(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】相乗作用をもつ制御を備えた閉ループ薬物注入システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
A61M5/168 504
A61M5/168 512
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564524
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 ES2021070273
(87)【国際公開番号】W WO2021214368
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522412987
【氏名又は名称】ウニベルシダ ポリテクニカ デ マドリード
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD POLITECNICA DE MADRID
【住所又は居所原語表記】Ramiro de Maeztu, 7, 28040 Madrid, Spain
(71)【出願人】
【識別番号】522412998
【氏名又は名称】フンダシオン パラ ラ インベスティガシオン エ イノヴァシオン バイオメディカ デル ホスピタル ウニベルシタリオ インファンタ レオノア イェ デル ホスピタル ウニベルシタリオ デル スレステ
【氏名又は名称原語表記】FUNDACION PARA LA INVESTIGACION E INNOVACION BIOMEDICA DEL HOSPITAL UNIVERSITARIO INFANTA LEONOR Y DEL HOSPITAL UNIVERSITARIO DEL SURESTE
【住所又は居所原語表記】Hospital Virgen de la Torre, C/ Puerto Lumbreras 5,2a planta, 28031 Madrid, Spain
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ヘレロ, アグスティン
(72)【発明者】
【氏名】ピメンテル ナランホ, ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンド ペレス, マリア エレナ
(72)【発明者】
【氏名】カルヴォ ヴェシノ, ホセ マリア
(72)【発明者】
【氏名】アバド グルメタ, アルフレド
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066FF01
4C066QQ17
4C066QQ24
4C066QQ25
4C066QQ44
4C066QQ61
4C066QQ82
(57)【要約】
本発明の目的は、例えば手術中に満足のいく麻酔状態をもたらすために、患者に適用可能な薬剤注入を自動的に計算するシステムを提供することにある。 自動計算システムは、患者の状態を評価するための生理学的モニターの目標値によって決定される。 自動注入により、患者の安全性が向上し、術後の罹患率と死亡率が減少し、専門医による継続的な意思決定が減少する。本発明は、複数のモニターによって分析される患者の状態の偏差によって定義される制御エラーに基づいて、様々な薬物の注入を計算するMIMO-PIDコントローラーを実装する電子システムに関する。自動薬剤注入は、過少/過剰注入を防止する安全システムによって決定され、修正及びフィードバックシステムによって補完される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相乗作用を持つ薬剤を患者に自動で複数静脈内注入するためのシステムであって、
-患者(1)に多数の薬剤を送達するように構成された注入ポンプサブシステム(2)と、
-患者の状態情報に関する一組の生理学的変数を測定するように構成されたモニタリングサブシステム(3)と、
-既定の初期注入量(4)、モニタリング目標値(8)、生理学的変数の測定値のフィードバック(6)及び薬剤間の相乗作用に基づき、注入ポンプサブシステム(2)によって送達される各薬剤(5)の量を適応させるように構成された制御サブシステム(24)とを備え、当該制御サブシステムは、
○モニタリング目標値(8)及び生理学的変数の測定値のフィードバック(6)に基づいて誤差(12,13,14)を計算するように構成された制御誤差生成モジュール(11)と、
○制御誤差生成モジュール(11)で計算された誤差(12,13,14)及び既定の初期注入量(4)に基づいて各薬剤の制御注入量(15)を判定するように構成されたコントローラ(16)と、
○生理学的変数の測定値をモニタリングシステム(3)から受信し、コントローラ(16)の制御注入量(15)を修正するように構成された修正モジュール(17)であって、前記注入量は生理学的変数をプリセットされた安全な範囲に設定する上限閾値の関数として増加するか、下限閾値の関数で減少する修正モジュールと、
○各薬剤の制御注入量(15)を受信し、各薬剤の投与のしすぎがないようにするため、前記注入量を前記下限閾値及び上限閾値という2つの注入値間に限定することで修正するように構成された安全性モジュール(19)とを備える、システム。
【請求項2】
制御誤差生成モジュール(11)が、モニタリングサブシステム(3)で患者ステータス情報とともに測定される一組の生理学的変数の各々の変数に対して、制御ベクトル(12,13,14)を生成するように構成されており、コントローラは、複数入力/複数出力(MIMO)タイプの多変数キャラクターで構成され、薬剤ごとに複数入力/単一出力(MISO)制御サブシステムを含み、制御誤差を受信し薬剤ごとに制御注入量ベクトル(15)を判定するように構成された単一入力/単一出力(SISO)コントローラを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
安全性モジュール(19)と注入ポンプサブシステム(2)との間に接続された定量モジュールをさらに備え、当該定量モジュールが前記安全性モジュールの出力ベクトルを注入ポンプサブシステム(2)によって解釈可能なものに適合させるように構成される、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
制御サブシステム(24)が、モニタリングサブシステム(3)によって送信されたフィードバック信号(6)を受信するように構成されたフィルターバンク(9)をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
制御誤差生成モジュール(11)が、モニタリングサブシステム(3)で測定される患者ステータス情報とともにモニタリングされる一組の生理学的変数の各々の変数に対していくつかの誤差生成サブモジュールを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
薬剤が患者を麻酔状態に誘引する麻酔薬であり、モニタリングサブシステムにより測定される一組の生理学的変数が患者の前記麻酔状態に関する情報を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
患者麻酔ステータス情報に関する一組の生理学的変数が、eBIS、eNOX及びeNMB又はその他同等の催眠、痛覚又は筋弛緩のモニター対象をそれぞれ含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
注入ポンプサブシステム(2)が、催眠特性を有する薬剤の第1の注入ポンプ、鎮痛特性を有する薬剤の第2の注入ポンプ及び筋弛緩特性を有する薬剤の第3の注入ポンプを備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
催眠特性を有する薬剤がプロポフォールであり、鎮痛特性を有する薬剤がレミフェンタニルであり、筋弛緩特性を有する薬剤がロクロニウムである、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
患者の麻酔状態やバイタルサインを変えるその他薬剤の注入のための追加のポンプをさらに備える、請求項8又は請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
制御サブシステム(24)が、様々なゲインを通じて各SISOコントローラに対してコントローラをチューニングする方法、並びに、体重、身長、性別、筋肉量及び臨床履歴からなる患者特有の生理学的パラメータのうち少なくとも1つの方法に基づき、当該患者のために特別にカスタマイズされる、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
MIMOコントローラがMIMO-PID多変数コントローラであり、MISO制御サブシステムがMISO-PID型制御サブシステムであり、SISOコントローラはSISO-PID型に属する、請求項2から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
制御誤差生成モジュール(11)の制御ベクトル(12.13.14)が、比例非対称誤差成分(12.1,13.1,14.1)、積分非対象誤差成分(12.2,13.2,14.2)、微分非対称誤差成分(12.3,13.3,14.3)及び付加的な誤差成分を有し、SISO-PIDコントローラ(25.1,25.2,25.3,26.1,26.2,26.3,27.1,27.2,27.3)が、各コントロールベクトルの比例非対称誤差成分、積分対称誤差成分及び微分非対称誤差成分をそれぞれ受信し、各薬剤について制御注入量ベクトル(15)を決定するように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
制御サブシステム(24)が、さらに1型糖尿病患者のグルコース管理のために構成されており、モニタリングサブシステムが、さらに患者のグルコース測定のために構成されており、注入サブシステムが、さらに連続的かつ制御された量のインシュリンとグルカゴンを患者に送達するために構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PID(proportional-integral-derivative)コントローラの変法に基づく一組の制御アルゴリズムを薬物の自動注入のために使用して、例えば麻酔等の薬物の静脈投与(IV)等において閉ループ(CL)制御を行う分野の枠組みに入っている。
【0002】
本発明は、生体系の自動制御の分野に属する。またその応用の主な分野は、麻酔行為におけるIV薬物注入の自動化複数制御である。しかしながら、患者が数種の薬剤を注入されて複数監視される必要がある急性又は慢性疾患の管理に使用され得る。本発明の直接の応用は、グルコールモニタリングとインシュリン及びグルカゴンを連続的に外部から注入することを通した1型糖尿病の管理のための人工膵臓への使用である(非特許文献1)。
【0003】
同様に同じコンセプトの元で、麻酔を適用したり、様々な薬を動物に同時注入したりするために獣医分野に応用し得る。動物の生理学的変数のモニタリングと薬剤の同時投与に必要な急性又は慢性の病状管理にも使用され得る。
【背景技術】
【0004】
米国麻酔学委員会(the American Board of Anaesthesiology)によれば、麻酔学は、手術、産科、治療及び診断処置において、疼痛に対する非感受性を与える医学の一分野である。麻酔医は、非外傷性の手術を患者に実施し得る状態を確立するため、様々なアクセスモードで人体に薬剤を投与する。
【0005】
一般麻酔の今日の技術は、以下の適合すべき3つの主目的を確立している:1)催眠深度(DoH);2)鎮痛(ANG);3)筋肉弛緩(MRX)。これらの変数をそれぞれ見積もるための方法が存在する(本明細書においてこれらの変数はモニターと称される):1)二波長指数(BIS)は、経験的に導かれた多因子脳波図の評価基準であり、与えられた指数は、患者の催眠深度と相関している(非特許文献2);2)侵害受容刺激指数(NOX)は、使用された薬剤の重み付け濃度から計算される単一変数指数であり、麻酔下での侵害刺激に対する応答の可能性を予測するために提案されている(非特許文献3);及び3)筋弛緩剤は手術中の神経筋遮断(NMB)を望ましいレベルに保つために投与される(非特許文献4)。そのほか、心電図、血圧、血中酸素飽和度又はカプノグラフなどの専門家が大きな関心を持ち、モニタリングの対象となるその他生理学的変数がある。
【0006】
一般に全静脈麻酔として知られる全身静脈麻酔は、一般に下記3相で発現する臨床シナリオで起こる。1)誘導相(IPh):ボーラス投与及び持続注入により薬剤を投与される;患者は、望ましい麻酔状態に誘導され、できる限り迅速に望ましいDoH、ANG及びMRX値を取得しようとする;2)維持相(MPh):外科処置を開始する。麻酔医によって適宜修正される様々な薬剤の注入が実施され、望ましい麻酔状態が維持される;同時使用される薬剤は相乗作用を発現し得る;この相の目的は目標値に近い麻酔状態を維持することである;3)回復相(RPh):薬剤の投与を停止し意識を回復し、ANG及びMRXを除去する(非特許文献5)。
【0007】
現在、静脈注入で最も使用されるプロトコルは、手動制御注入と目標制御注入(TCI)法であり、後者は、MPh間に望ましい参照注入値から適正に計算された一定量の薬剤を持続注入投与することからなる(非特許文献4)。薬剤を静脈注入投与することにより、複数の利点がもたらされる(非特許文献6)。しかしながら、麻酔医の経験、個人的な選好、薬物動態の臨床上の個体間変動、そしてTCIの原理の理解などのいくつかの要因から、臨床プラクティスで明確なTCIの使用はされていない。その結果として、TCIは、現在進行中の研究と今日の臨床プラクティスとの間の橋渡しになり、非常に高度な自動化システムを設計する可能性の扉を開いた。
【0008】
麻酔における注入薬にフィードバックを用いた制御を応用することは、広範囲にわたり研究されてきた。CLの自動制御は、以下のように社会経済的に一連の利点があるからである。1)患者と健康システムのコスト低減や麻酔医の労働負担の軽減;2)使用される投与量の低減、これは回復までの時間がより速くなり、結果として患者の術後回復が良好になることを示唆する;3)過剰投与や過少投与の事象が少なく、より頑強なパフォーマンス。要約すると、これは、患者にとって臨床上の安全性がより大きくなることになる (非特許文献5)。しかしながら、霧のシステムは、ここ数十年で開発されてきたが、それらの全てがCE認証や臨床使用のためのFDA承認のない試作品のままである。
【0009】
麻酔の自動制御は、外科医の行為によってもたらされた麻酔状態の変更とみなされる撹乱因子の高い拒絶に加えて、望ましいモニター変数の目標値に近い満足のいく麻酔状態を維持することを意図している(非特許文献5)。
【0010】
Kai Kuckは、彼の論文「The Three Laws of Autonomous and Closed-Loop Systems in anaesthesia」(非特許文献7)において、自立型麻酔システムが対象とする3つの法則を前提としている:1)傷付けないこと:システムは、故障した場合にも患者に対して安全である必要があり、いかなる危険も排除して故障がわずかである必要がある;2)透明であること:すなわち、システムは信頼可能かつ理解可能な方法で確立した目標を実行して麻酔医がその振る舞いを予測することができる必要がある;及び3)労働負荷の低減:システム自体は、適正な機能を維持するために過剰な注意を必要としてはならず、これにより麻酔医は、その他の重要な仕事に集中することができる。
【0011】
麻酔のCLに使用される最も一般的な制御アルゴリズムには以下のものがある:内部制御モデル、予測管理モデル、比例積分微分制御(PID)及び人工知能ベースの制御(非特許文献5)。そうであっても、最も効率のよいオプションはPID制御のままであり、最近の多様な提案の対象ともなっている。加えて、麻酔に適用される適切に調整されたPIDコントローラによって達成される性能は、その複雑性にも関わらず、その他のコントローラと同等かそれを上回るものである(非特許文献8)。
【0012】
PIDコントローラは、麻酔行為の自動化という課題を解決するための様々な設計アプローチを通じて使用されている。PPF及びRMFの併用投与のための第1提案がある。(非特許文献9)、しかし、より複雑な設計アプローチも提示されており(非特許文献10)、DoH測定からのフィードバックによりガイドされるPPF-RMF麻酔のための複数入力単一出力(MISO)コントローラを提供している。
【0013】
PIDコントローラに基づくその他のアプローチは、PPF及びBISの投与を制御変数として使用した麻酔のDoHを調整するために実施された。Padula及び彼のチーム (非特許文献5)は、コントローラの堅牢性を試験するために使用される相対的に大きな母集団を代表する12人で1組の仮想的な患者(VP)を確立する;そしてMerigo(非特許文献8)は、イベントが発生する場合、制御動作が更新されるPIDPlusコントローラに加えて、高いノイズフィルタリング特性を有する新イベント生成器を提案する。最後に、Merigoと彼のチーム(非特許文献11)は、効果がある場所での推定濃度がフィードバック信号として使用されるPPFの投与に関する患者の薬物動態及び薬理学モデルに基づくPID制御アルゴリズムを実行した。
【0014】
より最近の仕事のいくつかは、PID制御スキームの様々なアーキテクチャを提供する。例えば、Pawlowsklとそのチーム(非特許文献12)はBISを制御変数として使用し、DoHに2つの自由度を持つPIDを提案する。参照信号に生じた変化に対して適正な応答を取得するための1つは1次で、もう1つは2次の2つのローパスフィルタがある。もう1つの注目すべきアプローチは、Merigoによって最近提示されたものである(非特許文献13)。ここでは、DoHに関してPPF-RMFとBISを使用するPIDベースのCL最適化システムが提案されている。この仕事では、チューニングが、13VPのコホートにPSO(粒子群最適化)を適用することによって実行されている。
【0015】
麻酔行為のCLの制御における対処すべき問題に関連した一連の困難性として、以下の事項が特定される:1)一面的な制御、拮抗薬を考慮しないことに起因する;2)遅延、遅延によるCLの発振と不安定性の増加;3)制御されるべき変数がモニター対象(測定値)から来る変数でない;4)患者に投与されたときに記憶効果がある薬剤;及び5)複数の薬剤が投与されたときに発現し得る相乗効果。加えて、先行技術では、とりわけ以下のようないくつかの限界が麻酔におけるCL制御の応用に検知されてきた。1)主要麻酔状態(DoH、ANG及びMRX)を組み合わせた公式の提案がない;及び2)PIDベースのアルゴリズムは制御問題の解決に効果的であるが、複数の生理学的変数を用いた複数の薬剤の注入に対して多変数の手法で使用されてきていない。
【0016】
本発明に関連して、以下の先行技術文献が見いだされる。
-特許文献1(2001)、意識のある患者に医療・手術処置に関連づけられた疼痛や不安からの解放をもたらす装置(Apparatus for providing a conscious patient with relief from pain and anxiety associated with medical or surgical procedures)。システムは、コンピュータソフトウェアの保存的管理を通じて、患者の1以上の生理学的状態の電子的なモニタリングを用いた1つ以上の健忘剤、鎮痛剤及び鎮静剤の送達を提供するようにクレームされている。
-特許文献2(2002)、薬剤送達を滴定するための装置と方法(Apparatuses and methods for titrating drug delivery)。ユーザー情報を受信するためのユーザーインターフェース、薬剤送達装置、及びアルゴリズムによって調整された生理学的モニター対象を含む、患者への薬剤送達システムがクレームされている。
-特許文献3(2004)、麻酔注入に対する患者の応答を特定するためのシステム(System for identifying patient response to anesthesian infusion)。患者に麻酔薬を投与する間、医師を支援する装置がクレームされている。当該装置は、該当するデータを受け取る処理システム、データを保存するメモリ、式を解くプロセッサ、及び、得られた結果を麻酔医に表示する画面を備えている。
-特許文献4(2006)、コンピュータ制御の静脈薬剤送達システム(Computer-Controlled Intravenous Drug Delivery System)。静脈麻酔を制御及び管理するための装置並びに/又はその他静脈薬を患者に適用する装置がクレームされている。装置はまた、回復可能なシステムの恩恵を受ける専門家のデータを保存する。
-特許文献5(2007)、適応性薬剤送達のシステムと方法(System and method of adaptative drug delivery)。患者に対する望ましい効果を判定・維持するために、患者における望ましい薬剤濃度レベルを決定・維持するためのシステムがクレームされている。当該システムは、センサーアセンブリ、薬剤送達ユニット、及び、前記アセンブリに結合した入力と前記送達ユニットに結合した出力とを有するCL送達コントローラを備える。
-特許文献5(2009)、麻酔薬と鎮静剤の注入の手段を制御するためのシステム(System for controlling the means for injection of anesthetic or sedative agents)。鎮静の誘導及び維持のための静脈麻酔制御システムがクレームされている。当該システムには、制御信号の取得と分析のための手段が含まれる。
-特許文献6(2013)、薬剤送達を滴定するための装置と方法(Apparatuses and methods for titrating drug delivery)。患者に薬剤送達を提供するためのシステムがクレームされている。上記システムは、ユーザーインターフェース、薬剤送達装置、複数の生理学的モニター対象、及び、ユーザーインターフェースを統合するプロセッサを備えている。
-特許文献7(2013)、BIS(BispectralIndex)フィードバックベースの麻酔標的制御注入ポンプコントローラ(BIS (BispectralIndex) feedback-based anesthesia target controlled infusion pump controller)。ファジーPID制御アルゴリズムを含むBISベースの閉ループ制御システムがクレームされている。
-特許文献8(2015)、TCIベース(標的制御注入ベース)の麻酔深度インテリジェント制御システム(TCI-based (target controlled infusion-based) anesthesia depth intelligent control system)。麻酔におけるBISのモニタリングをベースとしたインテリジェントなTCI制御システムがクレームされている。
-特許文献9(2016)、薬剤投与の閉ループ制御のための方法及びシステム(Methods and Systems for closed-loop control of drug administration)。少なくとも1つの薬剤を患者に投与するための閉ループ制御システムがクレームされている。当該制御システムは、薬剤を投与するアクチュエータ、1以上の生理学的モニター対象、及び、制御信号を判定するプロセッサを備えている。
【0017】
以上を参照すると、単一のモニター、とりわけBISに基づく制御システムについてクレームする発明はある(特許文献8及び特許文献9);そのほか、異なる主要麻酔状態のなかで鎮静のみに言及している(特許文献6)。最も先進的な特許の1つは、1以上の生理学的モニター対象に基づく少なくとも1つの薬剤の注入のためのシステムをクレームしている。しかしながら、上記発明は、その制御にモデル予測コントローラ(MPC)の使用をベースとしており、使用される薬剤が呈し得る相乗効果に言及するものでもない。
【0018】
静脈麻酔行為に適用されるMIMO-PID制御を麻酔薬の複数注入の方法に統合した注入ポンプのシステムであって、使用される薬剤の数及び様々な薬剤間の相乗的関係を考慮に入れており、使用されるモニタリング変数の数を設定可能なものが現在あるという示唆はない。また、麻酔に使用される薬剤のほか、その他の種類の薬剤を複数注入することを検討した方法の示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】ES2297940T3
【特許文献2】CN1561241B
【特許文献3】US8998808B2
【特許文献4】ES2293366T3
【特許文献5】ES2267767
【特許文献6】JP5792629B2
【特許文献7】ES2429688
【特許文献8】CN103212119B
【特許文献9】CN106859592A
【特許文献10】US20180296759A1
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Peters, T. M., and A. Haidar."Dual-hormone artificial pancreas: benefits and limitations compared with single-hormone systems."Diabetic Medicine 35.4 (2018): 450-459
【非特許文献2】G. Schneider et al., Detection of awareness in surgical patients with eeg-based indexes, bispectral Index and patient State Index, British journal of anaesthesia 91 (3) (2003) 329-335
【非特許文献3】P. Schumacher et al. Time-based, online display of a noxious stimulus response index based on pharmacological data, in: Annual Meeting of the American Society of Anesthesiologists.San Francisco, California.Anesthesiology, Vol. 107, 2007, p. A17
【非特許文献4】A. Miranda et al., Optimal time for constant drug infusion initialization in neuromuscular blockade control, in: 2014 IEEE International Symposium on Medical Measurements and Applications (MeMeA), IEEE, 2014, pp. 1-6
【非特許文献5】F. Padula, C. lonescu, N. Latronico, M. Paltenghi, A. Visioli, G. Vivacqua, Optimized PID control of depth of hypnosis in anesthesia, Computer and methods in biomedicine 144-35) (2017)21-35
【非特許文献6】M. C. van den Nieuwenhuyzen et al., Burm Target-controlled infusion systems, Clinical pharmacokinetics 38 (2) (2000) 181-190
【非特許文献7】Kuck, K., & Johnson, K. B. The three laws of autonomous and closed-loop systems in anesthesia. Anesthesia & Analgesia 124 (2017) 377-380
【非特許文献8】L. Merigo et al, Event based control of propofol and remifentanil coadministration during clinical anesthesia, in: 2017 3rd International Conference on Event-Based Control, Communication and Signal Processing, IEEE, 2017, pp. 1-8
【非特許文献9】N. Liu et al., Closed-loop coadministration of propofol and remifentanil guided by bispectral Index: a randomized multicenter study, Anesthesia & Analgesia 112 (3) (2011) 546- 557
【非特許文献10】K. van Heusden et al., Robust miso control of propofol-remifentanil anesthesia guided by the neurosense monitor, IEEE Transactions on Control Systems Technology 26 (5) (2018) 1758-1770
【非特許文献11】L. Merigo etal., A model-based control scheme for depth of hypnosis in anesthesia, Biomedical Signal Processing and Control 42 (2018) 216-229
【非特許文献12】A. Pawlowski et al, Two-degreeof-freedom control scheme for depth of hypnosis in anesthesia, IFACPapersOnLine 51 (4) (2018) 72- 77
【非特許文献13】L Merigo et al., Optimized pid control of propofol and remifentanil coadministration for general anesthesia, Communications in Nonlinear Science and Numerical Simulation 72 (2019) 194-212
【発明の概要】
【0021】
電子的システムで実行される方法について理解の助けとするため、略語、変数そしてシステムの名前とその意味の一覧を最初に提示する。
【0022】
略語はテキストで頻出する長い名前を単純化しており、読者が概念に慣れるまでこの一覧をテキストの理解の一助とする(頭字語がsで終わる複数形に言及する場合、例えば、「IV」は形容詞として静脈(intravenous)に言及し、「IVs」は複数の静脈行為に言及する)。以下にアルファベット順で略語について示す。
【0023】
【0024】
変数の一覧は、読者が迅速かつ容易に名前に慣れ親しめるように意図しており、概念と図における場所を規定している。太字及び括弧で参照された変数は行列を表し、太字のみで参照されたものはベクトルを表す(書き方と解釈を容易にするため、転置が実行されている)、そして斜体で参照されたものはスカラー変数を表す。最も重要なものは、明細書で現れる順番にしたがって以下に列挙している。
【0025】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0026】
システムの一覧は、図及び明細書において迅速かつ容易に位置を提供することを意図している。明細書で現れる順番にしたがって以下に列挙している。
【表14】
【表15】
【0027】
本発明は、相乗的な薬剤の患者への自動複数静脈注入のためのシステムに関し、
-患者(1)に多数の薬剤を送達するように構成された注入ポンプサブシステム(2)と、
-患者の状態情報に関する一組の生理学的変数を測定するように構成されたモニタリングサブシステム(3)と、
-既定の初期注入量(4)、モニタリング目標値(8)、生理学的変数の測定値のフィードバック(6)及び薬剤間の相乗作用に基づき、注入ポンプサブシステム(2)によって送達される各薬剤(5)の量を適応させるように構成された制御サブシステム(24)とを備え、当該制御サブシステムは、
○モニタリング目標値(8)及び生理学的変数の測定値のフィードバック(6)に基づいて誤差(12,13,14)を計算するように構成された制御誤差生成モジュール(11)と、
○制御誤差生成モジュール(11)で計算された誤差(12,13,14)及び既定の初期注入量(4)に基づいて各薬剤の制御注入量(15)を判定するように構成されたコントローラ(16)と、
○生理学的変数の測定値をモニタリングシステム(3)から受信し、コントローラ(16)の制御注入量(15)を修正するように構成された修正モジュール(17)であって、前記注入量は生理学的変数をプリセットされた安全な範囲に設定する上限閾値の関数として増加するか、下限閾値の関数で減少する修正モジュールと、
○各薬剤の制御注入量(15)を受信し、各薬剤の投与のしすぎがないようにするため、前記注入量を前記下限閾値及び上限閾値という2つの注入値間に限定することで修正するように構成された安全性モジュール(19)とを備えており、生理学的変数を安全な範囲にして作業ができる。
【0028】
そのほか、過剰投与又は過少投与防止モジュールは、薬剤注入を安全な値で維持するように構成された安全性モジュール(19)と修正モジュール(17)がある制御サブシステムで検討される。
【0029】
本発明の実施形態の一つは、静脈経由での麻酔行為に適用されるCL MIMO-PID(SynPlD)によって制御された、相乗作用をもつ麻酔薬の複数注入システムを開示する。このシステムは、多次元であり、使用される薬剤の数を設定可能で、使用されるモニタリング変数の数を設定可能である。システムは電子デバイス上で実施される。電子デバイスでは以下のステップが実行される:
ステップ1:催眠状態(DoH)、鎮痛(ANG)及び筋弛緩(MRX)のためのモニタリング変数ベクトルを取得する。また、その他のモニタリング変数も使用され得る。以後、モニタリング変数ベクトル(6)と称され、それぞれDoH、ANG及びMRXのBIS、NOX及びNMB又はその他同等のモニター対象(eBIS、eNOX及びeNMBで表される)であり得る。モニタリング変数ベクトル(6)の値は、主にプロポフォール(PPF)、レミフェンタニル(RMF)及びロクロニウム(RCN)などの催眠、鎮痛及び/又は筋遮断特性を有する薬剤の注入量による。ePPF、eRMF及びeRCNで表される同等の薬剤を使用され得る。またその他麻酔薬も使用し得る。これらの薬剤は、薬剤又は麻酔薬と称され、静脈(IV)を経由して患者に注入される。これらは、麻酔薬注入量ベクトル(5)を構成している。麻酔薬注入量ベクトル(5)は、注入ポンプシステム(2)を経由して患者(1)に投与される。モニタリング装置(3)は、患者(1)に対する麻酔薬の効果、及び、介入する外科医の手術行為ベクトル(7)の効果を収集する。
ステップ2:モニタリング変数ベクトル(6)に従った相乗的(SynPID)(24)を有するMIMO-PID制御システム、手動プロトコル注入量ベクトル(4)及びモニター変数の目標値ベクトル(8)を用いて考慮すべき麻酔薬に対して麻酔薬注入量ベクトル(5)を計算する。
ステップ3:フィルターバンク(9)によってモニタリング変数ベクトル(6)からノイズとアーチファクトを除去し、フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)を取得する。
ステップ4:フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)とモニター対象変数の目標値ベクトル(8)とから制御誤差生成器(11)を用いて制御誤差ベクトル(12,13,14)を計算する。とりわけこれは、eBISモニター(10.1)とその目標値(8.1)を用いて催眠フィルタリングされたモニタリングからDoH誤差生成器(28)を用いてeBISモニター対象の制御誤差ベクトル(12)を計算すること;eNOXモニター(10.2)とその目標値(8.2)を用いてANGフィルタリングされたモニタリングからANG誤差生成器(29)を用いてeNOXモニター対象の制御誤差ベクトル(13)を計算すること;eNMBモニター対象(10.3)とその目標値(8.3)を用いてMRXフィルタリングされたモニタリングからRMX誤差生成器(30)を用いてeNMBモニター対象の制御誤差ベクトル(14)を計算することからなる。
ステップ5:相乗的MIMO-PIDを備えた多変数コントローラ(16)を用いて制御注入量ベクトル(15)を計算する。当該コントローラは、制御誤差ベクトル(12,13,14)と手動プロトコル注入量ベクトル(4)をベースとする3つのMISO-PID制御サブシステム(25,26,27)で構成されている。各PID制御注入量は、比例注入量、積分注入量及び誘導注入量の合計で生成される。
ステップ6:フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)から注入修正システム(17)を用いて修正ベクトル(18)を計算する。
ステップ7:制御注入量ベクトル(15)と修正ベクトル(18)から安全性システム(19)を用いて信頼性ある制御ベクトル(20)を計算する。
ステップ8:信頼性ある制御ベクトル(20)をベースとして定量化システム(21)によって自動注入量ベクトル(22)を計算する。
ステップ9:SynPlD制御システム(24)によって計算される手動プロトコル注入量ベクトル(4)及び自動注入量ベクトル(22)からスイッチシステム(23)によって患者(1)に対して適用される麻酔薬注入量ベクトル(5)を規定する。
ステップ10:ePPF薬の注入量を制御誤差ベクトル(12,13,14)に関連づける3つのSISO-PIDコントローラ(25.1,25.2,25.3)で構成されるMISO-PID-ePPF制御サブシステム(25)を用いて、ePPF薬の制御注入量(15.1)を計算する。
ステップ11:eRMF薬の注入量を制御誤差ベクトル(12,13,14)に関連づける3つのSISO-PIDコントローラ(26.1,26.2,26.3)で構成されるMISO-PID-eRMF制御サブシステム(26)を用いて、eRMF薬の制御注入量(15.2)を計算する。
ステップ12:eRCN薬の注入量を制御誤差ベクトル(12,13,14)に関連づける3つのSISO-PIDコントローラ(27.1,27.2,27.3)で構成されるMISO-PID-eNMB制御サブシステム(27)を用いて、eRCN薬の制御注入量(15.3)を計算する。
【0030】
静脈経由での麻酔行為に適用されるCL MIMO-PIDで制御される相乗作用を持つ麻酔薬の複数注入量のシステムは、SynPlD制御システムと呼ばれる。SynPlDは、患者に関する麻酔薬注入量ベクトル(5)を取得するには様々な種類の情報を必要とする。上述の各ステップでなされるべき動作と計算を以下に示す。
【0031】
SynPlD制御システムで実行されるステップ2)にはさらに以下の情報を取得することが含まれる:
2.1.-モニタリング変数ベクトル(6)の測定、
【数1】
式中、yは、モニタリング変数ベクトル(6)であり、y
1はeBISモニター対象であり、y
2はeNOXモニター対象であり、y
3はeNMBモニター対象であり、y
4からy
rまでのベクトル成分の残りは、その他可能なモニター対象の組み込みである。上付きTはベクトル転置を意味する。
2.2.-開ループ手動医療プロトコル(OP)として知られている手動プロトコル注入量ベクトル(4)を規定する。
【数2】
式中、u
ol は手動プロトコル注入量ベクトル(4)であり、u
0nはePPFの手動プロトコルの注入量であり、u
0l2は、eRMFの手動プロトコルの注入量であり、u
0l3は、eRCNの手動プロトコルの注入量であり、u
0l4からu
0l5までのベクトルのその他の成分は、システムに組み込まれるその他薬剤がとり得る決定である。
2.3.-OPの手動プロトコル注入量ベクトル(4)を計算する。
【数3】
2.3.1.-式中、dは、時刻t
iにIPhを開始する時間における手動ボーラス投与量ベクトルである。
【数4】
式中、Dは、各薬剤の単位重量あたりのボーラス投与量を含むベクトル、Wは患者の体重、T
sは実行期間である。
2.3.2.-式中、r
olはIPhの麻酔薬の注入量ベクトルである。
【数5】
式中、Rは、IPhが始まるt
iから麻酔のMPhが始まるt
mまでのIPhの持続注入量ベクトル、Pは、MPhの注入量減少のベクトルであり、Wは患者の体重である。
2.4.-モニター対象変数の目標値ベクトル(8)の設定、
【数6】
式中、y
Tは、モニター対象変数の目標値ベクトル(8)、y
T1はeBISモニター対象に関する目標値、y
2はeNOXモニター対象に関する目標値、y
3 はeNMBモニター対象に関する目標値であり、y
4からy
rまでのその他のベクトル成分は、その他可能なモニター対象の方法への組み込みである。
【0032】
SynPlD制御システムで実行されるステップ3)には、さらに以下のことを行うフィルターバンク(9)を含む。
3.1.-フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)を計算する、
【数7】
式中、y
fは、フィルタリングされたモニター変数ベクトル、y
f1はeBISモニター対象のフィルタリング、y
f2はeNOXモニター対象のフィルタリング、y
f3 はeNMBモニター対象のフィルタリングであり、y
f4からy
frまでのその他のベクトル成分の残りは、新しいモニター対象のシステムへの組み込みのフィルタリングである。
3.2.-n
H次のローパスフィルタに基づいてフィルターバンク(9)を規定する。
【数8】
式中、yは、モニタリング変数ベクトル(6)、y
fはフィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)、n
Hはフィルターの次数、f
cはフィルターバンク(9)のカットオフ周波数ベクトルであり、下記式で与えられる。
【数9】
式中、f
cはカットオフ周波数ベクトル、f
1はeBISフィルターのカットオフ周波数、f
2はeNOXフィルターのカットオフ周波数、f
3はeNMBフィルターのカットオフ周波数であり、f
4からf
rのベクトルのその他の成分は、新しいフィルターのシステムへの組み込みに関するクリーニングシステムのカットオフ周波数である。ベクトルf
c は等式で計算される。
【数10】
式中、Nは、フィルタリング係数PID、T
Dは、直接微分動作時間ベクトルである。
【0033】
SynPlD制御システムで実行されるステップ4)には、さらに以下のことを行う制御誤差生成器(11)が含まれる。
4.1.-DoH誤差生成器(28)を用いてeBIS e
1モニター対象制御誤差ベクトル(12)を計算し、ANG誤差生成器(29)を用いてeNOXe
2モニター対象の制御誤差ベクトル(13)を計算し、RMX誤差生成器(30)を用いてeNMB e
3モニター対象制御誤差ベクトル(14)を計算し、各々がその比例(12.1,12.2,12.3)、積分(13.1,13.2,13.3)、微分(14.1,14.2,14.3)成分を有する。e
4からe
rの対応誤差は、制御システムに組み込まれた新しいモニター対象に関連するものである。
【数11】
式中、e
Pjは、PIDの比例非対称誤差に言及し、e
ijは、PIDの積分対称誤差に言及し、e
Fjは、PIDのフィルタリングされた微分誤差、jは、モニター変数を参照する1とrの間の整数に言及する。
4.2.-y
fフィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)及びy
Tモニター対象変数の目標値ベクトル(8)を用いて各SISO-PIDコントローラの非対称比例誤差、対称積分誤差及び非対称微分誤差を計算すること。
【数12】
y
Tは、モニター対象変数の目標値ベクトル(8)、y
fはフィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)、Iは識別行列、T
Dは直接微分動作時間ベクトル、NはPIDフィルタリング定数である。
4.2.1.-[B]は、PIDの比例動作で「重み付けセットポイント」の影響がある行列であり、比例誤差の非対称としても知られている。
【数13】
式中、β
jjは、比例動作jの目標値に関する重みであり、
【数14】
式中、y
thb は、βの最大値を決定する閾値のベクトルである。
4.2.2.-G は、PIDの微分動作で「重み付けセットポイント」の影響がある行列であり、微分誤差の非対称としても知られている。
【数15】
式中、γ
jjは、比例動作jの目標値に関する重みであり、
【数16】
式中、y
thgは、γの最大値を決定する閾値のベクトルである。
4.3.-eBISモニター対象(10.1)及びその目標値(8.1)を用いたフィルタリングされたDoHモニタリングからDoH誤差生成器(28)を用いてeBISモニター対象(12)の制御誤差ベクトルを計算する。
【数17】
4.4.-eNOXモニター対象(10.2)及びその目標値(8.2)を用いたANGのフィルタリングされたモニタリングからANG誤差生成器(29)を用いてeNOXモニター対象(13)の制御誤差を計算する。
【数18】
4.5.-eNMBモニター対象(10.3)及びその目標値(8.3)を用いたRMXのフィルタリングされたモニタリングからMRX誤差生成器(30)を用いてeNMBモニター対象(14)の制御誤差ベクトルを計算する。
【数19】
【0034】
SynPlD制御システムで実行されるステップ5)にはさらに以下のことを行うMIMO-PID相乗的多変数コントローラ(16)が含まれる。
5.1.-制御注入量ベクトル(15)を規定する。
【数20】
式中、u
1は、ePPF(15.1)の制御注入量、u
2は、eRMF(15.2)の制御注入量、u
3は、eRCN(15.3)の制御注入量、u
4からu
sは、制御システムに組み込まれうる新しい薬剤の注入量である。
5.2.-MIMO-PID相乗的多変数コントローラ(16)、eBIS(12)、eNOX(13)及びeNMB(14)モニター対象の制御誤差ベクトル、並びに、手動プロトコル注入量ベクトル(4)を使用してMIMO-PID制御注入量ベクトル(15)を計算する。
【数21】
式中、5.2.1,-[PID]は、MIMO-PID相乗的多変数コントローラ(16)を構成するSISO-PIDコントローラの行列である。
【数22】
式中、C
ijは、モニター対象jと薬剤iに対してSISO-PIDコントローラ、C
1は、MISO-PID-ePPF制御サブシステム、C
2は、MISO-PID-eRMF制御サブシステム、C
3は、MISO-PID-eNM制御サブシステムである。C
ijは、比例ゲイン行列[K
P]、積分ゲイン行列[K
I]及び微分ゲイン行列[K
D]で規定されている。
【数23】
式中、K
Pijは、モニターjと薬剤/に対する比例ゲイン、K
Iijは、モニターjと薬剤/に対する積分ゲイン、K
Dijは、モニターjと薬剤/に対する微分ゲイン、K
Piは、薬剤に対する比例ゲインのベクトル、K
Iiは、薬剤に対する積分ゲインのベクトル、K
Di は、薬剤に対する微分ゲインのベクトル、K
Pは、薬剤j及びモニター対象yに対する直接比例ゲインのベクトル、K
Iは、薬剤j及びモニター対象yに対する直接積分ゲインのベクトル、K
Dは、薬剤j及びモニター対象jに対する直接微分ゲインのベクトルである。
5.2.2.-[SYN]は薬剤相乗作用行列:
【数24】
式中、S
ijは、コントローラC
ijに対する相乗作用、S
iは、薬剤iに対する相乗作用ベクトルである。
5.2.3.-K
olは、手動プロトコル注入量ベクトル(4)に関するゲインのベクトルである。
【数25】
式中、K
ol1は、ePPFの手動プロトコルの注入量(4.1)を調節するゲイン、K
ol2は、eRMF の手動プロトコルの注入量(4.2)を調節するゲイン、K
ol3は、eRCNの手動プロトコルの注入量(4.3)を調節するゲイン、K
ol4からK
olsは、制御システムに組み込まれうる新たな薬剤の手動プロトコルの注入量を調節するゲインである。
【数26】
y
τは、モニター変数の目標値ベクトル(8)、y
fは、フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)、y
LOは、修正の活性化のための下限閾値ベクトルである。
5.3.-制御誤差ベクトル(12,13,14)及び手動プロトコル注入量ベクトル(4)からMISO-PID制御サブシステム(25,26,27)を規定する。
【数27】
式中、C
ijは、モニター対象jと薬剤iに対するPIDコントローラ、S
ijは、コントローラC
ijに対する相乗作用、K
oliは薬剤u
oliの手動プロトコルの注入量に適用されるゲインである。
5.3.1.-制御誤差ベクトル(12,13,14)及びステップ5.2.1で規定するゲインを用いてSISO-PIDコントローラ(25.1,27.3)を規定する。
【数28】
式中、iは、薬剤(15.1)を特定し、jは、モニター対象(10.j)を特定し、P
ijは、比例動作、l
ijは、積分動作、D
ijは、微分動作である。
5.3.2.-比例、積分及び微分動作を計算する。
【数29】
式中、K
Pijは、薬剤i及びモニター対象jと関連づけられた比例ゲイン、e
pjは、モニター対象jと関連する比例誤差、K
Ijiは、薬剤i及びモニター対象jと関連づけられた積分ゲイン、e
liは、薬剤i及びモニター対象と関連する積分誤差、K
Dijは、薬剤i及びモニター対象と関連づけられた微分ゲイン、e
Fjは、薬剤jと関連する微分誤差である。
【0035】
SynPlD制御システムで実行されるステップ6)には、さらに以下のことを行う注入修正システム(17)が含まれる。
6.1.-修正ベクトル(18)を規定する。
【数30】
式中、u
cr1は、ePPF薬剤(18.1)の修正注入量であり、u
cr2は、eRMF薬剤(18.2)の修正注入量であり、u
cr3は、eRCN薬剤(18.3)の修正注入量であり、u
cr4からu
crsのベクトルのその他の成分は、システムに組み込まれるその他薬剤がとり得る修正量である。
6.2.-フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)から修正ベクトル(18)を計算する。
【数31】
[K
P]は、比例ゲイン行列、式[5.4]であり、[SYN]は、相乗作用行列式[5.10]であり、y
fは、フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)である。
6.2.1.-y
HIは、修正の活性化のための上限閾値ベクトルである。
【数32】
式中、H
1は、eBISに対する上限閾値、H
2は、eNOXに対する上限閾値、H
3は、eNMBに対する上限閾値、H
4からH
rのベクトルのその他の成分は、システムに追加されるその他考えられるモニター対象の上限閾値である。
6.2.2-y
LOは、修正の活性化のための下限閾値ベクトルである。
【数33】
式中、L
1は、eBISに対する下限閾値、L
2は、eNOXに対する下限閾値、L
3は、eNMBに対する下限閾値、L
4からL
rのベクトルのその他の成分は、システムに追加されるその他考えられるモニター対象の下限閾値である。
【0036】
SynPlD制御システムのステップ7)には、さらに以下のことを行うセキュリティシステム(19)を含む。
7.1.-信頼性ある制御ベクトル(20)を規定する。
【数34】
式中、U
sf1は、ePPF薬剤(20.1)の信頼性ある注入量であり、U
sf2は、eRMF薬剤(20.1)の信頼性ある注入量であり、U
sf3は、eRCN薬剤(20.1)の信頼性ある注入量であり、U
sf4からU
sfsのベクトルのその他の成分は、システムに組み込まれるその他薬剤がとり得る信頼性ある注入量である。
7.2.-制御注入量ベクトル(15)と修正ベクトル(18)から信頼性ある制御ベクトル(20)を計算する。
【数35】
式中、u
cr は、修正ベクトル(18)、u
pid は、制御注入量ベクトル(15)である。
7.2.1.-u
hiは、薬剤注入量上限値ベクトルである。
【数36】
式中、u
H1は、ePPF薬剤に対する注入量の上限値、u
H2は、eRMF薬剤に対する注入量の上限値、u
H3は、eRCN薬剤に対する注入量の上限値、u
H4からu
Hsのベクトルのその他の成分は、システムに組み込まれるその他考えられる薬剤に対する注入量の上限値である。
7.2.2.-u
LOは、薬剤注入量の下限境界ベクトルである。
【数37】
式中、u
L1は、ePPF薬剤に対する注入量の下限値、u
L2は、eRMF薬剤に対する注入量の下限値、u
L3は、eRCN薬剤に対する注入量の下限値、u
L4からu
Lsのベクトルのその他の成分は、システムに組み込まれるその他考えられる薬剤に対する注入量の下限値である。
【0037】
SynPlD制御システムで実行されるステップ8)には、さらに以下のことを行う定量化システム(21)が含まれる。
8.1.-自動注入量ベクトル(22)を規定する。
【数38】
式中、u
cl1は、ePPF薬剤(22.1)の自動注入量であり、u
cl2は、eRMF薬剤(22.2)の自動注入量であり、u
cl3は、eRCN薬剤(22.3)の自動注入量であり、u
cl4からu
cl5のベクトルのその他の成分は、システムに組み込まれるその他薬剤がとり得るCLの自動注入量である。
8.2.-信頼性ある制御ベクトル(20)から自動注入量ベクトル(22)を計算する。
【数39】
式中、u
Sf は、信頼性ある制御ベクトル(20)、u
mnは、持続注入ポンプシステム(2)の分解能ベクトルである。
8.2.1.-u
minは、各薬剤注入ポンプの分解能ベクトルである。
【数40】
式中、u
mn1は、ePPF薬剤注入ポンプの分解能、u
mn2は、eRMF薬剤注入ポンプの分解能、u
mn3は、eRCN薬剤注入ポンプの分解能、u
mn4からu
mnsのベクトルのその他の成分は、制御システムに組み込まれるその他考えられる新しい薬剤の注入ポンプの分解能である。
【0038】
SynPlD制御システムで実行されるステップ9)には、さらに以下のことを行うスイッチングシステム(23)が含まれる。
9.1.-麻酔薬注入量ベクトル(5)を規定する。
【数41】
式中、u
pt1は、ePPF薬剤(5.1)の注入量であり、u
pt2は、eRMF薬剤(5.2)の注入量であり、u
pt3は、eRCN薬剤(5.3)の注入量であり、u
pt4からu
ptsのベクトルのその他の成分は、システムに組み込まれるその他新しい薬剤がとり得る注入量である。
9.2.-手動プロトコル注入量ベクトル(4)と自動注入量ベクトル(22)から麻酔薬注入量ベクトル(5)を計算する。
【数42】
式中、u
0lは、手動プロトコル注入量ベクトル(4)、u
clは、自動注入量ベクトル(22)、t
iは、IPhを開始する時間、t
m は、MPhを開始する時間、t
rは、RPhを開始する時間である。
【0039】
SynPlD制御システムで実行されるステップ10)にはさらに以下のことを行うMISO-PID-ePPF制御サブシステム(25)が含まれる。
10.1.-一組のSISO-PIDコントローラとしてMISO-PID-ePPF制御サブシステム(25)を規定する。
【数43】
10.2.-SISO-PIDコントローラ(25.1,25.2,25.3)、制御誤差ベクトル(12,13,14)及びePPFの手動プロトコルの注入量(4.1)からePPFの制御注入量(15.1)を計算する。
【数44】
式中、S
1は、[SYN]の第1行で形成されるベクトル、C
1jは、モニター対象jとePPF薬に対するPIDコントローラ、S
1jは、コントローラC
1jに対する相乗作用によって形成されるベクトル、K
ol1は、ePPFの手動プロトコル注入量に適用されるゲインである。
【0040】
SynPlD制御システムで実行されるステップ11)にはさらに以下のことを行うMISO-PID-eRMF制御サブシステム(26)が含まれる。
11.1.-一組のSISO-PIDコントローラとしてMISO-PID-eRMF制御サブシステム(26)を規定する。
【数45】
11.2.-SISO-PIDコントローラ(26.1,26.2,26.3)、制御誤差ベクトル(12,13,14)及びeRMFの手動プロトコルの注入量(4.2)からeRMFの制御注入量(15.2)を計算する。
【数46】
式中、S
2は、[SYN]の第2行で形成されるベクトル、C
2jは、モニター対象jとeRMF薬に対するPIDコントローラ、S
2jは、コントローラC
2jに対する相乗作用によって形成されるベクトル、K
ol2は、eRMFの手動プロトコル注入量に適用されるゲインである。
【0041】
SynPlD制御システムで実行されるステップ12)にはさらに以下のことを行うMISO-PID-eNMB制御サブシステム(27)が含まれる。
10.1.-一組のSISO-PIDコントローラとしてMISO-PID-eNMB制御サブシステム(27)を規定する。
【数47】
12.2.-SISO-PIDコントローラ(27.1,27.2,27.3)、制御誤差ベクトル(12,13,14)及びeRCNの手動プロトコルの注入量(4.3)からeRCNの制御注入量(15.3)を計算する。
【数48】
式中、S
3は、[SYN]の第3行で形成されるベクトル、C
3jは、モニター対象jとeRCN薬に対するPIDコントローラ、S
3jは、コントローラC
3jに対する相乗作用、K
ol3は、eRCNの手動プロトコル注入量に適用されるゲインである。
【0042】
SynPlD制御システムで実行されるステップ13)にはさらに以下のことを行う新しい薬剤に対するいくつかのMISO-PIDコントローラが含まれる。
13.1-一組のSISO-PIDコントローラとして薬剤iのMISO-PIDコントローラを規定する。
【数49】
式中、i=4...s,は、新しい薬剤を特定し、rは、モニター対象の数を特定する。
13.2.-SISO-PIDコントローラ、制御誤差、薬剤iの手動プロトコル注入量(4.i)から薬剤iの制御注入量を計算する。
【数50】
【0043】
本発明の他の態様では、静脈経由での麻酔行為に適用されるCL MIMO-PID (SynPlD)によって制御された、相乗作用をもつ麻酔薬の複数注入装置を開示する。この方法は、多次元であり、本発明の第1の態様のいずれかの実施形態において使用される薬剤の数を設定可能で、使用されるモニタリング変数の数を設定可能である。
【0044】
静脈経由での麻酔行為に適用されるCL MIMO-PID(SynPlD)によって制御された、相乗作用をもつ麻酔薬の複数注入装置には、少なくとも1つのフィルターバンク(9)、制御誤差生成器(11)、複数変数の相乗的コントローラMIMO-PID(16)、注入修正システム(17)、安全性システム(19)、定量化システム(21)及びスイッチングシステム(23)が含まれる。静脈経由での麻酔行為に適用されるCL MIMO-PID(SynPlD)によって制御された、相乗作用をもつ麻酔薬の複数注入装置は、電子又は電子機械装置であることがある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】注入ポンプシステム(2)を通して麻酔薬注入量ベクトル(5)が提供され、モニタリング変数ベクトルの測定値がモニター装置(3)で収集された患者(1)を示す最も一般的な形式のSynPlD制御システム(24)のトポロジを示す。注入ポンプは、薬剤ePPF(2.1)、eRMF(2.2)及びeRCN(2.3)を制御する。モニター装置(3)は、以下の変数の情報を収集する。1)eBISモニター(6.1)を介したDoH(3.1)、2)eNOXモニター(6.2)を介したANG(3.2)、3)eNMBモニター(6.3)を介したMRX(3.3)。モニタリング変数ベクトル(6)は、以下に関する情報も使用するSynPlD制御システム(24)のフィードバックベースである。1)モニター対象変数の目標値ベクトル(8):eBIS(8.1)、eNOX目標値(8.2)及びeNMB目標値(8.3)、2)手動プロトコル注入量ベクトル(4):ePPF手動プロトコル(4.1)、eRMF手動プロトコル(4.2)及びeRCN手動プロトコル(4.3)。
【
図2】以下の入力を有するSynPlD制御システム(24)の詳細図を示す。1)手動プロトコル注入量ベクトル(4)、2)モニター対象変数の目標値ベクトル(8)、3)モニタリング変数ベクトル(6)の値。SynPlD制御システム(24)は以下のもので構成される。1)モニタリング変数ベクトル(6)からフィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)を取得するためのフィルターバンク(9)であって、当該フィルターバンク(9)は、3つのフィルターで構成され、1つはeBIS(9.1)のクリーニングとフィルタリングのためのもの、もう1つはeNOX(9.2)のクリーニングとフィルタリングのためのもの、もう1つはeNMB(9.3)のクリーニングとフィルタリングのためのもの、2)フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)及びモニター変数の目標値ベクトル(8)から制御誤差ベクトル(12,13,14)を取得するための制御誤差生成器(11)、とりわけeBISモニター対象制御誤差ベクトル(12)を取得し、eNOXモニター対象制御誤差ベクトル(13)を取得し、eNMBモニター対象制御誤差ベクトル(14)を取得し、3)制御誤差ベクトル(12,13,14)から及び手動プロトコル注入量ベクトル(4)から制御注入量ベクトル(15)を取得する複数変数の相乗的コントローラMIMO-PID(16)、4)フィルタリングされたモニタリング変数ベクトル(10)から修正ベクトル(18)を取得するための注入修正システム(17)、5)制御注入量ベクトル(15)と修正ベクトル(18)から信頼性ある制御ベクトル(20)を計算するための安全性システム(19)、6)信頼性ある制御ベクトル(20)から自動注入量ベクトル(22)を取得するための定量子(21)、7)手動プロトコル注入量ベクトル(4)と自動注入量ベクトル(22)から麻酔薬注入量ベクトル(5)を取得するためのスイッチングシステム(23)。
【
図3】以下の入力を有する制御誤差生成器(11)の詳細図を示す。1)モニター対象変数の目標値ベクトル(8)、2)モニタリング変数ベクトル(10)。制御誤差生成器(11)は以下のもので構成される。1)eBISモニター対象(10.1)及びその目標値(8.1)によるDoHのフィルタリングされたモニタリングに基づいて、比例誤差eBIS(12.1)、積分誤差eBIS(12.2)及び微分誤差eBIS(12.3)が指示するeBISモニター対象制御誤差ベクトル(12)が取得されるDoH誤差生成器(28)、2)eNOXモニター対象(10.2)及びその目標値(8.2)によるANGのフィルタリングされたモニタリングに基づいて、eNOX比例誤差(13.1)、eNOX積分誤差(13.2)及びeNOX微分誤差(13.3)が指示するeNOXモニター対象制御誤差ベクトル(13)が取得されるANG誤差生成器(29)、3)eNMBモニター対象(10.3)及びその目標値(8.3)を使用するMRXのフィルタリングされたモニタリングに基づいて、eNMB比例誤差(14.1)、eNMB積分誤差(14.2)及びeNMB微分誤差(14.3)が指示するeNMBモニター対象制御誤差ベクトル(14)が取得されるMRX誤差生成器(30)。
【
図4】制御誤差ベクトル(12,13,14)と手動プロトコル注入量ベクトル(4)を入力として有する相乗的MIMO-PIDを備えた多変数コントローラ(16)の詳細図を示す。相乗的MIMO-PIDを備えた多変数コントローラ(16)は、制御誤差ベクトル(12,13,14)を制御注入量ベクトル(15)に関係づけるMISO-PID制御サブシステム(25,26,27)で構成される。
【
図5】制御誤差ベクトル(12,13,14)を入力として有するePPF薬剤(15.1)の注入量に関連したMISO-PIDコントローラ(25)の詳細図を示す。MISO-PID-ePPF制御サブシステム(25)は、ePPF薬の注入量を以下と関係づける3つのSISO-PIDコントローラで構成される:1)eBIS-ePPF PIDコントローラ(25.1)を経由したeBIS制御誤差ベクトル(12);2)eNOX-ePPF PIDコントローラ(25.2)を経由したeNOX制御誤差ベクトル(13)、3)eNMB-ePPF PIDコントローラ(25.3)を経由したeNMB制御誤差ベクトル(14)。
【
図6】制御誤差ベクトル(12,13,14)を入力として有するeRMF薬剤(15.2)の注入量に関連したMISO-PID-eRMF制御サブシステム(26)の詳細図を示す。MISO-PID-eRMF制御サブシステム(26)は、eRMF薬の注入量を以下と関係づける3つのSISO-PIDコントローラで構成される。1)eBIS-eRMF PIDコントローラ(26.1)を経由したeBIS制御誤差ベクトル(12)、2)eNOX-eRMF PIDコントローラ(26.2)を経由したeNOX制御誤差ベクトル(13)、3)eNMB-eRMF PIDコントローラ(26.3)を経由したeNMB制御誤差ベクトル(14)。
【
図7】制御誤差ベクトル(12,13,14)を入力として有するeRCN薬剤(15.3)の注入量に関連したMISO-PID-eNMB制御サブシステム(27)の詳細図を示す。MISO-PID-eNMB制御サブシステム(27)は、eRCN薬の注入量を以下と関係づける3つのSISO-PIDコントローラで構成される。1)eBIS-eRCN PIDコントローラ(27.1)を経由したeBIS制御誤差ベクトル(12)、2)eNOX-eRCN PIDコントローラ(27.2)を経由したeNOX制御誤差ベクトル(13)、3)eNMB-eRCN PIDコントローラ(27.3)を経由したeNMB制御誤差ベクトル(14)。
【
図8】SynPlD制御システム(24)を構成する9個のSISO-PIDコントローラ(C
ij)のうち1つの詳細図を示す。各SISO-PIDコントローラは、各制御誤差ベクトル(e
j)の各成分に対応する比例(k.1)、積分(k.2)及び微分(k.3)誤差を入力として有する。各SISO-PIDコントローラは、部分的注入量が計算されている薬剤/を特定するサブスクリプトとモニター対象の起源を特定するjとで特定されている。したがって、i=1はPPFを特定し、i=2はRMF、i=3はRCN、j=1はモニター対象BISを特定し、j=2はNOX、j=3はNMB、k=12はモニター対象BISに対する誤差ベクトルを特定し、k=13はNOXに対する誤差ベクトル、k=14はNMBに対する誤差ベクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、全身麻酔の誘導と維持のCLの制御に有効な、CLのPIDコントローラを補完する様々な戦略を提供し、制御誤差ベクトルに基づいてePPF、eRMF及びeRCN薬の投与量を計算する。CLの制御は、麻酔行為における相乗作用を考慮し、それぞれeBIS、eNOX及びeNMBモニター対象(その他モニター対象を考慮し得る)を通じたDoH、ANG及びMRX(その他変数を考慮し得る)のモニタリング情報のフィードバックによって新規方法で取得する。モニター対象の値の変化は、主に薬剤の効果及び手術の行為によってもたらされる。
【0047】
加えて、患者の生理学的完全性を保護するため、薬剤注入は安全性システムによって調節され、従来のPIDが有していない注入修正システムによって補完される。とりわけその新規性のなかでも、PIDマルチコントローラにおける薬剤間の相乗作用、制御誤差における非対称性、モニター対象の極めて低レベル又は高レベルの注入の修正、薬剤注入の固定/可変限度値を通じた及びポンプの停止による過剰注入に対する安全性、麻酔医の手技経験に関連した条件に起因する過少注入に対する安全性(OL手動プロトコル)を考慮していることが挙げられる。最後に、注入量の最終決定値は、電子機械注入ポンプの分解能に注入量を適合する定量子を用いて調節される。
【0048】
最終目的は、本発明のエンドユーザーである全身麻酔の下で手術中の患者に対して直接適用され得るePPF、eRMF及びeRCNの注入量の自動計算の実行である。提案された発明の新規性は、とりわけ手術中の患者に適用され得るフィルターバンク、非対称制御誤差生成器、MIMO-PIDコントローラ、修正システム、安全性システム及び定量化システムによって形成されるSynPID制御システムを用いた新しい麻酔薬の注入システムの定義にある。なぜならそれは以下を考慮しているからである。1)eBIS、eNOX及びeNMBモニター対象を使用したDoH、ANG及びMRXのモニタリング、2)ePPF、eRMF及びeRCN薬剤の注入ポンプ、3)マイクロプロセッサ及び保存メモリを使用する電子機器の使用。
【0049】
加えて、患者に関する自動注入量の推計をするため、CL制御システムは行為の時点での以前の薬剤注入を考慮し、現在及び過去のモニター対象の測定値を考慮する。
【0050】
SynPID制御システムを用いたePPF、eRMF及びeRCN薬の連続注入システムは、麻酔医の手動経験(OL手動プロトコル)が必要な制御手法であり、各SISO-PIDコントローラの比例、積分及び微分ゲイン、患者の体重(W)、身長(H)、性別(G)及び筋肉量(MB)を使用したCohen-Coon経験的調整法の変法を使用して各患者に対してカスタマイズされる。カスタマイズ法は全身麻酔のIPh期間中に適用される。
【0051】
SynPID制御システム(24)は、MPhに自動注入ベクトル(22)に切替えてRPhに注入量を覆すためにIPhに手動プロトコル注入量ベクトル(4)を最初に適用するスイッチングシステム(23)の適用の結果として麻酔薬注入量ベクトル(5)を提案する。
【0052】
SynPID制御システム(24)の主目的は、以下に基づき、満足いく信頼できる麻酔状態に患者(1)を誘導することである。1)現在麻酔状態、2)現在及び/又は過去のモニタリング変数(6)(メモリーに保存された履歴)、3)過去の麻酔薬注入量ベクトル(5)(メモリーに保存された履歴)。本発明は、全身麻酔下で手術を受ける患者(1)に信頼性ある麻酔状態の制御を実施するための多変数制御システムを規定する、MIMO-PID相乗作用(16)を用いた多変数コントローラに基づくSynPID制御システム(24)によってフィードバック制御アルゴリズムが実施される電子システムの提案にある。
【0053】
SynPlD制御システムは、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、アルディーノ、ラズベリーパイ及び方法の実行のための特定のハードウェアから選択された、メモリーを有するマイクロプロセッサベースのシステムで実施され、命令を逐次実行するために注入ポンプというハードウェアを使用し、本発明で説明するSynPID制御システムで薬剤注入法を実施する。
【0054】
本発明の静脈麻酔行為に適用されるCL MIMO-PID(SynPlD)で制御による相乗的薬剤注入システムは、少なくとも以下の態様で従来のPIDに基づく先行技術の方法とは異なる。
-SynPlD制御システムが、スイッチングシステム(23)によって制御される3つの制御相を使用していること。1)IPhは、麻酔以降の開始に相当する相であって、満足いく麻酔状態が達成されるまで続く。この期間、手動プロトコル注入量ベクトル(4)のみが患者(1)に適用される一方、この期間の終わりは、SynPID制御システム(24)の患者(1)へのカスタマイズのために使用される。2)MPh、手術が行われるこの相では、SynPID制御システムの目的は、手術行為にもかかわらず、満足いく麻酔状態を維持することである。3)RPh、この相では、患者の覚醒を達成するため、薬剤の注入が除去される。
-SynPID制御システムは、フィルターバンク(9)を使用してモニタリング変数ベクトル(6)からノイズとアーチファクトを除去し、フィルターモニタリングベクトルを取得する。フィルターバンク(9)は、スペクトラルクリーニング及びモニタリング条件に基づく意思決定に基づいている。
-SynPID制御システムは、モニタリング変数ベクトル(6)を構成するeBIS、eNOX及びeNMBモニター対象に関係する制御誤差生成器(11)を使用する。誤差は非対称であり、モニター変数の目標値ベクトル(8)及びフィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)の調節によって定義される。手術行為のベクトル(7)は、モニタリング変数ベクトル(6)の変動を通じて患者(1)に反映される。
-SynPID制御システムは、薬剤ePPF(15.1)、eRMF(15.2)及びeRCN(15.3)の注入量によって形成された制御注入量ベクトル(15)を使用する。各薬剤注入は、3つのSISO-PIDコントローラに関係する3つの制御動作の合計で構成されるMISO-PID制御システムの動作によって定義される。
-ePPF(15.1)の注入量は、以下の合計から計算される。1)比例誤差eBIS(12.1)、積分誤差eBIS(12.2)及び微分誤差eBIS(12.3)によって形成されるeBISモニター対象制御誤差ベクトル(12)にePPF制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(25.1)、2)eNOX比例誤差(13.1)、eNOX積分誤差(13.2)及びeNOX微分誤差(13.3)によって形成されるeNOXモニター対象制御誤差ベクトル(13)にePPF制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(25.2)、3)比例成分(14.1)、積分成分(14.2)及び微分成分(14.3)によって形成されるeNMBモニター対象制御誤差ベクトル(14)にePPF制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(25.3)。
-eRMF(15.2)の注入量は、以下の合計から計算される。1)比例誤差eBIS(12.1)、積分誤差eBIS(12.2)及び微分誤差eBIS(12.3)によって形成されるeBISモニター対象制御誤差ベクトル(12)にeRMF制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(26.1)、2)eNOX比例誤差(13.1)、eNOX積分誤差(13.2)及びeNOX微分誤差(13.3)によって形成されるeNOXモニター対象制御誤差ベクトル(13)にeRMF制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(26.2)、3)比例成分(14.1)、積分成分(14.2)及び微分成分(14.3)によって形成されるeNMBモニター対象制御誤差ベクトル(14)にeRMF制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(26.3)。
-eRCN(15.3)の注入量は、以下の合計から計算される。1)比例誤差eBIS(12.1)、積分誤差eBIS(12.2)及び微分誤差eBIS(12.3)によって形成されるeBISモニター対象制御誤差ベクトル(12)にeRCN制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(27.1)、2)eNOX比例誤差(13.1)、eNOX積分誤差(13.2)及びeNOX微分誤差(13.3)によって形成されるeNOXモニター対象制御誤差ベクトル(13)にeRCN制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(27.2)、3)比例成分(14.1)、積分成分(14.2)及び微分成分(14.3)によって形成されるeNMBモニター対象制御誤差ベクトル(14)にeRCN制御注入量の一部を関係づけるSISO-PIDコントローラ(27.3)。
-SynPID制御システム(24)は、3つのMISO-PID制御サブシステムにグループ分けされる9個のSISO-PIDコントローラ(
図5、
図6、
図7)を使用しており、各SISO-PIDコントローラ(C)(
図8)が薬剤注入量i(15.i)を計算するために使用される。
-比例非対称制御誤差(k.1)という入力から始まり、比例注入動作(15.i.1)を出力で規定する比例動作システム(i.j.1)。
-積分非対称制御誤差(k.2)という入力から始まり、積分注入動作(15.i.2)を出力で規定する積分動作システム(i.j.2)。
-微分非対称制御誤差(k.3)という入力から始まり、微分注入動作(15.i.3)を出力で規定する微分動作システム(i.j.3)。
-SynPID制御システム(24)は、フィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)の上下限閾値のベクトルに関する乖離によって定義される修正ベクトル(18)で制御注入量ベクトル(15)を補償する注入量修正システム(17)を使用する。これらの偏差は、PID(24)に基づく多変数制御によって修正され得る。
-SynPID制御システム(24)は、安全性システム(19)を使用する。当該安全性システムは、修正ベクトル(18)で補償された制御注入量ベクトル(15)を調節し、過剰注入や過少注入を防止する信頼性ある制御ベクトル(20)を導くことで、患者の生命を損ねる深い全身麻酔期間や手術中の覚醒をもたらしうる鎮静期間を回避する。過剰注入を回避するため、安全性システム(19)に関して制限が適用され、注入ポンプシステム(2)を中止し、過少注入を回避する。修正ベクトル(18)が適用される。
-SynPID制御システム(24)は、定量化システム(21)を使用し、信頼性ある制御ベクトル(20)は、様々なカテーテルを通じて薬剤を患者の体(1)内に静脈注入する注入ポンプシステム(2)によって解釈可能で、麻酔状態を修正する。次に、これらの修正はモニタリング変数ベクトル(6)を用いて、モニタリング装置(3)によって収集される。
【0055】
電子機器で実行可能な自動注入のために静脈経由の麻酔行為において適用されるCL MIMO-PID(SynPlD)の制御による相乗作用をもつ麻酔薬の複数注入のためのステップは、各行為の時点で以下の通りである。
ステップ1:eBIS(6.1)、eNOX(6.2)及びeNMB(6.3)モニター対象のベクトル値を測定する。これは主に麻酔ePPF(5.1)、eRMF(5.2)及びeRCN(5.3)薬の注入ベクトルに依存する。麻酔薬は、注入ポンプシステム(2)を経由して患者(1)に投与される。モニタリング装置(3)は、麻酔薬の患者への効果、及び、モニタリング変数ベクトル(6)を通じた処置における外科医の手術行為ベクトル(7)への効果を収集する。その他要因は、モニタリングベクトルの値に影響しうる。モニタリング変数ベクトル(6)の情報と麻酔薬(5)の注入ベクトルの値に関する決定は、メモリに保存される。
ステップ2:eBIS(6.1)、eNOX(6.2)及びeNMB(6.3)モニター対象のベクトル値、ePPF(4.1)、eRMF(4.2)及びeRCN(4.3)に関係する手動プロトコルの注入量、並びに、eBIS(8.1)、eNOX(8.2)及びeNMB(8.3)に関係するモニター変数の目標値ベクトルのフィードバックからSynPID制御システム(24)を用いて麻酔ePPF(5.1)、eRMF(5.2)及びeRCN(5.3)薬の注入ベクトルを計算する。
ステップ3:eBISに関するクリーニング/フィルタリングシステム(9.1)、eNOXに関するクリーニング/フィルタリングシステム(9.2)及びeNMBに関するクリーニング/フィルタリングシステム(9.3)を用いてeBIS(6.1)、eNOX(6.2)及びeNMB(6.3)モニター対象のベクトルのノイズとアーチファクトの除去を進めて、eBIS(10.1)、eNOX(10.2)及びeNMB(10.3)のフィルタリングしたモニタリング変数ベクトルを取得する。
ステップ4:eBIS(12)、eNOX(13)及びeNMB(14)に対するモニター因子の制御誤差ベクトルを計算する。eBIS制御誤差ベクトルには、3つの成分(eBIS比例非対称誤差(12.1)、eBIS積分非対称誤差(12.2)、eBIS微分非対称誤差(12.3))がある。eNOX制御誤差ベクトルには、3つの成分(eNOX比例非対称誤差(13.1)、eNOX積分非対称誤差(13.2)、eNOX微分非対称誤差(13.3))がある。eNMB制御誤差ベクトルには、3つの成分(eNMB比例非対称誤差(14.1)、eNMB積分非対称誤差(14.2)、eNMB微分非対称誤差(14.3))がある。DoH誤差生成器(28)、ANG誤差生成器(29)及びMRX誤差生成器(30)で構成される制御誤差ベクトル(12,13,14)は制御誤差生成器(11)によって取得される。DoH誤差生成器(28)は、eBISのフィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10.1)及びeBISの目標値(8.1)から3つの成分(eBIS比例非対称誤差(12.1)、eBIS積分非対称誤差(12.2)、eBIS微分非対称誤差(12.3))を取得する。ANG誤差生成器(29)は、eNOXのフィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10.2)及びeNOXの目標値(8.2)から3つの成分(eNOX比例非対称誤差(13.1)、eNOX積分非対称誤差(13.2)、eNOX微分非対称誤差(13.3))を取得する。MRX誤差生成器(30)は、eNMBのフィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10.3)及びeNMBの目標値(8.3)から3つの成分(eNMB比例非対称誤差(14.1)、eNMBをかけた微分非対称成分積分非対称誤差(14.2)、eNMBをかけた微分非対称成分微分非対称誤差(14.3))を取得する。誤差は、その評価の時点で、モニター変数の目標値ベクトル(8)に対するモニタリング変数ベクトル(6)の乖離を示唆する。
ステップ5:制御誤差ベクトル(12,13,14)と手動プロトコル注入量ベクトル(4)を入力する多変数の相乗的MIMO-PIDコントローラ(16)を用いて、ePPF(15.1)、eRMF(15.2)及びeRCN(15.3)に対する薬剤注入量ベクトルを計算する。MIMO-PID多変数の相乗的コントローラ(16)は、3個のMISO-PID制御サブシステム(25,26,27)からなり、その各々が以下の3個のSISO-PIDコントローラからなる。1)ePPF制御注入量(15.1)を取得するために使用されるSISO-PIDコントローラ(25.1,25.2,25.3)、2)eRMF制御注入量(15.2)を取得するために使用されるSISO-PIDコントローラ(26.1,26.2,26.3)、3)eRCN制御注入量(15.3)を取得するために使用されるSISO-PIDコントローラ(27.1,27.2,27.3)。
ステップ6:eBIS(10.1)、eNOX(10.2)及びeNMB(10.3)のフィルタリングしたモニタリングで構成されるフィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)から、ePPF注入修正サブシステム(17.1)、eRMF注入修正サブシステム(17.2)及びeRCN注入修正サブシステム(17.3)で形成された注入修正システム(17)によって、ePPF修正注入量(18.1)、eRMF修正注入量(18.2)及びeRCN修正注入量(18.3)で形成された修正ベクトル(18)を計算する。修正ベクトル(18)は、DoH、ANG及びMRXの低減の影響を軽減し過少注入を回避するために制御注入量ベクトル(15)を補償しようとする。修正ベクトル(18)は、フィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)上で上下限閾値ベクトルに基づいて計算される。
ステップ7:ePPF制御注入ベクトル(15.1)、eRMF制御注入ベクトル(15.2)、及びeRCN制御注入ベクトル(15.3)によって形成される制御注入ベクトル(15)、並びに、ePPFの修正注入量(18.1)、eRMFの修正注入量(18.2)及びeRCN薬剤の修正注入量(18.3)によって形成される修正ベクトル(18)からePPF注入安全性サブシステム(19.1)、eRMF注入安全性サブシステム(19.2)及びeRCN注入安全性サブシステム(19.3)で形成された安全性システム(19)によって、ePPF薬剤の信頼性ある注入量(20.1)、eRMF薬剤の信頼性ある注入量(20.2)及びeRCN薬剤の信頼性ある注入量(20.3)で形成された信頼性ある制御ベクトル(20)を計算する。安全性システム(19)は、信頼性ある制御ベクトル(20)を患者(1)にとって信頼性があり、患者(1)にとって望ましい効果をもたらす値に向かわせるため、制御注入量ベクトル(15)を補償しようとする。つまり過剰注入や過少注入を回避することで、患者の生命を損ねるような深い全身麻酔期間や手術中の覚醒をもたらすことがある鎮静期間を回避することになる。過剰注入を回避するため、注入ポンプシステムの中止制限ベクトル(2)が適用され、過少注入を回避するため、修正ベクトル(18)が適用される。
ステップ8:ePPF薬剤の信頼性ある注入量(20.1)、eRMF薬剤の信頼性ある注入量(20.2)及びeRCN薬剤の信頼性ある注入量(20.3)で形成された信頼性ある制御ベクトル(20)から、ePPFの注入定量化サブシステム(21.1)、eRMFの注入定量化サブシステム(21.2)、eRCNの注入定量化サブシステム(21.3)によって形成された定量化システム(21)を用いて、ePPF薬剤の自動注入量(22.1)、eRMF薬剤の自動注入量(22.2)及びeRCNの自動注入量(22.3)によって形成された自動注入ベクトル(22)を計算する。定量化システム(21)は、注入量を修正する結果、信頼性ある制御ベクトル(20)は、様々なカテーテルを通じて薬剤を患者の体(1)内に静脈注入する注入ポンプシステム(2)(薬剤ePPF(2.1)、eRMF(2.2)及びeRCN(2.3)で構成される)によって解釈可能になる。
ステップ9:IPhの経過時間、MPhの時間及びRPhの時間を制御するためのスイッチングシステム(23)によって麻酔薬注入量ベクトル(5)(ePPF注入(5.1)、eRMF注入(5.2)及びeRCN注入(5.3)で構成される)を規定する。IPhにおいて、麻酔薬注入量ベクトル(5)は手動プロトコル注入量ベクトル(4)と同じであり、MPhにおいて、麻酔薬注入量ベクトル(5)は自動注入ベクトル(22)と同じであり、RPhにおいて、注入ポンプシステム(2)が中断モードになる。
ステップ10:3個のSISO-PIDコントローラ(C11,C12,C13)(25.1,25.2,25.3)で形成されたMISO-PID-ePPFC1制御サブシステム(25)からePPF薬剤の制御注入量(15.1)を計算する。ここで、各SISO-PIDコントローラは、以下に詳述する3種の薬剤制御動作によって形成されている。1)eBISモニター対象制御誤差ベクトル(12)から提供されるePPF薬剤注入量(15.1.1)の注入への寄与を計算するSISO-PID C11コントローラ(25.1)が、ePPFの一部注入量(15.1.1.1)をeBIS(12.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、ePPFの一部注入量(15.1.1.2)をeBIS(12.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、ePPFの一部注入量(15.1.1.3)をeBIS(12.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。2)eNOXモニター対象制御誤差ベクトル(13)から提供されるePPF薬剤注入量(15.1.2)の制御注入への寄与を計算するSISO-PID C12コントローラ(25.2)が、ePPFの一部注入量(15.1.2.1)をeNOX(13.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、ePPFの一部注入量(15.1.2.2)をeNOX(13.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、ePPFの一部注入量(15.1.2.3)をeNOX(13.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。3)eNMBモニター対象制御誤差ベクトル(14)から提供されるePPF薬剤注入量(15.1.3)の制御注入への寄与を計算するSISO-PID C13コントローラ(25.3)が、ePPFの一部注入量(15.1.3.1)をeNMB(14.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、ePPFの一部注入量(15.1.3.2)をeNMB(14.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、ePPFの一部注入量(15.1.3.3)をeNMB(14.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。
ステップ11:3個のSISO-PIDコントローラ(C21,C22,C23)(26.1,26.2,26.3)で形成されたMISO-PID-eRMFC2制御サブシステム(26)からeRMF薬剤の制御注入量(15.2)を計算する。ここで、各SISO-PIDコントローラは、以下に詳述する3種の薬剤制御動作によって形成されている。1)eBISモニター対象制御誤差ベクトル(12)から提供されるeRMF薬剤注入量(15.2.1)の制御注入への寄与を計算するSISO-PID CC21コントローラ(26.1)が、eRMFの一部注入量(15.2.1.1)をeBIS(12.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、eRMFの一部注入量(15.2.1.2)をeBIS(12.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、eRMFの一部注入量(15.2.1.3)をeBIS(12.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。2)eNOXモニター対象制御誤差ベクトル(13)から提供されるeRMF薬剤注入量(15.2.2)の制御注入への寄与を計算するSISO-PID C22コントローラ(26.2)が、eRMFの一部注入量(15.2.2.1)をeNOX(13.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、eRMFの一部注入量(15.2.2.2)をeNOX(13.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、eRMFの一部注入量(15.2.2.3)をeNOX(13.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。3)eNMBモニター対象制御誤差ベクトル(14)から提供されるeRMF薬剤注入量(15.2.3)の制御注入への寄与を計算するSISO-PID C23コントローラ(26.3)が、eRMFの一部注入量(15.2.3.1)をeNMB(14.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、eRMFの一部注入量(15.2.3.2)をeNMB(14.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、eRMFの一部注入量(15.2.3.3)をeNMB(14.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。
ステップ12:3個のSISO-PIDコントローラ(C31,C32,C33)(27.1,27.2,27.3)で形成されたMISO-PID-eNMB C3制御サブシステム(27)からeRCN薬剤の制御注入量(15.3)を計算する。ここで、各SISO-PIDコントローラは、以下に詳述する3種の薬剤制御動作によって形成されている。1)eBISモニター対象制御誤差ベクトル(12)から提供されるeRCN薬剤注入量(15.3.1)の注入への寄与を計算するSISO-PID C31コントローラ(27.1)が、eRCNの一部注入量(15.3.1.1)をeBIS(12.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、eRCNの一部注入量(15.3.1.2)をeBIS(12.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、eRCNの一部注入量(15.3.1.3)をeBIS(12.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。2)eNOXモニター対象制御誤差ベクトル(13)から提供されるeRCN薬剤注入量(15.3.2)の制御注入への寄与を計算するSISO-PID C32コントローラ(27.2)が、eRCNの一部注入量(15.3.2.1)をeNOX(13.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、eRCNの一部注入量(15.3.2.2)をeNOX(13.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、eRCNの一部注入量(15.3.2.3)をeNOX(13.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。3)eNMBモニター対象制御誤差ベクトル(14)から提供されるeRCN薬剤注入量(15.3.3)の制御注入への寄与を計算するSISO-PID C33コントローラ(27.3)が、eRMFの一部注入量(15.3.3.1)をeNMB(14.1)に対する比例制御非対称誤差に関係づける比例動作、eRCNの一部注入量(15.3.3.2)をeNMB(14.2)に対する積分制御非対称誤差に関係づける積分動作、及び、eRCNの一部注入量(15.3.3.3)をeNMB(14.3)に対する微分制御非対称誤差に関係づける微分動作によって形成される。
【0056】
次に、手動プロトコル注入量ベクトル(4)、モニタリング変数ベクトル(6)、モニター変数の目標値ベクトル(8)、制御誤差ベクトル(12,13,14)、修正ベクトル(18)及び信頼性ある制御ベクトル(20)を用いて患者(1)を手術中に満足いく麻酔状態に保つ麻酔薬注入量ベクトル(5)を取得するSynPlD制御システムを定義する式が表される。本発明の例示的態様において、考慮すべき薬剤は、ePPF、eRMF及びeRCNであり、考慮すべきモニター対象は、eBIS、eNOX及びeNMBであることから、ベクトルの次数は3x1に固定され、行列の次数は3x3に固定される。本発明は、各患者(1)に対する設計や個別化のために薬物動態モデルや薬力学モデルを使用していないことに留意すべきである。
【0057】
方法について詳細を説明する前に、式に現れる変数を説明するため、物理的単位と一般特性によってグループ分けされた最も重要なものを以下に列挙する。
1)多変数システムの次元は、モニタリング変数ベクトル(6)r=3に対して3x3であり、ここで1はeBIS、2はeNOX、3はeNMBについて言及しており、麻酔薬注入量ベクトル(5)s=3に対して3x3で、ここで1はePPF、2はeRMF、3はeRCNについて言及している。
2)離散時間は、整数kで表され、実時間tは、t=k・T
sとして表され、T
sは注入期間であり、IPh開始時間はt
i、MPh開始時間はt
m、RPh開始時間はt
rである。
3)薬剤注入量を参照するベクトルは、患者の体重に対して15注入単位であり、一般式:
【数51】
式中、u
xは、次元(3x1)の注入量列ベクトルを表し、u
x1はePPFの注入量であり、u
x2はeRMFの注入量であり、u
x3はeRCNの注入量であり、Tはベクトルの転置を意味する。
注入量変数の一覧は以下の通りである。
【表16】
x:考慮すべきベクトルの下付文字を参照する。「参照」は、図で出てくる数字を示す。「記号」はその名前で変数を特定する。式は定義された概要説明の式を示す。
4)モニター変数、モニタリング単位(UM)、変動範囲は0~100であり、一般式:
【数52】
式中、y
zは、列ベクトルモニタリング変数(3x1)に言及する。y
z1は、eBISモニタリング、y
z2は、eNOXモニタリング、y
z3は、eNMBモニタリング、Tはベクトル転置を表す。
モニタリング変数とその変形の一覧は以下の通りである。
【表17】
z:考慮すべきベクトルの下付文字を参照する。「参照」は、図で出てくる数字を示す。「記号」はその名前で特定した変数である。「式」は、定義された概要説明の式を示す。
5)±200 UMの変動範囲で制御誤差ベクトル(12,13,14)を参照するベクトル、一般式:
【数53】
式中、e
jは、制御誤差列ベクトル(3x1)を参照する。e
1は、eBISに対する制御誤差ベクトル、e
2は、eNOXに対する制御誤差ベクトル、15e
3は、eNMBに対する制御誤差ベクトル、e
Pjは、モニター対象yに対する比例制御非対称誤差ベクトル、e
ijは、モニター対象yに対する積分制御非対称誤差ベクトル、e
Fjは、モニター対象yに対する微分制御/フィルタリング非対称誤差ベクトル、Tはベクトル転置を表す。
誤差変数とその変形の一覧は以下の通りである。
【表18】
j:考慮すべきベクトルの下付文字を参照する。「参照」は、図で出てくる数字を示す。「記号」はその名前で特定した変数である。「式」は、定義された概要説明の式を示す。
6) 多変数及び相乗的MIMO-PIDコントローラ(16)、MISO-PID制御サブシステム(25,26,27)及びSISO-PIDコントローラを参照する変数。
【数54】
式中、[PID]は、相乗的MIMO-PIDを備えた多変数コントローラ(16)を構成するPIDコントローラのアレイである。C
1は、MISO-PID-ePPF制御サブシステム(25)を構成するPIDコントローラのベクトルである。C
2は、MISO-PID-eRMF制御サブシステム(26)を構成するPIDコントローラのベクトルである。C
3は、MISO-PID-eNMB制御サブシステム(27)を構成するPIDコントローラのベクトルである。C
ijは、誤差をモニター対象i及び薬剤jと関連づけるSISO-PIDコントローラである。
【表19】
i,j: 考慮すべきコントローラの下付文字を参照する。「参照」は、図で出てくる数字を示す。「記号」はその名前で特定した変数である。「式」は、定義された概要説明の式を示す。
【0058】
本発明のシステムは、サンプリング期間と関連づけられた時間Ts秒ごとに更新される。システムは、IPhに関して時間tiに開始する。IPhからMPhへのスイッチングの瞬間(tm)から、式2~13にしたがって、方法の実行の期間(Ts)、以下に説明するように値が更新される。
【0059】
式2:モニタリング変数ベクトル(6)を測定する。手動プロトコル注入量ベクトル(4)を定義及び計算する。そしてモニター変数の目標値ベクトル(8)を設定する。これらは、ステップ2で取得した結果である。
【表20】
【表21】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0060】
式3:フィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)を計算し、1次のローパスフィルタに基づいて5つのフィルターバンク(9)を定義し、カットオフ周波数ベクトルを定義する。ステップ3の結果は、フィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)である。
【表22】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0061】
式4:DoH誤差生成器(28)を用いてeBISe
1モニター対象制御誤差ベクトル(12)、ANG誤差生成器(29)を用いてeNOXe
2モニター対象制御誤差ベクトル(13)、RMX誤差生成器(30)を用いてeNMBe
3モニター対象制御誤差ベクトル(14)を計算し、それぞれ比例(12.1,12.2,12.3)、積分(13.1,13.2,13.3)及び微分(14.1,14.2,14.3)成分を用いており、各SISO-PIDコントローラの比例非対称(12.1,13.1,14.1)、積分非対称(12.2,13.2,14.2)及び微分非対称(12.3,13.3,14.3)誤差を計算する。本発明で示される非対称誤差は、モニター変数の目標値ベクトル(8)が比例動作の係数列[B]、微分動作の係数列[G]で重み付けされ、積分動作の重み付け値は、ユニタリ行列である。本発明のSynPlD制御システムは、モニタリング変数ベクトル(6)とモニター変数の目標値ベクトル(8)に依存する[B]及び[G]で定義される。ステップ4の結果は、制御誤差ベクトル(12,13,14)である。
【表23】
【表24】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0062】
式5:多変数の相乗的コントローラMIMO-PID(16)、eBIS(12)、eNOX(13)及びeNMB(14)モニター対象の制御誤差ベクトル並びに手動プロトコル注入量ベクトル(4)を用いて制御注入量ベクトル(15)を計算する。多変数の相乗的コントローラMIMO-PID(16)を構成するSISO-PIDコントローラの[PID]行列を定義する。モニター対象jと薬剤iに対してSISO-PIDC
ijコントローラを定義する。SISO-PIDコントローラの比例、積分及び微分制御動作を定義する(その合計が各SISO-PIDコントローラの総制御動作を定義する)。SISO-PIDコントローラに対するゲイン行列を定義する。薬剤相乗作用行列を定義する。手動プロトコル注入量ベクトル(4)上でK
olゲインベクトルを定義する。MISO-PID制御サブシステム(25,26,27)を定義する。ステップ5の結果は、制御注入量ベクトル(15)である。
【表25】
【表26】
【表27】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0063】
式6:フィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)から薬剤修正注入(18)を定義し計算する。修正発動の上下限閾値ベクトルを定義する。ステップ6の結果は、修正ベクトル(18)である。
【表28】
【表29】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0064】
式7:薬剤の過剰投与・過少投与を回避するため、制御注入量ベクトル(15)及び修正ベクトル(18)から信頼性ある制御ベクトル(20)を定義し計算する。以下の2つの概念にしたがって薬剤注入量の上下限ベクトルを定義する。1)ポジティブな注入量のみが患者(1)に適用され得る。したがって、制御注入量ベクトル(15)+修正ベクトル(18)が負かゼロ注入量になったとき、注入ポンプシステム(2)は中断する(ゼロ注入)。2)最大注入量限度は、毒性レベルを回避するため、薬剤過剰投与を回避する。ステップ7の結果は、信頼性ある制御ベクトル(20)である。
【表30】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0065】
式8:信頼性ある制御ベクトル(20)から自動注入量ベクトル(22)を定義し計算する。各薬剤注入ポンプの分解能ベクトルを定義する。信頼性ある制御ベクトル(20)は、連続注入ポンプシステム(2)の分解能に適合され、これにより患者(1)に分注される自動注入量ベクトル(22)を取得する。ステップ8の結果は、自動注入量ベクトル(22)である。
【表31】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0066】
式9:手動プロトコル注入量ベクトル(4)から麻酔薬注入量ベクトル(5)を、スイッチングシステム(23)から自動注入量ベクトル(22)を定義・計算する。ステップ9の結果は、麻酔薬注入量ベクトル(5)である。
【表32】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0067】
式10:MISO-PID-ePPF制御サブシステム(25)を一組のSISO-PIDコントローラとして定義する。SISO-PIDコントローラ(25.1,25.2,25.3)、制御誤差ベクトル(12,13,14)及びePPFの手動プロトコルの注入量(4.1)からePPFの制御注入量(15.1)を計算する。ステップ10の結果は、ePPF制御注入量(15.1)である。
【表33】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0068】
式11:MISO-PID-eRMF制御サブシステム(26)を一組のSISO-PIDコントローラとして定義する。SISO-PIDコントローラ(26.1,26.2,26.3)、制御誤差ベクトル(12,13,14)及びePPFの手動プロトコルの注入量(4.2)からeRMFの制御注入量(15.2)を計算する。ステップ11の結果は、eRMFの制御注入量(15.2)である。
【表34】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0069】
式12:MISO-PID-eNMB制御サブシステム(27)を一組のSISO-PIDコントローラとして定義する。SISO-PIDコントローラ(27.1,27.2,27.3)、制御誤差ベクトル(12,13,14)及びeRCNの手動プロトコルの注入量(4.3)からeRCNの制御注入量(15.3)を計算する。ステップ11の結果は、eRCN制御注入量(15.3)である。
【表35】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0070】
式13:新しい薬剤とモニター対象をクレームするために定式化されている。
【表36】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。
【0071】
式14:患者間/患者内の変動を吸収するためにSynPID制御システムのパラメータを各患者に調整する。調整は、本発明のステップ3及びステップ5を含む。ステップ3では、式[3.5]及び[3.6]で表されるフィルターのカットオフ周波数が調整される必要がある。ステップ5では、式[5.16]、[5.17]及び[5.18]で表されるMIMO-PID(16)多変数及び相乗的コントローラゲイン行列が調整される必要がある。
【0072】
調整に必要な情報は、患者(1)が手動プロトコル注入量ベクトル(4)のみに支配されるIPhで抽出される。tiからtmまで、方法の実行は、メモリに保存し、丁度時間tmに、Cohen-Coon経験的調整法が適用され、その瞬間、スイッチングシステム(23)麻酔薬注入量ベクトル(5)は、自動注入量ベクトル(22)にしたがって、SynPlD制御システム24の結果である。比例ゲイン行列[5.19]に関連するゲインは、患者の体重に関係しており、手動プロトコル注入量ベクトル(4)は、患者の体重、身長、性別、筋肉量に関係している。
【0073】
式14は、提案された発明に対して定義された全てのステップを含むが、特にステップ3、5及び6を含む。一旦時間tmにゲインが計算されると、回復時間trまで一定のままである。
【0074】
調整が必要なシステムは以下の通りである。
-フィルターバンク(9)。カットオフ周波数に言及する3つのパラメータを調節するために必要である。
-相乗的MIMO-PIDを備えた多変数コントローラ(16):18個のパラメータを調整する必要がある。各SISO-PIDコントローラに対して比例、積分及び微分ゲインを調整する必要がある。
-注入修正システム(17):MIMO-PID多変数相乗的コントローラ(16)の比例ゲインを使用する。
【表37】
【表38】
「参照」は図で出てくる数字を示す。「式」は、とりわけs=r=3である場合に定義された概要説明の式を示す。「x」は、要素ごとの積要素(シューア積)を特定する。
【0075】
式中、Kは一般ゲイン[(μg/(分))/UM]、[KP]は、比例ゲイン行列[(μg/(分kg))/UM]、[KI]は積分ゲイン行列[(μg(minkg))]/UM分)]、[TI]は、積分動作時間行列[分]、[KD]は、微分ゲイン行列[(μg/kg)/UM]、[TD]は、微分動作時間行列[分]である。
【0076】
式15:あらゆる患者に普遍的でありふれている(患者間/患者内の変動に共通する)SynPlD制御システムのその他パラメータの調整。これらのパラメータは、概して一定であるものの、明示的かつ一般的に性別、母集団グループ(糖尿病患者、肥満者)、手術の種類、地域及び/または年齢ごとに調整される。考慮すべきパラメータと当該パラメータが現れる等式について以下に示す。
【表39】
【表40】
【表41】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の静脈麻酔行為で適用されるCL MIMO-PID(SynPlD)の制御による相乗作用を有する複数注入薬剤システムの実施に関して、1つの実施形態は、Android、IOS、Arduino、Raspberry-PIデバイス、パーソナルコンピュータ、商用注入ポンプまたは特定のハードウェアによって解釈可能なコードでその実行を検討する。
【0078】
SynPlD制御システムは、Ts秒ごとに反復実行し、以下の相からなる。1)方法のNj回反復があるtjのスタートアップ。2)IPh、tiからtmまで方法のNm-Ni回反復がある。3)MPh、tmからtr。4)RPh、tr以降方法のNr-Nm回反復がある。各反復の結果は、注入ポンプシステム(2)を用いて患者(1)に投与すべき麻酔薬注入量ベクトル(5)を取得することである。その結果、モニタリング変数ベクトル(6)から、手術行為のベクトル(7)にかかわらず、モニター変数の目標値ベクトル(8)が導かれる。
【0079】
上述のデバイスで実施されるSynPlD方法の適用の各相でとられる行動は、以下の通りである。
1)スタートアップの前に、以下のデータを取得する必要がある。1)式[2.4]及び[2.5]のベクトルからその値が導かれる手動プロトコル注入量ベクトル(4)を調整するための患者(1)の体重、年齢、性別、身長、筋肉量のデータ。2)式[8.3]のベクトルを調整するための注入ポンプシステム(2)の分解能のデータ。3)SynPlDシステム(24)の式[2.4]で示される実行期間、式[5.10]に示される薬剤相乗作用行列、式[4.3]及び[4.5]に示される制御誤差の非対称行列と概して式15で示される全てのパラメータの非対称行列のデータ。
2)IPhにおいて、患者(1)に対して投与される麻酔薬注入量ベクトル(5)が式[2.3]で示すような手動プロトコル注入量ベクトル(4)に相当する。
3)IPhの最後に、[5.4]、[5.5]及び[5.6]に示されるゲイン行列と概して式14で示される全てのパラメータのデータ。
4)MPhにおいて、患者(1)に対して投与される麻酔薬注入量ベクトル(5)が自動注入量ベクトル(22)に相当する。
5)RPhにおいて、患者(1)に対して投与される麻酔薬注入量ベクトル(5)が無効にされる。
【0080】
SynPlD制御システムの不確定の反復において、以下の動作を所定の順序で行う必要がある。
1.モニタリング装置(3)を使用してモニタリング変数ベクトル(6)の情報を取得することにより始まり、現在の反復回と過去の反復回で取得した情報は、後日の使用のためにメモリに保存される。本動作で取得した情報は、CLの制御システムのフィードバックに役立つ。
2.モニター変数の目標値ベクトル(8)を設定する必要がある。現在と過去の反復の結果は、後日の使用のためにメモリに保存される。
3.モニタリング変数ベクトル(6)からのノイズ及びアーチファクトをフィルターバンク(9)を用いて清掃し、フィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)を取得する必要がある。現在と過去の反復の結果は、後日の使用のためにメモリに保存される。
4.制御誤差ベクトル(12,13,14)は、制御誤差生成器(11)を用いて計算する必要がある。各制御誤差ベクトルは比例非対称誤差、積分非対称誤差及び微分非対称誤差によって形成される。モニター変数の目標値ベクトル(8)とフィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)の現在のインスタントを使用する。現在と過去の反復の結果は、後日の使用のためにメモリに保存される。
5.制御注入量ベクトル(15)は、制御誤差ベクトル(12,13,14)及び手動プロトコル注入量ベクトル(4)を入力として有する相乗的MIMO-PIDを備えた多変数コントローラ(16)を使用して計算する必要がある。各SISO-PIDコントローラから、現在の反復を使用する比例動作、現在の反復及び過去の全反復を使用する積分動作並びに現在の反復及び以前の反復を使用する微分動作で分散された各制御誤差の各薬剤への寄与を取得する。現在と過去の反復の結果は、後日の使用のためにメモリに保存される。
6.修正ベクトル(18)は、現在の反復のフィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)を入力として提示する注入修正システム(17)を用いて計算する必要がある。現在と過去の反復の結果は、後日の使用のためにメモリに保存される。
7.信頼性ある制御ベクトル(20)は、現在の反復の制御注入量ベクトル(15)及び修正ベクトル(18)を入力として提示するセキュリティシステム(19)を用いて計算する必要がある。現在と過去の反復の結果は、後日の使用のためにメモリに保存される。
8.自動注入量ベクトル(22)は、信頼性ある制御ベクトル(20)の現在の反復を入力として提示する定量化システム(21)を用いて計算する必要がある。現在と過去の反復の結果は、後日の使用のためにメモリに保存される。
9.麻酔薬注入量ベクトル(5)は、制御注入量ベクトル(15)、手動プロトコル注入量ベクトル(4)及びゼロベクトルの現在の反復を入力として提示するスイッチングシステム(23)を用いて計算する必要がある。現在と過去の反復の結果は、後日の使用のためにメモリに保存される。
10.一旦麻酔薬注入量ベクトル(5)が取得されると、新たに反復が始まり、このリストのポイント1に戻り、反復の数が増加する。
【0081】
本発明に係る静脈経由での麻酔行為に適用されるCL MIMO-PID(SynPlD)によって制御された、相乗作用をもつ麻酔薬の複数注入システムは、メモリがあるマイクロプロセッサをベースとした電子回路を使用するインテリジェントな注入ポンプを設置するため用意する。外科行為において静脈経由で患者(1)に投与するための麻酔薬注入量ベクトル(5)を決定するように構成されている。各反復期間Tsは1~30秒の間で構成可能である。麻酔薬注入量ベクトル(5)のミッションは、モニター変数の目標値ベクトル(8)によって与えられた満足いく麻酔状態を取得することである。
【0082】
SynPlD制御システムは、システムは、以下のブロックを実行することを含む本発明に提示された方法をTs秒ごとに反復実行する。
1.メモリ:モニタリング装置(3)からの情報のデータ履歴、モニター変数の目標値ベクトル(8)、フィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)、制御誤差ベクトル(12,13,14)、制御注入量ベクトル(15)、修正ベクトル(18)、信頼性ある制御ベクトル(20)及び注入ポンプシステム(2)で実行される麻酔薬注入量ベクトル(5)及びプロセッサでSynPlD方法を実行するのに必要な説明書に基づくコンピュータコードの記憶。
2.カウンタ:相IPh、MPh及びRPhを決定し、IPhが5~10分続くこと、MPhが手術によって期間が大きく変動しうること、RPhが10~20分続くことを見積もるための電子時間カウンタ。このカウンタは、プロセッサで実行するコンピュータコード及び関連する命令の形態でスイッチングシステム(23)を実施する。
3.調整:式14で表される動作とシステムメモリを使用してSynPlD制御システムのパラメータを各患者(1)に合わせて調整するための時間tmで実行されるソフトウェアルーチン。
4.ルーチン1:式[5.6]で表されるゲイン行列[KD]と式[3.4]で表されるフィルタリング係数Nを使用するフィルターバンク(9)の実施のための再使用可能なソフトウェアルーチン。ルーチンは、メモリに保存された情報を使用する。
5.ルーチン2:値が1~2である式[4.3]及び[4.5]で表される行列[B]及び[G]の要素を使用する制御誤差生成器(11)の実施のための再使用可能なソフトウェアルーチン。シングルルーチンは、制御誤差ベクトル(12,13,14)を取得するためのコードで実施される。ルーチンは、修正可能な入力パラメータで数回実行されることがある。ルーチンは、メモリに保存された情報を使用する。
6.ルーチン3:式[5.14]及び[5.15]で定義されたSISO-PIDコントローラを使用した多変数及び相乗的MIMO-PIDコントローラ(16)の実施のための再使用可能なソフトウェアルーチン。シングルルーチンは、3個のMISO-PID制御サブシステム(25,26,27)を形成し、相乗的MIMO-PIDを備えた多変数コントローラ(16)を形成するSISO-PIDコントローラの実行コードで実施される。ルーチンは、修正可能な入力パラメータで数回実行されることがある。ルーチンは、メモリに保存された情報を使用する。
7.ルーチン4:式[5.14]及び[2.4][2.5]で表されるSISO-PIDコントローラと手動プロトコル注入量ベクトル(4)の結果に関係するルーチン3を適用することにより取得する結果を用いて、制御注入量ベクトル(15)を計算するソフトウェアルーチン。シングルルーチンは、制御注入量ベクトル(15)を取得するためのコードで実施される。ルーチンは、メモリに保存された情報を使用する。
8.ルーチン5:式[3.2]で表されるフィルタリングしたモニタリング変数ベクトル(10)を使用し、式[3.3]及び[3.4]で定義されるカットオフ周波数を使用する注入修正システム(17)の実施のための再使用可能なソフトウェアルーチン。シングルルーチンは、注入修正システム(17)の実行コードで実施される。ルーチンは、修正可能な入力パラメータで数回実行されることがある。ルーチンは、メモリに保存された情報を使用する。
9.ルーチン6:式[6.1]及び[6.2]で表される制御注入量ベクトル(15)を使用するセキュリティシステム(19)の実施のための再使用可能なソフトウェアルーチン。シングルルーチンは、制御誤差システム(19)の実行コードで実施される。ルーチンは、修正可能な入力パラメータで数回実行されることがある。ルーチンは、メモリに保存された情報を使用する。
10.ルーチン7:式[7.1]及び[7.2]で表される信頼性ある制御ベクトル(20)を使用する定量化システム(21)の実施のための再使用可能なソフトウェアルーチン。シングルルーチンは、定量化システム(21)の実行コードで実施される。ルーチンは、修正可能な入力パラメータで数回実行されることがある。ルーチンは、メモリに保存された情報を使用する。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相乗作用を持つ薬剤を患者に自動で複数静脈内注入するためのシステムであって、
-患者(1)に多数の薬剤を送達するように構成された注入ポンプサブシステム(2)と、
-患者の状態情報に関する一組の生理学的変数を測定するように構成されたモニタリングサブシステム(3)と、
-既定の初期注入量(4)、モニタリング目標値(8)、生理学的変数の測定値のフィードバック(6)及び薬剤間の相乗作用に基づき、注入ポンプサブシステム(2)によって送達される各薬剤(5)の量を適応させるように構成された制御サブシステム(24)とを備え、当該制御サブシステムは、
○モニタリング目標値(8)及び生理学的変数の測定値のフィードバック(6)に基づいて誤差(12,13,14)を計算するように構成された制御誤差生成モジュール(11)と、
○制御誤差生成モジュール(11)で計算された誤差(12,13,14)及び既定の初期注入量(4)に基づいて各薬剤の制御注入量(15)を判定するように構成されたコントローラ(16)と、
○生理学的変数の測定値をモニタリングシステム(3)から受信し、コントローラ(16)の制御注入量(15)を修正するように構成された修正モジュール(17)であって、前記注入量は生理学的変数をプリセットされた安全な範囲に設定する上限閾値の関数として増加するか、下限閾値の関数で減少する修正モジュールと、
○各薬剤の制御注入量(15)を受信し、各薬剤の投与のしすぎがないようにするため、前記注入量を前記下限閾値及び上限閾値という2つの注入値間に限定することで修正するように構成された安全性モジュール(19)とを備え、
制御誤差生成モジュール(11)が、モニタリングサブシステム(3)で患者ステータス情報とともに測定される一組の生理学的変数の各々の変数に対して、制御ベクトル(12,13,14)を生成するように構成されており、コントローラは、複数入力/複数出力(MIMO)タイプの多変数キャラクターで構成され、薬剤ごとに複数入力/単一出力(MISO)制御サブシステムを含み、制御誤差を受信し薬剤ごとに制御注入量ベクトル(15)を判定するように構成された単一入力/単一出力(SISO)コントローラを備え、
制御サブシステム(24)が、様々なゲインを通じて各SISOコントローラに対してコントローラをチューニングする方法、並びに、体重、身長、性別、筋肉量及び臨床履歴からなる患者特有の生理学的パラメータのうち少なくとも1つの方法に基づき、当該患者のために特別にカスタマイズされ、
MIMOコントローラがMIMO-PID多変数コントローラであり、MISO制御サブシステムがMISO-PID型制御サブシステムであり、SISOコントローラはSISO-PID型に属し、
制御誤差生成モジュール(11)の制御ベクトル(12.13.14)が、比例非対称誤差成分(12.1,13.1,14.1)、積分非対象誤差成分(12.2,13.2,14.2)、微分非対称誤差成分(12.3,13.3,14.3)及び付加的な誤差成分を有し、SISO-PIDコントローラ(25.1,25.2,25.3,26.1,26.2,26.3,27.1,27.2,27.3)が、各コントロールベクトルの比例非対称誤差成分、積分対称誤差成分及び微分非対称誤差成分をそれぞれ受信し、各薬剤について制御注入量ベクトル(15)を決定するように構成される、システム。
【請求項2】
安全性モジュール(19)と注入ポンプサブシステム(2)との間に接続された定量モジュールをさらに備え、当該定量モジュールが前記安全性モジュールの出力ベクトルを注入ポンプサブシステム(2)によって解釈可能なものに適合させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
制御サブシステム(24)が、モニタリングサブシステム(3)によって送信されたフィードバック信号(6)を受信するように構成されたフィルターバンク(9)をさらに備える、請求項1
又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
制御誤差生成モジュール(11)が、モニタリングサブシステム(3)で測定される患者ステータス情報とともにモニタリングされる一組の生理学的変数の各々の変数に対していくつかの誤差生成サブモジュールを備える、請求項1から
3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
薬剤が患者を麻酔状態に誘引する麻酔薬であり、モニタリングサブシステムにより測定される一組の生理学的変数が患者の前記麻酔状態に関する情報を有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
患者麻酔ステータス情報に関する一組の生理学的変数が、eBIS、eNOX及びeNMB又はその他同等の催眠、痛覚又は筋弛緩のモニター対象をそれぞれ含む、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
注入ポンプサブシステム(2)が、催眠特性を有する薬剤の第1の注入ポンプ、鎮痛特性を有する薬剤の第2の注入ポンプ及び筋弛緩特性を有する薬剤の第3の注入ポンプを備える、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
催眠特性を有する薬剤がプロポフォールであり、鎮痛特性を有する薬剤がレミフェンタニルであり、筋弛緩特性を有する薬剤がロクロニウムである、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
患者の麻酔状態やバイタルサインを変えるその他薬剤の注入のための追加のポンプをさらに備える、請求項
7又は請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
制御サブシステム(24)が、さらに1型糖尿病患者のグルコース管理のために構成されており、モニタリングサブシステムが、さらに患者のグルコース測定のために構成されており、注入サブシステムが、さらに連続的かつ制御された量のインシュリンとグルカゴンを患者に送達するために構成される、請求項1から
9のいずれか一項に記載のシステム。
【国際調査報告】