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▶ プロドライヴ・テクノロジーズ・イノヴェーション・サービシーズ・ベーフェーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230531BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20230531BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230531BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 F
H02M7/12 Q
H02M7/48 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567162
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2021061594
(87)【国際公開番号】W WO2021224193
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】2025503
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521460608
【氏名又は名称】プロドライヴ・テクノロジーズ・イノヴェーション・サービシーズ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョルディ・エバーツ
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ・ミハイロフ
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC02
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H730AA18
5H730AS04
5H730AS08
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB82
5H730CC02
5H730DD04
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD41
5H730FG05
5H770AA09
5H770BA11
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770HA02W
5H770HA03W
5H770HA03Y
(57)【要約】
3つの相端子(A、B、C)と、第1のDC端子(P)と、第2のDC端子(N)と、第1の変換器段(11)と、第2の変換器段(12)と、コントローラ(40)とを備える、3つの相電圧を有するAC信号と、DC信号との間で変換するための電気変換器。第1の変換器段は、3つの相端子におけるAC信号と、第1の中間ノード(x)および第2の中間ノード(y)における第1のDC信号との間で変換する。第2の変換器段(12)は、第4および第5の中間ノード(r、s)における第2のDC信号と、第1および第2のDC端子(P、N)における第3のDC信号との間で変換するように動作可能な昇圧回路(19、20)を備える。リンクは、第1の中間ノード(x)を第4の中間ノード(r)に接続し、第2の中間ノード(y)を第5の中間ノード(s)に接続する。電気変換器は、3つの相端子を第3の中間ノード(z)に選択的に接続するように構成された相セレクタ(25)と、第3の中間ノード(z)を第1のDC端子(P)および第2のDC端子(N)に接続するように動作可能な電流注入回路(14)とをさらに備える。コントローラ(40)は、AC信号と第3のDC信号との間で変換するように構成された第1の動作モードと、3つの相端子のうちの少なくとも2つの間に印加される単相AC信号と、第1および第2のDC端子(P、N)における第4のDC信号との間で変換するように構成された第2の動作モードとを実装される。第2の動作モードにおいて、第1の中間ノード(x)を通る第1の電流経路もしくは第2の中間ノード(y)を通る第2の電流経路と並列に作用する、または第1および第2の電流経路と並列に交互に作用する、第3の中間ノード(z)を通る第3の電流経路が取得される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの相電圧を有するAC信号と、DC信号との間で変換するための電気変換器(100、200、300、400、500、600)であって、
3つの相端子(A、B、C)と、第1のDC端子(P)と、第2のDC端子(N)と、
前記3つの相端子に動作可能に結合され、第1の中間ノード(x)と第2の中間ノード(y)とを備える第1の変換器段(11)であって、前記第1の変換器段が、前記3つの相端子における前記AC信号と、前記第1の中間ノード(x)および前記第2の中間ノード(y)における第1のDC信号との間で変換するように構成され、前記第1の変換器段が、前記3つの相端子を第3の中間ノード(z)に選択的に接続するように構成された第1のアクティブスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)を備える相セレクタ(25)をさらに備える、第1の変換器段(11)と、
前記第1および第2のDC端子(P、N)に動作可能に結合され、第4の中間ノード(r)と第5の中間ノード(s)とを備える第2の変換器段(12)であって、前記第2の変換器段が、少なくとも1つの第2のアクティブスイッチ(Sxm、Smy、Sxy)を介して、前記第4および第5の中間ノード(r、s)における第2のDC信号と、前記第1および第2のDC端子(P、N)における第3のDC信号との間で変換するように動作可能な昇圧回路(19、20、29)を備え、前記第2の変換器段が、前記第3の中間ノード(z)を前記第1のDC端子(P)および前記第2のDC端子(N)に接続するように動作可能な第3のアクティブスイッチ(SPz、SzN)を備える電流注入回路(14)をさらに備える、第2の変換器段(12)と、
前記第1の中間ノード(x)を前記第4の中間ノード(r)に接続し、前記第2の中間ノード(y)を前記第5の中間ノード(s)に接続するリンクと、
前記AC信号と前記第3のDC信号との間で変換するように構成された第1の動作モードを実装されたコントローラ(40)と
を備え、
前記コントローラ(40)が、前記3つの相端子のうちの少なくとも2つの間に印加される単相AC信号と、前記第1および第2のDC端子(P、N)における第4のDC信号との間で変換するように構成された第2の動作モードを実装され、
前記第2の動作モードにおいて、前記コントローラが、前記第1の中間ノード(x)を通る第1の電流経路と並列に作用するか、または前記第2の中間ノード(y)を通る第2の電流経路と並列に作用するか、または前記第1および第2の電流経路と交互に並列に作用する、前記第3の中間ノード(z)を通る第3の電流経路が取得されるように、前記第1のアクティブスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)と前記第3のアクティブスイッチ(SPz、SzN)とを動作させるように構成されたことを特徴とする、電気変換器(100、200、300、400、500、600)。
【請求項2】
前記第1の動作モードにおいて、前記少なくとも1つの第2のアクティブスイッチ(Sxm、Smy、Sxy)が前記第2の変換器段が昇圧変換器として動作するように、パルス幅変調によって動作され、前記第1のアクティブスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)が、前記3つの相電圧のうちの最小の瞬時絶対電圧値を有する前記相端子が前記第3の中間ノード(z)に継続的に接続されるスイッチングパターンに従って動作される、請求項1に記載の電気変換器。
【請求項3】
前記第2の動作モードにおいて、前記少なくとも1つの第2のアクティブスイッチ(Sxm、Smy、Sxy)が、前記電気変換器が単相昇圧変換器として動作するように、パルス幅変調によって動作される、請求項1または2に記載の電気変換器。
【請求項4】
前記第2の動作モードにおいて、前記コントローラ(40)が、前記少なくとも1つの第2のアクティブスイッチ(Sxm、Smy、Sxy)と前記第3のアクティブスイッチ(SPz、SzN)とをパルス幅変調によって動作させるように構成された、請求項1または2に記載の電気変換器。
【請求項5】
前記第2の動作モードにおいて、前記コントローラ(40)が、前記第1の中間ノード(x)を通る前記第1の電流経路と並列に作用する前記第3の中間ノード(z)を通る前記第3の電流経路を取得するために、前記第3の中間ノードを前記3つの相端子のうち最も高い瞬時電圧を有する相端子に接続するように、第1の選択モードに従って前記第1のアクティブスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)を動作させるように構成され、かつ/または前記コントローラ(40)が、前記第2の中間ノード(y)を通る前記第2の電流経路と並列に作用する前記第3の中間ノード(z)を通る前記第3の電流経路を取得するために、前記第3の中間ノードを前記3つの相端子のうち最も低い瞬時電圧を有する相端子に接続するように、第2の選択モードに従って前記第1のアクティブスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)を動作させるように構成された、請求項4に記載の電気変換器。
【請求項6】
前記第2の動作モードにおいて、前記コントローラ(40)が、前記少なくとも1つの第2のアクティブスイッチ(Sxm、Smy、Sxy)と前記第3のアクティブスイッチ(SPz、SzN)とをインタリーブモードにおいて動作させるように構成された、請求項4または5に記載の電気変換器。
【請求項7】
前記第2の動作モードにおいて、前記コントローラ(40)が、前記少なくとも1つの第2のアクティブスイッチ(Sxm、Smy、Sxy)と前記第3のアクティブスイッチ(SPz、SzN)とを同期して動作させるように構成された、請求項4または5に記載の電気変換器。
【請求項8】
前記昇圧回路が、単一の昇圧回路であり、前記リンクが、前記第2の中間ノード(y)と前記第5の中間ノード(s)との間、または前記第1の中間ノード(x)と前記第4の中間ノード(r)との間に誘導性蓄積素子を備えない、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項9】
前記昇圧回路が、前記第1のDC端子(P)と前記第2のDC端子(N)との間に積層された第1の昇圧回路(19)と第2の昇圧回路(20)とを備え、前記第1および第2の昇圧回路が、共通ノード(m)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項10】
前記第1の昇圧回路(19)および前記第2の昇圧回路(20)の各々が、前記少なくとも1つの第2のアクティブスイッチ(Sxm、Smy)のうちの1つを備え、前記第2の動作モードにおいて、前記コントローラ(40)が、前記第1の昇圧回路および前記第2の昇圧回路の前記少なくとも1つの第2のアクティブスイッチを同期して動作させるように構成された、請求項9に記載の電気変換器。
【請求項11】
前記第1の昇圧回路(19)および前記第2の昇圧回路(20)の一方または両方が、多レベル昇圧回路である、請求項9または10に記載の電気変換器。
【請求項12】
前記共通ノード(m)が、前記第1のDC端子(P)と前記第2のDC端子(N)との間の中位電圧ノード(q)に接続された、請求項9から11のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項13】
前記第1の変換器段が、3つのブリッジ脚部(16、17、18)を備えるブリッジ変換器を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項14】
前記第1の中間ノード(x)と前記第4の中間ノード(r)との間および/または前記第2の中間ノード(y)と前記第5の中間ノード(s)との間に第4のスイッチ(23)を備え、前記コントローラ(40)が、前記第1のDC端子と前記第2のDC端子との間の電圧をプリチャージするために、始動中に前記第4のスイッチ(23)を開くように動作可能である、請求項1から13のいずれか一項に記載の電気変換器(600)。
【請求項15】
電源を備えるバッテリ充電システムであって、前記電源が、請求項1から14のいずれか一項に記載の電気変換器を備える、バッテリ充電システム。
【請求項16】
前記バッテリが、電気自動車を駆動するように構成されたバッテリである、請求項15に記載のバッテリ充電システム。
【請求項17】
電源を備える電気モータ駆動システムであって、前記電源が、請求項1から14のいずれか一項に記載の電気変換器を備える、電気モータ駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換の分野に関する。特に、本発明は、3相AC電力と単相AC電力の両方をDC電力に、およびその逆に変換することを可能にする電気変換器トポロジーと、そのような電気変換器を制御するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5784269号は、整流器とDC/DC変換器とを備え、相選択回路を含む3相力率補正(PFC:Power Factor Correction)回路を開示している。相選択スイッチング回路は、3相AC入力電力の内相を選択する。スイッチングネットワークが、相選択スイッチング回路に結合され、DC/DC変換器に送達される少なくとも内相の波形を制御することにより、3相AC入力電力に関連する高調波を低減する。
【0003】
いくつかの3相AC-DC変換器トポロジーは、基本的に、単相ACをDCに変換するためにも使用され得ることが知られている。そうするために、3相入力端子のうちの1つは、順方向導体として使用され、3相入力端子のうちの別の1つは、戻り導体として使用され、第3の端子は、使用されないか、または他の2つの相端子のうちの1つに短絡される。
【0004】
米国特許出願公開第2019/0288539号は、第1および第2のDC電源バスキャパシタによって、第1および第2のLLC共振コンバータを含むDC-DC変換器段にリンクされた3相ウィーン型整流器段を備える3相PFC回路を開示している。PFC回路は、単相ACグリッドに接続され、7kW、14kW、および22kWをDC出力に送達するために、異なる単相接続モードに従って動作され得、22kWは、3相動作において送達可能な最大電力に対応する。
【0005】
単相AC-DC動作においてAC側とDC側との間で伝送され得る電力は、単相動作に使用される相入力の電流経路において接続された電子構成要素の電力定格に依存する。米国特許出願公開第2019/0288539号の場合、これは、3相動作において必要とされる11kWのみではなく、22kWの公称電力用に2つのLLC共振DC-DC変換器の各々を寸法設定することになる。したがって、単相動作に3相AC-DC変換器を使用することは、同じ電力レベルにおいて単相動作を可能にするために3相変換器の公称トポロジーがさらに拡大されなければならず、単相利用を非効率的にするので、経済的ではない。さらに、3相AC-DC変換器において単相AC-DC動作を実装することは、簡単ではなく、変換器の制御において複雑な変更を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、3(多)相昇圧型PFC AC-DC変換と単相昇圧型PFC AC-DC変換の両方に効率的に使用され得る低コスト電気変換器トポロジーを提供することである。複雑さを増すことなく、単相において動作されることを可能にするそのような電気変換器トポロジーを提供することが目的である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、したがって、添付の特許請求の範囲に記載されているように、電気変換器が提供される。
【0008】
本発明による電気変換器は、3つの相端子と、第1のDC端子および第2のDC端子と、第1の変換器段および第2の変換器段とを備える。第1の変換器段は、3つの相端子におけるAC信号と、第1の中間ノードおよび第2の中間ノードにおける第1の(スイッチングされたまたはDC)信号との間で変換するように構成される。
【0009】
第1の変換器段は、例えば、対応する相端子ごとにブリッジ脚部を備える、例えば、(3相)ブリッジ変換器を備えることができる。第1の変換器段は、3つの相端子を第3の中間ノードに選択的に接続するように構成された第1のアクティブスイッチを備える相セレクタをさらに備える。
【0010】
第2の変換器段は、少なくとも1つの第2のアクティブスイッチを介して、第4および第5の中間ノードにおける第2の(スイッチングされたまたはDC)信号と、第1および第2のDC端子における第3のDC信号との間で変換するように動作可能な昇圧回路を備える。第2の変換器段は、第3の中間ノードを第1のDC端子および第2のDC端子に選択的に接続するように動作可能な第3のアクティブスイッチを備える(第3高調波)電流注入回路をさらに備える。DCリンクは、第1の中間ノードを第4の中間ノードに接続し、第2の中間ノードを第5の中間ノードに接続する。
【0011】
コントローラは、第1、第2、および第3のアクティブスイッチに動作可能に接続される。第2および第3のアクティブスイッチは、有利にはパルス幅変調(PWM)によって動作される。
【0012】
本発明によれば、コントローラは、3つの相電圧を有するAC信号と第3のDC信号との間で変換するように構成された第1の動作モードと、単相AC信号、すなわち、1つの相電圧のみを有するAC信号と、第1および第2のDC端子における第4のDC信号との間で変換するように構成された第2の動作モードとを実装される。単相AC信号は、3つの相端子のうちの少なくとも第1の相端子と第2の相端子との間に印加され得る。
【0013】
上記の電気変換器の1つの利点は、より少ないまたはより小さいサイズの誘導性および/または容量性蓄積素子を可能にすることによるそのコンパクトさである。単相モードにおいて使用するように上記の電気変換器を実装することによって、単相と3相動作の両方に使用され得るコンパクトで経済的な変換器が取得される。
【0014】
それに加えて、単相動作において、相セレクタおよび電流注入回路は、有利には3相電力定格の3分の1よりも高い電力定格を取得するために、昇圧回路とともに動作される。有利には、昇圧回路および注入回路のインタリーブされたPWM動作は、追加コストなしにより高い電力定格が取得され得るように、誘導性構成要素を過大に寸法設定する必要性を回避する。
【0015】
昇圧回路は、第1および第2のDC端子にわたって接続されたブリッジ脚部を備える単一の昇圧回路として配置され得る。代替的に、昇圧回路は、有利には、第1および第2のDC端子にわたって接続され、共通電圧ノードを有する2つの積層されたブリッジ脚部から形成される。2つの積層されたブリッジ脚部を使用することは、昇圧インダクタがDCバス電圧の半分のみを供給されるので、より小さい誘導性構成要素を利用することを可能にする。それは、共通電圧ノードにおける電位を制御することによって共通モードDC電圧を制御することも可能にする。
【0016】
本開示の第2の態様によれば、電源ユニットを備える、バッテリ充電システム、または磁気共鳴撮像装置が提供され、電源ユニットは、第1の態様の電気変換器を備える。
【0017】
第3の態様によれば、3相昇圧型PFC変換器を使用して単相AC信号とDC信号との間で変換する方法について本明細書で説明される。この方法は、有利には、上記のようにこの電気変換器において実装される。
【0018】
本発明の態様について、ここで、添付図面を参照してより詳細に説明し、同じ参照番号は、同じ特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による、一方向性である電気変換器を概略的に示す図である。
図2A】AC主電源電圧の360°期間中の3相主電源電圧va、vb、およびvcを示す図である。
図2B】AC主電源電圧の360°期間中の電気変換器の中間ノード間の電圧を示す図であり、本発明の実施形態による電気変換器の全体的な動作原理を示す図である。
図2C】AC主電源電圧の360°期間中の本発明の実施形態による電気変換器のDCリンクキャパシタCx、Cy、Czにわたる電圧を示す図である。
図2D】AC主電源電圧の360°期間中の電気変換器の電流を示す図であり、本発明の実施形態による電気変換器の全体的な動作原理を示す図である。
図2E】AC主電源電圧の360°期間中の電気変換器の電流を示す図であり、本発明の実施形態による電気変換器の全体的な動作原理を示す図である。
図2F】AC主電源電圧の360°期間中の相セレクタスイッチのスイッチング状態を示す図であり、本発明の実施形態による電気変換器の全体的な動作原理を示す図である。
図2G】AC主電源電圧の360°期間中の昇圧(上位および下位)ならびに昇降圧回路のスイッチのスイッチング状態を示す図であり、本発明の実施形態による電気変換器の全体的な動作原理を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による中央制御ユニットおよび制御方法の有利な一実装形態のブロック図である。
図4A】電気変換器の昇圧ブリッジ脚部(上位および下位)ならびに昇降圧ブリッジ脚部の5つの連続するスイッチングサイクル内の電圧、電流、およびスイッチング状態を有する図であり、本発明の一実施形態によるこれらのブリッジ脚部のPWM変調を示す図である。
図4B】電気変換器の昇圧ブリッジ脚部(上位および下位)ならびに昇降圧ブリッジ脚部の5つの連続するスイッチングサイクル内の電圧、電流、およびスイッチング状態を有する図であり、本発明の一実施形態によるこれらのブリッジ脚部のPWM変調を示す図である。
図4C】電気変換器の昇圧ブリッジ脚部(上位および下位)ならびに昇降圧ブリッジ脚部の5つの連続するスイッチングサイクル内の電圧、電流、およびスイッチング状態を有する図であり、本発明の一実施形態によるこれらのブリッジ脚部のPWM変調を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による、双方向性である電気変換器を概略的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態による、一方向性であり、第1の変換器段の後ではなく前に配置された入力フィルタを有する電気変換器を概略的に示す図である。
図7A】本発明の電気変換器において使用され得る第1の変換器段の異なる一変形形態を示す図である。
図7B】本発明の電気変換器において使用され得る第1の変換器段の異なる一変形形態を示す図である。
図8A】本発明の電気変換器において使用され得る第1の変換器段の他の一変形形態を示す図である。
図8B】本発明の電気変換器において使用され得る第1の変換器段の他の一変形形態を示す図である。
図9】一方向性であり、グリッド中性導体(第4相)に接続するための接続端子を備える、本発明の態様による電気変換器を表す図である。
図10】単相グリッドに接続された図1の電気変換器を表す図である。
図11図10の変換器に関するグリッド信号の1周期にわたる単相グリッド電圧および電流を表す図である。
図12図11の期間にわたる第1の変換器段の上位および下位中間ノードにおける整流された単相グリッド電圧および電流を表す図である。
図13】単相動作モードおよび正のグリッド電圧における図10の電気変換器を流れる電流を表す図である。
図14】単相動作モードおよび負のグリッド電圧における図10の電気変換器を流れる電流を表す図である。
図15】2レベル昇圧回路を有する、本発明による代替の電気変換器を表す図である。
図16図15の変換器に関するグリッド信号の1周期にわたる単相グリッド電圧および電流を表す図である。
図17図15の電気変換器に適用される第2のタイプの単相動作における、図16の期間にわたる第1の変換器段の上位中間ノード、下位中間ノード、および中位中間ノードにおける整流された単相グリッド電圧および電流を表す図である。
図18】第2のタイプの単相動作モードおよび正のグリッド電圧における図15の電気変換器を流れる電流を表す図である。
図19】第2のタイプの単相動作モードおよび負のグリッド電圧における図15の電気変換器を流れる電流を表す図である。
図20】始動中にブリッジ整流器を部分的に無効にするためのスイッチを備える、本発明による電気変換器の別の実施形態を表す図である。
図21】本開示による、電気変換器を備えるバッテリ充電システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、3相アクティブ相セレクタ11およびDC/DC段12の形態における2つの変換器段11、12を備える、ダッチ整流器(DUTCH RECTIFIER)と呼ばれる電気変換器100を示す。電気変換器100は、入力フィルタ13と、出力フィルタ15とをさらに備える。
【0021】
電気変換器100は、3相ACグリッド21の3相電圧に接続された3つの相入力A、B、Cと、例えば、電気自動車の高電圧(例えば、800V)バッテリなどのDC負荷22に例えば接続され得る2つのDC出力P、Nとを有するAC-DC変換器である。
【0022】
第1の変換器段11は、3つの相入力A、B、Cに接続された3つの相接続a、b、cと、3つの出力x、y、zとを備える。これらの出力は、上位中間電圧ノードx、下位中間電圧ノードy、および中位中間電圧ノードzと見なされ得る。
【0023】
第1の変換器段11は、ハーフブリッジ構成の形態で接続された2つのパッシブ半導体デバイス(脚部16のためのダイオードDaxおよびDya、脚部17のためのDbxおよびDyb、脚部18のためのDcxおよびDyc)を各々が備える3つのブリッジ脚部16、17、18から構成される3相ブリッジ整流器24と、2つの逆直列に接続されたアクティブにスイッチング可能な半導体デバイスを各々が備える3つのセレクタスイッチ(Saza、Sbzb、およびSczc)を備える相セレクタ25とを備える。各々のそのようなスイッチング可能な半導体デバイスは、有利には、逆並列ダイオードを有する。この例において、金属酸化物電界効果トランジスタ(MOSFET(Metal Oxide Field Effect Transistor))が、アクティブにスイッチング可能な半導体デバイスに使用され、各々が、外部逆並列ダイオードを置き換え得る内部逆並列ボディダイオードを含む。
【0024】
DC/DC段12は、2つの積層された昇圧ブリッジ脚部19、20と、1つの昇降圧ブリッジ脚部14とを備える、またはこれらから構成される。各昇圧ブリッジ脚部(19、20)は、ハーフブリッジ構成で接続された、昇圧スイッチ(上位昇圧ブリッジ脚部19のためのSxm、および下位昇圧ブリッジ脚部20のためのSmy)と、昇圧ダイオード(上位昇圧ブリッジ脚部19のためのDxP、および下位昇圧ブリッジ脚部20のためのDNy)とを備える。昇降圧ブリッジ脚部14は、ハーフブリッジ構成で接続された2つの昇降圧スイッチ(SPzおよびSzN)を備える。上位昇圧ブリッジ脚部19の中位ノードrは、上位昇圧インダクタLxを介して中間電圧ノードxに接続され、下位昇圧ブリッジ脚部20の中位ノードsは、下位昇圧インダクタLyを介して中間電圧ノードyに接続され、昇降圧ブリッジ脚部14の中位ノードtは、中位昇降圧インダクタLzを介して中間電圧ノードzに接続される。
【0025】
上位昇圧ブリッジ脚部19および下位昇圧ブリッジ脚部20の共通ノードmは、有利には、2つの積層された2レベル昇圧回路を形成するために、出力フィルタ15の中位電圧ノードqに接続される。出力フィルタ15は、上位出力ノードPと下位出力ノードNとの間に直列に接続された2つの出力フィルタキャパシタCPm、CmNと、キャパシタCPmとキャパシタCmNとの間の中間ノードを形成する中位電圧ノードqとを備える。昇降圧ブリッジ脚部14の中位ノードtは、中位中間ノードzとDC出力端子PおよびNとの間のスイッチノードとして機能することに留意すると便利であろう。スイッチノードtは、出力フィルタ15の中位電圧ノードqに接続されない。
【0026】
上位昇圧ブリッジ脚部19は、上位出力ノードPと共通ノードmとの間に(すなわち、上位出力フィルタキャパシタCPmと並列に)接続され、スイッチSxmが開いている(導通していない、オフ状態)ときにダイオードDxPを介して中間電圧ノードxから上位出力ノードPに電流が流れることができ、スイッチSxmが閉じている(導通している、オン状態)ときにスイッチSxmを介して中間電圧ノードxから共通ノードmに(またはその逆に)電流が流れることができるように配置される。昇圧ブリッジ脚部19の昇圧スイッチ(Sxm)は、アクティブにスイッチング可能な半導体デバイス、例えば、MOSFETである。
【0027】
下位昇圧ブリッジ脚部20は、共通ノードmと下位出力ノードNとの間に(すなわち、下位出力フィルタキャパシタCmNと並列に)接続され、スイッチSmyが開いている(導通していない、オフ状態)ときにダイオードDNyを介して下位出力ノードNから中間電圧ノードyに電流が流れることができ、スイッチSmyが閉じている(導通している、オン状態)ときにスイッチSmyを介して共通ノードmから中間電圧ノードyに(またはその逆に)電流が流れることができるように配置される。昇圧ブリッジ脚部20の昇圧スイッチ(Smy)は、アクティブにスイッチング可能な半導体デバイス、例えば、MOSFETである。
【0028】
昇降圧ブリッジ脚部14は、上位出力ノードPと下位出力ノードNとの間に(すなわち、DC負荷22と並列に)接続され、スイッチSzNが開いている(導通していない、オフ状態)間、スイッチSPzが閉じている(導通している、オン状態)ときに中間電圧ノードzから上位出力ノードPに(またはその逆に)電流が流れ、スイッチSPzが開いている(導通していない、オフ状態)間、スイッチSzNが閉じている(導通している、オン状態)ときに中間電圧ノードzから下位出力ノードNに(またはその逆に)電流が流れるように配置された電流注入回路として作用する。昇降圧ブリッジ脚部14の昇降圧スイッチ(SPz、SzN)は、相補的な方法で制御される(すなわち、他方が開いている間、一方が閉じている、またはその逆)、アクティブにスイッチング可能な半導体デバイス、例えば、MOSFETである。
【0029】
有利には、入力フィルタ13の一部である3つの高周波(HF)フィルタキャパシタCx、Cy、Czは、スター接続の形態において中間電圧ノードx、y、zを相互接続している。一般に、ACグリッドに対称的に負荷をかけるために、3つのキャパシタCx、Cy、Czは、実質的に等しい値を有することが有利である。
【0030】
本発明の一態様によれば、コントローラは、本明細書においてさらに説明するように、3相動作と呼ばれる第1の動作モードと、単相動作と呼ばれる第2の動作モードとに従って動作するように構成される。
【0031】
中央制御ユニット40は、有利には、電気変換器100のすべての制御可能な半導体デバイス(スイッチ)を制御し、通信インターフェース50を介して各スイッチに制御信号を送信する。特に、半導体デバイスSaza、Sbzb、Sczc、Sxm、Smy、SPz、SzNがコントローラ40によって制御される。さらに、制御ユニットは、
・42:ACグリッド相電圧va、vb、vc
・43:インダクタ電流iLx、iLy、iLz
・44:DCバス電圧VDC
・45:DCバス中点電圧VmN=-VNm
の測定値を受信するための測定値入力ポート(42、43、44、45)と、要求されたDC出力電圧
【0032】
【数1】
【0033】
であり得る設定値を受信するための入力ポート41とを有する。コントローラの動作は、特に、通常の動作中にインダクタ電流iLx、iLy、iLzの区分的正弦波形状を達成することを可能にする。
【0034】
図1に示す電気変換器100は、入力段11および出力電力段12がダイオードを含み、電力が電気ACグリッド21から引き出され、この電力を出力において負荷22に提供することのみを可能にするので、一方向性である。一方、図5は、本発明による双方向性の電気変換器200を示す。電気変換器200は、図1に示す変換器の入力段11のダイオード(Dax、Dbx、Dcx、Dya、Dyb、Dyc)および出力電力段12のダイオード(DxP、DNy)が、それぞれ、入力段211内の制御可能な半導体スイッチ(Sxa、Sxb、Sxc、Say、Sby、Scy)および出力電力段212内の(SyN、SPx)に置き換えられている点で変換器100とは異なる。スイッチングデバイス23は、半導体スイッチ、例えば、MOSFETとして設けられる。
【0035】
図6において、入力フィルタ13が第1の変換器段11の前(後ではなく)に配置されている点、すなわち、入力フィルタ13が相入力端子A、B、Cと第1の変換器段11との間に接続されている点で変換器100とは異なる電気変換器300が示されている。第1の変換器段11は、入力フィルタ13の対応するインダクタLa、Lb、Lcを介して、相入力端子A、B、Cを中間ノードx、y、zに接続する。キャパシタCa、Cb、Ccは、相入力端子とインダクタとの間に配置される。前述の例のように、キャパシタは、スター構成において接続され、有利には、スター点が出力フィルタ15の中点に接続される。代替的には、キャパシタCa、Cb、Ccは、3つの相入力線にわたってデルタ構成において配置され得る。図6の例において、スイッチノードr、s、およびtにおける電圧は、中間ノードx、y、zにおける電圧と同一であるので、3つの中間ノードx、y、zにおける電圧信号は、前の例(図1図5)と比較して多少異なることに留意すると便利であろう。結果として、高周波電流が第1の変換器段11を通って流れることになるが、前の例(図1および図5)では、高周波電流は、入力フィルタ13の下流の出力電力段においてのみ発生する。
【0036】
電気変換器100、200、および300のいずれにおいても、電気変換器の双方向の電力の流れを可能にするために、ダイオードがアクティブにスイッチング可能な半導体デバイスに置き換えられ得る。
【0037】
電気変換器10、200、および300のいずれにおいても、HFキャパシタCx、Cy、Cz(または図6の場合はCa、Cb、Cc)は、スター構成において接続される。スター点接続における電圧は、共通ノードmにおける電圧を制御することによって制御され得る。
【0038】
図7A図7Bは、図1図5図6のいずれかの電気変換器において使用され得る第1の変換器段11の異なる変形形態を示す。
【0039】
図8A図8Bにおいて、第1の変換器回路11のさらに他の変形形態が示されている。これらの変形形態において、相セレクタの3つのブリッジ脚部16、17、および18は、半制御サイリスタ脚部(図8A)として配置され、すなわち、上位中間ノードに接続されたブリッジ脚部部分内にサイリスタThyax、Thybx、Thycxを備え、下位中間ノードに接続された他のブリッジ脚部部分内にダイオードを備え(もしくはその逆)、または全制御サイリスタ脚部(図8B)として配置され、すなわち、ダイオードの代わりに各ブリッジの半脚部内にサイリスタThyax、Thybx、Thycx、Thyya、Thyyb、Thyycを備える。そのような相セレクタは、追加のプリチャージ回路を必要とせずに、出力フィルタキャパシタCPm、CmN、またはCPNを制御可能にプリチャージすることを可能にする。
【0040】
図9を参照すると、電気変換器100(および、代替的には、電気変換器200または300でもあり得る)は、3相ACグリッドの中性導体を接続するための接続端子nを備えることができる。例えば、電気車両を充電するなどのいくつかの用途において、他の消費者デバイスが相を過負荷にせずに車両のバッテリの充電中にその特定の相から電力を依然として引き出すことができるように、特定の相の負荷を低減することができるために、3相グリッドの各相から引き出される正弦波電流の振幅が独立して制御され得ることがしばしば必要とされる。この場合、接続端子nは、有利には、3相グリッドの中性導体に接続され、3つの相電流の合計に実質的に等しい戻り電流がグリッドの中性導体に戻ることを可能にする。有利な一態様において、3つの相電流は、入力の中性導体に接続された共通ノードを設けることによって、完全に独立して制御され得る。
【0041】
中性接続端子nは、有利には、ACキャパシタCx、Cy、Czのスター点に、ならびに積層された昇圧ブリッジ19、20の共通ノードmに(および、したがって出力フィルタ15の中点にも)接続される。これは、完全に対称的な変換器構造をもたらす。この場合、スター点におけるおよび共通ノードにおける電圧は、グリッドの中性導体の電圧に等しい。
【0042】
電気変換器の3相動作
図1を再び参照すると、3相AC入力電圧の最高電圧を有する相入力A、B、またはCに接続されたブリッジ整流器24のブリッジ脚部は、対応する相入力A、B、またはCが上位中間電圧ノードxに接続されるように切り替えられる。これを達成するために、ブリッジ脚部は、ブリッジ脚部の対応するセレクタスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)が開いている(導通していない、オフ状態)間、対応する相接続a、b、またはcを、ブリッジ脚部の上位ダイオード(Dax、Dbx、Dcx)を介してノードxに接続する。3相AC入力電圧の最低電圧を有する相入力A、B、またはCに接続された整流器24のブリッジ脚部は、対応する相入力A、B、またはCが下位中間電圧ノードyに接続されるように切り替えられる。これを達成するために、ブリッジ脚部は、ブリッジ脚部の対応するセレクタスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)が開いている(導通していない、オフ状態の)間、対応する相接続a、b、またはcを、ブリッジ脚部の下位ダイオード(Dya、Dyb、Dyc)を介してノードyに接続する。3相AC入力電圧の最高電圧と最低電圧との間の電圧を有する相入力A、B、またはCは、相セレクタ25によって中位中間電圧ノードzに接続される。これを達成するために、相セレクタ25は、対応する相接続a、b、またはcを、閉じている(導通している、オン状態の)セレクタスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)を介してノードzに接続する。
【0043】
実質的に平衡な相電圧を有する3相ACグリッドにおいて、例えば、図2Aに示すように、3相AC入力電圧(図2Aに示す)は、上位中間電圧ノードxと、下位中間電圧ノードyと、中位中間電圧ノードzとの間に提供される3つの中間DC電圧(vxz、vzy、vxy;図2Bに示す)に変換される。したがって、これらのDC電圧は、区分的正弦波形状を示す。3相AC入力電圧の3つの中間DC電圧への変換は、上で説明したように、第1の変換器段11の動作の結果である。セレクタスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)のスイッチング状態(スイッチオン→S=1、スイッチオフ→S=0)が図2Fに示されている。AC主電源電圧の期間(360°)内の特定の60°セクタ全体の間、スイッチが継続的に「オン」または「オフ」になることがわかり得る。また、ブリッジ整流器24のダイオードは、AC主電源電圧の期間(360°)内の、例えば、60°の特定のセクタ全体の間、「導通している」または「導通していない」。スイッチおよびダイオードの状態の組合せは、3相AC入力電圧の60°セクタごとに固有であり、相入力(A、B、C)の電圧値に依存する。スイッチおよびダイオードの6つの固有の状態のシーケンスは、AC主電源電圧の周期(360°)ごとにそれ自体繰り返される。
【0044】
中間電圧ノードx、y、zの視点から出力端子P、Nに向かって見ると、HFフィルタキャパシタCxと、上位昇圧インダクタLxと、上位昇圧ブリッジ脚部19と、上位出力キャパシタCPmとを備える従来のDC-DC昇圧回路(上位昇圧回路)が形成されている。この上位昇圧回路の入力電圧は、キャパシタCxにわたる電圧vCx(図2Cに示す)であり、この上位昇圧回路の出力電圧は、総DCバス電圧の半分に実質的に等しい電圧値(VPm≒VDC/2)を有する、上位出力キャパシタCPmにわたる電圧VPmである。形成された上位昇圧回路は、上位昇圧インダクタLxにおける電流を制御するために、指定された、場合によっては可変のスイッチング周波数fsにおけるスイッチSxmのPWM変調によって動作され得る。
【0045】
中間電圧ノードx、y、zの視点から出力端子P、Nに向かって見ると、HFフィルタキャパシタCyと、下位昇圧インダクタLyと、下位昇圧ブリッジ脚部20と、下位出力キャパシタCmNとを備える従来の「反転」(負の入力電圧および負の出力電圧)DC-DC昇圧回路(下位昇圧回路)が形成されている。この下位昇圧回路の入力電圧は、キャパシタCyにわたる電圧vCy(図2Cに示す)であり、この下位昇圧回路の出力電圧は、総DCバス電圧のマイナス半分に実質的に等しい電圧値(VNm≒-VDC/2)を有する、下位出力キャパシタCmNにわたる電圧VNmである。形成された下位昇圧回路は、下位昇圧インダクタLyにおける電流を制御するために、指定された、場合によっては可変のスイッチング周波数fsにおけるスイッチSmyのPWM変調によって動作され得る。
【0046】
中間電圧ノードx、y、zの視点から出力端子P、Nに向かって見ると、HFフィルタキャパシタCzと、中位昇降圧インダクタLzと、昇降圧ブリッジ脚部14と、出力キャパシタCPm、CmNの直列接続とを備える従来のDC-DC昇降圧回路(中位昇降圧回路)が形成されている。このDC-DC昇降圧回路は、単相ハーフブリッジ電圧源変換器(VSC:voltage-source converter)に類似しているように見られ得る。この中位昇降圧回路の入力電圧は、キャパシタCzにわたる電圧vCz(図2Cに示す)であり、この中位昇降圧回路の出力電圧は、出力キャパシタCPm、CmNの直列接続にわたる出力電圧VPNである。形成された中位昇降圧回路は、中位昇降圧インダクタLzにおける電流を制御するために、指定された、場合によっては可変のスイッチング周波数fsにおけるスイッチSPz、SzNのPWM変調によって動作され得る。
【0047】
図2Gは、上位昇圧ブリッジ脚部19のスイッチSxmの状態と、下位昇圧ブリッジ脚部20のスイッチSmyの状態と、中位昇降圧ブリッジ脚部14のスイッチSPzの状態(スイッチSzNの状態がスイッチSPzの状態の補完であることに留意されたい)とを示す。スイッチSxm、Smy、SPz、SzNは、対応するスイッチのPWM変調を示す黒く着色されたバーからわかり得るように、すべてPWM変調されている。
【0048】
インダクタLx、Ly、Lzにおける電流iLx、iLy、iLzの例が図2Dに示されている。見てわかり得るように、これらの電流は、区分的正弦波形状を有するように制御され、すなわち、第1の変換器段11の動作の結果として、図2Eに示す3つの正弦波AC相電流ia、ib、icに変換される。
【0049】
図3は、通常動作と呼ばれる第1の動作モード中の図1の中央制御ユニット40の有利な実装形態のブロック図を示す。電気変換器100は、「単線」等価回路として図3に示されており、要素の注釈は、図1において与えられたものに対応する。信号線内の3つのスラッシュは、3つの相信号の束ねを示し、ベクトル表現への移行を表し得る。
【0050】
制御ユニット40の目標は、出力電圧VDCを、入力ポート41を介して外部ユニットから受信された要求された設定値
【0051】
【数2】
【0052】
に制御すること、ならびに、例えば、下位出力キャパシタCmNにわたる電圧をDCバス電圧の半分に実質的に等しくなるように制御することによって、2つの出力キャパシタCPmおよびCmNにわたる電圧を平衡させることである。加えて、相入力(a、b、c)から引き出される電流は、実質的に正弦波の形状にされ、対応する相電圧と実質的に同相に制御される必要がある。前に説明したように、これは、すなわち、区分的正弦波形状を有するように、相電流ia、ib、icを直接制御する代わりに、インダクタ電流iLx、iLy、iLzを制御することによっても達成され得る。具体的には、インダクタ電流の高周波リップルがHFフィルタキャパシタ(Cx、Cy、Cz)によってフィルタリングされながら、インダクタ電流のローパスフィルタリングされた値が制御される。
【0053】
出力電圧VDCの制御は、有利には、外部電圧制御ループ60と内部電流制御ループ70とを備えるカスケード制御構造を使用して行われる。出力電圧の設定値は、入力ポート41を介して比較器61に入力され、測定値処理ユニット95(例えば、ローパスフィルタを備える)から取得される測定された出力電圧と比較される。比較器61の出力は、出力電圧の制御エラー信号であり、制御エラー信号は、相電流の振幅の瞬間設定値を出力する制御要素62(例えば、比例積分制御ブロックを備える)にさらに入力される。これらの振幅は、乗算器63に入力され、相電圧の正規化された瞬間値を出力する計算要素64から取得される信号と乗算される。計算要素64の入力は、測定値処理ユニット93(例えば、ローパスフィルタを備える)から取得される測定された相電圧である。乗算器63の出力は、瞬間の、例えば、ローパスフィルタリングされた相電流ia、ib、icのための設定値
【0054】
【数3】
【0055】
であり、実質的に正弦波形状にされ、実質的に対応する相電圧と同相に配置される。設定値
【0056】
【数4】
【0057】
は、それらの機能について以下の文章でさらに詳細に説明する加算要素67と選択要素81とを通過した後、電流コントローラ70に入力される。
【0058】
電流コントローラ70は、3つの個別電流コントローラ71、74、77に分割される。
・個別電流コントローラ71は、中位昇降圧インダクタLzにおける電流を制御するために使用される。この制御は、中位昇降圧ブリッジ脚部14を含む中位昇降圧回路のスイッチSPz、SzNのPWM変調によって行われる。第1の変換器段11の動作の結果として、それに伴い、コントローラ71は、3相AC電圧の最高電圧と最低電圧との間の電圧を有する相入力A、B、Cの電流を制御する。
・個別電流コントローラ74は、上位昇圧インダクタLxにおける電流を制御するために使用される。この制御は、上位昇圧ブリッジ脚部19を含む上位昇圧回路のスイッチSxmのPWM変調によって行われる。第1の変換器段11の動作の結果として、それに伴い、コントローラ74は、3相AC電圧の最高電圧を有する相入力A、B、Cの電流を制御する。
・個別電流コントローラ77は、下位昇圧インダクタLyにおける電流を制御するために使用される。この制御は、下位昇圧ブリッジ脚部20を含む下位昇圧回路のスイッチSmyのPWM変調によって行われる。第1の変換器段11の動作の結果として、それに伴い、コントローラ77は、3相AC電圧の最低電圧を有する相入力A、B、Cの電流を制御する。
【0059】
セレクタ要素81は、相入力(A、B、C)の電圧値に応じて、瞬間相電流のための設定値
【0060】
【数5】
【0061】
(図2Dに示す)を正しい個別電流コントローラ(71、74、77)に送信するために使用され、その結果、各インダクタ電流コントローラのためのインダクタ電流設定値
【0062】
【数6】
【0063】
(図2Eに示す)が得られ、
・3相AC電圧の最高電圧を有する相入力A、B、Cの相電流の設定値が個別電流コントローラ74に送信され、その結果、設定値
【0064】
【数7】
【0065】
が得られ、
・3相AC電圧の最低電圧を有する相入力A、B、Cの相電流の設定値が個別電流コントローラ77に送信され、その結果、設定値
【0066】
【数8】
【0067】
が得られ、
・3相AC電圧の最高電圧と最低電圧との間の電圧を有する相入力A、B、Cの相電流の設定値が個別電流コントローラ71に送信され、その結果、設定値
【0068】
【数9】
【0069】
が得られる。
【0070】
各個別電流コントローラにおいて、瞬間インダクタ電流のための受信された設定値
【0071】
【数10】
【0072】
は、比較器、例えば、個別電流コントローラ71の比較器72に入力され、測定値処理ユニット94(例えば、ローパスフィルタを備える)から取得される測定されたインダクタ電流と比較される。比較器の出力は、電流の制御エラー信号であり、この制御エラー信号は、制御要素、例えば、個別電流コントローラ71の制御要素73にさらに入力され、制御要素の出力は、PWM生成要素、例えば、個別電流コントローラ71のPWM生成要素54に入力される。個別電流コントローラのPWM生成要素は、PWM制御ブリッジ脚部、すなわち、上位昇圧回路の上位昇圧ブリッジ脚部19、下位昇圧回路の下位昇圧ブリッジ脚部20、および中位昇降圧回路の中位昇降圧ブリッジ脚部14の制御可能な半導体スイッチのためのPWM変調制御信号を生成する。これらのPWM変調制御信号は、通信インターフェース50を介して適切なブリッジ脚部に送信される。
【0073】
第1の変換器段11のセレクタスイッチは、相入力(A、B、C)の電圧値に応じて、3相AC入力電圧の各60°セレクタの間、「オン」または「オフ」のいずれかである。セレクタスイッチのための制御信号は、スイッチ信号生成器51、52、53によって生成される。
【0074】
DCバス中点平衡化は、乗算器63によって出力される、瞬間の、例えば、ローパスフィルタリングされた相電流ia、ib、icのための設定値
【0075】
【数11】
【0076】
にオフセット値を加えることによって行われ得る。オフセット値は、比較器65を使用して、測定値処理ユニット96(例えば、ローパスフィルタを備える)から取得される測定されたDCバス中点電圧を設定値(例えば、VDC/2)と比較し、比較器65によって出力されたエラー信号を制御要素66に供給することによって取得される。
【0077】
図2Eに示す相電流ia、ib、icは、前述の文章において説明したそのような制御ユニット40と制御方法とを使用して電気変換器100を制御することによって取得される。図2Eには、図3に示すセレクタ要素81への入力としての、瞬間の、例えば、ローパスフィルタリングされた相電流ia、ib、icのための設定値
【0078】
【数12】
【0079】
も示されている。上で説明したように、相電流ia、ib、icは、間接的に制御され、すなわち、それらは、インダクタ電流iLx、iLy、iLz(図2Dに示す)の制御および第1の変換器段11の動作の結果である。インダクタ電流のための設定値
【0080】
【数13】
【0081】
は、測定された相電圧に基づいて、セレクタ要素81によって設定値
【0082】
【数14】
【0083】
から導出される。
【0084】
図4A図4Cは、3相AC入力電圧のここで0≦ωt<60°(図2参照)のセクタ内にあるωt=45°付近の時間間隔について、電気変換器100のブリッジ脚部の5つの連続するスイッチングサイクル(すなわち、各々が1/fsに等しいスイッチング周期Tsを有し、fsがスイッチング周波数である)内の図を示す。このセクタ内で、第1の変換器段11のセレクタスイッチおよびダイオードは、以下のスイッチング状態、
・スイッチSaza=0(オフ)、ダイオードDax=1(導通)、ダイオードDya=0(阻止)、相接続aがノードxに接続される、
・スイッチSbzb=0(オフ)、ダイオードDbx=0(阻止)、ダイオードDyb=1(導通)、相接続bがノードyに接続される、
・スイッチSczc=1(オン)、ダイオードDcx=0(阻止)、ダイオードDyc=1(導通)、相接続cがノードzに接続される
にある。
【0085】
図4A図4Cの図は、ミリ秒の時間軸上の電圧、電流、およびスイッチング信号を示す。図4Aは、上位昇圧回路の動作に対応し、対応するインダクタ電流iLx(およびこの電流の設定値
【0086】
【数15】
【0087】
)と、インダクタ電圧vLxと、PWM変調上位昇圧ブリッジ脚部19のスイッチの制御信号Sxmとを示す。図4Bは、下位昇圧回路の動作に対応し、対応するインダクタ電流iLy(およびこの電流の設定値
【0088】
【数16】
【0089】
)と、インダクタ電圧vLyと、PWM変調下位昇圧ブリッジ脚部20のスイッチの制御信号Smyとを示す。図4Cは、中位昇降圧回路の動作に対応し、対応するインダクタ電流iLz(およびこの電流の設定値
【0090】
【数17】
【0091】
)と、インダクタ電圧vLzと、PWM変調ブリッジ脚部14の上位スイッチの制御信号SPzとを示す。PWM変調ブリッジ脚部14の下位スイッチの制御信号SzNは、制御信号SPzの補完であることに留意されたい。
【0092】
電気変換器のAC入力電流の全高調波歪(THD)を最小化するために、相電流ia、ib、icの高周波リップルが有利には最小化される。
【0093】
電気変換器100の利点は、上位昇圧インダクタの半スイッチング周期電圧時間積/面積および下位昇圧インダクタの半スイッチング周期電圧時間積/面積が従来の6スイッチ昇圧型PFC整流器の昇圧インダクタの電圧時間積/面積よりも小さいことである。これは、これらのインダクタに印加される電圧が、従来の6スイッチ昇圧型PFC整流器の場合においてよりも低いためである。中位昇降圧インダクタについて、印加される電圧は、必ずしもより低くはないが、インダクタを流れる電流の値は、従来の6スイッチ昇圧型PFC整流器のインダクタを流れる電流の値よりも小さい。結果として、より少ない磁気エネルギー蓄積を有するより小さいインダクタが実現可能であり、本発明によって提供される電気的3相AC-DC変換器100のより高い電力容積比を結果としてもたらす。
【0094】
図5図6、および図9において表される電気変換器200~400の3相動作は、上記で説明した変換器100の3相動作と類似している。
【0095】
電気変換器の単相動作
本発明によれば、コントローラ40は、AC側において変換器が単相グリッドvgrに接続されているときに選択される、単相動作と呼ばれる第2の動作モードを実装される。電気変換器100を示す図10を参照すると、単相動作において、AC相端子のうちの1つ、例えば、Aは、単相グリッドvgrの順方向導体に接続され、別のAC相端子、例えば、Cは、vgrの戻り導体に接続される。第3の相端子、例えば、Bは、接続されない。様々な単相動作モードが考えられる。
【0096】
第1の従来の単相動作モードにおいて、ブリッジ整流器24は、図11および図12に示すように、グリッド電圧vgrを中間ノードxと中間ノードyとの間のvxyに整流する/折り畳む。昇圧回路脚部19および20は、図12に示すように、ix=-iyでvxyと同相である電流ixおよびiyをそれぞれ生成するように動作され得る。特に、アクティブスイッチSxmおよびSmyは、PWMで動作され、それぞれのSxmおよびSmyが開いているとき、ダイオードDxPおよびDNyが導通する。ブリッジ24は、ixおよび-iyをグリッド電流igrに展開する。この実施形態において、相セレクタスイッチSaza、Sbzb、Sczcおよび、スイッチSPz、SzNを有する第3高調波電流注入脚部14は、動作せず(すなわち、それらは、開いており、非導通である)、電流は、中間ノードzを通って流れない(iz=0)。図13は、Aにおけるグリッド電圧が正である期間中の電流経路を示す。図14は、Aにおけるグリッド電圧が負である期間中の電流経路を示す。
【0097】
上記の単相動作は、3相動作と比較して、電力の少なくとも3分の1を変換することを可能にする。3相動作を仮定すると、22kW、すなわち、400Vrmsの線間電圧の相において3×32Armsを変換することを可能にする。3相動作において、ノードxにおけるピーク電流
【0098】
【数18】
【0099】
である(すなわち、相電流の正の振幅値に等しい)。ノードyにおけるピーク電流
【0100】
【数19】
【0101】
である(すなわち、相電流の負の振幅値に等しい)。ノードzにおけるピーク電流
【0102】
【数20】
【0103】
である(すなわち、相電流の交差点における電流値に等しい)。これらのそれぞれの電流は、それぞれのHFブリッジ脚部19~20および14によって生成される。単相動作において、上位および下位昇圧ブリッジ脚部19、20のみがアクティブであり、同じ電流を流す(すなわち、それらは、並列に作用しない)。これは、ピーク相電流が45.2Apkであることを意味し、32Armsも取得されることを意味する。変換された電力は、230Vrms相電圧を仮定すると、230Vrms×32Vrms=7.36kW、すなわち22kWの約3分の1になる。
【0104】
3相動作と比較して誘導性構成要素を過大に寸法設定する必要なしに、入力フィルタ段のインダクタ(差分モード(DM)インダクタ)が制御飽和になることを可能にすることによって、単相動作においてさらにより高い電力定格を取得することが可能である。
【0105】
別の回路トポロジーにおいて、図15を参照すると、電気変換器500は、ノードPとノードNとの間に接続された単一の(2レベル)昇圧回路29を示し、ノードyとノードsとの間のDCリンクにおいて、インダクタLyが欠落している。単相動作において、変換器500は、上記で説明したように変換器100と同様に動作され得、すなわち、昇圧回路29は、電流注入脚部14および相セレクタ25が動作されていない間、PWMによって動作される。図13および図14に示すのと同じ電流経路が取得される。
【0106】
依然として図15を参照すると、第2の単相動作モードにおいて、本開示の態様によれば、単相動作は、注入脚部14ならびに昇圧回路29をPWMによって動作させることによって実行され得る。単相グリッドは、2つの相端子A、Cに依然として接続される。ブリッジ整流器24は、図16に示すグリッド電圧vgrを、図17に示すノードxとノードyとの間の整流された電圧vxyに整流する/折り畳む。相セレクタ25は、vgrの正の半サイクル中に中位中間ノードzを相端子Aに接続し、vgrの負の半サイクル中に中位中間ノードzを相端子Cに接続するように(コントローラ40によって)動作される。そうすることによって、相セレクタ25は、図16に示すグリッド電圧vgr図17に示すノードzとノードyとの間の整流された電圧vzyに整流し/折り畳み、中位中間ノードzにおいて、上位中間ノードxにおける電流経路ixに対する並列電流経路izを取得し、すなわち、ブリッジ24によってノードxに接続された単相導体は、相セレクタ25によってノードzにも接続される。相セレクタのそれぞれのスイッチは、低周波数、例えば、グリッド周波数において動作されることに留意すると便利であろう。
【0107】
昇圧脚部29のスイッチSxyおよび注入脚部14のスイッチSPz、SzNは、図17に示すように、vxyおよびvzyと同相のDCリンク電流ixおよびizをそれぞれ生成するために、PWMによって動作される。DCリンク電流ixおよびizは、キルヒホッフの法則iz+ix=-iyに従ってiyに結合される。ブリッジ整流器24は、図17に示すようなiz+ixおよび-iyを、図16に示すようなigrに展開する。図18は、Aにおけるグリッド電圧が正である期間中の電流経路を示す。図19は、Aにおけるグリッド電圧が負である期間中の電流経路を示す。
【0108】
この場合、igrは、図11図14の例におけるよりも高くなり得ることは、明らかであり、このタイプの単相動作は、3相動作と比較して電力の少なくとも半分を変換することを可能にする。3相動作を仮定すると、22kW、すなわち、400Vrmsの線間電圧の相において3×32Armsを変換することを可能にする。3相動作において、ノードxにおけるピーク電流
【0109】
【数21】
【0110】
である(すなわち、相電流の正の振幅値に等しい)。ノードyにおけるピーク電流
【0111】
【数22】
【0112】
である(すなわち、相電流の負の振幅値に等しい)。ノードzにおけるピーク電流
【0113】
【数23】
【0114】
である(すなわち、相電流の交差点における電流値に等しい)。これらのそれぞれの電流は、昇圧回路29および昇降圧回路14のそれぞれのHF電流脚部(すなわち、スイッチSxyおよびSPz、SzN)によって生成される。第2の単相動作モードにおいて、これら2つのHF電流脚部は、アクティブであり、並列に作用する。特に、HF電流脚部は、同相で動作され得る(非インタリーブモード)。これは、ピーク相電流が、45.2Apk+22.6=67.8Apkに等しいことを意味し、同様に48Armsを意味する。電力は、230Vrms相電圧を仮定すると、230Vrms×48=11kW~=1/2×22kWである。
【0115】
しかしながら、主電源側(入力)フィルタが3相動作のために32Arms用に設計されていると仮定すると、単相動作において48Armsを伝達しなければならず(ノードyを介して伝達される)、潜在的にDMインダクタを飽和状態に駆動し、これは、コア材料の適切な選択によって許容される。結果として生じるフィルタの減衰の減少は、電流ixおよびizの発生をインタリーブすることによって相殺または大幅に減少され得る。後者の場合、回路29および14のHF電流脚部は、位相がずれて動作される(インタリーブモード)。
【0116】
上記で説明したインタリーブモードと非インタリーブモードの両方においてHF電流脚部を動作させる1つの利点は、DCリンク電流ixとizとの間のグリッド電流iaの分配を制御することを可能にすることである。そうすることによって、iaの電流リップルは、低減され得る。
【0117】
第2の単相動作モードは、電流ixおよびizの発生をインタリーブする場合に必要なインダクタLyの過大な寸法設定を最小限にするか、またはなしで、電気変換器100(図10)に等しく適用されることに留意すると便利であろう。ノードrとノードsとの間の昇圧回路19、20の2つのスイッチSxmおよびSmyは、同期して、すなわち同時に開閉動作され得る。代替的には、インタリーブ方式において2つのスイッチSxmおよびSmyを動作させると、多レベル電圧を発生させることが可能である。これは、グリッド電圧周期の特定の領域において実行され得、HF電流リップルを低減する。
【0118】
第2の単相動作モードにおいて、相セレクタ25は、代替的に、ixおよびizの代わりに、izおよびiyが並列に作用するように動作され得る。この場合、相セレクタ25は、vgrの正の半サイクル中に中位中間ノードzを(Aの代わりに)相端子Cに接続し、vgrの負の半サイクル中に中位中間ノードzを(Cの代わりに)相端子Aに接続するように(コントローラ40によって)動作される。2つのオプションを交互にすることも可能であり得る。
【0119】
前の例では切断されたままである第3の相端子Bは、代替的に、順方向導体(すなわち、Aと短絡される)または戻り導体(すなわち、Cと短絡される)のいずれかに接続され得る。相セレクタ25の対応するスイッチを動作させることによって、第3の相端子Bを、相端子Aまたは相端子Cを介する電流経路と並列に接続することが可能である。例えば、図18および図19を参照すると、相端子Bが相端子AまたはCのどちらと並列に作用するかに応じて、SPzまたはSzNと組み合わせて、SazaまたはSczcの代わりに相セレクタ25のスイッチSbzbを動作させることになる。
【0120】
図20を参照すると、スイッチ23の存在において図5の電気変換器200とは異なる電気変換器600が示されている。スイッチ23は、有利には、始動時に変換器をプリチャージすることを可能にする。3相動作モードにおいて、始動時に、スイッチングデバイス23は、ブリッジ整流器24の上位ノードと上位中間ノードxとの間の導通を遮断するために開かれる。電流は、インダクタLxを通って流れない。ここで、相セレクタ25は、中位中間ノードzにおいて、限定された時間量(例えば、1μs)の間、出力端子P、Nにわたる(瞬時の)出力電圧VDCよりもわずかに高い相入力電圧を印加するように動作される。そうすることによって、限定された時間量の間、中位中間ノードzにおける電圧と出力電圧VDCとの間の正の電圧差は、インダクタLzに印加され、スイッチノードtと端子Pとの間のスイッチSPzに接続された(内部)逆並列ダイオードの導通により、相電流が、インダクタLzを通り、さらに上位出力端子Pまで流れるようにする。したがって、電流経路は、中位中間ノードzから、スイッチノードtを通り、スイッチSPzの逆並列ダイオードを通り、出力フィルタ15のキャパシタCPm、CmNを通り、下位中間ノードyに戻り、ブリッジ整流器24の下位の対応するダイオード/スイッチのうちの1つを通って、グリッドの相に戻る。そうすることによって、出力電圧VDCは、徐々に上昇され得る。
【0121】
単相動作モードにおいて、すなわち、スイッチ23を開き、上記で説明したように相セレクタ25を動作させると、同じプリチャージ動作が有利には実行され得る。この場合、相セレクタ25のスイッチSazaもしくはSczcのいずれか、または両方が動作される。
【0122】
通常動作中、スイッチ23は、3相動作モードと単相動作モードの両方において継続的に閉じられる。スイッチ23は、半導体スイッチの代わりにリレースイッチとして設けられ得、有利にはコントローラ40に動作可能に結合される。
【0123】
したがって、本開示の1つの特定の態様において、3つの相電圧を有するAC信号とDC信号との間で変換するための電気変換器(600)であって、
3つの相端子(A、B、C)と、第1のDC端子(P)と、第2のDC端子(N)と、
3つの相端子に動作可能に結合され、第1の中間ノード(x)と第2の中間ノード(y)とを備える第1の変換器段(11)であって、第1の変換器段が、3つの相端子におけるAC信号と、第1の中間ノード(x)および第2の中間ノード(y)における第1のDC信号との間で変換するように構成され、第1の変換器段が、3つの相端子を第3の中間ノード(z)に選択的に接続するように構成された第1のアクティブスイッチ(Saza、Sbzb、Sczc)を備える相セレクタ(25)をさらに備える、第1の変換器段(11)と、
第1および第2のDC端子(P、N)に動作可能に結合され、第4の中間ノード(r)と第5の中間ノード(s)とを備える第2の変換器段(12)であって、第2の変換器段が、少なくとも1つの第2のアクティブスイッチ(Sxm、Smy)を介して、第4および第5の中間ノード(r、s)における第2のDC信号と、第1および第2のDC端子(P、N)における第3のDC信号との間で変換するように動作可能な昇圧回路(19、20、29)を備え、第2の変換器段が、第3の中間ノード(z)を第1のDC端子(P)および第2のDC端子(N)に接続するように動作可能な第3のアクティブスイッチ(SPz、SzN)を備える電流注入回路(14)をさらに備える、第2の変換器段(12)と、
第1の中間ノード(x)を第4の中間ノード(r)に接続し、第2の中間ノード(y)を第5の中間ノード(s)に接続するリンクと、
AC信号と第3のDC信号との間で変換するように構成された第1の動作モードを実装されたコントローラ(40)と
を備え、
コントローラ(40)が、3つの相端子のうちの少なくとも2つの間に印加される単相AC信号と、第1および第2のDC端子(P、N)における第4のDC信号との間で変換するように構成された第2の動作モードを実装され、
変換器が、第1の中間ノード(x)と第4の中間ノード(r)との間および/または第2の中間ノード(y)と第5の中間ノード(s)との間に第4のスイッチ(23)を備え、コントローラ(40)が、第1のDC端子と第2のDC端子との間の電圧をプリチャージするために始動中に第4のスイッチ(23)を開くように動作可能である、電気変換器(600)が提供される。本態様は、例えば、添付の特許請求の範囲に記載されているように、本開示に記載の他の態様のうちのいずれか1つと組み合わせて提供され得る。
【0124】
本開示による電気変換器は、例えば、低電圧(例えば、50Hzの周波数において380~400または240Vrms)グリッドであり得る電気グリッドからの3相AC電圧または単相AC電圧を、高いDC出力電圧(例えば、3相ACについては700~1000V、および単相ACについては典型的には350~500V)に変換するために使用され得る。
【0125】
図21を参照すると、バッテリ充電システム700は、電源ユニット704を備える。電源ユニット704は、例えば、電源ユニット704をバッテリ703に接続することを可能にするスイッチデバイスを備えるインターフェース702に結合される。電源ユニット704は、DC-DC変換器段701に結合された、上記で説明した電気変換器のうちの任意の1つ、例えば、変換器500を備える。DC-DC変換器段701は、1つもしくは複数の絶縁されたDC-DC変換器を備えるかまたはそれらから構成され得る。DC-DC変換器段は、特に電源ユニット704とバッテリ703との間の有線電力伝送の場合、ガルバニック絶縁をもたらす変圧器を備えることができる。DC-DC変換器段は、ワイヤレス電力伝送の場合など、空気を介して誘導結合される一対のコイルを備えることができる。場合によっては、インターフェース702は、例えば、有線電力伝送において、プラグとソケットとを備えることができる。代替的に、プラグおよびソケットが入力において(例えば、端子A、B、Cにおいて)設けられ得る。特に、DC-DC変換器段701は、並列または直列に選択的に接続可能な複数のDC-DC変換器を備えることができる。電気変換器を3相ACモードにおいて動作させる場合、DC-DC変換器は、典型的には直列に接続される。上記で説明したように単相ACモードにおいて動作させる場合、DC-DC変換器は、典型的には並列に接続される。DC-DC変換器の接続の並列モードと直列モードとの間のスイッチングは、当該技術分野において知られているように、リレーを使用して行われ得る。
【符号の説明】
【0126】
10 電気変換器
11 3相アクティブ相セレクタ、変換器段、第1の変換器段、入力段、第1の変換器回路
12 変換器段、第2の変換器段、DC/DC段、出力電力段
13 入力フィルタ
14 昇降圧ブリッジ脚部、中位昇降圧ブリッジ脚部、PWM変調ブリッジ脚部電流注入回路、第3高調波電流注入脚部、HFブリッジ脚部、電流注入脚部、注入脚部、昇降圧回路、回路
15 出力フィルタ
16 脚部、ブリッジ脚部
17 脚部、ブリッジ脚部
18 脚部、ブリッジ脚部
19 昇圧ブリッジ脚部、上位昇圧ブリッジ脚部、PWM変調上位昇圧ブリッジ脚部、昇圧ブリッジ、上位昇圧ブリッジ、昇圧回路、HFブリッジ脚部
20 昇圧ブリッジ脚部、下位昇圧ブリッジ脚部、PWM変調下位昇圧ブリッジ脚部、昇圧ブリッジ、昇圧回路、HFブリッジ脚部
21 3相ACグリッド、電気ACグリッド
22 DC負荷、負荷
23 スイッチングデバイス、スイッチ、第4のスイッチ
24 3相ブリッジ整流器、ブリッジ、ブリッジ整流器、整流器
25 相セレクタ
29 昇圧回路、昇圧脚部、回路
40 中央制御ユニット、コントローラ、制御ユニット
41 入力ポート
42 測定値入力ポート
43 測定値入力ポート
44 測定値入力ポート
45 測定値入力ポート
50 通信インターフェース
51 スイッチ信号生成器
52 スイッチ信号生成器
53 スイッチ信号生成器
54 PWM生成要素
60 外部電圧制御ループ
61 比較器
62 制御要素
63 乗算器
64 計算要素
65 比較器
66 制御要素
67 加算要素
70 内部電流制御ループ、電流コントローラ
71 個別電流コントローラ、コントローラ
72 比較器
73 制御要素
74 個別電流コントローラ、コントローラ
77 個別電流コントローラ、コントローラ
81 選択要素、セレクタ要素
93 測定値処理ユニット
94 測定値処理ユニット
95 測定値処理ユニット
96 測定値処理ユニット
100 電気変換器、電気的3相AC-DC変換器、変換器
200 電気変換器
211 入力段
212 出力電力段
300 電気変換器
400 電気変換器
500 電気変換器、変換器
600 電気変換器
700 バッテリ充電システム
701 DC-DC変換器段
702 インターフェース
703 バッテリ
704 電源ユニット
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】