(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】膨張コーティング
(51)【国際特許分類】
H01M 50/229 20210101AFI20230601BHJP
H01M 50/222 20210101ALI20230601BHJP
H01M 50/231 20210101ALI20230601BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20230601BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230601BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20230601BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230601BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20230601BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20230601BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230601BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230601BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230601BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230601BHJP
【FI】
H01M50/229
H01M50/222
H01M50/231
H01M50/227
H01M50/249
H01M50/117
H01M50/121
H01M50/122
H01M50/124
C09D201/00
C09D7/61
C09D163/00
C09D7/63
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566357
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021030061
(87)【国際公開番号】W WO2021222685
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マ, シュアン
(72)【発明者】
【氏名】フルセボス, ケヴィン
【テーマコード(参考)】
4J038
5H011
5H040
【Fターム(参考)】
4J038DB001
4J038DB061
4J038DD051
4J038EA001
4J038HA036
4J038HA216
4J038HA406
4J038HA446
4J038HA476
4J038JB01
4J038JC24
4J038JC37
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA19
4J038NA15
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC08
5H011AA02
5H011CC02
5H011CC05
5H011CC10
5H011KK02
5H040AA37
5H040AS07
5H040JJ04
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN00
(57)【要約】
総固体重量に基づいて、5~20重量%の量でTiO2を、20~55重量%の量でホスフェート源を、ならびにボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源を含む膨張コーティング組成物が、そのような組成物、およびそれでコーティングされた基材を使用するための方法とともに開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、コーティング組成物であって、
a)フィルム形成成分と、
b)ホスフェート源と、
c)ボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源と、
d)TiO
2と、
e)ガス源と、を含み、
前記組成物の総固体重量に基づく重量%で、前記TiO
2が、9~15重量%などの、5~20重量%の量で存在し、前記ホスフェート源が、25~40重量%または40~55重量%などの、20~55重量%の量で存在し、かつ成分cがボレート源を含む場合、9~15重量%などの、5~20重量%の量で存在し、成分cがアルミニウム源を含む場合、0.2~8重量%などの、0.1~10重量%の量で存在し、成分cがシリカ源を含む場合、0.1~5重量%、そのような0.4~1重量%の量で存在する、コーティング組成物を対象とする。
【請求項2】
前記組成物の総固体重量に基づく重量%で、前記フィルム形成成分が、20~60重量%の量で存在し、かつ/または前記ガス源が、1~10重量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記組成物の総固体重量に基づく重量%で、ガラス繊維および/または鉱物繊維などの繊維を、最大4重量%の量でさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記組成物の総固体重量に基づく重量%で、2~20重量%の総量で1つまたは1つより多くの添加剤をさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記フィルム形成成分が、エポキシ樹脂およびアミン架橋剤を含み、前記ホスフェート源が、リン酸アンモニウム、リン酸トリフェニル、および/またはリン酸トリ(2-クロロイソプロピル)を含み、前記ボレート源が、使用される場合、金属ボレート、五ホウ酸アンモニウム、および/またはホウ酸を含み、前記ガス源が、メラミン、尿素、および/または膨張性黒鉛を含み、前記アルミニウム源が、使用される場合、水酸化アルミニウムおよび/または酸化アルミニウムを含み、前記シリカ源が、使用される場合、ヒュームドシリカを含む、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物から形成された自己支持フィルムまたはシート。
【請求項7】
基材をコーティングするための方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物、または請求項6に記載のフィルムもしくはシートを、前記基材の少なくとも一部分に適用することを含む、方法。
【請求項8】
前記基材が、アルミニウムもしくは鋼などの金属、またはポリカーボネートなどのプラスチックを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7または8のいずれかに記載の方法に従ってコーティングされた基材。
【請求項10】
請求項9に記載の基材を備える、物品。
【請求項11】
前記物品が、リチウムイオン電池を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記電池が、ハウジングを画定する外壁要素、および必要に応じて、内壁要素を備え、前記コーティング組成物またはフィルムもしくはシートが、前記外壁要素のうちのいずれかの外側側面および/もしくは内側側面に、ならびに/または存在する場合、前記内壁要素のうちのいずれかの任意の側面に、少なくとも部分的に適用されている、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記外壁要素および/または内壁要素のうちのいずれかが、複合材料、鋼、アルミニウム、および/またはポリカーボネートを含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記電池が、複数の個々の電池セルを備える電池パックであり、前記コーティング組成物またはフィルムもしくはシートが、膨張しかつ必要に応じて炭化した状態で、前記個々の電池セルのうちの少なくとも2つを互いに熱絶縁するように位置付けられており、前記電池が、必要に応じて、1つまたは1つより多くの追加の難燃性材料および/または火災軽減手段を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
前記物品が、車両を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項16】
前記物品が、構造体を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項17】
前記物品が、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされた電池部品であるか、または請求項6に記載のフィルムもしくはシートを適用されている電池部品である、請求項10に記載の物品。
【請求項18】
前記電池部品が、電気車両用電池部品を含む、請求項17に記載の電池部品。
【請求項19】
前記電池部品が、電池セル、電池シェル、電池モジュール、電池パック、電池ボックス、電池セルケーシング、パックシェル、電池蓋およびトレイ、熱管理システム、電池ハウジング、モジュールハウジング、モジュールラッキング、電池サイドプレート、電池セル筐体、冷却モジュール、冷却管、冷却フィン、冷却プレート、母線、電池フレーム、電気接続、金属ワイヤ、銅またはアルミニウムの導体またはケーブル、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項17または18に記載の電池部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張コーティング組成物、該組成物で基材をコーティングするための方法、該組成物でコーティングされた基材、電池を含む該基材を備える物品を対象とする。
【背景技術】
【0002】
膨張コーティングは、セルロース火災および炭化水素火災のどちらに対しても保護するように、様々な構造用途に使用されてきた。そのようなコーティングは、激しい熱に曝露されると炭素質炭を形成することによって保護を供与する。火災において形成される炭は、炭が最適な厚さに膨張して基板に付着するとき、および/または炭上にひび割れを残すことなどによって、直接的な火炎吹き付けが炭の完全性を損なわないような厚さで炭が形成されるときに、最適な保護を提供する。火災の場合に極端に高い熱に曝露されるであろう、例えば、ホテル、空港、コンサートホールまたは沖合の現場、化学プラント、石油掘削装置などのような商業的および輸送インフラストラクチャで使用される構造的建造物構成要素を含む多数の基材が、そのようなコーティングでコーティングされることから利益を得ることができる。リチウムイオン電池などの電池も、そのような激しい熱に曝露される場合があり、多くの電池、および特にリチウムイオン電池は、熱暴走に対して脆弱であり、熱暴走中に電池から熱およびガスが急速に排出され、火災の危険性が生じる。従来の単一パック防火コーティングは耐候性に優れていないが、2パック防火コーティングは粘性が高すぎて薄い厚さで塗布することはできず、したがって、電池に使用されるものを含む改善された耐火性コーティングが望まれている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、コーティング組成物であって、a)フィルム形成成分と、b)ホスフェート源と、c)ボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源と、d)TiO2と、e)ガス源と、を含み、組成物の総固体重量に基づく重量%で、TiO2が、9~15重量%などの、5~20重量%の量で存在し、ホスフェート源が、25~40重量%または40~55重量%などの、20~55重量%の量で存在し、かつ成分cがボレート源を含む場合、9~15重量%などの、5~20重量%の量で存在し、成分cがアルミニウム源を含む場合、0.2~8重量%などの、0.1~10重量%の量で存在し、成分cがシリカ源を含む場合、0.1~5重量%、そのような0.4~1重量%の量で存在する、コーティング組成物を対象とする。組成物は、自己支持フィルムまたはシートに形成することができる。本発明によるコーティング組成物または本明細書に記載されるようにそれから形成されたフィルムもしくはシートを使用して基材をコーティングする方法、およびそれによってコーティングされた基材、ならびに添付の特許請求の範囲に記述されるようなそのようなコーティングされた基材/フィルムもしくはシートを含む物品もまた、本発明の範囲内であり、本組成物で少なくとも部分的にコーティングされた電池部品および電池、ならびに本発明の自己支持フィルムまたはシートを含む電池が含まれる。
【0004】
本発明について、以下でより詳細に考察されるであろう。
図面の簡単な説明
【0005】
表1は、コーティングされた基材が1200±50℃のトーチ火に10分間さらされた後の、配合物1~13の実験または比較膨張コーティング組成物でコーティングされた基材の写真を含む。配合物6はまた、トーチ火にさらされた後のコーティングされたパネルの側面図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、コーティング組成物であって、a)フィルム形成成分と、b)ホスフェート源と、c)ボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源と、d)TiO2と、e)ガス源と、を含み、組成物の総固体重量に基づく重量%で、TiO2が、9~15重量%などの、5~20重量%の量で存在し、ホスフェート源が、25~40重量%または40~55重量%などの、20~55重量%の量で存在し、かつ成分cがボレート源を含む場合、9~15重量%などの、5~20重量%の量で存在し、成分cがアルミニウム源を含む場合、0.2~8重量%などの、0.1~10重量%の量で存在し、成分cがシリカ源を含む場合、0.1~5重量%、そのような0.4~1重量%の量で存在する、コーティング組成物を対象とする。未硬化時の組成物の総固体重量が、硬化時の総固体重量と同じであることが理解されよう。
【0007】
本コーティング組成物を使用して、膨張コーティングを形成することができる。つまり、コーティングは、火災中に経験する高温などの熱に曝露されるとき、膨大および炭化を受ける。本発明者らは、上で与えられた範囲内の、ボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源をTiO2およびホスフェート源と併せて使用することにより、驚くべきことに、基材への望ましい付着性と併せて望ましい炭形成を有する膨張コーティングが与えられることを発見した。「望ましい炭形成」とは、炭が直接的な火炎吹き付けによって容易にひび割れたり除去されたりすることがないことを意味し、炭の厚さとコーティングフィルムの厚さとの間の比率である膨張係数は、7~20などの、5~25であり得る。「望ましい付着性」とは、直接的な火炎吹き付け中、炭が実質的に無傷のままであり、火災試験中または火災試験後に、基材からの炭の明らかな脱離が起っていないことを意味する。したがって、本発明によるコーティング組成物は、従来の膨張コーティング組成物に優る利点を提供する。
【0008】
コーティング組成物は、フィルム形成成分を含む。「フィルム形成」は、乾燥および/または硬化時に、組成物が表面上に連続フィルムを形成することができることを意味する。フィルム形成成分は、例えば、フィルム形成樹脂およびこのための架橋剤を含み得る。本発明により任意のフィルム形成樹脂を使用することができる。そのような樹脂は、それ自体と反応することができる、つまり、自己架橋反応を受けることができるか、または架橋剤と反応して、フィルムを形成することができる。そのような反応は、周囲温度または高温で起こり得る。「架橋剤」ならびに同様の用語、硬化剤およびハードナー(hardener)は、本明細書で互換的に使用され得る。
【0009】
エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリビニル樹脂、フェノール樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、およびシアネート樹脂が挙げられるが、これらに限定されない、任意の好適な樹脂、または樹脂の組み合わせは、フィルム形成成分に使用することができる。これらの樹脂の中では、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、および/またはポリウレタン樹脂が特に好適である。
【0010】
本発明に従って使用されるフィルム形成樹脂は、互いと反応するか、または架橋剤上の官能基と反応する1つまたは1つより多くの官能基を含有する。好適な官能基の例としては、例えば、ケトン、ヒドラジド、カルボジイミド、オキサゾリン、エポキシ、アミン、ビニル、アミド、カルバメート、尿素、メルカプタン、カルボン酸、(メタ)アクリロイル、イソシアネート、アルコキシシリル、無水物、ヒドロキシル、およびアルコキシ基、官能基、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0011】
互いと反応することが可能である好適な官能基としては、例えば、N-メチロールアミド基、ケイ素に結合した加水分解性または縮合性基、例えば、クロロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アセトキシ、および/またはケトキシモ基を有するシラン基、例えば、空気酸素によって酸化乾燥することが可能であるエチレン性不飽和脂肪酸基、アゾメチン基、アゼチジン基、熱可逆性ディールス-アルダー反応することが可能である基、例えば、フラン/マレイミドが挙げられる。樹脂が互いと反応することが可能である官能基を含有する場合、それは、自己架橋性とみなされ、硬化剤の存在は、本膨張組成物を提供するために必要ではない。
【0012】
この樹脂はまた、互いと反応する(自己架橋する)ことが可能である官能基と、硬化剤の官能基と反応性である官能基との組み合わせも含有し得る。そのような場合、硬化剤が存在する場合があり、硬化時に、2つの架橋メカニズム、すなわち、架橋剤上の官能基と樹脂との間の反応、および樹脂それ自体の自己架橋反応を起こすであろう。
【0013】
本発明に使用するのに好適なエポキシ樹脂は、少なくとも1つのポリエポキシドを含む。ポリエポキシドは、典型的には、少なくとも2つの1,2-エポキシ基を有する。ポリエポキシドのエポキシ当量は、100~700などの、80~6000の範囲であり得る。エポキシ化合物は、飽和または不飽和の環状、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であってよい。これらは、ハロゲン、ヒドロキシ、およびエーテル基などの置換基(複数可)を含み得る。
【0014】
好適なポリエポキシドの例は、1を超える、または通常は2の1,2-エポキシ当量を有するもの、すなわち、分子当たり平均2つのエポキシ基を有するポリエポキシドである。最も一般的に使用されるポリエポキシドは、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、レゾルシノール、ヒドロキノン、ベンゼンジメタノール、フロログルシノール、ビスフェノールF、およびカテコールなどのポリフェノールのポリグリシジルエーテル、または1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルシクロヘキシル)プロパン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、および1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ポリオールなどのポリオールのポリグリシジルエーテルである。脂肪族ポリオールの例としては、特に、トリヒドロキシメチルペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、またはポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、およびネオペンタンジオールが挙げられる。
【0015】
好適なエポキシ樹脂の別の群としては、エピクロロヒドリンなどのエポキシ化合物と、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはダイマー化リノール酸などの脂肪族もしくは芳香族ポリカルボン酸との反応によって形成される、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルが挙げられる。そのような樹脂は、Hexion Inc.からそれらのEPIKOTEおよびEPONラインで市販されている。
【0016】
本発明に従って使用することができる他の好適なエポキシ樹脂としては、エポキシ脂環式エーテルおよびエステルなどのエポキシ化オレフィン性不飽和脂環式材料、オキシアルキレン基を含有するエポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂が挙げられ、これらは、エピハロヒドリンを、アルデヒドと、一価または多価のフェノールとの縮合生成物と反応させることによって調製され、エポキシフェノールノボラック樹脂またはエポキシクレゾールノボラック樹脂などである。
【0017】
さらに、本発明に従って、本発明の膨張組成物のポリエポキシ官能性化合物として可撓性ポリエポキシド樹脂を用いることが有利であり得る。これらの樹脂は、概して、少量の分岐が許容されるが、本質的に直線状の材料である。好適な材料の例は、エポキシ化大豆油、BASF SE(Ludwigshafen,Germany)から市販されているEMPOL1010樹脂などのダイマー酸系材料、ならびにビスフェノールAのポリグリシジルエーテルおよび酸官能性ポリブタジエンから調製された生成物などのゴム改質ポリエポキシド樹脂である。
【0018】
本発明に従って使用するための可撓性ポリエポキシドの他の好適な例としては、可撓性酸官能性ポリエステルおよびポリエポキシドから調製されるエポキシ官能性付加物が挙げられる。酸官能性ポリエステルは、ASTM974-87によって決定した場合、140~350mgKOH/または180~260mgKOH/gなどの、少なくとも10mgKOH/gの酸価を有し得る。
【0019】
本明細書での使用には、直線状のポリエステルが分岐状のポリエステルよりも好適であり得る。酸官能性ポリエステルは、有機ポリオールによる有機ポリカルボン酸またはその無水物のポリエステル化によって調製することができる。ポリカルボン酸およびポリオールは、脂肪族または芳香族の二塩基酸およびジオールであり得る。
【0020】
ポリエステルを作製する際に使用され得るジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール、および水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンジオールなどの他のジオール、例えば、イプシロン-カプロラクトンおよびエチレングリコールの反応生成物、ヒドロキシ-アルキル化ビスフェノール、ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコールなどが挙げられる。ジオールがより好適であるが、より高い官能性のポリオールも使用することができる。例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、グリセロール、イソソルビド、テトラメチルシクロブタンジオールなど、ならびにより低い分子量のポリオールをオキシアルキル化することによって生成されるものなどのより高い分子量のポリオールが挙げられる。
【0021】
ポリエステルの酸成分は、分子当たり2~36個の炭素原子を有するモノマーのジカルボン酸または無水物を含み得る。好適な酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタル酸、クロレンド酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ロジン酸、ジフェノール酸、没食子酸、および様々なタイプの他のジカルボン酸、例えば、不飽和C18脂肪酸のディールス・アルダー付加物が挙げられる。
【0022】
ポリエステルは、安息香酸、ステアリン酸、酢酸、ヒドロキシステアリン酸、およびオレイン酸などの少量の一塩基酸を含み得る。また、トリメリット酸などの高級ポリカルボン酸が用いられる場合がある。酸が上で参照される場合、無水物を形成するこれらの酸の無水物を酸の代わりに使用することができることが理解される。また、グルタル酸ジメチルおよびテレフタル酸ジメチルなどの酸の低級アルキルエステルを使用することができる。
【0023】
本発明によれば、エポキシ官能性付加物を作製するために使用されるポリエステルは、7~16個の炭素原子を有するポリカルボン酸または酸の混合物を含むポリカルボン酸成分、およびジエチレングリコールの一部を含むポリオール成分から調製され得る。
【0024】
可撓性酸官能性ポリエステルおよびポリエポキシドのエポキシ官能性付加物を調製するために使用されるポリエポキシドは、本発明によるポリエポキシド官能性成分について上で定義されるものから選択され得る。
【0025】
他の好適なポリエポキシ官能性化合物は、エポキシ官能性アクリル樹脂である。そのような樹脂は、(メタ)アクリルモノマーのフリーラジカル付加重合によって、必要に応じて、ビニルモノマーまたは少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む他のモノマーと組み合わせて調製することができ、モノマー組成物は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む。
【0026】
好適なエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジルアクリレート、2-エチルグリシジルメタクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルアクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルメタクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルアクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルメタクリレート、グリシジルメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルメタクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)アクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)メタクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、アルファ-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に好適な追加のモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和ニトリル化合物、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和酸のアルキルエステル、エチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、エチレン性不飽和酸のアミド、エチレン性不飽和酸、エチレン性不飽和スルホン酸モノマーおよび/またはエチレン性不飽和リン含有酸モノマー、ビニルカルボキシレート、共役ジエン、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するモノマー、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるエチレン性不飽和ニトリルモノマーの例としては、直線状または分岐状の配置で2~4個の炭素原子を含有する重合可能な不飽和脂肪族ニトリルモノマーが挙げられ、これらは、アセチル基または追加のニトリル基のいずれかによって置換され得る。かかるニトリルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルファ-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリル、およびこれらの組み合わせが挙げられ、アクリロニトリルが特に好適である。
【0029】
代表的な好適なビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、およびビニルトルエンが挙げられる。
【0030】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができる(メタ)アクリル酸のエステルとしては、アクリルもしくは(メタ)アクリル酸の、アルキル基が1~20個の炭素原子を有するn-アルキルエステル、イソ-アルキルエステルもしくはtert-アルキルエステル、またはメタアクリル酸と、バーサチック酸、ネオデカン酸、もしくはピバル酸などのネオ酸のグリシジルエステルとの反応生成物、ならびにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートのモノマーが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸の好適なアルキルエステルとしては、例えば、C1~C10-アルキル(メタ)アクリレートなどの、C1~C20アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ得る。かかるアクリレートモノマーの例としては、n-ブチルアクリレート、二級ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびセチルメタクリレートが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせなどの(メタ)アクリル酸のエステルが特に好適である。
【0032】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および高級アルキレンオキシド、またはこれらの混合物に基づく、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートのモノマーが挙げられる。例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、およびヒドロキシブチルアクリレートである。特に好適なものは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0033】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるエチレン性不飽和酸のアミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびジアセトンアクリルアミドが挙げられる。
【0034】
エポキシ官能性アクリル樹脂を調製するために使用することができるビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、およびバーサチック酸のビニルエステルが挙げられる。
【0035】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に好適なエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、モノカルボン酸およびジカルボン酸のモノマー、ならびにジカルボン酸のモノエステルが挙げられる。特に好適なものは、3~5個の炭素原子を含有するエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸または無水物である。モノカルボン酸モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が挙げられ、ジカルボン酸モノマーの例としては、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびマレイン酸無水物が挙げられる。他の好適なエチレン性不飽和酸の例としては、ビニル酢酸、ビニル乳酸、ビニルスルホン酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩が挙げられる。好適なエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に好適な共役ジエンモノマーとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、2-メチル-6-メチレン-1,7-オクタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-アミル-1,3-ブタジエン、3,7-ジメチル-1,3,7-オクタトリエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン、7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、および1,3-シクロヘキサジエン、ならびにこれらの組み合わせなどの共役ジエンモノマーが挙げられる。
【0037】
フィルム形成成分中で、上記に開示されるもののうちのいずれかなどの3つまたは3つより多く、または4つまたは4つより多くなどの、2つまたは2つより多くの異なるポリエポキシ官能性化合物の組み合わせを使用することも可能である。
【0038】
本発明に従って使用される好適なポリエポキシ官能性化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性(ポリ)シロキサン、エポキシ官能性ポリスルフィド、酸官能性ポリエステルのエポキシ官能性付加物、およびポリエポキシド、例えば、上述のものが挙げられ得る。本発明で使用されるアクリル樹脂としては、例えば、必要に応じて1つまたは1つより多くの他の重合性エチレン性不飽和モノマーと一緒のアクリル酸またはメタクリル酸の1つまたは1つより多くのアルキルエステルのコポリマーが挙げられ得る。アクリル酸またはメタクリル酸の有用なアルキルエステルとしては、例えば、アルキル基中に1~30個、および4~18個などの炭素原子を含有する脂肪族アルキルエステルが挙げられる。非限定的な例としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。好適な他の共重合性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、スチレンおよびビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物、アクリロニトリルおよび4-メタクリロニトリルなどのニトリル、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデンなどのビニルおよびビニリデンのハロゲン化物、ならびに酢酸ビニルなどのビニルエステルが挙げられる。
【0039】
アクリルコポリマーは、ヒドロキシル官能基を含むことができ、これは、コポリマーを産生するために使用される反応物中に1つまたは1つより多くのヒドロキシル官能性モノマーを含むことによって、しばしばポリマーに組み込まれる。有用なヒドロキシル官能性モノマーには、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトンおよびヒドロキシアルキルアクリレートのヒドロキシ官能性付加物、ならびに対応するメタクリレート、ならびに以下に記載されるベータ-ヒドロキシエステル官能性モノマーなどの、ヒドロキシアルキル基に2~4個の炭素原子を典型的には有するヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートが含まれる。アクリルポリマーは、N-(アルコキシメチル)アクリルアミドおよびN-(アルコキシメチル)メタクリルアミドで調製することもできる。
【0040】
ベータ-ヒドロキシエステル官能性モノマーは、エチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーおよび5~20個の炭素原子を有するカルボン酸から、またはエチレン性不飽和酸官能性モノマーおよびエチレン性不飽和酸官能性モノマーと重合可能ではない少なくとも5個の炭素原子を含有するエポキシ化合物から調製することができる。
【0041】
本発明で使用されるフィルム形成樹脂のポリマーはまた、ポリウレタンであり得る。使用することができるポリウレタンの中には、OH/NCO当量比が1:1を超え、その結果遊離ヒドロキシル基が生成物中に存在するように、上で言及されるものなどのポリエステルポリオールまたはアクリルポリオールをポリイソシアネートと反応させることによって調製されるポリマーポリオールがある。
【0042】
本発明によれば、フィルム形成成分は、例えば、US5,108,832またはUS5,070,119に開示されるように、エポキシ樹脂とアクリル樹脂、またはエポキシ樹脂とポリウレタン樹脂の組み合わせを含み得る。
【0043】
フィルム形成成分が、以下で考察されるように、エポキシ樹脂ならびに硬化剤としてポリアミンおよび/またはポリチオール官能性化合物を含む場合、フィルム形成成分は、(i)(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル、(ii)化合物(i)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物、またはこれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0044】
(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステルは、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応から生じる(メタ)アクリルエステル基の複数のベータ-ヒドロキシエステルを含み得る。ポリエポキシドは、(メタ)アクリル酸と、1:0.1~1:1.2、好適には1:0.5~1:1.2、より好適には1:1~1:1.05のエポキシ-カルボン酸当量比で反応させることができる。(メタ)アクリル酸の特に好適なベータ-ヒドロキシエステルは、EPIKOTE828(ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物)とアクリル酸との反応生成物であり、AllnexからEBECRYL3720として市販されている)。
【0045】
ポリエポキシドの(メタ)アクリル酸との反応生成物に使用することができるポリエポキシドは、上記に開示されたポリエポキシドであり得る。
【0046】
(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(i)に加えて、または代替的に、化合物(i)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(ii)が、フィルム形成成分中に存在し得る。これにより、本発明の膨張組成物の粘度は、調整することができる。したがって、必要に応じた成分(ii)が、本発明の膨張組成物中の反応性希釈剤として機能すると考えられる。本発明の膨張組成物の必要に応じた(メタ)アクリレート官能性成分(ii)としては、例えば、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、およびこれらの組み合わせのポリ(メタ)アクリレートが挙げられ得る。
【0047】
上記のように、フィルム形成成分はまた、架橋剤を含み得る。任意の好適な架橋剤を本発明に従って使用することができ、当業者によって、フィルム形成樹脂の官能基と反応するように選定されるであろう。好適な硬化剤としては、例えば、ポリアミン、例えば、ポリエーテルアミン、ポリアミド、ポリエポキシド、アミノプラスト樹脂、フェノール樹脂、ポリイソシアネート、ポリチオール、およびポリオールなどが挙げられる。
【0048】
硬化剤は、潜在性またはブロック硬化剤でもあり得、フィルム形成樹脂の官能基と反応性である実際の官能基は、高温などの硬化条件下でのデブロッキング反応で生成または復元される。該タイプの好適な硬化剤は、例えば、ブロックポリイソシアネートである。したがって、本明細書で使用される場合、ポイソシアネートという用語は、ブロックポリイソシアネートおよび遊離ポリイソシアネートを包含する。潜在性またはブロック硬化剤は、特に、適用および硬化の前に十分な貯蔵安定性およびポット寿命を確保するための単一成分組成物を提供するのに好適である。
【0049】
ポリアミン硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミンアミド、ポリエーテルアミン、例えば、Huntsman Cooperation(The Woodlands,Texas)から市販されているもの、ポリシロキサンアミン、ポリスルフィドアミン、またはこれらの組み合わせが挙げられ得る。例としては、ジエチルトリアミン、3,3-アミノ-ビス-プロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N-アミノエチルピペラジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、およびジアミノジフェニルスルホンが挙げられ、VERSAMIDの商標でBASFによって販売されている一連の材料などの、ポリアミンと脂肪族脂肪酸との反応生成物を使用することができ、後者が特に好適である。
【0050】
加えて、上記の任意のポリアミンの付加物を使用することもできる。ポリアミンの付加物は、ポリアミンをエポキシ樹脂などの好適な反応性化合物と反応させることによって形成される。この反応は、硬化剤中の遊離アミンの含有量を減少させ、低温および/または高湿度環境でより有用となる。
【0051】
硬化剤として、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine600、Jeffamine1000、Jeffamine2005、およびJeffamine2070などを含むが、これらに限定されない、Huntsman Corp.から入手可能な種々のJeffamineなどの種々のポリエーテルアミンを使用することもできる。
【0052】
硬化剤として、種々のポリアミドを使用することもできる。概して、ポリアミドは、ダイマー脂肪酸とポリエチレンアミン、および少量のモノマー脂肪酸の反応生成物を含有する。ダイマー脂肪酸は、モノマー脂肪酸のオリゴマー化によって調製される。ポリエチレンアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンなどといった任意の高級ポリエチレンアミンであってもよく、最も一般的に使用されるのはジエチレントリアミンである。硬化剤としてポリアミドを使用すると、耐食性、耐水性、および/または良好な可撓性などの1つまたは1つより多くの望ましい特性をコーティングに付与することができる。
【0053】
硬化剤として有用なポリチオール化合物としては、ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリトリトール系チオール、またはこれらの組み合わせが挙げられ得る。特に好適なポリチオール化合物は、Akzo Nobel Functional Chemicals GmbH&Co KG(Greiz,Germany)から市販されているThioplast G4である。
【0054】
上で言及されるように、フィルム形成樹脂がエポキシ樹脂を含む場合、ポリアミン、ポリチオール化合物またはこれらの組み合わせは、架橋剤として使用され得る。
【0055】
本発明のコーティング組成物では、エポキシ樹脂が使用される場合、エポキシ基などの、フィルム形成樹脂中の組み合わされた官能基の、硬化剤中の官能基に対する当量比は、1.05:1.0~1:2、または1:1.4~1:2などの、2:1~1:2であり得る。
【0056】
コーティング組成物は、任意の適切な量でフィルム形成成分を含み得る。例えば、コーティング組成物は、30重量%もしくは30重量%を超える、または40重量%もしくは40重量%を超えるなどの、20重量%もしくは20重量%を超えるフィルム形成成分を含有し得る。コーティング組成物は、例えば、50重量%もしくは50重量%未満、または40重量%もしくは40重量%未満などの、60重量%もしくは60重量%未満のフィルム形成成分を含有し得る。コーティング組成物は、例えば、20重量%~60重量%、20重量%~40重量%、または30重量%~50重量%などの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量でフィルム形成成分を含み得る。本明細書に報告される重量%は、別段の指示がない限り、組成物の総固体重量に基づいている。
【0057】
本発明のコーティング組成物は、ホスフェート源をさらに含む。本明細書で使用されるホスフェート源は、リン酸、またはその縮合もしくは脱水生成物(酸化物を含む)、または前述のうちのいずれかの塩、エステル、アミド、もしくは他の誘導体を含む、任意のリン含有材料を意味する。ホスフェート源は、例えば、リン酸、リン酸一アンモニウムおよびリン酸二アンモニウム、リン酸トリフェニル、リン酸トリス-(2-クロロエチル)、リン酸トリ(2-クロロイソプロピル)、ホスホリルアミドなどのリン含有アミド、ならびにピロリン酸メラミンなどの様々な材料を含み得る。好適には、リン源は、式(NH4)n+2PnO3n+1で表されるポリリン酸アンモニウムであり、式中、nは、少なくとも2の整数であり、好適には、nは、少なくとも50の整数である。本発明の膨張組成物は、例えば、25重量%もしくは25重量%を超える、または30重量%もしくは30重量%を超える、35重量%もしくは35重量%を超える、または40重量%もしくは40重量%を超えるなどの、20重量%もしくは20重量%を超える量でホスフェート源を含有し得る。コーティング組成物は、50重量%もしくは50重量%未満、または45重量%もしくは45重量%未満、または40重量%もしくは40重量%未満、または35重量%もしくは35重量%未満などの、55重量%もしくは55重量%未満の量のホスフェート源を含み得る。コーティング組成物は、20~55重量%、例えば、25~40重量%、または40~55重量%などの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量でホスフェート源を含み得る。本明細書に報告される重量%は、各々、組成物の総固体重量に基づいている。リンは、膨張性組成物中で炭促進剤として機能すると考えられている。
【0058】
本発明のコーティング組成物は、ボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源のうちの少なくとも1つをさらに含む。したがって、本発明のコーティング組成物は、例えば、ボレート源、アルミニウム源、またはシリカ源のうちの1つを含有することができる。例えば、コーティング組成物は、成分cとしてボレート源を含み得る。代替的に、コーティング組成物は、成分cとしてアルミニウム源またはシリカ源を含み得る。一方では、コーティング組成物はまた、ボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源のうちの2つまたは2つより多くの組み合わせを含み得る。例えば、本発明によるコーティング組成物は、アルミニウム源およびシリカ源を含み得る。本明細書で使用されるボレート源は、ホウ酸、またはその縮合もしくは脱水生成物(酸化物を含む)、または前述のうちのいずれかの塩もしくはエステルを含有する、任意のホウ素含有材料を意味する。好適なボレート源としては、例えば、五ホウ酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸亜鉛などの金属ボレート、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、およびホウ酸アンモニウムなどのボレート、ブチルボレートまたはフェニルボレートなどのボレートエステル、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書で使用されるアルミニウム源は、任意のアルミニウム含有材料を意味する。典型的には、アルミニウム源は、アルミニウム化合物、特に無機アルミニウム化合物であり得る。好適なアルミニウム源としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、塩化アルミニウム、アルミニウム塩、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例として、アルミニウム源は、水酸化アルミニウムおよび/または酸化アルミニウムを含み得る。本明細書で使用されるシリカ源は、ポリシロキサン、シラン、ケイ酸、それらの縮合もしくは脱水生成物(酸化物を含む)、または前述のうちのいずれかの塩もしくはエステルを含有する、任意の材料ケイ素含有材料を意味する。好適なシリカ源としては、例えば、150μm未満の粒径を有するものなどのヒュームドシリカもしくは石英、またはベントンもしくはカオリンなどのシリカを含有する物質が挙げられる。
【0059】
本発明の膨張組成物は、使用される場合、5重量%もしくは5重量%を超える、例えば6重量%もしくは6重量%を超える、例えば7重量%もしくは7重量%を超える、例えば8重量%もしくは8重量%を超える、例えば9重量%もしくは9重量%を超える、例えば10重量%もしくは10重量%を超える量でボレート源を含有し得る。コーティング組成物は、19重量%もしくは19重量%未満、または18重量%もしくは18重量%未満、または15重量%もしくは15重量%未満などの、20重量%もしくは20重量%未満の量でボレート源を含み得る。コーティング組成物は、5重量%~20重量%、または6重量%~15重量%、または9重量%~15重量%などの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量でボレート源を含み得る。本発明の膨張組成物は、使用される場合、0.2重量%もしくは0.2重量%を超える、または0.3重量%もしくは0.3重量%を超える、または0.5重量%もしくは0.5重量%を超える、または1重量%もしくは1重量%を超える、または3重量%もしくは3重量%を超える、または5重量%もしくは5重量%を超えるなどの、0.1重量%もしくは0.1重量%を超える量でアルミニウム源を含有し得る。コーティング組成物は、9重量%もしくは9重量%未満、または8重量%もしくは8重量%未満、または5重量%もしくは5重量%未満、または3重量%もしくは3重量%未満、または1重量%もしくは1重量%未満、または0.7重量%もしくは0.7重量%未満などの、10重量%もしくは10重量%未満の量でアルミニウム源を含み得る。組成物は、0.2~8重量%、または0.3重量%~1重量%などの、0.1~10重量%などの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量でアルミニウム源を含み得る。本発明の膨張組成物は、使用される場合、0.2重量%もしくは0.2重量%を超える、または0.3重量%もしくは0.3重量%を超える、または0.4重量%もしくは0.4重量%を超える、または0.5重量%もしくは0.5重量%を超えるなどの、0.1重量%もしくは0.1重量%を超える量でシリカ源を含有し得る。コーティング組成物は、3重量%もしくは3重量%未満、または2重量%もしくは2重量%未満、または1重量%もしくは1重量%未満、または0.8重量%もしくは0.8重量%未満などの、5重量%もしくは5重量%未満の量でシリカ源を含み得る。組成物は、0.1~5重量%、そのような0.4~1重量%などの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量でシリカ源を含み得る。上で報告された重量%は、各々、組成物の総固体重量に基づいている。
【0060】
本発明の組成物は、二酸化チタン(TiO2)をさらに含む。本発明による組成物は、6重量%もしくは6重量%を超える、または7重量%もしくは7重量%を超える、または8重量%もしくは8重量%を超える、または9重量%もしくは9重量%を超える、または10重量%もしくは10重量%を超えるなどの、5重量%もしくは5重量%を超える量でTiO2を含み得る。コーティング組成物は、19重量%もしくは19重量%未満、または18重量%もしくは18重量%未満、または17重量%もしくは17重量%未満、または15重量%もしくは15重量%未満、または13重量%もしくは13重量%未満、または10重量%もしくは10重量%未満などの、20重量%もしくは20重量%未満の量でTiO2を含み得る。組成物は、5~10重量%、または10重量%~18重量%などの、5~20重量%からなどの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量でTiO2を含み得る。上で報告された重量%は、各々、組成物の総固体重量に基づいている。
【0061】
上述のように、本発明者らは、上で与えられた範囲内の、ボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源をTiO2およびホスフェート源と併せて使用することにより、基材への望ましい付着性と併せて望ましい炭形成を有する膨張コーティングが与えられることを発見した。したがって、本組成物は、記載された要素のうちの1つまたは1つより多くが欠損している、および/または記載された範囲外で使用される同様の組成物に優る利点を提供する。
【0062】
本コーティング組成物は、ガス源をさらに含む。「ガス源」は、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物を指す。膨張ガスは、高温または火炎に曝露されるとき、膨張組成物を発泡させ、ふくらませる役割を果たす。この膨張の結果として、形成される炭は、下地基材を絶縁および保護する役割を果たす厚いマルチセル材料である。窒素含有材料などの任意の好適な膨張ガス源は、本発明の膨張組成物で使用され得る。好適な窒素含有材料の例としては、メラミン、リン酸の塩、グアニジン、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、リン酸グアニル尿素、およびグリシンが挙げられる。二酸化炭素を遊離する材料などの他の従来の膨張ガス源を使用することもできる。例は、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属である。加熱時に分解されるときに水蒸気を放出する化合物、例えば、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、または三水酸化アルミニウムを膨張性黒鉛として使用することもできる。そのような化合物の他の例はまた、ホウ酸、ならびにホウ酸エステルおよび金属ボレートなどのホウ酸誘導体などのボレート源である。メラミンなどのガス源は、本発明の膨張組成物中で、2重量%もしくは2重量%を超える、または3重量%もしくは3重量%を超えるなどの、1重量%もしくは1重量%を超える量で使用され得る。本発明による組成物は、例えば、10重量%もしくは10重量%未満、または8重量%もしくは8重量%未満、または7重量%もしくは7重量%未満、または5重量%もしくは5重量%未満の量でガス源を含み得る。組成物は、3~7重量%などの、1~10重量-などの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量でガス源を含み得る。報告された重量%は、各々、組成物の総固体重量に基づいている。
【0063】
本発明のコーティングは、膨張コーティングでの使用に好適な1つまたは1つより多くの追加の添加剤を含有し得る。そのような添加剤の例としては、亜鉛源、酸源、金属酸化物、例えば、事前加水分解テトラエチルオルトシリケート、チタンイソプロポキシド、炭素源、無機充填材、ガラス繊維および/または鉱物繊維、例えば、PPGからのCHOPVANTAGE、LapinusからのCoatforceまたはRoxul繊維、レオロジー添加剤、有機溶媒、顔料、発泡安定剤、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0064】
必要に応じた亜鉛源は、様々な材料を含み得る。亜鉛材料は、炭中の小さなセル構造の形成に寄与し得ると考えられる。炭の小さなセルは、基材のより良い絶縁を与え、よりよく炭の完全性を保ち、基材に付着することができる。したがって、炭のひび割れおよび基材からのその破断が最小限に抑えられ、下地基材に対してより強い保護手段が与えられる。亜鉛源である好適な材料の例としては、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛およびリン酸亜鉛、炭酸亜鉛などの亜鉛塩が挙げられ、亜鉛金属を使用することもできる。
【0065】
酸源は、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、二リン酸二アモニウム、五ホウ酸二アモニウム、リン酸生成材料、ホウ酸、金属または有機ボレート、およびこれらの組み合わせから選択され得る。
【0066】
本組成物の成分の多くは、組成物中の1つを超える機能の役割を果たし得ることを理解されたい。例えば、リン、亜鉛、ホウ素、および膨張ガスは、各々、別の供給源材料によって提供され得るか、または代替的に、単一の材料は、これらの成分のうちの1つを超えるものの供給源であり得る。例えば、ピロリン酸メラミンは、リンおよび膨張ガスの両方の供給源を提供することができ、ホウ酸亜鉛は、亜鉛源およびボレート源を提供することができ、リン酸亜鉛は、亜鉛源およびホスフェート源を提供することができる、などである。
【0067】
必要に応じた補強充填材は、他の充填材よりも好適であり得る繊維性補強剤およびプレートレット補強剤を含む、従来利用されている多数の材料の中から選定され得る。繊維性補強剤の例としては、ガラス繊維、セラミック繊維、例えば、酸化アルミニウム/酸化ケイ素、黒鉛繊維、鉱物繊維、およびバサルト繊維が挙げられる。プレートレット強化剤としては、ハンマーミルガラスフレーク、雲母、およびウォラストナイトが挙げられる。他の好適な充填材としては、金属酸化物、粘土、タルク、シリカ、珪藻土、LAPINUS繊維、および種々の顔料が挙げられる。強化充填剤は、結果として生じる炭が硬く均一であるように、炭形成の前および間、防火組成物の膨張を制御するのを補助すると考えられる。存在するとき、ガラス繊維および/または鉱物繊維などの補強充填材は、通常、膨張組成物の総固体重量に基づいて、5.0重量%もしくは5.0重量%未満、例えば4重量%もしくは4重量%未満、例えば3重量%もしくは3重量%未満の量で組成物中に存在する。本発明による組成物は、例えば、0.2重量%もしくは0.2重量%を超える、0.5重量%もしくは0.5重量%を超える、または1重量%もしくは1重量%を超えるなどの、0.1重量%もしくは0.1重量%を超える量で補強充填材を含み得る。組成物は、0.1重量%~5.0重量%または1重量%~4重量%などの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量で補強充填材を含み得る。報告された重量%は、各々、組成物の総固体重量に基づいている。
【0068】
本発明の膨張組成物は、レオロジー添加剤、有機溶媒、発泡安定剤、顔料、炎拡散制御剤などのような種々の従来の添加剤も含有し得る。これらの原料は必要に応じたものであり、様々な量で添加することができる。典型的には、追加の添加剤が使用される場合、それらは、2重量%もしくは2重量%を超える、または5重量%もしくは5重量%を超える、または10重量%もしくは10重量%を超えるなどの、1重量%もしくは1重量%を超える総量で存在する。追加の添加剤は、使用される場合、例えば、15重量%もしくは15重量%未満、または12重量%もしくは12重量%未満などの、20重量%もしくは20重量%未満の量で、本発明による組成物中に存在し得る。組成物は、2~20重量%または5~15重量%などの、1~20重量%などの上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲の量で必要に応じた追加の添加剤を含み得る。報告された重量%は、各々、組成物の総固体重量に基づいている。
【0069】
膨張組成物は、1つの成分(「1K」)、または2つの成分(「2K」)もしくはそれより多い成分などの多成分組成物のいずれかであり得る。1K組成物は、全てのコーティング成分が、製造後、貯蔵中などに同じ容器内に維持される組成物を指すと理解されるであろう。1K組成物は、基材に塗布され、加熱、強制空気などの任意の従来の手段によって硬化することができる。本組成物はまた、多成分であり得、これは、種々の成分が塗布の直前まで別に維持される組成物として理解されるであろう。本組成物は、熱可塑性または熱硬化性であり得る。例えば、本組成物は、第1のパッケージ(A)中のフィルム形成樹脂、およびこのための第2のパッケージ(B)中の硬化剤とともに、2Kシステムとしてパッケージ化することができ、それによって、コーティング組成物に使用される他の成分の全てが、パッケージ(A)中もしくはパッケージ(B)中のいずれか、またはこれらの両方の任意の組み合わせで使用されるか、あるいはいくつかもしくは全てが、1つまたは1つより多くのさらなるパッケージ(C)中にあり得る。個々のパッケージは、膨張組成物を使用する前に混合される。
【0070】
本発明の硬化性膨張組成物は、マスティックなどの厚い材料の形態であり得る。組成物は、無溶媒であり、スプレー塗布されることが特に好適である。所望の場合、希薄にすることは、キシレン、塩化メチレン、または1,1,1-トリクロロエタンなどの様々な従来の溶媒で達成され得る。
【0071】
本発明の硬化性膨張コーティング組成物は、所望に応じて種々の乾燥フィルム厚さを提供するために塗布され得る。好適な乾燥フィルム厚さは、10~20,000ミクロン、例えば50~5000ミクロン、例えば100~2000ミクロンの範囲であり得る。望ましい乾燥フィルム厚さ(「DFT」)は、用途に依存して変更することができる。建物の構造部品に使用する場合、300~1000ミクロンまたは3000~15000ミクロンなどの、200~20,000ミクロンの範囲のDFTが好適であり得る。リチウム電池に使用する場合、200~1000または1000~5000などの、200~5000ミクロンの範囲のDFTが好適であり得る。
【0072】
代替的に、本発明の硬化膨張組成物は、自己支持フィルムまたはシートに形成することができる。自己支持フィルムまたはシートは、その後、架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートを形成するために硬化させることができる。一般に、本発明の硬化性膨張組成物は、当業者によく知られている任意の技法、例えばキャスト成形プロセスによって、メッシュをコーティングに含浸させることによってなどで、フィルムまたはシートに形成することができる。フィルムまたはシートは、基材に架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートを適用する前に、架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートを形成するために硬化させることができる。形成ステップ後、未硬化フィルムまたはシートを基材に適用し、次いで、その後硬化させて、本発明に従う架橋した膨張層を得ることも、本発明の範囲内である。フィルムまたはシートは、接着剤を通して基材に塗布され得る。
【0073】
本組成物および自己支持フィルムまたはシートは、例えば、自動車基材、海洋基材、工業基材、重機、包装基材、材木、木製フローリングおよび家具、アパレル、コンピュータ、ノートブック、スマートフォン、タブレット、テレビ、ゲーム機器、コンピュータ機器、コンピュータアクセサリー、MP3プレーヤーなどのためのハウジングなどの、ハウジングおよび回路基板を含み、消費者用電子機器を含む電子機器、ガラスおよび透明フィルム、ゴルフボールを含むスポーツ用品などの、当技術分野において公知である任意の基材に塗布することができる。これらの基材は、例えば、金属性または非金属性であり得る。金属性基材としては、スズ、鋼、スズめっき鋼、クロム不動態化鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、およびアルミニウム箔が挙げられる。本明細書で使用される金属シートは、平らな金属シート、およびコイル状にされ、コーティングのために非コイル状にされ、次いで、製造業者への出荷のために再びコイル状にされる、コイル状の金属シートを指す。非金属性基材としては、ポリマー化合物、プラスチック、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セルロース化合物、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、EVOH、ポリ乳酸、他の「環境に優しい」ポリマー基材、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)、ポリカーボネート、ポリカーボネートアクリロブタジエンスチレン(「PC/ABS」)、SMC、炭素繊維、ポリアミド、木材、ベニア、木製複合材料、パーティクルボード、中密度ファイバーボード、セメント、石、ガラス、紙、段ボール、織物、合成および天然の両方の皮革などが挙げられる。基材は、構造体の一部または車両の一部であり得る。本明細書で使用される「構造体」は、建物、橋、輸送インフラストラクチャ、石油掘削装置、石油プラットフォーム、給水塔、送電塔、支持構造体、風力タービン、壁、桟橋、ドック、堤防、ダム、出荷コンテナ、トレーラー、および腐食環境に曝露される任意の金属構造体の任意の一部を指す。本明細書で使用される「車両」は、その最も広い意味で、車、トラック、バス、トラクター、収穫機、重機、バン、ゴルフカート、オートバイ、自転車、鉄道車、地下鉄車、飛行機、ヘリコプター、全てのサイズのボートなどであるが、これらに限定されない、全てのタイプの車両を指す。
【0074】
基材は、視覚的効果および/または色効果を付与するような、何らかの様態で既に処理された基材であり得る。例として、基材は、コーティング組成物の塗布前に、アルカリ洗浄、脱酸素、機械的洗浄、超音波洗浄、溶媒拭き取り、粗加工、プラズマ洗浄またはエッチング、化学気相成長への曝露、接着促進剤での処理、めっき、陽極酸化、アニーリング、クラッディング、またはこれらの任意の組み合わせで処理することができる。基材は、コーティング組成物を塗布する前に基材を洗浄剤浴および/または脱酸化剤浴中に浸漬するなどによって、コーティング組成物の塗布前に、前述の方法のうちのいずれかを使用して処理することができる。基材はまた、コーティング組成物を塗布する前にめっきすることができる。本明細書で使用される場合、「めっき」は、基材の表面を覆って金属を堆積させることを指す。基材はまた、3D印刷することができる。
【0075】
上で考察したように、基材は、電池または電池部品を含み得る。電池は、例えば、電気車両用電池であり得、電池部品は、電気車両用電池部品であり得る。「電池部品」は、リチウムイオン電池などの、電池内に見られる任意の部品であり得る。電池部品は、例えば、電極、電池セル、電池シェル、電池モジュール、電池パック、電池ボックス、電池セルケーシング、パックシェル、電池蓋およびトレイ、熱管理システム、電池ハウジング、モジュールハウジング、モジュールラッキング、電池サイドプレート、電池セル筐体、冷却モジュール、冷却管、冷却フィン、冷却プレート、母線、電池フレーム、電気接続、金属ワイヤ、あるいは銅またはアルミニウムの導体またはケーブルを含み得る。
【0076】
したがって、本発明は、本発明のコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされた物品をさらに対象とする。本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物または架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートなどの任意の形態で、物品に適用することができる。フィルムまたはシートを指すとき、「に適用される」およびその任意の変形形態は、フィルム/シートが、接着剤層などによって物品に付着され得るか、あるいは物品の固定部材もしくは可動部材に隣接するなどして、物品内に位置付けられ得るか、または配置され得ることを意味する。物品は、構造体であり得る。物品は、車両であり得る。物品は、電池部品、またはリチウムイオン電池などの電池であり得る。例えば、本発明のコーティング組成物または架橋した自己支持フィルムもしくはシートは、本発明による電池を得るために、電池、特にリチウムイオン電池の任意の構造要素に適用することができる。電池は、ハウジングを画定する外壁要素、および必要に応じて、内壁要素を備え得、架橋した膨張コーティングまたは架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、少なくとも部分的に、外壁要素のうちのいずれかの外側および/もしくは内側に、ならびに/または存在する場合、内壁要素のうちのいずれかの任意の側面に適用されている。外壁要素および/または内壁要素は、例えば、複合材料、鋼、アルミニウム、および/またはポリカーボネートを含み得る。本コーティング組成物は、比較的小さな膨張で強力な炭を形成し、電池モジュールとケースとの間の限られた隙間空間に好適にするため、電池での使用に特に好適であり得る。
【0077】
電池、特にリチウムイオン電池は、複数の個々の電池セルを備える電池パックであり得、本コーティングまたは架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、2つの電池セル間などにおいて、個々の電池セルのうちの少なくともいくつかを、膨張し、かつ必要に応じて炭化した状態で互いに熱絶縁するように位置付けられる。加えて、硬化性膨張コーティング組成物または架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、上で考察したように、電池パックのハウジング壁および内部分割壁に隣接して適用され得るか、または配置され得る。
【0078】
バッテリ内および/またはバッテリの周りで、1つまたは1つより多くの追加の難燃性材料および/または火災軽減手段を使用することが望ましい場合がある。例えば、熱絶縁材料または高強度材料などは、電池セル間、または電池ハウジングの周囲もしくは内部の周りに巻き付けられるか、あるいは別様に位置付けられ得る。そのような材料の例としては、ガラス繊維、鉱物ウール、シリカ/シリカ繊維、アルミナ、Kevlar、Nomex、ケイ酸カルシウム、またはケイ酸カルシウム繊維が挙げられ、これらの材料は、例えば、シートまたは他の自己支持形態であり得る。難燃剤と一緒にポリウレタン/ポリ尿素発泡体などの発泡体も使用することができる。電池セル間に挟まれた冷却フィン、マイカボード、エアロゲルブランケット、および/または鉱物/ガラス/炭素繊維含有ブランケットなどの物理的障壁も用いることができる。
【0079】
電池を含む物品およびその使用者に対する防火を提供するために、硬化性膨張コーティング組成物または架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートを、電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用して、物品を電池から絶縁することも本発明の範囲内である。そのような場合、従来の電池または本発明による電池を用いることができる。物品は、例えば、携帯電話、タブレット、またはラップトップコンピュータであってもよい。
【0080】
代替的に、物品は、ハイブリッドまたは電気で動く自動車、バス、またはトラックなどの車両であってもよい。かかる車両では、電池、とりわけリチウムイオン電池を、電池の重量により、車両本体、例えば車体の床部分の下に、平坦な電池パックとして位置決めすることが一般的である。そのような場合、本発明のコーティングまたは架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、電池と車両本体との間の、電池に隣接する車両の床部分に適用され得る。これにより、電池の熱暴走または電池火災の事象において、車体、特に乗客キャビンは、火災が乗客キャビンに広がらないように、本発明のコーティング層/フィルムによって保護され、そのような出来事が発生した場合に、乗客が車両から安全に脱出するのに十分な時間を有するように、乗客キャビンの温度上昇が長期間にわたって制限されるであろう。
【0081】
本発明の組成物は、ロボットによる塗布を含む、エレクトロコーティング、スプレー塗布、静電スプレー塗布、ディッピング、ローリング、ブラッシングなどの、当技術分野における任意の標準的な手段によって塗布することができる。
【0082】
本明細書で使用される場合、特に明示的に指定されない限り、値、範囲、量、またはパーセンテージを表すものなどの全ての数は、用語が明示的に現れなくても、「約」という言葉が前にあるかのように読むことができる。また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に属している全ての部分範囲を含むことを意図している。単数形は複数形を包含し、その逆も同様である。例えば、本明細書では、「ある(a)」フィルム形成成分、「ある(a)」フィルム形成樹脂、「ある(a)」ホスフェート源、「ある(a)」ボレート源、「ある(a)」シリカ源、「ある(an)」アルミニウム源、「ある(a)」ガス源などを参照するが、これらおよび任意の他の成分の各々のうちの1つまたは1つより多くを使用することができる。また、本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、プレポリマー、オリゴマー、およびホモポリマーとコポリマーとの両方を指すことを意味し、「ポリ」という接頭辞は、2つ以上を指す。範囲が与えられる場合、それらの範囲の任意のエンドポイントおよび/またはそれらの範囲内の任意の数値を、本発明の範囲と組み合わせることができる。「含む(including)」、「などの」、「例えば」、および同様の用語は、「限定されないが、含む(including)/などの/例えば」を意味する。「アクリル」および「アクリレート」という用語は、互換的に使用され(そうすることで意図された意味を変えることがない限り)、別途明確に示されない限り、アクリル酸、無水物、およびこれらの誘導体、低級アルキル置換アクリル酸、例えば、メタクリル酸、エタクリル酸などのC1~C2置換アクリル酸、ならびにそれらのC1~C6アルキルエステルおよびヒドロキシアルキルエステルを含む。
【0083】
前述のことを考慮して、本開示は、とりわけ、これらに限定されるものではないが、以下の態様に関する。
【0084】
第1の態様では、コーティング組成物であって、
a)フィルム形成成分と、
b)ホスフェート源と、
c)ボレート源、アルミニウム源、および/またはシリカ源のうちの少なくとも1つと、
d)TiO2と、
e)ガス源と、を含み、
組成物の総固体重量に基づく重量%で、TiO2が、5~20重量%の量で存在し、ホスフェート源が、20~55重量%の量で存在し、かつ成分cがボレート源を含む場合、5~20重量%の量で存在し、成分cがアルミニウム源を含む場合、0.1~10重量%の量で存在し、成分cがシリカ源を含む場合、0.1~5重量%の量で存在する、コーティング組成物が開示される。
【0085】
第2の態様は、TiO2が、組成物の総固体重量に基づいて、9~15重量%の量で存在する、先行する第1の態様に記載のコーティング組成物に関する。
【0086】
第3の態様は、ホスフェート源が、25~40重量%の量で存在する、先行する第1の態様または第2の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0087】
第4の態様は、ホスフェート源が、組成物の総固体重量に基づいて、40~55重量%の量で存在する、先行する第1の態様または第2の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0088】
第5の態様は、成分cが、ボレート源を含み、ボレート源が、組成物の総固体重量に基づいて、好ましくは9~15重量%の量で存在する、先行する第1~第4の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0089】
第6の態様は、成分cが、アルミニウム源を含み、アルミニウム源が、組成物の総固体重量に基づいて、好ましくは0.2~8重量%の量で存在する、先行する第1~第5の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0090】
第7の態様は、成分cが、シリカ源を含み、シリカ源が、組成物の総固体重量に基づいて、好ましくは0.4~1重量%の量で存在する、先行する第1~第6の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0091】
第8の態様は、フィルム形成成分が、組成物の総固形重量に基づいて、20~60重量%の量で存在する、先行する第1~第7の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0092】
第9の態様は、ガス源が、組成物の総固体重量に基づく重量%で、1~10重量%の量で存在する、先行する第1~第8の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0093】
第10の態様は、コーティング組成物が、組成物の総固体重量に基づいて、最大4重量%の量で、ガラス繊維および/または鉱物繊維などの繊維をさらに含む、先行する第1~第9の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0094】
第11の態様は、コーティング組成物が、組成物の総固体重量に基づく重量%で、2~20重量%の総量で、1つまたは1つより多くの添加剤をさらに含む、先行する第1~第10の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0095】
第12の態様は、フィルム形成成分が、フィルム形成樹脂、および必要に応じて、このためのエポキシ樹脂およびアミン架橋剤などの架橋剤を含む、先行する第1~第11の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0096】
第13の態様は、ホスフェート源が、リン酸アンモニウム、リン酸トリフェニル、および/またはリン酸トリ(2-クロロイソプロピル)を含み、好ましくはポリリン酸アンモニウムを含む、先行する第1~第12の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0097】
第14の態様は、ボレート源が、使用される場合、金属ボレート五ホウ酸アンモニウム、および/またはホウ酸を含む、第1~第13の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0098】
第15の態様は、アルミニウム源が、使用される場合、水酸化アルミニウムおよび/または酸化アルミニウムを含む、先行する第1~第14の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0099】
第16の態様は、シリカ源が、使用される場合、ヒュームドシリカを含む、先行する第1~第15の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0100】
第17の態様は、ガス源が、メラミン、尿素、および/または膨張性黒鉛を含む、先行する第1~第16の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物に関する。
【0101】
第18の態様は、先行する第1~第17の態様のいずれか1つによるコーティング組成物から形成された自己支持フィルムまたはシートに関する。
【0102】
第19の態様では、さらに、基材をコーティングするための方法であって、先行する第1~第17の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物、または先行する第18の態様に記載のフィルムもしくはシートを、基材の少なくとも一部分に適用することを含む、方法が開示される。
【0103】
第20の態様は、基材が、アルミニウムもしくは鋼などの金属、またはポリカーボネートなどのプラスチックを含む、先行する第19の態様に記載の方法に関する。
【0104】
第21の態様では、先行する第19の態様または第20の態様に記載の方法に従ってコーティングされた基材が開示される。
【0105】
第22の態様は、先行する第21の態様に記載の基材を備える物品にさらに関する。
【0106】
第23の態様は、物品が、車両または構造体を含む、先行する第22の態様に記載の物品に関する。
【0107】
第24の態様は、物品が、リチウムイオン電池を含む、先行する第22の態様に記載の物品に関する。
【0108】
第25の態様は、電池が、ハウジングを画定する外壁要素、および必要に応じて、内壁要素を備え、コーティング組成物またはフィルムもしくはシートが、外壁要素のうちのいずれかの外側側面および/もしくは内側側面に、ならびに/または存在する場合、内壁要素のうちのいずれかの任意の側面に、少なくとも部分的に適用されている、先行する第24の態様に記載の物品に関する。
【0109】
第26の態様は、外壁要素および/または内壁要素のうちのいずれかが、複合材料、鋼、アルミニウム、および/またはポリカーボネートを含む、先行する第25の態様に記載の物品に関する。
【0110】
第27の態様は、電池が、複数の個々の電池セルを備える電池パックであり、コーティング組成物またはフィルムもしくはシートが、膨張しかつ必要に応じて炭化した状態で、個々の電池セルのうちの少なくとも2つを互いに熱絶縁するように位置付けられており、電池が、必要に応じて、1つまたは1つより多くの追加の難燃性材料および/または火災軽減手段を含む、先行する第24の態様~第26の態様のいずれか1つに記載の物品に関する。
【0111】
第28の態様では、電池部品であって、先行する第1~第17の態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされているか、または先行する第18の態様に記載のフィルムもしくはシートを適用されている、電池部品が開示される。
【0112】
第29の態様は、電池部品が、電気車両用電池部品を含む、先行する第28の態様に記載の電池部品に関する。
【0113】
さらなる態様は、電池部品が、電池セル、電池シェル、電池モジュール、電池パック、電池ボックス、電池セルケーシング、パックシェル、電池蓋およびトレイ、熱管理システム、電池ハウジング、モジュールハウジング、モジュールラッキング、電池サイドプレート、電池セル筐体、冷却モジュール、冷却管、冷却フィン、冷却プレート、母線、電池フレーム、電気接続、金属ワイヤ、銅またはアルミニウムの導体またはケーブル、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む、先行する第28の態様または第29の態様のいずれか1つに記載の電池部品に関する。
【実施例】
【0114】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するものであり、いかなる形でも本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0115】
実施例
以下に示す配合成分を使用して、多数のコーティング配合物(配合物1~13)を調製した。配合物中の粒子のサイズが100ミクロン未満になるまで、高い回転速度の分散機械下で全ての成分を分散させることによって、各コーティング配合物のためのベースを調製した。配合物中の粒子のサイズが100ミクロン未満になるまで、高い回転速度の分散機械下で全ての成分を分散させることによって、各コーティング配合物のためのハードナーを調製した。分散速度および分散機プレートサイズは、180mmの容器直径で、それぞれ2000rpmおよび80mmであった。塗布する直前に、ベースおよびハードナーを、以下の表に示す相対量で混合した。ベースおよびハードナーを、混合物の色が均質で塊がなくなるまで、ミキサーまたはスパチュラによって混合した。コーティング配合物を、エアレススプレー塗布を用いて150×75×1.2mmのアルミニウムパネル上に各々塗布し、これにより形成されたコーティングを、2バールのガス圧力および30mmのバーナー直径を用いて、1200±50℃のトーチ火に対して10分間試験した。アルミニウムパネルの裏面の温度を監視した。膨張したコーティングの厚さとバージンコーティングの厚さとの間の比率として定義されるコーティングの膨張係数、形成された炭および基材との付着性を評価した。結果を、以下の表1にまとめている。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27-1】
【表27-2】
【表27-3】
【0116】
上記の結果から分かるように、ボレートを有するがTiO2がなく、APP20重量%未満を有する配合物1では、十分に膨張せず、膨張後に基材に付着しなかった許容不可能な炭を得た。同様の結果が、配合物2、3、および4について見られ、これには、5重量%未満のTiO2および/または20重量%未満のAPPを使用した。そこでの炭は、適切な膨張を有することができず、曝露された基材上に炭の残りが見られず、炭の不十分な基材付着性を示した。TiO2を有するがボレートがない配合物8でも、膨張が広範囲に及びすぎ、低炭密度をもたらし、その結果、トーチ火炎吹き付けによって炭層が除去されるという許容不可能な結果がもたらされた。総固体重量に基づいて、TiO2およびボレートの量が各々5~20重量%の範囲内であり、かつ20~55重量%の範囲内のAPPである配合物5、6、および7では、15mmのトーチ直径で、2バールの火炎吹き付け圧力下であっても、許容可能な炭および許容可能な付着性の両方を得た。「良好な付着性」の明確な例は、配合物6の第2の写真であり得、ここでは、炭の断面が示され、炭は密度が高く、基材からの明確な剥離は目に見える。記載された量のTiO2、APP、アルミニウム源、および/またはシリカ源を有する配合物9~13でも、許容可能な炭および付着性の結果を得た。
【0117】
本発明の特定の例は、例示の目的で上述されているが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細について多数の変形が行われ得ることは当業者に明らかであろう。
【国際調査報告】