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特表2023-524267スプリット膨張式ヒートポンプサイクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】スプリット膨張式ヒートポンプサイクル
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20230602BHJP
   F25B 9/06 20060101ALI20230602BHJP
   F25B 11/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F25B1/00 331E
F25B1/00 396D
F25B9/06 K
F25B11/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566667
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 US2021026825
(87)【国際公開番号】W WO2021225755
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】16/867,447
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511312137
【氏名又は名称】エコージェン パワー システムズ(デラウェア), インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ヘルド
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ミラー
(57)【要約】
本開示は、ヒートポンプサイクルのT(Q)勾配の改善された整合を可能にするヒートポンプサイクルを提供する。より具体的には、高温熱交換が2つのステージに分離される。さらに、第1ステージで冷却された作動流体の一部は、熱交換器に入力するために加熱された作動流体と混合される前に、膨張によってさらに冷却される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプであって、
熱伝達源と、
熱伝達対象物と
作動流体を循環させるための閉鎖流体ループと、を備え、
該閉鎖流体ループは、
第1の状態の作動流体を受け取り、機械的仕事を通して前記作動流体の温度及び圧力を上昇させ、作動流体を第2の状態にする圧縮機と、
対向流熱交換器であって、
前記熱伝達対象物と熱的に連通している第1ステージであって、該第1ステージは前記第2の状態の前記作動流体を受け取り、受け取った作動流体からの熱を前記熱伝達対象物に伝達して、前記作動流体を第3の状態まで冷却する第1ステージと、
前記熱伝達対象物と熱的に連通する第2ステージであって、該第2ステージは前記第3の状態の前記作動流体の第1の部分を受け取り、前記第3の状態の前記作動流体の受け取った第1の部分からの熱を前記熱伝達対象物に伝達して、前記作動流体を第4の状態まで冷却する第2ステージと、を含む対向流熱交換器と、
第5の状態の前記作動流体を受け取り、該作動流体を第6の状態まで膨張させる低温膨張装置と、
前記熱伝達源と熱連通する低温熱交換器であって、該低温熱交換器は前記第6の状態の前記作動流体を受け取り、前記熱伝達源からの熱を前記第6の状態の前記作動流体に伝達して、前記作動流体を第7の状態まで加熱する、低温熱交換器と、
前記第3の状態の前記作動流体の第2の部分を受け取り、前記第3の状態の前記作動流体の受け取った第2の部分を第8の状態まで膨張させる高温膨張装置と、
復熱交換器であって、前記対向流熱交換器の前記第2ステージから受け取った前記第4の状態の作動流体からの熱を前記高温膨張装置から受け取った前記第7の状態の前記作動流体と前記低温熱交換器から受け取った前記第8の状態の前記作動流体との混合物に伝達し、それによって混合された前記作動流体を前記第1の状態まで加熱し、前記第4の状態の前記作動流体を前記第5の状態まで冷却する、復熱交換器と、
を備えるヒートポンプ。
【請求項2】
前記高温膨張装置及び前記低温膨張装置の少なくとも一方はタービン又はバルブを備える、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項3】
前記熱伝達源及び前記熱伝達対象物の少なくとも一方は、流体及び固体の少なくとも一方を含む熱伝達媒体を有する、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
前記流体は導管内を流れる、請求項3に記載のヒートポンプ。
【請求項5】
前記固体は固体の塊又は砂である、請求項3に記載のヒートポンプ。
【請求項6】
前記流体は、水、水/プロピレングリコール混合物、又は空気である、請求項3に記載のヒートポンプ。
【請求項7】
前記熱伝達媒体は、合成油熱伝達流体、水、又は砂である、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項8】
前記対向流熱交換器は、2つの単一ステージ熱交換器又は中間マニホルドを有する単一熱交換器を有する、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項9】
前記2つの単一ステージ熱交換器は同一サイズである、請求項8に記載のヒートポンプ。
【請求項10】
前記復熱交換器と低圧膨張装置との間に配置された補助熱交換器をさらに備え、復熱した作動流体の前記第2の部分が前記低温膨張装置によって受け取られる前に、該補助熱交換器は前記復熱交換器から復熱した作動流体の前記第2の部分からの熱を周囲環境に排出する、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項11】
前記作動流体は二酸化炭素である、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項12】
ヒートポンプであって、
熱伝達源と、
熱伝達対象物と、
作動流体を循環させるための閉鎖流体ループと、を備え、
該閉鎖流体ループは、
第1の状態の作動流体を受け取り、受け取った作動流体を第2の状態まで加熱及び圧縮する圧縮機と、
前記第2の状態の前記作動流体のスプリット膨張を実施する手段であって、該スプリット膨張は、部分的に冷却された第3の状態の前記作動流体の第1の部分を第8の状態まで膨張させることと、前記第3の状態の前記作動流体の第2の部分が、第4の状態まで冷却され、かつ第5の状態までさらに冷却された後に、部分的に冷却された第3の状態の前記作動流体の前記第2の部分を第6の状態まで膨張させる、手段と、
前記熱伝達源と熱連通する低温熱交換器であって、前記第6の状態の前記作動流体を受け取り、前記熱伝達源からの熱を前記第6の状態の前記作動流体に伝達して、前記作動流体を第7の状態まで加熱する、低温熱交換器と、
対向流熱交換器の第2ステージから受け取った前記第4の状態の前記作動流体からの熱を、高温膨張装置から受け取った前記第7の状態の前記作動流体と前記低温熱交換器から受け取った前記第8の状態の前記作動流体との混合物に伝達し、それによって混合された作動流体を前記第1の状態まで加熱し、前記第4の状態の前記作動流体を前記第5の状態まで冷却する復熱交換器と、
を備えるヒートポンプ。
【請求項13】
前記スプリット膨張を実施する手段は、
対向流熱交換器であって、
前記熱伝達対象物と熱的に連通している第1ステージであって、前記圧縮機から前記第2の状態の前記作動流体を受け取り、前記第2の状態の受け取った作動流体から熱を前記熱伝達対象物に伝達し、前記第2の状態の受け取った作動流体を部分的に冷却された第3の状態まで冷却する第1ステージと、
前記熱伝達対象物と熱的に連通する第2ステージであって、前記第1ステージから部分的に冷却された前記第2の状態の前記作動流体の第1の部分を受け取り、部分的に冷却された前記第2の状態の前記作動流体から熱を前記熱伝達対象物に伝達し、前記作動流体を2度冷却する第4の状態まで冷却する第2ステージと、を含む対向流熱交換器と、
復熱交換器から受け取った前記第5の状態の前記作動流体を第6の状態まで膨張させる低温膨張装置と、
前記対向流熱交換器の前記第1ステージから前記第3の状態の前記作動流体の第2の部分を受け取り、前記作動流体の受け取った第2の部分を前記第8の状態まで膨張させる高温膨張装置と、
を備える請求項12に記載のヒートポンプ。
【請求項14】
前記冷却ループは、前記第5の状態の前記作動流体の熱を前記復熱交換器から周囲環境に排除する、請求項13に記載のヒートポンプ。
【請求項15】
前記対向流熱交換器は、2つの単一ステージ熱交換器又は中間マニホルドを有する単一熱交換器を含む、請求項12に記載のヒートポンプ。
【請求項16】
閉鎖流体ループ内のヒートポンプサイクルであって、
温度及び圧力を第2の状態まで上昇させるために、第1の状態の作動流体を圧縮することと、
対向流熱交換器内で第2の状態の前記作動流体を冷却することであって、
第1ステージで前記第2の状態の前記作動流体を第3の状態まで冷却することと、
第2ステージで前記第3の状態の前記作動流体の第1の部分を第4の状態まで冷却すること、を含む前記作動流体を冷却することと、
第5の状態の前記作動流体を第6の状態まで膨張させることと、
第6の状態の前記作動流体を第7の状態まで加熱することと、
前記第3の状態の前記作動流体の第2の部分を第8の状態まで膨張させることと、
前記第7の状態の前記作動流体と前記第8の状態の前記作動流体とを混合することと、
前記第7及び第8の状態の前記作動流体の混合物を前記第1の状態まで加熱する一方、復熱交換器内で前記第4の状態の前記作動流体を前記第5の状態まで冷却することと、
を備えるヒートポンプサイクル。
【請求項17】
前記第1ステージは第1の熱交換器であり、前記第2ステージは第2の熱交換器である、請求項16に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項18】
前記第1ステージ及び前記第2ステージは、中間マニホルドを有する単一の熱交換器の部分を備える、請求項16に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項19】
前記第5の状態の前記作動流体を前記第6の状態まで膨張させる前に、周囲環境へ熱を排除することによって、前記第5の状態の前記作動流体を冷却することをさらに含む、請求項16に記載のヒートポンプサイクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月5日に出願された米国特許出願第16867447号の優先権を主張し、その継続であり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、本明細書で説明され、及び/又は以下で特許請求される技術のいくつかの態様に関連し得る、又は背景を提供し得る、当技術分野からの情報を紹介する。この情報は、本明細書に開示されるものより良い理解を容易にする背景情報である。これは、「関連する」技術の議論である。このような技術は、それが「先行技術」でもあることを意味するものでは決してない。関連技術は、従来技術であってもなくてもよい。この議論はこの観点から読まれるべきであり、従来技術の承認として読まれるべきではない。
【0003】
図1を参照すると、従来のヒートポンプサイクルでは、作動流体が比較的低温の低圧状態(状態2)から、より高い温度及び圧力(状態3)のうちの1つに圧縮される。次いで、この熱はその熱を受け取り、使用するか、又は貯蔵する熱伝達対象物HTRに伝達することができる。図1において、熱伝達対象物HTRはHTRcの条件で始まり、HTRhで貯蔵される。HTRを含む材料をHTRcからHTRhに加熱するプロセス中、作動流体は状態4に冷却される。
【0004】
作動流体からHTRに熱を伝達するプロセスは、対向流熱交換器内で行われる。この熱伝達処理は図2に示すような「TQ」(温度-熱流)グラフや図に示すように、作動流体として30MPaの圧力の超臨界二酸化炭素(「sCO」)を使用し、HTR媒体として硅砂を使用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態では、ヒートポンプが熱伝達源と、熱伝達対象物と、作動流体を循環させるための閉鎖流体ループとを含む。閉鎖流体ループは、圧縮機と、対向流熱交換器と、低温膨張装置と、低温熱交換器と、高温膨張装置と、復熱交換器と、をさらに含む。閉鎖流体ループのこれらの要素の各々は、閉鎖流体ループ内の作動流体に作用する。
【0006】
より具体的には、動作中、圧縮機は第1の状態で作動流体を受け取り、機械的仕事によって作動流体の温度及び圧力を上昇させて、作動流体を第2の状態にする。対向流熱交換器は、第1ステージ及び第2ステージを含む。第1ステージは熱伝達対象物と熱連通しており、第2の状態で圧縮機から作動流体を受け取り、受け取った作動流体から熱伝達対象物に熱を伝達して作動流体を第3の状態に冷却する。第2ステージは熱伝達対象物と熱連通しており、第1ステージから第3の状態の作動流体の第1の部分を受け取り、第3の状態の作動流体の受け取った第1の部分から熱伝達対象物に熱を伝達して、作動流体を第4の状態に冷却する。
【0007】
低温膨張装置は作動中、第5の状態の作動流体を受け取り、作動流体を第6の状態に膨張させる。低温熱交換器は熱伝達源と熱連通しており、第6の状態の作動流体を受け取り、熱伝達源からの熱を第6の状態の作動流体に伝達して作動流体を第7の状態に加熱する。高温膨張装置は対向流熱交換器の第1ステージから第3の状態の作動流体の第2部分を受け取り、受け取った作動流体の第2部分を第8の状態に膨張させる。復熱交換器は対向流熱交換の第2ステージから受け取った第4の状態の作動流体から、高温膨張装置から受け取った第7の状態の作動流体と低温熱交換器から受け取った第8の状態の作動流体との混合物に熱を伝達し、これにより、混合作動流体を第1の状態に加熱し、第4の状態の作動流体を第5の状態に冷却する。
【0008】
他の例では、ヒートポンプが熱伝達対象物と、熱伝達源と、作動流体を循環させるための閉鎖流体ループとを含む。閉鎖流体ループは、圧縮機と、作動流体のスプリット膨張を実施するための手段と、低温熱交換器と、復熱交換器とを含む。圧縮機は第1の状態で作動流体を受け取り、受け取った作動流体を第2の状態に加熱及び加圧する。第2の状態の作動流体のスプリット膨張を実施する手段は、第3の状態の作動流体の第2の部分が2回冷却された第4の状態にさらに冷却され、第5の状態にさらに冷却された後、第3の状態の作動流体の第1の部分を第8の状態に膨張させ、第3の状態の作動流体の第2の部分を第6の状態に膨張させる。低温熱交換器は熱伝達源と熱連通しており、第6の状態の作動流体を受け取り、熱伝達源から第6の状態の作動流体に熱を伝達して、作動流体を第7の状態に加熱する。復熱交換器は対向流熱交換器の第2ステージから受け取った第4の状態の作動流体からの熱を、高温膨張装置から受け取った第7の状態の作動流体と低温熱交換器から受け取った第8の状態の作動流体との混合物に伝達し、これにより、混合作動流体を第1の状態に加熱し、第4の状態の作動流体を第5の状態に冷却する。
【0009】
さらに他の実施形態では、本開示が閉鎖流体ループ内でヒートポンプを動作させるための方法であって、第1の状態の作動流体を圧縮して温度及び圧力を第2の状態に上昇させることと、対向流熱交換器内で第2の状態の作動流体を冷却することとを含む方法を説明する。対向流熱交換器における冷却は、第1ステージにおける第2の状態の作動流体を第3の状態に冷却することと、第2ステージにおける第3の状態の作動流体の第1の部分を第4の状態に冷却することとを含む。この方法は、第5の状態の作動流体を第6の状態に膨張させることと、第6の状態の作動流体を第7の状態に加熱することと、第3の状態の作動流体の第2の部分を第8の状態に膨張させることと、第7の状態の作動流体を第8の状態の作動流体と混合することと、第7及び第8の状態の作動流体の混合物を第1の状態に加熱する一方で、復熱交換器において第4の状態の作動流体を第5の状態に冷却することとをさらに含む。
【0010】
上記は本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。この概要は、本発明のすべてを概観するものではない。本発明の主要又は重要な要素を特定したり、本発明の範囲を詳細に記載したりすることを意図するものでもない。その唯一の目的は、後述する詳細な説明に先だって、概念の一部を簡潔に示すことにある。
【0011】
以下に開示される主題は、同様の参照番号が同様の要素を識別する添付の図面と併せて、以下の説明を参照することによって理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は従来のヒートポンプサイクルを採用した従来のヒートポンプの模式図である。
図2図2図1のヒートポンプサイクルの対向流熱交換器のT(Q)プロットである。
図3図3は、1のヒートポンプサイクルの熱容量対温度のプロットであり、作動流体及び熱伝達媒体の温度が変化するときの熱容量の変化を示す。
図4図4は、図1のヒートポンプサイクルの対向流熱交換器についての第2のT(Q)プロットであり、作動流体流量が熱伝達媒体流量に対して増加することにつれて、作動流体流量のさらなる増加が作動流体出口温度を低下させることができない点に達するまで、作動流体温度の変化率がどのように増加するかを示す。
図5図5は、以下に請求される主題の1つ以上の実施形態による、スプリット膨張式ヒートポンプサイクルを使用するスプリット膨張式ヒートポンプの模式図である。
図6図6は、1つの一定の実施形態における図5のヒートポンプサイクルの一定の点における作動流体の圧力-エンタルピー図である。
図7図7は、図5のヒートポンプサイクルの対向流熱交換器のT(Q)プロットである。
図8図8は、図5のヒートポンプサイクルにおける対向流熱交換器の第1ステージと第2ステージとの間で抽出されるフローの部分の機能としてのヒートポンプサイクルの性能係数(「COP」)のグラフである。
図9図9は、図5のスプリット膨張式ヒートポンプサイクルの第2の特定の実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示された技術は様々な修正及び代替形態が可能であるが、図面は例として詳細に本明細書に記載された特定の実施形態を示す。しかしながら、本明細書における特定の実施形態の説明は開示された特定の形態に特許請求されるものを限定することを意図するものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に入るすべての修正物、均等物、及び代替物を包含することを意図することを理解されたい。
【0014】
ここで、以下に説明される主題の例示的な実施形態が開示される。明確にするために、実際の実装のすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。任意のそのような実際の実施形態の開発において、システム関連及びビジネス関連の制約の遵守など、開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装固有の決定が行われなければならないことが理解されるのであろう。さらに、そのような開発努力は、複雑で時間がかかる場合であっても、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であることが理解されよう。
【0015】
図1及び図2に関して上述した従来のヒートポンプサイクルを再び参照すると、TQプロットにおけるTwf及びThtr曲線の勾配は、流体の流量及び熱容量(「cp」)によって決定される。これらの流体はいずれも、図3に示すように、熱交換器を介してそれぞれの温度が変化することにつれて、熱容量に著しい変化を示す。この変化は、図3において、T(Q)プロットにおける曲率として見ることができる。熱容量曲線が不整合であるため、作動流体からHTR媒体に伝達され得る熱の量が制限される。
【0016】
作動流体流量がHTR媒体流量に対して減少することにつれて、T(Q)プロットが図4に示されるように点400で交差するまで、Twf曲線の勾配は減少する。この交差点では、作動流体流量のさらなる減少が熱伝達プロセスが曲線の交差する点における流体間のゼロ付近の温度差のために、より速く進行することができないため、作動流体出口温度を減少させることができない。この現象は、しばしば「ピンチ」と呼ばれ、この場合、熱交換器の中央で生じる。
【0017】
ヒートポンプ性能は、このピンチ現象によって影響を受けるので、作動流体とHTR媒体T(Q)プロットの勾配を一致させることが有益であろう。熱容量は2つの材料の熱力学的特性であり、したがって、変化させることができないので、一方又は両方の材料の流量を変化させることによってのみ、T(Q)勾配を変化させることができる。また、HTR媒体の流量は図1に示される2つ以上の熱伝達対象物を制御することが困難であり、貯蔵することは、複雑であり、コストが非常に高くなる。
【0018】
本開示の技術はT(Q)勾配の改善された整合を可能にし、ヒートポンプサイクルの成果を改善するヒートポンプサイクルを提供する。より具体的には高温熱交換(例えば、図1の対向流熱交換器HTXにおいて生じる)は代わりに2つのステージに分離される。さらに、第1ステージで冷却された作動流体の一部は、膨張によってさらに冷却された後、熱交換器に入力するために加熱された作動流体と混合される。さらに他の実施形態では、さらに他の変形例を見ることができる。
【0019】
図5は、1つ又は複数の実施形態による、スプリット膨張式ヒートポンプサイクルを使用するヒートポンプ500の模式図である。ヒートポンプ500は、熱伝達源502と、熱伝達対象物504と、閉鎖流体ループ506とを含む。閉鎖流体ループ506は作動時に、熱伝達のために使用される作動流体を、以下でさらに説明する方法で循環させる。作動流体は例えば、二酸化炭素であり得る。議論中の閉鎖流体ループ506内の点に応じて、作動流体は閉鎖流体ループ506の動作の議論中に、「加熱作動流体」、「圧縮作動流体」、「冷却作動流体」などと呼ばれ得る。
【0020】
熱伝達源502は、他に示されていない熱伝達媒体を含む。熱伝達媒体は可変熱容量を有する可能性があるが、全ての実施形態がそのように限定されるわけではなく、流体又は固体であってもよい。流体の場合、熱伝達媒体は例えば、合成油熱伝達流体、水、又は砂であってもよい。熱伝達源502は実施形態に応じて、例えば、導管内を循環する流体であってもよい。熱伝達媒体が固体である場合、固体は例えば、リザーバ内に収容された固体の塊又は流動砂であってもよい。
【0021】
熱伝達対象物504は全ての実施形態がそのように限定されるわけではないが、可変熱容量材料(複数可)であり得る、他に示されない熱伝達媒体を含む。熱伝達媒体は、流体又は固体であってもよい。流体の場合、熱伝達媒体は例えば、合成油熱伝達流体、水、又は砂であってもよい。流体は例えば、導管内で循環させることができる。したがって、熱伝達対象物504は、導管内を循環する流体であってもよい。熱伝達媒体が固体である場合、固体は例えば、固体の塊又は砂であってもよい。
【0022】
図5の閉鎖流体ループ506は作動流体を循環させるものであり、復熱交換器508と、圧縮機510と、対向流熱交換器512と、低温膨張装置514と、低温熱交換器516と、高温膨張装置518とを含む。圧縮機510は動作時に、第1の状態の作動流体を復熱交換器508から受け取る。圧縮機510は、第1の状態の作動流体の温度及び圧力を機械的仕事によって第2の状態に上昇させる。圧縮機510は動作時に、閉鎖流体ループ506を通して作動流体を循環させるための原動力を提供する。
【0023】
対向流熱交換器512は第1ステージ538及び第2ステージ540を含み、これらは両方とも熱伝達対象物504と熱連通している。対向流熱交換器512は、実施形態に応じて様々な方法で実施することができる。例えば、いくつかの実施形態では対向流熱交換器512が2つの単一ステージ熱交換器で実施されてもよく、個々の単一ステージ熱交換器は第1ステージ538又は第2ステージ540のそれぞれ1つを実施する。他の実施形態では、対向流熱交換器512が中間マニホルドを有する単一の熱交換器であってもよい。本開示の利益を享受する当業者は、対向流熱交換器512の実施のさらに他の変形例を理解することができる。
【0024】
運用中、対向流熱交換器512の第1ステージ538は第2の状態の作動流体を受け取り、そこから熱を熱伝達対象物504に伝達して、作動流体を第3の状態に冷却する。第2ステージ540は第3の状態の作動流体の第1の部分544を受け取り、そこから熱を熱伝達対象物504に伝達して、作動流体を第3の状態から第4の状態に冷却する。
【0025】
ヒートポンプ500の性能係数(「COP」)を最大化する第3の状態において、作動流体の第1の部分544と第2の部分550との間に最適なフロースプリットがあることに留意されたい。これは図5のヒートポンプサイクルに対して図8から推測することができ、この文脈において「最適」は所与の量の熱を熱伝達対象物504に伝達するのに必要な正味仕事量によって定義される最大達成可能ヒートポンプ性能を指す。最適なフロースプリットは、熱伝達対象物504の作動流体及び熱伝達媒体の熱力学的特性(具体的には熱容量)の関数である。
【0026】
低温膨張装置514は動作時に、第5の状態の作動流体を復熱交換器508から受け取る。低温膨張装置514は、第1の状態の作動流体を減圧して温度を下げ、第6の状態に冷却する。低温膨張装置514は例えば、膨張弁又はタービンに実装されてもよい。
【0027】
低温熱交換器516は、熱伝達源502と熱連通している。作動時、低温熱交換器516は低温膨張装置514から第6の状態の作動流体を受け取り、作動流体を第7の状態に加熱する。
【0028】
対向流熱交換器512、低温膨張装置514、及び高温膨張装置518は例及び例示として、いくつかの実施形態では、第2の状態の作動流体のスプリット膨張を実施するための手段を形成し、スプリット膨張は第3の状態の作動流体の第2の部分が第4の状態にさらに冷却され、さらに第5の状態にさらに冷却された後に、部分冷却された第3の状態の作動流体の第1の部分を第8の状態に膨張させ、部分冷却された第3の状態の作動流体の第2の部分を第6の状態に膨張させることを含む。他の実施形態は、図5に開示された構成の変形例を含むことができる。そのような手段が列挙された機能を実施する構造的等価物において実施され得ることを理解されたい。
【0029】
高温膨張装置518は、第3の状態の作動流体の第2の部分550を受け入れる。高温膨張装置518は、第3の状態の作動流体の第2の部分550を膨張させて、その圧力及び温度を第8の状態に低下させる。高温膨張装置518は例えば、膨張弁又はタービンに実装されてもよい。
【0030】
さらに図5を参照すると、ヒートポンプ500は第7の状態の作動流体と第8の状態の作動流体との組合せ又は混合物526に、第4の状態の作動流体から熱を伝達する。これにより、第4の状態の作動流体は第5の状態に戻され、混合物526は第1の状態に戻る。次いで、第1の状態の作動流体を圧縮して、上述のように温度及び圧力を上昇させる。
【0031】
より詳細には、復熱交換器508が動作時に、対向流熱交換器512から第4の状態の2回冷却された作動流体と、低温熱交換器516から第7の状態の作動流体と高温膨張装置518から第8の状態の作動流体との混合物526とを受け取る。復熱交換器508における熱伝達は第4の状態の作動流体を第5の状態に戻し、混合物526を第1の状態にする。
【0032】
ヒートポンプ500は、作動流体のスプリット膨張を実施する。本明細書で使用するとき、「スプリット膨張」は作動流体の一部が第1ステージ熱交換で部分的に冷却された後に膨張し、作動流体の残りが、第1ステージ熱交換と第2ステージ熱交換の両方で冷却された後に膨張する特徴を指す。したがって、図5では、第1の部分544及び第2の部分550が両方とも、そのようなスプリット拡張で拡張される。第1の部分544は、第1ステージ538及び第2ステージ540の両方において熱交換され、次いで、低温膨張装置514によって膨張される。第2の部分550は高温膨張装置518によって膨張される前に、熱伝達の第1ステージ538においてのみ冷却される。したがって、ヒートポンプ500内の作動流体は、「スプリット膨張」を受ける。
【0033】
以下に説明される主題のさらなる理解のために、1つの特定の実施形態がここで開示される。図6は、1つの一定の実施形態における図5のヒートポンプ500のヒートポンプサイクルの一定の地点における作動流体の圧力-エンタルピー図である。この特定の実施形態では、作動液は二酸化炭素(CO2)である。熱伝達対象物512の熱伝達媒体は砂である。
【0034】
ヒートポンプサイクル500は図5のヒートポンプ500と同様に、高温熱交換を2つのステージ538、540に分割する。この特定の実施形態では2つのステージ538、540は2つの同様のサイズのステージで実装される。「同様のサイズ」は、加熱ステージの加熱伝導率を指す。一般に「UA」と呼ばれる熱伝導率は、平均熱伝達係数(「U」)と熱伝達面積(「A」)との積である。他の実施形態における2つのステージ538、540の相対的なサイズは、サイズが異なってもよく、一方が他方よりも大きい。ステージ538、540の特定のサイズは作動流体の相対的な熱力学的特性(例えば、熱容量)及び熱伝達対象物504の熱伝達媒体に応じて設計プロセス中に選択することができる。
【0035】
第2の状態の作動流体は圧縮機510から流出し、第1ステージ538に流入する。第1ステージ538では、第2の状態の作動流体の温度が、第1ステージ538が熱伝達対象物504内の熱伝達媒体の加熱を完了することにつれて低下する。次いで、一旦冷却された作動流体542の第1の部分544は、第3の状態で第2ステージ540に進む。
【0036】
第3の状態の一旦冷却された作動流体の第1の部分544は、熱伝達媒体が加熱されている間、熱伝達対象物504の熱伝達媒体によって第2ステージ540でさらに冷却される。第3の状態にある作動流体のこの第1の部分544は、次いで、第4の状態に冷却され、第4の状態にある2回冷却された作動流体524となる。第4の状態の2回冷却された作動流体は、別の加熱器内の圧縮機510の入口511の前に作動流体に戻すことができる有用な温度の熱を依然として含有することができる。この他の加熱器は、復熱交換器508である。
【0037】
回復された作動流体532は依然として高圧である(すなわち、図6の状態5)。次に、第5の状態の作動流体は、弁又は低温タービン(「LTタービン」)のいずれかであり得る低温膨張装置514を介して膨張される。このプロセスは、第5の状態の作動流体の温度を大幅に低下させ、それによって、第6の状態の作動流体を生成する。
【0038】
低温膨張装置514における温度低下は、第2の状態の作動流体が熱伝達源502から熱を受け取ることを可能にする。熱伝達源502の熱伝達媒体は、合成油熱伝達流体、水、又は砂である。このとき、第6の状態の作動流体(CO2)は、液体又は液体/水蒸気のいずれかである。熱は、低温熱交換器516内の作動流体に伝達される。この熱伝達により作動流体が蒸発し、第7の状態の作動流体が生成される。そして、第7の状態の作動流体は、第8の状態の作動流体と混合される。次に、第7の状態の作動流体と第8の状態の作動流体との混合物526は再度圧縮される前に、復熱交換器508において第1の状態にさらに加熱される。
【0039】
一旦冷却された第3の状態の作動流体の第2の部分550は、第1ステージ538と第2ステージ540との間で抽出され、本実施形態では高温タービンである高温膨張装置518を通して膨張される。高温膨張装置518では、作動流体がチャージ圧縮機510を動作させるのに必要な仕事を相殺することができるシャフト仕事を生成する。次に、第8の状態で得られた作動流体は図5に示されるように、低温熱交換器516の下流及び復熱交換器508の上流の一次流体流に混合して戻される。
【0040】
ヒートポンプサイクル500における対向流熱交換器512のT(Q)プロットを図7に示すが、約70% Q/Qtotにおける勾配の変化は作動流体の約34%が第1ステージ538と第2ステージ540との間で抽出された点700である。ヒートポンプ500のためのヒートポンプサイクルの性能係数(「COP」)は第1ステージ538と第2ステージ540との間で抽出されるフローの部分の機能として図8に示されており、この一連の条件及び仮定について、COPの改善はほぼ10%である。
【0041】
図5の実施形態に関して上述したように、膨張する作動流体の割合に「最適」スプリットがある。この比率は図7に示すように、作動流体温度曲線の傾きと熱伝達媒体温度曲線とがほぼ一致するように設定されているが、これらの曲線の勾配は流体の質量流量と流体の熱容量との積に反比例する(すなわち、勾配~1/(m cp))ことを想起すると、この勾配の一致をもたらす対対向流熱交換器の各段における作動流体のおおよその流量を計算することができる。
【0042】
図9は、いくつかの実施形態において見出され得るいくつかの変形例を示すヒートポンプ900の模式図である。ヒートポンプ900の一部は図5のヒートポンプ500と共通であり、同様の部品は同様の番号を有する。一変形例では、対向流熱交換器912が第1ステージ938及び第2ステージ940を画定する中間マニホルド939を有する単一の熱交換器内に実装される。一旦冷却された作動流体542の第2の部分550は、中間マニホルド939から出される。第2の変形例では、加熱側922が復熱交換器508と低圧膨張装置514との間に配置された補助熱交換器950を含む。補助熱交換器950は第2の部分546が低温膨張装置514によって受容される前に、回復された作動流体532の第2の部分546から周囲環境へ熱を排除する。本開示の恩恵を受ける当業者は、さらに別の変形形態を理解することができる。
【0043】
以下に請求される開示されたヒートポンプサイクルは加熱された流体(例えば、熱伝達媒体)が最も実用的な流体を包含する作動流体(例えば、CO)の熱容量対温度カーブと実質的に異なる熱容量対温度カーブを有する、任意のヒートポンプ用途に適用可能性を有する。例えば、DURATHERM HF(登録商標)又はDOWTHERM(登録商標)のような市販の熱伝達流体の熱容量は、砂の場合と同様の温度依存性に従う(温度と共にcpを増加させる)。
【0044】
以上が詳細な説明である。上記で開示された特定の実施形態は例示的なものに過ぎず、特許請求される主題は本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかに異なるが同等の方法で修正及び実施され得る。更に、ここに記載した構成又は設計の詳細が、添付の特許請求の範囲以外によって限定されることない。したがって、上記で開示された特定の実施形態は変更又は修正され得、すべてのそのような変形は特許請求の範囲及び趣旨の範囲内であると見なされることが明白である。したがって、ここに保護を請求する対象は、添付の特許請求の範囲に記載したとおりである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】