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特表2023-524195心臓、肺、皮膚、および腎臓の線維症の治療および予防のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】心臓、肺、皮膚、および腎臓の線維症の治療および予防のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/136 20060101AFI20230602BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230602BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230602BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230602BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A61K31/136
A61K31/137
A61P9/00
A61P37/02
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P13/12
A61P11/00
A61P17/00
A61P9/12
A61K9/10
A61K9/08
A61K47/44
A61K47/40
A61K47/26
A61K47/14
A23L33/10
A23L2/52
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547686
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 US2021017052
(87)【国際公開番号】W WO2021159059
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/970,854
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/020,584
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.CREMOPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】521345903
【氏名又は名称】エメラルド ヘルス ファーマシュウティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローランド,アライン
(72)【発明者】
【氏名】ムノス-ブランコ,エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-マルティン,アデラ
(72)【発明者】
【氏名】ナバレテ,カルメン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD18
4B018ME14
4B117LC04
4B117LK06
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC17
4C076DD46
4C076EE23
4C076EE53
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA59
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB21
(57)【要約】
本開示は、カンナビジオール誘導体またはその組成物を使用して、心臓線維症、大動脈線維症、肺線維症、腎線維症、皮膚線維症、および慢性腎臓疾患などの様々な疾患または障害を治療または予防する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患または障害の予防または治療を必要とする対象においてそれを予防または治療するための方法であって、前記方法が、それを必要とする対象に治療量の式(I)の構造を有する化合物またはその組成物を投与することを含み、
【化1】
式中、Rが、直鎖もしくは分岐アルキルアミン、アリールアミン、アリールアルキルアミン、ヘテロアリールアミン、ヘテロアリールアルキルアミン、直鎖もしくは分岐アルケニルアミン、直鎖もしくは分岐アルキニルアミン、またはNHから独立して選択される基の窒素原子である、方法。
【請求項2】
前記式(I)の構造を有する化合物が、
【化2-1】
【化2-2】
およびそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物が、E2F経路の活性、筋線維芽細胞のレベル、線維芽細胞のレベル、線維症のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積または沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルまたは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルまたは活性、インターフェロン応答のレベルまたは活性、インターフェロンα(IFN-α)応答のレベルまたは活性、インターフェロンγ(IFN-γ)応答のレベルまたは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを調節する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物が、E2F経路の活性、筋線維芽細胞の増殖、線維芽細胞の増殖、線維症の増殖、マクロファージ浸潤、コラーゲン蓄積または沈着、大動脈中膜肥厚の発生、線維症に関連する大動脈中膜肥厚の発生、炎症反応の活性、少なくとも1つの線維性タンパク質の活性、インターフェロン応答の活性、IFN-α応答の活性、IFN-γ応答の活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを阻害する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記コラーゲン蓄積または沈着が、間質性コラーゲン蓄積または沈着、心臓組織における間質性コラーゲン蓄積または沈着、心筋コラーゲン蓄積または沈着、血管周囲心筋コラーゲン蓄積または沈着、腎臓コラーゲン蓄積または沈着、皮膚コラーゲン蓄積または沈着、肺コラーゲン蓄積または沈着、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物が、E2F依存性遺伝子、サイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)遺伝子、トポイソメラーゼ2-α(TOP2A)遺伝子、増殖Ki-67(MKi67)遺伝子、炎症遺伝子、線維化促進遺伝子、インターロイキン6(IL6)遺伝子、インターロイキン1β(IL1β)遺伝子、テネイシンC(TNC)遺伝子、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子を調節する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記線維症が、腎線維症、心臓線維症、大動脈線維症、皮膚線維症、肺線維症、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患または状態が、E2F経路に関連する疾患または状態、筋線維芽細胞の増殖に関連する疾患または状態、コラーゲン蓄積または沈着に関連する疾患または状態、大動脈中膜肥厚の増加に関連する疾患または状態、線維症による大動脈中膜肥厚に関連する疾患または状態、炎症に関連する疾患または状態、マクロファージ浸潤に関連する疾患または状態、線維性タンパク質の発現に関連する疾患または状態、E2F依存性遺伝子発現に関連する疾患または状態、線維芽細胞の増殖に関連する疾患または状態、線維性疾患または障害、自己免疫疾患または障害、炎症関連疾患または障害、心疾患または障害、心血管疾患または障害、肺疾患または障害、腎疾患または障害、皮膚疾患または障害、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記線維性疾患または障害が、腎線維症、心臓線維症、心血管線維症、肺線維症、皮膚線維症、血管周囲心筋コラーゲン蓄積または沈着、腎コラーゲン蓄積または沈着、皮膚コラーゲン蓄積または沈着、肺コラーゲン蓄積または沈着、線維症に関連する大動脈中膜肥厚の増加、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(BOOP)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、石綿肺、偶発的放射線誘発性肺線維症、治療用放射線誘発性肺線維症、サルコイドーシス、珪肺症、結核、COVID-19関連肺線維症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、砂糖キビ肺症、好酸球性肉芽腫、ウェゲナー肉芽腫症、リンパ脈管筋肉腫症、嚢胞性線維症、脂肪肝疾患、慢性移植片対宿主病(cGVHD)、強皮症性移植片対宿主病、腎性全身性線維症、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、慢性移植片拒絶、瘢痕化または創傷治癒異常、術後癒着、反応性線維症、腎毒性物曝露に関連する疾患または障害、アミノグリコシド曝露に関連する疾患または障害、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)曝露に関連する疾患または障害、免疫抑制剤曝露に関連する疾患または障害、ニトロフラントイン曝露に関連する疾患または障害、アミオダロン曝露に関連する疾患または障害、ブレオマイシン曝露に関連する疾患または障害、シクロホスファミド曝露に関連する疾患または障害、メトトレキサート曝露に関連する疾患または障害、心筋梗塞、損傷に関連する組織瘢痕化、手術に関連する瘢痕化、治療用放射線誘発性線維症、皮膚筋炎(DM)、自己免疫に基づく内皮細胞損傷などの内皮細胞損傷に関連する疾患または障害、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記心疾患または障害が、心不全、心臓線維症、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記腎疾患または障害が、慢性腎臓疾患、腎線維症、全身性エリテマトーデス(SLE)に関連する腎疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記肺疾患または障害が、特発性肺線維症(IPF)疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺動脈高血圧症(PAH)、特発性肺動脈高血圧症(iPAH)、肺線維症、嚢胞性線維症、肺炎症、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、脂質製剤である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、前記式(I)~(X)の構造を有する化合物を可溶化する薬学的ビヒクルを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記薬学的ビヒクルが、水性緩衝液、溶媒、共溶媒、シクロデキストリン複合体、脂質ビヒクル、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記脂質ビヒクルが、Captex300、Tween85、Cremophor EL、Maisine35-1、Maisine CC、Capmul MCM、コーン油、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記脂質ビヒクルが、少なくとも2種の油を含む油混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記油混合物が、Maisine CCとトウモロコシ油との混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記Maisine CCとトウモロコシ油との混合物が、50Maisine CC:50トウモロコシ油体積/体積を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物が、別の治療剤と組み合わせて投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項21】
前記式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物が、経口、局所、筋肉内、静脈内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項22】
前記式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物が、食品または飲料とともに投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
線維性疾患または障害の予防または治療を必要とする対象においてそれを予防または治療するための方法であって、治療量の式(VIII)の構造を有する化合物またはその組成物を投与することを含む、方法。
【化3】
【請求項24】
前記線維性疾患または状態が、心臓線維症、大動脈線維症、肺線維症、皮膚線維症、腎線維症、またはそれらの組み合わせである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
線維性疾患の予防および/または治療を必要とする対象においてそれを予防および/または治療するための組成物であって、前記組成物が、式(I)の構造を有する化合物またはその誘導体を含み、
【化4】
式中、Rが、直鎖もしくは分岐アルキルアミン、アリールアミン、アリールアルキルアミン、ヘテロアリールアミン、ヘテロアリールアルキルアミン、直鎖もしくは分岐アルケニルアミン、直鎖もしくは分岐アルキニルアミン、またはNHから独立して選択される基の窒素原子であり、
前記化合物が、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベルまたは活性、筋線維芽細胞のレベル、線維芽細胞のレベル、線維症のレベル、マクロファージ蓄積のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積または沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルまたは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルまたは活性、インターフェロン応答のレベルまたは活性、IFN-α応答のレベルまたは活性、IFN-γ応答のレベルまたは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを調節する、組成物。
【請求項26】
前記式(I)の構造を有する化合物が、
【化5-1】
【化5-2】
およびそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも1つの請求項25に記載の化合物を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月6日に出願された米国仮特許出願第62/970,854号および2020年5月6日に出願された米国特許出願第63/020,584号の優先権および利益を主張し、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、少なくとも1つのカンナビジオール誘導体を含む組成物、ならびに当該カンナビジオール誘導体またはその組成物を使用して、心臓、大動脈、腎臓、肺、および皮膚の線維性疾患または障害などの様々な疾患および障害を予防または治療するための方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を使用して、心臓、大動脈、腎臓、肺、および皮膚の線維性疾患または障害を予防または治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの形態の心血管疾患の臨床徴候である心不全は、間質性線維症、心室リモデリング、および低減した心室コンプライアンスを特徴とする壊滅的な障害である。心臓疾患は依然として世界中における主な死亡原因である(Benjamin EJ et al.,2019,Circulation,139:e56-e528)。治療戦略の大幅な改善にもかかわらず、心血管疾患は依然として世界中で主な死因であり、革新的な治療戦略が緊急に必要であることを示している(Mozaffarian D et al.,2015,Circulation,131:e29-e322)。心筋梗塞、高血圧、心房細動、真性糖尿病、およびいくつかの他の心血管疾患を含むほぼすべての形態の心臓疾患は、心臓線維症に関連している。
【0004】
心臓線維症は、心筋における細胞外マトリックス(ECM)の異常な蓄積を特徴とし(Berk BC et al.,2007,J.Clin.Invest.,117:568-5751、Kong P et al.,2014,Cell Mol.Life Sci.,71:549-574)、心臓線維芽細胞の活性化を伴い(Krenning G et al.,2010,J.Cell Physiol.,225:631-637)、その両方とも、ほとんどの心臓状態の不可欠な要素である。正味の蓄積は、心筋収縮能をなくし、心機能を損ない、最終的に心不全を引き起こす。哺乳動物成体の心筋は再生能力をほとんど有しないため、急性心筋細胞死に関連する疾患では、心室の最も広範な線維性リモデリングが見られる。急性心筋梗塞後、多数の心筋細胞が突発的に喪失することによって炎症反応が引き起こされ、死滅した心筋がコラーゲンベースの瘢痕に最終的に置き換わる(Frangogiannis NG,2012,Circ.Res.,110:159-173)。いくつかの他の病態生理学的状態は、完全梗塞がない場合に、より潜行性の間質および血管周囲コラーゲン沈着を誘発する。加齢は進行性線維症と関連し、これは高齢患者における拡張期心不全の発生の原因となり得る。高血圧または大動脈弁狭窄症によって誘発される圧力過負荷は、最初は剛性の増加、拡張機能障害、および収縮期心不全に関連する広範な心臓線維症を引き起こす(Berk BC et al.,2007,J.Clin.Invest.,117:568-5751)。弁逆流病変による容量過負荷も、不均衡的に多量の非コラーゲンマトリックスを特徴とする心臓線維症を引き起こし得る(Borer JS et al.,2002,Circulation,105:1837-1842)。
【0005】
心臓線維芽細胞は、心臓線維症における主なエフェクター細胞であり、線維化プロセスの重要な段階に関与する主要な細胞種であるため、心臓線維症の形成において重要な役割を果たす。その反応は、炎症、非心筋細胞の増殖、瘢痕の成熟、過剰な合成の生成、心臓組織でのコラーゲンの沈着を含むECMタンパク質の蓄積から構成される(Travers et al.,2016,Circ.Res.,118:1021-1040)。
【0006】
様々な炎症誘発性サイトカインおよび線維化促進因子の発現が心臓線維芽細胞でアップレギュレートされ、該心臓線維芽細胞は、増強された増殖、移動、収縮、およびコラーゲン産生能力を示す筋線維芽細胞に変換され得る(Krenning G et al.,2010,J.Cell.Physiol.,225:631-637、Ivey MJ et al.,2016,Circ.J.,80:2269-2276)。増殖の抑制およびアポトーシスの誘導は、活性化された線維芽細胞を減少させ、心臓線維症を緩和する。
【0007】
E2因子(E2F)経路の既知の標的であるサイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)の調節は、G1チェックポイント制御に関与し、心臓線維芽細胞の増殖を阻害し、心臓線維症に対する保護効果を発揮することが示されている(Fang G et al.,2018,Molecular Medicine Reports,18:1433-1438)。E2F転写因子ファミリーは、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスに関与する遺伝子の発現の制御において重要な役割を果たす。実際、それらは細胞周期のG1/S期移行において極めて重要な役割を果たす(Dyson N.,1998,Genes Dev.,12:2245-2262、Nevins JR et al.,1997,J.Cell.Physiol.,173:233-236)。
【0008】
構造的および機能的に、E2F転写因子は次の3つの主なカテゴリーに分類することができる:増殖に関与するE2F1~3、分化において役割を果たすと考えられるE2F-4およびE2F-5、ならびに転写リプレッサーとして説明されるE2F-6(Trimarchi,JM et al.,2002,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.,3:11-20)。完全な転写活性のために、E2F転写因子は、DP-1およびDP-2という2つの哺乳動物形態が説明されている二量体化パートナー(DP)タンパク質とヘテロ二量体化する。(Rogers KT et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,93:7594-75998)。E2Fメンバーの転写活性は、pRb、p107、および p130から構成されるポケットタンパク質のpRbファミリーによって立体的に調節される(Dyson N,1998,Genes Dev.,12:2245-2262、Rogers KT et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,93:7594-75998)。E2Fの活性化は、細胞周期のG1期にあるサイクリンD-サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6複合体がpRbポケットタンパク質をリン酸化し、次いでこれがE2F-DP複合体から解離して、E2F媒介性遺伝子転写および細胞周期のS期への進行が引きこされたときに生じる(Dyson N,1998,Genes Dev.,12:2245-2262、Nevins JR et al.,1997,J.Cell.Physiol.,173:233-236)。
【0009】
様々な研究により、E2Fが心筋細胞の細胞周期進行に関与することが示されている(Flink I et al.,1998,J.Mol.Cell.Cardiol.,30:563-578)。E2F活性は、筋細胞肥大の発生中に増加し、E2F機能を遮断することにより、心筋細胞肥大の発生が阻害される(Vara D et al.,2003,J.Biol.Chem.,278:21388-21394)。死滅した筋細胞は、コラーゲンマトリックスを合成する増殖中の心臓線維芽細胞に置き換えられる。
【0010】
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害剤(すなわち、ロサルタン)などのいくつかの従来の治療は、ヒトでの心臓線維症を軽減するが、心不全を有する患者では、これらの従来の治療法で治療した場合でも心臓線維症が残り続け、これは心血管疾患における新規かつ効果的な抗線維化治療を開発する必要性を示している(Fang L et al.,2017,Front.Pharmacol.,8:186)。
【0011】
特発性肺動脈性肺高血圧症(iPAH)は、診断後3年以内の平均死亡率が58%である致命的疾患である。レニン-アンジオテンシン系が内皮機能、機能不全、および血管リモデリングにおいて重要な役割を果たしていることは周知である。古典的なアンジオテンシン変換酵素(ACE)--アンジオテンシンII(Ang-II)--アンジオテンシン1受容体(AT1R)RAS軸(ACE-AngII-AT1R)の活性化は、肺血行動態に悪影響を及ぼし、血管収縮および肺高血圧症を引き起こす(Marshall RP,2003,Curr.Pharm.Des.,9:715-722)。ACE発現およびAng-II産生の増加ならびにAT1R発現の増加を伴うRAS軸のこの部分が、肺動脈性肺高血圧症(PAH)を有する患者で発生し得るという証拠がある(de Man FS et al.,2012,Am.J.Respir.Crit.Care Med.;186:780-789)。PAHはまた、肺動脈および細動脈を閉塞する特に重篤な動脈症および血管病変(例えば、叢状病変および新生内膜増殖)と関連している。PAHは、大動脈弁狭窄症を有する患者で一般的に見られる所見であり、経カテーテル的大動脈弁置換術および外科的大動脈弁置換術の両方の後の死亡率および罹患率の増加に関連している。(O’Sullivan CJ et al.,2015,Circ.Cardiovasc.Interv.8:e002358)。
【0012】
さらに、PAHは、特発性肺線維症(IPF)を含む間質性肺疾患のよく認識されている合併症である。根底となる病因は、最初は炎症であると仮説が立てられていたが、現在では、盛んな線維増殖プロセスとして特徴付けられている(Shorr AF et al.,2007,Eur.Respir.J.,30:715-721)。実際、PAHは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性肺疾患の患者に一般的に認められる。PAHは、COPDまたはIPFを有する患者の40%に存在することが同定されており、COPDまたはIPFを有する患者の死亡率の主な予測因子のうちの1つとみなされている。COPDは、主に肺に罹患する複雑な障害であり、局所肺炎症だけでなく、全身性炎症も特徴とし、これは肺外および心血管併存疾患の発症を促進する。ACE阻害剤およびARB(アンジオテンシン受容体遮断薬)は、心血管疾患の治療に広く使用されている薬物であり、COPD患者での潜在的な利点を示唆する証拠が増えている。しかしながら、そのような種類の薬剤の効果は限られ、慢性肺疾患の状況におけるPAHの有病率および致命的な結果にもかかわらず、減少していない。したがって、進行性疾患を有する患者に利用可能な治療は限られており、肺移植が最も実行可能な選択肢のままである。
【0013】
さらに、慢性腎臓疾患は、世界中で末期腎疾患および心血管疾患の罹患率および死亡率の主な原因であり、社会的および経済的負担の増大をもたらしている。慢性腎臓疾患の有病率および負担は、加齢の結果として、今後数十年にわたってさらに増加すると予想される。腎線維症は、腎臓の損傷および機能喪失に関連する進行性の病態生理学的変化である慢性腎臓疾患の主な特徴である。
【0014】
慢性腎臓疾患の進行中における線維症の生物学的意味は、ECM産生に寄与する腎筋線維芽細胞に依存する(Mack M et al.,2015,Kidney Int.,87:297-307)。通常の条件下では、常在腎線維芽細胞は、生理的恒常性を維持するために低酸素傷害に応答する赤血球産生の調節因子として最もよく知られているホルモンであるエリスロポエチン(EPO)を産生する。しかしながら、病理学的条件下では、常在腎線維芽細胞は筋線維芽細胞に分化転換し、これはEPOではなく大量のECMタンパク質を生成することによって腎線維症を促進する(Sato Y et al,2017,Inflamm Regen.,37:17)。さらに、マウスでの1つの研究は、EPOでの治療がα-SMAアップレギュレーションを阻害することによって線維細胞の蓄積を阻害し、間質性腎線維症を減弱させることを示した(Geng XC et al.,2015,Mol.Med.Rep.,11:3860-3865)。したがって、EPOは、腎線維症に対する効果的な保護を提供する(Zhang Y et al.,2020,Front.Med.(Lausanne),7:47)。
【0015】
慢性腎臓疾患(CKD)の患者では、腎機能が著しく損なわれている。慢性腎疾患としても既知であるCKDは、数か月または数年にわたって腎機能が進行的に喪失することである。CKDの最も深刻な段階は末期腎疾患(ESRD)であり、これは腎臓の機能が停止したときに発生する。CKDの2つの主な原因は、糖尿病および高血圧であり、これらは原因の最大3分の2を占める。心臓疾患は、CKDを有する患者の主な死因である。ESRDを患っている患者では、過剰な体液が蓄積し得る。従来の血液透析治療を受けたESRD患者の死亡率は年間24%であり、糖尿病患者間では死亡率はさらに高くなっている。ESRD患者では、腎臓が体から水および他の体液を効果的に除去できなくなるため、体液が蓄積する。液体は最初に血液中に蓄積し、次いで全身にわたって蓄積し、四肢および他の組織が浮腫として腫れる。体液のこの蓄積は、心臓へのストレスを増大させ、次いで血圧および高血圧の大幅な上昇を引き起こし、これによって心不全となり得る。
【0016】
CKDに罹患する患者の数は年々増加しているが、治療法がない。CKDの現在の治療は、疾患の進行を遅らせること目指している。しかしながら、病気が進行するにつれて腎機能が低下し、最終的には、喪失した腎機能を補うために腎代替療法が用いられる。腎代替療法は、新しい腎臓の移植または透析のいずれかを必要とする。
【0017】
腎臓疾患の場合、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の阻害剤が抗線維化活性を直接示す(Tampe D et al.,2014,Nat.Rev.Nephrol.,10,226-237)。しかしながら、ACE阻害剤カプトプリルがFDAによって1981年に承認されて以来、末期腎疾患(ESRD)の発生率は米国で3倍以上になった。(Collins AJ et al.,2011,Am.J.Kidney Dis.,59:evii)。しかしながら、現在、心臓線維症または腎線維症を予防または治療するための上市されている医薬品はない。
【0018】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、典型的には抗核抗体および抗二本鎖DNA抗体などの自己抗体の形成を特徴とする慢性自己免疫疾患である。SLEには、腎臓を含む複数の臓器が関与する多様な臨床症状がある。腎合併症はSLEの最も頻繁かつ深刻な合併症のうちの1つであり、症状は準臨床的な検査所見異常から顕性腎炎またはネフローゼ症候群まで様々である。さらに、SLEは、CKDおよびESRDの主な原因のうちの1つである。SLE患者の約60%に腎障害が発生し、そのうちの10%~20%がESRDに進行することが既知である。ループス腎炎によって引き起こされるCKDおよびESRDは、SLE患者の主な死亡原因である。免疫抑制治療は最近進歩しているが、ESRDへの進行および死亡率は過去数十年間減少していない(Costenbader KH et al.,2011,Arthritis Rheum.,63:1681-1688)。さらに、中壁心筋線維症はSLEにおいて頻繁に発生し、対象年齢の上昇と強く関連しているが、SLEの持続期間または重症度とは関連していない(Seneviratne MG et al.,2016,Lupus,25:573-581)。したがって、心臓、肺、および腎臓の線維症を予防および/または治療することを目的とし、免疫調節活性を備えた新規な薬剤候補がSLEの治療に必要である。
【0019】
利用可能な証拠により、嚢胞性線維症(CF)が広範な心血管系障害を生じさせることが示されている。心臓以外にも、気管支動脈、大動脈、および全身毛細血管において異常が観察されている。すべての心血管合併症の中で、肺性心は最も深刻である。肺性心の原因は低酸素血症であり、これが緩和されない限り、心臓に対する治療から持続的な効果は期待できない。嚢胞性線維症が進行性疾患であるため、肺性心も進行性である。肺障害は、通常は進行性であり、断続的な増悪を伴う。積極的な管理および治療の進歩は、肺疾患の進行を遅らせることはあっても防げない。肺高血圧症は、低酸素血症の程度と相関している。肺高血圧症は、進行したCFに関連する肺疾患を有する個人に一般的に見られる。さらに、病理学、動物、およびヒトの研究から蓄積データにより、嚢胞性線維症が、任意の他の既知の心疾患とは無関係に、心臓の機能的および構造的変化をもたらすことを示されており、これは、嚢胞性線維症に関連する心筋症の存在をサポートしている。組織学的研究により、心筋線維症が人生の早い時期に左心室に影響を与え得ることが示されている(Labombarda F et al,2016,Respir Med.,118:31-38)。
【0020】
一方、CFは現代医学の成功事例の1つであり、1950年代にはこの病気を有するほとんどの人が5歳になる前に死亡していたが、医学の進歩により、21世紀に生まれた人が50~60年生きるようになっている。しかしながら、CF人口の高齢化は予期せぬ問題および複雑性をもたらし、肺疾患のケアに重点的に取り組むことから複雑な多臓器慢性疾患の管理への成人医療部門の見通しにパラダイムシフトがあった。したがって、CFの個人は、アミノグリコシド、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、免疫抑制剤などを含む複数の潜在的に腎毒性である物質への曝露により、急性腎障害および慢性腎疾患の発症のリスクがある(Nazareth D et al.,2013,J.Cyst.Fibros.,12:309-317)。
【0021】
皮膚筋炎(DM)は、特有の全身性結合組織疾患であり、皮膚が主な関与部位を規定する。証拠により、その臨床症状の重要な要素が内皮細胞損傷に関連し得ることが示されている。DMの臨床的に典型的な皮膚病変の生検における線維症の同定は、重度の自己免疫に基づく内皮細胞損傷現象に起因する(Magro CM et al.,2018,J.Cutan.Pathol.,35:31-39)。
【0022】
多くの神経線維を覆う髄鞘(Myelin sheaths)は、若齢期に形成されるリポタンパク質層で構成される。中枢神経系(CNS)において乏突起膠細胞によって形成されるミエリン(myelin)は、末梢にシュワン細胞によって形成されるものとは化学的および免疫学的に異なるが、両タイプは、同じ機能:軸索に沿った神経インパルスの伝達を促進することを有する。多くの先天性代謝障害(例えば、フェニルケトン尿症および他のアミノ酸尿症、テイ-サックス病、ニーマン・ピック病、およびゴーシェ病、ハーラー症候群、クラッベ病および他の白質ジストロフィー)は、主にCNSにおいて、発達中の髄鞘に影響を及ぼす。生化学的欠陥を正すか、または補うことができない限り、永続的な、しばしば広範囲にわたる、神経学的欠損が生じる。
【0023】
高齢期における脱髄は、多くの神経障害の特徴であり、それは、局所損傷、虚血、毒剤、または代謝障害による神経またはミエリンの損傷に起因し得る。広範なミエリン喪失の後には通常、軸索変性、およびしばしば細胞体変性が続くが、その両方は不可逆的であり得る。しかしながら、髄鞘再生は、多くの事例において発生し、神経機能の修復、再生、および完全回復は、迅速であり得る。回復は、しばしば多くの末梢性ニューロパチーを特徴付ける分節性脱髄後に起こり、このプロセスは、MSの悪化および寛解を説明し得る。中枢(すなわち、脊髄、脳、または視神経の)脱髄は、病因が不明である、原発性脱髄性疾患における主な所見である。最もよく知られているものは、MSである。他の疾患には、例えば、急性散在性脳脊髄炎(感染後脳脊髄炎)、副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄ニューロパチー、レーバー遺伝性視神経萎縮および関連ミトコンドリア障害、ならびにヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)感染関連脊髄症が含まれる。
【0024】
髄鞘再生は、MS病変における通常の事象として一般的に受け入れられているが、それはミエリン修復には不十分であり、軸索は、MS患者では脱髄したままである。これについて考えられる説明には、乏突起膠細胞前駆細胞(OPC)の動員または生存の失敗、OPCの分化/成熟の障害、およびミエリン形成能力の喪失が含まれる。したがって、MSのための効果的な介入は、疾患進行を予防するだけでなく、髄鞘再生も促進するべきである。
【0025】
したがって、腎線維症を標的化する臨床的介入および治療、ならびに心臓、大動脈、皮膚、および肺の線維症を予防または治療する薬物療法に対する必要性が、当該技術分野において依然として存在する。様々な自己免疫疾患、脱髄疾患、炎症関連障害、心疾患または障害、心血管疾患または障害、および中枢神経系(CNS)の疾患の管理および治療のために、神経炎症を緩和し、かつ、神経保護およびミエリン再生の両方を選好する相補的シグナル伝達経路を標的化する、疾患修飾薬物、およびその組成物に対する必要性もまた、当該技術分野において存在する。有効な医薬製剤の開発の必要性もまた、当該技術分野において依然として存在する。本開示は、これらの必要性に対処する。
【発明の概要】
【0026】
本開示は、薬学的ビヒクルに可溶化された少なくとも1つのカンナビジオール誘導体を含む組成物を提供する。一態様では、組成物は、増加したバイオアベイラビリティを有する。別の態様では、組成物は、増加した溶解度を有する。
【0027】
別の態様では、疾患または障害の予防または治療を必要とする対象においてそれを予防または治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療量の式(I)の構造を有する化合物またはその組成物を投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【化1】
【0028】
いくつかの実施形態では、Rは、直鎖もしくは分岐アルキルアミン、アリールアミン、アリールアルキルアミン、ヘテロアリールアミン、ヘテロアリールアルキルアミン、直鎖もしくは分岐アルケニルアミン、直鎖もしくは分岐アルキニルアミン、またはNHから独立して選択される基の窒素原子である。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるカンナビジオール誘導体は、以下の化合物:
【化2-1】
【化2-2】
およびそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上から選択される。
【0030】
別の態様では、本開示は、式(I)~(X)の構造を有する化合物などの本明細書に開示される1つ以上の化合物またはその組成物を投与することによって状態または疾患を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、式(I)~(X)の構造を有する化合物などの本明細書に開示される1つ以上の化合物またはその組成物を投与することは、E2F経路の活性、筋線維芽細胞のレベル、線維芽細胞のレベル、線維症のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積もしくは沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルもしくは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルもしくは活性、インターフェロン応答のレベルもしくは活性、インターフェロンα(IFN-α)応答のレベルもしくは活性、インターフェロンγ(IFN-γ)応答のレベルもしくは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を調節および/または阻害する。
【0031】
別の実施形態では、治療される状態または疾患は、CB活性の調節にさらに応答する。一実施形態では、E2F転写シグネチャーの調節に応答する状態または疾患は、CB活性の調節にさらに応答する。
【0032】
いくつかの実施形態では、コラーゲン蓄積または沈着は、間質性コラーゲン蓄積もしくは沈着、心臓組織における間質性コラーゲン蓄積もしくは沈着、心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、血管周囲心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、腎臓コラーゲン蓄積もしくは沈着、皮膚コラーゲン蓄積もしくは沈着、肺コラーゲン蓄積もしくは沈着、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上である。
【0033】
いくつかの実施形態では、式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物は、E2F依存性遺伝子、サイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)遺伝子、トポイソメラーゼ2-α(TOP2A)遺伝子、増殖Ki-67(MKi67)遺伝子、炎症性遺伝子、線維化促進遺伝子、インターロイキン6(IL6)遺伝子、インターロイキン1β(IL1β)遺伝子、テネイシン-C(TNC)遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つ以上の遺伝子を調節する。
【0034】
いくつかの実施形態では、線維症は、腎線維症、皮膚線維症、肺線維症、心臓線維症、大動脈線維症もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物は、筋線維芽細胞の増殖に関連する疾患または状態などのE2F経路に関連する疾患または状態;コラーゲン蓄積または沈着に関連する疾患または状態;大動脈中膜肥厚の増加に関連する疾患または状態;線維症による大動脈中膜肥厚に関連する疾患または状態;炎症に関連する疾患または状態;マクロファージ浸潤に関連する疾患または状態;線維性タンパク質の発現に関連する疾患または状態;E2F依存性遺伝子の発現に関連する疾患または状態;線維芽細胞の増殖に関連する疾患または状態、線維性疾患または障害、自己免疫疾患または障害、炎症関連疾患または障害、心疾患または障害、心血管疾患または障害、肺疾患または障害、腎疾患または障害、皮膚疾患または障害、およびそれらの任意の組み合わせを治療または予防するために使用される。いくつかの実施形態では、線維性疾患もしくは障害は、腎線維症、心臓線維症、心血管線維症、肺線維症、皮膚線維症、血管周囲心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、腎コラーゲン蓄積もしくは沈着、皮膚コラーゲン蓄積もしくは沈着、肺コラーゲン蓄積もしくは沈着、線維症に関連する大動脈中膜肥厚の増加、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(BOOP)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、石綿肺、偶発的放射線誘発性肺線維症、治療用放射線誘発性肺線維症、サルコイドーシス、珪肺症、結核、COVID-19関連肺線維症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、砂糖キビ肺症、好酸球性肉芽腫、ウェゲナー肉芽腫症、リンパ脈管筋肉腫症、嚢胞性線維症、脂肪肝疾患、慢性移植片対宿主病(cGVHD)、強皮症性移植片対宿主病、腎性全身性線維症、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、慢性移植片拒絶、瘢痕化もしくは創傷治癒異常、術後癒着、反応性線維症、腎毒性物曝露に関連する疾患または障害、アミノグリコシド曝露に関連する疾患もしくは障害、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)曝露に関連する疾患もしくは障害、免疫抑制剤曝露に関連する疾患もしくは障害、ニトロフラントイン曝露に関連する疾患もしくは障害、アミオダロン曝露に関連する疾患もしくは障害、ブレオマイシン曝露に関連する疾患もしくは障害、シクロホスファミド曝露に関連する疾患もしくは障害、メトトレキサート曝露に関連する疾患もしくは障害、心筋梗塞、損傷に関連する組織瘢痕化、手術に関連する瘢痕化、治療用放射線誘発性線維症、皮膚筋炎(DM)、自己免疫に基づく内皮細胞損傷などの内皮細胞損傷に関連する疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、心不全、心臓線維症、またはそれらの任意の組み合わせなどの心疾患または障害である。
【0037】
いくつかの実施形態では、腎疾患または障害は、慢性腎臓疾患、腎線維症、全身性エリテマトーデス(SLE)に関連する腎疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物は、特発性肺線維症(IPF)疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺動脈高血圧症(PAH)、特発性肺動脈高血圧症(iPAH)、肺線維症、嚢胞性線維症、肺炎症、またはそれらの任意の組み合わせである肺疾患または障害を治療するために使用される。
【0039】
一態様では、本発明は、対象におけるCB活性の調節に応答する状態または疾患を治療する方法をさらに提供する。一実施形態では、方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオール誘導体またはその組成物を投与することを含む。一実施形態では、カンナビジオール誘導体は、CBに選択的に結合する。一実施形態では、式(I)の構造を有する化合物のR置換基は、CBに結合する。
【0040】
いくつかの実施形態では、CB活性の調節に応答する状態または疾患は、自己免疫疾患、脱髄疾患、炎症関連障害、線維性疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、心血管疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、CB活性の調節に応答する状態または疾患は、線維性疾患、心臓線維症、心血管線維症、血管周囲心筋コラーゲン沈着、大動脈中膜肥厚の増加、全身性硬化症、髄鞘破壊性疾患、視神経脊髄炎、中枢神経系神経障害、橋中心髄鞘崩壊症、脊髄症、白質脳症、大脳白質萎縮症、末梢神経障害、ギラン・バレー症候群、抗MAG末梢神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病、進行性炎症性神経障害、またはそれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、CB活性の調節に応答する状態または疾患は、心臓線維症である。
【0041】
別の態様では、本発明は、部分的に、治療を必要とする対象においてE2F転写シグネチャーの調節に応答する状態または疾患を治療する方法に関する。一実施形態では、方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオール誘導体またはその組成物を投与することを含む。一実施形態では、カンナビジオール誘導体は、E2F転写シグネチャーを調節する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体は、E2F転写シグネチャーを阻害する。一実施形態では、治療される状態または疾患は、CB活性の調節にさらに応答する。一実施形態では、E2F転写シグネチャーの調節に応答する状態または疾患は、CB活性の調節にさらに応答する。
【0042】
いくつかの実施形態では、E2F転写シグネチャーの調節に応答する状態または疾患は、自己免疫疾患、脱髄疾患、炎症関連障害、髄鞘破壊性障害、視神経脊髄炎、中枢神経系ニューロパチー、橋中心髄鞘崩壊症、脊髄症、白質脳症、大脳白質萎縮症、末梢神経障害、ギラン・バレー症候群、抗MAG末梢神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病、進行性炎症性神経障害、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0043】
別の態様では、本発明は、部分的に、式(I)~(X)の構造を有する化合物の脂質製剤を含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、式(I)~(X)の構造を有する化合物の可溶化を含む薬学的ビヒクルを含む。
【0044】
一実施形態では、薬学的ビヒクルは、水性緩衝剤、溶媒、共溶媒、シクロデキストリン複合体、脂質ビヒクル、またはそれらの任意の組み合わせを含み、任意に、少なくとも1つの安定剤、乳化剤、ポリマー、酸化防止剤、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、脂質ビヒクルは、Captex300、Tween85、Cremophor EL、Maisine35-1、Maisine CC、Capmul MCM、コーン油、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、油に可溶化された本開示の少なくとも1つのカンナビジオール誘導体を含む。他の実施形態では、組成物は、少なくとも2種の油を含む油混合物に可溶化された、本発明の少なくとも1つのカンナビジオール誘導体を含む。一実施形態では、本発明の少なくとも1つのカンナビジオール誘導体を含む組成物は、Maisine CC:トウモロコシ油混合物に可溶化される。
【0046】
いくつかの実施形態では、脂質ビヒクルは、少なくとも2つの油を含む油混合物である。いくつかの実施形態では、油混合物は、Maisine CCおよびトウモロコシ油である。いくつかの実施形態では、Maisine CCおよびトウモロコシ油は、50Maisine CC:50トウモロコシ油体積/体積を含む。
【0047】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物は、別の治療剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物は、別の治療剤の前、同時、または後に投与される。
【0048】
いくつかの実施形態では、式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物は、経口、局所、筋肉内、静脈内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその組成物は、食物または飲み物とともに投与される。
【0050】
いくつかの実施形態では、線維性疾患または障害の予防または治療を必要とする対象においてそれを予防または治療するための方法であって、治療量の式(VIII)の構造を有する化合物またはその組成物を投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【化3】
【0051】
いくつかの実施形態では、線維性疾患または状態は、心臓線維症、大動脈線維症、肺線維症、皮膚線維症、腎線維症、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0052】
いくつかの実施形態では、線維性疾患の予防および/または治療を必要とする対象においてそれを予防および/または治療するための組成物であって、式(I)の構造を有する化合物またはその誘導体を投与することを含む、組成物が本明細書に開示される。
【化4】
【0053】
いくつかの実施形態では、Rは、直鎖もしくは分岐アルキルアミン、アリールアミン、アリールアルキルアミン、ヘテロアリールアミン、ヘテロアリールアルキルアミン、直鎖もしくは分岐アルケニルアミン、直鎖もしくは分岐アルキニルアミン、またはNHから独立して選択される基の窒素原子である。
【0054】
いくつかの実施形態では、式(I)の構造を有する化合物は、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベルもしくは活性、線維芽細胞のレベル、線維症のレベル、マクロファージ蓄積のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積もしくは沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルもしくは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルもしくは活性、インターフェロン応答のレベルもしくは活性、IFN-α応答のレベルもしくは活性、IFN-γ応答のレベルもしくは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを調節する。
【0055】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の構造を有する化合物:
【化5-1】
【化5-2】
またはそれらの任意の組み合わせから独立して選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、式(II)~(X)の構造を有する少なくとも1つの化合物を含む組成物が本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本開示の様々な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本開示を説明する目的で、例示的な実施形態が図面に示されている。しかしながら、本開示は、図面に示される実施形態の正確な取り決めおよび手段に限定されないことを理解されたい。
【0058】
図1図1Aおよび図1Bを含み、式(VIII)の構造を有するカンナビジオールアミノキノン化合物のインビボでの心筋抗線維化活性を示す代表的な結果を示す。8週齢の野生型マウスを、イソフルラン、およびアンジオテンシンII(AngII)(A9525、Sigma、Madrid,Spain)を1.0mgkg-1-1で送達する浸透圧ポンプ(2004、Alzet、Cupertino,CA)を使用して麻酔したか、または生理食塩水を肩甲中央の弛緩した皮膚下に移植しだ。ポンプを14日間そのままとし、ポンプ移植の1日前に、式(VIII)の構造を有する化合物(20mg/kg)を強制経口投与した(予防モデル)。組織収集のためにマウスを安楽死させた。図1Aは、生理食塩水を注入したマウス、またはAngIIを注入し、式(VIII)の構造を有する化合物で処置したマウスの心臓の代表的なファストグリーン/シリウスレッド染色スライドを示す。図1Bは、ImageJによるファストグリーン/シリウスレッドの赤く染色されたコラーゲンの定量の代表的な結果を示している。データは、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との統計的比較が行われている。これらすべての面積測定について、1群当たり5~7匹のマウスの3~4切片を分析した。***p<0.001対対照群;###p<0.001対AngII群。
図2図2Aおよび図2Bを含み、血管周囲心筋コラーゲン沈着に対する式(VIII)の構造を有する化合物の効果を示す代表的な結果を示す。図2Aは、式(VIII)の構造を有する化合物が、ファストグリーン/シリウスレッド染色によって分析される、AngIIによって誘発される血管周囲心筋コラーゲン沈着を低減させることを示す代表的な結果を示す。図2Bは、左心室における血管周囲コラーゲン蓄積のそれぞれの測定値の定量化の代表的な結果を示している。データは、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との統計的比較が行われている。これらの測定では、1群当たり5~7匹のマウスからすべての血管を分析した。***p<0.001対対照群;###p<0.001対AngII群。
図3】インビボでの心臓組織マクロファージ浸潤に対する式(VIII)の構造を有する化合物の効果を示す代表的な結果を示す。マウスにAngIIを2週間注入し、並行して式(VIII)の構造を有する経口化合物(20mg/kg)で処置した。心筋組織におけるF4/80+マクロファージを免疫染色によって検出し、定量化し、F4/80+細胞/面積として表した。データは、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との統計的比較が行われている。これらすべての面積測定について、1群当たり5~7匹のマウスの3~4切片を分析した。***p<0.001対対照群;###p<0.001対AngII群。
図4図4Aおよび図4Bかを含み、インビボでの心臓組織におけるECMタンパク質テネイシンC(TNC)に対する式(VIII)の構造を有する化合物の効果を示す代表的な結果を示す。マウスにAngIIを2週間注入し、AngII注入の1日前から、並行して式(VIII)の構造を有する経口化合物(20mg/kg)で処置した。図4Aは、心臓の左心室切片におけるTNCが免疫染色によって検出されたことを示す代表的な結果を示している。図4Bは、面積/画像のTNCパーセンテージとして定量化および表された代表的な結果を示している。結果は、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との間の統計的比較が行われている。これらすべての面積測定について、1群当たり5~7匹のマウスの3~4切片を分析した。***p<0.001対対照群;###p<0.001対AngII群。
図5図5Aおよび図5Bを含み、インビボでの式(VIII)の構造を有する化合物の大動脈抗線維化活性を示す代表的な結果を示す。マウスにAngIIを2週間注入し、並行して式(VIII)の構造を有する経口化合物で処置した。図5Aは、外膜層のコラーゲン含有量を決定するためにシリウスレッドで染色された代表的な切片を示している。外膜領域は、外弾性板と血管の最外層である外膜との間の領域として定義された。図5Bは、大動脈切片のそれぞれの測定値の定量化の代表的な結果を示している。これらすべての面積測定について、1群当たり3~5匹のマウスの3~4切片を分析した。結果は中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との間の統計的比較が行われている。***p<0.001対対照群;###p<0.001対AngII群。
図6】式(VIII)の構造を有する化合物で処置したAngIIでチャレンジしたマウスのトランスクリプトーム変化を示す代表的な結果を示す。特徴は、AngII対対照の事前ランク付けリスト、および他の2つのリストのうちの少なくとも1つにおいて有意に強化された(p調整値<0.01)。三角形の方向は、強化がリストのアップレギュレートされた極点で見出されたか、またはダウンレギュレートされた極点で見出されたかどうかを示す。-log10変換されたp調整値として、三角形のサイズは強化の有意性に正比例する。各群n=3の心臓RNAを使用して、分析を行った。
図7】式(VIII)の構造を有する化合物が心臓において炎症マーカーおよび線維症マーカーmRNAの発現を低減させたことを示す代表的な結果を示す。インターロイキン6(IL6)、インターロイキン1β(IL1β)、およびTNCを含む炎症マーカーおよび線維症マーカーの遺伝子発現は、未処置のAngIIマウスと比較して、化合物での処置によってAngIIマウスでダウンレギュレートされた。発現レベルは2-ΔΔCt法を用いて計算された。値は、1群当たり3匹の動物に対する平均±SEMとして表される。#p<0.05対AngII群。
図8】心臓組織におけるE2F経路に対する式(VIII)の構造を有する化合物の阻害効果を示す代表的な結果を示す。CDK1、トポイソメラーゼ2-アルファ(TOP2A)、およびタンパク質コード遺伝子を含むE2F経路マーカーにおける遺伝子発現、増殖Ki-67(MKi67)のマーカーは、AngIIマウスにおいて化合物によってダウンレギュレートされた。発現レベルは2-ΔΔCt法を用いて計算された。値は、1群当たり7匹の動物に対する平均±SEMとして表される。#p<0.05対AngII群。
図9】式(VIII)の構造を有する化合物が左心室における筋線維芽細胞の増殖を低減させたことを示す代表的な結果を示す。AngII注入後2週間にKi67に対する抗体で染色された心室切片で測定された筋線維芽細胞の増殖。心臓当たり5~10視野のKi67陽性細胞数の定量化。各群からの4匹の動物を分析した。データは、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との統計的比較が行われている。***p<0.001対対照群;###p<0.001対AngII群。
図10図10Aおよび図10Bを含み、式(VIII)の構造を有する化合物がAngIIによって誘発された腎線維症を防止したことを示す代表的な結果を示す。図10Aは、ピクロシリウスレッドで染色し、式(VIII)の構造を有する化合物(20mg/kg)で処置したまたは処置していないAngIIマウスモデルの腎組織の代表的な顕微鏡写真を示す。矢印は、コラーゲン沈着を有する線維化領域を示す。図10Bは、腎臓のコラーゲン領域のそれぞれの測定値の定量化の代表的な結果を示している。データは、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との統計的比較が行われている。これらすべての面積測定について、1群当たり3~5匹のマウスの3~4切片を分析した。***p<0.001対対照群;###p<0.001対AngII群。
図11図11Aおよび図11Bを含み、式(VIII)の構造を有する化合物がAngIIによって誘発される皮膚(dermal)(皮膚(skin))線維症を防止したことを示す代表的な結果を示す。図11Aは、ピクロシリウスレッドで染色し、式(VIII)の構造を有する化合物(20mg/kg)で処置したまたは処置していないAngIIマウスモデルの皮膚組織の代表的な顕微鏡写真を示す。図11Bは、皮膚のコラーゲン領域のそれぞれの測定値の定量化の代表的な結果を示している。データは、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との統計的比較が行われている。これらすべての面積測定について、1群当たり3~5匹のマウスの3~4切片を分析した。***p<0.001対対照群;##p<0.01対AngII群。
図12図12Aおよび図12Bを含み、AngII誘発性線維症の治療モデルにおける血管周囲心筋コラーゲン沈着に対する式(VIII)の構造を有する化合物の効果を示す代表的な結果を示す。8~10週齢の野生型マウスを、イソフルラン、およびAngII(A9525、Sigma、Madrid,Spain)を500ng kg-1-1で送達する浸透圧ポンプ(2004、Alzet、Cupertino,CA)を使用して麻酔したか、または生理食塩水を肩甲中央の弛緩した皮膚下に移植しだ。ポンプを28日間そのままとし、ポンプ移植の最後の14日間に、式(VIII)の構造を有する化合物(20mg/kg)を強制経口投与した(治療モデル)。組織収集のためにマウスを安楽死させた。図12Aは、式(VIII)の構造を有する化合物が、ファストグリーン/シリウスレッド染色によって分析される、AngII血管周囲心筋コラーゲン沈着を低減させることを示す代表的な結果を示す。図12Bは、左心室における血管周囲コラーゲン蓄積のそれぞれの測定値の定量化の代表的な結果を示している。データは、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との統計的比較が行われている。これらの測定では、1群当たり6~13匹のマウスのすべての血管を分析した。***p<0.001対対照群;##p<0.01対AngII群。
図13図13Aおよび図13Bを含み、インビボでの式(VIII)の構造を有する化合物の大動脈抗線維化活性を示す代表的な結果を示す。マウスにAngII(500ng kg-1-1)を4週間注入し、式(VIII)の構造を有する経口化合物(20mg/kg)で最後の2週間処置した。図13Aは、外膜層のコラーゲン含有量を決定するためにシリウスレッドでも染色された代表的な切片を示している。図13Bは、中央値±四分位範囲として表される代表的なデータを示しており、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との間で統計的な比較が行われている。これらすべての面積測定について、1群当たり6~13匹のマウスの試料の3~4切片を分析した。***p<0.001対対照群;###p<0.001対AngII群。
図14図14Aおよび図14Bを含み、式(VIII)の構造を有する化合物が治療用AngIIマウスモデルにおいて腎線維症を低減させたことを示す代表的な結果を示す。マウスにAngII(500ng kg-1-1)を4週間注入し、式(VIII)の構造を有する経口化合物(20mg/kg)で最後の2週間処置した。図14Aは、腎間質組織のシリウスレッド染色の組織学的評価の代表的な結果を示している。図14Bは、腎臓におけるコラーゲン蓄積のそれぞれの測定値の定量化の代表的な結果を示している。データは、中央値±四分位範囲として表され、AngIIで処置した野生型マウスと他のすべての条件との統計的比較が行われている。これらすべての面積測定について、1群当たり6~13匹のマウスの試料の3~4切片を分析した。***p<0.001対対照群:#p<0.05対AngII群。
図15図15Aおよび図15Bを含み、式(VIII)の構造を有する化合物が治療用AngIIマウスモデルにおいて肺線維症を低減させたことを示す代表的な結果を示す。マウスにAngII(500ng kg-1-1)を4週間注入し、式(VIII)の構造を有する経口化合物(20mg/kg)で最後の2週間処置した。図15Aは、肺のマッソントリクローム染色の組織学的評価の代表的な結果を示している。図15Bは、肺のアシュクロフトスコアによる定量化の代表的な結果を示している。AngIIで処置した野生型マウスおよび他すべての条件。これらすべての面積測定について、1群当たり6~13匹のマウスの試料の3~4切片を分析した。***p<0.001対対照群:###p<0.001対AngII群。
図16図16A図16Cを含み、式(VIII)の構造を有する化合物(VCE-004.8とも呼ばれる)が、TGF-βまたはAngIIのいずれかで処置した培養ヒト不死化心臓線維芽細胞(hICF)においてα-SMA発現を低下させ、hICFにおいてAngII誘発性ERK1+2リン酸化およびNF-AT活性化の両方を阻害したことを示す代表的な結果を示す。図16Aは、式(VIII)の構造を有する化合物(VCE-004.8とも呼ばれる)が、TGF-βまたはAngIIのいずれかで処置した培養ヒト不死化心臓線維芽細胞(hICF)においてα-SMA発現を低下させたことを示す代表的な結果を示す。図16Bは、式(VIII)の構造を有する化合物(VCE-004.8とも呼ばれる)およびロサルタンがAngII誘発性ERK1+2リン酸化を阻害したことを示す代表的な結果を示す。データは平均±SEMを表し、有意性をクラスカル・ウォリスとそれに続くダンの事後検定によって決定した。**p<0.01対対照、#p<0.05、および##p<0.01対AngII。図16Cは、式(VIII)の構造を有する化合物(VCE-004.8とも呼ばれる)およびロサルタンがhICFにおいてNF-AT活性化を阻害したことを示す代表的な結果を示す。データは平均±SEMを表し、有意性をクラスカル・ウォリスとそれに続くダンの事後検定によって決定した。*p<0.05対AngII、**p<0.01対AngII。
図17】式(VIII)の構造を有する化合物(VCE-004.8とも呼ばれる)が、hICF細胞においてAngIIまたはTGFbによって誘発されるIL1b、IL6、Col1A2、およびCCL2のmRNA発現を阻害したことを示す代表的な結果を示す。データは平均±SEMを表し、有意性をクラスカル・ウォリスとそれに続くダンの事後検定によって決定した。*p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001対対照;#p<0.05、および##p<0.01対AngII。
【発明を実施するための形態】
【0059】
I本発明の図面および説明は、式(I)の構造を有する化合物などの様々なカンナビジオール誘導体を使用して、CB活性の調節に応答する状態もしくは疾患、またはE2F転写シグネチャーの調節に応答する状態もしくは疾患を治療する方法、ならびにそのような化合物、その薬学的組成物および液体製剤を製造および使用する方法に見出される他の多くの要素を、明確化のために省略しつつ、本発明の明確な理解に関連する要素を示すために簡略化されている。当業者は、本発明を実施する際に他の要素および/またはステップが望ましく、および/または必要とされることを認識し得る。しかしながら、そのような要素およびステップは当該技術分野で周知であり、それらは本発明のより良い理解を容易にしないので、そのような要素およびステップの議論は本明細書では提供されない。本明細書の開示は、当業者に知られているそのような要素および方法に対するすべてのそのような変形および変更を対象とする。
【0060】
本開示は、式(I)の1つ以上のカンナビジオール誘導体を含む組成物、および心臓、大動脈、腎臓、皮膚、肺の線維性疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせなどの様々な疾患または障害の治療におけるこれらの式(I)のカンナビジオールキノン誘導体の使用に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、式(VIII)のカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を使用して、心臓線維症、大動脈線維症、腎線維症、皮膚、肺線維症、またはそれらの任意の組み合わせを予防または治療する方法に関する。
【0061】
定義
本明細書で使用される場合、以下の用語の各々は、このセクションにおいてそれに関連する意味を有する。他の場所で定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料が記載される。
【0062】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語のうちの1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0063】
「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変動するであろう。本明細書では量、持続時間などのような測定可能な値を指すときに使用される場合、「約」という用語は、そのような変動が開示方法を実施するために適切であるため、指定された値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0064】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書で交換可能に使用され、インビトロでもインサイチュでも、本明細書に記載される方法に適した、任意の動物またはその細胞を指す。特定の非限定的な実施形態では、患者、対象、または個体は、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、霊長類、マウス、ラット、ブタ、ウマ、フェレット、イヌ、ネコ、ウシ、またはヒトである。
【0065】
「疾患」とは、動物が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合、動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。
【0066】
対照的に、動物における「障害」とは、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態が、障害がない場合よりも好ましくない、健康状態である。治療せずに放置されても、障害は、必ずしも動物の健康状態のさらなる低下を引き起こすわけではない。
【0067】
疾患もしくは障害の兆候もしくは症状の重症度、そのような兆候もしくは症状が患者によって経験される頻度、またはその両方が低減する場合、疾患または障害は「緩和」される。
【0068】
「治療」、「治療すること」などの用語は、一般に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するために本明細書で使用される。効果は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に予防するという点で予防的であり得、ならびに/または疾患および/もしくは疾患に起因する有害効果を部分的もしくは完全に治癒するという点で治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」という用語は、対象における疾患の任意の治療をカバーし、(a)疾患の素因となり得る対象において望ましくない免疫応答に関連する疾患が発症するのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その進行を停止すること、または(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0069】
本明細書で使用される「阻害する」という用語は、対照値と比較して、活性または機能を少なくとも約10パーセント抑制または遮断することを意味する。いくつかの実施形態では、活性は、対照値と比較して50%抑制または遮断される。いくつかの実施形態では、活性は75%抑制される。いくつかの実施形態では、活性は95%抑制される。
【0070】
本開示の文脈において、「モジュレーター」は、アゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、E2Fのアゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、またはアンタゴニスト)である化合物として定義される。例えば、モジュレーターは、E2F経路の活性を増加させるか、またはE2F経路の活性を低下させ得る。さらに、「アゴニスト」は、受容体の基礎活性(すなわち、受容体によって媒介されるシグナル伝達)を増加させる化合物として定義される。「アンタゴニスト」は、受容体に対するアゴニストの作用を遮断する化合物として定義される。「部分アゴニスト」は、インビトロで受容体を活性化することができず、インビボでアンタゴニストとして機能するような、限定された活性、または完全ではない活性を示すアゴニストとして定義される。「インバースアゴニスト」は、受容体の基礎活性を減少させる化合物として定義される。
【0071】
「誘導体」という用語は、参照分子とは構造が異なるが、参照分子の本質的な特性を保持または増強し得、追加の特性を有し得る小分子を指す。誘導体は、参照分子と比較して、特定の他の分子とのその相互作用を変化させ得る。誘導体分子はまた、参照分子の塩、付加物、互変異性体、異性体、または他の多様体を含み得る。
【0072】
「互変異性体」という用語は、化学プロセス(互変異性化)によって容易に相互変換する有機化合物の構造異性体である。
【0073】
「異性体」または「立体異性体」という用語は、同一の化学構成を有するが、空間における原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「多形体」とは、同じ化学組成を有するが、結晶を形成する分子、原子、および/またはイオンの異なる空間配置を有する結晶形態を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、完全に飽和した(二重結合または三重結合を有しない)炭化水素(すべて炭素)基の直鎖または分岐鎖を指す。本発明のアルキル基は、1~20個の炭素原子、すなわち、「C~C20アルキル」として指定される、「m」=1および「n」=20を含み得る。一実施形態では、「m」=1および「n」=12(C~C12アルキル)である。他の実施形態では、「m」=1および「n」=6(C~Cアルキル)である。アルキル基の例には、限定なく、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、tert-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシルが含まれる。
【0076】
本発明のアルキル基は、置換または非置換であり得る。置換される場合、置換基は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、-NRaRb、保護ヒドロキシル、保護アミノ、保護カルボキシ、および保護アミド基から独立して選択される1つ以上の基である。
【0077】
置換アルキル基の例には、限定なく、2-オキソ-プロプ-1-イル、3-オキソ-ブト-1-イル、シアノメチル、ニトロメチル、クロロメチル、ヒドロキシメチル、テトラヒドロピラニルオキシメチル、m-トリチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、アミノメチル、カルボキシメチル、アリルオキシカルボニルメチル、アリルオキシカルボニルアミノメチル、メトキシメチル、エトキシメチル、t-ブトキシメチル、アセトキシメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、トリフルオロメチル、6-ヒドロキシヘキシル、2,4-ジクロロブチル、2-アミノプロピル、1-クロロエチル、2-クロロエチル、1-ブロモエチル、2-クロロエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、1-ヨードエチル、2-ヨードエチル、1-クロロプロピル、2-クロロプロピル、3-クロロプロピル、1-ブロモプロピル、2-ブロモプロピル、3-ブロモプロピル、1-フルオロプロピル、2-フルオロプロピル、3-フルオロプロピル、1-ヨードプロピル、2-ヨードプロピル、3-ヨードプロピル、2-アミノエチル、1-アミノエチル、N-ベンゾイル-2-アミノエチル、Nアセチル-2-アミノエチル、N-ベンゾイル-1-アミノエチル、およびN-アセチル-1-アミノエチルが含まれる。
【0078】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、直鎖または分岐炭化水素鎖に1つ以上の二重結合を含有するアルキル基を指す。アルケニル基の例には、限定なく、ビニル(CH=CH-)、アリル(CHCH=CH-)、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、ならびにヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、およびドデセニルの様々な異性体が含まれる。
【0079】
本発明のアルケニル基は、非置換または置換であり得る。置換される場合、置換基は、アルキル基置換に関して上に開示されたものと同じ基から選択され得る。置換アルケニル基の例には、限定なく、スチレニル、3-クロロ-プロペン-1-イル、3-クロロ-ブテン-1-イル、3-メトキシ-プロペン-2-イル、3-フェニル-ブテン-2-イル、および1-シアノ-ブテン3-イルが含まれる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、直鎖または分岐炭化水素鎖に1つ以上の三重結合を含有するアルキル基を指す。
【0081】
本発明のアルキニル基は、非置換または置換であり得る。置換される場合、置換基は、アルキル基置換に関して上に開示されたものと同じ基から選択され得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、完全に非局在化されたパイ電子系を有する炭素環(全炭素)環または2つ以上の縮合環(2つの隣接する炭素原子を共有する環)を指す。アリール基の例には、これらに限定されないが、ベンゼン、および置換ベンゼン、例えば、トルエン、アニリン、キシレンなど、ナフタレンおよび置換ナフタレン、ならびにアズレンが含まれる。
【0083】
「薬学的に許容される塩」という用語は、患者への投与時に、本明細書に記載される化合物を(直接的または間接的に)提供することができる任意の薬学的に許容される塩を指す。そのような塩は、好ましくは、生理学的に許容される有機酸または無機酸を含む酸付加塩である。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの鉱酸付加塩、ならびに例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、およびp-トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が含まれる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびアンモニウム塩などの無機塩、ならびに例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキルエタノールアミン、トリエタノールアミン、および塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が挙げられる。しかしながら、それらが薬学的に許容される塩の調製に有用であり得るので、非薬学的に許容される塩もまた本発明の範囲内に該当することが理解されるであろう。塩形成の手順は、当該技術分野では従来通りである。
【0084】
本発明による「溶媒和物」という用語は、当該化合物が非共有結合によって別の分子(通常は極性溶媒)に結合している、本発明による活性化合物の任意の形態を意味し、水和物およびアルコラートを含むと理解されるべきである。
【0085】
「有効量」および「薬学的に有効な量」という用語は、所望の生物学的結果を提供するのに十分な薬剤の量を指す。その結果は、疾患もしくは障害の兆候、症状、もしくは原因の低減および/もしくは軽減、または生物学的システムの任意の他の望ましい変化であり得る。任意の個別の症例における適切な有効量は、日常的な実験を使用して当業者によって決定され得る。
【0086】
「治療有効量」とは、所与の状態および投与レジメンについて治療効果を提供する量を指す。特に、「治療有効量」とは、疾患の症状を予防、緩和、もしくは改善するか、またはヒトもしくは非ヒト動物であり得る、治療される対象の生存を延長するのに有効な量を意味する。治療有効量の決定は、当業者の技能の範囲内である。
【0087】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、本発明の少なくとも1つの化合物の、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分および物質との混合物を指す。薬学的組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。化合物を投与する複数の技法が当該技術分野に存在し、これらに限定されないが、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺、および局所投与を含む。
【0088】
「薬学的に許容される」とは、薬理学的/毒物学的観点から患者にとって、ならびに組成、製剤、安定性、患者の承諾、およびバイオアベイラビリティに関する物理的/化学的観点から製造薬剤師にとって許容可能である、それらの特性および/または物質を指す。「薬学的に許容される担体」とは、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、それが投与される宿主に対して毒性ではない培地を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、その意図された機能を実施し得るように、本発明内で有用な化合物を患者内または患者に運搬または輸送することに関与する、液体もしくは固体充填剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒、または封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物、または担体を意味する。典型的には、そのような構築物は、1つの臓器、または体の部分から、別の臓器、または体の部分に運搬または輸送される。各担体は、本発明内で有用な化合物を含む、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例には、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;界面活性剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸塩緩衝溶液;ならびに薬学的製剤に使用される他の非毒性適合性物質が含まれる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」はまた、本発明内で有用な化合物の活性と適合性であり、患者に生理学的に許容される、任意およびすべてのコーティング、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤などを含む。補足的な活性化合物はまた、組成物に組み込まれ得る。「薬学的に許容される担体」は、本発明内で有用な化合物の薬学的に許容される塩をさらに含み得る。本発明の実施に使用される薬学的組成物に含まれ得る他の追加の成分は、当該技術分野で知られており、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Genaro,Ed.,Mack Publishing Co.,1985,Easton,PA)に記載されている。
【0090】
本開示の様々な態様は、範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に便宜上および簡潔さのためであり、本開示の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0091】
説明
本開示は、式(I)のカンナビジオール誘導体を含む組成物、および心臓、腎臓、大動脈、皮膚、または肺の線維性疾患もしくは障害などの様々な疾患または障害の治療におけるこれらのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物の使用に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、式(II)~(X)のカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を使用して、心臓、腎臓、大動脈、皮膚、または肺の線維性疾患または障害を予防または治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、式(VIII)のカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を使用して、心臓、腎臓、大動脈、皮膚、または肺の線維性疾患または障害を予防または治療する方法に関する。
【0092】
組成物
本開示は、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベルもしくは活性、線維症のレベル、線維芽細胞のレベル、筋線維芽細胞のレベル、マクロファージ蓄積のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積もしくは沈着、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルもしくは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルもしくは活性、インターフェロン応答のレベルもしくは活性、インターフェロンα(IFN-α)応答のレベルもしくは活性、インターフェロンγ(IFN-γ)応答のレベルもしくは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、またはそれらの任意の組み合わせを調節するカンナビジオールアミノキノン誘導体を提供する。
【0093】
一実施形態では、カンナビジオール誘導体は、合成カンナビジオール誘導体である。一実施形態では、合成カンナビジオール誘導体は、酸化およびアミノ化によって合成カンナビジオールから化学的に誘導された、化学的に安定な非向精神性アミノキノンを含む。一実施形態では、合成カンナビジオール誘導体は、酸化およびアミノ化によって天然カンナビジオールから化学的に誘導された、化学的に安定な非向精神性アミノキノンを含む。一実施形態では、合成カンナビジオール誘導体は、非反応性合成カンナビジオールアミノキノン誘導体である。一実施形態では、非反応性合成カンナビジオール誘導体は、化学的に安定な合成カンナビジオール誘導体である。一実施形態では、非反応性合成カンナビジオール誘導体は、CB1受容体について検出可能な親和性を有しない合成カンナビジオールアミノキノン誘導体である。
【0094】
一実施形態では、カンナビジオール誘導体は、式(I)の構造を有する化合物である。
【化6】
【0095】
一実施形態では、Rは、直鎖もしくは分岐アルキルアミン、アリールアミン、アリールアルキルアミン、ヘテロアリールアミン、ヘテロアリールアルキルアミン、直鎖もしくは分岐アルケニルアミン、直鎖もしくは分岐アルキニルアミン、またはNHから独立して選択される基の窒素原子である。
【0096】
一実施形態では、カンナビジオール誘導体は、カンナビジオールアミノキノン誘導体である。例えば、いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体は、以下から選択される:
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
またはそれらの任意の組み合わせ。
【0097】
いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体は、任意に、PPARγ、CB受容体シグナル伝達、HIFの安定化、またはそれらの任意の組み合わせのモジュレーターである。したがって、いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体は、任意に、PPARγ、CB受容体シグナル伝達、E2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)、HIFの安定化、またはそれらの任意の組み合わせのモジュレーターである。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体は、PPARγ、CB受容体シグナル伝達、およびE2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)、ならびにHIF-1αを安定化のモジュレーターであり、したがって、エリスロポエチン(EPO)および血管内皮増殖因子A(VEGFA)を含むいくつかの関連因子の発現をアップレギュレートする。例えば、一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体は、PPARγ、CB受容体、E2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)、HIF経路、またはそれらの任意の組み合わせに作用することによって線維症を軽減する。
【0098】
一態様では、本開示はまた、薬学的ビヒクルに可溶化された少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体を含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、酸化およびアミノ化によって合成または天然のカンナビジオールから化学的に誘導された、化学的に安定な非向精神性アミノキノンを含む新薬候補を含む。
【0099】
様々な実施形態では、組成物は、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベルもしくは活性、線維症のレベル、線維芽細胞のレベル、筋線維芽細胞のレベル、マクロファージ蓄積のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積もしくは沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルもしくは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルもしくは活性、インターフェロン応答のレベルもしくは活性、IFN-α応答のレベルもしくは活性、IFN-γ応答のレベルもしくは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、またはそれらの任意の組み合わせを調節する。
【0100】
一実施形態では、組成物は、増加したバイオアベイラビリティを有する。一実施形態では、組成物は、非製剤化混合物中の同じカンナビジオール誘導体のバイオアベイラビリティと比較した場合、増加したバイオアベイラビリティを有する。一実施形態では、組成物は、増加した溶解度を有する。一実施形態では、組成物は、非製剤化混合物中の同じカンナビジオール誘導体の溶解度と比較した場合、改善された溶解度を有する。例えば、いくつかの実施形態では、薬学的ビヒクルに可溶化されたカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、約0.001mg/mL~約10.0g/mLの溶解度範囲を有する。
【0101】
一実施形態では、薬学的ビヒクルは、水性緩衝液、溶媒、共溶媒、シクロデキストリン複合体、脂質ビヒクル、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、任意に少なくとも1つの安定剤、乳化剤、ポリマー、抗酸化剤、およびそれらの任意の組み合わせをさらに含む。
【0102】
一実施形態では、溶媒は、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、PEG400、Transcutol(ジエチレングリコモノエチルエーテル)、MCT 70、Labrasol(PEG-8カプリル/カプリン酸グリセリド)、Labrafil M1944CS(オレイン酸PEG5)、プロピレングリコール、Transcutol P、PEG400、プロピレングリコール、グリセロール、Captex300、Tween85、Cremophor EL、Maisine35-1、Maisine CC、Capmul MCM、トウモロコシ油(コーン油とも呼ばれる)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0103】
一実施形態では、共溶媒は、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、DMSO、水、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、PEG400、Transcutol(ジエチレングリコモノエチルエーテル)、MCT70、Labrasol(PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド)、Labrafil M1944CS(オレイン酸PEG5)、プロピレングリコール、Transcutol P、PEG400、プロピレングリコール、グリセロール、Captex300、Tween85、Cremophor EL、Maisine35-1、Maisine CC、Capmul MCM、トウモロコシ油(コーン油とも呼ばれる)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0104】
一実施形態では、シクロデキストリン複合体は、メチル-β-シクロデキストリン、メチル-γ-シクロデキストリン、HP-β-シクロデキストリン、HP-γ-シクロデキストリン、SBE-β-シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、6-O-グルコシル-β-シクロデキストリン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0105】
一実施形態では、脂質ビヒクルは、Captex(登録商標)300、Tween(登録商標)85、Cremophor EL、Maisine(登録商標)35-1、Maisine CC、Capmul(登録商標)MCM、トウモロコシ油(コーン油とも呼ばれる)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、脂質ビヒクルは、油である。一実施形態では、脂質ビヒクルは、油混合物である。一実施形態では、油混合物は、少なくとも2種の油を含む。一実施形態では、油は、Captex300、Tween85、Cremophor EL、Maisine35-1、Maisine CC、Capmul MCM、トウモロコシ油(コーン油とも呼ばれる)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。例えば、いくつかの実施形態では、油混合物は、約10:90体積/体積の油混合物から約90:10体積/体積の油混合物である。
【0106】
一実施形態では、油混合物は、10:90体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、20:80体積/体積の混合物である。一実施形態では、油混合物は、30:70体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、40:60体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、42:58体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、50:50体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、55:45体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、60:40体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、70:30体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、80:20体積/体積の油混合物である。一実施形態では、油混合物は、90:10体積/体積の油混合物である。
【0107】
一実施形態では、安定剤は、Pharmacoat(登録商標)603、SLS、Nisso HPC-SSL、Kolliphor(登録商標)、PVP K30、PVP VA64、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、安定剤は、水溶液である。
【0108】
一実施形態では、ポリマーは、HPMC-AS-MG、HPMC-AS-LG、HPMC-AS-HG、HPMC、HPMC-P-55S、HPMC-P-50、メチルセルロース、HEC、HPC、Eudragit L100、Eudragit(登録商標)E100、PEO 100K、PEG 6000、PVP VA64、PVP K30、TPGS、Kollicoat(登録商標)IR、Carbopol(登録商標)980NF、Povocoat MP、Soluplus(登録商標)、Sureteric(登録商標)、Pluronic(登録商標)F-68、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0109】
一実施形態では、抗酸化剤は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、マンガン、ヨウ化物、メラトニン、アルファ-カロチン、アスタキサンチン、ベータ-カロチン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ルテイン、リコペン、ゼアキサンチン、ポリフェノール抗酸化剤、フラボノイド、フラボン、アピゲニン、ルテオリン、タンゲリチン、フラボノール、イソラムネチン、ケンフェロール、ミリセチン、プロアントシアニジン、ケルセチン、フラバノン、エリオジクチオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、フラバノール、カテキン、ガロカテキン、ガレートエステル、エピカテキン、エピガロカテキン、テアフラビン、テアルビジン、イソフラボンフィトエストロゲン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、スチルベノイド、レスベラトロール、プテロスチルベン、アントシアニン、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、ペツニジン、チコール酸、カフェイン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、ケイ皮酸、エラグ酸、エラジタンニン、没食子酸、ガロタンニン、ロスマリン酸、サリチル酸、クルクミン、フラボノリグナン、シリマリン、キサントン、オイゲノール、カプサイシン、ビリルビン、クエン酸、シュウ酸、フィチン酸、n-アセチルシステイン、R-アルファ-リポ酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0110】
一実施形態では、水性緩衝液は、水性HCl、水性クエン酸塩-HCl緩衝液、水性NaOH、水性クエン酸塩-NaOH緩衝液、水性リン酸塩緩衝液、水性KCl、水性ホウ酸塩-KCl-NaOH緩衝液、PBS緩衝液、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。例えば、いくつかの実施形態では、水性緩衝液は、約pH=0.5~10のpH範囲を有する。いくつかの実施形態では、水性緩衝液は、約0.05N~約1.0Nの濃度範囲を有する。
【0111】
一実施形態では、薬学的ビヒクルに可溶化されたカンナビジオール誘導体またはその組成物は、0.001mg/mL~10.0g/mLの溶解度範囲を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、0.001mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、0.005mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、0.006mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、0.008mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、0.01mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、0.03mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、0.06mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、1.0mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、2.0mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、2.5mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、6.1mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、10.0mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、10.2mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、100.0mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、250.0mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、500.0mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、750.0mg/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、1.0g/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、1.5g/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、5.0g/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、8.0g/mLの溶解度を有する。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、10.0g/mLの溶解度を有する。
【0112】
例えば、一実施形態では、本発明のカンナビジオール誘導体は、Maisine CC:トウモロコシ油(50:50体積/体積)の混合物中で製剤化される。一実施形態では、本発明のカンナビジオール誘導体は、Maisine CC:トウモロコシ油(50:50体積/体積)の混合物中で製剤化される。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、約20mgの本発明のカンナビジオール誘導体、約490mgのMaisine CC、および約490mgのトウモロコシ油を含む。
【0113】
一実施形態では、本発明のカンナビジオール誘導体は、Maisine35-1:トウモロコシ油(50:50体積/体積)の混合物中で製剤化される。一実施形態では、本発明のカンナビジオール誘導体は、Maisine35-1:トウモロコシ油(50:50体積/体積)の混合物中で製剤化される。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、約20mgの本発明のカンナビジオール誘導体、約490mgのMaisine35-1、および約490mgのトウモロコシ油を含む。
【0114】
様々な実施形態では、本発明の組成物は、PCT出願第PCT/US2020/017035号に開示された任意の組成物を含み、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0115】
いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体もしくはその組成物は、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベルもしくは活性、筋線維芽細胞のレベル、線維芽細胞のレベル、線維症のレベル、マクロファージ蓄積のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積もしくは沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルもしくは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルもしくは活性、インターフェロン応答のレベルもしくは活性、IFN-α応答のレベルもしくは活性、IFN-γ応答のレベルもしくは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、またはそれらの任意の組み合わせを調節する。
【0116】
コラーゲン蓄積または沈着の例には、間質性コラーゲン蓄積もしくは沈着、心臓組織における間質性コラーゲン蓄積もしくは沈着、心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、血管周囲心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、腎臓コラーゲン蓄積もしくは沈着、皮膚(dermal)(皮膚(skin))コラーゲン蓄積もしくは沈着、肺コラーゲン蓄積もしくは沈着、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
様々な実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、線維症が疾患、放射線への偶発的曝露、偶発的組織損傷、放射線への治療用曝露、または外科的処置の結果であるかどうかに関係なく、任意の線維症状態、疾患、または障害における線維症のレベルを調節する。したがって、本開示のカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、線維性疾患における線維症のレベルを調節し、線維症の原因には、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(BOOP)、皮膚筋炎(DM)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、石綿肺、偶発的放射線誘発性肺線維症、治療用放射線誘発性肺線維症、サルコイドーシス、珪肺症、結核、COVID-19関連肺線維症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、砂糖キビ肺症、全身性エリテマトーデス(SLE)、好酸球性肉芽腫、ウェゲナー肉芽腫症、リンパ管筋腫症、嚢胞性線維症、脂肪肝疾患、慢性移植片対宿主病(cGVHD)、強皮症型移植片対宿主病、腎性全身性線維症(NSF、腎性線維化性皮膚症(NFD)とも呼ばれる)、腎毒性物曝露、アミノグリコシド曝露、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)曝露、免疫抑制剤曝露、ニトロフラントイン曝露、アミオダロン曝露、ブレオマイシン曝露、シクロホスファミド曝露、メトトレキサート曝露、自己免疫に基づく内皮細胞損傷などの内皮細胞損傷、心筋梗塞、損傷に関連する組織瘢痕化、瘢痕形成手術、治療用放射線誘発性線維症、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベルもしくは活性、筋線維芽細胞のレベル、線維症のレベル、マクロファージ蓄積のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積もしくは沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルもしくは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルもしくは活性、インターフェロン応答のレベルもしくは活性、IFN-α応答のレベルもしくは活性、IFN-γ応答のレベルもしくは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、またはそれらの任意の組み合わせを低下させる。
【0119】
他の実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子の活性、筋線維芽細胞の増殖、線維芽細胞の増殖、線維症の増殖、マクロファージ蓄積、マクロファージ浸潤、コラーゲン蓄積または沈着、大動脈中膜肥厚の発生、線維症に関連する大動脈中膜肥厚の発生、炎症反応の活性、少なくとも1つの線維性タンパク質の活性、インターフェロン応答の活性、IFN-α応答の活性、IFN-γ応答の活性、線維症に関連する免疫反応、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、およびそれらの任意の組み合わせを阻害する。
【0120】
一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)を調節する。E2F依存性遺伝子の例には、CDK1遺伝子、TOP2A遺伝子、およびMKi67遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、IL6遺伝子、IL1β遺伝子、TNC遺伝子、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子、少なくとも1つの炎症性遺伝子、少なくとも1つの線維化促進遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせのレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)をさらに調節する。いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、IL6遺伝子、IL1β遺伝子、TNC遺伝子、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子、少なくとも1つの炎症性遺伝子、少なくとも1つの線維化促進遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせのレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)をさらに低下させる。いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、IL6遺伝子、IL1β遺伝子、TNC遺伝子、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子、少なくとも1つの炎症性遺伝子、少なくとも1つの線維化促進遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせのレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)をさらに阻害する。
【0122】
いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、TGF-βまたはAngIIのいずれかで処置された培養されたヒト不死化心臓線維芽細胞(hICF)においてα-SMA発現を低下させ、hICFにおいてAngII誘発性ERK1+2リン酸化およびNF-AT活性化の両方を阻害した。
【0123】
いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、hICF細胞においてAngIIまたはTGF-βによって誘発されるIL1b、IL6、Col1A2、およびCCL2のmRNA発現を阻害した。
【0124】
いくつかの実施形態では、式(I)~(X)の化合物は、任意に、E2F調節特性、抗炎症特性、またはそれらの組み合わせを含む。したがって、式(I)~(X)の少なくとも1つの化合物を含む組成物は、E2F経路に関連する疾患もしくは状態、炎症に関連する疾患もしくは状態、またはそれらの任意の組み合わせを治療または予防するのに有用である。
【0125】
さらに、様々な実施形態では、式(I)~(X)の化合物またはその組成物は、E2F経路に関連する疾患もしくは状態、全身性炎症もしくは肺炎症などの炎症に関連する疾患もしくは状態、腎線維芽細胞などの線維芽細胞に関連する疾患もしくは状態、線維芽細胞の増殖に関連する疾患もしくは状態、腎筋線維芽細胞もしくは皮膚筋線維芽細胞などの筋線維芽細胞に関連する疾患もしくは状態、筋線維芽細胞の増殖に関連する疾患もしくは状態、コラーゲンに関連する疾患もしくは状態、コラーゲン蓄積もしくは沈着に関連する疾患もしくは状態、大動脈中膜肥厚に関連する疾患もしくは状態、大動脈中膜肥厚の増加に関連する疾患もしくは状態、線維症による大動脈中膜肥厚の増加に関連する疾患もしくは状態、マクロファージ浸潤に関連する疾患もしくは状態、線維性タンパク質に関連する疾患もしくは状態、線維性タンパク質の発現に関連する疾患もしくは状態、E2F依存性遺伝子に関連する疾患もしくは状態、E2F依存性遺伝子の発現に関連する疾患もしくは状態、線維性疾患もしくは障害、SLEなどの自己免疫疾患もしくは障害、嚢胞性線維症、炎症関連疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、心血管疾患もしくは障害、腎疾患もしくは障害、皮膚(dermal)(皮膚(skin))疾患もしくは障害、肺(pulmonary)疾患もしくは障害(肺(lung)疾患もしくは障害とも呼ばれる)、SLEに関連する疾患もしくは障害などの自己免疫疾患もしくは障害に関連する疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせを治療または予防するのに有用である。
【0126】
線維性疾患または障害の例には、腎線維症、心臓線維症、心血管線維症、大動脈線維症、皮膚(dermal)(皮膚(skin))線維症、肺(pulmonary)線維症(肺(lung)線維症とも呼ばれる)、血管周囲心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、腎臓コラーゲン蓄積もしくは沈着、皮膚(dermal)(皮膚(skin))コラーゲン蓄積もしくは沈着、肺コラーゲン蓄積もしくは沈着、SLEに関連する線維性疾患もしくは障害、大動脈中膜肥厚の増加、線維症に関連する大動脈中膜肥厚の増加、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0127】
心疾患または障害の例には、心不全、心臓線維症、嚢胞性線維症、SLEに関連する心疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
腎疾患または障害の例には、慢性腎臓疾患、腎線維症、SLEに関連する腎疾患もしくは障害、または嚢胞性線維症に関連する障害、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
皮膚(dermal)(皮膚(skin))疾患または障害の例には、皮膚筋炎、皮膚(dermal)(皮膚(skin))線維症、皮膚筋炎に関連する皮膚(dermal)(皮膚(skin))疾患または障害、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
肺疾患または障害の例には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺動脈高血圧症(PAH)、特発性肺動脈高血圧症(iPAH)、IPF、SLEに関連する肺疾患または障害、肺の炎症、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
線維症を伴う疾患または障害の他の例には、BOOP、ARDS、石綿肺、偶発的放射線誘発性肺線維症、治療用放射線誘発性肺線維症、サルコイドーシス、珪肺症、結核、COVID-19関連肺線維症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、砂糖キビ肺症、好酸球性肉芽腫、ウェゲナー肉芽腫症、リンパ脈管筋肉腫症、嚢胞性線維症、脂肪肝疾患、cGVHD、強皮症性移植片対宿主病、NFD、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、慢性移植片拒絶反応、瘢痕化もしくは創傷治癒異常、術後癒着、反応性線維症、腎毒性物曝露に関連する疾患もしくは障害、アミノグリコシド曝露に関連する疾患もしくは障害、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)曝露に関連する疾患もしくは障害、免疫抑制剤曝露に関連する疾患もしくは障害、ニトロフラントイン曝露に関連する疾患もしくは障害、アミオダロン曝露に関連する疾患もしくは障害、ブレオマイシン曝露に関連する疾患もしくは障害、シクロホスファミド曝露に関連する疾患もしくは障害、メトトレキサート曝露に関連する疾患もしくは障害、心筋梗塞、損傷に関連する組織瘢痕化、手術に関連する瘢痕化、治療用放射線誘発性線維症、皮膚筋炎(DM)、自己免疫に基づく内皮細胞損傷などの内皮細胞損傷に関連する疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
式(I)~(X)の構造を有する化合物はCB受容体リガンドであるが、それらはまた、神経保護特性を有する。したがって、式(I)~(X)の構造を有する1つ以上の化合物を含む組成物および製剤は、脳卒中、片頭痛、群発性頭痛を含むがこれらに限定されない、神経障害の治療に有用である。本明細書に開示される組成物および製剤はまた、漸進的な選択的ニューロン喪失を特徴とする特定の慢性変性疾患の治療において有効である。これに関連して、本組成物および製剤は、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、および刑務所関連神経変性の治療において有効である。CB受容体アゴニストによって付与される神経保護は、神経ガスなどの神経毒性薬剤の保護および/または処理、ならびに化学的または生物学的薬剤による脳または神経組織への他の損傷においても有効であり得る。
【0133】
それらの鎮痛特性のおかげで、本発明による組成物および製剤は、末梢、内臓、神経因性、炎症性、および関連痛を含む疼痛の治療に有用であろうことが認識されるであろう。本組成物および製剤はまた、不整脈、高血圧、および心筋虚血からの心臓保護に有効である。本明細書に開示される組成物および製剤はまた、筋痙攣および振戦の治療においても有効である。本明細書に開示される組成物および製剤はまた、様々な心疾患もしくは障害、および/または心臓線維症などの線維性疾患もしくは障害の治療にも有効である。
【0134】
本明細書に記載される薬学的組成物および製剤は、対象に、それ自体で、またはそれらが併用療法のように、他の活性成分、または適切な担体もしくは賦形剤と混合される薬学的組成物で投与することができる。本出願の化合物の製剤化および投与のための技法は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PA,18th edition,1990に見られ得る。
【0135】
適切な投与経路には、例えば、局所、経口、直腸、経粘膜、または腸投与;筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、および髄腔内、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射を含む、非経口送達が含まれ得る。
【0136】
あるいは、例えば、直接的に疼痛の領域への化合物の注射を介して、しばしばデポまたは徐放性製剤で、全身的ではなく局所的に化合物を投与し得る。さらに、標的化された薬物送達システムで、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームで、薬物を投与し得る。リポソームは、臓器を標的とし、臓器によって選択的に取り込まれるであろう。
【0137】
本明細書に開示される薬学的組成物および製剤は、それ自体知られている方法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、水簸、乳化、カプセル化、捕捉、または打錠プロセスによって製造され得る。
【0138】
よって、本開示に従った使用のための薬学的組成物および製剤は、活性化合物の、薬学的に使用することができる調製物への加工を容易にする、賦形剤および助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して従来の方法で製剤化され得る。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。周知の技法、担体、および賦形剤のいずれも、適切であり、当該技術分野で、例えば、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesで理解されるものとして使用され得る。
【0139】
注射について、本明細書に開示される薬剤は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液で製剤化され得る。経粘膜投与について、製剤において浸透するバリアに適した浸透剤が使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。
【0140】
経口投与の場合、固体または液体の単位剤形のいずれかが調製され得る。錠剤などの固体組成物を調製するために、本明細書で上記に開示される式(I)~(X)の構造を有する化合物またはその誘導体は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、硫酸カルシウム、デンプン、ラクトース、アカシア、メチルセルロース、および薬学的希釈剤または担体と機能的に類似した材料などの従来の成分とともに製剤に混合される。経口投与の場合、化合物はまた、活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体は、本明細書に開示される化合物が、治療される患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化されることを可能にする。経口使用のための薬学的調製物は、1つ以上の固体賦形剤を本明細書に開示される薬学的組み合わせと混合し、任意に得られた混合物を粉砕し、必要に応じて、適切な助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理して、錠剤またはドラジェコアを得ることによって得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む、糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤が添加され得る。
【0141】
カプセルは、化合物を不活性薬学的希釈剤と混合し、混合物を適切なサイズの硬ゼラチンカプセルに充填することによって調製される。軟ゼラチンカプセルは、化合物のスラリーを許容可能な植物油、軽流動ワセリンまたは他の不活性な油で機械的にカプセル化することによって調製される。シロップ、エリキシル剤、および懸濁液などの経口投与用の液体単位剤形が調製され得る。水溶性剤形は、糖、芳香性の香味剤および防腐剤と一緒に水性ビヒクル中に溶解されて、シロップを形成することができる。エリキシル剤は、芳香性の香味剤と一緒に、糖およびサッカリンなどの適切な甘味剤を有する水アルコール性(例えば、エタノール)ビヒクルを使用することによって調製される。懸濁液は、アカシア、トラガカントゴム、メチルセルロースなどの懸濁化剤の助けとともに、水性ビヒクルで調製され得る。
【0142】
糖衣錠コアには適切なコーティングが施されている。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物を任意に含有し得る、濃縮糖溶液が使用され得る。染料または顔料は、同定のために、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0143】
デンプンミクロスフェアは、例えばジャガイモデンプンの温かい水性デンプン溶液を、水中のポリエチレングリコールの加熱した溶液に撹拌しながら添加することによって調製され、エマルジョンを形成することができる。(内相としてのデンプン溶液を用いて)二相系が形成された場合、混合物は撹拌を続けながら室温まで冷却され、その上で、内相はゲル粒子に変換される。次いで、これらの粒子は、室温で濾別され、エタノールなどの溶媒中でスラリー状にされ、その後、粒子は再度濾別され、空気中で乾燥するように静置される。ミクロスフェアは、熱処理などの周知の架橋結合手順によって、または化学的架橋結合剤の使用によって、硬化され得る。好適な薬剤としては、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、アジポアルデヒド、グルタルアルデヒド、およびフタルアルデヒドを含むジアルデヒド、ブタジオン、エピクロロヒドリン、ポリリン酸塩、およびホウ酸塩などのジケトンが挙げられる。ジアルデヒドは、アミノ基との相互作用によってアルブミンなどのタンパク質を架橋結合するために使用され、ジケトンは、アミノ基を有するシッフ塩基を形成する。エピクロロヒドリンは、アミノまたはヒドロキシルなどの求核試薬を持つ化合物をエポキシド誘導体に活性化する。
【0144】
経口で使用することができる薬学的調製物には、ゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作製された、封止された軟カプセルが含まれる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、ならびに任意に安定剤と混合した活性成分を含有することができる。軟カプセルでは、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁され得る。加えて、安定剤および/または抗酸化剤が添加され得る。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適した投与量であるべきである。
【0145】
頬側投与について、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとり得る。
【0146】
化合物は、注射による、例えば、ボーラス注射または持続注入による、非経口投与のために製剤化され得る。注射用製剤は、防腐剤が添加された、単位剤形、例えば、アンプルまたは多用量容器で提示され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態をとり得、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化剤を含有し得る。
【0147】
多数の生体高分子(生物学ベースのシステム)のいずれかを含む遅延放出または徐放性送達システム、リポソーム、コロイド、樹脂を利用するシステム、および他のポリマー送達システム、または区画化されたリザーバは、治療用化合物の連続的または長期的な供給源を提供するために、本明細書に記載される組成物とともに利用することができる。そのような遅延放出システムは、局所、眼内、経口、および非経口経路を介した送達のための製剤に適用可能である。
【0148】
非経口投与用の薬学的製剤には、水溶性形態の活性化合物の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる、物質を含有し得る。任意に、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させて、高度に濃縮された溶液の調製を可能にする、適切な安定剤または薬剤を含有し得る。
【0149】
あるいは、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌パイロジェンフリー水での構成のための粉末形態であり得る。
【0150】
前述の製剤に加えて、化合物はまた、デポ調製物として製剤化され得る。そのような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射によって投与され得る。よって、例えば、化合物は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂で、あるいは難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化され得る。
【0151】
本明細書に開示される疎水性化合物のための薬学的担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相を含む共溶媒系である。使用される一般的な共溶媒系は、絶対エタノール中で一定の体積を構成する、3%重量/体積のベンジルアルコール、8%重量/体積の非極性界面活性剤ポリソルベート80、および65%重量/体積のポリエチレングリコール300の溶液を含む、共溶媒系である。当然のことながら、共溶媒系の割合は、その溶解度および毒性特性を損なうことなく大幅に変動され得る。さらに、共溶媒成分の同一性は、様々であり得る:例えば、ポリソルベート80の代わりに他の低毒性非極性界面活性剤が使用され得、ポリエチレングリコールの画分サイズは様々であり得、他の生体適合性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンでポリエチレングリコールを置換し得、他の糖類または多糖類が使用され得る。
【0152】
あるいは、疎水性薬学的化合物のための他の送達システムが使用され得る。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物の送達ビヒクルまたは担体の周知の例である。通常はより高い毒性という犠牲を払うが、ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒も使用され得る。加えて、化合物は、治療剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの、徐放性システムを使用して送達され得る。様々な徐放性材料が確立されており、当業者によって周知である。徐放性カプセルは、それらの化学的性質に応じて、数週間~最大100日超にわたって化合物を放出し得る。治療試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、安定化のための追加戦略が採用され得る。
【0153】
本明細書に開示される薬学的組み合わせで使用される化合物の多くは、薬学的に適合性のある対イオンを有する塩として提供され得る。薬学的に適合性のある塩は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むが、これらに限定されない多くの酸で形成され得る。塩は、対応する遊離酸または塩基形態である水性または他のプロトン性溶媒においてより可溶性である傾向がある。
【0154】
本明細書に開示される方法における使用に適した薬学的組成物には、その意図された目的を達成するために有効な量で活性成分が含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療有効量とは、疾患の症状を予防、緩和、もしくは改善するか、または治療される対象の生存を延長するのに有効な化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0155】
本明細書に開示される薬学的組成物の正確な製剤、投与経路、および投与量は、患者の状態を考慮して個別の医師によって選択することができる。(例えば、Fingl et al.1975,”The Pharmacological Basis of Therapeutics”,第1章第1頁を参照されたい)。典型的には、患者に投与される組成物についての用量は、患者の体重の約0.5~1000mg/kg、または患者の体重の1~500mg/kg、もしくは10~500mg/kg、もしくは50~100mg/kgであり得る。投与量は、患者によって必要とされるように、1日以上の期間に与えられる単一または一連の2つ以上であり得る。本開示で言及されるほとんどすべての特定の化合物について、少なくともいくつかの状態の治療のためのヒト投与量が確立されていることに留意されたい。よって、ほとんどの場合、本明細書に開示される方法は、それらの同じ投与量、または確立されたヒト投与量の約0.1%~500%、もしくは約25%~250%、もしくは50%~100%である投与量を使用するであろう。新たに発見された薬学的化合物の場合であるように、ヒト投与量が確立されていない場合、適切なヒト投与量は、動物における毒性研究および有効性研究によって定量化されるように、ED50もしくはID50値、またはインビトロもしくはインビボ研究から誘導される他の適切な値から推測することができる。
【0156】
正確な投与量は薬剤ごとに決定されるが、ほとんどの場合、投与量に関するいくつかの一般化を行うことができる。成人ヒト患者の1日投与量レジメンは、例えば、本明細書で開示される薬学的組成物または遊離塩基として計算されるその薬学的に許容される塩の、0.1mg~2000mgの各成分、好ましくは1mg~250mg、例えば、5~200mgの経口用量、または0.01mg~500mg、好ましくは0.1mg~60mg、例えば、0.1~40mgの各成分の静脈内、皮下、もしくは筋肉内用量であり得、組成物は1日当たり1~4回投与される。あるいは、本明細書に開示される組成物は、好ましくは1日当たり400mgまでの各成分の用量で、継続的な静脈内注入によって投与され得る。よって、各成分の経口投与による総1日投与量は、典型的には、1~2000mgの範囲であり、非経口投与による総1日投与量は、典型的には、0.1~500mgの範囲であろう。好適には、化合物は、例えば、1週間以上、または数か月もしくは数年の継続的な療法の期間にわたって投与されるであろう。
【0157】
投与量および間隔は、調節効果を維持するために十分である、活性部分の血漿レベル、または最小有効濃度(MEC)を提供するために個別に調整され得る。MECは、各化合物について変動するであろうが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、個別の特徴および投与経路に依存するであろう。しかしながら、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿濃度を決定することができる。
【0158】
投与間隔は、MEC値を使用して決定することもできる。組成物は、測定時の10~90%、好ましくは30~90%、最も好ましくは50~90%でMECを超える血漿レベルを維持するレジメンを使用して投与されるべきである。
【0159】
局所投与または選択的摂取の場合、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度に関連しない場合がある。
【0160】
もちろん、投与される組成物の量は、治療される対象、対象の体重、苦痛の重症度、投与の方法、および処方する医師の判断に依存するであろう。
【0161】
薬学的組成物および製剤は、例として、担体または希釈剤であり得る、薬学的に許容される賦形剤で調製され得る。そのような組成物は、カプセル、小袋、紙または他の容器の形態であり得る。組成物を作製する際に、薬学的組成物を調製するための従来の技術を使用してもよい。例えば、本明細書において上記で開示される式(I)~(X)の構造を有する化合物は、担体と混合されるか、または担体によって希釈されるか、またはアンプル、カプセル、サシェ、紙、もしくは他の容器の形態であり得る担体内に封入され得る。担体が希釈剤として機能する場合、それは、活性化合物のビヒクル、賦形剤、または培地として作用する固体、半固体、または液体の物質であり得る。本明細書における上記のような使用のための、式(I)~(X)の構造を有する化合物およびそれを含む組成物は、例えばサシェ中の粒状固体容器上に吸着させることができる。好適な担体のいくつかの例は、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエトキシル化ヒマシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ラクトース、白土、スクロース、シクロデキストリン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸またはセルロース、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリドの低級アルキルエーテル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンである。同様に、担体または希釈剤は、単独でまたはワックスと混合した、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリルなどの、当該技術分野で既知の任意の徐放物質を含み得る。当該組成物はまた、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、保存剤、甘味剤、または香味剤を含み得る。本発明に記載される、CB受容体活性の調節に応答する状態または疾患の治療における使用のための組成物は、当該技術分野で周知の手順を採用することにより、患者への投与後に本明細書に開示される式(I)~(X)の化合物の即時、持続、または遅延放出を提供するように製剤化され得る。
【0162】
薬学的組成物および製剤は、滅菌し、必要に応じて、本明細書において上記で開示される化合物と有害に反応しない、助剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液、および/または着色物質などと混合することができる。
【0163】
薬学的組成物および製剤は、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液または溶液の形態で調製、包装、または販売され得る。この懸濁液または溶液は、既知の技術に従って製剤化され得、活性成分に加えて、本明細書に記載される分散剤、湿潤剤、または懸濁剤などの追加の成分を含み得る。そのような無菌の注射可能な製剤は、例えば、水または1,3ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を使用して調製され得る。他の許容される希釈剤および溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの固定油が含まれるが、これらに限定されない。有用な他の非経口投与可能な製剤には、微結晶形態で、リポソーム調製物で、または生分解性ポリマーシステムの成分として活性成分を含むものが含まれる。徐放または移植のための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩などの薬学的に許容されるポリマーまたは疎水性材料を含み得る。
【0164】
本発明の組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与の指示が添付され得る。パックまたはディスペンサーには、薬剤の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に関連する通知が添付され得、この通知は、ヒトまたは獣医学的投与用の薬物の形態の機関による承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認された表示、または承認された製品添付文書であり得る。適合性の薬学的担体中で製剤化された本明細書に開示される化合物を含む組成物はまた、調製され、適切な容器に入れられ、示された状態の治療についてラベル付けされ得る。
【0165】
本発明の組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与の指示が添付され得る。パックまたはディスペンサーには、薬剤の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に関連する通知が添付され得、この通知は、ヒトまたは獣医学的投与用の薬物の形態の機関による承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認された表示、または承認された製品添付文書であり得る。適合性の薬学的担体中で製剤化された本明細書に開示される化合物を含む組成物はまた、調製され、適切な容器に入れられ、示された状態の治療についてラベル付けされ得る。
【0166】
治療または予防方法
本開示はまた、部分的に、E2F経路に関連する疾患もしくは状態、全身性炎症もしくは肺炎症などの炎症に関連する疾患もしくは状態、腎線維芽細胞などの線維芽細胞に関連する疾患もしくは状態、線維芽細胞の増殖に関連する疾患もしくは状態、腎筋線維芽細胞もしくは皮膚筋線維芽細胞などの筋線維芽細胞に関連する疾患もしくは状態、筋線維芽細胞の増殖に関連する疾患もしくは状態、コラーゲンに関連する疾患もしくは状態、コラーゲン蓄積もしくは沈着に関連する疾患もしくは状態、大動脈中膜肥厚に関連する疾患もしくは状態、大動脈中膜肥厚の増加に関連する疾患もしくは状態、線維症による大動脈中膜肥厚の増加に関連する疾患もしくは状態、マクロファージ浸潤に関連する疾患もしくは状態、線維性タンパク質に関連する疾患もしくは状態、線維性タンパク質の発現に関連する疾患もしくは状態、E2F依存性遺伝子に関連する疾患もしくは状態、E2F依存性遺伝子の発現に関連する疾患もしくは状態、少なくとも1つの炎症性遺伝子に関連する疾患もしくは状態、少なくとも1つの炎症性遺伝子の発現に関連する疾患もしくは状態、少なくとも1つの線維化促進遺伝子に関連する疾患もしくは状態、少なくとも1つの線維化促進遺伝子の発現に関連する疾患もしくは状態、線維性疾患もしくは障害、SLEなどの自己免疫疾患もしくは障害、炎症関連疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、心血管疾患もしくは障害、腎臓疾患もしくは障害、皮膚(dermal)(皮膚(skin))疾患もしくは障害、肺(pulmonary)疾患もしくは障害(肺(lung)疾患もしくは障害とも呼ばれる)、自己免疫疾患に関連する疾患もしくは障害、もしくはSLEに関連する疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせなどの障害を治療または予防する方法に関する。一実施形態では、方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオール誘導体またはその組成物を投与することを含む。
【0167】
一態様では、本開示は、線維性疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する方法であって、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、線維性疾患または障害は、腎線維症、心臓線維症、心血管線維症、大動脈線維症、皮膚(dermal)(皮膚(skin))線維症、肺線維症、血管周囲心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、腎コラーゲン蓄積もしくは沈着、皮膚(dermal)(皮膚(skin))コラーゲン蓄積もしくは沈着、肺コラーゲン蓄積もしくは沈着、大動脈中膜肥厚の増加、線維症に関連する大動脈中膜肥厚の増加、IPF、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0168】
線維症を治療する本開示の方法は、線維症が疾患、放射線への偶発的曝露、偶発的組織損傷、放射線への治療的曝露、または外科的処置の結果であるかどうかに関係なく、任意の線維症状態を治療することができることが理解される。したがって、本開示の方法は、線維症を治療するために使用できることが理解され、線維症の原因には、肺線維症、IPF、BOOP、DM、ARDS、石綿肺、偶発的放射線誘発性肺線維症、治療用放射線誘発性肺線維症、サルコイドーシス、珪肺症、結核、COVID-19関連肺線維症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、砂糖キビ肺症、SLE、好酸球性肉芽腫、ウェゲナー肉芽腫症、リンパ脈管筋肉腫症、嚢胞性線維症、脂肪肝疾患、cGVHD、強皮症型移植片対宿主病、NFD、腎毒性物曝露、アミノグリコシド曝露、NSAID曝露、免疫抑制剤曝露、ニトロフラントイン曝露、アミオダロン曝露、ブレオマイシン曝露、シクロホスファミド曝露、メトトレキサート曝露、DM、自己免疫に基づく内皮細胞損傷などの内皮細胞損傷、心筋梗塞、損傷に関連する組織瘢痕化、瘢痕形成手術、治療用放射線誘発性線維症、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
一態様では、本開示は、心疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する方法であって、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、心疾患または障害は、心不全、心臓線維症、SLEに関連する心疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0170】
一態様では、本開示は、腎疾患または腎障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する方法であって、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、腎疾患または障害は、腎臓疾患もしくは障害、急性腎臓疾患もしくは障害、慢性腎臓疾患もしくは障害、末期腎疾患(ESRD)、腎線維症、SLEに関連する腎疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0171】
一態様では、本開示は、皮膚疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する方法であって、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、皮膚疾患または障害は、皮膚線維症、皮膚筋炎、皮膚筋炎に関連する皮膚(dermal)(皮膚(skin))疾患もしくは障害、皮膚炎症、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0172】
一態様では、本開示は、肺の疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する方法であって、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、肺疾患または障害は、COPD、PAH、iPAH、IPF、SLEに関連する肺疾患もしくは障害、肺炎症、嚢胞性線維症、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0173】
いくつかの態様では、本開示は、部分的に、調節を必要とする対象においてE2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベルもしくは活性、筋線維芽細胞のレベル、線維芽細胞のレベル、線維症のレベル、マクロファージの蓄積のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積もしくは沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルもしくは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルもしくは活性、インターフェロン応答のレベルもしくは活性、IFN-α応答のレベルもしくは活性、IFN-γ応答のレベルもしくは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、またはそれらの任意の組み合わせを調節する方法に関する。様々な実施形態では、方法は、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオール誘導体またはその組成物を対象に投与することを含む。
【0174】
例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、部分的に、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を対象に投与することにより、調節を必要とする対象において間質性コラーゲン蓄積もしくは沈着、心臓組織における間質性コラーゲン蓄積もしくは沈着、心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、血管周囲心筋コラーゲン蓄積もしくは沈着、腎コラーゲン蓄積もしくは沈着、コラーゲン蓄積もしくは沈着、皮膚(dermal)(皮膚(skin))コラーゲン蓄積もしくは沈着、肺コラーゲン蓄積もしくは沈着、またはそれらの任意の組み合わせを調節する方法に関する。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示は、部分的に、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を投与することにより、調節を必要とする対象において少なくとも1つの遺伝子のレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)を調節する方法に関する。例えば、一実施形態では、本開示は、部分的に、治療有効量の少なくとも1つのカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を投与することにより、調節を必要とする対象において少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)を調節する方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、CDK1遺伝子、TOP2A遺伝子、MKi67遺伝子、IL6遺伝子、IL1β遺伝子、TNC遺伝子、炎症遺伝子、線維化促進遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせのレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)を調節する方法を含む。
【0176】
一実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1つの遺伝子発現をさらに調節するカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を含む。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、少なくとも1つの遺伝子発現をさらに防止する。一実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1つの遺伝子発現をさらに低下させるカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を含む。一実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1つの遺伝子発現をさらに阻害するカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、E2Fに関連する遺伝子発現を調節するカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を含む。
【0177】
他の実施形態では、方法は、CDK1、TOP2A、MKi67、IL6、IL1β、TNC、またはそれらの任意の組み合わせのレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)を調節するカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を含む。いくつかの実施形態では、方法は、CDK1、TOP2A、MKi67、IL6、IL1β、TNC、またはそれらの任意の組み合わせのレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)を低下させるカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を含む。いくつかの実施形態では、方法は、CDK1、TOP2A、MKi67、IL6、IL1β、TNC、またはそれらの任意の組み合わせのレベル(例えば、発現、活性、レベルなど)を阻害するカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を含む。
【0178】
いくつかの態様では、本開示は、部分的に、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子のレベルもしくは活性、筋線維芽細胞のレベル、線維芽細胞のレベル、線維症のレベル、マクロファージ蓄積のレベル、マクロファージ浸潤のレベル、コラーゲン蓄積もしくは沈着のレベル、大動脈中膜肥厚、線維症に関連する大動脈中膜肥厚、炎症反応のレベルもしくは活性、少なくとも1つの線維性タンパク質のレベルもしくは活性、インターフェロン応答のレベルもしくは活性、IFN-α応答のレベルもしくは活性、IFN-γ応答のレベルもしくは活性、線維症に関連する免疫応答、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、またはそれらの任意の組み合わせのレベルを低下させる方法に関する。
【0179】
他の態様では、本開示は、部分的に、E2F経路の活性、少なくとも1つのE2F依存性遺伝子の活性、筋線維芽細胞の増殖、線維芽細胞の増殖、線維症の増殖、マクロファージ蓄積、マクロファージ浸潤、コラーゲン蓄積または沈着、大動脈中膜肥厚の発生、線維症に関連する大動脈中膜肥厚の発生、炎症反応の活性、少なくとも1つの線維性タンパク質の活性、インターフェロン応答の活性、IFN-α応答の活性、IFN-γ応答の活性、線維症に関連する免疫反応、線維症に関連する自己免疫応答、線維症に関連する炎症、およびそれらの任意の組み合わせを阻害する方法に関する。
【0180】
一態様では、本発明は、治療有効量のカンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物を対象に投与することにより、治療を必要とする対象においてE2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)の調節に応答する疾患または状態を治療する方法にさらに関する。
【0181】
一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、E2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)のモジュレーターである。したがって、例えば、一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、E2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)に作用することによって線維症を軽減する。
【0182】
いくつかの実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、TGF-βまたはAngIIのいずれかで処置した培養ヒト不死化心臓線維芽細胞(hICF)においてα-SMA発現を減少させ、hICFにおいてAngII誘発性ERK1+2リン酸化およびNF-AT活性化の両方を阻害した。また、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、hICF細胞においてAngIIまたはTGF-βによって誘発されるIL1b、IL6、Col1A2、およびCCL2のmRNA発現を阻害した。
【0183】
別の実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、PPARγおよびE2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)のモジュレーターである。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、PPARγおよびE2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)の二重モジュレーターであり、HIF経路を活性化する。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、PPARγ、CB、およびE2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)の三重モジュレーターであり、HIF経路を活性化する。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、PPARγ、CB、およびE2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)の三重モジュレーターであり、HIF-1αを安定化することによってHIF経路を活性化し、いくつかの関連するエリスロポエチン(EPO)および血管内皮増殖因子A(VEGFA)を含むいくつかの関連因子の発現をアップレギュレートする。したがって、一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、PPARγ、CB、E2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)、HIF経路、またはそれらの任意の組み合わせに作用することによって線維症を軽減する。
【0184】
いくつかの実施形態では、E2F活性(例えば、レベル、活性、発現など)の調節に応答する疾患または状態は、心臓線維症、大動脈線維症、皮膚(dermal)(皮膚(skin))線維症、肺線維症、腎線維症、およびSLEに関連する線維症を含むがこれらに限定されない線維性疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、心血管疾患もしくは障害、SLEを含むがこれらに限定されない自己免疫疾患もしくは障害、皮膚筋炎を含むがこれらに限定されない皮膚(dermal)(皮膚(skin))疾患もしくは障害、皮膚筋炎に関連する皮膚(dermal)(皮膚(skin))疾患もしくは障害、および皮膚炎症、慢性腎臓疾患を含むがこれに限定されない腎疾患もしくは障害、およびSLEに関連する腎疾患もしくは障害、IPF、COPD、PAH、iPAH、嚢胞性線維症、および肺炎症を含むがこれらに限定されない肺疾患もしくは障害、またはそれらの組み合わせである。
【0185】
別の実施形態では、対象は、CB受容体活性の調節に応答する状態または疾患を有する。一実施形態では、対象は、E2F転写シグネチャーの調節に応答する状態または疾患、およびCB受容体活性の調節に応答する状態または疾患を有する。
【0186】
一実施形態では、E2F転写シグネチャーの調節に応答する状態または疾患は、自己免疫疾患、脱髄疾患、炎症関連疾患、SSc、髄鞘破壊性障害、無痛症、急性および慢性疼痛、炎症性疼痛、術後疼痛、神経因性疼痛、筋弛緩、免疫抑制、抗炎症剤として、アレルギー、緑内障、気管支拡張、神経保護、骨粗鬆症および骨格系の障害、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病(PD)、およびハンチントン病を含むがこれらに限定されない神経変性障害、MS、筋痙縮、振戦、線維筋痛、狼瘡、リウマチ性関節炎、重症筋無力症、他の自己免疫障害、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、片頭痛、心因性掻痒症、湿疹、脂漏症、乾癬、帯状疱疹(shingle)、脳虚血、脳溢血、頭蓋大脳外傷、脳卒中、脊髄損傷、肝硬変、肝線維症、アテローム性動脈硬化症、鎮咳剤として、喘息、悪心、嘔吐、胃潰瘍、視神経脊髄炎、中枢神経系ニューロパチー、橋中心髄鞘崩壊、脊髄症、白質脳症、白質ジストロフィー、末梢性ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、抗MAG末梢性ニューロパチー、シャルコー・マリー・トゥース病、進行性炎症性ニューロパチー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0187】
一態様では、本発明は、酸化およびアミノ化を通して合成または天然カンナビジオール(CBD)から化学的に誘導される、化学的に安定な、非向精神性アミノキノイドを含む新薬候補に関する。いくつかの実施形態では、本開示の合成カンナビジオール誘導体は、神経炎症を緩和し、神経保護を支持し、軸索損傷を防止し、ミエリン構造を保存し、CB活性を調節し、E2F転写シグネチャーを調節し、再ミエリン化を潜在的に促進する相補的シグナル伝達経路を標的化することによる新規の作用機序を有する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、CB受容体シグナル伝達のモジュレーターである。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、E2F転写シグネチャーのモジュレーターである。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、PPARγおよびCB受容体シグナル伝達のモジュレーターである。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、PPARγ、CB受容体シグナル伝達、およびE2F転写シグネチャーのモジュレーターである。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、PPARγおよびCB受容体シグナル伝達の二重モジュレーターであり、HIF-1αを安定化することによってHIF経路を活性化し、エリスロポエチン(EPO)および血管内皮増殖因子A(VEGFA)を含むいくつかの関連因子の発現をアップレギュレートする。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、PPARγ、CB受容体シグナル伝達、およびE2F転写シグネチャーのモジュレーターであり、HIF-1αを安定化することによってHIF経路を活性化し、エリスロポエチン(EPO)および血管内皮増殖因子A(VEGFA)を含むいくつかの関連因子の発現をアップレギュレートする。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、おそらくPPARγ/CB受容体に作用することにより、神経保護の増強およびHIF経路を介した潜在的な再ミエリン化と併せて、神経炎症を軽減する。
【0188】
CBモジュレーター(すなわち、アゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、またはインバースアゴニスト)は、無痛症、急性および慢性疼痛、炎症性疼痛、術後疼痛、神経因性疼痛、筋弛緩、免疫抑制、抗炎症剤として、アレルギー、緑内障、気管支拡張、神経保護、骨粗鬆症、および骨格系の障害、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病(PD)、およびハンチントン病を含むがこれらに限定されない神経変性障害、多発性硬化症(MS)、筋痙縮、振戦、線維筋痛症、狼瘡、リウマチ性関節炎、重症筋無力症、他の自己免疫障害、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、片頭痛、心因性掻痒症、湿疹、脂漏症、乾癬、帯状疱疹、脳虚血、脳溢血、頭蓋脳外傷、脳卒中、脊髄損傷、肝硬変、肝線維症、アテローム性動脈硬化症、鎮咳剤として、喘息、悪心、嘔吐、胃潰瘍、全身性硬化症、髄鞘破壊性障害、視神経脊髄炎、中枢神経系ニューロパチー、橋中心髄鞘崩壊、脊髄症、白質脳症、白質ジストロフィー、末梢性ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、抗MAG末梢性ニューロパチー、シャルコー・マリー・トゥース病、進行性炎症性ニューロパチー、線維性疾患、心臓線維症、心血管線維症、血管周囲心筋コラーゲン沈着、大動脈中膜肥厚の増加、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ならびに下痢のための治療的有用性を有する。
【0189】
したがって、一態様では、本発明はさらに、対象においてCB受容体活性の調節に応答する疾患または状態を治療する方法に関する。一実施形態では、方法は、それを必要とする対象を同定すること、および治療有効量の本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物を対象に投与することを含む。
【0190】
一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、CBの活性を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、CBと比較してCB受容体に優先的に結合する。したがって、これらの実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体はCBに対して選択的である。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、CBへのその結合を増強する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、CB受容体よりもCB受容体に選択的に結合する。一実施形態では、CB受容体活性は、インビトロで調節されるが、他の実施形態では、CB受容体活性は、インビボで調節される。
【0191】
いくつかの実施形態では、CB受容体活性の調節に応答する状態もしくは疾患は、自己免疫疾患、脱髄疾患、炎症関連障害、心疾患もしくは障害、心血管疾患もしくは障害、またはそれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、CB受容体活性の調節に応答する状態または疾患は、線維性疾患、心臓線維症、心血管線維症、血管周囲心筋コラーゲン沈着、大動脈中膜肥厚の増加、SSc、髄鞘破壊性障害、無痛症、急性および慢性疼痛、炎症性疼痛、術後疼痛、神経因性疼痛、筋弛緩、免疫抑制、抗炎症剤として、アレルギー、緑内障、気管支拡張、神経保護、骨粗鬆症、および骨格系の障害、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病(PD)、およびハンチントン病を含むがこれらに限定されない神経変性障害、MS、筋痙縮、振戦、線維筋痛、狼瘡、リウマチ性関節炎、重症筋無力症、他の自己免疫障害、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、片頭痛、心因性掻痒症、湿疹、脂漏症、乾癬、帯状疱疹、脳虚血、脳溢血、頭蓋脳外傷、脳卒中、脊髄損傷、肝硬変、肝線維症アテローム性動脈硬化症、鎮咳剤として、喘息、悪心、嘔吐、胃潰瘍、視神経脊髄炎、中枢神経系ニューロパチー、橋中心髄鞘崩壊、脊髄症、白質脳症、白質ジストロフィー、末梢性ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、抗MAG末梢性ニューロパチー、シャルコー・マリー・トゥース病、進行性炎症性ニューロパチー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0192】
一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、別の治療剤と組み合わせて投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、経口投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、局所投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、直腸投与を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、経粘膜投与を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、腸投与を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、非経口送達を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、筋肉内注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、皮下注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、静脈内注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、髄内注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、髄腔内注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、直接の脳室内注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、腹腔内注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、鼻腔内注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオールアミノキノン誘導体またはその組成物は、眼内注射を使用して投与される。
【0193】
本発明の一態様では、E2F転写シグネチャーの調節に応答する状態または疾患を治療する方法は、再ミエリン化を調節することをさらに含む。
【0194】
本発明の別の態様では、CB受容体活性化の調節に応答する状態または疾患を治療する方法は、再ミエリン化を調節することをさらに含む。
【0195】
したがって、一態様では、本発明はまた、部分的に、脱髄疾患を治療する方法にも関する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、対象における脱髄の減弱に有効である。
【0196】
「脱髄の減弱」とは、疾患の結果としての、もしくは疾患の症状としての対象における脱髄の量が、他の同じ状態と比較される場合に低減すること、および/または対象における髄鞘再生の量が他の同じ状態と比較される場合に増加することを意味する。
【0197】
「低減した」とは、脱髄の量または脱髄に起因する脱髄疾患の任意の症状における任意の測定可能または検出可能な低減を意味する。
【0198】
同様に、「増加した」という用語は、脱髄に起因する脱髄疾患の症状における低減としても現れるであろう、髄鞘再生の量における任意の測定可能または検出可能な増加を意味する。本発明の実施形態では、対象における脱髄の減弱は、対照と比較される。脱髄に起因する症状は、疾患に応じて異なるが、例えば、これらに限定されないが、認知障害(記憶、注意、概念化、問題解決能力を含む)および情報処理などの神経学的欠損;1つ以上の肢、体幹、もしくは顔の片側における異常感覚;脚もしくは手の弱さもしくは不器用さ;または視覚障害、例えば、片眼における部分的失明および疼痛(球後視神経炎)、視界の暗さ、もしくは暗点を含み得る。脱髄を減弱する化合物の能力は、当該技術分野で知られているアッセイ、例えば、本明細書に記載されるクプリゾン誘発性脱髄モデルを使用して検出または測定され得る。
【0199】
一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、再ミエリン化を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、再ミエリン化を誘導する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、再ミエリン化を増強する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、脱髄を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、脱髄を防止する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、脱髄を軽減する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、脱髄を促進する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、脱髄を停止させる。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、神経炎症を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、神経炎症を緩和する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、ミクログリオーシスを調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、ミクログリオーシスを防止する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、ミクログリオーシスを緩和する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、アストログリオーシスを調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、アストログリオーシスを防止する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、アストログリオーシスを緩和する。
【0200】
一実施形態では、脱髄疾患は、脳および脊髄における神経を取り囲む保護被覆(髄鞘)に損傷をもたらす任意の疾患または状態である。本発明のさらなる実施形態では、脱髄疾患は、多発性硬化症、横断性脊髄炎、ギランバレー症候群、進行性多巣性白質脳症、横断性脊髄炎、フェニルケトン尿症および他のアミノ酸尿症、テイ-サックス病、ニーマン・ピック病、ゴーシェ病、ハーラー症候群、クラッベ病および他の白質ジストロフィー、急性散在性脳脊髄炎、感染後脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄ニューロパチー、視神経炎から選択される。デビック病(視神経脊髄炎)、レーバー遺伝性視神経萎縮および関連ミトコンドリア障害、ならびにHTLV関連脊髄症または脱髄疾患は、局所損傷、虚血、毒剤、または代謝障害の結果である。一実施形態では、脱髄疾患は、多発性硬化症である。
【0201】
一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、遺伝子発現を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、遺伝子発現を防止する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、遺伝子発現を低下させる。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、遺伝子発現を増強する。
【0202】
いくつかの実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、MS病態生理に関連する遺伝子、乏突起膠細胞機能に関連する遺伝子、EAEにおけるダウンレギュレーションに関連する遺伝子、Olig2の発現に関連する遺伝子、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される遺伝子発現を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、テネウリンの発現を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、テネウリン4(Tenm4)の発現を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、Tenm4の発現を増強する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、Tenm4の発現を正常化する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、Olig2の発現を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、Olig2の発現を回復させる。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、Olig2の発現を増強する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、グルタチオンS-トランスフェラーゼパイ(GSTpi)の発現を調節する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、GSTpiの発現を増強する。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体は、GSTpiの発現を回復させる。
【0203】
一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、別の治療剤と組み合わせて投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、経口投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、局所投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、直腸投与を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、経粘膜投与を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、腸投与を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、非経口送達を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、筋肉内注射を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、皮下注射を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、静脈注射を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、髄内注射を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、髄腔内注射を使用して投与される。一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、直接の脳室内注射を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、腹腔内注射を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、鼻腔内注射を使用して投与される。一実施形態では、本発明の合成カンナビジオール誘導体またはその組成物は、眼内注射を使用して投与される。
【0204】
一実施形態では、カンナビジオール誘導体またはその組成物は、食物または飲料とともに投与される。
【0205】
本開示の趣旨から逸脱することなく、多数の様々な修飾を行うことができることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、本明細書に開示される形式は例示にすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しないことを明確に理解されたい。
【0206】
実験例
本開示は、以下の実験例を参照することによってさらに詳細に説明される。これらの例は、例示のみを目的として提供されており、特に明記されない限り、限定することを意図しない。よって、本開示は、以下の例に限定されると決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるいずれかおよびすべての変形を包含すると解釈されるべきである。
【0207】
さらなる説明なしに、当業者は、前述の説明および以下の例示的な例を使用して、本開示の化合物を作製および利用し、特許請求の範囲に記載される方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであり、本開示の残りの部分をいかなる方法でも制限するものとして解釈されるべきではない。
【0208】
実施例1:心臓、肺(lung)(肺(pulmonary))、皮膚(skin)(皮膚(dermal))、および腎臓の線維症の治療および予防のための化合物および組成物
本開示は、PPARγの調節において活性を示し(例えば、PCT出願公開第2015/158381A1号を参照のこと、この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)を阻害する活性を示し、結果としてHIF-1αおよびHIF-2αレベルの安定化をもたらす(例えば、PCT出願公開第2018/177516号を参照のこと、この開示は参照によりその全体が本明細書に含まれる)、カンナビジオールアミノキノン誘導体である化合物の新規用途を提供する。より具体的には、本開示は、式(VIII)の構造を有する化合物に関する。
【化8】
【0209】
本開示はまた、E2F特徴を調節する活性を示し、結果としてこの経路に関連するいくつかのマーカーを調節し、CDK1、TOP2AおよびMKi67を阻害する化合物を提供する。言及された遺伝子の阻害は、筋線維芽細胞の増殖を低減させた。特定の心疾患におけるE2F活性の阻害は、心不全の発症を遅らせる可能性があり、おそらくそれを防止する筋細胞肥大の発生を阻害するための新しい治療アプローチを提供する。結論として、E2Fは心筋細胞の増殖ならびに心臓線維芽細胞の増殖および分化に重要な役割を果たしており、これらの転写因子を標的化することにより、心臓線維症を治療または予防するための効果的な治療法が提供される。したがって、本明細書に開示される一実施形態は、心臓線維症を予防または治療するための化合物の使用に言及する。
【0210】
心臓線維症という用語は、心臓線維芽細胞の不適切な増殖による心筋へのECMの異常な沈着であるが、より一般的には、心筋での線維芽細胞の増殖および筋線維芽細胞への分化を指す。線維芽細胞は通常、コラーゲンを分泌し、その機能は心臓の構造をサポートすることである。しかし、線維芽細胞が過剰に増殖して筋線維芽細胞に分化したときに、それによって過剰なコラーゲン蓄積およびその後の心臓左心室の線維化が引き起こされる。
【0211】
さらに、腎線維症は線維芽細胞の蓄積によって特徴付けられ、該蓄積によって、コラーゲンマトリックス沈着の生成が増加し、EPO生成が減弱した。好ましい実施形態によれば、本開示はまた、治療有効量の化合物またはその組成物を使用して、心臓および腎臓におけるコラーゲン分泌またはコラーゲン沈着に拮抗する方法を提供する。
【0212】
皮膚線維症は、免疫、自己免疫、および炎症作用機序によって駆動される。筋線維芽細胞によるコラーゲンの生成および分解のバランスは、皮膚の線維化プロセスの病態生理学において重要な役割を果たす。IL1βおよびIL6、IFN-γ、ならびにトランスフォーミング増殖因子-α(TNF-α)などの特定のサイトカインは、線維症を促進する。
【0213】
その上、肺線維症は、活性化線維芽細胞の数の増加の証拠を示し、その多くは筋線維芽細胞の表現型の特徴を有する。(Phan SH,2002,Chest,122:286S-289S)。実際、肺線維症は、肺にECMが過剰に沈着することによって顕在化する壊滅的な肺の問題である。線維性病変は、肺構造および肺胞構造を変形させ、肺胞壁を肥厚化し、肺コンプライアンスを低下させ、酸素拡散能力を低下させ、最終的に肺機能を損なわせる(Gross TJ et al.,2001,N.Engl.J.Med.,345:517-525)。
【0214】
さらに、本開示の化合物は、心臓組織における間質性コラーゲン蓄積を防止する能力を示し(例えば、実施例2)、血管周囲心筋コラーゲン沈着を防止し(例えば、実施例2)、コラーゲン蓄積によって誘発される大動脈中膜肥厚の増加を防止し(例えば、実施例2)、心臓組織における炎症およびマクロファージ浸潤を改善し(例えば、実施例3、実施例4、および実施例5)、左心室における線維性タンパク質の発現を防止し(例えば、実施例3、実施例4、および実施例5)、E2F関連遺伝子経路の発現をダウンレギュレートし(例えば、実施例4および実施例5)、E2F経路を調節することにより、心臓線維芽細胞の増殖を減少させ(例えば、実施例6)、腎線維症を防止し(例えば、実施例7)、皮膚線維症を防止し(例えば、実施例8)、血管周囲心筋コラーゲン沈着を減少させ(例えば、実施例9)、コラーゲン蓄積によって誘発される大動脈中膜肥厚を減少させ(例えば、実施例9)、腎線維症を軽減し(例えば、実施例9)、肺線維症を軽減する(例、実施例10)。
【0215】
実施例2:アンジオテンシンII(AngII)によって誘発された心臓線維症マウスに対する式(VIII)の化合物の防止効果
AngIIは、AngII注入の14日後に(Sigusch HH et al.,1996,Cardiovascular Research,31:546-554)、コラーゲン蓄積を特徴とする心筋線維症を短期間で引き起こす(Sopel M et al.,2011,Lab.Invest.,91:565-578)。防止モデルでは、AngIIを2週間注入することにより、線維症が起こり、コラーゲン蓄積が増加した。ALZET(登録商標)浸透圧ポンプを使用したAngIIの皮下注入を使用して、化合物の防止効果を研究した。ALZET(登録商標)浸透圧ミニポンプ(モデル#2004、Charles Rives、Barcelona,Spain)は、AngII(1.0mgkg-1-1)(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)を2週間送達した。化合物処置は、皮下ポンプの移植の1日前、肩甲中央の弛緩した皮膚下において並行して毎日行い、化合物(20mg/kg)またはビヒクル(コーン油/Maisine CC、1/1)の毎日の経口強制経口投与から構成された。ストレスを軽減し、行動の微妙な変化を研究者が検出できるようにするために、実験の1週間前にマウスをマニピュレーターに順応させた。マウスの体重を弱く評価し、実験群間で有意な変化は観察されなかった。プロトコル中に行動の変化は観察されなかった。実験手順中、立毛も、背中を丸くする外観も評価されなかった。マウスを頸椎脱臼により犠牲死させ、心臓、大動脈、皮膚、および腎臓を摘出し、組織学的検査のために処理するか、またはさらなる分析のために凍結した。
【0216】
AngIIを2週間注入すると、対照と比較してコラーゲン蓄積が増加したが、これは化合物処理によって防止された。間質性心臓線維症は、シリウスレッド/ファストグリーン染色(コラーゲン含有量)の測定によって決定された(図1A)。図1Bは、式(VIII)の化合物の経口治療が、左心室の間質領域におけるコラーゲン含有量の蓄積を有意に(p<0.001)低減させたことを示している。シリウスレッド/ファストグリーン染色により、血管周囲心筋領域へのコラーゲン沈着を決定するために、さらなる分析を行った。図2Aで報告されているように、AngIIを注入したマウスの心臓では、血管周囲のコラーゲン沈着含有量が有意に増加した。式(VIII)の化合物による経口治療は、血管周囲コラーゲン含有量の有意な減少を誘発した(図2B)。
【0217】
AngIIで処置したマウスは、コラーゲン蓄積による大動脈中膜層肥厚の増加を示した。式(VIII)の化合物は、中膜層肥厚を有意に低下させた(図5)。厚さ5μmの左心室の組織切片および大動脈切片をパラフィンに包埋し、大動脈の場合はシリウスレッド/ファストグリーン染色またはピクロシリウスレッドで染色した。左心室については、まず、切片を0.04%ファストグリーン(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)で15分間インキュベートし、蒸留水で洗浄し、次いで飽和ピクリン酸中の0.1%ファストグリーンおよび0.04%シリウスレッド(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)中で30分間インキュベートした。大動脈については、切片を飽和ピクリン酸中の0.1%シリウスレッド中で60分間インキュベートした。次いで、それらを脱水し、Eukitt(登録商標)Mounting Medium(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)で封入した。コラーゲン線維を確認する。各心臓の3~4つのランダムな視野を標準的な明視野顕微鏡で撮影し、Leica DFC420cカメラを使用してデジタル化し、Fijiソフトウェア(rsb.info.nih.gov/ij/)を使用して分析した。
【0218】
実施例3:炎症および線維マーカーの免疫組織化学
マクロファージの蓄積は、AngII誘発性線維症の特徴であり、炎症期に重要な役割を果たす。F4/80細胞を同定するmAbで染色することにより、マクロファージの蓄積を同定した(図3)。TNCは、様々な組織の損傷に応答して発現するECM分子である。正常な成人の心臓では検出できないが、それは病的条件下で発現した(図4)。
【0219】
心臓切片(左心室)(厚さ5μM)を脱パラフィン化し、抗原回復のためにクエン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH6.0)(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)中で10分間煮沸した。次いで、切片を0.1%Tween(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)を含むPBS洗浄緩衝液で10分間3回インキュベートした。切片を以下の抗体とともに4℃で一晩インキュベートし、マクロファージF4/80抗体(1:50;MCA497、Bio-Rad)の免疫組織化学的検出のために、またはモノクローナル抗TNC(1:100希釈、#MAB2138、RD system、Mineapolis,MN,USA)をこのECMタンパク質検出のために使用した。スライドをジアミノベンジジン色原体(Agilent、Santa Clara,CA,USA)で展開し、Harrisヘマトキシリン(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)で対比染色した。試料をLeica DFC420cカメラを使用して撮影、デジタル化し、Image Jソフトウェアを使用して分析した。免疫組織化学検査は、式(VIII)の化合物が、AngII未処置マウスと比較して、F4/80マクロファージおよびTNCマーカーの浸潤を有意に低減させたことを示した(図3および図4)。
【0220】
実施例4:式(VIII)の化合物は、心臓組織でのE2F依存性遺伝子、炎症、および線維性経路の発現を調節する
心筋組織から抽出したRNAからRNA配列解析を行った。トランスクリプトームライブラリーを、TruSeq TruSeq Illumina TruSeq mRNA Sample Prep v2キット(#RS-122-2001)を使用して構築した。簡単には、各試料の300ngのRNAを使用してcDNAライブラリーを構築し、続いて、Illumina Hiseq2500で、単一末端50bpリードおよび試料当たり約3億リードを用いて配列決定を行った。
【0221】
RNA-Seqリードをfastp(v0.20.0)で前処理し、HISAT2(v2.1.0)を使用してマウスゲノムアセンブリgrcm38にアラインした。次いで、featureCounts(v1.6.1)を使用して遺伝子ごとのカウントを取得し、edgeR(v3.26.8)を使用して正規化および差次的発現分析を行い、すべての試料でカウントが15未満の遺伝子を除外した。最後に、Mus musculus(V7.0)およびclusterProfilerパッケージ(v3.12.0)についてのMSigDbの特徴によって定義された機能カテゴリーを使用して、機能分析を行った。
【0222】
結果により、対照群に対してAngII群において強化された特徴が線維化応答に関連する経路であることが確認され、これは、IFN-αおよびIFN-γ応答、NF-κBを介したTNF-αシグナル伝達、上皮間葉転換、ならびにIL6 JAK STATシグナル伝達を含む炎症応答の場合であった(図6)。結果は、心臓組織のトランスクリプトームシグネチャの機能分析を行った後に得られた。この機能分析は、MSigDbの特徴を機能カテゴリーとして使用して(MSigDbpaper;ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26771021)行われる、Gene Set Enrichment Analysis(GSEA,method paper:ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16199517)で構成された。記述を生成するために使用されたすべての特徴は、GSEA分析でFDR調整p値<0.05の統計的カットオフを上回った。分析により、Angでチャレンジしたマウスで一方向に強化された特徴が、化合物での治療後は反対の傾向となることが明らかになった。
【0223】
炎症および線維化プロセスに関連する遺伝子の発現も調べた。AngII注入マウスは、対照マウスと比較して、左心室でIL6、IL1β、およびTNCの発現レベルが有意に高かった。そのようなアップレギュレーションは、式(VIII)の化合物で処置されたマウスにおいて有意に低減した(図7)。さらに、式(VIII)の化合物は、E2F経路の遺伝子セットの発現を明らかにダウンレギュレートすることが示された。さらに、CDK1、TOP2A、およびMKi67などのE2F経路に関連する遺伝子の発現を分析し、本開示の化合物での処置は、この特徴に関連する遺伝子発現を阻害する能力を確認した(図8)。
【0224】
実施例5:リアルタイム定量PCR
式(VIII)の化合物による経口治療は、炎症および線維症マーカーの対照レベルへの有意な減少を誘発した(図7)。さらに、式(VIII)の化合物による処置は、E2Fに関連する遺伝子の発現の低下を誘導した(図8)。
【0225】
全RNAを、QIAzol溶解試薬(Qiagen、Hilden,Germany)を使用して凍結した皮膚組織から単離し、RNeasy miniキット(Qiagen)で精製した。全RNA(1μg)を、iScript(商標)cDNA合成キット(Bio-Rad)を使用して逆転写し、生成したcDNAを、CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad)を使用したiQ(商標)SYBR Green Supermix(Bio-Rad)を使用したリアルタイムPCRによって分析した。CFX96 Real-Time PCR検出システム(Bio-Rad)を使用して、リアルタイムPCRを行った。GAPDHハウスキーピング遺伝子を使用して、すべてのサンプルにおけるmRNA発現レベルを標準化した。発現レベルを2-ΔΔCt法を用いて計算した。オリゴヌクレオチドプライマーの配列を表1に示す。遺伝子発現を各試料のGADPHまたはmRNAレベルに正規化し、2-ΔΔCt法を使用して表した。
【表1】
【0226】
実施例6:式(VIII)の化合物は、E2F経路の調節によって心筋線維芽細胞の増殖を改善した
線維芽細胞の増殖は、AngII誘発性線維症の重要な事象であり、心臓線維症において重要な役割を果たす。Ki67を同定するmAbで染色することによって、非心筋細胞の増殖が示された(図9)。Ki67は、MKI67遺伝子によってコードされるタンパク質であり、増殖の細胞マーカーである。心臓組織切片(厚さ5μM)を脱パラフィン化し、抗原回復のためにクエン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH6.0)(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)中で10分間煮沸した。次いで切片を、0.1%Triton X-100(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)を含むPBS洗浄緩衝液中で10分間3回インキュベートした。非特異的結合を3%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)でブロッキングした。切片をKi67抗体(1:100希釈、ab15580、Abcam、Cambridge,UK)とともに4℃で一晩インキュベートした。洗浄緩衝液でそれぞれ10分間3回洗浄した後、スライドを二次抗体である抗ウサギテキサスレッド(1:100希釈、#A-6399、Thermo Fischer Scientific、Waltham,MA,USA)で暗所で室温で1時間インキュベートした。次いで、DAPIを含むVectashield Antifade Mounting Medium(H-1200、Vector Laboratories、Burlingame,Ca,USA)を使用して組織切片を封入した後、スライドを10分間3回洗浄した。すべての画像は、63X Plan-Apochromat油浸レンズを備えたスペクトル共焦点レーザー走査顕微鏡LSM710(Zeiss、Jena,Germany)を使用して取得し、ImageJソフトウェア(rsb.info.nih.gov/ij/)を使用して10~15のランダムに選択された視野で定量化した。
【0227】
実施例7:AngIIによって誘発された腎線維症マウスに対する式(VIII)の化合物の防止効果
AngIIは、レニンアンジオテンシン系の主要なペプチドおよび細胞の種類に応じて過形成/肥大を誘発する腎増殖因子であり、腎線維症を誘発する。AngII(1.0mgkg-1-1)を2週間注入することにより、マウスで腎線維症を誘発した。強制経口投与による式(VIII)の化合物での処置は、実施例2に記載したものと同じであった。2週間の処置後、マウスをエーテル麻酔下で犠牲死させた。腎臓試料を収集し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した。線維症の評価のために、パラフィン切片(5μm)をシリウスレッドで染色した。AngIIの皮下注入により、コラーゲン含有量の有意な増加が誘発され、化合物で処置されたマウスでは、腎臓における線維症の誘発が防止された(図10)。
【0228】
実施例8:AngIIによって誘発された皮膚線維症マウスに対する式(VIII)の化合物の防止効果
局所レニンアンジオテンシン系は、皮膚を含むほとんどすべての臓器に存在する。AngIIは、活性化された線維芽細胞の蓄積によって皮膚の線維化を誘発する。AngII(1.0mgkg-1-1)を2週間注入することにより、マウスに皮膚線維症を誘発した。強制経口投与による式(VIII)の化合物での処置は、実施例2に記載したものと同じであった。2週間の処置後、マウスをエーテル麻酔下で犠牲死させた。皮膚試料を収集し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した。線維症の評価のために、皮膚切片(5μm)をシリウスレッドで染色した。AngIIの皮下注入により、コラーゲン含有量の有意な増加が誘発され、化合物で処置したマウスでは、皮膚における線維症の誘発が防止された(図11)。
【0229】
実施例9:AngIIによって誘発された心臓および腎臓の線維症マウスに対する式(VIII)の化合物の治療効果
治療モデルでは、AngIIを4週間注入し、ポンプ移植の2週間後に式(VIII)の化合物(20mg/kg)を投与した。ALZET浸透圧ミニポンプを使用したAngIIの皮下注入を使用して、化合物の防止効果を研究した。ALZET(登録商標)浸透圧ミニポンプ(モデル#2004、Charles Rives、Barcelona,Spain)により、AngII(500ngkg-1-1)(Sigma-Aldrich、Madrid,Spain)を4週間送達した。化合物処置は、皮下ポンプの移植の2週間後、肩甲中央の弛緩した皮膚下で並行して毎日行い、式(VIII)の化合物(20mg/kg)またはビヒクル(コーン油/Maisine CC、1/1)の毎日の経口強制経口投与から構成された。ストレスを軽減し、行動の微妙な変化を研究者が検出できるようにするために、実験の1週間前にマウスをマニピュレーターに順応させた。マウスの体重は弱く評価され、実験群間で有意な変化は観察されなかった。プロトコル中に行動の変化は観察されなかった。実験手順中、立毛も、背中を丸くする外観も評価されなかった。マウスを頸椎脱臼により犠牲死させ、心臓、大動脈、腎臓、および肺を摘出し、組織学的検査のために処理するか、またはさらなる分析のために凍結した。
【0230】
4週間のAngII注入により、対照と比較して血管周囲心筋コラーゲン沈着が増加し、化合物によって血管周囲のコラーゲン含有量が減少した(図12)。さらに、マウスにおけるAngII投与は、大動脈外膜層肥厚の増加をもたらし、これは化合物処理によって低減した(図13)。さらに、腎間質組織へのコラーゲン沈着は、AngIIを注入したマウスにおいて増強され、本開示の化合物での処置によって低減した(図14)。
【0231】
実施例10:マウスにおけるAngIIによって誘発された肺線維症に対する式(VIII)の化合物の治療効果
アンジオテンシン系が肺線維症に関与する重要なインビボ証拠がある(Uhal BD et al.,2012,Int.J.Biochem.Cell Biol.,44:465-468)。AngII(500ngkg-1-1)を4週間注入することにより、マウスで肺線維症を誘発した。強制経口投与による式(VIII)の化合物での処置は、実施例9に記載したものと同じであった。2週間の処置後、マウスをエーテル麻酔下で犠牲死させた。肺の試料を収集し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した。線維症の評価のために、パラフィン切片(5μm)をマッソントリクローム(Merck Millipore、Darmstadt,Germany)で染色した。各肺生検の3~4つのランダムな視野を撮影し、Leica DFC420cカメラを使用してデジタル化し、Image Jソフトウェアを使用して2人の独立した観察者による盲検様式で分析した。以前に記載したように、アシュクロフトスコアを使用して、肺標本の線維症の程度を決定した(Ashcroft T et al.,1988,Clin.Pathol.,41:467-470、Hubner RH et al.,2008,Biotechniques,44:507-511)。皮下AngII注入によって肺線維症が誘発され、これは化合物で防止された(図15)。
【0232】
実施例11:筋線維芽細胞への線維芽細胞の分化に対する式(VIII)の化合物(VCE-004.8とも呼ばれる)の効果
インビトロおよびインビボでの心臓線維芽細胞に対するAngIIの線維形成促進活性は、広く文書記録されている(H.H.Sigusch et al.,1996,Cardiovasc Res,31:546-554)。インビトロでの筋線維芽細胞の分化を研究するために、不死化心臓線維芽細胞(hICF)を筋線維芽細胞分化の特異的マーカーであるα-SMA発現について染色した。SV40ラージT抗原を含む不死化初代ヒト心臓線維芽細胞(hICF)をInnoprot SL(Derio,Spain)から取得し、少ない継代(<5継代)で培養した。5%CO、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを含むFibroblast Medium-2(P60108-2、Innoprot、Derio,Spain)中、加湿雰囲気で37℃で、細胞を維持した。AngIIをSigma-Aldrich Co(A9525、Sigma、Madrid,Spain)から購入し、TGFb1(トランスフォーミング増殖因子-b)-1(10ng/mL)をImmunoTools GmbH(Friesoythe,Germany)から入手した。TGF-βおよびAngIIの両方が培養hICFでα-SMAタンパク質発現を誘発し、式(VIII)の化合物による前処置はα-SMA発現を低下させた。筋線維芽細胞への分化は、細胞肥大の形態学的変化と関連していた。紡錘形からの細胞形状変化が観察され、それらは、AngIIまたはTGFbで処置した細胞と比較して樹状形態を示し、これは、より広がった、筋線維芽細胞分化の特徴であった(図16A)。
【0233】
hICFにおけるAngIIシグナル伝達経路に対する式(VIII)の化合物の効果を調べた。ERK1+2およびNFATの活性化は、Ang-IIによって活性化される2つの経路である(Wakatsuki et al.,2004,Trends Biochem Sci,29:609-617)。hICFを式(VIII)の化合物とともにプレインキュベートし、AngIIで30分間処置し、PBSで洗浄し、タンパク質を50μLの溶解緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、1%(v/v)NP-40、10%(v/v)グリセロール、10mM NaF、1mM NaVO、アプロチニン(10μg/ml)、ロイペプチン(10μg/ml)、ペプスタチン(1μg/ml)、および1mM PMSF飽和)で抽出した。10%SDS/PAGEゲル中の分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、0.1%Tween20および5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むTBS溶液で室温で1時間ブロッキングした。p-ERK(1:1000;#4695 Cell Signaling Technology)およびERK(1:1000、M5670、Sigma)に対する一次抗体とともにインキュベートするによって、特定のタンパク質の免疫検出を行った。膜をホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体とともにインキュベートし、化学発光システム(GE Healthcare Europe GmbH)によってタンパク質を検出した。式(VIII)の化合物は、AngII誘発性ERK1+2リン酸化を阻害した(図16B)。
【0234】
hICF細胞を、Roti-Fect(Carl Roth GmbH & Co.KG、Karlsruhe,Germany)を使用して、Gal4-Lucレポータープラスミド(ルシフェラーゼ遺伝子に融合した5つのGal4 DNA結合部位を含む)およびGal4-NFAT1~415プラスミドで24時間一過性にトランスフェクトした。次いで、細胞を6時間刺激し、細胞溶解物におけるルシフェラーゼ活性を測定した。特定のトランス活性化を対照に対する活性化のパーセンテージとして表す。式(VIII)の化合物は、AngII誘発性NFAT活性化を阻害した(図16B)。
【0235】
hICF(5×10細胞/cm)を式(VIII)の化合物とともにプレインキュベートし、AngIIで2時間または24時間刺激し、全RNAをHigh Pure Isolationキット(Roche Diagnostic、Switzerland)を使用して抽出した。iScript(商標)cDNA合成キット(Bio-Rad)を使用して全RNA(1μg)を逆転写し、iQ(商標)SYBR Green Supermix(Bio-Rad)を使用したリアルタイムPCRによるCFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad)を使用してcDNAを分析した。ヒトHPRTをインビトロ研究に使用して、各試料におけるmRNA発現レベルを標準化した。発現レベルは2-ΔΔCt法を用いて計算された。オリゴヌクレオチドプライマーの配列を表2に示す。式(VIII)の化合物は、hICF細胞においてAngIIまたはTGFbによって誘発されるIL1b、IL6、Col1A2、およびCCL2のmRNA発現を阻害した(図17)。
【表2】
【0236】
本開示の図面および説明は、明確にするために多くの他の要素を省略しつつ、本開示の明確な理解に関連する要素を示すために簡素化されていることを理解されたい。当業者は、本発明を実施する際に他の要素および/またはステップが望ましくおよび/または必要とされることを認識し得る。しかしながら、そのような要素およびステップは当該技術分野で周知であり、それらは本発明のより良い理解を容易にしないので、そのような要素およびステップの議論は本明細書では提供されない。本明細書の開示は、当業者に知られているそのような要素および方法に対するすべてのそのような変形および変更を対象とする。
【0237】
本明細書で引用されるすべての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本開示は、特定の実施形態を参照して開示されているが、本開示の他の実施形態および変形が、本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような実施形態および同等の変形を含むと解釈されることが意図される。
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【配列表】
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【国際調査報告】