IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-酸化セルロースを含む組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】酸化セルロースを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/04 20060101AFI20230601BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20230601BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61L31/04 120
A61L31/14
A61L31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567307
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 IL2021050513
(87)【国際公開番号】W WO2021224919
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】16/866,739
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511203455
【氏名又は名称】オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イラン・エレツ
(72)【発明者】
【氏名】ファインゴールド・オムリ
(72)【発明者】
【氏名】モンティア・イブ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC16
4C081BA17
4C081CD012
4C081CD021
4C081CD022
4C081CD122
4C081CD152
4C081CE01
4C081CE03
4C081DA02
4C081DA11
(57)【要約】
粉末の形態の酸化セルロース(OC)を含む組成物であって、OCのカルボキシル含有量が、約9重量%~約18重量%である、組成物が開示される。任意選択的に、粉末は凝集形態である。出血の存在下で組織癒着を防止するための組成物の使用が更に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の形態の酸化セルロース(OC)を含む組成物であって、前記OCのカルボキシル含有量が、約9重量%~約21重量%である、組成物。
【請求項2】
前記OCが、酸化再生セルロース(ORC)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
血液の存在下で癒着防止材として使用するための、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末が、凝集形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記粉末が、摩砕されたOCを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記粉末の少なくとも90%の粒径が、10~2,000μmの範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記粉末の少なくとも90%の粒径が、50~300μmの範囲である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記粉末が、ガンマ照射を受けたものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
同じカルボキシル含有量を有するOC布地と比較して、少なくとも120%の癒着防止効力を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記OCが、圧密された粉末の形態のORCを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ORC粉末が、ローラー圧縮加工されたORC粉末、及び/又はハンマーミル加工されたORC粉末を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記粉末が、1.75マイクロメートル~116マイクロメートルの平均粒径を有し、メジアン径が36マイクロメートルである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
添加剤を更に含み、前記添加剤が、CMC又は他の多糖類、カルシウム塩、抗感染症薬、止血促進薬、ゼラチン、コラーゲンから選択される1種以上の構成要素を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記粉末が、D15が約80マイクロメートル超、D50が約140~250マイクロメートル、かつD90が約370マイクロメートル未満であるサイズ分布プロファイルを有する粒子状凝集体の形態である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記粉末が、0.45g/mLを超える嵩密度を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記粉末が、0.7以上の球形度(sh50)を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記OCは、前記凝集体の形態で、少なくとも0.6の球形度、及び約500マイクロメートル未満かつ約50マイクロメートル超の最長軸に沿った寸法を有する、相互連結された個々のセルロース系フィブリルを形成する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記OCの前記カルボキシル含有量が18%以下である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記OCの前記カルボキシル含有量が、少なくとも12%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
キットであって、
a.請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物を収容している容器と、
b.前記組成物を組織に適用するためのアプリケータと、
c.任意選択で、使用説明書と、を含む、キット。
【請求項21】
前記容器が前記アプリケータに含まれている、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
組織癒着を防止するための方法であって、粉末の形態の酸化セルロース(OC)を含む組成物を、血液の存在下で組織の中に/上に適用することを含み、前記OCのカルボキシル含有量が、約9重量%~約21重量%である、方法。
【請求項23】
前記OCが、ORCを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記OCの前記カルボキシル含有量が、18%以下である、請求項22又は23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、酸化セルロース粉末、及び出血部位における癒着防止のための酸化セルロース粉末の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
手術中の様々な状況において、手術後の出血又は癒着防止のために、治療薬が人体内に広げられる。既存の薬剤は欠点を有しており、例えば、最小侵襲手術(minimal invasive surgeries、MIS)においてシートを配置することは困難である。
【0003】
癒着防止及び出血の制御は、失血を最小限に抑え、術後合併症を低減させ、手術室での手術の時間を短くするために、外科的処置において必須かつ重要である。
【0004】
出血及び/又は癒着を制御するための適切な方法又は製品の選択は、多くの要因に依存し、それらの要因としては、限定するものではないが、出血の重症度、出血源の解剖学的場所及び隣接する重要な構造の近接性、出血が、離散した出血源からのものであるか又はより広い表面積からのものであるか、出血源の視認性及び正確な特定、並びに出血源へのアクセスが挙げられる。
【0005】
癒着形成を防止するために、いくつかの製品が市販されている。癒着バリアの一部は、酸化再生セルロース(oxidized regenerated cellulose、ORC)などの酸化セルロース(oxidized cellulose、OC)、修飾糖、及び化工デンプンに基づく。
【0006】
上述の問題に対処する取り組みにおいて、癒着防止及び過剰な出血の制御の両方のための物質が開発されてきた。局所用吸収性止血材(Topical Absorbable Hemostat、TAH)は、外科用途で広く使用されている。TAHは、OC、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサンなどに基づく製品を包含する。止血性能を改善するために、上述の物質に基づくスキャフォールドを、トロンビン及びフィブリノゲンなどの生物学的に誘導された凝固因子と組み合わせることができる。
【0007】
その生分解性、並びにその殺菌特性及び止血特性により、ORCなどのOC系材料は、局所止血剤として長く使用されてきた。ORCに基づく製品は、神経外科術、腹部手術、心臓血管手術、胸部外科手術、頭頸部外科手術、骨盤手術、婦人科手術、並びに皮膚及び皮下組織処置を含む、様々な外科的処置で使用される。粉末、織布、不織布、ニット布、及び他の形態で作られるか否かにかかわらず、OC材料に基づいた様々な種類の止血剤を形成するためのいくつかの方法が知られている。現在利用されている止血剤としては、粉末、又はORCを含む布地が挙げられる。
【0008】
特に出血部位及び到達困難な領域において、適用の容易さを促進する改善された形態及び材料が必要とされている。
【0009】
米国特許第9447196(B2)号は、変性セルロース溶液を少なくとも1種の非溶媒と接触させて、複数の変性セルロース粒子を形成することを含む、変性セルロースを溶解するためのプロセスを開示している。
【0010】
同第9572907号は、グリセロール及び少なくとも1つのバイオポリマーを含有するポリマーフィルム層を含む埋め込み可能な医療デバイスを記載している。
【0011】
欧州特許第3258974号は、水分保持剤、バインダーダスト抑制剤、無機止血剤及び有機止血剤を含む、止血用組成物を記載している。
【0012】
米国特許第6627749号は、薬物、化学物質、及び生体高分子の固定化マトリックス又は担体としての使用に好適な、高収率(75~95%)及び異なる酸化レベル(カルボキシル含有量<25.6%、w/w))で酸化セルロースを製造するための制御された化学的手法を開示している。
【0013】
米国特許出願公開第20060008505号は、生体接着剤、特にペクチン、及びグリセロール可塑剤の自己接着性ストリップを含む止血材の送達システムを開示している。
【0014】
国際公開第2013049049号は、第1の吸収性酸化再生セルロース不織布及び第2の吸収性酸化再生セルロース織布又は編地を有する癒着防止布と、血液の存在下での癒着防止に有用な癒着防止布と、を開示している。
【0015】
INTERCEED(Johnson & Johnson Patient Care Inc.,(New Brunswick,NJ))は、術後癒着を低減するように特別に設計された吸収性布地である(FERTILITY AND STERILITY Vol.51,No.6,June 1989 INTERCEED(TC7)Adhesion Barrier Study Group)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、とりわけ、酸化セルロース(OC)、例えば、粉末の形態の酸化再生セルロース(ORC)を含む組成物であって、OCのカルボキシル含有量が、約9重量%~約21重量%の範囲である、組成物と、出血部位における癒着防止のためのその組成物の使用と、に関する。
【0017】
本発明は、とりわけ、酸化OC、例えば、粉末の形態のORCが血液の存在下でさえも癒着防止に有効であり得る予想外の発見に基づく。OCのカルボキシル含有量は、21重量%以下、例えば、最大18重量%であり得る。この発見は、癒着防止におけるINTERCEEDの有効性が出血の存在下で制限されることが以前に報告されたため、驚くべきことである。
【0018】
一態様では、粉末の形態の酸化セルロース(OC)を含む組成物が提供され、このOCのカルボキシル含有量は、約9重量%~約21重量%である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、18重量%以下である。いくつかの実施形態では、組成物は、出血部位における癒着防止材として使用するためのものである。いくつかの実施形態では、粉末は、凝集形態(すなわち、1つ以上の凝集体の形態)である。いくつかの実施形態では、粉末は、摩砕されたOC又はORCを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、粉末は、凝集形態であり、OCはORCを含み、OC又はORCのカルボキシル含有量は、18重量%以下である。
【0020】
いくつかの実施形態では、粉末の少なくとも90%の粒径は、10~2,000μm、任意選択で50~300μmの範囲である。
【0021】
いくつかの実施形態では、その任意の実施形態における組成物は、同じカルボキシル含有量を有するか、又は同じカルボキシル含有量からなるOC布地と比較して、少なくとも120%の癒着防止効力を特徴とする。いくつかの実施形態では、粉末は、ガンマ照射を受ける。
【0022】
いくつかの実施形態では、OCは、圧密された粉末の形態のORCを含み、任意選択で、約1~約18の平均アスペクト比を有する粒子を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、粉末は、約36マイクロメートルのメジアン径で、1.75マイクロメートル~116マイクロメートルの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、圧密されたORC粉末は、ローラー圧縮加工されたORC粉末、及び/又はハンマーミル加工されたORC粉末である。いくつかの実施形態では、ORCの凝集体(例えば、摩砕によって作製される)は圧密される。
【0024】
いくつかの実施形態では、組成物は、添加剤を更に含み、添加剤は、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、CMC)若しくは他の多糖類、カルシウム塩、抗感染症薬、止血促進薬、ゼラチン、コラーゲン、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、組成物は、粒子状凝集体の形態であり、OCは、凝集体の形態で、少なくとも0.6の球形度、及び約500マイクロメートル未満かつ約50マイクロメートル超であるその最長軸に沿った寸法を有する、相互連結された個々のセルロース系フィブリルを形成する。いくつかの実施形態では、凝集体は、D15が約80マイクロメートル超、D50が約140~250マイクロメートル、D90が約370マイクロメートル未満、嵩密度が0.45g/mL超、かつ/又は球形度(sh50)が0.7以上であるサイズ分布プロファイルを有する。
【0026】
別の態様では、a.そのいずれかの実施形態における本発明の組成物が入っている容器と、b.組成物を組織に適用するためのアプリケータと、c.任意選択で使用説明書と、を含む、キットが提供される。
【0027】
いくつかの実施形態では、容器はアプリケータに含まれる。
【0028】
別の態様では、組織癒着を防止するための方法であって、そのいずれかの実施形態において開示された組成物を、出血組織の中に/上に適用することを含む、方法が提供される。本態様のいくつかの実施形態では、OCは、ORCを含む。
【0029】
「組織癒着を防止すること」により、(組成物が適用された)組織内の組織癒着の防止、又は隣接組織の組織癒着を防止することを包含することが意図され、血液は、これらの組織のうちの一方又は両方に存在する。
【0030】
任意の態様のいくつかの実施形態では、ORCのカルボキシル含有量は、18%以下である。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1種の生物学的活性剤を更に含む。任意の態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1種の生物学的活性剤はカルシウムであるか、又はカルシウムを含む。任意の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の賦形剤を更に含む。
【0032】
任意の態様のいくつかの実施形態では、OC粉末は、ORC粉末を含む。
【0033】
典型的には、粉末は、粒子状物質などの細かく分離された状態の物質である。粉末は、固体粒子の緩い集団又は凝集体であることができ、典型的には、限定されるものではないが、1000マイクロメートルよりも小さい。
【0034】
粉末を調製するために使用され得る吸収性酸化再生セルロース布地は、編まれており、Ethicon,Inc.,(Somerville,NJ)の部門のJohnson & Johnson Wound Managementから入手可能なINTERCEEDが挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
吸収性酸化再生セルロース不織布、織布又は編地を使用して、粉末を調製してもよい。そのような布地は、例えば、米国特許第4,626,253号、同第5,002,551号、及び同第5,007,916号に記載されており、これらの内容は、その全体が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
任意の態様のいくつかの実施形態では、癒着防止を達成するために、OCのカルボキシル含有量は、例えば、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、18%以下である。
【0037】
本明細書を通して、OCのカルボキシル含有量は重量%である。
【0038】
防止は、癒着を起こしやすい対象に化合物を投与することによって達成され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、OC(又はORC)のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、9%以上かつ18%以下又は21%未満である。いくつかの実施形態では、OC(又はORC)のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、3%以上かつ18%以下又は21%未満である。
【0040】
任意の態様のいくつかの実施形態では、OC(又はORC)のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、9%以上かつ18%以下である。
【0041】
任意の態様のいくつかの実施形態では、OC(又はORC)のカルボキシル含有量は、例えば、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、12%以上かつ18%以下である。
【0042】
好適なORC布地としては、Ethicon,Inc.(Somerville,N.J.)から入手可能なINTERCEED吸収性癒着バリアなどの吸収性癒着バリアが挙げられるが、これに限定されない。
【0043】
任意の態様のいくつかの実施形態では、布地は、ブライトレーヨン糸で構成された縦編みトリコット生地であり、これは続いて、布地に生分解性を与えるのに有効な量のカルボキシル部分又はアルデヒド部分を含ませるために酸化される。布地は、F.Boardmanらによる米国特許第5,180,398号に記載されているように、セルロースをペルフルオロカーボン溶媒中の二酸化窒素溶液と反応させることによって酸化され得る。一実施形態では、カルボキシル含有量(「酸化度」)は、約9%~約21%(重量/重量)の範囲である。別の実施形態では、カルボキシル含有量は、約12%~約18%(重量/重量)の範囲である。更に別の実施形態では、酸化再生セルロース酸化度は、約9.5%~約10.5%(重量/重量)の範囲である。いくつかの実施形態では、酸化度は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、約9%~約21%(重量/重量)である。いくつかの実施形態では、酸化度は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、約9%~約18%(重量/重量)である。
【0044】
任意の態様のいくつかの実施形態では、OC粉末のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、9%以上である。任意の態様のいくつかの実施形態では、OC粉末のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、9%以上かつ18%以下(重量/重量)である。任意の態様のいくつかの実施形態では、OC粉末のカルボキシル含有量は、12%以上である。任意の態様のいくつかの実施形態では、OC粉末のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、12%以上かつ18%以下(重量/重量)である。一実施形態では、カルボキシル含有量(酸化度)は、約9%~約21%(重量/重量)の範囲である。別の実施形態では、酸化度は、約12%~約18%(重量/重量)の範囲である。
【0045】
更に別の実施形態では、酸化再生セルロース織布は、酸化度が、約9.5%~約10.5%の範囲であった。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、約9%~約21%である。
【0046】
任意の態様のいくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、約9%~約21%である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約18%~約21%である。
【0047】
任意の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、癒着防止材として使用するためのものである。
【0048】
任意の態様のいくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量が約18%~約21%である組成物は、例えば、軟組織における出血部位の癒着を防止するために使用するためのものである。任意の態様のいくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量が約12%~約18%である組成物は、例えば、軟組織における出血部位の癒着を防止するために使用するためのものである。癒着防止は、その一実施形態における組成物を、例えば創傷内の出血組織内又はその近隣に投与することによって達成され得る。
【0049】
任意の態様のいくつかの実施形態では、OC粉末の粒径は、10μm~2,000μm、任意選択で50μm~300μmである。いくつかの実施形態では、粉末中のOCのカルボキシル含有量は、約12%~約21%である。いくつかの実施形態では、粉末中のOCのカルボキシル含有量は、約18%~約21%である。いくつかの実施形態では、粉末中のOCのカルボキシル含有量は、約12%~約18%である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約12%~約21%であり、組成物は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、及び40℃からなる群から選択される1つ以上の温度値で流動性ではない。
【0050】
任意の態様のいくつかの実施形態では、組成物の総含水量は、約8w/w%未満である。
【0051】
任意の態様のいくつかの実施形態では、本明細書を通して開示される組成物は、18%未満に等しい(equal to below)(重量で)(例えば、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、又は18%、示された値間の任意の値及び範囲を含む)カルボキシル含有量を有するOCを含む出血部位で使用するための癒着防止粉末であり、同様のカルボキシル含有量を有する又は同様のカルボキシル含有量からなるOC布地と比較して、少なくとも120%、又は少なくとも150%の癒着防止効力を特徴とする。本明細書では、同様とは、同じ又は±10%を意味する。いくつかの実施形態では、粉末は、放射腺を受けた粉末、例えば、ガンマ線照射された粉末である。
【0052】
任意の態様の一実施形態では、出血部位で使用するための癒着防止粉末は、凝集形態の摩砕されたOC(例えば、ORC)を含む。いくつかの実施形態では、出血部位で使用するための凝集形態を有する摩砕されたOC中のOC粉末のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、9%以上かつ18%以下(重量で)である。いくつかの実施形態では、出血部位で使用するための凝集形態を有する摩砕されたOC中のOC粉末のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、9%以上かつ18%以下(重量で)である。いくつかの実施形態では、出血部位で使用するための凝集形態を有する摩砕されたOC中のOC粉末のカルボキシル含有量は、米国薬局方(USP)23-NF18に従って、12%以上かつ18%以下(重量で)である。
【0053】
「出血部位」という用語はまた、出血が必ずしも部位から生じるわけではなく、むしろ、例えば、隣接し得る組織などの他の部位又は発生源から生じる状況も包含する。したがって、「出血部位の」及び「血液の存在下で」という用語は、本明細書を通して互換的に使用される。
【0054】
吸収性酸化再生セルロース不織布、織布又は編地を使用して、粉末を調製してもよい。
【0055】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実行又は試験に使用することが可能であるが、代表的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾のある場合、定義を含め本特許明細書が適用される。なお、材料、方法、及び実施例は、単に例示的なものであり、必ずしも限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明のいくつかの実施形態について、例示のみを目的として、添付図面を参照して本明細書において説明する。ここで図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細は、例示的なものであり、本発明の実施形態の例示的な説明を目的としていることが強調される。この点に関し、図面を用いた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
図1】INTERCEED(登録商標)ORC及びグリセロールを含む組成物で処置されたラット盲腸の擦り傷モデルにおける癒着強度を示すグラフである。左から右:処置なし、INTERCEED(登録商標)、INTERCEED(登録商標)粉末(小さな顆粒に圧縮された摩砕/粉砕されたORC)、n=6。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の目的は、特に身体内の手が届きにくい領域において、必要な出血部位に容易に適用することができる、癒着防止材として使用するための、例えば、酸化セルロース(OC)を含む組成物を提供することである。本発明の組成物の更なる利点は、それらが生体吸収性であり、したがって、副作用を引き起こすことなく術後に留置することができることである。
【0058】
したがって、本発明は、癒着防止などの生物学的活性を得るために、特定の範囲の酸化度におけるOC粉末を、必要な部位に適用し得るという驚くべき発見に基づく。
【0059】
「必要な部位に適用される」とは、癒着を防止するために、部位、例えば、組織の出血している手術部位における又は部位に隣接した組成物の局所適用を指すことを意味する。
【0060】
図1を参照すると、1-INTERCEED(登録商標)布地、2-小さな顆粒に圧縮された摩砕/粉砕されたINTERCEED(INTERCEED粉末)を使用して、ラット盲腸の擦り傷モデルで試験された、癒着防止の比較を示している。INTERCEED粉末は、出血部位でのINTERCEEDシートよりも優れたか、又はそれに匹敵する癒着防止活性を示すことが見出された。ガンマ腺照射されたINTERCEED凝集粉末が、INTERCEED布地と比較して約135%の癒着防止効力を示したことは、更に特筆すべきことである。
【0061】
凝集体の形態のINTERCEED粉末はまた、本明細書では、凝集形態の摩砕/粉砕されたINTERCEED、小さな顆粒に圧縮された摩砕/粉砕されたINTERCEED、圧密されたINTERCEED粉末、及び凝集体の形態に圧密されたINTERCEED、とも呼ばれる。
【0062】
凝集体の形態のINTERCEED粉末は、米国特許第9,539,358号の実施例に記載されているプロセスによって生成することができる。酸化再生セルロース(ORC)は、SURGICEL(登録商標)シート(Ethicon)の代わりに使用され得るINTERCEED(登録商標)シート(Ethicon)中の基礎材料である。凝集体の形態のINTERCEED粉末を、20~45キログレイのガンマ線(例えば、Sorvan Radiation LTDの技術による)に供して、無菌性を提供することができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「重量で」、「w/w」、「重量パーセント」、又は「重量%」という用語は、本明細書で互換的に使用されてもよく、対応する混合物、溶液、製剤、又は組成物の総重量のうちの特定の物質の濃度を記述する。
【0064】
本明細書で使用するとき、「出血」という用語は、循環系の任意の構成要素からの血液溢出を指す。したがって、「出血」は、手術、外傷、又は他の形態の組織損傷に関連した望ましくない、制御されていない、多くの場合過度の出血、並びに、出血性疾患を有する患者における望ましくない出血を包含する。
【0065】
本明細書で使用するとき、「癒着」又は「組織癒着」という用語は、通常接続されていない組織の接続を指す。例えば、癒着は術後合併症として生じ得る。
【0066】
本明細書で使用するとき、用語「制御する」、「防止する」、又は「低減する」という用語は、本明細書では、組織癒着との関連において互換的に使用されてもよく(そのあらゆる文法的な語尾変化を含む)、組織癒着の形成が完全に若しくは部分的に防止されるか、又は癒着の重症度が、例えば、実施例の項に記載のPoehnert et al.,2015,International Journal of Medical Sciences 12(1):1-6による癒着評価スキームに従って低いことを示す。
【0067】
「室温付近で」とは、10℃~40℃、又は15℃~37℃の範囲内の少なくとも1つの温度、例えば、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、若しくは40℃(それらの間の任意の値を含む)を指すことを意味する。
【0068】
非限定的な例示的な粉末は、ORC繊維及び/又は顆粒(「顆粒状ORC」とも呼ばれる)を含む固体粒子を含む。
【0069】
本明細書で使用するとき、「均質」とは、全体にわたって均一な組成及び質感を指すことを意味する。
【0070】
「酸化セルロース」(又は「OC」)なる用語は、一級アルコール基の少なくとも一部、例えば、無水グルコース単位の6位の炭素がカルボン酸に酸化され、任意選択で官能化されたセルロース誘導体を指す。
【0071】
OCは、酸化剤をセルロースに適用することによって生成することができる。酸化剤は、これらに限定されるものではないが、塩素、過酸化水素、過酢酸、二酸化塩素、二酸化窒素、過硫酸塩、過マンガン酸塩、二クロム酸塩-硫酸、次亜塩素酸、次亜ハロゲン酸、過ヨウ素酸塩、若しくはこれらの任意の組み合わせ、及び/又は各種の金属触媒から選択することができる。酸化セルロースは、酸化剤の性質及び反応条件に応じて、出発物質であるセルロースの元のヒドロキシル基の代わりに、又はそれに加えて、カルボン酸、アルデヒド、及び/又はケトン基を含有してもよい。
【0072】
本発明の組成物に使用されるOCは、典型的には、粉末(顆粒状OC、摩砕/粉砕されたOC、又は凝集形態の摩砕/粉砕されたOCとも呼ばれる)の形態であるが、これらに限定されない。摩砕/粉砕されたOCは、既存の製品からのものを含む様々な方法によって調製されることができ、そのような製品のいくつかの非限定的な例について以下に記載する。既存の製品のいくつかは布地の形態であるため、OC粉末は、布地を粉砕又は摩砕して粉末を得ることによって調製されてもよい。例えば、摩砕されたOC(又はORC)は、ORC-ボールミル粉末(Ball-Milled powders、BMP)を含む圧密された粉末の調製を開示する米国特許第9,539,358号に記載されているように摩砕することによって、SURGICEL(登録商標)又はINTERCEED(登録商標)シートなどのOCシートのサイズを低減することによって得ることができる。
【0073】
したがって、非限定的な例示的な実施形態では、4インチ×4インチの事前にトリミングした数片の非滅菌INTERCEED布地(ETHICON,Inc.、ロット番号7A8654)を、摩砕に先立って24時間にわたって真空乾燥することができる。6グラムのサンプルを12個の高密度ZrOボール(直径20mm、Glen Mills Inc.(Clifton,N.J.,USA))と混合し、250mLの粉砕ジャーで密封することができる。このジャーはラッチブラケットの中へ圧締めされ、次いでミル(遊星ボールミルPM100;Retsch,Inc.(Newtown,Pa、USA))で均衡化され得る。摩砕は、300rpmで10分間実施することができる。次いで、摩砕された粉末を、真空ポンプ(LabCare America Pump PV-35)を備えた真空オーブン(Fisher Scientific Model 280A Isotemp真空オーブン)の中で65℃で2.5時間乾燥させることができる。摩砕された粉末は最終的に窒素ボックスの中で保管されてもよい。上記と同様の方法を使用し、ORC系のSURGICEL(登録商標)NU-KNIT(登録商標)吸収性止血剤を用いて、粉末を調製することができる。篩目1726~150を装備したFitz Millに通して細断したORCを使用して、ローラー圧縮されたORC粉末を調製することができる。細断ORC粉末をローラーコンパクタ(WP 120x 40V、#900-0071(Alexanderwerk,Inc,PA))に供給し、米国特許第9,539,358号に記載の通りに圧密することができる。
【0074】
追加的に又は代替的に、繊維及び任意選択で他の化合物を含む本発明による粉末組成物は、任意選択で、例えば、米国特許第10,034,957号に記載されているように乾燥、摩砕/粉砕及びふるい分けの工程を使用して、凝集体の形態に圧密される。使用されるふるいは、粉末の粒径を規定する。
【0075】
したがって、米国特許第10,034,957号に記載されているように、摩砕工程に先行して、セルロース原料物質を細長く切って切断して、断片を形成する工程を行い得る。摩砕工程は、二部分のプロセスであり得、第2の部分は空気分級機で実施され、第2の部分は3回繰り返すことができる。このプロセスによって製造された中間微細繊維は、D50が約100マイクロメートル未満、かつD90が約180マイクロメートル未満であるサイズ分布を有し得る。中間微細繊維は、11.0重量%~20重量%の含水量まで加湿され得る。中間微細繊維は、ローラー圧縮された材料であり得、次いで、事前破砕にかけられ、その後、最終摩砕の工程にかけられ得る。中間微細繊維は、少なくとも130バールのローラー圧で圧縮され得る。中間微細繊維は、少なくとも26.0kN/cmのローラー力で圧縮され得る。得られた材料は、スクリーンふるい分け法によって、75~300μmのその最長軸に沿った寸法を有する凝集体分画であり得る。いくつかの実施形態では、凝集体分画は、D15が約80マイクロメートル超であり、D50が約140~250マイクロメートルであり、D90が約370マイクロメートル未満となるサイズ分布を特徴とする。本明細書を通して記載されるように、原料物質は、ORC布地、ORC不織布、細断ORC材料、又はそれらの組み合わせから選択され得る。原料物質は、カルボキシメチルセルロース、カルシウム塩、抗感染症薬、ゲル化剤、ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの組み合わせから選択される添加剤又は活性剤を制限なしに更に含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の止血凝集体を製造するための1つのプロセスは、a)セルロース原料物質を細長く切って切断する工程と、b)工程a)から得られた材料を摩砕する工程と、c)空気分級機内での第2の摩砕工程と、d)加湿の工程と、e)ローラー圧密の工程と、f)ふるい分けの工程と、g)除湿又は乾燥する工程と、h)任意に、保管容器に又は送達デバイスに注入し、一次パッケージング及び二次パッケージングを行う工程と、i)任意の滅菌工程と、を含む。
【0077】
細長く切り切断することは、約1インチ×3インチ又は2インチ×3インチの間の適切なサイズの断片に布地を細長く切り切断するように実施され得るが、より小さい断片も使用することができる。細長く切り切断するために実施される主な動作は、布材のロールを巻き戻し、布材をストリップに細長く切り、そのストリップを切断してサイズ決めし、切断片を第1の摩砕工程に供給することである。AZCOから入手可能なAZCOモデルFTW-1000など、限定することなく、多くの切断及び細断機(slitting machine)が既知であり、市販されている。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1の摩砕工程において、処理されたセルロースの布片は、材料の色指数及び水溶性含量に与える影響を最小限に抑えながら、細長く切り切断する工程で生成された中間粗繊維からD90値が452μm未満及びD50値が218μm未満を有する材料に変換される。ハンマーミル型摩砕機であり、497マイクロメートルの丸いスクリーンと、中間粗セルロース繊維を製造するために布地がスクリーンを通過するまで布地を破砕する1組のブレードと、を備える、Fitzpatrickによって製造されたモデルDASO6及びWJ-RS-D6Aなど、限定することなく、摩砕用の多数の機械が市販されている。例示的な処理運転において、ミル速度を約7000RPMとし得、80℃未満での処理温度、1534~9004のスクリーンサイズ、8個(それぞれ2個のインペラ)のブレードの数、225ナイフなどのブレード型、衝撃型ブレード、「衝撃」として設定されたブレードの向き、とし得る。第1の摩砕工程からの中間粗繊維は、制御された速度で第2のミル内に送り込まれ、摩砕スクリーンによって分離された2つの摩砕チャンバを通過し得る。材料は、送風機によって摩砕チャンバから引き出され得る。中間粗繊維は、所望のサイズを得るために、空気分級装置を3回通して処理され得る。第2の摩砕工程の終わりに、中間微細繊維を採集し得る。
【0079】
例示的な処理運転では、Quadro空気分級機F10が、8400rpmの摩砕速度、1800rpmの送風機速度、0.0018インチの丸穴スクリーン、及び3回の通過により、第2の摩砕工程で使用され得る。ORC中間微細繊維はまた、上述のような2工程摩砕工程の代わりに、ボールミル加工によって1つの工程で製造され得る。代替のボールミル加工の実施形態では、50gの事前に切断されたORC布地(2インチ×2インチ)は、ボール及びサンプルを500mLの粉砕ジャーに入れることにより、12高密度ジルコニア(直径20mmの二酸化ジルコニウム、ZrO;Glen Mills Inc.(Clifton,N.J.、USA))でボールミル加工される。このジャーはラッチブラケットの中へ圧締めされ、次いで遊星ボールミルPM100(Retsch,Inc.(Newtown,Pa、USA))で均衡化され得る。次いで、摩砕が450rpmにて20分間、双方向で行われ得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、摩砕プロセス後に、得られたセルロース中間微細繊維は、約11%~約18%、又は11%~約16%、又は約12%~16%の含水率まで、ローラー圧縮プロセスを含む後続の処理のために加湿される。加湿工程に適した非限定的な湿度チャンバは、Thermal Product SolutionsによってモデルCEO-916-4-B-WF4-QSとして市販されている。チャンバ空気の加湿は、水蒸気注入によって達成され得る。典型的な25℃の定常状態温度を利用してもよく、一方、湿度レベルは、75%~85%で循環させてもよく、例えば85%の空気湿度が目標である。湿度チャンバ内の材料の加湿時間又は滞留時間は、材料及び空気再循環の量に応じて、数時間から数日の範囲とし得る。典型的な循環において、材料は、数個のトレイに配置され、85%の相対湿度及び加湿後の粉末の12%の含水率の目標にさらされた約3,000グラムのセルロース中間微細繊維に対して、12~13時間の滞留時間を有することがあり、20重量%の含水率など、16重量%を超える圧密工程に供給される含水率を有するセルロース中間微細繊維を使用することがあり、結果として生じるORC中間微細繊維は、圧密中に固化され得、非常に低い流動性を示し、コンパクタを妨げる。したがって、中間微細繊維の高湿度は、好適な止血凝集体材料をもたらさない恐れがある。反対に、中間微細セルロース繊維の含水率が約8%未満であるとき、止血凝集体の収率は極めて低く、所望の止血凝集体の収率は大体約5%である。次いで、加湿された中間微細ORC繊維を圧密し、ふるい分けして止血凝集体材料を得ることができる。ローラーコンパクタは、供給物を圧縮し得、供給物は、次いで、事前破砕、最終摩砕、及びスクリーナ内でのふるい分けにかけられて、所望の止血凝集体のサイズを得ることができる。
【0081】
圧密装置は既知であり、市販されている。非限定的な例示的な圧密ユニットは、Retschの手動ふるいAS200スクリーナを備えたFitzpatrickのChilsonator IRR220-L1A、及びM5A下に一体化されたスクリーナSweco Vibro-energyユニットを備えたFitzpatrickのChilsonator CCS220/M3B & RV-M5Aである。圧密処理は、共通の電気システムによって結合されている2つの別個のサブシステムを用いて実施され得る。例えば、第1のサブシステム(ローラーコンパクタ:メインユニット)は、FitzpatrickのChilsonator CCS220ローラーコンパクタと、圧縮された材料を事前破砕するためのM3Bミルであり得、一方、第2のサブシステム(ローラーコンパクタ:二次摩砕ユニット)は、所望のサイズの凝集体を得るために分離するためのSweco又はRetchのスクリーナによる最終摩砕のためのM5Aミルであり得る。加湿された中間微細セルロース繊維は、ローラーコンパクタユニットのホッパーに送り込まれ、最初にメイン摩砕ユニットを通過し、次いで、第2の摩砕ユニットを通って進み得る。メイン摩砕ユニットから得られる事前破砕されたセルロース材料を捕捉する容器を提供し得る。次いで、事前破砕されたセルロース材料断片を二次摩砕ユニットに送り込むことができ、二次摩砕ユニットは、スクリーンメッシュを利用した最終摩砕及びスクリーニングを実施する。得られた摩砕されたセルロース材料は、本明細書に記載のSweco又はRetchのスクリーナなどのスクリーンメッシュを使用して、微細(<75μm)、目標(75~300μm)、及び超過(>300μm)に分離され得る。
【0082】
高密度でかつ低アスペクト比の圧密されたORC粉末を生成する、ボールミル加工以外の他の方法が利用され得る。ローリング圧縮とは、ロールミルによって粉体を連続的に圧密することを指す。粉末は、送りねじによってロールに送出され、圧力及び剪断力によって高密度化され得る。ロール圧縮は、製薬、鉱物、及び化学産業を含めた多様な産業で用いられる粉末凝集プロセスである。流動性不足の粉末混合物のロール圧縮は、2本の逆転ローラー間における粉末のスクリューフィードを必要とする場合がある。次いで、これらの逆転ローラーは粉末を圧密ゾーンに引き込み、高圧を加えて、圧密された粉末のストリップを形成し得る。2本の逆転ローラー間の圧力によってそのようなストリップ又はリボンに圧縮された粉末は次いで、低アスペクト比の微粒子へと更に摩砕され得る。織布若しくは不織布のORC材料、又は細断若しくはボールミル加工されたORC材料は、所望の低アスペクト比及び高密度のORC粒子に達するように更にローラー圧縮され得る。
【0083】
ハンマーミルは、十分に低いアスペクト比と高いタップ密度を有するORC粒子を作製するために使用され得るもう1つの方法である。ハンマーミルは衝撃作用によって動作するものであり、大多数の乾燥した易流動性材料を微粉砕する。材料が頂部からハンマーミルの中に供給され得、次いで粉砕チャンバの中に落ち得る。この材料は、高速で回転する一連の焼入鋼ハンマーによって接触され得る。材料は、これらのハンマーとの繰り返し接触、粉砕チャンバの壁との接触、及び粒子間の接触によって粉砕され得る。粒子が、粉砕チャンバの底半部を被覆する孔あきスクリーンを通過することによって、脱出するのに十分に小さくなるまで、材料はハンマーミル粉砕チャンバ内に残留し得る。
【0084】
ハンマーミルとは本質的には、垂直又は水平回転シャフトを収容したスチールドラム、又はハンマーが装着されているドラムであり得る。ハンマーは、クロスの端部で自在に揺動し得るか、又は中心ローターに固定され得る。ローターは、材料が供給ホッパーに供給される間、ドラムの内側で高速で回転され得る。材料はハンマーバーで衝撃を与えられ得、それによって細断され、選択したサイズのドラム内のスクリーンを通じて排出され得る。ハンマーミルは、第1の、第2の、又は第3のクラッシャーとして使用され得るものであり、すなわち、ORCは、織布若しくは不織布材料のORC源から、又は細断若しくはボールミル加工されたORC材料からハンマーミル加工され得る。切断(細断)とボールミル加工及び他の圧粉/摩砕プロセスとの主な違いは、ボールミル加工及び他の圧粉プロセスで利用される鋭利な刃を用いない、圧砕による機械的な押付けである。鋭利な刃がないが故に、粒子は、粒子の形状、表面、タップ密度などの点において、細断された(すなわち刃を利用して摩砕された)粒子とは異なる種々の特性を得る。
【0085】
例示的実施形態では、OCは、生分解性を提供するのに有効な量でカルボキシル部分を含有するよう酸化されている。
【0086】
米国特許第3,364,200号は、フレオン培地中の二酸化窒素等の酸化剤を用いたカルボキシ酸化セルロースの調製を開示している。米国特許第5,180,398号は、パーフルオロカーボン溶媒中の二酸化窒素等の酸化剤を用いたカルボキシ酸化セルロースの調製を開示している。いずれかの方法により酸化した後、布地を、四塩化炭素等の溶媒、続いてイソプロピルアルコール(IPA)の50%水溶液、最後に99%のIPAで十分に洗浄してもよい。酸化前、布地は、所望の織布又は不織布構造体で構成され得る。
【0087】
典型的には、酸感受性種に適合する止血剤は、生体適合性のあるアルデヒド酸化した多糖類から調製される布地基材を含む。このような例示的な止血剤では、多糖類は、変性多糖を生分解性にするのに有効な量のアルデヒド部分を含有し、これは、多糖類が、身体によって再吸収されるか又は体内を容易に通過することができる成分に分解可能であることを意味する。より具体的には、生分解された成分は、永続的な少量の成分又は成分残留物が最終的に埋め込み部位に実質的に残留しないように、体内に吸収されるときに永続的な慢性の異物反応を誘発しない。
【0088】
本発明の特定の実施形態では、OCは、生体適合性の、生分解性の、アルデヒド酸化した再生セルロースから調製された粒子を含む。いくつかの実施形態では、アルデヒド酸化した再生セルロースは、米国特許第8,709,463号の構造IIの繰り返し単位を含むものである。いくつかの実施形態では、ORCは、特に組織の出血部位で癒着防止材料を調製するために使用される。典型的には、再生セルロースは、再生されていないセルロースに対して均等度がより高度であるため好ましい。再生セルロース、及び再生酸化セルロースの製造方法の詳細な説明は、例えば、米国特許第3,364,200号及び同第5,180,398号に記載されている。
【0089】
したがって、いくつかの実施形態では、OCは、ORCを含む。凝集形態であっても、又は粉砕若しくは摩砕されていてもよく、したがって組成物の粒子を調製するために利用することができるOC系製品の例としては、限定するものではないが、INTERCEED(登録商標)吸収性癒着バリア、SURGICEL(登録商標)Original吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)NU-KNIT(登録商標)吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)FIBRILLAR(商標)吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)SNoW(商標)吸収性止血剤、及びSURGICEL(登録商標)粉末吸収性止血剤、GelitaCel(登録商標)吸収性セルロース被覆剤(Gelita Medical BV(Amsterdam,The Netherlands))が挙げられる。
【0090】
いくつかの実施形態では、OCは、植物源由来のものである。OCの通常の供給源は植物材料であるが、OCは細菌源由来であってもよいことが理解される。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するためのセルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含まない。
【0092】
本発明の組成物は非水性組成物であり得、これは組成物中の主液が水ではなく、組成物が非常に低い含水量を有する、又は水を全く有しないことを意味する。
【0093】
いくつかの実施形態では、組成物の含水量は、約8w/w%未満である。いくつかの実施形態では、組成物の含水量は、約7w/w%未満である。いくつかの実施形態では、組成物の総含水量は、約6w/w%、5w/w%、4w/w%、3w/w%、2w/w%、1w/w%、0.5w/w%、0.1w/w%、又は0.01w/w%未満である。いくつかの実施形態では、組成物は、実質的に水を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は水を含有しない。
【0094】
いくつかの実施形態では、組成物は、溶媒を更に含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、エタノールなどの有機溶媒を更に含まない。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、粉末(例えば、摩砕されたOC)の形態のOCを含む。上記のように、様々なセルロース系材料を粉砕又は摩砕して、本発明の組成物を調製するために使用され得る粉末を得ることができる。
【0096】
セルロース系材料、例えばセルロース系布地は、上述のように、D90が350μm未満かつD50が167μm未満のサイズ分布を有する繊維を得るために摩砕されてもよい。所望であれば、摩砕工程を繰り返して、D90が177μm未満、かつD50が95μm未満のサイズ分布を得ることができる。
【0097】
本明細書に記載されるように、一実施形態では、組成物を作製するための繊維は、セルロース系原材料を摩砕することによって調製される。摩砕工程に先行して、セルロース系原材料を細長く切って切断して材料片を形成する工程を行うことができる。この実施形態では、摩砕工程は、二段階プロセスであってもよく、第2段階は空気分級機内で実施され、第2段階は3回繰り返され得る。したがって、空気分級機に最初に(1回目)通過させた後、得られた「長い繊維」は、D90が350μm未満かつD50が167μm未満のサイズ分布を有し得る。空気分級機に3回通過させた後(3回目)、得られる微細なORC繊維は、D90が177μm未満かつD50が95μm未満のサイズ分布を有し得る。したがって、一実施形態では、「長い繊維」は、D90が350μm未満かつD50が167μm未満のサイズ分布を有する。
【0098】
本発明の一実施形態では、組成物中の「微細」又は「短い」セルロース系繊維は、D90が177μm未満かつD50が95μm未満のサイズ分布を有する。セルロース系材料は、摩砕工程前、工程中、及び/又は工程後に、化合物と混合される又は配合されることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、開示される凝集体は、凝集体の形態で、少なくとも0.5の球形度、及び約500マイクロメートル未満かつ約50マイクロメートル超であるその最長軸に沿った直径を有する複数の相互連結された個々のセルロース系フィブリルから構成される。凝集体は、代替的に、D15が約80マイクロメートル超、D50が約140~250マイクロメートル、D90が約370マイクロメートル未満、嵩密度が0.45g/mL超、かつ/又は球形度(sh50)が0.70以上であるサイズ分布プロファイルを有するものとして表し得る。凝集体は、振動負荷にさらされるとき、サイズ分布変化を実質的に有さないか、又は最小限のサイズ分布変化を有することを特徴とすることができ、例えば、D50によって測定された止血凝集体のサイズ分布プロファイルは、100マイクロメートルを下回らない。一実施形態において、サイズ分布変化は、0.2バールにおいてQICPIC光センサによって特徴付けられる。また更なる実施形態において、サイズ分布変化又は最小限のサイズ分布変化は、1.0バール真空での処理に基づく。いくつかの実施形態では、凝集体は、摩砕され、加湿され、ローラー圧縮され、かつ乾燥されたセルロース系材料である。
【0100】
用語「D15」、「D50」、「D70」、及び「D90」は、それぞれ、粒子の(数又は体積で)15%、50%、70%、及び90%が対応する値以下のサイズを有することを指す。
【0101】
本明細書に提供されるように、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、凝集体の形態のOCから調製される。「凝集体」という用語は、合わせられた構成要素から形成された粒子を説明する。
【0102】
本明細書に更に提供されるように、凝集体は、任意選択で、以下の、粉末組成物を加湿する工程;粉末を、例えば、ローラーによって圧縮して及び/又は粉末を強打して凝集体を形成する工程;除湿する工程;摩砕する工程;凝集体をふるい分けする工程;任意選択で、得られた凝集体を貯蔵容器又は送達装置内に投入する工程、のうちの1つによって作製されてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、OCの粒径は、10μm~2,000μmである。いくつかの実施形態では、OCの粒径は、50μm~1,500μm、100μm~1,000μm、100μm~500μm、100μm~300μm、50μm~1,000μm、50μm~500μm、又は50μm~300μmである。
【0104】
上記で提供されるように、いくつかの実施形態では、OC(例えば、ORC)粉末は、圧縮される。圧密されたORC粉末は、ローラー圧縮加工されたORC粉末又はハンマーミル加工されたORC粉末であってよい。開示される粉末は、止血材料は好ましくは、少なくとも0.45g/cmのタップ密度、及び/又は少なくとも7.5cm/sの流動性、及び/又は1.75マイクロメートル~116マイクロメートルの平均粒径を有し、メジアン径は36マイクロメートルである。一実施形態では、開示される粉末は、約1~約5の平均アスペクト比、少なくとも0.67g/cmのタップ密度、及び少なくとも70cm/sの流動性を有する粒子を含む。
【0105】
一実施形態では、高いタップ密度粉末に圧密された微粒子は、約0.35~約1g/cm、又は0.4~0.9g/cm、例えば、0.42~0.78g/cmの範囲のタップ密度を有する。特定のアスペクト比を有するORCの粒子は、ボールミル加工プロセスを利用して、上記を特徴とするORC布地又は不織布などのORC材料から直接作製され得る。本明細書に記載されるように、粒径は、300マイクロメートル、200マイクロメートル未満、及び100マイクロメートル未満など、500マイクロメートル未満の全体的大きさ(最大寸法)を有し得る。
【0106】
別の実施形態において、開示された組成物は、上述の止血材料と食塩液とを含んだペーストの形態をなす。ペーストは、室温にて10000Pa・s超の粘度を有し得る。
【0107】
別の実施形態では、本発明は、約1~約18のアスペクト比を有する粉末の形態の圧密されたORC系材料である。ORC系材料は、細断ORC材料であり得る。一実施形態において、圧密は、上述のようにボールミル加工によって実施される。別の実施形態において、圧密は、上述のようにローラー圧縮によって又はハンマーミル加工によって実施される。
【0108】
別の実施形態では、本発明は、その一実施形態において開示された組成物を、例えば、上述のような粉末の形態で、対象の組織の出血部位に及び/又は出血部位内部に適用することによって、出血部位での癒着を防止する方法を対象とする。
【0109】
本発明の粉末はタップ密度が高くかつアスペクト比が低いがために、結果として得られるORC粉末は、ペースト又は粉末のいずれの形態においても、優れた止血特性と良好な組織適合性及び流動性により、出血部位にて癒着防止のための材料として利用され得る。加えて、これらのORC材料は、他の薬剤及びバイオポリマーと物理的に混和されて、出血部位における抗接着性を改善し得る。
【0110】
低アスペクト比(1~20)の粒子が、粉末材料をなす粒子の大部分、すなわち、粒子の80%超又は90%超など、50%超を構成し得る。300、200マイクロメートル未満、及び100マイクロメートル未満など、500マイクロメートル未満の全体的大きさ(最大寸法)を有する粒子が、粉末材料をなす粒子の大部分、すなわち、粒子の80%超又は90%超など、50%超を構成し得る。
【0111】
本発明の別の実施形態において、上述のように、低アスペクト比で高タップ密度のORCの粒子を含んだ、ボールミル加工プロセスから得られた製品は、有効な癒着防止特性を有することが示されている。
【0112】
本開示において、粉末のアスペクト比は、電子又は光学顕微鏡下で適切な倍率で可視であるとき、粒子のアスペクト比を、粒子の最長寸法(長さ)を粒子の最短寸法(幅)で割った測定値と定義して、粉末を含んだ粒子の平均アスペクト比として定義される。最小アスペクト比(AR)が1であることは、最短寸法に等しい最長寸法を有する、丸い粒子であることに対応する。アスペクト比が約20であることは、直径の20倍の長さを有する繊維状粒子であることに対応する。例示的なアスペクト比は、本発明によれば、1~20、より具体的には約1.5~約17.5である。
【0113】
いくつかの実施形態では、約12%~約18%のカルボキシル含有量を有するOCを有する開示された組成物は、例えば組織の出血部位における癒着の形成を防止するための、癒着防止組成物として有用である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量が約12%~約18%である本発明の流動性又は非流動性組成物は、組織の出血部位における癒着を低減又は防止するための癒着防止材として使用される。
【0114】
いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量が約12%~約18%である開示された組成物は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、及び40℃からなる群から選択される1つ以上の温度値で流動性がある。
【0115】
粒子の流動性は、外科手技中の粉末の展開に影響を及ぼすパラメータである。展開を容易にするため、外科手術の環境では、高度な流動性が好まれる場合がある。
【0116】
嵩密度とは、タップされていない粉末試料の質量と、粒子間の空隙容量の寄与を含めたその粉末試料の体積との比である。タップ密度とは、粉末の容器を機械的に軽く叩くことによって得られる、増加した粉末の嵩密度の測定値である。タップ密度は、流動性と相関すると思われる。展開及び混合を容易にするために、高度なタップ密度が好まれる場合がある。タップ密度は、本願の目的上、改良USP 616法を用いて測定されるものであり得、この改良USP 616法において、1グラムの粉末が、乾燥した10mLのメスシリンダーに導入され、約2分間にわたって手動で100回、軽く叩かれる。
【0117】
また、粉末の圧出力は、外科手技中の粉末又はペーストの展開に関連する重要なパラメータである。液体をシリンジから排出するため、また液体をシリンジの中に引き込むために必要な労力は、それぞれ圧出力及び吸引力として知られている。しかしながら、デュアルシリンジ混合装置には圧出力の測定値がより重要となる。いくつかの実施形態では、組成物はアプリケータを通過させることができる。
【0118】
デュアルシリンジ混合装置は、初期には分離している液体及び固体の担体を混合し、次いでその配合された内容物を、相互連結された出口を介して、連結された2本のシリンジの間で前後に送ることによって、実質的に均質なペースト混合物を生成する。したがって、ペーストをシリンジから分配するための圧出力が低いことが、混合を容易にするために、また究極的には、結果として得られるペーストを展開するために好ましい場合がある。所望の圧出力は、1.51lbf未満であり得る。
【0119】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの生物学的活性剤を更に含み得、組成物に含まれ得る非限定的な生物学的活性剤としては、カルシウム、並びに抗生物質、抗炎症剤、増殖因子、又は凝固因子などの治療薬が挙げられる。例えば、組成物は、フィブリノゲン又はトロンビンを更に含んでもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、組成物はトロンビンを更に含んでもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、組成物はカルシウムを更に含んでもよい。カルシウムは、凝固カスケードにおいて重要な要素である。因子XIIIを因子XIIIaに活性化することが必要であり、これによりフィブリンを架橋し、安定化させて不溶性血塊を生成する。
【0122】
本発明で使用されるカルシウムは、塩化カルシウム塩の形態であってもよい。あるいは、酢酸カルシウム及び/又はクエン酸カルシウムなどの他の塩が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、カルシウム源は、例えば、40~60mMの範囲の塩化カルシウムである。
【0123】
いくつかの実施形態では、組成物は、2種以上の生物学的活性剤、例えば、カルシウム及びトロンビンを含んでもよい。
【0124】
本明細書で使用するとき、「トロンビン」は、プロトロンビン(因子II)のタンパク質分解切断から生じる活性化酵素を示す。トロンビンは、当該技術分野において既知の様々な製造方法によって製造されてもよく、組み換えトロンビン及び血漿由来トロンビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
ヒトトロンビンは、ジスルフィド結合によって接合された2つのポリペプチド鎖から構成される、295アミノ酸タンパク質である。ヒトトロンビン及び非ヒト(例えば、ウシ)トロンビンの両方を、本開示の範囲内で使用することができる。
【0126】
組成物は、限定されるものではないが、アルブミン、糖類、糖類誘導体、ポリオール、アセテート、クエン酸塩、アミノ酸、ポリエチレングリコール、及び塩化ナトリウムから選択される、以下の賦形剤のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
【0127】
アルブミンは、0.05~1%(w/v)の範囲、又は0.5~1%(w/w)の範囲であってもよい。糖類源は、サッカロースであってもよく、例えば、約5g/Lの濃度であってもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、糖類誘導体源はグルコン酸を含む。いくつかの実施形態では、ポリオール源は、例えば、約2%(w/v)の濃度のマンニトールを含む。いくつかの実施形態では、アセテート源は、酢酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、クエン酸塩源はクエン酸ナトリウムであり得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、ヒスチジンを含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)源はPEG-3350であり、例えば、約0.03重量%の濃度で存在し得る。
【0129】
「PEG3350」は、平均分子量が3350ダルトンであるPEG化合物を示す。
【0130】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の賦形剤を更に含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、組成物は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、及び40℃からなる群から選択される1つ以上の温度値など、室温付近の少なくとも1つの温度で非流動性である。この組成物は、以下で「非流動性」又は「流動性でない」組成物と称される。
【0132】
上記のように、OCの酸化度は、生体適合性及び生体吸収性などのその機能特性にとって重要であり得る。カルボン酸基が酸化セルロースの18~21%(重量で)の濃度で存在する外科用止血剤など、様々なOCの酸化度を含む生成物が存在する。一方、カルボン酸基の濃度が低い(例えば12%~18%)OCは、優れた癒着防止特性を有し得る。
【0133】
OCを参照して本明細書で使用される場合、「酸化レベル」、「酸化度」、「カルボキシル含有量」、及び「カルボキシル化レベル」という用語は互換可能であり、米国薬局方(USP)23-NF18に従って決定され得る。
【0134】
したがって、いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約12%~24%(w/w)である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、12~23%(w/w)である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、12~22%(w/w)である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約12%~約21%(w/w)である。
【0135】
いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は16~24%(w/w)であり、組成物は止血剤として機能し得る。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は17~23%である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、18~22%(w/w)である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約18%~約21%(w/w)である。
【0136】
いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約12%~約18%(w/w)である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、12~17%(w/w)である。いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、12~16%(w/w)である。
【0137】
いくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、又は24%(w/w)(それらの間の任意の値及び範囲を含む)である。
【0138】
約12%~約18%のカルボキシル含有量を有するOCを有する本発明の組成物は、例えば、組織の出血部位における、癒着の形成を防止するための癒着防止組成物として有用である。いくつかの実施形態では、粉末を調製するための布地は、ブライトレーヨン糸で構成された縦編みトリコット生地であり、これは続いて、布地に生分解性を与えるのに有効な量のカルボキシル部分又はアルデヒド部分を含ませるために酸化される。上述のように、布地は、F.Boardmanらによる米国特許第5,180,398号に記載されているように、セルロースをペルフルオロカーボン溶媒中の二酸化窒素溶液と反応させることによって酸化され得る。
【0139】
一実施形態では、約9%~約21%の範囲のカルボキシル含有量(酸化度)を有するOC/ORCの粉末を出血部位における癒着防止のための方法に使用する。別の実施形態では、約12%~約18%の範囲のカルボキシル含有量(酸化度)を有するOC/ORCの粉末を出血部位における癒着防止のための方法に使用する。更に別の実施形態では、約9.5%~約10.5%の範囲のカルボキシル含有量(酸化度)を有する酸化再生セルロースを出血部位における癒着防止のための方法に使用する。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物はその一実施形態において、熱処理、放射線処理、濾過又は化学処理、例えば、ガンマ線、例えば0.22μm以下の孔径を使用した濾過、熱滅菌及び無菌場などの当該技術分野において既知の任意の方法によって更に処理されて、バイオバーデンを低くする。
【0141】
いくつかの実施形態では、本方法は、組成物にカルシウムを添加する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1種の生物学的活性剤を組成物に添加する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムから選択される1種以上の賦形剤を組成物に添加する工程を更に含む。
【0142】
更に、本発明の一態様では、例えば、手術を受けている患者において、組織の出血部位における癒着を低減する方法であって、上記実施形態で開示された組成物を出血部位と接触させる工程を含む、方法が提供される。したがって、その一実施形態において開示された組成物又はORC粉末を、出血組織の中に/上に適用することを含む、組織癒着を防止するための方法が提供される。組織は、軟組織又は例えば骨組織であり得る。
【0143】
「軟組織」という用語は、明細書で使用するとき、固化又は石灰化されていない身体組織に関する。この用語は、血管新生されており、したがって出血源であり得る軟組織に関する。このような組織の例としては、結合組織(腱、靱帯、筋膜、皮膚、繊維性組織、脂肪、及び滑膜など)、筋肉、及び内臓器官が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、軟組織は、骨組織を除外することを意味する。
【0144】
本方法のいくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、少なくとも9重量%以上、例えば、約9重量%~約21重量%、又は約12重量%~約21重量%である。本方法のいくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約18重量%以下、例えば、約18重量%である。本方法のいくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約9重量%~約18重量%又は12重量%~約18重量%である。本方法のいくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約9重量%~約21重量%又は12重量%~約21重量%である。本方法又は組成物のいくつかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、最大で約21重量%である。
【0145】
いくつかの実施形態では、組成物は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、及び40℃からなる群から選択される1つ以上の温度値で流動性である。
【0146】
いくつかの実施形態では、組成物は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、及び40℃からなる群から選択される1つ以上の温度値で流動性ではない。
【0147】
本方法のいくつかの実施形態では、組成物は、熱処理、放射線処理、濾過又は化学処理、例えば、ガンマ線、孔径0.22μm以下を使用した濾過、熱滅菌及び無菌場などの当該技術分野において既知の方法によって処理されて、バイオバーデンを低くする。
【0148】
本方法の任意の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の賦形剤を更に含む。
【0149】
更に、本発明の一態様では、例えば、手術を受けている患者において、組織及び/又は器官における癒着形成を低減する方法が提供される。本方法は、少なくとも手術部位及び/又はその近くに、上記実施形態に開示される組成物を適用する又は接触させる工程を含む。
【0150】
更なる態様では、本発明は、a)上記の本発明の組成物を収容する容器と、b)組成物を組織に適用するためのアプリケータと、c)任意選択で、使用説明書と、を含むキットを提供する。
【0151】
いくつかの実施形態では、容器(contained)はアプリケータの一部である。
【0152】
組成物の稠度は、例えば、組成物を出血部位の上に直接塗り広げることによって又は付着させることによって適用することができるようなものであることが理解される。したがって、組成物は、出血部位に適用するために適切な形態とするために、固体表面、物体、又はストリップ若しくはフィルムなどの他の固体媒体上に更に塗り広げる又は適用する必要はない。それにもかかわらず、組成物を出血部位上に適用する、塗り広げる、又は付着させるために、容易なアクセス及び取り扱いを目的として、例えば、注射器などの好適なアプリケータを使用してもよい。
【0153】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」及びそれらの複合体は、「含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」を意味する。用語「~からなる(consisting of)」は、「包含し、限定される(including and limited to)」ことを意味する。用語「~から本質的になる(consisting essentially of)」とは、組成物、方法又は構成が、追加の成分、工程及び/又は部分を含み得ることを意味するが、追加の成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構成の基本的かつ新規の特性を実質的に変えない場合に限る。
【0154】
単語「代表的な」とは、本明細書では、「実例、事例又は例証としての役割を果たす」ことを意味する。「代表的な」として記載される任意の実施形態は、他の実施形態よりも好ましい又は有利であると必ずしも解釈される必要はない、及び/又はその他の実施形態からの特徴の組み込みを必ずしも排除する必要はない。
【0155】
本明細書では、単語「任意選択で(optionally)」は、「いくつかの実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味する。本発明の任意の特定の実施形態は、このような特徴が矛盾しない限り、複数の「任意の(optional)」特徴を含んでもよい。
【0156】
本発明で使用する場合、その内容に別段の明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。例えば、用語「化合物(compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」は、これらの混合物を含む複数の化合物を含んでよい。
【0157】
本出願全体を通して、本発明の種々の実施形態が範囲形式にて提示されてもよい。範囲形式の説明は単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲上の確固とした制限として解釈されるべきではない、と理解すべきである。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示される部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を有するとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0158】
数値範囲が本明細書に示される場合はいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。用語、第1の表示番号と第2の表示番号との「間の範囲(ranging)/範囲(ranges)」、及び第1の表示番号「から」第2の表示番号「までの範囲(ranging)/範囲(ranges)」が本明細書で互換的に使用されるが、これは、第1及び第2の表示番号並びにこれらの間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0159】
本発明で使用する場合、用語「方法」とは、所与のタスクを達成するための方法、手段、技術及び手順を意味し、化学的、薬理学的、生物学的、生化学的及び医学的分野の施術者による周知の方法、手段、技術及び手順として、知られるか又は容易に開発されるか、のいずれかの方法、手段、技術及び手順のようなものを含むが、これらに限定されない。
【0160】
本発明で使用する場合、用語「治療する(treating)」は、病状の進行を抑制すること、実質的に阻害すること、緩徐化すること、若しくは逆行させること、状態の臨床症状若しくは審美的症状を実質的に改善すること、又は状態の臨床症状若しくは審美的症状の外観を実質的に予防することを含む。
【0161】
「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類する表記が用いられる場合、一般に、このような構文は、当業者がその表記を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有する組成物」は、限定するものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方及び/又はAとBとCの全てなどを有する組成物を含む)。明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する事実上全ての分離語及び/又は句は、用語のうちの1つ、用語のいずれか、又は両用語を含む可能性を考慮すると理解されるべきであることを当業者は更に理解するだろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」若しくは「B」又は「A及びB」の可能性を含むものと理解されよう。
【0162】
本発明の特定の特徴は、明確性のために別個の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、単一の実施形態において組み合わせて提示されてもよいことが理解されている。逆に、本発明の様々な特徴は、簡潔さのために、単一の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、別個に、若しくは任意の好適な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載される実施形態において、好適にもたらされてもよい。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしには動作不可能である場合を除き、それらの実施形態の必須特徴であるとして考慮されるべきではない。
【0163】
特に指示がない限り、例えば、比、重量、モル/モル、量、粘度、温度などを表すものなどの全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうではないと示されない限り、本説明中及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本発明が得ようとする所望の性質に応じて最大で±10%変化し得る近似値である。
【0164】
本明細書の上記で詳述され、以下の特許請求の範囲において特許請求されるような、本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的な裏付けを見出す。
【実施例
【0165】
以下の実施例を参照すると、上記の説明と併せて、非限定的な方法で本発明のいくつかの実施形態が例示されている。
【0166】
実施例1:ラット盲腸の擦り傷モデルの出血部位における癒着防止の有効性
癒着は、慢性疼痛、不妊症を引き起こし得る重要な医学的問題であり、死亡につながり得る腸閉塞症に関連する。これらの癒着の多くは、腹膜への外科的外傷から生じる。出血部位における癒着を低減する本発明の組成物の能力を調べるために、当該組成物を動物モデルで試験した。選択されたモデル(modal)は、盲腸の擦り傷及び腹部側壁欠損部を含むラットモデルである。モデルについては、Poehnert et al.,2015,International Journal of Medical Sciences 12(1):1-6に概説されているが、わずかな変更を伴う。
【0167】
材料及び方法
試験群:
1.処置なし(対照);
2.INTERCEED群:市販のINTERCEED(登録商標)シート(Ethicon)を、盲腸を覆うように適用されるサイズに切断した;
3.INTERCEED(登録商標)群の粉末は、凝集体の形態であり、米国特許第10,034,957号の実施例1に記載のプロセスによって生成されたが、使用した基礎材料がSURGICEL(登録商標)シート(Ethicon)ではなくINTERCEED(登録商標)シート(Ethicon)であった点が異なった。凝集体の形態のINTERCEED粉末はまた、本明細書を通して、凝集形態の摩砕/粉砕されたINTERCEED、小さな顆粒に圧縮された摩砕/粉砕されたINTERCEED、圧密されたINTERCEED粉末、凝集体の形態に圧密されたINTERCEED、とも呼ばれる。
【0168】
簡潔に述べると、INTERCEED(登録商標)は、材料が布地をより小さな片に切断するブレードに供給される前に、1~2インチ幅の切片に切断された。次いで、切断されたORC布地片は、2回の連続した摩砕プロセス(ハンマーミル加工及び空気分級摩砕)によって、中間ORC微細繊維に粉砕された。次いで、得られた中間ORC微細繊維は、Ohausハロゲン湿度計で測定して約11%~約16%に加湿され、その後、より大きな凝集体にローラー圧縮された。湿度計は、湿度計が試料の重量を測定した熱重量原理で動作し、次いで、試料は一体型ハロゲン乾燥機ユニットによって迅速に加熱され、水分を気化させた。乾燥動作中、器具は試料の重量を連続的に測定し、その結果を表示した。
【0169】
乾燥が完了すると、集計された結果は、含水率パーセント、固形分パーセント、重量又は回復パーセントとして表示され、特に、分析計は、0.5~1グラムの凝集体を、4分間のランプ、90℃の最高温度、及び以下の設定で試験した:試験ID-LOD;プロファイル-標準;乾燥温度-90℃;スイッチオフ-A60;結果-水分%;カスタム-オフ;目標重量-なし。
【0170】
ふるい分けは、スクリーンふるい分けによって決定される75~300マイクロメートルのサイズで目標粒子を分離するために行われた。圧密の目的のために導入された過剰な水分は、アプリケータデバイスへのその後の注入のための圧密及びふるい分け工程の後の除湿又は乾燥プロセスによって除去された。次いで、試料をデバイスパッケージング及び滅菌に供した。アプリケータへの注入前の貯蔵水分は、アプリケータへの注入のための制御された環境(相対湿度、通常は25~55%の相対湿度に応じて500gの試料当たり0.3~0.6%/時の水分増加量である)において6%未満の含水率を達成するために、乾燥終了時に約2%未満であった。
【0171】
総合すれば、本発明の止血凝集体を製造するための1つのプロセスは、a)セルロース原料物質を細長く切って切断する工程と、b)工程a)から得られた材料を摩砕する工程と、c)空気分級機内での第2の摩砕工程と、d)加湿の工程と、e)ローラー圧縮の工程と、f)ふるい分けの工程と、g)除湿又は乾燥する工程と、h)任意に、保管容器に又は送達デバイスに注入し、一次パッケージング及び二次パッケージングを行う工程と、i)任意の滅菌工程と、を含んだ。
【0172】
試験物品を、本明細書で説明したようにラット盲腸の擦り傷モデルに適用した(6回繰り返した)。
【0173】
癒着防止活性を試験するためのインビボラット盲腸の擦り傷モデル:簡潔に述べると、動物の麻酔は、ケタミンHCl 80mg/kg(Fort Dodge Pty.Ltd.(Australia))とキシラジンHCl 10mg/kg(VMD(Belgium)、手術処置は腹腔に対して行われたため、麻酔は腹腔内ではなく筋肉注射で投与された)との混合物の単回筋肉内注射を用いて投与した。
【0174】
腹側正中線上の線を覆う皮膚に、6cmの切開のためのマークを付けた。腹部皮膚を剃毛し、ヨードフォア溶液で準備し、切開した。処置の終了時の縫合を容易にするために、皮膚を牽引して皮下剥離させた。筋肉壁が露出した状態で、腹膜腔を通して、その線に沿って筋肉に5cmの切開部を形成した。右側腹壁を反転させた(reflected)。1×2cmの腹膜及び筋肉の一部を取り除いた。この欠陥部の内側縁部は、正中線切開部から1cm外側に、正中線切開部に平行に位置した。出血を観察するために、腹壁欠陥部をモニタリングした。点状出血の均質な表面が1×2cm面積にわたって形成されるようにメスで掻き取ることによって、対応する欠損部を盲腸に形成した。擦り傷を付ける前に盲腸を持ち上げて、閉じる際に盲腸が腹壁欠損部と接触して局所癒着を誘発するように位置決めされた。2つの表面を10分間空気乾燥させた。各試験物品について、一定の量を盲腸上に広げて、試験物品の薄層で盲腸を完全に覆うようにした。「処置なし」群はそのまま放置した。群割り付け及び適用後、盲腸及び腹壁欠損部は、閉じる前に1分間にわたって一緒に保持された。器官を解剖学的に元の位置に戻し、器官を近接して維持するために2つの縫合糸を欠陥の各端に配置した。処置中、動物を慎重に観察して、麻酔処置に対する予想外の応答を有するあらゆる動物を除去した。
【0175】
処置に続いて、動物に、疼痛を軽減するために、酒石酸ブトルファノール(Torbugestic)0.5~2.0mg/体重(kg)を単回投与した。動物を毎日モニタリングし、臨床的兆候又は挙動の変化が観察された場合には、動物の行動に応じて、必要に応じてブトルファノール0.5~2.0mg/体重(kg)を4時間毎に動物に皮下投与して痛みをコントロールした。手術後14日後に動物をCOによって窒息させて安楽死させた。腹部を開け、手術部位を検査した。癒着は、盲検観察者によって等級付けされた。
【0176】
様々な腹部臓器に対する癒着強度を、以下のスキームに従って評価した(Poehnert et al.,2015,International journal of medical sciences 12(1):1-6):グレード0-癒着なし;グレード1-薄膜状の癒着で剥離は容易;グレード2-鈍的切開で剥離可能;グレード3-鋭的剥離が必要;グレード4-異なる組織の縁部を区別することが困難であり、分離が非常に難しい。癒着の強さに加えて、癒着範囲を定規で測定した。癒着強度は、癒着の強さ×癒着範囲(mm)として計算した。
【0177】
図1に見られるように、INTERCEED粉末ORC(群3)は、ORC布地(群2)と比較して、約135%の癒着防止効力を示した。
【0178】
本発明は、その特定の実施形態と共に記載されてきたが、多くの代替、変更及び変形形態が当業者には明白となることは明らかである。したがって、これは、添付の特許請求の趣旨及び広義の範囲内にある、このような代替、変更及び変形形態の全てを包含することを目的としている。
【0179】
〔実施の態様〕
(1) 粉末の形態の酸化セルロース(OC)を含む組成物であって、前記OCのカルボキシル含有量が、約9重量%~約21重量%である、組成物。
(2) 前記OCが、酸化再生セルロース(ORC)を含む、実施態様1に記載の組成物。
(3) 血液の存在下で癒着防止材として使用するための、実施態様1又は2に記載の組成物。
(4) 前記粉末が、凝集形態である、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
(5) 前記粉末が、摩砕されたOCを含む、実施態様1~4のいずれかに記載の組成物。
【0180】
(6) 前記粉末の少なくとも90%の粒径が、10~2,000μmの範囲である、実施態様1~5のいずれかに記載の組成物。
(7) 前記粉末の少なくとも90%の粒径が、50~300μmの範囲である、実施態様6に記載の組成物。
(8) 前記粉末が、ガンマ照射を受けたものである、実施態様1~7のいずれかに記載の組成物。
(9) 同じカルボキシル含有量を有するOC布地と比較して、少なくとも120%の癒着防止効力を特徴とする、実施態様1~8のいずれかに記載の組成物。
(10) 前記OCが、圧密された粉末の形態のORCを含む、実施態様1~9のいずれかに記載の組成物。
【0181】
(11) 前記ORC粉末が、ローラー圧縮加工されたORC粉末、及び/又はハンマーミル加工されたORC粉末を含む、実施態様10に記載の組成物。
(12) 前記粉末が、1.75マイクロメートル~116マイクロメートルの平均粒径を有し、メジアン径が36マイクロメートルである、実施態様1~11のいずれかに記載の組成物。
(13) 添加剤を更に含み、前記添加剤が、CMC又は他の多糖類、カルシウム塩、抗感染症薬、止血促進薬、ゼラチン、コラーゲンから選択される1種以上の構成要素を含む、実施態様1~12のいずれかに記載の組成物。
(14) 前記粉末が、D15が約80マイクロメートル超、D50が約140~250マイクロメートル、かつD90が約370マイクロメートル未満であるサイズ分布プロファイルを有する粒子状凝集体の形態である、実施態様1~13のいずれかに記載の組成物。
(15) 前記粉末が、0.45g/mLを超える嵩密度を有する、実施態様1~14のいずれかに記載の組成物。
【0182】
(16) 前記粉末が、0.7以上の球形度(sh50)を有する、実施態様1~15のいずれかに記載の組成物。
(17) 前記OCは、前記凝集体の形態で、少なくとも0.6の球形度、及び約500マイクロメートル未満かつ約50マイクロメートル超の最長軸に沿った寸法を有する、相互連結された個々のセルロース系フィブリルを形成する、実施態様16に記載の組成物。
(18) 前記OCの前記カルボキシル含有量が18%以下である、実施態様1~17のいずれかに記載の組成物。
(19) 前記OCの前記カルボキシル含有量が、少なくとも12%である、実施態様1~18のいずれかに記載の組成物。
(20) キットであって、
a.実施態様1~19のいずれかに記載の組成物を収容している容器と、
b.前記組成物を組織に適用するためのアプリケータと、
c.任意選択で、使用説明書と、を含む、キット。
【0183】
(21) 前記容器が前記アプリケータに含まれている、実施態様20に記載のキット。
(22) 組織癒着を防止するための方法であって、粉末の形態の酸化セルロース(OC)を含む組成物を、血液の存在下で組織の中に/上に適用することを含み、前記OCのカルボキシル含有量が、約9重量%~約21重量%である、方法。
(23) 前記OCが、ORCを含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記OCの前記カルボキシル含有量が、18%以下である、実施態様22又は23に記載の方法。
図1
【国際調査報告】