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特表2023-523964整流器の電圧範囲を拡張する方法、その方法を実行するための整流器、および電解システム
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  • 特表-整流器の電圧範囲を拡張する方法、その方法を実行するための整流器、および電解システム 図1
  • 特表-整流器の電圧範囲を拡張する方法、その方法を実行するための整流器、および電解システム 図2
  • 特表-整流器の電圧範囲を拡張する方法、その方法を実行するための整流器、および電解システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】整流器の電圧範囲を拡張する方法、その方法を実行するための整流器、および電解システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20230601BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230601BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230601BHJP
【FI】
H02M7/12 601A
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565615
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2021059560
(87)【国際公開番号】W WO2021219367
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】102020111556.3
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】アンル,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ユケム,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ファルク,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】クラトシヴィル,マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルメリング,ダーク
【テーマコード(参考)】
4K021
5H006
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA05
4K021DC01
4K021DC03
5H006CA01
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
(57)【要約】
本願は、整流器(1)に接続されたAC供給システム(30)から、整流器(1)のDC整流器出力部(8)に接続されたDC負荷(20)に供給するための整流器(1)のDC電圧範囲を拡張する方法が述べられており、ここで、-整流器(1)のAC/DCコンバータ(4)は、半導体スイッチ(41)と、半導体スイッチと逆並列に接続された還流ダイオード(42)とを有するコンバータ回路(40)を備え、-AC/DCコンバータ(4)と供給システム接続点(31)との間にインダクタンスLが配置され、供給システム接続点を介して整流器がAC供給システム(30)に接続され、本方法が、-AC/DCコンバータ(4)の半導体スイッチ(41)を作動させることによって、AC/DCコンバータ(4)のDC出力部(4.2)および/またはDC整流器出力部(8)に所望のDC動作電圧UDC,Sollを設定するステップを備え、-所望のDC動作電圧UDC,SollがAC/DCコンバータ(4)のAC入力部(4.1)のAC電圧の振幅Uの値を下回る場合、AC/DCコンバータ(4)の半導体スイッチ(41)が、AC供給システム(30)と無効電力Q(t)を交換するように作動され、その無効電力が、AC電圧の振幅Uに対して電圧降下作用を有する。本願はさらに、本方法を実行するための整流器(1)、およびこの種の整流器(1)を含む電解システム(50)を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACグリッド(30)から、整流器(1)のDC整流器出力部(8)に接続されたDC負荷(20)に供給するための整流器(1)のDC電圧範囲を拡張する方法であって、
前記整流器(1)のAC整流器入力部(7)が、グリッド接続点(31)を介して前記ACグリッド(30)に接続され、
-前記整流器(1)が、AC入力部(4.1)およびDC出力部(4.2)を有するAC/DCコンバータ(4)を備え、このAC/DCコンバータ(4)が、半導体スイッチ(41)と、これに逆並列配置で接続された還流ダイオード(42)とを有するコンバータ回路(40)を備え、
-前記AC/DCコンバータ(4)のAC入力部(4.1)と前記グリッド接続点(31)との間にインダクタンスLが接続されており、
前記方法が、
-前記AC/DCコンバータ(4)の半導体スイッチ(41)の作動によって、前記AC/DCコンバータ(4)のDC出力部(4.2)および/または前記DC整流器出力部(8)に所望のDC動作電圧UDC,Sollを設定するステップを備え、
-所望のDC動作電圧UDC,Sollが前記AC/DCコンバータ(4)のAC入力部(4.1)の交流電圧の振幅Uの値を下回る場合、前記AC/DCコンバータ(4)のAC入力部(4.1)におけるAC電圧の振幅Uに対して電圧降下作用を有する前記ACグリッド(30)との無効電力Q(t)の交換のために、前記AC/DCコンバータ(4)の半導体スイッチ(41)が作動され、それにより、振幅Uが所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づき、可能な限り所望のDC動作電圧UDC,Sollに到達し、
-前記ACグリッド(30)との無効電力Q(t)の交換が、前記整流器(1)に対する前記DC負荷(20)の電気的接続および/または電気的分離の間および/またはその直前に実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記AC/DCコンバータ(4)と前記ACグリッド(30)との間で交換される無効電力Q(t)が、主に変位無効電力であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記インダクタンスが、前記AC/DCコンバータ(4)と前記AC整流器入力部(7)との間に配置されたフィルタリアクトル(3.1)、および/または前記整流器(1)に割り当てられた変圧器(32)の二次側(32.S)の変圧器巻線を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の方法において、
所望のDC動作電圧UDC,Sollが電圧閾値UTHに到達するか又は超える場合、前記AC/DCコンバータ(4)の半導体スイッチ(41)が、前記ACグリッド(30)との更なる無効電力Q(t)の交換のために作動され、この更なる無効電力Q(t)の交換が、前記AC/DCコンバータ(4)のAC入力部(4.1)における振幅Uに対して電圧上昇作用を有し、その結果、振幅Uが所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づくことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法において、
無効電力Q(t)の交換および/または更なる無効電力Q(t)の交換が、前記AC/DCコンバータ(4)のAC入力部(4.1)と前記ACグリッド(30)のグリッド接続点(31)との間で交換される無効電力Qの関数としての既知の電圧変動特性u(Q)に基づいて無効電力目標値を決定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法において、
前記AC/DCコンバータ(4)のDC出力部(4.2)に存在するDC電圧UDC,4の実際の値が検出され、検出された実際の値が所望のDC動作電圧UDC,Sollと比較され、制御ユニット(9)に接続された調整ユニット(10)により、実際の値が所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づくように、それぞれの無効電力Q1,2(t)の交換が制御されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の方法において、
無効電力Q(t)の交換および/または更なる無効電力Q(t)の交換により、振幅Uの公称値に対して少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも25%の、前記AC/DCコンバータ(4)のAC入力部(4.1)における振幅Uの変化が生じることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の方法において、
前記AC整流器入力部(7)の交流電圧の振幅Uがその公称値から逸脱しているACグリッド(30)状態の間、特定の限界条件の下で、第3の無効電力Q(t)の交換が、前記AC/DCコンバータ(4)と前記ACグリッド(30)との間で実行され、それにより振幅Uに対する作用がその公称値からの偏差を相殺することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の方法において、
所望のDC動作電圧UDC,Sollが、振幅Uの値に加えて、振幅Uでの交流電圧の整流値もアンダーシュートする場合にのみ、前記AC/DCコンバータ(4)と前記ACグリッド(30)との間の無効電力Q(t)の交換が実行されることを特徴とする方法。
【請求項10】
AC電圧を有するACグリッド(30)からDC負荷(20)に給電するためのアクティブ制御される整流器(1)であって、
-前記ACグリッド(30)に接続するための複数の入力端子を有するAC整流器入力部(7)と、前記DC負荷(20)に接続するための2つの出力端子を有するDC整流器出力部(8)と、
-前記AC整流器入力部(7)に接続されたAC側AC入力部(4.1)と、前記DC整流器出力部(8)に接続されたDC側DC出力部(4.2)と、前記AC入力部(4.1)と前記DC出力部(4.2)との間に配置されたコンバータ回路(40)とを有するAC/DCコンバータ(4)とを備え、
-前記AC/DCコンバータ(4)のコンバータ回路(40)が、アクティブ制御可能な半導体スイッチ(41)と、これに逆並列配置で接続された還流ダイオード(42)とを備え、
-前記AC/DCコンバータ(4)が、前記ACグリッド(30)との間で無効電力Q1,2(t)を交換するように構成され、
-前記整流器(1)が、前記AC/DCコンバータ(4)、特にその半導体スイッチ(41)を制御するための制御ユニット(9)をさらに備え、
前記整流器(1)が、請求項1~9の何れか一項に記載の方法を実行するように構成および設計されていることを特徴とする整流器。
【請求項11】
請求項10に記載の整流器(1)において、
前記整流器(1)が、調整ユニット(10)を備え、この調整ユニットが、前記AC/DCコンバータ(4)のDC出力部(4.2)および/または前記DC整流器出力部(8)に存在するDC電圧UDC,4を検出し、検出したDC電圧UDC,4を所望のDC動作電圧UDC,Sollと比較し、検出したDC電圧UDC,4が所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づき、可能な限り所望のDC動作電圧UDC,Sollに達するように、前記制御ユニット(9)と協働して、前記AC/DCコンバータ(4)を制御するように構成および設計されていることを特徴とする整流器。
【請求項12】
請求項10または11に記載の整流器(1)において、
前記制御ユニット(9)が、無効電力Qの関数としての電圧変動特性u(Q)を保存するように設計されたデータメモリ(11)を含むか、またはデータメモリ(11)に接続されていることを特徴とする整流器。
【請求項13】
請求項10~12の何れか一項に記載の整流器(1)において、
前記整流器(1)が、フィルタリアクトル(3.1)を有するフィルタユニット(3)をさらに備え、前記フィルタリアクトル(3.1)に公称電流Iが流れる場合に、前記AC整流器入力部(7)に存在するAC電圧Uに対して少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、特に好ましくは少なくとも45%の電圧降下が生じるように、前記フィルタリアクトル(3.1)のインピーダンスが規定されていることを特徴とする整流器。
【請求項14】
請求項10~13の何れか一項に記載の整流器(1)と、前記整流器(1)の出力側に接続された、DC負荷(20)としての電解槽(22)とを有する電解システム(50)。
【請求項15】
請求項14に記載の電解システム(50)において、
変圧器(32)をさらに備え、その二次側(32.S)が前記AC整流器入力部(7)に接続され、その一次側(32.P)がグリッド接続点(31)を介して前記ACグリッド(30)に接続されていることを特徴とする電解システム。
【請求項16】
請求項15に記載の電解システム(50)において、
グリッド上の反応を低減するための適切な無効電力補償設備をさらに備え、この無効電力補償設備が、前記変圧器(32)の一次側(32.P)で前記ACグリッド(30)に接続され、前記AC/DCコンバータ(4)によって前記ACグリッド(30)と交換される無効電力Q(t)および/または更なる無効電力Q(t)に対するシンクとして機能することを特徴とする電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流器のDC電圧範囲を拡張する方法、その方法を実行するための整流器、およびそのような整流器を有する電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、電解槽において、水をその構成物質である水素と酸素に分解する電解反応によって製造することができる。電解反応の速度は、電解槽の入力部に印加されるDC電圧によって設定される。DC電圧は通常、整流器によって生成され、整流器の入力側は交流電圧(AC)グリッドに、出力側は電解槽の形態のDC負荷に接続される。多くの場合、アクティブ制御される一段整流器が整流器として採用される。整流器に割り当てられるAC/DCコンバータのコンバータ回路は、複数の半導体スイッチを含み、その各々が還流ダイオードを含み、還流ダイオードが、逆並列配置でそれぞれの半導体スイッチに接続される。逆並列に接続された還流ダイオードにより、AC/DCコンバータのDC出力部における最小DC電圧は、AC/DCコンバータの入力側に印加される交流電圧の振幅の値に制限される。すなわち、AC/DCコンバータのDC出力部の最小DC電圧は、AC/DCコンバータに印加される入力側の交流電圧の振幅に対応する。これは、DC出力の電圧リップルを無視できる程度にDC電圧の平滑化動作を実行する、AC/DCコンバータのDC出力部に少なくとも主に容量性DC負荷がある場合に当てはまる。DC負荷のオーミック成分が大きくなると、AC/DCコンバータのDC出力部の電圧リップルがより顕著になり、最小DC電圧が僅かに小さい値に変位する。この場合、DC出力部の最小DC電圧は、通常、「整流値」で表される。整流値は、整流されたDC電圧の算術平均に対応し、採用される整流器、特にそのAC/DCコンバータのそれぞれのトポロジーに依存する。
【0003】
従来の電解槽は、通常、電流電圧特性曲線(I-U曲線)によって特徴付けられる。I-U曲線は2つの領域に分けられる。電解槽の入力部に存在するDC電圧が臨界電圧Ucrを下回る場合、電解反応はまだ進行しておらず、よって定常電流は流れていない。電解槽は主に容量性応答を示し、これは電解槽内の二重層の構成に関連している。臨界電圧Ucrを超えた場合にのみ電解反応が起こり、DC電圧の上昇に連れてその速度が速くなる。この領域では、電解反応を促進する定常電流が流れ、電解槽は主にここでオーミック負荷として動作する。最大許容DC電圧UDC,maxは、電解槽の定格容量または部品特性によって制限される。臨界電圧Ucrと最大許容DC電圧UDC,maxの値は、電解槽の設計に依存し、その結果、通常はタイプごとに異なる。
【0004】
一般に、電解槽は整流器によって、無段階に調整することができ、入力部に印加されるDC電圧の動作範囲全体にわたって動作可能であることが望ましいが、少なくとも臨界電圧Ucrよりも僅かに低い電圧から最大許容DC電圧UDC,maxまでの範囲で動作可能である必要がある。さらに、整流器での変換損失を最小限に抑えながら、電解槽の入力部で高い反応速度、それに付随する高いDC電圧を発生させることが望ましい。一段整流器では、DC整流器出力部に臨界電圧Ucrを下回るDC電圧のみを発生させるために、コンバータ回路のAC入力部の交流電圧の振幅を、例えば変圧器によって、対応する低い値に調整することができる。しかしながら、これは、電解槽の運転中にDC整流器出力部に高いDC電圧が要求される場合に、高い変換損失をもたらす。
【0005】
先行技術、例えば文献WO2013/160486A2により、回生発電設備がACグリッドに接続されるACグリッドのノード点において電圧補正を行う方法が知られている。交流電圧の振幅がその指定された公称値から逸脱した場合、回生発電設備とACグリッドとの間で無効電力が交換される。こうして交換された無効電力は、偏差を最小化するために、グリッドシステムをサポートする形で偏差を打ち消す。
【0006】
文献DE10303710A1は、DC電圧出力部を有する自己整流ラインコンバータを、ライン過電圧の場合に調整する方法を開示している。この方法では、特定されたライン過電圧の値に従って、ライン電流の無効成分の目標値が規定され、これにより、自己整流ラインコンバータのデューティサイクルの実際の値が低減される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的
本発明の目的は、アクティブ制御整流器のDC電圧範囲を拡張するための方法、特に、たとえ臨界電圧が交流電圧の振幅に対する公称値をアンダーシュートする場合においても、臨界電圧Ucrより僅かに低い値で最初に設定されるDC電圧を一段整流器のDC出力部に有する一段整流器のDC電圧範囲を拡張するための方法を開示することである。さらに、最小限の変換損失で、DC整流器出力部に高いDC電圧を設定することができる必要がある。この方法は、実行するのに可能な限り簡単で、費用対効果が高いものであることが意図されている。本発明の更なる目的は、本方法を実行するための適切な整流器を開示すること、並びに、そのような整流器を有する電解システムを開示することである。
【0008】
解決手段
本発明によれば、この目的は、独立特許請求項1の特徴を有する、上述したタイプの方法によって達成される。本発明によれば、この方法を実行するための適切な整流器を開示する目的は、独立特許請求項10の特徴によって満たされる。本発明によれば、このタイプの整流器を有する電解システムを開示する目的は、独立特許請求項14の特徴によって満たされる。本方法の有利な態様は請求項2~9に記載され、整流器の有利な実施形態は請求項11~13に記載されている。電解システムの有利な実施形態は、請求項15および16に示されている。
【0009】
本発明の説明
本発明に係る方法は、交流電圧(AC)グリッドから、DC整流器出力部に接続されたDC負荷に供給するのための整流器のDC電圧範囲を拡張することを目的とし、整流器のAC整流器入力部がグリッド接続点を介してACグリッドに接続されている。整流器は、AC入力部とDC出力部を有するAC/DCコンバータを備え、このAC/DCコンバータが、半導体スイッチとこれに逆並列に接続された還流ダイオードとを有するコンバータ回路を備える。AC/DCコンバータのAC入力部は、任意選択的にAC分離ユニットを介して、AC整流器入力部に接続され、AC/DCコンバータのDC出力部は、任意選択的にDC分離ユニットを介して、DC整流器出力部に接続されている。AC/DCコンバータのAC入力部とグリッド接続点との間にはインダクタンスLが配置されている。本方法は、
-AC/DCコンバータの半導体スイッチの作動により、AC/DCコンバータのDC出力部および/またはDC整流器出力部に所望のDC動作電圧UDC,Sollを設定するステップを含み、
-所望のDC動作電圧UDC,SollがAC/DCコンバータのAC入力部の交流電圧の振幅Uの値を下回る場合、AC/DCコンバータの半導体スイッチがACグリッドとの無効電力Q(t)の交換のために作動され、この無効電力Q(t)の交換が、AC/DCコンバータのAC入力部の振幅U、ひいてはコンバータ回路のAC入力部に対する電圧降下作用を有する。電圧降下作用により、交流電圧の振幅Uは所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づく。所望のDC動作電圧UDC,Sollへの振幅Uの接近は、(例えばACグリッドのオペレータにより発せられる指示に従う、ACグリッドとの許容される無効電力の交換が、この接近を制限しない限り)、所望のDC動作電圧UDC,Sollも達成されるように行われる。ACグリッドとの無効電力Q(t)の交換は、整流器との間のDC負荷の電気的接続および/または電気的分離と同時に実行される。
【0010】
ここでは、「と同時に」という用語は、「最中および/または直前に」という意味で理解されるべきものである。特に、整流器は、AC/DCコンバータとDC整流器出力部との間に配置されるDC/DCコンバータを有しない一段整流器とすることができる。整流器は、AC側に1つの相端子のみを含むことができるが、代替的には、複数の相端子を含むことも可能である。AC/DCコンバータのAC入力部はコンバータ回路のAC入力部に対応するが、後者に少なくとも低インピーダンス構成で接続されているため、AC/DCコンバータのAC入力部に加わる振幅Uも、コンバータ回路のAC入力部に加わる振幅に対応する。
【0011】
AC/DCコンバータのAC入力部に印加されるAC電圧の振幅Uと整流器のAC整流器入力部に印加されるAC電圧の振幅Uは、変圧器の中性点またはスター点に対する相導体の優勢な交流電圧の振幅、すなわち相-中性間電圧の振幅をそれぞれ含むことができる。これは、AC/DCコンバータのコンバータ回路が星形結線回路の形態で構成されている場合に、特に当てはまる。この場合、DC出力部の出力端子は変圧器の中性点、またはACグリッドの中性導体に接続することができる。代替的には、AC/DCコンバータのAC入力部に印加されるAC電圧の振幅Uは、ACグリッドの2相導体間で優勢なAC電圧の振幅、すなわち連系電圧の振幅とすることもできる。このため、整流器のAC整流器入力部に印加されるAC電圧の振幅Uも同様である。これは、AC/DCコンバータのコンバータ回路が「ブリッジ回路」の形態で構成されている場合に、特に当てはまる。この場合、電流はACグリッドの相導体間のみを流れるため、中性点タップを持つ変圧器の要件は全くない。例えば、三相ACグリッドにおいて、中性点電圧および連系電圧の振幅は、連系係数√3によって相互に関連付けられる。
【0012】
本発明に係る方法は、インダクタンスLの介在配置を介した、AC/DCコンバータとACグリッドとの間の無効電力の交換により、AC/DCコンバータのAC入力部に印加されるAC電圧の振幅Uが変動するという知見を利用する。具体的には、AC電圧の振幅Uは、一タイプの無効電力、例えば誘導性無効電力の交換によって減少させることができ、一方、相補的なタイプの無効電力、例えば容量性無効電力の交換によって増加させることができる。本発明において、無効電力Q(t)の交換は、コンバータ回路のDC出力部のDC電圧に影響を与え、それによりDC分離ユニットが閉じている場合にDC整流器出力部のDC電圧にも影響を与えるべく、交流電圧の振幅Uを変化させるために意図的に用いられる。例えば、DC整流器出力部(ひいてはAC/DCコンバータのDC出力部)に、AC/DCコンバータのAC入力部のAC電圧の振幅Uより低いDC動作電圧UDC,Sollを設定しようとした場合、ACグリッドとの無効電力Q(t)の短期間の交換が実行される。無効電力Q(t)に付随する電流は、インダクタンスLを流れ、AC電圧の振幅Uに電圧降下作用をもたらす。これにより、AC/DCコンバータに印加されるAC電圧の振幅Uが減少する。減少した振幅Uは、コンバータ回路の還流ダイオードを介して、コンバータ回路のDC出力部、つまりDC整流器出力部に同様に減少した値のDC電圧を生成する。交換される無効電力Q(t)の量によって、元の振幅U、すなわち無効電力の交換前と比較して、振幅Uの減少率または増加率を設定することが可能である。無効電力Q(t)の短期間の交換は、AC/DCコンバータのAC入力部の振幅U、ひいてはAC/DCコンバータのDC出力部のDC電圧が、所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づくように実行され、(無効電力Q(t)の最大可能または許容交換に応じて)所望のDC動作電圧UDC,Sollも達成されることになる。
【0013】
既知の先行技術とは異なり、AC/DCコンバータとACグリッドとの間の無効電力Q(t)の交換は、AC電圧の振幅の既存の偏差を打ち消してACグリッドをサポートするという目的で実行されるものではない。この場合、先行技術とは異なり、無効電力Q(t)の交換の目的は、少なくとも一時的に、その公称値から振幅Uを意図的に逸脱させることである。結果として生じる公称値からの振幅の意図的な偏差は、本発明によれば、DC負荷、特に電解槽を、少なくとも一時的に、その入力部において、他の場合よりも低いDC電圧で動作させるために用いられる。したがって、DC電圧の短期的な変化、この場合はDC電圧の低下が、無効電力Q(t)の交換の実際の目的である。これは、整流器とのDC負荷、特に電解槽の接続または分離のために可能な限り負荷のない配置を提供し、それにより分離ユニットおよび電解槽の保護動作が可能になる。
【0014】
本発明によれば、無効電力Q(t)の交換は、整流器へのDC負荷の接続中かつ/またはその直前に実行される。整流器へのDC負荷の電気的接続の後、特にその直後に、ACグリッドとの無効電力Q(t)の更なる交換を実行することが可能であるが、必ずしも必要ではない。具体的には、DC負荷が電解槽である場合、電解槽の入力部における電圧は臨界電圧Ucrよりも僅かに低い値まで下げることができる。その結果、整流器との間の電解槽の接続および分離は、それぞれの分離ユニットに対して可能な限り無負荷で保護的な方法で実行されることができる。電解反応の制御された緩やかな開始および/または終了は、交換される無効電力Q(t)の変化によっても達成され得る。具体的には、電解反応の開始時に、変換される有効電力P(t)が同時に増加する一方で、無効電力Q(t)の交換を減少させることができる。これと同様に、電解反応の終了時には、変換される有効電力が減少する一方で、無効電力の交換を同時に増加させて、AC/DCコンバータのDC出力部におけるDC電圧をさらに低下させることができる。さらに、整流器からDC負荷を分離した後、特にその直後に、ACグリッドとの無効電力Q(t)の更なる交換を実行することが可能であるが、必ずしも必要というわけではない。このため、例えば、ACグリッドとの無効電力Q(t)の交換は、特に安定した制御された方法で、例えば制御された下方傾斜によって、減少させることができる。このようにして、ACグリッドと交換される無効電力Q(t)の急激な変化、および結果としてACグリッドで生じる望ましくない反応を防止することができる。
【0015】
インダクタンスLは、少なくともある程度は通常存在する整流器の構成要素である。具体的に、ここで検討されている整流器では、高周波干渉信号の減衰のために、AC整流器入力部とAC/DCコンバータのAC入力部との間にフィルタが設けられ、このフィルタが1または複数のフィルタリアクトルを備える。多くの場合、1または複数のフィルタリアクトルは、インダクタンスLの要素として、適合なしで、または少なくとも僅かな適合のみで採用することができ、このインダクタンスを介して、ACグリッドとの無効電力Q(t)の交換が実行される。このため、多くの場合、追加のハードウェアは全く必要ないか、または限られた範囲でしか必要ない。同様に、コンバータ回路の半導体スイッチに関しても、無効電力Q(t)の交換のためのハードウェアの適応に関する要件はなく、ソフトウェアのデューティサイクルを調整する必要があるだけである。全体として、これは、本発明に係る方法を実行するために、相対的に費用対効果の高い、従来の整流器の複雑でない適合をもたらすことができる。
【0016】
本方法の有利な一態様では、AC/DCコンバータとACグリッドとの間で交換される無効電力Q(t)が、実質的に変位無効電力のみであるが、少なくともほとんどが変位無効電力である。したがって、歪み無効電力の成分は含まれないか、または不可避的な成分のみが含まれる。このため、無効電力Q(t)の交換があっても、交流電圧の所望の正弦波が維持されることが保証される。
【0017】
本方法の更なる態様では、AC/DCコンバータとACグリッドとの間の無効電力Q(t)の交換は、所望のDC動作電圧UDC,sollが特定の差分値だけ振幅Uの値を下回る場合にのみ可能である。例えば、所望のDC動作電圧UDC,sollが、振幅Uの値に加えて、振幅Uにおける交流電圧の整流値もアンダーシュートしている場合、無効電力の交換を進めることができる。このようにして、DC負荷が主にオーミック成分を有する場合、無効電力Q(t)の不要な交換、およびグリッドにおける関連する望ましくない反応を低減することができる。
【0018】
本発明の更なる態様によれば、無効電力Q(t)の交換は、AC電圧の振幅Uの減少のためだけでなく、増加のためにも使用される。後者の場合、DC負荷の特定の動作状況において、例えば所望のDC動作電圧UDC,Sollが電圧閾値UTHに達するか、またはそれを超える場合、AC/DCコンバータの半導体スイッチは、ACグリッドとの更なる無効電力Q(t)の交換のために作動され、更なる無効電力Q(t)の交換が、コンバータ回路のAC入力部での振幅Uに電圧上昇作用をもたらすものとされる。このようにして、ここでも所望のDC動作電圧UDC,Sollの振幅Uに近づけることができる。なお、更なる無効電力Q(t)は、無効電力Q(t)の相補型とすることができる。すなわち、無効電力Q(t)が誘導性無効電力である場合、更なる無効電力Q(t)は容量性無効電力とすることができ、その逆もまた可能である。この場合、AC/DCコンバータによって、AC電圧の整流と同時に、AC/DCコンバータのAC出力部に存在するDC電圧の僅かな昇圧が必要とされる。全体として、これによりAC/DCコンバータの変換損失を低減することができる。
【0019】
無効電力Q(t)の交換および/または更なる無効電力Q(t)の交換は、AC/DCコンバータのAC入力部とACグリッドのグリッド接続点との間で交換される無効電力Qの関数としての既知の電圧変動特性u(Q)に基づいて、無効電力目標値を決定することを含むことができる。具体的には、既知の電圧変動特性u(Q)との関係を、例えば1回限りで決定し、整流器の制御ユニットに接続されたデータメモリに保存することが可能である。代替的には、無効電力Q(t)の交換および/または更なる無効電力Q(t)の交換を、制御ユニットに接続された調整ユニットによって、それぞれ適応的に実行することが可能である。AC/DCコンバータのAC出力部に存在するDC電圧UDC,4の実際の値が検出され、検出された実際の値が所望のDC動作電圧UDC,Sollと比較され、実際の値が所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づくようにそれぞれの無効電力Q1,2(t)の交換が調整されることが可能である。調整ユニットは、比例コントローラ、積分コントローラおよび/または微分コントローラを含むことができる。
【0020】
無効電力Q(t)の交換および/または更なる無効電力Q(t)の交換が、既知の電圧変動特性u(Q)により実行されるか、または調整ユニットにより適応的に実行されるかにかかわらず、無効電力Q(t)の交換および/または更なる無効電力Q(t)の交換は、AC/DCコンバータのAC入力部における振幅Uの公称値に対して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも25%の振幅Uの変化をもたらすことができる。振幅Uの対応する変化を発生させるために必要な交換される無効電力Q1,2(t)の量は、AC/DCコンバータとグリッド接続点との間のインダクタンスLの値に依存する。ここでは、振幅Uの公称値は、AC/DCコンバータとACグリッドとの間で無効電力Q1,2(t)の交換がない場合に、AC/DCコンバータのAC入力部に存在することとなる振幅Uの値として理解される。
【0021】
本方法の有利な態様では、特定の限界条件下で、例えば電圧安定性のために、AC/DCコンバータとACグリッドとの間の無効電力のグリッドサービス交換を実行することができる。具体的には、AC整流器入力部の交流電圧の振幅Uがその公称値から逸脱しているACグリッド状態の間、AC/DCコンバータとACグリッドとの間で第3の無効電力Q(t)の交換を実行し、第3の無効電力Q(t)の質に応じて、AC電圧の振幅Uに電圧降下または電圧上昇の作用をもたらすことができる。電圧安定性のために、第3の無効電力Q(t)は、振幅Uへの結果として生じる作用がその公称値からの偏差を打ち消すように選択される。指定された限界条件は、リップル制御信号および/またはACグリッドのオペレータとの契約上の合意を含むことができる。
【0022】
本方法の一実施形態によれば、インダクタンスは、AC/DCコンバータとAC整流器入力部との間に配置されたフィルタリアクトルを含むことができ、このフィルタリアクトルを介して、無効電力Q(t)および/または更なる無効電力Q(t)がACグリッドと交換される。代替的または追加的には、インダクタンスは、整流器に割り当てられた変圧器の二次側の変圧器巻線を含むことができる。これは、整流器が変圧器を介してACグリッドに接続され、整流器が変圧器の二次側に接続され、ACグリッドが変圧器の一次側に接続されている場合に特に当てはまる。このタイプの構成では、ACグリッド、すなわち変圧器の一次側に、無効電力補償に適した少なくとも1の追加の設備がさらに接続され、それが、AC/DCコンバータによってACグリッドと交換される無効電力Q(t)および/または更なる無効電力Q(t)のためのシンクとして機能することが可能である。無効電力補償のための適切な設備は、整流器と協働して制御することができ、それにより、ACグリッドとのその無効電力の交換が実行される。追加の設備がAC/DCコンバータによりACグリッドと交換される無効電力のシンクとして機能するため、無効電力の交換に伴うACグリッドにおける反応をなくすか、少なくとも低減することができる。このため、ACグリッドのオペレータは、必要な無効電力補償を実行するための追加の設備を確保する必要がない。よって、ACグリッドと交換される無効電力の許容成分は、任意選択的に増加させることができる。
【0023】
本発明に係る整流器は、AC電圧を有するACグリッドからDC負荷に給電するように構成されたアクティブ制御整流器によって構成されている。この整流器は、
-ACグリッドに接続するための複数の入力端子を有するAC整流器入力部、およびDC負荷に接続するための2つの出力端子を有するDC整流器出力部と、
-AC整流器入力部に接続されたAC入力部、DC整流器出力部に接続されたDC出力部、およびAC入力部とDC出力部との間に配置されたコンバータ回路を含むAC/DCコンバータとを備える。AC/DCコンバータのコンバータ回路は、アクティブ制御可能な半導体スイッチと、それに逆並列配置で接続された還流ダイオードとを備える。AC/DCコンバータは、整流機能に加えて、ACグリッドと無効電力Q1,2(t)を交換するようにさらに構成および設計されている。整流器は、AC/DCコンバータ、特にその半導体スイッチを制御するための制御ユニットをさらに含む。整流器は、本発明に係る方法を実行するように構成および設計されていることを特徴とする。
【0024】
整流器の複数の入力端子は、1つのみの相端子と中性導体端子とを備えることができる。しかしながら、代替的には、それらは、複数の相端子を含み、かつ、中性導体端子を含まないか、または1つの中性導体端子を含むことも可能である。本方法に関する上述した利点がそれに応じて適用される。
【0025】
有利な一実施形態によれば、整流器は、調整ユニットを備え、この調整ユニットは、AC/DCコンバータのDC出力部のDC電圧が所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づくように、可能であれば、DC動作電圧UDC,Sollに到達するまで、制御ユニットと協働して、ACグリッドと交換される無効電力Q(t)と、任意選択的には更なる無効電力Q(t)とを設定するように構成および設計されている。具体的には、調整ユニットは、
-AC/DCコンバータのDC出力部および/またはDC整流器出力部に存在するDC電圧UDC,4を検出し、
-検出したDC電圧UDC,4と所望のDC動作電圧UDC,Sollを比較し、
-検出したDC電圧UDC,4が所望のDC動作電圧UDC,Sollに近づき、可能な限り所望のDC動作電圧UDC,Sollに到達するように、制御ユニットと協働してAC/DCコンバータを制御するように構成および設計されることができる。このようにして、AC/DCコンバータは、事前の特定と、任意選択的にはその保存とを必要とせずに、AC/DCコンバータのAC入力部とグリッド接続点との間に現在存在する電圧変動特性u(Q)に対して、適応的に応答することができる。しかしながら、代替的には、無効電力Qの関数として電圧変動特性u(Q)を事前に特定し、こうして特定した電圧変動特性u(Q)に従って、ACグリッドと交換される無効電力Q(t)および/または更なる無効電力Q(t)を設定することも可能である。この目的のために、整流器の制御ユニットは、先に規定された電圧変動特性u(Q)を反映する特定された値のペアを保存するように設計されたデータメモリを含むことができ、またはそのようなデータメモリに接続することができる。
【0026】
有利な一実施形態では、整流器が、1または複数のフィルタリアクトルを有するフィルタユニットを含むことができる。少なくとも1のフィルタリアクトルは、AC/DCコンバータのAC入力部とAC整流器入力部との間に配置することができる。したがって、それは、インダクタンスの少なくとも一要素を構成し、それを介して、無効電力Q(t)および/または更なる無効電力Q(t)がACグリッドと交換される。有利には、整流器のフィルタリアクトルに公称電流Iが流れる場合に、AC整流器入力部に存在するAC電圧に対して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、特に好ましくは少なくとも45%の電圧降下が生じるように、フィルタリアクトルのインピーダンスを規定することが可能である。フィルタリアクトルのインピーダンス、ひいてはインダクタンスLは、DC側で短絡が生じた場合の追加の電流制限とともに、無効電力Q1,2(t)の交換によって、先ずは、振幅に対する特に有効な電圧低減作用が得られるように設定されている。この追加的な電流制限により、DC負荷の短絡時にコンバータ回路の還流ダイオードが損傷を受けるリスクを最小限に抑えることができる。
【0027】
本発明に係る電解システムは、本発明に係る整流器と、この整流器の出力側に接続されたDC負荷としての電解槽とを備える。電解システムは、変圧器をさらに備えることができ、この変圧器は、その二次側がAC整流器入力部に接続され、その一次側がグリッド接続点を介してACグリッドに接続されている。電解システムは、変圧器を含む場合、グリッド上の反応を低減するための適切な無効電力補償設備もさらに備えることができる。適切な無効電力補償設備は、変圧器の一次側でACグリッドに接続され、AC/DCコンバータによってACグリッドと交換される無効電力Q(t)および/または更なる無効電力Q(t)に対するシンクとして機能する。ここでもまた、本方法に関して説明した上述の利点が適用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
図1図1は、本発明に係る整流器を有する、本発明に係る電解システムの一実施形態を示している。
図2図2は、図1の本発明に係る整流器のコンバータ回路の一実施形態を示している。
図3図3は、一実施形態における、本発明に係る方法の時間的特性を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に係る電解システム50の一実施形態を示している。電解システム50は、DC負荷20としての電解槽22と、本発明に係る整流器1と、変圧器32とを備える。変圧器32は、その一次側32.Pが、グリッド接続点31を介して交流電圧(AC)グリッド30に接続されている。変圧器32の二次側32.Sは、整流器1のAC整流器入力部7に接続されている。変圧器32は、振幅UNetzの一次側AC電圧を、二次側およびAC整流器入力部7の両方に存在する振幅UのAC電圧に変換する。整流器1のDC整流器出力部8は電解槽22の入力部21に接続されている。
【0030】
整流器1は、DC電圧UDC,Lastを電解槽22に供給するために、入力側に存在するAC電圧をDC整流器出力部8に存在するDC電圧に変換するように設計されたアクティブ制御可能な整流器である。この目的のために、整流器1は、AC入力部4.1とDC出力部4.2を有するAC/DCコンバータ4を含み、これが制御ユニット9によって制御される。AC入力部4.1は、フィルタユニット3を介してフィルタリアクトル3.1およびフィルタキャパシタンス3.2に接続され、さらにAC分離ユニット2を介してAC整流器入力部7に接続されている。DC出力部4.2は、DC分離ユニット6を介してDC整流器出力部8に接続されている。DC出力部4.2と並列に、DC出力部4.2に存在するDC電圧UDC,4を平滑化するための出力キャパシタンス5が接続されている。DC分離ユニット6は、2つの電流経路を含み、それらは互いに並列に配置されている。第1の電流経路は、プリチャージ抵抗器および分離スイッチの直列接続された配置を含み、電解槽22のプリチャージに用いられる。これと並列に配置される第2の電流経路は、更なる分離スイッチのみを含む。プリチャージに加えて、電解槽22はそのオーミック範囲で動作し、閉じた更なる分離スイッチは、AC/DCコンバータ4のDC出力部4.2と電解槽22との間に低インピーダンスの電気的接続を形成する。DC分離ユニット2およびAC分離ユニット6の両方は、整流器1の制御ユニット9によって作動される。
【0031】
本発明に係る整流器1は、AC/DCコンバータ4の半導体スイッチの対応する動作によって、変圧器32を介して、ACグリッド30と無効電力Q1,2(t)を交換するように構成されている。無効電力Q1,2(t)に付随する電流は、図1に示す例では、フィルタユニット3のフィルタリアクトル3.1および変圧器32の二次側32.Sの巻線によって形成されるインダクタンスLを介して流れる。無効電力Q1,2(t)は、実質的に変位無効電力のみであるが、少なくともほとんどが変位無効電力である。無効電力Q1,2(t)の交換は、図2および図3を参照してより詳細に説明するように、無効電力Q1,2(t)のタイプに応じて、AC/DCコンバータ4のAC入力部4.1に印加されるAC電圧の振幅Uに対して電圧降下作用または電圧上昇作用をもたらし、これによって整流器1、特にAC/DCコンバータ4のDC電圧範囲が拡張される。一方で、交換される無効電力の量は、制御ユニット9と協働して、例えば1回限りで求められる既知の電圧変動特性u(Q)を参照することによって、設定することができる。この目的のために、整流器1は、以前に求められた電圧変動特性u(Q)を反映する値のペアを記憶するためのデータメモリ11を含むことができる。代替的または追加的には、整流器1は、調整ユニット10も含むことができ、この調整ユニットが、AC/DCコンバータのDC出力部4.2に存在するDC電圧UDC,4と、任意選択的にAC入力部4.1に存在する振幅UのAC電圧も検出するように構成され、検出したDC電圧UDC,4が所望のDC動作電圧UDC,sollと比較されて、その比較結果が制御ユニット9に送信される。制御ユニット9は、DC電圧UDC,4が所望の動作電圧UDC,sollに近づき、可能な限り所望の動作電圧に到達するように、ACグリッド30とAC/DCコンバータ4との間で交換される無効電力Q1,2(t)を、AC/DCコンバータ4の半導体スイッチの対応する動作によって変化させる。
【0032】
図1では、整流器1、変圧器ユニット32およびACグリッドが、三相として例示的にそれぞれ示されている。しかしながら、本発明によれば、これらの各々を単相の構成要素として構成することも可能である。さらに、整流器1の制御ユニット9は、通信ユニット(図1には示されていない)に接続することが可能である。これにより、変圧器の一次側でACグリッドに接続される追加の無効電力補償設備の同期的に実行される動作を開始し、調整することができる。
【0033】
図2は、整流器1に割り当てられた、図1のAC/DCコンバータ4の一実施形態をより詳細に示している。図1の整流器1と同様に、AD/DCコンバータ4は、三相AC/DCコンバータ4として例示的に構成され、合計3つのブリッジアーム45を有するコンバータ回路40を備える。ブリッジアーム45の各々は、2つの直列接続された半導体スイッチ41を含み、各々が逆並列に接続された還流ダイオード42を有する。還流ダイオード42は、それぞれの半導体スイッチ41の固有のダイオードとして、または別個のダイオードとして構成することができる。半導体スイッチ41は、MOSFETまたはIGBT半導体スイッチとすることができる。コンバータ回路40の三相構成に従って、AC/DCコンバータ4のAC入力部4.1は、3つの入力端子を備え、その各端子は、それに割り当てられたブリッジアーム45の2つの半導体スイッチ41の接続点46に接続されている。DC/ACコンバータ4のDC出力部4.2は、正(+)および負(-)の出力端子を備える。
【0034】
コンバート中、AC/DCコンバータ4は、有効電力P(t)をAC入力部4.1からDC出力部4.2に伝送することができ、任意選択的には、DC出力部からAC入力部4.1の逆方向にも伝送することができる。AC/DCコンバータ4はさらに、AC/DCコンバータ4のAC入力部4.1と、AC入力部4.1に接続されたACグリッド30(図2には明示されていない)との間で無効電力Q1,2(t)を交換するように構成されている。この目的のために、制御ユニット9の半導体スイッチ41(図2には明示されていない)が作動される。半導体スイッチ41の対応するサイクルレートによって、AC/DCコンバータ4は、AC入力部4.1に存在するAC電圧を、DC出力部4.2のDC電圧UDC,4に変換することができる。変換されるDC電圧の大きさ、つまりDC電圧範囲は、最小DC電圧UDC,minと最大DC電圧UDC,maxとの間の値をとり得る。最小DC電圧UDC,minは、還流ダイオード42によって、(還流ダイオード42の導通状態電圧を除いて)AC入力部4.2に存在するAC電圧の振幅Uに対応する値に下方制限される。還流ダイオード42により、ブリッジ回路43は、入力側に印加されるAC電圧の振幅Uより大きい(小さくはない、少なくとも著しく小さくはない)DC電圧UDC,4をDC出力部4.2に生成することができる。入力側のAC電圧の振幅Uに対する出力側のDC電圧UDC,4の比率が大きくなると、変換損失が増加する。AC/DCコンバータ4が、インダクタンスL、例えばフィルタリアクトル3.1および/または変圧器の二次側に割り当てられたインダクタンスを介して、ACグリッド30と無効電力Q1,2(t)を交換すると、結果として電圧降下または電圧上昇作用が、AC入力部4.1上に存在するAC電圧の振幅Uに対して達成される。これは、図3を参照してより詳細に説明する。
【0035】
図2は、2つの電圧段を有する例示的な二段コンバータ回路40を示している。しかしながら、本発明では、2つだけの電圧段よりも多くの電圧段を有するコンバータ回路、例えば三段または五段のコンバータ回路も可能である。さらに、本発明では、コンバータ回路を中性点回路の形態で構成することが可能である。DC出力部4.2の出力端子(-)は、変圧器32の中性点タップに接続することができ、これを介してAC/DCコンバータ4がACグリッド30に接続される。代替的には、それをACグリッド30の中性導体に接続することもできる。
【0036】
図3は、調整ユニット10を使用して実行することができる一実施形態における、本発明に係る方法の時間的特性を概略的に示している。ここでは、AC/DCコンバータ4のDC出力部4.2のDC電圧UDC,4、AC/DCコンバータ4のAC入力部4.1のAC電圧の振幅U、およびインダクタンスLを介してAC/DCコンバータ4とACグリッド30との間で交換される無効電力Q(t)についての時間特性がプロットされている。図3では、無効電力Q(t)の交換の正の値が、AC電圧の振幅Uに電圧降下作用をもたらす。図3の縦座標軸の横には、個々の時間特性が異なるタイプの線で示されている。これらの時間的特性は、例えば、DC負荷20としての電解槽22がアクティブ制御整流器1に接続された場合に生じ得る例示的なケースを示している。
【0037】
出発点は、電解槽22が整流器1から分離されている状態である。しかしながら、電解槽22のプリチャージは既に実行されて、入力側DC電圧UDC,Lastが臨界電圧Ucrより僅かに低い値となっており、電解反応はまだ進行していない。時点t<tにおいて、AC/DCコンバータ4とACグリッド30との間で無効電力Q(t)は最初に交換されておらず、t<tにおいて、Q(t)=0である。AC入力部4.1に存在するAC電圧の振幅Uの値は、高い電解反応速度で変換損失を可能な限り低くするために、臨界電圧より上にある。
【0038】
時点tで、整流器1が電解槽22に接続されることが電解システム50に通知される。可能な限り最も負荷のない配置で、または少なくとも低減された補償電流でこの接続を実行するために、時点t以降の所望のDC動作電圧の第1の値UDC,Soll,1は、同様に電解槽22の入力部に現在存在するDC電圧UDC,Lastに設定されている。このため、所望のDC動作電圧の第1の値UDC,Soll,1は、AC入力部4.1上に存在するAC電圧の振幅Uよりも低く、還流ダイオード42の導通状態電圧を除くDC出力部4.2のDC電圧UDC,4が振幅Uに対応するため、出力側に存在するDC電圧UDC,4よりも低くもなっている。このため、所望のDC動作電圧UDC,Soll,1と出力側に存在するDC電圧UDC,4との間には、比較的大きな差ΔU(t)が存在する。調整ユニット10は、出力側に存在するDC電圧UDC,4を検出し、それを所望のDC動作電圧UDC,Soll,1と比較して、電圧差ΔU(t)を制御ユニット9に伝達する。それに応答して、制御ユニット9は、ACグリッド30と交換する無効電力Q(t)の増加に応じて、コンバータ回路40の半導体スイッチ41を作動させる。無効電力Q(t)の交換は、特にインダクタンスLを介したその付随する電流の流れによって、AC入力部4.1に存在するAC電圧の振幅Uに電圧降下作用をもたらす。その結果、振幅Uの値およびAC/DCコンバータ4のAC出力部4.2の対応するDC電圧UDC,4(t)が減少する。tとtIIの間の時間間隔において、現在存在するDC電圧UDC,4(t)は、調整ユニット10によって連続的に検出され、所望のDC動作電圧の第1の値UDC,Soll,1と比較される。この比較は、差ΔU(t)の量的な減少を示し、これは制御ユニット9に伝達される。制御ユニット9は、無効電力Q(t)の交換をさらに増加させることを目的として、コンバータ回路40の半導体スイッチ41を再び作動させる。無効電力Q(t)の増加と、それに伴う振幅Uの減少およびAC/DCコンバータ4のDC出力部4.2のDC電圧UDC,4の減少は、tとtIIの間の時間間隔において、AC/DCコンバータ4のDC出力部4.2のDC電圧UDC,4と所望のDC動作電圧の第1の値UDC,Soll,1との差が消滅するまで実行される。最終的に、結果として、時点tIIにおいて、入力側AC電圧の振幅U、およびAC/DCコンバータ4のDC出力部4.2のDC電圧UDC,4は、所望のDC動作電圧の第1の値UDC,Soll,1に到達する。このため、時点tIIにおいて、電解槽22は、DC分離ユニット6を閉じることによって、低インピーダンスかつ実質的に無負荷の構成で整流器1に接続され得る。
【0039】
時点tII以降、所望のDC動作電圧の第1の値UDC,Soll,1は、所望のDC動作電圧の第2の値UDC,Soll,2に置き換えられ、ここで電解反応が実行される。このため、tII~tIVの時間間隔において、AC/DCコンバータ4のDC出力部4.2のDC電圧UDC,4が、現在適用可能な所望のDC動作電圧の第2の値UDC,Soll,2に傾斜接近する。これは、時間間隔tII~tIIIにおいて、無効電力Q(t)が同様に値0まで傾斜減少することを伴う。時点tIII以降、AC/DCコンバータ4とACグリッド30との間で無効電力Q(t)の交換はさらに行われず、AC/DCコンバータの入力部4.2におけるAC電圧の振幅Uが、t=0におけるその元の値を回復する。
【0040】
無効電力Q(t)とAC/DCコンバータ4のDC出力部4.2のDC電圧UDC,4図3に示す傾斜特性は、示したものより急な勾配も想定することができ、実質的にステップ状の時間変化を観察することができる。
【0041】
図3は、調整ユニット10による適応的な方法での潜在的に実行するための、本発明に係る方法を示している。ACグリッド30のグリッド接続点31とAC/DCコンバータのAC入力部4.1との間の電圧変動特性u(Q)の詳細な知識は不要である。しかしながら、本発明では、既知の電圧変動特性u(Q)を用いて本方法を実行することも可能である。既知の電圧変動特性u(Q)を参照することにより、AC/DCコンバータ4のDC出力部4.2に存在するDC電圧UDC,4の検出および所望のDC動作電圧の第1の値UDC,soll,1との比較に加えて、対応する電圧差ΔU(t)が求められる。このようにして求められた電圧差ΔU(t)と既知の電圧変動特性u(Q)との比較により、所望のDC動作電圧UDC,soll,1の設定に必要な無効電力Q(t)を求めることができる。これに応答して、制御ユニット9は、必要な無効電力Q(t)の交換のために、AC/DCコンバータ4の半導体スイッチ42を作動させることができる。本発明に係る方法は、可能な限り最も負荷のない構成での電解槽22の整流器1への接続を参照しながら説明してきた。しかしながら、代替的または追加的には、DC分離ユニット6の開放による、整流器1からの電解槽22の無負荷分離と組み合わせて実行することも可能である。具体的には、無効電力Q(t)の短期間の交換によって、整流器1と電解槽22の低インピーダンス接続の場合に、DC分離ユニット6の開放の直前および開放中に、その入力部21に同様に存在するAC/DCコンバータ4のDC出力部のDC電圧UDC,4を、電解反応の維持に必要な限界電圧Ucr未満に低下させることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 整流器
2 AC分離ユニット
3 フィルタユニット
3.1 フィルタリアクトル
3.2 フィルタキャパシタンス
4 AC/DCコンバータ
4.1 (AC/DCコンバータの)AC入力部
4.2 (AC/DCコンバータの)DC出力部
5 (AC/DCコンバータの)出力キャパシタンス
6 DC分離ユニット
7 AC整流器入力部
8 DC整流器出力部
9 制御ユニット
10 調整ユニット
11 データメモリ
20 DC負荷
21 (DC負荷の)入力部
22 電解槽
30 交流電圧(AC)グリッド
31 グリッド接続点
32 変圧器
32.P 一次側
32.S 二次側
40 コンバータ回路
41 半導体スイッチ
42 還流ダイオード
43 (コンバータ回路の)入力部
44 (コンバータ回路の)出力部
45 ブリッジアーム
46 接続点
(t),Q(t) 無効電力
P(t) 有効電力
Netz,U,U 振幅
DC,4 DC電圧
DC,Soll DC電圧
DC,min,UDC,max DC電圧
TH 電圧閾値
図1
図2
図3
【国際調査報告】