(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】医療用注射器、並びに、注射管理プラットフォームのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/17 20180101AFI20230602BHJP
【FI】
G16H20/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566002
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2021030530
(87)【国際公開番号】W WO2021222908
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518438944
【氏名又は名称】コスカ ファミリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ジェイ・エス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、リンジー
(72)【発明者】
【氏名】エルマーディ、アイラ
(72)【発明者】
【氏名】マリート、ダニエル・クラカ
(72)【発明者】
【氏名】ハノン、クリステン・マリー
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
本開示のシステム、方法、及び製品は、ブロックチェーンなどの分散型の安全な技術を利用して、NFCチップまたはRFIDチップを備えた注射器を含む注射イベントトランザクションの検証及び管理を可能にする注射管理プラットフォームを提供する。注射イベントトランザクション台帳により、注射イベントトランザクションのデジタルレシートを安全に検証及び更新することが可能になる。いくつかの実施形態では、注射器は、ワクチンや薬剤などの流体薬剤の単回用量が予め充填された成形同時充填(Blow-Fill-Seal:BFS)式注射器を含み、注入イベントトランザクション台帳を介して、流体薬剤の個々の投与を追跡することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射管理システムの電子処理装置によって、第1の注射イベントトランザクションを認識するステップであって、
前記第1の注射イベントトランザクションの認識は、第1のユーザに対応する第1のモバイル装置に格納された注射管理アプリの注射実施者用プラットフォームを介して、患者への流体薬剤の投与の実施に関する情報を受信したことに基づいて行われ、前記情報は、前記流体薬剤が充填された注射器の固有識別子を含む第1のデータを含み、
前記第1のユーザは、前記電子処理装置が前記第1のユーザを一意に識別し前記第1のユーザを登録済みの注射実施者として認識することを可能にする第1のユーザ認証情報を提供することによって、前記第1のモバイル装置を介して前記注射実施者用プラットフォームに事前にサインインしている、該ステップと、
前記注射器の前記固有識別子に基づいて、前記流体薬剤の投与を承認するステップと、
前記第1の注射イベントトランザクションに固有の電子記録を生成することによって、第1の注射イベント記録を生成するステップと、
前記第1のユーザから、前記注射管理アプリを介して、前記患者への前記流体薬剤の投与が実施されたことを示す情報を受信するステップと、
前記患者への前記流体薬剤の投与が実施されたことを示す前記情報の受信に応じて、有効期限を有する第1のパスコードを生成し、前記第1のパスコードを前記第1の注射イベント記録に関連付けて格納するステップと、
前記第1のパスコードを、前記注射管理アプリを介して前記第1のユーザに出力するステップと、
前記第1のパスコードの前記有効期限が過ぎる前に、第2のユーザから前記第1のパスコードを受信するステップであって、
前記第2のユーザは、前記電子処理装置が前記第2のユーザを一意に識別し前記第2のユーザを登録済みの患者として認識することを可能にする第2のユーザ認証情報を提供することによって、前記第2のユーザに対応する第2のモバイル装置を介して、前記第2のモバイル装置に格納された注射管理アプリの患者用プラットフォームに事前にサインインしている、該ステップと、
前記第2のユーザから前記第1のパスコードを受信したことに基づき、前記第2のユーザが、前記第1の注射イベントトランザクションの一環として前記第1のユーザによって前記注射器から前記流体薬剤の投与を受けた患者であると判定するステップと、
前記第2のユーザが前記流体薬剤の投与を受けたことを示すために、前記第1の注射イベント記録を更新するステップと、
前記第2のユーザの前記注射管理アプリの前記患者用プラットフォームを介して、前記第2のユーザの前記第2のモバイル装置に、前記第2のユーザが前記流体薬剤の投与を受けたことを証明するコンファメーションを送信し、それによって、前記第2のユーザの前記注射管理アプリの前記患者用プラットフォームに格納されることになる前記第1の注射イベント記録のデジタルレシートを前記第2のモバイル装置に送信するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記デジタルレシートは、前記第1の注射イベント記録に対応する固有のデジタルレシート識別子を含み、
前記固有のデジタルレシート識別子は、前記第2のユーザが、前記注射管理アプリの前記患者用プラットフォームを介して前記注射管理システムと通信し、前記第1の注射イベント記録に格納されたデータに基づいて前記第2のユーザのワクチン接種状況を確認することを可能にするためのものである、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
受信する前に、前記注射管理アプリを介して、前記第1のユーザに、注射が承認されたことを示すメッセージを出力するステップをさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の注射イベント記録は、前記注射管理システムの分散型ネットワークにブロックチェーン記録として格納される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記デジタルレシートは、(i)前記流体薬剤に関する情報、(ii)前記注射器の識別子、(iii)前記流体薬剤の投与を実施した日時、(iv)前記流体薬剤の投与を実施した場所、(v)前記第2のユーザの識別子、及び、(vi)前記流体薬剤の投与を実施した前記第1のユーザの識別子、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記デジタルレシートは、前記第2のユーザの要求に応じて、前記注射管理アプリの前記患者用プラットフォームのグラフィカルユーザインターフェースを介して前記第2のユーザのモバイル装置に表示することができるコードを含み、
前記コードは、前記第2のユーザに対して前記流体薬剤の投与が実施されたことを確認するために、外部電子装置によって読み取り可能である、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、
前記デジタルレシートは、第三者と共有することができる複数のプライバシーレベルの情報を含み、
前記プライバシーレベルの情報のそれぞれは、前記第2のユーザのそれぞれの許可要件に対応し、
前記デジタルレシートの或るプライバシーレベルの情報を第三者と共有するためには、前記第2のユーザは、そのプライバシーレベルの情報に対応する許可要件を提供する必要がある、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記複数のプライバシーレベルの情報における第1のレベルの情報は、前記第2のユーザへの前記流体薬剤の投与が実施されたことに関する情報であって、前記流体薬剤の投与を受けた前記第2のユーザを識別しない匿名の情報に対応し、
前記複数のプライバシーレベルの情報における第2のレベルの情報は、前記第2のユーザへの前記流体薬剤の投与が実施されたことに関する情報であって、前記流体薬剤の投与を受けた前記第2のユーザを識別する情報に対応する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記流体薬剤は、投与を実施した日時から予め定められた期間にわたって有効な、特定の伝染性疾患に対するワクチンを含み、前記第2のユーザは、前記予め定められた期間にわたって前記特定の伝染性疾患に対するワクチン接種を受けたと見なされ、
前記デジタルレシートは、前記予め定められた期間に基づく前記流体薬剤の有効期限をさらに含み、前記注射管理アプリの前記患者用プラットフォームは、前記流体薬剤の前記有効期限まで、前記第2のユーザが前記特定の伝染性疾患に対するワクチン接種を受けたと見なされることを示すコンファメーションを、前記患者用プラットフォームのグラフィカルユーザインターフェースを介して出力する、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記患者への前記流体薬剤の投与が実施されたことを示す前記情報を受信する前記ステップは、前記第1の注射イベントトランザクション中に撮影された前記第2のユーザの写真を受信することを含み、
前記第1の注射イベント記録を更新する前記ステップは、前記第2のユーザの前記写真のコピーを前記第2のユーザの前記モバイル装置に送信し、前記デジタルレシートに関連付けて格納することを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記第2のユーザの前記写真のコピーは、前記第1の注射イベント記録と関連付けて格納される、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記注射器の前記固有識別子に基づいて、前記電子処理装置がアクセス可能なデータベースから、前記流体薬剤及び前記流体薬剤の投与に関する情報を取得するステップをさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記注射器の前記固有識別子に基づいて、前記流体薬剤の投与を承認する前記ステップは、前記流体薬剤及び前記流体薬剤の投与に関する前記情報に基づいて、前記流体薬剤の投与が有効であり、前記流体薬剤の投与の実施が承認されていることを確認することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2020年5月1日出願の「NFC対応薬物含有システム及びそれに関連する情報層(NFC-ENABLED DRUG CONTAINING SYSTEM AND ASSOCIATED INFORMATION LAYER)」という標題の米国特許仮出願第63/019、192号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(著作権の表示)
この特許文献の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれている。著作権者は、米国特許商標庁の特許ファイルまたは記録に記載されたこの特許文献または特許開示の他者による複写に対しては異議を唱えないが、それ以外の点では、すべての著作権を留保する。
【背景技術】
【0003】
毎年、驚くべき数の人々が様々な病気に感染し、死亡しているが、病気の中には、注射薬(すなわち、注射器または他のニードル型送達デバイスを使用して投与される薬剤)によって予防できる(または重症化を軽減できる)ものもある。注射薬により、いくつかの感染症の症例数(またはその感染症に起因する症状の重症度や死亡数)は劇的に減少したが、これらの感染症の中には、依然としてよく見られるものもあり、また、新たな感染症も出現している。多くの場合、世界中の多くの人々、特に開発途上国や経済的に恵まれていない国では、効果のない注射薬/ワクチン接種プログラムに起因して、予防可能な病気の蔓延に苦しんでいる。その原因としては、注射の実施が不十分であること、利用可能な薬剤/ワクチンが不足していること、注射を実施するのに十分な熟練者が不足していること、注射が実施済みの場所と注射の実施が依然として必要な場所との追跡及び管理が不十分であること、及び、それらの任意の組み合わせが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
COVID-19のパンデミックのような最近の世界的な出来事により、既存の注射薬/ワクチン接種プログラムの不十分さがさらに浮き彫りになっている。今回のパンデミックは、国民が、下記の(i)~(iv)の利益を受けることができる状況の一例である。(i)ワクチン接種者を検証可能かつ効率的に追跡することができる(また、ワクチンを接種した場所や日時や、接種したワクチンの種類を追跡することも可能である)。(ii)ワクチン接種の証明(また、いくつかの実施形態では、ワクチンの有効性がブースター接種または追加注射を必要とする場合における、現在のワクチン接種状況の証明)を効率的に提供することができる。(iii)継続的な予防接種を必要とする地域を特定することができる。(iv)熟練度の低い者が予防接種を実施する手段を提供することによって、より広範な予防接種活動が可能になる。既存のシステムやインフラは、上記のニーズを満たすには不十分であることが判明している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本明細書に記載される実施形態及びそれに付随する諸利点の多くは、添付図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによって、容易に理解できるであろう。
【0006】
【
図1】本明細書に記載される少なくともいくつかの実施形態と一致するシステムの例示的なブロック図である。
【
図2】本明細書に記載される少なくともいくつかの実施形態と一致するサーバ装置の例示的なブロック図である。
【
図3A】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3B】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3C】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3D】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3E】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3F】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3G】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3H】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3I】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3J】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3K】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図3L】本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従ってユーザに出力されるモバイル装置のアプリのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図4】本明細書に記載される少なくともいくつかの実施例と一致する例示的なプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載される実施形態は、流体薬剤を単回投与するための注射器であって、患者への流体薬剤の単回投与を電子的に認識、追跡、及び/または承認することを可能にするデータ記憶機構を備えた注射器に関する。いくつかの実施形態では、本発明の電子プラットフォームは、(i)注射器から患者への流体薬剤の投与の承認及び追跡を容易にするために、注射器から注射実施者の装置に、次いで電子プラットフォームの電子処理システムにデータを送信すること、及び/または、(ii)患者の装置とデータ交換し、注射器から流体薬剤が単回投与されたことを示すデジタルレシートを患者が受信及び格納することを可能にすること、を容易にする。本発明の電子プラットフォームは、医療システム及び医療当局が、データ記憶機構を備えた注射器に関連する情報層を生成し、利用することをさらに可能にする。
【0008】
本明細書で使用するとき、注射器という用語は、ワクチンや薬剤(いくつかの実施形態では、注射前に液体に再構成することができる凍結乾燥成分を含む)などの流体薬剤の単回用量が充填された装置を指す。注射器は、プラスチック、ガラス、または他の材料から作ることができ、本明細書に記載される実施形態は、特定の材料から作られた注射器に依存しない。注射器には、例えば、ばね仕掛けまたは流体薬剤の注射を補助する別の機構を備えた自動注射器、または、注射機構の操作がユーザに依存する手動注射器が含まれる。手動注射器の例としては、プランジャ型注射器やプラスチック製バイアル注射器(例えば、ブローフィルシール(BFS)注射器)が挙げられ、これらは、流体薬剤が充填された注射器を構成するバイアルまたは他の構成要素から流体薬剤を押し出すために、注射実施者(例えば、看護師、自己注射の場合は患者)が圧力を加える必要がある。本明細書に記載される実施形態で利用することができる注射器装置の例としては、特許文献1(Koskaらによる2021年4月3日出願の「事前充填式の薬剤送達装置のためのシステム及び方法(SYSTEMS AND METHODS FOR PRE-FILLED MEDICAL DELIVERY DEVICES)」という標題のPCT/US21/25683号)に記載のものや、特許文献2(Koskaらによる2018年11月16日出願の「流体送達マニホールドのためのシステム及び方法(SYSTEMS AND METHODS FOR FLUID DELIVERY MANIFOLDS)」という標題のPCT/US18/61696号)に記載のものが挙げられる(上記の特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される)。
【0009】
流体薬剤の単回用量が予め充填されている注射器は、上記の特許文献1及び特許文献2に記載されているBFS注射器のように製造プロセス中に予め充填されている場合(事前充填式)もあれば、注射実施者が複数回用量容器から単回用量を抽出して充填する場合(現場充填式)もあることに留意されたい。現場充填式注射器では、注射を行う前に、注射実施者が別の容器(例えばガラス製の複数回用量バイラル)から1回分の流体薬剤を抽出して注射器に充填する。現場充填式注射器では、注射器を介して投与される流体薬剤は、その注射器に固有ではないため、注射実施者は、注射器の識別子と、1回分の流体薬剤が抽出される複数回用量バイアルの識別子との両方を識別するために、2つのデータを提供する必要がある。事前充填式注射器では、注射器の固有識別子は、本質的に、注射器自体と、その注射器に充填されている流体薬剤との両方を識別する。流体薬剤を識別することは、例えば、バッチ番号、流体薬剤の種類、製造業者、流体薬剤の製造日などの情報に関心がある一実施形態では望ましい。本明細書に記載される実施形態は、主に、固有識別子を備えた事前充填式注射器に焦点を当てている。
【0010】
本明細書に記載される実施形態では、各注射器は、その注射器の製造時(事前充填式注射器の場合は、その注射器に流体薬剤を事前充填した時点)に生成した各注射器の固有識別子を格納することなどによって、その注射器を一意に識別するデータ記憶機構を備えている。このようなデータ記憶機構としては、例えば、近距離無線通信(NFC)チップ、無線周波数識別(RFID)チップ、QRコード(登録商標)、バーコード、または、注射器の固有識別子をその注射器に関連して格納することができる他の機械可読機構が挙げられる(例えば、注射器またはその一部(注射器のラベル部分の上や下など)に取り付けられるか、または埋め込まれる)。
【0011】
いくつかの実施形態では、NFCチップまたは他のデータ記憶機構に格納される注射器の固有識別子及び/または他のデータは、暗号化された形式で格納され得ることに留意されたい。さらに、いくつかの実施形態では、NFCチップ(または他のデータ記憶機構)及び/または注射管理アプリとの通信は、暗号化された形式で(例えば、公開鍵/秘密鍵プロトコルなど)または他のセキュリティ対策(二要素認証やブロックチェーン技術など)を利用して行ってもよいことに留意されたい。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明の注射管理システムは、本明細書に記載されるようなデータ記憶機構を備えた注射器を介して注射の認証/承認を容易にするための注射管理アプリを提供することを含む。本発明の注射管理アプリは、注射器の使用に基づく情報層の作成及び利用または電子記録の保持を容易にするための集中型または分散型(例えば、ブロックチェーンベース)のシステムと通信するために個人が利用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の注射管理アプリは、本明細書に記載されるような注射器を使用して流体薬剤の注射を実施する注射実施者または他の個人(「注射実施者」と総称する)が注射管理システムにサインインして、注射実施者用の機能にアクセスすることができる注射実施者用のポータルまたはプラットフォームを含む。例えば、注射実施者は、患者に流体薬剤を注射する前に、注射管理アプリを利用して、事前充填式注射器に充填されている流体薬剤が有効であること、及び、その使用が承認されていること(例えば、偽造品でないこと、期限切れでないこと、リコールの対象ではないこと)を確認し、一意に識別された注射器に充填されている流体薬剤の投与を特定の患者に対して実施した注射実施者のインスタンスを含む各注射イベントを注射管理システムに記録することができる。同様に、注射管理アプリは、患者用のポータルまたはプラットフォームを含み、これらを介して、注射を受ける個人(「患者」)が注射管理システムにサインインして、患者用の機能にアクセスすることができる(例えば、デジタルレシートを取得して患者のモバイル装置に格納し、そのデジタルレシートを第三者と何らかの形で共有することによって、特定のワクチンを接種したこと、または他の方法で特定の流体薬剤の投与を受けたことの証明を提供することができる)。
【0013】
いくつかの実施形態や状況では、或る個人が、注射実施者と患者との両方の役割を果たす場合がある。いくつかの実施形態では、或る個人が、或る注射イベント(例えば、個人が注射を自己投与することができるイベント)における注射実施者と患者との両方の役割を果たす場合がある。
【0014】
一意に識別可能な事前充填式注射器を利用して、その注射器が利用される注射イベントを認識することができる注射管理アプリを提供することにより、医療システムの既存の機能よりも優れた1以上の利点を提供することができる。例えば、ワクチン接種プログラムの多くは、一般的な再利用可能な注射器を使用したワクチン投与を含む。しかし、多くの場合、特に発展途上国では、ワクチン投与は、病院外で専門家以外の者によって行われることがあり、注射器へのアクセスを慎重に管理することなく患者への注射が行われることもある。このような状況下で再利用可能な注射器を使用すると、特に、使用済みで、滅菌されていない注射器を使用してその後の注射を行う場合、感染症や血液媒介疾患の拡大のリスクが高まる。例えば、世界保健機関(WHO)は、肝炎やヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの血液感染症が、再利用可能な注射器の再使用に起因して伝染し、毎年100万人以上が死亡していると推定している。固有識別子を備えた事前充填式注射器を利用し、特に、特定の注射器がいつ使用されたかを追跡し、いくつかの実施形態では、警告を出力したり、特定の注射器からの流体薬剤の複数回の投与の承認を保留したりすることができる使いやすい注射管理アプリを提供することは、既存のシステムに対する上記の問題点を軽減するのに役立つであろう。
【0015】
本明細書に提示される実施形態は、患者が固有識別子を備えた注射器から、特定の流体薬剤の注射を受ける注射イベントを管理、追跡、承認、及び証明するためのシステム、装置、インターフェース、方法、及び製造品を説明する。例えば、いくつかの実施形態では、注射管理システム(いくつかの実施形態では、セキュリティ目的のためにブロックチェーン分散型ネットワークシステムを組み込んでもよい)は、(i)注射管理システムの電子処理装置によって、第1の注射イベントトランザクションを認識するステップであって、第1の注射イベントトランザクションの認識は、第1のユーザに対応する第1のモバイル装置に格納された注射管理アプリの注射実施者用プラットフォームを介して、患者への流体薬剤の投与の実施に関する情報を受信したことに基づいて行われ、情報は、流体薬剤が充填された注射器の固有識別子を含む第1のデータを含み、第1のユーザは、電子処理装置が第1のユーザを一意に識別し第1のユーザを登録済みの注射実施者として認識することを可能にする第1のユーザ認証情報を提供することによって、第1のモバイル装置を介して注射実施者用プラットフォームに事前にサインインしている、該ステップと、
(ii)注射器の固有識別子に基づいて、流体薬剤の投与を承認するステップと、
(iii)第1の注射イベントトランザクションに固有の電子記録を生成することによって、第1の注射イベント記録を生成するステップと、
(iv)第1のユーザから、注射管理アプリを介して、患者への流体薬剤の投与が実施されたことを示す情報を受信するステップと、
(v)患者への流体薬剤の投与が実施されたことを示す情報の受信に応じて、有効期限を有する第1のパスコードを生成し、第1のパスコードを第1の注射イベント記録に関連付けて格納するステップと、
(vi)第1のパスコードを、注射管理アプリを介して第1のユーザに出力するステップと、
(vii)第1のパスコードの有効期限が過ぎる前に、第2のユーザから第1のパスコードを受信するステップであって、第2のユーザは、電子処理装置が第2のユーザを一意に識別し第2のユーザを登録済みの患者として認識することを可能にする第2のユーザ認証情報を提供することによって、第2のユーザに対応する第2のモバイル装置を介して、第2のモバイル装置に格納された注射管理アプリの患者用プラットフォームに事前にサインインしている、該ステップと、
(vii)第2のユーザから第1のパスコードを受信したことに基づき、第2のユーザが、第1の注射イベントトランザクションの一環として第1のユーザによって注射器から流体薬剤の投与を受けた患者であると判定するステップと、
(ix)第2のユーザが流体薬剤の投与を受けたことを示すために、第1の注射イベント記録を更新するステップと、
(x)第2のユーザの注射管理アプリの患者用プラットフォームを介して、第2のユーザの第2のモバイル装置に、第2のユーザが流体薬剤の投与を受けたことを証明するコンファメーションを送信し、それによって、第2のユーザの注射管理アプリの患者用プラットフォームに格納されることになる第1の注射イベント記録のデジタルレシートを第2のモバイル装置に送信するステップと、
を含む、方法の実施を容易にする。
【0016】
本明細書には、固有識別子を注射器に含めるか、または注射器に取り付けることによって、BFSバイアルや従来型のガラスバイアルなどの注射器に対して行うことができる様々な改良が記載されている。固有識別子は、NFCチップまたはRFIDチップなどの物理的構成要素、またはQRコード(登録商標)の形態であり得る。固有識別子を具現化する形態に関係なく、固有識別子を各注射器に関連付けることによって、注射器(または、特に事前充填式注射器の場合には、注射器に充填される流体薬剤)及び/または注射器に充填された流体薬剤の投与を受ける患者に関連する情報層を作成することができる。本明細書では、様々な実施形態は、BFSバイアル注射器を含む注射器に適用されるものとして説明されているが、これらの実施形態の少なくともいくつかは、本明細書で説明されるデータの生成と新しい機能の恩恵を受けることができるガラス製または他の材料製のバイアルまたはシリンジシステムにも適用できることを理解されたい。したがって、BFSバイアルまたは他の特定のタイプの注射器について言及する場合、その言及は制限することを意図するものではなく、様々な実施形態において、流体薬剤の容器として機能する他のタイプの注射器に対して、同一または同様の機能を提供できることを理解されたい。同様に、本明細書では、いくつかの実施形態においてNFCチップ対応注射器について言及しているが、その言及は、本明細書に記載されるようなソフトウェアアプリを介して読み取り可能な固有識別子に関連付けられた任意のタイプの注射器(BFSバイアル機構であるか、従来型のガラス製バイアルであるか、または他のタイプであるかに関わらず)についても言及することを意図している(例えば、NFCチップまたはRFIDチップが埋め込まれているか、何らかの方法で取り付けられているか、またはQRコード(登録商標)が取り付けられていて、それにより、NFCチップの固有識別子が対応する注射器とその注射器に充填されている特定の流体薬剤を一意に識別することが可能になる)。このような固有識別子を有する注射器は、本明細書では、固有ID注射器とも称する。「注射器」という用語が、「固有ID注射器」としてではなく使用されている場合は、「注射器」という用語が「固有ID注射器」の短縮形として本明細書中で使用されている場合があるため、説明の文脈において、固有識別子がその注射器に関連付けられていないことを意味すると解釈すべきではないことに留意されたい。さらに、注射器に取り付けられるか、埋め込まれるか、印刷されるか、エンボス加工されるか、または他の方法で関連付けられる固有識別子を含む固有識別子またはデータ記憶機構には、固有識別子または注射器に固有識別子を格納するデータ記憶機構が含まれ、いくつかの実施形態では、注射器の特定の構成要素(例えば、BFSバイアルまたはBFSバイアルのラベル部分)またはパッケージに取り付けられるか、または他の方法で関連付けられることを意味することに留意されたい(例えば、NFCチップを注射器のホイル包装に取り付けてもよい)。
【0017】
各注射器がNFCチップなどのデータ記憶機構を備えることにより(例えば、注射器またはその構成部品にデータ格納機構を取り付けるか、または他の方法で対応させることにより)、下記の(i)~(v)を含む新規なかつ有用な利点を実現することができる。
(i)注射器を、モノのインターネット(IoT)に接続させたり、注射器が、IoTに接続されたリモートサーバ及び/または他の装置と通信したりすることを可能にする。
(ii)コンプライアンス追跡/報酬機構を可能にする(例えば、自己注射の状況、複数回の注射レジメまたは他の状況についての)。
(iii)固有ID注射器のユーザ(ユーザが注射実施者であるか、注射を受ける患者であるか、注射を受ける患者の親、保護者または他の関係者であるかに関わらず)が、モバイル装置または他の装置上の特別にプログラムされたソフトウェアアプリを使用して(アプリは、装置に事前にダウンロードされているものとする)、アプリにデータまたは情報を入力すること、及び/または、アプリがデータ記憶機構から情報を読み取ることを可能にする(また、いくつかの実施形態では、例えば、データ記憶機構がNFCチップまたはRFIDチップを含む場合は、データ記憶機構にデータを書き込むことができる)。
(iv)注射器から患者に流体薬剤が投与されたことの証明、承認、追跡、確認、及び、そのことに対する報酬を可能にする。
(v)注射器から注射を受けた患者に対して、自分で追加注射を行うかまたは診療所で追加注射を受けることを思い出させること、起こり得る副作用について質問すること、または、追加の認証済みまたは承認済みの流体薬剤が推奨された通りに患者に注射されたことの確認を受けることなどのフォローアップコミュニケーション(例えば、テキストメッセージや、注射管理アプリを介してメッセージ)を出力することを可能にする。
【0018】
NFCチップ対応の注射器からの流体薬剤の注射には、下記の(i)~(iii)を含む少なくとも3種類のユーザが関与する可能性があることに留意されたい。(i)医療従事者などの注射実施者。(ii)流体薬剤の注射を受ける患者。(iii)流体薬剤の注射を受ける患者の保護者(例えば、親)、友人、または家族(場合によっては、患者が、モバイル装置を共有する村の人間である場合がある。患者に関係する可能性のあるこのような人を総称して、本明細書では患者連絡係と称する)。或る注射に、これらの3種類のユーザのすべてが関与するとは限らない。いくつかの実施形態では、これらのユーザの1人以上が、本明細書に記載される1以上の実施形態を容易にするために、そのユーザのモバイル装置上の注射管理アプリの様々なプラットフォーム、ポータル、またはバージョン(または、そのようなアプリの様々な態様、機能、またはページ)にアクセスすることができる。例えば、注射実施者は、注射管理アプリの第1のバージョンまたは態様(注射管理アプリの注射実施者用プラットフォームと称する)にアクセスして利用することができ、患者または患者連絡係は、注射管理アプリの第2のバージョンまたは態様(注射管理アプリの患者用プラットフォームと称する)にアクセスして利用することができる。いくつかの実施形態では、患者用プラットフォームは、特定の患者に投与されたワクチンまたは他の流体薬剤の追跡を容易にし、患者に投与されたワクチンまたは他の流体薬剤のオンライン記録または電子記録(例えば、注射イベントのデジタルレシートやワクチン電子証明書)を提供することができる。いくつかの状況では、家族が1つのモバイル装置を共有し、そのモバイル装置上のアプリで、その家族の複数のメンバーの注射の追跡を可能にする場合がある。
【0019】
いくつかの実施形態では、注射管理アプリ(注射実施者用プラットフォームまたは患者用プラットフォームに関わらず)は、注射管理アプリ及びそれによって収集された注射データを提供または管理するサービス(ここでは、そのようなサービスを注射管理サービスと称する)のリモートサーバとの間でのデータの通信を可能にする。いくつかの実施形態では、注射管理サービスは、本明細書に記載される固有ID注射器の製造及び/または流通に関与し(例えば、それを管理する組織を管理するか、またはトランザクション関係を有する)、本明細書に記載される実施形態に従って製造され、本明細書に記載される少なくともいくつかの実施形態では製造時点から注射時点まで追跡されるべき固有ID注射器の記録を格納することができる。いくつかの実施形態では、アプリがダウンロードされた装置が注射管理サービスと通信できない場合(例えば、その装置がWi-Fi(登録商標)に接続されていないか、または携帯電話サービスに十分に接続されていない場合)には、注射管理アプリを介して収集されたデータをローカルメモリにキャッシュして格納し、その後、十分な通信接続が確立されたときに、ローカルメモリに格納されたデータを注射管理サービスに転送するようにする。いくつかの実施形態では、注射管理サービスは、本明細書に記載される実施形態に従って製造された各固有ID注射器のデータベース内の記録を開くことができる。いくつかの実施形態では、注射管理サービスは、その記憶機構に、流体薬剤に対応する他の情報(例えば、製造時期及び場所;バッチ、ロット及び/またはストリップ番号;流体薬剤の種類;流体薬剤の用量;流体薬剤の使用期限;など)に関連付けて、バイアルに埋め込まれた、またはバイアルに取り付けられたNFCチップまたはRFIDチップの固有識別子を格納することができる。その後、ユーザ(例えば、注射実施者、患者、または患者連絡係)が、固有ID注射器をモバイル装置にタップすると、注射管理アプリは、注射器のデータ記憶機構に格納されている固有識別子(例えば、NFCチップの識別子)を読み取り、注射管理サービスと通信して、(i)注射を認証または承認するためにバイアル/チップに関連する情報を取得する(例えば、流体薬剤の使用期限が切れていないか、リコールの対象になっていないかを確認する)、または、(ii)その識別子に対応する流体薬剤が注射されたことを記録するために新しい記録を開くかまたは作成する(または既存のデータ記録の情報を更新する)ことができる。これには、ユーザから取得した、またはバイアルをモバイル装置にタップしたことによって取得した様々な新しい情報(例えば、注射の日時/場所;注射実施者の識別子(存在する場合);患者の識別子及び/または患者に関連するモバイル装置の識別子(例えば、電話番号))を格納することも含まれ、本明細書では、注射イベント記録とも称される。いくつかの実施形態では、注射管理サービスは、注射管理アプリがインストールされたユーザのモバイル装置と通信可能な1以上のサーバを備える注射管理システムを運用する。ユーザのモバイル装置は、注射管理システムに登録された装置であり、注射管理システムのユーザである。いくつかの実施形態では、注射管理システムは、注射イベント記録を格納するために、ブロックチェーンタイプの分散型サーバネットワークを利用する(例えば、セキュリティの目的で)。
【0020】
いくつかの実施形態では、ユーザがバイアルを注射管理アプリが開かれているモバイル装置にタップした後に、注射を認証または承認するために注射管理サービスに連絡することに加えてまたはその代わりに、注射管理アプリは、チップ識別子に加えて、データ記憶機構から情報を読み取り(例えば、NFCチップやRFIDチップは、バイアルに充填されている流体薬剤の有効期限、用量、種類などの読み取り可能なデータを格納することができる)、読み取った情報を使用して注射を承認し、注射を実施してよいことをユーザに出力することができる。
【0021】
固有ID注射器がBFSバイアル機構を含むいくつかの実施形態では、本明細書に記載されるBFS製造プロセス中に流体薬剤が充填される事前充填式BFSバイアルが、そのプラスチック内に埋め込まれているか、またはその内部または表面に取り付けられるNFCチップを備えていると想定している(「埋め込み」という用語は、簡潔さを目的として使用されるが、BFSバイアルであろうと、別の種類のプラスチック製またはガラス製のバイアルであろうと、バイアルへの取り付けや埋め込みなどのあらゆる形態を包含することを意図している)。別の実施形態では、データ記憶装置(NFCチップ、RFIDチップ、または他の形態に関わらず)は、製造プロセス中に注射器に接着させるか、または他の方法で取り付けることができる(例えば、BFSバイアルのラベル部分の上や下に接着または他の方法で取り付けることができる)。
【0022】
ここで
図1を参照すると、いくつかの実施形態による注射管理システム100のブロック図が示されている。いくつかの実施形態では、注射管理システム100は、複数のノード装置102a-nと、ネットワーク104と、管理装置106と、サーバ装置110とを備える。いくつかの実施形態では、ノード装置102a-n、管理装置106、及びサーバ装置110のいずれかまたはすべては、データストレージ及び/またはメモリ装置140-1a-n、140-2を含むか、あるいは、それらと通信するように構成される。例えば、各ノード装置102a-nがローカルメモリ装置140-1a-nを含み、サーバ装置110がネットワークメモリ装置140-2を含むように構成される。
図1に示すように、ノード装置102a-n、管理装置106、サーバ装置110、ローカルメモリ装置140-1a-n、ネットワークメモリ装置140-2のいずれかまたはすべて(またはそれらの任意の組み合わせ)は、ネットワーク104を介して通信することができる。いくつかの実施形態では、注射管理システム100のノード装置102a-n、管理装置106、サーバ装置110、ローカルメモリ装置140-1a-n、ネットワークメモリ装置140-2の各装置間及び/または各装置内の通信を利用して、分散型注射イベントトランザクション台帳を提供及び管理することができる。サーバ装置110は、例えば、ノード装置102a-n及び/または管理装置106の1以上とインターフェースして、メモリ装置140-1a-n、140-2のいずれかまたはすべてに格納されている特別にプログラムされたチェーンコード(図示しない)の複数のインスタンスを実行したり、注射イベントトランザクションに参加しているユーザが注射イベントトランザクションに関するステータス情報を取得、確認、及び/または変更することができる特別に構造化されたインターフェースを提供したりすることができる。
【0023】
より少ないまたはより多い数の構成要素102a-n、104、106、110、140-1a-n、140-2、及び/または、構成要素102a-n、104、106、110、140-1a-n、140-2の様々な構成が、本明細書に記載される実施形態の範囲から逸脱することなく、注射管理システム100に含まれ得る。いくつかの実施形態では、構成要素102a-n、104、106、110、140-1a-n、140-2は、本明細書に記載される、同様の名称及び/または符号の構成要素と同様の構成及び/または機能を有し得る。いくつかの実施形態では、注射管理システム100(及び/またはその一部)は、注射管理方法400及び/またはその一部を含む本明細書に記載される方法を実行、実施、及び/または容易にするようにプログラムされたかあるいは他の方法で構成された分散型注射イベントの管理プログラム、システム、及び/またはプラットフォームを含み得る。
【0024】
ノード装置102a-nは、いくつかの実施形態では、既知のまたは実施可能な、コンピュータ装置、モバイル電子装置、ネットワーク装置、ユーザ装置、及び/または通信装置の任意のタイプまたは構成を含み得る。ノード装置102a-nは、スマートフォン、携帯電話及び/または無線電話を含むモバイル装置などの1以上の電子装置を含み、そのようなものとしては、例えば、アップル社(Apple, Inc.)製のiPhone(登録商標)や、米国カリフォルニア州マウンテンビューのグーグル社(Google、Inc.)のアンドロイド(登録商標)オペレーティングシステムを実行する米国カリフォルニア州サンディエゴのLGエレクトロニクス社(LG Electronics, Inc.)製のLGオプティマスZone3などがある。いくつかの実施形態では、ノード装置102a-nは、患者、注射実施者、または特定の注射イベントトランザクションに関する情報を確認することを目的とする第三者などの、1人以上のユーザが所有及び/または操作する装置を含み得る。いくつかの実施形態では、ノード装置102a-nは、ネットワーク104を介してサーバ装置110と通信し、本明細書に記載される分散チェーンコード実行プロセスに従って、注射認証の問い合わせ及び/またはプロセスを実施したり、注射イベント(例えば、特定の患者が、特定の日時及び/または場所において、特定の流体薬剤の投与を受けたという事実、及び/または、患者の現在のワクチン接種ステータス(例えば、ワクチン接種イベントに参加した結果としての))に関する情報を記録、格納、確認、または更新したりすることができる。いくつかの実施形態では、ノード装置102a-nはそれぞれ、本明細書に記載されるような注射管理アプリのインスタンスを格納することができ、それを介して、ノード装置102a-nのユーザは、サーバ装置110を所有、制御、または操作する(または代わりに操作する)注射管理システムと通信することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、ノード装置102a-nは、例えば、他のユーザによって操作される1以上の他のノード装置102a-nとの(直接的または間接的な)通信を実現するために、サーバ装置110及び/または管理装置106とインターフェースすることができる(このような通信は
図1には明示的に示されていない)。いくつかの実施形態では、ノード装置102a-nは、管理装置106との(直接的または間接的な)通信を実現するために、サーバ装置110とインターフェースすることができる(このような通信も
図1には明示的に示されていない)。いくつかの実施形態では、ノード装置102a-n及び/またはサーバ装置110は、注射イベントのトランザクション台帳を暗号化及び認証可能な態様で配布するチェーンコードアルゴリズムの別個のインスタンスを実行することができる。本明細書で説明するように、例えば、ノード装置102a-n及び/またはサーバ装置110は、管理装置106と通信して、注射イベントチェーンコードブロックまたはペイロードを複数のノード装置102a-nに安全に配布するために利用される暗号サービスを実行することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、ネットワーク104は、サーバ装置110、ノード装置102a-n、管理装置106、及び/またはメモリ装置140-1a-n、140-2との通信リンクを有する、ローカルエリアネットワーク(LAN;無線及び/または有線)、携帯電話、Bluetooth(登録商標)、近距離無線通信(NFC)、及び/または無線周波数(RF)ネットワークを含み得る。いくつかの実施形態では、ネットワーク104は、注射管理システム100の構成要素102a-n、106、110、140-1a-n、140-2のいずれかまたはすべてとの直接的な通信リンクを含み得る。ノード装置102a-nは、例えば、ネットワーク104の一部を構成するネットワーク構成要素(例えば、通信リンク)などの、1以上のワイヤ、ケーブル、無線リンク、及び/または他のネットワーク構成要素を介して、1以上のサーバ装置110及び/または管理装置106と直接的にインターフェースするかまたは接続することができる。いくつかの実施形態では、ネットワーク104は、
図1に示したもの以外の1つまたは複数の他のリンクまたはネットワーク構成要素を含み得る。ノード装置102a-nは、例えば、ネットワーク104の一部を構成する様々なセルタワー、ルータ、リピータ、ポート、スイッチ、及び/または他のネットワーク構成要素、例えばインターネット及び/または携帯電話(及び/または公衆交換電話網(PSTN))ネットワークを介して、サーバ装置110及び/または管理装置106に接続され得る。
【0027】
ネットワーク104は、
図1では単一のオブジェクトとして示されているが、ネットワーク104は、識別されたまたは使用可能になったネットワークの任意の数、タイプ、及び/または構成を含み得る。いくつかの実施形態では、ネットワーク104は、注射管理システム100の構成要素102a-n、106、110、140-1a-n、140-2によって直接的または間接的に相互接続された様々なサブネットワーク及び/またはネットワーク構成要素の集合体を含み得る。ネットワーク104は、例えば、ノード装置102a-nとサーバ装置110との間の通信リンクを備えた1以上の携帯電話ネットワークであってもよいし、あるいは、例えば、サーバ装置110と管理装置106及び/またはメモリ装置140-1a-n、140-2のうちの1以上との間の通信リンクを備えたインターネットであってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、管理装置106は、PC(パーソナルコンピュータ)、ラップトップコンピュータ、コンピュータサーバ、データベースシステム、他の電子装置、他の装置、またはそれらの任意の組み合わせなどの、任意のタイプまたは構成のコンピュータ処理装置を含む。いくつかの実施形態では、管理装置106は、第三者(すなわち、ノード装置102a-nまたはサーバ装置110のいずれかを所有及び/または操作している任意のエンティティとは異なるエンティティ;例えば、証明書、認証、及び/または暗号化サービスのプロバイダなど)が所有及び/または操作することができる。管理装置106は、例えば、米国カリフォルニア州サンフランシスコのリナックス(登録商標)ファウンデーション(The Linux(登録商標)Foundation)から入手可能なHyperledger(TM)Fabric(TM)ブロックチェーンフレームワークなどの、集中型ブロックチェーン暗号化機能を提供する1以上のウェブサービスを実行することができる。いくつかの実施形態では、管理装置106は、1以上のノード装置102a-n及び/またはサーバ装置110からブロックチェーンデータを受信し、受信したデータにハッシュアルゴリズムを適用し、暗号化されたデータを各ノード装置102a-n及びサーバ装置110に送信することができる(例えば、ブロックチェーン台帳のローカルコピーに格納するために)。いくつかの実施形態では、管理装置106は、複数の装置を含んでもよいし、あるいは、複数の第三者のエンティティに関連付けてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、サーバ装置110は、ノード装置102a-n及び/または管理装置106と(直接的及び/または間接的に)インターフェースするために通信可能に接続されたコンピュータサーバなどの、電子的な及び/またはコンピュータ化された制御装置を含み得る。サーバ装置110は、例えば、1以上のTwelve-Core Intel(登録商標)Xeon(登録商標)E5-4640v4電子処理装置を含み得る、米国テキサス州ラウンドロックのデル社(Dell, Inc.)製の1以上のPowerEdge(TM)R830ラックサーバを含み得る。いくつかの実施形態では、サーバ装置110は、サーバ装置110の助けなしでは実行不可能な処理を実行及び/または実行するように特別にプログラムされた複数の処理装置を含み得る。サーバ装置110は、例えば、1以上のコード化されたルールを実行することにより、複数の注射イベントトランザクションのブロックチェーン台帳を管理することができ、そのような管理は、特別にプログラムされたサーバ装置110の恩恵なしには実行することができないリアルタイムでの注射イベントステータスの更新及び変更を可能にする。いくつかの実施形態では、サーバ装置は、注射イベントトランザクション台帳、注射イベントデータベース、または、注射管理システムによって追跡及び管理される注射イベントを示す電子記録の他のリポジトリに具現化された注射イベント記録に格納されているデータの認証を取得、更新、及び送信するために、それぞれのモバイル装置(例えば、ノード装置102a-n)を介して患者及び注射実施者と通信することができる、本明細書に記載されるような注射管理システムを含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、サーバ装置110は、1以上のノード装置102a-n及び/または管理装置106から遠隔の場所に位置してもよい。また、サーバ装置110は、1以上の様々なサイト及び/または場所に配置された複数の電子処理装置を含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、サーバ装置110は、本明細書に記載された実施形態に従って動作するように特別にプログラムされた命令を格納及び/または実行することができる。サーバ装置110は、例えば、オンライン環境において、本明細書に記載したような注射管理アプリを介して、注射イベントの管理、追跡、承認、認証、及び/または更新を容易にする1以上のプログラム、モジュール、及び/またはルーチンを実行することができる。いくつかの実施形態では、サーバ装置110は、ノード装置102a-nに関するトランザクション及び/または通信を管理及び/または容易にするためのコンピュータサーバ及び/または他の電子装置などの、コンピュータ化された処理装置を含み得る。民間企業、政府の保健機関、ヘルスケア企業、注射器製造業者、及び/または他のユーザは、例えば、サーバ装置110を使用して、下記の(i)~(v)を実現することができる。
(i)固有ID注射器に関連する注射イベントを受信または認識する。
(ii)その注射器からの注射を承認する。
(iii)特定の流体薬剤が特定の患者に投与されたことの確認を注射実施者から受けとる(例えば、特定の日時及び/または場所)。
(iv)上記のいずれかの結果として、特定のワクチンについての特定の患者のワクチン接種ステータス(ワクチン接種状況)を格納する。
(v)本明細書に記載されるように、第三者が患者のワクチン接種ステータスを確認したり、リアルタイムで最新情報を提供したりするためのインターフェースを提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ノード装置102a-n、管理装置106、及び/またはサーバ装置110は、メモリ装置140-1a-n、140-2と通信することができる。メモリ装置140-1a-n、140-2は、様々なデータや命令を格納することができる様々なデータベース及び/またはデータ記憶媒体を含み得る。そのような様々なデータや命令としては、例えば、ノード装置102a-nから取得した注射器データ、流体薬剤データ、登録患者データ、登録された注射実施者データ、注射イベントデータ、及び/または注射またはワクチン接種ステータスデータ、サーバ装置110によって定義されたデジタルレシートデータ(このようなレベルを採用する実施形態では、デジタルレシートに関連するプライバシーレベルを含む)、注射承認処理ルール、チェーンコード命令、ブロックチェーンデータ、暗号鍵及び/またはデータ、登録されたユーザのログイン及び/またはID認証情報、及び/または、様々な装置(例えば、サーバ装置110、管理装置106、及び/またはノード装置102a-n)を本明細書に記載された実施形態に従って動作させる命令、が挙げられる。
【0033】
メモリ装置140-1a-n、140-2は、例えば、注射イベントトランザクションの記録を格納する分散型注射イベントトランザクション台帳(例えば、特定の患者への注射が承認及び/または投与されたこと、及び/または、特定の流体薬剤が特定の患者に投与されたことを示す、注射実施者から提供された、注射イベントを定義するデータであり、このデータには、注射に対応する日時、場所、流体薬剤、及び/または注射実施者などの付随する詳細情報が含まれる)を定義するブロックチェーンデータ、チェーンコード命令、管理装置106との通信を実行させるデータ(例えば、ブロックチェーン認証、証明書、及び/または暗号ハッシュを提供するウェブサービスに対するAPI及び/またはAPIトンネル)を格納することができる。いくつかの実施形態では、メモリ装置140-1a-n、140-2は、識別されたまたは使用可能になった、任意のタイプ、構成、及び/または数量のデータ記憶装置を含み得る。メモリ装置140-1a-n、140-2は、例えば、ノード装置102a-nから提供された(及び/または要求された)注射イベントトランザクション台帳データ、注射器及び/または注射イベントの分析データ(例えば、解析式や数学モデル)、及び/または、様々な動作命令やドライバ、などを格納するように構成された、光学式ハードドライブ及び/またはソリッドステートハードドライブのアレイを含み得る。メモリ装置140-1a-n、140-2は、様々なノード装置102a-n及びサーバ110のスタンドアロン構成要素として示されているが、メモリ装置140-1a-n、140-2は、複数の構成要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数の構成要素を含むメモリ装置140-1a-n、140-2は、様々な装置に分散配置してもよいし、及び/または、遠隔に分散配置してもよい。ノード装置102a-n、管理装置106、及び/またはサーバ装置110のいずれかまたはすべては、例えば、メモリ装置140-1a-n、140-2またはその一部を含み得る。
【0034】
次に
図2を参照すると、本明細書で説明される注射管理サービスの構成要素である注射管理システム200のブロック図が示されている。一実施形態では、注射管理システム200は、サーバ装置110(
図1)の例を含み得る。注射管理システム200は、例えば、プロセッサ201、メモリ203、データベース202、及び、複数のソフトウェアモジュール222~226を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、注射管理システム200の構成要素のいずれかまたはすべては、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはデジタルシーケンシャルロジック、例えばプロセッサ201などの、1以上のハードウェア構成要素を含む。プロセッサ201は、順次または並列に動作する、1以上のINTEL(TM)プロセッサなどの、1以上のプロセッサを含む。プロセッサ201は、メモリ203と通信するか、または、メモリ230に動作可能に接続される。メモリ203は、磁気メモリ、光学メモリ、及び/または半導体メモリの適切な組み合わせを含むことができ、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、コンパクトディスク、及び/またはハードディスクを含むことができる。プロセッサ201及びメモリ203はそれぞれ、例えば、(i)その全体を単一のコンピュータまたは他の装置内に配置してもよいし、または、(ii)シリアルポートケーブル、電話回線、または無線周波数トランシーバーなどの遠隔通信媒体によって相互に接続してもよい。一実施形態では、注射管理システム200は、データベースまたは注射イベントトランザクション記録を維持するために、リモートサーバコンピュータに接続された1以上の装置(例えば、
図1の管理装置106)を含むことができる。
【0036】
注射管理システム200は、データベース202をさらに含む。いくつかの実施形態では、データベース202は、本明細書に記載された1以上の実施形態を実施するために有用なデータを格納することができ、そのようなデータの非限定的な例としては、下記の(i)~(v)が挙げられる。
(i)1以上のユーザ(例えば、注射を受ける患者及び/または注射実施者)に関連するデータ。
(ii)注射器に充填されている薬剤を製造した製薬会社に関連するデータ。
(iii)固有識別子を格納するデータ格納機構を備えた注射器に関連するデータ。
(iv)1以上の注射イベントまたは注射イベントトランザクションに関連するデータ。
(v)本明細書に記載されるような注射コンプライアンスプログラムで患者が獲得した(または獲得する予定の)1以上の報酬に関連するデータ。
【0037】
いくつかの実施形態では、データベース202は、データ、関連するデータ構造、及びデータベース管理ソフトウェアを含む。例えば、データベース202は、Microsoft SQL、Oracle、IBM DB2などを含む、よく知られたデータベース管理システムを使用して実装することができる。いくつかの実施形態では、データベース202(またはそれに格納されるデータの少なくとも一部)は、メモリ203、及び/または、メモリ203やプロセッサ201にアクセス可能な別のメモリ装置に格納され得ることに留意されたい。例えば、一実施形態では、データベース202(またはそれに格納されるデータの少なくとも一部)は、注射管理サービスがデータを格納する目的で契約したクラウドベースのコンピューティングサービスのサーバなどの、第三者のサーバのメモリに格納され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、データベース202に格納されるデータは、複数のデータベースにまたがって格納してもよい。少なくともいくつかの実施形態で有用であるとして本明細書に記載されるサンプルデータは、単に単純化の目的で単一のデータベース202に格納されると説明されている。いくつかの実施形態では、データ204~212のうちの1以上を別個のデータベースとして格納してもよい。
【0039】
データベース202に格納することができるデータの種類の例としては、注射管理システム200によって一意に識別可能な注射器(例えば、追跡、管理及び/または承認の目的で注射管理システム200に登録された注射器)を定義する注射器データ204(及び、事前充填式注射器の場合は、その注射器に充填された流体薬剤)が挙げられる。このような注射器データの例としては、下記の(i)~(xi)が挙げられる。
(i)注射器の固有のシリアル番号(いくつかの実施形態では、注射器に取り付けられるか、または他の方法で関連付けられたNFCチップまたは他のチップの固有のシリアル番号を含む)。
(ii)注射器に充填されている流体薬剤のバッチ番号。
(iii)流体薬剤の製造業者のロット識別番号。
(iv)流体薬剤及び注射器の製造の時期及び/または場所。
(v)注射器に充填されている流体薬剤の種類、カテゴリ、及び名称。
(vi)流体薬剤の有効期限(有効期限がある場合)。
(vii)ストリップID番号(例えば、注射器が、複数の注射器のストリップとして製造され、配布される場合)。
(viii)流体薬剤の用量または強度。
(ix)注射を受ける患者に関する情報(例えば、子供であるか、大人であるか)。
(x)注射器の1以上の特性(例えば、その注射器が、1.5mlのBFSバイアルであるという情報)。
(xi)固有ID注射器及び/またはそれに充填された流体薬剤を識別または追跡するために望ましい他の情報(例えば、リコールアラート)。
いくつかの実施形態では、固有のシリアル番号は、他のデータ(例えば、上記の(ii)~(x)に記載した情報の少なくとも一部)を指し示す固有識別子であってもよい。いくつかの実施形態では、注射器データ204は、注射承認プロセスの一部として利用することができる(例えば、その注射器が偽造品でないことや、その注射器に充填されている流体薬剤がリコールの対象になっていないことを確認するために利用することができる)。
【0040】
データベース202に格納することができるデータの種類の別の例としては、本明細書に記載される少なくともいくつかの実施形態では、注射管理システム200に登録された患者(例えば、接種したワクチンや、各種感染症のワクチン接種ステータスを把握するために、注射管理アプリをダウンロードした人物など)を定義する患者データ206が挙げられる。このような患者データ206は、患者データ206のそれぞれの患者記録において、下記の(i)~(vi)のうち少なくとも1つを含むことができる。
(i)名前。
(ii)連絡先。
(iii)固有識別子(例えば、注射管理システム、または、注射管理システムと提携している第三者組織が、その患者に関する注射イベント情報の管理を支援するために割り当てたもの)。
(iv)ログイン認証情報(例えば、患者が注射管理アプリの患者用ポータルにログインする際に使用するユーザ名とパスワード)。
(v)既往歴。
(vi)ワクチン接種を受けた(または受けていない)各種感染症の注射イベントステータスまたはワクチン接種ステータス。
【0041】
いくつかの実施形態では、注射管理システム200は、注射イベントトランザクションまたはワクチン接種のための所定のデジタルレシートに関連付けられる様々なプライバシーレベルを可能にすることができる。例えば、このようなデジタルレシートの第1のバージョンまたはレベルでは、特定の感染症に対するワクチン接種ステータスを確認するために、患者が匿名のままでデジタルレシートのバージョンを第三者と共有することを可能にする。このようなデジタルレシートのバージョンまたはプライバシーレベルは、例えば、患者に関する個人識別情報(PII)を提供することなく、患者のワクチン接種ステータスとワクチン接種に関するいくつかの情報(例えば、ワクチン接種の日時や場所)を示すことができる。デジタルレシートの第2のバージョンまたはレベルには、患者のPIIを含めることができる。このような実施形態では、異なる許可要件を、デジタルレシートの異なるプライバシーレベルに対応させることができる(例えば、患者/ユーザは、デジタルレシートのPIIを含む第2のレベルが第三者と共有されることを確認するために、追加のパスワードを提供するか、二要素認証に参加する必要がある)。このような実施形態では、デジタルレシートの異なるレベル(そして、例えば、それぞれの下で第三者と共有される異なる情報)、及び、各レベルに対応する許可要件も、患者データ206の患者記録に患者毎に格納することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、注射イベントのデジタルレシートを定義するデータを、患者データ206に格納してもよい。また、別の実施形態では、デジタルレシートが格納されている別の場所を指すデジタルレシートの識別子を、患者データ206に格納してもよい(例えば、注射イベントデータ210、または、患者データ206及び注射イベントデータ210の両方とは別に格納されている他のデジタルレシートのデータベースや台帳に格納してもよい)。
【0043】
データベース202に格納することができる別の種類のデータの例は、注射管理システム200に注射実施者として登録されている個人を定義する注射実施者データ208である。このような注射実施者データには、注射実施者の各記録について、下記の(i)~(iv)のうちの少なくとも1つを含めることができる。
(i)名前。
(ii)連絡先。
(ii)固有識別子(例えば、注射管理システムに登録された注射器を使用して患者に注射を行うのを支援するために、注射管理システムまたは注射管理システムと提携した第三者によって割り当てられる)。
(iv)ログイン認証情報(例えば、患者が注射管理アプリの注射実施者用ポータルにログインするときに使用するユーザ名とパスワード)。
いくつかの状況では、特定の個人が、患者と注射実施者の両方として注射管理システムに登録されている場合があり、このような場合には、その個人はログインの理由に応じて適切なポータルまたはプラットフォーム(患者用または注射実施者用)にログインする必要がある。
【0044】
データベース202に格納することができるデータのさらに別の例は、注射管理システム200によって認識及び記録された注射イベントまたは注射イベントトランザクションのリストを定義する注射イベントデータ210である。いくつかの実施形態では、注射イベントデータベースは、
図1に関して説明したように、注射イベントトランザクション台帳の実施形態を含むか、または、注射イベントトランザクション台帳に格納されるデータと同じデータの一部または全部を表す。いくつかの実施形態では、注射イベントデータ210の各記録は、認識され記録された特定の注射イベントを定義する情報を格納することができる(例えば、
図4を参照して説明する注射管理方法400などの方法に従って)。注射イベントデータ210に記録されるデータの例としては、下記の(i)~(xii)が挙げられる。
(i)注射の日時(本明細書では、「日付」、「時刻」、及び「日付/時刻」という用語は、注射イベントの日時を指すために互換的に使用されることに留意されたい)。
(ii)注射を実施した場所(例えば、注射実施者及び/または患者から提供された情報に基づく。選択肢のリストから選択した情報であってもよいし、または、GPSまたはモバイル装置のいずれかまたは両方から得られた位置情報に基づく情報であってもよい)。
(iii)注射を実施した注射実施者に関する情報または識別子。
(iv)注射を受けた患者の識別子。
(v)注射に関する情報(例えば、投与された流体薬剤の名称、バッチ、ロット番号など)。
(vi)注射の有効期限(有効期限がある場合)。
(vii)注射イベントで使用される注射器の固有識別子。
(viii)注射イベントデータ210の新しい記録が開かれたときに注射管理システム200によって生成される、トランザクションの固有識別子(注射器識別子と異なる場合)。
(ix)注射の実施が確認された後に、(例えば、
図4の注射管理方法400に従って)生成されるパスコード(有効期間がある)。
(x)パスコードの有効期限、または、有効期限が切れる前に患者からパスコードを受け取ったかどうかに関する情報。
(xi)注射イベントに対応する注射ステータス(例えば、所定期間有効なワクチンの注射の場合、注射ステータスは、その注射が現在有効/有効と見なされているのか、それとも期限切れと見なされているのかを示すことができる)。
(xii)注射イベントに対応するデジタルレシートまたはデジタルレシート識別子。
いくつかの実施形態では、注射イベントのデジタルレシートを定義するデータを、注射イベントデータに格納してもよい。別の実施形態では、デジタルレシートが格納されている別の場所を指すデジタルレシートの識別子を、注射イベントデータ210に格納してもよい(例えば、患者データ206、または、患者データ206及び注射イベントデータ210の両方とは別に格納されているデジタルレシートの別のデータベースや台帳に格納してもよい)。
【0045】
データベース202に格納することができるデータのさらに別の例は、流体薬剤データ212である。流体薬剤データ212は、注射管理システム200によって管理されている注射器に充填された流体薬剤に関するデータを含むことができる。いくつかの実施形態では、注射実施者は、患者に流体薬剤を投与するときに、流体薬剤データ212から特定の流体薬剤に関する情報を検索して調べることができる。別の実施形態では、流体薬剤データ212は、注射承認プロセスの一部として利用することができる。流体薬剤データ212に格納することができる流体薬剤に関する情報の例としては、これに限定しないが、下記の(i)~(v)が挙げられる。
(i)流体薬剤で治療/予防される疾患、または、流体薬剤の名称。
(ii)流体薬剤の製造業者。
(iii)液剤に含まれる成分(例えば、アレルギーや適合性の目的で)。
(iv)流体薬剤を製造した販売業者または委託製造業者。
(v)流体薬剤に関する追加情報を提供することができる製薬会社または他の代表者の連絡先、または、流体薬剤に対応する懸念、苦情、質問、または問題を提出するための連絡先。
【0046】
なお、どのような種類の情報がどのような種類のデータに含まれるかを示した本明細書の例では、限定を意図するものではないことに留意されたい。どのような種類の情報をどのような種類のデータに格納するか、異なる種類のデータを組み合わせること、一部の情報を複数の種類のデータで格納することなどの様々な変更が可能である。
【0047】
注射管理システム200は、プロセッサ201に特定の機能を実行させるための1以上のソフトウェアモジュールまたはエンジンをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、1以上のプロセッサに特定の機能を実行させるためのソフトウェア構成要素、アプリケーション、ルーチンまたはサブルーチン、または命令セットは、本明細書では、「モジュール」または「エンジン」と称する。このようなモジュール、エンジン、または本明細書で言及される他のソフトウェアまたはコンピュータプログラム(ユーザのモバイル装置にダウンロードして、注射管理システム200などを介して注射管理サービスとの通信を容易にする注射管理アプリを含む)は、任意のコンピュータ言語で記述することができ、モノリシックコードベースの一部であってもよいし、または、オブジェクト指向コンピュータ言語において一般的なように、より離散的なコード部分で開発してもよいことに留意されたい。加えて、本明細書で言及されるモジュール、エンジン、または任意のソフトウェアまたはコンピュータプログラムは、いくつかの実施形態では、複数のコンピュータプラットフォーム、サーバ、端末などに分散されていてもよい。例えば、或るモジュールは、本明細書に記載された機能が別々のプロセッサ及び/またはコンピューティングハードウェアプラットフォームによって実行されるように実装してもよい。
【0048】
図2に示したソフトウェアモジュールまたはコンピュータプログラムのいずれかは、単一のプログラムの一部であってもよいし、または、プロセッサ201を制御するための様々なプログラムに統合してもよいことを理解されたい。さらに、
図2に示したソフトウェアモジュールまたはコンピュータプログラムのいずれかは、圧縮された、コンパイルされていない、及び/または暗号化された形式で格納してもよく、プロセッサ201によって実行されたときに、プロセッサ201を本明細書に記載されている少なくともいくつかの方法に従って動作させる命令を含んでもよい。当然ながら、追加の及び/または異なるソフトウェアモジュールまたはコンピュータプログラムが含まれてもよく、
図2に関して図示及び説明されているソフトウェアモジュールの例は、いかなる実施形態においても必須ではないことを理解されたい。「モジュール」または「エンジン」という用語の使用は、それに関連して説明された機能がスタンドアロンでまたは独立して機能するプログラムまたはアプリケーションとして具体化されることを意味するものではない。いくつかの実施形態では、特定のモジュールに関して説明された機能が独立して機能することができるが、別の実施形態では、そのような機能は、説明の容易さまたは利便性のみのために特定のモジュールに関して説明され、そのような機能は、実際には、コンピューティング装置のプロセッサに指示するための別のモジュール、プログラム、アプリケーション、または命令セットに統合された一部であってもよい。
【0049】
一実施形態では、
図2に関して説明したソフトウェアモジュール、エンジン、またはプログラムのいずれかまたはすべての命令は、別のコンピュータ可読媒体からメインメモリに、例えばROMからRAMに読み出すことができる。ソフトウェアモジュール、エンジン、またはプログラム内の命令シーケンスの実行により、プロセッサ201は、本明細書で説明した方法ステップの少なくとも一部を実行する。別の実施形態では、本明細書に記載される実施形態の方法ステップを実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはそのソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路を使用してもよい。したがって、本明細書で説明する実施形態は、ハードウェアとソフトウェアとの特定の組み合わせに限定されるものではない。注射管理システム200で利用することができるソフトウェアモジュールの非限定的な例としては、(i)注射管理エンジン220、(ii)承認モジュール222、(iii)注射イベントトランザクションログモジュール224、及び(iv)注射ステータスモジュール226が挙げられる。
【0050】
図2に示す例示的な実施形態では、注射管理エンジン220は、(i)承認モジュール222、(ii)注射イベントトランザクションログモジュール224、(iii)注射ステータスモジュール226、及び(iv)データベース202と通信するように図示されている。したがって、注射管理エンジン220は、データベース202内のデータにアクセスし、それ自体で、またはそのようなデータをモジュール222~226の1以上に提供することによって、本明細書で説明される機能及び実施形態のいくつかを実行することができる。このような構成は、データベース202のデータにアクセスし、変更し、利用する方法の一例として示されている。
【0051】
一般的に、注射管理エンジン220及びモジュール222~226は、それらが注射管理システム200内に特にどのように配置されているかに関係なく、本明細書で説明される1以上の実施形態を実施するために、プロセッサ201にアクセス可能であると理解されるべきである。上述のように、エンジン220及びモジュール222~226のうちの1以上は、データベース202に格納されているデータの少なくともいくつかを利用することができる。さらに、いくつかの実施形態では、エンジン220及びモジュール222~226のうちの1以上は、データベース202に送信され、データベース202に格納されるデータを検索、操作、選択、更新、修正、及び/または決定することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、注射管理エンジン220は、下記の(i)~(iv)の機能例のうちの1つを実行または促進するために、データベース202のデータを操作することができる。
(i)一意に識別可能な注射器からの注射を承認すること(例えば、注射実施者のモバイル装置(例えば、
図1のノード装置102a-n)の注射管理アプリの注射実施者用ポータルを介して注射実施者から受け取った情報に基づいて承認する)。
(ii)注射管理システム200を利用して注射管理者が注射または投与した流体薬剤の記録を格納すること。
(iii)患者が注射を受けたことを示すデジタルレシートまたは他の情報を生成し、その患者の携帯端末(例えば、
図1のノード装置102a-n)を介してその患者に出力すること。
(iv)注射管理システム200で管理されている流体薬剤の注射または投与を患者が受けたことの証明を、効率的、電子的、安全かつ確認可能な方法で提供すること。
【0053】
一実施形態では、注射管理エンジン220、または、注射管理システム200の別の構成要素は、本明細書に記載されるように、注射管理アプリの1以上のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して、注射管理システム200に登録されている患者または注射実施者などのユーザに対して、情報を出力することができる(また、そのようなユーザから、注射器の識別子、注射が成功したことを裏付ける情報、または、注射が成功したことを確認するためのパスコードなどの入力またはデータを受け取ることができる)。このようなGUIの例を、
図3A~
図3Lを参照して説明する。また、注射実施者や患者などのユーザから情報を受け取ったり、ユーザに対して情報を出力したりするプロセスの例を、
図4を参照して説明する。
【0054】
注射管理アプリのインターフェースは、例えば、HTTPやTCP/IPなどのよく知られた伝送プロトコルを使用して、HTML、XML、または他のよく知られた形式でデータを伝達するウェブサーバの形態をとってもよい。また、独自のプロトコルやデータ形式を使用してもよい。
図3A~
図3Lは、注射管理システム200とインターフェースすることができる注射管理アプリを介して、ユーザに対して出力したりユーザから収集したりすることができる情報の種類と、そのような出力や収集のプロセスの非限定的な例を示す。
【0055】
図3A~
図3L及び
図4を参照すると、
図4は、本明細書で説明される注射管理システムのいくつかの機能の一実施形態を提供する例示的な注射管理方法400を示し、
図3A~
図3Lは、そのような注射管理方法400で利用することができるGUIの例を示す。注射管理方法400は、例えば、注射管理システム200(
図2)によって実施することができる。いくつかの実施形態では、注射管理方法400は、1以上の特別なコンピュータ及び/または特別にプログラムされたコンピュータ(例えば、
図2のプロセッサ201)によって実施及び/または実装してもよいし、あるいは、別の方法で関連付けてもよい。注射管理方法400及び本明細書に記載される他のすべての方法に関して、その方法に関して記載されるすべてのステップがすべての実施形態において必須なわけではなく、いくつかの実施形態ではそれらのステップを異なる順序で実施してもよく、いくつかの実施形態では追加または代替のステップを用いてもよいことに留意されたい。
【0056】
ここでは、注射イベントトランザクションの進行中にユーザ(本明細書に記載されるように、注射実施者または患者であり得る)に提示することができる複数のGUIの例を示す
図3A~
図3Lを参照して、注射管理方法400について説明する。
図3A~
図3Lは、ユーザのモバイル装置(例えば、
図1のノード装置102a~102n)に出力することができるGUIの例を示す。
図3A~
図3LのGUIは、アプリ(モバイル装置上で動作するソフトウェアアプリケーション)またはその特定のバージョン、ポータルまたはプラットフォームのタブ、画面、またはページを含む(例えば、或る画面は、ユーザが注射実施者としてサインインした場合に出力される注射実施者用ポータルの画面であり、別の画面は、ユーザが患者としてサインインした場合に出力される患者用ポータルの画面である)。このようなグラフィカルユーザインターフェースの多くのバリエーションが実装され得ることに留意されたい(例えば、メニューや要素の配置が変更されたり、グラフィックや機能が追加されたりする)。
図3A~
図3Lのグラフィカルユーザインターフェースは、本明細書で説明される特定の実施形態及び機能に焦点を当てるために簡略化された形態で示されている。
【0057】
まず、
図3Aを参照すると、
図3Aは、注射管理アプリがインストールされているユーザのモバイル装置を介して出力することができるGUI300Aを示す。このGUI300Aは、注射管理アプリを起動または開くたびにユーザに表示されるサインイン画面であり得る。一実施形態では、本アプリは、患者や注射実施者などの異なるタイプのユーザのための異なるポータル/プラットフォームを含み得る。このような実施形態では、ユーザは、まず、注射実施者としてサインインするか(この場合、ユーザはGUI302Aの領域302aで示される選択肢を選択する)、または、患者としてサインインするか(この場合、ユーザはGUI302Aの領域302bで示される選択肢を選択する)を選択することを求められる。別の実施形態では、異なるユーザが異なるアプリを使用するようにしてもよく、そのような場合、ユーザは、自分の役割に対応するアプリのみを起動させる(例えば、注射実施者は第1のアプリにアクセスし、患者は第2のアプリにアクセスするようにする。この場合、起動画面でユーザの種類を選択する必要はなくなる)。
図3A~
図3Lに示す実施形態を説明する目的で、注射実施者であるユーザ及び患者であるユーザは注射管理システム200に事前に登録されており、したがって、注射管理システム200はユーザを認識することができ(例えば、
図2の注射管理システム200の患者データ206及び/または注射実施者データ208に、ユーザに対応するデータが格納されている)、また、ユーザは注射管理システム200によって認識されるサインイン認証情報を持っているものとする(注射管理システムにユーザを登録するプロセスは、当業者であれば理解できるので、簡潔にするために、本明細書では説明しない)。
【0058】
次に、
図3Bを参照すると、
図3Bは、注射実施者であるユーザに提示されるGUI300Bの例を示す(ユーザが注射実施者であることは、GUI300Bの領域304aに示されている)。注射管理アプリを使用して、本明細書で説明されるような注射管理サービスの機能にアクセスするためには、ユーザは、ユーザ名及びパスワード、または、注射管理サービスから要求される他の認証情報を入力する。いくつかの実施形態では、ユーザ名は、ユーザに割り当てられた固有識別子であってもよい(例えば、注射管理サービスまたは注射管理サービスと提携した第三者機関の会員または参加者が注射イベントを管理するのを支援するために、注射管理サービスまたは第三者機関によってユーザに割り当てられる)。いくつかの実施形態では、注射管理アプリにサインインするユーザの身元を確認するために、追加のセキュリティ対策(例えば、二要素認証)を組み込んでもよい。
【0059】
次に、
図3Cを参照すると、
図3Cは、注射イベントトランザクションのプロセス(及びそのプロセスにおける現在のステータス(状況))を示すために、注射実施者に対して出力されるGUI300Cの例を示す。注射イベントとは、患者に対する注射(流体薬剤の投与)を実施するイベントである(例えば、患者が、特定のワクチンの接種を受けるイベント)。注射イベントトランザクションとは、注射を受ける患者と、注射管理サービス(または、注射管理サービスの代表としての注射実施者)とが参加する活動であり、患者は、注射を受け、そのデジタルレシートを受け取る。デジタルレシートは、注射管理サービスが、注射を受けた患者の記録を追跡して格納することができる情報を提供する(例えば、デジタルレシートは、本明細書に記載されるように、注射管理システム200が患者を識別することを可能にする固有識別子と、患者が固有ID注射器を介して特定の流体薬剤を投与されたことを注射管理システム200が確認することを可能にするパスコードとを含む)。本明細書に記載される実施形態に従ってトランザクションを記録することによって、患者と注射管理システムとの両方が、注射イベントの実施後に、注射イベントが実施されたことを、効率的かつ安全な方法でアクセスして確認することができる。
【0060】
図3Cに示すように、いくつかの実施形態では、注射イベントトランザクションのプロセスには、下記の(i)~(iii)が含まれる。
(i)注射(流体薬剤の投与)を実施することを登録する(
図3A~
図3Lの例の流体薬剤がワクチンであると仮定して、領域306aに「ワクチン接種の登録」及びステップ1と示される)。
(ii)流体薬剤が投与されたことの確認を患者から受け取る(領域306aに「患者の確認」及びステップ2と示される)。
(iii)注射イベントの証明可能な記録を格納する(領域306aに「ワクチン接種を記録」及びステップ3と示される)。
図4を参照した注射管理方法400の説明は、このような、注射イベントトランザクションのプロセスの各ステップを実施するいくつかの例示的な態様を提供する。
【0061】
いくつかの実施形態では、この例示的なプロセスの各ステップが完了すると、注射実施者のアプリは、ステップが正常に完了したことを示す情報を表示する(例えば、チェックマーク、または他の視覚補助を用いて表示する)。GUI300Cの画面では、各ステップの隣にチェックマークが図示されているが、そのステップの完了が確認されるまでは、そのステップが未完了であると表示される(例えば、チェックマークが付いていないこと、グレー表示、または他の視覚補助を使用して)。
【0062】
次に
図4を参照して、注射管理方法400は、注射器識別子の受信を含む、注射イベントトランザクションの開始が注射管理システム(例えば、注射管理システム200)によって認識されたときに、ステップ402で開始される。いくつかの実施形態では、患者識別子の受信または他の患者チェックインプロセスがステップ402の前に行われてもよい(例えば、注射実施者またはその関係者が、注射イベントが実質的に始まる前に、標準的な予約チェックインプロセスを行ってもよい)。
【0063】
注射イベントトランザクションの開始は、例えば、注射管理アプリを介して注射実施者から受信した固有の注射器識別子に基づいて認識することができる。注射実施者が固有の注射器識別子を送信または提供するためのGUIまたはインターフェースの例を、
図3DにGUI300Dとして示す。本明細書で説明するように、注射管理サービスによって管理される各注射器には、注射管理アプリがインストールされているモバイル機器のセンサによって読み取ることができるNFCチップ、RFIDチップ、QRコード(登録商標)、バーコードなどのデータ格納機構が設けられるかまたは関連付けられており、そのようなデータ格納機構には、その注射器を一意に識別する固有識別子が格納されている。
図3Dに示されている実施形態では、データ記憶機構はNFCチップであり、注射実施者は、注射器を注射実施者のモバイル装置の近くに保持するか、または、注射器(または、NFCチップが配置されているラベル領域などの注射器の特定の部分)をモバイル装置にタップする(接触させる)ことによって、患者への注射を行うために注射実施者が使用する注射器の固有の識別子を入力することが求められる。データ記憶機構がNFCチップ以外のもので構成される実施形態では、必要に応じて、異なる方法での固有の注射器識別子の入力をユーザに要求してもよい。例えば、注射器上のQRコード(登録商標)またはバーコードをスキャンするようにユーザに要求してもよいし、または、RFIDチップを備えた注射器をRFIDチップから情報を読み取ることができるRFIDアンテナに近接して保持するようにユーザに要求してもよい(この場合、RFIDアンテナは、注射イベントトランザクションを進行させるために、固有の注射器識別子をRFIDチップから読み取って、注射実施者のモバイル装置及び/または注射管理システムに送信する)。
【0064】
注射イベントトランザクションが開始され、固有の注射器識別子を受信すると、ステップ404では、その固有識別子を認証し(例えば、本物であると認証する)、その固有識別子に対応する注射器の使用を承認(許可)する。例えば、注射器識別子に関連付けられた情報を取得し、承認プロセスを実施する(例えば、その注射器が期限切れでないこと、以前に使用されていないこと、リコールの対象でないこと、及び/または、他の点で使用が不許可でないことを確認する)。いくつかの実施形態では、ステップ404に関して説明された機能は、承認モジュール222(
図2)によって少なくとも部分的に実施することができる。
【0065】
一実施形態では、ステップ404において、注射器識別子を受信すると、その注射器識別子を使用して注射器に関連するデータにアクセスする(
図2に関して説明したように)。例えば、注射器データ204の記録が注射管理システム200によってアクセスされ、プログラムまたはモジュール(例えば、承認モジュール222)によって1以上のフィールドがレビューされ、注射器が注射実施者による使用の不許可の原因となる条件が存在しないことを確認される(例えば、その注射器がリコールの対象でないことが確認される。また、注射器のデータに注射器の識別子がある場合には、その注射器が正規のものであると推定することができる)。いくつかの実施形態では、注射管理システムは、注射器承認プロセスの一部として、注射器及び/または注射器に充填された流体薬剤に関する情報を、GUI(図示しない)を介して注射実施者に出力してもよい。例えば、注射実施者は、注射器またはそのラベルに印刷またはエンボス加工された特定の情報が、注射実施者から提供された注射器識別子に関連付けられてデータベースに格納されている情報と一致することを確認することが求められる。
【0066】
いくつかの実施形態では、注射器識別子の認証、及び注射器の使用の承認には、追加情報または考慮事項が含まれ得る(すなわち、ステップ404は追加のステップを含むことができる、及び/または、承認モジュール222は追加の認証を実施することができる)。例えば、いくつかの実施形態では、BFSバイアルまたは他のタイプの注射器は、環境モニタリング機構(例えば、注射器に貼り付けられたストリップ)などのワクチンバイアルモニタ(VVM)を備える。いくつかの実施形態では、VVMは、ワクチンまたは他の流体薬剤を収容したバイアルに貼られたサーモクロミックラベルを含む。サーモクロミックラベルは、ワクチンまたは他の流体薬剤がその効力を維持する温度範囲内に保たれているかどうかを視覚的に示す。このサーモクロミックラベルは、環境特性(例えば、ワクチンの保管時の熱や寒さ)の維持や追跡が困難な発展途上国にワクチンを届ける場合に、不適切な温度(例えば、ワクチンにとって寒すぎる温度)にさらされて変性したことによってワクチンが不活性化し、ワクチン接種の効果が得られなかったという問題に対応するために設計された。いくつかの実施形態では、VVMは、それが貼り付けられたバイアルが製造施設を出た後にさらされた熱または寒さの累積量の尺度を含む。バイアルが許容できない温度に許容できない期間にわたってさらされた場合、ラベルは黒色に変色する。黒色のラベルは、バイアル内のワクチンまたは他の流体薬剤がもはや良好ではないため、注射すべきではないことを示す。別の実施形態では、同様の周囲温度情報を追跡するために、より高価なデジタルVVMを利用することができる。
【0067】
注射器がVVMを備えるいくつかの実施形態では、NFCチップまたは注射器の他の構成要素は、VVMの出力(例えば、VVMラベルが黒色に変色したかどうか)を読み取ることができる光学チップモニタを含むことができる。例えば、ユーザは、モバイル装置上で適切な注射管理アプリを開き、NFCチップ及び/または光学チップモニタを備えたバイアルをモバイル装置にタップして(モバイル装置(またはモバイル装置のカメラ)をVVMにかざして)、アプリが、VVMの出力に基づいて、ワクチンが良好であるかどうかまたはワクチンが使用できるかどうかの指標を読み取る。別の例では、ユーザがモバイル装置上で適切な注射管理アプリを開き、VVMの出力の写真を撮影し、アプリがVVMの出力に基づいてバイアル内の流体薬剤が使用に適しているかどうかを判定するように、アプリをプログラムしてもよい(または、アプリが通信可能なサーバが、適切なプログラムを実行可能なプロセッサを含むようにしてもよい)。いずれの例でも、VVMの出力に基づいて流体薬剤の使用が適切であると判定された場合には、注射器の使用を承認(許可)することや流体薬剤を注射する権限があることを示す情報を注射実施者に提供することに関して前述したように、注射管理アプリは、注射器の使用を承認する情報または表示をユーザに出力する(例えば、注射管理アプリの画面に緑色のボタンやライトなどのインジケータを表示する)。一例として、出願人は、VVMラベル(またはデジタルVVMのインジケータ)が黒色に変色した場合(または流体薬剤が許容できない温度にさらされたことを示す場合)、流体薬剤がもはや使用不能であること、または使用が許可されていないことを示す信号や情報などを生成するような、VVMと通信するかまたはVVMの状態をモニタすることができる単純な光学モニタをバイアルが備えることを想定している。この場合、光学モニタは、上記の信号や情報などをNFCチップ及び/または注射管理アプリに送信し、NFCチップ及び/または注射管理アプリに、バイアル内の流体薬剤が患者への注射を許可されるべきではないと判定させる。
【0068】
注射管理システムが、注射器識別子が本物であることを確認し、注射器の使用の不許可の原因となる他の情報が存在しないと判定することによって、注射器が認証されると、その注射器は、登録または認証されたものと見なされる。これには、例えば、注射イベントトランザクションの記録を作成することが含まれる(例えば、注射管理システム200のデータベース(例えば、
図2の注射イベントデータ210)で、現在の注射イベントトランザクションの新しい記録を開く、及び/または、注射イベントトランザクションの固有のトランザクション識別子を生成する)。さらに、注射器が認証され、使用が承認されると、
図3Cに示すプロセスのステップ1が完了したと見なされ、そのことを示す視覚的な情報がGUI300Cを介して注射実施者に出力される(例えば、ステップ1の隣にチェックマークが出力されるか、または、ステップ2が強調表示されたり、アクティブになったりする)。いくつかの実施形態では、注射器の使用が承認されたこと、及び注射実施者が患者への注射を進めるべきであることを示すために、追加の視覚的、音声的、及び/または触覚的な情報が注射実施者に出力される(例えば、注射管理アプリのGUIを介して、シンボルや他の視覚的な情報(例えば、チェックマーク、緑色のライト、サムズアップまたは完成した円)、音、または振動が出力される)。
【0069】
注射器識別子の認証に失敗した場合や、注射管理システム200が注射を承認しないと判定した場合には、注射管理アプリのGUIを介して、注射実施者にエラーや警告などの注射の承認に失敗したことを示すメッセージが出力される。例えば、注射実施者は、注射器に対してリコールが発行されたことを示す情報を受け取る場合がある(この場合、注射実施者は、リコールされた注射器を廃棄して、別の注射器の認証を試みる)。また、注射実施者は、注注射器識別子の読み取りが無効であることを示す通知を受け取る場合がある(この場合、注射実施者は、注射器をモバイル装置に再度タップしたり、QRコード(登録商標)や他のコードを再度スキャンしたり、注射器のコードを手動で入力するなどして、注射器識別子の再入力を試みる)。
【0070】
ステップ404において、注射識別子が正常に認証され、注射器に充填された流体薬剤の使用が承認されたと仮定して、注射管理システム200は、ステップ402で識別された注射器に充填された流体薬剤が患者に投与されたことを示す情報を注射実施者が提供するのを待つ。いくつかの実施形態では、注射管理方法400のこの時点で、注射管理システム200が注射を受ける患者を識別していない場合もあれば、別の実施形態では、(例えば、注射実施者や患者によって)患者識別子が注射イベントトランザクション記録に提供されている場合もあることに留意されたい。注射管理システム200が、患者への注射が正常に行われたというコンファメーションを(例えば、注射実施者から)受け取ると(ステップ406)、固有のパスコードが生成され、注射管理アプリのGUIを介して注射実施者に出力される(ステップ408)。このようなパスコードを注射実施者に出力する例を、GUI300Eの例に示す(
図3E)。GUI300Eの領域310aには6桁の数字のパスコードが図示されているが、任意の長さまたは種類のパスコードを利用することができる。
【0071】
注射を受けた患者に送信する目的で、注射管理システム200がパスコードを生成することにより、患者はそのパスコードを使用してその注射イベントを受けたことを証明し、さらには、注射イベントトランザクションの一部として注射管理システムにデータを提供することができる(パスコードの生成は、注射管理アプリのモジュールによってローカルで実施してもよいし、または、ユーザのモバイル装置が注射管理アプリを介して通信しているサーバ装置110などのサーバ装置によってリモートで実施してもよい)。いくつかの実施形態では、注射実施者が、注射実施者のモバイル装置に出力されたパスコードを、患者に見せたり、読み上げたりしてもよい。いくつかの実施形態では、パスコードは、QRコード(登録商標)または患者のモバイル装置が直接読み取り可能な他の形式で出力してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、パスコードに有効期限を設定し、パスコードが有効期限までしか有効でないようにしてもよい。いくつかの実施形態では、患者がパスコードを受け取って利用するためにさらに多くの時間が必要となる場合、注射実施者からの要求に基づいて新しいパスコードを生成するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、生成されたパスコードは、注射イベントトランザクションに関連付けて格納される(例えば、注射イベントデータ210及び/または注射イベントトランザクション台帳に(異なる場合))。生成されたパスコードは、いくつかの実施形態では、注射実施者のモバイル装置以外の装置に送信してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、パスコードは、注射イベントに関連するプロセスの実施前に提供された患者の識別子と関連付けて事前に格納された連絡先情報に基づいて、患者に直接送信(例えば、テキストで)してもよい。別の例では、パスコードは、別のサーバ装置(例えば、
図1の管理装置106)に送信してもよい。
【0073】
ステップ408でパスコードが生成されると、
図3Cに図示したプロセスのステップ2が完了したと見なされ、この完了を示す視覚的なまたは他の情報が、注射管理アプリの注射実施者用ポータルを介して注射実施者に出力される(例えば、ステップ2の完了を示すためにGUI300Eが更新される)。パスコードが出力されると、注射管理システム200は、患者からのパスコードの入力を待つ。
【0074】
いくつかの実施形態では、患者は、注射イベントを予約するとき、注射管理アプリの患者用ポータルにログインする(例えば、GUI300Aの領域302bで「患者」オプションを選択してから、GUI304Bの領域304bで適切なサインイン認証情報を入力する)。注射管理アプリにログインすると(そして、いくつかの実施形態では、アプリの適切な「注射確認」オプションを選択した後に)、患者は、注射の実施後に注射実施者から提供されたパスコードの入力を求められる。GUI300F(
図3F)の例は、患者にパスコードの入力を求めるインターフェースの一例を示す。患者は、GUI300Fの領域312aにパスコードを入力することによって、注射を受けたことの確認に進むことができる。いくつかの実施形態では、患者は、注射イベントのトランザクションに関連する他の情報を提供することを求められることがある(例えば、患者が注射を受けた日時、及び/または、患者に投与された流体薬剤を確認するために)。注射管理システム200が、パスコード(及び他の確認情報または入力)を患者から受信すると(ステップ410)、注射管理システム200は、注射イベントが成功裏に完了したと記録する(ステップ412)。
【0075】
いくつかの実施形態では、注射管理システム200が、注射イベントを認証されたと見なし、注射イベントトランザクションが正常に認証された及び/または完了したと判定するために、追加のステップまたは注射実施者による入力の実施を必要とする。例えば、いくつかの実施形態では、注射管理システムが患者のモバイル装置からパスコードを受信した後、注射実施者は、自身の身元を確認するため、及び、注射が成功裏に完了したとして「サインオフ」するために、(注射実施者のモバイル装置の注射実施者アプリを介して)、自身のパスワードを再入力することを求められる。
図3Hは、注射を確認するために、注射実施者に、領域316aを介してパスワードまたは他の認証情報を入力することを求めるGUIの例を示す。いくつかの実施形態では、このような注射実施者によるパスワードまたは他の認証情報の入力は、注射実施者による注射イベント記録へのデジタル「署名」としての役割を果たす。注射実施者が注射イベント記録に「署名」することを可能にする他の方法としては、この目的のために注射実施者に提供された項目のトークンまたはNFCチップを介して、注射実施者がコードを入力することが挙げられる(例えば、NFCチップまたは他の機構を介して、注射実施者の存在と身元を確認する目的で、注射管理アプリに固有識別子を通信するようにしてもよい)。いくつかの実施形態では、そのようなトークンまたは他の項目は、同様に、注射実施者が注射管理アプリの注射実施者用ポータルにログインするために利用することができる。
【0076】
患者からパスコードを受け取った後に、注射実施者から注射記録の成功の確認または認証を受け取ることは、例示的なGUI300Cに示されているように、注射管理アプリのプロセスのステップ3を満たす役割を果たす。さらに、いくつかの実施形態では、注射実施者は、
図3IのGUI318Iの例示的な領域318aに図示するように、注射管理アプリを介して、「格納」または同様のオプションを選択することによって、注射イベントの成功裏の完了を能動的に確認することを求められる。注射実施者が注射イベントを能動的に「格納」し、完了したことを示すことを可能にすることにより、注射管理システム200は、(例えば、GUI300Iの例に図示するように)注射イベントプロバイダに出力することによって、注射管理システム200が注射イベントトランザクション記録の注射イベントについて収集した他の情報を注射実施者にレビュー及び確認させることができる。
【0077】
また、いくつかの実施形態では、注射管理システム200は、(i)ステップ410で患者から受け取ったパスコードが、ステップ412で注射実施者に出力されたパスコードと一致することを確認すること、及び、(ii)パスコードの有効期限が切れる前にパスコードを受信したことを確認することによって、患者が注射管理アプリの患者用ポータルに入力したパスコードを確認することができる。注射管理システム200が、患者が入力したパスコードを認証している間(また、いくつかの実施形態では、注射管理システム200が、注射イベント記録の「署名」としての役割を果たす、注射実施者の入力を待っている間)、患者の注射管理アプリは、認証待ち状態を示す情報を出力する(例えば、
図3Gの例示的なGUI314Gの領域314bに示すように)。認証プロセスが完了すると(例えば、注射実施者が、注射実施者の身元を確認するためのパスワードや他のコードまたは入力を提供して、注射イベントにサインインするためのデータを提供することに基づいて、また、いくつかの実施形態では、注射イベントが完了したことを示す情報を追加し)、患者の注射管理アプリは、注射イベントまたは注射に関する更新された状態を出力する(例えば、注射がワクチンである場合は「ワクチン接種済」の状態、ワクチン名、及び/またはワクチン接種を受けた感染症名を出力する)。
図3JのGUI300Jの例は、このような更新された状態を患者に対して出力する一態様を示す。
【0078】
ステップ402~412に関して本明細書で説明した機能の一部またはすべては、承認モジュール222(
図2)及び/または注射イベントトランザクションログモジュール224(
図2)によって実施できることに留意されたい。例えば、注射イベントトランザクションログモジュール224は、注射イベントトランザクションに関する更新を更新したり、または、別の装置が注射イベントトランザクションの記録を更新できるようにするためにその別の装置(例えば、ノード装置102a-n及び/または管理装置106)に更新されたデータを送信したりする役割を果たす。一方、承認モジュール222は、そのような更新/データを確認または認証する役割を果たす。
【0079】
いくつかの実施形態では、ステップ412で患者からパスコードを受け取ることは、注射イベントトランザクションに参加している患者の識別及び/または身元確認にも役立つ。例えば、いくつかの実施形態では、注射管理アプリの患者用ポータルを介して患者から受信したパスコードは、患者の固有識別子の情報を含むデータパケットで受信してもよい(例えば、患者が注射管理アプリの患者用ポータルにサインインし、パスコードを入力することにより、アプリを介して注射管理システム200に提供し、GUI300Gの領域314aに表示するようにしてもよい)。注射管理システム200は、患者から受け取ったパスコードを、オープンな注射イベントトランザクションの一部として生成され注射実施者に出力されたパスコードと照合することに基づいて、患者を識別し、患者識別子をトランザクションの注射イベントトランザクション記録に追加してもよい。いくつかの実施形態では、ステップ412のプロセスの一部として、患者識別子による注射イベントトランザクション記録の更新を行ってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、注射イベントが完了し、トランザクションが1以上の記録に正常に記録したと見なされると(ステップ412)、注射イベントのデジタルレシートの形態で追加データが生成され、患者のモバイル装置に送信される(ステップ414)。いくつかの実施形態では、このようなデータ/デジタルレシートの送信により、注射管理アプリの患者用ポータルに、患者が対応する流体薬剤の注射を受けたことを示す「ワクチン接種済み」または同様のステータスを表示することが可能になる。いくつかの実施形態では、デジタルレシートには、注射の実施日や有効期限などのデータが含まれる。例えば、いくつかの状況では、患者が注射を受けてから一定期間(例えば、2週間)が経過するまで、注射が有効であると見なされない場合がある。別の例では、注射が、一定期間(例えば、1年間)しか有効でない場合がある。このような場合、デジタルレシートは、現在時刻と注射の有効時間及び/または有効期限との比較に基づいて、注射に関する患者の状況(例えば、特定のワクチンに対する患者のワクチン接種ステータス)が、注射管理アプリで自動的に更新されるようにしてもよい。例えば、その注射が患者に実施してから1年間のみ有効である場合、有効期限を過ぎた時点で患者が注射管理アプリの患者用ポータルにログインすると、注射の状況が「期限切れ」などと表示するようにする。このようなステータスの例と、特定のワクチンについてどのように表示されるかを、
図3LのGUI300Lに示す。
【0081】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、注射管理システムは、注射イベントトランザクションまたはワクチン接種のための所定のデジタルレシートに関連付けられる様々なプライバシーレベルを可能にする。例えば、このようなデジタルレシートの第1のバージョンまたはレベルでは、特定の感染症に対するワクチン接種ステータスを確認するために、患者が匿名のままでデジタルレシートのそのバージョンを第三者と共有することができる。このようなデジタルレシートのバージョンまたはプライバシーレベルは、例えば、患者に関する個人識別情報(PII)を提供することなく、患者のワクチン接種ステータスとワクチン接種に関するいくつかの情報(例えば、ワクチン接種の日時や場所)を示すことができる。デジタルレシートの第2のバージョンまたはレベルは、患者のPIIを含むことができる。このような実施形態では、異なる許可要件を、デジタルレシートの異なるプライバシーレベルに対応させることができる(例えば、患者/ユーザは、デジタルレシートのPIIを含む第2のレベルが第三者と共有されることを確認するために、追加のパスワードを提供するか、または二要素認証に参加する必要がある)。このような実施形態では、デジタルレシートの異なるレベル(そして、例えば、それぞれの下で第三者と共有される異なる情報)、及び、各レベルに対応する許可要件も、患者データ206の患者記録に患者毎に格納される。いくつかの実施形態では、公開秘密鍵暗号化を採用して、患者が注射についてのデジタルレシートに関連する特定の秘密情報の公開を制御できるようにしてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明の注射管理システムは、患者が特定の感染症に対して現在ワクチン接種を受けているか、または他の方法で特定の流体薬剤の投与を受けていることの証明を共有または「フリップ」することができるコード(例えば、QRコード(登録商標))または他の手段を出力することができる。注射ステータスモジュール226(
図2)は、(i)特定の流体薬剤の注射に関する患者のステータス(状況)を追跡し更新する機能、及び、(ii)患者が注射ステータスを第三者と共有するためのコードまたは許可を生成する(例えば、患者から許可要件または復号化パスワードを受け取り、デジタルレシートまたはデジタルレシートの特定のレベルまたはデータを、承認された第三者に公開する)機能を果たすことができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、注射管理システム200は、注射イベントトランザクションが完了し認証されたと見なす前に、注射イベント中に注射実施者が追加情報またはデータを提供することを要求する。例示的な一実施形態では、注射管理システム200は、注射を受ける患者の写真またはビデオを撮影し、注射イベント確認プロセスの一部として(例えばステップ406で)、または、注射イベントトランザクションが正常に記録されたと見なす前に(例えばステップ412で)、それをアップロードすることを注射実施者に求めるようにしてもよい。
図3Kは、そのような実施形態の一例を示す。この例では、注射実施者用ポータルのGUI300K-1は、領域320aを介して、注射実施者に患者の存在と画像の視覚的確認をアップロードするように求め、GUI300K-2は、アップロードされた視覚的確認を、領域322aの患者確認プロセスの一部として表示する。
【0084】
いくつかの実施形態では、注射イベントを完了する前に、注射実施者に加えて監督者または他の第三者が確認することを要求してもよい。
図3Kに示す例示的な実施形態は、(GUI300K-1のステップ3の一部として、また、GUI300K-2の領域322bにおいて)監督者のサインオフ(承認)の入力機構を提供することによって、そのような実施形態がどのように実施されるかを示す。
【0085】
いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップは、読み取り専用チップであり得る。別の実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップは、読み取りに加えて情報を追加することができる書き込み可能チップであり得る。いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップは、それ自体が電源を含まず、NFCチップの外部に存在するリーダー装置(例えば、ユーザの携帯電話)または他の機構から電力が供給されるパッシブ型チップであり得る。
【0086】
NFCチップまたはRFIDチップが書き込み可能なチップである実施形態(または別の実施形態)では、チップの電源が必要となる場合がある。一実施形態では、電源は、注射器に設けられる。一実施形態では、電源は、BFSバイアルに埋め込まれる(例えば、押し出しプロセスの一部として、BFSバイアルにコンデンサが埋め込まれる)。NFCチップまたはRFIDチップに電力を供給するために使用可能な電源の他の例としては、これに限定しないが、下記の(i)~(v)が挙げられる。
(i)バイアル内に流体薬剤を注射するために、ユーザがBFSバイアルを絞ったり押したりすることによって生成された電力。
(ii)ユーザがBFSバイアルを振ることによって生成された電力。
(iii)BFSバイアルに含まれる光源または太陽電池からの電力。
(iv)圧電効果及び/または材料の使用により生成された電力。
(v)太陽光などの自然の光源、または照明の光源の下に装置を保持することによって得られた外部光からの電力(例えば、プラスチックバイアルの実施形態では、バイアルのプラスチックに太陽光変換化学物質または材料を埋め込み、バイアルに光をあてることにより、関連するバッテリまたはコンデンサに非常に低いマイクロボルトのトリクル充電を提供することができる)。多くの実施形態では、本明細書に記載される多くの実施形態で必要とされる電力量は非常に小さくてもよいことを理解されたい(例えば、1または2マイクロボルト、またはマイクロボルトの数分の1であってもよい)。
【0087】
いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップは、故障したり、電池が切れたり、損傷したり、少なくとも部分的に動作不能になったりして、チップに記憶されている情報を書き換えたり、または、チップに追加の情報を書き込んだり格納したりできなくあることがある。いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップの能力は制限されている(例えば、チップに情報を書き込んだりまたは書き換えたりすることができる最大回数または最大期間が制限されている)。したがって、いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップは、ユーザがチップに書き込もうとした情報または書き換えようとした情報が、正常に書き込まれたことまたは書き換えられたことを確認する機能を有することが望ましい。NFCチップまたはRFIDチップと通信されるすべての情報は、少なくともいくつかの実施形態では、不正アクセスから保護されるように、暗号化または保護するか、または安全な要素を含むようにするとよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップは、GPSまたは位置追跡機能を備えてもよい。例えば、NFCチップまたはRFIDチップは、その位置のGPS座標を出力または送信するようにしてもよい(例えば、定期的に、非定期的に、センサからの問い合わせに応じて、または別の条件が満たされたことに応答して、GPS座標を出力する)。いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップを設けられたGPSまたは位置追跡機能は、NFCチップまたはRFIDチップに対応するバイアルの現在または過去の位置(例えば、どこにいたのか、どのくらいいたのか、現在どこにいるのか)などの情報を検出及び/または格納する(または、別の装置(ユーザのモバイル装置など)が対応するソフトウェアアプリを使用して検出及び/または格納することができるように、別の装置に情報を提供する)。
【0089】
いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップの機能は、NFCチップまたはRFIDチップをBFSバイアルに埋め込んだ後、製造プロセス中に試験され、適切に機能しない、または、機能パラメータが所望の範囲外であると判定された場合は、そのバイアルは廃棄されるか、または専用の処理プロセスに送られる。したがって、一実施形態では、製造プロセスは、下記の(i)~(vi)を含み得る。
(i)バイアルにNFCチップまたはRFIDチップを追加すること(例えば、プラスチック押出製造プロセスにおいてプラスチックにNFCチップまたはRFIDチップを埋め込む、または、ガラス製バイアルのキャップの下またはガラス製バイアルの別の部分にNFCチップまたはRFIDチップを取り付ける)。
(ii)バイアルに流体薬剤を充填し密封すること。
(iii)NFCチップまたはRFIDチップが許容可能なパラメータ内で機能しているかどうかを確認するために試験すること(例えば、チップに格納されている固有識別子が正常に読み取れるかどうかを試験する)。
(vi)(a)NFCチップまたはRFIDチップの試験が成功した場合には、バイアルを第1の製造経路(例えば、固有ID注射器としてパッケージし販売する)に進める、または、(b)NFCチップの試験が成功しなかった場合には、バイアルを第2の製造経路に進める(例えば、破棄するか、非NFCチップバイアルとして販売する)のいずれかを実施する。
【0090】
いくつかの実施形態では、インクジェットまたは他のプリンタによって、バイアルまたはバイアルの構成要素に埋め込まれるかまたは取り付けられたNFCチップまたはRFIDチップのNFC識別子またはRFID識別子の情報を印刷してもよい。NFC識別子またはRFID識別子の情報は、人間が読み取り可能な形式(例えば、英数字のコード)であってもよいし、または、機械が読み取り可能な形式(例えば、バーコードやQRコード(登録商標))であってもよい。NFC識別子またはRFID識別子の情報は、バイアルまたはバイアルの構成部品(例えば、ガラス製バイアルの場合はキャップ)に直接印刷してもよいし、または、ラベルに印刷してバイアルまたはバイアルの構成部品に貼り付けてもよい。したがって、そのような実施形態では、上記の製造プロセスは、バイアルに埋め込まれたNFCチップまたはRFIDチップのNFC識別子またはRFID識別子を(v)読み取ること、及び、(vi)印刷装置によってNFC識別子またはRFID識別子をバイアルに印刷すること(直接印刷するか、またはラベルに印刷してバイアルに貼り付ける)をさらに含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、ユーザ(例えば、バイアルの流体薬剤の注射を受ける患者)は、固有ID注射器を注射管理アプリと組み合わせて使用することにより、適格な使用(アプリによって承認された後、適切な時間ウィンドウ中にバイアル内のワクチン/薬を自己注射すること)に対して報酬を得ることができる。一実施形態では、エンドユーザ(注射器でワクチン/薬剤を自己注射するユーザ)は、バイアルの適格な使用に基づいてユーザが報酬(例えば、電話使用のための時間の追加、データプランのためのデータの追加、金銭の支払いなど)を得ることができるようにするために、自分のスマートフォンに注射管理アプリをダウンロードする(別の実施形態では、ユーザはアプリをダウンロードする必要はなく、使用を認証するためのオフラインの方法がスマートフォンに実装されていてもよい)。例えば、ユーザは、適格な時間ウィンドウ中(例えば、アプリに格納されている治療レジメに基づいて、ユーザが注射器に充填されているワクチン/薬剤を自己注射することになっている時間ウィンドウ中)に、スマートフォンにバイアルをタップすることにより、追加の通話時間を獲得することができる。適格な時間ウィンドウ中にユーザが注射器をタップすると、追加の通話時間または別の報酬を獲得することができる(いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、注射器に充填されている流体薬剤が期限切れでないか、または注射器のVVMステータスが許容可能であるかの認証などの情報に基づいて、注射がアプリによってさらに承認される必要がある)。
【0092】
ユーザが複数回注射レジメを処方されるいくつかの実施形態では、報酬値は、ユーザが複数回注射レジメをどの程度従ったかに基づいていてもよい。例えば、特定の疾患や状態では、複数回の自己注射を所定の間隔で行う必要がある場合がある。このような状況では、ユーザは「ゲームの完了」に基づいて報酬を得ることができる。ユーザは、必要な注射のすべてに従った場合には比較的大きな報酬を得られるが、注射のすべてではなく一部だけに従った場合には少ない報酬しか得られない。
【0093】
したがって、いくつかの実施形態では、注射管理サービスは、注射器を製造した時点または注射器に流体薬剤を充填した時点で、特定の流体薬剤と、その流体薬剤が充填されている注射器に埋め込まれているかまたは取り付けられているNFCチップまたはRFIDチップの固有識別子との関係を容易に変更することができない方法で、特定の流体薬剤(例えば、特定のワクチン)に固有識別子を効果的に割り当てることができる。これにより、特定の流体薬剤が患者に注射された時間/場所を追跡することや、注射器に充填されている流体薬剤が目的とするものであることを注射実施者が容易に確認する(例えば、注射管理アプリを使用して注射の実施前に注射器のNFCチップまたはRFIDチップの固有識別子を読み取り、アプリによって流体薬剤の認証/承認を行う)ことなどの、多くの利点が得られる。
【0094】
いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップは、チップ/注射器の位置の周期的、非周期的(例えば、特定のイベントによって、またはランダムにトリガーされる)または連続的なGPS追跡履歴を提供するように動作可能である(GPS追跡履歴は、NFCチップまたはRFIDチップに格納してもよいし、または、NFCチップまたはRFIDチップ及び/または注射管理アプリをダウンロードしたモバイル装置と通信可能なクラウド及び/またはサーバに格納してもよい)。加えて、NFCチップまたはRFIDチップは、VVMと通信したり、VVMの状態を示す写真や情報を格納したり、VVMの状態を判定するのに使用することができる情報を格納したりすることができる。このVVMステータスデータは、NFCチップまたはRFIDチップにローカルに格納してもよいし、または、別の場所に格納してもよい(例えば、NFCチップまたはRFIDチップ及び/または注射管理アプリをダウンロードしたモバイル装置と通信可能なクラウド及び/またはサーバに格納してもよい)。したがって、いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップは、注射器とそれに充填された流体薬剤に関して、下記の(i)~(iv)のうちの1以上を知ることができる。(i)それが現在どこにあるか。(ii)それが過去にどこにあったか。(iii)長旅でどのような温度にさらされたか。(iv)製造日からの経過時間。
【0095】
いくつかの実施形態では、注射管理アプリ(NFCチップを介して)及び/またはNFCチップまたはRFIDチップ自体は、注射実施者、患者、または他のユーザに関わらず、ユーザから提供される様々なデータを認識したり、サーバまたは他の装置に格納及び/または転送したりすることができる。
例えば、本明細書に記載されるように、NFCチップまたはRFIDチップ対応の注射器から患者に流体薬剤を注射するユーザや、流体薬剤を自己注射するユーザは、NFCチップまたはRFIDチップに格納されているデータをアプリで読み取って処理することができるように、注射を実施する前にバイアルをモバイル装置にタップする。例えば、アプリは(アプリが知っている患者に関する情報に基づいて)、下記の(i)~(iii)を認証することができる。(i)注射器に適切な流体薬剤が充填されていること。(ii)注射の実施時期が、適切な時期であること。(iii)流体薬剤が依然として注射に良好であること(例えば、VVMが不適切な温度にさらされたことを示していない、注射器に関連付けられた有効期限が流体薬剤の有効期限を超えていない、バイアルに関連付けられたリコールがない、バイアルが盗まれたものではない、など)。いくつかの実施形態では、ユーザは、注射時にバイアル及び/または注射部位の写真を撮影することを求められることがある(いくつかの実施形態では、ユーザは、この情報を提供することに対して報酬を得ることができる)。いくつかの実施形態では、ユーザは、アプリを使用して、流体薬剤に対する副作用または反応の情報を提供する(例えば、1以上の質問に答えたり、注射部位または関連する副作用の写真をアップロードしたりする)ことを求められることがある(また、いくつかの実施形態では、ユーザはそのような情報の提供に対して報酬を得ることができる)。
【0096】
いくつかの実施形態では、ユーザが、アプリに特定の情報を提供したり、アプリが追跡している特定の注射要件(例えば、糖尿病や結核の治療のための注射レジメに従うこと)に従ったりすることに対して、ユーザに通話時間やモバイル決済が提供される。このような報酬の例としては、これに限定しないが、通話時間やモバイル決済(例えば、マイクロペイメント)などが挙げられる。このような報酬は、個々のユーザ(例えば、患者)またはユーザのグループ(例えば、アプリが格納されているモバイル装置に関連付けられている家族の家族アカウントに)に提供され得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、注射管理アプリを利用して、ユーザ(例えば、注射を受けた患者、または、その患者の保護者や家族)とのコミュニケーションやフォローアップを行うことができる。例えば、テキストメッセージやアプリのリマインダをユーザのモバイル装置に送信して、レジメに従って流体薬剤の自己注射を再度行うようにユーザに通知することができる。別の例では、テキストメッセージやアプリのリマインダで、注射に対する反応や副作用の情報を送信するようにユーザに求めてもよい。
【0098】
いくつかの状況では、メッセージやリマインダが注射用であることを明確にしたり、ユーザが注射する必要がある注射剤/流体薬剤の種類を指定したりするテキストメッセージやリマインダを受け取ることをユーザが嫌がる場合があることに留意されたい。例えば、ユーザが、このような種類のメッセージやリマインダを他のユーザに見られることを恥ずかしいと思う場合がある(これは、ユーザが家族共有のモバイル装置でリマインダやメッセージを受信している場合に特に問題になる可能性がある)。したがって、いくつかの実施形態では、メッセージまたはリマインダは、それらが注射に関するものであること、またはそれらが言及している注射を明示しないように、隠蔽またはコード化してもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、特に注射実施者でないユーザによる自己注射の場合、注射器に充填された流体薬剤が、実際に患者にどれだけ注射されたかを知ることが望ましい場合がある。したがって、例えば、注射の前後の屈折率の比較を、注射管理アプリを使用して取得して、報告するようにしてもよい。別の例では、(送達機構の一方向弁の)弁レベルの流量計を注射の前後で比較して、送達された流体薬剤の量を測定するようにしてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、固有ID注射器の流体薬剤の注射が実際に人または少なくとも動物に注射されたことを確認することが望ましい場合がある(例えば、注射に伴う報酬を得るために空気中に押し出されたのではないことを確認するために)。そのため、例えば、注射時の背圧を測定したり、注射時または注射の前後に撮影した注射部位の写真をアプリに入力したりすることを要求してもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップ対応注射器に取り付けられた送達機構を構成する一方向バルブの機能または動作は、NFCチップまたはRFIDチップによって制御してもよい。例えば、いくつかの実施形態では(例えば、盗難されたNFCチップまたはRFIDチップ対応注射器に充填された流体薬剤の注射を防止する手段として)、固有ID注射器を、注射管理アプリを開いているモバイル装置に最初にタップし、アプリが、注射器を認証し、盗難されていないことや、または使用に適していることを確認した場合にのみ、一方向バルブを開き、流体薬剤が流出することを許可するようにしてもよい。アプリは、注射器の使用許可を確認した場合にのみ、NFCチップまたはRFIDチップ、または注射器の別の構成要素(例えば、バルブに関連するゲートや障害物)に通信を送信し、バルブを開くことを許可する。
【0102】
いくつかの実施形態では(例えば、NFCチップまたはRFIDチップ、または、注射器の別の構成要素が双方向通信する実施形態では)、注射器は、現在のGPS座標などの位置情報を(例えば、定期的または非定期的に)ブロードキャストするようにしてもよい。いくつかの実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップ、または、注射器の別の構成要素は、それが、承認されていない場所または予期しない場所に存在すると判定された場合、または、単にその位置情報を通信するために、電話またはテキストを発信するようにしてもよい。さらに別の実施形態では、NFCチップまたはRFIDチップ、または、注射器の別の構成要素は、その位置を決定することが必要な場合に、リモートで問い合わせてもよい。上記のすべては、注射器の盗難の防止や、注射器の追跡に役立つ。
【0103】
本明細書では、固有ID注射器からの適格なまたは承認された注射は、ユーザのモバイル装置上のアプリを介して追跡できることが記載されているが、モバイル装置は、本明細書に記載されるどの実施形態にも必須ではないことに留意されたい。別の装置を使用して、ユーザの注射を追跡してもよい(例えば、ユーザの注射の情報を直接格納するか、またはユーザの注射の情報を格納するクラウドベースのデータベースを指す識別子を格納することができるSIMカードまたは他の電子カードをユーザに提供してもよい)。
【0104】
解釈規則
【0105】
様々な実施形態が記載されているが、これらは、説明のみを目的として提示されている。記載された実施形態は、いかなる意味においても制限することを意図するものではない。本発明は、本明細書での開示から容易に明らかなように、様々な実施形態に広く適用可能である。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に説明されている。また、別の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、論理的、ソフトウェア的、電気的、または他の変更を行うことができることを理解されたい。したがって、当業者であれば、本発明が様々な修正及び変更を伴って実施され得ることを認識できるであろう。本発明の特定の特徴は、本開示の一部を構成する1以上の特定の実施形態または図面を参照して説明され、例示として本発明の特定の実施形態が示されているが、そのような特徴は、それらが説明されている1以上の特定の実施形態または図面における使用に限定されないことを理解されたい。したがって、本開示は、本発明のすべての実施形態の文字通りの説明でもないし、すべての実施形態に存在しなければならない本発明の特徴の一覧でもない。
【0106】
「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「例示的な実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」、「1以上の実施形態」、及び「一実施形態」という用語は、特に明示しない限り、「本発明の1以上の実施形態(すべてが必須ではない)」を意味する。
【0107】
「含む(including)(comprising)」という用語及びその変形は、特に明示しない限り、「~を含むがこれに限定されない」ことを意味する。
【0108】
「~から成る(consisting of)」という用語及びその変形は、特に明示しない限り、「~を含むがこれに限定されない」ことを意味する。
【0109】
列挙された項目は、それらのいずれかまたはすべての項目が相互に排他的であることを意味するものではない。列挙された項目は、特に明示しない限り、それらのいずれかまたはすべてが集合的に何かを網羅することを意味するものではない。列挙された項目は、列挙された順序に従っていかなる方法でも順序付けられることを意味するものではない。
【0110】
「少なくとも1つの~を含む(comprising at least one of)」という用語の後に項目の列挙が続く場合は、列挙されている各項目の構成要素または下位構成要素が必須であることを意味するものではない。むしろ、列挙されている1以上の項目が、指定された項目を構成する可能性があることを意味する。例えば、「Aは、a、b、及びcの少なくとも1つを含む」という記載は、(i)Aはaを含むことができる、(ii)Aはbを含むことができる、(iii)Aはcを含むことができる、(iv)Aはaとbとを含むことができる、(v)Aはaとcとを含むことができる、(vi)Aはbとcとを含むことができる、(vii)Aはa、b、及びcを含むことができる、ことを意味する。
【0111】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語は、特に明示しない限り、「1以上」を意味する。
【0112】
「~に基づく(based on)」という用語は、特に明示しない限り、「~に少なくとも基づく」ことを意味する。
【0113】
本明細書で説明される方法(方法、プロセス、アルゴリズム、計算などと称されるかどうかに関わらず)は、本質的に1以上のステップを含む。したがって、そのような方法の「ステップ」へのすべての言及は、「方法」という用語または同様の用語の単なる記載における先の記載を有する。したがって、クレームにおける方法の「ステップ」または「ステップ」への言及は、十分な先の記載を有すると見なされる。
【0114】
本明細書に記載されているセクションの見出し及びタイトルは、便宜上のものであり、本開示を何ら限定するものではない。
【0115】
互いに通信する装置は、特に明示しない限り、互いに連続的に通信している必要はない。加えて、互いに通信する装置は、1以上の仲介機構を介して、直接的または間接的に通信してもよい。
【0116】
複数の構成要素が互いに通信している実施形態の説明は、そのような構成要素のすべてが必要であること、または、開示された各構成要素が他のすべての構成要素と通信する必要があることを意味しない。それどころか、本発明の可能な様々な実施形態を説明するために、様々な任意選択の構成要素が記載されている。
【0117】
また、プロセスステップ、方法ステップ、アルゴリズムなどが順次に記載されている場合でも、そのようなプロセス、方法、アルゴリズムを別の順番で行うように構成してもよい。言い換えれば、本明細書に記載されるステップの順序は、ステップがその順序で実行されるという要件を示すものではない。本明細書に記載される方法のステップは、実用的な順序で実行され得る。さらに、いくつかのステップは、同時に実行されないと記載または暗示されているにも関わらず(例えば、或るステップが別のステップの後に記載されているため)、同時に実行してもよい。さらに、図面に示されたプロセスの記載は、記載されたプロセスが他のバリエーション及びそれに対する修正を排除すること、記載されたプロセスまたはそのステップのいずれかが本発明に必須であること、または、記載されたプロセスが好ましいことを意味するものではない。
【0118】
本明細書に記載される様々な方法やアルゴリズムは、例えば、適切にプログラムされた汎用コンピュータやコンピュータ装置によって実施できることは容易に理解できるであろう。一般的に、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサまたはコントローラデバイス)は、メモリや記憶装置などから命令を受け取り、それらの命令を実行することで、それらの命令によって定義されたプロセスを実行する。さらに、そのような方法やアルゴリズムを実装するプログラムは、様々な既知のメディアを使用して格納及び送信することができる。
【0119】
単一の装置または物品が本明細書に記載されている場合、単一の装置または物品の代わりに、複数の装置または物品(それらが協働するかどうかに関わらず)を使用してもよういことは容易に理解できるであろう。同様に、複数の装置または物品が本明細書に記載されている場合(それらが協働するかどうかに関わらず)、複数の装置または物品の代わりに、単一の装置または物品を使用してもよういことは容易に理解できるであろう。
【0120】
装置の機能及び/または特徴は、そのような機能/特徴を有すると明示的に記載されていない1以上の他の装置によって代替的に具現化してもよい。したがって、本発明の別の実施形態は、装置そのものを含む必要はない。
【0121】
本明細書で使用するとき、「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ、プロセッサ、または同様の装置によって読み取ることができるデータ(例えば、命令)の提供に関与する任意の媒体を指す。このような媒体には、これに限定しないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体などの様々な形態が含まれる。不揮発性メディアとしては、例えば、光ディスク、磁気ディスク、及び、他の永続的メモリなどが挙げられる。揮発性メディアとしては、一般的にメインメモリを構成するダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)などが挙げられる。伝送媒体としては、プロセッサに接続されたシステムバスを構成するワイヤまたは他の経路を含む、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバなどが挙げられる。伝送媒体は、高周波(RF)または赤外線(IR)でのデータ通信中に発生する音波、光波、及び電磁放射を含むか、または伝達することができる。コンピュータ可読媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク(登録商標)、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、ホールパターンを有する他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH(登録商標)-EEPROM、他のメモリチップまたはカートリッジ、後述する搬送波、または、コンピュータが読み取ることができる他の媒体が挙げられる。
【0122】
様々な形態のコンピュータ可読媒体が、プロセッサへの命令シーケンスの伝送に関与することができる。例えば、命令シーケンスは、(i)RAMからプロセッサに配信されたり、(ii)無線伝送媒体を介して伝送されたり、(iii)伝送制御プロトコル、インターネットプロトコル(TCP/IP)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、TDMA、CDMA、及び3Gなどの様々な形式、標準、またはプロトコルに従ってフォーマットされ得る。
【0123】
データベースが記載される場合、(i)記載されているものに代わるデータベース構造を容易に採用することができること、及び、(ii)データベース以外の他のメモリ構造を容易に採用することができることは、当業者であれば理解できるであろう。本明細書に提示されたサンプルデータベースの概略図及びその説明は、情報を格納する構成のための例示的な構成である。示したもの以外にも、様々な他の構成を採用することができる。同様に、データベースの例示されたエントリは、例示的な情報のみを表している。当業者であれば、エントリの数及び内容が、本明細書に示すものと異なってもよいことを理解できるであろう。さらに、データベースをテーブルとして記載しているが、他の形式(リレーショナルデータベース、オブジェクトベースのモデル及び/または分散データベースを含む)を使用して、本明細書で説明するデータ型を格納及び操作してもよい。
【0124】
同様に、データベースのオブジェクト方法または動作を使用して、本発明のプロセスを実施することができる。加えて、データベースは、既知の方法で、そのようなデータベース内のデータにアクセスするデバイスからローカルまたはリモートに格納してもよい。
【0125】
例えば、情報を格納するためのデータベース構造の代替例として、階層的な電子ファイルフォルダ構造を用いることができる。この場合、プログラムを使用して、プログラムで指定されたファイルパスに基づいて、階層内の適切なファイルフォルダ内の適切な情報にアクセスすることができる。
【0126】
また、特許請求の範囲に記載されている用語が、この明細書の他の箇所で、単一の意味に一致する態様で言及されている限り、それは単に明確化のために行われたものであり、そのような用語が、暗示的または他の方法で、その単一の意味に制限されることを意図するものではないことを理解されたい。
【0127】
クレーム(特許請求の範囲)において、「~する手段」または「~するステップ」という文言を含むクレームの限定は、米国特許法第112条第6項がその限定に適用されることを意味する。
【0128】
クレームにおいて、「~する手段」という文言または「~するステップ」という文言を含まないクレームの限定とは、その限定が、その機能を実施するための構造、材料、または行為を記載しているかどうかに関わらず、その限定に米国特許法第112条第6項が適用されないことを意味する。例えば、クレームにおいて、そのクレームまたは他のクレームの1以上のステップに言及するときに「~のステップ(step of;steps of)」という語句を単に使用するだけでは、そのステップに米国特許法第112条第6項が適用されることを意味するものではない。
【0129】
米国特許法第112条第6項に従って特定の機能を実施するための手段またはステップに関して、本明細書に記載された対応する構造、材料、または行為、及びそれらの同等物は、特定の機能だけでなく追加の機能を実施することもできる。
【0130】
コンピュータ、プロセッサ、コンピューティング装置などの製品は、様々な機能を実施することができる構造体である。このような製品は、その製品のメモリデバイスに格納されているプログラムや、その製品がアクセスするメモリデバイスに格納されているプログラムなどの、1以上のプログラムを実行することによって、特定の機能を実行することができる。特に明記されていない限り、このようなプログラムは、本出願で開示され得る特定のアルゴリズムなどの、特定のアルゴリズムに基づくものである必要はない。特定の機能が異なるアルゴリズムを用いて実装することもでき、様々なアルゴリズムのいずれも、特定の機能を実施するための単なる設計上の選択であることは、当業者にはよく知られている。
【0131】
したがって、米国特許法第112条第6項に従って特定の機能を実行するための手段またはステップに関して、特定の機能に対応する構造には、特定の機能を実行するようにプログラムされた製品が含まれる。このような構造は、そのような製品が、(i)機能を実行するための開示されたアルゴリズム、(ii)開示されたアルゴリズムに類似したアルゴリズム、または(iii)機能を実行するための異なるアルゴリズムによってプログラムされているかどうかに関わらず、機能を実行するプログラムされた製品を含む。
【0132】
本明細書では、様々な実施形態を説明したが、本発明の範囲は、明示的に記載された特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。他の多くの変形及び実施形態は、本明細書を読めば当業者であれば理解できるであろう。
【国際調査報告】