(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】GPERタンパク質分解ターゲティングキメラ
(51)【国際特許分類】
C07J 41/00 20060101AFI20230601BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230601BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230601BHJP
C07K 5/00 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
C07J41/00 CSP
A61K47/54
A61P35/00
C07K5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564329
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 US2021028900
(87)【国際公開番号】W WO2021217036
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515346639
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ アイオワ リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】University of Iowa Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】サレム、エイリアスガー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】フィラルド、エドワード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルー、アン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ロウヒモガダム、ミラド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C091
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
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4C091RR08
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA12
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
E3ユビキチンリガーゼリガンドに連結されたリンカーに連結されたGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む分子、及びその分子を使用する方法が提供される。一実施形態では、GPERリガンドはエストラジオールであり、E3ユビキチンリガーゼリガンドは(S,R,S)-AHPCである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E3ユビキチンリガーゼリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む分子。
【請求項2】
前記GPERリガンドは、17β-エストラジオール、エストロン、フィトエストロゲン、キセノエストロゲン、エストリオール、エストリオール3-硫酸、エストリオール17-硫酸、G-1、G-15、G-36、ゲニステイン、ダジン、又はケルセチンを含む、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
前記フィトエストロゲンは、フラボン、イソフラボン、リグニン、サポニン、クメスチン、又はスチルベンを含む、請求項2に記載の分子。
【請求項4】
前記GPERリガンドはGPERアンタゴニストである、請求項1~3のいずれか一項に記載の分子。
【請求項5】
前記E3ユビキチンリガーゼリガンドはフォン・ヒッペルリガーゼ(VHL)リガンドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の分子。
【請求項6】
前記E3ユビキチンリガーゼリガンドは、セレブロン、レナリドマイド、ポマリドマイド、イベルドマイド、(S,R,S)-AHPC、サリドマイド、VH-298、CC-122、CC-885、E3リガーゼリガンド8、TD-106、VL285、VH032、VH101、VH298、VHLリガンド4、VHLリガンド7、VHL-2リガンド3、E3リガーゼリガンド3、E3リガーゼリガンド2、又はBC-1215を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の分子。
【請求項7】
前記リンカーは、原子10~50個を有する鎖を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の分子。
【請求項8】
前記リンカーはアルキルリンカーである、請求項7に記載の分子。
【請求項9】
前記リンカーはヘテロアルキルリンカーである、請求項7に記載の分子。
【請求項10】
前記リンカーはポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の分子。
【請求項11】
前記リンカーは3~15個のPEG単位を含む、請求項10に記載の分子。
【請求項12】
前記リンカーは(PEG)
mNH(CO)(PEG)
nを含み、n及びmは独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15である、請求項10に記載の分子。
【請求項13】
nは3、4、5、又は6である、請求項12に記載の分子。
【請求項14】
mは7、8、9、又は10である、請求項12に記載の分子。
【請求項15】
特定量の請求項1~14のいずれか一項に記載の分子を含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記GPERリガンドが17β-エストラジオールを含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記E3ユビキチンリガーゼリガンドはフォン・ヒッペルリガーゼ(VHL)リガンドである、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記リンカーはPEGを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記リンカーは3~12個のPEG単位を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
哺乳動物においてがんを予防、阻害、又は治療する方法であって、E3ユビキチンリガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項21】
哺乳動物においてGPER陽性がんを予防、阻害、又は治療する方法であって、E3ユビキチンリガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項22】
前記がんが内分泌抵抗性がんである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記がんがホルモン療法抵抗性がんである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
前記がんがトリプルネガティブ乳がんである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項25】
前記がんが婦人科がんである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項26】
前記がんが卵巣がんである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項27】
前記がんが子宮内膜がんである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項28】
前記哺乳動物がヒトである、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記投与が全身性である、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記投与が経口である、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物は持続放出剤形である、請求項20~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記分子は請求項1~14のいずれか一項に記載の分子である、請求項20~31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
疫学的、臨床的及び前臨床的証拠は、乳がんがエストロゲン駆動型の悪性腫瘍であることを示唆している(Germain et al.,2011;Parl et al.,2018;Rothenberger et al.,2018;Rugo et al.,2016;Yue et al.、2016)。これは、抗エストロゲン剤が早期ER(+)乳がんの効果的な補助療法として広く成功していることを説明している(DePlacido et al.,2018;Tremont et al.,2017)。エストロゲン作用に拮抗するために、2つのクラスの薬剤が使用され、それらは1)アロマターゼを阻害する化合物(アロマターゼ阻害剤、AI)、アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素、及び2)エストロゲンとERの相互作用を競合的にブロックするエストロゲン模倣薬(ERアンタゴニスト)である。効果をもたらすためには、AI又はERアンタゴニストを3~5年又はそれ以上の長期にわたる投薬スケジュールで投与する必要がある。最終的に、抗エストロゲン療法の長期使用は、更年期症状、骨粗鬆症、骨痛、関節痛などの望ましくない、時には耐え難い副作用を伴う(Yang et al.,2013)。さらに、ERアンタゴニストの長期使用は、子宮内膜がん(Hu et al.,2015;Jones et al.,2012)及び血栓症(Cosman et al.,2005)のリスクの増加に関連する。
【0002】
de novoの又は獲得した薬剤耐性は、抗エストロゲン療法の使用をさらに制限し、治療を受けた患者の20%以上で耐性が発生する(Augusto et al.,2018;Clarke et al.,2001;Haque et al.,2019;Lei et al.,2019)。de novo耐性は、診断時のER発現における腫瘍内不均一性に起因し(Reinhardt et al.,2017)、獲得耐性は、治療中に抗エストロゲン剤によって加えられる選択圧によって進化する腫瘍の不均一性を反映している。例としては:a)薬物-受容体相互作用の喪失(Fan et al.,2015)又はエストロゲン非依存性ER媒介遺伝子トランス活性化の促進(Barone et al.,2010;GRCIA-Becerra et al,2012)をもたらす突然変異の選択を促進する突然変異の選択、b)ERプロモーターのエピジェネティックなサイレンシング(Achinger-Kaecke et al.,2020)、及びc)細胞周期活性(Thngavel et al.,2011)又は上皮成長因子受容体(EGFR)の下流のシグナル伝達活性(Guilano et al.,2011)を調節することによってエストロゲン非依存性の成長を促進する代償性遺伝子(compensatory genes)の転写アップレギュレーションが挙げられる。抗エストロゲン耐性のさらに別のメカニズムは、Gタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)によって提供される。この最近評価されたエストロゲン受容体は、乳がんの生物学と治療にとって明らかに重要である(Rouhimoghadm et al.,2020)。主に細胞内に存在し、リガンド誘導性転写因子として機能する核内エストロゲン受容体とは異なり、GPERは原形質膜及び細胞内膜に位置し、アデニル酸シクラーゼの活性化(Filardo et al.,20002)及びEGFRのトランス活性化(Filardo et al.,2000)を含む迅速なプレゲノム作用を促進するGs共役7回膜貫通型受容体である。GPERの刺激は、Ras、PI3K、AKT、及びErk1/2などのEGFRの下流にあるシグナル伝達エフェクターの活性化に寄与し、細胞増殖、生存、浸潤、及び内分泌療法に対する抵抗性に関与している(Peperman et al.,2019)。原発性乳房腫瘍におけるGPER発現の分析は、その存在が疾患の進行(Filardo et al.,2006)、乳がん幹細胞の生存(Chan et al.,2020)、及びタモキシフェン耐性(Ignatov et al.,2011;Rouhimoghadam et al.,2018;Yin et al.,2017)と関連していることを示している。さらに、その発現は、ER、PR、及びher-2/neuを欠くトリプルネガティブ乳がんにおいて一般的に保持される(Steiman et al.,2013)。したがって、GPERは、エストロゲン応答性のER中心の見方を広げ(Filardo et al.,2018)、乳がんの補助療法の合理的な割付けを導くバイナリルーブリックを混乱させる。「部分的な」(タモキシフェン)及び「純粋な」(フルベストラント及びラロキシフェン)ERアンタゴニストがGPERアゴニストとして機能するため(Filardo et al.,2000;Petrie et al.,2013)、これは内分泌療法を受けている患者にとって特に重要である。
【0003】
現在の臨床ガイドラインでは、内分泌抵抗性乳がんの二次治療としてフルベストラントの使用が推奨されている(Nathan et al.,2017;Sammons et al.,2019)。フルベストラントは、ERの競合的阻害剤として機能するだけでなく、選択的ER分解薬(SERD)としても機能するエストロゲン模倣薬である(Pike et al.,2001)。フルベストラントは、このクラスで唯一のFDA承認薬であり、ERに結合すると、関連する熱ショックシャペロンタンパク質との相互作用が不安定になり、26SプロテアソームでERが分解される(Callige et al.,2006)。このように、フルベストラントは薬剤標的のバイオアベイラビリティを低下させるように作用することで、二次薬剤耐性のリスクを低減する。しかし、フルベストラントの主な制限は、経口投与後のバイオアベイラビリティが低いため、痛みを伴う毎月の筋肉内注射が必要なことである(Robertson et al.,2007)。
【0004】
ERを選択的に分解する方法は、ユビキチン-プロテアソーム経路を利用するタンパク質分解ターゲティングキメラ(PROteolytic TArgeting Chimeras:PROTAC)の使用によって達成された(Cyrus et al.,2011;Huang et al.,2016)。通常、PROTACは、目的のタンパク質をユビキチン化機構に直接結合するように作用する2つの機能的結合ドメインからなるヘテロ二機能性化合物である。それらは、化学的スペーサーを介してE3ユビキチンリガーゼ認識モチーフに結合された標的ドメインで構成されている。結合すると、PROTACはその標的をポリユビキチン化し、分解のために26Sプロテアソームに向ける。PROTACは、広範囲の細胞質、核、及び原形質膜タンパク質を標的とするために使用されてきたという利点を提供する(Sun et al.,2019)。効率的なPROTAC分解ではあるが、標的化及びE3リガーゼ動員ドメインの空間的配置を最適化するための体系的なアプローチが必要である(Bondesonetal.,2018)。PROTACは、目的の標的タンパク質に対して高い特異性と処理能力を提供するという追加の利点を提供する。したがって、標的分子の濃度を効果的に減らし、薬剤耐性変異体が進化する可能性を低下させる。この戦略は、ERのダウンモジュレートに成功裏に使用されており、ER-PROTACは、それぞれ異なる化学的スペーサーでタンパク質又は小分子E3リガーゼ動員モチーフに結合された17β-エストラジオール(17b-E2)(Rodriguez-Gonzales et al.,2008)、エンドキシフェン(Dragovich et al.,2020)、ラロキシフェン(Hu et al.,2019)、及びタモキシフェン(Fan,2020)を含む様々なエストロゲン誘導体からなる標的ドメインと共に開発されている。ERα、ERβ、及びGPERは、天然及び合成エストロゲンに対する結合親和性が異なるが(Prissnitz et al.,2015)、低ナノモル範囲での解離定数の測定ではそれぞれ17β-エストラジオール(E2)に対して高い結合親和性を示す。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、Gタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)を不活性化することができるPROTACを提供する。一実施形態では、本開示は、GPERを不活性化することができる、又は活性化しない、経口送達される小分子PROTACを提供し、これは、例えば、最も治療が困難な乳がんの1つであるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)などのがんを治療するのに有用である。TNBCは、有効な治療標的がなく、一般的に(TNBCの80%超で)GPERを発現するタイプの乳がんである。本明細書に開示されるGPER-PROTACは、例えばTNBCにおけるGPERのタンパク質分解を増強することで、がんの進行を遅延又は阻害し、したがって内分泌療法をTNBCに使用できることを証明する。GPER-PROTACは、例えば、現在内分泌療法に不適格であると判断されている患者における他のタイプの乳がん又は婦人科がんなどの他のがんにも有用であり得る。GPER-PROTACは、既存の治療法(例えば、アロマターゼ阻害剤)と組み合わせて使用することもできる。一実施形態では、GPER-PROTACは経口送達される。一実施形態では、GPER-PROTACは、ERα、ERβ及びGPERと相互作用し、それらを分解するE2ベースのPROTAC、例えばUI-EP001又はUI-EP002)であり、例えばそれは総エストロゲン受容体阻害剤である。一実施形態では、二重特異性PROTACは原形質膜及び細胞内エストロゲン受容体と相互作用し、ユビキチン-プロテアソーム依存性分解を促進する。
【0006】
GPERを不活性化するためのPROTACは、例えば、[3H]-17β-エストラジオール(17β-E2)をトレーサーとして使用した競合的放射性受容体結合アッセイを使用して評価され、標的細胞、例えば乳がん細胞の原形質膜におけるGPER特異的結合を決定する。GPERを不活性化するためのPROTACは、乳がん細胞株などのがん細胞株でGPERのプロテアソーム分解を促進する能力、及び小さな原発性TNBC腫瘍を使用した自然発生がんモデルなどの動物モデルでの抗発がん効果についても評価される。本明細書に開示されるように、GPERを不活性化するための例示的なPROTACであるUIEP001は、天然及び組換えGPER原形質膜タンパク質を減少させ、HA-GPERの定常状態発現を減少させるが、HA-β1ARは減少させないことが示された。
【0007】
一実施形態では、本開示は、E3リガーゼのリガンドに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを提供する。一実施形態では、本開示は、リンカーに結合した、例えば共有結合を介して化学的に連結されたGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを提供し、これはさらに、例えば共有結合を介してE3リガーゼのリガンドに結合される。一実施形態では、GPERリガンドは、17β-エストラジオール、エストロン、フィトエストロゲン、キセノエストロゲン、エストリオール、エストリオール3-硫酸、エストリオール17-硫酸、G-1、G-15、G-36、ゲニステイン又はケルセチンを含む。一実施形態では、フィトエストロゲンは、フラボン、イソフラボン、リグニン サポニン、クメスチン、又はスチルベンを含む。一実施形態では、GPERリガンドは、ビスフェノール、アルキルフェノール、メトキシフェノール、ポリ塩化ビフェニル、又はダイオキシンを含む。一実施形態では、GPERリガンドはGPERアンタゴニストである。一実施形態では、GPERリガンドはGPERアゴニストである。一実施形態では、GPERリガンドは、2-シクロヘキシル-4-イソロピル-N-(4-メトキシベンジル)アニリンではない。一実施形態では、GPER PROTACは式(II)又は(III)を有しない。一実施形態では、GPERリガンドは2-シクロヘキシル-4-イソプロピル-N-(4-メトキシベンジル)アニリンを含む。一実施形態では、GPERリガンドはERに結合しない。一実施形態では、E3リガーゼリガンドはフォン・ヒッペルリガーゼ(VHL)リガンドである。一実施形態では、E3リガーゼリガンドは、レナリドマイド、ポマリドマイド、イベルドマイド、(S,R,S)-AHPC、サリドマイド、VH-298、CC-885、E3リガーゼリガンド8、TD-106、VL285、VH032、VH101、VH298、VHLリガンド4、VHLリガンド7(Scheepstra et al.,Comout.Struct.Biotech.J.,17:160(2019)参照、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、VHL-2リガンド3、E3リガーゼリガンド3、E3リガーゼリガンド2、セレブロン、CC-122、又はBC-1215を含む。一実施形態において、リンカーは、2~200個の原子を有する鎖を有する。一実施形態において、リンカーは、5~25個の原子を有する鎖を有する。一実施形態では、リンカーは、25~50個の原子を有する鎖を有する。一実施形態では、リンカーは、30~50個の原子を有する鎖を有する。一実施形態では、リンカーは、50~100個の原子を有する鎖を有する。一実施形態では、リンカーはアルキルリンカーである。一実施形態では、リンカーはヘテロアルキルリンカーである。一実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、2、3、4、又は5個のPEG単位、及び任意選択で、アミド基などの1つ以上の他の基を含む。一実施形態では、リンカーは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のPEG単位、及び任意選択でアミド基などの1つ以上の他の基を含む。一実施形態では、リンカーは、切断可能なPEGリンカー、例えば、ジスルフィド結合を有するものを含む。一実施形態では、リンカーは、脊椎動物細胞の膜にまたがることができる長さのものであり、例えば、少なくとも5~10nmの長さである。一実施形態では、リンカーは、少なくとも3個のPEG単位、例えば(OCC)3を含む。一実施形態では、リンカーは、少なくとも4個のPEG単位、例えば(OCC)4を含む。一実施形態では、リンカーは、少なくとも5個のPEG単位を有する。一実施形態では、リンカーはC1~C10アルキル(PEG)n.少なくとも4個のPEG単位、例えば(OCC)4を含む。一実施形態では、リンカーは(PEG)nNH(CO)(PEG)mを含み、n及びmは独立して1~15である。一実施形態では、n及びmは独立して3~10である。一実施形態では、nは5~10であり、mは3~6である。
【0008】
一実施形態では、リンカーは、GPERリガンドとE3ユビキチンリガーゼリガンドとの間の直線経路で数えて5~200個の原子の鎖長を有する主鎖を有する。一実施形態では、リンカーは、GPERリガンドとE3ユビキチンリガーゼリガンドとの間の直線経路で数えて、15~50個の原子の鎖長を有する主鎖を有する。一実施形態では、リンカーは、GPERリガンドとE3ユビキチンリガーゼリガンドとの間の直線経路で数えて20~50個の原子の鎖長を有する主鎖を有する。一実施形態において、リンカーは、GPERリガンドとE3ユビキチンリガーゼリガンドとの間の直線経路における結合長を合計することにより決定された計算長で8~300オングストロームの長さを有する主鎖を有する。
【0009】
一実施形態では、リンカーは、GPERリガンドとE3ユビキチンリガーゼリガンドとの間の直線経路における結合長を合計することにより決定された計算長で25~75オングストロームの長さを有する主鎖を有する。一実施形態では、リンカーは
【0010】
【0011】
の構造を有し、Qは、結合又はGPERリガンドへの共有結合を形成する二価の基であり;Zは、1つ以上のアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルグリコール、カルボニル、チオカルボニル、アシル、カルバマート、尿素、チオカルバマート、チオ尿素、ジチオカルバマート、アミノカルボニル、アミド、エステル、チオエステル、チオアミド、アミン、酸素、硫黄、スルホン、又はスルホキシドを、二価の形態で含む直鎖であり;Gは、結合又はE3ユビキチンリガーゼリガンドへの共有結合を形成する二価の基である。一実施形態では、リンカーは
【0012】
【0013】
の構造を有し、Qは、結合又はGPERリガンドへの結合を形成する二価の基であり;
Rは、二価の形態のアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルグリコール、カルボニル、チオカルボニル、アシル、カルバマート、尿素、チオカルバマート、チオ尿素、ジチオカルバマート、アミノカルボニル、アミド、エステル、チオエステル、チオアミド、アミン、酸素、硫黄、スルホン、又はスルホキシドであり;Gは、結合又はE3ユビキチンリガーゼリガンドへの結合を形成する二価の基であり;m、n、p、及びqは、存在する場合、m、n、p、及びqのうちの少なくとも1つが0より大きい整数であることを条件として、それぞれ独立して0~50の整数である。一実施形態では、Q及びGは、独立して、二価の形態のカルボニル、チオカルボニル、アシル、カルバマート、尿素、チオカルバマート、チオ尿素、ジチオカルバマート、アミノカルボニル、アミド、エステル、チオエステル、チオアミド、スルホン、又はスルホキシドである。一実施形態では、Q及びGは、独立して、カルボニル、又は、アセチル、2-ヒドロキシアセチル、2-アミノアセチル、プロピオニル、3-ヒドロキシプロパノイル、3-アミノプロパノイル、ブタノイル、4-ヒドロキシブタノイル、及び4-アミノブタノイルからなる群から選択されるアシルであり、これらはそれぞれ二価の形態である。
【0014】
一実施形態では、m及びnは、存在する場合、それぞれ独立して、0~2の整数であり、Q及びGは、それぞれ独立して、カルボニル、チオカルボニル、アセチル、2-ヒドロキシアセチル、2-アミノアセチル、プロピオニル、3-ヒドロキシプロパノイル、3-アミノプロパノイル、ブタノイル、4-ヒドロキシブタノイル、4-アミノブタノイル、カルバマート、尿素、チオカルバマート、チオ尿素、ジチオカルバマート、アミノカルボニル、アミド、エステル、チオエステル、チオアミド、スルホン、又はスルホキシドであり、これらはそれぞれ二価の形態である。一実施形態では、Zは親水性である。一実施形態では、リンカーは
【0015】
【0016】
の構造を有し、これは直線経路で数えて原子13個の長さを有する主鎖を提供する。一実施形態では、リンカーは
【0017】
【0018】
の構造を有し、p及びqは、それぞれ独立して、0~50の整数である。一実施形態では、リンカーは、二価アルキル基、二価のヘテロアルキル基、又は二価のポリエチレングリコール(PEG)のうちの1つ以上、又はそれぞれを1つ以上含む。一実施形態では、リンカーは、5個以上の二価のエトキシ(-CH2CH2O-)基を含む。一実施形態では、リンカーは、炭素2個ごとに1個以上のヘテロ原子を含み、ブチルより長いアルキル鎖を含まない。一実施形態では、リンカーは、GPERリガンドの酸素、窒素、硫黄、カルボニル、又はエチニルを介してGPERリガンドに結合し、リンカーは、E3ユビキチンリガーゼリガンドの酸素、窒素、硫黄、カルボニル、又はエチニルを介してE3ユビキチンリガーゼリガンドに結合する。一実施形態では、GPERリガンドはエストロゲンステロイドであり、エストロゲンステロイドのC6又はC17に位置する酸素、アミン、硫黄、ビニル、エチン、及びカルボニルから選択される二価の基を含み、C6又はC17の上記二価の基はリンカーに結合される。一実施形態において、E3ユビキチンリガーゼリガンドは、(S,R,S)-AHPCであり、これは(S,R,S)-AHPCのアミンを介してリンカーに結合される。
【0019】
また、上記分子を使用する方法も提供される。一実施形態では、哺乳動物において内分泌抵抗性がん又はホルモン療法抵抗性がんを予防、阻害、又は治療する方法が提供される。この方法は、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を哺乳動物に投与することを含む。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。一実施形態では、投与は全身性である。一実施形態では、投与は経口である。一実施形態では、組成物は錠剤である。一実施形態では、組成物は液体である。一実施形態では、組成物は注射される。一実施形態では、哺乳動物は、アロマターゼ阻害剤療法に耐性のあるヒトである。
【0020】
また、哺乳動物におけるトリプルネガティブ乳がんを予防、阻害、又は治療する方法が提供され、この方法は、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を哺乳動物に投与することを含む。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。一実施形態では、投与は全身性である。一実施形態では、投与は経口である。一実施形態では、GPERリガンドはGPERアンタゴニストである。
【0021】
雌性哺乳動物における婦人科がん、例えば、子宮頸がん、卵巣がん又は子宮内膜がんを予防、阻害、又は治療する方法がさらに提供され、この方法は、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を上記哺乳動物に投与することを含む。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。一実施形態では、投与は全身性である。一実施形態では、投与は経口である。
【0022】
哺乳動物において、前立腺がん又は結腸がんを含むがん、又はホルモン依存性でない任意のがんを予防、阻害、又は治療する方法もまた提供され、この方法は、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を哺乳動物に投与することを含む。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。一実施形態では、投与は全身性である。一実施形態では、投与は経口である。一実施形態では、GPERリガンドはGPERアンタゴニストである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】例示的なPROTACによるGPERのタンパク質分解ターゲティング。
【
図2】E2-PROTAC、UI-EP001の構造確定。
【
図3】PROTACプロトタイプUI-EP001は表面GPERを低減する。UI-EP001(100uM、16時間)は、表面組換えGPERのダウンモジュレーションを引き起こす。右は、3つの顕微鏡視野から測定された補正された全赤色蛍光によって定量化された結果。
【
図4】PROTACプロトタイプUI-EP001は表面GPERを低減する。her2+及びTNBC乳がん細胞の天然GPERについても同様の結果が得られた。
【
図5】トリプルネガティブ乳がん治療のためのGRER PROTAC。
【
図6】E2β-PROTAC(100uM)は、表面のGPERを低減することができる。
【
図7】E2β-PROTAC(100uM)は、表面のGPERを低減することができる。
【
図8】E2β-PROTAC(100uM)は、表面のGPERを低減することができる。
【
図9】E2β-PROTAC(100uM)は、表面のGPERを低減することができる。
【
図10】UI-EP001ダウンモジュレーションの特異性の評価。
【
図11】レストブルー(restoblue)アッセイ。
【
図12】E
2-PROTAC及び部分的PROTACで処理したHCC1806及びSKBR3の生存率の比較(処理の12時間後)。
【
図13】E
2-PROTAC及び部分的PROTACで処理したHCC1806及びSKBR3の生存率の比較(処理の24時間後)。
【
図14】エストラジオール飽和で前処理したHCC1806細胞株の生存率の比較(24時間の処理)。
【
図15】エストラジオール飽和で前処理したSKBR3細胞株の生存率の比較(24時間の処理)。
【
図17】PROTAC作用のメカニズム。PROTACは、標的タンパク質をE3リガーゼに結合させ、そのポリユビキチン化とプロテアソーム分解を引き起こす。
【
図18】E2-PROTAC(UI-EP001)は、ヒト乳がん細胞においてGPERをダウンモジュレーションする。UI-EP001の構造(A)とNMRスペクトル(B)。ヒトSKBR3(Her2+)及びHCC-1806(TNBC)乳がん細胞を、ビヒクル(未処理)又は100μMの部分的PROTAC又はE2β-PROTAC、UI-EP001に16時間曝露した。細胞をGPER抗体で30分間免疫染色し、ヤギ抗ウサギAlexa594IgG(赤)を使用して表面GPERを検出した。核をDAPI(青)で対比させた。(C)HA-GPER又はHA-β1AR細胞を指定された時間UI-EP001で処理し、HA抗体(D)でイムノブロッティングするか、表面受容体を免疫染色した(E)。処理した及び未処理のHA-GPER又はHA-β1AR細胞の全補正赤色蛍光(赤)(TCRF)を、細胞のバックグラウンドを差し引くことにより測定した。E2-PROTAC、UI-EP001、HA-GPERの存在下でGPERの有意な分解が観察されたが、ΗA-β1AR細胞では観察されなかった(F)。データは示していないが、遊離17β-E2で同様に処理した細胞では、表面GPER発現に違いは測定されない。
【
図19】低分子GPER-PROTACの設計。17β-エストラジオールは、そのエストラン環のC6又はC-17を介して、VHL由来のユビキチンE3リガーゼリガンド(S,R,S)AHPCに対する様々なサブユニット長の化学リンカーに結合する。
【
図20】C-17結合GPER-PROTACの合成。(S,R,S)-AHPC-PEG2-COOHからなる部分的PROTAC;(S,R,S)-AHPCPEG4-COOH又は(S,R,S)-AHPC-PEG6-COOHは、EDCカップリングによって17β-エストラジオールの17β-OH基を介して結合される。
【
図21】C-6結合GPER-PROTACの合成。(S,R,S)-AHPC-PEG2-COOHからなる部分的PROTAC;(S,R,S)-AHPC-PEG4-COOH又は(S,R,S)-AHPC-PEG6-COOHは、上図のいくつかのステップでC-6炭素原子に結合される。
【
図22】NanoBiT発光アッセイによる原形質膜及び細胞内GPERの検出、インタクト又は界面活性剤透過処理。HEK293細胞又はHiBiT-GPER-HEK293細胞を、周囲温度で4分間、可溶性LgBiTタンパク質及び発光基質で標識した。発光を、4連(quadruplicate)のサンプルから測定した。細胞を含まない空のウェルのバックグラウンドを差し引いて、相対発光単位(RLU)として報告した。
【
図23】GPER及びERαにおけるPROTACのモデリング。A)UI-EP001(青)とUI-EP002(緑)はGPER相同性モデル内で結合し、2つの異なる長さで結合ポケットを出るリンカーを有するように設計されている。B)TM1とTM7の間からのUI-EP001(青)とUI-EP002(緑)の出口を示すGPER結合ポケット(灰色の表面)。C)ERαホモ二量体(PDB:1A52)のERαリガンドドメイン内に結合したUI-EP001(青)及びUI-EP002(緑)。D)UI-EP001(青)とUI-EP002(緑)の出口を示すERα結合ポケット(灰色の表面)。
【
図24】UI-EP001及びUI-EP002の合成。スキーム1:部分的PROTAC(化合物7)の合成、試薬及び条件:(i)NaH、ジオキサン、rt、一晩;(ii)TFA/DCM、rt、2時間;(iii)Pd(OAc)
2、KOAc、DMAc、120℃、24時間;(iv)CoCl
2、NaBH
4、無水メタノール、0℃からrt、2時間;(v)HBTU、DIPEA、無水DMF、rt、一晩;(vi)1.TFA/DCM、rt、30分;2.Boc-Tle-OH、HBTU、DIPEA、無水DMF、rt、一晩;(vii)化合物2、HBTU、DIPEA、rt、一晩。スキーム2:UI-EP001(化合物8)の合成。試薬及び条件:(viii)DMAP、EDC、無水DMF、rt、48時間。スキーム3:UI-EP002(化合物10)の合成。試薬及び条件:(ix)Fmoc-NH-PEG
8-CH
2CH
2COOH、DMAP、EDC、無水DMF、rt、72h;(x)1.Et
3N、無水DMF;2.化合物7、HATU、DIPEA、無水DMF、rt、48時間。
【
図25】E2-PROTACは、GPER及びERへの高親和性結合を介して作用する。A)インタクトHEK-293(ER
-、GPER
-)、HA-GPER(ER
-、GPER
+)、SKBR3(ER
-、GPER
+)及びMCF-7(ER
+、GPER
+)細胞をウサギGPER抗体で4℃で標識した。次に、表面GPERをAlexa594結合ヤギ抗ウサギIgG(赤)で可視化した。B)E2-FITC濃度の関数として計算された、インタクトSKBR3細胞における特異的結合。C)フルオロトレーサーとしてE2-FITCを用いた競合結合アッセイによって測定された、インタクトSKBR3細胞における17b-E2、UI-EP001、UI-EP002、及び部分的PROTACの特異的結合。D)MCF-7細胞から調製されたサイトゾルタンパク質の濃度を増加させながら、10nMのE2-FITCを用いたE2-FITC総結合の決定。E)MCF-7細胞から調製されたサイトゾル画分におけるE2、UI-EP001、UI-EP002、及び部分的PROTACの特異的結合を評価するためのE2-FITCを用いた蛍光偏光アッセイ。平均値及びSDは、3回の独立した実験から得た。
【
図26】E2-PROTACは、組換え膜及び細胞内エストロゲン受容体の急速な喪失を促進する。HEK-293細胞(ERα、GPER)に50ngのHiBiT-GPER又はHiBiT-ERとpcDNA3.1(+)ゼオキャリアプラスミドを一過性にトランスフェクトした。(A)HiBiT-GPER及び(B)HiBiT-ERαの濃度応答曲線を、用量漸増UI-EP001又はUI-EP002のいずれかで1時間処理した後、細胞外LgBiT及び界面活性剤で透過処理した細胞で発光基質を使用して測定した。(C)100mMの薬物又は対照で1時間処理した後の全HiBiT-GPER及びHiBiT-ERを示すヒストグラム。細胞を100μMのUI-EP001、UI-EP002、及び部分的PROTACと共に1~8時間の様々なインキュベーション期間でインキュベーションした後の(D)HiBiT-GPER及び(E)HiBiT-ERαの動態。示されている結果は、3回の独立した実験の平均値±S.E.を表している。(
***、P<0.0004;
****、P<0.0001;一元配置分散分析)。
【
図27】E2-PROTACSは、天然及び組換えGPERの発現を選択的に減少させる。(A)HA-GPER、HA-β1AR、又はHA-CXCR4を安定して発現するHEK-293細胞を、100μMのUI-EP001、UI-EP002、及び部分的PROTACで1時間処理した。固定した細胞を透過処理してからウサギHA抗体で標識し、Alexa Fluor594抗ウサギ二次抗体(赤)を使用して全受容体を可視化した。(B)ビヒクル、UI-EP001、UI-EP002、及び部分的PROTACのいずれかで処理したHA-GPER、ΗA-β1AR、及びHA-CXCR4細胞の画像からの補正全赤色蛍光(Corrected Total Red Fluorescence:CTRF)を、3つの異なる顕微鏡視野からImage Jソフトウェアを使用して測定した(
***、P<0.0004;
****、P<0.0001;一元配置分散分析)。(C)MCF-7(ERa
+、ERb
+、PR
+、GPER
+)細胞を、ビヒクル、UI-EP001、UI-EP002、又は部分的PROTACとともに37℃で1時間インキュベートした後、マウスERα、ウサギERβ、マウスPR、及びウサギGPER抗体で免疫染色し、Alexa488結合抗マウスIgG又はAlexa488結合抗ウサギIgG(緑)で検出した。(D)CTRFとして測定された(C)の画像からの結果の定量化。(E)SKBR3(ERα
+、ERb
-、GPER
+)細胞をビヒクル(1%DMSO)、100uMのUI-EP001、UI-EP002、又は部分的PROTACと共に1時間インキュベートした。表面及び細胞内GPERを、インタクト又は界面活性剤透過処理細胞において、それぞれウサギGPER抗体及びAlexa594結合ヤギ抗ウサギIgG(赤)を使用して可視化した。
【
図28】E2-PROTACは、GPER及びERαのプロテアソーム依存性分解を誘導する。(A)HiBiT-GPER及び(B)HiBiT-ERαを一過性にトランスフェクトしたHEK-293細胞を、漸増濃度のE2β又はアルドステロンの存在下で100μMのUI-EP001で処理した。その後、全受容体を界面活性剤透過処理細胞におけるバイナリ発光相補性(binary luminescence complementation)によって測定した。(C)一過性にトランスフェクトした細胞における、100μMのUI-EP001単独又は100μMのE2又はアルドステロンと組み合わせた効果。
****は統計的有意性、P<0.0001以下を示す。(D)100μMのUI-EP001又はUI-EP002の存在下又は非存在下で、(D)10μMのMG132又は(E)100μMのクロロキンのいずれかで細胞を1時間処理した。次に、全受容体をバイナリ発光相補性によって定量化した。3回の独立した実験から得られた代表的な発光データと、平均値と、SDが表示されている。(
***、p<0.0004;
**、P<0.001;ns、有意差なし;一元配置分散分析)。
【
図29】E2-PROTACは、ヒト乳がん細胞でエストロゲン受容体特異的な細胞毒性を誘発する。SKBR3、HCC-1806、MCF-7、及びMDA-MB-231乳がん細胞の細胞生存率を、UI-EP001又はUI-EP002又は部分的PROTACの濃度を漸増させて24時間処理した後に測定した。示されている結果は、3回の独立した実験の平均値±S.E.を表している。
【
図30】E2-PROTACSは、エストロゲン受容体依存的G2/M停止を促進する。E2-PROTACは、膜及び/又は細胞内エストロゲン受容体を発現するヒト乳がん細胞株でG2/M停止を誘発した。10%FBSで増殖中のSKBR3、HCC-1806、MCF-7、及びMDA-MB-231細胞を、10μMのUI-EP001又はUI-EP002又は部分的PROTACで24時間処理した。固定した細胞を透過処理し、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。フローサイトメーターで細胞周期データを取得し、Flow-Joソフトウェアを使用して分析した。データは平均±SEM(n=3)として表される。Prism8.0を使用して、各フェーズの細胞の割合をプロットした。
【
図34】細胞周期解析のためのゲーティング法。最初のゲートを散布図(A)に適用することで、デブリをゲートアウトした。細胞が識別されたので、2番目のゲートを、パルス処理(パルス幅対パルス面積)(B)を使用して単一細胞集団に適用することで、分析から細胞ダブレットを除外した。この細胞集団から、各フェーズの各亜集団の割合をヒストグラムプロット(C)によって決定した。
【
図35】MCF7で攻撃したヌードマウス(2日ごとに100μlのIT処理(7×)。
【
図36】MCF7で攻撃したヌードマウス(2日ごとに100μlのIT処理(7×)。
【
図37】SKB3で攻撃したヌードマウス(2日ごとに100μlのIT処理(7×)。
【
図38】CIMBA-PROTACは組換えGPERを分解する。組換えHAタグ付きGPERを安定して発現するHEK293細胞を、様々な濃度のCIMBA-PROTAC-001又は部分的PROTACで16時間処理した後、界面活性剤で溶解させた。等量のタンパク質溶解物をSDS-ポリアクリルアミドゲルで分離し、次いでPVDFナイロンメンブレンにエレクトロトランスファーした。膜をウサギHA抗体で調査した。HA-抗体を低pHで膜から剥がし、次いで膜を特異性及びローディング対照としてトランスフェリン受容体(TFNR)抗体で調査し、剥がした。
【
図39】GPER結合剤として2-シクロヘキシル-4-イソプロピル-N-(4-メトキシベンジル)アニリンを有するGPER-PROTACの例示的な構造(式(II)又は(III))。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
乳がんはエストロゲンによって引き起こされる悪性腫瘍であり、エストロゲン作用の遮断は乳がんに対して非常に効果的であり、他の形態のがん治療よりもはるかに毒性が低い。しかし、ER機能及びエストロゲン生合成を阻害する戦略は、閉経後の、初期のER陽性(ER+)乳がんの女性にのみ使用するのに適している。さらに、薬剤耐性が発生すること、及び副作用が深刻になる可能性がある(Rugo et al.,2016;Miller et al.,2013)。フルベストラントなどの選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)は、エストロゲン受容体(ER)陽性乳がんの治療、特に内分泌抵抗性疾患を発症する患者の治療に有効な薬剤である。SERDは、ERに結合し、26S-プロテアソームでのそれの破壊をもたらすアロステリック変化を誘発することによって機能する。ER分解剤であるフルベストラントは、内分泌抵抗性乳がんの二次治療として使用されるが、バイオアベイラビリティが低いため、痛みを伴う毎月の筋肉内注射が必要である(Nathan et al.,2017)。
【0025】
エストロゲンは、オーファンGPCRホモログであるGPR30(別名GPER)を介して作用し、Gbgサブユニットタンパク質依存性HB-EGFオートクリンループをトリガーする。この発見は、エストロゲンのEGF様効果の最初のメカニズム説明を提供した。GPR30は、特異的なエストロゲン結合を有し、アデニリルシクラーゼに結合しているGs共役受容体である。GPERトラフィッキングに関する研究は、それが原形質膜でユビキチン化され、プロテアソーム分解の前にトランスゴルジネットワークへのクラスリン媒介、b-アレスチン非依存性逆行性輸送を使用することを示した。
【0026】
インテグリンa5b1は、GPERを介したEGFRトランス活性化における膜貫通シグナル伝達を仲介する。GPERを介したエストロゲン作用は、フィブロネクチンマトリックスアセンブリ及びEGF放出、細胞生存に関連する細胞作用を協調的に促進する。例えば、Filardo et.al.(2000);Filardo et.al.(2002);Pang et al.(2005)を参照されたい。
【0027】
GPERは、乳房腫瘍標本のERとは独立して発現される。さらに、GPERは進行性乳がんのマーカーと直接関連しており、これらの同じ予後変数を持つERとは正反対の関係である。GPERはまた、女性生殖器がんの予後不良とも関連している。GPERは発情期に皮質上皮でアップレギュレートされ、視床下部内及び黄体形成ホルモン放出の神経機能におけるGPERの役割に関していくつかのグループと協調している。例えば、Filardo et al.(2006);Noel et al.(2009);Cheng et al.(2014);及びWaters et al.(2015)を参照されたい。
【0028】
したがって、GPERの発現はER+乳がんに限定されないため(Prissnitz et al.,2015;Neklesa et al.,2017)、GPERは乳がんがエストロゲンに応答する代替メカニズムを提供する(Ignatov et al.,2011)。
【0029】
TNBC患者121人を対象とした最近の調査では、これらの腫瘍の80%以上でこの受容体が発現していることが示唆されている。TNBCの大部分におけるGPERの発現は、他の小規模な研究によって裏付けられており、GPERがTNBCにおける腫瘍抑制因子であることを示唆する腫瘍及び細胞株のかなり限定的な研究からのデータとは対照的である。進行性乳がんの臨床的予測因子と逆相関するERの発現とは異なり、GPERの発現はこれらの同じ変数と直接関連しており、転移に関与していることを示唆している。したがって、GPERを選択的に分解するこのタイプの治療薬の開発は、TNBCの治療に有望であり、内分泌抵抗性乳がんにも有用である可能性がある。最後に、GPERは婦人科がんの進行性疾患及び予後不良に関連しており、このことは、GPER-PROTACがこれらの患者にも利益をもたらす可能性があることを示唆している。
【0030】
例示的なGPER-PROTAC
乳がんの治療アルゴリズムはERが中心であり、GPERは国際基礎臨床薬理学連合(IUPHAR)によって認識されているにもかかわらず、エストロゲン標的療法の割付けにはまだGPERを考慮していない(Ignatov et al.,2011)。PROTACは標的を排除し、それによって薬剤耐性の選択を回避するため、治療薬の開発における新しい技術である(Neklesa et al.,2017;Gu et al.2018)。ER-PROTACは、優れた有効性と向上したバイオアベイラビリティを示すため、ER標的療法に有望である(Flanagan et al.,2018)。ER-PROTACは、ERを標的とする目的で開発されており、合成ERα特異的リガンドで構成されている(Flanagan et al.,2018;Tria et al.,2018)。したがって、これらはGPERの標的化には効果的ではない。GPERの合成アンタゴニストが存在し(Prissnitz et al.,2015)、動物モデルで抗腫瘍活性を示すが(Petrie et al.,2013)、それらは腹腔内及び慢性的に送達され、耐性の潜在的な発生を克服しない。GPERを標的とするPROTACアプローチは、原形質膜からのGPERのダウンモジュレーションがユビキチン-プロテアソーム分解経路を介して起こるため、特に魅力的である(Cheng et al.,2011)。
【0031】
ER及びGPERは、内因性エストロゲン、食物由来のエストロゲン、環境エストロゲンの多様なグループに結合する(Prissnitz et al.,2015)。個々のエストロゲンに対するこれらの受容体の相対的な親和性は異なり、各受容体は異なる物理化学的環境に存在するため、これらの親和性を比較することはできない(Prissnitz et al.,2015;Filardo et al.,2012)。ER及びGPERはどちらも17α-E2に高い親和性で結合する。そのため、GPERターゲティングリガンドとして17α-E2を有するGPER-PROTACを調製した。GPER-PROTACは、標的(GPERリガンド)をE3リガーゼに結合させることで、GPERポリユビキチン化及びプロテアソーム分解を引き起こす。
【0032】
Gタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)は、GPCRスーパーファミリーのメンバーである。刺激に続いて、GPERはその脱感作とエンドサイトーシスにつながる適応変化を受ける。26Sプロテアソームは、内分泌されたGPERの自然な行き先であり、それをPROTACを介したターゲティングに適したものにしている。GPERは、侵襲性疾患及び乳がん、子宮内膜がん、卵巣がんの予後不良に直接関連している。GPERは121例中97例(>80%)のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)で発現しているため、既知の治療標的がないこの乳がんサブタイプは、GPER-PROTAC療法に最適ながんである。利用可能なER-PROTACは、ERα特異的リガンドに結合するように最適化されているため、GPERを標的にしていない。本明細書に記載されるように、GPER-PROTAC UI-EP001及びUI-EP00は、ヒト乳がん細胞におけるGPERのダウンモジュレーションを促進した。化学的スペーサーの組成及び長さを変更したGPER-PROTACは、GPER特異的結合について[3H]-17β-エストラジオール(17-β-E2)を用いた競合的放射性受容体結合アッセイを使用して試験できる。
【0033】
17β-E2に対する相対結合親和性(RBA)が最も高いPROTACを、定量的免疫蛍光アッセイ及び免疫化学アッセイを使用して、乳がん細胞におけるGPER分解を促進する能力についてアッセイした。GPER除去の確認には、非常に高感度のバイナリ生物発光相補性アッセイであるNanobit(商標)を使用してもよい。GPERのポリユビキチン化は、タンデムユビキチン結合エレメント(TUBE)アッセイによって確認され、プロテアソーム阻害剤MG132を使用してプロテアソーム特異的分解が決定される。erbB1からerkへのシグナル伝達軸をトランス活性化するGPERの能力も評価される。
【0034】
GPER-PROTACの抗発がん効果、体内分布、及び毒性は、TNBC発がんモデルとして広く使用されているBRCA-1変異マウスを使用して、TNBCの再発及び転移を遅らせる能力に基づいて試験される。乳がんにおいてGPERを不活化することができる、経口送達される低分子PROTACが同定される。これらの小分子は、GPERの不活性化が望まれる他のがん、例えば、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、前立腺がん、又は結腸がんの治療に有用である。
【0035】
例示的な製剤
開示されたGPER-PROTACは、生分解性ポリマー分子を含み得るか、又は生分解性ポリマー分子から形成され得る生分解性粒子に含めて送達され得る。生分解性ポリマー分子は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、PLA及びPGAのコポリマー(すなわち、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA))、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(3-ヒドロキシブチラート)、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリプロピレンフマラート、ポリ(オルトエステル)、ポリオール/ジケテンアセタール付加ポリマー、ポリ-アルキル-シアノ-アクリラート(PAC)、ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキソン(PCPP)ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)、PSA、PCPP及びPCPMのコポリマー、ポリ(アミノ酸)、ポリ(擬似アミノ酸)、ポリホスファゼン、ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]及びポリ[(オルガノ)ホスファゼン]の誘導体、ポリヒドロキシ酪酸、又はS-カプロン酸、エラスチン、又はゼラチンを含み得るがこれらに限定されない。(例えば、Kumari et al.,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces 75(2010)1-18;及び米国特許第6,913,767号;6,884,435号;6,565,777号;6,534,092号;6,528,087号;6,379,704号;6,309,569号;6,264,987号;6,210,707号;6,090,925号;6,022,564号;5,981,719号;5,871,747号;5,723,269号;5,603,960号;及び5,578,709号;及び米国特許出願公開第2007/0081972号;及び国際公開第2012/115806号;及び国際公開第2012/054425号を参照されたい。これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0036】
粒子は、当技術分野で知られている方法によって調製することができる。(例えば、Nagavarma et al.,Asian J.of Pharma.And Clin.Res.,Vol 5,Suppl 3,2012,16~23頁;Cismaru et al.,Rev.Roum.Chim.,2010,55(8),433-442;及び国際公開第2012/115806号;及び国際公開第2012/054425号を参照されたい。これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。粒子を調製するための適切な方法は、予備成形されたポリマーの分散物を利用する方法を含み得、溶媒蒸発、ナノ沈殿、乳化/溶媒拡散、塩析、透析、及び超臨界流体技術を含み得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、粒子は、二重エマルション(例えば、水中油中水型)を形成し、続いて溶媒蒸発を行うことによって調製することができる。この方法によって得られた粒子は、必要に応じて、洗浄及び凍結乾燥などのさらなる処理工程に供され得る。任意選択で、粒子は防腐剤(例えば、トレハロース)と組み合わせることができる。
【0037】
典型的には、粒子は、1ミクロン未満の平均有効直径を有し、例えば、粒子は、約25nm~約500nm、例えば、約50nm~約250nm、約100nm~約150nm、又は約450nm~650nmの平均有効直径、又は約25μm~約500μm、例えば、約50μm~約250μm、約100μm~約150μm、又は約450μm~約650μmの平均有効直径を有する。粒子のサイズ(例えば、平均有効直径)は、透過型電子顕微鏡法(TEM)、走査型電子顕微鏡法(SEM)、原子間力顕微鏡法(AFM)、光子相関分光法(PCS)、ナノ粒子表面積モニター(NSAM)、凝縮粒子カウンター(CPC)、微分移動度分析装置(DMA)、走査移動度粒子測定装置(SMPS)、ナノ粒子追跡分析(NTA)、X線回折(XRD)、エアロゾル飛行時間型質量分析(ATFMS)、及びエアロゾル粒子質量分析器(APM)を含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の方法によって評価することができる。
【0038】
一実施形態では、送達ビヒクルは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、異なる分子量(例えば、2、22及び25kDa)の直鎖及び/又は分岐PEIなどを含むがこれらに限定されないポリマー、ポリアミドアミン(PAMAM)やポリメタクリラートなどのデンドリマー;リポソーム、エマルション、DOTAP、DOTMA、DMRIE、DOSPA、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、DOPE、又はDC-コレステロールを含むがこれらに限定されない脂質;ポリ-L-リジン又はプロタミンを含むがこれらに限定されないペプチドベースのベクター;又はポリ(β-アミノエステル)、キトサン、PEI-ポリエチレングリコール、PEI-マンノース-デキストロース、又はDOTAP-コレステロールを含む。
【0039】
一実施形態では、送達ビヒクルは、グリコポリマーベースの送達ビヒクル、ポリ(グリコアミドアミン)(PGAA)である。これらの材料は、様々な炭水化物のメチルエステル又はラクトン誘導体(D-グルカル酸塩(D)、メソガラクタル酸塩(G)、D-マンナル酸塩(M)、及びL-酒石酸塩(T))を一連のオリゴエチレンアミンモノマーと重合することによって作成される。(1~4個のエチレンアミンを含む(Liu and Reineke,2006)。これらの炭水化物及びポリマー反復単位中の4つのエチレンアミンから構成されるサブセットを使用することができる。
【0040】
一実施形態では、GPER-PROTACの送達ビヒクルは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン(PAMAM)、PEI-PEG、PEI-PEG-マンノース、デキストラン-PEI、OVAコンジュゲート、PLGAマイクロ粒子、又はPAMAMでコーティングされたPLGAマイクロ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む。ポリマーには、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーが含まれ得るが、これに限定されない。本開示のナノ粒子を調製するのに適したポリアミドアミンデンドリマーには、第3世代、第4世代、第5世代、又は少なくとも第6世代のデンドリマーが含まれ得る。
【0041】
一実施形態では、送達ビヒクルは、脂質、例えば、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロペル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム(DOTMA)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-スペルミンカルボキサミド]エチル-N,N-ジメチル-1-プロパンアンモニウムトリフルオロアセタート(DOSPA、リポフェクタミン);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP);N-[1-(2,3-ジミリストロキシ(dimyristloxy))プロピル];N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド(DMRIE)、3-β-[N-(N,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol);ジオクタデシルアミドグリセリルスペルミン(DOGS、トランスフェクタム);又はイメチルジオクタデクリアンモニウムブロミド(imethyldioctadeclyammonium bromide)(DDAB)を含む。カチオン性脂質の正に荷電した親水性頭部基は、通常、第三級及び第四級アミン、ポリアミン、アミジニウム、又はグアニジニウム基などのモノアミンからなる。一連のピリジニウム脂質が開発された(Zhu et al.,2008;van der Woude et al.,1997;Ilies et al.,2004)。ピリジニウムカチオン性脂質に加えて、他のタイプの複素環頭部基には、イミダゾール、ピペリジン、及びアミノ酸が含まれる。カチオン性頭部基の主な機能は、負に荷電した核酸を静電相互作用によってわずかに正に荷電したナノ粒子に凝縮し、細胞取り込みとエンドソーム脱出を促進することである。
【0042】
DOTMA、DOTAP及びSAINT-2などの2つの直鎖脂肪酸鎖を有する脂質、又はDODACを、N,N-ジオレイル-N,N-塩化ジメチルアンモニウム(DODAC)の二量体であるテトラアルキル脂質鎖界面活性剤と同様に、送達ビヒクルとして使用することができる。すべてのトランス配向脂質は、その疎水性鎖長(C16:1、C18:1、及びC20:1)にかかわらず、シス配向の対応物と比較してトランスフェクション効率を高めるように見える。
【0043】
送達ビヒクルとして有用なポリマーの構造には、キトサン及び直鎖ポリ(エチレンイミン)などの直鎖ポリマー、分岐ポリ(エチレンイミン)(PEI)などの分岐ポリマー、シクロデキストリンなどの環状ポリマー、架橋ポリ(アミノ酸)(PAA)などのネットワーク(架橋)型ポリマー、及びデンドリマーが含まれるが、これらに限定されない。デンドリマーは、中心のコア分子からいくつかの高度に枝分かれしたアームが「成長」して、対称又は非対称に樹木状の構造を形成したもので構成される。デンドリマーの例には、ポリアミドアミン(PAMAM)及びポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマーが含まれる。
【0044】
DOPE及びコレステロールは、リポソームの調製に一般的に使用される中性共脂質(co-lipid)である。分岐PEI-コレステロール水溶性リポポリマー複合体は、カチオン性ミセルに自己集合する。非イオン性ポリマーであるプルロニック(登録商標)(ポロキサマー)、及びプルロニック(登録商標)L61及びF127の組み合わせであるSP1017も使用することができる。
【0045】
一実施形態では、PLGA粒子はカプセル化頻度を高めるために使用されるが、PLLとの複合体形成もカプセル化効率を向上させ得る。他の材料、例えば、PEI、DOTMA、DC-Chol、又はCTABを使用することができる。
【0046】
一実施形態では、GPER-PROTACは、ポロキサマー、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)、カルボキシビニルポリマー(例えば、Carbopol(登録商標)934、Goodrich Chemical社)、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、セルロースアセタート及びヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコール、又はそれらの組み合わせのヒドロゲルを含むがこれらに限定されない材料に埋め込まれるか、又は適用される。
【0047】
いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマー材料は、コラーゲン、例えばヒドロキシル化コラーゲン、フィブリン、ポリ乳酸-ポリグリコール酸、又はポリ無水物などの生分解性ポリマーに由来する。他の例としては、親水性、疎水性、両親媒性のいずれであってもよい、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリメチルメタクリラート、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、N-イソプロピルアクリルアミドコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ブロックコポリマー、ポリグリコリド、ポリラクチド(PLLA又はPDLA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、又はポリ(ジオキサノン)(PPS)などの任意の生体適合性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
別の実施形態では、生体適合性材料には、ポリエチレンテレフタラート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのコポリマー、ポリグリコール酸とポリヒドロキシアルカノアートの組み合わせ、ゼラチン、アルギナート、ポリ-3-ヒドロキシブチラート、ポリ-4-ヒドロキシブチラート、及びポリヒドロキシオクタノアート、及びポリアクリロニトリルポリ塩化ビニルが含まれる。
【0049】
一実施形態では、以下のポリマー、例えば、天然ポリマーのデンプン、キチン、グリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸、デルマタン硫酸及びコンドロチン硫酸など、及び微生物ポリエステル、例えばヒドロキシバレラート及びヒドロキシブチラートコポリマーなどのヒドロキシアルカノアート、及び合成ポリマー、例えば、ポリ(オルトエステル)及びポリ無水物、及びグリコリド及びラクチドのホモ及びコポリマーを含む(例えば、ポリ(L-ラクチド、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド、ポリグリコリド及びポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コグリコリド)、ポリ(乳酸コリジン)及びポリカプロラクトンを使用することができる。
【0050】
一実施形態では、生体適合性材料は、単離された細胞外マトリックス(ECM)に由来する。ECMは、温血脊椎動物の皮膚、肝臓、消化器、呼吸器、腸、泌尿器又は生殖器管の真皮を含む任意の器官又は組織源など、様々な細胞集団、組織及び/又は器官の内皮層から単離することができる。本発明で使用されるECMは、複数の供給源の組み合わせに由来し得る。単離されたECMは、シート、粒子形態、ゲル形態などに調製することができる。
【0051】
生体適合性ポリマーは、シルク、エラスチン、キチン、キトサン、ポリ(d-ヒドロキシ酸)、ポリ(無水物)、又はポリ(オルトエステル)を含み得る。より具体的には、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸のコポリマー、乳酸とグリコール酸とポリエチレングリコールとのコポリマー、ポリ(E-カプロラクトン)、ポリ(3-ヒドロキシブチラート)、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリプロピレンフマラート、ポリ(オルトエステル)、ポリオール/ジケテンアセタール付加ポリマー、ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキソン(PCPP) ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)、SA、CPP及びCPMのコポリマー、ポリ(アミノ酸)、ポリ(擬似アミノ酸)、ポリホスファゼン、ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]又はポリ[(オルガノ)ホスファゼン]の誘導体、ポリ-ヒドロキシ酪酸、又はS-カプロン酸、ポリラクチド-co-グリコリド、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、セルロース、酸化セルロース、アルギナート、ゼラチン又はそれらの誘導体から形成され得る。
【0052】
したがって、ポリマーは、天然に存在するポリマー、合成ポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、ポリマーを含む広範囲の材料の任意のものから形成され得る。一実施形態では、足場は生分解性ポリマーを含む。一実施形態では、天然に存在する生分解性ポリマーを改変して、天然に存在するポリマーに由来する合成生分解性ポリマーを提供することができる。一実施形態では、ポリマーは、ポリ(乳酸)(「PLA」)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)(「PLGA」)である。一実施形態では、足場ポリマーには、これらに限定するものではないが、アルギナート、キトサン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)、キシログルカン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、シリコーン、疎水性ポリエステル及び親水性ポリエステル、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、N-イソプロピルアクリルアミドコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ乳酸、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、ポリウレタン、2-ヒドロキシエチルメタクリラートとナトリウムメタクリラートのコポリマー、ホスホリルコリン、シクロデキストリン、ポリスルホン及びポリビニルピロリジン、デンプン、ポリ-D,L-乳酸-パラ-ジオキサノン-ポリエチレングリコールブロックコポリマー、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ-ε-カプロラクトン、又は架橋キトサンヒドロゲルが含まれる。
【0053】
GPER-PROTACを有する製剤において、多数のリポソーム送達システムを使用することができる。リポソームを形成するために、実質的に任意の脂質を使用することができる。使用のための例示的な脂質には、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホル-L-セリン](DOPS)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(18:1 DOTAP)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](18:1 PEG-2000PE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](16:0 PEG-2000PE)、1-オレオイル-2-[12-[(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾキサジアゾール-4-イル)アミノ]ラウロイル}-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:1~12:0 NBD PC)、1-パルミトイル-2-{12-[(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル)アミノ]ラウロイル}-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:0~12:0 NBD PC)、コレステロール、及びそれらの混合物/組み合わせが含まれる。コレステロールは、技術的には脂質ではないが、ある実施形態によれば、コレステロールがプロトセルの脂質二重層の重要な成分であり得るという事実を考慮して、ある実施形態の目的については脂質として提示される。多くの場合、二重層の構造的完全性を高めるためにコレステロールが組み込まれる。これらの脂質はすべて、Avanti Polar Lipids社(米国アラバマ州アラバスター)から商業的に容易に入手できる。
【0054】
医薬組成物
本開示は、少なくとも1つのGPER-PROTAC及び薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)担体を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなる組成物を提供する。一実施形態では、組成物が本質的に少なくとも1つのGPER-PROTAC及び任意選択の薬学的に許容される担体からなる場合、組成物に実質的に影響を及ぼさない追加の成分(例えば、アジュバント、緩衝剤、安定剤、抗炎症剤、可溶化剤、防腐剤など)を含めることができる。一実施形態では、組成物が、粒子に封入された少なくとも1つのGPER-PROTACと、薬学的に許容される担体とからなる場合、組成物は追加の成分を含まない。本発明の一環として、任意の適切な担体を使用することができ、そのような担体は当技術分野で周知である。担体の選択は、部分的には、組成物が投与され得る特定の部位及び組成物の投与に使用される特定の方法によって決定される。組成物は、保存のために凍結又は凍結乾燥させ、使用前に適切な無菌担体で再構成することができる。組成物は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams&Wilkins、Philadelphia、PA(2001)に記載されている従来の技法に従って生成することができる。
【0055】
組成物に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、及び静菌剤を含むことができる水性及び非水性溶液、等張無菌溶液、ならびに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含むことができる水性及び非水性無菌懸濁液が含まれる。製剤は、アンプルやバイアルなどの単位用量又は複数用量の密閉容器で提供でき、使用直前に滅菌液体担体、例えば水を追加するだけでよいフリーズドライの(凍結乾燥)状態で保存できる。前述の種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から、即席の溶液及び懸濁液を調製することができる。一実施形態では、担体は緩衝生理食塩水である。一実施形態では、GPER-PROTACは、投与前にGPER-PROTACを損傷から保護するように調合された組成物で投与される。例えば、組成物は、GPER-PROTACを調製、保存、又は投与するために使用される器具、例えばガラス製品、注射器、又は針でのGPER-PROTACの損失を低減するように調合することができる。組成物は、GPER-PROTACの光感受性及び/又は温度感受性を低下させるように調合することができる。この目的のために、組成物は、例えば、上記のものなどの薬学的に許容される液体担体と、ポリソルベート80、L-アルギニン、ポリビニルピロリドン、トレハロース、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される安定化剤とを含み得る。
【0056】
組成物は、形質導入効率を高めるように調合することもできる。さらに、当業者は、少なくとも1つのGPER-PROTACが、他の治療剤又は生物活性剤と共に組成物中に存在し得ることを理解するであろう。例えば、イブプロフェンやステロイドなどの炎症を制御する因子は、腫れや炎症を軽減するための組成物の一部であり得る。免疫系刺激剤又はアジュバント、例えば、インターロイキン、リポ多糖、及び二本鎖RNAも投与することができる。既存の感染を治療し、及び/又は将来の感染のリスクを低減するために、抗生物質、すなわち殺菌剤や抗真菌剤が存在してもよい。
【0057】
注射可能なデポ剤は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーで少なくとも1つのGPER-PROTACを形成することによって作られる。GPER-PROTACのポリマーに対する比率、及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、GPER-PROTACの放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。デポ注射剤は、任意選択で、体組織と適合するリポソーム又はマイクロエマルション中のポリマーとの複合体にGPER-PROTACを封入することによっても調製される。
【0058】
特定の実施形態では、製剤は、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリアルキレン、アクリル及びメタクリル酸エステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそれらのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸及びグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、多糖類、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリラート、及びそれらのブレンド、混合物、又はコポリマーからなる群から選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0059】
組成物は、スポンジ、生体適合性の網状物、機械的リザーバ、又は機械的インプラントなどの、制御放出又は持続放出を可能にするデバイスに含めて又は付けて投与することができる。インプラント(例えば、米国特許第5,443,505号を参照)、デバイス(例えば、米国特許第4,863,457号を参照)、例えば、ポリマー組成物から構成される機械的リザーバ又はインプラント又はデバイスなどの植込み可能なデバイスは、GPER-PROTACの投与に特に有用である。組成物はまた、例えばゲルフォーム、ヒアルロン酸、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、ポリリン酸エステル、例えばビス-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(BHET)、及び/又はポリ乳酸グリコール酸を含む持続放出製剤(例えば、米国特許第5,378,475号参照)の形態で投与することができる。
【0060】
哺乳動物に投与される組成物中のGPER-PROTACの用量は、哺乳動物のサイズ(質量)、副作用の程度、特定の投与経路などを含む多くの要因に依存する。一実施形態では、この方法は、本明細書に記載のGPER-PROTACを含む組成物の「治療有効量」を投与することを含む。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量を指す。治療有効量は、疾患又は障害の程度、個人の年齢、性別、及び体重、ならびに個人においてGPER-PROTACが所望の反応を誘発する能力などの要因によって異なり得る。
【0061】
一実施形態では、組成物は哺乳動物に1回投与される。組成物の単回投与は、最小限の副作用で哺乳動物における持続的発現をもたらし得ると考えられる。しかしながら、場合によっては、治療期間中に組成物を複数回投与して、組成物への細胞の十分な曝露を確実にすることが適切であり得る。例えば、組成物は、治療期間中に哺乳動物に2回以上(例えば、2、3、4、5、6、6、8、9、又は10回以上)投与され得る。
【0062】
本開示は、治療有効量の少なくとも1つのGPER-PROTACを含む薬学的に許容される組成物を提供する。
投与経路、用量及び投与形態
GPER-PROTACの投与は、例えばレシピエントの生理学的状態、及び当業者に知られている他の要因に応じて、連続的又は断続的であり得る。GPER-PROTACの投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であり得るか、又は一連の間隔をあけた用量であり得る。例えば、鼻腔内又は髄腔内などの局所投与、及び全身投与の両方が企図される。任意の投与経路、例えば、静脈内、鼻腔内又は経口、又は局所投与を使用することができる。
【0063】
GPER-PROTACを含む1つ以上の適切な単位剤形は、任意選択で徐放用に製剤化することができ、局所、例えば髄腔内、経口、あるいは、直腸、口腔、膣及び舌下、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、又は肺内経路を介するものを含む非経口を含む、様々な経路で投与することができる。製剤は、必要に応じて、便宜上別個の単位剤形で提供されてもよく、これは薬局に周知の任意の方法によって調製され得る。そのような方法は、ベクターを液体担体、固体マトリックス、半固体担体、微粉固体担体又はそれらの組み合わせと結合させ、その後、必要に応じて、生成物を所望の送達システムに導入又は成形するステップを含み得る。
【0064】
特定の結果を達成するために投与されるGPER-PROTACの量は、状態、患者固有のパラメータ、例えば、身長、体重、年齢、及び達成目的が予防か治療かを含むがこれらに限定されない様々な要因によって異なる。
【0065】
GPER-PROTACは、便宜上、投与に適した製剤の形態で提供され得る。適切な投与形式は、標準的な手順に従って、個々の患者ごとに医師が決定するのが最善であろう。適切な薬学的に許容される担体及びそれらの製剤は、標準的な製剤の論文、例えばRemington’s Pharmaceuticals Sciencesに記載されている。「薬学的に許容される」とは、製剤の他の成分と混和でき、そのレシピエントに有害でない担体、希釈剤、賦形剤、及び/又は塩を意味する。
【0066】
GPER-PROTACは、中性pH、例えば、約pH6.5~約pH8.5、又は約pH7~8の溶液に調合されてもよく、その溶液をほぼ等張にするための賦形剤、例えば、4.5%のマンニトール又は0.9%の塩化ナトリウムを伴ってもよく、一般に安全とみなされるリン酸ナトリウムなどの当技術分野で知られている緩衝液でpH緩衝を行ってもよく、0.1%~0.75%のメタクレゾール、又は0.15%~0.4%のメタクレゾールなどの容認された防腐剤を伴ってもよい。所望の等張性を得ることは、塩化ナトリウム、又はデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(マンニトール及びソルビトールなど)、又は他の無機又は有機溶質などの他の薬学的に許容される作用物質を使用して達成することができる。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含む緩衝液に有用である。必要に応じて、貯蔵寿命及び安定性を高めるために、上記組成物の溶液を調製することもできる。治療上有用な組成物は、一般に受け入れられている手順に従って成分を混合することによって調製することができる。例えば、選択された成分を混合して濃縮混合物を生成し、その後水及び/又はpHを制御するための緩衝液又は張度を制御するための追加の溶質を加えることによって最終濃度及び粘度に調整することができる。
【0067】
GPER-PROTACは、1回又は複数回の投与で有効な量を含む剤形で提供することができる。GPER-PROTACは、少なくとも約0.0001mg/kg~約1mg/kg、少なくとも約0.001mg/kg~約0.5mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg~約0.25mg/kg又は少なくとも約0.01mg/kg~約0.25mg/kg体重の用量で投与することができるが、他の用量でも有益な結果が得られる可能性がある。投与量は、哺乳動物の疾患、体重、体調、健康、及び/又は年齢を含むがこれらに限定されない様々な要因に応じて変化するであろう。そのような要因は、動物モデル又は当技術分野で利用可能な他の試験系を使用する臨床医によって容易に決定することができる。前述のように、投与する正確な用量は主治医によって決定されるが、1mLのリン酸緩衝生理食塩水に含ませることができる。一実施形態では、個別又は分割用量で0.0001~1mg以上、例えば1gまで、例えば0.001~0.5mg、又は0.01~0.1mgのGPER-PROTACを投与することができる。
【0068】
例として、リポソーム及び他の脂質含有複合体を使用して、1つ以上のGPER-PROTACを送達することができる。
GPER-PROTACを含有する医薬製剤は、周知の容易に入手可能な成分を使用して、当技術分野で知られている手順によって調製することができる。例えば、薬剤は、一般的な賦形剤、希釈剤、又は担体と共に調合され、錠剤、カプセル、懸濁液、粉末などに形成され得る。GPER-PROTACはまた、例えば筋肉内、皮下又は静脈内経路による非経口投与に適したエリキシル又は溶液として調合することもできる。
【0069】
医薬製剤はまた、水溶液又は無水溶液、例えば凍結乾燥製剤又は分散液の形態、あるいはエマルション又は懸濁液の形態をとることができる。
一実施形態では、ベクターは、例えば注射、例えばボーラス注射又はカテーテルを介した持続注入による投与のために製剤化されてもよく、アンプル、充填済み注射器、少量の輸液容器、又は防腐剤が添加された複数回投与容器に入った単位用量形態で提供されてもよい。有効成分は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルションなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの調合剤を含むことができる。あるいは、有効成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリー水で構成するために、無菌固体の無菌分離又は溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であってもよい。
【0070】
これらの製剤は、従来技術で周知の薬学的に許容されるビヒクル及びアジュバントを含むことができる。例えば、生理学的観点から許容される1つ以上の有機溶媒を使用して溶液を調製することが可能である。
【0071】
吸入による上(鼻)又は下気道への投与のために、ベクターは便宜上、吸入器、ネブライザー又は加圧パック、又はエアロゾルスプレーを送達する他の都合の良い手段から送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。
【0072】
あるいは、吸入又は吹送による投与のために、組成物は、乾燥粉末、例えば、治療薬とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物の形態を取り得る。粉末組成物は、例えば、カプセル又はカートリッジ、又は例えば、ゼラチン又はブリスターパック中の単位剤形で提供されてもよく、そこから粉末が吸入器、送気器又は定量吸入器を用いて投与され得る。
【0073】
鼻腔内投与の場合、GPER-PROTACは、点鼻薬、液体スプレー、例えばプラスチックボトルアトマイザー又は定量吸入器を介して投与することができる。アトマイザーの代表的なものは、ミストメーター(Wintrop)及びメジヘラー(Riker)である。
【0074】
局所送達はまた、GPER-PROTACを疾患部位又はその近くに投与する様々な技術、例えば、カテーテル又は針を使用することによってもあり得る。部位特異的又は標的局所送達技術の例は、限定を意図するものではなく、利用可能な技術を例示するものである。例としては、注入又は留置カテーテル、例えば針注入カテーテルなどの局所送達カテーテル、シャント及びステント又は他の植込み型デバイス、部位特異的担体、直接注射、又は直接塗布が挙げられる。
【0075】
本明細書に記載の製剤及び組成物は、抗菌剤又は防腐剤などの他の成分も含み得る。
対象
対象は、ヒト及び非ヒト動物を含む任意の動物であり得る。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば哺乳類及び非哺乳類、具体的には非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類などが含まれる。対象はまた、ウシ、ブタ、ヒツジ、家禽、及びウマなどの家畜、又はイヌ及びネコなどのペットであってもよい。
【0076】
対象には、酸化的損傷を受けているか、又はそのリスクがあるヒト対象が含まれる。対象は、一般に、医師などの当業者によって本発明の状態であると診断される。
本明細書に記載の方法は、任意の種、性別、年齢、民族集団、又は遺伝子型の対象に使用することができる。したがって、対象という用語には、男性及び女性が含まれ、高齢者、高齢者から成人までの移行年齢の対象、成人、成人から未成年者までの移行年齢の対象、及び若者、子供、幼児を含む未成年者が含まれる。
【0077】
ヒトの民族集団の例には、コーカサス人、アジア人、ヒスパニック、アフリカ人、アフリカ系アメリカ人、ネイティブアメリカン、セム人、及び太平洋諸島人が含まれる。本発明の方法は、コーカサス人などのいくつかの民族集団、特に北ヨーロッパ人種、及びアジア人種により適している可能性がある。
【0078】
対象という用語はまた、上記のように、本発明を必要とする限り、任意の遺伝子型又は表現型の対象を含む。さらに、対象は、任意の髪の色、目の色、肌の色、又はそれらの任意の組み合わせの遺伝子型又は表現型を有することができる。
【0079】
対象という用語は、任意の身長、体重、又は任意の臓器又は身体部位のサイズ又は形状の対象を含む。
例示的なリンカー
本明細書において、用語「連結基」、「リンカー分子」、「リンカー」などは、少なくとも2つの別個の化学物質を連結するのに有用な任意の分子群を指す。化学物質間の結合を行うためには、反応物のそれぞれが化学的に相補的な反応基を含むことが必要である。相補的な反応性基の例は、アミド結合を形成するためのアミノ基及びカルボキシル基、エステル結合を形成するためのカルボキシ基及びヒドロキシ基、アルキルアミノ結合を形成するためのアミノ及びハロゲン化アルキル、ジスルフィドを形成するためのチオール及びチオール、又はチオエーテルを形成するためのチオール及びマレイミド又はハロゲン化アルキルである。ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、及び他の官能基がまだ存在しない場合、既知の方法によって導入することができる。必要に応じて、反応性相補基の1つ以上を「保護」することができ、この場合、特定の結合化学を行うために必要な化学反応を行う前に、保護された反応基を「脱保護」する必要がある。特定の状況では、任意の適切な保護/脱保護スキームを使用することができる。当業者が理解するように、任意の適切な分子群をリンカーとして使用することができ、どの分子群が特定の状況に適しているかはまちまちであり得るが、所望の結合を行うために適切な化学的に相補的な反応性基を有する適切な分子群を選択又は調製することは当業者の技術の範囲内で容易である。特定の環境で選択される分子群に関係なく、異なる化学物質間の安定な共有結合を提供して、本発明による結合体を形成することができる。具体的には、共有結合は、リンカー及び連結基がさらされる溶液条件に対して安定でなければならない。通常、任意の適切な長さ又は配置のリンカーを使用することができるが、約4~80個の炭素、好ましくは約10~70個の炭素、約10~50個の炭素、又は約10~30個の炭素、又は約10~20個の炭素を含むリンカーが想定される。リンカーはまた、分子連結基に1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、S、及びP)、特に0~10個のヘテロ原子を含み得る。様々な実施形態において、リンカーは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のヘテロ原子を含むことができる。なおさらなる実施形態では、リンカーは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の二価酸素(-O-)、二価窒素(-NH-)、又はそれらの両方を含む。分子連結基は、分枝鎖又は直鎖であり得る。場合によっては、プリンアナログと標的化部分又は特異的結合分子との間でコンジュゲートを直接形成することができることも理解されよう。この場合、リンカーは使用されない。そのような場合、プリンアナログの置換基及び特異的結合分子の置換基は、典型的には誘導体化されて、異なる化学物質を連結する適切な化学反応を行うのに必要な相補的反応基(適切であれば、1つ以上が保護されてもよい)を提供する。
【0080】
リンカー鎖の原子数での長さは、Gタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドからE3ユビキチンリガーゼリガンドまでのリンカーの直線骨格に沿った原子の計数に基づいて決定できるが、連結されていないGPERリガンド又はE3ユビキチンリガーゼリガンドの原子に対応する原子は含まない。例えば、β-エストラジオールがGPERリガンドである場合、リンカー鎖の原子を計数するとき、β-エストラジオールの酸素はどれも計数しない。さらに別の実施形態では、リンカーは骨格内に、GPERリガンドとE3ユビキチンリガーゼリガンドの間の(ただしそれらを含まない)直線経路で計数した時、凡そ以下の数であるか、それに等しいか、又はそれを超える数:5、6、7、8、9、19、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40、200までの原子数を有する鎖長を有する。さらなる実施形態では、鎖長は原子数で6、7、8、9、19、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個以下である。リンカーの長さは、GPERリガンドとE3ユビキチンリガーゼリガンドとの間の、リンカーとそれらのリガンドの各々とを連結する結合を含めた直線経路における結合長の計算に基づいて、オングストロームで表すこともできる。様々なさらなる実施形態において、リンカーは、GPERリガンドとE3ユビキチンリガーゼリガンドとの間の直線経路での結合長の追加に基づいて計算した時、凡そ以下の数値であるか、それに等しいか、又はそれを超える数値:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40オングストローム、最大300オングストロームの上記の計算長を有することができる。さらなる実施形態では、リンカーは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100オングストローム以下の計算長を有する。
【0081】
GPER-PROTACに有用なリンカーの非限定的な例には、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び/又は炭素原子(及び原子価を満たすために必要な場合は適切に付加された水素原子)が含まれるだけでなく、溶解度を高める側鎖、例えば、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、又はピペラジノ環などを含む基を有するリンカー;アミノ酸、アミノ酸のポリマー(タンパク質又はペプチド)、例えば、ジペプチド又はトリペプチドなど;炭水化物(多糖類)、ヌクレオチド、例えばPNA、RNA及びDNAなど;有機材料のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリラクチドなども含まれる。一実施形態では、リンカーは、二価のアリール又はヘテロアリール、ビス-アミドアリール、ビス-アミドヘテロアリール、ビス-ヒドラジドアリール、ビス-ヒドラジドヘテロアリールなどであり得る。一実施形態では、リンカーは、約24~50個までの原子を有する鎖を有する。ここで、原子は、炭素、窒素、硫黄、非過酸化物酸素、及びリンからなる群から選択される。一実施形態では、リンカーは、約4から約12から20個の原子、又は約16から約48個の原子を有する鎖を有する。
【0082】
一実施形態では、リンカーは、アルキレンリンカー、フェニレンリンカー、又はアルキルリンカーである。リンカーは、C4~C48アルキル又はそのヘテロ形態であり得る。これらのリンカーは、カルボニル基を含み得る。特定の実施形態では、リンカーは、-C(Y’)(Z’)-C(Y”)(Z”)-リンカーである場合があり、Y’、Y”、Z’及びZ”はそれぞれ独立して水素 C1~C10アルキル、置換C1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、置換C1~C10アルコキシ、C3~C9シクロアルキル、置換C3~C9シクロアルキル、C5~C10アリール、置換C5~C10アリール、C5~C9複素環、置換C5~C9複素環、C1~C6アルカノイル、Het、HetC1~C6アルキル、又はC1~C6アルコキシカルボニルであり、上記アルキル、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、Het、アリール又は複素環基における置換基は、ヒドロキシル、C1~C10アルキル、ヒドロキシルC1~C10アルキレン、C1~C6アルコキシ、C3~C9シクロアルキル、C5~C9複素環、C1~6アルコキシ C1~6アルケニル、アミノ、シアノ、ハロゲン又はアリールである。一実施形態では、リンカーは、鎖の原子が炭素、窒素、硫黄、及び酸素からなる群から選択される鎖であり、任意の炭素原子は、例えば、オキソで置換することができ、任意の硫黄原子は、1つ又は2つのオキソ基で置換することができる。鎖には、1つ以上のシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール環が散在していてもよい。一実施形態では、リンカーは、鎖内に約4個から約50個の原子を有する鎖を含み、鎖の原子は、炭素、窒素、硫黄、及び酸素からなる群から選択され、任意の炭素原子はオキソで置換することができ、任意の硫黄原子は1つ又は2つのオキソ基で置換することができる。
【0083】
一実施形態では、リンカーは、-(Y)y-、-(Y)y-C(O)N-(Z)z-、-(CH2)y-C(O)N-(CH2)z-、-(Y)y-NC(O)-(Z)z-、-(CH2)y-NC(O)-(CH2)z-を含み、各y(下付き文字)及びz(下付き文字)は独立して0~20であり、各Y及びZは独立して、C1~C10アルキル、置換C1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、置換C1~C10アルコキシ、C3~C9シクロアルキル、置換C3~C9シクロアルキル、C5~C10アリール、置換C5~C10アリール、C5~C9複素環、置換C5~C9複素環、C1~C6アルカノイル、Het、HetC1~C6アルキル、又はC1~C6アルコキシカルボニルであり、上記アルキル、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、Het、アリール又は複素環基における置換基は、ヒドロキシル、C1~C10アルキル、ヒドロキシルC1~C10アルキレン、C1~C6アルコキシ、C3~C9シクロアルキル、C5~C9複素環、C1~6アルコキシ C1~6アルケニル、アミノ、シアノ、ハロゲン又はアリールである。特定の実施形態では、リンカーは-C(Y’)(Z’)-C(Y”)(Z”)-リンカーである場合があり、Y’、Y”、Z’及びZ”はそれぞれ独立して水素 C1~C10アルキル、置換C1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、置換C1~C10アルコキシ、C3~C9シクロアルキル、置換C3~C9シクロアルキル、C5~C10アリール、置換C5~C10アリール、C5~C9複素環、置換C5~C9複素環、C1~C6アルカノイル、Het、HetC1~C6アルキル、又はC1~C6アルコキシカルボニルであり、上記アルキル、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、Het、アリール又は複素環基における置換基は、ヒドロキシル、C1~C10アルキル、ヒドロキシルC1~C10アルキレン、C1~C6アルコキシ、C3~C9シクロアルキル、C5~C9複素環、C1~6アルコキシ C1~6アルケニル、アミノ、シアノ、ハロゲン又はアリールである。
【0084】
一実施形態では、リンカーはアミド連結基(例えば、-C(O)NH-又は-NH(O)C-);アルキルアミノ連結基(例えば、-C1~C6アルキル-C(O)NH-、-C1-C6アルキル-NH(O)C-、-C(O)NH-C1~C6アルキル-、-NH(O)C-C1~C6アルキル-、-C1~C6アルキル--NH(O)C-C1~C6アルキル-、-C1~C6アルキル-C(O)NH-C1~C6アルキル-、又は-C(O)NH-(CH2)t-、ここで、tは1、2、3、又は4である);置換5~6員環(例えば、アリール環、ヘテロアリール環(例えば、テトラゾール、ピリジル、2,5-ピロリジンジオン(例えば、置換フェニル部分で置換された2,5-ピロリジンジオン))、炭素環、又は複素環)又は酸素含有部分(例えば、-O-、-C1~C6アルコキシ)を含む。
【0085】
一実施形態では、リンカーはポリエチレングリコール(PEG)部分(R3)rを含み、R3はPEG単位であり、rは約1~約10(例えば、rは約2~約6)である。特定の実施形態において、R3は、-O-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-O-である。いくつかの実施形態において、R3は、-O-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-O-であり、rは、約1~約100(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、又は100である。特定の関連する実施形態では、rは、約5~約25、約10~約50、約5~約15、約12~約35、約25~約55、又は約65~約95である。いくつかの実施形態では、(R3)r置換基は直鎖であり、特定の実施形態では、(R3)r置換基は分岐している。直鎖部分の場合、sはrよりも小さい場合があり(例えば、R3が-O-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-O-の場合)、sが1の場合もある。いくつかの実施形態では、R3は直鎖PEG部分である(例えば、約1~約30個のPEG単位を有する)。
【0086】
他のリンカーには、国際公開第19/123367及びSun et al.(Signal Transd.Targeted Ther.,4:64(2019))のものが含まれるがこれらに限定されず、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
本明細書で使用される「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、直鎖、分岐鎖および環状の一価ヒドロカルビルラジカル、およびこれらの組み合わせを含み得、これらは置換されていない場合はCとHのみを含む。例には、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2-プロペニル、3-ブチニルなどが挙げられる。このような各基の炭素原子の総数は、本明細書に記載されることがあり、例えば、上記基が最大10個の炭素原子を含むことができる場合、1~10C又はC1~C10又はC1~10のように表される。ヘテロ原子(典型的にはN、O、及びS)がヘテロアルキル基のように炭素原子を置き換えることができる場合、例えば、例としてまだC1~C6と記載されていても、その基を説明する数字は、その基の炭素原子数と、記載されている環又は鎖の主鎖中の炭素原子の置換として含まれるヘテロ原子の数との合計を表す。
【0088】
典型的には、本発明のアルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、1つの10C(アルキル)又は2つの10C(アルケニル又はアルキニル)を含む。例えば、1つの8C(アルキル)又は2つの8C(アルケニル又はアルキニル)を含む。場合によっては、1つの4C(アルキル)又は2つの4C(アルケニル又はアルキニル)が含まれる。単一の基は、複数の種類の多重結合、又は複数の多重結合を含むことができる。そのような基は、それらが少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む場合、用語「アルケニル」の定義内に含まれ、それらが少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む場合、用語「アルキニル」の範囲に含まれる。
【0089】
アルキル、アルケニル及びアルキニル基は、多くの場合、化学的に理にかなっている程度まで任意に置換される。典型的な置換基には、限定するものではないが、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR、=NR、OR、NR2、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、及びNO2が含まれ、各Rは独立してH、C1~C8アルキル、C2~C8ヘテロアルキル、C1~C8アシル、C2~C8ヘテロアシル、C2~C8アルケニル、C2~C8ヘテロアルケニル、C2~C8アルキニル、C2~C8ヘテロアルキニル、C6~C10アリール、又はC5~C10ヘテロアリールであり、各Rは、任意選択で、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR’、=NR’、OR’、NR’2、SR’、SO2R’、SO2NR’2、NR’SO2R’、NR’CONR’2、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’2、OOCR’、COR’、及びNO2で置換されてもよく、各R’は独立してH、C1~C8アルキル、C2~C8ヘテロアルキル、C1~C8アシル、C2~C8ヘテロアシル、C6~C10アリール又はC5~C10ヘテロアリールである。アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、C1~C8アシル、C2~C8ヘテロアシル、C6~C10アリール又はC5~C10ヘテロアリールで置換することもでき、その各々はその特定の基に適した置換基で置換することができる。
【0090】
「アセチレン」置換基は、任意選択で置換される、式-C≡C-Riの2~10Cアルキニル基を含むことができ、式中、RiはH又はC1~C8アルキル、C2~C8ヘテロアルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8ヘテロアルケニル、C2~C8アルキニル、C2~C8ヘテロアルキニル、C1~C8アシル、C2~C8ヘテロアシル、C6~C10アリール、C5~C10ヘテロアリール、C7~C12アリールアルキル、又はC6~C12ヘテロアリールアルキルであり、各Ri基は任意選択で、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR’、=NR’、OR’、NR’2、SR’、SO2R’、SO2NR’2、NR’SO2R’、NR’CONR’2、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’2、OOCR’、COR’、及びNO2から選択される1つ以上の置換基で置換され、ここで、各R’は独立してH、C1~C6アルキル、C2~C6ヘテロアルキル、C1~C6アシル、C2~C6ヘテロアシル、C6~C10アリール、C5~C10ヘテロアリール、C7~12アリールアルキル、又はC6~12ヘテロアリールアルキルであり、これらのそれぞれは、任意選択で、ハロ、C1~C4アルキル、C1~C4ヘテロアルキル、C1~C6アシル、C1~C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、及び=Oから選択される1つ以上の基で置換され;2つのR’は、結合して、N、O、及びSから選択される3個までのヘテロ原子を任意に含む3~7員環を形成することができる。いくつかの実施形態では、-C≡C-RiのRiは、H又はMeである。
【0091】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、及び「ヘテロアルキニル」などは、対応するヒドロカルビル(アルキル、アルケニル、及びアルキニル)基と同様に定義されるが、「ヘテロ」という用語は、1~3個のO、S又はNヘテロ原子又は骨格残基内のそれらの組み合わせを含む基を指す。したがって、対応するアルキル、アルケニル、又はアルキニル基の少なくとも1つの炭素原子が特定のヘテロ原子のうちの1つに置き換えられて、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、又はヘテロアルキニル基を形成する。アルキル、アルケニル及びアルキニル基のヘテロ形態の典型的なサイズは、通常、対応するヒドロカルビル基と同じであり、ヘテロ形態に存在し得る置換基は、ヒドロカルビル基について上述したものと同じである。化学的安定性の理由から、別段の指定がない限り、そのような基は、ニトロ基又はスルホニル基のようにN又はS上にオキソ基が存在する場合を除いて、3つ以上の連続したヘテロ原子を含まないことも理解される。
【0092】
本明細書で使用される「アルキル」には、シクロアルキル及びシクロアルキルアルキル基が含まれ、用語「シクロアルキル」は、本明細書では、環炭素原子を介して結合された炭素環式非芳香族基を表すために使用することができ、「シクロアルキルアルキル」は、アルキルリンカーを介して分子に結合している炭素環式非芳香族基を表すために使用することができる。同様に、「ヘテロシクリル」は、環員として少なくとも1個のヘテロ原子を含み、C又はNであり得る環原子を介して分子に結合している非芳香族環状基を表すために使用され得る。「ヘテロシクリルアルキル」は、リンカーを介して別の分子に結合された基を表すために使用され得る。シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキル基に適したサイズ及び置換基は、アルキル基について上述したものと同じである。本明細書で使用される場合、これらの用語には、環が芳香族でない限り、二重結合を1つ又は2つ含む環も含まれる。
【0093】
本明細書で使用される場合、「アシル」は、カルボニル炭素原子の利用可能な2つの原子価位置のうちの1つに結合したアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアリールアルキルラジカルを含む基を包含し、ヘテロアシルは、カルボニル炭素以外の少なくとも1つの炭素が、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子によって置換されている対応する基を指す。したがって、ヘテロアシルには、例えば、-C(=O)OR及び-C(=O)NR2、ならびに-C(=O)-ヘテロアリールが含まれる。
【0094】
アシル及びヘテロアシル基は、カルボニル炭素原子の空いている結合手を介して、任意の基又は分子に結合している。典型的には、それらは、ホルミル、アセチル、ピバロイル、及びベンゾイルを含むC1~C8アシル基、及びメトキシアセチル、エトキシカルボニル、及び4-ピリジノイルを含むC2~C8ヘテロアシル基である。アシル基又はヘテロアシル基を含むヒドロカルビル基、アリール基、及びそのような基のヘテロ形態は、アシル基又はヘテロアシル基の対応する構成要素のそれぞれについて一般に適した置換基として本明細書に記載の置換基で置換することができる。
【0095】
「芳香族」部分又は「アリール」部分は、芳香族性の周知の特徴を有する単環式又は縮合二環式部分を指し、例としてフェニル及びナフチルが挙げられる。同様に、「ヘテロ芳香族」及び「ヘテロアリール」は、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子を環メンバーとして含有するそのような単環式又は縮合二環式環系を指す。ヘテロ原子を含むことにより、5員環にも6員環にも芳香族性が付与される。典型的なヘテロ芳香族系には、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、及びイミダゾリルなどの単環式C5~C6芳香族基、及び、これらの単環式基の1つをフェニル環又はヘテロ芳香族単環式基のいずれかと縮合して、インドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニルなどのC8~C10二環式基を形成することによって形成される縮合二環式部分が含まれる。環系全体の電子分布に関して芳香族性の特徴を有する単環式又は縮合環二環式系はいずれも、この定義に含まれる。また、これは少なくとも環がその分子の残りの部分に直接結合している芳香族性の特徴を有する二環式基も含む。通常、環系は5~12個の環員原子を含む。例えば、単環式ヘテロアリールは5~6個の環員を含み得、二環式ヘテロアリールは8~10個の環員を含む。
【0096】
アリール及びヘテロアリール部分は、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C5~C12アリール、C1~C8アシル、及びこれらのヘテロ形態を含む様々な置換基で置換されてもよく、これらのそれぞれ自体がさらに置換されてもよい。アリール及びヘテロアリール部分の他の置換基には、ハロ、OR、NR2、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、及びNO2が含まれ、各Rは独立してH、C1~C8アルキル、C2~C8ヘテロアルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8ヘテロアルケニル、C2~C8アルキニル、C2~C8ヘテロアルキニル、C6~C10アリール、C5~C10ヘテロアリール、C7~C12アリールアルキル、又はC6~C12ヘテロアリールアルキルであり、各Rは、任意選択でアルキル基について上述したように置換されてもよい。アリール又はヘテロアリール基における置換基は、当然、そのような置換基の各種類又は置換基の各成分に適したものとして本明細書に記載されている基でさらに置換され得る。したがって、例えば、アリールアルキル置換基は、アリール基に典型的なものとして本明細書に記載される置換基でアリール部分において置換されてもよく、アルキル基に典型的又は適切なものとして本明細書に記載される置換基でアルキル部分においてさらに置換されてもよい。
【0097】
同様に、「アリールアルキル」及び「ヘテロアリールアルキル」は、置換又は非置換、飽和又は不飽和、環式又は非環式リンカーを含む、アルキレンなどの連結基を介してそれらの結合点に結合している芳香族及びヘテロ芳香環系を指す。通常、リンカーはC1~C8アルキル又はそのヘテロ形態である。これらのリンカーは、カルボニル基を含むこともできるため、アシル又はヘテロアシル部分として置換基を提供することができる。アリールアルキル又はヘテロアリールアルキル基中のアリール又はヘテロアリール環は、アリール基について上述したものと同じ置換基で置換されてもよい。例えば、アリールアルキル基は、アリール基について上記で定義した基で任意に置換されたフェニル環、及び非置換であるか、又は1つ又は2つのC1~C4アルキル又はヘテロアルキル基で置換されているC1~C4アルキレンを含み、上記アルキル又はヘテロアルキル基は、任意選択で、シクロプロパン、ジオキソラン、又はオキサシクロペンタンなどの環を形成するように環化してもよい。同様に、ヘテロアリールアルキル基は、アリール基に典型的な置換基として上述した基で任意に置換されたC5~C6単環式ヘテロアリール基、及び非置換であるか、又は1つ又は2つのC1~C4アルキル又はヘテロアルキル基で置換されているC1~C4アルキレンを含み得、又は、任意に置換されたフェニル環又はC5~C6単環式ヘテロアリール、及び非置換であるか、1つ又は2つのC1~C4アルキル又はヘテロアルキル基で置換されているC1~C4ヘテロアルキレンを含み、上記アルキル又はヘテロアルキル基は、任意選択で、シクロプロパン、ジオキソラン、又はオキサシクロペンタンなどの環を形成するように環化してもよい。
【0098】
アリールアルキル又はヘテロアリールアルキル基が任意に置換されると記載されている場合、置換基は、その基のアルキル又はヘテロアルキル部分又はアリール又はヘテロアリール部分のいずれかにあり得る。アルキル又はヘテロアルキル部分に任意に存在する置換基は、アルキル基について上述したものと概して同じである。アリール又はヘテロアリール部分に任意に存在する置換基は、アリール基について上述したものと概して同じである。
【0099】
本明細書で使用される「アリールアルキル」基は、置換されていない場合、ヒドロカルビル基であり、環及びアルキレン又は同様のリンカー中の炭素原子の総数によって記述される。したがって、ベンジル基はC7-アリールアルキル基であり、フェニルエチルはC8-アリールアルキルである。
【0100】
上記の「ヘテロアリールアルキル」は、連結基を介して結合したアリール基を含む部分を指し、アリール部分の少なくとも1個の環原子又は連結基中の1個の原子が、N、O、及びSから選択されたヘテロ原子であるという点で「アリールアルキル」とは異なる。ヘテロアリールアルキル基は、結合した環及びリンカー中の原子の総数に従って本明細書に記載され、ヘテロアルキルリンカーを介して連結されたアリール基;アルキレンなどのヒドロカルビルリンカーを介して連結されたヘテロアリール基;及びヘテロアルキルリンカーを介して連結されたヘテロアリール基を含む。したがって、例えば、C7-ヘテロアリールアルキルには、ピリジルメチル、フェノキシ、及びN-ピロリルメトキシが含まれる。
【0101】
本明細書で使用される「アルキレン」は、二価のヒドロカルビル基を指す。二価であるため、これは他の2つの基を連結できる。通常、これは-(CH2)n-を指し、nは1~8であり、例えばnは1~4であるが、指定されている場合、アルキレンは他の基で置換することもでき、他の長さ、及び鎖の両端にある必要のない空いている結合手にすることもできる。したがって、-CH(Me)-及び-C(Me)2-もシクロプロパン-1,1-ジイルなどの環状基と同様に、アルキレンと呼ばれる。アルキレン基が置換されている場合、置換基には、本明細書に記載のアルキル基上に典型的に存在するものが含まれる。
【0102】
総じて、置換基に含まれる任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、又はアリールもしくはアリールアルキル基、又はこれらの基のうちの1つの任意のヘテロ形態は、それ自体任意に追加の置換基によって置換され得る。これらの置換基の性質は、置換基が他に記載されていない限り、一次置換基自体に関して記載されたものと同様である。したがって、リンカーR2の実施形態がアルキルである場合、このアルキルは、化学的に意味があり、これがアルキル自体に提供されるサイズ制限を損なわない場合、R2の実施形態として列挙された残りの置換基によって任意に置換されてもよく、例えば、アルキル又はアルケニルで置換されたアルキルは、これらの実施形態の炭素原子の上限を単純に拡張するが、含まれない。しかし、アリール、アミノ、アルコキシ、=Oなどで置換されたアルキルは、本発明の範囲内に含まれ、これらの置換基の原子は、記載されているアルキル、アルケニルなどの基を説明するために使用される数に数えられない。置換基の数が指定されていない場合、そのようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、又はアリール基のそれぞれは、その利用可能な原子価に応じて、いくつかの置換基で置換されてもよい。特に、これらの基のいずれも、例えば、その利用可能な原子価のいずれか又はすべてにおいてフッ素原子で置換されていてもよい。
【0103】
一実施形態では、リンカーは、(R3)r-(R4)を含むか、又はR3であるか、又は((R3)r-(R4)-(R3)tである。一実施形態では、R3はPEG部分又はPEG部分の誘導体である。特定の実施形態において、R3は、-O-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-O-である。一実施形態では、PEG部分は、1つ以上のPEG単位を含むことができる。PEG部分は約1~約1,000個のPEG単位を含むことができ、いくつかの実施形態では、限定するものではないが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、又は900個の単位が含まれる。特定の実施形態では、PEG部分は、約1~5及び最大約25PEG単位、約1~5、最大約10PEG単位、約10~最大約50PEG単位、約18~最大約50PEG単位、約47~約150PEG単位、約114~最大約350PEG単位、約271~最大約550PEG単位、約472~最大約950PEG単位、約50~最大約150PEG単位、約120~最大約350PEG単位、約250~最大約550PEG単位、又は約650~最大約950PEG単位を含むことができる。特定の実施形態では、PEG単位は、-O-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-O-である。一実施形態において、R4は、NH(CO)、-C1~C6アルキル、-C1~C6アルコキシ、-NRaRb、-N3、-OH、-CN、-COOH、-COOR1、-C1~C6アルキル-NRaRb、C1~C6アルキル-OH、C1~C6アルキル-CN、C1~C6アルキル-COOH、C1~C6アルキル-COOR1、5~6員環、置換5~6員環、-C1~C6アルキル-5~6員環、-C1~C6アルキル-置換5~6員環 C2~C9複素環、又は置換C2~C9複素環である。
【0104】
いくつかの実施形態では、R3は-O-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-O-であり、r又はtは、独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。特定の実施形態では、r又はtは約4~約15であり、時にrは約4又は11である。いくつかの実施形態では、R3はPEG単位(PEG)rであり、rは約2~約4であり、tは約8~14である。
【0105】
特定の実施形態では、R4はアミド連結基(例えば、-C(O)NH-又は-NH(O)C-);アルキルアミド連結基(例えば、-C1~C6アルキル-C(O)NH-、-C1~C6アルキル-NH(O)C-、-C(O)NH-C1~C6アルキル-、-NH(O)C-C1~C6アルキル-、-C1~C6アルキル--NH(O)C-C1~C6アルキル-、-C1~C6アルキル-C(O)NH-C1~C6アルキル-、又は-C(O)NH-(CH2)t-、tは1、2、3、又は4である);置換5~6員環(例えば、アリール環、ヘテロアリール環(例えば、テトラゾール、ピリジル、2,5-ピロリジンジオン(例えば、置換フェニル部分で置換された2,5-ピロリジンジオン))、炭素環、又は複素環)又は酸素含有部分(例えば、-O-、-C1~C6アルコキシ)である。
【0106】
例示的な実施形態
一実施形態では、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む分子が提供される。一実施形態では、GPERリガンドは、17β-エストラジオール、エストロン、フィトエストロゲン、キセノエストロゲン、エストリオール、エストリオール3-硫酸、エストリオール17-硫酸、G-1、G-15、G-36、ゲニステイン又はケルセチンを含む。一実施形態では、GPERリガンドは17β-エストラジオールを含む。一実施形態では、GPERリガンドはGPERアンタゴニストである。一実施形態では、E3リガーゼリガンドはフォン・ヒッペルリガーゼ(VHL)リガンドである。一実施形態では、E3リガーゼリガンドは、レナリドマイド、ポマリドマイド、イベルドマイド、(S,R,S)-AHPC、サリドマイド、VH-298、CC-885、E3リガーゼリガンド8、TD-106、VL285、VH032、VH101、VH298、VHLリガンド4、VHL-2リガンド3、E3リガーゼリガンド3、E3リガーゼリガンド2、又はBC-1215を含む。一実施形態では、リンカーは、5~50個の原子、例えば、約8~約35個の原子を有する鎖を有する。一実施形態では、リンカーはアルキルリンカーである。一実施形態では、リンカーは、1つ以上のO、N又はSを有するヘテロアルキルリンカーである。一実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。一実施形態では、リンカーは、4~15個のPEG単位を含む。一実施形態では、リンカーは(PEG)mNH(CO)(PEG)nを含み、n及びmは独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15である。一実施形態では、nは3、4、5、又は6である。一実施形態では、mは7、8、9、又は10である。一実施形態では、GPERリガンド、リンカー又はE3リガンドは、アミン基、カルボキシル基、カルボニル基、スルフヒドリル基、例えばマレイミド、アルデヒド基、例えばヒドラジド、又は別の分子と共有結合を形成するのに有用なヒドロキシル基を含む。一実施形態では、リンカーは、カルボジイミド、例えばEDC、NHS、ABH、ANB-NOS、APDP、EMCH、EMCS、GMBS、MBS、又はSIABを含む。
【0107】
一実施形態では、ヒトにおける内分泌抵抗性がん又はホルモン療法抵抗性がんを予防、阻害、又は治療する方法が提供される。一実施形態では、この方法は、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物をヒトに投与することを含む。
【0108】
一実施形態では、ヒトのトリプルネガティブ乳がんを予防、阻害、又は治療する方法が提供され、この方法は、哺乳動物に、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を投与することを含む。
【0109】
一実施形態では、ヒトの子宮頸がん、卵巣がん、又は子宮内膜がんを予防、阻害、又は治療する方法が提供され、この方法は、哺乳動物に、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を投与することを含む。
【0110】
一実施形態では、ヒトの前立腺がん又は卵巣がんを予防、阻害、又は治療する方法が提供され、この方法は、哺乳動物に、E3リガーゼのリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む有効量の分子を有する組成物を投与することを含む。
【0111】
例示的なキメラ
式Iの構造を有する化合物又はその塩が提供され、
X-L-Y
式I
式中、Xは、Gタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドであり;
YはE3ユビキチンリガーゼリガンドであり;
Lはリンカーである。
【0112】
一例では、Xは、17β-エストラジオール、エストロン、フィトエストロゲン、キセノエストロゲン、エストリオール、エストリオール3-硫酸、エストリオール17-硫酸、G-1、G-15、G-36、ゲニステイン、ダジン、ケルセチン、又はそれらの誘導体である。一例では、XはGPERアンタゴニストである。一例では、Yはフォン・ヒッペルリガーゼ(VHL)リガンドである。一例では、Yは、セレブロン、レナリドマイド、ポマリドマイド、イベルドマイド、(S,R,S)-AHPC、サリドマイド、VH-298、CC-122、CC-885、E3リガーゼリガンド8、TD-106、VL285、VH032、VH101、VH298、VHLリガンド4、VHLリガンド7、VHL-2リガンド3、E3リガーゼリガンド3、E3リガーゼリガンド2、BC-1215、又はそれらの誘導体である。一例では、Lは、XとYとの間の直線経路で数えて原子5~200個の鎖長を有する主鎖を有する。一例では、Lは、XとYとの間の直線経路で数えて原子15~50個の鎖長を有する主鎖を有する。一例では、Lは、XとYとの間の直線経路で数えて原子20~50個の鎖長を有する主鎖を有する。一例では、Lは、XとYとの間の直線経路における結合長を合計することにより決定された計算長で8~300オングストロームの長さを有する主鎖を有する。一例では、Lは、XとYとの間の直線経路における結合長を合計することにより決定された計算長で25~75オングストロームの長さを有する主鎖を有する。例えば、Lの構造は
【0113】
【0114】
の構造を有し、
Qは、結合又はXへの共有結合を形成する二価の基であり;
Zは、1つ以上のアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルグリコール、カルボニル、チオカルボニル、アシル、カルバマート、尿素、チオカルバマート、チオ尿素、ジチオカルバマート、アミノカルボニル、アミド、エステル、チオエステル、チオアミド、アミン、酸素、硫黄、スルホン、又はスルホキシドを、二価の形態で含む直鎖であり;
Gは、結合又はYへの共有結合を形成する二価の基である。
【0115】
一例では、Lは、
【0116】
【0117】
の構造を有し、
Qは、結合又はXへの結合を形成する二価の基であり;
Rは、二価の形態のアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルグリコール、カルボニル、チオカルボニル、アシル、カルバマート、尿素、チオカルバマート、チオ尿素、ジチオカルバマート、アミノカルボニル、アミド、エステル、チオエステル、チオアミド、アミン、酸素、硫黄、スルホン、又はスルホキシドであり;
Gは、結合又はYへの結合を形成する二価の基であり;
m、n、p、及びqは、存在する場合、m、n、p、及びqのうちの少なくとも1つが0より大きい整数であることを条件として、それぞれ独立して0~50の整数である。
【0118】
一例では、Q及びGは、独立して、二価の形態のカルボニル、チオカルボニル、アシル、カルバマート、尿素、チオカルバマート、チオ尿素、ジチオカルバマート、アミノカルボニル、アミド、エステル、チオエステル、チオアミド、スルホン、又はスルホキシドである。
【0119】
一例では、Q及びGは、独立して、カルボニル、又は、アセチル、2-ヒドロキシアセチル、2-アミノアセチル、プロピオニル、3-ヒドロキシプロパノイル、3-アミノプロパノイル、ブタノイル、4-ヒドロキシブタノイル、及び4-アミノブタノイルからなる群から選択されるアシルであり、これらはそれぞれ二価の形態である。
【0120】
一例では、m及びnは、存在する場合、それぞれ独立して、0~2の整数であり、Q及びGは、それぞれ独立して、カルボニル、チオカルボニル、アセチル、2-ヒドロキシアセチル、2-アミノアセチル、プロピオニル、3-ヒドロキシプロパノイル、3-アミノプロパノイル、ブタノイル、4-ヒドロキシブタノイル、4-アミノブタノイル、カルバマート、尿素、チオカルバマート、チオ尿素、ジチオカルバマート、アミノカルボニル、アミド、エステル、チオエステル、チオアミド、スルホン、又はスルホキシドであり、これらはそれぞれ二価の形態である。
【0121】
一例では、Zは親水性である。
一例では、Lは
【0122】
【0123】
の構造を有し、これは直線経路で数えて原子13個の長さを有する主鎖を提供する。
一例では、Lは
【0124】
【0125】
の構造を有し、p及びqは、それぞれ独立して、0~50の整数である。
一例では、Lは、二価アルキル基、二価のヘテロアルキル基、又は二価のポリエチレングリコール(PEG)のうちの1つ以上、又はそれぞれを1つ以上含む。
【0126】
一例では、Lは、5個以上の二価のエトキシ(-CH2CH2O-)基を含む。一例では、Lは、炭素2個ごとに1個以上のヘテロ原子を含み、ブチルより長いアルキル鎖を含まない。
【0127】
一例では、Lは、Xの酸素、窒素、硫黄、カルボニル、又はエチニルを介してXに結合し、Lは、Yの酸素、窒素、硫黄、カルボニル、又はエチニルを介してYに結合する。
一例では、Xはエストロゲンステロイドであり、エストロゲンステロイドのC6又はC17に位置する酸素、アミン、硫黄、ビニル、エチン、及びカルボニルから選択される二価の基を含み、C6又はC17の上記二価の基はLに結合される。
【0128】
一例では、Yは、(S,R,S)-AHPCであり、これは(S,R,S)-AHPCのアミンを介してLに結合される。
一例では、化合物は
【0129】
【0130】
の構造を有し、Lはリンカーである。
一例では、化合物は
【0131】
【0132】
の構造を有し、Lはリンカーである。
一例では、化合物は
【0133】
【0134】
の構造を有する。
一例では、化合物は
【0135】
【0136】
の構造を有する。
一例では、化合物は
【0137】
【0138】
の構造を有する。
一例では、化合物は
【0139】
【0140】
の構造を有する。
本発明は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
実施例1
GPERは、乳がん(Filardo et al.,2000;Filardo et al.,2006;Sjostrom et al.,2014)、卵巣がん(smith et al.,2009)及び子宮内膜がん(Smith et al.,2007)の低生存率及び疾患の進行に関連している。重要なことに、GPERはTNBCの80%超で発現しており、TNBCは、利用可能な薬剤が標的とするタンパク質の発現が欠如しているために全生存率が低い乳がんのサブタイプである。このエストロゲン受容体は、エストロゲン作用の独立した尺度であり、ドラッガブルターゲットである。このプロジェクトの目標は、GPERをターゲティング及び分解するためのPROTACの開発において重要な一歩を踏み出すことである。
【0141】
TNBC患者121人を対象とした調査では、この受容体がこれらの腫瘍の80%以上で発現していることが示唆されている。TNBCの大部分におけるGPERの発現は、他の小規模な研究によって裏付けられており、GPERがTNBCにおける腫瘍抑制因子であることを示唆する6つの腫瘍と2つの細胞株のかなり限定的な研究からのデータとは対照的である。進行性乳がんの臨床的予測因子と逆相関するERの発現とは異なり、GPERの発現はこれらの同じ変数と直接関連しており(Filardo et al.,2006;Ignatov et al.,2011)、転移に関与していることを示唆している。この観察結果と、GPCRが製薬業界の標的であるという事実により、GPERは乳がんの有望なドラッガブルターゲットとなる。したがって、GPERを選択的に分解するこのタイプの治療薬は、TNBCの治療に有用である可能性があり、他の内分泌抵抗性乳がんにも有用である可能性がある。最後に、GPERは婦人科がんの進行性疾患及び予後不良に関連しており、このことは、GPER-PROTACがこれらの患者に利益をもたらす可能性があることを示唆している。
【0142】
エストロゲン標的療法は、閉経後の女性に有効である。腫瘍形成が閉経後に起こるTNBC発がんの自発的モデルが使用される。GPER-PROTACは、早期TNBC(腫瘍≦0.5cm)のマウスに送達される。GPER-PROTACは内因性エストロゲンの非存在下で最も効果的に機能する可能性があるが、乳がんの全症例の1%に満たないものの男性でも検査が実施される(Anderson et al.,2010)。
【0143】
GPER-PROTACプロトタイプであるUI-EP001は、組換えGPERを選択的に分解し、ヒト乳がん細胞における天然GPERの発現をダウンモジュレートする(
図2及び3)。GPER-PROTACをスクリーニングするために、GPERを発現するが核ERを欠くヒトSKBR3乳がん細胞の原形質膜におけるエストロゲンに特異的な高親和性(Kd=2.7nm)、限られた能力、置換可能な単一結合部位を測定するGPER結合アッセイを使用することができる(Thomas et al.,2005)。GPERは、受容体のリン酸化、β-アレスチンとの相互作用、リソソーム活性のいずれも必要としないエンドサイトーシスの通常とは異なるメカニズムを経る。代わりに、GPERは原形質膜でポリユビキチン化され、プロテアソーム分解の前に、rab11陽性リサイクルエンドソームを介してトランスゴルジネットワーク(TGN)に逆行的に輸送される(Cheng et al.,2011)。最後に、GPER分解の程度を定量化するために、GPERをタンパク質分解するGPER-PROTACの相対的な有効性を測定するための高感度Nanobitバイナリ発光アッセイが使用される(
図11)。
【0144】
GPERに対する結合親和性及び特異性の高いGPER-PROTACの特定
原理.ERのタンパク質分解ターゲティングは、内分泌抵抗性乳がんを治療する効果的な手段である。ER-PROTACは、経口投与された場合、ER+乳がんの前臨床モデルで腫瘍退縮を促進する(Flanagan et al.,2019)。ER陰性(Filardo et al.,2006;Ignatov et al.,2011)及びトリプルネガティブ腫瘍(97/121=80.2%)の大部分で発現される別個のエストロゲン受容体であるGPERを標的とするPROTACは、開発されているが(Prissnitz et al.,2015)、臨床使用はまだ承認されていない選択的GPERアンタゴニストを補完すると考えられ、より効果的である可能性がある。
【0145】
GPER-PROTACの設計.一実施形態では、PROTAC設計は、ターゲティングリガンドとしての17β-E2、及びフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)由来のユビキチンE3リガーゼ・リガンド、(S,R,S)AHPC[24]として知られている(2S,4R)-1-((S)-2-アミノ-3,3-ジメチル-ブタノイル)-4ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアソール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミドの使用に基づいている。GPER-PROTACは、2、4、又は6単位のペグ化化学的リンカーのアレイにコンジュゲートされたAHPCからなる部分的PROTACを使用して組み立てられる(
図19)。構造活性相関(SAR)データは、化学的リンカーのエストラン環のC6及びC17原子への結合が、GPERのエストロゲン結合機能を維持する可能性が最も高いことを示唆している。C6側鎖を含むフルベストラント(ICI182,780)は、5%の相対結合活性を有し、500nMでGPERアゴニストとして機能し(Filardo et al.,2007)、細胞内cAMP産生の刺激に関して17β-E2と類似する17β-E2-ヘミスクシナート-17-BSAの効力を有する(Filardo et al.,2007)。
【0146】
GPER-PROTACの合成、精製、及び構造確認.C-17結合GPER-PROTACは、室温でDMFの存在下でEDC.HCl及びHOBtを使用した、17β-E2の17β-ヒドロキシル基と(S,R,S)-AHPC-PEG2-COOH;(S,R,S)-AHPC-PEG4-COOH又は(S,R,S)-AHPC-PEG6-COOHとのEDCカップリングによって合成される。目的の化合物の合成は、NMR分析と高分解能質量分析によって確認される。C-6結合GPER-PROTACは多段階反応で合成可能である。第1に、還流メタノール中、酢酸アンモニウムの存在下でシアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用した、13-メチル-6-オキソ-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルジアセタート(1)の6カルボニル基の還元的アミノ化。第2に、DMFの存在下でEDC.HCl及びHOBtを使用した、6-アミノ-13-メチル-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルジアセテート(2)と(S,R,S)-AHPC-PEG2-COOH;(S,R,S)-AHPC-PEG4-COOH又は(S,R,S)-AHPC-PEG6-COOHのカップリング。化合物の精製は、C18逆相分取HPLCカラムにより達成される。目的の化合物の合成及び純度は、NMR分析及びLC-MSを使用して確認される。この合成に使用される化学物質はすべて市販されている。
【0147】
GPER-PROTAC結合の評価.GPER-PROTACは、競合的放射性受容体アッセイを使用して結合活性について試験される[22]。簡潔に述べると、GPER-PROTACをエタノールに溶解させ、最終濃度1nM~10uMになるようにガラス製反応チューブに加える。エタノールを窒素下で蒸発させる。膜タンパク質(100ug)と4nM(89Ci/mmol)3H-17β-エストラジオール(E2)をチューブに加え、4℃で30分間インキュベートする。事前に浸したガラス繊維フィルターで急速にろ過することによって結合を停止させることで、フリー3H-E2から結合を分離する。フィルターを洗浄し、液体シンチレーションカウンターを使用して放射線を測定する。最大特異的結合を、総結合(競合相手の不在)と1,000倍モル過剰の17β-E2又はGPER-PROTACの存在下での非特異的結合の差として計算する。50%の最大特異的結合を置換するために必要な競合物の濃度(EC50)を、1サイト競合結合曲線から計算する。この曲線の頂部と底部がそれぞれ100%と0%として定義される。相対結合親和性(RBA)は、GPER-PROTACのEC50に対する17β-E2のEC50の比として計算され、パーセンテージとして表される。一実施形態では、17β-E2に対する1つ以上のGPER-PROTACのRBAは>10%である。
【0148】
GPER-PROTAC候補の、GPERを分解し、そのシグナル伝達活性を低下させる能力の試験
原理.これは、E3ユビキチンリガーゼをリクルートし、GPERをユビキチン化し、プロテアソームによる破壊をもたらすGPER-PROTACの能力に向けられている。GPER-PROTACの分解能力を、最初に定量的免疫蛍光及び免疫化学分析によって評価する。強力な分解能力を示す薬剤候補を、次にハイスループットで感度の高い発光アッセイを使用してさらに評価する。最後に、活性GPERの減少における各試験済みGPER-PROTACの有効性を、GPER依存性erbB1チロシルリン酸化及びerk-1/2のリン酸化を測定することによって評価する(Prissnitz et al.,2015)。総合すると、GPERダウンモジュレーションのこれらの測定値は、GPER活性を効果的に低減するGPER-PROTACを特定する。
【0149】
乳がん細胞では、GPERの大部分はそのヘテロ三量体Gタンパク質から切り離されて低親和性状態にあり、小胞体に保持されている。高親和性のGタンパク質結合状態のものは、原形質膜でわずかな割合しか発現していない(Prissnitz et al.,2015;Smith et al.,2007)。インタクト細胞で高濃度で使用すると、GPER-PROTACは低親和性受容体と高親和性受容体の両方を分解する可能性がある。細胞表面関連及び全GPERに対するGPER-PROTACの影響が測定される。上述したように、また以下で詳述するように、いくつかの定量的モダリティを使用して、GPER-PROTAC候補で処理された乳がん細胞において、例えば、GPER-PROTAC候補で処理されたルミナールA、ルミナールB、her2過剰発現かつ基底免疫表現型の乳がん細胞において、GPER分解とそのシグナル伝達活性を測定する。最後に、既存のGPERアンタゴニストであるG15又はG36の、GPERシグナル伝達活性の低下における相対的有効性を比較する。
【0150】
GPER分解の評価.最も高いRBAを有するGPER-PROTACを、GPERをユビキチン化して分解する能力について試験する。GPERを発現する乳がん細胞を様々な用量のGPER-PROTAC又はビヒクルで5分から8時間処理し、GPERダウンモジュレーションを免疫蛍光分析及び免疫化学分析の両方によって評価する。固定されたインタクトな又は界面活性剤で透過処理された乳がん細胞において、天然GPERの存在を、N末端又はC末端抗体のいずれかを使用して検出する。免疫蛍光によって検出されたGPERを、総補正細胞蛍光(J-Image)及びELISAによって定量化する。GPERタンパク質の未成熟又は成熟形態の定常状態レベルを、GPER特異的抗体を用いたイムノブロッティングにより決定する。これらの実験では、GPER分解の程度は、バンドピクセル強度を測定し(ImageJ)、GAPDHに対して正規化することによって決定される。GPER作用の特異性を、過剰な遊離17β-E2又は対照ステロイド(測定可能なGPERへの結合を示さない17β-エストラジオール)の存在下で確認する(Thomas et al.,2005)。17β-E2を欠く、又は17β-E2に結合した部分的PROTACは、薬物コントロールとして機能する。標的特異性を、HA-GPER、HA-CXCR4、又はHA-β-1ARを安定して発現するHEK293細胞において評価する(Filardo et al.,2018)。
【0151】
GPERポリユビキチン化の評価.ユビキチン化状態を、タンデムユビキチン結合要素(TUBE)プルダウンアッセイで、GPER特異的抗体によりブロッティングして確認する。この場合も、未処理、PROTAC処理、及び部分的PROTAC処理細胞からの溶解物のピクセルバンド強度を測定することにより、未成熟及び表面形態の両方におけるGPERユビキチン化の程度を定量化する。プロテアソーム分解は、細胞をプロテアソーム阻害剤MG132で処理することによって評価されるが、対照細胞にはリソソーム加水分解酵素を阻害するクロロキンが与えられる。GPER-PROTAC分解に対する感受性についてユビキチン化できないGPERのリジンレスバージョン(Lys333Arg、Lys341Arg、Lys351Arg)も試験する。
【0152】
表面及び全GPERの分解を評価するためのNanobit相補アッセイ.細胞表面からのGPERの除去とその全体的な分解を定量化するために、Nanobit(商標)(Promega)バイナリ発光相補性アッセイを行う。このアッセイは、6log以上のダイナミックレンジを有する発光シグナルを記録する。ルシフェリン基質の存在下で、HiBit及びLgBitと呼ばれるエビルシフェラーゼの2つの分割成分の相互作用により、発光シグナルが生成される。これらの実験では、可溶性LgBitをルシフェリンと共に、N末端HiBitタグを付されたGPERを発現するインタクト又は界面活性剤で透過処理した細胞に送達する。
【0153】
GPERシグナル伝達の評価.GPER-PROTACによる様々な期間での処理後、細胞を17β-E2で刺激し、erbB1チロシルリン酸化又はerk-1/2リン酸化をモニタリングすることによりGPER活性を測定する。EGFで刺激したerbB1又はerk-1/2の測定は、GPER-PROTACの特異性の対照として機能する。erbB1又はerk-1/2刺激を測定する追加の対照実験を、17β-E2に結合させた部分的PROTACを用いて行う。データをピクセルバンド強度によって定量化し、未処理の細胞に対して正規化する。
【0154】
リードGPER-PROTACのin vivo有効性の決定
原理.有効性、体内分布、及び毒性を早期に検討することは、合理的に設計された医薬品の初期評価及びその後の構造の変更において重要である。これらの生物学的反応は、GPER-PROTACの経口投与後に測定される。
【0155】
GPERはがん細胞で作用し、その生存を促進するほか、腫瘍の微小環境の決定及びがんの進行の促進を行う細胞にも影響を与える(Filardo et al.,2018)。したがって、GPER-PROTACの抗発がん活性又は抗腫瘍活性は、ヒトTNBC発がんをシミュレートするマウスモデルを使用して、例えば、腫瘍増殖の阻害又は動物の生存率を測定することによって決定される。毒性及び体内分布の研究は、野生型とGPERヌルマウスの両方で行われる。実験は、卵巣インタクトマウス及び卵巣切除(OVX)マウスで行われる。
【0156】
統計分析.1群12匹のマウスは、群固有の標準偏差の1.2倍の平均差を検出する80%の検出力を達成する。検出力は、ある時点で有意水準5%の両側2サンプルt検定を使用して控えめに推定される。混合効果回帰を使用して、時間及び処理群の関数として腫瘍増殖率を推定及び比較する。ランダム効果モデルを使用して、繰り返される腫瘍測定の縦方向の相関性を説明する。時間の経過に伴うすべての腫瘍測定値が利用されるため、この形式的分析はより高い検出力を有することが期待される。全生存率については、カプラン・マイヤー法を使用して各処理群の曲線を作成し、ログランク検定を使用して比較する。
【0157】
抗がん剤としてのGPER-PROTAC.in vitro効果が最も高いことが判明したGPER-PROTACを、その抗発がん効果について調査する。オスのp53fl/flBrca1fl/flマウスを、メスのK14-creと交配したp53fl/flBrca1fl/flマウスは、通常の同腹仔サイズをもたらし、生まれるトランスジェニック幼仔が胚致死性でないことが示されている。メスのマウスの約85%が乳腺腫瘍を発症し、生存期間の中央値は248日である。デジタルキャリパーを使用して腫瘍形成を注意深く監視し、腫瘍が一次元で5mmに達したら、マウスを無作為に対照群と処理群に分ける。最初の実験は、毒性試験に基づいたGPER-PROTACの用量(100~4,000mg/kg)を使用して、腫瘍の増殖(退行)への影響が観察される用量及び処理スケジュールを特定することを目的とする。マウスは強制経口投与によってビヒクル又はGPER-PROTACの単回投与を受ける。キャリパーを使用してマウスの腫瘍増殖を監視する。腫瘍増殖及び全生存期間(OS)を、治療に対する反応性の尺度として使用する。
【0158】
生体分布研究.GPER-PROTACを、野生型及びGPERヌルマウスに強制経口投与により与える。投与スケジュールと投与濃度は様々であり得る。乳房、回腸、十二指腸、脾臓、心臓、肺、及び肝臓から腫瘍及び組織を摘出し、LC-MSにより薬物濃度を測定する。接種後1時間、4時間、24時間、7日、14日、21日及び28日で腫瘍及び組織を採取する。
【0159】
毒性研究.GPER-PROTACを使用した治療に関連する毒性を特定するために、上記で概説した実験と組み合わせて、処理マウスと未処理マウスの両方(5匹/群)において、肝機能(ALT、AST、LDH、ビリルビン)、腎機能(クレアチニン、BUN)、及び炎症性腸疾患(IBD)(下痢、血便)を毎週監視する。毒性を示す客観的基準には、肝機能及び腎機能の値が3倍以上上昇していること、ならびに下痢及び/又は血便が衰えていないことが含まれる。
【0160】
図11に示すように、処理の24時間後、HCC1806及びSKBR3細胞は、部分的PROTACと比較して、E
2-PROTACで処理した場合に低い生存率を示した。HCC1806は、SKBR3よりもE2-PROTACに対して高い応答を示した。IC50は、約10~約50uMの範囲であった。細胞をエストラジオールで前処理すると、HCC1806とSKBR3の両方で細胞死が大幅に減少した。GPERの分解は、細胞死又は細胞増殖の減少をもたらす可能性がある。又は、膜から核へのGPERの非局在化により、リガーゼが動員されて細胞質/核内のタンパク質が分解される可能性がある。
【0161】
実施例2
乳がんに対するホルモン療法の割付けに関する決定は、生検された腫瘍組織における核エストロゲン受容体(ER)の存在のみに基づいている。これは、Gタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)が進行性乳がんに関連しており、乳がん幹細胞の生存に必要であるという事実に反している。観察結果は、効果的な内分泌療法もこの受容体を標的とするべきであることを示唆している。ここでは、ERa、ERb、及びGPERを効果的に分解する2つのER/GPERターゲティングタンパク質分解キメラ(UI-EP001及びUI-EP002)について説明する。これらのキメラは、GPER及びERとの高親和性相互作用を形成し、結合解離定数はそれぞれ約30nM及び10~20nMである。原形質膜及び細胞内GPER及び核ERは、UI-EP001及びUI-EP002によって分解されたが、エストロゲンターゲティングドメインを欠く部分的PROTACでは分解されなかった。プロテアソーム阻害剤であるMG132による細胞の前処理は、UI-EP001及びUI-EP002のタンパク質分解をブロックしたが、リソソーム栄養阻害剤であるクロロキンは効果がなかった。組換えb1-アドレナリン受容体又はCXCR4に対してオフターゲット活性は観察されなかった。標的特異性は、両方の薬剤が効果的にERa、ERβ、及びGPERを分解したがプロゲステロン受容体(PR)を使用しなかったヒトMCF-7細胞でさらに実証された。UI-EP001及びUI-EP002は、MCF-7乳がん及びヒトSKBR3(ERa-ERb-GPER+)乳がん細胞において細胞毒性及びG2/M細胞周期停止を誘導したが、機能的GPER/ERを発現しないヒトMDA-MB-231乳がん細胞では誘導しなかった。これらの結果は、原形質膜及び細胞内のエストロゲン受容体の両方を標的とする乳がんの抗エストロゲン治療の受容体ベースの戦略を提供する。
【0162】
材料及び方法
ERa又はGPERへのE2-PROTACの分子ドッキング.以前に確立されたGPER相同性モデルを、GLIDE(Schroedinger、マサチューセッツ州ケンブリッジ)ドッキング研究で使用した(Amatt et al.,2012;Amatt et al.,2013)。これらの研究では、GLIDE内のReceptor Grid Generationを使用して、以前に確立されたE2の結合部位の周りに最初にグリッドを構築した。UI-EP001及びUI-EP002をMaestro11.3(Schroedinger、マサチューセッツ州ケンブリッジ)に描画し、Schroedinger内のLigPrep関数を使用するドッキングの準備をした。OPLS3力場を使用し、Epikを用いてpH7±2で可能なイオン化状態を生成した。他のすべての設定はデフォルト設定のままにした。その後、UI-EP001とUI-EP002のGLIDEドッキングが行われた。ファンデルワールス半径を、0.15の部分電荷カットオフで0.8のスケーリング係数に設定した。XP(超精密)ドッキングを、フレキシブルリガンドサンプリングを使用して実行し、サンプル窒素反転とサンプル環構造の両方をオンにした。アミドのバイアスサンプリングは、非平面コンフォメーションにペナルティーになるように設定した。エピック状態のペナルティをドッキングスコアに追加した。ドッキングでは、ドッキングの初期段階でリガンドあたり10,000のポーズを保持し、OPLS3力場を使用したエネルギー最小化のために、リガンドあたり最適な1,000のポーズを保持した。ドッキング後の最小化を実行し、リガンドあたり100ポーズを保持した。他のすべての設定はデフォルト設定のままにした。UI-EP001とUI-EP002の両方も、同様の方法でERα内にドッキングした。ERαホモ二量体結晶構造を使用し(PDB:1A52、Tanenbaum et al.,1998)、結合したE2分子を除去し、次いでGLIDE内でReceptor Grid Generationを使用してドッキングの準備をした後、UI-EP001及びUI-EP002を用いてドッキング研究を行った。
【0163】
E2-PROTAC及びE2-FITCの合成.
UI-EP001、UI-EP002、及びE2-FITCの化学合成を、それぞれ
図24及び
図31の概略図に従って行った。
1H及び
13C NMRスペクトルを、300KでBruker AVANCE AV-300及びBruker AVANCE AV-500装置で記録した。1H NMRスペクトルは、テトラメチルシラン(TMS)からの100万分の1(ppm)ダウンフィールドで報告される。すべての
13CNMRスペクトルはppmで報告され、1Hデカップリングで取得される。報告されたスペクトルデータでは、フォーマット(δ)化学シフト(多重度、Hz単位のJ値、積分)が次の略語と共に使用された:s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、m=多重項。Waters Q-Tof Premier質量分析計を用いてMS分析を行った。UI-EP001及びUI-EP002を、溶媒A(H
2O中の0.1%TFA)及び溶媒B(MeCN中の0.1%TFA)を溶離液として、Shimadzu Nexera X2 UHPLCシステムを備えたC18逆相分取HPLCカラムによって精製した。
【0164】
細胞及び培養条件.ヒトMCF-7、MDA-MB-231、HCC-1806、及びSKBR3乳がん細胞及びヒト胎児腎臓293細胞(HEK-293)を、American Tissue Culture Collection(バージニア州マナッサス)から購入した。ヘマグルチニンタグ付きGPER(HA-GPER)、β1-アドレナリン受容体(ΗA-β1AR)、及びCXCR4(HA-CXCR4)を安定して発現するHEK-293細胞は、以前に説明されている(Filardo et al.,2007)。すべての細胞株を、37℃、5%CO2を含む加湿チャンバー内で、フェノールレッドを含まない(1:1)DMEM/Ham’s F-12培地(PRF-DF12)(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)に10%ウシ胎仔血清及びペニシリン-ストレプトマイシンを添加したもので培養した。
【0165】
ステロイド及び阻害剤.17β-エストラジオール(17b-E2)及びアルドステロンを、Sigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入した。26S-プロテアソーム阻害剤であるMG132をSelleckchem(ペンシルベニア州ピッツバーグ)から購入し、リソソーム栄養剤である二リン酸クロロキンをBio-Techne(ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。
【0166】
抗体.GPER特異的抗体を、ヒトGPERポリペプチド(Pacific Immunology、カリフォルニア州ラモナ)のN末端からのアミノ酸1~62に由来する合成ペプチドに対して、ニュージーランドホワイトウサギで生成した。含まれる市販の抗体:ウサギ抗HAエピトープ抗体(Cell Signaling Technologies、マサチューセッツ州ビバリー)、マウスモノクローナルER-α(2Q418)、PR(F-4)はSanta Cruz Biotechnology(カルフォルニア州サンタクルズ)から購入し、ウサギモノクローナルER-β抗体、クローン68-4は、EMD Millipore(マサチューセッツ州ビレリカ)から購入した。ヤギ抗ウサギAlexa-Fluor594、ヤギ抗ウサギAlexa-Fluor488、及びヤギ抗マウスAlexa-Fluor488二次抗体は、Abcam(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から、ヤギ抗ウサギIgG及びヤギ抗マウスセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体は、Southern Biotechnology(アラバマ州バーミンガム)から購入した。
【0167】
プラスミド.CMVプロモーターの転写制御下で全長ヒトGPER(Filardo et al.,2007)及びEra(deConink et al.,1995)をコードする分子クローンが報告されている。フォワード5’-GTTCAAGAAGATTAGCGATGTGACTTCCCAAGCC-3’(配列番号1)及びリバース5’-AGCCGCCAGCCGCTCACCA-TGTCTCTGCACCGTGC-3’(配列番号2)オリゴヌクレオチドプライマー及びQ5突然変異誘発キット(New England Biolabs、マサチューセッツ州セイラム)を用いたインバースPCRによって、HiBiTタグ(VSGWRLFKKIS)をGPERのアミノ末端にインフレームで挿入した。フォワード5’-TGGCGGCTGTTCAAGAAGATTAGCTGAGAGCTCCCTGGCGGA-3’(配列番号3)及びリバース5’-GCCGCTCACAG-AGCCTCCTCCACCGACTGTGGCAGGGAAACCC-3’(配列番号4)オリゴヌクレオチドプライマーを用いた同様のインバースPCR戦略を使用して、ER-αのカルボキシル末端にHiBiTタグを挿入した。
【0168】
一過性トランスフェクション及びバイナリNano-Bit(商標)発光アッセイ.Nano-Glo HiBiT Extracellular Detection systemkit(Promega Corporation、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、組み換えLgBit及び基質を用いたバイナリ発光相補性により、界面活性剤で透過処理した細胞内の全HiBiTタグ付きGPER又はERエストロゲン受容体を検出した。簡潔に述べると、HEK293細胞(0.75×106)を35mm組織培養皿に播種し、24時間後に50ngのHiBiT-GPER又はHiBiT-ERa及び950ngのpcDNA3.1(+)zeoキャリアプラスミドを、リポフェクタミン2000(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて一過性にトランスフェクトした。翌日、トランスフェクトした細胞をトリプシン処理によって回収し、96ウェルのポリ-L-リジンでコーティングされたGreiner白底マイクロプレートに104細胞/ウェルの密度で播種した。翌日、細胞培養培地を吸引し、様々な濃度のE2-PROTAC、部分的PROTAC、又はビヒクルを含む100μLの無血清PRF-DF12に、示された時間間隔で37℃で交換した。いくつかの実験では、クロロキン(100mM)又はプロテアソーム阻害剤MG132(10mM)を含めた。処理後、LgBiTタンパク質及びNano-Glo(登録商標)HiBiT基質からなるHiBiT相補試薬を使用して、0.05%Triton(登録商標)X-100で透過処理した細胞において全HiBiTタグ付き受容体を測定した。Tecan(ノースカロライナ州ローリー)のInfinite 200 PROマルチモードマイクロプレートリーダーを使用して発光を測定し、相対発光単位(RLU)として報告した。すべてのサンプルをトリプリケートで測定し、平均値プラス又はマイナス標準偏差として表した。
【0169】
免疫細胞蛍光.細胞を、12ウェルクラスタープレート(CoStar、ニューヨーク州コーニング)において、ポリ-L-リジンでコーティングされた18mmガラス製カバースリップ上に、5%FBSを含むPRF-DF12中12,500~25,000細胞/cm2の密度で播種した。翌日、細胞を未処理のままにするか、クロロキン(100mM)又はプロテアソーム阻害剤MG132(10mM)の存在下又は非存在下、100mMのUI-EP001、UI-EP002、又は部分的PROTACで37℃で1時間処理した。処理後、プレートを氷上で10分間冷却してからGPER N末端ペプチド抗体で4℃で30分間標識した。冷PBSで洗浄することにより過剰の抗体を除去し、次いで細胞をPBS中4%パラホルムアルデヒドで5分間固定した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄し、5%ウシ血清アルブミン(BSA)及び5%正常ヤギ血清を含むPBS中で非特異的抗体結合部位を1時間ブロッキングした。全受容体を、免疫染色の前に0.1%Triton(登録商標)X-100で10分間透過処理した細胞において測定した。固定され、透過処理された細胞をPBSで2回洗浄し、一次抗体で1時間インキュベートした。過剰な一次抗体をPBSで洗浄して除去してから、細胞をヤギ抗ウサギ又は抗マウス二次抗体にさらに1時間曝露した。この2回目のインキュベーションに続いて、細胞をPBSで1回、トリス緩衝生理食塩水で1回洗浄した後、DAPI(Vector Laboratories、カリフォルニア州バーリンゲーム)を含むVecta-Shieldアンチクエンチ培地にカバースリップを載置した。免疫蛍光画像を、Qimaging Retiga 2000Rデジタルカメラ及びNikonイメージングソフトウェア(NIS-Elements-BR3.0)を使用して、微分干渉コントラストと落射蛍光機能を備えたNikon Plan Fluor 100×0.5~1.3オイルアイリスを装備したEclipse 80i顕微鏡(Nikon,Inc.、ニューヨーク州メルビル)で可視化した。キャプチャ後、PHOTOSHOP(登録商標)CS2(Adobe)を使用して明るさ/コントラストを調整して画像を処理した。
【0170】
競合結合アッセイ.GPER結合を、フルオレセイン標識エストラジオール(E2-FITC)を説明されたものにわずかな変更を加えて(Cao et al.,2017)トレーサーとして使用して、インタクト細胞ベースの競合結合アッセイで測定した。SKBR3細胞を175cm2フラスコ(Corning、米国ニューヨーク州)中でほぼコンフルエンスまで増殖させ、次いで無血清培地中に一晩置いた。細胞を5mMのEDTAを含有するHBSS中で剥がし、150gで5分間の遠心分離により回収した。細胞ペレットを2mMのCaCl2及び2mMびMgCl2を含む氷冷HBSSで2回洗浄し、細胞を同じ緩衝液中106/mlの最終濃度に調整した。細胞(100μL)を100nMのE2-FITCと混合し、等量のHBSS又は様々な濃度の17b-E2、部分的PROTAC、又はE2-PROTACを含む氷上の96ウェル円錐V字型底マイクロタイタープレートに播種した。次に、サンプルを氷上で30分間インキュベートした。細胞を4℃での遠心分離によりペレット化し、陽イオンを含むHBSSで1回洗浄し、Aurora FCM機器(Cytek Biosciences、米国)で分析した。サンプルあたり少なくとも10,000のイベントを、前方散乱対側方散乱ドットプロットゲーティングを使用して分析し、一次細胞集団を分解した。各サンプルについてフルオレセインイソチオシアネート(FITC)チャネル内の細胞の蛍光強度をログモードで記録した。各条件をトリプリケートで実行し、蛍光強度の中央値プラス又はマイナス標準偏差として報告した。
【0171】
ER結合を、蛍光偏光によってMCF-7細胞から調製されたサイトゾル画分を使用して測定した。MCF-7(106細胞)をEDTAで分離し、Dounceホモジナイザーを使用して細胞ホモジネートを調製し、細胞内画分を既に説明されているように分画遠心法で分離した(Filardo et al,2002)。各フラクションのタンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキット、Thermo Fisher)によって決定した。プローブの飽和結合アッセイのために、異なる濃度のサイトゾル画分をアッセイバッファー(10mMのTris-HCl、pH7.4;50mMのKCl、10%グリセロール、0.1mMジチオスレイトール(DTT)、1ug/mLのBGG、10nMプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)、10nMのE2-FITCを含む200uLの最終体積に希釈した。混合物を周囲温度で1時間インキュベートし、プローブとサイトゾルタンパク質との相互作用を蛍光偏光(FP)によって決定した。競合結合アッセイのために、サイトゾル分画のアリコートとE2-FITC(最終濃度10nM)を混合し、4℃で1時間インキュベートした。次に、様々な濃度の薬物と対照を混合物に加えた。混合物をさらに1時間インキュベートし、次いでFPにかけた。すべてのサンプルをトリプリケートで測定した。陰性対照(サイトゾル分画のみ又はE2-FITCのみ)及び陽性対照(処理なしで100%結合したE2-FITC及びサイトゾル分画)を含めた。相対的な結合親和性を、陽性対照と比較した処理ウェルから記録されたFPのパーセンテージとして表した。ミリ偏光単位(mP)でのFP値を、Spectra Max plus 384マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices、カリフォルニア州サニーベール)を使用して、96ウェルの黒色平底マイクロプレート(Greiner Bio-One North America,Inc.、ノースカロライナ州モンロー)において485nm/530nmのex/em波長で測定した。プローブのKd値を、飽和曲線の非線形回帰フィッティングによって決定し、処理のIC50値を、競合曲線の非線形回帰フィッティングによって決定した。
【0172】
細胞毒性アッセイ.E2-PROTAC処理後、Presto-Blue Viabilityキットを製造元の推奨プロトコル(Thermo Fisher Scientific)に従って使用して、細胞生存率を測定した。簡潔に述べると、乳がん細胞を増殖培地中104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。翌日、96ウェルプレートの内容物を吸引し、様々な濃度(10-9~10-3Mの範囲)の処理に交換し、続いて培地を加えて全量を200μL/ウェルにした。未処理の対照群は、200μL/ウェルの新鮮な培地でインキュベートした。1日後、培地を吸引し、90μLの培地+10μLのPrestoblue試薬と交換した後、37℃で1時間インキュベートした。560nmで蛍光を励起し、Spectra Max plus 384マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices、カリフォルニア州サニーベール)を用いて590nmで発光を記録した。相対細胞生存率の値を、未処理細胞を含む対照ウェルと比較した処理細胞を含むウェルから記録された蛍光のパーセンテージとして表した。
【0173】
細胞周期分析.細胞を2.5×105細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種し、未処理のままにするか、部分的PROTAC、UI-EP001、又はUI-EP002に24時間曝露した。処理後、トリプシン処理によって細胞を回収し、氷冷PBSで2回洗浄した。次に、細胞を70%エタノール中、4℃で30分間固定した。固定した細胞を230gで5分間遠心分離してペレット化し、細胞ペレットをクリシャン(Krishan’s)溶液(3.8mMクエン酸ナトリウム(Fisher Scientific)、0.014mMヨウ化プロピジウム(AnaSpec、カナダ国フェルモン)、1%NP-40(Sigma)及び2.0mg/mLのRNase A(Fisher Scientific))中で37℃で30分間インキュベートした。次に、細胞を遠心分離し、PBSで洗浄してから、FacScalliburフローサイトメーターを使用して分析した。フローサイトメトリーからのデータを、CellQuestソフトウェアバージョン3.3によるさらなる分析にかけた。生成されたDNAヒストグラムは、細胞周期のサブG1期、G0-G1期、S期、又はG2/M期の細胞集団の割合を示す。
【0174】
統計分析.すべてのデータを、GraphPad Prism(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して分析した。すべてのデータの分散の正規性と均一性を、一元配置分散分析(ANOVA)によって分析した。各実験はトリプリケートで行われ、P<0.05の場合、差が有意であると見なした。
【0175】
結果
ERa又はGPER1のE2-PROTACとの相互作用の分子ドッキング分析
GPER結合ポケットとそのE2との相互作用に関する以前の研究は、PROTAC戦略を使用してE2を修飾することができ、依然としてその結合効果を維持できることを示している(Amatt et al.,2012;Amatt et al.,2013)。これらの相同性モデリング研究に基づいて、17C-ヒドロキシル基は、TM1とTM7の間のGPER結合ポケットの外側を指し、N118
2.62及びH307
7.37と相互作用すると仮定される。以前の研究では、17Cでのフルオロフォアの結合がGPER活性に悪影響を及ぼさないことが示されている(Filardo et al.,2007)。したがって、2つの異なるPROTAC分子は、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーを介して17-ヒドロキシル基に結合したフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)、E3リガンド(VHL1/VHL032)を有するようにin silicoで設計された。合成を容易にするために17-ヒドロキシル基へのエステル結合を選択し、GPER-PROTACの可能な空間的制約を調査するために2つの異なる長さのリンカーを選択した。第1の分子であるUI-EP001を、E2とVHL1との間に14個の原子のリンカーを有するように設計し、第2の分子であるUI-EP002を、E2とVHL1との間に32個の原子のリンカーを有するように設計した。UI-EP001のリンカーの長さは、報告された文献に基づいており、13~14個の原子のリンカーは標的受容体の高い分解率及び選択性をもたらしたのに対し、UI-EP002のより長いリンカーは、この化合物の全体的な親水性及び柔軟性の向上に寄与した。UI-EP001及びUI-EP002とGPER1とのドッキング研究では、元のE2結合ポケットが維持され、リンカーがTM1とTM7との間の結合ポケットから出ていることが示されている(
図23)。既知のPROTACとそのタンパク質標的の結晶構造に基づいて、両方のリンカーの長さにより、UI-EP001及びUI-EP002がGPER1に結合しながらVHL E3リガーゼと相互作用できるようになる(Famaby et al.,2019;Gadd et al.,2017)。
【0176】
E2の17C位置の修飾がGPER結合に耐えられることは知られているが(Thomas et al.,2005)、設計されたPROTAC分子がERαと良好に結合するかどうかは不明である。したがって、ERαと共に、UI-EP001及びUI-EP002について、ERαリガンド結合ドメイン(PDB:1A52)に結合したE2の結晶構造を用いて、追加のドッキング研究を行った。E2とERαとの間のすべての既知の相互作用は、UI-EP001及びUI-EP002の両方で維持される。さらに、両方の分子のリンカーの長さは、VHL1部分がVHL E3リガーゼと相互作用するのに十分に長い。
【0177】
部分的PROTAC(化合物7)の合成の詳細を
図24(スキーム1)に図式化する。リンカー2を、2段階スキーム1Aに従ってトリエチレングリコールから調製した。VHL E3リガーゼリガンド(VH032)を、以前に公開された文献(スキーム1B)(Steinebach et al.,2019;Madak et al.,2017)に従って合成した。4-ブロモベンゾニトリルと4-メチルチアゾールの間のパラジウム触媒クロスカップリングを行ってシアニド3を得、続いてこれを塩化コバルト(II)と水素化ホウ素ナトリウムで処理して、第一級アミン4を得た。続いて、Boc-Hyp-OH、Boc-Tle-OH及びリンカー2とのアミドカップリングの後、4から化合物7が得られた。シュテークリヒ(Steglich)条件下でE2と化合物7との間のコンジュゲーションを行って、UI-EP001又は化合物8を得た(スキーム2)。UI-EP002(化合物10)を、E2と化合物7との間にPEGS8リンカーを導入することによって調製した。まず、E2とFmoc-NH-PEG8-CH2CH2COOHをシュテークリヒエステル化した後、トリメチルアミンで処理してFmoc基を除去し、化合物9を得た。最後に、化合物10は、化合物9と化合物7との間のコンジュゲーションから、HPLCによる72時間の注意深い監視により得られた(スキーム3)。
【0178】
E2-PROTACは、原形質膜及び細胞内エストロゲン受容体への高親和性特異的結合を示した
GPER及びERはそれぞれ、高い親和性でE2に結合する(Prissnitz et al.,2015)。しかし、各エストロゲン受容体は異なる細胞内コンパートメントに存在し、これは、E2-PROTACと相互作用する相対的な能力に関して重要な意味を持つ。GPERは、受容体の大部分が細胞内膜で発現されるという事実にもかかわらず、原形質膜受容体のすべての特徴を示す(Filardo et al.,2007)。原形質膜受容体としてのその役割の裏付けとして、先行研究は、原形質膜結合部位を示唆するスクロース密度勾配濃縮膜ホモジネートにおける
3H-E2の特異的結合を測定した(Thomas et al.,2005)。UI-EP0001及びUI-EP002の原形質膜上のGPERへの結合を直接評価するために、GPERを発現するがERaもERbも発現しないインタクトSKBR3細胞を使用して、蛍光トレーサーとして細胞非透過性E2-FITCを使用して、競合結合アッセイを実施した(
図25)。E2-FITCのGPER特異的結合活性を、細胞表面でGPERを発現する細胞又は発現しない細胞の結合活性を差し引いて、示差飽和分析によって測定した(
図25A)。最大GPER特異的結合は100nM E2-FITC近くに達し(
図25B)、競合的結合実験のためにこの濃度を選択した(
図25C)。E2-FITCの50%を置換するのに必要なE2の濃度(IC
50)は、17b-E2の100±1.5nMでのE2の解離定数(Kd)として計算された。これは、以前に報告されたE2のIC
50値300nMと同程度である(Cao et al.,2017)。比較すると、UI-EP001及びUI-EP002のIC
50値は、E2で測定された値(それぞれ30.2±0.9nM及び30.2±2.3nM)のほぼ3倍(RBA=330%)であった(表1)。これは、部分的には、それぞれ17C置換ヒドロキシルを含むE2-FITCとE2-PROTACの間で共有される構造的相同性によって説明され得る。対照的に、VHL E3ユビキチンリガーゼ認識モチーフにリンクされたUI-EP001の化学的スペーサーからなるがE2ターゲティングドメインを欠く部分的PROTACは、10mMの高濃度でもE2-FITC結合に関して競合できなかった(
図25C)。
【0179】
【0180】
【0181】
略語:IC50、50%阻害の濃度;すべてのIC50値はトリプリケートのサンプルから測定され、平均値±SDとして報告されている。
GPERとは対照的に、ERa及びERbは細胞質と核に集中している細胞内受容体である。したがって、UI-EP001及びUI-EP002ERの結合活性は、MCF-7乳がん細胞から分離されたサイトゾル画分で蛍光偏光(FP)を使用して評価した。飽和分析を、10nM E2-FITCを使用し、サイトゾルタンパク質の濃度を増加させて行った(
図25D)。ほぼ飽和(80%)のFP値に基づいて、600mg/mLのサイトゾルタンパク質を使用して競合結合アッセイを実施したところ、E2は最大変位の半分、IC
50=5.6±1.4nM)を示した(
図25E)。比較すると、UI-EP001及びUI-EP002のIC
50値は、それぞれ17.2±8.2nM及び11.4±3.3nMと計算された。これらの結果は、UI-EP001及びUI-EP002がE2と比較してわずかに弱い結合親和性を示し、RBAがそれぞれ32%及び49%であることを示している(表1)。まとめると、これらの競合結合アッセイは、インタクト細胞及びサイトゾル画分に対して行われ、UI-EP001及びUI-EP002が原形質膜及び細胞内エストロゲン受容体GPERに、低ナノモル濃度範囲において高い親和性で結合することを示している。
【0182】
E2-PROTACは天然及び/又は組換えエストロエン受容体の発現レベルを低下させる
UI-EP001及びUI-EP002が原形質膜及び細胞内エストロゲン受容体を分解する有効性を評価するために、HiBiTタグ付きタンパク質と可溶性Lg-BiTタンパク質との間の相互作用を測定する高感度Nano-BiTバイナリ発光相補性アッセイを採用した。UI-EP001又はUI-EP002で処理した細胞は、HiBiT-GPER又はHiBiT-ERαの用量依存的な減少を示したが(
図26A及びB)、100μMの部分的PROTACは、試験した濃度内ではいずれの組換え受容体についても有意な減少を示さなかった(
図26C)。これらのアッセイから、GPER(100μM)及びERα(10~100μM)についてそれぞれDC
50値(50%のタンパク質分解に必要な濃度)を計算した。これらのDC
50濃度を使用して、UI-EP001及びUI-EP002によるHiBiT-GPER及びHiBiT-ERの分解速度を測定した。UI-EP001とUI-EP002の両方が、組換えGPER又はERのいずれかの発現レベルの時間依存的な減少を誘発し、50%の減少は1時間という早い時期に測定された(
図26D及びE)。対照的に、細胞を部分的PROTACで8時間処理した後では受容体の83%が存在した。
【0183】
GPERに対するUI-EP001及びUI-EP002の特異性を、b1-アドレナリン受容体、b1AR及びケモカインC-X-Cケモカイン4型受容体、CXCR4を含む他のGPCRを分解するそれらの能力を調べることによって決定した(
図27A)。この目的のために、UI-EP001又はUI-EP002又は部分的PROTACの相対的有効性を、安定にトランスフェクトされたHEK293細胞株でHA-GPER、-b1AR、又は-CXCR4を分解する有効性について評価した。HA特異的抗体を用いた免疫蛍光分析により、HA-b1AR及びHA-CXCR4の検出可能なオフターゲット分解のない、HA-GPERの特異的分解が測定された(
図27A及びB)。次に、ERa、ERb、及びGPERを発現するヒトMCF-7乳がん細胞を使用して、UI-EP001及びUI-EP002の内因性原形質膜及び細胞内エストロゲン受容体を分解する特異性を評価した(
図27C及びD)。MCF-7細胞をUI-EP001、UI-EP002、部分的PROTACに1時間曝露するか、未処理のままにして固定し、透過処理し、GPER、ERa、ERb又はプロゲステロン受容体、PRに対する特異的抗体で免疫染色した。核ERα及びERβならびに細胞内GPERについて、明確な部位特異的減少が観察された(
図27C及びD)。対照的に、部分的PROTACによるMCF-7細胞の処理は、ERa、ERb、及びGPERの発現に影響を与えなかった。UI-EP001及びUI-EP002のどちらも、MCF-7細胞において検出可能なPRの分解を示さず、これはエストロゲン受容体に対するE2-PROTACの特異性をさらに示している(
図5D)。その上、UI-EP001及びUI-EP002は、ERa及びERbについて陰性であるヒトSKBR3乳がん細胞において原形質膜及び全GPERを減少させ、部分的PROTACは減少させなかった(
図27E)。同様に、E2特異的PROTACを介した分解がMCF-7細胞の表面で観察された。UI-EP001及びUI-EP002の、その意図された標的に対する特異性を、外因性E2がE2-PROTAC媒介ER/GPER分解を阻害する能力を調べることによってさらに評価した(
図28A及びB)。ER-HiBiT又はGPER-HiBiTをトランスフェクトした細胞を、100μMのUI-EP001及びUI-EP002単独で、又は漸増用量のE2β又はアルドステロン(100nM~100μM)と組み合わせて1時間処理した(
図28A及びB)。E2はUI-EP001及びUI-EP002の分解を効果的に阻害したが、いずれのエストロゲン受容体標的の分解も対照ステロイド、アルドステロンの存在下では測定されなかった(
図28C)。
【0184】
総合すると、これらの発見は、UI-EP001及びUI-EP002が原形質膜及び細胞内エストロゲン受容体を選択的に分解できるエストロゲン受容体分解剤(SERD)として機能することを示唆している。
【0185】
UI-EP001及びUI-EP002のER及びGPERの分解は26S-プロテアソームを介して発生する.最後に、UI-EP001及びUI-EP002がユビキチン-プロテアソーム経路を介して標的受容体の分解を促進できるかどうかを評価した。これらの実験を実施するために、HiBiTタグ付きエストロゲン受容体を一時的に発現するHEK293細胞を、UI-EP001又はUI-EP002に曝露する前に、プロテアソーム阻害剤、MG132、リソソーム栄養剤、クロロキン、又はビヒクルで前処理し、その後、全受容体発現を上記のように評価した。MG132はUI-EP001又はUI-EP002のGPER又はERαの分解を逆転させたが、クロロキンにはそのような効果はなかった(
図28D及びE)。この結果は、受容体のポリユビキチン化及び26S-プロテアソームでのタンパク質分解の結果として、PROTAC誘導性タンパク質分解が起こるという事実と一致している。重要なことに、これらの結果は、我々の第1世代のE2-PROTAC、UI-EP001及びUI-EP002が、原形質膜及び細胞内コンパートメントに存在するエストロゲン受容体と相互作用して、26S-プロテアソームでの膜(GPER)及び核(ER)エストロゲン受容体の分解を急速に促進することを示唆している。
【0186】
総合すると、これらの研究は、UI-EP001及びUI-EP002によるエストロゲン受容体(ERα及びGPER)とVHL E3ユビキチンリガーゼの同時関与が効果的な分解に重要であることを示唆している。
【0187】
E2-PROTACは細胞周期停止を誘導することにより乳がん細胞の増殖を阻害する
E2-PROTACの細胞毒性の可能性を評価するために、UI-EP001、UI-EP002、又は部分的PROTACでの処理後に、異なるエストロゲン受容体プロファイルを有する4つの異なるヒト乳がん細胞株の生存率を測定した(
図29)。この研究には以下が含まれた:i)3つすべてのエストロゲン受容体を発現するMCF-7細胞(ERa
+、ERb
+、GPER
+)、ii)her2/neuを過剰発現するSKBR3細胞(ERa
-、ERb
-、GPER
+)、iii)トリプルネガティブ及びGPERポジティブであるHCC1806細胞(ERa
-、ERb
-、GPER
+)及びiv)ERaネガティブであり、低レベルのERb及びGPERを発現し、ER(Al-Badar et al.,2011)及びGPER(Filardo et al.,2000)依存性シグナル伝達活性のいずれも誘発しないMDA-MB-231細胞(ERa
-、ERb
low、GPER
low)。各乳がん細胞株を、様々な濃度のE2-PROTAC又は部分的PROTACで24時間処理した後、テトラゾリウム塩をホルマザン色素に変換できるミトコンドリア酸化還元酵素を測定するMTSアッセイを使用して細胞の生存率を評価した(表2にまとめる)。UI-EP001又はUI-EP002のいずれかで処理されたすべての乳がん細胞株で、用量依存的な細胞生存率の低下が測定された。UI-EP001については、GPERを発現するMCF-7、SKBR3及びHCC1806乳がん細胞株においてそれぞれ9.0、10.9及び34.9mMのIC
50値が測定された。同様のIC
50値が、これら3つの細胞株でUI-EP002についてそれぞれ測定された(17.0、11.1、及び7.4mM)。対照的に、UI-EP001及びUI-EP002のIC50値は、低濃度の機能的ERb又はGPERを発現するMDA-MB-231細胞で約100倍高く(>100mM)、>80%の細胞生存率を示した。これらのIC
50値は部分的PROATACで処理された細胞について測定されたものに類似していた。これらのデータは、膜及び細胞内エストロゲン受容体の除去が、乳がん細胞の生存率を決定する重要な要因であることを示唆している。
【0188】
細胞生存率の低下に関連する生物学的効果を調査するために、ヨウ化プロピジウム染色を使用して同じ4つの細胞株に対して細胞周期分析を実施し、10μMのE2-PROTAC又は部分的PROTACで細胞を処理してから24時間後にフローサイトメトリーで測定した(
図30)。4つの細胞株すべてからの未処理細胞は、大部分の細胞がG1にあり、わずかな割合の細胞がS又はG2/Mにある典型的な細胞周期分布パターンを示した。UI-EP001又はUI-EP002のいずれかによる処理後、MCF-7、SKBR3、及びHCC1806乳がん細胞において、G1の有意な減少と共にG2/Mピークの劇的な増加が観察された。このシフトは、ERaを発現せず、機能的ERb又はGPERを少量しか発現しないMDA-MB-231細胞では観察されず、これは、E2-PROTACSが片方又は両方のエストロゲン受容体を減少させることにより、G2/M期で細胞周期停止を誘導することを示唆している。予想通り、部分的PROTACで処理した細胞は、G1とG2/Mの間で総細胞集団のパーセンテージの大幅な変化を示さなかった。これらのin vitroの結果は、ERα及び/又はGPERの分解が、ER+だけでなくER-乳がんの治療にもin vivoで有効である可能性があることを強く示唆している。
【0189】
考察
エストロゲンの発がん作用は、核ステロイドホルモン及びGタンパク質共役受容体スーパーファミリーに属する細胞受容体を介して現れる(Filardo et al.,2018)。ERを標的としたPROTACが多数開発されているが、GPERを分解する能力についてはまだ試験されていない。ここでは、単一のエストラジオールベースのPROTACが両方の受容体クラスを標的にできるという原理証明の証拠が提供されている。in silicoモデリング及び構造活性相関データに基づいて、17Cがエステル結合した14又は32原子長のPEGスペーサーであって、小分子VHL E3ユビキチンリガーゼ動員(recruitment)モチーフ(S,R,S)AHPCに結合したPEGスペーサーで置換されたエストラジオールベースのターゲティングドメインを含む2つの第一世代PROTAC(UI-EP001及びUI-EP002)を設計した。各PROTACは、核ER及びGPERに対して高い結合親和性を示し、GPER及びERに対して、測定可能な検出可能なオフターゲット活性を伴わない選択的なプロテアソーム依存性分解活性を示した。最も重要なことは、UI-EP001及びUI-EP002が標的特異的な細胞毒性及びG2/M停止を示したことであり、これは第一世代の総エストロゲン受容体PROTACにとって望ましいin vitro特性である。
【0190】
PROTACプラットフォームは、ヒト疾患を治療する可能性がある幅広いタンパク質を選択的に分解するために採用されている。これらには、限定するものではないが、ステロイドホルモン受容体(AR、ERa、ERRa、RAR)(Itoh et al.,2011;Peng et al.,2019;Schneekloth et al.,2008)、ブロモ-及びエキストラ-ターミナル(BET)ファミリータンパク質(Lu et al.,2015;Winter et al.,2015)、キナーゼ(Bondesonet al.,2018;Lai et al.,2016)、及び微小管関連タンパク質(Tau、TACC3)(Silva et al.,2019)が含まれる。このグループは最近、GPCRを含むように拡張された(Li et al.,2020)。PROTACが、異なる細胞内コンパートメントに局在する特有の構造特性を有するタンパク質を効率的に標的にできるという単なる事実は、その興味深い有望性を示している。しかし、単一のタンパク質を標的とするPROTACの開発は簡単なことではない。最終的に、標的の最適化は、様々なターゲティングドメイン及び/又は反応基(warhead)ドメインを評価し、化学的スペーサーの長さ及び組成、ならびにヘテロ二官能性分子全体の全体的な立体化学を変更する多数の微調整を行うことによって達成される。理論的には、異なる物理化学的環境に存在する特有の構造を有する、構造的及び機能的に異なる2つのエストロゲン受容体を標的とすることができる単一のPROTACを設計することは、より困難な課題となり得るが、ER+乳がんの治療には、これらの腫瘍の大多数もGPERを発現するため、必要なことである。過去10年間に様々なERa-PROTACが開発されたが、これらの化合物が非常に関連性の高いエストロゲン受容体であるERbや、より最近報告された原形質膜エストロゲン受容体であるGPERも標的とすることができるかどうかを示した研究は一つも発表されていない。
【0191】
先駆的なER-PROTACはペプチド反応基ドメインを含んでおり、その結果、E3ユビキチンリガーゼSCFb-TCRPを効果的に動員するために、低い細胞透過性及び細胞酵素活性への依存性を示した(Sakamoto et al.,2003)。より最近の第2世代ER-PROTACは、そのターゲティングドメインにERアンタゴニストを使用し、低いナノモル濃度で高い細胞透過性と分解能力を示す(Hu et al.,2019:Denizu 2012;Okhira et al.,2013)。これらの後者のPROTACは、ERと同様にGPERも標的とする可能性があるが、いずれかの受容体のERアンタゴニストと比較して予想されるE2のRBAの減少により、おそらく程度は低くなる。実験的方法論による薬物-標的相互作用の評価は、標的の特異性及び選択性を評価するための重要なステップである。しかし、通常、ER-PROTACの結合特性は測定されておらず、多くの場合、標的選択性は評価されていない。UI-EP001及びUI-EP002の両方が、低いナノモル濃度範囲で計算されたKd値で両方の標的エストロゲン受容体に対して高い親和性を示し、これは、17C置換E2ターゲティングドメインがGPER及びERの両方のリガンド接触部位とよく相互作用することを示唆している。17C置換E2-FITC、及び、GPERを発現し、RT-PCRによってERaもERbも検出されないインタクトSKBR3乳がん細胞を使用して(Vladusic et al.,1998)、UI-EP001及びUI-EP002について30.2nMのKd値が測定された。これは、1,3,5(10)-エストラトリエン-3,17β-ジオール17-ヘミスクシナート:BSA(E2-BSA)が細胞内cAMPのGPER依存性活性化を刺激できるという過去の証拠と一致している(Filardo et al.2007)。しかし、これらの発見は、遊離E2は組換えERa又はERbに結合した125I-16a-ヨード-E2を置換するか、又は電気泳動移動度アッセイでゲルシフトを誘発することができたが、E2-BSAはできなかったことを示した公開済みの研究と矛盾している(Stevis et al.,1999)。遊離17b-E2、UI-EP001又はUI-EP002は、内因性ERa及びERbを含むMCF-7細胞ホモジネートから調製されたサイトゾル画分に結合したE2-FITCを置換し、測定されたKd値はそれぞれ5.6nM、17.2nM及び11.4nMであった。本願の調査結果とStevis及び同僚の調査結果との不一致の理由は明確ではないが、結合プローブの違いと、E2及びFITCの1:1の化学量論に対してBSAに対するE2の多価性の違いの両方に関連している可能性がある。1つの可能性は、GPERに対するE2-FITCの結合動態が125I-16a-ヨード-E2と比較して異なり、これがプローブの変位に影響を与えているということである。とはいえ、これらのデータは、我々の第1世代のE2-PROTACが新薬の最も重要な特徴である、意図した標的に対して特異的かつ高い親和性で相互作用する能力を備えていることを示唆している。
【0192】
その設計により、PROTACは選択的タンパク質標的分解のがん治療薬として有望である。所与のPROTACに対する標的特異性を実証する目的でのゴールドスタンダードアッセイは、質量分析分析を使用することで、処理細胞と未処理細胞のプロテオームの全体的な読み取り値を比較するものである(Beveridge et al.,2020)。実際的な観点から、標的特異性は、がん治療標的を発現するか又は欠くがん細胞の生存率の差を評価することによって最もよく評価することができる。これは、ER及びGPERを選択的に分解するように設計された二重特異性PROTACを評価するために特に重要である。本研究では、免疫蛍光法、生化学的及び生物学的方法を用いて標的選択性を評価した。免疫蛍光分析により、細胞表面と細胞内の両方で、核内の、及びGPERについてのERa及びERbの選択的な部位特異的減少を示すことができた。UI-EP001又はUI-EP002による細胞内GPERの分解は、粗膜画分及びスクロース密度遠心分離によって濃縮された原形質膜画分からの3H-17b-E2のGPER依存性の特異的置換を示した我々の以前の発見と一致している(Thomas et al.,2005)。選択性は、E2-PROTAC処理細胞においてPR、CXCR4、及びb1ARの減少が測定されなかったという事実によって実証された。同様に、バイナリ発光相補性により、外因性E2がE2-PROTACを介したHiBiT-GPER又はHiBiT-ERの分解をブロックでき、アルドステロンはできないことを示すことにより、標的選択性も実証された。最後に、UI-EP001及びUI-EP002の標的選択性が生物学的アッセイで示され、エストロゲン受容体の異なる補体を発現する様々な乳がん細胞株において生存率及び細胞周期分布に対する相対的な影響を比較した。生存率の低下及びG2/M停止は、3つのエストロゲン受容体すべてを発現するMCF-7細胞で観察されたが、ERaを欠き低レベルの機能的ERb及びGPERを発現するMDA-MB-231細胞では観察されなかった。これが、ER又はGPER、又はそれらの両方の減少によるものかどうかは、これらの細胞では明らかではない。他の研究者がER陽性MCF-7、BT-474及びCAMA-1乳がん細胞株においてER-PROTACの細胞毒性を評価したこと、及びこれらの細胞もGPERを発現していることは注目に値する(Kargno et al.,2019;Zhang et al.,2004)。この研究のいずれかのE2-PROTACは、her-2/neu過剰発現及びTNBC腫瘍免疫表現型を表すER陰性、GPER陽性SKBR3及びHCC-1806乳がん細胞株の処理後に、細胞毒性及びG2/M停止を誘発した。様々な化学療法剤が細胞周期の様々な段階で細胞周期停止を示す一方で、E2-PROTACがG2/M停止を誘導するという観察結果は、アンドロゲン受容体(AR)-PROTAC、ARD-61もG2/M停止を誘導するという以前の報告と一致している(Zhao et al.,2020)。いくつかの点で、UI-EP001又はUI-EP002が、細胞毒性効果及び細胞周期停止を誘発することは、ER又はGPERのいずれかの完全な損失が観察されなかったという事実から、やや予想外のように見えるかもしれない。これらの結果の考えられる説明の1つは、GPCRが概して、リガンド占有率と受容体応答との間で双曲線関係を示すという事実に関連している可能性があるということである。この関係は「部分占有率」と呼ばれ、受容体活性の有意な低下を観察するために原形質膜でGPERの総量を排除する必要がない理由を示唆している。さらに重要なことに、本願のin vitroでの発見は、E2-PROTACがGPERを発現する乳がんだけでなく、エストロゲン標的療法では治療できないと考えられている一部のER陰性乳がんに対しても治療効果を有する可能性があることを示している。
【0193】
Arvinas,LLCは、ER(ARV-471)又はAR(ARV-110)のいずれかを標的とするPROTACを開発し、がんの前臨床マウスモデルで有望な成功を収めている。両方のPROTACは、それぞれ前立腺がんと乳がんのフェーズIの治験(clinicaltriais.govのNCT03888612及びNCT04072952)に入っている(Flanagan et al.,2018;Neklessa et al.,2019)。PROTACには、乳がんの治療において現在のSERDよりも魅力的ないくつかの利点がある(Neklessa et al.,2019)。PROTACは本質的に触媒性であるため、内分泌療法の主な制限の1つである、過剰発現又は変異による獲得薬剤耐性を克服するのに理想的に適している(ただし、ユビキチン化アクセプター部位が変更されていない場合である)。実際、ARV-471は、細胞株及びPDXモデルで臨床的に関連するERα変異体(Y537S及びD538G)を効率的に分解することが実証されている(Flanagan et al.,2018)。ARV-471のターゲティングドメインは非公開かつ独占所有物であるため、GPERも標的にできるかどうかは明らかではない。同様に、他の多くのER-PROTACが開発されており、これらのPROTACも、GPERを標的にしているかどうか明らかではない。GPERは、ER陽性乳がんの60%で発現し(Filardo et al.,2008)、進行がんを予測する臨床変数と関連し、ER陰性乳がん及びTNBCで一般的に発現し、抗エストロゲン療法に対する耐性と関連しているため、GPERを標的とするがん治療薬の開発は極めて重要である。総エストロゲン受容体PROTAC、例えばE2-PROTACS、UI-EP001及びUI-EP002は、この目的に最適であり得、既存の抗エストロゲン療法を補完するであろう。
【0194】
実施例3
スキーム
【0195】
【0196】
合成手順
UI-EP001(8)の合成
【0197】
【0198】
ジ-tert-ブチル3,6,9,12-テトラオキサテトラデカンジオアート(1)。トリエチレングリコール(1.50g、1.36ml、10mmol、1eq.)、鉱油中60%のNaH(800mg、20mmol、2eq.)及びブロモ酢酸tert-ブチル(4.50g、3.4ml、20mmol、2eq.)の混合物を、10mLのジオキサンに溶解させた。反応混合物を一晩撹拌し、続いて飽和NH4Clでクエンチした。混合物をEtOAcで抽出し、Na2SO4で乾燥させ、次いで真空中で濃縮した。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=8:2)にかけ、化合物1を無色油状物として得た。収率:3.25g、8.60mmol(92%)。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ3.99(s,4H),3.72-3.66(m,16H),1.46(s,9H)。C18H34O8[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:379.23、検出値379.46。
【0199】
【0200】
ジ-tert-ブチル3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン二酸(2)。DCM中50%v/vトリフルオロ酢酸(TFA)を溶媒とする化合物1(1.74g、4.62mmol)の溶液(1mmol当たり6mL)を室温で2時間撹拌した。TLC分析(DCM中10%メタノール)は、出発物質の完全な変換を示した。次に、反応混合物を真空下で濃縮し、粗生成物を凍結乾燥して、目的の生成物2を得た(定量的収率)。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ4.03(s,4H),3.85-3.42(m,16H)。C10H18O8[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:267.10、検出値267.56。
【0201】
【0202】
4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンゾニトリル(3)。4-ブロモベンゾニトリル(5.00g、27.5mmol)、4-メチルチアゾール(4.98mL、54.7mmol)、KOAc(5.40g、55.0mmol)、及び酢酸パラジウム(62.0mg、0.27mmol)の混合物を、20mLのDMAcに溶解させた。混合物を一晩120℃に加熱し、冷却し、EtOAcで希釈した。溶液をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。得られた油をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=9:1→1:1→1:9)にかけた。化合物3が黄色の固体(4.49g、22.5mmol、82%)として得られた。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ8.76(s,1H),7.75-7.71(m,2H),7.60-7.55(m,2H),2.58-2.56(m,3H)。C11H8N2S[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:201.04、検出値201.36。
【0203】
【0204】
(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)フェニル)メタンアミン(4)。化合物3(4.49g、22.5mmol)を300mLの無水MeOHに溶解させた。塩化コバルト(CoCl2)(4.39g、33.75mmol)を加え、溶液を氷浴で30分間冷却した。NaBH4(5.22g、138mmol)を20分かけて分割して添加した。混合物をさらに90分間撹拌し、冷H2Oでクエンチした。混合物を濾過し、H2Oで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(DCM:MeOH=99:1→90:10、0.5MのEt3Nを使用)により精製した。化合物4を白色粉末(3.44g、16.88mmol、75%)として得た。1H NMR(300MHz,DMSO-d6):δ8.94(s,1H),7.42(m,4H),3.77(s,2H)、2.45(s,3H)。13C NMR(300MHz,DMSO-d6)δ152.23,147.98,145.01,131.89,129.95,129.01,127.35,45.23,15.98。C11H12N2S[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:205.07、検出値205.77。
【0205】
【0206】
(4R)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)-Boc-ピロリジン-2-カルボキサミド(5)。化合物4(2.04g、10.00mmol)、Boo-Hyp-OH(2.31g、10.00mmol)、DIPEA(6.95mL、40.00mmol)、及びHBTU(4.16g、11.00mmol)の混合物を、50mLの無水DMFに溶解させた。混合物を室温で一晩撹拌し、次いでH2Oで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM:MeOH=99:1→90:10)で精製した。化合物5を無色油状物として得た(2.79g,6.7mmol,67%)1H NMR(300MHz,CDCl3)δ8.69(s,1H),8.28-8.04(m,1H),7.45-7.32(m,4H),4.52-4.44(m,3H),4.10(t,1H),3.10-3.00(m,1H),2.88-2.77(m,1H),2.54(s,3H),2.41-2.32(m,1H),2.07-1.93(m,1H),1.43(s,9H)。13C NMR(300MHz,CDCl3)δ172.15,153.88,152.12,148.02,139.75,131.52,130.66,129.05,128.05,77.25,65.48,55.98,53.95,42.16,28.96,14.86。C21H27N3O4S[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:418.17、検出値418.03。
【0207】
【0208】
(4R)-1-((S)-2-Boc-アミノ-3,3-ジメチルブタノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(6)。化合物5(2.79、6.7mmol)を50%v/vのTFA/DCM(1mmol当たり6mL)に溶解させ、室温で2時間撹拌した。混合物を濃縮し、さらに精製することなく次のステップに使用した。最後のステップの生成物であるBoc-L-tert-ロイシン(1.54g、6.7mmol)、HBTU(2.79g、7.37mmol)、及びDIPEA(4.66mL、26.8mmol)の混合物を50mLのDMFに溶解させた。混合物を室温で一晩撹拌し、H2Oで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を飽和NaHCO3溶液、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM:MeOH=99:1→90:10)で精製し、化合物6を白色の粉末として得た(2.09g、3.95mmol、2ステップ後の収率59%)。1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ8.98(s,1H),7.56-7.50(m,4H),4.91-4.86(m,4H),4.08(s,1H),3.36-3.31(m,1H),2.58(s,3H),2.34-2.30(m,1H),2.13-2.07(m,1H),1.20-1.02(m,18H)。13C NMR(300MHz,DMSO-d6)δ173.12,170.15,157.23,153.48,148.16,139.68,132.36,130.12,128.79,125.56,75.69,65.26,58.56,55.23,53.29,42.56,38.26,36.18,27.48,25.42,15.99。C27H38N4O5S[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:531.26、検出値531.49。
【0209】
【0210】
部分的PROTAC(7)。化合物5(2.09、3.95mmol)を50%v/vのTFA/DCM(1mmol当たり6mL)に溶解させ、室温で2時間撹拌した。混合物を濃縮し、さらに精製することなく次のステップに使用した。最後のステップの生成物(1eq)、化合物2(2.1g、7.9mmol、2eq)、HBTU(1.65g、4.30mmol)、及びDIPEA(2.75mL、15.8mmol)の混合物を50mLのDMFに溶解させた。混合物を室温で一晩撹拌した。TLCが出発物質の完全な反応を示したので、混合物をDCMで希釈し、ブラインで洗浄し、乾燥させ、濃縮した。生成物をHPLC逆相カラム(Zorbax300SB-C18、21.2×150mm、5uCrt)で精製して、所望の生成物7を得た。収率:(1.21g、2工程後46%)。1H NMR(500MHz,MeOD-d4)δ9.68(s,1H),7.56-7.50(m,4H),4.67.-4.69(t,1H),4.58-4.55(m,2H),4.43-4.40(d,1H),4.15-4.11(m,4H),4.08-4.05(m,17H),3.78-3.80(m,1H),3.85-3.71(m,1H),3.36-3.31(m,1H),2.58(s,3H),2.34-2.30(m,1H),2.13-2.07(m,1H),1.20-1.02(m,9H)。13C NMR(500MHz,MeOD-d4)δ172.97,170.73,170.31,151.43,147.69,138.87,132.01,130.15,129.00,127.58,70.93,70.37,70.24,70.20,69.77,69.73,69.66,59.41,56.75,56.69,50.39,42.33,37.53,37.70,29.26,25.56,14.40。C31H44N4O10S[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:679.29、検出値679.89。
【0211】
【0212】
UI-EP001(8)。化合物7(300mg、0.46mmol)を、DMF5mL中のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(53mg、0.46mmol)によって3時間活性化し、続いて17β-エストラジオール(125mg、0.46mmol)及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(71.3mg、0.46mmol)を添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌し、逆相HPLCでモニタリングした。粗生成物をDCM:MeOH(90:10)で希釈し、ブラインで洗浄し、乾燥させ、濃縮した。生成物8がHPLC逆相カラム(Zorbax300SB-C18、21.2×150mm、5uCrt)によって得られた。収率(119mg、28%)。1H NMR(500MHz,MeOD-d4)δ9.64(s,1H),7.56-7.49(m,4H),7.09-7.07(d,1H),6.55-6.53(m,1H),6.48-6.49(d,1H),4.71-4.67(t,1H),4.58-4.55(m,2H),4.12-3.95(m,17H),3.86-3.84(d,1H),3.74-3.71(m,1H),3.68-3.65(t,1H),2.78-2.77(m,2H),2.57(s,3H),2.32-2.30(m,2H),2.14-1.95(m,4H),1.74-1.67(m,1H),1.54-1.18(m,7H),1.15(s,9H),0.78(m,3H)。13C NMR(500MHz,MeOD-d4)δ173.12,170.15,157.23,153.48,148.16,139.68,132.36,130.12,128.79,125.56,75.69,65.26,58.56,55.23,53.29,42.56,38.26,36.18,27.48,25.42,15.99。C50H68N4O11S[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:933.46、検出値933.23。
【0213】
UI-EP002(10)の合成
【0214】
【0215】
化合物(9)。Fmoc-NH-PEG8-CH2CH2COOH(300mg、0.3mmol)を、1mLのDMF中のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(34.5mg、0.3mmol)によって3時間活性化し、続いて17β-エストラジオール(81.6mg,0.3ミリモル)及びEDC(46.6mg、0.3ミリモル)を添加した。反応混合物を室温で72時間撹拌し、逆相HPLCでモニタリングした。粗生成物をHPLC逆相カラム(Zorbax300SB-C18、21.2×150mm、5uCrt)によって精製して、化合物9を得た。収率(41mg、16%)。1H NMR(500MHz,MeOD-d4)δ7.12-7.11(d,1H),6.59-6.57(m,1H),6.52-6.51(d,1H),4.26-4.24(m,1H),3.77-3.74(t,2H),3.71-3.56(m,31H),3.34-3.32(m,2H),2.83-2.80(m,2H),2.59-2.56(t,2H),2.36-2.31(m,1H),2.17-2.14(m,1H),2.09-2.05(m,1H),2.01-1.97(m,1H),1.92-1.88(m,1H),1.59-1.19(m,8H),0.81(s,3H)。13C NMR(500MHz,MeOD-d4)δ171.62,152.12,141.58,138.85,135.04,128.85,125.00,123.42,122.38,117.17,112.27,109.95,78.73,67.76,67.74,67.67,67.59,67.53,67.14,64.07,63.81,47.54,40.59,38.02,36.76,34.26,32.13,26.94,26.93,26.88,24.75,23.83,20.25,7.90 C51H69NO13[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:905.11、検出値905.19。
【0216】
【0217】
UI-EP002(10)。化合物9(35.0mg、0.39mmol)のFmoc基を、DMF(5mL)中のEt3N(1mL)によって除去した。Et3Nをロータリーエバポレーターによって反応混合物から除去し、続いて部分的PROTAC7(264.4mg、0.39mmol)、HATU(178.6mg、0.47mmol)及びDIPEA(0.271mL、1.56mmol)を添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌し、逆相HPLCでモニタリングした。生成物10が、HPLC逆相カラム(Zorbax300SB-C18、21.2×150mm、5uCrt)によって得られた。収率(26mg、52%)。1H NMR(500MHz,MeOD-d4)δ9.69(s,1H),7.57-7.51(m,4H),7.12-7.11(d,1H),6.59-6.57(m,1H),6.52-6.51(d,1H),4.71-4.68(m,1H), 4.59-4.56(d,1H),4.44-4.40(d,1H),4.26-4.24(m,1H),4.09(s,1H),3.88-3.86(m,1H),3.77-3.74(t,2H),3.71-3.56(m,47H),3.36-3.32(m,6H),2.83-2.23(m,2H),2.59-2.56(m,5H),2.36-2.31(m,1H),2.21-2.14(m,1H),2.10-2.03(m,1H),2.01-1.97(m,1H),1.92-1.88(m,1H),1.76-1.70(m,1H),1.43-1.30(m,8H),1.15(s,9H),0.81(s,3H)。13C NMR(500MHz,MeOD-d4)δ174.01,167.15,154.52,143.97,141.25,137.43,131.25,127.39,126.77,125.81,124.81,124.78,119.56,114.67,112.34,81.12,70.16,70.13,69.98,69.93,69.54,66.47,66.21,49.94,42.98,40.41,39.16,34.52,29.33,29.32,29.17,27.14,26.22,22.64,10.30。C68H103N5O20S[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:1342.69、検出値1342.15。
【0218】
E
2
-FITC(12)の合成
【0219】
【0220】
化合物(11)。17α-エチニルエストラジオール(592mg、2mmol)を、Et3N(20ml)中の4-(t-ブチルオキシカルボニルアミノメチル)ヨードベンゼン(778mg、2.33mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムPd(Ph3)4(5モル%)、及びCul(5モル%)の混合物にアルゴン雰囲気下で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いで溶媒を真空下で減少させた。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=20:80→DCM:MeOH=90:10)により精製して、黄色の粉末生成物を得た。収率(756mg,78%)。1H NMR(300MHz,MeOD-d4)δ7.43-7.41(m,2H),7.28-7.16(m,2H),6.67-6.64(m,1H),6.59-6.58(d,1H),4.71-4.67(t,1H),4.33-4.31(d,1H),2.83(m,2H),2.43-1.72(m,15H),1.57-1.38(s,9H),0.94(s,3H)。13C NMR(500MHz,MeOD-d4)δ155.12,143.25,131.59,130.98,125.16,124.33,113.25,113.21,95.23,84.03,77.69,62.22,49.96,45.11,42.68,35.66,33.22,27.22,26.45,25.56,24.21,13.56。C32H39NO3[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:486.29、検出値486.85。
【0221】
【0222】
E2-FITC(12)。50%v/vのTFA/DCM中の化合物11(485mg、1mmol)の溶液を室温で2時間撹拌した。TLCが完全な変換を示した後、混合物をDCMと5~6回共蒸発させてTFAを除去した。残留物をDMF(5mL)に再溶解させ、続いてFITC(429mg、1.1mmol)及びピリジン(0.25mL)を添加した。反応混合物を暗所で室温で一晩撹拌した。乾燥後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=95:5→90:10)により精製して、化合物12を黄色の油状物(355mg、45%)として得た。1H NMR(300MHz,MeOD-d4)δ10.23(s,1H),8.05(m,1H),7.83-7.79(m,1H),7.43-7.41(m,2H),7.27(m,2H),6.68-6.53(m,8H),4.70(t,1H),4.32(m,1H),2.85(m,2H),2.40-1.53(m,15H),0.93(s,3H)。C48H42N2O7S[M+1]+のHRMS(ESI+)計算値:791.27、検出値791.28。
【0223】
参考文献
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
すべての出版物、特許、及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。上記の明細書では、本発明をその特定の好ましい実施形態に関して説明し、多くの詳細を説明のために記載したが、当業者には、本発明が追加の実施形態を受け入れることができること、及び、本明細書の特定の詳細は、本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更することができることは明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E3ユビキチンリガーゼリガンドに結合したリンカーに結合したGタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)リガンドを含む分子。
【請求項2】
前記GPERリガンドは、17β-エストラジオール、エストロン、フィトエストロゲン、キセノエストロゲン、エストリオール、エストリオール3-硫酸、エストリオール17-硫酸、G-1、G-15、G-36、ゲニステイン、ダジン、又はケルセチンを含む、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
前記フィトエストロゲンは、フラボン、イソフラボン、リグニン、サポニン、クメスチン、又はスチルベンを含む、請求項2に記載の分子。
【請求項4】
前記GPERリガンドはGPERアンタゴニストである、請求項1~3のいずれか一項に記載の分子。
【請求項5】
前記E3ユビキチンリガーゼリガンドはフォン・ヒッペルリガーゼ(VHL)リガンドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の分子。
【請求項6】
前記E3ユビキチンリガーゼリガンドは、セレブロン、レナリドマイド、ポマリドマイド、イベルドマイド、(S,R,S)-AHPC、サリドマイド、VH-298、CC-122、CC-885、E3リガーゼリガンド8、TD-106、VL285、VH032、VH101、VH298、VHLリガンド4、VHLリガンド7、VHL-2リガンド3、E3リガーゼリガンド3、E3リガーゼリガンド2、又はBC-1215を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の分子。
【請求項7】
前記リンカーは、原子10~50個を有する鎖を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の分子。
【請求項8】
前記リンカーはアルキルリンカーである、請求項7に記載の分子。
【請求項9】
前記リンカーはヘテロアルキルリンカーである、請求項7に記載の分子。
【請求項10】
前記リンカーはポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の分子。
【請求項11】
前記リンカーは3~15個のPEG単位を含む、請求項10に記載の分子。
【請求項12】
前記リンカーは(PEG)
mNH(CO)(PEG)
nを含み、n及びmは独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15である、請求項10に記載の分子。
【請求項13】
nは3、4、5、又は6である、請求項12に記載の分子。
【請求項14】
mは7、8、9、又は10である、請求項12に記載の分子。
【請求項15】
特定量の請求項1~14のいずれか一項に記載の分子を含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記GPERリガンドが17β-エストラジオールを含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記E3ユビキチンリガーゼリガンドはフォン・ヒッペルリガーゼ(VHL)リガンドである、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記リンカーはPEGを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記リンカーは3~12個のPEG単位を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
哺乳動物においてがんを予防、阻害、又は治療する
ための、請求項15~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
哺乳動物においてGPER陽性がんを予防、阻害、又は治療する
ための、請求項15~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記がんが内分泌抵抗性がんである、請求項20又は21に記載の
医薬組成物。
【請求項23】
前記がんがホルモン療法抵抗性がんである、請求項20又は21に記載の
医薬組成物。
【請求項24】
前記がんがトリプルネガティブ乳がんである、請求項20又は21に記載の
医薬組成物。
【請求項25】
前記がんが婦人科がんである、請求項20又は21に記載の
医薬組成物。
【請求項26】
前記がんが卵巣がんである、請求項20又は21に記載の
医薬組成物。
【請求項27】
前記がんが子宮内膜がんである、請求項20又は21に記載の
医薬組成物。
【請求項28】
前記哺乳動物がヒトである、請求項20~27のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項29】
前記
医薬組成物は全身
投与されるものである、請求項20~28のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項30】
前記
医薬組成物は経口
投与されるものである、請求項20~29のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項31】
前記
医薬組成物は持続放出剤形である、請求項20~30のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【国際調査報告】