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特表2023-523950メタンガスを抽出し、ガスをクラスレートに変換し、ガスを使用のために輸送する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】メタンガスを抽出し、ガスをクラスレートに変換し、ガスを使用のために輸送する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/00 20060101AFI20230601BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20230601BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
C07C7/00
C07C9/04
E21B43/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564527
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 US2021027902
(87)【国際公開番号】W WO2021216413
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/013,772
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/020,301
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522413054
【氏名又は名称】ケジリアン,マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ケジリアン,マイケル
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD10
(57)【要約】
天然ガスを抽出する方法およびシステムが本明細書に記載される。天然ガス源は、地上または地下または海中環境に見られる天然ガスもしくは天然ガスと原油の貯留層であり得る。天然ガスはまた、天然に形成されたクラスレートハイドレートの海中貯留層から抽出されたものであり得る。方法は、地上、海面、または海底で行われ得る。方法は、適切なプロモータを提供して構造II(sII)メタンクラスレートハイドレートの選択的形成を促進して、それによって、天然ガスを容易に輸送可能な形で格納することを特徴とする。方法はまた、不純物から、天然ガスと、それを生産することに関係する関連水の両方を分離することも特徴とし得る。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油からメタンを抽出する方法であって、
a)原油を、頭部空間を生成するのに十分な量で第1の容器内で受けることと、
b)前記容器の温度および/または圧力を調整して、溶解ガスの分離を生じさせることと、
c)ステップb)で分離された前記ガスを第2の容器内へ移行させることと、
d)水、任意選択的に熱力学プロモータ、および任意選択的に動的プロモータを前記第2の容器内へ導入することと、
e)前記圧力および/または温度を調整して、ガスクラスレートペレットを形成することと、
f)任意選択的に、前記sIIガスクラスレートハイドレートを、以下の特性、
i)中性浮力またはほぼ中性浮力を有する、
ii)実質的な漏洩または断裂することなく、前記sIIガスクラスレートハイドレートを効果的に含むのに十分に強い、
iii)空隙容量の実質的な形成に対して効果的に耐性を有するように可撓性がある、の1つ以上を有する貯蔵容器に移行させることとを含む、前記方法。
【請求項2】
g)前記第1の容器から前記処理された原油を、さらなる処理のために、コンテナ、パイプライン、船、または精製所に移行させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
h)前記第2の容器から任意の未処理ガスを除去するステップと、
i)任意選択的に、前記未処理ガスを隔離のために貯留層に移行させて貯留層圧力を維持するステップと、
j)任意選択的に、前記未処理ガスを商業目的で処理するステップとをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記未処理ガスが二酸化炭素である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記未処理ガスが、エタン、プロパン、ブタン、およびそれらの混合物からなる群から選択された1つ以上を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記プロモータが、テトラヒドロフラン、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、メチルシクロヘキサン、ネオヘキサン、2-メチルシクロヘキサン、p-ナコロン、イソアミルアルコール、第三ブチルメチルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップd)において、前記水が、真水、関連水、および海水、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
原油からメタンを回収する方法であって、
a)原油を、頭部空間を生成するのに十分な量で第1の容器内で受けることと、
b)前記第1の容器の温度および/または圧力を調整して、前記原油の任意の溶解ガスの分離を生じさせることと、
c)ステップb)で分離された前記ガスを第2の容器内へ移行させることと、
d)水、任意選択的に熱力学プロモータを前記第2の容器内に導入してクラスレートスラリーを形成し、任意選択的に、動的プロモータを前記第2の容器内に導入することと、
e)クラスレートを形成しない任意の非メタンガスを除去することと、
f)任意選択的に、前記クラスレートスラリーを第3の容器に移行させることと、
g)前記温度および/または圧力を調整して、安定sIIガスクラスレートペレットを形成することと、
h)貯蔵および集積のために、前記ガスクラスレートペレットを第4の容器に移行させることとを含む、前記方法。
【請求項9】
i)前記第1の容器から前記処理された原油を、さらなる処理のために、コンテナ、パイプライン、船、または精製所に移行させるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
j)前記第2の容器から任意の未処理ガスを除去するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記未処理ガスが二酸化炭素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記未処理ガスが、エタン、プロパン、ブタン、およびそれらの混合物からなる群から選択された1つ以上を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プロモータが、テトラヒドロフラン、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、メチルシクロヘキサン、ネオヘキサン、2-メチルシクロヘキサン、p-ナコロン、イソアミルアルコール、第三ブチルメチルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
石油精製所においてメタンを回収する方法であって、
a)精製プロセス中分離された揮発性ガスを、第1の容器内で受けることと、
b)水、任意選択的に熱力学プロモータ、および任意選択的に動的プロモータを前記第2の容器内へ導入することと、
c)前記第1の容器の温度および/または圧力を調整して、クラスレートスラリーの形成を生じさせることと、
d)任意選択的に、任意の未処理ガスを除去することと、
e)任意選択的に、前記スラリーを第2の容器へ移行させることと、
f)前記温度および/または圧力を調整して、安定sIIガスクラスレートハイドレートペレットを形成することと、
g)任意選択的に、前記sIIガスクラスレートハイドレートを、以下の特性、
i)中性浮力またはほぼ中性浮力を有する、
ii)実質的な漏洩または断裂することなく、前記sIIガスクラスレートハイドレートを効果的に含むのに十分に強い、
iii)空隙容量の実質的な形成に対して効果的に耐性を有するように可撓性がある、の1つ以上を有する貯蔵容器に移行させることとを含む、前記方法。
【請求項15】
前記未処理ガスが二酸化炭素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記未処理ガスが、エタン、プロパン、ブタン、およびそれらの混合物からなる群から選択された1つ以上を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記プロモータが、テトラヒドロフラン、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、メチルシクロヘキサン、ネオヘキサン、2-メチルシクロヘキサン、p-ナコロン、イソアミルアルコール、第三ブチルメチルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記安定sIIメタンクラスレートハイドレートを含有する前記貯蔵容器が、液化天然ガスへのさらなる処理のための場所へ輸送される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
自然界に現在存在する天然ガスハイドレートの貯留層からメタンを抽出する方法であって、
a)既存の天然ガスハイドレート貯留層から解離されたメタンを第1の容器内で受けることと、
b)水、任意選択的に熱力学プロモータを第2の容器内に導入して、クラスレートスラリーを形成し、任意選択的に動的プロモータを前記第2の容器内に導入することと、
c)前記温度および/または圧力を調整して、安定sIIガスクラスレートハイドレートペレットを形成することと、
d)安定sIIガスクラスレートハイドレートペレットを形成しない任意の非メタンガスを除去することと、
d)任意選択的に、前記安定sIIガスクラスレートハイドレートペレットを第2の容器に移行させることと、
e)任意選択的に、前記安定sIIガスクラスレートハイドレートペレットを、以下の特性、
i)中性浮力またはほぼ中性浮力を有する、
ii)実質的な漏洩または断裂することなく、前記安定sIIガスクラスレートハイドレートペレットを効果的に含むのに十分に強い、
iii)空隙容量の実質的な形成に対して効果的に耐性を有するように可撓性がある、の1つ以上を有する貯蔵容器に移行させることと、
f)前記安定sIIガスクラスレートハイドレートペレットの生産から生成した熱を、天然ガスハイドレート貯留層に向けることとを含む、前記方法。
【請求項20】
h)前記貯蔵容器を貯蔵設備に移行させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天然ガスを抽出し処理することに関する。天然ガス源は、天然ガスもしくは天然ガスと原油の地下もしくは海中貯留層、または、天然に形成されたクラスレートハイドレートの貯留層から抽出された天然ガスであり得る。本開示はまた、不純物からの天然ガスおよび不純物からの関連水の両方を分離することに関する。本開示はさらに、天然ガスを取得、輸送、かつ使用するために原油生産システムを改造することに関する。
【背景技術】
【0002】
原油の生産中に分離されたメタンおよび他の揮発性ガスは、それらは従来の手段では処理することができないので、燃焼される(または燃やされる)ことが多い。
【0003】
天然ガスを輸送する標準方法は、パイプラインを通してガスとしてのポンピング、または圧縮天然ガス(CNG)もしくは液化天然ガス(LNG)としてのコンテナにおいての輸送を含む。パイプラインは、天然ガス源と天然ガスの所望の目的地をつなぐ物理的パイプである。天然ガスをパイプラインを通してポンプするにはエネルギーが必要とされる。CNGシステムでは、天然ガスは圧縮され、輸送のために加圧コンテナに貯蔵される。天然ガスを圧縮することおよび輸送中に圧力を維持することにはエネルギーが必要とされる。目的地で、ガスは、以降の利用または天然ガス分配システムへの統合のために膨張される。
【0004】
LNGシステムでは、天然ガスの温度は、約-161℃に下げられ、その温度でガスは液化する。LNGは、輸送のために、特殊なコンテナ(熱伝達を最小化するための絶縁壁および/または真空壁を有する)に貯蔵される。目的地で、ガス温度は上げられ、ガスは、以降の使用または天然ガス分配システムへの統合のために、膨張する。天然ガスを液化し輸送中のガス温度および圧力を維持するにはエネルギーが必要とされる。LNGを用いると、容量の減少は、標準温度および圧力における同量の天然ガスと比べて、おおよそ600倍である。
【0005】
天然ガスをLNGとして輸送することは、業界に好まれる解決策となっている。システムの1つの欠点は、規模の経済が存在することである。システムを経済的なものとするには、非常に大きな生産量がなくてはならない。言い換えれば、小さな生産率では、必要なインフラコストは、投資が採算の合うシステムを生み出す実行可能な経済モデルに対応するものではない。現在、生産に関してかつ運用において、天然ガスを輸送のためにLNGに変換するターミナルが、地上および海上の両方において、世界中に存在する。また、LNGを天然ガスに戻すように動作するターミナルも存在する。
【0006】
貯留層が含有する天然ガスを生産するかどうかの決定に影響するいくつかの要因が存在する。貯留層が一定の基準に合致しない場合、その中に含まれる天然ガスは、どうすることもできない天然ガスと見なされ、それは、消費のために生産されない。どうすることもできないガス貯留層はしたがって、発見はされたが物理的理由または経済的理由のいずれかで使用できないままである天然ガス田として理解される。天然ガス貯留層は、天然ガスの量が少なすぎるという理由で、または到達するのが難しすぎるという理由で、またはエネルギー市場から地理的に離れているという理由で、どうすることもできないと見なされ得る。また、貯留層は、天然ガスが百分率組成で多すぎる不純物を含む場合、どうすることもできないと見なされ得る。これらの不純物は、例えば、二酸化炭素、硫化水素、水蒸気、および窒素を含み得る。
【0007】
Chinnの米国特許公開番号第2014/0100295号は、COを特定の化学物質と反応させることによって合成燃料に変換して、価値のないこの温室ガスから有益な生産物をもたらすことを教示する。このようにして、高COを有するどうすることもできないガス田は、生産するのに経済的となり得る。
【0008】
Heinemannの米国特許番号第6,028,234号は、天然に生じるクラスレート、例えば、クラスレートの海底堆積物の生産を教示する。最初に、熱が加えられてハイドレートを解離させ天然ガスを生産することができるように電気ヒータが海底堆積物に配置される。次いで、表面への移行が試みられるときハイドレートを改質するだろう。後続の方法は、後続のハイドレートの連鎖的な形成および解離からの移行を通して熱を向ける、太陽光、放射線および他の形状を向けるスキームを含む。
【0009】
Watanabeの米国特許公開番号第2010/0325955号は、ほぼアーモンド形状のハイドレートペレット(管状形状)を作成し、ハイドレートペレットをコンテナに入れて別々の対象物を保持し、凝集を防ぐように低温を保つことを教示する。Watanabeは、粉状氷(または雪)ではなく角氷を生産するが角氷をそのままのキューブとして保持し角氷が大きなブロックへ固化しないようにすることを類推し得る。
【0010】
Zhangの米国特許公開番号第2008/0135257号は、天然に形成されたハイドレートを加熱することによって海底堆積ハイドレートを採鉱して天然ガスを形成することを教示する。Zhangは本質的に、放出されたガスを収集する。それを行う際、Zhangは、ハイドレートが天然に形成される状況は実際のところ、地下環境における(すなわち、海底上の状況での)ハイドレート形成につながる状況であることを認識している。したがって、Zhangの教示によれば、ハイドレートが海面まで上昇すると、ハイドレートはその後解離して天然ガスを形成するので、ハイドレートは改質する。Zhangは、単に、ハイドレートが後に解離するであろうことを把握して、天然ガスがその後ハイドレートを改質することを可能とすることを教示する。Jonesの米国特許公開番号第2010/0048963号は、少なくとも1つの従来の炭化水素貯留層を有する複数の炭化水素貯留層からハイドレート貯留層を生成することを教示する。従来の貯留層の生産における余分な熱は、解離およびそれによる天然ガスハイドレート貯留層からの天然ガスの生産のための熱源として用いられる。
【0011】
どうすることもできないと見なされる天然ガスを含む天然ガスを抽出し、その天然ガスを経済的かつエネルギー効率良く輸送するのに適切な方法およびシステムを提供することは有益であろう。また、不純物から水を分離させることによって、天然ガスの生産から生成された水を使用可能とすることも有益であろう。同様に、天然ガスを不純物から分離させることが必要である。
【発明の概要】
【0012】
第1の態様では、貯留層から天然ガスを抽出する方法が提供される。天然ガスは、大部分はメタンおよび他の炭化水素から構成されるガスである。貯留層は、天然ガス、原油(石油と天然ガスの混合物である)を含み得、または、貯留層は、天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)として貯蔵されている天然ガスであり得る。方法は、貯留層に到達するよう井戸を掘削するという任意選択的な第1のステップを特徴とする。貯留層が天然ガスである場合、中身は、輸送される準備ができている。貯留層が原油である場合、方法は、石油と天然ガスを分離させるという第2のステップを特徴とする。方法は、既知の方法にしたがって石油成分を処理のために輸送、ポンピング、またはパイピングするという第3のステップを特徴とし得る。同様に、第3のステップは、石油成分を、適切な輸送のために別個の輸送用コンテナ内へと収集することを特徴とし得る。さらに他の例では、どうすることもできない天然ガスは、天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)の形で存在し得る。そのような場合、第2のステップは、元々の天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)を、例えば熱を加えるまたは圧力を低下させるまたはその両方により、ガスと水に解離させることを含み得る。全ての場合において、方法は、天然ガスからデブリを取り除くという第4のステップを特徴とし得る。方法は、天然ガスを、海底の近接する設備といったガス/クラスレートハイドレート処理設備内へと輸送、ポンピング、またはパイピングするという第5のステップを特徴とし得る。ガス/クラスレートハイドレート処理設備は、天然ガスを、それが天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)を形成するように変換するように設計され得る。
【0013】
天然ガスの構造II(sII)ハイドレートへの変換を促進するためにプロモータが提供され得る。天然ガスを、それが天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)を形成するように変換することは、COなどの不純物を天然ガスから分離するという結果をもたらし得る。COを含む不純物は次いで、ポンピングされ貯留層内へ戻されて、貯留層の圧力を維持しかつCOの大気中への放出を低減または回避し得る。第6のステップとして、そうした固体天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)は集められ、輸送に適切な輸送用コンテ内に配置され得る。場合によっては、天然ガスクラスレートハイドレートなどの固体ハイドレートは、まず集められ、輸送用コンテナ内に配置され、それらは次いで海面で取り出され、天然ガスに戻るよう変換すなわち再ガス化するため目的地へ輸送するために、より大きな輸送用キャリア内に入れられる。他の場合において、固体天然ガスクラスレートハイドレートは、集められ、輸送用コンテナ内に配置され、これらの輸送用コンテナ自体が、天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)を、再ガス化、すなわち、天然ガスに戻るよう変換するため目的地に輸送するのに用いられる。
【0014】
代替の第6のステップでは、固体ハイドレートは、海面まで輸送され、次いで、ポートにおける、または海面に浮かんでいる、すなわち浮体式液化天然ガス(FLG)のいずれかのターミナルといった標的目的地まで輸送され得る。そこで、固体ハイドレートは、水と天然ガスに解離され得、次いで、既知の技術にしたがって、例えば液化天然ガス(LNG)へとさらに処理され得る。
【0015】
天然ガス貯留層は、地上にまたは例えば海底などの海中に見られ得る。天然ガスのガス/クラスレートハイドレート処理設備内への輸送、ポンピング、またはパイピングは、海底から海面までの任意の深度で行われ得る。天然ガスをそれが固体天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)を形成するよう変換するように設計されたガス/クラスレートハイドレート処理設備は、海底に、例えば石油プラットフォーム上もしくは石油プラットフォームの近くなどの海面に、または、例えば原油井戸の近くなどの地上に見られ得る。
【0016】
第2の態様では、地下環境、例えば海底で見られ得る貯留層などの、天然ガスハイドレートの貯留層から天然ガスを抽出する方法が本明細書に記載される。方法は、炭化水素を抽出するために海底坑井を掘削するという任意選択的な第1のステップを特徴とする。場合によっては、貯留層の炭化水素の組成次第で、井戸は、天然ガスのみを産出し得る。方法は、天然ガスからデブリを取り除くという第2のステップを特徴とし得る。方法は、天然ガスを、ガス/クラスレートハイドレート処理設備内へ輸送、ポンピング、またはパイピングするという第3のステップを特徴とし得る。ガス/クラスレートハイドレート処理設備は、海底にもしくはその近くに、海面にもしくはその近くに、または地上に見られ得る。ガス/クラスレートハイドレート処理設備は、天然ガスを、それがクラスレートハイドレートなどの固体ハイドレートを形成するよう変換するように設計され得る。天然ガスの構造II(sII)ハイドレートへの変換を促進するために、プロモータが提供され得る。天然ガスをそれが天然ガスクラスレートハイドレートを形成するように変換するこの発熱プロセスにより生成された熱は、任意選択的に、天然ガス源に伝導または対流で戻され、次いで、さらなる天然ガスの遊離を促進するために用いられ得る。第4のステップとして、そうした固体天然ガスクラスレートハイドレートは、集められ、固体天然ガスクラスレートハイドレートの海面への輸送に適切な輸送用コンテナ内へ配置され得る。場合によっては、天然ガスクラスレートハイドレートは、まず集められ、輸送用コンテナ内に配置され、それらは次いで海面で取り出され、天然ガスに戻るよう変換するための目的地へ輸送するために、より大きな輸送用キャリア内に入れられる。他の場合では、固体天然ガスクラスレートハイドレートは、集められ、輸送用コンテナ内へ配置され、これら輸送用コンテナ自体が、天然ガスクラスレートハイドレートを、天然ガスに戻るよう変換するための目的地に輸送するのに用いられる。代替の第4のステップでは、固体天然ガスクラスレートハイドレートは、海面まで輸送され、水と天然ガスに、既知の技術にしたがって解離され得る。天然ガスは次いで、既知の技術にしたがって例えば液化天然ガス(LNG)へとさらに処理され得る。
【0017】
方法は、天然ガスなどのどうすることもできないガスを変換して天然ガスクラスレートハイドレートを形成することを含み、天然ガスからCOなどの不純物を遊離させることにつながり得る。COは、その後、それが由来する例えば地下または海中の貯留層内へポンピングされ戻されて、貯留層の圧力を維持しCOの大気内への流入を回避し得る。
【0018】
第3の態様では、本発明は、海底の下といった地下環境から天然ガスまたは石油と天然ガスの混合物を抽出しそれをクラスレートなどの固体ハイドレートに変換する方法であって、
a)天然ガスまたは石油と天然ガスの混合物を抽出することと、
b)第1のタンクまたは容器において石油と天然ガスの混合物から天然ガスを任意選択的に分離することと、
c)天然ガスを第2のタンクまたは容器に輸送することと、
d)海水を第2のタンクまたは容器内に導入することと、
e)プロモータを提供することと、
f)天然ガスと水を混合して、NGCH/水スラリーを形成することと、
g)NGCHスラリーから余分な水を除去して、クラスレートを備える固体を形成することと、
h)クラスレートを備える固体を輸送可能な形に処理することとを備える方法を提供する。
【0019】
メタンクラスレートハイドレートは、貯蔵および輸送のために容器に移行され得る。容器の理想的な特性は、1)中性浮力またはほぼ中性浮力を有する(すなわち、外部流体または海水と同じまたは同様の密度)、2)強い(中身を漏らすことなくまたは断裂することなく材料を含むために)、かつ3)容器が満たされるにつれて多くのまたはいくらかの空隙容量を含まないように可撓性があること、である。容器は、含まれるクラスレートハイドレートが安定領域にとどまるために(すなわち、早期に天然ガスと水へと解離させるのではなくハイドレートとしてとどまる)内部圧力が維持され得るように、圧力差を維持するのに適し得る。場合によっては、圧力容器は、満たされるにつれて容量が拡大するように可撓性がある。他の場合において、容器は、剛性を有するが、クラスレートハイドレートが容器内へ入れられるにつれて取り出され得る水または他の不活性液体で満たされる。そのような場合、容器は、水または他の不活性液体からハイドレートクラスレートを分離するためのブラダーまたはダイヤフラムを含み得る。そうしたブラダーまたはダイヤフラムは、液体燃料と容器の圧力を維持するのに用いられる不活性ガスなどの2つの種の混合を防ぐために航空宇宙業界で頻繁に用いられる一般的な特徴である。
【0020】
クラスレートを備える固体を輸送可能な形に処理することは、固体を輸送に対して適切なサイズおよび形状に成型または成形することを特徴とし得、または、既知の技術にしたがってクラスレートを水と天然ガスに解離することを特徴とし得る。天然ガスは次いで、例えば液化天然ガス(LNG)へと、既知の技術にしたがってさらに処理され得る。
【0021】
方法は、天然ガスを変換してクラスレートなどの固体ハイドレートを形成することを含み、天然ガスからCOなどの不純物を遊離することにつながり得る。COは、次いで、ポンピングされ地下環境または貯留層内へ戻されて、大気中への放出を回避し得る。
【0022】
第4の態様では、天然ガスまたは石油と天然ガスの混合物を、海底の下などの貯留層から抽出し、それをクラスレートなどの固体ハイドレートへと変換するシステムであって、
a)ガス/石油セパレータとして機能するように設計された第1のタンクまたは容器と、
b)NGCHプロセッサとして機能するように設計された第2のタンクまたは容器と、
c)NGCH収集/輸送用コンテナとして機能するようになされた第3のタンクまたは容器とを特徴とするシステムが本明細書に記載される。
システムは、任意選択的に、d)坑口エントリを備え得、システムは、任意選択的に、e)流量制限器、ガス/石油セパレータとして機能するように設計された第1のタンクまたは容器に結合され得るタービン/流量制限器を備え得る。タービンは、坑口の出口に取り付けられて、電気モータおよび機械加工デバイスを動作させるための機械力および電力を生成し得る。
【0023】
第1のタンクまたは容器は、従来の手段によってガス/石油セパレータまたはガス/石油/水セパレータとして機能するように設計される。セパレータは、より重い(主に石油)粒子がより軽い(主にガス)粒子から物理的に分離されるサイクロンとして動作し得る。生産に必要とされる量を超える大量の水が存在する三相分離では、余分な水は、廃水圧入井内へポンプされ得る。
【0024】
NGCHプロセッサとして機能するように設計された第2のタンクまたは容器は、局部圧力で動作し得、または、より高い圧力で動作し得る。第2のタンクまたは容器は、連続的なプロセスまたはバッチプロセスとして動作するよう設計され得る。場合によっては、タンク2の段階においてより大きな滞留時間を融通し貯留層からの連続的な生産をもたらすように時間的に交互配置される複数の(例えば3つの)より小さなバッチ処理タンクまたは容器、タンク2a、タンク2b、タンク2cなどが存在し得る。第2のタンクまたは容器は、半可撓性であり得、弁付き上部入口および/または底部出口を特徴とし得る。各タンクは、診断および制御センサを含み得る(すなわち、温度、圧力、組成に対して)。また、混合を提供するために1つ以上の装置も存在し得る。
【0025】
第3のタンクまたは容器は、NGCH収集/輸送用コンテナとして機能するように適合され得る。コンテナの理想的な特性は、1)中性浮力またはほぼ中性浮力を有する(すなわち、外部流体または海水と同じまたは同様の密度)、2)強い(中身を漏らすことなくまたは断裂することなく材料を含むために)、かつ3)容器が満たされるにつれて多くのまたはいくらかの空隙容量を含まないように可撓性があること、である。容器は、含まれるクラスレートハイドレートが安定領域にとどまるために(すなわち、早期に天然ガスと水へと解離させるのではなくハイドレートとしてとどまる)内部圧力が維持され得るように、圧力差を維持し得る。場合によっては、圧力容器は、満たされるにつれて容量が拡大し得るように可撓性があり得る。他の場合において、容器は、剛性を有するが、クラスレートハイドレートが容器内へ入れられるにつれて取り出される水または他の不活性流体で満たされる。そのような場合、容器は、水または他の不活性流体からハイドレートクラスレートを分離するためのブラダーまたはダイヤフラムを含み得る。そうしたブラダーまたはダイヤフラムは、液体燃料と液体燃料の圧力を維持するのに用いられる不活性ガスなどの2つの種の混合を防ぐために航空宇宙業界で頻繁に用いられる一般的な特徴である。
【0026】
第5の態様では、貯留層に存在する天然ガスからCOおよび他の不純物を分離する方法およびシステムが本明細書に記載される。そのような望ましくないガスは、捕捉、隔離され得る。方法は、COの大気中への放出が最小化されるように行われ得る。そのような貯留層内へポンピングされて戻されたCOが、天然ガスまたは天然ガスと原油の貯留層へ加えられると、それによって、その貯留層の内部圧力を増大させ、したがって残る貯留層の抽出のより高い効率を提供し得る。COは、本明細書に記載される方法およびシステムにしたがってsIIクラスレートハイドレートを形成するものではない。かくして、COは、天然ガスから効果的に分離され得る。
【0027】
第6の態様では、本明細書に記載される方法およびシステムは、使用可能な水を生産する方法を提供する。方法は、本明細書に記載される方法のいずれかにしたがって天然ガスクラスレートハイドレートを形成し、その後天然ガスクラスレートハイドレートを処理して天然ガスを放出することを特徴とする。人工的に形成された天然ガスクラスレートハイドレートから生成された水には、元々の源に固有の不純物が実質的に含まれ得ない。それによって生産された水は、例えば産業「雑廃」水または飲料水としてなど、以降の使用のために、必要に応じて、さらに処理され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1A-図1B。メタンからのクラスレートハイドレートの形成における相平衡曲線(境界)の図であり(図1A)、他の揮発性炭化水素を含有する天然ガスにおける平衡曲線の図である。曲線は、様々な温度および水深における純メタンおよびメタン/炭化水素の混合物のハイドレート/ガス相境界を記述する。また、メキシコ湾と北海の温度アイソクラインも示される。
図2】構造I(sI)メタンクラスレートハイドレートと構造II(sII)メタンクラスレートハイドレートの両方に対するハイドレート平衡データの図である。sIは、メタン/水システムに対するものであり、sIIは、メタン/THF/水システム由来のものである。
図3】構造II(sII)メタンクラスレートハイドレートを形成するための現在記載される方法およびシステムの図である。
図4】安定メタンクラスレート形成のための並列ストリームが提供される現在記載される方法およびシステムの例の図である。
図5】石油生産設備に対する、現在記載される方法およびシステムの改造の図である。
図6】石油生産設備に対する、現在記載される方法およびシステムの改造の図である。
図7】海底でまたはその下で天然に生じるクラスレートハイドレートの解離から得られる天然ガスを処理するシステムの概略図である。方法は、任意選択的に、貯留層における天然ガスの解離を向上させるために、人工ハイドレートの形成から産生される潜熱を向ける機会を与える。
図8】天然ガスが現在燃やされている既存のオフショア生産設備に対する、現在記載される方法およびシステムの改造の図である。代わりに、天然ガスは、貯蔵および輸送のための以降の処理のために海面にまたは海面の下に向けられる。天然ガスの一部は、燃やされて、プロセスを動作させるためのかつ不要な不純物の廃棄を可能とするためのエネルギーを生成することができる。
図9】ハイドレートが浮体式オフショア生産積み出し船(ESPO)における液化天然ガス(LNG)への以降の処理のために天然ガスに変換される概念図である。代替として、生産物は、LNGへの処理のためポート位置におけるLNGターミナルへ輸送することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に記載される材料、化合物、組成物、物品、および方法は、開示された主題およびそれに含まれる実施例の具体的な態様の以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0030】
本材料、化合物、組成物、および方法が開示、記載される前に、以下に記載される態様は具体的な合成法または具体的な試薬に限定されるものではなく、かくして、もちろん変化し得ることが理解されよう。本明細書で用いられる技術用語は、単に特定の態様を説明する目的であり、限定する意図はないことも理解されよう。
【0031】
一般的定義
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲では、いくつかの用語に参照がなされるだろう。それらは、以下の意味を有すると定義される。
【0032】
本明細書のすべてのパーセンテージ、比率、および割合は、別途指定されない限り、重量単位である。すべての温度は、別途指定されない限り、セ氏(℃)度単位である。
【0033】
用語「a」および「an」は、本開示が別途明確に必要としない限り、1つ以上として定義される。
【0034】
範囲は、「約」1つの特定の値からのかつ/または「約」別の特定の値までとして本明細書に表現され得る。そうした範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の値からかつ/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞「約」を用いることによって、特定の値は別の態様を形成すると理解されるだろう。範囲の各々のエンドポイントは、他のエンドポイントと関連して、そして他のエンドポイントとは無関係でという両方で重要であることがさらに理解されるだろう。
【0035】
「任意選択的な」または「任意選択的に」は、以降に記載されるイベントまたは状況が起こり得るまたは起こり得ないこと、そして、記載が、イベントまたは状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。
【0036】
「備える」(および「備える」、「備えている」といった任意の形の備える)、「有する」(および「有する」、「有している」といった任意の形の有する)、「含む」(および「含む」、「含んでいる」といった任意の形の含む)、ならびに「含有する」(および「含有する」、「含有している」といった任意の形の含有する)といった用語は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つ以上の要素を「備える」、「有する」、「含む」または「含有する」装置は、1つ以上の要素を有するが、それらの要素のみを有することに限定されるものではない。同様に、1つ以上のステップを「備える」、「有する」、「含む」または「含有する」方法は、1つ以上のステップを有するが、それらの1つ以上のステップのみを有することに限定されるものではない。
【0037】
方法のいずれかの任意の実施形態は、記載されたステップ、要素、および/または特徴のいずれかを、備える/含む/含有する/有するのではなく、構成するまたは本質的に構成することができる。つまり、クレームのいずれかにおいて、「構成される」または「本質的に構成される」という用語は、それ以外の場合オープンエンドな連結動詞を用いるだろう所与のクレームの範囲を変えるために、上記で引用されたオープンエンドな連結動詞のいずれかの代わりに用いることができる。
【0038】
「どうすることもできない」ガス貯留層という用語は、知られているが物理的または経済的理由のいずれかで使用できないままである天然ガス貯留層として本明細書に定義される。
【0039】
「天然ガス」という用語は、最終生産物、すなわち、天然源から得られるメタンおよび原料の両方として本明細書に定義される。「天然ガス」という用語は、メタンと高次の望ましい炭化水素、および標準圧力でガスではなく液体を形成する炭化水素を有するとしての石油を含む。「粗天然ガス」という用語は、「天然ガス」と言い換え可能で用いられる。粗天然ガスは、とりわけ、メタン、加えて、他の炭化水素、および、二酸化炭素、窒素、硫化水素、ヘリウムなどといったガスを備える。
【0040】
メタンハイドレート、メタンクラスレート、およびメタンハイドレートクラスレートという用語は言い換え可能で用いられる。メタンハイドレートクラスレートおよび天然ガスハイドレートクラスレートに対する用語も、別途具体的な記述がない限り、言い換え可能で用いられる。タイプIまたは構造I(sI)クラスレートへの言及は言い換え可能で用いられる。同様に、タイプIIまたは構造II(sII)クラスレートに対する用語は、互いと言い換え可能で用いられる。
【0041】
本明細書に記載される一実施形態の特徴または複数の特徴は、本開示または実施形態の性質によって明確に禁じられない限り、記載または例示されなくても、他の実施形態に適用され得る。
【0042】
方法およびシステムの適用性
環境から天然ガスを生産する方法およびシステムが本明細書に記載される。本明細書に記載される方法は、天然ガスを回収、貯蔵、かつ輸送する目的で、天然ガスクラスレートハイドレートを人工的に形成することを提供する。ガスクラスレートハイドレートは、比較的高圧かつ低温という特定の条件下で水とガスの反応から形成される不定比結晶性固体である(例えば、Sloanらの天然ガスのクラスレートハイドレート、第三版;CRC Press、Taylor&Francis Group:Boca Raton,FL,2008を参照)。
【0043】
本明細書に記載される方法およびシステムは、コストとエネルギーバランスの観点から経済的である方法を用いて天然ガスの抽出を可能とする。本明細書に記載される方法およびシステムは、抽出される天然ガスにおける貯蔵された潜在エネルギーと比べて、天然ガスを生産するのに必要とするエネルギーが少ない。本明細書に記載される方法は、それ以外では使用不可能である、したがって「どうすることもできない」と見なされる貯留層からの天然ガスの生産を可能とする。天然ガス源は、天然ガスまたは天然ガスと原油の組み合わせのいずれかであり得る石油の地下または海中の貯留層であり得る。源はまた、天然に形成されたクラスレートハイドレートの海中貯留層から抽出された天然ガスでもあり得る。本明細書に記載される方法およびシステムはまた、石油の生産システムの改造を提供する。
【0044】
本明細書に記載される方法およびシステムは、より高分子量の揮発物、例えば、エタン、プロパン、ブタン、およびペンタンをさらに捕捉して分離するようになされ得る。このことは、異なるハイドレート形成条件を有する種が固体ガスクラスレートハイドレートを形成するように処理容器における温度および圧力の変化を可能とすることによって達成することができる。ガスは、蒸留などの従来の方法によってまたはコールドフィンガー凝縮によって単離され得る。
【0045】
本明細書に記載される方法およびシステムは、深海または永久凍土下に形成されたものなどの天然に形成された天然ガスハイドレートクラスレート貯留層から収集された天然ガスを捕捉するようになされ得る。これらのクラスレートはまた、二酸化炭素を含む不純物も含み得る。方法およびシステムは、そうした不純物を除去するのに利用され得る。
【0046】
原油は、天然ガスを備える。本明細書に記載される方法およびシステムは、原油源から天然ガスを抽出するのに有用である。本明細書にさらに記載されるように、方法およびシステムは、海中レベルで、海底で、中間レベルで、海面で、または地上で行われ得る。本明細書に記載される方法およびシステムは、原油における天然ガスの組成および量に適合され得る。
【0047】
本明細書に記載される方法およびシステムは、坑口において天然ガスと石油を分離し、結果として生じた天然ガスを固体天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)へと処理し、輸送用コンテナを、輸送、例えば、海面までの輸送そして固体NGCHを天然ガスに再変換するための遠隔設備までの輸送などのために、固体NGCHで満たすことを提供する。本明細書に記載される方法およびシステムは、全体処理システム設計および使用材料、加えて、輸送用コンテナ設計および使用材料を含む。
【0048】
方法およびシステムの実施形態
場合によっては、本明細書に記載される原油からメタンを回収する方法およびシステムは、以下の、
a)頭部空間を生成するくらいの量で第1の容器内で原油を受けることと、
b)容器の温度および/または圧力を調整することと、
c)溶解ガスを容器から分離することと、
d)分離されたガスを第2の容器内へ移行させることと、
e)用水または取り込まれた海水を第2の容器内へ導入することと、
f)クラスレートスラリーを形成するのに十分な量のプロモータおよび任意選択的に界面活性剤を第2の容器内へ提供することと、
g)スラリーを第3の容器へ移行させて、安定sIIメタンクラスレートハイドレートを形成することとを特徴とする。
【0049】
本明細書に記載される方法は、本明細書に記載され図3に記述されるようにバッチスケールで実行することができる。代替として、方法は、1つ以上の容器2(102)および3(103)を並列配置することによって、図4に記述されるように連続プロセスに適合させることができる。安定メタンクラスレートハイドレートが適切に形成されると、それは、使用のための設備にまたはクラスレートがさらに処理される設備に輸送するために、コンテナに移行され得る。
【0050】
メタンクラスレートハイドレートが、g)に続いて除去されると、方法は以下の任意選択的なさらなるステップ、
h)第1の容器から処理済み原油を、さらなる処理のために、コンテナ、パイプライン、船舶などに移行させることと、
i)第2の容器から、任意の未処理ガス、すなわちCO、他の不純物、および揮発性炭化水素、例えばエタン、プロパン、およびブタンを除去することとを特徴とし得る。
【0051】
貯留層からの原油はまた、CO加えて他の不純物も含み得る。本明細書に記載される方法の最中に遊離されたCOは、さらに処理され得る。例えば、ガスは、液体または固体形状へ処理され得る。代替として、ガスは、吸収剤などの従来の手段によって捕捉され得る。このことは、例えば、以降の実行において第1の容器(101)の温度および圧力を調整するときに行われ得る。
【0052】
ステップ(f)で提供されるプロモータは、容器3(103)から除去された水に含まれ得る。プロモータは、プロセスへと再生利用のために回収され得る。例えば、有効なプロモータであるTHFは、質量分率で6.7%の水を含む64℃における水と最小共沸混合物を形成する。用水が、多量の溶解不純物、すなわち海水を含まない場合、THFは、共沸混合され得、THF含有量が多い水溶液を形成し、それは適切なプロモータ源であり得る。sIIハイドレートの形成は発熱プロセスであるため、放出されたエネルギーは、プロモータを回収するのに必要なエネルギーを補完するのに用いられ得る。揮発性炭化水素は、同様に捕捉され、使用のためにさらに処理され得る。
【0053】
場合によっては、放出された任意のCOは、貯留層内へ再注入されて戻され得る。かくして、本明細書に記載される方法は、以下の、
a)頭部空間を生成するのに十分な量で第1の容器内で原油を受けることと、
b)第1の容器の温度および/または圧力を調整して、溶解ガスの分離を生じさせることと、
c)分離されたガスを第2の容器内へ移行させることと、
d)用水または取り込まれた海水を第2の容器内へ導入することと、
e)クラスレートスラリーを形成するのに十分な量でプロモータおよび任意選択的に界面活性剤を第2の容器内へ提供することと、
f)クラスレートに由来しない非メタンガスを除去することと、
g)f)の非メタンガスを貯留層内へ移行させることと、
h)クラスレートスラリーを第3の容器へ移行させることと、
i)第3の容器に存在する用水の量を低減させて、安定sIIメタンクラスレートハイドレートを形成することとを特徴とし得る。
【0054】
開示されたプロセスにおける原油から分離されたCOおよび他の不純物は、原油貯留層内へ直接注入されて戻され得る。かくして、場合によっては、このことは、以下の、
a)頭部空間を生成するのに十分な量で第1の容器内で原油を受けることと、
b)容器の温度および/または圧力を調整して、溶解ガスを分離することと、
c)分離されたガスを第2の容器内へ移行させることと、
d)用水およびプロモータを第2の容器内へ導入して、クラスレートスラリーを形成することと、
e)原油から遊離された任意のCOおよび他の不純物を原油貯留層内へ移行させて戻すことと、
f)スラリーを第3の容器に移行させ、存在する用水の量を低減させて、安定sIIメタンクラスレートハイドレートを形成することとを特徴とする。
【0055】
場合によっては、本明細書に記載される方法は、原油生産設備に対する改造を特徴とする。通常、メタンおよび他の揮発性ガスは、低沸点の蒸留留分、例えば、ナフサ留分に含まれる。このナフサ留分は、液体ナフサが、低沸点炭化水素を含む任意の揮発性ガスから分離されるように凝縮することが可能とされる。このガス状留分は、通常燃やされまたは燃焼される。
【0056】
かくして、方法は、以下の、
a)精製プロセス中に分離された揮発性ガスを、用水とプロモータを含む第1の容器内で受けることと、
b)第1の容器の温度および/または圧力を調整して、それによってメタンクラスレートスラリーを形成することと、
c)揮発性ガスを除去することと、
d)メタンクラスレートスラリーを第2の容器に移行させることと、
e)用水を除去して、それによって安定sIIメタンクラスレートハイドレートを形成することとを特徴とし得る。
【0057】
それによって形成された安定sIIクラスレートハイドレートは輸送され得る。場合によっては、メタンクラスレートハイドレートは、貯蔵および輸送のために容器に移行され得る。容器の理想的な特性は、1)中性浮力またはほぼ中性浮力を有する(すなわち、外部流体または海水と同じまたは同様の密度)、2)強い(中身を漏らすことなくまたは断裂することなく材料を含むために)、かつ3)容器が満たされるにつれていくらかの空隙容量を含まないように可撓性があること、である。容器は、含まれるクラスレートハイドレートが安定領域にとどまるために(すなわち、早期に天然ガスと水へと解離させるのではなくハイドレートとしてとどまる)内部圧力が維持され得るように、圧力差を維持し得る。場合によっては、圧力容器は、満たされるにつれて容量が拡大するように可撓性がある。他の場合において、容器は、剛性を有するが、クラスレートハイドレートが容器内へ入れられるにつれて取り出される水または他の不活性流体で満たされる。そのような場合、容器は、水または他の不活性流体からハイドレートクラスレートを分離するためのブラダーまたはダイヤフラムを含み得る。そうしたブラダーまたはダイヤフラムは、液体燃料と液体燃料の圧力を維持するのに用いられる不活性ガスなどの2つの種の混合を防ぐために航空宇宙業界で頻繁に用いられる一般的な特徴である。
【0058】
天然に生じるクラスレートは、CO、加えて他の不純物を含み得る。本明細書に記載される方法およびシステムは、これらの不純物を分離し実質的に純粋なメタンクラスレートハイドレートを改質することを可能とし得る。結果として生じる固体メタンクラスレートハイドレートは、さらに処理され得る。
【0059】
場合によっては、海底の貯留層からメタンを収集する本明細書に記載される方法は、以下の、
a)天然ガスまたは原油と天然ガスの混合物を第1の格納容器に収集することと、
b)天然ガスを第2の格納容器内に移行させることと、
c)用水または取り込まれた海水を第2の格納容器内に導入することと、
d)プロモータおよび任意選択的に界面剤を第2の容器内に導入することと、
e)第2の容器の中身を混合して、それによってメタンクラスレートハイドレート水性スラリーを形成することと、
f)メタンクラスレートハイドレート水性スラリーから余分な水を除去して、それによって固体メタンクラスレートハイドレートを形成することと、
g)固体メタンクラスレートハイドレートを、輸送に適切なコンテナに移行させることとを特徴とする。
【0060】
そのような場合、方法は、例えば硫黄含有ガス、加えてCOなどの任意の汚染ガスを除去するようにも調整され得る。これらの汚染ガスは、捕捉、保持され、または、海底の貯留層に戻るように移行され得る。
【0061】
場合によっては、本明細書に記載される方法およびシステムは、生産された原油の流れからメタンを収集するためのものである。吸収ガスの溶解度は圧力が低下するにつれて減少するので、メタンは収集され得る。同様に、ガスは、温度が下がるにつれて、液体において、より可溶性を有する。原油から炭化水素ガスを回収する本明細書に記載される方法は、
a)第1の温度および圧力を有する第1の格納容器に原油を収集することと、
b)温度および/または圧力を調整して、任意の同伴炭化水素ガスを解離させることと、
c)放出された炭化水素ガスを第2の格納容器内に移行させることと、
d)用水または取り込まれた海水を、第2の格納容器内に導入することと、
e)プロモータおよび任意選択的に界面活性剤を第2の格納容器内に提供することと、
f)第2の格納容器の中身を混合して、それによって天然ガスクラスレートハイドレート水性スラリーを形成することと、
g)天然ガスクラスレートハイドレート水性スラリーから余分な水を除去して、それによって固体クラスレートハイドレートを形成することとを特徴とし得る。
【0062】
方法は、天然ガスをその成分に分別するのに、天然ガス混合物の性質を利用する。この分別は、さらなる処理の場所で行われ得る。
【0063】
生産場所
本明細書に記載される方法およびシステムは、任意の場所で行われ得る。例えば、本明細書に記載されるシステムは、原油貯留層に隣接してまたはそれに接続されて、海底に配置され得る。方法は、海面下だが海底よりも上で、例えば、石油リグにつながれ原油がリグに到達する前に遮るかまたは他の方法で捕捉するように改良された水中システムとして行われ得る。さらに、本明細書に記載される方法およびシステムは、地上で行われ得、例えば、地上坑口に直接接続されている、または天然ガスと関連する不純物がそれ以外の方法で燃やされるプロセス地点(上流生産または製油所で)で行われ得る。
【0064】
固体メタンクラスレートハイドレートを形成する本明細書に記載される方法およびシステムは、地上設備で行われ得る。そのような場合、人工的に形成されたメタンクラスレートハイドレートを天然ガスと水にその後解離させることが、望ましく必要であり得る。プロセスを行うことによって、純水と天然ガスを抽出することが可能となり、それらは破棄されるのではなく活用され得る。さらに、プロセスを行うことによって、元々の水およびガス流における不純物は、従来の方法による燃焼または隔離のいずれかでの廃棄のために、分離、濃縮され得る。廃棄に必要な流体量は、この方法を適用することにより大幅に減少され得る。
【0065】
さらに、本明細書に記載される方法およびシステムは、生産設備に適合され得る。例えば、精製プロセス中に分離されたメタンおよび他の揮発性ガスは、それらはパイプライン、CNG、またはLNG方法といった従来の手段によって処理することができないため、通常、燃やされるまたは燃焼される。本明細書に記載されるように、揮発性ガスは、メタンおよび他のガスの除去のために、本明細書に記載される方法に向けられ得る。
【0066】
メタンを含む原油は、海底に沿う掘削孔からしみ出るとして知られている。それに同伴されるメタンは、大気中に逃げるかまたは石油表面層の一部であるかのいずれかである。この原油排出の、表面に到達する前の捕捉は、表面に到達すると回収不能であり得るメタンを生産しそれが大気中へ逃げるのを防ぐことを可能とする。
【0067】
メタンクラスレートハイドレートは、原油貯留層において形成することができる。本方法およびシステムは、メタンクラスレートハイドレートにおける天然ガスを、安定した輸送可能なsIIメタンクラスレートハイドレートに変換するのに用いることができる。
【0068】
他の短鎖炭化水素、例えば、エタン、プロパン、ブタン、およびプロパンとブタンの異性体が、天然ガスクラスレート内に含まれる。これらの非メタンクラスレートハイドレートは、メタンから単離され、別に生成され得る。図1は、純メタン、純エタン、純プロパン、および純ブタンのクラスレートハイドレートの形成に対する相平衡曲線(境界)を表す。理論に縛られるつもりはないが、本明細書に記載される捕捉容器の温度および圧力を調整することによって、これらの非メタン炭化水素は、メタンから単離することができる。
【0069】
海中環境
現在、オフショア石油生産設備は、原油の生産中に得られる天然ガスを燃やすことが多い。地上環境からまたは水中環境から天然ガスを生産し、そうしたガスを消費のために輸送する安全な、効率的な、かつ環境に優しい方法を開発することが望ましい。これまでのプロセスは、メタンは天然ガスの主成分であるため、メタンクラスレートハイドレート(MCH)の形成に焦点を当てている。それでも、起源次第で、可能な天然ガス組成の範囲は、ほぼ純粋なメタンから、より重い揮発性炭化水素を多く含む複雑な混合物までの範囲に及び得る。本明細書に記載されるプロセスは、より一般に、出発天然ガスは、質量で約85%メタン、10%エタン、および5%プロパンであり得る天然ガスクラスレートハイドレート(NGCH)の形成に言及する。プロセスは、他の組成物に、容易に適合され得る。天然ガス混合物からのNGCHの形成は、一般に、純メタンからのMCHの形成(図1)よりも、同一温度において必要とする静水圧は少ない。また、より少ないメタンと、より多いエタン、プロパン、ブタン、およびイソペンタンなどを含む、他のあまり典型的ではないまたは人工的に混合された炭化水素ガス混合物もまた、固体クラスレートハイドレートを形成し、これらのより高い分子量のガス成分の割合が高くなると、必要とされる圧力は低下する。しかしながら、クラスレート形成に対する温度範囲は、はるかにより狭くなり、純ブタンからの形成が4℃を下回る水温を必要とする場合、これらの純炭化水素ガスからのクラスレートハイドレート形成に必要とされる圧力。
【0070】
海底は、NGCHを形成し処理するための理想的な環境を提供する。しかしながら、大量の天然ガスを天然ガスクラスレートハイドレートに効率良く変換することに関して、いくつかの技術的問題が存在する。海底から海面までのコンテナの輸送は、時間の経過とともにNGCHの安定性を維持可能でなければならない。すなわち、NGCHの、水と天然ガスへの重大かつ早期の解離は存在すべきでない。本明細書に記載される方法は、これを、煩雑な冷却またはコンテナに取り付けられた加圧システムなしで提供する。
【0071】
輸送および貯蔵
天然ガスクラスレートハイドレートの、天然ガスが回収されるまでの輸送および貯蔵中の安定性に対処することが必要である。安定性を維持するために、加圧コンテナ内の圧力および温度が制御される。
【0072】
プロモータ
熱力学プロモータが、本明細書に記載される方法およびシステムでの使用に適切である。熱力学プロモータは、メタンハイドレート形成の平衡状態を変えるまたはシフトする化合物である。熱力学プロモータはまた、形成の運動速度も向上させる。熱力学プロモータを用いることの1つの不利益は、貯蔵効率が低くなることである。ハイドレート形成のために熱力学プロモータを加えると、より穏やかな形成状態(より低い圧力およびより高い温度)がもたらされる。環境温度よりも高い温度における圧力の種々の低減によりオフセットされるのが、貯蔵能力の認められる減少である。
【0073】
テトラヒドロフラン(THF)は、広く利用可能な1つのそうした適切なプロモータである。sIIハイドレート形成を促進する他の適切なプロモータとして、シクロペンタン(CP)、2,2-ジメチルブタン(ネオヘキサン)、メチルシクロヘキサン(MCH)、ネオヘキサン、2―メチルシクロヘキサン、ピナコロン、イソアミルアルコール、および第三ブチルメチルエーテル(TBME)が挙げられる(例えば、Veluswamyら、Applied Energy2018;216:262-285を参照)。
【0074】
構造II(sII)ハイドレートを、構造I(sI)ハイドレートの形成に不利な温度および圧力条件下で形成することを促進するのに、化学プロモータが提供される。正しいプロモータを用いると、形成されるハイドレートは、sIIハイドレートである。テトラヒドロフラン(THF)は、広く利用可能である適切なプロモータである。sIIハイドレートを形成する他の適切なプロモータとして、シクロペンタン(CP)、2,2-ジメチルブタン(ネオヘキサン)、メチルシクロヘキサン(MCH)、ネオヘキサン、2―メチルシクロヘキサン、ピナコロン、イソアミルアルコール、および第三ブチルメチルエーテル(TBME)が挙げられる(例えば、Veluswamyら、Applied Energy2018;216:262-285を参照)。
【0075】
THFをプロモータとして用いる天然ガスハイドレートの安定性に対する圧力対温度平衡曲線は、Veluswamyら、Applied Energy2018;216:262-285に提供される(図2を参照)。平衡曲線(温度および圧力における)は、プロモータの添加により赤から青にシフトし、それによって、所与の圧力に対して天然ガスハイドレートを形成するのに、より高い可能な温度を、または所与の温度に対するハイドレート形成に、より低い必要とされる圧力を可能とする。この曲線はまた、輸送および貯蔵中ハイドレートを維持するための条件も判定する。構造II(sII)ハイドレートを形成するための必要温度および圧力条件は、海底に存在し得る。そうした場合、閉じられたコンテナは、圧力または温度の差を維持する必要はない。海底における温度および圧力が構造II(sII)ハイドレートを形成するのに十分でない場合、圧力を増大させるか、温度を低下させるか、またはそれらの組み合わせのいずれかが必要である。そうした場合、ガス処理のための閉じられたコンテナは、温度および圧力の差を維持することのみを必要とする。
【0076】
本明細書に記載される方法およびシステムは、構造I(sI)ハイドレートの代わりに構造II(sII)ハイドレートを有する天然ガスクラスレートハイドレートの形成をもたらす、熱力学プロモータを提供することを特徴とする。存在し得る構造H(sH)ハイドレートも存在し、sIIとsIハイドレートの比較は、sIIとsHハイドレートの比較と同様であり、天然ガスを貯蔵、輸送する際にプロモータを加えることによってsIIハイドレートを形成するいくつかの主要な利点が存在する。第1に、sIIクラスレートハイドレートを、対応するsIハイドレートよりも低い圧力および高い温度で形成することが可能である。このことは、ガスと水が熱力学的に、二流体(ガスと水)対ハイドレートをもたらす境界領域を描く平衡曲線から明らかである。図2に描かれた平衡曲線は、熱力学プロモータの存在下で右にシフトされる。メタンの人工温度への変換に対する局部温度および圧力に依存することは、sIハイドレートではなくsIIハイドレートを形成するためにプロモータを加えることによって、より高い温度においてより浅い深度(より低い圧力)でこの変換を行うことを必要とする。
【0077】
メタンの貯蔵および輸送のために構造IIハイドレートの形成を促進する(構造Iハイドレートの形成と比べて)ためにプロモータを提供することの1つの利点は、図2に示すように、sIIハイドレートに対するより広い範囲の安定性である。(最大35℃の)温度において、ガスがsIIハイドレートのままであるような上昇圧力を維持することが可能である。逆に、温度0℃において、ハイドレートのままであるのに3MPa圧力を維持することが必要である。より高い温度において、必要とされる圧力は、温度12℃に対して10MPAより高くなるまで大幅に増大する。構造Iハイドレートは、温度を制御することによって安定性を維持することができるだけであり、推定上、このことは、2つの現象の組み合わせに依存することによって達成される。第1に、自己保存効果が観察され、それによって、ハイドレートは、狭い温度および圧力帯で非常に低い解離率を有する。第2に、熱質量を利用して、人工的に形成されたハイドレートが、温度を上昇させるのに長時間かかるくらいの大きさとなるようにすることができる。浮力材のそうした大きな構造体の形成は、生成されているとき海底に係留されなければならない。これらの制限は、構造IIハイドレートが形成されるとき存在しない。
【0078】
熱質量のこの第2の現象の結果は、非常に大きな構造体(sIハイドレートを有する)の作成に制限を加える。この制限は、sIIハイドレートを形成することによって回避され、それによって、形成されるクラスレートを貯蔵し輸送するのにより小さなコンテナを使用する機会を提供する。大きな構造体を抑制することは難しくなり得る。なぜなら、含有ハイドレートは、容積に比例する対応する浮力を有する海水よりも密度が低くあり得るからである。かくして、より小さなコンテナが用いられ得、それは、制御、操縦、生産中の海底における抑制がしやすいものである。
【0079】
この形成ステップは、局部圧力および温度が、sIIハイドレートが形成される条件セットに対応するように、海底で行うことができる。この場合、in situ条件で動作すること、すなわち、温度および圧力が反応コンテナの内外の条件と平衡にあるようにすることが可能である。図1参照。
【0080】
代替として、in situ条件が、sIIハイドレートが形成されないようなものである場合、圧力を増大させるか温度を低下させるかのいずれかが必要であり、前者の選択肢は、通常、特に海面下で、より達成しやすいものである。
【0081】
隔離される二酸化炭素
場合によっては、本明細書に記載される方法およびシステムは、例えば、天然ガス貯留層によく見られる二酸化炭素(CO)といった、特に固体およびガスの任意の不純物から天然ガスを分離する。二酸化炭素は、sIIクラスレートハイドレートの形成が抑制される。sIICOハイドレートの形成を可能とする温度および圧力条件は、sIIメタンハイドレートに対する条件よりも好ましくない。具体的には、天然ガス形成は、sIICOハイドレートが形成されない条件セット下で行うことができる。CO分子は大きすぎて構造IIのハイドレートケージ内に適合しないことが推測される。言い換えれば、メタンsIIハイドレートが形成されるような条件では、実質的にCOハイドレートは形成されない。かくして、COは、変換に寄与しない。
【0082】
理想的には、COは、システムを通過する。1つの選択肢として、流出する二酸化炭素ガスおよび他の不要な成分を、それらを貯留層内に注入して戻す、すなわち、地中に戻すことによって隔離することがある。
【0083】
圧力および温度の条件次第で、少量のCOは、天然ガスハイドレート形成段階においてハイドレートを形成し得、一部のCOおよび他の不純物はまた、その形成中、天然ガスハイドレートに同伴され得る。後者の場合、一部のCOは隔離され得、他のCOは生成ガスの一部であり得る。
【0084】
天然に形成されたメタンクラスレートハイドレートを処理する本明細書に記載される方法およびシステムは、クラスレートに含まれる任意のCOが、COの大気中への放出が最小化されるように、捕捉され隔離されるように行われる。さらに、放出されるメタンガスは、捕捉されたガスを収集、輸送するように収集され得る。
【0085】
界面活性剤
例えば、反応を促進するために希釈濃度のミセラー物質(一側は極性であり、一側は非極性である)などの界面活性剤が、本明細書に記載される方法およびシステムに提供され得る(例えば、Andoら、Chemical Engineering Sience2012;73:79-85を参照)。適切な界面活性剤は、当技術分野でよく知られており、希釈濃度で提供され得る(百万分の一程度の小ささから、1~2%程度の大きさまで)。
【0086】
反応の平衡
天然に生じるクラスレートに関する場合、図1Aおよび1Bは、水深(圧力に比例する)と水温の観点からメタンと天然ガスからのクラスレートハイドレートの形成における相平衡曲線(境界)を記述する。図1Aに記述するように、純メタン含有サンプルの場合、この実施形態に対して温度はより低く、圧力はより高い。図1Bは、メタン以外の成分を備える天然ガスの場合、クラスレート形成に対して、温度はより高くシフトされ、圧力はより低い値にシフトされることを示す。
【0087】
本明細書に記載される方法およびシステムは、図2に説明される関係に部分的に基づく。条件(深度およびその対応する圧力と温度)は、構造Iまたは構造IIのいずれかのハイドレートの形成に資する。図1A、1Bにおけるデータは、北海およびメキシコ湾における条件に関するが、海中における温度プロファイルおよび深度の適切な知識を用いて任意の場所に変更することができる。局部条件が本明細書に記載されるプロセスの実装に資さない場合、圧力を増大させるまたは温度を低下させるまたは圧力と温度の両方の調整の組み合わせのいずれかによって、プロセス内でこれらの条件を達成することが可能である。いずれかの変数、すなわち圧力または温度は、所望の炭化水素の深度または開示された装置の位置決めに基づいて扱われ得る。したがって、収集および回収は、海面の下の任意の深度で行われ得る。
【0088】
本明細書に記載される方法およびシステムは、抽出されたメタンをメタンクラスレートハイドレートに変換することによって、原油からメタンを抽出するのに有効である。メタンクラスレートハイドレートが形成されると、メタンクラスレートハイドレートは、単離され、貯蔵かつ/またはある場所への輸送のために容器に運ばれる。メタンクラスレートハイドレートがユーザの目的地に運ばれると、メタンクラスレートハイドレートは、解離されて、目的地のユーザの意図される目的のためにメタンを産生し得る。
【0089】
本明細書に記載される方法およびシステムは、当業者が理解するようないくつかの利点を提供する。例えば、本明細書に記載される用水は、海水または貯留層から抽出されたプロセス水などの別の水源であり得る。水は、塩または他の汚染物質などの汚染物質を有し得る。メタンハイドレートクラスレートが解離されて水とメタンを形成すると、回収された水は、この目的で完全に処理されないとしても、脱塩または汚染物質から精製をされ得る。
【0090】
不純物
本明細書に記載されるように、例えば固体およびガスである不純物が天然ガスから分離され得る。二酸化炭素(CO)は、石油貯留層によく見られ得る。理論に縛られるつもりはないが、二酸化炭素は通常、sIIクラスレートハイドレートに同伴されることにならない。sIICOクラスレートハイドレートの形成を可能とする温度および圧力条件は、sIIメタンクラスレートハイドレートを形成するのに必要な条件とは異なる。形成ステップの動作温度および圧力を制御することによって、実質的にCOクラスレートハイドレートは形成されないがそれでもメタンハイドレートが形成される領域で動作することが可能である。したがって、COは、変換に寄与しない。開示されたプロセスによって制御可能な条件下で、COは、システムを通過する。1つの非限定的な選択肢として、流出する二酸化炭素ガスおよび他の不要な成分を、それらを貯留層内に注入して戻す、すなわち地中に戻すことによって、解離させることがある。
【0091】
他の短鎖炭化水素、例えば、エタン、プロパン、ブタン、およびプロパンとブタンの異性体が天然ガスクラスレート内に含まれ得る。これらのガスは、商業的価値を高めたかもしれない。純メタン、純エタン、純プロパン、および純ブタンのクラスレートハイドレートの形成に対する相平衡曲線(境界)が存在する。これらの非メタン炭化水素は、本明細書に記載される捕捉容器の温度および圧力を調整することによって、メタンから単離され得る。
【0092】
生成熱
sIIハイドレートの生成熱は、sIメタンクラスレートハイドレートを形成するのに必要な生成熱のおおよそ3倍である。対応する解離熱(すなわち、隔離されたメタンを遊離させるのに必要な熱)は、対応するクラスレートの生成熱と同じである。このことは、ハイドレートと対応するガスおよび液体のエネルギー状態の差を表す。天然に生じるハイドレートを収集する際、生成熱の差を利用することが可能である。熱注入、化学注入、および減圧という、3つの主な、天然に生じるハイドレートの生成技術が存在する。用いられる方法に関わらず、メタンを回収するのに解離熱と等しいエネルギーを供給する必要がある。次いでメタンが、貯蔵および輸送のためにクラスレートハイドレートへと処理される際、sIIハイドレートを形成するのにプロモータが用いられる場合、相に対する生成熱がハイドレートに移行して戻るとき3倍のエネルギーが放出される。生成熱によるこのエネルギーは、天然に形成されたハイドレートの貯留層からの天然ガスの生産を促進するために、プロセス装置を通しての伝導または熱伝達ループを介した強制対流などの1つ以上の従来の方法によって向けられ得る。
【0093】
海面でまたは海面近くで生じ得る処理のために、天然ガスに対する3つの異なる主な源も存在する。第1に、天然ガスは、天然ガスと石油の石油貯留層からの生産に由来し得る。生産された炭化水素の海底坑井から表面までの運搬中、圧力は低下し、吸収ガスは、溶液から産出される。このシナリオでは、ガスは、石油を表面に押す助けとなる。表面では、このガスを利用することは、経済的に生産するには量が少なすぎ得るため、難しいことがしばしばある。ガスは、本明細書に記載される処理によって処理され得、それによって、ガスは、処理水または注入された海水と混合されて、熱力学プロモータを加えることによってsIIハイドレートを形成する。反応系が、クラスレートハイドレートが形成されるような条件(温度および圧力)で動作するために、圧力を増大させるまたは温度を減少させる(従来の方法により)必要があり得る。天然ガスが現在のところ燃やされるまたは燃焼されるいくつかのシステムが存在する。しばしば、これは、天然ガスが、他の方法では廃棄され得ない不要な不純物と混合されるので、行われる。この技術を用いて、そうでなければ燃やされる天然ガス流は適宜処理され得る。システムは、不純物がハイドレートを形成せず設定パーセンテージ(ごく一部)の天然ガスがシステムを通過するように、ガスと水の流量および温度および圧力を制御することによって、調整することができる。不純物およびごく一部の天然ガスは、コンプレッサを起動させて圧力を増大させるかまたは冷蔵庫/コンプレッサを起動させてシステムの温度を低下させるかのいずれかに向けて発電するために、燃焼される。別の源は、地下石油貯留層を起源とする天然ガスである。ここで、処理は、地上または水上(川、湖、または海)のいずれかであり得る。これは、パーミアンまたはバッケンなどにおいて、他の燃やされたガスの処理を含む。
【0094】
ハイドレート輸送
本明細書に記載される方法およびシステムは、メタンクラスレートハイドレートを、それが用いられ得る場所への輸送を容易にするために形成する。かくして、ハイドレートを、天然ガスと水へのその解離を防ぐように安定形状で維持することが重要である。このことは、圧力および温度を、対応するハイドレート構造(sI、sII、またはsH)に対する図2に記述された平衡曲線の「左」に維持することによって達成することができる。
【0095】
海底における処理の場合、圧力容器は、従来の方法を介して、表面まで輸送され得る。いくつかの例は、遠隔操作車両により、他のメンテナンス動作と併せて、船上クレーン、プラットフォームベースクレーンを介して、または専用滑車システム上で表面まで運ばれることを含む。
【0096】
コンテナは、標準輸送方法によって所望の処理場所まで輸送され得、海上でタグボートに曳航されることまたはバルクキャリア上に積み込まれることを含む。
【0097】
所望の処理場所は、局所燃料源を有さない場所、または、天然ガス供給(具体的にはLNG)の従来の方法が実現可能でない場合がある場所であり得る。輸送用コンテナは、十分な天然ガスを「必要に応じて」地元住民に運ぶように設計することができる。それらはまた、不測の事態に対する予備品または備蓄として機能する貯蔵も提供し得る。本明細書に開示される装置は、したがって、任意のサイズの輸送用コンテナを受け、用いるようになされ得る。
【0098】
かくして、本開示の一態様は、天然ガス源をプロセッサまたはユーザに提供するための方法に関する。開示されたプロセスは、
a)安定sIIメタンクラスレートハイドレートを提供することと、
b)クラスレートを顧客に輸送することとを特徴とする。
【0099】
安定sIIメタンクラスレートハイドレートは、クラスレートが形成される点で、例えば、海底でまたは海面上で、適切なコンテナを満たすことによって顧客に輸送することができる。コンテナは、外部圧力に対して圧力差を維持する能力を有し得る。必要な最小圧力は、温度に依るものであり、構造II(sII)メタンハイドレートに対して35℃程の高さの温度を含む。このようにして、安定クラスレートを維持することが可能である。
【0100】
一実施形態では、空隙容量を有さない加圧コンテナは、開示されたプロセスおよび装置がクラスレートハイドレートを形成する海底上で満たされ得る。満たされると、加圧コンテナは、エンドユーザ、すなわち、処理または収集場所もしくはエンドユーザに輸送され得る。
【0101】
天然ガスと水への解離
メタンクラスレートハイドレートが所望の場所へ輸送されると、それは解離されて、天然ガスと水を形成することができる。ハイドレートの温度および圧力は、水とガスの相が好ましい条件である、すなわち、図2に示される平衡曲線の「右」の条件に対応しなければならない。温度を上昇させるかつ/または圧力を低下させるかのいずれかにより、この結果がもたらされる。これを達成するのに最も可能性のある方法は、コンテナが平衡温度および圧力を達成することを可能とすることである。解離熱のために熱をシステムに加えることも必要である。この熱源は、以下、1)そうでなければ環境もしくは2)海もしくはより低い温度における他の水域内、に配置される不要な処理熱、または3)太陽からの放射、および4)外部循環空気からの対流のうちの1つ以上の組み合わせであり得る。
【0102】
メタンクラスレートハイドレートを水と天然ガスに解離させるプロセスは、大量の熱を供給することを必要とする。本明細書で論じるように、メタンクラスレートハイドレート形成中に形成される天然に生じる再生利用可能なヒートシンクを用いることは、そうでなければ環境内へ未使用で逃げる余分な熱の吸収を可能とし得る。
【0103】
ハイドレートを、LNGへの以降の処理のために天然ガスに変換することも可能である。これは、オフショア石油抽出に用いられる浮体式生産貯蔵積み出し(FSPO)船またはLNGターミナルで行われ得る。このシナリオでは、天然ガスクラスレートハイドレートは、まず、本明細書に記載されるようなプロセスによって、水と天然ガスへと変換(解離)される。ハイドレート解離のための熱源はまた、FSPOもしくはLNGターミナルからの放熱も含み得る。天然ガスは次いで、LNGへと処理される。ハイドレート解離から回収された水は、FSPOまたはLNGターミナルで利用され得る。
【0104】
ここで図を参照
図3は、Veluswamyら、Applied Energy2018;216:262-285によりまとめられた実験結果のプロットである。これらのデータは、メタン/水システム対メタン/THF/水システムの、温度および圧力への依存を示す。メタン/水システムに対して、以下の参照文献、
【数1】
(MohammadiらのInd Eng Chem Res.2009;48:7838-41を参照)が適用される。
【0105】
図3は、プロモータが提供されそれによって、所与の圧力に対して天然ガスハイドレートを形成するのにより高い温度を必要とし、またはより高い温度におけるハイドレート形成に対してより低い圧力を必要とするとき、平衡曲線(温度および圧力における)が赤から青(白抜きから中実の記号)にシフトすることを示す。曲線はまた、輸送および貯蔵の間ハイドレートを維持するための条件も判定する。海底でハイドレートを形成するとき、ローカル温度および圧力を利用することが可能である。天然ガスハイドレート形成に有利に働く条件を生成するために、示された曲線で作動位置を左へシフトさせるために、適切な圧力室を用いて処理中圧力を増大させることは比較的容易である。
【0106】
例えば、反応を促進するための、形成されたハイドレート粒子の凝集を低減する希釈濃度のミセラー物質(一側は極性であり、一側は非極性である)などの界面活性剤が提供され得る(例えば、Andoら、Chemical Engineering Sience2012;73:79-85を参照)。適切な界面活性剤は、当技術分野でよく知られており、希釈濃度で提供され得る(百万分の一程度の小ささから、1~2%程度の大きさまで)。
【0107】
図4は、構造II(sII)メタンクラスレートハイドレートを形成するためのプロセスを記述する。適切な装置が、天然ガスが収集され燃焼される地点に並設され得る。この地点で収集された天然ガスは、プロモータの熱力学効果の元で、安定クラスレートに変換されて、sIIクラスレートを形成し得る。
【0108】
使用中、供給ライン200は貯留層100に接続される。貯留層は、地下、海中坑井、または坑口、または化石燃料の生成もしくは処理によるものなどの他の天然ガス源のいずれかであり得る。原油は、ポンプ111によって、バルブ110を通して運ばれる。原油は、熱交換器112、次いで、容器101の底部内に続いていく。原油の温度を調整することによって、溶解ガスは段階的に溶解される。すなわち、頭部空間に近接する溶解ガスが原油から離れ頭部空間に入るにつれて、この濃度勾配により、より多くのガスが、上方に浸透する。プロセスがバッチプロセスではなく連続的に行われると、頭部空間のガスは、ポンプ112によってライン201を介して熱交換器114に迂回され得、そこで、ガスの温度が調整され得る。ガスは次いで、室102内に流入し、そこで、ガスはライン204を介して流入している用水およびライン208を介して提供されたプロモータと混合されて、粗スラリーまたはペレットを形成する。スラリーまたはペレットは、ポンプ118を介して、核生成室103内へと通過させられ、そこで、メタンクラスレートハイドレートペレットが形成され、COなどの望まないガスが遊離される。任意選択的に、余分な水は、ライン205を介して除去され、ライン204を介して、使用するために代替として再生利用され得る。遊離されたガスは、元々の貯留層へと送られ、代替の貯留層に向けられまたはライン206を介して同伴のために収集され得る。それによって形成されたクラスレートハイドレートは、次いで、ライン203を介して、処理または輸送のために運ばれ得る。容器103は、ガスおよび水が除去されるにつれて空気または窒素を導入して必要である任意の空隙容量を満たすようになされ得る。プロセスが連続して行われるかバッチ式で行われるかまたは増加的に行われるかに関わらず、メタンが欠失した原油は、ライン206を介して容器101から除去されまたは代替として流れ207に再生利用され得る。
【0109】
場合によっては、界面活性剤は、容器102または103の構成を、界面活性剤の水流または既存の水に容易に可溶な固体界面活性剤のいずれかを導入することを可能とするように変化させることによって、加えられ得る。用水が、流れ205から流れ204に再生利用されない場合、界面活性剤は、用水流れに含まれ得る。
【0110】
本明細書に記載される方法およびシステムは、原油精製から放出された揮発性ガスからメタンを回収するように適合またはそうでなければ改造され得る。プロセスは、例えば、石油ナフサカットの第1の蒸留物からまたは任意のガス処理ステップからといった精製プロセスにおける任意の点から揮発性ガスを受けることができる。
【0111】
図6は、本明細書に記載されるプロセスの、石油精製所への改造を記述する。使用の際、冷却された低揮発性流は、還流容器300にライン301を介して流入する。還流容器300は、上部ガス状層(白)、下部凝縮層(灰色)、および酸性水収集装置を含む。凝縮層、通常ナフサは、ポンプを介して、ライン302を通して精製所内へ再生利用され得る。酸性水は、廃棄のために、ライン303を介して除去され得る。ポンプ420は、ガス状層を、ライン410を介して熱交換器430内、ポンプ421、そして容器400内へ運ぶ。用水およびプロモータは、ライン413を介してポンプ424によって導入され、クラスレートスラリーを形成する。スラリーは次いで、ポンプ422を介して、容器401内へ移行され、そこで、用水は除去され、安定sIIメタンクラスレートハイドレートが形成される。余分なプロモータは、余分な用水とともに除去され得る。分離された揮発物は、ポンプ423を利用して412を介して除去される。安定メタンクラスレートハイドレートは、ライン411を介してポンプ427によって除去することができる。
【0112】
例示的なシステム
3タンクシステムに基づくプロセス設計ステップ
坑口入口
天然ガスまたは石油/ガス混合物は、地下貯留層から、海底における坑口へのチューブストリングを上る。ガス/石油混合物は、元々の貯留層の深度において大部分は液体であり得る。坑口への入口点でかつ任意の後続の流量制御器および実際の流量次第で、圧力は、貯留層よりも低くあり得るが、それでも、海底における局部圧力よりも大きくあり得る。同様に、温度も低下するが、それでもまだ、局部水温よりもはるかに高いだろう。流体温度および圧力は、裸孔に移動しながら圧力が減少するにつれて石油からのガスの沸騰および断熱膨張により、変わるだろう。プロセスにおけるこの点で、開示された装置は、温度および圧力の変化を利用するようにシステムに適合させることができる。
【0113】
タンク2 NGCHプロセッサ
天然ガスは、石油から分離されると、特定の圧力において正確な量を測定するため流速計および制御弁が取り付けられたガスラインを通してタンク2にポンプされる。同時に、正確な量の用水(および/または海水)がタンク2内にポンプされる。さらに、タンク2は、バッチプロセスとして動作するように設計され得る。実際、半連続的なプロセスとして機能するため時間的に交互配置されている複数の(例えば3つの)より小さなバッチ処理タンク、タンク2a、タンク2b、タンク2cなどを有することが望ましくあり得る。このことは、タンクが満たされる合間におけるガスを格納するための保持タンクとして機能し得るガスセパレータタンクの浮力を減らし得る。複数のより小さなバッチ処理タンクを有することはまた、システムの保全性を促進する。タンク2は、プロモータおよび/または希釈濃度の界面活性剤をプロセス内に導入するように適合され得る。
【0114】
原油から天然ガスを抽出しそれを固体クラスレートハイドレートに変換するシステムおよび方法が本明細書に記載される。開示されたクラスレートは、効率的に輸送され得る。
【0115】
本明細書に記載される方法は、海底下の炭化水素貯留層(石油とガス)から天然ガスを抽出するために海底坑井を掘削するという第1のステップを特徴とする。開示された方法の構成は、貯留層由来の炭化水素組成に依存し、井戸は、ガスのみを、またはガスと石油の混合物を産出し得る。ガス-石油混合物の場合、石油は、海底で、特殊設計されたセパレータを通してガスから分離される。石油成分は次いで、海面までパイピングされ、通常のように処理される。天然ガス成分は、デブリが取り除かれ、固体ハイドレートを形成し海面までの輸送のために大きな輸送用コンテナに配置するように設計された海底上のガス/クラスレートハイドレート処理設備内にパイピングされる。
【0116】
海面直下の出口パイプにおける石油またはガスの圧力は通常、海底における水圧よりもはるかに高い。従来のシステムでは、この圧力は、石油とガスを処理のために表面まで移動させるのに利用される。本明細書に記載される方法では、ガスを表面まで押すのに圧力は用いられない。かくして、海底からの出口点で生じるガス膨張は、何らかの種類の流量制限器を含んでもよくまたは含まなくてもよく、タービンを通して(電気的または機械的な)力発生の手段を提供することができる。
【0117】
自明でありかつ本開示に固有である他の利点は、当業者に明らかであろう。特定の特徴およびサブ組み合わせは有用性があり、他の特徴およびサブ組み合わせを参照することなく用いられ得ることが理解されるだろう。このことは、特許請求の範囲によって考えられるものであり、特許請求の範囲内に在る。多くの可能な実施形態が、本開示から、その範囲から逸脱することなくなされ得るので、本明細書に記載されるまたは添付図面に示される全ての事柄は、例示的であり限定するものではないと解釈されると理解されるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】