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特表2023-524013家族性高コレステロール血症及び上昇した低密度リポタンパク質コレステロールの治療のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】家族性高コレステロール血症及び上昇した低密度リポタンパク質コレステロールの治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20230601BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/397 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20230601BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
A61K31/7088
C12N5/10
A61K31/711
A61P43/00 121
A61K31/7105
A61K9/127
A61K9/16
A61K9/51
A61K47/24
A61K47/18
A61K47/28
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/26
A61K31/197
A61K31/397
A61K31/40
A61K39/395 N
A61K31/445
A61P3/06
A61K35/407
C12N15/12 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565934
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 US2021030006
(87)【国際公開番号】W WO2021222653
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/017,424
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522418635
【氏名又は名称】サリオジェン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンズ、ジョセフ、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン、スコット
(72)【発明者】
【氏名】タビビアザール、レイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC21
4C076DD46H
4C076DD49H
4C076DD63H
4C076DD67H
4C076DD70H
4C076EE24H
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC02
4C086BC05
4C086BC21
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA38
4C086MA41
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZC33
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB52
4C087BB65
4C087MA02
4C087MA17
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZC33
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA47
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZC33
4C206ZC75
(57)【要約】
患者における総コレステロール及び/または低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を低下させ、それによって家族性高コレステロール血症を治療または緩和するために、超低密度リポタンパク質受容体遺伝子(VLDLR)及び低密度リポタンパク質受容体遺伝子(LDLR)を標的とするための遺伝子療法組成物及び方法が提供される。
【選択図】図13C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子導入構築物を含む組成物であって、
(a)超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)タンパク質もしくは低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質またはその機能的断片をコードする核酸と、
(b)肝臓特異的プロモーターと、
(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位、及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む、非ウイルスベクターと、を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記遺伝子導入構築物がDNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記遺伝子導入構築物が、コドン最適化されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記VLDLRタンパク質が、ヒトVLDLRタンパク質、またはその機能的断片である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒトVLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする前記核酸が、配列番号6のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒトVLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする前記核酸が、配列番号4のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記LDLRタンパク質が、ヒトLDLRタンパク質、またはその機能的断片である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ヒトLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする前記核酸が、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ヒトLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする前記核酸が、配列番号1のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒトLDLRタンパク質、またはその機能的断片が、配列番号3のアミノ酸配列と比較して、L18F、K830R、及びC839Aから選択される1つ以上の変異を含む、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項11】
前記肝臓特異的プロモーターが、LP1プロモーター、任意選択的に、ヒトLP1プロモーターであるか、または前記肝臓特異的プロモーターが、表1のプロモーターである、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記LP1プロモーターが、以下を含む、請求項11に記載の組成物:
(a)ヒトアンチトリプシンプロモーター、ヒトApoE/HCR1エンハンサー、及び/またはSV40イントロン、及び/または
(b)配列番号15の核酸配列、もしくはそれに対して少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアント。
【請求項13】
前記非ウイルスベクターが、DNAプラスミドであり、任意選択的に、
前記DNAプラスミドが、そばにある遺伝子の活性化または不活性化を防止または緩和する1つ以上のインスレーター配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ITRもしくは前記端部配列が、任意選択的に、TTAA反復性配列を含む、piggyBac様トランスポゾンのものであり、及び/または
前記ITRもしくは前記端部配列が、前記VLDLRタンパク質もしくはLDLRタンパク質をコードする前記核酸、もしくはその機能的断片に隣接する、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
プロタンパク質変換酵素サブチリシンケキシン(subtilisin kexin)9(PCSK9)を標的とするマイクロRNAをコードする核酸構築物を更に含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記トランスポザーゼをコードする核酸構築物、任意選択的に、前記トランスポザーゼをコードするmRNAを更に含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記トランスポザーゼが、Myotis lucifugusに由来する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
トランスポザーゼをコードする核酸構築物、任意選択的に、前記トランスポザーゼをコードするDNAを更に含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記トランスポザーゼが、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来し、及び/またはその操作されたバージョンであり、及び/または前記トランスポザーゼが、前記ITRもしくは前記端部配列を特異的に認識する、請求項16~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、脂質ナノ粒子(LNP)の形態にある、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、ジメチルアミノエタン-カルバモイルと混合されたカチオン性コレステロール誘導体(DC-Chol)、ホスファチジルコリン(PC)、トリオレイン(トリオレイン酸グリセリル)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG 2K)、及び1,2-ジステアロール(distearol)-sn-グリセロール-3ホスホコリン(DSPC)から選択される1つ以上の脂質を含み、及び/または、ポリエチレンイミン(PEI)、及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、及びN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)から選択される1つ以上の分子を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、追加の治療剤を含み、前記追加の治療剤が、任意選択的に、スタチン、エゼチミブ、胆汁酸結合樹脂、エボロクマブ、インクリシラン、ロミタピド、及びミポメルセンのうちの1つ以上から選択され、前記スタチンが、任意選択的に、アトルバスタチン(LIPITOR)、フルバスタチン(LESCOL)、ロバスタチン(ALTOCOR、ALTOPREV、MEVACOR)、ピタバスタチン(LIVALO)、プラバスタチン(PRAVACHOL)、ロスバスタチンカルシウム(CRESTOR)、及びシンバスタチン(ZOCOR)のうちの1つ以上である、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物を含む、単離された細胞。
【請求項24】
患者における総コレステロール及び/または低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を低下させるための方法であって、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
患者における総コレステロール及び/または低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を低下させるための方法であって、
(a)患者から得られた細胞を、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物と接触させることと、
(b)前記細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項26】
前記方法が、前記患者の心血管の健康を改善する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、前記投与を行わない総コレステロール及び/またはLDL-Cのレベルと比較して、総コレステロール及び/またはLDL-Cを約40%超、または約50%超、または約60%超、または約70%超、または約80%超、または約90%超低下させることを提供する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、血清LDL-Cレベルを約500mg/dL未満(約13mmol/L未満)まで低下させる、請求項24または25に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、ステロイド治療の不在下で実施される、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、実質的に非免疫原性である、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
総コレステロール及び/またはLDL-Cを前記低下させることが、恒久的である、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、単回投与を必要とする、請求項24~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、肝細胞におけるLDL代謝を刺激及び/または増加させる、請求項24~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物、及び/または、
PCSK9を標的とするマイクロRNAをコードする核酸構築物、を投与することを更に含む、請求項24~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞を、
任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物、及び/または、
PCSK9を標的とするマイクロRNAをコードする核酸構築物、と接触させることを更に含む、請求項24~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記投与することが、静脈内である、請求項24~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、家族性高コレステロール血症、一般的な高コレステロール血症、増加したトリグリセリド、インスリン抵抗性、または代謝症候群を治療する、請求項24~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記投与することが、肝臓への、任意選択的に、門脈内血管または肝臓実質へのものである、請求項24~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)もしくは前記低密度リポタンパク質受容体タンパク質(LDLR)、またはその機能的断片をコードする前記核酸対トランスポザーゼをコードする前記核酸構築物の比が、約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1、または約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5である、請求項34~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)もしくは低密度リポタンパク質受容体タンパク質(LDLR)、またはその機能的断片をコードする前記核酸対トランスポザーゼをコードする前記核酸構築物の前記比が、約2:1である、請求項34~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
PCSK9を標的とするmiRNAをそれを必要とする前記患者に投与することを更に含む、請求項24~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
追加の治療剤をそれを必要とする前記患者に投与することを含み、前記追加の治療剤が、任意選択的に、スタチン、エゼチミブ、胆汁酸結合樹脂、エボロクマブ、インクリシラン、ロミタピド、及びミポメルセンのうちの1つ以上から選択される、請求項24~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記スタチンが、アトルバスタチン(LIPITOR)、フルバスタチン(LESCOL)、ロバスタチン(ALTOCOR、ALTOPREV、MEVACOR)、ピタバスタチン(LIVALO)、プラバスタチン(PRAVACHOL)、ロスバスタチンカルシウム(CRESTOR)、及びシンバスタチン(ZOCOR)のうちの1つ以上である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
家族性高コレステロール血症(FH)を治療及び/または緩和するための方法であって、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
家族性高コレステロール血症(FH)を治療及び/または緩和するための方法であって、
(a)患者から得られた細胞を、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物と接触させることと、
(b)前記細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項46】
前記FHが、ホモ接合型FH(HoFH)またはヘテロ接合型FH(HeFH)である、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記FHが、APOB、LDLR、及びPCSK9のうちの1つ以上における1つ以上の変異を特徴とする、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記方法が、冠動脈疾患(CAD)を治療及び/または緩和する、請求項44~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
スタチン、エゼチミブ、胆汁酸結合樹脂、エボロクマブ、インクリシラン、ロミタピド、及びミポメルセンのうちの1つ以上を投与することを更に含む、請求項44~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、スタチン、エゼチミブ、胆汁酸結合樹脂、エボロクマブ、インクリシラン、ロミタピド、及びミポメルセンのうちの1つ以上での治療の必要性を排除する、請求項44~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記方法が、LDLアフェレシスの必要性を排除する、請求項44~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記方法が、ステロイド治療の必要性を排除する、請求項44~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記方法が、前記患者の心血管の健康を改善する、請求項44~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記方法が、実質的に非免疫原性である、請求項44~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記治療及び/または緩和が、恒久的である、請求項44~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記方法が、単回投与を必要とする、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記方法が、肝細胞におけるLDL代謝を刺激及び/または増加させる、請求項44~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
任意選択的に、Bombyx mori、もしくはXenopus tropicalisに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物、及び/または
PCSK9を標的とするマイクロRNAをコードする核酸構築物、を投与することを更に含む、請求項44~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記投与することが、静脈内である、請求項44~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記投与することが、肝臓への、任意選択的に、門脈内血管または肝臓実質へのものである、請求項44~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞を、任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物と接触させることを更に含む、請求項44~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)もしくは前記低密度リポタンパク質受容体タンパク質(LDLR)、またはその機能的断片をコードする前記核酸対トランスポザーゼをコードする前記核酸構築物の前記比が、約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1、または約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5である、請求項58または61に記載の方法。
【請求項63】
前記超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)もしくは低密度リポタンパク質受容体タンパク質(LDLR)、またはその機能的断片をコードする前記核酸対トランスポザーゼをコードする前記核酸構築物の前記比が、約2:1である、請求項58または61に記載の方法。
【請求項64】
PCSK9を標的とするmiRNAを投与することを更に含む、請求項44~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
追加の治療剤をそれを必要とする前記患者に投与することを含み、前記追加の治療剤が、任意選択的に、スタチン、エゼチミブ、胆汁酸結合樹脂、エボロクマブ、ロミタピド、及びミポメルセンのうちの1つ以上から選択される、請求項44~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記スタチンが、アトルバスタチン(LIPITOR)、フルバスタチン(LESCOL)、ロバスタチン(ALTOCOR、ALTOPREV、MEVACOR)、ピタバスタチン(LIVALO)、プラバスタチン(PRAVACHOL)、ロスバスタチンカルシウム(CRESTOR)、及びシンバスタチン(ZOCOR)のうちの1つ以上である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
遺伝子導入構築物を含む組成物であって、
(a)超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)もしくは低密度リポタンパク質受容体タンパク質(LDLR)またはその機能的断片をコードする核酸であって、前記VLDLRが、配列番号4のヌクレオチド配列もしくはそれに対して約90%の同一性のバリアント、または配列番号5のヌクレオチド配列もしくはそれに対して約90%の同一性のバリアントを含む、前記核酸と、
(b)肝臓特異的プロモーターであって、前記肝臓特異的プロモーターが、配列番号15の核酸配列を有するヒトLP1プロモーター、またはそれに対して少なくとも約90%の同一性を有するバリアントである、前記肝臓特異的プロモーターと、
(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位、及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む、非ウイルスベクターと、を含む、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上昇した低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)に関連する疾患及び状態を治療及び/または緩和するための方法、組成物、及び製品に部分的に関連する。
【0002】
優先権
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2020年4月29日出願の米国仮特許出願第63/017,424号の優先権及び利益を主張する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本出願は、EFS-Webを介して電子的に本明細書とともに提出されたASCII形式の配列表を含む。2021年4月28日に作成されたASCIIコピーは、SAL-001PC_Sequence Listing_ST25.txtという名称であり、75,515バイトのサイズである。配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
家族性高コレステロール血症(FH)は、最も頻度の高い脂質異常症のうちの1つであり、出生以来の、高濃度の総リポタンパク質コレステロール及び低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を特徴とする、常染色体優性疾患である。これは、1:200~1:250人の頻度で、加速したアテローム性動脈硬化症及び若年性冠動脈性心臓疾患をもたらす生命を脅かす状態である。Hopkins et al.,J Clin Lipidol 2011;5:S9-17、Talmud et al.Curr Opin Lipidol 2014;25:274-81を参照されたい。
【0005】
コレステロールは、必須の細胞構成要素であり、コレステロール恒常性の維持は、正常な生理学的機能にとって重要である。血漿コレステロールの上昇したレベルは、様々な病理学的状態、最も顕著には、高コレステロールレベルが泡沫細胞形成及び動脈内のプラーク蓄積をもたらし、潜在的に心臓発作または脳卒中を生じる冠動脈性心臓疾患に関連する。細胞コレステロール代謝及び血漿コレステロールレベルの調節は、特定の細胞への、低密度リポタンパク質(LDL)受容体によって媒介されるLDL取り込みに依存する。LDLは、血液中のコレステロールの主要な担体であり、総血漿コレステロールのうちの60%超を占める。LDLは、apoB-100-LDL受容体相互作用によって引き起こされる、受容体によって媒介されるエンドサイトーシスを通じて、肝組織及び肝外組織によって取り込まれる。取り込まれたLDL粒子は、リソソームに輸送され、リソソームにおいて遊離コレステロールとアミノ酸とに分解される。ヒトにおいて、肝臓は、LDL異化及びLDL受容体活性のための最も重要な臓器である。肝臓における薬理学的介入によって、LDLを調節することができる。肝組織によるLDL取り込みの基礎となる機序は、明確には理解されていない。したがって、LDL取り込み及びその調節は、アテローム性動脈硬化症及び関連疾患の重要な治療標的である。
【0006】
FHは、最も深刻な一般的に遺伝性の代謝疾患のうちの1つに相当する。高い有病率にもかかわらず、FHは、依然としてあまり診断が確定されておらず、治療されていない。FHのうちの推定70%~95%は、3つの遺伝子(APOB、LDLR、プロタンパク質変換酵素サブチリシンケキシン(subtilisin kexin)9(PCSK9))のうちの1つにおけるヘテロ接合型病原バリアントから生じる。低密度リポタンパク質受容体遺伝子(LDLR)における変異は、症例のうちの90%超の原因である。LDLRは、低密度リポタンパク質-コレステロール(LDL-C)のエンドサイトーシスに関与する細胞表面タンパク質受容体である。LDL-Cが細胞膜で結合した後、細胞によって取り込まれ、リソソームに輸送され、リソソームにおいてタンパク質部分が分解され、コレステロール分子がネガティブフィードバックを介して更なるコレステロール合成を抑制する。LDLR遺伝子における病原バリアントは、細胞内で産生されるLDL受容体の数を減少させるか、またはLDL-Cに結合する受容体の能力を妨害するかのいずれかである。LDLR遺伝子におけるホモ接合型FH(HoFH)及びヘテロ接合型FH(HeFH)病原バリアントは、高レベルの血漿LDL-C及びアテローム性動脈硬化症を引き起こす。
【0007】
ホモ接合型FHは、3つの遺伝子(APOB、LDLR、PCSK9)のうちの1つにおける二対立遺伝子(ホモ接合型または複合ヘテロ接合型)病原バリアントから生じる。当初、1:1,000,000で影響を及ぼすと記載されていたHoFHは、現在では、1:160,000~1:250,000の有病率を有すると推定されている。Cuchel et al.Eur Heart J 2014;35:2146-57.HoFHを有するほとんどの個人は、20代半ばまでに重度の冠動脈疾患(CAD)を経験する。10代での死亡または冠動脈バイパス手術のいずれかの割合は高く、重度の大動脈弁狭窄も一般的である。
【0008】
FHの従来の治療は、典型的には、複数の薬理学的薬剤を伴う。例えば、スタチン医薬品は、HeFH患者を助けることができるが、特に、HoFHを有する個人にとっては、多くの場合応答が減衰し、不十分であり得る。スタチンの有効性は、肝臓における機能的LDL受容体の上方制御に大きく依存するので、HoFHの治療において比較的効果的ではない場合がある。また、一部の患者は、スタチン不耐症を有する。HoFHを有する個体では、LDL受容体の両方のコピーの活性が不在であるか、または著しく低減しており、HoFHの療法は、多くの場合、複数の他の医薬品の使用に加えてLDLアフェレシス(機械的濾過)を必要とする。LDLアフェレシスは、多くの場合、若い年齢から必要とされ、この手順を提供する施設の数が限定的なことによって、LDLアフェレシスの使用は深刻な問題である。いくつかの重症症例では、FH患者は、肝臓移植を受ける。
【0009】
FH及び上昇したLDL-Cを有する患者の治療のためのいくつかの医薬品が存在し、ロミタピド、ミポマーセン(Kynamro)、及びプロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)阻害剤(例えば、インクリシラン、エボロクマブ(Repatha)、アリロクマブ(Praluent))が挙げられる。しかしながら、現在の努力にもかかわらず、LDL-Cレベル及び関連する心血管罹患率及び死亡率は、FH患者において高いままである。FHは、多くの場合、脂質低下薬物療法を生涯にわたって必要とし、患者及び医療制度に負担となる。
【0010】
したがって、患者におけるLDL-Cを低下させ、それによって患者の心血管の健康を改善するための改善された組成物及び方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、家族性高コレステロール血症(FH)または上昇したLDL-Cを有する患者における心血管事象を治療及び/または緩和するための組成物及び方法を提供する。本発明の組成物及び方法は、配列特異的または遺伝子座特異的転移(SLST)を使用して、LDLR遺伝子変異または上昇したLDL-Cを有する患者における脂質代謝を補正する、トランスポゾン発現ベクターを含む遺伝子導入構築物を使用する。この方式では、本発明は、ホモ接合型FH(HeFH)、ヘテロ接合型FH(HoFH)患者、及び上昇したLDL-Cを有する患者における、肝細胞におけるLDL代謝を元に戻すための方式を提供する。本発明は、家族性高コレステロール血症、一般的な高コレステロール血症、増加したトリグリセリド、インスリン抵抗、代謝症候群、及び総コレステロールの上昇したレベルを特徴とする他の疾患を治療するために使用することができる。
【0012】
したがって、いくつかの態様では、(a)超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)タンパク質もしくは低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質またはその機能的断片をコードする核酸と、(b)肝臓特異的プロモーターと、(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む非ウイルスベクターと、を含む、遺伝子導入構築物を含む組成物が提供される。実施形態では、これらの構築物は、PCSK9miRNAと組み合わせて、PCSK9の肝合成を低減し、LDL及びVLDL受容体の両方を上方制御することができる。遺伝子導入は、機能的VLDLRまたはLDLRの安定的な部位特異的ゲノム組み込みを可能にする。本発明の遺伝子導入構築物は、総コレステロールレベルを低下させて、それによってFH及びその症状を治療及び/または緩和し、患者の全体的な心血管の健康を改善することを可能にする。
【0013】
本開示による遺伝子療法は、導入される遺伝子と同じベクター(シス)上、または異なるベクター(トランス)上に提供されるトランスポザーゼによる補助を用いる、トランスポゾンに基づくベクター系を使用して実施することができる。トランスポゾンに基づくベクター系は、肝臓特異的プロモーターの制御下で動作することができる。いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、LP1プロモーターである。LP1プロモーターは、ヒトLP1プロモーターであり得、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるNathwani et al.Blood vol.107(7)(2006):2653-61に記載されているように構築することができる。実施形態では、LP1プロモーターは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Nathwani et al.Blood vol.107(7)(2006):2653-61に記載されており、例えば、Nathwani et al.の図S1を参照されたい。
【0014】
実施形態では、例えば、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンであるものが、遺伝子導入構築物のPCSK9サイレンシングmiRNAを含むかまたは含まないVLDLRまたはLDLR遺伝子を患者のゲノムに挿入するために使用される(したがって、本明細書では、PCSK9サイレンシングmiRNAを含むかまたは含まないVLDLRまたはLDLR遺伝子構築物は、時折、トランスポゾンと称される)。
【0015】
実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するバリアント、ならびにL573X、E574X、及びS2Xから選択される1つ以上の変異を含む、Myotis lucifugusトランスポザーゼ(MLT、またはMLTトランスポザーゼ)であり、Xが、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、A、G、または欠失である。実施形態では、変異は、L573del、E574del、及びS2Aである。
【0016】
実施形態では、MLTトランスポザーゼは、L573X、E574X、及びS2Xから選択される1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態では、Xは、任意のアミノ酸または非アミノ酸である。
【0017】
実施形態では、MLTトランスポザーゼは、変異L573del、E574del、及びS2A、加えて、高活性を付与する1つ以上の変異(または高活性変異)を有する、アミノ酸配列を含む。実施形態では、高活性変異は、S8X、C13X、及びN125X変異のうちの1つ以上であり、Xが、任意選択的に、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、P、R、またはKである。実施形態では、変異は、S8P、C13R、及びN125Kである。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、S8P及びC13R変異を有する。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、N125K変異を有する。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、S8P、C13R、及びN125K変異の3つ全てを有する。
【0018】
記載の組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)を使用して宿主細胞に送達され得る。いくつかの実施形態では、LNPは、中性または構造的脂質(例えばDSPC)、カチオン性脂質(例えばMC3)、コレステロール、PEG共役脂質(CDM-PEG)、及び標的化リガンド[例えばN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)]から選択される1つ以上の分子を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、LDL、VLDL、または他の脂質受容体が減少したかまたは不在の肝細胞への、アシアロ糖タンパク質(Asialoglycoprotein)受容体(ASGPR)によって媒介される取り込みのためのGalNAcまたは別のリガンドを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、インビボまたはエクスビボ方法であり得る、患者における総コレステロール及び/またはLDL-Cを低下させるための方法が提供される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の実施形態による組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者における総コレステロール及び/またはLDL-Cを低下させるためのエクスビボ方法は、(a)患者から得られた細胞を、記載の組成物と接触させることと、(b)細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、インビボまたはエクスビボでも実施することができる、上昇したLDLーCを治療及び/または緩和するための方法が提供される。上昇したLDL-Cを治療及び/または緩和するための方法は、FHを治療及び/または緩和することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の実施形態よる組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、FHを治療及び/または緩和するための方法は、(a)患者から得られた細胞を、本開示の組成物と接触させることと、(b)細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む。
【0021】
本開示の実施形態による組成物及び方法は、実質的に非免疫原性であり、いかなる管理不能な副作用も引き起こさず、場合によっては、単回投与を介して効果的に送達され得る。FHの治療及び/または緩和、または総コレステロール及び/またはLDL-Cを低下させることは、堅牢かつ恒久的であり得る。記載の組成物及び方法は、冠動脈疾患(CAD)またはアテローム性動脈硬化症を治療及び/または緩和することを可能にする。
【0022】
本開示のいくつかの態様では、本開示の実施形態による組成物を含む単離された細胞が提供される。
【0023】
本発明の詳細は、以下の添付の説明に記載される。本明細書に記載の方法及び材料と同様または等価なものが、本発明の実施または試験で使用され得るが、例示的な方法及び材料がここに記載される。本発明の他の特色、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲では、別段文脈が明示的に示さない限り、単数形はまた、複数形を含む。別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ヒトLDRL遺伝子の概略図を示す。
図2】ヒトLDRL遺伝子mRNAの概略図を示す。
図3】ヒトLDRLタンパク質の概略図を示す。
図4】本開示のいくつかの実施形態で使用される遺伝子導入構築物の概略図である。
図5】本開示のいくつかの実施形態で使用される脂質ナノ粒子構造を示す。
図6】ヌクレオフェクションの24時間後のHuh7細胞のGFP発現を示し、4つのパネル(左から右)は、Nucleofector(商標)溶液キット(Lonza,Basel,Switzerland)、プログラムCA-137、CM-150、CM-138、及びEO-100で得られたデータを示す。各パネルの上段は、GFP蛍光を示し、下段は、明視野顕微鏡データを示す。
図7】ヌクレオフェクションの4日後のHuh7細胞のGFP発現の結果を示し、4つのパネル(左から右)は、Nucleofector(商標)溶液キット、プログラムCA-137、CM-150、CM-138、及びEO-100で得られたデータを示す。各パネルの上段は、GFP蛍光を示し、下段は、明視野顕微鏡データを示す。
図8】ヌクレオフェクションの24時間後のヌクレオフェクション効率の定量化の結果:Nucleofector(商標)溶液キット、プログラムCA-137(A)、CM-150(B)、CM-138(C)、及びEO-100(D)で得られたデータを示す。各図の上段は、GFP蛍光を示し、下段は、蛍光活性化細胞選別(FACS)プロットを示す。
図9-1】以下のように、トランスフェクションの7日後の異なる条件下でトランスフェクトされたHuh7細胞のFACSプロットを示す。(A)プログラム無し 陰性アッセイ対照、(B)pmaxGFP-陽性アッセイ対照、(C)LP1-VLDLR/PGK-GFPプラスミド(すなわち、LP1プロモーター、超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)遺伝子、及び向上されたPGKプロモーターによって駆動された発現(eGFP)を含むプラスミド)。
図9-2】(D)LP1-VLDLR/PGK-GFP+MLT1、(E)LP1-VLDLR/PGK-GFP+MLT2、(F)MLT1、(G)MLT2。
図10】VLDLRプラスミド及びMLTトランスポザーゼ2で治療されたHuh7細胞に対する治療されていないHuh7細胞のLDL-C取り込みを示す。
図11】変動する条件下:治療されていないHuh7細胞;LP1-hVLDRLドナー及びMLTトランスポザーゼで治療されたHuh7細胞;LP1-hVLDRL+PGK-GFPドナー及びMLTトランスポザーゼで治療されたHuh7細胞;Huh7細胞は、ドナーで治療されていない(「ドナーなし」);ドナー(LP1-hVLDRL)のみで治療されたHuh7細胞「ドナーのみ」;ドナー(LP1-hVLDRL+PGK-GFP)のみで治療されたHuh7細胞「ドナーのみ」;HEK293細胞、でのVLDLR発現のRT qPCR結果を示す。
図12】本開示のいくつかの実施形態で使用される遺伝子導入構築物(DNAドナープラスミド)の概略図である。
図13図12の遺伝子導入構築物を使用した、トランスポザーゼ(MLT1及びMLT2)を用いた(「トランスポザーゼ+」)、及び用いない(「トランスポザーゼ-」)アッセイでの、Huh7細胞におけるGFP発現の画像及びFACSプロットである。A、B、及びCは、それぞれ、24時間(A)、72時間(B)、及び7日(C)でのトランスポザーゼ-アッセイ(上)及びトランスポザーゼ+アッセイ(下)のデータを示す。
図14】ヌクレオフェクトされていない(治療されていない)HEK293及びHuh7細胞におけるベースラインLDL取り込みを示す。Aは、LDL取り込みのみの治療されていないHEK293細胞を示し、Bは、LDL取り込みのみの治療されていないHuh7細胞を示し、Cは、染色されていない治療されていないHEK293細胞を示し、Dは、染色されていない治療されていないHuh7細胞を示す。
図15】転移されていないHuh7細胞に対する転移されたHuh7細胞におけるLDL取り込みを示す。比較のために、Aは、転移されていない(トランスポザーゼ-)HEK293細胞を示し、Bは、転移されていない(トランスポザーゼ-)Huh7細胞を示し、Cは、ヒトLP1-VLDLRプラスミド(pVLDLR)でヌクレオフェクトされた転移されていない(トランスポザーゼ-)Huh7細胞を示し、Dは、ヒトLP1-VLDLRプラスミド(pVLDLR)でヌクレオフェクトされた、MLT1で転移されたHuh7細胞を示し、Eは、ヒトLP1-VLDLRプラスミド(pVLDLR)でヌクレオフェクトされた、MLTトランスポザーゼ2で転移されたHuh7細胞を示す。
図16】3日目(A)及び5日目(B)の動物コホート1(表7に記載)の全身生物発光撮像(BLI)を示す。
図17A】3日目の動物コホート2(表8に記載)のBLIを示す。
図17B】5日目の動物コホート2(表8に記載)のBLIを示す。
図18A】3日目の動物コホート3(表9に記載)のBLIを示す。
図18B】5日目の動物コホート3(表9に記載)のBLIを示す。
図19】長期維持(それぞれ26日及び33日)後の動物群6及び動物群8に属する動物からのBLIを示す。
図20】左パネル-LNP中用量(250uL)(ldlr-/-)を投与した26日目の動物シリアル番号6001(表8)からのBLI、右パネル-LNP低用量(125uL)(ldlr-/-)を投与した26日目の動物シリアル番号8002(表9)からのBLIを示す。
図21A】本開示の肝臓特異的LNP製剤の、ldlr-/-マウスにおける有効性評価の結果を示す。トリグリセリド(mg/dL)は、参照範囲、ならびに治療されていないマウス及び治療された(vldlr)マウスの7日目(D7)及び15日目(D15)で示される。
図21B】試験動物の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の(u/Lでの)測定値として、安全性評価の結果を示す。各々、参照(「1」)範囲、ならびにD7(「2」)、及びD15(「3」)のデータを含む、治療されていない群、治療された群(vLdlr)、及びPBS群についてのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、非ウイルスのカプシドを含まない遺伝子療法方法及び組成物を使用して、総コレステロール及び低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を低下させ、それによって、家族性高コレステロール血症(FH)及びLDL-C上昇の心血管効果を治療及び緩和することができるという発見に部分的に基づいている。本開示による非ウイルス遺伝子療法方法は、低密度リポタンパク質受容体遺伝子(LDLR)、超低密度リポタンパク質受容体遺伝子(VLDLR)における変異を補正するための、またはLDL-Cの血清上昇を緩和するための、肝臓指向性遺伝子療法での使用が見出される。記載の方法及び組成物は、LDLRまたはVLDLRの転移を用いる。記載の方法及び組成物は、患者の心血管の健康を改善し、それによって患者の全体的な予後及び健康を改善する。
【0026】
いくつかの実施形態では、記載の方法及び組成物は、1回用量または反復用量として投与され得る。投与経路は、いくつかの実施形態では、静脈内もしくは門脈内血管に、または直接肝臓実質にであり得る。
【0027】
FHは、LDLR、APOB、及びPCSK9の主に3つの遺伝子における変異によって引き起こされるが、LDLRにおける変異が最も一般的であり、報告されているFHを引き起こすバリアントのうちの90%超がLDLRにおいてであり、APOBでは5%~10%、PCSK9では1%未満である。Iacocca et al.Expert Rev Mol Diagn 2017;17:641-51を参照されたい。
【0028】
LDLRは、染色体19に位置し、そのゲノム構造は、18個のエクソン及び17個のイントロンを含み、45kbに及ぶ。LDLR遺伝子、mRNA、及びタンパク質は、それぞれ、図1、2、及び3に概略的に示されている。ヒトLDLR転写産物バリアント1mRNA(NCBI参照:NM_000527.5)は、以下である。
【化1-1】

【化1-2】

【0029】
病原バリアントは、LDLRのプロモーター、イントロン、及びエクソンにおいて報告されており、病原バリアントの大部分は、リガンド結合ドメイン(40%)または表皮成長因子前駆体様ドメイン(47%)内にあり、病原バリアントの最も高い頻度は、エクソン4(20%)において報告されている。LDLRは、839アミノ酸の成熟タンパク質産生物をコードする。LDLRは、互いに独立して機能することができる4つの異なる機能的ドメイン:LDL受容体ドメインクラスA(LDLa)、表皮成長因子様ドメイン(EGF)、カルシウム結合EGF様ドメイン(EGF-CA)、及びLDL受容体反復クラスB(LDLb)を有する。LDLRは、LDLコレステロール(LDL-C)のエンドサイトーシスに関与する細胞表面タンパク質を含む。LDL-Cが細胞膜で結合した後、細胞及びリソソームに取り込まれ、リソソームにおいてタンパク質部分が分解され、コレステロール分子がネガティブフィードバックを介してコレステロール合成を抑制する。
【0030】
LDLR遺伝子における病原バリアントは、通常、細胞内で産生されるLDL受容体の数を減少させるか、またはLDL-Cに結合する受容体の能力を妨害するかのいずれかである。特定の機序に関わらず、LDLRにおけるヘテロ接合型病原バリアントは、高レベルの血漿LDL-Cを引き起こす。
【0031】
肝LDLR発現は、PCSK9によって調節され、PCSK9によって媒介されるLDLRの分解を妨げる第2世代脂質低下薬は、PCSK9に集中する。別の機序は、ユビキチン-プロテアソーム経路による受容体の分解に基づく、LDLR発現の転写後調節に関与し、受容体発現を増加させる追加の標的として浮上している。LDLR発現を増加させるそのような戦略は、PCSK9における天然に存在する機能喪失変異、及びLDL-Cレベルを低下させるが疾患がこれらのバリアントに関連しないLDLRの誘導可能な分解因子(inducible degrader)(IDOL、MYLIP)によって支持されている。ヒトLDLRバリアントK830R及びC839Aは、IDOLによって媒介されるLDLRの分解を防げることが以前に報告されている。Somanathan et al.,Circ Res 2014;115:591-9.加えて、L339Dは、ヒトPCSK9によって媒介される分解に対する耐性を付与する。Id.3つ全てのバリアント(L339D、K830R、及びC839A)を含有するLDLRを送達するAAVベクターにおいて、LDRLは、野生型LDLRを使用するベクターと比較して、PCSK9及びIDOL経路の両方による調節に耐性であった。Id.
【0032】
いくつかの実施形態では、ヒトLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸は、NM_000527.5(配列番号1)のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0033】
実施形態では、LDLRタンパク質は、ヒトLDLRタンパク質、またはその機能的断片である。
【0034】
実施形態では、ヒトLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸は、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0035】
実施形態では、ヒトLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸は、配列番号1のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、ヒトLDLRタンパク質は、L339D、K830R、及びC839Aから選択される1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、ヒトLDLRは、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする配列番号2のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。いくつかの実施形態では、ヒトLDLRは、配列番号3のアミノ酸配列をコードする配列番号2のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0037】
実施形態では、ヒトLDLRタンパク質またはその機能的断片は、配列番号3のアミノ酸配列と比較して、L18F、K830R、及びC839Aから選択される1つ以上の変異を含む。
【0038】
配列番号2のヌクレオチド配列(2583bp)は、以下に太字で下線が引かれているバリアントL339D、K830L、C839Aを含む。配列番号3のアミノ酸配列(860個のアミノ酸)は、以下に太字で下線が引かれているバリアントL339D、K830L、C839Aを含む。
【0039】
配列番号2は、以下である。
【化2】
【0040】
配列番号3は、以下である。
【化3】
【0041】
いくつかの実施形態では、ヒトLDLRをコードする核酸は、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含み得る。
【0042】
VLDLRは、染色体9に位置し、ゲノムのおよそ40kbに及ぶ19個のエクソンを含有する。遺伝子のエクソン-イントロン編成は、VLDL受容体のリガンド結合ドメインの追加の反復をコードする余分なエクソンを除いて、LDLR遺伝子のものとほぼ同一である。Homo sapiens VLDLR転写産物(mRNA)バリアント1は、9,213bp(NCBI参照:NM_003383.5)またはおよそ9.2kbである:

【化4-1】

【化4-2】

【化4-3】

【化4-4】
【0043】
LDLRのように、VLDLRは、5つのドメイン:LDLRのリガンド結合ドメインに相同な8つのシステインが豊富な反復で構成されるN末端の328アミノ酸、LDLRのリガンドにおける酸依存性解離を媒介する表皮成長因子前駆体に相同な396アミノ酸領域、LDLRのクラスター化したO-結合型の糖に相同な46アミノ酸ドメイン、22アミノ酸の膜貫通ドメイン、及び被覆小窩内に受容体をクラスター化するために必要であるNPXY配列を含む54アミノ酸細胞質ドメインからなる。VLDL受容体の遺伝子は、脂肪酸代謝において活性である心臓、筋肉、及び脂肪組織において高度に発現し、本質的には、肝臓では発現が見出されない。
【0044】
本開示の組成物及び方法は、患者のゲノムにおける病原バリアントを補正し、したがって、総コレステロール及び/または低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を低下させるために、LDLR及びVLDLRを標的とする遺伝子導入構築物を提供する。したがって、本開示のいくつかの態様では、(a)VLDLRもしくはLDLRまたはその機能的断片と、(b)肝臓特異的プロモーターと、(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む非ウイルスベクターと、を含む、遺伝子導入構築物を含む組成物が提供される。
【0045】
いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物は、LDLRの代わりに、VLDLRまたはその機能的断片を含む。VLDLRは、LDLRと構造的及び機能的に密接に関連しており、内皮細胞へのapoEが豊富なリポタンパク質の直接取り込みによって、及びリパーゼによって媒介されるこれらのリポタンパク質の代謝の上方制御を通じて、apoEが豊富なリポタンパク質の肝外代謝を主に調節する。LDLRとは対照的に、VLDLRの発現は、細胞内遊離コレステロールによって調節されない。LDLRが豊富である肝細胞では、VLDLRは、通常、微量のみ発現するが、LDLRの不在を補うことができる。Takahashi et al.J Atheroscler Thromb 2004;11:200-8、Turunen et al.(2016).Mol Ther 2016;24:620-35、Go & Mani.Yale J Biol Med 2012;85:19-28を参照されたい。
【0046】
いくつかの実施形態では、VLDLRタンパク質は、ヒトVLDLRタンパク質、またはその機能的断片である。実施形態では、ヒトVLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸は、配列番号6のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、ヒトVLDLR、またはその機能的断片をコードする核酸は、配列番号5のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む:

【化5】

【0048】
いくつかの実施形態では、ヒトVLDLR、またはその機能的断片をコードする核酸は、配列番号6のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む:
【化6】
【0049】
いくつかの実施形態では、VLDLR遺伝子またはその機能的断片は、マウス(ハツカネズミ)VLDLRである。マウスVLDLRは、配列番号8のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする配列番号7のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含み得る。
【0050】
実施形態では、ヒトVLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸は、配列番号4のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、マウスVLDLR、またはその機能的断片をコードする核酸は、配列番号7のヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む:

【化7】
【0052】
いくつかの実施形態では、マウスVLDLRまたはその機能的断片は、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む:
【化8】
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明は、二重トランスポゾン及びトランスポザーゼ系を介した遺伝子導入のための組成物及び方法に関する。転移可能な因子は、天然に普遍的に見出される非ウイルス遺伝子送達ビヒクルである。トランスポゾンに基づくベクターは、細胞への導入遺伝子構築物の安定的なゲノム組み込み及び長期間の発現の能力を有する。総じて、二重トランスポゾン及びトランスポザーゼ系は、目的の導入遺伝子(複数可)を含有するトランスポゾンDNAが、トランスポザーゼ酵素によって染色体DNAに組み込まれることによる、切断及び貼り付け機序を介して機能する。
【0054】
当該技術分野において理解されるであろうように、トランスポゾンは、多くの場合、トランスポゾンの中央の導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレームと、トランスポゾンの5’及び3’末端の末端反復配列と、を含む。翻訳されたトランスポザーゼは、トランスポゾンの5’及び3’配列に結合し、転移機能を実行する。
【0055】
実施形態では、トランスポゾンは、それら自体のコピーを他のポリヌクレオチドに挿入することが可能なポリヌクレオチドを指すために使用される、転移可能な因子と同義に使用される。トランスポゾンという用語は、当業者に周知であり、配列編成、例えば、各末端での短い逆位反復(ITR)、及び/または末端での直接的に繰り返される長い末端反復(LTR)に基づいて区別され得る部類のトランスポゾンを含む。実施形態では、本明細書に記載のトランスポゾンは、piggyBac様因子、例えば、TTAA配列を認識し、トランスポゾンの除去後に挿入部位の配列を元のTTAA配列に戻す、痕跡が残らない切除を特徴とするトランスポゾン因子として説明することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、トランスポザーゼによって認識されるITRに隣接する、トランスポゾンによって媒介される遺伝子導入系(例えば、DNAプラスミドトランスポゾン系)である。いくつかの実施形態では、ITRは、VLDLRまたはLDLR構築物に隣接する。非ウイルスベクターは、トランスポザーゼによって認識される2つの末端に隣接する異種ポリヌクレオチド(導入遺伝子とも称される)を含む、トランスポゾンに基づくベクター系として動作する。トランスポゾン末端は、正確または不正確な反復であってもよく、互いに対して方向が逆のITRを含む。トランスポザーゼは、トランスポゾン末端に作用して、それによって、トランスポゾンを(トランスポゾン末端とともに)ベクターから「切断」し、トランスポゾンを宿主ゲノムに「貼り付ける」かまたは組み込む。
【0057】
実施形態では、遺伝子導入系は、トランスポゾンをコードする核酸(DNA)であり、「ドナーDNA」と称される。実施形態では、トランスポザーゼをコードする核酸は、ヘルパーRNA(すなわち、トランスポザーゼをコードするmRNA)であり、トランスポゾンをコードする核酸は、ドナーDNA(またはDNAドナートランスポゾン)である。実施形態では、ドナーDNAは、プラスミドに組み込まれる。実施形態では、ドナーDNAは、プラスミドである。
【0058】
「切断及び貼り付け」機序を使用する移動性因子であるDNAドナートランスポゾンとしては、ヒト(Homo sapiens)を含む哺乳類(例えば、Myotis lucifugus、Myotis myotis、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、及びPan troglodytes)の場合では2つの端部配列に隣接するドナーDNA、または昆虫(例えば、Trichnoplusia ni)もしくは両生類(Xenopus種)等の他の生体では逆位末端反復(ITR)が挙げられる。ゲノムDNAは、宿主のドナー部位での二本鎖切断によって切除され、ドナーDNAは、この部位に組み込まれる。生物工学的に操作されたトランスポゾン及びトランスポザーゼを使用する二重系は、(1)TTAA等の特定のヌクレオチド配列で「切断」する活性トランスポザーゼの供給源、及び(2)トランスポザーゼによって移動される認識端部配列またはITRに隣接するDNA配列(複数可)を含む。DNA配列の移動によって、DNAフットプリントを用いずに特定のヌクレオチド配列(すなわち、TTAA)に介在核酸または導入遺伝子を挿入することが可能になる。
【0059】
実施形態では、トランスポザーゼは、DNA発現ベクターとして、またはトランスポザーゼの長期発現がトランスジェニック細胞において生じないように、発現可能なRNAもしくはタンパク質として提供され得る。
【0060】
実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するバリアントを含む、Myotis lucifugusトランスポザーゼ(MLT、またはMLTトランスポザーゼ)である。実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するバリアント、及びS2Xを含む、Myotis lucifugusトランスポザーゼ(MLT、またはMLTトランスポザーゼ)であり、Xが、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、AまたはGである。実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するバリアント、及びS2Xを含む、Myotis lucifugusトランスポザーゼ(MLT、またはMLTトランスポザーゼ)であり、Xが、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、AまたはGであり、C末端欠損が、L573X及びE574Xから選択され、Xが、非アミノ酸である。実施形態では、変異は、L573del、E574del、及びS2Aである。
【0061】
実施形態では、MLTトランスポザーゼは、変異L573del、E574del、及びS2Aを含む配列番号9のアミノ酸配列:
MAQHSDYSDDEFCADKLSNYSCDSDLENASTSDEDSSDDEVMVRPRTLRRRRISSSSSDSESDIEGGREEWSHVDNPPVLEDFLGHQGLNTDAVINNIEDAVKLFIGDDFFEFLVEESNRYYNQNRNNFKLSKKSLKWKDITPQEMKKFLGLIVLMGQVRKDRRDDYWTTEPWTETPYFGKTMTRDRFRQIWKAWHFNNNADIVNESDRLCKVRPVLDYFVPKFINIYKPHQQLSLDEGIVPWRGRLFFRVYNAGKIVKYGILVRLLCESDTGYICNMEIYCGEGKRLLETIQTVVSPYTDSWYHIYMDNYYNSVANCEALMKNKFRICGTIRKNRGIPKDFQTISLKKGETKFIRKNDILLQVWQSKKPVYLISSIHSAEMEESQNIDRTSKKKIVKPNALIDYNKHMKGVDRADQYLSYYSILRRTVKWTKRLAMYMINCALFNSYAVYKSVRQRKMGFKMFLKQTAIHWLTDDIPEDMDIVPDLQPVPSTSGMRAKPPTSDPPCRLSMDMRKHTLQAIVGSGKKKNILRRCRVCSVHKLRSETRYMCKFCNIPLHKGACFEKYHTLKNY(配列番号9)、
またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、以下のヌクレオチド配列によってコードされる:
atggcccagcacagcgactacagcgacgacgagttctgtgccgataagctgagtaactacagctgcgacagcgacctggaaaacgccagcacatccgacgaggacagctctgacgacgaggtgatggtgcggcccagaaccctgagacggagaagaatcagcagctctagcagcgactctgaatccgacatcgagggcggccgggaagagtggagccacgtggacaaccctcctgttctggaagattttctgggccatcagggcctgaacaccgacgccgtgatcaacaacatcgaggatgccgtgaagctgttcataggagatgatttctttgagttcctggtcgaggaatccaaccgctattacaaccagaatagaaacaacttcaagctgagcaagaaaagcctgaagtggaaggacatcacccctcaggagatgaaaaagttcctgggactgatcgttctgatgggacaggtgcggaaggacagaagggatgattactggacaaccgaaccttggaccgagaccccttactttggcaagaccatgaccagagacagattcagacagatctggaaagcctggcacttcaacaacaatgctgatatcgtgaacgagtctgatagactgtgtaaagtgcggccagtgttggattacttcgtgcctaagttcatcaacatctataagcctcaccagcagctgagcctggatgaaggcatcgtgccctggcggggcagactgttcttcagagtgtacaatgctggcaagatcgtcaaatacggcatcctggtgcgccttctgtgcgagagcgatacaggctacatctgtaatatggaaatctactgcggcgagggcaaaagactgctggaaaccatccagaccgtcgtttccccttataccgacagctggtaccacatctacatggacaactactacaattctgtggccaactgcgaggccctgatgaagaacaagtttagaatctgcggcacaatcagaaaaaacagaggcatccctaaggacttccagaccatctctctgaagaagggcgaaaccaagttcatcagaaagaacgacatcctgctccaagtgtggcagtccaagaaacccgtgtacctgatcagcagcatccatagcgccgagatggaagaaagccagaacatcgacagaacaagcaagaagaagatcgtgaagcccaatgctctgatcgactacaacaagcacatgaaaggcgtggaccgggccgaccagtacctgtcttattactctatcctgagaagaacagtgaaatggaccaagagactggccatgtacatgatcaattgcgccctgttcaacagctacgccgtgtacaagtccgtgcgacaaagaaaaatgggattcaagatgttcctgaagcagacagccatccactggctgacagacgacattcctgaggacatggacattgtgccagatctgcaacctgtgcccagcacctctggtatgagagctaagcctcccaccagcgatcctccatgtagactgagcatggacatgcggaagcacaccctgcaggccatcgtcggcagcggcaagaagaagaacatccttagacggtgcagggtgtgcagcgtgcacaagctgcggagcgagactcggtacatgtgcaagttttgcaacattcccctgcacaagggagcctgcttcgagaagtaccacaccctgaagaattactag
(配列番号10)、
またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0063】
いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼ(例えば、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するMLTトランスポザーゼ)は、MLTトランスポザーゼに高活性を付与する1つ以上の高活性変異を含む。実施形態では、高活性変異は、配列番号9のアミノ酸配列またはその機能的等価物と比較して、S8X、C13X、及びN125X変異のうちの1つ以上であり、Xが、任意選択的に、任意のアミノ酸または非アミノ酸であり、任意選択的に、Xが、P、R、またはKである。実施形態では、変異は、S8P、C13R、及びN125Kである。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、S8P及びC13R変異を有する。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、N125K変異を有する。いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、S8P、C13R、及びN125K変異の3つ全てを有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸配列またはその機能的等価物と比較して、N125K変異を有するアミノ酸(配列番号12)に対応するヌクレオチド配列(配列番号11)によってコードされ、配列番号11及び配列番号12が、以下のとおりである:
【化9】
【0065】
【化10】

またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列(N125K変異に対応するアミノ酸は下線が引かれ、太字である)によってコードされる。
【0066】
いくつかの実施形態では、配列番号11のヌクレオチド配列によってコードされ、配列番号12のアミノ酸配列を有するMLTトランスポザーゼは、MLTトランスポザーゼ1(またはMLT1)と称される。
【0067】
いくつかの実施形態では、MLTトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸配列またはその機能的等価物と比較して、S8P及びC13R変異を有するアミノ酸(配列番号14)に対応するヌクレオチド配列(配列番号13)によってコードされ、配列番号13及び配列番号14が、以下のとおりである:
【化11】

またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列(S8P及びC13R変異に対応するコドンは、下線が引かれ、太字である)。
【0068】
【化12】

またはそれに対して少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列(S8P及びC13R変異に対応するアミノ酸は下線が引かれ、太字である)によってコードされる。
【0069】
いくつかの実施形態では、配列番号13のヌクレオチド配列によってコードされ、配列番号14のアミノ酸配列を有するMLTトランスポザーゼは、MLTトランスポザーゼ2(またはMLT2)と称される。
【0070】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Tc1/マリナートランスポゾン(mariner transposon)からのものである。
【0071】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Sleeping Beautyトランスポゾン系(例えば、Cell.1997;91:501-510を参照されたい)またはpiggyBacトランスポゾン系(例えば、Trends Biotechnol.2015SEP;33(9):525-33.doi:10.1016/j.tibtech.2015.06.009.Epub 2015 Jul 23を参照されたい)からのものである。
【0072】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、LEAP-IN1型またはLEAP-INトランスポゾン系(Biotechnol J.2018 Oct;13(10):e1700748.doi:10.1002/biot.201700748.Epub 2018 Jun 11)からのものである。
【0073】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、LEAP-IN1型のLEAPINトランスポザーゼ(ATUM,Newark,CA)を含む。LEAPINトランスポザーゼ系は、トランスポザーゼ(例えば、トランスポザーゼmRNA)と、トランスポゾンの同族逆位末端反復(ITR)及び転移認識モチーフ(TTAT)に隣接する、1つ以上の目的の遺伝子(トランスポゾン)、選択マーカー、調節因子等を含有するベクターと、を含む。ベクターDNA及びトランスポザーゼmRNAの共トランスフェクションの際に、一過性に発現した酵素は、宿主細胞のゲノム全体にわたる1つ以上の部位で、トランスポゾンカセットの単一コピー(ITR間の全ての配列)の高効率かつ正確な組み込みを触媒する。Hottentot et al.In Genotyping:Methods and Protocols.White SJ,Cantsilieris S,eds:185-196.(New York,NY:Springer):2017.pp.185-196.LEAPINトランスポザーゼは、主にオープンクロマチンセグメントにおいて、複数のゲノム遺伝子座における単一コピーの組み込みを含む、様々な有利な特徴を有する安定的な導入遺伝子組み込み物を生成し、ペイロード制限がないので、複数の独立した転写単位を単一構築物から発現させることができ、組み込まれた導入遺伝子は、それらの構造的及び機能的完全性を維持し、導入遺伝子完全性の維持は、全ての組換え細胞における所望の鎖比を確保する。
【0074】
いくつかの実施形態では、VLDLRまたはLDLRタンパク質をコードする核酸は、導入遺伝子(例えば、VLDLRもしくはLDLR、またはその機能的断片)の全体的な発現レベル及び細胞特異性に影響を及ぼすことができるプロモーターに作動可能に結合される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、組織特異的、すなわち、肝臓特異的プロモーターである。トランスポザーゼがDNA配列をコードするトランスポザーゼである実施形態では、そのようなDNA配列はまた、プロモーターに作動可能に連結される。組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター等を含む多様なプロモーターが使用され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物の肝臓特異的プロモーターは、いくつかの実施形態では、ヒトLP1プロモーターであるLP1プロモーターであり得る。LP1プロモーターは、例えば、Nathwani et al.Blood vol.2006;107(7):2653-61に記載されている。
【0076】
いくつかの実施形態では、LP1プロモーターは、配列番号15の核酸配列、またはそれに対して少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントの機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、LP1プロモーターのヌクレオチド配列は、ヒトアポリポタンパク質E/C-I遺伝子座、肝制御領域HCR-1(塩基対134~325、GenbankレコードU32510.1)、ヒトアルファ-1-アンチトリプシン遺伝子(Sバリアント)(塩基対1747~2011、GenbankレコードK02212.1)、及び小型t-イントロンSV40(塩基対241~333、GenbankレコードFN824656.1)(545bp)を含む。
【化13】
【0077】
いくつかの実施形態では、LP1プロモーターは、配列番号15の核酸配列、またはそれに対して少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、少なくとも約90%、もしくは少なくとも約91%、もしくは少なくとも約92%、もしくは少なくとも約93%、もしくは少なくとも約94%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%の同一性を有するバリアントを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、LP1プロモーターのヌクレオチド配列は、ヒトアポリポタンパク質E/C-I遺伝子座、肝制御領域HCR-1(塩基対134~325、GenbankレコードU32510.1)、ヒトアルファ-1-アンチトリプシン遺伝子(Sバリアント)(塩基対1747~2001、GenbankレコードK02212.1)、及び小型t-イントロンSV40(塩基対241~333、GenbankレコードFN824656.1)(545bp)、のうちの1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、以下の表1に含まれるプロモーターから選択される。
【0079】
いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、以下の表1に含まれるプロモーターから選択され、任意選択的に、表1に列挙される1つ以上のエンハンサー及び/または表1に列挙される1つ以上のイントロンを有する。
【表1】
【0080】
上の表1では、「E」は、エンハンサーを示し、「P」は、プロモーターを示し、「Mm」は、ハツカネズミを示し、「Hs」はHomo sapiensを示し、「HBV」は、B型肝炎ウイルスを示す。
【0081】
いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、上の表1のプロモーターのうちのいずれかのプロモーターである。いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Kramer et al.Mol Ther 2003;7:375-85に記載のプロモーターのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Kramer et al.Mol Ther 2003;7:375-85に記載されるように構築することができる。いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、E-ALB(Mm)v2_P-AAT(Hs)またはE-HBV_P-AAT(Hs)であり、両方とも上の表1に列挙されている。
【0082】
実施形態では、本非ウイルスベクターは、トランスポゾンの5’及び3’末端に少なくとも1対の逆位末端反復(ITR)を含み得る。実施形態では、ITRは、ベクターの対向する末端に位置する相補的配列と組み合わせて使用される場合、ヘアピン構造を形成することができる、ベクターの一端に位置する配列である。一対の逆位末端反復は、本開示の非ウイルスベクターのトランスポゾンの転移活性に関与し、具体的には、DNA付加または除去及び目的のDNAの切除に関与する。一実施形態では、少なくとも一対の逆位末端反復は、プラスミドにおける転移活性に必要な最小配列であると思われる。別の実施形態では、本開示のベクターは、少なくとも2、3、または4対の逆位末端反復を含み得る。当業者によって理解されるであろうように、クローニングの容易さを促進にするのに必要な末端配列は、可能な限り短くてもよく、したがって、逆位反復を可能な限り少なく含有してもよい。したがって、一実施形態では、本開示のベクターは、1対以下、2対以下、3対以下、または4対以下の逆位末端反復を含み得る。一実施形態では、本開示のベクターは、1つの逆位末端反復のみを含み得る。
【0083】
実施形態では、本発明の逆位末端反復は、完璧な逆位末端反復(または同義に「完璧な逆位反復」と称される)または不完全な逆位末端反復(または同義に「不完全な逆位反復」と称される)のいずれかを形成し得る。本明細書で使用される場合、「完璧な逆位反復」という用語は、反対方向に配置された2つの同一のDNA配列を指す。対照的に、「不完全な逆位反復」という用語は、それらがいくつかのミスマッチを含有することを除いて、互いに同様である2つのDNA配列を指す。これらの反復(すなわち、完璧な逆位反復及び不完全な逆位反復の両方)は、トランスポザーゼの結合部位である。
【0084】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターのITR(または端部配列)は、「切断及び貼り付け」機序を通じて転移するpiggyBac様トランスポゾンのものである。いくつかの実施形態では、piggyBac様トランスポゾンは、TTAA反復性配列を含む。piggyBacトランスポゾンは、遺伝子組換えのために頻繁に使用されるトランスポゾン系であり、実際の転移事象中にDNA合成を必要としない。piggyBac因子は、トランスポザーゼによってドナー染色体から切断され得、継代ドナーDNAは、DNAリガーゼと再結合することができる。Zhao et al.Translational lung cancer research,2006;5(1):120-125.piggyBacトランスポゾンは、正確な切除、すなわち、配列を組み込み前の状態に戻すことを示す。Yusa.piggyBac Transposon.Microbiol Spectr.2015 Apr;3(2)を参照されたい。いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物は、Super piggyBac(商標)(SPB)トランスポザーゼを含む。Barnett et al.Blood 2016;128(22):2167を参照されたい。
【0085】
いくつかの実施形態では、他の非ウイルス遺伝子導入ツール、例えば、Sleeping Beautyトランスポゾン系等が使用され得る。例えば、Aronovich et al.Human Molecular Genetics,2011;20(R1),R14-R20を参照されたい。
【0086】
いくつかの実施形態では、トランスポゾン系の配列は、哺乳類系において改善されたmRNA安定性及びタンパク質発現を提供するようにコドン最適化され得る。
【0087】
様々な実施形態では、遺伝子導入構築物は、核酸構築物、プラスミド、またはベクター等の任意の好適な遺伝子構築物であり得る。様々な実施形態では、遺伝子導入構築物は、DNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物は、RNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物は、例えば、miRNA(例えばPCSK9)等のDNA配列及びRNA配列を有し得る。
【0088】
実施形態では、本核酸は、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはそれらの類似体もしくは誘導体のいずれかである、任意の長さのヌクレオチドの重合体形態を含む。実施形態では、二本鎖及び一本鎖DNA、ならびに二本鎖及び一本鎖RNA、ならびにRNA-DNAハイブリッドが提供される。実施形態では、メチル化またはキャップされたポリヌクレオチド等の転写活性化ポリヌクレオチドが提供される。実施形態では、本組成物は、mRNAまたはDNAである。
【0089】
実施形態では、本非ウイルスベクターは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、制御配列に作動可能に連結されている線状または環状のDNA分子であり、制御配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を提供する。実施形態では、非ウイルスベクターは、プロモーター配列、ならびに転写及び翻訳停止シグナル配列を含む。そのようなベクターとしては、とりわけ、染色体及びエピソームベクター、例えば、細菌プラスミド、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入因子、酵母染色体エレメントに由来するベクター、ならびにそれらの組み合わせに由来するベクターを挙げることができる。本構築物は、発現を調節ならびに発生させる制御領域を含有し得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物は、コドン最適化され得る。記載の実施形態では、VLDLRタンパク質及びLDLRタンパク質、またはその機能的断片をコードする核酸は、宿主ゲノム(例えば、ヒトゲノム)に組み込まれて所望の臨床転帰を提供する導入遺伝子として機能する。導入遺伝子コドン最適化は、導入遺伝子の療法的潜在性及び宿主生物におけるその発現を最適化するために使用され得る。導入遺伝子におけるコドン使用量を、宿主生物または細胞における各コドンのトランスファーRNA(tRNA)の存在量と一致させるために、コドン最適化が実施される。コドン最適化方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2007/142954に記載されている。最適化戦略としては、例えば、翻訳開始領域の修飾、mRNA構造的因子の改変、及び異なるコドンバイアスの使用を挙げることができる。
【0091】
遺伝子導入構築物は、構築物の安定的な発現を確実にするために選択されるいくつかの他の調節因子を含む。したがって、いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、そばにある遺伝子の活性化または不活性化を防止または緩和する1つ以上のインスレーター配列を含み得るDNAプラスミドである。
【0092】
実施形態では、ITRもしくは端部配列は、任意選択的に、TTAA反復性配列を含む、piggyBac様トランスポゾンのものであり、及び/またはITRもしくは端部配列は、VLDLRタンパク質もしくはLDLRタンパク質、もしくはその機能的断片をコードする核酸に隣接する。
【0093】
いくつかの実施形態では、1つ以上のインスレーター配列は、HS4インスレーター(1.2kb5′-HS4ニワトリβ-グロビン(cHS4)インスレーター因子)及びD4Z4インスレーター[顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)]に関連するタンデムマクロサテライト反復)を含む]。いくつかの実施形態では、HS4インスレーター及びD4Z4インスレーターの配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるRival-Gervier et al.Mol Ther.2013 Aug;21(8):1536-50に記載のとおりである。いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物の遺伝子は、トランスポザーゼの存在下で転移することが可能である。いくつかの実施形態では、本開示の実施形態による非ウイルスベクターは、トランスポザーゼをコードする核酸構築物を含む。トランスポザーゼは、トランスポザーゼDNAプラスミドであり得る。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、インビトロで転写されたmRNAである。トランスポザーゼは、遺伝子導入構築物から遺伝子を切除し、及び/または部位特異的もしくは遺伝子座特異的ゲノム領域に遺伝子を転移することが可能である。
【0094】
本開示による遺伝子導入構築物を含む組成物は、1つ以上の非ウイルスベクターを含み得る。また、トランスポザーゼは、導入遺伝子を含むトランスポゾンと同じかまたは異なるベクター上に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、トランスポザーゼと、導入遺伝子を包含するトランスポゾンとは、それらが同じベクターに含まれるような、シス構成にある。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼと、導入遺伝子を包含するトランスポゾンとは、それらが異なるベクターに含まれるような、トランス構成にある。ベクターは、本開示による任意の非ウイルスベクターである。
【0095】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来し、及び/またはその操作されたバージョンである。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、ITRを特異的に認識する。トランスポザーゼは、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、またはTrichoplusia niタンパク質をコードするDNAまたはRNA配列を含み得る。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,041,077号を参照されたい。
【0096】
しかしながら、いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、例えば、細胞透過性ペプチド(例えば、Ramsey and Flynn(2015).Cell-penetrating peptides transport therapeutics into cells.Pharmacol.Ther.154:78-86に記載の)を使用して、塩及びプロパンベタインを含む低分子(例えば、Astolfo et al.Cell 2015;161:674-690に記載の)、またはエレクトロポレーション(例えば、Morgan and Day.Methods in Molecular Biology 1995;48:63-71に記載の)を使用して、タンパク質として細胞に直接導入され得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、トランスポゾン系は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,435,696号に記載のように実施され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、記載の組成物は、導入遺伝子(例えば、VLDLRタンパク質もしくはLDLRタンパク質、またはその機能的断片)及びトランスポザーゼをある特定の比で含む。いくつかの実施形態では、転移活性の効率を改善する、導入遺伝子対トランスポザーゼ比が選択される。導入遺伝子対トランスポザーゼ比は、トランスフェクトされた遺伝子導入構築物の濃度に依存する。いくつかの実施形態では、超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)もしくは低密度リポタンパク質受容体タンパク質(LDLR)、またはその機能的断片をコードする核酸対トランスポザーゼをコードする核酸構築物の比は、約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1、または約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5である。
【0099】
いくつかの実施形態では、超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)もしくは低密度リポタンパク質受容体タンパク質(LDLR)、またはその機能的断片をコードする核酸対トランスポザーゼをコードする核酸構築物の比は、約2:1である。
【0100】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、例えば、脂質粒子を用いる方法等の様々なトランスフェクション方法によって細胞に導入される、共役ポリヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、遺伝子導入構築物を含む組成物は、送達粒子を含む。いくつかの実施形態では、送達粒子は、脂質に基づく粒子(例えば、脂質ナノ粒子(LNP))、カチオン性脂質、または生分解性ポリマー)を含む。遺伝子導入構築物の脂質ナノ粒子(LNP)送達は、潜在的なオフターゲット事象及び免疫応答を制限するための一過性の非組み込み発現、ならびに大きなカーゴを輸送する能力を有する効率的な送達を含む、ある特定の利点を提供する。LNPは、小さな干渉RNA(siRNA)及びmRNAの送達、ならびにCRISPR/Cas9構成要素を肝細胞及び肝臓にインビトロ及びインビボで送達するために使用されてきた。例えば、米国特許第10,195,291号は、RNA干渉(RNAi)治療剤の送達のためのLNPの使用について記載している。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の実施形態による組成物は、LNPの形態にある。いくつかの実施形態では、LNPは、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、ジメチルアミノエタン-カルバモイルと混合されたカチオン性コレステロール誘導体(DC-Chol)、ホスファチジルコリン(PC)、トリオレイン(トリオレイン酸グリセリル)、ならびに1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG 2K)、及び1,2-ジステアロール(distearol)-sn-グリセロール-3ホスホコリン(DSPC)から選択される1つ以上の脂質を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、Patel et al.,J Control Release 2019;303:91-100から適応させたLNPは、図5に示されるとおりである。図5に示されるように、LNPは、構造的脂質(例えば、DSPC)、PEG共役脂質(CDM-PEG)、カチオン性脂質(MC3)、コレステロール、及び標的化リガンド(例えば、GalNAc)のうちの1つ以上を含み得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、組成物は、様々な比で脂質及びポリマーを有し得、脂質が、例えば、DOTAP、DC-Chol、PC、トリオレイン、DSPE-PEGから選択され得、ポリマーが、例えば、PEIまたはポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)であり得る。加えてまたは代替的に、任意の他の脂質及びポリマーが使用され得る。いくつかの実施形態では、脂質及びポリマーの比は、約0.5:1、または約1:1、または約1:1.5、または約1:2、または約1:2.5、または約1:3、または約3:1、または約2.5:1、または約2:1、または約1.5:1、または約1:1、または約1:0.5である。
【0104】
いくつかの実施形態では、LNPは、カチオン性脂質を含み、その非限定的な例としては、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)もしくはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-’)アミノ)エチル)(2ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(Tech G1)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、LNPは、肝送達に好適である、ポリエチレンイミン(PEI)及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ならびにN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)から選択される1つ以上の分子を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,985,826号に記載の肝指向性化合物を含む。GalNAcは、哺乳類肝細胞で発現するアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を標的とすることが知られている。Hu et al.Protein Pept Lett.2014;21(10):1025-30を参照されたい。
【0106】
いくつかの例では、本開示の遺伝子導入構築物は、PEI、またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)もしくはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-トリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-triGAL)誘導体等のそれらの誘導体と製剤化または複合化され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、LNPは、共役脂質であり、その非限定的な例としては、限定されないが、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはそれらの混合物を含む、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質が挙げられる。PEG-DAA共役物は、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)であり得る。
【0108】
実施形態では、ナノ粒子は、約1000nm未満の直径を有する粒子である。いくつかの実施形態では、本開示のナノ粒子は、約500nm以下、または約400nm以下、または約300nm以下、または約200nm以下、または約100nm以下の最大寸法(例えば、直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、約50nm~約150nm、または約70nm~約130nm、または約80nm~約120nm、または約90nm~約110nmの範囲の最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、約100nmの最大寸法(例えば、直径)を有する。
【0109】
いくつかの態様では、本開示による組成物は、インビボ遺伝子組換え方法を介して送達され得る。いくつかの実施形態では、本開示による遺伝子組換えは、エクスビボ方法を介して実施され得る。
【0110】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の任意の実施形態または実施形態の組み合わせによる組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、患者における総コレステロール及び/または低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を低下させるための方法が提供される。方法は、静脈内もしくは腹腔内投与、または肝臓、または任意選択的に、門脈内血管もしくは肝臓実質への投与を含む、好適な経路を介して組成物を送達することを含む。
【0111】
いくつかの態様では、本発明は、エクスビボ遺伝子療法アプローチを提供する。したがって、いくつかの態様では、(a)患者から得られた細胞を、本開示の実施形態による組成物と接触させることと、(b)細胞をそれを必要とする患者に投与することとを含む、患者における総コレステロール及び/またはLDL-Cを低下させるための方法が提供される。
【0112】
実施形態では、方法は、細胞を、任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiensに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物、及び/またはPCSK9を標的とするマイクロRNAをコードする核酸構築物と接触させることを更に含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインビボ及びエクスビボ方法は、家族性高コレステロール血症、一般的な高コレステロール血症、増加したトリグリセリド、インスリン抵抗性、代謝症候群、及び上昇したレベルのコレステロールを特徴とする他の疾患を治療することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、(a)患者から得られた細胞を、本開示の実施形態による組成物と接触させることと、(b)細胞をそれを必要とする患者に投与することと、を含む、FHを治療及び/または緩和するためのエクスビボ方法が提供される。いくつかの実施形態では、FHは、ホモ接合型FH(HoFH)である。いくつかの実施形態では、FHは、ヘテロ接合型FH(HeFH)である。いくつかの実施形態では、FHは、APOB、LDLR、及びPCSK9のうちの1つ以上における1つ以上の変異を特徴とする。これらの病原変異は、血清中の高LDL-Cレベルを治療及び/または緩和するための記載の方法を使用して補正され得る。
【0115】
いくつかの態様では、本開示の実施形態による組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、FHを治療及び/または緩和するための方法が提供される。そのようなインビボ方法では、組成物は、本明細書に記載の技法のうちのいずれかを使用して投与される。
【0116】
実施形態では、FHを治療及び/または緩和するための方法は、PCSK9を標的とするmiRNAを投与することを更に含む。
【0117】
エクスビボ遺伝子療法の利点のうちの1つは、患者の投与前に形質導入された細胞を「サンプリング」する能力である。これによって、有効性が促進され、細胞(複数可)を患者に導入する前に安全性確認を実施することが可能になる。例えば、組み込みの形質導入効率及び/またはクローン性を、生成物の注入の前に評価することができる。肝臓は、独特の再生能力を有し、実質細胞及び非実質細胞の両方がこのプロセスに寄与する。肝臓損傷の際に、肝細胞は部分的に脱分化した前駆細胞に変化することができ、これによって肝細胞及び胆管上皮細胞が生じ、これが、臓器の元の大きさ及び正常な機能を元に戻すことができる。それにもかかわらず、初代ヒト肝細胞(PHH)は、インビトロでは自然に分裂しない。これは、肝臓に向けたエクスビボ疾患モデリング及び細胞に基づく療法にとっては、重要な制限である。遺伝子組換え細胞のエクスビボ移植は、肝臓移植の魅力的な代替手段ではあるが、この技術を用いる試みは、今のところ成功していない。外科的肝移植は、多くの遺伝性及び後天性肝疾患に対して治癒的/緩和的であるが、依然としてドナーの不足が足かせとなっている。例えば、McDiarmid,Liver Transpl 2001;7:48-50を参照されたい。
【0118】
いくつかの実施形態では、単離された細胞は、修飾された肝細胞であり得る肝細胞である。いくつかの実施形態では、単離された細胞は、初代ヒト肝細胞(PHH)である。いくつかの実施形態では、単離された細胞は、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)である。
【0119】
人工多能性幹細胞(iPSC)は、幹細胞移植の代理物として機能する潜在性を有する。iPSCへの成体細胞のリプログラミングは、肝細胞への線維芽細胞のトランス分化を導き、多能性状態を回避する。例えば、Yu et al.(2013).Cell Stem Cell 13:328-40、Takahashi & Yamanaka(2006).Cell 126:663-76、Zhu et al.(2014)Nature 508:93-7を参照されたい。iPSCは、3つの胚葉のうちのいずれかに分化する固有の自己更新能力及び潜在性を有し、先天性肝疾患の治療のために遺伝子補正された移植可能な肝細胞を大量に産生することが可能である。しかしながら、移植のためのiPSCの生成は、エピジェネティック異常及び染色体再配列の発生、ならびに奇形腫の形成によって制限される。例えば、Liang & Zhang(2013).Cell Stem Cell 13:149-59、Si-Tayeb et al.(2010)Hepatology 51:297-305、Ma et al.(2014)Nature 511:177-83を参照されたい。
【0120】
肝細胞は、一般に、肝臓損傷が不在場合、休止状態であることに起因して、エクスビボタイプの遺伝子操作の良好な候補ではないと見なされてきたが、ヒト遺伝子療法に必要な程度ではないが、インビトロでその増殖を誘導することができることが、最近の研究によって実証されている。Levy et al.Nat Biotechnol 2015;33:1264-71.しかしながら、最近、Unzuらは、成長因子ならびにWnt、EGF、及びFGFシグナル伝達を模倣する小分子のカクテルにヒト初代肝臓細胞をエクスビボ曝露させ、これによって、前駆体細胞へのPHHの効率的なリプログラミングを生じる、増殖性ヒト肝前駆細胞(HPC)を生成するための方法を開発した。Unzu et al.Hepatology 2019;69:2214-31.本開示は、エクスビボ遺伝子組換えに効果的に使用することができる組成物及び方法を提供する。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインビボ及びエクスビボ方法のうちのいずれかは、患者の心血管の健康を改善する。いくつかの実施形態では、方法は、実質的に非免疫原性である。
【0122】
いくつかの実施形態では、方法は、単回投与を必要とする。したがって、本発明は、1回のみの治療薬を提供することができ、これは、多くの場合、生涯にわたり、複数の医薬品及び/または手順(例えば、LDLアフェレシス)を伴う現在の治療プロトコルを顕著に改善することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、方法は、肝細胞におけるLDL代謝を刺激及び/または増加させる。いくつかの実施形態では、総コレステロール及び/またはLDL-Cを低下させることは、恒久的である。
【0124】
いくつかの実施形態では、方法は、冠動脈疾患(CAD)を治療及び/または緩和することを可能にする。いくつかの実施形態では、方法は、アテローム性動脈硬化症を治療及び/または緩和することを可能にする。
【0125】
いくつかの実施形態では、方法は、投与を行わない総コレステロール及び/またはLDL-Cのレベルと比較して、総コレステロール及び/またはLDL-Cの約40%超、または約50%超、または約60%超、または約70%超、または約80%超、または約90%超低下させることを提供する。
【0126】
いくつかの実施形態では、方法は、血清中のLDL-Cレベルを約500mg/dL未満(約13mmol/L未満)まで低下させる。いくつかの実施形態では、方法は、血清LDL-Cレベルを、約450mg/dL未満、または約400mg/dL未満、または約350mg/dL未満、または約300mg/dL未満、または約250mg/dL未満、または約200mg/dL未満、または約150mg/dL未満まで低下させる。いくつかの実施形態では、方法は、血清LDL-Cレベルを約130mg/dL未満まで低下させる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本組成物及び方法は、PCSK9を低下させることを可能にし、これは、PCSK9標的化マイクロRNA(miRNA)を使用することによって行うことができる。
【0128】
実施形態では、本遺伝子標的化組成物は、PCSK9をノックダウンすることができる。実施形態では、本遺伝子標的化組成物は、LDLR及びVLDLRの分解及びターンオーバーを防止することができる。
【0129】
実施形態では、本遺伝子標的化組成物は、PCSK9を標的とするマイクロRNAを含む。実施形態では、PCSK9を標的とするマイクロRNA配列は、LDLRまたはVLDLR遺伝子とは異なるプロモーターの制御下にある。実施形態では、PCSK9を標的とするマイクロRNA配列は、CAGプロモーターの制御下にある(例えば、Gene79(2):269-77を参照されたい)。実施形態では、PCSK9を標的とするマイクロRNA配列は、miR-451骨格の状況下であり、理論に束縛されることを望むものではないが、これは、標準的ではないDicerに依存しない経路を介してmiRNAプロセッシングを強制し、パッセンジャー鎖活性に起因するオフターゲット効果の生成を回避することができる。Herrera-Carrillo et al.,Nucleic Acids Res 2017;45:10369-79.
【0130】
実施形態では、本遺伝子標的化組成物は、PCSK9を標的とするマイクロRNAを含む遺伝子標的化組成物を含む追加の組成物を含む方法での使用が見出される。実施形態では、PCSK9を標的とするマイクロRNA配列は、LDLRまたはVLDLR遺伝子とは異なるプロモーターの制御下にある。実施形態では、PCSK9を標的とするマイクロRNA配列は、CAGプロモーターの制御下にある(例えば、Gene79(2):269-77を参照されたい)。実施形態では、PCSK9を標的とするマイクロRNA配列は、miR-451骨格の状況下である。
【0131】
実施形態では、PCSK9を標的とするマイクロRNAは、miR-24、miR-191、miR-195、miR-222、及びmiR-224のうちの1つである。
【0132】
PCSK9は、主に肝臓において受容体と複合体を形成することによって、LDL受容体の分解を促進する。細胞表面に局在するLDL受容体は、LDLと結合し、その後、複合体が、エンドサイトーシスを介してエンドソームに輸送され、酸性条件下でLDLを放出する。LDLは、アミノ酸とコレステロールとに分解され、LDL受容体が、細胞表面に輸送され、LDLと結合し、細胞内に取り込まれる。この細胞表面へのLDL受容体のリサイクルは、およそ150回行われる。PCSK9は、肝臓細胞における小胞体によって分泌され、細胞膜上でLDL受容体と結合し、細胞内に取り込まれる。PCSK9が結合したLDL受容体は、リサイクルされることなくリソソームにおいて分解される。PCSK9はまた、LDLRパラログ、VLDLRを調節し、脂肪VLDLRレベルの調節を介して脂肪生成を制限する。
【0133】
PCSK9は、LDL受容体の分解を促進するので、PCSK9を標的とすることによって、血漿中のLDLコレステロールレベルに影響を及ぼすことができる。ヒトにおける機能喪失変異は、低いLDL-Cレベル及び低い心血管疾患率に関連する。Cohen et al.,N Engl J Med 2006;354:1264-72、Miyake et al.Atherosclerosis 2008;196:29-36を参照されたい。PCSK9機能の完全な喪失は、ヒトまたは哺乳類の生存率または健康に影響を及ぼすとは考えられない。Zhao et al.,Am J Hum Genet 2006;79:514-23、Rashid et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:5374-9を参照されたい。PCSK9機能の喪失は、LDL-Cの低下をもたらし、15年以上の過去の結果の研究では、PCSK9の1コピーの喪失は、LDL-Cを低下に移行させ、心血管疾患の発症からのリスク:利益保護の増加をもたらすことが示された。Cohen et al.,N Engl J Med 2006;354:1264-72.
【0134】
RNA干渉及び関連するRNAサイレンシング経路は、遺伝子発現を調節するための非常に特異的な内因性機序を利用する。小さな干渉RNA(siRNA)は、エフェクターRNAによって誘導されるサイレンシング複合体の形成を通じて、配列特異的様式で相補的な標的メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳を選択的かつ触媒的にサイレンシングする。最近、siRNAであるインクリシランが、上昇したLDLコレステロールレベルを有する心血管リスクの高い患者間でPCSK9及びLDLコレステロールレベルを低下させることが示された。Ray et al.,N Engl J Med 2017;376:1430-40.PCSK9配列特異的miRNA構築物を使用するPCSK9サイレンシングは、高い遺伝子サイレンシング活性で設計することができる。miRNA miR-451骨格を使用するアプローチは、非標準的なDicerに依存しない経路を介してmiRNAプロセッシングを強制し、パッセンジャー鎖活性に起因するオフターゲット効果の生成を回避することができる。Herrera-Carrillo et al.,Nucleic Acids Res 2017;45:10369-79.
【0135】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、もしくはTrichoplusia niに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物が送達される。
【0136】
いくつかの実施形態では、細胞を、任意選択的に、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、もしくはTrichoplusia niに由来するトランスポザーゼ、及び/またはその操作されたバージョンをコードする核酸構築物と接触させる。
【0137】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Bombyx mori、Xenopus tropicalis、Trichoplusia ni、Rhinolophus ferrumequinum、Rousettus aegyptiacus、Phyllostomus discolor、Myotis myotis、Myotis lucifugus、Pteropus vampyrus、Pipistrellus kuhlii、Pan troglodytes、Molossus molossus、もしくはHomo sapiens、及び/またはその操作されたバージョンに由来する。
【0138】
いくつかの実施形態では、FHを治療及び/または緩和する方法は、ステロイド治療の不在下で実施される。グルココルチコイドステロイド(例えば、プレドニゾン)等のステロイドを使用して、免疫応答を低減することによって、AAVに基づく遺伝子療法の有効性が改善されている。しかしながら、ステロイド治療は、副作用を伴わないわけではない。本開示の組成物及び方法は、実質的に非免疫原性であり得、したがって、ステロイド治療の必要性を排除することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、しかしながら、方法は、ステロイド治療と組み合わせて実施される。
【0140】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせた記載の組成物を投与するために、この方法が使用され得る。追加の治療剤の非限定的な例は、スタチン、エゼチミブ、胆汁酸結合樹脂、エボロクマブ、インクリシラン、ロミタピド、及びミポメルセンのうちの1つ以上を含む。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、スタチン、エゼチミブ、胆汁酸結合樹脂、エボロクマブ、インクリシラン、ロミタピド、及びミポメルセンのうちの1つ以上を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、スタチンは、アトルバスタチン(LIPITOR)、フルバスタチン(LESCOL)、ロバスタチン(ALTOCOR、ALTOPREV、MEVACOR)、ピタバスタチン(LIVALO)、プラバスタチン(PRAVACHOL)、ロスバスタチンカルシウム(CRESTOR)、及びシンバスタチン(ZOCOR)のうちの1つ以上である。
【0141】
態様では、遺伝子導入構築物を含む組成物が提供される。実施形態では、組成物は、(a)超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)もしくは低密度リポタンパク質受容体タンパク質(LDLR)、またはその機能的断片をコードする核酸であって、VLDLRが、配列番号4のヌクレオチド配列もしくはそれに対して約90%の同一性のバリアント、または配列番号5のヌクレオチド配列もしくはそれに対して約90%の同一性のバリアントを含むヒトVLDLRである、核酸と、(b)肝臓特異的プロモーターであって、肝臓特異的プロモーターが、配列番号15の核酸配列、またはそれに対して約90%の同一性を有するバリアントを有する、ヒトLP1プロモーターである、肝臓特異的プロモーターと、(c)1つ以上のトランスポザーゼ認識部位及び1つ以上の逆位末端反復(ITR)または端部配列を含む非ウイルスベクターと、を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、スタチン、エゼチミブ、胆汁酸結合樹脂、エボロクマブ、インクリシラン、ロミタピド、及びミポメルセンのうちの1つ以上での治療の必要性を排除する。本方法及び組成物は、総コレステロール及び/またはLDL-Cのレベルの恒久的な減少を提供することができ、したがって、追加の治療剤の必要性を減少または排除することができる。
【0143】
更に、いくつかの実施形態では、方法は、LDLアフェレシスの必要性を排除する。
【0144】
いくつかの実施形態では、本開示による非ウイルス遺伝子療法のための組成物は、静脈内、門脈内、流体力学的送達、及び直接注射を含む、様々な送達経路を介して投与される。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内である。いくつかの実施形態では、投与は、門脈内、または直接肝臓実質への注射である。例えば、一実施形態では、投与は、対流強化薬剤送達法(convection-enhanced delivery)(CED)を使用する実質内肝臓注射である。CEDは、マイクロステップインフュージョンカニューレの先端に圧力勾配を生成し、中枢神経系の細胞間空間を通じて治療剤を直接送達する技法である。Mehta et al.(2017).Neurotherapeutics:the Journal of the American Society for Experimental NeuroTherapeutics,14(2),358-371.
【0145】
いくつかの実施形態では、患者への細胞の投与は、静脈内である。静脈内投与は、一般的なアプローチであるが、しかしながら、場合によっては増加した総用量を必要とし得、非標的臓器の形質導入をもたらし得る。また場合によっては、静脈内投与は、卵巣及び精巣において生殖細胞が形質導入される機会が増加し得る。これは、トランスポザーゼを使用する組み込み遺伝子療法では望ましくない。
【0146】
いくつかの実施形態では、細胞への投与は、動脈内、門脈内、及びまたは逆行性静脈内経路である。
【0147】
いくつかの実施形態では、患者への細胞の投与は、門脈内である。
【0148】
いくつかの実施形態では、患者への細胞の投与は、直接の実質内肝投与である。ヒトでは、経皮肝生検は、皮膚、皮下組織、肋間筋、及び腹膜を通じて長い針を肝臓まで導入して、肝臓組織の試験片を得る手順である。この手順は、通常、外来で実施される。いくつかの実施形態では、直接注射は、同様の手順に従うことができ、微小カニューレは、対流強化薬剤送達法(CED)によって組成物を注射するために使用され得る。CEDは、圧力によって駆動される髄液流(bulk flow)に依存する、直接注入技法である。これは、現在、遺伝子療法を中枢神経系(CNS)に送達するために使用されている。髄液流は、CNS内を標的としたカテーテルを通じて溶質を押し出すポンプからの小さな圧力勾配によって生成され、拡散を通じて達成可能なものよりもはるかに大量の薬物分布を提供する。従来の対流送達法と比較して、CEDは、より高濃度の治療剤、より長い注入時間、及び注入部位におけるより大きな分布体積を生成し、最小限の組織損傷を生じる。CNSにおける注入速度は、3~15マイクロリットル/分の範囲である。いくつかの実施形態では、注入速度は、15マイクロリットル/分よりも高い場合がある。
【0149】
いくつかの実施形態では、肝臓生検は、撮像誘導を用いて実施される。いくつかの実施形態では、肝臓生検は、超音波誘導、経頸静脈、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像診断(MRI)、腹腔鏡検査、及び内視鏡超音波を含む画像診断技法を使用して誘導される。いくつかの実施形態では、肝臓の右葉の経皮CED注入(肝臓体積の5/6)が使用され得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、本開示による組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む。
【0151】
好適な薬学的組成物を製剤化する方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,2005、及びDrugs and the Pharmaceutical Sciencesシリーズの本であるa Series of Textbooks and Monographs(Dekker,N.Y.)を参照されたい。例えば、注射可能な使用に好適な薬学的組成物は、滅菌注射溶液または分散液を即時調製するための、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び滅菌粉末を含み得る。静脈内投与に好適な担体としては、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、滅菌される必要があり、注射操作性(syringability)が容易な状態で存在する程度まで流体である必要がある。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定である必要があり、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対応して保存される必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、砂糖、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましいであろう。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことによって、注射組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0152】
滅菌注射溶液は、上に列挙された成分のうちの1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒中に、活性化合物を必要な量で組み込み、必要に応じて、その後濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒、及び上に列挙されたものとは異なる必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これらによって、予め滅菌濾過したその溶液から、活性成分及び任意の所望の追加成分の粉末が得られる。
【0153】
治療化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤等の、体内からの急速な放出に対して治療化合物を保護するであろう担体とともに調製され得る。コラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物(例えば、ポリ[1,3-ビス(カルボキシフェノキシ)プロパン-コ-セバシン酸](PCPP-SA)マトリックス、脂肪酸二量体-セバシン酸(FAD-SA)コポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド))、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコールでコーティングされたリポソーム、及びポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。そのような製剤は、標準的な技法を使用して調製することができるか、または例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することができる。また、リポソーム懸濁液は、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の、当業者に既知の方法に従って調製され得る。例えば、手術部位への投与が望ましい場合、半固体、ゲル化、軟質ゲル、または他の製剤(制御放出を含む)が使用され得る。そのような製剤を作製する方法は、当該技術分野において既知であり、生分解性、生体適合性ポリマーの使用を含み得る。例えば、Sawyer et al.,Yale J Biol Med.2006;79(3-4):141-152を参照されたい。
【0154】
実施形態では、トランスポザーゼの存在下で、本明細書に記載の遺伝子導入構築物を使用して細胞を形質転換して、目的の遺伝子の細胞への安定的な組み込みから生じる安定的にトランスフェクトされた細胞を生成する方法が提供される。実施形態では、安定的な組み込みは、細胞の染色体またはミニ染色体へのポリヌクレオチドの導入を含み、したがって、細胞ゲノムの比較的永続的な部分となる。
【0155】
実施形態では、本発明は、目的の遺伝子、例えば、VLDLRまたはLDLRが、宿主のゲノムにうまく導入されたかどうかを決定することに関する。一実施形態では、方法は、目的の遺伝子に隣接するプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を実施することと、得られた増幅ポリメラーゼ連鎖反応生成物のサイズを決定することと、得られた生成物のサイズを参照サイズと比較することとを含み得、得られた生成物のサイズが予想されるサイズと一致する場合、目的の遺伝子が、うまく導入されている。
【0156】
実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、限定されないが、遺伝子導入構築物及び/またはトランスポザーゼを含む組成物)を含む宿主細胞が提供される。実施形態では、宿主細胞は、原核細胞または真核細胞、例えば、哺乳類細胞である。
【0157】
実施形態では、本開示の方法によって形質転換された細胞を含み得るトランスジェニック生物が提供される。一例では、生物は、哺乳類または昆虫であり得る。生物が哺乳類である場合、生物としては、限定されないが、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギ等を挙げることができる。生物が昆虫である場合、生物は、限定されないが、ミバエ、蚊、アメリカタバコガの幼虫等を挙げることができる。
【0158】
組成物は、投与のための説明書と一緒に、容器、キット、パック、またはディスペンサー内に含まれ得る。
【0159】
また、本明細書で提供されるのは、i)本発明の先述の遺伝子導入構築物のうちのいずれか、及び/または本発明の先述の細胞のうちのいずれか、ならびにii)容器、を含むキットである。ある特定の実施形態では、キットは、キットを使用するための説明書を更に含む。ある特定の実施形態では、先述のキットのうちのいずれかは、トランスポザーゼをコードする核酸配列を含む組換えDNA構築物を更に含み得る。
【0160】
本発明は、以下の非限定的な実施例により更に説明される。
【実施例
【0161】
実施例1:トランスポゾン発現ベクターの設計
非ウイルスのトランスポゾン発現ベクターを、LEAPINトランスポザーゼ技術(ATUM,Newark,CA)を使用して設計し、クローニングする。トランスポゾン発現ベクターは、LP1プロモーターに作動可能に連結され、LP1プロモーターによって駆動されるヒトVLDLRを含む。マウスLP1-vldlrを含むトランスポゾン発現ベクターも作製する。ヒトLDRL-/-の個々の多能性幹細胞(iPSC)疾患細胞株または形質転換されたヒトもしくは胚性幹細胞(ESC)を使用する。他の試験した細胞株としては、ヒト肝臓(HepG2、Huh7)、及び非肝臓(CHO、HT1080、及びHEK293)細胞株が挙げられる。B6.129S7-Ldlrtm1Her/J(JAX)マウスモデル(ldlr-/-)を使用する。
【0162】
図4A、4B、4C、4D、4E、4F、4G、及び4Hは、インビトロトランスフェクション、及び転移有効性の評価、及びヒト幹細胞における発現研究、及びldlr-/-マウスにおけるLP1-ルシフェラーゼ生体内分布で使用される構築物の概略図を示す。図4Aは、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターを含むトランスポゾン構築物を示す。図4B及び4Cは、設計された発現ベクターの転移有効性を決定するために使用されるLP1-GFPトランスポゾン構築物を示す。図4Dは、肝細胞への分化後の、VLDLRでの幹細胞のトランスフェクションの表現型での結果を評価するために使用されるLP1-VLDRL構築物を示す。マウス、ブタ、カニクイザル、及びヒト配列を含むLP1-VLDRL構築物を調製する。図4Eは、異なる経路を使用して生体内分布を評価するために、肝臓への静脈内、門脈内、及び実質内経路によって投与されるLP1向上ヒトVLDLR(e-LDLR)構築物を示す。
【0163】
また、構築物は、PCSK9をノックダウンして、LDLR及びVLDLRの分解及びターンオーバーを防止するためにmiRNAを含むように設計する。図4Fは、LP1とは異なるプロモーターの制御下の、PCSK9標的化miRNAを含む構築物を示し、構築物が、異なる経路を使用して生体内分布及び用量範囲を評価するために、肝臓への静脈内、門脈内、または実質内経路によって投与され得る。図4Gは、LP1とは異なるプロモーターの制御下の、LP1-VLDRLトランスポゾン及びPCSK9標的化miRNAを含む、トランスポゾンを含む構築物を示す。図4Hは、LP1とは異なるプロモーターの制御下の、LP1-e-LDLRトランスポゾン及びPCSK9標的化miRNAを含む、トランスポゾンを含む構築物を示す。
【0164】
実施例2:トランスジェニックマウスを使用したインビボ実験
この実施例の実験は、投薬、忍容性、生体内分布、安全性、及び有効性を決定するための、ldlr-/-マウスへのLP1-vldlr及びLP1-ルシフェラーゼ構築物の静脈内、門脈内、及び実質内肝臓注射を含む。ユカタンLdlr-/-トランスジェニック小型ブタにおける同様の実験は、適切な構築物及び投与手順の安全性、忍容性、及び有効性を示すように設計しなければならない。生体内分布、用量応答、薬物動態、薬力学、安全性、及び病理学的研究は、GLP環境のユカタンブタまたはカニクイザルのいずれかにおいて実施され得る。
【0165】
実施例3:肝臓及び非肝臓細胞株における、転移有効性及びトランスポザーゼ(Ts):トランスポゾン(Tn)比の決定
構成的ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターの制御下でGFPを発現するトランスポゾンの転移有効性は、PGK1-GFP Tnでトランスフェクトされた後、肝臓及び非肝臓細胞株(すなわち、Huh7、HepG2、HT1801)の蛍光活性化細胞選別(FACS)分析によって決定する。構築物は、LEAPINトランスポザーゼを含む。図4Aは、この実施例で使用され得るベクターの一例を示す。上の表1に列挙されるものを含む、様々な肝臓特異的プロモーターを使用する。
【0166】
実施例4:肝臓特異的プロモーター(LSP)の選択
肝臓細胞株及び非肝臓細胞株を、上の実施例3で決定した転移有効性及びTs:Tn比に基づいて選択する。異なる肝臓特異的プロモーター(表1)を使用する緑色蛍光タンパク質(GFP)発現レベルは、細胞株をトランスポゾン(図4A及び4B)及びトランスポザーゼと共トランスフェクトすることによって決定する。肝臓特異的プロモーターは、Kramer et al.Mol Ther 2003;7:375-85に記載されているように評価する。GFP発現は、トランスフェクションの1日後、1週間後、2週間後、及び4週間後のFACS分析によって決定する。
【0167】
実施例5:ヒトVLDLR、向上させたLDLR(L339D、K830R、C839A)、及びPCSK9のノックダウンを含むトランスポゾン構築物の評価
肝臓及び非肝臓細胞株においてトランスフェクション実験を実施して、LDLR変異によって引き起こされたFHを改善するように設計された構築物の発現を評価する。2つのトランスポゾン(Tn)構築物の設計は、ヒトVLDLRを含む構築物、ならびにプロタンパク質変換酵素サブチリシンケキシンタイプ9(PCSK9)及びLDLRの誘導性分解物(IDOL)との相互作用を低減するためにヒトLDLR cDNAのコード配列に導入されるアミノ酸置換(L339D、K830R、及びC839A)を有する、向上させたヒトVLDLR(e-LDLR)を含む構築物を含む。加えて、構築物は、PCSK9をノックダウンして、LDLR及びVLDLRの分解及びターンオーバーを防止するためにmiRNAを含むように設計する、図4F~4Hを参照されたい。
【0168】
特定の細胞株、Ts:Tn比、強力な構成的LSP、及び最も安全なTs構築物(すなわち、規定された部位特異的組み込み)を、上の実施例3及び4に記載されるように選択する。LDLR及びVLDLRを評価するために、トランスフェクトされていない細胞及びトランスフェクトされた細胞において、FACS分析を前述の方法によって実施する。Somanathan et al.Circ Res 2014;115:591-9、Kozarsky et al.(1996).Nat Genet 3:54-62、Turunen et al.(2016).Mol Ther 2016;24:620-35を参照されたい。
【0169】
実施例6:FH患者iPSC、及びトランスジェニック-/-マウス、及び大型動物モデルにおけるインビボ研究のためのトランスポゾン(Tn)及びトランスポザーゼ(Ts)構築物の生成
患者のLDRL-/-幹細胞(iPSCまたはESC)におけるインビトロ試験、及びトランスジェニックldlr-/-マウスにおけるインビボ試験(ルシフェラーゼ生体内分布を含む)のためのトランスポゾン(Tn)及びトランスポザーゼ(Ts)構築物を同定する。使用する構築物は、図4B図4C図4D、及び図4Fに概略的に示される。研究のうちのいくつかを、大型動物、例えば、ユカタンミニブタLDRL-/-(Sus scrofa)、及び非ヒト霊長類(カニクイザル、macaca fascicularis)において行う。
【0170】
実施例7:LP1-VLDLR(Hs)/MLTトランスポザーゼでトランスフェクトされたHuh-7細胞におけるmRNA発現
この研究の目的は、HUH7細胞における2つのトランスジェニック細胞株-LP1-VLDLR/PGK-GFP及びLP1-VLDLRの生成による、MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2の組み込み効率を実証することであった。
【0171】
細胞株生成
本開示のMLTトランスポザーゼ(配列番号9)と組み合わせた2つの異なるプラスミド(LP1-VLDLR/PGK-GFP及びLP1-VLDLR単独)を使用する、ある特定のヌクレオフェクション条件(15個の異なるNucleofector(商標)プログラムと組み合わせた3つの異なる4D-Nucleofector(商標)溶液、及び1つの対照(ヌクレオフェクションなし))を使用して、HUH7細胞をトランスフェクションした。72時間後、抗生物質治療(Kan+)を適用して、陽性にトランスフェクトされたクローンを選択した。選択抗生物質を含む細胞培地を2~3日ごとに変更し、細胞毒性について14日間毎日、目視で細胞を検査した。MLTトランスポザーゼのゲノム編集能力を、14日後のGFPシグナルの免疫蛍光検出を使用して定量化した。
【0172】
細胞株検証
細胞株の生成及び増殖中に、陽性(HEK293)及び陰性対照(HUH7)細胞株を使用した。Droplet Digital(商標)PCT(ddPCR)を実施して、細胞当たりのLP1-VLDLR導入遺伝子のコピー数を定量化した。2つの陽性対照は、(1)LP1-VLDLRプラスミド単独、及び(2)ヒトゲノムDNA(二本鎖DNAの業界標準である、gBlocks(商標)Gene Fragments、長さ125~3000bpの二本鎖DNA断片)であった。陰性対照は、(1)HEK293細胞、(2)治療されていないHUH7細胞、(3)HUH7細胞+MLTトランスポザーゼ、及び(4)HO対照であった。
【0173】
qPCRを実施して、全ての細胞株における導入遺伝子の発現レベルを定量化した。以下の3つの陽性対照を使用した:(1)HEK293細胞、(2)プラスミド単独、及び(3)gBlocks(商標)Gene Fragments。以下の3つの陰性対照を使用した:(1)HUH7細胞、(2)HUH7細胞+MLTトランスポザーゼ、(3)HO対照。LP1-VLDLR単独を、ランダム導入の対照として使用した。
【0174】
LDL-C取り込みプロトコル
Abcam LDL取り込みキット(カタログ番号ab133127)を供給元の指示に従って使用した。ヌクレオフェクトされたHUH7細胞を70~80%の密集度で使用した。ヌクレオフェクトされた細胞へのLDL取り込みの検出のために、HUH7細胞をLDL-Dylight(商標)549で染色した。核の数の定量化のために、Hoechst染色を使用してハイコンテンツ撮像を実施して、読み取りを実施した。
【0175】
使用した試薬
本実験で使用した試薬を表2に示す。
【表2】
【0176】
結果
図6は、ヌクレオフェクションの24時間後のHuh7細胞のGFP発現を示し、4つのパネル(左から右)は、Nucleofector(商標)溶液キット(Lonza,Basel,Switzerland)、プログラムCA-137、CM-150、CM-138、及びEO-100で得られたデータを示す。各パネルの上段は、GFP蛍光を示し、下段は、明視野顕微鏡データを示す。図7は、ヌクレオフェクションの4時間後のHuh7細胞のGFP発現の結果を示し、4つのパネル(左から右)は、Nucleofector(商標)溶液キット、プログラムCA-137、CM-150、CM-138、及びEO-100で得られたデータを示す。各パネルの上段は、GFP蛍光を示し、下段は、明視野顕微鏡データを示す。図8A、8B、8C、及び8Dは、ヌクレオフェクションの24時間後のヌクレオフェクション効率の定量化の結果:Nucleofector(商標)溶液キット、プログラムCA-137(図8A)、CM-150(図8B)、CM-138(10,700個の生細胞、Q2%GFP:51%)(図8C)、及びEO-100(図8D)で得られたデータを示す。各図の上段は、GFP蛍光を示し、下段は、FACSプロットを示す:(1)10,700個の生細胞、Q2%GFP:51%、(2)13,300個の生細胞、Q2%GFP:39%、(3)13,800個の生細胞、Q2%GFP:45%、及び(4)10,800個の生細胞、Q2%GFP:71%。
【0177】
図9A、9B、9C、9D、9E、9F、及び9Gは、以下のように、トランスフェクションの7日後の異なる条件下でトランスフェクトされたHuh7細胞のFACSプロットを示す:(図9A)プログラムなし-陰性アッセイ対照、(図9B)pmaxGFP-陽性アッセイ対照、(図9C)LP1-VLDLR/PGK-GFPプラスミド(すなわち、LP1プロモーター、超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)遺伝子、及び向上されたPGKプロモーターによって駆動された発現(eGFP)を含むプラスミド)、(図9D)LP1-VLDLR/PGK-GFP+MLT1、(図9E)LP1-VLDLR/PGK-GFP+MLT2、(図9F)MLT1、及び(図9G)MLT2。以下の表3は、図9A~9Gについての、トランスフェクションの各々に関する情報を提供する。
【表3】
【0178】
図9A図9B図9C図9D図9E図9F、及び図9GのFACSプロットは、LP1-VLDLR/PGK-GFP+MLT1及びLP1-VLDLR/PGK-GFP+MLT2(パネル4及び5)の両方が、この研究における陰性対照(パネル1、6、及び7)と比較した場合、Huh7細胞を効果的にトランスフェクトすることが可能であったことを示す。トランスポザーゼを含まないLP1-VLDLR/PGK-GFPは、LP1-VLDLR/PGK-GFPとトランスポザーゼ(MLT1またはMLT2)との組み合わせの発現と同様の発現を有することが観察された。これは、トランスポザーゼの存在が、Huh7細胞の生存率に悪影響を及ぼさないことを示す。
【0179】
VLDLRプラスミド及びMLTトランスポザーゼ2で治療されたHuh7細胞に対する、治療されていないHuh7細胞のLDL-C取り込みを示す図10は、Huh7細胞をVLDLRプラスミド及びMLTトランスポザーゼ2で治療した場合、Huh7細胞のLDL-C取り込みが約30~50%増加したことを示す。
【0180】
変動する条件下でのVLDLR発現のqPCR結果を示す図11は、試料1(LP1-hVLDLR)及び試料2(LP1-hVLDLR+PGK-GFP)におけるMLTトランスポザーゼ2の存在が、VLDLR発現を増加させることを示す。これは、対照と比較した場合、ヒト肝細胞(Huh7細胞)におけるLP1-hVLDLRの発現の劇的な10倍超の増加を示す。
【0181】
結論として、この研究は、とりわけ、Huh7細胞をLP1-hVLDLRで治療した場合の、VLDLR mRNA発現の発現における増加を実証した。この研究はまた、治療されていない細胞株と比較して、VLDLRプラスミド及びMLTトランスポザーゼ2で治療された場合、LDL-C取り込みが約30%~50%増加することを実証した(図10)。
【0182】
実施例8:転移活性を決定するために使用されるフローサイトメトリー分析
この研究は、トランスフェクトされた細胞株のインビトロ転移を決定するためのフローサイトメトリーの使用を評価した。この研究では、フローサイトメトリーを使用して、変動する肝細胞及び非肝細胞株におけるGFPの存在を測定した。
【0183】
15mWの空冷488アルゴンイオンレーザーを備えたフローサイトメーター(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,BDIS)で試料を分析した。530/30nmバンドパス(BP)除去後に、緑色GFP蛍光を収集した。蛍光チャネル間で電子補正を使用して、残留スペクトル重複を除去した。4ディケード対数スケールでGFP蛍光データを表示した。低流量設定(12μL/分)を試料採取に使用して、ヒストグラムの変動係数を改善した。シングレットゲート内で、各試料の最小10,000の事象を収集した。CELL Questyソフトウェア(BDIS)で多変量データの分析を実施し、ModFit LTyソフトウェア(Verity Software House,Topsham,ME)でヒストグラムの細胞周期分析を実施した。本実験で使用した試薬を表4に示す。
【表4】
【0184】
この研究では、DNAドナー(プラスミド)候補(図12)を試験し、細胞株におけるフローサイトメトリーによって、それらのGFP発現を測定した。
【0185】
これらのインビトロ臨床前発見研究の結果は、ヒト疾患を治療するためにトランスポゾン構築物を使用する概念の証明を提供する。また、この研究で得られたデータは、ドナーGFPを測定することによって、転移した細胞の数を定量化するためのフローサイトメトリーの使用を支持する。
【0186】
実施例9:Huh-7ヒト肝細胞におけるPGK-GFP及びLP1-VLDLRの共トランスフェクション
この研究の目的は、PGK-GFP及びLP1-VLDLRで共トランスフェクトされた、本開示によるMLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2を含む及び含まないVLDLR/PGK-GFP及びVLDLR導入遺伝子の組み込みを評価することであった。
【0187】
HUH7細胞株調製
HUH7細胞株を、15個の異なるNucleofector(商標)プログラムと組み合わせた4D-Nucleofector(商標)溶液V、及び1つの対照(ヌクレオフェクションなし)で試験した。24時間後に、その後の全ての実験に対して最も高い効率及び最も低い死亡率を有するNucleofection(商標)条件を選択した。
【0188】
2つの異なるトランスポザーゼ-MLTトランスポザーゼ1及びMLTトランスポザーゼ2と組み合わせた、2つの異なるプラスミド(LP1-VLDLR/PGK-GFP及びLP1-VLDLR単独)を使用して、以前に事前決定したヌクレオフェクション条件を使用して、HUH7細胞をトランスフェクトした。72時間後、抗生物質治療(Kan+)を適用して、陽性にトランスフェクトされたクローンを選択した。選択抗生物質を含有する細胞培地を2~3日ごとに変更し、細胞毒性について14日間毎日、目視で細胞を検査した。2つのトランスポザーゼ(MLT1及びMLT2)のゲノム編集能力を定量化し、14日後のGFPシグナルの免疫蛍光検出を使用して比較した。
【0189】
アッセイ最適化
最適化の目的のために、細胞株の生成及び増殖中に、陽性(HEK293)及び陰性対照(HUH7)細胞株を使用した。ddPCRアッセイのための特異的Taqmanプローブを設計して、VLDLR導入遺伝子を検出して、LP1 VLDLR導入遺伝子コピー数を定量化した。コピー数決定アッセイのための参照遺伝子。安定的な組み込みのためGblock(陽性対照)及びプラスミド特異的プローブ(陰性対照)を用いたVlDLR発現レベル。
【0190】
ウエスタンブロッティング及び免疫細胞染色(ICC)実験では、最大2つの抗体を2つの希釈で試験した。同じ2つの抗体を使用して、2つの細胞株においてICCを実施した。更なる実験のために、特定の希釈の単一抗体を選択した。
【0191】
LDL取り込みアッセイキット(Abcam、カタログ番号ab133127)を使用して、LDL取り込みを評価した。修正せずに、製造業者によって提供されたプロトコルに従った。細胞を最大4つの異なる密度で播種した。実験は、技術的に3回実施した。ハイコンテンツ撮像及び画像分析を実施した。細胞内の蛍光LDLの強度を計算した。
【0192】
新しく生成したVLDLR/PGK-GFP及びVLDLR細胞株におけるVLDLR発現の評価を、Amaxa Nucleofector(商標)プログラムCA-137(Lonza)を使用して実施した。HEK293細胞を陽性対照に使用し、HUH7細胞を陰性対照に使用した。ddPCRを実施して、細胞当たりのLP1-VLDLR導入遺伝子のコピー数を定量化し、全ての細胞株における導入遺伝子の発現レベルを定量化した。ウエスタンブロットによって、タンパク質レベルでのVLDLRの定量化を実施した。
【0193】
核の数の定量化のために、Hoechst染色を使用してハイコンテンツ撮像及び画像分析を実施し、選択された抗体を用いてヒトVLDLRに対して免疫細胞染色を実施した。
【0194】
試薬
本実験で使用した試薬を表5に要約する。
【表5】
【0195】
結果
図13A、13B、及び13Cは、図12の遺伝子導入構築物を使用した、トランスポザーゼ(MLT1及びMLT2)を用いた(「トランスポザーゼ+」)、及び用いない(「トランスポザーゼ-」)アッセイでの、Huh7細胞におけるGFP発現の画像及びFACSプロットである。図13A、13B、及び13Cは、それぞれ、24時間(図13A)、72時間(図13B)、及び7日(図13C)でのトランスポザーゼ-アッセイ(上)及びトランスポザーゼ+アッセイ(下)のデータを示す。
【0196】
図12のドナーDNA構築物を使用して、図13A、13B、及び13Cに示されるFACS分析の結果を生成した。24時間後、トランスポザーゼを含む(トランスポザーゼ+)及びトランスポザーゼを含まない(トランスポザーゼ-)の両方のアッセイでは、GFP発現は両方で約2%で定量化され、ほとんど~全くなかった(図13A)。トランスポザーゼ-でトランスフェクトされた細胞では、72時間でのGFP発現は、0%であった一方で、トランスポザーゼ+細胞(トランスポザーゼ+LP1-VLDLR及びPGK-GFP)では、72時間で23%のGFP発現が観察された(図13B)。7日目でのトランスポザーゼ-細胞では7%のGFP発現があった一方で、72時間でのトランスポザーゼ+細胞では21%の発現があった(図13C)。このデータは、ddPCR及びFACSの両方によって定量化した。
【0197】
したがって、これらの実験で得られたデータは、図13A、13B、及び13Cに示されるように、トランスポザーゼ+PGK-GFP及びLP1-VLDLRがHuh7細胞を転移することができることを示す。これらのトランスフェクトされた細胞の比較は、トランスポザーゼ-細胞とトランスポザーゼ+細胞との間の顕著な差を示す。72時間でのトランスポザーゼ+LP1-VLDLR及びPGK-GFPでトランスフェクトされたHuh7細胞は、23%のGFP発現を示した。これは、72時間でのトランスポザーゼ+LP1-VLDLR及びPGK-GFPが、有害な細胞死を引き起こすことなく、Huh7細胞をトランスフェクトすることができることを示す。7日目でのトランスポザーゼ+でトランスフェクトされた細胞は依然として21%のGFP発現を示した一方で、トランスポザーゼ-でトランスフェクトされた(すなわち、転移にトランスポザーゼを使用しなかった)細胞は、7日目に7%のGFP発現を示した。このデータを比較する場合、実験結果からの対照GFP%陽性細胞を考慮すると、依然として7日後に顕著である14%のGFP発現を示すことを見ることができる。
【0198】
実施例10:LP1-VLDLRで転移されたHuh-7細胞におけるLDL取り込み
この研究の目的は、本開示のMLTトランスポザーゼ(ヘルパーRNA)及び肝臓特異的プロモーターLP1によって駆動されるヒトVLDLR(コドン最適化)を用いて細胞をトランスフェクトするドナーDNA構築物を使用して転移した、Huh7細胞における細胞レベルでのLDL取り込み及び調節を評価することであった。目標は、2週間の増殖後のHuh7細胞におけるVLDLR導入遺伝子の組み込みの成功を示すことであった。キットは、ヒトLDLを用いる。Huh7細胞は通常、ヒトVLDLRを発現しないが、LDLRを発現する。LDLRに加えてVLDLRを発現する転移されたHuh7細胞におけるLDL取り込みの増加が見られることが予想された。培養されたHu-7細胞へのLDL取り込みの検出のための蛍光プローブとして、DyLight(商標)550を使用した。
【0199】
方法論
本研究で使用したプロトコルは、96ウェルプレートのために設計した(他のサイズのプレートについては、各ウェルに適用する培地/溶液の体積を適宜調整した)。
1.96ウェルプレートに3×10個の細胞を播種し、細胞を一晩増殖させる。HepG2細胞については、治療前に2日間細胞を増殖させる。
2.翌日または3日目に、細胞を実験化合物またはビヒクルで24時間治療する。
3.治療期間の終了時に、培養培地を75-100μl/ウェルのLDL-DyLight(商標)550作業溶液に置き換える。
4.37℃のインキュベーター内で、更に3~4時間または実験プロトコルで使用する期間の間、細胞をインキュベートする。
5.LDL取り込みインキュベーションの終了時に、培養培地を吸引し、新鮮な培養培地またはPBSと置き換える。
6.励起波長540nm及び発光波長570nmをそれぞれ測定することが可能なフィルタを備えた顕微鏡下で、LDL取り込みの程度を調べる。
【0200】
試薬
本実験で使用した試薬を表6に要約する。
【表6】
【0201】
結果
Abcam LDL取り込みアッセイキット(カタログ番号ab133127)を供給元の指示に従って使用して、本開示のトランスポザーゼ(RNAヘルパー)及びLPI-VLDLRドナーで転移し、培養物中で14日間維持したHuh7細胞におけるLDL取り込みを決定した。LP1-VLDLRでヌクレオフェクトされた、ヌクレオフェクトされたHUH7細胞を、70%~80%の密集度まで14日間増殖させた。LDL取り込みの検出のために、ヌクレオフェクトされた細胞をLDL-Dylight(商標)549で染色した。ハイコンテンツ撮像を用いて、読み取りを実施した。
【0202】
図14A、14B、14C、及び14Dは、ヌクレオフェクトされていない(治療されていない)HEK293及びHuh7細胞におけるベースラインLDL取り込みを示す。図14Aは、LDL取り込みのみの治療されていないHEK293細胞を示し、図14Bは、LDL取り込みのみの治療されていないHuh7細胞を示し、図14Cは、染色されていない治療されていないHEK293細胞を示し、図14Dは、染色されていない治療されていないHuh7細胞を示す。図14A、14B、14C、及び14Dに示されるように、治療されていない染色されていない細胞(0%)と比較して、LDL-Dylight(商標)549で染色されたヌクレオフェクトされていない(治療されていない)HEK293及びHuh7細胞(30%~50%)の両方で、LDL取り込みシグナルが検出された。HEK293及びHuh7細胞型の両方は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)を有する。正常酸素圧条件下のHuh7細胞は、超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)を発現しないが、HEK293は、LDLR及びVLDLRの両方を発現する。
【0203】
図15A、15B、15C、15D、及び15Eは、転移されていないHuh7細胞に対する転移されたHuh7細胞におけるLDL取り込みを示す。比較のために、図15Aは、転移されていない(トランスポザーゼ-)HEK293細胞を示し、図15Bは、転移されていない(トランスポザーゼ-)Huh7細胞を示し、図15Cは、ヒトLP1-VLDLRプラスミド(pVLDLR)でヌクレオフェクトされた転移されていない(トランスポザーゼ-)Huh7細胞を示し、図15Dは、ヒトLP1-VLDLRプラスミド(pVLDLR)でヌクレオフェクトされた、MLT1で転移されたHuh7細胞を示し、図15Eは、ヒトLP1-VLDLRプラスミド(pVLDLR)でヌクレオフェクトされた、MLTトランスポザーゼ2で転移されたHuh7細胞を示す。示されるように、LDL取り込みシグナルは、MLT1またはMLTトランスポザーゼ2(70%~90%)のいずれかで転移されたHuh7細胞と比較して、LDL-Dylight(商標)549で染色された、ヌクレオフェクトされていないHEK293及びHuh7細胞、ならびに転移されていないHuh7細胞(30%~50%)において小さかった。
【0204】
結果は、転移されたHuh7細胞の表面上のVLDLRの増加が、LDL取り込みの増加を引き起こしたことを示唆する。
【0205】
実施例11:ldlr-/-マウスにおけるLNP LP1-ルシフェラーゼ/トランスポザーゼBLIの薬力学的用量範囲
この研究の目的は、同じ背景染色の株の野生型(ldlr+/+及びldlr-/-)C57BL/6マウスにおける、インビボでの蛍光標識された脂質ナノ粒子の肝取り込みを比較することであった。試験物品の肝内注射後の2つの時点(3日目及び5日目)で全身生物発光撮像(BLI)によって、ルシフェラーゼの発現を記録した。
【0206】
この研究は、以下の脂質ナノ粒子(LNP)製剤:イオン化可能なリピドイド、コレステロール、リン脂質、及びPEG脂質を使用した。
【0207】
動物群
本研究は、目的に基づいて交配されたナイーブマウス、株:ldlr-/-及び野生型(ldlr+/+)C57BL/6J(Jackson Laboratories,Bar Harbor,ME)を使用した。オスの数:16匹のC57BL/6J野生型(ldlr+/+)(及び2つの代替物)/16匹のldlr-/-ノックアウト(及び2つの代替物)。投薬開始時の標的年齢:約10週齢;及び到着時の標的重量:26.9+1.7 g.
【0208】
この研究で使用した3つのマウスコホートを表7、表8、及び表9に記載する。
【表7】

【表8】

【表9】
【0209】
試薬及び試験物品
本実験で使用した試薬を表10に要約する。
【表10】
【0210】
本研究で使用したビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4、NO Ca2+、またはMg2+(約4℃で保存)であった。
【0211】
本研究で使用した試験物品は、以下であった:
・PBS:CaまたはMgを含まない1XPBS緩衝液、注射用滅菌溶液(27G~31G注射針を使用した)。
・試験物品1:空のLNP。
・試験物品2:LNP LP1-ルシフェラーゼ2/MLTトランスポザーゼ2(750μgの核酸/mL)(ストック)。
【0212】
表11は、本実験で使用した試験物品の用量を要約する。
【表11】
【0213】
結果
マウスの合計8つの群に、異なる用量の試験物品(LP1-vldlr+MLTトランスポザーゼ)または空のLNP(シャム手術)のいずれかを注入した。図16A及び16Bは、3日目(図16A)及び5日目(図16B)のコホート1のBLIを示す。図17A及び17Bは、3日目(図17A)及び5日目(図17B)のコホート2のBLIを示す。図18A及び18Bは、3日目(図18A)及び5日目(図18B)のコホート3のBLIを示す。図19は、長期維持(それぞれ26日及び33日)後の群6及び群8に属する動物からのBLIを示す。
【0214】
興味深いことに、野生型マウスだけでなくまた、ldlr-/-マウス(群5、6、7、8)は、図16A、16B、17A、17B、18A、18B、及び19に示されるように、ドナーDNAの顕著な取り込みを示した。空のLNPは、wtまたはldlr-/-マウスのいずれにも致死効果を有さなかった(図16A、16B、17A、17B)。
【0215】
高用量のLNPは、3日及び5日間で両方のwtマウスにおいてドナーDNAの転移に成功したことを示したが、ldlr-/-マウスにおいては、いかなる有望な効果も示さなかった(図17A及び17B)。しかしながら、高用量のLNPは、wtマウス(群2)においても、5日目に発光パターンの減少を示した(図17B)。一方、中用量は、両日の野生型(群3)において有効なままであったが、5日目にはldlr-/-(群6)マウスにおいて有効性を示さなかった(図17B)。興味深いことに、低用量は、wt及びldlr-/-マウスの両方に顕著な効果を示した(図18A及び18B)。中用量及び低用量の試験物品を投与した2つの群の動物(群6及び8)を、長期間-26及び33日間にわたって保持した場合、低用量の動物(群8)は、安定的に組み込まれたルシフェラーゼDNAから生じる発光の継続的な発現を示した(図20)。群2からの1匹の動物、群5からの2匹の動物、及び群6からの1匹の動物は、外科的手順に起因して死亡した。
【0216】
結論として、低用量(0.35mg/kg)の試験物品は、最良の発光結果を示した。低用量は、比較的長期間にわたって、最良の組み込みまたは転移効率を呈した。
【0217】
実施例11:安定的な局所的肝臓組み込み
図20の左パネルは、肝臓の左側葉に6.25ugのDNAの肝臓総用量で注射され、注射後26日目に撮像した、ドナーDNA単独を含有する50uLのLNPを投与した、ldlr-/-動物を示す。図20の右パネルは、肝臓の左側葉に9.375ugの核酸(DNA6.25ug、3.125ugのRNA)の肝臓総用量で注入され、注入後26日目に撮像した、ドナーDNA及びヘルパーRNAの両方を含有する50uLのLNPを投与したldlr-/-動物を示す。図20の結果は、LP1-ルシフェラーゼ2/MLTトランスポザーゼを含有する肝臓特異的LNP製剤が、ldlr-/-動物において肝臓の左側葉に局所的かつ標的化された注射によって投与される場合、試験物品の単回用量の後に、ドナーDNAの安定的な局所的肝臓組み込みが生じることを示す。加えて、肝外組み込みの証拠はなく、本アプローチによって送達される標的化療法を実証する。
【0218】
実施例12:ldlr-/-マウスにおける肝臓特異的LNP製剤の安全性及び有効性の評価
本研究では、LP1-vldlr/MLTトランスポザーゼを使用する肝臓特異的LNP製剤を肝臓の左側葉に直接注射することによって、ldlr-/-マウスに投与した。図21Aは、有効性評価の結果を示し、治療されていない(ドナー単独)マウスと比較した、治療されたldlr-/-マウスにおける、7日目(D7)及び15日目(D15)での参照範囲と比較したトリグリセリド(mg/dL)の低下を示す。図21Bは、肝臓機能の指標である、試験動物の血液中の(u/Lでの)肝臓酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を測定した、安全性評価の結果を示す。図21Bは、各々、参照(「1」)範囲、ならびにD7(「2」)、及びD15(「3」)のデータを含む、治療されていない群、治療された群、及びPBS群についてのデータを示す。
【0219】
これらの結果は、トリグリセリドが、正常参照範囲と比較して約40%の低下を示すことを実証する。LDL-Cに短期的な変化は観察されなかった。また、直接肝臓注射に起因するALTの初期上昇(図21A、7日目)は、その後、正常参照範囲に戻る(図21A、15日目)。
【0220】
定義
以下の定義は、本明細書に開示の発明に関連して使用される。別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0221】
「インビボ」という用語は、対象の体内で起こる事象を指す。
【0222】
「エクスビボ」という用語は、対象の体から除去された細胞、組織、及び/または臓器に対する治療または手順の実施に関与する事象を指す。適切な場合、細胞、組織、及び/または臓器は、治療または手術の方法で対象の体に戻され得る。
【0223】
本明細書で使用される場合、「バリアント」という用語は、ある特定の位置での1つ以上の置換、欠失、及び/または付加の方式によって参照の核酸またはアミノ酸配列とは異なる核酸またはアミノ酸配列を含む核酸またはタンパク質を包含するが、これらに限定されない。バリアントは、1つ以上の保存的置換を含み得る。保存的置換は、例えば、同様に荷電されたまたは荷電されていないアミノ酸の置換を含み得る。
【0224】
本明細書で使用される場合、「担体」または「ビヒクル」は、薬物投与に好適な担体材料を指す。本明細書で有用な担体及びビヒクルとしては、当該技術分野において既知の任意のそのような材料、例えば、無毒であり、かつ有害な様式で組成物の他の構成要素と相互作用しない任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0225】
「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または妥当な利益/リスク比に見合った他の問題もしくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適な、化合物、材料、組成物、及び/または投薬形態を指す。
【0226】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、ならびに不活性成分を含むことが意図される。活性薬学的成分へのそのような薬学的に許容される担体または薬学的に許容される賦形剤の使用は、当業者に周知である。任意の従来の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される賦形剤が活性薬学的成分と不適合でない限り、本発明の療法組成物におけるその使用が企図される。他の薬物等の追加の活性薬学的成分も、記載の組成物及び方法に組み込まれ得る。
【0227】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」は、1つ、または2つ以上を意味し得る。
【0228】
更に、参照された数値表示に関連して使用される場合の「約」という用語は、その参照された数値表示に、その参照された数値表示の最大10%を加算または減算することを意味する。例えば、「約50」という言葉は、45から55の範囲を包含する。
【0229】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」という単語及びその変形は、リスト内のアイテムの列挙が、本技術の組成物及び方法でも有用であり得る他の同様のアイテムを除外するものではないように、非限定的であることを意図する。同様に、「し得る(can)」及び「し得る(may)」という用語、ならびにそれらの変形は、一実施形態が、ある特定の要素または特色を含み得る(can)かまたは含み得る(may)列挙が、それらの要素または特色を含まない本技術の他の実施形態を除外しないように、非限定的であることを意図する。
【0230】
含むこと(including)、含有すること、または有すること等の同義語としての「含むこと(comprising)」という開放的な用語は、発明、本発明、または本発明の実施形態について記載及び特許請求するために本明細書で使用され、代替的に、「からなること」または「から本質的になること」等の代替的な用語を使用して記載され得る。
本明細書で使用される場合、「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、ある特定の状況下である特定の利益をもたらす技術の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態も、同じかまたは他の状況下で好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味せず、本技術の範囲から他の実施形態を除外することを意図しない。
【0231】
等価物
本発明は、その特定の実施形態に関連して記載したが、更なる修正が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従って、本発明の任意の変型、使用、または適応を網羅するものであり、本発明が属する技術分野において知られているか、または慣行に含まれるような本開示からの逸脱、及び前述される本質的な特徴に適用され得るもの、ならびに添付の請求項の範囲に含まれるような本開示からの逸脱を含むことを理解されたい。
【0232】
当業者であれば、単なる日常的な実験を使用して、本明細書に具体的に記載される特定の実施形態の多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲の範囲内に包含されることが意図される。
【0233】
参照による組み込み
本明細書で参照される全ての特許及び刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0234】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前に単独でそれらの開示が提供されている。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0235】
本明細書で使用される場合、全ての見出しは単に本明細書の構成のためのものであり、いかなる様式においても開示を制限することを意図したものではない。いかなる個々のセクションの内容も、全てのセクションに等しく適用可能であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20
図21A
図21B
【配列表】
2023524013000001.app
【国際調査報告】