(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】プラズマ及びヒドロキシラジカルを生成する滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/14 20060101AFI20230531BHJP
H05H 1/30 20060101ALI20230531BHJP
H05H 1/32 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
A61L2/14
H05H1/30
H05H1/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022566294
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021061331
(87)【国際公開番号】W WO2021219820
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ,デイビッド・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンズ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】プレストン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】メドウクロフト,サイモン
【テーマコード(参考)】
2G084
4C058
【Fターム(参考)】
2G084AA24
2G084AA25
2G084CC34
2G084CC35
2G084DD18
2G084DD42
2G084FF02
2G084FF14
2G084GG02
2G084GG04
2G084GG07
4C058AA12
4C058AA23
4C058AA28
4C058BB06
4C058EE03
4C058KK06
(57)【要約】
本発明は、臨床使用に適した滅菌システムに関する。具体的には、滅菌デバイスが提供され、滅菌デバイスは、水ミストを受け取るための入口と、滅菌対象領域に向かってヒドロキシラジカルの流れを送り出す出口との間に、水ミスト流体流路を画定する筐体と、熱プラズマまたは非熱プラズマを生成するように構成されたエネルギー配送先端部と、無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーを搬送するように配置された同軸伝送線と、エネルギー配送先端部へガスを配送するように配置された筐体内のガス導管と、を備え、エネルギー配送先端部は、同軸伝送線の遠位端から延在する。エネルギー配送先端部は、同軸伝送線の内側導体に電気的に接続された第1の電極と、同軸伝送線の外側導体に電気的に接続された第2の電極と、を備える。第2の電極は、エネルギー配送先端部の内部体積を画定し、第1の電極は、内部体積内で長手方向に延在する。第1の電極及び第2の電極は、エネルギー配送先端部に配送されたガスの中でプラズマを生成し、水ミスト流体流路内にプラズマを送り込んで、そこでヒドロキシラジカルを形成するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシラジカルの流れを生成する滅菌デバイスであって、前記滅菌デバイスは、
水ミストを受け取るための入口と、滅菌対象領域に向かってヒドロキシラジカルの流れを送り出す出口との間に、水ミスト流体流路を画定する筐体と、
熱プラズマまたは非熱プラズマを生成するように構成されたエネルギー配送先端部と、
前記筐体に取り付けられた同軸伝送線であって、前記エネルギー配送先端部へ無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーを搬送するように構成された前記同軸伝送線と、
前記筐体に取り付けられたガス導管であって、前記エネルギー配送先端部へガスを配送するように構成された前記ガス導管と、
を備え、
前記同軸伝送線は、内側導体と、外側導体と、前記内側導体を前記外側導体から分離する誘電材料とを有し、
前記エネルギー配送先端部は、前記同軸伝送線の遠位端から延在し、
前記エネルギー配送先端部は、
前記同軸伝送線の前記内側導体に電気的に接続された第1の電極と、
前記同軸伝送線の前記外側導体に電気的に接続された第2の電極と、
を有し、
前記第2の電極は、前記エネルギー配送先端部の内部体積を画定するように構成され、前記第1の電極は、前記内部体積内で長手方向に延在し、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、
前記エネルギー配送先端部に配送された前記ガスの中で、プラズマを発生させ、
前記水ミスト流体流路内に前記プラズマを送り込んで、そこでヒドロキシラジカルを形成する
ように構成される、前記滅菌デバイス。
【請求項2】
前記エネルギー配送先端部は、前記筐体内に配置される、請求項1に記載の滅菌デバイス。
【請求項3】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記内部体積からの流出口を画定し、前記流出口は前記出口に、または前記出口内に配置される、請求項2に記載の滅菌デバイス。
【請求項4】
前記第1の電極は、前記外側導体の遠位端を越えて延在する前記内側導体の長さから形成される、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項5】
前記第1の電極は、前記第2の電極の遠位端を越えた所に取り付けられた導電性端部キャップを備え、前記導電性端部キャップは、前記プラズマを横手方向に前記水ミスト流体流路の中へ偏向するように構成される、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項6】
前記水ミスト流体流路は、前記出口に向かって先細りした形状を有する、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項7】
前記エネルギー配送先端部は、前記内部体積から前記同軸伝送線を絶縁するために前記同軸伝送線の遠位端に取り付けられた絶縁キャップをさらに備え、
前記ガス導管は、前記絶縁キャップと前記第2の電極との間に形成された流路を含む、
いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項8】
前記絶縁キャップは、前記第2の電極内に取り付けられ、前記流路は、前記絶縁キャップの周りでガスが流れることを可能にする複数の開口部を前記第2の電極に有する、請求項7に記載の滅菌デバイス。
【請求項9】
前記第2の電極は円筒であり、前記複数の開口部はそれぞれ、前記円筒にノッチを備える、請求項8に記載の滅菌デバイス。
【請求項10】
前記第2の電極の近位端は、前記複数の開口部を提供するようにキャスタレートされる、請求項9に記載の滅菌デバイス。
【請求項11】
前記エネルギー配送先端部は、前記内部体積内において前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された絶縁性誘電材料を有する、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項12】
前記誘電材料は石英である、請求項11に記載の滅菌デバイス。
【請求項13】
前記筐体は、ハンドヘルドユニットとして構成される、いずれかの先行請求項に記載の滅菌デバイス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の滅菌デバイスと、
ミスト生成器と、
ガス供給部と、
無線周波数(RF)電磁エネルギー及び/またはマイクロ波周波数電磁エネルギーを前記滅菌デバイスに供給するジェネレータと、
を備える、滅菌装置。
【請求項15】
前記ミスト生成器は、
超音波振動子、または
加熱素子
のいずれかを含む、請求項14に記載の滅菌装置。
【請求項16】
前記ガス供給部は、アルゴンガスの供給部である、請求項14または15に記載の滅菌装置。
【請求項17】
前記ジェネレータは、電池により電力供給される、請求項14~16のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人体、医療装置、または病院の病床スペースでの臨床使用に適した滅菌システムに関する。例えば、本発明は、人間もしくは動物の生体系及び/または周囲環境に伴う特定の細菌及び/またはウイルスを破壊または治療するのに使用できるシステムを提供し得る。本発明は、閉鎖空間または部分的閉鎖空間を滅菌または除染するのに、特に有用である。
【背景技術】
【0002】
細菌は、単細胞生物であり、ほぼどこでも見つかり、多数存在し、急速に分裂及び増殖することができる。ほとんどの細菌は無害であるが、3つの有害なグループ、すなわち球菌、螺旋菌、及び桿菌が存在する。球菌は丸い細胞、螺旋菌は螺旋状の細胞、及び桿菌は棒状の細胞である。有害な細菌は、破傷風及び腸チフスなどの病気を引き起す。
【0003】
ウイルスは、他の細胞を乗っ取ることによってのみ生き延び増殖することができ、すなわち、自力で生存することはできない。ウイルスは、風邪、インフルエンザ、おたふく風邪、及びエイズなどの病気を引き起こす。ウイルスは、人と人との接触を介して、または感染者からの呼吸飛沫もしくはその他のウイルス含有体液で汚染された領域との接触を介して、うつされ得る。
【0004】
真菌胞子及び原生動物と称される小さな生物が、病気を引き起こす場合もある。
滅菌とは、あらゆる形態の生物、特に微生物を、破壊または排除する行為またはプロセスである。プラズマ滅菌のプロセス中、活性物質が生成される。これらの活性物質は、化学的不対電子を有する原子または原子集合体である強力紫外線光子及びフリーラジカルである。プラズマ滅菌の魅力的特徴は、体温などの比較的低温で滅菌を実現できることである。プラズマ滅菌には、操作者及び患者に安全であるという利点もある。
【0005】
プラズマは通常、帯電した電子及びイオン、並びにオゾン、亜酸化窒素、及びヒドロキシラジカルなどの化学活性種を含む。ヒドロキシラジカルは、空気中の汚染物質を酸化するのに、オゾンよりもはるかに効果的であり、殺細菌力と殺真菌力が塩素よりも数倍高いことから、細菌またはウイルスを破壊することにおいて、及び閉鎖空間に含まれる物体、例えば病院環境に関連する物体またはアイテムの効果的な除染を実行することにおいて、非常に興味深い候補となる。
【0006】
水の「高分子」内に保持されるOHラジカル(例えば霞または霧の中の液滴)は、数秒間は安定性があり、同等濃度の従来の殺菌剤よりも1000倍効果的である。
【0007】
Baiらによる「Experimental studies on elimination of microbial contamination by hydroxyl radicals produced by strong ionisation discharge」と題された記事(Plasma Science and Technology、10巻、4番、2008年8月)では、微生物汚染の除去に、強力なイオン放電により生成されたOHラジカルを使用することが検討されている。この研究では、E. Coli及びB.subtilisに対する滅菌効果が検討されている。107cfu/ml(cfu=コロニー形成単位)の濃度の細菌懸濁液が用意され、マイクロピペットを使用して、液体状の細菌10μlが、12mm×12mmの滅菌ステンレス鋼プレートに移された。プレート上に細菌液が均一に広げられ、乾燥可能な状態に90分間置かれた。次に、プレートは無菌ガラス皿に入れられ、一定濃度のOHラジカルがプレートに噴霧された。この実験的研究の結果は、次のとおりである。
【0008】
1.OHラジカルは、細胞に不可逆的な損傷を引き起こし、最終的に細胞を死滅させるのに使用できる。
【0009】
2.微生物を除去するための閾値電位は、国内外で使用される殺菌剤の1万分の1である。
【0010】
3.OHによる生化学反応はフリーラジカル反応であり、微生物を除去する生化学反応時間は約1秒であり、これは、微生物汚染の迅速な除去というニーズを満たし、死滅時間は、現在の国内及び国外の殺菌剤の約1000分の1である。
【0011】
4.OHの致死密度は、他の殺菌剤の噴霧密度の約1000分の1であり、これは、広い空間、例えば病床スペースの領域で、効率よく迅速に微生物汚染を除去するのに役立つ。
【0012】
5.OHの霞または霧の液滴は、細菌をCO2、H2O、及びミクロ無機塩に酸化する。残りのOHもH2O及びO2に分解されるため、この方法は公害を出さずに微生物汚染を除去する。
【0013】
特許文献WO2009/060214は、ヒドロキシラジカルを生成及び放出するように制御可能に構成された滅菌装置を開示する。装置は、ヒドロキシルラジカル生成領域でRFエネルギーまたはマイクロ波エネルギー、ガス、及び水ミストを受け取るアプリケータを含む。水ミストが存在する場合にヒドロキシラジカルを生成するイオン化放電の生成を促進するために、ヒドロキシラジカル生成領域のインピーダンスは、高くなるように制御される。アプリケータは、同軸アセンブリまたは導波管であり得る。例えばアプリケータに統合された動的同調機構は、ヒドロキシラジカル生成領域でのインピーダンスを制御し得る。ミスト、ガス、及び/またはエネルギーの配送手段は、互いに一体化することができる。
【発明の概要】
【0014】
最も一般的には、本発明は、熱プラズマまたは非熱プラズマを生成し、熱プラズマまたは非熱プラズマを水ミストの流れの中へ偏向させて、ヒドロキシラジカルを含む流れを提供するように構成された滅菌デバイスを提供する。流れは、滅菌を行うために、表面または物体に送られ得る。
【0015】
本発明によれば、ヒドロキシラジカルの流れを生成する滅菌デバイスが提供され、滅菌デバイスは、水ミストを受け取るための入口と、滅菌対象領域に向かってヒドロキシラジカルの流れを送り出す出口との間に、水ミスト流体流路を画定する筐体と、熱プラズマまたは非熱プラズマを生成するように構成されたエネルギー配送先端部と、筐体に取り付けられた同軸伝送線であって、エネルギー配送先端部へ無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーを搬送するように配置された同軸伝送線と、筐体に取り付けられたガス導管であって、エネルギー配送先端部へガスを配送するように配置されたガス導管と、を備え、同軸伝送線は、内側導体と、外側導体と、内側導体を外側導体から分離する誘電材料とを有し、エネルギー配送先端部は、同軸伝送線の遠位端から延在し、エネルギー配送先端部は、同軸伝送線の内側導体に電気的に接続された第1の電極と、同軸伝送線の外側導体に電気的に接続された第2の電極と、を有し、第2の電極は、エネルギー配送先端部の内部体積を画定するように構成され、第1の電極は、内部体積内で長手方向に延在し、第1の電極及び第2の電極は、エネルギー配送先端部に配送されたガスの中で、プラズマを発生させ、水ミスト流体流路内にプラズマを送り込んで、そこでヒドロキシラジカルを形成するように構成される。
【0016】
滅菌デバイスは、使用時に、プラズマを生成するように構成され、プラズマは水ミストの流路内に送り込まれ、滅菌用のヒドロキシラジカルが生成される。デバイスはまた、水ミストがない状態でも使用可能であり得、プラズマのみで滅菌が行われる。
【0017】
第1の電極及び第2の電極により、プラズマは、同軸伝送線の軸と並行である長手方向に送られ得る。水ミスト流路は、エネルギー配送先端部から流出したプラズマと交わり得る。あるいは、第1の電極及び第2の電極により、プラズマは、長手方向に配向された水ミスト流体流路と交差する短手方向に、偏向され得る。これらの構成により、配向可能な滅菌ビームを提供するのに有用な長手方向水ミスト流体流路が促進される。
【0018】
デバイスは、ハンドヘルドユニットであり得る。例えば、筐体は、携帯ユニットであり、例えばハンドルまたはグリップを備え得る。ハンドヘルドユニットを設けることにより、必要に応じて任意の表面または物体を滅菌するようにヒドロキシラジカルの流れを送ることが、容易になり得る。
【0019】
エネルギー配送先端部は、内部体積内に存在するガスの中で熱プラズマまたは非熱プラズマを発生させて維持するために、内部体積において、受け取ったRFエネルギー及び/またはマイクロ波周波数エネルギーから高電界を生成する二極(例えば同軸)構造を、有利に画定する。例えば、プラズマを発生させるために、RFエネルギーの短パルス(例えば10ms以下、例えば1ms~10msの持続時間を有する)が使用され得る。プラズマを維持するために、より長いマイクロ波パルスが使用され得る。
【0020】
しかし、マイクロ波周波数エネルギーを使用してプラズマを発生させることも可能であり得、例えば、マイクロ波共振器、またはインピーダンス変成器、すなわち低電圧を高電圧に変換する1/4波長変成器を使用することにより、動作周波数が1/4波長(またはその奇数倍)の長さである高インピーダンス伝送線を使用して、プラズマを発生させる。この高インピーダンス線は、プラズマを発生させるためにスイッチが入れられ、プラズマが発生してプラズマを維持する必要があると、スイッチが切られ得る(すなわちより低インピーダンス線に戻る)。2つの状態を切り替えるために、同軸スイッチまたは導波管スイッチを使用することが可能であり得るが、パワーPINまたはバラクタダイオードを使用することが好ましくあり得る。
【0021】
あるいは、エネルギー配送先端部は、同軸伝送線の遠位端で変換された2つの1/4波長インピーダンスの提供によるマイクロ波エネルギーのみを使用して、プラズマを発生させて維持するように構成され得る。第1の1/4波長変成器は、同軸伝送線のインピーダンスを、例えば50Ωから目標インピーダンス(例えば25Ωなど)に、低減するように構成される。一旦プラズマが生成されると、内部体積内のプラズマはより低いインピーダンスを示し、よって、変成器は、プラズマを維持するために、生成されたプラズマへの電力供給を支援し得る。
【0022】
次に、第2(最遠位)の1/4波長変成器には、はるかに高いインピーダンス、例えば200Ω以上が与えられる。第2の1/4波長変成器は、第1の変成器の遠位端におけるより低いインピーダンスを、はるかに高い遠位インピーダンス、例えば1600Ωに、変換するように作動する。無損失線及び100Wのマイクロ波電力の入力を想定すると、第2の1/4波長変成器の遠位端で、400Vの電圧が達成可能である。第1の1/4波長変成器及び第2の1/4波長変成器の寸法は、プラズマを発生させることができる遠位電圧を提供するように構成され得る。
【0023】
エネルギー配送先端部は、筐体内に配置されることが好ましい。第1の電極及び第2の電極は、内部体積からの流出口を画定し得、流出口は出口に、または出口内に配置される。第1の電極は、長手方向に延在する細長い要素であり得る。これは直線形であってもよく、または別の形状が与えられてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第1の電極は、螺旋状であってもよい。任意で、第1の電極は、外側導体の遠位端を越えて延在する内側導体の一部から形成され得る。
【0024】
エネルギー配送先端部は、エネルギー配送先端部からプラズマを送り出すための開口部を形成するように、その遠位端が開いた状態であり得る。このような実施形態では、プラズマは、エネルギー配送先端部から長手方向に送り出される。あるいは、エネルギー配送先端部は、内部体積の遠位端において第1の電極に取り付けられた導電性キャップを備え、導電性キャップは、第2の電極の遠位端から離間して配置され、内部体積から流体流路へプラズマを送り出す出口を画定し、プラズマは、エネルギー配送先端部の半径方向外側に、流体流路内へ送り出される。例えば、流体流路は、エネルギー配送先端部と同軸上に形成され得る。導電性キャップは、プラズマが効率的に生成されることを確保し得、ほぼ全てのプラズマを流体流路内に送り込んで、ヒドロキシラジカルの生成の最大化を促進する。導電性キャップは、プラズマを生成するために、第1の電極の延長として効果的に機能する。
【0025】
有利なことに、流体流路は、出口に向かって先細りした形状を有する。このようにして、ヒドロキシラジカルの速度は高くなり得、これにより、滅菌対象の表面または物体に向かってより効果的にラジカルが発射される。いくつかの実施形態では、特にエネルギー配送先端部が出口または出口のあたりに配置された実施形態では、流路をこのように先細りした形状にすることにより、ほぼ全ての水ミストがプラズマを通って、ヒドロキシラジカルの生成の最大化が確保される。
【0026】
好ましくは、エネルギー配送先端部はさらに、内部体積から同軸伝送線を絶縁するために同軸伝送線の遠位端に取り付けられた絶縁キャップを備え、ガス導管は、絶縁キャップと第2の電極との間に形成された流路を介して内部体積と流体連通する。絶縁キャップは、例えば内部体積の近位端を画定するために、第2の電極内に取り付けられ得る。流路は、第2の電極に複数の開口部を有し得、これにより、絶縁キャップの周りにガスが流れることが可能となる。複数の開口部は、内部体積へのガスの均一な流れを促進するために、一定の間隔があけられ得る。
【0027】
絶縁キャップは、プラズマがエネルギー配送先端部の遠位部分で生成されることを確保するのに役立ち得、また、生成されたプラズマをエネルギー配送先端部から送り出すのにも役立ち得る。いくつかの実施形態では、絶縁キャップは、第2の電極を通る開口領域に、面取りされた遠位端を有し得る。これは、第2の電極の流路に沿ったガスの速度を高めるのに役立ち、ガスの流量及びエネルギー配送先端部の遠位端外へのプラズマの流出が促進され得る。
【0028】
第2の電極は、円筒形であり得る。複数の開口部はそれぞれ、円筒に長手方向のノッチを備え得る。例えば、第2の電極の近位端は、複数の開口部を設けるようにキャスタレートされ得る。
【0029】
エネルギー配送先端部は、内部体積内において第1の電極と第2の電極との間に配置された絶縁性誘電材料を有し得る。誘電材料は、一片の石英または他の同様の低損失材料であり得る。誘電材料は、第2の電極内に配置された円筒として設けられることが好ましい。誘電材料により、絶縁性誘電材料のそばのガス充填間隙において電界が強くなり、これにより、プラズマ生成が促進される。さらに、誘電材料により、エネルギー配送先端部の内部体積の寸法が縮小され、これにより、内部体積を通るガスの流速が上がり、よって、プラズマは、エネルギー配送先端部から遠くへ発射される。これは、プラズマが先端部から長手方向に送り出され、及び/またはプラズマのみを使用して滅菌を行うようにデバイスが構成される実施形態において、特に有益であり得る。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、滅菌装置が提供され、滅菌装置は、第1の態様による滅菌デバイスと、ミスト生成器と、ガス供給部と、ハンドヘルド滅菌デバイスに無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波周波数EMエネルギーを供給するジェネレータとを備える。RF EMエネルギーは、プラズマを発生させるためのものであり得、高電圧パルスとして受け取られ得る。マイクロ波EMエネルギーは、プラズマを維持するため、すなわちプラズマに電力を送り込んでイオン化の状態を維持するためのものであり得る。これも、パルスとして受け取られ得る。プラズマは、プラズマの準連続ビームを生成するように、繰り返し発生させられ得る。
【0031】
ミスト生成器は、超音波振動子または加熱素子のいずれかを備え得る。このように、ミスト生成器は、水からヒドロキシラジカルを生成するために、ハンドヘルド滅菌デバイスにミスト(例えば湿気または霧)を供給し得る。水ミストが供給されるため、装置はいずれの化学洗浄剤も使用する必要がなく、よって、本装置を使用した滅菌では、有害な副産物が発生しない。
【0032】
ガス供給部は、アルゴンガスの供給部であることが好ましい。しかしながら、他の任意の適切なガス、例えば二酸化炭素、ヘリウム、窒素、空気とこれらのガスのうちのいずれか1つの混合物、例えば10%空気/90%ヘリウムが、選ばれてもよい。
【0033】
有利なことに、ジェネレータは、携帯可能であるように、電池により電力供給され得る。ミスト生成器及びガス供給部も、ユーザが滅菌装置を容易に操作でき、いずれの必要な環境でも容易に滅菌を行うことができるように、携帯可能であることが好ましい。
【0034】
本明細書において、用語「内側」とは、同軸伝送線、エネルギー配送先端部、及び/またはアプリケータの中心(例えば軸)に、半径方向により近いことを意味する。用語「外側」は、同軸伝送線、エネルギー配送先端部、及び/またはアプリケータの中心(軸)から、半径方向により遠いことを意味する。
【0035】
本明細書では、用語「導電性」は、文脈による別段の指示がない限り、電気伝導性という意味で使用される。
【0036】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」は、アプリケータの端部を指す。使用時、近位端は、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを供給するジェネレータにより近く、一方、遠位端は、ジェネレータからより遠い。
【0037】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を示すように広範に使用されるが、1GHz~60GHzの範囲が好ましくあり得る。検討された具体的な周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び25GHzである。対照的に、本明細書では、「無線周波数」すなわち「RF」を使用して、例えば最大300MHz、好ましくは10KHz~1MHz、最も好ましくは400KHzという、少なくとも3桁小さい周波数範囲を示す。送られるマイクロ波エネルギーを最適化できるように、マイクロ波周波数は調整され得る。例えば、エネルギー配送先端部は、特定の周波数(例えば900MHz)で作動するように設計され得るが、使用時に最も効率的な周波数は異なり得る(例えば866MHz)。
【0038】
ここで、本発明の特徴が、下記に提供される本発明の実施例の詳細説明において、添付図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態による、滅菌装置の概略図である。
【
図3】
図2に示されるアプリケータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
さらなる選択肢及び選好
本発明は、水ミストの存在下でプラズマを作り出すことにより生成されるヒドロキシラジカルを使用して、滅菌を実行するためのデバイスに関する。
【0041】
図1は、本発明の実施形態である滅菌装置100の概略図である。装置100は、表面または領域を滅菌するために、ヒドロキシル(OH)ラジカルを生成することができる。例えば、装置100は、医療装置または病院の病床スペースを滅菌するために使用され得る。
【0042】
装置100は、アプリケータ104に無線周波数(RF)エネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを制御可能に配送することができるジェネレータ102を備える。ジェネレータは、例えば特許文献WO2012/076844に開示されるタイプのものであり得る。ジェネレータ102は、同軸ケーブル106によりアプリケータ104に接続される。同軸ケーブル106は、内側導体と、外側導体と、内側導体を外側導体から分離する誘電材料とを備える。同軸ケーブル106は、QMAコネクタなどを介してエネルギーをアプリケータ104内に連結し得る。いくつかの実施例では、ジェネレータ102は、アプリケータ104に伝達すべき好適な信号を特定するために、アプリケータ104から返され受信した反射信号(すなわち反射電力)を監視するように構成され得る。下記でより詳しく説明される方法でヒドロキシラジカルを生成するために、アプリケータ104で無線周波数エネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを利用して、熱プラズマまたは非熱プラズマが生成され維持される。いくつかの実施例では、表面を滅菌するために、熱プラズマまたは非熱プラズマが直接使用され得る。
【0043】
装置100は、アプリケータ104に水ミスト(例えば湿気または霧)を配送するように構成されたミスト生成器108をさらに備える。ミスト生成器108は、例えば、超音波振動子によりミストを生成し得る。あるいは、ミスト生成器108は、水を加熱して、アプリケータ104に渡す蒸気またはミストを生成するように構成されてもよい。下記でより詳しく説明されるプロセスによりヒドロキシラジカルを生成するために、ミストがアプリケータ104に供給される。このようにミスト生成器108を使用することにより、いずれの洗浄化学製品も使用せずに装置100を使用して表面または物体を滅菌することができ、滅菌に伴うコストが削減され、洗浄化学製品が不足している時に滅菌を実行することが可能となる。滅菌にヒドロキシラジカルを使用することにより、有害な副産物が出ないことも保証される。
【0044】
ミスト生成器108は、生成されたミストをアプリケータ104に向かって流すポンプまたは他の流体駆動ユニットを含み得る。
【0045】
下記に説明される方法でヒドロキシラジカルを生成するのに使用されるプラズマを形成するために、ガス供給部110は、アプリケータ104に接続されて、ガスを供給する。ガス供給部110は、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、またはこれらの組み合わせといった、非熱プラズマまたは熱プラズマを形成するのに適した任意の不活性ガスの供給部であり得る。ガス供給部110は、アプリケータ104に配送されるガスの流速調整が可能なように構成され得る。ガス供給部は、例えば毎分1.5~10リットルのガスを供給し得る。
【0046】
独立したミスト流駆動ユニットを設けることは、必須ではあり得ない。代わりに、ミストはアプリケータへ向かって自然と拡散し得る。ミストは、ガス流に同伴し得、これによりミストの拡散速度が高まる。
【0047】
ガスの流速は、1.5~15リットル/分の範囲であり、2~6リットル/分が好ましくあり得る。ミスト生成器108は、少なくとも体積率2%のガス/ミスト混合流を形成するのに十分なミストを生成するように構成され得る。ガスの流速は、混合流中のガスとミストが所望の割合に達するように制御され得る。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、ジェネレータ102、ミスト生成器108、及びガス供給部110は、それぞれ携帯可能であり得、アプリケータ104は、ハンドヘルドアプリケータであり得ることが想定され、よって、本発明は、ユーザにより容易に移動可能な効果的な滅菌装置を提供する。
【0049】
アプリケータ104は、下記の
図2~
図4により詳しく示される。表面を滅菌するために、ガス供給部110から配送されたガスに、ジェネレータ102からのエネルギーをあてることにより、アプリケータ104内でプラズマが生成される。例えば、RFエネルギーを使用してプラズマを発生させることができ、マイクロ波エネルギーを使用してプラズマを維持することができる。例えば、特許文献WO2009/060213に開示されるように、プラズマは生成され得る。プラズマの発生と同時に、ミスト生成器108からの水ミストが、流体流路に沿ってアプリケータ104の筐体を通過し、これは、ヒドロキシラジカルの噴霧112を生成するためにプラズマを通過し、生成された噴霧112は、アプリケータ104から噴出され、滅菌対象の表面または領域内に送られる。この方法でのヒドロキシラジカル生成の実施例は、例えば特許文献WO2009/060214に開示される。
【0050】
図2は、本発明の実施形態で使用され得る第1のアプリケータ200の概略図を示す。具体的には、
図2は、アプリケータ200のエネルギー配送先端部に関する詳細を示す。アプリケータをより概括的に示した断面図が、
図3に示される。
【0051】
アプリケータ200は、任意の適切な寸法で作製され得る。例えば、アプリケータは、人間の手で握れる大きさに合わせて作られ得る。あるいは、スタンドに取り付けるのに適した拡大版が製造されてもよい。使用時、アプリケータにより放出されるプラズマ及び/またはOHラジカルの流れは、例えば車両(例えば救急車)または病院の病床室もしくは手術室の内部といった、滅菌対象の体積内に送り込まれ得る。
【0052】
アプリケータ200は、通常細長い筐体202を備え、これは、滅菌対象の表面または物体に向かって遠位出口204から送り出されるヒドロキシラジカルの生成に必要な構成要素を含む。特に好ましい実施形態では、ユーザはアプリケータ200を手で保持して、表面または物体上にアプリケータ200を手動で通し得る。
【0053】
筐体202内に、アプリケータ200は、同軸伝送線206を備えたエネルギー配送構造を備え、同軸伝送線206は、その遠位端にエネルギー配送先端部205を有する。例えば
図1に関連して上記で論述されたケーブルを介して、ジェネレータからエネルギー配送構造へRFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーが導入され得るように、同軸伝送線206の近位端は、QMAコネクタ207などの中で終端する。
【0054】
同軸伝送線206は、内側導体208と、外側導体210と、内側導体208を外側導体210から分離する誘電材料212とを備える。同軸伝送線206は、筐体202の長手方向軸に沿って存在する。
【0055】
エネルギー配送先端部205は、内側導体208に電気的に接続された第1の電極214と、外側導体210に電気的に接続された第2の電極216と、導電性端部キャップ218とを備え、導電性端部キャップ218は、間隙220を画定するように、第2の電極216の遠位端から離間して配置される。この実施形態では、第2の電極216は、各端部で開口している中空円筒として設けられ、第1の電極214は、通常、第2の電極216の長手方向軸に沿って配置される。これにより、第1の電極214と第2の電極216との間に、環状空間が画定される。
【0056】
第1の電極214は、同軸伝送線206の内側導体208の延長で形成され得る。第1の電極214は、直線形であることが好ましいが、いくつかの実施例では、第1の電極214は、他の形状で提供され得る。例えば、第1の電極214は、螺旋電極であり得る。
【0057】
導電性端部キャップ218は、導電性材料(例えば銅、銀、金、またはめっき鋼)のディスクであり、これは、第1の電極214に電気的に接続され、第2の電極216の開口にわたり存在するように成形される。導電性端部キャップ218は、間隙220を形成するように、第2の電極216の遠位端から長手方向に離して配置される。間隙220は、第1の電極214と第2の電極216の半径方向分離よりも小さく、すなわち第1の電極214の外側表面と、第2の電極216を形成する中空円筒の内側表面との間の半径方向距離よりも小さい。例えば、端部キャップ218と第2の電極216との間の間隙220は、長手方向に約0.5mmの長さを有し得る。
【0058】
エネルギー(例えばRF信号)が同軸伝送線206に供給される時に、間隙220内または間隙220の周りに高電圧状態が作られるように、第1の電極214、第2の電極216、及び導電性端部キャップ218は構成される。入力信号は、間隙220における電圧を十分に高くして、エネルギー配送先端部205を通って流れるガス、またはエネルギー配送先端部205の外面を越えて流れるガスの中で、プラズマが生成されるように、制御し得る。
【0059】
端部キャップ218の形状効果により、エネルギー配送先端部205内の遠位端にプラズマ生成領域が作られる。周知のように同軸伝送線206を通したRFエネルギー及びマイクロ波エネルギーの適切な配送により、この領域で、熱プラズマまたは非熱プラズマが生成され維持され得る。
【0060】
下記に論述されるように、この実施形態では、プラズマ形成の素となるガスは、第1の電極214と第2の電極216との間に形成された環状空間に供給される。ガスは、エネルギー配送先端部205を長手方向に通って流れる。後述されるように、プラズマ生成領域では、ガスまたはプラズマは、端部キャップ218により、水ミストの流路226と交差する半径方向に迂回される。
【0061】
第2の電極216内で、同軸伝送線206の遠位端に略円筒形セラミックキャップ222が配置され、これは、誘電材料212の端部を越えて遠位方向に約2mm延在し得る。いくつかの実施形態において、第1の電極214は、セラミックキャップ222を貫通して延在する導電性要素により、同軸伝送線206の内側導体208に接続され得る。
【0062】
エネルギー配送先端部にガスを配送するために、同軸伝送線206の周りに、ガス導管224が形成される。アプリケータ200の近位端において、ガス導管224は、ガス供給部110からガスを受け取るためのコネクタ225を備える。ガスは、ガス導管224から、第2の電極216の近位端に形成されたキャスタレーションまたは開孔217を通って、第2の電極216内に流れ込むことができる。エネルギー配送先端部へのガスの流れが長手方向軸の周りで実質的に均一になるように、複数のキャスタレーションまたは開孔が第2の電極216の外周に規則的に離間して配置されていることが、望ましくあり得る。
【0063】
入口227から出口204へ水ミストを送るために、アプリケータ筐体202内において、ガス導管224の周りに、流体流路226が形成される。
図2に示されるように、流体流路226は通常、出口204に向かって遠位方向に先細りした形状を有する。これは、間隙220から放出されるプラズマと水ミストを接触させる機能と、ミストの流速を高める機能の二重機能を果たす。プラズマにより水ミスト内にヒドロキシラジカルが生成され、次にヒドロキシラジカルは、配向可能な流れまたは噴霧として、出口204を通して噴出される。
【0064】
使用時、ガス供給部110は、ガスをアプリケータ200内に送り込んでガス導管224を通らせるように作動する。セラミックキャップ222は、面取りされた遠位端面を有し、これにより、ガスは、ガス導管224から第2の電極216に流れ込み、熱プラズマまたは非熱プラズマが生成される第1の電極214と第2の電極216との間を通るように促進される。例えば、プラズマは、RFエネルギーを使用して生成され、マイクロ波エネルギーを使用して維持され得る。もちろん、いくつかの実施形態では、プラズマを発生させて維持するのに、RFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーのいずれかが使用され得ることが想定される。プラズマを維持するために供給される電力は、プラズマを好ましい状態で、例えば非熱プラズマとして維持するように、制御され得る。
【0065】
プラズマが生成されるのと同時に、ミスト生成器108は、水ミストをアプリケータ200に送り込み、流体流路226に沿って水ミストの流れを提供する。プラズマは、アプリケータ200を通る水ミストの流体流路226にプラズマを送り込むための円周出口を形成する間隙220を通って、第2の電極216から流れ出る。プラズマは、
図3において矢印229で示される。水ミストがプラズマを通ると、水分子がイオン化されてヒドロキシラジカルが生成され、ヒドロキシラジカルは、出口204を通って滅菌対象の表面または物体へ向かって流れる。
【0066】
図4は、本発明の実施形態で使用され得る第2のアプリケータ300の断面図を示す。具体的には、ヒドロキシラジカルを使用して、またはアプリケータ300から放出される熱プラズマまたは非熱プラズマを使用して、表面または物体を滅菌するのに使用できるように、アプリケータ300は適合される。第1のアプリケータ200に対応する第2のアプリケータ300の機構は、同じ参照番号が与えられ、再度説明されない。
【0067】
アプリケータ300は、同軸伝送線206の遠位端に接続されたエネルギー配送先端部305を備える。エネルギー配送先端部305は、アプリケータ300の出口204を通り抜ける熱プラズマまたは非熱プラズマを生成するように構成される。このように、アプリケータ300は、ガス供給部110などのガス供給部が作動している場合は、プラズマのみを使用した滅菌に使用することができ、または、ガス供給部と、ミスト生成器108などのミスト生成器の両方が作動している場合は、ヒドロキシラジカルを生成するように作動可能であり得る。
【0068】
エネルギー配送先端部305は、同軸伝送線206の内側導体208に接続された第1の電極302を備える。いくつかの実施形態では、第1の電極302は、内側導体208の延長であり得る。第2の電極304は、同軸伝送線206の外側導体210に接続される。この実施形態では、第2の電極304は、各端部で開口している中空円筒として設けられ、第1の電極302は、通常、第2の電極304の長手方向軸に沿って配置される。この実施形態では、第1の電極302の長さは20mmであり、第1の電極302の遠位端は、第2の電極304の遠位端から、2mmずれている。第1の電極302と第2の電極304との隙間は、半径方向に約1.3mmである。第1の電極302と第2の電極304は、これらの間に、ガス入口310からガスを受け取るための環状領域308を画定するように構成され、ガス導管は、ガス入口から第2の電極304を通って、第1の電極302と第2の電極304の間の環状領域308へ入るように形成される。
【0069】
エネルギー配送先端部305の遠位端では、環状領域308内に石英管312が配置され、石英管312と第1の電極302との間には間隙が存在し、ここを通ってガスが流れることができる。例えば、石英管312は、長さ12.35mmを有し得、石英管312の遠位端が第2の電極304の遠位端と隣接するように配置され得る。このように石英管312を配置することにより、第1の電極302と第2の電極304との間のガス充填間隙における電界は高くなり、プラズマ生成が促進される。石英管312内の領域は、よって、プラズマ生成領域である。
【0070】
エネルギー配送先端部の近位端では、同軸伝送線206とプラズマ生成領域とを分離するために、絶縁要素が提供される。この実施例での絶縁要素は、第1の電極302の近位領域の周りに存在するセラミックキャップ314を備える。入口310からエネルギー配送先端部へガスが流れる導管を提供するために、キャップ314と第2の電極304との間には間隙が存在する。例えば、キャップ314は、8mmの長さと、約4.3mmの外径を有し得る。キャップ314は、エネルギー配送先端部の近位端でプラズマが発生することを防ぐために設けられる。いくつかの実施例では、プラズマが生成される石英管312と第1の電極302との間にガスが流れることを促進するように、キャップ314の遠位端は面取りされ得る。
【0071】
第2の電極304の遠位端は、エネルギー配送先端部内で生成されたプラズマの出口を形成するように開口している。このように、プラズマは、長手方向にエネルギー配送先端部からアプリケータ300の出口204へ向かって送り出される。これは、
図4に出口204から外向きに噴出するプラズマの柱316として示され、プラズマの柱316は、滅菌のためにユーザにより表面または物体上に向けられ得る。
【0072】
アプリケータ300は、ヒドロキシラジカルを使用して滅菌を行う第1のモード、またはプラズマを使用して滅菌を行う第2のモードのいずれかで使用され得る。
【0073】
第1のモードでは、ガス供給部110は、入口310を介してアプリケータ300内にガスを送り込むように作動する。ガスは、プラズマが生成される第1の電極302と石英管312との間の領域に流れ込む。例えば、プラズマは、RFエネルギーを使用して生成され、マイクロ波エネルギーを使用して維持され得る。もちろん、いくつかの実施形態では、プラズマを発生させて維持するのに、RFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーのいずれかが使用され得ることが想定される。プラズマが生成されるのと同時に、ミスト生成器108は、ミスト入口318を介して水ミストをアプリケータ300に送り込み、流体流路226に沿って水ミストの流れを提供する。プラズマは、第2の電極216から長手方向に流れ出て、出口204を通る水ミストの流体流路226内に送り込まれる。水ミストがプラズマ柱316を通ると、水分子がイオン化されてヒドロキシラジカルが生成され、ヒドロキシラジカルは、出口204を通って滅菌対象の表面または物体へ向かって流れる。
【0074】
第2のモードは、第1のモードと同じステップを含むが、アプリケータ300に水ミストは供給されず、よって、熱プラズマまたは非熱プラズマが柱316として生成されて、出口204から送り出される。プラズマの柱316は、滅菌のためにユーザにより直接表面上に通され得る。
【0075】
前述の説明、または下記の特許請求の範囲、または添付図面で開示され、特定の形態で表された、すなわち必要に応じて、開示される機能を実行するための手段、または開示される結果を得るための方法もしくはプロセスに関して表された特徴は、本発明を多様な形態で実現するために、別々に、またはかかる特徴を任意に組み合わせて、利用されてもよい。
【0076】
本発明は前述の例示的な実施形態と併せて説明されたが、本開示が当業者に与えられた場合、多くの均等の変更形態及び変形形態が当業者には明らかであろう。従って、上記で説明された本発明の例示的な実施形態は、例示的であって、限定的ではないとみなされる。説明された実施形態に対し、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われてもよい。
【0077】
疑義を避けるために、本明細書に提供される理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。
【0078】
下記の請求項を含む本明細書の全体を通じて、文脈上別異の解釈を要さない限り、用語「~を有する(have)」、「~を備える(comprise)」、及び「~を含む(include)」、並びに「~を有する(having)」、「~を備える(comprises)」、「~を備える(comprising)」、及び「~を含む(including)」などの変形は、記載された構成要素もしくはステップ、または構成要素群もしくはステップ群の包含を示唆するが、いずれの他の構成要素もしくはステップ、または構成要素群もしくはステップ群の除外も示唆しないことが理解されよう。
【0079】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段に示されない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。範囲は、「約」ある特定値から、及び/または「約」別の特定値までとして、本明細書では表され得る。このような範囲が表される場合に、別の実施形態は、ある特定値から及び/または別の特定値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により、値が近似として表される場合、特定値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関連する用語「約」とは、任意であり、例えば±10%を意味する。
【0080】
本明細書で使用される用語「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」は、いくつかの状況下で特定の利点を提供し得る本発明の実施形態を指す。しかし、同じまたは異なる環境下では、他の実施形態が好ましい場合もあることを理解されたい。従って、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを意味または示唆するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲または特許請求の範囲から除外することを意図するものではない。
【国際調査報告】