(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】治療用材料として有用な水性抗微生物組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/04 20060101AFI20230601BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20230601BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20230601BHJP
A61K 33/10 20060101ALI20230601BHJP
A61K 33/20 20060101ALI20230601BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61K33/04
A61K33/00
A61K33/42
A61K33/10
A61K33/20
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566670
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021030429
(87)【国際公開番号】W WO2021222884
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518004141
【氏名又は名称】ティグラス,リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】アタラ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】スカレラ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヤクシク,アンドルー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086HA05
4C086HA06
4C086HA08
4C086HA14
4C086HA15
4C086HA16
4C086HA17
4C086HA19
4C086HA20
4C086HA28
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086NA14
4C086ZA59
(57)【要約】
SARS-COV2および他の微生物学的病原体に対して活性な治療用材料およびその投与方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用材料であって、
反応容器中で、少なくとも7のモル濃度、22°~70°ボーメの密度および1.18~1.93の比重を有する液体形態のある体積の濃縮無機酸を、得られた組成物中に存在する固体材料を沈殿物、懸濁固体、コロイド懸濁液のうちの少なくとも1つとして製造するのに十分な体積で存在する無機水酸化物と接触させるステップ、ならびに
得られた液体材料から前記固体材料を除去するステップであって、前記得られた材料が、200~150Mのモル濃度を有する粘性材料である、ステップ、を含むプロセスによって製造された生成物と、
水と、を含み、
7未満のpHを有する、治療用材料。
【請求項2】
前記pHが5未満である、請求項1に記載の治療用材料。
【請求項3】
前記材料が、塩酸、硝酸、リン酸、塩素酸、過塩素酸、クロム酸、硫酸、過マンガン酸、青酸、臭素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ素酸、フルオロホウ酸、フルオロケイ酸、フルオロチタン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される希酸をさらに含む、請求項1または2に記載の治療用材料。
【請求項4】
前記希酸が硫酸である、請求項2に記載の治療用材料。
【請求項5】
プロセスによる前記生成物が、カルシウム、マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される100~1000ppmの無機イオンをさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の治療用材料。
【請求項6】
前記生成物が、0.25体積%~5体積%の濃度で水中に存在する、請求項5に記載の治療用材料。
【請求項7】
前記生成物が、0.5体積%~2体積%の濃度で水中に存在する、請求項5に記載の治療用材料。
【請求項8】
前記生成物が、一般式:
【化1】
を有する化合物であり、
式中、xは≧3の奇数の整数であり、
yは1~20の整数であり、
Zは多原子イオンまたは単原子イオンである、請求項1に記載の治療用材料。
【請求項9】
Zが、-1~-3の電荷を有する第14族~第17族の単原子イオンまたは-1~-3の電荷を有する多原子イオンのうちの1つであり、xが3~11の整数であり、yが1~10の整数である、請求項8に記載の治療用材料。
【請求項10】
Zが、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、クロム酸塩、重クロム酸塩、ピロリン酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の治療用材料。
【請求項11】
以下の少なくとも1つの化学量論的にバランスのとれた化学組成からなる、請求項1、2、3または4に記載の治療用材料:水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1);水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリカーボネート(1:1),水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリホスフェート,(1:1);水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリオキサレート(1:1);水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリクロメート(1:1)水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリジクロメート(1:1)、水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリピロホスフェート(1:1)、およびそれらの混合物。
【請求項12】
前記治療用材料が、人体に存在する1つ以上の微生物学的病原体に対して活性である、請求項1~4、8、11のいずれかに記載の治療用材料。
【請求項13】
前記1つ以上の微生物学的病原体が、哺乳動物の呼吸器系における1つ以上の位置に存在する、請求項12に記載の治療用材料。
【請求項14】
患者における微生物学的病原体感染症に対処するための方法であって、前記微生物学的病原体感染が、少なくとも1つの微生物学的病原体によって引き起こされ、前記方法が、
請求項1~4、8、11のいずれかに記載の組成物を、接触間隔の間、上皮組織と接触させて導入するステップであって、前記接触が、前記ヒト上皮組織と関連する少なくとも1つの微生物学的病原体の減少をもたらす、ステップを含む、方法。
【請求項15】
前記組成物が、少なくとも1回の用量で液体として導入される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、液滴として前記上皮組織と接触して少なくとも1回の用量投与で導入され、前記液滴が、0.1~20μmの平均液滴サイズを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記上皮組織が、哺乳動物の呼吸器系に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記上皮組織が、患者の副鼻腔、気管支、肺胞のうちの少なくとも1つに存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記微生物学的病原体が、パラミクソウイルス科(麻疹モルビリウイルスなど)、ヘルペスウイルス科(水痘帯状疱疹ウイルスなど);マイコバクテリア科(マイコバクテリウム・ツベルクローシスなど);オルトミクソウイルス科(インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスBなど);ピコルナウイルス科(Picornavivdae)(例えば、エンテロウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルスなど);カリシウイルス科(ノロウイルスなど);オルトコロナウイルス亜科(SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVのようなベータコロナウイルスなど)を含むコロナウイルス科;アデノウイルス科など、ブドウ球菌科(メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウスのようなスタフィロコッカス・アウレウスなど);腸球菌科(バンコマイシン耐性腸球菌を含む)、連鎖球菌科(連鎖球菌を含む)、クロストリジオイデス・ディフィシル、リステリア、コリネバクテリウム(Coynebacterium)などのグラム陽性種などの範囲内のものなどの病原体、のうちの少なくとも1つである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物学的病原体が、SARS-CoV-2である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
呼吸器疾患としてのSARS-CoV-2発現に対して活性である治療用材料としての水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月1日に出願された現在係属中の米国仮出願第63/019,258号、2021年2月1日に出願された現在係属中の米国仮出願第63/144,305号、および2020年12月4日に出願された現在係属中の米国仮出願第63,121,856号に対する優先権の利益を主張し、両方の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、1つ以上の微生物に対して活性である材料に関する。より詳細には、本開示は、細菌、ウイルスまたは真菌微生物などの微生物に対して活性である水性材料を対象とする。そのような微生物には、SARS-CoV-2などのウイルスが含まれ得るが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0003】
感染症微生物の低減または排除に使用するための抗菌化合物を同定および用いる必要性は、過小評価することはできない。様々な種類のそのような微生物は、あらゆる年齢の人々の健康、安全性および幸福に対する課題である感染症疾患を引き起こす可能性がある。様々なウイルス性および/または細菌性および/または真菌性病原体は、集団を通して容易に拡散し、多くに感染する可能性がある。これは、罹患集団における多数の個体が所与の病原体に対する自然免疫または獲得免疫を欠く場合に特に困難である。
【0004】
効果的な治療用材料および治療方法、特に回復を増大または効果的にするために個体における病原性負荷に対処し、遅延または減少させることができるものの必要性は、言い尽くせない。同様に、硬質表面が含まれるが、これに限定されない表面の洗浄および消毒は、感染症疾患の拡散を遅延させることに大きく寄与し得る。したがって、表面に見られる病原体に対して活性であり得る組成物および材料の必要性も重要である。
【0005】
例えば、特定の状況では、病原体は、SARS-CoV-2であり得る。コロナウイルス疾患2019(COVID-19)は、重症急性呼吸器コロナウイルス2[SARS-CoV-2、2019新規コロナウイルス(2019-nCoV)としても公知]への感染に起因して、2019年12月に中国のWuhanで出現し、約3%の死亡率をもたらした。この死亡率は、インフルエンザの死亡率(約0.05%)よりもはるかに高いが、米国におけるインフルエンザ関連の入院および死亡は、はるかに高い有病率で、それぞれ約280,000および16,000件である。COVID-19は、6大陸すべてに拡散している。これまで、COVID-19に対して承認された公知の治療法または予防法はない。そして、SARS-CoV-2ウイルス感染症の場合、短期および長期の臨床結果の両方を最小限に抑えるための効果的な感染後治療が緊急に必要とされている。
【0006】
1つ以上の呼吸器感染症状および/または感染を引き起こす病原体を低減または排除するために、患者においてin situで1つ以上の病原体に対して活性であり得る1つまたは複数の製剤を提供することが望ましい。また、気道に存在する組織中または組織上に存在するであろう、1つ以上の病原体によって引き起こされる感染を呈する患者を治療するか、または病原体について陽性を試験する方法を提供することも望ましい。特定の状況において組織の再生および治癒を支援することができる治療用組成物および方法を提供することも望ましいであろう。
【発明の概要】
【0007】
本明細書で開示されるのは、細菌、ウイルス、真菌またはそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの病原体に対して抗菌活性を示す組成物であって、組成物が化学式:
【0008】
【0009】
を有する化合物を含み、
式中、xは≧3の奇数の整数であり、
yは1~20の整数であり、
Zは-1~-3の電荷を有する第14族および第17族からの単原子イオンまたは-1~-3の電荷を有する多原子イオンのうちの1つである。
【0010】
ウイルス感染症および/または細菌感染症によって誘発される上気道症状および/または下気道症状の治療に有効であり得る治療用材料組成物および手順も本明細書に開示される。より具体的には、開示される治療用材料組成物および手順は、1つ以上のウイルスおよび/または細菌による感染と関連する急性症状の発現時に用いることができる。7未満のpHを有する関連治療用組成物を提供する1つ以上の無機分子を含む組成物も本明細書に開示される。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの無機酸材料を含むことができる。特定の実施形態では、組成物は、カルシウムなどの少なくとも1つの緩衝イオンを含むことができる。
【0011】
反応容器中で、少なくとも7のモル濃度、22°~70°ボーメの密度および1.18~1.93の比重を有する液体形態のある体積の濃縮無機酸を、得られた組成物中に存在する固体材料を沈殿物、懸濁固体、コロイド懸濁液のうちの少なくとも1つとして製造するのに十分な体積で存在する無機水酸化物と接触させるステップと、得られた液体材料から固体材料を除去するステップであって、得られた材料が、200~150Mのモル濃度を有する粘性材料である、ステップと、を含むプロセスによって製造された生成物を含む治療用材料も開示される。治療用材料は、水も含む。治療用材料は、7未満、特定の実施形態では5未満、特定の実施形態では3未満のpHを有することができる。
【0012】
特定の実施形態では、治療用組成物は、一般式:
【0013】
【0014】
を有する少なくとも1つの化合物を含むことができ、
式中、xは≧3の奇数の整数であり、
yは1~20の整数であり、
Zは多原子イオンまたは単原子イオンである。
【0015】
所望または必要に応じて、成分Zは、-1~-3の電荷を有する第14族~第17族の単原子イオンまたは-1~-3の電荷を有する多原子イオンのうちの1つであり、xは3~11の整数であり、yは1~10の整数である。
【0016】
本明細書に開示される組成物を、接触間隔の間、上皮組織と接触させて導入するステップを含み、接触が、ヒト上皮組織と関連する少なくとも1つの微生物学的病原体の減少をもたらす、微生物学的病原体を治療するための方法も開示される。特定の実施形態では、組成物は、好適な操作された装置を通して気化または霧化流体としてはきだすことができる。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、好適な投与間隔にわたって、気化した担体材料中に存在する開示される組成物の量を吸入によって投与することができる。特定の実施形態では、組成物中に存在する治療用材料は、好適な担体中に0.1体積%を超える濃度で存在することができる。規定された用量間隔にわたる組成物の1回以上の用量投与は、患者の呼吸器系におけるウイルス力価の低下をもたらすことができる。そのような治療に応答し得るウイルスには、SARS-CoV-2が含まれる。規定された用量間隔にわたる本明細書に開示される組成物の1回以上の用量投与は、呼吸器組織のウイルス誘発損傷の回復を加速し得る。
【0017】
反応容器中で、少なくとも7のモル濃度、22°~70°ボーメの密度および1.18~1.93の比重を有する液体形態のある体積の濃縮無機酸を、得られた組成物中に存在する固体材料を沈殿物、懸濁固体、コロイド懸濁液のうちの少なくとも1つとして製造するのに十分な体積で存在する無機水酸化物と接触させるステップと、得られた液体材料から固体材料を除去するステップであって、得られた材料が、200~150Mのモル濃度を有する粘性材料である、ステップと、を含むプロセスによって製造された水および少なくとも1つの化合物の組成物であって、細菌、ウイルス性真菌感染症、特に呼吸器領域に全体的または部分的に存在するものの治療的処置として使用される、組成物も開示される。
【0018】
本装置の様々な特徴、利点および他の使用は、以下の詳細な説明および図面を参照することによってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】400ppmのCaSO4を含む希硫酸(A)、希硫酸(B)、実施例Iで概説したプロセスに従って調製した本明細書に開示される実施形態(C)、および逆浸透水(D)について正イオン化モードで収集した質量スペクトルを示す図である。
【
図2】400ppmのCaSO4を含む希硫酸(A)、希硫酸(B)、および実施例Iで概説したプロセスに従って調製した本明細書に開示される実施形態(C)、および逆浸透水(D)について負イオン化モードで収集した質量スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
SARS-CoV-2などの病原体で汚染された材料および培地を処理するための組成物および方法が本明細書で開示される。SARS-CoV-2が含まれるが、これらに限定されないコロナウイルスによって引き起こされるウイルス感染症に関連する症状を呈する患者に対処し、治療するために使用することができる組成物および治療レジメンも本明細書に開示される。そのようなウイルスは、オルトコロナウイルス亜科(SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVのようなベータコロナウイルスなど)を含むコロナウイルス科のメンバーであり得る。
【0021】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)は、重症急性呼吸器コロナウイルス2[SARS-CoV-2、2019新規コロナウイルス(2019-nCoV)としても公知]への感染に起因して、2019年12月に中国のWuhanで出現し、約3%の死亡率をもたらした。この死亡率は、インフルエンザの死亡率(約0.05%)よりもはるかに高いが、米国におけるインフルエンザ関連の入院および死亡は、はるかに高い有病率で、それぞれ約280,000および16,000件である。COVID-19は、人口の多い主要な6大陸すべてに拡散しており、今ではパンデミックとなっている。
【0022】
SARS-CoV-2感染は、潜在的に生涯続くまたは死に至る結果をもたらし得る。ウイルスは、受容体アンジオテンシン変換酵素(ACE)を標的とすることによって呼吸器細胞に感染する。曝露後の症状の発症は、約4日であり、急速な進行は、その後1~4日以内に入院に至ることが多い。
【0023】
一般的な症状には、発熱、筋肉痛、頭痛、下痢、息切れ、ならびに喀痰および場合により喀血を伴う咳が含まれる。より重症の患者の安静時呼吸数は、毎分30回を超える可能性があり、C反応性タンパク質(CRP)レベルは、30mg/Lを超える可能性があり(正常レベルは<3mg/L)、血中酸素飽和度は、93%未満に低下する[11]。コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、急速に発達している胸膜下のすりガラス影(GGO)を示すことができ、線維症の発症の可能性がある。不良な予後はまた、異常な凝固特徴を伴う。
【0024】
このパンデミックの開始時には、COVID-19に対して承認された公知の治療法または予防法はなかった。また、SARS-CoV-2ウイルス感染症についても承認された公知の治療法または予防法はなかった。いくつかが提案され、その後の数か月で利用可能になったが、短期および長期の臨床結果の両方を最小限に抑えるための追加の効果的な感染後治療が緊急に必要とされている。
【0025】
また、他の微生物学的病原体のうちの1つによる感染に対処するのに有用な組成物も本明細書に開示される。そのような他の微生物学的病原体の非限定的な例には、以下のうちの少なくとも1つが含まれる:パラミクソウイルス科(麻疹モルビリウイルスなど)、ヘルペスウイルス科(水痘帯状疱疹ウイルスなど);マイコバクテリア科(マイコバクテリウム・ツベルクローシスなど);オルトミクソウイルス科(インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスBなど);ピコルナウイルス科(Picornavivdae)(例えば、エンテロウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルスなど);カリシウイルス科(ノロウイルスなど);アデノウイルス科など、ブドウ球菌科(メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウスのようなスタフィロコッカス・アウレウスなど);腸球菌科(バンコマイシン耐性腸球菌を含む)、連鎖球菌科(連鎖球菌を含む)、クロストリジオイデス・ディフィシル、リステリア、コリネバクテリウム(Coynebacterium)などのグラム陽性種などの範囲内のものなどの病原体。
【0026】
SARS-CoV-2の場合、コロナウイルスは、コロナウイルス科、ナイドウイルス目およびリボウイルス域(realm Ribviria)において、オルトコロナウイルス亜科を構成する。これらは、プラスセンス一本鎖RNAゲノムおよびらせん対称性のヌクレオカプシドを有するエンベロープウイルスである。コロナウイルスのゲノムサイズは、RNAウイルスの中で最大のものの1つである。それらは、それらの表面から突出する特徴的な先太のスパイクを有する。
【0027】
本開示は、呼吸器組織に関連するそのような細菌、ウイルス、または真菌感染症を呈する個体において、生物学的組織、例えば、気管支組織、肺胞組織、食道組織、副鼻腔組織などが含まれるが、これらに限定されない哺乳動物肺組織などの呼吸器組織と接触して導入された場合に、7未満のpHを有する本明細書に開示される気化または霧化された材料が、鬱血、組織炎症などが含まれるが、これらに限定されない1つ以上の症状を軽減するという予想外の発見に一部基づいている。また、本明細書に開示される気化または霧化された材料の投与は、その組織と関連する関連した微生物学的病原体量を減少させることができることも発見された。酸性化された気化組成物を肺組織と接触させて導入するステップを含む、対象の感染症を治療するための方法も開示される。
【0028】
対象の少なくとも1つの肺組織領域を、治療用材料を含む組成物と接触させるステップを含み得る、前述の微生物学的病原体のうちの1つによって全体的または部分的に引き起こされる感染症を治療するための方法も開示される。特定の実施形態では、投与される組成物は、pHが7未満の組成物を有することができる。組成物は、塩酸、硝酸、リン酸、塩素酸、過塩素酸、クロム酸、硫酸、過マンガン酸、青酸、臭素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ素酸、フルオロホウ酸、フルオロケイ酸、フルオロチタン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される希酸を含み得る。特定の実施形態では、組成物は、硫酸を含むことができる。
【0029】
所望または必要に応じて、治療用材料はまた、カルシウム、マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される100~1000ppmの無機イオンを含むことができる。特定の実施形態では、無機イオンの濃度は、100~900ppm、100~800ppm、100~700ppm、100~600ppm、100~500ppm、100~400ppm、100~300ppm、200~900ppm、200~800ppm、200~700ppm、200~600ppm、200~500ppm、200~400ppm、200~300ppm、300~900ppm、300~800ppm、300~700ppm、300~600ppm、300~500ppm、300~400ppmであり得る。
【0030】
特定の実施形態では、組成物は、解離した硫酸分子およびカルシウムなどの少なくとも1つの無機緩衝イオンを含み、測定時に7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、1未満のpHを有する。
【0031】
特定の実施形態では、硫酸およびカルシウムイオンを含む治療用材料は、
反応容器中で、少なくとも7のモル濃度、22°~70°ボーメの密度および1.18~1.93の比重を有する液体形態のある体積の濃縮無機酸を、得られた組成物中に存在する固体材料を沈殿物、懸濁固体、コロイド懸濁液のうちの少なくとも1つとして製造するのに十分な体積で存在する無機水酸化物と接触させるステップと、
得られた液体材料から固体材料を除去するステップであって、得られた材料が、200~150Mのモル濃度を有する粘性材料である、ステップと、
を含むプロセスによって製造することができる。
【0032】
本明細書に開示される組成物は、好適な無機水酸化物を好適な無機酸に添加することによって形成することができる。無機酸は、22°~70°ボーメの密度を有し得、約1.18~1.93の比重を有する。特定の実施形態では、無機酸は、50°~67°ボーメの密度を有し、1.53~1.85の比重を有することが想到される。無機酸は、単原子酸または多原子酸のいずれかであり得る。
【0033】
用いられる無機酸は、均質であってもよく、または定義されたパラメータ内に入る様々な酸化合物の混合物であってもよい。酸は、想到されるパラメータの範囲外であるが、他の材料と組み合わせて指定された範囲の平均酸組成値を提供する1つ以上の酸化合物を含む混合物であり得ることも想到される。用いられる1つまたは複数の無機酸は、任意の好適なグレードまたは純度であり得る。特定の場合には、技術グレードおよび/または食品グレードの材料は、様々な用途に首尾よく用いることができる。必要に応じて、1つまたは複数の無機酸は、より高純度のグレードであり得る。
【0034】
本明細書の生成物の調製では、無機酸成分は、任意の好適な体積で液体形態の任意の好適な反応容器に収容することができる。様々な実施形態では、反応容器は、好適な体積の非反応性ビーカーであり得ることが想到される。用いられる酸の体積は、50ml程度に小さくすることができる。5000ガロン以上を含む大容量もまた、本開示の範囲内であると考えられる。
【0035】
無機酸は、周囲温度または周囲温度付近などの好適な温度で反応容器中に維持することができる。初期無機酸を約23°~約70℃の範囲に維持することは、本開示の範囲内である。しかしながら、15°~約40℃の範囲のより低い温度も用いることができる。
【0036】
無機酸は、約0.5HP~3HPの範囲の機械的エネルギーを付与するために好適な手段によって撹拌され、1~2.5HPの機械的エネルギーを付与する撹拌レベルが、プロセスの特定の用途に用いられる。撹拌には、DCサーボドライブ、電気インペラ、磁気撹拌器、化学誘導子などが含まれるが、これらに限定されない種々の好適な機械的手段によって付与することができる。
【0037】
撹拌は、水酸化物添加の直前から開始することができ、水酸化物導入ステップの少なくとも一部の間の間隔にわたって継続することができる。
【0038】
本明細書に開示されるプロセスでは、最適な酸材料は、少なくとも7以上の平均モル濃度(M)を有する濃縮酸であり得る。特定の手順では、平均モル濃度は、少なくとも10以上であり、7~10の平均モル濃度は、特定の用途において有用である。用いられる最適な酸性材料は、純粋な液体、液体スラリー、または本質的に濃縮された形態の溶解した酸の水溶液として存在してもよい。
【0039】
好適な酸性材料は、水性材料または非水性材料のいずれかであり得る。好適な酸材料の非限定的な例には、塩酸、硝酸、リン酸、塩素酸、過塩素酸、クロム酸、硫酸、過マンガン酸、青酸、臭素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ素酸、フルオロホウ酸、フルオロケイ酸、フルオロチタン酸のうちの1つ以上を含むことができる。
【0040】
特定の実施形態では、用いられる液体濃強酸の規定体積は、55°~67°ボーメの比重を有する硫酸であり得る。この材料を反応容器に入れ、16°~70℃の温度で機械的に撹拌することができる。
【0041】
開示された方法の特定の具体的な用途では、測定された規定量の好適な水酸化物材料を、測定された規定量で非反応性容器中に存在する撹拌酸、例えば濃硫酸に添加することができる。添加される水酸化物の量は、沈殿物および/または懸濁固体もしくはコロイド懸濁液として組成物中に存在する固体材料を製造するのに十分な量である。用いられる水酸化物材料は、水溶性または部分的に水溶性の無機水酸化物であり得る。本明細書に開示されるプロセスで用いられる部分的に水溶性の水酸化物は、一般に、それらが添加される酸性材料との混和性を示すものである。好適な部分的に水溶性の無機水酸化物の非限定的な例は、関連する酸に少なくとも50%の混和性を示すものである。無機水酸化物は、無水または水和のいずれかであり得る。
【0042】
水溶性無機水酸化物の非限定的な例には、単独で、または互いに組み合わせてのいずれかで水溶性アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、および希土類水酸化物が含まれる。他の水酸化物も、本開示の範囲内にあると考えられる。この用語としての「水溶性」は、用いられる水酸化物材料と併せて定義され、標準温度および標準圧力で水に75%以上の溶解特性を示す材料と定義される。利用される水酸化物は、典型的には、酸性材料に導入することができる液体材料である。水酸化物は、真溶液、懸濁液または超飽和スラリーとして導入することができる。特定の実施形態では、水溶液中の無機水酸化物の濃度は、それが導入される関連する酸の濃度に依存し得ることが想到される。水酸化物材料に好適な濃度の非限定的な例は、5モルの材料の5~50%を超える水酸化物濃度である。
【0043】
好適な水酸化物材料には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、および/または水酸化銀が含まれるが、これらに限定されない。無機水酸化物溶液は、用いられる場合、5モルの材料の5~50%の無機水酸化物濃度を有し得、5~20%の濃度が特定の用途で用いられる。無機水酸化物材料は、特定のプロセスでは、例えば、消石灰として存在する好適な水溶液中の水酸化カルシウムであり得る。
【0044】
開示されるプロセスでは、液体または流体形態の無機水酸化物は、規定の共振時間を提供するために、規定の間隔にわたって1つ以上の計量体積で撹拌酸材料に導入される。概説したプロセスにおける共振時間は、本明細書に開示されているヒドロニウムイオン材料が発生する環境を促進および提供するのに必要な時間間隔であると考えられる。本明細書に開示されるプロセスで用いられる共振時間間隔は、典型的には、12~120時間であり、24~72時間の共振時間間隔およびその中の増分が、特定の用途で利用される。
【0045】
プロセスの様々な用途では、無機水酸化物は、複数の計量体積で撹拌体積の上面で酸に導入される。典型的には、無機水酸化物材料の総量は、共振時間間隔にわたって複数の測定部分として導入される。多くの場合、フロントロード計量添加が用いられる。「フロントロード計量添加」は、この用語が本明細書で使用される場合、共振時間の初期部分の間により多くの部分が添加される全水酸化物体積の添加を意味すると解釈される。所望の共振時間の初期パーセンテージは、総共振時間の最初の25%~50%であると考えられる。
【0046】
添加される各計量体積の割合は、外部プロセス条件、in situプロセス条件、特定の材料特性などの非限定的な要因に基づいて等しいかまたは変動し得ることを理解されたい。計量体積の数は、3~12であり得ることが想到される。各計量体積の添加間の間隔は、開示されるようなプロセスの特定の用途では5~60分であり得る。実際の添加間隔は、特定の用途では60分~5時間であり得る。
【0047】
プロセスの特定の用途では、水酸化カルシウム材料の体積当たり5重量%の100mlの体積を、混合物の有無にかかわらず、66°ボーメの濃硫酸50mlに毎分2mlずつ増分して5計量で添加する。水酸化物材料を硫酸に添加すると、液体の濁度が増加する材料が製造される。液体濁度の上昇は、硫酸カルシウム固体が沈殿物として形成されることを示す。製造された硫酸カルシウムは、調整された濃度の懸濁固体および溶解固体を提供するために、連続的な水酸化物添加と調整される様式で除去することができる。
【0048】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、本明細書で定義される様式での硫酸への水酸化カルシウムの添加は、水酸化物添加時に一般に予想されるように問題のプロトンがオフガス化されないように、水素プロトン酸素化をもたらす、硫酸に関連する1つまたは複数の初期水素プロトンの消費をもたらし得ると考えられる。代わりに、1つまたは複数のプロトンは、液体材料中に存在するイオン性水分子成分と再結合する。
【0049】
所望または必要に応じて、定義された好適な共振時間が経過した後、得られた材料は、2000ガウスを超える値の非双極磁場に供され、特定の用途では200万ガウスを超える磁場が用いられている。特定の状況では、10,000ガウス~200万ガウスの磁場を用いることができると想到される。磁場は、様々な好適な手段によって製造することができる。好適な磁場発生器の非限定的な一例は、Wurzburgerの米国特許第7,122,269号明細書に見られ、その明細書は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
プロセス中に生成され、沈殿物または懸濁固体として存在する固体材料は、任意の好適な手段によって除去することができる。そのような除去手段には、以下が含まれるが、これらに限定する必要はない:重量測定、強制濾過、遠心分離、逆浸透など。
【0051】
プロセス中に生成され、沈殿物または懸濁固体として存在する固体材料は、任意の好適な手段によって除去することができる。そのような除去手段には、以下が含まれるが、これらに限定する必要はない:重量測定、強制濾過、遠心分離、逆浸透など。
【0052】
開示されるプロセスによって製造された材料は、周囲温度および50~75%の相対湿度で保存した場合に少なくとも1年間安定であると考えられる貯蔵安定性の粘性液体として存在することができる。物質の安定な電解質組成物は、様々な最終用途にそのまま使用することができる。物質の安定な電解質組成物は、平衡に荷電していない酸プロトンの総モル数の8~9%を含有する1.87~1.78モルの材料を有することができる。
【0053】
本明細書に開示されるプロセスによって製造された材料は、水素クーロメトリーおよびFTIRスペクトル分析によって滴定的に測定した場合、200~150Mの強度、特定の場合には187~178Mの強度のモル濃度を有する。材料は、1.15を超える重量範囲を有し、特定の場合には1.9を超える範囲を有する。この材料は、分析した場合、1モルの水に含有される水素に対して、1立方ml当たり最大1300体積時間のオルト水素を生じることが示されている。
【0054】
特定の実施形態では、この材料を水に導入して、本明細書で用いられる治療用材料を製造することができる。製造される使用溶液は、0.5体積%~10体積%を含有すると想到される。特定の実施形態では、治療用材料は、0.5~8体積%、0.5~7体積%、0.5~6体積%、0.5~5体積%、0.5体積%、0.5~4体積%、0.5~3体積%、0.5~2体積%、0.5~1体積%、1~10体積%1~8体積%、1~7体積%、1~6体積%、1~5体積%、1体積%、1~4体積%、1~3体積%、1~2体積%、2~10体積%2~8体積%、2~7体積%、2~6体積%、2~5体積%、2~4体積%、2~3体積%、2~10体積%2~8体積%、2~7体積%、2~6体積%、2~5体積%、2~4体積%、2~3体積%を含有する。
【0055】
これまでに概説したプロセスは、以下の一般式:
【0056】
【0057】
を有する化合物を製造することができ、
xは≧3の奇数の整数であり、
yは1~20の整数であり、
Zは-1~-3の電荷を有する第14族~第17族の単原子イオンまたは-1~-3の電荷を有する多原子イオンのうちの1つである。
【0058】
本明細書に開示される成分において、Zとして用いることができる単原子成分には、フッ化物、塩化物、ヨウ化物および臭化物などの第17族ハロゲン化物;窒化物およびリン化物などの第15族材料、ならびに酸化物および硫化物などの第16族材料が含まれる。多原子成分には、炭酸塩、炭酸水素塩、クロム酸塩、シアン化物、窒化物、硝酸塩、過マンガン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ヒドロブロマイト、ブロマイト、臭素酸塩、ヨウ化物、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩が含まれる。物質の組成物は、上に列挙した材料の単一のものから構成され得るか、または列挙した化合物のうちの1つ以上の組み合わせであり得ることが想到される。特定の実施形態では、Zは硫酸塩である。
【0059】
特定の実施形態では、xは3~9の整数であり、いくつかの実施形態では、xは3~6の整数であることが想到される。
【0060】
特定の実施形態では、yは1~10の整数であり、一方、他の実施形態では、yは1~5の整数である。
【0061】
特定の実施形態では、上記で概説したように、xは3~12の奇数の整数であり、yは1~20の整数であり、Zは-1~-3の電荷を有する第14族~第17族単原子イオンまたは-1~-3の電荷を有する多原子イオンのうちの1つであり、いくつかの実施形態では、xは3~9を有し、yは1~5の整数である。
【0062】
存在する場合、本明細書に開示されるイオン錯体は、安定であると考えられ、それを生成するために作り出された環境の存在下で酸素供与体として機能することができる。材料は、一般に安定であり、酸素供与体として機能することができる任意の好適な構造および溶媒和を有し得る。得られる溶液の特定の実施形態は、以下の式:
【0063】
【0064】
によって示されるようなイオンの濃度を含み、式中、xは≧3の奇数の整数である。
【0065】
本明細書に開示される化合物のイオンバージョンは、本開示においてヒドロニウムイオン錯体と呼ばれる個々の各イオン錯体中に7個を超える水素原子を有する固有のイオン錯体中に存在することが想到される。本明細書で使用される場合、「ヒドロニウムイオン錯体」という用語は、xが3以上の整数であるカチオンHxOx-1+を取り囲む分子のクラスタとして広く定義することができる。ヒドロニウムイオン錯体は、少なくとも4個の追加の水素分子およびそれと錯体形成した酸素分子の化学量論的割合を水分子として含み得る。したがって、本明細書のプロセスで用いることができるヒドロニウムイオン錯体の非限定的な例の式表現は、式:
【0066】
【0067】
で示すことができ、式中、xは3以上の奇数の整数であり、
yは1~20の整数であり、特定の実施形態では、yは3~9の整数である。
【0068】
本明細書に開示される様々な実施形態では、ヒドロニウムイオン錯体の少なくとも一部は、式:
【0069】
【0070】
を有するヒドロニウムイオンの溶媒和構造として存在することが想到され、
式中、xは1~4の整数であり、
yは0~2の整数である。
【0071】
そのような構造では、
【0072】
【0073】
コアは、複数のH2O分子によってプロトン化される。本明細書に開示される物質の組成物中に存在するヒドロニウム錯体は、Eigen錯体カチオン、Zundel錯体カチオンまたはこれら2つの混合物として存在できることが想到される。Eigen溶媒和構造は、H9O4+構造の中心にヒドロニウムイオンを有することができ、ヒドロニウム錯体は、3つの隣接する水分子に強く結合している。Zundel溶媒和錯体は、プロトンが2つの水分子によって等しく共有されるH5O2+錯体であり得る。溶媒和錯体は、典型的には、Eigen溶媒和構造とZundel溶媒和構造との間の平衡状態で存在する。これまで、それぞれの溶媒和構造複合体は、一般に、Zundel溶媒和構造に有利な平衡状態で存在していた。
【0074】
本開示は、少なくとも部分的には、ヒドロニウムイオンがEigen錯体に有利な平衡状態で存在する安定な材料を製造できるという予想外の発見に基づいている。本開示はまた、プロセス流中のEigen錯体の濃度の増加が、ある種の新規な増強された酸素供与体オキソニウム材料を提供することができるという予想外の発見を前提としている。
【0075】
本明細書に開示されるプロセス流は、特定の実施形態では、1.2対1~15対1のEigen溶媒和状態対Zundel溶媒和状態比を有することができ、他の実施形態では、1.2対1~5対1の比である。
【0076】
本明細書に開示される新規な増強された酸素供与体オキソニウム材料は、一般に、過剰のプロトンイオンで緩衝された熱力学的に安定な酸水溶液として説明することができる。特定の実施形態では、過剰のプロトンイオンは、遊離水素含有量によって測定される場合、10%~50%の過剰の水素イオンの量であり得る。
【0077】
特定の実施形態では、物質の組成は、以下の化学構造:
【0078】
【0079】
を有することができ、式中、xは3~11の奇数の整数であり、
yは1~10の整数であり、
Zは多原子イオンまたは単原子イオンである。
【0080】
多原子イオンは、1つ以上(on or more)のプロトンを供与する能力を有する酸に由来するイオンから誘導することができる。関連する酸は、23℃でpKa値≧1.7を有するものであり得る。用いられるイオンは、+2以上の電荷を有するものであり得る。そのようなイオンの非限定的な例には、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、ピロリン酸塩およびそれらの混合物が含まれる。特定の実施形態では、多原子イオンは、pKa値≦1.7を有する酸に由来するイオンを含む多原子イオン混合物を含む混合物に由来し得ることが想到される。
【0081】
特定の実施形態では、化合物は、以下のうちの少なくとも1つの化学量論的にバランスのとれた化学組成で構成される:水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1);水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリカーボネート(1:1),水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリホスフェート,(1:1);水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリオキサレート(1:1);水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリクロメート(1:1)水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリジクロメート(1:1)、水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリピロホスフェート(1:1),および水と混合したそれらの混合物。特定の実施形態では、化合物は、水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1)である。
【0082】
オルトコロナウイルス亜科(SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVのようなベータコロナウイルスなど)を含むコロナウイルス属のメンバーなどのウイルスによって引き起こされる微生物学的病原体感染に対処するための方法も本明細書に開示される。本方法は、本明細書に開示される組成物を、接触間隔の間、上皮組織などの呼吸器系の組織と接触させて導入するステップを含む。接触間隔は、ヒト上皮組織と関連する微生物学的病原体の減少をもたらすものである。
【0083】
治療用組成物は、治療用組成物の少なくとも一部がそれに近接する呼吸組織と接触するように、対象の呼吸器系に導入することができる。本明細書に開示される治療用組成物の少なくとも一部を標的組織と接触させて導入すると、その組織中またはその組織上に存在するウイルス量の減少をもたらすと考えられる。呼吸器組織の非限定的な例には、例えば、肺胞、気管支、食道、副鼻腔、鼻腔などに見られる上皮組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書に開示される組成物を、接触間隔の間、上皮組織と接触させて導入するステップを含む、微生物学的病原体による感染に対処するための方法であって、接触が、病原体量によって測定される場合、上皮組織に関連する少なくとも1つの病原体の減少をもたらす、方法が開示される。
【0085】
所望の場合、治療用材料は、液体、ゲル、軟膏などの中に存在する成分として投与することができる。呼吸器系感染症で起こるような患部への投与を容易にするために、噴霧、エアロゾル化、微粒子化することも想到される。
【0086】
本明細書に開示される方法は、治療用組成物の1回以上の用量を対象の呼吸器系に導入することを想到する。治療用組成物は、吸入に好適な状態にすることができる好適な担体液体中に存在することができる。所望または必要に応じて、吸入による投与および取り込みを容易にするために、好適な担体液体材料中に存在する組成物を、蒸気材料、噴霧材料、エアロゾル化材料、微粒子材料などとして投与することができる。投与は、より直接的な適用によって、特定の実施形態では、拭き取り、噴霧すすぎ、浸漬などによって行うことができる。
【0087】
材料がエアロゾル化または噴霧される場合、材料は、吸入摂取に好適なサイズを有する液滴に加工することができる。好適な液滴サイズの非限定的な例には、0.1~20μm、0.1~18μm、0.1~17μm、0.1~16μm、0.1~15μm、0.1~14μm、0.1~13μm、0.1~12μm、0.1~12μm、0.1~11μm、0.1~10μm、0.1~9μm、0.1~8μm、0.1~7μm、0.1~6μm、0.1~5μm、0.1~4μm、0.1~3μm、0.1~2μm、0.1~1μm、0.1~0.5μm、0.5~20μm、0.5~18μm、0.5~17μm、0.5~16μm、0.5~15μm、0.5~14μm、0.5~13μm、0.5~12μm、0.5~12μm、0.5~11μm、0.5~10μm、0.5~9μm、0.5~8μm、0.5~7μm、0.5~6μm、0.5~5μm、0.5~4μm、0.5~3μm、0.5~2μm、0.5~1μm、1~20μm、1~18μm、1~17μm、1~16μm、1~15μm、1~14μm、1~13μm、1~12μm、1~11μm、1~10μm、1~9μm、1~8μm、1~7μm、1~6μm、1~5μm、1~4μm、1~3μm、1~2μm、2~20μm、2~18μm、2~17μm、2~16μm、2~15μm、2~14μm、2~13μm、2~12μm、2~11μm、2~10μm、2~9μm、2~8μm、2~7μm、2~6μm、2~5μm、2~4μm、2~3のサイズを有する液滴が含まれる。
【0088】
治療することができ、病原体量を低減または排除することができる病原体感染には、パラミクソウイルス科(麻疹モルビリウイルスなど)、ヘルペスウイルス科(水痘帯状疱疹ウイルスなど);マイコバクテリア科(マイコバクテリウム・ツベルクローシスなど);オルトミクソウイルス科(インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスBなど);ピコルナウイルス科(Picornavivdae)(例えば、エンテロウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルスなど);カリシウイルス科(ノロウイルスなど);アデノウイルス科など、ブドウ球菌科(メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウスのようなスタフィロコッカス・アウレウスなど);腸球菌科(バンコマイシン耐性腸球菌を含む)、連鎖球菌科(連鎖球菌を含む)、クロストリジオイデス・ディフィシル、リステリア、コリネバクテリウム(Coynebacterium)などのグラム陽性種などの範囲内のものなどの病原体が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
SARS-CoV-2感染の場合、SARS-CoV-2感染は、潜在的に生涯続くまたは死に至る結果をもたらし得る。ウイルスは、受容体アンジオテンシン変換酵素(ACE)を標的とすることによって呼吸器細胞に感染する。曝露後の症状の発症は、約4日であり、急速な進行によりその後1~4日以内に入院に至ることが多い。一般的な症状には、発熱、筋肉痛、頭痛、下痢、息切れ、ならびに喀痰および場合により喀血を伴う咳が含まれる。より重症の患者の安静時呼吸数は、毎分30回を超える可能性があり、C反応性タンパク質(CRP)レベルは、30mg/Lを超える可能性があり(正常レベルは<3mg/L)、血中酸素飽和度は、93%未満に低下する。コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、急速に発達している胸膜下のすりガラス影(GGO)を示すことができ、線維症の発症の可能性がある。不良な予後はまた、異常な凝固特徴を伴う。
【0090】
全く予想外にも、本明細書に開示される組成物は、低pHで投与することができ、罹患組織、局所周囲組織、関連組織またはシステム全体に損傷または毒性を誘発することなく、SARS-CoV-2によって引き起こされるものなどの疾患に有効な治療を提供することができることが見出された。本明細書に開示される組成物は、独特の抗ウイルス特性を示し、COVID-19を引き起こすものなどのウイルスに対して有効である。
【0091】
[実施例I]
本明細書に開示される組成物の有効性を試験するために、98%の質量分率のH2SO4、7を超える平均モル濃度(M)および66°ボーメの比重を有する50mlの濃液体硫酸を非反応性容器に入れ、マグネチックスターラで撹拌しながら25℃に維持して液体に1HPの機械エネルギーを付与することによって材料を製造、調製する。
【0092】
撹拌が開始されると、測定量の水酸化ナトリウムを撹拌酸材料の各部分の上面に添加する。用いられる水酸化ナトリウム材料は、5M水酸化カルシウムの20%水溶液であり、5時間の間隔にわたって毎分2mlの速度で導入される5計量体積で導入し、24時間の共鳴時間を提供する。計量体積ごとの導入間隔は、30分である。
【0093】
濁度は、硫酸に水酸化カルシウムを添加して生じ、硫酸カルシウム固体の形成を示す。固体をプロセス中に定期的に沈殿させ、沈殿物を反応溶液と接触しないよう除去する。
【0094】
24時間の共振時間が完了すると、得られた材料を2400ガウスの非双極磁場に曝露し、観察可能な沈殿物および懸濁固体を2時間の間隔で製造する。得られた材料を遠心分離し、力濾過して沈殿物および懸濁固体を単離する。
【0095】
サンプルを将来の使用のために収集する。試験サンプルをFFTIRスペクトル分析に供し、水素クーロメトリーで滴定する。サンプル材料は、200~150Mの強度および187~178の強度の範囲のモル濃度を有する。材料は、1.15を超える重量範囲を有し、特定の場合には1.9を超える範囲を有する。組成物は、安定であり、平衡に荷電していない酸プロトンの総モル数の8~9%を含有する1.87~1.78モルの材料を有する。FTIR分析は、材料が式水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1)を有することを示す。この材料はまた、希硫酸および400ppmのカルシウムイオンを含むことが見出される。
【0096】
[実施例II]
本明細書に開示される液体材料の第2の実施形態は、98%の質量分率のH2SO4、7を超える平均モル濃度(M)、および66°ボーメの比重を有する50ml単位の濃液体硫酸を非反応性容器に導入し、マグネチックスターラで撹拌しながらそれぞれを25℃に維持して、各液体単位に1HPの機械エネルギーを付与することによって調製する。
【0097】
撹拌が開始されると、測定量の水酸化ナトリウムを各液体単位の撹拌酸性材料の上面に添加する。用いられる水酸化ナトリウム材料は、5M水酸化カルシウムの20%水溶液であり、5時間の間隔にわたって毎分2mlの速度で導入される5計量体積で導入し、24時間の共振時間を提供する。計量体積ごとの導入間隔は、30分である。
【0098】
濁度は、硫酸に水酸化カルシウムを添加して生じ、硫酸カルシウム固体の形成を示す。各単位中の固体をプロセス中に定期的に沈殿させ、沈殿物を反応溶液と接触しないよう除去する。
【0099】
24時間の共振時間が完了すると、得られた材料を遠心分離し、力濾過して沈殿物および懸濁固体を液体材料から単離し、それぞれの得られた材料単位をさらなる使用および分析のために収集する。
【0100】
[実施例III]
実施例Iで概説した方法に従って製造された材料の5mlを、標準温度および圧力で5mlの脱イオン蒸留水に混合する。過剰水素イオン濃度は、15体積%超と測定され、材料のpHは、1であると決定される。
【0101】
[実施例IV]
実施例IおよびIIで調製された材料をさらに評価するために、材料のサンプルを脱イオン水で希釈して、水中にそれぞれの材料を1体積%で含有する材料を得る。これらのサンプルを、希硫酸溶液、硫酸カルシウムを添加して300ppmを得る希硫酸溶液、および400ppm硫酸カルシウムを含む希硫酸、ならびに逆浸透水対照に対して評価する。
【0102】
すべてのサンプルを分析のために酸マトリックスで希釈する。EPA法200.7に従って、カルシウムおよび硫黄含有量についてThermo iCAP 6300 Duo ICP-OESを使用して試験を完了する。
【0103】
各試験材料は、初期に5%硝酸マトリックス中で単純希釈することによって調製する。較正標準は、サンプルと一致するように同じ酸マトリックス中に調製する。しかしながら、この調製は、サンプル中に存在するが較正標準には存在しない硫酸の結果であると考えられるカルシウムの高い回収率をもたらす。較正標準は、サンプルと一致させるために少量の硫酸で再調製し、100%に近いより良好なQC回収を提供するために分析を繰り返す。
【0104】
導電性を試験するために、サンプルを分析のために脱イオン水でそれぞれ希釈する。EPA法120.1に従って、導電性プローブを備えたMettler Toledo Seven Excellence Meterを使用して試験を完了する。予測された導電率の結果を表Iに示す。
【0105】
【0106】
凝固点を評価するために、USP<891>に従ってRCS-90冷却システムを装備したTA Instruments Q100 DSCを使用してサンプルを分析する。予測された結果を表IIに示す。
【0107】
【0108】
サンプルの密度および比重は、EPA法830.7300に従ってAnton Paarデジタル密度計を使用して20℃で決定する。予測された結果を表IIIに示す。
【0109】
【0110】
サンプルはまた、水素イオン含有量について滴定し、酸性度は、ASTM D1067-試験方法Aに従って8.6のpHまで測定する。試験は、pHプローブを装備したMetrohm 826 Titrandoを使用して完了した。予測された結果を表IVに示す。
【0111】
【0112】
溶液を、直接注入(カラムなし)およびエレクトロスプレーイオン化を正モードおよび負モードで使用してAgilent 1290/G6530 Q-TOF LC-MSで分析した。400ppmのCaSO4を含む希硫酸(A)、希硫酸(B)、Tydracide(C)および逆浸透水(D)についての正および負のイオン化モードで収集された代表的な質量スペクトルを
図1および2に示す。
【0113】
[実施例V]
実施例Iのそれぞれのサンプルを希釈して、5体積%の生成物を水中で製造し、少なくとも12~18ヶ月間の貯蔵安定性であることが見出される。過剰水素イオン濃度は、15%超と測定され、材料のpHは、1であると決定される。
【0114】
[実施例VI]
本明細書に開示される化合物および組成物の使用を探索するために、様々な研究が実施されてきた。実施例IIで概説したプロセスに従って製造された材料は、極性溶媒として機能することができると決定され、その濃度に応じて純水に導入されると、最終的に得られる安定な水溶液に調整することができ、pHは0と低い。製造された材料を含有する極性溶媒は、短時間の曝露後に原核生物系の細菌、ウイルスおよび真菌を破壊する能力を示し、酸-塩基平衡を維持することが公知の真核生物系の組織に対しても安全であることが示されている。
【0115】
[実施例VII]
材料の性能を確認するために、それぞれ2.5、5、15、20および25体積%の材料の水中最終濃度で溶液を調製し、SARS-CoV-2含有媒体に添加する。溶液を1分および5分の選択された時間インキュベートした。インキュベーション後、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で連続希釈を実行し、対照として食塩液を使用したVERO細胞を用いたウイルスプラークアッセイを使用して各希釈をスクリーニングした。対照食塩液は、1分および5分の曝露時間後に、プラーク形成単位/ml(PFU/ml)として測定した場合に、SARS-CoV-2生存率に有意な影響を示さなかった。2.5体積%~最大25体積%の濃度の実施例IIの材料のすべてのサンプルは、曝露の1分後および5分後の両方で、コロナウイルスであるSARS-CoV-2に対する有効性を示し、各例でプラーク形成単位/ml(PFU/ml)で5log超の減少(>99.999%)があり、検出可能な生存率はなかった。結果を表Vに示す。
【0116】
【0117】
[実施例VIII]
実施例VIで概説した材料を使用した試験を、標準的な細胞培養またはプラークアッセイ技術を使用して、以下のウイルス:単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)および2型(HSV-2)ならびにネコカリシウイルス(ノロウイルス代用物として用いた)に対して試験し、列挙したウイルスを不活性化することが見出された。
【0118】
[実施例IX]
米国感染症学会は、医療施設における薬剤耐性感染の主な原因として細菌性病原体の群を特定した。ニーモニック「ESKAPE」は、この重要な群を構成する生物、すなわちエンテロコッカス属、ブドウ球菌属、クレブシエラ属、アシネトバクター属、シュードモナス属ならびにESBL(エンテロバクターおよび大腸菌)を容易に同定するために開発された。実施例IIで概説した溶液を、実験室環境におけるESKAPE病原体の成長を中和するその能力について試験した。臨床検査標準協会によって概説された方法を使用して、それぞれ2.5体積%、1.0体積%および0.3体積%で実施例IIの組成物の3つの濃度を細菌成長阻害について試験した。試験したすべての多剤耐性ESKAPE病原体、ならびに臨床的に関連する感染症を引き起こすグラム陽性菌およびグラム陰性菌の包括的な活性調査の一部としての他の細菌一般/種(ヘモフィルス・インフルエンザ、ステノトロフォモナス・マルトフィラ、シトロバクター・フロインディ、およびセラチア・マルセセンスを含む)からの臨床分離株の成長阻害は、1体積%または2.5体積%の安定ヒドロニウム溶液のいずれかによって達成された。
【0119】
[実施例X]
実施例VIIで概説した材料を使用して実行された追加の研究は、本明細書に開示されている材料の作用が薬物耐性の一般的な機序の影響を受けないことを示唆している。実験室実験は、ESKAPE病原体ならびに現代起源および表現型の他の疾患を引き起こす細菌種の難治性臨床分離株に対する安定ヒドロニウムの抗菌活性を実証している。
【0120】
[実施例XI]
開示された材料が有することができる低いpH値を考慮して、同様のpHの硫酸に対する本明細書に開示された材料の性能を決定するために試験を実行した。実施例IIで概説したプロセスに従って調製した材料。現在の米国EPAガイドライン(870.1000)は、登録されているすべての化学物質について、ヒト曝露の可能性のある経路に従って急性または短期毒性試験を実行することを要求している。毒性試験(標準的な「Six-Pack」として公知)は、化学物質のヒトの健康への影響をシミュレートするために実験動物に対して実行される。実施例IIに開示される材料を含有する溶液の試験は、EPAガイドラインに従って50体積%の濃度で実施した。
【0121】
急性皮膚毒性試験は、試験溶液を含有する貼付剤を健康なラットの皮膚に直接適用することによって実行した。化学分類のための世界調和システム(GHS)の5つのカテゴリーの格付けによれば、安定ヒドロニウム溶液は、カテゴリー5の物質、すなわち実質的に非毒性であり、4つのカテゴリーの米国EPAの格付けによれば、カテゴリー4の製品と考えられ、製品ラベルに危険有害性表示は必要ない。
【0122】
急性経口毒性試験を実行して、健常ラットへの経口投与による単一用量から毒性を生じる可能性を決定した。データは、本質的に非毒性である、カテゴリー5のGHS口腔毒性分類およびカテゴリー4のEPA分類の割り当てと一致する。
【0123】
ラットを4時間にわたって試験材料エアロゾル(粒子径1~4ミクロン)に連続的に曝露した急性吸入毒性試験を実行した。すべての動物は、溶液で飽和した試験雰囲気への曝露を生き延び、試験中に体重が増加し、剖検中に肉眼的異常は見られなかった。
【0124】
試験材料溶液はまた、試験対象としてより感受性の高いウサギ種を使用した一次皮膚刺激性試験で評価した。これらのデータは、試験材料溶液を、GHSスケールおよびEPAスケールの両方での皮膚刺激についての最低毒性カテゴリーに割り当てる。
【0125】
ウサギモデルを使用して、100マイクロリットル滴の5%濃度の試験材料溶液を健康な動物のそれぞれの片眼に滴下することによって、一次眼刺激性を測定し、19.7の総数値スコアおよび眼に対して中程度に刺激性であるとしての分類を得た(EPAカテゴリー3、GHSカテゴリー2B)。
【0126】
試験材料溶液が、げっ歯類の皮膚を感作する能力を有するかどうかを決定するために、マウスにおいて局所リンパ節アッセイ(LLNA)を実行し、リンパ節における免疫細胞増殖を直接測定した。結果は、試験材料溶液が接触皮膚感作剤であるとは考えられず、GHSまたはEPAによる分類を必要としないことを示した。
【0127】
これらの主要な研究からの結果は、本明細書に開示される材料を含有する溶液が多くのウイルスおよび細菌に対して有効であることを実証している。この溶液は、「Six-PC」EPA毒性試験パラダイムに従って安全であると考えられる。腐食性が高く、毒性が高い従来の酸性生成物とは異なり、本明細書に開示される材料を含有する溶液は、ほとんどのカテゴリーにおいて最も低い化学毒性等級を割り当てることができ、眼に対して中程度にしか刺激しない。本明細書に開示される材料を含有する溶液は、低コストで環境に優しいグリーン化学が好ましい表面除染のための技術グレードの原料として安全かつ効果的に使用される可能性を有する。組織表面、経口摂取および肺吸入で実証された安全性プロファイルのために、本明細書に開示される材料を含有する溶液はまた、COVID-19患者において治療的に使用される可能性を有する。
【0128】
[実施例XII]
実施例IIの5体積%材料を、4部の水対1部の材料の比で蒸留脱イオン水で希釈し、滴下器を備えた2オンス/60mlガラス瓶に包装する。
【0129】
[実施例XIII]
実施例IVで概説した材料のそれぞれ2mlのアリコートをPARIネブライザーに導入して、好適なネブライザーマスクとして吸入によってそれぞれの各対象に投与することができる2.5μmの粒子径を製造する。ネブライザーをオンにすると、材料は、好適に噴霧される。
【0130】
[実施例XIV]
PCR検査によって確認され、急性呼吸窮迫を含むまでの様々な呼吸器症状を呈する、COVID19の症例が確認された100人の個体は、それぞれ、PARIネブライザーを介して7日間、3~4時間毎に2mlの用量を、毎日4回(それぞれ10分の治療間隔)受ける。本明細書に開示される材料の有効性を評価するために、対象を、実施例IVの組成物を受けるA群(67人の個体)またはB群のいずれかに無作為化し、一方、33人の条件および年齢は、生理食塩液のプラセボを受ける対象に一致した。各個体の治療は、COVID19が確認されたら直ちに開始し、治療後14日間ならびに治療完了後3週目および4週目ならびに治療後3ヶ月目にフォローアップ訪問する。
【0131】
実施例II、XIおよびXIIの組成物で治療した個体を7日目に評価し、個体の少なくとも50%が呼吸器症状がないことを実証している。14日目に、これらの個体は、標準的なPCR検査に基づいたCOVID-19についての検査で陰性と出る。
【0132】
[実施例XV]
それぞれ0.1体積%、0.5体積%、0.75体積%、1.0体積%、2.0体積%および5.0体積%の濃度値の生理食塩液中の実施例IIのプロセスに従って調製された組成物から構成される組成物の安全性を確立するために動物研究を実施する。
【0133】
研究では、試験ラットを用い、それぞれの組成物を、ヒトにおいてPARIネブライザーによって製造されたものをシミュレートするように構成された条件下で各試験対象の肺に送達する。試験対象には、最大14日間、3時間間隔で1日4回、10分間間隔で特定の濃度で投薬する。試験対象のさらなる群に、同じ条件下で対照として生理食塩水を投薬する。吸入投薬を受けていない対照群を組み立てる。
【0134】
各試験コホートの一部を7日、10日および14日目に安楽死させる。肺組織を目視検査および組織学的検査に供する。試験材料を受けた対象と生理食塩水処置を受けた対象との間で、肺組織(ling tissue)の分解は観察されない。
【0135】
[実施例XV]
PCR鼻咽頭スワブによって確認される陽性COVID検査結果を呈する成人男性は、20~30%の酸素飽和度値を有する。対象は、実施例Iのプロセスに従って調製された0.5体積%の水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1)組成物の吸入組成物で治療する。材料は、10mlのアリコート(alequot)中に10分間隔で4回、24時間間隔で投与される。24時間後の酸素飽和度は、85%と測定される。
【0136】
概説した治療をさらに24時間継続する。治療開始後48時間、治療開始後72時間および治療開始後7日および治療開始後14日に実施したPCR検査は、SARS-COV2について陰性である。
【0137】
ARDSの症状を呈する成人女性は、PCR検査によりCOVIDを有すると診断される。対象は、パルスオキシメトリによって測定される場合、50%の酸素飽和度を有する。対象は、実施例Iのプロセスに従って調製された0.75体積%の水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1)組成物の吸入組成物で治療する。材料は、10mlのアリコート中に10分間隔で4回、24時間間隔で投与される。24時間後の酸素飽和度は、90%と測定される。
【0138】
概説した治療をさらに24時間継続する。治療開始後48時間、治療開始後72時間および治療開始後7日および治療開始後14日に実施したPCR検査は、SARS-COV2について陰性である。
【0139】
[実施例XVI]
呼吸器感染および発熱の症状を呈する成人男性は、PCR検査によってCOVIDを有すると診断される。対象は、パルスオキシメトリによって測定される場合、70%の酸素飽和度を有する。対象は、実施例Iのプロセスに従って調製された1体積%の水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1)組成物の吸入組成物で治療する。材料は、10mlのアリコート中に10分間隔で4回、24時間間隔で投与される。24時間後の酸素飽和度は、90%と測定される。対象は、治療開始後36時間で無発熱状態である。
【0140】
概説した治療をさらに24時間継続する。治療開始後48時間、治療開始後72時間および治療開始後7日および治療開始後14日に実施したPCR検査は、SARS-COV2について陰性である。
【0141】
[実施例XVII]
本明細書に開示される組成物の有効性を確認するために無作為化比較研究を実施し、SARS-CoV2に急性感染した100人の成人対象を登録することによって実施する。67(67)人の対象を、吸入によって投与される本明細書に開示される方法による組成物によって治療する。33人の状態および年齢が一致する対象を、吸入によって投与される生理食塩水で処置する。フォローアップ訪問を、対象ごとに毎日14日間、治療後3週目および4週目、ならびに3ヶ月目に実施する。
【0142】
登録参加基準には、以下の要因が含まれる:男性もしくは女性、または任意の人種もしくは民族、50歳以上、コロナウイルスによる感染の確定診断。除外基準には、呼吸性または代謝性アシドーシスを含む様々な既存の健康状態が含まれる。
【0143】
適切な安全性エンドポイントに加えて、各対象を、以下のエンドポイントのうちの1つ以上について評価する。RT-PCR検査陰性までの時間および正常な酸素飽和度(SPO2)レベルに戻るまでの時間;肺炎重症度指数、発熱から常温に回復するまでの時間;感染後の臨床改善までの時間;ならびにC反応性ペプチド(CRP)などの様々な血清バイオマーカー;Dダイマー;トロポニン;フェリチン;界面活性剤タンパク質D;アンジオポエチン-2(Ang-2);マクロファージ遊走阻害因子(MIF);細胞外ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(eNAMPT);スフィンゴシン1-リン酸受容体3(S1PR3);インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を含むサイトカイン;インターロイキン-1受容体拮抗薬(IL-1ra)。
【0144】
登録された各対象を、第1群または第2群に無作為化する。第1群に無作為化された患者は、実施例Iのプロセスに従って調製された、生理食塩水中の0.5体積%の水素(1+),トリアクア-μ3-オキソトリスルフェート(1:1)組成物を、ネブライザーを介して7日間、3~4時間ごと(それぞれ10分間の治療)に1日4回2cc受ける。第2群に無作為化された患者は、生理食塩水を、ネブライザーを介して7日間、3~4時間ごと(それぞれ10分間の治療に1日3回2cc受ける。投与は、PARIネブライザーによる。
【0145】
本明細書に開示される組成物を受ける第1群に登録された対象は、通常、陰性PCR検査を含む治療開始7日以内に症状が緩和される。
【0146】
[実施例XVIII]
実施例XVIIで概説した手順を、0.75%体積および1.0%体積の本明細書に開示されている組成物の濃度について繰り返し、同様の結果を得る。
【0147】
[実施例XIX]
提案された組成物がウイルスSARS-Cov-2以外の微生物学的病原体に対して有効であることを裏付けるために、実施例Iで調製した材料を使用して黄色ブドウ球菌ATCC6538、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス)ATCC33951、緑膿菌ATCC、1544、および緑膿菌ATCC BAA 2018に対して最小発育阻止濃度(MIC)評価を実行した。結果を表VIおよびVIIに示し、本明細書に開示される材料のMIC有効性を裏付けている。
【0148】
【0149】
【0150】
本発明は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられているものに関連して説明してきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、反対に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる様々な修正および均等な構成を網羅することを意図しており、その範囲は、法律の下で許容されるようなすべてのそのような修正および均等な構造を包含するように最も広い解釈が与えられるべきであることを理解されたい。
【国際調査報告】