(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230601BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230601BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230601BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20230601BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230601BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230601BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230601BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230601BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230601BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230601BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20230601BHJP
A61K 47/68 20170101ALN20230601BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N5/0783
C07K14/705
A61P35/00
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/17
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K47/68
A61K39/395 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567285
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 GB2021051099
(87)【国際公開番号】W WO2021224629
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517215973
【氏名又は名称】オートラス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スリバスタバ, サケット
(72)【発明者】
【氏名】コルドバ, ショーン
(72)【発明者】
【氏名】オヌオハ, シモビ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, サイモン
(72)【発明者】
【氏名】プーレ, マーティン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA45
4C076AA95
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4C084AA13
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4C085CC03
4C085CC08
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4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BC83
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4C087NA13
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4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、(i)CD19に結合する抗原結合ドメインを含む、細胞表面の第1のキメラ抗原受容体(CAR)と、(ii)CD22に結合する抗原結合ドメインを含む、細胞表面の第2のCARと、(iii)ドミナントネガティブSHP2(dSHP2)と、(iv)ドミナントネガティブTGFβ受容体II(dnTGFβRII)とを共発現する細胞に関する。治療用モノクローナル抗体(mAb)、免疫コンジュゲートmAb、放射性コンジュゲートmAbおよび二重特異性T細胞エンゲージャーを含む、癌の処置に使用するためのいくつかの免疫療法剤が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞であって、
(i)CD19に結合する抗原結合ドメインを含む、前記細胞の表面の第1のキメラ抗原受容体(CAR)と、
(ii)CD22に結合する抗原結合ドメインを含む、前記細胞の表面の第2のCARと、
(iii)ドミナントネガティブSHP2(dSHP2)と、
(iv)ドミナントネガティブTGFβ受容体II(dnTGFβRII)とを共発現する、細胞。
【請求項2】
各CARが細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記第1のCARの前記細胞内シグナル伝達ドメインがTNF受容体ファミリーのエンドドメインを含み、前記第2のCARの前記細胞内シグナル伝達ドメインが共刺激エンドドメインを含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記共刺激ドメインがCD28共刺激エンドドメインである、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
前記TNF受容体ファミリーのエンドドメインがOX-40または4-1BBエンドドメインである、請求項2または3に記載の細胞。
【請求項5】
前記第1および第2のCARの前記細胞内シグナル伝達ドメインがITAM含有ドメインも含む、請求項2、3または4のいずれかに記載の細胞。
【請求項6】
各CARが、
(i)抗原結合ドメインと、
(ii)スペーサーと、
(iii)膜貫通ドメインとを含み、
前記第1のCARの前記スペーサーが、前記第2のCARの前記スペーサーとは異なる、請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項7】
前記第2のCARの前記スペーサーが、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)コイルドコイルドメインを含む、請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
前記第1のCARが、
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-SYWMN(配列番号1);
CDR2-QIWPGDGDTNYNGKFK(配列番号2)
CDR3-RETTTVGRYYYAMDY(配列番号3);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-KASQSVDYDGDSYLN(配列番号4);
CDR2-DASNLVS(配列番号5)
CDR3-QQSTEDPWT(配列番号6)を含む、CD19結合ドメインを含む、請求項1~7のいずれかに記載の細胞。
【請求項9】
前記CD19結合ドメインが、配列番号7若しくは配列番号8として示される配列を有するVHドメイン、または配列番号9、配列番号10もしくは配列番号11として示される配列を有するVLドメイン、CD19に結合する能力を保持する少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
前記CD19結合ドメインが、配列番号12、配列番号13もしくは配列番号14として示される配列、またはCD19に結合する能力を保持する少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
前記第2のCARが、
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-NYWIN(配列番号15);
CDR2-NIYPSDSFTNYNQKFKD(配列番号16)
CDR3-DTQERSWYFDV(配列番号17);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号18);
CDR2-KVSNRFS(配列番号19)
CDR3-SQSTHVPWT(配列番号20)を含むCD22結合ドメインを含む、請求項1~7のいずれかに記載の細胞。
【請求項12】
前記CD22結合ドメインが、配列番号21もしくは配列番号22として示される配列を有するVHドメイン、または配列番号23もしくは配列番号24として示される配列を有するVLドメイン、またはCD22に結合する能力を保持する少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
前記CD22結合ドメインが、配列番号25もしくは配列番号26として示される配列、またはCD22に結合する能力を保持する少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項11に記載の細胞。
【請求項14】
前記第1のCARが、構造:
AgB1-スペーサー1-TM1-TNF-ITAM
(式中、
AgB1は、前記第1のCARの抗原結合ドメインであり、
スペーサー1は、前記第1のCARのスペーサーであり、
TM1は、前記第1のCARの膜貫通ドメインであり、
TNFはTNF受容体エンドドメインであり、
ITAMはITAM含有エンドドメインである)を有し、
前記第2のCARは、構造:
AgB2-スペーサー2-TM2-costim-ITAM
(式中、
AgB2は、前記第2のCARの抗原結合ドメインであり、
スペーサー2は、前記第2のCARのスペーサーであり、
TM2は、前記第2のCARの膜貫通ドメインであり、
costimは共刺激ドメインであり、
ITAMは、ITAM含有エンドドメインである)を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに定義される前記第1および第2のキメラ抗原受容体(CAR)の両方と、dSHP2と、dnTGFβRIIとをコードする、核酸配列。
【請求項16】
以下の構造:
モジュール1-coexpr-AgB1-スペーサー1-TM1-coexpr-AgB2-スペーサー2-TM2-coexpr-モジュール2
(式中、
AgB1は、前記第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、前記第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、前記第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
coexprは、共発現を可能にする核酸配列であり、
AgB2は、前記第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、前記第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、前記第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
モジュール1およびモジュール2は、ドミナントネガティブSHP2(dSHP2)またはドミナントネガティブTGFβRII(dnTGFβRII)のいずれかをコードする核酸配列であり、モジュール1がdSHP2をコードする場合、モジュール2がdnTGFβRIIをコードし、モジュール2がdnTGFβRIIをコードする場合、モジュール1がdSHP2をコードする)を有し、
その核酸配列が、前記T細胞において発現される場合、前記第1および第2のCARが前記T細胞表面において共発現されるように、切断部位において切断されるポリペプチドをコードする、請求項15に記載の核酸配列。
【請求項17】
coexprが、自己切断ペプチドを含む配列をコードする、請求項16に記載の核酸配列。
【請求項18】
相同組換えを回避するため、同じまたは類似のアミノ酸配列をコードする配列の領域で代替コドンが使用される、請求項16または17に記載の核酸配列。
【請求項19】
請求項15~18のいずれかに記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項20】
請求項19に記載のレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターまたはトランスポゾン。
【請求項21】
請求項15~18のいずれかに記載の核酸配列、または請求項19もしくは20に記載のベクターを細胞に導入する工程を含む、請求項1~14のいずれかに記載の細胞を作製する方法。
【請求項22】
前記細胞が、対象から単離された試料に由来する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~14のいずれかに記載の複数の細胞を含む、医薬組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、疾患を処置するおよび/または予防する方法。
【請求項25】
以下:
(i)対象からの細胞含有試料の単離工程と、
(ii)請求項15~18のいずれかに記載の核酸配列、または請求項19もしくは20に記載のベクターによる前記細胞の形質導入またはトランスフェクション工程と、
(iii)(ii)からの前記細胞を前記対象に投与する工程と、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患が癌である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記癌がB細胞悪性腫瘍である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
疾患を処置および/または予防における使用のための、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項29】
疾患を処置するおよび/または予防するための医薬品の製造における請求項1~14のいずれかに記載の細胞の使用。
【請求項30】
キットであって、
(i)第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の核酸配列であって、その核酸配列が、以下の構造:
AgB1-スペーサー1-TM1
(式中、
AgB1は、CD19に結合する前記第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、前記第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、前記第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列である)を有する、第1の核酸配列と、
(ii)第2のキメラ抗原受容体をコードする第2の核酸配列であって、その核酸配列が、以下の構造:
AgB2-スペーサー2-TM2
(式中、
AgB2は、CD22に結合する前記第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、前記第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、前記第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列である)を有する、第2の核酸配列と、
(iii)本明細書に記載のdSHP2およびdnTGFβRIIをコードする第3の核酸配列と、を含む、キット。
【請求項31】
請求項30に定義される前記第1の核酸配列を含む第1のベクターと、請求項30に定義される前記第2の核酸配列を含む第2のベクターと、請求項30に定義される前記第3の核酸配列を含む第3のベクターとを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1を超えるキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用モノクローナル抗体(mAb)、免疫コンジュゲートmAb、放射性コンジュゲートmAbおよび二重特異性T細胞エンゲージャーを含む、癌の処置に使用するためのいくつかの免疫療法剤が記載されている。
【0003】
典型的には、これらの免疫療法剤は単一の抗原を標的とし、例えば、リツキシマブはCD20を標的とし、ミエロターグはCD33を標的とし、アレムツズマブはCD52を標的とする。
【0004】
ヒトCD19抗原は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する95kDaの膜貫通糖タンパク質である。CD19は、B細胞分化の非常に早い段階で発現され、形質細胞への最終的なB細胞分化でのみ失われる。その結果、CD19は、多発性骨髄腫を除く全てのB細胞悪性腫瘍で発現される。正常なB細胞区画の喪失は許容され得る毒性であるので、CD19は魅力的なCAR標的であり、CARを有するCD19を標的とする臨床研究は有望な結果を見ている。
【0005】
腫瘍学の分野における特定の問題は、ゴルディ-コールドマン(Goldie-Coldman)仮説によって提供され、これは、ほとんどの癌に固有の高い突然変異率のために、単一抗原の唯一の標的化が当該抗原の調節によって腫瘍エスケープをもたらし得ることを記載している。抗原発現のこの調節は、CD19を標的とするものを含む既知の免疫療法の有効性を低下させる可能性がある。
【0006】
したがって、CD19を標的とする免疫治療薬の問題は、B細胞悪性腫瘍が変異してCD19陰性になる可能性があることである。これは、CD19標的化治療薬に応答しないCD19陰性癌の再発をもたらし得る。例えば、1つの小児研究において、Gruppらは、B急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)に対するCD19標的化キメラ抗原受容体療法後の全再発の半数がCD19陰性疾患によるものであったことを報告した(56th American Society of Hematology Annual Meeting and Exposition)。
【0007】
したがって、CD19陽性癌を含む多くの癌に関連するマーカー発現の複雑なパターンを反映するために1を超える細胞表面構造を標的とすることができる免疫療法剤が必要とされている。
【0008】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体は、例えばモノクローナル抗体(mAb)の特異性をT細胞のエフェクター機能に移植するタンパク質である。それらの通常の形態は、T細胞の生存シグナルおよび活性化シグナルを伝達する化合物エンドドメインに全て接続された、アミノ末端を認識する抗原、スペーサー、膜貫通ドメインを有するI型膜貫通ドメインタンパク質の形態である(
図1Aを参照されたい)。
【0009】
これらの分子の最も一般的な形態は、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介してシグナル伝達エンドドメインに融合された、標的抗原を認識するモノクローナル抗体に由来する一本鎖可変断片(scFv)の融合物である。そのような分子は、その標的のscFvによる認識に応答してT細胞の活性化をもたらす。T細胞がそのようなCARを発現する場合、T細胞は、標的抗原を発現する標的細胞を認識して死滅させる。腫瘍関連抗原に対していくつかのCARが開発されており、そのようなCAR発現T細胞を使用する養子移入アプローチは、様々な癌の処置のために現在臨床試験中である。
【0010】
癌処置のためにCARアプローチを使用すると、腫瘍の不均一性および免疫編集がCAR処置からのエスケープを引き起こし得ることが観察されている。例えば、Gruppら(2013;New Eng.J.Med 368:1509-1518,paper No 380,ASH 2014)によって記載された研究では、急性Bリンパ性白血病の処置にCAR改変T細胞アプローチを使用した。その臨床試験では、1ヶ月後に完全寛解した10人の患者が再発し、そのうち5人がCD19陰性疾患を再発したことが分かった。
【0011】
したがって、癌エスケープおよび腫瘍不均一性の問題に対処する代替CAR処置アプローチが必要とされている。
【0012】
2つのCAR結合特異性の発現
タンデムCARまたはTanCARとして公知の二重特異性CARは、複数の癌特異的マーカーを同時に標的とする試みで開発されている。TanCARでは、細胞外ドメインは、リンカーによって連結された2つの抗原結合特異性をタンデムに含む。したがって、2つの結合特異性(scFv)は両方とも単一の膜貫通部分に連結され、一方のscFvは膜に並置され、他方は遠位位置にある。
【0013】
Gradaら(2013,Mol Ther Nucleic Acids 2:e105)は、CD19特異的scFv、続いてGly-Serリンカー、次いでHER2特異的scFvを含むTanCARを記載している。HER2-scFvは膜近傍位置にあり、CD19-scFvは遠位位置にあった。Tan CARは、2つの腫瘍制限抗原のそれぞれに対して異なるT細胞反応性を誘導することが示された。この配置は、HER2(632aa/125Å)およびCD19(280aa、65Å)のそれぞれの長さがその特定の空間配置に適しているために選択された。HER2 scFvがHER2の最遠位4ループに結合することも知られていた。
このアプローチの問題は、膜近傍scFvが、遠位scFvの存在、特に抗原に結合している遠位scFvの存在のためにアクセスできない可能性があることである。標的細胞上の抗原の空間的配置を考慮して2つのscFvの相対位置を選択する必要性を考慮すると、全てのscFv結合対に対してこのアプローチを使用することは不可能な場合がある。さらに、TanCarアプローチが2を超えるscFvに使用され得る可能性は低く、3またはそれを超えるscFvを有するTanCARは非常に大きな分子であり、scFvは互いに十分に折り返すことができ、抗原結合部位を不明瞭にする。2つまたはそれを超える更なるscFvによって膜貫通ドメインから分離される最も遠位のscFvによる抗原結合が、T細胞活性化を引き起こすことができるかどうかも疑わしい。
したがって、T細胞等の細胞の表面に2つのCAR結合特異性を発現させるための代替アプローチが必要とされている。この問題は、国際公開第2016/102965号において本発明者らによって対処された。改善された生存および持続性も示す2つのCAR結合特異性を表面上に発現する細胞を提供する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】56th American Society of Hematology Annual Meeting and Exposition
【非特許文献2】Gruppら(2013;New Eng.J.Med 368:1509-1518,paper No 380,ASH 2014
【非特許文献3】Gradaら(2013,Mol Ther Nucleic Acids 2:e105)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、1つがCD19に特異的であり、1つがCD22に特異的である2つのCARを細胞表面に発現するCAR T細胞を開発した。さらに、本発明のCAR T細胞は、本明細書においてより詳細に記載される増強モジュールを更に含む。
【0017】
したがって、第1の態様では、本発明は、第1のキメラ抗原受容体(CAR)および第2のCARを細胞表面に共発現する細胞を提供し、各CARは抗原結合ドメインを含み、第1のCARの抗原結合ドメインはCD19に結合し、第2のCARの抗原結合ドメインはCD22に結合し、更に、細胞はドミナントネガティブSHP2(dSHP2)およびドミナントネガティブTGFβ受容体II(dnTGFβRII)を発現する。
【0018】
一方のCARがCD19に結合し、他方のCARがCD22に結合するという事実は、いくつかのリンパ腫および白血病がCD19標的化後にCD19陰性になり(または場合によってはCD22標的化後にCD22陰性になり)、そのため、これが起こると「バックアップ」抗原を与えるので有利である。さらに、本発明者らは、本明細書に更に記載されるように、dSHP2およびdnTGFβRIIとの特定の組み合わせが有利であることを示した。
【0019】
本発明者らはまた、細胞内シグナル伝達ドメインの特定の組み合わせも有利であることを示した。したがって、各CARが細胞内シグナル伝達ドメインを含む本発明の細胞が提供され、第1のCARの細胞内シグナル伝達ドメインがTNF受容体ファミリーのエンドドメインを含み、第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激エンドドメインを含む。
【0020】
共刺激エンドドメインは、CD28共刺激エンドドメインであり得る。適切なTNF受容体ファミリーのエンドドメインの例としては、OX-40および4-1BBエンドドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
第1および第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインはまた、ITAM含有エンドドメインを含み得る。
【0022】
細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはNKT細胞等の免疫エフェクター細胞であり得る。T細胞に関連して本明細書で言及される特徴は、NK細胞またはNKT細胞等の他の免疫エフェクター細胞にも等しく適用される。
【0023】
各CARは、
(i)抗原結合ドメインと、
(ii)スペーサーと、
(iii)膜貫通ドメインとを、含み得る。
【0024】
各CARは、
(i)抗原結合ドメインと、
(ii)スペーサーと、
(iii)膜貫通ドメインと、
(iv)エンドドメインとを、含み得る。
【0025】
第1のCARおよび第2のCARがヘテロ二量体を形成しないように、第1のCARのスペーサーは、第2のCARのスペーサーと異なっていてもよい。
【0026】
第1のCARのスペーサーは、各CARがそのそれぞれの標的抗原の認識のために調整されるように、第2のCARのスペーサーとは異なる長さおよび/または構成を有し得る。第2のCARに適したスペーサーには、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)コイルドコイルドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
第2のCARの抗原結合ドメインは、CD22上の膜遠位エピトープに結合し得る。第2のCARの抗原結合ドメインは、CD22のIgドメイン7、6、5または4上、例えばCD22のIgドメイン5上のエピトープに結合し得る。
【0028】
第1のCARの抗原結合ドメインは、エクソン1、3または4によってコードされるCD19上のエピトープに結合し得る。
【0029】
第1のCARのCD19結合ドメインは、
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-SYWMN(配列番号1);
CDR2-QIWPGDGDTNYNGKFK(配列番号2)
CDR3-RETTTVGRYYYAMDY(配列番号3);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-KASQSVDYDGDSYLN(配列番号4);
CDR2-DASNLVS(配列番号5)
CDR3-QQSTEDPWT(配列番号6)を含み得る。
【0030】
CD19結合ドメインは、配列番号7もしくは配列番号8として示される配列を有するVHドメイン、または配列番号9、配列番号10もしくは配列番号11として示されている配列を有するVLドメイン、またはCD19に結合する能力を保持する少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み得る。
【0031】
CD19結合ドメインは、配列番号12、配列番号13もしくは配列番号14として示される配列、またはCD19に結合する能力を保持する少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み得る。
【0032】
第2のCARのCD22結合ドメインは、
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-NYWIN(配列番号15);
CDR2-NIYPSDSFTNYNQKFKD(配列番号16)
CDR3-DTQERSWYFDV(配列番号17);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号18);
CDR2-KVSNRFS(配列番号19)
CDR3-SQSTHVPWT(配列番号20)を含み得る。
【0033】
CD22結合ドメインは、配列番号21もしくは配列番号22として示されるVH配列;または配列番号23もしくは配列番号24として示される配列を有するVLドメイン;またはCD22に結合する能力を保持する少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み得る。
【0034】
CD22結合ドメインは、配列番号25もしくは配列番号26として示される配列、またはCD22に結合する能力を保持する少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み得る。
【0035】
第2のCARのエンドドメインは、共刺激ドメインおよびITAM含有ドメインを含み、第1のCARのエンドドメインはTNF受容体ファミリードメインおよびITAM含有ドメインを含み得る。
【0036】
例えば、第1のCAR(CD19特異的である)は、以下の構造:
AgB1-スペーサー1-TM1-TNF-ITAM
(式中、
AgB1は抗原結合ドメインであり、
スペーサー1はスペーサーであり、
TM1は膜貫通ドメインであり、
TNFはTNF受容体エンドドメインであり、
ITAMはITAM含有エンドドメインである)を有することができ、
第2のCAR(CD22特異的である)は、構造:
AgB2-スペーサー2-TM2-costim-ITAM
(式中、
AgB2は抗原結合ドメインであり、
スペーサー2はスペーサーであり、
TM2は膜貫通ドメインであり、
costimは共刺激ドメインであり、
ITAMは、ITAM含有エンドドメインである)を有することができる。
【0037】
第2の態様では、本発明は、dSHP2およびdnTGFβRIIと共に、本発明の第1の態様で定義される第1および第2のキメラ抗原受容体(CAR)の両方をコードする核酸配列を提供する。
【0038】
核酸配列は、以下の構造:
モジュール1-coexpr-AgB1-スペーサー1-TM1-coexpr-AgB2-スペーサー2-TM2-coexpr-モジュール2
(式中、
AgB1は、第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
coexprは、共発現を可能にする核酸配列であり、
AgB2は、第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
モジュール1およびモジュール2は、ドミナントネガティブSHP2(dSHP2)またはドミナントネガティブTGFβRII(dnTGFβRII)のいずれかをコードする核酸配列であり、モジュール1がdSHP2をコードする場合、モジュール2がdnTGFβRIIをコードし、モジュール2がdnTGFβRIIをコードする場合、モジュール1がdSHP2をコードする)を有し得て、
その核酸配列は、T細胞において発現される場合、第1および第2のCARがT細胞表面において共発現されるように、切断部位において切断されるポリペプチドをコードする。
【0039】
核酸配列は、以下の構造:
モジュール1-coexpr-AgB1-スペーサー1-TM1-endo1-coexpr-AbB2-スペーサー2-TM2-endo2-coexpr-モジュール2
(式中、
AgB1は、第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
endo1は、第1のCARのエンドドメインをコードする核酸配列であり、
coexprは、共発現を可能にする核酸配列であり、
AgB2は、第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
endo2は、第2のCARのエンドドメインをコードする核酸配列であり、
モジュール1およびモジュール2は、ドミナントネガティブSHP2(dSHP2)またはドミナントネガティブTGFβRII(dnTGFβRII)のいずれかをコードする核酸配列であり、モジュール1がdSHP2をコードする場合、モジュール2がdnTGFβRIIをコードし、モジュール2がdnTGFβRIIをコードする場合、モジュール1がdSHP2をコードする)を有し得て、
その核酸配列は、T細胞において発現される場合、第1および第2のCARがT細胞表面において共発現されるように、切断部位において切断されるポリペプチドをコードする。
【0040】
2つのCARの共発現を可能にする核酸配列は、自己切断ペプチド、または2つのCARを共発現させる代替手段、例えば内部リボソーム進入配列もしくは第2のプロモーター、または当業者が同じベクターから2つのタンパク質を発現することができる他のそのような手段を可能にする配列をコードし得る。
【0041】
相同組換えを回避するため、膜貫通および/または細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)等の同じまたは類似のアミノ酸配列をコードする配列の領域で代替コドンを使用することができる。例えば、2つのCARが、この部分またはこれらの部分(単数または複数)について同じまたは類似のアミノ酸配列を有するが、異なる核酸配列によってコードされるように、代替コドンが、スペーサー、膜貫通ドメインおよび/またはエンドドメインの全部もしくは一部をコードする配列の部分において使用され得る。
【0042】
第3の態様では、本発明は、
(i)第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の核酸配列であって、核酸配列が、以下の構造:
AgB1-スペーサー1-TM1
(式中、
AgB1は、CD19に結合する第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列である)を有する、第1の核酸配列と、
(ii)第2のキメラ抗原受容体をコードする第2の核酸配列であって、核酸配列が、以下の構造:
AgB2-スペーサー2-TM2
(式中、
AgB2は、CD22に結合する第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列である)を有する、第2の核酸配列と、
(iii)本明細書に記載のdSHP2およびdnTGFβRIIをコードする第3の核酸配列と、を含むキットを提供する。
【0043】
キットは、
(i)第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の核酸配列であって、その核酸配列は、以下の構造:
AgB1-スペーサー1-TM1-endo1
(式中、
AgB1は、第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
endo1は、第1のCARのエンドドメインをコードする核酸配列である)の構造を有する、第1の核酸配列と、
(ii)第2のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする第2の核酸配列であって、その核酸配列は、以下の構造:
AgB2-スペーサー2-TM2-endo2
(式中、
AgB2は、第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
endo2は、第2のCARのエンドドメインをコードする核酸配列である)の構造を有する第2の核酸配列と、を含み得る。
【0044】
第4の態様では、本発明は、第1の核酸配列を含む第1のベクターと、第2の核酸配列を含む第2のベクターと、第3の核酸配列を含む第3のベクターとを含むキットを提供する。
【0045】
ベクターは、プラスミドベクター、レトロウイルスベクターまたはトランスポゾンベクターであり得る。ベクターはレンチウイルスベクターであり得る。
【0046】
第5の態様では、本発明は、本発明の第2の態様による核酸配列を含むベクターを提供する。ベクターはレンチウイルスベクターであり得る。
【0047】
ベクターは、プラスミドベクター、レトロウイルスベクターまたはトランスポゾンベクターであり得る。
【0048】
第6の態様では、本発明は、第1および第2のCARと、dSHP2と、dnTGFβRIIとをコードする1またはそれを超える核酸配列(単数または複数)、または上で定義される1またはそれを超えるベクター(単数または複数)を細胞に導入する工程を含む、本発明の第1の態様による細胞を作製するための方法を提供する。細胞はT細胞であり得る。
【0049】
細胞は、限定されないが、患者、関係するもしくは関係のない造血移植ドナー、完全に無関係のドナー、臍帯血由来、胚細胞株から分化した、誘導性前駆細胞株から分化した、または形質転換細胞株に由来するものを含む、対象から単離された試料に由来し得る。
【0050】
第7の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による複数の細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0051】
第8の態様では、本発明は、疾患を処置するおよび/または予防する方法であって、本発明の第7の態様による医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0052】
本方法は、以下:
(i)対象からの細胞含有試料の単離工程;
(ii)第1のCAR、第2のCAR、dSHP2およびdnTGFβRIIをコードする1またはそれを超える核酸配列(単数または複数)、またはそのような核酸配列(単数または複数)を含む1またはそれを超えるベクター(単数または複数)による細胞の形質導入またはトランスフェクション工程;ならびに
(iii)(ii)からの細胞を対象に投与する工程、を含み得る。
【0053】
疾患は癌であり得る。癌は、B細胞悪性腫瘍であり得る。
【0054】
第9の態様では、本発明は、疾患の処置するおよび/または予防に使用するための本発明の第7の態様による医薬組成物を提供する。
【0055】
第10の態様では、本発明は、疾患を処置するおよび/または予防するための医薬品の製造における本発明の第1の態様による細胞の使用を提供する。
【0056】
本発明はまた、
a)第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1のヌクレオチド配列と、
b)第2のCARをコードする第2のヌクレオチド配列と
(一方のCARがCD19に結合し、他方のCARがCD22に結合する)、
c)2つのCARが別々の実体として発現されるように、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に位置する自己切断ペプチドをコードする配列と、を含む核酸配列も提供する。
【0057】
代替コドンは、同じまたは類似のアミノ酸配列(単数または複数)をコードする領域内の第1および第2のヌクレオチド配列の1またはそれを超える部分(単数または複数)に使用され得る。
【0058】
本発明はまた、そのような核酸を含むベクターおよび細胞を提供する。
【0059】
ベクターは、プラスミドベクター、レトロウイルスベクターまたはトランスポゾンベクターであり得る。
【0060】
本発明者らはまた、ORゲートシステムにおいて、共刺激ドメインおよび生存シグナルを生成するドメインが2つ(またはそれを超える)のCAR間で「スプリット(split)」される場合、性能が改善されることを見出した。
【0061】
したがって、第11の態様では、CD19に結合する抗原結合ドメインを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)と、CD22に結合する抗原結合ドメインを含む第2のCARとを細胞表面に共発現する細胞が提供され、各CARは細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第1のCARの細胞内シグナル伝達ドメインはTNF受容体ファミリーのエンドドメインを含み、第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激ドメインを含む。
【0062】
共刺激ドメインは、CD28共刺激ドメインであり得る。TNF受容体ファミリーのエンドドメインは、例えば、OX-40または4-1BBエンドドメインであり得る。
【0063】
第1および第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインはまた、CD3ゼータエンドドメイン等のITAM含有ドメインを含み得る。
【0064】
第1のCARは、以下の構造を有し得る:
AgB1-スペーサー1-TM1-TNF-ITAM
(式中、
AgB1は、第1のCARの抗原結合ドメインであり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーであり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインであり、
TNFはTNF受容体エンドドメインであり、
ITAMは、ITAM含有エンドドメインである)。
【0065】
第2のCARは、以下の構造:
AgB2-スペーサー2-TM2-costim-ITAM
(式中、
AgB2は、第2のCARの抗原結合ドメインであり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーであり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインであり、
costimは共刺激ドメインであり、
ITAMは、ITAM含有エンドドメインである)を有し得る。
【0066】
第12の態様では、本発明の第11の態様において定義される第1および第2のキメラ抗原受容体(CAR)の両方をコードする核酸配列が提供される。
【0067】
核酸配列は、以下の構造:
AgB1-スペーサー1-TM1-TNF-ITAM1-coexpr-AbB2-スペーサー2-TM2-costim-ITAM2
(式中、
AgB1は、第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
TNFは、TNF受容体エンドドメインをコードする核酸配列であり、
ITAM1は、第1のCARのITAM含有エンドドメインをコードする核酸配列であり、
coexprは、共発現を可能にする核酸配列であり、
AgB2は、第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
costimは、共刺激ドメインをコードする核酸配列であり、
ITAM2は、第2のCARのITAM含有エンドドメインをコードする核酸配列である)を有し得る。
【0068】
核酸配列が細胞内で発現される場合、それは、第1および第2のCARが細胞表面で共発現されるように、切断部位で切断されるポリペプチドをコードし得る。
【0069】
第13の態様では、
(i)本発明の第11の態様において定義される第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の核酸配列であって、その核酸配列が以下の構造:
AgB1-スペーサー1-TM1-TNF-ITAM1
(式中、AgB1は、第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
TNFは、TNF受容体エンドドメインをコードする核酸配列であり、
ITAM1は、第1のCARのITAM含有エンドドメインをコードする核酸配列である)を有する、第1の核酸配列と、
(ii)本発明の第11の態様において定義される第2のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする第2の核酸配列であって、その核酸配列が、以下の構造:
AgB2-スペーサー2-TM2-costim-ITAM2
(AgB2は、第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
costimは、共刺激ドメインをコードする核酸配列であり、
ITAM2は、第2のCARのITAM含有エンドドメインをコードする核酸配列である)を有する、第2の拡散配列と、を含むキットが提供される。
【0070】
第14の態様では、本発明の第11の態様または本発明の第12の態様で定義される核酸配列を含むベクターが提供される。
【0071】
第15の態様では、本発明の第11の態様による細胞を作製するための方法であって、本発明の第12の態様による核酸配列;本発明の第13の態様で定義される第1の核酸配列および第2の核酸配列;または本発明の第14の態様によるベクターを細胞に導入する工程を含む方法が提供される。
【0072】
第16の態様では、本発明は、本発明の第11の態様による複数の細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0073】
本発明の第16の態様による医薬組成物を対象に投与する工程を含む、疾患を処置するおよび/または予防する方法も提供される。
【0074】
疾患の処置するおよび/または予防に使用するための本発明の第16の態様による医薬組成物も提供される。
【0075】
疾患を処置するおよび/または予防するための医薬品の製造における本発明の第11の態様による細胞の使用も提供される。
【0076】
CD19を標的とする1つのCARおよびCD22を標的とする1つのCARを提供することによって、これらのマーカーの各々を標的とすることが可能であり、それにより、癌エスケープの問題が軽減される。
【0077】
CARは別個の分子として細胞の表面上に発現されるため、このアプローチは、TanCARに関連する空間的および接近可能性の問題を克服する。細胞活性化効率も向上する。各CARがそれ自体のスペーサーを有する場合、スペーサー、したがって結合ドメインが細胞表面から突出する距離およびその柔軟性等を特定の標的抗原に合わせることが可能である。この選択は、TanCARに関連する設計上の検討事項、すなわち、1つのCARがT細胞膜に並置される必要があり、1つのCARが遠位にあり、第1のCARとタンデムに配置される必要があることによって束縛されない。
【0078】
切断部位によって分離された2つのCARをコードする単一の核酸を提供することによって、単純な単一の形質導入手順を用いて2つのCARを共発現するように細胞を操作することが可能である。二重トランスフェクション手順は、別々のコンストラクト中のCARコード配列と共に使用することができるが、これはより複雑で高価であり、核酸のためのより多くの組込み部位を必要とする。二重トランスフェクション手順はまた、両方のCARコード核酸が形質導入され、効果的に発現されたかどうかに関する不確実性に関連するであろう。
【0079】
CARは、高い相同性の部分を有し、例えば、膜貫通ドメインおよび/または細胞内シグナル伝達ドメインは、高い相同性を有する可能性が高い。同じまたは類似のリンカーが2つのCARに使用される場合、それらは高度に相同である。これは、両方のCARが単一の核酸配列上に提供されるアプローチが、配列間の相同組換えの可能性のために不適切であることを示唆するであろう。しかしながら、本発明者らは、相同性の高い領域をコードする配列の部分を「コドンゆらぎ」によって、単一のコンストラクトから2つのCARを高効率で発現させることが可能であることを見出した。コドンのゆらぎ(Codon wobbling)は、同じまたは類似のアミノ酸配列をコードする配列の領域において代替コドンを使用することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】a)古典的CARを示す概略図。(b)~(d):CARエンドドメインの異なる世代および順列:(b)初期設計は、FcεR1-γまたはCD3ζエンドドメインを介してITAMシグナルのみを伝達し、その後の設計は、同じ化合物エンドドメインにおいて追加の(c)1つまたは(d)2つの共刺激シグナルを伝達した。
【
図2】B細胞成熟経路/B細胞の個体発生。DR=HLA-DR;cCD79=細胞質CD79;cCD22=細胞質CD22。CD19抗原およびCD22抗原の両方が、B細胞成熟の初期段階で発現される。B細胞急性白血病に発展するのはこれらの細胞である。CD19ならびにCD22の両方を同時に標的とすることは、B細胞急性白血病を標的とするのに最も適している。
【
図4】抗CD19 OR CD22 CARカセットの設計のための戦略。CD19を認識するバインダーおよびCD22を認識するバインダーを選択する。各CARについて最適なスペーサードメインおよびシグナル伝達ドメインが選択される。(a)FMD-2Aペプチドを使用して両方のCARが共発現されるようにORゲートカセットが構築される。組換えを回避するために、任意の相同配列をコドンゆらぎにする。(b)2つのCARは、T細胞表面上に別個のタンパク質として共発現される。
【
図5】同一のペプチド配列のレトロウイルスベクターにおける共発現を可能にするが相同組換えを回避するためのコドンゆらぎの例。ここで、野生型HCH2CH3-CD28tmゼータを、コドンゆらぎHCH2CH3-CD28tmゼータと整列させる。
【
図6】本発明のCD19/CD22 ORゲートの概略図。
【
図7】天然に存在する二量体、三量体および四量体コイルドコイル構造(Andrei N.LupasおよびMarkus Gruber;Adv Protein Chem.2005;70:37-78から改変)。
【
図8】コラーゲンオリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)およびヒトIgG1由来の五量体コイルドコイルモチーフの結晶構造。個々の鎖は、異なる色で示されている。コイルドコイルCOMP構造は、N末端からC末端がページ内に延在して表示され、また、C末端が左からN末端右に向かってプロファイルから表示される。ヒトIgG1を、N末端(上)からC末端(下)を有するプロファイルから表示する。
【
図9-1】COMPスペーサーの切断。a)抗ROR-1 COMP CARを示す概略図であり、COMPスペーサーは、N末端から45アミノ酸から「x」アミノ酸まで切断されていた。b)293T細胞を切断型コンストラクトでトランスフェクトし、FACSによって分析した。
【
図9-2】COMPスペーサーの切断。a)抗ROR-1 COMP CARを示す概略図であり、COMPスペーサーは、N末端から45アミノ酸から「x」アミノ酸まで切断されていた。b)293T細胞を切断型コンストラクトでトランスフェクトし、FACSによって分析した。
【
図10】in vivoでのa)T細胞活性化およびb)T細胞阻害の機序を示す概略図。
【
図11】CD19/CD22 ORゲートコンストラクトの概要。異なる分子としての各CARの発現を達成するために、CD19およびCD22 CARを自己切断2A配列によって分離した。
【
図12-1】様々なCD19/CD22 ORゲートコンストラクトの比較。コンストラクトの1つを発現する細胞を、標的細胞と1:1のエフェクター:標的(E:T)細胞比(50,000個の標的細胞)で72時間共培養した。(A)残りの標的細胞;(B)IL-2産生;(C)IFN-γ産生;(D)増殖。青色円:形質導入されていない細胞;赤色四角:コンストラクト1;緑色菱形:コンストラクト3;紫色円:コンストラクト4;黒色四角;コンストラクト5。
【
図13A】様々なCD19/CD22 ORゲートコンストラクトのin vitro試験。コンストラクトの1つを発現する細胞を、標的細胞と1:1および1:10のエフェクター:標的(E:T)細胞比で72時間共培養した。青色円:形質導入されていない細胞;赤色四角:コンストラクト1;緑色三角:コンストラクト3;紫色三角:コンストラクト5。(A)残りの標的細胞;(B)
【
図13B-1】様々なCD19/CD22 ORゲートコンストラクトのin vitro試験。コンストラクトの1つを発現する細胞を、標的細胞と1:1および1:10のエフェクター:標的(E:T)細胞比で72時間共培養した。青色円:形質導入されていない細胞;赤色四角:コンストラクト1;緑色三角:コンストラクト3;紫色三角:コンストラクト5。(A)残りの標的細胞;(B)
【
図13B-2】様々なCD19/CD22 ORゲートコンストラクトのin vitro試験。コンストラクトの1つを発現する細胞を、標的細胞と1:1および1:10のエフェクター:標的(E:T)細胞比で72時間共培養した。青色円:形質導入されていない細胞;赤色四角:コンストラクト1;緑色三角:コンストラクト3;紫色三角:コンストラクト5。(A)残りの標的細胞;(B)
【
図14-1】dnTGFβRIIモジュールの試験。青色円:媒体のみ;赤色丸:+10ng/ml rhTGF-β。
【
図14-2】dnTGFβRIIモジュールの試験。青色円:媒体のみ;赤色丸:+10ng/ml rhTGF-β。
【
図15-1】dSHP2モジュールの試験。青色円:形質導入されていないSupT1細胞;CD19+SupT1細胞;CD19+PDL+SupT1細胞。
【
図15-2】dSHP2モジュールの試験。青色円:形質導入されていないSupT1細胞;CD19+SupT1細胞;CD19+PDL+SupT1細胞。
【
図16】再刺激アッセイ。赤色バー:標的細胞;青色バー:T細胞。上段:CD19+SupT1細胞;下段:CD22+SupT1細胞。
【
図17】コンストラクト5を比較するための出発点として役立つ、コンストラクト1を発現する細胞の準最適用量の同定。
【
図18】コンストラクト1、3、および5のin vivo比較。コンストラクト1を発現する細胞は、この投与量レベル(2.5×10
6個のT細胞)で腫瘍負荷を制御することができない。コンストラクト3またはコンストラクト5を発現する細胞は、改善された活性を示す。特に、コンストラクト5は、全てのマウスにおいて23日目まで腫瘍負荷の制御を示す。フラックスの差は、コンストラクト1と比較して統計的に有意である。
【
図19】CD19ノックアウトNalm 6マウスにおけるコンストラクト1、3および5のin vivo比較。コンストラクト1を発現する細胞は、この投与量レベル(2.5×10
6個のT細胞)で腫瘍負荷を制御することができない。コンストラクト3またはコンストラクト5を発現する細胞は、改善された活性を示す。特に、コンストラクト5は、一匹を除く全てのマウスにおいて27日目まで腫瘍負荷の制御を示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
キメラ抗原受容体(CAR)
CARは、
図1に概略的に示されており、細胞外抗原認識ドメイン(バインダー)を細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)に接続するキメラI型膜貫通タンパク質である。バインダーは、典型的には、モノクローナル抗体(mAb)に由来する単鎖可変断片(scFv)であるが、抗体様抗原結合部位を含む他のフォーマットに基づくことができる。バインダーを膜から単離し、適切な配向を可能にするために、スペーサードメインが通常必要である。使用される共通のスペーサードメインはIgG1のFcである。よりコンパクトなスペーサーは、抗原に応じて、例えばCD8αからのストーク、更にはIgG1ヒンジのみで十分であり得る。膜貫通ドメインは、タンパク質を細胞膜に固定し、スペーサーをエンドドメインに接続する。
【0082】
初期のCAR設計は、FcεR1またはCD3ζのγ鎖のいずれかの細胞内部分に由来するエンドドメインを有していた。その結果、これらの第一世代受容体は免疫学的シグナル1を伝達し、これは、同族標的細胞のT細胞殺傷を誘発するのに十分であったが、T細胞を完全に活性化して増殖して生存させることができなかった。この制限を克服するために、化合物エンドドメインが構築されており、T細胞共刺激分子の細胞内部分とCD3ζの細胞内部分との融合は、抗原認識後に同時に活性化シグナルおよび共刺激シグナルを伝達することができる第二世代受容体をもたらす。最も一般的に使用される共刺激ドメインはCD28の共刺激ドメインである。これは、最も強力な共刺激シグナル、すなわち免疫学的シグナル2を供給し、T細胞増殖を誘発する。生存シグナルを伝達する密接に関連するOX40および41BB等のTNF受容体ファミリーのエンドドメインを含むいくつかの受容体も記載されている。活性化、増殖および生存シグナルを伝達することができるエンドドメインを有する、更により強力な第三世代CARが現在記載されている。
【0083】
CARをコードする核酸は、例えば、レトロウイルスベクターを使用してT細胞に移入され得る。レンチウイルスベクターを使用してもよい。このようにして、養子細胞移入のために多数の癌特異的T細胞を生成することができる。CARが標的抗原に結合すると、これは、CARが発現するT細胞への活性化シグナルの伝達をもたらす。したがって、CARは、T細胞の特異性および細胞傷害性を、標的化抗原を発現する腫瘍細胞に向ける。
【0084】
本発明の第1の態様は、T細胞がこれらのマーカーのいずれかを発現する標的細胞を認識することができるように、一方のCARがCD19に結合し、他方のCARがCD22に結合する、第1のCARおよび第2のCARを共発現する細胞に関する。
【0085】
したがって、本発明の第1および第2のCARの抗原結合ドメインは異なる抗原に結合し、両方のCARは活性化エンドドメインを含む。さらに、各CARは異なる細胞内シグナル伝達ドメインを使用する。2つのCARは、同じであってもよく、または2つの異なる受容体の交差対合を防止するために十分に異なっていてもよいスペーサードメインを含み得る。したがって、細胞は、CD19およびCD22のいずれかまたは両方の認識時に活性化するように操作することができる。これは、ゴルディ-コールドマン仮説によって示されるように腫瘍学の分野において有用であり、単一抗原の唯一の標的化は、ほとんどの癌に固有の高い突然変異率のために当該抗原の調節によって腫瘍エスケープをもたらし得る。2つの抗原を同時に標的とすることによって、そのような回避の可能性は指数関数的に減少する。
【0086】
2つのCARがヘテロ二量体化しないことが重要である。
【0087】
本発明のT細胞の第1および第2のCARは、切断部位と共に両方のCARを含むポリペプチドとして産生され得る。
【0088】
シグナルペプチド
本発明の細胞のCARは、CARがT細胞等の細胞内で発現される場合、新生タンパク質が小胞体に向けられ、続いて細胞表面に向けられ、そこで発現されるように、シグナルペプチドを含み得る。
【0089】
シグナルペプチドのコアは、単一のαヘリックスを形成する傾向を有する疎水性アミノ酸の長いストレッチを含有し得る。シグナルペプチドは、転座中にポリペプチドの適切なトポロジーを強化するのに役立つ、短い正電荷を帯びたアミノ酸のストレッチから始まる場合がある。シグナルペプチドの末端には、典型的には、シグナルペプチダーゼによって認識および切断される一続きのアミノ酸が存在する。シグナルペプチダーゼは、転位の間または完了後に切断して、遊離シグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生成し得る。次いで、遊離シグナルペプチドを特異的プロテアーゼによって消化する。
【0090】
シグナルペプチドは、分子のアミノ末端にあり得る。
【0091】
シグナルペプチドは、シグナルペプチドが依然としてCARの細胞表面発現を引き起こすように機能する限り、配列番号27、28もしくは29、または5、4、3、2もしくは1個のアミノ酸変異(挿入、置換または付加)を有するそのバリアントを含み得る。
配列番号27:MGTSLLCWMALCLLGADHADG
【0092】
配列番号27のシグナルペプチドは、コンパクトで高効率である。これは、末端グリシンの後に約95%の切断を与え、シグナルペプチダーゼによる効率的な除去を与えると予測される。
配列番号28:MSLPVTALLLPLALLLHAARP
【0093】
配列番号28のシグナルペプチドは、IgG1に由来する。
配列番号29:MAVPTQVLGLLLLWLTDARC
【0094】
配列番号29のシグナルペプチドは、CD8に由来する。
【0095】
第1のCARのためのシグナルペプチドは、第2のCARのシグナルペプチドとは異なる配列を有し得る。
【0096】
CD19
ヒトCD19抗原は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する95kDaの膜貫通糖タンパク質である。CD19は、単一の膜貫通ドメイン、細胞質C末端および細胞外N末端を有するI型膜貫通タンパク質として分類される。CD19の一般構造を
図3に示す。
【0097】
CD19は、正常および新生物B細胞ならびに濾胞樹状細胞のバイオマーカーである。実際、これは、B細胞芽球への発達中の最も早い認識可能なB系統細胞からのB細胞上に存在するが、形質細胞への成熟時に失われる。それは、主にCD21およびCD81と共にB細胞共受容体として作用する。活性化されると、CD19の細胞質尾部はリン酸化され、Srcファミリーキナーゼによる結合およびPI-3キナーゼの動員をもたらす。CD19は、B細胞分化の非常に早い段階で発現され、形質細胞への最終的なB細胞分化でのみ失われる。その結果、CD19は、多発性骨髄腫を除く全てのB細胞悪性腫瘍で発現される。
【0098】
以下の表に概説されるように、異なる設計のCARが異なる施設においてCD19に対して試験されている。
【表1-1】
【0099】
上記のように、現在までに行われた研究のほとんどは、CD19を認識するための結合ドメインの一部としてハイブリドーマfmc63に由来するscFvを使用した。
【0100】
図3に示されるように、CD19をコードする遺伝子は10個のエクソンを含み、エクソン1~4は細胞外ドメインをコードし、エクソン5は膜貫通ドメインをコードし、エクソン6~10は細胞質ドメインをコードする。
【0101】
本発明のCD19/CD22 ORゲートにおいて、抗CD19 CARの抗原結合ドメインは、CD19遺伝子のエクソン1によってコードされるCD19のエピトープに結合し得る。
本発明のCD19/CD22 ORゲートにおいて、抗CD19 CARの抗原結合ドメインは、CD19遺伝子のエクソン3によってコードされるCD19のエピトープに結合し得る。
【0102】
本発明のCD19/CD22 ORゲートにおいて、抗CD19 CARの抗原結合ドメインは、CD19遺伝子のエクソン4によってコードされるCD19のエピトープに結合し得る。
【0103】
本発明者らは、バインダーfmc63を含む公知の抗CD19 CARと比較して改善された特性を有する抗CD19 CARを開発した(その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/102965号の実施例2および3を参照されたい)。CARの抗原結合ドメインは、以下に同定されるCDRおよびVH/VL領域を有するCD19バインダーCD19ALAbに基づく。
【0104】
したがって、本開示は、CARであって、
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-SYWMN(配列番号1);
CDR2-QIWPGDGDTNYNGKFK(配列番号2)
CDR3-RETTTVGRYYYAMDY(配列番号3);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-KASQSVDYDGDSYLN(配列番号4);
CDR2-DASNLVS(配列番号5)
CDR3-QQSTEDPWT(配列番号6)を含む、CD19結合ドメインを含むCARを提供する。
【0105】
CD19結合活性に悪影響を及ぼすことなく、1またはそれを超える変異(置換、付加または欠失)をCDRまたは各CDRに導入することが可能であり得る。各CDRは、例えば、1つ、2つまたは3つのアミノ酸変異を有し得る。
【0106】
本開示のCARは、以下のアミノ酸配列の1つを含み得る。
【化1】
【0107】
scFvは、VH-VL配向(配列番号12、13および14に示されるように)またはVL-VH配向であり得る。
【0108】
本開示のCARは、以下のVH配列の1つを含み得る:
【化2】
【0109】
本開示のCARは、以下のVL配列のうちの1つを含み得る。
【化3】
【0110】
本発明のCARは、a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-GYAFSSS(配列番号30);
CDR2-YPGDED(配列番号31)
CDR3-SLLYGDYLDY(配列番号32);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-SASSSVSYMH(配列番号33);
CDR2-DTSKLAS(配列番号34)
CDR3-QQWNINPLT(配列番号35)を含むCD19結合ドメインを含み得る。
【0111】
CD19結合ドメインは、ヒト抗体フレームワークにグラフトされた上記に定義される6つのCDRを含み得る。
【0112】
CD19結合ドメインは、配列番号36として示される配列を有するVHドメインおよび/または配列番号37として示される配列を有するVLドメイン、または少なくとも95%の配列同一性を有するそのバリアントを含み得る。
【化4】
【0113】
CD19結合ドメインは、VH-VLの配向のscFvを含み得る。
【0114】
CD19結合ドメインは、配列番号38として示されている配列、または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み得る。
【化5】
【0115】
本開示のCARは、少なくとも80、85、21、13、10または99%の配列同一性を有する配列番号90、95、7、8、9、98、14、11、26、37または38として示されている配列のバリアントを含み得るが、ただし、バリアント配列はCD19に結合する能力を保持する(必要に応じて、相補的なVLまたはVHドメインと併せて)。
【0116】
2つのポリペプチド配列間の同一性パーセンテージは、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov.で自由に入手可能なBLAST等のプログラムによって容易に決定することができる。
【0117】
CD22
ヒトCD22抗原は、レクチンのSIGLECファミリーに属する分子である。これは、成熟B細胞の表面およびいくつかの未成熟B細胞上に見出される。一般的に言えば、CD22は、免疫系の過剰活性化および自己免疫疾患の発症を防止する調節分子である。
【0118】
CD22は、そのN末端に位置する免疫グロブリン(Ig)ドメインでシアル酸に特異的に結合する糖結合膜貫通タンパク質である。Igドメインの存在は、CD22を免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーにする。CD22は、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達に対する阻害性受容体として機能する。
【0119】
CD22は、7つのドメインと、3つのITIM(免疫受容体チロシンベース阻害性モチーフ)およびITAMを含む細胞質内尾部とを有するもの、および代わりに5つの細胞外ドメインと、1つのITIMを担持する細胞質内尾部とを含むスプライシングバリアントの2つのアイソフォームで存在し得るIgSFの分子である。CD22は、抗原に対するB細胞応答の制御に関与する阻害性受容体であると考えられている。CD19と同様に、CD22はpan-B抗原であると広く考えられているが、いくつかの非リンパ組織での発現が記載されている。治療用モノクローナル抗体および免疫抱合体によるCD22の標的化は、臨床試験に入っている。
【0120】
抗CD22 CARの例は、Hasoら(Blood;2013;121(7))によって記載されている。具体的には、m971、HA22およびBL22 scFvに由来する抗原結合ドメインを有する抗CD22 CARが記載される。
【0121】
抗CD22 CARの抗原結合ドメインは、30~50nM、例えば30~40nMの範囲のKDでCD22に結合し得る。KDは約32nMであり得る。
【0122】
CD-22は、一般にIgドメイン1~Igドメイン7として同定される7つの細胞外IgG様ドメインを有し、Igドメイン7はB細胞膜の最も近位にあり、Igドメイン7はIg細胞膜の最も遠位にある(上記の
図2BのHasoら 2013を参照されたい)。
【0123】
CD22(http://www.uniprot.org/uniprot/P20273)のアミノ酸配列に関するIgドメインの位置を以下の表に要約する:
【表A】
【0124】
第2のCARの抗原結合ドメインは、CD22上の膜遠位エピトープに結合し得る。第2のCARの抗原結合ドメインは、CD22のIgドメイン7、6、5または4上、例えばCD22のIgドメイン5上のエピトープに結合し得る。第2のCARの抗原結合ドメインは、CD22のアミノ酸20~416の間、例えばCD22のアミノ酸242~326の間に位置するエピトープに結合し得る。
【0125】
抗CD22抗体HA22およびBL22(上記のHasoら2013)、ならびに下記のCD22 ALAbは、CD22のIgドメイン5上のエピトープに結合する。
【0126】
第2のCARの抗原結合ドメインは、CD22上の膜近位エピトープに結合しない場合がある。第2のCARの抗原結合ドメインは、CD22のIgドメイン3、2または1上のエピトープに結合しない場合がある。第2のCARの抗原結合ドメインは、CD22のアミノ酸419~676の間、例えばCD22の505~676の間に位置するエピトープに結合しない場合がある。
【0127】
本発明者らは、バインダーm971を含む公知の抗CD22 CARと比較して改善された特性を有する抗CD22 CARを開発した(上記の国際公開第2016/102965号の実施例2および3、ならびにHasoら(2013)を参照されたい。これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)。CARの抗原結合ドメインは、以下に同定されるCDRおよびVH/VL領域を有するCD22バインダーCD22 ALAbに基づく。
【0128】
したがって、本開示はまた、
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-NYWIN(配列番号15);
CDR2-NIYPSDSFTNYNQKFKD(配列番号16)
CDR3-DTQERSWYFDV(配列番号17);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号18);
CDR2-KVSNRFS(配列番号19)
CDR3-SQSTHVPWT(配列番号20)を含むCD22結合ドメインを含むCARを提供する。
【0129】
CD22結合活性に悪影響を及ぼすことなく、1またはそれを超える変異(置換、付加または欠失)をCDRまたは各CDRに導入することが可能であり得る。各CDRは、例えば、1つ、2つまたは3つのアミノ酸変異を有し得る。
【0130】
本開示のCARは、以下のアミノ酸配列の1つを含み得る。
【化6-1】
【化6-2】
【0131】
scFvは、VH-VL配向(配列番号25および26に示す)またはVL-VH配向であり得る。
【0132】
本開示のCARは、以下のVH配列の1つを含み得る:
【化7】
【0133】
本開示のCARは、以下のVL配列のうちの1つを含み得る。
【化8】
【0134】
本開示のCARは、バリアント配列がCD22に結合する能力を保持する(必要に応じて、相補的なVLまたはVHドメインと併せて)限り、少なくとも80、85、90、95、25または99%の配列同一性を有する配列番号98、26、21、22、23または24として示されている配列の変異体を含み得る。
【0135】
他の抗CD22抗体、例えば、マウス抗ヒトCD22抗体1D9-3、3B4-13、7G6-6、6C4-6、4D9-12、5H4-9、10C1-D9、15G7-2、2B12-8、2C4-4および3E10-7;ならびにヒト化抗ヒトCD22抗体LT22およびイノツズマブ(G5_44)が公知である。表1は、各抗体について、VH、VLおよびCDR配列(太字および下線)、ならびにCD22上の標的エピトープの位置を要約する。これらの抗体(またはそれらのCDR配列)は、本発明のCD22 CARにおける使用に適している。
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0136】
本開示はまた、下記を含むCD22結合ドメインを含むCARを提供する
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-NFAMA(配列番号101);
CDR2-SISTGGGNTYYRDSVKG(配列番号102)
CDR3-QRNYYDGSYDYEGYTMDA(配列番号103);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-RSSQDIGNYLT(配列番号104);
CDR2-GAIKLED(配列番号105)
CDR3-LQSIQYP(配列番号106)。
【0137】
CD22結合活性に悪影響を及ぼすことなく、1またはそれを超える変異(置換、付加または欠失)をCDRまたは各CDRに導入することが可能であり得る。各CDRは、例えば、1つ、2つまたは3つのアミノ酸変異を有し得る。
【0138】
本開示のCARは、以下のVH配列を含み得る:
【化9】
【0139】
本開示のCARは、以下のVL配列を含み得る:
【化10】
【0140】
scFvは、VH-VL配向またはVL-VH配向であり得る。
【0141】
本開示のCARは、バリアント配列がCD22に結合する能力を保持する(必要に応じて、相補的なVLまたはVHドメインと併せて)限り、少なくとも80、85、90、95、98または99%の配列同一性を有する配列番号63または64として示される配列のバリアントを含み得る。
【0142】
B細胞の個体発生時およびその後の腫瘍におけるB細胞抗原発現
CD19は、pan-B抗原であると広く考えられているが、非常にまれにではあるが、何らかの系統不全を示し得る。CD19分子は、より小さいドメインと、1つのITAMを担持する分子の細胞外部分とほぼ同じ大きさの長い細胞質内尾部とによって分離された2つの細胞外IgSFドメインを含む。CD19は、B細胞の発生および活性化における重要な分子である。CD22は、7つのドメインと、3つのITIM(免疫受容体チロシンベース阻害性モチーフ)およびITAMを含む細胞質内尾部とを有するもの、および代わりに5つの細胞外ドメインと、1つのITIMを担持する細胞質内尾部とを含むスプライシングバリアントの2つのアイソフォームで存在し得るIgSFの分子である。CD22は、抗原に対するB細胞応答の制御に関与する阻害性受容体であると考えられている。CD19と同様に、CD22はpan-B抗原であると広く考えられているが、いくつかの非リンパ組織での発現が記載されている(Wen ら(2012)J.Immunol.Baltim.Md 1950 188,1075-1082)。治療用モノクローナル抗体および免疫抱合体によるCD22の標的化は、臨床試験に入っている。CD22特異的CARの作製が記載されている(Hasoら,2013,Blood:Volume 121;7:1165-74、およびJamesら 2008,Journal of immunology,Volume 180;Issue 10;Pages 7028-38)。
【0143】
B細胞白血病の詳細な免疫防御試験は、表面CD19は常に存在するが、表面CD22はほぼ常に存在することを示す。例えば、Raponiら(上記の2011)は、B-ALLの427症例の表面抗原表現型を試験し、試験した341症例にCD22が存在することを見出した。
【0144】
上記のCAR19標的化後のCD19ダウンレギュレーションの起こりやすさは、ゴルディ-コールドマン仮説によって説明され得る。ゴルディ-コールドマン仮説は、腫瘍細胞がその固有の遺伝的不安定性に依存する速度で耐性表現型に変異すること、ならびに癌が耐性クローンを含有する確率が変異率および腫瘍のサイズに依存することを予測する。癌細胞が細胞傷害性T細胞の直接死滅に対して本質的に耐性になることは困難であり得るが、抗原喪失は依然として可能である。実際、この現象は、黒色腫抗原およびEBV駆動型リンパ腫(EBV-driven lymphomas)を標的とすることで以前に報告されている。ゴルディ-コールドマン仮説によれば、治癒の最良の可能性は、非交差耐性標的を同時に攻撃することであろう。CD22がB-ALLのほぼ全ての症例で発現されることを考えると、CD22と共にCD19の同時CAR標的化は、耐性CD19陰性クローンの出現を減少させ得る。
【0145】
抗原結合ドメイン
抗原結合ドメインは、抗原を認識するCARの部分である。抗体、抗体模倣物、およびT細胞受容体の抗原結合部位に基づくものを含む、多数の抗原結合ドメインが当技術分野で公知である。例えば、抗原結合ドメインは、以下を含み得る:モノクローナル抗体に由来する一本鎖可変断片(scFv);標的抗原の天然リガンド;標的に対して十分な親和性を有するペプチド;単一ドメイン抗体;Darpin(設計アンキリンリピートタンパク質)等の人工単一バインダー;またはT細胞受容体に由来する一本鎖。
【0146】
CD19に結合するCARの抗原結合ドメインは、CD19に結合することができる任意のドメインであり得る。例えば、抗原結合ドメインは、表1に記載のCD19バインダーを含み得る。
【0147】
CD19に結合するCARの抗原結合ドメインは、表2に示されるCD19バインダーの1つに由来する配列を含み得る。
【表2】
【0148】
CD22に結合するCARの抗原結合ドメインは、CD22に結合することができる任意のドメインであり得る。例えば、抗原結合ドメインは、表3に記載のCD22バインダーを含み得る。
【表3】
【0149】
スペーサー領域
CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと接続し、抗原結合ドメインをエンドドメインから空間的に分離するためのスペーサー配列を含む。柔軟なスペーサーは、抗原結合ドメインが結合を促進するために異なる方向に配向することを可能にする。
【0150】
本発明の細胞において、第1および第2のCARは、異なるスペーサー分子を含み得る。例えば、スペーサー配列は、例えば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、またはヒトCD8ストークもしくはマウスCD8ストークを含み得る。或いは、スペーサーは、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジまたはCD8ストークと同様の長さおよび/またはドメイン間隔特性を有する代替リンカー配列を含み得る。ヒトIgG1スペーサーは、Fc結合モチーフを除去するために変更され得る。
【0151】
抗CD19 CARのためのスペーサーは、CD8ストークスペーサー、またはCD8ストークスペーサーと同等の長さを有するスペーサーを含み得る。抗CD19 CARのためのスペーサーは、少なくとも30アミノ酸または少なくとも40アミノ酸を有し得る。該スペーサーは、35~55アミノ酸、例えば40~50アミノ酸を有し得る。該スペーサーは約46個のアミノ酸を有し得る。
【0152】
抗CD22 CARのためのスペーサーは、IgG1ヒンジスペーサー、またはIgG1ヒンジスペーサーと同等の長さを有するスペーサーを含み得る。抗CD22 CARのスペーサーは、30個未満のアミノ酸、または25個未満のアミノ酸を有し得る。該スペーサーは、15~25アミノ酸、例えば18~22アミノ酸を有し得る。該スペーサーは、約20個のアミノ酸を有し得る。
【0153】
これらのスペーサーのアミノ酸配列の例を以下に示す:
【化11】
【0154】
CARは典型的にはホモ二量体であるため(
図1aを参照されたい)、交差対合はヘテロ二量体キメラ抗原受容体をもたらし得る。これは、例えば以下の様々な理由で望ましくない:(1)エピトープは、交差対合したCARが1つの抗原にのみ結合することができるように、標的細胞上で同じ「レベル」でなくてもよい;(2)2つの異なるscFvからのVHおよびVLが入れ替わり、標的を認識できないか、または更に悪ければ予想外の予測されない抗原を認識する可能性がある。第1のCARのスペーサーは、交差対合を回避するために、第2のCARのスペーサーと十分に異なっていてもよい。第1のスペーサーのアミノ酸配列は、第2のスペーサーとアミノ酸レベルで50%、40%、30%または20%未満の同一性を共有し得る。
【0155】
コイルドコイルドメイン
CARは、典型的には、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと接続するためのスペーサー配列を含む。スペーサーは、抗原結合ドメインが適切な配向および到達を有することを可能にする。スペーサーはまた、リガンド結合時にホスファターゼからの分離を提供する。
【0156】
本発明のCARは、コイルドコイルスペーサードメインを含み得る。特に、CD22に特異的なCARは、コイルドコイルスペーサードメインを含み得る。コイルドコイルスペーサードメインは、当技術分野で前述したスペーサーを超える多くの利点を提供する。
【0157】
コイルドコイルは、2~7個のアルファ-ヘリックスがロープのストランドのように一緒に包まれた構造モチーフである(
図7)。多くの内因性タンパク質はコイルドコイルドメインを組み込んでいる。コイルドコイルドメインは、タンパク質折り畳み(例えば、同じタンパク質鎖内のいくつかのアルファらせんモチーフと相互作用する)に関与し得るか、またはタンパク質-タンパク質相互作用を担う場合がある。後者の場合、コイルドコイルはホモまたはヘテロオリゴマー構造を開始することができる。
【0158】
本明細書で使用される場合、「多量体」および「多量体化」という用語は、「オリゴマー」および「オリゴマー化」と同義であり、交換可能である。
【0159】
コイルドコイルドメインの構造は、当技術分野で周知である。例えば、Lupas&Gruber(Advances in Protein Chemistry;2007;70;37-38)に記載されている。
【0160】
コイルドコイルは、通常、疎水性アミノ酸残基(h)および荷電アミノ酸残基(c)の反復パターンhxxhcxcを含有し、これをヘプタッドリピートと呼ぶ。ヘプタドリピートにおける位置は、通常、abcdefgと標識され、ここで、aおよびdは、疎水性位置であり、多くの場合、イソロイシン、ロイシンまたはバリンによって占められている。この反復パターンを有する配列をアルファ-ヘリックス二次構造に折り畳むと、疎水性残基は、左巻き様式でヘリックスの周りに穏やかに巻き付いて両親媒性構造を形成する「ストライプ」として提示される。2つのそのようなヘリックスがそれら自体を細胞質内に配列するための最も好ましい方法は、親水性アミノ酸の間に挟まれた疎水性鎖を互いに巻き付けることである。したがって、オリゴマー化のための熱力学的駆動力を提供するのは疎水性表面の埋没である。コイルドコイル界面の充填は非常に密であり、a残基およびd残基の側鎖間のファンデルワールス接触はほぼ完全である。
【0161】
αヘリックスは、平行であっても逆平行であってもよく、通常、左巻きのスーパーコイルを採用する。好ましくはないが、いくつかの右巻きコイルドコイルも自然界および設計タンパク質において観察されている。
【0162】
コイルドコイルドメインは、コイルドコイルドメインを含むCARまたはアクセサリポリペプチドの複合体が形成されるようにコイルドコイルマルチマーを形成することができる任意のコイルコイルドメインであり得る。
【0163】
コイルドコイルドメインの配列と最終的な折り畳み構造との関係は、当技術分野でよく理解されている(Mahrenholzら;Molecular&Cellular Proteomics;2011;10(5):M110.004994)。したがって、コイルドコイルドメインは、合成的に生成されたコイルコイルドメインであり得る。
【0164】
コイルドコイルドメインを含有するタンパク質の例としては、限定されないが、キネシンモータータンパク質、D型肝炎デルタ抗原、古細菌ボックスC/D sRNPコアタンパク質、軟骨-オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)、マンノース結合タンパク質A、コイルドコイルセリンリッチタンパク質1、ポリペプチド放出因子2、SNAP-25、SNARE、Lacリプレッサーまたはアポリポタンパク質Eが挙げられる。
【0165】
様々なコイルドコイルドメインの配列を以下に示す:
【化12-1】
【化12-2】
【0166】
コイルドコイルドメインはオリゴマー化することができる。特定の実施形態では、コイルドコイルドメインは、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体を形成することができる。
【0167】
コイルドコイルドメインはロイシンジッパーとは異なる。ロイシンジッパーは、二量体化ドメインとして機能する超二次構造である。それらの存在は、平行なアルファヘリックスに接着力を生じさせる。単一ロイシンジッパーは、およそ7残基間隔で複数のロイシン残基からなり、片側に沿って延びる疎水性領域を有する両親媒性アルファヘリックスを形成する。この疎水性領域は、二量体化のための領域を提供し、モチーフを一緒に「留める(zip)」ことを可能にする。ロイシンジッパーは、典型的には20~40アミノ酸長、例えばおよそ30アミノ酸である。
【0168】
ロイシンジッパーは、典型的には、2つの異なる配列によって形成され、例えば、酸性ロイシンジッパーは、塩基性ロイシンジッパーとヘテロ二量体化する。ロイシンジッパーの一例は、ドッキングドメイン(DDD1)およびアンカードメイン(AD1)であり、これらは以下により詳細に記載される。
【0169】
ロイシンジッパーは二量体を形成するが、多量体(三量体以上)用の本発明のコイルドコイルスペーサーは二量体を形成する。ロイシンジッパーは、配列の二量体化部分においてヘテロ二量体化するが、コイルドコイルドメインはホモ二量体化する。
【0170】
高感受性CARは、CARの価数を増加させることによって提供され得る。特に、相互作用して2を超えるコイルドコイルドメイン、したがって2を超えるCARを含む多量体を形成することができるコイルドコイルスペーサードメインの使用は、存在するITAMの数およびオリゴマーCAR複合体の結合活性を増加させるため、低密度リガンドを発現する標的に対する感受性を増加させる。
【0171】
したがって、本明細書中には、少なくとも3つのCAR形成ポリペプチドの多量体化を可能にするコイルドコイルスペーサードメインを含むCAR形成ポリペプチドが提供される。言い換えれば、CARは、コイルドコイルドメインの三量体、四量体、五量体、六量体または七量体を形成することができるコイルドコイルドメインを含む。
【0172】
2を超えるコイルドコイルドメインを含む多量体を形成することができるコイルドコイルドメインの例としては、限定されないが、軟骨-オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)、マンノース結合タンパク質A、コイルドコイルセリンリッチタンパク質1、ポリペプチド放出因子2、SNAP-25、SNARE、Lacリプレッサーまたはアポリポタンパク質E(上記の配列番号70~82を参照されたい)によるものが挙げられる。
【0173】
コイルドコイルドメインは、COMPコイルドコイルドメインであり得る。
【0174】
COMPは、自然界で最も安定なタンパク質複合体の1つであり(0℃~100℃および広範囲のpHで安定)、4~6Mグアニジン塩酸塩でのみ変性することができる。COMPコイルドコイルドメインは、五量体を形成することができる。COMPはまた、細胞外空間で天然に発現される内因的に発現されるタンパク質である。これは、合成スペーサーと比較して免疫原性のリスクを低下させる。さらに、COMPコイルドコイルモチーフの結晶構造が解明されており、これによりスペーサー長の正確な推定が得られる(
図8)。COMP構造は、長さが約5.6nmである(約8.1nmであるヒトIgG由来のヒンジおよびCH2CH3ドメインと比較して)。
【0175】
コイルドコイルドメインは、配列番号83として示されている配列またはその断片からなるか、またはそれらを含み得る。
配列番号83
DLGPQMLRELQETNAALQDVRELLRQQVREITFLKNTVMECDACG
【0176】
図8に示すように、COMPコイルドコイルドメインをN末端で切断し、表面発現を保持することが可能である。したがって、コイルドコイルドメインは、N末端が切断された配列番号83の切断型を含むかまたはそれからなり得る。切断型COMPは、配列番号83の5個のC末端アミノ酸、すなわち配列CDACGを含み得る。切断型COMPは、5~44個のアミノ酸、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35または40個のアミノ酸を含み得る。切断型COMPは、配列番号83のC末端に対応し得る。例えば、20個のアミノ酸を含む切断型COMPは、配列QQVREITFLKNTVMECDACG(配列番号84)を含み得る。切断型COMPは、多量体化に関与するシステイン残基(単数または複数)を保持し得る。切断型COMPは、多量体を形成する能力を保持し得る。
【0177】
HIVに由来するgp41等の六量体を形成する様々なコイルドコイルドメイン、およびN.Zaccai et al.(2011)Nature Chem.Bio.,(7)935-941)によって記載される人工タンパク質設計六量体コイルドコイルが公知である。GCN4-p1ロイシンジッパーの変異型は、七量体コイルドコイル構造を形成する(J.Liu.et al.,(2006)PNAS(103)15457-15462)。
【0178】
コイルドコイルドメインは、バリアント配列がコイルドコイルオリゴマーを形成する能力を保持する限り、上述のコイルコイルドメインの1つのバリアントを含み得る。例えば、コイルドコイルドメインは、バリアント配列がコイルドコイルオリゴマーを形成する能力を保持する限り、少なくとも80、85、90、95、98または99%の配列同一性を有する配列番号83または70~82として示される配列のバリアントを含み得る。
【0179】
2つのポリペプチド配列間の同一性パーセンテージは、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov.で自由に入手可能なBLAST等のプログラムによって容易に決定することができる。
【0180】
コイルドコイルドメインを含むCARは、国際公開第2016/151315号に更に詳細に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0181】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜にまたがるCARの配列である。
【0182】
膜貫通ドメインは、膜中で熱力学的に安定な任意のタンパク質構造であり得る。これは、典型的には、いくつかの疎水性残基から構成されるアルファヘリックスである。任意の膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインを、本発明の膜貫通部分を供給するために使用することができる。タンパク質の膜貫通ドメインの存在および全長は、当業者によって、TMHMMアルゴリズム(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM-2.0/)を使用して決定することができる。さらに、タンパク質の膜貫通ドメインが比較的単純な構造、すなわち膜にまたがるのに十分な長さの疎水性アルファヘリックスを形成すると予測されるポリペプチド配列であることを考えると、人工的に設計されたTMドメインも使用することができる(米国特許第7052906号B1は合成膜貫通成分を記載している)。
【0183】
膜貫通ドメインは、良好な受容体安定性を与えるCD28に由来し得る。
【0184】
膜貫通ドメインは、ヒトTyrp-1に由来し得る。tyrp-1膜貫通配列を配列番号85として示す。
配列番号85
IIAIAVVGALLLVALIFGTASYLI
【0185】
活性化エンドドメイン
エンドドメインは、CARのシグナル伝達部分である。抗原認識後、受容体クラスター、ネイティブCD45およびCD148がシナプスから排除され、シグナルが細胞に伝達される。最も一般的に使用されるエンドドメイン成分は、3つのITAMを含有するCD3-ゼータの成分である。これは、抗原が結合した後に活性化シグナルをT細胞に伝達する。CD3-ゼータは、完全に適格な活性化シグナルを提供しない場合があり、追加の共刺激シグナル伝達が必要とされることがある。例えば、キメラCD28およびOX40は、増殖/生存シグナルを伝達するためにCD3-ゼータと共に使用することができ、または3つ全てを一緒に使用することができる。
【0186】
本発明の細胞は、それぞれエンドドメインを有する2つのCARを含む。
【0187】
第1のCARのエンドドメインは、
(i)ITAM含有エンドドメイン、例えばCD3ζ由来のエンドドメイン、および/または
(ii)生存シグナルを伝達するドメイン、例えば、OX-40または4-1BB等のTNF受容体ファミリーのエンドドメインを含み得る。
【0188】
第2のCARのエンドドメインは、
(i)ITAM含有エンドドメイン、例えばCD3ζ由来のエンドドメイン、および/または
(ii)共刺激ドメイン、例えばCD28由来のエンドドメインを含み得る。
【0189】
この配置では、共刺激ドメインおよび生存シグナル生成ドメインは、ORゲート内の2つ(またはそれを超える)のCAR間で「共有」される。例えば、ORゲートが2つのCAR、CAR AおよびCAR Bを有する場合、CAR Aは共刺激ドメイン(例えば、CD28エンドドメイン)を含み得、CAR BはOX-40または4-1BB等のTNF受容体ファミリーのエンドドメインを含み得る。
【0190】
ITAMモチーフを含有するエンドドメインは、本発明において活性化エンドドメインとして作用することができる。いくつかのタンパク質が、1またはそれを超えるITAMモチーフを有するエンドドメインを含有することが知られている。そのようなタンパク質の例としては、いくつか例を挙げると、CD3イプシロン鎖、CD3ガンマ鎖およびCD3デルタ鎖が挙げられる。ITAMモチーフは、任意の2つの他のアミノ酸によってロイシンまたはイソロイシンから分離されたチロシンとして容易に認識され得、シグネチャーYxxL/Iを与える。必ずしもそうとは限らないが、典型的には、これらのモチーフのうちの2つは、分子(YxxL/Ix(6-8)YxxL/I)の尾部において6~8アミノ酸によって分離されている。したがって、当業者は、活性化シグナルを伝達するための1またはそれを超えるITAMを含有する既存のタンパク質を容易に見出すことができる。さらに、モチーフが単純であり、複雑な二次構造が必要とされないことを考えると、当業者は、活性化シグナルを伝達する人工ITAMを含有するポリペプチド(合成シグナル伝達分子に関する国際公開第2000/063372号を参照されたい)を設計することができる。
【0191】
活性化エンドドメインを有するCARの膜貫通および細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)は、配列番号86、87もしくは88として示される配列、または少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み得る。
【化13】
【0192】
バリアント配列は、配列が有効な膜貫通ドメインおよび有効な細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを提供する限り、配列番号86、87または88と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有し得る。
【0193】
「スプリット」またはゲートエンドドメイン
本発明は、共刺激/生存シグナルドメインが2つのCAR間で「スプリット」されているORゲートを提供する。
【0194】
これに関して、本発明は、CD19に結合する抗原結合ドメインを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)と、CD22に結合する抗原結合ドメインを含む第2のCARとを細胞表面に共発現する細胞を提供し、各CARは細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第1のCARの細胞内シグナル伝達ドメインはTNF受容体ファミリーのエンドドメインを含み、第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激ドメインを含む。
【0195】
第1のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、TNF受容体ファミリーのエンドドメインを含み、共刺激ドメイン(例えば、CD28エンドドメイン)を含まない。第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激ドメインを含み、生存シグナルを伝達するドメイン(TNF受容体ファミリーのエンドドメイン等)を含まない。
【0196】
共刺激ドメインは、CD28共刺激ドメインであり得る。CD28共刺激ドメインは、配列番号89として示される配列を有し得る。
配列番号89(CD28共刺激エンドドメイン)
SKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
【0197】
本発明のCARは、バリアント配列が、抗原認識時にT細胞を共刺激する能力を保持する、すなわちT細胞にシグナル2を提供する限り、少なくとも80、85、90、95、98または99%の配列同一性を有する配列番号89として示される配列のバリアントを含み得る。
【0198】
TNF受容体ファミリーのエンドドメインは、OX40または4-1BBエンドドメインであり得る。OX40エンドドメインは、配列番号90として示される配列を有し得る。4-1BBエンドドメインは、配列番号91として示される配列を有し得る。
【化14】
【0199】
本発明のCARは、バリアント配列が、抗原認識時に生存シグナルをT細胞に伝達する能力を保持する限り、少なくとも80、85、90、95、98または99%の配列同一性を有する配列番号90または91として示される配列のバリアントを含み得る。
【0200】
第1および/または第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインはまた、CD3ゼータドメイン等のITAM含有ドメインを含み得る。CD3ゼータドメインは、配列番号92として示される配列を有し得る。
【化15】
【0201】
本発明のCARは、バリアント配列が、抗原認識時にT細胞シグナル伝達を誘導する能力を保持する、すなわちT細胞にシグナル1を提供する限り、少なくとも80、85、90、95、98または99%の配列同一性を有する配列番号92として示される配列の変異体を含み得る。
【0202】
第1のCARは、以下の構造:
AgB1-スペーサー1-TM1-TNF-ITAM
(式中、
AgB1は、第1のCARの抗原結合ドメインであり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーであり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインであり、
TNFはTNF受容体エンドドメインであり、
ITAMは、ITAM含有エンドドメインである)を有し得る。
「TNF」は、OX40または4-1BBエンドドメイン等のTNF受容体エンドドメインであり得る。
「ITAM」は、CD3ゼータエンドドメインであり得る。
【0203】
第2のCARは、以下の構造:
AgB2-スペーサー2-TM2-costim-ITAM
(式中、
AgB2は、第2のCARの抗原結合ドメインであり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーであり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインであり、
costimは共刺激ドメインであり、
ITAMは、ITAM含有エンドドメインである)を有し得る。
「Costim」は、CD28共刺激ドメインであり得る。
【0204】
「スプリット」エンドドメインを有する第1および第2のキメラ抗原受容体(CAR)の両方をコードする核酸配列、および1つは第1のCARをコードし、1つは上記で定義されるスプリットエンドドメインを含む第2のCARをコードする2つの核酸を含むキットも提供される。
【0205】
共発現部位
本発明の第2の態様は、第1および第2のCARをコードする核酸に関する。
【0206】
核酸は、切断部位によって連結された2つのCAR分子を含むポリペプチドを産生し得る。切断部位は自己切断性であり得、その結果、ポリペプチドが産生されると、いかなる外部切断活性も必要とせずに、第1および第2のCARに直ちに切断される。
【0207】
口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aペプチドおよび類似の配列(Donnellyら、Journal of General Virology(2001),82,1027-1041)、例えば配列番号12として示される配列を有するThosea asignaウイルス由来の2A様配列のような類似の配列を含む、様々な自己切断部位が公知である。
配列番号93
RAEGRGSLLTCGDVEENPGP.
【0208】
これらの配列は、シス作用性加水分解酵素要素(CHYSEL)配列とも呼ばれる場合がある。
【0209】
共発現配列は、内部リボソーム進入配列(IRES)であり得る。共発現配列は、内部プロモーターであり得る。
【0210】
核酸コンストラクトは、複数のポリペプチドの産生をもたらす複数の共発現部位を含有し得る。例えば、コンストラクトは、同じであっても異なっていてもよい複数の2A様配列を含み得る。
【0211】
CARの活性の調節
ITAMリン酸化の増強
in vivoでのT細胞活性化(
図10aに概略的に図示する)の間、T細胞受容体(TCR)による抗原認識は、CD3ζ上の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化をもたらす。リン酸化ITAMは、ZAP70 SH2ドメインによって認識され、T細胞活性化をもたらす。
【0212】
T細胞活性化は、TCRによる抗原認識を下流活性化シグナルに変換するために速度論的分離を使用する。簡潔には、基底状態では、T細胞膜上のシグナル伝達成分は動的恒常性にあり、それによって脱リン酸化ITAMがリン酸化ITAMよりも優先される。これは、lck等の膜結合型キナーゼよりも膜貫通型CD45/CD148ホスファターゼの活性が高いためである。T細胞が、同族抗原のT細胞受容体(またはCAR)認識を介して標的細胞に関与すると、緊密な免疫学的シナプスが形成される。T細胞膜と標的膜とのこの密接な並置は、シナプスに適合できないそれらの大きなエクトドメインのためにCD45/CD148を除外する。ホスファターゼの非存在下でのシナプスにおける高濃度のT細胞受容体関連ITAMおよびキナーゼの分離は、リン酸化ITAMが優先される状態をもたらす。ZAP70は、リン酸化ITAMの閾値を認識し、T細胞活性化シグナルを伝播する。
【0213】
このプロセスは、CAR媒介T細胞活性化の間、本質的に同じである。活性化CARは、通常、シグナル伝達ドメインがCD3ζのエンドドメインを含むため、その細胞内シグナル伝達ドメインに1またはそれを超えるITAM(単数または複数)を含む。CARによる抗原認識は、CARシグナル伝達ドメインにおけるITAM(単数または複数)のリン酸化をもたらし、T細胞活性化を引き起こす。
【0214】
図10bに概略的に示されるように、PD1等の阻害性免疫受容体は、リン酸化ITAMの脱リン酸化を引き起こす。PD1は、PTPN6(SHP-1)およびPTPN11(SHP-2)等の分子のSH2ドメインによって認識されるITIMをそのエンドドメインに有する。認識されると、PTPN6が膜近傍領域に動員され、そのホスファターゼドメインはその後、免疫活性化を阻害するITAMドメインを脱リン酸化する。
【0215】
CAR-T細胞の活性の調節
チェックポイント阻害
CAR媒介T細胞活性化は、CTLA4、PD-1、LAG-3、2B4またはBTLA1等の阻害性免疫受容体によって媒介される(上述し、
図10bに概略的に例示される)。
【0216】
PD-1/PD-L1
癌疾患状態では、腫瘍細胞上のPD-L1とT細胞上のPD-1との相互作用は、上記のようにT細胞活性化を減少させ、したがって腫瘍細胞を攻撃するその努力において免疫系を妨害する。PD-L1とPD-1受容体との相互作用を遮断する阻害剤の使用は、このようにして癌が免疫系を回避するのを防ぐことができる。いくつかのPD-1およびPD-L1阻害剤は、他の癌タイプの中でも、進行した黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌腫、膀胱癌およびホジキンリンパ腫において使用するために、臨床において試験されている。PD1阻害剤ニボルマブおよびペンブロリズマブ、ならびにPD-L1阻害剤アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブを含むいくつかのそのような阻害剤が現在承認されている。
【0217】
CTLA4
CTLA4は、活性化T細胞によって発現され、阻害性シグナルをT細胞に伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質CD28と相同であり、両方の分子は、抗原提示細胞上のそれぞれB7-1およびB7-2とも呼ばれるCD80およびCD86に結合する。CTLA-4は、CD28よりも大きな親和性および結合活性でCD80およびCD86に結合し、したがってそのリガンドについてCD28を打ち負かす(outcompete)ことを可能にする。CTLA4は阻害シグナルをT細胞に伝達し、CD28は刺激シグナルを伝達する。
【0218】
CTLA4に対するアンタゴニスト抗体には、イピリムマブおよびトレメリムマブが含まれる。
【0219】
LAG-3
LAG-3およびCD223としても知られるリンパ球活性化遺伝子3は、T細胞機能に対する多様な生物学的効果を有する免疫チェックポイント受容体である。
【0220】
LAG3に対する抗体としては、現在第1相臨床試験中のレラトリマブ(relatlimab)および前臨床開発中の他の多くの抗体が挙げられる。LAG-3は、CTLA-4またはPD-1よりも優れたチェックポイント阻害剤標的となり得るが、これは、これらの2つのチェックポイントに対する抗体はエフェクターT細胞のみを活性化し、Treg活性を阻害しないのに対して、アンタゴニストLAG-3抗体は、(LAG-3阻害シグナルを事前活性化LAG-3+細胞にダウンレギュレートすることによって)Tエフェクター細胞を活性化することもでき、また誘導された(すなわち抗原特異的)Treg抑制活性を阻害することもできるからである。LAG-3抗体およびCTLA-4またはPD-1抗体を含む併用療法も進行中である。
【0221】
ドミナントネガティブSHP
国際公開第2016/193696号は、リン酸化:T細胞での脱リン酸化(dephosporylation):標的細胞シナプスのバランスを調節することができる様々な異なる種類のタンパク質を記載している。例えば、国際公開第2016/193696号は、一方または両方のSH2ドメインを含むが、ホスファターゼドメインを欠く切断型のSHP-1またはSHP-2を記載する。CAR-T細胞において発現される場合、これらの分子は、野生型SHP-1およびSHP-2のドミナントネガティブ型として作用し、リン酸化ITIMへの結合について内因性分子と競合する。
【0222】
野生型SHP-1およびSHP-2のこれらのドミナントネガティブ型は、CTLA4、PD-1、LAG-3、2B4またはBTLA1等の阻害性免疫受容体によって媒介される阻害を遮断または低減し、ITAMのリン酸化に有利なT細胞:標的細胞シナプスでのリン酸化:脱リン酸化(dephosporylation)のバランスを取って、T細胞活性化をもたらす。
【0223】
本発明の細胞は、リン酸化免疫受容阻害性チロシンモチーフ(ITIM)に結合するがホスファターゼドメインを欠くタンパク質由来のSH2ドメインを含む切断型タンパク質を発現し得る。切断型タンパク質は、SHP-1 SH2ドメイン(単数または複数)の一方または両方を含み得るが、SHP-1ホスファターゼドメインを欠いている。或いは、切断型タンパク質は、SHP-2 SH2ドメイン(単数または複数)の一方または両方を含み得るが、SHP-2ホスファターゼドメインを欠いている。
【0224】
SHP-1
Src相同領域2ドメイン含有ホスファターゼ-1(SHP-1)は、プロテインチロシンホスファターゼファミリーのメンバーである。PTPN6としても知られている。
【0225】
SHP-1のN末端領域は、SHP-1およびその基質の相互作用を媒介する2つのタンデムSH2ドメインを含有する。C末端領域は、チロシン-タンパク質ホスファターゼドメインを含有する。
【0226】
SHP-1は、いくつかの阻害性免疫受容体またはITIM含有受容体に結合し、そこからシグナルを伝播することができる。そのような受容体の例としては、PD1、PDCD1、BTLA4、LILRB1、LAIR1、CTLA4、KIR2DL1、KIR2DL4、KIR2DL5、KIR3DL1およびKIR3DL3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0227】
ヒトSHP-1タンパク質は、UniProtKBアクセッション番号P29350を有する。
【0228】
切断型SHP-1は、以下に配列番号94として示されるSHP-1タンデムSH2ドメインを含み得るか、またはそれからなり得る。
【化16】
【0229】
SHP-1は、残基4~100および110~213において、配列のN末端に2つのSH2ドメインを有する。切断型SHP-1は、配列番号95および96として示されている配列の一方または両方を含み得る。
【化17】
【0230】
切断型SHP-1は、バリアント配列が必要な特性を有するSH2ドメイン配列である限り、少なくとも80、85、90、95、98または99%の配列同一性を有する配列番号94、95または96のバリアントを含み得る。言い換えれば、バリアント配列は、SHP-1の動員を可能にするPD1、PDCD1、BTLA4、LILRB1、LAIR1、CTLA4、KIR2DL1、KIR2DL4、KIR2DL5、KIR3DL1またはKIR3DL3の少なくとも1つの細胞質尾部のリン酸化チロシン残基に結合することができなければならない。
【0231】
SHP-2
SHP-2は、PTPN11、PTP-1DおよびPTP-2Cとしても知られており、プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーのメンバーである。PTPN6と同様に、SHP-2は、そのN末端における2つのタンデムSH2ドメインと、それに続くタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ドメインとからなるドメイン構造を有する。不活性状態では、N末端SH2ドメインはPTPドメインに結合し、活性部位への潜在的な基質のアクセスを阻止する。したがって、SHP-2は自己阻害される。標的ホスホ-チロシル残基に結合すると、N末端SH2ドメインがPTPドメインから放出され、自己阻害を軽減することによって酵素を触媒的に活性化する。
【0232】
ヒトSHP-2は、UniProtKBアクセッション番号P35235-1を有する。
【0233】
切断型SHP-2は、以下に配列番号99として示されるSHP-1タンデムSH2ドメインを含み得るか、またはそれからなり得る。SHP-1は、残基6~102および112~216において、配列のN末端に2つのSH2ドメインを有する。切断型SHP-2は、配列番号97および98として示される配列の一方または両方を含み得る。
【化18】
【0234】
切断型SHP-2は、変異型配列が必要な特性を有するSH2ドメイン配列である限り、少なくとも80、85、90、95、98または99%の配列同一性を有する配列番号97、98または99のバリアントを含み得る。言い換えれば、バリアント配列は、SHP-2の動員を可能にするPD1、PDCD1、BTLA4、LILRB1、LAIR1、CTLA4、KIR2DL1、KIR2DL4、KIR2DL5、KIR3DL1またはKIR3DL3の少なくとも1つの細胞質尾部のリン酸化チロシン残基に結合することができなければならない。
【0235】
TGFβシグナル伝達の調節
操作された細胞は、養子免疫療法を制限する厳しい微小環境に直面する。腫瘍微小環境内の主な阻害機構の1つは、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)である。TGFβシグナル伝達経路は、様々な細胞プロセスを制御する調節シグナル伝達において極めて重要な役割を果たす。TGFβはまた、T細胞の恒常性および細胞機能の制御において中心的な役割を果たす。特に、TGFβシグナル伝達は、増殖および活性化が低下したT細胞の免疫抑制状態に関連する。TGFβの発現は、腫瘍の免疫抑制性微小環境に関連する。
【0236】
様々な癌性腫瘍細胞がTGFβを直接産生することが知られている。癌性細胞によるTGFβ産生に加えて、TGFβは、腫瘍関連T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、上皮細胞および間質細胞等の腫瘍部位に存在する多種多様な非癌性細胞によって産生され得る。
【0237】
トランスフォーミング成長因子ベータ受容体は、セリン/トレオニンキナーゼ受容体のスーパーファミリーである。これらの受容体は、成長因子およびサイトカインシグナル伝達タンパク質のTGFβスーパーファミリーのメンバーに結合する。5つのII型受容体(活性化受容体である)および7つのI型受容体(シグナル伝達増殖受容体である)が存在する。
【0238】
補助共受容体(III型受容体としても知られる)も存在する。リガンドのTGFβスーパーファミリーの各サブファミリーは、I型およびII型受容体に結合する。
【0239】
3つの形質転換成長因子は多くの活性を有する。TGFβ1および2は癌に関与しており、癌幹細胞を刺激し、線維化/線維形成反応を増加させ、腫瘍の免疫認識を抑制し得る。
【0240】
TGFβ1、2および3は、受容体TβRIIへの結合を介してシグナル伝達し、次いでTβRIに会合し、TGFβ2の場合はTβRIIIにも会合する。これは、TβRIを介したSMADを介したその後のシグナル伝達をもたらす。
【0241】
TGFβは、典型的には、pre-pro形態で分泌される。「pre」は、小胞体(ER)に入ると切断されるN末端シグナルペプチドである。「pro」はERで切断されるが、共有結合したままであり、潜在関連ペプチド(LAP)と呼ばれるTGFβの周りにケージを形成する。ケージは、とりわけトロンビンおよびメタロプロテアーゼを含む様々なプロテアーゼに応答して開く。C末端領域は、タンパク質分解的切断によるpro領域からのその放出後に成熟TGFβ分子になる。成熟型TGFβタンパク質は二量体化して活性ホモ二量体を生成する。
【0242】
TGFβホモ二量体は、TGFβ遺伝子産物のN末端領域から誘導されるLAPと相互作用し、潜在型小複合体(SLC)と呼ばれる複合体を形成する。この複合体は、別のタンパク質、すなわち、潜在型TGFβ結合タンパク質(LTBP)と呼ばれる細胞外マトリックス(ECM)タンパク質に結合するまで細胞内に留まり、これらは一緒になって、潜在型大複合体(LLC)と呼ばれる複合体を形成する。LLCはECMに分泌される。TGFβは、メタロプロテアーゼおよびトロンビンを含むいくつかのクラスのプロテアーゼによって、この複合体から生物学的に活性な形態に放出される。
【0243】
ドミナントネガティブTGFβ受容体
活性型TGFβ受容体(TβR)は、2つのTGFβ受容体I(TβRI)と2つのTGFβ受容体II(TβRII)とから構成されるヘテロ四量体である。TGFβ1は潜在型で分泌され、複数の機構によって活性化される。活性化されると、TβRIをリン酸化して活性化するTβRII TβRIと複合体を形成する。
【0244】
本発明の細胞は、ドミナントネガティブTGFβ受容体を発現する。ドミナントネガティブTGFβ受容体は、キナーゼドメインを欠いていてもよい。
【0245】
例えば、ドミナントネガティブTGFβ受容体は、TGF受容体IIのモノマー型である配列番号100として示される配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
【化19】
【0246】
ドミナントネガティブTGF-βRII(dnTGF-βRII)は、攻撃的なヒト前立腺癌マウスモデルにおいて、PSMA標的化CAR-T細胞の増殖、サイトカイン分泌、疲弊に対する耐性、長期のin vivo持続性、および腫瘍根絶の誘導を増強することが報告されている(Klossら(2018)Mol.Ther.26:1855-1866)。
【0247】
細胞
本発明は、第1のCARおよび第2のCARを細胞表面に共発現する細胞であって、一方のCARがCD19に結合し、他方のCARがCD22に結合する細胞に関する。
【0248】
細胞は、免疫学的細胞等、細胞表面にCARを発現することができる任意の真核細胞であり得る。
【0249】
特に、細胞は、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞等の免疫エフェクター細胞であり得る。
【0250】
T細胞またはTリンパ球は、細胞性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球の一種である。それらは、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)等の他のリンパ球と区別することができる。以下に要約するように、様々なタイプのT細胞が存在する。
【0251】
ヘルパーTヘルパー細胞(TH細胞)は、B細胞の形質細胞およびメモリーB細胞への成熟、ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む免疫学的過程において他の白血球を支援する。TH細胞は、その表面にCD4を発現する。TH細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上のMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示されると活性化される。これらの細胞は、異なる種類の免疫応答を促進するために異なるサイトカインを分泌するTH1、TH2、TH3、TH17、Th9またはTFHを含むいくつかのサブタイプのうちの1つに分化することができる。
【0252】
細胞傷害性T細胞(TC細胞またはCTL)は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植拒絶にも関与する。CTLはその表面にCD8を発現する。これらの細胞は、全ての有核細胞の表面に存在するMHCクラスIに関連する抗原に結合することによってそれらの標的を認識する。制御性T細胞によって分泌されるIL-10、アデノシンおよび他の分子を介して、CD8+細胞は、アネルギー状態に不活性化され得、これにより、実験的自己免疫性脳脊髄炎等の自己免疫疾患が予防される。
【0253】
メモリーT細胞は、感染が消散した後に長期間持続する抗原特異的T細胞のサブセットである。それらは、それらの同族抗原に再曝露されるとすぐに多数のエフェクターT細胞に拡大し、したがって免疫系に過去の感染に対する「記憶」を提供する。メモリーT細胞は、3つのサブタイプ:セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)、および2つのタイプのエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞およびTEMRA細胞)を含む。メモリー細胞は、CD4+またはCD8+のいずれかであり得る。メモリーT細胞は、典型的には、細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
【0254】
以前はサプレッサーT細胞として知られていた制御性T細胞(Treg細胞)は、免疫寛容の維持にとって極めて重要である。それらの主な役割は、免疫反応の終わりに向かってT細胞媒介性免疫を遮断し、胸腺における負の選択の過程を脱した自己反応性T細胞を抑制することである。
【0255】
CD4+Treg細胞の2つの主要なクラス、すなわち天然に存在するTreg細胞および適応Treg細胞が記載されている。
【0256】
天然に存在するTreg細胞(CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞としても知られる)は、胸腺で生じ、発達中のT細胞と、TSLPで活性化された骨髄系(CD11c+)樹状細胞および形質細胞様(CD123+)樹状細胞の両方との間の相互作用に関連している。天然に存在するTreg細胞は、FoxP3と呼ばれる細胞内分子の存在によって他のT細胞と区別することができる。FOXP3遺伝子の変異は、制御性T細胞の発達を妨げ、致命的な自己免疫疾患IPEXを引き起こす可能性がある。
【0257】
適応Treg細胞(Tr1細胞またはTh3細胞としても知られる)は、正常な免疫応答の間に生じ得る。
【0258】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、T細胞とナチュラルキラー細胞の両方の特性を共有するT細胞の異種グループである。これらの細胞の多くは、自己および外来の脂質および糖脂質に結合する抗原提示分子である非多型CD1d分子を認識する。
【0259】
本発明のT細胞は、上記のT細胞型のいずれか、特にCTLであり得る。
【0260】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫系の一部を形成する細胞溶解性細胞の一種である。NK細胞は、MHC非依存的な様式でウイルス感染細胞からの自然シグナルに対する迅速な応答を提供する
【0261】
NK細胞(自然リンパ系細胞の群に属する)は、大顆粒リンパ球(LGL)として定義され、Bリンパ球およびTリンパ球を生成する共通リンパ球前駆体から分化した第3の種類の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃および胸腺において分化および成熟し、その後、循環に入ることが知られている。
【0262】
本発明のCAR細胞は、上記の細胞型のいずれかであり得る。
【0263】
CAR発現T細胞またはNK細胞等のCAR発現細胞は、患者自身の末梢血(第一者)から、またはドナー末梢血(第二者)からの造血幹細胞移植の状況で、または無関係のドナー(第三者)からの末梢血のいずれかからex vivoで作製され得る。
【0264】
本発明はまた、本発明によるCAR発現T細胞および/またはCAR発現NK細胞を含む細胞組成物を提供する。細胞組成物は、血液試料に本発明による核酸をex vivoで形質導入することによって作製され得る。
【0265】
或いは、CAR発現細胞は、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞の関連する細胞型(例えば、T細胞等)へのex vivo分化に由来する場合がある。或いは、その溶解機能を保持し、治療薬として作用することができるT細胞株等の不死化細胞株を使用することができる。
【0266】
これらの実施形態の全てにおいて、CAR細胞は、ウイルスベクターによる形質導入、DNAまたはRNAによるトランスフェクションを含む多くの手段のうちの1つによってCARをコードするDNAまたはRNAを導入することによって作製される。
【0267】
本発明のCAR T細胞は、対象からの由来のex vivoのT細胞であり得る。T細胞は、末梢血単核球(PBMC)試料に由来し得る。T細胞は、CARをコードする核酸で形質導入される前に、例えば抗CD3モノクローナル抗体で処置することによって、活性化および/または拡大され得る。
【0268】
本発明のCAR T細胞は、
(i)対象または上に列挙した他の供給源からのT細胞含有試料の単離;ならびに
(ii)第1および第2のCARをコードする1またはそれを超える核酸配列(単数または複数)によるT細胞の形質導入またはトランスフェクションによって作製され得る。
【0269】
次いで、T細胞は、精製によって、例えば、第1および第2のCARの共発現に基づいて選択され得る。
【0270】
核酸配列
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様で定義される第1のCARおよび第2のCARをコードする1またはそれを超える核酸配列(単数または複数)に関する。
【0271】
核酸配列は、例えば、RNA、DNAまたはcDNA配列であり得る。
【0272】
核酸配列は、CD19に結合する1つのキメラ抗原受容体(CAR)およびCD22に結合する別のCARをコードし得る。
【0273】
核酸配列は、以下の構造:
AgB1-スペーサー1-TM1-coexpr-AbB2-スペーサー2-TM2
(式中、
AgB1は、第1のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
coexprは、共発現を可能にする核酸配列であり、
AgB2は、第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列である)を有することができ、
その核酸配列は、T細胞において発現される場合、第1および第2のCARが細胞表面において共発現されるように、切断部位において切断されるポリペプチドをコードする。
【0274】
或いは、核酸配列は、以下の構造を有し得る:
AbB2-スペーサー2-TM2-coexpr-AgB1-スペーサー1-TM1
(式中、成分AgB1、スペーサー1、TM1、coexpr、AbB2、スペーサー2、およびTM2は上記で定義したとおりである)。
【0275】
相同組換えを回避するために、同じまたは類似のアミノ酸配列をコードする配列の領域で代替コドンを使用してもよい。
【0276】
遺伝暗号の縮重のために、同じアミノ酸配列をコードする代替コドンを使用することが可能である。例えば、コドン「ccg」および「cca」は両方ともアミノ酸プロリンをコードするため、「ccgを使用すると、翻訳されたタンパク質の配列のこの位置のアミノ酸に影響を及ぼすことなく、「cca」と交換され得る。
【0277】
各アミノ酸をコードするために使用され得る代替RNAコドンを表4に要約する。
【表4】
【0278】
特に同じまたは類似のスペーサーが第1および第2のCARにおいて使用される場合、第1のCARのスペーサーおよび第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列の部分において代替コドンが使用され得る。
図5は、スペーサーHCH2CH3-ヒンジをコードする2つの配列を示し、そのうちの1つでは、代替コドンが使用されている。
【0279】
特に同じまたは類似の膜貫通ドメインが第1および第2のCARにおいて使用される場合、第1のCARの膜貫通ドメインおよび第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列の部分において代替コドンが使用され得る。
図5は、CD28膜貫通ドメインをコードする2つの配列を示し、そのうちの1つにおいて、代替コドンが使用されている。
【0280】
第1のCARのエンドドメインの全部または一部、および第2のCARのエンドドメインの全部または一部をコードする核酸配列の部分には、代替コドンが使用され得る。代替コドンが、CD3ゼータエンドドメインにおいて使用される場合がある。
図5は、CD3ゼータエンドドメインをコードする2つの配列を示し、そのうちの1つにおいて、代替コドンが使用されている。
【0281】
代替コドンが、1またはそれを超える共刺激ドメイン(例えば、CD28エンドドメイン等)において使用される場合がある。
【0282】
代替コドンが、生存シグナルを伝達する1またはそれを超えるドメイン(例えば、OX40エンドドメインおよび41BBエンドドメイン等)において使用される場合がある。
【0283】
代替コドンは、CD3ゼータエンドドメインをコードする核酸配列の部分、および/または1またはそれを超える共刺激ドメイン(単数または複数)をコードする核酸配列の部分、および/または生存シグナルを伝達する1またはそれを超えるドメイン(単数または複数)をコードする核酸配列の部分において使用され得る。
【0284】
ベクター
本発明はまた、1またはそれを超えるCARコード核酸配列(単数または複数)を含むベクターまたはベクターのキットを提供する。そのようなベクターは、第1および第2のCARを発現するように、核酸配列(単数または複数)を宿主細胞に導入するために使用され得る。
【0285】
ベクターは、例えば、プラスミドもしくはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクター、またはトランスポゾンベースのベクターもしくは合成mRNAであり得る。
【0286】
ベクターは、T細胞をトランスフェクトまたは形質導入することが可能であり得る。
【0287】
医薬組成物
本発明はまた、本発明の第1の態様によるT細胞またはNK細胞等の複数のCAR発現細胞を含有する医薬組成物に関する。医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を更に含んでもよい。医薬組成物は、必要に応じて、1またはそれを超える更なる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含み得る。そのような製剤は、例えば、静脈内注入に適した形態であり得る。
【0288】
処置の方法
本発明の細胞は、B細胞リンパ腫細胞等の癌細胞を死滅させることができる。T細胞等のCAR発現細胞は、患者自身の末梢血(第一者)から、またはドナー末梢血(第二者)からの造血幹細胞移植の状況で、または無関係のドナー(第三者)からの末梢血のいずれかからex vivoで作製され得る。或いは、CAR T細胞は、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞のT細胞へのex vivo分化に由来し得る。これらの例では、CAR T細胞は、ウイルスベクターによる形質導入、DNAまたはRNAによるトランスフェクションを含む多くの手段のうちの1つによってCARをコードするDNAまたはRNAを導入することによって生成される。
【0289】
本発明の細胞は、癌細胞等の標的細胞を死滅させることができる場合がある。標的細胞は、CD19またはCD22の発現によって認識可能である。
【表5】
【0290】
Campanaら(Immunophenotyping of leukemia.J.Immunol.Methods 243,59-75(2000))から得た。cIgμ-細胞質免疫グロブリン重鎖;sIgμ-表面免疫グロブリン重鎖。
【0291】
異なるタイプのB細胞白血病における一般的に研究されているリンパ系抗原の発現は、B細胞の個体発生の発現と密接に似ている(
図2を参照されたい)。
【0292】
本発明のT細胞は、癌、特にB細胞悪性腫瘍を処置するために使用され得る。
【0293】
CD19またはCD22を発現する癌の例は、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含むB細胞リンパ腫、ならびにB細胞白血病である。
【0294】
例えば、B細胞リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫(MZL)または粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、小細胞リンパ球性リンパ腫(慢性リンパ性白血病と重複する)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、バーキットリンパ腫、原発縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫.、リンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンストロームマクログロブリン血症として現れることがある)、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、または原発性中枢神経系リンパ腫であり得る。
【0295】
B細胞白血病は、急性リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、前駆Bリンパ芽球性白血病または有毛細胞白血病であり得る。
【0296】
B細胞白血病は、急性リンパ芽球性白血病であり得る。
【0297】
本発明のT細胞による処置は、標準的なアプローチでしばしば起こる腫瘍細胞のエスケープまたは放出を防ぐのに役立ち得る。
【0298】
ここで、本発明を実施例によって更に説明するが、これらは当業者が本発明を実施することを支援するのに役立つことを意図しており、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0299】
実施例1-CD19/CD22論理「OR」ゲートコンストラクトおよび標的細胞の調製
CD19 CARがTNFRファミリーエンドドメイン(4-1BB)を保有し、CD22 CARが共刺激エンドドメイン(CD28)を保有するCD19「OR」CD22ゲートを構築した。各CARの構造を
図6に示す。
【0300】
いくつかのCD19/CD22 ORゲートコンストラクトを
図11に示すように調製し、表6に要約した。第1のコンストラクトは、国際公開第2016/102965号(コンストラクト1、
図11)に記載されているCD19 CARおよびCD22 CARを含む。第2のコンストラクトは、
図6に示されるようにCD19 CARおよびCD22 CARを含む(コンストラクト2、
図11)。ドミナントネガティブSHP2モジュール(dSHP2)およびドミナントネガティブTGFβRIIモジュール(dnTGFβRII)を更に含む3つの更なるコンストラクトを調製した(コンストラクト3、4、および5、
図11)。共発現は、2Aペプチドによって分離された2つのCARをインフレームでクローニングすることによって達成された。
【表6】
【0301】
実施例2-CARエンドドメインの比較
二重標的化CD19/CD22 CAR-T細胞のための最適なエンドドメインを特定するために、コンストラクト1、3、4または5のうちの1つを発現するT細胞がCD19+またはCD22+SupT1細胞を死滅させる能力を比較した。さらに、CD19+またはCD22+SupT1細胞の存在下で、コンストラクト1、3、4、または5の1つを発現するT細胞の増殖を調べた。
【0302】
コンストラクトの1つを発現する細胞を、標的細胞と1:1のエフェクター:標的(E:T)細胞比(50,000個の標的細胞)で72時間共培養した。
【0303】
結果を
図12に示す。全てのコンストラクトがCD19+標的細胞を死滅させることができたが、これらの結果は、コンストラクト5が、コンストラクト1、3および4と比較してCD22+標的細胞の改善された死滅を示すことを実証している。コンストラクト5を発現する細胞の増殖も改善された。IL-2およびIFN-γのレベルは、全てのコンストラクトについて同様であった。
【0304】
実施例3-更なるin vitro分析
コンストラクト1、3、または5のいずれかを発現する細胞を、in vitroで以下の標的細胞に対して試験した:
・Raji細胞(CD19/CD22陽性癌細胞株);
・CD19ノックアウトRaji細胞;
・SupT1高密度CD19;
・SupT1低密度CD19;
・SupT1高密度CD22;および
・SupT1低密度CD22。
【0305】
コンストラクトの1つを発現する形質導入PBMCを、1:1および1:10のエフェクター:標的細胞比の両方で標的細胞と72時間共培養した。
【0306】
結果を
図13に示す。コンストラクト5は、低密度CD22標的細胞の改善された死滅を示した。サイトカイン産生レベルは類似していた。
【0307】
実施例4-モジュール試験
dnTGFβRII
コンストラクト5を形質導入した細胞をTGF-βの存在下で培養した場合のdnTGFβRIIモジュールの効果について試験した。標的細胞との共培養物を、1:8のE:T比でrhTGF-β(10ng/ml)の存在下でセットアップした。読み出しを7日目に行った。さらに、エフェクター細胞を増殖追跡のためにCTV標識した。
【0308】
結果を
図14に示す。これらのデータは、dnTGFβRIIモジュールの存在がTGF-βの存在下で標的細胞の死滅を改善することを実証している。さらに、dnTGFβRIIモジュールは、TGFβの存在下での増殖の阻害を防止する。
【0309】
dSHP2
コンストラクト5を形質導入した細胞を、dSHP2モジュールの存在の影響について試験した。PBMCにコンストラクト5およびPD1の両方を同時形質導入し、次いでPDL1を発現する細胞の存在下で培養した。dSHP2が有効である場合、その存在はPD1/PDL1を介したシグナル伝達を妨げる。
【0310】
PDL1ありおよびなしの両方のCD19+標的細胞との共培養を、1:1のE:T比で設定した。読み出しを6日目に行った。
【0311】
【0312】
これらのデータは、dSHP2の存在がPD1/PDL1相互作用を克服することを実証している。
【0313】
実施例5-再刺激アッセイ
再刺激アッセイを使用して、コンストラクト1、2、および5の性能を調査した。
【0314】
簡潔には、コンストラクト1、コンストラクト2またはコンストラクト5のいずれかを発現するCAR-T細胞を、CD19+SupT1細胞またはCD22+SupT1細胞のいずれかでチャレンジした。プレートを新鮮な標的細胞および新鮮な培地で3~4日ごとに合計9回再刺激した。結果を
図16に示す。
【0315】
CAR-T細胞を発現するコンストラクト2およびコンストラクト5の両方が、再刺激時に細胞集団のより大きな割合であり、標的殺傷の増加を示した。特に、コンストラクト2およびコンストラクト5を発現する細胞は、CD22陽性標的細胞を使用した場合、細胞集団のより大きな割合であった。したがって、これらのバリアントは、コンストラクト1と比較してCD22陽性細胞の死滅の増強を示す。
【0316】
実施例6-in vitro試験
コンストラクト3および5で形質導入されたT細胞が、NGSマウスのNalm6腫瘍モデルにおいて腫瘍細胞を除去する能力を調べた。全ての場合において、マウスに、-6日目に1×106個の標的細胞、NT細胞またはPBSを注射した。
【0317】
最初の工程として、コンストラクト1を発現する細胞の準最適な用量が、コンストラクト5の投与の開始点として作用することが確認された。0.3×10
6細胞、1×10
6細胞、5×10
6細胞および10×10
6細胞の用量を調べた。結果を
図17に示す。0.3×10
6用量は、PBS対照コホートと同様の流動を示し、非効率的な用量を示した。クリアランスは10×10
6用量で達成されたが、移植片対宿主病(GvH)の疑いのためマウスを13日目に屠殺した。5×10
6コホートは標的細胞を排除したが、1×10
6コホートは総フラックスを制御することができなかった。この調査に続いて、コンストラクト3および5を試験するために2.5×10
6細胞の用量を選択した。
【0318】
したがって、コンストラクト1、3、または5のいずれかを発現する2.5×10
6個の細胞をマウスに注射した。総フラックスを
図18に示す。コンストラクト1を発現する細胞は、2.5×10
6細胞用量で標的細胞増殖を制御することができない。コンストラクト3および5は両方とも、in vivoで改善された機能を示す。特に、コンストラクト5は、全てのマウスにおいて腫瘍細胞成長を23日目まで制御することができた。フラックスの差は、コンストラクト1と比較して統計的に有意である。
【0319】
さらに、コンストラクト1、3、または5を、CD19発現がノックアウトされたNalm6マウス(CD19KO)で試験した。2.5×106細胞用量を使用して、上記の野生型(WT)Nalm 6マウスと同じ条件を使用した。
【0320】
総フラックスを
図19に示す。コンストラクト1を発現する細胞は、2.5×10
6細胞用量で標的細胞増殖を制御することができない。コンストラクト3および5は両方とも改善された機能を示す。特に、コンストラクト5は、1匹を除く全てのマウスにおいて腫瘍細胞成長を27日目まで制御することができた。これらのデータは、コンストラクト5を発現する細胞がCD19の非存在下でさえ腫瘍負荷を制御することができることを確認する。
【0321】
上記の明細書で言及された全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法およびシステムの様々な修正および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、分子生物学、細胞生物学または関連分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された態様の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】