(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】プラズマ及びヒドロキシラジカルを生成する滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/14 20060101AFI20230531BHJP
H05H 1/32 20060101ALI20230531BHJP
H05H 1/30 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
A61L2/14
H05H1/32
H05H1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022566278
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021060502
(87)【国際公開番号】W WO2021219482
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】プレストン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】メドウクロフト,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,ジョージ・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ,デイビッド・エドワード
【テーマコード(参考)】
2G084
4C058
【Fターム(参考)】
2G084AA24
2G084AA25
2G084CC23
2G084CC34
2G084CC35
2G084DD01
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2G084DD42
2G084FF02
2G084FF13
2G084GG02
2G084GG04
2G084GG07
4C058AA12
4C058AA23
4C058AA28
4C058BB06
4C058EE03
4C058KK06
(57)【要約】
本発明は、例えば人体、医療装置、または病院の病床スペースでの臨床使用に適した滅菌システムに関する。具体的には、ヒドロキシラジカルの流れを生成する滅菌デバイスが提供され、滅菌デバイスは、長手方向に延在する同軸伝送線であって、内側導体と、内側導体の周りに内側導体から離間して配置された外側導体とを含む同軸伝送線と、同軸伝送線の遠位端に取り付けられた端部キャップであって、遠位に面した出口開口を有する端部キャップと、同軸伝送線の遠位端の流体入口から端部キャップを通って出口開口まで長手方向に延在する流体導管と、出口開口の近位端に存在するプラズマ生成領域であって、内側導体に電気的に接続された第1の電極、及び外側導体に電気的に接続された第2の電極を含むプラズマ生成領域と、を備え、流体導管は、流体入口を通して流体を受け取ることができるフィード方向に沿ってデバイスを通る長手方向流体流路を画定し、第1の電極及び第2の電極は、プラズマ生成領域において、長手方向流体流路を横断する短手方向に互いに対向する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシラジカルの流れを生成する滅菌デバイスであって、前記滅菌デバイスは、
無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーを搬送するための同軸伝送線であって、前記同軸伝送線は長手方向に延在し、内側導体と、前記内側導体の周りに前記内側導体から離間して配置された外側導体とを含む、前記同軸伝送線と、
前記同軸伝送線の遠位端に取り付けられた端部キャップであって、遠位に面した出口開口を有する前記端部キャップと、
前記同軸伝送線の遠位端の流体入口から前記端部キャップを通って前記出口開口まで前記長手方向に延在する流体導管と、
前記出口開口の近位端に存在するプラズマ生成領域であって、前記内側導体に電気的に接続された第1の電極、及び前記外側導体に電気的に接続された第2の電極を含む、前記プラズマ生成領域と、
を備え、
前記流体導管は、前記流体入口を通して流体を受け取ることができるフィード方向に整列された、前記デバイスを通る長手方向流体流路を画定し、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記プラズマ生成領域において、前記長手方向流体流路を横断する短手方向に互いに対向する、
前記滅菌デバイス。
【請求項2】
前記流体導管は、前記同軸伝送線の前記内側導体と前記外側導体との間に通路を含む、請求項1に記載の滅菌デバイス。
【請求項3】
前記流体導管は、前記同軸伝送線と平行に延びるダクトを含む、請求項1に記載の滅菌デバイス。
【請求項4】
前記プラズマ生成領域に水を配送するように構成された水導管をさらに備える、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項5】
前記水導管は、前記同軸伝送線の前記内側導体内に形成された長手方向通路を含む、請求項4に記載の滅菌デバイス。
【請求項6】
前記水導管は、前記第1の電極内に形成された長手方向通路を含む、請求項4または5に記載の滅菌デバイス。
【請求項7】
前記水導管の遠位端に噴霧ユニットをさらに備える、請求項4~6のいずれか1項に記載の滅菌デバイス。
【請求項8】
前記噴霧ユニットは、円錐形の水ミストの噴霧を生成するように構成されたエアロゾル生成器を備える、請求項7に記載の滅菌デバイス。
【請求項9】
前記水導管は、近位入口を有し、
前記水導管は、前記近位入口を通して水を受け取ることができるフィード方向に整列された、前記デバイスを通る長手方向流路を画定する、請求項4~8のいずれか1項に記載の滅菌デバイス。
【請求項10】
前記第1の電極は、前記内側導体の遠位端から前記長手方向に突出したロッドであり、前記ロッドの直径は、前記内側導体の直径よりも小さい、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項11】
前記プラズマ生成領域は、前記出口開口の近位領域に配置される、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項12】
前記第2の電極は、前記出口開口の側壁から内側へ延在する複数の放射状タブを備える、請求項11に記載の滅菌デバイス。
【請求項13】
前記プラズマ生成領域から遠位に、前記出口開口に取り付けられた絶縁管をさらに備える、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項14】
前記同軸伝送線に前記RFエネルギー及び/または前記マイクロ波エネルギーを導入するために接続された短手方向同軸フィードを、前記同軸伝送線の近位領域にさらに備える、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項15】
前記短手方向同軸フィードは、マイクロ波エネルギーを前記同軸伝送線内に連結するように構成され、
前記短手方向同軸フィードは、前記同軸伝送線の近位端から距離
【数1】
の位置にある前記同軸伝送線上の点に接続され、nは正の整数であり、λは前記同軸伝送線により搬送される前記マイクロ波エネルギーの波長である、請求項14に記載の滅菌デバイス。
【請求項16】
前記プラズマ生成領域に前記RFエネルギーを直接導入するように接続された近位短手方向同軸フィードをさらに備える、請求項14または15に記載の滅菌デバイス。
【請求項17】
前記同軸伝送線の近位端に取り付けられたチョークをさらに備える、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項18】
ハンドヘルドユニットとして構成される、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項19】
いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイスと、
前記プラズマ生成領域に水を供給するように接続された水供給部と、
前記流体導管を介して前記プラズマ生成領域にガスを供給するように接続されたガス供給部と、
無線周波数(RF)電磁エネルギー及び/またはマイクロ波周波数電磁エネルギーを前記プラズマ生成領域に供給するように接続されたジェネレータと、
を備える、滅菌装置。
【請求項20】
前記水供給部は、ポンプを含む、請求項19に記載の滅菌装置。
【請求項21】
前記水供給部は、ミスト生成器を含む、請求項19に記載の滅菌装置。
【請求項22】
前記ミスト生成器は、
超音波振動子、または
加熱素子
のいずれかを含む、請求項21に記載の滅菌装置。
【請求項23】
前記ガス供給部は、前記ミスト生成器を介して前記ハンドヘルド滅菌デバイスにガスを供給するように接続される、請求項21または22に記載の滅菌装置。
【請求項24】
前記ガス供給部は、アルゴンガスの供給部である、請求項19~23のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【請求項25】
前記ジェネレータは、電池により電力供給される、請求項19~24のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人体、医療装置、または病院の病床スペースでの臨床使用に適した滅菌システムに関する。例えば、本発明は、人間もしくは動物の生体系及び/または周囲環境に伴う特定の細菌及び/またはウイルスを破壊または治療するのに使用できるシステムを提供し得る。本発明は、閉鎖空間または部分的閉鎖空間を滅菌または除染するのに、特に有用である。
【背景技術】
【0002】
細菌は、単細胞生物であり、ほぼどこでも見つかり、多数存在し、急速に分裂及び増殖することができる。ほとんどの細菌は無害であるが、3つの有害なグループ、すなわち球菌、螺旋菌、及び桿菌が存在する。球菌は丸い細胞、螺旋菌は螺旋状の細胞、及び桿菌は棒状の細胞である。有害な細菌は、破傷風及び腸チフスなどの病気を引き起こす。
【0003】
ウイルスは、他の細胞を乗っ取ることによってのみ生き延び増殖することができ、すなわち、自力で生存することはできない。ウイルスは、風邪、インフルエンザ、おたふく風邪、及びエイズなどの病気を引き起こす。ウイルスは、人と人との接触を介して、または感染者からの呼吸飛沫もしくはその他のウイルス含有体液で汚染された領域との接触を介して、うつされ得る。
【0004】
真菌胞子及び原生動物と称される小さな生物が、病気を引き起こす場合もある。
滅菌とは、あらゆる形態の生物、特に微生物を、破壊または排除する行為またはプロセスである。プラズマ滅菌のプロセス中、活性物質が生成される。これらの活性物質は、化学的不対電子を有する原子または原子集合体である強力紫外線光子及びフリーラジカルである。プラズマ滅菌の魅力的特徴は、体温などの比較的低温で滅菌を実現できることである。プラズマ滅菌には、操作者及び患者に安全であるという利点もある。
【0005】
プラズマは通常、帯電した電子及びイオン、並びにオゾン、亜酸化窒素、及びヒドロキシラジカルなどの化学活性種を含む。ヒドロキシラジカルは、空気中の汚染物質を酸化するのに、オゾンよりもはるかに効果的であり、殺細菌力と殺真菌力が塩素よりも数倍高いことから、細菌またはウイルスを破壊することにおいて、及び閉鎖空間に含まれる物体、例えば病院環境に関連する物体またはアイテムの効果的な除染を実行することにおいて、非常に興味深い候補となる。
【0006】
水の「高分子」内に保持されるOHラジカル(例えば霞または霧の中の液滴)は、数秒間は安定性があり、同等濃度の従来の殺菌剤よりも1000倍効果的である。
【0007】
Bai et alによる「Experimental studies on elimination of microbial contamination by hydroxyl radicals produced by strong ionisation discharge」と題された記事(Plasma Science and Technology、10巻、4番、2008年8月)では、微生物汚染の除去に、強力なイオン放電により生成されたOHラジカルを使用することが検討されている。この研究では、大腸菌及び枯草菌に対する滅菌効果が検討されている。107cfu/ml(cfu=コロニー形成単位)の濃度の細菌懸濁液が用意され、マイクロピペットを使用して、液体状の細菌10μlが、12mm×12mmの滅菌ステンレス鋼プレートに移された。プレート上に細菌液が均一に広げられ、乾燥可能な状態に90分間置かれた。次に、プレートは無菌ガラス皿に入れられ、一定濃度のOHラジカルがプレートに噴霧された。この実験的研究の結果は、次のとおりである。
1.OHラジカルは、細胞に不可逆的な損傷を引き起こし、最終的に細胞を死滅させるのに使用できる。
2.微生物を除去するための閾値電位は、国内外で使用される殺菌剤の1万分の1である。
3.OHによる生化学反応はフリーラジカル反応であり、微生物を除去する生化学反応時間は約1秒であり、これは、微生物汚染の迅速な除去というニーズを満たし、死滅時間は、現在の家庭用及び国際的殺菌剤の約1000分の1である。
4.OHの致死密度は、他の殺菌剤の噴霧密度の約1000分の1であり、これは、広い空間、例えば病床スペースの領域で、効率よく迅速に微生物汚染を除去するのに役立つ。
5.OHの霞または霧の液滴は、細菌をCO2、H2O、及びミクロ無機塩に酸化する。
残りのOHもH2O及びO2に分解されるため、この方法は公害を出さずに微生物汚染を除去する。
【0008】
特許文献WO2009/060214は、ヒドロキシラジカルを生成及び放出するように制御可能に構成された滅菌装置を開示する。装置は、ヒドロキシルラジカル生成領域でRFエネルギーまたはマイクロ波エネルギー、ガス、及び水ミストを受け取るアプリケータを含む。水ミストが存在する場合にヒドロキシラジカルを生成するイオン化放電の生成を促進するために、ヒドロキシラジカル生成領域のインピーダンスは、高くなるように制御される。アプリケータは、同軸アセンブリまたは導波管であり得る。例えばアプリケータに統合された動的同調機構は、ヒドロキシラジカル生成領域でのインピーダンスを制御し得る。ミスト、ガス、及び/またはエネルギーの配送手段は、互いに一体化することができる。
【0009】
特許文献WO2019/175063は、熱プラズマまたは非熱プラズマを使用して外科用スコープデバイスを滅菌または殺菌する滅菌装置を開示する。一実施例では、RFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーを搬送してプラズマを発生させ維持する同軸伝送線の遠位端に、プラズマ生成領域は形成される。同軸伝送線の外側面の周りに、ガス通路が形成される。ガス通路は、同軸伝送線の遠位端に取り付けられた円筒電極のノッチを通して、プラズマ生成領域と流体連通する。いくつかの実施例では、同軸伝送線の内側導体内に形成された通路に水が通され、そこから物体の表面上に水が噴霧された後に、物体上にプラズマが通される。
【発明の概要】
【0010】
最も一般的には、本発明は、水の存在下で熱プラズマまたは非熱プラズマを生成してヒドロキシラジカルを含む流れを提供するのに使用されるインライン流体フィードに対応した滅菌デバイスを提供する。滅菌を行うために、流れは、表面または物体に送られ得る。流体フィード(ガスフィード及び/または水フィードを含み得る)を、流れが出力される方向とインラインでデバイスに提供することにより、より強いヒドロキシラジカルの流れが得られ、よって、より広い滅菌範囲が達成され得る。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、ヒドロキシラジカルの流れを生成する滅菌デバイスが提供され、滅菌デバイスは、無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーを搬送するための同軸伝送線であって、同軸伝送線は長手方向に延在し、内側導体と、内側導体の周りに内側導体から離間して配置された外側導体とを含む同軸伝送線と、同軸伝送線の遠位端に取り付けられた端部キャップであって、遠位に面した出口開口を有する端部キャップと、同軸伝送線の遠位端の流体入口から端部キャップを通って出口開口まで長手方向に延在する流体導管と、出口開口の近位端に存在するプラズマ生成領域であって、内側導体に電気的に接続された第1の電極、及び外側導体に電気的に接続された第2の電極を含むプラズマ生成領域と、を備え、流体導管は、流体入口を通して流体を受け取ることができるフィード方向に沿ってデバイスを通る長手方向流体流路を画定し、第1の電極及び第2の電極は、プラズマ生成領域において、長手方向流体流路を横断する短手方向に互いに対向する。この構成により、流体の流れは、デバイスを通して実質的に連続的なものとなり得る。
【0012】
流体導管は、不活性ガスと水ミストとの混合物をプラズマ生成領域に供給するように構成され得る。あるいは、下記に説明されるデバイスのいくつかの実施形態または動作モードでは、不活性ガス及び水は、プラズマ生成領域に別個に供給されてもよい。例えば、流体導管は、不活性ガスのみをプラズマ生成領域に供給するように構成され得る。
【0013】
デバイスは、ヒドロキシラジカルを生成し放出するように構成され得る。デバイスは、必要に応じて任意の表面または物体を滅菌するのに容易に使用できるように、ハンドヘルドユニットとして構成されることが好ましい。具体的には、プラズマ生成領域に供給されるガスは、RF及び/またはマイクロ波周波数を使用して、熱プラズマまたは非熱プラズマを生成するのに使用され得る。例えば、内側導体及び外側導体は、受け取ったRFエネルギー及び/またはマイクロ波周波数エネルギーによる高電界を、ガス流路にわたって生成し、熱プラズマまたは非熱プラズマを発生させ維持するように構成される。例えば、RFエネルギーの短パルス(例えば10ms以下、例えば1ms~10msの持続時間を有する)を使用して、プラズマが発生され得る。プラズマを維持するために、より長いマイクロ波パルスが使用されてもよい。マイクロ波周波数エネルギーを使用して、プラズマを発生させることも可能であり得、例えば、マイクロ波共振器、またはインピーダンス変成器、すなわち動作周波数に1/4波長(またはその奇数倍)の長さである高インピーダンス伝送線を使用して、低電圧を高電圧に変換してプラズマを発生させる1/4波長変成器を使用することが挙げられる。この高インピーダンス線は、プラズマを発生させるようにスイッチが入れられ、プラズマが発生してプラズマを維持する必要があると、スイッチが外され得る(すなわちより低インピーダンス線に戻る)。2つの状態を切り替えるために、同軸スイッチまたは導波管スイッチを使用することが可能であり得るが、パワーPINまたはバラクタダイオードを使用することが好ましい。生成された熱プラズマまたは非熱プラズマは、ヒドロキシラジカルを生成するためにプラズマ生成領域に(例えば不活性ガスと組み合わせて、または別々に)同様に配送された水を、イオン化することができる。ユーザの必要に応じて表面または物体を滅菌するために、ヒドロキシラジカルが出口開口から送り出される。
【0014】
流体導管は、同軸伝送線の内側導体と外側導体との間に通路を含み得る。この構成は、小型デバイスを形成するのに有益であり得る。流体導管により搬送される不活性ガスは、よって、同軸伝送線の誘電材料を形成し得る。この構成では、例えば同軸伝送線により搬送されるマイクロ波エネルギーの半波長の間隔で、同軸伝送線内に取り付けられた複数の放射状スポークにより、内側導体は外側導体から分離され得る。
【0015】
別の実施形態では、流体導管は、同軸伝送線と平行に延びるダクトを含み得る。言い換えると、ガスは、同軸伝送線とは独立して供給され得る。
【0016】
デバイスは、例えば流体導管とは別個に、プラズマ生成領域に水を配送するように構成された水導管を含み得る。水導管は、同軸伝送線の内側導体内に形成された長手方向通路を含み得る。すなわち、同軸フィード線の内側導体は中空であり、プラズマ生成領域に水を搬送するための水導管を画定し得る。よって、流体導管は、ガスをプラズマ生成領域に搬送するように構成され得る。一実施例では、水は、内側導体を通して水ミストとして供給され得、これは、水滴がより容易にイオン化されて分散されるため、ヒドロキシラジカルの生成を促進し得る。
【0017】
水導管は、さらに、第1の電極内に形成された長手方向通路を含み得る。デバイスは、水導管の遠位端に噴霧ユニットを備え得る。噴霧ユニットは、円錐形の水ミストの噴霧を生成するように構成されたエアロゾル生成器を備え得る。遠位端でエアロゾル生成器により水ミストに変えられる水流として、水導管を通して水が搬送され得る。水ミストは、プラズマ生成領域内に直接噴霧され得る。大体積のプラズマ生成領域に水滴を確実に分散するために、エアロゾル生成器は、円錐形ミストを生成するように構成され得ることが好ましい。例えば、エアロゾル生成器は、水流の経路内に多数(例えば1つ以上、好ましくは2つ)の衝突面を備え、回転運動を誘発することにより、水の渦を生成し得、水の渦は、衝突面(複数可)に衝突する水流、並びに渦の遠心力により、水流を水滴のミストに分解する。このように内側導体を通して水流を搬送することにより、高圧で水を配送することが可能となり、ヒドロキシラジカルを生成できる速度が増加し、また、ラジカルが出口開口を通ってデバイスから吐出される時により広い領域にわたるラジカル分散が促進され得る。
【0018】
水導管は、近位入口を有し得、水導管は、近位入口を通して水を受け取ることができるフィード方向に沿ってデバイスを通る長手方向流路を画定する。すなわち、水は、内側導体の長手方向軸に平行な水導管に供給され得、これにより、より高い圧力で水がデバイスに配送されることが可能となり得る(例えばある角度で内側導体に接続された水フィードと比較して)。同じ理由から、水導管はその長さに沿って実質的に直線であることが特に好ましい。
【0019】
第1の電極は、内側導体の遠位端から長手方向に突出した導電性ロッドであり得、ロッドの直径は、内側導体の直径よりも小さい。第1の電極が水を搬送する場合、水導管を通る水の速度は、噴霧ユニットに到達するまでにロッドを通して加速され、さらに水ミスト及びヒドロキシラジカルの分散が促進され得る。
【0020】
プラズマ生成領域は、出口開口の近位領域に配置され得る。端部キャップは、その遠位端面に出口開口を有した略円筒形の導電性素子を備え得る。端部キャップは、同軸伝送線の内側導体が外側導体の遠位端を越えて突出する内部体積を画定し得る。端部キャップは、外側導体に電気的に接続され得る。出口開口の直径は、内部体積の直径より小さくあり得る。
【0021】
第2の電極は、端部キャップと一体的に形成され得る。一実施例では、第2の電極は、出口開口の側壁から内側へ延在する複数の放射状タブを備える。
【0022】
滅菌デバイスは、例えば第2の電極を越えて、プラズマ生成領域から遠位に、出口開口に取り付けられた絶縁管を、さらに備え得る。絶縁管(例えば石英などから作られた)は、プラズマ生成領域を越えて出口開口に望ましくないプラズマが発生することを防ぎ得る。
【0023】
インライン流体フィードの空間を作るために、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーは、1つ以上の短手方向フィードを介して、同軸伝送線に供給され得る。
【0024】
例えば、デバイスは、同軸伝送線にRFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを導入するために接続された短手方向同軸フィードを、同軸伝送線の近位領域に備え得る。短手方向同軸フィードは、マイクロ波エネルギーを同軸伝送線内に連結するように構成され得、短手方向同軸フィードは、同軸伝送線の近位端から距離
【0025】
【0026】
の位置にある同軸伝送線上の点に接続され、nは正の整数であり、λは同軸伝送線により搬送されるマイクロ波エネルギーの波長である。
【0027】
デバイスは、例えばプラズマ発生を容易にするために、プラズマ生成領域にRFエネルギーを直接導入するように接続された近位短手方向同軸フィードをさらに備え得る。近位短手方向同軸フィードは、プラズマ生成領域で第1の電極と第2の電極との間の空間に突出する微細電極を備え得る。
【0028】
デバイスは、同軸伝送線の近位端に取り付けられたチョークを備え得る。
別の態様では、滅菌装置が提供され得、滅菌装置は、前述の滅菌デバイスと、プラズマ生成領域に水を供給するように接続された水供給部と、流体導管を介してプラズマ生成領域にガスを供給するように接続されたガス供給部と、無線周波数(RF)電磁エネルギー及び/またはマイクロ波周波数電磁エネルギーをプラズマ生成領域に供給するように接続されたジェネレータと、を備える。RF EMエネルギーは、プラズマを発生させるためのものであり得、高電圧パルスとして受け取られ得る。マイクロ波EMエネルギーは、プラズマを維持するため、すなわち電力をプラズマに送り込んでイオン化の状態を維持するためのものであり得る。これも、パルスとして受け取られ得る。プラズマは、プラズマの準連続ビームを生成するように、繰り返し打たれ得る。滅菌デバイスには水が供給されるため、装置はいずれの化学洗浄剤も使用する必要がなく、よって、本装置を使用した滅菌では、有害な副産物は発生しない。
【0029】
特定の実施形態では、水供給部は、高圧で水流を供給するために、ポンプを備え得る。これは、ハンドヘルド滅菌デバイスが同軸フィード線の内側導体を通る水導管を備える場合に、特に好ましくあり得る。
【0030】
他の実施形態では、水供給部は、ミスト生成器を備え得る。例えば、ミスト生成器は、超音波振動子または加熱素子のいずれかを備え得る。このようにして、ミスト生成器は、水からヒドロキシラジカルを生成するハンドヘルド滅菌デバイスに、ミスト(例えば湿気または霧)を供給し得る。このような構成は、ガスと水の混合物が、同軸フィード線の外側導体内に形成された流体導管を通って搬送される構成において、特に好ましくあり得る。ガス供給部は、ミスト生成器を介してハンドヘルド滅菌デバイスにガスを供給するように接続され得ることが好ましい。このようにして、ガス供給部は、ハンドヘルド滅菌デバイスを通るミストの流れを加圧して、ヒドロキシラジカルの高速生成を確保し、デバイスからのラジカル分散を促進し得る。
【0031】
ガスの流速は、1.5~15リットル/分の範囲であり、2~6リットル/分が好ましくあり得る。水供給部は、少なくとも体積率2%のガス/水混合流を形成するのに十分な噴霧またはミストを生成ように構成され得る。ガスの流速は、混合流中のガスと水が所望の割合に達するように制御され得る。
【0032】
ガス供給部は、アルゴンガスの供給部であることが好ましい。しかしながら、他の任意の適切なガス、例えば二酸化炭素、ヘリウム、窒素、空気とこれらのガスのうちのいずれか1つの混合物、例えば10%空気/90%ヘリウムが、選ばれてもよい。
【0033】
有利なことに、ジェネレータは、携帯可能であるように、電池により電力供給され得る。水供給部及びガス供給部も、ユーザが滅菌装置を容易に操作でき、いずれの必要な環境でも容易に滅菌を行うことができるように、携帯可能であることが好ましい。
【0034】
本明細書において、用語「内側」とは、同軸ケーブル、プローブ先端、及び/またはアプリケータの中心(例えば軸)に、半径方向により近いことを意味する。用語「外側」は、同軸ケーブル、プローブ先端、及び/またはアプリケータの中心(軸)から、半径方向により遠いことを意味する。
【0035】
本明細書では、用語「導電性」は、文脈による別段の指示がない限り、電気伝導性という意味で使用される。
【0036】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」は、アプリケータの端部を指す。使用時、近位端は、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを供給するジェネレータにより近く、一方、遠位端は、ジェネレータからより遠い。
【0037】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を示すように広範に使用されるが、1GHz~60GHzの範囲が好ましくあり得る。検討された具体的な周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び25GHzである。対照的に、本明細書では、「無線周波数」すなわち「RF」を使用して、少なくとも3桁小さい周波数範囲、例えば最大300MHzを示すが、好ましくは10KHz~1MHzであり、最も好ましくは400KHzである。送られるマイクロ波エネルギーを最適化できるように、マイクロ波周波数は調整され得る。例えば、プローブ先端は、特定の周波数(例えば900MHz)で作動するように設計され得るが、使用時に最も効率的な周波数は異なり得る(例えば866MHz)。
【0038】
ここで、本発明の特徴が、下記に提供される本発明の実施例の詳細説明において、添付図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態による、滅菌装置の概略図である。
【
図2】本発明の実施形態による、アプリケータの断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態による、アプリケータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
さらなる選択肢及び選好
本発明は、水ミストの存在下でプラズマを作り出すことにより生成されるヒドロキシラジカルを使用して、滅菌を実行するためのデバイスに関する。
【0041】
図1は、本発明の実施形態である滅菌装置100の概略図である。装置100は、表面または領域を滅菌するために、ヒドロキシル(OH)ラジカルを生成することができる。例えば、装置100は、医療装置または病院の病床スペースを滅菌するために使用され得る。
【0042】
装置100は、滅菌デバイスに無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを制御可能に配送することができるジェネレータ102を備え、滅菌デバイスは、本明細書ではアプリケータ104と称され、ハンドヘルドユニットであることが好ましい。
【0043】
ジェネレータ102は、例えば特許文献WO2012/076844に開示されるタイプのものであり得る。ジェネレータ102は、同軸ケーブル106によりアプリケータ104に接続される。同軸ケーブル106は、内側導体と、外側導体と、内側導体を外側導体から分離する誘電材料とを備える。同軸ケーブル106は、QMAコネクタなどを介してエネルギーをアプリケータ104内に連結し得る。いくつかの実施例では、ジェネレータ102は、アプリケータ104に伝達すべき好適な信号を特定するために、アプリケータ104から返され受信した反射信号(すなわち反射電力)を監視するように構成され得る。下記でより詳しく説明される方法でヒドロキシラジカルを生成するために、アプリケータ104で無線周波数及び/またはマイクロ波エネルギーを利用して、熱プラズマまたは非熱プラズマが生成され維持される。
【0044】
いくつかの実施例では、熱プラズマまたは非熱プラズマは、アプリケータから放出され、表面を滅菌するために直接使用可能であり得る。
図1に示される装置では、単一のジェネレータ102は、RF EMエネルギー及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーを供給するように構成される。しかし、本発明のいくつかの実施形態では、装置は、RF EMエネルギージェネレータ及びマイクロ波EMエネルギージェネレータを、個々の構成要素として備えてもよく、これらは、各自の同軸ケーブルによりアプリケータ104にそれぞれ接続される。
【0045】
装置100は、アプリケータ104に水を配送するように構成された水供給部108をさらに備える。一実施例では、水は、水流として供給され得、これは、アプリケータ104から放出される噴霧(例えば細かい水滴のシャワー)を形成するように構成され得る。別の実施例では、水は、水ミスト(例えば霧の湿気)として供給され得る。よって、水供給部108は、ミスト生成器を備え得る。ミスト生成器は、例えば、超音波振動子によりミストを生成し得る。あるいは、ミスト生成器は、水を加熱して、アプリケータ104に渡される蒸気またはミストを生成するように構成されてもよい。ミスト生成器は、生成されたミストをアプリケータ104に向かって流すポンプまたは他の流体駆動ユニットを含み得る。下記でより詳しく説明されるプロセスによりヒドロキシラジカルを生成するために、水がアプリケータ104に供給される。このように水を利用することにより、装置100を使用して、いずれの洗浄化学製品も使用せずに表面または物体を滅菌することができ、滅菌に伴うコストは削減され、洗浄化学製品が不足している時に滅菌を実行することが可能となる。滅菌にヒドロキシラジカルを使用することにより、有害な副産物が出ないことも確保される。
【0046】
下記に説明される方法でヒドロキシラジカルを生成するのに使用されるプラズマを形成するために、ガス供給部110は、アプリケータ104に接続されて、ガスを供給する。ガス供給部110は、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、またはこれらの組み合わせといった、非熱プラズマまたは熱プラズマを形成するのに適した任意の不活性ガスの加圧供給部であり得る。ガス供給部110は、アプリケータ104に配送されるガスの流速調整が可能なように構成され得る。ガス供給部は、例えば毎分1.5~15リットルのガスを供給し得る。
【0047】
ガス供給部110及び水供給部108は、共通のフィード線によりアプリケータ104に接続され得る。すなわち、ガス供給部110からの出力と水供給部108からの出力は、これらがアプリケータ104に到達する前に、結合され得る。この構成は、水供給部108がミスト生成器を含む実施例において、特に適切であり得る。ガス供給部110からのガスの流れは、水供給部108からの水ミストを取り込んで、アプリケータ104に供給されるミスト/ガス混合流を生み出し得る。ミスト/ガス混合流は、単一の流体導管を通してアプリケータ104に配送され得る。あるいは、ガス供給部110及び水供給部108は、水及びガスを配送する別個の流れを提供してもよい。別個の流れは、結合導管内に提供され得る。例えば、ガスをアプリケータ104に搬送するための導管は、T字形接合部を備え、これにより導管内への水供給が可能となり得る。あるいは、
図1に示されるように、ガス供給部110及び水供給部108は、アプリケータ104に別個に接続される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、ジェネレータ102(または存在する場合は複数のジェネレータ)、ミスト生成器108、及びガス供給部110は、それぞれ携帯可能であり得、アプリケータ104は、ハンドヘルドアプリケータであり得ることが想定され、よって、本発明は、ユーザにより容易に移動可能な効果的な滅菌装置を提供する。例えば、ジェネレータ102は、電池などにより電力供給され得る。
【0049】
アプリケータ104の実施例は、
図2及び
図3により詳しく示される。表面を滅菌するために、ガス供給部110から配送されたガスに、ジェネレータ102からのエネルギーをあてることにより、アプリケータ104内にプラズマが生成される。例えば、RFエネルギーを使用してプラズマを発生させることができ、マイクロ波エネルギーを使用してプラズマを維持することができる。例えば、特許文献WO2009/060213A1に開示されるように、プラズマは生成され得る。プラズマの発生と同時に、水供給部108からの水が、アプリケータ104内のヒドロキシラジカル生成領域に送られ、プラズマは、水をイオン化してヒドロキシラジカルの噴霧112を生成し、生成された噴霧112は、アプリケータ104から排出され、滅菌対象の表面または領域内に送られる。この方法でのヒドロキシラジカル生成の実施例は、例えば特許文献WO2009/060214A1に開示される。
【0050】
アプリケータ104は、任意の適切な寸法で作製され得る。例えば、アプリケータは、人間の手で握れる大きさに合わせて作られ得る。あるいは、スタンドに取り付けるのに適した拡大版が製造されてもよい。使用時、アプリケータにより放出されるプラズマ及び/またはOHラジカルの流れは、例えば車両(例えば救急車)または病院の病床室もしくは手術室の内部といった、滅菌対象の体積内に送られ得る。
【0051】
図2は、本発明の第1の実施形態であるアプリケータ200の断面図を示す。
図2には示されないが、アプリケータ200は、概して細長い筐体内に収容され得、これにより、ユーザは滅菌対象の表面または物体にわたりアプリケータ200を通すことが可能となる。特に好ましい実施形態では、アプリケータ200は、手動制御を容易にするハンドヘルドユニットであり得る。
【0052】
アプリケータ200は、エネルギー配送構造を、無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーを搬送する同軸伝送線201の形態で備える。同軸伝送線201は、内側導体202と、内側導体202から離間した外側導体204とを備えて、これらの間に環状領域219を画定する。例えば、好ましい実施形態では、適切な間隔を設けるために、内側導体202は3mmの外径を有し得、外側導体204は7mmの内径を有し得る。内側導体202と外側導体204との間隔は、隙間に配置された半径方向に延在するスペーサ(図示せず)により維持され得、例えば、スペーサは、PTFE製のスポークまたはスポークディスクであり得る。
【0053】
遠位先端203は、同軸伝送線201の遠位端に取り付けられる。遠位先端203は、同軸伝送線201の外側導体204に電気的に接続された導電性構造である円筒形キャップ213を備える。この実施形態では、円筒形キャップ213は、外側導体204の外面に重なって接触する近位領域を有する。円筒形キャップ213は、内部体積215を画定する。同軸伝送線201の内側導体202は、外側導体204の遠位端を越えて内部体積内に突出する。円筒形キャップ213は、その遠位端に出口開口217を有する。内部体積215は、出口開口217を通して外部環境と流体連通する。この実施例では、絶縁管214(例えば石英などから形成される)が出口開口に取り付けられ、よって、内部体積215は、絶縁管214により形成される通路を通して外部環境と連通する。
【0054】
内側導体202は中空であり、近位入口207から遠位先端203内の内部体積215まで同軸伝送線201に沿って水を搬送する水導管206を形成する。水流が内側導体202の長手方向軸と平行になるように、水入力パイプ209を介して水流が近位入口207に供給される。この構成は、水導管206に湾曲または屈曲がないため、高速水流が可能となる。水入力パイプ209は、
図1に関して前述されたように、ポンプまたは他の水供給部から水を受け取る。
【0055】
内側導体202と外側導体204との間の環状領域219は、内部体積215にガスを搬送するための流体導管208を形成する。ガスは、
図1に関して前述されたように、ガス供給部に接続されたガス入力パイプ211を通して流体導管208に配送される。
【0056】
アプリケータ200は、ガスと水ミストとの混合物を、流体導管208を通して搬送することにより、作動し得ることも想定される。必要に応じて水導管206を通して水を同時に供給することができるが、このような作動では、水導管206を通して水を配送する必要はない。
【0057】
短手方向同軸フィード220を介して同軸伝送線201に、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーが供給される。短手方向同軸フィード220は、同軸伝送線201の近位端に向かって配置された位置で、同軸伝送線201内にRFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを連結する。同軸伝送線201がRFエネルギーを搬送できるように、同軸伝送線201は、その近位端を開路状態にする(すなわち内側導体202及び外側導体204は互いに絶縁された状態が保持される)。この同軸伝送線201内へのマイクロ波エネルギーの効率的な連結を確保するために、短手方向同軸フィードは、マイクロ波エネルギーが同軸伝送線201上を伝搬する時、マイクロ波エネルギーの1つ以上の半波長に等しい距離分、同軸伝送線の近位端から離れて配置されることが好ましい。
【0058】
短手方向同軸フィード220は、コネクタ210を有し、これは、
図1に関して前述されたようにジェネレータからRFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを搬送する同軸ケーブルに、取り外し可能に接続できる。例えば、コネクタ210は、QMA、SMA、またはNコネクタなどを含み得る。
【0059】
マイクロ波エネルギーが同軸伝送線201の近位端を通って流れるのを防ぐために、同軸伝送線201の近位端にチョーク212が接続される。この実施例では、ダブルチョーク構成が使用される。チョーク212には、チョーク212を貫通する長手方向通路が設けられ、長手方向通路は、水入力パイプ209を収容し、ガス入力パイプ211と環状領域219との間の流体連通を提供する。
【0060】
前述のように、円筒形キャップ213は、その遠位端が開いており、出口開口217内に配置された絶縁管214を有する。絶縁管214の近位領域は、プラズマ生成ゾーン205を画定する。内側導体202に電気的に接続された第1の電極218は、プラズマ生成ゾーン205内に延在する。この実施例では、第1の電極218は、内側導体202の遠位端から突出する中空の導電性ロッドである。ロッドは、内側導体202の外径よりも小さい外径を有する。水導管206は、第1の電極218を貫通する長手方向通路と流体連通し得る。長手方向通路は、その水導管206よりも小さい直径を有し得、よって、長手方向通路内の水流速度は水導管206と比べて高くなり、すなわちプラズマ生成領域205に向かって水が加速する。
【0061】
長手方向通路の遠位端に、噴霧ノズルが取り付けられる。噴霧ノズルは、水流が長手方向通路を出る際に水流に渦運動を与えるように構成された渦流室を備え得、これにより、水滴または水ミストの円錐がプラズマ生成領域205に導入される。
【0062】
第2の電極221は、絶縁管214の近位端で出口開口217の側面に形成された1つ以上の半径方向に突出した導電性タブにより提供される。従って、同軸伝送線201に供給されるエネルギーは、プラズマ生成ゾーン205内の第1の電極218と第2の電極221との間に高電圧状態を生じ、これにより、流体導管208を通して供給されるガスからプラズマを発生させることができる。プラズマは、RFエネルギーのパルスにより生成され、その後、後続のマイクロ波EMパルス(複数可)により維持され得る。他の実施形態では、RF EMエネルギーまたはマイクロ波EMエネルギーのいずれかのみを使用して、プラズマを発生させ及び/または維持することができる。
【0063】
第2の電極を別個のタブとして形成することの利点は、円筒形キャップ内のインピーダンスへの影響が少なく、よって装置を通してエネルギーの効率的な連結が促進されることである。
【0064】
導電性タブは、出口開口217の周りに均等に配置され得る。例えば、対向する2つの導電性タブ、または出口開口の周りに90°の間隔で配置された4つの導電性タブが存在し得る。導電性タブは、同軸伝送線の内側導体及び外側導体に接続された導電性素子の間で、優先的にアーク放電が発生する場所を提供する。すなわち、アーク放電、従ってプラズマ生成が、第1の電極218と第2の電極221との間で優先的に発生する。プラズマを発生させ維持する電界強度を達成するために、第1の電極218及び第2の電極221の相対的な寸法が、プラズマ生成領域に供給される電力に関連して選択される。ガスがアルゴンの場合、絶縁破壊に必要な電界強度は、例えば600Vmm-1であり得る。例えば、第1の電極218は、0.5mmの外径を有し得、第2の電極221は、1mm以下の距離分、第1の電極218から半径方向に離間され得る。
【0065】
絶縁管214は、プラズマ生成ゾーン205を越えて出口開口217の側面を覆い、第1の電極及び第2の電極から離れた場所での望ましくないアーク放電を回避する。
【0066】
プラズマは、ガス入力パイプ211からのガス流の方向により、絶縁管214の遠位端の外へ自然に配向され得る。
【0067】
一方、中空の内側導体202は、水導管206を介して水またはミストを第1の電極218内の長手方向通路に搬送し、噴霧としてプラズマ生成ゾーン205へ送り込む。ここで、プラズマが水分子をイオン化してヒドロキシラジカルを生成し、これがアプリケータ200から流出する。絶縁管214には、アプリケータから排出されるガスの速度を増加させるように出口開口217を狭める内径が選ばれ得る。これにより、滅菌対象の領域にわたるヒドロキシラジカルの分散が促進され得る。例えば、絶縁管214は、10mmの外径及び8mmの内径を有し得る。
【0068】
上記で説明されたように、一実施例では、第1の電極218自体は、水導管206の遠位部分を形成する中空管である。第1の電極は、その遠位先端にエアロゾル生成器、すなわち水導管206を通して提供される水流から細かい液滴を生成するように構成された噴霧ヘッドを有し得る。例えば、エアロゾル生成器は、プラズマ生成ゾーン205に送り込まれる水ミストの円錐噴霧を生成するように構成され得る。
【0069】
しかし、別の実施形態では、アプリケータ200は、ガスと水ミストの混合物を、入口211を通して、及び流体導管208を通して配送することにより、作動し得る。この構成では、内側導体202及び第1の電極218は、中空である必要はない。このように作動する場合、前述とほぼ同じ方法で、プラズマ生成ゾーン205でプラズマが生成され、水分子をイオン化し、ヒドロキシラジカルを提供し得る。
【0070】
図3は、本発明の別の実施形態であるアプリケータ300を示す。
図2に関して前述されたアプリケータ200に対応するアプリケータ300の特徴は、同じ参照番号を与えられ、再度説明されない。
【0071】
アプリケータ300では、同軸伝送線201の長手方向軸に対して短手方向に取り付けられた2つのフィード302、304を使用して、エネルギーがアプリケータ300内に連結される。第1のフィード302は、同軸伝送線201の近位端に向かって接続される。第1のフィード302は、同軸伝送線201内にマイクロ波周波数EMエネルギーを連結するように構成された同軸フィード線である。この実施例では、同軸伝送線201の近位端は短絡状態である(すなわち内側導体202は外側導体204に電気的に接続されている)。次に、第1のフィード302は、同軸伝送線201の近位端から(マイクロ波周波数の)1つまたは奇数倍の1/4波長の距離に配置される。例えば、5.8GHzのマイクロ波周波数の場合、同軸伝送線201の近位端から約13mmの距離に、第1のフィード302は配置され得る。
【0072】
第2のフィード304は、アプリケータ300の遠位端に設けられ、円筒形キャップ213の側壁を通ってプラズマ生成ゾーン205に入る。第2のフィード304は、プラズマ生成ゾーン205内にRF EMエネルギーを連結するように構成された同軸フィード線である。第2のフィード304がマイクロ波エネルギーを連結し出すことを回避するために、第2のフィード304は、同軸伝送線201の近位端の短絡状態から1つ以上の1/2波長の位置に配置されることが望ましい。
【0073】
第2のフィード304は、プラズマ生成ゾーン205内で熱プラズマまたは非熱プラズマを発生させることができる電圧を有するRFパルスを配送するためのイグナイタとして構成され得る。第2のフィード304は、確実にプラズマが正しい場所で生成されるように、プラズマ生成ゾーン205内に突出するプラズマ生成電極314を備える。
【0074】
第1のフィード302及び第2のフィード304は、異なる供給源から、またはRF信号とマイクロ波信号の両方を生成するように構成されたジェネレータからの別個のフィードを介して、マイクロ波エネルギー及びRFエネルギーをそれぞれ受信し得る。
【0075】
この実施例では、アプリケータ300は、同軸伝送線201に平行なガスダクト306を備える。
図1を参照して前述されたように、ガス供給部からガスダクト内にアルゴンなどのガスが供給される。遠位端にて、ガスダクト306は、円筒形キャップ203の近位端で同軸伝送線201を囲むチャンバ308内にガスを送る。ガスは、チャンバ308から、円筒形キャップ203の近位端面に形成されたいくつかの開口310a、310bを通って、円筒形キャップ203の内部体積215に流れ込む。内部体積215におけるガスの均等分布を確保するために、開口310a、310bは、同軸伝送線201の周りに半径方向に離間される。
【0076】
図2に示される構成のように、同軸伝送線201の内側導体202は、中空であり、水導管206が設けられる。内側導体202は、外側導体204の遠位端を越えて、内部体積215内に突出する。内側導体202の遠位部分、及び円筒形キャップ213により設けられる包囲環状導体は、第1の電極及び第2の電極をそれぞれ提供し、これにより、同軸伝送線201からのマイクロ波エネルギーが、プラズマ生成ゾーン205で形成されるプラズマに連結される。よって、プラズマが、第2のフィード304からのRFパルスを使用して生成され、第1のフィード302からのマイクロ波エネルギーにより維持され得る。
【0077】
内側導体202の遠位端内に、エアロゾル生成器312が配置される。エアロゾル生成器312は、プラズマ生成ゾーン205内で水ミストの円錐噴霧を生成するように構成される。滅菌用のヒドロキシラジカルを生成するために、水導管206を通して水が送られ、エアロゾル生成器312から外へ送り出される水ミストが生成される。同時に、ガスダクト306から流体導管208へガスが送り込まれ、ガスの流れもプラズマ生成ゾーン205を通過することが確保される。ガスから熱プラズマまたは非熱プラズマを発生させるために、第2のフィード304を通してRFパルスが配送される。プラズマは、第1のフィード302から同軸伝送線201に供給されるマイクロ波EMエネルギーのパルス(複数可)を使用して、維持される。このようにして生成されたプラズマは、水ミスト内の水分子をイオン化して、ヒドロキシラジカルの噴霧を生成し、ヒドロキシラジカルの噴霧は、プラズマ生成ゾーン205から出口216を通って、滅菌対象の領域へ排出される。
【0078】
前述の説明、または下記の特許請求の範囲、または添付図面で開示され、特定の形態で表された、すなわち必要に応じて、開示される機能を実行するための手段、または開示される結果を得るための方法もしくはプロセスに関して表された特徴は、本発明を多様な形態で実現するために、別々に、またはかかる特徴を任意に組み合わせて、利用されてもよい。
【0079】
本発明は前述の例示的な実施形態と併せて説明されたが、本開示が当業者に与えられた場合、多くの均等の変更形態及び変形形態が当業者には明らかであろう。従って、上記で説明された本発明の例示的な実施形態は、例示的であり限定的ではないとみなされる。説明された実施形態に対し、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われてもよい。
【0080】
疑義を避けるために、本明細書に提供される理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。
【0081】
下記の請求項を含む本明細書の全体を通じて、文脈上別異の解釈を要さない限り、用語「~を有する(have)」、「~を備える(comprise)」、及び「~を含む(include)」、並びに「~を有する(having)」、「~を備える(comprises)」、「~を備える(comprising)」、及び「~を含む(including)」などの変形は、記載された構成要素もしくはステップ、または構成要素群もしくはステップ群の包含を示唆するが、いずれの他の構成要素もしくはステップ、または構成要素群もしくはステップ群の除外も示唆しないことが理解されよう。
【0082】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段に示されない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。範囲は、「約」ある特定値から、及び/または「約」別の特定値までとして、本明細書では表され得る。このような範囲が表される場合に、別の実施形態は、ある特定値から及び/または別の特定値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により、値が近似として表される場合、特定値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関連する用語「約」とは、任意であり、例えば±10%を意味する。
【0083】
本明細書で使用される用語「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」は、いくつかの状況下で特定の利点を提供し得る本発明の実施形態を指す。しかし、同じまたは異なる環境下では、他の実施形態が好ましい場合もあることを理解されたい。従って、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを意味または示唆するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲または特許請求の範囲から除外することを意図するものではない。
【国際調査報告】