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特表2023-523953脳腫瘍における改善された血液脳関門浸透性及び滞留性を備えた、スケーラブルなチロインテグリンアンタゴニストの組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】脳腫瘍における改善された血液脳関門浸透性及び滞留性を備えた、スケーラブルなチロインテグリンアンタゴニストの組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/48 20060101AFI20230601BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20230601BHJP
   C07D 249/04 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
C08G65/48
C07F5/02 D CSP
A61K45/00
A61K47/54
A61K47/60
A61K47/56
C07D249/04 503
A61P35/00
A61P25/00
A61K31/192
A61K49/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564621
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021024294
(87)【国際公開番号】W WO2021221836
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】16/862,076
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520390003
【氏名又は名称】ナノファーマスーティカルス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】NANOPHARMACEUTICALS, LLC
【住所又は居所原語表記】1 Discovery Drive, Rensselaer, New York 12144 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーサ,シェーカー エイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイ,ブルース エイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C206
4H048
4J005
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD39
4C076DD60
4C076DD62
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA11
4C084NA13
4C084NA14
4C084NA20
4C084ZA02
4C084ZB26
4C085HH01
4C085HH11
4C085KA36
4C085KB42
4C085KB56
4C085KB57
4C085KB74
4C085LL13
4C085LL18
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA10
4C206DA26
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA86
4C206NA11
4C206NA13
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZB26
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB20
4H048VA10
4H048VA11
4H048VA32
4H048VA75
4H048VB10
4J005BD03
4J005BD04
4J005BD05
(57)【要約】
化学化合物/組成物、その合成方法、及び使用方法を提供する。化合物/組成物はポリマーにコンジュゲートしたチロインテグリンアンタゴニストを対象とする。化合物/組成物はさらにポリマーにコンジュゲートした追加の置換基を有する。化合物/組成物は強化された滞留性を有する血管脳関門を透過する強化された取り込みと腫瘍内での滞留性を実証する。化合物/組成物はまた、改善されたスケーラビリティ、改善された純度、改善された水溶解度、固形物もしくは中間物を含んでもよい。化合物/組成物は改善された抗血管新生効果及び、例えば膠芽腫(GBM)のような、特に血管脳関門透過性を必要とする腫瘍などの疾患に対して改善された効果を実証する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であって、
チロインテグリンアンタゴニストと、
非生分解性ポリマーと、
切断不可の共有結合を介して、前記チロインテグリンアンタゴニストと前記非生分解性ポリマーとに共有結合したリンカーと、
前記非生分解性ポリマーに結合した置換基Aと、
を含む化合物。
【請求項2】
Aは、以下からなる群から選択され、
【化10】
式中、R1~R7は、H、Me、Et、iPr、nPr、nBu、iBu、secBu、tBu、C-C12n-アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、F、Cl、Br、I、CN、CF、OCF、CHF、OCHF、SOMe、NO、-O-アルキル、-O-アリール、-CH-O-アルキル、-CH-O-アリール、エステル、及びアミドからなる群から独立して選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アルキルは、Me、Et、iPr、nPr、nBu、iBu、secBu、tBu、C-C12n-アルキル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記アリールは、
フェニルと、
アルキル、F、Cl、Br、I、CN、CF、OCF、CHF、OCHF、SOMe、及びNOのうち1つで置換されたフェニルと、
からなる群から選択される、
請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記エステルは、以下からなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【化11】
【請求項6】
前記アミドは、以下からなる群から選択され、
【化12】
式中、R9及びR9は、H、アルキル、及びアリールのうち少なくとも1つから独立して選択される、
請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
Aは、以下からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化13】
【請求項8】
Aは、五員環ヘテロアリール、融合ヘテロアリール、キノリン、及びインドールからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Aは、以下からなる群から選択されるエステルである、請求項1に記載の化合物。
【化14】
【請求項10】
Aは、以下からなる群から選択されるアミドであり、
【化15】
式中、R9及びR9は、H、アルキル、及びアリールのうち少なくとも1つから独立して選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Aは、フェノキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記チロインテグリンアンタゴニストは、トリヨードチロ酢酸、トリヨードチロ酢酸誘導体、テトラヨードチロ酢酸、及びテトラヨードチロ酢酸誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記置換基Aは、置換ベンジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
前記置換ベンジルは、ハロゲンを含む、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
以下の一般式を有し、
【化16】
式中、n=5~200である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
以下の一般式を有し、
【化17】
式中、n1≧0であり、
式中、n2は5~200であり、
式中、Zはハロゲンである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
以下の一般式を有する化合物であって、
【化18】
式中、n1≧0であり、
式中、n2は5~200であり、
式中、R1~R4、及びR9は、H、Me、Et、iPr、nPr、nBu、iBu、secBu、tBu、C-C12n-アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、F、Cl、Br、I、CN、CF、OCF、CHF、OCHF、SOMe、NO、-O-アルキル、-O-アリール、-CH-O-アルキル、-CH-O-アリール、エステル、及びアミドからなる群から独立して選択され、
式中、R10~R13は、水素、ヨウ素、及びアルカン基からなる群からそれぞれ独立して選択され、
式中、Yは以下からなる群から選択される、化合物。
【化19】
【請求項19】
化合物であって、
ポリマーにコンジュゲートしたチロインテグリンアンタゴニストと、
前記ポリマーにコンジュゲートした置換ベンジルと、を含み、
前記化合物は、血液脳関門を透過し吸収される、
化合物。
【請求項20】
前記チロインテグリンアンタゴニストは、トリヨードチロ酢酸、トリヨードチロ酢酸誘導体、テトラヨードチロ酢酸、及びテトラヨードチロ酢酸誘導体からなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
前記置換ベンジルはハロゲンを含む、請求項19に記載の化合物。
【請求項23】
前記ハロゲンは、フッ素及び塩素のうちの少なくとも1つである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記置換ベンジルはフルオロベンジルである、請求項19に記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物は撮像のための染料を含む、請求項19に記載の化合物。
【請求項26】
前記化合物は、以下の一般式を有し、
【化20】
式中、n1≧0であり、
式中、n2は5~200であり、
式中、Zはハロゲンである、
請求項19に記載の化合物。
【請求項27】
疾患を治療する方法であって、
ポリマーにより連結されたチロインテグリンアンタゴニストと置換ベンジルとを有する化合物を提供することと、
前記化合物を必要とする患者に、治療有効量の前記化合物を投与することと、
を含む、方法。
【請求項28】
前記疾患は膠芽腫である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物は以下の一般式を有し、
【化21】
式中、n1≧0であり、
式中、n2は5~200であり、
式中、Zはハロゲンである、
請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物は以下の一般式を有する、請求項27に記載の方法。
【化22】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、改善された甲状腺ホルモン受容体拮抗剤(「チロインテグリンアンタゴニスト」と呼ぶ)化合物、併せてこれを含む組成物、疾患を治療するためのこれら化合物及び組成物の使用方法、及び合成方法に関する。より具体的には本開示は、ポリマーにコンジュゲートしたアルファ-V-ベータ-3(αvβ3)インテグリン甲状腺ホルモン受容体拮抗剤を含む化合物に関し、このポリマーはまた、さらなる置換基又は官能基にコンジュゲートしている。開示された化合物と、この化合物を利用する組成物とは、改善された血液脳関門浸透性と滞留性、改善された合成スケーラビリティ、水溶解度、及び/又は固形生成物若しくは中間物を有する。この化合物はまた、例えば順相クロマトグラフィーにより、容易に測定できる(スケーラブルな)精製の対象である。血液脳関門を透過する強化された浸透性と、脳腫瘍での滞留性とのため、開示された組成物及び化合物は特定の疾患、例えば膠芽腫、グリオーマ、星状細胞腫、CNSリンパ腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、下垂体腫瘍、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)、及び他の脳関連の疾患を治療するのに特に効果的である。
【背景技術】
【0002】
インテグリンは細胞表面接着受容体のスーパーファミリーであり、中実の細胞外環境により、細胞外マトリクス(ECM)と他の細胞両方への細胞の付着を制御する。接着は細胞にとって不可欠であり、接着により、足場、移動のきっかけ、及び増殖及び分化のためのシグナルが提供される。インテグリンはおびただしい数の正常状態と病理状態とに直接関わっているので、治療介入の重要な標的なのである。インテグリンは内在性膜貫通タンパク質であり、そしてどの14のα鎖がどの8のβ鎖に化合されるかに影響されてその結合特異性が変化するヘテロダイマーである。インテグリンは4つの重複するサブファミリーに分類され、β1、β2、β3、又はαv鎖を含む。細胞は、各サブファミリーから幾つかの異なるインテグリンを発現し得る。ここ数十年間、インテグリンは細胞接着に関わる主要受容体であるので、治療介入のための適切な標的であり得ると示されている。この受容体のライゲーションは、特定の環境では腫瘍細胞内のアポトーシスを誘導することができるので、インテグリンαvβ3は細胞増殖及び生存を調節する。抗αvβ3抗体、RGDペプチド、及び他のインテグリンアンタゴニスト(例えば、制限された血液脳関門の透過性及び脳腫瘍滞留性のために、膠芽腫の臨床第3相試験で失敗に終わった環状ペプチドシレンジタイド等)による細胞接着の破砕は、腫瘍増殖を減速させることが示されている。
【0003】
出願人は、例えば米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)及び米国特許出願第16/223,176号に、αvβ3インテグリン抗甲状腺剤にコンジュゲートした切断不可のポリマーを含む化合物及び組成物、並びに関連方法を先に開示しており、当該出願及び特許両方の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
さらに出願人は、例えば米国特許出願第15/950,870号(現米国特許第10,328,043号)及び米国特許出願第16/398,342号に、αvβ3インテグリン抗甲状腺剤と、ノルエピネフリントランスポーター又はカテコールアミントランスポーター(例えばベンジルグアニジン又は誘導体)の標的とを含む化合物、組成物、及び方法、並びに関連方法を先に開示しており、当該出願及び特許両方の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
これら先の出願及び発行済みの特許に開示された化合物、組成物、及び方法は、既存の技術水準に対する改善である一方で、このような化合物及び組成物は、血液脳関門への低い透過性、不十分な合成スケーラビリティ、水溶解度の欠乏、及び固形生成物若しくは中間物の形成の欠乏を含む、1つ以上の欠点を被り得る。精製も現在困難であり得る。開示された化合物、及びこれら化合物を含む組成物は、この分野での改善を含んでおり、膠芽腫、他の脳腫瘍、及び類似疾患の治療において予想外の効能を実証する。
【0006】
血液脳関門の透過性は特定の疾患、例えばグリオーマ、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、及び髄芽腫、を標的とするのに重要である。膠芽腫(多形膠芽腫又はGBM)は、効果的な治療のために血液脳関門の透過性を必要とする疾患の1つの具体例である。改善された血液脳関門透過性を有する薬物送達の方法が有利であろうことは、当該技術分野において周知である(例えば、Bhowmik A, Khan R, Ghosh MK. Blood Brain Barrier: A Challenge for Effectual Therapy of Brain Tumors. BioMed Research International, Volume 2015; Upadhyay RK. Drug Delivery Systems, CNS Protection, and the Blood Brain Barrier. BioMed Research International, Volume 2014参照)。本明細書に記載される、改善された化合物、組成物、及び方法は、改善された血液脳関門透過性を実証し、この種の疾患のために非常に改善された効能を呈する。さらに本明細書に記載される、改善された化合物、組成物、及び方法は、脳内、特には脳内に位置する腫瘍の部位における改善された滞留性を実証する。この改善された滞留性により、このような疾患の治療におけるさらに強化された効能が提供される。本明細書に記載される、改善された化合物、組成物、及び方法はまた、改善されたスケーラビリティ及び溶解性を実証し、固形生成物又は中間物を生じてもよい。
【0007】
αvβ3インテグリン甲状腺ホルモン受容体拮抗剤(チロインテグリンアンタゴニスト)を含み、記載される改善された血液脳関門浸透性及び滞留性を有する、本明細書に記載されるような化合物又は組成物は、このような化合物及び/又は組成物を使用した治療方法であるので、当該技術において高く評価されるであろう。また記載される、改善された合成スケーラビリティ、水溶解度、及び/又は固形生成物若しくは中間物の形成のうち1つ以上と共に、このような改善された血液脳関門浸透性を有する化合物又は組成物も同様に当該技術において高く評価されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、化合物は、チロインテグリンアンタゴニストと、非生分解性ポリマーと、切断不可の共有結合を介して、前記チロインテグリンアンタゴニストと前記非生分解性ポリマーとに共有結合したリンカーと、前記非生分解性ポリマーに結合した置換基Aと、を含む。
【0009】
別の態様によると、化合物は、以下の一般式を含む。
【化1】
式中、n1≧0、式中、n2は5~200,式中、R1~R4、及びR9は、H、Me、Et、iPr、nPr、nBu、iBu、secBu、tBu、C-C12n-アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、F、Cl、Br、I、CN、CF、OCF、CHF、OCHF、SOMe、NO、-O-アルキル、-O-アリール、-CH-O-アルキル、-CH-O-アリール、エステル、及びアミドからなる群から独立して選択され、式中、R10~R13は、水素、ヨウ素、及びアルカン基からなる群からそれぞれ独立して選択され、式中、Yは以下からなる群から選択される。
【化2】
【0010】
別の態様によると、化合物は、ポリマーにコンジュゲートしたチロインテグリンアンタゴニストと、前記ポリマーにコンジュゲートした置換ベンジルとを含み、前記化合物は血液脳関門を透過し吸収される。
【0011】
別の態様によると、治療方法は、ポリマーにより連結されたチロインテグリンアンタゴニストと置換ベンジルとを有する化合物を提供することと、前記化合物を必要とする患者に、治療有効量の前記化合物を投与することと、を含む。
【0012】
特許又は出願ファイルはカラーで作成された少なくとも1枚の図面を含む。請求及び必要な料金の支払いにより、カラー図面と共に当該特許又は特許出願公開の写しが、庁より提供されるであろう。
【0013】
以下の図面を参照し実施形態の幾つかを詳細に説明する。図中、同一の名称は同一の部材を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による例示的化合物の一般式を示す。
図2】本発明の実施形態による例示的化合物のさらに詳細な一般式を示す。
図3】本発明の実施形態による例示的化合物のさらに詳細な一般式を示す。
図4】例示的化合物2を示す。
図5】例示的化合物3を示す。
図6】例示的化合物4を示す。
図7】例示的化合物1を示す。
図8】例示的化合物5を示す。
図9A】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの実施形態を示す。
図9B】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図9C】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図10A】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図10B】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図10C】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図11】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図12A】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図12B】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図13A】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図13B】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図13C】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図13D】本発明の実施形態による、図1からの置換Aの別の実施形態を示す。
図14】本発明の実施形態による、化合物1に関する例示的な合成経路を示す。
図15】本発明の実施形態による、例示的化合物2に関する例示的な合成経路を示す。
図16】本発明の実施形態による、例示的化合物3に関する例示的な合成経路を示す。
図17】本発明の実施形態による、例示的化合物4に関する例示的な合成経路を示す。
図18】本発明の実施形態による、例示的化合物5に関する例示的な合成経路を示す。
図19】フローサイトメトリーによって分析された膠芽腫がん細胞におけるインテグリンαvβ3の発現レベルを示す。
図20】例示的化合物1~4に関する人工膜透過性試験(PAMPA)の結果を示す。
図21】膠芽腫のある様々な臓器及び脳、並びに膠芽腫のない様々な臓器及び脳における、例示的化合物5の蛍光強度を示す。
図22】マウスへの皮下投与後の、脳組織に存在する例示的化合物2のレベルを経時的に示す。
図23】14日間毎日15mg/Kgの皮下注射が行われたカニクイザルに対し、脳組織を切除しLC/MS/MSによる分析のために血液サンプルを採取して、その皮下投与後の例示的化合物2の血漿及び脳レベルを経時的に示す。
図24】様々な増殖因子存在下での、例示的化合物2の抗血管新生効果を示す。
図25】様々な増殖因子存在下での、既知化合物Avastin(登録商標)の、VEGFに対してのみの抗血管新生効果と、他の増殖因子に対するその欠乏とを示す。
図26】脳内のGBM腫瘍の生物発光シグナルを示す。
図27】GBM腫瘍のあるマウス及びGBM腫瘍のないマウスの脳における例示的化合物5の血液脳関門の取り込みを示す。
図28A】ヒトに使用され且つ取り込み及び滞留性に関して潜在的に競合し得る化合物と共に例示的化合物5が投与される、GBM腫瘍のあるマウス及びGBM腫瘍のないマウスの脳における例示的化合物5の血液脳関門の取り込みを示す。
図28B】ヒトに使用され且つ取り込み及び滞留性に関して潜在的に競合し得る化合物と共に例示的化合物5が投与される、GBM腫瘍のある脳領域及びGBM腫瘍のない脳領域における例示的化合物5の血液脳関門の取り込みを示す。
図29】腫瘍のあるマウス及び腫瘍のないマウスの脳における例示的化合物5の取り込み、並びに他の臓器における薬物の蓄積又はその欠乏を示す。
図30】GBM異種移植片のあるマウスの腫瘍重量に対する、様々な用量の例示的化合物2の効果を示す。
図31】GBM異種移植片のあるマウスの腫瘍細胞発光シグナルの強度に対する、様々な用量の例示的化合物2の効果を示す。
図32】GBM異種移植片のあるマウスの腫瘍重量に対する、投与量75mg/kgの既知化合物シレンジタイドと比較した、投与量6mg/kgの例示的化合物2の効果を示す。
図33】GBM異種移植片のあるマウスの腫瘍細胞発光シグナルの強度に対する、投与量75mg/kgの既知化合物シレンジタイドと比較した、投与量6mg/kgの例示的化合物2の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
開示された組成物及び方法の、これより記載される実施形態の詳細な説明が、図面を参照し、例証により非限定的に本明細書に示される。特定の実施形態を示し詳細に説明するが、様々な変更及び変形例が添付のクレームの範囲から逸脱せずになされ得ることが理解されるべきである。本開示の範囲は、構成要素の数、その材料、その形状、その色、その相対的な配置等に限定されず、それらは単に本開示の実施形態の一例として開示される。本実施形態及びその利点のさらに完全な理解は、同様の参照番号が同様の特徴を示す添付の図面と合わせて、以下の説明を参照することによって得られるであろう。
【0016】
詳細な説明の前に、本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」の単数形は、明らかにそうではないことを文中に示す場合を除き、複数を含む。
概要
【0017】
本開示の実施形態により、新規な化学的化合物、その新規な化学的化合物を含む組成物、その合成方法、そのような化合物及び組成物を使用した治療方法について説明がなされる。
【0018】
本明細書に開示された化合物(以下で詳細に記載される化合物2、化合物3、化合物4、及び化合物5等の例示的化合物、併せてそのような化合物から準備される組成物を含むがこれに限定されない)は、改善された血液脳関門浸透性及び脳腫瘍における滞留性について実証する。また、これらの化合物及びそれぞれの組成物は、脳腫瘍及び他の疾患、例えば膠芽腫(GBM)に関して予想外の強化された効能を示す。
【0019】
これらの疾患に対する予想外の強化された効能は、血液脳関門を透過する能動輸送、GBM及び類似疾患におけるインテグリンαvβ3の過剰発現、チロインテグリンアンタゴニスト上のさらなる置換基の、取り込み/滞留性に対する効果を含む、複数要因の複合に起因し得る。
【0020】
第1に、本明細書に記載される化合物及び組成物は、チロインテグリンアンタゴニストを含む。本明細書に記載されるようなチロインテグリンアンタゴニストは、甲状腺結合タンパク質によって、血液脳関門を透過する能動輸送の対象となり得る。脳における甲状腺ホルモン及びその類似物の輸送の検討については、Wirth EK, Schwiezer U, Kohrle J. Transport of thyroid hormone in brain. Frontiers in Endocrinology. June 2014, Volume 5, Article 98で確認され得る。改善された血液脳関門の透過性を有する薬物送達方法を達成することは困難であり得るが、出願人が開示した化合物及び組成物は、血液脳関門を透過し能動的に輸送されるので、治療活性のために意図された標的部位に達する。
【0021】
第2に、本明細書に記載される化合物及び組成物は、GBM及び類似疾患におけるインテグリンαvβ3の過剰発現により、血液脳関門内に滞留し得る。例えばGBMでのαvβ3の発現は、図19に示すように80~97%のレベルに達し得る。他のチロインテグリンアンタゴニストと同様に、開示された化合物はこのインテグリン結合部位に結合し得る。したがって、脳内に輸送されることに加え、記載された化合物及び組成物は腫瘍細胞に結合し、血液脳関門内に滞留し、意図された標的部位に滞留し得る。またこれにより非腫瘍組織に対する意図しない影響を低減させる。
【0022】
第3に、以下でさらに詳細に説明するように、本明細書に記載される化合物及び組成物は付加的な官能基を含む。これらの付加的な官能基は、ポリマーにコンジュゲートしてもよい。例えば線形ポリマーを有する実施形態において、付加的な官能基はチロインテグリンアンタゴニストではなく、ポリマーの反対側でコンジュゲートしてもよい。非線形ポリマーが使用されてもよい。付加的な官能基は、血液脳関門浸透性及び滞留性をさらに改善し、スケーラビリティ及び/又は溶解性も改善し得る。例えば(以下で図20により示す)受動輸送人工膜透過性試験(PAMPA)による分析は、甲状腺結合タンパク質がない場合はすべての誘導体で低い透過性を示すので、強化された取り込みは受動輸送を介さない。代わりに付加的な官能基は、例えばチロインテグリンアンタゴニスト(トランスポーター標的)をさらにアクセスしやすいものにすることにより、能動輸送を強化する。PAMPAは、すべてが低い透過性(1.5×E-6cm/s未満)を示したPMT36及び関連化合物2~4に対して行われた。同様に、1.5 E-6cm/s未満の低い透過性は、化合物5、並びにP-bi-TAT(米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)及び米国特許出願第16/223,176号で検討される化合物)で示された。その結果によると、これら化合物は、受動拡散により血液脳関門に透過することはないと示唆されており、このことはBBB透過性が、血液脳関門を透過して結合複合体を送達するトランスチレチン(TTR)等の血液中の甲状腺結合タンパク質を使用して、主に能動輸送系により促進されるということを明らかに示唆する。
【0023】
例示的化合物がこれより、本発明の実施形態で使用され得る潜在的なチロインテグリンアンタゴニスト及びポリマーに関する付加的な背景情報と共にさらに詳細に検討される。
【0024】
上記で参照により取り込まれた、米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)及び米国特許出願第16/223,176号で検討されるように、αvβ3インテグリン甲状腺ホルモン受容体拮抗剤を含む化合物又は組成物は、抗血管新生甲状腺ホルモン、又は切断不可のリンカーを介してポリマーにコンジュゲートしたその誘導体を含んでもよく、微小分子又は高分子と見なされ得る単一の化学物質を形成する(甲状腺ホルモンに共有結合されたポリマー又はその誘導体のサイズによる)。単一の化学物質のサイズ及び切断不可の共有結合の強さは、甲状腺ホルモン又はその誘導体の、インテグリンαvβ3変種の細胞表面受容体を含む細胞への進入を防ぐのに有利であるかもしれない。付着ポリマーのサイズにより、そして細胞の周囲環境が、甲状腺ホルモンの強力な非切断共有結合をポリマーから切断することができないため、甲状腺ホルモン又はその誘導体が相互作用し得る細胞の核内で、記載の化学物質の甲状腺ホルモン部分の内在化が不可能な場合がある。このように、甲状腺ホルモン部分は細胞と非ゲノム的に相互作用し得、細胞に進入し細胞核の核内受容体と相互作用する甲状腺ホルモン又はその誘導体によって引き起こされ得るゲノム相互作用を回避し得る。
【0025】
上記で参照により取り込まれた、米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)及び米国特許出願第16/223,176号で検討されるように、αvβ3インテグリン甲状腺ホルモン受容体拮抗剤を含む化合物又は組成物は、αvβ3抗甲状腺剤に対するポリエチレングリコール(PEG)(100~800分子量)の短鎖のないアミン又はトリアゾール結合を含む切断不可のリンカーを介してコンジュゲートした、PEG(1,000~15,000ダルトン、例えば4,000~8,000ダルトン)、α、β、又はγシクロデキストリン、キトサン、アルギン酸、又はヒアルロン酸等の、非生分解性ポリマーを含む実体を含むように(しかしこれに限定されず)、合成されてもよい。ポリマーにコンジュゲートした抗甲状腺剤の実施形態は、テトラヨードチロ酢酸(テトラック:tetrac)、トリヨードチロ酢酸(トリアック:triac)、その誘導体、及びその変異体を含んでもよい。テトラック及びトリアックを含む甲状腺ホルモン拮抗剤の1つ以上の変異体としては、幾つかの実施形態において、ジアミノテトラック(DAT)若しくはジアミノトリアック(DATri)(以下、同義で「DAT」と呼んでもよい)モノアミノテトラック(MAT)若しくはモノアミノトリアック(MATri)(以下、同義で「MAT」と呼ぶ)、トリアゾールテトラック(TAT)若しくはトリアゾールトリアック(TATri)(以下、同義で「TAT」と呼ぶ)、その誘導体、又は当業者に知られている他の抗甲状腺剤が挙げられてもよい。
【0026】
上記で参照により取り込まれた、米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)及び米国特許出願第16/223,176号で検討されるように、αvβ3インテグリン甲状腺ホルモン受容体拮抗剤を含む化合物又は組成物はさらに合成され、様々な分子量のポリエチレングリコール(1,000~15,000ダルトン)にコンジュゲートしたDAT、MAT、又はTATとして特徴づけられている。我々は、様々なインビトロ及びインビボの生物学的システムにおける生物学的特徴のために、相対的に最も溶解性の高い、PEG-DAT(P-Mono-DAT、P-bi-DAT)及びPEG-TAT(P-Mono-TAT、P-bi-TAT)の実施形態をスケールアップしてきた。撮像及び細胞動態のためのDAT又はTAT及びPEG-DAT又はPEG-TAT、並びにC-DAT及びC-TATの化学標識法である。データにより、DAT又はTATへのポリマーコンジュゲーションは、ポリマーコンジュゲートDAT又はTATの細胞核取り込みの制限に、DAT又はTATの激しい細胞核取り込みが対峙するという結果となることが明らかとなった。このユニークな細胞分布の結果は、ポリマーコンジュゲートDAT、MAT、又はTAT、コンジュゲートしていないものに対峙するゲノム作用の欠乏につながる。短鎖短鎖PEG(100~1,000ダルトン)の有無に関わらず、DAT、MAT、又はTATにコンジュゲートされたヒアルロン酸、アルギン酸、キトサン等の他のポリマーについて説明する。DAT、MAT、又はTATへの付加的なポリマーコンジュゲーションは、二官能性又は四官能性のPEGを使用し合成されたが、これはまた、8鎖までの他の分岐PEGも含んでもよい。
【0027】
上記で参照により取り込まれた、米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)及び米国特許出願第16/223,176号で検討されるように、αvβ3インテグリン甲状腺ホルモン受容体拮抗剤を含む化合物又は組成物は、血管新生又はその阻害よって変調される複数の様々な病気を治療するために複数種類の効用を有し得る。記載される組成物に存在する抗甲状腺剤の存在を考慮して、当該組成物はそれぞれ、人間の体及び様々な動物の体の至る箇所で確認される多様な細胞に位置するインテグリン受容体αvβ3を標的とするための親和性を有してもよい。例えば組成物は、ヒト又は哺乳類のがん(固形腫瘍及び液性腫瘍)等の血管新生に介在する疾患を治療するのに有益であり得る。がんは、膠芽腫、膵臓がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肺がん、及び肝臓がんを含み得る。液性腫瘍はまた、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、及び慢性リンパ球性白血病を含み得る。当該組成物により、存続のために血管新生による新たな血液細胞の発生にそれぞれ介在又は依存し得る眼疾患(糖尿病性網膜症及び加齢性黄斑変性)、炎症性疾患(関節炎、骨関節炎)、アテローム性動脈硬化病変、及び皮膚科(酒さ、乾癬、皮膚がん)の治療がさらに行われてもよい。治療は、新しい血管の形成に依存し拮抗して血管新生経路を遅らせるか又は取り除き得る。
【0028】
本明細書に開示された化合物及び組成物は、効果的な血液脳関門浸透性及び滞留性、良好な合成スケーラビリティ、良好な水溶解度のうち1つ以上を達成し、スケーラブルな精製に適した固形生成物を生じ得る、出願人の先に開示された化合物及び組成物を改善する。
【0029】
本明細書において、特定のチロインテグリン化合物、例えば、テトラック、トリアック、他を参照する。これらの表現は、本開示の完全な教示により、誘導体が特に記載されていない場合であっても、当該化合物の誘導体を含む。
【0030】
図面を参照し、図1はリンカー130を介し、置換基120(一般に「A」と示される)に接合されたチロインテグリンアンタゴニスト110を含む一般式100の実施形態を示す。以降置換基は、置換基A、置換基120、又は置換基A120と呼ばれ得る。図1は、本出願の多くの他の図面のように、一般式100のカルボン酸の形を示す。当業者に明らかであるように、一般式100の塩(例えばナトリウム塩)が使用されてもよい。
【0031】
図示された実施形態において、リンカー130は、スペーサー132及びポリマー131を含む。リンカー130は、リンカーが生理的条件下で非切断のままであるように生分解に抵抗する。1つの実施形態において、スペーサー132は、CH単位と、n1の繰り返しにより定義され得るメチレン(CH)単位の隣り合う繰り返し結合とを含み、式中、n1は0以上(≧0)の整数である。他の実施形態において、n1は、1以上,2以上、又は3以上(≧1,≧2,≧3)であってもよい。リンカー130はさらに部分「Y」を含む。部分「Y」の実施形態は、場合によってはアミンであってもよい。例えば一般式の部分Yは、出願人の先の出願から知られるように、1つのアミン基を有する二価のアルカン又は2つのアミン基を有する二価のアルカンであってもよい。別の実施形態において部分Yは、図3に示す一般式102の例に示されるようなトリアゾールであってもよい。ポリマー131は、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリエーテルを含んでもよい。他のポリマーが使用されてもよく、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、及び他のポリマーが含まれる。ポリマー131としてPEGを使用する実施形態において、ポリマーは、1モルにつき200~4,000gの分子量を有してもよい。
【0032】
用語チロインテグリンアンタゴニストは、当業者に知られている1つ以上の甲状腺ホルモン受容体、例えば甲状腺ホルモン細胞表面受容体αvβ3等の甲状腺ホルモン受容体のインテグリンファミリー、を阻害又は拮抗する能力を有する化合物について説明する。チロインテグリンアンタゴニスト110は、抗血管新生甲状腺ホルモン又は甲状腺ホルモン受容体拮抗剤であってもよい。例えばチロインテグリンアンタゴニスト110は、アルファ-V-ベータ-3(αvβ3)インテグリン甲状腺ホルモン受容体拮抗剤であってもよい。
【0033】
チロインテグリンアンタゴニスト110の特定の実施形態は、テトラヨードチロ酢酸(テトラック)、トリヨードチロ酢酸(トリアック)、その誘導体、及びその変異体を含んでもよい。テトラック及びトリアックを含むチロインテグリンアンタゴニストの1つ以上の変異体としては、幾つかの実施形態において、ジアミノテトラック(DAT)若しくはジアミノトリアック(DATri)(以下、同義で「DAT」と呼んでもよい)、モノアミノテトラック(MAT)若しくはモノアミノトリアック(MATri)(同義で「MAT」と呼ぶ)、トリアゾールテトラック(TAT)若しくはトリアゾールトリアック(TATri)(以下、同義で「TAT」と呼ぶ)、その誘導体、又は当業者に知られている他の抗甲状腺剤が挙げられてもよい。チロインテグリンアンタゴニストは、両方の全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)及び米国特許出願第16/223,176号、及び/又は両方の全内容が参照により本明細書に組み込まれた、米国特許出願第15/950,870号(現米国特許第10,328,043号)及び米国特許出願第16/398,342号で記載される種類のものであってもよい。これらの文献で説明があるようにチロインテグリンアンタゴニスト110の幾つかの実施形態において、R10、R11、R12、及びR13として示される変数は、各々独立して水素、ヨウ素、及びアルカン等の分子に置換されてもよい。幾つかの実施形態において、アルカンは4つ以下の炭素を有する。
【0034】
本発明の実施形態において、置換基A120は、アリール基及び/又は芳香族基であるか、又はこれを含んでもよい。例えば実施形態において、置換基A120はベンジル基、フェニル基等を含んでもよい。幾つかの実施形態において、置換基A120は置換ベンジル基を含んでもよい。さらなる実施形態においてヘテロベンジル基が使用されてもよい。また、五員環ヘテロアリール、融合ヘテロアリール、キノリン、及びインドールが使用されてもよい。ヘテロアリールはヘテロアリールメチルを含んでもよい。さらなる実施形態において置換基A120はエステル及びアミドを含んでもよい。
【0035】
図2は、実施形態による、置換基A120が芳香環を含むとして示される一般式101を示す。芳香環を含む置換基A120は、例えば置換ベンジル基であってもよい。実施形態において、芳香環を含む置換基A120は、R1、R2、R3、R4、及びR9のうち1つ以上で置換されてもよい。芳香環を含む置換基A120の幾つかの実施形態において、R1、R2、R3、R4、及びR9として示される変数は、各々独立して、水素、ヨウ素、フッ素、臭素、メトキシ基、ニトロ基、アミン基、及びニトリル基等の分子に置換されてもよい。例えば、芳香環を含む置換基A120の幾つかの実施形態において、R1、R2、R3、R4、及びR9として示される変数は、各々独立して、米国特許出願第15/950,870号(現米国特許第10,328,043)及び米国特許出願第16/398,342号の表2に記載されるように、水素、ヨウ素、フッ素、臭素、メトキシ基、ニトロ基、アミン基、及びニトリル基等の分子に置換されてもよい。また、R1、R2、R3、R4、及びR9として示される変数は、アルキル、アリール、ハロ、アミド等で置換されてもよい。
【0036】
図3に示すように、示される一般式102を含む幾つかの実施形態において、変数R1、R2、R3、R4は水素の分子に置換されてもよく、一方でR9は異なる分子又は基(示された実施形態では「Z」)に置換されてもよい。したがって、置換基A120は、上で検討されたような芳香環を含んでもよく、より具体的には、分子又は基ZがR9で水素に置換された置換ベンジル基122を含んでもよい。あるいは図6に示すように幾つかの実施形態において、変数R1及びR2、又は他の変数がR9の代わりに置換されてもよい。
【0037】
図3~8(例示的化合物1~5を含む)に示す各例示的化合物は、関連するチロインテグリンαvβ3受容体拮抗剤としてテトラック、関連するリンカーとしてポリエチレングリコール、及び含まれるY部分としてトリアゾールを含む。
【0038】
より具体的に例示的化合物2~5について述べると、これらは広義にはX-PTATと呼んでもよく、X-PTATにおいて置換基A120は、置換ベンジル基(例えば、図3に示す置換ベンジル基122、図4及び5にそれぞれ示すフルオロベンジル又はクロロベンジル、又は図6に示すような異なる置換ベンジル基)としてここに特定され、Xと呼ばれる。Pはポリマー又はポリエチレングリコールであり、TATはトリアゾールテトラックを指す。また、例示的化合物2~5はX-PMTATと呼んでもよく、X-PMTATにおいて置換基A120は置換ベンジル基としてここに特定され、Xと呼ばれる。Pはポリマー又はポリエチレングリコールであり、MTATはモノトリアゾールテトラックを指す。さらに例示的化合物2~5はX-PMTと呼んでもよく、X-PMTにおいて置換基Aは置換ベンジル基としてここに特定され、Xと呼ばれる。Pはポリマー又はポリエチレングリコールであり、MTはこの場合も先と同様にモノトリアゾールテトラックを指す。
【0039】
これらの名称は、図7に示す化合物、すなわち化合物1と対照的である。この化合物1は、米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)及び米国特許出願第16/223,176号に記載されるようなポリマーにコンジュゲートしたチロインテグリンアンタゴニストの特定の実施形態を含む。この化合物は化合物1と呼んでもよく、PTAT、PMT、又はPMTATと呼んでもよい。上述のようにこれらの名称は、(モノ)トリアゾールテトラックにコンジュゲートした、この場合はメチル基のみにコンジュゲートしたポリマーの含有を示し、上記(又は置換ベンジル基等のさらに具体的な例)の置換基A120等の官能基へのコンジュゲーションはない。
【0040】
これまでのところ開示された発明の実施形態に戻り、図4及び5に示すように、変数R9はハロゲンに置換されてもよい。例えば、R9は図4に示すようなフッ素分子に置換されてもよい。この構造は化合物2と呼ばれ、ポリエチレングリコールによってトリアゾールテトラックにコンジュゲートしたフルオロベンジル、あるいはfb-PTAT、fb-PMTAT、又はfb-PMTと呼んでもよい。別の実施形態において、R9は図5に示すような塩素原子に置換されてもよい。この構造は化合物3と呼ばれ、ポリエチレングリコールによってトリアゾールテトラックにコンジュゲートしたクロロベンジル、あるいはcb-PTAT、cb-PMTAT、又はcb-PMTと呼んでもよい。
【0041】
図6に示すさらなる実施形態において、変数R1及びR2は置換されてもよい。例えば、R1及びR2はtert-ブチル基に置換されてもよい。この構造は化合物4と呼ばれ、ポリエチレングリコールによってトリアゾールテトラックにコンジュゲートしたジ-tブチルベンジル、あるいはDtbb-PTAT、Dtbb-PMTAT、又はDtbb-PMTと呼んでもよい。
【0042】
さらなる実施形態が、例えば撮像目的で染料、マーカー、ラベル等を含んでもよい。染料、マーカー、又はラベルは、幾つかの実施形態において置換ベンジル上にあってもよい。例えば図8は、化合物5と呼ばれる標識ポリマコンジュゲートモノテトラック(PMT)誘導体を示す。この例において置換基A120は染料マーカー、例えばBODIPYを含む。化合物5はBODIPY-PMTと呼んでもよい。
【0043】
上述のように、置換基A120の付加的な実施形態が考えられてもよい。例えば図9A、9B、及び9Cに示すように、置換基A120に関してさらなる環状構造が開示される。これらの例において、R8はH、Me、Et等に等しい。R1~R7は、H、Me、Et、iPr、nPr、nBu、iBu、secBu、tBu、C-C12n-アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、F、Cl、Br、I、CN、CF、OCF、CHF、OCHF、SOMe、NO、-O-アルキル、-O-アリール、-CH-O-アルキル、-CH-O-アリール、エステル、アミド等から独立して選択されてもよい。エステル置換は、以下から選択されてもよい。
【化3】
アミド置換は、以下から選択されてもよい。
【化4】
式中、R9及びR10はH、アルキル、アリール等から独立して選択される。
【0044】
また上述のように、置換基A120のさらなる実施形態は図10A~10Cに示すようなヘテロベンジルを含んでもよい。さらに、五員環ヘテロアリール、融合ヘテロアリール、キノリン、インドール等を使用してもよい。R1~R5、及びR8は、上記のように置換されてもよい。
【0045】
図11に示すようなフェノキシ基は、置換基A120の実施形態として使用されてもよい。この場合も先と同様に、R1~R5は上記のように置換されてもよい。
【0046】
さらなる実施形態において、置換基A120は図12A及び12Bが示すようなアミドを含んでもよい。R9及びR10は置換されてもよい。
【0047】
エステルは、実施形態において置換基A120として使用されてもよい。例えば、図13A~13Dに示すようなエステルを使用してもよい。
【0048】
上記のように、実施形態において、様々な種類のポリマー、並びに様々な分子量のポリマーが使用されてもよい。実施形態において単分散ポリマーは、多分散ポリマーに対して、分析及びスケーラビリティの簡易化を向上させるために使用されてもよい。また例示的化合物2~4に示すように、実施形態はPEG36等の比較的大きなポリマーを含んでもよい。単分散PEG36等の大きな単分散ポリマーは、例示的化合物の溶解性と分析とに貢献する。さらに、このような大きな単分散ポリマーは、精製に適した比較的大きな固形生成物を生じることによって、スケーラビリティを強化し得る。したがって、モノトリアゾールテトラックにコンジュゲートしたPEG36を含む実施形態は、他の実施形態と比較し、合成及びスケーラビリティが単純化されていてもよい。幾つかの実施形態において、ポリマーは、約4,000ダルトン、例えば、4,000±10%の分子量を有してもよい。またこれらの大きな単分散ポリマーは、例えばチロインテグリンアンタゴニスト(トランスポーター標的)をさらにアクセスしやすいものにすることにより、化合物の強化された能動輸送に貢献し得る。
【0049】
本明細書に記載される特定の例示的化合物(化合物1~5)の合成は、以下で実証される。当該合成の説明は、単なる例として提供され、本開示を限定することは意図していない。これらの例では、プロパルギル化テトラック(PGT)が使用される。テトラックからのPGT又はその誘導体の準備については、米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)に記載されている。
【0050】
例1:化合物1の合成(PMT)
【化5】
【0051】
化合物1及び類似の化合物/組成物は、米国特許出願第15/616,637号(現米国特許第10,201,616号)(例えば、図7c及び8(化合物730)参照)に記載されており、そこに記載されるように準備されてもよい。しかし出願人はまた、以下のサンプル方法を提供する。
【0052】
図14は、化合物1に関する合成経路の概要を示す。化合物1の合成スキームの個別のステップについて以下でさらに詳細に説明する。
【0053】
ステップ1:1g(0.625mmol)の単分散MeoPEG36OH(PurePEG,サンディエゴ,CA)と、0.285ml(4等量)のTEAを、10mlのDCMに溶かした。238mg(2等量)のTosClを10分間にわたり少量ずつ撹拌しながら加え、一晩中撹拌した。10mLのDCMを加え、その混合物を5mLの飽和塩化アンモニウムで2回洗浄し、5mLの飽和炭酸水素ナトリウムで2回洗浄し、5mLの飽和食塩水で1回洗浄し、溶媒を真空下でストリッピングした。固形物を10mLの高温のTHFに溶かし、同量の高温のヘキサンを加えた。液体を少量の不溶性物質からデカントし、生成物を一晩-20度で析出させた。生成物をろ過し、ヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させ、995mg(90%)の生成物が生じた。
【0054】
ステップ2:990mgのMeOPEG36OTs(0.565mM)を、5mlのCHCNに溶かした。110mg(3等量)のアジ化ナトリウムを加え、その混合物を撹拌しながら70度で一晩温めた。その後反応を冷却し、大部分のアセトニトリルを減圧下で取り除いた。それぞれ10mLのDCMと水との間に残留物を区画した。その水層を5mL量のDCMで3回抽出し、組み合わせた有機層を、それぞれ5mlの水及び飽和塩水で洗浄した。溶媒を減圧下でストリッピングし、先のステップと同様の手順でTHF/ヘキサンから物質を析出させ、832mg(89%)の生成物が生じた。
【0055】
ステップ3:830mg(505mmol)のMeO-PEG36-N、474mgの(4-{3,5-ジヨード-4-[(2-プロパ-2-イン-1-イル)オキシ]-フェノキシ]-3,5-ジヨードフェニル)酢酸(1.2等量)、及び13.7mgのTBTA(5%)を、20mlのTHFに溶かした。12.6mg(0.1等量)の硫酸銅水和物及び60mg(0.6等量)のアスコルビン酸ナトリウムを5mlの水に溶かし、THF溶液に加えた。N下で16時間撹拌した後、フラスコの底にある少量の青色固形物から液体をデカントした。THFを減圧下で溶液からストリッピングし、10mlの水を加え、希HClでpH3まで酸性化させ、DCMで3×40mL抽出した。組み合わせた有機層を5mLの飽和EDTA溶液で3回洗浄した後、5mLの飽和塩水で洗浄した。DCMを減圧下でストリッピングし、20mlの温かいTHFに残余を溶かした。20mlの高温のヘキサンを加え、ほぼ全てのものが溶けるまで温めた。室温まで冷却した後、バイアルの底にある少量の固形物及びオイルから液体をデカントした。その混合物を一晩-20度で析出させ、固形物をろ過により取り除き、低温のヘキサンで洗浄した。残りの白色固形物を減圧下で乾燥させた(685mg)。2.5mLの1M-NaOHと1mLの飽和塩化ナトリウムで、6.5mLのH2Oに溶かした。2×25mLをヘキサン:DCM(3:2)で洗浄した。1ml以上の飽和NaClを加え、新たな2×25mLのヘキサン:DCM(3:2)で洗浄した。その水層は、希HClでpH2.0まで酸性化させ、DCMで3×25mLを抽出した。組み合わせた有機層を、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、溶媒を減圧下で取り除いた。残留物は、20mLのTHF及び20mLのヘキサンから析出させ、491mgの生成物が生じた。H-NMR(600MHz,DMSO-D,)d(PPM):8.258(s,1H)、7.850(s,2H)、7.195(s,2H)、5.015(s,2H)、4.581(br.s,2H)、3.851(br.s,2H)、3.6-3.3(m,144H)、3.239(S,3H)。MSm/z 2452.2(M+Na)、1215.4(M+2H)、810.2(M+3H)、608.2(M+4H)。
【0056】
例2:化合物2(fb-PMT)の合成
【化6】
【0057】
図15は、化合物2に関する合成経路の概要を示す。化合物2の合成スキームの個別のステップについて以下でさらに詳細に説明する。
【0058】
ステップ1:250mgのHO-PEG36-アジド(0.155mmol,PurePEG,サンディエゴ,CA)を、5mlのTHF中19mgの60%のNaH(3等量)に加えた。その混合物を30分間撹拌した後、2mLのTHF中58uLの4-(フルオロベンジル)ブロミド(アルドリッチ)(3等量)を滴下して加えた。その混合物を18時間撹拌した後、2mLの飽和重炭酸ナトリウムを加えた。THFを真空下でストリッピングし、10mLの飽和塩水を加え、その混合物を15ml量のDCMで3回抽出した。組み合わせた有機層を5mlの飽和塩水で洗浄し、溶媒を真空下でストリッピングした。その後、物質に対しDCM中0~10%のMeOHを使用し、24gのシリカでクロマトグラフィーを行い、170mgの物質(>99% pure by HPLC)が生じた。
【0059】
ステップ2:170mg(0.147mmol)の4-フルオロベンジルPEGアジド、138mg(0.176mmol)の(4-{3,5-ジヨード-4-[(2-プロパ-2-イン-1-イル)オキシ]-フェノキシ]-3,5-ジヨードフェニル)酢酸、及び3mgのTBTAを、8mLのTHFに溶かした。3mgのCuSO4水和物及び23mgのNaアスコルビン酸塩を2mLの水に追加し、N下で4時間撹拌した。THFを真空下でストリッピングした後、5mlの飽和塩水及び0.5mlの1M-HClを加えた。DCMで3×10mLを抽出し、飽和EDTAで3×5mLを洗浄し、5mLの飽和塩水で1回洗浄し、溶媒を真空下でストリッピングした。残留物を10mLの温かいTHFに溶かした後、ちょうど白濁し始めるまでヘキサンを加えた。生成物を一晩-20度で析出させた。固形物をろ過により取り除き、180mgの生成物を得た。H-NMR(600MHz,DMSO-D,)d(PPM):8.246(s,1H)、7.879(s,2H)、7.361(dd,2H)、7.167(m,4H)、5.013(s,2H)、4.575(m,2H)、4.466(s,2時間)、3.847(m,2H)、3.640(s,2H)、3.55-3.4(m,144H)。MSm/z 1262.8(M+2H)、842.5(M+3H)、632.2(M+4H)。この生成物は順相シリカゲルでのクロマトグラフィーによりさらに精製可能である。
【0060】
例3:化合物3(cb-PMT)の合成
【化7】
【0061】
図16は化合物3に関する合成経路の概要を示す。化合物3の合成スキームの個別のステップについて以下でさらに詳細に説明する。
【0062】
ステップ1:250mgのPEGアジド(0.155mmol)を、5mlのTHF中19mgの60%のNaH(3等量)に加えた。30分間撹拌した後、95.5mgの4-クロロベンジルブロミド(アルドリッチ)(3等量)をTHFに滴下して加えた。18時間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、THFを真空下でストリッピングし、10mLの飽和塩水を加え、15ml量のDCMで3回抽出し、組み合わせた有機層を飽和塩水で洗浄し、溶媒を真空下でストリッピングし、DCM中0~10%のMeOHを使用し、シリカゲルでクロマトグラフィーを行った。(190mg)。
【0063】
ステップ2:190mg(0.111mmol)のクロロベンジルPEGアジド、131mgの(4-{3,5-ジヨード-4-[(2-プロパ-2-イン-1-イル)オキシ]-フェノキシ]-3,5-ジヨードフェニル)酢酸(1.5等量)、及び3mgのTBTAを、8mLのTHFに溶かした。3mgのCuSO4水和物及び23mgのNaアスコルビン酸塩を2mLの水に加え、4時間撹拌した。THFを真空下でストリッピングした後、5の飽和塩水及び0.5mlの1M-HClを加えた。DCMで3回抽出し、飽和EDTAで3回洗浄し、塩水で1回洗浄し、溶媒を真空下でストリッピングした。10mLの温かいTHFに溶かしたのち、ちょうど白濁し始めるまでヘキサンを加えた。物質を-20度の冷凍室で析出させ、180mgの生成物が生じた。H-NMR(800MHz,D0)d(PPM):8.369(s,0.3H)、8,.147(s,0.7H)、7.758(s,2H)、7.261(m,6H)、4.993(s,2H)、4.541(m,2H)、4.451(s,2H)、3.849(m,2H)、3.640(s,2H)、3.65-3.54(m,142H)、3.346(s,2H)。MSm/z 1281.2(M+2H)、854.9(M+3H)、641.4(M+4H)。この生成物は順相シリカゲルでのクロマトグラフィーによりさらに精製可能である。
【0064】
例4:化合物4(Dtbb-PMT)の合成
【化8】
【0065】
図17は化合物4に関する合成経路の概要を示す。化合物4の合成スキームの個別のステップについて以下でさらに詳細に説明する。
【0066】
ステップ1:250mgのHO-PEG36アジド(0.155mmol)を5mlのTHF中19mgの60%のNaH(3等量)に加えた。30分間撹拌した後、131mgのブロミド(アルドリッチ)(3等量)をTHFに滴下して加えた。18時間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウムを加え、THFを真空下でストリッピングし、10mLの飽和塩水を加え、15ml量のDCMで3回抽出し、組み合わせた有機層を飽和塩水で洗浄し、溶媒を真空下でストリッピングし、DCM中0~20%のMeOHを使用し、シリカゲルでクロマトグラフィーを行った。(270mg)。
【0067】
ステップ2:270mg(0.147mmol)のジ-tブチルベンジルPEGアジド、171mgの(4-{3,5-ジヨード-4-[(2-プロパ-2-イン-1-イル)オキシ]-フェノキシ]-3,5-ジヨードフェニル)酢酸、及び4mgのTBTAを、8mLのTHFに溶かした。4mgのCuSO4水和物及び34mgのNaアスコルビン酸塩を2mLの水に加え、4時間撹拌した。THFを真空下でストリッピングした後、5mlの飽和塩水及び0.5mlの1M-HClを加えた。DCMで3回抽出し、飽和EDTAで3回洗浄し、塩水で1回洗浄し、溶媒を真空下でストリッピングした。DCM中0~10%のMeOHを使用し、シリカゲルでクロマトグラフィーを行った。(310mg)。H-NMR(600MHz,DMSO-D,d(PPM):8.248(s,1H)、7.842(s,2H)、7.300(s,1H)、7.188(s,2H)、7.130(s,2H)、5.007(s,2H)、4.564(m,2H)、4.455(s,2H)、3.843(m,2H)、3.6-3.3(m,144H)、1.274(s,18H)。MSm/z 1309.3(M+2H)、873.4(M+3H)、655.8(M+4H)。
【0068】
例5:化合物5(BODIPY-PMT)の合成
【化9】
【0069】
図18は化合物5に関する合成経路の概要を示す。化合物5の合成スキームの個別のステップについて以下でさらに詳細に説明する。
【0070】
ステップ1:250mgのNH2-PEG36-N3を5mLのDCM中1.5当量のBOC無水物及び3等量のトリエチルアミンで処理した。その混合物を室温で18時間撹拌した後、20mlのDCMで希釈し、0.1M-HClで洗浄し、次に飽和炭酸水素ナトリウム及び飽和塩水で洗浄した。溶媒を減圧下で取り除き、残留物を5mLの温かいTHFに溶かし、ちょうどその混合物が白濁し始めるまでヘキサンを加えた。ヘキサンでのろ過及び洗浄前、その混合物を一晩静置した。240mgの生成物を回収した。
【0071】
ステップ2:235mgのステップ1の生成物、171mgの(4-{3,5-ジヨード-4-[(2-プロパ-2-イン-1-イル)オキシ]-フェノキシ]-3,5-ジヨードフェニル)酢酸、及び4mgのTBTAを、8mLのTHFに溶かした。4mgのCuSO4水和物及び34mgのNaアスコルビン酸塩を2mLの水に加え、18時間撹拌した。THFを真空下でストリッピングした後、5mlの飽和塩水及び0.5mlの1M-HClを加えた。DCMで3回抽出し、飽和EDTAで3回洗浄し、塩水で1回洗浄し、溶媒を真空下でストリッピングした。その残留物を5mLの温かいTHFに溶かし、その混合物が白濁し始めるまでヘキサンを加えた。ヘキサンでのろ過及び洗浄前、その混合物を一晩静置した。220mgの生成物を回収した。
【0072】
ステップ3:215mgのステップ2の生成物を2mLのDCMに溶かし、ジオキサン中2mLの5M-HClを加えた。その混合物を18時間撹拌し、溶媒を減圧下で取り除き、生成物は次のステップのために使用された。
【0073】
ステップ4:最後のステップ(.0076mmol)からの18mgの生成物を、10uLのトリエチルアミンと一緒に1mlのDCMに溶かした。100ulのDCMに溶かされた5mgのBODIPY630/650NHSエステル(Thermo Fisher)を加えた。その混合物を18時間振とうさせ、溶媒を減圧下で取り除き、残留物に対しDCM中0~20%のメタノールを使用し、シリカゲルでクロマトグラフィーを行った。4.5mgを回収した。H-NMR(800MHz,CDCl3)d(PPM):8.221(s,1H)、8.058(s,1H)、7.850(s,2H)、7.642(m,3H)、7.513(d,1H)、7.237(m,3H)、7.075(m,1H)、7.021(m,1H)、6.993(m,3H)、6.828(m,1H)、6.729(m,1H)、5.218(s,2H)、4.619(m,2H)、4.570(s,2H)、3.836(m,2H)、3.75-3.6(m,140H)、3.545(m,2H)、3.416(m,2H)、3.310(m,2H)、2,223(m,2H)、1.688(m,2H)、1.603(m,2H)、1.359(m,2H)。生成物のHPLCシステム1:Pursuit XRs 3 C18カラム,移動相A(0.1%の蟻酸及び5%のアセトニトリルを含む水)及びメタノール(B)における保持時間は34.05分であった。流速は1.0mL/分、勾配は0分での50%Bから40~45分での95%Bまで線形、カラム温度は25度であった。
【0074】
この場合も先と同様に、上記のものに加え、他の合成経路が、例示的化合物を生成するために使用されてもよい。また、それぞれの置換に必要なように修飾された付加的な化合物を上述の技術を用いて生じさせてもよい。
使用/治療の方法
【0075】
上述のように本明細書に記載される化合物及び組成物は、血液脳関門を透過する脳への強化された取り込みを有する。以下の表1は、例示的化合物1~4それぞれに関する平均の脳内濃度を示すことにより、この強化された取り込みについて実証する。濃度は投与してから3時間後に記録され示される。
【表1】
【0076】
表1のデータは以下の調査を用いて生成された。C57BL/6マウスに10mg/Kgの組成物1~4が皮下投与された。各群は4匹のマウスを含んだ。マウスは投与3時間後に屠殺され、脳組織が脳内の化合物1~4の生体分析的測定のために切除された。平均濃度は上記に示され、各化合物2~4は、化合物1と比較し、強化された取り込みを実証した。
【0077】
また、各化合物2~4は、BG-P-TATと比較しても、強化された取り込みを実証した。BG-P-TATは、ポリマーPEGを介してテトラックにコンジュゲートしたベンジルグアニジンを指し、米国特許出願第15/950,870号(現米国特許第10,328,043号)及び米国特許出願第16/398,342号において、αvβ3インテグリン抗甲状腺剤と、ノルエピネフリントランスポーター又はカテコールアミントランスポーターの標的とを含む他の化合物及び組成物と併せて説明がなされた。BG-P-TATのテストされた実施形態ではPEG36が使用された。見て分かるように、BG-P-TATは血液脳関門を超えず、投与後3時間の脳内では検出可能なレベルのものはない。この場合も先と同様に、脳内で高いレベルの濃度を実証する例示的化合物2~4等のここに開示された化合物とは非常に対照的である。
【0078】
ここに開示された化合物の強化された取り込みは、受動的透過性というより能動輸送によると判断された。例えば図20に示すように、受動輸送人工膜透過性試験(PAMPA)による分析では、各化合物1~4の低い透過性が示された。したがって、甲状腺結合タンパク質なしでは殆ど血液脳関門の透過性は達成されない。受動的透過性は影響を受けず、各化合物1~4は、同一のトランスポーター認識素子(チロインテグリンアンタゴニスト、トリアゾールテトラック)を有するので、これらの化合物はそれぞれ甲状腺ホルモントランスポーターのための基質であり、同様に脳への同一又は類似の取り込みを有すると予測されるだろう。
【0079】
しかし上記表1で実証されるように、例示的化合物2~4は化合物1とBG-P-TATの両方よりも、脳内濃度レベルにおいて著しい予想外の強化を示す。さらに、以下でさらに詳細に検討されるように、脳の取り込み及び濃度におけるこの予想外の強化は、例えば膠芽腫を含む、血液脳透過性を必要とする疾患の治療において、同様に予想外の高められた効能という結果をもたらす。
【0080】
また図21に示すように、取り込みは、腫瘍が脳内にある場合に実質的に強化される。上述のようにこれは、少なくとも一部はGBM腫瘍によるαvβ3の高発現への化合物/組成物の結合による。また取り込みは、示されるような他の臓器を除外し、脳内に圧倒的に集中している。図21に示すデータにおいて、取り込みは化合物5(BODIPY-PMT)を使用して測定された。
【0081】
図22は、脳へのこの初期の取り込みについても示す。示されるように例示的化合物2(fb-PMT)は、24時間にわたる取り込み及び滞留性について実証する。この場合も先と同様に、単回皮下注射がマウスに用いられた。投与量は10mg/Kgだった。この例の脳組織は腫瘍細胞を含まない。
【0082】
カニクイザルの、例示的化合物2(fb-PMT)に関する血漿濃度及び脳レベルを図23に示す。見て分かるように、血漿濃度は1~4時間後がピークとなっている。脳レベルも含まれており、化合物2は、有効性が確認されたLC/MS/MS法を用いて測定され、14日間の治療計画(15mg/Kg,SC QD 14日間)の最終投与後24時間で、(雄と雌のカニクイザルそれぞれで)72.3ng/g及び80.5ng/gを示す。
【0083】
良好な初期の取り込みに加え、開示された化合物は良好な抗血管新生効果も有する。例えば例示的化合物2(fb-PMT)は、図24に示すような様々な増殖因子に対する広域スペクトル抗血管新生効果を実証する。特に、以下の増殖因子:bFGF、VEGF、VEGF+bFGF、及びbFGF+VEGF+HGFの存在下で投与される場合に、化合物2はCAMモデルに存在する血管新生のパーセンテージを低減させるのに効果的である。これらの増殖因子はそれぞれ、CAMモデルの血管新生において250%以上の増大を生じる。しかし、化合物2(fb-PMT)の1.0μgの投与は、ベースラインをただわずかに上回るまでに、この増大を大幅に低減させる。
【0084】
この広域スペクトル抗血管新生の効果は、AVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)等の現存する治療用化合物/組成物とは対照的である。図25に示すように、AVASTIN(登録商標)は主に、VEGF単体に対して効果的であるが、bFGF又はHGFに関する血管新生のパーセントを有意に低減しない。さらにAVASTIN(登録商標)はVEGFと共にbFGF又はbFGF及びHGFが存在するとき、良好な効果は実証しない。再度図24を参照し、例示的化合物2(fb-PMT)は、3つ全ての増殖因子、2つのみ、及び組み合わせたものに対して血管新生の阻害を実証する。
【0085】
再度図21を参照し、例示的化合物5(BODIPY-PMT)は、腫瘍(GBM)が脳内に存在するとき、実質的に取り込みが強化されたことを示す。また取り込みは、示されるような他の臓器を除外し圧倒的に脳内に集中する。調査プロトコルについてさらに説明する。
【0086】
脳内にGBMのある無胸腺雌性マウスと、GBMのない無胸腺雌性マウスとが使用された。GBMのあるマウスは、U87-luc細胞(100万の細胞)の脳同所移植を受けた。3mg/Kgの化合物5(BODIPY-PMT)(遠赤蛍光染料)が皮下注射された。蛍光シグナルが検知された(Ex/Em 630nm/650nm)。以下の表は全ての治療群を示す。
【表2】
※L-T4(甲状腺機能低下に関するチロキシン)、及びフェニトイン(抗てんかん)は甲状腺結合タンパク質に結合
【0087】
化合物5の蛍光シグナルは1時間、2時間、6時間、及び24時間後に撮像された。終了後、脳及び臓器で生体外蛍光シグナルを撮像した。終了後撮像に続いて、脳内の腫瘍発光シグナル検知のためにルシフェラーゼ基質が加えられた。
【0088】
図26は様々な治療群に関する脳内のGBM(U870-luc)腫瘍の生物発光シグナルを示す。
【0089】
図27は、1時間、2時間、6時間、及び24時間間隔の、脳内の化合物5(3mg/Kgの皮下注射投与)の存在を示す。示すように、化合物5は血液脳関門へ取り込まれ、すべての間隔において滞留している。また示すように、化合物5はGBM腫瘍のある動物で著しく高いレベルで存在しているので、血液脳関門を透過した取り込み及び腫瘍部位における滞留性のさらなる証拠となる。
【0090】
図28Aは、24時間後の例示的化合物5(3mg/Kg)の血液脳関門の取り込み及び滞留性を示す。この場合も先と同様に、化合物5は、GBMのある動物で著しく高いレベルで存在しているので、血液脳関門を透過した取り込み及び腫瘍部位における滞留性のさらなる証拠となる。化合物5は、単独で投与される場合、また、甲状腺ホルモンL-T4及びフェニトイン等の血液脳関門を透過する他の薬物と一緒に投与される場合も、存在し滞留している。したがって、開示された化合物/組成物は、取り込み/結合に競合し得る薬物が存在したとしても、脳内での良好な取り込み及び滞留性を示す。
【0091】
図28Bはまた、GBM腫瘍のある脳領域及びGBM腫瘍のない脳領域での化合物5の蛍光シグナルの強さを示す。この場合も先と同様に、化合物5は単独で、L-T4及びフェニトインの存在下で投与された。見て分かるように、取り込みは、腫瘍が存在するときは実質的に強化される。さらに、L-T4又はフェニトインの存在によっても、取り込みにおける強化は軽減されない。したがって開示された化合物は、脳への良好な取り込み、並びに腫瘍部位における高親和性結合及び滞留性を実証する。
【0092】
図29は腫瘍のあるマウス及び腫瘍のないマウスにおける、例示的化合物5(fb-PMT)の単回投与(3mg/Kg,SC)の脳の取り込みを示す。見て分かるように、移植された腫瘍のある動物は、脳への実質的に強化されたレベルの取り込みを実証する。また図29は、心臓及び肺、肝臓、並びに腎臓を含む他の臓器内の蓄積レベルも示す。薬物の蓄積は、両方のテスト群で肝臓に存在する。しかし、腫瘍のない動物では腎臓における蓄積が実証される一方で、腫瘍のある動物においては腎臓の蓄積は実証されていない。このことは、腫瘍部位での滞留性に関するさらなる証拠である。図29はまた、腫瘍のない動物の発光シグナルがない状態と比較した、腫瘍のある動物のGBMの発光シグナルを示す。
【0093】
先の図21~29は、例示的化合物の強化された血液脳関門の取り込みと滞留性について実証する。したがって、開示された化合物と、これら化合物を含む組成物とは、血液脳関門を透過し特には脳内に位置する腫瘍部位に送達され得る。またこの化合物は健康な組織に対する効果を最小限にする一方で、このような腫瘍を標的にするために使用されてもよい。
【0094】
GBM腫瘍に関するこれらの化合物/組成物の効能について、図30~33を参照しこれより説明する。調査プロトコルは以下の通りである。U87-luc異種移植片を有するヌードマウスに対し、3週間様々な用量の化合物2(fb-PMT)で治療を行った。効能が、対照群と比較した腫瘍重量及び発光シグナル強度によって判断された。また治療効果も、既知の見込みのある治療であるシレンジタイドとの比較で評価された。効能は、追加治療を行わずに3週間経過した後にも再度判断された。
【0095】
図30は、3週間治療後の腫瘍重量、並びに3週間治療後に3週間治療を行わなかった腫瘍重量に対する例示的化合物2(fb-PMT)の効果を示す。結果は、投与量1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、及び10mg/kg、対、対照群について示される。3週間後の対照群の腫瘍重量は約600mgであった。全ての治療群で、用量に依存して腫瘍重量が100mg未満まで減少したことが示された。
【0096】
腫瘍重量はまた、6週間の治療(3週間の治療後、追加治療なく3週間経過)後に比較が行われた。対照群では、約750mgの増大した腫瘍重量を示した。全ての治療群において、治療を行わない3週間にわたって腫瘍重量がまたさらに減少したことが示された。
【0097】
図31は、3週間治療後の発光シグナル強度、並びに3週間治療後に3週間治療を行わなかった発光シグナル強度に対する、化合物2(fb-PMT)の効果を示す。結果は、投与量1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、及び10mg/kg、対、対照群について示される。3週間後の対照群に関する発光シグナル強度は約600,000p/sであった。全ての治療群で、用量に依存して発光シグナル強度が100,000p/s未満まで減少したことが示された。
【0098】
シグナル強度も、6週間(3週間の治療後、追加治療なく3週間経過)後に比較が行われた。対照群では、シグナル強度が800,000p/s超まで増大したことが示された。全ての治療群において、治療を行わない3週間にわたって発光シグナル強度がまたさらに減少したことが示された。
【0099】
図32は、3週間治療後の腫瘍重量、並びに3週間治療後に3週間治療を行わなかった腫瘍重量に対する、化合物2(fb-PMT)の効果を示す。結果は、6mg/kgの投与量について示されており、対照群と、75mg/kgのシレンジタイドで治療を行った群両方とが比較される。この場合も、3週間後の対照群の腫瘍重量は約600mgであった。両方の治療群が、3週間の治療後、腫瘍重量の減少を示した。しかし、化合物2で治療を行った群は、シレンジタイドで治療を行った群と比較したとき、この減少が大いに増大したことを示した。例えば見て分かるように、シレンジタイドで治療を行った群では腫瘍重量が約300mgまで減少した一方で、化合物2で治療を行った群では50mg未満まで減少したことが示された。
【0100】
腫瘍重量はまた、6週間(3週間の治療後、追加治療なく3週間経過)後に比較が行われた。この場合も先と同様に、対照群では、治療せずに3週間経過した後は、腫瘍重量が増大し約750mgであったことが示された。さらに治療せずに3週間経過した後、シレンジタイド群は、3週間治療した場合と比較したとき、腫瘍重量が増大したことを示し、最終的な腫瘍重量は400mgを超えた。したがって、3週間75mg/kgで治療をした後でも、腫瘍はシレンジタイド群に対して活性があり増殖する。反対に化合物2群では、治療せずにさらに3週間経過した後でさえ、腫瘍重量がさらに減少したことを示した。
【0101】
図33は、3週間治療後の発光シグナル強度、並びに3週間治療後に3週間治療を行わなかった発光シグナル強度に対する化合物2の効果を示す。結果は、6mg/kgの化合物2(fb-PMT)の投与量について示されており、対照群と、75mg/kgのシレンジタイドで治療を行った群両方とで比較される。この場合も、3週間後の対照群の発光シグナル強度は約600,000p/sであった。両方の治療群が3週間の治療後、シグナル強度の減少を示した。しかし、化合物2で治療を行った群は、シレンジタイドで治療を行った群と比較したとき、減少が大いに増大したことを示した。例えば見て取れるように、シレンジタイドで治療を行った群では約300,000p/sまでシグナル強度が減少した一方で、化合物2で治療を行った群では無視できるレベルまで減少したことが示された。
【0102】
シグナル強度も、6週間(3週間の治療後、追加治療なく3週間経過)後に比較が行われた。この場合も、対照群は800,000p/sを超える増大したシグナル強度を示した。さらに治療せずに3週間経過した後、シレンジタイド群は、3週間治療した場合と比較したとき、シグナル強度が増大したことを示し、最終的なシグナル強度は500,000p/sを超えた。したがって、3週間75mg/kgで治療した後でも、腫瘍はシレンジタイド群に対して活性があり増殖する。反対に化合物2群では、治療せずにさらに3週間経過した後でさえ、発光シグナル活性がさらに減少したことを示した。
【0103】
当該調査で実証され、これらの図に示されるように、記載された化合物は、対照群、及び制限された血液脳関門の透過性を有する既知の治療化合物/組成物と比較したとき、膠芽腫(GBM)に対して強化された治療効果を有する。上述のように、この強化された治療効果は複数要因の複合に帰してもよく、これら要因は、化合物のチロインテグリンアンタゴニスト部分による血液脳関門を透過する能動輸送と、化合物のチロインテグリンアンタゴニスト部分の、GBM等の脳腫瘍に存在し過発現するインテグリンαvβ3への結合による脳内における特には腫瘍の位置における滞留性と、例えば、幾つかの実施形態におけるトランスポーター標的の強化されたアクセシビリティによる、血液脳関門を透過する取り込みに対する置換基Aの効果と、を含む。これら特徴は、強化された初期の取り込みと、脳及び所望の治療位置における強化された滞留性とに貢献し、結果、強化された治療効果となる。
【0104】
また開示された化合物は、強化されたスケーラビリティ、溶解性を有し、固形生成物又は中間物を生じ得る。合成スケーラビリティにより、患者が使用可能な化合物及び組成物を、効果的でコスト効率良く製造することができる。また、化合物及び組成物は、治療で使用するために十分なレベルの純度で合成されなくてはならない。固形生成物の形の化合物又は組成物の存在により、精製のための選択肢に改善が与えられる。このことは、オイル生成物を生じる上記P-Bi-TAT等の他の化合物とは対照的である。本明細書に記載される固形の例示的化合物はまた、P-Bi-TATを含む多くの他のペグ化分子に対しては実行できない、シリカゲルでの順相クロマトグラフィーで容易に精製される。例えばP-Bi-TATは、容易に計測できない逆相クロマトグラフィーを必要とする。同様に水溶解度は、特定手段の投与、例えば皮下注射等の注入方法を容易にする。したがってこれらの特徴は、化合物/組成物の生成の実現に、また、化合物/組成物を使用する効果的な治療の実現に重要となることが多い。開示された化合物は膠芽腫及び他の疾患の見込みのある治療の選択肢として特に役立ち、治療用量のために十分な量が生成され得る。
【0105】
当該化合物はまた、開示された化合物を含む組成物として準備されてもよい。さらに、当該化合物及び/又は組成物は、それを必要とする患者、例えばGBM等の疾患の患者に、治療有効量の化合物及び/又は組成物を投与することにより、当該疾患を治療するのに使用されてもよい。
【0106】
当該組成物は、がん細胞/腫瘍の撮像に使用されてもよい。例えば、本明細書に記載される組成物は、膠芽腫等の脳内の腫瘍を撮像するために使用されてもよい。撮像は、診断及び/又は治療モニタリングのために望ましいかもしれない。さらに当該組成物は、同時治療及び撮像のために使用されてもよい。例えば当該組成物は、標的とされるがん細胞/腫瘍における、強化された滞留性を示し得るので、治療を向上させることができる。
【0107】
本発明の様々な実施形態の説明が例示目的で提示されたが、当該説明は網羅的であると意図されておらず、開示された実施形態に限定することも意図されていない。多くの変更及び変形が、記載された実施形態の範囲及び主旨を逸脱することなく、当業者にとって明らかであろう。本明細書で使用された用語はまた、実施形態の主旨、当該市場で確認される技術に対する実際的応用又は技術的改良を最善に説明し、他の当業者が本明細書で開示された実施形態を理解できるように選択された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
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図18
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図28B
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図30
図31
図32
図33
【国際調査報告】