(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】コロナウイルス感染を予防および処置する化合物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/357 20060101AFI20230602BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230602BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20230602BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230602BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230602BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A61K31/357
A61P31/14
A61K31/575
A61P11/00
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566726
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 US2021029840
(87)【国際公開番号】W WO2021222534
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521007665
【氏名又は名称】アージル・バイオテック・ホールディング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Arjil Biotech Holding Company Limited
(71)【出願人】
【識別番号】521230986
【氏名又は名称】ウー,イェー ビー
【氏名又は名称原語表記】Wu, Yeh B.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ジャー-メン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イェー ビー
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホイ ジュー
(72)【発明者】
【氏名】リン,ペイ-シン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ウェイ-チョン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB40
4C086DA11
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、抗コロナウイルス化合物に関する。本開示には、ウイルス、特にSARS-COV-2中のシステインプロテアーゼの阻害を介してコロナウイルス感染を予防および/または処置する方法が含まれる。また、コロナウイルス感染を予防および/または処置するための組成物/医薬組成物であって、化合物、その薬学的に許容できる塩、またはそれらの混合物を含む組成物/医薬組成物、および該化合物の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス感染を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の化合物またはその薬学的に許容できる塩、またはそれらの混合物を含む医薬組成物を投与することを含み、前記化合物は、
(1)式:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
[式中、R
1は、O、α-OHまたはβ-Hであり;R
2は、HまたはOHであり;R
3は、O、α-H、β-OH、β-OAcまたはH
2であり;R
4は、HまたはOHであり;R
5は、H、OHまたはORxであり;R
6は、COORxまたはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;R
7は、H、Oh、ORxまたはOAcであり;R
8は、CH
3またはCOORxであり;R
21は、CH
3、COORx、またはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;点線は、単結合または二重結合を示し、Rxは、HまたはC
1-8アルキルである」
で示される化合物;および
(2)式:
【化6】
[式中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、X
1およびX
2はそれぞれ、H、OH、C
1-8アルキル、NRx、SRx、ORx、ピラゾリン、システイン、グルタチオン、ハロゲン、COORx、またはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;Y
1、Y
2、Z
1、Z
2、W
1およびW
2はそれぞれ、H、OH、C
1-8アルキルであり、あるいは、X
1およびX
2は一緒になって、-O-を形成し、あるいは、Y
1およびY
2、Z
1およびZ
2、または、W
1およびW
2は一緒になって、エポキシを形成する]
で示される化合物、
からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
式(I)で示される化合物が、式:
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
で示される化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(II)で示される化合物が、式:
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
で示される化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
化合物が、式:
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
で示される化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)およびSARS-COV-2からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
コロナウイルスが、SARS-COV-2である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
化合物が、ウイルスにおけるシステインプロテアーゼを阻害するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの追加の抗ウイルス治療物質を投与することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ウイルスにおけるシステインプロテアーゼを阻害することを介してウイルス感染を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に化合物もしくは薬学的に許容できる塩、またはそれらの混合物を含む組成物/医薬組成物を投与することを含み、化合物は、ウイルスにおけるシステインプロテアーゼを阻害するのに有効な量の、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩またはそれらの混合物である、方法
【請求項10】
ウイルス感染を処置または予防するための組成物/医薬組成物であって、ウイルスにおけるシステインプロテアーゼを阻害するのに有効な量の、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩またはそれらの混合物を含む組成物/医薬組成物。
【請求項11】
ウイルスが、RNA依存性ウイルスである、請求項10に記載の組成物/医薬組成物。
【請求項12】
RNA依存性ウイルスが、コロナウイルスである、請求項11に記載の組成物/医薬組成物。
【請求項13】
コロナウイルスが、SARS、MERSまたはSARS-CoV-2である、請求項12に記載の組成物/医薬組成物。
【請求項14】
コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項12に記載の組成物/医薬組成物。
【請求項15】
ウイルスにおけるシステインプロテアーゼを阻害することを介してウイルス感染を予防または処置するための医薬を製造するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩またはそれらの混合物の使用。
【請求項16】
ウイルスが、RNA依存性ウイルスである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
RNA依存性ウイルスが、コロナウイルスである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
コロナウイルスが、SARS、MERSまたはSARS-CoV-2である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月1日出願の米国仮特許出願63/018,690の優先権を主張し、これの全内容は引用により本明細書に包含される。
【0002】
本発明は、コロナウイルス感染、特に、SARS-COV-2による疾患を予防および処置する、いくつかの抗コロナウイルス化合物および方法および組成物/医薬組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
世界保健機関(WHO)によると、2002年11月1日から2003年6月18日までの重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生により、29か国以上で801人が死亡し、世界中で8465人の可能性例が報告された(Chen et al., 2005)。プラス・センスの一本鎖RNAを含むエンベロープβコロナウイルスであるSARSは、約30kbのゲノムサイズを有し、その読み取り枠(ORF)1aおよび1bはそれぞれ、2つのポリタンパク質(pps)pp1aおよびpp1abをコードしている(Hegyi et al., 2002; Needle et al., 2015)。そのライフサイクルを完了するには、複製およびタンパク質分解性のプロセシングの成功が不可欠である(Herold et al., 1998)。実際、ウイルスがコードするタンパク質分解性のこれらタンパク質の共通する機能が、すべてのコロナウイルス、特にパプリン様プロテアーゼ(PLpro)およびキモトリプシン様プロテアーゼ(3CLpro)に見出される(Herold et al., 1998)。pp1aとpp1abのタンパク質分解性のプロセシングにおいて、PLproと3CLproはそれぞれ、最初の3箇所と残りの11の位置を切断し、合計16個の非構造性タンパク質(nsp1-16)を与える(Hegyi et al.、2002; Needle et al.、2015)。このように、3CLpro阻害は、抗SARS薬の発見および開発における分子的アプローチを提供するとみなされている(Chen et al., 2005; Jo et al., 2020)。
【0004】
SARS-COV-2は、中国武漢の重症肺炎患者から同定されて以来、急速に広がった新型コロナウイルスであり(COVID-19と命名)、25カ国で報告され、2020年2月17日の時点で世界で約72000例の検査確定症例と1775名の死者を出している(Coronavirus disease 2019 (Covid-19) Situation Report - 28, 2020; Li & De Clercq, 2020)。ヒトコロナウイルスを処置する薬物またはワクチンがまだ承認されていないのは、絶望的である(Li & De Clercq, 2020)。現在のSARS-CoV-2の発生とSARSおよびMERS(別のβコロナウイルス)の治療経験に関して、多くの研究では、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびインフルエンザ感染に使用されている既存の抗ウイルス薬をSARS-CoV-2の処置または介入に用いる可能性を広範囲に検討している(De Clercq & Li, 2016; Li & De Clercq, 2020)。一方、SARS-CoV-2は、SARSやMERSと同様のエンベロープ型陽方向一本鎖RNAβコロナウイルスとして特徴づけられている(Li & De Clercq, 2020)。コロナウイルスの特徴と一致して、SARS-CoV-2ゲノムは、構造タンパク質(例えば、スパイク糖タンパク質)、非構造タンパク質(例えば、3CLpro、PLpro、ヘリカーゼ、RNA依存性RNAポリメラーゼ)、および付属タンパク質をコードする。SARS-COV-2、SARSおよびMERSの利用可能なゲノム配列に関して、タンパク質分解部位およびタンパク質分解酵素の高レベル保存が見出されたため、SARS-COV-2の処置のためにSARSおよびMERSプロテアーゼ阻害物質を転用することを検討する価値がある(Liu et al., 2020)。3CLproはSARSにおいて極めて重要な役割を果たしているため、SARS-COV-2のPLproではなく3CLproを標的としてライフサイクルを遮断することによってプロテアーゼを阻害する手法を採るのは合理的である(Chen et al., 2005; Jo et al., 2020; Liu et al., 2020)。
【0005】
現在、アルコール依存症を処置する薬として認可されているジスルフィラムは、細胞培養においてMERSとSARSのPLproを阻害することが報告されているが、まだ臨床的な評価はされていない(Li & De Clercq, 2020)。さらに、HIVプロテアーゼ阻害物質(ロピナビルおよびリトナビル)のSARS-CoV-2患者における臨床試験も開始されているが、SARS-CoV-2のものを効果的に阻害できるかどうかは不明であり、これは、HIVとβコロナウイルスのプロテアーゼはそれぞれアスパラギンプロテアーゼファミリーとシステインプロテアーゼファミリーに属しているからである(Li & De Clercq, 2020; Zumla et al., 2016)。他方で、HIV処置に承認されているRNAポリメラーゼ阻害物質のヌクレオチド類似体であるレムデシビルは、現在、SARS-CoV-2患者において2020年4月の終了予定で臨床試験を実施中であり;HCV処置の早期臨床試験中のRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害物質の別のヌクレオチド類似体であるガリデシビルは、前臨床試験において重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)に対して幅広い抗ウイルス活性を示した(Wang et al. , 2020; Zumla et al., 2016)。しかし、ヌクレオシド類似体は、まだ我々の知識を超えた毒性を誘発することができると予想される(Feng, 2018)。
【0006】
ヒトのコロナウイルス感染を予防または処置するワクチンまたは抗ウイルス薬はまだ見出されていない。特にSARS-COV-2に対する安全な抗コロナウイルス療法の探索と開発が急務である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、予想外にも、いくつかのトリテルペンがコロナウイルス感染、特にSARS-COV-2の阻害に有効であることを見出した。
【0008】
1つの目的において、本発明は、コロナウイルス感染を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に、化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含み、化合物は、
式:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
[式中、R
1は、O、α-OHまたはβ-Hであり;R
2は、HまたはOHであり;R
3は、O、α-H、β-OH、β-OAcまたはH
2であり;R
4は、HまたはOHであり;R
5は、H、OHまたはORxであり;R
6は、COORxまたはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;R
7は、H、Oh、ORxまたはOAcであり;R
8は、CH
3またはCOORxであり;R
21は、CH
3、COORx、またはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;点線は、単結合または二重結合を示し、Rxは、HまたはC
1-8アルキルである]
で示される化合物;および
式:
【化6】
[式中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、X
1およびX
2はそれぞれ、H、OH、C
1-8アルキル、NRx、SRx、ORx、ピラゾリン、システイン、グルタチオン、ハロゲン、COORx、またはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;Y
1、Y
2、Z
1、Z
2、W
1およびW
2はそれぞれ、H、OH、C
1-8アルキルであり、あるいは、X
1およびX
2は一緒になって-O-を形成するか、またはY
1およびY
2、Z
1およびZ
2、またはW
1およびW
2は一緒になってエポキシを形成する」
で示される化合物、
からなる群から選択される方法を提供する。
【0009】
本発明のいくつかの特定の例において、化合物は、
式:
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
で示される化合物から選択される。
【0010】
さらなる一態様において、本発明は、コロナウイルス感染、特にSARS-COV-2を処置および/または予防するための組成物/医薬組成物であって、治療有効量の本明細書に開示されるいずれかの化合物もしくはその薬学的に許容できるもの、またはそれらの混合物を薬学的に許容できる担体と組み合わせて含む組成物/医薬組成物を提供する。
【0011】
場合により、本発明による組成物/医薬組成物は、少なくとも1つの追加の抗ウイルス治療物質を含んでいてもよい。
【0012】
さらなる1態様において、本発明は、コロナウイルス感染、特にSARS-COV-2を予防および/または処置するための医薬を製造するための、本明細書に開示されるいずれかの化合物もしくはその薬学的に許容できる塩またはそれらの混合物の使用を提供する。
【0013】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものに過ぎず、本発明を制限するものではないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
前述の概要、および本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本発明を説明する目的で、現在好ましいとされる実施態様が図面に示されている。
【0015】
図において、
【0016】
【
図1】
図1は、AR100-DS1、AR101 DS1、AR101 DS2、AR101 DS3、AR101 DS4の濃度20μMでの阻害プロファイルを示す。*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001。
【0017】
【
図2】
図2Aは、AR101 DS2(0.5p/5FP)の相対3CLpro活性(%)、IC50=39μMを示す。
【0018】
【
図2】
図2Bは、AR101 DS2(0.125p/1.25FP)の相対3CLpro活性(%)、IC50=15.82μMを示す。
【0019】
【
図2】
図2Cは、AR101 DS3(0.5p/5FP)の相対3CLpro活性(%)、IC50=14.61μMを示す。
【0020】
【
図2】
図2Dは、AR101 DS3(0.5p/5FP)の相対3CLpro活性(%)、IC50=11.06μMを示す。
【0021】
【
図2】
図2Eは、AR101 DS3(0.125p/1.25FP)の相対3CLpro活性(%)、IC50=11.7μMを示す。
【0022】
【
図3】
図3は、AR100 DS1(0.125p/1.25FP)の相対3CLpro活性(%)、IC50=21.31μMを示す。
【0023】
本発明の詳細な説明
上記の本発明の概要を、以下の実施例の実施態様を参照してさらに説明する。ただし、本発明の内容は、以下の実施態様にのみ限定されるものと解すべきではなく、上述した本発明の内容に基づく発明は、全て本発明の範囲に属するものである。
【0024】
本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、他に定義されない限り、この発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「試料」への言及は、当業者に知られている複数のそのような試料およびその等価物を含む。
【0026】
本発明では、ハイスループットでのタンパク質分解プロセシング阻害に対する探索薬物の効果を評価するために、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対で標識された合成ペプチドを、以前の研究で使用されたものと同様に使用し、ここで、フルオロフォアは、FRET標識ペプチドの切断時に放出され、リアルタイムでモニタリングできる蛍光シグナルを生成する(Chen et al., 2005; Jean et al., 1995; Jo et al., 2020)。本発明において、本明細書に開示されるいずれかの化合物またはその混合物が、システインプロテアーゼ、特にSARS-CoV-2の3CLproの阻害に有効であることが確認される。
【0027】
本発明は、コロナウイルス感染、特にSARS-COV-2を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に、化合物もしくはその薬学的に許容される塩またはそれらの混合物を、それを必要とする対象に投与することを含み、化合物は、
(1)式:
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
[式中、R
1は、O、α-OHまたはβ-Hであり;R
2は、HまたはOHであり;R
3は、O、α-H、β-OH、β-OAcまたはH
2であり;R
4は、HまたはOHであり;R
5は、H、OHまたはORxであり;R
6は、COORxまたはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;R
7は、H、Oh、ORxまたはOAcであり;R
8は、CH
3またはCOORxであり;R
21は、CH
3、COORx、またはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;点線は、単結合または二重結合を示し、Rxは、HまたはC
1-8アルキルである]
で示される化合物;および
(2)式:
【化18】
[式中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、X
1およびX
2はそれぞれ、H、OH、C
1-8アルキル、NRx、SRx、ORx、ピラゾリン、システイン、グルタチオン、ハロゲン、COORx、またはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;Y
1、Y
2、Z
1、Z
2、W
1およびW
2はそれぞれ、H、OH、C
1-8アルキルであり、あるいは、X
1およびX
2は一緒になって-O-を形成するか、あるいは、Y
1およびY
2、Z
1およびZ
2、またはW
1およびW
2は一緒になってエポキシを形成する]
で示される化合物、
からなる群から選択される、方法を提供する。
【0028】
本発明はまた、コロナウイルス感染、特にSARS-COV-2感染を予防および/または処置するための組成物/医薬組成物であって、治療有効量の本明細書に開示される化合物またはその混合物および薬学的に許容できる担体を含む組成物/医薬組成物を提供する。
【0029】
一実施態様、化合物は、
(1)式:
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
[式中、R
1は、O、α-OHまたはβ-Hであり;R
2は、HまたはOHであり;R
3は、O、α-H、β-OH、β-OAcまたはH
2であり;R
4は、HまたはOHであり;R
5は、H、OHまたはORxであり;R
6は、COORxまたはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;R
7は、H、Oh、ORxまたはOAcであり;R
8は、CH
3またはCOORxであり;R
21は、CH
3、COORx、またはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり;点線は、単結合または二重結合を示し、Rxは、HまたはC
1-8アルキルである]
で示される化合物;および
(2)式:
【化24】
[式中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、X
1およびX
2はそれぞれ、H、OH、C
1-8アルキル、NRx、SRx、ORx、ピラゾリン、システイン、グルタチオン、ハロゲン、COORx、またはCOO(CH
2)n-CH
3であり;nは、0~3の整数であり、Rxは、HまたはC
1-8アルキルであり;Y
1、Y
2、Z
1、Z
2、W
1およびW
2はそれぞれ、H、OH、C
1-8アルキルであり、X
1およびX
2は一緒になって-O-を形成するか、あるいは、Y
1およびY
2、Z
1およびZ
2、またはW
1およびW
2は一緒になってエポキシを形成する]
で示される化合物、
からなる群から選択される。
【0030】
本発明の例において、式(I)で示される化合物は、
【化25】
【表1】
であり得る。
【0031】
本発明の別の例において、式(I)で示される化合物は、
【化26】
【表2】
であり得る。
【0032】
本発明のさらなる1つの例において、式(I)で示される化合物は、
【化27】
【表3】
であり得る。
【0033】
本発明のさらなる例において、式(I)で示される化合物は、
【化28】
【表4】
であり得る。
【0034】
本発明の特定の1つの例において、式(I)で示される化合物は、ラノスタン:
【化29】
であり得る。
【0035】
さらに、式(II)で示される化合物は、
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
またはその誘導体、例えば
【化42】
であり得る。
【0036】
したがって、好ましい化合物は、
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
からなる群から選択される。
【0037】
本発明によれば、最も好ましい化合物は、
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
からなる群から選択される。
【0038】
本発明特定の1つの例において、式(II)で示される化合物は、
【化68】
である。
【0039】
本明細書で使用する用語「コロナウイルス」とは、オーソコロナウイルス亜科、コロナウイルス科、ニドウイルス目、リボウイルス領域のコロナウイルスであり、陽方向一本鎖RNAゲノムおよびらせん対称のヌクレオカプサイドを有するエンベロープ型ウイルスであることを意味する。それらは、表面から突き出ている特徴的なこん棒形のスパイクを有し、電子顕微鏡写真では名前の由来である太陽コロナを思わせるような像を産生する。コロナウイルスは、ヒトを含む哺乳動物や鳥類に病気を引き起こす。ヒトでは、感冒、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、SARS-COV-2などの呼吸器感染症の原因となる。
【0040】
本明細書で使用する用語「システインプロテアーゼ」とは、チオールプロテアーゼを意味し、触媒三残基または二残基(duad)に求核性のシステインチオールが含まれる共通の触媒機構を共有する、タンパク質を分解する酵素である。ウイルスにおけるシステインプロテアーゼの一例として、SARS-COV-2中の3CLproが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用する用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」または「処置(treatment)」とは、疾患、疾患の症状もしくは状態、または疾患の進行に罹患した対象に、疾患、疾患の症状もしくは状態、疾患によって誘発される障害、または疾患の進行を治療、治癒、軽減、緩和、改変、回復、改善、または影響する目的で、1つまたはそれ以上の活性物質を含む組成物を適用または投与することを意味すす。
【0042】
本明細書で使用する用語「予防する(prevent)」、「予防(prevention)」又は「予防する(preventing)」とは、対象におけるウイルス感染、その1つまたはそれ以上の症状、コロナウイルス感染に関連する、またはそれによって増強される、またはそれを増強する呼吸器状態の再発、発症または進展を予防することを意味する。
【0043】
本明細書で使用する用語「対象」には、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、など)、または実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)が含まれる。
【0044】
本明細書で使用する用語「治療有効量」とは、そのような量を投与されていない対応する対象と比較して、疾患、障害、または副作用の処置、治癒、予防もしくは改善における効果、または疾患もしくは障害の進行速度の減少する医薬の量を意味する。また、この用語は、正常な生理学的機能を増強するのに有効な量もその範囲に含まれる。
【0045】
治療に使用するために、治療有効量の化合物は、投与のための医薬組成物として製剤化される。従って、本発明は、治療有効量の本明細書に開示されるいずれかの化合物またはそれらの混合物、および1つまたはそれ以上の薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0046】
送達および吸収の目的のために、本発明による治療有効量の活性成分は、薬学的に許容できる担体と共に適当な形態で医薬組成物に製剤化され得る。投与経路に基づいて、本発明の医薬組成物は、活性成分の総重量に対して、好ましくは0.1重量%~100重量%で構成される。
【0047】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容できる担体」とは、製剤の他の成分と適合し、医薬組成物を投与される対象に対して劇的に変化しないという意味で、許容できる担体(複数可)、希釈剤(複数可)または賦形剤(複数可)を意味する。本発明では、医薬製剤の要件に応じて、当該分野で一般的に知られているか、または使用されている任意の担体、希釈剤または賦形剤を使用することができる。前記担体は、活性成分に対する希釈剤、ビヒクル、賦形剤、またはマトリックスであってもよい。適切な賦形剤のいくつかの例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルボース、マンノース、デンプン、アラビヤゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩類、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが含まれる。組成物は、滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油;湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;防腐剤、例えば、メチルヒドロキシベンゾエートおよびプロピルヒドロキシベンゾエート;甘味剤;および風味剤をさらに含んでいてもよい。
【0048】
本発明の組成物は、患者への投与後、活性成分の迅速、継続、または遅延放出といった効果を提供することができる。本発明によれば、医薬組成物は、経口、直腸、経鼻、局所、膣、または非経腸経路(例えば、筋肉内、静脈内、皮下、および腹腔内)、経皮、坐薬、および鼻腔内方法を含むがこれらに限定されない任意の適切な経路による投与に適合させることが可能である。
【0049】
非経腸投与に関しては、好ましくは無菌水溶液の形態で使用され、その水溶液が血液に対して等張となるように十分な塩類やグルコースなどの他の物質を含んでいてもよい。この水溶液は、必要に応じて適宜緩衝化(好ましくはpH値3~9)されていてもよい。無菌条件下での適切な非経腸組成物の調製は、当業者によく知られた標準的な薬理学的技術によって達成することができる。
【0050】
本発明の特定の一例において、医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。そのような製剤は、薬学の技術分野で知られている任意の方法によって調製することができる。本発明によれば、前記組成物の形態は、錠剤、丸剤、粉末、ロゼンジ、パケット、トローチ、エリクサー、懸濁液、ローション、溶液、シロップ、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル、坐薬、滅菌注射液、包装された粉末であってもよい。
【0051】
本発明における方法および組成物/医薬組成物は、ウイルス、特にRNA依存性ウイルスにおけるシステインプロテアーゼの阻害を介してウイルス感染の処置に有効である。従って、本発明はまた、ウイルスにおけるシステインプロテアーゼの阻害を介してウイルス感染を処置および/または予防する方法および組成物/医薬品組成物であって、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を用いることを含む、方法および組成物/医薬品組成物を提供する。
【0052】
反応性を有する例示的なウイルスとしては、コロナウイルスおよびHIVが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ウイルス感染症は、コロナウイルスである。より好ましくは、ウイルス感染症は、SARS、MERSおよびSARS-COV-2である。
【0053】
別の態様において、本発明は、ウイルスにおけるシステインプロテアーゼを阻害することを介してRNA依存性ウイルス感染を処置または予防する方法を提供する。ウイルスの一例としては、RNA依存性ウイルス、例えば、SARS、MERSおよびSARS-COV-2;特にSARS-COV-2が挙げられる。
【0054】
さらなる一態様において、本発明は、ウイルスにおけるシステインプロテアーゼを阻害することを介してウイルス感染を処置および/または予防するための組成物/医薬組成物であって、本明細書に開示されるいずれかの化合物、その薬学的に許容できる塩、またはそれらの混合物を含む組成物/医薬組成物を提供する。場合により、組成物/医薬組成物は、少なくとも1つの追加の抗ウイルス治療物質を含んでいてもよい。
【0055】
さらなる一態様において、本発明は、ウイルスにおけるシステインプロテアーゼを阻害することを介してウイルス感染を処置または予防するための医薬の製造のための、本明細書に開示されるいずれかの化合物の使用を提供する。
【0056】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは限定ではなく実証の目的で提供されるものである。
【実施例】
【0057】
材料および方法
【0058】
I. SARS-CoV-2 3CLproを用いたFRETプロテアーゼアッセイ
【0059】
ED-FRETプラットフォームの構築は、Joら(2020)が示したプロトコルに従うものである。簡潔には、末端にDABCYLとEDANSを有するカスタムタンパク質分解性蛍光性ペプチド、DABCYL-TSAVLQSGFRKMG-EDANS(ジェノミックス、台湾)は、SARS-CoV-2の3CLproによって認識され得るコンセンサスnsp4/nsp5切断配列を含む。このペプチドを蒸留水に溶解し、SARS-CoV-2の3CLproとインキュベートする。スペクトルベースの蛍光の測定は、TECANにより提供されるのSPARK(登録商標)マルチモードマイクロプレートリーダーで測定する。タンパク質分解活性は、37℃で、ペプチド加水分解時のEDANSの蛍光強度を時間の関数として測定し、λ励起=340nm、λ発光=490nm、バンド幅=9, 15nmでそれぞれ測定したものである。アッセイに先立ち、試験薬の340nm励起時の発光波長を調べ、EDANSの発光スペクトルと重ならないことを確保する。
【0060】
アッセイは、SARS-CoV-2の3CLproとカスタマイズしたペプチドを含む100μLのアッセイ緩衝液中で、黒の96-ウェルマイクロプレート(Greiner)で3回行う。SARS 3CLproアッセイでは、50mM Tris pH6.5を含む1μM SARS-CoV-2 3CLproを5μM蛍光基質とともに37℃で3時間インキュベートしてから相対蛍光単位(RFU)を測定する。
【0061】
II. 本発明による化合物の存在下での阻害アッセイ
【0062】
20μM(n=3)での第一スクリーニングにおいて、5つの例示化合物(AR100-DS1、AR101-DS1、AR101-DS2、AR101-DS3、およびAR101-DS4)が存在していた。この5つの化合物を下表に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【0063】
まず、SARS-CoV-2 3CLproとArjil薬物を混合し、37℃で1時間プレインキュベートする。SARS-CoV-2の3CLproに対して阻害活性を示すものは、さらに異なる濃度で調べ、そのIC50値の特徴を、GraphPad Prism 7.03(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて検討した。
【0064】
SARS-CoV-2の3CLproに関する知識と配列に基づき、本発明による化合物の3CLpro阻害効果をインビトロで評価し、SARS-CoV-2処置におけるその治療可能性を決定した。SARS-CoV-2感染を処置する薬物やワクチンはまだ承認されていないため、SARS-CoV-2に対抗する広域抗ウイルス物質の開発は最も重要かつ緊急の課題である。ED-FRET技術とそのワークフローを導入することで、実験室での強固でハイスループットな薬物発見を提供する。一方、本発明による5つの例示化合物からSARS-CoV-2 3CLpro阻害物質を同定することは、臨床評価において可能な治療用量のガイドラインとして作用し、将来的には特許出願を促し、これは、抗ウイルスライブラリ構築に寄与する。
【0065】
III. 結果
【0066】
1. SARS-CoV-2の3CLpro阻害物質の同定
【0067】
本発明による5つの例示化合物の効能を測定するために、SARS-CoV-2の3CLpro、IQFペプチド基質および例示化合物をそれぞれ、0.5μM、5μMおよび20μMで構築したED-FRETプラットフォームにおいてインキュベートした。
図1に示すように、5つの例示化合物はいずれも、SARS-CoV-2の3CLproにおけるペプチド開裂活性を実質的に阻害した。これら5つの例示化合物のうち、AR101 DS2およびAR101 DS3は、20μMで最も高い阻害効果を示した。特に、AR101 DS3は3時間処理後SARS-CoV-2 3CLproを約50%の割合で阻害し、他方、AR101 DS2は同条件で40%阻害したことから、これらは、SARS-CoV-2のポリタンパク質プロセッシングサイクルに対抗する可能性があることが示唆された。
【0068】
2. 阻害物質の最大半量の阻害濃度の特徴づけ
【0069】
AR100-DS1、AR101 DS1、AR101 DS2、AR101 DS3、およびAR101 DS4の20μM濃度での阻害プロファイルを測定し、
図1に示した。
図1に示すように、0μM~200μMの範囲の指定濃度で化合物を処理することにより、SARS-CoV-2 3CLproに対する最大半量の阻害濃度(IC)を特徴づけた。AR101 DS2およびAR101 DS3のIC50値は、
図2A~2Eに示した。
図2Aに示すように、AR101 DS2は、0.5μM SARS-CoV-2 3CLproおよび5μM IQFペプチド基質(FP)の存在下で39μMのIC50値を有していた。一方、0.125μM AR101 DS2のSARS-CoV-2 3CLproおよび1.25μM IQFペプチド基質(FP)に対する0.125μM AR101 DS2の阻害率を測定したところ(
図2B参照)、SARS-CoV-2に対するAR101 DS2のIC50値は15.82μMであった。AR101 DS3のIC50値については、0.5μM SARS-CoV-2 3CLproおよび5μM IQFペプチド基質において14.61μMで50%SARS-CoV-2 3CLpro阻害に達し(
図2C参照)0.25μM SARS-CoV-2 3CLproおよび2.5μM IQFペプチド基質では11.06μMであり(
図2D参照)、または、125μM SARS-CoV-2 3CLproおよび1.25μM IQFペプチド基質では11.7μMであった(
図2E参照)。
【0070】
AR100 DS1のIC50値は、
図3に示した。AR100 DS1は、0.125μM SARS-CoV-2 3CLproおよび1.25μM IQFペプチド基質の存在下で21.31μMのIC50値を示した。
【0071】
以上のことから、AR100 DS1、AR101 DS1、AR101 DS2、AR101 DS3およびAR101 DS4を含む全ての例示化合物は、SARS-CoV-2 3CLproに対する阻害効果を有することが確認され、特にAR100 DS1、AR101 DS2およびAR101 DS3はSARS-CoV-2に対する治療可能性を強調するものであった。
【0072】
上記で引用した全ての出版物、特許、特許文献は、個別に引用することにより本明細書に包含される。
【0073】
本発明は、様々な具体的かつ好ましい実施態様および技術を参照して説明した。しかしながら、当業者であれば、本発明の精神および範囲内に留まりながら、多くの変形及び修正を行うことができることを理解するであろう。
【0074】
参考文献
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