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特表2023-524111サイトカインストームを治療するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】サイトカインストームを治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/133 20060101AFI20230601BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230601BHJP
【FI】
A61K31/133
A61P37/06
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/16
A61P31/14
A61P31/22
A61P31/20
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P29/00 101
A61P11/00
A61K47/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566671
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021030224
(87)【国際公開番号】W WO2021222781
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/018,308
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522426205
【氏名又は名称】トビア,アネット エム
【氏名又は名称原語表記】TOBIA, Annette M.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】トビア,アネット エム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB13
4C076CC03
4C076CC41
4C076EE59
4C206FA03
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA78
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA85
4C206MA90
4C206NA12
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA59
4C206ZB08
4C206ZB15
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB33
4C206ZB35
(57)【要約】
対象の状態を治療するための組成物および方法であって、該状態が、少なくとも部分的に、対象におけるサイトカインストームによってもたらされ、該対象に、メグルミンまたはその塩を含む該組成物を投与することを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象での障害を治療する方法であって、該障害が、少なくとも部分的に、該対象におけるサイトカインストームによりもたらされ、治療的に効果的な量のメグルミンまたはその塩を含む組成物を該対象に投与することを含む、方法
【請求項2】
組成物が、吸入、経口、経直腸、経膣、非経口、局所、経皮、経肺、皮下、鼻内、バッカル、経眼、髄腔内、非経口、静脈内、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、経路によって対象に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物が、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1月に1回、1月に2回、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される頻度で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
組成物が制御放出型製剤として対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
サイトカインストームが、細菌感染、ウイルス感染、非感染状態、、遺伝子変異、および治療活性からなる群より選択される、障害によって開始された、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細菌感染が、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、およびパンクリアタイティスからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ウイルス感染が、インフルエンザウイルス、ヒトコロナウイルス、他の非ヒトコロナウイルス、エプスタインバールウイルス、ウイルスバリオラ、デングウイルス、エボラウイルス、西ナイルウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、呼吸器ウイルス、ヘルペスサイトメガロウイルスおよび任意の上記したいずれかの変異からなる群より選択されるウイルスによる感染である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
インフルエンザウイルスが、H1N1、H5N1、ワインインフルエンザ、スペインインフルエンザ、アビアン(トリ)インフルエンザ、および任意の上記したいずれかの変異からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コロナウイルスが、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV2、および任意の上記したいずれかの変異からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
非感染状態が、対宿主移植片疾患(「GVHD」)、多発性硬化症、多臓器不全症候群、線維症、肺損傷、リウマチ性疾患、および血液がんからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
治療活性が、mAb療法およびCAR-Tからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
メグルミンまたはその塩を含む組成物を、吸入、経口、経直腸、経膣、非経口、局所、経皮、経肺、鼻内、バッカル、経眼、髄腔内、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、経路によって対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
メグルミンまたはその塩が、ドタレム(DOTAREM(登録商標))(ガドテレート-メグルミン)の許容された投与量に含有されるメグルミンの量と等しい量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
静脈内投与についてFDAの承認した用量が、10mlの溶液に0.9グラムのメグルミン(ガドテレートとイオン結合している)を含有する用量である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ドタレムのガドテレート部分の投与を含まない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
メグルミンまたはその塩が、1回に付き約0.2グラム~約10グラムの間の量で静脈内投与されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
かかる用量が1時間に1回の周期ないし6時間に約1回の周期の間で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
メグルミンまたはその塩が、1回に付き約0.2グラム~約4グラムの間の量で経口投与されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
メグルミンまたはその塩が、1回のパッチに付き約0.5グラムないし約3グラムの間の量の放出レベルで経皮投与されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
対象の状態を治療するための医薬組成物であって、該状態が、少なくとも部分的に、対象におけるサイトカインストームによってもたらされ、ここで該組成物が医薬的に許容される賦形剤と、治療的に効果的な量のメグルミンまたはその塩を体重1kgに付き約10mgと、体重1kgに付き約200mgの間の投与量範囲にて含む、医薬組成物。
【請求項21】
静脈内注射または点滴用に処方された、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
緩衝セイライン溶液中にメグルミンを約80mg/mlと約120mg/mlとの間で含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
活性成分としてメグルミンだけを含む、請求項20、請求項21または請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
活性成分として本質的にメグルミンを含む、請求項20、請求項21または請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
活性成分としてメグルミンからなる、請求項20、請求項21または請求項22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
サイトカインは、正常な免疫反応において重要な役割を果たすが、一斉に大量のサイトカインが体内に放出されることは有害であり得る。身体があまりにも早く、あまりにも多くのサイトカインを血中に放出する、そのような重度の免疫反応は「サイトカインストーム」と称される。(URLはcancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/797584である。)サイトカインストームは、多種多様な感染および非感染疾患、自己免疫症状、または他の疾患の結果として起こり得る。また、ある型の免疫療法で治療した後に発生することもある。特に、サイトカインストームは、キメラ抗原受容体(「CAR」)T細胞療法などの治療行為の意図しない結果であるとすることもできる。
(URLはblog.dana-farber.org/insight/2017/08/what-are-the-side-effects-of-car-t-cell-therapy/, accessed 4/9/2020である。)
【0002】
サイトカインストームは、公共および科学コミュニティ等の関心を引いており、炎症性サイトカインの過剰な放出または制御不能な放出という一般的な考え方が周知である。(Tisoncik, Jennifer Rら、「Into the eye of the cytokine storm.」 Microbiology and molecular biology reviews: MMBR vol. 76, 1 (2012): 16-32. doi:10.1128/MMBR.05015-11)。サイトカインは、感染症を撃退し、がんを回避することのできる、炎症性免疫学的タンパク質であり、コントロールできなくなると、ヒトは極めて危険な状態となり得る。(Cron、Cytokine Storm Syndrome, Springer, 2019。)
【0003】
NCI Dictionary of Cancer Termsでは、サイトカインストームを、身体があまりに多くのサイトカインをあまりに早く血中に放出する重度の免疫反応であるとして説明している。サイトカインストームでは、大量の白血球が活性化され、炎症性サイトカインが放出され、それが順次、さらに多くの白血球を活性化する。サイトカインストームの兆候および徴候には、高熱、炎症(発赤、および膨脹)、および強い疲労感および吐き気が含まれる。時に、サイトカインストームは重症であったり、または生命を脅かし、多臓器不全に至る可能性がある。
【0004】
サイトカインストームの他の名称は、高サイトカイン血症;サイトカイン放出症候群(「CRS」)、マクロファージ活性化症候群(「MAS」)、および血球貪食性リンパ組織球症である。薬物を投与した結果として生じる場合、サイトカインストームはまた、インフュージョン反応としても知られている。(URLはnewswise.com/articles/here-s-a-playbook-for-stopping-deadly-cytokine-storm-syndrome accessed 0/05/2020である。)
【0005】
「サイトカインストーム」なる語は、免疫系の異常、コントロール不能な炎症反応を連想させる。しかしながら、サイトカインストームを引き起こす分子事象の、このような「ストーム」が病態に及ぼす影響の、またはストームを防止するのにどのような治療法が使用できるか、またはそれが一旦始まった際にどのような治療法を用いてそれを鎮圧できるかの、十分な理解はない。(Tisoncikら、前掲。)
【0006】
「サイトカインストーム」が最初に使用されたのは、1993年に発表された、対宿主移植片疾患に関する論文であると思われる。感染症の研究における該用語の使用は、2000年初頭に、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス関連血球貪食性リンパ球減少症、A群ストレプトコッカス、インフルエンザウイルス、バローラウイルス、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(「SARS-CoV」)に関する報告にて始まった。該用語は、2005年にトリH5N1インフルエンザウイルス感染の話の中で、初めて適用されたようである。
【0007】
サイトカインストームは、大量の白血球が活性化され、炎症性サイトカインが放出される時に引き起こされる。これらのサイトカインは、順次、さらに多くの白血球を活性化させる。サイトカインストームはまた、ある種のモノクローナル抗体薬、ならびに養子T-細胞療法の副作用でもある。
【0008】
マクロファージ活性化症候群(「MAS」)の発症は、全身性若年性特発性関節炎の子供に最も一般的に起こる重症炎症のエピソードであり、サイトカインストームによって特徴付けられる。(Schulert, Grant SおよびAlexei A Grom.、「Macrophage activation syndrome and cytokine-directed therapies.」Best Practice & Research. Clinical Rheumatology vol. 28,2 (2014): 277-92. doi:10.1016/j.berh.2014.03.002。)
【0009】
サイトカイン
サイトカインは、細胞間のシグナル伝達および連絡のために細胞によって放出される多様な群のタンパク質である。特定のサイトカインは、自己分泌、傍分泌、および/または内分泌活性を有し、受容体との結合を介して種々の反応を惹起する。その反応はサイトカインと標的細胞とに依存する。サイトカインの機能としては、細胞増殖および分化の調整、血管形成および免疫や炎症反応の制御が挙げられる。多くのサイトカインは複数の、時に関連性のない機能を有する。表1に種々のサイトカインと、その各々の作用を列挙する。
【0010】
表1
【表1】
【0011】
インターフェロン
インターフェロン(「IFN」)は、ウイルスおよび他の微生物病原体に対する自然免疫において中心的役割を果たす。インターフェロンは、その受容体の特異性に基づき、3つの主な型(I型、II型およびIII型)に分類される。インターフェロンが受容体と結合すると、下流方向にシグナル伝達カスケードが始まり、それは転写因子を活性化させ、数百のIFN刺激遺伝子が抗ウイルス、抗増殖、または免疫調節特性のあるタンパク質の産物をコードするように誘発される。
【0012】
インターロイキン
インターロイキンは、免疫細胞の分化と活性化にて主に機能する、様々なファミリーの免疫系調節因子である。インターロイキンは、炎症誘発性または抗炎症性のいずれであってもよく、多種多様な反応を惹起する。
【0013】
炎症誘発性サイトカインである、IL-1αおよびIL-1βは、直接的および間接的な作用機序を介して、宿主反応を感染に媒介する。これらのサイトカインは、急性期シグナル伝達、免疫細胞の一次感染部位への移動、上皮細胞の活性化、および二次サイトカイン産生を増大させる。インフラムソームは、病原体に対する防御にてIL-1βおよびIL-18を産生する、ヌクレオチド結合ドメインおよびロイシンに富む反復配列を含有する受容体(NLR)ファミリー(NLRP3インフラムソームが最もよく特徴付けられるインフラムソームである)のメンバーを含む、細胞質の高分子複合体である。感染に対する急性期反応は、広範囲に及ぶ局所作用と、全身性変化とをもたらし、それは特異的サイトカイン産生の増加などの一般的に炎症誘発性である変化にて証明され、ウイルスのクリアランスと関連付けることができる。IL-1受容体のシグナル伝達は、急性肺免疫病理に関与しているが、IgM抗体反応を強化し、CD4+T細胞を感染部位に動員することによって、インフルエンザウイルスに感染したマウスの生存能を増大させる。
【0014】
ケモカイン
サイトカインの中で最も大きなファミリーがケモカインである。ケモカインは1または複数のGタンパク質共役型受容体と結合する。ケモカインは、化学誘引物質として機能し、細胞の、特に免疫系の細胞の移動を制御する。ケモカインはまた、杯発生、自然および適応免疫系の発達と機能、およびがんの転移などの他の過程にも関与している。大部分のケモカインは炎症性であり、ウイルス(または他の微生物)感染に対して応答し、種々の細胞によって放出されると考えられる。炎症性ケモカインが放出されると、免疫系細胞(好中球、単球/マクロファージ、およびリンパ球)の感染部位への動員がもたらされる。ケモカインとその受容体は、製薬会社によって重要な標的とされてきたが、その成果は限定的であった。
【0015】
CSF
コロニー刺激因子(「CSF」)は、造血前駆細胞の増殖および分化を刺激する。CSFには、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の3種の型がある。CSFはまた、炎症にも関連付けられる。CSFが、IL-1および腫瘍壊死因子(「TNF」)を含む、相互依存的な炎症性サイトカインネットワークの一部であり得るとの証拠がある。
【0016】
TNF
TNFは、インフルエンザウイルス、デングウイルス、およびエボラウイルスによって引き起こされる疾患を含め、急性ウイルス性疾患にて中心となるサイトカインであると現在では考えられている。TNFは種々の免疫細胞で発現し、その主な受容体である、TNFR1はあらゆる型の細胞にて発現し、このサイトカインが広く作用していることを裏付けているようである。TNFの過剰な産生は、多くの慢性炎症および自己免疫疾患と関連付けられ、TNF阻害剤は炎症性腸疾患、乾癬および関節リウマチの治療薬として承認されている。対照的に、敗血症を治療するのにTNF阻害剤の使用は未だ成功したと承認されていない。
【0017】
サイトカインストームの病態
サイトカインストームによる炎症は、局所で始まり、全身性循環を介して広がり、局所部位での発赤、腫脹または浮腫、発熱、疼痛、および機能喪失をもたらす。これらの反応は、血流を増加させ、血管白血球および血漿タンパク質を血管外の損傷部位に導き、上記した因子を惹起させ、それによって局所的反応が警告される。次に修復過程が始まり、組織および臓器の機能が回復する。重度の炎症では、局所組織構造の修復は線維化を伴う治癒となり、臓器機能障害が持続する結果となる可能性がある。
【0018】
急性肺障害(「ALI」)は、サイトカインストームの肺胞環境および全身循環での一般的な結果である。ALIは肺または他の器官での疑いのある、または証明された感染と関連している。ヒトでは、ALIは急性単核球/好中球炎症反応によって特徴付けられ、つづいて肺での進行性コラーゲン沈降でマークされる慢性線維増殖期で特徴付けられる。病原体誘発の肺損傷は、SARS-CoV、コロナウイルス病2019(「COVID-19」)およびインフルエンザ感染症で見られるような、ALIまたはそのより重度の形態である、急性呼吸窮迫症候群(「ARDS」)に進行し得る。
【0019】
サイトカインストームには、例示として重度の肺感染症が挙げられ、局所炎症が全身循環に波及し、持続的低血圧、高体温または低体温、白血球増加または白血球減少、時には血小板減少によって定義されるような、全身性敗血症を生じさせる。ウイルス、細菌、および真菌の肺感染はすべて、敗血症症候群を引き起こし、これらの病理的原因を臨床的に鑑別することは困難である。肺にて重度の微生物感染を伴わない持続的組織損傷もまた、サイトカインストーム、および敗血症症候群を真似る臨床症状に付随する、場合がある。肺感染に加えて、サイトカインストームは、消化管、尿路、中枢神経系、皮膚、関節腔、および他の部位が重度に感染した結果である。
【0020】
徴候としては、高熱、脾臓の肥大、過剰な出血、あらゆる型の血液細胞(赤血球、白血球、および血小板)の数が少ないこと、可能性として、多臓器不全が含まれる(Newswise.com, 前掲)。
【0021】
原因
サイトカインストームは多種多様な感染症および非感染症と関連付けられる。アラバマ大学バーミンガム校の小児科および医学部の教授である、Randy Cron, M.D., Ph.D.は、「症例報告でサイトカインストームと関連付けられバグが80~100例ある」と言っている(Newswise.com, 前掲)。サイトカインストームはまた、治療介入を試みた不幸な結果でもある。
【0022】
中でも次の細菌感染:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、およびパンクリアタイティスが、サイトカインストームと関連付けられる。
【0023】
サイトカインストームと関連するウイルス感染には、インフルエンザウイルス(限定されないが、H1N1、H5N1、ワインインフルエンザ、スペインインフルエンザ、およびアビアン(トリ)インフルエンザを含む)、ヒトコロナウイルス(限定されないが、コロナウイルス229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV2を含む)、他の非ヒトコロナウイルス、他のウイルス(限定されないが、エプテイン・バールウイルス(単核症を引き起こす菌株を含む)、ウイルスバリオラ、デングウイルス、およびエボラウイルス、西ナイルウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、呼吸器ウイルス、ヘルペス、サイトメガロウイルス(「CMV」)を含む)、および任意の上記のいずれかの変異株が含まれる。
【0024】
非感染状態(限定されないが、対宿主移植片疾患(「GVHD」)、多発性硬化症、多臓器不全症候群、若年性関節炎および狼瘡などのリウマチ性疾患、線維症、肺損傷、ならびに白血病およびリンパ腫のような血液がんを含む)はサイトカインストームをもたらし得る。
【0025】
治療活性はサイトカインストームをもたらし得る。T細胞上の表面受容体は、治療用モノクローナル抗体(「mAb」)によって活性化されると、サイトカインストームを引き起こし得る。最近では、がんの免疫療法としてCAR-Tを用いて治療した患者のケースでそのうちの20%~30%にもサイトカインストームが認められた。体外式膜酸素供給装置などの心肺バイパス装置を使用している特定の患者は、サイトカインストームに悩まされている。(Newswise.com. 前掲)。
【0026】
特定の遺伝子変異は、サイトカインストームから由来の死亡の危険因子である(Schulert, Grant Sら、「Whole-Exome Sequencing Reveals Mutations in Genes Linked to Hemophagocytic Lymphohistiocytosis and Macrophage Activation Syndrome in Fatal Cases of H1N1 Influenza.」The Journal of infectious diseases vol. 213,7 (2016): 1180-8. doi:10.1093/infdis/jiv550)。
【0027】
現在の治療法
Liaoらは、環状アデノシン一リン酸(「cAMP」)に対する添加剤としてメグルミンを使用することを開示しており、その添加剤はメグルミン環状アデニレート(MCA)の形態で存在する。しかしながら、MCAには、治療効果がなく、透過性向上剤として使用される(Liao, J.、Xie, J.、Lin, D.、Lu, N.、Guo, L.、Li, W.、Pu, B.、Yang, Y.、Yang, Z.、Zhang, Y.、Song, Y.、「Meglumine cyclic adenylate improves neurological function following acute spinal cord injury in rats.」Molecular Medicine Reports 10.3 (2014): 1225-1230を参照のこと)。さらには、Liaoらは、MCAの負の冠状動脈の副作用を報告する。(Jia L, Hou DH. Zhongguo Yao Li Xue Bao. 1988;9(5):421-426を参照のこと)
【0028】
米国特許出願公開番号2014/0275237(Fauldsら)は、ベラプロスト異性体を用いて、サイトカインストームに付随する病態を治療することを開示する。特定の実施態様では、ベラプロスト異性体はカチオン性部分を用いて製造された塩の形態で存在する。Fauldsはそのような塩のカチオンとして可能性のある多数の選択肢の一つにメグルミンを用いることを開示するが、治療目的のためにメグルミンを用いることの特定の治療上の利益についての教示はなく、開示された13のカチオンのうちの好ましいカチオンとしてメグルミンがあるとの示唆さえもない。
【0029】
研究者は、細胞を破壊することなく、CAR-Tよりもたらされるサイトカインストームを一時的に停止させるのに、白血病の治療用に承認されているチロシンキナーゼ阻害剤の一種である、ダサチニブ(Sprycel)を使用することを報告する。該薬物はCAR-T細胞の活性化のリン酸化工程を遮断することで作用する。しかしながら、この研究には薬物の迅速な投与が必要であった。さらには、薬物の対象に対する金銭的負担が大きくなり、危険な副作用もあるため、その使用は限定的である。(URLはmskcc.org/blog/drug-hits-car-snooze-button-can-quiet-cytokine-storm 1である)(URLはwww.webmd.com/drugs/2/drug-144641/sprycel-oral/details 2である。)
【0030】
COVID-19に関連してサイトカインストームを患っている患者は、商品名がトシリズマブの、関節リウマチ薬であるアクテムラ(Actemra)をIV注射した後に回復した。アクテムラは、COVID-19のサイトカインストームで増加する、数種のサイトカインのうちの一つのサイトカインIL-6受容体を遮断する。場合によっては、これらのアクテムラ治療では、大量のビタミンC注射(血流に通常の量の4000ないし5000倍)が補足される。(URLはrichmond.com/special-report/coronavirus/a-richmond-doctor-s-dramatic-story-of-covid-19-infection-hospitalization-and-survival/article_750722ad-7918-544d-bc4d-798d456033f6.html, accessed 4-20-2020であり;URLはwebmd.com/lung/news/20200417/cytokine-storms-may-be-fueling-some-covid-deaths, accessed 4-19-2020である。)
【0031】
サイトカインの放出の引き金となり得、その一つがカテコールアミンである、化学物質のいくつかを遮断することにより、サイトカインストームを一緒に回避することが可能であり得る。カテコールアミンは、免疫細胞において自己増殖するフィードフォワードループを介してIL-6および他のサイトカインの産生を増大させることにより、炎症性損傷を増大させる。ノンレビューの研究において、12673人以上の急性呼吸窮迫症候群(またはARDS)の医療記録は、重症のCOVID-19患者の多くに付与された診断と同じであった。しかしながら、これらの患者はCOVID-19を引き起こすウイルスに感染していなかった。データから、その診断の前の年にカテコールアミンの放出を遮断する医薬を服用している患者は、診断後に人工呼吸器を装着する必要性が、他の患者と比べて、約20%低く、その効果は統計学的に有意であることが明らかとなった。カテコールアミン合成の予防的阻害は、α1-ARアンタゴニストである、プラゾシンを用いて達成された。プラゾシンは、マウスにおけるカテコールアミンおよびサイトカインの反応を減らし、種々の高炎症性刺激の後の生存率を著しく増大させる結果となった。(Konigら、「Targeting the catecholamine-cytokine axis to prevent SARS-CoV-2 cytokine storm syndrome」)(URL doi.org/10.1101/2020.04.02.20051565。)
【0032】
サイトカインストームを緩和する方法としての薬物の使用の安全性および有効性は、実験的なものであり、その事例は、実際に、本発明者らが考えるように薬物が作用するかどうかについて確かな科学的情報を提供するものではなく、または薬物をいつ使用するべきかについて指針を示すものではない。さらには、該薬物は広く使用するためにはコスト的に高すぎることが証明された。例えば、アクテムラは1回投与に付き$3000~$5000と高価であり、その供給は限定される可能性がある。
【0033】
対象における状態を治療するための新規な組成物、および治療する方法であって、該状態が少なくとも部分的に該対象のサイトカインストームによってもたらされている、組成物および方法に対する要求が当該分野において存在する。本発明はこの要求を満たすものである。
【発明の概要】
【0034】
本発明の1の態様は、対象の障害を治療する方法であって、該障害が、少なくとも部分的に、対象におけるサイトカインストームにより惹起され、メグルミンまたはその塩を含む組成物を該対象に投与することを含む、方法を特徴とする。
【0035】
本発明の方法は、メグルミンまたはその塩、および鎮痛薬、抗生物質、抗ウイルス薬、および抗炎症剤からなる群より選択される治療剤を含む、組成物を対象に投与することをさらに含む。
【0036】
本発明の方法は、メグルミンまたはその塩を含む組成物を対象に投与することをさらに含み、さらにはサイトカインストームを引き起こす障害を緩和するのに使用されるそれらの医薬からなる群より選択される治療剤を該対象に投与することを含む。1の実施態様では、サイトカインストームを引き起こす障害は、細菌感染、ウイルス感染、非感染状態、遺伝子変異、および治療活性からなる群より選択される。1の実施態様では、細菌感染は、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、パンクリアタイティス、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、ウイルス感染は、インフルエンザウイルス、ヒトコロナウイルス、他の非ヒトコロナウイルス、エプテイン・バールウイルス(単核症を引き起こす菌株を含む)、ウイルスバリオラ、デングウイルス、エボラウイルス、西ナイルウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、呼吸器ウイルス、ヘルペス、サイトメガロウイルス、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、インフルエンザウイルスは、H1N1、H5N1、ワインインフルエンザ、スペインインフルエンザ、アビアン(トリ)インフルエンザ、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV2、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、非感染状態は、対宿主移植片疾患(「GVHD」)、多発性硬化症、多臓器不全症候群、線維症、肺損傷、リウマチ性疾患、および血液がんからなる群より選択される。1の実施態様では、リウマチ性疾患は若年性関節炎および狼瘡からなる群より選択される。1の実施態様では、血液がんは白血病およびリンパ腫からなる群より選択される。1の実施態様では、治療活性はmAb療法およびCAR-Tからなる群より選択される。
【0037】
本発明の1の態様は、対象の状態を治療するための組成物であって、該状態が、少なくとも部分的に、対象におけるサイトカインストームにより惹起され、ここで該組成物がメグルミンまたはその塩を含む、組成物を特徴とする。
【0038】
本発明の組成物は、メグルミンまたはその塩を含む。1の実施態様では、メグルミンまたはその塩は組成物に配合した唯一の有効成分である。もう一つ別の実施態様では、組成物は、鎮痛薬、抗生物質、抗ウイルス薬、および抗炎症剤からなる群より選択される治療剤を含む。
【0039】
本発明の組成物は、対象における状態を治療するための組成物であって、ここで該状態が、少なくとも部分的に、該対象でのサイトカインストームによって惹起され、ここで該サイトカインストームが外部事象によって引き起こされ、ここで該外部事象が細菌感染、ウイルス感染、非感染状態、遺伝子変異、および治療活性からなる群より選択される、組成物を含む。1の実施態様では、細菌感染は、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、パンクリアタイティス、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、ウイルス感染は、インフルエンザウイルス、ヒトコロナウイルス、他の非ヒトコロナウイルス、エプテイン・バールウイルス(単核症を引き起こす菌株を含む)、ウイルスバリオラ、デングウイルス、エボラウイルス、西ナイルウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、呼吸器ウイルス、ヘルペス、サイトメガロウイルス、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、インフルエンザウイルスは、H1N1、H5N1、ワインインフルエンザ、スペインインフルエンザ、アビアン(トリ)インフルエンザ、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV2、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、非感染状態は、対宿主移植片疾患(「GVHD」)、多発性硬化症、多臓器不全症候群、線維症、肺損傷、リウマチ性疾患、および血液がんからなる群より選択される。1の実施態様では、リウマチ性疾患は若年性関節炎および狼瘡からなる群より選択される。1の実施態様では、血液がんは白血病およびリンパ腫からなる群より選択される。1の実施態様では、治療活性はmAb療法およびCAR-Tからなる群より選択される。
【0040】
本発明の組成物は、メグルミンまたはその塩の他に、遅延放出剤、浸透促進剤、医薬的に許容される担体および放出制御成分からなる群より選択される治療剤をさらに含む。
【0041】
本発明の方法は、メグルミンまたはその塩を含む組成物を、吸入、経口、経直腸、経膣、非経口、局所、経皮、経肺、鼻内、バッカル、経眼、髄腔内、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、経路によって対象に投与することを、さらに含む。
【0042】
本発明は、メグルミンまたはその塩を含む組成物が、治療的に効果的な量にて対象に投与されることを含む、方法を含む。本発明はさらには、治療的に効果的な量がメグルミンまたはその塩を一日当たり一対象に付き4グラムよりも多い、方法を含む。1の実施態様では、本発明の方法は、治療的に効果的な量がメグルミンまたはその塩を一日当たり一対象に付き約5グラムと、メグルミンまたはその塩を一日当たり一対象に付き約100グラムとの間にある、方法を含む。1の実施態様では、本発明の方法は、治療的に効果的な量がメグルミンまたはその塩を一日当たり一対象に付き約10グラムと、メグルミンまたはその塩を一日当たり一対象に付き約80グラムとの間にある、方法を含む。1の実施態様では、本発明の方法は、治療的に効果的な量が一日当たり一対象に付き約15グラムである、方法を含む。本発明はさらには、治療的に効果的な量が対象の体重1kgに付き約500mgのメグルミンまたはその塩であること、および対象の体重1kgに付き約80mgのメグルミンまたはその塩であることを含む。本発明はさらには、治療的に効果的な量が対象の体重1kgに付き約70mgのメグルミンまたはその塩であることを含む。治療的に効果的な量は、70kgの対象が一日に付き15グラムのメグルミンまたはその塩を摂取する、用量を含む。
【0043】
1の実施態様では、本発明は、メグルミンまたはその塩を、ドタレム(DOTAREM(登録商標))(ガドテレート-メグルミン)の許容投与量にて含有されるメグルミンの量と等しい量で、投与することを含む。ドタレムは、現在、10mlの溶液中に約0.9グラムと、約10グラムとの間の、すなわち、メグルミン1mlに付き約90mgと約100mgの間の、メグルミン(ガドテレートとイオン結合している)を含有する用量での静脈内投与がFDAで承認されている。本発明は、ドタレムのガドテレート部分を投与することを必要としない。
【0044】
1の実施態様では、本発明は、メグルミンまたはその塩を1用量当たり約0.2グラム~約10グラムの間の量で静脈内投与することを含む。かかる用量は、1時間に1回の期間ないし6時間に1回の期間の間で投与され得る。
【0045】
1の実施態様では、本発明は、メグルミンまたはその塩を、1パッチに付き約0.5グラムないし約3グラムの間の量の放出レベルで経口投与することを含む。
1の実施態様では、本発明は、メグルミンまたはその塩を、1用量に付き約0.2グラムないし約4グラムの間の量で経皮投与することを含む。
【0046】
本発明はさらに、対象の状態を治療するための組成物、およびその方法であって、ここで該状態が、少なくとも部分的に、該対象でのサイトカインストームによって惹起され、ここで該方法がメグルミンまたはその塩を含む該組成物を該対象に投与することを含み、ここで該サイトカインストームがもう一つ別の疾患または障害と関連して起こる、組成物および方法を含む。1の実施態様では、他の疾患または障害は、細菌感染、ウイルス感染、非感染状態、遺伝子変異、および治療活性からなる群より選択される。1の実施態様では、細菌感染は、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、パンクリアタイティス、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、ウイルス感染は、インフルエンザウイルス、ヒトコロナウイルス、他の非ヒトコロナウイルス、エプテイン・バールウイルス(単核症を引き起こす菌株を含む)、ウイルスバリオラ、デングウイルス、エボラウイルス、西ナイルウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、呼吸器ウイルス、ヘルペス、サイトメガロウイルス、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、インフルエンザウイルスは、H1N1、H5N1、ワインインフルエンザ、スペインインフルエンザ、アビアン(トリ)インフルエンザ、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV2、および任意の上記のいずれかの変異からなる群より選択される。1の実施態様では、非感染状態は、対宿主移植片疾患(「GVHD」)、多発性硬化症、多臓器不全症候群、線維症、肺損傷、リウマチ性疾患、および血液がんからなる群より選択される。1の実施態様では、リウマチ性疾患は若年性関節炎および狼瘡からなる群より選択される。1の実施態様では、血液がんは白血病およびリンパ腫からなる群より選択される。1の実施態様では、治療活性はmAb療法およびCAR-Tからなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】メグルミンの構造を示す。 図2~7については、2人のドナーからの細胞を、各々、別個の独立した実験において用いた。細胞によって培地中に分泌されるサイトカインを、2、4、6、24および48時間後に測定した。
図2A】IL-6産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図2B】IL-6産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図3A】TNF-α産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図3B】TNF-α産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図4A】MIP 1α産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図4B】MIP 1α産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図5A】MCP 1産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図5B】MCP 1産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図6A】IL-10産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図6B】IL-10産生が種々の濃度のメグルミンの添加に応答して減少することを示す。
図7】IL-6産生がヒト細胞を40mMモルホリノフルクトースと共にインキュベートされることで刺激されることを示す。
図8】IL-6産生がリポポリサッカライド(「LPS」)の添加で刺激された細胞においてIL-6が減少することを示す。
図9】IL-1α産生がLPSの添加で刺激された細胞にメグルミンを投与することによってIL-1αが増加することを示す。
図10】IL-1β産生がLPSの添加で刺激された細胞にメグルミンを投与することによってIL-1βが減少することを示す。
図11】IL-8産生がLPSの添加で刺激された細胞にメグルミンをより高用量で投与することによってIL-8が減少することを示す。
図12】IL-9産生がLPSの添加で刺激された細胞にメグルミンをより高用量で投与することによってIL-9が減少することを示す。
図13】MIP-1α産生がLPSの添加で刺激された細胞にメグルミンをより高用量で投与することによってMIP-1αが減少することを示す。
図14】MIP-1β産生がLPSの添加で刺激された細胞にメグルミンをより高用量で投与することによってMIP-1βが減少することを示す。
図15】血管内皮増殖因子(「VEGF」)産生がLPSの添加で刺激された細胞にメグルミンをより高用量で投与することによってVEGFが減少することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
定義
特記されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるとの同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または均等な任意の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が本明細書にて説明されている。
【0049】
本明細書に使用されるように、以下の用語は、各々、このセクションにおいてその用語と関連する意味を有する。
「a」および「an」なる冠詞は、本明細書において、1または複数の冠詞の文法的対象をいうのに用いられる。例として、「要素」は1の要素または複数の要素を意味する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「添加成分」は、限定されないが、1または複数の次の成分:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;香味剤;着色剤;保存剤;ゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成物;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;沈殿防止剤;分散または湿潤剤;乳化剤、消炎剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;酸化防止剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および医薬的に許容される高分子または疎水性材料を包含する。本発明の医薬組成物に含まれ得る他の「添加成分」は、当該分野において知られており、例えば、出典明示により本明細書の一部とされる、Genaro編(1985, Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa.)において説明される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「疾患または障害の徴候を緩和する」は、該徴候の重篤度を低減させることを意味する。
「化合物」または「組成物」は、薬物と一般的に考えられる任意の型の物質または剤、あるいは薬物として用いるための候補体、ならびに上記の組み合わせおよび混合物、または該化合物の修飾バージョンまたは誘導体を意味する。
【0052】
「放出制御成分」なる語は、限定されないが、活性成分の放出制御を容易にする、ポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、浸透性膜、リポソーム、またはミクロスフィア、あるいはそれらの組み合わせを含む、化合物を意味する。
【0053】
「サイトカインストーム」は、体内であまりにも多くのサイトカインがあまりにも急速に血中に放出される重篤な免疫反応である。サイトカインストームはまた、「高サイトカイン血症」、「サイトカイン放出症候群」(「CRS」)、「マクロファージ活性化症候群」(「MAS」)、および「血球貪食性リンパ組織球症」としても知られる。薬物の投与の結果として起こる場合、サイトカインストームはまた、「インヒュージョン反応」としても知られる。
【0054】
「疾患」は、動物が恒常性を維持できない、該動物の健康状態であり、ここで該疾患が改善されない場合、その時には該動物の健康状態は悪化の一途を辿る。本明細書では、正常な老化も疾患に含まれる。
【0055】
動物の「障害」は、動物が恒常性を維持し得る、該動物の健康状態であるが、ここで該動物の健康状態が該動物において障害のない場合よりも良好でない状態をいう。治療せず放置しても、障害が必ずしも動物の健康状態をさらに低下させるわけではない。
【0056】
「ドタレム」は、URL accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2018/204781s
008lbl.pdfに説明されるように、ドタレム(登録商標)(ガドテレート-メグルミン)を意味する。
化合物の「効果的な量」または「治療的に効果的な量」は、化合物が投与される対象に有益な効果を提供するのに十分な化合物の量、または化粧品のように治療効果を提供するように外観を付与する、化合物の量である。
【0057】
「筋肉内」または「IM」は、筋肉の内または中を意味する。「筋肉内注射」は筋肉に注射することである。
「静脈内」または「IV」は、静脈に挿入された針または管を通して薬物または他の物質を付与する方法を意味する。
「変異」とは、細胞のDNA配列における任意の変化である。「変異体」とは、変異を起こした生物である。「ウイルス変異体」、「ウイルス変異」、「ウイルスの変異体」または「ウイルスの変異」は、子孫ウイルスが変異することで製造されるウイルスである。
【0058】
「末梢挿入型中心カテーテル」または「PICC」は、採血するのに、静脈内流体、薬物または輸血を含む、処置を行うのに使用される、装置である。細い柔軟な管を上腕静脈に挿入し、上大静脈に誘導する(スレッドする)。体外の部分に針を挿入し、そこを通して採血または流体を流す。末梢挿入型中心カテーテルは長期間にわたって所定の位置に留置され、針を繰り返して突き刺す必要が回避され得る。
【0059】
本明細書で使用される「浸透促進」および「浸透促進剤」は、薬理学的に活性な薬剤の浸透性が低いことに対して、皮膚または他の生物学的バリア(細胞膜または血流に対するバリアを含む)の浸透性の増加をもたらす、すなわち、薬物が該バリアを通って浸透し、バリアの反対側の領域に入る速度を増大させるための、方法および添加材料に関する。「浸透促進剤」は「侵入促進剤」と互換的に使用される。
【0060】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」なる語は、適切な化合物または誘導体と組み合わせることができ、その組み合わせた後に、その適切な化合物を対象に投与するのに使用することのできる、化学組成物を意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「生理学的に許容される」なる語のエステルまたは塩は、医薬組成物の他のあらゆる成分と適合性があり、該組成物が投与される対象に対して有害でない、かっせい成分のエステルまたは塩の形態を意味する。
【0062】
「予防的」治療とは、疾患の兆候を示さないか、該疾患の初期兆候だけを示す対象に、該疾患に付随する病理の発症のリスクを減少させる目的で投与される、治療法である。
【0063】
「皮下」とは、皮膚の下を意味する。「皮下部分」は、外科的に血管内に入れられる管であって、静脈内流体および薬物を投与するか、血液サンプルを得るために皮膚の下に設置されたディスクに取り付けられる、管である。
「治療的」治療とは、病態の兆候を示す対象に、これらの兆候を軽減または除去する目的で投与される、治療法である。
【0064】
「経皮」デリバリーとは、経皮的(または「経皮の」)および経粘膜的投与の両方を含み、すなわち、薬物が皮膚または粘膜組織を通過して血流中にデリバリーされることを意図する。経皮はまた、薬物または化合物を皮膚に局所塗布することにより、該薬物または化合物を投与するためのポータルとしての皮膚をいう。
【0065】
「局所塗布」なる語は、本明細書で使用される場合、皮膚などの表面への投与をいう。この用語は「皮膚塗布」と互換的に使用される。
本明細書で使用される場合の「治療する」なる語は、患者または対象が経験する徴候の頻度を減らすこと、あるいは徴候を経験する頻度を減らすために薬剤または化合物を投与することを意味する。
【0066】
本明細書で使用される場合の「疾患または障害を治療する」とは、該疾患または障害の徴候を患者が経験する頻度を減少させることを意味する。疾患および障害は本明細書では互換的に用いられる。本明細書で使用される場合の「野生型」なる語は、自然に発生する種の大部分のメンバーに特徴的であって、変異体の遺伝子型および表現型と対照的である、遺伝子型および表現型をいう。
【0067】
メグルミンについて
メグルミンはグルコースから誘導される糖アルコールである。それはソルビトールからも誘導される。メグルミンのIUPAC名は、(2R,3R,4R,5S)-6-(メチルアミノ)ヘキサン-1,2,3,4,5-ペントールである。メグルミンの別の名称には、N-メチル-D-グルカミン;メチルグルカミン;N-メチルグルカミン;1-デオキシ-1-(メチルアミノ)-D-グルシトール;1-デオキシ-1-メチルアミノソルビトール;N-およびメチルソルビチルアミンである。メグルミンの構造を図1に示す。
【0068】
キシリトールおよびソルビトールなどの糖アルコールは、FDAで「一般に安全と認められる」(「GRAS」)である、食品成分である。メグルミンは、現在、賦形剤として治療以外の目的で使用される。メグルミンの有害な副作用はこれまで報告されていない。
メグルミンはFDA承認の医薬用賦形剤であり、50年以上にわたって使用されており、最高用量であっても安全である。FDAのデータベースを検索すると、Inactive Ingredient Search for Approved Drug Products(URL: www.accessdata.fda.gov/
scripts/cder/iig/index.Cfm)で、メグルミンに関する検索に応答して以下のリストが得られる。
【0069】
表2
【0070】
ドタレム(DOTAREM)などのFDA承認の造影剤は、急性ボーラス用量の16グラムのメグルミン(230mg/kg)を含有する。メグルミン含有の造影剤は、ドタレムおよびクラリスカンを含む、多くの商品名で販売されている。これらの薬剤は、脳、脊椎および関連組織の磁気共鳴画像において、血液脳関門の破壊、および/または異常な血管のある領域を検出し、視覚化するのに使用されるガドリニウムをベースとする造影剤である。これらの薬剤は、通常、0.5ミリモル/mLの濃度(376.9mg/mLのガドテレート・メグルミンを含有する)でIV溶液として分配される(Fallenberg, E.M.、Renz, D.M.、Karle, B.ら、「Intraindividual, randomized comparison of the macrocyclic contrast agents gadobutrol and gadoterate meglumine in breast magnetic resonance imaging.」Eur Radiol 25, 837-849 (2015)(URLはdoi.org/10.1007/s00330-014-3426-0である))。ドタレムは、現在、10mlの溶液中に約0.9グラムのメグルミン(ガドテレートとイオン結合している)を含有する用量で静脈内投与用にFDA承認されている。本発明は、ドタレムのガドテレート部分を投与する必要はない。
【0071】
別個のメグルミン安全性のレポートを要約したデータは、メグルミン・HClが、ラット、マウスおよびイヌにおいて、臨床試験で提案されたヒト等価用量(HED)レベルよりも10倍高い用量で安全であることを示す。
本発明は、同定された化合物を医薬組成物にて投与し、本発明の方法を実施することに関するものであり、該組成物は上記の化合物またはその化合物の適切な誘導体またはフラグメントと、医薬的に許容される担体とを含む。
【0072】
1の実施態様では、本発明を実施するのに有用な医薬組成物は、1日当たり対象の体重1kgに付き1ng(1ng/kg/日)と100g/kg/日との間の用量を送達するのに投与されてもよい。もう一つ別の実施態様では、本発明を行うのに有用な医薬組成物は、1ng/kg/日と100g/kg/日との間の用量を送達するのに投与されてもよい。本発明は、メグルミンまたはその塩を含む組成物が治療的に効果的な量にて対象に投与される、方法を含む。本発明はさらには、メグルミンまたはその塩の治療的に効果的な量が1日当たり1対象に付き4グラムよりも多い、方法を含む。1の実施態様では、本発明の方法は、メグルミンまたはその塩の治療的に効果的な量が1日当たり1対象に付き約5グラムと、1日当たり1対象に付き約100グラムの間にある、方法を含む。1の実施態様では、本発明の方法は、メグルミンまたはその塩の治療的に効果的な量が1日当たり1対象に付き約10グラムと、1日当たり1対象に付き約80グラムの間にある、方法を含む。1の実施態様では、本発明の方法は、治療的に効果的な量が1日当たり1対象に付き約15グラムである、方法を含む。本発明はさらには、メグルミンまたはその塩の治療的に効果的な量が対象の体重1kgに付き約500mgと約80mgとの間にある、ことを含む。本発明はさらには、メグルミンまたはその塩の治療的に効果的な量が対象の体重1kgに付き約70mgである、方法を含む。治療的に効果的な量は、70kgの対象が1日当たり15グラムのメグルミンまたはその塩を受ける用量を包含する。本発明を実施するのに有用な医薬組成物は、10mlの溶液中に約0.9グラムのメグルミンの用量を送達するのに投与されてもよい。
【0073】
1の実施態様では、メグルミンは液体医薬組成物に処方される。これは、静脈内注射または点滴に使用され得る。製剤は一連の濃度のメグルミンを、例えば、1mLに付き少なくとも約10mg、または少なくとも約20mg、または少なくとも約30mg、または少なくとも約40mg、または少なくとも約50mg、または少なくとも約60mg、または少なくとも約70mg、または少なくとも約80mg、または少なくとも約90mg、または少なくとも約100mg、または少なくとも約110mg、または少なくとも約120mg、または少なくとも約130mg、または少なくとも約140mg、または少なくとも約150mg、または少なくとも約160mg、または少なくとも約170mg、または少なくとも約180mg、または少なくとも約190mg、または少なくとも約200mg、あるいはそれ以上で、所定の溶媒または緩衝剤の溶解限界まで含有し得る。上限は、1mLに付き約10mgまで、または約20mgまで、または約30mgまで、または約40mgまで、または約50mgまで、または約60mgまで、または約70mgまで、または約80mgまで、または約90mgまで、または約100mgまで、または約110mgまで、または約120mgまで、または約130mgまで、または約140mgまで、または約150mgまで、または約160mgまで、または約170mgまで、または約180mgまで、または約190mgまで、または約200mgまで、あるいはそれ以上で、所定の溶媒または緩衝剤の溶解限界までであってもよい。1の実施態様では、製剤は1mLに付き約10mg~約200mg、または1mLに付き約20mg~約190mg、または1mLに付き約mg~mg、または1mLに付き約30mg~約180mg、または1mLに付き約40mg~約170mg、または1mLに付き約50mg~約160mg、または1mLに付き約60mg~約150mg、または1mLに付き約70mg~約140mg、または1mLに付き約80mg~約130mg、あるいは1mLに付き約90mg~120mgを含有する。1の実施態様では、製剤は1mLに付き約90mg~約100mgのメグルミンを含有する。
【0074】
静脈内注射または点滴を介してメグルミンの液体製剤を投与するための投与量の範囲は変化し得る。1の実施態様では、体重1kgに付き例えば、約10mg、または約20mg、または約30mg、または約40mg、または約50mg、または約60mg、または約70mg、または約80mg、または約90mg、または約100mg、または約120mg、または約130mg、または約140mg、または約150mg、または約160mg、または約170mg、または約180mg、または約190mg、または約200mgのボーラス用量が投与される。
【0075】
1の実施態様では、医薬組成物は、メグルミンを、緩衝セイラインまたは他の緩衝水溶液などの生理学的に許容される担体中に含む。1の実施態様では、医薬組成物は、メグルミン活性成分を含有しない。
【0076】
当業者であれば理解されるように、本明細書に記載の開示で保護を受ける場合、本明細書において有用な組成物は、1の活性成分、すなわち、上記されるように、メグルミンを含み得る。別法として、本明細書において有用な組成物は、少なくとも2の活性成分を含み得る。1の態様において、複数の活性成分は相加的に活性であってもよい。もう一つ別の態様において、複数の活性成分は相乗的に活性であってもよい。すなわち、本発明の組成物中の複数の活性成分は、個々の単独の活性成分によって付与される治療効果の加算よりも大きい治療効果を提供し得る。限定されるものではないが、一例として、組成物は、メグルミンまたはその塩と、サイトカインストーム、または鬱血、眩暈、吐き気等などのそれに伴う障害を治療するための付加的な化合物とを含み得る。
【0077】
有用である他の医薬的に許容される担体には、グリセロール、水、セイライン、エタノール、およびリン酸塩および有機酸の塩などの他の医薬的に許容される塩の溶液が含まれるが、これらに限定されない。これらの、および他の医薬的に許容される担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1991, Mack Publication Co., New Jersey)に記載されている。
【0078】
医薬組成物は、滅菌注射可能な水性または油性懸濁液または溶液の形態で、製造、包装または販売されてもよい。この懸濁液または溶液は、既知の分野に従って処方されてもよく、活性成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、または沈殿防止剤などの付加的な成分を含んでもよい。かかる滅菌注射製剤は、例えば、水、セイライン、または1,3-ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を用いて製造されてもよい。他の許容される希釈剤および溶媒には、リンゲル液、塩化ナトリウム等張溶液、および合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの固定油が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、経口、経直腸、経腟、非経口、局所、経肺、鼻腔内、バッカル、経眼、または他の投与経路に適する製剤で、投与、製造、包装および/または販売されてもよい。他の企図される製剤には、プロジェクトのナノ粒子、リポソーム製剤、活性成分を含有する再封入赤血球、および免疫学に基づく製剤が含まれる。
【0080】
本発明の組成物は、経口、経直腸、経腟、非経口、局所、経肺、鼻腔内、バッカル、または経眼投与経路を含むが、これらに限定されない、多数の経路を介して投与され得る。投与経路は、当業者にとって自明であり、治療される疾患の型および重篤度、治療される獣医的またはヒト患者の型および年齢等を含む、多数の任意の因子に応じて変化するであろう。1の実施態様では、組成物は静脈内に投与される。1回の静脈内投与では、組成物は治療的に効果的な量にて造影剤として投与され得る。ドタレムの推奨用量は、成人および小児患者(新生児期を含む)で、静脈内ボーラス注射として体重1kgに付き0.2mL(0.1ミリモル)であり、手動により、またはパワーインジェクターで、成人患者の場合には約2mL/秒の流速で、小児患者の場合には1-2mL/秒の流速で投与される。ドタレムは、現在、10mlの溶液中に約0.9グラムのメグルミン(ガドテレートとイオン結合している)を含有する用量で静脈内投与用にFDA承認されている。本発明は、ドタレムのガドテレート部分を投与する必要はない。
【0081】
ドタレムが完全に注射されるのを保証するために、注射の後に生理食塩水をフラッシュさせてもよい。本発明の方法は、本発明の組成物を、もう一つ別の医薬組成物または付加的な成分と共に投与することをさらに含む。静脈内投与では、本発明の組成物は、本発明の組成物を投与するのに、現在のところ定位置にある、または特異的に使用されるかのいずれかで、IV注射を介して送達され得る。
【0082】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、経口固形製剤にて全身に、経眼、坐剤、エアロゾル、局所または他の同様の製剤にて投与され得る。本発明の化合物、硫酸ヘパランなどの他の化合物、またはその生物学的に均等な化合物に加えて、このような医薬組成物は、医薬的に許容される担体、および薬物の投与を強化し、促進することが知られている他の成分を含有してもよい。ナノ粒子、リポソーム、再封入赤血球、および免疫学的に基礎となる系などの他の可能性のある製剤も、本発明の方法に従って化合物を投与するのに使用されてもよい。
【0083】
組成物を種々の動物に投与するのに適するようにするために、ヒトへの投与に適する医薬組成物を修飾することが周知であり、当業者である薬学者は、あるならば、単に通常の実験によってかかる修飾を設計し、行うことができる。本発明の医薬組成物の投与が企図される対象には、ヒトおよび他の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌなどの市場と関連付けられる哺乳動物を含む哺乳類が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の方法にて有用である医薬組成物は、経口、経直腸、経腟、非経口、局所、経肺、鼻腔内、バッカル、経眼、髄腔内または他の投与経路に適する製剤で、製造、包装または販売されてもよい。他の企図される製剤には、プロジェクトのナノ粒子、リポソーム製剤、活性成分を含有する再封入赤血球、および免疫学に基づく製剤が含まれる。
【0085】
本発明の医薬組成物は、単回単位用量として、または複数の単回単位用量として大量に製造、包装または販売されてもよい。本明細書にて使用される場合の「単位用量」とは、所定量の活性成分を含む医薬組成物の分離量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与されるであろう活性成分の投与量に、または例えば、そのような投与量の2分の1または3分の1などのかかる投与量の真分数に等しい。
【0086】
本発明の医薬組成物中の活性成分、医薬的に許容される担体、および任意の付加的な成分の相対量は、治療される対象の身元、大きさ、状態に応じて、さらには組成物が投与され得る経路に応じて、変化するであろう。一例として、該組成物は、0.1%と100%(w/w)の間の活性成分を含んでもよい。
【0087】
活性成分に加えて、本発明の医薬組成物は、1または複数の付加的な医薬的に許容される活性剤をさらに含んでもよい。
本発明の医薬組成物の制御放出性または徐放性製剤は従来技術を用いて製造されてもよい。
【0088】
場合によっては、使用され得る剤形は、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、またはミクロスフィア、あるいはそれらの組み合わせを用いて、その中に含まれる1または複数の活性成分を遅延させるか、または制御放出するものとして提供され、割合を変えて、所望の放出特性を提供することができる。当該分野における当業者に公知の適切な制御放出性製剤は、本明細書に記載される製剤を含め、本発明の医薬組成物と一緒に使用するのに容易に選択され得る。かくして、制御放出に適合される錠剤、カプセル、ゲルキャップ、およびカプレットなどの経口投与に適する単回単位製剤は本発明に包含される。
【0089】
すべての制御放出性医薬品は、その非制御性のカウンターパートによって達成される薬物療法よりもそれを改善するという共通の目的を有する。理想的には、最適に設計された制御放出性製剤の医療における使用は、状態を最小限の時間で治癒または制御するのに利用される薬物が最小限であることによって特徴付けられる。制御放出性製剤の利点は、薬物の活性状態を延ばすこと、投薬の頻度を減らすこと、および患者のコンプライアンスを上げることを包含する。加えて、制御放出性製剤は、薬物の作用の発現する時間、または血中濃度などの他の特性に影響を及ぼすのに用いることができ、かくして副作用の発生に影響を及ぼすことができる。
【0090】
ほとんどの制御放出性製剤は、所望の治療効果を速やかに生じさせる量の薬物が、最初に放出され、この治療効果のレベルが長期間にわたって維持されるように、他の量の薬物を徐々に、かつ連続的に放出するように設計される。体内にて薬物のこの一定レベルを維持するためには、薬物は、代謝され、体内から排出される薬物の量に代わるであろう速度で、剤形から放出されなければならない。
【0091】
活性成分の制御放出は、種々の誘導因子、例えば、pH、温度、酵素、水、あるいは他の生理学的条件または化合物で刺激され得る。
【0092】
液体懸濁液は、活性成分の水性または油性ビヒクル中懸濁液を得るための従来の方法を用いて製造されてもよい。水性ビヒクルには、例えば、水および等張セイラインが含まれる。油性ビヒクルには、例えば、落花生油、油性エステル、エチルアルコール、アラキス、オリーブ、ゴマ、またはココナッツ油などの植物油、分画植物油、流動パラフィンなどの無機油が含まれる。液体懸濁液は、限定されないが、沈殿防止剤、分散または湿潤剤、乳化剤、消炎剤、保存剤、緩衝剤、塩、香料、着色剤、および甘味剤を含む、1または複数の付加的な成分をさらに含んでもよい。油性懸濁液はさらに増粘剤を含んでもよい。既知の沈殿防止剤には、限定されないが、ソルビトールシロップ、硬化食用油脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、アカシアガム、およびナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体が含まれる。既知の分散または湿潤剤には、限定されないが、レシチンなどの天然に存在するホスファチド、アルキレンオキシドと、脂肪酸との、直鎖脂肪族アルコールとの、脂肪酸およびヘキシトールより由来の部分エステルとの、または脂肪酸および無水ヘキシトールより由来の部分エステルとの縮合物(例えば、各々、ポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が含まれる。既知の乳化剤には、限定されないが、レシチン、およびアカシアが含まれる。既知の保存剤には、限定されないが、メチル、エチル、またはn-プロピル-パラ-ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸、およびソルビン酸が含まれる。既知の甘味剤には、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、シュークロース、およびサッカリンが含まれる。油性懸濁液用の既知の増粘剤には、例えば、ミツロウ、硬質パラフィン、およびセチルアルコールが含まれる。
【0093】
活性成分の水性または油性溶媒中の液体溶液は、液体懸濁液と実質的に同じ方法で製造され得るが、主な違いは活性成分を溶媒中に懸濁させるのではなく、溶解させることである。本発明の医薬組成物の液体溶液は液体懸濁液に関して記載されている各成分を含んでもよく、沈殿防止剤は該活性成分を溶媒に溶解させる補助となる必要は必ずしもないことが理解される。水性溶媒には、例えば、水および等張セイラインが含まれる。油性溶媒には、例えば、落花生油、油性エステル、エチルアルコール、アラキス、オリーブ、ゴマ、またはココナッツ油などの植物油、分画植物油、流動パラフィンなどの無機油が含まれる。
【0094】
本発明の医薬製剤の粉末および顆粒製剤は既知の方法を用いて製造されてもよい。かかる製剤は、対象に直接投与されてもよく、例えば、錠剤を形成するのに、カプセルを充填するのに、またはそこに水性または油性ビヒクルを添加することで水性または油性懸濁液または溶液を製造するのに用いられてもよい。これらの製剤は、各々、さらに1または複数の分散または湿潤剤、沈殿防止剤、および保存剤を含んでもよい。充填剤ならびに甘味剤、香料、または着色剤などの付加的な賦形剤もまた、これらの製剤に含まれてもよい。
【0095】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンの形態にて製造、包装または販売されてもよい。油相は、オリーブまたはアラキス油、流動パラフィンなどの鉱油、またはこれらの組み合わせなどの植物油であってもよい。かかる組成物はさらに、アカシアガムまたはトラガカントガムなどの天然に存在するガム、大豆またはレシチンホスファチドなどの天然に存在するホスファチド、ソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸と、無水ヘキシトールとの組み合わせから由来のエステルまたは部分エステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのかかる部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物などの1または複数の乳化剤を含んでもよい。これらのエマルジョンはまた、例えば、甘味剤または香料を含む、添加成分を含有してもよい。
【0096】
本明細書で使用される場合の「油性」液体は、含炭素液体分子を含み、水よりも低い極性を示す、液体である。
【0097】
経口投与に適する本発明の医薬組成物の製剤は、限定されないが、錠剤、ハードまたはソフトカプセル、カシェ、トローチ、またはロゼンジを含む、各々が所定量の活性成分を含有する、分離型固体用量単位の形態にて製造、包装または販売されてもよい。経口投与に適する他の製剤は、限定されないが、粉末状または顆粒状製剤、水性または油性懸濁液、水性または油性溶液、ペースト、ゲル、歯磨き粉、洗口液、コーティング剤、口腔リンス、またはエマルジョンを含む。口腔リンスおよび洗口液なる語は本明細書において互換的に使用される。
【0098】
本発明の医薬組成物は、経口またはバッカル投与に適する製剤で製造、包装または販売されてもよい。かかる製剤は、限定されないが、ゲル、液体、懸濁液、ペースト、歯磨き粉、洗口液または口腔リンス、およびコーティング剤を含んでもよい。例えば、本発明の口腔リンスは、本発明の化合物を約1.4%で、グルコン酸クロルヘキシジン(0.12%)、エタノール(11.2%)、サッカリンナトリウム(0.15%)、FD&C Blue No.1(0.001%)、ペパーミント油(0.5%)、グリセリン(10.0%)、ツィーン60(0.3%)、および水(100%まで適量)を含んでもよい。もう一つ別の実施態様では、本発明の歯磨き粉は、本発明の化合物を約5.5%で、水中70%ソルビトール(25.0%)、ナトリウムサッカリン(0.15%)、ラウリル硫酸ナトリウム(1.75%)、カルボポール934の6%分散液(15%)、スペアミント油(1.0%)、水酸化ナトリウムの水中50%(0.76%)、二塩基性リン酸カルシウム・二水和物(45%)、および水(100%まで適量)を含んでもよい。本明細書にて記載される製剤の例は網羅して記載するものではなく、本発明はこれらの、および本明細書に記載されていないが、当業者に公知である、他の製剤の付加的な修飾を含むものと理解される。
【0099】
活性成分を含む錠剤は、例えば、活性成分を、所望により1または複数の添加成分と一緒に圧縮または成形することによって製造され得る。圧縮錠は、活性成分を、粉末製剤または顆粒製剤などの易流動性の形態にて、所望により1または複数の結合剤、滑沢剤、賦形剤、界面活性剤、および分散剤と一緒に混合して、適切な装置で圧縮することによって製造されてもよい。成形錠は、活性成分、医薬的に許容される担体、および該混合物を湿らせるのに少なくとも十分な液体の混合物を、適切な装置にて成形することによって製造され得る。錠剤の製造に使用される医薬的に許容される賦形剤には、限定されないが、不活性な希釈剤、造粒剤および崩壊剤、結合剤、および滑沢剤が含まれる。既知の分散剤には、限定されないが、ポテト澱粉および澱粉グリコール酸ナトリウムが含まれる。既知の界面活性剤には、限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。既知の希釈剤には、限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムが含まれる。既知の造粒剤および崩壊剤には、限定されないが、トウモロコシ澱粉およびアルギン酸が含まれる。既知の結合剤には、限定されないが、ゼラチン、アカシア、アルファ化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。既知の滑沢剤には、限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、およびタルクが含まれる。
【0100】
錠剤は非コーティングであってもよく、あるいは該錠剤は対象の消化管にて遅延崩壊を達成し、それによって活性成分の徐放性および吸収の持続を提供するのに知られた方法を用いてコーティングさせてもよい。例として、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料を用いて錠剤をコーティングしてもよい。さらには、例として、錠剤を、米国特許第4,256,108号;第4,160,452号;および4,265,874号に記載の方法を用いてコーティングし、浸透圧制御放出錠を形成してもよい。錠剤は、医薬的にエレガントで、口当たりのよい製剤を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、保存剤またはこれらのいくつかの組み合わせをさらにふくんでもよい。
【0101】
活性成分を含むハードカプセルは、ゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成物を用いて製造されてもよい。かかるハードカプセルは活性成分を含み、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンなどの不活性な固体希釈剤を含む、添加成分をさらに含んでもよい。
【0102】
活性成分を含むソフトゼラチンカプセルは、ゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成物を用いて製造されてもよい。かかるソフトカプセルは活性成分を含み、水または落花生油、流動パラフィンまたはオリーブ油などの油媒体と混合されてもよい。
【0103】
経口投与に適する本発明の医薬組成物の液体製剤は、液体の形態、または使用前に水またはもう一つ別の適切なビヒクルを用いる復元を意図する乾燥品の形態のいずれかで製造、包装または販売されてもよい。
【0104】
本発明の医薬組成物は、経直腸投与に適する製剤にて製造、包装または販売されてもよい。かかる組成物は、例えば、坐剤、滞留浣腸製剤、および直腸または結腸の潅注用溶液の形態であってもよい。
【0105】
坐剤製剤は、活性成分を、通常の室温(すなわち、約20℃)で固体であり、対象の直腸の温度(すなわち、健康なヒトで約37℃)で液体である、非刺激性の医薬的に許容される賦形剤と組み合わせることにより製造されてもよい。適切な医薬的に許容される賦形剤には、限定されないが、ココアバター、ポリエチレングリコール、および種々のグリセリドが含まれる。坐剤製剤は、限定されないが、酸化防止剤、および保存剤を含む、様々な添加成分をさらに含んでもよい。
【0106】
直腸または結腸灌流のための滞留浣腸製剤または溶液は、活性成分を医薬的に許容される液体担体と組み合わせることによって製造されてもよい。当該分野において周知であるように、浣腸製剤は、対象の直腸解剖学に適合した送達装置を用いて投与されてもよく、またはその中に包装されてもよい。浣腸製剤は、限定されないが、酸化防止剤、および保存剤を含む、様々な添加成分をさらに含んでもよい。
【0107】
本発明の医薬組成物は、膣内投与に適した製剤において製造、包装または販売されてもよい。かかる組成物は、例えば、坐剤、タンポンなどの含浸または被覆された膣に挿入可能な材料、潅水製剤、あるいは膣潅流のためのゲルもしくはクリームまたは溶液の形態であってもよい。
【0108】
材料を化学組成物で含浸またはコーティングする方法は当該分野において知られており、限定されないが、化学組成物を表面に堆積または結合させる方法、化学組成物を材料を合成する間に該材料の構造内に組み込む方法(すなわち、生理学的に分解可能な材料を用いるなど)、および水性または油性溶液または懸濁液を吸収性材料に吸収させ、その後で乾燥させ、またはさせない方法を包含する。
【0109】
非経口投与に適する医薬組成物の製剤は、活性成分を、滅菌水または滅菌等張セイラインなどの医薬的に許容される担体と組み合わせることを含む。かかる製剤は、ボーラス投与に、または連続投与に適する形態において製造、包装または販売されてもよい。注射製剤は、アンプルに入れた、または保存剤を配合した複数回投与用容器に入れた単位剤形において製造、包装または販売されてもよい。非経口投与用製剤は、限定されないが、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、および移植可能な徐放性または生分解性製剤を包含する。かかる製剤は、限定されないが、沈殿防止剤、安定化剤、または分散剤を含む、1または複数の添加成分をさらに含んでもよい。非経口投与用の製剤の1の実施態様では、活性成分は、復元された組成物を非経口投与する前に、適切なビヒクル(例えば、パイロジェンフリー滅菌水)で復元する乾燥した(すなわち、粉末または顆粒の)形態にて提供される。
【0110】
医薬組成物は、滅菌注射可能な水性または油性懸濁液または溶液の形態において製造、包装または販売されてもよい。この懸濁液または溶液は既知の技術に従って処方されてもよく、活性成分に加えて、本明細書に記載される分散剤、湿潤剤、または沈殿防止剤などの添加成分を含んでもよい。かかる滅菌注射可能な製剤は、例えば、水、セイライン、または1,3-ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を用いて製造されてもよい。他の許容される希釈剤および溶媒には、限定されないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノまたはジグリセリドなどの固定油が含まれる。有用である、他の非経口投与可能な製剤は、活性成分を微結晶の形態にて、リポソーム製剤中に、または生分解性ポリマー系の成分として含むものを包含する。徐放性または移植用の組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩などの医薬的に許容されるポリマーまたは疎水性材料を含んでもよい。
【0111】
本発明の医薬組成物は、バッカル投与に適する製剤において製造、包装または販売されてもよい。かかる製剤は、例えば、従来の方法を用いて製造される錠剤またはロゼンジの形態であってもよく、例えば、0.1~20%(w/w)の活性成分を含み、残りは経口的に口腔内溶解性または分解可能な組成物を含み、所望により1または複数の本明細書に記載の添加成分を含んでもよい。別法として、バッカル投与に適する製剤は、活性成分を含む、粉末またはエアロゾル化もしくは霧化された溶液または懸濁液を含んでもよい。かかる粉末化、エアロゾル化、または霧化された製剤は、分散させる時に、約0.1~約200ナノメーターの範囲にて平均粒径または液滴サイズを有することが好ましく、さらには1または複数の本明細書に記載の添加成分を含んでもよい。
【0112】
本明細書にて使用される場合に、「添加成分」は、限定されないが、1または複数の以下の成分:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;香料;着色剤;保存剤;ゼラチンなどの生理的分解性組成物;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;沈殿防止剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、消炎剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;酸化防止剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および医薬的に許容されるポリマーまたは疎水性材料を包含する。本発明の医薬組成物に含まれ得る他の「添加成分」は、当該分野において知られており、例えば、Genaro編、(1985, Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa.)(出典明示により本明細書の一部とされる)に記載されている。
【0113】
典型的には、動物、好ましくはヒトに投与できる、本発明の化合物の投与量は、限定されないが、動物の型、および治療される病態の型、動物の年齢および投与経路を含む、任意の数の因子に応じて変化するであろう。
【0114】
該化合物は、1日に数回という頻度で動物に投与され得るか、または1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ケ月に1回、またはさらに少ない頻度、例えば、数ケ月に1回、または1年に1回以下というように投与されてもよい。投与の頻度は当業者に自明であり、限定されないが、治療される疾患の型および重篤度、動物の種類および年齢等などの、任意の数の因子に依存するであろう。
【0115】
実施例
以下の実施例において、細胞をリポポリサッカライド(「LPS」)またはモルホリノフルクトースのいずれかの既知のサイトカイン刺激剤で刺激した。モルホリノフルクトースに対するIL-6産生についての反応を図7に示す(40mM モルホリノフルクトースと一緒にインキュベートしたヒトPBMCは、対照となる細胞よりも有意に多くのIL-6を産生する)。次に、種々のレベルのメグルミンまたはその塩を刺激された細胞に投与し、その結果として生じるサイトカインレベルを測定した。
【0116】
実施例1
2ドナーから由来の末梢血単核細胞(「PBMC」)を用いて、様々なインプットに応答するサイトカインレベルを測定した。各ドナーで、一群のPBMCは処理されなかった。一群は細胞培養中に留めた。異なる群を40mMのメグルミンで処理した。もう一つ別の群をモルホリノフルクトースを用いて40mMの濃度で処理した。残りの3群は40mMの濃度のモルホリノフルクトース、ならびに20mM、40mMおよび80mMの濃度のメグルミンで処理した。各群を50時間までインキュベートさせた。細胞によって培地に分泌されたサイトカインを2、4、6、24および48時間後に測定した。IL-6に対して陽性な細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって測定した。結果を図2Aおよび2Bに示す。メグルミンの添加によりPBMC中のIL-6レベルが下がった。
【0117】
同じプロトコルを用いて、メグルミンの添加によって、TNF-α(図3Aおよび3B)、MIP-1α(図4Aおよび4B)、MCP-1(図5Aおよび5B)およびMCP-1(図6Aおよび6B)のレベルが下がることが測定された。
【0118】
実施例2
リポポリサッカライド(LPS)を40mMの濃度でPBMCにおけるサイトカイン産生の陽性対照として用いた。メグルミンを40mMで加え、細胞を4時間インキュベートさせ、その後でソーティングを行った。メグルミンは、LPS刺激によるIL-6陽性PBMCのパーセンテージの増加を有意に減少させたが、細胞を正常な範囲に戻らなかった(p<0.05 vs 非刺激、およびp<0.05 vs LPS)(図8)。同じプロトコルを用いて、IL-1α産生を測定した。LPSおよびLPSとメグルミンとの組み合わせは、共に、IL-1αを発現するPMBCのパーセンテージを有意に増加させた(図9)。
【0119】
実施例3
THP-1細胞(急性単球性白血病患者から由来のヒト単球細胞株)を80%コンフルエントとなるまで培養した。次にTHP-1細胞を25ng/mlのLPSで処理し、サイトカイン分泌を誘発した。細胞を様々な濃度のメグルミンのいずれかで処理した。組織培養液を24時間後に採取し、サイトカインのレベルを測定した。メグルミンは、高濃度で、以下のサイトカインの分泌に対する干渉能を示した:IL-1β(図10)、IL-8(図11)、IL-9(図12)、MIP-1α(図13)、MIP-1β(図14)およびVEGF(図15)。サイトカインの減少は10mMという低い濃度でも示されたが、より高い濃度での減少がより顕著であった。
【0120】
本明細書にて引用されるありとあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、その全体が出典明示により本明細書の中に組み込まれる。
本発明は特定の実施態様を参照して開示されてきたが、本発明の他の実施態様および変形が、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって創作され得ることは明らかである。添付した特許請求の範囲はかかるすべての実施態様および均等な変形を含むと解釈されるものとする。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】