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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/26 20060101AFI20230601BHJP
   C08G 65/22 20060101ALI20230601BHJP
   C09K 23/42 20220101ALI20230601BHJP
【FI】
C08G65/26
C08G65/22
C09K23/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567281
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021061677
(87)【国際公開番号】W WO2021224229
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】2006525.6
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522430246
【氏名又は名称】スフィア フルイディクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー シン
(72)【発明者】
【氏名】スミス クライヴ
(72)【発明者】
【氏名】マックワース ベン
【テーマコード(参考)】
4D077
4J005
【Fターム(参考)】
4D077AA04
4D077AB12
4D077AB13
4D077AC01
4D077BA03
4D077BA07
4D077CA03
4D077CA04
4D077DC12X
4D077DC19X
4D077DC39X
4D077DC44X
4D077DC45X
4D077DC48X
4D077DC72X
4D077DD29X
4D077DD30X
4D077DD35X
4D077DD43X
4D077DD45X
4D077DE03X
4D077DE35X
4J005AA04
4J005AA09
4J005AA21
4J005BA00
(57)【要約】
本発明は、式(I):(A)-X-(B) (I)(式中、Xは、連結基であり、各Aは、独立して、フルオロカーボン又はペルフルオロポリエーテルであり、各Bは、独立して、式(II)であり、ここで、aは、3から50の間の整数であり、各Rは、独立して、C1~6アルキル、CHCHOC1~6アルキル、又はCHCH(CH)OC1~6アルキルであり、mは、1から10の間の整数であり、かつ、nは、1から10の間の整数である)の界面活性剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(A)-X-(B) (I)
(式中、
Xは、連結基であり、
各Aは、独立して、フルオロカーボン又はペルフルオロポリエーテルであり、
各Bは、独立して、
【化1】
であり、
ここで、aは、3から50の間の整数であり、各Rは、独立して、C1~6アルキル、CHCHOC1~6アルキル、又はCHCH(CH)OC1~6アルキルであり、
mは、1から10の間の整数であり、かつ、
nは、1から10の間の整数である)の界面活性剤。
【請求項2】
星型界面活性剤、好ましくは星型高分子界面活性剤である、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項3】
n及びmの合計は、2より大きい、請求項1又は2に記載の界面活性剤。
【請求項4】
n及びmの合計は、3から10の間の整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項5】
n及びmの合計は、3、4、5、6、又は7であり、好ましくは、n及びmの合計は、3又は4である、請求項1~4のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項6】
aは、3から24、好ましくは4から20の間の整数である、請求項1~5のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項7】
各Rは、C1~6アルキル、好ましくはメチルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項8】
nは、1から6の間の整数である、請求項1~7のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項9】
mは、1、2、又は3、好ましくは1又は2である、請求項1~8のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項10】
mは1であり、かつnは2若しくは3であるか、又はmは2であり、かつnは1若しくは2である、請求項1~9のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項11】
少なくとも1つのA、好ましくは、各Aは、ペルフルオロポリエーテルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項12】
前記ペルフルオロポリエーテルは、式:
-[CF(CF)CFO]
(式中、bは、正の整数、好ましくは1~100である)の繰返単位を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項13】
前記連結基は、-C(O)NH-、-C(O)NMe-、-NHC(O)-、-NMeC(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)NH-、-OC(O)NMe-、-O-、-S-、-NHC(O)NH-、-NMeC(O)NH-、-NHC(O)NMe-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、-SONH-、-NHSO-、-NHSO-C-O-、及び-O-C-SONH-から選択される基、好ましくは、-C(O)NH-、-C(O)NMe-、-NHC(O)-、-NMeC(O)-、-OC(O)NH-、-C(O)O-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及び-O-から選択される基を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項14】
前記連結基は、荷電基、好ましくは正に荷電した基を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項15】
前記連結基は、
【化2】
(式中、
及びRは、独立して、H及びC1~6アルキル、好ましくはメチルから選択され、かつ、
は、対イオンである)から選択される基を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項16】
前記連結基は、複素環を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項17】
前記連結基は、C1~6アルキレン基を含む又はそれからなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項18】
前記連結基は、
【化3】
(式中、
各pは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各qは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各rは、独立して、1から6の間の整数であり、
sは、1から6の間の整数、好ましくは1又は2、更により好ましくは1であり、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、
各Uは、独立して、複素環であり、かつ、
各Yは、独立して、
【化4】
から選択され、
ここで、W、R、及びRは、請求項15において定義される通りである)から選択される基を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項19】
前記連結基は、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、若しくは式(IIId)、好ましくは、式(IIIb)、式(IIIc)、若しくは式(IIId):
【化5】
(式中、
pは、0又は1であり、
qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、かつ、
Zは、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)の基を含む、又は、
連結基は、式(IIIe)、式(IIIf)、若しくは式(IIIg)、好ましくは(IIIf)若しくは(IIIg):
【化6】
(式中、
pは、0又は1であり、
qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、
rは、1から6の間の整数、好ましくは1、2、又は3であり、
Zは、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、
Yは、
【化7】
から選択され、
ここで、W、R、及びRは、請求項15において定義される通りである)の基を含む、又は、
連結基は、式(IIIh)、式(IIIi)、若しくは式(IIIj)、好ましくは(IIIi)若しくは(IIIj):
【化8】
(式中、
pは、0又は1であり、
qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、
rは、1から6の間の整数、好ましくは1、2、又は3であり、
Zは、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、かつ、
Uは、複素環である)の基を含む、又は、
連結基は、式(IIIk):
【化9】
(式中、
各pは、0又は1であり、
各qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、かつ、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)の基を含む、又は、
連結基は、式(IIIl)若しくは(IIIm):
【化10】
(式中、
各pは、0又は1であり、
各qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、
各rは、1から6の間の整数、好ましくは1、2、又は3であり、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、
各Uは、複素環であり、かつ、
各Yは、独立して、
【化11】
から選択され、
ここで、W、R、及びRは、請求項15において定義される通りである)の基を含む、又は、
連結基は、式(IIIn):
【化12】
(式中、
各pは、0又は1であり、
各qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、
各rは、1から6の間の整数であり、
sは、1から6の間の整数、好ましくは1、2、又は3であり、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、かつ、
各Yは、独立して、
【化13】
から選択され、
ここで、W、R、及びRは、請求項15において定義される通りである)の基を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項20】
前記連結基は、式(IIIo)~式(IIIq):
【化14】
(式中、
各pは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各qは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、かつ、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)の基を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項21】
水素原子及びハロゲン原子、並びに側基又は分岐基上のあらゆる原子を除く前記連結基の主鎖構造中の原子数と、水素原子及びハロゲン原子、並びに側基又は分岐基上のあらゆる原子を除く基A及び基Bの主鎖構造中の総原子数との比率は、1:2~1:500、より好ましくは1:3~1:100、更により好ましくは1:5~1:50である、請求項1~20のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項22】
【化15】
からなる群より選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の界面活性剤を作製する方法であって、
式(II):
(A)-X-(OH) (II)
(式中、
Xは、連結基であり、
各Aは、独立して、フルオロカーボン又はペルフルオロポリエーテルであり、
mは、1から10の間の整数であり、
nは、1から10の間の整数である)の化合物と、式(III):
【化16】
(式中、各Rは、独立して、C1~6アルキル、CHCHOC1~6アルキル、又はCHCH(CH)OC1~6アルキルである)の化合物とを反応させること、
を含む、方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の界面活性剤を作製する方法であって、(A)を含む化合物と、(B)を含む化合物とを反応させることを含み、ここで、前記反応はカップリング反応であり、前記(A)と前記(B)との間にリンカーXを形成する、方法。
【請求項25】
請求項1~21のいずれか一項に記載の式(I)の界面活性剤を含む組成物、好ましくはエマルジョン。
【請求項26】
界面活性剤としての、請求項1~21のいずれか一項において規定される化合物の使用。
【請求項27】
エマルジョンの調製における、請求項1~21のいずれか一項において規定される式(I)の界面活性剤の使用。
【請求項28】
請求項25に記載のエマルジョンを調製する方法であって、
(i)水相を準備することと、
(ii)油相、好ましくはフルオラスな油相を準備することと、
(iii)前記水相と、前記油相と、前記で規定される式(I)の界面活性剤とを混合して、前記エマルジョンを形成することと、
を含む、方法。
【請求項29】
請求項25に記載のエマルジョンの不連続水相中で1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを実施することを含む、方法。
【請求項30】
マイクロ流体デバイスにおいて液滴をソーティングする方法であって、
(i)前記マイクロ流体デバイスの流路において請求項25に記載のエマルジョン中の水性液滴の流れを供給することと、
(ii)前記流れを第1の方向から照らすことと、
(iii)前記液滴内の分析物からの光を第2の方向において検出することと、
(iv)検出された光又は測定可能な信号に応答して、前記液滴を複数の区別された流れのうちの1つへとソーティングすることと、
を含む、方法。
【請求項31】
マイクロ流体デバイスにおいて液滴を合体させる方法であって、
(i)前記マイクロ流体デバイスの流路において請求項25に記載のエマルジョン中の少なくとも2つの水性液滴を準備することと、
(ii)前記水性液滴を電界に曝し、それによって前記少なくとも2つの水性液滴を合体させて、単一の液滴にすることと、
を含む、方法。
【請求項32】
マイクロ流体デバイスにおいて液滴内に流体を導入する方法であって、
(i)前記マイクロ流体デバイスの流路において請求項25に記載のエマルジョン中の水性液滴を準備することと、
(ii)前記水性液滴を流体の流れと接触させ、それによって前記流体を前記水性液滴内に導入することと、
を含む、方法。
【請求項33】
マイクロ流体デバイスにおいて液滴を分割する方法であって、
(i)マイクロ流体合流部を備えるマイクロ流体デバイスを準備することと、
ここで、前記マイクロ流体合流部は、第1のマイクロ流体流路と、第2のマイクロ流体流路と、第3のマイクロ流体流路とを備える;
(ii)前記第1のマイクロ流体流路において請求項25に記載のエマルジョン中の水性液滴を準備することと、
(iii)前記水性液滴を前記マイクロ流体合流部に通過させ、それによって前記水性液滴を少なくとも第1の娘液滴と第2の娘液滴とに、すなわち前記第1の娘液滴を前記第2のマイクロ流体流路に、そして前記第2の娘液滴を前記第3のマイクロ流体流路に分割することと、
を含む、方法。
【請求項34】
マイクロ流体デバイスにおいて請求項25に記載のエマルジョンの液滴を分配する方法であって、
液滴供給ラインから液滴出口ラインにおいて上記定義のエマルジョンの液滴を収容することと、
加圧された分配流体を前記液滴出口ラインに供給することによって、前記液滴出口ラインから液滴出口を経由して液滴を駆出することと、
加圧された分配流体が液滴出口ラインに供給されない場合に、液滴出口ラインから廃液ラインにおいて液滴を収容することと、
液滴出口ラインの上流に加圧された分配流体を供給することによって、前記液滴出口ラインの上流の液滴を保護することと、
を含む、方法。
【請求項35】
マイクロ流体デバイスにおいて請求項25に記載のエマルジョンの液滴を分配する方法であって、
液滴供給ラインから液滴出口ラインにおいて上記定義のエマルジョンの液滴を収容することと、
加圧された分配流体を前記液滴出口ラインに供給することによって、前記液滴出口ラインから液滴出口を経由して液滴を駆出することと、
加圧された分配流体が液滴出口ラインに供給されない場合に、廃液ラインにおいて液滴を収容することと、
加圧された分配流体が液滴出口ラインに供給される場合に、廃液ライン中に流体を注入することと、
を含む、方法。
【請求項36】
マイクロ流体デバイスにおいて液滴をソーティングする方法であって、
(i)マイクロ流体合流部を備えるマイクロ流体デバイスを準備することと、
ここで、前記マイクロ流体合流部は、第1のマイクロ流体流路と、第2のマイクロ流体流路と、第3のマイクロ流体流路とを備える;
(ii)前記第1のマイクロ流体流路において請求項25に記載のエマルジョン中の水性液滴を準備することと、
(iii)前記水性液滴を前記マイクロ流体合流部に通過させ、それによって前記水性液滴を少なくとも第1の娘液滴と第2の娘液滴とに、すなわち前記第1の娘液滴を前記第2のマイクロ流体流路に、そして前記第2の娘液滴を前記第3のマイクロ流体流路に分割することと、
(iv)質量分析法によって前記第1の娘液滴を検出することと、
(v)前記第1の娘液滴に対する質量分析法に応答して、前記第2の娘液滴を複数の区別された流れのうちの1つへとソーティングすることと、
を含む、方法。
【請求項37】
流体から分子を抽出する方法であって、
(i)請求項25に記載の式(I)の界面活性剤を二酸化炭素中に溶解して、二酸化炭素/式(I)の界面活性剤の混合物を形成することと、
(ii)前記分子を含む流体を前記二酸化炭素/式(I)の界面活性剤の混合物に加え、それによって前記分子を前記流体から前記二酸化炭素中に抽出することと、
を含む、方法。
【請求項38】
液滴処理の間に液滴の間隔を開けるキャリア流体(例えば、フルオラスな油)中での、請求項1~21のいずれか一項に記載の式(I)の界面活性剤の使用。
【請求項39】
マイクロ流体流路若しくはマイクロ流体デバイス、より大きな流体デバイス、容器、若しくはバットにおける分子分離、又はマイクロ流体流路若しくはマイクロ流体デバイスを制御する関連ソフトウェアを備える自動化されたデバイスにおける、請求項1~21のいずれか一項に記載の式(I)の界面活性剤の使用。
【請求項40】
マイクロ流体流路若しくはマイクロ流体デバイス、又はマイクロ流体流路若しくはマイクロ流体デバイスを制御する関連ソフトウェアを備える自動化されたデバイスにおける、請求項25に記載のエマルジョンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイクロ流体デバイスにおいて油中水型エマルジョンを安定化するのに特に有用である式(I)の界面活性剤に関する。式(I)の界面活性剤は、一般に星型構造を有する。本発明はまた、式(I)の界面活性剤を作製する方法、及び式(I)の界面活性剤を含むエマルジョン等の組成物に関する。さらに、本発明は、界面活性剤としての式(I)の化合物の使用、及び界面活性剤及び/又は界面活性剤を含むエマルジョンを、例えば液滴の生成、液滴のソーティング、液滴の合体、液滴の分割、液滴の分配等において使用する様々な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、様々な用途のための安定したエマルジョンの製造において長年にわたって使用されてきた。エマルジョンに関連する一般的な背景技術は、以下の特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、及び特許文献10において見出され得る。従来の界面活性剤は、一般に、エマルジョンの水相中に可溶な親水性頭部基と、エマルジョンの油相中に可溶な1つ以上の親油性尾部とを含む。
【0003】
最近では、連続油相中に水滴を含む界面活性剤安定化エマルジョンはマイクロ流体技術に応用され、例えば、ハイスループットスクリーニング、酵素研究、核酸増幅、及びその他の生物学的プロセスを実施することが可能となっている。生物学的アッセイを、例えばマイクロ流体デバイスにおいて非常に少量の生体物質を使用して実施することができる。マイクロ流体技術に関連する更なる情報は、本発明者らの以前の出願である特許文献11、及び特許文献12において見出され得る。液滴に関する他の一般的な背景技術は、RainDance Technologies Inc.の名前での特許/出願、例えば、特許文献13において見出され得る。
【0004】
マイクロ流体用途において、エマルジョンの形成及び生成における連続相として、油、特にフルオラスな油を使用することが有益である。それというのも、これらの油は、低摩擦、不揮発性(アルコールとは異なる)、温度耐性等の有用なマイクロ流体特性を有し、油水エマルジョンを簡単に生成し得るからである。
【0005】
しかしながら、従来の界面活性剤は、溶解性の問題のため、フルオラスな油相を含むエマルジョンを安定化するのに一般に適していない。さらに、多くの従来の界面活性剤は生体分子及び細胞に対して有毒であり、外部環境からエマルジョンの内部領域へのガス移動を妨げる可能性がある。
【0006】
したがって、油(例えば、フルオラスな油)中水型エマルジョン、特に水相中に疎水性有機小分子を含むそのようなエマルジョンを安定化するのに適した新しい界面活性剤が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,587,153号
【特許文献2】米国特許第6,017,546号
【特許文献3】国際公開第2005/099661号
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/081633号
【特許文献5】米国特許第6,379,682号
【特許文献6】米国特許出願公開第2002/172703号
【特許文献7】国際公開第2004/038363号
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/087122号
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/275415号
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/053205号
【特許文献11】国際公開第2009/050512号
【特許文献12】国際公開第2015/015199号
【特許文献13】国際公開第2008/063227号
【発明の概要】
【0008】
第1の態様から見ると、本発明は、式(I):
(A)-X-(B) (I)
(式中、
Xは、連結基であり、
各Aは、独立して、フルオロカーボン又はペルフルオロポリエーテルであり、
各Bは、独立して、
【化1】
であり、
ここで、aは、3から50の間の整数であり、各Rは、独立して、C1~6アルキル、CHCHOC1~6アルキル、又はCHCH(CH)OC1~6アルキルであり、
mは、1から10の間の整数であり、かつ、
nは、1から10の間の整数である)の界面活性剤を提供する。
【0009】
更なる態様から見ると、本発明は、上記の界面活性剤を作製する方法であって、
式(II):
(A)-X-(OH) (II)
(式中、
Xは、連結基であり、
各Aは、独立して、フルオロカーボン又はペルフルオロポリエーテルであり、
mは、1から10の間の整数であり、
nは、1から10の間の整数である)の化合物と、式(III):
【化2】
(式中、各Rは、独立して、C1~6アルキル、CHCHOC1~6アルキル、又はCHCH(CH)OC1~6アルキルである)の化合物とを反応させること、
を含む、方法を提供する。
【0010】
更なる態様から見ると、本発明は、上記の界面活性剤を作製する方法であって、(A)を含む化合物と、(B)を含む化合物とを反応させることを含み、ここで、上記反応はカップリング反応であり、上記(A)と上記(B)との間にリンカーXを形成する、方法を提供する。
【0011】
更なる態様から見ると、本発明は、上記の式(I)の界面活性剤を含む組成物、好ましくはエマルジョンを提供する。
【0012】
更なる態様から見ると、本発明は、上記の式(I)の界面活性剤を含むエマルジョンを提供する。
【0013】
更なる態様から見ると、本発明は、式(I)の界面活性剤としての、上記定義の化合物の使用を提供する。
【0014】
更なる態様から見ると、本発明は、エマルジョンの調製における、上記の式(I)の界面活性剤の使用を提供する。
【0015】
更なる態様から見ると、本発明は、上記定義のエマルジョンを調製する方法であって、
(i)水相を準備することと、
(ii)油相、好ましくはフルオラスな油相を準備することと、
(iii)上記水相と、上記油相と、上記定義の式(I)の界面活性剤とを混合して、上記エマルジョンを形成することと、
を含む、方法を提供する。
【0016】
更なる態様から見ると、本発明は、上記定義のエマルジョンの不連続水相中で1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを実施することを含む、方法を提供する。
【0017】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴をソーティングする方法であって、
(i)マイクロ流体デバイスの流路において上記定義のエマルジョン中の水性液滴の流れを供給することと、
(ii)流れを第1の方向から照らすことと、
(iii)液滴内の分析物からの光を第2の方向において検出することと、
(iv)検出された光又は測定可能な信号に応答して、液滴を複数の区別された流れのうちの1つへとソーティングすることと、
を含む、方法を提供する。
【0018】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴を合体させる方法であって、
(i)マイクロ流体デバイスの流路において上記定義のエマルジョン中の少なくとも2つの水性液滴を準備することと、
(ii)水性液滴を電界に曝し、それによって少なくとも2つの水性液滴を合体させて、単一の液滴にすることと、
を含む、方法を提供する。
【0019】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴内に流体を導入する方法であって、
(i)マイクロ流体デバイスの流路において上記定義のエマルジョン中の水性液滴を準備することと、
(ii)水性液滴を流体の流れと接触させ、それによって上記流体を水性液滴内に導入することと、
を含む、方法を提供する。
【0020】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴を分割する方法であって、
(i)マイクロ流体合流部を備えるマイクロ流体デバイスを準備することと、
ここで、上記マイクロ流体合流部は、第1のマイクロ流体流路と、第2のマイクロ流体流路と、第3のマイクロ流体流路とを備える;
(ii)上記第1のマイクロ流体流路において上記定義のエマルジョン中の水性液滴を準備することと、
(iii)水性液滴をマイクロ流体合流部に通過させ、それによって上記水性液滴を少なくとも第1の娘液滴と第2の娘液滴とに、すなわち第1の娘液滴を第2のマイクロ流体流路に、そして第2の娘液滴を第3のマイクロ流体流路に分割することと、
を含む、方法を提供する。
【0021】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて上記定義のエマルジョンの液滴を分配する方法であって、
液滴供給ラインから液滴出口ラインにおいて上記定義のエマルジョンの液滴を収容することと、
加圧された分配流体を上記液滴出口ラインに供給することによって、上記液滴出口ラインから液滴出口を経由して液滴を駆出することと、
加圧された分配流体が液滴出口ラインに供給されない場合に、液滴出口ラインから廃液ラインにおいて液滴を収容することと、
液滴出口ラインの上流に加圧された分配流体を供給することによって、上記液滴出口ラインの上流の液滴を保護することと、
を含む、方法を提供する。
【0022】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて上記定義のエマルジョンの液滴を分配する方法であって、
液滴供給ラインから液滴出口ラインにおいて上記定義のエマルジョンの液滴を収容することと、
加圧された分配流体を上記液滴出口ラインに供給することによって、上記液滴出口ラインから液滴出口を経由して液滴を駆出することと、
加圧された分配流体が液滴出口ラインに供給されない場合に、廃液ラインにおいて液滴を収容することと、
加圧された分配流体が液滴出口ラインに供給される場合に、廃液ライン中に流体を注入することと、
を含む、方法を提供する。
【0023】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴をソーティングする方法であって、
(i)マイクロ流体合流部を備えるマイクロ流体デバイスを準備することと、
ここで、上記マイクロ流体合流部は、第1のマイクロ流体流路と、第2のマイクロ流体流路と、第3のマイクロ流体流路とを備える;
(ii)上記第1のマイクロ流体流路において上記定義のエマルジョン中の水性液滴を準備することと、
(iii)水性液滴をマイクロ流体合流部に通過させ、それによって上記水性液滴を少なくとも第1の娘液滴と第2の娘液滴とに、すなわち第1の娘液滴を第2のマイクロ流体流路に、そして第2の娘液滴を第3のマイクロ流体流路に分割することと、
(iv)質量分析法によって上記第1の娘液滴を検出することと、
(v)上記第1の娘液滴に対する質量分析法に応答して、上記第2の娘液滴を複数の区別された流れのうちの1つへとソーティングすることと、
を含む、方法を提供する。
【0024】
更なる態様から見ると、本発明は、流体から分子を抽出する方法であって、
(i)上記定義の式(I)の界面活性剤を二酸化炭素中に溶解して、二酸化炭素/式(I)の界面活性剤の混合物を形成することと、
(ii)分子を含む流体を二酸化炭素/式(I)の界面活性剤の混合物に加え、それによって分子を流体から二酸化炭素中に抽出することと、
を含む、方法を提供する。
【0025】
更なる態様から見ると、本発明は、液滴処理の間に液滴の間隔を開けるキャリア流体(例えば、フルオラスな油)中での、上記定義の式(I)の界面活性剤の使用を提供する。
【0026】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体流路若しくはマイクロ流体デバイス、より大きな流体デバイス、容器、若しくはバットにおける分子分離、又はマイクロ流体流路若しくはマイクロ流体デバイスを制御する関連ソフトウェアを備える自動化されたデバイスにおける、上記定義の式(I)の界面活性剤の使用を提供する。
【0027】
更なる態様から見ると、本発明は、マイクロ流体流路若しくはマイクロ流体デバイス、又はマイクロ流体流路若しくはマイクロ流体デバイスを制御する関連ソフトウェアを備える自動化されたデバイスにおける、上記定義のエマルジョンの使用を提供する。
【0028】
定義
本明細書において使用される場合に、「フルオロカーボン」という用語は、1個以上の水素原子がフッ素原子によって置き換えられたヒドロカルビル基を指す。「ペルフルオロカーボン」においては、全ての水素原子がフッ素原子によって置き換えられている。
【0029】
本明細書において使用される場合に、「ペルフルオロポリエーテル」という用語は、全ての水素原子がフッ素原子によって置き換えられたポリエーテル化合物を指す。
【0030】
本明細書において使用される場合に、「ポリエーテル」という用語は、2個以上の-O-連結を含む有機化合物を指す。
【0031】
本明細書において使用される場合に、「星型界面活性剤」という用語は、星のような形状を有する界面活性剤を指す。星型界面活性剤は、連結基であるコアと、コアから延びる少なくとも2本のアーム、より好ましくは少なくとも3本のアームとを有し、各アームは線状である。アームの数はコアによって決まり、特にコア内の分岐点の数で決まる。
【0032】
本明細書において使用される場合に、「星型高分子界面活性剤」という用語は、連結基であるコアと、コアから延びる少なくとも2本のアーム、より好ましくは少なくとも3本のアームとを有し、各アームが線状オリゴマー又はポリマーである界面活性剤を指す。各アームは、生長するアームにおける単一の官能基での逐次重合により線状に重合される。したがって、線状アームは分岐アームを生成し得ない。
【0033】
本明細書において使用される場合に、「荷電基」という用語は、少なくとも1個の正に荷電した又は負に荷電した原子又は原子群を含む基を指す。この用語は、正電荷及び負電荷の両方が存在する基、すなわち両性イオン基を包含する。
【0034】
本明細書において使用される場合に、波線結合は、或る基と、それが構成部分である化合物の別の部分との取り付け点を示す。したがって、1つの波線結合を有する基は末端基であるのに対して、2つの波線結合を有する基は一般に連結基である。
【0035】
本明細書において使用される場合に、「オリゴマー」という用語は、式(I)の基Aに関して使用される場合に、3個~10個のグリセロール単位の直鎖を指す。
【0036】
本明細書において使用される場合に、「ポリマー」という用語は、式(A)の基Aに関して使用される場合に、11個~50個のグリセロール単位の直鎖を指す。
【0037】
本明細書において使用される場合に、「線状」という用語は、線状のオリゴマー又はポリマーに適用される。線状ポリマーは、自体がオリゴマー又はポリマーである側鎖を含まない。
【0038】
本明細書において使用される場合に、「アルキル」という用語は、飽和の直鎖状、分岐状、又は環状の基を指す。アルキル基は、置換されている場合も、又は置換されていない場合もある。
【0039】
本明細書において使用される場合に、「アルキレン」という用語は、二価のアルキル基を指す。
【0040】
本明細書において使用される場合に、「置換された」という用語は、基中の1個以上、例えば最大6個、より特に1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の水素原子が、互いに独立して、対応する数の記載された置換基によって置き換えられた基に適用される。本明細書において使用される「任意に置換された」という用語は、置換又は非置換であることを意味する。
【0041】
本明細書において使用される場合に、「フルオラス」という用語は、1個以上のフッ素原子を含むあらゆる基又は物質に適用される。一般に、この基又は物質は、複数のフッ素原子を含む。例えば、フルオラスな油は、部分的フッ素化された炭化水素、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、及びそれらの混合物を含む、フッ素原子を含むあらゆる油を指す。
【0042】
本明細書において使用される場合に、「脱離基」という用語は、脱離基と分子の残部とをつなぐ共有結合の不均一結合開裂に続いて、それとともに共有結合から結合電子を奪って、分子から離れることができるあらゆる原子又は基を指す。
【0043】
発明の詳細な説明
本発明は、油中水型エマルジョンを安定化するのに特に有用である界面活性剤に関する。界面活性剤は、油相中まで延びている又は油相に「面している」1個以上の親油性のペルフルオロポリエーテル又はフルオロカーボン尾部と、水相中へと延びている又は水相に「面している」1個以上の親水性尾部と、親油性尾部(複数の場合もある)と親水性尾部(複数の場合もある)とを接続する連結基とを含む。本発明の好ましい界面活性剤においては、界面活性剤は、少なくとも1個の親油性尾部及び少なくとも1個の親水性尾部を含み、合計で少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個の親油性尾部及び親水性尾部を含むとともに、親油性尾部(複数の場合もある)と親水性尾部(複数の場合もある)とを接続する連結基も含む。このような界面活性剤は、得られる構造が星に似ていることから、本明細書においては星型界面活性剤と呼ばれる。
【0044】
本発明の界面活性剤は、式(I):
(A)-X-(B) (I)
(式中、
Xは、連結基であり、
各Aは、独立して、フルオロカーボン又はペルフルオロポリエーテルであり、
各Bは、独立して、
【化3】
であり、
ここで、aは、3から50の間の整数であり、各Rは、独立して、C1~6アルキル、CHCHOC1~6アルキル、又はCHCH(CH)OC1~6アルキルであり、
mは、1から10の間の整数であり、かつ、
nは、1から10の間の整数である)の界面活性剤である。
【0045】
式(I)において、A基は親油性尾部であり、B基は親水性尾部である。式(I)において、Bは、少なくとも3個のグリセロール繰返単位を含む線状グリセロールオリゴマー又はポリマーである。上記式において示されるように、オリゴマー又はポリマーは、分岐状ではなく線状である。これは、B基中に反応性基(つまり-OH)が1個しかないためである。オリゴマー又はポリマーの線状形態は、本発明の界面活性剤の星型構造を達成するのに重要である。
【0046】
本発明の好ましい界面活性剤は星型界面活性剤である。本発明の特に好ましい界面活性剤は星型高分子界面活性剤である。星型高分子界面活性剤という用語は、本発明の界面活性剤におけるアームの少なくとも一部がオリゴマー又はポリマーであることを表している。
【0047】
式(I)の好ましい界面活性剤において、aは、3から30、より好ましくは3から20、更により好ましくは4から20の間の整数である。したがって、式(I)の界面活性剤は、グリセロールの線状オリゴマー及び/又は線状ポリマーを含む。
【0048】
式(I)の好ましい界面活性剤において、各Rは、C1~6アルキルである。好ましくは、各Rは同一である。適切なC1~6アルキル基の代表的な例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルが挙げられる。より好ましくは、各Rは、メチル及びエチルから選択される。特に好ましくは、各Rはメチルである。
【0049】
式(I)の更に好ましい界面活性剤において、aは、3から30、より好ましくは3から24、更により好ましくは4から20の間の整数であり、各Rは、C1~6アルキル、好ましくはメチルである。式(I)のまた更に好ましい界面活性剤において、aは4から20の間の整数であり、各Rはメチルである。
【0050】
式(I)の好ましい界面活性剤において、n及びmの合計は2より大きい。より好ましい界面活性剤において、n及びmの合計は3から10の間の整数である。好ましくは、n及びmの合計は3、4、5、6、又は7である。特に好ましくは、n及びmの合計は3又は4である。
【0051】
式(I)の好ましい界面活性剤において、nは1から6の間の整数である。言い換えれば、線状グリセロールオリゴマー又はポリマーによって形成される親水性アームの数は、1から6の間である。
【0052】
式(I)の好ましい界面活性剤において、mは1、2、又は3である。言い換えれば、ペルフルオロポリエーテル及び/又はフルオロカーボンによって形成される親油性アームの数は1、2、又は3である。より好ましくは、mは1又は2である。
【0053】
式(I)の幾つかの特に好ましい界面活性剤において、mは1であり、かつnは2若しくは3であるか、又はmは2であり、かつnは1若しくは2である。
【0054】
式(I)の更に好ましい界面活性剤において、aは4から20の間の整数であり、各Rはメチルであり、かつmは1であり、かつnは2若しくは3であるか、又はmは2であり、かつnは1若しくは2である。
【0055】
式(I)の幾つかの好ましい界面活性剤において、少なくとも1個のAはフルオロカーボンである。式(I)の幾つかの好ましい界面活性剤において、各Aはフルオロカーボンである。好ましいフルオロカーボンは、C1~18フルオロカーボン、特にC1~18ペルフルオロカーボンである。より好ましいフルオロカーボンは、C2~16フルオロカーボン、より好ましくはC4~14フルオロカーボン、更により好ましくはC4~12フルオロカーボンである。なおもより好ましくは、フルオロカーボンはC2~16ペルフルオロカーボン、特に好ましくはC4~14フルオロカーボン、なおもより好ましくはC4~12ペルフルオロカーボンである。
【0056】
式(I)の他の好ましい界面活性剤において、少なくとも1個のAはペルフルオロポリエーテルである。式(I)の更に好ましい界面活性剤において、各Aはペルフルオロポリエーテルである。
【0057】
式(I)の界面活性剤において存在する好ましいペルフルオロポリエーテルは、式-[CF(CF)CFO]-(式中、bは、正の整数である)の繰返単位を含む。より好ましくは、式(I)の界面活性剤において存在するペルフルオロポリエーテルは、式-[CFCFO]-[CF(CF)CFO]-(式中、b及びcは、それぞれ0又は正の整数であるが、但し、b及びcは両者とも0にはならない)の単位を含む。cは、好ましくは0又は1~100の整数、例えば5~50の整数である。好ましい界面活性剤において、cは0である。式(I)の界面活性剤において存在する特に好ましいペルフルオロポリエーテルは、式CFCFCFO-[CF(CF)CFO]-CF(CF)-(式中、bは、正の整数である)からなる。式(I)の界面活性剤において存在する好ましいペルフルオロポリエーテルにおいて、bは、好ましくは1~100(例えば、1~50)の整数、より好ましくは5~50の整数、特に好ましくは10~25の整数である。式(I)の界面活性剤において存在する好ましいペルフルオロポリエーテルは、166Da~16600Da、より好ましくは800Da~9000Da、なおもより好ましくは1500Da~6000Daの重量平均分子量を有する。
【0058】
式(I)の更に好ましい界面活性剤において、aは4から20の間の整数であり、各Rはメチルであり、mは1であり、かつnは2若しくは3であるか、又はmは2であり、かつnは1若しくは2であり、かつ各Aは、ペルフルオロポリエーテル、好ましくは式-[CF(CF)CFO]-(式中、bは、正の整数である)の繰返単位を含むペルフルオロポリエーテルである。
【0059】
本発明の界面活性剤においては、上記のように、連結基「X」は、1個以上の親油性のペルフルオロポリエーテル及び/又はフルオロカーボン尾部と、線状グリセロールオリゴマー又はポリマーを含む1個以上の親水性尾部とを接続する。本発明の式(I)の好ましい界面活性剤において、連結基の主鎖構造(すなわち、水素原子及びハロゲン原子、並びに側基又は分岐基上のあらゆる原子を除く)は、1個~50個の原子、より好ましくは2個~30個の原子、更により好ましくは3個~15個の原子を含む。本発明の好ましい界面活性剤においては、連結基の主鎖構造(すなわち、水素原子及びハロゲン原子、並びに側基又は分岐基上のあらゆる原子を除く)中の原子数と、基A及び基Bの主鎖構造(すなわち、水素原子及びハロゲン原子、並びに側基又は分岐基上のあらゆる原子を除く)中の総原子数との比率は、1:2~1:500、より好ましくは1:3~1:100、更により好ましくは1:5~1:50である。この比率は、本発明の界面活性剤の親水性アームの高分子の性質を反映している。
【0060】
本発明の好ましい界面活性剤において、連結基「X」は、-C(O)NH-、-C(O)NMe-、-NHC(O)-、-NMeC(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)NH-、-OC(O)NMe-、-O-、-S-、-NHC(O)NH-、-NMeC(O)NH-、-NHC(O)NMe-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、-SONH-、-NHSO-、-NHSO-C-O-、及び-O-C-SONH-から選択される基を含む。本発明の更に好ましい界面活性剤において、連結基「X」は、-C(O)NH-、-C(O)NMe-、-NHC(O)-、-NMeC(O)-、-OC(O)NH-、-C(O)O-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及び-O-から選択される基を含む。
【0061】
本発明の式(I)の幾つかの好ましい界面活性剤において、連結基「X」は荷電基を含む。荷電基は、正に荷電した基、両性イオン基、又は負に荷電した基であり得るが、好ましくは正に荷電した基である。好ましい正に荷電した基は、第四級アンモニウム基である。本発明の式(I)の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(II):
【化4】
(式中、
及びRは、独立して、H及びC1~6アルキルから選択され、かつ、
は、対イオンである)の基を含む連結基「X」を含む。
【0062】
好ましくは、R及びRは、独立して、C1~6アルキルから選択される。より好ましくは、R及びRは、メチル、エチル、プロピル、及びブチルから選択される。更により好ましくは、R及びRはメチルである。
【0063】
は、あらゆる対イオンであり得る。Wの代表的な例としては、ハロゲン化物イオン(例えば、Br、I、Cl)、トシル酸イオン、メシル酸イオン、及び酢酸イオンが挙げられる。さらに、Wは、多価荷電化合物(例えば、ジカルボン酸イオン又はトリカルボン酸イオン)又はポリマー、例えばポリ(カルボン酸)イオンであり得る。
【0064】
式(II)における波線は、荷電基が式(I)において定義される連結基「X」の残部又は基A若しくは基Bに取り付けられる場所を示している。式(I)の好ましい界面活性剤において、波線は、荷電基が連結基「X」の残部に取り付けられる場所を示している。
【0065】
本発明の他の好ましい界面活性剤において、連結基「X」は複素環を含む。連結基「X」において存在し得る複素環の例としては、1,2,3-トリアゾール、5員環~10員環と縮合された1,2,3-トリアゾール、及び二環式構造物と縮合された1,2,3-トリアゾールが挙げられる。適切な複素環の代表的な例を以下に示す:
【化5】
【0066】
本発明の他の好ましい界面活性剤において、連結基「X」はC1~6アルキレン基を含む。本発明の幾つかの好ましい界面活性剤において、連結基「X」はC1~6アルキレン基からなる。より好ましくは、連結基「X」は、Cアルキレン基、Cアルキレン基、Cアルキレン基、又はCアルキレン基を含む又はそれらからなる。
【0067】
連結基「X」がC1~6アルキレン基からなる本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化6】
(式中、a、b、及びRのそれぞれは、式Iに関する上記定義の通りである)。
【0068】
本発明の式(I)の更に好ましい界面活性剤は、式(III):
【化7】
(式中、
各pは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各qは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各rは、独立して、1から6の間の整数であり、
sは、1から6の間の整数、好ましくは1又は2、更により好ましくは1であり、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、
各Uは、独立して、複素環であり、かつ、
各Yは、独立して、
【化8】
から選択され、
ここで、W、R、及びR並びに波線は、式(II)に関する上記定義の通りである)の基を含む連結基「X」を含む。
【0069】
本発明の式(I)の更に好ましい界面活性剤は、式(IIIo)~式(IIIq):
【化9】
(式中、
各pは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各qは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、かつ、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)の基を含む連結基「X」を含む。
【0070】
本発明の式(I)のなおも更に好ましい界面活性剤は、上記に示される式(IIIa)~式(IIIq)の基を含む連結基「X」を含む。
【0071】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、又は式(IIId)の連結基「X」、好ましくは、式(IIIb)、式(IIIc)、又は式(IIId)の基を含む:
【化10】
(式中、
pは、0又は1であり、
qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、かつ、
Zは、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)。
【0072】
式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、又は式(IIId)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化11】
(式中、a、b、及びRのそれぞれは、式(I)に関する上記定義の通りである)。
【0073】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIe)、式(IIIf)、又は式(IIIg)、好ましくは(IIIf)又は(IIIg):
【化12】
(式中、
pは、0又は1であり、
qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、
rは、1から6の間の整数、好ましくは1、2、又は3であり、
Zは、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、
Yは、
【化13】
から選択され、
ここで、W、R、及びRは、式(II)に関する上記定義の通りである)の連結基「X」を含む。
【0074】
式(IIIe)、式(IIIf)、又は式(IIIg)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化14】
(式中、a、b、及びRのそれぞれは、式(I)に関する上記定義の通りである)。
【0075】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIh)、式(IIIi)、又は式(IIIj)、好ましくは(IIIi)又は(IIIj):
【化15】
(式中、
pは、0又は1であり、
qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、
rは、1から6の間の整数、好ましくは1、2、又は3であり、
Zは、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、かつ、
Uは、複素環である)の連結基「X」を含む。
【0076】
式(IIIh)、式(IIIi)、又は式(IIIj)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化16】
(式中、a、b、及びRのそれぞれは、式(I)に関する上記定義の通りである)。
【0077】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIk):
【化17】
(式中、
各pは、0又は1であり、
各qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、かつ、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)の連結基「X」を含む。
【0078】
式(IIIk)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化18】
(式中、a、b、及びRのそれぞれは、式(I)に関する上記定義の通りである)。
【0079】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIl)又は(IIIm):
【化19】
(式中、
各pは、0又は1であり、
各qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、
各rは、1から6の間の整数、好ましくは1、2、又は3であり、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、
各Uは、複素環であり、かつ、
各Yは、独立して、
【化20】
から選択され、
ここで、W、R、及びRは、式(II)に関する上記定義の通りである)の連結基「X」を含む。
【0080】
式(IIIl)又は(IIIm)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化21】
(式中、a、b、及びRのそれぞれは、式(I)に関する上記定義の通りである)。
【0081】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIn):
【化22】
(式中、
各pは、0又は1であり、
各qは、0、1、又は2、好ましくは0又は1であり、
各rは、1から6の間の整数であり、
sは、1から6の間の整数、好ましくは1、2、又は3であり、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択され、かつ、
各Yは、独立して、
【化23】
から選択され、
ここで、W、R、及びRは、式(II)に関する上記定義の通りである)の連結基「X」を含む。
【0082】
式(IIIn)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化24】
(式中、a、b、及びRのそれぞれは、式(I)に関する上記定義の通りである)。
【0083】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIo):
【化25】
(式中、
各pは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各qは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、かつ、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)の連結基「X」を含む。
【0084】
式(IIIo)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化26】
【0085】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIp):
【化27】
(式中、
各pは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各qは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、かつ、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)の連結基「X」を含む。
【0086】
式(IIIp)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化28】
【0087】
本発明の幾つかの好ましい界面活性剤は、式(IIIq):
【化29】
(式中、
各pは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、
各qは、独立して、0又は1から6の間の整数であり、かつ、
各Zは、独立して、C(O)NH、C(O)NMe、NHC(O)、NMeC(O)、OC(O)NH、C(O)O、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、及びOから選択される)の連結基「X」を含む。
【0088】
式(IIIq)の連結基「X」を含む本発明の式(I)の好ましい界面活性剤を以下に示す:
【化30】
【0089】
本発明の式(I)の好ましい界面活性剤は、
【化31】
からなる群より選択される。
【0090】
本発明の好ましい界面活性剤は、1000ダルトン~100000ダルトン、好ましくは2000ダルトン~30000ダルトン、更に好ましくは5000ダルトン~15000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0091】
本発明はまた、上記定義の式(I)の界面活性剤を作製する方法に関する。界面活性剤は、従来の反応を利用して市販の出発物質から調製され得る。
【0092】
上記の界面活性剤を作製する好ましい一方法は、
式(II):
(A)-X-(OH) (II)
(式中、
Xは、連結基であり、
各Aは、独立して、フルオロカーボン又はペルフルオロポリエーテルであり、
mは、1から10の間の整数であり、
nは、1から10の間の整数である)の化合物と、式(III):
【化32】
(式中、各Rは、独立して、C1~6アルキル、CHCHOC1~6アルキル、又はCHCH(CH)OC1~6アルキルである)の化合物とを反応させること、
を含む。
【0093】
上記の界面活性剤を作製する他の更に好ましい方法は、(A)を含む化合物と、(B)を含む化合物とを反応させることを含み、ここで、上記反応はカップリング反応であり、上記(A)と上記(B)との間にリンカーXを形成する。
【0094】
上記定義の式(I)の化合物は、界面活性剤として使用される。したがって、別の態様においては、本発明は、界面活性剤としての、上記定義の式(I)を有する化合物の使用に関する。本発明の界面活性剤は、エマルジョンを安定化するのに、より詳細には、連続油相、例えばフルオラスな油を含む連続油相中の不連続水相、例えば1つ以上の水性液滴を安定化するのに使用され得る。本発明の界面活性剤のペルフルオロポリエーテル及び/又はフルオロカーボン成分は、親フッ素性尾部として作用し、エマルジョンの油相、例えば連続油相中に可溶性であり、特に、ここで、油相は、フルオラスな油、例えばフルオラスな油相を含む。本発明の界面活性剤の親水性尾部(複数の場合もある)は、イオン性基として作用し、エマルジョンの水相、例えば不連続水相中に可溶性である。
【0095】
本発明の界面活性剤は、エマルジョンの調製において使用され得る。したがって、本発明はまた、エマルジョンの調製における、上記の界面活性剤の使用に関する。
【0096】
本発明はまた、上記の界面活性剤を含むエマルジョンに関する。本発明の好ましいエマルジョンは、不連続水相と、連続油相と、上記の界面活性剤とを含む。エマルジョンは、水相と、油相と、界面活性剤とをエマルジョンの形成に適したあらゆる量で含み得る。当業者であれば、そのような量を容易に決定することができるであろう。
【0097】
好ましくは、本発明のエマルジョンの連続油相は、フルオラスな油を含む。フルオラスな油は、好ましくは、部分的フッ素化された炭化水素、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、又はそれらの混合物である。特に好ましくは、フルオラスな油は、ヒドロフルオロエーテルである。本発明のエマルジョンの連続油相において存在する好ましいフルオラスな油は、Novec(商標)7500(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-ヘキサン)、Novec(商標)7300(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン)、Novec(商標)7200(COC)、Novec(商標)7100(COCH)、Fluorinert(商標)FC-72、Fluorinert(商標)FC-84、Fluorinert(商標)FC-77、Fluorinert(商標)FC-40、Fluorinert(商標)FC3283、Fluorinert(商標)FC-43、Fluorinert(商標)FC-70、ペルフルオロデカリン、及びそれらの混合物である。より好ましいフルオラスな油は、Novec(商標)7500(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-ヘキサン)、Fluorinert(商標)FC-40、Fluorinert(商標)FC3283、及びペルフルオロデカリンであり、更により好ましくは、Novec(商標)7500(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-ヘキサン)である。
【0098】
本発明の好ましいエマルジョンにおいて、不連続水相は、複数の液滴を含む。液滴は、好ましくは、1μm~500μm、より好ましくは10μm~150μm、更により好ましくは30μm~120μmの平均直径を有する。これが有利であるのは、したがって、液滴の容量が小さいため、必要とされる物質、例えば生体物質の量が少ないからである。液滴の少なくとも一部が1種以上の分析物を含むことが好ましい。好ましくは、各液滴は、平均数0種~100種の分析物、より好ましくは1種~20種、更により好ましくは1種~5種、例えば1種の分析物を含む。
【0099】
複数の液滴を含む本発明の好ましいエマルジョンにおいて、液滴の少なくとも一部は、水相及び非水相、化学的緩衝剤、生化学的緩衝剤、又は培養培地若しくは他の培地を更に含む。適切な化学的緩衝剤の例としては、重炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。適切な生化学的緩衝剤の例としては、HEPES、PBS、及びTrizmaが挙げられる。
【0100】
複数の液滴を含み、液滴の少なくとも一部が1種以上の分析物を含む本発明のエマルジョンにおいて、分析物は、対象となるあらゆる実体であり得る。複数の液滴を含み、液滴の少なくとも一部が1種以上の分析物を含む本発明のエマルジョンの1つの群において、分析物は、好ましくは、小分子、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、酵素、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、核酸、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、代謝産物、補因子、及び人工的に操作された分子から選択される生体分子である。より好ましくは、生体分子は、抗体、酵素、オリゴヌクレオチド、及び代謝産物から選択され、更により好ましくは、抗体及び代謝産物から選択される。任意に、生体分子は、細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、ハイブリドーマ、微生物)、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア)、ウイルス、又はプリオンにおいて含まれ得る。
【0101】
複数の液滴を含み、液滴の少なくとも一部が1種以上の分析物を含む本発明のエマルジョンの別の群において、分析物は、生体分析物、例えば、細胞、細胞性構成要素又は構成成分の細胞内複合体である。生体分析物は、好ましくは、細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、微生物細胞、酵母細胞)、初代B細胞、T細胞、ハイブリドーマ、微生物、ウイルス、細菌、又はプリオン、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア)、又はエクソソームから選択され、より好ましくはB細胞、T細胞、ハイブリドーマ、及び微生物から選択され、更により好ましくはハイブリドーマ及び微生物から選択される。生体分析物が細胞である場合に、細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、微生物細胞から選択され、より好ましくは哺乳動物細胞及び微生物細胞から選択され、更により好ましくは哺乳動物細胞から選択される。好ましくは、分子は、細胞内で産生され、細胞から排泄され、又は分泌され、例えば、分子は、細胞から排泄又は分泌される。生体分析物が細胞小器官である場合に、細胞小器官は、好ましくは細胞核及びミトコンドリアから選択される。
【0102】
複数の液滴を含み、液滴の少なくとも一部が1種以上の分析物を含む本発明のエマルジョンの更なる群において、分析物は、好ましくはビーズ、ナノ粒子、結晶、ミセル、量子ドット、検出試薬、抗体、酵素補因子、核酸増幅試薬、オリゴヌクレオチドシーケンシング試薬、細胞形質転換試薬、細胞形質導入混合物、及びゲノム編集試薬から選択されるアッセイ成分である。より好ましくは、アッセイ成分は、ビーズ、検出試薬、核酸増幅試薬、及びゲノム編集試薬から選択され、更により好ましくは検出試薬から選択される。
【0103】
液滴の少なくとも一部が生命体、例えば、細胞又は細菌を含む場合に、水相は、好ましくは培養培地又は成長培地を含む。あらゆる従来の培地を使用することができる。培地は、例えば、グルコース、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、塩、pH指示薬、及び密度適合試薬、例えばFicollを含み得る。対象となる分析、反応、又は他のプロセス、例えばマイクロ流体デバイスにおけるソーティングの期間にわたって生命体を生存させ続けるのに十分な培地を提供しなければならない。
【0104】
本発明はまた、上記のエマルジョンを調製する方法であって、
(i)水相を調製することと、
(ii)油相を調製することと、
(iii)水相と、油相と、上記の界面活性剤とを混合して、エマルジョンを形成することと、
を含む、方法に関する。
【0105】
エマルジョンを調製する好ましい方法の1つの群において、界面活性剤は、上記水相と混合する前に油相と混合(例えば、油相中に溶解)される。好ましくは、界面活性剤は、油相中に0.001%(重量/重量)~20%(重量/重量)、より好ましくは0.1%(重量/重量)~10%(重量/重量)、更により好ましくは0.5%(重量/重量)~5%(重量/重量)の濃度で溶解される。好ましくは、水相は、少なくとも1種の分析物を含む。幾つかの好ましい方法においては、油相は、フルオラスな溶媒中の界面活性剤の溶液であり得る。言い換えれば、界面活性剤をフルオラスな溶媒中に溶解して、油相を得ることができる。
【0106】
エマルジョンを調製する代替的な好ましい方法においては、界面活性剤は、油相と混合する前に水相と混合(例えば、水相中に溶解)される。
【0107】
エマルジョンを調製する更に好ましい方法においては、界面活性剤は、水相と油相とを混合する前に水相と混合(例えば、水相中に溶解)され、別途油相と混合(例えば、油相中に溶解)される。あらゆる従来の混合方法、例えば、T字型合流部、ステップ乳化、フローフォーカス型合流部等を使用することができる。
【0108】
上記のエマルジョンを調製する好ましい方法において、混合は、マイクロ流体デバイス、例えば、国際公開第2012/022976号及び特許文献12において開示されるマイクロ流体デバイスのフローフォーカス型合流部によるものである。これが有利であるのは、それにより、典型的にはピコリットル又はナノリットル程度の容量を有する非常に小さな水相、例えば液滴を生成することが可能となるからである。
【0109】
エマルジョンを調製する方法の更に好ましい特徴は、上記のエマルジョンの好ましい特徴と同じである。したがって、好ましくは、エマルジョン、水相、及び油相は、エマルジョンに関する上記定義の通りである。
【0110】
実験、アッセイ、反応、及びプロセスを、本発明のエマルジョン中で実施することができる。エマルジョンの不連続水相、例えば、水性液滴は、実験、アッセイ、反応、及びプロセス用の場所として機能し得る。本発明の界面活性剤は、エマルジョン、例えば油相中の不連続水相を安定化することから、実験、アッセイ、反応、又はプロセスをエマルジョン中で実施することが可能となる。したがって、不連続水相、例えば水性液滴が合体することなく、実験、アッセイ、反応、又はプロセスを実施することができる。実験、アッセイ、反応、又はプロセスは、エマルジョンの水相中に存在する1種以上の分析物を必要とし得る。したがって、エマルジョン内で、例えば、上記のエマルジョンの不連続水相(好ましくは、水性液滴)内で1つ以上の実験、アッセイ、反応、及びプロセスを実施する方法は、本発明の別の態様を形成する。本発明のエマルジョン中で実施される実験、アッセイ、反応、及びプロセスは、マイクロ流体流路又はマイクロ流体デバイスにおいて実施され得る。例えば、実験、アッセイ、反応、及びプロセスは、マイクロ流体デバイスの1つ以上の流路において実施され得る。
【0111】
したがって、本発明はまた、上記のエマルジョンの不連続水相中で1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを実施する方法に関する。
【0112】
一態様においては、上記のエマルジョンの不連続水相中で1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを実施する方法は、好ましくは、1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応を実施する方法である。化学的反応及び/又は生物学的反応は、酵素反応であり得る。代替的には、化学的反応及び/又は生物学的反応は、測定可能なシグナルをもたらす分子結合、分子相互作用、細胞相互作用、又はコンフォメーション変化である。好ましくは、化学的反応及び/又は生物学的反応は、酵素反応、分子結合、又は分子/細胞相互作用である。
【0113】
別の態様においては、上記のエマルジョンの不連続水相中で1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを実施する方法は、好ましくは、1つ以上の生物学的プロセスを実施する方法である。生物学的プロセスは、細胞による抗体分泌若しくは酵素分泌、又は細胞内部での酵素産生であり得る。代替的には、生物学的プロセスは、抗体結合である。代替的な方法においては、生物学的プロセスは、核酸増幅プロセス、部分的若しくは完全な核酸複製プロセス、又は核酸転写プロセスであり得る。代替的には、生物学的プロセスは、細胞増殖、細胞代謝、細胞トランスフェクション、細胞形質導入、細胞シグナル伝達、細胞アポトーシス、又は細胞死であり得る。好ましくは、生物学的プロセスは、PCRである。使用されるプロセスは、デジタルPCRに関するプロセスであり得る。
【0114】
したがって、本発明はまた、上記のエマルジョンの不連続水相中で細胞、分子、又は細胞成分に対する1つ以上の薬物スクリーニング試験を実施する方法に関する。
【0115】
1つ以上の生物学的プロセスを実施する方法の別の態様においては、生物学的プロセスはゲノム編集プロセスであり得る。生物学的プロセスは、試料調製、例えば、シーケンシングのためのオリゴヌクレオチド試料の調製プロセスであり得る。生物学的プロセスは、核酸シーケンシングであり得る。シーケンシングされる分子はRNA又はDNAであり得て、シーケンシングは、ゲノムレベル、エピゲノムレベル、又はトランスクリプトームレベルでのシーケンシングであり得る。
【0116】
上記のエマルジョンの不連続水相中で1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを実施する方法は、1つ以上の化学的反応、1つ以上の生物学的反応、1つ以上の生物学的プロセス、又はそれらの組合せを含み得る。好ましい化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスは、上記の通りである。
【0117】
好ましくは、上記のエマルジョンの不連続水相中で1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを実施する方法は、マイクロ流体流路又はマイクロ流体デバイスにおいて実施される。これにより、化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを、非常に小規模で、例えば液滴内で実施することが可能となり、非常に少ない物質、例えば、生体物質しか必要とされない。マイクロ流体流路又はマイクロ流体デバイスは、好ましくは、自動化されたデバイス及びソフトウェアによって制御される。
【0118】
好ましくは、上記のエマルジョンの不連続水相中で1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスを実施する方法は、熱的条件下、pH条件下、又は環境循環条件下で実施される。
【0119】
本発明の界面活性剤及びエマルジョンは、多くの有用な用途を有する。これらは特に、マイクロ流体力学的応用において多くの潜在的な用途を有する。例えば、上記定義の界面活性剤及び/又はエマルジョンは、液滴をソーティングする方法、液滴を合体させる方法、又は流体を液滴内に導入する方法において使用され得る。界面活性剤及び/又はエマルジョンはまた、流体からタンパク質を抽出する方法において使用され得る。これらの方法は、好ましくは、マイクロ流体デバイスにおいて実施される。
【0120】
本明細書において記載される本発明の方法(例えば、エマルジョンを調製する方法、1つ以上の化学的反応及び/又は生物学的反応、及び/又は生物学的プロセスをエマルジョンの不連続相中で実施することを含む方法、マイクロ流体デバイスにおいて液滴をソーティングする方法、マイクロ流体デバイスにおいて液滴を合体させる方法、マイクロ流体デバイスにおいて流体を液滴内に導入する方法、マイクロ流体デバイスにおいて液滴を分割する方法、流体から分子を抽出する方法)は、あらゆる組合せ及び順序において同時に又は逐次に(例えば、逐次に)実施され得る。本発明の2つ以上の方法の実施は、機能のワークフローとして知られている場合がある。
【0121】
好ましい機能のワークフローは、以下の工程を含み得る:
(i)a)水相を調製することと、b)油相を調製することと、c)上記水相と、上記油相と、上記定義の界面活性剤とを混合して、マイクロ流体デバイスにおいて上記エマルジョンを形成することとを含む、上記定義のエマルジョンを調製する工程であって、水相は、生体培地中で細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、ハイブリドーマ、微生物)、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア)、ウイルス、又はプリオンを含み、油相は、上記定義のフルオラスな溶媒及び上記定義の界面活性剤からなり、得られるエマルジョンは、複数の液滴を含み、各液滴は、1つの細胞又は小さなプール又は細胞、例えば最大50個の細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、ハイブリドーマ、微生物)、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア)、ウイルス、又はプリオンを含む、工程、
(ii)工程(i)からの上記液滴内で上記定義の第1の生物学的プロセスを実施する工程であって、生物学的プロセスは、細胞増殖、細胞による抗体産生、細胞による抗体分泌、細胞のゲノム編集、細胞による酵素分泌、細胞内での酵素産生、及び酵素反応である、工程、
(iii)マイクロ流体デバイスにおいて上記定義の液滴をソーティングする工程であって、a)マイクロ流体デバイスの流路において上記定義のエマルジョン中の工程(ii)からの上記水性液滴の流れを供給することと、この流れを第1の方向から照らすことと、液滴内の分析物からの光を第2の方向において検出することと(ここで、検出する光は分析物からの散乱光又は蛍光である)、検出された光又は測定可能な信号に応答して、液滴を複数の区別された流れのうちの1つへとソーティングすることとを含む、工程、
(iv)任意に、マイクロ流体デバイスにおいて上記定義の工程(iii)からの上記ソーティングされた液滴へと流体を導入する工程であって、流体は、少なくとも1つの生体分子を含み、ここで、生体分子は、小分子、タンパク質、酵素、ペプチド、アミノ酸、多糖類、オリゴ糖類、二糖類、単糖類、核酸、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、補因子、及び細胞溶解試薬から選択される、工程、
(v)任意に、工程(iv)からの上記液滴内部で上記定義の第2の生物学的プロセスを実施する工程であって、上記生物学的プロセスは、細胞溶解及び酵素反応であり、ここで、上記酵素は、工程(ii)において上記細胞によって分泌され、又は上記細胞内部で産生され、上記酵素反応は、工程(iv)における上記生体分子をその対応する産物に変換することである、工程、
(vi)任意に、a)工程(v)からの上記液滴を高温で一定期間にわたって処理することと(ここで、温度は50℃~98℃であり、期間は10秒~1時間である)、b)マイクロ流体デバイスにおいて流体を上記定義の工程(v)からの上記液滴内に導入することと(ここで、流体は、酸、アルカリ、又は酵素阻害剤を含む)、c)工程(v)からの上記液滴を4℃~10℃の温度でソーティングすることとによって、工程(v)における上記酵素反応をクエンチする工程、
(vii)マイクロ流体デバイスにおいて上記定義の工程(iii)又は工程(vi)からの液滴を分割する工程であって、a)工程(iii)又は工程(vi)からの液滴を、マイクロ流体デバイス上の3つのマイクロ流体流路を備えるマイクロ流体合流部の第1のマイクロ流体流路において供給することと、水性液滴をマイクロ流体合流部に通過させ、それにより上記液滴を2つの娘液滴に、すなわち第1の娘液滴を第2のマイクロ流体流路に、そして第2の娘液滴を第3のマイクロ流体流路に分割することとを含む、工程、
(viii)マイクロ流体エレクトロスプレーイオン化(すなわち、ESI)エミッターを介して第1の娘液滴の内容物を気化及びイオン化した後に質量分析(MS)法を使用して、第1の娘液滴内部で工程(iii)又は工程(v)における上記酵素反応から生成された産物分子を分析する工程、
(ix)工程(viii)におけるMS分析結果に応答して、マイクロ流体デバイスにおいて対応する第2の娘液滴をソーティングする工程。
【0122】
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例及び図面によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1】マイクロ流体デバイスのフローフォーカス型合流部での本発明の界面活性剤によって安定化されたピコ液滴を示す図である。
図2】マイクロ流体デバイスの出口での本発明の界面活性剤によって安定化された同じピコ液滴を示す図である。
図3】収集バイアルから採取された、本発明の界面活性剤によって安定化された試料ピコ液滴を示す図である。
図4】フローフォーカス型合流部での界面活性剤37を使用したCHO培養培地のマイクロ液滴生成(a)、出口でのマイクロ液滴(b)、及び収集バイアルから採取された試料マイクロ液滴(c)を示す図である。
図5】フローフォーカス型合流部での界面活性剤37を使用したハイブリドーマ培養培地のマイクロ液滴生成(a)、出口でのマイクロ液滴(b)、及び収集バイアルから採取された試料マイクロ液滴(c)を示す図である。
図6】(a)フローフォーカス型デバイス内、(b)生成チップの出口での界面活性剤22の画像、並びに(c)画像(a)及び画像(b)において示される液滴を100μmの高さの測定チップ内に貯蔵したものを示す図である。
図7】以下のように、Novec7500中の画分B(界面活性剤22)の5%(重量:重量)溶液から作製されたマイクロ液滴の画像を示す図である。画像7a:60μm×60μmのフローフォーカス型デバイスを使用した、Novec7500中の5%の界面活性剤22、流量700μL/h、及びハイブリドーマ培地500μL/hを用いた液滴生成による、294pLのマイクロ液滴の製造。画像7bは、画像aの場合と同じ条件であるが、生成チップの出口で作成された。画像7cは、上記の画像a及び画像bにおける生成された294pLの貯蔵されたピコ液滴を100μmの高さの測定チップ内に貯蔵したものを示している。
図8】以下のように、界面活性剤41、つまりKrytox-bis-Click界面活性剤(Novec7500中の1%の界面活性剤(重量:重量))から作製されたマイクロ液滴の画像を示す図である。画像8a-油流量2600μL/h、DPBS 333μL/h、容量243.3pL(n=4)、φ77.4μmにおける液滴生成。図8bは、Krytox-bis-Click界面活性剤41(Novec7500中の1%の界面活性剤(重量:重量))から、油流量2600μL/h、DPBS 333μL/h、容量243.3pL(n=4)、φ77.4μmを用いて作製されたマイクロ液滴を100μmの高さのリザーバー内に貯蔵したものを示している。図8cは、Krytox-bis-Click界面活性剤41(Novec7500中の1%の界面活性剤(重量:重量))の、油流量2000μL/h、DPBS 333μL/h、容量293.5pL(n=4)、φ82.4μmを用いたマイクロ液滴生成を示している。図8dは、Krytox-bis-Click界面活性剤41(Novec7500中の1%の界面活性剤(重量:重量))から、油流量2000μL/h、DPBS 333μL/h、容量293.5pL(n=4)、φ82.4μmを用いて作製されたマイクロ液滴を100μmの高さのリザーバー内に貯蔵したものを示している。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0124】
実施例1:RがMeである界面活性剤3の重合による合成
【化33】
【0125】
界面活性剤3を合成するのに、最初にKrytoxアルコール(3a)を塩化アリルと反応させる。次に、得られた中間体3bの二重結合を酸化させて1,2-ジオールを得た後に、Krytoxジオール中間体3cの2個のヒドロキシル基からポリマー鎖を延長させる。
【0126】
実施例2:RがMeである界面活性剤3のエーテルカップリングによる合成
【化34】
【0127】
界面活性剤3を、3-クロロ-1,2-プロパンジオールの2個のヒドロキシからポリマー鎖を延長させることから始めて、続いて、得られた中間体3dとKrytoxアルコールとの間で塩基の存在下にてカップリング反応を行うことで合成することもできる。
【0128】
実施例3:RがMeである界面活性剤4のアミドカップリングによる合成
【化35】
【0129】
界面活性剤を合成するのに、最初に4,3-クロロ-1,2-プロパンジオールを3-アジド-1,2-プロパンジオールに転化させた後に、2個のヒドロキシル基からポリマー鎖を延長させる。得られた中間体4aのアジド基を還元してアミノ基にする。次に、最後に、中間体4bをKrytox酸塩化物とカップリングさせて、界面活性剤4を得る。
【0130】
実施例4:RがMeである界面活性剤11のアミドカップリングによる合成
【化36】
【0131】
界面活性剤11の合成は、Trizma(商標)塩基のアミノ基のBoc保護から始まり、続いて3個のヒドロキシル基からポリマー鎖を延長させる。中間体11aのBocの脱保護後に、中間体11bとKrytox酸塩化物との間のカップリング反応により、目標の界面活性剤11を得る。
【0132】
実施例5:RがMeである界面活性剤5のカルバメートカップリングによる合成
【化37】
【0133】
界面活性剤5を、中間体4bと、4-ニトロフェニルクロロホルメートで活性化されたKrytoxアルコールとをカップリングさせることによって合成する。
【0134】
実施例6:RがMeである界面活性剤8のカップリングによる合成
【化38】
【0135】
界面活性剤8を、中間体3dと、Krytox酸塩化物と1-(2-アミノエチル)ピペリジンとの反応により作製された中間体8aとをカップリングさせることによって合成する。
【0136】
実施例7:RがMeである界面活性剤23のカップリングによる合成
【化39】
【0137】
界面活性剤23の合成は、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールの2個のヒドロキシル基からポリマー鎖を延長させて中間体23aを得ることから始まり、続いて、以下の手順に従って作製された中間体23bとカップリングさせる。
【0138】
N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]Krytoxアミド(23b)の合成
無水THF(60mL)中の3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン(50.61g、62.3mL、495mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で50℃にて、Novec7500(203mL)中のkrytox酸塩化物(2、192.39g、82.55mmol)の溶液を、カニューレを介して1時間かけて滴加した。混合物を窒素下で50℃にて48時間撹拌した後に、混合物を室温まで冷まし、黄色の固体を濾過により除去し、Novec7500(30ml)で洗浄した。濾液をメタノール(4×100mL)とともに撹拌し、そのたびにフルオラスな下相を分液漏斗において分離した。次に、フルオラスな層を真空中で蒸発乾涸させて、(6)を薄黄色の油状物(189.7g、95.9%)として得た。IR(cm-1):2955.5(bw)、2832.0(bw)、1729.6(sm)。H NMR(400MHz,FC72中の5%のC12;容量:容量):9.506(1H,bs,NH)、3.493(2H,m,CONHCH)、2.488(2H,t,CH-NMe)、2.246(6H,s,NMe)、1.692(2H,m,CH-CHNMe)。
【0139】
実施例8:RがMeである界面活性剤27のカップリングによる合成
【化40】
【0140】
界面活性剤27の合成は、1,4-ジブロモ-2,3-ブタンジオールの2個のヒドロキシル基からポリマー鎖を延長させて中間体27aを得ることから始まり、続いて、上記の手順に従って作製された中間体23bとカップリングさせる。
【0141】
実施例9:RがMeである界面活性剤34のクリックケミストリーによる合成
【化41】
【0142】
最初に、KrytoxアミドをKrytoxアミンに還元させた後に、4-ニトロフェニルクロロホルメートで活性化された(1R)-(-)-ノポールとカップリングさせた。次に、得られた中間体34aを中間体4aとクリック反応させて、目標の界面活性剤34を得る。
【0143】
実施例10:RがMeである界面活性剤36のクリックケミストリーによる合成
【化42】
【0144】
最初に、2,3-ジブロモ-1-プロパノールがアジ化ナトリウムと反応して、2,3-ジアジド-1-プロパノールが得られ、続いてポリマー鎖を延長させる。次に、得られた中間体36aを、Krytoxアルコールから作製されたKrytoxノポール(36b)とクリック反応させて、目標の界面活性剤36を得る。
【0145】
実施例11:RがMeである界面活性剤35のクリックケミストリーによる合成
【化43】
【0146】
界面活性剤35の合成は、4-ニトロフェニルクロロホルメートで活性化された(1R)-(-)-ノポールと中間体11bとの間の反応から始まる。次に、得られた中間体35aを、Krytoxアルコールから作製されたKrytoxアジド(35b)とクリック反応させて、目標の界面活性剤35を得る。
【0147】
実施例12:
Krytox-FSL-PEG-11-アジド-1-アミドの合成
【化44】
【0148】
Novec7100(58.0mL)中のKrytox FSL 2,2,2-トリフルオロエチルエステル(57.26g、23.97mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で38℃にて、無水THF(25.5mL)中の11-アジド-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-アミン(5.393g、24.71mmol)の溶液を、1.5mLの洗浄液を含めシリンジを介して加えた。次に、40℃で一晩撹拌したところ、TLCにより多くの未反応のアミンが存在することが示された。トリエチルアミン(3.512mL、25.2mmol)を、シリンジを介して加え、ブロック温度を60℃に上昇させた。48時間後に、反応物を室温まで冷まし、真空中で蒸発乾涸させた。得られた油状物をNovec7500(200mL)中に溶解し、分液漏斗においてメタノール(4×50mL)で抽出した。次に、フルオラスな層を真空中で蒸発させて、濃厚な黄色の油状物(69.0g)を得た。IR(cm-1)2115.0(N)、1790.5(C=O、TFE-エステル)、1730.62(C=O、生成物)。2つのカルボニル伸縮は、ほぼ同等の強さであった。粗製物質の一部(20.95g)をNovec7100(15.0mL)中に溶解し、Novec7100で予備洗浄された80gのInterchimの50μmのHCカートリッジへとロードした。次に、カラムを以下のように洗浄した:a.Novec7100(250mL)、b.0.5%のMeOH/Novec7100(250mL)、c.1.0%のMeOH/Novec7100(250mL)、d.1.5%のMeOH/Novec7100(250mL)、e.2.0%のMeOH/Novec7100(250mL)、f.3.0%のMeOH/Novec7100(250mL)、g.5.0%のMeOH/Novec7100(250mL)、h.10.0%のMeOH/Novec7100(500mL)。Novec7100中で溶出された出発物質を真空中で蒸発させて、無色の油状物(12.224g)を得た。後から流れる生成物バンドの画分を合わせ、真空中で蒸発させて、生成物を澄明な油状物(7.317g、12.15%)として得た。IR(cm-1):2112.3(N,mBr)、(C=O,1717.15)。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むFC-72中の5%のC12(重量:重量))、Δ(ppm)7.80(1H,s,NH)、3.72(14H,s)、3.60(2H,s)、3.35(2H,s)。
【0149】
1-(2-(6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-2-エン-2-イル)エトキシ)-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)の重合
【化45】
【0150】
t-Bu-P4ホスファゼン塩基(10.48ml、ヘキサン中0.8M、8.4mmol)を、トルエン(40ml)中の(1R)-(-)-ノポール(1.40g、8.4mmol)の溶液に加えた。メチルグリシジルエーテル(19.6g、222.4mmol)を滴加し、得られた混合物をN下で40℃にて2日間撹拌した。反応を安息香酸(2.0g)でクエンチし、減圧下で濃縮し、THF中に再溶解した。生成物を中性アルミナに通し、濾過し、減圧下で濃縮することにより精製して、薄褐色の油状物(11.33g)を得た。
【0151】
Krytox-FSL-PEG-11-アジド-1-アミドと1-(2-(6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-2-エン-2-イル)エトキシ)-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)との間のクリック反応
【化46】
【0152】
Novec7500(5.4mL)中の粗製ノポールポリマー(0.93g)の溶液に、無水DMF(2.0mL)中のKrytox-FSL-PEG-11-アジド-1-アミド(1.303g、5.18mmol)の溶液を、シリンジを介して窒素雰囲気下で加えた。加熱ブロックを105℃に設定した。3時間後に、TLC(Novec7100中の4%のMeOH)により、全てのアジドが反応したことが示されたが、105℃で一晩加熱を続けた。室温まで冷ましたら、Novec7500(20mL)を加え、溶液を分離フラスコ中でメタノール(3×50mL)により抽出した。フルオラスな相を真空中で蒸発乾涸させて、生成物(1.156g)を得た。粗製物質の一部(1.00g)をNovec7100(3.0mL)中に溶解し、Novec7100で予備洗浄された25gのInterchimの50μmのHCカートリッジへとロードした。次に、カラムを以下のように洗浄した:a.Novec7100(100mL)、b.1.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、c.2.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、d.3.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、e.4.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、f.5.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、g.6.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、h.7.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、及びi.8.0%のMeOH/Novec7100(100mL)。極性の画分を合わせ、真空中で蒸発させて、生成物を薄黄色の油状物(365mg)として得た。油状物をNovec7500(6.935g)中に溶解することによって5.0%のストック溶液を作製し、マイクロ液滴の生成に使用した。
【0153】
実施例13
2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパン-ジオール
【化47】
【0154】
固体の2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパンジオール(24.06g、91.86mmol)に、水(50mL)中のアジ化ナトリウム(18.19g、275.6mmol)の溶液を、窒素下で室温にて加え、ビーカーに残っているアジドを水(40.0mL)で洗い流し、反応物に加えた。次に、溶液が僅かに濁っていたため、撹拌された溶液を、窒素下で100℃のブロック温度に加熱し、追加の水(30.0mL)を加え、ブロック温度を105℃に高めた。46時間後に、反応物を室温まで冷まし、DCM(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、硫酸ナトリウムを介して乾燥させ、濾過し、蒸発させて、生成物を薄黄色の油状物(16.24g、95.0%)として得た。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)3.65(4H,t,CH-O)、3.43(4H,t,CH-N)、2.60(2H,bs,OH)。
【0155】
2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリマー
【化48】
【0156】
無水トルエン(10mL)中の2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパン-ジオール(200mg、1.075mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で室温にて、ヘキサン中の溶液P-t-Bu(0.8M、2.68mL、2.15mmol、ホスファゼン塩基)を、シリンジを介して加えた。次いで、無溶媒の2-(メトキシメチル)オキシラン(2.215mL、36.49mmol、34.0モル当量)を、撹拌された溶液にシリンジを介して室温で加えた。48時間後に、固体の安息香酸(0.934g、7.65mmol)を加えることにより反応をクエンチし、溶解後に、反応物を真空中で蒸発させた。粗生成物をDCM(50mL)中に溶解し、水(50mL)で洗浄し、水相をDCM(2×15mL)で逆抽出した。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した。次に、有機画分をアミノプロピルシリカ(1.64g、1.78mmol)とともに10分間撹拌した後に、濾過し、真空中で蒸発させて、薄黄色の油状物(2.985g)を得た。油状物をTHF(3.0mL)中に溶解し、THFで予備洗浄されたアルミナ(34g)の自然落下カラムへとロードした。カラムを最初のTHF(300mL)で洗浄し、これを真空中で蒸発させて、黄色の油状物(0.722g)を得た。IR(cm-1)2101.0(弱,s,N)。カラムをTHF(250mL)中の10%のメタノールで洗浄して、粗生成物(1.876g)を得た。IR(cm-1)2101.0(中,s,N)。
【0157】
2,2-ビス(アミノメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリマー
【化49】
【0158】
メタノール(3.0mL)中の粗製2,2-ビス(アミノメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリマー(0.86g、約0.27mmol)の溶液に、固体のギ酸アンモニウム(85mg、1.35mmol)を加えた後に、亜鉛末(118mg、1.80mmol)を加え、窒素下で室温にて反応が開始した。20時間後に、セライトを介して固体を濾別し、濾液を真空中で蒸発させて、薄黄色の油状物(0.731g)を得た。油状物を1gのSCXカートリッジへと溶解し、最初にメタノール(15mL)で、次にメタノール中のアンモニア(7.0M、15.0mL)で溶出した。メタノール性アンモニア画分を蒸発させて、緑色の油状物(90mg)を得た。
【0159】
RがMeである界面活性剤22の合成
【化50】
【0160】
THF(2.5mL)中の2,2-ビス(アミノメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリマー(90mg、28.8mmol)の撹拌された溶液に、N-メチルモルホリン(50μL、0.54mmol)を窒素下で室温にて加えた。Novec7100(3.0mL)中のKrytox-4-ニトロフェニルカーボネート(133mg、71.94μmol、2.5mol当量)の溶液を加えたところ、加えている間に溶液は緑色から黄色に変化した。次に、ブロック温度を40℃に上昇させ、約112時間撹拌した後に、室温まで冷ました。溶液を真空中で蒸発乾涸させた後に、Novec7500(12.0mL)中に溶解し、メタノール(3×10.0mL)で洗浄した。フルオラスな画分を真空中で蒸発させて、粗生成物を無色の油状物(219mg)として得た。IR(cm-1)1779.8(弱,s,未反応のKrytoxカーボネート)及び1744.6(中,s,カルバメート)。
【0161】
実施例14:水のピコ液滴の生成
300pL~400pLの間の容量を有する液滴を生成するのに、実施例12において合成された5%(重量/重量)の界面活性剤を含有するフルオラスな油(例えば、Novec7500)を連続キャリア油相として使用する一方で、生化学的緩衝溶液を分散水相として使用した。単一のフローフォーカス型ノズル(ノズル寸法:60μm×60μm)を備えたPDMSマイクロ流体チップにポリエチレンチューブ(内径:0.38mm)を介して接続されたCetoni GmbHのシリンジポンプを使用して、2つの相を注入した。典型的な流量は、フルオラスな相については1000μL/時間から1500μL/時間の間の範囲であり、水相については500μL/時間で一定に保った。
【0162】
ピコ液滴が界面活性剤によって安定化されていることが図により示される。図1はフローフォーカス型合流部での液滴生成を示し、図2は出口での液滴を示している。液滴が同じサイズであることは明らかである。図3は、収集バイアルから採取された試料液滴を示しており、これにより液滴の安定性が更に確認される。
【0163】
実施例15:RがMeである界面活性剤37の合成
2,3-ジアジドプロパン-1-オールの合成
【化51】
【0164】
2,3-ジブロモプロパン-1-オール(4.36g、20mmol)をDMSO(120mL、60mmol)中のNaNの撹拌溶液に加え、75℃で2日間撹拌した。TLCにより1つだけの生成物スポットが示された。反応を水(250mL)でクエンチし、ジエチルエーテル(3回、150mL)で抽出し、水(2回、150mL)及び飽和ブライン(150mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(50g)で乾燥させた。濾過により、生成物を黄色の油状物(2.231g、15.7mmol、79%)として得る。IR(cm-1)3374.8(ブロード,m,OH)、2932.8(b,m,CH)、2085.0(シャープ,s,N)。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)3.82(3H,m,CHOH及びCHN)、3.45(1H,m,CH)、2.00(1H,s,OH)。
【0165】
1-(2,3-ジアジドプロポキシ)-ポリ(3-メトキシプロピレンオキシド)の合成
【化52】
【0166】
2-(メトキシメチル)オキシラン(8.38g、95.1mmol)を、トルエン(20mL)中の2,3-ジアジド-プロパン-1-オール(0.51g、3.59mmol)の溶液に加えた。tert-Bu-P4塩基(4.49mL、ヘキサン中0.8M、3.59mmol)を滴加し、混合物を室温で6日間撹拌した。反応を安息香酸(1.00g)でクエンチし、蒸発させて、粗製油状物(8.183g)を得た。これをカラムクロマトグラフィーによりTHF(100%)で溶出させて精製して、生成物(2.989g)を得た。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)3.94(2H,幅広いs,2H,CHOH)、3.64(幅広いm,4H)、3.56~3.40(m,7.5H)、3.39~3.36(m,5H)、1.89(2H,s,OH)。
【0167】
1-(2,3-ジアミノプロポキシ)-ポリ(3-メトキシプロピレンオキシド)の合成
【化53】
【0168】
1-(2,3-ジアジドプロポキシ)-ポリ(3-メトキシプロピレンオキシド)(2.0g)を、メタノール(50mL)中のトリフェニルホスフィン(1.20g、4.56mmol)の撹拌溶液に加え、50℃に加熱した。溶液をN下で50℃にて2週間撹拌した。混合物を蒸発させ、ジクロロメタン(30mL)中で再溶解した。これをHCl(1.0M、15mL)及びブライン(5mL)で酸性化し、ジクロロメタン(2×15mL)で洗浄し、NaOH(10M)で塩基性化し、ジクロロメタン(3×20mL)で抽出した。合わせた有機画分を、NaSOを介して乾燥させ、蒸発させて、生成物を黄色/褐色の油状物(0.31g)として得た。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)3.94(2H,s,CHO)、3.68(26H,幅広いs)、3.55~3.28(60H,幅広いm)、2.80(4H,bm,(NH)、0.8(2H,幅広いs,OH)。
【0169】
界面活性剤37の合成
【化54】
【0170】
THF(25mL)中の1-(2,3-ジアミノプロポキシ)-ポリ(3-メトキシプロピレンオキシド)(0.294g、0.639mmol)及び4-メチルモルホリン(0.21mL、1.1917mmol)の溶液を、Novec7100(15mL)中のPFPE-CHOC(O)O-Ph-4-NO(2.36g、1.278mmol)の溶液に加え、N下で40℃にて1週間撹拌した。反応混合物を濾過し、蒸発させ、Novec7100中に再溶解した。次に、溶液を洗浄し、引き続き、黄色が残らなくなるまでアミノプロピル官能化シリカ(20g、10g、及び10g)を用いて濾過した。得られた溶液を蒸発させて、薄黄色の油状物(0.765g)を得て、これを20gのシリカ(30μm)カラムクロマトグラフィーにおいて、2%のMeOH/Novec7100(75mL)、5%のMeOH/Novec7100(50mL)、7%のMeOH/Novec7100(50mL)、及び10%のMeOH/Novec7100(100mL)で溶出させて精製し、生成物(0.667g)を得た。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むFC-72中の5%のC12(重量:重量))、Δ(ppm)4.78(4H,幅広いm,(Krytox-CH)、4.10~3.70(幅広いm,16H)、3.68~3.40(幅広いm,9.2H)、3.39~3.25(幅広いm,16H)。
【0171】
マイクロ液滴の生成
300pL~400pLの間の容量を有する液滴を生成するのに、実施例15において合成された5%(重量/重量)の界面活性剤37を含有するフルオラスな油(例えば、Novec7500)を連続キャリア油相として使用する一方で、細胞培養培地を分散水相として使用した。単一のフローフォーカス型ノズル(ノズル寸法:60μm×60μm)を備えたPDMSマイクロ流体チップにポリエチレンチューブ(内径:0.38mm)を介して接続されたCetoni GmbHのシリンジポンプを使用して、2つの相を注入した。典型的な流量は、フルオラスな相については800μL/時間から1000μL/時間の間の範囲であり、水相については500μL/時間で一定に保った。マイクロ液滴が界面活性剤によって安定化されていることが図4及び図5により示される。図4は、フローフォーカス型合流部でのCHO培養培地のマイクロ液滴生成(a)、出口でのマイクロ液滴(b)、及び収集バイアルから採取された試料マイクロ液滴を示しており、これによりマイクロ液滴の安定性が確認される。図5は、フローフォーカス型合流部でのハイブリドーマ培養培地のマイクロ液滴生成(a)、出口でのマイクロ液滴(b)、及び収集バイアルから採取された試料マイクロ液滴を示しており、これによりマイクロ液滴の安定性が確認される。
【0172】
実施例16:RがMeである界面活性剤38の合成
2,3-ジアジドブタン-1,4-ジオールの合成
【化55】
【0173】
水(25mL)中の2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール(4.96g、20mmol)の溶液を、水(25mL)中のNaN(3.90g、60mmol)の溶液に加え、N下で80℃にて5日間加熱した。反応混合物を室温まで冷まし、クロロホルム/イソプロパノール(3:1、4×50mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物を、NaSOを介して乾燥させ、蒸発させて、黄色の油状物(2.95g、17.2mmol、86%)を得た。
【0174】
1,4-(2,3-ジアジドブトキシ)-ジポリ(3-メトキシプロピレンオキシド)の合成
【化56】
【0175】
2-(メトキシメチル)オキシラン(13.57g、154.0mmol)を、トルエン(50mL)中の2,3-ジアジドブタン-1,4-ジオール(1.00g、5.81mmol)の溶液に加えた。tert-Bu-P4塩基(7.26mL、5.81mmol)を滴加したところ、無色から澄明な黄色に変化がもたらされた。反応物をN下で室温にて1週間撹拌した。反応を安息香酸(1.50g)でクエンチし、蒸発させた。粗製油状物を、中性アルミナを通じたカラムクロマトグラフィーによりTHF(100%)で溶出させて精製して、生成物(8.389g)を得た。
【0176】
1,4-(2,3-ジアミノブトキシ)-ジポリ(3-メトキシプロピレンオキシド)の合成
【化57】
【0177】
1,4-(2,3-ジアジドブトキシ)-ジポリ(3-メトキシプロピレンオキシド)(4.0g)を、メタノール(100mL)中のトリフェニルホスフィン(1.20g、4.56mmol)の撹拌溶液に加えた。水(0.82g、45.6mmol)を加え、溶液を50℃に加熱し、N下で50℃にて2日間撹拌した。混合物を蒸発させ、ジクロロメタン(30mL)中で再溶解した。これをHCl(1.0M、3×15mL)及びブライン(5mL)で酸性化し、ジクロロメタン(2×15mL)で洗浄し、NaOH(10M)で塩基性化し、ジクロロメタン(3×20mL)で抽出した。合わせた有機画分を、NaSOを介して乾燥させ、蒸発させて、生成物を黄色の油状物(1.538g)として得た。
【0178】
界面活性剤38の合成
【化58】
【0179】
THF(25mL)中の1,4-(2,3-ジアミノブトキシ)-ジポリ(3-メトキシプロピレンオキシド)(0.8g、0.735mmol)及び4-メチルモルホリン(0.22g、2.206mmol)の溶液を、Novec7100(15mL)中のPFPE-CHOC(O)O-Ph-4-NO(2.71g、1.471mmol)の溶液に加え、N下で室温にて1週間撹拌した。反応混合物を蒸発させ、Novec7100(50mL)中に再溶解し、続いて黄色が残らなくなるまで2-アミノプロピル官能化シリカ(2×20g)で洗浄した。得られた溶液を蒸発させて、薄黄色の油状物(0.43g)を得て、これを20gのシリカ(30μm)カラムクロマトグラフィーにおいて、2%のMeOH/Novec7100(75mL)、5%のMeOH/Novec7100(50mL)、7%のMeOH/Novec7100(50mL)、及び10%のMeOH/Novec7100(100mL)で溶出させて精製し、生成物を得た。
【0180】
実施例17:RがMeである界面活性剤39の合成
1-(2-(6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-2-エン-2-イル)エトキシ)-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)の重合
【化59】
【0181】
t-Bu-P4ホスファゼン塩基(10.48ml、ヘキサン中0.8M、8.4mmol)を、トルエン(40ml)中の(1R)-(-)-ノポール(1.40g、8.4mmol)の溶液に加えた。メチルグリシジルエーテル(19.6g、222.4mmol)を滴加し、得られた混合物をN下で40℃にて2日間撹拌した。反応を安息香酸(2.0g)でクエンチし、減圧下で濃縮し、THF中に再溶解した。生成物を中性アルミナに通し、濾過し、減圧下で濃縮することにより精製して、薄褐色の油状物(11.33g)を得た。
【0182】
代替的な方法
トルエン(2.6ml)中の(1R)-(-)-ノポール(0.181g、1.09mmol)の溶液に、2-(メトキシメチル)グリシドール(0.959g、10.89mmol)を加え、続いてジオキサン(0.31mL)中のアルミニウムトリフラート(0.0181g、3.817×10-5mol)の溶液を加え、溶液を加熱ブロックにおいて75℃で加温した。18時間後に、反応混合物を室温まで冷まし、淡褐色の油状物(1.011g)を得て、中性アルミナ(12g)においてカラムに通し、THFで溶出させた。画分1~画分3を合わせ、蒸発乾涸させて、薄黄色の油状物(0.198g)を得た。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)5.107(0.39H,m,ノポール=C-H,副異性体)、5.022(0.61H,m,ノポール=C-H,主異性体)、4.35~4.22(m,1H)、4.12(m,1H)、3.956~3.71(m,5H)、3.67~3.40(m,8H)、3.395~3.383(m,OMe,14.6H,n=4.86)、2.10~1.80(m,3.0H)、1.776(1H,s,OH)、1.73~1.51(m,3H)、1.292~1.09(m,4H)、1.07~0.95(m,4H)、0.85~0.80(m,2H)。
【0183】
Krytox-FSL-PEG-11-アジド-1-アミドの合成
【化60】
【0184】
Novec7100(58.0mL)中のKrytox FSL 2,2,2-トリフルオロエチルエステル(57.26g、23.97mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で38℃にて、無水THF(25.5mL)中の11-アジド-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-アミン(5.393g、24.71mmol)の溶液を、1.5mLの洗浄液を含めてシリンジを介して加えた。次に、40℃で一晩撹拌したところ、TLCにより幾らかの未反応のアミンが依然として存在することが示された。トリエチルアミン(3.512mL、25.2mmol)を、シリンジを介して加え、ブロック温度を60℃に上昇させた。48時間後に、反応物を室温まで冷まし、真空中で蒸発乾涸させた。得られた油状物をNovec7500(200mL)中に溶解し、分液漏斗においてメタノール(4×50mL)で抽出した。次に、フルオラスな層を真空中で蒸発させて、濃厚な黄色の油状物(69.0g)を得た。IR(cm-1)2115.0(N)、1790.5(C=O,TFE-エステル)、1730.62(C=O,生成物)。2つのカルボニル伸縮は、ほぼ同等の強さであった。粗製物質の一部(20.95g)をNovec7100(15.0mL)中に溶解し、Novec7100で予備洗浄された80gのInterchimの50μmのHCカートリッジへとロードした。次に、カラムを以下のように洗浄した:a.Novec7100(250mL)、b.0.5%のMeOH/Novec7100(250mL)、c.1.0%のMeOH/Novec7100(250mL)、d.1.5%のMeOH/Novec7100(250mL)、e.2.0%のMeOH/Novec7100(250mL)、f.3.0%のMeOH/Novec7100(250mL)、g.5.0%のMeOH/Novec7100(250mL)、h.10.0%のMeOH/Novec7100(500mL)。Novec7100中で溶出された出発物質を真空中で蒸発させて、無色の油状物(12.224g)を得た。後から流れる生成物バンドの画分を合わせ、真空中で蒸発させて、生成物を澄明な油状物(7.317g、12.15%)として得た。IR(cm-1):2112.3(N,mBr)、(C=O,1717.15)。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むFC-72中の5%のC12(重量:重量))、Δ(ppm)7.80(1H,s,NH)、3.72(14H,s)、3.60(2H,s)、3.35(2H,s)。
【0185】
代替的な手順
Novec7500(50.0mL)中のKrytox FSL酸塩化物(24.46g、12.25mmol、IR1806.7cm-1)の撹拌された溶液に、窒素下で室温にて、無水1,4-ジオキサン(20.0mL、それに加え5.0mLの洗浄液)中の11-アジド-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-アミン(2.674g、12.25mmol)の溶液を、シリンジを介して加えた。次に、40℃で一晩撹拌したところ、TLCにより幾らかの未反応のアミンが依然として存在することが示された。得られた溶液に、PS-ピペリジン(3.0mmol/g~4.0mmol/g、5.249g)を加え、反応温度を75℃に上昇させ、72時間撹拌した。反応物を室温まで冷まし、ポリスチレンビーズを濾過により除去し、反応フラスコ及びビーズをNovec7500(2×40mL)で洗浄した。濾液をメタノール(30mL)とともに振盪し、フルオラスな下層を分離し、真空中で蒸発させたところ、プロトンNMRによる判断で、Krytoxメチルエステル(30.5%)及び所望のKrytox-FSL-PEG-11-アジド-1-アミド(26.36g)の混合物であった(%)。IR(cm-1):2109.9(N)、1785.7(COMe)、1723.0(CONH)。
【0186】
界面活性剤39の合成:
Krytox-FSL-PEG-11-アジド-1-アミドと1-(2-(6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-2-エン-2-イル)エトキシ)-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)との間のクリック反応
【化61】
【0187】
Novec7500(5.4mL)中の粗製ノポールポリマー(0.93g)の溶液に、無水DMF(2.0mL)中のKrytox-FSL-PEG-11-アジド-1-アミド(1.303g、5.18mmol)の溶液を、シリンジを介して窒素雰囲気下で加えた。加熱ブロックを105℃に設定した。3時間後に、TLC(Novec7100中の4%のMeOH)により、全てのアジドが反応したことが示されたが、105℃で一晩加熱を続けた。室温まで冷ましたら、Novec7500(20mL)を加え、溶液を分離フラスコ中でメタノール(3×50mL)により抽出した。フルオラスな相を真空中で蒸発乾涸させて、生成物(1.156g)を得た。粗製物質の一部(1.00g)をNovec7100(3.0mL)中に溶解し、Novec7100で予備洗浄された25gのInterchimの50μmのHCカートリッジへとロードした。次に、カラムを以下のように洗浄した:a.Novec7100(100mL)、b.1.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、c.2.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、d.3.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、e.4.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、f.5.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、g.6.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、h.7.0%のMeOH/Novec7100(100mL)、及びi.8.0%のMeOH/Novec7100(100mL)。極性の画分を合わせ、真空中で蒸発させて、生成物を薄黄色の油状物(365mg)として得た。油状物をNovec7500(6.935g)中に溶解することによって5.0%のストック溶液を作製し、マイクロ液滴の生成に使用した。
【0188】
実施例18:RがMeである界面活性剤40の合成
2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパン-ジオール
【化62】
【0189】
固体の2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパンジオール(24.06g、91.86mmol)に、水(50mL)中のアジ化ナトリウム(18.19g、275.6mmol)の溶液を、窒素下で室温にて加え、ビーカーに残っているアジドを水(40.0mL)で洗い流し、反応物に加えた。次に、溶液が僅かに濁っていたため、撹拌された溶液を、窒素下で100℃のブロック温度に加熱し、追加の水(30.0mL)を加え、ブロック温度を105℃に高めた。46時間後に、反応物を室温まで冷まし、DCM(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、硫酸ナトリウムを介して乾燥させ、濾過し、蒸発させて、生成物を薄黄色の油状物(16.24g、95.0%)として得た。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)3.65(4H,s,CH-O)、3.43(4H,s,CH-N)、2.60(2H,bs,OH)。
【0190】
2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)
【化63】
【0191】
無水トルエン(10mL)中の2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパン-ジオール(200mg、1.075mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で室温にて、ヘキサン中の溶液P-t-Bu(0.8M、2.68mL、2.15mmol、ホスファゼン塩基)を、シリンジを介して加えた。次いで、無溶媒の2-(メトキシメチル)オキシラン(2.215mL、36.49mmol、34.0モル当量)を、撹拌溶液にシリンジを介して室温で加えた。48時間後に、固体の安息香酸(0.934g、7.65mmol)を加えることにより反応をクエンチし、溶解後に、反応物を真空中で蒸発させた。粗生成物をDCM(50mL)中に溶解し、水(50mL)で洗浄し、水相をDCM(2×15mL)で逆抽出した。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した。次に、有機画分をアミノプロピルシリカ(1.64g、1.78mmol)とともに10分間撹拌した後に、濾過し、真空中で蒸発させて、薄黄色の油状物(2.985g)を得た。油状物をTHF(3.0mL)中に溶解し、THFで予備洗浄されたアルミナ(34g)の自然落下カラムへとロードした。カラムを最初にTHF(300mL)で洗浄し、これを真空中で蒸発させて、黄色の油状物(0.722g)を得た。IR(cm-1)2101.0(弱,s,N)。カラムをTHF(250mL)中の10%のメタノールで洗浄して、粗生成物(1.876g)を得た。IR(cm-1)2101.0(中,s,N)。
【0192】
2,2-ビス(アミノメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)
【化64】
【0193】
メタノール(35.0mL)中の粗製2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)(2.564g、約1.74mmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(0.913g、3.48mmol)を加えた。次に、水(0.626mL)を加え、加熱ブロックを77℃に温め、19時間撹拌し続けた。溶液を蒸発乾涸させて、油状の固体(3.325g)を得て、これをDCM中に溶解し、2.0MのHCl(1×10mL)及び(1×20mL)で洗浄した。合わせた酸層を水酸化ナトリウム(10M、10.62mL)で中和し、DCM(3×20mL)で抽出した。合わせた有機画分を、硫酸ナトリウムを介して乾燥させ、濾過し、蒸発させて、薄黄色の油状物(1.132g)を得た。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)3.95(幅広い一重線)、3.8~3.40(幅広い多重線)、3.378(-OMe,幅広い一重線)。
【0194】
代替的な方法
メタノール(3.0mL)中の(中性アルミナにおいてカラムに通された)2,2-ビス(アジドメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)(0.86g、約0.27mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で室温にて、最初にギ酸アンモニウム(固体、85.2mg、1.35mmol)を加えた後に、亜鉛末(10μm未満、110mg、1.68mmol)を加えた。粗製反応混合物を、セライトを介して濾過し、メタノールで洗浄し、濾液を真空中で蒸発させて、薄黄色の油状物(0.731g)を得た。粗製油状物を、1gのSCXカートリッジにおいて、最初にメタノールで、次にメタノール中のアンモニア(7M、15mL)で溶出させて精製し、これを真空中で濃縮して、緑色の油状物(90mg)を得た。
【0195】
界面活性剤40-2,2-ビス(krytoxカルボキサミド-メチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)
【化65】
【0196】
ジオキサン(無水、17.5mL)中の粗製2,2-ビス(アミノメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)(0.705g)の撹拌された溶液に、窒素下でPS-ピペリジン(0.652g、約3.5mmol/g)を加えた。次に、Novec7500(15.0mL、それに加え2.5mLの洗浄液)中のKrytox酸塩化物(3.416g)の溶液を、シリンジを介して加えた。アルミブロックの温度を80℃に上昇させ、およそ60時間撹拌した。次に、反応混合物を室温まで冷やし、濾過し、濾液を分液漏斗に移した。フルオラスな下層をジオキサン層から分離し、メタノール(25mL)で1回抽出した。フルオラスな層を分離し、蒸発乾涸させて、薄黄色の油状物(3.456g)を得た。IR(cm-1)1790.7(弱,s,CO,エステル)、及び1738.9(弱,シャープ,CO,アミド)。粗製物質をシリカカートリッジ(25g)においてカラムに通し、Novec7100中の1%のメタノール→Novec7100中の15%のメタノールで段階的に溶出させた。後から流れる画分を蒸発させて、褐色の油状物(0.54g)を得た。IR(cm-1)3369.8(弱,b,-OH)、2891.3(強,br,CH)、1699.6(強,s,CO,アミド)。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)5.35(幅広い多重線,NH)、3.82(s,CHO)、3.77(s,CHO)、3.72(s,CHO)、3.72(s,CHO)、3.7~3.5(幅広い多重線,CHO)、3.46(s,OMe)、3.45~3.10(幅広い多重線,CHO)。試料はP-t-Bu不純物を含む。
【0197】
実施例19:RがMeである界面活性剤22の代替的な合成
【化66】
【0198】
THF(54.5mL)中の4-ニトロフェニルクロロホルメート(25.24g、125.22mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で室温にて、Novec7100(32.0mL)を、シリンジを介して加えた。次に、Krytoxアルコール(52.63g、31.3mmol)の溶液を、Novec7100(15.0mL)及びTHF(24.5mL)の混合物にシリンジを介して加えた。最後に、Novec7100(4.0mL)及びTHF(6.5mL)の混合物中のピリジン(5.1mL、62.6mmol)の溶液を、シリンジを介して加えたところ、直ちに溶液から白色の固体が沈殿し始めた。次に、反応物を40℃に加温し、48時間撹拌した。反応物を室温まで冷まし、セライトを介して濾過し、床をNovec7100(50mL)で洗浄した。濾液を真空中で蒸発させ、Novec7100:FC72(1:1、容量:容量、200mL)中に溶解したところ、沈殿物が形成し始めた。1時間後に、セライトを介して溶液を濾過し、床を少量のFC72(30mL)で洗浄した。濾液を真空中で濃縮し、FC72(180mL)中に再溶解し、一晩放置した。最後に、セライトを介して溶液を濾過し、蒸発乾涸させて、無色の油状物(54.88g、95.0%)を得た。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むFC-72中の5%のC12(重量:重量))、Δ(ppm)8.21(2H,d,芳香族)、7.30(2H,d,芳香族)、4.80(2H,m,CH)。
【0199】
【化67】
【0200】
THF(無水、12.5mL)中の粗製2,2-ビス(アミノメチル)-1,3-プロパン-ジ-O-ポリマー(1.072g、約0.87mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で室温にて、N-メチルモルホリン(0.48mL、4.35mmol)を、シリンジを介して加えた。次に、Novec7100(14.0mL、それに加え1.0mlの洗浄液)中のKrytox4-ニトロフェニルカーボネート(3.53g、19.15mmol)の溶液を、シリンジを介して加え、加熱ブロックを42℃に設定し、48時間撹拌した。反応物を室温まで冷まし、真空中で蒸発乾涸させて油状物を得て、これをTHF(2×20mL)で洗浄し、残留物を傾瀉分離した。残留物をNovec7500(50mL)中に溶解し、メタノール(1×50mL及び2×30mL)で抽出した。フルオラスな相を真空中で濃縮して、暗色の油状物(4.54g)を得た。油状物をNovec7100(50mL)中に撹拌しながら溶解し、アミノプロピルシリカ(2.52g、1.78mmol/g)を加え、30分間撹拌した。混合物を濾過し、シリカを少量のNovec7100(10mL)で洗浄した。濾液をアミノプロピルシリカ(2.52g、1.78mmol/g)で更に2回処理し、30分後に、溶液を濾過し、シリカを少量のNovec7100(10mL)で洗浄した。3回目の濾過後に、濾液を低真空下で濃縮した。得られた油状物をNovec7100(4.0mL)中に溶解し、Novec7100中で充填されたシリカカートリッジ(25g、SIHC、Interchim)へとロードした。Novec7100→7100中の15%のメタノールの勾配を実行し、50mLの画分を収集した。画分12及び画分13を合わせ、真空中で濃縮して、淡褐色の油状物、つまり画分A(0.84g)を得た。IR(cm-1)1737.9(Krytox-CHC=O,カルバメート)。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むFC-72中の5%のC12(重量:重量))、Δ(ppm)5.47(4H,s,Krytox-CH)、5.05(6H,s)、4.78(12H,m)、4.00~3.48(68H,m)、3.47~3.25(47.5H,bs,OMe)。画分14~画分18を真空中で濃縮して、淡褐色の油状物、つまり画分B(0.685g)を得た。IR(cm-1)1768.3(Krytox-CHO,カーボネート)。NMR 400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むFC-72中の5%のC12(重量:重量)、Δ(ppm)5.45(4H,s,Krytox-CHO)、5.05(10H,s)、4.75(25H,s)、4.00~3.48(96H)、3.47~3.28(100H,bs,OMe)。図6a及び図6bは、Novec7500中の画分Bの5%(重量:重量)溶液から作製されたマイクロ液滴を示している。画像6a:60μm×60μmのフローフォーカス型デバイスを使用した、Novec7500中の5%の界面活性剤22、流量700μL/h、及びCHO培地500μL/hを用いた液滴生成による、308pLのマイクロ液滴の製造。画像6bは、画像aの場合と同じ条件であるが、生成チップの出口で作成された。画像6cは、上記の画像a及び画像bにおける生成された308pLの貯蔵されたピコ液滴を100μmの高さの測定チップ内に貯蔵したものを示している。
【0201】
図7a及び図7bは、Novec7500中の画分Bの5%(重量:重量)溶液から作製されたマイクロ液滴を示している。画像7a:60μm×60μmのフローフォーカス型デバイスを使用した、Novec7500中の5%の界面活性剤22、流量700μL/h、及びハイブリドーマ培地500μL/hを用いた液滴生成による、294pLのマイクロ液滴の製造。画像7bは、画像aの場合と同じ条件であるが、生成チップの出口で作成された。画像7cは、上記の画像a及び画像bにおける生成された294pLの貯蔵されたピコ液滴を100μmの高さの測定チップ内に貯蔵したものを示している。
【0202】
実施例20
【化68】
【0203】
Novec7100中のKrytox酸塩化物(12.893g、5.54mmol)の撹拌された溶液に、無水THF(4.0mL、それに加え1.00mLの洗浄液)中のジプロパルギルアミド(0.60mL、5.81mmol)の溶液を窒素下で室温にて加えたところ、微細な白色の沈殿物が形成し始めた。最後に、無水THF(4.0mL)中のトリエチルアミン(1.16mL、8.30mmol)の溶液を加え、溶液を55℃に加温した。20時間後に、反応物を室温まで冷まし、セライトを介して濾過し、Novec7100(20mL)で洗浄し、濾液を真空中で蒸発乾涸させて、淡褐色の油状物(13.009g、98.5%)を得た。IR(cm-1)3320.2(弱,CH)、1697.3(中,s,CO)。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)(4H,dt,N(CH)、2.08(2H,d,CH)。
【0204】
1-アジド-3-メトキシ-プロパン-2-オール及び2-アジド-3-メトキシ-プロパン-1-オール
【化69】
【0205】
1,2-DME(74.0mL)中のテトラ-n-ブチルアンモニウムアジド(5.245g、18.44mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で室温にて、1,2-DME(無水、9.0mL、それに加え1.0mLの洗浄液)中の2-(メトキシメチル)オキシラン(1.547g、17.56mmol)の溶液を、シリンジを介して加えた。最後に、1,2-DME中のアルミニウムトリフラート(10mM、1.756mmol)の溶液を加え、加熱ブロックの温度を65℃に上昇させた。反応物を48時間撹拌した後に、室温まで冷ました。粗製反応混合物を室温まで冷まし、真空中で濃縮して、黄色の油状物(7.60g)を得た。ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を使用する複数回のクロマトグラフィーにより、最終的にテトラ-n-ブチルアンモニウム塩を含まないジアステレオマーの所望の混合物を薄黄色の油状物(0.798g、34.9%)として得た。IR(cm-1)3421.3(OH,bm)、2927.7(CH,bm)、2094.0(N,ss)。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)3.94(1H,m,CH-OH)、3.55~3.42(2H,m,CHOMe)、3.40(3H,s,OMe)、3.38~3.32(2H,m,CH-N)、2.46(1H,s,OH)。
【0206】
1-アジド-3-メトキシ-プロパン-2-O-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)
【化70】
【0207】
1,2-DME(5.97mL)中のテトラ-n-ブチルアンモニウムアジド(1.493mmol、0.25M)の撹拌された溶液に、窒素下で室温にて、1,2-DME(無水、4.0mL、それに加え1.0mLの洗浄液)中の2-(メトキシメチル)オキシラン(1.973g、22.40mmol)の溶液を、シリンジを介して加えた。最後に、1,2-DME中のアルミニウムトリフラート(10mM、44.8μmol、4.48mL)の溶液を加え、加熱ブロックの温度を75℃に上昇させた。反応物を48時間撹拌した後に、室温まで冷ました。粗製反応混合物を室温まで冷まし、真空中で濃縮して、黄色の油状物(2.1g)を得た。ヘキサン中の酢酸エチルを使用する40gのシリカカートリッジ(SIHC、Interchim)における精製により、所望のアジドポリマー(0.473g、33.7%、n=10.2、mw941、内部標準を使用)を薄黄色の油状物として得た。IR(cm-1)3460.0(OH,bm)、2877.7(CH,bm)、2097.2(N,ss)。NMR(400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むCDCl)、Δ(ppm)4.03~3.93(1H,m,CH-OH)、3.77~3.54(6H,m,CHOMe)、3.53~3.42(12.5H,s,OMe)、3.38~3.32(2H,m,CH-N)、1.96(1H,s,OH)。
【0208】
Krytox-bis-Click界面活性剤41
【化71】
【0209】
t-ブタノール(2.70mL)中の1-アジド-3-メトキシ-プロパン-2-O-ポリ(2-メトキシメチルエチレンオキシド)(0.257g、Mn836、0.307mmol)の撹拌された溶液に、窒素下で36℃にて、Novec7100(5.0mL)中のKrytoxジプロパルギルアミド(1.10g、0.4611mmol)の溶液を加えた。次に、t-ブタノール:水(5:1、容量:容量、0.783mL)中の酢酸銅(II):THPTA(1:1、各9.357μmol)の溶液を、ピペットを介して加えた。翌朝、反応物を室温まで冷まし、真空中で蒸発乾涸させて、青色/緑色の油状物(1.294g)を得て、これをNovec7100中に溶解し、25gのシリカカートリッジ(SiHC、Interchim)において精製し、100%のNovec7100→Novec7100中の12%のMeOHの勾配で溶出させた。後から流れる画分を合わせて、ビス-1,4-トリアゾール界面活性剤(0.884g)を得た。NMR 400MHz、内部標準として0.04%のTMSを含むFC-72中の5%のC12(重量:重量)、Δ(ppm)8.08(2H,幅広いm,(トリアゾール-H5))、5.40~4.26(5H,幅広いm)、4.25~3.90(3H,幅広いm)、3.90~3.15(25H,幅広いm,OMe)、1.37(1H,幅広いm,OH)、0.85(1H,幅広いm,OH)。
【0210】
図8aは、Krytox-bis-Click界面活性剤(Novec7500中の1%の界面活性剤(重量:重量))の、油流量2600μL/h、DPBS 333μL/h、容量243.3pL(n=4)、φ77.4μmを用いたマイクロ液滴生成を示している。図8bは、Krytox-bis-Click界面活性剤(Novec7500中の1%の界面活性剤(重量:重量))から、油流量2600μL/h、DPBS 333μL/h、容量243.3pL(n=4)、φ77.4μmを用いて作製されたマイクロ液滴を100μmの高さのリザーバー内に貯蔵したものを示している。図8cは、Krytox-bis-Click界面活性剤(Novec7500中の1%の界面活性剤(重量:重量))の、油流量2000μL/h、DPBS 333μL/h、容量293.5pL(n=4)、φ82.4μmを用いたマイクロ液滴生成を示している。図8dは、Krytox-bis-Click界面活性剤(Novec7500中の1%の界面活性剤(重量:重量))から、油流量2000μL/h、DPBS 333μL/h、容量293.5pL(n=4)、φ82.4μmを用いて作製されたマイクロ液滴を100μmの高さのリザーバー内に貯蔵したものを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d
【国際調査報告】