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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】濃縮液体エステルクアット組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20230601BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20230601BHJP
   D06M 13/402 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M13/17
D06M13/402
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566023
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 US2021029118
(87)【国際公開番号】W WO2021222083
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/017,976
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591066100
【氏名又は名称】ステパン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,デニス・エス
(72)【発明者】
【氏名】マーウィン,キャスリン・イー
(72)【発明者】
【氏名】ジャーメイン,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ,パトリック・シェーン
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC02
4L033BA14
4L033BA71
4L033BA86
(57)【要約】
30重量%~90重量%のエステルクアット活性体、および10重量%~50重量%の特定の溶媒系を含む、透明で安定的な濃縮液性組成物が開示される。エステルクアット活性体は、1.0:1~2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である。濃縮液性組成物は、5%未満のVOC含有量、少なくとも20のバイオ再生可能炭素指数(BCI)、および25℃で5000cP未満の粘度を有する。濃縮液性組成物は、水で容易に希釈されて、安定的な水性分散液を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明で安定的な組成物であって、
(A)前記組成物の重量に基づき、約30重量%~約80重量%の一種以上のエステルクアットであって、前記一種以上のエステルクアットは、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル基と、アルカノールアミンとの約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比での四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、
(B)前記組成物の重量に基づき、約20重量%~約50重量%の溶媒系であって、前記溶媒系は、130~700の数平均分子量を有する一種以上のポリエチレングリコールと、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドとの混合物を含み、
【化1】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または一つ以上の二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、
(C)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、
25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、組成物。
【請求項2】
透明で安定的な組成物であって、
(A)前記組成物の重量に基づき、約30重量%~約90重量%の一種以上のエステルクアットであって、前記一種以上のエステルクアットは、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源と、アルカノールアミンとの約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比での四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、
(B)前記組成物の重量に基づき、約10重量%~約50重量%の溶媒系であって、前記溶媒系は、以下の一般式を有する一種以上の1,3-ジアルコキシ-2-プロパノールを含み、
【化2】
式中、RおよびRは独立して、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、
(C)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、
25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、組成物。
【請求項3】
透明で安定的な組成物であって、
(A)前記組成物の重量に基づき、約30重量%~約90重量%の一種以上のエステルクアットであって、前記一種以上のエステルクアットは、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、
(B)前記組成物の重量に基づき、約10重量%~約50重量%の溶媒系であって、(i)2-ブトキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、2(2-メトキシエトキシ)エタノール、2(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブトキシエタン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上のグリコールエーテル、および(ii)以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドとの混合物を含み、
【化3】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、
(C)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、
25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、組成物。
【請求項4】
透明で安定的な組成物であって、
(A)前記組成物の重量に基づき、約55重量%~約85重量%の一種以上のエステルクアットであって、前記一種以上のエステルクアットは、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル基と、アルカノールアミンとの約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比での四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、
(B)前記組成物の重量に基づき、約15%~約45%の溶媒系であって、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドを含み、
【化4】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または一つ以上の二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに
(C)任意で、0重量%から最大で10重量%の水、を含み、
25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸アシル資源が、ヒマワリ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、ピーナッツ油、メドウフォーム油、ダイズ油、クルミ油、ホホバ油、ヤシ油、ルリジサ油、紅花油もしくは菜種油、またはそれらの混合物、好ましくはキャノーラ油、LEAR菜種油、またはそれらの組み合わせに由来する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸アシル資源が、キャノーラ脂肪酸、LEAR菜種脂肪酸、またはそれらの組み合わせである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルカノールアミンが、トリエタノールアミン(TEA)またはメチルジエタノールアミン(MDEA)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記アルカノールアミンが、TEAであり、前記脂肪酸アシル鎖とアルカノールアミンの比率が、約1.3:1~約2.2:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルカノールアミンが、MDEAであり、前記脂肪酸アシル鎖とアルカノールアミンの比率が、約1.0:1~約2.0:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヨード価が、60~130である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記エステルクアットが、約5より大きいハンセン極性パラメーターを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、5重量%未満、好ましくは2重量%未満の揮発性有機化合物(VOC)含有量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記粘度が、25℃で3000cP未満、好ましくは25℃で1000cP未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記脂肪酸アシル鎖とアルカノールアミンの比率が、約1.3~約1.8である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール200(PEG200)を含む、請求項1および5~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記脂肪酸アミドが、ジメチルラウラミド/ジメチルミリスタミドを含む、請求項1および3~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
PEG200、およびジメチルラウラミド/ジメチルミリスタミドが、1:3~3:1の重量比で、好ましくは1:2~2:1の重量比で、前記混合物中に存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の重量に基づき、前記エステルクアットは、約50重量%を構成し、前記溶媒系は、約30重量%を構成する、請求項1、3、および5~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記溶媒系が1,3-ジエトキシ-2-プロパノールを含む、請求項2および5~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記エステルクアットが、前記組成物の約80重量%であり、1,3-ジエトキシ-2-プロパノールが、前記組成物の約20重量%である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記溶媒系が、少なくとも90の合計バイオ再生可能炭素指数(BCI)を有する、請求項1、2、または5~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記グリコールエーテルが、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)を含む、請求項3、5~14、16、または18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記溶媒系が、ジメチルラウラミド/ジメチルミリスタミドを含み、DPMとジメチルラウラミド/ジメチルミリスタミドの重量比が、2:1である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記溶媒系が、20~60の合計バイオ再生可能炭素指数(BCI)を有する、請求項3、5~14、16、18、または22~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、繊維軟化組成物である、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の繊維軟化組成物を含む、繊維軟化製品。
【請求項27】
水、および請求項25に記載の繊維軟化組成物を含む柔軟剤組成物であって、前記一種以上のエステルクアットは、2~22重量パーセントの範囲の活性量で前記組成物中に存在する、柔軟剤組成物。
【請求項28】
前記一種以上のエステルクアットは、約3~約8重量パーセントの範囲の活性量で前記組成物中に存在する、請求項27に記載の柔軟剤組成物。
【請求項29】
少なくとも一つのイオン化塩をさらに含む、請求項27または28に記載の柔軟剤組成物。
【請求項30】
柔軟剤組成物を作製する方法であって、
(A)濃縮された繊維軟化組成物を提供する工程であって、前記濃縮された繊維軟化組成物は、(i)前記濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約30重量%~約80重量%の一種以上のエステルクアット活性体であって、前記一種以上のエステルクアット活性体は、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット活性体、
(ii)前記濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約20重量%~約50重量%の溶媒系であって、前記溶媒系は、130~700の数平均分子量を有する一種以上のポリエチレングリコールと、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドとの混合物を含み、
【化5】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに
(iii)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、
前記濃縮された繊維軟化組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、提供する工程、ならびに
(B)前記濃縮された繊維軟化組成物を水中で混合して、分散液の総重量に基づき、2重量%~22重量%のエステルクアット活性体を含む安定的な水性分散液を形成させ、それにより、前記柔軟剤組成物を作製する工程、を含む、方法。
【請求項31】
柔軟剤組成物を作製する方法であって、
(A)濃縮された繊維軟化組成物を提供する工程であって、前記濃縮された繊維軟化組成物は、(i)前記組成物の重量に基づき、約30重量%~約90重量%の一種以上のエステルクアットであって、前記一種以上のエステルクアットは、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源と、アルカノールアミンとの約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比での四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、(ii)前記組成物の重量に基づき、約10重量%~約50重量%の溶媒系であって、前記溶媒系は、以下の一般式を有する一種以上の1,3-ジアルコキシ-2-プロパノールを含み、
【化6】
式中、RおよびRは独立して、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、
(iii)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、
前記組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、提供する工程、ならびに
(B)前記濃縮された繊維軟化組成物を水中で混合して、分散液の総重量に基づき、2重量%~22重量%のエステルクアット活性体を含む安定的な水性分散液を形成させ、それにより、前記柔軟剤組成物を作製する工程、を含む、方法。
【請求項32】
柔軟剤組成物を作製する方法であって、
(A)濃縮された繊維軟化組成物を提供する工程であって、前記濃縮された繊維軟化組成物は、(i)前記濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約30重量%~約90重量%の一種以上のエステルクアット活性体であって、前記一種以上のエステルクアット活性体は、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット活性体、
(ii)前記濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約10重量%~約50重量%の溶媒系であって、2-ブトキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、2(2-メトキシエトキシ)エタノール、2(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブトキシエタン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上のグリコールエーテルと、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドとの混合物を含み、
【化7】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに
(iii)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、
前記濃縮された繊維軟化組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、提供する工程、ならびに
(B)前記濃縮された繊維軟化組成物を水中で混合して、分散液の総重量に基づき、2重量%~22重量%のエステルクアット活性体を含む安定的な水性分散液を形成させ、それにより、前記柔軟剤組成物を作製する工程、を含む、方法。
【請求項33】
柔軟剤組成物を作製する方法であって、
(A)濃縮された繊維軟化組成物を提供する工程であって、前記濃縮された繊維軟化組成物は、(i)前記組成物の重量に基づき、約55重量%~約85重量%の一種以上のエステルクアットであって、前記一種以上のエステルクアットは、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル基と、アルカノールアミンとの約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比での四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、
(ii)前記組成物の重量に基づき、約15%~約45%の溶媒系であって、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドを含み、
【化8】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または一つ以上の二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびR は独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、
(iii)任意で、0重量%から最大で10重量%の水、を含み、
前記組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、提供する工程、ならびに
(B)前記濃縮された繊維軟化組成物を水中で混合して、分散液の総重量に基づき、2重量%~22重量%のエステルクアット活性体を含む安定的な水性分散液を形成させ、それにより、前記柔軟剤組成物を作製する工程、を含む、方法。
【請求項34】
イオン化塩を添加する工程をさらに含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリエチレングリコールが、PEG200を含む、請求項30または34に記載の方法。
【請求項36】
前記脂肪酸アミドが、ジメチルラウラミド/ジメチルミリスタミドを含む、請求項30または32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記1,3-ジアルコキシ-2-プロパノールが、1,3-ジエトキシ-2-プロパノールを含む、請求項31または34に記載の方法。
【請求項38】
前記濃縮された繊維軟化組成物が、5重量%未満、好ましくは2重量%未満の揮発性有機化合物(VOC)含有量を有する、請求項30~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記溶媒系が、少なくとも90の合計バイオ再生可能炭素指数(BCI)を有する、請求項30、31、または34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記粘度が、25℃で3000cP未満、好ましくは25℃で1000cP未満である、請求項30~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記グリコールエーテルが、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)を含む、請求項32、34、36、38、または40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記溶媒系が、20~60の合計BCIを有する、請求項32、34、36、38、または40~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、化学的に安定であり、保管時に安定であり、組成物中で生分解性および水分散性であるエステルクアット(esterquat)活性体を用いる、透明で濃縮されたエステルクアット組成物に関する。濃縮された液性組成物は、希釈することなく使用することができ、または水中で簡単に分散させて安定的な液性分散液を形成することができる。濃縮された液体エステルクアット組成物は特に繊維軟化の用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
すすぎサイクルで布地を柔らかくする液体の繊維軟化組成物が知られている。そのような組成物は一般的に、約5重量%~約15重量%の範囲の量の軟化活性物質を含み、残りは主に水である。さらに濃縮された組成物、すなわち、15%を超える活性量を有する組成物は、包装材が少なく、したがって例えば、輸送費用が低減され、廃棄物の産生も少ないことから、環境への影響が小さく、望ましいものとされる。
【0003】
濃縮された繊維軟化組成物に関連する課題の一つは、保管時、特に高温で保管されたとき、または凍結温度で保管されたときに、安定しないことである。不安定性は、保管の際に、もはや製品を注ぐことができないほどの製品の粘性の増加として現れることがある。結果として、現在の典型的な市販の液体柔軟剤組成物は、約15重量%以下の軟化活性物質濃度となっている。
【0004】
濃縮された繊維軟化組成物に伴うもう一つの課題は、そうした繊維軟化組成物は多くの場合、許容可能な濃縮水性分散液を得るための溶媒を必要とすることである。融解状態で充分に低い粘性を有し、従来的な装置でポンプ注入することが可能な製品を得るためにも、通常、溶媒の添加が必要とされる。添加される溶媒は、通常、例えばイソプロパノールまたはエタノールなどの揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compound)であり、環境の観点からは望ましくない。それに加えて、VOCを制限する厳格な規制が提案されており、VOCの原因となる溶媒を制限または排除することが重要となっている。
【0005】
消費者製品市場でも、化石燃料ではなく、植物由来や動物由来の再生可能な資源をベースとした成分で製品を作ることがトレンドとなっている。そのような成分は、再生可能な、および/または持続可能な資源に由来するため、「グリーン」または「自然」であるとみなされる。その結果、それら成分は、化石燃料由来の原料よりも環境に優しくなっている。高いバイオ再生可能炭素指数(BCI:Biorenewable Carbon Incex)、例えば80を超えるBCIを有する成分は、主に植物、動物または海洋ベースの資源に由来する炭素を含む成分であることを示している。
【0006】
保管中に濃縮形態で安定性を保つことができ、さらには室温で容易に水で希釈され、ゲル化することなく安定的な繊維軟化分散液を形成することもできる、高度に濃縮された柔軟剤活性系に対するニーズが存在する。また、再生可能な資源から作製することができ、VOC溶媒を必要としない成分を有する、安定的な濃縮液体柔軟剤組成物に対するニーズも存在する。
【発明の概要】
【0007】
第一の態様では、本技術は、透明で安定的な液性組成物を提供するものであり、当該組成物は、(A)組成物の重量に基づき、約30重量%~約80重量%の一種以上のエステルクアットであって、当該一種以上のエステルクアットは、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、(B)組成物の重量に基づき、約20重量%~約50重量%の溶媒系であって、当該溶媒系は、(i)130~700の数平均分子量を有する一種以上のポリエチレングリコールと、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドとの混合物を含み、
【0008】
【化1】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し(ヒドロキシル基は、-OH基である)、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに(C)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、当該組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する。
【0009】
別の態様では、本技術は、透明で安定的な液性組成物を提供するものであり、当該組成物は、(A)組成物の重量に基づき、約30重量%~約90重量%の一種以上のエステルクアットであって、当該一種以上のエステルクアットは、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、(B)組成物の重量に基づき、約10重量%~約50重量%の溶媒系であって、2-ブトキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、2(2-メトキシエトキシ)エタノール、2(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブトキシエタン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上のグリコールエーテルと、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドとの混合物を含み、
【化2】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに(C)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、当該組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する。
【0010】
別の態様では、本技術は、透明で安定的な組成物を提供するものであり、当該組成物は、(A)組成物の重量に基づき、約30重量%~約90重量%の一種以上のエステルクアットであって、当該一種以上のエステルクアットは、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源と、アルカノールアミンとの、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比での四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、(B)組成物の重量に基づき、約10重量%~約50重量%の溶媒系であって、当該溶媒系は、以下の一般式を有する一種以上の1,3-ジアルコキシ-2-プロパノールを含み、
【化3】
式中、RおよびRは独立して、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに(C)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、
当該組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する。
【0011】
別の態様では、本技術は、透明で安定的な組成物を提供するものであり、当該組成物は、(A)組成物の重量に基づき、約55重量%~約85重量%の一種以上のエステルクアットであって、当該一種以上のエステルクアットは、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源と、アルカノールアミンとの約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比での四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット、および(B)組成物の重量に基づき、約15%~約45%の溶媒系であって、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドを含み、
【化4】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに(C)任意で、0重量%から最大で10重量%の水、を含み、当該組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する。
【0012】
さらなる態様では、本発明技術は、柔軟剤組成物を作製する方法に関連し、当該方法は、(A)濃縮された繊維軟化組成物を提供する工程であって、当該濃縮された繊維軟化組成物は、(i)当該濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約30重量%~約80重量%の一種以上のエステルクアット活性体であって、当該一種以上のエステルクアット活性体は、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット活性体、(ii)当該濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約20重量%~約50重量%の溶媒系であって、当該溶媒系は、130~700の数平均分子量を有する一種以上のポリエチレングリコールと、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドとの混合物を含み、
【化5】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに(iii)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、当該濃縮された繊維軟化組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、提供する工程、ならびに(B)当該濃縮された繊維軟化組成物を水中で混合して、分散液の総重量に基づき、2重量%~22重量%のエステルクアット活性体を含む安定的な水性分散液を形成させ、それにより、柔軟剤組成物を作製する工程、を含む。
【0013】
さらなる態様では、本発明技術は、柔軟剤組成物を作製する方法を提供し、当該方法は、(A)濃縮された繊維軟化組成物を提供する工程であって、当該濃縮された繊維軟化組成物は、(i)当該濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約30重量%~約90重量%の一種以上のエステルクアット活性体であって、当該一種以上のエステルクアット活性体は、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット活性体、(ii)当該濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約10重量%~約50重量%の溶媒系であって、当該溶媒系は、以下の一般式を有する一種以上の1,3-ジアルコキシ-2-プロパノールを含み、
【化6】
式中、RおよびRは独立して、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに(C)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、当該濃縮された繊維軟化組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、提供する工程、ならびに(B)当該濃縮された繊維軟化組成物を水中で混合して、分散液の総重量に基づき、2重量%~22重量%のエステルクアット活性体を含む安定的な水性分散液を形成させ、それにより、柔軟剤組成物を作製する工程、を含む。
【0014】
さらなる態様では、本発明技術は、柔軟剤組成物を作製する方法を提供し、当該方法は、(A)濃縮された繊維軟化組成物を提供する工程であって、当該濃縮された繊維軟化組成物は、(i)当該濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約30重量%~約90重量%の一種以上のエステルクアット活性体であって、当該一種以上のエステルクアット活性体は、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット活性体、(ii)当該濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約10重量%~約50重量%の溶媒系であって、当該溶媒系は、2-ブトキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、2(2-メトキシエトキシ)エタノール、2(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブトキシエタン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上のグリコールエーテルと、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドとの混合物を含み、
【化7】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに(C)任意で、0重量%から最大で30重量%の水、を含み、当該組成物は、25℃で、5000cp未満の測定粘度を有する、提供する工程、ならびに(B)当該濃縮された繊維軟化組成物を水中で混合して、分散液の総重量に基づき、2重量%~22重量%のエステルクアット活性体を含む安定的な水性分散液を形成させ、それにより、柔軟剤組成物を作製する工程、を含む。
【0015】
追加的な態様では、本発明技術は、柔軟剤組成物を作製する方法に関連し、当該方法は、(A)濃縮された繊維軟化組成物を提供する工程であって、当該濃縮された繊維軟化組成物は、(i)当該濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約55重量%~約85重量%の一種以上のエステルクアット活性体であって、当該一種以上のエステルクアット活性体は、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシルとアルカノールアミンのモル比でアルカノールアミンと反応された、40~130のヨード価を有する脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物である、一種以上のエステルクアット活性体、(ii)当該濃縮された繊維軟化組成物の重量に基づき、約15%~約45%の溶媒系であって、以下の一般構造を有する一種以上の脂肪酸アミドを含み、
【化8】
式中、Rは、6~20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは直線状であり、飽和であるか、または不飽和二重結合を有し、任意選択的に一つ以上のヒドロキシル基を含有し、
ならびにRおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよい、溶媒系、ならびに(iii)任意で、0重量%から最大で10重量%の水、を含み、当該濃縮された繊維軟化組成物は、25℃で、5000cP未満の測定粘度を有する、提供する工程、ならびに(B)当該濃縮された繊維軟化組成物を水中で混合して、分散液の総重量に基づき、2重量%~22重量%のエステルクアット活性体を含む安定的な水性分散液を形成させ、それにより、柔軟剤組成物を作製する工程、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記述される技術は、一つ以上の好ましい実施形態に関連付けられて記述されているが、当業者であれば、当該技術は、それら特定の実施形態のみに限定されないと理解するであろう。逆に、本明細書に記述される技術は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれ得る全ての代替物、改変物、および均等物を含む。
【0017】
定義
「バイオ再生可能炭素指数(BCI:Biorenewable Carbon Index)」は、バイオ再生可能な資源に由来する炭素の割合に関する推定を指し、バイオ再生可能な炭素の数を分子全体の炭素の数の合計で割った値に基づいて計算される。
【0018】
本明細書において、「バイオ再生可能」とは、動物、植物、または海洋物質に由来するものとして定義される。
【0019】
「透明」または「透き通った」組成物とは、420ナノメートルの波長で、1センチメートルのキュベットを使用したときに、約50を超える光の透過率を有する組成物と定義され、この場合において当該組成物は、25℃で、染料および乳白剤の非存在下で測定される。あるいは、組成物の透明性は、420ナノメートルで、約0.3未満の吸光度(A)を有するとして測定されてもよく、これは上記と同じキュベットを使用したときの約50を超える透過率と同等である。吸光度と透過率の関係性は、以下の通りである。
透過率=100(1/逆対数A)
【0020】
「VOC」とは、揮発性有機化合物を指す。そのような化合物は、25℃で、2mmHgを超える蒸気圧、7未満の炭素原子数、および大気圧で120℃未満の沸点を有する。
【0021】
エステルクアット柔軟剤化合物
本発明技術の濃縮された液性組成物は、主な活性体として、アルカノールアミンと反応した脂肪酸アシル資源の四級化反応生成物であるエステルクアットカチオン性物質を含む。概して本発明技術のエステルクアット活性体は、天然油または他の脂肪酸原料とアルカノールアミンとを、典型的には当該天然油または脂肪酸原料が、液体または融解している状態の開始温度で混合すること、任意選択的に触媒を添加すること、次いで所望のエステルアミン反応生成物が、酸値およびアルカリ価によって実証され、取得されるまで、反応混合物を加熱することにより、調製される。脂肪酸原料は、約1.0:1~約2.2:1の脂肪酸アシル基とアルカノールアミンのモル比で、アルカノールアミンと反応されて、エステルアミン中間体を形成する。次いでエステルアミン中間体は、アルキル化剤を使用して四級化され、エステルクアット生成物が得られる。エステルクアットを調製するためのアルキル化剤は当分野に公知であり、例えば、硫酸ジメチル、塩化メチル、硫酸ジエチル、塩化ベンジル、塩化エチルベンジル、臭化メチル、およびエピクロロヒドリンが挙げられる。得られたエステルクアット生成物は、四級化されたモノエステル、ジエステル、および開始アルカノールアミンに応じてトリエステルの構成要素と、任意選択的に、限定されないが、遊離アミンおよび遊離脂肪酸もしくは親脂肪酸アシル化合物、またはその誘導体を含む、ある程度の量の一つ以上の反応物、中間体および副産物との混合物である。
【0022】
エステルクアットを調製するための脂肪酸アシル資源は、様々な開始物質であってもよく、例えば、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、または脂肪酸に相当する酸クロリドなどであってもよい。遊離脂肪酸は、例えば単一の精製脂肪酸など、分離されていてもよく、または例えば、天然油中のグリセリドエステルの脂肪酸成分に特有の脂肪酸混合物など、組み合わせであってもよい。脂肪酸エステルは、例えば、モノ-、ジ-および/またはトリ-グリセリドなどのグリセリドであってもよく、または例えば脂肪酸のメチルエステルもしくはエチルエステルなどの脂肪酸のアルキルエステルであってもよい。脂肪酸エステルは、単一の脂肪酸に由来してもよく、または脂肪酸の混合物に由来してもよく、例えば天然脂肪酸原料または天然油に由来してもよい。一部の実施形態では、脂肪酸またはそのアルキルエステル誘導体は、脂肪酸アシル資源として天然油よりも好ましい。
【0023】
エステルクアットは、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、または飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の混合物である、C8-32脂肪酸またはそのアルキルエステル誘導体から調製されてもよい。好ましい脂肪酸は、炭素原子数が16~20の炭素鎖長を有する脂肪酸である。脂肪酸は、例えば、ヒマワリ、キャノーラ、トウモロコシ、綿実、亜麻仁、ピーナッツ、メドウフォーム、ダイズ、クルミ、ホホバ、ヤシ、ルリジサ、紅花または菜種などの様々な原料に由来してもよく、またはそれらの混合物であってもよい。一部の実施形態では、脂肪酸は、キャノーラ油または低エルカ酸菜種油(LEAR:low erucic acid rapeseed oil)に由来する。好ましい脂肪酸は、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する、少なくとも50重量%、あるいは少なくとも60重量%の不飽和脂肪酸基を含み、および40~130、好ましくは50~130、より好ましくは60~130の範囲のヨード価を有する。
【0024】
ヨード価は、親脂肪酸アシル化合物、または存在するエステルクアットのすべての脂肪酸の平均ヨード価を表す。本発明技術の場合、ヨード価は、100グラムの親化合物と反応するヨウ素のグラム数として定義される。親脂肪酸アシル化合物/酸のヨード価の計算方法は当分野において公知であり、所定の量(0.1~3g)を約15mlのクロロホルムに溶解することを含む。次いで、溶解された親脂肪酸アシル化合物/脂肪酸を、酢酸溶液(0.1M)中で25mlの一塩化ヨウ素と反応させる。このために、20mlの10%ヨウ化カリウム溶液と約150mlの脱イオン水が添加される。ハロゲン添加が行われた後、青デンプン指標粉末の存在下でチオ硫酸ナトリウム溶液(0.1M)を用いて滴定することにより、一塩化ヨウ素の超過が決定される。同時に、同じ量の試薬を用いて、および同じ条件下でブランクが決定される。ブランクで使用されたチオ硫酸ナトリウムの体積と、親脂肪酸アシル化合物または脂肪酸との反応で使用されたチオ硫酸ナトリウムの体積との間の差によって、ヨード価を計算することができる。
【0025】
エステルクアット中の不飽和脂肪酸基の量は、安定性を維持する濃縮液性組成物の取得に影響を及ぼし得る。約40未満の平均ヨード価を有する脂肪酸原料から作製されたエステルクアットは、不安定な濃縮液性組成物を生じさせ得る。
【0026】
エステルクアット活性体の調製に有用なアルカノールアミンは概して、以下の一般式に相当する:
【化9】
式中、R、RおよびRは独立して、C-Cアルキル基またはヒドロキシアルキル基から選択される。適切なアルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン(TEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、エチルジエタノールアミン、ジメチルアミノ-N-(2,3-プロパンジオール)、ジエチルアミノ-N-(2,3-プロパンジオール)、メチルアミノ-N-2-エタノール-N-2,3-プロパンジオール、およびエチルアミノ-N-2-エタノール-N-2,3-プロパンジオール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。脂肪酸とアルカノールアミンのモル比は、約1.0:1~約2.2:1である。いくつかの実施形態では、アルカノールアミンは、トリエタノールアミン(TEA)であり、脂肪酸基とTEAのモル比は、約1.3:1~約2.2:1、あるいは約1.3:1~1.8:1である。他の実施形態では、アルカノールアミンはMDEAであり、脂肪酸基とMDEAのモル比は、約1.0:1~約2.0:1である。
【0027】
好ましいエステルクアットは、以下の化学構造を有するTEA系エステルクアットである:
【化10】
各Rは独立して、C5-31のアルキル基またはアルケニル基、あるいはC7-21のアルキル基またはアルケニル基、あるいはC11-21のアルキル基またはアルケニル基、あるいは少なくとも主にC13-17のアルキル基またはアルケニル基から選択され、直線状または分岐状であってもよい。好ましくは、式Iの化合物は、60~130の平均ヨード価を有する脂肪酸原料に由来する異なるR基を含有する。R1は、C1-4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、またはC2-4アルケニル基を表し、
【化11】
(すなわち、前方または後方のエステル結合);nは、0~4から選択される整数、あるいは2~4から選択される整数であり、mは、モノエステルクアットに対しては1、ジエステルクアットに対しては2、またはトリエステルクアットに対しては3であり、mは、N原子から直接釣り下がる部分の数を示し、Xは、例えば、ハロゲン化物、またはC1-4の硫酸アルキルもしくは硫酸ヒドロキシアルキル、またはC2-4の硫酸アルケニルなどの硫酸アルキルなどのイオン基である。具体的に予期されるアニオン基としては、塩化物、硫酸メチル、または硫酸エチルが挙げられる。
【0028】
濃縮された液性組成物は、組成物の総重量に基づき、約30重量%~約90重量%、あるいは約35重量%~約85重量%、あるいは約40重量%~約80重量%、あるいは約45重量%~約75重量%、あるいは約45重量%~約70重量%、あるいは約50重量%~約60重量%、あるいは約55重量%~約85重量%のエステルクアット活性体を含む。
【0029】
溶媒
濃縮液性組成物は、約10重量%~約50重量%、あるいは約15%~約45%、あるいは約20重量%~約40重量%、あるいは約25重量%~約35重量%の溶媒系も含み、当該溶媒系は、一種以上の溶媒を含む。本発明技術の重要な態様は、濃縮された繊維軟化組成物において使用される溶媒系は、VOC含有量が低いこと、またはVOCを含まないこと、および主にバイオ再生可能な資源に由来する溶媒を含むことである。例えば、エタノール、プロパノールやブタノールなど、繊維軟化組成物中で使用される従来的な溶媒は、VOC溶媒であるか、石油原料に由来するか、またはその両方であり、本発明技術の濃縮された繊維軟化組成物での使用には望ましくない。しかしながら、いくつかの実施形態では、溶媒系は、VOC溶媒を含んでもよい。ただし、当該VOC溶媒は、組成物の総重量に基づき、濃縮された繊維軟化組成物に対して、5重量%以下、好ましくは2重量%以下のVOCを生じさせるものとする。好ましくは、非VOC溶媒のみが組成物中で使用される。
【0030】
また、選択される溶媒は、50を超えるBCI、あるいは60を超えるBCI、あるいは70を超えるBCI、あるいは80を超えるBCI、あるいは90を超えるBCIを有することが望ましい。いくつかの実施形態では、0のBCIを有する溶媒(すなわち、100%石油系)を含む、50未満のBCIを有する溶媒を、高いBCI(50を超える)を有する溶媒と組み合わせて使用して、全体として少なくとも20、あるいは20~60、あるいは40~60、あるいは少なくとも50、あるいは少なくとも60のBCIを有する溶媒系を得ることができる。
【0031】
溶媒系で使用され得る溶媒としては、ポリエチレングリコール、脂肪酸アミド、1,3-ジアルコキシ-2-プロパノール、グリコールエーテル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。使用され得るポリエチレングリコールは、130~700、あるいは170~400、あるいは190~300、あるいは195~210の範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコールである。数平均分子量は、例えばサイズ排除クロマトグラフィーなどの当分野で公知の方法によって決定することができる。好適なポリエチレングリコール(PEG)溶媒の一例は、PEG200(PEG-4としても知られる)であり、約200の数平均分子量を有する。PEG200は、VOC溶媒ではなく、100%植物ベースの型でAcme-Hardesty社から入手可能である。100%植物系の原料に由来する場合、PEG200は、100のBCIを有する。
【0032】
溶媒系で使用され得る脂肪酸アミドは、以下の一般構造を有する:
【化12】
式中、Rは、6~20、好ましくは8~14の炭素原子数を有する分岐状もしくは直線状、飽和もしくは不飽和のアルキルまたはアルケニル、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、Rは、一つ以上のヒドロキシル基を含有してもよい。RおよびR は独立して、水素、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよく、またはそれらの混合であってもよい。アルキルアミドを作製するために使用され得る原料の例としては、ラウリン脂肪酸、ミリスチル脂肪酸、ココナッツ脂肪酸、大豆脂肪酸およびリシノール脂肪酸、またはこれらの原料に対応するメチルエステルが挙げられる。R基およびR基の具体的な例としては、メチル、エチル、および2-プロパノールが挙げられる。ジアルキルアミドの商業的な例としては、限定されないが、Colonial Chemical, Inc.の商標名COLA(登録商標)Liquidで入手可能なジ-イソプロピルアミド、ならびにNINOL(登録商標)およびHallcomid(登録商標)の商標でStepan Companyから市販されているジメチルアミドが挙げられる。好適なアルキルアミドの一例は、Stepan Companyから入手可能なジメチルラウラミドとジメチルミリスタミド(CAA)の混合物であるNINOL(登録商標)CAAである。CAAは、主に再生可能な資源に由来し、BCIは86であり、非VOC溶媒である。Stepan Companyから入手可能な好適なアルキルアミドのその他の例は、HALLCOMID(登録商標)M-10(N,N-ジメチルカプラミド;M-10)およびHALLCOMID(登録商標)M-8-10(N,N-ジメチルカプリルアミドN,N-ジメチルカプラミドの混合物;M-8-10)である。窒素上のメチル基を除き、これらの分子中の全ての炭素は、植物資源に由来する。もう一つの例は、STEPOSOL(登録商標)MET-10U(N,N-ジメチル9-デセナミド;MET-10U)であり、MET-10Uも、Stepan Companyから入手可能である。
【0033】
溶媒系で使用され得る1,3-ジアルコキシ-2-プロパノールは、以下の一般構造を有する:
【化13】
式中、RおよびRは独立して、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であり、任意で一つ以上のヒドロキシル基を含有し、および3つ以上の炭素原子が存在する場合、任意で分岐状であってもよく、またはそれらの混合であってもよい。好適な1,3-ジアルコキシ-2-プロパノール溶媒の一例は、1,3-ジエトキシ-2-プロパノール(DEP)である。DEPは、VOC溶媒ではない。DEPは、石油系原料ではなく、バイオ再生可能な原料を利用する合成経路によって調製することができる。バイオ再生可能な原料に由来する場合、DEPのBCIは、100である。
【0034】
溶媒系で使用され得るグリコールエーテルは、好ましくは非VOCであり、2-ブトキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、2(2-メトキシエトキシ)エタノール、2(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブトキシエタン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好適なグリコールエーテルの一例は、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)である。DPMのBCIは0であるが、例えばCAAなどの高いBCIを有する溶媒と組み合わせることができ、その結果、全体的な溶媒系のBCIは、少なくとも20となる。
【0035】
溶媒系における溶媒は、濃縮されたエステルクアット組成物が、透明で、化学的に安定で、保管安定的で、および水分散性であるように選択される。いくつかの実施形態では、透明で安定的な、水分散性の濃縮組成物は、単一の溶媒を含む溶媒系を用いて得ることができる。他の実施形態では、所望の安定性と水分散性を得るために、特定の溶媒の混合物を使用する必要があり得る。唯一の溶媒として1,3-ジアルキル-2-プロパノールを含む濃縮液性組成物は、安定的で、水分散性であることが見出された。1,3-ジアルキル-2-プロパノール溶媒と、上述の他の溶媒のうちの一つ以上とを組み合わせて、溶媒系を形成させることもできる。いくつかの実施形態では、安定的で水分散性の濃縮液性組成物は、唯一の溶媒として脂肪酸アミド(上述に定義される)を、組成物の約15重量%~約45重量%の量で使用して得ることができる。上記に定義される、少なくとも一種のポリエチレングリコールと、少なくとも一種の脂肪酸アミドとの混合物を含む溶媒系は、透明で安定的な、水分散性の濃縮液性組成物を提供し得ることも見出された。溶媒系におけるポリエチレングリコールと脂肪酸アミドとの重量比は、1:3~3:1、または1:2~2:1の範囲であってもよい。一つの実施形態では、溶媒系は、PEG200とCAAの混合物を含む。上記に定義される、少なくとも一種のグリコールエーテルと、少なくとも一種の脂肪酸アミドとの混合物を含む溶媒系も、透明で安定的な、水分散性の濃縮組成物を提供し得る。いくつかの実施形態では、グリコールエーテルと脂肪酸アミドの重量比は、溶媒系中、約2:1である。一つの実施形態では、溶媒系は、DPMとCAAの混合物を含む。
【0036】
濃縮された液性組成物の粘度は、25℃で、5000cP未満、好ましくは、25℃で、3000cP未満、および最も好ましくは、25℃で、1000cP未満である。
【0037】
液性担体
濃縮された液体エステルクアット組成物は、25℃で5,000cP未満の組成物粘度を達成するために、必要に応じて、0重量%から最大で30重量%の液性担体を含むことができる。水は、低コストであり、相対的な利用し易さ、安全性、および環境適合性から、好ましい液性担体である。水は、本発明の組成物のいずれにおいても溶媒系の一部とはみなされるべきではないことを理解されたい。一部の実施形態では、濃縮された組成物は、水または他の液性担体を添加することなく、5,000cP未満の粘度を有する。かかる実施形態では、組成物は、約50重量%~約90重量%のエステルクアット、および約10重量%~約50重量%の溶媒を含んでもよい。水を含まない濃縮液性組成物は、エステルクアットの加水分解を引き起こす水が存在しないため、長期保管中でも安定性良好である。
【0038】
任意選択的な成分
濃縮された液性組成物は、望ましい場合、または必要に応じて、追加成分を任意で含み得ることが予期される。追加成分としては、限定されないが、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン類、例えば、ポリジメチルシロキサン、アミノシリコーン、またはエトキシ化シリコーン、カチオン性ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。任意選択的な成分は、組成物の0~約3重量%の量で濃縮液性組成物に添加されてもよい。
【0039】
補助成分
補助成分が、本発明技術の組成物に添加されてもよい。「補助成分」という用語には、以下が含まれる:分散剤、安定剤、pH制御剤、金属イオン制御剤、着色剤、漂白剤、染料、悪臭防止剤、芳香促進剤(pro-perfumes)、シクロデキストリン、香水、溶媒、防汚剤、防腐剤、抗菌剤、塩素捕捉剤、抗収縮剤、布地クリスプ剤(fabric crisping agent)、スポッティング剤、抗酸化物質、防錆剤、増粘剤、ドレープおよび形態制御剤(drape and form control agent)、平滑剤、静電気帯電防止剤、ひだ制御剤、衛生剤、殺菌剤、細菌制御剤、かび制御剤、白カビ制御剤、抗ウイルス剤、乾燥剤、汚染抵抗剤、悪臭制御剤、布用消臭剤、塩素漂白悪臭防止剤、染料固着剤、転染阻害剤、色維持剤、色復元剤、再生剤、色褪せ防止剤、白色強化剤、抗摩耗剤、摩耗抵抗剤、布地品質剤、抗摩耗剤、すすぎ補助剤、UV保護剤、日光色褪せ防止剤、防虫剤、抗アレルギー剤、酵素、難燃物質、防水加工剤、布地用コンフォート剤(fabric comfort agent)、水質調整剤、収縮抵抗剤、伸縮抵抗剤、およびそれらの組み合わせ。補助的構成要素は、組成物の0~約3重量%の量で濃縮液性組成物に添加されてもよい。
【0040】
組成物の特性
本発明技術の濃縮された液体エステルクアット組成物は、透明で、透過性があり、そして25℃で染料および乳白剤の非存在下で測定されたとき、420ナノメートルの波長で約50を超える透過率を有することが望ましい。組成物は、25℃で5,000cP未満、あるいは25℃で3,000未満、あるいは25℃で1,000cP未満の測定粘度を有し、組成物の総重量に基づき、2重量%未満のVOC含有量である。いくつかの実施形態では、溶媒系は、少なくとも50のBCIを有する。溶媒系は、疎水性成分を組成物に組み込むことができる。そのため、溶媒系は、濃縮された液体組成物に多量の香水または香料成分を含ませることも可能であり得る。多量の香水または香料成分とは、約1重量%~12重量%、あるいは約2重量%~8重量%、あるいは約2重量%~5重量%である。
【0041】
濃縮軟化組成物を作製する方法
本発明技術の濃縮された液性組成物は、エステルクアットと溶媒系をシンプルに混合することにより作製してもよい。水も組成物に含まれる場合、溶媒系と水を一緒に混合して、その後にエステルクアットを添加することが好ましい。混合は大気温度で行ってもよく、混合前に成分を加熱する必要はない。しかし、混合を容易にするために成分を加熱することが望ましい場合もあり、またエステルクアットの粘度を低下させて操作をし易くするために成分を加熱することが望ましい場合もある。いつでも任意の成分および補助成分を追加することができる。
【0042】
濃縮物から希釈組成物を作製する方法
濃縮された液性組成物は、希釈することなくそのまま使用され得ることが想定される。また、濃縮液性組成物は、好ましくは水を用いて使用前に、希釈組成物の総重量に基づき、約2重量%~約22重量%、好ましくは約3重量%~約8重量%のエステルクアット活性体濃度まで希釈され得ることも想定される。濃縮液性組成物の一部の実施形態は、水中に容易に分散され得るため、希釈は消費者によって行われ得ることが予期される。そのような使用によって、例えば包装の必要性の低減(製品が濃縮されているため)、および輸送エネルギーの必要性の低減、ならびに輸送コストの低減などのいくつかの利点を提供するが、これは輸送の必要がある水が少ないことによるものである。
【0043】
また、例えば25℃で約5,000cP以下の粘度を提供する量など、最小量の溶媒系を使用して、エステルクアットを輸送に適した流動性にし得ることも想定される。その後、完全な濃縮液性組成物を作製する場所で溶媒の残量を添加してもよい。
【0044】
本発明技術の濃縮液性組成物は、従来的なリポソームエステルクアット分散液を作製するための装置を利用することができない消費者製品製造業者の場所へ、濃縮された形態で輸送されてもよい。濃縮液性組成物の一部の実施形態は、高せん断混合装置または他の専門装置を用いずとも容易に水中に分散させることができるため、そのような装置を有さない消費者製品製造業者でも容易に2~22重量%活性体の希釈生成物を作製することができる。いくつかの実施形態では、希釈組成物の約8重量%よりも高いエステルクアット活性体濃度にまで濃縮液性組成物を希釈する場合、イオン化塩を含むことが有用な場合がある。イオン化塩は、典型的には、高い濃度の分散液で使用されて、粘度を低減もしくは制御する、および/または希釈製剤を安定化させる。
【0045】
多種多様なイオン化塩が希釈分散液で使用され得る。好適な塩の例は、元素周期表のグループIAおよびIIAの金属のハロゲン化物、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、および塩化リチウムである。使用されるイオン化塩の量は、組成物で使用される活性成分の量に依存し、製造者の要望に従って調整することができる。組成物の粘度を制御するために使用される塩の典型的な量は、希釈組成物の重量で、約20~約20,000ppm、好ましくは約20~約11,000ppmである。任意選択的な成分、または補助的な成分が、製品製造業者により添加されて、最終希釈生成物が作製されてもよい。
望ましくは、本発明技術の濃縮液性組成物は、安定した濃縮物であり、使用前に希釈される場合、安定した液性分散体を形成する。安定した液性濃縮物または安定した液性分散体は、4℃および40℃で4週間保管された後、相分離をせず、または約10%を超える粘度の増加しない、もしくは減少しないものと定義される。望ましくは、濃縮された液性組成物および希釈された液性分散体は、常温安定的でもある。本明細書で使用される場合、「常温安定的」とは、例えば、約19℃~約30℃の範囲の温度など、小売店の棚で遭遇する可能性が高い温度で、52週間の保管後に、相分離せず、または粘度が約10%を超えて増加もしくは減少しない組成物を意味する。
【0046】
製品の用途
本発明技術の濃縮液性組成物は、例えば、家庭用洗濯機のすすぎサイクルにおいて、濃縮液体繊維軟化組成物として使用され得る。濃縮液体繊維軟化組成物は、例えば、ディスペンサードロワー(dispenser drawer)を通して非希釈状態で直接添加されてもよく、または上蓋式洗濯機については、ドラム内に直接添加されてもよい。洗濯機に添加される濃縮柔軟剤の量は、洗濯1回当たり、約1.5g~約8gのエステルクアット活性体を送達するのに充分な量であってもよい。そのような量は、典型的には、乾燥布地の重量に基づき、約0.04重量%~約0.3重量%のエステルクアット活性体を提供する。例えば、乾燥布地(WOF)に対し、0.15重量%の活性エステルクアットを送達するためには、6ポンド(2721.55g)の乾燥した洗い物の荷重に対して、50%活性エステルクアット配合物の用量は、8.16gとなる:(0.15%WOF)(2721.55g)/50%=8.16g。式中、WOFは、乾燥生地の重量を表す。0.15%のWOFは、ボトルの説明書に従い、中くらいの荷重に対する市販のプレミアム柔軟剤の用量に基づく。
【0047】
いくつかの実施形態では、濃縮された繊維軟化組成物は、液体として洗濯機に添加されてもよい。他の実施形態では、組成物は、例えば限定されないが、ポッド、パケット、パウチ、またはカプセルなどの、繊維軟化製品として調剤されてもよい。繊維軟化製品は、濃縮された繊維軟化組成物の単位用量を封入する、もしくは含有する、水溶性または水-破裂性のコーティングまたはフィルムを有する。本明細書で使用される場合、「単位用量」という用語は、最小体積の洗濯液中の最小量の洗濯物に有効量の軟化剤を提供するために、洗濯液に送達されるべき繊維軟化組成物の予め計量された量を指す。大量の洗濯物の場合、軟化剤の有効量のために、複数回の投与が必要となる場合がある。水溶性もしくは水-破裂性のコーティングまたはフィルムは、当分野で公知である。コーティングまたはフィルムに適した物質としては限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、部分的に加水分解された酢酸ビニル、ゼラチン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
あるいは濃縮された液体繊維軟化組成物は、好ましくは水を用いて使用前に、希釈組成物の総重量に基づき、約2重量%~約22重量%、好ましくは約3重量%~約8重量%のエステルクアット活性体濃度まで希釈されてもよい。濃縮された繊維軟化組成物の一部の実施形態は、容易に分散させることができるため、消費者によって希釈が行われてもよく、または従来的なリポソーム柔軟剤分散液を作製するために多く使用されている高せん断混合装置または専門装置を有さない消費者製品製造業者によって希釈が行われてもよい。
【0049】
繊維軟化組成物(濃縮型または希釈型のいずれか)は、有効量でディスペンサーに添加され、所定の洗濯条件下で、布製品を軟化させ、状態を整える。繊維軟化組成物は、手洗い洗濯プロセスにおいても使用することができ、この場合において、繊維軟化組成物は、手洗い洗濯プロセスの手動での布製品のすすぎに対し、一つ以上のすすぎ槽溶液に添加される。あるいは組成物は、市販の自動洗濯オペレーションで使用されてもよい。
【0050】
以下の実施例は、本発明技術の実施形態をより完全に解説するものである。本明細書および添付の特許請求の範囲において言及されるすべての部分、パーセンテージおよび割合は、別段の説明がない限り、重量によるものである。物理的な試験方法を以下に記載する。
【実施例
【0051】
実施例1
エステルクアットを以下のように作製した:キャノーラ脂肪酸(283g/mol、2876.0g、10.1625mol)および抗酸化剤1010(1178g/mol、3.7g、0.003mol)を、機械的攪拌、窒素スパージおよび蒸留能力を備えた5Lのリアクターに添加した。この脂肪酸のヨード価は、111である。攪拌を開始し、内容物を35℃に加熱して、トリエタノールアミン(149g/mol、977.03g、6.5572mol)を添加した。この混合物中の脂肪酸とTEAの比率は、1.55:1である。反応温度を190℃に上昇させ、3.5時間保持した。3.5時間後、リアクターを冷却し、エステルアミン中間体を移して四級化を行い、試験した(遊離アミン=1.77meq/g、総酸性度=0.06meq/g)。
【0052】
エステルアミン中間体(564g/mol、3650.3g、6.5mol)を、機械的攪拌、窒素ヘッドスペーススイープおよび還流能力を備えた5Lのリアクターに加えた。攪拌および窒素スイープを開始した。反応温度を50℃に調整し、硫酸ジメチル(126g/mol、774.8g、6.1mol)を1時間かけて滴加した。添加中、温度を最大85℃に制御した。反応物を85℃で1時間混合した。亜塩素酸ナトリウム、25%(重量)(90.4g/mol、9.8g、0.03mol)を加え、30分間混合した。生成物を回収し、試験した(遊離アミン=0.08meq/g、カチオン活性=1.17meq/g、総酸性度=0.10meq/g、ガードナー色数=4.6)。わずかに黄色のペーストを得た。このエステルクアットは、EQ1と指定される。
【0053】
実施例2
キャノーラ脂肪酸(283g/mol、647.8g、2.289mol)、トリエタノールアミン(149g/mol、171.0g、1.1477mol)、および抗酸化剤1010(1178g/mol、0.82g、0.001mol)を、機械的攪拌、窒素表面下スパージおよび蒸留能力を備えた2Lのリアクターに添加した。この脂肪酸のヨード価は、111であり、脂肪酸とTEAの比率は、2.00:1である。攪拌を開始し、内容物を75℃に加熱した。窒素スパージを開始した。次いで反応温度を190℃に上昇させ、4.5時間保持した。4.5時間後、リアクターを冷却し、エステルアミン中間体を移して四級化を行い、試験した(遊離アミン=1.48meq/g、総酸性度=0.05meq/g)。
【0054】
エステルアミン中間体(675g/mol、753.7g、1.1mol)を、機械的攪拌、窒素ヘッドスペーススイープおよび還流能力を備えた2Lのリアクターに加えた。攪拌および窒素スイープを開始した。反応温度を45℃に調整した。硫酸ジメチル(126g/mol、130.5g、1.0mol)を1時間かけて滴加した。添加中、温度を最大85℃に制御した。反応物を85℃で1時間混合した。生成物を回収し、試験した(遊離アミン=0.09meq/g、カチオン活性=1.16meq/g、総酸性度=0.01meq/g)。わずかに黄色のペーストを得た。このエステルクアットは、EQ2と指定される。
【0055】
実施例3
蒸留された獣脂脂肪酸(272g/mol、1067.05g、3.9230mol)および水素化獣脂脂肪酸(272g/mol、409.89g、1.5069mol)を、機械的攪拌、窒素表面下スパージおよび蒸留能力を備えた3Lのリアクターに添加した。この脂肪酸混合物のヨード価は、約34である。攪拌を開始し、内容物を75℃に加熱した。トリエタノールアミン(149g/mol、521.3g、3.4987mol)、抗酸化剤1010(1178g/mol、2.0g、0.002mol)およびリン酸(82g/mol、1.0g、0.01mol)を添加した。脂肪酸とTEAの比率は、1.55:1である。窒素スパージを開始した。次いで反応温度を190℃に上昇させ、4時間保持した。4時間後、リアクターを冷却し、エステルアミン中間体を移して四級化を行い、試験した(遊離アミン=1.81meq/g、総酸性度=0.06meq/g)。
【0056】
エステルアミン中間体(552g/mol、1836.0g、3.3mol)を、機械的攪拌、窒素ヘッドスペーススイープおよび還流能力を備えた3Lのリアクターに加えた。攪拌および窒素スイープを開始した。反応温度を45℃に調整した。硫酸ジメチル(126g/mol、381.8g、3.0mol)を30分かけて滴加した。添加中、温度を最大85℃に制御した。反応物を85℃で1時間混合した。硫酸ジメチル(126g/mol、20.0g、0.2mol)を滴加した。添加中、温度を最大85℃に制御した。反応物を85℃で1時間混合した。生成物を回収し、試験した(遊離アミン=0.08meq/g、カチオン活性=1.16meq/g、総酸性度=0.17meq/g)。ワックス状の固形物を得た。このエステルクアットは、EQ3と指定される。
【0057】
実施例4
100%のBCIを有する1,3-ジエトキシ-2-プロパノール(DEP)は、少なくとも二つの方法によって合成することができる。一つの方法は、溶媒としてエタノールを使用して、ナトリウムエトキシドを、1,3-ジクロロ-2-プロパノール(ジクロロヒドリン)と反応させることができ、Wills,et al.J.Chem.Soc.,Perkins Trans.I 2002,965-981.DOI:10.1039/b111097gに報告されている。反応混合物を水で希釈して、沈殿した塩化ナトリウムを溶解させ、次いで抽出を行い、そしてカラムクロマトグラフィーを行うことによって、中程度の収率で生成物を得る。以下のスキーム1は、記載の化学法を示す。この方法の改変バージョンを使用して、実施例で利用されるDEPを合成した。具体的には、反応混合物を濾過することによりカラムクロマトグラフィーを回避して、その後、分離および精製の好ましい方法として蒸留を行った。
【化14】
【0058】
100%のBCIを有するDEPを作製するための二番目の方法は、ナトリウムエトキシドとエピクロロヒドリンの反応を伴うものであり、Garcia,et al.Green Chem.2010,12,426-434.DOI:10.1039/b92331gに記載されている。この場合、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液に、制御された様式でエピクロロヒドリンが加えられる。反応の第一工程は、エポキシド環上のナトリウムエトキシドへの作用であり、これによって環が開き、その後、環は反対側で自然に閉じて、エトキシ置換されたエポキシドが生成される。次いで、ナトリウムエトキシドの第二のモルを、新たに形成されたエポキシド環と反応させて、ナトリウム対イオンを有する脱プロトン化されたジエトキシル-2-プロパノールが生成される。次いで、脱プロトン化ジエトキシ-2-プロパノールは、エタノール溶媒からプロトンを除去して、所望の生成物と1モルのナトリウムエトキシドが生成される。全体として、エピクロロヒドリンと反応する2モルのナトリウムエトキシドは、1モルの塩化ナトリウムのみを生成する。反応が完了したと思われる時点で、反応混合物を水で希釈し、濃縮して、揮発性物質を除去し、次いで生成物をカラムクロマトグラフィーにより高収率で単離する。生成物の単離手段として蒸留を使用して、カラムクロマトグラフィーを回避してもよい。記載される化学法は、スキーム2に示される。
【化15】
スキーム2は、1モルの塩化ナトリウムのみを生成するのに対し、スキーム1は、2モルの塩化ナトリウムを生成するため、スキーム2が好ましい。
【0059】
100% BCIバージョンのDEPであるために、採用される原料は、天然由来のものでなければならない。エタノールは穀物ベースの製品として市販されているが、1,3-ジクロロヒドリンおよびエピクロロヒドリンは両方とも、Dow Chemical Companyのグリセリンからエピクロロヒドリン(GTE:glycerin to epichlorohydrin)プロセスを使用して取得することができ、当該プロセスは、Bell,et al., Clean 2008,36(8),657-661.DOI:10.1002/clen.200800067に記載されている。GTEプロセスは、出発物質として植物性グリセリンを使用するため、100% BCI含量のバイオ再生可能な1,3-ジクロロヒドリンとエピクロロヒドリンの製造を可能にする。
【0060】
以下の実施例の配合物は、溶媒と水をビーカーに添加し、続いてエステルクアットを添加することによって作製された。次いで、混合物を、Ikaベンチトップミキサーで数分間混合した。EQ1を含有する配合物を作製する際に使用された成分は、室温で製造された。EQ1配合物を作製するために使用される成分はいずれも、ビーカーに加える前には加熱されず、バッチが混合されている間も加熱されなかった。すべての配合物は、2.5~4.0のpHを有する。pHは、必要に応じて調整され、pH2.5~4.0の配合物を取得する。
【0061】
以下の実施例で透明または透過性のある配合物として指定される濃縮配合物は、420ナノメートルの波長で、1センチメートルキュベットを使用し、約50を超える光の透過率を有するものである。この場合において組成物は、25℃で染料および乳白剤の非存在下で測定される。あるいは組成物の透明度は、420ナノメートルで、約0.3未満の吸光度(A)を有するとして測定されてもよく、これは、上記と同じキュベットを使用したときの約50を超える透過率パーセントと同等である。吸光度と透過率の関係性は、以下である:透過率=100(1/逆対数A)。不安定と指定される配合物とは、420nmでの透過率が50%未満であること、および/または配合物が相分離していたことのいずれかを意味する。「相分離した」とは、分離された相が、視覚的に検出され得ることを意味する。別段の示唆が無い限り、粘度測定は、室温(25℃)で、Brookfield DV-II+粘度計、50RPMで、RVTスピンドル4を使用して行われた。サンプルサイズは、4オンス(約113グラム)瓶中で約100gであった。
【0062】
実施例5
本実施例では、配合物は、水中での配合物の分散性を評価するために作製された。各配合物は、エステルクアットとしてEQ1を50重量%、30重量%の溶媒、そして20重量%の水を含有した。配合物は、溶媒中のジメチルラウラミド/ミリスタミド(CAA)、およびポリエチレングリコール200(PEG200)の比率が異なっていた。配合物を、以下の表1に示す。水中での各配合物の分散性を、以下の試験により決定した:1グラムの配合物を、120mlの水を含有する8オンス(約227グラム)の瓶に加え、キャップを被せ、手で10回、混合物を激しく振った。振とう後に目に見える粒子がない場合、配合物は容易に分散可能であるとみなされた。結果を表1に示す。下記に別段の示唆がない限り、全ての安定的な配合物は容易に水に分散させることができた。安定的であることは判明したが、可視粒子があり、容易に分散しないとみなされた配合物であっても、従来的なリポソーム分散体を作製するための設備は欠くが、混合能力はある製造現場で、希釈配合物を作製するのには有用であり得る。容易に分散しない配合物の目に見える浮遊粒子は、分散容易性試験で行われたよりも多く混合されることで、最終的に分散する。
【表1】
【0063】
表1の結果は、CAAまたはPEG200を唯一の溶媒として使用した場合、50重量%のエステルクアット濃度では配合物が安定しなかったことを示す。同様に、CAAとPEG200の比率が5:1または1:5であった場合、配合物は安定しなかった。しかし、CAAとPEG200の比率が2:1~1:2の範囲の配合物はすべて安定的であった。結果は、配合物の安定性は、溶媒混合物中の溶媒の比率に依存し得ることを示す。また、結果から、溶媒の混合物が配合物の安定性を提供し得ること、一方で、同じ溶媒が個々に使用された場合には、不安定な配合物が生じ得ることが示された。
【0064】
実施例6
本実施例は、従来的なエステルクアット分散液と比較した、本発明技術による配合物の軟化能力を評価する。実施例5の配合物は、15%のCAAと15%のPEGを含んでおり、これを本実施例でも使用した。この配合物を水中で分散させ、5重量%のエステルクアット活性体を含む分散液を作製した。5重量%のEQ1を含む従来的なリポソーム分散液を、比較として使用した。従来的なリポソーム分散液は、適切な量の水に、約3~10分間にわたって攪拌しながらEQ1をゆっくりと添加し、必要に応じて加熱して混合を改善し、リポソーム形成を促進して、その後すべてのEQ1が添加された後にさらに約5~15分間混合を継続することによって調製される。リポソームは、混合プロセス中に形成され、5重量%のEQ1のリポソーム分散液が得られる。使用される軟化試験方法は、ASTM D-5237に基づく。86/14の綿/ポリエステル混紡から作られた白いハンドタオルにまず事前洗浄プロセスを行い、工場仕上げをすべて除去した。各試験について、160枚のタオルを従来的な家庭用洗濯機で洗浄した。実験用柔軟剤サンプルを、すすぎサイクル中に洗濯機に投与した。次いで、タオルをタンブル乾燥させ、室温に一晩平衡化させた。次いでパネリストは、一対比較パネル試験を介して、一対のタオルを盲検評価した。各サンプルについて、投票数を集計した。片側方向性差分検定(Meilgaard,M.C.,Civille,G.V.,Carr,B.T.,Sensory Evaluation Techniques,3rd Ed.,CRC Press,1999,pp.277-278,355,371)を使用した、160票の観察試験において、95%の信頼レベルで他よりも統計的に優れているとみなされるためには、一つ製品が最低でも91回選択される必要がある。
【0065】
この検定法を使用したところ、15%のCAAと15%のPEG200を含む実施例5の配合物の5% エステルクアット活性体水性分散液が、5% EQ1エステルクアット活性体の従来的なリポソーム分散液の軟化と同等であった。実施例5の配合物の5%分散液は、水と濃縮配合物とを穏やかに混合することによって容易に作製された。
【0066】
実施例7
各配合物においてエステルクアットとしてEQ2を使用した点を除き、実施例5を繰り返した。EQ2は、脂肪酸とTEAの比率が2.00:1であるのに対し、EQ1は、1.55:1の比率である点で、EQ1とEQ2は異なっている。配合物と結果を表2に示す。
【表2】
【0067】
表2は、すべての配合物が不安定であったことを示している。このことから、配合物の安定性は、エステルクアット作製で使用される脂肪酸とTEAの比率に影響を受け得ることが示唆される。PEG 200/CAAの溶媒系およびキャノーラ脂肪酸系のエステルクアットを使用した場合(TEA/DMS)、結果は、安定的な分散液を得るためには、脂肪酸とTEAの比率を2.0未満にしなくてはならないことを示している。
【0068】
実施例8
実施例5の安定的配合物のみを使用し、および各配合物中のエステルクアットとしてEQ3を代わりに使用して、実施例5を繰り返した。EQ3は、EQ1作製に使用されたキャノーラ脂肪酸原料ではなく、ヨード価34の獣脂脂肪酸原料から作製される。配合物と結果を表3に示す。
【表3】
【0069】
表3は、配合物が不安定であったことを示している。このことから、配合物の安定性は、エステルクアット作製で使用される脂肪酸原料のヨード価にも影響を受け得ることが示唆される。PEG 200/CAAの溶媒系を使用する場合、結果は、エステルクアット作製に使用される原料のヨード価は、安定的な分散液を得るためには34よりも高くなければならないことを示している。
【0070】
実施例9
Solubility Science, Principles and Practice, Steven Abbott, 2017, Creative Common NY-BDという本に記載される方法に従い一連の異なる溶媒を使用して、EQ1のハンセン極性パラメーター(Hansen polarity parameter)は10.9であると測定された。一方でEQ3のハンセン極性パラメーターは、4.4であると測定された。ハンセン溶解度パラメーターは、物理化学的なパラメーターであり、所与の溶媒または溶質の挙動を予測するために使用することができる。これらの結果は、PEG 200/CAAの溶媒系を使用する場合、EQのハンセン溶解度パラメーターは、約5よりも高くなければならないことが示される。
【0071】
実施例10
本実施例では、配合物の安定性に対するエステルクアット濃度の影響を評価するために、様々な量のエステルクアットを用いて配合物が調製された。配合物と結果を表4に示す。
【表4】
【0072】
表4に示されるように、80重量%のエステルクアット濃度では、PEG 200/CAA溶媒系を含むEQ1は不安定である。結果は、安定的な組成物を得るためには、この組成物中のエステルクアットの上限は、80重量%未満でなければならないことを示す。本実施例の60%および70%の配合物は安定していたが、容易には水に分散しなかった。
【0073】
実施例11
50% EQ1/20% ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)/10% CAA/20% 水を含有する配合物は、水中で透明であり、安定的で分散可能であることが判明した。また当該配合物は、通常のサイクルが実行された時に、前面挿入式洗濯機において、柔軟剤ディスペンサードロワーから完全に取り除かれた。DPMおよびCAAから作製された本溶媒系のBCIは、以下のように計算される:
【0074】
DPMからの炭素原子の合計寄与=(重量係数2)X(148.2g/mol)X(6.022×1023分子/mol)X(7炭素原子/分子)=1.249×1027 炭素原子 そのすべてが、非バイオ再生可能な資源に由来する。
【0075】
CAAからの炭素原子の合計寄与=(重量係数1)×(234g/mol)×(6.022×1023分子/mol)×(14.5炭素原子/分子)=2.043×1027炭素原子そのうち86.2%は、バイオ再生可能な資源に由来する。これは、CAAからは、バイオ再生可能な炭素の数が、1.761×1027(2.043×1027×0.862)であり、非バイオ再生可能な炭素の数は、2.820×1026(2.043×1027×0.138)であることを意味する。
【0076】
炭素原子の合計数は、3.292×1027であり、溶媒系のBCIは、以下である:
BCI=100×[(1.761×1027)/(3.292×1027)]=53.5
【0077】
実施例12
本実施例では、溶媒系中の溶媒の量を変化させることによる影響を評価した。以下の配合物を調製した:
50% EQ1/15% ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)/15% CAA/20% 水、および50% EQ1/10% ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)/20% CAA/20% 水。
溶媒濃度は30%で同じであったが、DPMおよびCAA溶媒の量は変動した。溶媒成分および溶媒の合計量が実施例11で使用されたものと同じであったにもかかわらず、配合物は不安定であることが判明した。これらの結果から、溶媒系中の溶媒の相対量が、組成物の安定性に影響を及ぼすことが示される。これらの各製剤の溶媒系(DPM+CAA)について算出されたBCI値は、それぞれ66.0および74.8である。
【0078】
実施例13
80% EQ1/20% 1,3-ジエトキシ-2-プロパノール(DEP)を含有する配合物は、透明で安定的、および水中で分散性であることが判明した。また当該配合物は、通常のサイクルが実行された時に、前面挿入式洗濯機において、柔軟剤ディスペンサードロワーから完全に取り除かれた。DEPのBCIは、100である。本実施例は、本発明技術の濃縮された繊維軟化組成物が、水なしで調製され得ることを示す。
【0079】
実施例14
凍結/融解の安定性の比較を、各々5%のEQ1を含有する二種の配合物で行った。一つ目は、従来的なリポソーム法を介して作製され、二つ目は、50% EQ1、15% バイオ系PEG-200、15% NINOL(登録商標)CAA、および20%の水を含有する濃縮配合物を希釈することによって作製された。使用される凍結/融解安定性試験方法は、以下の通りである。
1.サンプルを準備し、保管容器(例えば、4オンス瓶)に移す
2.サンプルを-15℃の冷凍庫の中に置く
3.サンプルを-15℃で24時間放置する
4.24時間後、-15℃の冷凍庫からサンプルを取り出し、室温に置く
5.サンプルが室温に達するまで融解させる(通常は6時間で充分)
6.相分離、増粘/ゲル化、および不均一性/塊化について、サンプルの目視検査を実施する
凍結/融解サイクルを3回行う場合は、この手順を3回繰り返す。
【0080】
従来的なリポソーム経路によって作製された配合物は、1回の凍結/融解サイクル後に増粘し、および塊化/不均一であったが、50%濃縮物を希釈することによって作製された5%配合物は、3回の凍結/融解サイクルの後でも同じ粘度を維持し、均一/非塊化であった。従来的なリポソームは、凍結工程中に「割れる」ため、凍結/融解サイクルに失敗する。リポソームが割れた場合、リポソームの疎水性表面が露出されるが、疎水性表面が水相に露出されることは好ましくない。融解されると、それらの疎水性表面は互いに引き寄せられるが、ランダムなリポソーム間様式で互いにくっついており(すなわち、割れたリポソームで、秩序だってリポソーム内で再結合するだけではない)、巨大な粒子を形成して、肉眼で見える増粘と塊化がもたらされる。理論に拘束されるものではないが、5%の分散液が、50%の濃縮物を希釈することによって作製された場合、非リポソーム構造が形成される可能性がある。PEG-200とNINOL(登録商標)CAAの存在は、非リポソーム性の液滴形成に関与する可能性がある。あるいは、理論に拘束されることは望まないが、PEG-200および/またはNINOL(登録商標)CAAの存在は、リポソームが存在する場合には、リポソームの性質を変化させ、凍結時に破滅的に割れないようにする可能性がある。
【0081】
実施例15
EQ1を含有する二つの配合物のエステル結合の高い保管温度(50℃)での加水分解を、NMRによって追跡した。一つ目は、50% EQ1、15%バイオ系PEG-200、15% NINOL(登録商標)CAA、および20%の水を含有する濃縮配合物であった。二つ目は、従来的なリポソーム法によって作製された5%活性EQ1分散液であった。パーセンテージを正規化して、TEAクアット(エステル結合なし)、モノエステルクアット(一つのエステル結合)、ジエステルクアット(二つのエステル結合)、およびトリエステルクアット(三つのエステル結合)の重量での合計が100%に等しくなるようにした。9週間後、濃縮物中のTEAクアット(エステル結合が無く、加水分解プロセスで形成される最終物)の正規化重量パーセントは8.2%であったが、従来的な5% 配合物では20.2%であった。これにより、濃縮物中での加水分解速度は半減よりも遅いことが示され、すなわち、従来的なリポソーム分散液よりも保存可能期間が長くなるはずである。
【0082】
実施例16
配合物は、70重量%のEQ1、および30重量%のCAAを利用して作製された。配合物は安定的であり、容易に水分散性であった。低濃度の同じクアット活性体を有する配合物において、30重量%のCAAを唯一の溶媒として使用した場合(実施例5、表1の50% EQ1/30% CAA/20%水の配合物)、配合物が不安定であったことを考慮すると、この結果は予想外であった。同濃度の同溶媒を含有し、しかし高濃度のクアット活性体を含有する配合物が安定的であり得たことは、低濃度のクアット配合物が安定的ではなかったことからすると驚きである。
【0083】
実施例17
実施例16の配合物と類似した配合物を、CAAの代わりにM-10またはM-8-10のいずれかを使用して作製した。これらの配合物も安定的であり、容易に分散した。
【0084】
実施例18
安定的であり、容易に分散可能であることが判明した追加の配合物を表5に示す。
【表5】
実施例16~18からの結果から、安定的で高度に濃縮された(70~80重量%の活性エステルクアット)組成物は、脂肪酸アミドを単独で含む溶媒系、またはポリエチレングリコールと組み合わせて含む溶媒系を使用して調製することができる。
【0085】
本発明技術は本明細書において、関連分野の当業者が、本発明技術を実施することができるように、完全で、明確および簡潔な用語で記述される。上記は、本発明技術の好ましい実施形態を記述するものであり、添付の特許請求の範囲に記載される本発明技術の趣旨または範囲から逸脱することなく改変が行われ得ることを理解されたい。さらに、本実施例は、特許請求の範囲内にあるいくつかの実施形態を網羅的ではなく例示のために提供するものである。
【国際調査報告】