(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】治療用SIRPα抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230602BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230602BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230602BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230602BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230602BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230602BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230602BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/02
A61K45/00
C07K16/28
C12N15/13
C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566033
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 US2021030163
(87)【国際公開番号】W WO2021222746
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521202743
【氏名又は名称】アーチ オンコロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】プーロ,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】ヒービッシュ,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】カポッシア,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレジェバ,ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ,ダニエル スーザ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA14
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
特徴的な機能プロファイルを有する、多重特異性SIRPα抗体を含む抗SIRPαモノクローナル抗体(抗SIRPα mAb)、ならびに関連する組成物、ならびに固形がんおよび血液がんの予防および治療のための治療薬として抗SIRPα mAbを使用する方法が提供される。例示的な抗SIRPαモノクローナル抗体のアミノ酸配列も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトSIRPαに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を、がんを治療するのに有効な量で対象に投与することを含む、それを必要とする対象においてがんを治療する方法であって、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、正常な末梢血単核細胞(PBMC)に対する食作用を誘導することなくがん細胞に対する食作用を誘導し、モノクローナル抗体または抗原結合性断片が、
i. 配列番号1、配列番号2、配列番号3、
ii. 配列番号4、配列番号5、配列番号6、
iii. 配列番号7、配列番号8、配列番号9、
iv. 配列番号10、配列番号11、配列番号12、
v. 配列番号13、配列番号14、配列番号15、
vi. 配列番号16、配列番号17、配列番号18、
vii. 配列番号19、配列番号20、配列番号21、
viii. 配列番号22、配列番号23、配列番号24、
ix. 配列番号25、配列番号26、配列番号27、
x. 配列番号28、配列番号29、配列番号30、
xi. 配列番号10、配列番号31、配列番号12、
xii. 配列番号10、配列番号31、配列番号32、および
xiii. 配列番号25、配列番号26、配列番号27、
から選択される3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、LCDR3)と、
xiv. 配列番号33、配列番号34、および配列番号35、
xv. 配列番号36、配列番号37、および配列番号38、
xvi. 配列番号39、配列番号40、および配列番号41、
xvii. 配列番号42、配列番号43、および配列番号44、
xviii. 配列番号45、配列番号46、および配列番号47、
xix. 配列番号48、配列番号49、および配列番号50、
xx. 配列番号51、配列番号52、および配列番号53、
xxi. 配列番号54、配列番号55、および配列番号56、
xxii. 配列番号57、配列番号58、および配列番号59、
xxiii. 配列番号60、配列番号61、および配列番号62、ならびに
xxiv. 配列番号57、配列番号58、および配列番号63
から選択される3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3)とを含む、方法。
【請求項2】
ヒトSIRPαに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、
i. 配列番号81のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号64を含む軽鎖可変ドメイン、
ii. 配列番号82のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号65を含む軽鎖可変ドメイン、
iii. 配列番号83のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号66を含む軽鎖可変ドメイン、
iv. 配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号67を含む軽鎖可変ドメイン、
v. 配列番号85のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号68を含む軽鎖可変ドメイン、
vi. 配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号69を含む軽鎖可変ドメイン、
vii. 配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号70を含む軽鎖可変ドメイン、
viii. 配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖可変ドメイン、
ix. 配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号72を含む軽鎖可変ドメイン、
x. 配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号73を含む軽鎖可変ドメイン、
xi. 配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖可変ドメイン、
xii. 配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖可変ドメイン、
xiii. 配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号76を含む軽鎖可変ドメイン、
xiv. 配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖可変ドメイン、
xv. 配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖可変ドメイン、
xvi. 配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号76を含む軽鎖可変ドメイン、
xvii. 配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖可変ドメイン、
xviii. 配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖可変ドメイン、
xix. 配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号76を含む軽鎖可変ドメイン、
xx. 配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖可変ドメイン、
xxi. 配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖可変ドメイン、
xxii. 配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号76を含む軽鎖可変ドメイン、
xxiii. 配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号77を含む軽鎖可変ドメイン、
xxiv. 配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号78を含む軽鎖可変ドメイン、
xxv. 配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号79を含む軽鎖可変ドメイン、
xxvi. 配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号80を含む軽鎖可変ドメイン、
xxvii. 配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号78を含む軽鎖可変ドメイン、
xxviii. 配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号79を含む軽鎖可変ドメイン、
xxix. 配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号80を含む軽鎖可変ドメイン、
xxx. 配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号78を含む軽鎖可変ドメイン、
xxxi. 配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号79を含む軽鎖可変ドメイン、
xxxii. 配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号80を含む軽鎖可変ドメイン、ならびに
xxxiii. 配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号72を含む軽鎖可変ドメイン
から選択される、重鎖可変ドメイン(V
H)および軽鎖可変ドメイン(V
L)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項3】
ヒトSIRPαに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、
i. 配列番号109のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号98を含む軽鎖、
ii. 配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号99を含む軽鎖、
iii. 配列番号111のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号100を含む軽鎖、
iv. 配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖、
v. 配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号102を含む軽鎖、
vi. 配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖、
vii. 配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖、
viii. 配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号102を含む軽鎖、
ix. 配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖、
x. 配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖、
xi. 配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号102を含む軽鎖、
xii. 配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖、
xiii. 配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖、
xiv. 配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号102を含む軽鎖、
xv. 配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖、
xvi. 配列番号116のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号104を含む軽鎖、
xvii. 配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号105を含む軽鎖、
xviii. 配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号106を含む軽鎖、
xix. 配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号107を含む軽鎖、
xx. 配列番号118のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号105を含む軽鎖、
xxi. 配列番号118のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号106を含む軽鎖、
xxii. 配列番号118のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号107を含む軽鎖、
xxiii. 配列番号119のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号105を含む軽鎖、
xxiv. 配列番号119のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号106を含む軽鎖、
xxv. 配列番号119のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号107を含む軽鎖、ならびに
xxvi. 配列番号120のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号108を含む軽鎖
から選択される、1本の重鎖および1本の軽鎖を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項4】
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断が、IgG1、IgG1-N297Q、IgG2、IgG4、IgG4 S228P、IgG4 PE、およびこれらのバリアントから選択されるIgGアイソタイプを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトSIRPαおよびヒトSIRPγに結合する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
食作用の誘導がFc依存的である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
食作用の誘導がFcγRに依存する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
FcγRが、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、およびFcγRIIIB(CD16b)から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、化学療法剤または治療用抗体と組み合わせて投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
治療用抗体が、CD47(表面抗原分類47)、CD70(表面抗原分類70)、CD200(OX-2膜糖タンパク質、表面抗原分類200)、CD154(表面抗原分類154、CD40L、CD40リガンド、表面抗原分類40リガンド)、CD223(リンパ球活性化遺伝子3、LAG3、表面抗原分類223)、KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)、GITR(TNFRSF18、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質、活性化誘導性TNFRファミリー受容体、AITR、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18)、CD20(表面抗原分類)、CD28(表面抗原分類28)、CD40(表面抗原分類40、Bp50、CDW40、TNFRSF5、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5、p50)、CD86(B7-2、表面抗原分類86)、CD160(表面抗原分類160、BY55、NK1、NK28)、CD258(LIGHT、表面抗原分類258、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、TNFSF14、ヘルペスウイルス侵入メディエーターリガンド(HVEM-L))、CD270(HVEM、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14、ヘルペスウイルス侵入メディエーター、表面抗原分類270、LIGHTR、HVEA)、CD275(ICOSL、ICOSリガンド、誘導性T細胞共刺激分子リガンド、表面抗原分類275)、CD276(B7-H3、B7ホモログ3、表面抗原分類276)、OX40L(OX40リガンド)、B7-H4(B7ホモログ4、VTCN1、V-setドメイン含有T細胞活性化阻害物質1)、GITRL(グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体-リガンド、グルココルチコイド誘導性TNFR-リガンド)、4-1BBL(4-1BBリガンド)、CD3(表面抗原分類3、T3D)、CD25(IL2Rα、表面抗原分類25、インターロイキン-2 受容体α鎖、IL-2受容体α鎖)、CD48(表面抗原分類48、Bリンパ球活性化マーカー、BLAST-1、シグナル伝達リンパ球活性化分子2、SLAMF2)、CD66a(Ceacam-1、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、胆汁糖タンパク質、BGP、BGP1、BGPI、表面抗原分類66a)、CD80(B7-1、表面抗原分類80)、CD94(表面抗原分類94)、NKG2A(ナチュラルキラーグループ2A、キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーDメンバー1、KLRD1)、CD96(表面抗原分類96、TActILE、T細胞活性化後期発現増加)、CD112(PVRL2、ネクチン、ポリオウイルス受容体関連2、ヘルペスウイルス侵入メディエーターB、HVEB、ネクチン-2、表面抗原分類112)、CD115(CSF1R、コロニー刺激因子1受容体、マクロファージコロニー刺激因子受容体、M-CSFR、表面抗原分類115)、CD205(DEC-205、LY75、リンパ球抗原75、表面抗原分類205)、CD226(DNAM1、表面抗原分類226、DNAXアクセサリー分子-1、PTA1、血小板およびT細胞活性化抗原1)、CD244(表面抗原分類244、ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、CD262(DR5、TrailR2、TRAIL-R2、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b、TNFRSF10B、表面抗原分類262、KILLER、TRICK2、TRICKB、ZTNFR9、TRICK2A、TRICK2B)、CD284(Toll様受容体-4、TLR4、表面抗原分類284)、CD288(Toll様受容体-8、TLR8、表面抗原分類288)、白血病抑制因子(LIF)、TNFSF15(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー15、血管内皮細胞増殖阻害物質、VEGI、TL1A)、TDO2(トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ、TPH2、TRPO)、IGF-1R(1型インスリン様増殖因子)、GD2(ジシアロガングリオシド2)、TMIGD2(膜貫通免疫グロブリンドメイン含有タンパク質2)、RGMB(RGMドメインファミリー、メンバーB)、VISTA(T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン含有サプレッサー、B7-H5、B7ホモログ5)、BTNL2(ブチロフィリン様タンパク質2)、Btn(ブチロフィリンファミリー)、TIGIT(IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体、Vstm3、WUCAM)、シグレック(シアル酸結合Ig様レクチン)、すなわち、SIGLEC-15、ニューロフィリン、VEGFR(血管内皮増殖因子受容体)、ILTファミリー(LIR、免疫グロブリン様転写物ファミリー、白血球免疫グロブリン様受容体)、NKGファミリー(ナチュラルキラーグループファミリー、C型レクチン膜貫通受容体)、MICA(MHCクラスIポリペプチド関連配列A)、TGFβ(形質転換増殖因子β)、STING経路(インターフェロン遺伝子経路の刺激物質)、アルギナーゼ(アルギニンアミジナーゼ、カナバナーゼ、L-アルギナーゼ、アルギニントランスアミジナーゼ)、EGFRvIII(上皮増殖因子受容体バリアントIII)、およびHHLA2(B7-H7、B7y、HERV-H LTR関連タンパク質2、B7ホモログ7)、PD-1の阻害物質(プログラム細胞死タンパク質 1、PD-1、CD279、表面抗原分類279)、PD-L1(B7-H1、B7ホモログ1、プログラム死リガンド1、CD274、表面抗原分類274)、PD-L2(B7-DC、プログラム細胞死1リガンド2、PDCD1LG2、CD273、表面抗原分類273)、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4、CD152、表面抗原分類152)、BTLA(Bおよび Tリンパ球アテニュエーター、CD272、表面抗原分類272)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO、IDO1)、TIM3(HAVCR2、A型肝炎ウイルス細胞受容体 2、T細胞免疫グロブリンムチン-3、KIM-3、腎臓損傷分子3、TIMD-3、T細胞免疫グロブリンムチン-ドメイン3)、A2Aアデノシン受容体(ADO受容体)、CD39(エクトヌクレオチド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ-1、表面抗原分類39、ENTPD1)、およびCD73(エクト-5'-ヌクレオチダーゼ、5'-ヌクレオチダーゼ、5'-NT、表面抗原分類73)、CD27(表面抗原分類27)、ICOS(CD278、表面抗原分類278、誘導性T細胞共刺激分子)、CD137(4-1BB、表面抗原分類137、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9、TNFRSF9)、OX40(CD134、表面抗原分類134)、TNFSF25(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー25)、IL-10(インターロイキン-10、ヒトサイトカイン合成阻害因子、CSIF)、PVRIG(ポリオウイルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有タンパク質)、およびガレクチンから選択される細胞標的を対象とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、腫瘍細胞上の抗原を標的とするオプソニン化抗体と組み合わせて投与される、請求項1から3、7、8、および10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
オプソニン化抗体が、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗RANKL、抗SLAMF7、抗PD-L1、抗CD38、抗CD19/CD3、および抗GD2抗体のうちの1つまたは複数から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
オプソニン化抗体が、リツキシマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、オファツムマブ、デノスマブ、ペルツズマブ、パニツムマブ、エロツズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ネシツムマブ、ダラツムマブ、オビヌツズマブ、ブリナツモマブ、およびジヌツキシマブのうちの1つまたは複数から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オプソニン化抗体が、抗CD20、抗EGFR、抗PD-1、および抗PD-L1抗体のうちの1つまたは複数から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、乳がん、子宮内膜がん、結腸がん(結腸直腸がん)、直腸がん、膀胱がん、尿路上皮がん、肺がん(非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌)、気管支がん、骨がん、前立腺がん、膵がん、胃がん、肝細胞癌、胆嚢がん、胆管がん、食道がん、腎細胞癌、甲状腺がん、頭頸部の扁平上皮癌(頭頸部がん)、精巣がん、内分泌腺のがん、副腎のがん、下垂体のがん、皮膚のがん、軟部組織のがん、血管のがん、脳のがん、神経のがん、目のがん、髄膜のがん、中咽頭のがん、下咽頭のがん、子宮頸のがん、および子宮のがん、神経膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、神経膠腫、髄膜腫、ガストリノーマ、神経芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、および肉腫から選択される、請求項1から3、7、8、10、および12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記白血病が、全身性肥満細胞症、急性リンパ性(リンパ芽球性)白血病(ALL)、T細胞ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患/新生物、骨髄異形成症候群、単核球細胞白血病、および形質細胞白血病から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記リンパ腫が、組織球性リンパ腫およびT細胞リンパ腫、ならびに、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、例えば、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、細胞リンパ腫(FCC)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度 びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHL、およびワルデンストローム・マクログロブリン血症を含む、B細胞リンパ腫から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記肉腫が、骨肉腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫、胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、および軟骨肉腫から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が汎対立遺伝子的である、請求項1から3、7、8、10、12から14、および16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、SIRPαの二量体化、クラスター形成、およびアーキテクチャのうちの1つまたは複数に影響を与える、請求項1から3、7、8、10、12から14、および16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、細胞表面SIRPαの減少を引き起こす、請求項1から3、7、8、10、12から14、および16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
細胞表面SIRPαが内在化される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は免疫療法の分野に関する。本開示は、SIRPαとCD47の間の相互作用を妨害し、腫瘍細胞に対する食作用を増強し、免疫応答の免疫調節を引き起こす、抗SIRPα抗体(抗SIRPα)、抗SIRPα抗体を作製する方法、ならびに、血液がんおよび固形がんの予防および治療のための治療剤として抗SIRPα抗体を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
[0002] T細胞チェックポイントPD-1、PD-L1、およびCTLA-4を含む獲得免疫を標的とし、T細胞免疫応答の細胞障害活性を増強する治療用抗体により、転移性疾患を有する患者の長期的寛解の見込み、または治癒の見込みさえもが高まった(Hodi 2010、McDermott 2015)。前向きな結果にもかかわらず、これらのチェックポイント阻害剤に対する応答ができない(原発性の抵抗性)大きな患者集団、または、応答はするが、最終的に疾患進行が発生する(後天的な抵抗性)人々が存在する(Pitt 2016、Restifo 2016、Sharma 2017)。近年の研究により、抵抗性のメカニズムは、特有の腫瘍抗原タンパク質を欠くことまたは腫瘍抗原の提示の阻害など、腫瘍細胞内因的であり、なおかつ、腫瘍微小環境における浸潤性T細胞の不在、冗長な阻害チェックポイント、および/または免疫抑制細胞の存在を伴い、腫瘍細胞外因的である可能性があることが示唆されている(Sharma 2017)。チェックポイント阻害剤に感受性があると考えられる腫瘍においてでさえ、あるいは抗CTLA-4および抗PD-1/PDL-1剤を組み合わせた場合であっても、患者のおよそ50%が腫瘍縮小を経験せず、治療を受けたすべての患者の治療期間または無増悪生存期間中央値は2~5カ月付近と、比較的短いままである(Kazandjian、 2016)。さらに、最もありふれた固形腫瘍のいくつかと血液悪性腫瘍の大部分において、これらのチェックポイント阻害剤では残念な結果となっている。特に、ホルモン受容体陽性乳がん、結腸直腸がん(非マイクロサテライト不安定性)、および前立腺がんはこの種の免疫操作に対して感受性ではないように思われ、違った免疫療法のアプローチから恩恵を受ける可能性がある(Le 2015、Dirix 2015、Topalian 2012、Graff 2016)。これらの知見は、さらなるチェックポイントを標的とすることで、獲得免疫応答に加えて自然免疫応答を活性化させて臨床成績をさらに改善する、代替的または相乗的なアプローチの必要性を強調している。いくつかの自然免疫応答のチェックポイントは、腫瘍細胞上および骨髄細胞(マクロファージ、樹状細胞、単球由来サプレッサー細胞、顆粒球)上に存在し、骨髄細胞は、腫瘍の進行、転移、および全体的な成績に影響を与える、腫瘍微小環境の重要な細胞構成要素である(Barclayおよびvan den Berg 2014、Yanagita 2017)。
【0003】
[0003] シグナル制御タンパク質(SIRP)-α、またはSIRPαは、CD172a、BIT、またはSHPS-1としても知られ、密接に関連したSIRPタンパク質からなるSIRPペア型受容体ファミリーのメンバーである。SIRPαは、マクロファージ、樹状細胞、および顆粒球を含む造血細胞によって主に発現され、とりわけ脳内のニューロン、グリア、平滑筋細胞、ならびに内皮および一部の腫瘍細胞上でも発現される(Barclayおよびvan den Berg 2014)。SIPRαは、3つのIg様ドメインを含む細胞外ドメインと、免疫受容体チロシン型阻害性モチーフ(ITIM)を含む細胞質領域とを有する、膜貫通タンパク質である。
【0004】
[0004] ヒトSIRPαをコードする遺伝子は多形性であり、最大で10種類のSIRPαハプロタイプが報告されている[Takenaka K.ら, 2007およびBrooke G.ら, 2004)。3つの対立遺伝子群(ホモ接合性v1/v1、ヘテロ接合性v1/v2、およびホモ接合性v2/v2)は、遺伝子型を同定された実質的にすべての民族を構成する(Treffers LWら, 2018およびSim J.ら 2020)。ヘテロ接合体では、SIRPαの両方の対立遺伝子を遮断することがマクロファージ媒介性食作用を増強するために必要であるため、SIRPαに対する対立遺伝子汎特異的抗体は、多様な集団においてSIRPα/CD47チェックポイントを最も広く標的化/遮断すると考えられる(Sim J.ら 2020およびZhao XWら, 2011)。本開示の抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒト単核球細胞株U937(SIRPα v1/v1)およびTHP-1(SIRPα v2/v2)のいずれにも結合し(Tsaiら, 2010)、U937(SIRPα v1/v1)のみに結合するmAb 18D5とは異なる(細胞ベースの結合アッセイによる)(Tsaiら, 2010およびvan Eenennaamら, 2018)。
【0005】
[0005] SIRPαは骨髄細胞により発現され、CD47は多くの腫瘍細胞上や一部の正常細胞上で発現または過剰発現されるが、SIRPαのCD47との相互作用は、接着、移動、活性化、および阻害活性を含む骨髄機能を制御する自然応答の、重要な免疫チェックポイントである。CD47/SIRPα相互作用は、阻害性の「私を食べるなシグナル」を貪食細胞に送る標的細胞に対する、マクロファージおよび樹状細胞の食作用を制御する。CD47のSIRPαへの結合により阻害シグナル伝達カスケードが開始されることで、その細胞質ITIMのリン酸化(Oldenborg 2000、Oldenborg 2001、Okazawa 2005)、SHP-1およびSHP-2、ならびにSrc相同領域含有タンパク質チロシンホスファターゼの動員および結合(Veillette 1998、Oldenborg 2001)、ならびに非筋肉ミオシンIIAの阻害、そして最終的に貪食機能の阻害(TsaiおよびDischer 2008、Barclayおよびvan den Berg 2014、Murata 2014、VeilletteおよびChen 2018、Matazaki 2009)が起こり、その後食作用が阻害される。CD47の「私を食べるな」シグナルとしての作用に付随して重要なのは、その「自己のマーカー」としての役割である。これにより自己に対する食作用が著しく妨げられ、その後の自己免疫反応が遮断される(Oldenborg, 2002、Oldenborg 2004)。がん細胞はCD47を用いて自らを「自己」の中に隠し、この結果、自然免疫系と獲得免疫系の両方から巧みに逃れる。マクロファージおよび樹状細胞などの自然免疫細胞上におけるSIRPαと、腫瘍細胞上におけるCD47との相互作用の遮断は、がん療法における有望な標的として登場した。前臨床データより、SIRPα/CD47相互作用を遮断する抗SIRPα抗体は、抗CD47抗体と同様に、マウス腫瘍モデルにおいて、単剤療法で、または他の薬剤との組合せにおいて抗腫瘍力を呈することが示されている(Gauttier, 2017;Ring, 2017;Yanigita, 2017;Poirier, 2018;およびGuattier, 2018)。重要なことは、SIRPα/CD47相互作用の妨害後の自然免疫応答に加えて獲得免疫応答が生じることが、頑強な抗腫瘍応答を得る際に不可欠と考えられる点である(Tseng 2013、Li 2015、Xu 2017)。
【0006】
[0006] DC細胞上におけるSIRPαの発現、およびT細胞上でのCD47とのその相互作用は、獲得免疫応答を誘導する際に重要であると考えられる。SIRPα/CD47相互作用の遮断が、DCによる抗原特異的CD8+T細胞応答を刺激する能力に影響を与えることが報告されており、これは腫瘍DNAに対するDC媒介性応答の増強と相関していた(Liu 2015、Xu 2017)。
【0007】
[0007] ペア型受容体からなるSIRPファミリーのもう1つのメンバーである、SIRP-γは、ヒトT細胞の表面上に選択的に発現され(ただし齧歯類ではそうではない)、4つのアミノ酸からなる短い細胞質領域を有する。SIRP-γもCD47に結合し、T細胞とAPCの間の接着の媒介、ならびに増殖および活性化を含む、T細胞の機能にとって重要であると考えられる(Barclayおよびvan den Berg 2014;およびPiccio, 2005)。よって、SIRP-γとCD47の間ではなくSIRPαとCD47の間の相互作用を遮断することで、T細胞の機能を保護する利点が得られる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 本開示は、特徴的な機能プロファイルを有する抗SIRPα mAbを記載する。本開示の抗体は、ヒトにおけるSIRPαと関連する疾患および状態を治療するための様々な治療方法において有用であり、これらには、固形がんおよび血液がんの予防および治療のための治療薬としての、抗SIRPα mAbの使用が含まれる。本開示の抗体は、組織試料における抗SIRPα発現量を決定するための診断薬としても有用である。本開示の実施形態は、単離された抗体およびその免疫学的に活性なその結合性断片;抗SIRPαモノクローナル抗体、好ましくは、これらの抗体のキメラまたはヒト化形態のうちの1つまたは複数を含む、医薬組成物;ならびにこのような抗SIRPαモノクローナル抗体の治療的使用方法を含む。
【0009】
[0009] 本開示の実施形態はmAbまたはその抗原結合性断片を含み、これらは、特定の構造的特徴、すなわち、CDR、または重鎖および軽鎖可変ドメインの全体、または重鎖および軽鎖の全体の、規定されたアミノ酸配列を参照することによって定義される。本明細書で開示されるこれらの抗体のすべてが、SIRPα、SIRP-γ、またはSIRPαとSIRP-γとに結合する。
【0010】
[0010] モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書で提示される少なくとも1つ、通常は少なくとも3つのCDR配列を、通常はヒト可変領域に由来するフレームワーク配列と組み合わせて、または単離されたCDRペプチドとして含んでいてもよい。一部の実施形態において、抗体は、限定されるものではないが、マウスまたはヒト可変領域フレームワークであってもよい可変領域フレームワークに位置する、本明細書で提示される3つの軽鎖CDR配列を含む少なくとも1本の軽鎖と、限定されるものではないが、マウスまたはヒト可変領域フレームワークであってもよい可変領域フレームワークに位置する、本明細書で提示される3つの重鎖CDR配列を含む少なくとも1本の重鎖とを含む。モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片には、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディラクダ科VHH、またはサメ単一ドメイン抗体もしくはその抗原結合性断片)および多重特異性(例えば、二重特異性)抗体またはその抗原結合性断片も含まれる。
【0011】
[0011] 一部の実施形態において、6つのCDRの組合せとしては、以下から選択される可変重鎖CDR1(HCDR1)、可変重鎖CDR2(HCDR2)、可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変軽鎖CDR1(LCDR1)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)、および可変軽鎖CDR3(LCDR3)の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
[0012] 配列番号33を含むHCDR1、配列番号34を含むHCDR2、配列番号35を含むHCDR3、配列番号1を含むLCDR1、配列番号2を含むLCDR2、配列番号3を含むLCDR3、
【0013】
[0013] 配列番号36を含むHCDR1、配列番号37を含むHCDR2、配列番号38を含むHCDR3、配列番号4を含むLCDR1、配列番号5を含むLCDR2、配列番号6を含むLCDR3、
【0014】
[0014] 配列番号39を含むHCDR1、配列番号40を含むHCDR2、配列番号41を含むHCDR3、配列番号7を含むLCDR1、配列番号8を含むLCDR2、配列番号9を含むLCDR3、
【0015】
[0015] 配列番号42を含むHCDR1、配列番号43を含むHCDR2、配列番号44を含むHCDR3、配列番号10を含むLCDR1、配列番号11を含むLCDR2、配列番号12を含むLCDR3、
【0016】
[0016] 配列番号45を含むHCDR1、配列番号46を含むHCDR2、配列番号47を含むHCDR3、配列番号13を含むLCDR1、配列番号14を含むLCDR2、配列番号15を含むLCDR3、
【0017】
[0017] 配列番号48を含むHCDR1、配列番号49を含むHCDR2、配列番号50を含むHCDR3、配列番号16を含むLCDR1、配列番号17を含むLCDR2、配列番号18を含むLCDR3、
【0018】
[0018] 配列番号51を含むHCDR1、配列番号52を含むHCDR2、配列番号53を含むHCDR3、配列番号19を含むLCDR1、配列番号20を含むLCDR2、配列番号21を含むLCDR3。
【0019】
[0019] 配列番号54を含むHCDR1、配列番号55を含むHCDR2、配列番号56を含むHCDR3、配列番号22を含むLCDR1、配列番号23を含むLCDR2、配列番号24を含むLCDR3。
【0020】
[0020] 配列番号57を含むHCDR1、配列番号58を含むHCDR2、配列番号59を含むHCDR3、配列番号25を含むLCDR1、配列番号26を含むLCDR2、配列番号27を含むLCDR3。
【0021】
[0021] 配列番号60を含むHCDR1、配列番号61を含むHCDR2、配列番号62を含むHCDR3、配列番号28を含むLCDR1、配列番号29を含むLCDR2、配列番号30を含むLCDR3。
【0022】
[0022] 配列番号42を含むHCDR1、配列番号43を含むHCDR2、配列番号44を含むHCDR3、配列番号10を含むLCDR1、配列番号31を含むLCDR2、配列番号12を含むLCDR3。
【0023】
[0023] 配列番号42を含むHCDR1、配列番号43を含むHCDR2、配列番号44を含むHCDR3、配列番号10を含むLCDR1、配列番号31を含むLCDR2、配列番号32を含むLCDR3。
【0024】
[0024] 配列番号57を含むHCDR1、配列番号58を含むHCDR2、配列番号63を含むHCDR3、配列番号25を含むLCDR1、配列番号26を含むLCDR2、配列番号27を含むLCDR3。
【0025】
[0025] 一部の実施形態において、抗SIRPα抗体には、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、および配列番号97のアミノ酸配列、ならびに記載されたアミノ酸配列の1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含む、抗体またはその抗原結合性断片が含まれる。あるいは、またはさらに、抗体またはその抗原結合性断片を含む抗SIRPα抗体は、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、および配列番号80のアミノ酸配列、ならびに記載されたアミノ酸配列の1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含んでいてもよい。
【0026】
[0026] 上記で列挙したVHドメインおよびVLドメインの配列群から選択されるVHドメインとVLドメインとのすべての可能な対が許容されるが、VHおよびVLドメインのある特定の組合せが開示される。したがって、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、
i. 配列番号81のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号64を含む軽鎖可変ドメイン、
ii. 配列番号82のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号65を含む軽鎖可変ドメイン、
iii. 配列番号83のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号66を含む軽鎖可変ドメイン、
iv. 配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号67を含む軽鎖可変ドメイン、
v. 配列番号85のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号68を含む軽鎖可変ドメイン、
vi. 配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号69を含む軽鎖可変ドメイン、
vii. 配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号70を含む軽鎖可変ドメイン、
viii. 配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖可変ドメイン、
ix. 配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号72を含む軽鎖可変ドメイン、
x. 配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号73を含む軽鎖可変ドメイン、
xi. 配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖可変ドメイン、
xii. 配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖可変ドメイン、
xiii. 配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号76を含む軽鎖可変ドメイン、
xiv. 配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖可変ドメイン、
xv. 配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖可変ドメイン、
xvi. 配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号76を含む軽鎖可変ドメイン、
xvii. 配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖可変ドメイン、
xviii. 配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖可変ドメイン、
xix. 配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号76を含む軽鎖可変ドメイン、
xx. 配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖可変ドメイン、
xxi. 配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖可変ドメイン、
xxii. 配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号76を含む軽鎖可変ドメイン、
xxiii. 配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号77を含む軽鎖可変ドメイン、
xxiv. 配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号78を含む軽鎖可変ドメイン、
xxv. 配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号79を含む軽鎖可変ドメイン、
xxvi. 配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号80を含む軽鎖可変ドメイン、
xxvii. 配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号78を含む軽鎖可変ドメイン、
xxviii. 配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号79を含む軽鎖可変ドメイン、
xxix. 配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号80を含む軽鎖可変ドメイン、
xxx. 配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号78を含む軽鎖可変ドメイン、
xxxi. 配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号79を含む軽鎖可変ドメイン、
xxxii. 配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号80を含む軽鎖可変ドメイン、ならびに
xxxiii. 配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよびアミノ酸配列配列番号72を含む軽鎖可変ドメイン
から選択される、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)との組合せを含む、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片である。
【0027】
[0027] 一部の実施形態において、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片はまた、重鎖可変ドメインが、上記で(i)~(xxxiii)に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性、または少なくとも95%の配列同一性、または少なくとも97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するVH配列を含む、および/または、軽鎖可変ドメインが、上記で(i)~(xxxiii)に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性、または少なくとも95%の配列同一性、または少なくとも97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するVL配列を含む、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの組合せを含んでいてもよい。項目(i)~(xxxiii)における特定のVHとVLとの対または組合せが、VHおよびVLドメイン配列を有する抗SIRPα抗体について、これらの参照配列に対して特定の百分率の配列同一性で保存されていてもよい。
【0028】
[0028] すべての実施形態について、抗体または抗原結合性断片の重鎖および/または軽鎖可変ドメインは、参照配列に対する特定の百分率の配列同一性によって定義され、VHおよび/またはVLドメインは、フレームワーク領域内のみに差異が存在するように、参照配列中に存在するCDR配列と同一のCDR配列を保持していてもよい。
【0029】
[0029] 別の実施形態において、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、
i. 配列番号109のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号98を含む軽鎖、
ii. 配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号99を含む軽鎖、
iii. 配列番号111のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号100を含む軽鎖、
iv. 配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖、
v. 配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号102を含む軽鎖、
vi. 配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖、
vii. 配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖、
viii. 配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号102を含む軽鎖、
ix. 配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖、
x. 配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖、
xi. 配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号102を含む軽鎖、
xii. 配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖、
xiii. 配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖、
xiv. 配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号102を含む軽鎖、
xv. 配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖、
xvi. 配列番号116のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号104を含む軽鎖、
xvii. 配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号105を含む軽鎖、
xviii. 配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号106を含む軽鎖、
xix. 配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号107を含む軽鎖、
xx. 配列番号118のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号105を含む軽鎖、
xxi. 配列番号118のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号106を含む軽鎖、
xxii. 配列番号118のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号107を含む軽鎖、
xxiii. 配列番号119のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号105を含む軽鎖、
xxiv. 配列番号119のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号106を含む軽鎖、
xxv. 配列番号119のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号107を含む軽鎖、ならびに
xxvi. 配列番号120のアミノ酸配列を含む重鎖およびアミノ酸配列配列番号108を含む軽鎖
から選択される重鎖(HC)と軽鎖(LC)との組合せを含む、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片である。
【0030】
[0030] 様々な形態の抗SIRPα mAbが開示される。例えば、抗CD47 mAbは、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、より具体的には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のヒトフレームワークおよび定常領域を有し、一部の場合において、Fc受容体の機能を変えるかまたはFabアーム交換を防止する様々な変異を有する、全長ヒト化抗体、または抗体断片、例えば、本明細書で開示される、F(ab’)2断片、F(ab)断片、一本鎖Fv断片(scFv)等であり得る。
【0031】
[0031] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、IgG1、IgG1-N297Q、IgG2、IgG4、IgG4 S228P、IgG4 PE、およびこれらのバリアントから選択されるIgGアイソタイプを含む。
【0032】
[0032] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒトSIRPαに加えてヒトSIRPγに結合する。
【0033】
[0033] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒトSIRPαに選択的に結合する。
【0034】
[0034] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒト腫瘍細胞に対する食作用を増加させる。
【0035】
[0035] 一部の実施形態において、本明細書で開示される抗SIRPα mAbは、SIRPαと、CD47発現細胞のマーカーである少なくとも1つの第2の抗原とに特異的に結合する、多重特異性抗体である。
【0036】
[0036] 一部の実施形態において、多重特異性抗体の第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD40、CD44、HER2、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD-1)、CD117、C-Met、PTHR2、EGFR、RANKL、SLAMF7、PD-L1、CD38、CD19/CD3、HAVCR2(TIM3)、およびGD2から選択される。
【0037】
[0037] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒト腫瘍細胞に対する食作用を増加させる。
【0038】
[0038] 一部の実施形態において、ヒト腫瘍細胞に対する食作用の増加は、Fc非依存的である。
【0039】
[0039] 一部の実施形態において、ヒト腫瘍細胞に対する食作用の増加は、Fc依存的である。
【0040】
[0040] 一部の実施形態において、ヒト腫瘍細胞食作用の食作用の増加は、FcγRに依存する。
【0041】
[0041] 一部の実施形態において、FcγRは、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、およびFcγRIIIB(CD16b)から選ばれる。
【0042】
[0042] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒト腫瘍細胞に対する食作用を増加させ、腫瘍細胞上の抗原を標的とするオプソニン化モノクローナル抗体と組み合わせて投与される。
【0043】
[0043] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒト腫瘍細胞に対する食作用を増加させ、腫瘍細胞上の抗原を標的とするオプソニン化モノクローナル抗体と組み合わせて投与され、オプソニン化モノクローナル抗体は、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗RANKL、抗SLAMF7、抗PD-L1、抗CD38、抗CD19/CD3、および抗GD2抗体のうちの1つまたは複数から選択される。一部の実施形態において、オプソニン化モノクローナル抗体は、リツキシマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、オファツムマブ、デノスマブ、ペルツズマブ、パニツムマブ、エロツズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ネシツムマブ、ダラツムマブ、オビヌツズマブ、ブリナツモマブ、およびジヌツキシマブのうちの1つまたは複数から選択される。
【0044】
[0044] 一部の実施形態において、オプソニン化モノクローナル抗体は、CD20、EGFR、およびPD-L1を標的とする。
【0045】
[0045] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、抗腫瘍活性を呈する。
【0046】
[0046] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、参照により全体が本明細書に援用される米国特許第10,239,945号に記載される、抗CD47抗体と組み合わせて投与される。
【0047】
[0047] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、抗EGFR抗体と組み合わせて投与される。
【0048】
[0048] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、抗PD-1抗体と組み合わせて投与される。
【0049】
[0049] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、抗CTLA-4抗体と組み合わせて投与される。
【0050】
[0050] 一部の実施形態において、本開示は、任意選択によりキメラまたはヒト化形態である、本明細書で開示される抗SIRPα mAbまたは抗原結合性断片のうちの1つまたは複数と、薬学的または生理学的に許容される担体、賦形剤、または添加剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0051】
[0051] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒト用の療法において使用するためのものである。
【0052】
[0052] 一部の実施形態において、抗SIRPα mAbまたはその抗原結合性断片は、ヒト患者におけるがんを予防または治療する際に使用するためのものである。
【0053】
[0053] 本開示に先立って、本明細書に記載される機能プロファイルを有する抗SIRPα mAbを特定する必要があった。本開示の抗SIRPα mAbは、該mAbを、ヒト用の療法、特に、固形がんおよび血液がんの予防および/または治療において使用することに関して特に有利とする特性の組合せを呈する。
【0054】
[0054] 一部の実施形態において、がんは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、乳がん、子宮内膜がん、結腸がん(結腸直腸がん)、直腸がん、膀胱がん、尿路上皮がん、肺がん(非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌)、気管支がん、骨がん、前立腺がん、膵がん、胃がん、肝細胞癌、胆嚢がん、胆管がん、食道がん、腎細胞癌、甲状腺がん、頭頸部の扁平上皮癌(頭頸部がん)、精巣がん、内分泌腺のがん、副腎のがん、下垂体のがん、皮膚のがん、軟部組織のがん、血管のがん、脳のがん、神経のがん、目のがん、髄膜のがん、中咽頭のがん、下咽頭のがん、子宮頸のがん、および子宮のがん、神経膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、神経膠腫、髄膜腫、ガストリノーマ、神経芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、および肉腫から選択される。
【0055】
[0055] 一部の実施形態において、白血病は、全身性肥満細胞症、急性リンパ性(リンパ芽球性) 白血病(ALL)、T細胞ALL、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患/新生物、骨髄異形成症候群、単核球細胞白血病、および形質細胞白血病からなる群から選択され、前記リンパ腫は、組織球性リンパ腫およびT細胞リンパ腫、ならびに、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、例えば、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、細胞リンパ腫(FCC)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHL、およびワルデンストローム・マクログロブリン血症を含む、B細胞リンパ腫からなる群から選択され、前記肉腫は、骨肉腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫、胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、および軟骨肉腫からなる群から選択される。
【0056】
[0056] 一部の実施形態において、配列番号121の配列内のエピトープに特異的に結合する抗SIRPαモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を使用して、腫瘍および/または免疫細胞におけるSIRPα発現をアッセイする方法が開示される。
【0057】
[0057] 一部の実施形態において、本方法は、患者試料を得ることと、患者試料を、配列番号121の配列内のエピトープに特異的に結合する抗SIRPαモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と接触させることと、患者試料に対する抗体の結合についてアッセイすることとを含み、患者試料に対する抗体の結合は、患者試料におけるSIRPα発現を示す。
【0058】
[0058] 一部の実施形態において、配列番号122の配列内のエピトープに特異的に結合する抗SIRPαモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を使用して、腫瘍および/または免疫細胞におけるSIRPγ発現をアッセイする方法が開示される。
【0059】
[0059] 一部の実施形態において、本方法は、患者試料を得ることと、患者試料を、配列番号122の配列内のエピトープに特異的に結合する抗SIRPγモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と接触させることと、患者試料に対する抗体の結合についてアッセイすることとを含み、患者試料に対する抗体の結合は、患者試料におけるSIRPγ発現を示す。
【0060】
[0060] 一部の実施形態において、腫瘍は主に、がん腫瘍または転移性がん腫瘍である。
【0061】
[0061] 一部の実施形態において、患者試料に対する抗SIRPαモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片の結合についてのアッセイは、組織試料の免疫組織化学的標識、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、またはフローサイトメトリーを利用する。
【0062】
[0062] 一部の実施形態において、本方法は腫瘍細胞を含み、アッセイは、患者試料中の腫瘍細胞に対する抗SIRPαモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片の結合についてアッセイすることを含む。
【0063】
[0063] 本開示の利用可能性のさらなる範囲は、以下に提示される詳細な説明から明らかになるはずである。しかし、本開示の主旨および範囲から逸脱しない様々な変更および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるはずであり、よって詳細な説明および具体的な例は、本開示の実施形態を示しているものの、例示のためだけに与えられている点については理解しなければならない。
【0064】
[0064] 本開示の上記およびその他の態様、特徴、および利点は、添付の図面と組み合わせてなされる以下の詳細な説明からよりよく理解されることになるが、これらのすべては例示のためだけに与えられ、本開示において限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1A-1V】[0065]抗SIRP抗体のヒトSIRPαへの結合。抗SIRP抗体の組換えヒトSIRPαへの結合を、固相ELISAによって決定した。高結合ELISAプレートを組換えヒトSIRPαで被覆し、漸増する濃度の抗SIRP抗体を1時間添加した。ウェルを洗浄し、次いで、HRP標識二次抗体を用いて1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加し、450nmにおける吸光度を測定した。抗SIRPα抗体1~23についての結果を示す。
【0066】
【
図2】[0066]ハイブリドーマ由来mAb(SIRP1、SIRP2、およびSIRP3)のSIRPαを発現するTHP1細胞への結合。SIRP1、SIRP2、およびSIRP3のTHP-1単核球細胞株への結合を決定した。細胞を、漸増する濃度の抗体を用いて1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで、Alexaflour647標識二次抗体を用いて1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを使用して抗体結合を測定した。
【0067】
【
図3A-3V】[0067]抗SIRP抗体のヒトSIRPガンマへの結合。抗SIRP抗体の組換えヒトSIRPガンマ(SIRPγ)への結合を、固相ELISAによって決定した。高結合ELISAプレートを組換えヒトSIRPガンマで被覆し、漸増する濃度の抗SIRP抗体を1時間添加した。ウェルを洗浄し、次いで、HRP標識二次抗体を用いて1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加し、450nmにおける吸光度を測定した。抗SIRPα抗体1~23についての結果を示す。
【0068】
【
図4A-4B】[0068]SIRP mAbのSIRPγを発現するJurkat T細胞への結合。SIRP1、SIRP2、SIRP3、SIRP4、およびSIRP9のJurkat T-ALL細胞への結合を決定した。細胞を、漸増する濃度の抗体(
図4A)、または10μg/mlの抗SIRP抗体(
図4B)を用いて1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、Alexaflour647標識二次抗体を用いて1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを使用して抗体結合を測定した。
【0069】
【
図5A-5G】[0069]抗SIRP抗体による、ヒトCD47/SIRPα結合の遮断。CD47と組換えヒトSIRαの間の相互作用を遮断する抗SIRP抗体の能力を、固相ELISAによって決定した。高結合ELISAプレートを組換えヒトSIRPαで被覆し、漸増する濃度の抗SIRP抗体を1時間添加した。ウェルを洗浄し、次いで、Fcタグ付きヒトCD47を用いて1時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、次いで、HRP標識二次抗体を用いて1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加し、450nmにおける吸光度を測定した。
【0070】
【
図6A-6H】[0070]抗SIRP抗体による、ヒトCD47/SIRPγ結合の遮断。CD47と組換えヒトSIRPγの間の相互作用を遮断する抗SIRP抗体の能力を、固相ELISAによって決定した。高結合ELISAプレートを組換えヒトSIRPγで被覆し、漸増する濃度の抗SIRP抗体を1時間添加した。ウェルを洗浄し、次いで、Fcタグ付きヒトCD47を用いて1時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、次いで、HRP標識二次抗体を用いて1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加し、450nmにおける吸光度を測定した。
【0071】
【
図7A-7B】[0071]抗SIRP抗体は食作用を増強する。ヒトマクロファージを、96ウェルプレート中に1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で播種し、24時間接着させた。8×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と、漸増する濃度の抗SIRP抗体(
図7A)、または10μg/mlの抗SIRP抗体(
図7B)とをマクロファージ培養物に添加し、37℃で3時間インキュベートした。食作用を受けていないJurkat細胞を除去し、マクロファージ培養物を洗浄した。マクロファージをトリプシン処理し、CD14について染色した。フローサイトメトリーを使用して、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞の百分率を求めた。
【0072】
【
図8A-8J】[0072]抗SIRP抗体は、抗CD47抗体との組合せにおいて食作用を増強する。ヒトマクロファージを、96ウェルプレート中に1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で播種し、24時間接着させた。8×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と、漸増する濃度の抗SIRP抗体単独、抗CD47抗体単独、または抗SIRP抗体と抗CD47抗体との組合せとをマクロファージ培養物に添加し、37℃で3時間インキュベートした。食作用を受けていないJurkat細胞を除去し、マクロファージ培養物を洗浄した。マクロファージをトリプシン処理し、CD14について染色した。フローサイトメトリーを使用して、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞の百分率を求めた。
【0073】
【
図9A-9D】[0073]抗SIRP抗体は、抗CD20抗体との組合せにおいて食作用を増強する。ヒトマクロファージを、96ウェルプレート中に1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で播種し、24時間接着させた。8×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトRAJIリンパ腫細胞と、漸増する濃度の抗SIRP抗体単独、抗CD20抗体であるRituxan単独、または抗SIRP抗体とRituxanとの組合せとをマクロファージ培養物に添加し、37℃で3時間インキュベートした。食作用を受けていないRAJI細胞を除去し、マクロファージ培養物を洗浄した。マクロファージをトリプシン処理し、CD14について染色した。フローサイトメトリーを使用して、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞の百分率を求めた。
【0074】
【
図10A-10B】[0074]抗SIRP抗体は、抗EGFRおよび抗PD-L1抗体との組合せにおいて食作用を増強する。ヒトマクロファージを、96ウェルプレート中に1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で播種し、24時間接着させた。8×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトFaDu HNSCCと、漸増する濃度の抗SIRP抗体単独、抗EGFR抗体であるErbitux単独、または抗SIRP抗体とErbituxもしくはアベルマブとの組合せとをマクロファージ培養物に添加し、37℃で3時間インキュベートした。食作用を受けていないFaDu細胞を除去し、マクロファージ培養物を洗浄した。マクロファージをトリプシン処理し、CD14について染色した。フローサイトメトリーを使用して、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞の百分率を求めた。
【0075】
【
図11】[0075]抗SIRP抗体はマクロファージおよび樹状細胞上のSIRPαに結合する。抗SIRP抗体のヒトマクロファージまたは樹状細胞への結合を決定した。ヒト単球由来マクロファージを、漸増する濃度の抗SIRP抗体を用いて1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで、AF647標識二次抗体を用いて45分間インキュベートし、洗浄し、フローサイトメトリーを使用して抗体結合を測定した。
【0076】
【
図12A-12C】[0076]抗SIRP抗体は、ナイーブおよび活性化T細胞上のSIRPγに結合する。抗CD3被覆プレート上での3日間の活性化後における、抗SIRP抗体のナイーブT細胞(
図12Aおよび
図12B)または活性化T細胞(
図12C)への結合を、フローサイトメトリーによって決定した。T細胞を漸増する濃度の抗SIRP抗体を用いて1時間インキュベートし、細胞を洗浄し、FITC標識抗マウス二次抗体を1時間添加した。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを使用して抗体結合を測定した。
【0077】
【
図13】[0077]マクロファージ上の抗SIRP抗体によるヒトCD47/SIRPα結合の遮断。組換えヒトCD47とマクロファージ発現SIRPαの間の相互作用を遮断する抗SIRP抗体の能力を、フローサイトメトリーによって決定した。インキュベーションに先立ち、10μg/mlの抗SIRP抗体を用いてマクロファージ上のFc受容体を遮断した。AF647タグ付き抗ヒト二次抗体を使用して、可溶性Fcタグ付きヒトCD47(20μg/ml)の結合を測定した。
【0078】
【
図14A-14B】[0078]抗SIRP抗体は、同種樹状細胞刺激時にT細胞増殖を阻害しない。CellTrace Violet標識ヒトCD3 T細胞を、10μg/ml抗SIRP抗体の存在下、同種ヒト単球由来樹状細胞により1:5のT細胞:DC比で活性化することによって、T細胞の増殖に対する抗SIRP抗体の効果を決定した。フローサイトメトリーを使用して、6~7日間の共培養後における増殖したCD3 T細胞の百分率を求めた。点線は、hIgG4P対照の増殖を表す。
【0079】
【
図15】[0079]抗SIRP抗体は、抗原リコール応答を阻害しない。ヒトサイトメガロウイルス血清陽性ドナーから得たPBMCを使用して、T細胞抗原リコール応答に対する抗SIRP抗体の効果を評価した。CellTrace Violet色素標識PBMCを、漸増する濃度のCMV抗原の存在下、10μg/mlの抗SIRP抗体を用いて5日間インキュベートした。フローサイトメトリーを使用して、CD4+ T細胞集団中におけるCellTrace Violet色素の希釈により、T細胞増殖率を決定した。
【0080】
【
図16】[0080]抗SIRP抗体は、SIRPα高次構造および/またはアーキテクチャをもたらす。フローサイトメトリー(FCET)を使用して、フィコエリトリン(PE)と、アロフィコシアニン(APC)とコンジュゲートした非競合性抗SIRP抗体の間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)効率を測定することにより、SIRPαの二量体化/クラスター形成/アーキテクチャに対する抗SIRP抗体の効果を評価した。ヒトCD14+単球を、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地中で6日間培養して、これらをマクロファージへと分化させた。10μg/mlの抗SIRP抗体で3時間処理した後、PEまたはAPCで標識した非競合性SIRPα抗体(クローンSE5A5)でマクロファージを染色した。フローサイトメトリーを使用してPE/APC対間のFRET効率をアッセイし、3波長補正モデルを使用した。
【0081】
【
図17】[0081]抗SIRP抗体は、SIRPα抗体の内在化を誘導する。ヒトマクロファージおよびpHrodo green標識抗SIRP抗体を使用して、SIRPα抗体複合体の内在化に対する抗SIRP抗体の効果を評価した。マクロファージへの分化のために、末梢血単核細胞から単離したヒトCD14+単球を、インビトロで7日間、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地中で培養した。マクロファージを10μg/mlの抗SIRP抗体を用いて37℃で最長1時間インキュベートし、フローサイトメトリーによって内在化を測定した。pHrodo Greenマイクロスケールタンパク質標識キットを使用して、SIRP抗体を標識した。
【0082】
【
図18】[0082]抗SIRPモノクローナル抗体は、細胞表面SIRPαレベルを低下させる。ヒトマクロファージを使用して、細胞表面上におけるSIRPαの発現量に対する抗SIRP抗体の効果を、フローサイトメトリーによって評価した。末梢血単核細胞から単離したヒトCD14+単球を、インビトロで7日間、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地中で分化させて、ヒトマクロファージを作製した。V底96ウェルプレートにおいて、ヒトマクロファージをAIM-V培地中で2時間インキュベートした。次いで、細胞を、10μg/mlのmIgG1対照、SIPR4、SIRP9、18D5、またはKWAR23を用いて、5%CO
2にて、4℃で2時間、または37℃で2時間、4時間、6時間、もしくは24時間インキュベートした。続いて、非競合性蛍光標識抗SIRPα抗体を使用して、細胞表面SIRPαレベルをフローサイトメトリーによって測定した。
【0083】
【
図19A-19B】[0083]抗SIRP抗体は、SIRPアルファ対立遺伝子バリアントとは無関係に、腫瘍細胞に対する食作用を誘導する。異なるSIRPα対立遺伝子バリアントを保有するマクロファージによる腫瘍細胞に対する食作用に対する抗SIRPα抗体の効果を、フローサイトメトリーを使用したインビトロアッセイによって評価した。CD14+単球から、異なるSIRPα対立遺伝子群ドナー(v1/v1、v1/v2、およびv2/v2)に由来するヒト単球由来マクロファージを分化させ、補足物のないAIM-V培地中で2時間培養した。ヒトがん細胞を1μM 5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステルで標識し、8×10
4細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレート中のマクロファージ培養物に添加した。標的およびエフェクター細胞を混合してすぐに、抗SIRP抗体を添加した。
図19Aは、様々な濃度で添加した抗SIRPまたはmIgG1対照抗体を示し、
図19Bは、10μg/mlの濃度の場合を示す。37℃で4時間のインキュベーションの後、食作用を受けていないすべての細胞を除去し、残りの細胞をPBSで3回洗浄した。Accutaseを使用してマクロファージを剥離し、アロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体100ngで30分間染色し、フローサイトメトリーによって分析した。食作用を、CD14+細胞集団内でのCFSE+細胞の百分率として決定した。
【0084】
【
図20】[0084]抗SIRPモノクローナル抗体は、SIRPα結合について互いに競合しない。Hisタグ付きヒトSIRPαタンパク質およびビオチン化SIRPα抗体を使用したELISAにより、ヒトSIRPαへの結合における抗SIRP抗体間の競合を評価した。
【0085】
【
図21A-21B】[0085]抗SIRP抗体のヒトがん細胞株への結合は、それらによるSIRPαおよびSIRPγの発現と相関する。食作用アッセイで使用したヒトがん細胞株(Jurkat T-ALL、RAJI B細胞リンパ腫、DLD-1結腸直腸腺癌、RL95-2子宮内膜癌、およびES-2卵巣癌)における抗SIRP mAbの結合、ならびにSIRPα/β、SIRPγ、およびCD47の表面発現を、フローサイトメトリーによって評価した。
図21Aは、食作用アッセイで使用されたがん細胞株上での、市販の抗CD47クローンB6H12によって測定したCD47の発現、SIRPα/βの発現(市販のクローンSE5A5で測定)、およびSIRPγの発現(市販のクローンLSB2.20で測定)を示す。
図21Bは、SIRP4およびSIRP9の結合が、市販の抗SIRP抗体によって確認されるSIRPα/βまたはSIRPγ発現とよく相関していることを示す。
****はP<0.0001を示す。
【0086】
【
図22A-22D】[0086]抗SIRP抗体誘導性食作用はFc受容体を関与させる。ヒト単球由来マクロファージを、96ウェルプレート中に1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で播種し、24時間接着させた。次いで、ヒトFc受容体CD16、CD32、およびCD64に対する10μg/mlの抗体(+Fc遮断)または30μg/mlのmIgG1アイソタイプ対照(-Fc遮断)を添加した。その直後に、8×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T-ALL細胞(
図22A~
図22B)またはDLD-1細胞(
図22C~
図22D)と、漸増する濃度の抗SIRP抗体SIRP4(
図22A~
図22C)またはSIRP9(
図22B~
図22D)とをマクロファージ培養物に添加し、37℃で3時間インキュベートした。食作用を受けていないがん細胞を除去し、マクロファージ培養物を洗浄した。マクロファージをトリプシン処理し、CD14について染色した。フローサイトメトリーを使用して、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞の百分率を求めた。
【0087】
【
図23A-23B】[0087]抗SIRP抗体誘導性食作用は、FcγRIIに依存する。ヒト単球由来マクロファージを、96ウェルプレート中に1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で播種し、24時間接着させた。次いで、10μg/mlの、ヒトFc受容体CD16、CD32、およびCD64に対する抗体またはmIgG1アイソタイプ対照を個別に添加した。その直後に、8×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T-ALL細胞と、漸増する濃度の抗SIRP抗体SIRP4(
図23A)またはSIRP9(
図23B)とをマクロファージ培養物に添加し、37℃で3時間インキュベートした。食作用を受けていないがん細胞を除去し、マクロファージ培養物を洗浄した。マクロファージをトリプシン処理し、CD14について染色した。フローサイトメトリーを使用して、全CD14
+集団におけるCD14
+/CFSE
+細胞の百分率を求めた。
【0088】
【
図24A-24B】[0088]抗SIRP抗体は、正常な自己ヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対する食作用を誘導しない。ヒト単球由来マクロファージを、96ウェルプレート中に1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で播種し、24時間接着させた。8×10
4個のCFSE(1μM)標識自己正常PBMC(
図24A)またはヒトJurkat T-ALL細胞(
図24B)と、漸増する濃度の抗SIRP抗体SIRP4またはSIRP9とをマクロファージ培養物に添加し、37℃で3時間インキュベートした。食作用を受けていない細胞を除去し、マクロファージ培養物を洗浄した。マクロファージをトリプシン処理し、CD14について染色した。フローサイトメトリーを使用して、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞の百分率を求めた。
【発明を実施するための形態】
【0089】
[0089] 定義
別段の定義がなされない限り、本開示との関連で使用される科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学、ならびにハイブリダイゼーションとの関連で利用される命名法、およびそれらの技法は、当技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。
【0090】
[0090] 本明細書で使用される場合、「SIRPα」および「Srcホモロジー2(SH2)ドメイン含有タンパク質チロシンホスファターゼ基質1(SHPS-1)」という用語は同義であり、交換可能に使用することができる。
【0091】
[0091] 「抗SIRPα抗体」という用語は、治療剤または診断剤としての使用が意図され、SIRPα、特にヒトSIRPαに特異的に結合する、本開示の抗体を指す。
【0092】
[0092] 「抗SIRP」という用語は、治療剤または診断剤としての使用が意図され、SIRPα、特にヒトSIRPα、特定されている2つの一般的なバリアントであるSIRPαV1およびSIRPαV2の一方もしくは両方、ならびに/またはSIRPγおよびその抗体バリアントに特異的に結合する、本開示の抗体を指す。
【0093】
[0093] 本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と特異的に結合する(免疫反応を行う)抗原結合部位を含む分子を指す。~と、または~に対して、「特異的に結合する」または「免疫反応を行う」は、抗体が、所望の抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドと反応しないか、またははるかに低い親和性(Kd > 10-6 M)で結合することを意味する。抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、一本鎖Fv断片、および片腕抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
[0094] 本明細書で使用される場合、本抗SIRPα化合物に対して適用される「モノクローナル抗体(mAb)」と言う用語は、単一コピー、または、例えば、任意の真核生物、原核生物、もしくはファージクローンなどのクローンに由来する抗体を指し、それが作製される方法ではない。本開示のモノクローナル抗体は、好ましくは、均一または実質的に均一な集団中に存在する。完全なmAbは、2本の重鎖と2本の軽鎖とを含む。
【0095】
[0095] 「抗体断片」とは、インタクトな抗体の、該インタクトな抗体が結合する抗原に結合する一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
[0096] 本明細書で開示される場合、「抗体化合物」とは、mAbおよびその抗原結合性断片を指す。本開示に従う類似の機能特性を呈するさらなる抗体化合物を、常法によって作製することができる。例えば、マウスをヒトSIRPαまたはその断片によって免疫化することができ、得られた抗体を回収および精製することができ、これらが本明細書で開示される抗体化合物と類似または同一の結合および機能特性を有しているか決定することを、実施例に開示される方法によって評価することができる。常法によって抗原結合性断片を調製することもできる。抗体および抗原結合性断片を作製および精製するための方法は当技術分野において周知であり、例えば、HarlowおよびLane(1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 第5~8および15章に見出すことができる。
【0097】
[0097] 本明細書で開示される場合、「多重特異性抗体」は、例えば、二重特異性、三重特異性、または四重特異性抗体である。一部の実施形態において、多重特異性抗体は、SIRPαおよび/またはSIRPγと、1つの分子中における少なくとも1つの他の抗原結合特異性とを標的とする。一部の実施形態において、多重特異性抗体は、SIRPαおよび/またはSIRPγと、少なくとも第2の抗原(二重特異性)、または少なくとも第2および第3の抗原(三重特異性)、または少なくとも第2、第3、および第4の抗原(四重特異性)とを同時に標的としてもよく、この場合、第2の抗原、第3の抗原、および第4の抗原は、本明細書で開示される腫瘍細胞上に存在する。
【0098】
[0098] 二重特異性抗体は、1つの分子中に2つの異なる抗原結合特異性を有する抗体である。同様に、三重特異性抗体は、1つの分子中に3つの異なる抗原結合特異性を有する抗体である。四重特異性抗体は、1つの分子中に4つの異なる抗原結合特異性を有する抗体である。一実施形態において、本明細書で開示される抗SIRPα抗体は、SIRPαおよび/またはSIRPγと、本明細書で開示される腫瘍細胞上の第2の抗原とを標的とする、二重特異性抗体である。
【0099】
[0099] 一部の実施形態において、二重特異性抗体は、対称または非対称アーキテクチャを有する分子形式を含んでいてもよい。
【0100】
[0100] 非対称二重特異性抗体としては、二重特異性抗体コンジュゲート、ハイブリッド二重特異性IgG、ハイブリッド二重特異性IgM、「可変ドメイン単独」二重特異性抗体分子、CH1/CL融合タンパク質、Fab融合タンパク質、非免疫グロブリン融合タンパク質、Fc改変IgG、Fc改変IgM、付加Fc改変IgG、付加Fc改変IgGM、および改変Fc/CH3融合タンパク質を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0101】
[0101] 対称二重特異性抗体としては、付加IgG-HC融合物、付加IgG-LC融合物、付加IgG-HC/LC融合物、Fc融合物、CH3融合物、IgE、IgM/CH2融合物、F(ab’)2、CH1/CL融合タンパク質、改変IgG、および非免疫グロブリン融合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0102】
[0102] モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が、マウス抗体、特に、マウスCDRにおける対応する配列と同一または相同であり、一方で、該鎖の残りがヒト抗体における対応する配列と同一または相同である抗体を包含する。本開示の他の実施形態は、これらのモノクローナル抗体と類似または同一の結合および生物学的特性を呈する、該モノクローナル抗体の抗原結合性断片を含む。本開示の抗体は、カッパまたはラムダ軽鎖定常領域と、IgGサブクラスIgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4の定常領域などの、重鎖IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM定常領域とを含むことができ、一部の場合、Fc受容体機能を変える様々な変異を有する。
【0103】
[0103] ここで開示されるマウスCDRを含むモノクローナル抗体を、組換えDNA方法を含む、当業者に公知の様々な方法のいずれかによって調製することができる。
【0104】
[0104] 抗体を操作および改良するための現行の方法に関する総説は、例えば、P. Chames編, (2012) Antibody Engineering: Methods and Protocols, 第2版(Methods in Molecular Biology, Book 907), Humana Press, ISBN-10:1617799734;C. R. Wood編, (2011) Antibody Drug Discovery(Molecular Medicine and Medicinal Chemistry, Book 4), Imperial College Press;R. KontermannおよびS. Dubel編, (2010) Antibody Engineering第1および2巻(Springer Protocols), 第2版;およびW. StrohlおよびL. Strohl(2012) Therapeutic antibody engineering: Current and future advances driving the strongest growth area in the pharmaceutical industry, Woodhead Publishingに見出すことができる。
【0105】
[0105] 抗体および抗原結合性断片を作製および精製するための方法は当技術分野において周知であり、例えば、HarlowおよびLane(1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 第5~8および15章に見出すことができる。
【0106】
[0106] 天然に存在する完全長抗体は、4本のポリペプチド鎖、すなわち、ジスルフィド結合で相互接続された、2本の同一の重鎖(H)と2本の同一の軽鎖(L)とを含む、「Y」型の免疫グロブリン(Ig)分子である。各鎖のアミノ末端部分は抗原結合性フラグメント領域(FAB)と称され、約100~110個以上のアミノ酸からなる可変領域を含み、可変領域は、そこに含まれる相補性決定領域(CDR)を介する抗原認識に主に関与する。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域(「FC」領域)を定める。
【0107】
[0107] CDR間には、より保存された、フレームワーク(「FR」)と称される領域が挟まっている。多くのFRのアミノ酸配列が当技術分野において周知である。各々の軽鎖可変領域(LCVR)および重鎖可変領域(HCVR)は、3つのCDRと4つのFRとで構成されており、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番で並んでいる。軽鎖の3つのCDRは「LCDRl、LCDR2、およびLCDR3」と呼ばれ、重鎖の3つのCDRは「HCDRl、HCDR2、およびHCDR3」と呼ばれる。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大半を含む。LCVRおよびHCVR領域内のCDRアミノ酸残基に対する付番および位置付けは、周知のKabatによる付番の慣習である、Kabatら(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, NIH出版番号91-3242に従う。
【0108】
[0108] 本明細書に記載される、「抗原結合部位」は、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」としても定義することができ、ChothiaおよびLesk(Chothia and Lesk, Mol. Biol. 196:901-917, 1987)によって定義される、抗体可変ドメインの構造的超可変領域を指し得る。6つのHVR、すなわち、VH中に3つ(H1、H2、H3)、VL中に3つ(L1、L2、L3)のHVRが存在する。本明細書では、H1を含むように延長されるH-CDR1を除き、Kabatによって定義されるCDRを使用した。
【0109】
[0109] 5種類の哺乳動物免疫グロブリン(Ig)重鎖が存在し、これらはギリシャ文字のα(アルファ)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)、γ(ガンマ)、およびμ(ミュー)で表され、それぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG,またはIgMとして、抗体のクラスまたはアイソタイプを定義する。IgG抗体は、例えば、IgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4のサブクラスにさらに分けることができる。
【0110】
[0110] 各々の重鎖型は、当技術分野において周知の配列を有する特定の定常領域によって特徴付けられる。定常領域は同じアイソタイプの全抗体間で同一だが、異なるアイソタイプの抗体間で異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム免疫グロブリン(Ig)ドメインと、可撓性の付加に関わるヒンジ領域とから構成される、定常領域を有する。重鎖μおよびεは、4つのIgドメインから構成される定常領域を有する。
【0111】
[0111] ヒンジ領域は、抗体のFc部分とFab部分とを連結する、可撓性のあるアミノ酸区間である。この領域はジスルフィド結合を形成することができるシステイン残基を含み、2本の重鎖を一体に接続している。
【0112】
[0112] 重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体間で異なるが、単一のB細胞またはB細胞クローンによって再生された全抗体で同一である。各重鎖の可変領域はおよそ110個のアミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0113】
[0113] 哺乳動物において、軽鎖はカッパ(κ)またはラムダ(λ)に分類され、当技術分野で知られている特定の定常領域によって特徴付けられる。軽鎖は、2つの連続するドメイン、すなわち、アミノ末端における1つの可変ドメインと、カルボキシ末端における1つの定常ドメインとを有する。各々の抗体は常に同一である2本の軽鎖を含み、哺乳動物においては、1つの抗体にκまたはλの一方のみの種類の軽鎖が存在する。
【0114】
[0114] Fc領域は、抗体のクラスに応じて3つまたは4つの定常ドメインを与える2本の重鎖から構成され、免疫細胞活性を調節する役割を果たしている。Fc領域は、特定のタンパク質に結合することにより、各々の抗体が所与の抗原に対して適当な免疫応答を生じることができるようにする。Fc領域は、Fc受容体などの様々な細胞受容体や、補体タンパク質などの他の免疫分子にも結合する。こうすることにより、Fc受容体は、オプソニン化、細胞溶解、ならびに肥満細胞、好塩基球、および好酸球の脱顆粒を含む、種々の生理学的効果を媒介する。
【0115】
[0115] 本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体または抗体断片が結合するペプチドまたはタンパク質上に位置するアミノ酸の、特異的な配列を指す。エピトープは、多くの場合、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面の化学的に活性な一群からなり、特異的な電荷特性に加え、特異的な三次元構造特性を有する。エピトープは、線状、すなわち、アミノ酸の単一の配列への結合を伴うものでも、立体構造的、すなわち、必ずしも直線配列中で連続になっていなくてもよい、抗原の様々な領域中のアミノ酸の2つ以上の配列への結合を伴うものでもあり得る。
【0116】
[0116] 本明細書で使用される場合、本抗体化合物に適用される「特異的に結合する」、「特異的に結合を行う」、「特異的な結合」等の用語は、特異的な結合剤(抗体など)による、特異的な結合剤および標的分子種と共に混合される他の分子種への結合よりも優先的に標的分子種に結合する能力を指す。特異的な結合剤は、それが標的分子種に特異的に結合できる場合に、その標的を特異的に認識すると言われる。
【0117】
[0117] 本明細書で使用される場合、「結合親和性」という用語は、ある分子のある部位における、別の分子への結合の強さを指す。特定の分子が別の特定の分子に結合する、または特異的に会合するならば、これらの2つの分子は、互いに対する結合親和性を呈すると言われる。結合親和性は、分子の対についての結合定数および解離定数と関連しているが、これらの定数が測定または決定されることは、本明細書の方法にとって決定的に重要というわけではない。逆に、記載される方法の分子同士の相互作用を説明するために本明細書で使用される場合、親和性は、一般に、実験的研究において観察される見かけの親和性(別段の規定がなされない限り)であり、1つの分子(例えば、抗体または他の特異的な結合パートナー)が2つの他の分子(例えば、ペプチドの2つのバージョンまたはバリアント)と結合する相対的な強さを比較するために使用することができる。結合親和性、結合定数、および解離定数という概念は周知である。
【0118】
[0118] 本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、2つ以上の配列を最大の配列合致となるように、すなわち、ギャップおよび挿入を考慮してアラインメントした際の、該配列中の対応する位置において同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の百分率を意味する。同一性は公知の方法によって容易に計算することができ、これらとしては、Computational Molecular Biology, Lesk、A. M.編, Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.編, Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, 第I部, Griffin, A. M.およびGriffin, H. G.編, Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;Sequence Analysis Primer, Gribskov, M.およびDevereux、J.編, M Stockton Press, New York, 1991;およびCarillo, H.およびLipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073(1988)に記載される方法が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、同一性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラム中に体系化されている。
【0119】
[0119] 比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム、相同性アラインメントアルゴリズム、類似性探索法、もしくはこれらのアルゴリズムのコンピュータによる実装(GCG Wisconsin Package中のGAP、BESTFIT、PASTA、およびTFASTA、Accelrys, Inc., San Diego, California, United States of Americaから入手可能)、または目視よって実施することができる。概要は、Altschul, S. F.ら, J. Mol. Biol. 215: 403~410(1990)およびAltschulら、Nucl. Acids Res. 25: 3389~3402(1997)を参照されたい。
【0120】
[0120] パーセント配列同一性および配列類似性の決定に適したアルゴリズムの一例は、Altschul, S.ら, NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894、およびAltschul, S.ら, J. Mol. Biol. 215: 403~410(1990)に記載されている、BLASTアルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターから公的に入手可能である。このアルゴリズムでは、まず、問合せ配列中において、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントしたときに一致するか、またはある正の値の閾値スコアTを満たす、長さWの短いワードを特定し、これにより、高スコア配列ペア(HSP)を特定する。Tは、近接ワードスコア閾値と呼ばれる。
【0121】
[0121] これらの最初における近接ワードヒットは、これらを含むより長いHSPを見つける探索を開始するための種値として働く。次いで、これらのワードヒットは、積算アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列の両方向に延長される。積算スコアは、塩基配列の場合、パラメータM(一致する残基のペアに対するリワードスコア、常時、0)およびN(一致しない残基のペアに対するペナルティスコア、常時、0)を使用して計算する。アミノ酸配列の場合、スコアリング行列を使用して積算スコアを計算する。各方向へのワードヒットの延長は、積算アラインメントスコアが最大到達値から量Xだけ下がったとき、1つまたは複数の負のスコアとなる残基アラインメントの蓄積によって積算スコアがゼロ以下になったとき、またはいずれかの配列の末端に到達したときに、停止する。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感受性および速度を決定する。BLASTNプログラム(塩基配列用)では、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=ー4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムでは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリング行列を使用する。
【0122】
[0122] BLASTアルゴリズムは、パーセント配列同一性の計算に加えて、2つの配列間の類似性の統計解析も行う。BLASTアルゴリズムによって与えられる類似性の1つの尺度は最小合計確率(P(N))であり、これは、2つの塩基またはアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を与える。例えば、試験核酸配列を参照核酸配列と比較した際の最小合計確率が、一実施形態において約0.1未満であり、別の実施形態において約0.01未満であり、さらに別の実施形態において約0.001未満であった場合、試験核酸配列は参照核酸配列と類似しているとみなされる。
【0123】
[0123] 本明細書で使用される場合、「ヒト化された」、「ヒト化」等の用語は、本明細書で開示されるマウスモノクローナル抗体CDRをヒトFRおよび定常領域に移植することを指す。これらの用語は、以下で解説するように、様々な抗体特性を改善するための、マウスCDRおよびヒトFRに対する可能なさらなる改変を包含し、これらは、例えば、それぞれKashmiriら(2005) Methods 36(1):25~34およびHouら(2008) J. Biochem. 144(1):115~120で開示される方法によって行われる。
【0124】
[0124] 本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で開示されるものと類似した本開示による結合および機能特性を有し、非ヒト抗体に由来するCDRを取り囲む、実質的にヒト型または完全にヒト型のFRおよび定常領域を有する、mAbおよびその抗原結合性断片を指し、本明細書で開示される抗体化合物を含む。
【0125】
[0125] 本明細書で使用される場合、「FR」または「フレームワーク配列」という用語は、FR1~4のいずれか1つを指す。本開示によって包含されるヒト化抗体および抗原結合性断片は、FR1~4のうちのいずれか1つまたは複数が実質的または完全にヒト型である、すなわち、個々の実質的または完全なヒトFR1~4の可能な組合せのいずれかが存在する分子を含む。例えば、これは、FR1およびFR2、FR1およびFR3、FR1、FR2、およびFR3などが実質的または完全にヒト型である分子を含む。実質的にヒト型であるフレームワークは、既知のヒト生殖系列フレームワーク配列と少なくとも80%の配列同一性を有するフレームワークである。好ましくは、実質的にヒト型であるフレームワークは、本明細書で開示されるフレームワーク配列または既知のヒト生殖系列フレームワーク配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、 少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0126】
[0126] 完全にヒト型であるフレームワークは、既知のヒト生殖系列フレームワーク配列と同一なフレームワークである。ヒトFR生殖系列配列を、国際免疫遺伝学(IMGT)データベースや、内容の全体が参照により本明細書に援用される、The Immunoglobulin FactsBook、Marie-Paule LefrancおよびGerard Lefranc著, Academic Press, 2001から取得することができる。
【0127】
[0127] The Immunoglobulin Facts Bookは、ヒト抗体レパートリーを創出するために使用されるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子の大要であり、203種の遺伝子と459種の対立遺伝子についての収録項目を含み、全部で837個の配列が示されている。それぞれの収録項目によって、ヒト免疫グロブリン定常遺伝子、ならびに、少なくとも1つの機能的またはオープンリーディングフレーム対立遺伝子を有し、3つの主要な遺伝子座に位置する、生殖系列可変、多様性、およびジョイニング遺伝子のすべてを構成する。例えば、生殖系列軽鎖FRを、IGKV3D-20、IGKV2-30、IGKV2-29、IGKV2-28、IGKV1-27、IGKV3-20、IGKV1-17、IGKV1-16、1-6、IGKV1-5、IGKV1-12、IGKV1D-16、IGKV2D-28、IGKV2D-29、IGKV3-11、IGKV1-9、IGKV1-39、IGKV1D-39、およびIGKV1D-33、ならびにIGKJ1-5からなる群から選択することができ、生殖系列重鎖FRを、IGHV1-2、IGHV1-18、IGHV1-46、IGHV1-69、IGHV2-5、IGHV2-26、IGHV2-70、IGHV1-3、IGHV1-8、IGHV3-9、IGHV3-11、IGHV3-15、IGHV3-20、IGHV3-66、IGHV3-72、IGHV3-74、IGHV4-31、IGHV3-21、IGHV3-23、IGHV3-30、IGHV3-48、IGHV4-39、IGHV4-59、およびIGHV5-51、ならびにIGHJ1-6からなる群から選択することができる。
【0128】
[0128] 実質的にヒト型であるFRは、既知のヒト生殖系列FR配列と少なくとも80%の配列同一性を有するFRである。好ましくは、実質的にヒト型であるフレームワークは、本明細書で開示されるフレームワーク配列または既知のヒト生殖系列フレームワーク配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0129】
[0129] 本開示によって包含されるCDRは、本明細書で具体的に開示されるCDRだけでなく、本明細書で開示されるCDR配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列も含む。あるいは、本開示によって包含されるCDRは、本明細書で具体的に開示されるCDRだけでなく、本明細書で開示されるCDR配列と比較して、対応する位置において1、2、3、4、または5個のアミノ酸変化を有するCDR配列も含む。このような配列上同一であるか、またはアミノ酸が改変されたCDRは、好ましくは、インタクトな抗体によって認識される抗原に結合する。
【0130】
[0130] 本明細書で開示されるものに加え、本開示による類似の機能特性を呈するヒト化抗体は、いくつかの異なる方法、すなわち、Almagroら, Frontiers in Biosciences. Humanization of antibodies.(2008) Jan 1; 13:1619~33を使用して作製することができる。1つのアプローチでは、親抗体化合物CDRを、親抗体化合物フレームワークと高い配列同一性を有するヒトフレームワーク中に移植する。新しいフレームワークの配列同一性は、一般に、親抗体化合物中の対応するフレームワークの配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性となる。100個未満のアミノ酸残基を有するフレームワークの場合、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基が変化し得る。この移植により、親抗体と比較して結合親和性が低下する可能性がある。これが起こる場合、Queenら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2869によって開示された具体的な判断基準に基づいて、フレームワークをある特定の位置で親フレームワークに逆変異させることができる。相同性および逆変異に基づいてヒト化バリアントを作製するのに有用な方法を記載するさらなる参考文献としては、Olimpieriら, Bioinformatics. 2015 2月1日;31(3):434~435、ならびに米国特許第4,816,397、5,225,539、および5,693,761号に記載されているもの、ならびにWinterおよび共同研究者の方法(Jonesら(1986) Nature 321:522-525、Riechmannら(1988) Nature 332:323-327、およびVerhoeyenら(1988) Science 239:1534-1536)が挙げられる。
【0131】
[0131] ヒト化は、1980年代前半に開発された方法である、キメラ化(Morrison, S. L., M. J. Johnson、L. A. Herzenberg & V. T. Oi: Chimeric human antibody molecules: mouse antigen-binding domains with human constant region domains. Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 81, 6851-5(1984))によって開始され、これは、マウス抗体の可変(V)ドメインをヒト定常(C)ドメインと組み合わせて約70%のヒト型含有率を有する分子を作製することからなる。
【0132】
[0132] 本明細書に記載されるヒト化抗体を作製するために、いくつかの異なる方法を使用することができる。1つのアプローチでは、親抗体化合物CDRを、親抗体化合物フレームワークと高い配列同一性を有するヒトFR中に移植する。新しいFRの配列同一性は、一般に、親抗体化合物中の対応するFRの配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性となる。100個未満のアミノ酸残基を有するFRの場合、1、2、3、4、5個、またはそれより多くのアミノ酸残基が変化し得る。この移植により、親抗体と比較して結合親和性が低下する可能性がある。これが起こる場合、Queenら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2869によって開示された具体的な判断基準に基づいて、FRをある特定の位置で親フレームワークに逆変異させることができる。相同性および逆変異に基づいてヒト化バリアントを作製するのに有用な方法を記載するさらなる参考文献としては、Olimpieriら, Bioinformatics. 2015 2月1日;31(3):434~435、ならびに米国特許第4,816,397、5,225,539、および5,693,761号に記載されているもの、ならびにWinterおよび共同研究者の方法(Jonesら(1986) Nature 321:522-525、Riechmannら(1988) Nature 332:323-327、およびVerhoeyenら(1988) Science 239:1534-1536)が挙げられる。
【0133】
[0133] 逆変異のために考慮すべき残基の特定は、以下で記載されるように実施することができる。あるアミノ酸が以下のカテゴリーに当てはまる場合、使用されているヒト生殖系列配列のフレームワークアミノ酸(「アクセプターFR」)は、親抗体化合物のフレームワークに由来するフレームワークアミノ酸(「ドナーFR」)で置き換えられている。
【0134】
[0134] (a)アクセプターフレームワークのヒトFR中のアミノ酸が、その位置におけるヒトフレームワークにとって普通ではないものの、ドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸が、その位置におけるヒトフレームワークにとって典型的である;
【0135】
[0135] (b)アミノ酸の位置がCDRのうちの1つとすぐ隣である;または
【0136】
[0136] (c)三次元免疫グロブリンモデルにおいて、フレームワークアミノ酸の任意の側鎖原子が、CDRアミノ酸の任意の原子から約5~6オングストローム(中心間)以内である。
【0137】
[0137] アクセプターフレームワークのヒトFRにおけるアミノ酸の各々およびドナーフレームワークにおける対応するアミノ酸が、その位置においてヒトフレームワークにとって全体として普通でない場合、そのようなアミノ酸は、その位置においてヒトフレームワークにとって典型的なアミノ酸と置き換えることができる。この逆変異判断基準により、親抗体化合物の活性を回復させることができる。
【0138】
[0138] 本明細書で開示される抗体化合物と類似する機能特性を呈するヒト化抗体を作製することに対するもう1つのアプローチでは、移植されたCDR内のアミノ酸を、フレームワークを変化させることなくランダムに変異させ、得られた分子を、親抗体化合物と同程度またはそれより良好な結合親和性およびその他の機能特性についてスクリーニングする。各CDR内の各アミノ酸位置に単一の変異を導入し、その後、結合親和性およびその他の機能特性に対するかかる変異の影響を評価することもできる。改善された特性を生む単一の変異を組み合わせることで、互いの組合せにおけるその効果を評価することができる。
【0139】
[0139] さらに、上記アプローチの両方の組合せが可能である。CDR移植の後、CDR中にアミノ酸変化を導入することに加え、特定のFRを逆変異させることができる。この方法論は、Wuら(1999) J. Mol. Biol. 294: 151~162に記載されている。
【0140】
[0140] 本開示の教示を適用することで、当業者は、一般的な技法、例えば、部位特異的変異誘発を使用して、本開示によるCDRおよびFR配列内のアミノ酸を置換し、これにより本配列に由来するさらなる可変領域アミノ酸配列を作製することができる。最大ですべての天然に存在するアミノ酸を、特定の置換部位に導入することができる。次いで、指定されたインビボ機能を有する配列を特定するために、本明細書で開示される方法を使用して、これらのさらなる可変領域アミノ酸配列をスクリーニングすることができる。このように、本開示に従ってヒト化抗体およびそれらの抗原結合部分を調製するのに適する、さらなる配列を特定することができる。好ましくは、フレームワーク内のアミノ酸置換は、本明細書で開示される4つの軽鎖および/または重鎖FRのうちの任意の1つまたは複数の中における、1、2、3、4、または5箇所に限定される。好ましくは、CDR内のアミノ酸置換は、3つの軽鎖および/または重鎖CDRのうちの任意の1つまたは複数の中における、1、2、3、4、または5箇所に限定される。これらFRおよびCDR内における上述の様々な変化の組合せもまた、可能である。
【0141】
[0141] 上記で解説したアミノ酸改変を導入することによって作製された抗体化合物の機能特性が本明細書で開示される特定の分子が呈する機能特性に従うことは、本明細書で開示される実施例における方法によって確認することができる。
【0142】
[0142] 上述のように、患者におけるヒト抗マウス抗体(HAMA)応答の誘発という問題を回避するために、マウス抗体を、抗原結合部位の完全性にとって必須と思われるそのマウスフレームワーク残基を維持しつつ、その相補性決定領域(CDR)をヒト免疫グロブリン分子の可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)フレームワーク上に移植することによって遺伝子操作することで、そのマウス型の内容をヒトの対応物中に存在するアミノ酸残基と徐々に置き換えておく。しかし、ヒト化抗体の異種CDRは、患者において抗イディオタイプ(抗Id)応答を惹起する可能性がある。
【0143】
[0143] 抗Id応答を最小化するために、抗体-リガンド相互作用において最も重要なCDR残基のみをヒトフレームワーク上に移植することによる、「SDR移植」と呼ばれる異種抗体をヒト化する手順が開発されており、この手順では、CDRの重要な特異性決定残基(SDR)のみをヒトフレームワーク上に移植する。Kashmiriら(2005) Methods 36(1):25~34に記載されているこの手順では、既知の構造を有する抗原-抗体複合体の三次元構造のデータベースの助けを借りて、または抗体結合部位の変異分析により、SDRを特定することが行われる。より多くのCDR残基を保持することを伴うヒト化の別なアプローチは、すべてのSDRを含むCDR残基の区間である、「省略された」CDRの移植に基づく。Kashmiriらは、マウス抗体を投与された患者から得られた血清に対するヒト化抗体の反応性を評価する手順も開示している。
【0144】
[0144] 免疫原性特性が改善されたヒト抗体バリアントを構築するためのもう1つの戦略が、Houら(2008) J. Biochem. 144(1):115~120に開示されている。これらの著者は、マウス抗ヒトCD34モノクローナル抗体である4C8から、コンピュータ補助相同性モデリングによって構築された4C8の分子モデルを使用したCDR移植により、ヒト化抗体を開発した。この著者らは、この分子モデルを使用して、抗原結合において潜在的に重要なFR残基を特定した。これら鍵となるマウスFR残基を、マウスCDR残基と共に、マウス抗体FRに対する相同性に基づいて選択されたヒト抗体フレームワーク上に導入することにより、4C8のヒト化バージョンが作製された。得られたヒト化抗体は、元のマウス抗体と類似した抗原結合親和性および特異性を有することが示されたが、このことは、得られたヒト化抗体が、臨床において日常的に使用されているマウス抗CD34抗体の代替になり得ることを示唆している。
【0145】
[0145] 本開示の実施形態は、ヒト免疫系による認識を回避するように創出され、想定されているmAbが本明細書で開示される単一のマウスmAbから得られるCDRの組を含み得るような、任意の組合せの形態における本明細書で開示されるCDR、または開示されるマウスmAbのうちの2つもしくは3つに由来する各々のCDRを含むCDRの組を含む軽鎖および重鎖を含む、抗体を包含する。このようなmAbを分子生物学の標準的な技法によって創出することができ、本明細書に記載されるアッセイを使用して、所望の活性についてスクリーニングすることができる。このように、本開示は、開示されるマウスmAbから得られるCDRの混合物を含む新規mAbを創出して、新しい、または改善された治療活性を達成するための、「ミックス・アンド・マッチ」アプローチを提供する。
【0146】
[0146] 本明細書で開示される分子と「競合」する、本開示に包含されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、本分子が結合する部位と同一であるかまたはこれと重なり合う部位においてヒトSIRPαに結合する、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。競合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、抗体競合アッセイにより特定することができる。例えば、精製または部分的に精製されたヒトSIRPα細胞外ドメインの試料を、固体支持体に結合させることができる。次いで、本開示の抗体化合物またはその抗原結合性断片と、かかる開示抗体化合物と競合することが可能であると疑われるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片とを添加する。2つの分子のうちの一方を標識する。標識された化合物と標識されていない化合物がSIRPα上の別々の離れた部位に結合する場合、疑われる競合する化合物が存在するか否かにかかわらず、標識された化合物は同レベルで結合する。しかし、相互作用の部位が同一であるかまたは重なり合う場合、標識されていない化合物は競合し、抗原に結合する標識された化合物の量は減少する。標識されていない化合物が過剰に存在する場合、標識された化合物は、結合したとしても極めて少量である。本開示の目的に対し、競合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、本抗体化合物のSIRPαへの結合を、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、 約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%減少させる、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。このような競合アッセイを実施するための手順の詳細は当技術分野において周知であり、例えば、HarlowおよびLane(1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Yに見出すことができる。精製された抗体を使用することにより、このようなアッセイを定量的にすることができる。1つの抗体をそれ自身に対して滴定することにより、すなわち、標識と競合物質の両方に対して同じ抗体を使用し、標準曲線を確立する。標識されていない競合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片による、標識された分子のプレートへの結合を阻害する能力を滴定する。結果をプロットし、所望の結合阻害度を達成するのに必要な濃度を比較する。
【0147】
[0147] そのような競合アッセイにおいて、本開示の抗体化合物と競合するmAbまたはその抗原結合性断片が本抗体化合物と同一または類似の機能特性を有するかは、これらの方法と下記実施例2~7で記載される方法を組み合わせることで決定することができる。様々な実施形態において、本明細書で包含される治療方法において使用するための競合する抗体は、本明細書で開示される抗体化合物の本明細書に記載される生物活性と比較して、約50%から約100%または約125%以上までの範囲の本明細書に記載される生物活性を有する。一部の実施形態において、競合する抗体は、下記で提示される実施例において開示される方法によって決定した場合、本明細書で開示される抗体化合物の生物活性と比較して、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一の生物活性を有する。
【0148】
[0148] 前記組成物および方法において有用な、mAbもしくはその抗原結合性断片または競合する抗体は、本明細書に記載されるアイソタイプのいずれでもあり得る。さらに、これらのアイソタイプのいずれもが、以下のさらなるアミノ酸改変を含むことができる。
【0149】
[0149] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体もしくはその抗原結合性断片、または競合する抗体は、ヒトIgG1アイソタイプとすることができる。
【0150】
[0150] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG1定常領域は、抗体半減期を変えるように改変することができる。抗体半減期は、大部分が新生児Fc受容体とのFc依存性相互作用によって制御されている(RoopenianおよびAlikesh, 2007)。モノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG1定常領域は、半減期を延長させるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変N434A、T307A/E380A/N434A(Petkovaら, 2006、Yeungら, 2009);M252Y/S254T/T256E(Dall'Acquaら、2006);T250Q/M428L(Hintonら, 2006);およびM428L/N434S(Zalevskyら, 2010)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
[0151] 半減期を延長させることとは反対に、例えば、高い抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)と関連する有害事象の可能性を低減するために、半減期の短縮が望ましい状況がいくつか存在する(Presta 2008)。本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG1定常領域は、半減期を短縮させる、および/または内因性IgGを減少させるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変I253A(Petkovaら, 2006);P257I/N434H、D376V/N434H(Datta-Mannanら, 2007);およびM252Y/S254T/T256E/H433K/N434F(Vaccaroら, 2005)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
[0152] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG1定常領域は、抗体エフェクター機能を増加または減少させるように改変することができる。これらの抗体エフェクター機能としては、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、C1q結合、およびFc受容体への結合の変容が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
[0153] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG1定常領域は、抗体エフェクター機能を増加させるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変
S298A/E333A/K334(Shieldsら, 2001);S239D/I332EおよびS239D/A330L/I332E(Lazarら, 2006);F234L/R292P/Y300L、F234L/R292P/Y300L/P393L、およびF243L/R292P/Y300L/V305I/P396L(Stevenhagenら, 2007);G236A、G236A/S239D/I332E、およびG236A/S239D/A330L/I332E(Richardsら, 2008);K326A/E333A、K326A/E333S、およびK326W/E333S(Idusogieら, 2001);S267EおよびS267E/L328F(Smithら, 2012); H268F/S324T、S267E/H268F、S267E/S234T、およびS267E/H268F/S324T(Mooreら, 2010);S298G/T299A(Sazinskyら, 2008);E382V/M428I(Jungら, 2010)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
[0154] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG1定常領域は、抗体エフェクター機能を減少させるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変N297AおよびN297Q(Boltら, 1993、Walkerら, 1989); L234A/L235A(Xuら, 2000);K214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D356E/L358M(Ghevaertら, 2008);C226S/C229S/E233P/L234V/L235A(McEarchernら, 2007);S267E/L328F(Chuら, 2008)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
[0155] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG1定常領域は、抗体エフェクター機能を減少させるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変V234A/G237A(Coleら, 1999);E233D、G237D、P238D、H268Q、H268D、P271G、V309L、A330S、A330R、P331S、H268Q/A330S/V309L/P331S、H268D/A330S/V309L/P331S、H268Q/A330R/V309L/P331S、H268D/A330R/V309L/P331S、E233D/A330R、E233D/A330S、E233D/P271G/A330R、E233D/P271G/A330S、G237D/H268D/P271G、G237D/H268Q/P271G、G237D/P271G/A330R、G237D/P271G/A330S、E233D/H268D/P271G/A330R、E233D/H268Q/P271G/A330R、E233D/H268D/P271G/A330S、E233D/H268Q/P271G/A330S、G237D/H268D/P271G/A330R、G237D/H268Q/P271G/A330R、G237D/H268D/P271G/A330S、G237D/H268Q/P271G/A330S、E233D/G237D/H268D/P271G/A330R、E233D/G237D/H268Q/P271G/A330R、E233D/G237D/H268D/P271G/A330S、E233D/G237D/H268Q/P271G/A330S、P238D/E233D/A330R、P238D/E233D/A330S、P238D/E233D/P271G/A330R、P238D/E233D/P271G/A330S、P238D/G237D/H268D/P271G、P238D/G237D/H268Q/P271G、P238D/G237D/P271G/A330R、P238D/G237D/P271G/A330S、P238D/E233D/H268D/P271G/A330R、P238D/E233D/H268Q/P271G/A330R、P238D/E233D/H268D/P271G/A330S、P238D/E233D/H268Q/P271G/A330S、P238D/G237D/H268D/P271G/A330R、P238D/G237D/H268Q/P271G/A330R、P238D/G237D/H268D/P271G/A330S、P238D/G237D/H268Q/P271G/A330S、P238D/E233D/G237D/H268D/P271G/A330R、P238D/E233D/G237D/H268Q/P271G/A330R、P238D/E233D/G237D/H268D/P271G/A330S、P238D/E233D/G237D/H268Q/P271G/A330S(Anら, 2009、Mimoto, 2013)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
[0156] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体もしくはその抗原結合性断片または競合する抗体は、ヒトIgG2アイソタイプとすることができる。
【0157】
[0157] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG2定常領域は、抗体エフェクター機能を増加または減少させるように改変することができる。これらの抗体エフェクター機能としては、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、C1q結合、およびFc受容体への結合の変容が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
[0158] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG2定常領域は、抗体エフェクター機能を増加させるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変K326A/E333S(Idusogieら, 2001)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
[0159] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG2定常領域は、抗体エフェクター機能を減少させるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変V234A/G237A(Coleら, 1999);E233D、G237D、P238D、H268Q、H268D、P271G、V309L、A330S、A330R、P331S、H268Q/A330S/V309L/P331S、H268D/A330S/V309L/P331S、H268Q/A330R/V309L/P331S、H268D/A330R/V309L/P331S、E233D/A330R、E233D/A330S、E233D/P271G/A330R、E233D/P271G/A330S、G237D/H268D/P271G、G237D/H268Q/P271G、G237D/P271G/A330R、G237D/P271G/A330S、E233D/H268D/P271G/A330R、E233D/H268Q/P271G/A330R、E233D/H268D/P271G/A330S、E233D/H268Q/P271G/A330S、G237D/H268D/P271G/A330R、G237D/H268Q/P271G/A330R、G237D/H268D/P271G/A330S、G237D/H268Q/P271G/A330S、E233D/G237D/H268D/P271G/A330R、E233D/G237D/H268Q/P271G/A330R、E233D/G237D/H268D/P271G/A330S、E233D/G237D/H268Q/P271G/A330S、P238D/E233D/A330R、P238D/E233D/A330S、P238D/E233D/P271G/A330R、P238D/E233D/P271G/A330S、P238D/G237D/H268D/P271G、P238D/G237D/H268Q/P271G、P238D/G237D/P271G/A330R、P238D/G237D/P271G/A330S、P238D/E233D/H268D/P271G/A330R、P238D/E233D/H268Q/P271G/A330R、P238D/E233D/H268D/P271G/A330S、P238D/E233D/H268Q/P271G/A330S、P238D/G237D/H268D/P271G/A330R、P238D/G237D/H268Q/P271G/A330R、P238D/G237D/H268D/P271G/A330S、P238D/G237D/H268Q/P271G/A330S、P238D/E233D/G237D/H268D/P271G/A330R、P238D/E233D/G237D/H268Q/P271G/A330R、P238D/E233D/G237D/H268D/P271G/A330S、P238D/E233D/G237D/H268Q/P271G/A330S(Anら, 2009、Mimoto, 2013)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
[0160] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG2のFc領域は、アイソフォームおよび/またはアゴニスト活性を変えるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変C127S(CH1ドメイン)、C232S、C233S、C232S/C233S、C236S、およびC239S(Whiteら, 2015、Lightleら, 2010)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
[0161] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG2のFc領域は、FcγR結合能力の低下を示すが保存されたFcRn結合を有するように改変することができる。これらのIgG Fc変異体は、免疫エフェクター機能および補体媒介性細胞傷害のFcに関連する関与を最小化しつつ、可溶性または細胞表面抗原の治療的標的化を可能にする。一実施形態において、IgG2 Fc変異体は、EU付番方式に従い、V234A、G237A、P238Sを含む。別の実施形態において、IgG2 Fc変異体は、EU付番方式に従い、V234A、G237A、H268Q、またはH268A、V309L、A330S、P331Sを含む。特定の態様において、IgG2 Fc変異体は、EU付番方式に従い、V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、P331Sと、任意選択により、P233Sとを含む。
【0162】
[0162] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体は、ヒトIgG3アイソタイプとすることができる。
【0163】
[0163] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片のヒトIgG3定常領域は、抗体半減期、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、またはアポトーシス活性を延長/増加させるように、1つまたは複数のアミノ酸において改変することができる。
【0164】
[0164] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片のヒトIgG3定常領域は、抗体半減期を延長させるように、アミノ酸R435Hにおいて改変することができる。
【0165】
[0165] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体もしくはその抗原結合性断片、または競合する抗体は、ヒトIgG4アイソタイプとすることができる。
【0166】
[0166] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG4定常領域は、抗体エフェクター機能を減少させるように改変することができる。これらの抗体エフェクター機能としては、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞食作用(ADCP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
[0167] 本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、または競合する抗体のヒトIgG4定常領域は、Fabアーム交換を防止する、および/または抗体エフェクター機能を減少させるように改変することができ、例としては、アミノ酸改変F234A/L235A(Alegreら, 1994);S228P、L235E、およびS228P/L235E(Reddyら, 2000)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
[0168] 本明細書で使用される場合、「腫瘍」という用語は、悪性であれ良性であれ、すべての新生物細胞の成長および増殖、ならびにすべての前がん性またはがん性の細胞および組織を指す。
【0169】
[0169] 「がん」、「がん性」、および「腫瘍」という用語は、本明細書で使用される場合、互いに排他的ではない。「がん」および「がん性」という用語は、典型的には異常な細胞成長/増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはこれを記述する。がんの例としては、癌、リンパ腫(すなわち、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、芽腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このようながんのより具体的な例としては、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がん、膵がん、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎がん、肝がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌、白血病およびその他のリンパ増殖性障害、ならびに様々な種類の頭頸部がんが挙げられる。
【0170】
[0170] 「感受性がん」という用語は、本明細書で使用される場合、がんであって、その細胞が、CD47、IRPα、またはCD47およびSIRPαを発現し、CD47とSIRPαの間の相互作用を防止する、本開示から得られる抗体もしくはその抗原結合性断片または競合する抗体もしくはその抗原結合性断片を用いた治療に対して反応性である、がんを指す。
【0171】
[0171] 「自己免疫疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、身体の免疫系が自らに反抗し、誤って健康な細胞を攻撃する場合を指す。
【0172】
[0172] 「炎症性疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、炎症を特徴とする疾患を指し、炎症とは、物理的、化学的、または生物学的要因によって引き起こされる傷害または異常刺激に応答して罹患した血管および隣接する組織に生じる、組織学的に明確な細胞学的変化、細胞浸潤、およびメディエーター放出の動的な複合的現象からなり、局所的反応およびそれに起因する形態変化、傷害性物質の破壊または除去、ならびに修復および治癒に繋がる応答を含む、基本的な病理過程である。
【0173】
[0173] 「自己炎症性疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、自然免疫系が未知の理由で炎症を引き起こす際に生じる疾患を指す。
【0174】
[0174] 本明細書で使用される場合、「治療すること」または「治療する」または「治療」という用語は、徴候、症状、障害、状態、または疾患の進行または重症度を、遅らせること、妨害すること、停止させること、抑制すること、止めること、低減すること、または逆転させることを意味するが、疾患に関連するすべての徴候、症状、状態、または障害を完全に除去することを必ずしも伴わない。「治療すること」という用語等は、疾患または病態の徴候または症状が発症してしまった後でこれを寛解させる、治療的介入を指す。
【0175】
[0175] 本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者または器官に単回または複数回投与を行った際に所望の治療または予防をもたらす、本開示の抗体化合物の量または用量を指す。
【0176】
[0176] いずれの特定の対象についても、精確な有効量は、対象の大きさおよび健康、対象の状態の性質および程度、ならびに投与のために選択された治療薬または治療薬の組合せに依存する。ある患者についての有効量は定期的な実験によって決定され、臨床医による判断の範囲内にある。本抗体化合物の治療有効量は、採取された器官または患者に投与される単回用量当たり、約0.1mg/kg~約150mg/kg、約0.1mg/kg~約100mg/kg、約0.1mg/kg~約50mg/kg、または約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲内の量を含み得る。この点について、公知の抗体系医薬品が指標となる。例えば、Herceptin(商標)は、21mg/ml溶液の静脈内注入によって投与され、初回負荷用量が4mg/kg体重で、週間維持用量が2mg/kg体重であり、Rituxan(商標)は、例えば、毎週375mg/m2で投与される。
【0177】
[0177] 個々のいずれの患者についても、腫瘍退縮、循環する腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、または抗腫瘍応答に対する抗体化合物の効果をモニタリングすることによって、医療提供者が治療有効量を決定することができる。これらの方法によって得られたデータを解析することにより、本開示の抗体化合物が単独で用いられたか、互いに組み合わせて用いられたか、あるいは別の治療剤と組み合わせて用いられたか、それとも両方の組合せで用いられたかにかかわらず、本開示の抗体化合物の最適な量が投与されるように、そして、治療の継続期間も同様に決定できるように、療法中の治療計画を修正することが可能となる。このように、単独または組合せで使用された抗体化合物の、良好な有効性を示す最低量が投与されるように、そして、かかる化合物の投与が、患者を首尾よく治療するのに必要である限りにおいてのみ継続されるように、投与/治療計画を療法の過程全体にわたって修正することができる。投与の頻度、例えば、医薬品を、例えば、毎日、毎週、それとも毎月与えるべきかに関して、公知の抗体系医薬品が指標となる。頻度および投薬量は、症状の重症度にも依存し得る。
【0178】
[0178] 一部の実施形態において、本開示の抗体化合物を、ヒトおよび動物の医療における医薬として使用し、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹膜内、髄腔内、脳室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)、局所、皮下、腫瘍内、鼻腔内、経腸、舌下、膣内、小胞内、または直腸経路を含むがこれらに限定されない、様々な経路によって投与することができる。組成物を、腫瘍などの病変中に直接投与することもできる。投薬治療は、単回投与スケジュールであっても複数回投与スケジュールであってもよい。また、ハイポスプレーを使用して医薬組成物を投与してもよい。一般に、治療用組成物を、液体の溶液または懸濁液のいずれかである注射剤として調製することができる。注射前に液体ビヒクル中に溶解または懸濁するのに適した、固体形態を調製することもできる。獣医学用途としては、ネコおよびイヌなどの伴侶/ペット動物、盲導犬または介助犬およびウマなどの使役動物、ウマおよびイヌなどの競技用動物、霊長類、ライオンおよびトラなどのネコ科動物、クマなどの、動物園の動物、ならびに監禁下にあるその他の有価値な動物の治療が挙げられる。
【0179】
[0179] このような医薬組成物は、当技術分野において周知の方法によって調製することができ(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21stEdition(2005), Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PAを参照)、本明細書で開示される1つまたは複数の抗体化合物と、薬学的に許容される、例えば、生理学的に許容される、担体、賦形剤、または添加剤とを含む。
【0180】
[0180] がん適応症
感受性の血液がんおよび固形腫瘍を有する患者に、好ましくは非経口的に投与することができるがん治療薬として有効な、抗SIRPα mAbおよびその抗原結合性断片がここで開示され、感受性の血液がんおよび固形腫瘍としては、全身性肥満細胞症、急性リンパ性(リンパ芽球性)白血病(ALL)、T細胞ALL、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患/新生物、単核球細胞白血病、および形質細胞白血病を含む、白血病;多発性骨髄腫(MM);ワルデンストローム・マクログロブリン血症;組織球性リンパ腫およびT細胞リンパ腫、ならびに、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、例えば、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、細胞リンパ腫(FCC)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHLを含む、リンパ腫;卵巣がん、乳がん、子宮内膜がん、結腸がん(結腸直腸がん)、直腸がん、膀胱がん、尿路上皮がん、肺がん(非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌)、気管支がん、骨がん、前立腺がん、膵がん、胃がん、肝細胞癌(肝がん、ヘパトーマ)、胆嚢がん、胆管がん、食道がん、腎細胞癌、甲状腺がん、頭頸部の扁平上皮癌(頭頸部がん)、精巣がん、内分泌腺のがん、副腎のがん、下垂体のがん、皮膚のがん、軟部組織のがん、血管のがん、脳のがん、神経のがん、目のがん、髄膜のがん、中咽頭のがん、下咽頭のがん、子宮頸のがん、および子宮のがん、神経膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、神経膠腫、髄膜腫、ガストリノーマ、神経芽腫、骨髄異形成症候群、ならびに、骨肉腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫、胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、および軟骨肉腫を含むがこれらに限定されない、肉腫を含む、固形腫瘍;ならびに黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
[0181] がんの治療
当業者に周知の通り、単剤による療法または手順は疾患または状態を治療または治癒するのに十分ではない可能性があるため、多くの場合、がん治療において併用療法が採用される。従来のがん治療は、多くの場合、手術、放射線治療、相加的もしくは相乗的効果を達成するための細胞傷害性薬物の組合せ、またはこれらのアプローチのうちのいずれかもしくはすべての組合せを伴う。とりわけ有用な化学療法および生物学的療法の組合せは、異なる作用機序を介して作用する薬物を用い、がん細胞の抑制または殺傷を増大し、免疫系によるがん細胞の増殖を抑制する能力を増加させ、療法中の薬物耐性の可能性を低減し、個々の薬物を低減された用量で使用することを許容することによって、起こり得る重複毒性を最小化する。
【0182】
[0182] 本方法に包含される併用療法において有用な従来の抗腫瘍および抗新生物剤のクラスは、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第12版(2010) L.L. Brunton, B.A. ChabnerおよびB. C. Knollmann編, 第VIII節, 「Chemotherapy of Neoplastic Diseases」, 第60~63章, 1665~1770頁, McGraw-Hill, NYに開示されており、これらとしては、アントラサイクリン類、白金類、タキゾール、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍性抗生物質、有糸分裂阻害剤、およびアルキル化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
[0183] 上記に加え、本開示の方法はがん適応症の治療に関し、手術、放射線、および/または、腫瘍性の状態を治療するための慣用もしくは現在開発中であるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸治療薬を含むがこれらに限定されない、有効量の化学的低分子もしくは生物学的薬物を、それを必要とする患者に投与することを介して患者を治療することを、さらに含む。これは、本明細書で開示されるもの以外の抗体および抗原結合性断片、サイトカイン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、ならびにmiRNAを含む。
【0184】
[0184] 本明細書で開示および特許請求される治療方法は、本明細書で開示される抗体を、単独で、および/または互いの組合せで、および/またはSIRPαに結合する、本開示のその抗原結合性断片と共に、および/または適当な生物/治療活性を呈する、競合する抗体と共に、ならびに、例えば、最大の治療有効性を達成する、これらの抗体化合物のあらゆる可能な組合せで使用することを含む。
【0185】
[0185] さらに、本治療方法はまた、これらの抗体、その抗原結合性断片、競合する抗体、およびこれらの組合せを、(1)手術、放射線、抗腫瘍剤、および抗新生物剤、もしくはこれらのいずれかの組合せから選択される、1つもしくは複数の抗腫瘍治療的処置、または(2)抗腫瘍性生物学的薬剤のうちの1つもしくは複数、または(3)特定の適応症に対する所望の治療的処置効果を達成する適当な組合せである、当業者には明白と思われる上記(1)または(2)のいずれかの等価物と、さらに組み合わせて使用することも包含する。
【0186】
[0186] 腫瘍抗原に対するT細胞応答に影響を与える同時刺激性または阻害性相互作用を調節することによってがんに対する免疫応答を増加させる、免疫チェックポイントの阻害剤および同時刺激性分子のモジュレーターなどの抗体および低分子薬物もまた、本明細書に包含される併用治療方法の文脈で特に対象となっており、これらとしては、その他の抗SIRPα抗体が挙げられるが、これに限定されない。SIRPαタンパク質に結合する治療剤、例えば、SIRPαに結合し、CD47とSIRPαの間の相互作用を防止する抗体または低分子の投与が患者に対して行われ、食作用を介してがん細胞のクリアランスを引き起こす。SIRPαタンパク質に結合する治療剤は、CD47(表面抗原分類47)、CD70(表面抗原分類70)、CD200(OX-2膜糖タンパク質、表面抗原分類200)、CD154(表面抗原分類154、CD40L、CD40リガンド、表面抗原分類40リガンド)、CD223(リンパ球活性化遺伝子3、LAG3、表面抗原分類223)、KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)、GITR(TNFRSF18、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質、活性化誘導性TNFRファミリー受容体、AITR、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18)、CD20(表面抗原分類20)、CD28(表面抗原分類28)、CD40(表面抗原分類40、Bp50、CDW40、TNFRSF5、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5、p50)、CD86(B7-2、表面抗原分類86)、CD160(表面抗原分類160、BY55、NK1、NK28)、CD258(LIGHT、表面抗原分類258、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、TNFSF14、ヘルペスウイルス侵入メディエーターリガンド(HVEM-L))、CD270(HVEM、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14、ヘルペスウイルス侵入メディエーター、表面抗原分類270、LIGHTR、HVEA)、CD275(ICOSL、ICOSリガンド、誘導性T細胞共刺激分子リガンド、表面抗原分類275)、CD276(B7-H3、B7ホモログ3、表面抗原分類276)、OX40L(OX40リガンド)、B7-H4(B7ホモログ4、VTCN1、V-setドメイン含有T細胞活性化阻害物質1)、GITRL(グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体-リガンド、グルココルチコイド誘導性TNFR-リガンド)、4-1BBL(4-1BBリガンド)、CD3(表面抗原分類3、T3D)、CD25(IL2Rα、表面抗原分類25、インターロイキン-2 受容体α鎖、IL-2受容体α鎖)、CD48(表面抗原分類48、Bリンパ球活性化マーカー、BLAST-1、シグナル伝達リンパ球活性化分子2、SLAMF2)、CD66a(Ceacam-1、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、胆汁糖タンパク質、BGP、BGP1、BGPI、表面抗原分類66a)、CD80(B7-1、表面抗原分類80)、CD94(表面抗原分類94)、NKG2A(ナチュラルキラーグループ2A、キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーDメンバー1、KLRD1)、CD96(表面抗原分類96、TActILE、T細胞活性化後期発現増加)、CD112(PVRL2、ネクチン、ポリオウイルス受容体関連2、ヘルペスウイルス侵入メディエーターB、HVEB、ネクチン-2、表面抗原分類112)、CD115(CSF1R、コロニー刺激因子1受容体、マクロファージコロニー刺激因子受容体、M-CSFR、表面抗原分類115)、CD205(DEC-205、LY75、リンパ球抗原75、表面抗原分類205)、CD226(DNAM1、表面抗原分類226、DNAXアクセサリー分子-1、PTA1、血小板およびT細胞活性化抗原1)、CD244(表面抗原分類244、ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、CD262(DR5、TrailR2、TRAIL-R2、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b、TNFRSF10B、表面抗原分類262、KILLER、TRICK2、TRICKB、ZTNFR9、TRICK2A、TRICK2B)、CD284(Toll様受容体-4、TLR4、表面抗原分類284)、CD288(Toll様受容体-8、TLR8、表面抗原分類288)、白血病抑制因子(LIF)、TNFSF15(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー15、血管内皮細胞増殖阻害物質、VEGI、TL1A)、TDO2(トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ、TPH2、TRPO)、IGF-1R(1型インスリン様増殖因子)、GD2(ジシアロガングリオシド2)、TMIGD2(膜貫通免疫グロブリンドメイン含有タンパク質2)、RGMB(RGMドメインファミリー、メンバーB)、VISTA(T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン含有サプレッサー、B7-H5、B7ホモログ5)、BTNL2(ブチロフィリン様タンパク質2)、Btn(ブチロフィリンファミリー)、TIGIT(IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体、Vstm3、WUCAM)、シグレック(シアル酸結合Ig様レクチン)、すなわち、SIGLEC-15、ニューロフィリン、VEGFR(血管内皮増殖因子受容体)、ILTファミリー(LIR、免疫グロブリン様転写物ファミリー、白血球免疫グロブリン様受容体)、NKGファミリー(ナチュラルキラーグループファミリー、C型レクチン膜貫通受容体)、MICA(MHCクラスIポリペプチド関連配列A)、TGFβ(形質転換増殖因子β)、STING経路(インターフェロン遺伝子経路の刺激物質)、アルギナーゼ(アルギニンアミジナーゼ、カナバナーゼ、L-アルギナーゼ、アルギニントランスアミジナーゼ)、EGFRvIII(上皮増殖因子受容体バリアントIII)、およびHHLA2(B7-H7、B7y、HERV-H LTR関連タンパク質2、B7ホモログ7)、PD-1の阻害物質(プログラム細胞死タンパク質 1、PD-1、CD279、表面抗原分類279)、PD-L1(B7-H1、B7ホモログ1、プログラム死リガンド1、CD274、表面抗原分類274)、PD-L2(B7-DC、プログラム細胞死1リガンド2、PDCD1LG2、CD273、表面抗原分類273)、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4、CD152、表面抗原分類152)、BTLA(Bおよび Tリンパ球アテニュエーター、CD272、表面抗原分類272)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO、IDO1)、TIM3(HAVCR2、A型肝炎ウイルス細胞受容体 2、T細胞免疫グロブリンムチン-3、KIM-3、腎臓損傷分子3、TIMD-3、T細胞免疫グロブリンムチン-ドメイン3)、A2Aアデノシン受容体(ADO受容体)、CD39(エクトヌクレオチド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ-1、表面抗原分類39、ENTPD1)、およびCD73(エクト-5'-ヌクレオチダーゼ、5'-ヌクレオチダーゼ、5'-NT、表面抗原分類73)、CD27(表面抗原分類27)、ICOS(CD278、表面抗原分類278、誘導性T細胞共刺激分子)、CD137(4-1BB、表面抗原分類137、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9、TNFRSF9)、OX40(CD134、表面抗原分類134)、TNFSF25(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー25)、IL-10(インターロイキン-10、ヒトサイトカイン合成阻害因子、CSIF)、およびガレクチンから選択される、1つまたは複数のさらなる細胞標的を対象とする、抗体、化学的低分子または生物学的薬物などの、治療剤と組み合わせられる。
【0187】
[0187] ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ、Bristol-Meyers Squibb)は、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)の細胞外ドメインに特異的に結合する、認可された組換えヒト/マウスキメラモノクローナル抗体の一例である。
【0188】
[0188] RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ、Biogen IDEC/Genentech)は、認可された抗CD20抗体の一例である。
【0189】
[0189] YERVOY(登録商標)(イピリムマブ、Bristol-Meyers Squibb)は、認可された抗CTLA-4抗体の一例である。
【0190】
[0190] KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ、Merck)およびOPDIVO(登録商標)(ニボルマブ、Bristol-Meyers Squibb Company)は、認可された抗PD-1抗体の例である。
【0191】
[0191] TECENTRIQ(商標)(アテゾリズマブ、Roche)は、認可された抗PD-L1抗体の一例である。
【0192】
[0192] BAVENCIO(商標)(アベルマブ、Merck KGaAおよびPfizer and Eli Lilly and Company)は、認可された抗PD-L1抗体の一例である。
【0193】
[0193] IMFINZI(商標)(デュルバルマブ、Medimmune/AstraZeneca)は、認可された抗PD-L1抗体の一例である。
【0194】
[0194] 実施例は本開示の様々な実施形態を例示するが、実施例を、本開示のこれら具体的に開示された実施形態のみへの限定と解釈してはならない。
【実施例】
【0195】
実施例1
アミノ酸配列
軽鎖CDR
【0196】
【0197】
【表2】
マウス軽鎖(V
L)可変ドメイン配列およびヒト軽鎖(V
L)可変ドメイン配列
【0198】
【0199】
【表3-2】
マウス重鎖(V
H)可変ドメイン配列およびヒト重鎖(V
H)可変ドメイン配列
【0200】
【0201】
【表4-2】
マウス軽鎖(LC)配列およびヒト軽鎖(LC)配列
【0202】
【0203】
【0204】
【表5-3】
マウス重鎖(HC)配列およびヒト重鎖(HC)配列
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
[0195] 実施例2
SIRPモノクローナル抗体のSIRPαへの結合
本開示の抗SIRPモノクローナル抗体(mAb)のSIRPアルファ(SIRPα)への結合を、Fcタグ付きヒトSIRPアルファを使用した固相ELISAによって決定した。可溶性抗SIRP抗体による結合をインビトロで測定した。
【0214】
[0196] Fcタグ付きヒトSIRPα(ACRO #SIG-H5251、遺伝子バリアント1)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に希釈した1μg/mlの濃度にて、4℃で終夜、高結合マイクロタイタープレートに吸着させる。コーティング溶液を除去し、ウェルを洗浄し、次いで、0.5% Tween 20を含有するPBS(PBST)中の75%カゼインにより、振盪しながら室温で60分間ブロッキングする。ブロッキング溶液を除去し、ウェルを洗浄し、PBST中に開始濃度30μg/mlで希釈したマウスまたはヒト抗SIRP mAbを用い、濃度を3倍連続希釈で低減して、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルをPBSTで3回洗浄し、PBST中に1:10,000で希釈したHRP標識ロバ抗マウスまたは抗ヒト二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用い、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルを洗浄し、次いで、ペルオキシダーゼ基質を用いてインキュベートし、450nmにおける吸光度を測定する。非線形フィットモデル(GraphPad Prism)を使用して、見かけの親和性を計算した。
【0215】
[0197] 表1に示されるように、すべての可溶性抗SIRP mAbは、ピコモルからナノモルの範囲の見かけの親和性でヒトSIRPαに結合した。
図1A~
図1Vは、本開示の抗体についての代表的な結合曲線を示す。
【0216】
【0217】
[0198] 実施例3
マウス抗SIRP mAbのSIRPαを発現するTHP-1細胞への結合
ハイブリドーマ由来マウスSIRP抗体SIRP1、SIRP2、およびSIRP3の、SIRPαを発現するがSIRPγを発現しないTHP-1細胞への結合活性を、フローサイトメトリーによって決定した。
【0218】
[0199] pH7.2のPBS中に希釈した漸増する濃度のmAbを用い、THP-1細胞を37℃で60分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗浄し、PBS中のAlexa Fluor-647標識ロバ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いてさらに1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、C6 Accuriフローサイトメーター(Becton Dickinson)を使用して結合を分析した。
【0219】
[0200]
図2に示されるように、すべての抗体がSIRPα発現THP-1細胞に濃度依存的に結合した。
【0220】
[0201] 実施例4
SIRP mAbのSIRPγへの結合
本開示の抗SIRP抗体のSIRPガンマ(SIRPγ)への結合を、Fcタグ付きヒトSIRPγを使用したELISAによって決定した。可溶性抗SIRP抗体の結合をインビトロで測定した。
【0221】
[0202] Fcタグ付きヒトSIRPγ(ACRO #SIG-H5253)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で1μg/mlの濃度にて、4℃で終夜、高結合マイクロタイタープレートに吸着させる。コーティング溶液を除去し、ウェルを洗浄し、次いで、0.5% Tween 20を含有するPBS(PBST)中の75%カゼインにより、振盪しながら室温で60分間ブロッキングする。ブロッキング溶液を除去し、ウェルを洗浄し、PBST中に開始濃度30μg/mlで希釈した抗SIRP mAbを用い、濃度を3倍連続希釈で低減して、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルをPBSTで3回洗浄し、PBST中に1:10,000で希釈したHRP標識ロバ抗マウスまたは抗ヒト二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用い、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルを洗浄し、次いで、ペルオキシダーゼ基質を用いてインキュベートし、450nmにおける吸光度を決定する。非線形フィットモデル(GraphPad Prism)を使用して、見かけの親和性を計算した。
【0222】
[0203] 表2に示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP2、SIRP3、SIRP4、SIRP5、SIRP6、SIRP7、SIRP9、SIRP10、SIRP11、SIRP12、SIRP16、SIRP17、SIRP18、SIRP20、SIRP21、およびSIRP23は、ピコモルからナノモルの範囲の見かけの親和性でヒトSIRPガンマに結合した。さらに、抗SIRP mAb SIRP1、SIRP8、SIRP13、SIRP14、SIRP15、SIRP19、およびSIRP22は、30μg/mlまでのmAb濃度ではヒトSIRPガンマに認識可能な結合をしなかった。
図3A~
図3Vは、本開示の抗体から得られた代表的な結合曲線を示す。
【0223】
【0224】
[0204] 実施例5
マウスmAbのSIRPγを発現するJurkat T細胞への結合
マウスハイブリドーマ由来SIRP mAbの、SIRPγを発現するがSIRPαを発現しないJurkat細胞への結合活性を、フローサイトメトリーによって決定した。
【0225】
[0205] pH7.2のリン酸緩衝食塩水(PBS)中に希釈した漸増する濃度の抗SIRP mAbを用い、Jurkat細胞を37℃、5%CO2で60分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗浄し、PBS中のAlexa Fluor-647標識ロバ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いてさらに1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、C6 Accuriフローサイトメーター(Becton Dickinson)を使用して結合を分析した。あるいは、PBS(Corning)中に1mM EDTA(Sigma Aldrich)、1% FBS(Biowest)を含有する結合バッファ中の飽和濃度10μg/mlのSIRP mAbを用いて、細胞を37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、同じ条件下でロバ抗マウスIgGフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて、45分間染色した。次いで、細胞を洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。
【0226】
[0206]
図4Aに示されるように、SIRP3はSIRPγ発現Jurkat細胞に結合したが、SIRP2もSIRP1も結合を示さなかった。さらに、
図4Bに示されるように、SIRP9は10μg/mlの濃度でJurkat細胞に結合し、これはこれまでにSIRPγに結合することが示されているKWAR-23に匹敵していたが、SIRP4はJurkat細胞上のSIRPγに結合を示さなかった。
【0227】
[0207] 実施例6
抗SIRP mAbはCD47/SIRPα結合を遮断する
CD47のSIRPαへの結合を遮断する本開示の抗SIRP抗体の能力をインビトロで評価するため、ヒスチジン(HIS)タグ付きヒトSIRPαで被覆されたELISAプレートを使用した以下の方法を採用した。
【0228】
[0208] HISタグ付きヒトSIRPα(ACRO #SIG-H5225)を、PBS中に希釈した1μg/mlの濃度にて、4℃で終夜、高結合マイクロタイタープレートに吸着させる。コーティング溶液を除去し、ウェルを洗浄し、次いで、0.5% Tween 20を含有するPBS(PBST)中の75%カゼインにより、振盪しながら室温で60分間ブロッキングする。ブロッキング溶液を除去し、ウェルを洗浄し、PBST中に開始濃度30μg/mlで希釈した抗SIRP mAbを用い、濃度を3倍連続希釈で低減して、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルをPBSTで3回洗浄し、PBST中250ng/mlの濃度のFCタグ付きヒトCD47(ACRO #CD7-H5256)を用い、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルをPBSTで3回洗浄し、PBST中に1:20,000で希釈したHRP標識ロバ抗マウスまたは抗ヒト二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用い、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルを洗浄し、次いで、ペルオキシダーゼ基質を用いてインキュベートし、450nmにおける吸光度を決定する。非線形フィットモデル(GraphPad Prism)を使用して、IC50を計算した。
【0229】
[0209] 表3に示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP2、SIRP3、SIRP4、およびSIRP7は、ナノモル範囲のIC
50値でヒトSIRPαのヒトCD47への結合を遮断する。さらに、可溶性抗SIRP mAb SIRP1、SIRP5、SIRP6、SIRP8、およびSIRP10は、30μg/mlまでのmAb 濃度ではヒトSIRPαのヒトCD47への結合を遮断することができなかった。
図5A~
図5Gは、本開示の抗体から得られた代表的な阻害曲線を示す。
【0230】
【0231】
[0210] 実施例7
抗SIRPモノクローナル抗体はCD47/SIRPγ結合を遮断する
CD47のSIRPγへの結合に対する本開示の抗SIRP mAbの効果をインビトロで評価するため、HISタグ付きヒトCD47で被覆されたELISAプレートを使用した以下の方法を採用した。
【0232】
[0211] HISタグ付きヒトCD47(ACRO #CD7-H5227)を、PBS中に希釈した2μg/mlの濃度にて、4℃で終夜、高結合マイクロタイタープレートに吸着させる。コーティング溶液を除去し、ウェルを洗浄し、次いで、0.5% Tween 20を含有するPBS(PBST)中の75%カゼインにより、振盪しながら室温で60分間ブロッキングする。ブロッキング溶液を除去し、ウェルを洗浄し、PBST中に開始濃度30μg/mlで希釈した抗SIRP mAbを用い、濃度を3倍連続希釈で低減して、また、0.5μg/mlのヒトSIRPγ(ACRO# SIG-H5253)を用い、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルをPBSTで3回洗浄し、PBST中に1:20,000で希釈したHRP標識ロバ抗マウスまたは抗ヒト二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用い、振盪しながら室温で60分間インキュベートする。ウェルを洗浄し、次いで、ペルオキシダーゼ基質を用いてインキュベートし、450nmにおける吸光度を決定する。非線形フィットモデル(GraphPad Prism)を使用して、IC50を計算した。
【0233】
[0212] 表4に示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP2、SIRP3、SIRP4、SIRP5、SIRP6、およびSIRP7は、ナノモル範囲のIC
50値でヒトSIRPγのヒトCD47への結合を遮断する。さらに、可溶性抗SIRP mAb SIRP1、SIRP8、SIRP9、およびSIRP10は、30μg/mlまでのmAb 濃度ではヒトSIRPγのヒトCD47への結合を遮断することができなかった。
図6A~
図6Hは、本開示の抗体から得られた代表的な阻害曲線を示す。
【0234】
【0235】
[0213] 実施例8
抗SIRP mAbは食作用を誘導する
マクロファージによる腫瘍細胞に対する食作用に対する抗SIRP mAbの効果をインビトロで評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0236】
[0214] ヒト単球由来マクロファージを、健康なヒト末梢血の白血球除去によって取得し、50ng/ml M-CSF(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で7日間インキュベートした。インビトロ食作用アッセイのために、96ウェルプレート中、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地100μl中にマクロファージを1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で再播種し、24時間接着させた。エフェクターマクロファージが培養皿に接着したら、標的となるヒトがん細胞(Jurkat)を1μM 5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル(CFSE; Sigma Aldrich)で標識し、補足物のないAIM-V培地100μl中8×10
4細胞の濃度でマクロファージ培養物に添加した。標的およびエフェクター細胞を混合してすぐに、抗SIRP mAbを様々な濃度(
図7A)または10μg/ml(
図7B)の抗体で添加し、37℃で3時間インキュベートした。3時間後、食作用を受けていないすべての細胞を除去し、残りの細胞をPBSで3回洗浄した。次いで、細胞をAccutase(Stemcell Technologies)中でインキュベートしてマクロファージを剥離し、微量遠心管中に回収し、アロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体(BD biosciences)100ng中で30分間インキュベートし、1回洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)により、完全な食作用の指標となるCFSE
+でもあるCD14
+細胞の百分率について分析した。
【0237】
[0215]
図7Aおよび
図7Bに示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP4、SIRP9、SIRP11、SIRP12、SIRP13、SIRP14、SIRP15、SIRP16、SIRP17、SIRP18、SIRP19、SIRP20、SIRP21、SIRP22、およびSIRP23は、マウスIgG1対照抗体(Biolegend)と比較して、ヒトマクロファージによるJurkat細胞に対する食作用を誘導した。一方、可溶性抗SIRP mAb SIRP1、SIRP2、SIRP3、SIRP7、SIRP8、およびSIRP10は、ヒトマクロファージによるJurkat細胞に対する食作用を誘導しなかった。
【0238】
[0216] 実施例9
抗SIRP mAbは抗CD47抗体と組み合わせた場合に食作用を誘導する
マクロファージによる腫瘍細胞に対する食作用の誘導に対する抗SIRP mAbと抗CD47 mAbとの組合せの効果をインビトロで評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0239】
[0217] ヒト単球由来マクロファージを、健康なヒト末梢血の白血球除去によって取得し、50ng/ml M-CSF(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で7日間インキュベートした。インビトロ食作用アッセイのために、96ウェルプレート中、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地100μl中にマクロファージを1ウェル当たり3×104細胞の濃度で再播種し、24時間接着させた。エフェクターマクロファージが培養皿に接着したら、標的となるヒトがん細胞(Jurkat)を1μM 5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル(CFSE; Sigma Aldrich)で標識し、補足物のないAIM-V培地100μl中8×104細胞の濃度でマクロファージ培養物に添加した。標的およびエフェクター細胞を混合してすぐに、抗SIRP mAb単独、抗CD47 mAb(食作用を誘導することが知られている)単独、または抗SIRP mAbと抗CD47 mAbとを、様々な濃度で添加し、37℃で3時間インキュベートした。3時間後、食作用を受けていないすべての細胞を除去し、残りの細胞をPBSで3回洗浄した。次いで、細胞をAccutase(Stemcell Technologies)中でインキュベートしてマクロファージを剥離し、微量遠心管中に回収し、アロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体(BD biosciences)100ng中で30分間インキュベートし、1回洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)により、完全な食作用の指標となるCFSE+でもあるCD14+細胞の百分率について分析した。
【0240】
[0218]
図8A~
図8Jに示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP1、SIRP2、SIRP3、SIRP4、SIRP5、SIRP7、SIRP12、SIRP20、SIRP21、およびSIRP22のすべてが、単独の薬剤と比較して、抗CD47 mAbと組み合わせた場合に、より大きな程度でヒトマクロファージによるJurkat細胞に対する食作用を増加させる。
【0241】
[0219] 実施例10
抗SIRP mAbはRituxanとの組合せにおいて食作用を誘導する
マクロファージによる腫瘍細胞に対する食作用の誘導に対する抗SIRP mAbと抗CD20 mAbとの組合せの効果をインビトロで評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0242】
[0220] ヒト単球由来マクロファージを、健康なヒト末梢血の白血球除去によって取得し、50ng/ml M-CSF(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で7日間インキュベートした。インビトロ食作用アッセイのために、96ウェルプレート中、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地100μl中にマクロファージを1ウェル当たり3×104細胞の濃度で再播種し、24時間接着させた。エフェクターマクロファージが培養皿に接着したら、標的となるヒトがん細胞(RAJI)を1μM 5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル(CFSE; Sigma Aldrich)で標識し、補足物のないAIM-V培地100μl中8×104細胞の濃度でマクロファージ培養物に添加した。標的およびエフェクター細胞を混合してすぐに、抗SIRP mAb単独、抗CD20 mAb(Rituxan、Roche)単独、または抗SIRP mAbと抗CD20 mAbとを、様々な濃度で添加し、37℃で3時間インキュベートした。3時間後、食作用を受けていないすべての細胞を除去し、残りの細胞をPBSで3回洗浄した。次いで、細胞をAccutase(Stemcell Technologies)中でインキュベートしてマクロファージを剥離し、微量遠心管中に回収し、アロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体(BD biosciences)100ng中で30分間インキュベートし、1回洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)により、完全な食作用の指標となるCFSE+でもあるCD14+細胞の百分率について分析した。
【0243】
[0221]
図9A~
図9Dに示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP1、SIRP2、SIRP3、およびSIRP7のすべてが、単独の薬剤と比較して、抗CD20 mAbと組み合わせた場合に、より大きな程度でヒトマクロファージによるRAJI細胞に対する食作用を増加させた。
【0244】
[0222] 実施例11
抗SIRP mAbはErbituxおよびアベルマブとの組合せにおいて食作用を誘導する
マクロファージによる腫瘍細胞に対する食作用の誘導に対する抗SIRP mAbと抗EGFR mAbまたは抗PD-L1 mAbとの組合せの効果をインビトロで評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0245】
[0223] ヒト単球由来マクロファージを、健康なヒト末梢血の白血球除去によって取得し、50ng/ml M-CSF(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で7日間インキュベートした。インビトロ食作用アッセイのために、96ウェルプレート中、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地100μl中にマクロファージを1ウェル当たり3×104細胞の濃度で再播種し、24時間接着させた。エフェクターマクロファージが培養皿に接着したら、標的となるヒトがん細胞(FaDuまたはES-2)を1μM 5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル(CFSE; Sigma Aldrich)で標識し、補足物のないAIM-V培地100μl中8×104細胞の濃度でマクロファージ培養物に添加した。標的およびエフェクター細胞を混合してすぐに、抗SIRP mAb単独、抗EGFR mAb(Erbitux、Bristol-Myers Squibb)単独、抗PD-L1 mAb(アベルマブ、Pfizer)、または抗SIRP mAbと抗EGFR mAbとを、様々な濃度で添加し、37℃で3時間インキュベートした。3時間後、食作用を受けていないすべての細胞を除去し、残りの細胞をPBSで3回洗浄した。次いで、細胞をAccutase(Stemcell Technologies)中でインキュベートしてマクロファージを剥離し、微量遠心管中に回収し、アロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体(BD biosciences)100ng中で30分間インキュベートし、1回洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)により、完全な食作用の指標となるCFSE+でもあるCD14+細胞の百分率について分析した。
【0246】
[0224]
図10Aに示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP4は、単独の薬剤と比較して、抗EGFR mAbと組み合わせた場合に、より大きな程度でヒトマクロファージによるFaDu細胞に対する食作用を増加させた。
図10Bに示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP4は、単独の薬剤と比較して、抗PD-L1 mAbと組み合わせた場合に、より大きな程度でヒトマクロファージによるES-2細胞に対する食作用を増加させた。
【0247】
[0225] 実施例12
抗SIRP mAbはヒトマクロファージおよび樹状細胞に結合する
抗SIRP mAbのヒトマクロファージおよび樹状細胞などのSIRPαを発現する細胞への結合を評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0248】
[0226] 末梢血単核細胞から単離されたヒトCD14+単球(Astarte Biologics)を、インビトロで7日間、マクロファージまたは樹状細胞にへと分化させた。マクロファージ分化については、単球を、50ng/ml M-CSF(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で7日間インキュベートした。樹状細胞分化については、単球を、AIM-V培地(Life Technologies)中、10%ヒトAB血清(Valley Biomedical)、200ng/ml GM-CSF(Biolegend)、および50ng/ml IL-4(Biolegend)の存在下でインキュベートした。PBS(Corning)中に1mM EDTA(Sigma Aldrich)および1% FBS(Biowest)を含有する結合バッファ中のSIRP mAbの連続希釈を用いて、細胞を37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、同じ条件下でロバ抗マウスIgGフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて、45分間染色した。その後、Alexa Fluor 647フルオロフォアとコンジュゲートした抗CD14または抗CD11c(それぞれ、Life TechnologiesおよびBiolegend)を用いて、細胞を氷上で30分間染色し、洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。結合を、二次抗体のみで染色した細胞から差し引いた、CD14+またはCD11c+細胞のFITC蛍光強度中央値として評価した。
【0249】
[0227] 表5に示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP3、SIRP4、SIRP5、およびSIRP9は、OSE-18D5およびKWAR-23と同様に、ピコモル範囲の見かけの親和性で樹状細胞および/またはマクロファージ上の細胞発現SIRPαに結合した。
図11は、本開示の抗体から得られた代表的な結合曲線を示す。
【0250】
【0251】
[0228] 実施例13
抗SIRP mAbはヒトCD3+ T細胞への可変的な結合を示す
抗SIRP mAbのヒトCD3 T細胞に対する結合を評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0252】
[0229] PBS(Corning)中に1mM EDTA(Sigma Aldrich)、1% FBS(Biowest)を含有する結合バッファ中のSIRP mAbの連続希釈を用いて、末梢血単核細胞から単離されたヒトCD3 T細胞(Astarte Biologics)を、96ウェルV底プレート中、2.5×105細胞/ウェルにて、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、同じ条件下でロバ抗マウスIgGフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて、45分間染色した。その後、3-カルボキシ-6,8-ジフルオロ-7-ヒドロキシクマリン(パシフィックブルー)フルオロフォアとコンジュゲートした抗CD3(BioLegend)を用いて、細胞を氷上で30分間染色し、洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。結合を、二次抗体のみで染色したCD3+細胞から差し引いた、CD3+細胞のFITC蛍光強度中央値として評価した。LSB2.20(BioLegend)を除き、すべてのSIRP抗体を自社で作製した。活性化されたT細胞については、CD3 T細胞を、結合アッセイの前に、10μg/mlの抗CD3(クローンUCHT1; BioLegend)で被覆された96ウェル平底プレート中、1×105細胞/ウェルにて、0.5μg/mlの抗CD28(クローンCD28.2; BioLegend)の存在下で72時間活性化させた。
【0253】
[0230] 表6に示されるように、可溶性SIRP3、SIRP7、SIRP9、KWAR-23、およびSIRPγ特異的抗体LSB2.20は、ピコモル範囲の親和性でT細胞に結合する。抗SIRP mAb SIRP4、SIRP5、およびOSE-18D5の親和性ははるかに低く、ナノモル範囲である。
図12A、
図12B、および
図12Cは、本開示の抗体から得られた代表的な結合曲線を示す。
【0254】
【0255】
[0231] 実施例14
抗SIRP mAbは可溶性CD47/細胞SIRPγ結合を遮断しない
可溶性CD47のSIRPγを発現する細胞への結合の遮断に対する本開示の抗SIRP抗体の効果を評価するため、可溶性ヒトIgG1 Fcタグ付きヒトCD47を使用した以下の方法を採用した。
【0256】
[0232] PBS(Corning)中に1mM EDTA(Sigma Aldrich)、1% FBS(Biowest)を含有する結合バッファ中の10μg/mlのSIRP mAbを用いて、ヒトT-ALL細胞(Jurkat)を、2.5×105細胞/ウェルにて、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。この後、可溶性ヒトIgG1 Fcタグ付きヒトCD47(ACRO #CD7-H5256)を最終濃度が50μg/mlとなるように添加し、細胞を前と同様にもう1時間インキュベートした。次いで、細胞をくまなく洗浄し、同じ条件下でAlexa Fluor 647(Jackson ImmunoResearch)にコンジュゲートしたロバ抗ヒト抗体を用いて、45分間染色した。試料をフローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。分析のために、可溶性Fcタグ付きCD47の非存在下におけるバックグラウンドヒトIgG1 Fc染色を、Alexa Fluor 647蛍光強度中央値から差し引いた。遮断を、マウスIgG1(Biolegend、MOPC-21)対照と比較したときの、SIRP mAbの存在下におけるAlexa Fluor 647のバックグラウンド補正済み蛍光強度中央値の減少として評価した。
【0257】
[0233] 表7に示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP4、SIRP9、およびOSE 18D5は、細胞発現SIRPγの可溶性ヒトCD47への結合を遮断しない。KWAR-23は、Jurkat細胞発現SIRPγの可溶性ヒトCD47への結合を遮断する。
【0258】
【0259】
[0234] 実施例15
抗SIRP mAbは可溶性CD47/細胞SIRPα結合を遮断する
可溶性CD47のSIRPαを発現する細胞への結合に対する本開示の抗SIRP抗体の効果を評価するため、ヒトマクロファージおよび可溶性ヒトIgG1 Fcタグ付きヒトCD47を使用した以下の方法を採用した。
【0260】
[0235] 末梢血単核細胞から単離されたヒトCD14+単球(Astarte Biologics)を、インビトロで7日間、50ng/ml M-CSF(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で分化させた。次いで、ヒトFc受容体ブロッキング溶液(Biolegend)を用いて、マクロファージFc受容体を室温で20分間ブロッキングした。次いで、細胞を洗浄し、PBS(Corning)中に1mM EDTA(Sigma Aldrich)、1% FBS(Biowest)を含有する結合バッファ中の10μg/mlの抗SIRP mAbを用いて、細胞を37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。この後、可溶性ヒトIgG1 Fcタグ付きヒトCD47(ACRO #CD7-H5256)を最終濃度が20μg/mlとなるように添加し、細胞を前と同様にもう1時間インキュベートした。次いで、細胞をくまなく洗浄し、同じ条件下でAlexa Fluor 647(Jackson ImmunoResearch)にコンジュゲートしたロバ抗ヒト抗体を用いて、45分間染色した。試料をフローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。分析のために、可溶性Fcタグ付きCD47の非存在下におけるバックグラウンドヒトIgG1 Fc染色を、Alexa Fluor 647蛍光強度中央値から差し引いた。遮断を、マウスIgG1(Biolegend、MOPC-21)対照と比較したときの、SIRP mAbの存在下におけるAlexa Fluor 647のバックグラウンド補正済み蛍光強度中央値の減少として評価した。これらのアッセイでは、被験抗体当たり3種のドナーを最小として、4種の異なる単球ドナーを使用した。
【0261】
[0236]
図13に示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP4およびSIRP9は、マクロファージ上の細胞発現SIRPαの可溶性ヒトCD47への結合を遮断する。OSE 18D5 mAbは、細胞発現SIRPαの可溶性ヒトCD47への結合を遮断しない。
【0262】
[0237] 実施例16
抗SIRP mAbはT細胞増殖を阻害しない
同種樹状細胞誘導性T細胞増殖に対する抗SIRP mAbの効果をインビトロで評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0263】
[0238] 10%ヒトAB血清(Valley Biomedical)、200ng/ml GM-CSF(Biolegend)、および50ng/ml IL-4(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で、2日目に新しいサイトカイン再播種培地を添加しつつ6日間CD14+単球(Astarte Biologics)をインキュベートすることにより、ヒト単球由来樹状細胞を作製した。同種樹状細胞・T細胞共培養アッセイのために、未成熟の樹状細胞を、96ウェルプレート上に1ウェル当たり1×105細胞の濃度で再播種した。4種の異なるドナー(Astarte Biologics)から得られ、CellTrace(商標) Violet(Life Technologies)蛍光細胞増殖色素で標識した、同種健康ドナー由来CD3+ T細胞を、1:5のDC:T細胞比で培養物に添加した。抗SIRP mAbを10μg/mlの飽和濃度で即座に添加し、細胞を総体積200μlにて37℃、5%CO2で6~7日間インキュベートした。次いで、ピペットの先端でウェルを擦ることによって細胞を剥離し、蛍光活性化細胞用ソーティングバッファ(1%FBS、Biowest、PBS中)中で洗浄した。次いで、PerCP-Cy5.5蛍光色素標識CD3抗体(Biolegend)を用いて、細胞を氷上で30分間インキュベートし、1回洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。CD3+細胞集団内でのCellTrace(商標) Violet色素の希釈により、T細胞増殖を測定した。
【0264】
[0239]
図14Aおよび
図14Bに示されるように、抗SIRP mAb SIRP3、SIRP4、SIRP5、SIRP9、SIRP11、SIRP12、SIRP13、SIRP14、SIRP15、SIRP17、SIRP18、SIRP20、SIRP21、SIRP23、およびOSE-18D5は、対照抗体(Biolegend)と比較して、T細胞増殖に対する有意な効果を有していなかった。一方、CD47へのSIRPαおよびSIRPγ結合のいずれも遮断するKWAR-23は、T細胞増殖を阻害した。
【0265】
[0240] 実施例17
抗SIRP mAbは抗原特異的T細胞リコール応答を阻害しない
T細胞における抗原リコール応答に対する抗SIRP mAbの効果をインビトロで評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0266】
[0241] サイトメガロウイルス血清陽性ドナー(Astarte Biologics)から得られたヒト末梢血単核細胞を、CellTrace(商標) Violet(Life Technologies)蛍光細胞増殖色素で標識し、96ウェルプレート中に200,000細胞/ウェルで播種した。次いで、異なる濃度のサイトメガロウイルス抗原(Astarte Biologics)を用いて、T細胞増殖に対する抗原依存性刺激を誘導する10%ヒトAB血清(Valley Biomedical)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で、細胞をインキュベートした。抗SIRP mAb、あるいは抗CD47 mAbであるクローンB6H12(Biolegend)を10μg/mlの飽和濃度で即座に添加し、細胞を37℃、5%CO2で5日間インキュベートした。CD4+細胞集団内でのCellTrace(商標) Violet色素の希釈により、T細胞増殖を測定した。
【0267】
[0242]
図15に示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP4、SIRP5、およびSIRP9は、CMV抗原リコール応答を誘発するT細胞の能力を阻害しなかった。一方、T細胞応答を阻害することが知られている抗CD47抗体クローンB6H12は、マウスIgG1対照抗体(Biolegend)と比較してT細胞増殖を低減させた。
【0268】
実施例18
SIRPα抗体配列
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
[0243] 実施例19
SIRPαアーキテクチャに対する抗SIRPモノクローナル抗体の効果
SIRPαのアーキテクチャ、すなわち、二量体、多量体、またはクラスター中でのその組織に対する本開示の抗SIRP抗体の効果を評価するため、ヒトマクロファージおよびフィコエリトリン(PE)またはアロフィコシアニン(APC)で標識した非競合性SIRPα抗体を使用し、フローサイトメトリー(FCET)法によって定量された、以下の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を採用する。
【0273】
[0244] 末梢血単核細胞から単離したヒトCD14+単球(Astarte Biologics)を、インビトロで7日間、50ng/ml M-CSF(BioLegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で分化させた。FRETアッセイのために、PEおよびAPCで標識したSIRPαに対する抗体を、これまでに記載されているFCET法(Batardら, 2002)に従って使用した。抗体-PEとコンジュゲートしたドナーと抗体-APCとコンジュゲートしたアクセプターの間のFRETは、これら2つの分子が近接していることを示す。Accutaseを使用してヒトマクロファージをプレートから剥離し、洗浄し、V底96ウェルプレートにおいてAIM-V培地中で2時間インキュベートした。次いで、細胞を、10μg/mlのSIPR4、SIRP9、またはmIgG1対照を用いて、37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、等モル濃度のSIRP抗体クローンSE5A5-PEおよびSE5A5-APC(いずれもBioLegendから)を組み合わせ(最終的に10μg/mlとなるように)、細胞懸濁液に添加した。また、単一フルオロフォア染色のために、等モル量の非標識SE5A5(BioLegend)の存在下で、細胞をSE5A5-PEまたはSE5A5-APCで標識した。細胞を氷上で30分間染色し、洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。SE5A5-APCおよびSE5A5-PEのいずれについても1:1のタンパク質対色素比であると仮定し(BioLegendによって提供された情報を使用)、3波長補正法(Batardら, 2002)を使用してFRET効率を計算した。
【0274】
[0245]
図16に示されるように、抗SIRP mAb SIRP9は、SE5A5-PEドナーとSE5A5-APCアクセプターの間のFRET効率を低下させる。抗SIRP mAb SIRP4は、SE5A5-PEドナーとSE5A5-APCアクセプターの間のFRET効率を低下させない。
【0275】
[0246] 実施例20
マクロファージによる抗SIRPモノクローナル抗体の内在化
SIRPα-抗体複合体の内在化に対する本開示の抗SIRP抗体の効果を評価するため、ヒトマクロファージおよびpHrodo green標識抗SIRP抗体を使用した以下の方法を採用した。pHrodo green色素は、酸性の内在化したコンパートメントにおいて1度だけ蛍光を発する。
【0276】
[0247] 末梢血単核細胞から単離したヒトCD14+単球(Astarte Biologics)を、インビトロで7日間、50ng/ml M-CSF(BioLegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で分化させた。pHrodo Greenマイクロスケールタンパク質標識キット(Invitrogen)を使用して、製造業者による説明書に従ってSIRP抗体を標識した。標識効率はすべての抗体間で同等であった。抗体をマクロファージ成長培地中に希釈し、37℃に加温した。指定された時点で、マクロファージから培地を取り除き、10μg/mlの標識抗体を含有する培地と置き換え、37℃で最長1時間、インキュベーションを継続した。インキュベーション後、培地を取り除き、Accutase(STEMCELL Technologies)を使用して細胞をプレートから剥離した。細胞を400gでペレット化し、氷冷PBS(Corning)で洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。内在化を、pHrodo green+単一生細胞の百分率として定量化した。
【0277】
[0248]
図17に示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP4は、SIRPα-抗体複合体の内在化を誘導する。可溶性抗SIRP9 mAbは、SIRPアルファ-抗体複合体の内在化をより低い程度で誘導する。
【0278】
[0249] 実施例21
抗SIRPモノクローナル抗体は細胞表面SIRPアルファレベルを低下させる
細胞表面上におけるSIRPアルファの発現量に対する本開示の抗SIRP抗体の効果を評価するため、ヒトマクロファージを利用した、フローサイトメトリーに基づく以下の方法を使用した。
【0279】
[0250] 末梢血単核細胞から単離したヒトCD14+単球(Astarte Biologics)を、インビトロで7日間、50ng/ml M-CSF(BioLegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で分化させた。Accutase(STEMCELL Technologies)を使用してヒトマクロファージをプレートから剥離し、洗浄し、V底96ウェルプレートにおいて、AIM-V培地中で2時間インキュベートした。次いで、10μg/ml のmIgG1対照、SIPR4、SIRP9、18D5、またはKWAR23を用いて、5%CO2にて、4℃で2時間、または37℃で2時間、4時間、6時間、もしくは24時間インキュベートした。その後、細胞をフローサイトメトリー(FC)バッファ(PBS中2%FBS)中で洗浄し、非競合性の蛍光標識した抗SIRPアルファ抗体を使用して、細胞表面SIRPアルファレベルを測定した。SIRP4、18D5、およびKWAR23については、Alexa Fluor 647で標識した抗SIRP抗体SIRP9を使用した。SIRP9-AF647は、Life TechnologiesによるMolecular ProbesのAlexa Fluor 647抗体標識キットを使用して作製した。SIRP4については、フィコエリトリンで標識した抗SIRP抗体SE5A5を使用した(BioLegend)。蛍光抗体標識のために、細胞を氷上で30分間染色し、洗浄し、フローサイトメーター(Attune、Life Technologies)上で分析した。蛍光レベルを、mIgG1対照で処理し、それぞれの蛍光SIRP抗体を用いて氷上で染色したマクロファージの蛍光強度中央値に対して正規化した。
【0280】
[0251]
図18に示されるように、抗SIRP mAb SIRP4は、SIRPαの表面レベルの低下を示す。抗SIRP mAb SIRP9、18D5、およびKWAR23は、いずれもSIRPアルファの表面レベルの低下を示さない。
【0281】
[0252] 実施例22
抗SIRPモノクローナル抗体は、SIRPα対立遺伝子バリアントによらずマクロファージによる腫瘍細胞に対する食作用を増加させる
異なるSIRPアルファ対立遺伝子バリアントを保有するマクロファージによる腫瘍細胞に対する食作用に対する抗SIRPアルファ抗体の効果を評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下のインビトロの方法を採用した。
【0282】
[0253] CD14+単球から、異なるSIRPα対立遺伝子群(V1/V1、V1/V2、およびV2/V2)に由来するヒト単球由来マクロファージ(MDM/MQ)を分化させた。CD14+単球はAstarte Biologicsから購入したか、または汎単球単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して末梢血単核細胞(PBMC、AllCellsおよびHemacare)から富化した。単球を96ウェル平底プレート上に5×104細胞/ウェルで播種し、インビトロで7日間、10% FBS(Biowest)および50ng/ml M-CSF(BioLegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中でMDMに分化させた。
【0283】
[0254] インビトロ食作用アッセイを開始する前に、ヒトMDMを補足物のないAIM-V培地中で2時間培養した。ヒトがん細胞を1μM 5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル(CFSE; Sigma Aldrich)で標識し、8×10
4細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレート中のマクロファージ培養物に添加した。標的およびエフェクター細胞を混合してすぐに、抗SIRPまたはmIgG1対照抗体を様々な濃度で(
図19A)、または10μg/mlの濃度(
図19B)で添加し、37℃で4時間インキュベートした。4時間後、食作用を受けていないすべての細胞を除去し、残りの細胞をPBSで3回洗浄した。次いで、細胞をAccutase(Innovative Cell Technologies)中でインキュベートしてマクロファージを剥離し、96ウェルV底プレート中に回収し、アロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体(BD biosciences)100ngを用いて30分間インキュベートし、1回洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。食作用を、CD14
+細胞集団内でのCFSE
+細胞の百分率として決定した。
【0284】
[0255]
図19A~19Bで示されるように、抗SIRP抗体SIRP4およびSIRP9は、SIRPアルファ対立遺伝子バリアントとは無関係に腫瘍に対する食作用を誘導する。
【0285】
[0256] 実施例23
抗SIRPモノクローナル抗体はSIRPα結合について互いに競合しない
ヒトSIRPαへの結合における本開示の抗SIRP抗体同士の競合を評価するため、Hisタグ付きヒトSIRPαタンパク質およびビオチン化SIRPα抗体を使用した以下のELISA法を採用する。
【0286】
[0257] EZ-Link(商標)スルホ-NHS-LC-ビオチン化キット(Thermo Scientific)を使用して、製造業者による説明書に従ってSIRPアルファに対する抗体をビオチン化し、固相ELISAを使用してそれらのヒトSIRPαへの結合を確認した。競合ELISAのために、1.25μg/mlのビオチン化SIRP抗体の存在下で連続希釈された非ビオチンSIRP抗体を用いる対の様式により、プレートに吸着させたヒトSIRPα(Hisタグ付き、ACRObiosystems)を室温で1時間インキュベートした。検出のために、HRPストレプトアビジン(BioLegend)およびペルオキシダーゼ基質3,3’ ,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB、Thermo Scientific)を1:5000で使用し、1N H2SO4の添加により反応を停止させた。Synergy H1プレートリーダー(BioTek)を使用して、450nmにおける吸光度を決定した。
【0287】
[0258]
図20に示されるように、抗SIRP mAb SIRP9は、SIRPα結合についてSIRP4、OSE(18D5)、およびKWAR23と競合しない。抗ヒトSIRP mAb SIRP4は、SIRPα結合についてOSE(18D5)と競合するが、SIRP9ともKWAR23とも競合しない。
【0288】
[0259] 実施例24
抗SIRPモノクローナル抗体はヒトがん細胞株に対し様々な結合パターンを示す
食作用アッセイにおいて使用されたヒトがん細胞株への抗SIRP mAbの結合、ならびにこれらの細胞株によるSIRPα/β、SIRPγ、およびCD47の発現を評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用する。
【0289】
[0260] ヒトがん細胞株(Jurkat T-ALL、RAJI B細胞リンパ腫、DLD-1結腸直腸腺癌、RL95-2子宮内膜癌、およびES-2卵巣癌)をアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)から購入し、ベンダーによって推奨されるように培養した。これらの細胞株上におけるSIRPα、SIRPγ、およびCD47のレベルを評価するため、それらの成長培地中で非接着細胞株を回収し、Accutase(Stemcell Technologies)を使用して接着細胞株をそれらの培養プレートから剥離した。次いで、細胞をPBS中で洗浄し、96ウェルV底プレート中に1×105細胞/ウェルで配置し、いずれもBioLegendから購入した、ヒトSIRPα/β(クローンSE5A5)、SIRPγ(クローンLSB2.20)、またはCD47(クローンB6H12)を認識する市販のフィコエリトリン(PE)標識抗体を用いて、フローサイトメトリーバッファ(PBS中1%FBS)中、氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。SIRP4およびSIRP9 mAbのがん細胞株への結合を測定するため、上記のように、PBS(Corning)中に1mM EDTA(Sigma Aldrich)、1% FBS(Biowest)を含有する結合バッファ中の10μg/mlのSIRP mAbまたはマウスIgG1対照(BioLegend)を用いて、細胞を37℃、5%CO2で1時間、96ウェルV底プレート中に置いた。次いで、細胞を洗浄し、同じ条件下でロバ抗マウスIgGフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて、45分間染色し、次いで洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)によって分析した。
【0290】
[0261]
図21Aに示されるように、既知の特異性を有するSIRP mAbを使用すると、Jurkat細胞はSIRPγを発現し、ES-2細胞はSIRPα/βを発現するが、残りの細胞株はSIRPα/βもSIRPγも発現しない。すべての被験細胞株がCD47を発現する。
図21Bに示されるように、SIRP9はJurkat(SIRPγ)およびES-2(SIRPα/β)細胞株に結合し、SIRP4はES-2(SIRPα/β)細胞株のみに結合し、Jurkat(SIRPγ)には結合しない。
【0291】
[0262] 実施例25
抗SIRP mAb誘導性食作用はFcγR会合に依存する
マクロファージによる腫瘍細胞に対する抗SIRP mAb誘導性食作用に対するヒトFc受容体の遮断の効果をインビトロで評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0292】
[0263] ヒト単球由来マクロファージを、健康なヒト末梢血の白血球除去によって取得し、50ng/ml M-CSF(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で7日間インキュベートした。インビトロ食作用アッセイのために、96ウェルプレート中、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地100μl中にマクロファージを1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で再播種し、24時間接着させた。エフェクターマクロファージが培養皿に接着したら、各々が10μg/ml(+Fc遮断)の最終濃度である、ヒトCD16(クローン3G8、Invitrogen)、CD32(クローンAT10、Invitrogen)、およびCD64(クローン10.1、Invitrogen)に対する機能遮断抗体からなるヒトFc抗体の反応混液を添加した。30μg/mlのmIgG1(Biolegend)をアイソタイプ対照(-Fc遮断)として使用した。その後すぐに、標的となるヒトがん細胞Jurkat(
図22Aおよび
図22B)またはDLD-1(
図22Cおよび
図22D)を1μM 5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル(CFSE; Sigma Aldrich)で標識し、補足物のないAIM-V培地100μl中8×10
4細胞の濃度でマクロファージ培養物に添加した。標的およびエフェクター細胞を混合してすぐに、抗SIRP mAb SIRP4(
図22Aおよび
図22C)またはSIRP9(
図22Bおよび
図22D)を様々な濃度で添加し、37℃で3時間インキュベートした。3時間後、食作用を受けていないすべての細胞を除去し、残りの細胞をPBSで3回洗浄した。次いで、細胞をAccutase(Stemcell Technologies)中でインキュベートしてマクロファージを剥離し、微量遠心管中に回収し、アロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体(BD biosciences)100ng中で30分間インキュベートし、1回洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)により、完全な食作用の指標となるCFSE
+でもあるCD14
+細胞の百分率について分析した。
【0293】
[0264] 個々のFc受容体の効果を詳細に分析するため、上記のように食作用を行ったが、Fc遮断抗体を個別に10μg/mlで添加し、10μg/mlの対照mIgG1と比較した。
【0294】
[0265]
図22Aおよび
図22Bに示されるように、可溶性抗SIRP mAb SIRP4およびSIRP9はヒトマクロファージによるJurkat細胞に対する食作用を誘導したが、食作用活性はFc遮断抗体反応混液の添加によって抑制された。DLD-1細胞を標的細胞として使用したとき、SIRP4(
図22C)およびSIRP9(
図22D)を用いると同じ効果が観察された。
図23に示されるように、CD16でもCD64でもなく、CD32(FcγRII)の機能遮断により、Jurkat T-ALL細胞に対するSIRP4誘導性(
図23A)およびSIRP9(
図23B)誘導性のいずれの食作用も阻害された。これは、Fc受容体との既知のアイソタイプ相互作用と一致する。
【0295】
[0266] 実施例26
抗SIRP抗体は正常な自己ヒト末梢血単核細胞に対する食作用を誘導しない
正常な非がん性細胞に対する食作用に対する本開示の抗SIRP抗体の効果をインビトロで評価するため、フローサイトメトリーを使用した以下の方法を採用した。
【0296】
[0267] ヒト単球由来マクロファージを、健康なヒト末梢血の白血球除去によって取得した。マクロファージを作製するため、CD14
+単球を、50ng/ml M-CSF(Biolegend)を補足したAIM-V培地(Life Technologies)中で7日間インキュベートした。インビトロ食作用アッセイのために、96ウェルプレート中、50ng/ml M-CSFを補足したAIM-V培地100μl中にマクロファージを1ウェル当たり3×10
4細胞の濃度で再播種し、24時間接着させた。エフェクターマクロファージが培養皿に接着したら、正常な自己ヒト末梢血単核細胞(
図24A)またはJurkat T-ALL細胞(
図24B)を1μM 5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル(CFSE; Sigma Aldrich)で標識し、補足物のないAIM-V培地100μl中8×10
4細胞の濃度でマクロファージ培養物に添加した。標的およびエフェクター細胞を混合してすぐに、抗SIRP抗体SIRP4またはSIRP9を様々な濃度で添加し、37℃で3時間インキュベートした。3時間後、食作用を受けていないすべての細胞を除去し、残りの細胞をPBSで3回洗浄した。次いで、細胞をAccutase(Stemcell Technologies)中でインキュベートしてマクロファージを剥離し、微量遠心管中に回収し、アロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体(BD biosciences)100ng中で30分間インキュベートし、1回洗浄し、フローサイトメトリー(Attune、Life Technologies)により、完全な食作用の指標となるCFSE
+でもあるCD14
+細胞の百分率について分析した。
【0297】
[0268]
図24Aに示されるように、可溶性抗SIRP抗体 SIRP4およびSIRP9は、ヒトマクロファージによるPBMCに対する食作用を誘導しなかった。一方、
図24Bに示されるように、SIRP4およびSIRP9は、マクロファージによるJurkat T-ALL細胞に対する食作用を用量依存的に誘導した。
【配列表】
【国際調査報告】