(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】低液相線粘度シートガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 18/02 20060101AFI20230602BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C03B18/02
C03B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565822
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021027238
(87)【国際公開番号】W WO2021221910
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デ アンジェリス,ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】フォーネル,ニルス ポール
(72)【発明者】
【氏名】フレドホルム,アラン マーク
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シアオジュー
(72)【発明者】
【氏名】マーカム,ショーン ラシェル
(72)【発明者】
【氏名】シーヒィ,ウィリアム アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルドゥルメ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ルイ
(57)【要約】
液相線粘度が<5kPである溶融ガラスからシートガラスを形成するためのさまざまな方法及び装置が開示される。液相線粘度が<5kPであるガラスの連続的に供給されるリボンを受け取り、ローラの外面で冷却するためのローラもまた開示される。該ローラは、ガラスリボンがローラと一定時間接触し、一定時間の終わりにローラから離れるように、所定の温度で維持されるように構成されており、所定の速度で回転することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスからガラスシートを形成する方法であって、
液相線粘度が<5kPであるガラスのガラスリボンを形成する工程;及び
第1の端部と第2の端部との間に画成された長さが500cm以下であるフロートタンク内に収容された溶融金属浴の表面に前記ガラスリボンを流す工程であって、前記ガラスリボンが前記第2の端部においてその平衡厚さに達し、前記第2の端部における前記ガラスリボンの粘度が少なくとも100kPになるように、前記ガラスリボンが前記フロートタンクの長さにわたって前記第1の端部から前記第2の端部へと流れ方向に流れる、工程
を含む、方法。
【請求項2】
複数のトップローラを使用して前記ガラスリボンの流れ方向に対して横方向に外側に前記ガラスリボンを延伸する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスリボンが前記溶融金属浴の表面にあるときに前記ガラスリボンの上面を複数のトップローラと接触させる工程;及び
前記複数のトップローラを使用して前記ガラスリボンの流れ方向に対して横方向に外側に前記ガラスリボンを延伸する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融金属浴の第2の端部から前記ガラスリボンを引き延ばして冷却するダウンドロープロセスまで前記ガラスリボンを送給する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
溶融ガラスからガラスシートを形成するための装置であって、
液相線粘度が<5kPであるガラスの連続的に供給されるガラスリボンを受け取り、ローラの外面で冷却するためのローラ;及び
前記ガラスリボンを前記ローラに連続的に送給するように構成されたガラスリボン送給装置;
を含み、
前記ガラスリボンが前記ローラと一定時間接触し、前記一定時間の終わりに前記ローラから離れ、それによって前記ローラから離れる前記ガラスリボンの部分が少なくとも100kPの粘度を達成するように、前記ローラが所定の温度で維持されるように構成され、所定の速度で回転することができる、
装置。
【請求項6】
前記ローラが、内壁を有する内部空間を備えた中空円筒構造を有しており、前記ローラが、供給量の液体冷却剤を前記内壁の少なくとも一部に噴霧するように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ローラが、
前記内部空間へのアクセスを提供する前記中空円筒構造の1つにある開口部;
前記開口部を介して前記内部空間へと延びる液体冷却剤供給パイプであって、供給量の液体冷却剤が前記液体冷却剤供給パイプに供給されるときに前記液体冷却剤を前記内壁の一部に噴霧する1つ以上のジェットノズルを含む、液体冷却剤供給パイプ
を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ガラスリボン送給装置が、前記連続的に供給されるガラスリボンを前記ローラに水平又は垂直に送給するように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
溶融ガラスからガラスシートを形成するための装置であって、
液相線粘度が<5kPであるガラスの連続的に供給されるガラスリボンを受け取り、2つのローラ間の一対のローラの外面で冷却するための一対のローラ;及び
前記ガラスリボンを前記一対のローラに連続的に送給するように構成されたガラスリボン送給装置;
を含み、
前記ガラスリボンが前記2つのローラと一定時間接触し、前記一定時間の終わりに前記2つのローラから離れ、それによって前記2つのローラから離れる前記ガラスリボンの部分が少なくとも100kPの粘度を有するように、前記2つのローラが所定の温度で維持され、所定の速度で回転される、
装置。
【請求項10】
前記2つのローラの各々が、内壁を有する内部空間を備えた中空円筒構造を有しており、前記ローラが、供給量の液体冷却剤を前記内壁の少なくとも一部に噴霧するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ローラの各々が、
前記内部空間へのアクセスを提供する前記中空円筒構造の1つにある開口部;
前記開口部を介して前記内部空間内に配置された液体冷却剤供給パイプであって、供給量の液体冷却剤が前記液体冷却剤供給パイプに供給されるときに前記液体冷却剤を前記内壁の一部に噴霧する1つ以上のジェットノズルを含む、液体冷却剤供給パイプ
を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ガラスリボン送給装置が、前記連続的に供給されるガラスリボンを前記一対のローラに水平又は垂直に送給するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記ガラスリボン送給装置が、オーバーフローフュージョン送給装置、片面オーバーフロープロセス、ハーフトラフからの片面オーバーフロープロセス、垂直フィッシュテールスロット、又は拡張スロットを備えたPt管のうちの1つである、請求項5又は9に記載の装置。
【請求項14】
前記ガラスの前記液相線粘度が<1kPである、請求項1、5、及び9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2020年04月29日出願の米国仮特許出願第63/017257号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、溶融ガラスからシートガラスを形成するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン及びタブレットなどの最新の消費者向け電子機器のディスプレイカバーガラスの堅牢性の向上に対する高まる要求に応えるため、ガラス製造業者は、より深い応力プロファイルを有する、より高い破壊靭性を備えたガラスを開発している。この分野の進歩の幾つかは、リチウム含有量がより高いガラス組成物を使用することによって可能となった。しかしながら、このようなガラス配合物の欠点の1つは、液相線粘度が大幅に低く(多くの場合<5kP)、ガラス成形プロセスに適合しないことが多いことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、より低い液相線粘度に対応することができる改善されたガラス成形プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
溶融ガラスからガラスシートを形成する方法が提供される。該方法は、液相線粘度が<5kPのガラスのガラスリボンを形成する工程;及び、第1の端部と第2の端部との間に画成された長さが500cm以下であるフロートタンク内に収容された溶融金属浴の表面にガラスリボンを流す工程を含み、ガラスリボンは、該ガラスリボンが第2の端部においてその平衡厚さに達し、第2の端部におけるガラスリボンの粘度が少なくとも100kPになるように、フロートタンクの長さにわたって第1の端部から第2の端部へと流れ方向に流れる。
【0006】
溶融ガラスからガラスシートを形成するための別の方法もまた提供される。該方法は、溶融液相線粘度が<5kPであるガラスからガラスリボンを形成する工程;及び、ガラスリボンをローラに送給する工程を含み、ここで、ローラは、ガラスリボンがローラと一定時間接触し、一定時間の終わりにローラから離れ、それによってローラから離れるガラスリボンの部分が少なくとも100kPの粘度を有するように、所定の温度で維持され、所定の速度で回転される。
【0007】
別の態様では、溶融ガラスからガラスシートを形成するための装置の実施形態が開示される。装置は、液相線粘度が<5kPである連続的に供給されるガラスリボンを受け取り、ローラの外面で冷却するためのローラと、ガラスリボンをローラに連続的に送給するように構成されたガラスリボン送給装置とを含む。ローラは、ガラスリボンがローラと一定時間接触し、一定時間の終わりにローラから離れ、それによってローラから離れるガラスリボンの部分が少なくとも100kPの粘度を達成するように、所定の温度で維持されるように構成され、所定の速度で回転することができる。
【0008】
液相線粘度が<5kPである溶融ガラスからガラスシートを形成するための装置の別の実施形態も開示される。装置は、連続的に供給されるガラスリボンを受け取り、2つのローラの間の一対のローラの外面で冷却するための一対のローラと、ガラスリボンを一対のローラに連続的に送給するように構成されたガラスリボン送給装置とを含む。2つのローラは、ガラスリボンが2つのローラと一定時間接触し、一定時間の終わりに2つのローラから離れ、それによって2つのローラから離れるガラスリボンの部分が少なくとも100kPの粘度を有するように、所定の温度で維持され、所定の速度で回転される。
【0009】
これらの図面は、説明の目的で提供されており、本明細書に開示され、論じられる実施形態は、示される構成及び手段に限定されないことが理解される。図は概略図であり、縮尺どおりではない。寸法又は実際の比率を示すことは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示による低液相線粘度ガラスのためのハイブリッドフロートバス及びダウンドロープロセスの全体的なプロセスレイアウトを示す図
【
図3】溶融スズ浴、並びに本開示の持ち上げからダウンドローまでのプロセスを示す図
【
図5A】垂直ガラスリボンディスペンサの一例を示す図
【
図5B】垂直ガラスリボンディスペンサの一例を示す図
【
図5C】垂直ガラスリボンディスペンサの一例を示す図
【
図5D】垂直ガラスリボンディスペンサの一例を示す図
【
図7B】冷却ロールの内部冷却に使用することができる水ノズルを示す図
【
図7C】冷却ロールの内部冷却に使用することができる水ノズルを示す図
【
図8】一実施形態による溶融低液相線粘度ガラスからガラスシートを形成する方法のフローチャート
【
図9】別の実施形態による溶融低液相線粘度ガラスからガラスシートを形成する方法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書は詳細を含むことができるが、これらは範囲の制限として解釈されるべきではなく、特定の実施形態に固有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。
【0012】
改善されたガラス形成プロセスのさまざまな実施形態が、図面を参照して説明され、理解を容易にするために同様の要素には同様の番号が付与されている。
【0013】
また、特に明記しない限り、「上部」、「底部」、「外向き」、「内向き」などの用語は便宜上の言葉であり、限定する用語として解釈されるべきではないことも理解される。加えて、あるグループが要素のグループ及びそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むと記載される場合には常に、そのグループは、個々に又は互いに組み合わせて、列挙された任意の数の要素を含むか、実質的にそれらで構成されるか、又はそれらからなる。
【0014】
同様に、あるグループが要素のグループ又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つからなると記載される場合には常に、そのグループは、個々に又は互いに組み合わせて、列挙された任意の数の要素で構成されうる。特に明記しない限り、値の範囲は、列挙される場合には、範囲の上限と下限の両方を含む。本明細書で用いられる場合、不定冠詞「a」及び「an」、並びに対応する定冠詞「the」は、特に明記しない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。
【0015】
本明細書で用いられる「液相線粘度」という用語は、その液相線温度におけるガラス組成物の剪断粘度を指す。液相線粘度は、ASTM C829規格、勾配ボート法に従って測定される。
【0016】
本明細書で用いられる「液相線温度」という用語は、ガラス組成物中で失透が起こる最高温度を指す。液相線温度は、ASTM C829規格、勾配ボート法に従って測定される。
【0017】
当業者は、本開示の有益な結果を取得しつつ、記載された実施形態に対して多くの変更を行うことができることを認識するであろう。本開示の所望の利益の幾つかは、他の特徴を使用することなく、記載された特徴の幾つかを選択することによって得ることができることも明らかであろう。したがって、当業者は、多くの修正及び適応が可能であり、ある特定の状況では望ましいことさえあり、本開示の一部であること認識するであろう。よって、以下の説明は、本開示の原理の例示として提供されるものであって、本開示を限定するものではない。
【0018】
低い液相線粘度を有するガラス配合物からガラスシートを形成するための新規の方法及びシステムのさまざまな実施形態が本明細書に開示される。本明細書で用いられる場合、低液相線粘度は<5kPを意味する。一実施形態では、プロセスは、低液相線粘度のガラス組成物から高品質のカバーガラスを製造する方法として、溶融した低液相線粘度ガラスを修正フロートバスからダウンドロープロセスへと送給する。
【0019】
他の実施形態では、溶融低液相線粘度ガラスは、水平送給システム又は垂直送給システムを介して均一なリボンの厚さで新規の急速冷却機構(能動的に冷却されたローラ又は一対の能動的に冷却されたローラ)へと送給され、少なくとも100kP、好ましくは約200kP、最大で1MPの使用可能な粘度を有するガラスリボンを形成する。
【0020】
修正されたフロートバス及びダウンドロープロセスシステムでは、溶融ガラスを拡散して均一な厚さのリボンを形成するための溶融スズ浴は、500cm以下の長さを有し、これは、フロートバスの長さが数十メートルから最大で60メートルの長さである従来のフロートガラスプロセスよりも大幅に短い。ハイブリッドフロートバス及びダウンドロープロセスシステムはまた、低い液相線粘度(<5kP)を有するガラスリボンを溶融スズ浴の水平面からダウンドロー機の供給部分において垂直方向に移行させるための装置も含み、それによって、リボンを7mm未満の所望の厚さに延伸し、製品の厚さ及び用途に応じて、リボンを個々のシートへと切断するか、又はロールに巻くことができるようにする。このプロセスは、ガラス送給システムとリボンの自由表面(空気に晒されるガラス表面)を最小限に抑え、したがってガラスリボン送給システムにおける潜在的なガラスの揮発の影響(蒸発によるガラス組成の成分の損失)を最小限に抑えるという点で、典型的なフロートプロセスとは異なる。ガラス送給システム及びリボンの自由表面を最小限に抑えることにより、ツイールを使用した典型的なチャネルと比較して、別のフロー制御方法も導入され、トップストリーク型の欠陥を最小限に抑えることができる。ツイールは、フロートプロセスで加熱炉から溶融金属浴へのガラスの流れを制御するために用いられる耐火ブロックである。ツイールは、概して、上から挿入され、落下高さを調整することによって流れを制御することができる。
【0021】
ガラスの拡散に長さが500cm以下のフロートバスを使用すると、ガラスリボンと溶融スズ浴との接触時間が減少し、溶融スズと接触するガラスリボンの底面からガラスリボン内へのスズの拡散が減少する。このプロセスは、ガラスリボンの粘性から弾性への移行点がプロセスの垂直延伸部分にあるように構成される。ガラスは平衡液体状態から過冷却状態(固体)へと移行し、その機械的挙動は粘性から粘弾性に向かうことによって説明することができる。機械的属性のほとんどは、粘性状態から弾性状態への移行の履歴に依存する。平坦な薄いガラスシートを製造するためには、残留応力と反りが最小限に抑制されるように、ガラスの粘性から弾性への移行を慎重に制御する必要がある。粘性から弾性への移行点を垂直延伸部分に移動することにより、従来のフロートライン又は特殊なフロートラインで観察されるマイクロコルゲーション及び表面のうねりの影響を軽減することができる。
【0022】
また、フロートバスを使用すると、プロセスの早い段階でガラスリボンが垂直方向にシフトする。これにより、フロートバスプロセスの温度を上昇させて低液相線粘度組成物の送給を可能にしつつ、表面凝縮ドリッの欠陥の可能性を低減する。フロートバスの温度は、低液相線粘度組成物では、フロートバス内での失透(devit)の進行を避けるために、液相線温度よりも高くする必要がある。
【0023】
図1は、本開示の一実施形態による低液相線粘度ガラスからガラスシートを形成するためのフロートバス及びダウンドロープロセス100の一例の全体的なプロセスレイアウトを示している。ガラス製造装置100は、フロートタンク160、ダウンドロー(引き伸ばし及び冷却)プロセス180、並びにさまざまな下流プロセスステーション120(例えば、検査、ビード除去、クロスカット、及び梱包など)を含む。フロートタンク160は、溶融スズなどの溶融金属浴162を保持する。低液相線粘度のガラスリボンの広がりが薄くなりすぎないように、溶融金属浴の長さL
Mは長すぎない。好ましくは、L
Mは、200cmから1000cmの長さでありうる。さらに好ましくは、L
Mは500cm(±10cm)である。フロートタンク160は、その入口で溶融低液相線粘度ガラス300の流れを受け取り、その出口端165でガラスリボン310を排出する。
【0024】
ダウンドロープロセス180は、一連のローラ182及び温度制御181を利用して、ガラスリボン310を所望の寸法に引き伸ばし、冷却する。ダウンドロープロセスにおける温度制御181は、ガラスが溶融状態から固体状態へと移行するときに、ガラスの制御された冷却を提供する。このプロセスは慎重に制御される。温度制御181は、冷却速度を制御するための加熱機構を含むことができる。ダウンドロープロセス180の温度制御ゾーンは、固化したガラスリボンの内部応力を緩和するためのアニーリングゾーン及び引張ゾーンも含むことができる。次いで、さまざまな下流プロセスステーション120が、必要に応じて、検査、ビード除去、クロスカット、及び梱包などのプロセスを実施する。任意選択的に、ダウンドロープロセス180と下流プロセスステーション120との間に緩衝ゾーン190を設けることができる。緩衝ゾーン190は、ダウンドロープロセス180と下流プロセスステーション120との間のプロセス分離を提供することができる。緩衝ゾーン190内において、ガラスリボン310は、カテナリー形状、すなわち、自由懸垂ループとすることができる。カテナリー形状は、緩衝ゾーン190内のガラスリボン310にかかる引っ張り力及び重力の量に応じて、自己調整することができる。
【0025】
低液相線粘度ガラスのガラスリボン310は、溶融低液相線粘度ガラス300を制御された方法でフロートタンク160及び溶融金属浴162の表面に流すことによって形成される。低液相線粘度ガラスリボン310が、フロートタンク160の出口端165に向かってその長さLMにわたって溶融金属浴162の表面に流れるときに、低液相線粘度ガラスリボン310は薄くなり、また、より広く広がる。溶融金属浴162の表面上を移動するガラスリボン310の速度は、ガラスリボンが溶融金属浴162の出口端165に到達するときまでに、ガラスリボンがその平衡厚さに達するように(すなわち、所望の幅及び所望の粘度に達する点)制御される。上述のように、溶融金属浴162の長さLMは、より高い液相線粘度を有する従来のフロートガラス組成物よりも、低液相線粘度ガラスがより速く平衡厚さに達するため、5メートル以下の長さである。また、溶融金属浴162の長さLMを制限することにより、望ましくない失透(devit)を形成する可能性が最小限に抑えられる。
【0026】
幾つかの実施形態では、低液相線粘度ガラスリボン310がその平衡厚さに迅速に到達するときに所望の幅に広がることを確実にするために、複数の上端面ローラ170を設けることができる。複数の上端面ローラ170は、ガラスリボンが溶融金属浴162の表面にあるときにガラスリボン310の上面に接触し、上端面ローラは、ガラスリボン310の流れ方向に対して横方向に外側に、ガラスリボン310を延伸する。
【0027】
ガラスシート製造装置100の上面図である
図2を参照すると、溶融金属浴162の長さL
Mにわたって2つの位置A及びBが示されている。ガラスリボン310の形態の溶融低液相線粘度(<5kP)ガラスが溶融金属浴162に入る位置Aでは、ガラスリボンの粘度は、約22mmの厚さで<10kPでありうる。出口端165近くの位置Bでは、ガラスは広がり、液相線粘度が少なくとも100kPであり、厚さ約7mmで最大1MPになりうる点まで冷却される。この範囲の粘度では、ガラスリボンは、溶融金属浴162から持ち上げられ、既知の機構によって垂直ダウンドロープロセスに変えられうる。幾つかの実施形態では、ガラスシート製造装置100は、液相線粘度が<1kPのガラス配合物のリボン310を取り扱うことができる。
【0028】
図3は、本開示の溶融金属浴162と、ガラスリボン310をさらに処理するためのダウンドロープロセス180までガラスリボン310を持ち上げるための構成とを示している。上述のように、複数の上端面ローラ170は、溶融金属浴162の長さL
Mに沿ったさまざまな点で、ガラスリボン310の上面と接触して設けられており、ガラスが平衡厚さに達するときに所望の幅に広がることを確保する。溶融金属浴162の端部では、ガラスリボン310は、約7mmの平衡厚さに達しているが、液相線粘度が少なくとも100kP、最大で1MPの粘性状態のままであるため、この低液相線粘度ガラスから得られるリボンは、水平下流プロセスには適していない。ガラスは、粘性状態で溶融金属浴から持ち上げられ、その後、垂直ダウンドロー処理に向けられる必要がある。好ましくは、この持ち上げは、表面に損傷を生成することなく行われる。この持ち上げは、溶融スズ浴162に浸漬された、持ち上げローラ175によって達成することができる。持ち上げられた後、ガラスリボン310は、ダウンドロープロセス180のために垂直に向けられる。この回転は、全幅の非接触回転装置177によって達成することができる。非接触回転装置の例は、当業者によく知られている空気軸受ローラである。非接触回転装置177は、ガラス速度制御装置179と連動して動作する。ガラス速度制御装置179は、ガラスリボン310にいかなる表面損傷も引き起こさない。ガラス速度制御装置179の例は、ガラスリボンのエッジのみを挟んで駆動する一組のエッジローラでありうる。持ち上げローラ175と非接触回転装置177との間の領域は、ガラスが粘性状態にある間、ガラスリボン310を適切な温度に保ち、その粘度を100kPから最大で1MP以上に維持する、熱制御ゾーン140である。ダウンドロープロセスゾーン180では、一連のローラ182は、ガラスリボン310を引っ張り、リボンが冷えるにつれて所望の寸法へと引き伸ばす。この実施形態では、粘性から弾性への移行は、
図3のローラ182の近くのダウンドロープロセスゾーンで起こる。
【0029】
図8のフローチャート500を参照すると、溶融金属浴162を使用して溶融ガラスからガラスシートを形成する方法が提供される。該方法は、液相線粘度が<5kPのガラスリボンを形成する工程(ボックス510参照);及び、第1の端部Aと第2の端部Bとの間に画成された長さが500cm以下である溶融金属浴162の表面にガラスリボンを流す工程(ボックス520参照)を含み、ここで、ガラスリボンは、該ガラスリボンが第2の端部においてその平衡厚さに達し、第2の端部におけるガラスリボンの粘度が少なくとも100kP、好ましくは約200kP、及び最大で1MPになるように、フロートタンクの長さにわたって第1の端部から第2の端部へと流れ方向に流れる。
【0030】
図4は、幾つかの実施形態による水平送給ガラスリボン抽出法を利用する低液相線粘度(<5kP)ガラスのためのガラスシート成形装置200の一例を示す図である。この実施形態では、低液相線粘度ガラスは、標準的な溶融及び清澄ステーション210において調製される。次いで、溶融ガラスリボンは、水平送給システム220を介して冷却ローラ250に送給される。冷却ローラ250は、ガラスリボンから熱を吸収してガラスリボンを冷却する。水平送給システム220は、ガラスリボン310を冷却ローラ250に水平に送給する傾斜プレート225上に低粘度ガラスのリボン310を分配する溶融ガラスディスペンサ222を備えることができる。
【0031】
水平送給システム220のための溶融ガラスディスペンサ222は、知られている溶融ガラス送給方法のうちの1つでありうる。このような溶融ガラス送給構成は、当技術分野でよく知られている。このような水平送給溶融ガラスディスペンサの幾つかの例としては、フィッシュテール、及びサイドスロットを備えたPt(白金)管、並びに他のよく知られている装置がある。水平送給フィッシュテール及びサイドスロットを備えた水平送給Pt管は、
図5C(垂直送給フィッシュテールスロット94)及び
図5D(底部に拡張スロットを備えたPt管96)に示される垂直送給システムに似ているが、水平送給用に構成されている。溶融ガラスリボン300は傾斜したプレート225上に分配される。
【0032】
低液相線粘度ガラスのリボン300が溶融ガラスディスペンサ222から出るとき、ガラスの粘度は<5kPである。ガラスリボン300が傾斜プレート225上を水平に移動し、冷却ローラ250に到達すると、粘度は約5~8kPになりうる。幾つかの実施形態では、ガラスシート成形装置200は、ガラスリボン310が冷却ローラ250に到達するときに約1~3kPの粘度を有する、液相線粘度が<1kPのガラス配合物のリボン300を取り扱うことができる。したがって、この実施形態では、粘性から弾性への移行点は、
図4~5のローラ272の付近のダウンドロープロセスゾーンにある。ローラ250は、少なくとも2つの機能を提供する:(1)制御された方法でガラスリボン300を急速に(数秒以内に)冷却して、100kP~1MPの使用可能な粘度を有するガラスリボン310を形成すること;及び、(2)所望の厚さ、表面仕上げなどに到達するために、ガラスリボン310のその後のダウンドローシート成形処理のために、ガラスリボン310を垂直方向に向けること。
【0033】
冷却ローラ250は、溶融ガラス300を数秒以内に急速に冷却して、少なくとも約100kP、好ましくは約200kPの所望の粘度を有するガラスリボン310を生成するように構成される。溶融ガラスの温度は、組成物に応じて、通常1400~1600℃である。組成物に応じて、所望の粘度における低液相線粘度ガラスの温度は、約850~1000℃である。しかしながら、冷却は、ガラスリボンの外観上の欠陥の形成を防ぎつつ、冷却ローラ250から離れるガラスリボン310の粘度を正確に制御するために、制御された方法である必要がある。冷却ローラ250の温度の維持を低くしすぎると、ガラスリボン310は、冷却時にできた皺(chill wrinkles)として知られる波状表面、若しくはオレンジの皮のような凹凸が酷い表面(heavy orange peel)などの外観上の欠陥を有する可能性があり、又はガラスリボン310に亀裂が形成される可能性がある。溶融ガラスの冷却を正確に制御するために、能動的に冷却されるローラ250は、加熱及び冷却能力を備えることができる。
【0034】
図4に示されるように、ヒータユニット255は、必要に応じて、冷却ローラ250と接触しているガラスリボンの部分を加熱するために、冷却ローラ250に近接して設けることができる。
【0035】
ローラ250の外面上を進むガラスリボン310に物理的に干渉することなく、冷却ローラ250からの熱抽出を制御するために、ガラス成形装置200の幾つかの実施形態では、冷却ローラ250は、中空円筒として構成することができ、液体冷却剤が中空の内部空間に注入される。以下でより詳細に説明するように、液体冷却剤の送給は、液体冷却剤が冷却ローラの中空の内部空間の内壁の所望の部分に噴霧するように構成することができる。
【0036】
冷却ローラ250の下流には、
図4及び5に示されるさまざまな追加のローラ270及び272が存在しうる。下流のローラ270を使用して、ガラスリボン310の厚さを制御することができる。必要に応じて、冷却ローラ250の下流において再加熱及び/又は表面研磨を実施することができる。レーザベースの表面研磨と厚さの調整も実施することができる。これらの補助工程は、
図4及び5において概略的に260で表されている。
【0037】
図7Aは、液体冷却剤を冷却ローラ250の内部空間に送給するための内部冷却配置の一例の図である。冷却ローラ250は、中空の円筒であり、内面253を有する中空の内部空間251を含む。冷却ローラ250は、一端に、中空の内部空間251へのアクセスを提供する開口部255を備える。冷却ローラ250の反対側の端部256は、ガラスリボン310の搬送を補助する冷却されたローラを回転させる適切な駆動機構と係合するように構成される。1つ以上のジェットノズル12を含む液体冷却剤供給パイプ10が、開口部255を介して中空の内部空間251内に配置される。冷却ローラ250を冷却して、その外面(ガラスリボン310に接触する)の温度を所望の温度に維持する必要がある場合、供給パイプ10への液体冷却剤の供給が開始され、液体冷却剤がジェットノズル12から出て、冷却ローラ250の内面253に噴霧される。内部空間251の底に溜まって停滞するのを避けるために、ガス(例えば、空気又は好ましくは不活性ガス)のジェットを、ガス供給管20を介して導入して、液体冷却剤を内部空間251から外に吹き出すことができる。ガス供給管20は、開口部255を介して中空の内部空間251内に配置される。ガス供給管20の末端22は、好ましくは、ガスのジェットを開口部255の方向に向けて、液体冷却剤を内部空間251から外に吹き出すように構成される。あるいは、液体冷却剤を吹き出すのではなく、パイプ20を使用して、吸引によって液体冷却剤を除去することができる。液体冷却剤は、水又は他の適切な液体でありうる。水は、冷却ローラ250の腐食を防止するために、化学的に処理されることが好ましい。
【0038】
ジェットノズル12の例示的な構造の詳細な図である
図7B及び7Cを参照する。ジェットノズル12は、
図7Bに示されるように、液体冷却剤供給パイプ10のねじ穴にねじ込むことができる。あるいは、
図7Cに示されるように、ジェットノズル12に雌ねじを設けて、液体冷却剤供給パイプ10の雄型のねじを有する穴にねじ込むことができる。ジェットノズル12は、液体冷却剤供給パイプ10の内部に開口し、水がノズルを通って出ることを可能にするチャネル13を備える。
【0039】
図7Dの冷却ローラ250の断面図に示されるように、ガラスリボンは、回転する冷却ローラ250の上部位置の近くの冷却ローラ250上に落とされる。上述のジェットノズル12を出る液体冷却剤の噴霧液は、冷却ローラの内壁253に噴霧され、冷却を提供する。幾つかの実施形態では、ジェットノズル12は、内壁253の所望の角度セグメントを選択的に冷却することができるように、液体冷却剤のジェットを任意の事前に設定された方向、好ましくは選択的な方向に向ける配列で提供することができる。例えば、冷却ローラ250のある特定の部分のみを冷却する必要がある場合、ジェットノズルは、冷却ローラ250の内壁のその角度セグメント部分にのみ液体冷却剤のジェットを向ける配列で提供することができる。
図7Dに示されるように、ジェットノズル12は、高温のガラスリボン310と接触している冷却されたローラ250のセクションである、角度セグメントα内にある内壁253の部分のみに液体冷却剤のジェットを向けるように配置することができる。
【0040】
ジェットノズル12の構成により、液体冷却剤の温度を調整すること、液体冷却剤の流量を制御することによって送給される液体冷却剤の量を調整すること、並びにジェットノズル12の密度(すなわち、ジェットノズルの間隔)、ジェットノズルチャネル13の直径、並びに、連続的な供給、さまざまな間隔でのパルスなどから無供給までの範囲の液体冷却剤の送給のタイミング及び頻度などの液体冷却剤送給ハードウェアの幾何学的構成を調整することによって、さまざまな熱除去率を達成することができる。この冷却技術は、ガラス成形プロセスにおける他の表面の冷却にも適用することができるという追加の利点を提供する。
【0041】
図4を再び参照すると、ガラスシート成形プロセス200のダウンドローシート成形プロセス部分は、エッジロール270(通常は金属)及びプルロール272(通常はセラミック)などの複数のロールを含むことができる。ダウンドローシート成形プロセスはまた、必要に応じてガラスリボン310を再加熱するための1つ以上の再加熱ユニット260を含むことができる。例えば、冷却ローラ250から離れたガラスリボン310が、適切なさらなる成形プロセスを行うには硬すぎる場合、ガラスリボンを再加熱して、制御された方法で粘度を下げてより成形しやすくする必要がある。シート成形処理は、ガラスリボンの厚さの調整及び/又は表面の研磨のためのレーザベースの処理など、所望の表面属性を達成するための追加の処理を含むこともできる。
【0042】
図5は、幾つかの実施形態による垂直送給ガラスリボン抽出法を利用する低液相線粘度ガラスのためのガラスシート成形装置200’の一例の図である。この実施形態では、溶融低液相線粘度ガラスは、標準的な溶融及び清澄ステーション210において調製される。次いで、溶融ガラスは、垂直溶融ガラス送給システム220’を介して冷却ローラ250に送給される。垂直溶融ガラス送給システム220’は、溶融ガラスのリボンを能動的に冷却されたローラ250に直接送給する垂直ガラスリボンディスペンサ222’を含むことができる。
【0043】
垂直溶融ガラス送給システム220’のための垂直ガラスリボンディスペンサ222’は、知られている溶融ガラス送給方法の1つでありうる。このようなガラスリボンディスペンサの幾つかの例は、オーバーフローフュージョン送給装置(
図5A参照)、片面オーバーフロープロセス、ハーフトラフからの片面オーバーフロープロセス92(
図5B参照)、垂直フィッシュテールスロット94(
図5C参照)、又は底部に拡張スロットを備えたPt管96(
図5D参照)などである。各例の図では、矢印は、分配される溶融ガラスの流れの方向を示している。
【0044】
溶融低粘度ガラスがガラスリボンディスペンサ222’から出て冷却ローラ250に着地するとき、ガラスの粘度は約5kPになりうる。粘性から弾性への移行点は、
図5に示されるプルロール272の周りのダウンドロープロセスにある。
図4に示される実施形態のように、片面冷却ローラ250は、少なくとも2つの機能を提供する:(1)ガラスリボンディスペンサ222’から受け取った溶融ガラスを制御された方法で急速に(数秒以内)冷却して、約100kP、好ましくは約200kPの使用可能な粘度を有するガラスリボン310を形成すること;及び、(2)所望の厚さに達するように、ガラスリボン310のその後のダウンドローシート成形処理のために、ガラスリボン310を垂直方向に向けること。ダウンドローシート成形プロセスは、エッジロール270(通常は金属)及びプルロール272(通常はセラミック)などの複数のロールを含むことができる。ダウンドローシート成形プロセスはまた、必要に応じてガラスリボン310を再加熱するための1つ以上の再加熱ユニット260を含むことができる。例えば、冷却ローラ250から離れたガラスリボン310が、適切なさらなる成形プロセスを行うには硬すぎる場合、ガラスリボンを再加熱して、制御された方法で粘度を下げてより成形しやすくする必要がある。シート成形処理は、ガラスリボンの厚さの調整及び/又は表面の研磨のためのレーザベースの処理など、所望の表面属性を達成するための追加の処理を含むこともできる。幾つかの実施形態では、ガラスシート成形プロセス200’は、液相線粘度が<1kPであり、ガラスリボンが冷却ローラ250に到達するときに約1~3kPの粘度を有するガラス配合物のリボンを取り扱うことができる。
【0045】
図4のガラスシート成形プロセス200と同様に、ガラスシート成形プロセス200’のダウンドローシート成形プロセス部分は、エッジロール270(通常は金属)及びプルロール272(通常はセラミック)などの複数のロールを含むことができる。ダウンドローシート成形プロセス部分はまた、必要に応じてガラスリボン310を再加熱するための1つ以上の再加熱ユニット260も含むことができる。例えば、片面冷却ローラ250から離れたガラスリボン310が、適切なさらなる成形プロセスを行うには硬すぎる場合、ガラスリボンを再加熱して、制御された方法で粘度を下げてより成形しやすくする必要がある。シート成形処理は、ガラスリボンの厚さの調整及び/又は表面の研磨のためのレーザベースの処理など、所望の表面属性を達成するための追加の処理を含むこともできる。
【0046】
図6Aは、ヒータユニット255を備えた冷却ローラ250の別の図である。幾つかの実施形態では、溶融ガラス300の制御された冷却は、
図6Bに示されるように、一対の冷却ローラ250a、250bを用いて達成することができる。低液相線粘度ガラスの特定の組成物と製造スループット要件に応じて、一対の冷却ローラ250a、250bを使用することは、2つのロールが、通過するガラスリボンからの熱を片側ではなく両側から抽出することができるため、望ましい。冷却ローラ250、250a、及び250bは、ガラスリボン310に対して、
図6A及び6Bに矢印で示された方向に回転する。したがって、一対の冷却ローラ250a、250bにおいて、2つのロールは、示されるように、ガラスリボンが2つのロールの間を通るように、上述のように反対方向に回転する。冷却ローラは、ローラと、該ローラに接触しているガラスリボン310との間に相対運動がない(すなわち、滑りがない)ことを確実にする方向及び速度で回転する。
【0047】
図9のフローチャート600を参照すると、別の実施形態による装置200又は200’を使用して溶融低液相線粘度ガラスからガラスシートを形成する方法が提供される。該方法は、溶融液相線粘度が<5kPであるガラスからガラスリボンを形成する工程(ボックス610参照);及び、ガラスリボンを冷却ローラに送給する工程を含み、ここで、冷却ローラは、ガラスリボンが冷却ローラと一定時間接触し、一定時間の終わりに冷却ローラから離れ、それによって冷却ローラから離れるガラスリボンの部分が少なくとも約100kP、好ましくは約200kPの粘度に達するように、所定の温度で維持され、所定の速度で回転される(ボックス620参照)。有効な粘度は約100kPから1MPであろう。冷却ローラから離れたガラスリボンは、その厚さ方向に大きい温度勾配を有しており、したがって、本明細書では平均粘度を表すために有効粘度が用いられる。このような方法では、ガラスリボンは、水平方向(ガラスリボンディスペンサ222を使用)又は垂直方向(ガラスリボンディスペンサ222’を使用)で、冷却ローラ上に送給することができる。該方法の幾つかの実施形態では、ガラスリボンは、冷却ローラ上に連続的に送給される。
【0048】
当業者は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された例示的な実施形態に対して多くの修正が可能であることを認識するであろう。したがって、説明は意図されておらず、与えられた例に限定されると解釈されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって与えられる保護の全範囲が認められるべきである。加えて、本開示の幾つかの特徴は、他の特徴の対応する使用なしに、使用することが可能である。したがって、例示的又は実例となる実施形態の前述の説明は、本開示の原理を限定するものではなく、説明する目的で提供され、本開示をそれに対する修正及びそれらの並べ替えを含むことができる。
【0049】
本開示の好ましい実施形態について説明してきたが、記載された実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるものであり、完全な範囲の同等性が与えられる場合には、本明細書の熟読から当業者に自然に生じる多くの変形及び修正が含まれることが理解されるべきである。
【0050】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0051】
実施形態1
溶融ガラスからガラスシートを形成する方法であって、
液相線粘度が<5kPであるガラスのガラスリボンを形成する工程;及び
第1の端部と第2の端部との間に画成された長さが500cm以下であるフロートタンク内に収容された溶融金属浴の表面に前記ガラスリボンを流す工程であって、前記ガラスリボンが前記第2の端部においてその平衡厚さに達し、前記第2の端部における前記ガラスリボンの粘度が少なくとも100kPになるように、前記ガラスリボンが前記フロートタンクの長さにわたって前記第1の端部から前記第2の端部へと流れ方向に流れる、工程
を含む、方法。
【0052】
実施形態2
前記ガラスの前記液相線粘度が<1kPである、実施形態1に記載の方法。
【0053】
実施形態3
複数のトップローラを使用して前記ガラスリボンの流れ方向に対して横方向に外側に前記ガラスリボンを延伸する工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0054】
実施形態4
前記ガラスリボンが前記溶融金属浴の表面にあるときに前記ガラスリボンの上面を複数のトップローラと接触させる工程;及び
前記複数のトップローラを使用して前記ガラスリボンの流れ方向に対して横方向に外側に前記ガラスリボンを延伸する工程
をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0055】
実施形態5
前記溶融金属浴の第2の端部から前記ガラスリボンを引き延ばして冷却するダウンドロープロセスまで前記ガラスリボンを送給する工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0056】
実施形態6
溶融ガラスからガラスシートを形成するための装置であって、
液相線粘度が<5kPであるガラスの連続的に供給されるガラスリボンを受け取り、ローラの外面で冷却するためのローラ;及び
前記ガラスリボンを前記ローラに連続的に送給するように構成されたガラスリボン送給装置;
を含み、
前記ガラスリボンが前記ローラと一定時間接触し、前記一定時間の終わりに前記ローラから離れ、それによって前記ローラから離れる前記ガラスリボンの部分が少なくとも100kPの粘度を達成するように、前記ローラが所定の温度で維持されるように構成され、所定の速度で回転することができる、
装置。
【0057】
実施形態7
前記ガラスの前記液相線粘度が<1kPである、実施形態6に記載の装置。
【0058】
実施形態8
前記ローラが、内壁を有する内部空間を備えた中空円筒構造を有しており、前記ローラが、供給量の液体冷却剤を前記内壁の少なくとも一部に噴霧するように構成される、実施形態6に記載の装置。
【0059】
実施形態9
前記ローラが、
前記内部空間へのアクセスを提供する前記中空円筒構造の1つにある開口部;
前記開口部を介して前記内部空間へと延びる液体冷却剤供給パイプであって、供給量の液体冷却剤が前記液体冷却剤供給パイプに供給されるときに前記液体冷却剤を前記内壁の一部に噴霧する1つ以上のジェットノズルを含む、液体冷却剤供給パイプ
を含む、実施形態7に記載の装置。
【0060】
実施形態10
前記ジェットノズルが、液体冷却剤の噴霧を所定の方向に向ける配列で提供される、実施形態8に記載の装置。
【0061】
実施形態11
前記ジェットノズルが、前記内壁の所望の角度セグメントを覆う前記液体冷却剤の噴霧を所定の方向に向ける配列で提供される、実施形態8に記載の装置。
【0062】
実施形態12
前記ガラスリボン送給装置が、前記連続的に供給されるガラスリボンを前記ローラに水平に送給するように構成される、実施形態6に記載の装置。
【0063】
実施形態13
前記ガラスリボン送給装置が、フィッシュテール、又はサイドスロットを備えたPt管である、実施形態11に記載の装置。
【0064】
実施形態14
前記ガラスリボン送給装置が、前記連続的に供給されるガラスリボンを前記ローラに垂直に送給するように構成される、実施形態6に記載の装置。
【0065】
実施形態15
前記ガラスリボン送給装置が、オーバーフローフュージョン送給装置、片面オーバーフロープロセス、ハーフトラフからの片面オーバーフロープロセス、垂直フィッシュテールスロット、又は拡張スロットを備えたPt管のうちの1つである、実施形態13に記載の装置。
【0066】
実施形態16
溶融ガラスからガラスシートを形成する方法であって、
溶融液相線粘度が<5kPであるガラスからガラスリボンを形成する工程;及び
前記ガラスリボンをローラに送給する工程であって、前記ガラスリボンが、前記ローラと一定時間接触し、前記一定時間の終わりに前記ローラから離れ、それによって前記ローラから離れる前記ガラスリボンの部分が少なくとも100kPの粘度を有するように、前記ローラが所定の温度で維持され、所定の速度で回転される、工程
を含む、方法。
【0067】
実施形態17
前記ガラスの前記液相線粘度が<1kPである、実施形態16に記載の方法。
【0068】
実施形態18
前記ガラスリボンが前記ローラ上に水平方向に送給される、実施形態16に記載の方法。
【0069】
実施形態19
前記ガラスリボンが前記ローラ上に垂直方向に送給される、実施形態16に記載の方法。
【0070】
実施形態20
前記ガラスリボンが前記ローラ上に連続的に送給される、実施形態16に記載の方法。
【0071】
実施形態21
前記ガラスリボンが前記ローラ上に連続的に送給される、実施形態18に記載の方法。
【0072】
実施形態22
前記ガラスリボンが前記ローラ上に連続的に送給される、実施形態19に記載の方法。
【0073】
実施形態23
前記ローラから前記ガラスリボンを所望の寸法へと引き延ばし、さらに冷却するダウンドロープロセスに前記ガラスリボンを送給する工程をさらに含む、実施形態16に記載の方法。
【0074】
実施形態24
溶融ガラスからガラスシートを形成するための装置であって、
液相線粘度が<5kPであるガラスの連続的に供給されるガラスリボンを受け取り、2つのローラ間の一対のローラの外面で冷却するための一対のローラ;及び
前記ガラスリボンを前記一対のローラに連続的に送給するように構成されたガラスリボン送給装置;
を含み、
前記ガラスリボンが前記2つのローラと一定時間接触し、前記一定時間の終わりに前記2つのローラから離れ、それによって前記2つのローラから離れる前記ガラスリボンの部分が少なくとも100kPの粘度を有するように、前記2つのローラが所定の温度で維持され、所定の速度で回転される、
装置。
【0075】
実施形態25
前記ガラスの前記液相線粘度が<1kPである、実施形態24に記載の装置。
【0076】
実施形態26
前記2つのローラの各々が、内壁を有する内部空間を備えた中空円筒構造を有しており、前記ローラが、供給量の液体冷却剤を前記内壁の少なくとも一部に噴霧するように構成される、実施形態24に記載の装置。
【0077】
実施形態27
前記ローラの各々が、
前記内部空間へのアクセスを提供する前記中空円筒構造の1つにある開口部;
前記開口部を介して前記内部空間内に配置された液体冷却剤供給パイプであって、供給量の液体冷却剤が前記液体冷却剤供給パイプに供給されるときに前記液体冷却剤を前記内壁の一部に噴霧する1つ以上のジェットノズルを含む、液体冷却剤供給パイプ
を含む、実施形態24に記載の装置。
【0078】
実施形態28
前記ジェットノズルが、液体冷却剤の噴霧を所定の方向に向ける配列で提供される、実施形態27に記載の装置。
【0079】
実施形態29
前記ジェットノズルが、前記内壁の所望の角度セグメントを覆う前記液体冷却剤の噴霧を所定の方向に向ける配列で提供される、実施形態27に記載の装置。
【0080】
実施形態30
前記ガラスリボン送給装置が、前記連続的に供給されるガラスリボンを前記一対のローラに水平に送給するように構成される、実施形態24に記載の装置。
【0081】
実施形態31
前記ガラスリボン送給装置が、フィッシュテール又はサイドスロットを備えたPt管である、実施形態30に記載の装置。
【0082】
実施形態32
前記ガラスリボン送給装置が、前記連続的に供給されるガラスリボンを前記一対のローラに垂直に送給するように構成される、実施形態24に記載の装置。
【0083】
実施形態33
前記ガラスリボン送給装置が、オーバーフローフュージョン送給装置、片面オーバーフロープロセス、ハーフトラフからの片面オーバーフロープロセス、垂直フィッシュテールスロット、又は拡張スロットを備えたPt管のうちの1つである、実施形態32に記載の装置。
【符号の説明】
【0084】
10 液体冷却剤供給パイプ
12 ジェットノズル
13 チャネル
20 ガス供給管/パイプ
22 末端
92 ハーフトラフからの片面オーバーフロープロセス
94 フィッシュテールスロット
96 Pt管
100 ガラスシート製造装置
120 下流プロセスステーション
140 熱制御ゾーン
160 フロートタンク
162 溶融金属浴/溶融スズ浴
165 出口端
170 上端面ローラ
175 持ち上げローラ
177 非接触回転装置
179 ガラス速度制御装置
180 ダウンドロープロセスゾーン
181 温度制御
182 一連のローラ
190 緩衝ゾーン
200,200’ ガラスシート成形装置
210 溶融及び清澄ステーション
220 水平送給システム
220’ 垂直溶融ガラス送給システム
222 溶融ガラスディスペンサ
222’ 垂直ガラスリボンディスペンサ
225 傾斜プレート
250 冷却ローラ
251 内部空間
253 内面
255 開口部/ヒータユニット
256 反対側の端部
260 再加熱ユニット
270 エッジロール
272 プルロール
300 溶融低液相線粘度ガラス
310 ガラスリボン
【国際調査報告】