(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】農業植物の植物保護処置計画を決定する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20230531BHJP
G16Y 10/05 20200101ALI20230531BHJP
【FI】
G06Q50/02
G16Y10/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554843
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2021056340
(87)【国際公開番号】W WO2021180925
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521508254
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ アグロ トレードマークス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャンカー,プリヤンヴァダ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーネン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】モラレス セペダ,ディエゴ アルマンド
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,オーレ
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
本願は、農業植物の植物保護処置計画を決定する方法を提供する。方法はデータ処理ユニット(111)によって実行される。方法は、前記データ処理ユニットによって、前記農業植物または基準植物の現在の健康状態を示す植物観測データを取得するステップ(S110)と、前記データ処理ユニットによって、前記農業植物が栽培される場所に関連付けられた気象データを取得するステップ(S120)と、前記データ処理ユニットによって実行される計算モデル(113)によって、取得された前記観測データおよび取得された前記気象データに基づき、前記農業植物の時間関連病害率を予測するステップ(S130)と、前記計算モデル(113)によって、少なくとも予測された前記病害率に基づき、前記植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータを決定するステップ(S140)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業植物の植物保護処置計画を決定する方法であって、
前記方法は、データ処理ユニット(111)によって実行され、
前記方法は、
前記データ処理ユニットによって、前記農業植物または基準植物の現在の健康状態を示す植物観測データを取得するステップ(S110)と、
前記データ処理ユニットによって、前記農業植物が栽培される場所に関連付けられた気象データを取得するステップ(S120)と、
前記データ処理ユニットによって実行される計算モデル(113)によって、取得された前記観測データおよび取得された前記気象データを少なくとも含む入力データに基づき、前記農業植物の時間関連病害率を予測するステップ(S130)と、
前記計算モデル(113)によって、少なくとも予測された前記病害率に基づき、前記植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータを決定するステップ(S140)と、
を備える、方法。
【請求項2】
前記入力データはさらに、前記データ処理ユニットによって取得され前記農業植物が栽培される前記場所に関連付けられた土壌水分指標を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、処置期間または処置時刻を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、特定の植物保護施策に関する前記病害の制御性が最小閾値を超えている日または時間ウィンドウを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記農業植物が栽培される前記場所はフィールドであり、
前記フィールドは、いくつかのサブフィールドに分割され、
前記病害率は、前記いくつかのサブフィールドの少なくとも一部について、サブフィールドごとに固有の態様で予測される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、サブフィールドごとに固有の態様で決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記土壌水分指標は、1つ以上の土壌深さに関連付けられた土壌水分値を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記土壌水分指標は土壌タイプを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記土壌水分指標は、少なくとも土壌タイプおよび前記気象データに基づいてモデル化される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記土壌水分指標は、前記農業植物が栽培される前記場所に対して実行されるリモート測定から少なくとも部分的に導出される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記土壌水分指標は、前記農業植物が栽培される前記場所において実行されるローカル測定から少なくとも部分的に導出される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記農業植物が栽培される前記場所に関連付けられたバイオマス指標を取得することをさらに備え、
前記バイオマス指標は、前記病害率を予測するための追加の入力データとして、前記計算モデル(113)に追加的に提供される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記農業植物の前記病害率を予測するステップは、さらに、前記計算モデル(113)によって、病害進行ウィンドウを予測することを含み、前記病害進行ウィンドウ内において、時間的期間にわたって前記農業植物の病害のあり得る経過が計算され、前記病害進行ウィンドウ内の特定の時刻に対して前記病害率に関する指標であり、
予測された前記病害率は、前記病害進行ウィンドウから抽出される、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記植物観測データは、葉層ごとに取得され、および/または処理される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記植物観測データは、前記農業植物または前記基準植物の異なる葉層について、前記農業植物の収穫量に対する前記異なる葉層の影響に基づき重み付けられるか、または前記異なる葉層に分類され、
前記病害率は、重み付けられたまたは分類された前記植物観測データに基づいて予測される、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記植物観測データは、農業植物に関連付けられた成長段階データ、フィールドデータ、および観測インフェステーションデータのうち1つ以上を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
予測された前記病害率は、病害深刻度、病害罹患率、および病害リスクのうち1つ以上を示すかまたは含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記計算モデル(113)は、入力された前記植物観測データおよび気象データに応じ、データを出力するよう適合されたニューラルネットワークを利用する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの植物保護処置パラメータおよび/または前記植物保護処置計画は、特定の日または時刻に植物保護薬剤を適用するために、ロボットデバイスのデータ処理デバイスによって実行されるよう構成されるコンピュータ可読データセットとして提供される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの植物保護処置パラメータおよび/または前記植物処置計画は、前記少なくとも1つの植物保護処置パラメータおよび/または前記植物処置計画をユーザに自動的に知らせるための、および/または、特定の時刻に特定の行動を実行するよう前記ユーザに命令するための、トリガとして用いられる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
適合された計算モデル(113)を用いて、農業植物のための植物保護処置計画を決定するために、農業植物の変更後栽培条件に対して前記計算モデル(113)を適合させる方法であって、
前記方法は、データ処理ユニット(111)によって実行され、
前記方法は、
前記計算モデル(113)によって、フィールド固有データ、観測病害深刻度、成長段階データ、および気象データのうち1つ以上を少なくとも含む訓練データを取得するステップであって、前記訓練データは前記農業植物の変更後栽培条件に関連付けられる、訓練データを取得するステップと、
前記訓練データに基づき、逆伝搬を用いて、前記農業植物の前記変更後栽培条件に対して前記計算モデル(113)を適合させるために、前記計算モデル(113)のパラメータまたは重みを調整するステップと、
適合された前記計算モデル(113)を用いて、前記農業植物の少なくとも1つの時間関連病害率を予測することにより、前記農業植物の前記植物保護処置計画を決定するステップと、
を備える、方法。
【請求項22】
前記方法は、前記訓練データを入力データとして提供する前に、さらに、
異なる葉層それぞれに固有の病害率を、前記植物の収穫量に対するそれらの影響に基づき、合計するよう構成される、重み付け和関数を用いて、前記植物観測データを処理するステップを備える、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
農業植物の植物保護処置計画を決定するデバイス(110)であって、
前記デバイスは、データを受け取り、および/またはデータを出力するよう構成されるデータインタフェース(112)と、データ処理ユニット(111)とを備え、
前記データ処理ユニット(111)は、
取得された観測データおよび取得された気象データに基づき、前記データ処理ユニットによって実行される計算モデル(113)を用いて、前記農業植物の時間関連病害率を予測し、
少なくとも予測された前記病害率に基づき、前記計算モデル(113)を用いて、前記植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータを決定する、
よう構成される、デバイス。
【請求項24】
農業植物に割り当てられた植物保護処置計画に基づき、前記農業植物を処置するシステムであって、
第1データ処理ユニット(111)および第2データ処理ユニット(121)を備え、
前記第1データ処理ユニット(111)は、
取得された観測データおよび取得された気象データに基づき、前記第1データ処理ユニット(111)によって実行される計算モデル(113)を用いて、前記農業植物の時間関連病害率を予測し、
前記計算モデル(113)を用いて、少なくとも予測された前記病害率に基づき、前記植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータを決定し、
前記少なくとも1つの植物保護処置パラメータを少なくとも含む出力データを提供する、
よう構成され、
前記第2データ処理ユニット(121)は、
前記第1データ処理ユニット(111)から前記出力データを取得し、
前記少なくとも1つの植物保護処置パラメータを用いるために取得された前記出力データを処理する、
よう構成される、
システム。
【請求項25】
農業植物の植物保護処置計画を決定するためのコンピュータプログラム要素であって、前記コンピュータプログラムは、データ処理ユニットおよび/またはコンピュータデバイスによって実行されると、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法を実行するよう構成される、コンピュータプログラム要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はコンピュータによって支援される農業植物処置に関する。とくに、本願は、農業植物の植物保護処置計画を決定する方法およびデバイスに関する。さらに、本願は、農業植物のための植物保護処置計画を、適合した計算モデルの使用により決定するための農業植物の変更後栽培条件に対する計算モデルを適合させる方法と、農業植物に割り当てられた植物保護処置計画に基づいて農業植物を処置するシステムとに関する。
【0002】
農業において、栽培植物(とくに作物)は、種まきと収穫の間に発生する病害によって影響を受け得、これが収穫量を減少させ得る。これによって、植物の病害は、主に3つの要因によって発生する。すなわち、宿主植物(植物固有の脆弱性に影響する)、病原体(病害発生主体を表す)、環境条件(病害が好む気象を含み得る)、である。主にこれら3つの要因が病害を発生させ、病害の発現はこれらの要因の間の動的プロセスである。要因間のこの複雑な関係だけでも植物病害の管理を困難にする。同時に、農業は、2050年までに90億に増加すると予測される増大する人口を養うという困難に直面しており、農業はできるかぎり効率的であるべきである。そして、土地、水および生物的多様性といった重要な資源はますます希少となっている。気候変動の影響と組み合わさり、極端な気象事象はより頻繁となり、植物の悪疫および病害が増加し、農業を困難にしている。
【0003】
しかしながら、植物は、植物保護施策または処置(植物保護薬剤、殺虫剤、等の適用等)によって健康に維持され得る。それでもたとえば、植物保護施策の最も適切な時期を決定すること、適切な植物保護薬剤を特定すること、植物保護薬剤の最適量を決定すること、等は困難である。
【0004】
したがって、依然として、植物の病害および/または健康管理において、農業を支援するための、より効率的かつ効果的な手段を提供する必要がある。したがって、本発明の目的のひとつは、植物の病害および/または健康管理において農業を支援するためのより効率的かつ効果的な手段を提供することである。
【0005】
本発明の第1の態様は、農業植物(たとえば作物)の植物保護処置計画を決定する方法(好ましくはコンピュータ実装されるもの)を提供する。本方法は、データ処理ユニット(プロセッサ、コンピュータデバイス、等であってもよい)によって実行されるべきである。本方法は、コンピュータプログラム命令(たとえばコンピュータプログラム要素として提供される)で実装可能であり、たとえば1以上のデータ処理ユニットおよび/またはコンピュータデバイスによって実行可能である。分散コンピュータシステムに含まれる1以上のコンピュータデバイスによって実行することも可能である。そのような分散コンピュータシステムは、とくに、コンピューティングクラウド、クライアント・サーバ・システム、等と、植物栽培場所におけるコンピュータデバイスとを備えてもよい。これは、分散コンピュータシステムは、クラウドコンピューティングを介して集中的に実装されてもよいし、および/または、エッジコンピューティングを介して植物栽培場所においてリモートで、実装されてもよいということを意味する。本方法は、集中的にまたはリモートで実行可能であり、また、集中およびリモートの組み合わせでも実行可能である。いくつかの実施形態では、個々の計算ステップが異なる処理ユニット上で実行可能であると考えられる。コンピュータデバイスは、データプロセッサ、コンピュータプログラム要素を格納するためのメモリ、データインタフェース、通信インタフェース、等を備えてもよい。本明細書において、データまたは情報は、電子的形態(信号、データパケット、等)で提供され、および/または交換されてもよく、上記のデータ処理ユニットまたはコンピュータデバイスによって電子的に処理されてもよい。データ交換は、通信ネットワーク(インターネット等)を介して実行可能である。
【0006】
農業植物の植物保護処置計画を決定する方法は、以下の各ステップを備える。
‐データ処理ユニットによって、農業植物または基準植物の現在の健康状態を示す植物観測データを取得すること。植物観測データは、1以上の個別データ(データ融合の対象ともなり得る)を含んでもよい。観測データは、直接的な観測で得られたものでなくともよく、データベース、データセット、複数のデータソースの組み合わせ、等から間接的に決定されてもよい。上述のデータの一部または全部が、互いに組み合わされまたはマージされてもよい。
‐データ処理ユニットによって、農業植物が栽培される場所に関連する気象データを取得すること。上述のように、植物の環境条件は、典型的に、植物の健康または病害の発現に影響し得る。気象データは、気象データベース、気象記録、気象予測サービス、気象測定、衛星データから、等から取得可能である。また、気象データは、植物の地理的場所の指標を介して間接的に取得されてもよい。さらに、気象データは、温度、湿度、等のうち1つ以上を含んでもよい。場所は、たとえば、場所の座標、場所の識別子、場所の名前(地域、市、町の名前等)によって示されてもよい。好ましくは、気象データおよび場所は、互いに相関し、マッピングされ、組み合わされ、等である。
‐データ処理ユニットによって実行される計算モデルによって、入力データ(少なくとも取得された観測データおよび取得された気象データを含む)にもとづき、農業植物の時間関連病害率を予測する。言い換えると、将来に対する予測および/または推定および/または予報(たとえば、時間に関した態様で、気象に関して)(そうであれば、任意選択で、植物病害がどの程度予測されるかまたは少なくとも発生しやすいか)が行われる。計算モデルは、とくに、計算資源(上記のデータ処理ユニットによって、たとえば、複雑系(たとえば植物の農業的栽培)の振る舞いを、とくに植物病害の確率を、たとえばコンピュータシミュレーションによって研究するために、提供される)を要する計算科学において利用される数学的モデルとして広い意味に理解される。さらに、計算モデルは、機械学習モデルであってもよい。本明細書において、病害率は、病害深刻度、病害罹患率、病害リスク、等のうち1つ以上を含み得る。ここで、病害深刻度は、病害の量、病害の指標(植物からの反射度および/または植物上の視認可能な変化(それが手作業で目視によって観測および/または検出可能なように、たとえば植物上で視認可能な斑点等))の量、等として理解されてもよい。代替的に、または追加的に、たとえばロボット検出デバイス(検出手段を有する、航空機(たとえばドローン)、農業車両、等)を用いて、および/または、衛星画像によって、少なくとも半自動な態様で、観測および/または検出されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、病害検出は、いわゆる正規化差植生指標(NDVI)および/または葉面積指数(LAI)(観測される植物が生きた緑色植生を含むか否かを評価するためのローカル測定の分析(たとえばリモートセンシング)に用いられるよう適合された、画像的指標および/または地面単位面積あたりの片側緑色葉面積)に基づいてもよい。さらに、病害深刻度は、ある時間的期間(たとえば日数)にわたる所与の感染リスクの結果として理解されてもよい。病害深刻度に関して、たとえば、植物の上側の葉の病害の検出がとくに重要である。これは収穫量に実質的な影響を及ぼし得る。
‐計算モデルによって、少なくとも予測された病害率に基づき、植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータを決定すること。植物保護処置パラメータおよび/または植物保護計画は、計算モデルの出力データとして参照され、および/または、本方法の結果として参照される。これは、続いて、相互関連した装置および/またはシステムのための入力データとして用いてもよく、それはこれらのデータをさらに処理してもよく、これらのデータに基づいて動作してもよい。たとえば、さらに、植物保護処置パラメータおよび/または植物保護計画は、ユーザ(農業会社、農家、等)のために表示および/またはロギングされてもよい。さらに、植物保護処置パラメータおよび/または植物保護計画は、植物保護施策または処置(たとえば検出手段を有するロボット(少なくとも半自動化および/またはリモート操作可能なデバイス(農業車両、航空機(たとえばドローン)、等))を用いて少なくとも部分的に自動化されて実行可能なもの)をトリガするよう構成されたトリガ(トリガ信号、メッセージ、等)として用いられてもよい。
【0007】
本明細書において、植物病害は、任意の望ましくないまたは破壊的な植物病害および/または破壊的な作物病害とすることができる。例として、植物病害は、以下の薬剤のうちの1種以上に割り当てられるか、又はそれによって引き起こされる場合がある:特にネコブカビ類(Plasmodiophoromycetes)、ツユカビ類(Peronosporomycetes)(卵菌類(Oomycetes)と同義)、ツボカビ類(Chytridiomycetes)、接合菌類(Zygomycetes)、子嚢菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)及び不完全菌類(Deuteromycetes)(不完全菌類(Fungi imperfecti)と同義)のクラスに由来する土壌病原菌を含む植物病原性菌類。本明細書に記載される方法は、特にコムギ葉枯病等の病害に関連して使用するのに好適である。このような病害は、例えば植物の収穫量に影響を与える可能性がある。収穫量への影響は、病害が頂部の葉のうちの1枚、特に頂部3葉のうちの1枚に到達した場合に特に大きい可能性がある。したがって、方法は、予測された植物保護処置パラメータを葉層ごとの推定にマッピングすることもできる。
【0008】
方法は、植物保護処置パラメータ及び/又は植物保護計画を決定するための規則を自動化された方法で調整することを可能にする。これは、方法、特にこの方法に使用されるモデルが、異なる状況に適合可能であることを意味する。例えば、人間の専門家の介入なしに、例えば新しい栽培場所、例えば新しい地域、気象条件の変化、気候変化、新しい又は変化した病害などに適合させることができる。したがって、方法によれば、例えば植物保護薬剤、殺虫剤などの適用の時機を最適化することができるため、農業会社、農家などは、実際の量、すなわち可能な限り少ない量を植物に適用するだけでよく、したがって収穫量が保護され、コストが削減され、且つ環境が保護される。
【0009】
例えば、第2の態様による方法の使用により、計算モデルを他の病害に適合させることができる。例として、その後予測され得る植物病害は、以下の薬剤の1種以上に割り当てられるか、又はそれらによって引き起こされる場合がある:アルブゴ属の種(Albugo spp.)(白さび病)であって、観賞植物、野菜(例えば、A.カンジダ(A.candida))及びヒマワリ(例えば、A.トラゴポゴニス(A.tragopogonis))におけるもの;アルテルナリア属の種(Alternaria spp.)(アルテルナリア葉斑病)であって、野菜(例えばA.ダウシ(A.dauci)又はA.ポルリ(A.porri))、ナタネ(例えばA.ブラシシコラ(A.brassicicola)又はブラシカエ(brassicae))、サトウダイコン(A.テヌイス(A.tenuis))、果実(例えば、A.グランディス(A.grandis))、イネ、ダイズ、ジャガイモ及びトマト(例えば、A.ソラニ(A.solani)、A.グランディス(A.grandis)又はA.アルテルナタ(A.alternata))、トマト(例えば、A.ソラニ(A.solani)又はA.アルテルナタ(A.alternata))及びコムギ(例えば、A.トリチシナ(A.triticina))におけるもの;サトウダイコン及び野菜におけるアルファノマイセス属の種(Aphanomyces spp.);穀物及び野菜におけるアスコキタ属の種(Ascochyta spp.)、例えばコムギにおけるA.トリチシ(A.tritici)(炭疽病)及びオオムギにおけるA.ホルデイ(A.hordei);トウモロコシにおける眼紋病(Aureobasidium zeae)(トウモロコシ褐斑病(Kapatiella zeae)と同義);ビポラリス属の種(Bipolaris spp.)及びドレシュレラ属の種(Drechslera spp.)(テレオモルフ:コクリオボルス属の種(Cochliobolus spp.))であって、例えばトウモロコシにおけるごま葉枯病(D.マイディス(D.maydis))又はすす紋病(B.ゼイコラ(B.zeicola))、例えば穀物における斑点病(B.ソロキニアナ(B.sorokiniana))、並びに例えばイネ及びシバにおけるB.オリザエ(B.oryzae);穀物(例えばコムギ又はオオムギ)におけるブルメリア(Blumeria)(以前はエリシフェ(Erysiphe))・グラミニス(graminis)(ウドンコ病);ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)(テレオモルフ:ボトリオチニア・フッケリアナ(Botryotinia fuckeliana):灰色かび病)であって、果実及び液果(例えばイチゴ)、野菜(例えばレタス、ニンジン、セロリ及びキャベツ)におけるもの;タマネギ科、ナタネ、観賞植物(例えばBエリプチカ(B eliptica))、ブドウ、森林植物及びコムギにおける白斑葉枯病(B.squamosa)又は灰色腐敗病(B.allii);レタスにおけるブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)(べと病);広葉樹及び常緑樹におけるセラトシスチス属(オフィオストマ属(Ophiostoma)と同義)の種(Ceratocystis spp.)(根腐れ病、立ち枯れ病)、例えばニレにおけるC.ウルミ(C.ulmi)(オランダニレ病);セルコスポラ属の種(Cercospora spp.)(褐斑病)であって、トウモロコシ(例えば灰斑病:C.ゼアエ-マイディス(C.zeae-maydis))、イネ、サトウダイコン(例えばC.ベチコラ(C.beticola))、サトウキビ、野菜、コーヒー、ダイズ(例えばC.ソジナ(C.sojina)又はC.キクチイ(C.kikuchii))及びイネにおけるもの;マッシュルームにおけるクラドボトリウム属(ダクチリウム属(Dactylium)と同義)の種(Cladobotryum spp.)(例えばC.ミコフィルム(C.mycophilum)(以前はダクチリウム・デンドロイデス(Dactylium dendroides)、テレオモルフ:ネクトリア・アルベルティニイ(Nectria albertinii)、ネクトリア・ロゼラ(Nectria rosella)(ヒポマイセス・ロゼルス(Hypomyces rosellus)と同義));クラドスポリウム属の種(Cladosporium spp.)であって、トマト(例えばC.フルブム(C.fulvum):葉かび病)及び穀物、例えばコムギにおけるC.ヘルバルム(C.herbarum)(黒変病);穀物におけるクラビセプス・プルプレア(Claviceps purpurea)(バッカク);コクリオボルス属(Cochliobolus)(アナモルフ:ビポラリス属(Bipolaris)のヘルミントスポリウム属(Helminthosporium))の種(斑点病)であって、トウモロコシにおけるもの(C.カルボヌム(C.carbonum))、穀物におけるもの(例えばC.サチブス(C.sativus)、アナモルフ:B.ソロキニアナ(B.sorokiniana)及びイネにおけるもの(例えばC.ミヤベアヌス(C.miyabeanus)、アナモルフ:H.オリザエ(H.oryzae));コレトトリクム属(Colletotrichum)(テレオモルフ:グロメレラ属(Glomerella))の種(炭疽病)であって、ワタにおけるもの(例えばC.ゴシピイ(C.gossypii))、トウモロコシにおけるもの(例えばC.グラミニコラ(C.graminicola):炭疽病根腐れ)、ソフトフルーツにおけるもの、ジャガイモにおけるもの(例えばC.ココデス(C.coccodes:黒点病))、マメ類におけるもの(例えばC.リンデムチアヌム(C.lindemuthianum))、ダイズにおけるもの(例えばC.トルンカツム(C.truncatum)又はC.グロエオスポリオイデス(C.gloeosporioides))、野菜におけるもの(例えばC.ラゲナリウム(C.lagenarium)又はC.カプシキ(C.capsici))、果実におけるもの(例えばC.アクタツム(C.acutatum))、コーヒーにおけるもの(例えばC.コフェアヌム(C.coffeanum)又はC.カハワエ(C.kahawae))、及び様々な作物におけるC.グロエオスポリオイデス(C.gloeosporioides);イネにおけるコルチキウム属の種(Corticium spp.)、例えばC.ササキイ(C.sasakii)(紋枯病);ダイズ、ワタ及び観賞植物におけるコリネスポラ・カッシイコラ(Corynespora cassiicola)(斑点病);シクロコニウム属の種(Cycloconium spp.)、例えばオリーブの木におけるC.オレアギヌム(C.oleaginum);シリンドロカルポン属の種(Cylindrocarpon spp.)(例えば果樹潰瘍病又は幼ブドウの衰弱、テレオモルフ:ネクトリア属の種(Nectria spp.)又はネオネクトリア属の種(Neonectria spp.))であって、果樹におけるもの、ブドウにおけるもの(例えばC.リリオデンドリ(C.liriodendri)、テレオモルフ:ネオネクトリア・リリオデンドリ(Neonectria liriodendri)、黒足病)及び観賞植物におけるもの;ダイズにおけるデマトフォラ(Dematophora)(テレオモルフ:ロゼリニア(Rosellinia))・ネカトリクス(necatrix)(根及び茎腐れ病);ダイズにおけるディアポルテ属の種(Diaporthe spp.)、例えばD.ファゼオロルム(D.phaseolorum)(苗立ち枯れ病);ドレシュレラ属(Drechslera)(ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)と同義、テレオモルフ:ピレノフォラ属(Pyrenophora))の種であって、トウモロコシにおけるもの、穀物、例えばオオムギにおけるもの(例えばD.テレス(D.teres)、網斑病)及びコムギにおけるもの(例えばD.トリチシ-レペンチス(D.tritici-repentis):黄褐色斑病))、イネ及びシバにおけるもの;ブドウにおいて、ホルミチポリア(Formitiporia)(フェリヌス(Phellinus)と同義)・プンクタタ(punctata)、F.メジテラネア(F.mediterranea)、フェオモニエラ・クラミドスポラ(Phaeomoniella chlamydospora)(以前はフェオアクレモニウム・クラミドスポルム(Phaeoacremonium chlamydosporum))、フェオアクレモニウム・アレオフィルム(Phaeoacremonium aleophilum)及び/又はボトリオスフェリア・オブツサ(Botryosphaeria obtusa)に起因するエスカ(Esca)病(胴枯病、アポプレキシー);エルシノエ属の種(Elsinoe spp.)であって、リンゴ類果実におけるもの(E.ピリ(E.pyri))、ソフトフルーツにおけるもの(E.ベネタ(E.veneta):炭疽病)、及びブドウにおけるもの(E.アンペリナ(E.ampelina):炭疽病);イネにおけるエンチロマ・オリザエ(Entyloma oryzae)(葉すす病);コムギにおけるエピコックム属の種(Epicoccum spp.)(黒かび病);エリシフェ属の種(Erysiphe spp.)(ウドンコ病)であって、サトウダイコンにおけるもの(E.ベタエ(E.betae))、野菜におけるもの(例えばE.ピシ(E.pisi))、例えばウリ科植物におけるもの(例えばE.シコラセアルム(E.cichoracearum))及びキャベツ、ナタネにおけるもの(例えばE.クルシフェラルム(E.cruciferarum));果樹、ブドウ及び観賞樹におけるユーチパ・ラタ(Eutypa lata)(ユーチパ潰瘍病又は胴枯病、アナモルフ:シトスポリナ・ラタ(Cytosporina lata)、リベルテラ・ブレファリス(Libertella blepharis)と同義);トウモロコシにおけるエクセロヒルム属(Exserohilum)(ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)と同義)の種(例えばE.ツルシクム(E.turcicum));様々な植物におけるフザリウム属(Fusarium)(テレオモルフ:ジベレラ(Gibberella))の種(立ち枯れ病、根又は茎腐れ病)、例えば穀物(例えばコムギ又はオオムギ)におけるF.グラミネアルム(F.graminearum)又はF.クルモルム(F.culmorum)(根腐れ病、黒星病、又は赤かび病)、トマトにおけるF.オキシスポルム(F.oxysporum)、ダイズにおいてそれぞれが突然死症候群を引き起こすF.ソラニ(F.solani)(分化型グリシネス(f.sp.glycines)、現在のF.ビルグリフォルメ(F.virguliforme)と同義)、及びF.ツクマニアエ(F.tucumaniae)及びF.ブラシリエンス(F.brasiliense)、並びにトウモロコシにおけるF.バーチシリオイデス(F.verticillioides);穀物(例えばコムギ又はオオムギ)及びトウモロコシにおけるゲウマノマイセス・グラミニス(Gaeumannomyces graminis)(立ち枯れ病);ジベレラ属の種(Gibberella spp.)であって、穀物におけるもの(例えばG.ゼアエ(G.zeae))及びイネにおけるもの(例えばG.フジクロイ(G.fujikuroi)、馬鹿苗病);ブドウ、リンゴ類果実及び他の植物におけるグロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata)並びにワタにおけるG.ゴシピイ(G.gossypii);イネにおける穀粒ステイン複合病;ブドウにおけるギグナルディア・ブドウェリ(Guignardia bidwellii)(黒腐れ病);バラ科植物及び杜松におけるギムノスポランギウム属の種(Gymnosporangium spp.)、例えばナシにおけるG.サビネ(G.sabinae)(さび病);トウモロコシ、穀物、ジャガイモ及びイネにおけるヘルミントスポリウム属の種(Helminthosporium spp.)(ドレシュレラ(Drechslera)と同義、テレオモルフ:コクリオボルス(Cochliobolus));ヘミレイア属の種(Hemileia spp.)、例えばコーヒーにおけるH.バスタトリクス(H.vastatrix)(コーヒーの葉さび病);ブドウにおけるイサリオプシス・クラビスポラ(Isariopsis clavispora)(クラドスポリウム・ビチス(Cladosporium vitis)と同義);ダイズ及びワタにおけるマクロフォミナ・ファゼオリナ(Macrophomina phaseolina)(ファゼオリ(phaseoli)と同義)(根及び茎腐れ病);穀物(例えばコムギ又はオオムギ)におけるミクロドキウム(Microdochium)(フザリウム(Fusarium)と同義)・ニバレ(nivale)(ピンク雪かび病);ダイズにおけるミクロスフェラ・ディフューザ(Microsphaera diffusa)(ウドンコ病);核果及び他のバラ科植物におけるモニリニア属の種(Monilinia spp.)、例えばM.ラクサ(M.laxa)、M.フルクチコラ(M.fructicola)及びM.フルクチゲナ(M.fructigena)(モニラ属の種(Monilia spp.)と同義:花枯病及び枝枯病、褐色腐れ病);穀物、バナナ、ソフトフルーツ及びラッカセイにおけるマイコスフェレラ属の種(Mycosphaerella spp.)、例えばコムギにおけるM.グラミニコラ(M.graminicola)(アナモルフ:ジモセプトリア・トリチシ(Zymoseptoria tritici)、以前はセプトリア・トリチシ(Septoria tritici):セプトリア斑点病)又はバナナにおけるM.フィジエンシス(M.fijiensis)(プソイドケルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)と同義:黒シガトカ病)及びM.ムシコラ(M.musicola)、M.アラキジコラ(M.arachidicola)(M.アラキジス(M.arachidis)又はセルコスポラ・アラキジス(Cercospora arachidis)と同義)、ラッカセイにおけるM.ベルケレイイ(M.berkeleyi)、エンドウマメにおけるM.ピシ(M.pisi)及びアブラナ科の植物におけるM.ブラシシオラ(M.brassiciola);ペロノスポラ属の種(Peronospora spp.)(べと病)であって、キャベツにおけるもの(例えばP.ブラシカエ(P.brassicae))、ナタネにおけるもの(例えばP.パラサイチカ(P.parasitica))、タマネギにおけるもの(例えばP.デストラクター(P.destructor))、タバコにおけるもの(P.タバキナ(P.tabacina))及びダイズにおけるもの(例えばP.マンシュリカ(P.manshurica));ダイズにおけるファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)及びP.メイボミエ(P.meibomiae)(ダイズさび病);フィアロフォラ属の種(Phialophora spp.)、例えばブドウにおけるもの(例えばP.トラケイフィラ(P.tracheiphila)及びP.テトラスポラ(P.tetraspora))並びにダイズにおけるもの(例えばP.グレガタ(P.gregata):茎腐れ病);ナタネ及びキャベツにおけるフォマ・リンガム(Phoma lingam)(レプトスフェリア・ビグロボサ(
Leptosphaeria biglobosa)及びL.マクランス(L.maculans)と同義:根及び茎腐れ病)及びサトウダイコンにおけるP.ベタエ(P.betae)(根腐れ病、斑点病及び苗立ち枯れ病)及びトウモロコシにおけるP.ゼアエマイディス(P.zeae-maydis)(フィロスティクタ・ゼアエ(Phyllostica zeae)と同義);フォモプシス属の種(Phomopsis spp.)であって、ヒマワリにおけるもの、ブドウにおけるもの(例えばP.ビチコラ(P.viticola):茎葉斑点病)及びダイズにおけるもの(例えば茎腐れ病:P.ファゼオリ(P.phaseoli)、テレオモルフ:ディアポルテ・ファゼオロルム(Diaporthe phaseolorum));トウモロコシにおけるフィゾデルマ・マイディス(Physoderma maydis)(褐色斑病);様々な植物におけるフィトフトラ属の種(Phytophthora spp.)(立ち枯れ病、根、葉、果実及び茎腐れ病)、例えばパプリカ及びウリ科植物におけるもの(例えばP.カプシキ(P.capsici))、ダイズにおけるもの(例えばP.メガスペルマ(P.megasperma)、P.ソヤエ(P.sojae)と同義)、ジャガイモ及びトマトにおけるもの(例えばP.インフェスタンス(P.infestans):葉枯病)及び広葉樹におけるもの(例えばP.ラモルム(P.ramorum):オークの突然死);キャベツ、ナタネ、ダイコン及び他の植物におけるプラスモディオフォラ・ブラシカエ(Plasmodiophora brassicae)(根こぶ病);プラスモパラ属の種(Plasmopara spp.)、例えばブドウにおけるP.ビチコラ(P.viticola)(ブドウのべと病)及びヒマワリにおけるP.ハルステディイ(P.halstedii);ポドスフェラ属の種(Podosphaera spp.)(ウドンコ病)であって、バラ科植物、ホップ、仁果類及びソフトフルーツにおけるもの(例えばリンゴにおけるP.ロイコトリカ(P.leucotricha))及びウリ科植物におけるもの(P.キサンチイ(P.xanthii));ポリミキサ属の種(Polymyxa spp.)、例えば穀物、例えばオオムギ及びコムギにおけるもの(P.グラミニス(P.graminis))及びサトウダイコンにおけるもの(P.ベタエ(P.betae))、及びそれにより伝染するウイルス病;穀物、例えばコムギ又はオオムギにおけるシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)(オクリマクラ・ヤルンダエ(Oculimacula yallundae)と同義、O.アクフォルミス(O.acuformis):眼紋病、テレオモルフ:タペシア・ヤルンダエ(Tapesia yallundae));様々な植物におけるシュードペロノスポラ属(Pseudoperonospora)(べと病)、例えばウリ科植物におけるP.キュベンシス(P.cubensis)又はホップにおけるP.フミリ(P.humili);ブドウにおけるシュードペツィクラ・トラケイフィラ(Pseudopezicula tracheiphila)(赤焼け病又はロットブレンナー(rotbrenner)、アナモルフ:フィアロフォラ(Phialophora));様々な植物におけるプッチニア属の種(Puccinia spp.)(さび病)、例えば穀物、例えばコムギ、オオムギ又はライムギにおけるP.トリチシナ(P.triticina)(褐色さび病又は葉さび病)、P.ストリイホルミス(P.striiformis)(縞さび病又は黄さび病)、P.ホルデイ(P.hordei)(矮化さび病)、P.グラミニス(P.graminis)(茎さび病又は黒さび病)又はP.レコンジタ(P.recondita)(褐色さび病又は葉さび病)、サトウキビにおけるP.クエニイ(P.kuehnii)(橙さび病)及びアスパラガスにおけるP.アスパラギ(P.asparagi);ナタネにおけるピレノペジザ属の種(Pyrenopeziza spp.)、例えばP.ブラシカエ;コムギにおけるピレノフォラ(Pyrenophora)(アナモルフ:ドレシュレラ(Drechslera))・トリチシ-レペンチス(tritici-repentis)(黄褐色斑病)又はオオムギにおけるP.テレス(P.teres)(網斑病);ピリクラリア属の種(Pyricularia spp.)、例えばイネにおけるP.オリザエ(P.oryzae)(テレオモルフ:マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)、イネイモチ病)並びにシバ及び穀物におけるP.グリセア(P.grisea);シバ、イネ、トウモロコシ、コムギ、ワタ、ナタネ、ヒマワリ、ダイズ、サトウダイコン、野菜及び様々な他の植物におけるピチウム属の種(Pythium spp.)(苗立ち枯れ病)(例えばP.ウルチムム(P.ultimum)又はP.アファニデルマツム(P.aphanidermatum))及びマッシュルームにおけるP.オリガンドルム(P.oligandrum);ラムラリア属の種(Ramularia spp.)、例えばオオムギにおけるR.コロ-シグニ(R.collo-cygni)(ラムラリア葉斑点病、生理的葉斑点病)、ワタにおけるR.アレオラ(テレオモルフ:ミコスフェレラ・アレオラ(Mycosphaerella areola))及びサトウダイコンにおけるR.ベチコラ(R.beticola);ワタ、イネ、ジャガイモ、シバ、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、サトウダイコン、野菜及び様々な他の植物におけるリゾクトニア属の種(Rhizoctonia spp.)、例えばダイズにおけるR.ソラニ(R.solani)(根及び茎腐れ病)、イネにおけるR.ソラニ(R.solani)(紋枯病)又はコムギ若しくはオオムギにおけるR.セレアリス(R.cerealis)(リゾクトニア春枯れ病);イチゴ、ニンジン、キャベツ、ブドウ及びトマトにおけるリゾプス・ストロニフェル(Rhizopus stolonifer)(黒かび病、軟腐病);オオムギ、ライムギ及びライコムギにおけるリンコスポリウム・セカリス(Rhynchosporium secalis)及びR.コムネ(R.commune)(火傷病);イネにおけるサロクラジウム・オリザエ(Sarocladium oryzae)及びS.アテヌアツム(S.attenuatum)(鞘腐れ病);スクレロチニア属の種(Sclerotinia spp.)(茎腐れ病又は白かび病)であって、野菜におけるもの(S.ミノール(S.minor)及びS.スクレロチオルム(S.sclerotiorum))並びに農作物、例えばナタネ、ヒマワリ(例えばS.スクレロチオルム)及びダイズにおけるもの、ダイズ、ラッカセイ、野菜、トウモロコシ、穀物及び観賞植物におけるS.ロルフシイ(S.rolfsii)(アテリア・ロルフシイ(Athelia rolfsii)と同義);様々な植物におけるセプトリア属の種(Septoria spp.)、例えばダイズにおけるS.グリシネス(S.glycines)(褐色斑病)、コムギにおけるS.トリチシ(S.tritici)(ジモセプトリア・トリチシ(Zymoseptoria tritici)と同義、セプトリア斑点病)及び穀物におけるS.(スタゴノスポラ(Stagonospora)と同義)・ノドルム(nodorum)(スタゴノスポラ斑点病);ブドウにおけるウンシヌラ(Uncinula)(エリシフェ(Erysiphe)と同義)・ネカトル(necator)(ウドンコ病、アナモルフ:オイジウム・ツッケリ(Oidium tuckeri));セトスフェリア属の種(Setosphaeria spp.)(黒葉枯病)であって、トウモロコシにおけるもの(例えばS.ツルシクム(S.turcicum)、ヘルミントスポリウム・ツルシクム(Helminthosporium turcicum)と同義)及びシバにおけるもの;スファセロテカ属の種(Sphacelotheca spp.)(すす病)であって、トウモロコシにおけるもの(例えばS.レイリアナ(S.reiliana):ウスチラゴ・レイリアナ(Ustilago reiliana)と同義:堅黒穂病)、雑穀及びサトウキビにおけるもの;ウリ科植物におけるスフェロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)(ポドスファエラ・キサンチイ(Podosphaera xanthii)と同義:ウドンコ病);ジャガイモにおけるスポンゴスポラ・サブテラネア(Spongospora subterranea)(粉状瘡痂病)及びそれにより伝染するウイルス病;穀物におけるスタゴノスポラ属の種(Stagonospora spp.)、例えばコムギにおけるS.ノドルム(S.nodorum)(スタゴノスポラ斑点病、テレオモルフ:レプトスフェリア[フェオスフェリア(Phaeosphaeria)と同義]・ノドルム(nodorum)、セプトリア・ノドルム(Septoria nodorum)と同義);ジャガイモにおけるシンキトリウム・エンドビオチクム(Synchytrium endobioticum)(ジャガイモ癌腫病);タフリナ属の種(Taphrina spp.)、例えばモモにおけるT.デフォルマンス(T.deformans)(縮葉病)及びプラムにおけるT.プルニ(T.pruni)(スモモ類膨らみ病);タバコ、リンゴ類果実、野菜、ダイズ及びワタにおけるチエラビオプシス属の種(Thielaviopsis spp.)(黒根腐れ病)、例えばT.バシコラ(T.basicola)(カララ・エレガンス(Chalara elegans)と同義);穀物におけるチレチア属の種(Tilletia spp.)(黒穂病又はなまぐさ黒穂病)、例えばコムギにおけるT.トリチシ(T.tritici)(T.カリエス(T.caries)と同義、コムギ黒穂病)及びT.コントロベルサ(T.controversa)(矮化黒穂病);マッシュルームにおけるトリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum);オオムギ又はコムギにおけるチフラ・インカルナタ(Typhula incarnata)(灰色雪かび病);ウロシスチス属の種(Urocystis spp.)、例えばライムギにおけるU.オクルタ(U.occulta)(軸黒穂病);野菜におけるウロマイセス属の種(Uromyces spp.)(さび病)、例えばマメ類におけるもの(例えばU.アペンジクラツス(U.appendiculatus)、U.ファゼオリ(U.phaseoli)と同義)、サトウダイコンにおけるもの(例えばU.ベタエ(U.betae)又はU.ベチコラ(U.beticola))及びマメ科植物におけるもの(例えばU.ビグナエ(U.vignae)、U.ピシ(U.pisi)、U.ビシアエ-ファバエ(U.viciae-fabae)及びU.ファバエ(U.fabae));ウスチラゴ属の種(Ustilago spp.)(裸黒穂病)であって、穀物におけるもの(例えばU.ヌダ(U.nuda)及びU.アベナエ(U.avaenae))、トウモロコシにおけるもの(例えばU.マイディス(U.maydis):トウモロコシ黒穂病)及びサトウキビにおけるもの;ベンツリア属の種(Venturia spp.)(黒星病)であって、リンゴにおけるもの(例えばV.イナエクアリス(V.inaequalis))及びナシにおけるもの;並びに様々な植物、例えば果実及び観賞植物、ブドウ、ソフトフルーツ、野菜及び農作物におけるバーチシリウム属の種(Verticillium spp.)(立ち枯れ病)、例えばナタネにおけるV.ロンギスポルム(V.longisporum)、イチゴ、ナタネ、ジャガイモ及びトマトにおけるV.ダリアエ(V.dahliae)、並びにマッシュルームにおけるV.フンギコラ(V.fungicola);穀物におけるジモセプトリア・トリチシ(Zymoseptoria tritici)。
【0010】
一実施形態では、入力データはさらに土壌水分指標を含み、これはデータ処理ユニットによって取得され、農業植物が栽培される場所に関連付けられる。たとえば、土壌水分指標は、所与の時刻において、および/または将来の時刻について、土壌がどれだけ湿っていたか、または、湿っているかを示してもよい。言い換えると、本方法は、データ処理ユニットによって、農業植物が栽培される場所に関連付けられた土壌水分指標を取得する任意選択のステップ(ただし土壌水分指標は入力データの一部として計算モデルに提供される)を備えてもよい。このようにすると、より正確な病害率の予測が可能となる。
【0011】
一実施形態によれば、検疫的値において病害率が予測されてもよい。言い換えると、計算モデルは、病害がその植物に発生する特定の確率値またはその範囲、または、特定の閾値を超えて広がり得た病害の経過、に割り当てられる値を予測してもよい。量的値は、病害率を示すものについて、たとえば0と1の間、0と100の間、等であってもよい。代替的にまたは追加的に、予測値は、0から100%までのパーセント値として提供されてもよい。このように、病害率は、予測期間内の特定の時刻または特定の期間に対する具体的な値をもって、正確に予測および/または推定され得る。さらに、予測値にもとづき、時間関連閾値(それ以降、またはその後、病害の経過または病害のレベルが許容不可(頂部の葉に移動するため等)である)を決定してもよい。
【0012】
一実施形態では、少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、処置期間または処置時刻を含み得る。言い換えると、本方法は、適切(好適には最も適切)な処置タイミング(たとえば、一方では病害を少なくとも制御、撲滅または防止するために、他方では要求される植物保護薬剤または殺虫剤を可能な最少量とするために、植物保護薬剤または殺虫剤が適用可能であるスプレータイミング)を発見することができる。植物保護処置パラメータは、したがって、最適処置および/または適用時間としても参照可能である。
【0013】
一実施形態では、少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、さらに、特定の植物保護施策に関する病害の制御性が最小閾値を超えている日または時間ウィンドウを含んでもよい。これは、最適な処置および/または適用時間としても参照され得る。
【0014】
一実施形態では、農業植物が栽培される場所は、フィールド(field)(たとえば土壌表面等)であってもよく、フィールドはサブフィールドに分割されてもよく、病害率はいくつかのサブフィールドの少なくとも一部についてサブフィールドごとに固有の態様で予測されてもよい。たとえば、マップが生成されてもよく、マップはフィールドを複数のサブフィールドに分割し、それらに地理的参照データを割り当てる。その後、当該サブフィールドの1つ、いくつかまたはすべてについて、病害率が予測されてもよい。このようにすると、サブフィールドのそれぞれについて個別に植物処置が制御可能となり、これはたとえば、植物に、保護薬剤および/または植物(複数可)の機械処置の結果としての機械動作時間を節約し得る。
【0015】
一実施形態によれば、少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、サブフィールドごとに固有の態様で決定されてもよい。このようにすると、1つ、いくつか、またはすべてのサブフィールドについて、少なくとも1つの植物保護処置パラメータが個別に決定可能となり、これはたとえば、植物に、保護薬剤および/または植物(複数可)の機械処置の結果としての機械動作時間を節約し得る。
【0016】
一実施形態では、土壌水分指標は、1つ以上の土壌深さに関連付けられた土壌水分値を含んでもよい。たとえば、土壌水分値は、フィールドまたは1つ以上のサブフィールドの土壌が、所与の時刻において、および/または将来の時刻について、どの程度湿っているか、または湿っていたか、を示してもよい。さらに、例として、土壌水分値は、マイクロ波放射測定から導出されてもよく、土壌の異なる深さについて土壌水分値を提供するために異なる波長が用いられてもよい。任意選択で、土壌の最上部2cmの土壌水分値を提供および/または決定するためにC帯マイクロ波放射を用いてもよく、土壌の最上部1cmの土壌水分値を提供および/または決定するためにX帯マイクロ波放射を用いてもよく、土壌の最上部5cmの土壌水分値を提供および/または決定するためにL帯マイクロ波放射を用いてもよい。土壌水分値は、計算モデルに対する入力データとして用いてもよい。このようにすると、病害率のより正確な予測が提供可能である。
【0017】
一実施形態によれば、土壌水分指標は土壌タイプを含んでもよい。これによって、(たとえば対応する分類によって)病害の確率に対する異なる病害素質に、異なる土壌タイプが割り当てられ得る。このようにすると、病害率のより正確な予測が提供可能である。
【0018】
一実施形態では、土壌水分指標は、土壌データおよび気象データに基づいてモデル化および/または計算されてもよく、土壌データは、以下のデータタイプ(フィールドまたはサブフィールドに関連する)のうち1つ以上であってもよい:土壌タイプ、土壌品質、土壌砂状度、土壌湿度、土壌温度、土壌表面温度、土壌密度、土壌テクスチャ、土壌導通度、土壌のpH値、および/または土壌の水保持容量。これによって、病害の確率に対する異なる病害素質に、(たとえば対応する分類によって)異なる土壌データが割り当てられ得る。このようにすると、病害率のより正確な予測が提供可能である。
【0019】
一実施形態では、土壌水分指標は、少なくとも土壌タイプおよび気象データに基づいてモデル化および/または計算される。これによって、病害の確率に対する異なる病害素質に、(たとえば対応する分類によって)異なる土壌タイプが割り当てられ得る。このようにすると、病害率のより正確な予測が提供可能である。
【0020】
一実施形態によれば、土壌水分指標は、農業植物が栽培される場所に対して実行されるリモート測定から、少なくとも部分的に導出されてもよい。たとえば、土壌水分(たとえば土壌水分値等)は、衛星データから取得されてもよい。任意選択で、土壌の最上部2cmの土壌水分値を提供および/または決定するためにC帯マイクロ波放射を用いてもよく、土壌の最上部1cmの土壌水分値を提供および/または決定するためにX帯マイクロ波放射を用いてもよく、土壌の最上部5cmの土壌水分値を提供および/または決定するためにL帯マイクロ波放射を用いてもよい。土壌水分値は、計算モデルに対する入力データとして用いてもよい。このようにすると、病害率のより正確な予測が提供可能である。
【0021】
一実施形態では、土壌水分指標は、農業植物が栽培される場所において実行されるローカル測定から、少なくとも部分的に導出されてもよい。たとえば、少なくとも1つの土壌水分センサを用いて土壌水分および/または土壌水分指標を決定してもよい。土壌水分値は、計算モデルに対する入力データとして用いてもよい。このようにすると、病害率のより正確な予測が提供可能である。
【0022】
一実施形態によれば、本方法は、さらに、農業植物が栽培される場所に関連付けられたバイオマス指標を取得することを含んでもよく、バイオマス指標は、病害率を予測するための追加の入力データとして、追加的に計算モデルに提供されてもよい。たとえば、バイオマス指標は、正規化差植生指標(NDVI)および/または葉面積指数(LAI)であってもよい。このようにすると、病害率のより正確な予測が提供可能である。
【0023】
一実施形態では、計算モデルは計算回帰モデルであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つの植物保護処置パラメータを用いて、用いるべき植物保護薬剤の仕様を特定してもよい。この目的で、適切な計算モデル(またはデータベースによって取得されたデータ等)を用いてもよい。これによって、植物保護の質がさらに改善される。
【0024】
一実施形態によれば、少なくとも1つの植物保護処置パラメータおよび/または植物処置計画は、(たとえば、その少なくとも1つの植物保護処置パラメータおよび/または植物処置計画に関するメッセージ、警告、等を介して)ユーザに知らせるための、または、その少なくとも1つの植物保護処置パラメータおよび/または植物処置計画に基づき、ユーザが特定の行動を(たとえば特定の時刻に)実行することを命令するための、トリガとして用いられてもよい。
【0025】
一実施形態では、少なくとも1つの植物保護処置パラメータおよび/または植物処置計画は、ロボットデバイス(自動的に、植物処置計画を実行する、または、特定の日または時刻に、たとえば植物保護薬剤、殺虫剤、等を適用する、ように構成されてもよい)に提供されるよう構成される制御データセットを生成するために用いられてもよい。これによって、農業の効率をさらに改善できる。
【0026】
一実施形態によれば、農業植物の病害率を予測することは、さらに、
‐計算モデルによって、病害進行ウィンドウを予測することを含んでもよく、病害進行ウィンドウ内において、時間にわたって農業植物の病害のあり得る経過が計算され、その病害進行ウィンドウ内の特定の時刻に対して病害率に関する指標である。
‐予測された病害率は、病害進行ウィンドウから抽出されてもよい。
【0027】
言い換えると、計算モデルは、病害進行曲線(ウィンドウの一部であってもよい)を決定することができる。この病害進行曲線は、閾値(当該閾値の後、病害のレベルが許容不可(たとえば植物の上側または頂部の葉に移動するため等)である)を特定するために用いられてもよい。その後、これは、最適な適用時刻を決定するために用いられてもよい。
【0028】
一実施形態では、植物観測データは、農業植物に関する成長段階、フィールドデータ、および観測インフェステーションデータのうち1つ以上を含んでもよい。これらのデータは、組み合わされ、および/または、相関されてもよい。一実施形態によれば、フィールドデータは、地理的場所情報(農業植物が栽培される地理的場所を示す)、および、フィールドデータ(土壌データ、フィールド寸法、フィールド向き、フィールド環境データ、のうち1つ以上を含む)、のうち1つ以上を含んでもよい。
【0029】
一実施形態によれば、フィールドデータは、地理的場所情報(農業植物が栽培される地理的場所を示す)、土壌データ、フィールド寸法、フィールド向き、フィールド環境データ、のうち1つ以上を含んでもよい。これらのデータは、組み合わされ、および/または、相関されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、計算モデルは、いくつかの層(その数は、処理すべき入力データの、数、複数、等に基づいてもよい)を含んでもよい。追加の層が導入される場合には、予測のためにさらなるデータおよび/またはパラメータが考慮されてもよい。たとえば、追加的に土壌水分等を考慮してもよい。
【0030】
一実施形態では、予測された病害率は、病害深刻度、病害罹患率、および病害リスクのうち1つ以上を示すかまたは含む。好適には、それは病害深刻度を示す。その理由は、ある1日の高い感染リスクは、必ずしも問題ではないが、何日かにわたる連続して高いリスクは病害の出現につながり得るということがわかっているからである。しかしながら、植物上で視認可能な病害の量である病害深刻度は、いくつかの感染リスク日の結果として見ることができる。
【0031】
一実施形態によれば、計算回帰モデルは、入力植物観測データおよび気象データに応じてデータを出力する人工ニューラルネットワークを利用する。ニューラルネットワークは複数の層からなってもよく、各層は1つ以上のニューロンを備える。隣接する層間のニューロンは、第1層のニューロンの出力が、隣接する第2層の1つ以上のニューロンの入力となるという意味でリンクされる。そのようなリンクはそれぞれ「重み」を与えられ、対応する入力は、入力の関数としてニューロンの出力を与える「活性化関数」に、この重みをもって入る。活性化関数は、典型的にはその入力の非線形関数である。たとえば、活性化関数は、各入力の重み付け和または他の線形関数である「予備活性化関数」と、予備活性化関数の値からそのニューロンの最終的な出力を生成する閾値関数または他の非線形関数とを含んでもよい。本方法を実行するために用いられるニューラルネットワークでは、予測を行う前に、適切な訓練データを用いる訓練によって重みが設定または調整される。少なくともいくつかの実施形態において、ニューラルネットワークは、Pytorchおよび/またはFastAI等の技術によって実装可能である。
【0032】
少なくともいくつかの実施形態では、計算モデルは時間認識計算モデルであってもよい。たとえば、モデルは、時間依存入力データ(たとえば、入力値を時刻または期間にマッピングするタイムスタンプ等を備える)を処理するよう構成されるさらなる層を備えてもよい。これによって、計算モデルの学習および/または予測能力がさらに改善される。
【0033】
さらに、代替的に、または追加的に、計算モデルは、ノード間の接続が時間的系列に沿って方向付けられたグラフを形成するリカレントニューラルネットワーク(RNN)を含んでもよく、またこれとして形成されてもよい。これによって、計算モデルの学習および/または予測能力がさらに改善される。
【0034】
代替的に、または追加的に、計算モデルは、人工リカレントニューラルネットワーク(RNN)アーキテクチャである長短期記憶(LSTM)アーキテクチャを含んでもよく、またこれとして形成されてもよい。これによって、計算モデルの学習および/または予測能力がさらに改善される。
【0035】
一実施形態では、植物保護処置パラメータおよび/または植物保護処置計画は、データ処理デバイスによって実行可能なように構成されるコンピュータ可読データセットとして提供されてもよい。たとえば、植物保護処置パラメータおよび/または植物保護処置計画は、メッセージ(たとえば端末(たとえばスマートフォンまたは任意の他の適切なコンピュータデバイス)によって受信されるもの)として提供されてもよい。また、それは、保護処置パラメータを使用するための、および/または、植物保護処置計画を実行するための、ロボットを制御するために用いられてもよい。
【0036】
一実施形態では、計算モデルは、さらに、栽培シーズン中に収集および/または捕捉された、偵察情報および/またはユーザフィードバックを取得してもよい。偵察情報は、たとえばコンピュータアプリケーション(App)から取得可能である。偵察情報は、たとえば、植物の場所において取得された1つ以上の偵察画像を含んでもよい。偵察撮像は、画像処理(たとえば画像分析、パターン認識、等)の対象となってもよい。ユーザフィードバックは、たとえば手作業による観察、少なくとも半自動の検出、等に基づいてもよい。同一または別のコンピュータAppを介して入力されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、取得された偵察情報および/またはユーザフィードバックは、植物の栽培シーズン中、計算モデルを適合させおよび/または較正するために用いられてもよい。これによって、計算モデルの学習および/または予測能力がさらに改善される。
【0037】
本発明の第2の態様は、農業植物のための植物保護処置計画を、適合された計算モデルの使用によって決定するために、計算モデルを、農業植物の変更後栽培条件に適合させる方法を提供する。本方法は、好ましくはコンピュータ実装され、データ処理ユニットによって実行される。これは上記のデータ処理ユニットまたはコンピュータデバイスであってもよい。本方法は、計算モデルに、入力データとして訓練データを提供するステップを備え、入力データは、フィールド固有データ、観測病害深刻度、成長段階データ、および気象データのうち1つ以上を少なくとも含み、入力データは、農業植物の変更後栽培条件に関連付けられる。
【0038】
フィールド固有データは、実験的試行で収集されたデータを参照してもよい。フィールド試行は、農業において、種の多様性、罹病性、殺菌剤の効果、および他の具体的な農耕活動の影響を研究するための標準的な方法である。たとえば、これらの研究の一部として、試行作業者によって、様々なプロット設計または試行セットアップが工夫されてもよく、成長期間を通して様々な態様が記録され、これは後に試行作業者によって分析され研究される。この研究では、試行における未処置プロットからのデータを用いて、農家がいかなる行動も取らなかった場合に病害がどう進行するかが研究される。これにより、病害の動力学が研究でき、したがって、デバイス管理戦略がよりよくなる。このプロセスの一部として、植え付け日、作物データ(作物タイプ等)および試行の場所詳細をさらに用いてもよい。これらのフィールド固有データは、コンピュータ的に処理され、電子的形態で入力データを提供してもよい。フィールド固有データは、適切な検出手段および/または収集手段(光学的検出手段等)によって(たとえばリモート制御、または、少なくとも部分的に自律型のロボット、衛星撮像、等によって)、電子的に取得されてもよい。さらに、フィールド固有データは、観測病害深刻度および/または成長段階データおよび/または気象データと相関されしてもよい。
【0039】
一実施形態では、フィールド固有データは植え付け日および作物データに関するデータを含み、作物データは、作物タイプ、作物品種、作物多様性、作物遺伝情報、特定の病害に関する作物の罹病性、に関するデータを含む。フィールド固有のデータ、植え付け日に関するデータおよび作物データは、測定(たとえばリモートセンシング、近位センシング、等に基づくセンサ測定を含む)、モデル化、またはユーザ入力を介して取得可能である。「遺伝情報」は、生物の遺伝特性に関する任意の種類の情報として理解され、以下を含むがこれに限定されない:DNA配列、RNA配列、DNAおよび/またはRNA配列の部分、DNAおよび/またはRNAの分子構造、後成的情報(たとえばDNA部分のメチル化)、遺伝子突然変異に関する情報、遺伝子コピー数の変化に関する情報、遺伝子の過発現に関する情報、遺伝子の発現レベルに関する情報、遺伝子シフティングに関する情報、野生型と突然変異型の比率に関する情報、異なる突然変異間の比率に関する情報、突然変異と他の変異種(たとえば後成的変異種)との比率に関する情報、異なる変異種(たとえば後成的変異種)間の比率に関する情報。また、「遺伝情報」は、特定の野生型、突然変異、または変異種(たとえば後成的変異種)、またはDNA/RNA配列、またはDNA/RNA配列の各部、または特定の後成的変異種が不在であるという情報を含む。
【0040】
観測病害深刻度および/または成長段階データは、観測によって、成長期間を通して、農業植物の様々な成長段階における病害深刻度を決定することから取得されてもよい。さらに、観測病害深刻度および/または成長段階データは、フィールド固有データおよび/または気象データと相関してもよい。
【0041】
気象データは、歴史的な気象データを参照してもよく、適切なアプリケーションプログラミングインタフェース(API)を介して、たとえば気象データベース、気象ステーションネットワーク、および、適切な気象モデルからのシミュレーションされたデータから、導出されてもよい。さらに、気象データは、フィールド固有データおよび/または観測病害深刻度および/または成長段階データと相関されてもよい。
【0042】
計算モデルに訓練データとして上記データを提供する前に、フィールド固有データ、観測病害深刻度、成長段階データ、および気象データのうち1つ以上が事前処理されてもよい。たとえば、観測日ごとに観測を行ってもよく、同一の日からの各値が平均されてもよい。さらに、植え付け日は重要なパラメータであるため、植え付け日のない試行は破棄してもよい。さらに、試行は地理的座標の詳細がない場合があり、そのような試行については、場所について利用可能なさらなる情報(市または町の指名)に基づいて、および/または逆地理コーディングによって、場所推定が推定されてもよい。
【0043】
さらに、計算モデルに上記データを訓練データとして提供する前に、上記データは、病害進行分析の対象となってもよい。たとえば、試行において行われる観測は、時間的な病害発現(成長シーズンにわたって何度か評価された場合の、植物の母集団に存在する病害の量)を捕捉することを目的とし得る。そのような評価は、異なる葉層上の病害深刻度について行うことができる。とくに、重み付け和の手法を用いて、最終的な収穫量への影響に基づき、異なる葉層それぞれ固有の病害深刻度値を合計することができる。この結果として、時間にわたる病害進行の、より理解可能で、簡素化された、スムーズな曲線が得られる。これらの時間的病害発現値に基づき、病害進行曲線(時間につれての病害発現の動力学を描画する集合的提示)を準備してもよい。この時間的進行曲線は、宿主、病原体、環境および作物農業の間の複雑な相互作用の結果を表す。時間的病害進行曲線を記述するために用いられる方法は、適切な成長モデルの使用である。
【0044】
‐訓練データに基づき、逆伝搬を用いて、農業植物の変更後栽培条件に計算モデルを適合させるために、計算モデルのパラメータまたは重みを調節すること。
【0045】
たとえば、計算モデルは、ニューラルネットワークとして形成されてもよく、ニューラルネットワークを利用してもよい。一般的に、ニューラルネットワークは複数の層からなってもよく、各層は1つ以上のニューロンを備える。隣接する層間のニューロンは、第1層のニューロンの出力が、隣接する第2層の1つ以上のニューロンの入力となるという意味でリンクされる。そのようなリンクはそれぞれ「重み」を与えられ、対応する入力は、入力の関数としてニューロンの出力を与える「活性化関数」に、この重みをもって入る。活性化関数は、典型的にはその入力の非線形関数である。たとえば、活性化関数は、各入力の重み付け和または他の線形関数である「予備活性化関数」と、予備活性化関数の値からそのニューロンの最終的な出力を生成する閾値関数または他の非線形関数とを含んでもよい。本方法を実行するために用いられるニューラルネットワークでは、予測を行う前に、適切な訓練データを用いる訓練によって重みが設定または調整される。
【0046】
さらに、逆伝搬は、機械学習の分野において既知であり、たとえば教師あり学習についてフィードフォワードニューラルネットワークを訓練することに用いられるアルゴリズムを参照する。逆伝搬は、ネットワークの重みに関する損失関数の勾配を、ニューラルネットワークに適合するように計算してもよい。フィードフォワードネットワークを訓練するために利用される逆伝搬は、非線形の複数の回帰を実行することができる。フィードフォワードネットワークの目的は、y=f(x;θ)となる関数fを近似することである。ただしfは、すべての入力データおよびパラメータθを、病害率の値y(0と1の間、または0と100%の間)を与えるためにマッピングする。逆伝搬技法では、実際の出力と所望の出力との差を最小化するように、パラメータθへの繰り返し調整が行われてもよい。入力データは、カテゴリ値および連続値の組み合わせであってもよい。連続値は、さらなる事前処理なしで入力データとして使用可能であるが、カテゴリ値は、事前処理から利益を得られる可能性がある。少なくともいくつかの実施形態では、さらに、カテゴリ列の値を、単一の整数に代えてN次元のベクトルの形式で表すことによって、逆伝搬をさらに改善し得る。ベクトルにより、より多くの情報を捕捉でき、複数のカテゴリ値間の関係をより適切な方法で発見できる。入力データは、多層フィードフォワードニューラルネットワークに供給されてもよい。これは、ネットワークが隠れニューロンの複数の層を含むということを意味する。隠れ層を用いて、非線形性を増大させ、関数上でのデータのよりよい一般化の表現を変更する。これは、複雑な表データ分析タスクであるため、この層は、たとえば、多数の(たとえば数百または数千の)出力ニューロンを含み、好ましくは、2層ネットワークでは、それぞれ、500~1500、好ましくは約1000、および200~800、好ましくは約500、の出力ニューロンを含む。これによって、たとえば行列の乗算が線形関数となる。用いる非線形性は、たとえば、整流化線形ユニット(ReLU)である。一般化能力が増大するにつれ、データのオーバーフィッティングのリスクが増加する。これを回避するため、ドロップアウト正則化を用いてもよい。代替的にまたは追加的に、非線形後にいわゆるバッチ正規化を適用してオーバーフィッティングを回避してもよい。さらに、いわゆるバッチ正規化を実行して、ニューラルネットワークのスピード、性能、および安定性を改善してもよい。これは、とくに、活性化を調整およびスケーリングして入力層を正規化するために用いられる。出力層は、その入力として、直前の層の出力活性化(対応する数の入力、たとえば200~800、好ましくは約500)を受け取る。任意選択で、線形変換を実行して、1つの出力、すなわち0と1の間の範囲内の予測された病害率値(その後、0と100%との間の値にマッピングされてもよい)を取得してもよい。このように、逆伝搬を用いて計算モデルを訓練してもよい。
【0047】
‐農業植物の時間関連病害率を少なくとも1つ予測することにより、農業植物の植物保護処置計画を決定するために、適合された計算モデルを使用すること。
【0048】
訓練および適合の後、計算モデルは変更後栽培条件に適合される。したがって、これを用いて、新たな気象条件、新たな病害、および/または新たな地域について、農業植物の植物保護処置計画を正確に決定することができる。
【0049】
一実施形態によれば、本方法は、入力データとして訓練データを提供する前に、
‐フィールド固有データ、観測病害深刻度、成長段階データ、および気象データを、組み合わせデータに組み合わせるステップと、
‐組み合わせデータを、重み付け和関数によって処理し、異なる葉層それぞれに固有の病害率値を、農業植物の最終的な収穫量へのそれらの影響に基づき、合計するステップと、
を備えてもよい。
【0050】
本発明の第3の態様は、農業植物の植物保護処置計画を決定するデバイスを提供する。デバイスは、データを受け取り、および/またはデータを出力するよう構成されるデータインタフェースと、データ処理ユニットとを備える。データ処理ユニットは、
‐データ処理ユニットによって実行される計算モデルを用いて、
取得された観測データと、任意選択で土壌水分データおよび取得された気象データとに基づき、農業植物の時間関連病害率を予測し、
‐計算モデルを用いて、少なくとも予測された病害率に基づき、植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータを決定する
ように構成される。
【0051】
好適には、デバイスは第1の態様の方法を実行するよう構成され得る。
【0052】
本発明の第4の態様は、適合された計算モデルを用いて、農業植物のための植物保護処置計画を決定するために、農業植物の変更後栽培条件に対して計算モデルを適合させるためのデバイスを提供する。デバイスは、データを受け取り、および/またはデータを出力するよう構成されるデータインタフェースと、データ処理ユニットとを備える。データ処理ユニットは、
‐計算モデルによって、農業植物の変更後栽培条件に関連付けられた訓練データを取得し、訓練データは、フィールド固有データと、観測病害深刻度と、成長段階データと、任意選択で土壌水分データおよび気象データとのうち少なくとも1つ以上を含み、
‐逆伝搬を用いて、訓練データに基づき、農業植物の変更後栽培条件に計算モデルを適合させるために、計算モデルのパラメータまたは重みを調整し、
‐適合された計算モデルを用いて、農業植物の少なくとも1つの時間関連病害率を予測することにより、農業植物のための植物保護処置計画を決定する、
ように構成される。好適には、デバイスは第2の態様の方法を実行するよう構成され得る。
【0053】
本発明の第5の態様は、農業植物に割り当てられた植物保護処置計画に基づき、農業植物を処置するシステムを提供する。システムは、
‐データを受け取り、および/またはデータを出力するよう構成されるデータインタフェースと、データ処理ユニットとを備える第1デバイスであって、データ処理ユニットは、
‐取得された観測データと、任意選択で取得された土壌水分データおよび取得された気象データとに基づき、第1データ処理ユニットによって実行される計算モデルを用いて、農業植物の時間関連病害率を予測し、
‐計算モデルを用いて、少なくとも予測された病害率に基づき、植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータを決定し、
‐少なくとも1つの植物保護処置パラメータを少なくとも含む出力データを提供する
よう構成される、第1デバイスと、
‐データを受け取り、および/またはデータを出力するよう構成されるデータインタフェースと、データ処理ユニットとを備える第2デバイスと、を備える。データ処理ユニットは、
‐第1データ処理ユニットから出力データを取得し、
‐少なくとも1つの植物保護処置パラメータを用いるために取得された出力データを処理する、
ように構成される。
【0054】
システムは、分散コンピュータシステムであってもよく、第1デバイスおよび第2デバイスは、通信ネットワーク(インターネット等)を介して接続されてもよい。たとえば、第1デバイスはサーバ、クラウド、等であってもよく、上述の各ステップを集中的に実行するよう構成されてもよい。さらに、第2デバイスは、第1デバイスに対してリモートに配置されてもよい。第2デバイスは、任意のコンピュータデバイス、端末(スマートフォン等)、ロボットデバイスのコントローラ、等であってもよい。たとえば、植物保護処置パラメータが植物処置のタイミングを示す場合には、第1デバイスの出力データは、たとえば端末によって送受信されるメッセージを含んでもよく、それによって、植物処置の予測されるタイミングをユーザに知らせる。さらに、第1デバイスの出力データは、ロボットデバイスに対し、植物処置を実行させるようトリガしてもよい。
【0055】
本発明の第6の態様は、農業植物の植物保護処置計画を決定するためのコンピュータプログラム要素を提供する。コンピュータプログラムは、データ処理ユニットおよび/またはコンピュータデバイスによって実行されると、第1および/または第2の態様による方法を実行するよう構成される。
【0056】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の実施形態を参照して明白となり、説明される。
【0057】
以下、本発明の例示的な実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の一実施形態による、農業植物を処置するシステムの概略ブロック図。
【
図2】本発明の一実施形態による、農業植物の植物保護処置計画を決定するよう適合される計算モデルのアーキテクチャの概略ブロック図。
【
図3】本発明の一実施形態による、農業植物の植物保護処置計画を決定する方法のフローチャート。
【
図4】本発明の一実施形態による、計算モデルを農業植物の変更後栽培条件に適合させる方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0059】
添付図面は、単に概略的な表現であり、本発明を例示することのみを役割とする。同一または同等の要素は、一貫して同一の参照符号で提供される。
【0060】
図1は、農業植物を処置するシステム100の概略ブロック図を示す。
【0061】
システム100は、農業植物の植物保護処置計画を決定するよう構成される第1デバイス110を備える(後により詳細に説明する)。第1デバイス110は、適切なタイプのコンピュータであってもよく、データを受け取り、および/またはデータを出力するよう構成されるデータインタフェース111と、データ処理ユニット112とを備える。データストレージ、メモリ、等を備えてもよい。任意選択で、データインタフェース111は、通信ネットワーク(インターネット等)を介して通信するよう構成されてもよい。いくつかの実施形態では、第1デバイス110は、コンピューティングクラウド、サーバ、等を形成してもよく、これらの一部であってもよい。他の実施形態では、第1デバイス110はローカルコンピュータデバイスであってもよい。第1デバイス110は、後により詳述するように、農業植物の植物保護処置計画を決定するよう適合される計算モデル113(たとえば
図2参照)を計算的に実行するよう構成される。
【0062】
さらに、システム100は、第1デバイス110から取得される出力データを、少なくとも取得し、および/または処理するよう構成される第2デバイス120を備える。言い換えると、第1デバイス110の出力データは、農業植物の処置のために第2デバイス120によって用いられてもよい。たとえば、第2デバイス120は、第1デバイス110から、農業植物の植物保護処置計画を受け取ってもよい。第2デバイス120は、適切なタイプのコンピュータであってもよく、データを受け取り、および/またはデータを出力するよう構成されるデータインタフェース121と、データ処理ユニット122とを備える。データストレージ、メモリ、等を備えてもよい。任意選択で、データインタフェース121は、通信ネットワーク(インターネット等)を介して通信するよう構成されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、第2デバイス140は、第1デバイス110および/または第2デバイス120に対してリモートに(たとえば農業植物の場所に、またはその近くに)配置されてもよい。さらに、任意選択で、第2デバイス120は、スマートフォン、ロボットデバイス、等の端末であってもよい。
【0063】
さらに、システム100は、第1デバイス110および/または第2デバイス120に入力されるべきデータを収集または提供するよう構成される少なくとも1つのデータソース130を備えるか、またはこれに動作可能に接続される。データソース130は、例示的に、複数の異なるデータソース(気象ステーション、気象ステーションネットワーク、観測植物データを備えるデータベース、等)を表してもよい。それは、フィールド固有データ、観測病害深刻度、成長段階データ、および気象データのうち1つ以上を少なくとも備える訓練データを含んでもよく、訓練データは農業植物の変更後栽培条件に関連付けられる。さらに、データソース130は、農業植物または基準植物の現在の健康状態と、農業植物が栽培される場所に関連付けられた気象データとを示す植物観測データを含んでもよい。
【0064】
データソース130、第1デバイス110および/または第2デバイス120は、
図1に示す各エンティティ間の矢印によって示すように、少なくとも部分的に互いに動作可能に接続され、エンティティ間のデータフローは、矢印の向きによって特定される。
【0065】
上記のシステム100は、以下に説明するよう動作してもよい。
【0066】
第1デバイス110は、農業植物の植物保護処置計画を決定するよう構成されてもよい。具体的には、第1デバイス110は、たとえばデータ処理ユニット112によって、データインタフェース111を介して、データソース130から、農業植物または基準植物の現在の健康状態を示す植物観測データを取得するよう構成される。さらに、第1デバイス110は、データ処理ユニット112によって、データインタフェース111を介して、データソース130から、農業植物が栽培される場所に関連付けられた気象データを取得するよう構成される。第1デバイス110は、さらに、上記の計算モデル113(好ましくはたとえば第1デバイス110のデータストレージユニットに記憶されるかロードされ、データ処理ユニット112によって実行される)によって、取得された観測データと、取得された気象データと、任意選択で土壌水分指標とに基づき、農業植物の時間関連病害率を予測するよう構成される。さらに、第1デバイス110は、計算モデル113によって、少なくとも予測された病害率に基づき、植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータを決定するよう構成される。計算モデル113は、さらに、入力された植物観測データおよび気象データに応じ、データを出力するよう適合されたニューラルネットワークとして形成されてもよく、当該ニューラルネットワークを利用してもよい。計算モデル113は、病害率を量的値(たとえば0から1まで、または0から100までの値)において計算するために、入力データを処理するよう構成されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、処置期間または処置時刻を含む。たとえば、少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、特定の植物保護施策に関する病害の制御性が最小閾値を超えている日または時間ウィンドウを含む。さらに、少なくともいくつかの実施形態では、第1デバイス110および/または計算モデル113は、計算モデル113によって、病害進行ウィンドウ(その中で、時間的期間にわたる農業植物の病害のあり得る経過が計算され、病害進行ウィンドウ内の特定の時間に対して病害率を示す)を予測するよう適合され、予測された病害率は病害進行ウィンドウから抽出される。さらに、少なくともいくつかの実施形態では、第1デバイス110および/または計算モデル113は、異なる葉層それぞれに固有の病害率を、植物の収穫量に対するそれらの影響に基づいて合計するよう構成される重み付け和関数を用いて、植物観測データを処理するよう構成される。たとえば、植物観測データは、フィールドデータ、観測インフェステーションデータ、農業植物に関連付けられる成長段階データ、のうち1つ以上を含む。さらに、予測された病害率は、病害深刻度、病害罹患率、および病害リスクのうち1つ以上を示すかこれを含む。植物保護処置パラメータおよび/または植物保護処置計画は、データ処理デバイス(たとえば第2デバイス120)によって実行されるよう構成されるコンピュータ可読データセットとして提供される。
【0067】
任意選択で、農業植物が栽培される場所はフィールドであってもよく、フィールドはいくつかのサブフィールドに分割されてもよく、病害率は、いくつかのサブフィールドの少なくとも一部について、サブフィールドごとに固有の態様で予測されてもよい。たとえば、フィールドは、異なる複数のサブフィールドを示す地図(たとえばデジタルおよび/またはコンピュータ可読地図)を利用して分割されてもよい。いくつかのサブフィールドへの分割に基づき、少なくとも1つの植物保護処置パラメータは、サブフィールドごとに固有の態様で決定されてもよく、たとえば、少なくとも1つの保護処置パラメータが、各サブフィールドについて個別に決定されてもよい。
【0068】
さらに任意選択で、土壌水分指標は、1つ以上の土壌深さに関連付けられた土壌水分値を含む。少なくともいくつかの実施形態では、土壌水分指標は土壌タイプを含んでもよい。さらに任意選択で、土壌水分指標は、少なくとも1つの土壌タイプおよび気象データに基づいてモデル化され、予測され、および/または計算される。さらに、土壌水分指標は、農業植物が栽培される場所に対して実行されるリモート測定から、少なくとも部分的に、導出されてもよい。代替的に、または追加的に、土壌水分指標は、農業植物が栽培される場所で実行されるローカル測定から、少なくとも部分的に、導出されてもよい。
【0069】
少なくともいくつかの実施形態では、農業植物が栽培される場所に関連付けられたバイオマス指標(たとえばLAIおよび/またはNDVI等。衛星データから導出されてもよい)が取得されてもよい。これによって、病害率を予測するための追加の入力データとして、計算モデル113にバイオマス指標が追加的に提供されてもよい。
【0070】
第1デバイス110によって実行される計算モデル113は、適合された計算モデル113を用いて、農業植物に対する適切な植物保護処置計画を決定するために、農業植物の変更後栽培条件に対して適合されてもよい。このために、第1デバイス110は、計算モデル113によって(たとえばデータインタフェース112を介して)、訓練データ(フィールド固有データ、観測病害深刻度、成長段階データ、および気象データのうち1つ以上を少なくとも含む)を取得するよう構成され、訓練データは、農業植物の変更後栽培条件に関連付けられる。さらに、第1デバイス110は、訓練データに基づき、逆伝搬を用いて、農業植物の変更後栽培条件に対して計算モデル113を適合させるように、計算モデル113のパラメータまたは重みを調整するよう構成される。その後、上述のように、適合した計算モデル113を用いて、少なくとも農業植物の時間関連病害率を予測することにより、農業植物の植物保護処置計画を決定してもよい。
【0071】
図2は、上記の計算モデル113の例示的なアーキテクチャ(ここでは多層ニューラルネットワーク)の概略ブロック図である。例として、計算モデル113は、逆伝搬(逆伝搬アルゴリズム等)によって訓練されるよう構成される2層フィードフォワードニューラルネットワークである。したがって、計算モデル133は、第1層113Aおよび第2層113Bを備える。
図2でブロック113Cおよび113Dとして示されるように、入力データ(カテゴリ値(ブロック113C参照)および連続値(ブロック113D参照)を含んでもよい)がニューラルネットワークに供給され、とくに第1層113Aに供給される。第1層113Aおよび第2層113Bは、相互接続されていてもよい。第1層113Aおよび第2層113Bはそれぞれ、線形関数(たとえば行列乗算を含む)および非線形関数(たとえば整流化線形ユニット(ReLU)を含む)を備えてもよい。計算モデル113の、ブロック113Eを介する出力は、上述の、植物保護処置計画に含まれるべき予測された少なくとも1つの植物保護処置パラメータであってもよく、少なくとも1つの植物保護処置パラメータを含む完全な植物保護処置計画であってもよい。
【0072】
図3は、農業植物の植物保護処置計画を決定する方法のフローチャートを示す。以下の各方法ステップ(とくに入力データを取得すること)は、特定の順序で実行する必要はなく、入力データは異なる順序で取得されてもよいということに留意すべきである。ステップS110において、農業植物または基準植物の現在の健康状態を示す植物観測データが、たとえばデータ処理ユニット111によって取得される。ステップS120において、農業植物が栽培される場所に関連付けられた気象データが、たとえばデータ処理ユニット111によって取得される。任意選択で、農業植物が栽培される場所に関連付けられた土壌水分指標が、たとえばデータ処理ユニット111によって取得されてもよい。ステップS130において、少なくとも取得された観測データおよび取得された気象データを含み、任意選択で取得された土壌水分指標を含む入力データに基づき、農業植物の時間関連病害率が、データ処理ユニット111によって実行される計算モデル113によって予測される。ステップS140において、少なくとも予測された病害率に基づき、植物保護処置計画に含まれるべき少なくとも1つの植物保護処置パラメータが、たとえば計算モデル113(たとえばデータ処理ユニット111によって実行される)によって決定される。
【0073】
図4は、適合された計算モデル113を用いて、農業植物の植物保護処置計画を決定するための、農業植物の変更後栽培条件に対して計算モデル113を適合させる方法のフローチャートである。ステップS210において、フィールド固有データ、観測病害深刻度、成長段階データ、気象データのうち1つ以上を少なくとも含み、任意選択で土壌水分指標を含む、訓練データが、計算モデル113によって取得され、訓練データは農業植物の変更後栽培条件に関連付けられている。ステップS220において、訓練データに基づき、計算モデル113のパラメータまたは重みが、逆伝搬を用いて、農業植物の変更後栽培条件に対して計算モデル113を適合させるよう調整される。ステップS230において、適合された計算モデル113が、少なくとも農業植物の時間関連病害率を予測することによって、農業植物の植物保護処置計画を決定するために用いられる。
【0074】
本発明の各実施形態は、様々な対象を参照して記述されるということに留意すべきである。とくに、いくつかの実施形態は方法タイプの請求項を参照して記述され、他の実施形態はデバイスタイプの請求項を参照して記述される。しかしながら、当業者は、上記および下記の説明から、他に通知されない限り、1つのタイプの対象に属する特徴の任意の組み合わせに加え、異なる対象に関する特徴間の組み合わせも、本願で開示されたと考えられるということを理解する。しかしながら、すべての特徴は、組み合わされて、特徴の単純な加算を超える相乗効果を提供する。
【0075】
本発明は、図面および上述の説明で詳細に例示され説明されたが、そのような例示および説明は、図示的または例示的なものと考えるべきであり、限定的なものと考えるべきではない。本発明は、開示の実施形態には限定されない。開示の実施形態に対する他の変形が、図面、開示および従属請求項の研究から、特許請求の範囲に記載された発明を実施する際に、当業者によって理解され実現される。
【0076】
特許請求の範囲において、「備える」という用語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲に記載されるいくつかの項目の機能を満たし得る。互いに異なる従属請求項に特定の手段が再度記載されるという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが利益について用いられ得ないということを示さない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものと考えるべきではない。
【国際調査報告】