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特表2023-524149CD3およびCD20に対する二重特異性抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(54)【発明の名称】CD3およびCD20に対する二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230601BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
A61K39/395 E
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K31/56
A61K31/573
A61K31/135
A61K31/167
A61P43/00 111
A61P29/00
C07K16/46 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567357
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2021062231
(87)【国際公開番号】W WO2021224499
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/022,212
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/078,667
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/121,690
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アーマディ,タハムタン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,マニシュ
(72)【発明者】
【氏名】リー,トミー・アール
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェリ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】デマルコ,ディナ
(72)【発明者】
【氏名】ヒエムストラ,イーダ
(72)【発明者】
【氏名】チュー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】アザリアン,エーダ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA05
4C206GA02
4C206GA31
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA07
4C206ZC42
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、二重特異性抗体(bsAb)、ならびに注目すべき疾患の治療におけるそのような抗体の使用に関する。さらに、B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療のための有利な治療レジメンが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)を治療する方法であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が、配列番号6のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含み、前記可変軽鎖領域が、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第1の結合アーム;ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、前記可変軽鎖領域が、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第2の結合アーム
を含む、完全な長さの抗体である二重特異性抗体を、それを必要とするヒト対象の皮下に投与することを含み、
前記二重特異性抗体を少なくとも24mgの用量で投与する、方法。
【請求項2】
前記B-NHLが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯リンパ腫および小リンパ球性リンパ腫からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記B-NHLが、FL、HGBCLまたはDLBCLである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、前記二重特異性抗体による前記治療の前に、リツキシマブなどのCD20単一特異性抗体による治療を受けている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記CD20単一特異性抗体による前記治療の期間中、前記がんが再発した、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記CD20単一特異性抗体による前記治療の期間中、前記がんが前記治療に対して難治性であった、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記CD20単一特異性抗体が併用治療において使用された、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、前記B細胞NHLに対するさらなる先行の治療の方針を受けた、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記二重特異性抗体を少なくとも40mgの用量で投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記二重特異性抗体を40mg~100mgの範囲内の用量で投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記二重特異性抗体を少なくとも48mgの用量で投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記二重特異性抗体を少なくとも60mgの用量で投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記二重特異性抗体を48mgの用量で投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記二重特異性抗体を60mgの用量で投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記用量が毎週投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記毎週の投与が少なくとも4回行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記毎週の投与の後、前記抗体を二週間に一回投与する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記隔週の投与が(少なくとも)6回行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記二週間に一回の投与後、前記抗体を四週間に一回投与する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記毎週の用量を投与する前に、前記二重特異性抗体のプライミング用量を投与する、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記初回用量の前記毎週の用量を投与する一週間前に、前記プライミング用量を投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記プライミング用量が50~350μgの範囲内である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記プライミング用量が160μgである、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記プライミング用量を投与した後、前記毎週の用量を投与する前に、前記二重特異性抗体の中間用量を投与する、請求項20~23に記載の方法。
【請求項25】
前記初回用量の前記毎週の用量を投与する前に、前記プライミング用量が二週間投与され、前記中間用量が一週間投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記中間用量が600~1200μgの範囲である、請求項24または25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記中間用量が800μgである、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記治療方法が、前記二重特異性抗体を28日間サイクルで皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目に、第1のサイクルの間、プライミング用量を1日目に投与し、中間用量を8日目に投与し、48mgの用量を15、22日目に投与し、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、48mgの用量を投与し、
c)サイクル4~9の1、15日目、48mgの用量を投与し、また
d)さらなる後続サイクルの1日目に、48mgの用量を投与する、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記治療方法が、前記二重特異性抗体を28日間サイクルで皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目に、第1のサイクルの間、160μgのプライミング用量を1日目に投与し、800μgの中間用量を8日目に投与し、48mgの用量を15、22日目に投与し、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、48mgの用量を投与し、
c)サイクル4~9の1、15日目に、48mgの用量を投与し、また
d)さらなる後続サイクルの1日目に、48mgの用量を投与する、請求項24~27に記載の方法。
【請求項30】
前記治療方法が、前記二重特異性抗体を28日間サイクルで皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目に、第1のサイクルの間、プライミング用量を1日目に投与し、中間用量を8日目に投与し、60mgの用量を15、22日目に投与し、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、60mgの用量を投与し、
c)サイクル4~9の1、15日目、60mgの用量を投与し、また
d)さらなる後続サイクルの1日目に、60mgの用量を投与する、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療方法が、前記二重特異性抗体を28日間サイクルで皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目に、第1のサイクルの間、160μgのプライミング用量を1日目に投与し、800μgの中間用量を8日目に投与し、60mgの用量を15、22日目に投与し、
b)サイクル2~3の1日目、8日目、15日目および22日目に、60mgの用量を投与し、
c)サイクル4~9の1、15日目に、60mgの用量を投与し、
d)さらなる後続サイクルの1日目に、60mgの用量を投与する、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記B細胞NHLがFL、DLBCL、および/またはHGBCLである、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、グレード1またはグレード2の管理可能なサイトカイン放出症候群(CRS)を間に有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が腫瘍崩壊症候群を経ていない、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、サイトカイン放出症候群(CRS)の予防で治療される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記予防がコルチコステロイドの前記投与を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記予防が、前記二重特異性抗体と同じ日に投与される、請求項35~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記予防が、後の2~3日目に、および4日目であっていてもよい、または後の2~4日目に投与される、請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記予防が前記二重特異性抗体と同じ日に投与される場合、前記予防は、前記二重特異性抗体の前記投与の30~120分前に投与される、請求項37~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記コルチコステロイドが、プレドニゾロンであり、例えば、経口での用量を含む100mgの静脈内用量またはその等価物である、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒト対象が、注射に対する反応を低下させるために前投薬で治療される、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記前投薬が抗ヒスタミン薬の前記投与を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記前投薬が解熱薬の前記投与を含む、請求項41~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記抗ヒスタミン剤が、例えば50mgの静脈内または経口での用量でのジフェンヒドラミン、またはその等価物である、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記解熱薬がアセトアミノフェン、例えば650~1000mgの経口での用量、またはその等価物である、請求項43~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記前投薬が、前記二重特異性抗体と同じ日に投与される、請求項41~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記前投薬が、前記二重特異性抗体の前記投与の30~120分前に投与された、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
請求項35~40において定義される前記予防が前記第1のサイクルの間に投与される、請求項28~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
請求項41~47において定義される前記前投薬が前記第1のサイクルの間に投与される、請求項28~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記予防が、サイクル1での前記二重特異性抗体の4回目の投与後に、前記ヒト対象がグレード1を超えるCRSを経るとき、第2のサイクルの間に投与される、請求項48および49に記載の方法。
【請求項51】
前記予防が、先行のサイクルの前記二重特異性抗体の最後の投与において、前記ヒト対象がグレード1を超えるCRSを経る場合、その後のサイクルの間継続される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記前投薬が、前記第2のサイクル中に投与されていてもよい、請求項49および50に記載の方法。
【請求項53】
前記前投薬が、後のサイクルの間に投与されていてもよい、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記二重特異性抗体が、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに配列GTNである配列番号4に示される配列および配列番号5に示される配列をそれぞれ有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第1の結合アーム、ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、前記第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9、および10に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに配列DASである配列番号11に示される配列および配列番号12に示される配列をそれぞれ有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第2の結合アーム
を含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記二重特異性抗体が、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が配列番号6を含み、前記可変軽鎖領域が配列番号7を含む、第1の結合アーム、ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が配列番号13を含み、前記可変軽鎖領域が配列番号14を含む、第2の結合アーム
を含む、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記二重特異性抗体の前記第1の結合アームが、ヒト化抗体、好ましくは完全な長さのIgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記二重特異性抗体が、配列番号22で定められるλ軽鎖定常領域を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記二重特異性抗体の前記第2の結合アームが、ヒト抗体、好ましくは完全な長さのIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記二重特異性抗体が、配列番号23で定められるκ軽鎖定常領域を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記二重特異性抗体が、ヒトIgG1定常領域を有する完全な長さの抗体である、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記二重特異性抗体が不活Fc領域を含む、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記二重特異性抗体が、前記第1の重鎖および前記第2の重鎖の両方の配列番号15のヒトIgG1重鎖のL234、L235、およびD265位に対応する位置の前記第1および第2の重鎖に、それぞれアミノ酸F、E、およびAを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記二重特異性抗体が、前記第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置にアミノ酸Lを含み、前記第2の重鎖が、Rである配列番号15のヒトIgG1重鎖のK409に対応する前記位置にアミノ酸Rを含むか、またはその逆である、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記二重特異性抗体が、前記第1の重鎖および前記第2の重鎖の両方の、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖のL234、L235、およびD265の位置に対応する前記位置の前記第1の重鎖および前記第2の重鎖に、それぞれアミノ酸F、E、およびAを含み、前記第1の重鎖に、配列番号15のヒトIgG1重鎖のF405に対応する前記位置のアミノ酸Lを含み、前記第2の重鎖に、Rである配列番号15のヒトIgG1重鎖のK409に対応する前記位置の前記アミノ酸Rを含む、またはその逆である、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記二重特異性抗体が、配列番号19および20において定められる定常領域を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24および25において定められる重鎖および軽鎖、ならびに配列番号26および27において定められる重鎖および軽鎖を含む、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24および25において定められる重鎖および軽鎖、ならびに配列番号26および27において定められる重鎖および軽鎖からなる、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記二重特異性抗体がエプコリタマブまたはそのバイオシミラーである、請求項1~67のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD3およびCD20の両方を標的とする二重特異性抗体(bsAb)、ならびに注目すべき疾患の治療におけるそのような抗体の使用に関する。さらに、有利な治療レジメンが提供される。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体(mAb)は、がんの治療に対しておおいに成功していることが示されてきた。抗体療法を改善するためのさらなる有望なアプローチは、抗原発現がん細胞に特異的にT細胞を動員することによるものである。これは、T細胞および抗原発現細胞の両方を標的とするbsAbを利用することによって達成することができる。しかし、初期の臨床研究は、主に二重特異性抗体の低い効力、重篤な有害作用(サイトカインストーム)および免疫原性のために、どちらかと言えば期待外れであった。二重特異性抗体の設計および応用における進歩は、サイトカイン放出症候群の初期の障壁を部分的に克服し、用量制限毒性を伴わずに臨床的有効性を改善している(Garber,2014,Nat.Rev.Drug Discov.13:799-801)。
【0003】
CD20分子は、ヒトBリンパ球拘束性分化抗原またはBp35とも呼ばれ、末梢血またはリンパ器官由来のB細胞の90%超の表面に見られ、B細胞発生前初期に発現され、形質細胞分化まで残る。CD20は、正常B細胞および悪性B細胞の両方に存在する。特に、CD20は、B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の90%超で発現されるが、造血幹細胞、プロB細胞、正常な形質細胞、または他の正常組織では見出されない。CD20を標的とすることによってがんならびに自己免疫疾患および免疫疾患を治療する方法は、当技術分野で公知である。
【0004】
例えば、キメラCD20抗体リツキシマブは、B-NHLや慢性リンパ性白血病(CLL)などのがんの治療に使用されてきた、または治療において使用するために示唆されてきた。ヒトモノクローナル抗CD20抗体オファツムマブは、とりわけ様々なCLL適応症、濾胞性リンパ腫(FL)、視神経脊髄炎(NMO)、びまん性および再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の治療に使用するために使用されているか、またはその使用が示唆されている。
【0005】
現在、CD20およびCD3の両方を標的とする二重特異性抗体が開発中である。例えば、国際公開第2011028952号には、とりわけ、XencorのXmAb二重特異性Fcドメイン技術を使用したCD3xCD20二重特異性分子の生成が記載されており、国際公開第2014047231号には、Regeneron PharmaceuticalsからのFcΔAdp技術を使用して生成されたREGN 1979および他のCD3xCD20二重特異性抗体が記載されており、Sunら(2015,Science Translational Medicine 7,287 ra 70)には、「ノブ・イントゥ・ホール」技術を使用して構築されたB細胞標的化抗CD20/CD3 T細胞依存性二重特異性抗体が記載されている。そのような二重特異性抗体は、現在、ヒトにおける特異的な適応症についての臨床試験において試験されている。
【0006】
開発中の特に注目すべき二重特異性抗体は、エプコリタマブ(Duobody CD3xCD20;GEN 3013)である(参照により本明細書に組み込まれる、Engelberts et al.,2020,EBioMedicine,Vol.52,102625、国際公開第2016110576号および国際公開第2019155008号)。
【0007】
B-NHLなどのCD20+がんの治療に利用可能な治療レジメンが現在存在するが、現在利用可能な治療に対して再発または難治性の患者が依然として存在するため、さらなる治療選択肢が依然として必要である。エプコリタマブは、B-NHLなどのがんに罹患している患者に利益をもたらし得る、治療選択肢のレパートリーに追加することができる候補である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2011028952号
【特許文献2】国際公開第2014047231号
【特許文献3】国際公開第2016110576号
【特許文献4】国際公開第2019155008号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Garber, 2014,Nat.Rev.Drug Discov.13:799-801
【非特許文献2】2015,Science Translational Medicine 7,287 ra 70
【非特許文献3】Engelberts et al.,2020,EBioMedicine,Vol.52,102625
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、本明細書に記載されるようなCD3xCD20を標的とする二重特異性抗体、例えばエプコリタマブを使用することによってがんを治療するための手段および方法を提供すること、ならびにがんの治療において使用するための、本明細書に記載されるようなCD3xCD20を標的とする二重特異性抗体、例えばエプコリタマブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのような方法または使用に関して、例えば、B-NHLなどのCD20に対して陽性であることが公知であるかまたは特定されたがんに対して有利な特定の用量範囲および/または投与レジメンが提供される。より具体的には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、高悪性度B細胞リンパ腫、FLに罹患している患者の治療に関して有利な特定の用量範囲および/または投与レジメンが本明細書で提供される。本明細書で提供される用量範囲および/または投与レジメンは、ヒトでの使用に対して安全であると評価され、および/またはB-NHLの治療に非常に有効であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】集団PKモデルが、標的媒介性薬物動態(TMDD)の飽和を予測した。各用量について、100人の仮想患者をシミュレートし、モデル予測TMDD飽和を箱ひげ図でまとめ、中央値(中央の水平の棒線)、25および75パーセンタイル(下部ヒンジおよび上部ヒンジ)、1.5*四分位範囲(ひげ)、および外れ値(点)を表した。
図2】ヒトPK/PDモデリング分析の概要。
図3】観察および較正されたモデルの予測のエプコリタマブ用量漸増試行の奏効率の比較。観察されたエプコリタマブ用量漸増試行の奏効率およびエプコリタマブ曝露3分位数の関数としての90%CIを、それぞれ黒丸およびエラーバーで示す。モデルの予測試行奏功率および90%予測区間を実線および網掛け領域によって示す。
図4】FLの統合されたPK/PDモデル予測三量体形成。各用量について、シミュレーション用の100人の仮想患者および最初の84日間にわたって形成された三量体のモデル予測平均数を腫瘍細胞の数によって正規化させ、中央値(中央の水平な棒線)、25および75パーセンタイル(下部ヒンジおよび上部ヒンジ)、1.5*四分位範囲(ひげ)および外れ値(点)を表す箱ひげ図でまとめた。
図5】DLBCL/HGBCLについての統合された薬物動態/薬力学モデルでの予測された三量体形成。各用量について、エプコリタマブ増大試験における100人の仮想患者をシミュレートし、腫瘍細胞の数によって正規化された、最初の84日間にわたって形成された三量体のモデル予測平均数を箱ひげ図でまとめた。
図6】統合されたPK/PDモデルは、FL患者に対するエプコリタマブ増大試験の奏効率を予測した。各用量について、エプコリタマブ増大試験における100人の仮想患者をシミュレートし、モデルの予測された試験奏効率を箱ひげ図でまとめ、中央値(中央の水平な棒線)、25および75パーセンタイル(下ヒンジおよび上ヒンジ)、1.5*四分位範囲(ひげ)および外れ値(点)を表した。
図7】統合されたPK/PDモデルは、DLBCL/HGBCL患者に対するエプコリタマブ増大試験の奏効率を予測した。各用量について、エプコリタマブ増大試験における100人の仮想患者をシミュレートし、モデルの予測された試験奏効率を箱ひげ図でまとめ、中央値(中央の水平な棒線)、25および75パーセンタイル(下ヒンジおよび上ヒンジ)、1.5*四分位範囲(ひげ)および外れ値(点)を表した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書における「免疫グロブリン」という用語は、2対のポリペプチド鎖、1対の低分子量軽(L)鎖および1対の重(H)鎖からなり、4つすべてがジスルフィド結合によって相互接続されている、構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けられている。例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照されたい。簡潔には、各重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHまたはVと略す)および重鎖定常領域(本明細書ではCHまたはCと略す)から構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3から構成される。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、非常に柔軟である。ヒンジ領域のジスルフィド結合は、IgG分子の2つの重鎖間の相互作用の一部である。各軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVと略される)および軽鎖定常領域(本明細書ではCLまたはCと略される)から構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLで構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在しながら、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変領域(または配列および/または構造的に定められたループの形態で超可変であり得る、超可変領域)に、さらに細分することができる。各VHおよびVLは通常、次の順序、つまりFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された、3つのCDRと4つのFRから構成される(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196,901-917(1987))も参照されたい。特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書のCDR配列は、IMGT規則により特定される(Brochet X.,Nucl Acids Res.2008;36:W503-508 and Lefranc MP.,Nucleic Acids Research 1999;27:209-212;また、インターネットhttp address http://www.imgt.org/を参照されたい)。特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本発明における定常領域のアミノ酸の位置への言及は、EUのナンバリングに従う((Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242))。例えば、本明細書の配列番号15は、IgG1重鎖定常領域のEUのナンバリングでのアミノ酸の位置118~447位を示す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「位置...に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖のアミノ酸の位置の番号を指す。他の免疫グロブリンの対応するアミノ酸の位置は、ヒトIgG1とのアラインメントによって見出され得る。したがって、別の配列のアミノ酸またはセグメント「に対応する」1つの配列のアミノ酸またはセグメントは、典型的にはデフォルト設定で、ALIGN、ClustalWまたは同様の標準的な配列アラインメントプログラムを使用して、他のアミノ酸またはセグメントとアライメントするものであり、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有する。配列、または配列のセグメントを整列させ、それによって本発明によるアミノ酸の位置に対する配列の対応する位置を判定する方法は、当技術分野で周知であると考えられる。
【0015】
本発明の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、典型的な生理学的条件下で、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間以上など、または任意の他の関連する機能的に定められた期間(例えば、抗原への抗体結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強および/または調節するのに十分な時間、および/または抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)の重要な期間の半減期で、抗原に特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそれらいずれかの誘導体を指す。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「抗体結合領域」という用語は、抗原と相互作用し、VH領域とVL領域の両方を含む領域を指す。抗体という用語は、本明細書で使用される場合、単一特異性抗体だけでなく、複数、例えば2つ以上、例えば3つ以上の異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体の定常領域(Ab)は、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞など)および補体活性化の古典的経路における第1の成分であるC1qなどの補体システムの成分を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。上記のように、本明細書における抗体という用語は、特に明記しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、完全な長さの抗体の断片によって行われ得ることが示されている。「抗体」という用語に包含される抗原結合断片の例には、(i)Fab’もしくはFab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片、または国際公開第2007059782号(Genmab)に記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインから本質的になるFv断片、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれる(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;21(11):484-90)dAb断片(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科動物またはナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5(1):111-24)、および(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、合成リンカーによって連結され得、このリンカーはVLおよびVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらを作製することを可能にするものである(一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv)として知られており、例えばBird et al.,Science 242,423-426(1988)およびHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照されたい)。そのような一本鎖抗体は、特に明記されない限り、または文脈によって明確に示されていない限り、抗体という用語に包含される。そのような断片は一般に抗体の意味の範囲内に含まれるが、それらは集合的におよびそれぞれ独立して、本発明の固有の特徴であり、異なる生物学的特性および有用性を示す。本発明の文脈におけるこれらおよび他の有用な抗体断片、ならびにそのような断片の二重特異性フォーマットは、本明細書でさらに論じられる。抗体という用語は、特に明記しない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに酵素切断、ペプチド合成、および組換え技術などの任意の公知の技術によって得られる抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片(抗原結合断片)も含むということがまた、理解されるべきである。生成された抗体は、いずれかのアイソタイプを有し得る。本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM)を指す。特定のアイソタイプ、例えばIgG1が本明細書で言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプの配列、例えば特定のIgG1の配列に限定されないが、抗体が他のアイソタイプよりもそのアイソタイプ、例えばIgG1に配列が近いことを示すために使用される。したがって、例えば、本発明のIgG1抗体は、定常領域の変異を含む、天然に存在するIgG1抗体の配列変異体であり得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性と親和性を示す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指す。ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスなどの、トランスジェニックまたはトランスクロモソーマル非ヒト動物から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって、生成され得る。
【0017】
本発明の文脈における「二重特異性抗体」または「bs」または「bsAb」という用語は、異なる抗体配列によって定められる2つの異なる抗原結合領域を有する抗体を指す。二重特異性抗体は、任意の形式のものであり得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、「半分子」、「Fabアーム」および「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖対を指す。
【0019】
二重特異性抗体が、第1の親抗体「に由来する」半分子抗体、および第2の親抗体「に由来する」半分子抗体を含むと記載されている場合、「に由来する」という用語は、任意の公知の方法によって、前記第1および第2の親抗体のそれぞれからの前記半分子を、得られた二重特異性抗体に再結合することによって、二重特異性抗体が生成されたことを示す。これに関連して、「組換え」は、どのような特定の組換え方法によっても限定されることが意図されず、したがって、例えば、半分子交換(「制御されたFabアーム交換」としても知られる)による組換え、同様に、核酸レベルでの、および/または、同じ細胞における2つの半分子の共発現による組換えを含めて、本明細書において下段に記載される二重特異性抗体を産生するための方法のすべてを含む。
【0020】
「完全な長さ」という用語は、抗体との関連で使用される場合、抗体が断片ではないが、そのアイソタイプについて自然界で通常見られる特定のアイソタイプのドメイン、例えばIgG1抗体のVH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VLおよびCLドメインのすべてを含むことを示す。完全な長さの抗体を操作することができる。「完全な長さ」抗体の例は、エプコリタマブである。
【0021】
本明細書で使用される場合、文脈によって矛盾しない限り、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの2つの重鎖のFc配列からなる抗体領域を指し、前記Fc配列は、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体タンパク質における第1のCH3領域と第2のCH3領域との間の相互作用を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「第1および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体タンパク質の第1のCH3領域と別の第1のCH3領域との間の相互作用、および第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体タンパク質の第2のCH3領域と別の第2のCH3領域との間の相互作用を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、所定の抗原への抗体の結合に関連する「結合」という用語は、典型的には、リガンドとして抗体および分析種として抗原を使用するOctet HTX機器のバイオレイヤー干渉法(BLI)技術などによって判定された場合、約10-6M以下、例えば10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11M以下のKに対応する親和性での結合であり、それにおいて、抗体は、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)へ結合するKよりも少なくとも十分の1以下、例えば100分の1以下、例えば1,000分の1以下、例えば10,000分の1以下、例えば100,000分の1以下のKに対応する親和性で、所定の抗原に結合する。Kが結合する量がより少ないことは、抗体のKに依存するので、抗体のKが非常に少ない場合、抗原とKが結合する量は、Kが非特異的抗原と結合するよりも少なく、少なくとも1万倍(すなわち、抗体は高度に特異的である)であり得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「K」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。本明細書で使用される場合、親和性とKは逆の関係にあり、すなわち、より高い親和性はより低いKを指すことを意図し、より低い親和性はより高いKを指すことを意図する。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の抗体を単離する。本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図する。好ましい実施形態において、CD20およびCD3に特異的に結合する単離された二重特異性抗体はさらに、CD20またはCD3に特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に含まない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「CD3」という用語は、T細胞共受容体タンパク質複合体の一部であり、4つの異なる鎖で構成されるヒトクラスター分類の3タンパク質を指す。CD3はまた、他の種に見られるため、「CD3」という用語は、文脈と矛盾しない限り、ヒトCD3に限定されない。哺乳動物では、複合体は、CD3γ(ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖UniProtKB/Swiss-Prot No P09693、またはカニクイザルCD3γ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI7)、CD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No P04234、またはカニクイザルCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI8)、2つのCD3ε(イプシロン)鎖(ヒトCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No P07766;カニクイザルCD3εUniProtKB/Swiss-Prot NoQ95LI5;またはアカゲザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No G7NCB9)、およびCD3ζ鎖(ゼータ)鎖(ヒトCD3ζUniProtKB/Swiss-Prot No P20963、カニクイザルCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No Q09TK0)を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として知られる分子と会合し、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。TCRおよびCD3分子は共にTCR複合体を含む。
【0028】
「CD3抗体」または「抗CD3抗体」は、抗原CD3、特にヒトCD3ε(イプシロン)に特異的に結合する抗体である。
【0029】
「ヒトCD20」または「CD20」という用語は、ヒトCD20(UniProtKB/Swiss-Prot No P11836)を指し、腫瘍細胞を含む細胞によって天然に発現される、またはCD20遺伝子もしくはcDNAでトランスフェクトされた細胞で発現されるCD20の任意の変異体、アイソフォームおよび種ホモログを含む。種ホモログには、アカゲザルCD20(アカゲザル;UniProtKB/Swiss-Prot No H9YXP1)およびカニクイザルCD20(カニクイザル;UniProtKB No G7PQ03)が含まれる。
【0030】
「CD20抗体」または「抗CD20抗体」は、抗原CD20、特にヒトCD20に特異的に結合する抗体である。
【0031】
「CD3xCD20抗体」、「抗CD3xCD20抗体」、「CD20xCD3抗体」または「抗CD20xCD3抗体」は、2つの異なる抗原結合領域を含む二重特異性抗体であり、その1つは抗原CD20に特異的に結合し、その1つはCD3に特異的に結合する。
【0032】
本明細書における「DuoBody-CD3xCD20」は、それぞれ配列番号24および配列番号25で定められるような第1の重鎖および軽鎖対を含み、配列番号26および配列番号27で定められるような第2の重鎖および軽鎖対を含むIgG1二重特異性CD3xCD20抗体を指す。第1の重鎖および軽鎖の対は、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する結合領域を含み、第2の重鎖および軽鎖の対は、ヒトCD20に結合する結合領域を含む。第1の結合領域は、配列番号6および7によって定義されるVHおよびVL配列を含み、第2の結合領域は、配列番号13および14によって定義されるVHおよびVL配列を含む。この二重特異性抗体は、国際公開第2016/110576号に記載されているように調製することができる。
【0033】
本発明はまた、実施例の抗体の重鎖、軽鎖、VL領域、VH領域または1つもしくは複数のCDRの機能的変異体を含む抗体を提供する。抗体との関連で使用される重鎖、軽鎖、VL、VH、またはCDRの機能的変異体は、依然として、抗体が、CD20および/またはCD3の特定のエピトープに対する親和性および/または特異性/選択性、Fc不活性、ならびに半減期、Tmax、CmaxなどのPKパラメータを含む、「参照」および/または「親」抗体の機能的特徴の少なくともかなりの割合(少なくとも約90%、95%以上)を保持することを可能にする。
【0034】
そのような機能的変異体は、典型的には、親抗体と意味ある配列同一性を保持し、および/または実質的に同様の長さの重鎖および軽鎖を有する。2つの配列間の同一性率は、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要があるギャップの数と各ギャップの長さを考慮して、シーケンスによって共有される同じ位置の数(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)の関数である。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性率は、例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Miller Comput.Appl.Biosci 4,11-17(1988)のアルゴリズムを使用して、PAM120ウェイト残余表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を用いて、決定できる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性率は、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48,444-453(1970)のアルゴリズムを用いて決定できる。
【0035】
例示的な変異体には、主に保存的置換によって親抗体配列の重鎖および/または軽鎖、VHおよび/またはVLおよび/またはCDR領域とは異なるもの、例えば、変異体における置換のうちの10個、例えば9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個が、保存的アミノ酸残基置換であり得るものが含まれる。
【0036】
本発明の文脈において、保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸のクラスの中での置換によって定義され得る。
【表1】
【0037】
本発明の文脈において、以下の注記、すなわちi)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えばK409Rと記載され、これは、アルギニンによる位置409におけるリジンの置換を意味すること、およびii)特定の変異体について、任意のアミノ酸残基を示すためのコードXaaおよびXを含む、特定の3文字または1文字のコードが使用されることが、特に指示しない限り、突然変異を説明するために使用される。したがって、409位のアルギニンによるリジンの置換は:K409Rと呼称され、409位の任意のアミノ酸残基によるリジンの置換はK409Xと呼称される。位置409におけるリジンの欠失の場合、それはK409*によって示される。
【0038】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合能を有するタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面グループからなり、通常、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープおよび非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば特異的抗原結合ペプチドによって効果的にブロックまたは被覆されるアミノ酸残基を含み得る(換言すれば、アミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリントの範囲内である)。
【0039】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、可変領域が非ヒト種(例えば、げっ歯類に由来する)に由来し、定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体を指す。治療用途のためのキメラモノクローナル抗体は、抗体免疫原性を低下させるために開発されている。キメラ抗体の文脈で使用される「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域を指す。キメラ抗体は、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning:A laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,Ch.15に記載されているような標準的なDNA技術を使用することにより、生成できる。キメラ抗体は、遺伝子操作または酵素が操作された組換え抗体であり得る。キメラ抗体を作製することは当業者が公知のことであり、したがって、本発明によるキメラ抗体の作製は、本明細書に記載される以外の方法によって行われ得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインとを含む、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同ヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)にグラフトすることによって達成することができる(国際公開第92/22653号および欧州特許第0629240号明細書参照)。親抗体の結合親和性および結合特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)からヒトフレームワーク領域へのフレームワーク残基の置換(復帰突然変異)が必要とされ得る。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を同定するのに役立ち得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、非ヒトアミノ酸配列に対する1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を含んでいてもよいヒトフレームワーク領域、および完全ヒト定常領域を含み得る。Duobody-CD3xCD20において本明細書で使用されるCD3アームのVHおよびVLは、ヒト化抗原結合領域を表す。必ずしも復帰突然変異ではないさらなるアミノ酸修飾を適用して、親和性および生化学的特性などの好ましい特徴を有するヒト化抗体を得ることができていてもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。Duobody-CD3xCD20において本明細書で使用されるCD20アームのVHおよびVLは、ヒト抗原結合領域を表す。本発明のヒトモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む様々な技術によって産生され得る。体細胞ハイブリダイゼーション治療が原則として好ましいが、モノクローナル抗体を産生するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルスもしくは発がん性の形質転換またはヒト抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ技術を使用することができる。ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための適切な動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常によく確立された治療である。融合のために免疫化脾細胞を単離するための免疫化プロトコルおよび技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合の治療も公知である。したがって、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、マウス系またはラット系ではなく、ヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルマウスまたはラットを用いて作製することができる。したがって、1つの実施形態において、ヒト抗体は、動物免疫グロブリン配列の代わりにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物、例えば、マウスまたはラットから得られる。そのような実施形態では、抗体は、動物に導入されたヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来するが、最終抗体配列は、内因性動物抗体機構による体細胞高頻度変異および親和性成熟によって前記ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列がさらに改変された結果であり、例えば、Mendez et al.1997 Nat Genet.15(2):146-56を参照されたい。Duobody-CD3xCD20において本明細書で使用されるCD20アームのVHおよびVLは、ヒト抗原結合領域を表す。
【0042】
「還元条件」または「還元環境」という用語は、基質、ここでは抗体のヒンジ領域中のシステイン残基が酸化されるよりも還元される可能性が高い状態または環境を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、発現ベクター、例えば本発明の抗体をコードする発現ベクターが導入された細胞を指すことを意図している。組換え宿主細胞としては、例えば、トランスフェクトーマ、例えばCHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6またはNS0細胞、およびリンパ球性細胞が挙げられる。
【0044】
「治療」という用語は、症状または疾患の状態を緩和、改善、停止または根絶(治癒)する目的での本発明の治療活性抗体の有効量の投与を指す。
【0045】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望の治療の結果を達成するために、必要な投与量および期間での有効な量を指す。抗体の治療有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、抗体または抗体部分の任意の毒性または有害作用が治療的に有益な作用によって上回る量である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「緩衝剤」という用語は、薬学的に許容される緩衝剤を表す。「緩衝剤」という用語は、溶液のpHの値を、例えば許容範囲内に維持する薬剤を包含し、限定するものではないが、酢酸塩、ヒスチジン、TRIS(登録商標)(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、クエン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩などを含む。一般に、本明細書で使用される場合、「緩衝剤」は、約5~約6、好ましくは約5.5のpHの範囲に適したpKaおよび緩衝能力を有する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」は、表面への薬物の吸着、およびまたは凝集を防ぐために、医薬製剤に典型的に使用される化合物である。さらに、界面活性剤は、2つの液体間または液体と固体との間の表面張力(または界面張力)を低下させる。例えば、例示的な界面活性剤は、非常に低い濃度(例えば、5% w/v以下、例えば3% w/v以下、例えば1% w/v以下、例えば0.4% w/v以下、例えば0.1% w/v未満、例えば0.04% w/v)で存在する場合、表面張力を著しく低下させることができる。界面活性剤は両親媒性であり、これは、界面活性剤が通常、親水性基と疎水性基または親油性基の両方から構成され、したがって水溶液においてミセルまたは同様の自己集合構造を形成することができることを意味する。薬学的に使用するための公知の界面活性剤としては、グリセロールモノオレエート、塩化ベンゼトニウム、ドキュセートナトリウム、リン脂質、ポリエチレンアルキルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウムおよびトリカプリリン(アニオン性界面活性剤);塩化ベンザルコニウム、シトリミド、塩化セチルピリジニウムおよびリン脂質(カチオン性界面活性剤);およびαトコフェロール、グリセロールモノオレエート、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビンタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステラレート、ポリオキシルヒドロキシステアレート、ポリオキシルグリセリド、ポリソルベート、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンエステルスクロースパルミテート、スクロースステアレート、トリカプリリンおよびTPGS(非イオン性および両性イオン性界面活性剤)が挙げられる。
【0048】
本明細書における関心対象の「希釈剤」は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に安全かつ非毒性であり)、医薬組成物の希釈液の調製に有用なものである。好ましくは、本発明の組成物のこのような希釈は、抗体濃度のみを希釈し、緩衝剤および安定剤を希釈しない。したがって、好ましい実施形態では、希釈剤は、本発明の医薬組成物に存在するのと同じ濃度の緩衝剤および安定剤を含有する。さらなる例示的な希釈剤には、滅菌水、静菌性注射用水(BWFI)、好ましくは酢酸緩衝剤であるpH緩衝剤、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が含まれる。好ましい実施形態では、希釈剤は、酢酸緩衝剤およびソルビトールを含むか、またはそれらから本質的になる。
【0049】
「医薬組成物」および「医薬製剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0050】
実施形態
一態様において、本発明は、ヒト対象におけるB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)を治療する方法であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が、配列番号6のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第1の結合アーム;ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第2の結合アーム
を含む、二重特異性抗体を、それを必要とする対象に皮下(sc)で投与することを含み、
前記二重特異性抗体を少なくとも24mgの用量で投与する方法を提供する。
【0051】
別の態様において、本発明は、ヒト対象におけるB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)を治療する方法であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が、配列番号6のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第1の結合アーム;ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第2の結合アーム
を含む、不活Fc領域を有する完全な長さの抗体である二重特異性抗体を、それを必要とする対象に皮下で投与することを含み、
前記二重特異性抗体を少なくとも24mgの用量で投与する方法を提供する。
【0052】
さらに別の態様において、本発明は、ヒト対象におけるB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)を治療する方法であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が、配列番号6のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第1の結合アーム;ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第2の結合アーム
を含む、完全な長さの抗体である二重特異性抗体を、それを必要とする対象に皮下で投与することを含み、
前記二重特異性抗体を少なくとも24mgの用量で投与する方法を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、ヒト対象におけるB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)を治療する方法であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が、配列番号6のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第1の結合アーム;ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第2の結合アーム
を含む、不活Fc領域を含む二重特異性抗体を、それを必要とする対象に皮下で投与することを含み、
前記二重特異性抗体を少なくとも24mgの用量で投与する方法を提供する。
【0054】
本明細書において、治療方法、すなわちヒト対象のB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療方法について言及されるとき、その方法は、それを必要とするヒト対象の皮下に本発明による二重特異性抗体を投与することを含み、それは好ましくは完全な長さの抗体であり、かつ/または不活Fc領域を含み、別言すると、本発明による二重特異性抗体も、ヒト対象におけるB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療において使用するため、言及され、本発明による二重特異性抗体を、それを必要とするヒト対象の皮下に投与することを使用が含み、それは好ましくは完全な長さの抗体であり、かつ/または不活Fc領域を含むことが理解される。したがって、本明細書では、本明細書で定義されるCD3およびCD20を標的とする二重特異性抗体でB-NHLを治療する方法が言及され、ヒト対象におけるB-NHLの治療に使用するためのCD3およびCD20を標的とする前記二重特異性抗体も言及される。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、B-NHLを治療する方法であって、前記二重特異性抗体が、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに配列GTNである配列番号4に示される配列および配列番号5に示される配列をそれぞれ有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第1の結合アーム、ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、前記第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9、および10に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに配列DASである配列番号11に示される配列および配列番号12に示される配列をそれぞれ有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第2の結合アームを含む。
【0056】
なおさらなる態様において、本発明は、B-NHLを治療する方法であって、前記二重特異性抗体が、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号6を含み、可変軽鎖領域が配列番号7を含む、第1の結合アーム、および
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号13を含み、可変軽鎖領域が配列番号14を含む、第2の結合アームを含む方法を提供する。
【0057】
非ホジキンリンパ腫(NHL)は、リンパ組織からの細胞の悪性形質転換を特徴とする疾患実体を表す。本明細書で定義されるB細胞起源のNHL(「B-NHL」または「B細胞NHL」)は、NHLのより大きなコンテキスト内での多様な一連の新生物を構成する。これらは診断され、B-NHLサブタイプの区別は、組織学による形態学的特徴、表面マーカー(免疫組織化学/フローサイトメトリー)、染色体異常/転座(核型分析、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH))、および分子(遺伝子変異)の所見を含む、病理学者による(組織生検に基づく)標準的な分類基準を使用して、決定される。B-NHLは、参照により本明細書に含まれるWHO分類に基づいて診断および分類される(Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(Revised ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2017);Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2008))。
【0058】
手短に言えば、B-NHLは、典型的には、緩徐進行型(増殖が遅い)および侵襲性のサブタイプに分けられる。侵襲性B-NHLは高Ki67の発現を有するのに対して、低悪性度B-NHLは比較的低いKi67発現を有する。一般化として、緩徐進行型リンパ腫は治療に反応し、長年に及ぶ長期生存を伴って制御下(寛解状態)に保たれるが、治癒しない。侵襲性リンパ腫は通常、集中的な治療を必要とし、一部は永久的な治癒の見込みが高い。侵襲性B-NHLには、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)が含まれる。緩徐進行型B-NHLには、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、および小リンパ球性リンパ腫(SLL)が含まれる。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、すべてのNHL診断の約30%~40%を占めるNHLの最も一般的なタイプであり、次いでFL(すべてのNHL診断の20%~25%)である。B細胞リンパ腫の大部分は、CD19、CD20、CD22およびCD79bなどのB細胞マーカーを発現する。B細胞悪性腫瘍の生物学的不均一性は、個々の疾患の臨床的な経過および転帰に反映される。FL、MZL、およびSLLなどの無痛性疾患はゆっくりと進行し、生存期間の中央値は8~10年である。対照的に、DLBCL/HGBCLなどのより侵襲性の疾患は、無治療のままである場合、6ヶ月の生存期間中央値を有する。リンパ腫の大半の患者の診断時年齢の中央値は約60~65歳(WHO、2008年)である。
【0059】
したがって、本発明による方法は、B-NHLの治療をさらに含み、前記B-NHLは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)からなる群から選択される。
【0060】
別の態様では、本明細書で提供される本発明による方法は、FL、HGBCLまたはDLBCLの治療を含む。さらに別の態様では、本明細書で提供される本発明による方法は、FLの治療を含む。別の態様では、本明細書で提供される本発明による方法は、HGBCLの治療を含む。さらに別の態様では、本明細書で提供される本発明による方法は、DLBCLの治療を含む。別のさらなる態様では、本明細書で提供される本発明による方法は、HGBCLおよび/またはDLBCLの治療を含む。さらに別の態様では、本明細書で提供される本発明による方法は、FL、MCL、HGBCLまたはDLBCLの治療を含む。別の態様では、本明細書に記載の本発明による方法は、MCLの治療を含む。
【0061】
本明細書で定義される「DLBCL/HGBCL」または「DLBCLおよびHGBCL」または「DLBCLまたはHGBCL」は、参照により本明細書に組み込まれる、Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2008)、およびSwerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(Revised ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2017)で定義されるWHOの分類に従って、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫または高悪性度B細胞リンパ腫のいずれかとして分類されるB-NHLを指す。
【0062】
本明細書で定義される「FL」、すなわち濾胞性リンパ腫は、典型的には濾胞性または濾胞様の構造を形成する中心細胞および中心芽細胞として知られる特定の種類のB細胞に由来するB-NHLを指す。FLは、典型的には、何年も実質的な無変化が続く、ゆっくりとした疾患の経過を辿る。FLは、参照により本明細書に組み込まれる、Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2008)、およびSwerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(Revised ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2017)で定義されているWHOの分類に従って分類することができる。
【0063】
「MCL」、すなわちマントル細胞リンパ腫は、CD5+も含むサイクリンD1の発現をもたらす染色体転座t(11;14)を伴うB細胞リンパ腫を含む。本明細書で定義されるMCLには、参照により本明細書に組み込まれる、Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2008)and Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(Revised ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2017)で定義されるWHOの分類に従ってMCLとして分類されるB-NHLが含まれる。
【0064】
投与される二重特異性抗体の少なくとも24mgの用量、または任意の他の特定の用量に関して、この量は、実施例の節で定義されるエプコリタマブなどの完全な長さの抗体を表す二重特異性抗体の量を指すと理解される。したがって、別の言い方をすれば、少なくとも24mgの用量の二重特異性抗体を、本発明による二重特異性抗体の用量を投与する際に投与することを指し得、この場合前記用量は、少なくとも用量24mgのエプコリタマブの用量に対応する。例えば、エプコリタマブなどの完全な長さの抗体の分子量とは分子量が実質的に異なる抗体が使用される場合、投与される抗体の量を判定することができる。本明細書で定義されるこのように必要とされる抗体の量は、抗体の分子量をエプコリタマブなどの完全な長さの抗体の重量で除し、その結果に本明細書に記載される特定の用量を乗じることによって計算することができる。二重特異性抗体がDuobody CD3xCD20と非常に類似した特徴を有する限り、血漿中半減期、Fc不活性、および/またはCD3およびCD20の結合領域の特徴に関して、すなわちCDRおよびエピトープ結合特徴、例えばDuobody CD3xCD20の機能的変異体に関して、そのような抗体は本発明に従って企図されて、エプコリタマブなどの完全な長さの抗体について本明細書で定義される用量に対応する用量で投与され得る。
【0065】
上記のように、CD3およびCD20に結合する二重特異性抗体は皮下投与されるべきである。したがって、二重特異性抗体は、皮下(s.c.)投与に適合する、すなわち、本明細書で定義されるような選択された用量で医薬的に許容され得るs.c.投与を可能にする製剤および/または濃度を有するように、医薬組成物において製剤化される。好ましくは、皮下投与は注射によって行われる。例えば、企図され得る皮下製剤と適合するDuobody CD3xCD20の製剤が記載されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019155008号に記載されているように)。本発明による二重特異性抗体のための好ましい製剤は、5.5のpHを有する酢酸ナトリウム三水和物、酢酸、水酸化ナトリウム、ソルビトール、ポリソルベート80、注射用水を使用して製剤化され得る。
【0066】
本発明による二重特異性抗体に適した医薬組成物は、二重特異性抗体、20~40mMの酢酸塩、140~160mMのソルビトール、およびポリソルベート80などの界面活性剤を含むことができ、pHは5.3~5.6である。本発明による二重特異性抗体に適した医薬製剤は、5~100mg/mL、例えば48または60mg/mLの二重特異性抗体、30mMの酢酸塩、150mMのソルビトール、0.04% w/vのポリソルベート80の範囲の抗体の濃度を含み得、pHは5.5である。そのような製剤は、適切な投与および皮下投与を可能にするために、例えば製剤緩衝剤で適切に希釈され得る。いずれの場合も、医薬組成物の体積は、抗体の皮下投与を可能にするように適切に選択される。例えば、投与される体積は、約0.3mL~約3mL、例えば0.3mL~3mLの範囲である。投与される体積は、0.5mL、0.8mL、1mL、1.2mL、1.5mL、1.7mL、2mL、または2.5mLであり得る。投与される体積は0.5mLであり得る。投与される体積は0.8mLであり得る。投与される体積は1.2mLであり得る。投与される体積は1.5mLであり得る。投与される体積は1.7mLであり得る。投与される体積は2mLであり得る。投与される体積は2.5mLであり得る。一実施形態では、s.c.投与のための好ましい体積は約1mLである。別の実施形態では、s.c.投与のための好ましい体積は1mLである。
【0067】
上記のように、本発明による方法(またはCD3xCD20抗体の使用)は、B-NHLに罹患しているヒト患者を治療するためのものである。本発明による方法は、第1の治療であってもよく、またはそのような患者に施される第1の治療の一部であってもよいことが理解される。しかしながら、患者はB-NHLの先行の治療を受けている可能性がある。先行の治療は、化学療法、放射線療法、免疫療法、および標的療法、またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含み得るが、それらに限定されることはない。最も一般的には、標準治療は、CD20モノクローナル抗体、アルキル化剤およびアントラサイクリンを単独でまたは組み合わせて用いる治療を含む。本発明による方法および使用はまた、他の適切な治療と組み合わせて使用され得ることが理解される。
【0068】
例えば、侵襲性NHLの最初の治療のための最も一般的な化学療法の組み合わせは、CHOPと呼ばれ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾンの4つの薬物を含む。リツキシマブなどの抗CD20モノクローナル抗体を添加したものは、CHOP単独に対して改善したものであることが示され、R-CHOPとも呼ばれている。R-CHOPによる誘導は、DLBCLの第一選択治療における標準治療であり、FLにおけるより利用可能な第一標準治療の1つである。DLBCLでは、第二選択の治療には、集中的サルベージ治療(リツキシマブ/デキサメタゾン/高用量シタラビン/シスプラチン[R-DHAP]、リツキシマブ/イホスファミド/カルボプラチン/エトポシド[R-ICE]、またはリツキシマブ/ゲムシタビン/デキサメタゾン/シスプラチン[R-GDP])、引き続いて化学感受性であれば、自家造血幹細胞移植(HDT-ASCT)を伴う高用量化学療法が含まれる。年齢または併存症のために集中的なサルベージ治療およびHDT-ASCTに適格でないDLBCLの患者の場合、第二選択の治療には、リツキシマブ/ゲムシタビン/オキサリプラチン(R-GemOx)およびリツキシマブ/ベンダムスチン(RB)が含まれる。DLBCLの後期再発に対する明確な標準治療はないが、介入には、同種造血幹細胞移植、レナリドミド、イブルチニブ、およびキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法(Chavez et al.,Best Pract Res Clin Haematol,2018 Jun;31(2):135-146)が含まれる。
【0069】
したがって、さらなる実施形態では、本発明による方法において、B-NHLを有するヒト対象は、本発明による治療の前に少なくとも1つの方針の治療を受けている。別の実施形態では、B-NHLを有するヒト対象は、本発明による治療の前に、1つの方針の治療を受けている。別のさらなる実施形態では、B-NHLを有するヒト対象は、本発明による治療の前に2つの方針の治療を受けている。さらに別のさらなる実施形態では、B-NHLを有するヒト対象は、本発明による治療の前に3つの方針の治療を受けている。さらに別のさらなる実施形態では、B-NHLを有する対象が、本発明による治療の前に3つを超える方針の治療を受けたことがある。別のさらなる実施形態では、B-NHLを有する対象は、本発明による治療の前に1、2、3またはそれより多い方針の治療を受けたことがある。さらなる実施形態では、先行する方針の治療はR-CHOPを含む。さらに別のさらなる実施形態では、先行する方針の治療はCAR-T細胞療法を含む。
【0070】
B-NHLを有するヒト対象は、CD20陽性がんを有すると分類される。したがって、そのようなヒト対象が受けた可能性がある先行のがん治療には抗CD20mAbが含まれ、また、CD20を標的とする操作されたT細胞、例えばCAR-T療法も含まれ得る(Schuster SJ,Bishop MR,Tam CS,et al.Tisagenlecleucel in adult relapsed or refractory diffuse large B-cell lymphoma.N Engl J Med.2019;380(1):45-56)。そのような治療または任意の他の治療の間、B-NHLは、難治性であり得るか、または前記治療に対して再発し得る。したがって、本発明の1つの態様において、前記ヒト対象は、二重特異性抗体による治療の前に、CD20単一特異性抗体、例えばリツキシマブによる治療を受けている。さらに、CD20単一特異性抗体による前記先行の治療中に、B-NHLがんが再発したか、またはB-NHLがんが前記治療に対して難治性であった。CD20単一特異性抗体によるそのような先行の治療は、CD20単一特異性抗体がコンビナトリアルのアプローチにおいて使用された治療であり得る。
【0071】
さらなる実施形態において、前記二重特異性抗体は、少なくとも40mgの用量で投与される。別のさらなる実施形態において、前記二重特異性抗体は、30mg~100mgまたは35mg~90mgの範囲の用量で投与される。より好ましくは、別のさらなる実施形態において、前記二重特異性抗体は、40mg~70mgの範囲内の用量で投与される。別のさらなる実施形態において、前記二重特異性抗体は、少なくとも48mgの用量で投与される。別のさらなる実施形態において、前記二重特異性抗体は、少なくとも60mgの用量で投与される。前記二重特異性抗体を60mgの用量で投与することも企図され得る。別の実施形態において、前記二重特異性抗体は、72mgの用量で投与される。なおも別のさらなる実施形態において、前記二重特異性抗体は、84mgの用量で投与される。
【0072】
なおさらなる実施形態において、前記二重特異性抗体は、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67または69mgの用量で投与される。好ましい実施形態では、前記二重特異性抗体を48mgの用量で投与する。
【0073】
前記用量は好ましくは毎週投与され、好ましくは前記用量は(少なくとも)4回投与される。前記毎週の投与の後、隔週投与とも呼ばれる2週間に1回の投与までの投与間隔を短縮することができる。このような隔週投与は、(少なくとも)6回行うことができる。前記隔週投与の後、間隔をさらに4週間に1回に短縮することができる。このような4週間ごとの投与は、長期間にわたって行われ得る。
【0074】
本明細書では、本明細書上で言及した前記用量は、例えば前記毎週の用量、2週間ごとの前記用量および/または4週間ごとの前記用量が同じレベルで投与される上記シナリオでは、フル用量またはフラット用量とも呼ばれ得ることが理解される。したがって、48mgの用量が選択される場合、好ましくは、例えば毎週の投与、隔週投与、および4週間ごとの各投与に、48mgの同じ用量が毎回投与される。前記用量(これは、フル用量またはフラット用量と呼ぶことができる)を投与する前に、プライミング、またはプライミングおよびその後の中間(第2のプライミング)用量を、投与することができる。これは、本発明によるCD3およびCD20の両方に結合する二重特異性抗体による治療中に起こり得る副作用である、CRSのリスクおよび重症度を効果的に軽減することを可能にし得るので、有利であり得る。そのようなプライミング、またはプライミングおよび中間用量は、フラット用量またはフル用量と比較してより低い用量である。
【0075】
したがって、本発明による方法または使用では、前記毎週の用量を投与する前に、前記二重特異性抗体のプライミング用量を投与することができる。前記プライミング用量は、好ましくは、前記毎週の用量の第1の用量を投与する1週間前に投与される。20~2000μgの範囲、好ましくは50~1000μgの範囲、より好ましくは70~350μgの範囲のプライミング用量を選択することができる。選択され得るプライミング用量は、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、350、400、450、500、600、700、800、900または1000μgである。選択され得る好ましいプライミング用量は、160μgの完全な長さの二重特異性抗体である。
【0076】
また、本発明による方法または使用では、前記プライミング用量を投与した後、前記毎週の用量を投与する前に、前記二重特異性抗体の中間用量を投与することができる。好ましくは、前記プライミング用量は、2週間投与され、前記中間用量は、前記毎週の用量の最初の用量を投与する1週間前に、投与される。前記中間用量は、典型的には、プライミング用量と、フラット用量またはフル用量との間の範囲から選択される。前記中間用量は、200~8000μgの範囲、または好ましくは400~4000の範囲、より好ましくは600~2000μgの範囲で選択され得る。選択され得る中間用量は、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500または1600μgである。選択され得る好ましい中間用量は、800μgの完全な長さの二重特異性抗体である。
【0077】
したがって、別の実施形態において、本発明の方法および使用において企図され得る有利な投薬レジメンは、二重特異性抗体を28日間サイクルで皮下投与することを含み得、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目に、第1のサイクルの間、プライミング用量を1日目に投与し、中間用量を8日目に投与し、48mgの用量を15、22日目に投与し、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、48mgの用量を投与し、
c)サイクル4~9の1、15日目、48mgの用量を投与し、また
d)さらなる後続サイクルの1日目に、48mgの用量を投与する。
【0078】
またさらなる別の実施形態において、本発明の方法および使用において企図され得る有利な投薬レジメンは、二重特異性抗体を28日間サイクルで皮下投与することを含み得、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目に、第1のサイクルの間、160μgのプライミング用量を1日目に投与し、800μgの中間用量を8日目に投与し、48mgの用量を15、22日目に投与し、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、48mgの用量を投与し、
c)サイクル4~9の1、15日目、48mgの用量を投与し、また
d)さらなる後続サイクルの1日目に、48mgの用量を投与する。
【0079】
さらに別の実施形態において、本発明の方法および使用において企図され得る有利な投薬レジメンは、二重特異性抗体を28日間サイクルで皮下投与することを含み得、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目に、第1のサイクルのためプライミング用量を1日目に、中間用量を8日目に、60mgの用量を15、22日目に投与し、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、60mgの用量を投与し、
c)サイクル4~9の1、15日目、60mgの用量を投与し、また
d)さらなる後続サイクルの1日目に、60mgの用量を投与する。
【0080】
また別のさらなる別の実施形態において、本発明の方法および使用において企図され得る有利な投薬レジメンは、二重特異性抗体を28日間サイクルで皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目に、第1のサイクルの間、160μgのプライミング用量を1日目に投与し、800μgの中間用量を8日目に投与し、60mgの用量を15、22日目に投与し、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、60mgの用量を投与し、
c)サイクル4~9の1、15日目、60mgの用量を投与し、
d)さらなる後続サイクルの1日目に、60mgの用量を投与する。
【0081】
一実施形態では、代替的に、第1のサイクルの第1日および第8日に、80μgのプライミング用量および800μgの中間用量が選択される。一実施形態では、代替的に、第1のサイクルの第1日および第8日に、80μgのプライミング用量および1200μgの中間用量が選択される。一実施形態では、代替的に、第1のサイクルの第1日および第8日に、80μgのプライミング用量および1600μgの中間用量が選択される。別の実施形態では、第1のサイクルの第1日および第8日に、160μgのプライミング用量および1200μgの中間用量が選択される。別の実施形態では、最初のサイクルの1日目および8日目に、160μgのプライミング用量および1600μgの中間用量が選択される。
【0082】
上記のように、そのような使用および方法は、B-NHLの治療、より好ましくはFL、DLBCL、および/またはHGBCLの治療に有利である。本発明による前記治療は、上記で概説した治療レジメンを使用して連続的に維持される。進行性疾患が発症すると、許容できない毒性が生じるか、または患者の死亡によって、治療を終了され得る。
【0083】
サイトカイン放出症候群(CRS)は、CD3を係合することなどによる免疫エフェクター細胞の活性化によって機能する免疫細胞および二重特異的抗体に基づくアプローチを利用する手段および方法がヒト対象において使用される場合に起こり得る(Lee et al.,Biol Blood Marrow Transplant.2019 Apr;25(4):625-638、参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、CRSの緩和は、本発明による方法および使用において好ましい。CRSの緩和の一部として、プライミング用量および/または中間用量の選択は、本発明に従って少なくとも24mg用量、すなわちフル用量またはフラット用量を投与する前に非常に好ましい。CRSは、標準的な慣行に従って分類することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Lee et al.,Biol Blood Marrow Transplant.2019 Apr;25(4):625-638に概説されている)。CRSは、発熱、悪心、嘔吐および悪寒などの有害作用をもたらし得るサイトカイン、例えば炎症促進性サイトカイン、例えばIL-6、TNF-αまたはIL-8の過剰放出を含み得る。したがって、エプコリタマブなどの二重特異性抗体の独特の抗腫瘍活性にもかかわらず、それらの免疫学的作用様式は、望ましくない「側」の効果、すなわち望ましくない炎症反応の誘導を誘発し得る。したがって、患者は、起こり得るCRSの症状を緩和するために、例えば鎮痛薬、解熱薬、および/または抗炎症薬による併用治療、予防および/または前投薬にさらに供され得る。
【0084】
一実施形態では、本発明による方法および使用における前記ヒト対象は、サイトカイン放出症候群の予防について治療される。好ましくは、そのような予防には、コルチコステロイドの投与が含まれる。一実施形態における前記予防は、二重特異性抗体と同じ日に施される。前記予防は、翌日にも、より好ましくはその後の2日目および3日目にも施すことができる。前記予防は4日目にさらに施され得ていてもよい。予防などのさらなる薬物療法に関連する場合、2日目、3日目および4日目は、1日目に投与される二重特異性抗体の投与に関連することが理解される。したがって、例えば、15日目のサイクルで抗体が投与され、予防が施される場合、2、3および4日目に対応する前記予防は、サイクルの16、17および18日目である。さらなる実施形態において、前記予防は、二重特異性抗体が投与される日、およびその後の2~3日目に施され、4日目は任意である。前記予防が二重特異性抗体と同じ日に施される場合、前記予防は、好ましくは、前記二重特異性抗体の投与の30~120分前に施される。好ましくなり得るコルチコステロイドは、例えば100mgの静脈内用量でのプレドニゾロン、または経口での用量を含むその等価物である。
【0085】
さらに、一実施形態では、本発明による方法および使用における前記ヒト対象は、注射に対する反応を減少させるために前投薬で治療される。一実施形態では、前記前投薬は抗ヒスタミン薬の投与を含む。別の実施形態では、前記前投薬は、解熱薬の投与を含む。さらなる実施形態では、前記前投薬には、全身性抗ヒスタミン薬および解熱薬が含まれる。選択され得る抗ヒスタミン剤は、例えば、静脈内または経口での用量50mgでのジフェンヒドラミン、またはその等価物である。選択され得る解熱薬は、アセトアミノフェン、例えば650~1000mgの経口での用量またはその等価物である。より好ましくは、前記前投薬は、二重特異性抗体と同じ日に、最も好ましくは二重特異性抗体の注射の前に、例えば二重特異性抗体の前記投与の30~120分前に投与される。
【0086】
前記前投薬および/または予防は、少なくとも治療の初期段階で与えられるべきであることが理解される。より好ましくは、二重特異性抗体の最初の4回の投与の間である。例えば、前記予防は、二重特異性抗体の投与の最初の28日間のサイクルの間に、本明細書の上段で記載されているように施され得る。前記前投薬は、好ましくは、前記第1のサイクルの間にも与えられる。
【0087】
通常、初期治療中の反応のリスクは、数回の投与後、例えば最初の4回の投与後(第1のサイクル)に、低下する。したがって、ヒト対象がCRSを経ていない場合、CRSの予防薬を中止することができる。しかしながら、好ましくは、ヒト対象がグレード1を超えるCRSを経る場合、CRSの予防を継続し得る。同様に、前投薬はまた継続していてもよい。
【0088】
さらなる実施形態において、本明細書に記載されるような本発明による方法および使用では、前記予防は、サイクル1での二重特異性抗体の4回目の投与後に、ヒト対象がグレード1を超えるCRSを経る28日間の第2のサイクルの間に投与される。さらに、前記予防は、前のサイクルの二重特異性抗体の最後の投与において、ヒト対象がグレード1を超えるCRSを経る場合、その後のサイクル中に継続することができる。任意の前投薬が、第2のサイクルの間に投与されていてもよい。さらなる前投薬は、後続のサイクルの間に同様に投与されていてもよい。
【0089】
一実施形態では、CRSの前投薬および予防が施され、例えば抗ヒスタミン剤が50mgなどの静脈内もしくは経口での用量のジフェンヒドラミンまたはその等価物であり得る抗ヒスタミン剤、例えば、650~1000mgの経口での用量またはその等価物であるアセトアミノフェンであってもよい解熱薬、および
コルチコステロイドの投与であって、コルチコステロイドがプレドニゾロンであり得る、例えば100mgの静脈内用量またはその等価物でのコルチコステロイドの投与があり、前記前投薬および予防が、二重特異性抗体の投与の30~120分前に投与される。その後の2、3日目に、また4日目であっていてもよい、コルチコステロイドの全身投与を含むさらなる予防が施され、このコルチコステロイドは、例えば100mgの静脈内用量またはその等価物でプレドニゾロンであり得る。好ましくは、その後の2、3および4日目に、コルチコステロイドの全身投与を含む前記さらなる予防が施され、このコルチコステロイドは、例えば100mgの静脈内用量またはその等価物でプレドニゾロンであり得る。そのような前投薬および予防スケジュールは、好ましくは、本発明による二重特異性抗体の最初の4回の投与の間に施される。例えば、本明細書に記載されるような二重特異性抗体投与の最初の28日間のサイクルの間である。さらに、後続のサイクルは、例えば前のサイクルの最後の投与の最中に発生するグレード1を超えるCRSの場合、同じ投与スケジュールを含むことができ、それにおいて投与スケジュールの一部としての前投薬は任意である。
【0090】
本明細書で提供される、提供される有利な用量および/または治療レジメンでは、CRSを十分に管理することができ、同時にB-NHLを効果的に制御および/または治療することを可能にする。実施例の節に示されるように、本明細書中に記載されるような方法および使用では、前記ヒト対象において、管理可能なサイトカイン放出症候群CRSが起こり得る。本発明による治療を受けているヒト対象は、標準的な慣例に従って定義されるグレード1のCRSを有し得る。本発明による治療を受けているヒト対象は、標準的な慣例に従って定義されるグレード2の管理可能なCRSを有し得る。したがって、本発明による治療を受けているヒト対象は、標準的な慣例に従って定義されるように、グレード1またはグレード2の管理可能なCRSを有し得る。CRSの標準的な分類によれば、グレード1のCRSには、少なくとも38℃までの発熱、低血圧なし、低酸素症なしが含まれ、グレード2のCRSには、少なくとも38℃までの発熱に加えて、昇圧剤を必要としない低血圧、および/または低流量鼻カニューレまたはブローバイによる酸素を必要とする低酸素症が含まれる。このような管理可能なCRSは、サイクル1の間に起こり得る。本発明による治療を受けているヒト対象はまた、標準的な慣例に従って定義される前記治療の間にグレード2を超えるCRSを有し得る。したがって、本発明による治療を受けているヒト対象はまた、標準的な慣例に従って定義されるように、前記治療中にグレード3のCRSを有し得る。このような管理可能なCRSは、サイクル1および後続のサイクル中にさらに発生し得る。
【0091】
前記ヒト対象は、本発明による方法および使用において発熱を経験し得る。疲労および注射部位の反応も起こり得る。ヒト対象は、神経毒性、部分発作、CRSに関連する失書症、またはCRSに関連する錯乱状態を経験し得る。さらに、前記ヒト対象は、腫瘍崩壊症候群を経験しないことが観察され得る。
【0092】
エプコリタマブの安全性プロファイルのために、エプコリタマブを投与するために患者を入院させる必要がない場合がある。さらなる実施形態では、B-NHLの治療のための本発明による方法および使用は、外来環境でのエプコリタマブの投与を含む。外来での管理は、入院を伴わない。別の実施形態では、患者は、第1のフル用量のみの投与のために入院する。前記第1のフル用量は、例えば、サイクル1の15日目に投与され、この場合、1日目および8日目はそれぞれ、本明細書に記載されるような漸増用量を含む。エプコリタマブを外来で使用するための本明細書に記載の方法および使用における好ましい用量には、最大60mgであり得るフル用量が含まれる。より好ましくは、外来で使用する際の投与量は48mgである。別の実施形態では、B-NHLの治療のための本発明による方法および使用は、専ら外来の環境でのエプコリタマブの投与を含む。
【0093】
本明細書に記載されるように、本発明による方法および使用において、CD3およびCD20を標的とすることを目的とする本発明による二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が、配列番号6のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含み、前記可変軽鎖領域が、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第1の結合アーム;ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、前記可変軽鎖領域が、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第2の結合アーム
を含む。
【0094】
CDR1、CDR2およびCDR3領域は、当技術分野で公知の方法を使用して、可変重鎖および軽鎖領域から同定することができる。前記可変重鎖領域および可変軽鎖領域からのCDR領域は、IMGT(Lefranc MP.et al.,Nucleic Acids Research,27,209-212,1999]およびBrochet X.Nucl.Acids Res.36,W503-508(2008)を参照されたい)に従って注釈を付けることができる。したがって、本発明による方法および使用においても開示されるが、CD3およびCD20を標的とすることを目的とする本発明による二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに配列GTNである配列番号4に示される配列および配列番号5に示される配列をそれぞれ有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第1の結合アーム、ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、前記第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9、および10に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに配列DASである配列番号11に示される配列および配列番号12に示される配列をそれぞれ有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第2の結合アームを含む。
【0095】
なおさらなる実施形態では、本発明による方法および使用において、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号6を含み、可変軽鎖領域が配列番号7を含む、第1の結合アーム、および
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号13を含み、可変軽鎖領域が配列番号14を含む、第2の結合アームを含む。
【0096】
前記のように、本発明による二重特異性抗体は、最も好ましくは完全な長さの抗体であり、不活Fc領域を有し得る。より好ましくは、CD3に対する第1の結合アームは、ヒト化抗体、好ましくは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015001085号に記載されるH1L1などの完全な長さのIgG1、λ(ラムダ)抗体)に由来し、および/または、CD20に対する第2の結合アームは、ヒト抗体、好ましくは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004035607号に記載されるクローン7D8などの完全な長さのIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。二重特異性抗体は、2つの半分子抗体から産生され得る。2つの半分子抗体の各々は、例えば、本明細書において配列番号6および7、ならびに配列番号13および14に列挙されるそれぞれの第1および第2の結合アームを含む。半抗体は、CHO細胞において産生され得、二重特異性抗体は、例えばFabアーム交換によって生成され得る。一実施形態では、本発明による前記二重特異性抗体は、Duobody CD3xCD20の機能的変異体である。
【0097】
本発明によれば、様々な定常領域またはその変異が企図され得る。それにもかかわらず、最も好ましくは、本発明による二重特異性抗体は、ヒトIgG1定常領域、例えば、配列番号15で定められるヒトIgG1定常領域、または任意の他の適切なIgG1アロタイプを含む。上記のように、二重特異性抗体の第1の結合アームは、好ましくはヒト化抗体、好ましくは完全な長さのIgG1、λ(ラムダ)抗体に由来し、したがってλ軽鎖定常領域を含む。より好ましくは、本明細書において定義される前記第1の結合アームは、配列番号22において定められるλ軽鎖定常領域を含む。さらに、二重特異性抗体の前記第2の結合アームは、ヒト抗体、好ましくは完全な長さのIgG1、κ(カッパ)抗体に由来し、したがってκ軽鎖定常領域を含む。より好ましくは、前記第2の結合アームは、配列番号23で定められるκ軽鎖定常領域を含む。
【0098】
定常領域は、二重特異性抗体の一部であるので、前記定常領域は、二重特異性抗体の効率的な形成/産生を可能にする、および/または不活Fc領域を設けるための修飾を含み得ることが理解される。そのような修飾は当技術分野で公知である。
【0099】
二重特異性抗体の種々のフォーマットおよび使用は当技術分野で公知であり(Kontermann;Drug Discov Today,2015 Jul;20(7):838-47および;MAbs,2012 Mar-Apr;4(2):182-97によるレビュー)、必ずしも特定の二重特異性フォーマットまたはその産生方法に限定されない。例えば、二重特異性抗体としては、限定されないが、(i)ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメインを有する二重特異性抗体;)、いわゆるノブ孔内分子(Genentech、国際公開第9850431号)、CrossMAb(Roche、国際公開第2011117329号)、または静電的に一致した分子(Amgen、欧州特許第1870459号明細書および国際公開第2009089004号;Chugai、米国特許第201000155133号明細書;Oncomed、国際公開第2010129304号)が挙げられ得る。
【0100】
好ましくは、本発明の二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1のFc配列を有する第1の重鎖と、第2のCH3領域を含む第2のFc配列を有する第2の重鎖とを含むFc領域を含み、第1および第2のCH3領域の配列は異なり、前記第1および第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が前記第1および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用の各々よりも強くなるようなものである。これらの相互作用およびそれらがどのようにして達成され得るかに関するさらなる詳細は、例えば、国際公開第2011131746号および国際公開第2013060867号(Genmab)に提示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態において、本発明による方法および使用における二重特異性抗体は、前記第1の重鎖に、(i)配列番号15のヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置のアミノ酸Lを含み、前記第2の重鎖に、配列番号15のヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置のアミノ酸RがRであるか、またはその逆であるアミノ酸Rを含む。
【0101】
本発明による抗体は、抗体のFc領域を不活性化または非活性化にするためのFc領域における修飾を含み得る。したがって、本明細書に開示される二重特異性抗体、一方または両方の重鎖は、そのような修飾を有さない二重特異性抗体と比較して、抗体がより少ない程度でFc媒介エフェクター機能を誘導するように、修飾され得る。Fc媒介エフェクター機能は、T細胞でのFc媒介CD69発現(すなわち、CD3抗体媒介Fcγ受容体依存性CD3架橋の結果としてのCD69発現)を判定することによって、Fcγ受容体に結合することによって、C1qに結合することによって、またはFcγRのFc媒介性架橋の誘導によって、測定することができる。特に、重鎖定常配列は、Fc媒介CD69発現が、野生型(非改変)抗体と比較した場合、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%または100%低下するように改変されていてもよく、前記Fc媒介CD69発現は、例えば国際公開第2015001085号の実施例3に記載されているようなPBMCベースの機能アッセイで判定される。重鎖定常配列および軽鎖定常配列の改変はまた、前記抗体へのC1qの結合の減少をもたらし得る。未改変の抗体と比較して、減少は少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%であり得、C1q結合はELISAによって判定され得る。さらに、前記抗体が、非改変の抗体と比較して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%または100%、低下したFc媒介性T細胞増殖を媒介するように改変され得るFc領域であり得、前記T細胞の増殖がPBMCベースの機能アッセイで測定される。例えばIgG1アイソタイプ抗体において修飾され得るアミノ酸位置の例としては、位置L234およびL235が挙げられる。したがって、本発明による抗体は第1および第2の重鎖を含み得、第1および第2の重鎖の両方において、Euの番号付けによるヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸残基は、それぞれFおよびEである。さらに、D265Aアミノ酸置換は、すべてのFcγ受容体への結合を減少させ、ADCCを防止することができる(Shields et al.,2001,J.Biol.Chem.(276):6591-604)。したがって、本発明による抗体は、第1および第2の重鎖を含み得、第1および第2の重鎖の両方において、Euの番号付けによるヒトIgG1重鎖の位置D265に対応する位置のアミノ酸残基はAである。
【0102】
最も好ましくは、本発明による方法および使用において、前記第1および第2の重鎖、ヒトIgG1重鎖のL234、L235およびD265位に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、EおよびAである、二重特異性抗体が提供される。これらのアミノ酸をこれらの位置に有する抗体は、不活性なFc領域または非活性なFc領域を有する抗体の例である。
【0103】
本願では、3つのアミノ酸置換L234F、L235EおよびD265Aの組み合わせを有し、さらに上記の本明細書に開示されるK409RまたはF405L変異を有する抗体は、それぞれ接尾辞「FEAR」または「FEAL」で命名され得る。
【0104】
前記のように、野生型IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書では配列番号15として同定される。上に開示される実施形態と一致して、本発明の抗体は、F405L置換を有するIgG1重鎖定常領域を含み得、配列番号17に示されるアミノ酸配列および/またはK409R置換を有するIgG1重鎖定常領域を有し得、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有し得、Fc領域を不活性化または非活性化にするさらなる置換を有し得る。したがって、本発明による二重特異性抗体に含まれるIgG1重鎖定常領域の最もおよび特に好ましい組み合わせは、本明細書において配列番号19として特定されるようなL234F、L235E、D265AおよびF405L置換を有するIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列、ならびに本明細書において配列番号20として特定されるようなL234F、L235E、D265AおよびK409R置換を有するIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列である。
【0105】
さらに特に好ましい一実施形態では、本明細書に記載の方法および使用における二重特異性抗体は、配列番号24および25において定められる重鎖および軽鎖を有する第1の結合アーム、ならびに配列番号26および27において定められる重鎖および軽鎖を有する第2の結合アームを含む。そのような抗体は、本明細書ではDuobody CD3xCD20と呼ばれることがある。また、そのような抗体の変異体は、本明細書に記載の方法および使用のために企図され得る。なおさらなる実施形態において、本発明による二重特異性抗体は、エプコリタマブ(CAS 2134641-34-0)またはそのバイオシミラーである。
【0106】
さらなる実施形態
1.二重特異性抗体であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が、配列番号6のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第1の結合アーム;ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、可変重鎖領域が配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、可変軽鎖領域が、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第2の結合アーム
を含み、
ヒト対象におけるB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療における使用のためであり、前記治療が、前記二重特異性抗体を、少なくとも24mgの用量で、それを必要とするヒト対象の皮下に投与することを含む、二重特異性抗体。
【0107】
2.完全な長さの抗体である二重特異性抗体であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が、配列番号6のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含み、前記可変軽鎖領域が、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第1の結合アーム;ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を含み、前記可変重鎖領域が配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、前記可変軽鎖領域が、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、第2の結合アーム
を含み、
ヒト対象におけるB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療における使用のためであり、前記治療が、前記二重特異性抗体を、少なくとも24mgの用量で、それを必要とするヒト対象の皮下に投与することを含む、二重特異性抗体。
【0108】
3.前記B-NHLが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯リンパ腫および小リンパ球性リンパ腫からなる群から選択される、実施形態1または2に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0109】
4.前記B-NHLがFL、HGBCLまたはDLBCLである、実施形態1または2に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0110】
5.前記対象が、二重特異性抗体による治療の前に、リツキシマブなどのCD20単一特異性抗体による治療を受けている、実施形態1~4のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0111】
6.CD20単一特異性抗体による前記治療の期間中、がんが再発した、実施形態5に記載の使用するための二重特異性抗体。
【0112】
7.CD20単一特異性抗体による前記治療の期間中、がんが前記治療に対して難治性であった、実施形態5に記載の使用するための二重特異性抗体。
【0113】
8.前記CD20単一特異性抗体が併用治療において使用された、実施形態5~7のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0114】
9.患者が、前記B細胞NHLに対するさらなる先行の治療の方針を受けた、実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0115】
10.前記二重特異性抗体が少なくとも40mgの用量で投与される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0116】
11.40mg~100mgの範囲内の用量で前記二重特異性抗体が投与される、実施形態1から9のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0117】
12.前記二重特異性抗体が少なくとも48mgの用量で投与される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0118】
13.前記二重特異性抗体が少なくとも60mgの用量で投与される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0119】
14.前記二重特異性抗体が48mgの用量で投与される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0120】
15.前記二重特異性抗体が60mgの用量で投与される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0121】
16.前記用量が毎週投与される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0122】
17.前記毎週の投与が少なくとも4回行われる、実施形態16に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0123】
18.前記毎週の投与の後、前記抗体を二週間に一回投与する、実施形態16または17に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0124】
19.前記隔週の投与が(少なくとも)6回行われる、実施形態18に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0125】
20.前記二週間に一回の投与の後、前記抗体を四週間に一回投与する、実施形態18または19に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0126】
21.前記毎週の用量を投与する前に、前記二重特異性抗体のプライミング用量を投与する、実施形態16~20のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0127】
22.初回用量の前記毎週の用量を投与する1週間前に、前記プライミング用量を投与する、実施形態21に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0128】
23.前記プライミング用量が50~300μgの範囲である、実施形態21または22に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0129】
24.前記プライミング用量が160μgである、実施形態21~23のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0130】
25.前記プライミング用量を投与した後、前記毎週の用量を投与する前に、前記二重特異性抗体の中間用量を投与する、実施形態21~24に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0131】
26.初回用量の前記毎週の用量を投与する前に、前記プライミング用量を2週間投与し、前記中間用量を1週間投与する、実施形態25に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0132】
27.前記中間用量が600~1200μgの範囲である、実施形態25または26のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0133】
28.前記中間用量が800μgである、実施形態25~27のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0134】
29.前記使用が、28日間サイクルで二重特異性抗体を皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目において、第1のサイクルでプライミング用量を1日目に投与し、中間用量を8日目に投与し、48mgの用量を15、22日目に投与する、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、48mgの用量を投与する、
c)サイクル4~9の1、15日目に、48mgの用量を投与する、および
d)さらなる後続サイクルの1日目に、48mgの用量を投与する、実施形態25~28のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0135】
30.前記使用が、28日間サイクルで二重特異性抗体を皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目において、第1のサイクルで160μgのプライミング用量を1日目に投与し、800μgの中間用量を8日目に投与し、48mgの用量を15、22日目に投与する、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、48mgの用量を投与する、
c)サイクル4~9の1、15日目に、48mgの用量を投与する、および
d)さらなる後続サイクルの1日目に、48mgの用量を投与する、実施形態25~28のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0136】
31.前記使用が、28日間サイクルで二重特異性抗体を皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目において、第1のサイクルでプライミング用量を1日目に投与し、中間用量を8日目に投与し、60mgの用量を15、22日目に投与する、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、60mgの用量を投与する、
c)サイクル4~9の1、15日目に、60mgの用量を投与する、および
d)さらなる後続サイクルの1日目に、60mgの用量を投与する、実施形態25~28のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体
32.治療方法が、28日間サイクルで二重特異性抗体を皮下投与することを含み、
a)第1のサイクルの1、8、15および22日目において、第1のサイクルで160μgのプライミング用量を1日目に投与し、800μgの中間用量を8日目に投与し、60mgの用量を15、22日目に投与する、
b)サイクル2~3の1、8、15および22日目に、60mgの用量を投与する、
c)サイクル4~9の1、15日目に、60mgの用量を投与する、
d)さらなる後続サイクルの1日目に、60mgの用量を投与する、実施形態25~28のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0137】
33.前記B-NHLがFL、DLBCLおよび/またはHGBCLである、実施形態29~32のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0138】
34.前記対象が、前記使用中にグレード1またはグレード2の管理可能なサイトカイン放出症候群(CRS)を有する、実施形態1~33のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0139】
35.前記対象が腫瘍崩壊症候群を経ていない、実施形態1~34のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0140】
36.前記対象がサイトカイン放出症候群(CRS)の予防で治療される、実施形態1~35のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0141】
37.前記予防がコルチコステロイドの投与を含む、実施形態36に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0142】
38.前記予防が二重特異性抗体と同じ日に投与される、実施形態36~37のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0143】
39.前記予防が、後の2~3日目に、および4日目であっていてもよい、または後の2~4日目に投与される、実施形態38のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0144】
40.前記予防が二重特異性抗体と同じ日に施される場合、前記予防は、二重特異性抗体の前記投与の30~120分前に施される、実施形態38~39のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0145】
41.前記コルチコステロイドが、プレドニゾロンであり、例えば、経口での用量を含む100mgの静脈内用量またはその等価物である、実施形態37~40のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0146】
42.前記ヒト対象が、注射に対する反応を低下させるために前投薬で治療される、実施形態1~41のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0147】
43.前記前投薬が抗ヒスタミン薬の投与を含む、実施形態42に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0148】
44.前記前投薬が解熱薬の投与を含む、実施形態42~43のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0149】
45.前記抗ヒスタミン薬がジフェンヒドラミンであり、例えば、静脈内もしくは経口での用量で50mgまたはその等価物である、実施形態42~44のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0150】
46.前記解熱薬がアセトアミノフェンであり、例えば650~1000mgの経口での用量またはその等価物である、実施形態43~45のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0151】
47.前記前投薬が二重特異性抗体と同じ日に投与される、実施形態42~45のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0152】
48.前記前投薬が、二重特異性抗体の前記投与の30~120分前に投与された、実施形態47に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0153】
49.実施形態35~41で定義される前記予防が第1のサイクルの間に施される、実施形態29~48のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0154】
50.実施形態42~48で定義される前記前投薬が第1のサイクルの間に施される、実施形態29~49のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0155】
51.ヒト対象がサイクル1での二重特異性抗体の4回目の投与後にグレード1を超えるCRSを経る場合、前記予防が第2のサイクルの間に施される、実施形態49および50に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0156】
52.前記予防が、先行のサイクルの二重特異性抗体の最後の投与においてヒト対象がグレード1を超えるCRSを経る場合、その後のサイクルの間継続される、実施形態51に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0157】
53.前記前投薬が、第2のサイクル中に投与されていてもよい、実施形態51または52に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0158】
54.前記前投薬が、後のサイクル中に投与されていてもよい、実施形態53に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0159】
55.二重特異性抗体が、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに配列GTNである配列番号4に示される配列および配列番号5に示される配列をそれぞれ有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第1の結合アーム、ならびに
(ii)ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、前記第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9、および10に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに配列DASである配列番号11に示される配列および配列番号12に示される配列をそれぞれ有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第2の結合アームを含む、実施形態1~54のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0160】
56.二重特異性抗体が、
(i)配列番号6によって定められる可変重鎖領域、および配列番号7によって定められる可変軽鎖領域を含む、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アーム、および
(ii)配列番号13によって定められる可変重鎖領域、および配列番号14によって定められる可変軽鎖領域を含む、ヒトCD20に結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームを含む、実施形態1~55のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0161】
57.二重特異性抗体の第1の結合アームがヒト化抗体、好ましくは完全な長さのIgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する、実施形態1~56のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0162】
58.配列番号22で定められるλ軽鎖定常領域を含む、実施形態57に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0163】
59.二重特異性抗体の第2の結合アームがヒト抗体に由来し、好ましくは完全な長さのIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する、実施形態1~58のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0164】
60.配列番号23で定められるκ軽鎖定常領域を含む、実施形態59に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0165】
61.ヒトIgG1定常領域を有する完全な長さの抗体である、実施形態1~60のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0166】
62.二重特異性抗体が不活Fc領域を含む、実施形態1~61のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0167】
63.二重特異性抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖の両方の配列番号15のヒトIgG1重鎖のL234、L235、およびD265位に対応する位置の第1および第2の重鎖に、それぞれアミノ酸F、E、およびAを含む、実施形態62に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0168】
64.二重特異性抗体が、前記第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置にアミノ酸Lを含み、前記第2の重鎖が、Rである配列番号15のヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置にアミノ酸Rを含むか、またはその逆である、実施形態1~63のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0169】
65.二重特異性抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖の両方の、配列番号15のヒトIgG1重鎖のL234、L235、およびD265の位置に対応する位置の第1の重鎖および第2の重鎖に、それぞれアミノ酸F、E、およびAを含み、前記第1の重鎖に、配列番号15のヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置のアミノ酸Lを含み、前記第2の重鎖に、Rである配列番号15のヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置のアミノ酸Rを含む、またはその逆である、実施形態1~64のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
66.配列番号19および20で定められる定常領域を含む、実施形態65に記載の使用のための二重特異性抗体。
【0171】
67.二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24および25において定められる重鎖および軽鎖、ならびに配列番号26および27において定められる重鎖および軽鎖を含む、実施形態1~66のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0172】
68.二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24および25において定められる重鎖および軽鎖、ならびに配列番号26および27において定められる重鎖および軽鎖からなる、実施形態1~67のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0173】
69.二重特異性抗体がエプコリタマブまたはそのバイオシミラーである、実施形態1~68のいずれか1つに記載の使用のための二重特異性抗体。
【0174】
配列
【表2】
[実施例]
DuoBody-CD3xCD20
DuoBody-CD3xCD20は、T細胞抗原CD3およびB細胞抗原CD20を認識するbsAbである。DuoBody-CD3xCD20は、CD20発現細胞の強力なT細胞媒介殺傷をトリガーする。DuoBody-CD3xCD20は、規則的なIgG1構造を有する。
【0175】
2つの親抗体、IgG1-CD3-FEAL、それぞれ配列番号24および25に記されている重鎖配列および軽鎖配列を有するヒト化IgG1λ、CD3ε特異的抗体と、IgG1-CD20-FEAR、配列番号26および27にそれぞれ示される重鎖配列および軽鎖配列を有するヒトIgG1κCD20特異的抗体7D8に由来するものとを、別々の生物学的中間体として製造した。各親抗体は、DuoBody分子の生成に必要なCH3ドメインの相補的突然変異の1つを含有する(それぞれF405LおよびK409R)。親抗体は、Fc領域に3つのさらなる変異を含んでいた(L234F、L235EおよびD265A;FEA)。標準的な浮遊細胞培養および精製技術を使用して、哺乳動物チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株において親抗体を産生した。その後、DuoBody-CD3xCD20を、制御されたFabアーム交換(cFAE)プロセスによって製造した(Labrijn et al.2013,Labrijn et al.2014,Gramer et al.2013)。親抗体を混合し、制御された還元条件に供する。これは、再酸化下で再集合する親抗体の分離をもたらす。このようにして、DuoBody-CD3xCD20(約93~95%)の高純度調製物を得た。さらに研磨/精製した後、純度100%に近い最終生成物を得た。DuoBody-CD3xCD20の濃度を、理論的吸光係数ε=1.597mL・mg-1cm-1を使用して、280nmでの吸光度によって測定した。最終生成物を4℃で保存した。DuoBody-CD3xCD20のグリコシル化プロファイルは、それが主に様々な程度の末端ガラクトースを有するコア-フコシル化N結合バイアンテナ型グリカンを含有することを示した。産生された生成物について、国際的な商標名、すなわちエプコリタマブが得られた。
【0176】
DuoBody-CD3xCD20(5mg/mLまたは60mg/mL)を、皮下(SC)注射用溶液のための濃縮物として供給される無色からわずかに黄色の滅菌透明溶液として調製した。DuoBody-CD3xCD20は、緩衝剤および等張化剤を含有する。製剤化された製品中のすべての賦形剤(酢酸ナトリウム三水和物、酢酸、水酸化ナトリウム、ソルビトール、ポリソルベート80、注射用水)およびその量は、皮下注射製品について薬学的に許容された。適切な用量を皮下注射のために約1mLの体積に再構成した。
【0177】
臨床試験:用量漸増
GCT3013-01(NCT03625037)は、文書化されたCD20+成熟B細胞新生物ならびに再発性および/または難治性B細胞NHLを有する18歳以上の患者、ヒト対象における非盲検2部(用量漸増および増大)試験である。
【0178】
T細胞、すなわちGEN3013の機能に対するエフェクター細胞の数が患者の体重および/または体表面積と相関すると予想されなかったので、用量の投与を単純化するために固定用量の投与アプローチを選択した。EMA Guideline on the Evaluation of Anti-cancer Medicinal Products in Man(EMA、2012;EMA、2017)は、体格ベースの投薬に対する科学的支持が弱いことを認めており、i.a.PKデータを使用して投与戦略を定めるモデリングおよびシミュレーションのアプローチを推奨している。したがって、本明細書では、用量漸増パートの目的は、最大耐量(MTD)を確立すること、および/またはエプコリタマブの投与戦略に到達することであった。
【0179】
用量漸増パートは、加速滴定および標準滴定を含む。初期の用量レベルは、単一対象コホート(加速滴定)であり、追加の薬物動態(PK)/薬力学およびバイオマーカーのデータを得る目的で、最大2人の追加対象でコホートを拡大する選択肢があった。標準的な滴定パートは、用量制限毒性(DLT)評価のための標準的な3つの対象コホートを含み、DLT評価期間(すなわち、最初のサイクル、28日間)中にいずれもグレード≧2の毒性を経なかった場合、最低2人の評価可能な対象が登録される。用量漸増は、利用可能なすべてのデータに基づいており、加速滴定パートでは半分のlog10(3.2倍)を超えない増分であり、標準滴定パートでは100%(2倍)を超えない増分である。
【0180】
用量漸増パートでは、61人の対象が現在治療されている(表2)。初期のコホート1~5では、対象を、より低いプライミング用量が先行する、エプコリタマブのフル(フラット)用量に曝露した。初回抗原刺激用量に加えて、中間用量をコホート6(1.5mg)と共に導入して、プライミング用量と連続的に漸増するフル用量との間のギャップの拡大を最小限に抑え、サイトカイン放出症候群(CRS)のリスクおよび発生率を低下させるようにした。DLTは発生しておらず、0.004(コホート1のプライミング用量)~48mg(コホート11および11Aのフル用量)の用量が、登録を継続するのに安全であると概観されている。MTDには到達していない。
【0181】
対象のコホートに投与される計画されたサイクル1の用量を表2に挙げる。例えば、コホート8では、最初の28日間のサイクルの1日目に0.04mgのプライミング用量、8日目に0.5mgの中間用量、続いて15および22日目に6mgのフル(フラット)用量を投与した。投与される場合、サイクル2に含まれる後続の28日間サイクルは、28日間サイクルの1、8、15および22日目のフラット用量の投与、サイクル3~6から、28日間サイクルの1および15日目のフラット用量の投与、ならびにサイクル7+から、28日間サイクルの1日目のフラット用量の投与を含んでいた。
【表3】
【0182】
急性的な注射反応を防ぐための前投薬は、ジフェンヒドラミン50mgのIVまたは経口(PO)(または同等物)、およびサイクル1の間のエプコリタマブ投与の30~120分前に投与されたパラセタモール(アセトアミノフェン)650から1000mgのPO(または同等物)からなった。CRS緩和薬予防は、エプコリタマブの投与の30~120分前に投与されたプレドニゾロン100mgのIV(またはコルチコステロイドの同等の経口またはIVの用量)、引き続いてサイクル1のエプコリタマブの最初の4用量について、エプコリタマブの投与後2日目および3日目(すなわち、合計3日間連続したコルチコステロイド)に追加のプレドニゾロン100mgのIV(または経口での用量を含む同等物)からなった。グレード1より高いCRSが、4回目のエプコリタマブの投与後に発生した場合、任意選択の前投薬による予防の施行は、サイクル2(1、2、3日目)以降も継続する。
【0183】
錯乱から致死性脳浮腫に及ぶ神経学的な症状が、CD3を標的とする他の化合物または薬物で報告されている。したがって、諸研究で、神経学的な症状の綿密なモニタリングを、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法、CAR-T細胞関連毒性10点神経学的評価(CARTOX-10)および米国移植細胞療法学会(ASCTC)免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)評価のために最初に開発された、関連する評価用ツールを利用して、各用量、治療の終了時、および臨床的に徴候のあったときに行った。サイトカイン放出関連ICANSのリスクおよび重症度を低下させるために投与された薬物スキームは、CRS予防スキーム、すなわち、エプコリタマブの投与の日にプレドニゾロン100mgのIV(または経口での用量を含む等価物)、ジフェンヒドラミン50mgのIVまたは経口(PO)(または等価物)、およびパラセタモール(アセトアミノフェン)650から1000mgのPO(または等価物)、引き続いてエプコリタマブの投与後2日目および3日目に追加のプレドニゾロン100mgのIV(または経口での用量を含む等価物)によって網羅された(すなわち、合計3日間連続したプレドニゾロン)。
【0184】
人口統計
登録された様々なB細胞NHLサブタイプのうち、患者をWHO 2008またはWHO 2016のガイドラインに従って分類した(Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(ed 4th).Lyon,France:IARC Press;2008;Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(Revised ed 4th).Lyon,France:IARC Press;2017)。WHO 2016ガイドラインとWHO 2008ガイドラインとの間でDLBCL分類とHGBCL分類との間に重複があるため、DLBCLまたはHGBCLと診断された患者は、DLBCL/HGBCLとして分類される1つの群として定められる。
【0185】
様々なB細胞NHLサブタイプで治療された61人の患者のうち、45人(73.8%)がDLBCL/HGBCLとして分類される疾患を有し、11人(18.0%)の対象がFLとして分類された。含まれる他のB細胞NHLは、MCL(3名の患者)、MZL(1名の患者)およびSLL(1名の患者)であった。
【0186】
58人の患者からのベースライン疾患特性データが臨床データベースで利用可能であり、患者の大部分はスクリーニング時にAnn ArborのIII期(25.9%)またはIV期(51.7%)であり、大半がリンパ外の疾患の存在を有していた(58.6%)。リンパ腫の診断からの時間の中央値は26.7ヶ月(6~330の範囲)であり、最後の再発または進行からの時間の中央値は1.6ヶ月(0~88の範囲)であった。ほとんどの患者は、最後の治療方針(67.2%)および/または最新の抗CD20療法(63.8%)に対して難治性であり、6.9%が先行のCAR T療法を受けていた。先行の治療方針の数の中央値は3(1から18の範囲)であり、最も一般的にはリツキシマブ(100%)、アルキル化剤(98.3%)およびアントラサイクリン(89.7%)であった。23人の対象(39.7%)が3を超える先行の治療の方針を有していた。
【0187】
臨床的有効性
治療に対する応答を、FDG-PETに対する代謝活性を組み込んでいる、Lugano基準(Cheson,et al.(2014)。J Clin Oncol 32,3059-3068)、CT/MRIによる限られた数の標的病変のサイズの評価、およびいずれかの新しい病変の存在により、指定された時点での放射線画像と、必要に応じて組織生検によって、評価された。スクリーニング時にFDG親和性腫瘍を有する患者は、例えば、Deauville 5点尺度(DS)を使用してFDG-PET-CTを用いて行われたその後の疾患評価を受けた(Barrington,et al.(2014)J Clin Oncol 32,3048-3058)。非親和性または可変FDG親和性腫瘍を有する患者について、頸部/胸部/腹部/骨盤/さらなる既知の病変のIV造影剤を用いたCTスキャン、または場合によってはMRIを実施して奏功を評価した。奏効基準には、最大6つの測定可能な優性病変について垂直直径の積の和(SPD)を計算すること、およびその後の各スキャンでのこのSPDの変化を比較すること、ならびに任意の新しい病変の外観を考慮することが含まれた。FDG-PETを実施した場合、最高の取り込みを示す標的病変に従って、全体的なDSを適用した。場合によっては、応答を明確にするまたは確認するために組織生検が必要であった。
【0188】
表3は、奏功の評価が可能な集団(n=53)に対する最良総合効果(BOR)を示し、これは、少なくとも1回の試験薬の投与を受けたことがある、および少なくとも1回のベースライン後の応答評価を受けたか、または2020年5月5日現在で死亡した、すべての組織型およびすべての投与量にわたる対象を含む。試験中に冠動脈バイパス移植(CABG)の手術を受けた1人の対象、およびCOVID-19を有し、その後死亡した1人の対象を、除外した。全奏効率(ORR)は34.0%であり、疾患制御率(DCR)は52.8%であった。
【表4】
【0189】
少なくとも6.0mgのフル用量を受けたR/R DLBCL/HGBCLの奏功評価可能な対象の中で、8/19(42.1%)が応答し、4名(21.1%)がCRを達成し、4名(21.1%)がPRを達成し、4名(21.1%)のさらなる対象がSDを達成した。データカットオフ時に少なくとも0.76mgのフル用量を受けたFLの応答評価可能な対象の中で、7/8(87.5%)がPRを達成し、1/8(12.5%)がSDを有していた。
【0190】
DLBCL/HGBCL(フル用量≧6mg)およびFL(フル用量≧0.76mg)の対象についての研究者による標的病変(すなわち、すべての標的病変のSPDの最良の変化率)およびBORの最大の減少を挙げる表を以下に挙げる。
【表5】
【0191】
DLBCL/HGBCLおよびFLとして分類されない患者に関して、0.76mgのフル用量で治療されたMZL患者は、第8週の画像化スキャンでSDを示した。MCLについては、1名の患者がCRを達成し、別の患者がSDを達成した。
【0192】
要約すると、皮下投与されたエプコリタマブは、一部の患者における非常に低い用量でのいくつかの応答を含む、用量漸増中のB-NHL、特にDLBCL/HGBCLおよびFLにおいて、抗腫瘍活性を示した。DLBCL/HGBCL群における奏功(CR、PR)の大部分は、少なくとも6mgのフル用量で見られ、FL群におけるすべての奏功は、少なくとも0.76mgのフル用量で見られた。
【0193】
臨床的安全性
すべての対象のすべての治療下で発現した有害事象の概要を表5Aおよび5Bに列挙する。
【表6】
【表7】
【0194】
安全性分析で評価した58人の対象のうち、58人(100%)の対象が少なくとも1つの治療下で発現した有害事象(TEAE)を経て、対象の69.0%がグレード3またはグレード4のTEAEを有していた(表5Aおよび5B)。4つの最も一般的なTEAEは、発熱(69.0%)、CRS(56.9%)、疲労(41.4%)、および注射部位反応(41.4%)であった。11名(19.0%)の対象が、死に至るTEAEを有し、9名(15.5%)の対象が悪性新生物進行(リンパ腫の進行)を有し、1名(1.7%)が「安楽死」によるものであった(進行性疾患との関連においても同様)。1名(1.7%)の患者がコロナウイルス感染症(COVID-19)により死亡した。これらの事象のいずれもエプコリタマブに関連すると考えられなかった。
【0195】
重篤な有害事象(SAE)が39名(67.2%)の対象で報告された。最も頻繁に報告されたSAEは、発熱(25.9%)、悪性新生物進行(15.5%)および肺感染(6.9%)であった。
【0196】
永続的な治療中止をもたらすTEAEの発生は7人の対象(12.1%)に限定され、これらのすべてが疾患の進行を伴った。5名(8.6%)の対象が悪性新生物進行の事象を報告し、1名(1.7%)の対象が部分発作を経験し(リンパ腫を伴う可能なCNS関与の状況で)、1名(1.7%)の対象が基礎疾患のために呼吸困難を経た。
【0197】
特に注目すべき有害事象(AESI)が対象の35名(60.3%)で発生した;これらのうち、33名(56.9%)の対象がグレード1またはグレード2のCRSを経た;CRSのために治療を中止した患者はいなかった。4名(6.9%)の対象が神経毒性を経た(1名[1.7%]の対象[0.76mg]がグレード1の部分発作を経た;1名[1.7%]の対象[12mg]は、CRSに関連するグレード1の失書症を有していた;1名[1.7%]の対象[12mg]は、CRSに関連するグレード3の錯乱状態を有していた;1名[1.7%]の対象[12mg]は、インフルエンザおよび軟膜疾患の状況においてグレード3の錯乱を有していた)。
【0198】
要約すると、60mg以下の用量を投与すると、治療は十分に忍容された。用量制限毒性は観察されず、したがって最大耐量に達しなかった。重度(グレード3以上)のCRS事象はなく、治療関連死もなかった。
【0199】
臨床応答および作用機序の評価
薬力学(PD)バイオマーカーも試験して、エプコリタマブおよび作用機序(MOA)に対する臨床応答を評価した。末梢血を使用してバイオマーカー分析を行い、フローサイトメトリーおよびイムノアッセイをそれぞれ使用して、循環性の免疫細胞およびサイトカインに対するエプコリタマブの効果を評価した。エプコリタマブは、循環性のB細胞の急速かつ持続的な枯渇を誘導した(先行の抗CD20療法後のベースラインに存在する場合)。末梢CD4+およびCD8+T細胞の一過性の減少が最初の投与の6時間以内に観察され、その後の投与はCD8+およびCD4+T細胞の両方のベースラインからの増大を誘導した。さらに、活性化マーカーCD69およびCD279は、CD4+およびCD8+T細胞にて上方制御された。臨床応答に関連するバイオマーカーの探索的分析は、エプコリタマブに対する部分応答または完全応答を有した患者において、活性化T細胞および全T細胞(CD8+およびCD4+の両方)のより大きな増大ならびにより高いIFNγレベルの傾向を示した。
【0200】
用量漸増中のエプコリタマブの段階的投与およびSC投与を、CRSを軽減するために実施した。CRS関連サイトカイン、IL-6およびTNFの中程度の上昇が観察された。T細胞およびサイトカインにおけるこれらのPDバイオマーカーの変化は、異なるB-NHLの分類にわたって一貫して観察された。さらなるバイオマーカー分析が進行中であり、更新されたデータが提示される。
【0201】
エプコリタマブの作用機序は、T細胞表面抗原CD3およびB細胞表面抗原CD20を標的化し、CD20陽性細胞のT細胞媒介性殺傷をトリガーすることを含む。DuoBody-CD3xCD20は、悪性B細胞に対する強力なT細胞媒介性細胞傷害性をもたらすT細胞の活性化および増大を誘導することが示され、観察されたデータは、B-NHLの治療のためのエプコリタマブの臨床活性を確認する作用機序と一致している。
【0202】
モデリング
コホート群あたりの本発明者らの臨床試験で評価された患者の数が少なかったため、本発明者らは、DLBCLおよびFLの治療においてエプコリタマブの最適な皮下用量に到達するために、モデリングアプローチで患者データを分析することに頼った。
【0203】
血漿エプコリタマブ濃度対時間薬物動態(PK)のデータは、0.0128mg~48mgのフル用量で治療された患者から入手可能であった。エプコリタマブの皮下投与のために、利用可能なPKデータおよびMonolix集団PKモデリングソフトウェア(MonolixSuite)を使用して、集団PKモデルを発展させた。一次吸収、線形およびミカエリス・メンテン除去を伴った1区画モデルが、PKデータを最もよく説明するモデルであると決定された。
【0204】
集団PKモデルに基づいて、エプコリタマブは、Tmaxが2.96(48.7%)日(幾何平均およびCV)の遅い吸収を示す。モデルは、エプコリタマブの最終半減期が9.58(112%)日であると予測する(幾何平均およびCV)。注目すべきことに、s.c.投与されたエプコリタマブは、吸収速度が排出速度よりも遅いフリップフロップ速度論を示す。したがって、最終半減期は吸収半減期の代表であり、用量に依存しない。48mgのフル用量では、定常状態でのCmaxは3.30E6(75.0%)pg/mL(幾何平均およびCV)である。集団PK分析は、エプコリタマブが標的媒介性薬物動態(TMDD)を呈することを示した。集団PKモデルを使用したシミュレーションは、12mg超の用量レベルで標的媒介性薬物配置の飽和(90%超)が起こることを示し、血漿中のCD3およびCD20の関与および飽和を示した(図1参照)。
【0205】
しかし、集団PKモデルによって予測されるように、血漿中の標的の関与および飽和は、有効性評価に最も関連するものではない。作用部位(腫瘍付近)における関与および飽和は、より関連性がある。さらに、二重特異性抗体の場合、2つの標的の飽和が順次起こり、高親和性標的化アーム(CD20)が最初に飽和に達し、低親和性標的化アーム(CD3)が続く。三量体の形成(二重特異性抗体によるCD3およびCD20の架橋)は、二重特異性抗体の濃度がCD20アームのKDの値に近づくにつれて増加する。二重特異性抗体の濃度がCD20アームのKDの値を超えて増加すると、三量体の濃度は最終的にプラトーに達する。プラトーに続いて、二重特異性抗体の濃度がCD3アームのKDの値を超えると、三量体の濃度は低下し始める。したがって、最大の三量体形成は、CD3およびCD20が完全に飽和する前に起こる。したがって、二重特異性抗体が最大の三量体形成、ひいては最大の有効性を達成する最適な範囲が存在する。
【0206】
腫瘍における三量体形成を定量的に予測するために、半機構モデルを発展させた。最初に、前臨床のサルのデータを使用して半機構的PK/PDモデルを発展させた。i.v.およびs.c.投与された用量範囲(3桁の大きさ、単回投与および複数回投与に及ぶ)集約的PKのデータ、経時的血中T細胞計数のデータ、経時的血中B細胞計数のデータ、ならびに経時的活性化T細胞サブセット計数のデータを含む、サルにおけるエプコリタマブの調査は豊富なデータを生成した。
【0207】
発展させたモデルは、最小の生理学的ベースのPKモデル(mPBPK)を利用して、組織中のエプコリタマブ濃度の生理学的に関連する予測をもたらす。このモデルはまた、T細胞およびB細胞の血液から組織および逆方向への輸送、T/B細胞の動的な産生および死、ならびにT/B細胞の恒常性を維持するフィードバック機構を考慮する。このモデルは、CD3およびCD20の測定されたKDの値に基づいて、T細胞上のCD3およびB細胞上のCD20へのエプコリタマブ(血液中および組織中)の結合、ならびにCD3およびCD20の架橋を組み込んでいる。このモデルは、三量体の形成をT細胞の活性化、それに続くT細胞の増大に結び付ける。次いで、活性化されたT細胞は、B細胞の排除を誘導する。発展させたPK/PDモデルを、集団ベースのモデリングアプローチおよびMonolixソフトウェアを使用して、PK、T細胞数、活性化T細胞数およびB細胞数のデータに同時に適合させた。
【0208】
PK/PDモデルは、観察対予測、残差対予測、および残差対時間などのモデル診断、モデルパラメータ推定精度に基づいて、PK/PDデータ(血漿濃度、血中T細胞数、血中活性化T細胞数および血中B細胞数のデータ)を合理的に良好に記述することができた。
【0209】
次に、その後、サルのデータに基づいて発展させたPK/PDモデルの構造に基づいて、統合されたヒトPK/PDモデルを発展させた。ヒトPK/PDモデリング分析の概要を図2に示す。このモデルは、非臨床および臨床の両方のPKおよび有効性データを活用して、三量体の形成および有効性を予測する。Monolixソフトウェアをモデルのフィッティングに使用した(集団PKモデルおよびサルPK/PDモデルの両方)。mrgsolveパッケージと共にR(Microsoft)を使用してシミュレーションを行った。このモデルは、腫瘍病変におけるエプコリタマブの濃度を予測するためにmPBPKモデルを組み込んでいる。このモデルはまた、T細胞、B細胞および腫瘍細胞数、ならびにこれらの細胞のCD3およびCD20の発現を組み込んでいる。さらに、このモデルは、CD3およびCD20へのエプコリタマブの動的結合ならびに三量体の形成を組み込んでいる。最後に、PK/PDモデルは、三量体形成およびT細胞活性化の結果として腫瘍の動態および腫瘍の死滅を組み込む。
【0210】
ヒトPK/PDモデルは、サルPK/PDモデルによって推定されたいくつかの関連パラメータを利用する。ヒトPK/PDモデルパラメータは、入手可能な臨床データまたは文献からのヒト特異的な値に基づいた。PKサブモデルパラメータは、mPBPKモデルを臨床PKデータに適合させることによって知らされた。三量体形成サブモデルパラメータは、患者のバイオマーカーデータ(例えば、T細胞数、B細胞数、腫瘍細胞数)、インビトロ測定値(例えば、CD3およびCD20のエプコリタマブKD(それぞれ16および5.4nM)、ならびに/または文献上の値(例えば、T細胞上のCD3発現、B細胞/腫瘍細胞上のCD20発現)に基づいた。腫瘍動的サブモデルパラメータは、文献上の値(例えば腫瘍成長速度)、患者腫瘍サイズデータ(例えば、ベースラインの腫瘍サイズ)に基づくか、またはエプコリタマブ用量漸増試験から観察された奏効率(例えば、腫瘍死滅率)に対するヒトPK/PDモデルの予測奏効率を較正することによって推定した。較正されたモデルは、エプコリタマブ用量漸増試験(図3)で十分観察された奏効率(病変のサイズの変化に基づく)を記載しており、したがって、このモデルは、最適な投薬を予測するためのインシリコ分析のために検証される。
【0211】
したがって、臨床試験のシミュレーションは、その後、重要なモデルパラメータにおける個々の変動性を組み込み、統合されたヒトPK/PDモデルを使用して実施される。モデルパラメータの変動は、エプコリタマブ用量漸増試験で観察された個体間変動(例えば、T細胞、B細胞およびベースライン腫瘍サイズ、PKパラメータ)または文献上の値(例えば、CD3、CD20発現、腫瘍成長速度)に基づく。異なる腫瘍増殖速度によって区別されるFLおよびDLBCL/HGBCLについて別々のシミュレーションを行った。DLBCL/HGBCLの場合、1ヶ月の腫瘍倍加時間を使用し、FLの場合、6ヶ月の腫瘍倍加時間を使用した。
【0212】
ヒトPK/PDモデル(図4および図5)は、FLおよびDLBCL/HGBCLの両方において48mg以上のエプコリタマブ用量で三量体形成プラトーを示した。さらに、PK/PDモデルは、FLおよびDLBCL/HGBCLの両方において≧48mgのエプコリタマブ用量で生じる有効性のプラトー(予測される増大試験奏効率)を予測する(図6および7)。モデル予測に基づき、患者から入手可能な臨床データを利用すると、選択され得るエプコリタマブの最適用量は48mgである。
【0213】
さらなる分析I
上段で提示した結果に続いて、患者は評価され続け、および/または治療を受け続け、さらに患者はエプコリタマブで治療された。
【0214】
この後の評価時点で、登録された患者の総数は67人であり、これにはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者45人(67%)、濾胞性リンパ腫(FL)の患者12人(18%)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)の患者4人(6%)が含まれた。患者は相当な前処置がなされ、DLBCL患者については3(1~6)の先行の治療の方針の中央値(範囲)で、FL患者については4.5(1~18)で、MCL患者については4(3~5)であった。合計6名の患者が先行のCAR-T療法を受けていた。患者の半数以上(37/67;55%)が直近の全身療法に対して抵抗性であり、35/67(52%)が直近の抗CD20 mAb療法に対して抵抗性であった。
【0215】
8.3ヶ月の中央値の全体的なフォローアップでは、25人の患者(37%)で治療が進行中である。フォローアップの中央値は、DLBCL患者については8.3ヶ月であり、FL患者については8.8ヶ月である。エプコリタマブは忍容性が高く、治療関連有害事象(AE)による中断はなかった。最も一般的な治療下で発現したAE(TEAE)は、発熱(70%)、局所注射部位反応(48%)および疲労(45%)であった。用量が増加すると、特に注目すべきTEAEは以前の報告と一致し、CRS事象はすべてグレード1/2(58%)であり、グレード3/4の事象はなく、限られた神経毒性が観察された(6%;グレード1:3%;グレード3:3%;全部が過渡的)。
【0216】
用量制限毒性、腫瘍崩壊症候群または発熱性好中球減少症事象はなく、治療関連AEによる死亡はなかった。DLBCLおよびFLを有する評価可能な患者における抗腫瘍活性を表6に示す。エプコリタマブ≧12mgを投与されたDLBCL患者18名では、全奏効率(ORR)が66.7%であり、6名の患者が完全奏効(CR)を達成した。エプコリタマブ≧48mg(48mgのRP2D、n=4;60mg、n=3)を投与された7名の患者のうち、全員が、2名の患者におけるCRを含めて、奏功を達成した。以前にCAR-T療法で治療されたDLBCL患者はすべて奏効を達成した(4/4:2名はCR;2名は部分奏効[PR])。エプコリタマブ≧0.76mgを投与されたFL患者8名全員のうち、ORRは100%であり、2名の患者がCRを達成した。
【表8】
【0217】
さらに、MCLの合計4名の患者がエプコリタマブによる治療を受け、1名の患者(芽球様体;6mgで)がプライミング用量(C1D1)を受けた1週間後に急速な疾患悪化後に死亡し、1名の患者(12mg)が第6週の評価でSDをもたらしたが、12週目にPDをもたらし、1名の患者(48mgで芽球様体)は第6週の評価でPRをもたらしたが、第12週にPDをもたらし、1名の患者(多形;プライミング用量0.16mg、中間用量0.8mg、24mg)は第6週の評価で深い構造的および代謝性CRをもたらし、これは最新の応答評価(24週目:SPD=0cm;DS=1)で維持された。MCLのる4人の患者のうち3人がサイクル1中に6つのCRS事象を経験し、これらはすべてグレード1(すなわち、唯一の所見としての発熱)であり、発症の48時間以内に消散した(#1、プライミング用量40μg、中間用量、フル用量6mg、プライミング用量後24時間以内にCRS1のエピソード。
【0218】
#2、プライミング用量0.16mg、中間用量0.8mg、フル用量24mg、CRSの2回のエピソード:プライミング用量の4日後の最初のエピソード、中間用量の4日後の別のエピソード;#3、プライミング用量0.16mg、中間用量0.8mg、フル用量48mg、CRSの3エピソード:プライミング用量後24時間以内の最初のエピソード、中間用量後さらに3日、および最初のフル用量後24時間の3番目のエピソード)。いずれのCRS事象も、計画された次回のエプコリタマブ投与の遅延、エプコリタマブ用量の変更、または試験の中止をもたらさなかった。結論として、エプコリタマブは、MCLにおいて活性および良好な耐容性を示した。
【0219】
これらの結果は、エプコリタマブが、外来患者への投与を支持して、グレード3以上のCRS事象がなく、神経毒性が限定的である、好ましい安全性プロファイルを示し続けることを示す。結果は、FL、MCLおよびDLBCLで相当の前処置がなされた患者における完全奏効を含む、実質的な単剤有効性を示す。
【0220】
安全性および有効性パラメータを評価することに加えて、さらなるPK/PD分析のために患者(0.0128~60mgの範囲のエプコリタマブを投与されている患者を含む)から、さらなるデータを収集した。このさらなるデータ解析は、エプコリタマブが遅い吸収を示し、Tmaxが2.8日、終末半減期が8.67日、標的媒介性配置(TMD)であることを示した。上に示されるように、モデルは、TMDの飽和が≧48mgの用量レベルで起こると予測し、これは、血中のCD3およびCD20の関与および飽和を示す。さらに、このモデルは、PK/PDモデルを使用した臨床および臨床試験のシミュレーションにおいて観察された曝露-応答関係を記述することができ、この場合も、48mgの用量がFLおよびDLBCLの両方において最適な三量体形成および臨床応答を達成し得ることが実証された。曝露-有害事象分析は、評価した用量範囲において、エプコリタマブの曝露とサイトカイン放出症候群(CRS)のリスクとの間に平坦な関係を示した。
【0221】
さらなる分析II
上段で提示した結果からの別のさらなるフォローアップにおいて、患者は評価され続け、および/またはエプコリタマブによる治療を受け続けた。
【0222】
この後の評価時点で、登録された患者の総数は68人であり、これにはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者46人(68%)、濾胞性リンパ腫(FL)の患者12人(18%)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)の患者4人(6%)が含まれた。患者は相当な前処置がなされ、DLBCL患者については3(1~6)の先行の治療の方針の中央値(範囲)で、FL患者については4.5(1~18)で、MCL患者については4(3~5)であった。合計6名(9%)の患者が先行のCAR-T療法を受けていた。患者の大部分(59/68;87%)が直近の全身療法に対して抵抗性であり、60/68(88%)は、直近の抗CD20 mAb療法に対して抵抗性であった。
【0223】
10ヶ月のフォローアップの中央値では、17人の患者(25%)で治療が進行中である。フォローアップの中央値は、DLBCL患者では7ヶ月であり、FL患者では12ヶ月である。60mgまで投与された用量では、用量制限毒性は観察されず、最大耐量に達しなかった。エプコリタマブは忍容性が高く、治療関連有害事象(AE)による中断はなかった。最も一般的な治療下で発現したAE(TEAE)は、発熱(69%)、局所注射部位反応(47%)および疲労(43%)であった。有害事象の大部分はグレード1~2であった。用量が増加すると、特に注目すべきTEAEは以前の報告と一致した:CRS事象はすべてグレード1/2(59%)であり、グレード3/4事象はなく(表7参照)、限られた神経毒性が観察され(6%;グレード1:3%;グレード3:3%;すべてが一過性であり、中央値[範囲]が1.5[<1~3]日であり、標準治療で管理可能である)。疾患の進行に関連するグレード3の腫瘍崩壊症候群の患者が1人いた。
【0224】
ほとんどのCRS事象がサイクル1で発生し、48mgの2回目のフル用量ではCRS事象がなかったことが観察された。大部分の事象がサイクル1で発生し、解消した。解消までの時間の中央値(範囲)は2(1.0から9.0)日であった。48mgおよび60mgの推奨された用量まで用量が漸増したにもかかわらず、グレード3以上のCRS事象はなかった。CRSのリスクは、投与経路、昇圧投与、およびコルチコステロイドによる前処置によって軽減された。
【表9】
【0225】
DLBCL、FLおよびMCLの評価可能な患者における抗腫瘍活性を表8に示す。エプコリタマブ12~60mgを投与されたDLBCL患者22名では、全奏効率(ORR)が68%であり、10名の患者が完全奏効(CR)を達成した。エプコリタマブ48~60mg(48mgのRP2D、n=8名;60mg、n=3)を投与された11名のDLBCL患者のうち、10名の患者が、6名の患者におけるCRを含めて、応答を達成した。以前にCAR-T療法で治療され、応答評価可能であったDLBCL患者はすべて、奏功を達成した(4/4:2名はCR;2名は部分奏効[PR])。エプコリタマブ0.76~48mgを投与されたFL患者10人全員のうち、ORRは90%であり、5人の患者がCRを達成した。エプコリタマブ12~48mgを投与されたFL患者5名のうち、ORRは80%であり、3名の患者がCRを達成した。
【0226】
さらなるMCL患者がエプコリタマブによる治療を受けることはなかった。手短に言えば、4名の患者のうち、1名の患者(芽球様体;6mgで)は、推定される急速な疾患の悪化の後、プライミング用量(C1D1)を受けた1週間後に応答評価なしで死亡し、1名の患者(12mg)は、6週目の評価でSDをもたらしたが、12週目でPDをもたらし、1名の患者(48mgの芽球様体)は、6週目の評価でPRをもたらしたが、12週目でPDをもたらし、1名の患者(多形;プライミング用量0.16mg、中間用量0.8mg、24mg)は、6週目の評価で深い構造的および代謝的CRをもたらし、これは、直近の応答評価(24週目:SPD=0cm2;DS=1)で持続した。
【表10】
【0227】
上記のPK/PDモデルに関して、これを患者から得られたさらなるデータで連続的に更新した。得られた結果は、例えば図1および図3図7に示す結果と非常に類似していた。全体的な結論は同じままであり、FLおよびDLBCLの両方について、予測された三量体の形成は48~192mgからプラトーに達し、予測された奏効率は48mgでプラトーに達し始めた。曝露-有害事象分析も行い、プライミング用量、中間用量およびフル用量、ならびにエプコリタマブCmaxとグレード2のCRSとの間の平坦な関係を用いて、グレード2のCRSの全体的な低リスクがあったことを示した。モデルおよび臨床試験のシミュレーションに基づいて、48mgのフル用量が生物学的に有効な用量として特定され、有害事象のリスクと比較して適切な標的調節および臨床活性が得られた。
【0228】
結論
良好な安全性プロファイルに基づき、完全奏効を含む高い奏効率を有する印象的な有効性プロファイルと相まって、エプコリタマブは、少なくとも再発性または難治性のDLBCL/HGBCL、FLおよびMCLを有する患者にとって、クラス最高の治療である可能性を有する。これらのデータは、エプコリタマブの将来の外来での投与を支持する。臨床的有効性、安全性データ、およびPK/PDモデリングに基づいて、推奨されるフル用量は、DLBCL/HGBCLとFLの両方について、および一般にB-NHLについて、少なくとも48mgであり得る。現在利用可能なデータに基づいて、60mgのフル用量が企図され得る。48mgのフル用量が推奨され得る。0.16mgのプライミング用量および0.80mgの中間用量で観察された安全性データは、これらの用量後のすべてのCRS事象が軽度から中等度(≦gr.2)の重症度のみであり、標準的なCRS管理で解消されたという観察とともに、プライミング用量0.16mgおよび中間用量0.80mgが推奨され得ることを示す。したがって、サイクル1は、28日間サイクルの1、8、15および22日目に、それぞれ0.16mg、0.80mg、48mgおよび48mgの投与を含むことが推奨され得る。また、サイクル1の後に投与されるサイクルは、サイクル2~3に、28日間サイクルの1、8、15および22日目のフル用量の投与、サイクル4~9から、28日間サイクルの1および15日目のフル用量の投与、ならびにサイクル10から、28日間サイクルの1日目のフル用量の前進的な投与を含むように推奨することができる。本明細書に概説されるCRS緩和のための予防および前投薬は、サイクル1の4回の毎週の投与すべてについて3~4日間連続して推奨することができ、CRS>gr.1が、サイクル1における4回目の毎週のエプコリタマブ投与後に認められるときに、継続することができる。現在、臨床試験は、この投薬レジメンを、推奨される48mgのフル用量で利用しており、i.a.FL、MCLおよびDLBCL/HGBCLにおいて拡張し、また第III相試験が、HDT-ASCTに失敗したかまたは不適格である再発性、難治性DLBCLにおいて開始された。
【0229】
用量漸増および増大パートおよび第III相試験 全体で、169名の対象が、エプコリタマブ:GCT 3013-01(n=153名の対象合計;用量漸増パートの対象68名、増大パートの対象85名)、GCT3013-04(n=14名の対象;漸増パート7名、増大パートの対象7名)およびGCT3013-05(n=2名の対象)の3つの進行中の試験にわたって治療されてきた。
【0230】
GCT3013-01は、再発性、進行性、または難治性のB細胞リンパ腫を有する対象におけるエプコリタマブの安全性および予備的有効性を調査する第I/II相非盲検試験である。患者は用量漸増パートで治療されており、その結果は上記で広く記載されている。上記のような結果に対するさらなる更新が以下に提示される。用量漸増に続いて、増大パートにおいて、患者は、エプコリタマブによる治療を28日間のサイクルで、サイクル1の中で、1日目に0.16mg、8日目に0.8mg、15および22日目に48mg、サイクル2~3に、1、8、15、および22日目に48mg;サイクル4~9に、1、15日目に48mg;またサイクル10+に、1日目に48mgを皮下に受けた。153名の対象をこの試験に登録した。
【0231】
GCT 3013-05は、エプコリタマブの無作為化非盲検第III相臨床試験であり、最初の患者が治療されている。登録される患者は、先行のASCTに失敗したかまたはスクリーニングにおいてASCTに不適格である、R/R DLBCLの対象である。有効性は、ゲムシタビンおよびオキサリプラチンと組み合わせたリツキシマブであるR-GemOx、およびベンダムスチンと組み合わせたリツキシマブを含む標準的なケア治療と比較される。エプコリタマブは、28日間のサイクルで皮下投与され、サイクル1の中で、1日目に0.16mg、8日目に0.8mg、15および22日目に48mg、サイクル2~3に、1、8、15、および22日目に48mg;サイクル4~9に、1、15日目に48mg;またサイクル10+に、1日目に48mgを皮下に受けた。2名の対象をこの試験に登録した。
【0232】
GCT3013-04は、再発性または難治性(R/R)B-NHLの日本人対象におけるエプコリタマブの安全性および予備的有効性を調査する第I/II相非盲検試験コホートである。患者は、用量漸増および増大パートで治療されており、患者は、エプコリタマブによる治療を28日間のサイクルで皮下的に受け、サイクル1の中で、1日目に0.16mg、8日目に0.8mg、15および22日目に48mg、サイクル2~3に、1、8、15、および22日目に48mg;サイクル4~9に、1、15日目に48mg;またサイクル10+に、1日目に48mgを皮下に受けた。14名の対象をこの試験に登録した。
【表11】
【0233】
データカットオフ時に3から60mgの投薬群(3mgの2人の対象、6mgの1人の対象、12mgの2人の対象、24mgの4人の対象、48mgの4人の対象、および60mgの2人の対象)においてエプコリタマブの投与を継続していた15名の対象(22.1%)を含む、68名の対象が、GCT3013-01用量漸増パートにおいてエプコリタマブによる治療を受けていた。治療を中断した53名の対象のうち、46名の対象が疾患の進行のために中断した。GCT3013-01の用量漸増パートで治療された68人の対象のうち、年齢の中央値は67.5歳であり、対象の大部分(45名、66.2%)は男性であった。リンパ腫診断から初回の投与までの時間の中央値は29.7ヶ月であった。直近の再発、再発または進行からの時間の中央値は1.6ヶ月であった。登録された様々なB-NHLサブタイプのうち、46人の対象(67.6%)がDLBCLを有し、12人の対象(17.6%)がFLを有していた。登録した患者は、以下の疾患のタイプを有していた:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、すなわち、デノボ(28)、形質転換(17)または未知(1);高悪性度B細胞リンパ腫(3)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(1)、濾胞性リンパ腫(12)、マントル細胞リンパ腫(4)、小リンパ球性リンパ腫(1)および辺縁帯リンパ腫(1)。フル用量を受けた患者には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、すなわちデノボ(9)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(1)、濾胞性リンパ腫(1)、およびマントル細胞リンパ腫(1)が含まれた。
【0234】
データカットオフの時点でエプコリタマブの投与を継続している61名の対象(71.8%)を含めて、85名の対象がGCT3013-01増大パートにおいてエプコリタマブで治療されている;50人の対象が攻撃的B細胞非ホジキンリンパ腫(aNHL)コホートを継続しており、11人の対象が低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫(iNHL)コホートであった。治療を中断した24名の対象(28.2%)のうち、14名の対象が疾患の進行のために中断した。GCT3013-01増大パートで治療された85名の対象のうち、年齢の中央値は68.0歳であり、対象の大部分(60、70.6%)は男性であった。リンパ腫診断から初回投与までの時間の中央値は24.9ヶ月であった。直近の難治性または再発からの時間の中央値は1.13ヶ月であった。登録された様々なB-NHLサブタイプのうち、71名(83.5%)の対象がDLBCLを有し、13名(15.3%)の対象がFLを有していた。侵襲的NHLコホートでは、ほとんどの対象がDLBCL、すなわち、デノボ(44)、形質転換(17)、適用不可能(5)、未知(3)、欠落(1)を有していた。1名の患者は高悪性度B細胞リンパ腫を有していた。低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫コホートの対象のうち、12人が濾胞性リンパ腫グレード1-3Aおよび未知のグレードの1つを有していた。
【表12】
【0235】
薬力学
エプコリタマブは、循環性のB細胞の急速かつ持続的な枯渇を誘導した(検出可能なB細胞を有する患者のサブセットにおいて、以前の抗CD20療法のためにほとんどの対象において存在しない)。B細胞をCD19に対する抗体で検出した。その後の投与は、12mgを超える用量で、ベースラインからの循環T細胞の増大ならびに循環IFNγ、IL-6およびTNFαの中程度の上昇(血清免疫アッセイによる)を誘導した。末梢CD4+およびCD8+T-細胞の一過性の減少が最初のSC用量の6時間以内に観察され、これは他の二重特異性で見られるT細胞の周縁化と一致する。重要なことに、その後の投与は、ベースラインからのT細胞の増大を誘導した。CRSを軽減するために、エプコリタマブの段階的投与およびSC投与を実施した。エプコリタマブのSC投与は、中程度のIFNγ、IL-6およびTNFα上昇をもたらした。
【0236】
有効性
用量漸増パートでは、治療に対する応答の評価は、Lugano基準(Cheson et al.,2014)による研究者の評価に基づいた。完全解析セットを使用して、DLBCLを有する18/46の対象(39.1%)が奏功を達成した(部分奏効または完全奏効を有する対象を応答者と見なす)。FLを有する対象では、9/12(75.0%)が応答を達成した(表11)。
【表13】
【表14】
【0237】
安全性および忍容性
GCT3013-01用量漸増パートの68人の対象全員が、少なくとも1つの治療下で発現した有害事象(TEAE)を経験していた。4つの最も一般的なTEAEは、発熱(69.1%)、CRS(58.8%)、注射部位反応(47.1%)、および疲労(44.1%)であった。合計で、対象の80.9%が少なくとも1つのグレード3以上のTEAEを有していた。死亡に至るTEAEの対象は13名であった(11人の対象が悪性新生物進行を有し、1人が安楽死[進行性疾患との関連においても]を有し、1人がCOVID-19[コロナウイルス疾患2019]肺炎を有する)。エプコリタマブに関連すると考えられたものはなかった。重篤な有害事象(SAE)が対象のうち46名の対象(67.6%)について報告された。試験薬に関連していると考えられた最も一般的なSAEは発熱(19人の対象、27.9%)であり、これはCRSの症状として報告された(セクション4.6.2.2参照)。永続的な治療中止につながるTEAEの発生率は低かった(対象の13.2%)。特に注目すべき有害事象(AESI)には、以下が含まれた:40人の対象(58.8%)がCRSを経験し、4人の対象(5.9%)が、免疫介在性であると試験者が考えた神経症状を経験し、1人の対象(1.5%)が臨床的腫瘍崩壊症候群を経た。AESIは、eCRFの別個のAESIページで捕捉された。重篤度基準を満たすAESIに関連する症状は、全体的な診断を主要事象として有するSAEとして報告された。GCT3013-01用量漸増パートで治療された68人の対象のうち46人(67.6%)が少なくとも1つのSAEを経験していた。合計24名の対象(35.3%)が、エプコリタマブに関連すると考えられるSAEを経た。試験薬に関連していると考えられた最も一般的なSAEは発熱(19人の対象、27.9%)であり、これはCRSの症状として報告された。
【0238】
GCT3013-01増大パートの85人の対象のうち76人(89.4%)が少なくとも1つのTEAEを経験していた(表12)。最も一般的な3つのTEAEは、CRS(47.1%)、疲労(18.8%)、および発熱(18.8%)であった(表13)。合計で、対象の40.0%が少なくとも1つのグレード3以上のTEAEを有していた(表14)。死に至るTEAEの7人の対象が存在していた。1名の対象が、研究者によってエプコリタマブに関連すると見なされた、死をもたらすTEAEを経た(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群[ICANS])。SAEは対象の55.3%について報告された。試験薬に関連すると考えられる最も一般的なSAEはCRS(25人の対象、29.4%)であった。永続的な治療中止につながるTEAEの発生率は低かった(対象の5.9%)。AESIには以下が含まれていた:40人の対象(47.1%)がCRSを経験し、3人の対象(3.5%)がICANSを経験し、1人の対象(1.2%)が臨床的腫瘍崩壊症候群を経た。
【0239】
前述のように、GCT3013-01増大パートで治療された85人の対象のうち7人(8.2%)が死に至るTEAEを経た。1名の対象が、研究者によってエプコリタマブに関連すると見なされた、死をもたらすTEAEを経た。この対象は、IV期の非GCB DLBCL、および糖尿病、高血圧、高脂血症の病歴、また肺がんによる右上葉切除がある72歳女性であった。スクリーニング時に、対象は、膵臓、脾臓および傍大動脈リンパ腫に関与していた。対象は、0.16mgのエプコリタマブのプライミング用量の2日後に持続性の腹痛を経て、後にグレード3の膵炎と診断され、モルヒネの複数回の反復用量で治療され、イメージングに基づいて進行性リンパ腫が判定された。中間用量0.8mgのエプコリタマブの4日後、グレード2のICANSが報告され、これは後にグレード4に悪化した。さらに、グレード1の脳虚血が脳イメージングで観察された。試験薬を中止した。対象の状態は悪化し、対象は中間用量0.8mgのエプコリタマブの17日後に死亡し、死亡はICANSによるものと報告された。しかし、長い歴の糖尿病、高血圧、高脂血症、可能性のある微小血管障害(新たな多巣性脳梗塞、脾臓梗塞、凝固障害の検査所見、および腎機能障害によって示唆される)、ならびにモルヒネを使用したことでの活性代謝産物の蓄積(これらは浄化のため機能している腎臓に依存する)が伴う対象における高アンモニア血症によって引き起こされる代謝性脳症は、神経毒性に対する非常に可能性の高い交絡因子である。CRSの非存在下で神経学的症状を治療するためのトシリズマブの不当な投与は、IL-6の循環レベルを増加させることによって、神経毒性の可能性を高めることが知られており、この場合、神経毒性の悪化に寄与した可能性が高い。
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【0240】
GCT3013-01増大パートで治療された85人の対象のうち47人(55.3%)が少なくとも1回のSAEを経験していた(表23)。合計28名の対象(32.9%)が、エプコリタマブに関連すると考えられるSAEを経た。試験薬に関連すると考えられた最も一般的なSAEはCRS(25人の対象、29.4%)であった(表15)。
【表19】
【0241】
GCT3013-01増大パートで治療された85人の対象のうち合計5人(5.9%)が、試験薬の永続的な中止をもたらすTEAEを経ていた:1人の対象がそれぞれ、肺新生物、悪性新生物の進行、腹痛、肝毒性、高ビリルビン血症、進行性多巣性白質脳症、トランスアミナーゼ上昇、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群、および呼吸不全を経た(表16)。2人の対象が治療の永続的な中止をもたらす複数のTEAEを経た:1人の対象が肺新生物および呼吸不全を経た;1名の対象は、疾患の進行により、腹痛、肝毒性、高ビリルビン血症、およびトランスアミナーゼの増加を経た。
【表20】
【0242】
特に注目すべき有害事象
以下は、エプコリタマブAESIの概要である。
【0243】
サイトカイン放出症候群は、GCT3013-01用量漸増パートの40名の対象、GCT3013-01増大パートの40名の対象、およびGCT3013-04用量漸増パートの6名の対象を含む86名の対象で報告された。CRSを(Lee et al.,2019)に従って等級付けした。グレード3であったGCT3013-01増大パートにおける2つの事象およびGCT3013-04用量漸増部分における1つの事象を除いて、すべてのCRSの事象はグレード1または2であった。
【0244】
神経毒性は、AESIとしてエプコリタマブプロトコルに列挙されている。GCT3013-01試験の用量漸増パートでは、CARTOX-10スケール(Neelapu et al.,2017)に従って神経学的評価を行った。ICANSと一致する免疫介在性の疑われる神経症状を別々のAESIとして捉えた。GCT3013-01試験およびGCT3013-04試験の増大パートでは、ICANSの症例は、ICANSの正確な用語を使用して報告されている。AESIとして報告された神経学的症状は、用量漸増パートの4名の対象、および増大パートの3名の対象を含むGCT3013-01の7名の対象で報告され、GCT3013-04の用量漸増パートの対象は報告されなかった。
【0245】
臨床腫瘍崩壊症候群は、GCT3013-01用量漸増パートの1名の対象、GCT3013-01増大パートの1名の対象、およびGCT3013-04用量漸増パートの対象なしを含む2名の対象で報告された。臨床腫瘍崩壊症候群を、Cairo-Bishop(Coiffier et al.,2008)に従って等級付けした。腫瘍崩壊症候群の両事象はグレード3であった。
【0246】
臨床データの概要
これは、GCT3013-01(用量漸増パートおよび用量増大パートの安全性、用量漸増パートの有効性、ならびに用量漸増パートのPK)のデータ、およびGCT3013-04用量漸増パートの安全性データをまとめたものである。DLTは生じておらず、MTDに到達しておらず、RP2Dは48mgのフル用量であると明言された。GCT3013-01用量漸増パートの68人の対象全員が少なくとも1つのTEAEを経た;対象の80.9%が少なくとも1つのグレード3以上のTEAEを有していた。最も一般的なTEAEは、発熱、CRS、注射部位反応および疲労であった。死亡に至るTEAEの対象は13名であった(11人の対象が悪性新生物進行を有し、1人が安楽死[進行性疾患との関連においても]を有し、1人がCOVID-19肺炎を有する)。SAEは対象の67.6%について報告された。試験薬に関連していると考えられた最も一般的なSAEは発熱であり、これはCRSの症状として報告された。永続的な治療中止につながるTEAEは13.2%で報告された。。AESIには以下が含まれていた:40人の対象がCRSを経験し、4人の対象が免疫介在性であると試験者が考えた神経症状を経験し、1人の対象が臨床的腫瘍崩壊症候群を経た。
【0247】
GCT3013-01増大パートの合計76人の対象(89.4%)が少なくとも1つのTEAEを経た;対象の40.0%が少なくとも1つのグレード3以上のTEAEを有していた。最も一般的なTEAEは、CRS、疲労および発熱であった。死に至るTEAEの対象は7人であった(疾患の進行、全身の健康状態の悪化、COVID-19、肝毒性、悪性新生物の進行および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群をそれぞれ有する1名の対象)。SAEは対象の55.3%について報告された。試験薬に関連すると考えられる最も一般的なSAEはCRSであった。永続的な治療中止をもたらすTEAEが対象の5.9%で報告された。AESIには以下が含まれた:40人の対象がCRSを経験し、3人の対象がICANSを経験し、1人の対象が臨床腫瘍崩壊症候群を経た。
【0248】
GCT3013-04用量漸増パートの7人の対象全員が少なくとも1つのTEAEを経た;対象の71.4%が少なくとも1つのグレード3以上のTEAEを有していた。最も一般的なTEAEは、CRSおよび注射部位紅斑であった。治療の中止をもたらすTEAE、SAE、または死をもたらすTEAEを経た対象はいなかった。2人の対象が、用量の変更をもたらすTEAEを経た。CRSのAESIは6人の対象(85.7%)で発生した。
【0249】
エプコリタマブの投与は、循環性のB細胞(先行の抗CD20療法のためにほとんどの患者には存在しない、検出可能なB細胞を有する対象のサブセットにおいて)の迅速かつ持続的な枯渇を誘導し、末梢T細胞および循環性のIFNγを増加させた。
【0250】
患者において、エプコリタマブに対する有意なADA(力価≧1)は観察されなかった。
【0251】
GCT3013-01用量漸増パートでは、合わせたすべての用量レベルについて、ORRは44.1%であった;RP2Dレベル(48mg)について、ORRは66.7%であった。
【0252】
クラス効果
エプコリタマブが属する化合物のクラス、すなわち二重特異性T細胞エンゲージャーについて報告された有害反応には、CRS、神経症状、および感染が含まれる。
【0253】
B細胞の枯渇は、感染のリスク増加をもたらし得る。感染は、最良の医療行為に従って管理されるべきである。エポリタマブでの治療中および治療後に、リスクのある対象の潜伏ウイルス感染、例えばB型肝炎またはサイトメガロウイルスのモニタリングを行うべきである。GCT3013-01試験およびGCT3013-04試験の漸増パートの合計58人の対象が感染を経た。エプコリタマブ関連感染は、GCT3013-01増大またはGCT3013-04用量漸増パートでは報告されなかった。
【0254】
CRSは、エプコリタマブ、ならびにCD3およびキメラ抗原受容体T細胞を標的とする他の化合物または薬物で報告されている。バイタルサイン、特に体温、血圧、および酸素飽和度の綿密なモニタリング、ならびに血液学、肝臓および腎臓のパラメータの検査室での評価は、必要に応じて支持療法のタイムリーな開始を確保するために重要である。(Lee et al.,2019)および(Neelapu et al.,2017)に基づく支持療法には、それだけに限らないが、以下が含まれ得る。
【0255】
・生理食塩水の注入
・全身性糖質コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、解熱
・血圧支持
・換気のための支持
・IL-6R、IL-6またはIL-1に対するモノクローナル抗体(例えば、トシリズマブ、シルツキシマブおよび/またはアナキンラ)
サイクル1でのエプコリタマブの投与に関連して、4日間連続した予防的なコルチコステロイドの投与を含む追加のCRSリスク低減措置を実施した。CRS事象の大部分はグレード1および2として報告されている;3名の対象のみがグレード3としてCRSとして報告されている。
【0256】
合計で86名の対象が、GCT3013-01およびGCT3013-04用量漸増パートにおいて少なくとも1つのCRS事象を報告した。症例の大部分はグレード1またはグレード2のCRSであったが、グレード3のCRSが3人の患者でのみ発生し、グレード1またはグレード2のCRSが非常に一般的な事象であるのに対してグレード3は一般的であると思われることを示している。このうち、40名(58.8%)の対象(20人の対象-グレード1;20人の対象-グレード2)がGCT3013-01用量漸増パートにおり、40名(47.1%)の対象(24人の対象-グレード1;14人の対象-グレード2;2人の対象-グレード3)がGCT3013-01増大パートにあり、6名(85.7%)の対象(4人の対象-グレード1;1人の対象-グレード2;1人の対象-グレード3)がGCT3013-04用量漸増パートにいた。CRS事象を経た86名の対象のうち、25名がSAEとして報告された。CRSのすべての症例を、エプコリタマブに関連する、回復/消散として評価した。生命を脅かすまたは致死的なCRSの症例は報告されなかった。CRSは治療中止に至らなかった。
【0257】
錯乱から致死性脳浮腫に及ぶ神経学的な症状が、CD3を標的とする他の化合物または薬物で報告されている。神経学的評価は、ICANS評価(Lee et al.,2019)に従って行うべきである。ICANSの等級付けには、10点の免疫エフェクター細胞関連脳症スコアの評価、ならびに4つの他の神経学的ドメイン、すなわち意識レベル、発作、運動症状、および脳症の有無にかかわらず起こり得る頭蓋内圧上昇/脳浮腫の徴候の評価が必要である(プロトコルを参照)。治療中の精神状態の綿密な監視が、必要に応じて支持療法の適時の開始を確実にするために、重要である。支持療法には、それだけに限らないが、以下が含まれ得る:
・IV水和の開始
・経口摂取を控える
・中枢神経系鬱病を引き起こす薬物を回避する
・コルチコステロイドの開始
・抗サイトカイン療法
・抗痙攣療法
合計7人の対象が、神経症状(AESI)に関連する有害事象を経た。GCT3013-01増大パートの3名の対象がICANSを発症し、これは1名の対象において致死的であった。7人の対象のうち4人はGCT3013-01用量漸増パートからであり、グレード3の意識水準の低下、グレード3の過眠、グレード1の部分発作の3つの重篤なAESI、ならびにグレード1の書字障害およびグレード1の失書症の2つの非重篤なAESIを経た。
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図7
【配列表】
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【国際調査報告】