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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】電流検出抵抗器
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20230601BHJP
   H01C 3/00 20060101ALI20230601BHJP
   H01C 1/144 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
G01R15/00 500
H01C3/00 Z
H01C1/144
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565706
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2021052737
(87)【国際公開番号】W WO2021219263
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】102020111634.9
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593116434
【氏名又は名称】イザベレンヒュッテ ホイスラー ゲー・エム・ベー・ハー ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100100860
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100222922
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】クラム、ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ルボー、フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、スヴェン
【テーマコード(参考)】
2G025
5E028
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB05
2G025AC01
5E028BA21
5E028BB01
5E028JB03
5E028JC01
(57)【要約】
本発明は、電流(I)を測定するための電流検出抵抗器(1)に関連し、電流検出抵抗器(1)は、2つの接続部材(2,3)と、抵抗素子(4)と、抵抗素子(4)の電圧降下を測定するための一対の電圧検出用接点(8~19)と、少なくとも1つの接続部材(2,3)内の少なくとも1つの切り込み(20)と、を備え、切り込み(20)は、電圧検出用接点(8~19)を囲み、且つ切り込み(20)を超えて電流が流れることを防ぐ。本発明は、電流の流れ方向に直列に配置される複数の対の電圧検出用接点(8~19)を提供する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流(I)を測定するための電流検出抵抗器(1)であって、
a)測定される前記電流(I)を前記電流検出抵抗器(1)内に導入するための、導電材料から形成された第1の接続部材(2)と、
b)測定される前記電流(I)を前記電流検出抵抗器(1)から導出するための、導電材料から形成された第2の接続部材(3)と、
c)抵抗性材料から形成された抵抗素子(4)であって、測定される前記電流(I)が前記抵抗素子(4)を通って流れるように、前記第1の接続部材(2)と前記第2の接続部材(3)との間に電流の流れ方向に配置された抵抗素子(4)と、
d)前記抵抗素子(4)での電圧降下を測定するための少なくとも一対の電圧検出用接点(8~19;22~25)であって、前記接続部材(2、3)の1つにそれぞれ係合された電圧検出用接点(8~19;22~25)と、
e)前記接続部材(2,3)の少なくとも1つ内にある少なくとも1つの切り込み(20;20.1~20.4)であって、前記電圧検出用接点(8~19;22~25)の1つを囲み、該切り込み(20;20.1~20.4)を超えて電流が流れることを防ぐ切り込み(20;20.1~20.4)と、
を備え、
f)複数対の電圧検出用接点(8~19;22~25)が前記電流の流れ方向に並んで配置される、
ことを特徴とする電流検出抵抗器(1)。
【請求項2】
前記切り込み(20;20.1~20.4)と、前記切り込み(20;20.1~20.4)に囲まれた前記電圧検出用接点(14)とは、前記電流の流れ方向に直交する方向に対して前記接続部材(2)の中心に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項3】
a)前記電流検出抵抗器(1)は、前記電流の流れ方向に平行な特定の中心軸(7)を有し、
b)前記切り込み(20.1)を備える前記接続部材(2)は、前記電流の流れ方向に直交する特定の幅(B)を有し、及び、
c)前記切り込み(20.1)によって囲まれた前記電圧検出用接点(10)は、より小さい前記電流検出抵抗器(1)の前記中心軸(7)に対して、前記電流検出抵抗器(1)の前記幅(B)の50%、40%、30%、20%、10%又は5%より小さい偏心(e)を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項4】
a)前記接続部材は、前記電流の流れ方向に直交する特定の幅(B)を有し、及び、
b)前記接続部材内の前記切り込み(20;20.1~20.4)は、前記接続部材(2,3)の前記幅(B)の最大60%、50%又は40%にわたって前記電流の流れ方向に対して直交するように延びる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項5】
a)前記切り込み(20;20.1~20.4)は円弧状、特にU字形状、又はV字形状であり、前記電流の流れ方向に直交する基部と、前記電流の流れ方向に平行な前記抵抗素子(4)に面する脚部とを備える、及び/又は、
b)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記脚部は、前記電流の流れ方向に垂直であって、前記抵抗素子(4)の厚み(h)と少なくとも同じ大きさである幅(b)を有する、及び/又は、
c)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記基部は、前記電流の流れ方向に対して垂直であって、前記抵抗素子(4)の前記厚み(h)と少なくとも同じ大きさである幅(l)を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項6】
a)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記脚部は、前記電流の流れ方向に前記抵抗素子(4)中に突出し、前記抵抗素子(4)内で終端し、特に前記抵抗素子(4)内で、
a1)6mmであり、ずれが最大で±3mm、±2mm、±1mm、±0.5mm、又は±0.2mmである、及び/又は、
a2)前記電流の流れ方向において、前記抵抗素子(4)の前記長さ(lRM)の10%~90%、20%~80%、又は30%~70%である、
脚長(dl)を備える、及び/又は、
b)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記脚部は、前記電流の流れ方向において、前記抵抗素子(4)の前の接続部材(2,3)で終端し、特に、
b1)4mmであり、ずれが最大で±2mm、±1mm、±0.5mm、又は±0.2mmである、及び/又は、
b2)前記電流検出抵抗器(1)の前記幅の10%~90%、20%~80%、又は30%~70%である、
脚長を備える、又は、
c)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記脚部は、前記電流の流れ方向において、前記抵抗素子(4)と前記接続部材(2,3)との間の境界で終端する、
ことを特徴とする請求項5に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項7】
前記接続部材(2,3)内の前記切り込み(20;20.1~20.4)は、コンタクトアイランドを区画し、前記切り込み(20;20.1~20.4)と前記抵抗素子(4)との間の前記コンタクトアイランドは、少なくとも4mm、5mm、6mm、8mm又は10mmの面積を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項8】
a)少なくとも1つの切り込み(20.1~20.4)は、2つの前記接続部材(2,3)のそれぞれに配置されており、前記切り込み(20.1~20.4)は、電圧検出用接点(9,10,23,24)のためのコンタクトアイランドを囲み、及び、
b)前記切り込み(20.1~20.4)は、前記接続部材(2,3)において、前記抵抗素子(4)の対向する側に、つまり、前記電流検出抵抗器(1)の前記中心軸(7)に対して同じ遅行位置において、対で配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項9】
前記2つの接続部材(2,3)の少なくとも1つにおいて、複数の切り込み(20.1~20.4)は、前記電流の流れ方向に対して互いに隣接して配置され、前記複数の切り込みは、電圧検出用接点(9,10,23,24)のためのコンタクトアイランドをそれぞれ囲む、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項10】
a)前記抵抗素子(4)は、第1の部分と第2の部分とに分割されており、それにより、測定される前記電流(I)は、前記抵抗素子(4)の前記第1の部分を通る第1の電流経路と、前記抵抗素子(4)の前記第2の部分を通る第2の電流経路とに分けられ、
b)カットアウト(21)が、前記抵抗素子(4)に設けられ、前記カットアウト(21)は電流が前記カットアウト(21)を超えて流れることを防ぐため、前記2つの電流経路は、前記カットアウト(21)のどちらかの側を通り、
c)前記カットアウト(21)は、前記電流の流れ方向に、好ましくは前記抵抗素子(4)の全長にわたって延び、
d)前記カットアウト(21)は、好ましくは、前記電流の流れ方向に、前記接続部材(2,3)内に延びる、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項11】
a)前記第1の電流経路において、それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)が前記電流の流れ方向に沿って並んで配置され、
b)前記第2の電流経路において、それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)が、前記電流の流れ方向に沿って並んで配置され、及び、
c)一対の電圧検出用接点(8~19;22~25)は、前記電流の流れ方向に対して横方向に前記抵抗素子(4)の前記2つの部分の間の前記電圧降下を測定するために、特に前記接続部材における前記抵抗素子(4)との直接の境界において、前記抵抗素子(4)の前記2つの部分を結合する、
ことを特徴とする請求項10に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項12】
a)前記第1の電流経路において、それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)が、前記電流の流れ方向に対して直交する方向に隣り合って配置されており、
b)前記第2の電流経路において、それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)が、前記電流の流れ方向に対して直交する方向に隣り合って配置されており、及び、
c)それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)は、前記抵抗素子(4)の前記2つの部分上に、すなわち、前記電流の流れ方向に対して直交する方向に隣り合って、特に、前記接続部材(2,3)内に前記抵抗素子(4)との境界に直接、配置される、
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項13】
a)導体材料は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金である、及び/又は、
b)前記接続部材(2,3)の前記導体材料は、前記抵抗素子(4)の抵抗材料よりも小さい比電気抵抗を有する、及び/又は、
c)前記抵抗素子(4)の前記抵抗材料は、以下の合金
c1)銅合金、特に銅-マンガン-錫合金、特にCuMn12Ni、若しくはCuMnSn2,3、又は銅-マンガン-ニッケル合金、特にCu84NiMn12、若しくはCu65Mn25Ni10、又は銅-クロム合金、
c2)ニッケル合金、特にNiCr又はCuNi、
のうちの1つである、及び/又は、
d)前記抵抗素子(4)は、電気的に及び機械的に、特に溶接継手によって、特に電子ビーム溶接による溶接継手によって、2つの前記接続部材に接続されている、及び/又は、
e)前記抵抗材料は、2・10-4Ω・m、2・10-5Ω・m、又は2・10-6Ω・m未満の比電気抵抗を有する、及び/又は、
f)前記抵抗材料は、2・10-6Ω・m、2・10-7Ω・mより大きい電気抵抗率を有する、及び/又は、
g)前記導体材料は、10-6Ω・m、又は10-7Ω・mより小さい比電気抵抗を有する、及び/又は、
h)前記抵抗は、最大で1μΩ、10μΩ、50μΩ、100μΩ、500μΩ、10mΩ、5mΩ、2mΩ、又は1mΩの抵抗値を備える低抵抗であること、及び/又は、
i)前記電流検出抵抗器(1)は、少なくとも1A、10A、100A、1kA、又は5kAの通電容量を有する、及び/又は、
j)前記抵抗素子(4)は、板状である、特に平板である、及び/又は、
k)前記接続部材(2,3)は、それぞれ板状である、特に平板である、及び/又は、
l)前記電流検出抵抗器(1)は、前記電流の流れ方向に30cm、20cm、又は10cm未満の長さ(L)を有する、及び/又は、
m)前記電流検出抵抗器(1)は、前記電流の流れ方向に直角な20cm、10cm、又は5cmの幅(B)を有する、及び/又は、
n)前記電流検出抵抗器(1)は、10mm、5mm、又は4mmより小さい厚さ(h)を有する、及び/又は、
o)前記2つの接続部材(2,3)は、それぞれ、電流を導入及び導出するための少なくとも1つの電流接続部(5,6)を有し、個々の前記電流接続部(5,6)は、好ましくは、それぞれの前記接続部材(2,3)に少なくとも1つの孔をそれぞれ有し、特にそれぞれの場合において電流の流れの方向に対して互いに隣接して配置されている2つの孔を備える、及び/又は、
p)個々の前記電圧検出用接点(8~19;22~25)は、それぞれの場合において、それぞれの前記接続部材(2,3)上の導電性コーティングからなるコンタクトアイランドである、及び/又は、
q)個々の前記コンタクトアイランドは、それぞれ実質的に方形である、及び/又は、
r)前記コンタクトアイランドの前記コーティングは、前記接続部材(2,3)とは異なる導電材料からなる、及び/又は、
s)前記電流検出抵抗器(1)上の前記コンタクトアイランドは、前記電流の流れ方向に直角な複数の列、特に4つの列で、且つ前記電流の流れ方向に平行な複数の行、特に3つの行で、マトリクス状に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電流検出抵抗器(1)。
【請求項14】
a)請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電流検出抵抗器(1)と、
b)前記電流検出抵抗器(1)の前記電圧検出用接点(8~19;22~25)での電圧を測定するため、及び、対応する電圧測定値を決定するための電圧測定装置(26)と、
c)前記電流検出抵抗器(1)を通って流れる前記電流(I)を、前記電圧測定値から決定するための評価ユニット(27)と、
を備える、電流測定装置。
【請求項15】
a)前記電圧検出用接点(8~19;22~25)は、ホイートストンブリッジ回路を形成する、及び/又は、
b)前記電圧検出用接点(8~19;22~25)は、複数の冗長な電流測定チャンネルを形成する、
ことを特徴とする請求項14に記載の電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4線式技術に従って電流を測定するための電流検出抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような電流検出抵抗器は、特許文献1から原理が知られている。この既知の電流検出抵抗器は、抵抗合金(例えば、マンガニン(登録商標))から形成された板状の抵抗素子と、導体材料(例えば、銅)からなる同様に板状の2つの接続部材と、を本質的に備え、2つの接続部材は、抵抗素子の対向する側で抵抗素子に溶接されている。被測定電流は、2つの接続部材を介して電流検出抵抗器に導入され、電流検出抵抗器から導出されるため、被測定電流は電流検出抵抗器の抵抗素子内を流れる。抵抗素子の電圧降下を測定するため、抵抗素子との境界の2つの接続部材には、2つの電圧検出用接点が取り付けられる。測定された電圧降下は、オームの法則に従い、電流検出用抵抗器を流れる電流に対応する。加えて、既知の電流検出用抵抗器は、接続部材に2つの弧状の切り込みを有し、切り込みは弧状に電圧検出用接点を囲み、電流シャドウとも呼ばれる。これらの電流シャドウにより、測定の温度依存性が改善される。しかし、上述した既知の電流検出抵抗器は、測定精度の点で、まだ最適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/019784号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、これに対応して改善された電流検出抵抗器を作成するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、主請求項に係る電流検出抵抗器によって、解決される。
【0006】
本発明は、一対の電圧検出用接点を提供するだけでなく、電流の流れる方向に順番に配置され、複数の測定チャンネルを形成することができる複数対の電圧検出用接点を提供するという一般的な技術教示を含む。これにより、電流検出用抵抗器の測定精度を著しく向上させることができる。このように、複数対の電圧検出用接点は、電圧測定と電流測定の検証とにおける複数の冗長性を、既に物理的に可能とする。
【0007】
まず、本発明に係る電流検出抵抗器は、冒頭に述べた既知の電流検出抵抗器と同様に、導体材料(例えば、銅、銅合金)からなり、被測定電流を電流検出抵抗器に導入するために機能する第1の接続部材を有する。
【0008】
更に、本発明に係る電流検出抵抗器は、冒頭に述べた既知の電流検出抵抗器と同様に、同じく導体材料(例えば、銅、銅合金)からなり、被測定電流を再び電流検出抵抗器の外に導くために機能する第2の接続部材を有している。
【0009】
更に、本発明に係る電流検出抵抗器は、冒頭に述べた既知の電流検出抵抗器と同様に、抵抗材料(例えば、マンガニン(登録商標))からなる抵抗素子を備え、抵抗素子が2つの接続部材間の電流の流れの方向に配置されることで、被測定電流は、この抵抗素子を通って流れる。
【0010】
更に、本発明に係る電流検出抵抗器は、冒頭に述べた既知の電流検出抵抗器と同様に、接続部材の少なくとも1つに少なくとも1つの切り込みを有し、この切り込みは電圧検出用接点の1つを囲み、切り込みを越えて電流が流れることを防ぐ。そのような切り込みは電流シャドウとも呼ばれ、電流検出抵抗器内の等電位線と電流場とを変形させ、測定精度を向上させるために役立つ。
【0011】
しかし、冒頭に述べた既知の電流検出抵抗器とは対照的に、本発明に係る電流検出抵抗器は、電流の流れ方向に直列に配置され、電流検出抵抗器の異なる測定点での電圧測定を可能にする複数対の電圧検出用接点を有する。このように、電圧測定のために電圧検出用接点を異なる対で使用することにより、複数の異なる測定チャンネルを形成することができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態において、切り込みと、切り込みに囲まれた電圧検出用接点とは、電流の流れる方向に対して直交する方向の位置に対して接続部材の中心に配置される。このように、本発明に係る電流検出抵抗器は、冒頭で説明した切り込みが接続部材の側縁から始まるため、縁の近くに配置されている、つまり中央に配置されていない公知の電流検出抵抗器とも異なる。
【0013】
ここで、電流検出抵抗器は電流の流れる方向と平行な特定の中心軸を有し、切り込みを有する接続部材は電流の流れる方向と直交する特定の幅を有することに言及すべきである。切り込みによって囲まれた電圧検出用接点は、好ましくは、電流検出抵抗器の中心軸に対する偏心が、電流検出抵抗器の幅の50%、40%、30%、20%、10%、又は5%よりも小さい。本明細書での、この意味での偏心は、一方において切り込みによって囲まれた電圧検出用接点の中心と、他方において電流検出抵抗器の中心軸と間の横方向の距離である。
【0014】
本発明の好適な実施形態において、接続部材の切り込みは、電流の流れ方向に対して横方向に特定の幅を有し、その幅は、接続部材の幅の最大で60%、50%、又は最大で40%であることが好ましい。
【0015】
冒頭で説明した既知の電流検出抵抗器の場合、接続部材の切り込み(電流シャドウ)は、それぞれの場合で、円弧状であり、これは、本発明に係る電流検出抵抗器においても同様とすることが可能である。しかし、好ましくは、切り込みは、電流の流れ方向に対して横向きの基部と、電流の流れ方向に対して平行であり、且つ抵抗素子に面する脚部とを有するU字形状である。従って、U字形状の切り込みの基部は接続部材に位置し、脚部は抵抗素子に面する。しかし、これに代えて、切り込みがV字形状であることも可能である。
【0016】
更に、電流の流れ方向に垂直なU字形状又はV字形状の切り込みの脚部が、好ましくは、抵抗素子の厚さ、及び/又は接続部材の厚さ、及び/又は電流検出抵抗器全体の厚さと少なくとも同じ大きさの特定の幅を有する点に言及すべきである。
【0017】
更に、電流の流れ方向に平行なU字形状の切り込みの基部は、好ましくは、抵抗素子の厚さ、及び/又は接続部材の厚さ、及び/又は電流検出抵抗器全体の厚さと少なくとも同じ大きさの特定の幅も有する点に言及すべきである。
【0018】
従って、U字形状の基部及び脚部において、切り込みは、抵抗素子の厚さ、及び/又は接続部材の厚さ、及び/又は電流検出抵抗器全体の厚さと少なくとも同じ幅を有する。
【0019】
本発明の好適な実施形態において、U字形状又はV字形状の切り込みの脚部は、電流の流れ方向に抵抗素子内に延び、抵抗素子内で終端する。従って、切り込みの脚部の一部は、抵抗素子内に存在し、切り込みの脚部の別の部分は接続部品内に存在する。抵抗素子内の脚部の長さは、例えば、6mmであることができ、ずれは最大で±3mm、±2mm、±1mm、±0.5mm、又は更に±0.2mmであることができる。更に、抵抗素子内における切り込みの脚部の長さは、抵抗素子の電流の流れ方向の長さの10%~90%、20%~80%、又は30%~70%の範囲内であることが好ましい点に言及すべきである。
【0020】
しかし、代わりに、本発明の範囲内において、切り込みの脚部は、電流の流れ方向に抵抗素子の前の接続部材内で終端することも可能である。従って、この場合は、切り込みはそれぞれの接続部材内に完全に位置し、抵抗素子内に突出しない。ここで、切り込みの脚長は、例えば、4mmであることができ、ずれは最大で±2mm、±1mm、±0.5mm、又は更に±0.2mmであることができる。更に、脚長は、電流検出抵抗器の幅の10%~90%、20%~80%、又は更に30%~70%の範囲内であることができる点に言及すべきである。
【0021】
他方、別の代替例として、切り込みの脚部は、電流の流れの方向において、抵抗素子と接続部材との間のちょうど境界で終端する。
【0022】
接続部材における切り込みは電圧検出用接点を囲み、且つ電流シャドウとして機能することは既に簡単に上述した。このように、切り込みは、残りの接続部材にコンタクトアイランドを区切り、それによって、切り込みと抵抗素子との間のコンタクトアイランドは、好ましくは、少なくとも4mm、5mm、6mm、8mm、又は10mmの面積を有する。このように、コンタクトアイランドは、一方では切り込みによって、他方では抵抗素子によって境界が引かれる。
【0023】
更に、好ましくは、電圧検出用接点のためのコンタクトアイランドを囲む2つの接続部材のそれぞれに、少なくとも1つの切り込みが配置される点に言及すべきである。この場合、切り込みは、好ましくは、抵抗素子の2つの対向する側に対で配置され、好ましくは、電流検出抵抗器の中心軸に対して同じ横方向の位置に配置される。しかし、代替的に、切り込みを、抵抗素子の2つの対向する側に横方向にオフセットさせて配置することも可能である。
【0024】
更に、本発明の範囲内で、2つの接続部材の少なくとも一方において、電流の流れの方向に対して、複数の切り込みが互いに隣り合って配置され、切り込みのそれぞれが電圧検出用接点のためのコンタクトアイランドを囲むことも可能である。例えば、2つの接続部材のそれぞれにおいて、電流検出抵抗器の中心軸に対して、且つ抵抗素子に対して対称に配置された2つの切り込みを配置することも可能である。
【0025】
本発明の1つの変形例において、抵抗素子は、横方向において第1の部分と第2の部分とに分割されているため、被測定電流は、抵抗素子の第1の部分を通る第1の電流経路と、抵抗素子の第2の部分を通る第2の電流経路とに分割される。この分割は、2つの電流がカットアウトのどちらかの側を通るように、電流がカットアウトを超えて流れることを防ぐカットアウトによって実現される。このカットアウトは、例えば、打ち抜き部分からなることができる。ここで、カットアウトは、好ましくは、抵抗素子の全長にわたって電流の流れ方向に延び、且つ接続部材内にも延びることができる点に言及すべきである。
【0026】
この発明の変形例において、2つの電流経路のそれぞれに、複数の電圧検出用接点を1つずつ、好ましくは電流の流れ方向に沿って1つずつ配置することができる。
【0027】
更に、少なくとも1対の電圧検出用接点が、抵抗素子の2つの部分を結合するように設けられることが好ましい。例えば、これらの電圧検出用接点を、抵抗素子上に直接配置することができる。しかしながら、好適な実施形態において、電流の流れ方向に横向きである抵抗素子の2つの部分間の電圧降下を測定するために、これらの電圧検出用接点は、それぞれの接続部材上の抵抗素子との境界に直接配置される。
【0028】
複数の平行な電流経路を備える本発明の変形例において、複数の電圧検出用接点を、2つの電流経路において、電流の流れ方向に対して隣り合わせて配置することもできる。例えば、2つの電流経路における電圧検出用接点を、それぞれ、電流の流れ方向に対して横方向に行、電流の流れ方向に沿って列のマトリクス状に配置することができる。
【0029】
導体材料が、例えば、銅又は銅合金であることができる点は、既に簡単に上述した。しかし、これに代えて、接続部材の導体材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることもできる。しかし、本発明は、使用する導体材料について、これらの材料に限定されるものではなく、導電性を有する他の材料を用いて実現することも可能である。しかし、接続部材の導体材料は、抵抗素子の抵抗材料よりも比電気抵抗が小さくあるべきであることに言及すべきである。
【0030】
抵抗素子の抵抗材料に関し、本発明の範囲内で多くの可能性がある。例えば、抵抗材料は、銅合金、特に銅-マンガン-錫合金、銅-マンガン-ニッケル合金、又は銅-クロム合金であってもよい。基本的に好適な抵抗材料の別の例は、ニッケル-クロム又は銅-ニッケルのようなニッケル合金である。
【0031】
抵抗素子が、2つの接続部材の間に配置され、2つの接続部材に接続されることは既に簡単に上述した。例えば、この接続は、欧州特許出願公開第0605800号明細書から知られているように、溶接接続(例えば、電子ビーム溶接)とすることができる。
【0032】
抵抗材料は、好ましくは、2・10-4Ω・m、2・10-5Ω・m、又は2・10-6Ω・m、より小さい電気抵抗率を有する。
【0033】
好ましくは、抵抗材料は、2・10-6Ω・m、2・10-7Ω・mより大きい抵抗率を有し、その上、抵抗材料の抵抗率は、好ましくは10-6Ω・m、又は10-7Ω・mより小さい。
【0034】
一般に、電流検出抵抗器は、好ましくは、高くても1μΩ、10μΩ、50μΩ、100μΩ、500μΩ、10mΩ、5mΩ、2mΩ、又は1mΩの抵抗値を有する低抵抗である点に言及すべきである。
【0035】
更に、電流検出抵抗器は、連続電流負荷又はパルス負荷に基づいて、少なくとも1A、10A、100A、1kA又は5kAの通電容量を有することができる点に言及すべきである。
【0036】
電流検出抵抗器の設計に関して、抵抗素子及び/又は接続部材は、板状、特に平板とすることができる点に言及すべきである。
【0037】
寸法に関して、電流検出抵抗器は、電流の流れ方向の長さが30cm、20cm、又は10cmより短くてもよく、一方、好ましくは、幅は20cm、10cm、又は5cmより短くてもよいことに留意されたい。一方、電流検出抵抗器の厚さは、好ましくは10mm、5mm、又は4mmより小さい。
【0038】
更に、2つの接続部材は、それぞれ、電流を導入又は導出するための少なくとも1つの電流接続部を有することができ、個々の電流接続部はそれぞれ、好ましくはそれぞれの接続部に少なくとも1つの孔、特にそれぞれの場合に2つの孔を有し、これらは電流の流れの方向に関して互いに隣接して配置されている。代わりに、電流接続部は、欧州特許出願公開第0605800号明細書から知られているように、板状の接続部から直角に突出する接続ネジからなることも可能である。
【0039】
上述の電圧検出用接点は、好ましくは、それぞれの接続部材上に導電性コーティングからなるコンタクトアイランドをそれぞれ備える。例えば、個々のコンタクトアイランドは、それぞれ実質的に長方形であり、接続部材とは異なる導体材料のコーティングを備えてもよい。
【0040】
コンタクトアイランドは、電流検出抵抗器上に、電流の流れ方向に垂直な複数の行、特に4つの行と、電流の流れ方向に平行な複数の列、特に3つの列とにマトリクス状に配置されることができる。
【0041】
更に、本発明は、単一部品としての本発明に係る上述の電流検出抵抗器に対する保護のみを主張するものではない点に言及すべきである。むしろ、本発明は、そのような電流検出抵抗器と、電流検出抵抗器の電圧検出用接点での電圧測定のために機能し、且つ対応する電圧測定値を供給する電圧測定装置とを備え、電圧測定装置が複数の測定チャンネルを形成することが可能である、完全な電流測定装置に対する保護も主張する。更に、本発明に係る電流測定装置は、好ましくは、電圧測定値の関数として、電流検出抵抗器を流れる電流を計算するための評価ユニットも含む。ここで、評価ユニットは、重み付け係数を用いて、様々な電圧測定値に重み付けをすることが可能である。更に、本発明の範囲内で、評価ユニットは、複数の冗長性によって可能である自動較正を行うことも可能である。一般に、やはり、様々な電圧検出用接点がホイートストンブリッジ回路を形成することが可能である点に言及すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の他の有利な更なる実施形態は、従属項に示される、又は図を参照した本発明の好適な実施形態の説明と共に、以下により詳細に説明される。
【0043】
図1A図1は、本発明に係る電流検出抵抗器を示す斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aに係る電流検出抵抗器の上面図である。
図1C図1Cは、図1Bの拡大部分図と電圧図である。
図2図2は、2つの接続部材に2つの切り込みを備える図1Bの変形例である。
図3図3は、電流の流れを2つの平行な電流経路に分割するためのカットアウトを電流検出抵抗器内に備える図1A~1Cに係る実施形態の変形例を示す。
図4図4は、図3の変形例を示す。
図5図5は、図3の変形例を示す。
図6図6は、図3の更なる変形例を示す。
図7】最後に、図7は、本発明に係る電流検出抵抗器を備える電流測定装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図1A~1Cに示すように、本発明に係る電流検出抵抗器1の第1の実施形態について説明する。電流検出抵抗器1は、基本的に、導体材料(例えば、銅)から形成された2つの接続部材2、3と、抵抗材料(例えば、マンガニン(登録商標))から形成された抵抗素子4とからなり、抵抗素子4は、2つの接続部材2、3間の電流の流れ方向に配置されており、その結果、被測定電流Iは、接続部材2を介して電流検出抵抗器1に導入され、抵抗素子4を通って流れ、接続部材3によって再び電流検出抵抗器1から導出される。抵抗素子4での電圧降下は、電流検出抵抗器1を流れる電流Iをオームの法則に従って測定したものであり、既知の4線式技術に従って電流測定が可能である。
【0045】
電流の導入及び導出のために、2つの接続部材2、3は、それぞれ、電流検出抵抗器1の中心軸7の両側に配置された、2つの孔の形状の電流接続部5、6を有する。電流接続部5、6の孔はそれぞれ、先行技術からそれ自体が知られているように、対応する接点のねじ止めを可能にする。
【0046】
電流検出抵抗器1における電圧測定は、2つの接続部材2、3上に、電流の流れ方向に対して横方向の行と電流の流れ方向に沿った列とでマトリクス状に配置された多数の電圧検出用接点8~19によって行われる。電圧検出用接点8~19は、それぞれの接続部材2及び3に塗布されたセパレート型の導電性コーティングからなる矩形のコンタクトアイランドとして、それぞれ形成されている。電圧検出用接点8~19は、電圧測定の範囲内で任意の対で接続することができ、これにより複数の電圧測定チャンネルを形成することができる。
【0047】
電圧検出用接点14は、U字形状の切り込み20によって囲まれている。まず、U字形状の切り込み20は、接続部材2内に基部を有する。更に、U字形状の切り込み20は、特に図1Cから理解できるように、電流の流れ方向に延び、且つ抵抗素子4内に達する2つの脚部を有する。U字形状の切り込み20の脚部は、電流の流れ方向に垂直な幅bを有し、U字形状の切り込み20の基部は、電流の流れ方向に沿った幅lを有する。更に、図1Cから理解できるように、抵抗素子4は、電流の流れ方向に沿った幅lRMを有する。最後に、図1Cからも明らかなように、抵抗素子4内のU字形状の切り込み20の脚部は、脚長dlを有する。
【0048】
上記の数量は、以下の寸法式を満たす。
dl=0,1-0,9・lRM
≧h
≧h
【0049】
電流検出抵抗器1は、電流の流れる方向に沿った長さL=80mm、電流の流れる方向を横切る幅B=40mm、厚さh=3mmを有する。
【0050】
図1Cの電位図は、電圧検出用接点8~19の異なる対について、電圧測定値の関係を定性的に示す。電位図における電圧値の指標は、対応する電圧検出用接点の参照符号に対応する。従って、電圧値U1,2は、電圧検出用接点1及び2の間の電圧を表す。
【0051】
図2は、図1A~1Cに係る実施形態の例の変形例を示し、繰り返しを避けるため、まず上記の説明を参照し、対応する詳細について同じ参照符号を使用する。
【0052】
本実施形態の例の特別な特徴は、電流検出抵抗器1が、抵抗素子4の対向する側の2つの接続部材2及び3にそれぞれ配置された2つの切り込み20.1、20.2を有する点である。
【0053】
図3は、上述した実施形態の変形例を示すものであり、繰り返しを避けるために、再び上記説明を参照し、対応する詳細については同じ参照符号を使用する。
【0054】
まず、本実施形態の例の特別な特徴は、2つの切り込み20.1、20.2が、抵抗素子4の対向する側に配置されておらず、抵抗素子4の同じ側、すなわち接続部材2に配置されている点である。
【0055】
本実施形態の例の更なる特別な特徴は、電流検出抵抗器1が、抵抗素子4の全長にわたって電流検出抵抗器1の中心軸7に沿って延び、且つ、隣接する接続部材2及び3内へそれぞれ延びるカットアウト21を有する点である。カットアウト21は、例えば、突起からなり、カットアウト21を超えて電流が流れることを防ぐことができる。このように、カットアウト21は、電流Iをカットアウト21の両側で2つの電流経路に分割する。
【0056】
更に、この実施形態の例において、4つの付加的な電圧検出用接点22~25が設けられていることに言及すべきである。従って、電圧検出用接点8~25は、4行4列のマトリクス状に配置されている。
【0057】
図4は、図3に係る実施形態の例の変形例を示すものであり、繰り返しを避けるため、上記の説明を参照し、対応する詳細については同じ参照符号を使用するものとする。
【0058】
ここで、切り込み20.1が、電流検出抵抗器の中心軸7に対して一定の偏心量eで偏心して配置されていることに言及するべきである。
【0059】
図5は、図3に係る実施形態の例の更なる変形例を再び示すものであり、繰り返しを避けるため、再び上記の説明を参照し、対応する詳細については同じ参照符号を使用するものとする。
【0060】
本実施形態の例の特徴は、電流検出抵抗器1に合計4つの切り込み20.1~20.4が配置されていることである。
【0061】
図6は、図3に係る実施形態の例の変形例を示すものであり、繰り返しを避けるため、上記の説明を参照し、対応する詳細については同じ参照符号を使用するものとする。
【0062】
この実施形態の例の特徴は、切り込み20が1つだけであることである。
【0063】
図7は、本発明に係る電流検出抵抗器1と、電圧検出用接点8~19において対で電圧を測定し、複数の測定チャンネルを提供する電圧測定装置26と、を備える完全な電流測定装置を示す。
【0064】
次に、測定された電圧値は評価ユニット27に転送され、評価ユニット27は測定された電圧値から電流Iを計算し、それによって評価ユニット27は個々の測定された電圧値を個別に重み付けすることもでき、それによって自動校正も可能である。
【0065】
本発明は、上述した好適な実施形態に限定されない。むしろ、本発明は、また、本発明の概念を利用し、それゆえ、保護の範囲内に入る多数の変形及び変形例も可能にする。特に、本発明は、各場合に参照される請求項とは独立して、また特に、主請求項の技術教示なしに、従属項の主題及び特徴に対する保護も主張する。従って、本発明は、互いに独立して保護を享受する本発明の異なる態様を含む。例えば、本発明の独立した態様は、電流の流れ方向に延在するカットアウトによって、電流を2つの平行な電流経路に分割することである。
【0066】
[付記]
[付記1]
電流(I)を測定するための電流検出抵抗器(1)であって、
a)測定される前記電流(I)を前記電流検出抵抗器(1)内に導入するための、導電材料から形成された第1の接続部材(2)と、
b)測定される前記電流(I)を前記電流検出抵抗器(1)から導出するための、導電材料から形成された第2の接続部材(3)と、
c)抵抗性材料から形成された抵抗素子(4)であって、測定される前記電流(I)が前記抵抗素子(4)を通って流れるように、前記第1の接続部材(2)と前記第2の接続部材(3)との間に電流の流れ方向に配置された抵抗素子(4)と、
d)前記抵抗素子(4)での電圧降下を測定するための少なくとも一対の電圧検出用接点(8~19;22~25)であって、前記接続部材(2、3)の1つにそれぞれ係合された電圧検出用接点(8~19;22~25)と、
e)前記接続部材(2,3)の少なくとも1つ内にある少なくとも1つの切り込み(20;20.1~20.4)であって、前記電圧検出用接点(8~19;22~25)の1つを囲み、該切り込み(20;20.1~20.4)を超えて電流が流れることを防ぐ切り込み(20;20.1~20.4)と、
を備え、
f)複数対の電圧検出用接点(8~19;22~25)が前記電流の流れ方向に並んで配置される、
ことを特徴とする電流検出抵抗器(1)。
【0067】
[付記2]
前記切り込み(20;20.1~20.4)と、前記切り込み(20;20.1~20.4)に囲まれた前記電圧検出用接点(14)とは、前記電流の流れ方向に直交する方向に対して前記接続部材(2)の中心に配置される、
ことを特徴とする付記1に記載の電流検出抵抗器(1)。
【0068】
[付記3]
a)前記電流検出抵抗器(1)は、前記電流の流れ方向に平行な特定の中心軸(7)を有し、
b)前記切り込み(20.1)を備える前記接続部材(2)は、前記電流の流れ方向に直交する特定の幅(B)を有し、及び、
c)前記切り込み(20.1)によって囲まれた前記電圧検出用接点(10)は、より小さい前記電流検出抵抗器(1)の前記中心軸(7)に対して、前記電流検出抵抗器(1)の前記幅(B)の50%、40%、30%、20%、10%又は5%より小さい偏心(e)を有する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の電流検出抵抗器(1)。
【0069】
[付記4]
a)前記接続部材は、前記電流の流れ方向に直交する特定の幅(B)を有し、及び、
b)前記接続部材内の前記切り込み(20;20.1~20.4)は、前記接続部材(2,3)の前記幅(B)の最大60%、50%又は40%にわたって前記電流の流れ方向に対して直交するように延びる、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載の電流検出抵抗器(1)。
【0070】
[付記5]
a)前記切り込み(20;20.1~20.4)は円弧状、特にU字形状、又はV字形状であり、前記電流の流れ方向に直交する基部と、前記電流の流れ方向に平行な前記抵抗素子(4)に面する脚部とを備える、及び/又は、
b)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記脚部は、前記電流の流れ方向に垂直であって、前記抵抗素子(4)の厚み(h)と少なくとも同じ大きさである幅(b)を有する、及び/又は、
c)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記基部は、前記電流の流れ方向に対して垂直であって、前記抵抗素子(4)の前記厚み(h)と少なくとも同じ大きさである幅(l)を有する、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の電流検出抵抗器(1)。
【0071】
[付記6]
a)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記脚部は、前記電流の流れ方向に前記抵抗素子(4)中に突出し、前記抵抗素子(4)内で終端し、特に前記抵抗素子(4)内で、
a1)6mmであり、ずれが最大で±3mm、±2mm、±1mm、±0.5mm、又は±0.2mmである、及び/又は、
a2)前記電流の流れ方向において、前記抵抗素子(4)の前記長さ(lRM)の10%~90%、20%~80%、又は30%~70%である、
脚長(dl)を備える、及び/又は、
b)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記脚部は、前記電流の流れ方向において、前記抵抗素子(4)の前の接続部材(2,3)で終端し、特に、
b1)4mmであり、ずれが最大で±2mm、±1mm、±0.5mm、又は±0.2mmである、及び/又は、
b2)前記電流検出抵抗器(1)の前記幅の10%~90%、20%~80%、又は30%~70%である、
脚長を備える、又は、
c)前記切り込み(20;20.1~20.4)の前記脚部は、前記電流の流れ方向において、前記抵抗素子(4)と前記接続部材(2,3)との間の境界で終端する、
ことを特徴とする付記5に記載の電流検出抵抗器(1)。
【0072】
[付記7]
前記接続部材(2,3)内の前記切り込み(20;20.1~20.4)は、コンタクトアイランドを区画し、前記切り込み(20;20.1~20.4)と前記抵抗素子(4)との間の前記コンタクトアイランドは、少なくとも4mm、5mm、6mm、8mm又は10mmの面積を有する、
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載の電流検出抵抗器(1)。
【0073】
[付記8]
a)少なくとも1つの切り込み(20.1~20.4)は、2つの前記接続部材(2,3)のそれぞれに配置されており、前記切り込み(20.1~20.4)は、電圧検出用接点(9,10,23,24)のためのコンタクトアイランドを囲み、及び、
b)前記切り込み(20.1~20.4)は、前記接続部材(2,3)において、前記抵抗素子(4)の対向する側に、つまり、前記電流検出抵抗器(1)の前記中心軸(7)に対して同じ遅行位置において、対で配置されている、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1つに記載の電流検出抵抗器(1)。
【0074】
[付記9]
前記2つの接続部材(2,3)の少なくとも1つにおいて、複数の切り込み(20.1~20.4)は、前記電流の流れ方向に対して互いに隣接して配置され、前記複数の切り込みは、電圧検出用接点(9,10,23,24)のためのコンタクトアイランドをそれぞれ囲む、
ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1つに記載の電流検出抵抗器(1)。
【0075】
[付記10]
a)前記抵抗素子(4)は、第1の部分と第2の部分とに分割されており、それにより、測定される前記電流(I)は、前記抵抗素子(4)の前記第1の部分を通る第1の電流経路と、前記抵抗素子(4)の前記第2の部分を通る第2の電流経路とに分けられ、
b)カットアウト(21)が、前記抵抗素子(4)に設けられ、前記カットアウト(21)は電流が前記カットアウト(21)を超えて流れることを防ぐため、前記2つの電流経路は、前記カットアウト(21)のどちらかの側を通り、
c)前記カットアウト(21)は、前記電流の流れ方向に、好ましくは前記抵抗素子(4)の全長にわたって延び、
d)前記カットアウト(21)は、好ましくは、前記電流の流れ方向に、前記接続部材(2,3)内に延びる、
ことを特徴とする付記1乃至9のいずれか1つに記載の電流検出抵抗器(1)。
【0076】
[付記11]
a)前記第1の電流経路において、それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)が前記電流の流れ方向に沿って並んで配置され、
b)前記第2の電流経路において、それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)が、前記電流の流れ方向に沿って並んで配置され、及び、
c)一対の電圧検出用接点(8~19;22~25)は、前記電流の流れ方向に対して横方向に前記抵抗素子(4)の前記2つの部分の間の前記電圧降下を測定するために、特に前記接続部材における前記抵抗素子(4)との直接の境界において、前記抵抗素子(4)の前記2つの部分を結合する、
ことを特徴とする付記10に記載の電流検出抵抗器(1)。
【0077】
[付記12]
a)前記第1の電流経路において、それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)が、前記電流の流れ方向に対して直交する方向に隣り合って配置されており、
b)前記第2の電流経路において、それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)が、前記電流の流れ方向に対して直交する方向に隣り合って配置されており、及び、
c)それぞれの場合において、複数の電圧検出用接点(8~19;22~25)は、前記抵抗素子(4)の前記2つの部分上に、すなわち、前記電流の流れ方向に対して直交する方向に隣り合って、特に、前記接続部材(2,3)内に前記抵抗素子(4)との境界に直接、配置される、
ことを特徴とする付記10又は11に記載の電流検出抵抗器(1)。
【0078】
[付記13]
a)導体材料は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金である、及び/又は、
b)前記接続部材(2,3)の前記導体材料は、前記抵抗素子(4)の抵抗材料よりも小さい比電気抵抗を有する、及び/又は、
c)前記抵抗素子(4)の前記抵抗材料は、以下の合金
c1)銅合金、特に銅-マンガン-錫合金、特にCuMn12Ni、若しくはCuMnSn2,3、又は銅-マンガン-ニッケル合金、特にCu84NiMn12、若しくはCu65Mn25Ni10、又は銅-クロム合金、
c2)ニッケル合金、特にNiCr又はCuNi、
のうちの1つである、及び/又は、
d)前記抵抗素子(4)は、電気的に及び機械的に、特に溶接継手によって、特に電子ビーム溶接による溶接継手によって、2つの前記接続部材に接続されている、及び/又は、
e)前記抵抗材料は、2・10-4Ω・m、2・10-5Ω・m、又は2・10-6Ω・m未満の比電気抵抗を有する、及び/又は、
f)前記抵抗材料は、2・10-6Ω・m、2・10-7Ω・mより大きい電気抵抗率を有する、及び/又は、
g)前記導体材料は、10-6Ω・m、又は10-7Ω・mより小さい比電気抵抗を有する、及び/又は、
h)前記抵抗は、最大で1μΩ、10μΩ、50μΩ、100μΩ、500μΩ、10mΩ、5mΩ、2mΩ、又は1mΩの抵抗値を備える低抵抗であること、及び/又は、
i)前記電流検出抵抗器(1)は、少なくとも1A、10A、100A、1kA、又は5kAの通電容量を有する、及び/又は、
j)前記抵抗素子(4)は、板状である、特に平板である、及び/又は、
k)前記接続部材(2,3)は、それぞれ板状である、特に平板である、及び/又は、
l)前記電流検出抵抗器(1)は、前記電流の流れ方向に30cm、20cm、又は10cm未満の長さ(L)を有する、及び/又は、
m)前記電流検出抵抗器(1)は、前記電流の流れ方向に直角な20cm、10cm、又は5cmの幅(B)を有する、及び/又は、
n)前記電流検出抵抗器(1)は、10mm、5mm、又は4mmより小さい厚さ(h)を有する、及び/又は、
o)前記2つの接続部材(2,3)は、それぞれ、電流を導入及び導出するための少なくとも1つの電流接続部(5,6)を有し、個々の前記電流接続部(5,6)は、好ましくは、それぞれの前記接続部材(2,3)に少なくとも1つの孔をそれぞれ有し、特にそれぞれの場合において電流の流れの方向に対して互いに隣接して配置されている2つの孔を備える、及び/又は、
p)個々の前記電圧検出用接点(8~19;22~25)は、それぞれの場合において、それぞれの前記接続部材(2,3)上の導電性コーティングからなるコンタクトアイランドである、及び/又は、
q)個々の前記コンタクトアイランドは、それぞれ実質的に方形である、及び/又は、
r)前記コンタクトアイランドの前記コーティングは、前記接続部材(2,3)とは異なる導電材料からなる、及び/又は、
s)前記電流検出抵抗器(1)上の前記コンタクトアイランドは、前記電流の流れ方向に直角な複数の列、特に4つの列で、且つ前記電流の流れ方向に平行な複数の行、特に3つの行で、マトリクス状に配置される、
ことを特徴とする付記1乃至12のいずれか1つに記載の電流検出抵抗器(1)。
【0079】
[付記14]
a)付記1乃至13のいずれか1つに記載の電流検出抵抗器(1)と、
b)前記電流検出抵抗器(1)の前記電圧検出用接点(8~19;22~25)での電圧を測定するため、及び、対応する電圧測定値を決定するための電圧測定装置(26)と、
c)前記電流検出抵抗器(1)を通って流れる前記電流(I)を、前記電圧測定値から決定するための評価ユニット(27)と、
を備える、電流測定装置。
【0080】
[付記15]
a)前記電圧検出用接点(8~19;22~25)は、ホイートストンブリッジ回路を形成する、及び/又は、
b)前記電圧検出用接点(8~19;22~25)は、複数の冗長な電流測定チャンネルを形成する、
ことを特徴とする付記14に記載の電流測定装置。
【符号の説明】
【0081】
1 電流検出抵抗器
2,3 接続部材
4 抵抗素子
5,6 電流接続部(接続部材内の孔)
7 電流検出抵抗器の中心軸
8~19 電圧検出用接点
20,20.1~20.4 切り込み
21 電流検出抵抗器内のカットアウト
22~25 電圧検出用接点
26 電圧測定装置
27 評価ユニット
B 電流方向に垂直な方向の電流検出抵抗器の幅
電流方向に垂直な切り込みの脚の幅
dl 抵抗素子の内部の切り込みの脚の長さ
e 切り込みの偏心度
h 電流検出抵抗器の厚み
I 電流
RM 通電方向に沿った抵抗素子の幅
電流方向に沿った切り込みの底辺の幅
L 電流方向に沿った電流検出抵抗器の長さ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】