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特表2023-524104低下したシャットダウン温度を有する膜および同膜を作製するためのポリマー組成物
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  • 特表-低下したシャットダウン温度を有する膜および同膜を作製するためのポリマー組成物 図1
  • 特表-低下したシャットダウン温度を有する膜および同膜を作製するためのポリマー組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】低下したシャットダウン温度を有する膜および同膜を作製するためのポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20230601BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230601BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230601BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20230601BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20230601BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20230601BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230601BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20230601BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20230601BHJP
   H01M 50/406 20210101ALI20230601BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230601BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20230601BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20230601BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230601BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L101/00
C08K5/00
C08L91/00
C08J9/26 102
C08J9/26 CES
H01M50/417
H01M50/443 D
H01M50/443 C
H01M50/489
H01M50/411
H01M50/406
H01M50/403 Z
H01M50/449
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566638
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021030095
(87)【国際公開番号】W WO2021222709
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/018,924
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/107,072
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】オーム,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マルクグラフ,キルステン
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074AA18
4F074AA21
4F074AA98
4F074AB03
4F074AB05
4F074CB34
4F074CB43
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA10
4F074DA49
4J002AE05Y
4J002BB03W
4J002BB03X
4J002BB05X
4J002BB16X
4J002BB17X
4J002BP01X
4J002CF10X
4J002CK02X
4J002CK03X
4J002CK04X
4J002CL00X
4J002EA016
4J002EA026
4J002EA056
4J002EA066
4J002EB126
4J002EC036
4J002EC066
4J002EC067
4J002ED016
4J002EH146
4J002EP007
4J002FD026
4J002FD02Y
4J002FD207
4J002FD20X
4J002GD00
4J002GQ00
5H021BB02
5H021BB12
5H021BB13
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE01
5H021EE04
5H021EE23
5H021EE31
5H021EE37
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物が記載される。該ポリマー組成物は、可塑剤および1種または複数のシャットダウン低下性添加剤と合わされたポリエチレン粒子を含有する。該シャットダウン低下性添加剤は、ポリマー組成物から作製されたポリマー物品のシャットダウン温度を低下させる。一実施形態では、ポリマー組成物は、バッテリーセパレータの使用のための多孔質膜を形成するのに使用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物であって、
可塑剤と、
高密度ポリエチレン粒子と、
シャットダウン低下性添加剤と
を含み、前記シャットダウン低下性添加剤が、前記高密度ポリエチレン粒子および前記可塑剤と合わされたときに、前記ポリマー組成物から作製された膜のシャットダウン温度を低下させる粒子を含み、前記シャットダウン低下性添加剤が、第2の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリエチレンワックス、水添脂肪酸、脂肪酸のアミド、脂肪酸の二量体、プラストマー、エラストマー、またはこれらの混合物を含む、
ポリマー組成物。
【請求項2】
ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物であって、
可塑剤と、
高密度ポリエチレン粒子と、
シャットダウン低下性添加剤と
を含み、前記シャットダウン低下性添加剤が、前記高密度ポリエチレン粒子および前記可塑剤と合わされた粒子を含み、
膜へと形成されたときの前記ポリマー組成物が、前記シャットダウン低下性添加剤がさらなる量の前記高密度ポリエチレン粒子によって置き換えられたポリマー組成物と比較して、少なくとも1.4℃低いシャットダウン温度を有する、
ポリマー組成物。
【請求項3】
前記シャットダウン温度が、前記シャットダウン低下性添加剤がさらなる量の前記高密度ポリエチレン粒子によって置き換えられたポリマー組成物と比較して、少なくとも1.8℃低い、例えば少なくとも2.2℃低い、例えば少なくとも2.5℃低い、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記シャットダウン温度が、前記シャットダウン低下性添加剤がさらなる量の前記高密度ポリエチレン粒子によって置き換えられたポリマー組成物と比較して、少なくとも3℃低い、例えば少なくとも4℃低い、例えば少なくとも5℃低い、例えば少なくとも6℃低い、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記シャットダウン低下性添加剤が、第2の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリエチレンワックス、水添脂肪酸、脂肪酸のアミド、脂肪酸の二量体、プラストマー、エラストマー、またはこれらの混合物を含む、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記シャットダウン低下性添加剤が、約0.05g/10分~約70g/10分、例えば約1g/10分~約20g/10分のMFRを有するポリエチレンポリマーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記シャットダウン低下性添加剤が、約0.5重量%~約15重量%の量で、例えば約2重量%~約8重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記高密度ポリエチレン粒子が、約150ミクロン未満の体積中位粒径を有し、前記シャットダウン低下性添加剤が、約800ミクロン未満の体積中位粒径を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記高密度ポリエチレン粒子が、約50重量%までの量で前記組成物中に存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記可塑剤が、鉱油、パラフィン系油、炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、またはこれらの混合物を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記高密度ポリエチレンが、約600,000g/mol超、例えば約1,000,000g/mol超、例えば約1,500,000g/mol超の分子量を有し、かつ約4,000,000g/mol未満、例えば約3,500,000g/mol未満の分子量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記高密度ポリエチレンが、チーグラーナッタ触媒高分子量ポリエチレンである、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記可塑剤が、デカリン、パラフィン油、白色油、鉱油、キシレン、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n-デカン、n-ドデカン、オクタン、ノナン、ケロセン、トルエン、ナフタレン、テトラリン、モノクロロベンゼン、カンフェン、メタン、ジペンテン、メチルシクロペンタンジエン、トリシクロデカン、1,2,4,5-テトラメチル-1,4-シクロヘキサジエン、またはこれらの混合物を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
ポリマー物品を製造する方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載のポリマー組成物をゲル様組成物に形成するステップと、
前記ゲル様組成物をダイを通して押出して、ポリマー物品を形成するステップと
を含み、
前記ポリマー物品が、フィルムを含む、
方法。
【請求項15】
前記ポリマー物品から前記可塑剤の少なくとも一部を除去するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抽出溶媒を前記方法の間に前記ポリマー組成物に添加して、前記ポリマー物品からの前記可塑剤の除去を促進する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記抽出溶媒が、ジクロロメタン、アセトン、クロロホルム、ヘキセン、ヘプタン、アルコール、またはこれらの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
シャットダウン低下性添加剤と合わされた高密度ポリエチレンを含む、多孔質膜であって、前記シャットダウン低下性添加剤が、第2の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレン、ポリエチレンワックス、水添脂肪酸、脂肪酸のアミド、脂肪酸の二量体、プラストマー、エラストマー、またはこれらの混合物を含み、前記シャットダウン低下性添加剤が、前記多孔質膜中に、前記膜のシャットダウン温度を、インピーダンス試験に準拠して測定したときに少なくとも2℃低下させるのに十分な量で存在する、多孔質膜。
【請求項19】
前記高密度ポリエチレンが、約60重量%~約98重量%の量で前記膜中に存在し、前記シャットダウン低下性添加剤が、約2重量%~約40重量%、例えば約3重量%~約10重量%の量で前記膜中に存在する、請求項18に記載の多孔質膜。
【請求項20】
アノード、カソード、および前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータ膜を備えるバッテリーであって、前記セパレータ膜が、請求項18または19に記載の多孔質膜を含む、バッテリー。
【請求項21】
前記セパレータ膜が、任意選択でコーティングを含んでよい単一層ポリマー膜である、請求項20に記載のバッテリー。
【請求項22】
前記単一層ポリマー膜が、コーティングを含み、前記コーティングが、無機コーティングまたはポリマーコーティングを含む、請求項21に記載のバッテリー。
【請求項23】
前記シャットダウン低下性添加剤が、プラストマーを含み、前記プラストマーが、オクテンおよびエチレンのランダムコポリマーを含む、請求項18に記載の多孔質膜。
【請求項24】
前記シャットダウン低下性添加剤が、直鎖低密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンを含む、請求項18に記載の多孔質膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2020年5月1日の出願日を有する米国特許仮出願第63/018,924号、および2020年10月29日の出願日を有する米国特許仮出願第63/107,072号に基づき、かつ優先権を主張するものであり、それらの両方が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリエチレンポリマーは、多数で多様な使用および用途を有する。例えば、高密度ポリエチレンは、耐摩耗性、表面滑性、耐薬品性および衝撃強度の独特の組合せを有する、有用なエンジニアリングプラスチックである。それらは、ロープおよび防弾成形物品における使用のための高強度ファイバーの製造、ならびに他の細長い物品、例えば電子装置用の膜の製造において用途を見出している。しかしながら、溶融状態にあるこれらの材料の流動性が、分子量が増大するにつれて低減するため、従来の技術による、例えば溶融押出による処理が、常に可能なわけではない。
【0003】
[0003]ファイバーおよび他の細長い構成品をポリエチレンポリマーから製造する1つの代替的な方法は、ポリマーが溶媒と合わされるゲル処理による。得られたゲルはファイバーまたは膜へと押出され、1方向または2方向に延伸されうる。また、溶媒の一部または全てが、製品から除去されうる。
【0004】
[0004]ポリエチレンポリマーからゲル処理を通じて作製された膜は、多くの有益な性質を有するように形成されうる。例としては、膜は、微小孔を伴って形成されうる。ゲル処理を通じて形成される微小孔性ポリエチレン膜は、例としては、バッテリー、例えばリチウムイオンバッテリー中のセパレータとしての使用に特に好適である。微小孔性膜は、例としては、カソードからアノードを分離して活性なバッテリー部品間の短絡を阻止することができる。同時に、微小孔性膜は、当該材料の多孔質の性質に起因して、イオンが通ることを可能にする。微小孔性ポリエチレン膜のイオン透過性の性質は、材料が、バッテリー内の電気化学反応を制御するのに特に好適であるようにする。
【0005】
[0005]当該ポリエチレン膜の微小孔性質、ならびに有益な強度および他の物性を保有する性質に加えて、当該ポリエチレン膜は、有効な「シャットダウン効果」を有すると当技術分野で称するものも提示する。シャットダウン効果は、それが一定の温度を上回るとき、ポリエチレンセパレータ内で微小孔が自ら閉じることを指す。ポリエチレン膜中の細孔が、一定の温度の到達に際して閉じられるとき、イオンはもはや当該膜を通ることができず、バッテリーの電気化学的機能は停止する。この効果は、バッテリーにとって重要な安全性の性質となり、その理由は、該効果が、熱暴走反応が継続することを阻止し、かつバッテリーが過剰に加熱して潜在的に有害な状況を創り出すことを阻止するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]高分子量ポリエチレンポリマーから作製された微小孔性膜は、多くの他の材料よりも低いシャットダウン温度を本来保有しているが、ポリエチレン膜が、物性を損なうことなく、さらに低いシャットダウン温度を有することへの願望が当技術分野にはある。事実、材料のシャットダウン温度における小さい低下でさえ、バッテリーの安全性および他の機能に劇的な改善を付与することができる。残念なことに、シャットダウン温度を低下させようとする努力が試みられるとき、膜の他の性質が悪影響を受けるおそれがある。そのため、材料の他の性質に悪影響を及ぼすことなしに、ポリエチレン膜のシャットダウン温度を下げる方法および技術への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]一般に、本開示は、ゲル処理用途に好適なポリオレフィン組成物を対象とする。より詳細には、本開示は、バッテリー中のセパレータとして使用されうる微小孔性のイオン透過性膜を製造するのに好適な高密度ポリエチレンポリマーを含有するポリマー組成物を対象とする。本開示によれば、ポリマー組成物は、より低いシャットダウン温度を有するように配合されるので、一旦、膜が特定の環境中でより高い温度に供されると、膜は実質的に非透過性となる。例としては、バッテリーセパレータとして使用されるとき、膜のシャットダウン温度は、バッテリーを熱暴走状態から阻止することができる。
【0008】
[0008]一実施形態では、本開示は、ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物を対象とする。該ポリマー組成物は、可塑剤と、高密度ポリエチレン粒子と、シャットダウン低下性添加剤とを含む。シャットダウン低下性添加剤は、高密度ポリエチレン粒子および可塑剤と合わされた粒子を含む。
【0009】
[0009]一実施形態では、シャットダウン低下性添加剤は、さらなる量のポリエチレン粒子によってシャットダウン低下性添加剤が置き換えられているポリマー組成物よりも少なくとも約1.4℃低い、例えば少なくとも約1.8℃低い、例えば少なくとも約2.2℃低い、例えば少なくとも約2.5℃低いように、シャットダウン温度を低下させる。他の態様では、シャットダウン低下性添加剤は、ポリマー組成物のシャットダウン温度を、約3℃超、例えば約4℃超、例えば約5℃超、例えば約6℃超、例えば約7℃超、低下させる。ポリマー組成物のシャットダウン低下温度は、一般に約20℃以下、例えば約15℃以下、例えば約10℃以下、低下される。
【0010】
[00010]シャットダウン低下性添加剤は、組成物中に存在する主要な高密度ポリエチレン粒子との関連において異なる高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン触媒(catalyzed)直鎖低密度ポリエチレン、ポリエチレンワックス、水添脂肪酸(hydrogenated fatty acid)、脂肪酸のアミド、中密度ポリエチレン、脂肪酸の二量体、プラストマー、エラストマー、またはこれらの混合物を含んでもよい。一実施形態では、シャットダウン低下性添加剤は、約0.01g/10分~約70g/10分、例えば約0.05g/10分~約50g/10分、例えば約0.1g/10分~約30g/10分、例えば約1g/10分~約20g/10分のメルトフローレートを有するポリエチレンポリマーである。シャットダウン低下性添加剤は、ポリマー組成物中に、約10重量%~約40重量%の量で、例えば約15重量%~約35重量%の量で、例えば約20重量%~約30重量%の量で存在することができる。
【0011】
[00011]高密度ポリエチレン粒子は、一実施形態では、約150ミクロン未満、例えば約125ミクロン未満の、体積中位粒径を有することができ、かつ一般に約50ミクロン超の、体積中位粒径を有することができる。シャットダウン低下性添加剤は、他方で、約800ミクロン未満、例えば約600ミクロン未満、例えば約400ミクロン未満、例えば約200ミクロン未満の、体積中位粒径を有する粒子の形態とすることができ、かつ一般に約25ミクロン超、例えば約50ミクロン超の、体積中位粒径を有する粒子の形態とすることができる。
【0012】
[00012]一般に、ポリマー組成物は、高密度ポリエチレン樹脂を、約50重量%までの量で含有し、例えば約0.5重量%~約15重量%、例えば約2重量%~約8重量%の量で含有する。可塑剤は、例としては、組成物中に、約50重量%超の量で、例えば約60重量%超の量で、例えば約70重量%超の量で、例えば約80重量%超の量で、例えば約90重量%未満の量で存在することができる。多種の異なる材料が、可塑剤として使用されうる。例としては、可塑剤は、鉱油、パラフィン系油、炭化水素油、アルコールなどを含みうる。例としては、可塑剤は、デカリン、キシレン、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n-デカン、n-ドデカン、またはこれらの混合物を含みうる。一実施形態では、可塑剤は、C5~C12炭化水素、例えばC5~C12飽和炭化水素を含みうる。例えば、可塑剤は、ヘプタン、ヘキサン、パラフィンなどを含みうる。
【0013】
[00013]一実施形態では、粒子を製造するのに使用される高密度ポリエチレンは、比較的高い分子量を有することができる。高分子量ポリエチレン粒子の使用は、特に、より大きい強度の性質が必要とされるまたは所望される用途において有益でありうる。例えば、粒子を製造するのに使用されるポリエチレンは、約500,000g/mol超、例えば約700,000g/mol超、例えば約1,000,000g/mol超、例えば約1,500,000g/mol超の分子量を有することができ、かつ約4,000,000g/mol未満、例えば約3,500,000g/mol未満の分子量を有することができる。一実施形態では、粒子を製造するのに使用されるポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒高分子量ポリエチレンを含む。
【0014】
[00014]本開示はまた、上記ポリマー組成物から形成されるポリマー物品も対象とする。ポリマー物品は、ゲル押出法またはゲル紡糸法を通じて製造されうる。本開示に従って作製されるポリマー物品には、ファイバー、フィルム、例えば膜などが挙げられる。
【0015】
[00015]ポリマー物品を形成する間に、可塑剤のかなりの部分が除去される。例えば、一態様では、可塑剤のうちの95重量%超、例えば約98重量%超が、ポリマー物品の形成中に除去される。その結果、本開示に従って作製されるポリマー物品は、一般に、シャットダウン低下性添加剤と合わされた高密度ポリエチレンを含有する。例えば、得られたポリマー物品は、高密度ポリエチレンポリマーを、約60重量%~約98重量%の量で、例えば約65重量%~約97重量%の量で含有することができる。シャットダウン低下性添加剤は、ポリマー物品中に、約2重量%~約40重量%の量で、例えば約3重量%~約35重量%、例えば約4重量%~約10重量%の量で存在することができる。
【0016】
[00016]本開示はまた、ポリマー物品を製造する方法も対象とする。該方法は、上に記載されたポリマー組成物からゲル様組成物を形成するステップを含む。次いで、ゲル様組成物は、ダイを通して押出されてポリマー物品を形成する。ポリマー物品は、例としては、ファイバー、連続フィルム、または非連続フィルム、例えば多孔質膜を含みうる。ポリマー物品を形成する間、可塑剤のうちの少なくとも一部は、ポリエチレン物品から分離され、除去される。例としては、一実施形態では、可塑剤のうちの80%超、例えば90%超、例えば95%超、例えば98%超が、ポリマー物品を形成する間に除去される。
【0017】
[00017]一実施形態では、抽出溶媒、例えばジクロロメタンが、ポリマー物品の形成の前にまたは形成の間にポリマー組成物と合わされる。抽出溶媒は、可塑剤の除去を促進するために使用されうる。
【0018】
[00018]本開示の他の特徴および態様が、以下に、より詳細に検討される。
[00019]本開示は、以下の図面を参照することにより、よりよく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】[00020]インピーダンス試験を用いて、微小孔性膜のシャットダウン温度を例示しているプロットまたはグラフである。
図2】[00021]本開示に従って作製された多孔質膜を組み入れた電子装置、例えばバッテリーの断面図である。
【0020】
[00022]本明細書中のおよび本図面中の参照文字の繰り返しの使用は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことが意図される。
【0021】
定義
[00023]ポリマー物品、例えば微小孔性膜のシャットダウン温度は、シャットダウン温度を測定するのに用いられる試験および機器のタイプに応じて変化しうる。事実、シャットダウン温度は、手順、ベース樹脂の分子量、および決定するのに用いられる器具に応じて広く変化しうる。そのため、多様な製品についての任意の報告されたシャットダウン温度は、異なる試験または技術が使用されている場合よりもはるかに低いことがある。
【0022】
[00024]本開示では、ポリマー物品、例えば多孔質膜の、またはポリマー組成物のシャットダウン温度は、「インピーダンス試験」、「熱機械分析試験」および「示唆走査熱量測定」に準拠して決定されうる。しかしながら、インピーダンス試験が、シャットダウン温度を直接測定する唯一の試験である。以下の試験は、以下のように定義される。
【0023】
[00025]インピーダンス試験
[00026]インピーダンス分光法試験セットアップは、2つの鋼の電極を備えたガラス測定セルから構成される。インピーダンス分光法によれば、サンプルが電解液中に浸漬され(炭酸エチレン/炭酸ジメチル1:1中の1M LiPF)、電極間のセル中に集められる。次いで、測定セルは、インピーダンススペクトルを100Hzから100kHzの間の周波数にて50秒ごとに記録するインピーダンス分光器に連結される。次いで、測定セルは、オーブン中に置かれて110℃から150℃へと2時間にわたって加熱され、その間、インピーダンススペクトルを継続して記録する。データ評価は、インピーダンス対温度をプロットして行われ、シャットダウン温度が、インピーダンスにおける急勾配の増加の中間点によって示される。例となるプロットは図1に示されており、そこで矢がシャットダウン温度を示している。該試験は、Biologic Science Instrumentsから入手可能なHCP-803ポテンシオスタットを用いて行われうる。
【0024】
[00027]熱機械分析(TMA試験)
[00028]TMA法の下、サンプルが、温度レジーム、および0.5の力乗算を伴う0.2Nの静的力に供されている間に、動ひずみが測定される。該試験は、室温(25~30℃)から160℃の範囲の温度にわたって加熱速度2℃/分で実施される。周波数は0.1Hzに設定される。データ評価は動ひずみ対温度をプロットして行われ、軟化点が、動ひずみ屈曲点によって示される。該試験は、Perkin Elmer DMA8000動的機械分析器において行われうる。
【0025】
[00029]示唆走査熱量測定(DSC試験)
[00030]示唆走査熱量測定(DSC)を用いて、サンプルの融点が、ISO Test No.11357によって以下の条件下で決定されうる:サンプルは0℃から180℃へと加熱速度10℃/分で加熱され、180℃にて5分間、等温に保持される。等温に保持された後、サンプルは0℃に加熱速度10℃/分で冷却される。最後に、サンプルは180℃に加熱速度20℃で加熱される。サンプルは、DSC手順の全ステップの間、窒素で不活性化される。該試験は、TA Instrumentsから入手可能なDSC Q2000熱量計を用いて行われうる。
【0026】
[00031]本明細書で使用される場合、パンクチャー強度はASTM Test D3763に準拠して測定され、異質な粒子が穴または欠損を引き起こすことに抵抗する膜の能力を測定する。該試験は、試験装置、例えばInstron CEAST9340装置において行われる。落下高さは0.03~1.10mである。衝突速度は0.77~4.65m/秒である。最大落下質量は37.5kgであり、最大位置エネルギーは405Jである。パンクチャー強度は、1.67mm/秒での低速パンクチャーモードにおいて測定される。
【0027】
[00032]ポリマーまたはポリマー組成物のメルトフローレートは、ISO Test 1133に準拠して、190℃にて2.16kgの負荷において測定される(別段の指定がない限り)。
【0028】
[00033]ポリマーの密度は、ISO Test1183に準拠して、g/cmの単位において測定される。
[00034]平均粒径(d50)は、レーザー回析/光散乱、例えば好適なHORIBA光散乱装置を用いて測定される。
【0029】
[00035]ポリマーの平均分子量は、マーゴリーズ等式を用いて決定される。
[00036]引張係数、降伏点引張応力、降伏点引張ひずみ、50%破断点引張応力、破断点引張応力および破断点引張公称ひずみは、全て、ISO Test527-2/1Bに準拠して測定される。
【0030】
[00037]ガーレー透気度は、ガーレー透気度試験機、例えば熊谷理機工業株式会社から市販されているGurley Densometer,Model KRK2060cを用いたガーレー試験に準拠して測定されうる。該試験は、ISO Test5636に準拠して行われる。ガーレー試験は、特定の量の空気が特定の圧力下で特定の面積を通るのに必要とされる時間の関数としての空気透過度を測定する。単位は、秒/100mlにおいて報告される。
【0031】
[00038]多孔度(%)は、以下の手順に従って測定される。該手順の間、以下のASTM Standardsが参照物として用いられる:D622 Standard Test Method for Apparent Density of Rigid Cellular Plastics1;およびD729 Standard Test Methods for Density and Specific Gravity(Relative Density)of Plastics by Displacement1。以下の機器が使用される:Calibrated Analytical Balance(0.0001グラム);Lorentzen&Wettre Micrometer、code251(0.1um);およびDeli2056 art knife。
【0032】
手順:
1.1. サンプルおよびサンプル調製
標本のart knifeを用いて、各サンプル材料を最少3種の60mm±0.5×60mm±0.5の標本へと切断する。
1.2. 機器および測定
3.2.1 L&Wミクロメーターを用いて、それぞれが60mm×60mmの標本において、厚さの5回の読取り(平均して5回の読取り)を行う。この値を、この標本の厚さとして記録する。
3.2.2 該標本を秤上で、直接、秤量する。この値を標本の重量として記録する。
3.2.3 同一のサンプルの3種の標本を一緒に置き、ステップ2.2.1とステッ3.2.2とを繰り返して、[バルク]厚さおよび[バルク]重量を得る。
密度を、3種の有意な数字へと、以下の通り算出する
a.Dフィルム=密度(フィルム)=標本のWt./THK×Square
Dフィルム=標本の密度、mg/mm3
Wt=標本の重量、mg
THK=標本の厚さ、mm
Square=標本の面積、(mm2)
b.Dポリマー=密度(ポリマー)0.95(g/cm3)
Dポリマー:原材料の密度、細孔なし
c.多孔度=(1-Dフィルム/Dポリマー)×100%
【発明を実施するための形態】
【0033】
[00039]本検討が、例示的実施形態のみの記載であり、かつ本開示のより広い態様を限定することが意図されないことが、当業者によって理解されることになる。
[00040]一般に、本開示は、ゲル押出物品、例えば多孔質膜を備えたファイバーおよびフィルムを製造するのに好適なポリマー組成物を対象とする。ポリマー組成物は、可塑剤およびシャットダウン低下性添加剤と合わされた、ポリエチレン樹脂、例えば高密度ポリエチレン粒子を含有する。本開示によれば、シャットダウン低下性添加剤は、高密度ポリエチレン粒子と合わされた粒子を含み、かつ該組成物が多孔質膜へと形成されるときに、膜のシャットダウン温度を低下させる。特に有利なことに、シャットダウン低下性添加剤は、該組成物から作製された物品の物理的または機械的性質を含まずに、比較的大量にポリマー組成物中に組み入れられうる。そのため、シャットダウン低下性添加剤は、該組成物から作製された膜の機械的性質に実質的に影響を与えることなく、本開示のポリマー組成物中に組み入れられうる。
【0034】
[00041]一般に、任意の好適な高密度ポリエチレンポリマーが、ポリマー組成物の主ポリマー成分およびマトリックスポリマーを形成するのに使用されうる。高密度ポリエチレンは、約0.93g/cm以上、例えば約0.94g/cm以上、例えば約0.95g/cm以上の密度を有し、かつ一般に約1g/cm未満の密度を有する。
【0035】
[00042]高密度ポリエチレンポリマーは、90%を上回るエチレン由来の単位、例えば95%超のエチレン由来の単位、または100%エチレン由来の単位から作製されうる。ポリエチレンは、ホモポリマー、または他のモノマー単位を有するターポリマーを含むコポリマーとすることができる。
【0036】
[00043]高密度ポリエチレンは、高分子量ポリエチレン、非常に高い分子量のポリエチレンおよび/または超高分子量ポリエチレンとすることができる。「高分子量ポリエチレン」は、少なくとも約3×10g/molの平均分子量を有するポリエチレン組成物を指し、かつ本明細書で使用される場合、非常に高い分子量のポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレンを含むことが意図される。本明細書の目的では、本明細書中で参照される分子量は、マーゴリーズ等式に従って決定される(「マーゴリーズ分子量」)。
【0037】
[00044]「非常に高い分子量のポリエチレン」は、約3×10g/mol未満で約1×10g/mol超の重量平均分子量を有するポリエチレン組成物を指す。いくつかの実施形態では、非常に高い分子量のポリエチレン組成物の分子量は、約2×10g/molから約3×10g/mol未満の間である。
【0038】
[00045]「超高分子量ポリエチレン」は、少なくとも約3×10g/molの平均分子量を有するポリエチレン組成物を指す。いくつかの実施形態では、超高分子量ポリエチレン組成物の分子量は、約3×10g/molから約30×10g/molの間、または約3×10g/molから約20×10g/molの間、または約3×10g/molから約10×10g/molの間、または約3×10g/molから約6×10g/molの間である。
【0039】
[00046]一態様では、高密度ポリエチレンは、エチレンのホモポリマーである。別の実施形態では、高密度ポリエチレンは、コポリマーであってもよい。例としては、高密度ポリエチレンは、エチレンと、3~16個の炭素原子、例えば3~10個の炭素原子、例えば3~8個の炭素原子を含有する別のオレフィンとのコポリマーであってもよい。これらの他のオレフィンには、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチルペンタ-1-エン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセンなどが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書でまた利用可能なのは、ポリエンコモノマー、例えば1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、4-ビニルシクロヘキサ-1-エン、1,5-シクロオクタジエン、5-ビニリデン-2-ノルボルネンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンである。しかしながら、存在する場合、コポリマー中の非エチレンモノマーの量は、約10mol%未満、例えば約5mol%未満、例えば約2.5mol%未満、例えば約1mol%未満であってもよく、そのmol%はポリマー中のモノマーの総モルに対する。
【0040】
[00047]一実施形態では、高密度ポリエチレンは、単峰性の分子量分布を有しうる。あるいは、高密度ポリエチレンは、二峰性の分子量分布を呈しうる。例としては、二峰性の分布は、一般に、サイズ排除クロマトグラフィーまたはゲル浸透クロマトグラフィーの曲線上で、明瞭なより高い分子量と明瞭なより低い分子量と(例えば2つの明瞭なピーク)を有するポリマーを指す。別の実施形態では、高密度ポリエチレンは、ポリエチレンが多峰性(例えば三峰性、四峰性など)の分布を呈するような2個超の分子量分布ピークを呈しうる。あるいは、高密度ポリエチレンは、より高い分子量の成分とより低い分子量の成分とのブレンドからなることにより、サイズ排除クロマトグラフィーまたはゲル浸透クロマトグラフィーの曲線が、少なくとも2つの明瞭なピークを呈さず、代わりに個々の成分のピークよりも広い1つの明瞭なピークを呈する、広い分子量分布を呈してもよい。
【0041】
[00048]当技術分野で公知の任意の方法を利用して、ポリエチレンを合成することができる。ポリエチレン粉末は、典型的には、不均一触媒および共触媒としてオルガノアルミニウムまたはマグネシウム化合物を用いて、エチレンモノマーの、または任意選択で1種または複数の他の1-オレフィンコモノマーとの触媒重合で、最終ポリマー中の1-オレフィン含有量がエチレン含有量の10%以下となるように、製造される。エチレンは、通常、気相またはスラリー相において、比較的低い温度および圧力にて重合される。重合反応は、50℃から100℃の間の温度、および0.02~2MPaの範囲内の圧力にて実施しうる。
【0042】
[00049]ポリエチレンの分子量は、水素を添加することによって調整することができる。温度ならびに/または共触媒のタイプおよび濃度の変更も、分子量を微調整するのに使用してもよい。加えて、反応は、ファウリングおよび製品汚染を回避するために、帯電防止剤の存在下で行ってもよい。
【0043】
[00050]好適な触媒系には、チーグラーナッタ型触媒が挙げられるがこれらに限定されない。典型的には、チーグラーナッタ型触媒は、周期表の4族から8族の遷移金属化合物、および周期表の1族から3族の金属のアルキルまたは水素化物誘導体の組合せに由来する。使用される遷移金属誘導体は、通常、金属ハロゲン化物もしくはエステル、またはこれらの組合せを含む。例示的なチーグラーナッタ触媒には、オルガノアルミニウムまたはマグネシウム化合物、限定されないが例えばアルキルアルミニウムまたはマグネシウムと、チタン、バナジウムまたはクロムのハロゲン化物またはエステルとの反応生成物に基づく触媒がある。不均一触媒は、担持されていないこともあり、多孔質微粒物質、例えばシリカまたは塩化マグネシウム上に担持されていることもある。このような担体は、触媒の合成中に添加するこができ、または触媒合成自体の化学反応生成物として得てもよい。
【0044】
[00051]一実施形態では、好適な触媒系は、不活性有機溶媒中、-40℃~100℃、好ましくは-20℃~50℃の範囲内の温度にて、チタン(IV)化合物とトリアルキルアルミニウム化合物との反応によって得られうる。出発材料の濃度は、チタン(IV)化合物については0.1~9mol/L、好ましくは0.2~5mol/Lの範囲内であり、トリアルキルアルミニウム化合物については0.01~1mol/L、好ましくは0.02~0.2mol/Lの範囲内である。チタン成分は、0.1分~60分、好ましくは1分~30分にわたってアルミニウム化合物に添加され、最終混合物中のチタンとアルミニウムとのモル比は、1:0.01~1:4の範囲内にある。
【0045】
[00052]別の実施形態では、好適な触媒系は、チタン(IV)化合物の、トリアルキルアルミニウム化合物との、不活性有機溶媒中の、-40℃~200℃、好ましくは-20℃~150℃の範囲内の温度における1ステップまたは2ステップの反応によって得られる。第1のステップでは、チタン(IV)化合物が、トリアルキルアルミニウム化合物と、チタンのアルミナに対するモル比1:0.1~1:0.8の範囲内を用いて、-40℃~100℃、好ましくは-20℃~50℃の範囲内の温度にて反応される。出発材料の濃度は、チタン(IV)化合物については0.1~9.1mol/L、好ましくは5~9.1mol/Lの範囲内にあり、トリアルキルアルミニウム化合物については0.05~1mol/L、好ましくは0.1~0.9mol/Lの範囲内にある。チタン成分は、アルミニウム化合物に、0.1分~800分、好ましくは30分~600分にわたって添加される。第2のステップでは、適用される場合、第1のステップにおいて得られた反応生成物が、トリアルキルアルミニウム化合物と、チタンのアルミニウムに対するモル比1:0.01~1:5の範囲内を用いて、-10℃~150℃、好ましくは10℃~130℃の範囲内の温度にて処理される。
【0046】
[00053]さらに別の実施形態では、好適な触媒系は、第1の反応段階において、マグネシウムアルコレートを、塩化チタンと、不活性炭化水素中、50℃~100℃の温度にて反応させる手順によって得られる。第2の反応段階において、形成された反応混合物は、110℃~200℃の温度にて約10~100時間、熱処理に供すると、塩化アルキルがもはや放出しなくなるまで塩化アルキルの放出を伴い、次いで固体は、炭化水素で数回洗浄することによって可溶性反応生成物から遊離される。
【0047】
[00054]さらなる実施形態では、シリカ担持触媒、例えば市販の触媒系Sylopol5917がまた使用されうる。
[00055]このような触媒系を使用して、重合は、通常、サスペンション中で、連続またはバッチの1つのまたは複数のステップにおいて、低い圧力および温度にて実施される。重合温度は、典型的には、30℃~130℃の範囲内、好ましくは50℃~90℃の範囲内にあり、エチレンの分圧は、典型的には、10MPa未満、好ましくは0.05MPaおよび5MPaである。例えばイソプレニルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムであるがそれらに限定されないようなトリアルキルアルミニウムは、Al:Ti(共触媒対触媒)の比が0.01~100:1の範囲内、より好ましくは0.03~50:1の範囲内にあるように、共触媒として使用される。溶媒は、チーグラー型重合のために典型的に使用される不活性有機溶媒である。例は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキセン、オクタン、ノナン、デカン、それらの異性体およびそれらの混合物である。ポリマーの分子量は、水素を供給することを通して制御される。水素分圧のエチレン分圧に対する比は、0~50の範囲内、好ましくは0~10の範囲内にある。ポリマーは、分離されて、流動床乾燥器中、窒素下で乾燥される。溶媒は、高沸点溶媒を使用する場合に、水蒸気蒸留を通じて除去されうる。長鎖脂肪酸の塩が、安定剤として添加されてもよい。典型的な例は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸亜鉛である。
【0048】
[00056]任意選択で、他の触媒、例えばフィリップス触媒、メタロセンおよびポストメタロセンが利用されうる。一般に、共触媒、例えばアルモキサンまたはアルキルアルミニウムまたはアルキルマグネシウムの各化合物もまた利用される。他の好適な触媒系には、フェノレートエーテル配位子の4族金属錯体が挙げられる。
【0049】
[00057]本開示によれば、高密度ポリエチレンポリマーは粒子へと形成され、可塑剤と合わされる。一実施形態では、ポリエチレン粒子は、DIN53466に準拠して測定して、比較的低いバルク密度を有するポリエチレンポリマーから作製される。例としては、一実施形態では、バルク密度は、一般に約0.4g/cm未満、例えば約0.35g/cm未満、例えば約0.33g/cm未満、例えば約0.3g/cm未満、例えば約0.28g/cm未満、例えば約0.26g/cm未満である。バルク密度は、一般に、約0.1g/cm超、例えば約0.15g/cm超である。一実施形態では、ポリマーは、約0.2g/cm~約0.27g/cmのバルク密度を有する。
【0050】
[00058]一実施形態では、ポリエチレン粒子は、易流動性粉末でもよい。該粒子は、200ミクロン未満の、体積中位粒径(d50)を有することができる。例えば、ポリエチレン粒子の中位粒径(d50)は、約150ミクロン未満、例えば約125ミクロン未満とすることができる。中位粒径(d50)は、一般に、約20ミクロン超である。粉末の粒径は、ISO13320によるレーザー回析法を利用して測定されうる。
【0051】
[00059]一実施形態では、ポリエチレン粒子のうちの90%は、約250ミクロン未満の粒径を有することができる。他の実施形態では、ポリエチレン粒子のうちの90%は、約200ミクロン未満、例えば約170ミクロン未満の粒径を有することができる。
【0052】
[00060]ポリエチレンポリマーの分子量は、特定の用途に応じて変化しうる。ポリエチレンポリマーは、例としては、マーゴリーズ等式により決定される平均分子量を有しうる。分子量は、最初にDIN EN ISO Test1628に準拠して粘度数を測定することによって決定しうる。乾燥粉末流は、25mmのノズルを用いて測定される。次いで、分子量は、マーゴリーズ等式を用いて粘度数から算出される。平均分子量は、一般に約300,000g/mol超、例えば約500,000g/mol超、例えば約700,000g/mol超、例えば約1,000,000g/mol超、例えば約2,000,000g/mol超、例えば約2,500,000g/mol超、例えば約3,000,000g/mol超、例えば約4,000,000g/mol超である。平均分子量は、一般に約12,000,000g/mol未満、例えば約10,000,000g/mol未満である。一態様では、高密度ポリエチレンポリマーの数平均分子量は、約4,000,000g/mol未満、例えば約3,000,000g/mol未満とすることができる。
【0053】
[00061]ポリエチレンは、ISO1628 part3に準拠して0.0002g/mLのデカヒドロナフタレン中の濃度を利用して決定して、少なくとも100mL/g、例えば少なくとも500mL/g、例えば少なくとも1,500mL/g、例えば少なくとも2,000mL/g、例えば少なくとも4,000mL/gの粘度数から、約6,000mL/g未満、例えば約5,000mL/g未満、例えば約4000mL/g未満、例えば約3,000mL/g未満、例えば約1,000mL/g未満の粘度数までを有しうる。
【0054】
[00062]高密度ポリエチレンは、少なくとも約40%~85%、例えば45%~80%の結晶度を有しうる。
[00063]一般に、高密度ポリエチレン粒子は、ポリマー組成物中に、約50重量%までの量で存在する。例としては、高密度ポリエチレン粒子は、ポリマー組成物中に、約45重量%未満の量で、例えば約40重量%未満の量で、例えば約35重量%未満の量で、例えば約30重量%未満の量で、例えば約25重量%未満の量で、例えば約20重量%未満の量で、例えば約15重量%未満の量で存在することができる。ポリエチレン粒子は、組成物中に、約5重量%超の量で、例えば約10重量%超の量で、例えば約15重量%超の量で、例えば約20重量%超の量で、例えば約25重量%超の量で存在することができる。ゲル処理の間に、可塑剤は高密度ポリエチレン粒子と合わされ、これは、ポリマー物品の形成中に実質的にまたは完全に除去されうる。例えば、一実施形態では、得られたポリマー物品は、高密度ポリエチレンポリマーを、約70重量%超の量で、例えば約80重量%超の量で、例えば約85重量%超の量で、例えば約90重量%超の量で、例えば約95重量%超の量で含有することができる。
【0055】
[00064]本開示によれば、ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物は、シャットダウン低下性添加剤を、高密度ポリエチレン粒子との組合せにおいて含有する。シャットダウン低下性添加剤はまた、高密度ポリエチレン粒子と混合されているまたはブレンドされている粒子の形態においても存在することができる。高密度ポリエチレン粒子をシャットダウン低下性添加剤と溶融ブレンディングすることは、例としては、ポリマー組成物からゲル押出物品を製造することを難しくしうるポリマーの絡み合い等の不都合な結果をもたらすおそれがある。
【0056】
[00065]シャットダウン低下性添加剤は、物品、例えば多孔質膜へと形成されるときにポリマー組成物のシャットダウン温度を低下させるような方法で、高密度ポリエチレン粒子と合わされる。用途のために選択される特定のシャットダウン低下性添加剤は、シャットダウン低下性添加剤と合わされる高密度ポリエチレン粒子のタイプを含む多様な要素に依存しうる。一般に、シャットダウン低下性添加剤は、マトリックスポリマーとは異なる高密度ポリエチレン粒子、低密度ポリエチレン粒子、直鎖低密度ポリエチレン粒子、約3未満、例えば約2.5未満の分子量分布または多分散性指数を有するメタロセン直鎖低密度ポリエチレン粒子、ポリエチレンワックス粒子、水添脂肪酸粒子、脂肪酸の二量体から作製された粒子、プラストマー粒子、エラストマー粒子、およびこれらの混合物を含みうる。
【0057】
[00066]例えば、一態様では、シャットダウン低下性添加剤は、ポリエチレンポリマーから作製されうる。例えば、一態様では、ポリエチレンポリマーは、高密度ポリエチレンマトリックスポリマーの分子量より少ない分子量を有する高密度ポリエチレンポリマーとすることができる。例えば、高密度ポリエチレンポリマーは、約700,000g/mol未満、例えば約500,000g/mol未満、例えば約300,000g/mol未満、例えば約100,000g/mol未満の平均分子量を有することができる。高密度ポリエチレンポリマーの平均分子量は、一般に約80,000g/mol超である。
【0058】
[00067]さらに別の態様では、シャットダウン低下性添加剤は、中密度ポリエチレンとすることができる。中密度ポリエチレンは、例としては、一般に約0.92g/cm~約0.94g/cmの密度を有することができる。
【0059】
[00068]代替的な実施形態では、シャットダウン低下性添加剤は、低密度ポリエチレンとすることができる。低密度ポリエチレンは、高密度ポリエチレンまたは直鎖低密度ポリエチレンからポリマーを区別する分枝状構造を有することができる。ポリマーの枝分かれは、透明度を増大させ、可撓性を増大させ、ポリマーの溶融処理を容易にする。低密度ポリエチレンの分子量、結晶化度および分子量分布は、特定の用途に応じて変化することができる。
【0060】
[00069]低密度ポリエチレンの結晶化度は、ポリマー分子上に存在する枝分かれの量の関数となりうる。ポリマーの結晶化度は、例として、一般に約20%超、例えば約30%超になり、一般に約50%未満、例えば約40%未満になりうる。低密度ポリエチレンの結晶化度は、一般に約50%~約75%の結晶化度の値を有することができる高密度ポリエチレンの結晶化度よりも小さい。
【0061】
[00070]低密度ポリエチレンは、一般に、狭い分子量分布または中程度の分子量分布を有することができる。例として、一態様では、分子量分布は約3~約5の場合がある。あるいは、分子量分布は約6~約12の場合がある。分子量分布は、重量平均分子量の、数平均分子量に対する比であると定義される。
【0062】
[00071]シャットダウン低下性添加剤はまた、直鎖低密度ポリエチレンとすることもできる。直鎖低密度ポリエチレンポリマー鎖は、一般に、長い鎖の枝分かれを有していない。例としては、該ポリマーは、低密度ポリエチレンよりも低い温度にて製造されうる。直鎖低密度ポリエチレンは、ポリエチレンホモポリマーとすることもでき、またはエチレンと、より高度なアルファオレフィン、例えばブテン、ヘキセンまたはオクテンとのコポリマーとすることもできる。一態様では、直鎖低密度ポリエチレンは、約0.9g/cm超、例えば約0.91g/cm超の密度を有することができ、かつ一般に約0.93g/cm未満、例えば約0.925g/cm未満の密度を有することができる。
【0063】
[00072]一態様では、シャットダウン低下性添加剤は、メタロセン直鎖低密度ポリエチレンとすることができる。メタロセン直鎖低密度ポリエチレンは、典型的には、直鎖低密度ポリエチレンよりも強靭であり、約0.915g/cmから約0.94g/cmの間の密度を有することができる。該ポリマーは、メタロセン触媒を使用して作製される。メタロセン直鎖低密度ポリエチレンは、エチレンと、ブテンまたはヘキセンとのコポリマーとすることができる。メタロセン直鎖低密度ポリエチレンは、約3.5未満、例えば約3未満、例えば約2.5未満の分子量分布または多分散性指数を有することができる。
【0064】
[00073]シャットダウン低下性添加剤はまた、ポリエチレンワックス粒子からもなりうる。ポリエチレンワックスは、一般に、非常に低い分子量を有する。例としては、平均分子量は、約12,000g/mol未満、例えば約8,000g/mol未満、例えば約6,000g/mol未満、例えば約4,000g/mol未満、例えば約2,000g/mol未満とすることができる。数平均分子量は、一般に約200g/mol超、例えば約400g/mol超である。ポリエチレンワックスは、典型的にはポリエチレンホモポリマーであるが、コポリマーもまた存在する。ポリエチレンワックスは、低密度ポリエチレンから形成される、または高密度ポリエチレンから形成される、のいずれかとすることができる。一態様では、ポリエチレンワックスは、約1.5~5、例えば約1.5~約2.5の分子量分布を有しうる。
【0065】
[00074]シャットダウン低下性添加剤がポリエチレンポリマーを含むとき、該ポリマーは、一般に(2.16kgの負荷において測定されたとき)約0.05g/10分~約100g/10分のメルトフローレートを有することができる。例としては、メルトフローレートは、約0.1g/10分超、例えば約0.8g/10分超、例えば約1g/10分超、例えば約1.5g/10分超、例えば約3g/10分超、例えば約5g/10分超、例えば約10g/10分超、例えば約20g/10分超とすることができる。メルトフローレートは、一般に約70g/10分未満、例えば約50g/10分未満、例えば約30g/10分未満、例えば約20g/10分未満である。メルトフローレートは、一態様では、比較的低くてもよく、約10g/10分未満、例えば約8g/10分未満、例えば約6g/10分未満、例えば約4g/10分未満、例えば約3g/10分未満、例えば約2g/10分未満とすることができる。
【0066】
[00075]シャットダウン低下性添加剤がポリエチレンポリマーを含むとき、該ポリエチレンポリマーは、粒子の形態とすることができる。該粒子は、一般に約100ミクロン超、例えば約200ミクロン超、例えば約250ミクロン超、例えば約300ミクロン超の平均d50粒径を有することができ、かつ一般に約1,000ミクロン未満、例えば約900ミクロン未満、例えば約800ミクロン未満、例えば約600ミクロン未満、例えば約500ミクロン未満の平均d50粒径を有することができる。ポリエチレンポリマーの密度は、一般に約0.91g/cm~約0.95g/cmのどこかにあることができ、それらの間の0.01g/cmの全ての増分を含む。
【0067】
[00076]多様なポリエチレンポリマーに加えて、シャットダウン低下性添加剤はまた、脂肪酸誘導体、例えば水添脂肪酸、または脂肪酸の二量体も含むことができる。水添脂肪酸は、二重結合のうちの大半が単結合に転換された脂肪酸である。水添脂肪酸は、約12個超の炭素原子、例えば約16個超の炭素原子、例えば約18個超の炭素原子、例えば約20個超の炭素原子、例えば約24個超の炭素原子の炭素鎖長を有する脂肪酸から、かつ一般に約52個未満の炭素原子、例えば約48個未満の炭素原子、例えば約38個未満の炭素原子の炭素鎖長を有する脂肪酸から形成されうる。
【0068】
[00077]脂肪酸の二量体または二量体化脂肪酸は、トールオイルから得られた不飽和脂肪酸を二量体化することによって調製される。二量体化脂肪酸は、水添脂肪酸に関して上に記載した炭素鎖長を有する脂肪酸から形成されうる。
【0069】
[00078]さらに別の実施形態では、シャットダウン低下性添加剤は、エラストマー粒子を含むことができる。熱可塑性エラストマーには、スチレン性ブロックコポリマー、オレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリウレタンエラストマーが挙げられる。スチレン性ブロックコポリマーには、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンポリマーおよびスチレン-ブタジエン-スチレンポリマーが挙げられる。
【0070】
[00079]一態様では、エラストマー粒子は、ポリウレタンエラストマーから作製される。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例としては、長鎖ジオールの軟質セグメント、ジイソシアネートに由来する硬質セグメント、および鎖延長剤を有してもよい。一実施形態では、ポリウレタンエラストマーは、長鎖ジオールをジイソシアネートと反応させて、イソシアネート末端基を有するポリウレタプレポリマーを生成し、続いて該プレポリマーをジオール鎖延長剤で鎖延長することによって調製されるポリエステルタイプである。代表的な長鎖ジオールは、ポリエステルジオール、例えばアジピン酸ポリブチレンジオール、アジピン酸ポリエチレンジオールおよびポリ(ε-カプロラクトン)ジオール;ならびにポリエーテルジオール、例えばポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリプロピレンオキシドグリコールおよびポリエチレンオキシドグリコールである。好適なジイソシアネートには、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、2,4-トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートおよび4,4’-メチレンビス-(シクロオキシルイソシアネート)が挙げられる。好適な鎖延長剤は、C2~C6脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールである。熱可塑性ポリウレタンの1つの例は、本質的に、ポリ(アジピン酸-co-ブチレングリコール-co-ジフェニルメタンジイソシアネート)として特徴付けられる。
【0071】
[00080]エラストマー粒子はまた、コポリエステルエラストマーからも作製されうる。一実施形態では、コポリエステルエラストマーは、エステル結合およびエーテル結合を含むことができる。例えば、コポリエステルエラストマーは、エステル結合を介した頭-尾連鎖によって一緒に結合されている、多数のランダムに繰り返す長鎖エステル単位および短鎖エステル単位によって規定される交互構造を有することができる。
【0072】
[00081]長鎖エステル単位は、式:
【0073】
【化1】
【0074】
によって表され、
その一方で、短鎖エステル単位は、式:
【0075】
【化2】
【0076】
によって表され、
式中、
- Gは、約250から6000の間の分子量を有するポリオールから末端ヒドロキシル基を除去した後に残っている二価基であり、
- Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価基であり、
- Dは、約250未満の分子量を有するジオールからヒドロキシル基を除去した後に残っている二価基である。
【0077】
[00082]G基およびD基の場合、表現「二価基」は、2つのヒドロキシル反応中心を有して、1つが分子の頭部に、1つが分子の尾部に位置している基を意味する。R基の場合、表現「二価基」は、2つのカルボキシル反応中心を有して、1つが分子の頭部に、1つが分子の尾部に位置している基を意味する。
【0078】
[00083]構造的に、R基は、ポリエステル結合を付与する基である。詳細には、R基が芳香族部分を有するとき、それらはコポリエステルに結晶性を与える。
[00084]R基との組合せにおけるG基は、コポリエステルにエラストマーの性質を与える。
【0079】
[00085]R基との組合せにおけるD基は、コポリエステルに剛性の性質を与える。
[00086]上記交互構造は、5重量%~15重量%の短鎖エステル単位、および70重量%~80重量%の長鎖エステル単位を含むことができる。
【0080】
[00087]一実施形態では、交互構造熱可塑性コポリエステルエラストマーは、以下の一般的な反応スキームに従って得られうる:
- 1種もしくは複数のカルボン酸の、1種もしくは複数のジカルボン酸のエステルの、ならびに/または1種もしくは複数の二量体もしくは三量体カルボン酸の、ジオールとのおよびジオールポリグリコールとのエステル化/エステル交換
- エステル化/エステル交換の生成物のその後の重縮合。
【0081】
[00088]コポリエステルエラストマーの分子量は、特定の用途に応じて変化しうる。一実施形態では、例としては、コポリエステルエラストマーの分子量は、約20,000g/mol超、例えば約25,000g/mol超、例えば約28,000g/mol超、例えば約30,000g/mol超、例えば約35,000g/mol超、例えば約40,000g/mol超、例えば約45,000g/mol超、例えば約50,000g/mol超である。ポリエステルエラストマーの分子量は、一般に約200,000g/mol未満、例えば約100,000g/mol未満である。
【0082】
[00089]さらに別の態様では、シャットダウン低下性添加剤は、プラストマーとすることができる。プラストマーは、エラストマーの品質と熱可塑性の品質とを組み合わせたポリマー材料である。一態様では、ポリオレフィンプラストマーは、アルファオレフィンコポリマー、詳細にはアルファオレフィンポリエチレンコポリマーを含んで使用される。好適なアルファ-オレフィンは、直鎖であっても分枝状であってもよい(例えば1つまたは複数のC1~C3アルキル枝分かれ、またはアリール基)。特定の例には、エチレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1つまたは複数のメチル、エチルまたはプロピルの各置換基を有する1-ペンテン;1つまたは複数のメチル、エチルまたはプロピルの各置換基を有する1-ヘキセン;1つまたは複数のメチル、エチルまたはプロピルの各置換基を有する1-ヘプテン;1つまたは複数のメチル、エチルまたはプロピルの各置換基を有する1-オクテン;1つまたは複数のメチル、エチルまたはプロピルの各置換基を有する1-ノネン;エチル、メチルまたはジメチルで置換されている1-デセン;1-ドデセン;およびスチレンが挙げられる。特に望ましいアルファ-オレフィンコモノマーは、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンである。このようなコポリマーのエチレン含有量は、約60mol%~約99.5wt.%、いくつかの実施形態では約80mol%~約99mol%、いくつかの実施形態では約85mol%~約98mol%であってもよい。アルファ-オレフィン含有量は、同様に、約0.5mol%~約40mol%、いくつかの実施形態では約1mol%~約20mol%、いくつかの実施形態では約2mol%~約15mol%の範囲であってもよい。アルファ-オレフィンコモノマーの分布は、典型的には、エチレンコポリマーを形成する異なる分子量の分率の間でランダムであり均一である。
【0083】
[00090]プラストマーの密度は、一般に約0.95g/cc未満、例えば約0.91g/cc未満であってもよい。ポリオレフィンの密度は、一般に約0.8g/cc超、例えば約0.85g/cc超、例えば約0.88g/cc超である。一態様では、プラストマーは、約35℃未満、例えば約25℃未満のガラス転移温度を有することができる。
【0084】
[00091]上に記載した通り、シャットダウン低下性添加剤は、高密度ポリエチレン粒子と合わされた粒子の形態である。一般に、シャットダウン低下性添加剤粒子は、約800ミクロン未満、例えば約600ミクロン未満、例えば約400ミクロン未満、例えば約200ミクロン未満の、体積中位粒径を有する。シャットダウン低下性添加剤の中位粒径は、一般に約10ミクロン超、例えば約20ミクロン超、例えば約50ミクロン超、例えば約70ミクロン超である。一実施形態では、シャットダウン低下性添加剤粒子は、粒径が、高密度ポリエチレン粒子の粒径と実質的に合致するように選択、粉砕またはミリングすることができる。例としては、シャットダウン低下性添加剤の中位粒径は、高密度ポリエチレン粒子の中位粒径の(+または-)約20%内、例えば約10%内とすることができる。
【0085】
[00092]シャットダウン低下性添加剤は、一般に約0.01g/10分~約110g/10分、例えば約0.03g/10分~約70g/10分、例えば約0.05g/10分~約50g/10分のメルトフローレートを有する。メルトフローレートは、ISO Test1133を用いて、190℃の温度にて2.16kgの負荷において測定されうる。より詳細には、シャットダウン低下性添加剤のメルトフローレートは、約2g/10分超、例えば約7g/10分超、例えば約10g/10分超とすることができ、かつ一般に約60g/10分未満、例えば約40g/10分未満、例えば約30g/10分未満、例えば約25g/10分未満、例えば約20g/10分未満とすることができる。
【0086】
[00093]一態様では、シャットダウン低下性添加剤(上で確定されたシャットダウン低下性添加剤のうちのいずれか)は、一般に約130℃未満、例えば約129℃未満、例えば約128℃の融点を有することができる。融点は、一般に約105℃超、例えば約115℃超である。
【0087】
[00094]シャットダウン低下性添加剤は、一般に、ポリマー組成物中に、高密度ポリエチレン粒子および可塑剤との組合せで、2重量%~約40重量%の量で存在する。例えば、シャットダウン低下性添加剤は、ポリマー組成物中に、約2重量%超の量で、例えば約4重量%超の量で、例えば約8重量%の量で、例えば約10重量%超の量で、例えば約12重量%超の量で、例えば約15重量%超の量で、例えば約18重量%超の量で、例えば約20重量%超の量で、例えば約22重量%超の量で存在することができ、かつ一般に約40重量%未満、例えば約35重量%未満の量で、例えば約30重量%の量で、例えば約20重量%未満の量で、例えば約15重量%未満の量で存在することができる。
【0088】
[00095]一旦、物品が、上に記載されているようにゲル押出を通してポリマー組成物から形成されると、可塑剤のうちの全てではなくてもほとんどが除去されうる。そのため、シャットダウン低下性添加剤は、最終製品中に、例えば多孔質膜中に、約3重量%超の量で、例えば約5重量%超の量で、例えば約7重量%超の量で、例えば約8重量%超の量で、例えば約10重量%超の量で、例えば約12重量%超の量で存在することができ、かつ一般に約30重量%未満、例えば約25重量%未満の量で、例えば約20重量%未満の量で、例えば約15重量%未満の量で、例えば約10重量%未満の量で存在することができる。
【0089】
[00096]ポリマー組成物から作製されたポリマー物品のシャットダウン温度に対してシャットダウン低下性添加剤が及ぼす効果は、多様な要素に依存しうる。一般に、1種または複数のシャットダウン低下性添加剤は、該ポリマー組成物の該シャットダウン温度が、シャットダウン低下性添加剤がさらなる量の高密度ポリエチレン粒子に置き換えられているポリマー組成物から作製された物品と比較して少なくとも1.8℃、例えば少なくとも2.2℃、例えば少なくとも2.5℃、例えば少なくとも2.8℃、例えば少なくとも3℃、例えば少なくとも3.3℃、例えば少なくとも3.5℃、例えば少なくとも3.8℃、例えば少なくとも4℃低下されるように、ポリマー組成物中に組み入れられる。一態様では、ポリマー組成物のシャットダウン温度は、少なくとも5℃、例えば少なくとも6℃、例えば少なくとも7℃低下される。
【0090】
[00097]添加剤の使用により低下するシャットダウン温度の量は、ポリマー組成物の最終のまたは究極のシャットダウン温度よりも幾分か重要である。例えば、本開示の添加剤は、より高いシャットダウン温度およびより優れた性能を有するポリエチレンポリマーの使用を可能にする。本開示の添加剤は、例としては、シャットダウン温度を、性質の劣ったポリエチレンポリマーの使用を通じて過去に使用されたレベル内に保つために、これらのポリマーと合わされうる。しかしながら、一般に、ポリマー組成物から作製された物品のシャットダウン温度は、133.7℃以下、例えば133.4℃以下、例えば132.9℃以下、例えば132.5℃以下、例えば132.3℃以下、例えば132℃以下、例えば131.7℃以下、例えば131.5℃以下、例えば131.3℃以下、例えば131℃以下の温度とすることができる。シャットダウン温度は、例としては、130℃以下、例えば129℃以下とすることができる。シャットダウン温度は、一般に約120℃超、例えば約125℃超である。上記シャットダウン温度は、インピーダンス試験を用いたポリマー物品の測定に基づく。
【0091】
[00098]高密度ポリエチレン粒子および少なくとも1種のシャットダウン低下性添加剤に加えて、ポリマー組成物は、可塑剤をさらに含有する。一般に、任意の好適な可塑剤が、可塑剤がゲル紡糸または押出に好適なゲル様材料を形成することが可能である限り、他の成分と合わされうる。
【0092】
[00099]可塑剤は、例としては、炭化水素油、アルコール、エーテル、エステル、例えばジエステル、またはこれらの混合物を含んでもよい。例としては、好適な可塑剤には、鉱油、パラフィン系油、デカリンなどが挙げられる。他の可塑剤には、キシレン、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n-デカン、n-ドデカン、オクタン、ノナン、ケロセン、トルエン、ナフタレン、テトラリンなどが挙げられる。一実施形態では、可塑剤は、ハロゲン化炭化水素、例えばモノクロロベンゼンを含んでもよい。シクロアルカンおよびシクロアルケンがまた使用されてもよく、例えばカンフェン、メタン、ジペンテン、メチルシクロペンタンジエン、トリシクロデカン、1,2,4,5-テトラメチル-1,4-シクロヘキサジエンなどである。可塑剤は、上記のうちのいずれかの混合物および組合せもまた含んでもよい。
【0093】
[000100]可塑剤は、一般に、ポリマー物品を形成するのに使用される組成物中に、約50重量%超の量で、例えば約55重量%超の量で、例えば約60重量%超の量で、例えば約65重量%超の量で、例えば約70重量%超の量で、例えば約75重量%超の量で、例えば約80重量%超の量で、例えば約85重量%超の量で、例えば約90重量%超の量で、例えば約95重量%超の量で、例えば約98重量%超の量で存在する。事実、可塑剤は、約99.5重量%までの量で存在することができる。
【0094】
[000101]高密度ポリエチレン粒子およびシャットダウン低下性添加剤は、可塑剤とブレンドされて、均質なゲル様材料を形成する。
[000102]本開示によるポリマー物品を形成するために、高密度ポリエチレン粒子は、シャットダウン低下性添加剤および可塑剤と合わされて、所望の形状のダイを通して押出される。一実施形態では、組成物は、押出機内で加熱されうる。例えば、可塑剤は、粒子混合物と合わされて、押出機中に供給されうる。本開示によれば、可塑剤および粒子混合物は、均質なゲル様材料を形成し、その後、押出機に、不純物がほとんどないポリマー物品から不純物がまったくないポリマー物品までを形成させる。
【0095】
[000103]一実施形態では、細長い物品が、ゲル紡糸法または押出法の間に形成される。ポリマー物品は、例としては、ファイバーまたはフィルム、例えば膜の形態にあってもよい。
【0096】
[000104]該方法の間、可塑剤のうちの少なくとも一部が、最終製品から除去される。可塑剤除去の方法は、比較的揮発性の可塑剤が使用されるときに、蒸発に起因して起こりうる。さもなければ、抽出液体が、可塑剤を除去するのに使用されうる。抽出液体は、例としては、炭化水素溶媒を含んでもよい。抽出液体の1つの例は、例としては、ジクロロメタンである。他の抽出液体には、アセトン、クロロホルム、アルカン、ヘキセン、ヘプテン、アルコール、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
[000105]所望であれば、得られたポリマー物品は、ポリマー混合物の融点未満の昇温にて延伸されて、強度および弾性を増強しうる。延伸のための好適な温度は、およそ周囲温度から約155℃の範囲内である。延伸比は、一般に約4超、例えば約6超、例えば約8超、例えば約10超、例えば約15超、例えば約20超、例えば約25超、例えば約30超とすることができる。一定の実施形態では、延伸比は、約50超、例えば約100超、例えば約110超、例えば約120超、例えば約130超、例えば約140超、例えば約150超とすることができる。延伸比は、一般に約1,000未満、例えば約800未満、例えば約600未満、例えば約400未満である。一実施形態では、より低い延伸比が用いられ、例えば約4~約10である。ポリマー物品は、一軸で伸ばされてもよく、または二軸で伸ばされてもよい。
【0098】
[000106]本開示に従って作製されたポリマー物品は、数多くの使用および用途を有する。例えば、一実施形態では、膜を製造する方法が用いられる。膜は、例としては、バッテリーセパレータとして使用されうる。あるいは、膜は、ミクロフィルターとして使用されうる。ファイバーを製造するとき、ファイバーは、不織布の布帛、ロープ、ネットなどを製造するのに使用されうる。一実施形態では、ファイバーは、防弾衣料における充填材料として使用されうる。
【0099】
[000107]図2を参照すると、本開示に従って作製されるリチウムイオンバッテリー10の一実施形態が示されている。バッテリー10は、アノード12およびカソード14を備える。アノード12は、例としては、リチウム金属から作製されうる。他方、カソード14は、硫黄から、または挿入されているリチウム金属酸化物から作製されうる。本開示によれば、バッテリー10は、多孔質膜16、またはアノード12とカソード14との間に位置されたセパレータをさらに備える。多孔質膜16は、イオン、例えばリチウムイオンの通過を可能にしながら、2つの電極間の電気的短絡を最小化する。図2に示されるように、一実施形態では、多孔質膜16は単一層ポリマー膜であり、多層構造を含まない。一態様では、単一層ポリマー膜はまた、コーティングを含んでもよい。コーティングは、例としては、酸化アルミニウムまたは酸化チタンから作製される無機コーティングとすることができる。あるいは、単一層ポリマー膜はまた、ポリマーコーティングも含んでもよい。該コーティングは、増強した耐熱性を付与することができる。
【0100】
[000108]本開示に従って作製されるポリマー組成物およびポリマー物品は、多様な他の添加剤、例えば熱安定剤、光安定剤、UV吸収剤、酸捕捉剤、難燃剤、潤滑剤、着色剤などを含有してもよい。
【0101】
[000109]一実施形態では、熱安定剤が、組成物中に存在しうる。熱安定剤には、ホスファイト、アミン抗酸化剤、フェノール抗酸化剤、またはこれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0102】
[000110]一実施形態では、抗酸化剤が、組成物中に存在しうる。抗酸化剤には、第2級芳香族アミン、ベンゾフラノン、立体障害フェノール、またはこれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0103】
[000111]一実施形態では、光安定剤が、組成物中に存在しうる。光安定剤には、2-(2’-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-アルコキシベンゾフェノン、ニッケル含有光安定剤、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロベンゾエート、立体障害アミン(HALS)、またはこれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0104】
[000112]一実施形態では、UV吸収剤が、組成物中に、光安定剤の代わりにまたは光安定剤に加えて存在しうる。UV吸収剤には、ベンゾトリアゾール、ベンゾエート、またはこれらの組合せまたはこれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0105】
[000113]一実施形態では、ハロゲン化難燃剤が、組成物中に存在しうる。ハロゲン化難燃剤には、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、テトラブロモフタル酸無水物、デデカクロロペンタシクロオクタデカジエン(デクロラン)、ヘキサブロモシクロデデカン、塩素化パラフィン、またはこれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0106】
[000114]一実施形態では、非ハロゲン化難燃剤が、組成物中に存在しうる。非ハロゲン化難燃剤には、レゾルシノール二リン酸テトラフェニルエステル(RDP)、ポリリン酸アンモニウム(APP)、ホスフィン酸誘導体、リン酸トリアリール、トリクロロプロピルホスフェート(TCPP)、水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、三酸化アンチモニーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0107】
[000115]一実施形態では、潤滑剤が、組成物中に存在しうる。潤滑剤には、シリコーン油、ワックス、二硫化モリブデン、またはこれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0108】
[000116]一実施形態では、着色剤が、組成物中に存在しうる。着色剤には、無機および有機ベースの色顔料が挙げられるがこれらに限定されない。
[000117]一態様では、酸捕捉剤が、ポリマー組成物中に存在しうる。酸捕捉剤は、例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含みうる。該塩は、脂肪酸の塩、例えばステアリン酸塩を含むことができる。他の酸捕捉剤には、炭酸塩、酸化物または水酸化物が挙げられる。ポリマー組成物中に組み入れられうる特定の酸捕捉剤には、ステアリン酸金属、例えばステアリン酸カルシウムが挙げられる。さらに他の酸捕捉剤には、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0109】
[000118]これらの添加剤は、単独で使用されてもよく、またはそれらの任意の組合せにおいて使用されてもよい。一般に、各添加剤は、ポリマー組成物中にまたは得られたポリマー物品中に、少なくとも約0.05wt.%、例えば少なくとも約0.1wt.%、例えば少なくとも約0.25wt.%、例えば少なくとも約0.5wt.%、例えば少なくとも約1wt.%の量で存在してもよく、かつ一般に約20wt.%未満、例えば約10wt.%未満、例えば約5wt.%未満、例えば約4wt.%未満、例えば約2wt.%未満の量で存在してもよい。ポリマー組成物および物品中で利用される、存在する場合に任意の添加剤を含む成分のうちの全てのwt.%の和は、100wt.%となる。
【0110】
[000119]本開示は、以下の実施例を参照して、より良く理解されうる。以下の実施例は、例示によって以下に付与され、限定によって付与されるのではない。以下の実験は、本発明の有益性および利点のうちのいくつかを示すために行った。
【実施例
【0111】
実施例1
[000120]本開示に従って作製した樹脂が、改質していない樹脂と比べて、より低いシャットダウン(SD)温度を有する膜を産生することを明示するために、以下の実施例を行った。
【0112】
[000121]多種の樹脂組成物を、多種のシャットダウン低下性添加剤を有する高密度ポリエチレンのベース樹脂を含有させて配合した。添加剤を、タンブルブレンダーを用いて、多種の重量比にある2つの異なる分子量の高密度ポリエチレンとブレンドした。樹脂組成物を、従来のように、ゲル押出、二軸延伸および溶媒抽出を介して膜へと調製した。
【0113】
[000122]本実施例では、使用するシャットダウン低下性添加剤は、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)とした。さらに他の実施例では、シャットダウン低下性添加剤は、プラストマーとした。プラストマーは、アルファ-オレフィンランダムコポリマーとした。より具体的には、使用するプラストマーは、オクテン-エチレンランダムコポリマーとした。添加剤を含有する改質した組成物のシャットダウン温度を、添加物を使用しなかった改質していない樹脂のシャットダウン温度と比較した。得た膜のシャットダウン温度を、3種の独立した方法を用いて決定した:インピーダンス分光法によって直接的に、動的熱機械分析(TMA)による軟化点を介して間接的に、および示差走査熱量測定(DSC)による融点を介して間接的に。全ての試験は延伸した膜において実施した。
【0114】
[000123]以下のサンプル組成物中、可塑剤は70重量%の量で存在し、膜の形成中にほとんど完全に除去した。押出した組成物中のおよび最終製品中のシャットダウン低下性添加剤の量を、以下の表に示す。高密度ポリエチレンポリマーが、組成物および膜の残部を構成した。以下の結果を得た。
【0115】
【表1】
【0116】
[000124]図1は、実施例1および実施例3において実施したインピーダンス試験の、グラフによる表現である。示しているように、直鎖低密度ポリエチレンを含有する実施例3は、シャットダウン温度を劇的に低下させた。シャットダウン温度は、多孔質膜の他の性質に影響を与えることなく低下した。
【0117】
実施例2
[000125]実施例1の手順を、多種の異なるシャットダウン低下性添加剤を異なる量で使用して繰り返した。シャットダウン低下性添加剤の全てを、ポリエチレンポリマー、例えば直鎖低密度ポリエチレンポリマー、高密度ポリエチレンポリマー、および低密度ポリエチレンポリマーとした。より詳細には、異なるサンプルに、以下のシャットダウン低下性添加剤を含ませた。
【0118】
【表2】
【0119】
[000126]サンプル番号38および39:サンプル番号22とサンプル番号28との50:50重量比における組合せ
[000127]サンプル番号40および41:サンプル番号30とサンプル番号34との50:50重量比における組合せ
[000128]上記シャットダウン低下性添加剤を、実施例1で記載した手順に従って、1,700,000g/molの分子量を有するベースのポリエチレン樹脂と合わせた。膜を形成し、様々な性質を測定した。以下の結果を得た。
【0120】
【表3】
【0121】
[000129]本発明に対するこれらのおよび他の変更ならびに変形は、添付の特許請求の範囲においてより詳細に示されている本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実践されうる。加えて、様々な実施形態の態様が、全体または一部の両方において互換しうることが理解されるべきである。さらに、当業者であれば、先行する説明が例のみを介するものであり、このような添付の特許請求の範囲においてさらに説明されているような本発明を限定することは意図されていないことを認めることになる。
図1
図2
【国際調査報告】