(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】眼鏡ジョイント
(51)【国際特許分類】
G02C 5/16 20060101AFI20230602BHJP
G02C 5/22 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G02C5/16
G02C5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566050
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021062212
(87)【国際公開番号】W WO2021224486
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】102020112407.4
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522421370
【氏名又は名称】マイキータ スタジオ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MYKITA STUDIO GMBH
【住所又は居所原語表記】Ritterstrase 9 10969 Berlin (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギュンタート,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ケーター,イナ-マリー
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー,モリッツ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】チュール,マイケル
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006AC04
2H006DA01
(57)【要約】
本発明は、スクリューレスで弾力性のある眼鏡ジョイントに関する。
本明細書に記載するのは、眼鏡フレーム用のテンプルとのジョイントであって、前記ジョイント(1)は、フロント部(2)と、テンプル部(3)と、そして圧縮ばね要素(4)と、からなり、前記フロント部(2)は、一側部に沿った内側において前に向かって開いた直方体からなり、前記開いた直方体の互いに対向する内側部(5)には、内方に向けられた短い回転軸(6)が配置されており、前記テンプル部(3)は、保持ラグ(9)の形態に構成され、前記保持ラグ(9)は、前記フロント部(2)の前記開いた直方体に挿入可能に形成され、前記フロント部(2)の短い回転軸(6)にぶら下げ可能な前記保持ラグ(9)の対をなす2つの外面には、ヒンジフック(13)が凹部の形態で配置されており、これにより、前記フロント部(2)および前記テンプル部(3)は、連結式に接続可能であり、前記テンプル部(3)が前記フロント部(2)の回転軸(6)に可動に固定されるように、前記フロント部(2)と前記テンプル部(3)との間に前記圧縮ばね要素(4)が配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレーム用のテンプルとのジョイントであって、
前記ジョイント(1)は、
フロント部(2)と、
テンプル部(3)と、そして
圧縮ばね要素(4)と、からなり、
前記テンプル部(3)は、一側部に沿った内側において前に向かって開いた直方体からなり、開いた直方体の対向する内側部(5)には、内方に向けられた短い回転軸(6)が配置されており、
前記フロント部(2)は、保持ラグ(9)の形態に構成され、前記保持ラグ(9)は、前記テンプル部(3)の前記開いた直方体に挿入可能に形成されており、前記テンプル部(3)の前記短い回転軸(6)に吊り下げ可能な前記保持ラグ(9)の対をなす2つの外面には、ヒンジフック(13)が凹部の形態で配置されており、
これにより、
前記フロント部(2)および前記テンプル部(3)は、互いにヒンジ接続可能であり、
前記フロント部(2)が前記テンプル部(3)の前記回転軸(6)に可動に固定されるように、前記フロント部(2)と前記テンプル部(3)との間に前記圧縮ばね要素(4)が配置されている、ジョイント。
【請求項2】
前記テンプル部(3)は、前記テンプル部(3)から眼鏡テンプルまで後方に延出するインサート本体(10)を有し、前記インサート本体(10)は、前記眼鏡テンプルに挿入可能に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のジョイント。
【請求項3】
前記インサート本体(10)は、ばねハウジング(7)を形成するためのキャビティ(16)を有し、前記テンプル部(3)は、前記インサート本体(10)の前記キャビティ(7)に前記テンプル部を介して前記圧縮ばね要素(4)を導入できるように、前記開いた直方体の後壁にボアを有することを特徴とする、請求項2に記載のジョイント。
【請求項4】
前記フロント部(2)は、前記保持ラグ(9)の前部に配置されたベース板(11)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のジョイント。
【請求項5】
前記ベース板(11)は、眼鏡テンプルが開いた状態で、前で開口している前記テンプル部(3)の直方体側部を前記ベース板(11)が覆うように形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のジョイント。
【請求項6】
前記フレームを眼鏡グラスに固定するために設けられたベース板(11)の前向きの側部には、接続要素(12)が配置されていることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のジョイント。
【請求項7】
前記保持ラグ(9)は、外側後部に半径を、内側後部に丸みを帯びた縁を有することを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載のジョイント。
【請求項8】
前記圧縮ばね要素(4)は、圧縮ばね(14)とピン(15)とからなり、前記ピン(15)が前記保持ラグ(9)の方向に配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項7の何れか一項に記載のジョイント。
【請求項9】
前記保持ラグ(9)は、ジョイント部品の相対的な角度範囲90°~108°において前記圧縮ばね(14)に一定の圧縮力が及ぶように、前記ピン(15)に向けられた側部に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項8の何れか一項に記載のジョイント。
【請求項10】
前記ピン(15)は、しっかりとまたは解放可能に前記圧縮ばね(14)に接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の前記ジョイント。
【請求項11】
眼鏡フレーム用のテンプルとのジョイントであって、
前記ジョイント(1)は、
フロント部(2)と、
テンプル部(3)と、そして
圧縮ばね要素(4)と、からなり、
前記フロント部(2)は、一側部に沿った内側において前に向かって開いた直方体からなり、前記開いた直方体の互いに対向する内側部(5)には、内方に向けられた短い回転軸(6)が配置されており、
前記テンプル部(3)は、保持ラグ(9)の形態に構成され、前記保持ラグ(9)は、前記フロント部(2)の前記開いた直方体に挿入可能に形成され、前記フロント部(2)の短い回転軸(6)にぶら下げ可能な前記保持ラグ(9)の対をなす2つの外面には、ヒンジフック(13)が凹部の形態で配置されており、
これにより、
前記フロント部(2)および前記テンプル部(3)は、連結式に接続可能であり、
前記テンプル部(3)が前記フロント部(2)の回転軸(6)に可動に固定されるように、前記フロント部(2)と前記テンプル部(3)との間に前記圧縮ばね要素(4)が配置されている、ジョイント。
【請求項12】
前記圧縮ばね要素(4)は、板ばねの形態、並びに/または、エラストマー部品および/もしくはゴム成形部品の形態であることを特徴とする、請求項1から請求項11の何れか一項に記載のジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューレスで弾力性のある眼鏡ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許発明第4339517号明細書は、グラス側の接続要素上に水平に回転可能に配置されたテンプルを有する眼鏡フレームを記載しているが、ジョイントの存在により、テンプルの垂直移動は依然として可能である。従来技術の欠点は、眼鏡テンプルが、開放状態でも閉止状態でも、固定位置に配置されないことである。さらに、ユーザがグラスを使用したい環境に応じて、眼鏡テンプルを固定するために調整可能なばね力を用いる必要がある。
【0003】
米国特許第658,537,2号明細書は、テンプルアームと眼鏡の支持体との間の接続構造を記載しているが、ここでは眼鏡アームの展開および折りたたみ移動型の特徴的な変化に対して適切な抵抗が生じ、これはテンプルアームによって生成される。
【0004】
特開2002-268017号公報は、テンプル接続構造の構成を開示しており、弾性ばね部材の復元力を利用するだけで、組立作業を改善して製造コストを低減し、内部にばね部材を組み付けるために円周端部分が大きく拡大するのを防止している。
【0005】
特開2013-148826号公報には、スナップイン構造による眼鏡のテンプル接続構造の構成が開示されているが、この構造および組立作業は簡単である。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0091237号明細書は、眼鏡フレームのための弾力性のあるジョイント要素を記載しており、このジョイント要素は、ハウジング内に配置されたキャリッジと、キャリッジの伸縮ばねと、を備えている。キャリッジは、フレームのガイドゾーンと共に動作し、ハウジングの外方に延出するジョイントを形成する端を有するガイド部分を含む。ばねは、キャリッジに統合されたリア止めとフロント止めとの間で、圧力下で動作する。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、ごく少数の部品からなり、ジョイント部品を工具なしで組み立てることを可能にする眼鏡ジョイントを提供することである。
【0008】
この課題は、主請求項の特徴を有する眼鏡ジョイントによって達成される。本発明による眼鏡ジョイントの有利な展開は、従属する副請求項において特徴付けられる。
【0009】
本願発明の目的は、眼鏡フレーム用のテンプルとのジョイントであって、前記ジョイントは、フロント部と、テンプル部と、そして圧縮ばね要素と、からなり、前記テンプル部は、一側部に沿った内側において前に向かって開いた直方体からなり、開いた直方体の対向する内側部には、内方に向けられた短い回転軸が配置されており、前記フロント部は、保持ラグの形態に構成され、前記保持ラグは、前記テンプル部の前記開いた直方体に挿入可能に形成されており、前記テンプル部の前記短い回転軸に吊り下げ可能な前記保持ラグの対をなす2つの外面には、ヒンジフックが凹部の形態で配置されており、これにより、前記フロント部および前記テンプル部は、互いにヒンジ接続可能であり、前記フロント部が前記テンプル部の前記回転軸に可動に固定されるように、前記フロント部と前記テンプル部との間に前記圧縮ばね要素が配置されている。
【0010】
前記テンプル部が前記テンプル部から前記眼鏡テンプルまで後方に延出するはめ込み本体を有し、前記インサート本体は前記眼鏡テンプルに挿入可能に形成されている、本発明によるジョイントが好ましい。ここで、前記インサート本体は、ばねハウジングを形成するためのキャビティを有し、前記テンプル部は、前記インサート本体の前記キャビティに前記テンプル部を介して前記圧縮ばね要素を挿入できるように、前記開いた直方体の後壁に穴を有することが、特に好ましい。
【0011】
前記フロント部が前記保持ラグの前部に配置されたベース板をさらに備える、本発明によるジョイントが、さらに好ましい。
【0012】
ここで、前記ベース板は、眼鏡テンプルが開いた状態で、前で開口している前記テンプル部の直方体側部を前記ベース板が覆うように形成されていることが、特に好ましい。
前記フレームを眼鏡グラスに固定するために設けられたベース板の前向きの側部に接続要素が配置されていることが、さらに特に好ましい。
【0013】
さらに、本発明による特に好ましいジョイントは、さらに前記保持ラグが、外側後部に半径を、内側後部に丸みを帯びた縁を、有するものである。
【0014】
さらに、前記圧縮ばね要素が圧縮ばねとピンとからなり、前記ピンが前記保持ラグの方向に配置されている、本発明によるジョイントが、特に好ましい。
【0015】
さらに、前記ピンに向けられた側部の前記保持ラグが、ジョイント部品の相対的な角度範囲90°~108°において前記圧縮ばねに一定の圧縮力が及ぶように形成されているジョイントが好ましい。
したがって、前記ピンに向けられた側部の前記保持ラグが、それによって前記フロント部と前記テンプル部との間の角度範囲0°~18°において前記圧縮ばねがもはや追加の弛緩を経験せず、よって前記テンプルが前に動かされる直前にサスペンションが無効となるとなるように形成されているジョイントも好ましい。
【0016】
本発明によってさらに好ましいのは、前記ピンが、しっかりとまたは解放可能に前記圧縮ばねに接続されている本発明によるジョイントである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、眼鏡フレーム用のテンプルとのジョイントであって、前記ジョイントは、フロント部と、テンプル部と、そして圧縮ばね要素と、からなり、前記フロント部は、一側部に沿った内側において前に向かって開いた直方体からなり、前記開いた直方体の互いに対向する内側部には、内方に向けられた短い回転軸が配置されており、前記テンプル部は、保持ラグの形態に構成され、前記保持ラグは、前記フロント部の前記開いた直方体に挿入可能に形成され、前記フロント部の短い回転軸にぶら下げ可能な前記保持ラグの対をなす2つの外面には、ヒンジフックが凹部の形態で配置されており、これにより、前記フロント部および前記テンプル部は、連結式に接続可能であり、前記テンプル部が前記フロント部の回転軸に可動に固定されるように、前記フロント部と前記テンプル部との間に前記圧縮ばね要素が配置されている。
【0018】
さらに、前記圧縮ばね要素が、板ばねの形態、並びに/または、エラストマー部品および/もしくはゴム成形部品の形態である、本発明によるジョイントが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付図面により、本発明をより詳細に説明する。
【
図2】本発明による眼鏡ジョイントの、ジョイント吊り下げ中の3つの状態位置における部分断面図
【
図4】本発明による眼鏡ジョイントの、長手軸に沿った3つの異なる配置位置における3つの上面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<定義>
本明細書に記載されている位置および方向の表示は、次のように理解されるべきである。
前:眼鏡の着用者の視野の方向。
後:(耳に向かって)前の反対の方向。
内側:頭側、着用者の体の中心に向かう方向。
外側:頭に面する、眼鏡着用者の体の中心から離れる方向。
ジョイント位置180°:テンプルが全開している。
ジョイント位置90°:テンプルが完全に折りたたまれている。
【0021】
本発明によるジョイントは、2つの画定された終了位置、すなわち開放位置と閉止位置とを有し、眼鏡テンプルが開閉されるとそこにカチッと嵌りこむ。これは、ばね付勢されたピンと非円形の走行表面との相互作用によって達成される。フロント側とテンプル側のジョイント部品、すなわちフロント部とテンプル部は、揺動軸をヒンジフックに吊るすことで、工具なしで組立および分解できる。
【0022】
プラスチックまたは金属製の眼鏡テンプルは、例えば、金属芯を含むか、または完全に金属からなることが好ましい。特に好ましいのは、プラスチック製テンプル内の金属芯である変形例であって、テンプルインサートと呼ばれる。
【0023】
圧縮ばね、好ましくはばね鋼製のスパイラルばねと、例えば金属やセラミック製の予め組み立てられたまたは緩く挿入されたピンとが、テンプルインサートの前部のばねハウジング内に移動可能に取り付けられる。ばねハウジングは、その外側に、周囲の眼鏡テンプルのプラスチックが滑り出るのを防ぐ棘その他の表面構造を有していてもよい。ばねハウジングの断面は、円形または多角形に形成されていてもよく、ねじれ防止装置として好ましい。
インサートは、ウォッシング-イン(washing-in)によって、例えば、振動もしくは加熱、射出成形、リベット留め、接着もしくはねじ込みによって、プラスチックテンプルに導入し固定できる。
【0024】
本発明によれば、圧縮ばねを板ばねの形態にもできることが、さらに意図される。エラストマーまたは成形ゴム部品の形態のばね要素も、好ましい。
【0025】
テンプルインサートの前端には、テンプル側ジョイント部品が取り付けられる。これは、金属射出成形による鋼製で、インサートに溶接または半田付けされることが好ましいが、インサートと一体に形成することもできる。ジョイント部品は、前および内側に開いたボックスからなり、この頂部と底部に2つの短い回転軸が置かれる。ボックス内前縁にはへこみがあり、組み立て時にジョイントに必要な移動の自由を与える。ボックスの後壁にはボアがあり、これを通してばね要素を取り付けたり取り外したりすることができる。軸の短さによって、これに十分なスペースが残される。
【0026】
フロント側ジョイント部品も、金属射出成形によって鋼から一体成形されることが好ましいが、フライス加工または押出/フライス加工によっても製造できる。眼鏡のフロントは、プラスチック製または金属製であってよい。熱可塑性プラスチック製のフロントが、特に好ましい。フロント側ジョイント部品は取付装置を有しており、これによってプラスチック製のフロントに挿入可能とされる。これは、熱間ウォッシングイン(hot washing in)、振動溶接、接着、リベット留め、またはねじ込みによって行うことができる。また、フロントの前側部にある別の金属部品にプレスすることもできる。特に好ましいのは、振動および圧力によるウォッシング-イン、いわゆるウォッシング-インファンガス(washing-in fungus)である。
【0027】
このウォッシング-インファンガスまたはリベットホルダまたは他の適当な取付装置は、ベース板上に配置されるが、これはプラスチック上のフロント側ジョイント部品の位置を画定し、深く沈み過ぎるのを防止することを意図したものである。ベース板は、テンプル側ジョイント部品止めとしても機能する。ベース板は、ジョイントの移動に必要ではないが、取り付け時にジョイントが意図せず分解されるのをあらゆるテンプル位置で防止する。
【0028】
ベース板にもまた、好ましくは保持ラグの形態のラグがあり、これはテンプル側ジョイントのボックスに収まると共に、後部の外側に半径を、後部の内側にわずかに丸みを帯びた縁を有している。組み立てられた状態では、縁がテンプル側ばね要素用の非円形の走行表面を形成する。ラグは、テンプル側ジョイント部品止めとしても機能する。ラグの上下側部には、テンプル部の軸ピン用ベアリングとして機能する外方に開いたフック形状がある。このフック形状により、差込み原理と同様に、工具なしでテンプルをフロントに取り付け可能となる。テンプルを、フロントに対して外側から内側に約45°の角度で移動させることにより、ばね付勢されたピンをフロント側ラグの内側でばねハウジングに押し込んで、軸を外側からフック内に動かすことができる。テンプルを離すと、ばね要素が軸をフック内に押し込み、180°から90°の角度でジョイントを開閉できる。これにより、ピンの角張った走行面が、45°のテンプル位置でフロントに対してこれを最も遠くに押し戻す。一方、90°と180°の位置では、ばねが最も弛緩する。これにより、テンプル移動の画定された終了位置に落ち着く。
本発明によるジョイントのさらなる実施形態では、108°から90°の角度範囲において、すなわちテンプルが完全に折り畳まれる直前に、フロントの方向にさらなる跳ね上げが起こらないことが意図される。この目的のため、保持ラグの走行面は、テンプルがフロントに対して停止する前に108°~90°の角度範囲でばね力がもはや内側には作用しなくなりギアレギュレーションのみが行われるように、成形される。したがって、ばねは、テンプルの進路の最後のセクションにおいて常に圧縮されたままとなる。この実施形態の利点は、スプリングによって及ぼされる、フロントおよびそれぞれの他方のテンプル上のテンプルの一定の圧力によって、プラスチックの変形および眼鏡全体の変形を、より長い期間にわたって熱の影響下で防止できることである。したがって、ばねがテンプルの進路の最後のセクションで常に圧縮されたままとなるため、フレームの望ましくない変形を防ぐことができる。
【0029】
ばね力、ひいてはテンプルのばね挙動は、圧縮ばねの可変長さ、コイル数、ワイヤ太さ、およびピンの長さによって変えることができる。したがって、ジョイントの挙動は、これを置き換えることなく変更できる。
【0030】
ジョイントは、テンプルを、フロントに対して前方かつ外方に約45°のテンプル対フロント角度で移動させることにより、工具なしで解体することもできる。これにより、ばね要素が時間の経過とともに摩耗した場合に、ばね要素の交換が可能である。摩耗を最小限とするため、少量のオイルまたはグリースを機構に注油することが推奨される。組み立て前にばねに厚くグリースを塗布することには、2つの望ましい利点がある。ばねハウジングが潤滑剤のポンプリザーバとして機能し、そして分解中にピンを含むばねが損失する可能性がグリースの粘度によって大幅に最小化される。
【0031】
本発明による構成により、最小構成高さ4mmの眼鏡ジョイントを実現できる。ただし、眼鏡のデザインによって、構成高さは自由に選択できる。さらなる最小化は、実用的なばね直径、並びに、ばねハウジングおよびそのプラスチック被覆の最小壁厚によって制限されるが、これは予測可能である。より大きな構成高さは、問題なく可能である。ジョイント部品は、研磨、PVDコーティング、または電気めっきによって仕上げることができる。本明細書では、主にプラスチック頂部への取付が望ましいことを記載しているが、テンプルの内側に移動したジョイント位置も実現でき、テンプルが開いているときに外側からジョイントが見えなくなり、テンプル構成高さの選択においても高度な柔軟性が許容される。
【0032】
本発明によれば、テンプル部は、好ましくはテンプルインサートを含めて、テンプルのプラスチックに完全に封入されることがさらに意図される。よって、ジョイントはもはや外側からは見えない。プラスチックは、酢酸塩、特に酢酸セルロース、またはポリアミド、特にレーザー焼結ポリアミド12であることが、特に好ましい。
【0033】
本発明によって好ましいのは、本発明による眼鏡ジョイントの眼鏡フレームへの取り付けの異なる実施形態である。本発明によるジョイントのフレームへの取り付けは、ウォッシングイン、リベット留め、ねじ込み、接着、ポッティング、プレスによって実施できる。眼鏡フレームのフロント構成要素が金属または合金で構成されている場合、ジョイントの取り付けは、溶接または半田付け、または金属材料を接合するための他の方法によって、実施してもよい。本明細書で言及する接合の方法およびプロセスはそれぞれ、例えばウォッシング-インファンガス、ねじドーム、接着ピンなどのように、ジョイントのフロント部の異なる最適な形状を必要とするものの、本発明によるジョイント機能とは独立して変えることができる。
【0034】
また、本発明によって好ましいのは、本発明による眼鏡ジョイントを、これも可変に形成できる眼鏡テンプルに取り付けるための異なる実施形態である。本明細書では、本発明によるジョイントのプラスチックテンプルまたはテンプル端へのウォッシング-イン、熱間リベット留め、熱間成形または圧入が好ましい。しかしながら、構成要素の接合は、接着、ねじ込み、リベット留め、ポッティング、プレスまたは他の公知の接合技術によっても行うことができる。眼鏡テンプルの構成要素が金属または合金製である場合、ジョイントの取り付けは、溶接または半田付け、または金属材料を接合するための他の方法によって行うことができる。さらに、本発明によれば、プラスチックテンプルでは、テンプルインサートをワイヤまたは板金の形態で形成し、本発明による眼鏡ジョイントのばねハウジングに直接接続することが意図される。本発明によれば、本発明による眼鏡ジョイントを有する金属テンプルを一体で製造し、このばねハウジングがテンプルインサートではなく金属テンプルに連なっていることが、さらに意図される。
【0035】
これまでに記載した構成要素の配置により、保持ラグがフロント側に取り付けられ、軸、ピン、およびばねがテンプル側アセンブリの方向に配置され、細長い渦巻ばねがテンプル本体に省スペースに配置される。しかしながら、本発明によれば、逆配向の構成要素もまた意図される。ばね要素を短くして広げることによって、または例えば板ばねまたはエラストマーもしくは成形ゴム部品の形態の異なるばねの概念を使用することによって、このばねの概念をフロント内に収容でき、したがって、本発明による眼鏡ジョイント全体を、逆の配置で取り付けできる。この構成もまた、本発明による眼鏡ジョイントの発明による一実施形態を表す。当業者には、構成部品のこの形態の配置は、構成部品が逆に配置された前述の実施形態から部分的に導くこともでき、この実施形態は、本説明からその全体を導くことができることは明らかである。
【0036】
以下の実施形態は、本発明の範囲を限定することなく本発明をより詳細に説明するものである。本発明およびその実施形態は、ここに添付の図を参照しつつより詳細に記載される。
【0037】
図1は、本発明による眼鏡ジョイント1の斜視分解図を示す。眼鏡ジョイント1は、フロント部2とテンプル部3とからなり、これらは互いに取付可能に形成されている。フロント部2は、取付装置12によって眼鏡のフロントに一体化でき、眼鏡テンプルの方向に配置された保持ラグ9を有している。保持ラグ9の対をなす2つの側面の外面には、ヒンジフック13が配置されている。ヒンジフック13は、例えば、保持ラグ9のそれぞれの側面にフライス加工できる。
【0038】
保持ラグ9の寸法は、ジョイント1のテンプル部3の中空体に保持ラグ9を挿入して引っ掛けることができるようなものとされている。フロント部2は、種々の目的を果たすベース板11をさらに備えている。ベース板11は、テンプル部3上で止め具として機能し、および/またはジョイント部品2,3の意図しない分解を防止できる。ジョイント1の2つ目の部品は、テンプル部3と称される。テンプル部3は、フロント部2を受容するための装置を有する。この受容装置は、内側が開口した直方体の形態に作製され、直方体の2つの側面、すなわちジョイントの組立状態においてフロント部2に面する前側部が完全に除去され、直方体の前側部からテンプルインサート10の方向に延出する長手側部が部分的に除去されており、直方体側面の残りの部分は、前方に向けられた側縁にへこみ8を備えている。有利には、反対側の直方体側面の角部は、開いた直方体内に保持ラグ9を吊り下げ可能とするために面取りされる。直方体の反対側面の内側面である直方体の内側部5には、短い回転軸6が配置されている。回転軸6は、ヒンジフック13の引っ掛けが可能な高さを有しているが、さらに、ジョイントの組み立て時には、ばね要素4を貫通させるのに互いに十分な距離を有する。テンプルインサート10にばね要素4を挿入するため、直方体の形態の受容装置は、テンプルインサート10に面する側部に開口(図示しない)を有する。そして、この開口は、テンプルインサートの一部であるばねハウジング7と空間的に接続されている。ばねハウジングは、ばね要素4がジョイントに必要なばね張力を及ぼすように、ばね要素4を収容する。
ジョイント1の3つ目の構成部品は、ばね要素4である。ばね要素4は、ジョイントの組み立て中にばねハウジング7に挿入される。そして、ばね要素4が、フロント部2の保持ラグ9にばね力を作用させ、短い回転軸6およびヒンジフック13をばね張力下におく。ジョイントの開放および閉止状態において、ばね要素4は弛緩状態にあるため、ばね力の低下は小さく保たれる。
【0039】
図2は、本発明による眼鏡ジョイントの、ジョイント吊り下げ中の3つの状態位置における部分断面を示す。ジョイント1を組み立てるには、まず、テンプル部1のばねハウジング7にばね要素4を挿入する。
図2aは、フロント部2の保持ラグ9が、テンプル部3の開いた直方体にどのように挿入されるかを示している。保持ラグ9は、ヒンジフック13の開いた側部が回転軸6に整合するように向けられる。同時に、保持ラグ9によってばね要素4に圧力が及ぼされ、ばね要素4が張力下におかれる。回転軸6がヒンジフック13に係合すると、
図2bに示すように、保持ラグ9は回転軸6の方向に横方向に変位する。
図2bには、回転軸6がヒンジフック13で囲まれ、フロント部2が移動可能に取り付けられ、取付装置12の上の矢印で示すように、ジョイントが開放状態に移行可能であることが示されている。ジョイントが開放状態にあるとき、ばね要素4は保持ラグ9の後端に寄りかかり、弛緩した状態となる。フロント部2を逆方向に動かすことによって、保持ラグ9がばね要素4に圧力を及ぼし、閉止状態に達すると、ばね要素4は弛緩して保持ラグの側壁に寄りかかる。
本明細書において、保持ラグの走行面は、108°~90°の角度範囲でテンプルがフロントに対して停止する前に、もはや内向きに作用するばね力がなくなってギア調整のみが行われるような形状とされることが、特に好ましい。
【0040】
したがって、
図2は、ジョイントの工具不要の組み立てを、構成要素、具体的にはフロント部2、ばね要素4、テンプル部3を接合することにより、どのように実行できるかを示している。
【0041】
図3は、本発明による眼鏡ジョイントの断面図を示す。ジョイント1は開放状態で示されている。フロント部2は、テンプル部3に取り付けられている。断面図であるため、回転軸とヒンジフックは示されていない。保持ラグ9は、ばね要素4に寄りかかっている。ばね要素4は、これ自体がいくつかの構成要素からなっている。最初に、圧縮ばね14が示されているが、これはピン15に寄りかかるか、或いは、強固にまたは着脱可能に接続されている。ピン15は、ジョイント移動中の摩耗を最小限に抑えるため、フロント部2および/または保持ラグ9と同じか、またはより低い硬度を有する材料からなることが好ましい。これにより、摩耗が大きすぎる場合に、必要に応じてピン15を交換可能となる。材料は、ニッケル銀、青銅、柔らかい鋼または低摩擦プラスチックから選択してもよい。ピン15の前方に向けられた部分を、半球の形状に丸めてもよい。本発明によれば、ピン15の前方に向けられた部分のみを前述の材料から選択することも意図される。しかしながら、本発明によれば、ピン15またはピン15の前方に向けられた部分をスライド可能なプラスチックで被覆することも意図される。ばね要素4は、ばねハウジング7に挿入されている。ばねハウジング7は、キャビティの形態であり、テンプルインサート10内部のボアの形態であることが好ましい。
さらに好ましい実施形態では、互いにスライド移動する構成要素、具体的には保持ラグ9と保持ラグ9に寄りかかるピン15の前部を、半球状または他の何らかの丸みを帯びた様式に形成できる。これにより、互いに対峙する表面の面積がより小さく形成されるため、摩擦が小さくなる。これによってもまた、構成要素間の摩擦効果を低減できる。
【0042】
図4には、本発明による眼鏡ジョイントの、長手軸に沿った3つの異なる位置における3つの図が示されている。
図4aは、開いているジョイントの側部領域の上面図を示す。ここでは、ベース板12の形状および寸法により、ジョイント自体は見えていない。
図4bは、開いているジョイントの上部または下部の領域それぞれの上面図を示す。ここでも、ジョイント自体は見えていない。保持ラグを受容する直方体の斜めの縁だけが見えている。プラスチックもしくはその他の材料へのテンプルインサートの取付性向上のための表面構造17が、ばねハウジングの外側に示されている。この表面構造17は、テンプルインサートを眼鏡テンプルに最適に固定するための任意の形状とすることができる。そして、
図4cには、開いた眼鏡ジョイントの内観図が示されている。本発明によるジョイントの個々の構成要素および特徴が、明確に示されている。
【符号の説明】
【0043】
1…眼鏡ジョイント
2…フロント部
3…テンプル部
4…ばね要素
5…直方体の内側部
6…回転軸
7…ばねハウジング
8…へこみ
9…保持ラグ
10…テンプルインサート
11…ベース板
12…取付装置
13…ヒンジフック
14…圧縮ばね
15…ピン
16…キャビティ/ボア
17…表面構造
【国際調査報告】