IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-524063液相及び気相解析による非侵襲的膀胱がん検出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】液相及び気相解析による非侵襲的膀胱がん検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20230601BHJP
   G01N 33/551 20060101ALI20230601BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230601BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230601BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230601BHJP
【FI】
G01N27/22 B
G01N27/22 A
G01N33/551
C12M1/34 A
C12Q1/02
C12Q1/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566321
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021029778
(87)【国際公開番号】W WO2021222489
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/018,704
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/242,750
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ログンルド、クリストファー ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】コヤ、ビジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュディッシュ、オーガスト
(72)【発明者】
【氏名】タッソーニ ジュニア、アンソニー フランク
(72)【発明者】
【氏名】シャーウッド、グレゴリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フロスト、ケイト ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン、ジャスティン セオドア
【テーマコード(参考)】
2G060
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AA07
2G060AA15
2G060AB15
2G060AD06
2G060AF10
2G060BA09
2G060BC04
2G060KA01
2G060KA05
4B029AA07
4B029BB11
4B029BB15
4B029BB20
4B029FA09
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QS10
4B063QS39
4B063QX04
(57)【要約】
被検者の病態を検出する方法は、被検者から液体生体サンプル(306)を取得し、それを容器(302)内に収容するステップと、液体生体サンプル(306)を第一の化学センサ素子(308)と接触させるステップと、を含み、第一の化学センサ素子(308)は、複数のディスクリートグラフェンバラクタ(312)を含む。方法は、第一のサンプルデータセットを取得するためにディスクリートグラフェンバラクタ(312)の各々の静電容量を検知し、記憶するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の病態を検出する方法であって、
前記被検者から液体生体サンプルを取得し、それを容器内に収容するステップと、
前記液体生体サンプルを、複数のディスクリートグラフェンバラクタを備える第一の化学センサ素子と接触させるステップと、
第一のサンプルデータセットを取得するために前記ディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し記憶するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
液体生体サンプルを取得するステップは、尿サンプル、血液サンプル、臓器生検サンプルを含む液体懸濁液、唾液サンプル、汗サンプル、又は細胞培養サンプルのうちの1つ以上を取得するステップを備える、請求項1又は3~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項3】
前記第一のサンプルデータセットを1つ以上の既定の病態に分類するステップをさらに備える、請求項1、2又は4~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記液体生体サンプルの周囲のヘッドスペースからのガスを、複数のディスクリートグラフェンバラクタを備える第二の化学センサ素子と接触させるステップをさらに備える、請求項1~3又は5~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体生体サンプルの周囲の前記ヘッドスペースは、ある容積のガスを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘッドスペースからのガスを前記第二の化学センサ素子と接触させるステップの前に、前記液体生体サンプルをガスで発泡させるステップをさらに備える、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記液体生体サンプルを前記容器内に収容するステップの前に、前記容器に不活性ガスが充填される、請求項1~6又は8~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記液体生体サンプルは、前記第一の化学センサ素子を前記液体生体サンプルの中に予め設定された長さの時間にわたり浸漬させることにより、前記第一の化学センサ素子と接触させられる、請求項1~7又は9の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
サンプルデータセットを取得するために前記ディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し記憶するステップは、ある範囲のバイアス電圧にわたって行われ、前記バイアス電圧の範囲は-3V~3Vである、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
被検者の病態を検出する方法であって、
前記被検者から液体生体サンプルを取得して、それを、当該液体生体サンプルの上方にヘッドスペースを有する容器内に収容するステップと、
前記液体生体サンプルを、複数のディスクリートグラフェンバラクタを備える第一の化学センサ素子と接触させるステップと、
前記液体生体サンプルの上方の前記ヘッドスペースからのガスを、複数のディスクリートグラフェンバラクタを備える第二の化学センサ素子と接触させるステップと、
第一のサンプルデータセットを取得するための前記第一の化学センサ素子と、第二のサンプルデータセットを取得するための前記第二の化学センサ素子との各々の前記ディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し記憶するステップと、
を備える方法。
【請求項11】
前記第一のサンプルデータセット及び前記第二のサンプルデータセットの各々を1つ以上の既定の病態に分類するステップをさらに備える、請求項10に記載の方法。
1つ以上の病態の特定のバイオマーカに関する先行するデータ
【請求項12】
病態を検出するためのシステムであって、
該システムは容器を備え、該容器は被検者の液体生体サンプルを収容するように適合されたハウジングを含み、前記ハウジングはある容積のガスからなるヘッドスペースを画定し、
該システムは前記液体生体サンプルと接触させられるように構成された第一の化学センサ素子を備え、該第一の化学センサ素子は複数のディスクリートグラフェンバラクタを備え、
該システムは前記第一の化学センサ素子とインタフェースするように構成された検知装置を備え、該検知装置は前記複数のディスクリートグラフェンバラクタの静電容量を検知するようにさらに構成される、システム。
【請求項13】
前記ヘッドスペースと流体連通する第二の化学センサ素子をさらに備え、該第二の化学センサ素子は複数のディスクリートグラフェンバラクタを備える、請求項12又は14~15の何れか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数のディスクリートグラフェンバラクタは各々、グラフェン表面の1つ以上の表面改質を含む、請求項12~13又は15の何れか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数のディスクリートグラフェンバラクタの前記表面改質は、病態の1つ以上のバイオマーカを検出するように構成され、前記バイオマーカはDNA、RNA、ヌクレオリン、腫瘍細胞、細胞表面受容体蛋白質、C反応性蛋白質、転写因子、サイトカイン、揮発性有機化合物、エクソソーム、又はそれらの誘導体及び断片を備える、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施形態は、非侵襲的膀胱がん検出システム及び方法に関する。より具体的には、本願の実施形態は、液相及び気相分析のための非侵襲的膀胱がん検出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国がん学会によれば、膀胱がんの新たな診断件数は年間80,000件に上っている。膀胱がんは4つのステージに分類でき、これには、膀胱壁の上皮のレベルが影響を受けるものと特徴付けることのできるステージI、上皮の他膀胱壁の筋層の表層が影響を受けるものと特徴付けることのできるステージII、筋層の表層及び上皮の他膀胱の筋層の深層が影響を受けるものと特徴付けることのできるステージIII、並びに膀胱壁の層の各々、何れかの周辺組織及び器官、又は遠隔組織及び器官が影響を受ける、転移性として特徴付けることのできるステージIVが含まれる。ステージIで検出されれば、膀胱がんの生存率は90%を超える可能性があるため、早期検出が重要である。
【0003】
現行の膀胱がん早期検出方法には、侵襲性の高いものや感度と特異性の低いものが含まれる。膀胱鏡検査等の侵襲的手法は、患者にとってきわめて不快であり、出血、痛み、感染症などの合併症の高いリスクを伴う可能性がある。膀胱鏡検査は、ステージI及びステージIIの膀胱がん腫瘍に対する感度が低く、早期検出が困難であるため、さらに限定的である。尿細胞検査等のより侵襲性の低い手法は、患者の尿サンプルを利用するが、感度と特異性が低い可能性があり、患者の人口集団ごとのばらつきが大きい。それゆえ、ロバストであり、非侵襲的であり、特異性が高く、且つ再現可能な検出システムが求められている。
【発明の概要】
【0004】
第一の態様において、被検者の病態を検出する方法が含められる。この方法は、被検者から液体生体サンプルを取得して、それを容器内に収容するステップと、液体生体サンプルを第一の化学センサ素子と接触させるステップを含み、第一の化学センサ素子は複数のディスクリートグラフェンバラクタを含むことができる。方法は、第一のサンプルデータセットを取得するためにディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し記憶するステップを含むことができる。
【0005】
第二の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、液体生体サンプルを取得するステップは、尿サンプル、血液サンプル、臓器生検サンプルを含むことができる液体懸濁液、唾液サンプル、汗サンプル、又は細胞培養サンプルのうちの1つ以上を取得するステップを含む。
【0006】
第三の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、方法は、第一のサンプルデータセットを1つ以上の既定の病態に分類するステップをさらに含むことができる。
【0007】
第四の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、方法は、液体生体サンプルの周囲のヘッドスペースからのガスを、複数のディスクリートグラフェンバラクタを含むことのできる第二の化学センサ素子と接触させるステップを、さらに含むことができる。
【0008】
第五の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、液体生体サンプルの周囲のヘッドスペースは、ある容積のガスを含む。
【0009】
第六の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、方法は、ヘッドスペースからのガスを第二の化学センサ素子と接触させるステップの前に、液体生体サンプルをガスで発泡させるステップをさらに含むことができる。
【0010】
第七の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、液体生体サンプルを容器内に収容するステップの前に、容器に不活性ガスが充填される。
【0011】
第八の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、液体生体サンプルは、第一の化学センサ素子を液体生体サンプルの中に予め設定された長さの時間にわたり浸漬させることにより、第一の化学センサ素子と接触させられる。
【0012】
第九の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、液体生体サンプルは、第一の化学センサ素子を通る流体の毛細管作用により、第一の化学センサ素子と接触させられる。
【0013】
第十の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、液体生体サンプルが化学センサ素子と接触させられる前に、液体生体サンプルは容器内である期間にわたりインキュベートされる。
【0014】
第十一の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、ディスクリートグラフェンバラクタの静電容量を検知及び記憶し、サンプルデータセットを取得するステップは、ある範囲のバイアス電圧にわたって行われ、バイアス電圧の範囲は-3V~3Vである。
【0015】
第十二の態様において、被検者の病態を検出する方法が含められる。方法は、被検者から液体生体サンプルを取得して、それを、当該液体生体サンプルの上方にヘッドスペースを有する容器内に収容するステップと、液体生体サンプルを第一の化学センサ素子と接触させるステップと、を含み、第一の化学センサ素子は複数のディスクリートグラフェンバラクタを含むことができる。方法は、液体生体サンプルの上方のヘッドスペースからのガスを、複数のディスクリートグラフェンバラクタを備える第二の化学センサ素子と接触させるステップを含むことができる。方法は、第一のサンプルデータセットを取得するための第一の化学センサ素子と、第二のサンプルデータセットを取得するための第二の化学センサ素子との各々のディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し記憶するステップと、を含むことができる。
【0016】
第十三の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、方法は、第一のサンプルデータセット及び第二のサンプルデータセットの各々を1つ以上の既定の病態に分類するステップを含むことができる。
【0017】
第十四の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、液体生体サンプルを取得するステップは、尿サンプル、血液サンプル、臓器生検サンプルを含むことができる液体懸濁液、唾液サンプル、汗サンプル、又は細胞培養サンプルのうちの1つ以上を取得するステップを含む。
【0018】
第十五の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、方法は、検知された静電容量以外の被検者に関する追加的な被検者固有データを記憶するステップをさらに含み、追加的な被検者固有のデータは、被検者の既往症、被検者の年齢、健康診断の結果、被検者に生じた症状、被検者が現在受けている治療、被検者が過去に受けた治療、及び1つ以上の病態の特定のバイオマーカに関する先行するデータのうちの1つ以上を含むことができる。
【0019】
第十六の態様において、病態を検出するためのシステムが含められる。このシステムは容器を含むことができ、この容器は被検者の液体生体サンプルを収容するように適合されたハウジングを含むことができ、このハウジングは、ある容積のガスを含むことのできるヘッドスペースを画定する。システムは、液体生体サンプルと接触させられるように構成された第一の化学センサ素子を含むことができ、第一の化学センサ素子は、複数のディスクリートグラフェンバラクタを含むことができる。システムは、第一の化学センサ素子とインタフェースするように構成された検知装置を含むことができ、検知装置はさらに、複数のディスクリートグラフェンバラクタの静電容量を検知するように構成される。
【0020】
第十七の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、システムは、ヘッドスペースと流体連通する第二の化学センサ素子をさらに含むことができ、第二の化学センサ素子は複数のディスクリートグラフェンバラクタを含むことができる。
【0021】
第十八の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、複数のディスクリートグラフェンバラクタは各々、グラフェン表面の1つ以上の表面改質部を含むことができる。
【0022】
第十九の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、複数のディスクリートグラフェンバラクタの表面改質部は、ある病態の1つ以上のバイオマーカを検出するように構成され、バイオマーカはDNA、RNA、ヌクレオリン、腫瘍細胞、細胞表面受容体蛋白質、C反応性蛋白質、転写因子、サイトカイン、揮発性有機化合物、エクソソーム、又はそれらの誘導体及び断片を含むことができる。
【0023】
第二十の態様において、上述若しくは後述の態様のうちの1つ以上に加えて、又は幾つかの態様の代替として、複数のディスクリートグラフェンバラクタはアレイ状に構成される。
【0024】
この概要は本願の教示の幾つかの概観であり、本願の主題を排他的又は網羅的に論じているのではない。その他の詳しい事柄は詳細な説明及び付属の特許請求の範囲に見られる。当業者にとっては、以下の詳細な説明を読んで理解し、本明細書の一部を構成する、何れも限定的な意味に解釈されるべきではない図面を参照すれば他の態様も明らかとなる。本願の範囲は、付属の特許請求の範囲及びそれらの合法的な均等物によって画定される。
【0025】
態様は、下記のような図面に関してより十分に説明され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本願の各種の実施形態による健康状態を検出する方法の概略フロー図。
図2】本願の各種の実施形態による健康状態を検出する追加的な方法の概略フロー図。
図3】本願の各種の実施形態による容器システムの概略図。
図4】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図5】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図6】本願の各種の実施形態による図5の容器の線6-6’矢視概略図。
図7】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図8】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図9】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図10】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図11】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図12】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図13】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図14】本願の各種の実施形態による図13の容器の線14-14’矢視概略図。
図15】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図16】本願の各種の実施形態による容器システムの追加的な実施形態の概略図。
図17】本願の各種の実施形態によるシステムの各種の構成要素の概略図。
図18】本願の各種の実施形態による化学センサ素子の一部の概略図。
図19】本願の各種の実施形態によるディスクリートグラフェンバラクタの概略斜視図。
図20】本願の各種の実施形態による複数のディスクリートグラフェンバラクタの静電容量を測定する回路の概略図。
図21】受動センサ回路の概略図であり、本願の各種の実施形態による読み取り回路の一部が示されている。
図22】本願の各種の実施形態によるディスクリートグラフェンバラクタの静電容量対DCバイアス電圧を示すグラフである。
図23】本願の各種の実施形態による健康状態を検出する追加的な方法の概略フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態は様々な改良及び代替形態をとることができるが、その細部は例及び図面として示されており、これから詳しく説明する。しかしながら、本願の範囲は説明されている特定の態様に限定されないと理解すべきである。反対に、本願の主旨と範囲内に含まれる改良、均等物、及び代替型をカバーすることが意図されている。
【0028】
膀胱がんは、膀胱内の病変細胞の代謝の変化に基づいて検出可能である。細胞代謝が変化すると、その結果として、尿と血液中に見られる多数の尿膀胱がんバイオマーカが生成される。このようなバイオマーカは、尿又は血液中に可溶性又は不溶解性分子の何れかとして発見できるか、又は尿と血液の両方から揮発性有機化合物(VOC)として放出される可能性がある。被検者から得た組織、液体、又は固体内のバイオマーカの検出は、病態又はその他の医学的イベントの発生以降に早期発見、患者への適切なケア、及び/又は治療の提供に役立つ実質的な診断的数値とすることができ、治療後の経過をモニタするための方法としてのさらなる利益も提供できる。幾つかのケースでは、病態にある細胞により放出されるバイオマーカ、及び/又は健康な状態と比較したそれらの放出パターンは、被検者の液体生体サンプルから低い濃度で検出可能である。
【0029】
患者からの液体生体サンプルは容器内に収容することができ、バイオマーカは気相及び液相のどちらでも測定できる。ディスクリートグラフェンバラクタアレイを容器内に保持される液体又は入れ物のヘッドスペース内に見られるガスに暴露させて解析し、病態等の特定の健康状態に固有の応答パターンを特定できる。典型的に、被検者の健康な生体サンプルに関連付けられるバイオマーカの、ディスクリートグラフェンバラクタアレイからの応答パターンは、病態からの液体生体サンプルに関連付けられるバイオマーカと比較して、異なるであろう。
【0030】
本願の実施形態によれば、各種のバイオマーカを被検者の液体生体サンプル内で検出し、病態の診断に、及び/又はその治療又は介護の方法の一部として役立てることができる。各種の実施形態において、1つ以上のバイオマーカは、被検者の液体生体サンプル中で検出でき、液体生体サンプルの大きさは限定的である。他の実施形態では、バイオマーカの解析は、医療施設から離れた場所で迅速に実行できる。
【0031】
幾つかの実施形態において、病気の発生からある期間にわたるバイオマーカ及び/又はそれに関連するパターンの検出は、治療に応答した進行状態をモニタするため、又は必要に応じて治療コースを変更するために使用できる。
【0032】
本明細書中で使用されるかぎり、「バイオマーカ」という用語は細胞又は細胞の集合の代謝物又は分析物を指す。各種のバイオマーカには、水溶性媒質中に溶解可能なバイオマーカ、水溶性媒質中に溶解しないバイオマーカ、及び揮発性有機化合物(VOC)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0033】
ここで、図1を参照すると、本願の各種の実施形態による被検者の病態を検出するための方法100の概略図が示されている。方法100は、102で被検者から液体生体サンプルを取得するステップを含むことができる。方法100は、104で液体生体サンプルを容器内に収容するステップを含むことができる。方法100は、106で液体生体サンプルを第一の化学センサ素子と接触させるステップを含むことができる。第一の化学センサ素子は複数のディスクリートグラフェンバラクタを含むことができ、これは1つ以上のバイオマーカによる結合に応答したディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶する。ディスクリートグラフェンバラクタについては、図18図22に関して後述する。方法100は、108でディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶して、第一のサンプルデータを取得するステップを含むことができる。本願の各種の実施形態において、方法は、液体生体サンプルを容器の中に設置するステップの前に、容器に不活性ガス、例えば窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、又はキセノン(Xe)を充填するステップを含むことができる。幾つかの実施形態において、方法100は、第一のサンプルデータセットを1つ以上の既定の病態に分類するステップをさらに含むことができ、これについては後でより詳しく説明する。各種の実施形態において、被検者は人間である。
【0034】
幾つかの実施形態において、液体生体サンプルを取得するステップは、尿サンプル、血液サンプル、臓器生検サンプルを含む液体懸濁液、唾液サンプル、汗サンプル、又は細胞培養サンプルのうちの1つ以上を取得するステップを含むことができる。幾つかの実施形態において、被検者から液体生体サンプルを取得するステップは、病態又はその他の医学的イベントの発生直後に液体生体サンプルを取得するステップを含むことができる。液体生体サンプルを取得する時点には、病態又はその他の医学的イベントの発生直後、病態又はその他の医学的イベントの開始から60分以内、及び病態又はその他の医学的イベントの発生から1日以内を含めることができるが、これらに限定されない。
【0035】
幾つかの実施形態において、被検者から液体生体サンプルを取得するステップは、病態又はその他の医学的イベントの発生から1日、病態又はその他の医学的イベントの発生から1週間、病態又は医学的イベントの発生から2週間、病態又はその他の医学的イベントの発生から1カ月、病態又はその他の医学的イベントの発生から6カ月、病態又はその他の医学的イベントの発生から1年に液体生体サンプルを取得するステップを含むことができる。他の実施形態において、被検者から液体生体サンプルを取得するステップは、病気又はその他の医学的イベントの発生から1年を超えて液体生体サンプルを取得するステップを含むことができる。幾つかの実施形態において、被検者から液体生体サンプルを取得するステップは、上記のタイミングの何れかにおいて液体生体サンプルを取得して、病態のための治療の進み方をモニタするステップを含むことができる。
【0036】
被検者の液体生体サンプルは、病態等の健康状態に関して被検者をモニタする過程で液体生体サンプルを1つ以上の化学センサ素子に複数回にわたり接触させることによって試験することができる。液体生体サンプルは第一の化学センサ素子と、第一の化学センサ素子を液体生体サンプル内に予め設定された長さの時間にわたり浸漬させることによって接触させることができる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルは第一の化学センサ素子と、第一の化学センサ素子を通る液体の毛細管作用によって接触させることができる。他の実施形態において、液体生体サンプルは、液体生体サンプルを化学センサ素子と接触させる前に、液体生体サンプルを容器内である期間にわたりインキュベートすることができる。
【0037】
液体生体サンプルは、病態又はその他の医学的イベントの発生から様々な時点で取得できる。
取得された被検者の液体生体サンプルは、病態又はその他の医学的イベントの発生から様々な時点で試験することができ、これには液体生体サンプルの取得直後、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、4.5時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、48時間、又は上記の何れかの間の様々な時点が含まれる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルは48時間より長い時間が経過した時点で試験することができる。他の実施形態において、液体生体サンプルは、その取得時点に1回のみ試験することができる。
【0038】
次に図2を参照すると、本願の各種の実施形態による被検者の病態を検出する方法200の概略図が示されている。方法200は、202で被検者から液体生体サンプルを取得するステップを含むことができる。方法200は、204で液体生体サンプルを、液体生体サンプルの上にヘッドスペースを有する容器内に収容するステップを含むことができる。方法200は、206で液体生体サンプルを第一の化学センサ素子と接触させるステップを含むことができ、第一の化学センサ素子は複数のディスクリートグラフェンバラクタを含むことができる。方法200はまた、208で液体生体サンプルの上のヘッドスペースからのガスを、複数のディスクリートグラフェンバラクタを備える第二の化学センサ素子と接触させるステップを含むことができる。液体生体サンプルの周囲のヘッドスペースは、ある容積のガスを含むことができる。方法200はまた、210で第一の化学センサ素子のディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶して、第一のサンプルデータセットを取得するとともに、第二の化学センサ素子のグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶して、第二のサンプルデータセットを取得するステップを含むことができる。各種の実施形態において、方法200は、第一のサンプルデータセット及び第二のサンプルデータセットを1つ以上の既定の病態に分類するステップをさらに含むことができ、これについては後でより詳しく説明する。
【0039】
本願の方法の各種の実施形態において、液体生体サンプルは、ヘッドスペースからのガスを第二の化学センサ素子と接触させる前に、ガスで発泡させることができる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルを発泡させるために使用されるガスは不活性ガス、例えば窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、又はキセノン(Xe)を含むことができる。他の実施形態において、液体生体サンプルを発泡させるために使用されるガスは、周囲空気又は酸素を含むことができる。
【0040】
幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセット及び/又は第二のサンプルデータセットを解析して、被検者の病態を特定することができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットを解析して、ある期間にわたり被検者の病態の改善又は悪化を特定することができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットを解析するステップは、24時間~48時間にわたり被検者の病態の改善又は悪化を特定するステップを含むことができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットを解析するステップは、24時間~72時間にわたり被検者の病態の改善又は悪化を特定するステップを含むことができる。他の実施形態では、方法は、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットを解析して、1週間~2週間又はそれ以上にわたり被検者の病態の改善又は悪化を特定するステップを含むことができる。第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットをさらに解析して、被検者がその病態に対するリハビリテーション治療、機器を用いた療法、介入的療法、又は薬物療法の候補者であるか否かを識別することができる。
【0041】
各種の実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶して第一のサンプルデータセット又は第二のサンプルデータセットを取得した後に第一のサンプルデータセット又は第二のサンプルデータセットを解析するステップは、液体生体サンプルを取得した後に複数回行うことができる。各種の実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットは、液体生体サンプルを取得した直後に解析することができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットは、液体生体サンプル取得から4時間で解析することができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットは、液体生体サンプル取得から8時間で解析することができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットは、液体生体サンプルの取得後12時間で解析することができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットは、液体生体サンプル取得後16時間で解析することができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットは、液体生体サンプル取得から20時間で解析することができる。幾つかの実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットは、液体生体サンプルの取得から24時間で解析することができる。各種の実施形態において、第一のサンプルデータセットと第二のサンプルデータセットは、液体生体サンプルの取得から24時間にわたり複数回解析することができる。複数のデータセットを解析できると理解されたく、これには液体生体サンプル取得後の様々な時点での第一のサンプルデータセット、第二のサンプルデータセット、第三のデータセット、第四のデータセット、第五のデータセット等が含まれる。
【0042】
グラフェンバラクタの静電容量を検知し、記憶して、サンプルデータセットを取得するステップは、ある範囲のバイアス電圧にわたり実行できる。幾つかの実施形態において、グラフェンバラクタの静電容量を検知し、記憶するステップは、-3V~3Vの静電容量を検知するステップを含むことができる。幾つかの実施形態において、バイアス電圧の範囲は-2V~2Vとすることができる。他の実施形態では、電圧の範囲は-1.5V~1.5Vとすることができる。幾つかの実施形態において、グラフェンバラクタの静電容量を検知するステップは、-3V、-2.5V、-2.0V、-1.5V、-1.0V、-0.5V、0.5V、1.0V、1.5V、2.0V、2.5V、3.0Vで静電容量を検知するステップを含むことができる。グラフェンバラクタの静電容量を検知し、記憶するステップは、ある範囲内の静電容量を検知するステップを含むことができると理解されたく、上記の電圧の何れも、その範囲の下限又は上限とすることができるが、ただし、範囲の下限は範囲の上限より低い値である。
【0043】
バイアス電圧の範囲にわたりグラフェンバラクタの静電容量を検知し、記憶するステップは、ステップ式に静電容量を検知するステップを含むことができる。静電容量をステップ式に検知し、記憶するステップは、ある電圧間隔で、例えば5mV、10mV、25mV、50mV、75mV、100mV、125mV、150mV、200mV、300mV、400mV、又は500mVごとに、又は上記の何れかの間の範囲内に含まれる差分ごとに実行できる。
【0044】
ある範囲のバイアス電圧にわたるグラフェンバラクタの静電容量をステップ式に検知し、記憶する際、サンプルデータセットは各ディスクリートグラフェンバラクタについて各バイアス電圧で取得できる。ある範囲のバイアス電圧にわたりグラフェンバラクタの静電容量を検知し、記憶して、サンプルデータセットを取得するステップは、その範囲のバイアス電圧にわたり、各グラフェンバラクタについて少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、250,300、350、400、450、500、又はそれより多くの個別の静電容量値(又は上記の何れかの間の範囲内に含まれる複数の個別の静電容量値)を記憶するステップを含むことができる。
【0045】
本願の方法はまた、分類されるサンプルデータセットの一部として検知された静電容量以外に被検者に関する追加のデータを収集及び/又は記憶するステップも含むことができる。各種の実施形態において、方法は、検知された静電容量以外の被検者に関する追加の被検者固有データを記憶するステップを含むことができる。追加の被検者固有データには、被検者の既往症、被検者の過去の病態からの経過時間、被検者の年齢、1回又は複数の健康診断の結果、被検者に生じた症状、被検者が現在受けている治療、被検者が過去に受けた治療、及び1つ以上の病態の特定のバイオマーカに関する先行するデータを含めることができるが、これらに限定されない。追加的データにはまた、過去の治療レジメンに関する情報及び、過去の治療レジメンが成功したか失敗したかも含めることができる。
【0046】
液体生体サンプル内のバイオマーカは、化学センサ素子のディスクリートグラフェンバラクタと繋がって、検知された静電容量に影響を与える可能性があると理解されたい。液体生体サンプル又中に存在するバイオマーカ又はVOCとしてヘッドスペースの中へと発せられるバイオマーカは、検知された静電容量に影響を与える可能性がある。病気の状態の被検者の液体生体サンプル中のバイオマーカは、病気の状態にない被検者の液体生体サンプル中のバイオマーカとは異なる可能性がある(種類、量等の点で)。1つ以上の生体サンプルは、病態又はその他の医学的イベントの発生以前の定期健康診断中に被検者から取得できる。病気の状態にない液体生体サンプルからの静電容量を検知し、記憶するステップから得られたデータは、ベースライン値としての役割を果たすことができる。病気の状態にない液体生体サンプルを取得するステップの例には、定期健康診断中に液体生体サンプルを取得するステップ、軍務として派兵される前に液体生体サンプルを取得するステップ、運動又はスポーツレジメンを開始する前に液体生体サンプルを取得するステップ、又は毎日、毎週、若しくは毎月液体生体サンプルを取得するステップを含めることができるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルからのデータは、定期健康診断において臨床現場で被検者から取得でき、将来のある時点で病気が発生した場合に、その被検者の液体生体サンプル中のバイオマーカ含有量のベースラインとしての役割を果たすことができる。
【0047】
本願の方法との使用に適した例示的な容器システムを、図3図14に関して説明する。ここで、図3を参照すると、本願の各種の実施形態による病態を検出するための容器システム300の概略図が示されている。容器システム300は、ベースハウジング302と、化学センサ素子プローブ304を含むことができる。化学センサ素子プローブ304は、図17図20に関して説明するような本願のシステムの各種の構成要素と電気的に通信できる。ベースハウジング302は、被検者の液体生体サンプル306を収容するようになすことができる。ベースハウジングは、1つの底壁と1つの円筒形側壁、又は1つの底壁と2、3、4、若しくはそれより多い側壁を含むことができる。各種の実施形態において、ベースハウジング302は、ユーザに対して容器への液体生体サンプルの所望の注入量を示すためのスコアリングマーク、隆起マーク、印刷マーク等のしるし314を含むことができる。図3には示されていないが、容器システム300は蓋をさらに含むことができると理解されたく、これはベースハウジング302に取外し可能に取り付けて、容器システム300内にヘッドスペースを形成することができ、これについては図5に関してより詳しく説明する。本明細書中で使用されるかぎり、「ヘッドスペース」とは、液体生体サンプル306の上方又はそれを取り囲むある容積のガスを指すことができる。各種の実施形態において、本願の容器には、液体生体サンプルを容器内に収容する前に、不活性ガスを充填することができる。
【0048】
例示的な化学センサ素子の態様は、2015年10月15日に出願された米国特許出願公開第2016/0109440A1号明細書、代理人整理番号第115.0183USU1において見ることができ、その内容の全体を参照によって本願に援用する。
【0049】
幾つかの実施形態において、化学センサ素子プローブ304は、液体生体サンプル306と接触した状態で設置できると理解されたい。化学センサ素子プローブ304は、第一の化学センサ素子308を含むことができる。第一の化学センサ素子はディスクリートグラフェンバラクタのアレイ312を含むことができ、これは1つ以上のバイオマーカによる結合に応答したディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶する。ディスクリートグラフェンバラクタについては、図18図22に関して後でより詳しく説明する。本願の液体生体サンプルと接触させるために使用される本願の化学センサ素子は、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウシ血清、ウマ血清、ウサギ血清、ポリエチレングリコール(PEG)、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、再生ミルク粉末(例えば、粉末牛乳、粉末山羊乳)、各種の表面活性剤、及びその他等の遮断剤を使用することにより、非特異的バイオマーカ結合を遮断するために前処理できる。
【0050】
幾つかの実施形態において、化学センサ素子プローブ304は、液体生体サンプル306内に浸漬させることができる。他の実施形態において、液体生体サンプル306は、化学センサ素子プローブ304の表面に滴下により添加できる。また別の実施形態において、液体生体サンプル306は、液体生体サンプルストリームとすることができ、化学センサ素子プローブ304の表面は液体生体サンプルストリームと接触させることができる。第一の化学センサ素子308は、化学センサ素子プローブ304が液体生体サンプル306の中に設置されたときに、液体生体サンプル306の中に完全に、又は部分的に浸漬させられると理解されたい。図3には示されていないが、容器システム300は複数の化学センサ素子プローブを含むことができると理解されたい。さらに、化学センサ素子プローブ304は複数の化学センサ素子を含み、第二の化学センサ素子、第三の化学センサ素子、第四の化学センサ素子等を含むことができると理解されたい。
【0051】
本願の各種の実施形態において、化学センサ素子は、液体生体サンプルを吸収して液体生体サンプルを解析のために化学センサ素子の表面に移行させることのできる吸収性コーティング、フィルム、又は膜により保護できる。他の各種の実施形態において、本願の化学センサ素子は、化学センサ素子の表面上に保護カバーを含むことができる。保護カバーは、エポキシ、セラミック、金属、1つ若しくは複数のポリマ、又はそれらの混合物を含むことができる。
【0052】
本願の容器は多くの材料で製作でき、これにはガラス(glass)、ポリマ材料、金属、ガラス(glasses)、及びその他が含まれる。幾つかの実施形態において、容器は周囲環境からシールされる。他の実施形態において、容器は周囲環境に開放している。また別の実施形態では、容器は内部が滅菌されている。
【0053】
本願の容器との使用に適した液体生体サンプルの容積は、液体生体サンプルの種類及び入手可能性に応じて様々とすることができる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルの容積は、1マイクロリットル(μl)~約1ミリリットル(ml)とすることができる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルの容積は、1ml~100mlとすることができる。他の実施形態では、液体生体サンプルの容積は100ml~1Lとすることができる。各種の実施形態において、液体生体サンプルの容積は、0.5μl、1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、20μl、30μl、40μl、50μl、60μl、70μl、80μl、90μl、100μl、250μl、500μl、750μl、1ml、10ml、25ml、50ml、75ml、100ml、250ml、500ml、750ml、若しくは1L、又はこれらの容積のうちの1つ若しくは複数を境界とする範囲とすることができる。また別の実施形態において、液体生体サンプルの容積は、1Lより大きくすることができる。
【0054】
本願の容器に適した容器の総容積は、液体生体サンプルの種類と容積に応じて様々とすることができる。幾つかの実施形態において、容器総容積は1マイクロリットル(μl)~ミリリットル(ml)とすることができる。幾つかの実施形態において、容器総容積は1ml~100mlとすることができる。他の実施形態において、容器総容積は100ml~1Lとすることができる。各種の実施形態において、容器総容積は、1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、20μl、30μl、40μl、50μl、60μl、70μl、80μl、90μl、100μl、250μl、500μl、750μl、1ml、10ml、25ml、50ml、75ml、100ml、250ml、500ml、750ml、又は1Lとすることができる。また別の実施形態において、容器総容積は1Lより大きいか、又はこれらの容積のうちの1つ以上を境界とする範囲とすることができる。
【0055】
次に図4を参照すると、本願の各種の実施形態による病態を検出するための容器システム400の概略図が示されている。容器システム400は、ベースハウジング302と投げ込み式化学センサ素子ボール402を含むことができる。投げ込み式化学センサ素子402は、図17図20に関して述べるように、本願のシステムの各種の構成要素と電気通信できる。ベースハウジング302は、被検者の液体生体サンプル306を収容するようになすことができる。各種の実施形態において、ベースハウジング302は、ユーザに対して容器への液体生体サンプルの所望の注入量を示すためのスコアリングマーク、隆起マーク、印刷マーク等のしるし314を含むことができる。投げ込み式化学センサ素子402は、第一の化学センサ素子308を含むことができる。図4には示されていないが、投げ込み式化学センサ素子ボール402は、複数の化学センサ素子を含み、第二の化学センサ素子、第三の化学センサ素子、第四の化学センサ素子等を含むことができると理解されたい。
【0056】
各種の実施形態において、本願の容器は蓋を含むことができ、これは蓋の内面で露出する化学センサ素子を有する。次に図5を参照すると、本願の各種の実施形態による病態を検出するための容器システム500の概略図が示されている。容器システム500は、ベースハウジング302と蓋502を含むことができる。蓋502は、化学センサ素子プローブ304を含むようになすことができる。蓋502は、蓋502がベースハウジング302に固定されると容器システム500内のヘッドスペースガスと接触するように構成された第二の化学センサ素子508をさらに含むことができる。ベースハウジング302は、被検者の液体生体サンプル306を収容するようになすことができる。各種の実施形態において、ベースハウジング302は、ユーザに対して容器への液体生体サンプルの所望の注入量を示すためのスコアリングマーク、隆起マーク、印刷マーク等のしるし314を含むことができ、それゆえ蓋502がベースハウジング302に固定されたときに容器システム500内にヘッドスペース510の容積を残すことができる。各種の実施形態において、容器システム500は化学センサ素子508付近にヘッドスペースガスを循環させるためのファンを含むことができる。
【0057】
液体生体サンプルにより発せられるVOCの検出を最適化するために、ヘッドスペースの容積、液体生体サンプルの容積、及び容器システムの総容積は、液体生体サンプルの大きさと種類に合わせて調整できる。幾つかの実施形態において、ヘッドスペースの容積は、液体生体サンプルが存在するときの容器システムの総容積の0.5容積パーセント(vol.%)~容器システムの総容積の約15vol.%とすることができる。他の実施形態では、ヘッドスペースの容積は、液体生体サンプルが存在するときの容器システムの総容積の10vol.%~50vol.%とすることができる。また別の実施形態では、ヘッドスペースの容積は、液体生体サンプルが存在するときの容器システムの総容積の75vol.%~95vol.%とすることができる。ヘッドスペースの容積は、液体生体サンプルが存在するときの容器システムの総容積の0.5vol.%、1vol.%、2vol.%、3vol.%、4vol.%、5vol.%、6vol.%、7vol.%、8vol.%、9vol.%、10vol.%、15vol.%、20vol.%、25vol.%、30vol.%、35vol.%、40vol.%、45vol.%、50vol.%、55vol.%、60vol.%、65vol.%、70vol.%、75vol.%、80vol.%、85vol.%、90vol.%、95vol.%、又は99vol.%とすることができる。ヘッドスペースの容積は、ある範囲内の容器システムの総容積の何れの容積パーセンテージも含むことができ、上記の容積パーセンテージの何れもその範囲の下限又は上限とすることができるが、ただしその範囲の下限はその範囲の上限より低い値である。
【0058】
容器システム内のヘッドスペースはまた、液体生体サンプルの大きさに関してカスタマイズすることもできる。例えば、幾つかの実施形態において、ヘッドスペースの容積は液体生体サンプル容積の50%以下とすることができる。幾つかの実施形態において、ヘッドスペースの容積は液体生体サンプル容積の100%以下とすることができる。他の実施形態では、ヘッドスペースの容積は液体生体サンプル容積の200%以下とすることができる。また別の実施形態において、ヘッドスペースの容積は液体生体サンプル容積の400%以下とすることができる。
【0059】
容器システム500は、ガス入口導管504とガス出口導管506をさらに含むことができ、これらは第二の化学センサ素子508の表面に沿ってヘッドスペース510に入り、そこから出るガス経路を画定する。ガス経路はヘッドスペース510と流体連通することができ、それによってヘッドスペース510内からのガスはガス経路を通り、第二の化学センサ素子508の表面へと拡散することができる。容器システム500の蓋502は、第二の化学センサ素子が液体生体サンプル306に何ら接触しないようにガス入口導管504とガス出口導管506を具備した構成にできる。
【0060】
図5の線6-6’から容器システム500の内面に向かって見た蓋502の構成要素の概略図が図6に示されている。蓋502は、ガス入口導管504及びガス出口導管506を含むことができ、これらは第二の化学センサ素子508の表面に沿ってヘッドスペース510に入り、及びそこから出るガス経路を画定する。第二の化学センサ素子は、ディスクリートグラフェンバラクタのアレイ312を含むことができ、これは1つ以上のバイオマーカによる結合に応答したディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶する。ディスクリートグラフェンバラクタについては、図18図22に関して後でより詳しく説明する。蓋502は、液体生体サンプルの中に浸漬させられるように構成された一体型化学センサ素子プローブ304をさらに含むことができる。幾つかの実施形態において、蓋502は一体型化学センサ素子プローブ304を含まないと理解されたい。
【0061】
各種の実施形態において、本願の容器システムは、一定分量の液体生体サンプルを取り出して、別の化学センサ素子の上又は中に、各種の技術を使って分注するように構成でき、それには液体を化学センサ素子の表面に分注すること、液体を、流動化を介して分注すること、液体をエアロゾル、ミスト、若しくはスプレイを介して分注すること、又は液体を1つ若しくは複数の液滴を介して分注することが含まれる。
【0062】
各種の実施形態において、化学センサ素子は、本願の容器システムの蓋の内面又はベースハウジングの内面の何れかの一部として含めることができる。各種の実施形態において、化学センサ素子は、蓋又はベースハウジングの内面の中に組み込むことができ、他の実施形態では化学センサ素子は蓋又はベースハウジングの内面に取り付けることができる。次に図7を参照すると、本願の各種の実施形態による病態を検出するための容器システム700の概略図が示されている。容器システム700は、ベースハウジング302と蓋502を含むことができ、蓋502は蓋502の構造の内面上に露出する第一の化学センサ素子308を含む。
【0063】
容器システム700のベースハウジング302は、被検者の液体生体サンプル306を収容するようになすことができる。容器システム700は、液体生体サンプル306を振盪又は反転等、動かして、液体生体サンプル306が第一の化学センサ素子308と接触するようにするために使用できる。容器システム700は、人の手によっても、又は機械的手段によっても、そのように動かすことができると理解されたい。容器システム700は、1つ以上のバイオマーカによる結合に応答したディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶する前にそのように動かすことができる。幾つかの実施形態において、容器システム700は、1つ以上のバイオマーカによる結合に応答したディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶している間に振盪できる。
【0064】
幾つかの実施形態において、液体生体サンプル306は5秒(sec)~30secの間、振盪できる。他の実施形態では、液体生体サンプルの振盪時間は5sec、10sec、15sec、20sec、25sec、30sec、1.0分(min)、1.5min、2.0min、2.5min、3.0min、3.5min、4.0min、4.5min、若しくは5.0min以上とすることができ、又は上記の何れかの間の範囲内に含まれる長さとすることができる。各種の実施形態において、液体生体サンプル306は5分より長時間にわたり振盪できる。
【0065】
次に図8を参照すると、本願の各種の実施形態による病態を検出するための容器システム800の概略図が示されている。容器システム800はベースハウジング302を含むことができ、これはベースハウジング302の内面の一部としての、例えばベースハウジング302の底壁の上に位置付けられた、第一の化学センサ素子308を有する。ベースハウジング302は、被検者の液体生体サンプル306を収容するようになすことができる。第一の化学センサ素子308は、液体生体サンプル306と直接接触するように構成できる。液体生体サンプル306は、ベースハウジング302内に、1つ以上のバイオマーカによる結合に応答したディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶する前の所定の時間にわたり、第一の化学センサ素子308と直接接触した状態で保持できる。各種の実施形態において、液体生体サンプルは、ディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶する前に5sec、15sec、20sec、25sec、30sec、1.0min、1.5min、2.0min、2.5min、3.0min、3.5min、4.0min、4.5min、若しくは5.0minにわたり容器システム800のベースハウジング内に保持でき、又は上記の何れかの間の範囲内に含まれる長さとすることができる。
【0066】
本願の容器システムは、蓋の内面の一部としての化学センサ素子と、ベースハウジングの内面の一部としての化学センサ素子との両方を含むことができる。次に図9を参照すると、本願の各種の実施形態による病態を検出するための容器システム900の概略図が示されている。容器システム900は、ベースハウジング302を含むことができ、これはベースハウジング302の内面の一部としての第一の化学センサ素子308を有し、また、蓋502を含むことができ、これは蓋502の構造の内面の一部としての第二の化学センサ素子508を有する。ベースハウジング302は、被検者の液体生体サンプル306を収容するようになすことができる。第一の化学センサ素子308は、液体生体サンプル306と直接接触するように構成できる。第二の化学センサ素子508は、液体生体サンプル306の上方に配置されるヘッドスペース510内のガスと直接接触し、その中のVOCを検出するように構成できる。液体生体サンプル306の上方のヘッドスペース510内のVOCは液体生体サンプル306により放出されると理解されたい。
【0067】
化学センサ素子を液体生体サンプルと接触させるのを所定の遅延時間にわたり遅延させるように構成された容器システムを使用することが望ましい可能性がある。次に図10を参照すると、本願の各種の実施形態による病態を検出するための容器システム1000の概略図が示されている。容器システム1000はベースハウジング302を含むことができ、これはベースハウジング302の内面の一部としての第一の化学センサ素子308を有し、また、蓋502を含むことができ、これは蓋502の構造の内面の一部としての第二の化学センサ素子508を有する。ベースハウジング302は、被検者の液体生体サンプル306を収容するようになすことができる。容器システム1000は可動パーティション1002、例えばフィルム、フォイル、可動壁、スライド部材、機械的絞り、及びその他をさらに含むことができ、これは液体生体サンプル306を第一の化学センサ素子308から分離する。第一の化学センサ素子308は、可動パーティション1002が十分に移動されて、液体生体サンプル306が可動パーティション1002とベースハウジング302により画定される容積の中に入れるようになった後に、液体生体サンプル306と直接接触するように構成できる。第二の化学センサ素子508は、液体生体サンプル306の上方に配置されるヘッドスペース510内のガスと直接接触し、その中のVOCを検出するように構成できる。
【0068】
化学センサ素子を、被検者から取得した液体生体サンプルと接触させるための遅延時間には、液体生体サンプル取得後の様々な時点を含めることができ、これには液体生体サンプル取得の直後、それから5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、4.5時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、48時間、又は上記の何れかの間の様々な時点が含まれる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルは、48時間を超えた後でも試験できる。
【0069】
本願の容器システムは真空下に置くことができ、ヘッドスペースガスを容器システムの蓋の上の化学センサ素子の表面を横切るように案内するガス流路を含むことができる。次に図11を参照すると、本願の各種の実施形態による容器システム1100の概略図が示されている。容器システム1100は、被検者の液体生体サンプル306を収容するためのベースハウジング302を含むことができる。容器システム1100は、容器システム1100を真空下に置くための真空ポート1102を含むことができる。真空ポート1102は、容器システム1100に取外し可能に接続でき、又は容器システム1100と一体化できる。幾つかの実施形態において、真空ポート1102は、液体生体サンプルを容器内に入れるためにそれを通じて生検針を受けるように構成できるポリマ材料、例えばセプタム又はゴムストッパを含むことができる。幾つかの実施形態において、真空ポート1102は、キャップ、蓋、又はその他の種類のシーリング機構を有する開口を画定できる。
【0070】
幾つかの実施形態において、液体生体サンプルをその中に設置する前に、ヘッドスペース内に真空を含むことができる。他の実施形態では、容器は、液体生体サンプルをその中に入れる前に、ヘッドスペース内に部分真空を含むことができる。幾つかの実施形態において、容器は真空又は部分真空を含むことができる。真空内部の圧力には、標準大気圧より低い(すなわち、760mmHg未満)何れの圧力も含むことができると理解されたい。例えば、幾つかの実施形態において、圧力は、760、750、740、730、720、710、700、680、660、640、620、600、580、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、又は50mmHg未満とすることができ、又は上記の何れかを含む範囲内とすることができ、定常的又は一時的にそのようにすることができる。真空内部の圧力は、容器を取り囲む環境の周囲圧力未満の何れの圧力を含むこともできる。しかしながら、他の実施形態では、容器内の圧力は局所的環境の周囲圧力以上であり得る。例えば、幾つかの実施形態において、圧力は760、770、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、4000、5000、又は6000mmHgより高圧とすることができ、又は上記の何れかの間の範囲内とすることができ、定常的又は一時的にそのようにすることができる。
【0071】
容器システム1100は、ガス入口導管1104とガス出口導管1106を含むことができる。ガス入口導管1104は、容器システム1100の上流のキャリアガス供給ラインに接続できる。ヘッドスペースからのガスは、容器システム1100からガス出口導管1106を通じて連続的に引き出して、ヘッドスペース内に存在する全てのVOCを取り出し、また、ヘッドスペースガスを、VOCを全く含まないガスで補充することができる。キャリアガスは、周囲空気を含むことができ、又はこれは不活性ガス、例えば窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、若しくはキセノン(Xe)を含むことができる。キャリアガスは、ガス出口導管1106を通じてヘッドスペース510内のガスを容器の外へと排出するために使用できる。ガス流は、図11の中で矢印により示されている。ガス入口導管1104とガス出口導管1106は、容器システム1100と一体とすることができ、又は各々を容器システム1100に気密ガスケット、若しくはガス入口ポート1108及びガス出口ポート1110により接続することができる。
【0072】
各種の実施形態において、キャリアガスはヘッドスペース510内のガスを、ガス出口導管1106を通じて容器から排出し、容器システム1100の下流の1つ以上の化学センサ素子(図示せず)と接触させるために使用できる。ガス流は、図11の中で矢印により示されている。ガス入口導管1104とガス出口導管1106は容器システム1100と一体とすることができ、又は各々を容器システム1100に気密ガスケット、又はガス入口ポート1108及びガス出口ポート1110によって接続することができる。
【0073】
幾つかの実施形態において、本願の容器システムの中に保持される液体生体サンプルは、キャリアガスで発泡させることができ、及び/又は温度調整器を使って加熱することができる。次に図12を参照すると、本願の各種の実施形態による容器システム1200の概略図が示されている。容器システムは、液体生体サンプル306の中に浸漬される発泡ガス導管1202の他には、容器システム1100の全ての特徴と要素を含むことができる。液体生体サンプル306を通じて発泡させられるキャリアガス1204は周囲空気を含むことができ、又はこれは不活性ガス、例えば窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、若しくはキセノン(Xe)を含むことができる。キャリアガスは、液体生体サンプル306を通じて発泡させて、VOCのヘッドスペース510への放出を促進又は加速させることができる。
【0074】
液体生体サンプル306を所望の温度、例えば生理学的温度範囲内に保持するために、温度調整器1206を使用できる。本願の容器システムは、温度調整器と接触するように設置でき、それによって容器システムは温度調整器1206と直接接触するか、又は間接的に接触する。幾つかの実施形態において、温度調整器1206は熱源を含むことができ、これは液体生体サンプルの温度を一定に保つために使用できるサーモスタット1208により制御できる。温度調整器1206は、液体生体サンプルの温度を段階式に増減させるために使用できる。幾つかの実施形態において、温度調整器1206は代替的に、熱を除去し、液体生体サンプルの温度を所望の温度より低温、例えば生理学的温度範囲より低温に冷却するための冷却装置を含むことができると理解されたい。
【0075】
幾つかの実施形態において、液体生体サンプルは、針及びシリンジ又はカニューレを使って被検者から採取できる。液体生体サンプルの取扱をなるべく少なくするために、シリンジ又はその他のサンプル採取装置は本願の実施形態での使用に適した容器として構成できる。例えば、次に図13を参照すると、本願の各種の実施形態による容器1300の概略図が示されている。容器1300は、シリンジバレル1302、シリンジプランジャ1304、針1306、及び化学センサ素子308を含む。幾つかの実施形態において、容器1300は、シリンジバレル1302と針1306との間に配置された針カプリング1308を含むことができる。針1306は、被検者に刺入されて、液体生体サンプル306を採取できる。液体生体サンプル306は、針1306を通じてシリンジバレル1302の中へと引き込むことができる。
【0076】
容器1300は化学センサ素子308を含み、液体生体サンプル306のVOC排出を解析するように構成できる。この実施形態では、シリンジプランジャ1304は、シリンジプランジャ1304のうちシリンジバレル1302のヘッドスペース510内に設置された面の上に化学センサ素子を含む。それゆえ、幾つかの実施形態において、液体生体サンプル306の解析は、被検者から採取された直後に行うことができる。その他の実施形態では、液体生体サンプル306は、シリンジバレル1302内である時間にわたりインキュベートされるようにして、VOCがヘッドスペース510の中に発せられて、液体生体サンプル306と平衡状態となるようにすることができる。幾つかの実施形態において、シリンジプランジャ1304を調整して、ヘッドスペース510内のガスの容積を増減できる。
【0077】
本願の各種の実施形態による、図13のシリンジプランジャ1304の内面に配置された化学センサ素子308の、線14-14’から見た概略図が図14に示されている。化学センサ素子308はディスクリートグラフェンバラクタのアレイ312を含むことができ、これは1つ以上のバイオマーカによる結合に応答したディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶する。その上に置かれた複数のディスクリートグラフェンバラクタを含む、化学センサ素子308は、多くの形状及び大きさをとることができると理解されたく、これについては図18図22に関して後述する。
【0078】
本願の容器システムは、マイクロ流体チップとして動作するものを含むことができる。次に図15を参照すると、本願の各種の実施形態による容器システム1500の概略図が示されている。容器システム1500は、ハウジング1502、ロードリザーバ1504、各々が化学センサ素子1508と流体連通する1つ以上のマイクロチャネル1506を含む。液体生体サンプルは、ロードリザーバ1504の中に装填でき、液体生体サンプルは1つ以上のマイクロチャネル1506を通り毛細管作用を介して化学センサ素子1508に向かって移動できる。幾つかの実施形態において、容器システム1500のロードリザーバ1504は、液体生体サンプル中にある時間にわたり浸漬させることができ、液体生体サンプルは1つ以上のマイクロチャネル1506を通って毛細管作用を介して移動できる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルの流体流は受動的とすることができ、他の実施形態では、液体生体サンプルの流体流は能動的とすることができる。容器システム1500はロードリザーバ1504を含み、これは2つのマイクロチャネル1506と流体連通し、2つのマイクロチャネルは2つの化学センサ素子1508と流体連通し、そこで終結する。
【0079】
次に図16を参照すると、本願の各種の実施形態による容器システム1600の概略図が示されている。容器システム1600は、ハウジング1502、ロードリザーバ1504、1つ以上のマイクロチャネル1506を含み、マイクロチャネル1506の各々は複数の化学センサ素子1508と流体連通する。液体生体サンプルは、ロードリザーバ1504に装填でき、液体生体サンプルは1つ以上のマイクロチャネル1506を通って毛細管作用を介して複数の化学センサ素子1508に向かって移動できる。
【0080】
幾つかの実施形態において、容器システム1600のロードリザーバ1504は液体生体サンプル中にある時間にわたり浸漬させることができ、液体生体サンプルが1つ以上のマイクロチャネル1506を通り毛細管作用を介して移動できる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルの流体流は受動的とすることができ、他の実施形態では、液体生体サンプルの流体流は能動的とすることができる。容器システム1600はロードリザーバ1504を含み、これは2つのマイクロチャネル1506と流体連通し、2つのマイクロチャネルは2つの化学センサ素子1508と流体連通し、そこで終結する。
【0081】
幾つかの実施形態において、容器システム1500及び1600は、1、2、3、4、又はそれより多くのマイクロチャネル1506を含むことができる。1、2、3、又は4つのマイクロチャネル1506は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれより多くの化学センサ素子1508と流体連通することができる。
【0082】
本願の容器は複数のグラフェンバラクタの静電容量を検知するためのシステムとインタフェースすることができる。次に図17を参照すると、本願の各種の実施形態によるシステム1700の構成要素の概略図が示されている。システム1700は、本明細書に記載の容器システムの何れか、例えば容器システム300、500、800、及び1500と、検知装置1760を含むことができる。図17の実施形態において、システム1700の検知装置1760は、現場で使用可能なハンドヘルド式である。検知装置1760はスマートフォン、タブレット、コンピュータとすることができる。しかしながら、検知装置1760及びシステム1700のための他の多くの要素が本願では想定され、無線及び有線技術の何れの組合せも使用できる。各種の実施形態において、検知装置は第一の化学センサ素子とインタフェースするように構成できる。検知装置はさらに、複数のディスクリートグラフェンバラクタ静電容量を検知するように構成できる。
【0083】
検知装置1760は、表示スクリーン1774、例えばキーボードなどのユーザ入力インタフェース1776、及びハウジング1778を含むことができる。検知システム及び装置の態様は、2015年10月15日に出願された米国特許出願公開第2016/0109440号明細書、代理人整理番号第115.0183USU1に記載されており、その内容を参照によって本願に援用する。検知装置は、図20及び図21に関して説明される、本明細書に記載の化学センサ素子とインタフェースするように構成された回路の何れを含むこともできる。
【0084】
幾つかの実施形態において、システム1700はローカルコンピューティング装置1782を含むことができ、これはマイクロプロセッサ、入力及び出力回路、入力装置、視覚的システム、1つ以上のユーザインタフェース装置、及びその他を含むことができる。幾つかの実施形態において、検知装置1760は検知装置1760とローカルコンピューティング装置1782との間でデータを交換するためにローカルコンピューティング装置1782と通信できる。ローカルコンピューティング装置1782は、検知装置1760から受け取ったデータについて様々な処理ステップを実行するように構成でき、これには本明細書に記載の各種のパラメータを計算することが含まれるが、これに限定されない。しかしながら、幾つかの実施形態において、ローカルコンピューティング装置1782に関連する機構は、検知装置1760に組み込むことができる。幾つかの実施形態において、ローカルコンピューティング装置1782はラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバ(現実又は仮想)、目的特定コンピュータ装置、又はポータブルコンピューティング装置(モバイルフォン、タブレット、ウェアラブル装置等を含むがこれらに限定されない)とすることができる。ローカルコンピューティング装置1782及び/又は検知装置1760は、離れた場所にあるコンピューティング装置と、データネットワーク1784、例えばインタネット又はその他の、パケット、フレーム、若しくはそれ以外のデータ交換のためのネットワークを通じて通信できる。
【0085】
幾つかの実施形態において、システム1700はまた、サーバ1786(現実又は仮想)等のコンピューティング装置も含むことができる。検知装置1760は、データネットワーク1784を通じてサーバ1786と通信するように構成できる。幾つかの実施形態において、サーバ1786は検知装置1760から離れた場所にあり得る。サーバ1786はデータベース1788とデータ通信できる。データベース1788は、本明細書に記載されているもの等の各種の被検者情報を記憶するために使用できる。幾つかの実施形態におい、データベースは具体的には、被検者の健康状態、各種の状態に関連するデータのパターン(例えば、被検者データの大きなセットの機械学習解析から生成されたもの)、人口集団に関するデータ及びその他を含む電子医療データベースを含むことができる。幾つかの実施形態において、データベース1788及び/若しくはサーバ1786、又はそれらの組合せは、化学センサにより生成されるデータの他、機械学習解析により生成されたデータ出力も記憶できる。
【0086】
次に図18を参照すると、本願の各種の実施形態による化学センサ素子308の一部の概略図が示されている。複数のディスクリートグラフェンバラクタ1802は、アレイ状の化学センサ素子308の上に設置できる。幾つかの実施形態において、化学センサ素子は、アレイ状に構成された複数のディスクリートグラフェンバラクタを含むことができる。幾つかの実施形態において、複数のディスクリートグラフェンバラクタは同じとすることができ、他の実施形態では、複数のディスクリートグラフェンバラクタは相互に異なるようにすることができる。本願のディスクリートグラフェンバラクタは、2014年1月3日に出願された米国特許第9,513,244号明細書においてより詳しく説明でき、その内容の全体を参照によって本願に援用する。
【0087】
ディスクリートグラフェンバラクタは、グラフェン表面が表面改質されたものを含むことができる。ディスクリートグラフェンバラクタの表面改質は、病態の1つ以上のバイオマーカを検出するように構成できる。表面改質は、DNA、RNA、ヌクレオリン、腫瘍細胞、細胞表面受容体蛋白質、C反応性蛋白質、転写因子、サイトカイン、揮発性有機化合物、エクソソーム、又はそれらの誘導体及び断片を含むバイオマーカを検出するものを含むことができる。
【0088】
幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタはそれらが結合挙動、又は特定のバイオマーカに関する特異性において相互に異なる(集合ごと又は個々のディスクリートグラフェンバラクタごとに)という点で異種とすることができる。幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの中にはバリデーションの目的のために複製できるものもあるが、それ以外は、他のディスクリートグラフェンバラクタとは異種である。また別の実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタは結合挙動、又は特定のバイオマーカに関する特異性において異種とすることができる。図18のディスクリートグラフェンバラクタ1802はグリッド状に組織化された四角として示されているが、ディスクリートグラフェンバラクタは多くの形状(各種の多角形、円、楕円、不規則形状、及びその他を含むがこれらに限定されない)をとることができ、すると、ディスクリートグラフェンバラクタの集合は多くの異なるパターン(星形パターン、ジグザグパターン、放射状パターン、記号パターン、及びその他を含むがこれらに限定されない)に配置できると理解されたい。
【0089】
幾つかの実施形態において、特定のディスクリートグラフェンバラクタ1802の、測定ゾーンの長さ1812及び幅1814に沿った順序は、実質的にランダムとすることができる。他の実施形態において、この順序は特定的(specific)とすることができる。例えば、幾つかの実施形態において、測定ゾーンは、より高い分子量を有するバイオマーカに関する特定のディスクリートグラフェンバラクタ1802が流入ガス流のより近くに配置されるのに対し、より低い分子量を有するバイオマーカに関する特定のディスクリートグラフェンバラクタ1802は流入ガス流からより遠くに配置される。そのため、異なる分子量の化合物同士を分離するのに役立ち得るクロマトグラフィ効果を利用して、化合物を対応するディスクリートグラフェンバラクタに最適に結合させることができる。
【0090】
ディスクリートグラフェンバラクタの数は約1~約100,000とすることができる。幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの数は約1~約10,000とすることができる。幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの数は約1~約1,000とすることができる。幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの数は約2~約500とすることができる。幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの数は約10~約500とすることができる。幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの数は約50~約500とすることができる。幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの数は約1~約250とすることができる。幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの数は約1~約50とすることができる。
【0091】
幾つかの実施形態において、本願での使用に適したディスクリートグラフェンバラクタの各々は、1つ以上の電気回路の少なくとも一部を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態において、ディスクリートグラフェンバラクタの各々は、1つ以上の受動的電気回路の全部又は一部を含むことができる。幾つかの実施形態において、グラフェンバラクタは、これらが電気回路上に直接集積されるように形成できる。幾つかの実施形態において、グラフェンバラクタは、これらが回路に接合されるウェハであるように形成できる。幾つかの実施形態において、グラフェンバラクタは集積された読み出し電気回路、例えば読み出し集積回路(ROIC)を含むことができる。電気回路の電気特性は、抵抗又は静電容量を含め、液体生体サンプルからの成分との結合、例えば特異的及び/又は非特異的結合により変化する可能性がある。多くの異なる種類の回路を使って化学センサ素子からのデータを収集でき、これについては図18及び図19に関して後述する。
【0092】
幾つかの実施形態において、本願で実施されるディスクリートグラフェンバラクタは、グラフェンベースの可変コンデンサ(すなわち、グラフェンバラクタ)を含むことができる。次に図19を参照すると、本願の実施形態によるディスクリートグラフェンバラクタ1802の概略図が示されている。ディスクリートグラフェンバラクタは様々な幾何学形状により様々な方法で製作でき、図19に示されるディスクリートグラフェンバラクタは本願の実施形態による一例にすぎないと理解されたい。
【0093】
ディスクリートグラフェンバラクタ1802は、絶縁体層1902、ゲート電極1904(又は、「ゲートコンタクト」)、誘電体層(図19では図示せず)、1つ以上のグラフェン層、例えばグラフェン層1908a及び1908b、並びにコンタクト電極1910(又は「グラフェンコンタクト」)を含むことができる。幾つかの実施形態において、グラフェン層1908a~bは連続的とすることができ、他の実施形態ではグラフェン層1908a~bは不連続的とすることができる。ゲート電極1904は絶縁体層1902内に形成された1つ以上の凹部の中に堆積させることができる。絶縁体層1902は、シリコン基板(ウェハ)上に形成された二酸化シリコンその他の絶縁材料から形成できる。ゲート電極1904は、クロム、銅、金、銀、タングステン、アルミニウム、チタン、パラジウム、プラチナ、イリジウム、及びこれらの何れかの組合せ若しくは合金等の導電材料により形成でき、これらを絶縁体層1902の上に堆積させ、又はその中に埋め込むことができる。誘電体層は絶縁体層1902及びゲート電極1904の表面上に設置できる。グラフェン層1908a-bは、誘電体層の上に設置できる。
【0094】
ディスクリートグラフェンバラクタ1802は、8つのゲート電極フィンガ1906a~1906hを含む。ディスクリートグラフェンバラクタ1802は8つのゲート電極フィンガ1906a~1906hを示しているが、何れの数のゲート電極フィンガ構成も想定できると理解されたい。幾つかの実施形態において、個々のグラフェンバラクタは8つ未満のゲート電極フィンガを含むことができる。幾つかの実施形態において、個々のグラフェンバラクタは8つより多いゲート電極フィンガを含むことができる。幾つかの実施形態において、個々のグラフェンバラクタは2つのゲート電極フィンガを含むことができる。幾つかの実施形態において、個々のグラフェンバラクタは1、2、3、4、5、6、7、8,9、10、又はそれより多いゲート電極フィンガを含むことができる。
【0095】
ディスクリートグラフェンバラクタ1802は、グラフェン層1908a及び1908bの一部の上に配置される1つ以上のコンタクト電極1910を含むことができる。コンタクト電極1910は、クロム、銅、金、銀、タングステン、アルミニウム、チタン、パラジウム、プラチナ、イリジウム、及びこれらの何れかの組合せ又は合金から形成できる。例示的グラフェンバラクタの別の態様は、2014年1月3日に出願された米国特許第9,513,244号明細書において見られ、その全体を参照によって本願に援用する。
【0096】
グラフェンバラクタの静電容量は、特定の電圧の、及び/又は電圧範囲にわたる励起電流を送達することにより測定できる。静電容量を測定することにより、バイオマーカのグラフェンバラクタとの結合状態を反映するデータを提供する。各種の測定回路が、グラフェンバラクタの静電容量を測定するために使用できる。
【0097】
ここで図20を参照すると、本願の各種の実施形態による複数のディスクリートグラフェンバラクタの静電容量を測定するための回路の概略図が示されている。回路は、マルチプレクサ2004と電気通信する静電容量-デジタル変換器(CDC)2002を含むことができる。マルチプレクサ2004は、複数のグラフェンバラクタ2006との選択的な電気通信を提供できる。グラフェンバラクタ2006の反対側との接続は、スイッチ2003(CDCにより制御される)により制御でき、第一のデジタル-アナログ変換器(DAC)2005及び第二のデジタル-アナログ変換器(DAC)2007との選択的な電気通信を提供できる。DAC2005、2007の反対側は、バス装置2010に、又は幾つかのケースではCDC2002に接続できる。回路はマイクロコントローラ2012をさらに含むことができ、これについては後でより詳しく述べる。
【0098】
この場合、CDCからの励起信号は、2つのプログラマブルデジタル-アナログ変換器(DAC)の出力電圧間のスイッチを制御する。DAC間のプログラムされた電圧差は励起振幅を決定し、測定に対して追加のプログラブルスケールファクタを提供し、CDCにより特定されるものより広範囲の静電容量の測定が可能となる。静電容量が測定されるバイアス電圧は、CDC入力におけるバイアス電圧(マルチプレクサを介し、通常、VCC/2と等しく、VCCは供給電圧である)とプログラム可能な励起信号の平均電圧との差と等しい。幾つかの実施形態において、バッファアンプ及び/又はバイパスキャパシタンスをDAC出力において使用して、スイッチング動作中の安定な電圧を保持することができる。多くの異なる範囲のDCバイアス電圧を使用できる。幾つかの実施形態において、DCバイアス電圧の範囲は-3V~3V、又は-1V~1V、又は-0.5V~0.5Vとすることができる。
【0099】
多くの異なる局面を静電容量データに基づいて計算できる。例えば、計算可能な局面には、静電容量対電圧の最大勾配、ベースライン値からの静電容量対電圧の最大勾配の変化、静電容量対電圧の最小勾配、ベースライン値からの静電容量対電圧の最小勾配の変化、最小静電容量、ベースライン値からの最小静電容量の変化、最小静電容量での電圧(ディラック点)、最小静電容量の電圧の変化、最大静電容量、最大静電容量の変化、最大静電容量対最小静電容量の比、応答時間定数、及び上記の何れかのディスクリートグラフェンバラクタ間、特に異なるバイオマーカに対する特異性を有する異なるディスクリートグラフェンバラクタ間の比が含まれる。
【0100】
上記の計算された局面は、様々な診断目的に使用できる。幾つかのケースでは、上記の計算された局面は、ガスサンプルの特定の揮発性有機化合物の名称及び/又は濃度を示すことができる。そのため、上記の計算された値の各々は、ある被検者及び/又はあるガスサンプルに関するパターンの一部を形成する別個のデータとしての役割を果たすことができる。本明細書の他の箇所にも記載されているように、しかしてパターンは、機械学習又はその他の技術を通じて多くの保存データセットから得られる既存のパターン、又はリアルタイムで識別されるバターンとマッチさせることができ、このようなパターンは各種の状態又は病態の特徴であることが特定される。上記の計算された局面はまた、診断かそれ以外かにかかわらず、その他の目的にも使用できる。
【0101】
幾つかの実施形態において、上述のもののような計算はコントローラ回路により実行できる。コントローラ回路は、グラフェンバラクタの静電容量を反映する電気信号を受信するように構成できる。幾つかの実施形態において、コントローラ回路はこれらの計算を行うためのマイクロコントローラを含むことができる。幾つかの実施形態において、コントローラ回路は測定回路と電気通信するマイクロプロセッサを含むことができる。マイクロプロセッサは、アドレスバス、データバス、制御バス、クロック、CPU、処理装置、アドレスデコーダ、RAM、ROM、及びその他等の構成要素を含むことができる。幾つかの実施形態において、コントローラ回路は測定回路と電気通信する計算回路(特定用途集積回路-ASIC等)を含むことができる。
【0102】
それに加えて、幾つかの実施形態において、システムは不揮発性メモリを含むことができ、そこに特定のセンサのための感度較正情報が記憶される。例えば、センサは生産施設でテストでき、そこで各種のバイオマーカ、例えばVOCに対するその感度を特定でき、その後、EPROM又は同様の構成要素上に記憶できる。それに加えて、又は代替的に、感度較正情報は、中央データベースに記憶して、被検者データが解析及び診断のために中央ロケーションに送られると、センサシリアル番号で参照できる。これらの構成要素は、本明細書に記載のハードウェアの何れとも含めることができる。
【0103】
本願の幾つかの実施形態において、構成要素はインタネット又は同様のネットワーク等のネットワーク上で通信するように構成できる。各種の実施形態において、中央記憶及びデータ処理施設を含めることができる。幾つかの実施形態において、被検者が存在する場所でセンサから収集されたデータ(ローカル)は、インタネット又は同様のネットワークを介して中央処理施設に送る(リモート)ことができ、評価対象の特定の被検者からのパターンを、過去に様々な状態で診断され、そのような状態のデータが保存されている何千人又は何百万人もの他の被検者のそれらと比較できる。パターンマッチングアルゴリズムを使って、現在の被検者のパターンが最も近い他の被検者又は被検者クラス(例えば、病気若しくは状態別のクラス)を見つけることができる。被検者の各クラスは、ある状態又は病態を有する所定の可能性を含むことができる。このようにして、パターンマッチングの後、ある状態又は病態を有する可能性が、データネットワークを通じて被検者が現在いる施設へと戻すことができる。
【0104】
幾つかの実施形態において、回路は能動検知回路及び受動検知回路を含むことができる。このような回路は、有線(直接電気コンタクト)検知技術又は無線検知技術を実装できる。次に図21を参照すると、本願の各種の態様による受動センサ回路2102と読み出し回路2122の一部の概略図が示されている。幾つかの実施形態において、受動センサ回路2102は、インダクタ2110に連結された金属-酸化物-グラフェンバラクタ2104(RSは直列抵抗を表し、CGはバラクタコンデンサを表す)を含むことができる。幾つかの実施形態において、読み出し回路2122は、抵抗2124とインダクタンス2126を有する読み出しコイルを含むことができる。しかしながら、図20及び図21に示される回路は単に例示的なアプローチにすぎないと理解されたい。本願では多くの異なるアプローチが想定される。
【0105】
次に図22を参照すると、本願の各種の実施形態によるグラフェンバラクタに関する静電容量対DCバイアス電圧を示す例示的なグラフが示されている。図22に示されるような静電容量対電圧曲線は、図20及び図21において説明したもの等の回路を使って化学センサを被検者の液体生体サンプルから発せられるガスに晒しながら、ある範囲のバイアス電圧にわたり静電容量を測定することによって作成できる。幾つかの実施形態において、バイアス電圧の範囲は-3V~3Vを含むことができる。幾つかの実施形態において、DCバイアス電圧の範囲は-2V~2V、又は-1.5V~1.5V、又は-1V~1V、又は-0.5V~0.5Vとすることができる。
【0106】
追加的方法
本願の追加的方法は、膀胱がん等の特定の病態に対するものとすることができる。次に図23を参照すると、本願の各種の実施形態による被検者の病態を検出するための方法2300の概略図が示されている。方法2300は、被検者の膀胱がんを検出する方法を含むことができる。方法2300は、2302で被検者から尿又は血液サンプルを取得するステップを含むことができる。方法は、2304で液体生体サンプルを容器内に収容するステップを含むことができる。方法2300は、2306で尿又は血液サンプルを第一の化学センサ素子と接触させるステップを含むことができ、第一の化学センサ素子は複数のディスクリートグラフェンバラクタを含む。方法は、2308でディスクリートグラフェンバラクタの各々の静電容量を検知し、記憶して、第一のサンプルデータを取得するステップを含むことができる。方法は、2310で第一のサンプルデータを1つ以上の既定の病態に分類するステップをさらに含むことができる。各種の実施形態において、方法2300は第一のサンプルデータセットを、ステージI膀胱がん、ステージII膀胱がん、ステージIII膀胱がん、又はステージIV膀胱がんを含む1つ以上の既定の病態に分類するステップを含むことができる。
【0107】
液体生体サンプルの取扱
本願の実施形態により被検者から液体生体サンプルを取得する際、様々な液体生体サンプル採取、処理、及び保存技術を採用できると理解されたい。液体生体サンプルは、侵襲的又は非侵襲的収集方法を使って被検者から取得できる。収集方法は、採尿及び採血又はその他の場合のように、被検者からの低侵襲的サンプル採取を含むことができる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルは最小限のみ処理され、他の実施形態では、液体生体サンプルはまったく処理されない。幾つかの実施形態において、腫瘍サンプルを取得し、液体懸濁液中で処理できる。
【0108】
液体生体サンプルが被検者から取得され、容器内に収容されると、液体生体サンプルは将来使用するために保存でき、又はすぐに使用できる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルは、所定の温度及び湿度で所定の時長さの時間にわたりインキュベートすることができる。インキュベート中、液体生体サンプルは熱源で加熱して、サンプルをある温度範囲内に保持することができる。幾つかの実施形態において、温度範囲は生理学的温度範囲、例えば摂氏35度(℃)~39℃等を含むことができる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルは生理学的温度に保持できるが、他の実施形態では液体生体サンプルは生理学的範囲以外の温度に保持できる。例えば、液体生体サンプルは約10℃~約30℃の温度に保持できる。他の実施形態では、液体生体サンプルは25℃~40℃の温度に保持できる。他の実施形態では、液体生体サンプルは40℃~50℃の温度に保持できる。幾つかの実施形態において、液体生体サンプルは不活性ガス中で曝気させることができる。例えば、液体生体サンプルは、ある期間にわたり段階的に曝気させることができる。
【0109】
分類及びパターンマッチング
サンプルデータセットを1つ以上の既定の疾病分類に分類するステップは、多くの様々な機械学習技術、例えばパターン認識によって実行できる。分類は、サンプルデータセットを過去に特定された1つ以上のパターンとパターンマッチング又はパターン認識アルゴリズムを使って比較し、最もよくマッチするパターンを特定するステップを含むことができ、最もよくマッチする過去に特定された具体的パターンがその被検者の病態を示す。
【0110】
例えば、多くの被検者データセットの中のパターンは当初、機械学習解析又はその他同様のアルゴリズム技術を通じて特定され得る。特定の病態分類に関連付けられるパターンは、ラベル付き「トレーニング」データ(教師あり学習)又はラベル付きデータがない状態で(教師なし学習)得ることができる。
【0111】
本願で使用されるパターンマッチングのためのアルゴリズムには、分類アルゴリズム(カテゴリラベルを予想する教師ありアルゴリズム)、クラスタリングアルゴリズム(カテゴリラベルを予想する教師なしアルゴリズム)、アンサンブル学習アルゴリズム(複数の学習アルゴリズムを合体させる教師つきメタアルゴリズム)、任意の構成のラベルセットを予想するための一般的アルゴリズム、多重線形サブスペース学習アルゴリズム(テンソル表現を使用する多次元データのラベルを予想する)、観測値系列ラベリングアルゴリズム(観測値ラベルの系列を予想する)、回帰アルゴリズム(観測値ラベルを予想する)、及び系列ラベリングアルゴリズム(カテゴリラベルの系列を予想する)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0112】
分類アルゴリズムには、パラメータアルゴリズム(例えば、線形判別解析、二次判別解析、及び最大エントロピ分類子)及びノンパラメトリックアルゴリズム(例えば、決定木、カーネル推定、ナイーブベイズ分類子、ニューラルネットワーク、パーセプトロン、及びサポートベクトルマシン)を含めることができる。クラスタリングアルゴリズムには、カテゴリ混合モード、深層学習方法、階層クラスタリング、K平均クラスタリング、相関クラスタリング、及びカーネル主成分分析を含めることができる。アンサンブル学習アルゴリズムには、ブースティング、ブートストラップアグリゲーティング、アンサンブル平均、及び混合エキスパートを含めることができる。任意構成のラベルセットを予想する一般的アルゴリズムには、ベイジアンネットワーク及びマルコフランダムフィールドを含めることができる。多重線形サブスペース学習アルゴリズムには、多重線形主成分分析(MPCA)を含めることができる。観測値系列ラベリングアルゴリズムには、カルマンフィルタ及び粒子フィルタを含めることができる。回帰アルゴリズムには、教師あり(ガウス過程回帰、線形回帰、ニューラルネットワーク、及び深層学習方式等)と教師なし(独立成分分析及び主成分分析)方式の両方を含めることができる。系列ラベリングアルゴリズムには、教師あり(条件付きランダムフィールド、隠れマルコフモデル、最大エントロピマルコフモデル、及び回帰型ニューラルネットワーク等)と教師なし(隠れマルコフモデル及び動的時間伸縮法)の両方の方式を含めることができる。
【0113】
治療方法
本願の実施形態は、被検者の病態を治療する方法を特に含むことができる。方法は、被検者から液体生体サンプルを取得するステップと、それを液体生体サンプルの上方又はその周囲のヘッドスペースを有する容器内に収容するステップを含むことができる。方法は、液体生体サンプル及び/又はヘッドスペース内のガスを化学センサ素子と接触させるステップをさらに含むことができ、化学センサ素子は複数の個別的グラフェンバラクタを含む。方法は、個別的グラフェンバラクタの静電容量を検知し、記憶して、1つ以上のサンプルデータセットを取得するステップをさらに含むことができる。方法は、サンプルデータセットを1つ以上の既定の病態分類に分類するステップをさらに含むことができる。方法は、被検者を治療するための療法を病態分類に基づいて識別するステップをさらに含むことができる。
【0114】
例えば、分類及び病態に対する考え得る治療の1つの例示的セットを下の表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
本明細書及び付属の特許請求の範囲の中で使用されるかぎり、単数形の冠詞(a、an、the)は、文脈上の明らかに別の解釈が必要な場合を除き、複数も含む点に留意すべきである。また、「又は」という用語は、文脈上明らかに別の解釈が必要な場合を除き、「及び/又は」を含むその意味において一般に使用されている点にも留意すべきである。
【0117】
また、本明細書及び付属の特許請求の範囲の中で使用されるかぎり、「構成される」という語句は、特定のタスクを実行する、又は特定の構成をとるように構築又は構成されるシステム、装置、又はその他の構造を表すことに留意すべきである。「構成される」という語句は、配置及び構成される、構築及び配置される、構築される、製造及び配置される、並びにその他等、他の同様の語句と互換的に使用できる。
【0118】
本明細書中の全ての出版物及び特許出願は、本発明が関係する業界の通常の当業者のレベルを示すものである。全ての出版物及び特許出願は、個々の出版物又は特許出願の各々が具体的且つ個別に参照により指示されている場合と同程度に、参照によって本願に援用される。
【0119】
本明細書中で使用されるかぎり、端点による数値範囲の引用は、その範囲内の全ての数を含むものとする(例えば、2~8は2.1、2.8、5.3、7等を含む)。
本明細書中で使用される見出しは、米国特許法規則1.77項に基づく推奨に従って、又はそれ以外に組織化する上でのヒントとなるように提供されている。これらの見出しは、本開示から発行され得る何れの特許請求項に明記されている本発明を限定又は特徴付けるとはみなされないものとする。例えば、見出しに「分野」と記されていても、かかる請求項は、いわゆる技術分野を説明するためにこの見出しに基づいて選択された文言によって限定されるべきではない。さらに、「背景」の中の技術の説明は、技術が本開示の何れかの発明に対する先行技術であることを認めるものではない。「概要」も、発行される特許請求項に記される発明の特徴とみなされないものとする。
【0120】
本明細書に記載の実施形態は、網羅的である、又は本発明を以下の詳細な説明の中で開示されている形態そのものに限定するものである、とは意図されていない。そうではなく、実施形態は当業者が原理と実践を評価し、理解できるようにするために選択され、説明されている。そのため、態様は、各種の具体的な好ましい実施形態及び技術に関して説明されている。しかしながら、本願の主旨と範囲の中にとどまりながら、多くの変形及び改良をなすことができると理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】