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特表2023-524232官能化有機分子を生成するための方法およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】官能化有機分子を生成するための方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/159 20060101AFI20230602BHJP
   B01J 27/18 20060101ALI20230602BHJP
   C07C 31/08 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C07C29/159
B01J27/18 Z
C07C31/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565842
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2021060996
(87)【国際公開番号】W WO2021219644
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】20382345.5
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20382918.9
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599012422
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・サージカル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】B. Braun Surgical, S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】513233665
【氏名又は名称】ウニベルジテート ポリテクニカ デ カタル-ニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポウ トゥロン ドルス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネサ サンス ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】アンナ マリア ロドリゲス リベロ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス エンリケ アレマン ランソ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーディ プイガリ ベラルタ
(72)【発明者】
【氏名】ギエム リビラ-ロペス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーディ サンズ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB05C
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BB14C
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC09C
4G169CB02
4G169CB70
4G169CB72
4G169CB74
4G169EC27
4G169ED10
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA61
4H006BA95
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE41
4H006BE60
(57)【要約】
本発明は、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子を生成するための方法であって、唯一の気体としての二酸化炭素、または二酸化炭素およびメタンを含む、または、これらからなる気体混合物として、水が存在する状況下で、永久分極ハイドロキシアパタイトを含む、または、これからなる触媒と接触させるステップを含む方法に関する。さらに、本発明は、該方法の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子、特にエタノール、メタノール、ギ酸、酢酸、マロン酸、アセトンおよび前述の官能化有機分子のうちの少なくとも2種の混合物からなるグループから選択される官能化有機分子を生成するための方法であって、
唯一の気体としての二酸化炭素、または、二酸化炭素およびメタンを含むまたはこれらからなる気体混合物を、
水が存在する状況下で、
永久分極ハイドロキシアパタイトを含むまたは永久分極ハイドロキシアパタイトからなる触媒と接触させるステップを含む、
方法。
【請求項2】
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
>65%、特に>70%、好ましくは>75%、より好ましくは65%~99%の結晶化度、および/または、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの総重量に対して、<18重量%、特に0.1重量%~17重量%の割合の非晶質リン酸カルシウム、および/または、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの総重量に対して、<36重量%、特に0.1重量%~35重量%の割合のβ-リン酸三カルシウム、および/または
10Ωcm~10Ωcm、特に10Ωcm~10Ωcmのバルク抵抗であって、前記バルク抵抗が3カ月後、好ましくは4%~73%だけ、特に4%~63%だけ、好ましくは4%だけ増加するバルク抵抗、および/または、
3カ月後、8%未満、特に8%~0.1%、好ましくは5%~3%低減する表面静電容量を、
有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハイドロキシアパタイトのサンプルを準備するステップ(a)と、
ステップ(a)で準備した前記サンプルを700℃~1200℃の間の温度で焼結するステップ(b)と、
250V~2500Vの間の定DC電圧もしくは可変DC電圧を、特に少なくとも1分間、900℃~1200℃の間の温度で、ステップ(b)で得た前記サンプルにもしくはその成形体に印加するステップ(c)、または、
1.49kV/cm~15kV/cmの間の等価電界を、特に少なくとも1分間、900℃~1200℃の間の温度で、ステップ(b)で得た前記サンプルにもしくはその成形体に印加するステップ(c)、または、
2500V~1500000Vの間の静電気放電を、特に10分未満の間、900℃~1200℃の間の温度で、ステップ(b)で得た前記サンプルにもしくはその成形体に印加するステップ(c)、または
148.9kV/cm~8928kV/cmの間の等価電界を、特に10分未満の間、900℃~1200℃の間の温度で、ステップ(b)で得た前記サンプルにもしくはその成形体に印加するステップ(c)と、
前記DC電圧もしくは前記等価電界を維持しながら、ステップ(c)で得た前記サンプルを冷却するステップ(d)、または、
前記静電気放電もしくは前記等価電界を維持するもしくは維持することなく、ステップ(c)で得た前記サンプルを冷却するステップ(d)と、
を含む工程によって、前記永久分極ハイドロキシアパタイトが得られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ハイドロキシアパタイトのサンプルを準備するステップ(a)と、
ステップ(a)で準備した前記サンプルを、1000℃の温度で、特に2時間焼結するステップ(b)と、
3kV/cmの等価電界を、1000℃の温度で、特に1時間、ステップ(b)で得た前記サンプルにまたはその成形体に印加するステップ(c)と、
前記等価電界を維持しながら、ステップ(c)で得た前記サンプルを特に30分間冷却するステップ(d)と、
を含む工程によって、前記永久分極ハイドロキシアパタイトが得られることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接触ステップは、液体水が存在する状況下で行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記接触ステップは、前記永久分極ハイドロキシアパタイトの水、特に液体水に対する体積比率が、1000:1~0.01:1、特に500:1~100:1、好ましくは300:1~350:1となる状況下で行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接触ステップは、二酸化炭素のメタンに対する体積比率が、200:1、特に3:1、好ましくは1:1となる状況下で行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記接触ステップは、全圧力が、0.1バール~100バール、特に1バール~10バール、好ましくは6バールとなる状況下で行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触ステップは、二酸化炭素の圧力が、0.035バール~100バール、特に1バール~6バール、好ましくは6バールとなる状況下で行われることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接触ステップは、
二酸化炭素の分圧が、0.035バール~90バール、特に1バール~3バール、好ましくは3バールとなる状況下、および/または、
メタンの分圧が、0.00017バール~5バール、特に1バール~3バール、好ましくは3バールの状況下で行われることを特徴とする、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記接触ステップは、
二酸化炭素の、永久分極ハイドロキシアパタイトに対するモル比が、0.1~0.5、特に0.2~0.5、好ましくは0.3~0.5となる状況下、および/または、
メタンの、永久分極ハイドロキシアパタイトに対するモル比が、0.1~0.5、特に0.2~0.5、好ましくは0.3~0.5となる状況下で行われることを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記接触ステップは、UV照射またはUV-Vis照射が、200nm~850nm、特に240nm~400nm、好ましくは250nm~260nm、より好ましくは253.7nmの波長を有する状況下で行われることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記接触ステップは、UV照射およびまたは可視光照射が、特に0.1W/m~200W/m、特に1W/m~50W/m、好ましくは2W/m~10W/mの放射照度を有する状況下で行われることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記接触ステップは、温度が、25℃~250℃、特に95℃~140℃、好ましくは95℃となる状況下で行われることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
エタノール、またはエタノールと、メタノール、ギ酸、酢酸、マロン酸およびアセトンからなるグループから選択される少なくとも1種のさらなる官能化有機分子とを含むもしくはこれらからなる混合物、またはエタノール、メタノール、ギ酸、酢酸およびアセトンを含むもしくはこれらからなる混合物、特に主要な反応生成物としてエタノールを有する混合物、またはエタノール、メタノール、酢酸、マロン酸およびアセトンを含むもしくはこれらからなる混合物、特に主要な反応生成物としてエタノールを有する混合物を生成するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項16】
二酸化炭素を大気から除去するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能化有機分子、特に、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子を生成するための方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)は、第1次温室効果ガスおよび地球温暖化の主要原因と考えられている。したがって、価値のある化学物質および工業製品を合成するためのC1供給原料としてのその効率的な利用が増々注目を集めている。例えば、二酸化炭素がエタノールを合成するためのC1供給原料として利用され得ることが知られている(W.Zhang、Y.Hu、L.Ma、G.Zhu、Y.Wang、X.Xue、R.Chen、S.Yang、Z.Jin、Adv.Sci.、2018年、5巻、1700275頁;B.An、Z.Li、Y.Song、J.Z.Zhang、L.Z.Zeng、C.Wang、W.B.Lin、Natur.Catal.、2019年、2巻、709~717頁;C.Liu、B.C.Colon、M.Ciesack、P.A.Silver、D.G.Nocera、Science、2016年、352巻、1210~1213頁;E.S.Wiedner、J.C.Linehan、Chem.Eur.J.、2018年、24巻、16964~16971頁;D.Wang、Q.Y.Bi、G.H.Yin、W.L.Zhao、F.Q.Huang、X.M.Xie、M.H.Jiang、Chem.Commun.、2016年、52巻、14226~14229頁)。
【0003】
さらに、遷移金属として作用することができる遷移金属および錯体は、CO活性化および固定化に関連する触媒作用を支配していることが知られている(C.S.Yeung、Angew.Chem.Int.Ed.、2019年、58巻、5492~5502頁;C.Weetman、S.Inoue、Chem Cat Chem、2018年、10巻、4213~4228頁;P.P.Power、Nature、2010年、463巻、171~177頁;D.D.Zhu、J.L.Liu、S.Z.Adv.Mater.、2016年、28巻、3423~3452頁)。
【0004】
CO中の炭素原子は最も高い酸化状態にあるので、CO分子は非常に不活性で、安定している。したがって、COを1個の炭素原子(C1;例えば、メタノールおよびギ酸)、2個の炭素原子(C2;例えば、エタノールおよび酢酸)および3個の炭素原子(C3;例えば、アセトン)を有する高価値の化学物質へと変換するには、動力学的に遅いCO還元法を推進するための非常に効率的な電気触媒を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、COの、高価値の化学物質、特に上述されている化学物質への変換を促進する方法に対するさらなる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目的および解決策
したがって、前述を考慮して、本発明の根本的な目的は、官能化有機分子を生成するための方法、特に選択的に生成するための方法、特に1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子を選択的に生成するための方法であって、上記に記述されている必要性に対処する方法を利用可能にすることである。
【0007】
本目的は、独立請求項1に記載の方法ならびに請求項15および16に記載の使用により達成される。本方法の好ましい実施形態は、従属請求項および本発明の明細書において定義されている。全ての請求項のそれぞれの対象事項および表現は、明白な参照によって本明細書に組み込まれている。
【0008】
本発明は、官能化有機分子を生成または合成するための方法、特に選択的に生成または合成するための方法、特に1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子を選択的に生成または合成するための方法であって、官能化有機分子が好ましくはエタノール、メタノール、ギ酸、酢酸、マロン酸、アセトンおよび前述の官能化有機分子のうちの少なくとも2種の混合物からなるグループから選択される方法に関する。好ましくは、本発明は、エタノール、またはエタノールと、少なくとも1個のさらなる官能化有機分子、好ましくはメタノール、ギ酸、酢酸、マロン酸およびアセトンからなるグループから選択される少なくとも1個のさらなる官能化有機分子と、を含むもしくはこれらからなる混合物を生成または合成するための方法、特に選択的に生成または合成する方法に関し、特にエタノール、メタノール、ギ酸、酢酸およびアセトンを含むもしくはこれらからなる混合物、特に主要な反応生成物としてエタノールを有する混合物に関し、またはエタノール、メタノール、酢酸、マロン酸およびアセトンを含むもしくはこれらからなる混合物、特に主要な反応生成物としてエタノールを有する混合物に関する。
【0009】
本方法は、
水、特に液体水(HO)の存在下で、唯一の気体としての二酸化炭素(CO)(すなわち二酸化炭素であってさらなる気体無し)を、触媒、特に永久分極ハイドロキシアパタイトを含む、もしくはこれからなる電気触媒と接触させるステップ、または、
水、特に液体水(HO)の存在下で、二酸化炭素(CO)およびメタン(CH)を含むもしくはこれらからなる、特に二酸化炭素(CO)およびメタン(CH)のみを含むもしくはこれらのみからなる気体混合物を、触媒、特に永久分極ハイドロキシアパタイトを含むまたはこれからなる電気触媒と接触させるステップ、
を含む。
【0010】
以下、本発明の方法の上記ステップは、「接触ステップ」と表される。
【0011】
「官能化有機分子」という用語は、本発明に従い使用される場合、官能基、すなわち有機分子の特徴的化学反応に通常関与している特定の置換基または部分を保持するまたは含む有機分子を意味する。好ましくは、官能基は、カルボキシ基、ホルミル基、ケト基、ヒドロキシ基およびこれらの組合せからなるグループから選択される。
【0012】
さらに、「官能化有機分子」という用語は、本発明に従い使用される場合、1種類の有機分子、例えばアルコール、例えばエタノールまたはカルボン酸、例えばギ酸、または異なる有機分子を含むもしくはこれらからなる混合物を指していてもよい。異なる有機分子は、例えば、炭素原子および/または官能基の数において異なり得る。
【0013】
好ましくは、「官能化有機分子」という用語は、本発明に従い使用される場合、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、アルコールまたはこれらの混合物を意味する。より好ましくは、カルボン酸/カルボン酸は、ギ酸および/または酢酸および/またはマロン酸である。ケトン/ケトンは好ましくはアセトンである。アルコール/アルコールは好ましくはエタノールおよび/またはメタノールである。
【0014】
先行する段落によると、本発明による方法は、好ましくはカルボン酸を生成または合成するための方法、特に選択的に生成または合成するための方法、特に1~3個の炭素原子を有する異なるカルボン酸、好ましくはギ酸および/または酢酸、および/またはマロン酸、および/またはアルデヒド、特に1~3個の炭素原子を有する異なるアルデヒド、および/またはケトン、特に1~3個の炭素原子を有する異なるケトン、好ましくはアセトン、および/またはアルコール、特に1~3個の炭素原子を有する異なるアルコール、好ましくはエタノールおよび/またはメタノールを選択的に生成または合成するための方法である。
【0015】
より好ましくは、本発明による方法は、エタノール、メタノール、ギ酸、酢酸、マロン酸、アセトンおよびこれらの混合物、すなわち前述の官能化有機分子のうちの少なくとも2種の混合物からなるグループから選択される官能化有機分子を生成または合成するための方法、特に選択的に生成または合成するための方法である。
【0016】
特に好ましくは、本発明による方法は、エタノール、またはエタノール、メタノール、ギ酸、酢酸およびアセトンを含むもしくはこれらからなる混合物、特に主要な反応生成物としてエタノールを有する混合物、またはエタノール、メタノール、酢酸、マロン酸およびアセトンを含むもしくはこれらからなる混合物、特に主要な反応生成物としてエタノールを有する混合物を生成または合成するための方法、特に選択的に生成または合成するための方法である。
【0017】
「主要な反応生成物」という用語は、特にエタノールの文脈で、本発明に従い使用される場合、異なる生成物、特に異なる官能化有機分子、特に1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子を含むまたはこれらからなる混合物の中で最も高いモル収率を有する生成物を意味する。
【0018】
「永久分極ハイドロキシアパタイト」という用語は、本発明に従い使用される場合、完全な構造的再分布、特にほとんど完璧な構造的再分布が行われたハイドロキシアパタイトを意味し、このハイドロキシアパタイトは高い結晶化度を有し、すなわち非晶質リン酸カルシウムの量が特に低く、電気化学的活性の増加ならびに単位質量当たりおよび表面の電荷の蓄積により検出される空孔が存在する。このハイドロキシアパタイトは時間の経過と共に消滅しない電気化学的活性およびイオン移動性を有する。永久分極ハイドロキシアパタイトの対応する31P-NMRスペクトルは図1に示されている通りである。好ましくは、前記スペクトルは、基準としてリン酸(HPO)を使用して、固体ハイドロキシアパタイトを用いて取得し、ハイドロキシアパタイトのリン酸基に対応する独特なピーク2.6ppmを示す。
【0019】
「熱分極ハイドロキシアパタイト」という用語は、本発明に従い使用される場合、好ましくは、下記のステップ(a)、(b)を含む方法(熱分極プロセス)で得られるまたは入手可能な永久分極ハイドロキシアパタイトを意味する。
ハイドロキシアパタイトのサンプルを、特に700℃~1200℃の間の温度で焼結するステップ(a)と、
250V~2500Vの間の定DC電圧もしくは可変DC電圧を、特に少なくとも1分間、および/もしくは900℃~1200℃、特に1000℃~1200℃の間の温度で印加するステップ(b)、または、
1.49kV/cm~15kV/cmの間の等価電界を、特に少なくとも1分間、および/もしくは900℃~1200℃、特に1000℃~1200℃の間の温度で印加するステップ(b)、または、
2500V~1500000Vの間の静電気放電を、特に>0分間~24時間の間、例えば、10分未満の間、および/もしくは900℃~1200℃、特に1000℃~1200℃の間の温度で印加するステップ(b)、または、
148.9kV/cm~8928kV/cmの間の等価電界を、特に>0分間~24時間の間、例えば、10分未満の間、および/もしくは900℃~1200℃、特に1000℃~1200℃の間の温度で印加するステップ(b)。
【0020】
ステップ(a)のハイドロキシアパタイトのサンプルは、天然、すなわち自然発生のハイドロキシアパタイトのサンプルまたは合成ハイドロキシアパタイトのサンプルであってよい。
【0021】
さらに、ステップ(a)のハイドロキシアパタイトのサンプルは、特に結晶性ハイドロキシアパタイトのサンプル、非晶質ハイドロキシアパタイトのサンプル、結晶性ハイドロキシアパタイトの混合物のサンプルおよび非晶質リン酸カルシウム、ならびにこれらの混合物からなるグループから選択されてもよい。
【0022】
したがって、本発明による組成物または材料の永久分極ハイドロキシアパタイトは、好ましくは上記方法(熱分極プロセス)により得られるまたは入手可能である。
【0023】
「室温」という用語は、本発明に従い使用される場合、15℃~35℃、特に18℃~30℃、好ましくは20℃~30℃、より好ましくは20℃~28℃、特に20℃~25℃の温度を意味する。
【0024】
本発明は、1個の炭素原子を有する官能化有機分子(例えば、メタノールおよび/またはギ酸)、2個の炭素原子を有する官能化有機分子(例えば、エタノールおよび/または酢酸)および3個の炭素原子を有する官能化有機分子(例えば、アセトン)を、二酸化炭素単独からまたは二酸化炭素およびメタンから、触媒としての永久分極ハイドロキシアパタイトの存在下で、生成または合成する、特に選択的に生成または合成することが、穏やかな条件(特に<10バールの圧力および≦250℃、特に<250℃の温度)下で、より低いレベルの環境の汚染およびコストで達成可能であるという驚くべき発見に基づく。理論に制約されることを望むことなく、本発明による、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子の生成または合成は、還元された二酸化炭素の水素付加およびC-C結合の構築を含む。よって、本発明による方法はまた、カルボン酸(例えば、ギ酸および/または酢酸)および/またはアルデヒドおよび/またはケトン(例えば、アセトン)および/またはアルコール(例えば、メタノールおよび/またはエタノール)への二酸化炭素の電解還元法として表示されてもよく、永久分極ハイドロキシアパタイトもまた電解触媒として表示されてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態では、永久分極ハイドロキシアパタイトは、
結晶化度であって、>65%、特に>70%、好ましくは>75%、より好ましくは65%~99.9%の結晶化度、
および/または
非晶質リン酸カルシウムであって、永久分極ハイドロキシアパタイトの総重量に対して、<18重量%、特に0.1重量%~17重量%もしくは<9重量%、好ましくは<5重量%、特に<0.1重量%の割合の非晶質リン酸カルシウム、
および/または
β-リン酸三カルシウムであって、永久分極ハイドロキシアパタイトの総重量に対して、<36重量%、特に0.1重量%~35重量%もしくは<12重量%、好ましくは<5重量%、特に<0.5重量%の割合のβ-リン酸三カルシウム、
および/または
バルク抵抗であって、10Ωcm~10Ωcm、特に10Ωcm~10Ωcm、特に10Ωcm~10Ωcm、好ましくは10Ωcmのバルク抵抗、
および/または
表面静電容量であって、3カ月後、8%未満、特に8%~0.1%、好ましくは5%~3%に低減する表面静電容量を、含むまたは有する。
【0026】
「バルク抵抗」という用語は、本発明に従い使用される場合、電子移動に対する抵抗を意味し、電気化学的インピーダンス分光法により決定され得る。
【0027】
好ましくは、バルク抵抗は、3カ月後、0.1%~33%だけ、特に4%~63%だけ、好ましくは4%だけ増加する。
【0028】
「表面静電容量」という用語は、本発明に従い使用される場合、熱分極プロセスにより誘発されるハイドロキシアパタイトの表面変化に起因する静電容量を意味し、電気化学的インピーダンス分光の手段により決定され得る。
【0029】
本発明に従い使用される永久分極ハイドロキシアパタイトのさらなる特徴および利点に関しては、その内容が明白な参照により本明細書に組み込まれているPCT出願WO2018/024727A1を参照されたい。
【0030】
本発明のさらなる実施形態では、永久分極ハイドロキシアパタイトは、下記のステップ(a)、(b)、(c)、(d)を含む方法で取得されるまたは取得可能である。
ハイドロキシアパタイトのサンプル、特に結晶性ハイドロキシアパタイトを準備するステップ(a)と、
ステップ(a)で準備したサンプルを、特に700℃~1200℃の間の温度で焼結するステップ(b)と、
250V~2500Vの間の定DC電圧もしくは可変DC電圧を、特に少なくとも1分間、および/もしくは900℃~1200℃、特に1000℃~1200℃の間の温度で、ステップ(b)で得たサンプルにもしくはその成形体に印加するステップ(c)、または、
1.49kV/cm~15kV/cmの間と等価電界を、特に少なくとも1分間および/もしくは900℃~1200℃の間の温度で、特に1000℃~1200℃で、ステップ(b)で得たサンプルにもしくはその成形体に印加するステップ(c)、または
2500V~1500000Vの間の静電気放電を、特に>0分間~24時間の間、例えば10分未満の間、および/もしくは900℃~1200℃、特に1000℃~1200℃の間の温度で、ステップ(b)で得たサンプルにもしくはその成形体に印加するステップ(c)、または、
148.9kV/cm~8928kV/cmの間の等価電界を、特に>0分間~24時間の間、例えば、10分未満の間、および/もしくは900℃~1200℃、特に1000℃~1200℃の間の温度で、ステップ(b)で得たサンプルにもしくはその成形体に印加するステップ(c)、および
DC電圧もしくは等価電界を維持しながら、ステップ(c)で得たサンプルを冷却するステップ(d)、または、
静電気放電もしくは等価電界を維持しながら、ステップ(c)で得たサンプルを冷却するステップ(d)、または、
DC電圧も静電気放電も等価電界も維持することなく、ステップ(c)で得たサンプルを冷却するステップ(d)。
【0031】
「サンプル」という用語は、本発明に従い使用される場合、1つのサンプル、すなわち1つだけのサンプル(単数)、または複数のサンプル、すなわち2つまたはそれよりも多くのサンプルを特に意味し得る。したがって、「成形体」という用語は、本発明に従い使用される場合、特に1つの成形体、すなわち1つだけの成形体(単数)、または複数の成形体、すなわち2つまたはそれよりも多くの成形体を意味し得る。
【0032】
上述のステップ(a)は、二塩基性リン酸アンモニウム(リン酸水素二アンモニウム、(NHHPO)および硝酸カルシウム(Ca(NO)を反応物質または出発材料として使用することにより行うことができる。特に、ステップ(a)は、下記のステップ(a)~(a)により行うことができる。
混合物、特に水性混合物、好ましくは、二塩基性リン酸アンモニウムおよび硝酸カルシウムの水性アルコール性混合物を準備するステップ(a)、
ステップ(a)で準備された混合物を、特に室温で撹拌するステップ(a)、
ステップ(a)で撹拌した混合物を熱水処理するステップ(a)、
ステップ(a)で熱水処理された混合物を冷却するステップ(a)、
ステップ(a)の混合物を冷却した後、得られた沈殿物を分離するステップ(a)、および
ステップ(a)で分離した沈殿物を凍結乾燥して、ハイドロキシアパタイト、特に結晶性ハイドロキシアパタイトを生成するステップ(a)。
【0033】
ステップ(a)は、特に二塩基性リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、水、特に脱イオン水、エタノール、および任意選択でキレート化カルシウム溶液を含むまたはこれらからなる混合物を使用することにより行われてもよい。有利には、混合物のpH値および/または混合物を準備するために適用された硝酸カルシウム水溶液のpH値は、10~12、好ましくは10.5に調整されてもよい。よって、ハイドロキシアパタイトの形状およびサイズ、特にナノ粒子の形態は制御することができる。さらに、ステップ(a)は、撹拌下、特に穏やかな撹拌下で、例えば150rpm~400rpmを適用して行われてもよい。さらに、ステップ(a)は、1分~12時間、特に1時間行われてもよい。ステップ(a)は、また本発明による熟成ステップと呼ぶこともできる。さらに、ステップ(a)は、60℃~240℃の温度、好ましくは150℃の温度で行われてもよい。さらに、ステップ(a)は、1バール~250バールの圧力、好ましくは20バールの圧力で行われてもよい。さらに、ステップ(a)は、0.1時間~72時間、好ましくは24時間行われてもよい。さらに、ステップ(a)は、ステップ(a)で熱水処理した混合物を、0℃~90℃、特に25℃の温度に冷却することにより行われてもよい。さらに、ステップ(a)は、遠心分離および/または濾過により行われてもよい。さらに、ステップ(a)で分離された沈殿物は、ステップ(a)が行われる前に、特に水および/またはエタノールと水の混合物を使用して洗浄されてもよい。さらに、ステップ(a)は、1日~4日間、特に2日~3日間、好ましくは3日間行われてもよい。
【0034】
さらに、上述のステップ(b)は、700℃~1150℃の間の温度で、特に800℃~1100℃の間の温度で、特に1000℃の温度で行われてもよい。
【0035】
さらに、本方法は、好ましくはステップ(b)とステップ(c)の間にさらに設けられるステップ(bc)であって、成形体を形成するために、ステップ(b)で得たサンプルをプレスする、またはその成形体を形成する、すなわち、ステップ(b)で得たサンプルの成形体を形成するステップ(bc)を含む。
【0036】
特に、ステップ(bc)は、1MPa~1000MPaの圧力、特に100MPa~800MPaの圧力、好ましくは600MPa~700MPaの圧力で行われてもよい。さらに、ステップ(bc)は1分~90分、特に5分~50分、好ましくは10分~30分の間行われてもよい。
【0037】
成形体は、多角形、例えば三角形、平方形もしくは長方形、五角形、六角形、七角形、八角形もしくは九角形、またはコーナーレス、特に円形、卵型もしくは楕円形状、横断面を有してもよい。さらに、成形体は、>0cm~10cm、特に>0cm~5cm、好ましくは>0cm~2cmの厚さを有してもよい。特に、成形体は、0.1cm~10cm、特に0.1cm~5cm、好ましくは0.5cm~2cmの厚さを有してもよい。
【0038】
好ましくは、成形体の形態は、円板、平板、円錐または円柱である。
【0039】
有利には、ステップ(c)を実行することにより、ステップ(b)で得たサンプルまたはその成形体の触媒の活性化を達成することができる。好ましくは、ステップ(c)は、陽極と陰極との間に、ステップ(b)で得たサンプルを配置することにより、またはその成形体を配置することにより行われ、ステップ(b)で得たサンプルまたはその成形体は両方の電極と接触している。電極は、例として、ステンレススチールプレート、特にステンレススチールAISI 304プレートの形態であってよい。さらに、電極は、相互の距離0.01mm~10cm、特に0.01mm~5cm、好ましくは0.01mm~1mmを有することができる。
【0040】
電極は異なる形状であることができる。電極は多角形の断面、例えば平方形もしくは長方形、またはコーナーレス、特に円形、卵型もしくは楕円形状、横断面を有することができる。特に、電極は、>0cm~10cm、特に>0cm~5cm、好ましくは>0cm~1mmの厚さを有することができる。例えば、電極は円板、平板または円柱の形態であってよい。
【0041】
さらに、上述のステップ(c)において、定DC電圧もしくは可変DC電圧または等価電界が1時間~24時間、特に0.1時間~10時間、特に1時間印加されてもよい。
【0042】
さらに、上述のステップ(c)で印加されるDC電圧は、好ましくは500Vであり、これは定電界3kV/cmと同等である。
【0043】
さらに、上述のステップ(c)で印加される等価電界は好ましくは3kV/cmである。
【0044】
さらに、上述のステップ(c)の温度は、好ましくは少なくとも900℃であり、より好ましくは少なくとも1000℃である。好ましくは、ステップ(c)の温度は900℃~1200℃、特に1000℃~1200℃、特に1000℃である。
【0045】
好ましくは、ステップ(c)は、定DC電圧または可変DC電圧500Vを1000℃で1時間、ステップ(b)で得たサンプルにまたは成形体に、特にその円盤状成形体に印加することにより行われる。
【0046】
さらに、上述のステップ(d)は、ステップ(c)で得たサンプルを室温に冷却することにより行われてもよい。
【0047】
さらに、上述のステップ(d)は、1分~72時間、特に15分~5時間、好ましくは15分~2時間行われてもよい。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、永久分極ハイドロキシアパタイトは、下記のステップ(a)、(b)、(c)、(d)を含む方法により取得されるまたは取得可能である。
特に二塩基性リン酸アンモニウム(リン酸水素二アンモニウム、(NHHPO)および硝酸カルシウム(Ca(NO)を反応物質または出発材料として使用して、ハイドロキシアパタイトのサンプル、特に結晶性ハイドロキシアパタイトを準備するステップ(a)と、
ステップ(a)で準備したサンプルを、特に1000℃の温度で、特に2時間焼結するステップ(b)と、
等価電界3kV/cmを、特に1000℃の温度で、特に1時間、ステップ(b)で得たサンプルにまたはその成形体に印加するステップ(c)と、
等価電界を、特に30分間維持しながらステップ(c)で得たサンプルを冷却するステップ(d)。
【0049】
ステップ(a)~(d)のさらなる特徴および利点に関しては、先の記載全体を参照されたい。
【0050】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、液体水および/または水蒸気が存在する状況下で行われる。言い換えると、本発明のさらなる実施形態によると、接触ステップを実行するための水は、液体形態および/または蒸気形態である。
【0051】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、永久分極ハイドロキシアパタイトの、水、特に液体水および/または水蒸気に対する体積比率が、1000:1~0.01:1、特に500:1~100:1、好ましくは300:1~350:1となる状況下で行われる。
【0052】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、二酸化炭素単独で行われる。
【0053】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、二酸化炭素のメタンに対する体積比率が、200:1、特に3:1、好ましくは1:1となる状況下で行われる。
【0054】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、全圧力が、0.1バール~100バール、特に0.1バール~10バール、特に1バール~10バール、特に1バール~8バール、特に1バール~6バール、好ましくは6バールとなる状況下で行われる。
【0055】
「全圧力」という用語は、本発明に従い使用される場合、好ましくは室温での、二酸化炭素圧力(この気体が単独で使用されている場合)または気体混合物の各気体分圧の合計を指す。
【0056】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、二酸化炭素の圧力が、0.035バール~90バール、特に0.1バール~10バール、特に1バール~8バール、好ましくは6バールとなる状況下で行われる。
【0057】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、二酸化炭素の分圧が、0.035バール~90バール、特に0.1バール~3バール、特に1バール~3バール、好ましくは3バールの下で、および/またはメタンの分圧0.00017バール~5バール、特に1バール~3バール、好ましくは3バールとなる状況下で行われる。
【0058】
さらに、接触ステップは、気体混合物の全圧力が、0.0001バール~250バールとなり、触媒および水、特に液体水が存在する状況下で行われてもよい。
【0059】
さらに、接触ステップは、触媒の存在する状況下で、二酸化炭素のメタンに対する圧力比(CO:CH)が、0.0001バール:250バール~250バール:0.0001バールとなる状況下で行われてもよい。
【0060】
さらに、気体混合物は、特に、窒素(N)を含まなくてもよい。言い換えると、接触ステップは、窒素が存在しない状況下で行ってもよい。
【0061】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、二酸化炭素の、永久分極ハイドロキシアパタイトに対するモル比が、0.1~0.5、特に0.2~0.5、好ましくは0.3~0.5となる状況下で行われる。
【0062】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、メタンの、永久分極ハイドロキシアパタイトに対するモル比が、0.1~0.5、特に0.2~0.5、好ましくは0.3~0.5となる状況下で行われる。
【0063】
好ましくは、接触ステップは、コーティングされてない永久分極ハイドロキシアパタイトを使用することにより、すなわちコーティング無しの永久分極ハイドロキシアパタイトを使用することにより行われる。それに関して、驚くことに、コーティングされてない永久分極ハイドロキシアパタイトの適用は、有利なことに、二酸化炭素の、2および/または3個の炭素原子を有する官能化有機分子(例えば、エタノールおよび/または酢酸および/またはアセトン)への変換を有意に増加させ、特にさらには、主要な反応生成物としてのエタノールの選択的合成を最大にする結果となった。同様に、コーティングされてない永久分極ハイドロキシアパタイトの適用は、有利なことに、二酸化炭素およびメタンの、エタノールへの変換を有意に増加させ、特にさらには、主要な反応生成物としてのエタノールの選択的合成を最大にする。
【0064】
代わりに、接触ステップは、コーティングした永久分極ハイドロキシアパタイトを使用することにより行われてもよい。原則として、接触ステップは、無機光触媒、例えば、TiO、MgO、MnOまたはこれらの組合せでコーティングされた永久分極ハイドロキシアパタイトを使用することにより行われてもよい。より具体的には、接触ステップは、3層コーティングを有する永久分極ハイドロキシアパタイトを使用することによって行われてもよい、特にこの3層コーティングは、アミノトリス(メチレンホスホン酸)の2つの層と、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl)またはジルコニアZrO2の1つの層とで構成されてもよく、オキシ塩化ジルコニウムの層は、アミノトリス(メチレンホスホン酸)の2つの層の間に配置されるか、またはこれらの間に挟まれている。コーティングした永久分極ハイドロキシアパタイトを使用することにより、反応の効率を有利に増加させることができる。
【0065】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、UV(紫外線)照射下またはUV-Vis(紫外線-可視)照射下で行われる。特に、接触ステップは、UV照射またはUV-Vis照射が、200nm~850nm、特に240nm~400nm、好ましくは250nm~260nm、より好ましくは253.7nmの波長を有する状況下で行われてもよい。さらに、接触ステップは、UV照射が、200nm~280nm、特に240nm~270nm、好ましくは250nm~260nm、より好ましくは253.7nmの波長を有する状況下で特に行われてもよい。好ましくは、永久分極ハイドロキシアパタイトは、UV照射もしくはUV-Vis照射に直接曝露されるか、またはUV照射もしくはUV-Vis照射が照射される。有利には、UV照射またはUV-Vis照射は、適切なUV供給源および/またはVis供給源、例えばUVランプおよび/またはVisランプにより提供される。
【0066】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、UV(紫外線)照射またはUV-Vis(紫外線-可視の)照射が、0.1W/m~200W/m、特に1W/m~50W/m 好ましくは2W/m~10W/m、より好ましくは3W/mの放射照度を有する状況下で行われる。本実施形態の利点に関しては、先行する段落を参照されたい。
【0067】
本発明のさらなる実施形態では、接触ステップは、温度が、25℃~250℃、特に95℃~140℃、好ましくは95℃となる状況下で行われる。
【0068】
より好ましくは、接触ステップは、95℃の温度およびUV照射下で行われる。これらの反応条件は、高収率で、合成する、特に2個の炭素原子を有する官能化有機分子(例えば、エタノールおよび/または酢酸)を選択的に合成するのに特に有用である。
【0069】
さらに、接触ステップは、好ましくはUV照射無しで、および25℃~250℃、特に95℃~140℃、好ましくは140℃の温度で行ってもよい。また、本実施形態による反応条件は、高収率で、合成、特に2個の炭素原子を有する官能化有機分子(例えば、エタノールおよび/または酢酸)の選択的合成をもたらす。
【0070】
さらに、接触ステップは、0.0001時間~120時間、特に24時間~72時間、好ましくは48時間~72時間行われてもよい。
【0071】
さらに、本方法、特に接触ステップは、連続的にまたは不連続的に、特にバッチプロセスとして行われてもよい。
【0072】
さらに、接触ステップは、空気、特に交通で汚染された空気を気体混合物として使用することにより行われてもよい。よって、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子、特にエタノールおよび/または酢酸および/またはメタノールおよび/またはギ酸および/またはアセトンを、価値のある化合物として合成し、並行して、空気、特に交通で汚染された空気から二酸化炭素を除去することが可能である。
【0073】
好ましくは、本方法は、さらに、接触ステップの間または接触ステップに得られた官能化有機分子を単離および/または分離および/または精製するステップを含む。
【0074】
上記さらなるステップは、好ましくは、触媒を溶解および抽出することにより、ならびに/または接触ステップの間または接触ステップに形成された上澄み液を抽出することにより行われる。
【0075】
本発明のさらなる実施形態では、本方法は、生成または合成するため、特にエタノールを選択的に生成または合成するために使用される。
【0076】
本発明のさらなる実施形態では、本方法は、エタノールおよび最後に、好ましくはメタノール、ギ酸、酢酸、マロン酸およびアセトンからなるグループから選択される1個のさらなる官能化有機分子を含むまたはこれらからなる混合物を生成または合成するために使用される。
【0077】
より好ましくは、本方法は、エタノールおよび少なくとも、メタノール、ギ酸、酢酸およびアセトンからなるグループから選択される1個のさらなる官能化有機分子を含むまたはこれらからなる混合物を生成または合成するために使用される。
【0078】
代わりに、本方法は、好ましくは、エタノールおよび少なくとも、メタノール、酢酸、マロン酸およびアセトンからなるグループから選択される1個のさらなる官能化有機分子を含むまたはこれらからなる混合物を生成または合成するために使用される。
【0079】
本発明のさらなる実施形態では、本方法は、エタノール、メタノール、ギ酸、酢酸およびアセトンを含むまたはこれらからなる混合物を生成または合成するために使用される。
【0080】
本発明のさらなる実施形態では、本方法は、エタノール、メタノール、酢酸、マロン酸およびアセトンを含むまたはこれらからなる混合物を生成または合成するために使用される。
【0081】
さらに、本発明は、二酸化炭素を大気、特に空気、すなわち地球の大気から除去するために、本発明による方法を使用することに関する。特に、本発明は、汚れたまたは汚染された空気、例えば、交通で汚染された空気から二酸化炭素を除去するために、本発明による方法を使用することに関する。
【0082】
「空気」または「地球の大気」という用語は、本発明に従い使用される場合、地球の重力により保持され、地球を取り囲み、その惑星の大気を形成する気体の層を意味する。
【0083】
使用のさらなる特徴および利点に関しては、先の記載全体を参照されたい。
【0084】
最後に、本発明は、
二酸化炭素(CO)を唯一の気体として(すなわち二酸化炭素はあるが、さらなる気体は無く)、水、特に液体水、(HO)の存在下、触媒、特に永久分極ハイドロキシアパタイトを含むまたはこれからなる電気触媒と接触させるステップ、または、
二酸化炭素(CO)およびメタン(CH)を含むまたはこれらからなる、特に二酸化炭素(CO)およびメタン(CH)のみを含むまたはこれからなる気体混合物を、水、特に液体水、(HO)の存在下、触媒、特に、永久分極ハイドロキシアパタイトを含むまたはこれからなる電気触媒と接触させるステップ、
を含む、生成または合成のための方法、特に1~3個の炭素原子を有する有機分子の特に選択的生成または合成のための方法であって、官能化有機分子が好ましくはエタノール、メタノール、ギ酸、酢酸、マロン酸、アセトンおよび前述の官能化有機分子のうちの少なくとも2種の混合物からなるグループから選択される方法の使用に関する。
【0085】
好ましくは、本方法の前記使用は、生成または合成のため、特にエタノール、またはエタノールと、メタノール、ギ酸、酢酸、マロン酸およびアセトンからなるグループから選択される少なくとも1個のさらなる官能化有機分子とを含むもしくはこれらからなる混合物の選択的生成または合成のため、特にエタノール、メタノール、ギ酸、酢酸およびアセトンを含むもしくはこれらからなる混合物、特に主要な反応生成物としてエタノールを有する混合物のため、またはエタノール、メタノール、酢酸、マロン酸およびアセトンを含むもしくはこれらからなる混合物、特に主要な反応生成物としてエタノールを有する混合物のためのものである。使用のさらなる特徴および利点に関しては、特に方法および官能化有機分子という点では、先の記載を参照されたい。
【0086】
本発明のさらなる特徴および利点は、従属請求項の対象事項と併せて以下の実施例から明らかとなる。個々の特徴は本発明の一実施形態において単独でまたは別々に組み合わせて実現化することができる。好ましい実施形態は、本発明の例示およびより良い理解に対してのみその目的を果たし、決して本発明を限定すると理解されてはならない。
【0087】
開示されていることをより良い理解するために、概略的にまたはグラフにより、および単に非限定的例として本発明の実施形態の実用的事例を示すいくつかの図が付随されている。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】本発明による永久分極ハイドロキシアパタイト(p-HAp)の31P-NMRスペクトルをグラフで示している。
図2図2aは、930~990cm-1間隔でνピークのデコンボリューションを有するハイドロキシアパタイト(HAp)サンプルのラマンスペクトルを概略的に表している。カウント数(A.U.)は縦軸にプロットされている。ラマンシフト(cm-1)は横座標にプロットされている。 図2bは、930~990cm-1間隔でνピークのデコンボリューションを有する永久分極ハイドロキシアパタイト(p-HAp)サンプルのラマンスペクトルを概略的に表している。カウント数(A.U.)は縦軸にプロットされている。ラマンシフト(cm-1)は横座標にプロットされている。 図2(a)~(b)は、Hapの分極の前と後の930~990cm-1間隔におけるラマンvピークを比較し、分極プロセスの成功を証明している。 HAp、非晶質リン酸カルシウム(ACP)およびβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)の領域は、各相の内容物を示唆している。共存する相の内容物は分極したサンプルの減少が生じ(すなわちACPおよびβ-TCPに対してそれぞれ4.3%および9.8%)、これは、HApにおいて9cm-1から、p-HApにおいて5cm-1までの半値幅(FWHM)の低減を伴う。この結果は、結晶欠陥、例えば、PO 3-四面体のゆがみの減少によるHAp相の増加を示唆する。
図3a】永久分極ハイドロキシアパタイトの走査型電子顕微鏡法による顕微鏡像を示す。したがって、永久分極ハイドロキシアパタイトは、1μmまでのサイズの凝集物を形成して凝集する(およそ)100nm~300nmの粒子として記載することができる。
図3b】CO(3バール)、CH(3バール)、HO(1mL)を使用して、触媒としての従来の(すなわち非分極)ハイドロキシアパタイトの存在下、95℃で、紫外線下で72時間行われた反応の反応生成物の抽出後に得られた溶液のH-NMRスペクトルをグラフで示している。反応した触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。
図3c】CO(3バール)、CH(3バール)、HO(1mL)を使用し、触媒として(コーティングされてない)永久分極ハイドロキシアパタイトを使用して、95℃で、紫外線下で72時間行われた反応の反応生成物の抽出後に得られた溶液のH-NMRスペクトルをグラフで示している。反応した触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。
図3d】CO(3バール)、CH(3バール)、HO(1mL)を使用して、コーティングしたp-HApの存在下で、72時間行われた反応の反応生成物の抽出後に得られた溶液のH-NMRスペクトルをグラフによる示している。p-HApはアミノトリス(メチレンホスホン酸)(これより以下ATMPと表される)、およびオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl)(これより以下ZCと表される)で、95℃で、紫外線下でコーティングした。反応した触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。 図3(b)~(d)に示されているように、コーティングしたp-HApの溶解後に観察された化学シフトは、非コーティング触媒から誘導された生成物のピークに関してわずかに反遮蔽化されている。この効果は、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)に起因するものであり、媒体の酸性度を増加させ、条件に関わりなく、p-HApおよびHApに対して検出されない低磁場シフトを引き起こす。他方では、図3(b)~(c)は、触媒からコーティングを除去することは、エタノールへの変換を20%増加させるばかりでなく、主要な反応生成物としてのエタノールの選択的合成もまた最大にすることを示唆している。
図4図4aは、永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として、ならびに95℃および紫外線を反応条件として使用して、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)から72時間後に得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液のさらなるH-NMRスペクトルをグラフで示している。触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。 図4bは、永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として、および95℃、紫外線無しを反応条件として使用して、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)から72時間後に得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液のH-NMRスペクトルをグラフで示している。触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。 図4cは、永久分極ハイドロキシアパタイトを触媒として、および140℃、紫外線無しを反応条件として使用して、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)から72時間後に得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液のH-NMRスペクトルをグラフで示している。触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。 図4dは、永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として、ならびに95℃および紫外線を反応条件として使用して、72時間の反応後の、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)からの液体水のさらなるH-NMRスペクトルをグラフで示している。スペクトルは、4.7ppmでの水の非常に急激なピークを回避するために切り取られている。 図4eは、永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として、ならびに95℃および紫外線を反応条件として使用して、72時間後に得られた、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)からの反応生成物の抽出後に得られた溶液のさらなるH-NMRスペクトルをグラフで示している。触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。スペクトルは、4.7ppmでの水の非常に急激なピークを回避するために切り取られている。 スペクトルは、反応に対して使用された液体水中のメタノールおよびギ酸の反応生成物としての突然の出現を明らかにしている。エタノールおよび酢酸は、触媒と液体水の両方に出現しているが、アセトンは前者のみで検出されている。
図5】永久分極ハイドロキシアパタイトのOH空孔上の3種のプロトン付加形態のCO吸着した分子の表示をグラフで示している。数値(単位:eV)は計算した吸着エネルギーを表す。 カルボキシレートの形成に基づくp-HAp固定化機構を支持するため、DFT計算をPBE-D3レベルで実施した。計算は、最も安定したHAp表面である(0001)面を考慮し、Hがプロトンの供給源として使用されるアイソデスミックモデルを考慮して実施された。ミネラルのヒドロキシル空孔内に分子を挿入することにより、COの3種の異なるプロトン付加生成物の吸着エネルギーを計算した。結果は、ギ酸へのCOのプロトン付加は、気相では-3.1kcal/モルだけ発熱性であるが、p-HAp基質に吸着した場合には-32.7kcal/モルだけ発熱性であることを証明した。しかし、全てのプロトン付加した種は、吸熱性吸着エネルギーを示し、プロトン付加したギ酸に対するエネルギーは極小(0.2kcal/モル)であるが、COに対するエネルギーは5.1kcal/モルであり(他の部位は、図5のいくつかの代表的な事例に対して示されている通り、より高いエネルギーを示すp-HApでチェックした)、よってこの経路を完全に追跡するのは不可能となり、触媒作用の箇所を他の近くの箇所にシフトさせている。
図6】アミノトリス(メチレンホスホン酸)およびオキシ塩化ジルコニウムでコーティングした永久分極ハイドロキシアパタイトの存在下、95℃、紫外線下で、72時間後に得られた、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)からの反応生成物の抽出後に得られた溶液のさらなるH-NMRスペクトルをグラフで示している。反応した触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。スペクトルは4.65ppmでOHバンドを含む。
図7】紫外線を使用した場合(対照1)、および紫外線を使用しない場合(対照2)の、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)からの95℃で72時間後の液体水のH-NMRスペクトルをグラフで示している。この反応に対して触媒は使用しなかった。
図8図8aは、紫外線および永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として使用して、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)から95℃で72時間後に得られた反応生成物のさらなるH-NMRスペクトルをグラフで示しており、触媒を100mM HClおよび50mM NaClと共に溶解することによって、生成物の抽出後に得られた溶液の分析を実施した。 図8bは、紫外線を使用し、永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として使用して、CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)から95℃で72時間後に得られた反応生成物のH-NMRスペクトルをグラフで示しており、この反応チャンバーに組み込まれた液体水を分析した。
図9図9aは、紫外線および永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として使用して、水が存在しない状況下において、CO(3バール)およびCH(3バール)から95℃で72時間後に得られた反応生成物のH-NMRスペクトルをグラフで示している。 図9bは、紫外線および(コーティングされてない)永久分極ハイドロキシアパタイトを触媒として、過剰の水が存在する状況下において、CO(3バール)およびCH(3バール)から95℃で72時間後に得られた反応生成物のH-NMRスペクトルをグラフで示している。
図10】永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として95℃で使用し、紫外線下で、95℃で72時間後に、汚染された空気(大気圧)およびHO(1mL)から得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液のH-NMRスペクトルをグラフによる示している。反応した触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。
図11a】永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として、および140℃を反応条件として(紫外線なし)使用して、CO(6バール)およびHO(1mL)からの48時間の反応後の液体水のさらなるH-NMRスペクトルをグラフで示している。スペクトルは、4.7ppmでの水の非常に急激なピークを回避するために省略されている。
図11b】永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として、および140℃を反応条件として(紫外線なし)使用して、CO(6バール)およびHO(1mL)から48時間後に得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液のさらなるH-NMRスペクトルをグラフで示している。触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。スペクトルを、4.7ppmでの水の非常に急激なピークを回避するために省略されている。 スペクトルは、液体水と、触媒および液体水と、の両方において、メタノール、ギ酸、エタノール、酢酸およびアセトンの反応生成物としての出現を示している。液体水中の収率(触媒のμmol/g)は:0.21±0.07(メタノール)、2.44±0.97(ギ酸)、4.50±0.91(エタノール)、2.22±0.88(酢酸)および0.74±0.15(アセトン)であった。触媒中の収率(触媒のμmol/g)は:0.56±0.19(メタノール)、3.22±0.54(ギ酸)、6.60±2.32(エタノール)、0.49±0.12(酢酸)および0.62±0.27(アセトン)であった。
図12図12aは、CO(1、2、4または6バール)およびHO(1mL)を140℃(紫外線無し)で使用し、48時間後に得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液からHNMR分光法で測定した場合の、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)の収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の変動を、CO圧力(単位:バール)に対してグラフで示している。触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。 図12bは、永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として使用して、液体水からH NMR分光法で測定した場合の、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)の収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の変動を、CO圧力(単位:バール)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、CO(1、2、4または6バール)およびHO(1mL)を140℃(紫外線なし)で使用して、48時間行われた。 図12cは、触媒(図.12a)および上澄み液(図.12b)からの反応生成物の抽出後に得られた溶液から得られた、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)に対する収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の合計の変動を、CO圧力(単位:バール)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、CO(1、2、4または6バール)およびHO(1mL)を140℃(紫外線無し)で使用して、48時間行われた。 図12dは、触媒(図.12a)および上澄み液(図.12b)からの反応生成物の抽出後に得られた溶液から得られた、C1(メタノールおよびギ酸;MeOH+HCOOH)、C2(エタノールおよび酢酸;EtOH+AcOH)およびC3(アセトン;Ace)に対する収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の合計の変動を、CO圧力(単位:バール)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、CO(1、2、4または6バール)およびHO(1mL)を140℃(紫外線なし)で使用して、48時間行われた。
図13】13aは、CO(6バール)およびHO(1mL)を95、120または140℃(紫外線なし)で使用して、48時間後に得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液からH NMR分光法で測定した場合の、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)の収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の変動を、温度(単位:℃)に対してグラフで示している。触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。 図13bは、永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として使用して、液体水からH NMR分光法で測定した場合、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)の収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の変動を、温度(単位:℃)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、CO(6バール)およびHO(1mL)を95、120または140℃(紫外線なし)で使用して48時間行われた。 図13cは、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)に対する触媒(図.13a)および上澄み液(図.13b)からの反応生成物の抽出後に得られた溶液から得られた収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の合計の変動を、温度(単位:℃)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、CO(6バール)およびHO(1mL)を95、120または140℃(紫外線なし)で使用して48時間行われた。 図13dは、C1(メタノールおよびギ酸;MeOH+HCOOH)、C2(エタノールおよび酢酸;EtOH+AcOH)およびC3(アセトン;Ace)に対する触媒(図.13a)および上澄み液(図.13b)からの反応生成物の抽出後に得られた溶液から得られた収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の合計の変動を、温度(単位:℃)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、CO(6バール)およびHO(1mL)を95、120または140℃(紫外線無し)で使用して48時間行われた。
図14】14aは、CO(6バール)およびHO(1mL)を140℃(紫外線なし)で使用して、24、48および72時間後に得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液からH NMR分光法で測定した場合の、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)の収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の変動を、反応時間(単位:時間)に対してグラフで示している。触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。 図14bは、永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として使用して、液体水からH NMR分光法で測定した場合の、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)の収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の変動を、時間(単位:時間)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、CO(6バール)およびHO(1mL)を140℃(紫外線無し)で使用して、24、48または72時間行われた。 図14cは、エタノール(EtOH)、酢酸(AcOH)、メタノール(MeOH)、ギ酸(HCOOH)およびアセトン(Ace)に対して、触媒(図.14a)および上澄み液(図.14b)からの反応生成物の抽出後得られた溶液から得られた収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の合計の変動を、時間(単位:時間)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、CO(6バール)およびHO(1mL)を140℃(紫外線なし)で使用して、24、48または72時間行われた。 図14dは、C1(メタノールおよびギ酸;MeOH+HCOOH)、C2(エタノールおよび酢酸;EtOH+AcOH)およびC3(アセトン;Ace)に対して、触媒(図14a)および上澄み液(図14b)からの反応生成物の抽出後得られた溶液から得られた収率(生成物(μmol)/触媒(g)として表現)の合計の変動を、時間(単位:時間)に対してグラフで示している。全ての場合において、反応は、24、48または72時間、CO(6バール)およびHO(1mL)を140℃(紫外線無し)で使用して行われた。
図15】永久分極ハイドロキシアパタイト(コーティングされてない)を触媒として95℃で、および紫外線下で使用して、汚染された空気(大気圧)およびHO(1mL)から95℃で72時間後に得られた反応生成物の抽出後に得られた溶液のH-NMRスペクトルをグラフで示している。反応した触媒を100mM HClおよび50mM NaClを含む水溶液に溶解した。
【発明を実施するための形態】
【0089】
(実験セクション)
1.材料
硝酸カルシウム(Ca(NO)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO;純度>99.0%)および水酸化アンモニウム溶液30%(NHOH;純度:28~30%w/w)はSigma Aldrichから購入した。エタノール(純度>99.5%)はScharlabから購入した。全ての実験はmilli-Q水を用いて実施した。
【0090】
2.ハイドロキシアパタイト(HAp)の熱水合成
脱イオン水中の15mLの0.5MのNHHPOを、2mL/分の速度で、エタノール中の25mLの0.5MのCa(NO(pHは水酸化アンモニウム溶液を使用して10.5に事前に調節)に加え、1時間熟成させた。全プロセスは穏やかな撹拌下(150rpm)および室温で実施した。オートクレーブDigestec DAB-2を24時間使用して150℃での熱水処理を適用した。開く前にオートクレーブを冷却した。沈殿物を遠心分離で分離し、水およびエタノール-水の60/40v/v混合物で(2回)洗浄した。これを3日間凍結乾燥した後、得られた白色粉末を、Carbolite ELF11/6W/301炉を使用して、空気中、1000℃で2時間焼結した。
【0091】
3.熱刺激による分極プロセス(TSP)
150mgの事前に焼結したHAp粉末を620MPaで10分間プレスすることにより、厚さ約1.5mmの機械的に均一な円板が得られた。熱分極は、2つのステンレススチール(AISI304)の間にHAp円板を配置し、上述の炉と同じ実験室の炉を使用して、1000℃でGAMMA電源により、3kV/cmを1000℃で1時間印加することにより行った。印加された電位を30分間維持してディスクを冷却させ、最後に、全てのシステムを切り、そのまま置いて終夜冷却させた。
【0092】
4.特性決定
Renishaw Centrus 2957T2検出器および785nmレーザーを備えたinVia Qontor共焦点ラマン顕微鏡(Renishaw)で構造的フィンガープリントに対する振動スペクトルが得られた。
【0093】
SEM GEMINI カラムを備えたZeiss Neon 40顕微鏡を使用して、SEM画像が得られた。電界放射電子源を備えたJEOL 2010F顕微鏡でHRTEMを実施し、加速電圧200kVで作動させた。点分解能は0.19nmであり、ライン間の分解能は0.14nmであった。サンプルを超音波浴内で、アルコール懸濁液中に分散させ、懸濁液の1滴を穴あき炭素フィルムを有するグリッド上にセットした。画像は、デジタル加工でフィルターにかけず、処理もせず、生データに対応している。全てのH-NMRスペクトルは、400.1MHzで作動し、64のスキャンを蓄積するBruker Avance III-400分光器で取得した。テトラメチルシランを内部標準として使用して、化学シフト較正を行った。サンプルを、水重水素化された水の最終添加と共に100mM HClおよび50mM NaClを含有するmilli-Q水に溶解した。
【0094】
5.計算の詳細
p-HApに対する(0001)面を作るために、2×1×2HApスーパーセルを選択した。表面に正規直交するOHをHApスーパーセル(選択したDFTレベルで事前に最適化した)から除去することによりp-HApに対する(0001)面を構築した。結果的には、ホルメートに関与するものを除いて、+1の全体的電荷を全ての計算に適用し、必要な場合不対のスピンが考慮された。以下に提供されている計算の詳細に従い、表面張力をほぐすためにHApの最初の座標を最適化した。Open-SourceコンピュータコードのQuantum Espresso 4.6スイートに導入された平面波手法を使用した。デフォルトのCソフトウエア係数を適用して、Grimme three body dispersion potentials(PBE-D3)で補正した、PBEレベルの理論で計算を実施した。波関数40Ryに対する動力学的エネルギーカットオフを利用した。k-ポイントメッシュ3×3×1が自動的に生成された。代わりに、Gamma-中心1×1×1k-メッシュを別個の分子の計算に使用し、7×7×7k-メッシュをバルクHApの計算に使用した。連続したステップ間のエネルギーおよび力の変動の両方がそれぞれ10-3a.uおよび10-4a.u未満になるまで、コンジュゲート勾配アルゴリズムを使用して形状最適化を実施した。自己一貫性からの偏差が10-5Ry未満になるまで各ステップのエネルギーを最適化した。吸着エネルギーを以下の方法に従い計算した:A+S→AS*(式中、Aは吸着質であり、Sは表面であり、AS*は吸着された状態である)。吸着エネルギー(Eads)をEads=EAS*-(E+E)と表現した。
【0095】
6.反応チャンバー
ad hocで設計された、高圧ステンレススチール反応器を使用して、全ての反応を実施した。簡潔には、反応器に、マノメーター、サーモカップル付電気ヒーターおよび外部温度コントローラーを点在させた。反応器はまたパーフルオロ化ポリマー(テフロン(登録商標)、120mL)をコーティングした不活性反応チャンバーを特徴とし、ここに触媒と水の両方が組み込まれた。反応器には、気体の組込みのための3つの独立した入口弁および気体の反応生成物を回収するための出口弁が備えられた。触媒に直接照射するためのUVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)もまた反応器の中央に配置され、ランプはUV透過性石英管で保護されていた。全ての表面は、反応媒体と反応器表面の間のあらゆる接触を回避するようパーフルオロ化ポリマー(テフロン(登録商標))の薄膜でコーティングされており、こうして、他の触媒効果を排除した。
【0096】
7.コーティングしたp-HApの合成
p-HAp上の、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)およびオキシ塩化ジルコニウム(ZC)の連続する堆積からなる3層状系を、室温で5時間、対応する水溶液中に浸漬することにより得た。第1のATMP層を堆積するため、p-HApを5mM ATMP溶液に5時間浸した。続いて、ATMPを重ねたp-HApを5mM ZrOCl溶液に5時間浸漬することにより、ATMPを重ねたp-HAp上にZCを堆積した。最後に、ZCおよびATMPを重ねたp-HApを1.25mM ATMP溶液に5時間浸漬することによって、ZCおよびATMPを重ねたp-HAp上にATMPの第2の層を堆積した。
【0097】
8.コーティングされてないp-HApを触媒として使用した、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子の合成
1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子を、CO気体単独から(1、2、4または6バール)ならびにCOおよびCH気体混合物から(それぞれ3バール)、触媒としてのコーティングされてないp-HApの存在下および液体HO(1mL)の存在下で合成した。反応は、24、48または72時間、95、120または140℃で、およびコーティングされてないp-HApに直接照射するUVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)の照射下で、または紫外線無しで行った。
【0098】
反応の代表的な例として、以下の収率(触媒1グラム当たりの生成物のμmolとして表現)が得られた:
・CO(3バール)、CH(3バール)およびHO(1mL)を使用して、95℃で、紫外線下で72時間反応を行った。
【0099】
触媒の溶解による抽出後に得られた溶液から得られた収率:エタノール(19.4±3.8μmol/g)、アセトン(0.9±0.1μmol/g)および酢酸(0.6±0.1μmol/g)。メタノールおよびギ酸は検出されなかった。
【0100】
液体水(上澄み液)から得られた収率:エタノール(0.7±0.14μmol/g)、酢酸(2.0±0.5μmol/g)、メタノール(1.5±0.3μmol/g)およびギ酸(1.9±0.6μmol/g)。アセトンは検出されなかった
【0101】
・CO(6バール)およびHO(1mL)を使用して、140℃で、紫外線無しで48時間反応を行った。
【0102】
触媒の溶解による抽出後に得られた溶液から得られた収率:エタノール(6.6±2.3μmol/g)、ギ酸(3.2±0.5μmol/g)、アセトン(0.6±0.3μmol/g)、メタノール(0.6±0.2μmol/g)および酢酸(0.5±0.1μmol/g)。
【0103】
液体水(上澄み液)から得られた収率:エタノール(4.5±0.9μmol/g)、ギ酸(2.4±1.0μmol/g)、酢酸(2.2±0.9μmol/g)、アセトン(0.7±0.1μmol/g)およびメタノール(0.2±0.1μmol/g)。
【0104】
・CO(1バール)およびHO(1mL)を使用して、140℃で、紫外線なしで48時間反応を行った。
【0105】
触媒の溶解による抽出後に得られた溶液から得られた収率:アセトン(1.6±0.6μmol/g)、ギ酸(1.1±0.3μmol/g)、エタノール(0.8±0.2μmol/g)、酢酸(0.8±0.2μmol/g)およびメタノール(0.5±0.2μmol/g)。
【0106】
液体水(上澄み液)から得られた収率:酢酸(acid acetic)(2.4±1.0μmol/g)、ギ酸(acid formic)(1.3±0.3μmol/g)、ギ酸(1.1±0.3μmol/g)、アセトン(0.8±0.3μmol/g)、エタノール(0.8±0.1μmol/g)およびメタノール(0.1±0.03μmol/g)。
【0107】
・CO(6バール)およびHO(1mL)を使用して、95℃で紫外線無しで48時間反応を行った。
【0108】
触媒の溶解による抽出後に得られた溶液から得られた収率:ギ酸(1.1±0.3μmol/g)、エタノール(0.7±0.3μmol/g)、アセトン(0.6±0.2μmol/g)、酢酸(0.5±0.1μmol/g)およびメタノール(0.3±0.1μmol/g)。
【0109】
液体水(上澄み液)から得られた収率:酢酸(4.6±0.6μmol/g)、アセトン(2.3±0.3μmol/g)、ギ酸(1.1±0.1μmol/g)、およびエタノール(0.4±0.1μmol/g)。メタノールは検出されなかった。
【0110】
・CO(6バール)およびHO(1mL)を使用して、140℃で、紫外線なしで72時間反応を行った。
【0111】
触媒の溶解による抽出後に得られた溶液から得られた収率:エタノール(10.2±3.0μmol/g)、ギ酸(2.4±0.5μmol/g)、アセトン(0.9±0.2μmol/g)、酢酸(0.7±0.2μmol/g)およびメタノール(0.6±0.2μmol/g)。
【0112】
液体水(上澄み液)から得られた収率:エタノール(7.0±1.1μmol/g)、酢酸(3.0±1.2μmol/g)、ギ酸(1.9±0.8μmol/g)、アセトン(1.1±0.4μmol/g)およびメタノール(0.2±0.1μmol/g)。
【0113】
9.コーティングしたp-HApを触媒として使用した、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子の合成
1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子を、COおよびCH気体混合物(それぞれ3バール)から、触媒としてのコーティングしたp-HApの存在下および液体HO(1mL)の存在下で合成した。95℃で72時間およびコーティングしたp-HApに直接照射するUVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)の照射下で反応を行った。p-HAを2層のアミノトリス(メチレンホスホン酸)および1層のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl)でコーティングし、オキシ塩化ジルコニウムの層を2層のアミノトリス(メチレンホスホン酸)の間に配置するか、またはこれらの間に挟んだ。触媒の溶解による抽出後に得られた溶液から得られた収率(コーティングしたp-HAp1グラム当たりの生成物のμmolとして表現)は:エタノール(16.1±3.2μmol/g)、メタノール(4.9±1.0μmol/g)、アセトン(0.8±0.2μmol/g)および酢酸(0.6±0.1μmol/g)であった。
【0114】
10.コーティングしたp-HApを触媒として使用したエタノールの合成
エタノールをCOおよびCH気体混合物(それぞれ3バール)から、触媒としてのコーティングしたp-HApの存在下および液体HO(1mL)の存在下で合成した。95℃で72時間、およびコーティングしたp-HApを直接照射するUVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)の照射下で反応を行った。p-HAを2層のアミノトリス(メチレンホスホン酸)および1層のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl)でコーティングし、オキシ塩化ジルコニウムの層を2層のアミノトリス(メチレンホスホン酸)の間に配置するか、またはこれらの間に挟んだ。反応は、以下の収率(コーティングしたp-HAp1グラム当たりの生成物のμmolとして表現):エタノール(16.1±3.2μmol/g)、メタノール(4.9±1.0μmol/g)、マロン酸(1.6±0.2μmol/g)、アセトン(0.8±0.2μmol/g)および酢酸(0.6±0.1μmol/g)をもたらした。主要な生成物、エタノールは、H-NMR分光法により、それぞれ3.53ppmおよび1.06ppmにおける四重線(CH)および三重線(CH)ばかりでなく、4.65ppmでの急激なOHピークによっても特定した。
【0115】
11.HAp(コーティングされてない)を触媒として使用したエタノールの合成
触媒としてのHAp(コーティングされてない)の存在下および液体HO(1mL)の存在下で、エタノールをCOおよびCH気体混合物(それぞれ3バール)から合成した。95℃で72時間、およびp-HApに直接照射するUVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)の照射下で反応を行った。反応は、非常に低い収率のエタノール(1.9±0.5μmol/g触媒)をもたらした。さらに、アセトンおよび酢酸の収率は<0.1μmol/g触媒であった。
【0116】
12.触媒として作用する固形担体無しでのエタノールの合成
触媒としてのHAp(コーティングされてない)の存在下および液体HO(1mL)の存在下で、エタノールをCOおよびCH気体混合物(それぞれ3バール)から合成した。95℃で72時間およびUVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)の照射下で反応を行った。触媒として作用するいかなる固形担体も存在しない中(図7(a)を参照されたい)、エタノールの収率は実質的に0(0.1±0.05μmol/g)である。偶発的な光誘発によるCO還元および水分解に起因したこのような少量は、紫外線無しで完全に消滅する(7(b)を参照されたい)。
【0117】
13.交通で汚染された空気を使用した、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子、特にエタノールの合成
概念の立証として、UPC(Universitat Politecnica de Catalunya)Barcelonaのイーストキャンパスの周辺地域、すなわち都市の主要道路の1つに面しているため、車の交通により空気がひどく汚染されている地域から採取した汚染空気を使用して、エタノールを合成するための反応を大気圧で行った。化石燃料(carburant)の燃焼により汚染された空気は、外気の平均より著しく高いCOおよびCHを含有する。反応は、触媒としてp-HApを使用し、1mLの水の存在下および95℃で紫外線を用いて行った。72時間後の反応生成物の分析は他の生成物の中にエタノールを示したが、これら他の生成物の一部は、制御された気体混合物との以前の反応において特定されていないものであった。エタノール(1.1±0.2μmol/g)、酢酸(0.03±0.01μmol/g)、アセトン(0.09±0.02μmol/g)、ギ酸(0.13±0.05μmol/g)およびメタノール(0.16±0.04μmol/g)の量は極小であったという事実にもかかわらず、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子が価値のある生成物として得られた一方で、高価値な化学的生成物の形成により、汚染空気を再生する触媒としてのp-HApの潜在的適応性が確定されたことが判明した。
【0118】
14.機構経路に関するさらなる研究
1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子の形成は、供給気体の圧力、温度および反応時間に関連し得る。反応条件の役割を探究するために、CO気体およびコーティングされてないp-HApを触媒として使用して、UV照射無しによる方法を繰り返した。図12(a)~(d)に示されている通り、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子の収率は圧力と共に増加する。圧力を1から6バールに増加させると、全収率(触媒の溶解により各生成物に対して得られた収率の合計+上澄み液から各生成物に対して得られた収率の合計)は、11.9±1.6から23.1±2.3μmol/gに増加した。
【0119】
要約すれば、電解還元機構に従い、気体COを高価値の有機化学物質、すなわち1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子へと変換する、永久分極ハイドロキシアパタイトの触媒活性が確認することができた。異なる反応条件下での実験は、1~3個の炭素原子を有する官能化有機分子の形成を反映し、これらは永久分極ハイドロキシアパタイトにより誘発させたCOの電解還元を介して形成される。概念の立証として、提案された反応は道路交通で汚染された空気から高価値の化学的生成物を得ることに成功し、地球に豊富に存在するミネラルに基づく単純な触媒を使用して、温室効果ガスの放出を価値ある化学的生成物に変換する興味深い新しい道を切り開く。
図1
図2
図3(a)-(d)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11(a)-(b)】
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】