(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】呼吸困難に起因する集中治療後の認知機能障害及び認知障害の予防及び治療のための化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/167 20060101AFI20230602BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A61K31/167
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565823
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021029689
(87)【国際公開番号】W WO2021222438
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520319303
【氏名又は名称】アブレキサ ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Abrexa Pharmaceuticals, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラフランカ,ヘスース エ
(72)【発明者】
【氏名】キッシンジャー,チャールズ リチャード
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA03
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA15
4C206ZC52
(57)【要約】
ある特定の態様において、ICUに滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続の前、最中、又は後に、本明細書に開示される化合物を対象に投与することによって、集中治療後の認知機能障害(PICCD)を予防、軽減、遅延、及び治療する方法が本明細書に提示される。また、ある特定の態様において、呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる認識機能障害又は認知障害を治療、予防、抑制、その重症度を軽減、又はその発症を遅延する方法も本明細書に提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象又はPICCDを発症するリスクのある対象における集中治療後の認知機能障害(PICCD)を予防する、その重症度を軽減する、その発症を遅延する、又はそれを治療する方法であって、式Iの構造:
【化1】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体
を含む化合物の治療的有効量を前記対象又は前記リスクのある対象に投与することを含む、方法
[式中、
R
2は、H及びメチルからなる群より選択され;
R
3は、トリフルオロメチル又は他のフルオロ置換アルキルであり;
L
3はカルボニルであり;
R
6は、存在ごとに独立して、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、カルボニル、アリール、置換アリール、置換複素環式、ハロゲン、シアノ、シアノアルキル、ニトロ、アミノ、アミジノ、カルバメート、S(O)
nR
7、及びC(O)R
8からなる群より選択されるか、あるいは、隣接する位置にある2つのR
6が結合して、前記隣接するフェニル部分と融合した、任意選択的に置換されたヘテロアリール又はヘテロアルキル環を形成し;
R
7は、H、R
9、NH
2、HNR
9、又はNR
9R
10であり;
R
8は、OH、OR
9、NH
2、NHR
9、又はNR
9R
10であり;
R
9及びR
10は、存在ごとに独立して、任意選択的に置換されたアルキルであり;かつ
n=1又は2である]。
【請求項2】
前記化合物が、式IIの構造:
【化2】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体
を有する、請求項1に記載の方法
[式中、
(i)R
A2、R
A4、R
A5、及びR
A6はHであり、R
A3はメトキシであり、R
B2はメチルであり、R
B4はメチルであるか;又は
(ii)R
A2、R
A3、R
A5、及びR
A6はHであり、R
A4はメトキシであり、R
B2はメチルであり、R
B4はメチルであるか;又は
(iii)R
A2、R
A3、R
A4、R
A5、及びR
A6はHであり、R
B2はHであり、R
B4はHであるか;又は
(iv)R
A2、R
A3、R
A4、R
A5、及びR
A6はHであり、R
B2はメチルであり、R
B4はメチルであるか;又は
(v)R
A2、R
A4、R
A5、及びR
A6はHであり、R
A3はメトキシであり、R
B2はHであり、R
B4はHであるか;又は
(vi)R
A2、R
A3、R
A4、R
A5、及びR
A6はHであり、R
B2はHであり、R
B4はメチルであるか;又は
(vii)R
A2、R
A4、R
A5、及びR
A6はHであり、R
A3はメトキシであり、R
B2はHであり、R
B4はメチルであるか;又は
(viii)R
A2、R
A3、R
A4、R
A5、及びR
A6はHであり、R
B2はメチルであり、R
B4はHであるか;又は
(ix)R
A2、R
A4、R
A5、及びR
A6はHであり、R
A3はメトキシであり、R
B2はメチルであり、R
B4はHであるか;又は
(x)R
A2、R
A3、R
A5、及びR
A6はHであり、R
A4はCOOHであり、R
B2はメチルであり、R
B4はメチルであるか;又は
(xi)R
A2、R
A4、及びR
A5はHであり、R
A3及びR
A6はヒドロキシルであり、R
B2はメチルであり、R
B4はメチルであるか;又は
(xii)R
A2、R
A4、及びR
A6はHであり、R
A3及びR
A5はヒドロキシルであり、R
B2はメチルであり、R
B4はメチルであるか;又は
(xiii)R
A2、R
A4、及びR
A5はHであり、R
A3はメトキシであり、R
A6はFであり、R
B2はHであり、R
B4はClであるか;又は
(xiv)R
A3及びR
A5はHであり、R
A2及びR
A6はFであり、R
A4はヒドロキシルであり、R
A6はFであり、R
B2はHであり、R
B4はFであるか;又は
(xv)R
A2、R
A4、及びR
A6はHであり、R
A3はヒドロキシルであり、R
A5はFであり、R
B2はHであり、R
B4はFであるか;又は
(xvi)R
A2、R
A5、及びR
A6はHであり、R
A3及びR
A4を合わせて-O-CH
2-O-であり、R
A5はFであり、R
B2はHであり、R
B4はFである]。
【請求項3】
前記化合物が、式IVの構造:
【化3】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象又はリスクのある対象が、a)集中治療室に入院している、若しくはしていた、b)挿管されている、若しくはされていた、又はc)人工呼吸器に動作可能に接続されている、若しくはされていた、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、a)集中治療室に入院、b)挿管、又はc)人工呼吸器に動作可能に接続されるリスクがある、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象又はリスクのある対象が、前記集中治療室への入院前、前記挿管前、前記人工呼吸器への動作可能な接続前、又は前記人工呼吸器から外される前に、認知障害又は神経変性疾患と診断されていない、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記認知障害又は神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、緑内障、網膜変性症、黄斑変性症、老人性難聴、軽度の認知機能障害、進行性核上性麻痺、脊髄小脳失調症、網膜神経障害、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、バックグラウンド神経障害、家族性アミロイド多発神経障害、老人性全身性アミロイドーシス、プリオン性疾患、スクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、及びアミロイド症から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象又はリスクのある対象が、がん、糖尿病、関節炎、インスリノーマ、脳卒中、虚血(例えば、心臓虚血)、又は心血管疾患であると以前に診断されていない、及び/又はそれらを患っていない、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象又はリスクのある対象が、高血糖症、低血糖症、血清グルコースの変動、膵炎、院内急性ストレス症候群、抑うつ症、不安神経症、及び/又はせん妄であると以前に診断されたか、それらを患っているか、又はそれらを患っている疑いがある、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象又はリスクのある対象が、急性呼吸器症候群、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、喘息、肺炎、又は感染症を患っている、患っている疑いがある、又は患うリスクがある、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象又はリスクのある対象が、ウイルス、真菌、又は細菌から選択される病原体に感染しているか、又は感染している疑いがある、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスがコロナウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コロナウイルスが、SARS関連コロナウイルス又はSARS関連コロナウイルス-2である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、前記対象が集中治療室に入院する、挿管される、人工呼吸器に動作可能に接続される、又は人工呼吸器が外される前、最中、及び/又は後に、前記対象又はリスクのある対象に投与される、請求項1又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、前記入院、前記挿管、前記人工呼吸器への動作可能な接続、又は前記人工呼吸器から外される少なくとも24時間、少なくとも12時間、又は少なくとも4時間前に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、1日1回又は2回の間隔で投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、0.5mg/kg~100mg/kg、又は10mg/kg~50mg/kgの用量で投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が、経口投与又は静脈内投与される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記PICCDが、せん妄、記憶喪失、錯乱状態、意識の低下、実行機能の障害、発話障害、言語障害、コミュニケーション障害、注意力の喪失、抑うつ症、不安神経症、外傷後ストレス障害、及び/又は視空間能力の障害の発症又は悪化を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象又はリスクのある対象がヒトである、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象又はリスクのある対象が高齢者又は少なくとも60歳である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象又はリスクのある対象が、小児患者であるか、又は13歳未満である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる認識機能障害又は認知障害を治療、予防、抑制、それらの重症度を軽減、又はそれらの発症を遅延する方法であって、式I、II、III、又はIVの構造を有する化合物の治療的有効量を、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象に投与することを含む、方法。
【請求項24】
対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる既存の認識機能障害又は認知障害の低下又は悪化を予防又は抑制する方法であって、式I、II、III、又はIVの構造を有する化合物の治療的有効量を、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象に投与することを含む、方法。
【請求項25】
呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象を治療する方法であって、式I、II、III、又はIVの構造を有する化合物の治療的有効量を前記対象に投与することを含み、前記呼吸困難に起因する又はそれによって引き起こされる認識機能障害又は認知障害が、予防、改善、抑制、重症度を軽減、又は遅延される、方法。
【請求項26】
呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象を治療する方法であって、式I、II、III、又はIVの構造を有する化合物の治療的有効量を前記対象に投与することを含み、既存の認識機能障害、既存の認知障害、又は既存の神経変性疾患の悪化を防止する、それらの重症度の増加を防止する、又は抑制する、方法。
【請求項27】
前記呼吸困難が、急性呼吸窮迫症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)から選択される、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記呼吸困難が低酸素症に関連する、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記認識機能障害が、せん妄、記憶喪失、錯乱状態、意識の低下、実行機能の障害、言語障害、注意力の喪失、及び/又は視空間能力の障害を含む、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記認識機能障害又は認知障害が、急性、一過性、又は一時的である、請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記認識機能障害又は認知障害が慢性である、請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象がヒトである、請求項23から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が高齢者又は少なくとも60歳である、請求項23から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、挿管されるリスクがある、及び/又は人工呼吸器に動作可能に接続されるリスクがある、請求項23から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が挿管される、及び/又は人工呼吸器に動作可能に接続される、請求項23から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が挿管された、及び/又は人工呼吸器に動作可能に接続された、請求項23から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、前記呼吸困難の前に安定した認知機能を示す、請求項23から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、前記呼吸困難の前に認知障害又は神経変性疾患と診断されなかった、請求項23から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、前記呼吸困難の前に認知障害又は神経変性疾患と診断された、請求項23から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、がん、糖尿病、関節炎、インスリノーマ、脳卒中、又は虚血(例えば、心臓虚血)であると以前に診断されていない、及び/又はそれらを患っていない、請求項23から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、がん、糖尿病、高血糖症、低血糖症、血清グルコースの変動、院内急性ストレス症候群、せん妄、関節炎、膵炎、及び/又はインスリノーマであると以前に診断されたか、それらを患っているか、又はそれらを患っている疑いがある、請求項23から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、喘息を患っているか、又は患っていると診断されている、請求項23から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、肺炎を患っているか、又は患っていると診断されている、請求項23から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が病原体に感染している、請求項23から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記病原体が、ウイルス、真菌、又は細菌である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルスがコロナウイルスである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記コロナウイルスが、SARS関連コロナウイルス又はSARS関連コロナウイルス-2である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、抑うつ症であると以前に診断されたか、又は抑うつ症になりやすい、請求項23から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が、式I、式II、式III、及び式IVのいずれか1つから選択される化合物を以前に(例えば、呼吸困難の前に)投与されていない、請求項23から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記化合物が、前記対象が前記呼吸困難を経験する前、最中、及び/又は後に、前記対象に投与される、請求項23から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記化合物が、前記呼吸困難の発症の少なくとも24時間、少なくとも12時間、又は少なくとも4時間前に投与される、請求項23から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記呼吸困難が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である、請求項27から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ARDSが、敗血症、肺炎、肺感染症、膵炎、身体的外傷、誤嚥、煙の吸入、有害物質の吸入、特発性肺線維症、輸血、大量輸血、熱傷、溺水、薬物に対する反応、薬物の過剰摂取、ショック、肺の手術、心肺バイパス手術、播種性血管内血液凝固、又はダニ媒介性回帰熱に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記肺感染症が、真菌感染症、ウイルス感染症、又は細菌感染症を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ウイルス感染症が、インフルエンザ、又はコロナウイルス感染を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記コロナウイルスが、SARS関連コロナウイルス又はSARS関連コロナウイルス-2である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記身体的外傷が、頭部外傷、胸部外傷、又は肺外傷を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
請求項1から57のいずれか一項に記載の方法を実施する際に使用するための式I、式II、式III、及び式IVのいずれかから選択される構造を含む化合物。
【請求項59】
請求項1から57のいずれか一項に記載の方法を実施する際に使用するための式I、式II、式III、及び式IVのいずれかから選択される構造を含む化合物を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ある特定の態様において、ICUに滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続の前、最中、又は後に、本明細書に開示される化合物を対象に投与することを含む、集中治療後の認知機能障害(PICCD)を治療及び/又は予防する方法が提供される。また、本明細書では、ある特定の態様において、呼吸困難に起因する又はそれによって引き起こされる認知障害を治療又は予防する方法であって、呼吸困難の前、最中、又は後に本明細書に開示される化合物を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
集中治療後の認知機能障害(PICCD)とは、集中治療室(ICU)に滞在後、挿管後、及び/又は人工呼吸器への接続後に、対象に観察される認知機能の障害又は低下である。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの呼吸困難を経験する患者は、呼吸困難の最中又は後に認知機能の障害又は低下も経験する。本明細書に開示される化合物は、PICCD及び呼吸困難に関連する認知障害の治療及び/又は予防に使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
ある特定の態様では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象における集中治療後の認知機能障害(PICCD)を予防、軽減、遅延、又は治療する方法が本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、PICCDは、せん妄、記憶喪失、錯乱状態、意識の低下、実行機能の障害、発話障害、言語障害、コミュニケーション障害、注意力の喪失、抑うつ症、不安神経症、外傷後ストレス障害、及び/又は視空間能力の障害の発症又は悪化を含む。ある特定の実施形態では、PICCDは、a)対象の集中治療室への滞在又は入院、b)対象の挿管、及び/又はc)対象を人工呼吸器に動作可能に接続することに起因するか、それらに関連するか、又はそれらによって誘発される。
【0004】
ある特定の態様では、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる認識機能障害又は認知障害を治療、予防、抑制、その重症度を軽減、又はその発症を遅延する方法が本明細書に提供され、該方法は、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象に投与することを含む。
【0005】
ある特定の態様では、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる既存の認識機能障害又は認知障害の低下又は悪化を予防又は抑制する方法が本明細書に提供され、該方法は、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象に投与することを含む。
【0006】
ある特定の態様では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象を治療する方法であって、呼吸困難に起因する又はそれによって引き起こされる認識機能障害又は認知障害が、予防、改善、抑制、重症度を軽減、又は遅延される、方法が本明細書に提供される。
【0007】
ある特定の態様では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象を治療する方法が本明細書に提供され、ここで、既存の認識機能障害、既存の認知障害、若しくは既存の神経変性疾患の悪化を防止する、それらの重症度の増加を防止する、又は抑制する。
【0008】
幾つかの実施形態では、対象は、急性呼吸器症候群、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群、喘息、肺炎、又は感染症を患っているか、それらを患っている疑いがあるか、それらを患っていると診断されるか、又はそれらを患うリスクがある。
【0009】
幾つかの実施形態では、対象は、コロナウイルスに感染している。幾つかの実施形態では、対象は、COVID-19を患っているか、又は患っている疑いがある。
【0010】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物は、式I、II、III、又はIVの化合物である。幾つかの実施形態では、化合物は、式IVの構造:
【0011】
【0012】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】マウスを虚血及び45分間の低酸素に供した、実施例3の実験計画を示す図
【
図2】実施例3における、代表的な脳の冠状切片のHI損傷の24時間後のマウス海馬の2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色(白色部分は損傷領域(左)を示している)、並びに、SH(偽対照マウス)、HI(未治療の低酸素性虚血マウス)、及びHIJ(J147で治療した低酸素性虚血マウス)についての対側半球量のパーセンテージとしての梗塞量のMRI画像測定値を示す図。この図は、J147が低酸素性虚血による脳損傷の領域を大幅に減少させることを示している。
【
図3】実施例3における、低酸素虚血損傷の50日後の梗塞量の大きさを反映する、100%からの減少の程度による対側半球量のパーセンテージとしてのとしての同側半球量の磁気共鳴画像測定による、J147による治療の効果を示す図。この図は、損傷の50日後に、J147が低酸素性虚血による脳損傷の領域をほぼ完全に減少させることを示している。
【
図4】実施例3における、新生児低酸素性虚血性脳症マウスモデルにおける損傷の4日後の海馬におけるアポトーシス性神経細胞死の減少に対するJ147治療の用量依存性の分析を示す図
【
図5】実施例3における、NeuN陽性領域の測定値、並びに偽治療マウス、HIマウス、及びJ147で治療したHIマウスの海馬におけるTUNEL陽性細胞数の計数による、J147治療によるアポトーシス細胞死の損傷の4日後の減少を示す図
【
図6】実施例3における、オープンフィールド試験、ロータロッド試験、及びY迷路試験でのJ147治療によって誘発されたHIマウスの機能回復を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
幾つかの実施形態では、PICCDを治療及び/又は予防する化合物が本明細書に提示される。集中治療後の認知機能障害(PICCD)とは、集中治療室(ICU)に滞在後、挿管後、及び/又は人工呼吸器への接続後に、対象に観察される認知機能の障害又は低下である。幾つかの実施形態では、呼吸困難の最中又は後に対象に観察される認識機能障害又は認知機能の低下を治療及び/又は予防する化合物が本明細書に提示される。
【0015】
化合物
幾つかの実施形態では、PICCDの予防又は治療に使用するための化合物が本明細書に提示される。幾つかの実施形態では、本明細書で使用される化合物は、式Iの構造:
【0016】
【0017】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体を含む。式Iの幾つかの実施形態では、R2は、水素(H)又はメチルであり;R3は、メチル、フッ素置換アルキル(例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、又はトリフルオロメチル)、又は臭素置換アルキル(例えば、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル)であり;L3はカルボニルであり;R6は、存在ごとに独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヒドロキシル、メトキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、カルボニル、カルボキシル、アリール、置換アリール、置換複素環式、ハロゲン、シアノ、シアノアルキル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、ニトロ、アミノ、アミジノ、カルバメート、CF3、OCF3、S(O)nR7、及びC(O)R8から選択されるか、あるいは、隣接する位置にある2つのR6が結合して、隣接するフェニル部分と融合した、任意選択的に置換されたヘテロアリール又はヘテロアルキル環を形成し;ここで、R7は、H、R9、NH2、HNR9、及びNR9R10から選択され;R8は、OH、OR9、NH2、NHR9、及びNR9R10から選択され;ここで、R9及びR10は、存在ごとに独立して、任意選択的に置換されたアルキルであり;かつ、nは1又は2である。
【0018】
式Iのある特定の実施形態では、R6は、存在ごとに独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヒドロキシル、アルコキシ、メトキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、カルボニル、カルボキシル、又はC(O)R8から選択され;ある特定のこのような態様では、R6は、存在ごとに、メチル、メトキシ、ペルフルオロメチル、ペルフルオロメトキシ、ヒドロキシル、Cl、F、又はIである。式Iの幾つかの実施形態では、L3はカルボニルであり、R3はCF3であり、R2はHであり、R6は、存在ごとに、null又はHである。式Iの幾つかの実施形態では、L3はカルボニルであり、R3はCF3であり、R2はHであり、R6は、存在ごとに、メチル又はメトキシから独立して選択される。式Iの幾つかの実施形態では、L3はカルボニルであり、R3はCF3であり、R2はメチルであり、R6は、存在ごとに、メチル又はメトキシから独立して選択される。
【0019】
幾つかの実施形態では、本明細書で使用される化合物は、式IIの構造:
【0020】
【0021】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体を含み、式中、
(i)RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであり;
(ii)RA2、RA3、RA5、及びRA6はHであり、RA4はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであり;
(iii)RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はHであり、RB4はHであり;
(iv)RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであり;
(v)RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はHであり、RB4はHであり;
(vi)RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はHであり、RB4はメチルであり;
(vii)RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はHであり、RB4はメチルであり;
(viii)RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はメチルであり、RB4はHであり;
(ix)RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はHであり;
(x)RA2、RA3、RA5、及びRA6はHであり、RA4はCOOHであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであり;
(xi)RA2、RA4、及びRA5はHであり、RA3及びRA6はヒドロキシルであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであり;
(xii)RA2、RA4、及びRA6はHであり、RA3及びRA5はヒドロキシルであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであり;
(xiii)RA2、RA4、及びRA5はHであり、RA3はメトキシであり、RA6はFであり、RB2はHであり、RB4はClであり;
(xiv)RA3及びRA5はHであり、RA2及びRA6はFであり、RA4はヒドロキシルであり、RA6はFであり、RB2はHであり、RB4はFであり;
(xv)RA2、RA4、及びRA6はHであり、RA3はヒドロキシルであり、RA5はFであり、RB2はHであり、RB4はFであるか;又は
(xvi)RA2、RA5、及びRA6はHであり、RA3及びRA4を合わせて-O-CH2-O-であり、RA5はFであり、RB2はHであり、RB4はFである。
【0022】
式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2及びRB4はメチルであり、RA4は、H、NO2、OH、メトキシ、フェノール、メチル、フッ素(F)、N(CH3)2、CHC(CN)2、及びO-tert-ブチルジメチルシリル(OTBDMS)から選択される。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA3、RA5、及びRA6はHであり、RA4はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はHであり、RB4はHである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はHであり、RB4はメチルである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はHであり、RB4はメチルである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA4、RA5及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はHであり、RB4はメチルである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA4、RA5及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はHである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA3、RA4、RA5及びRA6はHであり、RB2はメチルであり、RB4はHである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA3、RA5及びRA6はHであり、RA4はカルボキシルであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルである。式IIの化合物の幾つかの実施形態では、RA2、RA4、RA5及びRA6はHであり、RA3はカルボキシルであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルである。
【0023】
幾つかの実施形態では、本明細書で使用される化合物は、式VIの構造:
【0024】
【0025】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体、を含み、式中、R1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、又はトリブロモメチルであり;R2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF3、OCH3、OCF3、又はOCBr3であり;R3及びR4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、Cl、F又はBr)、メチル、メトキシ、及びアミンから独立して選択される。式IIIの幾つかの実施形態では、R1はCF3(トリフルオロメチル)であり、R2はOCH3であり、R3及びR4はメチルである。式IIIの幾つかの実施形態では、R1はCF3(トリフルオロメチル)であり、R2はOCF3であり、R3及びR4はメチルである。
【0026】
幾つかの実施形態では、本明細書で使用される化合物は、下記式IVの構造、又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体を含む。
【0027】
【0028】
式IVの構造は、本明細書では「J147」と呼ばれることがある。
【0029】
以下の用語は、以下に記載されるそれぞれの定義を有する。
【0030】
「アルキル」とは、約1から最大約12個の範囲の炭素原子(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)を有する直鎖又は分岐鎖アルキルラジカルを指す。「置換アルキル」は、本明細書に記載される1つ以上の置換基(例えば、1、2、3、4、又はさらには5つ)をさらに有するアルキルを指す。「任意選択的に置換されたアルキル」とは、アルキル又は置換アルキルを指す。
【0031】
「シクロアルキル」とは、約3から最大約12個の範囲の炭素原子を含む、環式環含有基を指す。「置換シクロアルキル」とは、アルキル、置換アルキル、並びに本明細書に記載される置換基のいずれかから選択される1つ以上の置換基(例えば、1、2、3、4、又はさらには5つ)をさらに有するシクロアルキルを指す。「任意選択的に置換されたシクロアルキル」とは、シクロアルキル又は置換シクロアルキルを指す。
【0032】
「複素環」、「複素環式」などの用語は、環の一部として1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含み、かつ1から最大約14個の範囲の炭素原子を有する、環状(すなわち、環含有)基を指す。「置換複素環式」などの用語とは、本明細書に記載される1つ以上の置換基(例えば、1、2、3、4、又はさらには5つ)をさらに有する複素環を指す。例示的な複素環式部分には、飽和環、不飽和環、及び芳香族ヘテロ原子含有環系、例えば、エポキシ、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、ピロール、ピリジン、フランなどが含まれる。「任意選択的に置換された複素環」などの用語とは、複素環又は置換複素環を指す。
【0033】
「任意選択的に置換された二環式環」への言及は、任意選択的に本明細書で定義されるような置換を含む、当技術分野で知られている二環式環構造を指す。
【0034】
「アルケニル」とは、少なくとも1つ、1~3、1~2、又は1つの炭素-炭素二重結合を有する、2から約20個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖、又は環状ヒドロカルビル基を指す。「置換アルケニル」とは、本明細書に記載されるような置換を伴って、1つ以上、例えば、1、2、3、4、又はさらには5つの位置で置換されたアルケニルを指す。「任意選択的に置換されたアルケニル」とは、アルケニル又は置換アルケニルを指す。幾つかの実施形態では、アルケニルはエチレニル又はプロピレニルである。ある特定の実施形態では、置換アルケニルは、置換エチレニル又は置換プロピレニルである。幾つかの実施形態では、エチレニル又はプロピレニルは、1つ以上のCN部分で置換されている。例えば、幾つかの実施形態では、置換エチレニルは、(CN)2C=CH-を含む。
【0035】
「アリール」とは、6から最大約14個の範囲の炭素原子を有する芳香族基を指す。「置換アリール」とは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、カルボニル、アリール、置換アリール、複素環式、置換複素環式、ハロゲン、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、シアノ、シアノアルキル、ニトロ、アミノ、アミド、アミジノ、カルボキシル、カルバメート、SO2X(ここで、Xは、H、R、NH2、NHR又はNR2、SO3Yであり、ここで、Yは、H、NH2、NHR又はNR2、又はC(O)Zであり、ここで、Zは、OH、OR、NH2、NHR又はNR2などである)から選択される1つ以上の置換基(例えば、1、2、3、4、又はさらには5つ)をさらに有するアリールラジカルを指す。「任意選択的に置換されたアリール」とは、アリール又は置換アリールを指す。
【0036】
「アラルキル」とは、アリール基で置換されたアルキル基を指す。「置換アラルキル」とは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、並びに本明細書に記載される置換基のいずれかから選択される1つ以上の置換基(例えば、1、2、3、4、又はさらには5つ)をさらに有するアラルキルを指す。したがって、アラルキル基は、とりわけ、ベンジル、ジフェニルメチル、及び1-フェニルエチル(-CH(C6H5)(CH3))を含む。「任意選択的に置換されたアラルキル」とは、アラルキル又は置換アラルキルを指す。
【0037】
「ヘテロアリール」とは、典型的には2から最大約14個の範囲の炭素原子を有する、芳香族環の一部として1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含有する芳香族基を指し、「置換ヘテロアリール」とは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、並びに上記置換基のいずれかから選択される1つ以上の置換基(例えば、1、2、3、4、又はさらには5つ)をさらに有するヘテロアリールラジカルを指す。
【0038】
「ヘテロアラルキル」及び「ヘテロアリールアルキル」とは、1つ以上のヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指す。「置換ヘテロアラルキル」とは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、並びに本明細書に記載される置換基のいずれかから選択される1つ以上の置換基(例えば、1、2、3、4、又はさらには5つ)をさらに有するヘテロアラルキルを指す。「任意選択的に置換されたヘテロアラルキル」とは、ヘテロアラルキル又は置換ヘテロアラルキルを指す。
【0039】
「ハロゲン」及び「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を指す。
【0040】
「ヒドロキシル」及び「ヒドロキシ」とは、官能性-OHを指す。
【0041】
「アルコキシ」は、基-ORを示し、ここで、Rはアルキルである。「置換アルコキシ」は、基-ORを示し、ここで、Rは置換アルキルである。「任意選択的に置換されたアルコキシ」とは、アルコキシ又は置換アルコキシを指す。
【0042】
「アリールオキシ」は、基-ORを示し、ここで、Rはアリールである。「置換アリールオキシ」は、基-ORを示し、ここで、Rは置換アリールである。「任意選択的に置換されたアリールオキシ」とは、アリールオキシ又は置換アリールオキシを指す。
【0043】
「メルカプト」及び「チオール」とは、官能性-SHを指す。
【0044】
「アルキルチオ」及び「チオアルコキシ」とは、基-SR、-S(0)n=1-2-Rを指し、ここで、Rはアルキルである。「置換アルキルチオ」及び「置換チオアルコキシ」とは、基-SR、-S(O)n=1-2-Rを指し、ここで、Rは置換アルキルである。「任意選択的に置換されたアルキルチオ」及び「任意選択的に置換されたチオアルコキシ」とは、アルキルチオ又は置換アルキルチオを指す。
【0045】
「アリールチオ」は、基-SRを示し、ここで、Rはアリールである。「置換アリールチオ」は、基-SRを示し、ここで、Rは置換アリールである。「任意選択的に置換されたアリールチオ」とは、アリールチオ又は置換アリールチオを指す。
【0046】
「アミノ」とは、置換基-NH2を含む、非置換、一置換、及び二置換アミノ基を指し、「モノアルキルアミノ」とは、Rがアルキル又は置換アルキルである、構造-NHRを有する置換基を指し、「ジアルキルアミノ」とは、各Rが独立してアルキル又は置換アルキルである、構造-NR2の置換基を指す。
【0047】
「アミジノ」は、基-C(=NRq)NRrRsを示し、ここで、Rq、Rr.、及びRsは、独立して、水素又は任意選択的に置換されたアルキルである。
【0048】
「アミド基」への言及は、各Rが独立して、上記のようなH、アルキル、置換アルキル、アリール、又は置換アリールである、構造-C(O)-NR2の置換基を包含する。各RがHである場合、置換基は、「カルバモイル」とも呼ばれる(すなわち、構造-C(O)-NH2を有する置換基)。R基の1つのみがHである場合、置換基は、「モノアルキルカルバモイル」(すなわち、Rが上記のようなアルキル又は置換アルキルである、構造-C(O)-NHRを有する置換基)又は「アリールカルバモイル」(すなわち、アリールが置換アリールを含めて上記定義された通りである、構造-C(O)-NH(ary1)を有する置換基)とも呼ばれる。R基のいずれもHではない場合、置換基は、「ジアルキルカルバモイル」とも呼ばれる(すなわち、構造-C(O)-NR2を有する置換基、ここで、各Rは独立して、上記のようなアルキル又は置換アルキルである)。
【0049】
「カルバメート」への言及は、構造-O-C(O)-NR2の置換基を包含し、ここで、各Rは独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、又は置換アリールである。
【0050】
「エステル基」への言及は、構造-O-C(O)-ORの置換基を包含し、ここで、各Rは独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、又は置換アリールである。
【0051】
「アシル」は、構造-C(O)Rを有する基を指し、ここで、Rは、本明細書で定義される水素、アルキル、アリールなどである。「置換アシル」とは、置換基Rが本明細書で定義されるように置換されているアシルを指す。「任意選択的に置換されたアシル」とは、アシル及び置換アシルを指す。
【0052】
「シアノアルキル」とは、基-R≡Nを指し、ここで、Rは、任意選択的に置換されたアルキレニルである。
【0053】
本明細書で用いられる場合、「置換」は、別の原子又は原子群(すなわち、置換基)で置換された原子又は原子群を示し、例えば、モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、又はさらにはヘキサ置換など、化学的に許容されるすべてのレベルの置換が含まれる。置換は、炭素及び酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子における置換など、化学的にアクセス可能な任意の位置で及び任意の原子において行われうる。例えば、置換部分には、そこに含まれる水素又は(一又は複数の)炭素原子への1つ以上の結合が、非水素及び/又は(一又は複数の)非炭素原子への結合によって置き換えられているものが含まれる。置換には、F、Cl、Br、及びIなどのハロゲン原子;ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びエステル基などの基の酸素原子;チオール基、アルキル及びアリールスルフィド基、スルホン基、スルホニル基、及びスルホキシド基などの基の硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミド、及びエナミンなどの基の窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、及びトリアリールシリル基などの基のケイ素原子;並びに、当技術分野でよく知られている他の基のヘテロ原子が含まれうるが、これらに限定されない。
【0054】
置換基の非限定的な例には、限定はしないが、ハロゲン、-OH、-NH2、-NO2、-CN、-C(O)OH、-C(S)OH、-C(O)NH2、-C(S)NH2、-S(O)2NH2、-NHC(O)NH2、-NHC(S)NH2、-NHS(O)2NH2、-C(NH)NH2、-OR、-SR、-OC(O)R、-OC(S)R、-C(O)R、-C(S)R、-C(O)OR、-C(S)OR、-S(O)R、-S(O)2R、-C(O)NHR、-C(S)NHR、-C(O)NRR、-C(S)NRR、-S(O)2NHR、-S(O)2NRR、-C(NR)NHR、-C(NH)NRR、-NHC(O)R、-NHC(S)R、-NRC(O)R、-NRC(S)R、-NHS(O)2R、-NRS(O)2R、-NHC(O)NHR、-NHC(S)NHR、-NRC(O)NH2、-NRC(S)NH2、-NRC(O)NHR、-NRC(S)NHR、-NHC(O)NRR、-NHC(S)NRR、-NRC(O)NRR、-NRC(S)NRR、-NHS(O)2NHR、-NRS(O)2NH2、-NRS(O)2NHR、-NHS(O)2NRR、-NRS(O)2NRR、-NHR、-NRRが含まれ、ここで、Rは、存在ごとに独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールである。次の化学官能基のうちの1つ以上を含む、任意選択的に置換されたヒドロカルビル部分での置換もまた、想定されている:-O-、-S-、-NR-、-O-C(O)-、-O-C(O)-O-、-O-C(O)-NR-、-NR-C(O)-、-NR-C(O)-O-、-NR-C(O)-NR-、-S-C(O)-、-S-C(O)-O-、-S-C(O)-NR-、-S(O)-、-S(O)2-、-O-S(O)2-、-O-S(O)2-O、-O-S(O)2-NR-、-O-S(O)-、-O-S(O)-O-、-O-S(O)-NR-、-O-NR-C(O)-、-O-NR-C(O)-O-、-O-NR-C(O)-NR-、-NR-O-C(O)-、-NR-O-C(O)-O-、-NR-O-C(O)-NR-、-O-NR-C(S)-、-O-NR-C(S)-O-、-O-NR-C(S)-NR-、-NR-O-C(S)-、-NR-O-C(S)-O-、-NR-O-C(S)-NR-、-O-C(S)-、-O-C(S)-O-、-O-C(S)-NR-、-NR-C(S)-、-NR-C(S)-O-、-NR-C(S)-NR-、-S-S(O)2-、-S-S(O)2-O-、-S-S(O)2-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(O)-NR-、-NR-O-S(O)2-、-NR-O-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-NR-S(O)-O-、-O-NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)2-O-、-O-NR-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)2-、-O-P(O)R2-、-S-P(O)R2-、又は-NRP(O)R2-、ここで、Rは、存在ごとに独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールである。
【0055】
幾つかの実施形態では、本明細書で使用される化合物は、本明細書に開示される化合物の立体異性体(例えば、光学異性体及びジアステレオマー)、構造異性体、互変異性体、立体配座異性体、及び幾何異性体を含む異性体を含む。
【0056】
例示的な構造異性体には、例えば、限定はしないが、例えば2-プロピル置換に対する1-プロピル置換など、本明細書に開示される化合物を形成する官能性の異なる結合性から生じる異性体が含まれる。互変異性化と組み合わせた構造異性体は、二重結合及び置換基の移動を含む結合転位をさらに包含する。例えば、1~3の多面的水素シフトと組み合わせた互変異性化は、構造異性をもたらしうる。
【0057】
例示的な立体配座異性体には、例えば、限定はしないが、当技術分野でよく知られているように、分離可能な異性体が生じる程度まで回転が妨げられる、結合の周りの回転によって生まれる異性体が含まれる。
【0058】
例示的な幾何異性体は、当技術分野でよく知られているように、例えば、「E」又は「Z」配置の二重結合を含む。
【0059】
本明細書に開示される化合物は、適切な合成方法を使用して容易に調製することができる。例えば、クルクミンは、トルエン中で一晩加熱還流することにより、フェニルヒドラジンと縮合させることができる。任意選択的に、触媒量の酸(HCl)を使用することができる。幾つかの実施形態では、純粋なクルクミン(工業用に対して)及び新たに蒸留したフェニルヒドラジンを使用することができる。
【0060】
別の例として、3-メトキシベンズアルデヒドは、標準的なヒドラゾン調製条件(例えば、反応時間を短縮するためにマイクロ波で加熱する)を使用して、メタノール中で2,4-ジメチルフェニルヒドラジンと縮合させることができる。次に、遊離のNHをTFAA(無水トリフルオロ酢酸)と触媒(0.1%)量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)、THE(テトラヒドロフラン)、又はDCM(ジクロロメタン)でアシル化する。
【0061】
幾つかの実施形態では、CF3置換トリアゾールは、適切なアリールトリフルオロメチルアセチレンとアリールアジドとの間の1,3-双極子付加環化反応によって調製することができる。位置選択性は、適切なクリックケミストリーを利用することによって得ることができる(例えば、Huisgen R. (1984) 1,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry, pp. 1-176, Lodon:Wiley;Padwa (1991) Comprehensive Organic Synthesis, Vol. 4:pp.1069-1109, Oxford: Pergamon;及び、Fan & Katritzky (1996) Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, Vol. 4:pp.101-126, Oxford: Pergamon参照)。明細書に開示される化合物を生成するさらなる方法は、Lima et al., (2015) Chem.Commun.51:10784-10796、及びKim et al., (2015) Org.Biomol.Chem.13:9564-9569に見出すことができる。
【0062】
幾つかの実施形態では、本明細書で使用される化合物は、薬学的に許容される塩の形態で提供される。本明細書で使用される化合物は、適切な方法を使用して、任意の適切な無機又は有機塩と複合体を形成することができる。幾つかの実施形態では、本明細書で使用される化合物物の塩は、化合物を、適切な有機又は無機の酸又は塩基と反応させることによって調製される。本明細書で使用することが想定されている有機塩の非限定的な例には、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプシル酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸、ドデシル硫酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ウンデカン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などが含まれる。幾つかの実施形態では、無機塩は、硫酸塩、重硫酸塩、半硫酸塩、塩酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などの無機酸から形成することができる。塩基性塩の非限定的な例には、アンモニウム塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチル-D-グルカミン、フェニルエチルアミンなどの有機塩基との塩;及び、アルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩などが含まれる。
【0063】
したがって、ある特定の実施形態では、本明細書の方法は、治療的有効量の式I、II、III、又はIVの化合物を対象に投与することを含む。
【0064】
呼吸困難
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、肺に体液が蓄積すること(肺水腫)に関連する生命を脅かす状態であり、その結果、適切な血中酸素レベルを維持することができなくなる(低酸素症又は低酸素血症)。ARDSは、さまざまな潜在的な原因を有する可能性があり、その非限定的な例には、肺炎、敗血症、ウイルス感染症、及び外傷が含まれる。COVID19の大流行前は、世界中で推定年間300万件のARDSが発生し、ICU患者全体の10%を占めていた。ARDSに利用可能な主とした治療オプションは、肺に空気を押し込む人工呼吸器によって呼吸が補助される、機械的換気である。
【0065】
ARDSから回復した患者は、通常、何らかの形の認識機能障害を経験する(Hopkins et al. (1999) American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 160(1):50-56; Sasannejad et al. (2019) Critical Care 23(1):1-12)。幾つかの研究では、1年後に56~80%、5年後に20%の割合で、記憶、注意力、集中力、及び/又は処理速度の障害に苦しんでいることが示唆されている。長期的な障害を患う一部の患者は、知力の標準テストでパフォーマンスの大幅な低下を示し、正規分布の第6百分位を下回った(Hopkins et al.(2005) American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 171(4):340-347)。加えて、ARDSの生存者は、不安神経症及び抑うつ症になりやすく(Mikkelsen et al. (2009) Respirology 14(1):76-82; Mikkelsen et al. (2012) American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 185(12):1307-1315)、大部分が外傷後ストレス障害の症状を示している(Kapfhammer et al.(2004) The American Journal of Psychiatry 161(1):45-52; Mikkelsen et al., 2012)。
【0066】
画像研究では、一致した対照と比較して、ARDS生存者には重大な脳萎縮及び心室肥大が見られた(Hopkins et al., (2006) Brain Injury 20(3):263-271)。既存の認知低下又は脳損傷を患う患者はリスクが高くなるが(Sasannejad et al., 2019)、年齢又は病気の重症度との明確な関連はない(Herridge et al., 2016)。急性疾患中の低酸素血症の期間もリスクの増加と関連しているが(Mikkelsen et al., 2012)、ARDSのブタモデルでの実験では、低酸素血症よりも、肺損傷から生じるサイトカイン媒介性の脳損傷が、海馬損傷の大きな原因であることが示唆された。低血圧の持続時間、中心静脈圧の低下、高血糖、血糖変動を含む、多くの他の明らかな危険因子が特定されている(Herridge et al.(2016) Intensive Care Medicine 42(5):725-738)。ARDSの治療中及び治療後によく起こるせん妄の発生及び期間は、長期的な認知低下の危険因子でもある(Mikkelsen et al., 2012; Sasannejad et al., 2019)。
【0067】
ARDSの認知効果の原因となる生理学的機構は不明である。幾つかの可能な機構が示唆されている。例えば、血液脳関門のサイトカイン誘発性の崩壊は、その過程の中心的な事象として示唆されており、アミロイド-βのクリアランスを妨害する可能性があり、さらに神経学的損傷を引き起こす可能性がある。海馬のサイトカイン産生は、神経可塑性、学習、及び記憶に不可欠な脳由来の神経栄養因子(BDNF)の枯渇に関与している。
【0068】
ARDSの治療に用いられる機械的換気には、その使用に伴って重大なリスクがあり(Wolthius et al. (2009) Critical Care (London, England) 13(1):1-11; Matthay et al. (2019) Nature Reviews. Disease Primers 5(1):18)、回復後に患者が経験する認知機能障害の独立した原因となる可能性がある(Bilotta et al.(2019) Critical Care 23(1):1-3)。
【0069】
ARDS関連の認識機能障害を最小限に抑えるための確立された予防措置又は治療法が欠如している。現在の推奨事項は、人工呼吸器使用中の鎮静及び一回換気量を最小限に抑えることに重点を置いている。現在、ARDS関連の認知低下の予防又は最小化のために推奨されている医薬品は存在しない。治療中のせん妄及びその後の認知機能障害に対するスタチン薬の臨床試験では、有効性が示されなかった(Needham et al.(2016) The Lancet Respiratory Medicine 4(3):203-212;臨床試験ID NCT00979121及びNCT00719446)。
【0070】
本明細書に示されるように、式I、II、III、及びIVの医薬品などの神経栄養効果を有する医薬品は、ARDS及びその治療に起因する神経学的損傷を最小限に抑えるのに役立てることができる。
【0071】
幾つかの実施形態では、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる認識機能障害又は認知障害を治療、抑制、それらの重症度を軽減、それらの発症を遅延、又は予防する方法が本明細書に提示され、該方法は、式I、II、III、又はIVの構造を有する化合物の治療的有効量を、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象に投与することを含む。以前に呼吸困難を経験したことがある対象とは、本明細書の方法を実施してから1日から10年以内に呼吸困難を経験したか、又は呼吸困難と診断された対象である。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を以前に呼吸困難を経験したことがある対象に投与することは、対象が呼吸困難を患った又は呼吸困難と診断されてから1日から10年の期間内に、本明細書に開示される化合物を対象に投与することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、既存の認識機能障害、既存の認知障害又は既存の神経変性疾患の低下を予防又は抑制する、及び/又はそれらの悪化を予防又は抑制することを含み、該方法は、式I、II、III、又はIVの構造を有する化合物の治療的有効量を、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象に投与することを含む。呼吸困難の文脈における「既存」という用語は、対象が呼吸困難を経験する前又は呼吸困難を患う前を意味する。幾つかの実施形態では、方法は、式I、II、III、又はIVの構造を有する化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象を治療することを含み、ここで、呼吸困難に起因する、それによって引き起こされる、又はそれによって悪化する認識機能障害又は認知障害が、予防、改善、抑制、重症度を軽減、又は遅延される。ある特定の実施形態では、方法は、式I、II、III、又はIVの構造を有する化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、呼吸困難のリスクがある、呼吸困難を患っている若しくは経験している、又は以前に呼吸困難を経験したことがある対象を治療することを含み、既存の認識機能障害、既存の認知障害、又は既存の神経変性疾患の悪化が防止される、又はそれらの重症度の増加が防止若しくは抑制される。
【0072】
呼吸困難の非限定的な例には、急性呼吸窮迫症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)が含まれる。ある特定の実施形態では、呼吸困難は低酸素症に関連する。幾つかの実施形態では、ARDSは、敗血症、肺炎、肺感染症(例えば、真菌感染症、ウイルス感染症(例えば、インフルエンザ又はコロナウイルス感染)、又は細菌感染症)、膵炎、身体的外傷(例えば、頭部外傷、胸部外傷、又は肺外傷)、誤嚥、煙の吸入、有害物質の吸入、特発性肺線維症、輸血、大量輸血、熱傷、溺水、薬物に対する反応、薬物の過剰摂取、ショック、肺の手術、心肺バイパス手術、播種性血管内血液凝固、又はダニ媒介性回帰熱に関連するか、又はそれらによって引き起こされる。幾つかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS関連コロナウイルス又はSARS関連コロナウイルス-2である。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書の方法は、ARDSに起因する又はARDSによって引き起こされる認識機能障害又は認知障害を治療、抑制、それらの重症度の軽減、それらの発症の遅延、又は予防することを含み、ここで、ARDSは、敗血症、肺炎、肺感染症(例えば、真菌感染症、ウイルス感染症(例えば、インフルエンザ又はコロナウイルス感染)、又は細菌感染症)、膵炎、身体的外傷(例えば、頭部外傷、胸部外傷、又は肺外傷)、誤嚥、煙の吸入、有害物質の吸入、特発性肺線維症、輸血、大量輸血、熱傷、溺水、薬物に対する反応、薬物の過剰摂取、ショック、肺の手術、心肺バイパス手術、播種性血管内血液凝固、又はダニ媒介性回帰熱によって引き起こされるか、又はそれらに関連する。
【0073】
呼吸困難によって誘発される、悪化する、又は関連する認識機能障害及び認知障害の非限定的な例には、記憶の喪失(短期及び長期)、集中力の喪失、集中困難、注意力の喪失、せん妄、混乱状態、意識の低下、慣れ親しんだタスク又は日常的なタスクの完了の困難;空間及び時間の混乱;視覚の障害、色又は記号の認識の喪失、コミュニケーション能力の喪失又は障害(例えば、発話困難(例えば、不明瞭な、はっきりしない、又は不規則な発話)、筆記困難、読解力の喪失、語彙喪失など、又はそれらの組合せ)、判断力の喪失、不機嫌、不機嫌、異常又は頻繁な刺激反応性、実行機能の喪失又は障害、抑うつ症、不安神経症、外傷後ストレス障害など、及びそれらの組合せが含まれる。呼吸困難によって引き起こされる、悪化する、又は呼吸困難に関連する認識機能障害及び認知障害の追加の非限定的な例には、倦怠感(例えば、過度の倦怠感);消極的;嗜眠;無気力;振戦;運動失調;攣縮、萎縮、又は脱力;息切れ;呼吸困難;奥行知覚の喪失;異常又は頻繁な攻撃;パラノイア;妄想;社会的関与からの撤退;異常又は頻繁な硬直又は強剛;細かい又は全体的な運動制御の喪失;動きの鈍化;平衡障害;身体的不安定性;姿勢又は歩行異常(例えば、引きずり歩行、不安定又は不規則な歩行);協調の減少;運動機能障害;ぎくしゃくした、又は不随意の体の動き;遅い衝動性眼球運動;発作;嚥下障害;咀嚼、食事、又は嚥下の困難;認知/精神的能力の低下;認知症;不規則な睡眠;不眠症;睡眠障害;診断された行動又は精神医学的異常;社会的行動の規制障害;社会的ひきこもり;過活動;ペーシング;徘徊;平衡感覚障害;動員時に前に突進する;速い歩行;運動失調;転倒;人格の変化;抑制又は情報を整理する能力の消失;眼筋麻痺又は眼球運動障害;まぶたの機能障害;不随意の顔面筋拘縮;パーキンソニズム;など、及びそれらの組合せが含まれる。したがって、幾つかの実施形態では、方法は、呼吸困難によって引き起こされる、悪化する、又は呼吸困難に関連する1つ以上の認知障害又は認識機能障害を予防、その重症度を軽減、その発症を遅延、及び/又はそれを治療することを含み、該方法は、治療的有効量の本明細書に開示される化合物、又は本明細書に開示される化合物の治療的有効量を含む医薬組成物を、呼吸困難を患っている、その疑いがある、又はそのリスクがある対象に投与することを含む。
【0074】
幾つかの実施形態では、方法は、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる記憶喪失を治療、抑制、それらの重症度の軽減、それらの発症の遅延、又は予防することを含む。
【0075】
幾つかの実施形態では、方法は、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる注意力若しくは集中力の障害又は喪失を治療、抑制、それらの重症度の軽減、それらの発症の遅延、又は予防することを含む。
【0076】
幾つかの実施形態では、方法は、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされるせん妄の低下又は悪化を治療、抑制、それらの重症度の軽減、それらの発症の遅延、又は予防することを含む。
【0077】
幾つかの実施形態では、方法は、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる抑うつ症、不安神経症、及び/又は外傷後ストレス障害の低下又は悪化を治療、抑制、それらの重症度の軽減、それらの発症の遅延、又は予防することを含む。
【0078】
幾つかの実施形態では、方法は、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる実行機能、発話、言語、又はコミュニケーション能力の障害又は喪失を治療、抑制、それらの重症度の軽減、それらの発症の遅延、又は予防することを含む。
【0079】
幾つかの実施形態では、方法は、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる視覚能力及び空間能力の障害又は喪失を治療、抑制、それらの重症度の軽減、それらの発症の遅延、又は予防することを含む。
【0080】
幾つかの実施形態では、方法は、対象における呼吸困難に起因する又は呼吸困難によって引き起こされる運動不能の危機を治療、抑制、それらの重症度の軽減、それらの発症の遅延、又は予防することを含む。
【0081】
幾つかの実施形態では、呼吸困難に起因する認識機能障害又は認知障害は、医療の専門家によって検出及び/又は診断される。呼吸困難に起因する認識機能障害、認知障害、又は認知機能の喪失は、呼吸困難の前及び/又は後に行われる適切な認識力試験(例えば、心理試験)の結果を比較することによって検出及び/又は診断することができる。適切な認識力試験は、呼吸困難の前、及び/又は少なくとも1日後、又は少なくとも少なくとも1週間後に行うことができる。幾つかの実施形態では、認識力試験は、呼吸困難後にICUに滞在して1日から30日後、1日から15日後、又は1日から7日後に行われる。幾つかの実施形態では、認識力試験は、呼吸困難の1から6ヶ月前、1日から30日前、1日から15日前、又は1日から7日前に行われる。
【0082】
ある特定の実施形態では、対象は、呼吸困難の前に、認知障害又は神経変性疾患と診断されていない。ある特定の実施形態では、対象は、呼吸困難の前に、がん、糖尿病、関節炎、インスリノーマ、脳卒中、又は虚血(例えば、心臓虚血)と診断されていない、及び/又はそれらを患っていない。
【0083】
ある特定の実施形態では、対象は、呼吸困難の最中又は前に認知障害又は神経変性疾患と診断されている。ある特定の実施形態では、対象は、呼吸困難の最中又は前に、がん、糖尿病、高血糖症、低血糖症、血清グルコースの変動、院内急性ストレス症候群、せん妄、関節炎、膵炎、及び/又はインスリノーマと以前に診断されているか、患っているか、又は患っている疑いがある。ある特定の実施形態では、対象は、呼吸困難の最中又は前に、喘息を患っているか、又は喘息と診断されている。ある特定の実施形態では、対象は、呼吸困難の最中又は前に肺炎を患っているか、又は肺炎と診断されている。
【0084】
PICCD
PICCDを予防、その重症度を軽減、その発症を遅延、及び/又はPICCDを治療する方法が本明細書に提示され、該方法は、ある特定の実施形態では、治療的有効量の本明細書に開示される化合物、又は本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物を、PICCDを患っているか、患っている疑いがあるか、又は患うリスクがある対象に投与することを含む。幾つかの実施形態では、方法は、治療的有効量の本明細書に開示される化合物、又は本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物を対象(例えば、それらを必要とする対象)に投与することを含む、PICCDを患っているか、患っている疑いがあるか、又は患うリスクがある対象を治療することを含む。
【0085】
PICCDは、集中治療室への滞在(ICU)、挿管及び/又は人工呼吸器への接続によって誘発されるか、引き起こされるか、又は悪化する認知状態である。ある特定の実施形態では、PICCDは、集中治療室(ICU)への滞在中又は後、挿管中又は後、及び/又は人工呼吸器への接続中又は後に発生する、認識機能障害、認知障害及び/又は、1つ以上の認知機能の低下、喪失、又は障害である。幾つかの実施形態では、PICCDは、ICUに滞在後、挿管後、又は人工呼吸器への接続後に検出又は診断された新しい認識機能障害又は認知障害である。したがって、ある特定の実施形態では、PICCDは、ICUに滞在する前、挿管前、又は人工呼吸器への接続前には存在しないが、ICUに滞在後、挿管後、及び/又は人工呼吸器への対象の接続後には存在する、認識機能障害又は認知障害である。幾つかの実施形態では、PICCDは、集中治療後症候群を含むか、又は集中治療後症候群からなる(Inoue, et al.(2019) Acute Medicine & Surgery 6:233-246)。
【0086】
幾つかの実施形態では、PICCDは慢性状態である。幾つかの実施形態では、慢性PICCDは、6か月以上、12か月以上、又は1年以上続くことがあり、あるいは治療しない場合は5年以上続く可能性がある。したがって、幾つかの実施形態では、方法は、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象における慢性PICCDを予防又は治療することを含む。
【0087】
幾つかの実施形態では、PICCDは急性状態である。幾つかの実施形態では、急性PICCDは、ICUに滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続後、最長6か月、最長12か月、最長20か月、又は最長36か月、続く可能性がある。したがって、幾つかの実施形態では、方法は、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象における急性PICCDを予防又は治療することを含む。
【0088】
PICCDに関連する認識機能障害及び認知障害の非限定的な例には、記憶の喪失(短期及び長期)、集中力の喪失、集中困難、注意力の喪失、せん妄、混乱状態、意識の低下、慣れ親しんだタスク又は日常的なタスクの完了の困難;空間及び時間の混乱;視覚の障害、色又は記号の認識の喪失、コミュニケーション能力の喪失又は障害(例えば、発話困難(例えば、不明瞭な、はっきりしない、又は不規則な発話)、筆記困難、読解力の喪失、語彙喪失など、又はそれらの組合せ)、判断力の喪失、不機嫌、異常又は頻繁な刺激反応性、実行機能の喪失又は障害、抑うつ症、不安神経症、外傷後ストレス障害など、及びそれらの組合せが含まれる。PICCDに関連する認識機能障害及び認知障害の追加の非限定的な例には、倦怠感(例えば、過度の倦怠感);消極的;嗜眠;無気力;振戦;運動失調;攣縮、萎縮、又は脱力;息切れ;呼吸困難;奥行知覚の喪失;異常又は頻繁な攻撃;パラノイア;妄想;社会的関与からの撤退;異常又は頻繁な硬直又は強剛;細かい又は全体的な運動制御の喪失;動きの鈍化;平衡障害;身体的不安定性;姿勢又は歩行異常(例えば、引きずり歩行、不安定又は不規則な歩行);協調の減少;運動機能障害;ぎくしゃくした、又は不随意の体の動き;遅い衝動性眼球運動;発作;嚥下障害;咀嚼、食事、又は嚥下の困難;認知/精神的能力の低下;認知症;不規則な睡眠;不眠症;睡眠障害;診断された行動又は精神医学的異常;社会的行動の規制障害;社会的ひきこもり;過活動;ペーシング;徘徊;平衡感覚障害;動員時に前に突進する;速い歩行;運動失調;転倒;人格の変化;抑制又は情報を整理する能力の消失;眼筋麻痺又は眼球運動障害;まぶたの機能障害;不随意の顔面筋拘縮;パーキンソニズム;など、及びそれらの組合せが含まれる。したがって、幾つかの実施形態では、方法は、PICCDの1つ以上の認知障害又は認識機能障害を予防、その重症度を軽減、その発症を遅延、及び/又はそれを治療することを含み、該方法は、治療的有効量の本明細書に開示される化合物、又は本明細書に開示される化合物の治療的有効量を含む医薬組成物を、PICCDを患っているか、患っている疑いがあるか、又は患うリスクがある対象に投与することを含む。
【0089】
幾つかの実施形態では、PICCDを治療又は予防する方法は、記憶の障害又は喪失を治療又は予防、その発症を遅延、その重症度を軽減、その頻度を軽減、及び/又はそれを抑制することを含む。
【0090】
幾つかの実施形態では、PICCDを治療又は予防する方法は、注意力若しくは集中力(例えば、対象の集中する能力)の障害又は喪失を治療又は予防、その発症を遅延、その重症度を軽減、その頻度を軽減、及び/又はそれを抑制することを含む。
【0091】
幾つかの実施形態では、PICCDを治療又は予防する方法は、せん妄の低下又は悪化を治療又は予防、その発症を遅延、その重症度を軽減、その頻度を軽減、及び/又はそれを抑制することを含む。せん妄の症状の非限定的な例には、対象の環境に対する意識の低下、注意を集中する能力の低下、時間、場所、及び人物の見当識障害、言語障害(例えば、物の名前を言えなくなる、書くことができない、及び散漫な発話)、知覚障害(例えば、幻覚、錯覚、又は誤解)など、及びそれらの組合せが含まれる。
【0092】
幾つかの実施形態では、PICCDを治療又は予防する方法は、抑うつ症、不安神経症、及び/又は外傷後ストレス障害の低下又は悪化を治療又は予防、その発症を遅延、その重症度を軽減、その頻度を軽減、及び/又はそれを抑制することを含む。
【0093】
幾つかの実施形態では、PICCDを治療又は予防する方法は、実行機能、発話、言語、又はコミュニケーション能力の障害又は喪失を治療又は予防、その発症を遅延、その重症度を軽減、その頻度を軽減、及び/又はそれを抑制することを含む。
【0094】
幾つかの実施形態では、PICCDを治療又は予防する方法は、視覚能力及び空間能力の障害又は喪失を治療又は予防、その発症を遅延、その重症度を軽減、その頻度を軽減、及び/又はそれを抑制することを含む。
【0095】
幾つかの実施形態では、PICCDを治療又は予防する方法は、集中治療室への滞在(ICU)、挿管及び/又は人工呼吸器への接続中又は後に生じる運動不能の危機を予防、その症状を軽減、その発症を遅延、又はそれを治療することを含む。運動不能の危機(急性無動症としても知られる)は、患者がほぼ完全に運動不能になるまで、パーキンソン病(PD)の運動症状が急激に悪化した状況を指す。運動不能の危機の症状の非限定的な例には、嚥下障害、高体温症、自律神経失調症、振戦、運動緩慢、筋硬直、運動喪失、身体動作困難、緩慢な動作、姿勢とバランスの障害、発話の変化、書き方の変化、細字症、筋肉のこわばり、起立困難、歩行困難、不随意運動、協調性の問題、リズミカルな筋収縮、血清筋肉酵素のレベルの上昇などの問題、並びにそれらの組合せの悪化又はそれらの症状も含まれる。
【0096】
ある特定の実施形態では、PICCDは、集中治療室(ICU)への滞在中又は後、挿管中又は後、及び/又は人工呼吸器への接続中又は後に発生する、既存の認知障害、既存の認識機能障害、又は既存の神経変性疾患の増悪又は悪化である。幾つかの実施形態では、PICCDは、ICUに滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続の結果として増悪する、重症度が増加する、又は悪化する、既存の認知障害又は神経変性疾患である。PICCDの文脈での「既存」という用語は、ICUへの入院前、挿管前、及び/又は人工呼吸器への接続前を意味する。神経変性疾患の非限定的な例には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、緑内障、網膜変性症、黄斑変性症、老人性難聴、軽度の認知機能障害、認知症、せん妄、抑うつ症、不安神経症、進行性核上性麻痺、脊髄小脳失調症、網膜神経障害、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、バックグラウンド神経障害、家族性アミロイド多発神経障害、老人性全身性アミロイドーシス、プリオン性疾患、スクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、アミロイド症など、及びそれらの組合せが含まれる。
【0097】
幾つかの実施形態では、PICCDは、医療の専門家によって検出及び/又は診断される。PICCDは、集中治療室(ICU)への滞在又は入院、挿管、及び/又は人工呼吸器への接続の前及び/又は後に行われる適切な認識力試験(例えば、心理試験)の結果を比較することによって検出及び/又は診断することができる。適切な認識力試験は、ICUに滞在、挿管、及び/又は対象を人工呼吸器に接続する前、及び/又は少なくとも1日後、又は少なくとも少なくとも1週間後に行うことができる。幾つかの実施形態では、認識力試験は、ICUに滞在、挿管、及び/又は対象を人工呼吸器に接続した1日から30日後、1日から15日後、又は1日から7日後に行うことができる。幾つかの実施形態では、認識力試験は、ICUに滞在、挿管、及び/又は対象を人工呼吸器に接続する1から6ヶ月前、1日から30日前、1日から15日前、又は1日から7日前に行うことができる。
【0098】
複数の認知ドメインを試験して、認識機能障害又は認知障害の存在又は重症度を決定することができ、その非限定的な例には、学習力、記憶力、注意力、及び集中力の試験が含まれる。認識機能障害又は認知障害の存在、不存在、その重症度、その発症、又は量を診断するために実行することができる認識力試験の非限定的な例には、ミニメンタルステート検査(MMSE)(例えば、Saczynski et al., (2012) N. Engl. J. Med.367:30-39参照);信頼変化指標(例えば、Lewis et al., (2006) Acta Anaesthesiol Scand.50:50-57;及び、Berger et al., (2015) Anesthesiol Clin.33(3):517-50参照);Reyの聴覚言語性学習検査;トレイルメイキングテスト、パートA及びB;溝付きペグボードテスト;デジットスパンテスト;ストループテスト、4フィールド試験、Erzigkeitの短期認知能力試験;患者の自己評価;並びに、さまざまな臨床試験で開示されたさまざまな試験(例えば、ClinicalTrials.gov番号:NCT0361019、NCT03540433、NCT02265263、NCT02650687、NCT02848599、NCT03084393、NCT03029676及びNCT03635229参照)が含まれる。
【0099】
PICCDは病理学的プロセスと明確には結びついておらず、PICCDの病因は正確には特定されていない。炎症がPICCDに関与している可能性がある。しかしながら、幾つかの免疫抑制薬/抗炎症薬は、手術によって誘発される、手術によって引き起こされる、又は手術によって悪化すると考えられている認知障害の予防又は治療に失敗している。例えば、心臓手術中に静脈内投与されたマグネシウム(免疫抑制剤と見なされる)は、臨床試験において、術後の認知障害を軽減することに失敗した(例えば、ClinicalTrials.gov番号:NCT00041392参照)。別の例として、免疫抑制薬として用いられるヒト化モノクローナル抗体であるペクセリズマブは、冠動脈バイパス移植手術後の術後認知障害に影響を与えなかった(例えば、Mathew et al.(2004) Stroke 35:2335-239)。さらに別の例として、抗炎症作用及び神経保護効果を有することが示されている抗生物質であるミノサイクリンは、術後認知障害を憎悪させた(Li W, et al., (2018) J Int Med Res.46(4):1404-1413)。したがって、PICCDが炎症によって引き起こされる障害であること、若しくは抗炎症特性又は免疫抑制特性を有する特定の薬剤を使用してPICCDを予防又は治療することができることを合理的な確実性で予測することはできない。
【0100】
また、神経変性疾患の治療に用いられる幾つかの薬物は、術後認知障害の予防又は治療に失敗している。例えば、認知症、記憶喪失、及びアルツハイマー病の治療に用いられるドネペジル(アリセプト)は、心臓手術の1年後に認知機能が低下した患者の全体的な認知指数に影響を与えなかった(Doraiswamy et al., (2007) Psychopharmacol Bull.40:54-62)。せん妄の治療における使用が示唆されている鎮静剤であるデクスメデトミジン(MacLaren, et al.(2015) Journal of Intensive Care Medicine.30 (3): 167-175)もまた、術後認知障害に対する有効性を示さなかった(Skvarc et al., (2018) Neurosci. Biobehav. Rev. 84, 116-133)。AD/パーキンソン病治療薬であるリバスチグミン(エクセロン)の術後認知障害の治療への使用を試験する臨床調査は、手術後の重篤な患者にとって危険すぎることが判明したため終了し、終了時点において有効性は観察されなかった(NCT00835159)。したがって、神経性疾患の治療に成功するために用いられる薬物が、PICCDの予防又は治療にも使用することができることを合理的な確実性で予測することはできない。
【0101】
対象
「対象」という用語は、哺乳動物を指す。任意の適切な哺乳動物が、本明細書に記載される方法又は組成物によって治療されうる。哺乳動物の非限定的な例には、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、ギボン、チンパンジー、オランウータン、サル、マカクなど)、家畜(例えば、イヌ及びネコ)、畜産動物(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、及び実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)が含まれる。幾つかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類又はヒトである。幾つかの実施形態では、対象はヒトである。対象は、任意の年齢又は発達の任意の段階(例えば、成人、十代、子供、乳児、又は子宮内の哺乳動物)でありうる。対象は、男性/オス又は女性/メスでありうる。
【0102】
幾つかの実施形態では、対象は、安定した認知機能を(例えば、呼吸困難の前、ICUに滞在する前、挿管前、及び/又は人工呼吸器への接続の前に)示している対象である。幾つかの実施形態では、対象は、以前に(例えば、呼吸困難の前、ICUに滞在する前、挿管前、及び/又は人工呼吸器への接続の前に)認知障害又は神経変性疾患と診断されていない。幾つかの実施形態では、対象は、以前にがん、糖尿病、関節炎、インスリノーマ、脳卒中、又は虚血(例えば、心臓虚血)と診断されていない。幾つかの実施形態では、対象は、式I、式II、式III、及び式IVのいずれか1つから選択される化合物を以前に投与されていなかった。ある特定の実施形態では、対象は、ICUへの滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続を行おうとしている、行う予定である、行っている、及び/又は最近(例えば、数時間から数日以内に)行った。
【0103】
ある特定の実施形態では、対象は、PICCDを発症するリスクがある。幾つかの実施形態では、PICCDを発症するリスクのある対象は、45歳以上、50歳以上、55歳以上、60歳以上、65歳以上、70歳以上、又は75歳以上である。幾つかの実施形態では、PICCDを発症するリスクのある対象は、45歳~100歳、50歳~100歳、55歳~100歳、60歳~100歳、65歳~100歳、70歳~100歳、又は75歳~100歳の範囲の年齢である。幾つかの実施形態では、PICCDを発症するリスクのある対象は、小児の対象又は小児患者である。幾つかの実施形態では、PICCDを発症するリスクのある対象は、18歳以下、16歳以下、13歳以下、10歳以下、8歳以下、又は5歳以下である。幾つかの実施形態では、PICCDを発症するリスクのある対象は、18歳~1週間、18歳~1ヶ月、18歳~6ヶ月、18歳~1歳、16歳~1歳又は13歳~1歳の範囲の年齢である。
【0104】
ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、認知障害又は神経変性疾患を患っている、その疑いがある、又は以前に(例えば、挿管、ICUへの入院、又は人工呼吸器への接続の前に)そうであると診断された対象である。ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、認知症、せん妄、抑うつ症、不安神経症、及び/又は院内急性ストレスの症状を患っている、その疑いがある、又は以前にそうであると診断された対象である。
【0105】
ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、糖尿病、高血糖症、低血糖症、血清グルコースの変動、及び/又は膵炎を患っている、その疑いがある、又は以前にそうであると診断された対象である。ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、がんを患っている、その疑いがある、又は以前にそうであると診断された対象である。
【0106】
ある特定の研究により、女性の対象がPICCDを発症する傾向が著しく高いことが示唆されている。したがって、幾つかの実施形態では、リスクのある対象は女性である。
【0107】
ある特定の研究では、その非限定的な例に臓器機能不全、肺機能不全、及び喘息が含まれる二次的健康状態を有する患者は、PICCDを発症するリスクが高いことが示唆されている。したがって、ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、臓器機能不全、肺機能不全、又は喘息を患っている、その疑いがある、又は以前にそうであると診断された対象である。
【0108】
ある特定の実施形態では、PICCDのリスクのある対象は、教育レベルが12年生(高校のGED又は卒業証書)以下の対象である。
【0109】
ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、急性呼吸器症候群、重症急性呼吸器症候群、喘息、肺炎、又は感染症を患っている、その疑いがある、又は以前にそうであると診断された対象である。ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、その非限定的な例に細菌、ウイルス、又は真菌が含まれる、病原体による感染を患っている、その疑いがある、又は以前にそうであると診断された対象である。ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、コロナウイルスに感染している対象であり、その非限定的な例には、ARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)及びSARS関連コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)が含まれる。ある特定の実施形態では、PICCDの対象又はPICCDのリスクのある対象は、COVID-19を患っている、又は患っている疑いのある対象である。
【0110】
医薬組成物
幾つかの実施形態では、組成物又は医薬組成物は、本明細書に開示される化合物を含む。幾つかの実施形態では、組成物又は医薬組成物は、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を含む。幾つかの実施形態では、組成物又は医薬組成物は、本明細書に開示される化合物を1μg~100mg、又は10μg~100μgの範囲の量で含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される方法を実施する際に使用するための本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物が本明細書に提示される。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示される化合物と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、添加剤、又は担体とを含む。
【0111】
医薬組成物は、適切な投与経路で処方することができる。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、経口、皮下(s.c.)、皮内、筋肉内、腹腔内、及び/又は静脈内(i.v.)投与用に処方される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解又は放出の速度、吸着又は浸透を改変、維持、又は保存するための製剤材料を含む。ある特定の実施形態では、適切な製剤材料には、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラニン、アルギニン、又はリジンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、又は適切な有機酸など);増量剤(マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなど);着色剤、香味料、及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩を形成する対イオン(ナトリウムなど);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールなど);希釈剤;賦形剤及び/又は医薬品アジュバントが含まれるが、これらに限定されない。特に、医薬組成物は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、“Remington: The Science And Practice Of Pharmacy” Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition, (1995)(以後、Remington’95)、又は“Remington: The Science And Practice Of Pharmacy”, Pharmaceutical Press, Easton, PA, 22nd Edition, (2013)(以後、Remington2013)に列挙される、任意の適切な担体、製剤、若しくは成分など、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0112】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、適切な賦形剤を含み、その非限定的な例には、付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、結合剤、充填剤、単糖、二糖、他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、又はデキストリン)、糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール)、コーティング(例えば、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶性セルロース、合成ポリマー、シェラック、ゼラチン、コーンプロテインゼイン、腸内細菌、又は他の多糖類)、デンプン(例えば、ジャガイモ、トウモロコシ、又は小麦デンプン)、シリカ、着色料、崩壊剤、香味剤、潤滑剤、防腐剤、吸着剤、甘味剤、ビヒクル、懸濁剤、界面活性剤、及び/又は湿潤剤(プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパルなど)、安定性向上剤(スクロース又はソルビトールなど)、及び張性増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物、塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトール、ソルビトーなどル)、及び/又はRemington’95又はRemington2013に開示される任意の賦形剤が含まれる。本明細書で用いられる「結合剤」という用語は、医薬混合物を組み合わせて維持するのに役立つ化合物又は成分を指す。医薬錠剤、カプセル、及び顆粒の調製にしばしば用いられる、医薬品製剤を製造するための適切な結合剤は当業者に知られている。
【0113】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、適切な薬学的に許容される添加剤及び/又は担体を含む。適切な添加剤の非限定的な例には、適切なpH調整剤、無痛化剤、緩衝液、硫黄含有還元剤、抗酸化剤などが含まれる。硫黄含有還元剤の非限定的な例には、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、及びC1~C7チオアルカン酸などのスルフヒドリル基(例えば、チオール)を有するものが含まれる。抗酸化剤の非限定的な例には、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸及びその塩、パルミチン酸L-アスコルビル、ステアリン酸L-アスコルビル、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、及び没食子酸プロピル、並びに、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、及びメタリン酸ナトリウムなどのキレート剤が含まれる。さらには、希釈剤、添加剤、及び賦形剤は、他の一般的に用いられる成分、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及び重炭酸ナトリウムなどの無機塩、並びにクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸ナトリウムなどの有機塩を含みうる。
【0114】
本明細書で用いられる医薬組成物は、長期間にわたって、例えば、数ヶ月又は数年の単位で安定でありうる。幾つかの実施形態では、医薬組成物は1つ以上の適切な防腐剤を含む。防腐剤の非限定的な例には、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、過酸化水素など及び/又はそれらの組合せが含まれる。防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セパゾニウム、塩化セチルピリジニウム、又は臭化ドミフェン(BRADOSOL(登録商標))などの第四級アンモニウム化合物を含むことができる。防腐剤は、チメロサール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、又はホウ酸フェニル水銀などのチオサリチル酸のアルキル水銀塩を含むことができる。防腐剤は、メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのパラベンを含むことができる。防腐剤は、クロロブタノール、ベンジルアルコール、又はフェニルエチルアルコールなどのアルコールを含むことができる。防腐剤は、クロルヘキシジン又はポリヘキサメチレンビグアニドなどのビグアニド誘導体を含むことができる。防腐剤は、過ホウ酸ナトリウム、イミダゾリジニル尿素、及び/又はソルビン酸を含むことができる。防腐剤は、PURITE(登録商標)の商品名で知られ、市販されているような安定化されたオキシクロロ錯体を含むことができる。防腐剤は、Henkel KGaA社から商品名POLYQUART(登録商標)で知られ、市販されているようなポリグリコール-ポリアミン縮合樹脂を含むことができる。防腐剤は、安定化された過酸化水素を含むことができる。防腐剤は塩化ベンザルコニウムでありうる。幾つかの実施形態では、医薬組成物は防腐剤を含まない。
【0115】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物、医薬組成物、又は化合物は、実質的に夾雑物(例えば、血球、血小板、ポリペプチド、ミネラル、血液由来の化合物又は化学物質、ウイルス、細菌、他の病原体、毒素など)を含まない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物、医薬組成物、又は化合物は、血清及び血清夾雑物(例えば、血清タンパク質、血清脂質、血清炭水化物、血清抗原など)を実質的に含まない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物、医薬組成物、又は化合物は、病原体(例えば、ウイルス、寄生虫、又は細菌)を実質的に含まない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物、医薬組成物、又は化合物は、エンドトキシンを実質的に含まない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物、医薬組成物、又は化合物は無菌である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物又は医薬組成物は、式I、II、III、又はIVの化合物を含む。
【0116】
本明細書に記載される医薬組成物は、それらを使用する治療法に従って、任意の適切な形態及び/又は量で対象に投与するように構成することができる。例えば、非経口投与(例えば、注射又は注入による)用に構成された医薬組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルションの形態をとることができ、それは、配合剤、賦形剤、添加剤、及び/又は水性又は非水性溶媒、共溶媒、懸濁溶液などの希釈剤、防腐剤、安定剤、及び/又は分散剤を含みうる。幾つかの実施形態では、非経口投与に適した医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を含みうる。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、乾燥粉末形態へと凍結乾燥される。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、適切な医薬溶媒(例えば、水、生理食塩水、等張緩衝液(例えば、PBS)、DMSO、それらの組合せなど)での再構成に適した乾燥粉末形態へと凍結乾燥される。ある特定の実施形態では、凍結乾燥された医薬組成物の再構成された形態は、哺乳動物への非経口投与(例えば、静脈内投与)に適している。
【0117】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、経口投与用に構成され、錠剤、マイクロ錠剤、ミニ錠剤、マイクロペレット、粉末、顆粒、カプセル(例えば、マイクロ錠剤、マイクロペレット、粉末、又は顆粒を充填したカプセル)、エマルション、溶液など、又はそれらの組合せとして製剤化することができる。経口投与用に構成された医薬組成物は、有効成分の放出を遅延又は持続するための適切なコーティングを含むことができ、その非限定的な例には、脂肪酸、ワックス、シェラック、プラスチック、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(酢酸コハク酸ヒプロメロース)、ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸トリメリト酸セルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、植物繊維など、及びそれらの組合せなどの腸溶コーティングが含まれる。
【0118】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、局所投与用に構成することができ、結合剤及び/又は潤滑剤、ポリマー性グリコール、ゼラチン、カカオバター、又は他の適切なワックス又は脂肪のうちの1つ以上を含みうる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、概して局所薬物投与に適しており、かつ当業者に知られている任意の適切な材料を含む、局所担体を含有する局所製剤に組み込まれる。ある特定の実施形態では、医薬組成物の局所製剤は、局所パッチを使用して化合物を投与するために製剤化される。
【0119】
ある特定の実施形態では、最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達フォーマット、及び所望の投薬量に応じて、当業者によって決定される(例えば、上記のRemington’95又はRemington2013を参照)。医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉末化、乳化、カプセル化、封入又は錠剤化プロセスを含む、任意の適切な方法によって製造することができる(例えば、Remington’95又はRemington2013に記載される方法を参照)。
【0120】
投与経路
本明細書に開示される組成物、医薬組成物、又は化合物を対象に投与する任意の適切な方法を使用することができる。本明細書に開示される化合物又は本明細書に開示される組成物の投与のために、任意の適切な製剤及び/又は投与経路を使用することができる(例えば、ここに参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、Fingl et al. 1975, in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”を参照)。適切な製剤及び/又は投与経路は、例えば、対象のリスク、年齢、及び/又は状態を考慮して、医療専門家(例えば、医師)によって選択されうる。投与経路の非限定的な例には、局所又は局部(例えば、経皮的又は皮膚的に(例えば、皮膚又は表皮上)、眼内又は眼の上、鼻腔内、経粘膜、耳、耳内(例えば、鼓膜の後ろ))、経腸(例えば、胃腸管を介して、例えば、経口的に(例えば、錠剤、カプセル、顆粒、液体、乳化型、トローチ剤、又はそれらの組合せとして)、舌下、胃栄養チューブ、直腸などによって、送達される)、非経口投与(例えば、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、腔内、頭蓋内、関節内、関節腔に、心臓内、(心臓に)、海綿体内注射、病巣内(病変に)、骨内注入(骨髄に)、脊髄内(脊柱管に)、子宮内、膣内、膀胱内注入、硝子体内)によるなど、又はそれらの組合せが含まれる。
【0121】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物又は本明細書に記載される医薬組成物は、適切な方法を使用して、肺、気管支、気管、食道、副鼻腔、又は鼻腔に投与され、その非限定的な例には、鼻腔内投与、気管内注入、及び経口吸入投与(例えば吸入器、例えば、単回/複数回投与の乾燥粉末吸入器、ネブライザなどの使用による)が含まれる。
【0122】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物又は本明細書に開示される医薬組成物は、対象に提供される。例えば、対象に提供される組成物は、自己投与のため、又は別の者(例えば、非医療専門家)による対象への投与のために、対象に提供されることがある。別の例として、組成物は、本明細書に記載される組成物又は治療を患者に提供することを許可する開業医によって書かれた指示(例えば、処方箋)として提供することができる。さらに別の例では、組成物は、対象が、例えば、経口、静脈内、又は吸入器を利用して組成物を自己投与する場合に、対象に提供されうる。
【0123】
あるいは、本明細書に開示される化合物又は組成物は、全身的ではなく局所的に、例えば、デポー又は徐放性製剤の使用を含む、治療のための皮膚、粘膜、又は目的の領域への直接適用によって投与することができる。
【0124】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物は、単独で(例えば、単一の活性成分(AI、又は例えば、単一の医薬品有効成分(API)として)投与される。他の実施形態では、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物は、1つ以上の追加のAI/APIと組み合わせて、例えば、2つの別々の組成物として、又は1つ以上の追加のAI/APIが医薬組成物中の本明細書に開示される化合物と一緒に混合若しくは配合される単一の組成物として、投与される。
【0125】
用量及び治療的有効量
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物の量(例えば、医薬組成物中)は、治療的有効量である。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量が、対象に投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量は、有効な治療成績を得るために必要な量である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量は、呼吸困難に起因する認識機能障害又は認知障害を治療又は予防するのに十分な量である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量は、PICCDを治療又は予防するのに十分な量である。治療的有効量の決定は、とりわけ本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0126】
ある特定の実施形態では、治療的有効量は、有効な治療効果(例えば、有益な治療効果)を提供するのに十分に高い量であり、かつ、望ましくない有害作用を最小限に抑えるのに十分に低い量である。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量は、多くの場合、年齢、体重、対象の一般的な健康状態、治療される状態の重症度、ICUでの滞在期間、挿管期間、又は対象が人工呼吸器に接続されている時間に応じて、対象ごとに異なりうる。したがって、幾つかの実施形態では、治療的有効量は経験的に決定される。したがって、対象に投与される化合物の治療的有効量は、例えば、動物又は臨床研究において有効であることが見出された量、医師の経験、及び推奨される用量範囲又は投薬ガイドラインに基づいて、当業者によって決定することができる。
【0127】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物の治療的有効量は、許容可能な治療成績を得ることを目的とした適切な用量(例えば、適切な量、頻度、及び/又は濃度で(これは多くの場合、対象の体重、年齢、及び/又は状態に依存する))で投与される。ある特定の実施形態では、治療的有効量の化合物は、少なくとも0.01mg/kg(例えば、対象の体重1kgあたりの本発明の化合物のmg)、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも10mg/kg、又は少なくとも100mg/kgから選択される1回以上の用量を含む。ある特定の実施形態では、治療的有効量の化合物は、約0.001mg/kg(例えば、対象の体重1kgあたりの本発明の化合物のmg)~約5000mg/kg、0.01mg/kg~1000mg/kg、0.01mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~1000mg/kg、1mg/kg~1000mg/kg、10mg/kg~1000mg/kg、100mg/kg~1000mg/kg、0.1mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~250mg/kg、0.1mg/kg~150mg/kg、0.1mg/kg~100mg/kg、0.1mg/kg~75mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~25mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.5mg/kg~5mg/kg、それらの介在量及び組合せの1回以上の用量から選択される。幾つかの態様では、対象に投与される化合物の治療的有効量は、約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、500mg/kg、並びにそれらの介在量及び組合せの1回以上の用量を含む。幾つかの実施形態では、治療的有効量の本明細書に開示される化合物は、約0.1mg/kgから約50mg/kgの間である。
【0128】
ある特定の実施形態では、化合物の治療的有効量は、以下のようにマウスに有効な用量から選択される用量を参照して用量が決定される、1回以上の用量を含む。Dμg/g=Dmg/kgのマウス用量は、マウスとヒトとの間の体表面積の差を考慮に入れた換算係数である、3/37などの当技術分野で知られている換算係数によって換算することができる(FASEB J. 22, 659-661 (2007)参照)。したがって、幾つかの実施形態では、ヒトに対する適切な用量は、Dμg/gのマウス用量に基づいて、(3/37)*Dmg/kgとなるであろう。例えば、5μg/gのマウス用量は、ヒトでは5mg/kg×3/37=0.40mg/kgに換算され、60kgのヒトでは24mgの用量になるであろう。この変換を使用して、(i)10μg/gのマウス用量では、ヒト用量は0.81mg/kgになり、及び(ii)25μg/gのマウス用量では、ヒト用量は2.02mg/kgになるであろう。
【0129】
幾つかの態様では、対象に投与される化合物の治療的有効量は、約0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、並びにそれらの介在量及び組合せの1回以上の用量を含む。幾つかの実施形態では、治療的有効量の本明細書に開示される化合物は、約0.4mg/kgから約2.0mg/kgの間である。
【0130】
幾つかの実施形態では、治療的有効量の本明細書に開示される化合物、又は本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物を投与することは、有効な治療成績を得るために必要とされる頻度又は間隔で適切な用量を投与することを含む。幾つかの実施形態では、治療的有効量の本明細書に開示される化合物又は医薬組成物を投与することは、適切な用量を、1時間ごと、2時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、1日3回、1日2回、1日1回、週6回、週5回、週4回、週3回、週2回、週1回、それらの組合せで、及び/又はその規則的又は不規則な間隔で、及び/又は単に必要に応じた又は医療専門家によって推奨される頻度又は間隔で、投与することを含む。幾つかの実施形態では、治療的有効量の化合物又は医薬組成物は、例えば静脈内投与によって、連続的に投与される。
【0131】
幾つかの実施形態では、治療的有効量の化合物は、ICUに滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続の前、最中、又は後に、対象に投与される。幾つかの実施形態では、治療的有効量の化合物は、ICUへの滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続の最長3日前、最長2日前、最長1日前、最長20時間前、最長15時間前、最長10時間前、最長5時間前、最長2時間前、又は最長1時間前に、対象に投与される。幾つかの実施形態では、治療的有効量の化合物は、ICUへの滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続の0から72時間前、0から48時間前、0から24時間前、0から12時間前、0から6時間前、0から4時間前、又は0から2時間前に、対象に投与される。幾つかの実施形態では、治療的有効量の化合物は、ICUに滞在中、挿管中、及び/又は対象が人工呼吸器に接続されている間に投与される。幾つかの実施形態では、治療的有効量の化合物は、ICUに滞在、挿管、又は人工呼吸器への接続の最長1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、2日後、3日後、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、24ヶ月後、又は最長で36ヶ月後に、断続的又は連続的に投与される。
【0132】
人工呼吸器に関して本明細書で用いられる「接続された」という用語は、人工呼吸器が対象又は患者の肺に酸素を供給するように「動作可能に接続」されていることを意味する。人工呼吸器は当技術分野で知られており、多くの場合、呼吸可能な空気及び/又は酸素を積極的に患者の肺に出し入れする医療機械である。
【0133】
「集中治療室(ICU)」という語句は、集中治療室、集中治療設備、集中治療部、及び/又は集中治療ユニットを指し、多くの場合、重度の又は生命を脅かす病気やけがをした患者に集中治療薬を提供する、病院の特別な部門又は支部であり、これらの患者は、常にケアを行い、生命維持装置及び投薬を注意深く監視する必要がある。ICUは、当技術分野で知られており、標準的な病室とは異なる。ICUには、多くの場合、重症患者のケアを専門とする高度な訓練を受けた医師、看護師、及びセラピストが配置される。また、ICUは、患者に対するスタッフの比率の高さ、並びに常套的に利用可能ではない高度な医療資源及び機器へのアクセスの点で、一般病棟とは区別される。「集中治療室に入院」という語句は、患者として病院の集中治療室にいる、集中治療室に運ばれる、又は集中治療室に移される対象を指す。
【0134】
キット
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物又は本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物を含むキットが本明細書に提示される。幾つかの実施形態では、キットは、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物の1回以上の用量を含む。幾つかの実施形態では、キットは、本明細書に記載されるように、本明細書に開示される化合物、又はその医薬組成物の1回以上の用量を含むことができる、1つ以上のパック及び/又は1つ以上のディスペンサ装置を含む。パックの非限定的な例には、本明細書に開示される化合物又は本明細書に記載される組成物を含む、金属、ガラス、又はプラスチックの容器、シリンジ、又はブリスターパックが含まれる。ある特定の実施形態では、キットは、本明細書に開示される化合物又は本明細書に記載される組成物を含んでいても含んでいなくてもよい、シリンジ又は吸入器などの分配装置を含む。パック及び/又はディスペンサ装置には、投与のための説明書を添付することができる。パック又はディスペンサには、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の容器に関連する通知を添付することもでき、この通知は、ヒト又は動物への投与用の薬物の剤形の機関による承認を反映している。このような通知は、例えば、米国食品医薬品局によって処方薬について承認されたラベル、又は承認された製品インサートでありうる。
【0135】
幾つかの実施形態では、キット又はパックは、1日から1年、1日から180日間、1日から120日間、1日から90日間、1日から60日間、1日から30日間、1~24時間、1~12時間、1~4時間、又はそれらの間の時間量で、患者を治療するのに十分な本明細書に開示される化合物の量を含む。
【0136】
キットは、任意選択的に、構成要素の説明、若しくはキット内での構成要素のインビトロ、インビボ、又はエクスビボでの使用のための説明書を提供する、製品ラベル及び/又は1つ以上の包装インサートを含む。例示的な説明書は、治療プロトコル又は治療レジメンの説明書を含みうる。ある特定の実施形態では、キットは、該キットの構成要素を収容する物理的構造を指す、包装材を含む。包装材は、構成要素を無菌的に維持することができ、そのような目的に一般的に用いられる材料(例えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、箔、アンプル、バイアル、チューブなど)で作ることができる。製品のラベル又はインサートには、「印刷物」、例えば、紙又は段ボールなど、若しくは別個の、又は構成成分、キット、梱包材(例えば箱)に貼り付けられているもの、若しくはキットの構成成分を含むアンプル、チューブ、又はバイアルに取り付けられているものが含まれる。ラベル又はインサートは、コンピュータ可読媒体、CD-又はDVD-ROM/RAM、DVD、MP3などの光ディスク、DVD、MP3、磁気テープ、若しくはRAM及びROMなどの電気的記憶媒体(electrical storage media)、若しくは磁気/光学記憶媒体、フラッシュ媒体、又はメモリタイプのカードなどのハイブリッドをさらに含むことができる。製品ラベル又はインサートには、その中の1つ以上の構成成分の識別情報、用量量、作用機序を含めた有効成分の臨床薬理学、薬物動態(PK)、及び薬力学(PD)を含めることができる。製品ラベル又はインサートには、製造業者の情報、ロット番号、製造業者の所在地、日付、キット構成成分を使用することができる特定の状態、障害、病気、又は症状に関する情報を含めることができる。製品ラベル又はインサートには、方法、治療プロトコル、又は治療レジメンでキット構成成分の1つ以上を使用する臨床医又は対象のための説明書を含めることができる。説明書には、投与量、頻度、又は期間、及び本明細書に記載される方法、治療プロトコル、又は治療レジームのいずれかを実施するための説明を含めることができる。キットには、本明細書に記載される方法のいずれかを実施するためのラベル又は説明書を追加的に含めることができる。製品ラベル又はインサートには、可能性のある有害な副作用及び/又は警告に関する情報を含めることができる。
【実施例】
【0137】
実施例1 - 先見的治療
60歳の男性対象が、ARDSであると診断される。対象にJ147を1mg/kgの用量で静脈内投与し、その後、1日1mg/kgの用量の静脈内投与を1~6週間続ける。対象は、回復後に1つ以上の適切な認識力試験を実施することによって、認知機能の喪失について評価される。最終試験の後、対象は認知機能の損失がほとんど又はまったくないと判断される。
【0138】
実施例2 - 先見的治療
60歳の男性対象が、COVID-19及び重度の急性呼吸器症候群であると診断される。挿管及び人工呼吸器への接続の前に、J147が1mg/kgの用量で静脈内投与され、その後、人工呼吸器に接続された状態で、1日1回の複数回の投与を行い、その後、対象が人工呼吸器から取り外された日から開始し、1~6週間の間続けて、1mg/kgの経口用量を毎日投与した。対象は、人工呼吸器から取り外されてから1週間後に開始する1つ以上の適切な認識力試験を実施することにより、PICCDについて評価される。最終試験の後、対象は認知機能の損失がほとんど又はまったくないと判断される。
【0139】
実施例3 - 新生児低酸素性虚血性脳損傷のマウスモデルにおける、ニューロン形成並びに構造的及び機能的回復の改善の実証
年間約100万人の新生児が新生児低酸素性虚血性脳損傷(HI)を患っており、その結果、生存者に重度の神経損傷が発生する率が高くなる。低体温神経保護は唯一証明された代替治療法であるが、それがもたらす利益は非常に限られており、多くの場合、利益を達成するのに間に合うように開始することはできない。新生児HIの主な病理は神経細胞死と機能不全であり、したがって、神経細胞死を防ぎ、修復を促進するためにニューロン形成を高めることが、望ましい治療戦略である。
【0140】
式IVの化合物であるJ147は、多種多様な神経毒性損傷に対して高度に神経保護的であり、神経幹細胞の増殖及び分化を促進する栄養因子である脳由来増殖因子の内因性産生を介して、神経原性である。このマウスモデル研究は、神経細胞死を強力に防ぐことによって新生児HIの転帰を改善するJ147の能力を実証し、ニューロン形成を大幅にアップレギュレートする能力を示した。挿管又は人工呼吸器への接続、又は呼吸困難、又はICUに滞在中の低酸素症のリスクを伴う他の状態又は治療に関連する低酸素症の観点から、マウスのHIを治療するためのJ147の有効性は、ARDS又はPICCDに罹患することに関連する低酸素症の結果の治療及び/又は予防のためのJ147の使用を支持する。
【0141】
生後10日目のマウスを、低酸素性虚血性損傷の修正Vanucci-Riceモデルに供し(恒久的な右総頸動脈結紮に続いて、8%酸素/バランス窒素に曝露)、次に、J147を損傷後2週間、10mg/kg/dayで毎日強制経口投与することにより、同日に治療を開始した。梗塞量、協調、移動、及び記憶の機能試験の成績、ニューロン形成のマーカー、及びアポトーシス細胞死を測定した。実験計画が
図1に要約されている。
【0142】
低酸素性虚血性(HI)損傷及びJ147治療:HI損傷を誘発するために、p10 C57BL6マウスで恒久的な右総頸動脈結紮を行い、続いて37℃の低酸素チャンバで45分間、8%酸素/残部窒素に曝露した。HI損傷の日から、J147(10mg/kg/day)又はビヒクル(コーン油、同量)のいずれかを、強制経口投与で1日1回、2週間、投与した。
【0143】
TTC染色:HI損傷の24時間後、2mmの冠状脳切片を1%の2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)に37℃で30分間浸した。個々の切片の画像をデジタル化し、梗塞領域をImageJソフトウェアで測定した。損傷量は、[対側半球量-(同側半球量-病変量)]/対側半球量×100を使用して計算した。
【0144】
磁気共鳴画像(MRI):p60でのマウス脳の死後高解像度T2強調MRIは、無線周波数送信機及び受信機として直径15mmのボリュームコイルを使用して、9.4テスラ垂直ボアNMR分光計で実施した。リフォーカスエコーシーケンスによる3D高速取得を使用した(TE/TR=40/2000ms、RARE因子=8、4信号平均、FOV=16.0mm×9.0mm×18.0mm、マトリクスサイズ=128×72×144、ネイティブ解像度≒125×125×125μm3、時間=3時間)。ROIエディタソフトウェアを使用して、容積測定を実施した。
【0145】
行動試験:異なる神経学的ドメインを分析する3つの異なる試験を採用した:i)一般的な自発運動を測定するオープンフィールド試験は、13cmの円からの脱出潜伏期間を測定することにより、p14で実施した;ii)運動協調を測定するロータロッドは、4から99rpmまで0.3rpm/秒で最長3分間加速した回転ロッド(幅9.3cm、直径3cm)の耐久時間を測定することにより、p45で実施した;iii)空間学習を測定するY迷路は、5分間の3つのアームエントリの自発的交替(異なるアーム選択の連続トリプレット)を測定することにより、p60で実施した。
【0146】
J147の投与により、急性及び慢性の両方で梗塞量が減少した。
図2及び3に示すように、J147で治療したマウスは、24時間後の組織学的測定及び50日目の磁気共鳴画像測定により、海馬の病変サイズの縮小を示した。
【0147】
図2は、実施例3における、代表的な脳の冠状切片のHI損傷の24時間後のマウス海馬の2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色(白色は損傷領域を示す)を示している。偽治療(SH)切片は損傷を示さず、HI切片は実質的な損傷を示し、J147で治療したマウスに由来するHIJ切片は、損傷の領域範囲の減少を示している。50日目のMRI測定では、未治療のHIマウスと比較して、SHマウスでは梗塞量を示さず、HIJマウスでは梗塞量の約50%の減少を示した。
【0148】
図3は、実施例3における、梗塞量の大きさを反映する、100%からの減少の程度による対側半球量のパーセンテージとしての同側半球量の測定による、J147による治療の効果を示している。SHは効果を示していない。HIJは、HIと比較して効果の大幅な低下を示している。
【0149】
J147は、新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)マウスモデルにおける海馬のアポトーシス細胞死の減少に対する用量依存性を示す。C57BL6マウスは、P10で焼灼器を使用して完全な片側頸動脈遮断に供され、続いて、8%O2で45分間、低酸素に曝露され、これに続いて、P10~P14で、ある範囲の用量のJ147又はビヒクルの毎日の強制経口投与が行われた。次に、動物を殺処理し、TUNEL染色のために処理した。偽群では、歯状回にはTUNEL陽性細胞はほとんど観察されない(DG、各々、4.7±4.1)。HIEはアポトーシス細胞を劇的に増加させ(141.7±56.6;p<0.0001)、J147の治療はこの数を用量依存的に減少させる。123.2±51.5個のTUNEL陽性細胞が0.5μg/g/日群で検出され、107.8±42.7個の細胞が1μg/g/日群で検出される(p>0.05)。5μg/g/日のJ147は、数値を大幅に減少させる(55±23.6;p<0.01)。10μg/g/日群及び25μg/g/日群では、DGにおいて42.2±23個(p<0.001)及び31.7±21.4個(p<0.001)の細胞が見られる(一方向ANOVA;n=6)。結果が
図4に示されている。
【0150】
J147治療は、偽治療マウス、HIマウス、及びJ147で治療したHIマウスにおける、NeuN陽性領域の測定値及び海馬のTUNEL陽性細胞数の計数により、
図5に示されるように、アポトーシス細胞死の減少をもたらす。新生児低酸素性虚血(HI)はP10で実施され、毎日10μg/gのJ147がP10からP14まで強制経口投与された。HIは、NeuN陽性領域の縮小をもたらし(0.52mm2/切片(SH)対0.32mm2/切片(HI);p=0.0025)、J147を与えると、領域が増大し(0.45mm2/切片(HI+J147);p=0.0433)、偽治療マウスのレベル近くまで戻る。HIはTUNEL陽性アポトーシス細胞を誘導し(36.33/切片(SH)対372.67/切片(HI);p<0.0001)、J147は、この数値を減少させる(208.17/切片(HI+J147);p=0.0092)。
【0151】
図6は、実施例3における、オープンフィールド試験、ロータロッド試験、及びY迷路試験でのJ147による治療によって誘発されたHIマウスの機能回復を示している。J147治療マウスは、HI後4日目のオープンフィールド試験、5週間でのロータロッド試験、及び50日目の歯状回依存性のY迷路空間学習タスクでパフォーマンスの有意な改善を示した(33%、治療なしのHI群と比較してp<0.001)。いずれの場合も、HIマウスは偽治療マウスよりもパフォーマンスが悪く、J147治療マウスのパフォーマンスは偽治療マウスのパフォーマンスに匹敵した。すなわち、J147治療マウスは、行動試験において、HI損傷に関連するパフォーマンスの低下からの実質的な機能回復を示した。HI損傷から4日後、移動及び旋回行動を評価するために、マウスにオープンフィールド試験を与えた。HI損傷から5週間後、運動協調を評価するために、マウスにロータロッド試験を与えた。HI損傷の50日後、作業記憶を評価するために、マウスにY迷路試験で自発的交替を与えた。
【0152】
概要:TTC染色で測定して、梗塞サイズは、1日のJ147治療で、HI対象と比較して48%縮小し(p<0.001)、MRI画像は、2週間のJ147治療で、成体マウスの病変サイズの88%の縮小を示した。その効果と一致して、J147治療は、海馬におけるアポトーシス細胞死の約50%の減少をもたらした。さらには、行動試験では、J147治療による改善が示唆された。4日目のオープンフィールド試験での急性パフォーマンス及びロータロッド試験での慢性パフォーマンスは、J147治療群で約25%、有意に改善され、一方、Y迷路の空間学習タスクは、HI対象と比較して33%の改善を示した。まとめると、これらの発見は、J147が神経保護及びニューロン形成のアップレギュレーションを介して新生児HI後の神経学的回復を促進することを強く示唆している。神経前駆体マーカーの蛍光染色により、ネスチン陽性細胞は、損傷の1日後及び1週間後に、J147治療によって増加した。1週間で、Tbr2陽性細胞が大幅に増加し、中間ニューロン前駆体の急速な増殖が示唆された。これらの結果は、J147による治療が低酸素誘発性の傷害に対して保護的であり、低酸素誘発性の傷害からの回復を促進し、したがって、本発明のある特定の実施形態に記載されるように、PICCD及びARDSに有効であろうという結論を支持するものである。
【0153】
参考文献:1.Patel SD, et al. Biochem Soc Trans. 2014 Apr;42(2):564-8; 2. Lai M, et al. J Biomed Biotechnol. 2011: 609813; 3. Prior M, et al. Alzheimers Res Ther. 2013 May 14;5(3):25; 4. Chen Q, et al. PLoS One. 2011;6(12):e27865; 5. Nicola Z, et al. Front Neuroanat. 2015 May 7;9:53。
【0154】
実施例4 - ある特定の非限定的な実施形態
実施例4は、この段落において以下に記載される、次の実施形態A1~A5、B1、C1~C27、D1~D2からなる:
A1.治療的有効量の式Iの構造を有する化合物:
【0155】
【0156】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体
を投与するステップを含む、それを必要とする対象において集中治療後の認知機能障害(PICCD)を治療又は予防する方法
[式中、
R2は、H及びメチルからなる群より選択され;
R3は、トリフルオロメチル又は他のフルオロ置換アルキルであり;
L3はカルボニルであり;かつ
R6は、存在ごとに独立して、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、カルボニル、アリール、置換アリール、置換複素環式、ハロゲン、シアノ、シアノアルキル、ニトロ、アミノ、アミジノ、カルバメート、S(O)nR7、及びC(O)R8からなる群より選択されるか、又は隣接する位置にある2つのR6が結合して、隣接するフェニル部分と融合した、任意選択的に置換されたヘテロアリール又はヘテロアルキル環を形成し;
R7は、H、R9、NH2、HNR9、又はNR9R10であり;
R8は、OH、OR9、NH2、NHR9、又はNR9R10であり;
R9及びR10は、存在ごとに独立して、任意選択的に置換されたアルキルであり;かつ
n=1又は2である]。
【0157】
A2.R6が、存在ごとに、アルキル、置換アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、及びC(O)R8からなる群より選択される、実施形態A1に記載の方法。
【0158】
A3.R6が、存在ごとに、メチル、メトキシ、ペルフルオロメチル、ペルフルオロメトキシ、ヒドロキシル、Cl、F、及びIからなる群より選択される、実施形態A2に記載の方法。
【0159】
A4.化合物が、式IIの構造:
【0160】
【0161】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体
を有する、実施形態A1に記載の方法
[式中、
(i)RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであるか;又は
(ii)RA2、RA3、RA5、及びRA6はHであり、RA4はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであるか;又は
(iii)RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はHであり、RB4はHであるか;又は
(iv)RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであるか;又は
(v)RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はHであり、RB4はHであるか;又は
(vi)RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はHであり、RB4はメチルであるか;又は
(vii)RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はHであり、RB4はメチルであるか;又は
(viii)RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RB2はメチルであり、RB4はHであるか;又は
(ix)RA2、RA4、RA5、及びRA6はHであり、RA3はメトキシであり、RB2はメチルであり、RB4はHであるか;又は
(x)RA2、RA3、RA5、及びRA6はHであり、RA4はCOOHであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであるか;又は
(xi)RA2、RA4、及びRA5はHであり、RA3及びRA6はヒドロキシルであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであるか;又は
(xii)RA2、RA4、及びRA6はHであり、RA3及びRA5はヒドロキシルであり、RB2はメチルであり、RB4はメチルであるか;又は
(xiii)RA2、RA4、及びRA5はHであり、RA3はメトキシであり、RA6はFであり、RB2はHであり、RB4はClであるか;又は
(xiv)RA3及びRA5はHであり、RA2及びRA6はFであり、RA4はヒドロキシルであり、RA6はFであり、RB2はHであり、RB4はFであるか;又は
(xv)RA2、RA4、及びRA6はHであり、RA3はヒドロキシルであり、RA5はFであり、RB2はHであり、RB4はFであるか;又は
(xvi)RA2、RA5、及びRA6はHであり、RA3及びRA4を合わせて-O-CH2-O-であり、RA5はFであり、RB2はHであり、RB4はFである]。
【0162】
A5.RA2、RA4、RA5、及びRA6がHであり、RA3がメトキシであり、RB2がメチルであり、RB4がメチルである、実施形態A4に記載の方法。
【0163】
B1.式IVの構造を含む化合物:
【0164】
【0165】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象においてPICCDを予防又は治療する方法。
【0166】
C1.式IからIVのいずれかから選択される構造を含む、治療的有効量の化合物を対象に投与することを含む、対象においてPICCDを予防又は治療する方法。
【0167】
C1.1.PICCDが、認知障害及び/又は精神障害を含む、実施形態A1からC1のいずれかに記載の方法。
【0168】
C1.2.PICCDが救急医療後症候群である、実施形態A1からC1.1のいずれかに記載の方法。
【0169】
C1.3.PICCDが、せん妄、記憶喪失、錯乱状態、意識の低下、実行機能の障害、言語障害、注意力の喪失、及び/又は視空間能力の障害を含む、実施形態A1からC1.2のいずれかに記載の方法。
【0170】
C1.4.PICCDが、急性、一過性、又は一時的である、実施形態A1からC1.3のいずれかに記載の方法。
【0171】
C1.5.PICCDが慢性である、実施形態A1からC1.4のいずれかに記載の方法。
【0172】
C2.対象がヒトである、実施形態A1からC1.5のいずれかに記載の方法。
【0173】
C2.1.対象が高齢者又は少なくとも60歳である、実施形態A1からC2のいずれかに記載の方法。
【0174】
C2.2.対象が小児患者又は13歳未満である、実施形態A1からC2.1のいずれかに記載の方法。
【0175】
C2.3.対象が女性である、実施形態A1からC2.2のいずれかに記載の方法。
【0176】
C2.4.対象が、挿管されるリスクがある、及び/又は人工呼吸器に動作可能に接続されるリスクがある、実施形態A1からC2.3のいずれかに記載の方法。
【0177】
C2.5.対象が挿管される、及び/又は人工呼吸器に動作可能に接続される、実施形態A1からC2.4のいずれかに記載の方法。
【0178】
C2.6.対象が挿管された、及び/又は人工呼吸器に動作可能に接続された、実施形態A1からC2.5のいずれかに記載の方法。
【0179】
C3.化合物が、式IIIの構造:
【0180】
【0181】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体、を含む、実施形態C1からC2.6のいずれかに記載の方法[式中、R1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル又はトリブロモメチルであり;R2は、OCH3、OCF3、又はOCBr3であり;R3及びR4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、Cl、F又はBr)、メチル、メトキシ、又はアミンから独立して選択される]。
【0182】
C4.化合物が、式IVの構造:
【0183】
【0184】
又はそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、若しくは互変異性体を含む、実施形態C3に記載の方法。
【0185】
C5.PICCDが、集中治療室への滞在に起因するか、又はそれによって誘発される、実施形態A1からC4のいずれかに記載の方法。
【0186】
C6.PICCDが、対象の挿管に起因するか、又はそれによって誘発される、実施形態A1からC5のいずれかに記載の方法。
【0187】
C7.対象が、挿管の前、ICUに滞在する前、又は人工呼吸器に動作可能に接続される前に安定した認知機能を示す、実施形態A1からC6のいずれかに記載の方法。
【0188】
C8.対象が、挿管される前又は人工呼吸器に動作可能に接続される前に、認知障害又は神経変性疾患と診断されていなかった、実施形態A1からC7のいずれかに記載の方法。
【0189】
C9.対象が、挿管される前又は人工呼吸器に動作可能に接続される前に、認知障害又は神経変性疾患と診断される、実施形態A1からC7のいずれかに記載の方法。
【0190】
C10.認知障害又は神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、緑内障、網膜変性症、黄斑変性症、老人性難聴、軽度の認知機能障害、認知症、せん妄、進行性核上性麻痺、脊髄小脳失調症、網膜神経障害、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、バックグラウンド神経障害、家族性アミロイド多発神経障害、老人性全身性アミロイドーシス、プリオン性疾患、スクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、及びアミロイド症から選択される、実施形態C8又はC9に記載の方法。
【0191】
C11.対象が、がん、糖尿病、関節炎、インスリノーマ、脳卒中、虚血(例えば、心臓虚血)、又は心血管疾患であると以前に診断されていない、及び/又はそれらを患っていない、実施形態A1からC10のいずれかに記載の方法。
【0192】
C12.対象が、がん、糖尿病、高血糖症、低血糖症、血清グルコースの変動、院内急性ストレス症候群、せん妄、関節炎、膵炎、及び/又はインスリノーマであると以前に診断されたか、それらを患っているか、又はそれらを患っている疑いがある、実施形態A1からC10のいずれかに記載の方法。
【0193】
C13.対象が、急性呼吸器症候群を患っているか、又は患うリスクがある、実施形態A1からC12のいずれかに記載の方法。
【0194】
C14.対象が、喘息を患っているか、又は患っていると診断されている、実施形態A1からC13のいずれかに記載の方法。
【0195】
C15.対象が、肺炎を患っているか、又は患っていると診断されている、実施形態A1からC14のいずれかに記載の方法。
【0196】
C16.対象が病原体に感染している、実施形態A1からC15のいずれかに記載の方法。
【0197】
C17.病原体が、ウイルス、真菌、又は細菌である、実施形態A1からC16のいずれかに記載の方法。
【0198】
C18.ウイルスがコロナウイルスである、実施形態C17に記載の方法。
【0199】
C19.コロナウイルスがCOVID19である、実施形態C18に記載の方法。
【0200】
C20.対象が以前に抑うつ症と診断された、又は抑うつ症になりやすい、実施形態A1からC19のいずれかに記載の方法。
【0201】
C21.対象が、式I、式II、式III、及び式IVのいずれか1つから選択される化合物を以前(例えば、ICUに滞在する前又は挿管前)に投与されていない、実施形態A1又はC20に記載の方法。
【0202】
C22.化合物が、対象が挿管される、又は人工呼吸器に動作可能に接続される前、最中、及び/又は後に、対象に投与される、実施形態A1又はC21に記載の方法。
【0203】
C23.化合物が、対象が集中治療室にいる、又は集中治療室に入院する前、最中、及び/又は後に、対象に投与される、実施形態A1又はC22に記載の方法。
【0204】
C24.化合物が、挿管、人工呼吸器への動作可能な接続、又はICUへの滞在又は入院の少なくとも24時間、少なくとも12時間、又は少なくとも4時間前に投与される、実施形態A1からC23のいずれかに記載の方法。
【0205】
C25.化合物が1日1回又は2回の間隔で投与される、実施形態A1からC24のいずれかに記載の方法。
【0206】
C26.化合物が、0.5mg/kgから100mg/kg、又は10mg/kgから50mg/kgの用量で投与される、実施形態A1からC25のいずれかに記載の方法。
【0207】
C27.化合物が、経口投与又は静脈内投与される、実施形態A1からC26のいずれかに記載の方法。
【0208】
D1.実施形態A1からC27のいずれかに記載の方法の実施に用いるための式I、式II、式III、及び式IVのいずれかから選択される構造を含む化合物。
【0209】
D2.実施形態A1からC27のいずれかに記載の方法の実施に用いるための式I、式II、式III、及び式IVのいずれかから選択される構造を含む化合物を含む医薬組成物。
【0210】
本明細書に引用されている各特許、特許出願、刊行物、又は他の任意の参考文献又は文書の全体が、ここに参照することによって組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書が支配する。
【0211】
特許、特許出願、出版物、又は他の任意の文書の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることを認めるものではなく、これらの出版物又は文書の内容又は日付に関する承認を構成するものでもない。
【0212】
特に定義されていない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似した又は同等の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料が本明細書に記載されている。
【0213】
本明細書に開示されるすべての特徴は、任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書に開示されている各特徴は、同じ、同等の、又は同様の目的を果たす代替な特徴に置き換えることができる。したがって、特に明記されていない限り、開示されている特徴(例えば、抗体)は、同等又は同様の特徴の属の一例である。
【0214】
本明細書で用いられる場合、すべての数値又は数値範囲は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、そのような範囲内の整数、及び範囲内の値又は整数の端数を含む。さらには、値のリストが本明細書に記載されている場合(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%又は86%)、そのリストは、それらのすべての中間値及び小数値(例えば、54%、85.4%)を含む。したがって、説明するために、80%以上の同一性への言及には、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%など、並びに81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%など、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%などが含まれる。
【0215】
より多い(より大きい)又はより小さい整数への言及には、それぞれ参照番号より大きい又は小さい任意の数が含まれる。したがって、例えば、100未満への言及には、99、98、97などから1までが含まれ、10未満への言及には、9、8、7などから1までが含まれる。
【0216】
本明細書で用いられる場合、すべての数値又は範囲には、文脈で明確に示されていない限り、そのような範囲内の値及び整数の端数、並びにそのような範囲内の整数の端数が含まれる。したがって、説明するために、1~10などの数値範囲への言及には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5などが含まれる。したがって、1~50の範囲への言及には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20など、最大50を含み、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などが含まれる。
【0217】
一連の範囲への言及には、該一連の範囲内の異なる範囲の境界値を組み合わせた範囲が含まれる。したがって、説明するために、例えば、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、又は8,000~9,000などの一連の範囲への言及には、10~50、50~100、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000などの範囲が含まれる。
【0218】
技術の基本的な態様から逸脱することなく、前述の内容を修正することができる。技術について、1つ以上の特定の実施形態を参照して実質的に詳細に説明してきたが、当業者は、本出願で具体的に開示された実施形態に変更を加えることができ、またこれらの変更及び改善は本技術の範囲及び精神の範囲内であることを認識するであろう。
【0219】
本発明は、概して、多くの実施形態及び態様を説明するために肯定的な言葉を使用して本明細書に開示される。本発明はまた、物質又は材料、方法のステップ及び条件、プロトコル、又は手順など、特定の主題が完全に又は部分的に除外される実施形態も具体的に含む。例えば、本明細書に開示される方法の幾つかの実施形態又は態様では、一部の材料及び/又は方法のステップが除外される。したがって、本発明が概して、本明細書に含まれていないものに関して本明細書で表現されていない場合でも、本発明において明示的に除外されていない態様は、それでもなお、本明細書に開示されている。
【0220】
本明細書に記載されている技術の幾つかの実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない要素なしに、適切に実施することができる。したがって、幾つかの実施形態では、「含んでいる」又は「含む」という用語は、「実質的に~からなる」又は「~からなる」又はそれらの文法的変形に置き換えることができる。「a」又は「an」という用語は、1つの要素又は複数の要素のいずれかが説明されていることが文脈上明確でない限り、それが修飾する1つの要素又は複数の要素を指すことができる(例えば、「試薬」は1つ以上の試薬を意味する場合がある)。本明細書で用いられる「約」という用語は、基礎となるパラメータの10%以内の値(すなわち、±10%)を指し、値の文字列の先頭における「約」という用語の使用は、各値を修正する(すなわち、「約1、2、及び3」は約1、約2、及び約3を指す)。例えば、「約100グラム」の重量は、90グラムから110グラムの間の重量を含みうる。本明細書で用いられる「実質的に」という用語は、「少なくとも95%」、「少なくとも96%」、「少なくとも97%」、「少なくとも98%」、又は「少なくとも99%」を意味する、値の修飾語を指し、100%を含みうる。例えば、Xを実質的に含まない組成物は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満のXを含むことができ、及び/又は、Xは組成物中に存在しないか、又は検出できない可能性がある。
【国際調査報告】