IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フンダシオ インスティテュート デ レセルカ コントラ ラ レウセミア ジュゼップ カレラスの特許一覧 ▶ インスティトゥシオ カタラーナ デ レセルカ イ エストゥディス アバンカツ (アイシーアールイーエー)の特許一覧 ▶ ユニベルシタ デ バルセロナの特許一覧 ▶ フンダシオ インスティテュート ディンベスティガシオ エン シエンシエス デ ラ サリュ ジャーマンス トライアス アイ プジョルの特許一覧 ▶ ワンチェーン イミュノセラピューティクス エセ.エレの特許一覧

特表2023-523682B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の処置のためのCD22標的化部分
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の処置のためのCD22標的化部分
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230531BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230531BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230531BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230531BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230531BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230531BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230531BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230531BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230531BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230531BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K19/00
C07K16/30
C12N5/10
C12N5/0783
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K35/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554601
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021056262
(87)【国際公開番号】W WO2021180890
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】20382175.6
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522357323
【氏名又は名称】フンダシオ インスティテュート デ レセルカ コントラ ラ レウセミア ジュゼップ カレラス
(71)【出願人】
【識別番号】513019977
【氏名又は名称】インスティトゥシオ カタラーナ デ レセルカ イ エストゥディス アバンカツ (アイシーアールイーエー)
(71)【出願人】
【識別番号】513295641
【氏名又は名称】ユニベルシタ デ バルセロナ
(71)【出願人】
【識別番号】519023754
【氏名又は名称】フンダシオ インスティテュート ディンベスティガシオ エン シエンシエス デ ラ サリュ ジャーマンス トライアス アイ プジョル
(71)【出願人】
【識別番号】522357334
【氏名又は名称】ワンチェーン イミュノセラピューティクス エセ.エレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メネンデス ブジャン パブロ
(72)【発明者】
【氏名】ベラスコ エルナンデス タリア
(72)【発明者】
【氏名】ザネッティ サマンタ ロミーナ
(72)【発明者】
【氏名】アンヘル ロカモラ パブロ
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス マルティネス ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス アグエラ フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス マルティン アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ディアス コルテス ビクトル マヌエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA05
4C087ZB27
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)などのCD22陽性がんの処置のための治療薬を提供する。特に、本発明は、抗CD22モノクローナル抗体を提供し、そのscFvは、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の一部として、CD22陽性がんの処置に使用するために、CD22抗原の第1のIg細胞外ドメイン(膜から最も遠いドメイン)を標的化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号15として記載されるCD22抗原の第1のIg細胞外ドメインの領域に対して結合親和性を有し、VLドメインおよびVHドメインを含む、抗体、F(ab’)、Fab、scFabまたはscFvであるCD22標的化部分であって、前記VLドメインが配列番号7のみからなり、前記VHドメインが配列番号8のみからなる、CD22標的化部分。
【請求項2】
前記CD22標的化部分が、VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであり、前記VLドメインが配列番号7のみからなり、前記VHドメインが配列番号8からなる、請求項1に記載のCD22標的化部分。
【請求項3】
前記CD22標的化部分が、配列番号9のみからなるscFvである、請求項2に記載のCD22標的化部分。
【請求項4】
a.請求項1に記載のCD22標的化部分を含む細胞外ドメイン;
b.膜貫通ドメイン;および
c.細胞内シグナリングドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項5】
前記膜貫通ドメインが、CD28、CD3、CD45、CD4、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154の膜貫通ドメインを含む、請求項4に記載のCAR。
【請求項6】
前記膜貫通ドメインがCD8の膜貫通ドメインを含む、請求項5に記載のCAR。
【請求項7】
前記細胞内シグナリングドメインが、CD3ζ、FcRγ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66bの細胞内ドメインを含む、請求項4から6のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項8】
前記細胞内シグナリングドメインがCD3ζの細胞内ドメインを含む、請求項7に記載のCAR。
【請求項9】
前記CARが共刺激シグナリングドメインをさらに含み、好ましくは、前記共刺激シグナリングドメインが、CD27、CD28、CD137、CD134、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、またはCD276の細胞内ドメインを含む、請求項4から8のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項10】
前記共刺激シグナリングドメインがCD137の細胞内ドメインを含む、請求項9に記載のCAR。
【請求項11】
前記CD22標的化部分がscFVであり、好ましくは、前記scFVが、配列番号7のみからなるVLドメインおよび配列番号8のみからなるVHドメインを含む、請求項4から10のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項12】
請求項4から11のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含むT細胞。
【請求項14】
CD22陽性がんを処置する方法において使用するための、請求項13に記載の細胞または請求項1から3のいずれか一項に記載のCD22標的化部分であって、前記方法が、前記細胞または組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、前記CD22陽性がんが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、より具体的にはCD19B-ALLの再発である、細胞またはCD22標的化部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)などのCD22陽性がんの処置のための治療薬を提供する。特に、本発明は、CD22陽性がんの処置に使用するための、F(AB’)2、特にscFv断片がCD22抗原を標的化することができる抗CD22モノクローナル抗体を提供する。
【背景技術】
【0002】
B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)は、個体の寿命全体を通じていかなる年齢でも診断されるアグレッシブながんであり、小児において最も一般的な悪性腫瘍である。現在の5年無病生存率は約80%であるが、難治性および再発性(R/R)患者は予後が悪い。成人のB-ALLは頻度が低いが、高用量化学療法レジメンの使用および同種幹細胞移植後でさえ、一般に好ましくない臨床転帰を伴う。
【0003】
免疫療法は、がん処置において前例のない期待を生み出している。細胞表面の腫瘍抗原に対して再指向されたキメラ抗原受容体(CAR)を用いたヒトT細胞の遺伝的操作に基づく養子細胞免疫療法は、CD19-CAR T細胞の高い効力および特異性のためにR/R B-ALLにおいて大きな可能性を示し、12ヶ月後に約90%の応答率および約50%の完全寛解率を示した。しかしながら、CD19-CAR T細胞は必ずしも治癒的であるとは限らず、患者の約60%は、主にCAR T細胞の低い持続性、またはCD19B-ALLクローンの出現のために、再発が避けられない。したがって、残念なことに、化学療法またはCD19指向性免疫療法のいずれかの後に、CD19として再発するB-ALL患者に対する治療選択肢はほとんどなく、したがって、新規標的抗原、共刺激ドメインまたはエフェクター細胞の開発を含む、CAR T細胞の機能および持続性を増強するための新規戦略が研究されている。
【0004】
CD19と同様に、CD22はB細胞系統に限定された様式で発現される。CD22指向性T細胞は、i)CD22がそのような再発において保持されるので、CD19/dim B-ALLの再発に対する代替物を構成し、ii)CD19-CAR T細胞療法において潜在的に回避することができる最も初期のプレVDJ CD19B系統前駆体を標的化し得るため、現在のCD19指向性T細胞戦略に対して魅力的な追加である。実際、CD22は、免疫毒素に連結した抗CD22モノクローナル抗体(moAb)を使用した臨床試験においてB-ALLに対する標的として用いられており、いくつかのCD22-CARも報告されている。CD22-CAR T細胞は、ナイーブまたはCD19-CAR T細胞に抵抗性のR/R B-ALL患者の約70%において臨床的寛解を誘導する。
【0005】
しかしながら、これらの研究は、B-ALL芽球が、その後のCD22-/dim再発によりCD22-CAR T細胞媒介性溶解から逃れるかどうかに関して相反する結果を報告している(Fry TJ、Shah NN、Orentas RJ、Stetler-Stevenson M、Yuan CM、Ramakrishna Sら、CD22-targeted CAR T cells induce remission in B-ALL that is naive or resistant to CD19-targeted CAR immunotherapy.Nature medicine.2018;24(1):20-8;およびPan J、Niu Q、Deng B、Liu S、Wu T、Gao Zら、CD22 CAR T-cell therapy in refractory or relapsed B acute lymphoblastic leukemia.Leukemia.2019)。興味深いことに、Orentas研究室からの比較研究(Blood.2013年2月14日;121(7):1165-74.doi:10.1182/blood-2012-06-438002.Epub 2012年12月14日;およびAdrienne H.Long、Waleed M.Haso&Rimas J.Orentas(2013)Lessons learned from highly-active CD22-specific chimeric antigen receptor、OncoImmunology、2:4、e23621)は、細胞表面の近位エピトープを標的化するか、またはCD22に対して高い結合親和性を示す抗CD22抗体を使用すると、CD22-CAR T細胞の最大効力が得られることを報告した。
【0006】
ここで、本発明者らは、膜遠位CD22エピトープを標的化する新規CD22-CARを開発し、特徴付け、初代B-ALL細胞の効率的な排除を報告する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】CD22-CAR T細胞の設計、検出および増殖。(A)CD22-CAR構造および細胞内モック(モック-IC)のスキーム。(B)CD22+B細胞株であるRaji細胞をhCD22.7クローンとプレインキュベートした場合の抗CD22 S-HCL-1クローンの結合のブロッキングを示すヒストグラム(PEシグナル)(左のパネル)。右のパネルは、CD22構造を描写し、hCD22.7 scFvの結合部位(ならびにm971、HA22およびBL22 scFv)を指し示す。(C)初代T細胞における代表的なCAR検出。CD22-CARで形質導入されたT細胞は、GFP+として検出され、抗ヒトIgG F(ab’)2および抗His moAb(rCD22-Hisとのインキュベーション時)によって共認識される。(D)抗CD3/CD28への48時間の曝露後に、CD25およびCD69染色によって決定された適切なT細胞活性化(n=3の健常ドナー由来のPBMC)。(E)形質導入されていない、またはモック-ICもしくはCD22-CARのいずれかで形質導入された活性化T細胞の堅固な増殖(n=3の健常ドナー由来のPBMC)。TM、膜貫通;モック-IC、モック-細胞内;scFv、一本鎖可変断片;rCD22-His、組換えCD22-His;His、ヒスチジン;FSC、前方散乱;PBMC、末梢血単核細胞。プロットは平均±SEMを示す(n=3の健常ドナー)。
図2】CD22-CAR T細胞は、インビトロでB-ALL細胞株を特異的に標的化し、排除する。(A)インビトロ細胞傷害性アッセイの実験的設計。(B)細胞傷害性をFACS分析するために使用されるゲーティング戦略。生存標的細胞を、7AAD-CD3-GFP-CD19+CD10+/CD13+(MV4-11細胞株についてはCD33+)として同定した。CD22は、潜在的な抗原喪失のために標的細胞の交絡検出を回避するために使用されなかった。デュプレットを分析から除去した。(C)指し示されたE:T比でCD22-CAR T細胞との48時間のインキュベーション後の生存標的細胞のパーセンテージ。結果を、モック-ICデータ対して正規化する(n=3の健常ドナー由来のPBMC)。異なる細胞株におけるCD22発現は、ヒストグラムで以前に示されている。(D)CRISPR-Cas9で作製した、CD19-KOおよびCD22-KO SEM細胞529を使用したCD22-CARの特異性(n=3の健常ドナー由来のPBMC)。異なる細胞株におけるCD22発現は、ヒストグラムで以前に示されている。(E)1:1のE:T比での48時間細胞傷害性アッセイにおいて、FACSによって測定された生存標的細胞の絶対数(n=3の健常ドナー由来のPBMC)。(F)B-ALLおよびAML細胞株(上のパネル)ならびにCD22-KOまたはCD19-KO SEM細胞株(下のパネル)への48時間の曝露後のCD22-CAR T細胞による炎症促進性サイトカインの堅固な分泌を示すELISA(n=3人の健常ドナー由来のPBMC)。FSC、前方散乱;SSC、側方散乱;FSC-H、前方散乱-高;FSC-A、前方散乱領域;E:T、エフェクター:標的比;KO、ノックアウト;wt、野生型;MFI、蛍光強度中央値。データを平均±SEMとして示す(n=3の健常ドナー)。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3】CD22-CAR T細胞はインビトロで初代B-ALL細胞を効率的に標的化および排除するが、CD22の発現レベルはそれらの効力に影響を及ぼす。(A)使用した異なる初代B-ALL試料におけるCD22の蛍光強度中央値(MFI)(n=9)。CD22 MFIの平均値を使用して、初代B-ALL試料をCD22high(ALL#1~ALL#3)またはCD22low(ALL#4~ALL#9)として分類した。(B)1:1のE:T比での24時間および48時間細胞傷害性アッセイにおいて、FACSによって測定された生存標的CD22highおよびCD22lowの絶対数。統計学的有意性を、各試料について指し示す。二元配置分散分析(シダック(Sidak)の多重比較検定)を使用した。(C)CD22の発現レベルに関係なく、48時間の曝露後のCD22-CAR T細胞による炎症促進性サイトカインの同様に堅固な分泌を示すELISA。データを平均±SEMとして示す(n=3の健常ドナー由来のPBMC)。p<0.05、**p<0.01。
図4】膜遠位CD22エピトープに対して指向されたCAR T細胞は、インビボで示差的にアグレッシブなPDX B-ALL芽球を効率的に排除する。(A)インビボ実験の実験的設計。(B)インビボ実験からのFACSデータを分析するために使用したゲーティング戦略。白血病細胞を、hCD45+hHLA-ABC+hCD3-hCD19+hCD10+として同定した。潜在的な抗原喪失による交絡分析を回避するために、CD22は同定から除外した。CAR T細胞を、CD3およびGFPの発現に基づいて同定した。デュプレットを分析から除去した。(C)26週間のフォローアップ期間にわたってPBで測定された白血病負荷(上のパネル)およびT細胞の持続性(下のパネル)(n=4~5のマウス/群;n=3のPDX、CD22high(ALL#1およびALL#2)およびCD22low(ALL#10))。(D)PB、同側および対側のBMならびに脾臓における屠殺時の白血病負荷(3つのPDX由来のn=14のマウスをプールして示す)。(E)屠殺時のモック-ICおよびCD22-CAR T細胞処置マウスの脾臓(ALL#2マウス)の重量(全動物、n=14)および巨視的画像。(F)屠殺時のモック-ICおよびCD22-CAR T細胞処置マウスにおけるPB赤血球数(n=14)。(G)屠殺時のモック-ICおよびCD22-CAR T細胞処置マウスにおける持続的初代B-ALLのCD22 MFI(ALL#2マウス、n=4~5)、ならびに標的細胞集団内のモック-ICおよびCD22-CAR T細胞処置マウスのCD22のレベルを示す対側BM試料の代表的なFACSプロット。D、日;W、週;it、脛骨内;iv、静脈内;BM、骨髄;RBC、赤血球;MFI、蛍光強度中央値。プロットは平均±SEMを示す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図5】hCD22.7-scFvの免疫原性予測。hCD22.7、m971およびHA22 CD22-scFvの免疫原性の可能性をインシリコ予測分析によって比較した。CD22-scFvは、HLA分子が強い好選性を有する長さの9量体ペプチドに切断された。ペプチドは、半数阻害濃度(IC50)が<500nMである場合、MHCクラス-Iに結合すると考えられ、IC50が<50nM(親和性値>2、点線)およびアミノ酸配列が図に示されている場合に強力な結合因子と考えられる。最も代表的なHLAスーパータイプのみを分析した。予測されたエピトープ結合親和性を(1/IC50×100)として計算した。予測されるエピトープは、タンパク質におけるそれらの分布に従い、x軸に沿って分布する。
図6】CD22/CD19-biCAR T細胞の作製、形質導入、増殖および検出。A)使用したCAR構築物のスキーム。(S)および(L)はそれぞれ、scFv間リンカーについての短い-(GS)-および長い-(GS)-のサイズを示す。B)FACSによるCD25およびCD69の発現(左のパネル)によって、ならびに光学顕微鏡による活性化T細胞クラスター(右のパネル)によって決定された、抗CD3/CD28+IL-7およびIL-15への48時間の曝露後のT細胞活性化(n=5)。C)指し示されたCARで形質導入された活性化T細胞の形質導入効率(左のパネル)および増殖(右のパネル)(n=5)。矢印は、CAR T細胞を、ヒトT細胞上のCAR表面検出のために採取した時間を表す。D)GFP+(上のパネル)、抗scFv(2行目)、CD19-Fc/抗Fc(3行目)、およびCD22-Hisタグ(下のパネル)として検出された、ヒトT細胞上のCAR発現の代表的なフローサイトメトリープロット。CARで形質導入されたT細胞を緑色で示す。E)CD4およびCD8T細胞における代表的なCAR形質導入(n=5)。データを平均±SEMとして示す。
図7】インビトロでのCD22/CD19-biCAR T細胞の堅固な抗白血病効力および特異性。A~B)指し示されたCAR T細胞およびE:T比で48時間のインキュベーション後の生存標的細胞(SEMまたはNALM6)の絶対数(A)および(B)パーセンテージ。Aの結果を、モック-CARデータに対して正規化する(n=3の独立した健常ドナーのPBMC)。C)1:1のE:T比でSEMまたはNALM6標的細胞への48時間の曝露後のCAR T細胞による炎症促進性サイトカインIL-2、IFN-γおよびTNF-αの産生(n=3の独立した健常ドナーのPBMC)。D)CRISPR/cas9編集されたSEM細胞の異なるCD22/CD19コンビナトリアル表現型。E~F)指し示されたCAR T細胞およびE:T比で48時間のインキュベーション後の生存標的細胞のパーセンテージ(E)および絶対数(F)。Eの結果を、モック-CARデータに対して正規化する(n=5の独立した健常ドナーのPBMC)。G)指し示されたSEM表現型への48時間の曝露後のCAR T細胞によるIL-2、IFN-γおよびTNF-αの産生(n=5)。データを平均±SEMとして示す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001;テューキー事後検定による一元配置ANOVA検定。
図8】CD22/CD19(S)-CAR T細胞は、NALM6およびSEM B-ALL細胞株の両方を使用したインビボで、CD19-CAR T細胞と同程度に効率的である。A)インビボ実験の実験的設計。NSGマウス(n=6/群)に、1×10個のLuc発現NALM6/SEM細胞をBM内移植した。4日後、4×10個のモック-CAR、CD19-CARまたはCD22/CD19(S)-CAR T細胞をi.v.注射した。白血病負荷を、インビボイメージングシステム(IVIS)を使用して生物発光(BLI)によって毎週モニターした。モック-CAR処置マウスがBLIによって完全に白血病性であった場合、マウスを屠殺し、白血病負荷およびCAR-T細胞の持続性についてFACS分析した。B)指し示された時点でBLIによってモニターされたNALM6白血病負荷のIVIS画像化。C)指し示された時点でのNALM6についての全放射輝度定量(p/秒/cm2/sr)。D、E)それぞれモック-CAR、CD19-CAR、およびCD22/CD19(S)-CARで処置したマウスの屠殺時の末梢血(PB)(D)および対側骨髄(BM)(E)におけるNALM6白血病負荷。F)それぞれモック-CAR、CD19-CAR、およびCD22/CD19(S)-CARで処置したマウスの屠殺時のBMにおける、NALM6細胞(青色)およびヒトT細胞の持続性(赤色)を示す代表的なFACSプロット。G~K)SEM標的細胞についてはB~Fと同じ。各ドットはマウスを表す。データを平均±SEMとして示す、p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001;テューキー事後検定による一元配置ANOVA検定。
図9】CD22/CD19(S)-CAR T細胞は、初代およびPDX B-ALL細胞を排除する。A)初代B-ALL芽球におけるCD22およびCD19 FACS発現(n=3)。B)2:1のE:T比でCAR T細胞との24時間のインキュベーション後の生存初代B-ALL芽球の絶対数。C)2:1のE:T比で初代B-ALL芽球への24時間の曝露後のCAR T細胞による炎症促進性サイトカインIL-2、IFN-γおよびTNF-αの産生(n=3の独立した健常ドナーのPBMC)。D~F)PDX B-ALL試料についてはA~Bと同じ。データを平均±SEMとして示す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001;テューキー事後検定による二元配置ANOVA検定。
図10】CD22/CD19(S)-CARは、長期フォローアップのB-ALL PDXにおいて再発を遅延させるのに有効である。A)実験的設計を示すスキーム。NSGマウス(n=6~8/群)に、0.5×10個のB-ALL PDX#1および1×10個のB-ALL PDX#2細胞をi.v.移植した。BMにおけるB-ALLの生着の際に、マウスを無作為化し、17日目または31日目に、5×10個のモック-CAR、CD19-CARまたはCD22/CD19(S)-CAR T細胞をi.v.注射した。PBにおける白血病負荷およびヒトT細胞の持続性を、FACSによって隔週でモニターした。モック-CAR処置マウスを屠殺した時(4週目)およびエンドポイント分析時(13週目)に、BM吸引物をFACS分析した。B)CAR-T細胞注入後の指し示された時点でのPB(左上のパネル)およびBM(左下のパネル)における白血病負荷。右のパネルは、CAR T細胞注入前(CAR T細胞注入の3日前)およびモック-CAR処置マウスを屠殺した時(4週目)の代表的なBMのFACS分析を示す。C)指し示された時点でのCD19-CAR処置マウス対CD22/CD19(S)-CAR処置マウスの白血病生着/再発(左のパネル)および持続性T細胞(右のパネル)のPBにおけるフォローアップ(n=7~8の動物/群)。D)CD19-CAR処置マウス対CD22/CD19(S)-CAR処置マウスについてのBMにおける屠殺/エンドポイント(CAR T細胞注入後の第13週)時での白血病負荷(n=7のマウス/群)。BMにおける芽球のパーセント(%)が>1%(水平の点線)である場合、マウスは再発したと考えられる。下のパネルは、各独立したCD19-CAR処置マウスおよびCD22/CD19(S)-CAR処置マウスについてのB-ALL細胞(青色)およびヒトT細胞の持続性(赤色)を示すFACS分析を示す。各ドットはマウスを表す。データを平均±SEMとして示す。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001;テューキー事後検定による一元配置ANOVA検定。
図11】7つのドメインを有するCD22構造。抗CD22抗体の結合が指し示されている。
図12】イノツズマブ(ドメイン遠位)、hCD22.7(ドメイン1、遠位)の結合ドメイン。イノツズマブについて検出されたエピトープ(青色)は、hCD22.7(赤色)に対して同定されたものに隣接する露出領域と一致する。イノツズマブのエピトープは、hCD22.7によって認識されるものよりもわずかに延びており、主に酸/塩基性残基から構成される。現在、この図に示されているCD22の3つの第1のドメイン(1~300)に関する構造情報のみが存在する。
図13】CD22-イノツズマブscFvおよびCD22-hCD22.7scFv複合体の構造モデル。hCD22.7の場合、構造は、CD22の同定された結合エピトープ(赤色)ならびにhCD22.7scFvの重鎖および軽鎖の配列(それぞれ青色およびピンク色)に基づいて予測される。イノツズマブの場合、構造は、CD22の同定された結合エピトープ(青色)ならびにイノツズマブscFvの重鎖および軽鎖の配列(それぞれ黄色および緑色)に基づいて予測される。イノツズマブのモデリングは、重鎖および軽鎖の両方に対して高い配列同一性(重鎖:90%;軽鎖:92%)を有するPDBデータバンクで利用可能な構造5czxに基づいて行われている。
図14】A)細胞傷害性アッセイ。指し示された数(E:T比1/1、1/2、1/4および1/8)で1×10個のNALM6細胞をCD22-CAR T細胞と24~48時間インキュベーション後の生存標的NALM6(CD1a+)およびJurkat(CD1a-、対照として)細胞のパーセンテージ。結果を、モックデータ(n=3の健常ドナーおよび2つの独立した実験からのPBMCを用いたデータ)に対して正規化する。B)NALM6細胞への24~48時間の曝露後の異なるCD22-CAR T細胞による炎症促進性サイトカインの分泌を示すELISA。データを平均±SEMとして示す(n=3の健常ドナー)。
図15】NSGマウスn=4群に、2つの5×10個のLuc/GFP発現NALM6細胞(図16図18)またはSEM(図20図22)細胞を脛骨内(IT)注射し、3日後に5×10個のモックまたは異なるCD22 CARTの単回IV(静脈内)注射を行った。腫瘍負荷を、BLI(IVIS画像化を使用)によって4日ごとにモニターした。モック処置された動物が完全に白血病性である場合、動物を安楽死させ、白血病負荷およびCART持続性についてFACSを使用することによって分析した。
図16】A)指し示された時点でBLIによってモニターされたNALM6-Luc細胞由来の腫瘍負荷のIVIS画像化。B)指し示された時点での平均放射輝度定量。左、線形スケール。右、対数スケール。
図17】末梢血(PB)、骨髄(BM)および脾臓における屠殺時の白血病負荷(NALM6-Luc細胞)。
図18】屠殺時のPB、BMおよび脾臓におけるT細胞の持続性(NALM6-Luc細胞)。
図19】A)指し示された時間で、標的細胞(T)として1×105個のSEM WT細胞(左)およびCD22に対するKO SEM細胞(CD22KO)を用いた細胞傷害性アッセイ。指し示された細胞数(E:T比1/1、1/2、1/4および1/8)でエフェクター(E、CD22-CAR T)細胞との24時間および48時間のインキュベーション後の生存標的細胞のパーセンテージ。結果を、モックデータ(n=3の健常ドナーおよび1つの実験からのPBMC)対して正規化する。B)SEM細胞への24~48時間の曝露後の異なるCD22-CAR T細胞による炎症促進性サイトカインの分泌を示すELISA。データを平均±SEMとして示す(n=3の健常ドナー)。
図20】A)指し示された時点でBLIによってモニターされたSEM-luc細胞由来の腫瘍負荷のIVIS画像化。(B)指し示された時点での平均放射輝度定量。左、線形スケール。右、対数スケール。
図21】PB、BMおよび脾臓における屠殺時の白血病負荷(SEM-Luc細胞)。
図22】屠殺時のPB、BMおよび脾臓における屠殺時の負荷におけるT細胞の持続性(SEM-Luc細胞)。
図23】g5/44およびCD22.7タンパク質配列のscFvを比較のためにアラインメントした。A)重鎖の比較;B)これらのscFvのそれぞれの軽鎖の比較。相同性の程度は、各アミノ酸について1~10のスコアで指し示されている(10はである)。この図に示されるように、これらのscFv、g5/44およびCD22.7のそれぞれのCDRが四角形を伴って指し示されている。G5/44およびm5/44は、同じ抗体(イノツズマブ)のヒトおよびマウスバージョンである。
図24】配列ベースの(および構造アシストの)CDRグラフティングアプローチに従うヒト化プロセス。図24は、新規抗CD22(クローンhCD22.7)の重鎖および軽鎖のマウスバージョンとヒト化バージョンとの間の比較を示す。図25A)はヒト化重鎖を示し、図25B)はヒト化軽鎖を示す。
図25】「脱マウス化(De-murinenization)」アプローチに従うヒト化プロセス。図25は、マウス配列上の免疫学的に責任がある領域の同定、およびそのような責任を取り除くための配列上の個々の変化(すなわち点変異)を示す。
【発明の詳細な説明】
【0008】
(定義)
患者へ医薬を「投与すること」または患者への医薬「の投与」(およびこの語句の文法的等価物)は、医療専門家による患者への投与であり得るか、または自己投与であり得る直接投与、および/または薬物を処方する行為であり得る間接投与を指す。例えば、患者に医薬を自己投与するように指示するか、または患者に薬物の処方箋を提供する医師が、患者へ薬物を投与している。
【0009】
「アフィボディ」という用語は、プロテインAのZドメインに由来し、特定の標的に結合するように操作されたタンパク質を指す(Frejd&Kim、2017.Exp Mol Med.49(3):e306を参照)。
【0010】
「抗体」という用語は、特定の標的に結合するか、または特定の標的と免疫学的に反応性である少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む分子を指す。用語は、全抗体および任意の抗原結合部分またはその単鎖ならびにそれらの組合せを含む。例えば、「抗体」という用語は、特に二価抗体および二価二重特異性抗体を含む。
【0011】
典型的な種類の抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(「HC」)および2つの軽鎖(「LC」)を含む。
【0012】
各「重鎖」は、「重鎖可変ドメイン」(本明細書では「VH」と略される)および「重鎖定常ドメイン」(本明細書では「CH」と略される)を含む。重鎖定常ドメインは、典型的には、3つの定常ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。
【0013】
各「軽鎖」は、「軽鎖可変ドメイン」(本明細書では「VL」と略される)および「軽鎖定常ドメイン」(「CL」)を含む。軽鎖定常ドメイン(CL)は、カッパ型またはラムダ型のものであり得る。VHおよびVLドメインは、「フレームワーク領域」(「FW」)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(「CDR」)と呼ばれる超可変の領域にさらに細分することができる。
【0014】
各VHおよびVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRおよび4つのFWから構成される:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4。本開示は、とりわけ、VHおよびVL配列ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3に対応する部分配列を提示する。
【0015】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列境界は、Kabatら(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(’’Kabat’’付番スキーム)、Al-Lazikaniら、(1997)JMB 273、927-948(’’Chothia’’付番スキーム)によって記載されたものを含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して決定することができる。
【0016】
したがって、当業者は、FW1、FW2、FW3およびFW4の配列が等しく開示されていることを理解するであろう。特定のVHについて、FW1は、VHのN末端とH-CDR1のN末端との間の部分配列であり、FW2は、H-CDR1のC末端とH-CDR2のN末端との間の部分配列であり、FW3は、H-CDR2のC末端とH-CDR3のN末端との間の部分配列であり、FW4は、H-CDR3のC末端とVHのC末端との間の部分配列である。同様に、特定のVLについて、FW1は、VLのN末端とL-CDR1のN末端との間の部分配列であり、FW2は、L-CDR1のC末端とL-CDR2のN末端との間の部分配列である。FW3は、L-CDR2のC末端とL-CDR3のN末端との間の部分配列であり、FW4は、L-CDR3のC末端とVLのC末端との間の部分配列である。
【0017】
重鎖および軽鎖の可変ドメインは、結合標的と相互作用する領域を含み、結合標的と相互作用するこの領域は、本明細書では「抗原結合部位(antigen-binding site)」または「抗原結合部位(antigen binding site)」とも呼ばれる。抗体の定常ドメインは、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への抗体の結合を媒介することができる。本開示の例示的な抗体には、典型的な抗体だけでなく、F(ab’)2などの二価断片およびその変形も含まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、二価抗体断片(F(ab’)2など)、二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および抗原結合部位を含む任意の他の改変免疫グロブリン分子を包含する。
【0019】
抗体は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれるそれらの重鎖定常ドメインの同一性に基づいて、免疫グロブリンの5つの主要なクラス(アイソタイプ):IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそれらのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)のいずれかのものであり得る。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造および三次元構成を有する。抗体は、裸であるか、または他の分子(治療剤または診断剤など)にコンジュゲートして、イムノコンジュゲートを形成することができる。
【0020】
「抗原結合断片」または「Fab」という用語は、重鎖および軽鎖のそれぞれの1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインを含む抗体断片を指す。Fab断片は、インタクトなモノクローナル抗体をパパインで消化することによって得ることができる。
【0021】
「がん」という用語は、生理学的機能を有さず、制御されていない通常は急速な細胞増殖から生じ、身体の他の部分に浸潤または拡散する可能性を有する、組織の異常な良性または悪性の新しい成長として定義することができる疾患の群を指す。
【0022】
「CD22陽性」がん性疾患を含む「CD22陽性」がんは、その細胞表面にCD22が存在する細胞を含むものである。「CD22陽性」という用語はまた、本発明のCAR含有細胞がCD22へのCARの結合によって媒介される治療効果を有するように、細胞の表面に十分なレベルのCD22を産生するがんを指す。いくつかの実施形態では、CD22陽性がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、より具体的にはCD19B-ALLの再発である。
【0023】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、T細胞を選択された抗原に対して標的化し、T細胞の機能、代謝および持続性を再プログラムする合成受容体を指す(Riviere&Sadelain、2017.Mol Ther.25(5):1117-1124を参照)。同様に、「CART」という用語は、CARを含むT細胞を指す。
【0024】
本明細書で使用される「併用療法」、「と組み合わせて」または「と併せて」は、少なくとも2つの別個の処置モダリティ(すなわち、化合物、構成要素、標的化剤または治療剤)による同時(concurrent)、並列、同時(simultaneous)、逐次または断続的な処置の任意の形態を示す。したがって、用語は、対象への他の処置モダリティの投与前、投与中、または投与後の1つの処置モダリティの投与を指す。組み合わせたモダリティは、任意の順序で投与することができる。治療的に活性なモダリティは、医療従事者によってまたは規制当局に従って処方される様式および投薬レジメンで、一緒に(例えば、同じまたは別々の組成物、製剤または単位剤形で同時に)または別々に(例えば、同じ日または異なる日に、別々の組成物、製剤または単位剤形のための適切な投与プロトコルに従って任意の順序で)投与される。一般に、各処置モダリティは、その処置モダリティに対して決定された用量および/または時間スケジュールで投与され得る。場合により、3つ以上のモダリティが併用療法において使用されてもよい。さらに、本明細書で提供される併用療法は、他の種類の処置と併せて使用されてもよい。例えば、他の抗がん処置は、対象の現在の標準治療に関連する他の処置の中でも、化学療法、手術、放射線療法(放射線)および/またはホルモン療法からなる群より選択されてもよい。
【0025】
「完全奏効」または「完全寛解」または「CR」は、RECIST v1.1ガイドラインで定義されているように、すべての標的病変の消失を指し示す。これは、がんが治癒したことを必ずしも意味しない。
【0026】
「共刺激シグナリングドメイン」という用語は、例えばTCR/CD3複合体のCD3ζ鎖によって提供される一次シグナルに加えて、活性化、増殖、分化、サイトカイン分泌などを含むがこれらに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルをT細胞に提供するシグナリング部分を指す。共刺激ドメインには、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、1COS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドのすべてまたは一部分含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、他の細胞内メディエーターと相互作用して、活性化、増殖、分化およびサイトカイン分泌などを含む細胞応答を媒介する細胞内シグナリングドメインである。
【0027】
本明細書で使用される場合、薬剤、例えば、CARTなどの治療剤の「有効量」という用語は、有益な結果または所望の結果、例えば、臨床結果をもたらすのに十分な量であり、したがって、「有効量」は、それが適用される状況に依存する。例えば、T-ALLを処置する治療剤を投与する状況においては、有効量は、がん細胞の数を減少させる;腫瘍サイズまたは負荷を減少させる;末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅くする、ある特定の実施形態では、停止させる);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅くする、ある特定の実施形態では、停止させる);腫瘍成長をある程度阻害する;がんに関連する症候の1つまたは複数をある程度緩和する;および/または良好な応答、例えば、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)もしくは全生存期間(OS)の延長、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、またはいくつかの場合には、安定疾患(SD)、進行疾患(PD)の減少、進行までの時間(TTP)の短縮、またはそれらの任意の組合せをもたらすことができる。「有効量」という用語は、「有効用量」、「治療有効量」または「治療有効用量」と互換的に使用され得る。
【0028】
「個体」、「患者」または「対象」という用語は、本出願ではヒトを指定するために互換的に使用され、決して限定することを意味するものではない。「個体」、「患者」または「対象」は、任意の年齢、性別および体調のものであり得る。「それを必要とする患者」という用語は、通常、CD22陽性がんに罹患している患者を指す。
【0029】
「注入」または「注入する」とは、治療目的のために静脈を通して体内に治療剤含有溶液を導入することを指す。一般に、これは静脈内バッグを介して達成される。
【0030】
本明細書で使用される「細胞内シグナリングドメイン」は、リンパ球の活性化をもたらす分子(ここではキメラ受容体分子)の1つまたは複数のドメインのすべてまたは一部分を指す。そのような分子の細胞内ドメインは、細胞メディエーターと相互作用することによってシグナルを媒介し、増殖、分化、活性化および他のエフェクター機能をもたらす。本発明のCARで使用するための細胞内シグナリングドメインの例としては、CD3ζ鎖の細胞内配列、および/またはCAR係合後にシグナル伝達を開始するために協調して作用する共受容体、ならびにこれらの配列の任意の誘導体またはバリアント、および同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。T細胞活性化は、2つの別個のクラスの細胞質シグナリング配列:抗原依存性一次活性化を開始し、T細胞受容体様シグナルをもたらすもの(一次細胞質シグナリング配列)および抗原非依存的様式で作用し、二次または共刺激シグナルをもたらすもの(二次細胞質シグナリング配列)によって媒介されると言うことができる。刺激の様式で作用する一次細胞質シグナリング配列は、受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知のシグナリングモチーフを含み得る。ITAMを含む一次細胞質シグナルリング配列の例としては、CD3ζ、FcRγ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。
【0031】
「部分奏効」または「PR」は、RECIST v1.1ガイドラインで定義されているように、ベースラインの合計直径を基準として、標的病変の直径の合計における処置に応答した少なくとも30%の減少を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される希釈剤とは、薬学的投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を意味する。薬学的に活性な物質に対するそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、本発明の範囲を限定するものではないが、以下が含まれる:追加の緩衝剤;防腐剤;共溶媒;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ポリエステルなどの生分解性ポリマー;ナトリウム、多価糖アルコールなどの塩形成対イオン;アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、およびトレオニンなどのアミノ酸;ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコールなどの有機糖または糖アルコール;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[α]-モノチオグリセロール、チオ硫酸ナトリウムなどの硫黄含有還元剤;ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリンなどの低分子量タンパク質;ならびにポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー。他の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.編(1980)に記載されているものはまた、医薬組成物の所望の特徴に悪影響を及ぼさないという条件で、本明細書に記載の医薬組成物に含まれてもよい。
【0033】
「進行疾患」または「進行した疾患」とは、RECIST v1.1ガイドラインで定義されているように、もう1つの新しい病変もしくは腫瘍の出現および/または既存の非標的病変の明確な進行を指す。進行疾患または進行した疾患はまた、質量の増加または腫瘍の広がりのいずれかに起因して、処置を開始してから20%を超える腫瘍成長を指し得る。
【0034】
「無増悪生存期間」(PFS)は、登録から疾患進行または死亡までの時間を指す。PFSは、一般に、カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)法および固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)1.1規格を使用して測定される。一般に、無増悪生存期間は、患者ががんが悪化することなく生存したままである状況を指す。
【0035】
「RECIST」という用語は、固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumours)を意味する。RECISTガイドライン、基準、または規格は、成人および小児がん臨床試験で使用するための固形腫瘍の測定に対する標準的なアプローチおよび腫瘍サイズの変化の客観的評価のための定義を記載している。RECIST v1.1は、改訂RECISTガイドラインのバージョン1.1を意味し、European Journal of Cancers 45(2009)228-247に公表されている。
【0036】
「有利に応答する」という用語は、一般に、対象に有益な状態を引き起こすことを指す。がん処置に関して、用語は、対象に治療効果をもたらすことを指す。がんにおけるプラスの治療効果は、いくつかの方法で測定することができる(Weber、2009.J Nucl Med.50Suppl1:1S-10Sを参照)。例えば、腫瘍成長阻害、分子マーカーの発現、血清マーカーの発現、および分子イメージング技術はすべて、抗がん治療薬の治療効力を評価するために使用することができる。腫瘍成長阻害に関して、NCI規格によれば、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C<10%は、高い抗腫瘍活性レベルと考えられ、T/C(%)=(処置された腫瘍体積の中央値)/(対照の腫瘍体積の中央値)×100である。好ましい応答は、例えば、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)、もしくは全生存期間(OS)の延長、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、または、いくつかの場合では、安定疾患(SD)、進行疾患(PD)の減少、進行までの時間(TTP)の短縮、またはそれらの任意の組合せによって評価することができる。
【0037】
「配列同一性」という用語は、ペアワイズ配列アラインメントツールを使用して2つの配列を比較した場合に得られるパーセンテージ値を指す。この場合、配列同一性は、デフォルト設定を使用したグローバルアライメントツール「EMBOSS Needle」(Riceら、2000.Trends Genet.16(6):276-7;Liら、2015.Nucleic Acids Res.43(W1):W580-4)を使用して得られる。グローバルアライメントツールは、https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/で入手可能である。
【0038】
「一本鎖抗原結合断片」または「scFab」という用語は、抗体の重鎖の1つの可変ドメインおよび1つの定常ドメインに結合した、抗体の軽鎖の1つの可変ドメインおよび1つの定常ドメインを含む融合タンパク質を指し、重鎖および軽鎖は短いペプチドを介して一緒に連結されている。
【0039】
「一本鎖可変断片」または「scFv」という用語は、ペプチドリンカーで互いに連結された抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む融合タンパク質を指す。用語はまた、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)を含む。ジスルフィド結合でscFvを安定化する方法は、Reiterら、1996.Nat Biotechnol.14(10):1239-45に開示されている。
【0040】
「安定疾患」とは、RECIST v1.1ガイドラインで定義されているように、進行または再発のない疾患を指す。安定疾患では、部分奏効に適格となるのに十分な腫瘍縮小も、進行疾患として適格となるのに十分な腫瘍増加もない。
【0041】
「腫瘍進行までの時間」(TTP)は、登録から疾患進行までの時間として定義される。TTPは、一般に、RECIST v1.1基準を使用して測定される。
【0042】
本出願で使用される場合、「処置」および「治療」という用語は、健康問題を改善する目的で疾患および/または症候を治癒および/または緩和する目的で使用される衛生的、薬理学的、外科的および/または物理的手段のセットを指す。「処置」および「治療」という用語は、両方とも個体または動物の健康の維持および/または再確立を指向するため、予防的および治癒的方法を含む。症候、疾患および障害の原因にかかわらず、健康問題を緩和および/または治癒するための適切な医薬の投与は、本出願の文脈内の処置または治療の形態として解釈されるべきである。
説明
【0043】
CD19-CAR T細胞療法は、R/R B-ALLにおいて疑う余地のない可能性を示した。しかしながら、残念なことに、患者の40~60%は、CAR T細胞の持続性が低いため、またはCD19B-ALLクローンの出現のために最終的に再発する。CD19B-ALLの再発には治療選択肢がほとんど存在しないため、CAR T細胞の機能および持続性を増強するためには、新しい標的抗原の開発を含む新規戦略を検討すべきである。CD22は汎B細胞抗原であり、通常はCD22発現を保持するCD19再発を標的とするので、CAR T細胞療法に関してCD19に対する魅力的な代替物である。
【0044】
これに沿って、いくつかのCD22-CARが、ナイーブまたはCD19-CAR T細胞に抵抗性のR/R B-ALL患者の70%において臨床的寛解を誘導することが報告されている。しかし、異なるCD22 scFv(m971対YK-CD22BB-002)に基づく第I相臨床試験は、CD22-CAR T細胞接触時のCD22喪失および免疫回避に関して相反する結果を報告している。いくつかの抗CD22 moAbの以前の包括的な比較は、エピトープ選択がCD22-CARの抗白血病活性に重要であること、およびCD22の最も膜近位のIg細胞外ドメイン(5~7)を標的とするm971 scFvが、近位のIgドメイン3を標的とするBL22およびHA22 scFvよりも強力であろうことを指し示した。
【0045】
本発明では、本発明者らは、CD22-CARの制限された最先端のアーセナルの拡大に寄与し得る、新規CD22標的化部分、好ましくは抗CD22抗体、より好ましくはscFv、Fab、およびscFabからなる群より選択される抗CD22抗体断片の前臨床開発を報告する。この目的のために、従来のmoAb作製技術を使用して3つのCD22反応性ハイブリドーマを作製し、3つの非常に特異的なIgG1アイソタイプ抗CD22 moAbをもたらし、最後にCARの構築のためにhCD22.7クローンを選択した。本発明者らの知る限りでは、このhCD22.7 scFvは、CD22の最も膜遠位のIg細胞外ドメイン1の配列番号15に列挙されるエピトープを認識するCD22-CARの開発に使用された最初である。これらの膜遠位エピトープCD22-CAR T細胞は、臨床的に重要な初代B-ALL細胞を使用したインビトロおよびインビボで、高性能を示した。実際、それらは、長期間(最大26週間)のT細胞の持続性と相まって、多様なアグレッシブさを有するいくつかのB-ALL PDXを制御するのに非常に効率的であった。重要なことに、本発明者らの実験的設計では、すべての構造モチーフ、細胞溶解モチーフおよび共刺激モチーフがエフェクターT細胞において発現されるが、細胞外抗CD22 scFv領域は発現されない、厳密な「モック」対照を使用した。この細胞内モック(モック-IC)は、本発明者らのCD22-CARの高い特異性および感度を実証する。
【0046】
本明細書で提供される実施例に示されるように、CD22の発現レベルを使用して、9つの初代B-ALL試料をCD22highおよびCD22lowとして分類し、本発明者らは、すべてのB-ALL初代細胞がインビトロでCD22-CARによって効率的に認識され、排除されたことを示す。さらに、CD22-CAR T細胞は、長期間(最大26週間)にわたって様々なアグレッシブさを有するいくつかのB-ALL PDXをインビボで制御することにおいて有能に機能し、これは、長期間のT細胞の持続性と相まって、生存/耐性B-ALL細胞によるCD22抗原喪失の徴候がなかった。
【0047】
したがって、本発明者らは、アブイニシオ(ab initio)で、既存のCD22-CARとは異なり、CD22抗原の第1のIg細胞外ドメイン(膜から最も遠いドメイン)を認識するように見える1つのCD22-CARを作製した。
【0048】
本発明の文脈において、「CD22抗原の第1のIg細胞外ドメイン(膜から最も遠いドメイン)」は、以下のアミノ酸配列[DSSKWVFEHPETLYAWEGACVWIPCTYRALDGDLESFILFHNPEYNKNTSKFDGTRLYESTKDGKVPSEQKRVQFLGDKNKNCTLSIHPVHLNDSGQLGLRMESKTEKWMERIHLNVSE](配列番号14)を有するCD22ドメインとして理解される。
【0049】
本発明の文脈において、「CD22抗原の第1のIg細胞外ドメイン(膜から最も遠いドメイン)からのエピトープ」は、以下のアミノ酸配列を有するエピトープ領域として理解される:[ESTKDGKVP](配列番号15)
【0050】
そのようなCD22-CARは、B-ALLの臨床的に重要な患者試料を使用したインビトロおよびインビボで、効率的に機能する。特に、本発明者らのhCD22.7由来の膜遠位標的化CARは、CD22-CARの持続性と相まって、異なるPDXを使用したインビボで、疾患を完全に制御する。
【0051】
したがって、本発明の第1の態様は、CD22標的化部分を提供し、CD22標的化部分は、CD22抗原の第1のIg細胞外ドメイン(膜から最も遠いドメイン)に対して結合親和性を有し、具体的には配列番号14に対して結合親和性を有し、より具体的には配列番号15に対して結合親和性を有する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の第1の態様は、CD22標的化部分を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナリングドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供し、CD22標的化部分は、CD22抗原の第1のIg細胞外ドメイン(膜から最も遠いドメイン)に対して結合親和性を有し、具体的には配列番号14に対して結合親和性を有し、より具体的には配列番号15に対して結合親和性を有する。CD22抗原の第1のIg細胞外ドメイン(膜から最も遠いドメイン)、より具体的には配列番号15に特異的に結合する結合分子は、上記障害、特にB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、より具体的にはCD19B-ALLの再発の診断および処置において特に有用または好適であると考えられる。
【0053】
上記抗体を作製するためのファージディスプレイおよびコンビナトリアル法は、当技術分野で公知である(例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号;Kangら、国際公開第92/18619号;Dowerら、国際公開第91/17271号;Winterら、国際公開第92/20791号;Marklandら、国際公開第92/15679号;Breitlingら、国際公開第93/01288号;McCaffertyら、国際公開第92/01047号;Garrardら、国際公開第92/09690号;Ladnerら、国際公開第90/02809号;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370-1372;Hayら(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81-85;Huseら(1989)Science 246:1275-1281;Griffthsら(1993)EMBO J 12:725-734;Hawkinsら(1992)J Mol Biol 226:889-896;Clacksonら(1991)Nature 352:624-628;Gramら(1992)PNAS 89:3576-3580;Garradら(1991)Bio/Technology 9:1373-1377;Hoogenboomら(1991)Nuc Acid Res 19:4133-4137;およびBarbasら(1991)PNAS 88:7978-7982に記載されているように(これらのすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0054】
いくつかの実施形態では、CD22標的化部分は、VLドメインおよびVHドメインを含む、抗体、scFv、Fab、またはscFabであり、前記VLドメインは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3ポリペプチドを含み、前記VHドメインは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3ポリペプチドを含み、LCDR1は[QSLLDSDGKTY](配列番号1)からなり、LCDR2は[LVS](配列番号2)からなり、LCDR3は[WQGTHFPWT](配列番号3)からなり、HCDR1は[GDSITSGY](配列番号4)からなり、HCDR2は[ISYSGST](配列番号5)からなり、HCDR3は[ARYPSPDAMNY](配列番号6)からなる。
【0055】
いくつかの実施形態では、CD22標的化部分は、VLドメインおよびVHドメインを含む、抗体、F(AB’)2、scFv、Fab、またはscFabであり、VLドメインは配列番号7からなり、VHドメインは配列番号8からなる。いくつかのさらなる実施形態では、CD22標的化部分は、VLドメインおよびVHドメインを含む、抗体、F(AB’)2、scFv、Fab、またはscFabであり、VLドメインは配列番号23からなり、VHドメインは配列番号22からなる。いくつかのさらなる実施形態では、CD22標的化部分は、VLドメインおよびVHドメインを含む、抗体、F(AB’)2、scFv、Fab、またはscFabであり、VLドメインは配列番号21からなり、VHドメインは配列番号20からなる。
【0056】
いくつかの実施形態では、CD22標的化部分は、VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであり、VLドメインは配列番号7からなり、VHドメインは配列番号8からなる。いくつかのさらなる実施形態では、CD22標的化部分は、VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであり、VLドメインは配列番号23からなり、VHドメインは配列番号22からなる。いくつかのさらなる実施形態では、CD22標的化部分は、VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであり、VLドメインは配列番号21からなり、VHドメインは配列番号20からなる。
【0057】
VLドメイン(配列番号7)
[DVVMTQTPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLDSDGKTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGS GSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPWTFGGGTKLEIKRA]
【0058】
VHドメイン(配列番号8)
[EVQLQESGPSLVKPSQTLSLTCSVTGDSITSGYWNWIRKFPGNKLEYMGYISYSGSTYYNPSLKSRISITRDTSKNQYYMQLKSVTTEDTATYYCARYPSPDAMNYWGQGTSVTVSS]
【0059】
いくつかの実施形態では、CD22標的化部分は、配列番号9を含むかまたは配列番号9からなるscFvである。
【0060】
クローンhCD22.7に由来するscFv(配列番号9)
[EVQLQESGPSLVKPSQTLSLTCSVTGDSITSGYWNWIRKFPGNKLEYMGYISYSGSTYYNPSLKSRISITRDTSKNQYYMQLKSVTTEDTATYYCARYPSPDAMNYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQTPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLDSDGKTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPWTFGGGTKLEIKRA]
【0061】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)の膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来し得る。膜貫通領域は、少なくとも、CD28、CD3、CD45、CD4、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154のα鎖、β鎖またはζ鎖の膜貫通領域(複数可)を含み得る。
【0062】
膜貫通ドメインは、合成の膜貫通ドメインまたは天然に存在する膜貫通ドメインのバリアントであってもよい。いくつかの実施形態では、合成貫通ドメインまたはバリアントの膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、CD3、CD45、CD4、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の膜貫通ドメイン、またはそのバリアントを含み、そのバリアントは95%の配列同一性を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、CD3、CD45、CD4、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の膜貫通ドメイン、またはそのバリアントを含み、そのバリアントは98%の配列同一性を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、CD3、CD45、CD4、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154の膜貫通ドメインを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは95%の配列同一性を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは98%の配列同一性を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD8の膜貫通ドメインを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号10、または配列番号10に対して95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号10、または配列番号10に対して98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは配列番号10を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは配列番号10からなる。
【0072】
CD8由来の膜貫通ドメイン(配列番号10)
[TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC]
【0073】
別の好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)の細胞内シグナリングドメインは、腫瘍細胞に発現されたリガンドに結合すると、CARを発現する細胞の少なくとも1つの機能の活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、1つまたは複数の細胞内シグナリングドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、CAR含有細胞の少なくとも1つの機能の活性化をもたらす細胞内シグナリングドメインの一部分および/またはバリアントである。
【0074】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、CD3ζ、FcRγ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66bの細胞内ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは95%の配列同一性を有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、CD3ζ、FcRγ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66bの細胞内ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは98%の配列同一性を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、CD3ζ、FcRγ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66bの細胞内ドメインを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、CD3ζの細胞内ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは95%の配列同一性を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、CD3ζの細胞内ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは98%の配列同一性を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインはCD3ζの細胞内ドメインを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、配列番号11、または配列番号11に対して95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、配列番号11、または配列番号11に対して98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは、配列番号11、または配列番号11に対して99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは配列番号11を含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナリングドメインは配列番号11からなる。
【0084】
CD3ζ由来の細胞内シグナリングドメイン(配列番号11)
[RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR]
【0085】
いくつかの実施形態では、CARは共刺激シグナリングドメインをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、CD27、CD28、CD137(ヒト4-1BBとしても公知)、CD134、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、CD276の細胞内ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは95%の配列同一性を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、CD27、CD28、CD137(ヒト4-1BBとしても公知)、CD134、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、CD276の細胞内ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは98%の配列同一性を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、CD27、CD28、CD137、CD134、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、またはCD276の細胞内ドメインを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、CD137の細胞内ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは95%の配列同一性を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、CD137の細胞内ドメインまたはそのバリアントを含み、そのバリアントは98%の配列同一性を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインはCD137の細胞内ドメインを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、配列番号12、または配列番号12に対して95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、配列番号12、または配列番号12に対して98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは、配列番号12、または配列番号12に対して99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは配列番号12を含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナリングドメインは配列番号12からなる。
【0095】
CD137由来の共刺激シグナリングドメイン(配列番号12)
[KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL]
【0096】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、前記VLドメインがLCDR1、LCDR2およびLCDR3ポリペプチドを含み、前記VHドメインがHCDR1、HCDR2およびHCDR3ポリペプチドを含み、LCDR1が配列番号1からなり、LCDR2が配列番号2からなり、LCDR3が配列番号3からなり、HCDR1が配列番号4からなり、HCDR2が配列番号5からなり、HCDR3が配列番号6からなる、scFv;
(ii)配列番号10、または配列番号10に対して95%の配列同一性を有する配列を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11、または配列番号11に対して95%の配列同一性を有する配列を含む細胞内シグナリングドメイン;ならびに
(iv)配列番号12、または配列番号12に対して95%の配列同一性を有する配列を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0097】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、前記VLドメインがLCDR1、LCDR2およびLCDR3ポリペプチドを含み、前記VHドメインがHCDR1、HCDR2およびHCDR3ポリペプチドを含み、LCDR1が配列番号1からなり、LCDR2が配列番号2からなり、LCDR3が配列番号3からなり、HCDR1が配列番号4からなり、HCDR2が配列番号5からなり、HCDR3が配列番号6からなる、scFv;
(ii)配列番号10、または配列番号10に対して98%の配列同一性を有する配列を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11、または配列番号11に対して98%の配列同一性を有する配列を含む細胞内シグナリングドメイン;ならびに
(iv)配列番号12、または配列番号12に対して98%の配列同一性を有する配列を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0098】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、前記VLドメインがLCDR1、LCDR2およびLCDR3ポリペプチドを含み、前記VHドメインがHCDR1、HCDR2およびHCDR3ポリペプチドを含み、LCDR1が配列番号1からなり、LCDR2が配列番号2からなり、LCDR3が配列番号3からなり、HCDR1が配列番号4からなり、HCDR2が配列番号5からなり、HCDR3が配列番号6からなる、scFv;
(ii)配列番号10、または配列番号10に対して98%の配列同一性を有する配列を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11、または配列番号11に対して99%の配列同一性を有する配列を含む細胞内シグナリングドメイン;ならびに
(iv)配列番号12、または配列番号12に対して99%の配列同一性を有する配列を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0099】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、前記VLドメインがLCDR1、LCDR2およびLCDR3ポリペプチドを含み、前記VHドメインがHCDR1、HCDR2およびHCDR3ポリペプチドを含み、LCDR1が配列番号1からなり、LCDR2が配列番号2からなり、LCDR3が配列番号3からなり、HCDR1が配列番号4からなり、HCDR2が配列番号5からなり、HCDR3が配列番号6からなる、scFv;
(ii)配列番号10を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11を含む細胞内シグナリングドメイン;ならびに
(iv)配列番号12を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0100】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、前記VLドメインがLCDR1、LCDR2およびLCDR3ポリペプチドを含み、前記VHドメインがHCDR1、HCDR2およびHCDR3ポリペプチドを含み、LCDR1が配列番号1からなり、LCDR2が配列番号2からなり、LCDR3が配列番号3からなり、HCDR1が配列番号4からなり、HCDR2が配列番号5からなり、HCDR3が配列番号6からなる、scFv;
(ii)配列番号10からなる膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11からなる細胞内シグナリングドメイン;ならびに
(iv)配列番号12からなる共刺激シグナリングドメイン。
【0101】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、VLドメインが配列番号7からなり、VHドメインが配列番号8からなる、scFv;
(ii)配列番号10、または配列番号10に対して95%の配列同一性を有する配列を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11、または配列番号11に対して95%の配列同一性を有する配列を含む細胞内シグナリングドメイン;ならびに
(iv)配列番号12、または配列番号12に対して95%の配列同一性を有する配列を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0102】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、VLドメインが配列番号23からなり、VHドメインが配列番号22からなる、scFv;
(ii)配列番号10、または配列番号10に対して95%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11、または配列番号11に対して95%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む細胞内シグナリングドメイン;および
(iv)配列番号12、または配列番号12に対して95%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0103】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、VLドメインが配列番号21からなり、VHドメインが配列番号20からなる、scFv;
(ii)配列番号10、または配列番号10に対して95%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含むかまたはそれからなる膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11、または配列番号11に対して95%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含むかまたはそれからなる細胞内シグナリングドメイン;および
(iv)配列番号12、または配列番号12に対して95%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなる共刺激シグナリングドメイン。
【0104】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、VLドメインが配列番号7からなり、VHドメインが配列番号8からなる、scFv;
(ii)配列番号10、または配列番号10に対して98%の配列同一性を有する配列を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11、または配列番号11に対して98%の配列同一性を有する配列を含む細胞内シグナリングドメイン;および
(iv)配列番号12、または配列番号12に対して98%の配列同一性を有する配列を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0105】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、VLドメインが配列番号7からなり、VHドメインが配列番号8からなる、scFv;
(ii)配列番号10、または配列番号10に対して99%の配列同一性を有する配列を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11、または配列番号11に対して99%の配列同一性を有する配列を含む細胞内シグナリングドメイン;および
(iv)配列番号12、または配列番号12に対して99%の配列同一性を有する配列を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0106】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、VLドメインが配列番号7からなり、VHドメインが配列番号8からなる、scFv;
(ii)配列番号10を含む膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11を含む細胞内シグナリングドメイン;および
(iv)配列番号12を含む共刺激シグナリングドメイン。
【0107】
いくつかの実施形態では、CARは以下を含む:
(i)VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであって、VLドメインが配列番号7からなり、VHドメインが配列番号8からなる、scFv;
(ii)配列番号10からなる膜貫通ドメイン;
(iii)配列番号11からなる細胞内シグナリングドメイン;および
(iv)配列番号12からなる共刺激シグナリングドメイン。
【0108】
いくつかの実施形態では、CARは、配列番号13、または配列番号13と95%の配列同一性を有する配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号13、または配列番号13と98%の配列同一性を有する配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号13、または配列番号13と99%の配列同一性を有する配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、CARは配列番号13を含むかまたはそれからなる。
【0109】
CARの完全配列(配列番号13)
[EVQLQESGPSLVKPSQTLSLTCSVTGDSITSGYWNWIRKFPGNKLEYMGYISYSGSTYYNPSLKSRISITRDTSKNQYYMQLKSVTTEDTATYYCARYPSPDAMNYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQTPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLDSDGKTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPWTFGGGTKLEIKRATTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR]
【0110】
いくつかのさらなる実施形態では、上記のCARのいずれかは、CD19標的化部分または任意の他の標的化部分、例えばCD20標的化部分をさらに含んでもよい。特に、CARは、好ましくは二重特異性CD22/CD19-biCARである。
【0111】
本発明の第2の態様では、本発明は、上記に開示されるCARのいずれか1つを含む、本発明のCARのいずれか1つをコードする核酸を提供する。キメラ受容体をコードする核酸配列は、キメラ受容体をカスタマイズするために切除し、他の構成要素と置き換えることができるいくつかのモジュール構成要素を一緒に連結する。
【0112】
いくつかの実施形態では、核酸は、細胞を形質導入または形質転換するのに適している。いくつかの実施形態では、核酸は、養子免疫療法に使用するためのT細胞を形質導入または形質転換するのに適している。
【0113】
いくつかの実施形態では、核酸は、哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化されている。コドン最適化方法は当技術分野で公知である(例えば、Parretら、2016.Curr Opin Struct Biol.39:155-162を参照)。
【0114】
本発明の核酸は、T細胞を形質導入または形質転換するために使用され得るγ-レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターに含まれてもよい(Riviere&Sadelain、2017.Mol Ther.25(5):1117-1124を参照)。核酸はまた、DNAトランスポゾン、RNAトランスフェクション、またはTALEN、ZFNおよびCRISPR/Cas9などのゲノム編集技術の使用によって細胞に挿入されてもよい(Riviere&Sadelain、2017.Mol Ther.25(5):1117-1124を参照)。
【0115】
本発明の第3の態様は、本発明の核酸および/または本発明のCARを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞はT細胞(CARTと呼ばれる)である。
【0116】
いくつかの実施形態では、細胞は、ナイーブT細胞、メモリー幹T細胞またはセントラルメモリーT細胞である。これらの細胞は適応免疫療法により適していると現在考えられている(Riviere&Sadelain、2017.Mol Ther.25(5):1117-1124を参照)。
【0117】
いくつかの実施形態では、細胞は自家T細胞である。「自家細胞」という用語は、本発明の方法のいずれか1つを使用して処置されるその同じ患者から得られる細胞を指す。
【0118】
いくつかの実施形態では、細胞はアロ寛容T細胞である。「全寛容細胞」という用語は、移植片対宿主病応答のリスクを低下させるように操作された細胞を指す。いくつかの実施形態では、これは、TCRおよび/またはβ2-ミクログロブリンのゲノム編集媒介の欠失によって達成される15、19。アロ寛容細胞は当技術分野で公知である(Riviere&Sadelain、2017.Mol Ther.25(5):1117-1124における同種異系T細胞のセクションを参照)。
【0119】
いくつかのさらなる実施形態では、細胞は、CD19標的化部分を含むCARをさらに含んでもよい。好ましくは、CARは、好ましくは二重特異性CD22/CD19-biCARである。
【0120】
本発明の第4の態様は、本発明で定義されるCD22標的化部分および/または本発明の複数の細胞、および薬学的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0121】
本明細書に記載の医薬組成物はまた、他の物質を含有してもよい。これらの物質には、凍結保護剤、界面活性剤、抗酸化剤、および安定化剤が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「凍結保護剤」という用語は、凍結誘発ストレスに対してCARTに安定性をもたらす薬剤を含む。凍結保護剤の非限定的な例としては、スクロース、グルコース、トレハロース、マンニトール、マンノースおよびラクトースなどの糖;デキストラン、ヒドロキシエチルデンプンおよびポリエチレングリコールなどのポリマー;ポリソルベート(例えば、PS-20またはPS-80)などの界面活性剤;ならびにグリシン、アルギニン、ロイシンおよびセリンなどのアミノ酸が挙げられる。生体系において低い毒性を示す凍結保護剤が、一般的に使用される。
【0122】
いくつかの実施形態では、細胞は、最初にそれらをそれらの培養培地から採取し、次いで、洗浄し、投与に適した媒体および容器系(「薬学的に許容される」担体)中、治療有効量で細胞を濃縮することによって製剤化される。適切な注入媒体は、任意の等張性媒体製剤、典型的には生理食塩水、Normosol R(Abbott)またはPlasma-Lyte A(Baxter)であり得るが、水中の5%デキストロースまたは乳酸リンゲルも利用することができる。注入媒体は、ヒト血清アルブミン、ウシ胎児血清または他のヒト血清構成要素を補充することができる。
【0123】
一態様では、本発明は、医薬として使用するための、本発明による細胞または本発明による医薬組成物を提供する。
【0124】
本発明の第5の態様は、本発明の細胞または本発明の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、CD22陽性がん(好ましくはCD22陽性がんがB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)であり、より具体的にはCD19B-ALLの再発である)を処置する方法を提供する。
【0125】
いくつかの実施形態では、患者には、治療有効量の細胞が投与される。いくつかの実施形態では、患者には、少なくとも10、10、10、10、10、10、10、10個または1010個の細胞が投与される。細胞の数は、その中に含まれる細胞の種類と同様に、意図される組成物の最終用途に依存し得る。例えば、特定の抗原に特異的な細胞が望まれる場合、集団は、70%超、一般に80%超、85%および90~95%のそのような細胞を含む。本明細書で提供される使用の場合、細胞は、一般に、1リットルまたはそれ以下の体積であり、500ml以下、さらには250ml以下、または100ml以下であり得る。臨床的に重要な数の細胞は、累積的に10、10、10、10、10、10、10、10個または1010個の細胞に等しいかまたはそれを超える複数の注入に配分することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、細胞または医薬組成物は、静脈内、腹腔内、骨髄内、リンパ節内、および/または脳脊髄液内に投与される。
【0127】
いくつかの実施形態では、方法は併用療法を含む。いくつかの実施形態では、方法は、CD19-CAR T細胞をさらに投与することを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞または医薬組成物は、化学療法剤および/または免疫抑制剤と組み合わせて投与される。一実施形態では、患者は、最初に、他の免疫細胞を阻害または破壊する化学療法剤で処置され、続いて本明細書に記載の細胞または医薬組成物で処置される。いくつかの場合では、化学療法は完全に回避されてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で処置される患者は、別の療法による処置後に完全またはほぼ完全な寛解にある。いくつかの実施形態では、本発明の方法で処置される患者は、部分奏効、完全奏効、安定疾患、進行疾患の減少、腫瘍進行までの時間の短縮またはそれらの任意の組合せをもたらした別の療法で以前に処置されている。
【0130】
以下の実施例は、本発明を例示するにすぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0131】
実施例1.
材料および方法
CD22一本鎖可変断片(scFv)の作製
【0132】
ヒトCD22に反応性なMoAbを、NS-1骨髄腫細胞と、30×10個のCD22トランスフェクトされた300.19細胞で予め3回免疫したBalb/cマウス由来の脾細胞との融合によって作製した。ハイブリドーマ含有ウェルからの上清を、CD22トランスフェクトされた300.19細胞に反応性なmoAbについて、フローサイトメトリーによってスクリーニングした。3つの反応性ハイブリドーマをさらなる特徴付けのために選択し、限界希釈によってサブクローニングした(クローンhCD22.7、hCD22.316およびhCD22.401)。3つの抗体は、マウスmoAbアイソタイピングキット(Boehringer Mannheim、Mannheim、Germany)を使用して決定したところ、IgG1κアイソタイプのものであった。抗体特異性を、CD22トランスフェクトされたCOS細胞株(pUNO1-hCD22;InvivoGen、Toulouse、France)、細胞株Raji、Daudi、PRMI82229、U266およびJurkat、ならびに末梢血(PB)単核細胞(PBMC)を使用してさらに検証した。hCD22.7クローンに結合するCD22エピトープを、CD22のN末端ドメインに対する抗体(S-HCL-1)によるクロスブロックによって決定した。マウスIgGライブラリープライマーセット(Progen、Heidelberg、Germany)を使用して、hCD22.7クローン由来のCD22特異的scFvを得た。
CAR設計およびベクター、レンチウイルス産生およびT細胞形質導入
【0133】
CD22特異的scFvを、ヒトCD8膜貫通(TM)ドメイン、ヒト4-1BBおよびCD3ζエンドドメイン(第2世代CAR)、ならびにT2A-GFPカセットを含むpCCLレンチウイルスベースの骨格にクローニングした。Hisタグに連結されたCD8 TM-4-1BB-CD3ζドメインを有する同一のレンチウイルスベクターを、モック細胞内(モック-IC)対照として使用した。ポリエチレンイミン(PEI、Polysciences Inc.、Warrington、PA)を使用して、pCCLベクターおよびパッケージングプラスミドVSV-GおよびpsPAX2でHEK293T細胞をコトランスフェクションすることによって、VSV-Gでシュードタイプ化されたCAR発現ウイルス粒子を作製した。上清を、トランスフェクションの48時間後および72時間後に回収し、超遠心分離によって濃縮した。
【0134】
Ficoll-Hypaque勾配遠心分離(GE Healthcare、Chicago、IL)によって健常ボランティアのバフィーコートからPBMCを単離した。バフィーコートは、Institutional Review Boardの承認(HCB/2018/0030)を受けて、Barcelona Blood and Tissue Bankから得た。T細胞を、抗CD3(OKT3)および抗CD28(CD28.2)抗体(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)で2日間プレートコーティングすることによって活性化し、インターロイキン-7(IL7)およびIL15(10ng/mL;Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)の存在下、10の感染多重度においてCAR発現レンチウイルスで形質導入した。T細胞を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)(Sigma、St.Louis、MO)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco/Invitrogen)、ならびにIL7およびIL15(10ng/mL)を含有するRPMI-1640培地(Gibco/Invitrogen、Waltham、MA)中で最大10日間増殖させた。CD22-CARの表面発現を、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって追跡した。
細胞株
【0135】
SEM、NALM6、MV4-11およびREH細胞株を、DSMZ細胞株バンク(Braunschweig、Germany)から購入した。CD19-ノックアウト(KO)およびCD22-KO SEM細胞を、CRISPR媒介のゲノム編集によって作製した。簡単に説明すると、200,000個の細胞にCas9タンパク質/tracrRNA/crRNA複合体(IDT、Coralville、IA)でエレクトロポレート(Neon transfector、ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)した。各遺伝子について2つのガイドを設計した:CD19-エクソン2.1、CAGGCCTGGGAATCCACATGおよびCD19-エクソン14.1、AGAACATGGATAATCCCGAT;ならびにCD22-エクソン3.2、TCAATGACAGTGGTCAGCTGおよびCD22-エクソン9、CAGGTGTAGTGGGAGACGGG。エレクトロポレーション後、細胞を回収し、次いで、CD19またはCD22細胞をFACS選別した(純度>99%)。
インビトロ細胞傷害性アッセイおよびサイトカイン放出の判定
【0136】
標的細胞(細胞株または初代B-ALL細胞;100,000標的細胞/96ウェルプレートのウェル)を、CD22-CARまたはモック-IC T細胞と共に、異なるエフェクター:標的(E:T)比で指し示された期間インキュベートした。細胞株を、RPMI-1640、10%FBSおよびペニシリン-ストレプトマイシン中で培養した。初代細胞を、StemSpan(商標)SFEM培地(StemCell Technologies、Vancouver、Canada)、20%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)(Gibco/Invitrogen)、hSCF(100ng/mL)、hFLT3L(100ng/mL)、hIL3(10ng/mL)およびhIL7(10ng/mL)(すべてMiltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany製)中で培養した。CAR T細胞媒介の細胞傷害性を、各時点およびE:T比での残存する生存(7-アミノアクチノマイシンD;7-AAD)標的細胞を分析することによって決定した。絶対細胞の計数のために、BD TruCount(商標)絶対数チューブ(BD Biosciences)を使用した。炎症促進性サイトカインIL2、TNFαおよびIFNγの定量を、1:1のE:T比を使用して、T細胞曝露後24時間(細胞株)および48時間(初代細胞)に採取した上清において、BD OptEIA(商標)ヒトELISAキット(BD Biosciences)を使用するELISAによって測定した。
フローサイトメトリー
【0137】
CD22-CARの細胞表面発現を、GFP発現、AffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗マウスIgG(H+L)-APC(Jackson ImmunoResearch、Westgrove、PA)への結合、および抗His-APC(J095G46;BioLegend、San Diego、CA)によって、ヒト組換えCD22-His(rCD22-His)(ThermoFisher Scientific)との事前のインキュベーション後に確認した。形質導入されたT細胞の活性化を、PBMCのプレーティングの48時間後に、CD3-PE(UCHT1;BD Biosciences)、CD25-APC(M-A251;BD Biosciences)およびCD69-VioBlue(REA824;Miltenyi Biotec)を用いた表面染色によって確認した。T細胞および標的細胞を、以下のヒト抗体を使用するインビトロアッセイで同定した:CD3-PE(UCHT1)、CD22-APC(HIB22)、CD19-BV421(HIB19)およびCD10-PECy7(HI10a)またはCD13-PECy7(WM15)(SEM細胞株用)もしくはCD33-APC(WM53)(MV4-11細胞株用)(すべてBD Biosciences製)。死細胞を7AAD染色によって廃棄した。マウスPB、骨髄(BM)および脾臓から回収した細胞を、HLA-ABC-PE(G46-2.6)、CD45-BV510(HI30)、CD3-PerCP(SK7)、CD22-APC、CD19-BV421およびCD10-PECy7(すべてBD Biosciences製)で染色した。細胞を30分間インキュベートし、次いで溶解し、BD FACS(商標)溶解溶液(BD Biosciences)で固定した。蛍光マイナスワン(FMO)対照を使用してゲートを設定した。FACSDiva(商標)ソフトウェアを備えたFACSCanto(商標)-IIフローサイトメーターを分析に使用した(BD Biosciences)。
B-ALLおよびCAR T細胞のインビボ異種移植モデル
【0138】
12週齢の非肥満性糖尿病(NOD).Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(The Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)を繁殖させ、病原体フリーの条件下で飼育した。すべてのインビボ手順は、地域倫理委員会(HRH-17-0029-P1)によって承認された。合計で0.5~1.5×10個のPDX B-ALL細胞を、亜致死的に照射(2Gy)されたNSGマウスにBM内移植し、続いて2週間後に4×10個のCD22-CAR T細胞(平均形質導入約51.3%)またはモック-IC T細胞(平均形質導入約54.2%)を静脈内(i.v.)注入した。B-ALLの生着を、PBにおいて1週間ごとにモニターした。BM吸引物を、脾臓と共に、移植の6週間後および屠殺時に分析した。赤血球(RBC)計数は、血球計2800VET V-Sight(A.Menarini Diagnostics、Badalona、Spain)で決定した。
統計解析
【0139】
すべてのデータを平均±SEMとして表す。群間の差異は、特に異なって記載しない限り、対応のない両側スチューデントt検定を使用して評価した。すべての分析は、Prismソフトウェア、バージョン8.0(GraphPad software Inc、San Diego、CA)を用いて行った。
結果
CD22.7-CAR T細胞は、インビトロでB-ALL細胞を効率的に排除する
【0140】
本発明者らの新規抗CD22 scFv(クローンhCD22.7)を、抗CD22 scFv、CD8膜貫通スペーサー、ならびにT2A配列を介してGFPとインフレームでカップリングされた、4-1BBおよびCD3ζ由来の細胞内シグナリングドメインからなる第二世代CAR構築物にクローニングした(図1a)。
【0141】
hCD22.7 moAbによって認識されるCD22のドメインを同定するために、本発明者らは、CD22の最も遠位のIg細胞外ドメイン1に結合することが公知な抗CD22クローンH-SCL-1(Engel P、Wagner N、Miller AS、Tedder TF.Identification of the ligand-binding domains of CD22,a member of immunoglobulin superfamily that uniquely binds a sialic acid-dependent ligand.The Journal of experimental medicine.1995;181(4):1581-6)を用いてクロスブロッキングアッセイを行った。抗体hCD22.7とプレインキュベートした細胞では、標識されたH-SCL-1クローンの結合が妨げられ、CD22の最も遠位のIgドメインに対する両moAbの重複結合を指し示した(図1b)。健常なヒトT細胞を、20~50%の形質導入効率にてCD22-CARおよびモック-ICレンチベクターの両方で首尾よく形質導入した。T細胞におけるCD22-CARの発現を、scFvおよびGFPの同時検出によって、ならびにヒトrCD22-Hisとのインキュベーションで抗His moAbを使用することによって確認した(図1c)。重要なことに、活性化(CD69CD25)CD22-CAR T細胞(図1d)は、モック-IC T細胞(図1e)と同様に、15日の期間にわたって100倍を超えて連続的に増殖し、CAR発現がT細胞増殖を妨げないことを実証した。
【0142】
次いで、3人の異なる健常ドナー由来のCD22-CAR T細胞を、増加するE:T比で、B-ALL細胞株NALM6、SEMおよびREH、ならびに陰性対照としてのAML細胞株MV4-11に対する細胞傷害性アッセイにおいてインビトロで機能的に試験した(図2a)。CD22-CAR T細胞曝露後に生存している標的細胞を、7AADCD3CD19CD10(またはSEM細胞株の場合はCD13、MV4-11細胞株の場合は7AADCD3CD33)として同定した(図2b)。モック-IC T細胞と比較して、CD22-CAR T細胞は、比較的低いE:T比依存的様式でCD22B-ALL細胞を特異的に排除した(図2c)。CD22-CAR T細胞の特異性を、CRISPR/Cas9媒介のCD19-KOおよびCD22-KO SEM細胞を使用してさらに実証した(図2d)。
【0143】
重要なことに、B-ALL細胞は、1:1のE:T比での48時間絶対数アッセイにおいて、CD22-CAR T細胞への曝露に対してかろうじて生き残った(図2e)。CD22-CAR T細胞は、標的細胞との共培養後に高レベルの炎症促進性サイトカインIL2、TNFα、およびIFNγを産生し、それらの細胞傷害性を確認した(図2f)。
CD22の発現レベルは、B-ALL初代細胞を死滅させる際のCD22.7-CAR T細胞の効率に影響を及ぼす
【0144】
CD22-CAR T細胞療法後の寛解は短く、CD22の発現低下に関連する一方、CD22の高発現がCD22-CAR T細胞の活性に好ましいという報告がある。さらに、CD22-/dim B-ALLの再発がCD22-CAR T細胞処置後に一般的であるかどうかについては議論がある。この情報を考慮して、本発明者らは次に、CD22の変化した発現レベルを有する9つの初代B-ALL試料において、インビトロで本発明者らのCD22-CAR T細胞の効力を試験した。平均値(MFI=6752)を上回るまたは下回るCD22の蛍光強度中央値(MFI)レベルを使用して、初代B-ALLをCD22highまたはCD22lowとして分類した(図3a)。
【0145】
細胞傷害性を、CD22-CAR/モック-IC T細胞への24時間および48時間の曝露後に測定した。全体として、CD22-CAR T細胞は、初代B-ALL芽球を有意に排除した(図3b)。しかしながら、CD22-CAR T細胞は、CAR T細胞曝露ウィンドウ全体にわたって一貫してCD22high B-ALL芽球(n=3)を排除したが(図3b、左のパネル)、CD22-CAR T細胞媒介のCD22low B-ALL芽球(n=6)の死滅は、有意ではあるが、それほど堅固ではなく、ALL#7を除いて、CD22-CAR T細胞への曝露の最初または最後の24時間のいずれかの間に排他的に起こった(図3b、右のパネル)。それにもかかわらず、炎症促進性サイトカインIL2、TNFαおよびIFNγの同様の堅固な産生が、CD22highおよびCD22lowの両方のB-ALL芽球に対して観察され(図3c)、本発明者らのCD22.7-CAR T細胞によるB-ALL初代細胞の効率的な認識および死滅を確認した。
膜遠位CD22エピトープ指向CAR T細胞は、臨床的に重要な患者由来の異種移植片においてインビボでB-ALL芽球を効率的に排除する
【0146】
次に、本発明者らは、CD22high(ALL#1およびALL#2)およびCD22low(ALL#10)PDX B-ALL試料の両方を使用して、インビボで本発明者らのCD22-CARの活性を評価した(図4)。NSGマウスに、0.5~1.5×10個の初代CD22B-ALL芽球をBM内移植し、続いて2週間後に4×10個のCD22-CAR/モック-IC T細胞を注入した。白血病の生着およびT細胞の持続性を、PBにおいてFACSによって隔週でモニターし、いずれかの動物が明白な疾患の徴候を発症した場合、屠殺時にBMおよび脾臓で分析した(図4a~図4b)。移植後4~20週の間の検出可能な白血病再構成(アグレッシブさ)の動態は各PDXに固有であり、CD22highおよびCD22low PDXの両方の生着は、モック-IC T細胞処置マウスにおいて経時的に徐々に増加する傾向があった(図4c)。しかしながら、重要なことに、CD22-CAR T細胞は、B-ALL細胞の成長を完全に消失させた(ALL#1およびALL#10)か、または大きく制御した(ALL#2)(図4c、上のパネル)。各PDXの再構成動態に適合したT細胞の持続性が、CAR T細胞注入の26週間後でさえも、3つすべてのPDXにおいて検出された(範囲、第6週(n=15)~第26週(n=5):モック-IC群2.38%±0.65~0.34%±0.34;CAR T細胞群2.79%±1.13~0.14%±0.09)(図4c、下のパネル)。腫瘍負荷のFACS定量(図4d)、脾腫の欠如(図4e)、および造血置換の徴候(図4f)を通して、同側(注射された脛骨)および対側(大腿骨および非注射脛骨の両方)のBM、PB、および脾臓において屠殺時に疾患制御をさらに確認した。重要なことに、屠殺時の持続性白血病細胞はCD22の完全な発現を維持し、抗原喪失による免疫回避を除外した(図4g)。
【0147】
最後に、自家T細胞において発現されるマウスまたはヒト起源のいずれかの操作されたscFvは、それに由来するペプチドが適応免疫系によって「非自己」抗原として認識され得るので、主要組織適合性複合体クラスI(MHCI)上に提示される場合、免疫原性であり得る。したがって、本発明者らは、最も代表的なHLAスーパータイプに結合するペプチドの親和性を予測するインシリコツールNetMHC4.0を使用して、本発明者らのhCD22.7-scFvの免疫原性能力を、m971およびHA22クローンの免疫原性能力と並べて比較した。図5に示されるように、本発明者らは、hCD22.7、m971およびHA22それぞれについて、非常に類似した数の合計(29、23、26)および強い(8、9および6)結合9量体ペプチドを見出した。まとめると、提示されたデータは、別様にアグレッシブな初代B-ALL PDXの白血病成長の制御において、膜遠位エピトープを標的とするこの新規4-1BBベースのCD22-CARの高い性能を指し示している。
実施例2.イノツズマブおよびCD22に対する新規抗CD22 scFv(クローンhCD22.7)のエピトープのマッピング。
【0148】
CD22の配列を、それぞれ6、9および12個のアミノ酸のペプチド-ペプチド重複を有する7、10および13個のアミノ酸ペプチドに翻訳した。得られたCD22ペプチドの立体配座マイクロアレイは、二連でプリントされた2,556個の異なるペプチドを含み、さらなる対照ペプチドによってフレーム化された。インキュベーション緩衝液中、10μg/mlおよび65μg/mlの濃度のヒトIgG4抗体イノツズマブを用いたCD22ペプチドマイクロアレイのインキュベーションに続いて、二次抗体および対照抗体で染色し、ならびに7/7(赤色/緑色)のスキャン強度でLI COR Odyssey Imaging Systemを用いてマイクロアレイを読み取った。
【0149】
スポット強度の定量は、PepSlide(登録商標)Analyzerを用いて行った。強度マップを作製し、ペプチドマップにおいて相互作用を強調した。図11および図12に指し示されるように、検出されたイノツズマブのエピトープ(青色)は、hCD22.7(赤色)に対して同定されたものに隣接する露出領域に一致する。イノツズマブのエピトープは、hCD22.7によって認識されるものよりもわずかに延びており、主に酸/塩基性残基から構成される。さらに、図13では、CD22イノツズマブscFvおよびCD22 hCD22.7 scFv複合体の構造モデルが示されている。hCD22.7の場合、構造は、CD22の同定された結合エピトープ(赤色)ならびにhCD22.7 scFvの重鎖および軽鎖の配列(それぞれ青色およびピンク色)に基づいて予測される。イノツズマブの場合、構造は、CD22の同定された結合エピトープ(青色)ならびにイノツズマブscFvの重鎖および軽鎖の配列(それぞれ黄色および緑色)に基づいて予測される。
【0150】
異なるバイオインフォマティクス分析は、Kcal/molでの予測結合エネルギーが、hCD22.7がイノツズマブよりも好ましい結合エネルギーを有することを示すことを指し示す。さらに、hCD22.7の接触面はイノツズマブよりも小さいが、エネルギーはより良好である。
実施例3.B細胞白血病細胞株NALM6を用いた実験
材料および方法
【0151】
-CARベクター、レンチウイルス産生およびT細胞形質導入
【0152】
次のCD22 scFvを、CARカセット(CD8ヒンジおよび膜貫通ドメイン、4-1BBおよびCD3ζエンドドメインならびにT2A-GFP)の上流のpCCLレンチウイルスベクターにクローニングした:CD22.7、g5/44(特許WO2017216561)、M971(T.J.Fryら;Nat Med 2018、第24巻、第1号、20-28頁)。ポリエチレンイミン(PEI,Polysciences、Warrington、Pennsylvania、USA)を使用して、pCCLベクターおよびパッケージングプラスミドVSV-G、pMDL/pRRE、pRSV-RevでHEK 293 T細胞をコトランスフェクションすることによって、VSV-Gでシュードタイプ化されたCAR発現ウイルス粒子を作製した。上清を、トランスフェクションの48時間後および72時間後に回収し、超遠心分離によって濃縮した。Ficoll-Hypaque勾配遠心分離(GE Healthcare、Chicago、Illinois、USA)によって健常ボランティアのバフィーコートからPBMCを単離した。T細胞を、抗CD3(OKT3)および抗CD28(CD28.2)抗体(BD Biosciences、Franklin Lakes、New Jersey、USA)で2日間プレートコーティングすることによって活性化し、インターロイキン7(IL-7)およびIL-15(10ng/mL;Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)の存在下、10の感染多重度においてCAR発現レンチウイルスで形質導入した。T細胞を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS、Sigma、St.Louis、Missouri、USA)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco/Invitrogen)、ならびにIL-7およびIL-15(10ng/mL)を含有するRPMI-1640培地(Gibco/Invitrogen、Waltham、MA)中で最大10日間増殖させた。CD22-CARの発現を、蛍光活性化細胞選別(FACS)によりGFP陽性細胞を決定することによって追跡した。典型的な実験では、形質導入効率は30~70%で変動し得る。同じパーセンテージの感染(GFP陽性)した細胞をすべてのインビトロおよびインビボ実験で使用し、必要に応じて形質導入されていない細胞(UT)で釣り合わせた。形質導入された細胞の最小パーセンテージは30%であった。CD22-CARの細胞表面発現を、緑色蛍光タンパク質(GFP)発現ならびにヒト組換えCD22-His(rCD22-His、ThermoFisher Scientific)および抗His-APC(J095G46;BioLegend、San Diego、California、USA)への結合によって確認した。形質導入されたT細胞の活性化を、PBMCのプレーティングの48時間後に、CD3-PE(UCHT1;BD Biosciences)、CD25-APC(M-A251;BD Biosciences)およびCD69-VioBlue(REA824;Miltenyi Biotec)を用いた表面染色によって確認した。
【0153】
-インビトロ細胞傷害性アッセイ、サイトカイン放出の判定およびインビボ異種移植モデル
【0154】
細胞NALM6をDSMZ(Germany)から購入し、DSMZの推奨に従って増殖させた。標的細胞を、異なるCAR22またはモックT細胞と共に、異なるエフェクター:標的(E:T)比で、指し示された期間(24および48時間)インキュベートした。各時点での残存生存(7-AAD-)標的細胞およびE:T比を分析することによって、CART媒介の細胞傷害性を決定した。標的細胞(1×10個)を、すべての細胞傷害性アッセイに使用した。T細胞および標的細胞を、以下のヒト抗体を使用したフローサイトメトリーによるインビトロアッセイで同定した:CD3-PE(UCHT1)、CD22-APC(HIB22)、CD19-BV421(HIB19)およびCD10-PECy7(HI10a)。炎症促進性サイトカインIL-2、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)およびインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生を、T細胞曝露の24~48時間後に採取したインビトロでの上清を使用してELISA(Human ELISA SET、BD Biosciences)によって評価した。
【0155】
インビボ実験の実験的設計(異種移植モデル)を以下のように行った。健常PBMC由来の5×10個のCD22-CARTの静脈内注入(IV)の3日前、NSGマウス(8~12週齢、Jackson Laboratory、n=4群)に、1×10個のLuc-GFP(NALM6)細胞を脛骨内移植(IT)した。腫瘍負荷を、Xenogenインビボイメージングシステム(IVIS)50イメージングシステム(Perkin Elmer)を使用した生物発光(BLI)によって、指し示された時点でモニターした。モック処置された動物が完全に白血病性である場合、動物を安楽死させ、白血病負荷およびCART持続性についてFACSを使用することによって分析した。骨髄(BM)、末梢血(PB)および脾臓を屠殺時にヒトキメラ現象についてFACS分析した。細胞を、リンパ系細胞に対する抗HLA.ABC-PE、CD3-APC、CD10-PECy7、CD45-AmCyanおよびCD19-BV421で染色した(図15を参照)。
結果
【0156】
図14は、細胞傷害性アッセイを示す。図14A)では、指し示された数(E:T比1/1、1/2、1/4および1/8)で1×10個のNALM6細胞をCD22-CAR T細胞と24~48時間インキュベーション後の生存標的NALM6(CD19+)およびJurkat(対照として)細胞のパーセンテージを指し示している。結果を、モックデータ(n=3の健常ドナーおよび2つの独立した実験からのPBMCを用いたデータ)に関して正規化した。さらに、図14B)では、NALM6細胞への24~48時間の曝露後の異なるCD22-CAR T細胞による炎症促進性サイトカインの分泌を示すELISAアッセイの結果が示されている。データを平均±SEMとして示す(n=3の健常ドナー)。さらに、異種移植モデルを使用したインビボ実験から得られた結果を図16図18に示す。
【0157】
図14A)に示されるように、1×10個のNALM6細胞をCD22-CAR T細胞と1/1および1/2のE:T比で24~48時間インキュベーション後、生存標的NALM6(CD19+)細胞のパーセンテージは、CD22.7(1/1の比、24および48時間で、それぞれ37対12%の生存細胞)およびCD22-M971(ゴールドスタンダード)(1/1の比、24および48時間で、それぞれ55対27%の生存細胞)について同様に減少したが、CD22-G5/44を使用することによって得られた生存標的NALM6(CD19+)細胞のパーセンテージは、CD22.7またはCD22-M971のいずれかで得られたパーセンテージよりも著しく高かった。対照として、Jurkat細胞の生存度は、使用したCART細胞のいずれによっても有意には影響されなかった(図14A)。図14Bに示されるように、炎症促進性サイトカインの放出は、CD22-M971またはCD22-G5/44を用いた場合よりもCD22.7 CAR-T細胞の存在下において高かった。図16に示されるように、指し示された時点でBLIによってモニターされた腫瘍負荷は、CD22.7またはCD22-M971のいずれかを使用することによって得られた腫瘍負荷と比較して、CD22-G5/44の場合に著しく高かった。最後に、図17に示されるように、末梢血(PB)、骨髄(BM)および脾臓における屠殺時の白血病負荷は、CD22.7またはCD22-M971のいずれかを使用することによって得られる白血病負荷と比較して、CD22-G5/44の場合に著しく高かった。
【0158】
これらの結果は、インビトロ(シトキシティ(citoxicity))およびインビボモデル(異種移植モデル)において、CD22.7がCD22-G5/44よりも顕著に有効であろうことを明確に示す。したがって、結果はまた、炎症促進性サイトカインの放出がCD22.7の存在下でより高いことを示す。
実施例4.急性リンパ芽球性白血病細胞株SEM(CD22陽性)を用いた実験
材料および方法
【0159】
-CARベクター、レンチウイルス産生およびT細胞形質導入
【0160】
pCCLベクター、レンチウイルス粒子の産生およびT細胞の形質導入法は、実施例3に記載したものと同じであった。
【0161】
-インビトロ細胞傷害性アッセイ、サイトカイン放出の判定およびインビボ異種移植モデル
【0162】
細胞SEMをDSMZ(Germany)から購入し、DSMZの推奨に従って増殖させた。標的細胞を、異なるCAR22またはモックT細胞と共に、異なるエフェクター:標的(E:T)比で、指し示された期間(24および48時間)インキュベートした。各時点での残存生存(7-AAD-)標的細胞およびE:T比を分析することによって、CART媒介の細胞傷害性を決定した。標的細胞(1×10個)を、すべての細胞傷害性アッセイに使用した。T細胞および標的細胞を、以下のヒト抗体を使用したフローサイトメトリーによるインビトロアッセイで同定した:CD3-PE(UCHT1)、CD22-APC(HIB22)、CD19-BV421(HIB19)およびCD13-PECy7(WM15)(図19Aを参照)。炎症促進性サイトカインIL-2、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)およびインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生を、T細胞曝露の24~48時間後に採取したインビトロでの上清を使用してELISA(Human ELISA SET、BD Biosciences)によって評価した(図19Bを参照)。
【0163】
インビボ実験の実験的設計(異種移植モデル)を以下のように行った。健常PBMC由来の5×10個のCD22-CARTの静脈内注入(IV)の3日前、NSGマウス(8~12週齢、Jackson Laboratory、n=4群)に、1×10個のLuc-mCherry(SEM)細胞を脛骨内移植(IT)した。腫瘍負荷を、Xenogenインビボイメージングシステム(IVIS)50イメージングシステム(Perkin Elmer)を使用した生物発光(BLI)によって、指し示された時点でモニターした。モック処置された動物が完全に白血病性である場合、動物を安楽死させ、白血病負荷およびCART持続性についてFACSを使用することによって分析した。骨髄(BM)、末梢血(PB)および脾臓を屠殺時にヒトキメラ現象についてFACS分析した。細胞を、リンパ系細胞に対する抗HLA.ABC-PE、CD3-PerCP、CD45-AmCyan、およびCD19-BV421で染色した(図20を参照)。
結果
【0164】
指し示された時間で、標的細胞(T)として1×10個のSEM WT細胞(左)およびCD22に対するKO SEM細胞(CD22KO)を用いた細胞傷害性アッセイ(A)を行った、インビトロでの結果を図19に示す。図19B)では、SEM WT細胞またはCD22 KO細胞への24~48時間の曝露後の異なるCD22-CAR T細胞による炎症促進性サイトカインの分泌を示すELISAアッセイの結果が示されている。インビボでの結果を図20図23に示す。
【0165】
図19A)に示されるように、24~48時間後、CD22 KO細胞ではなく生存標的SEM WT細胞のパーセンテージは、CD22.7およびCD22-M971(ゴールドスタンダード)の存在下で同様に減少し、CD22-G5/44を使用することによって得られた生存標的SEM WT細胞のパーセンテージは、特に1:4および1:8の比で、CD22.7またはCD22-M971のいずれかで得られたパーセンテージよりも著しく高かった(SEM WT細胞の結果(左)を参照)。これによれば、図19Bに示されるように、炎症促進性サイトカインの放出は、CD22.7またはCD22-M971によって強くかつ同様に誘導された。図20に示されるように、指し示された時点でBLIによってモニターされた腫瘍負荷は、CD22.7またはCD22-M971のいずれかを使用することによって得られた腫瘍負荷と比較して、CD22-G5/44の場合に著しく高かった。さらに、図21に示されるように、末梢血(PB)、骨髄(BM)および脾臓における屠殺時の白血病負荷は、CD22.7またはCD22-M971のいずれかを使用することによって得られる白血病負荷と比較して、CD22-G5/44の場合に著しく高かった。
実施例5.新規抗CD22(クローンhCD22.7)のscFvのヒト化
【0166】
ヒト化のために、2つの異なるアプローチを使用した:
1.配列ベースの(および構造アシストの)CDRグラフティング;および
2.「脱マウス化(De-murinenization)」。
【0167】
配列ベースの(および構造アシストの)CDRグラフティングは、厳密に言えば、唯一の「ヒト化」アプローチ、すなわちマウスのCDRをヒトscFvシャーシに移すことである。「脱マウス化(De-murinenization)」は、それ自体、scFvのヒト化ではない。このアプローチは、免疫学的に責任があり、そのような責任を取り除くために配列上で個々の変化(すなわち点変異)を行う、マウス配列上の領域を同定することに依存する。
【0168】
配列ベースの(および構造アシストの)CDRグラフティングアプローチは、以下のヒト化重鎖および軽鎖を生じた:
【0169】
重鎖(配列番号20):
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCSVTGDSITSGYWNWIRKFPGNKLEWIGYISYSGSTYYNPSLKSRITISRDTSKNQYSLKLSSVTTEDTATYYCARYPSPDAMNYWGQGTSVTVSS
【0170】
軽鎖(配列番号21):
DVVMTQTPLTLPVTLGQPASISCKSSQSLLDSDGKTYLNWLQQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFWTFGGGTKLEIKRA
【0171】
図24は、新規抗CD22(クローンhCD22.7)の重鎖と軽鎖のマウスバージョンとヒト化バージョンとの間の比較を示す。
【0172】
「De-murinenization」アプローチは、以下のヒト化重鎖および軽鎖を生じた:
【0173】
重鎖(配列番号22)
QVQLQESGPSLVKPGQTLSLTCSVTGDSITSGYWNWIRQSPGNKLEYMGYISYSGSTYYNPTLKGRISITRDNSSSQYYLQLKSVTSEDTATFYCARYPSPDAMNYWGQGTSVTVSS
【0174】
軽鎖(配列番号23)
DVVMTQTPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLDSDGKTYLNWLLQRPGQSPKLLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEADDLGVYFCWQGTHFWTFGGGTKLEIKRA
【0175】
図25は、マウス配列上の免疫学的に責任がある領域の同定、およびそのような責任を取り除くための配列上の個々の変化(すなわち点変異)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
【配列表】
2023523682000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD22標的化部分であって、
配列番号15として定義されるCD22抗原の第1のIg細胞外ドメインの領域に対して結合親和性を有し、
VLドメインおよびVHドメインを含み、
前記VLドメインが、LCDR1、LCDR2およびLCDR3ポリペプチドを含み、
前記VHドメインがHCDR1、HCDR2およびHCDR3ポリペプチドを含み、
LCDR1が配列番号1のみからなり、LCDR2が配列番号2のみからなり、LCDR3が配列番号3のみからなり、HCDR1が配列番号4のみからなり、HCDR2が配列番号5のみからなり、HCDR3が配列番号6のみからなる、
CD22標的化部分。
【請求項2】
抗体、F(ab’)2、Fab、scFabまたはscFvであるCD22標的化部分であって、前記VLドメインが配列番号21のみからなり、前記VHドメインが配列番号20のみからなる、請求項1に記載のCD22標的化部分。
【請求項3】
配列番号15として定義されるCD22抗原の第1のIg細胞外ドメインの領域に対して結合親和性を有し、VLドメインおよびVHドメインを含む、抗体、F(ab’)、Fab、scFabまたはscFvであるCD22標的化部分であって、前記VLドメインが配列番号7のみからなり、前記VHドメインが配列番号8のみからなる、請求項1に記載のCD22標的化部分。
【請求項4】
前記CD22標的化部分が、VLドメインおよびVHドメインを含むscFvであり、前記VLドメインが配列番号7のみからなり、前記VHドメインが配列番号8からなる、請求項に記載のCD22標的化部分。
【請求項5】
前記CD22標的化部分が、配列番号9のみからなるscFvである、請求項に記載のCD22標的化部分。
【請求項6】
a.請求項1~5のいずれか一項に記載のCD22標的化部分を含む細胞外ドメイン;
b.膜貫通ドメイン;および
c.細胞内シグナリングドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項7】
前記膜貫通ドメインが、CD28、CD3、CD45、CD4、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154の膜貫通ドメインを含む、請求項に記載のCAR。
【請求項8】
前記膜貫通ドメインがCD8の膜貫通ドメインを含む、請求項に記載のCAR。
【請求項9】
前記細胞内シグナリングドメインが、CD3ζ、FcRγ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66bの細胞内ドメインを含む、請求項からのいずれか一項に記載のCAR。
【請求項10】
前記細胞内シグナリングドメインがCD3ζの細胞内ドメインを含む、請求項に記載のCAR。
【請求項11】
前記CARが共刺激シグナリングドメインをさらに含み、好ましくは、前記共刺激シグナリングドメインが、CD27、CD28、CD137、CD134、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、またはCD276の細胞内ドメインを含む、請求項から10のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項12】
前記共刺激シグナリングドメインがCD137の細胞内ドメインを含む、請求項11に記載のCAR。
【請求項13】
前記CD22標的化部分がscFVであり、好ましくは、前記scFVが、配列番号7のみからなるVLドメインおよび配列番号8のみからなるVHドメインを含む、請求項から1のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項14】
前記scFVが配列番号21のみからなるVLドメインおよび配列番号22のみからなるVHドメインを含む、請求項13に記載のCAR。
【請求項15】
請求項から1のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸。
【請求項16】
請求項1に記載の核酸を含むT細胞。
【請求項17】
CD22陽性がん処置用医薬であって、請求項1に記載の細胞または請求項1からのいずれか一項に記載のCD22標的化部分を含み
前記細胞またはCD22標的化部分を、それを必要とする患者に投与することを含むCD22陽性がん処置方法であって、前記CD22陽性がんが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、より具体的にはCD19B-ALLの再発であるCD22陽性がん処置方法に用いられるCD22陽性がん処置用医薬
【国際調査報告】