(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】唾液におけるウイルス検査
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20230601BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20230601BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20230601BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230601BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20230601BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230601BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/70
C12Q1/6851 Z
G01N33/50 P
G01N33/68
G01N33/53 N
G01N33/53 D
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566675
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021029897
(87)【国際公開番号】W WO2021222569
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522426364
【氏名又は名称】ルー, シ-ロン
(71)【出願人】
【識別番号】522426423
【氏名又は名称】ハリー, ブライアン エル.
(71)【出願人】
【識別番号】522426434
【氏名又は名称】セバージョス, ホセ ピー.
(71)【出願人】
【識別番号】522426467
【氏名又は名称】ブロムクイスト, ロバート イー.
(71)【出願人】
【識別番号】522426478
【氏名又は名称】ヤオ, シン
(71)【出願人】
【識別番号】522426489
【氏名又は名称】チウ, ユエ
(71)【出願人】
【識別番号】522426490
【氏名又は名称】タラカン, マーシャ ティー.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルー, シ-ロン
(72)【発明者】
【氏名】ハリー, ブライアン エル.
(72)【発明者】
【氏名】セバージョス, ホセ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ブロムクイスト, ロバート イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ, シン
(72)【発明者】
【氏名】チウ, ユエ
(72)【発明者】
【氏名】タラカン, マーシャ ティー.
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
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2G045DA36
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4B063QX02
(57)【要約】
SARS-CoV-2を含むウイルスの唾液ベースの検査が提供される。単純な収集法は、自宅での収集を可能にし、従来の試験方法を使用する医療従事者に対するリスクおよび負担を低減する。試験は、ウイルス負荷を評価するためにウイルス核酸を、ならびに疾患進行および潜在的免疫を追跡するためにウイルス特異的抗体を、ともに定量的に分析し得る。本発明の組成物および方法は、ウイルス病原体のための唾液ベースの検査を提供する。本発明の検査は、ウイルス感染および唾液中のウイルス抗体の存在の検出を可能にし、それによって、個人が、医療従事者の助力なしに、自己検査することを可能にする。本発明は、高感度で特異的なウイルス監視を提供すると同時に、職員、装置および時間に関して効率を生じる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染を検出する方法であって、前記方法は、
患者に由来する唾液サンプルを提供する工程;
1またはこれより多くのアッセイを実施して、前記唾液サンプル中でウイルス核酸および/またはウイルス特異的抗体もしくは抗原を検出する工程;ならびに
前記唾液サンプル中で、前記ウイルス核酸、または前記ウイルス特異的抗体もしくは抗原を検出した際に、前記ウイルスに感染したと前記患者を診断する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記ウイルスは、呼吸器系ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスは、パラミクソウイルス科、ピコルナウイルス科、コロナウイルス科、パルボウイルス科、およびエンテロウイルス属からなる群より選択されるメンバーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスは、重症急性呼吸器症候群の原因ウイルスである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスは、SARS-CoV-2ウイルスである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記実施する工程は、アッセイを実施して、前記唾液サンプル中のウイルス核酸およびウイルス特異的抗体を検出する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記実施する工程は、前記唾液サンプルに由来する核酸に対して、ウイルス核酸に対して特異的なプライマーを使用してPCRを実施する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルス核酸特異的プライマーは、N遺伝子、ORF1ab遺伝子およびE遺伝子のうちの1またはこれより多くを標的化する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス核酸を定量化する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記定量化する工程は、Q-PCRを実施する工程を包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記PCRは、デジタルPCR(dPCR)である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記dPCRは、液滴デジタルPCR(ddPCR)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ウイルス核酸の定量化に基づいて前記感染の重篤度を決定する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
逐次的な時点で前記患者から得られた複数の唾液サンプル中のウイルス核酸量を比較する工程、および前記ウイルス核酸量の経時的な増大または減少に基づいて、疾患進行を決定する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルス核酸量に基づいて処置の臨床上の経過を評価する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記処置の臨床上の経過は、挿管、ICU入室、退院、挿管までの時間、退院までの時間、および死亡からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルス特異的抗体は、免疫グロブリンA(IgA)または免疫グロブリンG(IgG)抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルス特異的抗体は、IgA抗体およびIgG抗体を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ウイルス特異的抗体を定量化する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルス特異的IgAおよびIgG抗体の量に基づいて、処置の臨床上の経過を評価する工程をさらに包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処置の臨床上の経過は、挿管、ICU入室、退院、挿管までの時間、退院までの時間、および死亡のうちの1またはこれより多くから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記唾液サンプル中の全IgAおよびIgG抗体に対してウイルス特異的IgAおよびIgG抗体の量を正規化する工程をさらに包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記アッセイは、イムノアッセイを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記イムノアッセイは、生体マーカーベースのアッセイである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記生体マーカーベースのイムノアッセイは、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ビーズベースのアッセイ、発光アッセイ、金属結合イムノソルベントアッセイ、またはポイントオブケアイムノクロマトグラフィーアッセイである、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年4月29日出願の米国仮特許出願第63/017,354号(その内容は、本明細書に参考として援用される)の利益および優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、体液中のウイルスを検出するための組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
早期のかつ信頼性の高いウイルス監視は、ウイルス病原体の市中感染を制御するにあたって極めて重要である。例えば、信頼性の高い検査がないことで、2019年の新型コロナウイルスパンデミックへの反応が妨げられた。FDA緊急使用許可(EUA)に伴って、米国でのCOVID-19検査の大部分は、鼻咽頭スワブを利用する。鼻咽頭での収集は侵襲性であり、技術的に困難があり、30~40%に迫る高い偽陽性率が報告されている。
【0004】
大部分のウイルス検査は、かなりの技術的ノウハウを必要とし、医療専門家によって施されなければならない。感染していると疑われる何人も、彼らの自宅を離れなければならず、少なくとも、検査を施す医療従事者と接触しなければならない。よって、従来の検査は、ウイルスを拡げるリスクがあり、個人防護具を含む資源の不足を引き起こす。
【0005】
ウイルス検査の普及に付随する資源制約に鑑みれば、拡がってしまったウイルス病原体の拡がりを制限するために、迅速で、便利、安全な、かつ信頼性の高い検査は、当該分野で必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明の組成物および方法は、ウイルス病原体のための唾液ベースの検査を提供する。本発明の検査は、ウイルス感染および唾液中のウイルス抗体の存在の検出を可能にし、それによって、個人が、医療従事者の助力なしに、自己検査することを可能にする。本発明は、高感度で特異的なウイルス監視を提供すると同時に、職員、装置および時間に関して効率を生じる。
【0007】
本発明は、呼吸器ウイルス感染を検出するために特に有用である。上部呼吸・消化器道(aerodigestive tract)のためのレザバとして、唾液は、ウイルスの存在およびウイルス負荷の両方の評価のための良好な代表的サンプリングを提供する。例えば、SARS-CoV-2ウイルスに関して、近年の研究から、唾液中のウイルス濃度が試験される体液の中で最高のもののうちに入ることが見出された。To KK, Tsang OT, Chik-Yan Yip C,ら, 2020, Consistent detection of 2019 novel coronavirus in saliva, Clinical infectious diseases: an official publication of the Infectious Diseases Society of America; Wang W, Xu Y, Gao R,ら, 2020, Detection of SARS-CoV-2 in Different Types of Clinical Specimens, JAMAを参照のこと;これらの各々の内容は、本明細書に参考として援用される。
【0008】
唾液は、患者が自宅で自己収集できるので、医療従事者との直接的な接触の必要性および疾患伝播の関連するリスクを回避することができる。本発明の組成物および方法は、唾液中でウイルス核酸を検出するために有用である。好ましい実施形態において、本発明の方法は、唾液中のウイルス核酸を増幅および検出するために、PCRの使用を含む。
【0009】
好ましい実施形態において、デジタルPCRおよび特に液滴デジタルPCR(ddPCR)が、ウイルス核酸(ウイルスのタイプに依存して、RNAまたはDNA)を検出するために、唾液サンプルに対して実施される。デジタルPCRまたは定量的蛍光標識PCR(qPCR)のような定量的方法は、感染を診断するためのみならず、ウイルス負荷を定量化し、検査される患者の疾患予後および進行に関する貴重な情報を提供するためにも使用され得る。デジタルPCRは、qPCRより高い感度を提供し得るので、好ましい。NPSサンプルでのSARS-CoV-2に関するddPCR検査の近年の研究は、有望であることが示されており、リアルタイムPCR(RT-PCR)分析と比較して、高い感度および正確度と、低減された偽陰性報告とを実現している。Tao S,ら, 2020, ddPCR: a more sensitive and accurate tool for SARS-CoV-2 detection in low viral load specimens, medRxiv (preprint) https://doi.org/10.1101/2020.02.29.20029439; Dong, Iら, 2020, Highly accurate and sensitive diagnostic detection of SARS-CoV-2 by digital PCR. medRxiv (preprint) https://doi.org/10.1101/2020.03.14.20036129を参照のこと;これらの各々の内容は、本明細書に参考として援用される。
【0010】
ある特定の実施形態において、スクリーニング正確度は、唾液中の抗体検査の追加によって補われ得る。1つの唾液サンプル中で2種の異なる方法(核酸および抗体検出)を使用してウイルスを検出できる能力は、自分で施され得る堅固かつ正確な検査を提供する。具体的には、本発明の組成物および方法は、ウイルス特異的IgAおよびIgG抗体(粘膜分泌物中に存在することが公知)を検出し、粘膜(IgA)および全身(IgG)の両方の免疫の貴重なメトリック(metric)を提供するために使用され得る。PCRベースのウイルス検出および「唾液血清学(saliva serology)」(抗体検出)の本発明の組み合わせは、1つの唾液サンプルから診断情報を最大化し、現在の感染および過去の曝露の両方ならびに免疫を検出するにあたって有用なツールを提供する。よって、本発明の検査は、さらなる伝播のリスクを最小限にしながら、疾患曝露、感染、および潜在的免疫に関する詳細な情報を提供することによって、ソーシャルディスタンスの要件を緩和することにいて貴重な役割を果たし得る。
【0011】
ある特定の実施形態において、ウイルス負荷および/または抗体の定量化は、疾患進行に関する情報を提供し、挿管、ICU入室、退院、および死亡の確率のような転帰、ならびに挿管、ICU入室、または退院までの時間を推測するために、患者サンプル中で長期的にモニターされる。ベッド、材料、または装置が不足している場合、上記の転帰の確率およびタイミングを推測する能力は、患者の入院および処置の割り当ておよび計画の助けになり得る。
【0012】
本発明の方法は、呼吸器系ウイルスが唾液および唾液腺組織(salivary tissue)中に存在するという事実を利用する。よって、本発明は、任意の呼吸器系ウイルス(パラミクソウイルス科、ピコルナウイルス科、コロナウイルス科、パルボウイルス科、およびエンテロウイルス属(enteroviridae)のメンバーが挙げられるが、これらに限定されない)の検出に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、唾液における定量的RT-PCRによるHPV定量化を示す。
【
図2】
図2は、1日間、3日間、および7日間の時間にわたって、種々の温度で貯蔵される唾液中のDNA安定性を示す。
【
図3】
図3は、唾液および鼻スワブサンプルに関するSARS-CoV-2のN1領域を標的化するプライマー-プローブセットでのqPCRのCt値を示す。
【
図4】
図4は、唾液および鼻スワブサンプルに関するSARS-CoV-2のN2領域を標的化するプライマー-プローブセットでのqPCRのCt値を示す。
【
図5】
図5は、唾液および鼻スワブサンプルに関する内部コントロールである宿主遺伝子リボヌクレアーゼP(RNP)のCt値を示す。
【
図6】
図6は、抽出なしの唾液および抽出した鼻スワブサンプルに関するSARS-CoV-2のN1領域を標的化するプライマー-プローブセットでのqPCRのCt値を示す。
【
図7】
図7は、抽出なしの唾液および抽出した鼻スワブサンプルに関するSARS-CoV-2のN2領域を標的化するプライマー-プローブセットでのqPCRのCt値を示す。
【
図8】
図8は、抽出なしの唾液および抽出した鼻スワブサンプルに関する内部コントロールである宿主遺伝子リボヌクレアーゼP(RNP)のCt値を示す。
【
図9】
図9は、N1標的化プライマーを使用する、低い、中程度の、および高いウイルス負荷に関して決定される場合の、鼻スワブおよび唾液サンプルにおけるSARS-CoV-2のコピー/μLを示す。
【
図10】
図10は、N2標的化プライマーを使用する、低い、中程度の、および高いウイルス負荷に関して決定される場合の、鼻スワブおよび唾液サンプルにおけるSARS-CoV-2のコピー/μLを示す。
【
図11】
図11は、N1領域標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ鼻スワブサンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
【
図12】
図12は、N2領域標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ鼻スワブサンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
【
図13】
図13は、RPP30標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ鼻スワブサンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
【
図14】
図14は、N1領域標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ唾液サンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
【
図15】
図15は、N2領域標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ唾液サンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
【
図16】
図16は、RPP30標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ唾液サンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
【
図17】
図17は、N1領域標的化プライマーを使用する鼻スワブサンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
【
図18】
図18は、N2領域標的化プライマーを使用する鼻スワブサンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
【
図19】
図19は、RNPコントロールプライマーを使用する鼻スワブサンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
【
図20】
図20は、N1領域標的化プライマーを使用する唾液サンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
【
図21】
図21は、N2領域標的化プライマーを使用する唾液サンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
【
図22】
図22は、RNPコントロールプライマーを使用する唾液サンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
【
図23】
図23は、SARS-CoV-2患者における唾液および鼻スワブサンプルの長期的検査の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本発明の組成物および方法は、唾液中でのウイルス検出に関する。詳細には、過去のまたは現在のCOVID-19感染に関する核酸分析(例えば、ddPCRを介して)および抗体検査(例えば、IgAおよびIgA検査)のうちの1またはこれより多くのものが企図される。自己収集した唾液サンプルからの核酸プロファイリングおよび「唾液血清学」分析の両方を通じて、堅固な定量化された情報を提供する能力は、医療従事者による施与を必要とする検査と関連する伝播リスクを回避しながら、現在の検査より正確な、従って使えるデータを提供する。
【0015】
本発明の検査は、任意のウイルス感染を検出するために使用され得る。プライマーおよび方法(例えば、RNA検出のための逆転写および増幅)は、PCR法を使用して唾液中で検出するためのDNAウイルスまたはRNAウイルスの特異的配列を標的化するために選択され得る。検査は、例えば、RSV、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、HPV、HIV、肝炎、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、ライノウイルス、およびアデノウイルスを標的化し得る。種々の実施形態において、複数の異なる抗体アッセイおよびプライマーセットが、多数のウイルスの存在を検出するために、1つの唾液サンプルに対して多重分析において使用され得る。ある特定の実施形態において、本発明の検査は、唾液がウイルス物質の顕著なレザバであり得る呼吸器感染または粘膜感染と関連するウイルスを検出するために使用され得る。本発明の検査は、コロナウイルス核酸およびコロナウイルス特異的抗体を検出するために標的化され得る。PCRベースの検出のための例示的なコロナウイルスプライマー標的としては、N遺伝子、ORF1ab遺伝子およびE遺伝子の中の配列が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明の検査は、SARS-CoV-2を標的化し、現在のまたは過去のCOVID-19感染を検出し、その処置をモニターするために使用され得る。
【0016】
本発明の顕著な利点は、患者の進行をステージ分類し、追跡する、患者転帰を推測する、および種々の治療的処置に対する応答を判断する(gauge)ために使用され得るウイルス負荷および抗体産生の定量的分析を提供する能力である。ウイルス負荷および抗体レベルは、疾患進行を追跡するために、経時的に収集されたサンプル中で追跡され得る、および/または転帰の推測を補助するために標準的な閾値レベルに対して比較され得る。閾値レベルは、以前の患者のプールから決定され得、共通の人口統計、病歴、および他の測定基準に基づいて、患者に調整され得る。レベルは、種々の実施形態において正規化され得る。例えば、ウイルス特異的抗体に関するIgAおよび/またはIgG抗体レベルは、唾液サンプル中で検出される全てのIgAおよび/またはIgG抗体に対して正規化され得る。
【0017】
唾液サンプルは、例えば、提供される滅菌容器へと唾液を吐き出させることによって、患者から収集され得る。簡単な指示とともに、患者は、医療従事者を訪れる必要性なしに、隔離下にありながら必要とされる唾液サンプルを提供し得る。ボックスまたは封筒が滅菌容器および指示とともに提供されてもよい。その結果、患者は、サンプルを提供し、その容器を密封した後に、その容器を検査のための研究室へと移送し得る。次いで、以下で考察される核酸および/または抗体アッセイは、最小限の曝露リスクで制御された検査状況において実施され得る。不足しているPPE装置および医療職員資源は、よって保護され得る。
【0018】
本発明の検査は、現在の感染、過去の感染、疾患の重篤度およびステージ分類、ならびに転帰推測のための検査を含む複数の適用を有する。さらなる適用としては、妊婦のための垂直伝播リスクを評価する検査、および潜在的血液ドナーのための水平伝播リスクを評価する検査が挙げられ得る。
【0019】
核酸分析
本発明の検査は、患者から収集された唾液サンプル中のウイルス核酸のPCRベースの分析を含み得る。単純なPCR分析は、ウイルス特異的抗体でDNAを増幅する工程(これは、ウイルスRNAから逆転写され得る)およびゲル電気泳動を使用して推測されるサイズのバンドを検出する工程を包含し得る。しかし、好ましい実施形態において、定量的PCR法は、ウイルス核酸の存在のみならず、サンプル中のウイルス核酸の量によって示されるように、ウイルス負荷にも関する情報を提供するために使用される。好ましい定量的PCR法は、dPCRである。
【0020】
デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)は、DNA、cDNA、またはRNAを含む核酸鎖を直接的に定量化しかつクローン的に増幅するために使用され得る従来のポリメラーゼ連鎖反応法の改良である。dPCRにおいて、サンプルは、多数の区画へと分離され、反応は、各区画で個々に行われ、それによって、標準的なPCR技術において見出されるとおりのサンプル全体に関して1つの値とは対照的に、各区画における蛍光分析を介して標的DNAの高感度定量化を可能にする。
【0021】
液滴デジタルPCR(ddPCR)は、前述の区画が、PCR反応および蛍光検出が、例えば、液滴フローサイトメトリーを使用して実施され得る、ナノリットルサイズの油中水型エマルジョン(water-oil emulsion)液滴からなるdPCRの一方法である。ddPCRのための液滴を作製および読み取るための方法は、他の箇所で詳細に記載されている(Zhongら, ‘Multiplex Degital PCR: breaking the one target per color barrier of quantitative PCR’, Lab Chip, 11:2167-2174, 2011を参照のこと)が、本質的には、各液滴は、別個の反応ウェルのようなものであり、サーマルサイクリングの後、各個々の液滴の蛍光強度が、ピーク蛍光強度を記録したフローサイトメーターのようなフロースルー機器において読み取られた。
【0022】
本発明の組成物および方法は、任意のウイルスに対して特異的な核酸および/または抗体を検出するために使用され得るが、好ましい実施形態において、SARS-CoV-2が、検出標的である。SARS-CoV-2の検出のための例示的なプライマーおよびプローブは、中華人民共和国CDC(NおよびORF1ab遺伝子を標的化する)およびWHO(E遺伝子を標的化する)によって開示されており、Tao S,ら, 2020およびDong, Iら 2020において提供される。唾液サンプルのddPCRを使用するCOVID-19感染の検出のための本発明の組成物および方法は、その中で考察される同じプライマーおよびプローブを使用することを企図する。
【0023】
NPSサンプル中のSARS-CoV-2のddPCR検出および定量化は、成功裡に示されてきており、このような検査は、例えば、Biodesix(Boulder, Colorado)によって現在提供されている。本発明の組成物および方法は、類似のddPCR技術を適用するが、より容易に得られる唾液サンプルに適用する。
【0024】
上述のように、唾液は、COVID-19感染に関するウイルス負荷の良好な代表を提供することが見出されている。To KK,ら, 2020; Wang W,ら, 2020を参照のこと。感染患者におけるウイルス核酸のこの未開拓の供給源を認識すると、組成物および方法は、ddPCRを利用して、それらの核酸を検出および定量化する。唾液におけるPCRベースのDNA分析の実現性は、上記で考察されるように、腫瘍DNAに関して示されている。種々のウイルスDNAはまた、唾液中で検出されている(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)DNAが挙げられる)。
図1Aおよび1Bは、頭頚部がん患者に由来する唾液サンプルから、qRT-PCRを使用してHPVの成功裡の検出および定量化を示す。
図1Aは、アガロースゲル電気泳動による定性的検出を示し、
図1Bは、qRT-PCRによって得られる定量的結果を示す。
【0025】
本発明の定量的方法を使用すると、ウイルス負荷は、疾患進行を評価し、種々の処置の治療効果を決定するために患者に対して長期的にモニターされ得る。例えば、疾患プロセスに沿った比較は、公衆の安全および患者のケアのための有用な情報を提供する。サンプルは、長期的なデータを確立するために、不規則なまたは規則的な間隔で収集され得る。例えば、唾液は、患者から、1日に複数回、少なくとも毎日、少なくとも2日毎に、少なくとも3日毎に、少なくとも4日毎に、少なくとも5日毎に、少なくとも6日毎に、少なくとも毎週、収集され得る。このようなデータは、処置決定をガイドするかまたは臨床転帰を推測するために使用され得る。推測される転帰の例としては、挿管、ICU入室、回復、死亡、および上記のうちのいずれかのタイミングが挙げられ得る。
【0026】
ウイルス負荷は、宿主遺伝子内部コントロールのコピーに対するウイルスのコピーとして正規化され得る。患者の人口統計情報(人種および社会経済学的データを含む)、および臨床パラメーター(過去の病歴および医療管理を含む)は、ウイルス負荷と上記のパラメーターとの間の関連を同定するために、ウイルス負荷に関して分析され得る。このような情報はまた、患者を、類似の属性を有する患者のデータベースに対して比較することによって、ウイルス負荷に基づいて転帰推測を合わせるために使用され得る。このような情報はまた、リスクにある集団を同定するために使用され得る。
【0027】
収集から検査およびサンプル貯蔵までの時間は、正確なウイルス負荷データを提供するにあたって重要であり得る。唾液中でのDNA安定性は、種々の温度(RT:室温、4℃、および-20℃)で1日間、3日間、および7日間の期間にわたって調べられており、室温での新鮮な唾液(D0-RT)に対して比較され、結果は、
図2に示される。β-アクチンの増幅有効性(Ct平均)を、評価のために使用した。示されるように、DNAは、室温においてすら、1週間またはこれより長い期間にわたって比較的安定である。よって、単純でかつ安価な自己収集方法(自宅用キットおよび簡単なパッケージングを含む)が、検査のためのサンプルを得、移送し、そして貯蔵するために有効に使用され得る。
【0028】
抗体検査
大部分の現在のSARS-CoV-2検査は、核酸に集中している一方で、血清学的検査は、SARS-CoV-2に対する抗体を調べるために現在登場している。このような検査は、免疫を理解し、曝露を追跡し、ソーシャルディスタンスまたは職場復帰キャンペーン(retum-to-work campaign)の最終的な緩和をガイドするにあたって有用である。血清学的検査は、大部分は、抗ウイルスIgMおよびIgG抗体の生成に集中している。本発明の検査は、好ましくは、IgA抗体分析を含む。上部呼吸・消化器道は、粘膜で裏打ちされ、主なSARS-CoV-2感染部位である。粘膜分泌物中の主な抗体クラスであるIgAは、呼吸器系ウイルスに対する防御の第一線である。IgG(これは、免疫応答において後の方で出現する)は、通常は血清中で測定される全身性免疫のメトリックである。しかし、IgGはまた、唾液中でも見出され、血液と唾液のIgG間には高い相関関係が示された。これは、本明細書で記載されるように「唾液血清学」試験の開発という実現可能性を裏付ける。Hettegger P, Huber J, Passecker K,ら, 2019, High similarity of IgG antibody profiles in blood and saliva opens opportunities for saliva based serology, PLoS One, 14(6)(本明細書に参考として援用される)を参照のこと。本明細書で記載される唾液抗体検査は、唾液中に存在する抗SARS-CoV-2 IgAおよびIgGを検出し得、COVID-19に対する粘膜免疫および全身性免疫の両方のより包括的な評価を提供し得る。
【0029】
核酸と比較すると、タンパク質は、比較的安定性が低く、温度および貯蔵に対する感受性がより高い。さらに、唾液のタンパク質は、血清タンパク質と比較して、分解に対してより感受性である可能性がある。Dawes C, Wong DTW. 2019, Role of Saliva and Salivary Diagnostics in the Advancement of Oral Health, J Dent Res, 98(2): 133-141(本明細書に参考として援用される)を参照のこと。よって、抗体分析が使用される検査では、断熱パッケージングおよび迅速な輸送、ならびに検査法を含む指示および材料が、タンパク質安定性を促進するために調整され得る。
【0030】
好ましい実施形態において、ELISAベースのアッセイが、SARS-CoV-2に対して特異的な唾液IgAおよびIgGの検出および定量化のために使用され得る。血中のSARS-CoV-2特異的抗体を検出するためのELISAアッセイは、例えば、Eurolmmun AG(Luebeck,Germany)から入手可能である。唾液中の抗ウイルスIgAおよびIgGにおける動的な変化は、上記の核酸に由来するウイルス負荷に関して考察されるように、感染および免疫の進行ステージ全体を通じてモニターされ得る。よって、長期的な抗体データは、転帰推測ならびに疾患進行および治療有効性のモニタリングのために同様に使用され得る。さらに、抗体レベルは、免疫の推測を補助するために退院後にモニターされ得る。抗SARS-CoV-2 IgAおよびIgGの定量化は、抗SARS-CoV-2抗体の量を、唾液中の全抗体に対してならびに存在する全IgAおよびIgG(それぞれ)に対して正規化することによって実施され得る。ウイルス負荷データと同様に、抗体情報は、基本的な人口統計(例えば、年齢、性別、人種)および臨床情報(例えば、既存の状態、臨床経過、転帰)と相関され得、その中で特定されるパターンが、転帰推測を調整するために使用され得る。任意の生体マーカーベースのイムノアッセイが、ウイルス関連抗体の検出のために本発明において使用され得る(例えば、スティックディップ検査(stick-dip test)、ニトロセルロースストリップ、または任意のラテラルフローイムノアッセイ)。いくつかの非限定的な好ましい例としては、ビーズベースのアッセイ、発光アッセイ、金属結合イムノソルベントアッセイ、またはポイントオブケアイムノクロマトグラフィーアッセイが挙げられる。
【0031】
IgAは、10日間以内に検出可能になると予測され、IgGは、28日間以内に検出可能になると予測される。よって、ある特定の実施形態において、IgAおよびIgG抗体の相対的レベルが、感染開始日を決定するために使用され得る。
【0032】
本発明の抗体アッセイは、レセプター結合ドメイン(RBD)またはスパイクタンパク質のS1サブユニットに依拠し得る。これらは、他のコロナウイルス抗原と比較して、さらなる特異性を付与すると考えられる。Okba NMA, Muller MA, Li W,ら, 2020, Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2-Specific Antibody Responses in Coronavirus Disease 2019 Patients, Emerging infectious diseases, 26(7)(本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【実施例】
【0033】
実施例1 - 唾液および鼻スワブに由来するSARS-CoV-2のqPCR比較
唾液および鼻スワブサンプルを、qPCRを介して検査し、得られたCt値またはCq値を示した。
図3は、唾液および鼻スワブサンプルに関するSARS-CoV-2のN1領域を標的化するプライマー-プローブセットでのqPCRのCt値を示す。
図4は、唾液および鼻スワブサンプルに関するSARS-CoV-2のN2領域を標的化するプライマー-プローブセットでのqPCRのCt値を示す。
図5は、唾液および鼻スワブサンプルに関する内部コントロールである宿主遺伝子リボヌクレアーゼP(RNP)のCt値を示す。
図3~5の各々に関しては、各データ点は、鼻スワブおよび唾液サンプルの両方が調製された1つの供給源を表す。唾液および鼻スワブサンプルはともに、qPCRの前にRNA抽出に供した。
【0034】
図6~8は、同じであるが、RNA抽出に供した鼻スワブ、および迅速PCRのために調製したRNA抽出なしの唾液での比較を示す。このようなRNA抽出なしの方法の例は、例えば、米国仮特許出願第63/158,685号(本明細書に参考として援用される)に記載される。
図6は、抽出なしの唾液および抽出した鼻スワブサンプルに関するSARS-CoV-2のN1領域を標的化するプライマー-プローブセットでのqPCRのCt値を示す。
図7は、抽出なしの唾液および抽出した鼻スワブサンプルに関するSARS-CoV-2のN2領域を標的化するプライマー-プローブセットでのqPCRのCt値を示す。
図8は、抽出なしの唾液および抽出した鼻スワブサンプルに関する内部コントロールである宿主遺伝子リボヌクレアーゼP(RNP)のCt値を示す。図示されるように、SARS-CoV-2を含むサンプルにおけるN1標的は、標準的な鼻スワブ法と比較した場合に、核酸の抽出ありまたはなしの唾液中で、定性的にかつ定量的に、一貫して測定された。それらの知見は、抽出法ありまたはなしの唾液中の内部コントロールRNPの一貫した測定によって裏付けられる。
【0035】
実施例2 - ddPCR精度検査
BioRad SARS-CoV-2 ddPCRアッセイを使用するN1およびN2標的化ddPCRを、種々のウイルス負荷を有する唾液および鼻スワブサンプルに対して実施した。ddPCRは、コピー/μL単位で、絶対的ウイルス負荷測定値を与える。
図9および10は、唾液および鼻スワブ検査におけるddPCR検査の再現性および正確度を示す。
図9は、N1標的化プライマーを使用する、低い、中程度の、および高いウイルス負荷に関して決定される場合の、鼻スワブおよび唾液サンプル中のSARS-CoV-2のコピー/μLを示す。
図10は、N2標的化プライマーを使用する、低い、中程度の、および高いウイルス負荷に関して決定される場合の、鼻スワブおよび唾液サンプルにおけるSARS-CoV-2のコピー/μLを示す。
【0036】
実施例3 - qPCRおよびddPCRの比較
鼻スワブおよび唾液サンプルを、SARS-CoV-2 N1もしくはN2領域またはRPP30コントロール遺伝子を標的化するddPCR法およびqPCR法を使用して検査し、その結果を比較した。
図11は、N1領域標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ鼻スワブサンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
図12は、N2領域標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ鼻スワブサンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
図13は、RPP30標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ鼻スワブサンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
図14は、N1領域標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ唾液サンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
図15は、N2領域標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ唾液サンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。
図16は、RPP30標的化プライマーを使用して、qPCR検査から得られたCt値と、同じ唾液サンプルに対して実施されたddPCRを使用して得られたコピー/μL値とを比較する。唾液および鼻スワブサンプルの両方において、qPCR検査を介して得られたCt値は、ddPCRによって決定される場合のウイルス負荷の良好な代用であることを証明する。
【0037】
スワブおよび唾液サンプルの両方のN1、N2、およびRNPに関するddPCRおよびqPCR検査の対になった結果をさらに分析して、それらの間の関連を評価した。対になったデータの大部分に関しては、セグメントまたは区分線形回帰(piece-wised linear regression)を使用して、その関連を評価した。Rパッケージ「セグメント化(segmented)」を分析のために使用した。これを、最良のフィットしたモデルを選択するために、ベイス情報量規準BICを使用した。
【0038】
図17は、N1領域標的化プライマーを使用する鼻スワブサンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
図18は、N2領域標的化プライマーを使用する鼻スワブサンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
図19は、RNPコントロールプライマーを使用する鼻スワブサンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
【0039】
図20は、N1領域標的化プライマーを使用する唾液サンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
図21は、N2領域標的化プライマーを使用する唾液サンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
図22は、RNPコントロールプライマーを使用する唾液サンプルの対になったddPCRおよびqPCRを比較する回帰モデリングを示す。
【0040】
重要なことには、それらの結果は、Ct値のある特定の範囲(およそ20~30)内でRT-PCRとddPCRとの間に線形の関係性が存在することを示す。
【0041】
実施例3 - 長期的検査
対になった長期的な唾液および鼻スワブサンプルを、症状発症後の種々の日で、COVID-19患者から得た。それらサンプルを、ウイルス負荷の代用として存在するCt値でのqPCR分析を使用して、ウイルス負荷に関して試験した。
図23は、その検査の結果を示し、ここでy軸は、Ct値における差異(唾液-鼻スワブ)を表す。測定されたウイルス負荷は、19名の患者における診断時の唾液サンプルと比較して、鼻スワブサンプルにおいて最初はより高いが、その差異は、10日目までに消失する。この結果は、鼻スワブおよび唾液の両方が、患者においてウイルス負荷を経時的にモニターするために有用な供給源であることを示す。
【0042】
援用の表示
参考文献および他の文書(例えば、特許、特許出願、特許公報、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ)の引用は、本開示全体を通じて行われている。全てのこのような文書は、それらの全体において全ての目的のために判明に参考として援用される。
【0043】
均等物
本発明の種々の改変およびその多くのさらなる実施形態が、本明細書で示され、記載されるものに加えて、本明細書で引用される科学文献および特許文献への言及を含めて、この文書の全内容から当業者に明らかになる。本明細書中の主題は、その種々の実施形態およびその均等物において、本発明の実施に適合され得る重要な情報、例示およびガイダンスを含む。
【国際調査報告】