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特表2023-524062治療用タンパク質に対する中和抗体アッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】治療用タンパク質に対する中和抗体アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230601BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230601BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20230601BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20230601BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/543 575
G01N33/543 541B
C12Q1/66
C12Q1/6897 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566320
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 US2021030099
(87)【国際公開番号】W WO2021222711
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/018,821
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/041,768
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/172,488
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィン スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ラジャジヤクシャ マノイ
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン アイナー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ22
4B063QQ42
4B063QQ44
4B063QR02
4B063QR32
4B063QR77
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、概して、治療用タンパク質に対する中和抗体(NAb)の存在について試験する方法に関する。具体的には、本発明は、治療用タンパク質に対する中和抗体の検出のための、リガンド結合アッセイ又は細胞ベースのアッセイにおける干渉競合薬物に対する緩和剤の使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の治療用タンパク質に対する中和物質を検出するための方法であって、
(a)前記中和物質及び競合薬物を有する前記試料を、前記治療用タンパク質、前記治療用タンパク質の標的、及び緩和剤に接触させることと、
(b)前記治療用タンパク質の前記標的への結合を測定することと、
(c)前記中和物質を検出するために、(b)の結果を対照測定値と比較することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記対照測定値が、
中和物質の不在下で、前記治療用タンパク質の前記標的への結合を測定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中和物質が、中和抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記治療用タンパク質が、抗体、可溶性受容体、抗体-薬物コンジュゲート、及び酵素からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療用タンパク質が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体が、抗PD-1抗体、抗TNF抗体、抗PD-L1抗体、抗EGFR抗体、抗CD20抗体、抗CD38抗体、及び抗LAG3抗体からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記治療用タンパク質が、二重特異性抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記二重特異性抗体が、CD20×CD3抗体、BCMA×CD3抗体、EGFR×CD28抗体、及びCD38×CD28抗体からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療用タンパク質が、固体支持体に固定化される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記治療用タンパク質が、検出のために標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記標識が、蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能、又は親和性精製によって検出可能である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記標識が、ルテニウムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標的が、抗原、受容体、リガンド、又は酵素基質である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記標的が、細胞表面タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記標的が、組換えタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記標的が、細胞によって発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が、HEK293細胞、MOLP-8細胞、Jurkat細胞、又はそれらの修飾型である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記標的が、固体支持体に固定化される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記標的が、検出のために標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記標識が、蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能、又は親和性精製によって検出可能である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記標的が、酵素基質である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記標的が、CD20、CD3、BCMA、PD-1、EGFR、CD28、CD38、TNF、PD-L1、又はLAG3である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
第2の標的を追加的に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記競合薬物が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記競合薬物が、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、又はアダリムマブである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記競合薬物が、二重特異性抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記緩和剤が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
2種、3種、4種、又はそれ以上の緩和剤を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記治療用タンパク質の前記標的への結合が、受容体リン酸化、シグナル伝達経路における下流タンパク質のリン酸化、サイトカイン放出、細胞増殖、細胞死、又は二次タンパク質の産生を測定することによって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記治療用タンパク質の前記標的への結合が、レポーター遺伝子の発現によって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記レポーター遺伝子が、ルシフェラーゼである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記試料を前記治療用タンパク質又は前記標的に接触させる前に、前記試料を前記緩和剤に接触させる前処理工程
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
(a)治療用タンパク質と、
(b)前記治療用タンパク質の標的と、
(c)前記治療用タンパク質に対する中和物質と、
(d)競合薬物と、
(e)緩和剤と
を含む、キット。
【請求項34】
前記標的を発現する細胞
を更に含む、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記治療用タンパク質の前記標的への前記結合に応答して、測定可能な活性又はシグナルを生じる細胞
を更に含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記活性が、ルシフェラーゼの発現である、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記標的が、固体支持体に固定化されている、請求項33に記載のキット。
【請求項38】
前記治療用タンパク質に付着した標識を更に含む、請求項33に記載のキット。
【請求項39】
前記標識が、ルテニウムを含む、請求項38に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月1日に出願された米国仮特許出願第63/018,821号、2020年6月19日に出願された米国仮特許出願第63/041,768号、及び2021年4月8日に出願された米国仮特許出願第63/172,488号の優先権及び恩典を主張し、それらは各々、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本出願は、治療用タンパク質に対する中和抗体の検出のための診断アッセイを行うためのアッセイ方法、モジュール、及びキットに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
患者への生物学的治療薬の投与は、抗薬物抗体(ADA)の発生をもたらし得る、患者において望ましくない免疫原性応答を誘導することができる(Mire-Sluis,A.R.,et al.,J Immunol Methods,289(1):1-16(2004)(非特許文献1))。中和抗体(NAb)は、薬物のその標的への結合を阻害し、薬物を生物学的に不活性にする、ADAのサブセットである。定義によると、NAbは、薬物の効果を中和し、臨床活性を低減する可能性がある。加えて、薬物が内因性タンパク質の生物学的模倣物である場合、NAbは、薬物の内因性類似体と交差反応し得、これは、薬物の安全性に重要な結果を有し得る(Finco,D.,et al.,J Pharm Biomed Anal,54(2):351-358(2011)(非特許文献2)、Hu,J.,et al.,J Immunol Methods,419:1-8(2015)(非特許文献3))。
【0004】
免疫原性応答の検出は段階的アプローチを伴い、そこでは、典型的にはブリッジングイムノアッセイを使用して、まずADAの存在について試料が試験される(Mire-Sluis,A.R.,et al.,J Immunol Methods,289(1):1-16(2004)(非特許文献4))。ADA応答の更なる特徴付けは、ADAの相対量を決定するための力価アッセイと、抗体応答が中和しているかどうかを判定するためのアッセイとを含み得る(Wu,B.,et al.,AAPS Journal,18(6):1335-1350(2016)(非特許文献5)、Shankar,G,et al.,J Pharm Biomed Anal48(5):1267-1281(2008)(非特許文献6)、Gupta,S.,et al.,J Pharm Biomed Anal,55(5):878-888(2011)(非特許文献7))。
【0005】
NAbアッセイは、治療用タンパク質に対する中和の正確な定量化を妨げる干渉に供され得る。例えば、内因性薬物標的が可溶性である場合、それは、対象試料中に存在し、治療薬と競合的に結合し、偽陽性NAbシグナルを生じる可能性がある。また、対象試料中には、治療薬の以前の投与からの残留薬物が存在している可能性があり、これは、NAbに競合的に結合し、偽陰性NAbシグナルを生じる可能性がある。こうした干渉原因に対処して、NAbの正確な定量化を得るために、様々な技術が開発されてきた(Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,462:34-41(2018)(非特許文献8)、Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,416:94-104(2015)(非特許文献9)、Xiang,Y.,et al.,AAPS Journal,21(1):4(2019)(非特許文献10)、Sloan,J.H.,et al.,Bioanalysis,8(20):2157-2168(2016)(非特許文献11))。
【0006】
まだ特徴付けられていない潜在的な干渉の追加の原因は、試験されている治療用タンパク質とは異なる残留薬物による干渉であり、治療薬と同じ薬物標的に競合的に結合し、これは、偽陽性NAbシグナルを生じる。したがって、このタイプの干渉を緩和するための戦略も、現在まで開発されていない。
【0007】
したがって、治療用タンパク質に対する中和抗体の検出のための、リガンド結合アッセイ又は細胞ベースのアッセイにおいて、競合薬物からの干渉を特定及び緩和するための方法に対するニーズが存在することが認識されるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mire-Sluis,A.R.,et al.,J Immunol Methods,289(1):1-16(2004)
【非特許文献2】Finco,D.,et al.,J Pharm Biomed Anal,54(2):351-358(2011)
【非特許文献3】Hu,J.,et al.,J Immunol Methods,419:1-8(2015)
【非特許文献4】Mire-Sluis,A.R.,et al.,J Immunol Methods,289(1):1-16(2004)
【非特許文献5】Wu,B.,et al.,AAPS Journal,18(6):1335-1350(2016)
【非特許文献6】Shankar,G,et al.,J Pharm Biomed Anal48(5):1267-1281(2008)
【非特許文献7】Gupta,S.,et al.,J Pharm Biomed Anal,55(5):878-888(2011)
【非特許文献8】Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,462:34-41(2018)
【非特許文献9】Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,416:94-104(2015)
【非特許文献10】Xiang,Y.,et al.,AAPS Journal,21(1):4(2019
【非特許文献11】Sloan,J.H.,et al.,Bioanalysis,8(20):2157-2168(2016)
【発明の概要】
【0009】
概要
本開示は、試料中の治療用タンパク質に対する中和物質を検出するための方法を提供する。いくつかの例示的な実施形態では、本方法は、(a)当該中和物質及び競合薬物を有する当該試料を(i)当該治療用タンパク質、(ii)当該治療用タンパク質の標的、及び(iii)緩和剤に接触させることと、(b)当該治療用タンパク質の当該標的への結合を測定することと、(c)当該中和物質を検出するために(b)の結果を対照測定値と比較することと、を含む。
【0010】
一態様では、当該対照測定値は、中和物質の不在下で、当該治療用タンパク質の当該標的への結合を測定することによって得られる。別の態様では、当該中和物質は、中和抗体である。
【0011】
一態様では、当該治療用タンパク質は、抗体、可溶性受容体、抗体-薬物コンジュゲート、又は酵素である。特定の態様では、当該治療用タンパク質は、モノクローナル抗体である。更に別の特定の態様では、当該モノクローナル抗体は、抗PD-1抗体、抗TNF抗体、抗PD-L1抗体、抗EGFR抗体、抗CD20抗体、抗CD38抗体、又は抗LAG3抗体である。
【0012】
一態様では、当該治療用タンパク質は、二重特異性抗体である。特定の態様では、当該二重特異性抗体は、CD20×CD3抗体、BCMA×CD3抗体、EGFR×CD28抗体、又はCD38×CD28抗体である。
【0013】
一態様では、当該治療用タンパク質は、固体支持体に固定化される。別の態様では、当該治療用タンパク質は、検出のために標識される。特定の態様では、当該標識は、蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能、又は親和性精製によって検出可能である。更に別の特定の態様では、当該標識は、ルテニウムを含む。
【0014】
一態様では、当該標的は、抗原、受容体、リガンド、又は酵素基質である。別の態様では、当該標的は、細胞表面タンパク質である。更に別の態様では、当該標的は、組換えタンパク質である。更に別の態様では、当該標的は、細胞によって発現される。特定の態様では、当該細胞は、HEK293細胞、MOLP-8細胞、Jurkat細胞、又はそれらの修飾型である。
【0015】
一態様では、当該標的は、固体支持体に固定される。別の態様では、当該標的は、検出のために標識される。特定の態様では、当該標識は、蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能、又は親和性精製によって検出可能である。別の態様では、当該標的は、酵素基質である。更に別の態様では、当該標的は、CD20、CD3、BCMA、PD-1、EGFR、CD28、CD38、TNF、PD-L1、又はLAG3である。更に別の態様では、当該方法は、第2の標的を追加的に含む。
【0016】
一態様では、当該競合薬物は、モノクローナル抗体である。特定の態様では、当該競合薬物は、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、又はアダリムマブである。別の態様では、当該競合薬物は、二重特異性抗体である。
【0017】
一態様では、当該緩和剤は、モノクローナル抗体である。別の態様では、当該方法は、2種、3種、4種、又はそれ以上の緩和剤を使用することを含む。
【0018】
一態様では、当該治療用タンパク質の当該標的への結合は、受容体リン酸化、シグナル伝達経路における下流タンパク質のリン酸化、サイトカイン放出、細胞増殖、細胞死、又は二次タンパク質の産生を測定することによって測定される。別の態様では、当該治療用タンパク質の当該標的への結合は、レポーター遺伝子の発現によって測定される。特定の態様では、当該レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼである。
【0019】
一態様では、当該方法は、当該試料を当該治療用タンパク質又は当該標的に接触させる前に、当該試料を当該緩和剤に接触させる前処理工程を更に含む。
【0020】
本開示はまた、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。いくつかの例示的な実施形態では、キットは、治療用タンパク質と、当該治療用タンパク質の標的と、当該治療用タンパク質に対する中和物質と、競合薬物と、緩和剤と、を含む。
【0021】
一態様では、当該キットは、当該標的を発現する細胞を更に含む。特定の態様では、当該キットは、当該治療用タンパク質の当該標的への結合に応答して、測定可能な活性又はシグナルを生じる細胞を更に含む。別の特定の態様では、当該活性は、ルシフェラーゼの発現である。
【0022】
一態様では、当該標的は、固体支持体に固定される。別の態様では、当該キットは、当該治療用タンパク質に付着した標識を更に含む。特定の態様では、当該標識は、ルテニウムを含む。
【0023】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の説明及び添付の図面と併せて考慮される場合に、よりよく認識され、理解されるであろう。以下の説明は、その様々な実施形態及び多数の具体的な詳細を示すが、限定ではなく、例証として与えられる。多くの置換、修正、追加、又は再配置は、本発明の範囲内で行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1Aは、例示的な実施形態に従った、細胞ベースの中和抗体(NAb)アッセイの図を示す。図1Bは、例示的な実施形態に従った、陰性対照抗体がルシフェラーゼシグナルを誘導しない一方で、二重特異性CD20×CD3薬物抗体の濃度の増加に伴う、ルシフェラーゼ活性の増加を示す。図1Cは、例示的な実施形態に従った、2つの二重特異性BCMA×CD3薬物抗体の濃度の増加に伴う、ルシフェラーゼ活性の増加を示す。
図2A】例示的な実施形態に従った、治療用抗体の各アームに対する中和抗体を添加した細胞ベースNAbアッセイの図を示す。
図2B】例示的な実施形態に従った、二重特異性CD20×CD3薬物抗体のCD20アーム又はCD3アームのいずれかに対する代理中和抗体の濃度の増加に伴う、ルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図2C】例示的な実施形態に従った、二重特異性BCMA×CD3薬物抗体のBCMAアームに対する代理中和抗体の濃度の増加に伴う、ルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図2D】例示的な実施形態に従った、二重特異性BCMA×CD3薬物抗体のCD3アームに対する代理中和抗体の濃度の増加に伴う、ルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図2E】例示的な実施形態に従った、二重特異性BCMA×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイに対して、アイソタイプ対照抗体の添加によるルシフェラーゼ活性の変化がないことを示す。
図2F】例示的な実施形態に従った、第2の二重特異性BCMA×CD3薬物抗体のBCMAアームに対する代理中和抗体の濃度の増加に伴う、ルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図2G】例示的な実施形態に従った、第2の二重特異性BCMA×CD3薬物抗体のCD3アームに対する代理中和抗体の濃度の増加に伴う、ルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図2H】例示的な実施形態に従った、第2の二重特異性BCMA×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイに対して、アイソタイプ対照抗体の添加によるルシフェラーゼ活性の変化がないことを示す。
図3A】例示的な実施形態に従った、薬物標的CD20に対する競合抗体の添加による、二重特異性CD20×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイにおけるルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図3B】例示的な実施形態に従った、薬物標的CD3に対する競合抗体の添加による、二重特異性CD20×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイにおけるルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図3C】例示的な実施形態に従った、薬物標的BCMA又はCD3に対する競合抗体の添加による、二重特異性BCMA×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイにおけるルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図3D】例示的な実施形態に従った、薬物標的BCMA又はCD3に対する競合抗体の添加による、二重特異性BCMA×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイにおけるルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図3E】例示的な実施形態に従った、薬物標的BCMA又はCD3に対する競合抗体の添加による、第2の二重特異性BCMA×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイにおけるルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図3F】例示的な実施形態に従った、薬物標的BCMA又はCD3に対する競合抗体の添加による、第2の二重特異性BCMA×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイにおけるルシフェラーゼ活性の減少を示す。
図4図4Aは、例示的な実施形態に従った、治療用抗体の濃度の増加に伴う、NAbアッセイにおけるルシフェラーゼ活性の増加を示す。ナイーブヒト血清の添加は、ルシフェラーゼ活性に影響を及ぼさなかった。図4Bは、例示的な実施形態に従った、薬物対照の存在下でのルシフェラーゼ活性を実験試料の存在下でのルシフェラーゼ活性と比較することによる、NAbアッセイシグナルの定量化を示す。
図5】例示的な実施形態に従った、60個の薬物ナイーブ臨床試料からの細胞ベースのNAbアッセイ結果を示す。
図6】例示的な実施形態に従った、臨床試料中のリツキシマブの濃度とNAbアッセイシグナルとの間の相関を示す。
図7図7Aは、例示的な実施形態に従った、リツキシマブを添加した細胞ベースのNAbアッセイの図を示す。図7Bは、例示的な実施形態に従った、リツキシマブ及びリツキシマブに対する緩和抗体を添加したNAbアッセイの図を示す。図7Cは、例示的な実施形態に従った、リツキシマブに対する緩和抗体を添加した、NAbアッセイにおけるルシフェラーゼ活性の回復を示す。
図8】例示的な実施形態に従った、リツキシマブに対する緩和抗体を添加した、薬物非投与臨床試料中の偽陽性NAbアッセイシグナルの低減を示す。
図9図9Aは、例示的な実施形態に従った、標的捕捉リガンド結合NAbアッセイの図を示す。図9Bは、例示的な実施形態に従った、治療用タンパク質のアームに対するNAbを添加した標的捕捉リガンド結合NAbアッセイの図を示す。図9Cは、例示的な実施形態に従った、薬物捕捉リガンド結合NAbアッセイの図を示す。
図10図10Aは、例示的な実施形態に従った、競合薬物を添加したリガンド結合NAbアッセイの図を示す。図10Bは、例示的な実施形態に従った、競合薬物の濃度の増加に伴う、リガンド結合NAbアッセイにおける偽陽性シグナル阻害の増加を示す。
図11図11Aは、例示的な実施形態に従った、競合薬物及び競合薬物に対する緩和抗体を添加したリガンド結合NAbアッセイの図を示す。図11Bは、例示的な実施形態に従った、競合薬物に対する緩和抗体を添加した、偽陽性NAbアッセイシグナルの排除を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
治療用タンパク質は、様々なヒト疾患を治療するために使用される薬物の重要なクラスである。しかしながら、治療用タンパク質は、投与されたレシピエントにおいて免疫応答を誘発し、抗薬物抗体(ADA)を生成し得る。中和抗体(NAb)は、治療用タンパク質の生物学的活性を遮断することによって、患者の安全性に潜在的に影響を与え、薬効の損失を媒介することができるADAの部分集団である。したがって、NAbの特徴付け及び監視は、免疫原性評価の重要な態様であり、治療作用機序を反映する感度及び信頼性の高い方法を必要とする(Wu,B.,et al.,AAPS Journal,18(6):1335-1350(2016))。
【0026】
NAbアッセイは、適切な感度、特異性、選択性、及び精度でNAbを確実に検出することが予想される。細胞ベースのアッセイ及び非細胞ベースのアッセイの両方が、NAb評価のための選択肢である。概して、NAbアッセイは、治療用タンパク質の標的を提示し、及び治療用タンパク質のその標的への結合への応答としてのシグナル出力の機序を提示するので、結合の定量化が可能になる。共インキュベートされた試料中にNAbが存在する場合、それらは、治療用タンパク質の標的への結合を阻害し、シグナル出力を低減するので、試料中のNAbの定量化が可能になる。
【0027】
試料マトリックスは、例えば、NAb、治療用タンパク質、又は標的と直接相互作用することによって、NAbの正確な定量化を妨げる干渉物質を含み得る。NAbと相互作用し、NAbを占有することによって干渉し得るマトリックス構成成分としては、例えば、治療用タンパク質の以前の投与からの残留薬物が挙げられる。治療用タンパク質と相互作用し、治療用タンパク質を占有することによって干渉し得る別の構成成分としては、例えば、可溶性薬物標的が挙げられる。これらの干渉物質は、従来技術において特徴付けられており、これらの干渉原因に対処して、NAbの正確な定量化を得るために、技術が開発されてきた(Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,462:34-41(2018)、Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,416:94-104(2015)、Xiang,Y.,et al.,AAPS Journal,21(1):4(2019)、Sloan,J.H.,et al.,Bioanalysis,8(20):2157-2168(2016))。
【0028】
しかしながら、まだ特徴付けられていない又は対処されていない別の考えられる干渉物質は、試験されている治療用タンパク質とは異なる、対象試料中の残留競合薬物であり、これは、治療用タンパク質の標的と相互作用し、それを占有し、NAbの偽陽性の定量化をもたらし得る。
【0029】
治療用タンパク質に対する中和抗体を正確に測定する課題に対応するために、中和抗体アッセイにおける干渉を防止するために競合薬物に対する緩和剤を使用するための方法及びキットが、本明細書に記載される。また、治療用タンパク質の標的に競合的に結合する薬物からのNAbアッセイにおける干渉の検出も、本明細書に開示される。この干渉は、NAbアッセイにおける治療用タンパク質結合シグナル又は活性、及び偽陽性NAbアッセイシグナルの低減をもたらし得る。この干渉を克服するために、競合薬物の標的への結合を低減し、治療用タンパク質がその標的に結合することを可能にし、正確なNAbアッセイシグナルを回復させる緩和剤が、用いられ得る。
【0030】
残留競合薬物からの干渉は、例えば、実施例5及び6で実証されるように、臨床使用のための治療用タンパク質を試験する際の、NAbの正確な評価における重大な課題である。新規の治療薬は、患者が、同じ標的と競合的に相互作用し得る第一選択の療法をすでに投与された後に試験され得る。これらの場合、競合薬物からの干渉は、特定及び緩和されなければならない。例えば、B細胞成熟抗原(BCMA)又はCD3の共有標的を有する多数の薬剤候補が、表1に列挙される。多くの競合薬物が存在し得る他の治療標的としては、例えば、セツキシマブなどの薬物若しくは薬物候補によって標的とされ得る上皮成長因子受容体(EGFR);CD28;ダラツムマブなどの薬物若しくは薬物候補によって標的とされ得るCD38;リンパ球活性化遺伝子3(LAG3);セミプリマブ、ペムブロリズマブ、若しくはニボルマブなどの薬物若しくは薬物候補によって標的とされ得るプログラム細胞死タンパク質1(PD-1);プログラム死リガンド1(PD-L1);アダリムマブなどの薬物若しくは薬物候補によって標的とされ得る腫瘍壊死因子(TNF);又はリツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ、若しくはウブリツキシマブなどの薬物又は薬物候補によって標的とされ得るCD20が挙げられる。本明細書の開示は、これら及び他の薬物及び薬物候補からのNAbアッセイ干渉を緩和するのに好適である方法を教示する。
【0031】
(表1)共有標的を有する薬剤候補の例
【0032】
別段記載されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されるものと類似の又は同等の任意の方法及び材料を実施又は試験において使用することができるが、特定の方法及び材料をこれから説明する。
【0033】
「1つの(a)」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきであり、「約」及び「およそ」という用語は、当業者によって理解されるように標準的な変動を可能にすると理解されるべきであり、範囲が提供される場合、端点が含まれる。本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」という用語は、非限定的であることが意図され、それぞれ「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」を意味することが理解される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」又は「目的のタンパク質」という用語は、共有結合されたアミド結合を有する任意のアミノ酸ポリマーを含み得る。タンパク質は、概して「ポリペプチド」として当技術分野において既知の、1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。「ポリペプチド」は、アミノ酸残基、関連する天然に存在する構造バリアント、及びペプチド結合を介して連結されたそれらの天然に存在しない合成類似体、関連する天然に存在する構造バリアント、並びにそれらの天然に存在しない合成類似体からなるポリマーを指す。「合成のペプチド又はポリペプチド」は、天然に存在しないペプチド又はポリペプチドを指す。合成のペプチド又はポリペプチドは、例えば、自動化ポリペプチド合成機を使用して合成され得る。様々な固相ペプチド合成方法が、当業者に既知である。タンパク質は、単一の機能的な生体分子を形成するために、1つ又は複数のポリペプチドを含み得る。タンパク質は、抗体断片、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含み得る。目的のタンパク質は、生物治療用タンパク質、研究又は治療で使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質及び他のキメラ受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、並びに二重特異性抗体のうちのいずれかを含み得る。タンパク質は、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、ピキア(Pichia)種)、哺乳動物系(例えば、CHO細胞、及びCHO-K1細胞などのCHO誘導体)などの組換え細胞ベースの産生系を使用して産生され得る。生物治療用タンパク質及びそれらの産生を考察する最近のレビューについては、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation”(Darius Ghaderi et al.,Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,28 BIOTECHNOLOGY AND GENETIC ENGINEERING REVIEWS 147-176(2012)、それらの教示全体は、本明細書に組み込まれる)を参照されたい。タンパク質は、組成及び溶解性に基づいて分類され得、したがって、球状タンパク質及び線維状タンパク質などの単純タンパク質;ヌクレオタンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、色素タンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質、及びリポタンパク質などのコンジュゲートタンパク質;並びに一次誘導タンパク質及び二次誘導タンパク質などの誘導タンパク質を含み得る。
【0035】
いくつかの例示的な実施形態では、目的のタンパク質は、組換えタンパク質、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、融合タンパク質、及びそれらの組み合わせであり得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「組換えタンパク質」という用語は、好適な宿主細胞に導入されている組換え発現ベクター上で担持される遺伝子の転写及び翻訳の結果として産生されるタンパク質を指す。ある特定の例示的な実施形態では、組換えタンパク質は、抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であり得る。ある特定の例示的な実施形態では、組換えタンパク質は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA1、IgA2、IgD、又はIgEからなる群から選択されるアイソタイプの抗体であり得る。ある特定の例示的な実施形態では、抗体分子は、完全長抗体(例えば、IgG1若しくはIgG4免疫グロブリン)であるか、又は代替的に、抗体は、断片(例えば、Fc断片若しくはFab断片)であり得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4本のポリペプチド鎖、すなわち、2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む、免疫グロブリン分子、並びにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわち、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH領域及びVL領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分化され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ、以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。本発明の異なる実施形態では、抗big-ET-1抗体(若しくはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であり得るか、又は天然に若しくは人工的に修飾され得る。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。本明細書で使用される「抗体」という用語はまた、完全抗体分子の抗原結合断片を含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原を特異的に結合して複合体を形成する、天然発生型の、酵素処理で入手可能な、合成の、又は遺伝子操作された、ポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗体結合断片は、例えば、完全な抗体分子から、抗体可変ドメイン及び任意選択で定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現に関連するタンパク質消化、又は組換え遺伝子工学技術などの任意の好適な標準的技術を使用して、得ることができる。そのようなDNAは既知であり、かつ/又は例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えばファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、又は合成され得る。DNAは、例えば、1つ以上の可変及び/若しくは定常ドメインを好適な構成へと配置するか、又はコドンを導入し、システイン残基を作成し、アミノ酸を修飾、付加、若しくは欠失などするために、分子生物学技術を使用することによって配列決定及び化学的に操作され得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、例えば、抗体の抗原結合領域又は可変領域などの完全なままの抗体の一部分を含む。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、dsFvダイアボディ、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)領域、並びにトリアボディ、テトラボディ、線形抗体、単鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。Fv断片は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の可変領域の組み合わせであり、ScFvタンパク質は、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続された組換え単鎖ポリペプチド分子である。いくつかの例示的な実施形態では、抗体断片は、親抗体と同じ抗原に結合する断片である親抗体の十分なアミノ酸配列を含み、いくつかの例示的な実施形態では、断片は、親抗体と同等の親和性で抗原に結合し、かつ/又は抗原への結合について親抗体と競合する。抗体断片は、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、完全なままの抗体の断片化によって酵素的又は化学的に産生され得、かつ/又はそれは、部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に産生され得る。代替的又は追加的に、抗体断片は、完全に又は部分的に合成的に産生され得る。抗体断片は、任意選択で単鎖抗体断片を含み得る。代替的又は追加的に、抗体断片は、例えば、ジスルフィド連結によって一緒に連結される複数の鎖を含み得る。抗体断片は、任意選択で多分子複合体を含み得る。機能的抗体断片は、典型的には、少なくとも約50アミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200アミノ酸を含む。
【0039】
「二重特異性抗体」という用語は、2つ以上のエピトープに選択的に結合することが可能な抗体を含む。二重特異性抗体は、概して、2つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、2つの異なる分子(例えば、抗原)上又は同じ分子上(例えば、同じ抗原上)のいずれかで、異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合することが可能である場合、第1の重鎖の第1のエピトープに対する親和性は、概して、第1の重鎖の第2のエピトープに対する親和性より少なくとも1~2、又は3、又は4桁低く、逆も同様である。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じ又は異なる標的上(例えば、同じ又は異なるタンパク質上)にあり得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製され得る。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列は、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合され得、そのような配列は、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞中で発現し得る。
【0040】
典型的な二重特異性抗体は、各々が3つの重鎖CDRを有する2つの重鎖、続いて、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン、並びに免疫グロブリン軽鎖を有し、免疫グロブリン軽鎖は、抗原結合特異性を付与しないが、各重鎖と会合することができるか、又は各重鎖と会合することができ、かつ重鎖抗原結合領域によって結合されたエピトープのうちの1つ以上と会合することができるか、又は各重鎖と会合することができ、かつ重鎖のうちの一方若しくは両方が一方若しくは両方のエピトープと結合することを可能にする。BsAbは、Fc領域を保有するもの(IgG様)と、Fc領域を欠くものの2つの主要なクラスに分けることができ、後者は、通常、Fcを含むIgG及びIgG様二重特異性分子よりも小さい。IgG様bsAbは、トリオマブ(triomab)、ノブイントゥホールIgG(kih IgG)、crossMab、オルト-Fab IgG、二重可変ドメインIg(DVD-Ig)、ツーインワン若しくは二重作用Fab(DAF)、IgG-一本鎖Fv(IgG-scFv)、又はκλ-ボディなどであるが、これらに限定されない異なる形式を有し得る。非IgG様の異なる形式としては、タンデムscFv、ダイアボディ形式、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、二重親和性再標的化分子(DART)、DART-Fc、ナノボディ、又はドックアンドロック(DNL)法によって産生される抗体が挙げられる(Gaowei Fan,Zujian Wang & Mingju Hao,Bispecific antibodies and their applications,8 JOURNAL OF HEMATOLOGY & ONCOLOGY 130、Dafne Muller & Roland E.Kontermann,Bispecific Antibodies,HANDBOOK OF THERAPEUTIC ANTIBODIES 265-310(2014)(それらの教示全体は、本明細書に組み込まれる))。
【0041】
本明細書で使用される場合、「多重特異性抗体」とは、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体を指す。そのような分子は通常、2つの抗原のみに結合するが(すなわち、二重特異性抗体、bsAb)、三重特異性抗体及びKIH三重特異性などの更なる特異性を有する抗体は、本明細書に開示される系及び方法の対象であり得る。
【0042】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ハイブリドーマ技術を介して産生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、当技術分野において利用可能な又は既知の任意の手段によって、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む単一のクローンに由来し得る。本開示で有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術、又はそれらの組み合わせの使用を含む、当技術分野において既知の多種多様な技術を使用して調製され得る。
【0043】
いくつかの例示的な実施形態では、目的のタンパク質は、哺乳動物細胞から産生され得る。哺乳動物細胞は、ヒト起源又は非ヒト起源のものであり得、初代上皮細胞(例えば、角化細胞、子宮頸部上皮細胞、気管支上皮細胞、気管上皮細胞、腎臓上皮細胞、及び網膜上皮細胞)、確立された細胞株及びそれらの株(例えば、293胎児腎臓細胞、BHK細胞、HeLa子宮頸部上皮細胞、及びPER-C6網膜細胞、MDBK(NBL-1)細胞、911細胞、CRFK細胞、MDCK細胞、CHO細胞、BeWo細胞、Chang細胞、Detroit 562細胞、HeLa 229細胞、HeLa S3細胞、Hep-2細胞、KB細胞、LSI80細胞、LS174T細胞、NCI-H-548細胞、RPMI2650細胞、SW-13細胞、T24細胞、WI-28 VA13、2RA細胞、WISH細胞、BS-C-I細胞、LLC-MK2細胞、クローンM-3細胞、1-10細胞、RAG細胞、TCMK-1細胞、Y-1細胞、LLC-PKi細胞、PK(15)細胞、GHi細胞、GH3細胞、L2細胞、LLC-RC256細胞、MHiCi細胞、XC細胞、MDOK細胞、VSW細胞、及びTH-I、B1細胞、BSC-1細胞、RAf細胞、RK細胞、PK-15細胞、又はそれらの誘導体)、任意の組織又は器官由来の線維芽細胞(心臓、肝臓、腎臓、結腸、腸、食道、胃、神経組織(脳、脊髄)、肺、血管組織(動脈、静脈、毛細血管)、リンパ組織(リンパ腺、咽頭扁桃腺、扁桃腺、骨髄、及び血液を含むが、これらに限定されない)、脾臓、並びに線維芽細胞及び線維芽細胞様細胞株(例えば、CHO細胞、TRG-2細胞、IMR-33細胞、Don細胞、GHK-21細胞、シトルリン血症細胞、Dempsey細胞、Detroit 551細胞、Detroit 510細胞、Detroit 525細胞、Detroit 529細胞、Detroit 532細胞、Detroit 539細胞、Detroit 548細胞、Detroit 573細胞、HEL 299細胞、IMR-90細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WI-26細胞、Midi細胞、CHO細胞、CV-1細胞、COS-1細胞、COS-3細胞、COS-7細胞、Vero細胞、DBS-FrhL-2細胞、BALB/3T3細胞、F9細胞、SV-T2細胞、M-MSV-BALB/3T3細胞、K-BALB細胞、BLO-11細胞、NOR-10細胞、C3H/IOTI/2細胞、HSDMiC3細胞、KLN205細胞、McCoy細胞、マウスL細胞、2071株(マウスL)細胞、L-M株(マウスL)細胞、L-MTK’(マウスL)細胞、NCTCクローン2472及び2555、SCC-PSA1細胞、Swiss/3T3細胞、インドキョン細胞、SIRC細胞、Cn細胞、及びJensen細胞、Sp2/0、NS0、NS1細胞、又はそれらの誘導体)を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「治療用タンパク質」という用語は、疾患又は障害の治療のために対象に投与され得る任意のタンパク質を指す。いくつかの例示的な実施形態では、治療用タンパク質は、がんの治療を対象とする。治療用タンパク質は、薬理学的効果を有する任意のタンパク質、例えば、抗体、可溶性受容体、抗体-薬物コンジュゲート、又は酵素であってもよい。いくつかの例示的な実施形態では、治療用タンパク質は、二重特異性CD20×CD3抗体であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、治療用タンパク質は、二重特異性BCMA×CD3抗体であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、治療用タンパク質は、セミプリマブなどのプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に対するモノクローナル抗体であり得る。他の実施形態では、治療用タンパク質は、二重特異性EGFR×CD28抗体、二重特異性CD38×CD28抗体、モノクローナル抗TNF抗体、モノクローナル抗PD-L1抗体、モノクローナル抗EGFR抗体、モノクローナル抗CD20抗体、モノクローナル抗CD38抗体、又はモノクローナル抗LAG3抗体であり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「標的」という用語は、薬理学的効果を達成するために治療用タンパク質と特異的に相互作用し得る任意の分子を指す。例えば、抗体の標的は、抗体が対象とする抗原であってもよく、リガンドの標的は、リガンドが選択的に結合する受容体であってもよく、その逆も同様であり、酵素の標的は、酵素が選択的に結合する基質であってもよい、などである。単一の治療用タンパク質は、2つ以上の標的を有してもよい。様々な標的は、特定の用途に従った本発明の方法での使用に好適である。標的は、例えば、細胞表面に存在し得るか、可溶性であり得るか、細胞質であり得るか、又は固体表面上に固定化され得る。標的は、組換えタンパク質であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、標的は、CD20、CD3、BCMA、PD-1、EGFR、CD28、CD38、TNF、PD-L1、又はLAG3であり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗薬物抗体」又は「ADA」という用語は、治療用タンパク質上のエピトープを標的とする対象の免疫系によって産生される抗体を指す。ADAのサブセットは、「中和抗体」又は「NAb」であり、これは、治療用タンパク質に、その薬理学的活性を阻害又は中和する様式で結合することができる。NAbは、治療用タンパク質の臨床的有効性に影響を及ぼし得、したがって、治療用タンパク質を対象に投与するときに監視されなければならない。
【0047】
本明細書で使用される場合、「中和物質」という用語は、治療用タンパク質と、その薬理学的活性を阻害又は中和する様式で相互作用し得る分子を指す。中和物質は、例えば、アプタマーなどのオリゴヌクレオチド、又は抗体などのタンパク質であり得る。中和物質は、様々な供給源から、例えば、化学合成によって、組換え産生によって、又は対象の免疫系から生じ得る。簡潔にするために、対象の免疫系によって産生される中和抗体(NAb)は、本明細書で考察される一次中和物質であるが、本発明の方法が任意の中和物質の検出に適用され得ることを理解されたい。
【0048】
NAbは、様々なアッセイを使用して監視され得る。NAbアッセイは、細胞ベースのアッセイ又は非細胞ベースのアッセイに大別され得る。細胞ベースのアッセイ対非細胞ベースのアッセイの選択は、問題の治療用タンパク質、標的、及び適用に依存し、当業者は、それらのニーズに従ってアッセイを選択することができるであろう。
【0049】
細胞ベースのアッセイは、少なくとも1つの細胞型を含む。治療用タンパク質は、細胞事象が影響を受けるように標的に結合し得、次いで、治療用タンパク質結合の出力として測定され得る。測定可能なシグナル又は活性をもたらす有用な細胞事象としては、例えば、受容体リン酸化、シグナル伝達経路における下流タンパク質のリン酸化、サイトカイン放出、細胞増殖、細胞死、二次タンパク質の産生、又は任意の他の細胞活性が挙げられ得る。追加的又は代替的に、標的に結合する治療用タンパク質によって引き起こされる細胞事象に応答して発現するレポーター遺伝子、例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、又はそれらの任意のバリアントなどの蛍光タンパク質が使用されてもよい。
【0050】
標的に結合する治療用タンパク質によって生じるシグナルの測定、及びNAbによるそのシグナルの阻害の測定は、「直接的な」細胞ベースのアッセイと呼ばれ得る。逆に、「間接的な」細胞ベースのアッセイでは、治療用タンパク質の標的への結合は、測定可能なシグナルを阻害し、そのシグナルの回復は、NAbを検出するために使用される。簡潔にするために、考察は、直接的な細胞ベースのアッセイに限定されるが、本明細書に記載される方法は、同様に、間接的な細胞ベースのアッセイに適用され得る。
【0051】
治療用二重特異性抗体によって架橋されたときに測定可能な細胞事象を生じさせる2つの細胞型を含む、細胞ベースのNAbアッセイが、本明細書に開示される。各細胞型は、二重特異性抗体の一方のアームによって認識される抗原である標的を、その細胞表面上に提示し得る。両方の標的の同時結合は、2つの細胞を架橋し、治療用タンパク質結合の指標として測定され得る下流の細胞事象を生じさせる。細胞ベースのNAbアッセイに使用される細胞の例としては、ヒトCD20を発現するHEK293/hCD20細胞、BCMAを内因的に発現するMOLP-8細胞、及びJurkat/NFAT-Luc細胞が挙げられる。Jurkat/NFAT-Luc細胞は、その細胞表面上にCD3及びT細胞受容体(TCR)を発現する。二重特異性抗体、例えば二重特異性CD20×CD3抗体又は二重特異性BCMA×CD3抗体がこの細胞を第2の細胞と架橋するときに、TCRは、ルシフェラーゼレポーターの発現をもたらすシグナル伝達経路を開始し、測定可能なシグナルを生じる。このシグナルは、実施例に更に記載されるように、アッセイにおけるNAbの存在によって、又は競合薬物によって低減され得る。
【0052】
多くの細胞型が、試験されている治療用タンパク質及び標的に従って、本発明の細胞ベースのアッセイで使用され得るが、ただし、細胞が、標的を発現するか、若しくは発現するように修飾され得ること、及び/又は測定可能なシグナル若しくは活性をもたらすことによって、治療用タンパク質及び標的の結合に応答することができることが条件であることを理解されたい。本発明の方法で使用され得る細胞の非限定的な例としては、HEK293細胞、HEK293/hCD20細胞、HEK293/MfBCMA細胞、HEK293/hBCMA細胞、NCI-H929細胞、MOLP-8細胞、Jurkat細胞、Jurkat/NFAT-Luc細胞、Jurkat/NFAT-Luc/MfCD3細胞、及びそれらの修飾型が挙げられる。
【0053】
非細胞ベースのアッセイは、細胞の不在下でNAbの存在を検出することができる。非細胞ベースのアッセイの1つのタイプは、競合リガンド結合(CLB)アッセイと呼ばれる。CLBアッセイ、又は本明細書で言及されるように、リガンド結合アッセイは、治療用タンパク質の標的への結合を測定し、標的は、例えば、精製された組換えタンパク質、又は調製された細胞膜と会合した天然標的であり得る。標的は、マイクロプレート又はビーズなどの固体支持体上に固定化され、標識された治療用タンパク質の捕捉を可能にし得、その標識の検出は、結合を測定するために使用され得る。試料中のNAbは、治療用タンパク質の標的への結合を遮断し、シグナルを低減する。代替的に、治療用タンパク質は、可溶性標的が標識されている間、固体表面に固定化されてもよく、同じ原理が別の方法で適用される。標識は、例えば、蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能、又は親和性精製によって検出可能であり得、かつ/又はシグナル若しくは活性をもたらし得る。
【0054】
標的に結合する治療用タンパク質によって生じるシグナルの測定、及びNAbによるそのシグナルの阻害の測定は、直接結合アッセイと呼ばれ得る。逆に、間接結合アッセイでは、治療用タンパク質の標的への結合は、測定可能なシグナルを阻害し、そのシグナルの回復は、NAbを検出するために使用される。簡潔にするために、考察は、直接的結合アッセイに限定されるが、本明細書に記載される方法は、同様に、間接結合アッセイに適用され得る。
【0055】
アビジンコーティングされたマイクロプレート上に固定化され、ルテニル化治療用タンパク質、例えば、セミプリマブと共インキュベートされたビオチン化標的、例えば、PD-1を含む、リガンド結合NAbアッセイが、本明細書に開示される。固定化されたPD-1への標識されたセミプリマブの結合は、この結合を測定するために使用され得るシグナルの検出を可能にする。実施例で更に考察されるように、アッセイにおけるNAb又は競合薬物の存在は、このシグナルを低減し得る。
【0056】
第2のタイプの非細胞ベースのアッセイは、酵素活性ベースのアッセイと呼ばれる。酵素活性ベースのアッセイは、好適な基質を生成物に変換することによって、その作用機序に生物学的に関連する反応を触媒する酵素製剤の能力を測定する。酵素活性は、酵素のその基質への結合を直接測定することによって、又は生成される生成物の量を測定することによって測定され得る。アッセイにおけるNAb又は競合薬物の存在は、生成物の結合の低減又は産生の低減によって示され得る。したがって、本明細書に開示される方法はまた、酵素活性ベースのアッセイにおけるNAbの正確な定量化にも適用可能である。
【0057】
試料中のNAbの存在を検出するために、NAbアッセイは、実験条件及び対照条件を含むべきである。実験条件は、NAbの存在について試験されている試料を含む。対照条件は、例えば、NAbを含まないことが既知である陰性対照条件であり得る。シグナル又は活性は、標的に結合する治療用タンパク質の尺度としてNAbアッセイにおいてもたらされ、対照条件と比較した実験条件における当該シグナルの低減は、治療用タンパク質の中和の尺度であり、したがって、例えば図4Bに示されるように、実験条件におけるNAbの存在である。
【0058】
逆に、陽性対照条件は、NAb又は別の中和物質を含むことが既知であり得、例えば、NAbアッセイを検証するために、又はそのシグナルを較正するために使用され得る。
【0059】
実験条件と対照条件との間のシグナルの変化は、干渉物質からの干渉によっても引き起こされ得る。試料中のNAbの存在が正確に検出され得るように、当該干渉を低減する方法が、本明細書に開示される。
【0060】
本明細書で使用される場合、「干渉物質」という用語は、NAbの正確な測定に干渉し得る、NAbアッセイ又は試料マトリックス中に存在する任意の分子を指す。干渉は、NAb、治療用タンパク質、治療用タンパク質標的、又はNAbアッセイの任意の構成成分との会合によって引き起こされ得る。干渉物質の例としては、治療用タンパク質の可溶性標的、したがって同じNAbによって標的とされる治療用タンパク質と同様の配列を有するタンパク質、又は治療用タンパク質の以前の投与からの残留薬物が挙げられ得る。
【0061】
特定のクラスの干渉物質は、治療用タンパク質ではないが、治療用タンパク質標的などのNAbアッセイの構成成分に競合的に結合することができる、試料マトリックス中に存在する「競合薬物」であり得る。競合薬物は、対象に以前に投与された残留薬物であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、競合薬物は、例えば、CD20、CD3、BCMA、PD-1、EGFR、CD28、CD38、TNF、PD-L1、又はLAG3を含む治療標的に競合的に結合し得る。いくつかの例示的な実施形態では、競合薬物は、表1に列挙される薬物又は薬物候補のいずれかであり得る。いくつかの例示的な実施形態では、競合薬物は、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、又はアダリムマブであり得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「緩和剤」という用語は、NAbアッセイにおける干渉を低減又は防止し、試料中のNAbの正確な検出を可能にするために、干渉物質に結合し得る任意の分子を指す。干渉物質と特異的に相互作用し、NAb、治療用タンパク質、標的、又はNAbアッセイの他の構成成分とのその干渉を防止することができる任意の分子は、好適な緩和剤であり得る。緩和剤は、例えば、アプタマーなどのオリゴヌクレオチド、又は抗体などのタンパク質であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、緩和剤は、競合薬物に対する遮断抗体、例えば、抗リツキシマブ遮断抗体、抗ペムブロリズマブ遮断抗体、又は抗ニボルマブ遮断抗体であり得る。
【0063】
本発明の方法を実施するためのキットも、本明細書に開示される。本発明のキットは、使用者が、競合薬物からの干渉を緩和することによって、試料中のNAbの存在を正確に検出することを可能にする。本発明のキットは、例えば、治療用タンパク質、当該治療用タンパク質の標的、緩和剤、当該治療用タンパク質と当該標的との間の結合の尺度としてシグナル又は活性をもたらす手段、及びキットの使用説明書を含み得る。それらはまた、陽性対照として使用され得る中和物質を含み得る。それらは、陽性対照として使用され得る競合薬物を追加的に含み得る。
【0064】
キットは、細胞ベース若しくは非細胞ベースのNAbアッセイ、又はその両方を対象とし得る。細胞ベースのNAbアッセイを対象とするキットは、標的の発現に、かつ当該標的に結合する治療用タンパク質の尺度としてシグナル又は活性をもたらすのに好適な細胞、例えば、HEK293/hCD20細胞、Jurkat/NFAT-Luc細胞、MOLP-8細胞、又は標的を発現することができ、かつ/又は測定可能なシグナル若しくは活性をもたらすことによって治療用タンパク質の標的への結合に応答することができる、任意の他の細胞を含み得る。細胞ベースのNAbアッセイを対象とするキットにおける好適な標的は、例えば、CD20、CD3、BCMA、EGFR、CD28、CD38、又はそれらの組み合わせであり得る。好適な治療用タンパク質は、例えば、二重特異性CD20×CD3抗体、二重特異性BCMA×CD3抗体、二重特異性EGFR×CD28抗体、又は二重特異性CD38×CD28抗体であり得る。
【0065】
非細胞ベースのNAbアッセイを対象とするキットは、例えば、アビジンでコーティングされることによって、標的及び/又は治療用タンパク質に結合することができる固体支持体、例えば、マイクロプレート又はビーズを含み得る。それらは、例えば、ビオチンにコンジュゲートされることによって、当該固体支持体に結合することができる標的及び/又は治療用タンパク質を追加的に含み得る。それらは、標識された標的及び/又は治療用タンパク質、例えば、ルテニウムで標識された標的及び/又は治療用タンパク質を更に含み得る。非細胞ベースのNAbアッセイを対象とするキットにおける好適な標的は、例えば、PD-1、TNF、PD-L1、EGFR、CD20、CD38、又はLAG3であり得る。好適な治療用タンパク質は、例えば、セミプリマブ、又は前述の標的のうちのいずれかに対するモノクローナル抗体であり得る。
【0066】
本発明は、前述の治療用タンパク質、標的、中和物質、細胞ベースのアッセイ、細胞型、非細胞ベースのアッセイ、レポーター、標識、干渉物質、競合薬物、又は緩和剤のうちのいずれかに限定されず、任意の治療用タンパク質、標的、中和物質、細胞ベースのアッセイ、細胞型、非細胞ベースのアッセイ、レポーター、標識、干渉物質、競合薬物、又は緩和剤が、任意の好適な手段によって選択され得ることを理解されたい。
【0067】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0068】
材料及び方法。本発明は、当業者によって実施される場合、例えば、Sambrook et al.“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,3rd ed.2001、Ausubel et al.“Short Protocols in Molecular Biology”,5th ed.1995、“Methods in Enzymology”,Academic Press,Inc.、MacPherson,Hames and Taylor(eds.).“PCR 2:A practical approach”,1995、“Harlow and Lane(eds.)“Antibodies,a Laboratory Manual”1988、Freshney(ed.)“Culture of Animal Cells”,4th ed.2000、“Methods in Molecular Biology”vol.149(“The ELISA Guidebook”by John Crowther)Humana Press 2001、及びこれらの論文の後の版(例えば、“Molecular Cloning”by Michael Green(4th Ed.2012)及び“Culture of Animal Cells”by Freshney(7th Ed.,2015)、並びに最新の電子版に記載されるような、薬化学、免疫学、分子生物学、細胞生物学、組換えDNA技術、及びアッセイ技術の分野の従来の技術を利用し得る。
【0069】
本発明の方法及び本発明のキットの態様を実施するための試薬は、ビオチン化PD-1(標的)、抗リツキシマブ抗体であるα-Ritux Ab1、α-Ritux Ab2、及びα-Ritux Ab3、抗ペムブロリズマブ抗体、並びに抗ニボルマブ抗体(緩和剤);抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗BCMA抗体、抗PD-1抗体、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、及びニボルマブ(競合薬物);並びに二重特異性抗体CD20×CD3、二重特異性抗体BCMA×CD3、及びセミプリマブ(治療用タンパク質)を含み、例えば、米国特許第9,657,102号及び同第10,550,193号を参照されたい(それらの教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。陰性対照抗体、例えば、hIgG1、hIgG4は、いくつかの商業的供給源から入手可能である。
【0070】
本発明の方法及び本発明のキットの態様を実施するのに好適な細胞としては、HEK293/hCD20、MOLP-8、Jurkat/NFAT-Luc、及びJurkat/NFAT-Luc/MfCD3細胞が挙げられ、それらは全て、いくつかの商業的供給源から入手可能である。
【0071】
ルシフェラーゼアッセイは、製造業者からのガイドラインに従って実施され、例えば、Promega及びThermoFisherを参照されたい。
【0072】
実施例1.治療用タンパク質に対する中和抗体(NAb)を検出するための細胞ベースのアッセイ設計
この実施例は、治療用タンパク質候補を評価するための、本発明の細胞ベースの中和抗体(NAb)アッセイの実験設計を示す。簡潔に述べると、細胞表面ヒト抗原CD20を発現するように操作されたヒト不死化B細胞を調製した(HEK293/hCD20と表す)。これらの細胞は、CD20を発現するヒトがん細胞を模倣する、アッセイの「標的細胞」を表す。加えて、T細胞受容体(TCR)及び細胞表面抗原CD3を発現するヒト不死化T細胞を調製し、TCR/CD3誘導性プロモーター(活性化T細胞の核因子(NFAT))の制御下で、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を発現するように操作した。図1Aに示されるように、これらのJurkat/NFAT-Luc細胞は、二重特異性CD20×CD3抗体などの薬物抗体と架橋されたときに、細胞媒介性細胞傷害性応答を介してCD20発現がん細胞に結合し、それを潜在的に排除することができる患者の免疫細胞を模倣する、アッセイの「レポーター細胞」を表す。
【0073】
図1Bに示されるように、レポーター細胞上のT細胞受容体(TCR)のクラスター化を媒介する、CD20及びCD3に結合する抗体(二重特異性CD20×CD3薬物抗体)の添加は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現をもたらし、堅牢な用量依存的ルシフェラーゼシグナルをもたらす。hIgG4アイソタイプ対照抗体の添加は、図1Bの白抜きの四角形によって示されるように、ルシフェラーゼ活性をもたらさなかった。
【0074】
上述のようにレポーター細胞としてJurkat/NFAT-Luc細胞を使用し、標的細胞としてMOLP-8細胞と組み合わせて、別の細胞ベースのNAbアッセイを設計した。MOLP-8は、細胞表面タンパク質B細胞成熟抗原(BCMA)を内在的に発現する多発性骨髄腫細胞株である。図1Cに示されるように、二重特異性BCMA×CD3抗体は、レポーター細胞と標的細胞とを架橋し、レポーター細胞上のTCRのクラスター化を媒介し、ルシフェラーゼレポーター遺伝子及び用量依存的ルシフェラーゼシグナルの発現をもたらすことができる。2つのBCMA×CD3抗体を試験し、点線は、後続のアッセイで使用される濃度を示す。
【0075】
これらの結果は、本発明の細胞ベースのアッセイが、堅牢な用量応答曲線を提供し、陽性対照及び陰性対照に予測通りに応答することを示す。
【0076】
実施例2.細胞ベースのNAbアッセイを使用した、治療用タンパク質に対するNAbの検出
この実施例は、本発明のNAbアッセイの実験設計の更なる概念実証を示す。細胞ベースのNAbアッセイにおいて、治療用タンパク質に対するNAbは、治療用タンパク質のその標的細胞及び/又はレポーター細胞への結合を阻害し、それによってレポーターシグナルを排除する。NAbアッセイにおけるレポーターシグナル又は活性の低減は、試料中のNAbの存在の尺度である。
【0077】
例えば、図2Aは、二重特異性CD20×CD3薬物抗体に対するNAbの作用を示し、二重特異性抗体の抗CD20アーム又は抗CD3アームに対するNAbの結合は、それぞれCD20又はCD3への結合を妨げ、ルシフェラーゼ活性を排除する。この細胞ベースのNAbアッセイを更に検証するために、代理NAbをNAbアッセイに添加し、二重特異性CD20×CD3薬物抗体の抗CD20アーム又は抗CD3アームのいずれかを標的とした。図2Bに示されるように、NAbの添加は、用量依存的にルシフェラーゼ活性の減少を引き起こした。
【0078】
この細胞ベースのNAbアッセイの有効性を、2つの二重特異性BCMA×CD3薬物抗体との使用について更に検証した。代理NAbをNAbアッセイに添加し、2つの二重特異性BCMA×CD3薬物抗体の抗BCMAアーム又は抗CD3アームのいずれかを標的とした。図2C図2D図2F、及び図2Gに示されるように、NAbの添加は、用量依存的にルシフェラーゼ活性の減少を引き起こした。図2E及び図2Hに示されるように、アイソタイプ対照の添加は、ルシフェラーゼ活性に影響を及ぼさなかった。
【0079】
これらの結果は、本発明のアッセイが、用量依存的に治療用タンパク質に対する中和抗体の存在を確実に測定することを示す。
【0080】
実施例3.競合薬物による、細胞ベースのNAbアッセイの干渉
NAbアッセイは、マトリックス構成成分からの干渉に起因して、偽陽性又は偽陰性の結果を起こしやすい可能性がある。干渉の1つの潜在的な原因は、試験されている治療用タンパク質の標的に競合的に結合する第2の薬物である。このタイプの干渉の概念の証明として、二重特異性CD20×CD3薬物抗体のNAbアッセイを、図3A及び図3Bに示されるように、CD20又はCD3のいずれかに対する競合抗体を添加して行った。競合薬物の添加は、ルシフェラーゼ活性の用量依存的な低減を引き起こし、代理NAbによって引き起こされるルシフェラーゼ活性の低減を模倣し、したがって、偽陽性の結果を生じさせた。
【0081】
競合薬物からの干渉は、2つの二重特異性BCMA×CD3薬物抗体についてのNAbアッセイにおいても見られた。図3C及び図3Eに示されるように、BCMA又はCD3に対する二価親抗体の添加は、両方のアッセイにおいてルシフェラーゼシグナルの減少をもたらした。図3D及び図3Fに示されるように、BCMAに対する様々な臨床候補抗体の添加もまた、両方のアッセイにおいてルシフェラーゼシグナルの減少を引き起こした。
【0082】
これらの結果は、競合する第2の薬物の存在が、細胞ベースのNAbアッセイにおいて偽陽性結果をもたらす可能性があるという概念実証を示す。
【0083】
実施例4.細胞ベースのNAbアッセイへのヒト血清の添加
上で考察されたように、NAbアッセイは、マトリックス構成成分からの干渉を受けやすい可能性がある。潜在的な干渉に対する本発明のNAbアッセイの回復力を試験するために、図4Aに示されるように、薬物ナイーブヒト血清を添加して、二重特異性CD20×CD3薬物抗体のNAbアッセイを行った。ルシフェラーゼ活性は、ヒト血清の添加による影響を受けず、ヒト血清構成成分からの干渉に対する本発明のNAbアッセイの回復力、したがって臨床応用への適合性を実証した。
【0084】
図4Bは、「NAbアッセイシグナル」の単純な表現を示す。試料中のNAbの相対的な存在は、薬物対照で誘導されるルシフェラーゼ活性を、実験試料中で誘導されるルシフェラーゼ活性で割ることによって、定量化される。ルシフェラーゼ活性は、NAbの存在下で用量依存的に低減され、より高いNAbアッセイシグナルをもたらす。
【0085】
実施例5.臨床試料中での、細胞ベースのNAbアッセイの干渉
図5に示されるように、本発明のNAbアッセイを使用して、二重特異性CD20×CD3薬物抗体に対するNAbの存在について、臨床試験からの60個の薬物ナイーブヒト試料を試験した。試験した患者は、薬物抗体に曝露されていなかったが、多くの試料は、NAbについて偽陽性の結果を示した。
【0086】
実施例3で考察されたように、NAbアッセイにおける偽陽性シグナルの考えられる原因の1つは、競合する第2の薬物である。この臨床試験の多くの患者は、抗CD20療法の既往歴があった。競合する抗CD20薬物がNAbアッセイの偽陽性の結果に関与し得るかどうかを評価するために、17個のヒト試料のサブセットを、市販のELISAを使用して、抗CD20抗体であるリツキシマブの存在について試験した。図6に示されるように、リツキシマブの存在は、偽陽性NAbアッセイシグナルと相関した。
【0087】
これらの結果は、残留競合薬物からの干渉が、臨床応用においてNAbアッセイにおける偽陽性の結果をもたらし得、治療用タンパク質に対するNAbを正確に検出するために対処されなければならないことを実証する。
【0088】
実施例6.競合薬物による、細胞ベースのNAbアッセイ干渉の緩和
上述のように、競合薬物の存在は、NAbアッセイにおける治療用タンパク質のその標的への結合に干渉し、レポーター活性の低減及び偽陽性NAbアッセイシグナルをもたらし得る。これは、治療用タンパク質としての二重特異性CD20×CD3薬物抗体、及び競合薬物としての抗CD20抗体であるリツキシマブの例を使用した、図7Aに示される。競合薬物の存在下で治療用タンパク質に対するNAbを正確に検出するためには、共通標的への競合薬物の結合が緩和されなければならない。これは、競合薬物からの干渉を防止し、治療用タンパク質に対するNAbの正確な検出を可能にする緩和剤としての抗リツキシマブ抗体の例を使用した、図7Bに示される。
【0089】
リツキシマブに対する遮断抗体を、本発明のNAbアッセイにおける干渉を緩和する能力について試験した。図7Cに示されるように、抗リツキシマブ抗体を、リツキシマブでスパイクした血清中で共インキュベートし、NAbアッセイに添加した。抗リツキシマブ抗体の添加は、ルシフェラーゼ活性を回復させ、リツキシマブによって引き起こされる偽陽性NAbアッセイシグナルを排除した。
【0090】
これらの結果は、競合薬物に対する緩和剤の使用が、偽陽性NAbアッセイシグナルを排除し、治療用タンパク質に対するNAbの正確な検出を可能にすることができることを実証する。
【0091】
実施例7.臨床試料中の競合薬物による、細胞ベースのNAbアッセイ干渉の緩和
実施例5に示されるように、臨床試験からの多くの薬物ナイーブヒト試料は、二重特異性CD20×CD3薬物抗体に対するNAbについて試験されたときに、競合薬物である抗CD20抗体リツキシマブの存在に起因する可能性がある、偽陽性NAbアッセイシグナルをもたらした。図8に示されるように、リツキシマブからの干渉を緩和するために、抗リツキシマブ遮断抗体を添加した臨床試料を使用して、NAbアッセイを行った。試料番号1は、低いNAbアッセイシグナルを有する対照試料である。試料番号2及び番号3は、高い偽NAbアッセイシグナルを示した。抗リツキシマブ抗体の添加は、偽陽性NAbアッセイシグナルを排除した。
【0092】
これらの結果は、臨床試料中の残留競合薬物、この場合はリツキシマブが、NAbアッセイに干渉し、NAbアッセイの結果を不正確にする可能性があることを確認する。それらは、競合薬物に対する緩和剤が、臨床応用における偽陽性NAbアッセイシグナルを排除することができることを更に実証する。競合薬物に対する緩和剤の使用は、試験されている治療用タンパク質に対するNAbの正確な検出を可能にする。
【0093】
実施例8.治療用タンパク質に対するNAbを検出するためのリガンド結合アッセイ設計
この実施例は、治療用タンパク質候補を評価するための、本発明のリガンド結合NAbアッセイの実験設計を示す。本発明の例示的な実施形態は、標的捕捉リガンド結合NAbアッセイを含む。簡潔に述べると、試料を、ビオチン化標的とともにインキュベートし、アビジンコーティングされたマイクロプレートに移す。ルテニル化薬物を、後続の工程でマイクロプレートに添加する。図9Aに示されるように、NAbの不在下では、ルテニウム標識薬物は、固定化されたビオチン標的に結合し、アッセイにおいてシグナルを生じる。図9Bに示されるように、NAbの存在下では、ルテニウム標識薬物は、ビオチン標的に結合することができず、アッセイシグナルの阻害をもたらす。
【0094】
追加のリガンド結合NAbアッセイは、治療用タンパク質に対するNAbの評価に好適であり得る。例えば、標的捕捉設計の代わりに、リガンド結合アッセイを薬物捕捉のために設計してもよく、目的の治療用タンパク質を固定化し、標的をアッセイシグナルの発生のために標識する。図9Cは、アビジンコーティングされたマイクロプレート上にビオチン化薬物が固定化され、ルテニル化標的がアッセイシグナルを生じ、固定化された薬物に対するNAbが標的への結合を遮断し、それによってアッセイシグナルを阻害する、リガンド結合アッセイ設計を示す。
【0095】
実施例9.競合薬物による、リガンド結合NAbアッセイの干渉
上述の細胞ベースのNAbアッセイと同様に、リガンド結合NAbアッセイは、マトリックス構成成分からの干渉に起因して、偽陽性又は偽陰性の結果を起こしやすい可能性がある。図10Aに示されるように、干渉の潜在的な原因の1つは、試験されている治療用タンパク質の標的に競合的に結合する第2の薬物である。例えば、薬物抗体セミプリマブ、ペムブロリズマブ、及びニボルマブは、同じ薬物標的PD-1を共有する。臨床試料を、セミプリマブに対するNAbについて試験する場合、ルテニル化セミプリマブのビオチン化PD-1への結合を使用してシグナルを生じさせると、臨床試料中の任意の残留ペムブロリズマブ、ニボルマブ、又は非標識セミプリマブは、標的に競合的に結合し、アッセイシグナルを阻害し、NAbの存在について偽陽性の結果を引き起こす。
【0096】
概念実証として、図10Bに示されるように、増加する濃度のセミプリマブ、ペムブロリズマブ、又はニボルマブを、セミプリマブに対するNAbの標的捕捉NAbアッセイに添加した。125ng/mLを超えるセミプリマブ、ペムブロリズマブ、又はニボルマブの濃度は、ルテニル化セミプリマブからのシグナルを阻害し、偽陽性NAbアッセイシグナルを生じた。
【0097】
これらの結果は、競合薬物の存在が、偽陽性リガンド結合NAbアッセイシグナルをもたらす可能性があり、治療用タンパク質に対するNAbを正確に検出するために対処されなければならないことを実証する。
【0098】
実施例10.競合薬物によるリガンド結合NAbアッセイ干渉の緩和
上述のように、競合薬物の存在は、リガンド結合NAbアッセイにおける治療用タンパク質のその標的への結合に干渉し、シグナルの低減及び偽陽性NAbアッセイシグナルをもたらし得る。競合薬物の存在下で治療用タンパク質に対するNAbを正確に検出するためには、共通標的への競合薬物の結合が緩和されなければならない。これは、競合薬物からの干渉を防止し、治療用タンパク質に対するNAbの正確な検出を可能にする緩和剤としての、抗ペムブロリズマブ又は抗ニボルマブ抗体の例を使用した、図11Aに示される。
【0099】
ペムブロリズマブ及びニボルマブに対する遮断抗体を、本発明のNAbアッセイにおける干渉を緩和する能力について試験した。図11Bに示されるように、抗ペムブロリズマブ又は抗ニボルマブ抗体を、それぞれペムブロリズマブ又はニボルマブでスパイクした試料中で共インキュベートし、リガンド結合NAbアッセイに添加した。競合薬物に対する緩和剤の添加は、標的への競合的結合によって引き起こされる偽陽性NAbアッセイシグナルを排除した。
【0100】
これらの結果は、競合薬物に対する緩和剤の使用が、リガンド結合アッセイにおける偽陽性NAbアッセイシグナルを排除し、治療用タンパク質に対するNAbの正確な検出を可能にすることができることを実証する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】