(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】カニューレ挿入システムおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566115
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 US2021029548
(87)【国際公開番号】W WO2021222349
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】フレーク・アラン・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】デイビー・マーカス・グレイム
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン・ジョセフ・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】パプロスキ・ディラン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミアーズ・ライアン・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ガイドス・ダスティン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン・スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】ブッソーネ・ジュニア・フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF42
4C160FF49
4C160MM33
(57)【要約】
血管にカニューレを挿入するためのカニューレ挿入システムは、カニューレ内腔を画定し、遠位端部および近位端部を有する、カニューレを有するカニューレシステムを含む。システムは、システムと連結するためのカニューレ挿入デバイスを含み、カニューレ挿入デバイスは、拡張器本体および拡張器内腔を有する拡張器と;針本体および針内腔を有する針であって、針は、拡張器内腔内部で第1の方向に沿って並進運動可能である、針と;拡張器を第1の方向に沿って動かすよう構成された、移動可能な拡張器アクチュエータと;第1の方向に沿った針の動きを引き起こすように構成された、移動可能な針アクチュエータと;ハウジング凹部を画定するハウジングと、を含む。ハウジング凹部は、カニューレシステム、拡張器、および針を受容するように構成される。針および拡張器は、カニューレ内腔内部で第1の方向に沿って動かされるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の血管にカニューレを挿入するためのカニューレ挿入システムであって、
内部を通るカニューレ内腔を画定するカニューレを含むカニューレシステムであって、前記カニューレは、遠位端部と、前記遠位端部の反対側の近位端部と、を有する、カニューレシステムと、
前記カニューレシステムと連結するように構成されたカニューレ挿入デバイスと、を含み、前記カニューレ挿入デバイスは、
内部を通る拡張器内腔を画定する拡張器本体を有する拡張器と、
内部を通る針内腔を画定する針本体を有する針であって、前記針は、前記拡張器内腔内部で第1の方向に沿って並進運動可能である、針と、
拡張器アクチュエータであって、前記拡張器アクチュエータの動きが前記第1の方向に沿った前記拡張器の動きを引き起こすように動かされるよう構成されている、拡張器アクチュエータと、
針アクチュエータであって、前記針アクチュエータの動きが前記第1の方向に沿った前記針の動きを引き起こすように動かされるよう構成されている、針アクチュエータと、
ハウジング凹部を内部に画定するハウジングであって、前記ハウジング凹部は、前記カニューレシステム、前記拡張器、および前記針を受容するように構成されている、ハウジングと、を含み、
前記カニューレ挿入デバイスの前記針および前記拡張器は、前記カニューレ内腔内部で前記第1の方向に沿って動かされるように構成されている、カニューレ挿入システム。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記針の遠位端部が前記拡張器の遠位端部の遠位に位置付けられる、第1の位置から、前記針の前記遠位端部が前記拡張器の前記遠位端部の近位に位置付けられる、第2の位置に、前記針を並進運動させるように構成されている、請求項1に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項3】
前記カニューレシステムは、前記カニューレの前記近位端部に隣接したY-コネクタを含み、前記Y-コネクタは、第1の近位チャネルを画定する第1の近位部分と、第2の近位チャネルを画定する第2の近位部分と、を有し、
前記第1の近位チャネルおよび前記第2の近位チャネルは、前記カニューレ内腔と流体連通するように構成されている、請求項1に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項4】
前記第1の近位部分は、前記第1の近位チャネルを前記第2の近位チャネルから分離するスリットシールを画定し、前記スリットシールは、前記拡張器および前記針がその中を通って挿入される、開放構成と、前記針および前記拡張器がその中を通って延びていない、閉鎖構成と、を有し、
前記スリットシールが前記閉鎖構成にあるとき、前記カニューレ内腔からの液体は、前記第1の近位チャネル内に入るのを妨げられる、請求項3に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項5】
前記第1の近位チャネルに取り外し可能に挿入されるように構成されたプラグをさらに含む、請求項3に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項6】
前記カニューレシステムは、その上にロック要素をさらに含み、前記ハウジングは、その上にロック要素を含み、
前記カニューレシステムの前記ロック要素は、前記カニューレシステムが前記ハウジングに取り付けられるように、前記ハウジングの前記ロック要素と解放可能に係合するように構成されている、請求項1に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項7】
前記カニューレを前記血管に解放可能に固定するように構成されたコレットジョーをさらに含み、前記コレットジョーは、前記カニューレに取り付けられ、前記コレットジョーは、ベースと、変形可能なアームと、ヘッドと、を有し、
前記コレットジョーが開放位置にあるとき、前記ヘッドは、前記血管および前記カニューレから離間され、前記コレットジョーが閉鎖位置にあるとき、前記ヘッドは、前記組織と接触していて、前記血管は前記コレットジョーと前記カニューレとの間の適所に保持される、請求項1に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項8】
前記コレットジョーは、前記血管に向かって延びる、前記ヘッド上の歯をさらに含み、
前記歯は、前記コレットジョーが前記第2の位置にあるときに前記組織に食い込むように構成されている、請求項7に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項9】
前記ハウジングは、前記ハウジングを通した、前記ハウジング凹部内への可視性を可能にするように構成された半透明部分を含む、請求項1に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項10】
前記カニューレシステムは、体外式膜型人工肺(ECMO)システムに動作的に接続されるように構成されている、請求項1に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項11】
前記組織は、新生児の臍帯を含む、請求項1に記載のカニューレ挿入システム。
【請求項12】
カニューレシステムであって、
遠位端部、および前記遠位端部の反対側の近位端部を有するカニューレと、
前記遠位端部と前記近位端部との間で前記カニューレを通って延びるカニューレ内腔と、
前記カニューレ上に配されたスリットシールであって、カニューレ挿入デバイスを受容するように構成されている、スリットシールと、を含み、
前記カニューレシステムは、血管と、また酸素化装置と、流体連通するように構成されている、カニューレシステム。
【請求項13】
前記カニューレは、
第1の近位部分および第2の近位部分を有するY字型コネクタと、
前記カニューレ上に配されたスリットシールであって、その中を通してカニューレ挿入デバイスを受容するように構成されている、スリットシールと、をさらに含み、
前記カニューレ内腔は、前記Y字型コネクタの前記第2の近位部分を通って延び、
前記スリットシールは、前記第1の近位部分と前記カニューレ内腔との間の流体連通を可能にするように構成されている、請求項12に記載のカニューレシステム。
【請求項14】
前記組織は、新生児の臍帯を含む、請求項12に記載のカニューレシステム。
【請求項15】
組織の血管と流体連通するためのカニューレであって、
遠位端部と、
前記遠位端部の反対側の近位端部と、
前記遠位端部と前記近位端部との間で前記カニューレを通って延びるカニューレ内腔と、
第1の近位部分および第2の近位部分を有するY字型コネクタと、
前記カニューレ上に配されたスリットシールであって、その中を通してカニューレ挿入デバイスを受容するように構成されている、スリットシールと、を含み、
前記カニューレ内腔は、前記Y字型コネクタの前記第2の近位部分を通って延び、
前記スリットシールは、前記第1の近位部分と前記カニューレ内腔との間の流体連通を可能にするように構成されている、カニューレ。
【請求項16】
前記組織は、新生児の臍帯を含む、請求項15に記載のカニューレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2020年4月29日出願の米国仮特許出願第63/017,204号の利益を主張するものであり、この全体は、ありとあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本開示は、カニューレシステムと、カニューレ挿入デバイスと、を含むカニューレ挿入システムの実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
超早産は、米国における幼児の罹患率および死亡率の主な原因であり、全幼児死亡の3分の1超および脳性まひ診断の2分の1が、早産によるものである。呼吸器不全は、超早産に関連する最も一般的かつ困難な問題であるが、それは、極めて早産の新生児におけるガス交換が、肺の構造的および機能的な未熟さにより損なわれるためである。新生児の集中治療における進歩により、生存が改善され、早産の新生児の生存力の限界が、肺発達の管状期から終末嚢期への移行を特色付ける、妊娠22~24週まで押し上げられている。生存は可能になっているが、特に妊娠28週より前に生まれた新生児において、慢性肺疾患および臓器未発達の他の合併症が依然として高い割合で存在する。数週間でも正常な新生児成長および臓器成熟を支援し得るシステムの開発は、超早産の罹患率および死亡率を大幅に低下させ、生存者の生活の質を改善することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述した欠陥は、本明細書全体にわたり説明される、カニューレ挿入システムおよびそれらの使用方法により対処される。本開示の一態様によれば、組織の血管にカニューレを挿入するためのカニューレ挿入システムは、内部を通るカニューレ内腔を画定するカニューレを有するカニューレシステムを含む。カニューレは、遠位端部と、遠位端部の反対側の近位端部と、を有する。カニューレ挿入システムは、カニューレシステムと連結するように構成されたカニューレ挿入デバイスをさらに含む。カニューレ挿入デバイスとカニューレシステムとの間の連結は、解放可能とすることができる。カニューレ挿入デバイスは、内部を通る拡張器内腔を画定する拡張器本体を有する拡張器と;内部を通る針内腔を画定する針本体を有する針であって、針は、拡張器内腔内部で第1の方向に沿って並進運動可能である、針と;拡張器アクチュエータであって、拡張器アクチュエータの動きが第1の方向に沿った拡張器の動きを引き起こすように動かされるよう構成されている、拡張器アクチュエータと;針アクチュエータであって、針アクチュエータの動きが第1の方向に沿った針の動きを引き起こすように動かされるよう構成されている、針アクチュエータと;ハウジング凹部を内部に画定するハウジングと、を含む。ハウジング凹部は、カニューレシステム、拡張器、および針を受容するように構成される。カニューレ挿入デバイスの針および拡張器は、カニューレ内腔内部で第1の方向に沿って動かされるように構成される。
【0005】
アクチュエータは、針の遠位端部が拡張器の遠位端部の遠位に位置付けられる、第1の位置から、針の遠位端部が拡張器の遠位端部の近位に位置付けられる、第2の位置に、針を並進運動させるように構成され得る。
【0006】
カニューレシステムは、カニューレの近位端部に隣接したY-コネクタを含み得、Y-コネクタは、第1の近位チャネルを画定する第1の近位部分と、第2の近位チャネルを画定する第2の近位部分と、を有する。第1および第2の近位チャネルは、カニューレ内腔と流体連通するように構成され得る。いくつかの態様では、第1の近位部分は、第1の近位チャネルを第2の近位チャネルから分離するスリットシールを画定し得る。スリットシールは、拡張器および針がその中を通って挿入される、開放構成と、針および拡張器がその中を通って延びていない、閉鎖構成と、を有する。スリットシールが閉鎖構成にあるとき、カニューレ内腔からの液体は、第1の近位チャネルに入るのを妨げられる。いくつかの態様では、カニューレ挿入システムは、第1の近位チャネルに取り外し可能に挿入されるように構成されたプラグを含み得る。
【0007】
カニューレシステムは、その上にロック要素を含み得、ハウジングも、その上にロック要素を含み得る。カニューレシステムのロック要素は、カニューレシステムがハウジングに取り付けられるように、ハウジングのロック要素と解放可能に係合するように構成され得る。
【0008】
システムは、カニューレを血管に解放可能に固定するように構成されたコレットジョーをさらに含み得る。コレットジョーは、カニューレシステムに取り付けられ得る。コレットジョーは、ベースと、変形可能なアームと、ヘッドと、を有し得る。コレットジョーが開放位置にあるとき、ヘッドは、血管およびカニューレから離間され、コレットジョーが閉鎖位置にあるとき、ヘッドは、組織と接触していて、血管はコレットジョーとカニューレとの間の適所に保持される。
【0009】
組織は、臓器などの生理学的組織とすることができる。いくつかの態様では、組織は、新生児の臍帯を含み得る。コレットジョーのヘッドは、臍帯の臍帯鞘(umbilical sheath)、臍帯のホウォートンゼリー、または血管自体に接触し得る。いくつかの態様では、コレットジョーは、血管に向かって延びる、ヘッド上の歯を含み得る。歯は、コレットジョーが第2の位置にあるときに組織(例えば、臍帯)に食い込むように構成され得る。
【0010】
いくつかの態様では、システムのハウジングは、ハウジングを通した、ハウジング凹部内への可視性を可能にするように構成された半透明部分を含み得る。
【0011】
カニューレシステムは、体外式膜型人工肺(ECMO)システムに動作的に(operatively)接続されるように構成され得る。
【0012】
いくつかの態様では、カニューレ挿入システムは、心血管系の外側で、例えば、泌尿器系内、消化系内、リンパ系内、または身体の別の部分内で、使用され得る。いくつかの態様では、カニューレ挿入システムは、尿管と共に使用され得る。他の態様では、カニューレ挿入システムは、胆管と共に使用され得る。
【0013】
本開示の別の態様によれば、組織内の血管にカニューレを挿入する方法は、血管に向けて、かつ血管の壁を通して針を動かすことにより、針の遠位端部で壁に穴をあけることによって、血管の壁に開口部を作るステップと;拡張器を開口部に挿入し、開口部を拡張させるステップと;針が血管から出るように針を後退させるステップと;拡張器が血管から出るように拡張器を後退させるステップと;カニューレを血管の壁の開口部に挿入するステップと;カニューレを血管内で固定するステップと、を含む。カニューレは、遠位端部と近位端部との間を延びる、カニューレを通るカニューレ内腔を画定する。拡張器および針は、カニューレ内腔内部で動くことができる。本明細書に記載されるステップは、列挙した順序で実行される必要はない。
【0014】
方法のいくつかの態様では、針は、遠位端部、および遠位端部の反対側の近位端部を画定することができ、拡張器は、遠位端部と近位端部との間で拡張器を通って延びる拡張器内腔を画定し得る。針を後退させるステップは、針の遠位端部が拡張器内腔の外側にあり、かつ拡張器の遠位端部の遠位にある、第1の位置から、針の遠位端部が拡張器内腔内にあり、かつ拡張器の遠位端部の近位にある、第2の位置まで、拡張器内腔内の針を動かすステップを含み得る。
【0015】
カニューレを血管に固定するステップは、コレットジョーが組織に接触しない、ロック解除位置から、コレットジョーが組織を力強くクランプし、血管がコレットジョーとカニューレとの間に保持され、血管の少なくとも一部がカニューレに対して並進運動するのを妨げられる、ロック位置まで、コレットジョーを動かすステップを含み得る。いくつかの態様では、方法は、コレットジョー上に配された歯により組織に食い込むステップをさらに含み得る。
【0016】
組織は、臓器などの生理学的組織とすることができる。いくつかの態様では、組織は、新生児の臍帯を含み得る。
【0017】
方法は、カニューレを体外式膜型人工肺(ECMO)システムに接続するステップを含み得る。
【0018】
いくつかの態様では、カニューレは、第1の近位部分、および第1の近位部分とは別個の第2の近位部分に分かれる、Y-コネクタに接続され得る。カニューレをECMOシステムに接続するステップは、Y-コネクタの第2の近位部分をECMOシステムに接続するステップを含み得る。
【0019】
方法は、血管をカニューレに固定するステップの後で拡張器および針をカニューレ内腔から出すステップをさらに含み得る。いくつかの態様では、カニューレは、第1の近位部分、および第1の近位部分とは別個の第2の近位部分に分かれる、Y-コネクタに接続され得、拡張器および針をカニューレ内腔から出すステップは、第1の近位部分を通して拡張器および針を動かすステップを含み得る。いくつかの態様では、方法は、Y-コネクタの第1の近位部分に画定されたスリットシールを通して針および拡張器を動かすステップをさらに含み得る。
【0020】
いくつかの態様では、方法は、第1の近位部分からの血液の流出を防ぐためにY-コネクタの第1の近位チャネルにプラグを挿入するステップをさらに含み得る。
【0021】
本開示の別の態様によれば、カニューレシステムが、遠位端部、および遠位端部の反対側の近位端部を有するカニューレと;遠位端部と近位端部との間でカニューレを通って延びるカニューレ内腔と;カニューレ上に配されたスリットシールであって、カニューレ挿入デバイスを受容するように構成されている、スリットシールと、を含む。カニューレシステムは、血管と、また酸素化装置と、流体連通するように構成される。血管は組織内にあるものとすることができる。組織は、臓器などの生理学的組織とすることができる。いくつかの態様では、組織は、新生児の臍帯を含み得、カニューレシステムは、臍帯の血管と、また酸素化装置と、流体連通するように構成され得る。
【0022】
いくつかの態様では、カニューレシステムのカニューレは、第1の近位部分および第2の近位部分を有するY字型コネクタと;カニューレ上に配されたスリットシールと、をさらに含み得る。スリットシールは、その中を通してカニューレ挿入デバイスを受容するように構成され得る。カニューレ内腔は、Y字型コネクタの第2の近位部分を通って延びることができる。スリットシールは、第1の近位部分とカニューレ内腔との間の流体連通を可能にするように構成され得る。カニューレシステムは、オプションとして、本明細書全体にわたり記載されるカニューレシステムの1つ以上の特徴を含み得る。
【0023】
本開示の別の態様によれば、組織の血管と流体連通するためのカニューレは、遠位端部と;遠位端部の反対側の近位端部と;遠位端部と近位端部との間でカニューレを通って延びるカニューレ内腔と;第1の近位部分および第2の近位部分を有するY字型コネクタと;カニューレ上に配されたスリットシールであって、その中を通してカニューレ挿入デバイスを受容するように構成されている、スリットシールと、を含む。カニューレ内腔は、Y字型コネクタの第2の近位部分を通って延びる。スリットシールは、第1の近位部分とカニューレ内腔との間の流体連通を可能にするように構成される。組織は、臓器などの生理学的組織とすることができる。いくつかの態様では、組織は、新生児の臍帯を含み得る。カニューレは、オプションとして、本明細書全体にわたり記載されるカニューレの1つ以上の特徴を含み得る。
【0024】
前述した概要、ならびに本出願の例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本開示を例示する目的で、図面は、例示的な実施形態を描く。しかしながら、本出願は、開示される特定の実施形態および方法に制限されず、その目的のために特許請求の範囲を参照することを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の一態様によるカニューレ挿入システムの等角図である。
【
図2】
図1のカニューレ挿入システムの断面図である。
【
図2A】
図2のカニューレ挿入システムの一部の拡大断面図である。
【
図3】本開示の一態様によるカニューレ挿入デバイスの等角図である。
【
図4】
図3のカニューレ挿入デバイスの断面図である。
【
図5】
図3および
図4のカニューレ挿入デバイスの部分Aの拡大断面図である。
【
図5A】
図5に描かれたカニューレ挿入デバイスの一部の拡大断面図である。
【
図6】
図3~
図5のカニューレ挿入デバイスの部分Bの拡大断面図である。
【
図6A】
図6の部分の拡大断面図であるが、ブロック表面から離間したアクチュエータを描いている。
【
図7】
図3~
図6Aのカニューレ挿入デバイスの別の部分の等角断面図である。
【
図7A】
図3~
図7のカニューレ挿入デバイスのハウジングの断面図である。
【
図8】本開示の一態様による針組立体の側面斜視図である。
【
図10】本開示の一態様による拡張器組立体の等角図である。
【
図11A】ハウジングの内側の保持部材を示す、カニューレ挿入デバイスの一部の側面断面図である。
【
図11B】ハウジング上の拡張器組立体ブロック表面と一直線になった保持部材を示す、
図11Aの部分の側面断面図である。
【
図12】本開示の一態様による拡張器の側面断面図である。
【
図12A】本開示の一態様による拡張器の側面断面図である。
【
図12B】本開示の別の態様による拡張器の側面断面図である。
【
図13】本開示の別の態様によるカニューレシステムの等角図である。
【
図16】
図13~
図15のカニューレシステムの一部の側面斜視図であり、開放位置にあるコレットジョー、および血管(透視図で示す)を描いている。
【
図17】
図13~
図16のカニューレシステムの一部の断面図であり、血管(透視図で示す)を固定する閉鎖構成にあるコレットジョーを描いている。
【
図17A】
図13~
図17のカニューレシステムの等角図であり、コレットジョーが閉鎖構成で示され、バネロックを示している。
【
図18A】本開示の一態様による、針および拡張器が伸長位置にある、カニューレ挿入デバイスの側面断面図である。
【
図18B】本開示の一態様による、針が後退位置にあり拡張器が伸長位置にある、カニューレ挿入デバイスの側面断面図である。
【
図18C】本開示の一態様による、針および拡張器が後退位置にある、カニューレ挿入デバイスの側面断面図である。
【
図19】本開示の一態様による、針で血管に穴をあけるステップを描いた、側面断面図である。
【
図20】本開示の一態様による、
図19の血管に拡張器を挿入するステップを描いた、側面断面図である。
【
図21】本開示の一態様による、
図19および
図20の血管にカニューレを挿入するステップを描いた、側面断面図である。
【
図22】本開示の一態様によるカニューレ挿入システムで血管にカニューレを挿入するプロセスを描く。
【
図23】カニューレ挿入デバイスを手の中に保持するユーザの例示的な図を描く。
【
図24A】本開示の一態様による、動脈血管にカニューレを挿入するステップを描く。
【
図24B】本開示の一態様による、静脈血管にカニューレを挿入するステップを描く。
【
図25】カニューレシステムに接続された外部循環回路を示す概略図を描く。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ある特定の用語が、便宜上以下の説明で使用されるが、限定的なものではない。ある方向に沿った2つの要素に関して本明細書で使用される用語「整列される」は、それらの要素のうちの一方を通過し、かつその方向に平行である、直線が、2つの要素のうちのもう一方も通過することを意味する。
【0027】
本開示の態様は、これから図面を参照して詳細に説明され、図面中、同様の参照符号は、特に指定のない限り、全体にわたり同様の要素を指す。ある特定の用語が、便宜上以下の説明で使用されるが、限定的なものではない。本明細書で使用される用語「複数」は、2つ以上を意味する。ある構造の「一部」および「少なくとも一部」という用語は、その構造の全体を含む。別々の実施形態の文脈で本明細書に記載される本開示のある特定の特徴は、単一の実施形態において、組み合わせて提供されてもよい。逆に、単一の実施形態の文脈で記載される本開示のさまざまな特徴は、別々に、または任意の部分的組み合わせで提供されてもよい。用語「近位」および「遠位」は、図面に現れる際の、デバイスの一部の、デバイスの残部または反対側の端部に対する位置を指すことができる。近位端部は、ユーザが操作する端部を指すのに使用され得る。遠位端部は、挿入および前進され、かつユーザから最も離れている、デバイスの端部を指すのに使用され得る。当業者には認識されるように、近位および遠位の使用は、別の文脈、例えば、近位および遠位が患者を基準として使用する解剖学的文脈で、または、入口点がユーザから遠位にある場合に、変化し得る。
【0028】
正常な新生児の発育および臓器成熟を支援し得る、既存のシステムに関連する難題の1つは、いったん新生児が子宮から切り離されたら新生児の血液供給を酸素化するように構成された酸素化装置に、新生児の循環系を接続することである。臍帯内の動脈および静脈などの小血管へのカニューレ挿入は、カニューレ挿入処置で使用されているデバイスの正確な操作を必要とする。さらに、新生児の体内の血液供給は少ないので、臍帯内部の血管へのカニューレ挿入は、迅速に、また、結果が成功するチャンスを最大限にするために新生児の血液損失をできるだけ少なくして、行わなければならない。さらに、臍帯にカニューレを挿入するのに必要な時間を短縮し、臍帯に加えられる刺激量を減らすことで、臍帯の痙攣を低減または防止し、また、新生児が酸素を受け取っていない時間を減らすことができ、よって、低酸素症による悪影響の可能性が下がる。
【0029】
したがって、臍帯内部の静脈または動脈などの血管内への開口部を、迅速に、効果的に、かつ安全に作り、カニューレを血管に取り付けて、血管に出入りする通路を提供し、新生児と酸素化装置との間に血流を確立するように構成された、カニューレ挿入システムにより、カニューレ挿入処置の結果が成功となることが多くなり得る。
【0030】
概して、カニューレ挿入システムは、血管内への通路を開いて、カニューレを血管に挿入するように構成されたカニューレ挿入デバイスを含み得、そのため、血液は、血管からカニューレ内へ、またはその逆に動くことができる。カニューレ挿入システムはまた、針組立体と、拡張器組立体と、カニューレと、を含み得る。血管は、身体、例えば人体の内側にあるものとすることができる。本開示の一態様によると、血管は、月満ちて生まれた新生児または早産の新生児の臍帯など、身体の外側の外部血液回路の一部を形成し得る。
【0031】
開示される態様は、さまざまなヒトまたは動物と共に利用され得る。具体的には、これらの実施形態は、早産の新生児などの小児の臍帯内の血管にカニューレを挿入するのに使用され得る。血管にカニューレが挿入されると、血液は、臍帯からカニューレを通って、所望の目的地、例えば外部血液循環回路まで流れることができる。開示されたもの(disclosed)のいくつかは、カニューレ挿入プロセスが片手で、かつ追加のツールまたは支援なしで実行されることを可能にし、よって、平易さが改善され、カニューレ挿入空間での余分な構成要素または人員の必要性が低減される。これにより、カニューレ挿入を達成しようとして、間違った医療ツールを使用したり、さまざまなツールを不適切に組み合わせたりするリスクが減る。ユーザが片手でカニューレ挿入システムを操作するのを可能にすることにより、ユーザのもう一方の手は、他のタスクを自由に実行することができる。
【0032】
いくつかの態様では、本出願全体にわたり開示されるシステムは、心血管系の外側で使用され得る。いくつかの態様では、システムは、泌尿器系内、消化系内、リンパ系内、または身体の別の部分内の管腔もしくは血管にカニューレを挿入するのに使用され得る。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、尿管または胆管と共に使用され得る。
【0033】
1つの好適な実施形態では、カニューレ挿入システムは、カニューレ挿入デバイスと、カニューレシステムと、を含む。カニューレシステムは、新生児からの血液を、1つ以上の外部医療デバイス間で輸送するのに使用され得る。カニューレシステムは、新生児の臍帯に取り外し可能に接続され得る。例えば、カニューレ挿入システムは、臍帯内の別個の血管にそれぞれが接続される、複数のカニューレシステムを有し得る。好適な実施形態では、2つのカニューレシステムが、別々の動脈に接続され得、1つのカニューレシステムが、臍帯内の静脈に接続され得、よって循環ループを形成し、循環ループにおいて、血液が、新生児から出て、カニューレシステム内に移動し、接続された循環回路内に移動し、その後、新生児に戻る。いくつかの態様では、カニューレ挿入プロセスを繰り返さなければならない場合、(詳細に後述するように)カニューレシステムが血管および周囲組織から係合解除され、カニューレ挿入システムがリセットされる。カニューレシステムは次に、臍帯の異なる部分に導入され得、臍帯の最初に使用された部分は、切断され得る。
【0034】
好適な実施形態を続けると、カニューレシステムは、カニューレ挿入デバイスと解放可能に係合することができ、これにより、カニューレシステムをそれぞれの各血管に接続および固定するのが容易になる。カニューレ挿入システムは、手持ち式であり、これを保持している同じ手でユーザが操作するように設計され得る。このような片手操作により、ユーザは、もうひとつの手を他のタスクのために使用することができる。一般的に、好適な実施形態では、カニューレ挿入システムは、標的血管を貫通し、血管壁の開口部を拡張し、(例えば、作られた開口部を通して、カニューレシステムの一部を血管に挿入することにより)カニューレシステムを血管に接続し、カニューレシステムを血管に固定するように構成され得る。いったん必要なステップが実行されて、カニューレシステムが血管に固定されたら、カニューレ挿入デバイスは、カニューレシステムから切り離され得る。
【0035】
図1~
図7Aを参照すると、カニューレ挿入システム10は、カニューレ挿入デバイス20を含む。カニューレ挿入デバイス20は、ハウジング凹部222を内部に画定するハウジング220を有する(
図7および
図7A参照)。凹部222は、その中にカニューレシステム28を受容し得る。いくつかの態様では、ハウジング220は、透明または半透明部分230を画定することができ、これを通して、ユーザは、構成要素の動き、およびカニューレシステム28を通る血液の流れを観察することができる。透明または半透明部分230は、ユーザがハウジング凹部222の少なくとも一部を見ることを可能にする、透明または半透明部分を含む。
【0036】
フラッシュバックチャンバ231(
図2参照)が、凹部222内に配され、透明または半透明部分230を通して可視であってよく、また、カニューレ挿入デバイス20のユーザに情報を提供するように構成され得る。例えば、カニューレ挿入デバイス20は、針が血管にうまく入ったことを示すように構成され得る。カニューレを挿入されるべき血管と、カニューレ挿入システムを接続したら、血管からの液体(例えば、血液)が、カニューレ挿入デバイス20を通って移動し、フラッシュバックチャンバ231内に入ることができる。フラッシュバックチャンバ231は、開口部232を画定し、これを通って、血液は、透明または半透明部分230を通して見ることができる凹部222の部分内にしたたり、よって、血管がうまくカニューレを挿入されていることを示すことができる。いくつかの態様では、血管にカニューレを挿入する前に、ユーザは、所定量の液体(例えば、生理食塩水)を、(例えば、液体を注入することによって)開口部232を通してフラッシュバックチャンバ231に入れることができる。カニューレシステムは、使用前に適切な材料(例えば、血液、生理食塩水、またはPlasmaLyteなどの既知の組成物)でプライミングされ得る。針がうまく挿入されるとフラッシュバックチャンバ231を通って移動する血液は、次に、フラッシュバックチャンバ231内の液体によりフラッシュバックの時間を早めることができ、混合物の小滴が、開口部232からしたたり得る。フラッシュバックの可視化は、針が血管壁を穿刺し血管に入った表示として役立つ。血液がフラッシュバックチャンバ231からしたたってこない場合、これは、例えば、針が血管に適切に入らなかった、針が不注意に反対側の血管壁を穿刺し、血管から出た、および/または、カニューレ挿入デバイス20内に機械的閉塞がある、という表示となり得る。エラストマープラグ233が、開口部232内に取り外し可能に位置付けられ得る。プラグ233は、カニューレシステムがプライミングされると、開口部232から離れる方に動かされ得る。針が後退された後、プラグ233は、開口部232内に配され、流体が針内腔から出るのを防ぎ、よって、血液損失を低減する。プラグは、デブリが開口部232を通ってフラッシュバックチャンバ231に入るのを防ぐための物的障壁としてさらに役立ち得る。
【0037】
ハウジング220は、カニューレ挿入デバイス20がユーザにより片手で保持され得るようにサイズ決めされ得る。ハウジング220がユーザの手のひらに完全に収まる必要はなく、その手から1つ以上の方向に延びてよいことが認識されるであろう(例えば、
図23参照)。ハウジング220は、遠位端部221と、遠位端部221の反対側の近位端部223との間に延びる。ハウジング220は、遠位端部221から近位端部223までD1に平行な軸に沿って延びる最大長さLと、長さLに垂直な軸に沿って延びる最大幅Wと、長さLおよび幅Wの両方に垂直な軸に沿って延びる最大高さHと、を有する(
図3参照)。いくつかの態様では、ハウジング220は、約300mmまで、約250mmまで、約235mmまで、約200mmまで、または別の適切な長さまでの、長さLを有し得る。いくつかの態様では、ハウジング220は、約50mmまで、約40mmまで、約30mmまで、または別の適切な幅までの、幅Wを有し得る。いくつかの態様では、ハウジング220は、約50mmまで、約40mmまで、約30mmまで、または別の適切な高さまでの、高さHを有し得る。いくつかの特定の実施形態では、ハウジング220は、約150mm~約300mm、好ましくは約175mm~約275mm、さらに好ましくは約175mm~約250mmの長さL、約20mm~約40mm、好ましくは約25mm~約35mmの幅W、および、約25mm~約35mmの高さHを、一実施形態では、約200mmの長さL、約28mmの幅W、および約31mmの高さHを、有し得る。ハウジング220は異なるかまたは追加の寸法を有し得ること、ならびに、その特定のサイズおよび形状は意図した用途に左右されること、がさらに認識されるであろう。ハウジング220、ならびにカニューレ挿入デバイス20またはカニューレ挿入システム10の正確な寸法は、全体として、ユーザによる片手での使用を可能にするように選択され得る。例えば、ハウジング220は、平均的なユーザが、カニューレ挿入システムの期待される別々の機能(例えば、針を後退させる、拡張器を後退させる、およびカニューレをカニューレ挿入デバイスから係合解除する)を、機能の合間に手の中でハウジング220を実質的に配置し直すことなく、実施でき、いくつかの好適な実施形態では、同じ指で(例えば、ハウジングを保持する手の親指で)すべての機能を実施することが可能であるように、サイズ決めされ得る。
【0038】
図8および
図9を参照すると、カニューレ挿入システム10は、針組立体22を含み得る。ハウジング凹部222は、針組立体22を受容するように構成され得る。針組立体22は、針40を含み得、これは、血管に穴をあけ、それによって、血管内への通路を作るように構成される。本開示の一態様によると、針40は、血管、例えば新生児の臍帯内に位置する血管に穴をあけ、その血管内への通路を開くように構成され得る。針40は、針本体42を含み得、これは、針40の近位端部44から針40の遠位端部46まで延びる。針40の近位端部44は、針40の遠位端部46から近位方向PDに離間され得、遠位端部46は、針40の近位端部44から遠位方向DDに離間され得る。例示された実施形態に示すように、針本体42は、近位端部44から遠位端部46まで、またはその反対に延びる第1の方向D1に沿って細長くすることができる。第1の方向D1は、双方向であり、近位方向PDおよび遠位方向DDの両方を含み得る。第1の方向D1は、本明細書全体にわたり記載されるカニューレ挿入システムの他の構成要素との参照のために使用され得る。
【0039】
針40は、針40の近位端部44と遠位端部46との間で測定される長さL1を定める。一実施形態によると、長さL1は、約25mm~約305mmとすることができる。一実施形態によると、長さL1は、約150mm~約180mm、好ましくは約100mm~約200mmとすることができる。
【0040】
図9に示すように、針40は、針本体42によって画定され、かつ近位端部44と遠位端部46との間で長さL1の全体に沿って延びる、針内腔48をさらに含み得る。針内腔48は、円形断面を有し得る。針40は、中心軸49を定めることができ、これに沿って針内腔48が延びる。中心軸49は、第1の方向D1に平行とすることができる。針40は、針内腔48のサイズによって、具体的には第1の方向D1に垂直である断面積J1によって、決定されるゲージを定める。針40の内腔48は、約0.05mm
2~約0.8mm
2、または約0.2mm
2~約0.45mm
2の断面積を定めることができる。針40は、20ゲージ針~25ゲージ針とすることができる。別の態様によると、針40は、例えば、針40が臍帯で典型的に見られる血管より大きな血管内で使用されるように構成されている場合、20ゲージ針より大きくてよい。いくつかの態様では、針40は中実であってよく、針40に針内腔48がない。いくつかの例示的な実施形態では、針40は、約0.603mmの外径を有する20ゲージ針とすることができる。
【0041】
依然として
図9を参照すると、針40は、針内腔48を通る血流に対して制限を提供すると共に、依然としていくらかの量の血流を可能にするように構成された、ブリードバック低減機構(bleedback reduction mechanism)45を含み得、これは、針40がいつ血管に入ったかを特定するのに使用され得る。一実施形態によると、針40は、針内腔48より小さい微小孔47を含み得る。ブリードバック低減機構45は、針内腔48内に、例えば、遠位端部46の中もしくは近く、近位端部44の中もしくは近く、または遠位端部46と近位端部44との間に、位置付けられ得る。ブリードバック低減機構45の一部は、針内腔48の外側に、例えば近位端部44の外部の周りに、位置付けられ得る。いくつかの例示的な実施形態では、ブリードバック低減機構45は、フラッシュバックチャンバ231と液体連通(liquid communication)していてよく、血液は、針40を通って、具体的にはブリードバック低減機構45を通って移動してフラッシュバックチャンバ231に入るように構成される。液体は、前述したように、微小孔47を通過してフラッシュバックチャンバ231に入ることができる。一実施形態では、ブリードバック低減機構45は、針内腔48の内径を効果的に低減する。いくつかの態様では、ブリードバック低減機構45は、微小孔47を画定するために局所的に針内腔48の内径を低減するように構成された、針40上の特徴を含み得る。
【0042】
図9に示すように、針40の先端は、ベース端部65および先端部(tip end)66を有するベベル64を含み得る。ベベル64がベース端部65から先端部66に延びるにつれて、断面積J1が減少する。針40は、中心軸49からベベル64まで測定されたベベル角度αを定め得る。一実施形態によると、ベベル角度αは、約1°~約60°とすることができる。別の実施形態によると、ベベル角度αは、約5°~約45°とすることができる。さらに別の実施形態によると、ベベル角度αは、約10°~約25°とすることができる。さらに別の実施形態によると、ベベル角度αは、約12°~約22°とすることができる。ベベル角度αが小さいほど、血管の穴あけと針40の挿入が容易になり得るが、ベベル角度αを小さくすると、ベース端部65から先端部66まで測定されるベベル64の長さが増大する。本開示の一態様によると、針40は、複数のベベルを含み得、ベベル64は複数のベベルのうちの1つである。針は、外科用ステンレス鋼、例えばSAE 316、420、または440ステンレス鋼などの、医療グレード材料から製造され得る。
【0043】
一実施形態によると、針40の挿入の成功は、先端部66およびベース端部65の両方が血管内部に位置付けられると、達成される。ベベル64の長さが増大すると、挿入を成功させるために必要な針40の挿入深さが深くなり得、それにより、「バックウォール(backwalling)」または血管の向こう側に穴をあける可能性が高くなり得る。よって、一実施形態によると、針40は、臍帯への挿入の容易さのつり合いを保つと共に、臍帯のバックウォールの可能性を最小限に抑える挿入深さを維持するように構成される。
【0044】
再び
図1~
図7Aを参照すると、一態様に示すように、カニューレ挿入デバイス20は、針40をハウジング220に対して並進運動させるための機構を含む。針アクチュエータ50が、ハウジング220に接続されるか、またはその上に配される(特に
図6~
図7参照)。いくつかの態様では、針アクチュエータ50は、凹部222内部で動くことができる。針アクチュエータ50は、針組立体22(
図8参照)に動作可能に連結され、針アクチュエータ50が作動すると、針40が第1の位置から第2の位置に移行する。
図4~
図7を参照すると、針アクチュエータ50は、ハブ52、および針アクチュエータ50とハブ52との間に配されたブームアーム54に取り付けられる。ハブ52は、針40を受容するように構成された凹部56を含み得る。凹部56は、針本体42の外側表面59に対応する形状を画定する。針組立体22は、針40がハブ52に永続的または一時的に固定されるように、構成され得る。例えば、針40およびハブ52は、接着剤、オーバーモールド、溶接、対応するねじ山などにより、固定され得る。
【0045】
一実施形態によると、針40および針アクチュエータ50は固定されるよう構成され、ハブ52に対する針40の並進運動、回転、またはその両方を含む動きは、針組立体22の塑性変形なしで妨げられる。
【0046】
ブームアーム54は、図示の実施形態に示すように、ハブ52から針アクチュエータ50まで、例えば、少なくとも部分的に遠位方向DDに、延びる。ブームアーム54は、ハブ52に隣接する近位端部55と、遠位端部57と、を含み得、遠位端部57は、近位端部55の反対側にあり、ブームアーム54の遠位端部57が針アクチュエータ50において終端するように位置付けられる。針アクチュエータ50は、ユーザが接触するように構成された作動表面58を含み得る。
図6に示すように、作動表面58は、第2の方向D2に面することができる。他の態様では、作動表面58は、第2の方向D2に対して斜めまたは垂直とすることができる。ユーザは、針アクチュエータ50が針40を動かすように、例えば指または親指で、作動表面58を押すことができる。
【0047】
図6および
図6Aで分かるように、針アクチュエータ50は、例えば遠位端部57に隣接して位置付けられた、停止表面60を含み得る。一実施形態によると、停止表面60は近位方向PDに面する。停止表面60は、カニューレ挿入デバイス20の別の表面、例えばハウジング220によって画定されるブロック表面124、に選択的に当接するように構成される。
図6は、ブロック表面124に当接する停止表面60を示し、
図6Aは、ブロック表面124から離間された停止表面60を示す。
【0048】
針組立体22は、付勢部材62、例えばバネまたは弾性ゴムひも(resilient elastic)をさらに含み得る(
図5および
図5A参照)。付勢部材62は、針組立体22に付勢力を加えるように構成される。一実施形態によると、付勢部材62は、近位方向PDにおいてハブ52に力を加えるように構成される。
【0049】
針組立体22は、負荷構成および無負荷構成を有し得る。負荷構成では、針40は第1の位置にあり、付勢部材62は、近位方向PDにおいてハブ52に付勢力を及ぼしている。ブームアーム54は、針組立体22が付勢部材62により動かされるのを防ぐための物理的な停止部として役立つ、停止表面60とブロック表面124との間の接触により付勢力に抗して所定の場所に保持され得る(
図6および
図6A参照)。付勢部材62により及ぼされる力は、針組立体22の動きに対する抵抗がない場合に針組立体22を動かすのに十分であるが、付勢力が停止表面60とブロック表面124との係合により変化がないまま保たれている場合は、ブームアーム54、ハブ52、針40、またはハウジング220のいずれかに変形または損傷を生じるのには不十分であることが、認識されるであろう。
【0050】
無負荷構成では、停止表面60は、ブロック表面124と接触しておらず、針組立体22は、負荷構成にあるときよりも近位に位置付けられる。針組立体22を無負荷構成から負荷構成に移行させるため、針組立体22は、以下で説明するように、付勢部材62により針組立体22に及ぼされる付勢力に抗して遠位方向DDに動かされる。この移行は、ユーザによって手動で作動され得る。ユーザは、(例えば、フラッシュバックチャンバ231において)針組立体22に力を加え、針組立体22を遠位方向DDに押すことができる。いくつかの態様では、ハウジング220は、近位端部221が開いていてよく、ユーザは、指または親指をハウジング220に挿入してフラッシュバックチャンバ231に接触することができる。ユーザが加える力は、付勢部材62が及ぼす付勢力よりも大きくなければならないことが、認識されるであろう。いくつかの態様では、ユーザは、フラッシュバックチャンバ231を遠位方向DDに押すことにより、負荷力を加えることができる。針組立体22が負荷構成にあるとき、ユーザは、無負荷構成から負荷構成への針組立体22の移行の成功を示す、可聴クリック音を聞くことができる。
【0051】
負荷構成では、針組立体22は、ユーザが作動表面58に接触する(例えば、これを押す)と、針アクチュエータ50の遠位端部57がハブ52に対して動くように、構成される。この動きにより、ブームアーム54は弾性的に変形し得る。例えば
図18Aおよび
図18Bに示すように、ユーザ入力は、第3の方向D3において作動表面58に加えられる起動力Fを含み得る。第3の方向D3は、第2の方向D2の反対であるか、作動表面58に垂直であるか、その両方であるか、そのどちらでもないものとすることができる。ブームアーム54は、例えば第3の方向D3において、作動表面58に力を加えることにより動かされ得、停止表面60がブロック表面124から係合解除される。この係合がなければ、付勢力により針組立体22が近位方向PDに動く。針40は、停止表面60およびブロック表面124が係合しているとき、カニューレ挿入デバイス20内部の第1の位置にあり(
図18Aおよび
図18D)、停止表面60およびブロック表面124が係合しておらず、付勢部材62によってハブ52に及ぼされた付勢力により針組立体22が近位方向PDに動かされて、停止表面60がブロック表面124の近位に位置するとき、第2の位置にある(
図18Bおよび
図18E)。
【0052】
図10~
図12を参照すると、カニューレ挿入システムは、拡張器組立体25をさらに含み得る。一実施形態では、拡張器組立体25は、針が血管の壁に穴をあけるのが終わった後で、針40を収容し、より大きな開口部を血管に作るように機能する。血管の開口部を拡張させることは、以下でさらに説明するように、カニューレを血管に挿入するのに役立ち得る。拡張器組立体25は、拡張器26、拡張器26を中に固定的に保持するように構成された拡張器ハブ246、および拡張器移動機構240を含む。特に
図12を参照すると、拡張器26は、遠位端部90と、近位端部92と、近位端部92から遠位端部90まで延びる拡張器本体94と、を含み得る。拡張器26は、拡張器本体94によって画定された拡張器内腔96をさらに含む。図示の実施形態に示すように、拡張器内腔96は、近位端部92と遠位端部90との間で拡張器本体94の全体を通って延びることができる。拡張器内腔96は、針40の外側表面積よりわずかに大きな断面積を有し、その中に針40を受容するように構成される。針40は、拡張器内腔96内部でスライド可能に動くことができ、少なくとも部分的に、拡張器内腔96の遠位端部90から、拡張器内腔96の近位端部92から、または拡張器内腔96の両端部から、延びることができる。いくつかの態様では、針40は拡張器26より長くてよい。
【0053】
拡張器本体94は、遠位端部90に隣接してテーパー部分98を画定し得る。拡張器26は、外側断面積J2を定めることができ、これは、テーパー部分98が遠位方向DDに延びるにつれて減少する。図示の実施形態に示すように、テーパー部分98の最小断面積J2は、拡張器26の遠位端部90に位置し得る。いくつかの態様では、拡張器26は、約2mm~約6mmの外径91を有し得る。いくつかの例示的な態様(
図12B参照)では、拡張器26は、約4mm~約5mmの外径91を有し得る。他の例示的な態様(
図12A参照)では、拡張器26は、約2mm~約3mmの外径91を有し得る。拡張器26の特定のサイズは、カニューレ挿入システム10との意図した用途に左右されることが認識されるであろう。いくつかの態様では、使用される特定の拡張器26は、臍帯の脈管構造に左右される。
【0054】
テーパー部分98は、遠位端部90から、外側断面積J2が拡張器本体94の残部の外側断面積J2に比べて減少し始める、拡張器本体94上の位置に位置するテーパーの初めの部分まで測定された、特定の長さ93を有し得る。いくつかの態様では、テーパー部分98の長さ93は、約1mm~約12mm、約2mm~約11mm、約3mm~約10mm、約4mm~約9mm、または別の適切な長さとすることができる。いくつかの例示的な態様(
図12A参照)では、テーパー部分98の長さ93は、約4mmとすることができる。他の例示的な態様(
図12B参照)では、テーパー部分98の長さ93は、約9mmとすることができる。
【0055】
テーパー部分98は、テーパー部分98ではない拡張器本体94の残部の内径とは異なる内径95を有し得、または、代わりに、内径95は、テーパー部分98を含め、拡張器本体94全体にわたって同じとすることができる。いくつかの例示的な態様では、テーパー部分98の内径95は、約0.5mm~約2mmとすることができる。いくつかの特定の例示的な実施形態では、テーパー部分98の内径95は、約0.96mmとすることができる。
【0056】
拡張器26は、カニューレ挿入システム10における意図された適用に基づいて、前述した特定の態様に従ってサイズ決めされ成形され得る。カニューレ挿入システム10は、動脈血管または静脈血管にカニューレを挿入するのに利用され得るので、拡張器26の種々のパラメータが好ましくなり得る。例えば、カニューレ挿入システム10が動脈血管にカニューレを挿入するのに使用される態様では、静脈血管にカニューレを挿入するのに使用される拡張器より小さい拡張器を利用することが好ましくなり得る。いくつかの態様では、カニューレ挿入システム10が動脈血管にカニューレを挿入することが意図されている場合、拡張器26は、約4mmの長さ93を有するテーパー部分98を有し得る(例えば、
図12A参照)。拡張器26は、約3Fr~約17Fr、約5Fr~約15Fr、または別の適切なサイズ範囲とすることができる。拡張器のサイズは、カニューレ104のサイズに比べて決定され得る。いくつかの態様では、拡張器は、3、4、5、…、17Fr、または別の適切なサイズとすることができる。いくつかの例示的な態様では、カニューレ挿入システム10が動脈血管にカニューレを挿入することが意図されている場合、拡張器26は約4Fr~約11Frとすることができる。他の態様では、カニューレ挿入システム10が静脈血管にカニューレを挿入することが意図されている場合、拡張器26は、約9mmの長さ93を有するテーパー部分98を有し得る(例えば、
図12B参照)。これらの実施例の拡張器26は、約9Fr~約17Frとすることができる。拡張器先端のサイズおよび幾何学的外形の差は、拡張器を血管に入れる容易さを望ましいものにし、また、反対側の血管壁に意図せずに穴をあけるリスクを減少させる。
【0057】
図10および
図11を参照すると、拡張器26は、ハウジング220上または内部に配された拡張器アクチュエータ242を含む拡張器移動機構240によって、並進運動され得る。拡張器アクチュエータ242が第1の方向に動かされると、拡張器ハブ246およびその中の拡張器26は、カニューレを挿入されるべき血管に向かって、例えば遠位方向DDに動かされる。拡張器アクチュエータ242が第2の反対方向に動かされると、拡張器ハブ246およびその中の拡張器26は、血管から離れる方に、例えば近位方向PDに動かされる。いくつかの態様では、拡張器アクチュエータ242が動くと、拡張器ハブ246および拡張器26が反対方向に動き、例えば、拡張器アクチュエータ242を遠位方向DDに動かすと拡張器26が近位方向PDに動き、拡張器アクチュエータ242を近位方向PDに動かすと拡張器26が遠位方向DDに動く。
【0058】
いくつかの態様では、拡張器移動機構240は、ラックアンドピニオン歯車システム260をさらに含み、これは、ハウジング220内に配されており、拡張器ハブ246と係合しこれと共に動作するように構成されている。第1のピニオン262が、ハウジング220上に配され、その軸に沿って回転可能である。第1のピニオン262は、第1のラック264と係合し、第1のラック264を第1の方向D1に沿って動かすように構成される。第2のピニオン266が、ハウジング220上に配され、その軸に沿って回転可能である。第2のピニオン266は、第2のラック268と係合し、第2のラック268を第1の方向D1に沿って動かすように構成される。いくつかの態様では、第1のピニオン262は、第2のピニオン266に取り付けられ得、ピニオンのうちの一方が回転すると、他方のピニオンも回転する。ラックアンドピニオン歯車システム260は、両方のラックと係合する単一のピニオンを含み得るか、または、代わりに、2つ超のピニオンおよび2つ超のラックを含み得ることが、認識されるであろう。
【0059】
図18A~
図18Fを参照すると、第1の方向D1に沿った拡張器26の位置は、例えばやはり第1の方向D1に沿った、拡張器アクチュエータ242の動きによって制御され得る。拡張器アクチュエータ242が第1の位置、例えばその最近位位置にあるとき、拡張器26は、その意図された構成、例えば、その最遠位位置にある(
図18Aおよび
図18B)。拡張器アクチュエータ242が遠位方向DDに動かされるにつれて、前述した拡張器移動機構240内のラックアンドピニオン歯車システム260により、拡張器26は近位方向PDに動き得る(
図18Cおよび
図18F)。拡張器ハブ246および拡張器26の動きは、近位方向PDへの針組立体22(針と共に)の動きも引き起こし得る(
図18Cおよび
図18F)。
図5および
図5Aで最も良く分かるように、針ハブ52は、拡張器ハブ246が遠位方向DDまたは近位方向PDに動いた際に、針ハブ52も同じそれぞれの方向に動くように、拡張器ハブ246に接触し得る。例えば、
図18Cに示すように、拡張器ハブ246および針ハブ52の両方は、
図18Bにおけるそれらのそれぞれの位置より近位にある。
【0060】
図10~
図11Bに示すように、拡張器組立体25は、その上、例えば拡張器移動機構240上に配された、保持部材241を含み得る。保持部材241は、例えば第2の方向D2または第3の方向D3に、弾性的に変形可能である。
図11Aおよび
図11Bを参照すると、保持部材241は、ハウジング220上に画定された対応する拡張器組立体ブロック表面225と解放可能に係合して、拡張器組立体25が偶然動くのを防ぐように構成される。保持部材241は、拡張器組立体ブロック表面225に接触するように構成された保持表面243を画定する。例えば、拡張器26がその意図された構成(
図18Aおよび
図18Bなど)になるように拡張器組立体25が配されたとき、保持部材241は、ハウジング220の内側、例えば凹部222の中にあり、保持表面243はハウジング220とは接触していない(
図11A参照)。拡張器26がその後退構成(
図18Cに見られるものなど)になるように拡張器組立体25が動かされると、保持部材241は、凹部220の外側に出て、保持表面243は、第1の方向D1に沿って拡張器組立体ブロック表面225と一直線に位置付けられる(
図11B参照)。拡張器26が後退された後でユーザが拡張器アクチュエータ242を反対方向に後方へ動かそうとすると、保持表面243は、拡張器組立体ブロック表面225に接触し、そのような動きを妨げる。これにより、拡張器26が既に後退された後で拡張器26が偶然伸長することが妨げられる。このような動きが依然として望ましい場合、または、カニューレ挿入プロセスが完了した場合、拡張器組立体25は、その元の位置に戻されてよく、その位置では、拡張器26は、拡張器アクチュエータ242を近位方向PDに動かすと同時に、保持表面243が第1の方向D1に沿って拡張器組立体ブロック表面225ともはや一直線にならないように第3の方向D3において保持部材241に力を加える(例えば、押し下げる)ことによって、伸長される。
【0061】
カニューレ挿入システム10は、カニューレシステム28をさらに含み得、これは、一方の端部ではカニューレを挿入されるべき血管に、もう一方の端部では循環システムに、流体接続されるように構成される。
図13~
図17Aを参照すると、カニューレシステム28は、遠位端部100と、遠位端部100の反対側の近位端部102と、を有するカニューレ104を含み得る。カニューレ104は、カニューレ104によって画定されたカニューレ内腔106を含む。図示の実施形態に示すように、カニューレ内腔106は、近位端部102および遠位端部100のうちの一方においてカニューレ104に入り、カニューレ104の全体を通って延び、近位端部102および遠位端部100のうちの他方においてカニューレ104から出ることができる。
【0062】
カニューレ104は、遠位端部100に隣接してテーパー部分108を画定し得る。カニューレシステム28は、断面積J3(
図17参照)を定めることができ、これは、テーパー部分108が遠位方向DDに延びるにつれて減少する。テーパー部分108の最小断面積J3は、カニューレシステム28の遠位端部100に位置し得る。
【0063】
カニューレ104は、変形に抵抗するように構成された補強部分110を画定し得る。補強部分110は、遠位端部100に隣接していてよい。補強部分110は、引き伸ばしに抵抗するように構成された構成要素、例えばポリエチレンのワイヤもしくは糸またはステンレス鋼のワイヤを含み得る。これにより、カニューレ104が血管に挿入されていて、クランプ機構が血管をカニューレシステム28に固定するように起動されるときに、補強部分110が引き伸ばされるのを防ぐ。補強部分110は、カニューレ104の一部であってよく、または、遠位端部100と近位端部102との間のカニューレ104の全体を構成し得る。補強部分110は、引き伸ばしに抵抗する1つ以上の材料、例えば、ニチノール、ステンレス鋼、ポリアラミド合成メッシュ、例えばKEVLAR(登録商標)(デラウェア州ウィルミントンのE.I. Du Pont de Nemours and Companyから入手可能)、高弾性ポリエチレン(例えば、DYNEEMA(登録商標))、または他の適切な材料を含み得る。このように、カニューレ104は、その遠位端部100の近くにおいて可撓性がより低く、血管付近での剛性を増大することができ、よって、一実施形態では、カニューレ104の遠位の25%、さらに好ましくは50%は、カニューレ104の残りの近位部分より可撓性が低い。
【0064】
いくつかの実施形態では、拡張器26およびカニューレ104は、テーパー状遠位端部を有する単一の構成要素とすることができる。テーパー状遠位端部の内径は、針本体42の外径とほぼ同じか、または名目上はこれより大きくてよく、針本体42はテーパー状遠位端部の中に配され得る。このような実施形態における組み合わせの拡張器およびカニューレ構成要素のテーパー状遠位端部は、変形可能であるように構成され得、組み合わせの拡張器およびカニューレ構成要素が血管内部に配置されたときに、テーパー状端部は、その長さに沿ってほぼ一定の内径のボアを作り出すように拡張され得る。この組み合わせの構成要素は、本出願全体にわたり記載されるような、別々の拡張器26およびカニューレ104の機能性に匹敵する機能性を提供し得ることが、認識されるであろう。
【0065】
カニューレシステム28は、カニューレ104に接続するように構成されたY-コネクタ190を含み得る。Y-コネクタは、カニューレシステム28を2つの近位部分に分割する。第1の近位部分194は、その中を通って延びる第1の近位チャネル206を画定し、カニューレ挿入デバイス20と連動および接続するように構成される。第2の近位部分196は、その中を通って延びる第2の近位チャネル208を画定し、外部循環回路400(
図25参照)、例えば体外式膜型人工肺(ECMO)システムの1つ以上の構成要素に接続するように構成される。第2の近位部分196は、チューブ28bに接続され得、チューブ28bは次に、外部循環回路400に接続し得る。Y-コネクタ190の遠位部分192は、遠位チャネル210を画定し、第1の近位部分194および第2の近位部分196の反対側に配され、例えば近位端部102において、カニューレ104と連通する。遠位チャネル210は、カニューレ内腔106と、また第2の近位チャネル208と、流体連通している。遠位チャネル210と第1の近位チャネル206との間の流体連通は、可逆であり、使用中に開いたり閉じたりされ得る。
図14は、第2の近位チャネル208がカニューレ内腔106と同軸である実施形態を描いているが、他の実施形態では、第1の近位チャネル206をカニューレ内腔106と同軸になるように配置することができる。また、針40および拡張器26は、第1の近位チャネル206からカニューレ内腔106までの挿入経路をたどるように曲がるのに十分に可撓性(例えば、弾性的に可撓性)であってよい。
【0066】
Y-コネクタ190は、カニューレ104とは別個の構成要素であってよく、または、いくつかの態様では、Y-コネクタ190およびカニューレ104は、モノリシックな一体部品として形成され得る。Y字型コネクタを利用すると、針40および拡張器26は第1のチャネルを通して導入され、カニューレを挿入された血管からの液体(例えば、血液)は、異なるチャネルを通って動く。これにより、血液の損失、漏れ、感染症、またはカニューレシステム28もしくは任意の接続された管への損傷が妨げられる。これにより、カニューレ挿入プロセスと、カニューレに血液を流すこととの間の移行がさらに容易になり、組立体の少なくとも一部が、カニューレ挿入プロセス中に外部の流れ回路に接続される。いくつかの態様では、Y-コネクタ190の少なくとも一部が、補強部分110を含み得る。
【0067】
いくつかの態様では、カニューレ104全体、Y-コネクタ190、およびチューブ28bはすべて、1つの構成要素として成型(例えば、浸漬成型)されている、単一の一体部品とすることができる。このような一体的構築は、血液流路に沿った移行部を取り除き、それにより血塊形成、漏れ、または細菌増殖部位の事例を減少させることによって、血液の健康に有益となり得る。Y-コネクタ190は、引き伸ばしに抵抗する1つ以上の材料、例えば、ニチノール、ステンレス鋼、ポリアラミド合成メッシュ、例えばKEVLAR(登録商標)(デラウェア州ウィルミントンのE.I. Du Pont de Nemours and Companyから入手可能)、高弾性ポリエチレン(例えば、DYNEEMA(登録商標))、または他の適切な材料を含み得る。具体的には、いくつかの態様では、遠位部分192は、前記に挙げた引き伸ばし抵抗材料を含み得、第1の近位部分194および第2の近位部分196は、引き伸ばし抵抗材料を含まなくてよい。
【0068】
第1の近位部分194はシール198(
図15参照)を画定し、針40および/または拡張器26は、カニューレ挿入デバイス20がカニューレシステム28と係合されたときに、シール198を取り外し可能に通過し得る。シール198は、針40および拡張器26が通過するのを可能にするように可逆的に開くように構成され、また、針40および拡張器26がカニューレシステム28から取り外されると閉じるように構成されることが、認識されるであろう。シール198は、針40または拡張器26の力に応答して変形し、かつ針40または拡張器26が取り外されるとその非変形状態に戻るように構成された、弾力性または弾性材料を含み得る。シール198は、シール198が閉じるとカニューレ内の液体の通過が妨げられるように、製造されなければならない。シール198が開いているとき、遠位チャネル210は、第1の近位チャネル206および第2の近位チャネル208の両方と流体連通し得る。シール198が閉じているとき、遠位チャネル210は第2の近位チャネル208のみと連通し得る。いくつかの実施形態では、シール198は、第1の近位部分194内部のY-コネクタ190の壁におけるスリットシール198とすることができる。いくつかの実施形態では、シール198は、針40および拡張器26によって貫通されるように構成された、第1の近位部分194内部のY-コネクタ190の壁における隔壁シールとすることができる。
【0069】
剛性ケーシング200が、Y-コネクタ190に構造を提供するためにY-コネクタ190上に配され得る。ケーシング200は、任意の適切な形状、例えば、Y-コネクタ190の形状を補完するY字型であってよい。ケーシング200は、一体部品であってよく、または、いくつかの態様では、別々の構成要素、例えば、第1の近位部分194上に配された第1のケーシング構成要素と、第2の近位部分196上に配された第2のケーシング構成要素と、を含み得る。剛性ケーシング200は、ポリカーボネートなどのプラスチックで形成され得る。
【0070】
例えば
図13に示すように、剛性ケーシング200は、カニューレシステム28をカニューレ挿入デバイス20と解放可能に係合させるために、剛性ケーシング上に配されたロック構成要素202を含み得る。カニューレ挿入デバイス20は、相補的ロック構成要素224(
図6および7参照)を含み、これは、ロック構成要素202と相互作用して、カニューレシステム28をカニューレ挿入デバイス20のハウジング220に解放可能にロックし、偶然の移動、分離、相対的な並進運動、または相対回転を防ぐように構成される。ロック構成要素202、224は、突出部、レール、フック、ラッチ、または別の機構など、任意の適切なロック機構とすることができる。ロック係合は、カニューレシステム28をカニューレ挿入デバイス20から切り離すように逆転され得る。
【0071】
カニューレ挿入デバイス20を示す
図1~
図7Aを再び参照すると、解放機構226が、カニューレ挿入デバイス20のハウジング220上に配され、ハウジング220上でのロック構成要素224の動きを作動させるように構成され得る。ハウジング220上のロック構成要素224が動かされると、ケーシング200上のロック構成要素202から係合解除され、よって、カニューレシステム28をカニューレ挿入デバイス20から取り外すことができる。解放機構226は、ボタン、スイッチ、ラッチ、または別の適切な機構とすることができる。いくつかの態様では、第2の解放機構226bが、ハウジング上に配され得る。第2の解放機構226bは、主要解放機構226が構成要素を十分に切り離せなかった場合、または、別の緊急事態が生じた場合に、使用され得る。
【0072】
いくつかの態様では、ケーシング200は、第1の近位部分194、第2の近位部分196のうちの1つ、または両方の近位部分の上にガイド270をさらに含み得る(例えば、
図13~
図15参照)。ガイド270は、凹部222の形状に対応しており、カニューレシステム28は、所望の向きのみでその中に挿入可能となる。例えば、ガイド270は、第2の近位部分196上に配され得、第2の近位部分196は、不注意に凹部222に挿入されることも、針組立体22または拡張器26と係合することもできない。これにより、ユーザのエラーが妨げられ、カニューレシステム28またはカニューレ挿入デバイス20を損傷する可能性が減り、不適切な血液循環、血液損失、気泡の侵入、または漏れをもたらし得る、誤った接続が妨げられる。
【0073】
いくつかの態様では、いったんカニューレ104が血管に挿入されたら、カニューレを挿入された血管を、カニューレ104に固定することが有利である。クランプ機構を使用して、カニューレ104を血管に解放可能に固定することができる。カニューレ104が血管に間接的に、例えば臍帯の一部に接触することによって、固定され得ることが認識されるであろう。いくつかの態様では、クランプ機構は、臍帯鞘、臍帯内部のホウォートンゼリー、または血管自体に接触し得る。いくつかの態様では、クランプ機構は、カニューレシステム28に、または具体的にはカニューレ104に、取り付けられる。再び
図13~
図17Aを参照すると、1つ以上のコレットジョー170が、カニューレ104上にまたはこれに隣接して配され得る。コレットジョー170は、コレットジョー170がカニューレ104に取り付けられる、(
図14に見られる)ベース172と、ベース172の反対側のヘッド174と、ベース172とヘッド174との間に延びる変形可能なアーム176と、を含み得る。変形可能なアーム176は湾曲していてよく、ベース172がカニューレ104に取り付けられてこれに接触すると、ヘッド174はカニューレ104から離間する。この配置では、コレットジョー170は付勢されて開いている。いくつかの態様では、コレットジョー170は、チタンから形成され得る。他の態様では、コレットジョー170は、ステンレス鋼、例えば306ステンレス鋼または316ステンレス鋼から形成され得る。
【0074】
図17の例示的な態様に描かれるように、係合中、変形可能なアーム176は、その長さに沿って屈曲され、かつ真っ直ぐにされ得、ヘッド174は、カニューレ104に向かって動かされる。カニューレを挿入された血管2の一部(透視図で示す)は、カニューレ104とヘッド174との間に配され得、変形可能なアーム176がカニューレ104に向かって屈曲されると、血管2の内壁は、ヘッド174の内側表面によってカニューレ104の外側表面に押し付けられる。これにより、血管2がカニューレ104に対して適所に固定される。前述したように、ヘッド174は、血管2に直接接触するのではなく、臍帯1の別の部分、例えば臍帯鞘を押すことによって、血管2をカニューレ104に押し付け得ることが、理解されるであろう。
【0075】
依然として
図13~
図17Aを参照すると、いくつかの態様では、変形可能なアーム176の屈曲は、カニューレ104に沿ってスライド可能に動くように構成されたコレットスリーブ178によって作動され得る。変形可能なアーム176は、カニューレ104とコレットスリーブ178との間に配され得る。コレットスリーブ178は、遠位端部100に向かって動かされると、変形可能なアーム176の上をスライドし、これに力を加え、変形可能なアーム176を変形させ、かつ真っ直ぐにする。コレットスリーブ178により加えられる力は、変形可能なアーム176における曲げに対する固有の抵抗よりも大きくしなければならない。コレットスリーブ178が遠位端部100から離れる方に動かされると、変形可能なアーム176に対する力が取り除かれ、変形可能なアームは、その非変形構成に戻る。いくつかの態様では、物理的停止部180が、コレットジョー170の一部から延びて、コレットスリーブ178が物理的停止部を通り過ぎるのを妨げることができる。いくつかの態様では、停止部180が、ヘッド174上、変形可能なアーム176上、ベース172上、またはカニューレ104上に配され得る。
【0076】
コレットジョー170は、カニューレを挿入された血管の保持を容易にする特徴を含む。いくつかの態様では、1つ以上の歯182(
図16および
図17参照)が、ヘッド174上に配され得、コレットスリーブ178が変形可能なアーム176を変形させて、ヘッド174を血管と接触させると、歯182は、臍帯1に食い込むか、臍帯1を突き刺すか、または臍帯1にかみつく。歯182は、臍帯の臍帯鞘、血管自体、または臍帯内に存在する別の接続組織に食い込み得る。歯182は臍帯に食い込んだり、臍帯を完全に通ってかみついたりする必要がないことが、認識されるであろう。このようなかみつきまたは食い込みにより、血管がさらに固定され、例えばカニューレ104が血管に挿入されて組織に固定された後で近位方向PDに引っ張られた場合に、血管がコレットジョー170またはカニューレ104に対して並進運動または回転するのが妨げられる。いくつかの態様では、歯182は、ヘッド174に対して実質的に直交していてよく、または、代わりに、例えば、ヘッド174に対してある角度で配されてよく、歯182は、カニューレ104の遠位端部100から離れる方に、ヘッド174から延びる。歯182は、血管2の周囲の組織(例えば、臍帯鞘)または血管2自体に食い込み、カニューレ挿入プロセスまたはその後の使用中に血管2がカニューレシステム28から移動したり引き離されたりするのを防ぐことができる。本明細書の例示的な態様は、臍帯内の血管を対象としているが、開示されるシステムは、ヒトまたは他の動物の身体の他の部分で利用され得ることが、理解されるであろう。「組織」とは臍帯組織、または臓器を含む他の生理学的組織を指し得ることが、さらに認識されるであろう。
【0077】
いくつかの態様では、血管2をカニューレ104の遠位端部100のできるだけ近くに固定して、遠位端部100と、カニューレシステム28に固定された血管2の部分との間の空間を減らすことが好ましくなり得る。これにより、その空間内に血液が集まることが減り、血液が遠位端部100と固定された血管2の部分との間に蓄積され、圧力を高めると共に血管を引き伸ばし拡張させる、血管2の膨れ上がりが低減される。これは、カニューレシステム28からの血管2の望ましくない分離、ならびに血液の停滞、凝血、感染症、不十分な血流、血液損失、および/または、漏れをもたらし得る。
図16は、ロック解除位置にあるコレットジョー170を描き、ロック解除位置では、ヘッド174は、カニューレ104から離間されており、
図17は、ロック位置にあるコレットジョー170を描き、ロック位置では、ヘッド174は、ヘッド174とカニューレ104との間で血管2をカニューレ104にクランプする。コレットジョー170は、1つ、2つ、3つ、4つ、または別の適切な数の変形可能なアーム176と、それぞれのヘッド174と、を有し得る。いくつかの例示的な態様では、コレットジョー170は、2つの変形可能なアーム176と、それぞれのヘッド174と、を有する。コレットジョー170は、血管2の周囲の外部組織(例えば、臍帯またはホウォートンゼリー)を締め付けることによって、血管2にクランプアクションを加えるのに使用され得、血管壁を直接クランプする必要はないことが、理解されるであろう。
【0078】
いくつかの態様では、バネロック179が、変形可能なアーム176上に配され得る(
図17A参照)。バネロック179は、コレットジョー170がロック解除構成にあるとき、コレットスリーブ178により圧縮して保持される。コレットスリーブ178が遠位方向DDに動かされて、変形可能なアーム176を変形させて、カニューレ104を血管2に固定させるとき、コレットスリーブ178は、バネロック179を横切って通り過ぎ、バネロック179を圧縮前の状態に戻す。バネロック179は次に、コレットスリーブ178(不図示)の近位に位置付けられ、物的障壁として作用して、コレットスリーブ178が近位方向PDに動くのを防ぐ。バネロック179は、これをカニューレ104に向かって押し、バネロック179の上でコレットスリーブ178を近位方向PDにスライドさせて戻すことによって、圧縮構成に戻ることができる。例えば、カニューレ104を血管から取り外す必要がある場合、バネロック179を動かして、コレットスリーブ178をスライドさせて戻すと、カニューレ挿入デバイス20は、「リセット」されて、コレットジョー170を組織から係合解除する。
【0079】
ハウジング220は、コレットジョー170を動かすための機構を含み得る。いくつかの態様では、この機構は、前述した拡張器アクチュエータ242の一部であるか、またはこれに接続されていてよい。再び
図1~
図7Aを参照すると、ハウジング220上に配された拡張器アクチュエータ242は、ハウジング220に対して遠位方向DDおよび近位方向PDに移動可能で、コレットジョー170を動かすことができる。拡張器アクチュエータ242が遠位方向DDに動かされると、コレットジョー170は、血管2がコレットジョー170とカニューレシステム28との間に固定されていないロック解除位置から、血管2がコレットジョー170とカニューレシステム28との間に固定されるロック位置まで、動くことができる。拡張器アクチュエータ242は、コレットスリーブ178に接触するように構成され得、拡張器アクチュエータ242が動くと、コレットスリーブ178が動く。コレットスリーブ178はまた、ロック位置からロック解除位置に動かされ得、この動きは、拡張器アクチュエータ242を前述したのとは反対方向に動かすことによって、または代わりに、手でコレットスリーブ178を動かす(すなわち、ユーザがコレットスリーブ178を動かす)ことによって、達成され得る。
【0080】
いくつかの態様では、コレットスリーブ178は、ハンドル184を含み得、これは、コレットスリーブ178を並進運動させるために把持されるか、押されるか、または引っ張られ得る。いくつかの態様では、拡張器アクチュエータ242は、コレットスリーブ178に取り付けられた、ハンドル184に接触し、これを動かすように構成され得る(
図13~
図15参照)。いくつかの態様では、拡張器アクチュエータ242は、ハンドル184に接触するように構成されたコレット係合表面252を含む(例えば、
図1、
図2、
図6、および
図7参照)。コレット係合表面252は、ハンドル184が極端に近位方向PDに動くのを防ぐためのブロック表面としても役立ち得る。補強部分110は、コレットスリーブ178がカニューレ104に沿って動かされるときに引き伸ばしを防ぐことができ、これは、カニューレシステム28の所望のサイズおよび形状を維持するのに役立ち、構成要素が損傷したり、偶然外れたりする可能性を低減する。
【0081】
コレットジョー170は、カニューレシステム28の補強部分110上にまたはこれに隣接して配され得、コレットジョー170が閉鎖位置にあり、血管2がカニューレシステム28に固定されると、コレットジョー170により血管2を通じてカニューレシステム28に加えられるクランプ力は、カニューレシステム28の補強部分110を変形させない。本開示の一態様によると、補強部分110は、コレットジョー170を受容すると共に、円筒形状を維持するように構成される。
【0082】
カニューレ挿入システム10を組み立てる方法は、針40および針アクチュエータ50が並進運動をロックされるおよび回転をロックされる、のうちの少なくとも一方(または両方)となるように、針40を針アクチュエータ50に連結するステップを含み得る。針40を針アクチュエータ50に連結するステップは、針40の少なくとも一部をハブ52の凹部56に位置付けるステップを含み得る。針40を針アクチュエータ50に連結するステップは、針40の少なくとも一部を凹部56に固定するステップをさらに含み得る。針40の少なくとも一部を凹部56に固定するステップは、接着剤を使用するステップ、オーバーモールドするステップ、溶接するステップ、ねじ山を切るステップなどを含み得る。
【0083】
カニューレ挿入システム10を組み立てる方法は、拡張器26を拡張器ハブ246に連結するステップを含み得、拡張器26および拡張器ハブ246は、並進運動をロックされるおよび回転をロックされる、のうちの少なくとも一方となる。拡張器26の少なくとも一部を拡張器ハブ246に固定するステップは、接着剤を使用するステップ、オーバーモールドするステップ、溶接するステップ、ねじ山を切るステップなどを含み得る。
【0084】
カニューレ挿入システム10を組み立てる方法は、針40および針アクチュエータ50が拡張器26およびハウジング220の両方に対して並進運動可能となるように、針40、針アクチュエータ50、拡張器26、拡張器アクチュエータ242、およびハウジング220を連結するステップを含み得る。本開示の一態様によると、針40、針アクチュエータ50、拡張器26、拡張器アクチュエータ242、およびハウジング220を連結するステップは、針40を針アクチュエータ50に連結するステップの後、および拡張器26を拡張器ハブ246に連結するステップの後で行われる。針40、針アクチュエータ50、拡張器26、拡張器アクチュエータ242、およびハウジング220を連結するステップは、針40を拡張器内腔96に挿入し、針40を拡張器内腔96内部で拡張器26に対して遠位方向DDに並進運動させるステップを含み得る。
【0085】
カニューレ挿入システム10を組み立てる方法は、例えば、付勢部材62が圧縮可能なバネまたは弾性要素である態様において、付勢部材62を圧縮するステップを含み得る。
【0086】
カニューレ挿入システム10を組み立てる方法は、近位方向PDへのハウジング220に対する針組立体22の動きを妨げるステップを含み得る。本開示の一態様によると、このステップは、前述したように停止表面60をブロック表面124と当接させるステップを含み得る。このステップは、遠位方向DDにおいて針組立体22に力を加えることにより行われ得る。フラッシュバックチャンバ231は、ユーザによって押されて、針組立体22を遠位方向DDに動かすことができる。
【0087】
組み立てる方法は、カニューレシステム28をハウジング220に連結するステップを含み得る。本開示の一態様によると、カニューレシステム28をハウジング220に連結するステップは、ハウジング220を遠位方向DDにカニューレシステム28に対して動かすのが妨げられ、ハウジング220を近位方向PDにカニューレシステム28に対して動かすのが妨げられないように、カニューレシステム28をハウジング220に連結するステップを含み得る。本開示の一態様によると、カニューレシステム28をハウジング220に連結するステップは、ハウジング220をカニューレシステム28に対して遠位方向DDおよび近位方向PDの両方に動かすのが妨げられるように、カニューレシステム28をハウジング220に連結するステップを含む。カニューレシステム28をハウジング220に連結するステップは、拡張器26をカニューレ内腔106に挿入し、拡張器26をカニューレ内腔106内部でカニューレシステム28に対して遠位方向DDに並進運動させるステップを含み得る。
【0088】
カニューレシステム28をハウジング220に連結するステップは、ハウジングの凹部222に挿入可能となるようにカニューレシステム28を方向付けるステップを含み得る。いくつかの態様では、ハウジング220に対するカニューレシステム28の特定の向きが望ましい場合、このステップは、ガイド270を、例えばハウジング220の形状によって画定された凹部222内の開口部と整列させるステップをさらに含み得、そのため、カニューレシステム28は凹部222内に入ることができる。
【0089】
組み立てる方法は、Y-コネクタ190の第1の近位部分194をハウジング220と係合させるステップも含み得る。針40、拡張器26、またはその両方は、第1の近位チャネル206の中に、シール198(例えば、スリットシール198)を通って、遠位チャネル210の中に、そしてカニューレ内腔106の中に挿入され得る。いくつかの態様では、組み立てる方法は、カニューレシステム28がハウジングに対して並進運動または回転するのを妨げられるように、ケーシング200をハウジング220と係合させるステップをさらに含み得る。ケーシング200が1つ以上のロック構成要素202を含み、ハウジングが相補的なロック構成要素224を含む、いくつかの態様では、ケーシング200をハウジング220と係合させるステップは、ケーシング200上のロック構成要素202を、ハウジング220上のそれぞれの対応するロック構成要素224と固定して、カニューレシステム28をハウジング220にロックするステップをさらに含み得る。いくつかの態様では、ロック構成要素202をロック構成要素224と係合させるステップにより、可聴クリック音が生じ得、よって、連結アクションがうまく完了したという聴覚フィードバックをユーザに提供する。
【0090】
カニューレシステム28は、必要な液体でプライミングされ、血管に接続される準備ができた状態になることができる。組み立てる方法は、カニューレシステム28をプライミングするステップをさらに含み得る。カニューレシステム28をプライミングするステップは、カニューレ104内に、血液、血漿、生理食塩水、PlasmaLyte、ならびに/またはヒトの生理学的血漿電解質の濃度、重量オスモル濃度、およびpHを模倣する組成物を有する溶液を導入するステップを含み得る。導入される1つまたは複数の液体は、所望の温度、圧力、およびガス濃度にされるか、または所望の温度、圧力、およびガス濃度で維持され得る。前述したパラメータの特定の値は、意図した用途の特定の要件に左右されることが認識されるであろう。プライミングするステップは、カニューレ104が液体で完全に満たされるように気泡をカニューレ104から除去するステップを含み得る。
【0091】
カニューレ挿入システム10を組み立てる方法が完了した後、カニューレ挿入デバイス20およびカニューレシステム28は、例えば
図1および
図2に示すような、組み立て構成を画定し得る。本開示の一態様によると、組み立て構成では:1)針40および針アクチュエータ50が並進運動をロックされるように、針40が針アクチュエータ50に連結され;2)拡張器26およびハウジング220が並進運動をロックされるように、拡張器26およびハウジング220が連結され;3)針組立体22が拡張器26に対して並進運動可能になるように、針組立体22が拡張器に連結され;4)カニューレシステム28が遠位方向DDにおいてハウジング220に対して並進運動可能であり、カニューレシステム28が近位方向PDにおいてハウジング220に対して並進運動をロックされるように、カニューレシステム28がハウジング220に連結される。
【0092】
所望の使用の後、方法は、カニューレシステム28をハウジング220から分離するステップをさらに含み得る。分離するステップは、解放機構226を作動させて、ケーシング200上のロック構成要素202をハウジング220上の対応するロック構成要素224から係合解除するステップを含み得る。いくつかの態様では、方法は、主要解放機構226の代わりに第2の解放機構226bを作動させることによってカニューレシステム28をハウジング220から分離する代替的なステップを含み得る。これは、解放機構226がカニューレシステム28をハウジング220から分離しないか、または分離できない場合に、例えば緊急事態の状況において、行われ得る。いくつかの態様では、解放機構226または第2の解放機構226bを作動させるステップにより可聴クリック音が生じ、よって、分離アクションがうまく完了したという聴覚フィードバックをユーザに提供する。ロック構成要素202、224を互いから係合解除した後、カニューレシステム28は、凹部222から取り出され、ハウジング220から出ることができる。針40は、カニューレ内腔106から取り出され、シール198を通して引き出され、第1の近位チャネル206の外に取り出され得る。拡張器26は、カニューレ内腔106から取り出され、シール198を通して引き出され、第1の近位チャネル206の外に取り出され得る。
【0093】
いくつかの態様では、組み立てる方法は、取り付け部品212を第1の近位チャネル206に挿入するステップをさらに含み得る(取り付け部品212を示す
図13および
図15、ならびに第1の近位チャネル206を示す
図14参照)。取り付け部品212は、第1の近位チャネル206から血液が流出するのを妨げるためのキャップまたはプラグとすることができる。いくつかの態様では、第1の近位部分194は、取り付け部品212と第1の近位部分194との間に液密シールを作るために取り付け部品212と係合するように構成されたシール要素204を含み得る。シール要素204は、クロススリットシール(cross-slit seal)とすることができる。シール要素204および取り付け部品212は一緒に、液密シールを形成し得る。シール198、およびシール要素204と取り付け部品212との間に形成されたシールは、カニューレ挿入プロセスが完了した後で、液体がカニューレ内腔106から第1の近位チャネル206に入ること、または、デブリが第1の近位チャネル206からカニューレ内腔106に入ることを防ぐのに役立つ。
【0094】
カニューレ挿入デバイス20は、組み立て構成において、ハウジング220がカニューレシステム28に当接し、ハウジング220がカニューレシステム28に対して第3の方向D3に動くのが妨げられるように、構成され得る。
【0095】
カニューレ挿入システム10の組み立て構成は、針40および拡張器26が遠位方向DDに延びた、(例えば、
図18Aおよび
図18Dに示すような)伸長構成を含み得る。組み立て構成は、針40が前述したように後退位置にあり、拡張器26が伸長位置にある、第1の後退構成(
図18Bおよび
図18E)をさらに含み得る。組み立て構成は、針40および拡張器26の両方が前述したような後退位置にある、第2の後退構成(
図18Cおよび
図18F)をさらに含み得る。
【0096】
第1および第2の後退構成では、針40の遠位端部46は、拡張器内腔96内部に位置付けられ、針40の遠位端部46は、拡張器26の遠位端部90の近位に位置付けられる。本開示の一態様によると、カニューレ挿入システム10は、ユーザが片手で、カニューレ挿入システム10を伸長構成から第1の後退構成に、また第1の後退構成から伸長構成に移行させることができるように、構成される。ユーザはさらに、片手で、カニューレ挿入システム10を第1の後退構成から第2の後退構成に、また第2の後退構成から第1の後退構成に移行させることもできる。カニューレ挿入システム10が片手で移行されるように構成されていることで、ユーザのもう一方の手は、例えば、挿入処置中に臍帯を自由に保持することができる状態のままである。
【0097】
第1および第2の後退構成では、停止表面60は、ブロック表面124から離間されていてよい。これらの後退構成では、付勢部材62により加えられた付勢力は、ハウジング220に対する遠位方向DDへの針40の動きに抵抗する。付勢部材62により加えられる付勢力より大きい力を、カニューレ挿入デバイス20に、付勢力の方向とは反対の方向に加えると、針40がハウジング220に対して遠位方向DDに動き、それによって、カニューレ挿入デバイス20を後退構成から伸長構成に移行させることができる。
【0098】
伸長構成では、針40の遠位端部46は、拡張器内腔96の外側に位置付けられ、針40の遠位端部46は、拡張器26の遠位端部90の遠位に位置付けられる。伸長構成では、停止表面60はハウジング220のブロック表面124に当接し、ハウジング220に対して近位方向PDへの針40の動きは、停止表面60とブロック表面124との干渉により妨げられる。
【0099】
本開示の一態様によると、カニューレ挿入システム10は、組み立てられて、後退構成で手術室に運ばれ得る。第1または第2の後退構成では、針40の遠位端部46は、拡張器26よって囲まれ、よって、針40の遠位端部46が損傷する可能性が低下し、また、針40の鋭利な遠位端部46によってカニューレ挿入システム10のユーザがけがをする可能性が低下する。あるいは、カニューレ挿入システム10は、カニューレシステム28がカニューレ挿入デバイス20から分離されるように、ユーザに提示されてもよい。いくつかの態様では、カニューレシステム28は、前述したようにカニューレ挿入デバイス20と係合される前に、プライミングされ得る。いくつかの態様では、カニューレ挿入デバイス20は、拡張器26が伸長位置にあり、針40が後退位置にあり、針先端部66が拡張器内腔96の内側にある、第1の後退構成で、ユーザに送達され得る。
【0100】
使用方法は、カニューレ挿入デバイス20を第1の後退構成から伸長構成に移行させるステップを含み得る。ユーザは、針40の遠位端部46が拡張器内腔96の外側に動き、第1の方向D1に沿って拡張器26の遠位端部90の遠位に位置付けられるまで、および針アクチュエータ50上の停止表面60が第1の方向D1に沿ってブロック表面124の遠位に位置付けられるまで、針40を遠位方向DDに動かすために針組立体22に負荷力を加えることができる。例えば、いくつかの例示的な実施形態では、ユーザは、フラッシュバックチャンバ231またはプラグ233に力を加えることができる。前述したように、いくつかの態様では、ハウジング220は、近位端部221が開いていてよく、ユーザは、指または親指をハウジング220に挿入することができる。フラッシュバックチャンバ231またはプラグ233に力を加えるため、ユーザは、1本以上の指をハウジング220に(例えば、半透明部分230を含むハウジング220の部分に)挿入し、フラッシュバックチャンバ231を押すことができる。加えられた力は、付勢部材62により反対の近位方向PDに加えられている力よりも大きくしなければならない。付勢部材62は、圧縮され得、または伸長され得る。針アクチュエータ50が遠位方向DDにブロック表面124を通り過ぎると、ブームアーム54の遠位端部57および針アクチュエータ50は第2の方向D2に動き、それによって、停止表面60およびブロック表面124が第1の方向D1に沿って整列される。ユーザは、停止表面60が動かされてブロック表面124と一直線になった後、針組立体22を押すのをやめることができる。この位置で、カニューレ挿入デバイス20は伸長構成(
図18Aおよび
図18D)にある。いくつかの態様では、ユーザは、カニューレ挿入デバイス20が適切な伸長構成にあるという表示、例えば可聴クリック音または触覚フィードバックを受信し得る。
【0101】
針アクチュエータ50、および特にブームアーム54は、変形可能であるが弾性または弾力性のある材料で形成され得、そのため、ブームアーム54は、力が加えられると変形され得るが、力が取り除かれると変形していない状態に戻ることもできる。力Fが針アクチュエータ50の遠位端部57において作動表面58に加えられると、ブームアーム54は、例えば第2の方向D2とは反対の第3の方向D3に、変形される。この力が取り除かれると、その変形していない状態に戻るよう付勢された、ブームアーム54は、遠位端部57、および取り付けられた針アクチュエータ50を第2の方向D2に動かす。
【0102】
使用方法は、遠位端部46(すなわち、針先端)が拡張器26の遠位端部90を越えて遠位に延びるように針40が延びた伸長構成にカニューレ挿入デバイス20がある間に、カニューレ挿入デバイス20を血管2、例えば臍帯内の血管に向かって前進させるステップを含み得る。
図19を参照すると、使用方法は、針40の遠位端部46で血管2の第1の壁4に穴をあけるステップをさらに含み得る。図示のとおり、カニューレ挿入デバイス20の組み立て構成は、先端部66が第2の方向D2にベース端部65から離間するように針40が「下方に傾いて」方向付けられることを含み得、先端部66は、ベース端部65が第2の方向D2に関して作動表面58から離れるよりも、第2の方向D2に関して作動表面58の近くにある。あるいは、カニューレ挿入システム10は、カニューレ挿入デバイス20が組み立て構成にあるとき、針が(下方に傾くのとは反対に)「上方に傾いて」方向付けられることを含み得る。あるいは、カニューレ挿入システム10は、カニューレ挿入デバイス20が組み立て構成にあるとき、針が上方にも下方にも傾いていない向きで方向付けられることを含み得る。
【0103】
図示のとおり、血管2の第1の壁4に穴をあけるステップは、針40の中心軸49から血管2の第1の壁4まで測定される角度βが約5°~約60°、約10°~約45°、または約15°~約30°となるように、カニューレ挿入デバイス20を血管2に対して方向付けるステップを含む。カニューレ挿入デバイス20は、ベース端部65から拡張器26の遠位端部90まで第1の方向D1に沿って測定された長さL2を定めることができる。本開示の一態様によると、長さL2は、約1.5mm~約2mmとすることができる。あるいは、長さL2は、1.5mm未満または2mm超で、カニューレ挿入デバイス20がさまざまなサイズの血管のために構成可能になることができる。カニューレ挿入デバイス20は、長さL2が、血管2のバックウォールの可能性を最小限に抑えつつ、ベベル64全体の血管への挿入を可能にするのに十分大きくなるように、構成され得る。針40の挿入角度は、適用ごとに大きく変化し得ることが認識されるであろう。例えば、臍帯内の血管は、さまざまな異なる方法で方向付けられ得、よって、種々の挿入角度を必要とする。このような血管のいくつかの例示的で非限定的な実施例は、
図24Aおよび
図24Bに示されている。
図24Aは、例えば、動脈血管にカニューレを挿入するステップを描き、
図24Bは、静脈血管にカニューレを挿入するステップを描いている。これらの図は、図画描写であり、カニューレ挿入プロセスに関与するすべての構成要素を示すわけではないことが理解されるであろう。特定の挿入角度にもかかわらず、各血管のカニューレ挿入プロセスは、好ましくは、血管自体を損傷せずに、血管がカニューレ104に適切に固定され得るように、実施される。
【0104】
使用方法は、針40の先端部66および針40のベース端部65の両方が血管2内部に位置付けられるまで、血管2に対して遠位方向DDにカニューレ挿入デバイス20を前進させるステップをさらに含み得る。使用方法は、針40の先端部66が血管2の第2の壁6に穴をあける前に、血管2に対する、遠位方向DDへのカニューレ挿入デバイス20の動きを停止するステップをさらに含み得る。
【0105】
使用方法は、針40の先端部66、針40のベース端部65、および拡張器26の遠位端部90がそれぞれ血管2内部に位置付けられるまで、血管2に対して遠位方向DDにカニューレ挿入デバイス20を前進させるステップを含み得る。針40の先端部66、針40のベース端部65、および拡張器26の遠位端部90がそれぞれ血管2内部に位置付けられるまで、血管2に対して遠位方向DDにカニューレ挿入デバイス20を前進させるステップは、拡張器26のテーパー部分98の少なくとも一部を血管2に挿入するステップを含み得る。次に、
図20に示すように、針40はその後、後退され得、針40の先端部66は、拡張器26の遠位端部90に対してさらに近位になる。
【0106】
拡張器26のテーパー部分98の少なくとも一部が血管2内部に位置付けられた後、使用方法は、針40を後退させるステップを含み得る。針40を後退させるステップは、血管2に対して針40を近位方向PDに動かすステップを含み得る。本開示の一態様によると、針40を後退させるステップは、針40がもはや血管2内部に位置しなくなるまで、針40を近位方向PDに動かすステップを含む。針40を後退させるステップは、拡張器26と血管2との相対位置を維持しながら、実施され得る。
【0107】
本開示の一態様によると、針40を後退させるステップは、例えば指を使って作動表面58を押し下げることによって、針アクチュエータ50を動かすステップを含む。ユーザは、作動表面58を、ある方向、例えば、第3の方向D3など、針40に向かう方向に押すことができる。作動表面58に及ぼされる力は、ブームアーム54自体からの曲げに対する固有の抵抗より大きく、かつ、ブームアーム54を一時的に変形させ、遠位端部57を針に向かって動かすのに十分大きくする必要がある。本開示の一態様によると、ブームアーム54は屈曲形状で設計され得、ブームアーム54は、それ自体の付勢機構を提供する。追加の付勢力がブームアーム54に加えられるいくつかの態様では、作動表面58に及ぼされる力は、それらの付勢力より大きくしなければならない。
【0108】
針40を後退させるステップは、停止表面60およびブロック表面124が第1の方向D1に沿って整列しなくなるまで、停止表面60をブロック表面124に沿って、例えば第3の方向D3にスライドさせるステップを含み得る。いったん停止表面60およびブロック表面124が第1の方向D1に沿って整列されなくなると、付勢部材62(例えば
図18B参照)により加えられる力は、針アクチュエータ50、ブームアーム54、ハブ52、および取り付けられた針40を、ハウジング220に対して近位方向PDに動かす。いくつかの態様では、針40を後退させるステップにより、可聴クリック音が生じ得、よって、針後退がうまく完了したという聴覚フィードバックをユーザに提供する。
【0109】
図21を参照すると、使用方法は、拡張器26の遠位端部90およびカニューレシステム28の遠位端部100の両方が血管2内部に位置付けられるまで、血管2に対して遠位方向DDにカニューレ挿入デバイス20を前進させるステップを含み得る。図示の実施形態に示すように、カニューレ挿入デバイス20を前進させるステップそれ自体は、カニューレシステム28のテーパー部分108の少なくとも一部を、血管2に挿入するステップを含み得る。
【0110】
一実施形態によると、拡張器26の遠位端部90およびカニューレの遠位端部100の両方が血管2内部に位置付けられるまで、血管2に対して遠位方向DDにカニューレ挿入デバイス20を前進させるステップは、針40を後退させるステップの後で実施される。このステップは、カニューレシステム28のテーパー部分108の全体を血管2に挿入するステップを含み得る。
【0111】
使用方法は、拡張器26を後退させるステップを含み得る。拡張器26を後退させるステップは、血管2に対して拡張器26を近位方向PDに動かすステップを含み得る。本開示の一態様によると、拡張器6を後退させるステップは、拡張器26が血管2内部に位置しなくなるまで、拡張器26を近位方向PDに動かすステップを含む。拡張器26を後退させるステップは、カニューレシステム28と血管2との相対位置を維持しながら、実施され得る。本開示の一態様によると、拡張器26を後退させるステップは、拡張器26の遠位端部90およびカニューレの少なくとも遠位端部100の両方が血管2内部に位置付けられるまで血管2に対して遠位方向DDにカニューレ挿入デバイス20を前進させるステップの後で、実施される。
【0112】
拡張器26を後退させるステップは、拡張器アクチュエータ242に力を加えて、拡張器アクチュエータ242を第1の方向D1に沿って動かすステップを含み得る。拡張器アクチュエータ242は、ラックアンドピニオン歯車システム260に接続され得る。
【0113】
いくつかの態様では、拡張器アクチュエータ242を動かすステップは、拡張器アクチュエータ242を遠位方向DDに動かすステップを含み得る。これにより、第2のピニオン266と係合される、第2のラック268も、遠位方向DDに動くことができる。第2のピニオン266は、ハウジング220に固定され得、第2のピニオン266は、回転し得るが、第1の方向D1に沿って並進運動するのを妨げられる。第2のラック268が動くと、第2のピニオン266が回転する。いくつかの態様では、第2のピニオン266は、第1のピニオン262に接続され、第2のピニオン266が回転すると、第1のピニオン262も回転する。第2のピニオン266が回転すると、第1のピニオン262は、回転し、第1のピニオン262と係合された第1のラック264の動きを引き起こす。このような回転により、第1のラック264は近位方向PDに動くことができる。拡張器組立体25および拡張器26は、第1のラック264に接続され得、第1のラック264が近位方向PDに動くと、拡張器26も近位方向PDに動く。いくつかの態様では、拡張器26を後退させるステップにより、可聴クリック音が生じ得、よって、拡張器後退がうまく完了したという聴覚フィードバックをユーザに提供する。針40および拡張器26の両方が後退位置にある、カニューレ挿入デバイス20が、
図18Cに描かれている。
【0114】
使用方法は、血管2に対するカニューレシステム28の位置を固定するステップを含み得る。例えば、カニューレ104は、血管2にクランプされ得る。いくつかの態様では、前述したような、1つ以上のコレットジョー170が、カニューレ104を血管2に固定するためにカニューレシステム28上に配され得る。
【0115】
使用方法は、血管2がコレットジョー170とカニューレ104との間に固定されていないロック解除位置(血管2を透視図で示す
図16参照)から、血管2がコレットジョー170とカニューレ104との間に固定されるロック位置(血管2を透視図で示す
図17参照)まで、コレットジョー170を動かすステップを含み得る。コレットジョー170をロック位置まで動かすステップは、コレットスリーブ178を、カニューレ104の遠位端部100に向かって遠位方向DDに動かすステップを含み得、コレットスリーブ178は、変形可能なアーム176の上をスライドし、変形可能なアーム176を変形させ、ヘッド174はカニューレ104に向かって動かされる。コレットスリーブ178が遠位方向DDへと遠くに動かされるほど、ヘッド174はカニューレ104に近づく。固定されるべき血管2の部分は、カニューレ104とヘッド174との間に位置付けられ得、コレットスリーブ178が遠位方向DDに動かされると、ヘッド174は、血管2に接触し、血管2をヘッド174とカニューレ104との間で圧縮する(
図17参照)。
【0116】
コレットスリーブ178を動かすステップは、コレットハンドル184を動かすステップを含み得る。ハンドル184は、コレットスリーブ178に取り付けられ得、ハンドル184が遠位方向DDに動かされると、コレットスリーブ178も遠位方向DDに動かされる。
【0117】
コレットハンドル184を動かすステップは、コレット係合表面252がハンドル184に接触するまで拡張器アクチュエータ242を遠位方向DDに動かすステップと、コレット係合表面252でハンドル184を遠位方向DDに押すステップと、を含み得る。
【0118】
いくつかの代替的な態様では、血管2をクランプするステップは、薄く滑りやすい臍帯血管をカニューレに固定する、片手で挟んで操作されるクリップとして構成された、血管クランプにより実施され得る。
【0119】
血管2に対するカニューレシステム28の位置を固定するステップは、カニューレ104を血管2に縫い付けるステップを含み得る。一実施形態によると、縫合糸が、カニューレ104の補強部分110に巻き付けられ得る。
【0120】
血管2に対するカニューレシステム28の位置を固定するステップは、拡張器26を後退させるステップの後で実施され得る。
【0121】
使用方法は、前述したようにカニューレシステム28をカニューレ挿入デバイス20から分離するステップも含み得る。分離するステップは、解放機構226を作動させて、ケーシング200上のロック構成要素202をハウジング220上の対応するロック構成要素224から係合解除するステップを含み得る。いくつかの態様では、方法は、主要解放機構226の代わりに第2の解放機構226bを作動させることによってカニューレシステム28をハウジング220から分離する代替的なステップを含み得る。これは、解放機構226がカニューレシステム28をハウジング220から分離するのに十分でない場合に、または他の緊急事態の状況において、行われ得る。いくつかの態様では、解放機構226または第2の解放機構226bを作動させるステップにより可聴クリック音が生じ、よって、分離アクションがうまく完了したという聴覚フィードバックをユーザに提供する。
【0122】
使用方法は、カニューレシステム28がカニューレ挿入デバイス20から切り離された後で、取り付け部品212を第1の近位部分194に取り付けるステップをさらに含み得る。取り付け部品212は、トロカール弁またはクロススリット弁であり、かつ第1の近位チャネル206から外に血液が通過するのを妨げ得る、シール要素204を通って動かされ得る。取り付け部品212はまた、シール198とシール要素204との間の液体を移動させ、追加の液体がその2つのシール間の空間に入るのを防ぎ得る。シール198とシール要素204との間の液体を移動させる(または抜く)ことにより、停滞した血液またはプライミング流体が除去される。取り付け部品212は、カニューレ内腔106内の圧力によりシール198が開くのを防ぐために、シール198に隣接する物的障壁を提供することもできる。いくつかの態様では、取り付け部品212は、剛性ケーシング200またはカニューレ104につなぎ留められ得る。
【0123】
カニューレ挿入システム10は、カニューレ挿入デバイス20の1つ以上、カニューレシステム28の1つ以上、針組立体22の1つ以上、拡張器組立体25の1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせを含む、キットの一部であってよい。使用方法は、前述したステップのいずれかをさらに2回繰り返すステップを含み得、カニューレ挿入システム10のうちの3つが使用されて、例えば3つの血管2への通路を作る。本開示の一態様によると、3つの血管は、1つの静脈と、2つの動脈と、を含み得、その静脈および2つの動脈は、新生児の臍帯内に位置する。臍帯内の血管は、種々のサイズを有し得、そのため、開示されるシステムの適切なサイズの構成要素を、各血管と共に使用すべきであることが認識されるであろう。使用方法は、カニューレ挿入デバイス20それぞれのカニューレシステム28を互いに対して固定するステップを含み得、カニューレシステム28のいずれか1つの、その他のカニューレ挿入システム28のいずれかに対する動き。カニューレ104を固定するステップは、縫合糸をカニューレ104のそれぞれに巻き付けるステップを含み得る。カニューレ104を固定するステップにより、カニューレシステム28のそれぞれが、それらのそれぞれの血管2と整列したままとなると共に、カニューレシステム28とそれぞれの血管2との間のこすれおよび摩擦を低減することができる。
【0124】
本開示の一態様によると、カニューレ挿入システム10は、複数のカニューレ挿入デバイス20のカニューレ104を、カニューレ104がそれぞれの血管に挿入された後で互いに固定するように構成された、包み、テープ、縫合糸、または別の構造を含み得る。本開示の一態様によると、カニューレ挿入システム10は、種々のサイズのカニューレ104を含み得る。カニューレ104のサイズは、そのカニューレ104の意図する適用に左右され得ることが認識されるであろう。例えば、カニューレ104のサイズは、どの特定の血管にカニューレが挿入されるかに基づいて、決定され得る。いくつかの例示的な態様では、カニューレ104は、約4Fr~約18Frの範囲のサイズを有し得る。カニューレ104は、4Fr、5Fr、6Fr、…、18Fr、または意図する用途に適している別のサイズであってよい。複数のカニューレ104が異なるサイズの血管に導入され得る、いくつかの例示的な適用では、別々のカニューレ104は種々のサイズを有し得る。例えば、カニューレ104が第1のタイプの血管(例えば、臍帯の動脈)に導入される態様では、カニューレ104は、約5Fr~約12Frであってよく、カニューレ104が第2のタイプの血管(例えば、臍帯の静脈)に導入される場合、カニューレ104は、約12Fr~約18Frであってよい。
【0125】
図22は、血管2にカニューレを挿入する例示的なプロセス300を描く。ステップ302では、針40が所望の角度および場所にあり、血管2に穴をあける位置にくるように、カニューレ挿入システム10が血管2に対して位置付けられる。ステップ302の前または後で、他の外科的準備ステップ、例えば、血管2を消毒するか、掃除するか、もしくは別様に準備するか、またはカニューレシステム28をプライミングするステップが、実行され得ることが認識されるであろう。
【0126】
ステップ304では、カニューレ挿入デバイス20は、針40が血管2の壁に穴をあけるように、血管2に向かって動かされる。針40は、所望の血管に穴をあけるために適切なサイズおよび剛性であることが認識されるであろう。針40が血管2の壁に穴をあけたた後、血管2からの血液は、カニューレ挿入システム10を通って流れ、開口部232を通ってフラッシュバックチャンバ231において出ることができる。血液は、ハウジング220の凹部222内にしたたることができ、ユーザは、半透明部分230を通して、またはハウジング220の開いた近位端部223を通して見ることによって、凹部222内の血液の存在を視覚的に検出し得る。これにより、血管2にうまく穴があいたことをユーザに示し得る。
【0127】
ステップ306では、血管2に穴をあけた後、拡張器26は、ステップ304で針40により作られた開口部を通って血管2に入る。拡張器26は、並進運動して血管2に入り、血管2の壁における開口部を拡大させる。
【0128】
ステップ308では、針40は、本明細書全体にわたって記載される機構に従って後退され得る。これにより、鋭利な針先端が血管2内部から取り出され、血管の「バックウォール」または血管壁の別様の穴あけ、ひっかき、もしくは刺激の可能性が減る。また、これにより、血管2内の空間が大きくなり、その空間の中に、拡張器26が入って、血管壁における開口部をさらに拡大させ得る。
【0129】
ステップ310では、拡張器26は、本明細書全体にわたって記載されるように後退され得る。拡張器26の後退により、血管2の内側にカニューレ104のためのより大きな空間ができ、また、カニューレ内腔106の内側のオープンスペースが増え、これにより、より多くの血液が、血管2からカニューレシステム28内に流れる。
【0130】
ステップ312では、カニューレ104の先端が、血管壁における拡大された孔を通って血管2に入る。カニューレ104が入ることは、カニューレ104の遠位端部100におけるテーパー部分108によって容易になり得る。血管2内の血液は、いまやカニューレ内腔106に流れ込むことができる。血液は、カニューレ内腔106を通って、Y-コネクタ190の第2の近位部分196を通って、かつ、カニューレシステム28に接続される(またはその一部である)チューブ28bを通って、流れることができる。
【0131】
ステップ314では、カニューレ104は、血管2に固定されて、血管とカニューレが切り離されるのを防ぐことができる。カニューレ104を血管2に固定するステップは、本明細書全体にわたり記載されるように、1つ以上のコレットジョー170をロック解除位置からロック位置に動かすことにより、達成され得る。具体的には、このステップは、コレットスリーブ178を動かし、変形可能なアーム176を変形させ、ヘッド174をカニューレ104、およびカニューレ104とヘッド174との間の血管2に向かって動かすステップを含み得る。このステップは、1つ以上の歯182で血管2の壁に穴をあけるステップをさらに含み得る。
【0132】
プロセス300のステップのいくつかは、異なる順序で行われ得ることが、認識されるであろう。例えば、いくつかの態様では、拡張器26を後退させるステップ310は、カニューレ104を血管2内に入れるステップ312の後で、行われ得る。
【0133】
プロセス300は、カニューレシステム28を外部循環回路400(例えば、
図25参照)、例えば体外式膜型人工肺回路に接続するオプションのステップをさらに含み得る。いくつかの態様では、この接続は、Y-コネクタ190の第2の近位部分196において行われ得る。いくつかの態様では、中間の管28bが、第2の近位部分196に接続され得、これは、次に、外部循環系に接続され得る。カニューレシステム28を外部循環系に接続するステップは、ステップ302の前に実施され得、カニューレシステム28は、血管2にカニューレが挿入されたとき、既に外部循環系と接続されている。
【0134】
プロセス300は、液体をフラッシュバックチャンバ231に導入するステップをさらに含み得る。ユーザは、開口部232を通じて液体をフラッシュバックチャンバ231に注入し得る。このステップは、開口部232を通じて液体を注入する前に、プラグ233を開口部232の外に動かすステップを含み得る。
【0135】
プロセス300は、針が後退されたときに血液またはプライミング流体が開口部232からフラッシュバックチャンバ231内にしたたるかどうかを視覚的に観察することによって、針40が適切に血管2に入ったかどうかを確認するステップを含み得る。このステップは、ステップ308の直後に実施され得る。
【0136】
いくつかの態様では、プロセス300は、カニューレ104を血管2に固定した後でカニューレシステム28をカニューレ挿入デバイス20から切り離すオプションのステップをさらに含み得る。このステップは、本明細書全体にわたり記載されるように、カニューレシステム28上のロック構成要素202を、カニューレ挿入デバイス20上の対応するロック構成要素224から係合解除するステップを含み得る。カニューレシステム28をカニューレ挿入デバイス20から切り離すステップは、シール198にもはや構成要素が挿入されておらず、よって、液体がその中を通過するのを防ぐためシールが閉じるように、シール198を通して針40および拡張器26を動かすことをさらに含み得る。
【0137】
いくつかの態様では、プロセス300は、取り付け部品212を第1の近位部分194の第1の近位チャネル206に挿入し、第1の近位チャネル206内に存在する液体を移動させ、液体またはデブリが第1の近位チャネル206に入るのを防ぐ、オプションのステップをさらに含み得る。
【0138】
本出願全体にわたり言及したように、カニューレシステム28は、新生児を外部循環回路と流体接続し得る。外部循環回路は、その中を通過する血液のためにガス交換を提供するように構成された、酸素化装置を含み得る。外部循環回路は、回路を通過する血液を、好適なパラメータに維持するのに役立つ、他の構成要素も含み得ることが認識されるであろう。
【0139】
いくつかの態様では、カニューレ挿入プロセス300は、別々の血管の間に血液回路を画定するために複数の血管で実施され得る(例えば、動脈血管へのカニューレ挿入および静脈血管へのカニューレ挿入)。血液が第1の血管からカニューレシステム28内に流れる第1の血管にカニューレを挿入すると、血液が、カニューレ内腔106を通って流れて、Y-コネクタ190の第2の近位部分196に入り、その後チューブ28bに入る。血液は次に、外部循環回路(酸素化装置などの、血液を処置するための1つ以上の構成要素を含む)を通って移動し得る。血液が外部循環回路内の構成要素のいずれかで処置された後、血液は、第2の血管に接続され得る第2のカニューレシステム28のチューブ28bに流れ込み、これを通って流れることができる。血液は次に、第2のカニューレシステム28のチューブ28bから、第2の近位部分196に、また第2のカニューレシステム28のカニューレ内腔106を通って流れ得る。第2のカニューレシステム28から、血液は、プロセス300によりカニューレを挿入された、第2の血管まで移動することができる。第1の血管に接続されたカニューレシステム28および第2の血管に接続されたカニューレシステム28が互いと流体連通するように少なくとも第1の血管および第2の血管にカニューレを挿入することによって、ユーザは、第1の血管と第2の血管との間に血液回路を作ることができる。このような例示的な配置では、血液は、第1の血管から流出し、外部循環回路を通って移動し、第2の血管に流れ込み得る。複数の第1の血管(すなわち、血液が流出する血管)および/または複数の第2の血管(すなわち、血液が流れ込む血管)が、カニューレを挿入されて、単一の外部循環回路に接続され得ることが、認識されるであろう。
【0140】
本明細書全体にわたり記載されたさまざまなカニューレ挿入システムの構成要素は、医療環境、手術環境、または別様の無菌環境で使用するのに適したさまざまな材料から製造され得る。カニューレ挿入デバイス20およびカニューレシステム28は、医療グレードのプラスチックもしくは金属を含み得、または、プラスチック構成要素と金属構成要素との組み合わせを有し得る。適切な材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン、または別の適切なもの(another suitable)を含むが、これらに制限されない。材料は、生体適合性で、かつ無毒でなければならず、また、液体、体液、ガス、温度、利用されている薬剤と不利に反応してはならない。カニューレシステム28、およびカニューレシステム28と共に使用される任意の管(例えば、カニューレ104またはチューブ28b)は、その中を通って流れる血液への損傷を避けるため、非溶血性でなければならないことが、理解されるであろう。例えば、カニューレ挿入システム10のいくつかの態様では、針40は、ステンレス鋼から形成され得、拡張器26は、HDPEから形成され得、ハウジング220は、ポリカーボネートから形成され得る。カニューレ104は、ウレタンまたはシリコーンから形成され得る。コレットジョー170は、チタン、またはステンレス鋼、例えば304ステンレス鋼もしくは316ステンレス鋼から形成され得る。
【0141】
前述の説明は、開示されるシステムおよび技術の実施例を提供することが認識されるであろう。しかしながら、本開示の他の実施態様は、前述した実施例と詳細が異なっていてもよいことが企図される。本開示またはその実施例への言及はすべて、その時点で論じられている特定の実施例を参照することが意図されており、さらに一般的に開示の範囲に関する制限を示唆することは意図していない。特定の特徴に関する区別および非難の言葉はすべて、それらの特徴に対する嗜好性の欠如を示すことが意図されているが、特に明記しない限り、それらを本開示の範囲から完全に排除する意図はない。
【0142】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で特に示されない限り、述べた範囲の両端を含む範囲内に入る各個別の値に個別に言及する略記法として役立つことを意図しているだけであり、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に指示しない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実施され得る。
【0143】
本開示を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、置換、および改変を本明細書で行うことができることを理解されたい。さらに、本開示の範囲は、本明細書に記載される特定の実施形態に制限されることを意図していない。当業者であれば本発明の開示から容易に認識するであろうが、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、または実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか、または後に開発されるプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法、またはステップが、本開示に従って利用され得る。
【0144】
〔実施の態様〕
(1) 組織の血管にカニューレを挿入するためのカニューレ挿入システムであって、
内部を通るカニューレ内腔を画定するカニューレを含むカニューレシステムであって、前記カニューレは、遠位端部と、前記遠位端部の反対側の近位端部と、を有する、カニューレシステムと、
前記カニューレシステムと連結するように構成されたカニューレ挿入デバイスと、を含み、前記カニューレ挿入デバイスは、
内部を通る拡張器内腔を画定する拡張器本体を有する拡張器と、
内部を通る針内腔を画定する針本体を有する針であって、前記針は、前記拡張器内腔内部で第1の方向に沿って並進運動可能である、針と、
拡張器アクチュエータであって、前記拡張器アクチュエータの動きが前記第1の方向に沿った前記拡張器の動きを引き起こすように動かされるよう構成されている、拡張器アクチュエータと、
針アクチュエータであって、前記針アクチュエータの動きが前記第1の方向に沿った前記針の動きを引き起こすように動かされるよう構成されている、針アクチュエータと、
ハウジング凹部を内部に画定するハウジングであって、前記ハウジング凹部は、前記カニューレシステム、前記拡張器、および前記針を受容するように構成されている、ハウジングと、を含み、
前記カニューレ挿入デバイスの前記針および前記拡張器は、前記カニューレ内腔内部で前記第1の方向に沿って動かされるように構成されている、カニューレ挿入システム。
(2) 前記アクチュエータは、前記針の遠位端部が前記拡張器の遠位端部の遠位に位置付けられる、第1の位置から、前記針の前記遠位端部が前記拡張器の前記遠位端部の近位に位置付けられる、第2の位置に、前記針を並進運動させるように構成されている、実施態様1に記載のカニューレ挿入システム。
(3) 前記カニューレシステムは、前記カニューレの前記近位端部に隣接したY-コネクタを含み、前記Y-コネクタは、第1の近位チャネルを画定する第1の近位部分と、第2の近位チャネルを画定する第2の近位部分と、を有し、
前記第1の近位チャネルおよび前記第2の近位チャネルは、前記カニューレ内腔と流体連通するように構成されている、実施態様1に記載のカニューレ挿入システム。
(4) 前記第1の近位部分は、前記第1の近位チャネルを前記第2の近位チャネルから分離するスリットシールを画定し、前記スリットシールは、前記拡張器および前記針がその中を通って挿入される、開放構成と、前記針および前記拡張器がその中を通って延びていない、閉鎖構成と、を有し、
前記スリットシールが前記閉鎖構成にあるとき、前記カニューレ内腔からの液体は、前記第1の近位チャネル内に入るのを妨げられる、実施態様3に記載のカニューレ挿入システム。
(5) 前記第1の近位チャネルに取り外し可能に挿入されるように構成されたプラグをさらに含む、実施態様3に記載のカニューレ挿入システム。
【0145】
(6) 前記カニューレシステムは、その上にロック要素をさらに含み、前記ハウジングは、その上にロック要素を含み、
前記カニューレシステムの前記ロック要素は、前記カニューレシステムが前記ハウジングに取り付けられるように、前記ハウジングの前記ロック要素と解放可能に係合するように構成されている、実施態様1に記載のカニューレ挿入システム。
(7) 前記カニューレを前記血管に解放可能に固定するように構成されたコレットジョーをさらに含み、前記コレットジョーは、前記カニューレに取り付けられ、前記コレットジョーは、ベースと、変形可能なアームと、ヘッドと、を有し、
前記コレットジョーが開放位置にあるとき、前記ヘッドは、前記血管および前記カニューレから離間され、前記コレットジョーが閉鎖位置にあるとき、前記ヘッドは、前記組織と接触していて、前記血管は前記コレットジョーと前記カニューレとの間の適所に保持される、実施態様1に記載のカニューレ挿入システム。
(8) 前記コレットジョーは、前記血管に向かって延びる、前記ヘッド上の歯をさらに含み、
前記歯は、前記コレットジョーが前記第2の位置にあるときに前記組織に食い込むように構成されている、実施態様7に記載のカニューレ挿入システム。
(9) 前記ハウジングは、前記ハウジングを通した、前記ハウジング凹部内への可視性を可能にするように構成された半透明部分を含む、実施態様1に記載のカニューレ挿入システム。
(10) 前記カニューレシステムは、体外式膜型人工肺(ECMO)システムに動作的に接続されるように構成されている、実施態様1に記載のカニューレ挿入システム。
【0146】
(11) 前記組織は、新生児の臍帯を含む、実施態様1に記載のカニューレ挿入システム。
(12) 組織内の血管にカニューレを挿入する方法であって、
前記血管に向けて、かつ前記血管の壁を通して針を動かすことにより、前記針の遠位端部で前記壁に穴をあけることによって、前記血管の前記壁に開口部を作るステップと、
拡張器を前記開口部に挿入し、前記開口部を拡張させるステップと、
前記針が前記血管から出るように前記針を後退させるステップと、
前記拡張器が前記血管から出るように前記拡張器を後退させるステップと、
カニューレを前記血管の前記壁の前記開口部に挿入するステップと、
前記カニューレを前記血管内で固定するステップと、を含み、
前記カニューレは、遠位端部と近位端部との間を延びる、前記カニューレを通るカニューレ内腔を画定し、
前記拡張器および前記針は、前記カニューレ内腔内部で動くことができる、方法。
(13) 前記針は、遠位端部、および前記遠位端部の反対側の近位端部を画定し、
前記拡張器は、遠位端部と近位端部との間で前記拡張器を通って延びる拡張器内腔を画定し、
前記針を後退させるステップは、前記針の前記遠位端部が前記拡張器内腔の外側にあり、かつ前記拡張器の前記遠位端部の遠位にある、第1の位置から、前記針の前記遠位端部が前記拡張器内腔内にあり、かつ前記拡張器の前記遠位端部の近位にある、第2の位置まで、前記拡張器内腔内の前記針を動かすステップを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記カニューレを前記血管に固定するステップは、コレットジョーが前記組織に接触しない、ロック解除位置から、前記コレットジョーが前記組織を力強くクランプし、前記血管が前記コレットジョーと前記カニューレとの間に保持され、前記血管の少なくとも一部が前記カニューレに対して並進運動するのを妨げられる、ロック位置まで、前記コレットジョーを動かすステップを含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記コレットジョー上に配された歯により前記組織に食い込むステップをさらに含む、実施態様14に記載の方法。
【0147】
(16) 前記カニューレを体外式膜型人工肺(ECMO)システムに接続するステップをさらに含む、実施態様12に記載の方法。
(17) 前記カニューレは、第1の近位部分、および前記第1の近位部分とは別個の第2の近位部分に分かれる、Y-コネクタに接続され、
前記カニューレを前記ECMOシステムに接続するステップは、前記Y-コネクタの前記第2の近位部分を前記ECMOシステムに接続するステップを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記血管を前記カニューレに固定するステップの後で前記拡張器および前記針を前記カニューレ内腔から出すステップをさらに含む、実施態様12に記載の方法。
(19) 前記カニューレは、第1の近位部分、および前記第1の近位部分とは別個の第2の近位部分に分かれる、Y-コネクタに接続され、
前記拡張器および前記針を前記カニューレ内腔から出すステップは、前記第1の近位部分を通して前記拡張器および前記針を動かすステップを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記Y-コネクタの前記第1の近位部分に画定されたスリットシールを通して前記針および前記拡張器を動かすステップをさらに含む、実施態様19に記載の方法。
【0148】
(21) 前記第1の近位部分からの血液の流出を防ぐために前記Y-コネクタの第1の近位チャネルにプラグを挿入するステップをさらに含む、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記組織は、新生児の臍帯を含む、実施態様12に記載の方法。
(23) カニューレシステムであって、
遠位端部、および前記遠位端部の反対側の近位端部を有するカニューレと、
前記遠位端部と前記近位端部との間で前記カニューレを通って延びるカニューレ内腔と、
前記カニューレ上に配されたスリットシールであって、カニューレ挿入デバイスを受容するように構成されている、スリットシールと、を含み、
前記カニューレシステムは、血管と、また酸素化装置と、流体連通するように構成されている、カニューレシステム。
(24) 前記カニューレは、
第1の近位部分および第2の近位部分を有するY字型コネクタと、
前記カニューレ上に配されたスリットシールであって、その中を通してカニューレ挿入デバイスを受容するように構成されている、スリットシールと、をさらに含み、
前記カニューレ内腔は、前記Y字型コネクタの前記第2の近位部分を通って延び、
前記スリットシールは、前記第1の近位部分と前記カニューレ内腔との間の流体連通を可能にするように構成されている、実施態様23に記載のカニューレシステム。
(25) 前記組織は、新生児の臍帯を含む、実施態様23に記載のカニューレシステム。
【0149】
(26) 組織の血管と流体連通するためのカニューレであって、
遠位端部と、
前記遠位端部の反対側の近位端部と、
前記遠位端部と前記近位端部との間で前記カニューレを通って延びるカニューレ内腔と、
第1の近位部分および第2の近位部分を有するY字型コネクタと、
前記カニューレ上に配されたスリットシールであって、その中を通してカニューレ挿入デバイスを受容するように構成されている、スリットシールと、を含み、
前記カニューレ内腔は、前記Y字型コネクタの前記第2の近位部分を通って延び、
前記スリットシールは、前記第1の近位部分と前記カニューレ内腔との間の流体連通を可能にするように構成されている、カニューレ。
(27) 前記組織は、新生児の臍帯を含む、実施態様26に記載のカニューレ。
【国際調査報告】