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特表2023-524276全能性幹細胞から間葉系幹細胞を分化させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】全能性幹細胞から間葉系幹細胞を分化させる方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230602BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20230602BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20230602BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20230602BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0735
C12N5/0775
A61K35/545
A61P29/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P3/10
A61P37/02
A61P25/00
A61P11/00
A61P21/00
A61P17/00
A61P1/04
A61P9/00
A61P1/16
A61P37/06
A61P19/08
A61P19/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566733
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 KR2021005767
(87)【国際公開番号】W WO2021225420
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0054455
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518056140
【氏名又は名称】コングク ユニバーシティ インダストリアル コーオペレーション コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ,サング
(72)【発明者】
【氏名】アブダル ダイエム,アメド
(72)【発明者】
【氏名】イ,スビン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BC41
4B065BC47
4B065BC50
4B065BD15
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB61
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA65
4C087NA05
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA68
4C087ZA75
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、全能性(pluripotent)幹細胞から間葉系幹細胞を製作する方法及びその方法で製作された間葉系幹細胞に関する。本発明は、全能性幹細胞、特に、誘導万能幹細胞(iPSC)を出発細胞として3次元浮遊培養とこれを通じて形成された細胞凝集体の付着培養を逐次的に行うことにより、固有の生物学的活性がより優れながらも優れた増殖率を有する間葉系幹細胞を高い収率で得ることができる。さらに、本発明の方法により製作された間葉系幹細胞は、骨及び軟骨への高い分化効率を示しながら優れた炎症抑制活性を有するので、骨疾患、軟骨疾患又は炎症及び自己免疫疾患などの治療用の組成物として有用に用いられることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む全能性(pluripotent)幹細胞から間葉系幹細胞を製作する方法:
(a)対象から分離された全分化能幹細胞を培養して胚様体(EB:Embryoid Body)を形成する段階;
(b)前記胚様体を微小重力(microgravity)下の物反応器中で三次元培養してスフェロイド(spheroid)を形成する段階;及び
(c)前記スフェロイドを培養表面に粘着性高分子がコーティングされた培養容器で付着培養して間葉系幹細胞に分化させる段階。
【請求項2】
前記デンプン化能幹細胞は、胚性幹細胞(ESC:Embryonic Stem Cell)又は誘導多能性幹細胞(iPSC:induced Pluripotent Stem Cell)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デンプン化能幹細胞は誘導万能幹細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記段階(a)は、前記全分化能幹細胞をマルチウェル培養容器中で三次元培養することによって行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記段階(a)は、前記三次元培養時に遠心分離によって細胞凝集を誘導する段階をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記段階(b)の微小重力は、前記生物反応器を回転させることによって、前記生物反応器に加えられる重力を相殺する微小重力シミュレーターによって誘発されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記段階(b)は、前記微小重力シミュレーターを40~80rpmで回転させながら3~8日間培養することによって行われることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記段階(b)は、前記微小重力シミュレーターを40~60rpmから始まり、毎日5rpmずつ増加させながら回転させることによって行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粘着性ポリマーは、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginate)、ヘパリン(heparin)、フコイダン(fucoidan)、セルロース(cellulose)、デキストラン(dextran)、キトサン(chitosan)、アルブミン(albumin)、フィブリン(fibrin)、コラーゲン(collagen)及びゼラチン(gelatin)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記粘着性ポリマーはゼラチンであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法で製作した間葉系幹細胞。
【請求項12】
請求項11に記載の間葉系幹細胞を有効成分として含む骨又は軟骨疾患治療用の組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の間葉系幹細胞を有効成分として含む炎症性疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用の組成物。
【請求項14】
前記自己免疫疾患又は炎症性疾患は、リウマチ関節炎、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、特発性繊維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、局所皮膚硬化症、全身皮膚硬化症、大腸炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、レイノ現象(Raynaud’s phenomenon)、ベーチェット病(Bechet’s disease)、川崎病(Kawasaki’s disease)、原発性胆汁性硬化症(primary biliary sclerosis)、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative olitis)、移植片対宿主病(GVHD:Graft-versus-host disease)又はクローン病(Crohn’s disease)であることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小重力下で三次元培養及び付着培養を逐次的に行うことによって全能性幹細胞から間葉系幹細胞を分化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト胚性幹細胞(hESCs:human embryonic stem cells)及び誘導多能性幹細胞(iPSCs:induced pluripotent stem cells)を含むヒト全能性幹細胞(hPSCs:Human pluripotent stem cells)は、様々な形態の体細胞に分化できる能力を維持しながら、無限に増殖することができる。これらの細胞は、細胞治療及び再生医療において、無制限に細胞源を提供することにより、価値を高く評価されており、再生しようとする組織に適した形態の細胞に特異的に分化させるための様々な分化誘導方法、分化細胞の分離方法及び未分化細胞の除去方法に対する研究が活発に行われている。
【0003】
一方、骨髄で最初に確認された間葉系幹細胞(MSC:Mesenchymal stem cells)は、再生医療において大きな潜在性を有する全能性細胞である。間葉系幹細胞は、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋肉細胞及び線維芽細胞などの様々な種類の間葉系統に分化することができ、免疫調節活性を有することによって、移植促進剤、胎児移植(fetal graft)及び宿主疾患などの様々な自己免疫、炎症性疾患の治療用組成物剤として使用することができる(Le Blanc Kなど、Lancet,363(9419):1439-1441,2004;El-Badri N.Sなど、Exp Hematol,26 (2):110-116,1998)。間葉系幹細胞は、骨髄、脂肪組織、臍帯血、末梢血、新生児組織、胎盤などの様々な人体組織から分離することができるが、成人組織から得ることができる間葉系幹細胞の数には限界があり、間葉系幹細胞を分離するには侵襲的な手順が必要なので、ドナーに予想外の危険を及ぼす可能性がある。したがって、本発明者らは、全能性幹細胞から治療有効量の間葉系幹細胞を効率的に得る方法を開発することによって、再生医療における治療用の幹細胞の細胞確保のための新しい代案を提示しようとした。
【0004】
本明細書の全体にわたって多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示は、その全体として参照により本明細書に組み込まれて、本発明が属する技術分野のレベル及び本発明の内容をより明確に説明する。
【0005】
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1)特許文献1 韓国出願第10-2011-0107237号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、全分化能幹細胞から臨床的に有用性に優れた間葉系幹細胞を効率的に分化する方法を開発するために鋭意研究努力した。その結果、全分化能幹細胞を浮遊培養して得られた胚様体を人工的に誘導された無重力又は微小重力下の三次元培養器で培養することによりスフェロイドを形成し、これを再び粘着性高分子がコーティングされた培養容器で付着培養する場合、組織の再生及び免疫調節の活性など固有の薬理効果がより優れながら、増殖率も優れた間葉系幹細胞を高い収率で得ることができることを見出すことにより、本発明を完成することになった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、全能性(pluripotent)幹細胞から間葉系幹細胞を製作する方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、本発明の方法で製作された間葉系幹細胞及びそれを有効成分として含む骨疾患、軟骨疾患、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的及び利点は、以下の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、本発明は、以下の段階を含む全能性幹細胞から間葉系幹細胞を製作する方法を提供する:
【0013】
(a)対象から分離された全分化能幹細胞を培養して胚様体(EB:Embryoid Body)を形成する段階;
【0014】
(b)前記胚様体を微小重力(microgravity)下の生物反応器中で三次元培養してスフェロイド(spheroid)を形成する段階;及び
【0015】
(c)前記スフェロイドを培養表面に粘着性高分子がコーティングされた培養容器で付着培養して間葉系幹細胞に分化させる段階。
【0016】
本発明者らは、全分化能幹細胞から臨床的に有用性に優れた間葉系幹細胞を効率的に分化させる方法を開発するために鋭意研究努力した。その結果、全分化能幹細胞を浮遊培養して得られた胚様体を人工的に誘導された無重力又は微小重力下の三次元培養器で培養することによりスフェロイドを形成し、これを再び粘着性高分子がコーティングされた培養容器で付着培養する場合、組織の再生や免疫調節の活性など固有の薬理効果がより優れながら増殖率に優れた間葉系幹細胞を高い収率で得ることができることを見出した。
【0017】
本明細書において、「幹細胞(stem cell)」という用語は、組織を構成する各細胞に分化される前の段階の未分化細胞であり、特定の分化刺激(環境)下で特定の細胞に分化できる能力を有する細胞を総称する。幹細胞は、細胞分裂が停止した分化細胞とは異なり、細胞分裂により自分と同じ細胞を産生(self-renewal)することができ、分化刺激が加えられると、刺激の性格に応じて様々な細胞に分化できる、分化の柔軟性(plasticity)を有していることが特徴である。
【0018】
本発明で用いられる幹細胞は、幹細胞の特性、すなわち、未分化、無限増殖及び特定細胞への分化能を有して再生しようとする組織に分化誘導が可能な細胞であれば制限なく利用されることができる。
【0019】
本発明の具体的な具現例によれば、本発明で使用される幹細胞は間葉系幹細胞である。
【0020】
本明細書における「間葉系幹細胞」という用語は、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、神経細胞、心筋細胞への分化が可能な多分化能を有する幹細胞を意味する。間葉系幹細胞は、渦巻き状の形態と基本的な細胞表面マーカーCD73(+)、CD105(+)、CD34(-)、CD45(-)の発現度によって識別されることができ、多分化能とともに免疫応答を調節する機能も持つ。
【0021】
本明細書における「全能性幹細胞(pluripotent stem cell)」という用語は、受精卵よりも発生が進行した状態の細胞であり、内胚葉、間葉及び外胚葉を構成する細胞に全て分化できる幹細胞を意味する。本発明の具体的な具現例によれば、本発明で使用される全能性幹細胞は、胚性幹細胞(ESC:Embryonic Stem Cell)、胚性生殖細胞(Embryonic Germ Cell)、胚性腫瘍細胞(Embryonic Carcinoma Cell)又は誘導万能幹細胞(iPSC:induced Pluripotent Stem Cell )であり、より具体的には、胚性幹細胞又は誘導万能幹細胞であり、最も具体的には、誘導万能幹細胞である。
【0022】
本明細書における「誘導万能幹細胞」という用語は、非全分化能細胞(例えば、体細胞)に未分化又は全分化能の表現型に関連する特定の遺伝子を挿入することにより人工的に由来する全分化能幹細胞の一つである。誘導万能幹細胞は、幹細胞遺伝子及びタンパク質の発現、染色体のメチル化、倍加時間(doubling time)、胚様体の形成、テラトマの形成、生存性キメラの形成、交雑性及び分化性を有するという点で、胚性幹細胞のような天然の全分化能幹細胞と同じ表現型、生理学的特性及び発生学的特性を有すると当業界で考えられている。
【0023】
本明細書における「幹細胞の分化」という用語は、未分化状態の幹細胞から特定の細胞に完全に分化が誘導された場合だけでなく、幹細胞から特定の細胞に完全に分化される前の中間段階で形成される前駆体(precursor)細胞の形成も含む。
【0024】
本発明の各段階で使用される細胞培養液は、糖、アミノ酸、様々な栄養物質、ミネラルなどのような細胞の成長及び増殖に必須の要素を含む、インビトロにおける細胞の成長及び増殖のための混合物である。細胞培養用の培地にさらに含まれ得る成分は、例えば、グリセリン、L-アラニン、L-アルギニン塩酸塩、L-システイン塩酸塩-一水和物、L-グルタミン、L-ヒスチジン塩酸塩-一水和物、L-リシン塩酸塩、L-メチオニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-バリン、L-アスパラギン-一水和物、L-アスパラギン酸、L-シスチン2HCl、L-グルタミン酸、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-チロシン二ナトリウム塩二水和物、i-イノシトール、チアミン塩酸塩、ナイアシンアミド、ピリドキシン塩酸塩、ビオチン、D-パントテン酸カルシウム、葉酸、リボフラビン、ビタミンB12、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(NaHPO-HO)、硫酸銅五水和物(CuSO-5HO)、硫酸第二鉄-七水和物(FeSO-7HO)、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(MgSO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO-7HO)、D-グルコース(デキストロース)、ナトリウムピルベート、ヒポキサンチンNa、リノレン酸、リポ酸、プトレシン2HCl及びチミジンを含むが、これらに限定されない。
【0025】
本発明による細胞培養用の培地は人工的に製造して使用することができ、あるいは市販されているものを購入して使用することができる。市販されている培養用の培地の例は、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、α-MEM(Alpha Modification of Eagle’s Medium)、F12(Nutrient Mixture F-12)及びDMEM/F12(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12)を含むが、これに限定されない。
【0026】
本発明の具体的な具現例によれば、前記段階(a)は、前記全分化能幹細胞をマルチウェル(multi-well)培養容器で三次元培養することによって行われる。
【0027】
本明細書において、用語「三次元培養」は、二次元培養に相対する概念であり、培養対象細胞を基質(substrate)等に固定せずに培養液内で浮遊(floating)した状態で培養することを言う。したがって、用語「三次元培養」は、「浮遊培養」と同じ意味として使用される。付着依存性の幹細胞は浮遊培養時に細胞凝集を起こし、このような凝集に含まれず、単独で浮遊する細胞は細胞死(apoptosis)を誘発して死滅するので、細胞はその付着特性に合う環境を形成しなければならない。本発明によれば、複数のウェルを有するマルチウェルで全能性幹細胞を浮遊培養することにより、ウェルサイズに応じた直径の全能性幹細胞凝集体、すなわち、胚様体(EB:Embryoid Body)がウェルの数に比例して形成される。したがって、本発明の段階(a)では、同じ大きさ及び形状を有する標準化された胚様体を大量に得ることができる。
【0028】
より具体的には、前記マルチウェル培養容器は、ウェル当たり350μm×350μm~450μm×450μmの大きさを有するマイクロウェルプレートである。
【0029】
本発明の具体的な具現例によれば、前記浮遊培養は、前記マルチウェル培養容器内のウェル当たり0.5×10~1.5×10個の細胞を株分けすることによって行われる。より具体的には、0.7×10~1.3×10個の細胞を、最も具体的には、0.9×10~1.1×10個の細胞を株分けする。
【0030】
より具体的には、前記段階(a)は、前記浮遊培養時に遠心分離によって細胞の凝集を誘導する段階をさらに含む。
【0031】
本明細書における用語「細胞凝集」は、単層ではなく、三次元成長が許容される浮遊培養などの環境で培養された細胞が自己組立て(self aggregation)をしながら三次元構造の細胞凝集塊を形成することを意味する。三次元培養の結果として得られる細胞凝集体は、幹細胞が由来するインビボ組織と同様の環境を提供し、大きさ及び自己集合された細胞の数に応じて球形であっても球形以外の形態であってもよい。
【0032】
本発明の具体的な具現例によれば、前記段階(b)の微小重力は、前記生物反応器を回転させることによって前記生物反応器に加えられる重力を相殺する微小重力シミュレーターによって導かれる。
【0033】
本明細書における「微小重力」という用語は、重力が存在しないか、測定可能なレベル未満でのみ存在するか、又は重力による生物学的及び生理学的影響が観察されない程度にのみ存在することを意味し、具体的には、1×10g以下の環境を意味する。したがって、「微小重力」という用語は、「無重力」としても表現することができる。
【0034】
本明細書における用語「微小重力シミュレーター(microgravity simulator)」は、正常重力環境又は有意な重力が存在する環境内で人為的に重力を相殺することによって微小重力環境を誘導する装置をいう。このような微小重力シミュレーターとしては、例えば、クリノスタット(Clinostat)、RPM(Random positioning machine)、RWV(Rotating wall vessel)などがあるが、これらに限定されず、適当な外力の付加を介した本発明の生物反応器内の培養環境で指定された時間だけ重力を相殺できる装置であれば、制限なく使用することができる。
【0035】
本発明の具体的な具現例によれば、本発明の微小重力シミュレーターはクリノスタットである。クリノスタットは生物反応器のような培養容器に結合されてランダムにあるいは指示(入力)されたパターンに従って連続的に方向を変えながら回転して、絶えず三次元姿勢を変えることにより、重力方向の連続的な変動を引き起こし、これを通じて重力を相殺する装置である。
【0036】
【0037】
本発明の具体的な具現例によれば、前記段階(b)は、前記微小重力シミュレーターを40~80rpmで回転させながら3~8日間培養することにより行われ、より具体的には、4~7日間、最も具体的には、5日間培養する。
【0038】
より具体的には、前記段階(b)は、前記微小重力シミュレーターを40~60rpmから始まり、毎日5rpmずつ増加させながら回転させることによって行われる。最も具体的には、50rpmから始まり、毎日5rpmずつ増加させながら5日間培養する。
【0039】
本明細書における「生物反応器(bioreactor)」という用語は、生物学的活性を有する培養環境を形成するための培養空間と、それと連動して動作する一連の機械装置を含む生物学的試料の培養装置又はシステムを意味する。
【0040】
本発明によれば、本発明の方法の段階(b)では、段階(a)で生成した胚様体を微小重力下の生物反応器で3次元培養することにより、スフェロイドを形成する。スフェロイドは球状の細胞凝集体を意味するが、幾何学的に完全な球状である必要はない。
【0041】
【0042】
本発明によれば、本発明の方法は、段階(a)及び段階(b)で2回にわたる3次元浮遊培養を進行した後、これを通じて形成されたスフェロイドを粘着性高分子がコーティングされた培養容器に付着培養することにより、間葉系幹細胞に分化させる。
【0043】
本明細書における「高分子」という用語は、同じ又は異なる種類のモノマーが連続的に結合した合成又は天然ポリマー化合物をいう。したがって、高分子は、ホモポリマー(一種類のモノマーが重合されたポリマー)と少なくとも二種の異なるモノマーの重合によって製造されたハイブリッドポリマーを含み、ハイブリッドポリマーはコポリマー(二種の異なるモノマーから製造されたポリマー)と2種超過の異なるモノマーから製造されたポリマーの両方を含む。
【0044】
本明細書における「粘着性ポリマー」という用語は、培養表面と細胞又はその凝集体(例えば、スフェロイド)の間の共有又は非共有結合を介して架橋を形成して、細胞又はその凝集体が培養容器の底又は側面から逸脱することなく付着されたまま、培養が進行することを可能にする天然又は人工高分子を意味する。
【0045】
本発明の具体的な具現例によれば、前記粘着性高分子は、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginate)、ヘパリン(heparin)、フコイダン(fucoidan)、セルロース(cellulose)、デキストラン(dextran)、キトサン(chitosan)、アルブミン(albumin)、フィブリン(fibrin)、コラーゲン(collagen)及びゼラチン(gelatin)からなる群から選択される。より具体的には、前記粘着性ポリマーはゼラチンである。
【0046】
【0047】
本発明の他の態様によれば、本発明は、本発明の方法で製作した間葉系幹細胞を製作する。
【0048】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、本発明の間葉系幹細胞を有効成分として含む骨又は軟骨疾患治療用の組成物を提供する。
【0049】
本明細書における「治療」という用語は、(a)疾患、疾病又は症状の発症の抑制、(b)疾患、疾病又は症状の軽減、又は、(c)疾患、疾病又は症状を除去することを意味する。本発明の方法で分化された間葉系幹細胞は、骨及び軟骨に効率的に分化されて骨又は軟骨組織の不可逆的な量的消失を原因とする様々な骨又は軟骨疾患の症状の発症を抑制するか、それを除去するか、又は軽減する役割をする。したがって、本発明の組成物は、それ自体として、これらの疾患治療の組成物となることができ、又は他の薬理学的成分と組み合わせて投与されて、前記疾患の治療補助剤として適用されることもできる。したがって、本明細書における用語「治療」又は「治療剤」は、「治療補助」又は「治療補助剤」の意味を含む。
【0050】
本明細書では、用語「投与」は本発明の組成物の治療的有効量を対象に直接投与することにより、対象の体内に同じ量が形成されるようにすることを意味し、「移植」又は「注入」と同じ意味を有する。本明細書における「移植」という用語は、移植された細胞の機能的完全性を受容者に維持するという目的の下で、ドナーから受容者に生存細胞又はそれを受容する人工支持体などを送達するプロセスを意味する。
【0051】
本発明における「治療的有効量」という用語は、本発明の組成物を投与しようとする個体に治療的又は予防的効果を提供するのに十分な程度に含まれる組成物の含有量を意味し、「予防的有効量」を含む意味である。
【0052】
本明細書における「対象」という用語は、制限なしに、人間、マウス、ラット、モルモット、犬、猫、馬、牛、豚、猿、チンパンジー、ヒヒ、又は赤毛サルを含む。具体的には、本発明の対象は人間である。
【0053】
本明細書における用語「骨疾患」は、外傷、骨折、癌細胞の骨転移、破骨細胞の過剰活性を含む様々な原因によって引き起こされる骨組織の損傷を伴うか、又は伴う可能性があるすべての疾患を含む。具体的には、本発明の組成物で予防又は治療することができる骨疾患は、例えば、骨粗鬆症、骨形成不全症、歯周疾患、骨折、代謝性骨炎、線維性骨炎、無形性骨疾患、骨軟化症、くる病、高カルシウム血症、多発性骨髄腫及びパゼット病を含むが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書における用語「軟骨疾患」は、変性関節炎などのように軟骨細胞の死滅又は軟骨組織の定量的消失により軟骨組織が元の機能を失う疾患を意味する。
【0055】
本発明の他の態様によれば、本発明は、本発明の間葉系幹細胞を有効成分として含む炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療用組成物を提供する。
【0056】
本発明によれば、本発明の方法で分化された間葉系幹細胞は、LPSで炎症を誘発した細胞において炎症因子を著しく抑制することにより、優れた抗炎症及び免疫調節活性を有することを確認した。
【0057】
本発明の具体的な具現例によれば、本発明の組成物で予防又は治療される自己免疫疾患又は炎症性疾患は、例えば、リウマチ関節炎、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、特発性繊維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、局所皮膚硬化症、全身皮膚硬化症、大腸炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、レイノ現象(Raynaud’s phenomenon)、ベーチェット病(Bechet’s disease)、川崎病(Kawasaki’s disease)、原発性胆汁性硬化症(primary biliary sclerosis)、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative olitis)、移植片対宿主病(GVHD:Graft-versus-host disease)及びクローン病(Crohn’s disease)を含むが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の組成物が薬剤学的な組成物として製造される場合、本発明の薬剤学的な組成物は薬剤学的に許容される担体を含む。さらに、前記薬剤学的な組成物は、薬学分野における通常の方法に従って患者の体内投与に適した単位投与型の製剤として剤型化することができる。この目的に適した剤型としては、非経口投与製剤として注射用溶液又は懸濁液、又は局所投与用製剤として軟膏剤などが挙げられる。本発明の組成物を剤型化する際には、一般的に使用される充填剤、重量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を併用することができる。前記組成物の1回投与量は、全組成物を基準にして体重1kg当たり、約1μg~50mgであり得、治療用幹細胞の投与量は成人に基づいて1日、1~10、10~10、10~10個である場合もある。前記投与は1日1回から数回に分けて投与することができる。しかしながら、前記投与量及び投与数は、疾患の程度、投与経路だけでなく、患者の体重、年齢及び性別などの要因を考慮して決定することができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下の通りである。
【0060】
(a)本発明は、全能性(pluripotent)幹細胞から間葉系幹細胞を製作する方法及び前記方法で製作された間葉系幹細胞を提供する。
【0061】
(b)本発明は、全能性幹細胞、特に、誘導万能幹細胞(iPSC)を出発細胞として3次元浮遊培養とこれを通じて形成された細胞凝集体の付着培養を逐次的に行うことにより、固有の生物学的活性がより優れながらも優れた増殖率を有する間葉系幹細胞を高い収率で得ることができる。
【0062】
(c)本発明の方法で製作された間葉系幹細胞は、骨及び軟骨への高い分化効率を示しながら優れた炎症抑制活性を有するので、骨疾患、軟骨疾患又は炎症及び自己免疫疾患などの治療用の組成物として有用に使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】iPSCからMSCを分化させる本発明のプロトコルを要約した概略図を示す。
【0064】
図2】Aggrewell上に形成された胚様体(EB)の形態を示した図である。
【0065】
図3】微小重力生物培養器であるBAM(Bio Array Matrix)装置を通じて形成されたスフェロイドの形態(上部)とOCT4及びDAPI抗体を用いた染色結果(下部)を示した図である。
【0066】
図4】スフェロイド由来の間葉系幹細胞の外形を示した図であって、継代後紡錘(spindle)形態を示すことを確認した(右側)。
【0067】
図5図5は、本発明の方法で分化したMSCの各継代における外観を示した図である。
【0068】
図6a】本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の累積細胞増殖曲線を示した図であって、各継代別のCPD(Cummulative Population Doubling)(図6a)、2倍数時間(Doubling time)(図6b)、及びLog細胞数(図6c)をそれぞれ示す。
図6b】本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の累積細胞増殖曲線を示した図であって、各継代別のCPD(Cummulative Population Doubling)(図6a)、2倍数時間(Doubling time)(図6b)、及びLog細胞数(図6c)をそれぞれ示す。
図6c】本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の累積細胞増殖曲線を示した図であって、各継代別のCPD(Cummulative Population Doubling)(図6a)、2倍数時間(Doubling time)(図6b)、及びLog細胞数(図6c)をそれぞれ示す。
【0069】
図7】本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の細胞表面マーカー発現をFACS分析で確認した結果を示した図である。
【0070】
図8】本発明の方法で分化された間葉系幹細胞が脂肪、骨及び軟骨に分化することを、Alizarin Red S、Oil Red O及びAlcian Blue染色により確認した結果を示した図である。
【0071】
図9】免疫細胞化学を用いて本発明の方法により誘導万能幹細胞が全能性を失い、間葉系幹細胞のマーカーを発現する細胞に分化されたことを確認した結果を示した図である。
【0072】
図10】LPSを用いた炎症誘導細胞において本発明の方法で分化された幹細胞の炎症制御効果を確認した実験手順の模式図を示した図である。
【0073】
図11】RT-PCRによる炎症マーカーの発現を確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは当業界で通常の知識を有する者には自明であろう。
【0075】
【0076】
<実施例>
【0077】
【0078】
<実験方法>
【0079】
単一コロニーの培養
【0080】
iPSCをマトリゲル(354234,Corning,U.S.A.)でコーティングされた96ウェルプレートに単一細胞として付着させたiPSC培地で1週間培養して単一のコロニーを生成した。得られた各コロニーは、マトリゲルでコーティングされた24ウェルディッシュ、6ウェルディッシュに順に継代後1×10程度に細胞数が増えると、スフェロイド実験に用いた(図1)。
【0081】
【0082】
BAMシステムを用いたスフェロイドの生成
【0083】
iPSCをAggrewellプレート(34460、Stemcell、カナダ)に1×10程度にシーディングした後、300gで5分間遠心分離して細胞を凝集させた後、5%CO培養器下で24時間培養して胚様体(Embryoid Body,EB)を生成した。24時間後に生成されたEBは、生物反応器(Bioreactor、CelVivo、デンマーク)に注意深く移し、生物反応器を微小重力装置であるBAMシステム(CelVivo、デンマーク)に装着して5日間回転した。回転時に最初は50rpmから始まり、毎日5rpmずつ増加させた(図1)。
【0084】
【0085】
iPSC-MSCの生成
【0086】
BAMシステムで育てたスフェロイドを0.1% ゼラチンコーティングの6ウェル培養皿に移し、DMEM/F12に10%FBSと1%P/Sを添加した培地で培養し、2~3日ごとに培地を交換した。コーティングされた底に付着したスフェロイドから細胞が出て、70~80%コンフルエンスになると、Trypleを用いて継代した。最初の継代をP0と呼び、細胞形状が均質化するまで継代した。
【0087】
【0088】
免疫細胞化学(ICC)染色を用いた万能性及び間葉系幹細胞の確認
【0089】
iPSC段階で生成したスフェロイドを生物反応器から一部取り出し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。iPSCのスフェロイドで作られたiPSC-MSCは、共焦点ディッシュ(101350、SPL、韓国)に1×10の濃度でシーディングした後、60~70%コンフルエンスで4%PFAに固定した。固定されたスフェロイド及びiPSC-MSCは、DPBSで5分間3回水洗した後、抗体が良好に透過できるように0.3% Triton X-100で表面を透過させた。その後、DPBSで5分間3回水洗した。水洗されたスフェロイドは、ブロッキングのために3%BSA/PBSで1時間室温で培養した。1時間後に3% BSA/PSBを除去した後、一次抗体(1:200)であるAnti-OCT4、Anti-SSEA4、Anti-PDGFRβを入れて冷蔵庫で12時間反応させた。12時間後に室温に取り出し、DPBSで5分ずつ3回水洗した。水洗後、二次抗体(1:200)であるヤギ 抗-マウス488と共に室温で1時間培養した。1時間後、二次抗体を除去し、核を染色するDAPI又はTopro3で20分間染色した後、DPBSで5分ずつ3回水洗した。水洗した試料は、Antifade Mounting Medium(H-1000、VECTOR LABORATORY、イギリス)を用いて蛍光の消失を防止した。
【0090】
【0091】
iPSC-MSC継代及び細胞増殖曲線
【0092】
iPSC-MSCの形状が均質化した継代から細胞形態を記録し、細胞数を計算して増殖曲線を描いた。P5からiPSC-MSCを60mmの培養皿に2×10の細胞数でシーディングした後に5日間培養し、5日間1回培地を交換した。細胞増殖は3つの増殖曲線で示した。まず、細胞成長率(CPD:Cummulative Population Doubling level )の細胞数は、「CPD=log(後の細胞数/最初の細胞数)/log(2)」として計算した。次に、細胞が2倍に増殖する時間であるDoubleng timeは、「Doubling Time=培養日数×log(2)/(log(後の細胞数)-log(最初の細胞数))」として計算した。その後、継代時の細胞数を計算してlogを取った値である細胞数は、「cell number=log(細胞数)」として計算した。計算された数値は線グラフで示され、対照群としてAD-MSC及びhWJ-MSCを使用した。
【0093】
【0094】
フローサイトメートリー(FACS)分析を用いた免疫表現型の検査
【0095】
培養中の細胞をTrypLETMExpress(10624013,Gibco,U.S.A.)を用いて分離し、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上清を除去し、FACS緩衝液(2% FBSを含むD-PBS)に浮遊した後、マウス 抗-CD34、マウス 抗-CD45、マウス 抗-CD73、ヒツジ 抗-CD90で一次反応した。これらの一次抗体を1:500に希釈し、細胞に200μlずつ加えた後、4℃で30分間培養した。次に、D-PBSで洗浄した後、1,500rpmで5分間遠心分離して上清を除去した後、1:500に希釈した二次抗体であるウサギ 抗-マウス488又はドンキー 抗-ヒツジPEを200μlずつ添加し、4℃で20分間培養した。その後、染色された細胞を500μLのFACS緩衝液に浮遊して、流動細胞分析機(FACS Calibur;Becton Dickinson、Heidelberg、Germany)で流動細胞分析を行い、Cell Quest pro swartorを用いて分析した。
【0096】
【0097】
骨形成、脂肪及び軟骨分化誘導
【0098】
3つの系列への分化誘導のために、24ウェル容器に細胞を2×10/ウェルに付着させ、80%の密度に達したときに分化を開始した。
【0099】
骨形成分化のために、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)-低グルコース(Invitrogen, CA, U.S.A.)に10%FBS、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)、100nM デキサメタゾン(Sigma-Aldrich, MO, U.S.A.)、50μg/ml アスコルベート-2-リン酸(Sigma-Aldrich, MO, U.S.A.)及び10mMβ-グリセロリン酸(Sigma-Aldrich, MO, U.S.A.)を添加した。分化培地は2週間、2日ごとに交換した。分化の終了時点に細胞を4%PFAで15分間固定した後、滅菌水で水洗した。分化検証は、Alizarin Red S染色法を用いて蓄積された鉱物リン酸カルシウムの染色によって行った。
【0100】
脂肪分化のために、DMEM-高グルコースに10%FBS、1%P/S、500μMイソブチルメチルキサンチン、1μMデキサメタゾン、100μMインドメタシン及び10μg/mlインスリンを添加した。分化培地を2週間3日ごとに交換した。分化が終わった時点に細胞は4%PFAで15分間固定した後、滅菌水で1次水洗した後、60%イソプロパノールで2次水洗した。分化検証は、イソプロパノール(wt/vol)で希釈した5%Oil Red Oを用いた細胞内に蓄積された脂質染色によって行った。
【0101】
軟骨分化のために、DMEM-高グルコースに2% FBS、1%P/S、50μg/mLアスコルベート-2-リン酸、100μg/mLナトリウムピルビン酸塩、1%インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS,Gibco)、100nMデキサメタゾン、40μg/mLのL-プロリン及び10ng/mLのTGF-β3(Prospec、East Brunswick, NJ, U.S.A.)を添加した。分化培地を2週間、2日ごとに交換した。分化が終わった時点に、細胞を4%PFAで15分間固定した後、滅菌水で水洗した。分化検証のために、グリコサミノグリカンなどの酸性ムコ多糖類を染色するAlcian blueで染色した。
【0102】
【0103】
抗炎症細胞モデル
【0104】
本発明のiPSC-MSCの抗炎症能力を評価するために、炎症細胞モデルに使用する大食べ細胞であるRaw 264.7細胞を用いた。Raw 264.7細胞は、10% FBS及び1% P/Sを含むα-MEM(Minimum Essential Medium)培地で培養した。まず、培養容器でiPSC-MSCを48時間培養した後、コンディション培地を集めた後、0.20μmの注射器フィルターを用いて濾過した後、4℃冷蔵庫に保管した。
【0105】
Raw 264.7細胞を、ウェル当たりの3.75×10で6ウェル培養皿に分けて接種した。12時間後に細胞が付着したら、用意したコンディション培地と交換した。再度12時間後、図10に示すように、対照群を除き、コンディション培地群を含む全ての群にLPS(lipopolysaccharide, Sigma, U.S.A.)200ng/mlを処理した。陽性対照群として、LPS及びDEX(Dexamathasone, Peprotech, U.S.A.)を1μMで処理した。7時間後に画像を記録し、全体RNAを分離した後、炎症マーカーであるIL-6を用いてRT-PCRを行う。
【0106】
【0107】
全RNA単離、RT-PCR
【0108】
Labo Pass Kit、TRIzol(Cosmogenetech,Seoul,Korea)を使用して、製造業者のマニュアルに従ってRaw264.7細胞の全体RNAを抽出した。全体RNAの濃度は、Nanodrop(ND1000)分光光度計(Nanodrop Technologies Inc.,Wilmington DE, U.S.A.)で測定した。全体RNA2μg及びM-MLV逆転写酵素(Promega)を用いて製造業者のマニュアルに従ってcDNAを合成した。RT-PCR反応は終了後、2%アガロースゲルで分析した。使用したプライマーの序列を表1に列挙した。
【0109】
【表1】
【0110】
実験結果
【0111】
BAMシステムを用いたスフェロイドの生成
【0112】
Aggrewellプレートに載せたiPSCは、24時間後に形状と大きさが均一な丸いEBを形成することを確認した(図2)。
【0113】
【0114】
免疫細胞化学染色によるスフェロイドの多能性細胞の確認
【0115】
スフェロイドを万能性マーカーであるOCT4で染色したとき、緑色に染色され、核を染色するDAPIで染色したとき、特異的に核部位に緑色と青色に染色されることが確認できた。OCT4が核で発現することがわかり、iPSC由来のスフェロイドが万能性を維持することがわかった(図3)。
【0116】
【0117】
iPSC-MSCの生成
【0118】
0.1% ゼラチンでコーティングされた培養皿で、スフェロイド(黒い矢印)が底に付着し、細胞が突出して出てくるもの(白矢印)を観察することができた。時間が経つにつれて、突出細胞が増加し、70~80%コンフルエンスで継代した。継代を進めるにつれて、細胞の形状は紡錘形(白破線矢印)で均質化された(図4)。
【0119】
【0120】
iPSC-MSC継代及び細胞増殖曲線
【0121】
iPSC-MSCは、P5から細胞が紡錘形態を示し、P13まで継代できた(図5)。その後、細胞は貯蔵液を作ってLNに貯蔵した。細胞増殖曲線は対照群であるhWJ-MSC、AD-MSCと比較し、その結果、AD-MSCはP9まで細胞数が増え、その後には減少し、hWJ-MSCはP13でも着実に細胞が増殖した。iPSC-MSCは対照群よりもCPD及び累積細胞数が非常に高く、2倍の時間も対照群より速かった(図6)。
【0122】
【0123】
流動細胞分析(FACS)を用いた免疫表現型の検査
【0124】
【0125】
*FACS分析結果、対照であるAD-MSCと比較して、iPSC-MSCが抗-CD73、抗-CD90に対して陽性であり、抗-CD34、抗-CD45が陰性であることを確認した(図7)。これにより、BAMシステムを通じて作られたiPSC-MSCが間葉系幹細胞の明確な特性を有することが分かった。
【0126】
【0127】
骨形成、脂肪及び軟骨分化誘導
【0128】
AD-MSCとiPSC-MSCを用いて骨形成、脂肪及び軟骨分化実験を行った。2週間分化後、それぞれ、Alizarin Red S、Oil Red O、Alcian Blueに染色した結果、対照群として使用したAD-MSCと同様に、iPSC-MSCも骨、脂肪、軟骨に分化されることが確認でき、特に、骨形成が効率的に行われることを観察した(図8)。
【0129】
【0130】
免疫細胞化学染色によるiPSC‐MSCの間葉系幹細胞の確認
【0131】
iPSC-MSC細胞を万能性マーカーであるOCT4、SSEA4と間葉系幹細胞マーカーであるPDGFRβを用いてICCを進行した。iPSC-MSCでは緑色に染色されたOCT4、SSEA4マーカーでは緑色に染色された細胞が少なく、緑色PDFGRβマーカーでは緑色に染色された細胞が多く分布した。これにより、iPSC-MSCが全分化能を失い、間葉系幹細胞に転換されたことが分かった。
【0132】
【0133】
炎症細胞モデル
【0134】
炎症実験の結果、LPSを処理しなかった群では、丸い細胞が観察され、LPSを処理して炎症を誘発した細胞では、大きな多核細胞を観察することができた。一方、陽性対照群であるLPSとDEXを処理した群では、多核細胞が観察されず、iPSC-MSCのコンディション培地を処理した群でも、大きな多核細胞が見られなかった。RT-PCRを通じてIL-6の発現を調べた結果、LPSを処理した群は98%と高く、LPS+DEXを処理した群では14%と低く、iPSC-MSCコンディション培地を処理した群はそれぞれ65%が発現した。したがって、iPSC-MSCコンディション培地を処理した群がLPSより低いレベルでIL-6の発現が低いことがわかった(図11)。
【0135】
【0136】
以上のように本発明の特定の部分を詳細に説明したところ、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施形態に過ぎず、これに本発明の範囲が限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とその等価物によって定義されると言われる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2023524276000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
図6a】本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の累積細胞増殖曲線を示した図であって、各継代別のCPD(Cummulative Population Doubling)を示図6a)
図6b】本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の累積細胞増殖曲線を示した図であって、各継代別の2倍数時間(Doubling time)を示図6b)
図6c】本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の累積細胞増殖曲線を示した図であって、各継代別のLog細胞数を示図6c)
【国際調査報告】