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特表2023-524015使い捨て培養工程システムを用いたインフルエンザウイルス生産方法及びインフルエンザウイルス抗原精製条件の迅速確認試験
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  • 特表-使い捨て培養工程システムを用いたインフルエンザウイルス生産方法及びインフルエンザウイルス抗原精製条件の迅速確認試験 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】使い捨て培養工程システムを用いたインフルエンザウイルス生産方法及びインフルエンザウイルス抗原精製条件の迅速確認試験
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/14 20060101AFI20230601BHJP
   C07K 14/11 20060101ALN20230601BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230601BHJP
   C12N 7/06 20060101ALN20230601BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20230601BHJP
   C07K 1/18 20060101ALN20230601BHJP
   C07K 1/26 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
C07K1/14
C07K14/11
C12N5/10
C12N7/06
C12M1/00 D
C07K1/18
C07K1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565959
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 KR2021004356
(87)【国際公開番号】W WO2021221338
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052700
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052708
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
3.CETAVLON
(71)【出願人】
【識別番号】519038714
【氏名又は名称】エスケー バイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ファンウィ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム、フン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨンウク
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB11
4B029BB13
4B029GA08
4B029GB05
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA30
4B065BD15
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA61
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA15
4H045GA23
4H045GA31
(57)【要約】
本発明は、使い捨て培養工程システムを用いたインフルエンザウイルス生産方法及びインフルエンザウイルス抗原精製条件の迅速確認試験に関し、本発明によると、既存のインフルエンザワクチン生産時に標準試験法として用いられている放射免疫拡散法を用いなくても本発明特有の方法により迅速で信頼性のあるインフルエンザ表面抗原の取得(精製)条件の確認が可能であり、これによりインフルエンザ表面抗原サブユニットワクチンの生産期間が著しく短縮され、新型インフルエンザが急速に大流行する状況でも迅速にワクチンの開発/製造に応じた対応を迅速に行える。また、本発明のインフルエンザウイルス生産方法によれば、使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いることにより、培地交換を密閉システムで進行させることができ、ウイルス生産過程中の汚染発生の可能性を大きく下げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤(Detergent)を用いてインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する方法において、前記界面活性剤はサンプリング(sampling)したインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で前記サンプリングしたインフルエンザウイルスに処理される界面活性剤の処理量が決定されることを特徴とする方法:
【数1】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【請求項2】
前記界面活性剤の処理量は、ウイルスコア(core)の非破壊状態またはウイルスコアの破壊が最小化された状態であり、表面抗原のみを選択的に分離するための濃度であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤の処理量決定は、サンプル内ヘマグルチニン(HA)タンパク質の量に対してSRID(Single radial immunodiffusion)による定量過程が必要ではないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記界面活性剤はカチオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カチオン性界面活性剤はCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記全体タンパク質の定量値(TPQV)はBCA assay、lowry assayまたはBradford assayにより得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプリング(sampling)したインフルエンザウイルスは、下記段階を含む方法により得られたことを特徴とする、請求項1に記載の方法:
(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;
(b)前記(a)段階の細胞培養液で使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;
(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスに感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;及び
(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階。
【請求項8】
前記細胞はMDCK(Madin-Darby Canine Kidney)細胞であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記(b)段階は、培養液の全量回収及び再投入過程なしに連続式低速遠心分離機を用いて連続的に細胞と培地を分離して培地の一部を廃棄し、新たな培地を細胞インキュベーターに投入する方法で培地を交換することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記培地の一部は、全体培養液の50%~80%であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記(d)段階は、下記段階を含めて行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法:
(d-1)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)に基づいて精製条件を決定する段階;及び
(d-2)前記(d-1)段階で決定された条件に応じて前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階。
【請求項12】
前記サンプリング(sampling)したインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値は50~950μg/mLであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
下記第1精製条件決定法及び第2精製条件決定法を含むことを特徴とする、インフルエンザ抗原精製条件の迅速確認試験方法:
第1精製条件決定法として、インフルエンザウイルス培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階で用いられるものであって、前記インフルエンザウイルス精製時の条件は、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて決定される第1精製条件決定法;及び
第2精製条件決定法として、界面活性剤を用いてインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階で用いられるものであって、前記表面抗原タンパク質の精製時の界面活性剤の処理量は、インフルエンザウイルスサンプルに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定される第2精製条件決定法。
【請求項14】
前記インフルエンザ抗原精製条件の迅速確認試験方法は、インフルエンザウイルスサンプル内のヘマグルチニン(HA)タンパク質の量に対してSRID(Single radial immunodiffusion)による定量過程が必要でないことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記インフルエンザウイルス培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階は、クロマトグラフィーで行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記クロマトグラフィーはセルファインサルフェート(Cellufine sulfate;CS)で充填されたクロマトグラフィーで行われることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記条件は、緩衝液の種類、緩衝液の濃度、pH、伝導度を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記条件は、伝導度であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第2精製条件決定法は、前記第1精製を経て得られたインフルエンザウイルス培養物の単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で界面活性剤の処理量が決定されることを特徴とする、請求項13に記載の方法:
【数2】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700,800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記インフルエンザウイルス培養物の容量である。)
【請求項20】
インフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階を含むワクチンの製造方法であって、前記段階は、サンプリングしたインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value, TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で界面活性剤を処理する条件の下に行われる方法:
【数3】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【請求項21】
下記段階を含む、インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法:
a)インフルエンザウイルスを細胞に感染させ、培養してウイルス培養物を得る段階;
b)前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて精製条件を決定する段階;
c)前記b)段階で決定された条件に応じて前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階;
d)前記c)段階で精製されたインフルエンザウイルスから表面抗原を精製するために、表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量をインフルエンザウイルスに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定する段階;
e)前記d)段階で決定された条件に応じて界面活性剤を処理してインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階。
【請求項22】
前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、b)段階以前に、ウイルス培養物から細胞(cell)及び細胞残屑(cell debris)を除去する段階をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルス培養物から細胞(cell)及び細胞残屑(cell debris)の除去は、濾過、透析及び遠心分離からなる群から選択された一つ以上の方法で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、c)段階後に限外濾過及びダイアフィルトレーションからなる群から選択される一つ以上の方法による追加の精製過程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記e)段階は、界面活性剤の処理後、遠心分離して上澄液を回収する方法で表面抗原タンパク質を分離する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、e)段階後に界面活性剤の除去過程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、e)段階後に不純物の除去のための追加のクロマトグラフィー遂行過程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記クロマトグラフィーは、TMAE(トリメチルアミノエチル)アニオン交換クロマトグラフィーであることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、クロマトグラフィー後に限外濾過及びダイアフィルトレーションからなる群から選択される一つ以上の方法による追加の精製過程を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記a)段階でウイルス感染に用いられる細胞またはa)段階でウイルスに感染した細胞は使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記a)段階のウイルスを細胞に感染させる前に、ウイルス感染に用いられる細胞培養物で連続式低速遠心分離機を通じて培地の一部を新鮮な培地で交換することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、c)段階後にベンゾナーゼ(Benzonase)、エキソヌクレアーゼ(Exonuclease)、リボザイム(Ribozyme)、またはその混合物の処理過程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、c)段階後にウイルス不活性化過程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記ウイルス不活性化は、界面活性剤(detergent)、ホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、2級エチルアミン、アセチルエチレンイミンまたはこれらの組合わせを処理することにより行われることを特徴とする、請求項33に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月29日に出願された大韓民国特許出願第10-2020-0052700号及び2020年4月29日に出願された大韓民国特許出願第10-2020-0052708号を優先権として主張し、前記明細書の全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、使い捨て培養工程システムを用いたインフルエンザウイルス生産方法及びインフルエンザウイルス抗原精製条件の迅速確認試験に関する。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザ関連疾患は、治療も重要であるが、何よりもワクチン接種を通じた予防が現実的で効果的な方法であると言え、もしワクチンの開発がより迅速になされたとすれば、新型インフルエンザの大流行時には、被害をそれだけ減らすことができると予測される。
【0004】
インフルエンザウイルスは、毎年ワクチン生産勧告株が変更され、不特定時点に全世界的に感染が増加する新型インフルエンザ発病の特性に応じて、インフルエンザウイルスワクチンの開発は、短時間に大量生産条件を確立し、高収率及び高純度でワクチンを生産することが鍵であるといえる。
【0005】
インフルエンザワクチンの主抗原は、インフルエンザウイルスの外皮にあるヘマグルチニン(Haemagglutinin,HA)であり、ワクチンの力価もヘマグルチニン濃度を基準とする。現在、インフルエンザワクチンのヘマグルチニンの濃度を測定するために、ヨーロッパ薬局方と世界保健機構(world health organization,WHO)で推薦する放射免疫拡散法(single radial immunodiffusion technique,SRID)が国内外で共通に用いられている(非特許文献1)。放射免疫拡散法を用いたヘマグルチニンの含量の測定時にNIBSC(National Institute for Biological Standards and Control)で分譲する標準抗原と標準抗体が用いられるが、インフルエンザワクチン抗原と標準抗体が凝集した環の大きさを標準抗原と標準抗体が凝集した環の大きさと比較換算することにより、インフルエンザワクチンのヘマグルチニンの濃度を測定する。しかし、このような放射免疫拡散法はサンプルを処理するのに24時間以上が要され、大部分の工程が手作業で行われて処理量に比べて大変労働集約的である。
【0006】
パンデミック(pandemic)とは、世界的に伝染病が大流行する状態を意味することであり、パンデミック状況ではワクチンの開発が迅速でなければならないため、インフルエンザパンデミック状況に対処するためのワクチン開発時にヘマグルチニンの含量測定も迅速に行わなければならない。韓国では、2009年度に予期しないH1N1パンデミック状況で世界保健機構(World Health Organization,WHO)の標準抗原及び標準抗体の供給遅延によりワクチンの製造及び後続の臨床試験が全般的に遅延された経験をした。パンデミック状況のように迅速にワクチンが開発されなければならない場合、迅速なヘマグルチニン含量の測定法が要求されるが、放射免疫拡散法に用いられる標準抗原と標準抗体の開発に2~3カ月が要されるため、迅速なワクチンの開発に障害になったものである。
【0007】
また、最近、新たな物理化学的試験方法に関する研究が行われ始めたが、新たに試みられる物理化学的試験方法が放射免疫拡散法試験に代替するためには、代替試験法と放射免疫拡散法の結果に如何なる相関関係があるというデータと試験法の確立、認証などが必要である。
【0008】
現在、代替試験法として逆相クロマトグラフィー試験法(RP-HPLC)、同位元素希釈液体クロマトグラフィー質量分析法(ID-LC/MS)、脱糖抗原SDS-PAGE分析法などが知られているが、方法によっては依然として標準抗原が必要でもあり、高価な装備及び専門人材が絶対に必要であったり、分析感度が低いなどの短所が存在することが知られている(非特許文献2)。
【0009】
依然として当業界にはワクチンの製造時に容易にSRID方法なしに、あるいはSRID方法に代替可能な方法が必要な実情である。
【0010】
一方、インフルエンザワクチンは、50年間有精卵を用いて製造されてきた。しかし、同製造方法は、1回接種量のワクチンの製造に約1個の有精卵を必要として製造に長期間が要され、製造工程が複雑である。また、ワクチンの製造のために品質管理されたSPF(Specific pathogen free)有精卵を用いるようになっているが、供給量が制限的で事前に計画されていない場合、突然の需要が発生した時、供給量を増やすのが困難である。その上、有精卵を用いたワクチンには、微量のタマゴ由来のタンパク質が含まれているため、このタンパク質に感受性がある者にはアレルギー反応を引き起こす可能性が高い。また、インフルエンザウイルスは有精卵で培養する時、抗原性変異が起きる場合もあり、一部のウイルスの場合、むしろ有精卵培養が不可能であるか、またはニワトリに対して致死性を示す場合もある。このような短所は、インフルエンザウイルスの世界的な大流行(Pandemic)が発生した場合に十分なワクチンを供給するにおいて大きな問題になり得る。このような短所を克服するために、約15年前から動物細胞培養を用いてインフルエンザウイルスを培養する技術が開発され始めた。
【0011】
一方、産業的規模のウイルス生産のための細胞培養は、ステンレススチール醗酵機の設備で行われることが一般であるが、このような設備を用いれば、使用前に醗酵機を洗浄及び滅菌する過程が必要で工程準備時間が長く、外部物質に汚染される可能性が高い。また、使用後の洗浄過程でロットまたはウイルスstrain間の交差汚染が発生し得るが、特に、インフルエンザワクチンは3価または4価ワクチンで3種類または4種類の異なるウイルスを培養しなければならないため、strain間の交差汚染発生の可能性が高く、このような問題が解決された新たなウイルス生産工程が必要な実情である。
【0012】
韓国登録特許第10-1464783号では、MDCK細胞を使い捨て生物反応器で培養する方法が開示されているが、前記文献が提供する方法は細胞培養が微細担体の存在下に進行され、微細担体を除去する工程が追加され、手順が面倒で汚染の可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1464783号
【特許文献2】国際特許公報WO05/108546
【特許文献3】国際特許公報WO05/104706
【特許文献4】国際特許公報WO05/10849
【特許文献5】大韓民国公開特許第10-2012-0024464号
【特許文献6】大韓民国登録特許第10-1370512号
【特許文献7】大韓民国特許出願第10-2020-0052700号
【特許文献8】大韓民国特許出願第10-2020-0052708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これに対し、本発明者は放射免疫拡散法を用いなくてもワクチン生産時に工程条件の設定が可能であるように研究した中、本発明特有の方法によると、迅速で信頼性のあるインフルエンザ表面抗原の収得条件の確認が可能であり、これによりインフルエンザ抗原を含むワクチン生産期間が顕著に短縮されるということを確認し、本発明を完成した。
【0015】
また、インフルエンザウイルスの増殖のための細胞培養において工程の準備時間が短縮され、汚染に対するおそれが非常に低い細胞培養システムを開発するために鋭意研究を重ねた結果、使い捨てバッグを用いる使い捨て細胞インキュベーターで細胞を培養した後、使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いてウイルス感染前に培地交換を行えば、このような目的が達成されるということを発見し、本発明を完成するようになった。
【0016】
従って、本発明の目的は、界面活性剤(Detergent)を用いてインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する方法において、前記界面活性剤は、サンプリング(sampling)したインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で前記サンプリングしたインフルエンザウイルスに処理される界面活性剤の処理量が決定されることを特徴とする方法を提供することにある:
【0017】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0018】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量(体積)である。)
【0019】
本発明の他の目的は、下記第1精製条件決定法及び第2精製条件決定法を含むことを特徴とする、インフルエンザ抗原精製条件の迅速確認試験方法を提供することにある:
【0020】
第1精製条件決定法であって、インフルエンザウイルス培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階で用いられるものとして、前記インフルエンザウイルス精製時の条件は、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて決定される第1精製条件決定法;及び
第2精製条件決定法であって、界面活性剤を用いてインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階で用いられるものとして、前記表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量はインフルエンザウイルスサンプルに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定される第2精製条件決定法。
【0021】
本発明の他の目的は、インフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階を含むワクチンの製造方法であって、前記段階はサンプリングしたインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で界面活性剤を処理する条件の下に行われる方法を提供することにある:
【0022】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0023】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【0024】
本発明の他の目的は、下記段階を含む、インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法を提供することにある:
【0025】
a)インフルエンザウイルスを細胞に感染させ、培養してウイルス培養物を得る段階;
b)前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて精製条件を決定する段階;
c)前記b)段階で決定された条件に応じて前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階;
d)前記c)段階で精製されたインフルエンザウイルスから表面抗原を精製するために、表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量をインフルエンザウイルスに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定する段階;
e)前記d)段階で決定された条件に応じて界面活性剤を処理してインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階。
【0026】
本発明の他の目的は、インフルエンザ表面抗原を含むワクチンの製造方法において、ワクチンの製造期間が短縮されたことを特徴とする、下記段階を含む方法を提供することにある:
【0027】
a)インフルエンザウイルスを細胞に感染させ、培養してウイルス培養物を得る段階;
b)前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて精製条件を決定する段階;
c)前記b)段階で決定された条件に応じて前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階;
d)前記c)段階で精製されたインフルエンザウイルスから表面抗原を精製するために、表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量をインフルエンザウイルスに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定する段階;
e)前記d)段階で決定された条件に応じて界面活性剤を処理してインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階。
【0028】
本発明の他の目的は、(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;
(b)前記(a)段階の細胞培養液で使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;
(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスに感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;及び
(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階を含むことを特徴とするインフルエンザウイルスを生産する方法を提供することにある。
【0029】
本発明の他の目的は、インフルエンザ抗原を含むワクチンの製造方法において、ワクチンの製造期間が短縮されたことを特徴とする、下記段階を含む方法を提供することにある:
【0030】
(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;(b)前記(a)段階の細胞培養液で連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスに感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;及び(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前述した本発明の目的を達成するために、本発明は、界面活性剤(Detergent)を用いてインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する方法において、前記界面活性剤はサンプリング(sampling)したインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で前記サンプリングしたインフルエンザウイルスに処理される界面活性剤の処理量が決定されることを特徴とする方法を提供する:
【0032】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0033】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【0034】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、下記第1精製条件決定法及び第2精製条件決定法を含むことを特徴とする、インフルエンザ抗原精製条件の迅速確認試験方法を提供する:
【0035】
第1精製条件決定法であって、インフルエンザウイルス培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階で用いられるものとして、前記インフルエンザウイルス精製時の条件は互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて決定される第1精製条件決定法;及び
第2精製条件決定法であって、界面活性剤を用いてインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階で用いられるものとして、前記表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量はインフルエンザウイルスサンプルに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定される第2精製条件決定法。
【0036】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、インフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階を含むワクチンの製造方法であって、前記段階はサンプリングしたインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で界面活性剤を処理する条件の下に行われる方法を提供する:
【0037】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0038】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【0039】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、下記段階を含む、インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法を提供する:
【0040】
a)インフルエンザウイルスを細胞に感染させ、培養してウイルス培養物を得る段階;
b)前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて精製条件を決定する段階;
c)前記b)段階で決定された条件に応じて前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階;
d)前記c)段階で精製されたインフルエンザウイルスから表面抗原を精製するために、表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量をインフルエンザウイルスに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定する段階;
e)前記d)段階で決定された条件に応じて界面活性剤を処理してインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階。
【0041】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、インフルエンザ表面抗原を含むワクチンの製造方法において、ワクチンの製造期間が短縮されたことを特徴とする、下記段階を含む方法を提供する:
【0042】
a)インフルエンザウイルスを細胞に感染させ、培養してウイルス培養物を得る段階;
b)前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて精製条件を決定する段階;
c)前記b)段階で決定された条件に応じて前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階;
d)前記c)段階で精製されたインフルエンザウイルスから表面抗原を精製するために、表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量をインフルエンザウイルスに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定する段階;
e)前記d)段階で決定された条件に応じて界面活性剤を処理してインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階。
【0043】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;(b)前記(a)段階の細胞培養液で使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスに感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;及び(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階を含むことを特徴とするインフルエンザウイルスを生産する方法を提供する。
【0044】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、インフルエンザ抗原を含むワクチンの製造方法において、ワクチンの製造期間が短縮されたことを特徴とする、下記段階を含む方法を提供する:
【0045】
(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;(b)前記(a)段階の細胞培養液で連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスに感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;及び(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階。
【0046】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0047】
本発明は、界面活性剤(Detergent)を用いてインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する方法において、前記界面活性剤は、サンプリング(sampling)したインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で前記サンプリングしたインフルエンザウイルスに処理される界面活性剤の処理量が決定されることを特徴とする方法を提供する:
【0048】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0049】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【0050】
インフルエンザウイルスのビリオン(virion)の構造は、最外側に二重脂肪層からなる外皮(envelop)があり、これに2個の表面糖タンパク質(glycoprotein)が突出しているが、一つは柱状の血球凝集素であるヘマグルチニン(hemagglutinin,HA)であり、もう一つはキノコ状のノイラミン分解酵素であるノイラミニダーゼ(neuraminidase,NA)である。
【0051】
本発明が提供する前記方法は、界面活性剤を処理してインフルエンザウイルスの表面抗原である前記へマグルチニンとノイラミニダーゼを分離して精製する方法において、インフルエンザウイルスの表面抗原をウイルスコア(core)から分離するのに用いられる界面活性剤の最適処理量を速やかに算出してインフルエンザウイルス表面抗原の精製条件を短期間に確立できるようにすることを特徴とする。
【0052】
本発明において、前記「界面活性剤」は「洗剤」と相互交換可能に用いられ、前記界面活性剤は、当業界でウイルスの表面抗原を分離、精製するために用いられるものであれば、その種類に制限されず、例えば、非イオン性またはイオン性(例えば、カチオン性)の界面活性剤が含まれてもよい。前記界面活性剤の非制限的な例示としては、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル、糖、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N-ジアルキル-グルカミド、ヘカメグ(Hecameg)、アルキルフェノキシ-ポリエトキシエタノール、4級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、トリ-N-ブチルホスフェート、セタブロン(Cetavlon)、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミン、及びDOTMA、オクチル-またはノニル-フェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X-100またはTriton N101のようなTriton界面活性剤)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルが含まれてもよい。
【0053】
本発明の好ましい一実施様態において、前記界面活性剤はカチオン性界面活性剤であってもよい。
【0054】
本発明のさらに好ましい一実施様態において、前記界面活性剤はCTABであってもよい。
【0055】
本発明の前記インフルエンザウイルスは、分子生物学的特性に応じてA、B及びC型を含む。望ましくは、前記インフルエンザウイルスはAまたはB型であってもよい。このうち、前記A型インフルエンザウイルスは表面抗原であるヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)糖タンパク質の種類に応じて多様な亜型に区分が可能である。より具体的には、A型インフルエンザウイルスの表面抗原は18種類のヘマグルチニン及び11種類のノイラミニダーゼが公知となっているため、算術的に計198種のA型インフルエンザウイルス亜型が存在し得るが、これらはいずれも本発明のインフルエンザウイルスに含まれることが理解できる。
【0056】
一方、前記主要抗原である前記HA及びNAが従前に公知となったものと全く異なる新たな亜型に変化する不連続変異(antigenic shift)、または前記HA及びNA遺伝子の水準で点突然変異(point mutation)が蓄積されて少数のアミノ酸が変化する連続抗原変異(antigenic drift)を含み、現在まで公知となった亜型だけでなく、将来明らかになる新たな亜型のインフルエンザウイルスが制限なく本発明の前記インフルエンザウイルスに含まれ得る。
【0057】
本発明の好ましい一様態において、前記インフルエンザウイルスはA型インフルエンザであってもよく、その非制限的な例示としてH1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7、H7N9、H6N1などが含まれてもよい。
【0058】
本発明において、前記「サンプリング(sampling)した」インフルエンザウイルスとは、表面抗原タンパク質を発現するインフルエンザウイルスを宿主細胞で培養して培養物を提供する段階、前記培養物を精製及び/又は濃縮する段階、及び前記培養物に含まれたインフルエンザウイルスを不活性化する段階からなる群から選択された1種以上の段階を経たことを意味する。
【0059】
本発明の一様態において、前記サンプリングとは、下記段階を含む方法によりインフルエンザウイルスが処理されたことを意味する:
【0060】
(i)インフルエンザウイルスが増殖できる細胞基盤のウイルス増殖培養液または有精卵基盤のウイルス増殖培養液を提供する段階;
(ii)前記培養液を清澄化してインフルエンザウイルスを含む培養物を得る段階;
(iii)選択的に、前記培養物を精製し、選択的に、濃縮する段階;及び
(iv)選択的に、前記培養物に含まれたインフルエンザウイルスを不活性化する段階。
【0061】
前記(i)ではインフルエンザウイルスを含む培養液が提供される。このような培養液は、細胞基盤のウイルス増殖培養液または有精卵基盤のウイルス増殖培養液に由来することができる。当該分野の熟練者に公知となっているように、ウイルスは細胞基盤の培養システムで、または有精卵基盤の培養システムで増殖することができる。インフルエンザウイルスを成長させるために用いられる適した細胞株は、典型的に哺乳動物起源のものであり、従って、哺乳動物細胞株、望ましくは動物細胞株を示す。適した動物細胞株は当該分野の熟練者に公知となっており、ハムスター、ウシ、霊長類(ヒト及びサルを含む)及びイヌ起源の細胞株を含んでもよい。前記細胞株の非制限的な例示として、哺乳動物細胞株の細胞はVero、PerC6、BHK、293、COS、PCK、MRC-5、MDCK、MDBK、WI-38、及びこれらの無血清適応細胞などが含まれてもよい。望ましくは、前記細胞株はMDCK細胞であってもよい。
【0062】
また、前記インフルエンザウイルスは、当該分野の熟練者に公知となっている任意の適した方法により細胞上に成長することができる。細胞基盤の培養システムの場合、任意の適した媒質が用いられる。好ましい実施形態において、細胞は、血清非包含及び/又はタンパク質非包含の媒質で培養されてもよい。細胞基盤のウイルス増殖の場合、一般に、ウイルスまたは生ウイルス製剤は、それぞれこれらが増殖する細胞培養液に接種される。ウイルス増殖は、バッチ方式、または供給バッチ方式、または灌流方式で行われ得る。
【0063】
他の案として、前記インフルエンザウイルスは有精卵基盤のシステムで増殖することができる。有精卵基盤の製造において、一般に、種子ウイルス(working seed virus)を採卵鶏の発育卵に注射する。ウイルスは、前記発育卵の尿膜液で増殖し始めてウイルスの量が増加する。例えば、2~3日間の恒温培養後、前記発育卵は2~8℃に冷却させ、それぞれの発育卵の尿膜液を収穫し、手動または自動化した真空収穫システムを用いてプーリングする(pooling)。収集されたウイルス含有尿膜液は、ウイルスを含む有精卵基盤の培養液であり、後続的な精製プロセスでさらにプロセッシングされる。
【0064】
インフルエンザウイルスの増殖に用いられた培養システムにより、増殖したウイルス粒子を含む培養液は相違する汚染物質を含有してもよい。例えば、有精卵基盤の培養液に存在する潜在的汚染物質は、有精卵基盤のタンパク質、例えば、有精卵アルブミン、または抗生剤であり、一方、細胞基盤の培養液に存在する典型的な汚染物質は残存する宿主細胞DNAである。望ましくは、本発明が提供する方法は、インフルエンザウイルスの増殖に用いられるシステムと関連して制限されず;細胞基盤の培養システムで及び同様に有精卵基盤の培養システムで増殖したウイルスを含む培養液を処理したものがいずれも適用されてもよい。
【0065】
本発明において、前記(i)段階の培養液は使い捨て生物反応器を用いることにより製造されてもよい。このような使い捨て生物反応器を用いることにより、例えば、得られた生成物自体は、例えば、品質及び/又は純度の観点で向上し得る。これは、特に前記方法が大規模で、例えば、工業規模で行われる場合に有益であり得る。
【0066】
前記インフルエンザウイルスを含む細胞基盤または有精卵基盤の培養液は清澄化されてもよい((ii)段階)。清澄化段階は、ウイルス粒子を含む培養液に対して行われるが、沈降したりそれ以外のペレット化された物質に対しては行われない。本発明において、このような清澄化段階の目的は、培養液から粒子状物質、例えば、細胞残骸、タンパク質不純物及び/又は細胞を成長させるために用いられた支持物質、例えば、微細担体を除去することにある。前記タンパク質不純物は、例えば、アラントイン、コラーゲン及び/又はアルブミン、例えば、オボアルブミンであってもよい。清澄化のために、当該分野の熟練者に公知となっている任意の適した手段または方法が用いられる。特に、接線流濾過(TFF)、深層濾過、または遠心分離を適用できる。これにより、それぞれ適用された清澄化手段(TFF、深層濾過、遠心分離)のそれぞれの設定は、前記の目的が到達する方式で選択される。一般に、このような目的が与えられる場合、それぞれの手段に対するそれぞれの前記設定は、当該分野の熟練者に公知となっている。
【0067】
本発明において、前記方法により得られた清澄化された培養液は「ウイルス培養物」と称される。
【0068】
本発明の一様態において、前記ウイルス培養物が本発明で提供する前記「サンプリングしたインフルエンザウイルス」であってもよい。
【0069】
本発明の他の一様態において、前記「サンプリングしたインフルエンザウイルス」は前記(ii)段階後に以下の(iii)段階及び/又は(iv)段階をさらに行ったものであってもよい。
【0070】
本発明の一様態において、前記(iii)段階培養物の精製はウイルス抗原を特異的に精製するための適した任意の方法により行われてもよい。好ましい精製方法は、例えば、クロマトグラフィー法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、疑似親和性クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、液体-液体クロマトグラフィーなどである。一実施形態において、好ましい精製方法は親和性クロマトグラフィーであり、さらに好ましい精製方法はセルファインサルフェート(cellufine sulfate,CS)を担体として用いた親和性クロマトグラフィーである。
【0071】
本発明の一様態において、前記(iii)段階で培養物を精製する時、CS親和性クロマトグラフィーを用いる場合、カラム寸法の選択は熟練技術者により決定されてもよい。前記CS親和性クロマトグラフィーにおいて、CSカラムはインフルエンザウイルス濾過液をローディングするために平衡用緩衝液を用いて平衡化されてもよい。本発明の一実施様態において、CSカラムは平衡用緩衝液を用いて平衡化するが、平衡用緩衝液は10~20mMのリン酸ナトリウムを含有してもよく、pHは7.0~7.6であってもよい。
【0072】
前記精製過程においてCSカラムに付着されたインフルエンザウイルスは溶出用緩衝液で溶出することができる。本発明の一実施例において、CSカラムに付着されたインフルエンザウイルスは中性pHで0.01~1.0M濃度の塩化ナトリウムを含有する溶出用緩衝液をカラムに投入した時、カラムに結合したインフルエンザウイルスを溶出することができた。溶出用緩衝液のpHは6.5~7.4であってもよく、0.1~6.0Mの塩化ナトリウムを含有してもよい。
【0073】
また、前記精製過程でCSカラムに結合した任意のタンパク質を洗浄除去するために1.0~3.0Mの塩化ナトリウムを含有する溶出用緩衝液を用いて洗浄できる。使用済のCSカラムは任意に洗浄され、適切な作用剤中で貯蔵されてもよく、任意に再使用されてもよい。
【0074】
本発明の一様態において、前記(iii)段階の濃縮は適した方法により達成される。前記方法はウイルス培養物の容積を減少させることを誘導する。前記濃縮段階はインフルエンザウイルスを含む培養物の容積を減少させて濃縮された培養物を得ることを目標とする。
【0075】
好ましい様態において、TFF限外濾過または単一段階へのTFF限外濾過と透析濾過(TFF限外濾過/透析濾過)を適用することにより容積を減少させることができ、容積を減少させるために超遠心分離または沈殿、望ましくはTFF限外濾過を用いることができる。これにより、それぞれ適用された濃縮手段(TFF、TFF限外濾過/透析濾過、超遠心分離または沈殿)のそれぞれの設定は、前記の目的、即ち、容積減少及びインフルエンザウイルスの濃縮が達成される方式で選択される。
【0076】
他の実施形態において、超遠心分離を用いて容積を減少させる場合、超遠心分離の条件は、例えば、10分間超に30,000g~200,000gであってもよい。
【0077】
他の実施形態において、沈殿を適用することにより濃縮が行われる場合、適した化学物質は当該分野の熟練者に公知となっており、例えば、それぞれ適切な濃度への塩、メチル及びエチルアルコール及びポリエチレングリコールであってもよい。適切な濃度への適した化学物質は、生成物、例えば、ウイルス抗原含有粒子を沈殿させるが、前記ウイルス抗原に対する否定的な効果はないか、最小である。化学物質は、目的とする抗原、例えば、インフルエンザウイルス表面抗原タンパク質と反応することなく所望の抗原の免疫原性を変更しないように選別される。
【0078】
一実施様態において、前記濃縮段階でウイルス培養物の容積は4倍以上、望ましくは5倍以上、または9倍以上、また望ましくは12倍以上、また望ましくは13倍以上、または15倍以上、また望ましくは20倍以上、または25倍以上減少できる。
【0079】
本発明の一様態において、前記(iii)段階後にウイルス精製及び/又は濃縮されたウイルス培養物は不活性化されてもよい。不活性化はウイルスの感染性の除去をもたらし、典型的にはウイルスを下記化学的手段中の一つ以上の有効量で処理することにより行われてもよい:界面活性剤(detergent)、ホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、2級エチルアミン、アセチルエチレンイミンまたはこれらの組合わせ。また、不活性化方法は当該分野の熟練者に公知となっており、例えば、ウイルスを物理的手段、例えば、ガンマ照射及び/又はUV光で処理することを含む。
【0080】
本発明の一実施形態において、インフルエンザウイルスの表面抗原を分離するために用いられたものと同一の界面活性剤を適用するによる不活性化を行わなくてもよい。
【0081】
本発明の他の一様態において、前記サンプリングしたインフルエンザウイルスとは、下記段階を含む方法により得られたものを意味してもよい:
【0082】
(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;(b)前記(a)段階の細胞培養液で使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスで感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;及び(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階。
【0083】
前記(a)~(d)段階をより具体的に説明すると、次の通りである:
【0084】
(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;
本発明において、前記(a)段階はウイルスを感染させて増殖するための宿主細胞を培養する段階であって、使い捨て生物反応器で細胞を培養することを特徴とする。一様態において、前記(a)段階は細胞培養のための可撓性プラスチックバッグのような使い捨て部材を含む生物反応器システムが用いられる。このような生物反応器システムは当業界に公知となっており、市販中である。例えば、国際特許公報WO05/108546;WO05/104706;及びWO05/10849及び下記セクション8.12を参照する。使い捨て部材を含む生物反応器システム(本願において「使い捨て生物反応器(single use bioreactor)」または略語「SUB」と称される)は予め滅菌されてもよく、培養または生産システムで回分間(batch to batch)または生成物間(product to product)の転換のためのスチーム滅菌装置(steam-in-place,SIP)または内部洗浄装置(clean-in-place,CIP)が必要でない。SUBは、回分間の汚染が皆無であることを確認することができ、調節的防除の必要性がより少ないため、使用前に最小限の準備だけで、または準備を特にしなくても迅速に配置して細胞培養物から多量のワクチン物質の生産を促進させることができる。従って、費用及び時間の面で相当な優位に立ちながら作動され得る。他の一様態において、前記使い捨て生物反応器システムは、栄養分、O及びpHのより効率的な調節が可能な細胞培養物の混合のための流体力学的環境を提供できる攪拌型タンク反応器システムであってもよい。
【0085】
本発明の一様態において、前記細胞は、ウイルスを感染させて培養することにより、ウイルス増殖の目的を達成できる細胞であれば、制限なく本発明で使用されてもよい。特に、インフルエンザウイルスを成長させるために用いられる適した細胞は典型的に哺乳動物起源のものであってもよい。適した動物細胞は当該分野の熟練者に公知となっており、ハムスター、ウシ、霊長類(ヒト及びサルを含む)及びイヌ起源の細胞株を含んでもよい。前記細胞株の非制限的な例示として、哺乳動物細胞は Vero、PerC6、BHK、293、COS、PCK、MRC-5、MDCK、MDBK、WI-38、及びこれらの無血清適応細胞などが含まれてもよい。望ましくは前記細胞株はMDCK細胞であってもよい。
【0086】
前記MDCK細胞は、例えば、ATCC CCL-34細胞株、ATCC PTA-7909またはPTA-7910に由来したものを用いることができる。一つの例示的な実施形態において、大韓民国公開特許第10-2012-0024464号に開示されているATCC CCL-34由来のMDCK Sky1023(DSM ACC3112)、MDCK Sky10234(DSM ACC3114)またはMDCK Sky3851(DSM ACC3113)細胞株や大韓民国登録特許第10-1370512号に開示されているMDCKS-MG細胞株(KCLRF-BP-00297)のようなMDCK細胞株を用いることができる。特に望ましくは細胞成長のために血清を必要とせず、付着のための別途の担体の必要なしに浮遊培養が可能であり、腫瘍の誘発性が低い前記MDCK Sky3851細胞を用いることができる。
【0087】
好ましい実施形態において、前記細胞を培養する培地は無血清(serum-free)培養培地であってもよい。動物血清は他の病原性物質を含有し得るため、細胞培養物で製造されたワクチンにより治療または接種されるヒトまたは動物に伝達される潜在的危険性があり、特に免疫力の弱いヒトに致命的であり得る。前記無血清培養培地は、例えば、EMEM(Eagle’s minimal essential media)及びDMEM(Dulbecco’s modifiedEagle’s medium)などのMEM培地のようによく知られている細胞培養培地を用いたり、これら細胞培養培地に由来したり、これら細胞培養培地を変形したものであってもよい。例えば、Gibco BRL/Life Technologyで製造されるVP-SFMのように商業的に利用可能な培養培地を用いることもできる。これら培養培地に由来した培養培地を用いて細胞の継代培養を誘導できる。
【0088】
前記培地には、例えば、トウモロコシ、エンドウ豆、大豆、麦芽、ジャガイモ及び小麦のうちの一つ以上から得られる植物加水分解物;コレステロールや飽和及び/または不飽和脂肪酸のような脂質補充物;CuSO・5HO、ZnSO・7HO、クエン酸鉄などのような微量元素;成長因子のような一つ以上のホルモン;プトレシン、アミノ酸、ビタミン、不飽和脂肪酸のような脂肪酸、ヌクレオシド、重炭酸ナトリウム、グルコースのような炭素源、鉄分結合物質などを含んでもよい。前記細胞培養培地に添加され得るこれら成分の含有量は当業界によく知られている。
【0089】
本発明の一様態において、前記細胞は1%以上、または2%以上、または3%以上、または4%以上、または5%以上、または6%以上、または7%以上、または8%以上、または9%以上、または10%以上、または20%以上のCO濃度で培養されてもよい。
【0090】
本発明の一様態において、使い捨て生物反応器内の溶存酸素(DO)濃度(pO値)は、前記細胞の培養時に有利に調節され、5%~95%の範囲であるか(空気飽和度を基準)、10%~60%である。特定の実施形態において、溶存酸素(DO)濃度(pO値)は10%以上、または20%以上、または30%以上、または50%以上であってもよい。
【0091】
本発明の一様態において、前記細胞を培養するのに用いられる培養培地のpHは培養時に調節され、pH6.4~pH8.0の範囲、またはpH6.8~pH7.6の範囲であってもよい。特定の実施形態において、前記培養培地のpHは6.4以上、または6.6以上、または6.8以上、または7.0以上、または7.2以上であってもよい。
【0092】
本発明の一様態において、前記細胞は25℃~39℃の温度で培養されてもよい。特定の実施形態において、前記培養温度は30℃~38℃、または35℃~38℃、または36℃~38℃であってもよい。
【0093】
本発明の一様態において、前記細胞は攪拌型タンクSUBで温度、攪拌速度、pH、溶存酸素量(DO)、O及びCOの流速からなる群から選択される一つ以上のパラメータがモニタリングされ/されたり制御されながら培養されてもよい。一実施様態において、温度は約30℃~約42℃、または約33℃~約39℃、または約35℃~約38℃に維持される。特定の実施様態において、温度は約36℃~約37℃に維持される。一実施様態において、攪拌速度は約50~150rpmに維持される。具体的な実施様態において、攪拌速度は約60~約120rpm、または約70~約100rpmに維持される。攪拌速度は当業界によく知られている方法により調節される。更に他の実施様態において、培養物のpHは約6.0~約7.5に維持される。具体的な実施様態において、培養開始時点のpHは約6.0~約7.5であり、培養中には培養物のpHが約7.0~約7.5に維持される。当業者であれば、開始pHは、前記好ましい範囲より低いか、高くてもよく、このようなpHは好ましい水準(例えば、7.4)に高くしたり下げてその水準に維持させることも可能である。このようなpHは当業界に公知となった任意の方法に維持される。例えば、pHは必要に応じてCOの散布及び/又は酸の添加(例えば、HCl)または塩基の添加(例えば、NaOH)により調節されてもよい。追加の更に他の実施様態において、許容可能なDOの範囲は約100%~約35%である。特定の実施様態において、DOは約35%~約70%、または約50%に維持される。更に他の特定の実施様態において、DOは約35%未満に下げてはならない。当業者であれば、初期のDOが100%であってもよく、このようなDOは予め設定した濃度(例えば、50%)に下げて、この水準に維持させることも可能である。このようなDOは当業界に公知となった任意の方法、例えば、Oを散布することにより維持されてもよい。
【0094】
(b)前記(a)段階の細胞培養液において使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;
前記(b)段階は、前記(a)段階で培養した細胞が十分に増殖してウイルスを感染させる前に培地を交換する段階である。
【0095】
本発明の一様態において、前記(b)段階の培地交換は使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培養液の回収及び再投入過程なしに連続的に細胞と培地を分離して一定量の培地を廃棄し、再度新たな培地を使い捨てバッグに投入する方法で培地を交換する。培養液を全量回収後に容器に小分して遠心分離を進行する一般的な方式とは異なり、使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いる場合、培地交換を密閉されたシステムで進行でき、汚染発生の可能性を大きく下げることができる。
【0096】
本発明の一様態において、前記「培地の一部」とは、使い捨てバッグに存在する全体培養液の50%~90%の体積であってもよい。望ましくは、前記培地の一部とは、使い捨てバッグに存在する全体培養液の60%~80%の体積、最も望ましくは70%~80%の体積であってもよい。
【0097】
一実施様態において、培地は同一の体積及び同一の組成の培地で交換される。具体的には、連続式低速遠心分離機を用いて細胞が沈殿すれば上部の培地を一部回収し、回収された培地と同一の体積の培地を補充して培地交換を実施する。更に他の実施様態において、培地は減少した体積の培地で交換され、細胞を効果的に濃縮させる。培地は同一又は異なる組成を有する培地で交換され得る。一実施様態において、前記(a)段階で細胞の増殖のために用いられる成長培地は、以下(c)段階で用いられる感染培地(即ち、感染及びウイルス複製時に用いられる培地)で交換されてもよい。選択的に、前記成長培地は、培地の交換が必要でないように追加の成分(例えば、グルコース、微量のミネラル、アミノ酸など)で補充され/されたり、このような追加の成分を含む。更に他の特定の実施様態において、感染培地はセリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、TrypLEなど)を含む。他の実施様態において、培地が交換されない所には、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、TrypLEなど)を感染直前に、感染中にまたは感染直後に添加する。特定の実施様態において、プロテアーゼは細胞をウイルスで感染させる前にまたは感染と同時に添加される。
【0098】
(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスに感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;一つの実施様態において、前記インフルエンザウイルスは、略0.00001~0.01のMOI(multiplicity of infection)、望ましくは0.0001~0.002のMOI投入量で培養培地に投与されてもよい。この程度の投与量で、培養培地に接種された細胞を十分に感染させ、所望の分だけのインフルエンザウイルス増殖を期待することができる。
【0099】
一実施様態において、感染後、細胞は22℃~40℃の温度で培養される。特定の実施様態において、ウイルスで感染した後、細胞は39℃以下、または38℃以下、または37℃以下、または36℃以下、または35℃以下、または34℃以下、または33℃以下、または32℃以下、または30℃以下、または28℃以下、または26℃以下、または24℃以下の温度で培養される。特定の実施様態において、ウイルスに感染した後、細胞は33℃の温度で培養される。更に他の実施様態において、ウイルスに感染した後、細胞は33℃以下の温度で培養される。更に他の実施様態において、感染後、細胞は31℃の温度で培養される。特定の実施様態において、細胞培養は2日~10日間行われる。培養は回分式(batch)工程で行われてもよい。
【0100】
本発明の一様態において、前記(c)段階の培養は適切な収率でウイルスを生産するのに十分な期間、例えば、感染後の2日~10日、または選択的に3日~7日が経過した後に行う。本発明の一様態において、前記(c)段階の培養は感染後の2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または8日、または9日、または10日間行われる。
【0101】
(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階;前記(d)段階は、前記(c)段階で得られたウイルス培養物からインフルエンザウイルスを精製して分離する段階である。
【0102】
前記(d)段階でインフルエンザウイルスを精製する方法は、前述した説明が同様に適用されてもよい。
【0103】
本発明の一様態において、前記(d)段階は、(d-1)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)に基づいて精製条件を決定する段階;及び(d-2)前記(d-1)段階で決定された条件に応じて前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階を含む方法により行われてもよい。
【0104】
前記(d-1)段階は、前記インフルエンザウイルス培養物をクロマトグラフィーカラムに適用した後、互いに異なる条件でカラムを通過したカラム通過液をそれぞれ赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)に適用してヘマグルチニン(HA)力価が最も低い条件を選定することを特徴とすることができる。前記赤血球凝集反応法を行った結果、カラムを通過したウイルス培養物のHA力価が高ければ、ウイルス培養物内のウイルスがカラムに結合できず、そのまま通過する条件として好ましくない。
【0105】
本発明の他の一様態において、前記(d-1)段階は、前記インフルエンザウイルス培養物を互いに異なる条件でクロマトグラフィーカラムに適用した後、緩衝溶液を用いてカラムと結合したインフルエンザウイルスを溶出し、各条件による溶出液を赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに適用し、HA力価が最も高く、SDS-PAGE上でHAが十分に観察される条件を選定することを特徴とすることができる。
【0106】
本発明の他の一様態において、前記(d-1)段階は、ウイルス培養物をカラムに通過させた時、ウイルスがレジンと最もよく結合する条件及びレジンに結合したウイルスを溶出する過程でウイルスを最もよく溶出することができる条件の組合わせであることを特徴とすることができる。前記ウイルスがレジンと最もよく結合する条件は、カラムを通過したカラム通過液を赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに適用して選定でき、前記レジンに結合したウイルスを溶出する過程でウイルスを最もよく溶出することができる条件はカラムを通過した溶出液を赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに適用して選定できる。
【0107】
本発明の他の一様態において、前記(d-1)段階は互いに異なる条件でクロマトグラフィーカラムを通過したウイルス培養物を赤血球凝集反応法及びSDS-PAGEに適用してインフルエンザウイルスが最も少なく損失される条件を選定することを特徴とすることができる。
【0108】
本発明の一様態において、前記(d)段階後に精製されたウイルス培養物を濃縮する段階が追加で行われてもよい。精製されたウイルス培養物を濃縮する方法は、前述した説明が同様に適用され得る。
【0109】
その後、前記方法によりサンプリングされたインフルエンザウイルス培養物の単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で前記サンプリングしたインフルエンザウイルスに処理される界面活性剤の処理量が決定されることを特徴とすることができる:
【0110】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0111】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【0112】
ウイルス表面抗原ワクチンは副作用が少なく純度の高い高品質のワクチンであり、適切な界面活性剤の処理量の設定が非常に重要である。過量の界面活性剤を処理する場合、ウイルス全体が破砕されて不純物であるウイルスコア内部のタンパク質が外部に露出されて純度が低下し、界面活性剤の処理量が不十分な場合、大部分の表面抗原が可溶化されず、表面抗原の収率が低下する。
【0113】
従って、本発明の一様態において、前記式により算出された界面活性剤の処理量はウイルスコア(core)の非破壊状態またはウイルスコアの破壊が最小化した状態であり、インフルエンザウイルスの表面抗原のみを選択的に可溶化するための濃度であることを特徴とする。
【0114】
一方、ウイルス表面抗原の可溶化のために適切な界面活性剤の処理量を短時間内に確認することがインフルエンザワクチンの生産過程で重要な要素である。現在、インフルエンザワクチンの表面抗原含量を測定するためにヨーロッパ薬局方と世界保健機構(WHO)で推薦する単一放射免疫拡散法(SRID, single radial immunodiffusion)が国内外で共通に用いられているが、前記SRID法は結果を算出するまで要される時間があまりに長いという限界がある。
【0115】
従って、本発明は、前記ウイルス培養物内におけるヘマグルチニン(HA)タンパク質量に対するSRIDによる定量過程が必要ではなく、ウイルス培養物の単位容量当たりの全体タンパク質の定量値に基づいて添加する界面活性剤の処理量を決定することを特徴とする方法を提供する。
【0116】
本発明の前記方法においてウイルス培養物の単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(TPQV)は、当業界でタンパク質含量を算出するために用いられる任意の方法により決定され、この非制限的な例示としてBCA assay、lowry assayまたはBradford assayが含まれてもよい。
【0117】
本発明の前記式(1)において、a値はタンパク含量を基準とした界面活性剤の処理濃度(%)を意味するものであり、ウイルスのstrain、ウイルス特性などにより最適な界面活性剤の処理濃度が相違するため、0.005~0.100(v/v%)の範囲内の任意の値に対してSDS-PAGEを行ってウイルスによる適切な界面活性剤の処理濃度(%)を確認することができる。具体的には、ウイルス溶液を少量ずつ小分して前記数値範囲内の任意の値に対して界面活性剤を処理した後、超高速遠心分離を行って表面抗原タンパク質は上澄液として回収され、ウイルスコアタンパク質は沈殿物として分離される最適な界面活性剤の処理濃度を確認することにより決定されてもよい。
【0118】
本発明において、前記値は100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択される。例えば、前記サンプリングしたインフルエンザウイルスのTPQVが220μg/mLであれば、前記数値中、最も近い値である200が前記b値になり、TPQVが370μg/mLであれば、前記数値中、最も近い値である400が前記b値になり得る。
【0119】
本発明において、前記TPQVは前述したサンプリングしたインフルエンザウイルスの濃縮程度に応じて異なり得る。従って、本発明の前記式(1)により最適な界面活性剤の処理量を決定するためには、前記サンプリングしたインフルエンザウイルスのTPQVが50~950μg/mLであるように濃縮されたインフルエンザウイルス培養物を用いることが好ましい。
【0120】
本発明は、また、下記第1精製条件決定法及び第2精製条件決定法を含むことを特徴とする、インフルエンザ抗原精製条件の迅速確認試験方法を提供する:
【0121】
第1精製条件決定法であって、インフルエンザウイルス培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階で用いられるものとして、前記インフルエンザウイルス精製時の条件は、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて決定される第1精製条件決定法;及び
第2精製条件決定法であって、界面活性剤を用いてインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階で用いられるものとして、前記表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量はインフルエンザウイルスサンプルに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定される第2精製条件決定法。
【0122】
本発明の一様態において、前記第1精製は前述した(c)段階のウイルス培養物精製段階と対応する。
【0123】
本発明の他の一様態において、前記第1精製はウイルス培養物内のヘマグルチニン(HA)タンパク質の量に対してSRID(single radial immunodiffusion)による定量過程が必要ではないことを特徴とする。
【0124】
本発明の他の一様態において、前記インフルエンザウイルス培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階はクロマトグラフィーにより行われることを特徴とすることができる。
【0125】
本発明の他の一様態において、前記クロマトグラフィーは、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、疑似親和性クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、液体-液体クロマトグラフィーなどを含む。一実施形態において、好ましい前記精製方法は親和性クロマトグラフィーであり、さらに好ましい精製方法はセルファインサルフェート(cellufine sulfate,CS)を担体として用いた親和性クロマトグラフィーである。
【0126】
本発明の他の一様態において、前記第1精製はカラムを通過したインフルエンザウイルス培養物がレジンに最もよく結合できる条件を確認した後、最適な収率と純度で結合したウイルスを分離精製できる溶出条件まで選定することを特徴とすることができる。
【0127】
本発明の他の一様態において、前記第1精製条件決定法は、前記インフルエンザウイルス培養物を平衡用緩衝液で多様な比率を適用して希釈し、クロマトグラフィーカラムに適用した後、互いに異なる条件でカラムを通過したカラム通過液をそれぞれ赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)に適用してヘマグルチニン(HA)力価が最も低い条件を選定することを特徴とすることができる。前記赤血球凝集反応法を行った結果、前記カラム通過液のHA力価が高ければ、ウイルス培養物内のウイルスがカラムに結合できず、そのまま通過する条件であるため好ましくない。
【0128】
本発明の他の一様態において、前記第1精製条件決定法は、前記インフルエンザウイルス培養物を平衡用緩衝液で多様な比率を適用して希釈し、互いに異なる条件でクロマトグラフィーカラムに適用した後、溶出用緩衝液を用いてカラムと結合したインフルエンザウイルスを溶出し、各条件による溶出液を赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに適用し、HA力価が最も高くSDS-PAGE上でへマグルチニンバンドが最も厚い条件を選定することを特徴とすることができる。
【0129】
本発明の他の一様態において、前記第1精製条件はウイルス培養物をカラムに通過させた時、ウイルスがレジンと最もよく結合する条件及びレジンに結合したウイルスを溶出する過程でウイルスを最もよく溶出することができる条件の組合わせであることを特徴とすることができる。前記ウイルスがレジンと最もよく結合する条件は、カラムを通過したカラム通過液を赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに適用して選定でき、前記レジンに結合したウイルスを溶出する過程でウイルスを最もよく溶出することができる条件は、カラムを通過した溶出液を赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに適用して選定できる。
【0130】
本発明の他の一様態において、前記第1精製条件決定法は、互いに異なる条件でクロマトグラフィーカラムを通過したウイルス培養物(即ち、カラム通過液)を赤血球凝集反応法、SDS-PAGEまたはその組合わせに適用してインフルエンザウイルスが最も少なく損失される条件を選定することを特徴とすることができる。
【0131】
本発明の他の一様態において、前記条件は緩衝液の種類、緩衝液の濃度、緩衝液のpH及び伝導度からなる群から選択される1種以上であってもよい。望ましくは、前記条件は緩衝液のpHまたは伝導度であってもよい。
【0132】
本発明の一実施例では、前記第1精製に用いられる緩衝液のpHを7.0~7.4に維持してタンパク質の安定性を高め、伝導度を低くしながらウイルスがレジンと最もよく結合する条件を探索した。インフルエンザウイルス培養工程で確保されたインフルエンザウイルス培養物の伝導度は約10.0~15.0mS/cmであり、これを伝導度が低いリン酸ナトリウム緩衝液で希釈してカラムにローディングする試料の伝導度を低くしながら結合能を確認した。迅速な精製条件の確認のために、精製条件中の一つとして設定されるpHを除いて伝導度のみを調整する方式で精製条件の確認に必要な時間と変数を減らした。
【0133】
一般に、伝導度を下げるほどインフルエンザウイルスはレジンに十分に結合することが知られているが、伝導度を下げる場合、投入されるリン酸ナトリウム緩衝液の容量とクロマトグラフィーの工程時間が増加して生産期間と生産コストも増加するため、適切な伝導度を確認することが重要である。これについて、本発明の一実施例ではリン酸ナトリウム緩衝液を用いてウイルス培養液を0.5~4倍希釈する方式で10.0mS/cm以下に伝導度を低くしながら、結合能が適切かを確認するために、カラムを通過するウイルス培養物に対して赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)を実施した。赤血球凝集反応法を行う場合、1時間以内に試験結果を確認することができ、各条件による精製結果が1日以内に確認された。
【0134】
本発明の他の一様態において、レジンに結合したインフルエンザウイルスの溶出はレジンとインフルエンザウイルスの結合を分離できる適切な濃度の緩衝溶液を用いて最適な伝導度を探索する形態で進められてもよい。
【0135】
本発明の一実施例によると、2~5Mの塩化ナトリウム緩衝液/linear gradientの条件で塩濃度を高めながら緩衝液をカラムに投入した結果、ウイルス及びタンパク質などが溶出しながらUV280ピークが示され、前記分画を回収分析してウイルスが含まれている分画の伝導度と塩濃度を確認した。前記2~5Mの塩化ナトリウム緩衝液と平衡用緩衝液を用いたstep gradientの条件でウイルスを溶出して当該溶出濃度で大部分のインフルエンザウイルスが溶出するかを確認した後、ウイルスの溶出条件を確立した。ウイルスが高収率、高純度で溶出するかを確認するために、赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)及び/又はSDS-PAGEを行った。
【0136】
本発明の一様態において、前記第2精製条件決定法は、前記第1精製を経て得られたインフルエンザウイルス培養物の単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value, TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値でウイルス溶液に処理する界面活性剤の処理量が決定されることを特徴とすることができる:
【0137】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0138】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理するウイルス溶液の容量である。)
【0139】
本発明は、また、インフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階を含むワクチンの製造方法であって、前記段階はサンプリングしたインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で界面活性剤を処理する条件の下に行われる方法を提供する:
【0140】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0141】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理するウイルス溶液の容量である。)
【0142】
本発明は、また、下記段階を含む、インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法を提供する:
【0143】
a)インフルエンザウイルスを細胞に感染させ、培養してウイルス培養物を得る段階;
b)前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて精製条件を決定する段階;c)前記b)段階で決定された条件に応じて前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階;
d)前記c)段階で精製されたインフルエンザウイルス溶液から表面抗原を精製するために、表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量をインフルエンザウイルス溶液に対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定する段階;
e)前記d)段階で決定された条件に応じて前記ウイルス溶液に界面活性剤を処理してインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階。
【0144】
本発明の一様態において、前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、b)段階以前に、ウイルス培養物から細胞(cell)及び細胞残屑(cell debris)を除去する段階をさらに含むことを特徴とすることができる。
【0145】
本発明の他の一様態において、前記ウイルス培養物から細胞(cell)及び細胞残屑(cell debris)の除去は、濾過、透析及び遠心分離からなる群から選択された一つ以上の方法で行われることを特徴とすることができる。
【0146】
本発明の他の一様態において、前記b)段階は赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)及びSDS-PAGEに基づいて精製条件を決定することを特徴とすることができる。
【0147】
本発明の他の一様態において、前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、c)段階後に限外濾過及びダイアフィルトレーションからなる群から選択される一つ以上の方法による追加の精製過程を含むことを特徴とすることができる。
【0148】
本発明の他の一様態において、前記e)段階は界面活性剤処理後、遠心分離(望ましくは、超遠心分離)して上澄液を回収する方法で表面抗原タンパク質を分離することを特徴とすることができる。前記界面活性剤の処理によりウイルスコアから分離された表面抗原タンパク質を遠心分離により効率よく分離できる。このような分離は、ウイルスコアをペレット化することにより、例えば、超遠心分離により行われてもよい。ウイルス表面タンパク質、例えば、ヘマグルチニン及び/又はノイラミニダーゼは上澄液に存在し、ウイルスコアはペレットに存在し得る。ウイルスコアをペレット化するために選択された遠心分離の条件は当該分野の熟練者に公知となっている。例えば、超遠心分離はバッチ方式、または連続方式のいずれか一つであってもよく、用いられた超遠心分離条件は、それぞれ適した温度で、例えば、2~25℃、より望ましくは2~8℃で10分間(min.)超に30,000g~10分間超に200,000gで行われ得る。
【0149】
本発明の他の一様態において、前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、e)段階後に界面活性剤の除去過程をさらに含むことを特徴とすることができる。このような界面活性剤の除去は、このような目的に適した任意の方法により、例えば、アンバーライトまたはTFF処理により行われてもよい。アンバーライト処理を用いる場合、段階e)段階が行われた後、例えば、ウイルスコアをペレット化した後に収集された上澄液にアンバーライトをカチオン性界面活性剤の質量に対するアンバーライトの質量比を約1:1~100:1で添加し、適した温度、例えば、2~8℃の範囲内である温度で適した時間、例えば、8~24時間、適切には16時間恒温培養する。続いて、アンバーライトは当該分野の熟練者に公知となっている任意の適した方法により、例えば、従来の流動濾過/全量濾過(dead end filtration)、篩、またはTFFを用いることにより除去されてもよい。フィルタが用いられる場合、5μmより大きかったり7μmより大きい粒子を維持できる方式で選択されることが好ましい。また、アンバーライトは篩を用いることにより除去され得る。適切な篩の開口は0.1~200μmの範囲内であり、望ましくは150μm未満であり、より望ましくは100μm未満である。
【0150】
本発明の一実施例によると、Amberlite XAD-4(巨大網状架橋芳香族ポリマー)を添加して界面活性剤として用いられたCTABを除去した。CTABは分子量が大きくイオン性を帯びるため、直接吸着させて除去する方法を実施した。超高速遠心分離の上清にAmberlite XAD-4を処理してCTABを吸着させ、2~8℃の冷蔵条件で3時間以上攪拌して反応させた後、0.22μmのフィルタで濾過してAmberlite XAD-4を除去した。
【0151】
本発明の他の一様態において、前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、e)段階後にDNAのような不純物の除去のための追加のクロマトグラフィー遂行過程を含んでもよい。前記クロマトグラフィーは、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、疑似親和性クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、液体-液体クロマトグラフィーなどを含んでもよく、望ましくは、アニオン交換クロマトグラフィー、最も望ましくはTMAE(トリメチルアミノエチル)アニオン交換クロマトグラフィーであってもよい。DNAはアニオンを帯びているため、アニオン交換レジンに結合する特性を用いて容易に分離、除去が可能である。
【0152】
本発明の他の一様態において、前記TMAEカラムは平衡用リン酸ナトリウム緩衝液を用いて平衡化でき、平衡用緩衝液は1~20mMのリン酸ナトリウムを含有することができ、pHは6.8~7.6であってもよい。
【0153】
本発明の一実施例において、DNAはレジンに結合させ、インフルエンザ表面抗原をカラム通過液で回収するためにpHは6.5~7.4,及び1~6Mの塩化ナトリウムを含むリン酸ナトリウム緩衝液をAmberlite XAD-4吸着濾過工程が完了した状態のインフルエンザ表面抗原工程液に添加して伝導度を調整し、30~120mS/cmの伝導度で適切な水準の表面抗原回収率を確認することができた。
【0154】
本発明の他の一様態において、前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、前記不純物の除去のためのクロマトグラフィー後に限外濾過及びダイアフィルトレーションからなる群から選択される一つ以上の方法による追加の精製過程をさらに含むことを特徴とすることができる。
【0155】
本発明は、また、インフルエンザ表面抗原を含むワクチンの製造方法において、ワクチンの製造期間が短縮されたことを特徴とする、下記段階を含む方法を提供する:
【0156】
a)インフルエンザウイルスを細胞に感染させ、培養してウイルス培養物を得る段階;
b)前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせに基づいて精製条件を決定する段階;
c)前記b)段階で決定された条件に応じて前記a)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階;
d)前記c)段階で精製されたインフルエンザウイルス溶液から表面抗原を精製するために、表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量をインフルエンザウイルス溶液に対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定する段階;
e)前記d)段階で決定された条件に応じて前記ウイルス溶液に界面活性剤を処理してインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階。
【0157】
本発明の一様態において、前記a)段階でウイルス感染に用いられる細胞またはa)段階でウイルスで感染した細胞は、使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養されることを特徴とすることができる。使い捨て生物反応器の場合、使用前に洗浄及び滅菌する過程が不要であるため、工程の準備時間が短縮され、汚染に対するおそれが非常に低い長所がある。また、使用後に洗浄過程なしに使い捨て生物反応器を廃棄し、新たな使い捨て生物反応器を用いることができるため、ロットまたはウイルスstrain間の交差汚染を防止できる。特に、インフルエンザワクチンは3価または4価ワクチンであり、3種類または4種類の互いに異なるウイルスを培養しなければならないため、使い捨て生物反応器を用いる場合、工程が非常に単純になり、strain間の交差汚染を防止でき、好ましい。
【0158】
本発明の他の一様態において、前記a)段階のウイルスを細胞に感染させる前に、ウイルス感染に用いられる細胞培養液で連続式低速遠心分離機を通じて培地の一部を新鮮な培地で交換することを特徴とすることができる。これを通じて、培養液の回収及び再投入の過程なしに連続的に細胞と培地を分離して培地を廃棄し、再度新たな培地を生物反応器に投入する方式で培地を交換できる。培地を全量回収後、容器に小分して遠心分離を進行する一般的な方式とは異なり、連続式低速遠心分離機を用いる場合、培地交換を密閉システムで進行でき、汚染発生の可能性を大きく下げることができる利点がある。
【0159】
本発明の他の一様態において、前記培地の一部は、既存の培地の50~90%、望ましくは60~80%、最も望ましくは70~80%廃棄し、同量の新鮮な培地を注入することが特徴であってもよい。
【0160】
本発明の他の一様態において、前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、c)段階後にDNA切断酵素処理過程をさらに含むことを特徴とすることができる。インフルエンザウイルス培養に用いられた細胞由来のDNAが前記ウイルス培養物に混入されている可能性があるため、DNA切断酵素を処理することにより、DNAを100bp以下の大きさに切断して除去する過程が追加されてもよい。本発明において、前記DNA切断酵素はその種類に特に制限されないが、ベンゾナーゼ(Benzonase)、エキソヌクレアーゼ(Exonuclease)、リボザイム(Ribozyme)、またはこの混合物であってもよい。
【0161】
本発明の他の一様態において、前記インフルエンザ表面抗原の迅速精製方法は、c)段階後にウイルス不活性化過程をさらに含むことを特徴とすることができる。前記ウイルスの不活性化は、界面活性剤(detergent)、ホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、2級エチルアミン、アセチルエチレンイミンまたはこれらの組合わせを処理することにより行われてもよい。また、前記不活性化方法は、当該分野の熟練者に公知となっている物理的手段、例えば、ガンマ照射及び/又はUV光で処理することにより行われてもよい。
【0162】
本発明は、また、下記段階を含むことを特徴とするインフルエンザウイルスを生産する方法を提供する:
【0163】
(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;
(b)前記(a)段階の細胞培養液で使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;
(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスで感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;及び
(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階。
【0164】
本発明の一様態において、前記細胞はMDCK(Madin-Darby Canine Kidney)細胞であることを特徴とすることができる。
【0165】
本発明の他の一様態において、前記(b)段階は培養液の全量回収及び再投入過程なしに連続式低速遠心分離機を用いて連続的に細胞と培地を分離して培地の一部を廃棄し、新たな培地を細胞インキュベーターに投入する方法で培地を交換することを特徴とすることができる。
【0166】
本発明の他の一様態において、前記培地の一部は全体培養液の50%~80%であることを特徴とすることができる。
【0167】
本発明は、また、インフルエンザ抗原を含むワクチンの製造方法において、ワクチンの製造期間が短縮されたことを特徴とする、下記段階を含む方法を提供する:
【0168】
(a)細胞を使い捨て生物反応器(single-use bioreactor;SUB)で培養する段階;
(b)前記(a)段階の細胞培養液で連続式低速遠心分離機を用いて培地の一部を新鮮な培地で交換する段階;
(c)前記増殖した細胞をインフルエンザウイルスに感染させ、インフルエンザウイルスの複製を許容する条件の下で培養する段階;及び
(d)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを分離する段階。
【0169】
本発明の一様態において、前記(d)段階は下記段階を含めて行われることをさらに含むことを特徴とすることができる:
【0170】
(d-1)前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製するために、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対する赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)に基づいて精製条件を決定する段階;及び
(d-2)前記(d-1)段階で決定された条件に応じて前記(c)段階の培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階。
【0171】
本発明の他の一様態において、前記方法は、(d-1)段階以前に、ウイルス培養物から細胞(cell)及び細胞残屑(cell debris)を除去する段階をさらに含んでもよい。
【0172】
本発明の他の一様態において、前記ウイルス培養物から細胞(cell)及び細胞残屑(cell debris)の除去は、濾過、透析及び遠心分離からなる群から選択された一つ以上の方法で行われてもよい。
【0173】
本発明の他の一様態において、前記(d-1)はインフルエンザウイルス培養物のサンプルを互いに異なる条件で精製させたものをそれぞれ赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGEまたはその組合わせを行って決定されることを特徴とすることができる。
【0174】
本発明の他の一様態において、前記方法は、(d-2)段階後に限外濾過及びダイアフィルトレーションからなる群から選択される一つ以上の方法による追加の精製過程を含んでもよい。
【0175】
本発明の他の一様態において、前記方法は、(d)段階後にベンゾナーゼ(Benzonase)、エキソヌクレアーゼ(Exonuclease)、リボザイム(Ribozyme)、またはこの混合物処理過程をさらに含んでもよい。
【0176】
本発明の他の一様態において、前記方法は、(d)段階後にウイルス不活性化過程をさらに含んでもよい。
【0177】
本発明の他の一様態において、前記ウイルス不活性化は、界面活性剤(detergent)、ホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、2級エチルアミン、アセチルエチレンイミンまたはこれらの組合わせを処理することにより行われることを特徴とすることができる。
【0178】
本発明の他の一様態において、前記方法は、下記段階をさらに含むことを特徴とすることができる:
【0179】
(e)インフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を分離する段階。
【0180】
本発明の他の一様態において、前記(e)段階は、界面活性剤処理後、遠心分離して上澄液を回収する方法で表面抗原タンパク質を分離するものであってもよい。
【0181】
本発明の他の一様態において、前記(e)段階は、下記段階を含めて行われるものであってもよい:
【0182】
(e-1)前記(d)段階で精製されたインフルエンザウイルスから表面抗原を精製するために、表面抗原タンパク質精製時の界面活性剤の処理量をインフルエンザウイルスサンプルに対する全体タンパク質定量法(Total protein quantification assay)に基づいて決定する段階;
(e-2)前記(e-1)段階で決定された条件に応じて界面活性剤を処理して前記(d)段階のインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質を精製する段階。
【0183】
本発明の他の一様態において、前記方法は、(e)段階後に界面活性剤除去過程をさらに含んでもよい。
【0184】
本発明の他の一様態において、前記(e-1)段階は、前記(d)段階から分離されたインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value, TPQV)を求めた後、下記式(1)に代入して得られた値で界面活性剤の処理量が決定されることを特徴とすることができる:界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0185】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【0186】
本発明の他の一様態において、前記方法は、(e)段階後に不純物の除去のための追加のクロマトグラフィー遂行過程を含んでもよい。
【0187】
本発明の他の一様態において、前記クロマトグラフィーは、TMAE(トリメチルアミノエチル)アニオン交換クロマトグラフィーであることを特徴とすることができる。
【0188】
本発明の他の一様態において、前記方法は、クロマトグラフィー後に限外濾過及びダイアフィルトレーションからなる群から選択される一つ以上の方法による追加の精製過程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0189】
従前のインフルエンザワクチン生産時に標準試験法として用いられている放射免疫拡散法を用いなくても本発明特有の方法により迅速で信頼性のあるインフルエンザ表面抗原収得(精製)条件の確認が可能であり、これにより、インフルエンザ表面抗原サブユニットワクチンの生産期間が顕著に短縮され、新型インフルエンザが急速に大流行する状況でも迅速にワクチンの開発/製造による対応が迅速に行えるという期待効果を有する。
【0190】
また、本発明のインフルエンザウイルス生産方法によれば、使い捨てバッグを用いて細胞を培養し、ウイルス感染段階で使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培地を交換した後、ウイルスを感染させることにより汚染発生の可能性を最小化し、生産期間の短縮及び生産コストの節減を最大化できる培養工程を提供できる。培養液を全量回収後に容器に小分して遠心分離を進行する一般的な方式とは異なり、使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いる場合、培地交換を密閉システムで進行でき、汚染発生の可能性を大きく下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
図1】本発明の方法によりタンパク含量を基準にウイルス(B/Maryland/15/2016)に対するCTAB処理量を決定し、これを不活性化ウイルス培養液に処理した後、超高速遠心分離した上澄液または不活性化ウイルス液に含まれたタンパクをSDS-PAGEで分析した結果である(HA: Hemagglutinin、NP:Nucleoprotein、M:Matrix protein)。
図2】CSカラムレジンに対するウイルス結合の最適条件を決定するためにlinear gradient精製工程を行った後にSDS-PAGE及びHA assayを行ってカラム通過液でヘマグルチニンが損失を最小化する伝導度の条件を確認した結果である(IVR-190 virus、linear gradient purification-クロマトグラム)。
図3】CSカラムレジンに対するウイルス結合の最適条件を決定するためにlinear gradient精製工程を行った後にSDS-PAGE及びHA assayを行ってカラム通過液でヘマグルチニンが損失を最小化する伝導度の条件を確認した結果である(IVR-190 virus、linear gradient-クロマトグラム(Eluate分画拡大))。
図4】CSカラムレジンに対するウイルス結合の最適条件を決定するためにlinear gradient精製工程を行った後にSDS-PAGE及びHA assayを行ってカラム通過液でヘマグルチニンが損失を最小化する伝導度の条件を確認した結果である(IVR-190 virus、linear gradient purification-SDS-PAGE 結果)。
図5】本発明の方法に用いられるHA assay、SDS-PAGEを行って各条件におけるウイルス溶出液を分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0192】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0193】
ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0194】
実施例1:本発明特有の使い捨てバッグ及び連続式低速遠心分離機を用いたインフルエンザウイルス培養工程の新規戦略の樹立
1)MDCK細胞培養
本発明の培養方法は、使い捨てバッグを用いる使い捨て細胞インキュベーターを用いてMDCKSky-3851細胞を効率よく培養する方法を提供する。
【0195】
本発明の一様態は、37℃、5%のCO培養器でスピンナフラスコを用いてMDCK細胞を培養する段階を含む培養方法である。125mLスピンナフラスコでは攪拌速度40~150rpm、500mL及び1Lのスピンナフラスコの攪拌速度は80~150rpmで設定されなければならない。培養に用いられる培地は、化学的に定義された無血清培地を用いて、細胞成長に必要な栄養分としてL-glutamineを3~6mMの濃度で添加する。スピンナフラスコを用いた培養は1L以下の体積で実施する。
【0196】
本発明の追加様態は、フラスコ培養に続く使い捨てバッグを用いた細胞インキュベーターを通じた培養であり、10L、50L、200L、2000Lの規模の細胞インキュベーターを用いて培養液の規模を増大させることができる。細胞培養を有利な条件で行って大量培養が可能であるように溶存酸素量、pHのような培養条件を調節及び維持して培養を進行する。溶存酸素量とpHは培養に必要なガス(空気、酸素、二酸化炭素、窒素)及びbase(Sodium bicarbonate)を用いて調節する。特定の側面で、培養段階中に温度と溶存酸素の濃度及びpHは、それぞれ37±3℃、DO 50±10%、pH7.2±0.2の条件で維持され、本培養における培地はL-glutamineを3~6mM含む。
【0197】
2)ウイルス感染
本発明は、前記本培養工程で確保した細胞培養液にインフルエンザウイルスを感染させてウイルス培養液を得るためである。本培養を通じて十分な数の細胞が確保されれば、ウイルスを感染させる前に培養培地を交換する。
【0198】
ウイルス感染前の培地交換は、使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いて培養液の回収及び再投入過程なしに連続的に細胞と培地を分離して一定量(70%~80%)の培地を廃棄し、再度新たな培地を細胞インキュベーターに投入する方法で培地を交換する。培養液を全量回収後に容器に小分して遠心分離を進行する一般的な方式とは異なって、使い捨てバッグを用いた連続式低速遠心分離機を用いる場合、培地交換をclosed systemで進行でき、汚染発生の可能性を大きく下げることができる。当該工程段階で発生した汚染は、培養段階で用いられた培地の無駄遣いと工程期間延長につながり時間的、経済的損失が発生する。
【0199】
本発明では、使い捨てバッグを用いて細胞を培養し、ウイルス感染段階で連続式低速遠心分離機を用いて培地交換後にウイルスを感染することにより、汚染発生の可能性を最小化し、生産期間の短縮及び生産コストの節減を最大化できる培養工程を定立し、このような方式の細胞培養及びウイルス感染工程を「使い捨てバッグ及び連続式低速遠心分離機を用いたウイルス培養工程(略称:SBCC工程(Virus cultivation process using Single-use Bioreactor and low speed Continuous Centrifuge)」と称する。
【0200】
培地交換及びウイルス感染段階は、本培養中に栄養分が消耗した培地を除去し、外部から新たな培地及びウイルスを投入する段階であり、汚染の危険性が最も高い段階である。もし、培地交換段階で汚染が発生する場合、生産期間に対して損害が発生するが、凍結保管中であるワクチン生産用MDCK-Sky3851細胞株を溶かすcell thawing段階から10L細胞インキュベーターの段階でウイルス感染を進行する場合、培地交換まで13日程要される。2000Lの商業生産の場合、ウイルス感染のための培地交換段階まで24日程要される。併せて、培地及び使い捨てバッグの追加購買による生産コストも増加する。
【0201】
SBCC工程を用いた培地交換後に製造用ウイルス株を準備し、定められた感染多重度(MOI)で計算されただけのウイルスと2.5~20μg/mL濃度のトリプシンを細胞インキュベーターに無菌的に投入して細胞を感染させ、約2~4日間培養してウイルスの力価と細胞数及び生存率が適正水準に至ると、ウイルス培養を終了して培養液を回収する。本発明の一実施例において、3×10細胞/ml以上の細胞数が確保されたMDCK細胞に0.0001~0.01MOIで計算されただけのウイルスと1~20μg/mL濃度のトリプシンを処理して約3日間培養した。
【0202】
実施例2:インフルエンザウイルスから表面抗原の精製工程時に、精製条件の迅速探索戦略の新規樹立
インフルエンザウイルスから表面抗原の精製工程時にインフルエンザウイルスに界面活性剤(イオン性またはノニオン性)を添加して遠心分離などの分画手段を通じて表面抗原タンパク質を分離精製でき、その時、一例として、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)のようなイオン性界面活性剤を用いることが一般的である。
【0203】
インフルエンザウイルスに処理する界面活性剤の処理量の基準は、ウイルス表面抗原であるヘマグルチニン含量に応じて処理量を決定することが好ましいが、現在、一般に用いられている標準HA含量試験法であるSRID(単一放射免疫拡散法)は約2~3日程度の時間が要されるため、工程中の確認試験として適さない側面があり、特に、NIBSCなどでSRID標準品の供給がなされなかったり遅れる場合、試験を行えないという短所がある。
【0204】
一方、インフルエンザウイルスから表面抗原の精製工程時にウイルスコア(core)は破砕せずに、表面抗原であるヘマグルチニンとノイラミニダーゼのみ選択的に分離できる界面活性剤の処理量は、各ウイルスごとに異なる。表面抗原ワクチンは副作用が少なく、純度の高い高品質のワクチンであり、適切な界面活性剤の処理量の設定が非常に重要である。過量の界面活性剤の処理は、ウイルス全体が破砕されて不純物であるウイルスコア内部タンパク質が外部に露出されるため、精製結果物内の表面抗原純度が落ち、界面活性剤の処理量が不十分な場合、大部分の表面抗原がペレット(pellet)に存在するようになり、表面抗原の収率が低下する。また、適切な界面活性剤の処理量を短時間内に確認することがインフルエンザワクチン生産の過程において重要な要素となる。
【0205】
本発明者らは、多様な分析技法を用いて様々な比較実験の結果、後述する本発明の方法を最初に発明し、SRID方法に依存しなくても迅速に表面抗原分離に適した界面活性剤処理条件の設定が可能であるだけでなく、実質的に既存の標準試験法であるSRIDに基づいた方法とも有意な関係性があり、信頼性及び再現性が裏付けられることを確認した。以下の実施例は、本発明特有の方法による効果が既存の通常の工程からは予測し難い特別な効果であることを裏付ける。以下の実施例は、代表的に界面活性剤としてCTABを用いた一例を示し、これをCTCCT(CTAB treatment concentration confirmation test; CTAB 処理量確認試験)と略称する。
【0206】
2-1.SRID非依存表面抗原の精製工程条件の設定方法の新規樹立
本発明者らは、不活性化されたインフルエンザウイルス濃縮物からサンプリング(sampling)されたインフルエンザウイルスの単位容量当たりの全体タンパク質の定量値(total protein quantification value,TPQV)を用いて表面抗原の精製時に最適化された界面活性剤(ここで、一例としてCTAB)の処理量を算定するためのアルゴリズムを具現することにより、下記式(1)のような計算式の関係を導き出した。前記全体タンパク質の定量値(全体タンパク質含量値)の測定は、BCA assay(またはlowry assay、Bradford assayなど)を行って1時間以内に確認することができた。基準となる全体タンパク質の定量値はウイルスのstrainにより異なり得るが、本研究において実験に用いた不活性化ウイルス濃縮物のタンパク含量を分析した結果、200~600μg/mLと確認され、不活性化ウイルス液のタンパク含量を測定後、100、200、300、400、500、600、700、800または900μg/mLの数値中、TPQV測定値の近似値に該当する数値をCTAB処理のためのタンパク含量の基準値として設定した。CTAB処理量は、下記式(1)により求め、不活性化ウイルス液のタンパク含量比CTAB処理濃度(%)は0.005%~0.100%(v/v)内で決定された。
【0207】
界面活性剤の処理量=[{(a*TPQV(μg/mL))/(b μg/mL)}/c]* d・・・(1)
【0208】
(式中、
aは0.005~0.100(v/v%)であり、
bは100、200、300、400、500、600、700、800または900であり、前記TPQVと最も近い値が選択され、
cは処理される界面活性剤ストック(stock)の濃度(v/v%)であり、
dは界面活性剤を処理する前記サンプリングしたインフルエンザウイルスの容量である。)
【0209】
タンパク含量を基準としたCTAB処理濃度(%)はstrain、ウイルス特性に応じて異なるため、任意の範囲に対してSDS-PAGEを行って適切なCTAB処理濃度(%)を確認して決定した。即ち、不活性化ウイルス液を少量ずつ小分して任意の範囲に対してCTABを処理した後、スカイセルフル製造工程に従って30,000rpm以上の条件で超高速遠心分離を行って表面抗原タンパク質は上澄液として回収され、ウイルスコアタンパク質は沈殿物として分離される最適なCTAB処理濃度を確認した。
【0210】
確認された最適なCTAB処理濃度を用いて製造工程に適用した。前述した工程を行って得られたサンプル(B/Maryland/15/2016ウイルス)を用いてSDS-PAGEを行った結果、図1のような結果が得られた。0.01%~0.10%の濃度でCTABを処理した時、nucleoprotein、matrix proteinなどの不活性化ウイルス液から確認されるヘマグルチニン以外の不純物がCTAB処理後に超高速遠心分離工程を進行した時に除去され、ヘマグルチニンのみ超高速遠心分離上澄液として回収されることを確認することができた。
【0211】
2-2.本発明による表面抗原の精製工程条件の設定方法の信頼性及び再現性の確認_既存のSRID方法に基づいた方法との相関関係
【0212】
【表1】
【0213】
前記表1は、2,000L scale商業生産dataを整理したものであり、前記式(1)により界面活性剤の処理量をタンパク含量を基準として求め、CTAB処理工程を行った。
【0214】
併せて、不活性化ウイルス液のHA含量と不活性化ウイルス液にCTAB処理後に超高速遠心分離工程を行って獲得した超高速遠心分離上澄液のHA含量を求めて比較した結果、超高速遠心分離上澄液のHA含量が不活性化ウイルス液のHA含量比70%~80%水準で十分な商業性を確認した。HA回収率を高めるために過度にCTABを処理する場合、生産しようとするサブユニット(subunit)ワクチンではなく分割ワクチン(split vaccine)形態に製造され得るため、適切なCTAB処理量を求めることが非常に重要である。
【0215】
従って、本発明で確立した前記式(1)による界面活性剤の処理量算出方式がインフルエンザウイルスの表面抗原を精製過程で必要なCTAB処理量を迅速かつ正確に確認することができる方式であることが確認された。
【0216】
2-3.既存のSRID方法(比較例1)に基づいた精製条件の設定と、本発明による精製条件設定の遂行時間の比較
前記実施例2-2で行われた通り、既存のSRID(放射免疫拡散法)による表面抗原精製条件の設定と、本発明の精製条件の設定方法(実施例2-1及び実施例2-2を参照)による工程遂行時間を比較した結果、下記表2のように、本発明方法による遂行時間が既存の放射免疫拡散法より遥かに短いため、インフルエンザ表面抗原の精製条件を確認するのにさらに効率的であることを確認することができた。
【0217】

【表2】
【0218】
実施例3:ウイルス培養以降、インフルエンザウイルス抗原精製条件の迅速確認試験セット(Rapid influenza virus antigen purification condition test set; 略称 RIVPCT)の樹立
インフルエンザ表面抗原を含むサブユニット(subunit)ワクチンの生産工程中における精製過程は、インフルエンザウイルスを感染させた細胞培養物からインフルエンザウイルスの精製工程及びインフルエンザウイルスから表面抗原タンパク質の分離工程の大きく2工程段階が必要となる。既存のワクチン生産工程は、前記2工程段階で標準試験法である単一放射免疫拡散法(SRID)を用いて工程条件を最適化できるが、前述したようにSRIDはワクチン生産において種々の短所が存在する。これに対し、本発明者は単一放射免疫拡散法(SRID)なしに適した工程条件を設定できる新規な方法を模索し、下記第1精製条件決定法及び第2精製条件決定法(実施例2で樹立された新たな戦略に基盤)をセットとして含むインフルエンザウイルス抗原精製条件の迅速確認試験セットを開発した。本発明において第1精製条件決定法及び第2精製条件決定法のセットを本明細書においてRIVPCTと称する。
【0219】
3-1.第1精製条件決定法_インフルエンザウイルス培養物からインフルエンザウイルスの分離/精製/濃縮時
インフルエンザウイルス培養物からインフルエンザウイルスを精製する段階で用いられる精製条件の設定において、SRID測定なしにウイルス別に迅速に最適条件を設定するための決定法/判別法を提供する。具体的には、互いに異なる条件で精製されて得られたインフルエンザウイルスサンプルに対して後述する本発明特有の赤血球凝集反応法(Hemagglutination assay)、SDS-PAGE及び判別基準に基づいて、前記インフルエンザウイルス精製時の条件を決定する試験法/判断法を提供する。
【0220】
以下の実施例では、代表的にウイルス精製手段として、クロマトグラフィーを用いた一例を示す。ウイルス培養液をクロマトグラフィーカラムに投入する前に、ウイルス培養液から細胞及び細胞残屑(cell debris)が一次的に除去される前処理が行われ、このような前処理には一例として遠心分離、透析、濾過などの方法で行われてもよい。
【0221】
クロマトグラフィー工程を進行するために、インフルエンザウイルスごとに互いに異なって条件を設定する必要があるが、毎年ワクチン生産勧告株が変更されるインフルエンザウイルスの特性上、ウイルス株別に迅速に精製条件を確認する必要がある。クロマトグラフィー精製条件を設定するために、インフルエンザウイルスがレジンに最もよく結合できる条件を確認した後、最適な収率と純度で結合したウイルスを分離精製できる溶出条件に関する試験を実施する。以下では、代表的な一例としてCellufine sulfate(CS)クロマトグラフィー利用時のインフルエンザウイルス精製条件(CSクロマトグラフィーカラムレジンに対する目的物の結合条件及び溶出条件)決定法を示し、これをCSPCT(CS chromatography purification condition test)と略称する。
【0222】
ウイルスがクロマトグラフィーカラムのレジンに結合する原理は、インフルエンザウイルスの表面タンパク質とレジンのsulfate group間の親和力によるイオン結合であり、一般に、伝導度とpHにより結合能が決定される。本実施例は、工程に用いられる緩衝液のpHを7.0~7.4で中性を維持し、タンパク質の安定性を高め、伝導度を低くしながらウイルスが最大限に結合可能な条件を見出すことを例示する。一般に得られるインフルエンザウイルス培養物(液)の伝導度は約10.0~15.0mS/cmであり、これに伝導度が低いリン酸ナトリウム緩衝液で希釈してカラムにローディングする試料の伝導度を低くしながら結合能を確認する。本実施例では、迅速な工程条件の確認のために、一般に、精製条件の一つとして設定されるpHを除いて伝導度のみを調整する簡単な方式で精製条件の確認に必要な時間と変数を減らすことを例示する。
【0223】
一般に、伝導度を下げるほどインフルエンザウイルスはCSレジンによく結合することが知られているが、伝導度を下げるために投入されるリン酸ナトリウム緩衝液の容量とCSクロマトグラフィー工程時間が増加するようになって生産期間と生産コストも増加するため、適切な伝導度を確認することが重要である。これについて、リン酸ナトリウム緩衝液を用いてウイルス培養液を0.5~4倍希釈する方式で10.0mS/cm以下に伝導度を低くしながら、結合能が適切かを確認するためにカラム通過液に対してヘマグルチニン確認試験(HA assay)を実施した。
【0224】
具体的には、HA assayはWHOで作成して配布した「Manual for the laboratory diagnosis and virological surveillance of influenza」に記述されているprotocolに従って行った。前記方法によりカラム通過液のHA titerの減少傾向に基づいてローディング試料の適正伝導度を確認し、SDS-PAGEも同時に行ってインフルエンザウイルスがカラム通過液で損失するかどうかを各条件別に確認した。
【0225】
前記のようにCSカラムレジンに対するウイルス結合の最適条件を決定した後には、ウイルス溶出に適した条件を見出す。レジンに結合したインフルエンザウイルスの溶出は、レジンとの結合を分離できる適切な濃度の塩化ナトリウムを含む緩衝溶液を用いて最適な伝導度を探索する方式で進めた。2~5M塩化ナトリウム緩衝液でlinear gradientの条件で塩濃度を高めながらカラムに投入すれば、ウイルス及びタンパク質などが溶出しながらUVピークが示されるが、この分画を回収してウイルスが含まれている分画の伝導度と塩濃度をHA assay及びSDS-PAGEを行って確認した。ここで確認されたウイルス溶出条件と、先に確認したウイルス結合能が適切であると判断される伝導度の条件に基づいて、2~5M塩化ナトリウム緩衝液とリン酸ナトリウム緩衝液を用いたstep gradientの条件でウイルスを溶出して当該溶出濃度で大部分のインフルエンザウイルスが溶出するかを確認した後にウイルス溶出条件を確立した。ウイルスが高収率、高純度で溶出するかを確認するために、前述したことと同様の方法及び基準によりHA assayを行って確認した。前記確認にはSDS-PAGEを伴って行った。
【0226】
前記のような一連の過程で行われる、回収されたウイルス培養液からウイルスを精製するためのCSクロマトグラフィー工程条件試験(CSPCT)は約6~12時間内に完了することができ、毎年ワクチン生産用strainが変更されるインフルエンザワクチンの特性上、このような時間短縮は全体生産期間の短縮とも連関する。
【0227】
クロマトグラフィー条件の設定時に標準試験法である単一放射免疫拡散法(Single Radial Immunodiffusion technique、以下SRID)を行ってカラム通過液からヘマグルチニン含量を確認する方式が最も正確な方式であるが、一つの精製条件の確認のために2~3日程度要され、条件試験期間が相当増加し、NIBSC(National Institute for Biological Standards and Control)、TGA(Therapeutic Goods Administration)などでSRID標準品の供給がなされなかったり遅れる場合、試験を行えないという短所がある。本発明によりHA assayとSDS-PAGEを行う場合、3時間以内に試験結果を確認することができ、各ウイルスに対する精製条件試験が1日以内になされるため、非常に迅速で、標準品の供給などのイシューがなく試験遂行に対する制約事項がほとんどないと見られる。伝導度を適宜下げてインフルエンザウイルスの結合能を確認して高収率、高純度でウイルスを溶出する条件を12時間以内に迅速に確認する方式が前述したCSPCTの特長点であると言え、原理と手続は前述した通りである。
【0228】
3-2.第2精製条件決定法_インフルエンザウイルスから表面抗原の分離精製
インフルエンザウイルスから表面抗原の分離精製のために、代表的に本実施例では界面活性剤としてCTABを用いた一例を提示する。CTAB処理量は、前記実施例2と同様の方法でRIVPCT中、CTCCTを行って迅速に確認した。
【0229】
3-3.第1精製条件決定法及び第2精製条件決定法による表面抗原タンパク質の精製効果
SRIDを行って確認したHA含量を基盤にワクチン生産に必要な精製工程において必要な条件を求める場合、より正確な精製条件を設定できるが、本発明のRIVPCTによると、ワクチン生産に必要な精製工程において必要な条件をより迅速に究明できるという長所がある。SRIDを用いた方式を遂行する時、標準品保有有無及び入庫期間を除いても2日間以上要されるため、この所要時間を短縮するためにSDS-PAGE、HA assayなどを用いるRIVPCT方式を発明するようになった。
【0230】
【表3】
【0231】
実施例4:生産期間が短縮された、インフルエンザサブユニットワクチン生産工程
4-1.細胞にインフルエンザウイルスの感染及び培養
1) MDCK(Madin-Darby Canine Kidney cells)細胞培養
凍結保管中のワクチン生産用MDCK-Sky3851細胞株1バイアルを37℃の恒温水槽で解凍し、培養培地を入れて希釈した。次に、希釈された細胞を遠心分離して培地から細胞を分離した後、再度新鮮な培地で細胞ペレットを解いてサンプルをとって細胞数及び生存率を測定した。1×10~5×10細胞/mlの接種濃度で125mLスピンナフラスコに細胞を接種し、37℃、5%COの条件で80rpmで攪拌して3~4日間培養した。
【0232】
前記125mLスピンナフラスコで培養中のMDCK細胞の細胞数及び生存率を測定し、500mLスピンナフラスコで250mLの規模で培養を開始することができるだけの細胞培養液を接種し、37℃、5%COの条件で100rpmで攪拌しながら3~4日間1次種培養を行った。細胞をバッチ過程で培養し、細胞培養培地として化学的に定義された培地を用い、L-glutamineを3~6mM/Lの濃度で添加した。1次種培養後、細胞数及び生存率を測定した後、2個の1Lスピンナフラスコに500mLの規模で培養を開始することができるだけの細胞を接種し、1次種培養と同様な条件で3~4日間培養した。
【0233】
前記500mL培養中の1Lスピンナフラスコからサンプルをとって細胞数及び生存率を測定した後、10Lの使い捨て細胞インキュベーターで5Lの規模で培養を開始することができるだけの1Lスピンナフラスコの培養液を無菌的に細胞インキュベーターに細胞を接種して3~4日間培養した。スピンナフラスコの細胞培養液を細胞インキュベーターに接種するために必要な器具とpH及びDO probeを予め滅菌して準備し、pHとDO probeを装着し、培養培地を投入した後、温度を37±1℃に設定し、DO値を補正して細胞を接種できるように準備した。
【0234】
これと同様の方法で、順次50Lの規模、100Lの規模、500Lの規模及び2000Lの規模まで順次細胞培養を行った。
【0235】
2)ウイルス感染
前記2000Lの規模で培養中の細胞インキュベーターの培養液をとって細胞数と生存率を測定し、1×10~3×10細胞/ml以上の細胞数が確保されれば、存在する培養培地を新鮮な培地で交換した。細胞培養用使い捨てバッグに連続式低速遠心分離機を用いて細胞培養液を基準として70~80%の培地を除去し、新鮮な培地を再度投入する方法で培養培地を交換した。
【0236】
培地交換及びウイルス感染工程中、細胞インキュベーターは、内部は密閉された環境が維持され、培地交換に用いられる資材は、滅菌された状態の使い捨てバッグで汚染発生の可能性が非常に低くなる。当該工程に要される工程時間は10Lの規模で工程遂行時に3~4時間、2000Lの規模の商業生産の場合、7~12時間程度要された。
【0237】
ウイルス感染及び増殖はDO 50±10%、pH7.2±0.2の条件で実施され、製造しようとするインフルエンザウイルスの製造用ウイルス株を溶かし、0.0001~0.002MOIで計算されただけのウイルスと2.5~20μg/mL濃度のトリプシンを細胞インキュベーターに無菌的に投入して細胞を感染させ、約3~4日間培養し、ウイルス力価と細胞数及び生存率が適正水準に至れば培養を終了して培養液を回収した。
【0238】
前記細胞培養及びウイルス感染方法では微細担体が用いられず、特に、灌流システムではなくバッチ細胞培養システム(batch cell culture system)で細胞が培養されてウイルスが増殖した。インフルエンザウイルスは、前記MDCK-Sky3851に感染された後、細胞内で増殖して細胞を破裂させて外部に噴出される様相を示すため、灌流システムで細胞を培養する場合、細胞数が次第に減少するため、本発明のシステムに適さなかった。
【0239】
4-2.ウイルス培養物からインフルエンザウイルス精製のための条件設定及びウイルス精製
1)遠心分離及び濾過
細胞インキュベーター内のウイルス培養が完了すると、ウイルス培養液を連続式低速遠心分離機を用いて8,000~20,000rpmの速度で遠心分離して上澄液を回収する方法で細胞及び細胞残屑を除去した。回収した上澄液は1.0/0.5μmのプレフィルタで濾過後、0.45μmサイズのフィルタで再度濾過して一定のサイズ以上の大きい粒子を除去した。
【0240】
2)精製条件の設定及びCellufine sulfate(CS)親和性レジンを用いたインフルエンザウイルス精製
濾過されたウイルス培養液は、インフルエンザウイルスに親和性があるレジン(Cellufine sulfate)を用いて1次クロマトグラフィー工程を行った。平衡用リン酸ナトリウム緩衝液を用いてカラムを平衡化した後、ウイルス濾過液を投入した。前記実施例3-1に記述したようなCSPCT方法で迅速に精製条件を設定した。IVR-190(A/Brisbane/02/2018(H1N1) pdm09-like virus)を用いて精製条件の設定試験を行い、CSPCT方法とSRIDを用いた方法間の結果を比較分析した。
【0241】
まず、CSカラムレジンに対するウイルス結合の最適条件を決定するためにlinear gradient精製を行った後にSDS-PAGE及びHA assayを行ってカラム通過液でハマグルチニンが損失を最小化する伝導度の条件を確認した(図2図4、表4)。
【0242】
【表4】
【0243】
JVR-190ウイルス培養液と平衡用リン酸ナトリウム緩衝液を1:1で希釈して伝導度を13.03mS/cmから7.54mS/cmに下げてlinear gradient精製条件試験を行った。SDS-PAGE上でカラム通過液で損失するHAはなく、HAを除いた不純物が溶出することを確認することができた。0.5% chicken RBCを用いたHA assay結果も全てのカラム通過液分画で0 HAU/50μLが確認され、試験に用いられたローディング試料の伝導度が1次クロマトグラフィー精製に適することを確認した。
【0244】
ウイルス溶出濃度の確認と関連し、塩化ナトリウムを含む溶出用リン酸ナトリウム緩衝液とリン酸ナトリウム緩衝液を適切な比率で希釈して投入し、UV280peakを確認して溶出したウイルス分画液を収集した結果、0.1M~0.2M NaCl濃度の条件でクロマトグラム上、最も高いピーク(UV280value)とHA titerが確認されるとともに0.3M NaCl濃度の条件までピークとHA titerが徐々に減少することが確認され、収率を高めるためにウイルス溶出濃度として0.4M NaClが適当であることが確認された。試験結果を総合してみると、CSカラムにローディングする試料の伝導度として7.54mS/cm水準であれば適当であると判断され、ウイルス溶出濃度として0.4M NaClが適当であると判断された。
【0245】
前記CSPCT方法によりローディング試料の伝導度の条件を設定した後、SRIDを基盤とした方法と比較するために、ウイルス溶出濃度を0.3M、0.35M、0.4M NaClに設定してstep gradient精製工程を行った後、各batchのウイルス溶出液のHA含量を比較した。併せて、SDS-PAGEとHA assayを行って本発明のCSPCT方法で導き出される結果とSRIDを用いた方法との間の相関関係を確認した。
【0246】
SRID遂行結果、0.4M NaCl濃度でウイルスを溶出した時、収率と純度が最もよいことを確認することができた(表5)。
【0247】
【表5】
【0248】
SRIDに用いられたサンプルを用いてCSPCT方法に用いられるHA assay、SDS-PAGEを行って各条件のウイルス溶出液を分析した。
【0249】
図5のSDS-PAGE結果を参考にすると、ウイルス溶出濃度が増加するほどHAバンドが厚くなることが確認され、これを通じてウイルス溶出液に含まれているHAが増加していることが分かった。ウイルス溶出液のHA titerの場合、0.3M、0.35M NaClの濃度条件である時、1,024HAU/50μLと同一であるが、0.4M条件である時、2,048HAU/50μLに増加した。このように、CSPCT方法で確認されたウイルス溶出条件もSRID方法と同様にウイルス溶出濃度が0.4M NaClであることを確認することができ、両方法間の相関関係を確認することができた(表6)。
【0250】
【表6】
【0251】
一方、精製過程に用いられる平衡用緩衝液のpHは7.0~7.4に中性を維持し、ウイルス濾過液を平衡用緩衝液で希釈してウイルスが最大限に結合可能な伝導度まで下げる。ウイルス培養終了時に、ウイルス培養液の伝導度は約10.0~15.0mS/cmであり、これに伝導度が低い平衡用緩衝液で希釈して伝導度を低くしながらレジンとの結合能を確認した結果、インフルエンザウイルスの種類に応じて差があるが、約4.0~10.0mmS/cmの条件で適切な水準の結合能を示した。
【0252】
平衡用緩衝液で希釈されたウイルス濾過液をCSカラムに投入した後、カラムに結合せずに流れ出たカラム通過液はサンプリング後に廃棄し、平衡用緩衝液を2~3CV投入してカラムを十分に洗浄した後、塩化ナトリウムを含む溶出用リン酸ナトリウム緩衝液とリン酸ナトリウム緩衝液を適切な比率で希釈し、投入してUV280peakを確認しながら溶出したウイルス分画液を収集した。インフルエンザウイルスの溶出は、RIVPCT中、CSPCT(実施例3-1を参照)を行ってウイルスとレジンの結合を分離できる適切な濃度の塩化ナトリウムを含む溶出用緩衝液を確認して条件を確立し、大部分のウイルスは1M以下の塩化ナトリウム濃度で溶出した。
【0253】
4-3.ウイルス濃縮及び脱塩
ウイルス溶出液を濃縮し、PBS緩衝液で交換するために1次限外濾過を実施する。300kDa~800kDaの限外濾過フィルタを用いて細胞培養液体積基準に10%以下に濃縮し、濃縮体積の8倍以上の体積に該当するPBS緩衝液で、PBS緩衝液の伝導度と同一になるまでダイアフィルトレーションを実施した。
【0254】
4-4.ウイルス濃縮液内のMDCK細胞由来DNAの除去
回収されたウイルス濃縮液から細胞株由来DNAを除去するためにDNA切断酵素であるベンゾナーゼ(Merck社)を0.5~50U/mLで処理し、常温で30分~24時間ゆっくり攪拌しながら反応させた。ベンゾナーゼの補助因子として0.5~5mMの塩化マグネシウム六水和物を添加してベンゾナーゼの活性を高めた。
【0255】
4-5.ウイルス不活性化
ベンゾナーゼ反応が完了したインフルエンザウイルス濃縮液を不活性化させて感染性を除去した。ウイルスを不活性化させる化学的手段は、公知となった手段であれば何でも使用可能であり、例えば、洗浄剤、ホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)などがあり、本実施例ではホルムアルデヒド溶液を0.01~0.1%の水準に処理してウイルスを不活性化した。
【0256】
4-6.Detergentを用いた表面抗原の分離
インフルエンザウイルスに界面活性剤(イオン性またはノニオン性)または溶媒を処理することにより表面抗原タンパク質を分離精製でき、代表的な一例としてセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)のようなイオン性界面活性剤を用いることが一般的である。
【0257】
本実施例でも不活性化ウイルス濃縮液のタンパク含量を基準にCTABを処理し、CTAB処理量は、前記実施例3-2のようにRIVPCT中、CTCCTを行って確認した。冷蔵または常温で1時間以上反応させた後、連続式超高速遠心分離機を用いて30,000rpm以上の条件で遠心分離した後に上澄液を回収して表面抗原タンパク質のみを分離する。
【0258】
超高速遠心分離上澄液内のCTABを除去するために、吸着用レジン(Amberlite XAD-4)を上澄液に添加してCTABを除去した。その後、吸着用レジンはフィルタで濾過して除去した。
【0259】
4-7.TMAEアニオン交換レジンを用いた残留DNAの除去
宿主細胞由来のDNAを追加で除去するために、アニオン交換クロマトグラフィーレジンを用いて2次クロマトグラフィー工程を行った。平衡用リン酸ナトリウム緩衝液を用いてカラムを平衡化した後、ウイルス表面抗原回収濾過液を投入する。その時、伝導度の高い1~6Mの塩化ナトリウムが含まれたリン酸ナトリウム緩衝液で希釈して表面抗原はレジンに結合せず、DNAはレジンに結合する伝導度でクロマトグラフィー工程を実施し、レジンに結合していないカラム通過液を表面抗原分画液として回収する。
【0260】
4-8.表面抗原分画液の濃縮及び脱塩
表面抗原分画液を30~50kDaの限外濾過フィルタを用いて濃縮を実施した。濃縮工程が完了すると、PBS緩衝液を用いてPBS緩衝液の伝導度と同一になるまでバッファ交換を実施して濃縮液を回収した。回収された濃縮液を0.5/0.2umのフィルタで除菌濾過して原液を生産し、2~8℃で保管した。
【産業上の利用可能性】
【0261】
従前にインフルエンザワクチン生産時に標準試験法として用いられている放射免疫拡散法を用いなくても本発明特有の方法により迅速で信頼性のあるインフルエンザ表面抗原収得(精製)条件の確認が可能であり、これによりインフルエンザ表面抗原サブユニットワクチン生産の期間が顕著に短縮され、新型インフルエンザが急速に大流行する状況でも迅速にワクチンの開発/製造による対応が迅速に行えて産業上の利用可能性が非常に高い。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】