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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】マイクロ構造軟組織移植片
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/02 20060101AFI20230531BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20230531BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20230531BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20230531BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20230531BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
A61F2/02
A61L27/14
A61L27/44
A61L27/58
A61L27/50
A61L27/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566487
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 US2021028651
(87)【国際公開番号】W WO2021221993
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】16/862,531
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513326370
【氏名又は名称】ビーブイダブリュ ホールディング エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーシェール,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ミルボッカー,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BA16
4C081BA17
4C081CA021
4C081CA171
4C081CA211
4C081DA02
4C081DA04
4C081DA06
4C081DB01
4C081DB03
4C081DB07
4C081DC04
4C097BB01
4C097CC02
4C097CC03
4C097DD01
4C097DD09
4C097DD15
4C097FF12
4C097FF16
(57)【要約】
癒着防止層(502)、構造層、及び配置層を備えた軟組織修復移植片(500)が記載される。これらの層は、別々であっても、又は1つの基材に一体化されていてもよい。層の用語は、別々の材料層ではなく、組織修復移植片の機能を区別するために用いられる。別々の機能層は、物質の単一平面を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織修復移植片であって、
生体適合性非生体吸収性ポリマーメッシュを含む第一の層、
癒着形成防止ポリマー材料を含む第二の層、
マイクロ構造化表面を含む第三の層であって、前記マイクロ構造化表面は、第一のマイクロ構造化パターン及び第二のマイクロ構造化パターンを含み、前記第一のマイクロ構造化パターンは、少なくとも第一のマイクロ形体及び第二のマイクロ形体を有し、前記第一及び第二のマイクロ形体は、階層的に構成されており、前記第二のマイクロ構造化パターンは、標的表面に侵襲的に係合するように構成されたバーブ付きマイクロ形体を有する、第三の層、
を備え、前記第二の層は、前記第一の層の近辺に配置され、第三の層は、前記第二の層の近辺に配置されている、軟組織修復移植片。
【請求項2】
前記癒着形成防止ポリマー材料が、生体吸収性材料を含み、前記マイクロ構造化表面が、非生体吸収性ポリマー材料を含む、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項3】
前記癒着形成防止ポリマー材料が、生体吸収性ポリマー材料を含み、前記マイクロ構造化表面が、生体吸収性ポリマー材料を含む、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項4】
前記癒着形成防止ポリマー材料が、非生体吸収性ポリマー材料を含み、前記マイクロ構造化表面が、非生体吸収性ポリマー材料を含む、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項5】
前記癒着形成防止ポリマー材料が、非生体吸収性ポリマー材料を含み、前記マイクロ構造化表面が、生体吸収性ポリマー材料を含む、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項6】
前記マイクロ構造化表面が、第一の生体吸収性ポリマー材料を含み、前記第一のパターンが、第二の生体吸収性ポリマー材料を含み、前記第二のパターンが、前記第一の生体吸収性ポリマー材料を含む、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項7】
前記マイクロ構造化表面が、非生体吸収性ポリマー材料を含み、前記第一のパターンが、生体吸収性ポリマー材料を含み、前記第二のパターンが、前記非生体吸収性ポリマー材料を含む、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項8】
前記第二のパターンが、力を、前記第二のパターンを侵襲的に係合するために前記力が前記軟組織修復移植片上に加えられたとき、前記標的表面の接触面積全体に分配するように構成され、前記軟組織修復移植片が前記標的表面から分離されるとき、前記第二のパターンのいずれの単一のマイクロ形体も、前記単一のマイクロ形体の体積あたり0.025kg/cmを超えて加えることはなく、前記分離力は、前記軟組織修復移植片と標的表面との間の前記接触面積あたり25kg/cmを超える、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項9】
前記第三の層が、穿孔を含み、それによって、前記標的表面からの組織の成長が、前記第三の層の穿孔を通って前記第一の層まで貫通する、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項10】
前記ポリマーメッシュが、直径0.5mm~6mmの細孔を含む、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項11】
前記ポリマーメッシュが、5ミクロン~100ミクロンの直径を有する縦編みフィラメ
ントを含む、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項12】
300g/m未満の単位面積質量を有する、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項13】
前記第一の層が、第一の表面及び第二の表面をさらに含み、前記第二の層が、前記第一の層の前記第一の表面の少なくとも一部分に取り付けられており、前記第三の層が、前記第一の層の前記第二の表面の少なくとも一部分に取り付けられている、請求項1に記載の軟組織修復移植片。
【請求項14】
前記第二の層が、前記第一の層の前記第一の表面の少なくとも一部分に、取り付け部位で取り付けられ、前記取り付け部位は、前記第一及び第二の層を一緒に取り付けるための第一のフィラメントを含み、隣接する取り付け部位は、1mm~20mmの距離で分離されている、請求項13に記載の軟組織修復移植片。
【請求項15】
前記第三の層が、前記第一の層の前記第二の表面の少なくとも一部分に、取り付け部位で取り付けられ、前記取り付け部位は、前記第一及び第三の層を一緒に取り付けるための第二のフィラメントを含み、隣接する取り付け部位は、0.1mm~10mmの距離で分離されている、請求項14に記載の軟組織修復移植片。
【請求項16】
前記フィラメントが、生体吸収性である、請求項15に記載の軟組織修復移植片。
【請求項17】
軟組織修復移植片を標的表面に固定するための方法であって、
生体適合性非生体吸収性ポリマーメッシュを含む第一の層、癒着形成防止ポリマー材料を含む第二の層、マイクロ構造化表面を含む第三の層、を備えた軟組織修復移植片を提供する工程であって、前記マイクロ構造化表面は、第一のマイクロ構造化パターン及び第二のマイクロ構造化パターンを含み、前記第一のマイクロ構造化パターンは、少なくとも第一のマイクロ形体及び第二のマイクロ形体を有し、前記第一及び第二のマイクロ形体は、階層的に構成されており、前記第二のマイクロ構造化パターンは、標的表面に侵襲的に係合するように構成されたバーブ付きマイクロ形体を有し、前記第二の層は、前記第一の層の近辺に配置され、第三の層は、前記第二の層の近辺に配置される、工程、
前記軟組織修復移植片を、第一の垂直力を用いて前記標的表面と接触させて配置する工程、及び
前記軟組織修復移植片を前記標的表面に固定する工程であって、前記バーブ付きマイクロ形体が、前記標的表面に侵襲的に係合する、工程、
を含む、方法。
【請求項18】
前記軟組織修復移植片を、前記標的表面上の第一の位置から、前記標的表面上の第二の位置に位置変更することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記軟組織修復移植片を固定することが、前記軟組織移植片に第二の垂直力を加えて、前記バーブ付きマイクロ形体を前記標的表面に侵襲的に係合させることを含み、前記第二の垂直力は、前記第一の垂直力よりも大きい、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記軟組織修復移植片を位置変更することが、前記軟組織修復移植片を前記標的表面上の前記第一の位置から取り外し、前記軟組織修復移植片を、前記標的表面上の前記第二の位置に置き換えることを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟組織修復の分野におけるデバイス及び方法全般に関する。より詳細には、本発明は、術後癒着の形成を阻害する癒着防止層、及び縫合に依存することなく有利には自己接着し、広い組織領域にわたって固着力を分布させる固定手段、を含む軟組織修復のための移植材料に関する。
【背景技術】
【0002】
癒着とは、通常は一緒に結合されていない体内の組織と器官との間に形成される、又は体内の組織と器官との間に通常の結合組織解剖学とは異なって形成される、結合組織の線維帯である。癒着は、一般に、腹部又は骨盤部の術後に形成する。ある特定の場合では、癒着は、それが結合している器官の疼痛又は閉塞などの合併症を引き起こし得る。
【0003】
癒着は、一般に、手術後すぐに形成を開始し、その後発達を継続し得る。癒着の形成を逆転させるのに有効な治療は知られていない。癒着が患者の合併症に繋がる場合、典型的な治療は、癒着を外科的に除去することである。したがって、癒着を管理する最良の手法は、全体として、癒着の形成を防止すること、又は癒着の形成を制限することである。
【0004】
癒着の形成を有効に逆転する製品は知られていないが、癒着の形成を防止するための様々な製品は存在し、市販されている。これらの製品は、100%有効ではないが、それらを使用することで、癒着の形成が一貫して低減されることは知られている。これらの製品は、体内の手術部位に適用されて数日間を掛けて次第に吸収されるゲル及び吸収性シートなどの多くの形態を取る。
【0005】
軟組織欠損部の修復において、典型的には、ゲルではなくシートが、補強メッシュと組み合わせて用いられる。一般に、シートは、複合体構造としてメッシュに取り付けられる。シートは、メッシュ上に形成されてよく、又は接着剤を介して取り付けられてもよい。通常は、複合体構造のメッシュ側が、ヘルニアなどの軟組織欠損部に面する。メッシュへの組織の内殖及びメッシュと軟組織欠損部との間の接着形成を促進するために、メッシュと癒着防止層と間に空間が残されることが有利である。理想的には、メッシュは、組織の足場として作用し、メッシュと軟組織欠損部との間の、線維的ではなく健全な組織成長を促進する。
【0006】
しかし、現行製品の1つの欠点は、縫合又は類似する何らかの機構を用いてデバイスを正しい位置に固定する必要があることである。組織欠損部に機械的に固定することができないゲルなどの製品の場合、数時間、数日間、又は数週間などの合理的に長い期間にわたってゲルを目的の位置に維持する能力に乏しいという欠点が見出される。したがって、一部の製品は、機械的手段を通して良好に固定するが、位置変更性に乏しく、周辺組織を損傷し、一方他の製品は、位置変更可能であるが、長期間にわたる位置決め性に乏しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、目的の場所に配置するための、位置決めを維持することができるが、機械的な固定を必要としない、位置変更可能で自己接着性である修復移植片が必要とされている。さらに、位置変更特性を備え、他の支持なしで、及び位置決め剤の固化又は硬化を必要とすることなく、外科手技中に標的とする組織場所の組織に対してデバイスを一時的に正しい位置に維持するのに適する接着力を有するデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に従って、様々な実施形態が本明細書で記載される。いくつかの実施形態では、位置決め剤が、軟組織修復移植片上に提供されてもよい。位置決め剤は、外科手技中に標的とする組織場所に対して、他の支持なしで、外科用軟組織修復装具を一時的に正しい位置に維持するのに適する接着能力を保持し得る。いくつかの実施形態では、メッシュ装具は、恒久的な固定のためのデバイスを用いて標的とする組織場所に対してメッシュ装具が恒久的に正しい位置に固定されるまで、一時的な位置に維持され得る。いくつかの実施形態では、恒久的な固定のためのデバイスとしては、縫合糸、外科用締結具(surgical tacks)、外科用ステープルなどが挙げられ得る。位置決め剤は、外科用軟組織修復装具に適用された場合、例えば植え込み手技中に位置決め剤が固化又は硬化することなく、それを重力に対抗して正しい位置に保持するのに充分な接着能力を呈し得る。
【0009】
本開示の実施形態は、軟組織修復移植片上に備えられた恒久固定剤を含み得る。いくつかの実施形態では、位置決め剤は、恒久固定剤と組み合わせて作用してよく、それらは一緒になって、外科手技中に標的とする組織場所に対して、他の支持なしで、外科用軟組織修復装具を正しい位置に維持するのに適する接着能力を保持する。いくつかの実施形態では、軟組織修復移植片は、軟組織修復装具に対して垂直力を適用することによって固定剤の作用を完了して恒久的に固定されてよく、この場合、位置決め剤及び固定剤は、外科用軟組織修復装具に適用された場合、例えば植え込み手技中に位置決め剤が固化又は硬化することなく、それを重力に対抗して正しい位置に保持するのに充分な接着能力を呈する。いくつかの実施形態では、固定剤は、標的組織表面と軟組織修復装具のメッシュ層との間の接着形成が限定されるように、軟組織修復装具を指定された時間にわたって正しい位置に維持するのに充分な固定を提供し得る。
【0010】
本開示の実施形態は、外科用メッシュ装具を植え込む方法を含んでよく、方法は、位置決め剤を装具のメッシュ層と標的組織の表面との間に配置して、標的組織の表面に対して外科用メッシュ装具を位置決めする工程を含み得る。位置決め剤は、標的組織に対して、他の支持なしで、位置決め剤が固化又は硬化することなく、メッシュ層を重力に対抗して正しい位置に一時的に維持するのに適する接着能力を有し得る。いくつかの実施形態では、位置決め剤は、位置決め剤の表面に対して外科用メッシュ装具を位置決めする前に、標的組織の表面に適用され得る。いくつかの実施形態では、位置決め剤は、標的組織の表面に対して外科用メッシュ装具を位置決めする前に、外科用メッシュ装具の第一の面に適用され得る。この方法は、さらに、組織上の第一の場所から組織上の第二の場所へ、外科用軟組織修復装具を位置変更することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法はさらに、組織上の第一の場所から外科用軟組織修復装具を剥がすこと、及び外科用軟組織修復装具を、組織を傷つけたり又は損傷したりすることなく、組織上の第二の場所に配置すること、を含み得る。
【0011】
本開示の実施形態は、癒着防止層、組織足場層、位置決め層(positional layer)、及び恒久的固定層を有する植え込み型デバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、層のうちの1つは、別の層と組み合わされてもよいが、両方の層は、それらの能力及び/又は特性を維持する。
【0012】
本開示の実施形態は、積層された第二の層上に積層された第一の層を備え、第二の層は第三の層上に積層されている軟組織修復移植片を含み得る。いくつかの実施形態では、第一の層は、非吸収性ポリマー材料で形成されたメッシュを含んでよい。第二の層は、吸収性又は非吸収性ポリマー材料で形成されたバリア層を含んでよい。そして第三の層は、吸収性又は非吸収性ポリマー層を含んでよく、その上には、ポリマー層上に生体吸収性材料による第一のパターンが配置され、及び第三の層と同じポリマーを含む第二のパターンが配置されている。いくつかの実施形態では、第二の層は、患者の腸に隣接する第一の表面
を有してよい。第三の層は、欠損部を含む組織に隣接する第一の表面を有してよい。いくつかの実施形態では、第三の層の第一の表面は、欠損部を含む組織と接触していてよい。いくつかの実施形態では、第一の層は、第二及び第三の層に、柔軟性をもって取り付けられていてよい。いくつかの実施形態では、第三の層の第一のパターンは、軟組織修復移植片を組織に固定させるように第三の層の第二のパターンを組織中に動かすのに充分な力で、第三の層の組織に向いた側を組織に引き付けるものである、垂直方向の引力を発生させ得る。
【0013】
本開示の実施形態は、第一の層が非吸収性であり、第二の層が吸収性であり、第三の層が非吸収性である軟組織修復移植片を含み得る。
【0014】
本開示の実施形態は、第一の層が非吸収性であり、第二の層が非吸収性であり、第三の層が吸収性である軟組織修復移植片を含み得る。
【0015】
本開示の実施形態は、第一のパターンが、a)毛管引力、b)ファンデルワールス引力、c)ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面、d)シャラマッハ捕捉界面(Schallamach capturing interface)、e)アイゲンリンクル捕捉界面(eigenwrinkle capturing interface)、及びf)内殖表面、のうちの少なくとも1つを生成する
ことができるマイクロ構造を含んでよい軟組織修復移植片を含み得る。
【0016】
本開示の実施形態は、第一のパターンが、表面エネルギーの異なる少なくとも2つの表面サブパターンを備えた階層的に配列されたマイクロ構造を含んでよい軟組織修復移植片を含み得る。いくつかの実施形態では、上記第一の層を水性濡れ表面と接触させた場合に、第一のサブパターンは、より高い表面エネルギーのパターンで、親水性となっていてよく、第二のサブパターンは、より低い表面エネルギーのパターンで、疎水性となってよい。
【0017】
本開示の実施形態は、第一のパターンによって発生された引力が、第二のパターンを組織層中に完全に動かすには不充分である、軟組織修復移植片を含み得る。第一のパターンと第二のパターンとの間のそのような構成及び連携によって、軟組織修復移植片は、組織を損傷することなく位置変更できるようになり得る。いくつかの実施形態では、理想的な移植片位置が実現されると、医師によって加えられる僅かな垂直力によって、第二のパターンと組織層とが係合し得る。いくつかの実施形態では、医師によって加えられる垂直力は、既に少なくとも部分的に組織層と係合している可能性のある第二のパターンをさらに係合させ得る。
【0018】
本開示の実施形態は、第二のパターンが、第一のパターン若しくは外力によって組織層中に侵襲的に上記第二のパターンが係合された場合に上記組織層からの除去に抵抗するバーブ(barbs)又は適切な組織接着構造を含む、軟組織修復移植片を含み得る。
【0019】
本開示の実施形態は、第二のパターンが、植え込み後に接触領域全体にわたって軟組織修復移植片の固定力を最大限に分散させるように設計されている、軟組織修復移植片を含み得る。いくつかの実施形態では、軟組織修復移植片は、標的表面との接触状態から分離されてよい。いくつかの実施形態では、標的表面は、階層的マイクロ構造の最上部マイクロ形体(microfeature)と接触していてよいが、階層的マイクロ構造の他のマイクロ形体とは直接接触していなくてよい。分離の過程で、階層的マイクロ構造の単一の最上部マイクロ形体は、0.025kg/cmを超える力を標的表面に加えなくてよく、ここでの体積(cm)は、単一の最上部マイクロ構造要素の体積であってよい。いくつかの実施形態では、軟組織修復移植片を標的表面から完全に分離するのに要する力は、25kg/cm超であってよく、ここでの表面積(cm)は、軟組織修復移植片と組織層との接
触面積であってよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、分離の過程で、単一の階層的マイクロ構造は、0.025kg/cmを超える力を標的表面に加えなくてよく、ここでの体積(cm)は、階層的に配列された個々のマイクロ形体の体積であってよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、分離の過程で、階層的ではない単一のマイクロ形体は、0.025kg/cmを超える力を標的表面に加えなくてよく、ここでの体積(cm)は、マイクロ形体の体積であってよい。いくつかの実施形態では、単一のマイクロ形体は、バーブ付きマイクロ形体であってよい。いくつかの実施形態では、バーブ付きマイクロ形体は、階層的マイクロ構造の最上部マイクロ形体であってもよい。
【0022】
本開示の実施形態は、第一のパターンの最長マイクロ構造要素よりも少なくとも50%長い第二のパターンのマイクロ構造要素を含んでよい軟組織修復移植片を含み得る。
【0023】
本開示の実施形態は、第三の層が、第三の層を通って第二の層中への組織からの組織成長を可能とするように穿孔されている軟組織修復移植片を含み得る。
【0024】
本開示の実施形態は、第一の層が、直径0.5mm~6mmの連続気泡細孔を備えたメッシュである軟組織修復移植片を含み得る。
【0025】
本開示の実施形態は、縦編みフィラメントで形成されたメッシュを有する軟組織修復移植片を含んでよく、フィラメントの直径は、5ミクロン~100ミクロンである。
【0026】
本開示の実施形態は、300g/m未満の単位面積質量を有する軟組織修復移植片を含み得る。
【0027】
本開示の実施形態は、自己接着層、装具補強層、及び癒着防止層を備えた軟組織修復移植片を含んでよく、移植片は、動物組織を修復するように構成されている。いくつかの実施形態では、各層は、別の層と組み合わされてもよいが、各層は、その特性を維持し得る。いくつかの実施形態では、軟組織修復移植片は、吸収性外科用バリアのシート、メッシュ材料のシート、及び接着性材料のシートを含んでよく、接着性シートは、少なくとも第一及び第二のマイクロ構造を含み得る。いくつかの実施形態では、接着性シートは、欠損組織表面とメッシュのシートとの間で接着が可能となるように複数の穿孔を含んでよく、3つのシートはすべて、柔軟性をもって接合されており、シート間で最大mm単位の横方向の変位が可能である。
【0028】
本開示の実施形態は、3つの接合されたシートが、平面から大きくはずれた予め形成されたネスティング形状を含んでよい軟組織修復移植片を含み得る。
【0029】
本開示の実施形態は、固定及び組織内殖を促進するように構成された1つの膜、並びに固定及び組織内殖を阻止するための第二の膜の2つの膜を備えた軟組織修復移植片を含み得る。いくつかの実施形態では、膜上には、液体接着剤又は組織結合剤は存在しない。いくつかの実施形態では、メッシュが、100~2000ミクロンの平均細孔径を有する膜の間に配置されてよい。いくつかの実施形態では、軟組織修復移植片は、接触によって欠損組織層に接着し得る。
【0030】
本開示の実施形態は、接着ブロックゲル層が、固定及び組織内殖を阻止するための膜層の代わりに配置されてよい軟組織修復移植片を含み得る。
【0031】
本開示の実施形態は、固定及び組織内殖を促進するための膜が、階層的マイクロ構造部分及び組織係合部分を含み得る、軟組織修復移植片を含んでよい。
【0032】
本開示の実施形態は、自己接着層が、階層的マイクロ構造である第一の部分によって発生される引力と、組織に進入し維持する第二の部分との組み合わせである、軟組織修復移植片を含んでよく、第一の部分は、第二の部分を固定させる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、分岐比を示す階層的マイクロ構造の実施形態である。
図2A図2Aは、標的表面とマイクロ構造化面との間のウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面の1つの実施形態の図である。
図2B図2Bは、標的表面とマイクロ構造化面との間のウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面の別の実施形態の図である。
図3A図3Aは、標的表面とマイクロ構造との間に界面体積を有する本開示の実施形態の図である。
図3B図3Bは、標的表面とマイクロ構造との間に界面体積を有する本開示の実施形態の図である。
図4図4は、マイクロ構造の形状の様々な実施形態を示す。
図5図5は、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)軟組織修復デバイスの実施形態の図である。
図6図6は、柔軟性層を備えたウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)軟組織修復デバイスの実施形態の図である。
図7図7は、2レベル軟組織修復デバイスの実施形態の図である。
図8A図8Aは、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)2レベル軟組織修復デバイスの実施形態の図である。
図8B図8Bは、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)2レベル軟組織修復デバイスの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1つ以上の例が本明細書で以下に示される本開示の実施形態について、以降で詳細に述べる。各実施形態及び例は、本開示のデバイス、組成物、及び材料の説明として提供されるものであり、限定するものではない。むしろ、以下の記述は、本開示の例示的実施形態を実行するための便利な実例を提供する。実際、当業者であれば、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本開示の教示内容に対して様々な改変及び変更が成され得ることは明らかであろう。例えば、1つの実施形態の一部として示され又は記載される特徴は、別の実施形態と共に用いられて、なおさらなる実施形態が得られ得る。したがって、本開示は、そのような改変及び変更を、添付の請求項及びそれらの均等物の範囲に含まれるとして包含することを意図している。本開示の他の目的、特徴、及び態様は、以下の詳細な記述に開示される、又は以下の詳細な記述から明らかである。当業者であれば、本発明の考察は、単なる例示的実施形態の記述であり、本開示の広い態様を限定するものとしての意図ではないことは理解されるべきである。
【0035】
本開示に従う装置及び方法の例示的な適用を、本セクションで記載する。これらの例は、本開示の文脈を追加し、本開示の理解を補助するためだけに提供されている。したがって、当業者であれば、本開示を、これらの具体的な詳細事項の一部又はすべてが無い状態で実践し得ることは明らかであろう。他の場合では、公知のプロセス工程は、本開示を不要に分かりにくくすることを避けるために、詳細に記載していない。他の適用も可能であり、そのため、以下の例は、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0036】
以下の詳細な記述において、記述の一部を形成し、本開示の具体的な実施形態が実例と
して示される添付の図面が参照される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実践することができるように充分に詳細に記載されるが、これらの例は、限定するものではなく、そのため、他の実施形態が用いられてもよく、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく変更が成されてもよいことは理解される。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「表面間接着」とは、マイクロ構造化表面と接触表面との間に形成される接着を表すものとして理解され得る。この用語が、横方向の移動(せん断)に対する抵抗及び垂直方向の移動(剥離)に対する抵抗に適用され得ることは理解される。この用語はまた、液体の表面張力及びマイクロ構造化面の表面エネルギーが、両方のエネルギーが最小化される界面を形成する場合に発生される吸引力にも適用され得る。
【0038】
本明細書で用いられる場合、マイクロ構造化表面に適用される「フラクタル次元」の用語は、特徴的な分岐比を有するマイクロ構造化表面を表すものと理解され得る。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面」の用語は、2つの固体表面間に形成される界面体積を意味するものと理解され得る。界面体積は、異なる表面エネルギーの少なくとも2つの流体を含有し得る。「流体」は、液体又は気体又はその両方のいずれかを意味し得るものと理解される。
【0040】
本明細書で用いられる場合、「表面エネルギー」の用語は、表面の単位面積あたりの表面分子のポテンシャルエネルギーを意味するものと理解され得る。「表面エネルギー勾配」の用語は、本明細書で用いられる場合、2つの表面が接合する経路に沿った表面エネルギーの空間導関数の変動を意味するものと理解され得る。
【0041】
ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面における界面体積の組織化は、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面の階層的マイクロ構造化表面及び液体成分の表面エネルギー勾配の最小化であると理解され得る。したがって、界面液体及び表面マイクロ構造は、一般に、ペアとして関連し得るものであり、この場合、液体-マイクロ構造ペアの各々の表面エネルギー差の合計は、最小であり得る。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「表面張力」の用語は、液体の表面エネルギーを表すものと理解され得る。表面張力は、一定温度において、表面張力の力に対抗して、単位あたりの(by unity)液体表面の面積を広げるように作用する仕事量として理解され得る。
【0043】
当業者であれば、これらの現象の多くが、時間の経過と共に、いくつかの場合では数分間の時間で現れ得ることは理解される。したがって、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面を発生させる第一のマイクロ構造化表面は、マイクロ構造表面と接触表面との間の距離を、経時で減少させ得る。第二のマイクロ構造が第一のマイクロ構造と組み合わせて用いられ、及び第二のマイクロ構造が第一のマイクロ構造よりも長く、軟組織と機械的に係合するように設計されている場合、第一のマイクロ構造は、第二の組織係合要素を軟組織接触表面へ移動させるように作用し得る。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「位置決め強度(positional strength)」の用語は、フ
ァンデルワールス相互作用に起因するマイクロ構造化表面の自己接着特性を表す一般的な意味を含むものと理解され得る。一般に、位置決め強度は、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面と関連し得る。位置決め強度は、単位面積あたりの力によって特徴付けられる接触表面の非侵襲的接着として理解され得る。位置決め強度は、本開示において、横移動(せん断)接着及び剥離(持ち上げ)接着の2つの方法で定量され得る。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「面積比」の用語は、メッシュ又はシートを含むがこれらに限定されない材料の多孔度を意味するものと理解され得る。面積比は、材料の細孔面積をシートの総面積で除した比であり得る。面積密度が低下しているシートは、多孔度が増加しているものと理解され得る。
【0046】
本明細書で用いられる場合、「バーブ」の用語は、接触表面を侵襲的に係合することを意図し得る表面上のいずれかのマイクロ形体を意味するものと理解され得る。いくつかの実施形態では、バーブは、平滑なテーパー状ピラー、又は矢じり状構造が配置されたピラーであり得る。
【0047】
本明細書で用いられる場合、「侵襲的」の用語は、物体の少なくとも一部分が表面から中に進入していることを意味するものと理解され得る。
【0048】
本開示は、軟組織修復のための新規な材料、特に、ヘルニア修復のための材料に関する。これらの新規な材料は、移植片又は軟組織支持デバイスなどのインプラントとしてを含むがこれらに限定されない様々な用途に適するように構成され得る。これらの材料は、ヘルニアを有する患者、又はヘルニア修復外科手技を受けている患者などの患者に植え込まれ得る。
【0049】
有利には、これらの材料(及びこれらの材料を用いた移植片を含むデバイス及びシステムなどのいずれかの装置)は、体壁キャビティの修復における経時での外科的植え込みに特に良好に適しており、先行技術のデバイス及び材料と比較して有利な生体力学的又は生化学的特性を有し得る。特に、標的組織に恒久的に固定されるいずれのデバイスのコンプライアンスも、外科手術からの最良の予後をもたらし、合併症を最小限とするために、標的組織のコンプライアンスにマッチするべきである。逆に、コンプライアンスは、少なくとも時間が経過した後に、組織欠損部を補正するのに充分であるべきである。したがって、先行技術のインプラントデバイスの多くの生体力学的特徴は、生体適合性と治療法との間の妥協であり、したがって不充分である。
【0050】
同様に、外科用バリアを外科用足場に追加することが、この組み合わされたデバイスをより堅くすることも一般的には事実である。他方、癒着形成は、手術の7日後では一般的には発生しない。したがって、外科用バリアは、ある時間の経過後に吸収性であってよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示の装置は、組織足場材料を含み得る。いくつかの実施形態では、組織足場材料は、メッシュであってよい。足場材料は、バイオテキスタイル、医療用テキスタイル、又はバイオテキスタイルと医療用テキスタイルとの両方であってよい。いくつかの実施形態では、装置は、組織足場材料に取り付けられていてよい癒着防止層も含んでよい。いくつかの実施形態では、癒着防止層は、足場材料上の別個の場所に位置していてよい。「別個の」とは、本明細書で用いられる場合、癒着防止層が、足場材料上の別々の異なる場所にあり、したがって足場材料のおよそ全体面積に配置されるものではないことを含むものと理解され得ると理解される。いくつかの実施形態では、場所は、足場材料に組み込まれている癒着防止層を含んでよく、及び/又はそれは、足場材料上に固定されていてもよい。いくつかの実施形態では、癒着防止層は、足場材料上に固定されてよいが、同時に、別個の癒着防止の場所に隣接する領域及び/又はそれらの間の領域で、足場材料と癒着防止層との間のスライド移動が依然として可能である。
【0052】
組織足場は、様々な材料及び/又は組成物を含んでよい。いくつかの実施形態では、組織足場材料は、生体適合性であってよい。いくつかの実施形態では、足場材料は、細胞外基質、ヘルニア修復足場、パッチ、及び/又はメッシュなどを含んでよい。組織足場は、
連続気泡形状で配置されてよく、いくつかの実施形態では、「メッシュ」として本明細書において言及され得る。いくつかの実施形態では、メッシュは、生体適合性、及び/又は生体吸収性、及び/又は非生体吸収性であってよい。いくつかの実施形態では、組織足場は、生体適合性フィルムを含んでよい。本出願全体を通して、組織足場材料は、組織足場がメッシュとフィルムとが一緒にあるなどの多くのサブ層から構成されているか、又は単一の層のみから構成されているかにかかわらず、まとめて第一の層と称され得る。
【0053】
組織足場の実施形態は、非生体吸収性である材料で形成されてよい。いくつかの実施形態では、これらの非生体吸収性材料は、材料中に組み込まれたフィラメントを含んでよい。いくつかの実施形態では、フィラメントは、縫い糸、ワイヤ、ブレード、モノフィラメント、マルチフィラメント、これらの組み合わせなどであってよい。いくつかの実施形態では、フィラメントは、フィラメントの織り、縫い、又は刺繍に類似の方法によって、組織足場材料に組み込まれてよい。いくつかの実施形態では、フィラメントの組み込みは、足場材料内にパターンを生成することを含んでよい。第一のパターンは、非生体吸収性フィラメント材料を用いて組み込まれてよく、第一のパターンは、実質的に平行である線のグリッド又はアレイであってよい。いくつかの実施形態では、第一のパターンは、互いからずれて及び/又は重なり合って配列された、一緒になってより大きいパターンを作り出していてよい複数のサブパターンを含んでよい。第一のパターンを形成しているフィラメント材料及び/又は第一のパターン全体は、メッシュよりも低いコンプライアンスを有し得る。したがって、組織足場の最終的なコンプライアンスは、メッシュ及びメッシュに組み込まれた第一のパターンのコンプライアンスであり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、第二のフィラメントが、第一のフィラメントと一緒に、又は第一のフィラメントと合わせて用いられてよい。第二のフィラメントは、第一のフィラメントとは異なるフィラメント材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、第二のフィラメントは、第一のパターンを作り出すために第一のフィラメントと一緒に用いられてよい。他の実施形態では、第一のフィラメントが、第一のパターンを作り出してよく、第二のフィラメントが、第二のパターンを作り出してよい。当業者であれば、いかなる数のフィラメント及びパターンが用いられてもよいことは理解される。単一のパターン及び/又は複数のパターンを生成するために、単一のフィラメント材料が用いられてもよいことも理解される。また、単一のパターン及び/又は複数のパターンを生成するために、複数のフィラメント材料が用いられてもよい。
【0055】
メッシュが生体吸収性であるいくつかの実施形態では、生体吸収性であるフィラメント材料が用いられてもよい。いくつかの実施形態では、メッシュの生体吸収性材料及びフィラメントの生体吸収性材料は、各材料が同じ環境中でおよそ同じ速度で吸収されるように、類似の吸収性プロファイルを有してよい。いくつかの実施形態では、フィラメント材料は、フィラメントがメッシュ材料よりも素早く吸収されるように又はよりゆっくり吸収され得るように、異なる生体吸収性プロファイルを有してよい。好ましい実施形態では、フィラメント材料は、メッシュ生体吸収性材料よりも素早く吸収される。
【0056】
材料のコンプライアンス(例:曲げ弾性率)は、加えられた力を受けて弾性変形を起こしている材料の機械的特性を意味し得る。それは剛性の逆数として理解され得る。コンプライアンスは、コンプライアンス歪みパーセント(percent compliance strain)として
表され得る。容易に変形する材料は、コンプライアンスを有するとされ、変形に抵抗する材料は、剛性であると見なされる。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態は、癒着防止層を含み得る。いくつかの実施形態では、癒着防止層は、癒着防止材料の1又は複数の層を含んでよい。「癒着防止層」の言及は、層又は材料が「非癒着性」であることを必ずしも示すものではなく、むしろ、「癒着」の形
成を防止又は実質的に制限する層又は材料であることには留意されたい。
【0058】
いくつかの実施形態では、癒着防止層は、バイオテキスタイル及び/又は医療用テキスタイルの1又は複数の層を含んでよい。いくつかの実施形態では、材料は、好ましくは、真皮、心膜、腹膜、腸、胃、又は前胃のうちの1又は複数に由来する細胞外基質などの細胞外基質であってよい。本開示において、癒着防止層は、「第二の層」とも称され得ることは理解される。しかし、「第二の層」の言及は、癒着防止層だけに限定されるものではない。
【0059】
本開示の実施形態は、第一の層(組織足場材料)を、第一の層に取り付けられた第二の層(癒着防止層)と共に含んでよい。いくつかの実施形態では、層の組み合わせは、第一の層のコンプライアンスを実質的に変化させないように構成される。実際には、これは、第一の層及び第二の層のコンプライアンスが、別々に又は合わせて、本明細書で述べるように一緒に取り付けられた場合に数パーセントを超えて変化しないことを意味し得る。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態は、一緒に取り付けられた第一の層及び第二の層を含んでよく、この場合、材料のコンプライアンスは、第一の層と第二の層とが別個の接着部位で一緒に取り付けられた場合、第一の層単独若しくは第二の層単独のいずれかの、又は上下に「積層」されているが取り付けられてはいない場合の第一の層及び第二の層の組み合わせのコンプライアンスの20%以下であり得る。「別個の」とは、「別個の取り付け部位」について本明細書で用いられる場合、第一の層と第二の層とが互いに対して取り付けられている各場所が、個々に別々で、別の場所とは異なっていることを意味し得るものと理解され得る。別個の接着部位は、第一の層と第二の層とを取り付けるためのいかなる数の方法であってもよい。いくつかの実施形態では、別個の取り付け部位は、第一の層を第二の層と接続するステッチを含み得る。いくつかの実施形態では、部位は、生体適合性で第一の層を第二の層に接着させる接着剤又は糊材料など、小さい別個の場所にある2つの層間の化学接着剤又はポリマー接着剤であってよい。接着剤は、適切ないかなる生物学的適合性接着剤であってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、別個の取り付け部位は、規則的な形状又は不規則な形状であってよい比較的小径の領域を含み得る。別個の取り付け部位としてステッチを含む実施形態は、2つの層の間に織られた又はステッチされた材料を含んでよく、別個の取り付け部位は、ステッチ材料の直径を有し得る。ステッチ材料は、フィラメント、縫い糸、織り糸などから選択されてよい。ステッチ材料は、生体適合性及び/又は生体吸収性であってよい。いくつかの実施形態では、別個の取り付け部位は、約1ミクロン~10mmの直径を有してよい。
【0062】
本開示の実施形態は、組織足場材料に接続されている癒着防止層を含んでよく、癒着防止層は、これらの層を一緒に接続する材料の織り(weaving)を介して足場と接続されて
いてよい。いくつかの実施形態では、材料の織りは、癒着防止材料を含む少なくとも1つのフィラメント、縫い糸、又は織り糸を含んでよいステッチパターンを含み得る。本明細書で述べるステッチパターンが、全体パターンに配列されてよい別個の取り付け部位のパターンであってよいことは理解される。したがって、ステッチパターンは、2つの層の間の別個の取り付け部位のパターンを意味し得る。
【0063】
本開示の実施形態は、ステッチパターンを含んでよく、パターンは、材料の1又は複数の軸線に沿って配向された複数の直線を含み得る。いくつかの実施形態では、材料の異なる軸線に沿って配向された直線のサブセットが、複数の直線の少なくとも一部分で交差して、グリッドパターンを形成していてもよい。ステッチパターンは、様々なデザイン及びパターンを含んでよい。いくつかの実施形態は、複数の平行線だけを含んでよい。いくつ
かの実施形態は、ジグザグパターンに配列された複数の線を含むステッチパターンを含んでよい。他の実施形態は、異なるパターンを有する別個の領域を備えたステッチパターンを含んでよい。
【0064】
ジグザグデザインの線のサブセットを有するステッチパターンを含む本開示の実施形態は、ステッチパターン中のジグザグである線の別のサブセットに対して、異なる振幅、周波数、又は振幅と周波数を含んでよい。
【0065】
いくつかの実施形態は、複数の曲線を含むパターンに配列された複数の線を有するステッチパターンを含んでよい。いくつかの実施形態は、正弦波などの波パターン又は振動線パターンを含んでよい。曲線パターンの線のサブセットが、ステッチパターン中の曲線である線の別のサブセットに対して、異なる振幅、周波数、又は振幅と周波数を含んでよい。いくつかの実施形態は、連続的であるステッチパターンを含んでよく、一方他の実施形態は、パターンに沿った1又は複数の場所において、切れた部分又は中断部分を含んでもよい。ステッチパターンは、コーナーロック(corner-lock)ステッチパターンを含んで
よい。
【0066】
本開示のいくつかの実施形態は、縫い糸、織り糸などのフィラメントを含み得るステッチパターンを含んでよい。1つの実施形態では、ステッチパターンは、単一のフィラメントを含んでよい。1つの実施形態では、ステッチパターンは、上部フィラメント及び下部フィラメントを含んでよい。上部フィラメントは、下部フィラメントと比較して大きい径を有してよく、下部フィラメントと比較して実質的に同じ径を有してよく、又は下部フィラメントと比較して小さい径を有してよい。
【0067】
上部フィラメント及び下部フィラメントは、キトサン、ヒアルロン酸、イコデキストリン、フィブリン、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)/ポリ乳酸、ポリテトラフルオロエチレン、又は酸化再生セルロース、これらのいずれかのブレンドされた組み合わせ又はこれらの重合物を含めて、これらのいずれか1つ以上を含み得る。
【0068】
一般に、第一の層と第二の層との取り付けは、2つの層の組み合わせが、公称値(例:10%以下)を超えてコンプライアンスを変化させないように、2つの層を柔軟性をもって取り付けるように構成されていてよい。この柔軟性のある取り付けの構成は、少なくとも部分的には、第一の層及び第二の層が、材料が曲げ、引っ張り、又は操作を受けた場合に、互いに対して相対的に移動又はスライドすることができるように、別個の取り付け部位間に取り付けられていない領域を含めることによって、実現され得る。
【0069】
別個の取り付け部位の密度は、均一であっても又は不均一であってもよい。上記で述べたように、いくつかの実施形態では、別個の取り付け部位は、グリッド又は重なり合っているグリッドなどのパターンに分布されていてよい。いくつかの実施形態では、取り付け部位の密度は、比較的低くて良い。例えば、取り付け部位の密度は、約10取り付け部位/mm未満であってよい。
【0070】
第二の層が第一の層上に取り付けられている本開示の実施形態では、第二の層は、ECM、シリコーン、ポリウレタン、又はポリ乳酸(PLA)などの癒着防止層材料の1又は複数のシートを備えてよい。いくつかの実施形態では、第二の層を本明細書で述べるステッチパターンで取り付けることは、癒着防止層材料の1又は複数のシートを基材に対して移動可能とし得る。例えば、1又は複数のシートは、少なくとも1つのフィラメントを含むステッチパターンで、第一の層に接合されてよい。フィラメント材料は、ポリマー材料を含む適切ないかなる材料で形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、フィラメント材料は、癒着防止層シートと同じ材料で形成されていてよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、第一の層を第二の層に固定する取り付けステッチパターンは、複数のステッチアイランド(stitch islands)を含んでよく、それによって、少なくとも1つのフィラメントは、材料の近辺の別個の場所に配置され得る。いくつかの実施形態では、その組織足場材料は、ステッチアイランドの間に、取り付けられていない(例:ステッチパターン又はフィラメントがない)領域を含んでよい。いくつかの実施形態は、基材の1又は複数の軸線に沿って配向された複数の直線を有するステッチ取り付けパターンを含んでよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、基材の異なる軸線に沿って配向された直線のサブセットが、複数の直線の少なくとも一部分で交差してよく、それによって、材料の少なくとも一部分上にグリッドパターンを形成してもよい。ステッチパターンは、様々なデザイン及びパターンを含んでよい。いくつかの実施形態は、複数の平行線だけを含んでよい。いくつかの実施形態は、ジグザグパターンに配列された複数の線を含むステッチパターンを含んでよい。他の実施形態は、異なるパターンを有する別個の領域を備えたステッチパターンを含んでよい。
【0073】
ジグザグデザインの線のサブセットを有するステッチパターンを含む本開示の実施形態は、ステッチパターン中のジグザグである線の別のサブセットに対して、異なる振幅、周波数、又は振幅と周波数を含んでよい。
【0074】
いくつかの実施形態は、複数の曲線を含むパターンに配列された複数の線を有するステッチパターンを含んでよい。いくつかの実施形態は、正弦波などの波パターン又は振動線パターンを含んでよい。曲線パターンの線のサブセットが、ステッチパターン中の曲線である線の別のサブセットに対して、異なる振幅、周波数、又は振幅と周波数を含んでよい。いくつかの実施形態は、連続的であるステッチパターンを含んでよく、一方他の実施形態は、パターンに沿った1又は複数の場所において、切れた部分又は中断部分を含んでもよい。ステッチパターンは、コーナーロックステッチパターンを含んでよい。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態は、縫い糸、織り糸などのフィラメントを含み得るステッチパターンを含んでよい。1つの実施形態では、ステッチパターンは、単一のフィラメントを含んでよい。1つの実施形態では、ステッチパターンは、上部フィラメント及び下部フィラメントを含んでよい。上部フィラメントは、下部フィラメントと比較して大きい径を有してよく、下部フィラメントと比較して実質的に同じ径を有してよく、又は下部フィラメントと比較して小さい径を有してよい。
【0076】
上部フィラメント及び下部フィラメントは、キトサン、ヒアルロン酸、イコデキストリン、フィブリン、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)/ポリ乳酸、ポリテトラフルオロエチレン、又は酸化再生セルロース、これらのいずれかのブレンドされた組み合わせ又はこれらの重合物を含めて、これらのいずれか1つ以上を含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、1又は複数の癒着防止層シートは、キトサン、ヒアルロン酸、イコデキストリン、フィブリン、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)/ポリ乳酸、ポリテトラフルオロエチレン、又は酸化再生セルロース、これらのいずれかの組み合わせ又は重合物を含めて、これらのいずれか1つ以上を含み得る。
【0078】
上記開示は、組織足場に癒着防止層を取り付けることを主として含む材料を提供するが、上記開示はまた、組織足場をマイクロ構造化表面に取り付けることに適用されてもよい。いくつかの実施形態では、3つの部分(第一の層、第二の層、及びマイクロ構造化表面)のすべてが、1つの取り付け手順で同時に提供され得る。いくつかの実施形態では、マ
イクロ構造化表面は、本明細書で開示されるいずれの層に組み込まれていてもよい。本開示は、マイクロ構造層を提供し得るものであるが、この層は、別の層と一体化していても、又は別の層に組み込まれていてもよい。
【0079】
本開示の実施形態は、組織足場材料に取り付けられた又は組織足場材料と一体化されたマイクロ構造化表面を含んでよい。いくつかの実施形態では、組織足場材料は、第一の層、第二の層、及びマイクロ構造化層を含む3つの層を含んでよい。マイクロ構造化層は、材料に、表面に対する位置決め性及び/又は固定を維持する能力を備えるように構成されていてよい。
【0080】
2つの表面間において、2つの表面間に配置された界面体積が高表面張力物質及び低表面張力物質の両方を含む場合に、表面間接着が形成され得る。この表面間接着は、形成された場合に吸引性であるウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面によって引き起こされ得る。吸引性の態様は、界面体積の構成成分が、液体界面がマイクロ構造化表面と最大限に接触するように組織化された場合に発生する。ある意味では、界面体積は、マイクロ構造中に拡散し得、続いてそこでピン止めされた状態となり、接着効果又は接着力を発生させる。
【0081】
界面のいずれのマイクロ領域におけるピン止め力も小さいものであり得るが、マクロ領域全体でのピン止め力は、予想外に大きいものであり得る。
【0082】
表面間接着は、多くの形を取り得るが、一般に、マイクロ構造化表面の空間的に変動する表面エネルギーと、接触表面に存在する様々な液体及び固体の表面エネルギーとの相互作用に起因して発生する。実際の状況では、複数種類の表面間接着の組み合わせが発生することが多い。例えば、「スティックスリップ(stick-slip)」として知られる状態は、シャラマッハ波の形成と関連付けられ得る。スティックスリップの現象は、相対的な変位を起こしている表面間での破壊的な相互作用を最小限に抑える。スティックスリップは、ゼロに近い接着状態と無限に近い接着状態とを交互に含む界面状態の間隔が時間的に分布されていることを特徴とし得る。
【0083】
スティックスリップは、せん断力と剥離力との間の差異に依存し得る。標的基材が充分な圧縮力下に置かれた場合、それは、曲がって垂直方向の変位を作り出し得、続いてそれが、部分剥がれ(dehesion)の剥離モードに到達し得る。部分剥がれは、垂直方向の変位を除去し得る横方向の移動(スリップ)を引き起こし得、せん断力が回復される。この現象は、本明細書で開示される本発明の実施形態の位置変更性の態様の一部の理由であり得る。
【0084】
例えば、いくつかの実施形態では、マイクロ構造化表面は、標的表面の垂直方向の変位が界面距離又は体積を変化させず、その結果として剥離力を発生させずにスリップ現象を防止するものである設計形体を含み得るシャラマッハ波を有するように設計され得る。標的表面が外力からの圧縮波を受け得る実施形態では、グリップ表面(gripping surfaces
)の周期的な分布によって、マイクロ構造化表面と標的表面との間の関係を変化させることなく、圧縮波を移動させることが可能となり得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、マイクロ構造化表面上のマイクロ形体は、通常は周期的に、及び多くの「重なった」レベルで、整列されていてよい。マイクロ構造が、複数のサイズスケールで周期的に形成される場合、それらは、階層的であるとすることができ、2を超えるフラクタル次元を有し得る。
【0086】
図1を参照すると、マイクロ構造化表面100は、3つの階層的マイクロ形体102、
104、106によって定められ得る分岐比を含み得る。いくつかの実施形態では、第一のマイクロ形体102は、中心間(ピッチ)が1000ミクロン離れていてよく、第二のマイクロ形体104は、100ミクロン離れていてよく、第三のマイクロ形体106は、10ミクロン離れていてよい。第三のマイクロ形体106は、第二のマイクロ形体104の上部表面108の上に配置されてよい。第二のマイクロ形体104は、第一のマイクロ形体102の上部表面110の上に配置されてよい。したがって、線112は、長さ114が長さ116の10倍であり得、長さ116が長さ118の10倍であり得る分岐比を定めることができる。線112は、2.1=2+連続する長さの比、のフラクタル次元を定めることができ、2は、マイクロ構造のない表面の次元である。
【0087】
いくつかの実施形態では、最小表面エネルギーの流体は、表面エネルギーがゼロである気体であり得る。図2A及び図2Bを参照すると、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面200が、接触表面202とマイクロ構造化表面204との間に形成され得る。界面200は、第一の液体206及び第二の液体208を含み得る。いくつかの実施形態では、マイクロ構造化表面204は、通常は第一及び第二の液体206、208の中で均質であり得る界面200を、階層的マイクロ構造210、212の周りに組織化し得る。この組織化によって、流体206、208が、空間的に局所化されたドメイン214、216に分離され得る。系の合計エネルギーは、この組織化によって低下し得、それによって、接着力が作り出され得る。ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)界面を乱すのに要するエネルギーは、界面200を均質状態に戻すのに必要であるエネルギーにほぼ等しいものであり得る。
【0088】
本開示の実施形態は、第一の層、第二の層、及び第三の層を含んでよく、第二の層及び第三の層は、第一の層に取り付けられている。いくつかの実施形態では、第一の層は、第一の層の第一の側で第二の層に取り付けられ、第一の層は、第一の層の第二の側で第三の層に取り付けられている。いくつかの実施形態では、第一の層は、組織足場材料を含んでよい。第二の層は、癒着防止組成物を含んでよい。第三の層は、マイクロ構造表面を含んでよい。いくつかの実施形態では、第三の層は、マイクロ構造表面が第一又は第二の層と一体化するように、第一又は第二の層と組み合わされていてよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、第三の層は、第一のマイクロ形体が、その上に第二のマイクロ形体を有する階層的マイクロ構造を含んでよい。いくつかの実施形態では、第三のマイクロ形体は、第二のマイクロ形体の近辺に配置されてよい。マイクロ形体のこの連続した「重なり」は、前のマイクロ形体の近辺に配置されたさらなるマイクロ形体を含んでよい。いくつかの実施形態では、マイクロ構造表面を含む第三の層は、組み合わされた層が一時的に標的表面に接着することができるように、接着効果を提供するように構成されていてよい。いくつかの実施形態では、第三の層は、組み合わされた層を、標的組織に対して他の支持なしで、及び固化剤又は硬化剤もなしで、より恒久的な時間にわたって標的表面に固定することができるように、固定効果を提供するマイクロ構造表面を含んでよい。
【0090】
開示される材料の実施形態を製造する方法も、本明細書で記載される。方法は、例えば、癒着防止層材料を、1又は複数のステッチ取り付けパターンを介して取り付けて、本明細書で記載又は例示される足場材料に癒着防止材料を固定することを含んでよい。いくつかの実施形態では、そのような方法は、癒着防止層材料を含む1又は複数のシートを、本明細書で記載又は例示される足場材料に取り付けることができるように、フィラメント材料を織ること又は縫うことを含んでよい。いくつかの実施形態では、足場は、その上に足場材料よりも高い生体吸収性を有するフィラメント材料を用いて織り、縫い、又は刺繍が成された第一のパターンを含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、メッシュは、その元の状態では高いコンプライアンス特性を有し得るが、その上に、より低いコンプライアンスのフィラメント材料を用いて織り、縫い、又は刺繍が成された、コンプライアン
スを制限するステッチパターンを有してよい。続いて、メッシュは、別個の取り付け部位の取り付けパターン(例:ステッチ)を介して、癒着防止層に取り付けられてよい。
【0091】
当業者であれば、本開示の実施形態が、組織の修復に対して有益で有用であり得ることは理解される。例えば、本明細書で開示されるのは、癒着を阻止し、インプラントとしての材料を位置決めし、材料を固定する方法であり、そのすべての態様は、必要とする対象における組織の修復又は再構築にとって重要であることは理解される。そのような方法は、一般に、癒着防止層及び位置決め/固定層を含むインプラント又は足場材料を植え込むことを含んでよく、位置決め/固定層は、インプラント又は足場材料に縫われていてよい、又は刺繍されていてよい。いくつかの実施形態では、インプラント又は足場材料は、組織の修復又は組織の再構築を必要とする対象の体内の場所で、インプラント又は足場に縫われた1又は複数の癒着防止層を含んでよい。
【0092】
本明細書で用いられる場合、「組織」は、軟組織を含む体内のいずれの組織であってもよい。いくつかの方法では、組織は、ヘルニアを含んでよく、それによって、インプラント又は軟組織修復移植片は、ヘルニア形成を修復するために用いられる。植え込まれると、癒着防止層は、体内の組織とインプラント又は足場との間の癒着を阻止することができ、さらにまた、インプラント近傍にある体内の隣接する組織間の癒着も阻止することができる。インプラントの固定が、軟組織欠損部と足場との間の位置関係を維持することを含むことは理解される。いくつかの実施形態では、固定部分は、足場への組織内殖の前に、拘束力を足場へ伝達し得る。いくつかの実施形態では、固定部分は、足場が完全に身体と一体化した後であっても、支持する役割を果たし続け得る。「対象」の用語の使用は、ヒト又は他の動物(例:家畜動物、非ヒト動物など)を含み得ることは理解される。
【0093】
本開示のいくつかの実施形態は、ヘルニア修復移植片を含み得る。いくつかの実施形態では、ヘルニア修復移植片は、組織足場層を含む第一の層、癒着防止層を含む第二の層、及び移植片を組織に位置決め又は固定するための第三の層を含んでよく、第二及び第三の層は、別個の取り付け部位のパターンを用いて第一の層に柔軟性をもって取り付けられる。いくつかの実施形態では、別個の取り付け部位のパターンは、積層された第一、第二、及び第三の層のコンプライアンスを、10%未満変化させてよく、並びに別個の取り付け部位間の、第一の層、第二の層、及び第三の層の隣接する領域は、互いに対してスライドし得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、ヘルニア修復移植片は、編まれた非生体吸収性メッシュ及び生体吸収性材料を用いてメッシュに刺繍された第一のパターンを含む第一の層を含んでよい。ヘルニア修復移植片はさらに、第一の層に沿った別個の取り付け部位で、隣接する別個の取り付け部位が1mm~20mmの距離で分離され得るように取り付けられた、癒着防止材料の少なくとも1つのシートを含む第二の層を含んでよい。ヘルニア修復移植片はさらに、第一の層に沿った別個の取り付け部位で、隣接する別個の取り付け部位が0.1mm~10mmの距離で分離され得るように取り付けられた、マイクロ構造化材料の少なくとも1つのシートを含む第三の層を含んでよく、別個の取り付け部位間の、第一の層、第二の層、及び第三の層の隣接する領域は、互いに対してスライドし得る。
【0095】
本開示のいくつかの実施形態では、ヘルニア修復移植片は、第二の層に取り付けられた第一の層、及び第一の層上に取り付けられた第三の層を含んでよい。第二の層は、吸収性材料で形成された癒着防止層、及び生体吸収性材料を用いて第二の層にステッチされた第一のパターンを含んでよい。第一の層は、細胞外基質材料(ECM)の複数のシートを含む足場材料を含んでよい。そして第三の層は、材料を位置決めするための階層的マイクロ構造及び材料を固定するための組織に進入するバーブを含む位置決め/固定材料を含んでよい。第三の層は、ポリプロピレンを含む部分を少なくとも有してよい。第二及び第三の
層は、別個のステッチされた取り付け部位の第二のパターンを用いて第一の層に柔軟性をもって取り付けられてよく、別個のステッチされた取り付け部位の第二のパターンは、癒着防止シートにステッチされた第一のパターンよりも密度が低い。いくつかの実施形態では、隣接する別個の取り付け部位は、1mm~20mmの距離で分離されていてよい。ヘルニア修復移植片はさらに、第一の層に沿った別個の取り付け部位で、隣接する別個の取り付け部位が0.1mm~10mmの距離で分離され得るように取り付けられた、マイクロ構造化材料の少なくとも1つのシートを含む第三の層を含んでよく、別個の取り付け部位間の、第一の層、第二の層、及び第三の層の隣接する領域は、互いに対してスライドし得る。
【0096】
本明細書で開示される移植片の実施形態のいずれにおいても、第一のパターン(例:補強パターン)は、第三の層に適用されてもよく、第三のパターン(例:取り付けパターン)は、別個の取り付け部位の第三のステッチパターンであってよい。第三のパターンは、第三の層の平面内において、第一のパターンよりも密度が低くてよい。
【0097】
一般に、組織足場は、メッシュを含んでよい。メッシュは、編まれたメッシュ、織られたメッシュ、又は成形されたメッシュであってよい。メッシュは、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、ポリエステル、又はこれらの組み合わせなどで形成されてよい。メッシュは、1mm~10mmの連続気泡細孔径を有してよい。メッシュは、1ミクロン~250ミクロンの直径を有する縦編みフィラメントで形成されてよい。例えば、メッシュは、3ミクロン~100ミクロンの直径を有する縦編みフィラメントで形成されてよい。メッシュは、一緒に編まれた複数の繊維で(マルチフィラメント)又はモノフィラメントで形成されてよい。いくつかの変型例では、マルチフィラメント繊維(メッシュ及び縫い材料のいずれか又は両方において)は、より強い可能性があることから、好ましい場合がある。
【0098】
一般に、位置決め/固定層は、組織表面から足場層への組織成長を可能とするために、穿孔を備えたポリマーシートを含んでよい。層の位置決め部分は、マイクロ構造化表面を含んでよい。マイクロ構造は、2を超えるフラクタル次元で、階層的に配列されてよい。一般に、フラクタル次元が高いほど、位置決め強度は強くなる。層の位置決め部分は、組織に対するインプラントの配置をもたらし得るものであり、それによって、特に腹腔鏡下において、外科的配置が容易となる。
【0099】
いくつかの実施形態では、第三の層は、接触表面を侵襲的に係合し得る固定の態様を含んでよい。ここで図3Aを参照すると、軟組織移植片300が図示されている。軟組織移植片は、位置決め/固定層301を含んでよい。いくつかの実施形態では、組織係合構造302は、テーパ状のピラー303であってよい。いくつかの実施形態では、組織係合構造302は、バーブ付きマイクロ形体304であってよい。バーブ305は、標的表面312を侵襲的に係合するために用いられ得るが、バーブの係合は、軟組織移植片300の位置変更性を低下させ得る。したがって、位置決め/固定層301は、バーブ付きマイクロ形体304が別のバーブ付きマイクロ形体304よりも標的表面312から長い距離306に位置するように構成されてよい。複数のバーブ付きマイクロ形体304は、複数のバーブ付きマイクロ形体の様々なサブセットが、標的表面312から増加する距離を有するように構成されてよい。標的表面312からの様々な距離を有するそのような構成によって、標的表面に係合するバーブ305の数を時間の関数として増加させることが可能となり得る。いくつかの実施形態では、組織係合構造302は、マイクロ構造リング308を含んでよい。マイクロ構造リング308は、組織係合構造302による標的組織312との侵襲的係合の深さを限定し得る。いくつかの実施形態では、マイクロ構造リング308は、リングが、医師による追加の圧力の印加によって乗り越えることができる弱い停止を提供するように構成されてよく、したがって、所望される時点で、軟組織移植片300
が標的表面312により強く固定される。
【0100】
いくつかの実施形態では、位置決め力は、マイクロ構造314及び316、並びに少なくとも2つの流体320及び322を含む界面体積318によって提供され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、位置決め-固定層は、穿孔されていてよい。穿孔は、軟組織修復移植片300のサイズに対して実用的ないかなるサイズであってもよい。重要な考慮事項は、軟組織移植片300の位置決め及び固定の強度が、マイクロ構造化表面301の表面積に比例することである。したがって、面積比が大きい程、所与のフラクタル次元及びバーブ密度に対して、位置決め及び固定の強度が大きくなる。
【0102】
外科手技及び関連するインプラントにおいて、インプラントの中心がまず配置され、インプラントの残りの部分が、この最初の位置を適合させるように配置される場合、面積比は、インプラントの中心から半径方向に低下してよい。
【0103】
外科手技及び関連するインプラントにおいて、インプラントの周辺部分がまず配置される場合、面積比は、周辺部付近で最大であってよい。面積比は、高面積比の局所領域に離散化(discretized)されてよく、その領域は、従来の締結及び/又は縫合手順を模倣す
ることができる。いくつかの実施形態では、一部の領域にはバーブのみが存在していてよく、他の領域にはバーブなしのマイクロ構造のみが存在していてよい。
【0104】
本開示のいくつかの実施形態では、位置決め構造(マイクロ構造)及び固定構造(バーブ)の分布は、軟組織移植片又は医療用インプラント全般の中で、異なっていてよい。同様に、いくつかの実施形態では、組織係合形体に沿ったバーブの位置及び密度は、位置決め/固定層の表面全体にわたって変動していてよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、位置決め/固定層は、さらに、マイクロ構造及び/又は組織係合構造が上に配置された基材表面も含んでよい。いくつかの実施形態では、マイクロ構造及び/又は組織係合構造は、基材表面と一体であり、したがって、同じ材料/組成物から構成され得る。いくつかの実施形態では、マイクロ構造及び/又は組織係合構造は、基材表面の近辺に配置されてよく、基材表面とは異なる材料から構成される。1つの実施形態では、マイクロ構造及び/又は組織係合構造は、基材の材料上にエンボス加工されていてもよい。いくつかの実施形態では、組織係合構造は、エンボス加工基材上の選択された場所に適用される金属製又は硬質プラスチック製のバーブを含んでよい。
【0106】
図3Bを参照すると、位置決め/固定層301は、階層的マイクロ構造310を含み得る。階層的マイクロ構造は、第一のマイクロ形体314及び第二のマイクロ形体316を含んでよく、第二のマイクロ形体は、第一のマイクロ形体の近辺に配置される。いくつかの実施形態では、第一のマイクロ形体は、第二のマイクロ形体よりも大きい寸法を有してよい。いくつかの実施形態では、位置決め/固定層は、組織係合構造302を含んでよい。組織係合構造302は、テーパ状ピラー近辺に配置されたマイクロ構造リング308を備えたバーブ付き端部305を含んでよい。既に開示したように、マイクロ構造リング308は、標的表面3012への組織係合構造302のさらなる挿入を初期に防止するために弱い停止として作用し得る。追加の圧力又は力によって、マイクロ構造リング308は、標的表面312に挿入することができる。いくつかの実施形態では、位置決め力は、階層的マイクロ構造314、316、及び少なくとも2つの流体320、322を含む界面体積318によって提供され得る。いくつかの実施形態では、固定力は、組織係合構造302によって提供され得る。軟組織移植片300は、最初は標的表面312の近辺に配置されてよく、軟組織移植片の初期位置決め性は、階層的マイクロ構造310によって維持され得る。軟組織移植片300の位置が医師にとって許容可能であると、又はある特定の
要件/パラメータ以内であると、軟組織移植片は、移植片に圧力を加えることで組織係合構造302を標的表面312と係合させることによって、正しい位置に固定され得る。
【0107】
次に図4を参照すると、バーブ設計の組織係合構造400の様々な例が示される。例(Example)4Aは、円形断面を有する円錐構造402を含む。表面403は、環状に取り
囲んで内向きに反って突出したバーブ404を備えていてよい。例(Example)4Bは、
係合内部構造408を備えた中空円筒406を含む。中空円筒406の外面409は、少なくとも1つの穴410を含んでよく、これは、内部412にトラップされた流体を、組織が内部に進入可能であるように排出可能とし得る。切断面414は、組織が内部412に容易に進入可能とし得る。例(Example)4Cは、円形断面を有する円錐構造416を
含む。別個のバーブ突出部418が、軸線方向に分布されている。隣接するバーブは、構造の高さ方向に沿って互いにずれていてよい。例(Example)4Dは、円形断面を有する
円錐構造420を含む。連続するバーブ突出部422が、構造表面の周りにらせん状に配置されていてよい。例(Example)4Eは、ブレード状断面424を含む。断面424は
、内向きに反っていてよく、一方の側には、別個のバーブ突出部426が配置され、反対側は、切断面428を含む。例(Example)4Fは、縦溝付き表面434を備えた円錐構
造430であり、切断点432を備えた円錐構造を含む。縦溝の谷436は、バーブ突出部438を含んでよい。例(Example)4Gは、円形断面を有する円錐構造440を含む
。円錐構造440の表面は、その上に配置された柔軟性バーブ突出部442を含んでよい。柔軟性バーブ突出部442は、いくつかの実施形態では、曲線の輪郭を含んでよい。例(Example)4Hは、柔軟性繊維444を円形に配列したものを含み、それは、表面に押
し付けられると半径方向に拡がり得る。例(Example)4Iは、円形断面を有する中実円
錐構造450を中央に備えた、中空の円筒構造448を含む。構造448は、外壁452を含んでよく、それは、外壁の内側部分に配置されたバーブ突出部454を含んでよい。例(Example)4Jは、凹んだ軸線方向の縦溝458を備えたブレード状構造456を含
む。構造456は、バーブ突出部462が上に配置された切断エッジ460を含んでよい。例(Example)4Kは、2つの尖った部分を備えた構造464を含む。第一の尖った部
分466は、ブレード状の内向きに反った構造を有してよい。それはさらに、その上に配置されたバーブ突出部468を含んでもよい。第二の尖った部分470は、テーパ状の円筒形ピン止め構造を含んでよい。例(Example)4Lは、堅い繊維状バーブ突出部474
が上に配置された針状構造472を含む。バーブ突出部474は、構造472の基部478に向かってバーブごとに増加する分岐節(bifurcation nodes)で分岐してよい。
【0108】
本発明で開示される主題を、以下の具体的であるが限定するものではない例によってさらに説明する。以下の例は、本発明で開示される主題に対する開発及び実験の過程での様々な時点で収集したデータを代表するデータの編集を含み得る。以下の例は、説明することを意図しており、網羅的でも限定するものでもない。
【実施例
【0109】
実施例1
ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)固定を用いた軟組織修復移植片
【0110】
図5を参照すると、軟組織修復移植片500が図示されている。いくつかの実施形態では、軟組織修復移植片500は、5~1000ミクロンの厚さを有する吸収性層を含んでよい癒着防止層502を含み得る。吸収性層は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエステルウレタンなどの生体適合性材料から構成されていてよい。軟組織修復移植片はさらに、連結部位506を介して癒着防止層502に取り付けられていてよい組織足場層504を含み得る。連結部位506は、連続的であっても、又は別個であってもよい。いくつかの実施形態では、連結部位506は、接着剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、連結部位は、癒着防止層502を構成するポリマーの溶液を含んで、組織足場層504の
ストランド508の周囲で硬化されてもよい。組織足場層504は、連続的であっても、又は図5に示されるようなメッシュなどの織物であってもよい。いくつかの実施形態では、組織足場層504のストランド508は、ストランド表面がコーティングされて、連結部位506から離れている部分を少なくとも含んでよい。いくつかの実施形態では、組織足場層504は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどの非吸収性材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、組織足場層504は、吸収性材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、軟組織移植片500は、標的表面を損傷することなく標的表面512上で位置変更可能であり得るマイクロ構造層510を含んでよい。いくつかの実施形態では、標的表面512は、生体組織であってよい。マイクロ構造層510は、別個のアイランド部分を含んでよく、又はそれは、連続層であってもよい。マイクロ構造層510は、上にマイクロ形体516が配置されていてよい基材層514を含んでよい。いくつかの実施形態では、マイクロ形体516は、組織足場層504上に直接形成されてよい。マイクロ構造層510は、異なる連結部518を通して、又は癒着防止層502を組織足場層504に取り付ける際に開示したものと同じ連結部506を用いて、組織足場層504に取り付けられてよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、マイクロ形体516は、階層的マイクロ構造519を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、階層的マイクロ構造は、正弦曲線パターンである第一のマイクロ構造520を含んでよい。正弦曲線パターン520は、100~1000ミクロンの範囲内の振幅を有してよい。加えて、正弦曲線パターン520は、100~1000ミクロンの範囲内のピッチも有してよい。いくつかの実施形態では、ピラーの形態の第二のマイクロ構造522は、10~100ミクロンの範囲内の直径、10~100ミクロンの範囲内のピッチ、及び10~300ミクロンの範囲内の高さを有してよい。第二のマイクロ構造は、第一のマイクロ構造の近辺に配置されてよい。いくつかの実施形態では、第二のマイクロ構造ピラー522は、円形、正方形、三角形、長方形、又は他のいずれかの多角形の形状の断面を有してよい。いくつかの実施形態では、第三のマイクロ構造は、第二のマイクロ構造526の近辺に配置されてよい。第三のマイクロ構造526は、標的表面512に侵襲的に係合するために、図4のように、平滑であっても又はデザインを有していてもよい。進入なしを含む様々な度合いの標的表面配置が、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)型の位置決め性を損なうことなく標的表面進入度を変化させることによって実現され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、マイクロ構造層510は、本開示において既にこれまでに列挙した1つの材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、マイクロ構造層510は、金属、及びPETなどの高デュロメーター硬度材料を含む適切ないかなる植え込み型材料及び/又は生体適合性材料を含んでもよい。基材部分514を含み得る実施形態は、弾性(低デュロメーター硬度)材料である基材部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基材部分514上に配置されたマイクロ構造層516は、高デュロメーター硬度材料であってよい。基材部分514とマイクロ構造516とのこの組み合わせは、マイクロ構造層510を標的表面512に対して最大限追随可能とし得る。
【0113】
本明細書で提示される例は、生体軟組織を修復する特定の態様に関するものであるが、本開示の実施形態は、標的表面にある欠損部を強化及び/又は支持されるべきであるいかなる用途にも適用され得ることは理解されたい。
【0114】
例として、以下のマイクロ構造を、本開示の軟組織移植片に配置した。
【表1】
【0115】
この軟組織移植片は、動物組織上に配置した場合、接触表面の1平方センチメートルあたり258+/-17グラムのせん断力下で、変位に抵抗した。
【0116】
実施例2
位置変更可能で柔軟な配置ができるヘルニア修復デバイス
【0117】
ここで図6を参照すると、軟組織修復デバイスが図示されている。軟組織修復デバイス600は、ポリ乳酸を含む癒着防止層602、ポリウレタンでコーティングしたポリプロピレンメッシュを含む組織足場層604、及びマイクロ構造化ポリ乳酸を含む第三のマイクロ構造層606を含み得る。マイクロ構造層606は、10~100ミクロンの範囲内の直径、10~100ミクロンの範囲内のピッチ、及び30~120ミクロンの範囲内の高さを有する第一の円形ピラー608、並びに第一のピラー608の上に配置された第二の円形ピラー610を含む階層的マイクロ形体を含んでよい。第二のピラー610は、10~50ミクロンの範囲内の直径、10~50ミクロンの範囲内のピッチ、及び30~80ミクロンの範囲内の高さを有してよい。
【0118】
図6において上述した実施形態の試験を、垂直力を加えた場合及び加えない場合で行った。加えた垂直力は、50g/cmであった。試験は、せん断力及び垂直力(剥離)で行った。
【0119】
せん断力の設定:
【0120】
2つの均一厚さ(約2cm)の板状牛肩肉を水に浸漬し、横に並べた。各板状肉の上に、手による初期圧力を掛けながら複合メッシュを下向きに置いた。ギャップは作らなかった。
【0121】
1つの板状肉を、その角及び中央一箇所で、堅いプラスチックシートと縫合した。他方の板状肉は、その遠位端部に、等距離の5か所で縫合した。5つの縫合線を一緒に引き寄せて太いコードに固定し、それによって、コードを引いたときに各縫合線の力がおよそ等しくなるようにした。コードを、滑車の周りに通して90度の位置とし、インストロンのヘッドに取り付けた。滑車及び肉は、コードに掛けられた張力が肉の平面内となるように並べた。肉は、生理食塩水を適宜振りかけて湿潤状態を維持した。肉のねじれを起こした実験回は、破棄した。ヘッド速度は、5cm/分とした。肉-メッシュ接触部の単位面積当たりの力を算出した。
【0122】
試験の垂直力のアームでは、別のプラスチックシートを、肉/メッシュ組み合わせの上に置き、50g/cmまでの荷重を均一に掛けた。
【0123】
試験のメッシュのみのアームでは、メッシュを各板状肉に対して4か所縫合し、合計8か所の縫合とした。噛み込み深さはおよそ1cmであった。
【0124】
垂直力の設定:
【0125】
この設定は、せん断力設定と同様であるが、但し、第三の肉片を引いて、一方が縫合で固定されている2つの肉片の間のギャップに通す。引く力は、メッシュを貫通している縫合線によって加える。ギャップに垂直力は掛けない。縫合糸:Prolene 5-0
【0126】
試験アーム1:垂直方なしでのせん断力
【0127】
試験アーム2:垂直力ありでのせん断力
【0128】
試験アーム3:縫合のみでのせん断力
【0129】
試験アーム4:加えられた垂直力による垂直力
【0130】
結果:
【表2】
【0131】
実施例3
2レベル軟組織修復デバイス
【0132】
本開示の多くの用途において、標的表面にデバイスを置き、デバイスを一時的に接着させ、より望ましい場所にデバイスを位置変更し、続いて標的表面に対するデバイスのより恒久的な固定を作動させることが望ましい場合がある。「より恒久的」とは、非可逆的な固定を示すのではなく、一時的な接着よりも長く続く固定を示すものであることは理解される。
【0133】
ここで図7を参照すると、2レベル軟組織修復デバイス700は、周辺部マイクロ構造層704に結合されたポリプロピレンメッシュ702を備え得る。周辺部マイクロ構造層は、先端部分708、バーブ付き部分710、及び停止部分712を備えた第一のマイクロ構造706を含み得る。デバイス700が、軽い圧力を用いて標的表面714に配置される場合、デバイス700は、標的表面に侵襲的に係合することができ、この場合、先端部分708だけが標的表面に係合する。この係合は、装置700の標的表面への接着を提供することができるが、この接着は、デバイスの容易な位置変更を可能とし得る。さらなる力が方向716でデバイス700に掛けられた場合、デバイスが位置変更不可である位置に接着するように、バーブ710が標的表面714に侵襲的に係合し、より恒久的な固定を提供することができる。停止部分712は、バーブ710を標的表面714に係合可能とし得る深さを制限するために用いられ得る。
【0134】
実施例4
ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)2レベル軟組織修復デバイス
【0135】
ここで図8A及び図8Bを参照すると、2レベル軟組織修復デバイス800が図示されている。2レベル軟組織修復デバイス800は、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)マイクロ構造806及び標的進入構造808を含むマイクロ構造層804に結合されたポリプロピレンメッシュ802を備え得る。ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)構造806は、階層的複合ピラー810を含み得る。標的進入構造808は、バーブ812を備えたピラー811を含み得る。軽い圧力下では、標的表面814(図8A)は、位置814に示されるその元の状態などの非変形状態に維持され得る。より強い圧力がデバイス800に掛けられると、標的表面814は、位置816に示されるように(図8B)、ウェンゼル-カッシー(Wenzel-Cassie)構造806の周囲で標的表面が変形し、標的進入構造808と接触することができるように変形し得る。圧力がデバイス800から開放されると、デバイス及び標的表面は、デバイスが数時間、数日間、及び/又は数週間のオーダーの実質的な時間にわたって正しい位置に維持されるように、固定される。
【0136】
実施例5
つかむための軟組織デバイス
【0137】
軟組織接着デバイスは、弾性ゴムシートに結合された例2のマイクロ構造を備える。このデバイスが、肉、果実、及び野菜などの軟組織を持ち上げることができる能力を、1g/cmの垂直力下でのせん断力を測定することによって試験した。
【0138】
軟組織接着デバイスを、試験物品の平面スライス上に置き、1g/cmの荷重を掛け、試験物品の平面内で引っ張った。試験物品はすべて、試験前に水中に浸漬することによって濡らしておいた。
【0139】
結果:
【表3】
【0140】
したがって、新規で有用なマイクロ構造軟組織移植片の本発明の特定の実施形態について述べてきたが、そのような参照は、以下の請求項に示される内容を除いて、本発明の範囲に対する限定として解釈されることを意図するものではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【国際調査報告】