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特表2023-523720コンバイン用ヘッダ安定化制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】コンバイン用ヘッダ安定化制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20230531BHJP
   A01D 41/02 20060101ALI20230531BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
A01D41/12 C
A01D41/02 K
A01B63/10 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564008
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 US2021015150
(87)【国際公開番号】W WO2021216156
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】16/856,718
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505315742
【氏名又は名称】トプコン ポジショニング システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ペトリシン
【テーマコード(参考)】
2B074
2B304
【Fターム(参考)】
2B074AA05
2B074AB02
2B074AC02
2B074AG02
2B074BA01
2B074BA18
2B074EA03
2B074EB03
2B074EC01
2B074EC03
2B074FA01
2B074FB02
2B304KA11
2B304KA16
2B304LA02
2B304LA13
2B304LB02
2B304MA02
2B304MA06
2B304MB02
2B304MC08
2B304MD04
2B304PB06
2B304QA11
2B304QA22
2B304QA23
2B304QC02
2B304RA27
(57)【要約】
コンバイン用ヘッダを安定化させるシステムと方法を提供する。ヘッダに対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号とヘッダに対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号を、ヘッダに設けた1つまたは複数のセンサから受信する。上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値が決定され、横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値が決定される。1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータに送信して、補正上下方向変位値に基づいてヘッダを上下方向に変位させて上下方向の外乱を補正し、補正横方向傾き変位値に基づいてヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて横方向の傾きの外乱を補正する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバイン用のヘッダに設けられた1つまたは複数のセンサから、前記ヘッダに対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号と前記ヘッダに対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号とを受信することと、
前記上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求めることと、
前記横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求めることと、
1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータに送信して、前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させて前記上下方向の外乱を補正し、前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて前記横方向の傾きの外乱を補正することとを含む、
方法。
【請求項2】
前記上下方向外乱信号は前記ヘッダの上下方向の加速度を示す、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記横方向傾き外乱信号は、前記枢軸ジョイントを中心とした回転方向における前記ヘッダの角速度を示す、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータに送信して、前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させて前記上下方向の外乱を補正し、前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて前記横方向の傾きの外乱を補正することは、
前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させるよう第1アクチュエータセットに命令する第1制御信号を送信することと、
前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを回転方向に変位させるよう第2アクチュエータセットに命令する第2制御信号を送信することとを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求めることは、
前記上下方向外乱信号から求められた前記ヘッダの上下方向の加速度に基づいて前記ヘッダの上下方向位置を算出することと、
前記ヘッダの上下方向高さ誤差を求めることと、
前記上下方向位置と前記上下方向高さ誤差に基づいて前記補正上下方向変位値を求めることとを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記上下方向位置と前記上下方向高さ誤差に基づいて前記補正上下方向変位値を求めることは、
前記上下方向位置と前記上下方向高さ誤差とを加算することで前記補正上下方向変位値を算出することを含む、
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求めることは、
前記横方向傾き外乱信号から求められた前記ヘッダの角加速度に基づいて前記ヘッダの横方向の傾き位置を算出することと、
前記ヘッダの横方向傾き誤差を求めることと、
前記横方向の傾き位置と前記横方向傾き誤差とに基づいて前記補正横方向傾き変位値を求めることとを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記横方向の傾き位置と前記横方向傾き誤差とに基づいて前記補正横方向傾き変位値を求めることは、
前記横方向の傾き位置と前記横方向傾き誤差とを加算して前記補正横方向傾き変位値を算出することを含む、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数のセンサは、慣性測定ユニットを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータプログラム命令を記録した非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラム命令は、プロセッサにより実行されると、
コンバイン用のヘッダに設けられた1つまたは複数のセンサから、前記ヘッダに対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号と前記ヘッダに対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号とを受信することと、
前記上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求めることと、
前記横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求めることと、
1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータに送信して、前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させて前記上下方向の外乱を補正し、前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて前記横方向の傾きの外乱を補正することとを含む動作を、前記プロセッサに実行させる、
ことを特徴とする、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項11】
前記上下方向外乱信号は前記ヘッダの上下方向の加速度を示す、
ことを特徴とする、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
前記横方向傾き外乱信号は、前記枢軸ジョイントを中心とした回転方向における前記ヘッダの角速度を示す、
ことを特徴とする、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータに送信して、前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させて前記上下方向の外乱を補正し、前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて前記横方向の傾きの外乱を補正することは、
前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させるよう第1アクチュエータセットに命令する第1制御信号を送信することと、
前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを回転方向に変位させるよう第2アクチュエータセットに命令する第2制御信号を送信することとを含む、
ことを特徴とする、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求めることは、
前記上下方向外乱信号から求められた前記ヘッダの上下方向の加速度に基づいて前記ヘッダの上下方向位置を算出することと、
前記ヘッダの上下方向高さ誤差を求めることと、
前記上下方向位置と前記上下方向高さ誤差に基づいて前記補正上下方向変位値を求めることとを含む、
ことを特徴とする、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求めることは、
前記横方向傾き外乱信号から求められた前記ヘッダの角加速度に基づいて前記ヘッダの横方向の傾き位置を算出することと、
前記ヘッダの横方向傾き誤差を求めることと、
前記横方向の傾き位置と前記横方向傾き誤差とに基づいて前記補正横方向傾き変位値を求めることとを含む、
ことを特徴とする、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
コンバインのヘッダに設けられた1つまたは複数のセンサと、
1つまたは複数のアクチュエータと、
電子制御ユニットであって、
前記1つまたは複数のセンサから、前記ヘッダに対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号と前記ヘッダに対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号とを受信することと、
前記上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求めることと、
前記横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求めることと、
1つまたは複数の制御信号を前記1つまたは複数のアクチュエータに送信して、前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させて前記上下方向の外乱を補正し、前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて前記横方向の傾きの外乱を補正することとを行うように構成されている、電子制御ユニットとを備える、
システム。
【請求項17】
前記上下方向外乱信号は前記ヘッダの上下方向の加速度を示す、
ことを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記横方向傾き外乱信号は、前記枢軸ジョイントを中心とした回転方向における前記ヘッダの角速度を示す、
ことを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つまたは複数のアクチュエータは、第1アクチュエータセットと第2アクチュエータセットとを含み、
前記1つまたは複数の制御信号を前記1つまたは複数のアクチュエータに送信して、前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させて前記上下方向の外乱を補正し、前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて前記横方向の傾きの外乱を補正することは、
前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させるよう第1アクチュエータセットに命令する第1制御信号を送信することと、
前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを回転方向に変位させるよう第2アクチュエータセットに命令する第2制御信号を送信することとを含む、
ことを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求めることは、
前記上下方向外乱信号から求められた前記ヘッダの上下方向の加速度に基づいて前記ヘッダの上下方向位置を算出することと、
前記ヘッダの上下方向高さ誤差を求めることと、
前記上下方向位置と前記上下方向高さ誤差とに基づいて前記補正上下方向変位値を求めることとを含む、
ことを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求めることは、
前記横方向傾き外乱信号から求められた前記ヘッダの角加速度に基づいて前記ヘッダの横方向の傾き位置を算出することと、
前記ヘッダの横方向傾き誤差を求めることと、
前記横方向の傾き位置と前記横方向傾き誤差とに基づいて前記補正横方向傾き変位値を求めることとを含む、
ことを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記1つまたは複数のセンサは、慣性測定ユニットを含む、
ことを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
車両と、
枢軸ジョイントによって前記車両に回動可能に接続されたヘッダと、
前記ヘッダに設けられた1つまたは複数のセンサと、
前記車両と前記ヘッダとを接続し、前記ヘッダの高さおよび横方向の傾きを制御する1つまたは複数のアクチュエータと、
電子制御ユニットであって、
前記1つまたは複数のセンサから、前記ヘッダに対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号と前記ヘッダに対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号とを受信することと、
前記上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求めることと、
前記横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求めることと、
1つまたは複数の制御信号を前記1つまたは複数のアクチュエータに送信して、前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させて前記上下方向の外乱を補正し、前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて前記横方向の傾きの外乱を補正することとを行うように構成されている、電子制御ユニットとを備える、
農作業機。
【請求項24】
前記上下方向外乱信号は前記ヘッダの上下方向の加速度を示す、
ことを特徴とする、請求項23に記載の農作業機。
【請求項25】
前記横方向傾き外乱信号は、前記枢軸ジョイントを中心とした回転方向における前記ヘッダの角速度を示す、
ことを特徴とする、請求項23に記載の農作業機。
【請求項26】
1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータに送信して、補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させて前記上下方向の外乱を補正し、前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて前記横方向の傾きの外乱を補正することは、
前記補正上下方向変位値に基づいて前記ヘッダを上下方向に変位させるよう第1アクチュエータセットに命令する第1制御信号を送信することと、
前記補正横方向傾き変位値に基づいて前記ヘッダを回転方向に変位させるよう第2アクチュエータセットに命令する第2制御信号を送信することとを含む、
ことを特徴とする、請求項23に記載の農作業機。
【請求項27】
前記上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求めることは、
前記上下方向外乱信号から求められた前記ヘッダの上下方向の加速度に基づいて前記ヘッダの上下方向位置を算出することと、
前記ヘッダの上下方向高さ誤差を求めることと、
前記上下方向位置と前記上下方向高さ誤差とに基づいて補正上下方向変位値を求めることとを含む、
ことを特徴とする、請求項23に記載の農作業機。
【請求項28】
前記上下方向位置と前記上下方向高さ誤差とに基づいて補正上下方向変位値を求めることは、
前記上下方向位置と前記上下方向高さ誤差とを加算することで前記補正上下方向変位値を算出することを含む、
ことを特徴とする、請求項27に記載の農作業機。
【請求項29】
前記横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求めることは、
前記横方向傾き外乱信号から求められた前記ヘッダの角加速度に基づいてヘッダの横方向の傾き位置を算出することと、
前記ヘッダの横方向傾き誤差を求めることと、
前記横方向の傾き位置と前記横方向傾き誤差とに基づいて前記補正横方向傾き変位値を求めることとを含む、
ことを特徴とする、請求項23に記載の農作業機。
【請求項30】
前記横方向の傾き位置と横方向傾き誤差とに基づいて前記補正横方向傾き変位値を求めることは、
前記横方向の傾き位置と前記横方向傾き誤差とを加算して前記補正横方向傾き変位値を算出することを含む、
ことを特徴とする、請求項29に記載の農作業機。
【請求項31】
前記1つまたは複数のセンサは、慣性測定ユニットを含む、
ことを特徴とする、請求項23に記載の農業機械。
【請求項32】
前記農作業機はコンバインである、
ことを特徴とする、請求項23に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年4月23日に出願された米国出願第16/856、718号に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容全体を本明細書に参照により組み込む。
【0002】
本発明は、概して、コンバイン用ヘッダ安定化制御に関し、特に、コンバインのヘッダに設けた慣性測定ユニットを用いてヘッダに対する上下方向および横方向の外乱を補正するためのヘッダ安定化制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
コンバインは、農業分野において農作物を収穫するために一般的に使用されている。ヘッダは通常、作物を刈り取るためにコンバインの前部に設けられる。コンバインが農地において作物を収穫する際、ヘッダが地面から一定のヘッダ高さを保つことが重要である。ヘッダ高さが高すぎると収穫量減少につながる可能性があり、ヘッダ高さが低すぎるとヘッダに損傷を与えることになり得る。このような特定のヘッダ高さを維持することは、農地の地面が凸凹しているため困難である。
【0004】
従来のヘッダ高さ制御システムは、ヘッダから地面までの距離を測定する高さセンサに基づいて、コンバインが農地を移動する際に自動的にヘッダを上下させる。しかし、従来のヘッダ高さ制御システムの多くは、キャリア車両からの、または、タイヤの撓みに基づく、もしくは他のヘッダサスペンション因子に基づくヘッダ位置の影響からの、外乱測定値のような他のいずれの情報も考慮していない。同様に、従来のヘッダ高さ制御システムは、ヘッダに対する横方向の傾きによる外乱を考慮していない。
【発明の概要】
【0005】
1つまたは複数の実施形態において、コンバイン用ヘッダを安定化させるシステムと方法を提供する。ヘッダに対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号とヘッダに対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号を、ヘッダに設けた1つまたは複数のセンサから受信する。上下方向外乱信号に基づいて補正上下方向変位値を求め、横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求める。1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータに送信して、補正上下方向変位値に基づいてヘッダを上下方向に変位させて上下方向の外乱を補正し、補正横方向傾き変位値に基づいてヘッダを枢軸ジョイントを中心にして回転方向に変位させて横方向の傾きの外乱を補正する。
【0006】
一実施形態では、上記上下方向外乱信号はヘッダの上下方向の加速度を示し、横方向傾き外乱信号は上記枢軸ジョイントを中心とした回転方向におけるヘッダの角速度を示す。
【0007】
一実施形態において、第1制御信号を第1アクチュエータセットに送信して補正上下方向変位値に基づいてヘッダを上下方向に変位させ、第2制御信号を第2アクチュエータセットに送信して補正横方向傾き変位値に基づいてヘッダを回転方向に変位させる。
【0008】
一実施形態において、補正上下方向変位値を、上下方向外乱信号から求められたヘッダの加速度に基づいてヘッダの上下方向位置を算出し、ヘッダの上下方向高さ誤差を求め、上下方向位置と上下方向高さ誤差に基づいて補正上下方向変位値を求めることで算出する。例えば、上記上下方向位置と上記上下方向高さ誤差とを加算することで、補正上下方向変位値を算出してもよい。
【0009】
一実施形態において、補正横方向傾き変位値を、横方向傾き外乱信号から求められたヘッダの角速度に基づいてヘッダの横方向の傾き位置を算出し、ヘッダの横方向の傾き誤差を求め、該横方向の傾き位置と該横方向の傾き誤差とに基づいて補正横方向傾き変位値を求めることで算出する。例えば、上記横方向の傾き位置と上記横方向の傾き誤差とを加算することで、補正横方向傾き変位値を算出してもよい。
【0010】
一実施形態において、上記1つまたは複数のセンサは、慣性計測ユニットである。
【0011】
本発明のこれらおよびその他の効果については、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより、当業者にとって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、コンバインの一例を示す図である。
図2図2は、ヘッダ安定化制御システムの上位概略図である。
図3図3は、コンバインのヘッダの安定化方法を示す図である。
図4図4は、補正上下方向変位値を算出する方法を示す図である。
図5図5は、補正横方向傾き変位値を算出する方法を示す図である。
図6図6は、コンピュータの上位概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、1つまたは複数の実施形態によるコンバイン100の一例を示す。コンバイン100は、自走する車両102と、車両102の前端にフィーダハウス106を介して備え付けられたヘッダ104とを備える。ヘッダ104は、枢軸ジョイント108により(フィーダハウス106を介して)車両102に枢動可能に接続されている。一般に、作業時には、コンバイン100が農地を移動するにつれ、ヘッダ104が作物を刈り、収穫する。刈り取られた作物はフィーダハウス106に運ばれ、作業は連続的に行われる。
【0014】
従来、例えば農地の地面の凸凹や、コンバインの方向転換などにより特定のヘッダ高さを維持するのは困難であった。ヘッダ高さとは、ヘッダの一点(例えば、ヘッダの先端)と地面との間の距離を意味する。ヘッダ高さが高すぎると収穫量減少につながる可能性があり、ヘッダ高さが低すぎるとヘッダに損傷を与えることになり得る。
【0015】
本発明の実施形態は、ヘッダ104に対する上下方向の外乱と横方向の傾きの外乱の両方を補正するためのヘッダ安定化制御システムを提供するという効果を奏する。ヘッダ104には1つまたは複数のセンサ112が設けられ、ヘッダ104に対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号と、ヘッダ104に対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号とを含む出力を提供するように構成されている。電子制御ユニット(ECU)114は、1つまたは複数のアクチュエータ110に制御信号を送信して、ヘッダ104を変位させ、上下方向の外乱および横方向の傾きの外乱を補正する。
【0016】
本明細書に記載する実施形態は、コンバインのヘッダを安定化させることに関して説明するが、本発明はそのように限定されないものであることは理解されよう。本発明の実施形態は、任意の種類の車両の任意の種類のブームの安定化に適用することができる。例えば、本発明の実施形態は、散布車のブームの安定化に適用することができる。
【0017】
図2に、1つまたは複数の実施形態によるヘッダ安定化制御システム200の上位概略図を示す。図1に基づいて図2について説明する。ヘッダ安定化制御システム200は、ヘッダ104上に配置された1つまたは複数のセンサ112と通信可能に接続されたECU114と、第1および第2アクチュエータセット110-Aおよび110-B(まとめてアクチュエータ110と呼ぶ)とを備える。ECU114、センサ112、およびアクチュエータ110は、任意の適切な方法(例えば、ケーブルを介した有線、又は無線)で通信可能に接続されていてもよい。ヘッダ104の正面から見たヘッダ安定化制御システム200を図2に概略的に示す。
【0018】
ヘッダ104には1つまたは複数のセンサ112が配置されまたは埋め込まれ、ヘッダ104に対する上下方向の外乱とヘッダ104に対する横方向の傾きの外乱とを検出するように構成されている。ヘッダ104の上下方向の外乱とは、ヘッダ104を上下方向202(すなわち、z方向における上または下)に変位させる外乱のことをいう。ヘッダ104の横方向の傾きの外乱とは、枢軸ジョイント108(つまり、y軸とz軸の両方に垂直な回転軸x(図2に図示せず))を中心とする回転方向204(例えば、時計回り方向または反時計回り方向)にヘッダ104の横方向の傾きを回転させて変位させる外乱のことをいう。このようなヘッダ104に対する上下方向の外乱および横方向の傾きの外乱は、例えば、コンバイン100のタイヤの撓み、ヘッダ上昇回路の油圧コンプライアンスまたは意図的な油圧サスペンション(油圧アキュムレータ)、コンバイン100の機械的な撓み、コンバインアダプタ(コンバイン100とヘッダ104間の機械滴サスペンション)、またはヘッダ104の上下方向の変位または横方向の傾きの変位に影響を与えるその他の外乱など、ヘッダ104を支えるコンバイン100の構成要素の動きを表すものである。このような外乱は、例えば、コンバイン100が凹凸のある地面(例えば、地面の段差)上を走行するときや、コンバイン100が方向転換するときに発生することがある。
【0019】
センサ112は、ヘッダ104に対する上下方向の外乱や横方向の傾きの外乱を検知または定量する任意の適切なセンサであってもよく、例えば、加速度計、ジャイロスコープ、その他のタイプのセンサまたはセンサの組み合わせなどであってもよい。センサ112は、ヘッダ104の長さに沿った任意の適切な位置においてヘッダ104に配置された任意の数のセンサで構成されていてもよい。一実施形態によれば、図2に示すように、センサ112はヘッダ104の中心または中心付近に配置されたひとつのセンサで構成されていてもよい。他の実施形態では、センサ112は、ヘッダ104の両端部に配置された2つのセンサで構成される。いくつかの実施形態では、センサ112は、ECU114に一体化されて、ヘッダ104に埋め込まれてもよい。センサ112は、ヘッダ104に対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号と、ヘッダ104に対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号を出力するように構成されている。
【0020】
一実施形態では、センサ112は、慣性計測ユニット(IMU)である。IMUは、加速度計とジャイロスコープ(および場合によっては地磁気計)で構成される。IMUの加速度計は上下方向の外乱を加速度として定量し、IMUのジャイロスコープは横方向の傾きの外乱を角速度として定量する。これにより、IMUは、上下方向202におけるヘッダ104の加速度を示し、ヘッダ104に対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号と、回転方向204におけるヘッダ104の角速度を示し、ヘッダ104に対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号を出力する。
【0021】
一実施形態において、センサ112は、上下方向外乱信号を出力する個別の加速度計と、横方向傾き外乱信号を出力する個別のジャイロスコープから構成される。一実施形態において、センサ112は、ヘッダ104の両端に配置された2つの加速度計を含み、横方向傾き外乱信号は、2つの加速度計による角加速度の差異に基づいて決定される。一実施形態では、センサ112は、回転方向204におけるヘッダ104の角加速度を表す横方向傾き外乱シングルを出力する角加速度センサを含む。
【0022】
ECU114は、センサ112から上下方向外乱信号と横方向傾き外乱信号を受信する。ECU114は、例えば図6に示すコンピュータ602のような任意の適切な演算装置を用いて実施されてもよい。ECU114は、コンバイン100の任意の適切な場所に配置されていてもよく(例えば、コンバイン100のキャビン内や、ヘッダ104上)、または、センサ112およびアクチュエータ110と無線通信を行うことでコンバイン100から遠隔の場所に配置されていてもよい。ECU114は、補正上下方向変位値を上下方向外乱信号に基づいて求め、補正横方向傾き変位値を横方向傾き外乱信号に基づいて求め、1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータ110に送信して、上記補正上下方向変位値に基づいて上下方向にヘッダ104を変位させて上下方向の外乱を補正し、上記補正横方向傾き変位値に基づいてヘッダ104を回転方向に変位させて横方向の傾きの外乱を補正する。一実施形態では、ECU114は、以下に詳細に説明する図3の方法300のステップを実行する。
【0023】
アクチュエータ110は、ヘッダ104を上下方向に変位させ、ヘッダ104を回転方向に変位させるために、任意の適切な位置に配置された任意の適切な数のアクチュエータにより構成されていてもよい。一実施形態において、図2に示すように、アクチュエータ110は、上下方向202においてヘッダ104を上下方向に変位させるための1つまたは複数の第1アクチュエータセット110-Aと、回転方向204においてヘッダを回転させて変位させる1つまたは複数の第2アクチュエータセット110-Bとを含む。第1アクチュエータセット110-A及び第2アクチュエータセット110-Bは、車両102のシャーシと(ヘッダ104を支持している)フィーダハウス106との間に結合されていてもよい。一例では、第1アクチュエータセット110-Aは、フィーダハウス106の片側または両側に配置されていてもよく、第2アクチュエータセット110-Bは枢軸ジョイント108に比較的近い位置に配置されていてもよい。アクチュエータ110は、伸縮してヘッダ104を変位させる。例えば、第1アクチュエータセット110-Aがそれぞれ伸縮してヘッダ104を上下方向に変位して上下方向の外乱を補正する構成であってもよい。上記構成に加えて、または、上記構成に代替して、第2アクチュエータセット110-Bが伸長または収縮して回転方向204においてヘッダ104を回転させて変位して、横方向の傾きの外乱を補正する構成であってもよい。例えば、図2に示すように、第2アクチュエータセット110-Bが1つのアクチュエータから構成される場合、アクチュエータが伸縮してヘッダ104を反時計回転方向204または時計回転方向204にそれぞれ回転方向に変位させてもよい。第2アクチュエータセット110-Bが、枢軸ジョイント108のそれぞれ反対側に配置されていた第1のアクチュエータと第2のアクチュエータを含む他の例の場合、第1のアクチュエータが伸長(または収縮)し、第2のアクチュエータが収縮(または伸長)して回転方向204においてヘッダ104を回転させて変位する。アクチュエータ110は、ヘッダ104の動きを制御するための任意の適切な装置であってもよい。例えば、アクチュエータ110は、電流、油圧、空気圧等に基づいたものであってもよい。例示的なアクチュエータ110としては、リニア油圧シリンダおよびリニア電気モータが挙げられる。
【0024】
図3に、1つまたは複数の実施形態によるコンバインのヘッダの安定化方法300を示す。図3を、図1および図2を参照して説明する。方法300は、例えば図6に示すコンピュータ602などの任意の適切な演算装置にて実行されてもよい。一実施形態において、方法300は、図1および図2に示すECU114により実行される。
【0025】
ステップ302において、ヘッダ104に対する上下方向の外乱を示す上下方向外乱信号と、ヘッダ104に対する横方向の傾きの外乱を示す横方向傾き外乱信号を、コンバイン100のヘッダ104に配置された1つまたは複数のセンサ112から受信する。一実施形態によれば、上下方向外乱信号は、上下方向202におけるヘッダ104の上下方向の加速度を示し、横方向傾き外乱信号は、回転方向204におけるヘッダ104の角速度を示す。一実施形態によれば、上下方向外乱信号と横方向傾き外乱信号は、それぞれ加速度と角速度に比例する電圧信号である。
【0026】
ステップ304において、補正上下方向変位値は、上下方向外乱信号に基づいて求められる。一実施形態において、補正上下方向変位値を図4の方法400により求める構成であってもよい。
【0027】
ステップ306において横方向傾き外乱信号に基づいて補正横方向傾き変位値を求める。一実施形態において、補正横方向傾き変位値を図5の方法500により求める構成であってもよい。
【0028】
ステップ308において、1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数のアクチュエータ110に送信し、補正上下方向変位値に基づいてヘッダ104を上下方向に変位させて上下方向の外乱を補正し、および/または補正横方向傾き変位値に基づいて枢軸ジョイントを中心にヘッダ104を回転方向に変位させてヘッダ104に対する横方向の傾きの外乱を補正する。一実施形態において、第1制御信号を第1アクチュエータセット110-Aに送信してヘッダ104を上下方向に変位させ、第2制御信号を第2アクチュエータセット110-Bに送信してヘッダ104を回転方向に変位させる。
【0029】
図4に、1以上の実施形態による、補正上下方向変位値を求める方法400を示す。図4は、図1および図2を参照して説明される。方法400は、例えば図6に示すコンピュータ602などの任意の適切な演算装置にて実行されてもよい。一実施形態において、方法400は、図3のステップ304を実行する図1および図2のECU114により実行される。
【0030】
ステップ402において、上下方向外乱信号から求められたヘッダ104の上下方向の加速度に基づいてヘッダ104の上下方向位置を算出する。上下方向外乱信号は、ヘッダ104の上下方向加速度を示し、ヘッダ104の上下方向外乱を示す。ヘッダ104の上下方向の加速度は、ヘッダ104の直線加速度であることが好ましいが、ヘッダ104の上下方向の加速度が角加速度であることも可能である。ヘッダ104の上下方向の位置は、慣性系に対する相対位置(距離)である。
【0031】
ヘッダ104の上下方向の位置は、上下方向の加速度のダイナミックな応答を機械系の応答と一致させる操作を行い、その結果を測定することで、ヘッダ104の上下方向の加速度から推定する。その結果得られた信号は、キャリア車両(コンバインなど)からの上下方向の外乱や支持サスペンションによる運動、の結果としての上下方向の位置変化の影響を忠実に推定する。
【0032】
ステップ404において、ヘッダの上下方向高さ誤差を測定する。ヘッダの上下方向高さ誤差は、ヘッダ104の地表からの高さを表す。ヘッダ104のヘッダ高さは、例えば、ヘッダ104に設けられた超音波トランスデューサなどの1つまたは複数の距離センサ(図示せず)を用いて測定されてもよい。上下方向高さ誤差は、距離センサで測定したヘッダ高さの平均値として算出してもよい。
【0033】
ステップ406において、ヘッダ104の上下方向位置と上下方向高さ誤差に基づいて補正上下方向変位値を算出する。一実施形態において、補正上下方向変位値は、上下方向位置と上下方向高さ誤差とを加算することで算出される。上下方向位置は基準の慣性系に関し、上下方向高さ誤差は地面からの絶対位置であるので、補正上下方向変位値は、既知の慣性系を考慮しつつ上下方向位置と上下方向高さ誤差とを加算することで算出される。
【0034】
図5に、1つまたは複数の実施形態による、補正横方向傾き変位値を算出する方法500を示す。図1および図2を参照して図5を説明する。方法500は、例えば図6に示すコンピュータ602などの任意の適切な演算装置にて実行されてもよい。一実施形態において、方法500は、図3のステップ306を実行する図1および図2のECU114により実行される。
【0035】
ステップ502において、ヘッダ104の横方向の傾き位置は、横方向傾き外乱信号から算出された、枢軸ジョイントを中心にしたヘッダ104の角加速度に基づいて算出される。横方向傾き外乱信号は、枢軸ジョイントを中心にしたヘッダ104の角速度を表し、ヘッダ104に対する横方向の傾きの外乱を示す。ヘッダ104の角加速度は、ヘッダ104の角速度の微分値として算出されてもよい。
【0036】
ヘッダ104の横方向の傾き位置は、信号のダイナミックな応答を機械系の応答に一致させるように操作し、その結果を測定することで、ヘッダ104の角加速度から推定される。その結果得られた信号は、キャリア車両(コンバインなど)からの横方向の傾きの外乱や支持サスペンションによる運動、の結果としての横方向の傾きの位置変化の影響を忠実に推定する。
【0037】
ステップ504において、ヘッダの横方向の傾き誤差を測定する。横方向の傾き誤差は、ヘッダ104の両端で求めたヘッダ高さの差分として算出される。ヘッダ104の両端のヘッダ高さは、例えば、ヘッダ104の両端に設けられた超音波トランスデューサなどの複数の距離センサ(図示せず)を用いて測定されてもよい。横方向の傾き誤差は、ヘッダ104の左端におけるヘッダ高さとヘッダ104の右端におけるヘッダ高さとの差として算出されてもよく、その場合、左端と右端のヘッダ高さが等しいとき、横方向の傾き誤差はゼロとなる。一実施形態において、ヘッダ104の横方向の傾き誤差は、「Roll control system and method for a suspended boom」をタイトルとし、その開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6、834、223号に記載のように算出される。
【0038】
ステップ506において、補正横方向傾き変位値は、ヘッダ104の横方向の傾き位置と横方向の傾き誤差に基づいて求められる。一実施形態において、補正横方向傾き変位値は、横方向の傾き位置と横方向の傾き誤差とを加算することで算出される。横方向の傾き位置は地面との距離に基づき、横方向の傾き誤差は慣性系に関するので、補正横方向傾き変位値は、既知の慣性系を考慮しつつ横方向の傾き位置と横方向の傾き誤差とを加算することで算出される。
【0039】
図4の方法400および図5の方法500に対して追加の信号処理ステップを適用することが可能なことは理解されよう。例えば、補正上下方向変位値と補正横方向傾き変位値をデッドバンド閾値と比較することで方法400および方法500にてデッドバンド解除ステップを実行し、デッドバンド閾値を満足しない場合にでもヘッダ104の上下方向の変位と横方向の傾きの変位に対して修正を行わないようにする構成としてもよい。他の例では、方法400および方法500において、フィルタリングステップを実行し、信号に対してフィルタリングを行ってノイズを低減してもよい。例えば、対象の信号が所定の周波数または速度を超えている場合に、1つまたは複数のセンサからの信号に対してハイパスフィルタまたはバンドバスフィルタを適用する構成としてもよい。他の例では、方法500において、速度の加速度への変換は、角速度の微分値を計算して角加速度を算出するステップと、例えば、ヘッダダイナミクス、スケーリング、ポラライジングなどに合わせて位相変移させるなどの追加の信号処理ステップを提供するステップとを含んでもよい。追加の信号処理ステップも提供してもよい。
【0040】
本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、デジタル回路を用いて、または公知のコンピュータプロセッサ、メモリユニット、記憶装置、コンピュータソフトウェアや他の構成要素を用いる1つまたは複数のコンピュータを用いて実現されてもよい。典型的には、コンピュータは、指令を実行するためのプロセッサと、指令およびデータを記憶するための1つまたは複数のメモリとを備えた構成であってもよい。また、コンピュータは、1つまたは複数の磁気ディスク、内部ハードディスクおよびリムーバブルディスク、光磁気ディスク、光ディスクなどの、1つまたは複数の大容量記憶装置を備えている構成であってもよく、1つまたは複数の大容量記憶装置に接続している構成であってもよい。
【0041】
本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、プログラマブルプロセッサに実行されるように、情報担体(例えば、非一時的機械可読記憶装置)において有形具現化されたコンピュータプログラム製品を用いて実施されてもよく、本明細書に記載の方法およびワークフローにおける各ステップ(図3図5のステップまたは機能のうちの1つまたは複数を含む)は、そのようなプロセッサによって実行できる1つまたは複数のコンピュータプログラムを用いて実施されてもよい。コンピュータプログラムは、任意の動作を行ったり、任意の結果を得たりするためにコンピュータにおいて直接的または間接的に使用することができる1組のコンピュータプログラム指令である。コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語やインタープリタ型言語などの任意の方式のプログラミング言語で記載でき、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、構成要素、サブルーチンや任意の演算環境での利用に適した他のユニットとしての方式などの任意の方式で展開できる。
【0042】
本明細書に記載のシステム、装置、および方法を実施するために使用できるコンピュータ602の一例の上位概略ブロック図を図6に示す。図1および図2に示すECU114を含め、本明細書に記載のシステムおよび装置のいずれか、または全ては、コンピュータ602などの1つまたは複数のコンピュータを用いて実現してもよい。コンピュータ602は、データ記憶装置612とメモリ610に操作可能に接続されたプロセッサ604を備えている。プロセッサ604は、コンピュータ602の動作全般を、該動作を定義するコンピュータプログラム命令を実行することにより、制御する。該コンピュータプログラム命令は、データ記憶装置612または他のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存されたものであってもよく、該コンピュータプログラム命令の実行が必要な際にメモリ610にロードされてもよい。したがって、図3ないし図5に記載の方法やワークフローにおけるステップ、または機能は、メモリ610および/またはデータ記憶装置612に保存されているコンピュータプログラム命令により定義され、該コンピュータプログラム命令を実行するプロセッサ604により制御されるものであってもよい。例えば、コンピュータプログラム命令は、図3ないし図5に記載の方法やワークフローにおけるステップまたは機能を実行するように当業者によってプログラムされたコンピュータ実行可能コードとして実施可能である。したがって、コンピュータプログラム指示を実行することにより、プロセッサ604は、図3ないし図5の方法やワークフローにおけるステップ、または機能を実行する。また、コンピュータ604は、ネットワークを介して他の装置と通信するための1つまたは複数のネットワークインターフェース606を備えている構成であってもよい。また、コンピュータ602は、コンピュータ602とのユーザインタラクションを可能にする1つまたは複数の入出力デバイス608(例えば、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、ボタン等)を備えた構成であってもよい。
【0043】
プロセッサ604は、汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサとの両方を含んでいてもよく、コンピュータ602の唯一のプロセッサであっても、複数のプロセッサの1つであってもよい。プロセッサ604は、例えば、1つまたは複数の中央処理装置(CPU)を備えていてもよい。プロセッサ604、データ記憶装置612および/またはメモリ610は、1つもしくは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つもしくは複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を含むか、これらによって補完されるか、またはこれらに内蔵されてもよい。
【0044】
データ記憶装置612およびメモリ610は、それぞれ、有形の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を備えている。データ記憶装置612およびメモリ610はそれぞれ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダブルデータレート同期型ダイナミックランダムアクセスメモリ(DDR RAM)、または他のランダムアクセスの固体メモリ装置などの高速ランダムアクセスメモリを含んでいてもよく、内蔵ハードディスク、リムーバブルディスクなどの1つまたは複数の磁気ディスク記憶装置、光磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリ装置、消却・プログラム可能型読取専用メモリ(EPROM)、電気的消却・プログラム可能型読取専用メモリ(EEPROM)などの半導体メモリ装置、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク読取専用メモリ(DVD-ROM)ディスクなどの不揮発性メモリ、またはその他の不揮発性固体記憶装置を含んでいてもよい。
【0045】
入力/出力装置608としては、プリンタ、スキャナ、表示画面などの周辺機器を備えていてもよい。例えば、入力/出力装置608は、ユーザに情報を表示する陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)モニタ、およびそれによりユーザがコンピュータ602に入力を行うことができるキーボードやマウスやトラックボールなどのポインティングディバイスと、を備えていてもよい。
【0046】
実際のコンピュータまたはコンピュータシステムの実施は、別の構造を有してもよく、別の構成要素を備えてもよく、図6は例示を目的としてそのようなコンピュータの構成要素のうち、いくつかの構成要素を上位表示したものであることを理解するであろう。
【0047】
上記の詳細な説明は、あらゆる点で、説明と例示のためのものであり、本発明を限定するものではなく、また、本明細書に開示されている本発明の範囲は、詳細な説明から判断されるべきものではなく、特許法により許容される最も広い範囲に従って解釈される請求項の範囲から判断されるべきものである。本明細書に記載かつ示された実施形態は、本発明の原理を例示するものにすぎず、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者が種々の変更を実施し得ることを理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、様々な他の特徴の組み合わせを実施することが可能であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】