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特表2023-524209重質オイルをアップグレードするための超臨界水プロセスのためのスキーム
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  • 特表-重質オイルをアップグレードするための超臨界水プロセスのためのスキーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】重質オイルをアップグレードするための超臨界水プロセスのためのスキーム
(51)【国際特許分類】
   C10G 31/08 20060101AFI20230602BHJP
   C10G 31/06 20060101ALI20230602BHJP
   C10G 3/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C10G31/08
C10G31/06
C10G3/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564642
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 US2021029370
(87)【国際公開番号】W WO2021222226
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】16/864,134
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】カービ,ハリド,アル
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,キ-ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ファティ,マジン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA03
4H129CA08
4H129CA19
4H129CA25
4H129CA29
4H129DA08
4H129HA04
4H129HA30
4H129NA01
4H129NA21
4H129NA43
4H129NA45
(57)【要約】
混合流を超臨界反応器に導入するステップであって、混合流中の水とオイルとの体積比が10:1~2:1の範囲であるステップ;超臨界水反応器内で混合流を反応させて反応器流出液を生成するステップであって、オイルが超臨界反応器内で転化反応を受け、反応器流出液がアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ;反応器流出液の温度を下げて冷却流出液を生成するステップ;浸漬器を操作して生成物流出液を生成するステップであって、浸漬器内の温度が250℃~350℃であり、浸漬器内で脱カルボキシル化反応が起こるステップ;および分離ユニット内で生成物流出液を分離しアップグレードされたオイルブレンドを生成するステップであって、アップグレードされたオイルブレンドがアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ;を含むアップグレードされたオイルブレンドを生成するためのプロセス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップグレードされたオイルブレンドを生成するためのプロセスであって、
混合流を超臨界反応器に導入するステップであって、前記混合流中の水とオイルとの体積比が10:1~2:1の範囲であり、オイルが重質オイルとバイオ-オイルを含むステップ;
前記超臨界水反応器内で前記混合流を反応させて反応器流出液を生成するステップであって、前記超臨界反応器は温度が390℃~450℃で、圧力が23MPa~27MPaであり、超臨界水反応器が触媒の外部供給のない状態にあり、前記オイルが前記超臨界反応器内で転化反応を受け、前記反応器流出液がアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ;
前記反応器流出液を熱交換器に導入するステップ;
前記反応器流出液の温度を下げて冷却流出液を生成するステップであって、前記冷却流出液が250℃~350℃の温度であるステップ;
前記冷却流出液を浸漬器(soaker)に導入するステップ;
前記浸漬器を操作して生成物流出液を生成するステップであって、前記浸漬器内の温度が250℃~350℃であり、前記浸漬器内で脱カルボキシル化反応と転化反応が起こるステップ;
前記生成物流出液を分離ユニットに導入するステップ;および
前記生成物流出液を前記分離ユニット内で分離してガス生成物、回収水、および前記アップグレードされたオイルブレンドを生成するステップであって、前記アップグレードされたオイルブレンドがアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ;
を含む、プロセス。
【請求項2】
超臨界水を第1段ミキサーに導入するステップであって、前記超臨界水が超臨界水を含むステップ;
バイオ-オイル供給物を前記第1段ミキサーに導入するステップであって、前記バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、前記バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ;
前記超臨界水と前記バイオ-オイル供給物を前記第1段ミキサー内で混合してバイオ-オイルエマルションを生成するステップ;
前記バイオ-オイルエマルションを第2段ミキサーに導入するステップ;
重質オイル供給物を前記第2段ミキサーに導入するステップであって、前記重質オイル供給物が重質オイルを含み、前記重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ;および
前記バイオ-オイルエマルションと前記重質オイル供給物を前記第2段ミキサー内で混合して前記混合流を生成するステップ;
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
超臨界水を前記第1段ミキサーに導入するステップであって、前記超臨界水が超臨界水を含むステップ;
重質オイル供給物を第1段ミキサーに導入するステップであって、前記重質オイル供給物が重質オイルを含み、前記重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ;
前記超臨界水と前記重質オイル供給物を前記第1段ミキサー内で混合してオイル-水エマルションを生成するステップ;
前記オイル-水エマルションを第2段ミキサーに導入するステップ;
バイオ-オイル供給物を前記第2段ミキサーに導入するステップであって、前記バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、前記バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ;および
前記重質オイルエマルションと前記バイオ-オイル供給物を前記第2段ミキサー内で混合して混合流を生成するステップ;
をさらに含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
バイオ-オイル供給物を第1段ミキサーに導入するステップであって、前記バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、前記バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ;
重質オイル供給物を前記第1段ミキサーに導入するステップであって、前記重質オイル供給物が重質オイルを含み、前記重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ;
前記バイオ-オイル供給物と前記重質オイル供給物を前記第1段ミキサー内で混合して混合オイルを生成するステップ;
前記混合オイルを第2段ミキサーに導入するステップ;
超臨界水を前記第2段ミキサーに導入するステップであって、前記超臨界水が超臨界水を含むステップ;および
前記混合オイルエマルションと前記超臨界水を前記第2段ミキサー内で混合して混合流を生成するステップ;
をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記分離ユニット内において、前記生成物流出液を分離するステップが、
前記浸漬器流出液を気-液分離器に導入するステップ;
前記浸漬器流出液を分離してガス生成物と液体流を生成するステップ;
前記液体流をオイル-水分離器に導入するステップ;
前記液体流を分離して前記アップグレードされたオイルブレンドと前記回収水を生成するステップ;
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記バイオ-オイル供給物がバイオマス原料から生成されたバイオ-オイルを含み、前記バイオマス原料がリグノセルロース系バイオマス、草本系バイオマス、微細藻類、大型藻類、食品バイオマス、農業廃棄物、都市ごみ、ひまわり油、パーム油、菜種油、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記重質オイル供給物中の前記重質オイルが常圧蒸留残渣、減圧蒸留残渣、精油所、石油化学プラント、および石炭液化流からの残渣流、オイルまたはタールサンドから回収されたアップグレードされたオイルブレンド、ビチューメンオイル、製油所プロセスからの炭化水素流、水蒸気分解プロセスからの生成物流、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記重質オイル供給物がバイオ-オイルの存在しない状態である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項9】
重質オイルポンプ内の重質オイル流の圧力を上昇させて加圧重質オイルを生成するステップであって、前記加圧重質オイルが23MPa~27MPaの圧力であるステップ;
重質オイル加熱器内の前記加圧重質オイルの温度を上昇させて前記重質オイル供給物を生成するステップ;
バイオ-オイルポンプ内のバイオ-オイル流の圧力を上昇させて加圧バイオ-オイルを生成するステップであって、前記加圧バイオ-オイルが23MPa~27MPaの圧力であるステップ;
バイオ-オイル加熱器内の前記加圧バイオ-オイルの温度を上昇させてバイオ-オイル供給物を生成するステップ;
水供給物の圧力を上昇させて加圧水を生成するステップであって、前記加圧水が23MPa~27MPaの圧力であるステップ;および
前記加圧水の温度を上昇させて前記超臨界水を生成するステップであって、前記超臨界水が400℃~550℃の温度であるステップ;
をさらに含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項10】
重質オイルポンプ内の重質オイル流の圧力を上昇させて加圧重質オイルを生成するステップであって、前記加圧重質オイルが23MPa~27MPaの圧力であるステップ;
重質オイル加熱器内の前記加圧重質オイルの温度を上昇させて前記重質オイル供給物を生成するステップ;
バイオ-オイルポンプ内のバイオ-オイル流の圧力を上昇させて加圧バイオ-オイルを生成するステップであって、前記加圧バイオ-オイルが23MPa~27MPaの圧力であるステップ;
バイオ-オイル加熱器内の前記加圧バイオ-オイルの温度を上昇させて前記バイオ-オイル供給物を生成するステップ;
水供給物の圧力を上昇させて加圧水を生成するステップであって、前記加圧水が23MPa~27MPaの圧力であるステップ;および
前記加圧水の温度を上昇させて前記超臨界水を生成するステップであって、前記超臨界水が400℃~550℃の温度であるステップ;
をさらに含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項11】
アップグレードされたオイルブレンドを生成するためのシステムであって、
超臨界反応器であって、反応器生成物を生成するために混合流の反応を維持するように構成され、前記混合流中の水とオイルとの体積比が10:1~2:1の範囲であり、オイルが重質オイルとバイオ-オイルを含み、前記超臨界反応器は温度が390℃~450℃で、圧力が23MPa~27MPaであり、超臨界水反応器が触媒の外部供給のない状態にあり、前記オイルは、前記反応器流出液がアップグレードされたバイオ-オイルとアップグレードされた重質オイルを含むように、前記超臨界反応器内で転化反応を受ける超臨界反応器;
前記超臨界反応器に流体接続された熱交換器であって、前記反応器流出液の温度を下げて冷却流出液を生成するように構成され、前記冷却流出液が250℃~350℃の温度である熱交換器;
熱交換器に流体接続された浸漬器であって、前記冷却流出液の反応を維持して生成物流出液を生成するように構成され、前記浸漬器内の温度が250℃~350℃であり、脱カルボキシル化反応、転化反応が前記浸漬器内で起こる浸漬器;および
分離ユニットであって、ガス生成物、回収水、および前記アップグレードされたオイルブレンドを生成するように構成され、前記アップグレードされたオイルブレンドがアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含む分離ユニット;
を含む、システム。
【請求項12】
超臨界水とバイオ-オイル供給物を混合してバイオ-オイルエマルションを生成するように構成された第1段ミキサーであって、前記超臨界水が超臨界水を含み、前記バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、前記バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaである第1段ミキサー;および
前記第1段ミキサーに流体接続された第2段ミキサーであって、前記バイオ-オイルエマルションと重質オイル供給物を混合して混合流を生成するように構成され、前記重質オイル供給物が重質オイルを含み、前記重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaである第2段ミキサー;
をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
超臨界水と重質オイル供給物を混合してオイル-水エマルションを生成するように構成された第1段ミキサーであって、前記超臨界水が超臨界水を含み、前記重質オイル供給物が重質オイルを含み、前記重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaである第1段ミキサー;および
前記第1段ミキサーに流体接続された第2段ミキサーであって、前記オイル-水エマルションとバイオ-オイル供給物を混合して混合流を生成するように構成された第2段ミキサー;
をさらに含む、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
バイオ-オイル供給物と重質オイル供給物を混合して混合オイルを生成するように構成された第1段ミキサーであって、前記バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、前記バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであり、前記重質オイル供給物が重質オイルを含み、前記重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaである第1段ミキサー;および
前記第1段ミキサーに流体接続された第2段ミキサーであって、前記混合オイルと超臨界水を混合するように構成され、前記超臨界水が超臨界水を含む第2段ミキサー;
をさらに含む、請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
気-液分離器であって、浸漬器流出液を分離してガス生成物と液体流を生成するように構成された気-液分離器;
前記気-液分離器に流体接続されたオイル-水分離器であって、前記液体流を分離して前記アップグレードされたオイルブレンドと前記回収水を生成するように構成されたオイル-水分離器;
をさらに含む、請求項11~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
重質オイルポンプであって、重質オイル流の圧力を上昇させて加圧重質オイルを生成するように構成され、前記加圧重質オイルが23MPa~27MPaの圧力である重質オイルポンプ;
前記重質オイルポンプに流体接続された重質オイル加熱器であって、前記加圧重質オイルの温度を上昇させて前記重質オイル供給物を生成するように構成された重質オイル加熱器;
バイオ-オイルポンプであって、バイオ-オイル流の圧力を上昇させて加圧バイオ-オイルを生成するように構成され、前記加圧バイオ-オイルが23MPa~27MPaの圧力であるバイオ-オイルポンプ;
前記バイオ-オイルポンプに流体接続されたバイオ-オイル加熱器であって、前記加圧バイオ-オイルの温度を上昇させて前記バイオ-オイル供給物を生成するように構成されたバイオ-オイル加熱器;
ウォーターポンプであって、水供給物の圧力を上昇させて加圧水を生成するように構成され、前記加圧水が23MPa~27MPaの圧力であるウォーターポンプ;および
前記ウォーターポンプに流体接続された水加熱器であって、前記加圧水の温度を上昇させて前記超臨界水を生成するように構成され、前記超臨界水が400℃~550℃の温度である水加熱器;
をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
重質オイルポンプであって、重質オイル流の圧力を上昇させて加圧重質オイルを生成するように構成され、前記加圧重質オイルが23MPa~27MPaの圧力である重質オイルポンプ;
前記重質オイルポンプに流体接続された重質オイル加熱器であって、前記加圧重質オイルの温度を上昇させて前記重質オイル供給物を生成するように構成された重質オイル加熱器;
バイオ-オイルポンプであって、バイオ-オイル流の圧力を上昇させて加圧バイオ-オイルを生成するように構成され、前記加圧バイオ-オイルが23MPa~27MPaの圧力であるバイオ-オイルポンプ;
前記バイオ-オイルポンプに流体接続されたバイオ-オイル加熱器であって、前記加圧バイオ-オイルの温度を上昇させて前記バイオ-オイル供給物を生成するように構成されたバイオ-オイル加熱器;
ウォーターポンプであって、水供給物の圧力を上昇させて加圧水を生成するように構成され、前記加圧水が23MPa~27MPaの圧力であるウォーターポンプ;および
前記ウォーターポンプに流体接続された水加熱器であって、前記加圧水の温度を上昇させて前記超臨界水を生成するように構成され、前記超臨界水が400℃~550℃の温度である水加熱器;
をさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1段ミキサーがt-接合(t-junction)、インラインミキサー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第2段ミキサーがt-接合、インラインミキサー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11~17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
アップグレードされたオイルブレンドを生成するためのプロセスであって、
超臨界水の一部を第1段ミキサーに導入するステップであって、前記超臨界水が超臨界水を含むステップ;
バイオ-オイル供給物を前記第1段ミキサーに導入するステップであって、前記バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、前記バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ;
前記超臨界水と前記バイオ-オイル供給物を前記第1段ミキサー内で混合してバイオ-オイルエマルションを生成するステップ;
前記バイオ-オイルエマルションを第1反応器ユニットへ導入するステップ;
前記第1反応器ユニット内で前記バイオ-オイルエマルションを反応させて反応器生成物を生成するステップであって、前記第1反応器ユニットは温度が390℃~450℃で、圧力が23MPa~27MPaであり、前記第1反応器ユニットが触媒層を含むステップ;
前記反応器生成物を第2段ミキサーに導入するステップ;
重質オイル供給物を前記第2段ミキサーに導入するステップであって、前記重質オイル供給物が重質オイルを含み、前記重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaの圧力であるステップ;
前記超臨界水の前記残りを前記第2段ミキサーに導入するステップ;
前記反応器生成物と前記重質オイル供給物を前記第2段ミキサー内で混合して混合反応器生成物を生成するステップであって、前記混合反応器生成物中の水とオイルとの体積比が10:1~2:1の範囲であり、オイルが重質オイル、アップグレードされたバイオ-オイル、およびバイオ-オイルを含むステップ;
前記混合反応器生成物を熱交換器に導入するステップ;
前記混合反応器生成物の温度を下げて冷却混合生成物を生成するステップであって、前記冷却混合生成物の温度が前記第1の反応器ユニットの前記温度よりも20℃~50℃低い温度であるステップ;
前記冷却混合生成物を第2反応器ユニットに導入するステップ;
前記第2反応器ユニット内で前記混合反応器生成物を反応させて生成物流出液を生成するステップであって、前記第2反応器ユニットが第1反応器ユニット内の温度よりも20℃~50℃低い温度であり、23MPa~27MPaの圧力であり、超臨界水反応器が触媒の外部供給のない状態にあり、前記オイルが前記超臨界反応器内で転化反応を受け、前記生成物流出液がアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ;
前記生成物流出液を分離ユニットに導入するステップ;および
前記分離ユニット内で前記生成物流出液を分離してガス生成物、回収水、および前記アップグレードされたオイルブレンドを生成するステップであって、前記アップグレードされたオイルブレンドがアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ;
を含む、プロセス。
【請求項20】
重質オイルポンプ内の重質オイル流の圧力を上昇させて加圧重質オイルを生成するステップであって、前記加圧重質オイルが23MPa~27MPaの圧力であるステップ;
重質オイル加熱器内の前記加圧重質オイルの温度を上昇させて重質オイル供給物を生成するステップ;
バイオ-オイルポンプ内のバイオ-オイル流の圧力を上昇させて加圧バイオ-オイルを生成するステップであって、前記加圧バイオ-オイルが23MPa~27MPaの圧力であるステップ;
バイオ-オイル加熱器内の前記加圧バイオ-オイルの温度を上昇させて前記バイオ-オイル供給物を生成するステップ;
水供給物の圧力を上昇させて加圧水を生成するステップであって、前記加圧水が23MPa~27MPaの圧力であるステップ;および
前記加圧水の温度を上昇させて前記超臨界水を生成するステップであって、前記超臨界水が400℃~550℃の温度であるステップ;
をさらに含む、請求項19に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オイルをアップグレードする方法を開示するものである。具体的には、バイオ-オイルと重質オイルを同時にアップグレードする方法とシステムを開示するものである。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に関する環境規制がますます厳しくなっていることを考慮すると、石油市場を維持し、石油製品の需要に対応するためには、新規かつ革新的な技術的解決策を開発する必要がある。そのような有望な解決策の1つが、超臨界条件で水を使用する重質オイルの処理およびアップグレードである。反応媒体としての超臨界水のユニークな点は、その特性をコントロールできることであり、ここで、誘電率は、温度および圧力を変化させることで微調整され得る。超臨界水の低誘電率は、トルエンおよびジクロロメタンのような一般的な有機溶媒に類似する。超臨界水は、重質オイルの熱アップグレードにおいて有効な溶媒または希釈剤であることが示されている。超臨界水は、幅広い炭化水素を溶解することができるため、重質オイルのアップグレードとコークス生成の抑制を同時に実現することができる。さらに、超臨界水プロセスは、ガスおよびコークスの生成を強化する過分解反応を抑制しながら、重質オイルを高苛酷度、すなわち高温および高圧でアップグレードすることができる。超臨界水プロセスを改善するために、生成物群(product slate)の幅を広げ、環境規制に対応し、生成物特性を改善するために、添加剤利用などの追加ステップが必要とされる。
【0003】
様々なタイプのバイオ-オイルおよびバイオ-燃料が調製され、商業化されている。第1世代バイオ-燃料は、耕地作物から生産することができる。例えば、バイオ-エタノールは、トウモロコシおよびサトウキビなどの糖類から調製され、一方、バイオ-ディーゼルは、植物油から調製される。微細藻類などの非食物バイオマスは、バイオ燃料を生成するために使用することができる。しかしながら、バイオ-燃料は、不十分な熱-安定性、不十分な長期-貯蔵安定性、高含水量(15-30% 重量%)、従来の化石燃料との低い混和性、および腐食をもたらし得る高酸性度を有する傾向がある。これらの欠点は、バイオ-オイル(35-40 重量%)中に見出される高酸素含有量、親水性化合物の存在、およびカルボン酸の高含有量に起因している。さらに、バイオ-オイルの長期貯蔵は、熱分解したリグニンとバイオ-オイルとの間の反応により、粘度の上昇および相分離を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
オイルをアップグレードする方法を開示するものである。具体的には、バイオ-オイルと重質オイルを同時にアップグレードする方法とシステムを開示するものである。
【0005】
第1の態様では、アップグレードされたオイルブレンドを生成するプロセスが提供される。本プロセスは、混合流を超臨界反応器に導入するステップであって、混合流中の水とオイルとの体積比が10:1~2:1の範囲であり、オイルが重質オイルとバイオ-オイルを含むステップ、超臨界反応器内で混合流を反応させて反応器流出液を生成するステップであって、超臨界反応器は温度が390℃~450℃で、圧力が23MPa~27MPaであり、超臨界水反応器が触媒の外部供給のない状態にあり、オイルが超臨界反応器内で転化反応を受け、反応器流出液がアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含む。本プロセスは、反応器流出液を熱交換器に導入するステップ、反応器流出液の温度を下げて冷却流出液を生成するステップであって、冷却流出液が250℃~350℃の温度であるステップ、冷却流出液を浸漬器(soaker)に導入するステップ、浸漬器を操作して生成物流出液を生成するステップであって、浸漬器内の温度が250℃~350℃であり、浸漬器内で脱カルボキシル化反応と転化反応が起こるステップ、生成物流出液を分離ユニットに導入するステップ、および生成物流出液を分離ユニット内で分離してガス生成物、回収水、およびアップグレードされたオイルブレンドを生成するステップであって、アップグレードされたオイルブレンドがアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ、をさらに含む。
【0006】
ある態様では、本プロセスは、超臨界水を第1段ミキサーに導入するステップであって、超臨界水が超臨界水を含むステップ、バイオ-オイル供給物を第1段ミキサーに導入するステップであって、バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ、超臨界水とバイオ-オイル供給物を第1段ミキサー内で混合してバイオ-オイルエマルションを生成するステップ、バイオ-オイルエマルションを第2段ミキサーに導入するステップ、重質オイル供給物を第2段ミキサーに導入するステップであって、重質オイル供給物が重質オイルを含み、重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ、およびバイオ-オイルエマルションと重質オイル供給物を第2段ミキサー内で混合して混合流を生成するステップ、をさらに含む。ある態様では、本プロセスは、超臨界水を第1段ミキサーに導入するステップであって、超臨界水が超臨界水を含むステップ、重質オイル供給物を第1段ミキサーに導入するステップであって、重質オイル供給物が重質オイルを含み、重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ、超臨界水と重質オイル供給物を第1段ミキサー内で混合してオイル-水エマルションを生成するステップ、オイル-水エマルションを第2段ミキサーに導入するステップ、バイオ-オイル供給物を第2段ミキサーに導入するステップであって、バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ、および重質オイルエマルションとバイオ-オイル供給物を第2段ミキサー内で混合して混合流を生成するステップ、をさらに含む。ある態様では、本プロセスは、バイオ-オイル供給物を第1段ミキサーに導入するステップであって、バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ、重質オイル供給物を第1段ミキサーに導入するステップであって、重質オイル供給物が重質オイルを含み、重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ、バイオ-オイル供給物と重質オイル供給物を第1段ミキサー内で混合して混合オイルを生成するステップ、混合オイルを第2段ミキサーに導入するステップ、超臨界水を第2階ミキサーに導入するステップであって、超臨界水が超臨界水を含むステップ、および混合オイルエマルションと超臨界水を第2段ミキサーで混合して混合流を生成するステップ、をさらに含む。特定の態様では、本プロセスは、分離ユニット内において、生成物流出物を分離するステップが、浸漬器流出液を気-液分離器に導入するステップ、浸漬器流出液を分離してガス生成物と液体流を生成するステップ、液体流をオイル-水分離器に導入するステップ、液体流を分離してアップグレードされたオイルブレンドと回収水を生成するステップ、を含む。ある態様では、バイオ-オイル供給物がバイオマス原料から生成されたバイオ-オイルを含み、バイオマス原料がリグノセルロース系バイオマス、草本系バイオマス、微細藻類、大型藻類、食品バイオマス、農業廃棄物、都市ごみ、ひまわり油、パーム油、菜種油、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。ある態様では、重質オイル供給物中の重質オイルが常圧蒸留残渣、減圧蒸留残渣、精油所、石油化学プラント、および石炭液化流からの残渣流、オイルまたはタールサンドから回収されたアップグレードされたオイルブレンド、ビチューメンオイル、製油所プロセスからの炭化水素流、水蒸気分解プロセスからの生成物流、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。ある態様では、重質オイル供給物がバイオ-オイルの存在しない状態である。ある態様では、本プロセスは、重質オイルポンプ内の重質オイル流の圧力を上昇させて加圧重質オイルを生成するステップであって、加圧重質オイルが23MPa~27MPaの圧力であるステップ、重質オイル加熱器内の加圧重質オイルの温度を上昇させて重質オイル供給物を生成するステップ、バイオ-オイルポンプ内のバイオ-オイル流の圧力を上昇させて加圧バイオ-オイルを生成するステップであって、加圧バイオ-オイルが23MPa~27MPaの圧力であるステップ、バイオ-オイル加熱器内の加圧バイオ-オイルの温度を上昇させてバイオ-オイル供給物を生成するステップ、水供給物の圧力を上昇させて加圧水を生成するステップであって、加圧水が23MPa~27MPaの圧力であるステップ、および加圧水の温度を上昇させて超臨界水を生成するステップであって、超臨界水が400℃~550℃の温度であるステップ、をさらに含む。
【0007】
第2の態様では、アップグレードされたオイルブレンドを生成するためのシステムが提供される。本システムは、超臨界反応器であって、反応器生成物を生成するために混合流の反応を維持するように構成され、混合流中の水とオイルとの体積比が10:1から2:1の範囲であり、オイルが重質オイルとバイオ-オイルを含み、超臨界反応器は温度が390℃~450℃で、圧力が23MPa~27MPaであり、超臨界水反応器が触媒の外部供給のない状態にあり、オイルは、反応器流出液がアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むように、超臨界反応器内で転化反応を受ける超臨界反応器、超臨界反応器に流体接続された熱交換器であって、反応器流出液の温度を下げて冷却流出液を生成するように構成され、冷却流出液が250℃~350℃の温度である熱交換器、熱交換器に流体接続された浸漬器であって、冷却流出液の反応を維持して生成物流出液を生成するように構成され、浸漬器内の温度が250℃~350℃であり、脱カルボキシル化反応、転化反応が浸漬器内で起こる浸漬器、および分離ユニットであって、ガス生成物、回収水、およびアップグレードされたオイルブレンドを生成するように構成され、アップグレードされたオイルブレンドがアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含む分離ユニット、を含む。
【0008】
ある態様では、本システムは、超臨界水とバイオ-オイル供給物を混合してバイオ-オイルエマルションを生成するように構成された第1段ミキサーであって、超臨界水が超臨界水を含み、バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaである第1段ミキサー、および第1段ミキサーに流体接続された第2段ミキサーであって、バイオ-オイルエマルションと重質オイル供給物を混合して混合流を生成するように構成され、重質オイル供給物が重質オイルを含み、重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaである第2段ミキサー、をさらに含む。ある態様では、本システムは、超臨界水と重質オイル供給物を混合してオイル-水エマルションを生成するように構成された第1段ミキサーであって、超臨界水が超臨界水を含み、重質オイル供給物が重質オイルを含み、重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaである第1段ミキサー、および第1段ミキサーに流体接続された第2段ミキサーであって、オイル-水エマルションとバイオ-オイル供給物を混合して混合流を生成するように構成された第2段ミキサー、をさらに含む。ある態様では、本システムは、バイオ-オイル供給物と重質オイル供給物を混合して混合オイルを生成するように構成された第1段ミキサーであって、バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであり、重質オイル供給物が重質オイルを含み、重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaである第1段ミキサー、および第1段ミキサーに流体接続された第2段ミキサーであって、混合オイルと超臨界水を混合するように構成され、超臨界水が超臨界水を含む第2段ミキサー、をさらに含む。ある態様では、本分離ユニットは、気-液分離器であって、浸漬器流出液を分離してガス生成物と液体流を生成するように構成された気-液分離器、および気-液分離器に流体接続されたオイル-水分離器であって、液体流を分離してアップグレードされたオイルブレンドと回収水を生成するように構成されたオイル-水分離器、を含む。
【0009】
ある態様では、本システムは、重質オイルポンプであって、重質オイル流の圧力を上昇させて加圧重質オイルを生成するように構成され、加圧重質オイルが23MPa~27MPaの圧力である重質オイルポンプ、重質オイルポンプに流体接続された重質オイル加熱器であって、加圧重質オイルの温度を上昇させて重質オイル供給物を生成するように構成された重質オイル加熱器、バイオ-オイルポンプであって、バイオ-オイル流の圧力を上昇させて加圧バイオ-オイルを生成するように構成され、加圧バイオ-オイルが23MPa~27MPaの圧力であるバイオ-オイルポンプ、バイオ-オイルポンプに流体接続されたバイオ-オイル加熱器であって、加圧バイオ-オイルの温度を上昇させてバイオ-オイル供給物を生成するように構成されたバイオ-オイル加熱器、ウォーターポンプであって、水供給物の圧力を上昇させて加圧水を生成するように構成され、加圧水が23MPa~27MPaの圧力であるウォーターポンプ、およびウォーターポンプに流体接続された水加熱器であって、加圧水の温度を上昇させて超臨界水を生成するように構成され、超臨界水が400℃~550℃の温度である水加熱器、をさらに含む。ある態様では、第1段ミキサーがt-接合(t-junction)、インラインミキサー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、第2段ミキサーがt-接合、インラインミキサー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
第3の態様では、アップグレードされたオイルブレンドを生成するためのプロセスが提供される。本プロセスは、超臨界水の一部を第1段ミキサーに導入するステップであって、超臨界水が超臨界水を含むステップ、バイオ-オイル供給物を第1段ミキサーに導入するステップであって、バイオ-オイル供給物がバイオ-オイルを含み、バイオ-オイル供給物の温度が300℃未満で、圧力が23MPa~27MPaであるステップ、超臨界水とバイオ-オイル供給物を第1段ミキサー内で混合してバイオ-オイルエマルションを生成するステップ、バイオ-オイルエマルションを第1反応器ユニットへ導入するステップ、および第1反応器ユニット内でバイオ-オイルエマルションを反応させて反応器生成物を生成するステップであって、第1反応器ユニットは、温度が390℃~450℃で、圧力が23MPa~27MPaであり、第1反応器ユニットが触媒層を含むステップ、を含む。本プロセスは、反応器生成物を第2段ミキサーに導入するステップ、重質オイル供給物を第2段ミキサーに導入するステップであって、重質オイル供給物が重質オイルを含み、重質オイル供給物の温度が250℃未満で、圧力が23MPa~27MPaの圧力であるステップ、超臨界水の残りを第2段ミキサーに導入するステップ、反応器生成物と重質オイル供給物を第2段ミキサー内で混合して混合反応器生成物を生成するステップであって、混合反応器生成物中の水とオイルとの体積比が10:1~2:1の範囲であり、オイルが重質オイル、アップグレードされたバイオ-オイル、およびバイオ-オイルを含むステップ、をさらに含む。本プロセスは、混合反応器生成物を熱交換器に導入するステップ、混合反応器生成物の温度を下げて冷却混合生成物を生成するステップであって、冷却混合生成物の温度が第1反応器ユニットの温度よりも20℃~50℃低い温度であるステップ、冷却混合生成物を第2反応器ユニットに導入するステップ、第2反応器ユニット内で混合反応器生成物を反応させて生成物流出液を生成するステップであって、第2反応器ユニットが第1反応器ユニット内の温度よりも20℃~50℃低い温度であり、23MPa~27MPaの圧力であり、超臨界水反応器が触媒の外部供給のない状態にあり、オイルが超臨界反応器内で転化反応を受け、生成物流出液がアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ、生成物流出液を分離ユニットに導入するステップ、および分離ユニット内で生成物流出液を分離してガス生成物、回収水、およびアップグレードされたオイルブレンドを生成するステップであって、アップグレードされたオイルブレンドがアップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを含むステップ、をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の範囲のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、特許請求の範囲、および添付の図面に関してよりよく理解されるのであろう。しかしながら、図面はいくつかの実施形態のみを示しており、したがって、他の等しく有効な実施形態を認めることができるので、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。
【0012】
図1図1は、アップグレードプロセスの実施形態のプロセス図である。
【0013】
図2図2は、アップグレードプロセスの実施形態のプロセス図である。
【0014】
図3図3は、アップグレードプロセスの実施形態のプロセス図である。
【0015】
図4図4は、アップグレードプロセスの実施形態のプロセス図である。
【0016】
図5図5は、アップグレードプロセスの実施形態のプロセス図である。
【0017】
添付の図面では、類似の構成要素または特徴、あるいはその両方に類似の参照符号を付す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
装置および方法の範囲をいくつかの実施形態で説明されるが、当業者は本明細書で説明される装置および方法の多くの例、変形形態、および変更形態が実施形態の範囲および趣旨内にあることを認めることが理解されるであろう。
【0019】
したがって、説明された実施形態は、一般性を損なうことなく、かつ実施形態に限定を課すことなく、説明されたものである。当業者であれば、本明細書に開示された特定の特徴のすべての可能な組み合わせおよび使用を含むことを理解する。
【0020】
開示された本プロセスおよびシステムは、アップグレードされた重質オイルおよびアップグレードされたバイオ-オイルを含むアップグレードされたオイルブレンドを生成した。有利にはバイオ-オイルが超臨界水中で混和性であり、バイオ-オイルと水との間の強力なエマルションの形成を可能にし、これは重質オイル流との混合および混和性を高める。
【0021】
超臨界水中でバイオ-オイルを処理することは、いくつかの利点を有する。第1に、バイオ-オイルは、重質オイルよりも多い35重量%~40重量%の酸素含有量を有する。酸素含有量の増加および酸性度の増加は、カルボン酸基の存在によるものである。酸素量の増加は、バイオ-オイルと重質オイルが超臨界条件下で同時に処理されるとき、重質オイルのアップグレーディングを改善することができる。第2に、超臨界水処理は、水素発生を促進し、重質オイルおよびバイオ-オイルの両方のアップグレードを促進する。水素は、ガス化反応および一酸化炭素の水-ガスシフト反応など、バイオ-オイルからその場で生成することができる。一酸化炭素および二酸化炭素は、脱カルボニル化および脱カルボキシル化反応から生成することができる。次いで、一酸化炭素は、水-ガスシフト反応により水素を生成することができる。水素は、酸触媒脱硫反応を促進し、炭素の硫黄結合への開裂を引き起こし、これは、重質オイルの脱硫度を高めることができる。さらに、重質オイル中のナフテン画分、例えばテトラリンなどの天然水素供与体を利用することでバイオ-オイルの水素化処理を促進することができる。超臨界水処理における水素量の増加は、混和性および安定性が向上し、粘度が低下したアップグレードされたオイルブレンドを得ることができる。最後に、超臨界水処理により、バイオ-オイルの不安定性の原因となる不純物の除去を高めることができる。未処理または「粗」(crude)バイオ-オイルには、酸素化物(oxygenates)、グリセロール、グリセリン、ならびにアルカリおよびアルカリ土類金属(Na、K、Mg、Ca)などの不純物が含まれることがある。粗バイオ-オイル中のこれらの汚染物質は、超臨界水中での沈殿または溶解によって除去することができる。
【0022】
有利には、アップグレードされたオイルブレンドを生成するための本プロセスおよびシステムは、重質オイルとバイオ-オイルとの混和性の改善、アップグレードされたオイルブレンドの安定性の改善、エネルギー含有量の改善、液体収率の増加、軽量留分量の増加、およびコークスの量の低減をもたらす。有利には、アップグレードされたオイルブレンドを生成するための本プロセスおよびシステムがバイオ-オイルおよび重質オイルの同時処理を含む。有利なことに、アップグレードされたオイルブレンドを生成する本プロセスおよびシステムは、重質オイルとバイオ-オイルの相乗的特性を利用することができ、それらを一緒にアップグレードすることによって、安定性が悪く、全体的なアップグレードの度合いが低い単純混合とは対照的に、特性が向上した生成物燃料を実現することができる。
【0023】
アップグレードされたオイルブレンドを生成する本プロセスおよびシステムは、連続的であり、バッチプロセスおよびバッチステップでない。
【0024】
全体を通して使用されるように、「バイオ-オイル」または「バイオ-燃料」は、任意のバイオマス原料、バイオマス原料から生成されたエネルギー-含有オイルを指し、バイオ-ディーゼル、バイオ-ガソリン、およびバイオ-エタノールを含む。バイオ-オイルは、植物オイルまたは動物性油脂を含むことができる。バイオ-オイルの生成に用いるのに適したバイオマス原料の例としては、リグノセルロース系バイオマス、草本系バイオマス、微細藻類、大型藻類、食品バイオマス、農業廃棄物、都市ごみ、ひまわり油、パーム油、菜種油、およびそれらの組み合わせが挙げられる。バイオマス原料からバイオ-オイルを生成する際に用いるのに適したプロセスの例としては、熱分解および水熱液化などの熱化学転化、ならびにエステル交換反応が挙げられる。バイオ-オイルは、バイオ-界面活性剤のない状態である。少なくとも1つの実施形態において、バイオ-オイルは、微細藻類のない状態である。
【0025】
全体を通して使用されるように、「水素の外部供給」は、反応器への供給物または反応器そのものに水素を添加することを指す。例えば、水素の外部供給がない場合の反応器とは、反応器への供給物および反応器が、水素、ガス(H)または液体を添加していない状態であり、水素(Hの形態)が反応器への供給物またはその一部でないような状態であることを意味する。
【0026】
全体を通して使用されるように、「触媒の外部供給」は、反応器への供給物への触媒の添加、または反応器内の固定床触媒のような反応器内の触媒の存在を意味する。例えば、触媒の外部供給がない場合の反応器とは、反応器への供給物に触媒が添加されておらず、反応器内に触媒床が存在しないことを意味する。
【0027】
全体を通して使用されるように、「混和性」または「混和できる」は、2つの物質があらゆる割合で互いに溶解し、均質な溶液を形成する性質を意味する。言い換えれば、よく混ざり合う2つの成分は、混和性があるかまたは混和性が向上している。燃料の安定性は、ASTM D4625やおよびASTM D7060などの既知の規格で試験することができる。
【0028】
全体を通して使用されるように、「安定性」または「安定した」は、(i)熱および化学物質を含む様々な要因による劣化に対する耐性;および(ii)混合されたブレンド流体のポケットや層に分離する耐性を意味する。安定なブレンド組成物は、混合後に混合状態を維持するものである。
【0029】
全体を通して使用されるように、「超臨界水」は、水の臨界温度超の温度で、水の臨界圧力超の圧力の水である。水の臨界温度は373.946℃である。水の臨界圧力は22.06メガパスカル(MPa)である。超臨界水中での炭化水素反応は、硫黄化合物を含む重質オイルや原油をアップグレードし、より軽い留分を有する生成物を生成することが当技術分野で知られている。超臨界水は、反応目的が石油の転化反応、脱硫反応、脱窒素反応、および脱金属反応を含むことができる石油反応媒体として使用するのに適した独特な特性を有する。有利なことに、超臨界状態では、水は転化反応、脱硫反応、および脱金属反応において水素源と溶媒(希釈剤)の両方として作用し、触媒は必要とされない。水分子からの水素は、直接移送するか、水-ガスシフト反応のような間接移送によって炭化水素に移送する。水-ガスシフト反応では、一酸化炭素と水が反応して二酸化炭素と水素を生成する。水素は、脱硫反応、脱金属反応、脱窒素反応、およびそれらの組み合わせで炭化水素に移送させることができる。
【0030】
全体を通して使用されるように、「コークス」は、石油中に存在するトルエン不溶性物質を意味する。
【0031】
全体を通して使用されるように、「分解」(cracking)は、炭化水素が炭素-炭素結合の切断により、少数の炭素原子を含有するより小さなものに分解することを意味する。
【0032】
全体を通して使用されているように、「アップグレード」(upgrade)または「アップグレーディング」(upgrading)は、API比重の増加、硫黄原子、窒素原子、金属原子、および酸素原子を含むヘテロ原子量の減少、アスファルテン量の減少、中間留出物収率の増加、粘度の減少、およびプロセス供給物流に対してプロセス出口流のそれらの組み合わせを意味する。当業者であれば、ある流を他の流と比較してアップグレードすることができるような相対的な意味を持つことができることを理解することができるが、ヘテロ原子のような好ましくない成分を含むことがある。
【0033】
全体を通して使用されているように、「転化反応」は、分解、異性化、オリゴマー化、脱アルキル化、二量化、芳香族化、環化、脱硫、脱窒素、脱アスファルト化、脱金属化、およびそれらの組み合わせを含む炭化水素流をアップグレードすることができる反応を意味する。
【0034】
全体を通して使用されているように、「十分に混合された」とは、成分が互いに均一に分配されて、ある成分が別の成分中で分離した領域や凝集ポケットが存在しない混合物を意味する。「十分に混合された」流体とは、均質な混合物である。オイルの場合、十分に混合されたオイルは、あるオイルと他のオイルの分離を示さない。
【0035】
超臨界水中での炭化水素反応は、硫黄化合物を含む重質オイルや原油をアップグレードし、より軽い留分を有する生成物を生成することが当技術分野で知られている。超臨界水は、反応目的が石油の転化反応、脱硫反応、脱窒素反応、および脱金属反応を含むことができる石油反応媒体として使用するのに適した独特な特性を有する。超臨界水は、水の臨界温度超の温度および水の臨界圧力超の圧力の水である。水の臨界温度は、373.946℃である。水の臨界圧力は、22.06メガパスカル(MPa)である。有利なことに、超臨界状態では、水は転化反応、脱硫反応および脱金属反応において水素源および溶媒(希釈剤)の両方として作用し、触媒を必要としない。水分子からの水素は、直接移送によって、または水-ガスシフト反応のような間接移送によって炭化水素に移送する。水-ガスシフト反応では、一酸化炭素と水が反応して二酸化炭素と水素を生成する。水素は、脱硫反応、脱金属反応、脱窒素反応、およびそれらの組み合わせで炭化水素に移送させることができる。水素は、またオレフィン含有量を減少させることができる。内部で水素を発生させることで、コークスの生成を減少させることができる。
【0036】
特定の理論に縛られることなく、超臨界水媒介石油プロセスの基本的な反応機構はフリーラジカル反応機構と同じであると理解される。ラジカル反応には、開始、成長、および終結ステップが含まれる。炭化水素の場合、開始が最も困難なステップであり、開始に必要な活性化エネルギーが高いため、超臨界水での転化は制限されることがある。開始には、化学結合の切断が必要である。炭素-炭素結合の結合エネルギーは、約350kJ/molであるが、炭素-水素結合の結合エネルギーは、約420kJ/molである。化学結合エネルギーの関係で、炭素-炭素結合および炭素-水素結合は、触媒またはラジカル開始剤なしで、380℃~450℃の超臨界水プロセスの温度では容易に切断されない。対照的に、脂肪族炭素-硫黄結合の結合エネルギーは約250kJ/molである。チオール、硫化物、および二硫化物などの脂肪族炭素-硫黄結合は、芳香族炭素-硫黄結合よりも低い結合エネルギーを有する。
【0037】
熱エネルギーは、化学結合の切断によりラジカルを生成する。超臨界水は、ラジカルを取り囲む「ケージ効果」を生成する。水分子に囲まれたラジカルは互いに反応し難いため、コークス生成に寄与する分子間反応が抑制される。ケージ効果は、ラジカル間反応を制限することによってコークス生成を抑制する。液相水に比べ誘電率の低い超臨界水は、炭化水素を溶解し、ラジカルを取り囲んで縮合(二量体化または重合)の停止反応であるラジカル間反応を抑制する。さらに、超臨界水の誘電率は、温度および圧力を調節することで調整することができる。超臨界水ケージが障害となるため、そのような障害がなくラジカルが自由に移送できるディレードコーカーのような従来の熱分解プロセスに比べ、超臨界水中では炭化水素ラジカルの移送がより困難となる。
【0038】
アップグレードされたオイルブレンドを生成するための本システムおよびプロセスは、2段階または2ユニットでの混合を含めることができ、供給物流が1つのミキサーで全て混合されないようにすることができる。段階的に混合することで、混合流の均質性を改善し、異なる供給物流の成分間の相互作用が増加し、ひいては超臨界反応器での不要な副反応を減少させることができる。重質オイル供給物およびバイオ-オイル供給物は、類似の粘度を有するが、異なる極性を有し、混合を困難にする場合がある。2段階で混合することで、十分に混合された混合流を生成するための混合時間を確保することができる。さらに、段階的な混合はバイオ-オイル供給物の高い極性および高いパラフィン系含有量のために、重質オイル供給物のアスファルテン留分が別の相に沈殿する可能性を減少することができる。
【0039】
図を参照して提供される以下の実施形態は、アップグレードされたオイルブレンドを生成するためのプロセスを説明する。
【0040】
図1を参照しながら、超臨界水を用いて重質オイルをバイオ-オイルでアップグレードする本プロセスおよびシステムの一実施形態を説明する。重質オイル供給物10は、第1段ミキサー100に導入される。重質オイル供給物10は、API比重が32超、あるいは24超の石油残渣の任意の供給源であることができる。重質オイル供給物10は、常圧蒸留残渣、減圧蒸留残渣、精油所、石油化学プラント、および石炭液化流からの残渣流、オイルまたはタールサンドから回収された液体生成物、ビチューメンオイル、ビスブレーキング(visbreaking)ユニット、ディレードコーカーユニット、流動接触分解ユニット、および水素化分解ユニットなどの製油所プロセスからの炭化水素流、および熱分解燃料オイルなどの水蒸気分解プロセスの生成物流、およびこれらの組み合わせを含むことができる。重質オイル供給物10は、バイオマスまたはバイオ-オイルを含まない状態である。少なくとも1つの実施形態において、重質オイル供給物10は、T5%が900°F超、あるいはT5%1050°F超の減圧残渣である。少なくとも1つの実施形態において、重質オイル供給物10は、T5%が600°F超、交互に650°F超の常圧残渣である。少なくとも1つの実施形態において、重質オイル供給物10は、600°F超のT5%を有する流動接触分解(FCC)清澄化スラリーオイル(CSO)である。少なくとも1つの実施形態において、重質オイル供給物10は、300°F超のT5%を有するナフサ水蒸気クラッカー(naphtha steam cracker)熱分解燃料オイルである。重質オイル供給物10は、50℃~250℃の温度、あるいは150℃~250℃の温度であることができる。重質オイル供給物10は、約22MPa超、あるいは約23MPa~約30MPa、あるいは約23MPa~約27MPaの圧力であることができる。
【0041】
超臨界水20は、第1段ミキサー100に導入される。超臨界水20は、任意の脱イオン水源から得ることができる。超臨界水20は、1マイクロジーメンス/センチメートル(μS/cm)未満、あるいは0.5μS/cm未満、あるいは0.1μS/cm未満の導電率を有することができる。超臨界水20は、5マイクログラム/リットル(μg/l)未満、あるいは1μg/l未満のナトリウム含有量を有することができる。超臨界水20は、5μg/l未満、あるいは1μg/lのクロライド含有量を有することができる。超臨界水20は、3μg/l未満のシリカ含有量を有することができる。超臨界水20は、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤としては、水とオイルの混合性を改善することができる任意の界面活性剤を含むことができる。使用に適した界面活性剤の例としては、グリコール酸エトキシレートエーテル、フルオロ界面活性剤、ポリエチレングリコールエーテル、アミンアセテート、エトキシル化アミド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。超臨界水20は、374℃~600℃、あるいは400℃~550℃、あるいは400℃超の温度であることができる。超臨界水20は、約22MPa超、あるいは約23MPa~約30MPa、あるいは約23MPa~約27MPaの圧力であることができる。超臨界水20は、超臨界水を含む。
【0042】
第1段ミキサー100は、水流とオイル流ならびに2つのオイル流を含む、2つの流体流を混合することができる任意のタイプのミキサーとすることができる。第1段ミキサー100として使用するのに適したミキサーの例としては、t-接合およびインラインミキサーを挙げることができる。オイル-水エマルション30は、第2段ミキサー200に移送することができる。オイル-水エマルション30は、374℃超の温度および22MPa超の圧力であることができる。重質オイル供給物10と超臨界水20を第1段ミキサー100で混合しオイル-水エマルション30を生成することができる。
【0043】
第1段ミキサー100から第2段ミキサー200への移送ラインは、10秒未満の滞留時間を有することができる。滞留時間を10秒未満に維持すると、移送ライン内のオイルの転化率が減少する。混合は、誘導された乱流によって移送ライン内で継続することができる。移送ラインは、第1段ミキサー100と第2段ミキサー200との間の流体の温度を維持するための外部加熱器を含むことができる。
【0044】
バイオ-オイル供給物40は、第2段ミキサー200に導入することができる。バイオ-オイル供給物40は、バイオ-オイルを含むことができる。バイオ-オイル供給物40の酸素含有量は、5wt%~60wt%の範囲、あるいは50wt%以下、あるいは35wt%~40wt%とすることができる。バイオ-オイル供給物40の含水率は、2wt%~45wt%の範囲、あるいは15wt%~30wt%であることができる。バイオ-オイル供給物40の粘度は、40℃で測定した粘度が5cP~2500cPの範囲、あるいは40℃で測定した粘度が35cP~1000cPであることができる。バイオ-オイル供給物40の動粘性率は、0.1mm/s~80mm/sの範囲、あるいは1mm/s~10mm/sであることができる。バイオ-オイル供給物40の密度は、0.5kg/l~0.97kg/lの範囲、あるいは0.5kg/l~0.9kg/lであることができる。バイオ-オイル供給物40の曇点は、1℃~25℃の範囲、あるいは5℃~15℃であることができる。バイオ-オイル供給物40のT5%カットポイントは、25℃超、あるいは70℃超であることができる。バイオ-オイル供給物40のT95%カットポイントは、450℃未満、あるいは300℃未満であることができる。バイオ-オイル供給物40は、50℃~300℃の温度、あるいは50℃~250℃の温度であることができる。バイオ-オイル供給物40は、22MPa超の圧力、あるいは23MPa~27MPaの圧力であることができる。
【0045】
重質オイル供給物10、超臨界水20、およびバイオ-オイル供給物40を生成する本ステップおよびシステムは、図2を参照することにより理解することができる。重質オイル流12は、重質オイルポンプ110に導入することができる。重質オイル流12は、炭化水素を含む残渣も含む化石燃料-ベースの重質オイルの任意の供給源とすることができる。重質オイル流12は、32超、あるいは24超のAPI比重を有する石油残渣または重質オイルの任意の供給源とすることができる。重質オイル流12として使用するのに適した石油残渣または重質オイルの例としては、常圧蒸留残渣、減圧蒸留残渣、精油所、石油化学プラント、および石炭液化流からの残渣流、オイルまたはタールサンドから回収された液体生成物、ビチューメンオイル、ビスブレーキングユニット、ディレードコーカーユニット、流動接触分解ユニット、および水素化分解ユニットなどの製油所プロセスからの炭化水素流、熱分解燃料オイルなどの水蒸気分解プロセスからの生成物流、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。重質オイル流12は、バイオマスまたはバイオ-オイルの存在しない状態である。
【0046】
重質オイルポンプ110は、重質オイル流12の圧力を上昇させ、加圧重質オイル14を生成することができる。重質オイルポンプ110は、重質オイル流12の圧力を上昇させることができる任意のタイプのポンプとすることができる。重質オイルポンプ110の例としては、ダイヤフラム定量ポンプが挙げられる。加圧重質オイル14の圧力は、水の臨界圧力超の圧力、あるいは約22MPa超、あるいは約23MPa~約30MPa、あるいは23MPa~30MPaであることができる。加圧重質オイル14は、重質オイル加熱器120に供給することができる。
【0047】
重質オイル加熱器120は、加圧重質オイル14の温度を上昇させて重質オイル供給物10を生成する。重質オイル加熱器120は、加圧重質オイル14の温度を上昇させることができる任意のタイプの加熱器とすることができる。重質オイル加熱器120の例としては、電気加熱器、ガス燃焼加熱器、水蒸気加熱器、熱交換器などを挙げることができる。
【0048】
水供給物22は、ウォーターポンプ210に導入することができる。水供給物22は、任意の脱イオン水供給物源からとすることができる。超臨界水20は、1マイクロジーメンス/センチメートル(μS/cm)未満、あるいは0.5μS/cm未満、あるいは0.1μS/cm未満の導電率を有することができる。超臨界水20は、5マイクログラム/リットル(μg/l)未満、あるいは1μg/l未満のナトリウム含有量を有することができる。超臨界水20は、5μg/l未満、あるいは1μg/lのクロライド含有量を有することができる。超臨界水20は、3μg/l未満のシリカ含有量を有することができる。
【0049】
ウォーターポンプは、水供給物22の圧力を上昇させて、加圧水24を生成することができる。ウォーターポンプ210は、水供給物22の圧力を上昇させることができる任意のタイプのポンプとすることができる。ウォーターポンプ210としての使用に適したポンプの例としては、ダイヤフラム定量ポンプが挙げられる。加圧水24の圧力は、水の臨界圧力超、あるいは約22MPa超、あるいは約23MPa~約30MPa、あるいは約23MPa~27MPaであることができる。加圧水24は、水加熱器220に供給することができる。
【0050】
水加熱器220は、加圧水24を加熱して超臨界水20を生成する。水加熱器220は、パラフィン含有水流12の温度を上昇させることができる任意のタイプの加熱装置とすることができる。水加熱器220の例としては、ガス燃焼加熱器、電気加熱器、および熱交換器などを挙げることができる。
【0051】
バイオ-オイル流42は、バイオ-オイルポンプ410に導入することができる。バイオ-オイル流42は、バイオ-オイルを含むことができる。バイオ-オイル流42の酸素含有量は、5wt%~60wt%の範囲、あるいは50wt%以下、あるいは35wt%~40wt%であることができる。バイオ-オイル流42の含水率は、2wt%~45wt%の範囲、あるいは15wt%~30wt%であることができる。バイオ-オイル流42の粘度は、40℃で測定された5cP~2500cPの範囲、あるいは40℃で測定された35cP~1000cPであることができる。バイオ-オイル流42の動粘性率は、0.1mm/s~80mm/sの範囲、あるいは1mm/s~10mm/sであることができる。バイオ-オイル流42の密度は、0.5kg/l~0.97kg/lの範囲、あるいは0.5kg/l~0.9kg/lであることができる。バイオ-オイル流42の曇点は、1℃~25℃の範囲、あるいは5℃~15℃であることができる。バイオ-オイル流42のT5%カットポイントは、25℃超、あるいは70℃超であることができる。バイオ-オイル流42のT95%カットポイントは、450℃未満、あるいは300℃未満とすることができる。
【0052】
バイオ-オイルポンプ410は、バイオ-オイル流42の圧力を上昇させて、加圧バイオ-オイル44を生成することができる。バイオ-オイルポンプ410は、バイオ-オイル流42の圧力を上昇させることができる任意のタイプのポンプとすることができる。バイオ-オイルポンプ410の例としては、ダイヤフラム定量ポンプが挙げられる。加圧バイオ-オイル44の圧力は、水の臨界圧力超の圧力、あるいは約22MPa超、あるいは約23MPa~約30MPa、あるいは23MPa~30MPaであることができる。加圧バイオ-オイル44は、バイオーオイル加熱器420に供給することができる。
【0053】
バイオ-オイル加熱器420は、加圧バイオ-オイル44の温度を上昇させてバイオ-オイル供給物40を生成する。バイオ-オイル加熱器420は、加圧バイオ-オイル44の温度を上昇させることができる任意のタイプの加熱装置とすることができる。バイオ-オイル加熱器420の例としては、電気加熱器、ガス燃焼加熱器、水蒸気加熱器、および熱交換器を含むことができる。
【0054】
図1に戻ると、オイル-水エマルション30とバイオ-オイル供給物40は、第2段ミキサー200で混合されて、混合流50を生成することができる。第2段ミキサー200は、水流とオイル流、ならびにオイルと水のエマルションとオイル流を含む、2つの流体流を混合することができる任意のミキサーとすることができる。第2段ミキサー200として使用するのに適したミキサーの例としては、t-接合およびインラインミキサーを挙げることができる。
【0055】
任意に、超臨界水20の一部を、第1段ミキサー100と第2段ミキサー200との間の移送ラインを通してオイル-水エマルション30に導入することができる。任意に、超臨界水20の一部を、第2段ミキサー200に導入することができる。任意に、バイオ-オイル供給物40の一部を、第1段ミキサー100と第2段ミキサー200との間の移送ラインを通してオイル-水エマルション30に導入することができる。移送ラインにおいて超臨界水20またはバイオ-オイル供給物40をオイル-水エマルション30に導入することにより、混合および流体力学を改善することができる。流体力学とは、流体(特に液体)の流れや混合挙動のことであり、流体力学が改善されると混合も改善される。流体力学の改善とは、レイノルズ数が3,000超、あるいは5,500超の流体が完全に発達した乱流領域を有することを意味することができる。
【0056】
超臨界水20、重質オイル供給物10、およびバイオ-オイル供給物40の体積流量は、混合流50中の水とオイルとの体積比が10:1、あるいは5:1~1:1の範囲、あるいは4:1~2:1の範囲となるようにすることができる。オイルよりも多くの水を有することは、超臨界反応器におけるコークスの生成を低減し、炭化水素の転化率を増加させることができる。少なくとも1つの実施形態では、オイルの総流量が第2段ミキサー200の総体積流量の50%未満である。オイルの総流量とは、バイオ-オイル供給物40と重質オイル供給物10の合計体積流量のことである。総体積流量とは、重質オイル供給物10、バイオ-オイル供給物40、および超臨界水20の合計体積流量のことである。
【0057】
混合流50を超臨界反応器300に導入することができる。
【0058】
超臨界反応器300は、水の臨界条件で反応を維持するように構成された任意のタイプの反応器とすることができる。超臨界反応器300としての使用に適した容器の例としては、容器型反応器、管型反応器、またはそれらの組み合わせが挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、超臨界反応器300がダウンフロー、アップフロー、またはダウンフローとアップフローの両方の組み合わせのいずれかとして配向された管型反応器を含むことができる。超臨界反応器300は、直列に接続された複数の反応器を含むことができる。超臨界反応器300における反応滞留時間は、10秒~60分、あるいは5分~30分とすることができる。超臨界反応器300における反応滞留時間は、反応器の条件において内部流体の密度を水の密度と仮定して決定される。超臨界反応器300内の温度は、水の臨界温度超、あるいは380℃~600℃、あるいは390℃~450℃~であることができる。超臨界反応器300内の温度は、反応器出口における流体の温度を測定することによって測定される。超臨界反応器300の圧力は、水の臨界圧力超、あるいは23MPa~30MPa、あるいは23MPa~28MPa、あるいは23MPa~28MPaであることができる。超臨界反応器300は、触媒の外部供給のない状態にあってもよい。超臨界反応器300は、水素の外部供給がない状態にあってもよい。超臨界反応器300の寸法は、内部流体を水と仮定して計算したレイノルズ数が4,000を超えるように設計することができる。
【0059】
混合流50中のオイルは、超臨界反応器300内で転化反応を受けて、アップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを生成することができる。
【0060】
超臨界反応器300内の流体は、反応器流出液60として出ることができる。反応器流出液60は、アップグレードされたバイオ-オイル、アップグレードされた重質オイル、水、およびそれらの組み合わせを含むことができる。反応器流出液60は、オイル-水混合物を含有することができ、ここで、アップグレードされた重質オイルおよびアップグレードされたバイオ-オイルは、水中に分散される。反応器流出液60は、3つの相、すなわち、アップグレードされたバイオ-オイル相、アップグレードされた重質オイル相、および主に水を含有する水に富んだ相の3つの相を含有することができ、ここで、3つの相はオイル-水混合物中で一緒に混合され、よく混合された流れを形成する。
【0061】
反応器流出液60の温度は、熱交換器400で低下させ、冷却流出液70を生成することができる。熱交換器400は、反応器流出液流の温度を低下させることができる任意のタイプの交換器とすることができる。熱交換器400の例としては、熱交換器および空気冷却器を挙げることができる。冷却流出液70は、250℃~350℃の温度、あるいは275℃~325℃、あるいは295℃~305℃、あるいは300℃の温度とすることができる。冷却流出液70は、浸漬器500に導入することができる。
【0062】
浸漬器500は、反応を維持することができる任意のタイプの容器とすることができる。浸漬器500の温度は、250℃~350℃の範囲、あるいは275℃~325℃の範囲、あるいは295℃~305℃の範囲、あるいは300℃であることができる。浸漬器500内の圧力は、水の臨界圧力超、あるいは22MPa超、あるいは23MPa~30MPaであることができる。浸漬器500内の水は液体状態である。浸漬器500における滞留時間は、1分~120分、あるいは10分~60分であることができる。浸漬器500の滞留時間は、超臨界反応器300の滞留時間より長い。正確な滞留時間は、浸漬器500内の温度に基づいて決定することができる。滞留時間は、浸漬器500が超臨界反応器300の条件よりも厳しい反応条件で、重質オイルの延長または追加の転化を可能にするように選択される。浸漬器500は、超臨界反応器内での転化率が低く、追加の転化が必要な場合や反応速度が遅く、浸漬器での追加の反応時間により転化率を挙げることができる場合に含めることができる。浸漬器500では、超臨界反応器300に比較して、温度が低下し、滞留時間が長くなるため、分解反応が防止される。脱カルボキシル化反応の発生は、超臨界水条件で制限される。浸漬器500内の温度は、より高い程度のアップグレードをもたらすことができる脱カルボキシル化反応の発生を可能にすることができる。浸漬器内は亜臨界状態であるため、標準的な温度および圧力の水よりもイオン性が高く、脱カルボキシル化反応などのイオン反応に有利である。また、脱硫反応も起こり得る。浸漬器500は、分解反応がない状態にある。生成物流出液80を分離ユニット600に導入することができる。
【0063】
少なくとも1つの実施形態において、浸漬器500は触媒を含むことができる。触媒は、遷移金属酸化物、アルカリ金属、およびそれらの組み合わせを含むことができる。触媒は、触媒担体を含むことができる。触媒担体は、シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライト、およびそれらの組み合わせを含むことができる。触媒は、触媒床中に存在することができ、触媒床は、固定床である。
【0064】
少なくとも1つの実施形態において、超臨界水を使用して重質オイルをバイオ-オイルでアップグレードする本プロセスおよびシステムは、浸漬器500がない場合であり、冷却流出液70は直接分離ユニット600に導入することができる。
【0065】
分離ユニット600としては、ガス、オイル、および水を分離することができる任意のタイプの分離ユニットとすることができる。分離ユニット600は、三相分離器、気-液分離器、オイル-水分離器、およびそれらの組み合わせを含むことができる。分離ユニット600は、熱交換器および減圧デバイスを含む、温度および圧力を低減するための機器を含むことができる。生成物流出液80は、分離ユニット600で分離されて、アップグレードされたオイルブレンド90、ガス生成物92、および回収水94を生成することができる。
【0066】
分離ユニット600の1つの実施形態について、図2を参照して説明する。生成物流出液80は、冷却器610に供給されて、冷却流82を生成することができる。冷却器610は、生成物流出液80の温度を低下させることができる任意の装置とすることができる。少なくとも1つの実施形態では、冷却器610は熱交換器である。冷却流82の温度は、気-液分離器630に望まれる操作条件に依存することができる。冷却流82の温度は、50℃~350℃の範囲、あるいは374℃未満、あるいは50℃~120℃の範囲、あるいは120℃未満とすることができる。少なくとも1つの実施形態では、冷却流82の温度は120℃未満である。
【0067】
冷却流82は、減圧流84を生成するために減圧器620を通過する。減圧器620は、流体圧力を低減することができる任意の圧力調整装置とすることができる。減圧器620として使用することができる圧力調整装置の例としては、圧力制御弁、毛細管要素、背圧調整器、およびそれらの組み合わせが挙げられる。減圧器620は、直列の2つ以上の圧力調整装置とすることができる。少なくとも1つの実施形態では、減圧器620が背圧調整器とすることができる。減圧器620は、冷却流82の圧力を1barg(0.1MPa)~50barg(50MPa)の圧力、あるいは1barg~10barg(1MPa)、あるいは10barg(1MPa)~20barg(2MPa)の圧力に低減させる。
【0068】
減圧流84は、気-液分離器630に供給される。気-液分離器630は、減圧流84をガス生成物92と液体流86に分離する。気-液分離器630は、フラッシュドラムなどの単純な精留塔であってもよい。有利には、減圧流84の温度および圧力は、フラッシュドラムを使用して減圧流84を気相と液相に分離することができるようなものである。気-液分離器630は、内部に蒸気を発生させるように設計することができる。ガス生成物92は、軽質留分と蒸気を含む。液体流86は、液体オイルと水を含む。ガス生成物92と液体流86の各々の炭化水素組成および水の量を含む組成は、気-液分離器630内の温度および圧力に依存する。気-液分離器630の温度および圧力は、ガス生成物92と液体流86との間の所望の分離を達成するように調整することができる。
【0069】
液体流86は、オイル-水分離器640に導入することができる。オイル-水分離器640は、液体流86をアップグレードされたオイルブレンド90と回収水94に分離することができる。
【0070】
少なくとも1つの実施形態では、ガス生成物92をさらに分離して、水留分および軽質留分流を生成することができる。水留分は、ガス生成物92中の水蒸気が凝縮して液体水(liquid water)を形成するような条件で、ガス生成物92を凝縮することによって分離することができる。水留分は、液体水を含む。少なくとも1つの実施形態では、ガス生成物92は、凝縮器において凝縮させることができ、液体流は、水が軽質留分から分離され得るようにオイル-水分離器640に導入することができる。
【0071】
図1に戻ると、アップグレードされたオイルブレンド90は、アップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルとの混合を含む。アップグレードされたオイルブレンド90は、十分に混合された流れを含む。アップグレードされたオイルブレンド90は、超臨界水の存在下、超臨界条件下で処理されなかったバイオ-オイルと重質オイルとの混合物と比較して、より優れた安定性、混和性、および増大したエネルギー含有量を示す。アップグレードされたオイルブレンド90は、バイオ-オイル供給物と重質オイル供給物との混合物と比較して、より多量の軽質炭化水素留分を含有する。アップグレードされたオイルブレンド90は、15重量%未満、あるいは10重量%未満、あるいは5重量%未満の酸素含有量を有することができる。アップグレードされたオイルブレンド90の含水率は、10wt%未満、あるいは6wt%未満、あるいは2wt%未満であることができる。硫黄含有量は、5重量%未満、あるいは3重量%未満、あるいは1重量%未満であることができる。アップグレードされたオイルブレンド90は、バイオ-オイル供給物と重質オイル供給物との混合物と比較して、API比重の増加、中間留分収率の増加、硫黄含有量の減少、窒素含有量の減少、金属含有量の減少、およびそれらの組み合わせを有することができる。
【0072】
回収水94は、さらに処理して不純物を除去した後、超臨界水20に再利用することができる。そのようなプロセスの例としては、膜プロセス、促進酸化プロセス、および分解プロセスが挙げられる。回収水94は、不純物を含むことができる。回収水94中の不純物は、有機化合物、無機化合物、酸素化物、炭素質粒子、およびそれらの組み合わせを含むことができる。回収水94中の有機化合物は、バイオ-オイルを超臨界水で処理する際に生成された軽質アルコールとカルボン酸を含むことができる。軽質アルコールは、メタノールを含むことができる。不純物は、水を再利用する前に除去することができる。回収水94から不純物を除去する1つの分解プロセスは、最初に無機化合物を除去することを含む。水中に溶解または分散された無機化合物は、ろ過システムによって除去することができる。プロセス中に真水を添加すると、無機化合物の一部が除去され、蓄積を防ぐことができる。次に、回収水の温度を600℃以上に上昇させ、溶存炭化水素や酸素化物(oxygenates)などの有機化合物を分解する。炭化水素と有機化合物は除去することができる。少なくとも1つの実施形態では、分離ユニット600から水を移送する配管は、溶存炭化水素の分解を促進するための触媒を含むことができる。触媒の例としては、インコネル-625メッシュ(Inconel-625 mesh)が挙げられる。超臨界水20が少なくとも600℃の温度である実施形態では、水の分解は必要でない。
【0073】
図3を参照すると、図1および図2を参照してアップグレードされたオイルブレンドを生成するためのプロセスの別の実施形態が、提供される。バイオ-オイル供給物40と超臨界水20は、第1段ミキサー100に導入することができる。バイオ-オイル供給物40と超臨界水20は、バイオ-オイルエマルション35を生成するために、第1段ミキサーで混合することができる。有利には、重質オイル供給物10を混合するステップの前にバイオ-オイル供給物40を超臨界水20と混合することにより、重質オイルと比較してバイオ-オイルの酸素含有量が増加するため、重質オイルのアップグレードを改善することができるより大量の酸素化学種を生成することができる。重質オイルの改良されたアップグレーディングは、特性を改良したアップグレードされたオイルブレンド流を得ることができる。超臨界水とバイオ-オイルを混合することで、重質オイルのアップグレーディングと脱硫反応を強めることができる水素の発生を促進し、その結果、重質オイルのアップグレーディングと脱硫の度合いを大きくすることができる。バイオ-オイルは、一酸化炭素が水-ガスシフト反応を起こす脱カルボキシル化反応、およびバイオ-オイル炭化水素のガス化により、水素の発生を促進することができる。さらに、脱カルボニル化反応および脱カルボキシル化反応によるCOおよびCOの放出は、超臨界水条件下でのこれらの分子の存在が脱硫およびアップグレーディング反応を改善することが示されているので、重質オイルのアップグレーディングを促進することができる。さらに、重質オイルの存在は水のバイオ-オイルに対する比率を低下させ、これは前述の反応の程度を低下させることはできても、それらを排除することはできない。したがって、バイオ-オイルと超臨界水とを先に混合することで、より多量の酸素化学種を発生させることができる。
【0074】
バイオ-オイルエマルション35は、第2段ミキサー200に導入することができる。重質オイル供給物10は、第2段ミキサー200に導入することができる。バイオ-オイルエマルション35と重質オイル供給物10は、第2段ミキサー200で混合されて、混合流50を生成することができる。バイオ-オイル供給物40と超臨界水20を第1段ミキサー100で混合してバイオ-オイルエマルション35を生成すると、親水性および親油性相互作用により重質オイル供給物10とバイオ-オイルエマルションとの間のより良好な混合を誘導することができる。超臨界水の存在により、混合性が高まる。
【0075】
任意に、超臨界水20の一部を、第1段ミキサー100と第2段ミキサー200との間の移送ラインを通してバイオ-オイルエマルション35に導入することができる。任意に、超臨界水20の一部を、第2段ミキサー200に導入することができる。場合により、重質オイル供給物10の一部を、第1段ミキサー100と第2段ミキサー200との間の移送ラインを通してバイオ-オイルエマルション35に導入することができる。移送ライン内のバイオ-オイルエマルション35に超臨界水20または重質オイル供給物10を導入することにより、混合および流体力学を改善することができる。
【0076】
超臨界水20、重質オイル供給物10、およびバイオ-オイル供給物40の体積流量は、混合流50中の水とオイルとの体積比が10:1、あるいは10:1~2:1、あるいは5:1~1:1の範囲、あるいは4:1~2:1の範囲となるようにすることができる。オイルの総流量は、第2段ミキサー200における総体積流量の50%未満である。オイルの総流量は、バイオ-オイル供給物40と重質オイル供給物10の合計体積流量のことである。総体積流量は、重質オイル供給物10、バイオ-オイル供給物40、および超臨界水20の合計体積流量のことである。
【0077】
図4を参照すると、図1および図2を参照してアップグレードされたオイルブレンドを生成するためのプロセスの別の実施形態が、提供される。重質オイル供給物10とバイオ-オイル供給物40は、第1段ミキサー100に導入することができる。重質オイル供給物10とバイオ-オイル供給物40は、混合オイル15を生成するために、第1段階ミキサー100において混合することができる。混合オイル15は、第2段ミキサー200に導入することができる。
【0078】
超臨界水20は、第2段ミキサー200に導入することができる。超臨界水20と混合オイル15は、第2段ミキサー200で混合されて、混合流50を生成することができる。任意に、超臨界水20の一部を、第1段ミキサー100に導入することができる。任意に、超臨界水20の一部を、第1段ミキサー100と第2段ミキサー200との間の移送ラインを通して混合オイル15に導入することができる。移送ライン内の混合オイル15に超臨界水20を導入することにより、混合および流体力学を改善することができる。
【0079】
超臨界水20、重質オイル供給物10、およびバイオ-オイル供給物40の体積流量は、混合流50中の水とオイルとの体積比が10:1、あるいは5:1~1:1の範囲、あるいは4:1~2:1の範囲であることができる。オイルの総流量とは、第2段ミキサー200の総体積流量の50%未満である。オイルの総流量とは、バイオ-オイル供給物40と重質オイル供給物10の合計体積流量のことである。総体積流量とは、重質オイル供給物10、バイオ-オイル供給物40、および超臨界水20の合計体積流量のことである。
【0080】
図5を参照すると、図1図2、および図3を参照して、アップグレードされたオイルブレンドを生成するための実施形態が提供される。バイオ-オイル供給物40および超臨界水20の一部は、第1段ミキサー100に導入される。第1段ミキサー100に導入される超臨界水20の一部の水の量は、超臨界水20の水の総量の50体積%以下であってもよく、あるいは超臨界水20の一部の水の量は、10体積%~100体積%であることができる。バイオ-オイル供給物40および超臨界水20の一部を、第1段ミキサー100で混合して、バイオ-オイルエマルション35を生成することができる。バイオ-オイルエマルション35中の水とオイルとの体積比が5:1~1:1の範囲、あるいは4:1~2:1の範囲であることができる。バイオ-オイルエマルション35を第1反応器ユニット700に導入することができる。
【0081】
バイオ-オイルエマルション35は、第1反応器ユニット700内で処理されて、反応器生成物65を生成することができる。第1反応器ユニット700内の温度は、400℃~500℃の範囲、あるいは450℃~500℃の範囲とすることができる。第1反応器ユニット700内の圧力は、22MPa超、あるいは23MPa~30MPaの範囲であることができる。第1反応器ユニット700は、触媒層を含むことができる。触媒層は、ニッケル、鉄、銅、亜鉛、ランタニドおよびそれらの組み合わせの酸化物を含むことができる。触媒層は、支持体としての不活性担体、例えばアルミナおよびシリカを含むことができる。触媒層は、ネット、スポンジ、ハニカム、またはそれらの組み合わせの形態であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、触媒層はニッケル合金構造体である。少なくとも1つの実施形態において、触媒層はインコネル-625(Inconel-625)を含む。
【0082】
バイオ-オイルを超臨界条件で処理すると、多核芳香族化合物を含むアスファルテン化合物の量が減少するため、同じ条件下で処理した重質オイルに比べてコークスが発生しにくくなる。脱カルボニル化および脱カルボキシル化反応は、触媒を使用しない超臨界状態では制限されるため、第1反応器ユニット700に触媒層が存在することで、脱カルボニル化および脱カルボキシル化反応を増加させることができる。脱カルボニル化および脱カルボキシル化反応により、一酸化炭素が水-ガスシフト反応を起こすことで水素量が増加し、脱硫反応やアップグレーディング反応を改善することができる。さらに、第1反応器ユニット700において、エステル基およびカルボキシル基の加水分解が起こり得る。
【0083】
反応器生成物65は、第2段ミキサー200に導入することができる。重質オイル供給物10は、反応器生成物65および残りの超臨界水20とともに第2段ミキサー200に導入することができる。超臨界水20の残りの水の量は、超臨界水20の水の総量の50体積%以上とすることができ、あるいは超臨界水20の残りの水の量は、0体積%~90体積%とすることができる。少なくとも1つの実施形態では、超臨界水20の水の量は、一部が第1段ミキサー100に導入され、等量の残部が第2段ミキサー200に導入されて、均等に分割される。反応器生成物65は、重質オイル供給物10および超臨界水20の残りと混合されて、混合反応器生成物55を生成することができる。
【0084】
任意に、超臨界水20の残りの一部を、第1反応器ユニット700と第2段ミキサー200との間の移送ラインを通して反応器生成物65に導入することができる。任意に、バイオ-オイル供給物40の一部は、第1反応器ユニット700と第2段ミキサー200との間の移送ラインを通して反応器生成物65に導入することができる。任意に、重質オイル供給物10の一部を、第1段ミキサー100に導入することができる。任意に、重質オイル供給物10の一部を、第1反応器ユニット700と第2段ミキサー200との間の移送ラインを通して反応器生成物65に導入することができる。超臨界水20、バイオ-オイル供給物40、または重質オイル供給物10を移送ラインの反応器生成物65に導入することにより、混合および流体力学を改善することができる。
【0085】
超臨界水20、重質オイル供給物10、およびバイオ-オイル供給物40の体積流量は、混合流50中の水とオイルの体積比が10:1、あるいは5:1~1:1の範囲、あるいは4:1~2:1の範囲であることができる。オイルの総流量とは、第2段ミキサー200における総体積流量の50%未満である。オイルの総流量は、バイオ-オイル供給物40と重質オイル供給物10の合計体積流量のことである。総体積流量とは、重質オイル供給物10、バイオ-オイル供給物40、および超臨界水20の合計体積流量のことである。
【0086】
混合反応器生成物55は、熱交換器400に導入することができる。混合反応器生成物55の温度は、熱交換器400で低下させ、冷却混合生成物75を生成することができる。冷却混合生成物75の温度は、第1反応器ユニット700の温度よりも少なくとも20℃低く、あるいは第1反応器ユニット700の温度よりも少なくとも50℃低く、あるいは第1反応器ユニット700の温度よりも15℃~55℃低い温度であることができる。冷却混合生成物75を第2反応器ユニット750に導入することができる。
【0087】
少なくとも1つの実施形態では、第1反応器ユニット700と第2反応器ユニット750との間に、ろ過要素(図示せず)を有するフィルターを設置することができる。ろ過要素は、第1反応器ユニット700において、バイオ-オイルから析出した触媒と不純物を除去することができる。
【0088】
第2反応器ユニット750は、水の臨界条件で反応を維持するように構成された任意のタイプの反応器とすることができる。第2反応器ユニット750として使用するのに適した容器の例としては、容器型反応器、管型反応器、またはそれらの組み合わせが挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、第2反応器ユニット750が、ダウンフロー、アップフロー、またはダウンフローとアップフローの両方の組み合わせのいずれかとして配向された管型反応器を含むことができる。第2反応器ユニット750は、直列の複数の反応器を含むことができる。第2反応器ユニット750における反応滞留時間は、10秒~60分、あるいは5分~30分であることができる。第2反応器ユニット750における反応滞留時間は、反応器の条件において内部流体の密度を水の密度であると仮定することによって決定される。少なくとも1つの実施形態では、第2反応器ユニット750における反応滞留時間は、第1反応器ユニット700における反応滞留時間超である。第2反応器ユニット750内の温度は、第1反応器ユニット700の温度よりも少なくとも20℃低く、あるいは第1反応器ユニット700の温度よりも少なくとも50℃低く、あるいは第1反応器ユニット700の温度よりも15℃~55℃低い温度であることができる。第2反応器ユニット750内の温度は、水の臨界温度超である。第2反応器ユニット750内の温度は、反応器出口における流体の温度を測定することによって測定される。第2反応器ユニット750の圧力は、水の臨界圧力超、あるいは23MPa~30MPaであり、あるいは23MPa~28MPaであることができる。第2反応器ユニット750は、触媒の外部供給がない状態であってもよい。第2反応器ユニット750は、水素の外部供給がない状態であってもよい。第2反応器ユニット750の寸法は、内部流体を水と仮定して算出されるレイノルズ数が4000を超えるように設計することができる。第2反応器ユニット750は、触媒の外部供給がない状態である。第2反応器ユニット750は、水素の外部供給がない状態である。
【0089】
冷却混合生成物75内のオイルは、第2応器ユニット750内で転化反応を受けて、アップグレードされたバイオ-オイルおよびアップグレードされた重質オイルを生成することができる。反応器生成物65の未反応の酸素化物は、重質オイルが酸素化物と反応するのに十分な量のラジカルと水素を提供できるので、第2反応器ユニット750で処理することができる。さらに、重質オイルからの硫黄化合物は、置換反応による重質オイルおよびバイオ-オイルの炭素-酸素結合の切断を改善することができる。第2反応器ユニット750内の流体は、生成物流出液80として出ることができる。生成物流出液80を分離ユニット600に導入することができる。
【0090】
少なくとも1つの実施形態では、アップグレードされたオイルブレンドを生成するプロセスは、第1反応器ユニット700と第2反応器ユニット750との間に熱交換器400がない状態で、熱交換器が第2反応器ユニット750の下流に配置され得る。そのような実施形態では、混合反応器生成物55は、フィルターまたは第2反応器ユニット750に直接導入することができ、生成物流出液80は、熱交換器に導入することができる。
【0091】
ここで説明する各実施形態では、オイルの総体積流量が、水とオイルの総体積流量の50%未満であり、水の体積流量がオイルの総体積流量超である。
【0092】
有利には、図1および図3に示すように、重質オイル供給物10とバイオ-オイル供給物40を異なるミキサーで混合することにより、超臨界水の介在によるより良好な混合を誘導し、重質オイル供給物10とバイオ-オイル供給物40の混和性を改善することができる。
【0093】
[実施例]
実施例は、図2を参照して説明したプロセスによる処理のシミュレーション分析である。シミュレーションは、パイロットプラントでの実験から得られた実験データを基に、Aspen-HYSYSを用いて作成された。重質オイル供給物10を、大気中の残留物/還元原油としてモデル化された。バイオ-オイル供給物40は、木材の熱分解による生成物としてモデル化された。両者の特性を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
バイオ-オイル供給物40の第1段ミキサー100への流量は、圧力27MPa、温度295℃で2リットル/分であった。第1段ミキサー200への超臨界水20の流量は、圧力27MPa、温度400℃で4リットル/分であった。バイオ-オイルエマルション35を超臨界反応器300に導入した。超臨界反応器300は、温度450℃、圧力27MPa、滞留時間約4分で操作した。反応器生成物65は、第2段ミキサー200で重質オイル供給物10と混合され、重質オイル供給物10は、27MPaの圧力および245℃の温度で2リットル/分の流量を有していた。混合反応器生成物55は、第2反応器ユニット750に導入される。第2反応器ユニット750は、400℃の温度および27MPaで操作した。生成物流出液80は、90℃の温度まで冷却し、0.1013MPaまで減圧することができる。その後、冷却および減圧された流出液を、気-液分離器610およびオイル-水分離器620からなる分離ユニット600に導入して、アップグレードされたオイルブレンド90、ガス生成物92、および回収水94を生成した。アップグレードされたオイルブレンドの流れ特性を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
アップグレードされたオイルブレンド90の特性は、酸素含有量と硫黄含有量が低減されたドライオイルであることを示している。アップグレードされたオイルブレンド90は、水素と炭素の比率が高いため、燃料として使用するのに適している。さらに、液体の収率も高い。
【0098】
本発明を詳細に説明したが、本発明の原理および範囲から逸脱することなく、種々の変更、置換、および改変が可能であることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその適切な法的均等物によって決定されるべきである。
【0099】
また,記載されたさまざまな要素は、特に断りのない限り、他のすべての要素と組み合わせて使用することができる。
【0100】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈で明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0101】
「任意選択の(optional)」、または「任意選択的に(optionally)」とは、後述の事象または状況が発生してもしなくてもよいことを意味する。説明には、その事象または状況が発生した場合と発生しなかった場合が含まれる。
【0102】
本明細書では、「範囲(Ranges)」は、ある特定のおおよその値から別の特定のおおよその値までのことであり、特に断りのない限り包括的なものである。そのような範囲が表わされる場合、他の実施形態は、その範囲内のすべての組み合わせとともに、1つの特定の値から他の特定の値までのものであることを理解されるべきである。
【0103】
この出願を通して、特許または刊行物が参照される場合、これらの文献の開示内容は、これらの文献がここでの記載と矛盾する場合を除いて、本発明に係る技術の状態をより完全に記載するために、それらの全体が参照により本出願に組み込まれることを意図する。
【0104】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単語「備える(comprise)」、「有する(has)」、「含む(include)」およびそれらのすべての文法上の変形はそれぞれ、追加の要素またはステップを除外しないオープンで非限定的な意味を有することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】