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特表2023-523739音声出力装置、音像調整方法及び音量調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】音声出力装置、音像調整方法及び音量調整方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20230531BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
H04S7/00 310
H04R1/00 317
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564494
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-10-22
(86)【国際出願番号】 CN2020088524
(87)【国際公開番号】W WO2021217670
(87)【国際公開日】2021-11-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514156013
【氏名又は名称】深▲セン▼市韶音科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN SHOKZ CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Floors 1-4,Factory Building 26,Shancheng Industrial Park,Shiyan Street,Bao’an District,Shenzhen,Guangdong 518108,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】付 峻江
(72)【発明者】
【氏名】張 磊
(72)【発明者】
【氏名】廖 風云
(72)【発明者】
【氏名】齊 心
【テーマコード(参考)】
5D017
5D162
【Fターム(参考)】
5D017AB11
5D162CA06
5D162CA21
5D162EG02
(57)【要約】
本願は、音声出力装置及び音像調整方法、並びに音声出力装置及び音量調整方法を提供する。本願に係る音像調整方法は、前記第1の音波と前記第2の音波との音量差を取得するステップと、前記第1の音波と前記第2の音波との発音時間差を調整するステップとを含む。本願に係る音量調整方法は、前記第1の音波と前記第2の音波との音量差を取得するステップと、前記第1の励振と前記第2の励振との振幅差を調整するステップとを含む。本願に係る音声出力装置及び音像調整方法は、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による、ユーザが感知する音像のオフセットを補正することができる。本願に係る音声出力装置及び音量調整方法は、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による第1のスピーカーと第2のスピーカーとの間の音量差を補正することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作時に目標音声情報に基づいて第1の電気信号及び第2の電気信号を生成する信号処理回路と、
前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第1の電気信号を受信し、かつ前記第1の電気信号を第1の音波に変換する第1のスピーカーと、
前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第2の電気信号を受信し、かつ前記第2の電気信号を第2の音波に変換する第2のスピーカーとを含み、
音声出力装置は、前記目標音声情報を前記第1の音波に変換するのに第1の時間長を必要とし、前記目標音声情報を前記第2の音波に変換するのに第2の時間長を必要とし、
前記第1の時間長は、前記第2の時間長よりも1つの時間差だけ短いことを特徴とする、音声出力装置。
【請求項2】
同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、前記第1のスピーカーから出力された音波の音量は、前記第2のスピーカーから出力された音波の音量よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、前記第1の音波の音量と前記第2の音波の音量との差は、3dB以下であることを特徴とする、請求項2に記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記第1のスピーカーは、第1の機械的構造を励振することにより前記第1の音波を発生させ、
前記第2のスピーカーは、第2の機械的構造を励振することにより第2の音波を発生させ、
前記第1の機械的構造の質量が前記第2の機械的構造の質量よりも大きいため、同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、前記第1のスピーカーから出力された音波の音量は、前記第2のスピーカーから出力された音波の音量よりも小さいことを特徴とする、請求項2に記載の音声出力装置。
【請求項5】
前記第1のスピーカーは、第1の骨伝導スピーカー及び第1の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含み、
前記第2のスピーカーは、第2の骨伝導スピーカー及び第2の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項2に記載の音声出力装置。
【請求項6】
前記時間差は、前記音声出力装置により前記目標音声情報を前記第1の電気信号と前記第2の電気信号に変換する過程において発生することを特徴とする、請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項7】
前記時間差は、前記第1のスピーカーが前記第1の電気信号を前記第1の音波に変換し、かつ前記第2のスピーカーが前記第2の電気信号を第2の音波に変換する過程において発生することを特徴とする、請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項8】
前記時間差は、3ms以下であることを特徴とする、請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項9】
動作時に目標音声情報に基づいて第1の電気信号及び第2の電気信号を生成する信号処理回路と、
前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第1の電気信号を受信し、かつ前記第1の電気信号を第1の励振に変換して第1の機械的構造を励振することにより第1の音波を発生させる第1のスピーカーと、
前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第2の電気信号を受信し、かつ前記第2の電気信号を第2の励振に変換して第2の機械的構造を励振することにより第2の音波を発生させる第2のスピーカーとを含み、
前記第1の音波の音量は、前記第2の音波の音量と同じであり、
同じ励振下で、前記第1の機械的構造が発生する音量は、第2の機械的構造が発生する音量よりも小さいことを特徴とする、音声出力装置。
【請求項10】
前記第1の機械的構造の質量が前記第2の機械的構造の質量よりも大きいため、同じ励振下で、前記第1の機械的構造が発生する音量は、第2の機械的構造が発生する音量よりも小さいことを特徴とする、請求項9に記載の音声出力装置。
【請求項11】
前記第1のスピーカーは、第1の骨伝導スピーカー及び第1の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含み、
前記第2のスピーカーは、第2の骨伝導スピーカー及び第2の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項10に記載の音声出力装置。
【請求項12】
前記第1のスピーカーは、前記第1の励振を発生させる第1の電磁励振装置をさらに含み、前記第1の励振は、前記第1の機械的構造を励振して振動させることにより前記第1の音波を発生させ、
前記第2のスピーカーは、前記第2の励振を発生させる第2の電磁励振装置をさらに含み、前記第2の励振は、前記第2の機械的構造を励振して振動させることにより前記第2の音波を発生させることを特徴とする、請求項10に記載の音声出力装置。
【請求項13】
前記第1の電磁励振装置は、第1のコイルを含み、
前記第2の電磁励振装置は、第2のコイルを含み、
前記第1のコイルの巻線の直径は、前記第2のコイルの巻線の直径よりも大きいことを特徴とする、請求項12に記載の音声出力装置。
【請求項14】
前記第1の電磁励振装置は、第1のコイルを含み、
前記第2の電磁励振装置は、第2のコイルを含み、
前記第1のコイルの抵抗率は、前記第2のコイルの抵抗率よりも小さいことを特徴とする、請求項12に記載の音声出力装置。
【請求項15】
同じ入力電流で、前記第1の電磁励振装置が発生する前記第1の励振は、前記第2の電磁励振装置が発生する第2の励振よりも大きいことを特徴とする、請求項12に記載の音声出力装置。
【請求項16】
前記第1のスピーカーは、第1の抵抗を含み、
前記第2のスピーカーは、第2の抵抗を含み、
前記第1の抵抗は、前記第2の抵抗よりも小さいことを特徴とする、請求項12に記載の音声出力装置。
【請求項17】
前記第1のスピーカー及び前記信号処理回路に接続される電力増幅回路をさらに含み、
前記電力増幅回路は、前記第1の電気信号を増幅し、
前記第1のスピーカーは、増幅後の前記第1の電気信号を受信することを特徴とする、請求項12に記載の音声出力装置。
【請求項18】
前記第2のスピーカー及び前記信号処理回路に接続される電力減衰回路をさらに含み、
前記電力減衰回路は、前記第2の電気信号を減衰させ、
前記第2のスピーカーは、減衰後の前記第2の電気信号を受信することを特徴とする、請求項12に記載の音声出力装置。
【請求項19】
請求項1~8のいずれか1項に記載の音声出力装置の第1のスピーカー及び第2のスピーカーの音像を調整するように構成され、
前記第1の音波と前記第2の音波との音量差を取得するステップと、
前記時間差を調整するステップとを含むことを特徴とする、音像調整方法。
【請求項20】
前記第1の音波と前記第2の音波との音量差は、3dB以下であることを特徴とする、請求項19に記載の音像調整方法。
【請求項21】
前記第1の音波と前記第2の音波との時間差を調整するステップは、
前記第1の音波と前記第2の音波との位相差を調整するステップを含むことを特徴とする、請求項19に記載の音像調整方法。
【請求項22】
請求項9~18のいずれか1項に記載の音声出力装置の第1のスピーカー及び第2のスピーカーの音量を調整するように構成され、
前記第1の音波と前記第2の音波との音量差を取得するステップと、
前記第1の励振と前記第2の励振との振幅差を調整するステップとを含むことを特徴とする、音量調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、音響の分野に関し、特に音声出力装置、音像調整方法及び音量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨伝導イヤホンが動作するときに、骨伝導スピーカーの振動振幅とその発生する音量とは、正の相関がある。骨伝導スピーカーのハウジングの質量は、その振動振幅に明らかな影響を与え、さらにスピーカーが発生する音量に影響を与える。骨伝導イヤホンの製品設計において、一方側の骨伝導スピーカーに、追加の機能モジュール、例えば、ヘッドセットマイク(延伸ロッドを増設したマイク)、ボタンなどを配置する必要がある場合がある。骨伝導スピーカーに配置されたボタンは、骨伝導スピーカーの質量分布を変化させることにより、スピーカーが発生する音量に影響を与える。それとともに、ヘッドセットマイク又はボタンなどの機能モジュールを一方側のみに配置する必要があり、他方側に配置しないため、両側のスピーカーの音量の大きさが一致せず(一方の耳に当てるスピーカーの音量が大きいのに対し、他方の耳に当てるスピーカーの音量が小さい)、音像のオフセットを引き起こす。左右両側のスピーカーの音量差が大きい場合、長期間の使用によりユーザの聴力に損傷を与える可能性がある。したがって、音像を調整することにより、音像を中央寄せするか、及び/又はイヤホンの両側のスピーカーの音量の大きさを調整することにより、両側のスピーカーの音量を一致させる必要がある。
【発明の概要】
【0003】
以下、本願のいくつかの態様に関する基本的な理解を提供するために、本願の簡潔な概要を提供する。該部分は、本願の鍵となる部分又は重要な部分を決定することを意図するものではなく、本願の範囲を限定することを意図するものでもないことを理解されたい。その唯一の目的は、本願におけるいくつかの概念を簡単に説明することである。より多くの詳細は、本願の他の部分において詳細に説明される。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、骨伝導イヤホンについて、一方側の骨伝導スピーカーに取り付けられた機能モジュールは、該骨伝導スピーカーのハウジングの質量を増加させるため、該側のスピーカーの音量が低下し、左右の骨伝導イヤホンの音量が異なることになる。左右両側のイヤホンの音量差が大きい場合、イヤホンの音像に明らかなオフセットが生じることになり、長期間使用すると、ひいては聴力に損傷を与えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
骨伝導イヤホンの両側のスピーカーの質量不均一による音量差及び音像のオフセットの技術的問題を解決するために、本願において開示される音声出力装置は、動作時に目標音声情報に基づいて第1の電気信号及び第2の電気信号を生成する信号処理回路と、前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第1の電気信号を受信し、かつ前記第1の電気信号を第1の音波に変換する第1のスピーカーと、前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第2の電気信号を受信し、かつ前記第2の電気信号を第2の音波に変換する第2のスピーカーとを含み、前記音声出力装置は、前記目標音声情報を前記第1の音波に変換するのに第1の時間長を必要とし、前記目標音声情報を前記第2の音波に変換するのに第2の時間長を必要とし、前記第1の時間長は、前記第2の時間長よりも1つの時間差だけ短い。
【0006】
いくつかの実施例において、同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、前記第1のスピーカーから出力された音波の音量は、前記第2のスピーカーから出力された音波の音量よりも小さい。
【0007】
いくつかの実施例において、同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、前記第1の音波の音量と前記第2の音波の音量との差は、3dB以下である。
【0008】
いくつかの実施例において、前記第1のスピーカーは、第1の機械的構造を励振することにより前記第1の音波を発生させ、前記第2のスピーカーは、第2の機械的構造を励振することにより第2の音波を発生させ、前記第1の機械的構造の質量が前記第2の機械的構造の質量よりも大きいため、同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、前記第1のスピーカーから出力された音波の音量は、前記第2のスピーカーから出力された音波の音量よりも小さい。
【0009】
いくつかの実施例において、前記第1のスピーカーは、第1の骨伝導スピーカー及び第1の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含み、前記第2のスピーカーは、第2の骨伝導スピーカー及び第2の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
いくつかの実施例において、前記時間差は、前記音声出力装置により前記目標音声情報を前記第1の電気信号と前記第2の電気信号に変換する過程において発生する。
【0011】
いくつかの実施例において、前記時間差は、前記第1のスピーカーが前記第1の電気信号を前記第1の音波に変換し、かつ前記第2のスピーカーが前記第2の電気信号を第2の音波に変換する過程において発生する。
【0012】
いくつかの実施例において、前記時間差は、3ms以下である。
【0013】
本願のまた開示する音声出力装置は、動作時に目標音声情報に基づいて第1の電気信号及び第2の電気信号を生成する信号処理回路と、前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第1の電気信号を受信し、かつ前記第1の電気信号を第1の励振に変換して第1の機械的構造を励振することにより第1の音波を発生させる第1のスピーカーと、前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第2の電気信号を受信し、かつ前記第2の電気信号を第2の励振に変換して第2の機械的構造を励振することにより第2の音波を発生させる第2のスピーカーとを含み、前記第1の音波の音量は、前記第2の音波の音量と同じであり、同じ励振下で、前記第1の機械的構造が発生する音量は、第2の機械的構造が発生する音量よりも小さい。
【0014】
いくつかの実施例において、前記第1の機械的構造の質量が前記第2の機械的構造の質量よりも大きいため、同じ励振下で、前記第1の機械的構造が発生する音量は、第2の機械的構造が発生する音量よりも小さい。
【0015】
いくつかの実施例において、前記第1のスピーカーは、第1の骨伝導スピーカー及び第1の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含み、前記第2のスピーカーは、第2の骨伝導スピーカー及び第2の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
いくつかの実施例において、前記第1のスピーカーは、前記第1の励振を発生させる第1の電磁励振装置をさらに含み、前記第1の励振は、前記第1の機械的構造を励振して振動させることにより前記第1の音波を発生させ、前記第2のスピーカーは、前記第2の励振を発生させる第2の電磁励振装置をさらに含み、前記第2の励振は、前記第2の機械的構造を励振して振動させることにより前記第2の音波を発生させる。
【0017】
いくつかの実施例において、前記第1の電磁励振装置は、第1のコイルを含み、前記第2の電磁励振装置は、第2のコイルを含み、前記第1のコイルの巻線の直径は、前記第2のコイルの巻線の直径よりも大きい。
【0018】
いくつかの実施例において、前記第1の電磁励振装置は、第1のコイルを含み、前記第2の電磁励振装置は、第2のコイルを含み、前記第1のコイルの抵抗率は、前記第2のコイルの抵抗率よりも小さい。
【0019】
いくつかの実施例において、同じ入力電流で、前記第1の電磁励振装置が発生する前記第1の励振は、前記第2の電磁励振装置が発生する第2の励振よりも大きい。
【0020】
いくつかの実施例において、前記第1のスピーカーは、第1の抵抗を含み、前記第2のスピーカーは、第2の抵抗を含み、前記第1の抵抗は、前記第2の抵抗よりも小さい。
【0021】
いくつかの実施例において、前記音声出力装置は、前記第1のスピーカー及び前記信号処理回路に接続される電力増幅回路をさらに含み、前記電力増幅回路は、前記第1の電気信号を増幅し、前記第1のスピーカーは、増幅後の前記第1の電気信号を受信する。
【0022】
いくつかの実施例において、前記音声出力装置は、前記第2のスピーカー及び前記信号処理回路に接続される電力減衰回路をさらに含み、前記電力減衰回路は、前記第2の電気信号を減衰させ、前記第2のスピーカーは、減衰後の前記第2の電気信号を受信する。
【0023】
本願はまた、音像調整方法を開示する。前記音像調整方法は、音声出力装置の第1のスピーカー及び第2のスピーカーの音像を調整するように構成され、前記第1の音波と前記第2の音波との音量差を取得するステップと、前記時間差を調整するステップとを含む。
【0024】
いくつかの実施例において、前記第1の音波と前記第2の音波との音量差は、3dB以下である。
【0025】
いくつかの実施例において、前記第1の音波と前記第2の音波との時間差を調整するステップは、前記第1の音波と前記第2の音波との位相差を調整するステップを含む。
【0026】
本願はまた、音量調整方法を開示する。前記音量調整方法は、音声出力装置の第1のスピーカー及び第2のスピーカーの音量を調整するように構成され、前記第1の音波と前記第2の音波との音量差を取得するステップと、前記第1の励振と前記第2の励振との振幅差を調整するステップとを含む。
【発明の効果】
【0027】
以上より、骨伝導イヤホンの両側のスピーカーの質量不均一による音量差及び音像のオフセットの技術的問題に対して、本願に係る音声出力装置及び音像調整方法は、第1の音波と第2の音波との間の時間差を設定することにより、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による、ユーザが感知する音像のオフセットを補正する。
【0028】
本願に係る音声出力装置及び音量調整方法は、異なるコイルの抵抗率、コイルの巻線の直径、磁場強度及び/又は抵抗を設定することにより、左右の耳に当てるスピーカーの機械的構造の質量差による左右スピーカーの間の音量差を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本願において開示される例示的な実施例を詳細に説明する。同じ符号は、図面の複数の図において類似する構造を表す。当業者には理解されるように、これらの実施例は、非限定的で例示的な実施例であり、図面は、例示及び説明のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、他の形態の実施例もまた同様に本願における発明意図を達成することが可能である。図面は、原寸に比例して描かれるものではないことを理解されたい。
【0030】
図1】本願のいくつかの実施例に係る音声出力装置の外観概略図を示す。
図2】本願のいくつかの実施例に係る音声出力装置の概略構成図を示す。
図3】本願のいくつかの実施例に係る電磁励振装置の概略構成図を示す。
図4】本願のいくつかの実施例に係る骨伝導スピーカーの概略構成図を示す。
図5】本願のいくつかの実施例に係る骨伝導スピーカーの振動モデルの概略図を示す。
図6】本願のいくつかの実施例に係る、動作時のハウジングの振動試験結果を示す。
図7】本願のいくつかの実施例に係る可動コイル式スピーカーの概略構成図を示す。
図8】本願の実施例に係る、音量調整方法のフローチャートを示す。
図9】本願の実施例に係る、音像調整方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の説明は、当業者が本願の内容を実施し、使用することを可能にするために示したものであり、本願の特定の用途及びそれらの用途の要件の文脈で提供されている。以下の説明を考慮すると、本開示のこれらの特徴及びその他の特徴、構造の関連した素子の動作及び機能、並びに部材の組み合わせ及び製造の経済性を顕著に向上させることができる。図面を参照しながら、これら全ての図面は、本開示の一部を構成する。しかしながら、明確に理解されるように、図面は、例示及び説明のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。当業者にとって、開示された実施例に対する様々な部分的な変更は、明らかであり、かつ本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に定義された一般的な原理を別の実施例及び用途に適用することができる。したがって、本開示は、示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲と一致する最も広い範囲が付与されるべきである。
【0032】
本願において、骨伝導音波とは、機械的振動が骨格を介して耳内に伝導された音波(骨伝導音声とも呼ばれる)を指し、空気伝導音波とは、機械的振動が気体を介して耳内に伝導された音波(空気伝導音声とも呼ばれる)を指す。
【0033】
本願は、音量調整方法を提供する。上記音量調整方法は、音声出力装置から出力された音波の音量を調整することができる。上記音波は、骨伝導音波及び/又は空気伝導音波を含んでもよい。上記音声出力装置は、イヤホン、補聴器、ヘルメットなどを含んでもよいが、これらに限定されない。上記イヤホンは、有線イヤホン、無線イヤホン、ブルートゥース(登録商標)イヤホンなどを含んでもよいが、これらに限定されない。上記イヤホンは、骨伝導スピーカー及び空気伝導スピーカーを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0034】
図1は、本願の実施例に係る音声出力装置300の外観概略図を示す。図2は、本願の実施例に係る音声出力装置300の概略構成図を示す。図2に示すように、音声出力装置300は、第1のスピーカー310、第2のスピーカー320及び信号処理回路330を含んでもよい。
【0035】
信号処理回路330は、目標音声情報10を受信し、目標音声情報10を処理して、第1の電気信号11及び第2の電気信号12を生成することができる。
【0036】
目標音声情報10は、特定のデータフォーマットを有するビデオファイル、オーディオファイル、又は特定の方法により音声に変換可能なデータ若しくはファイルを含んでもよい。上記目標音声情報10は、音声出力装置300自体の記憶アセンブリからのものであってもよく、音声出力装置300以外の情報生成、記憶又は伝達システムからのものであってもよい。上記目標音声情報10は、電気信号、光信号、磁気信号、機械信号などのうちの1種又は複数種の組み合わせを含んでもよい。上記目標音声情報10は、1つの信号源又は複数の信号源からのものであってもよい。上記複数の信号源は、相関があってもなくてもよい。いくつかの実施例において、信号処理回路330は、複数種の異なる方式で上記目標音声情報10を取得してもよい。上記目標音声情報10の取得は、有線又は無線であってもよく、リアルタイム又は遅延であってもよい。例えば、音声出力装置300は、有線又は無線の方式で上記目標音声情報10を受信してもよく、記憶媒体からデータを直接取得して、上記目標音声信号10を生成してもよい。また例えば、音声出力装置300は、音声収集機能を有するアセンブリを含んでもよく、環境中の音声をピックアップして上記音声の機械的振動を電気信号に変換し、増幅プロセッサを通過した後に特定の要件を満たす電気信号を取得する。いくつかの実施例において、上記有線接続は、金属ケーブル、光ケーブル、又は金属光学ハイブリッドケーブルを含んでもよく、例えば、同軸ケーブル、通信ケーブル、フレキシブルケーブル、スパイラルケーブル、非金属シースケーブル、金属シースケーブル、多芯ケーブル、ツイストペアケーブル、リボンケーブル、シールドケーブル、電気コアケーブル、対ケーブル、二芯平行配線、ツイストペアなどのうちの1種又は複数種の組み合わせである。上述した例は、説明を容易にするためのものに過ぎず、有線接続の媒体は、他のタイプのもの、例えば、他の電気信号又は光信号などの伝送キャリアであってもよい。上記無線接続は、無線通信、自由空間光通信、音声通信、電磁誘導などを含んでもよい。無線通信は、IEEE802.11標準規格、IEEE802.15標準規格(例えば、ブルートゥース(登録商標)技術及びセルラー技術など)、第1世代移動通信技術、第2世代移動通信技術(例えば、FDMA、TDMA、SDMA、CDMA、及びSSMAなど)、汎用パケット無線サービス技術、第3世代移動通信技術(例えば、CDMA2000、WCDMA(登録商標)、TD-SCDMA、及びWiMAXなど)、第4世代移動通信技術(例えば、TD-LTE及びFDD-LTEなど)、衛星通信(例えば、GPS技術など)、近距離無線通信(NFC)及び他のISMバンド(例えば、2.4GHzなど)における他のオペレーティングを含んでもよく、自由空間光通信は、可視光信号、赤外線信号などを含んでもよく、音声通信は、音波、超音波信号などを含んでもよく、電磁誘導は、近距離無線通信技術などを含んでもよい。上述した例は、説明を容易にするためのものに過ぎず、無線接続の媒体は、他のタイプのもの、例えば、Z-wave技術、市民向け又は軍事用の他の有料無線周波数帯などであってもよい。例えば、本願のいくつかの応用シナリオにおいて、音声出力装置300は、ブルートゥース(登録商標)技術により他のデバイスから上記目標音声情報10を取得してもよい。
【0037】
いくつかの実施例において、第1の音波21及び第2の音波22に特定の出力特性(例えば、周波数、位相、振幅など)を有させるために、信号処理回路330は、目標音声情報10を処理することにより、信号処理回路330から出力された第1の電気信号11と第2の電気信号12がそれぞれ特定の周波数成分を含むようにしてもよい。
【0038】
いくつかの実施例において、信号処理回路330に複数のフィルタ/フィルタバンク331が設置されてもよい。上記複数のフィルタ/フィルタバンク331は、受信した電気信号を処理し、かつ異なる周波数を含む電気信号を出力することができる。上記フィルタ/フィルタバンク331は、アナログフィルタ、デジタルフィルタ、パッシブフィルタ、アクティブフィルタなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、信号処理回路330にダイナミックレンジコントローラ332が設置されてもよい。上記ダイナミックレンジコントローラ332は、音声がより柔らかく聞こえるか又はより大きく聞こえるように、入力信号を圧縮し、増幅するように構成されてもよい。いくつかの実施例において、音声出力装置300の音漏れを低減するように、信号処理回路330にアクティブ音漏れ低減回路333が設置されてもよい。いくつかの実施例において、信号処理回路330にフィードバック回路334が設置されてもよい。上記フィードバック回路334は、音場情報を信号処理回路330にフィードバックしてもよい。いくつかの実施例において、信号処理回路330に、受信した電気信号の振幅を調整する電力調整回路335が設置されてもよい。上記電力調整回路335は、第1の電気信号11及び/又は第2の電気信号12の信号振幅を増幅するように、電力増幅回路を含んでもよい。上記電力調整回路335は、第1の電気信号11及び/又は第2の電気信号12の信号振幅を減衰させるように、電力減衰回路をさらに含んでもよい。いくつかの実施例において、信号処理回路330に等化器338が設置されてもよい。上記等化器338は、特定の周波数帯域に応じて、受信した信号に個別の利得又は減衰を与えるように構成されてもよい。いくつかの実施例において、信号処理回路330は、周波数分割回路339を含んでもよい。上記周波数分割回路は、受信した電気信号を高周波信号成分と低周波信号成分に分割してもよい。
【0039】
第1のスピーカー310は、信号処理回路330と電気的に接続される。第1のスピーカー310は、信号処理回路330からの第1の電気信号11を受信し、かつ上記第1の電気信号11を第1の音波21に変換してもよい。第1のスピーカー310は、トランスデューサであってもよい。いくつかの実施例において、第1のスピーカー310は、受信した第1の電気信号11を機械的振動に変換してもよい。さらに、第1の音波21は、上記機械的振動により発生する。例えば、第1のスピーカー310は、第1の機械的構造311及び第1の励振装置312を含んでもよい。いくつかの実施例において、第1のスピーカー310は、骨伝導スピーカーであってもよく、第1のスピーカー310は、空気伝導スピーカー、又は骨伝導スピーカーと空気伝導スピーカーとの組み合わせを含んでもよい。
【0040】
第1の励振装置312は、上記トランスデューサの入力端であってもよい。第1の励振装置312は、信号処理回路330からの第1の電気信号11を受信し、かつ上記第1の電気信号11を第1の励振に変換する。上記第1の励振は、第1の機械的構造311を励振して振動させる。すなわち、第1の励振装置312及び第1の機械的構造311により、第1のスピーカー310は、受信した第1の電気信号11の電気エネルギーを第1の機械的構造311の機械的振動エネルギーに変換する。
【0041】
第1の励振装置412は、上記第1の励振を発生させることにより第1の機械的構造411を励振して振動させる。いくつかの実施例において、第1の励振装置412は、電磁励振装置であってもよい。上記第1の励振は、上記電磁励振装置が発生する磁場力、電磁力及び/又はアンペール力であってもよい。当然のことながら、第1の励振装置412は、さらに、他のタイプの励振装置であってもよく、本願では具体的に限定されない。上記励振装置は、信号処理回路430からの第1の電気信号11を受信し、かつ第1の励振を発生させる。上記励振装置が第1の励振を発生させる方式は、可動コイル式、静電式、圧電式、バランスドアーマチュア式、空気圧式、電磁式などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0042】
例として、図3は、本願の実施例に係る第1の励振装置412の概略構成図を示す。図3に示される第1の励振装置412は、電磁励振装置であってもよい。具体的には、第1の励振装置412は、磁性部材610及びコイル620を含んでもよい。
【0043】
磁性部材610は、磁場を発生させてもよい。例えば、磁性部材610は、磁性を有してもよい。いくつかの実施例において、上記磁性は、一定であってもよい。磁性部材610は、永久磁石を含んでもよく、永久磁石で製造されてもよい。上記永久磁石は、天然磁石であってもよく、人工磁石であってもよい。例として、上記永久磁石は、ネオジム鉄ボロン磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などを含んでもよいが、これらに限定されない。上記永久磁石は、できるだけ高い保磁力、残留磁気及び最大磁気エネルギー積を有することにより、上記永久磁石が安定した磁性を有し、かつ最大の磁気エネルギーを貯蔵できることを保証すべきである。
【0044】
コイル620は、一定の方向に巻いた巻線であってもよい。コイル620は、磁性部材610が発生する磁場内に設置されてもよい。コイル620は、第1の端621及び第2の端622を含んでもよい。コイル620には、電気信号は、電流の形態で第1の端621から流入し、コイル620を流れ、第2の端622から流出してもよい。
【0045】
電磁気学的知識から分かるように、通電されたコイル620は、磁場においてアンペール力を受ける。かつ、上記アンペール力の大きさは、F=BILで決定されてもよい。ここで、Fは、コイル620が受けるアンペール力の大きさを表し、Fの方向は、アンペールの法則に基づいて決定されてもよい。Fは、コイル620が振動するように駆動する。コイル620は、機械的構造630に接続されてもよく、さらに、コイル620は、機械的構造630が振動するように駆動する。例として、機械的構造630は、第1の音波21を発生させる第1の機械的構造311であってもよい。すなわち、Fは、外部励振信号として第1の機械的構造311を励振して振動させてもよい。
【0046】
Bは、磁性部材610が発生する磁場の磁場強度である。磁性部材610が発生する磁場の磁場強度の大きさは、磁性部材610の材料と相関がある。いくつかの実施例において、磁性部材610が発生する磁場の強度Bの大きさは、磁性部材610の保磁力、残留磁気及び最大磁気エネルギー積と正の相関がある。
【0047】
Iは、コイル620に流れる電流の大きさである。Iは、第1の励振装置412が受信する電気信号と相関がある。一般的に、電気信号は、パルス電圧の形態でコイル620に入力される。コイル620の第1の端621と第2の端622との間のパルス電圧の大きさ(すなわち、電磁励振装置600に入力される電気信号)をUで表す。この場合、コイル620を流れる電流Iは、I=U/Rで表されてもよい。Rは、第1の端621と第2の端622との間の抵抗の大きさを表す。また、物理学的知識から分かるように、第1の端621と第2の端622との間の抵抗の大きさは、R=ρL/Sに基づいて計算されてもよい。ここで、ρは、コイル620の巻線の抵抗率を表し、Lは、コイル620の長さを表し、Sは、コイル620の巻線の直径を表す。
【0048】
以上より、第1の励振装置412で発生する励振F(すなわち、コイルが受けるアンペール力)の大きさは、以下のとおりであってもよい。
【数1】
【0049】
さらに図2に示すように、第1の機械的構造311は、上記エネルギー変換装置の出力端であってもよい。第1の機械的構造311は、振動して第1の音波21を発生させる。第1の機械的構造311は、第1の励振の作用で機械的振動が発生してもよく、さらに、第1の音波21は、上記機械的振動に基づいて発生する。いくつかの実施例において、第1の機械的構造311は、励振された後に振動により直接的に音声を発する部材であってもよい。例えば、上記第1のスピーカーが骨伝導スピーカーである場合、第1の機械的構造311は、上記骨伝導スピーカーのハウジングであってもよい。これに対して、第1のスピーカーが可動コイル式空気伝導スピーカーである場合、第1の機械的構造311は、上記可動コイル式空気伝導スピーカーのウールコーン又はペーパーコーンを含んでもよい。
【0050】
第1の音波21は、第1の機械的構造311の振動により発生するため、第1の音波21の特性を分析するために、第1の機械的構造311の振動過程を分析する必要がある。次に、本願では、第1のスピーカー310が骨伝導スピーカーであることを例として第1の機械的構造311の振動過程を分析する。
【0051】
図4は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導スピーカー100の概略構成図を示す。骨伝導スピーカー100は、ハウジング120及び磁気回路130を含んでもよい。
【0052】
磁気回路130は、励振装置として励振fを発生させてもよい。磁気回路130とハウジング120とは、振動伝達シート140によって接続されている。
【0053】
ハウジング120は、耳掛け部110に接続されてもよい。耳掛け部110の先端である点Pは、頭部と良好にフィットする。したがって、先端である点Pは、固定点であると考えられてもよい。骨伝導スピーカー100が動作するとき、ハウジング120は、励振fの作用で振動し、かつ音波を発生させることができる。力の相互作用により、ハウジング120が振動する過程において、磁気回路130も、fとは、大きさが同じで、方向が逆である付勢力(すなわち、図に示される「-f」)を受ける。骨伝導スピーカー100が発生する音波とハウジング120及び磁気回路130との間の関係の分析を容易にするために、ハウジング120及び磁気回路130は、2自由度の振動システムとして簡略化されてもよい。
【0054】
図5は、本願の実施例に係る2自由度の振動システムのモデルを示す。図5に示されるモデルにおいて、質量ブロックmは、ハウジング120を表してもよく、質量ブロックmは、磁気回路130を表してもよく、弾性接続部材kは、振動伝達シート140を表してもよく、弾性接続部材kは、耳掛け部110を表してもよい。弾性接続部材kとkの減衰は、それぞれcとcである。ハウジング120と磁気回路130は、それぞれ力fと力-fの作用を受けて振動する。fは、システムの励振の大きさであり、fの方向は、図5に示すとおりである。ハウジング120、磁気回路130、振動伝達シート140及び耳掛け部110で構成される複合振動システムは、耳掛け部110の先端である点Pに固定される。
【0055】
それぞれハウジング120と磁気回路130を対象として動力学的分析を行って、図5に示される2自由度の振動モデルの以下の動力学方程式を得ることができる。
【数2】
【0056】
フーリエ変換から分かるように、任意の励振fは、いずれも周波数領域で一連の単振動の和として表されてもよいため、
【数3】
であると仮定し、ここでFは、励振の振幅であり、システムの定常応答は、
【数4】
として表されてもよく、ここで
【数5】
は、応答の振幅である。
【0057】
F及びXを式(2)に代入して以下の式(3)を得る。
【数6】
【0058】
以下の機械インピーダンス行列Z(ω)を導入する。
【数7】
【0059】
機械インピーダンス行列Z(ω)を式(3)に代入することにより求められる振動システムの応答の振幅は、以下のとおりである。
【数8】
ここで、
【数9】
である。
【0060】
これにより、以下の振動システムの応答の振幅を得ることができる。
【数10】
【0061】
ハウジング120は、振動して音波を発生させる。したがって、ハウジング120(すなわち、質量ブロックm)を分析する。機械インピーダンス行列Z(ω)を式(4)に代入することにより得られるハウジング120の応答の振幅は、以下のとおりである。
【数11】
【0062】
式(6)から分かるように、強制振動で、ハウジング120の振動振幅Xは、同時に、励振fの周波数(大きさは、1/ωに等しい)、励振fの振幅F、ハウジング120の質量m、磁気回路130の質量m、振動伝達シート140の剛性k及び減衰c、並びに耳掛け部110の剛性k及び減衰cというパラメータの影響を受ける。例えば、他のパラメータを不変に保つ場合、励振fの振幅Fとハウジング120の振動振幅Xとは正比例の関係にある。励振fの振幅Fが大きいほど、ハウジング120の振幅Xが大きくなる。また例えば、他のパラメータを不変に保つ場合、骨伝導スピーカー100のハウジング120の質量mが大きいほど、ハウジング120の振幅Xが小さくなり、磁気回路130の質量mが大きいほど、ハウジング120の振幅Xが大きくなる。したがって、上記パラメータが変化する場合、ハウジング120の振幅Xがそれに応じて変化する。伝送媒体及び伝送距離の差異を考慮しない場合、ハウジング120の振幅Xは、ハウジング120の振動により発生する音波の音量と正の相関がある。振幅Xが大きいほど、音波の音量が大きくなり、振幅Xが小さいほど、音波の音量が小さくなる。
【0063】
図6は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導スピーカー100が動作するときのハウジング120の振動試験結果を示す。振動試験において、振動又は音量の大きさを評価するための物理量は、振動源の速度、変位、音圧レベルなどを含んでもよいが、これらに限定されない。例として、図6に示される振動試験において、振動源の加速度レベル(単位はdBである)を、振動を評価するための物理量とする。図6において、実線は、ハウジング120の質量がmである場合に骨伝導スピーカー100の振動加速度レベルが励振fの周波数に応じて変化する曲線を示し、破線は、ハウジング120の質量mが50%増加した後に骨伝導スピーカー100の振動加速度レベルが励振fの周波数に応じて変化する曲線を示す。
【0064】
図6から分かるように、ハウジング120の振動加速度レベルは、周波数及び質量と相関がある。ハウジングの初期質量mに対して、ハウジング120の質量mが1.5mになるときのハウジングの振動加速度レベルは、160Hz以下の低周波数帯域のみで明らかに低下せず、中周波数帯域と高周波数帯域の両方で約3~4dBだけ低下する。すなわち、中周波数帯域と高周波数帯域で、ハウジング120の質量が0.5倍増加する場合にハウジング120の振動振幅が3~4dBだけ低下する。
【0065】
上記結論は、スピーカーをモデル化モデリングすることにより得られる結果である。人間の耳の可聴範囲内で、低周波とは、概ね20Hz~150Hzの周波数帯域を指してもよく、中周波とは、概ね150Hz~5KHzの周波数帯域を指してもよく、高周波数帯域とは、概ね5KHz~20KHzの周波数帯域を指してもよく、中低周波とは、概ね150Hz~500Hzの周波数帯域を指してもよく、中高周波とは、500Hz~5KHzの周波数帯域を指す。当業者であれば理解されるように、上記周波数帯域の区別は、概ね区間を与える一例としてに過ぎない。上記周波数帯域の定義は、異なる業界、異なる応用シナリオ及び異なる分類基準に応じて変更することができる。例えば、他のいくつかの応用シナリオでは、低周波とは、概ね20Hz~80Hzの周波数帯域を指し、中低周波とは、概ね80Hz~160Hzの周波数帯域を指してもよく、中周波とは、概ね160Hz~1280Hzの周波数帯域を指してもよく、中高周波とは、概ね1280Hz~2560Hzの周波数帯域を指してもよく、高周波数帯域とは、概ね2560Hz~20KHzの周波数帯域を指してもよい。
【0066】
なお、以上の説明では、骨伝導スピーカーが発生する音量とハウジングの質量との間の関係のみを説明したが、本願に係る第1のスピーカー310は、骨伝導スピーカーに限定されない。例えば、空気伝導スピーカーの場合、上記第1のスピーカー310の表現は、依然として上記分析を満たす。
【0067】
例として、図7は、本願の実施例に係る可動コイル式スピーカー500の概略構成図を示す。図7に示される可動コイル式スピーカーは、空気伝導スピーカーであってもよい。具体的には、可動コイル式スピーカー500は、磁気回路アセンブリ520、振動アセンブリ530及び支持補助アセンブリ510を含んでもよい。
【0068】
支持補助アセンブリ510は、振動アセンブリ530及び磁気回路アセンブリ520に対する支持を提供してもよい。支持補助アセンブリ510は、弾性部材511を含んでもよい。振動アセンブリ530は、弾性部材511により支持補助アセンブリ510の上面に固定されてもよい。
【0069】
磁気回路アセンブリ520は、電気信号を励振Fに変換してもよい。励振Fは、振動アセンブリ530に作用してもよい。
【0070】
振動アセンブリ530は、励振Fの作用で振動して音波を発生させてもよい。
【0071】
動力学的分析により、以下を得ることができる。骨伝導スピーカー100と同様に、可動コイル式スピーカー500における振動アセンブリ530の、励振Fの作用での振動振幅は、振動アセンブリ530の等価質量m、励振F、減衰c及び剛性kと相関がある。他のパラメータが変化しない場合、振動アセンブリ530の等価質量が大きいほど、振動振幅が小さくなる。他のパラメータが変化しない場合、励振Fが大きいほど、振動振幅が大きくなる。簡潔にするために、動力学的分析の過程については説明を省略する。
【0072】
以上から分かるように、第1の機械的構造311の振動により発生する第1の音波21の音量の大きさは、第1の電気信号11の周波数及び第1の機械的構造311の質量と相関がある。第1の機械的構造311の質量が大きいほど、第1の音波21の音量が小さくなる。
【0073】
さらに図2に示すように、第2のスピーカー320は、信号処理回路330と電気的に接続される。第2のスピーカー320は、信号処理回路330からの第2の電気信号12を受信し、かつ上記第2の電気信号12を第2の音波22に変換してもよい。第2のスピーカー320は、トランスデューサであってもよい。いくつかの実施例において、第2のスピーカー320は、受信した電気信号を機械的振動に変換してもよい。さらに、第2の音波22は、上記機械的振動により発生する。いくつかの実施例において、第2のスピーカー320は、第2の機械的構造321及び第2の励振装置322を含んでもよい。第2の機械的構造321の構造及び機能は、第1の機械的構造311と同一又は類似のものであってもよく、第2の励振装置322の構造及び機能は、第1の励振装置312と同一又は類似のものであってもよい。簡潔にするために、第2の機械的構造321と第2の励振装置322の構造及び機能については説明を省略する。
【0074】
第1のスピーカー310と同様に、第2のスピーカー320における第2の機械的構造321の振動により発生する第2の音波22の音量の大きさは、第2の電気信号21の周波数及び第2の機械的構造321の質量と相関がある。第2の機械的構造321の質量が大きいほど、第2の音波22の音量が小さくなる。
【0075】
さらに図1に示すように、いくつかの実施例において、第1のスピーカー310の一端には追加デバイス940が設置される。例として、追加デバイス940は、骨伝導イヤホンの一方側のハウジングに設置された機能ボタンを含んでもよい。例として、追加デバイス940は、骨伝導イヤホンの一方側のハウジングに設置されたヘッドセットマイクを含んでもよい。上記ヘッドセットマイクは、ベース、マイクスティック及びマイクなどの部材を含んでもよいが、これらに限定されない。上記ヘッドセットマイクの設置により、上記骨伝導イヤホンの通話品質を向上させることができる。追加デバイス940の質量は、音声出力装置300の質量と比較すると無視することができない。追加デバイス940が音声出力装置300の片側(すなわち、第1のスピーカー310の一方側)に設置されるため、第1のスピーカー310における第1の機械的構造311の質量は、第2のスピーカー310における第2の機械的構造311の質量よりも大きい。例えば、ヘッドセットマイクが設置された一方側の骨伝導スピーカーのハウジングの質量は、ヘッドセットマイクが設置されない他方側の骨伝導スピーカーのハウジングの質量よりも大きい。
【0076】
以上の説明から分かるように、減衰及び剛性などの差異を考慮しないと、同じ電気信号が入力される場合、第1の機械的構造311の質量が第2の機械的構造321の質量よりも大きいことは、第1の機械的構造311の振動振幅が第2の機械的構造321の振動振幅よりも小さいことを引き起こす。伝送媒体及び伝送距離の差異を考慮しない場合、ユーザが聞く、第1のスピーカー310から発する第1の音波の音量は、第2のスピーカー320から発する第2の音波の音量よりも小さい。
【0077】
ユーザが聞く第1の音波の音量と第2の音波の音量との差(以下、音量差と略称)が長期間存在する場合、ユーザの聴力に損傷を与える。(例えば、ユーザの両耳に聞こえる音声の音量差が長期間3dBよりも大きい場合にユーザの両耳に損傷を与える。)また、ユーザが聞く第1の音波と第2の音波との間に音量差がある場合にも、ユーザが感知する音像と実際の音像との間にオフセットが発生することを引き起こす。したがって、第1の音波及び第2の音波の音量を調整することにより、第1の音波の音量をできるだけ第2の音波の音量と一致させ、上記音量差による聴力損傷及び音像のオフセットを回避する必要がある。
【0078】
図8は、本願の実施例に係る、音量調整方法S200のフローチャートを示す。プロセスS200は、音声出力装置300の第1のスピーカー310及び第2のスピーカー320から出力された音声の音量を調整することができる。それとともに、プロセスS200は、ユーザが感知する音声出力装置300の音像を調整することができる。具体的には、プロセスS200は、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差を取得するS210と、上記第1の励振と上記第2の励振との振幅差を調整するS220とを含んでもよい。
【0079】
S210において、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差を取得する。いくつかの実施例において、上記音量差は、3dBよりも大きい。
【0080】
S220において、上記第1の励振と上記第2の励振との振幅差を調整する。以上の説明から分かるように、第1の機械的構造の質量が第2の機械的構造の質量よりも大きい場合、第1の機械的構造の振動振幅が第2の機械的構造の振動振幅よりも小さいことを引き起こし、第1の音波の音量が第2の音波の音量よりも小さいことをさらに引き起こす。したがって、第1の励振の振幅を調整することにより第1の機械的構造の振幅を調整し、第2の励振の振幅を調整することにより第2の機械的構造の振幅を調整し、さらに、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による音量差を補正することができる。
【0081】
理解を容易にするために、本願の以下の説明において、Fで第1の励振の大きさを表し、Fで第2の励振の大きさを表し、Mで第1の機械的構造の質量を表し、Mで第2の機械的構造の質量を表し、Sで第1のコイルの巻線の断面積を表し、Sで第2のコイルの巻線の断面積を表し、ρで第1のコイルの巻線の抵抗率を表し、ρで第2のコイルの巻線の抵抗率を表し、Bで第1の磁性部材の磁場強度を表し、Bで第2の磁性部材の磁場強度を表し、Rで第1のコイルの巻線の抵抗(以下、第1の抵抗と略称)を表し、Rで第2のコイルの巻線の抵抗(以下、第2の抵抗と略称)を表す。
【0082】
式(1)及び式(6)を参照すると、第1の励振F及び/又は第2の励振Fの大きさを調整することにより、第1の機械的構造311の振動振幅Xを第2の機械的構造321の振動振幅Xと一致させ、さらに第1の音波21の音量を第2の音波22の音量と一致させることができる。
【0083】
いくつかの実施例において、第1のコイルの巻線の直径及び/又は第2のコイルの巻線の直径を調整することにより、大きさの異なる第1の励振F及び第2の励振Fを得て、さらに第1の音波21の音量を第2の音波22の音量と一致させることができる。M>Mであるため、第1のコイルの巻線の直径を大きくし及び/又は第2のコイルの巻線の直径を小さくすることにより、S>Sにすることができる。式(1)によれば、第1の励振装置312が発生する第1の励振Fは、第2の励振装置422が発生する第2の励振Fよりも大きい。式(6)と組み合わせて、第1の励振Fが第2の励振Fよりも大きい場合、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波21の電力は、第2の音波22の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波21の音量は、第2の音波22の音量と同じである。このように、第1の機械的構造311と第2の機械的構造321との質量差(M>M)による音量差が補正される。さらに、音量差による音像のオフセットも回避される。
【0084】
さらに、コイルの直径を調整する方式により音量を調整する方法は、出力音量を一致させるとともに、コイルの全体的な寸法を不変に保つ。このように、音声出力装置における各部材の構造及び寸法を不変に保つことができる。
【0085】
例として、イヤホンに要求される最大音量が比較的大きい場合、追加デバイスのある側の骨伝導スピーカーは、導線の線径が追加デバイスのない側のスピーカーの導線の線径よりも太いコイルを使用する。例えば、追加デバイスのある側のスピーカーのコイルに使用される太い導線と追加デバイスのない側のスピーカーのコイルに使用される導線の線径の比は、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、2.0のうちの任意の値以上であるか又は任意の2つの値の間の範囲にある。
【0086】
例として、イヤホンに要求される消費電力が比較的小さい場合、追加デバイスのない側の骨伝導スピーカーは、導線の線径が追加デバイスのある側のスピーカーの導線の線径よりも細いコイルを使用する。例として、追加デバイスのない側のスピーカーのコイルに使用される細い導線と追加デバイスのある側のスピーカーのコイルに使用される導線の線径の比は、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99のうちの任意の値以下であるか又は任意の2つの値の間の範囲にある。
【0087】
また、さらに、第1のコイルの抵抗率及び/又は第2のコイルの抵抗率を調整することにより、大きさの異なる第1の励振F及び第2の励振Fを得て、さらに第1の音波21の音量を第2の音波22の音量と一致させてもよい。M>Mであるため、第1のコイルの抵抗率ρを小さくし及び/又は第2のコイルの抵抗率ρを大きくすることにより、ρ<ρにすることができる。例として、特定の巻線材料を選択することにより、ρ<ρにすることができる。他の独立変数が変化しない場合に、式(1)によれば、第1の励振装置312が発生する第1の励振Fは、第2の励振装置422が発生する第2の励振Fよりも大きい。式(6)と組み合わせて、第1の励振Fが第2の励振Fよりも大きい場合、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波21の電力は、第2の音波22の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波21の音量は、第2の音波22の音量と同じである。このように、第1の機械的構造311と第2の機械的構造321との質量差(M>M)による音量差が補正される。さらに、音量差による音像のオフセットも補正される。
【0088】
また、さらに、第1の磁性部材の磁場強度B及び/又は第2の磁性部材の磁場強度Bを調整することにより、大きさの異なる第1の励振F及び第2の励振Fを得て、さらに第1の音波21の音量を第2の音波22の音量と一致させてもよい。M>Mであるため、第1の磁性部材の磁場強度Bを大きくし及び/又は第2の磁性部材の磁場強度Bを小さくすることにより、B>Bにすることができる。他の独立変数が変化しない場合に、式(1)によれば、第1の励振装置312が発生する第1の励振Fは、第2の励振装置422が発生する第2の励振Fよりも大きい。式(6)と組み合わせて、第1の励振Fが第2の励振Fよりも大きい場合、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波21の電力は、第2の音波22の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波21の音量は、第2の音波22の音量と同じである。このように、第1の機械的構造311と第2の機械的構造321との質量差(M>M)による音量差が補正される。さらに、音量差による音像のオフセットも補正される。
【0089】
また、さらに、第1の磁性部材の寸法を大きくし及び/又は第2の磁性部材の寸法を小さくすることにより、B>Bにすることができる。
【0090】
例えば、磁性の異なる材料で製造された磁性部材を選択することにより、B>Bにすることができる。例えば、第1の磁性部材は、磁性のより強い材料を選択し、第2の磁性部材は、磁性の弱い材料を選択する。いくつかの実施例において、上記第1の磁性部材の残留磁気が上記第2の磁性部材の残留磁気よりも大きいことにより、上記第1の電磁励振装置が発生する磁場強度Bは、上記第2の電磁励振装置が発生する磁場強度Bよりも大きい。いくつかの実施例において、上記第1の磁性部材の保磁力が上記第2の磁性部材の保磁力よりも大きいことにより、上記第1の電磁励振装置が発生する磁場強度Bは、上記第2の電磁励振装置が発生する磁場強度Bよりも大きい。いくつかの実施例において、上記第1の磁性部材の磁気エネルギー積が上記第2の磁性部材の磁気エネルギー積よりも大きいことにより、上記第1の電磁励振装置が発生する磁場強度Bは、上記第2の電磁励振装置が発生する磁場強度Bよりも大きい。
【0091】
いくつかの実施例において、第1の抵抗R及び/又は第2の抵抗Rの大きさを調整することにより、大きさの異なる第1の励振F及び第2の励振Fを得て、さらに第1の音波21の音量を第2の音波22の音量と一致させることができる。本願において、上記第1の抵抗Rとは、第1のスピーカーの全体的な抵抗を指し、第1のスピーカーの内部抵抗及び可能な追加抵抗を含み、第2の抵抗Rとは、第2のスピーカーの全体的な抵抗を指し、第2のスピーカーの内部抵抗及び可能な追加抵抗を含む。M>Mであるため、第1の抵抗Rを小さくし及び/又は第2の抵抗Rを大きくすることにより、R<Rにすることができる。他の独立変数が変化しない場合に、式(1)によれば、第1の励振装置312が発生する第1の励振Fは、第2の励振装置422が発生する第2の励振Fよりも大きい。式(6)と組み合わせて、第1の励振Fが第2の励振Fよりも大きい場合、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波21の電力は、第2の音波22の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波21の音量は、第2の音波22の音量と同じである。このように、第1の機械的構造311と第2の機械的構造321との質量差(M>M)による音量差が補正される。例として、イヤホンは、最大音量及び消費電力に対して特に厳しい要求がない場合、追加デバイス(例えば、ヘッドセットマイク)のない側の骨伝導スピーカーには1つの抵抗が直列接続される。例として、追加デバイスのない側の骨伝導スピーカーに直列接続された抵抗の抵抗値は、1Ω以上である。なお、直列接続された抵抗は、必ずしも個別の抵抗素子ではなく、制御回路に使用される線材(例えば、後掛け導線)の抵抗により同じ効果を達成することもできる。
【0092】
また、さらに、上記第2のコイルの外に抵抗を直列接続することにより第1の抵抗Rを第2の抵抗Rよりも小さくし(すなわち、R<R)、さらに第1の機械的構造311と第2の機械的構造321との質量差による音量差を補正してもよい。さらに、外付け抵抗を直列接続する方法を使用すると、製造及び設計過程において材料を増加させる必要がなく、製造及び設計への影響が小さい。
【0093】
また、さらに、直接的に第1のコイルの抵抗Rを小さくし及び/又は第2のコイルの抵抗Rを大きくすることにより第1の抵抗Rを第2の抵抗Rよりも小さくし(すなわち、R<R)、さらに第1の機械的構造311と第2の機械的構造321との質量差による音量差を補正してもよい。式R=ρL/Sによれば、いくつかの実施例において、第1のコイルの抵抗率を小さくし及び/又は第2のコイルの抵抗率を大きくすることにより、第1のコイルの抵抗を第2のコイルの抵抗よりも小さくしてもよい。いくつかの実施例において、第1のコイルの巻線の長さを大きくし及び/又は第2のコイルの巻線の長さを小さくすることにより、第1のコイルの抵抗を第2のコイルの抵抗よりも小さくしてもよい。いくつかの実施例において、第1のコイルの巻線の直径を小さくし及び/又は第2のコイルの巻線の直径を大きくすることにより、第1のコイルの抵抗を第2のコイルの抵抗よりも小さくしてもよい。なお、第1のコイル及び/又は第2のコイルの抵抗率、巻線の長さ及び/又は巻線の直径を大きくし及び/又は小さくする場合、第1のコイル及び/又は第2のコイルの質量も変化する可能性がある。また、第1のコイル及び第2のコイルの質量も、第1の機械的構造及び第2の機械的構造の振動に影響を与える。したがって、抵抗率、巻線の長さ及び/又は巻線の直径などのパラメータを調整する場合、他のパラメータの影響を考慮することにより、最終的な第1の機械的構造311の振動振幅を第2の機械的構造321の振動振幅と一致させる必要もある。
【0094】
式(6)を参照すると、いくつかの実施例において、さらに、第1の電気信号11及び/又は第2の電気信号12の振幅を調整することにより、振幅の異なる第1の励振F及び第2の励振Fを得て、さらに第1の音波21の音量を第2の音波22の音量と一致させてもよい。
【0095】
例として、M>Mであるため、信号処理回路330に電力増幅回路を設置してもよい。例えば、電力調整回路335は、上記電力増幅回路であってもよい。上記電力増幅回路は、第1の電気信号11を増幅することにより、第1の電気信号11の電力を第2の電気信号12の電力よりも大きくすることができる。このように、電力調整回路335を通らないときに第1の電気信号11と第2の電気信号12の振幅が同じである場合、電力調整回路335を通った後に、第1の電気信号11の振幅は、第2の電気信号12の振幅よりも大きい。第1のスピーカー310は、増幅後の第1の電気信号を受信するため、第1のスピーカー310が発生する第1の励振Fは、第2のスピーカー320が発生する第2の励振Fの大きさよりも大きい(すなわち、F>F)。
【0096】
例として、M>Mであるため、信号処理回路330に電力減衰回路を設置してもよい。例えば、電力調整回路335は、上記電力減衰回路であってもよい。上記電力減衰回路は、第2の電気信号12を減衰させることができる。このように、第1の電気信号11の振幅は、第2の電気信号12の振幅よりも大きい。第2のスピーカー320は、減衰後の第2の電気信号12を受信する。このように、電力調整回路335を通らないときに第1の電気信号11と第2の電気信号12の振幅が同じである場合、電力調整回路335を通った後に、第2のスピーカー320が上記減衰後の第2の電気信号12に基づいて発生する第2の励振Fは、第1の励振Fよりも小さい(すなわち、F>F)。他の独立変数が変化しない場合に、式(6)と組み合わせて、第1の励振Fが第2の励振Fよりも大きいと、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波21の電力は、第2の音波22の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波21の音量は、第2の音波22の音量と同じである。このように、第1の機械的構造311と第2の機械的構造321との質量差(M>M)による音量差が補正される。例として、さらに、骨伝導イヤホンにおけるチップ制御ソフトウェアにより、骨伝導イヤホンの両側の骨伝導スピーカーのオーディオ信号の利得を調整することにより、骨伝導イヤホンの両側の音量を一致させてもよい。
【0097】
また、いくつかの実施例において、さらに、第1の機械的構造311及び/又は第2の機械的構造321の質量を直接的に調整することにより、第1の機械的構造311の質量を第2の機械的構造321の質量と一致させて、質量差による第1の音波21と第2の音波22との音量差を補正してもよい。例えば、ヘッドセットマイク、機能ボタンなどが第1のスピーカー310の一方側に設置されるため、第1の機械的構造311の質量が第2の機械的構造321の質量よりも大きい場合、第2のスピーカー320の一方側に重りを増加させることにより、第2の機械的構造321の質量を、第1の機械的構造311の質量と同じであるまで大きくすることができる。このように、第1の機械的構造311と第2の機械的構造321の質量は、同じであり、最終的に、第1の音波21の音量は、第2の音波22の音量と同じである。
【0098】
なお、上記音量調整の解決手段及び/又は実施例で言及された音量及び電力は、いずれもイヤホンのスピーカーから発する音声の音量及び電力であり、イヤホンの消費電力ではない。上記音量調整の解決手段及び/又は実施例は、孤立したものではない。上記音量調整の解決手段及び/又は実施例は、単独で用いて音声出力装置300の両端の音量を調整してもよい。上記音量調整の解決手段及び/又は実施例は、組み合わせて用いて音声出力装置300の両端の音量を調整してもよい。例えば、質量の調整と励振の調整を同時に行ってもよい。例えば、M>Mである場合、「第2の機械的構造311の質量を大きくする」、「第1の励振を大きくする」、「第1のコイルの直径を大きくする」などの解決手段を組み合わせて同時に用いる方法により、第1のスピーカー310と第2のスピーカー320の音量を一致させてもよい。
【0099】
上記解決手段及び/又は実施例は、実際の製造において良好な技術的効果を達成する。例として、以下、3種のイヤホンサンプルを試験した結果を列挙する。サンプル1において、音量の小さい側の骨伝導スピーカーは、導線の線径のより太いコイルを使用し、他方側は、通常のコイルを使用し、サンプル2において、音量の大きい側の骨伝導スピーカーは、導線の線径のより細いコイルを使用し、他方側は、通常のコイルを使用し、サンプル3において、音量の大きい側の骨伝導スピーカーには、一定の抵抗値を有する抵抗が直列接続される。以上の3種のサンプルは、いずれも、一方側の骨伝導スピーカーに同じ機能モジュールが取り付けられ、他方側に機能モジュールがない。携帯電話を用いてホワイトノイズ信号を再生し、ブルートゥース(登録商標)で試験対象のイヤホンサンプルに接続し、同じ音量での各イヤホンの電池端の総電流を試験する。試験結果を表1に示す。試験過程において、電池端の出力電圧は、ほとんど変化しない(4.0~4.2V)。
【表1】
【0100】
表1における試験結果から分かるように、同じリスニング音量で、追加の機能モジュールを有する3種のイヤホンサンプル(サンプル1、サンプル2、サンプル3)の電池端の総電流は、通常のイヤホンと比較すると、いずれも増大する。3種のサンプルのうち、サンプル2(音量の大きい側のスピーカーは、導線の線径のより細いコイルを使用し、他方側は、通常のコイルを使用する)の総電流が最小であり、サンプル1(音量の小さい側のスピーカーは、導線の線径のより太いコイルを使用し、他方側は、通常のコイルを使用する)の総電流が最大である。サンプル3(音量の大きい側の骨伝導スピーカーには、一定の抵抗値を有する抵抗が直列接続される)は、回路基板に1つの抵抗を直列接続するか、又は他の方式により抵抗の直列接続による効果を達成するだけでよく、製造及び設計過程において材料を増加させる必要がなく、製造及び設計への影響が小さい。
【0101】
また、異なるサンプルの電池使用時間を試験する。同じリスニング音量(85dB)で試験し、携帯電話を用いてホワイトノイズ信号を再生し、ブルートゥース(登録商標)で試験対象のイヤホンサンプルに接続し、異なるイヤホンサンプルに同じ容量の電池を使用し、試験を開始するときに、電池は、いずれも満充電状態にあり、異なるサンプルの実際の使用時間を表2に示す。
【表2】
【0102】
表2における試験結果から分かるように、同じリスニング音量で、3種のサンプルの電池使用時間は、通常のサンプルと比較すると、著しく短くなり、サンプル1の使用時間が最も短く、サンプル3の使用時間がサンプル2よりも僅かに短いが、大差がない。以上の結果は、以前の電池電流の試験結果と一致する。
【0103】
以上の説明から分かるように、ユーザが聞く第1の音波21の音量が、ユーザが聞く第2の音波22の音量よりも小さい場合、イヤホンの設計構造を調整することにより2つのイヤホンの間の音量差を補正することができる。また、上記イヤホンの間の音量差に対して、さらにイヤホンにより形成される音像を調整してもよい。
【0104】
音像とは、音源の音場における発音位置を指し、すなわち、音像は、音声の方位である。ユーザにとって、ユーザの脳は、目標音声情報の発音位置(すなわち、ユーザが感知する音像)が音量のより大きい第2の音波22側である第2のスピーカー320側へ偏ると判定する。これに対して、実際に、第1のスピーカー310と第2のスピーカー320のユーザからの距離は、同じであると考えられ、すなわち、目標音声情報10の実際の音像は、中央にある(すなわち、ユーザの直前又は真後ろにある)。すなわち、ユーザが感知する音像と実際の音像との間にオフセットが発生する。本願は、音像調整方法を提供し、ユーザが感知する音像をできるだけ実際の音像に近づけることができるため、ユーザが感知する音像と実際の音像との間のオフセットを低減する。上記音像調整方法は、本願に係るイヤホンに独立に適用してもよく、上記音量補正の解決手段及び/又は実施例と組み合わせられてもよい。
【0105】
図9は、本願の実施例に係る、音像調整方法S100のフローチャートを示す。プロセスS100は、音声出力装置300の第1のスピーカー310及び第2のスピーカー320から出力された音像を調整することができる。具体的には、プロセスS100は、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差を取得するS110と、上記第1の音波と上記第2の音波との発音時間差を調整するS120とを含んでもよい。
【0106】
「両耳効果」は、人々が両耳間の音量差、時間差、位相差及び音色差により音声の方位を判別する効果である。左右の耳の間に一定の距離があるため、直前及び真後ろからの音声以外に、他の方向からの同一の音声が両耳に到達する音量、時間、位相及び音色が異なることにより、音量差、時間差、位相差及び音色差を引き起こす。例として、音源が右へ偏る場合、音声は、必ず右耳に到達した後に左耳に到達する。音声が一方側へ偏るほど、時間差も大きくなる。例として、音源が右へ偏る場合、音源の右耳からの距離は、左耳からのものよりも近く、右耳に到達する音量は、左耳へのものよりも大きい。音声が一方側へ偏るほど、音量差も大きくなる。例として、音声は、波の形態で伝播し、また音波の空間の異なる位置での位相は異なる。両耳の空間における距離に起因して、音波が両耳に到達する位相に差がある可能性がある。耳の膜内の鼓膜は、音波と共に振動する。この振動の位相差も、ユーザの脳が音源の方位を判別するための要因となる。
【0107】
人々の脳は、「両耳効果」により音源の位置(すなわち、音像)を判定する。
【0108】
音声がまず左耳に聞こえる場合、聴者の脳は、この音声が左側(音声がまず聞こえる側)からのものであることを感知し、すなわち、聴者の脳が感知する音像は、左側へ偏る。逆も同様である。このような現象は、左右の耳の間の「時間差効果」と呼ばれる。
【0109】
左耳に聞こえる音声が右耳よりも大きい場合、聴者の脳は、音声が左側方向からのものであると考え、逆も同様である。このような現象は、左右の耳の間の「音量差効果」と呼ばれる。前述したように、第1の機械的構造の質量と第2の機械的構造の質量との差による音像のオフセットは、本質的に「音量差効果」として理解することもできる。
【0110】
したがって、「時間差」及び/又は「位相差」を用いて、「音量差」による、ユーザが感知する音像のオフセットを調整することができる。
【0111】
S110において、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差を取得する。まず、第1の音波21と第2の音波22との音量差を取得する。上記音量差に基づいて、音量差による音像のオフセットの値を得ることができる。例えば、第1の音波21の音量が第2の音波22の音量よりも小さい場合、ユーザが感知する音像は、中央の位置から第2のスピーカー320の方向にδだけオフセットする。
【0112】
S120において、上記第1の音波と上記第2の音波との発音時間差を調整する。
【0113】
いくつかの実施例において、第1の音波21と第2の音波22との発音時間差を調整することにより、第1の機械的構造311と第2の機械的構造との質量差による、ユーザが感知する音像のオフセットを調整してもよい。
【0114】
第1の音波21の音量が第2の音波22の音量よりも小さいことを例とする。音声出力装置300は、目標音声情報10を第1の音波21に変換するのに第1の時間長tを必要とし、音声出力装置300は、目標音声情報10を第2の音波22に変換するのに第2の時間長tを必要とし、上記第1の時間長tは、上記第2の時間長tよりも短い。このように、目標音声情報10に対して、第1のスピーカー310の発音時間は、第2のスピーカー320の発音時間よりも早められる。いくつかの実施例において、第1のスピーカー310の発音時間は、第2のスピーカー320の発音時間よりも1つの時間差だけ早められる。いくつかの実施例において、上記時間差は、3ms以下である。具体的には、上記時間差は、0.1ms、0.2ms、0.3ms、0.4ms、0.5ms、0.6ms、0.7ms、0.8ms、0.9ms、1.0ms、1.1ms、1.2ms、1.3ms、1.4ms、1.5ms、1.6ms、1.7ms、1.8ms、1.9ms、2.0ms、2.1ms、2.2ms、2.3ms、2.4ms、2.5ms、2.6ms、2.7ms、2.8ms、2.9ms、3.0msという数値のうちの任意の値、又は任意の2つの数値の間の任意の値であってもよい。第1の音波21と第2の音波22は、発音時間以外の情報がいずれも同じであると仮定する。伝送媒体及び伝送距離が同じである場合、ユーザの左耳に聞こえる第1の音波21の時間は、右耳に聞こえる第2の音波22の時間よりも早められる。両耳効果に基づいて、ユーザの脳は、目標音声情報10の音源位置がより早く発音する第1の音波21側であるユーザの左側へ偏ると判定する。このように、第1の音波21の音量が第2の音波22の音量よりも小さいことによる音像の右へのオフセットを同時に考慮すると、最終的に、ユーザが聞く目標音声情報10の音源位置(すなわち、ユーザが感知する音像)は、同様に中間位置に調整される。このように、第1の機械的構造311の質量が第2の機械的構造321の質量よりも大きいことによる音像の右へのオフセットが解消される。
【0115】
いくつかの実施例において、両側のスピーカーのオーディオ信号の時間差(すなわち、オーディオ信号の左右チャネル間の時間差)を制御する方式によりイヤホンの音像の位置を調整してもよい。例えば、両側のスピーカーから出力された音波の時間差を制御する方式によりイヤホンの音像の位置を調整してもよい。例えば、第1のスピーカーの作用と第2のスピーカーの作用により、第1のスピーカーから出力された第1の音波は、第2のスピーカーから出力された第2の音波よりも早められる。いくつかの実施例において、第1の音波は、第2の音波よりも1つの時間差だけ早められる。いくつかの実施例において、上記時間差は、3ms以下である。具体的には、上記時間差は、0.1ms、0.2ms、0.3ms、0.4ms、0.5ms、0.6ms、0.7ms、0.8ms、0.9ms、1.0ms、1.1ms、1.2ms、1.3ms、1.4ms、1.5ms、1.6ms、1.7ms、1.8ms、1.9ms、2.0ms、2.1ms、2.2ms、2.3ms、2.4ms、2.5ms、2.6ms、2.7ms、2.8ms、2.9ms、3.0msという数値のうちの任意の値、又は任意の2つの数値の間の任意の値であってもよい。例えば、上記時間差は、1.0msであってもよく、1.0msよりも僅かに大きい数値であってもよい。
【0116】
いくつかの実施例において、両側のスピーカーに入力されるオーディオ信号の時間差(すなわち、第1の電気信号と第2の電気信号との時間差)を制御する方式によりイヤホンの音像の位置を調整してもよい。例えば、信号処理回路の作用により、第1のスピーカーに入力される第1の電気信号は、第2のスピーカーに入力される第2の電気信号よりも早められる。いくつかの実施例において、第1の電気信号は、第2の電気信号よりも1つの時間差だけ早められる。いくつかの実施例において、上記時間差は、3ms以下である。具体的には、上記時間差は、0.1ms、0.2ms、0.3ms、0.4ms、0.5ms、0.6ms、0.7ms、0.8ms、0.9ms、1.0ms、1.1ms、1.2ms、1.3ms、1.4ms、1.5ms、1.6ms、1.7ms、1.8ms、1.9ms、2.0ms、2.1ms、2.2ms、2.3ms、2.4ms、2.5ms、2.6ms、2.7ms、2.8ms、2.9ms、3.0msという数値のうちの任意の値、又は任意の2つの数値の間の任意の値であってもよい。例えば、上記時間差は、1.0msであってもよく、1.0msよりも僅かに大きい数値であってもよい。
【0117】
また、ユーザが感知する音像のオフセット値δを取得し、さらに、第1の音波21と第2の音波22との位相差を調整することにより、ユーザが感知する音像を調整して、ユーザが感知する音像を中央寄せすることができる。例として、第1の音波21の位相を第2の音波22の位相よりもδwだけ大きくしてこそ、音像を第1の音波21の方向にδだけオフセットさせることができると仮定する。
【0118】
第1の音波21の位相を第2の音波22の位相よりもδwだけ大きくするために、信号処理回路330及び/又は第1のスピーカー310及び/又は第2のスピーカー320に位相遅延回路を設置することができる。
【0119】
例えば、第2のスピーカー320に位相遅延回路を設置することにより、第1の音波21の位相を第2の音波22の位相よりもδwだけ大きくしてもよい。例えば、信号処理回路330は、目標音声情報10を処理することにより、生成した第1の電気信号11と第2の電気信号12の位相を同じにする。第2のスピーカー320に位相遅延回路が設置されてもよい。第2のスピーカー320は、第2の電気信号12の位相をδwだけ遅延させ、かつ位相が同様にδwだけ遅延した第2の音波22を発生させることができる。すなわち、最終的に、第1の音波21の位相は、第2の音波22の位相よりもδwだけ大きい。両耳効果に基づいて、ユーザが感知する音像は、位相のより大きい第1の音波21の方向にオフセットする。このように、第1の機械的構造311の質量mが第2の機械的構造321の質量mよりも大きいことによる音像の第2の音波22の方向へのオフセットを相殺することができる。最終的に、ユーザが感知する音像は、中央にある。
【0120】
例えば、さらに、信号処理回路330に位相遅延回路を設置することにより、第1の音波21の位相を第2の音波22の位相よりもδwだけ大きくしてもよい。例えば、信号処理回路330は、目標音声情報10を処理して第1の電気信号11及び第2の電気信号12を取得することができる。第1の電気信号11の位相は、第2の電気信号12の位相よりもδwだけ大きい。また、δw=δwである。第1のスピーカー310は、第1の電気信号11に対して、第2のスピーカー320は、第2の電気信号12の位相に対して、同じ位相処理を行う(例えば、第1のスピーカー310は、第1の電気信号11の位相を処理せず、第2のスピーカー320は、第2の電気信号12の位相を処理しない)。このように、最終的に第1のスピーカー310が発生する第1の音波21の位相は、第2のスピーカー320が発生する第2の音波22の位相よりもδwだけ大きい。両耳効果に基づいて、ユーザが感知する音像は、位相のより大きい第1の音波21の方向にオフセットする。このように、第1の機械的構造311の質量mが第2の機械的構造321の質量mよりも大きいことによる音像の第2の音波22の方向へのオフセットを相殺することができる。最終的に、ユーザが感知する音像は、中央にある。
【0121】
いくつかの実施例において、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差は、3dB以下である。このように、「時間差」及び/又は「位相差」を用いて、「音量差」による、ユーザが感知する音像のオフセットを調整することにより、一方ではユーザが感知する音像を調整し、他方ではユーザの聴力に影響を与えない。これは、位相差/時間差を調整して音像を中央寄せすることで、ユーザが感知する音像のみを調整し、左右の耳に実際に聞こえる第1の音波と第2の音波の音量を変化させないためである。左右の耳に実際に聞こえる音波の音量差が大きすぎる場合、長期間の使用により聴者の両耳に損傷を与える可能性がある。
【0122】
以上より、本願は、音像調整方法S100、及び音量調整方法S200を提供する。本願に係る音像調整方法S100は、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差を取得するS110と、上記第1の音波と上記第2の音波との発音時間差を調整するS120とを含む。本願に係る音量調整方法S200は、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差を取得するS210と、上記第1の励振と上記第2の励振との振幅差を調整するS220とを含む。本願に係る音像調整方法S100は、第1の音波と第2の音波との間の時間差を設定することにより、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による、ユーザが感知する音像のオフセットを補正する。本願に係る音量調整方法S200は、異なるコイルの抵抗率、コイルの巻線の直径、磁場強度及び/又は抵抗を設定することにより、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による第1のスピーカーと第2のスピーカーとの間の音量差を補正する。
【0123】
以上の説明から分かるように、伝送媒体及び伝送距離の差異を考慮しない場合、スピーカーが発生する音波の音量は、スピーカーにおける機械的構造の振幅と正の相関がある。機械的構造の振幅が大きいほど、音波の音量が大きくなる。また、機械的構造の振幅は、機械的構造が受ける励振と正の相関がある。同じ機械的構造について、機械的構造が受ける励振が大きいほど、機械的構造の振幅が大きくなる。
【0124】
いくつかの実施例において、同じ励振下で、音声出力装置における第1の機械的構造が発生する第1の音波の音量は、第2の機械的構造が発生する第2の音波の音量と異なる。例えば、図1に示される音声出力装置300において、追加デバイス940の設置により、第1の機械的構造311の質量は、第2の機械的構造321の質量よりも大きい(すなわち、M>M)。式(6)を参照すると、同じ励振fで、第1の機械的構造の振動振幅は、第2の機械的構造の振動振幅よりも小さい。伝送媒体及び伝送距離の差異を考慮しない場合、ユーザが感知する第1の音波の音量は、第2の音波の音量よりも小さい。当然のことながら、いくつかの実施例において、音声出力装置の両端の出力音波の音量差を引き起こす原因は、他のものである可能性もあり、例えば、ヘッドセットマイクが設置されない通常のイヤホンは、水の侵入又は他の原因により両端の質量に差が生じ、最終的に、イヤホンの両端から発する音声の音量に差が生じることも引き起こす。理解を容易にするために、以下の説明において、骨伝導スピーカーを例として説明する。
【0125】
実際には、ユーザの使用体験に影響を与えないために、ユーザの両耳に聞こえる音声の音量をできるだけ一致させる必要がある。以上の説明から分かるように、音声出力装置におけるスピーカーが発生する音波の音量は、電気信号に基づいて発生する励振、振動が発生する機械的構造の質量M、振動システムの減衰C及び剛性Kなどと相関がある。
【0126】
例えば、骨伝導スピーカー100を例とすると、式(6)によれば、骨伝導スピーカー100が発生する音波の音量は、同時に、励振fの周波数(大きさは、1/ωに等しい)、励振fの振幅F、ハウジング120の質量m、磁気回路130の質量m、振動伝達シート140の剛性k及び減衰c、並びに耳掛け部110の剛性k及び減衰cというパラメータの影響を受ける。例えば、他のパラメータを不変に保つ場合、励振fの振幅Fとハウジング120の振動振幅Xとは正比例の関係にある。励振fの振幅Fが大きいほど、ハウジング120の振幅Xが大きくなる。また例えば、他のパラメータを不変に保つ場合、骨伝導スピーカー100のハウジング120の質量mが大きいほど、ハウジング120の振幅Xが小さくなる。したがって、上記パラメータが変化する場合、ハウジング120の振幅Xがそれに伴って変化する。伝送媒体及び伝送距離の差異を考慮しない場合、ハウジング120の振幅Xは、ハウジング120の振動により発生する音波の音量と正の相関がある。振幅Xが大きいほど、音波の音量が大きくなり、振幅Xが小さいほど、音波の音量が小さくなる。
【0127】
したがって、合理的に励振Fと機械的構造の質量Mのバランスを取ることができれば、所望の振動振幅Xを得ることができる。音声出力装置の両端の機械的構造の質量に差があっても(例えば、骨伝導イヤホンの片側にヘッドセットマイクが設置される)、音声出力装置の両端から出力される音量を一致させることができる。
【0128】
したがって、本願はまた、音声出力装置を提供する。上記音声出力装置は、イヤホン、補聴器、ヘルメットなどを含んでもよいが、これらに限定されない。上記イヤホンは、有線イヤホン、無線イヤホン、ブルートゥース(登録商標)イヤホンなどを含んでもよいが、これらに限定されない。具体的には、上記音声出力装置は、第1のスピーカー、第2のスピーカー及び信号処理回路を含んでもよい。
【0129】
上記信号処理回路は、目標音声情報を受信して、上記目標音声情報を処理し、かつ第1の電気信号及び第2の電気信号を生成することができる。
【0130】
上記第1のスピーカーは、上記信号処理回路と電気的に接続される。上記第1のスピーカーは、上記信号処理回路からの第1の電気信号を受信し、かつ上記第1の電気信号を第1の音波に変換することができる。いくつかの実施例において、上記第1のスピーカーは、第1の骨伝導スピーカーを含み、上記第1の音波は、第1の骨伝導音波を含む。いくつかの実施例において、上記第1のスピーカーは、受信した第1の電気信号を機械的振動に変換してもよい。さらに、上記第1の音波は、上記機械的振動により発生する。いくつかの実施例において、上記第1のスピーカーは、第1の機械的構造及び第1の励振装置を含んでもよい。上記第1の励振装置は、上記第1の電気信号に基づいて第1の励振を発生させる。上記第1の励振は、外力として、上記第1の機械的構造を励振して振動させ、さらに、第1の機械的構造は、振動して第1の音波を発生させる。
【0131】
上記第2のスピーカーは、上記信号処理回路と電気的に接続される。上記第2のスピーカーは、上記信号処理回路からの第2の電気信号を受信し、かつ上記第2の電気信号を第2の音波に変換することができる。いくつかの実施例において、上記第2のスピーカーは、第2の骨伝導スピーカーを含み、上記第2の音波は、第2の骨伝導音波を含む。いくつかの実施例において、上記第2のスピーカーは、受信した第2の電気信号を機械的振動に変換してもよい。さらに、上記第2の音波は、上記機械的振動により発生する。いくつかの実施例において、上記第2のスピーカーは、第2の機械的構造及び第2の励振装置を含んでもよい。上記第2の励振装置は、上記第2の電気信号に基づいて第2の励振を発生させる。上記第2の励振は、外力として、上記第2の機械的構造を励振して振動させ、さらに、第2の機械的構造は、振動して第2の音波を発生させる。
【0132】
いくつかの実施例において、第1の励振装置及び第2の励振装置は、電磁励振装置であってもよい。第1の励振の大きさ及び第2の励振の大きさは、式(1)により計算して得ることができ、第1の機械的構造及び第2の機械的構造の振動過程は、式(6)で表すことができる。
【0133】
説明を容易にするために、本願の以下の説明において、Fで第1の励振の大きさを表し、Fで第2の励振の大きさを表し、Mで第1の機械的構造の質量を表し、Mで第2の機械的構造の質量を表し、Sで第1のコイルの巻線の断面積を表し、Sで第2のコイルの巻線の断面積を表し、ρで第1のコイルの巻線の抵抗率を表し、ρで第2のコイルの巻線の抵抗率を表し、Bで第1の磁性部材の磁場強度を表し、Bで第2の磁性部材の磁場強度を表し、Rで第1のコイルの巻線の抵抗(以下、第1の抵抗と略称)を表し、Rで第2のコイルの巻線の抵抗(以下、第2の抵抗と略称)を表し、Xで第1の機械的構造の振動振幅を表し、Xで第2の機械的構造の振動振幅を表す。
【0134】
同じ励振下で、上記第1の機械的構造が発生する音量は、上記第2の機械的構造が発生する音量よりも小さい。例として、いくつかの実施例において、上記第1の機械的構造の質量Mが上記第2の機械的構造の質量Mよりも大きいため、同じ励振下で、上記第1の機械的構造の振動により発生する第1の音波の音量は、上記第2の機械的構造の振動により発生する第2の音波の音量よりも小さい。式(1)及び式(6)を参照すると、第1の電気信号と第2の電気信号が同じであり(U=U)、かつ第1の励振装置と第2の励振装置が同じである(すなわち、B=B、S=S、ρ=ρ、R=R)と仮定し、減衰及び剛性の差異を考慮しない(すなわち、C=C、K=K)場合、式(1)及び式(6)に基づいて、第1の励振Fと第2の励振Fが同じであること(F=F)を得ることができる。上記仮定に基づいて、M>Mであるため、質量と振幅との関係から分かるように、第1の機械的構造の振動振幅は、第2の機械的構造の振動振幅よりも小さい。伝播媒体及び伝播距離が同じである場合、ユーザが聞く、第1のスピーカーから発する音波の音量は、第2のスピーカーから発する音波の音量よりも小さい。
【0135】
第1の音波の音量は、第2の音波の音量と同じである。
【0136】
説明を容易にするために、第1の音波がユーザの左耳に聞こえ、第2の音波が右耳に聞こえることを例として説明する。一般的に、音量差による両耳への損傷を回避するように、ユーザの左耳に聞こえる第1の音波の音量と右耳に聞こえる第2の音波の音量ができるだけ同じであることが望まれている。すなわち、伝送距離及び伝送媒体が同じである場合、第1の機械的構造の振動振幅ができるだけ第2の機械的構造の振動振幅と一致することが望まれている。
【0137】
いくつかの実施例において、上記第1のコイルの巻線の直径は、第2のコイルの巻線の直径よりも大きく、すなわち、S>Sである。式(1)及び式(6)によれば、第1の励振装置が発生する第1の励振Fは、第2の励振装置が発生する第2の励振Fよりも大きく、このように、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波の電力は、第2の音波の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波の音量は、第2の音波の音量と同じである。このように、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差(M>M)による音量差が補正される。
【0138】
いくつかの実施例において、上記第1のコイルの抵抗率は、上記第2のコイルの抵抗率よりも小さく、すなわちρ1<ρ2である。式(1)及び式(6)によれば、第1の励振装置が発生する第1の励振Fは、第2の励振装置が発生する第2の励振Fよりも大きく、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波の電力は、第2の音波の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波の音量は、第2の音波の音量と同じである。このように、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による音量差が補正される。
【0139】
いくつかの実施例において、同じ入力電流で、上記第1の電磁励振装置が発生する磁場強度Bは、上記第2の電磁励振装置が発生する磁場強度Bよりも大きい。式(1)及び式(6)によれば、第1の励振装置が発生する第1の励振Fは、第2の励振装置が発生する第2の励振Fよりも大きく、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波の電力は、第2の音波の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波の音量は、第2の音波の音量と同じである。このように、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による音量差が補正される。いくつかの実施例において、上記第1の磁性部材の残留磁気が上記第2の磁性部材の残留磁気よりも大きいことにより、上記第1の電磁励振装置が発生する磁場強度Bは、上記第2の電磁励振装置が発生する磁場強度Bよりも大きい。いくつかの実施例において、上記第1の磁性部材の保磁力が上記第2の磁性部材の保磁力よりも大きいことにより、上記第1の電磁励振装置が発生する磁場強度Bは、上記第2の電磁励振装置が発生する磁場強度Bよりも大きい。いくつかの実施例において、上記第1の磁性部材の磁気エネルギー積が上記第2の磁性部材の磁気エネルギー積よりも大きいことにより、上記第1の電磁励振装置が発生する磁場強度Bは、上記第2の電磁励振装置が発生する磁場強度Bよりも大きい。
【0140】
いくつかの実施例において、上記第1の抵抗Rは、上記第2の抵抗Rよりも小さい。式(1)及び式(6)によれば、第1の励振装置が発生する第1の励振Fは、第2の励振装置が発生する第2の励振Fよりも大きく、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波の電力は、第2の音波の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波の音量は、第2の音波の音量と同じである。このように、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による音量差が補正される。
【0141】
いくつかの実施例において、上記第2のコイルの外に抵抗を直列接続することにより第1の抵抗Rを第2の抵抗Rよりも小さくし、さらに第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による音量差を補正してもよい。
【0142】
いくつかの実施例において、第1のコイルの抵抗Rを小さくし及び/又は第2のコイルの抵抗Rを大きくすることにより第1の抵抗Rを第2の抵抗Rよりも小さくし、さらに第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による音量差を補正してもよい。
【0143】
式R=ρL/Sによれば、いくつかの実施例において、第1のコイルの抵抗率を大きくし及び/又は第2のコイルの抵抗率を小さくすることにより、第1のコイルの抵抗を第2のコイルの抵抗よりも小さくしてもよい。
【0144】
式R=ρL/Sによれば、いくつかの実施例において、第1のコイルの巻線の長さを大きくし及び/又は第2のコイルの巻線の長さを小さくすることにより、第1のコイルの抵抗を第2のコイルの抵抗よりも小さくしてもよい。
【0145】
式R=ρL/Sによれば、いくつかの実施例において、第1のコイルの巻線の直径を小さくし及び/又は第2のコイルの巻線の直径を大きくすることにより、第1のコイルの抵抗を第2のコイルの抵抗よりも小さくしてもよい。
【0146】
なお、第1のコイル及び/又は第2のコイルの抵抗率、巻線の長さ及び/又は巻線の直径を大きくし及び/又は小さくする場合、第1のコイル及び/又は第2のコイルの質量も変化する可能性がある。また、コイルの質量も、第1の機械的構造の振動に影響を与える。したがって、抵抗率、巻線の長さ及び/又は巻線の直径などのパラメータを調整する場合、他のパラメータの影響を考慮することにより、最終的に第1の機械的構造の振動振幅を第2の機械的構造の振動振幅と一致させる必要もある。
【0147】
いくつかの実施例において、音声出力装置に電力増幅回路が設置されてもよい。上記電力増幅回路は、上記第1のスピーカーと上記信号処理回路との間に設置されてもよい。上記信号処理回路から出力される第1の電気信号は、上記電力増幅回路を通過する。上記電力増幅回路は、上記第1の電気信号を増幅して上記第1のスピーカーに出力する。上記第1のスピーカーは、増幅後の上記第1の電気信号を受信する。このように、第1のスピーカーが発生する第1の励振Fは、第2のスピーカーが発生する第2の励振Fの大きさよりも大きい(すなわち、F>F)。式(6)と組み合わせて、第1の励振Fが第2の励振Fよりも大きいと、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波の電力は、第2の音波の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波の音量は、第2の音波の音量と同じである。このように、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による音量差が補正される。
【0148】
いくつかの実施例において、音声出力装置に電力減衰回路が設置されてもよい。上記電力減衰回路は、上記第2のスピーカーと上記信号処理回路との間に設置されてもよい。上記信号処理回路から出力される第2の電気信号は、上記電力減衰回路を通過する。上記電力減衰回路は、上記第2の電気信号を減衰させて上記第2のスピーカーに出力する。上記第2のスピーカーは、減衰後の上記第2の電気信号を受信する。このように、第2のスピーカーが発生する第2の励振Fは、第1のスピーカーが発生する第1の励振Fの大きさよりも小さい(すなわち、F>F)。式(6)と組み合わせて、第1の励振Fが第2の励振Fよりも大きいと、XをXと一致させることができる。その場合、第1の音波の電力は、第2の音波の電力と同じであり、ユーザが聞く第1の音波の音量は、第2の音波の音量と同じである。このように、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による音量差が補正される。
【0149】
以上の説明から分かるように、イヤホンの両端に音量差が発生する場合、ユーザが感知する音像のオフセットが発生する。したがって、音声出力装置に対して合理的な設計を行うことにより、音声出力装置から出力される音像をできるだけオフセットさせない必要がある。
【0150】
したがって、本願はまた、音声出力装置を提供する。上記音声出力装置は、イヤホン、補聴器、ヘルメットなどを含んでもよいが、これらに限定されない。上記イヤホンは、有線イヤホン、無線イヤホン、ブルートゥース(登録商標)イヤホンなどを含んでもよいが、これらに限定されない。具体的には、上記音声出力装置は、第1のスピーカー、第2のスピーカー及び信号処理回路を含んでもよい。
【0151】
上記信号処理回路は、目標音声情報を受信して、上記目標音声情報を処理し、かつ第1の電気信号及び第2の電気信号を生成することができる。
【0152】
上記第1のスピーカーは、上記信号処理回路と電気的に接続される。上記第1のスピーカーは、上記信号処理回路からの第1の電気信号を受信し、かつ上記第1の電気信号を第1の音波に変換することができる。いくつかの実施例において、上記第1のスピーカーは、第1の骨伝導スピーカーを含み、上記第1の音波は、第1の骨伝導音波を含む。いくつかの実施例において、上記第1のスピーカーは、受信した第1の電気信号を機械的振動に変換してもよい。さらに、上記第1の音波は、上記機械的振動により発生する。いくつかの実施例において、上記第1のスピーカーは、第1の機械的構造及び第1の励振装置を含んでもよい。上記第1の励振装置は、上記第1の電気信号に基づいて第1の励振を発生させる。上記第1の励振は、外力として、上記第1の機械的構造を励振して振動させ、さらに、第1の機械的構造は、振動して第1の音波を発生させる。
【0153】
上記第2のスピーカーは、上記信号処理回路と電気的に接続される。上記第2のスピーカーは、上記信号処理回路からの第2の電気信号を受信し、かつ上記第2の電気信号を第2の音波に変換することができる。いくつかの実施例において、上記第2のスピーカーは、第2の骨伝導スピーカーを含み、上記第2の音波は、第2の骨伝導音波を含む。いくつかの実施例において、上記第2のスピーカーは、受信した第2の電気信号を機械的振動に変換してもよい。さらに、上記第2の音波は、上記機械的振動により発生する。いくつかの実施例において、上記第2のスピーカーは、第2の機械的構造及び第2の励振装置を含んでもよい。上記第2の励振装置は、上記第2の電気信号に基づいて第2の励振を発生させる。上記第2の励振は、外力として、上記第2の機械的構造を励振して振動させ、さらに、第2の機械的構造は、振動して第2の音波を発生させる。
【0154】
いくつかの実施例において、第1の励振装置及び第2の励振装置は、電磁励振装置であってもよい。第1の励振の大きさ及び第2の励振の大きさは、式(1)により計算して得ることができ、第1の機械的構造及び第2の機械的構造の振動過程は、式(6)で表すことができる。
【0155】
説明を容易にするために、本願の以下の説明において、Fで第1の励振の大きさを表し、Fで第2の励振の大きさを表し、Mで第1の機械的構造の質量を表し、Mで第2の機械的構造の質量を表し、Sで第1のコイルの巻線の断面積を表し、Sで第2のコイルの巻線の断面積を表し、ρで第1のコイルの巻線の抵抗率を表し、ρで第2のコイルの巻線の抵抗率を表し、Bで第1の磁性部材の磁場強度を表し、Bで第2の磁性部材の磁場強度を表し、Rで第1のコイルの巻線の抵抗(以下、第1の抵抗と略称)を表し、Rで第2のコイルの巻線の抵抗(以下、第2の抵抗と略称)を表し、Xで第1の機械的構造の振動振幅を表し、Xで第2の機械的構造の振動振幅を表す。
【0156】
同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、上記第1のスピーカーから出力された音波の音量は、上記第2のスピーカーから出力された音波の音量よりも小さい。例として、いくつかの実施例において、上記第1の機械的構造の質量Mが上記第2の機械的構造の質量Mよりも大きいため、同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、上記第1のスピーカーから出力された音波の音量は、上記第2のスピーカーから出力された音波の音量よりも小さい。式(1)及び式(6)を参照すると、第1の電気信号と第2の電気信号の振幅及び周波数がいずれも同じであり(すなわち、U=U)、かつ第1の励振装置と第2の励振装置が同じである(すなわち、B=B、S=S、ρ=ρ、R=R)と仮定し、減衰及び剛性の差異を考慮しない(すなわち、C=C、K=K)場合、式(1)及び式(6)に基づいて、第1の励振Fと第2の励振Fが同じであること(F=F)を得ることができる。上記仮定に基づいて、M>Mであるため、質量と振幅との関係から分かるように、第1の機械的構造の振動振幅は、第2の機械的構造の振動振幅よりも小さい。伝播媒体及び伝播距離が同じである場合、ユーザが聞く、第1のスピーカーから発する音波の音量は、第2のスピーカーから発する音波の音量よりも小さい。例として、同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、上記第1の音波の音量と上記第2の音波の音量との差は、3dB以下である。
【0157】
説明を容易にするために、本願の以下の説明において、第1の音波をユーザの左耳に伝達し、第2の音波をユーザの右耳に伝達することを例として、ユーザの目標音声情報に対する感知を説明する。第1の音波と第2の音波は、音量以外の情報がいずれも同じであると仮定し、両耳効果に基づいて、ユーザの左耳に聞こえる第1の音波の音量がユーザの右耳に聞こえる第2の音波の音量よりも小さい場合、ユーザの脳は、目標音声情報の発音位置(すなわち、ユーザが感知する音像)が、右側である、音量のより大きい第2の音波側へ偏ると判定する。
【0158】
両耳効果に基づいて、「位相差」及び/又は「時間差」を用いて、「音量差」による音像のオフセットを解消することができる。
【0159】
いくつかの実施例において、音声出力装置300は、目標音声情報10を第1の音波21に変換するのに第1の時間長tを必要とし、目標音声情報10を第2の音波22に変換するのに第2の時間長tを必要とし、第1の時間長tは、第2の時間長tよりも1つの時間差δtだけ短い。このように、目標音声情報10に対して、第1のスピーカー310の発音時間は、第2のスピーカー320の発音時間よりも時間差δtだけ早められる。いくつかの実施例において、上記時間差δtは、3ms以下である。具体的には、上記時間差δtは、0.1ms、0.2ms、0.3ms、0.4ms、0.5ms、0.6ms、0.7ms、0.8ms、0.9ms、1.0ms、1.1ms、1.2ms、1.3ms、1.4ms、1.5ms、1.6ms、1.7ms、1.8ms、1.9ms、2.0ms、2.1ms、2.2ms、2.3ms、2.4ms、2.5ms、2.6ms、2.7ms、2.8ms、2.9ms、3.0msという数値のうちの任意の値、又は任意の2つの数値の間の任意の値であってもよい。例えば、上記時間差δtは、1.0msであってもよく、1.0msよりも僅かに大きい数値であってもよい。第1の音波21と第2の音波22は、発音時間以外の情報がいずれも同じであると仮定する。伝送媒体及び伝送距離が同じである場合、ユーザの左耳に聞こえる第1の音波21の時間は、右耳に聞こえる第2の音波22の時間よりも早められる。両耳効果に基づいて、ユーザが聞く目標音声情報10の音源位置(すなわち、ユーザが感知する音像)が補正される。
【0160】
いくつかの実施例において、上記時間差は、上記第1のスピーカーが上記第1の電気信号を上記第1の音波に変換し、かつ上記第2のスピーカーが上記第2の電気信号を第2の音波に変換する過程において発生する。例えば、第1のスピーカーに時間進み回路を設置し及び/又は第2のスピーカーに時間遅延回路を設置することにより、第1のスピーカーから出力された第1の音波を、第2のスピーカーから出力された第2の音波よりも早めてもよい。いくつかの実施例において、第1の音波は、第2の音波よりも1つの時間差δtだけ早められる。
【0161】
いくつかの実施例において、上記時間差は、上記音声出力装置が上記目標音声情報を上記第1の電気信号と上記第2の電気信号に変換する過程において発生する。例えば、信号処理回路に時間処理回路を設置することにより、第1のスピーカーに入力される第1の電気信号を、第2のスピーカーに入力される第2の電気信号よりも早めてもよい。いくつかの実施例において、第1の電気信号は、第2の電気信号よりも1つの時間差δtだけ早められる。
【0162】
いくつかの実施例において、第2の音波と第1の音波との間に第1の位相差δwがある。いくつかの実施例において、第1の音波の位相は、第2の音波の位相よりもδwだけ大きい。第1の音波と第2の音波は、位相以外の情報がいずれも同じであると仮定すると、両耳効果に基づいて、ユーザの脳は、目標音声情報の音源位置(すなわち、ユーザが感知する音像)が位相のより大きい第1の音波側であるユーザの左側へ偏ると判定する。このように、第1の音波の音量が第2の音波の音量よりも小さいことによる音像の右へのオフセットを考慮すると、最終的に、ユーザが聞く目標音声情報の音源位置は、中間位置に調整される。このように、第1の機械的構造の質量が第2の機械的構造の質量よりも大きいことによる音像のオフセットが解消される。
【0163】
いくつかの実施例において、第2の電気信号と第1の電気信号の位相は同じである。例として、信号処理回路は、目標音声情報を処理することにより、生成した第1の電気信号と第2の電気信号の位相を同じにしてもよい。さらに、第2のスピーカーに位相遅延回路が設置されてもよい。上記位相遅延回路は、第2の電気信号の位相をδwだけ遅延させ、かつ位相が同様にδwだけ遅延した第2の音波を発生させることができる。このように、第1の音波の位相を第2の音波の位相よりもδwだけ大きくすることができる。このように、第1の機械的構造の質量が第2の機械的構造の質量よりも大きいことによる音像のオフセットを解消することができる。
【0164】
いくつかの実施例において、第2の電気信号と第1の電気信号との間に第2の位相差δwがあり、第2の位相差δwは、第1の位相差δwと同じである。例として、信号処理回路に位相遅延回路が設置されてもよい。信号処理回路は、目標音声情報を処理して第1の電気信号及び第2の電気信号を取得することができる。かつ、第1の電気信号と第2の電気信号との間に第2の位相差δwがある。例えば、第1の電気信号の位相は、第2の電気信号の位相よりもδwだけ大きい。第1のスピーカーと第2のスピーカーは、第1の電気信号の位相と第2の電気信号の位相を変化させないため、第1のスピーカーが発生する第1の音波は、第2のスピーカーが発生する第2の音波の位相よりもδwだけ大きい。また、δwは、δwと同じであり、すなわち、最終的に、第1の音波の位相は、第2の音波の位相よりもδwだけ大きい。このように、第1の機械的構造の質量が第2の機械的構造の質量よりも大きいことによる音像のオフセットを解消することもできる。
【0165】
このように、目標音声情報に対して、第1のスピーカーの発音時間は、第2のスピーカーの発音時間よりも早められる。第1の音波と第2の音波は、発音時間以外の情報がいずれも同じであると仮定する。伝送媒体及び伝送距離が同じである場合、ユーザの左耳に聞こえる第1の音波の時間は、右耳に聞こえる第2の音波の時間よりも早められる。両耳効果に基づいて、ユーザの脳は、目標音声情報の音源位置がより早く発音する第1の音波側であるユーザの左側へ偏ると判定する。このように、第1の音波の音量が第2の音波の音量よりも小さいことによる音像の右へのオフセットを同時に考慮すると、最終的に、ユーザが聞く目標音声情報の音源位置(すなわち、ユーザが感知する音像)は、同様に中間位置に調整される。このように、第1の機械的構造の質量が第2の機械的構造の質量よりも大きいことによる音像の右へのオフセットが解消される。
【0166】
以上より、本願は、音像調整方法S100、音量調整方法S200及び2種の音声出力装置を提供する。本願に係る音像調整方法S100は、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差を取得するS110と、上記第1の音波と上記第2の音波との発音時間差を調整するS120とを含む。本願に係る音量調整方法S200は、上記第1の音波と上記第2の音波との音量差を取得するS210と、上記第1の励振と上記第2の励振との振幅差を調整するS220とを含む。本願に係る音声出力装置及び音像調整方法S100は、第1の音波と第2の音波との間の時間差を設定することにより、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による、ユーザが感知する音像のオフセットを補正する。本願に係る音声出力装置及び音量調整方法は、異なるコイルの抵抗率、コイルの巻線の直径、磁場強度及び/又は抵抗を設定することにより、第1の機械的構造と第2の機械的構造との質量差による第1のスピーカーと第2のスピーカーとの間の音量差を補正する。
【0167】
なお、本願に係る第1の音波及び/又は第2の音波の伝播媒体は、本願の範囲を限定するものではない。本願に係る第1の音波及び/又は第2の音波は、固体(例えば、骨格)を介して伝播してもよく、上記第1の音波及び/又は第2の音波は、気体(例えば、空気)を介して伝播してもよい。いくつかの実施例において、上記伝播媒体は、空気及び骨格のうちの1種又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0168】
なお、実際の設計及び製造において、本願に係る音量調整方法、上記音像調整方法及び音声出力装置を組み合わせて用いて、所望の調整効果を達成することができる。例えば、いくつかの実施例において、音像調整方法S100を単独で用いて、音声出力装置から出力される音像を調整してもよい。例えば、いくつかの実施例において、音量調整方法S200と音像調整方法S100を同時に用いて、音声出力装置から出力される音声の音像及び音量を調整してもよい。
【0169】
例えば、質量の調整と励振の調整を同時に行ってもよい。例えば、M>Mである場合、「第2の機械的構造311の質量を大きくする」、「第1の励振を大きくする」、「第1のコイルの直径を大きくする」などの方法を同時に用いて、第1のスピーカー310と第2のスピーカー320の音量を一致させてもよい。
【0170】
例えば、M>Mである場合、「第2の機械的構造311の質量を大きくする」、「第1の励振を大きくする」、「第2のコイルの直径を小さくする」などの方法を同時に用いて、第1のスピーカー310と第2のスピーカー320との間の音量差を目標音量差範囲内に維持してもよく、その後、位相差を設定する方法を同時に用いて音像を調整してもよい。
【0171】
なお、本願に係る、第1のスピーカーの音量と第2のスピーカーの音量とを「一致」させるか又は「同じ」にすることは、分析のためのものに過ぎず、本願の保護範囲を限定するものではない。上記第1のスピーカーの音量と第2のスピーカーの音量とを一致させるか又は同じにすることは、第1のスピーカーと第2のスピーカーとの間の音量差を目標音量差範囲内に維持することであってもよい。
【0172】
なお、本願に係る、音声出力装置の音像を「中央寄せ」することも、分析のためのものに過ぎず、本願の保護範囲を限定するものではない。上記音像を中央寄せすることは、音像を目標位置範囲内に維持することであってもよい。
【0173】
以上より、本詳細な開示内容を読んだ後、当業者には、前述の詳細な開示内容が単なる例として提示されているに過ぎず、限定的ではないことは明らかである。本明細書には明確に説明していないが、当業者であれば、本願は、実施例に対する様々な合理的な変更、改良及び修正を含むことを意図していることを理解できる。これらの変更、改良及び修正は、本開示によって示唆されることを意図されており、本開示の例示的な実施例の精神及び範囲内にある。
【0174】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施例を説明するためのものに過ぎず、限定的ではない。例えば、文脈が明確に別段の指示をしない限り、本明細書で使用される単数形「一」、「1つ」、「上記」及び「該」は、複数形を含んでもよい。本明細書で使用される場合、用語「含む」、「備える」及び/又は「含んでいる」は、関連する整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらの群の存在を除外しないか、又は該システム/方法に他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらの群を追加してもよい。本明細書で使用される場合、用語「AがB上に位置する」は、AがBに直接的に隣接する(その上又は下に位置する)ことを意味してもよく、AがBに間接的に隣接する(すなわち、AとBとの間にある物質を挟む)ことを意味してもよく、用語「AがB内に位置する」は、A全体がB内に位置することを意味してもよく、Aの一部がB内にあることを意味してもよい。
【0175】
また、本願におけるいくつかの用語は、本開示の実施例を説明するために用いられる。例えば、「1つの実施例」、「実施例」及び/又は「いくつかの実施例」は、該実施例に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの実施例に含まれてもよいことを意味する。したがって、本明細書の各部分における「実施例」又は「1つの実施例」又は「代替的な実施例」への2つ以上の言及は、必ずしもすべて同じ実施例を指すものではないことが強調され、理解されるべきである。また、特定の特徴、構造又は特性は、本開示の1つ以上の実施例において適切に組み合わせられてもよい。
【0176】
本開示の実施例の前述の説明において、1つの特徴への理解を助けるために、本開示を簡略化する目的で、本願は、様々な特徴を単一の実施例、図面又はその説明にまとめる場合があることを理解されたい。あるいは、本願はまた、様々な特徴を複数の本発明の実施例に分散させる。しかしながら、これは、これらの特徴の組み合わせが必須であることを意味するものではなく、当業者であれば、本願を読むときにそのうちの一部の特徴を抽出して別個の実施例として理解することが全く可能である。すなわち、本願における実施例は、複数の下位実施例の組み合わせであると理解することもできる。また、各下位実施例の内容は、単一の前述の開示された実施例のすべての特徴よりも少ない場合にも成立するものである。
【0177】
いくつかの実施形態において、本願のいくつかの実施形態を説明し、かつ特許請求するための数又は特性を表す数字は、いくつかの場合に用語「約」、「ほぼ」又は「実質的」によって修飾されることを理解されたい。例えば、特に明記しない限り、「約」、「ほぼ」又は「実質的」は、説明される値の±20%の変動を示してもよい。したがって、いくつかの実施形態において、明細書及び添付の特許請求の範囲に列挙された数値パラメータは、近似値であり、それは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化してもよい。いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告された有効桁数に照らし、通常の丸め手法を適用することにより、解釈されるべきである。本願のいくつかの実施形態を説明するために列挙された広い範囲の数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例において、できるだけ正確な数値がいずれも列挙される。
【0178】
本明細書において参照されている各特許、特許出願、特許出願の刊行物、及び論文、書籍、仕様書、刊行物、文書、物品などのような他の資料は、参照により本明細書に組み込まれる。すべての目的のために、その全体は、関連する任意の起訴ファイル履歴、及び、本明細書と一致しないかもしくは矛盾する可能性がある任意のもの又は特許請求の範囲の最も広い範囲に関して限定的な影響を有し得る任意の起訴ファイル履歴を除くものである。現在又は後に本明細書に関連する。例えば、本明細書に組み込まれる任意の資料に関連する用語の説明、定義及び/又は使用と、本明細書に関連する用語の説明、定義及び/又は使用との間に、何らかの不一致又は矛盾がある場合、本明細書における用語を優先するものとする。
【0179】
最後に、本明細書に開示された本願の実施形態は、本願の実施形態の原理を説明するものであることを理解されたい。その他の修正後の実施例も本願の範囲内にある。したがって、本願で開示された実施例は、例示なものに過ぎず、限定的ではない。当業者であれば、本願における実施例に基づいて代替的な構成を用いて本願における発明を実施することができる。したがって、本願の実施例は、出願で正確に説明された実施例に限定されない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-10-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作時に目標音声情報に基づいて第1の電気信号及び第2の電気信号を生成する信号処理回路と、
前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第1の電気信号を受信し、かつ前記第1の電気信号を第1の音波に変換する第1のスピーカーと、
前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第2の電気信号を受信し、かつ前記第2の電気信号を第2の音波に変換する第2のスピーカーとを含み、
前記第1のスピーカーは、第1の骨伝導スピーカー及び第1の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含み、
前記第2のスピーカーは、第2の骨伝導スピーカー及び第2の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含み、
音声出力装置は、前記目標音声情報を前記第1の音波に変換するのに第1の時間長を必要とし、前記目標音声情報を前記第2の音波に変換するのに第2の時間長を必要とし、
前記第1の時間長は、前記第2の時間長よりも1つの時間差だけ短いことを特徴とする、音声出力装置。
【請求項2】
同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、前記第1のスピーカーから出力された音波の音量は、前記第2のスピーカーから出力された音波の音量よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記第1のスピーカーは、第1の機械的構造を励振することにより前記第1の音波を発生させ、
前記第2のスピーカーは、第2の機械的構造を励振することにより第2の音波を発生させ、
前記第1の機械的構造の質量が前記第2の機械的構造の質量よりも大きいため、同じ振幅及び周波数を有する電気信号が入力される場合、前記第1のスピーカーから出力された音波の音量は、前記第2のスピーカーから出力された音波の音量よりも小さいことを特徴とする、請求項2に記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記時間差は、前記音声出力装置により前記目標音声情報を前記第1の電気信号と前記第2の電気信号に変換する過程において発生する、または、
前記時間差は、前記第1のスピーカーが前記第1の電気信号を前記第1の音波に変換し、かつ前記第2のスピーカーが前記第2の電気信号を第2の音波に変換する過程において発生するまたは、
前記時間差は、3ms以下であることを特徴とする、請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項5】
動作時に目標音声情報に基づいて第1の電気信号及び第2の電気信号を生成する信号処理回路と、
前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第1の電気信号を受信し、かつ前記第1の電気信号を第1の励振に変換して第1の機械的構造を励振することにより第1の音波を発生させる第1のスピーカーと、
前記信号処理回路と電気的に接続され、動作時に前記信号処理回路からの第2の電気信号を受信し、かつ前記第2の電気信号を第2の励振に変換して第2の機械的構造を励振することにより第2の音波を発生させる第2のスピーカーとを含み、
前記第1のスピーカーは、第1の骨伝導スピーカー及び第1の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含み、
前記第2のスピーカーは、第2の骨伝導スピーカー及び第2の空気伝導スピーカーのうちの少なくとも1つを含み、
前記第1の音波の音量は、前記第2の音波の音量と同じであり、
同じ励振下で、前記第1の機械的構造が発生する音量は、第2の機械的構造が発生する音量よりも小さいことを特徴とする、音声出力装置。
【請求項6】
前記第1の機械的構造の質量が前記第2の機械的構造の質量よりも大きいため、同じ励振下で、前記第1の機械的構造が発生する音量は、第2の機械的構造が発生する音量よりも小さいことを特徴とする、請求項に記載の音声出力装置。
【請求項7】
前記第1のスピーカーは、前記第1の励振を発生させる第1の電磁励振装置をさらに含み、前記第1の励振は、前記第1の機械的構造を励振して振動させることにより前記第1の音波を発生させ、
前記第2のスピーカーは、前記第2の励振を発生させる第2の電磁励振装置をさらに含み、前記第2の励振は、前記第2の機械的構造を励振して振動させることにより前記第2の音波を発生させることを特徴とする、請求項に記載の音声出力装置。
【請求項8】
前記第1の電磁励振装置は、第1のコイルを含み、
前記第2の電磁励振装置は、第2のコイルを含み、
前記第1のコイルの巻線の直径は、前記第2のコイルの巻線の直径よりも大きい、または、
前記第1のコイルの抵抗率は、前記第2のコイルの抵抗率よりも小さい、または、
同じ入力電流で、前記第1の電磁励振装置が発生する前記第1の励振は、前記第2の電磁励振装置が発生する第2の励振よりも大きいことを特徴とする、請求項に記載の音声出力装置。
【請求項9】
前記第1のスピーカーは、第1の抵抗を含み、
前記第2のスピーカーは、第2の抵抗を含み、
前記第1の抵抗は、前記第2の抵抗よりも小さいことを特徴とする、請求項に記載の音声出力装置。
【請求項10】
前記第1のスピーカー及び前記信号処理回路に接続される電力増幅回路をさらに含み、
前記電力増幅回路は、前記第1の電気信号を増幅し、
前記第1のスピーカーは、増幅後の前記第1の電気信号を受信する、または、
前記第2のスピーカー及び前記信号処理回路に接続される電力減衰回路をさらに含み、
前記電力減衰回路は、前記第2の電気信号を減衰させ、
前記第2のスピーカーは、減衰後の前記第2の電気信号を受信することを特徴とする、請求項に記載の音声出力装置。
【国際調査報告】