(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(54)【発明の名称】病原体又はアレルゲン結合部分を呈するサーファクタントタンパク質C模倣体
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20230602BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230602BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230602BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230602BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230602BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230602BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230602BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230602BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A61K38/16
C07K14/47 ZNA
A61P31/00
A61P31/14
A61K47/64
A61K47/54
A61P31/04
A61P31/10
A61K9/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513070
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 US2021031663
(87)【国際公開番号】W WO2021231343
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522438622
【氏名又は名称】バロン, アンネリーゼ イー.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バロン, アンネリーゼ イー.
(72)【発明者】
【氏名】フォートコート, ジョン エー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB27
4C076CC29
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE41
4C076EE43
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA59
4C084DC50
4C084MA13
4C084MA56
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA18
4H045BA50
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA20
4H045FA51
(57)【要約】
対象を治療するための方法が提供される。方法は、対象を、原因因子の対象における存在から生じる状態に罹患していると診断することと、(a)疎水性螺旋領域、(b)少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域、(c)疎水性螺旋領域をN末端領域に連結する第1の連結部分であって、該連結部分が少なくとも1つのリジン様側鎖を備える、第1の連結部分、(d)原因因子に結合する結合部分、及び(e)結合部分をN末端領域に連結する第2の連結部分、を有する、薬学的有効量の物質を対象に投与することと、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
請求項A1.
病原体によって引き起こされた感染症に対して個体を治療するための方法であって、
前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある個体に、少なくとも1つの組成物の量を投与することであって、前記組成物の前記量が前記感染症を阻害するのに有効であり、前記組成物が、
(a)疎水性螺旋領域、
(b)少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域、
(c)前記疎水性螺旋領域を前記N末端領域に連結する第1の連結部分であって、前記連結部分が少なくとも1つのリジン様側鎖を備える、第1の連結部分、
(d)原因因子に結合する結合部分、及び
(e)前記結合部分を前記N末端領域に連結する第2の連結部分、を含む、投与することを含む、方法。
【請求項2】
請求項A2.
前記第2の連結部分が、前記結合部分を、前記N末端領域内のプロリン残基に連結する、請求項A1に記載の方法。
【請求項3】
請求項A3.
前記第2の連結部分が、親水性である、請求項A1に記載の方法。
【請求項4】
請求項A4.
前記N末端領域が、少なくとも1つのアルキル鎖を含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項5】
請求項A5.
前記N末端領域が、少なくとも1つのC-18アルキル鎖を含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項6】
請求項A6.
前記N末端領域が、複数のC-18アルキル鎖を含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項7】
請求項A7.
物質が、ポリ-N置換グリシンである、請求項A1に記載の方法。
【請求項8】
請求項A8.
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpe)
14-NH
2を有する、請求項A1に記載の方法。
【請求項9】
請求項A9.
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNSpeNssb)
4-NSpeNSpe-NH
2を有する、請求項A1に記載の方法。
【請求項10】
請求項A10.
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNssbNssb)
4Nspe-NH
2を有する、請求項A1に記載の方法。
【請求項11】
請求項A11.
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNssbNssb)
4Nspe-NH
2を有する、請求項A1に記載の方法。
【請求項12】
請求項B1.
病原体によって引き起こされた感染症を治療するための方法であって、
前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある個体に、少なくとも1つの組成物の量を投与することであって、前記組成物の前記量が前記感染症を阻害するのに有効であり、前記組成物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含む、投与することを含む、方法。
【請求項13】
請求項B2.
前記肺サーファクタント模倣体が、SP-C模倣体である、請求項B1に記載の方法。
【請求項14】
請求項B3.
前記組成物が、第1及び第2の化合物の混合物を含み、前記第1の化合物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含み、前記第2の化合物が、前記結合部分及び連結部分を含まない前記肺サーファクタントの類似体である、請求項B2に記載の方法。
【請求項15】
請求項C1.
関連するアレルゲンによって引き起こされたアレルギーを治療するための方法であって、
前記アレルギーを有する個体に、少なくとも1つの組成物の量を投与することであって、前記組成物の前記量が、前記アレルギーを阻害するのに有効であり、前記組成物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記アレルゲンに結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含む、投与することを含む、方法。
【請求項16】
請求項C2.
前記肺サーファクタント模倣体が、SP-C模倣体である、請求項C1に記載の方法。
【請求項17】
請求項C3.
前記組成物が、第1及び第2の化合物の混合物を含み、前記第1の化合物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含み、前記第2の化合物が、前記結合部分及び連結部分を含まない前記肺サーファクタントの類似体である、請求項C2に記載の方法。
【請求項18】
請求項D1.
病原体によって引き起こされた感染症に対して個体を治療するための方法であって、
前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある個体に、薬学的有効量の少なくとも1つの組成物を投与することであって、前記組成物の前記量が、前記感染症を阻害するのに有効であり、前記組成物が、前記病原体に結合する結合剤を含み、前記結合剤が、前記病原体が結合する受容体のペプチド又はペプトイド模倣体である、投与することを含む、方法。
【請求項19】
請求項D2.
前記組成物が、
肺の肺サーファクタント(pulmonary lung surfactant)に結合するアンカーを更に含む、請求項D1に記載の方法。
【請求項20】
請求項D3.
前記組成物が、
前記結合剤を前記アンカーに連結する第1の連結部分を更に含む、請求項D2に記載の方法。
【請求項21】
請求項D4.
前記結合剤が、ペプチドである、請求項D1に記載の方法。
【請求項22】
請求項D5.
前記結合剤が、ペプトイドである、請求項D1に記載の方法。
【請求項23】
請求項D6.
前記結合剤が、アミノ酸配列を含む、請求項D1に記載の方法。
【請求項24】
請求項D7.
前記結合剤が、前記病原体が結合する細胞受容体を模倣する、請求項D1に記載の方法。
【請求項25】
請求項D8.
前記結合剤が、前記病原体が結合する上皮細胞受容体を模倣する、請求項D1に記載の方法。
【請求項26】
請求項D9.
前記組成物を前記個体に投与することが、
前記組成物を含有する粉末を生成することと、
前記個体の肺に前記粉末を適用することと、を含む、請求項D1に記載の方法。
【請求項27】
請求項D10.
前記組成物を前記個体に投与することが、
前記組成物を含有する蒸気を生成することと、
前記蒸気を前記個体の肺に適用することと、を含む、請求項D1に記載の方法。
【請求項28】
請求項D11.
前記アンカーが、
疎水性螺旋領域と、
少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域と、
前記疎水性螺旋領域を前記N末端領域に連結する第2の連結部分であって、前記第2の連結部分が少なくとも1つのリジン様側鎖を備える、第2の連結部分と、を含む、請求項D2に記載の方法。
【請求項29】
請求項D12.
前記結合剤を前記N末端領域に連結する第1の連結部分を更に含む、請求項D11に記載の方法。
【請求項30】
請求項D13.
前記アンカーが、親油性である、請求項D11に記載の方法。
【請求項31】
請求項D14.
前記アンカーが、親水性頭部及び少なくとも1つの疎水性尾部を有する、請求項D2に記載の方法。
【請求項32】
請求項D15.
前記アンカーが、親水性頭部及び複数の疎水性尾部を有する、請求項D2に記載の方法。
【請求項33】
請求項D16.
前記アンカーが、化学式R
1R
2PA
(式中、R
1及びR
2はアルキル基である)を有する、請求項D2に記載の方法。
【請求項34】
請求項D17.
前記アンカーが、脂質である、請求項D2に記載の方法。
【請求項35】
請求項D18.
前記アンカーが、コレステロールである、請求項D2に記載の方法。
【請求項36】
請求項D19.
前記アンカーが、リン脂質である、請求項D2に記載の方法。
【請求項37】
請求項D20.
前記アンカーが、ホスファチジルコリンである、請求項D19に記載の方法。
【請求項38】
請求項D21.
前記アンカーが、ジパルミトイルホスファチジルコリンである、請求項D19に記載の方法。
【請求項39】
請求項D22.
前記アンカーが、以下の構造:
【化1】
を有する、請求項D2に記載の方法。
【請求項40】
請求項D23.
前記アンカーが、前記結合剤に共有結合される、請求項D2に記載の方法。
【請求項41】
請求項D24.
前記アンカーが、前記結合剤にイオン結合される、請求項D2に記載の方法。
【請求項42】
請求項D25.
前記アンカーが、少なくとも1つの脂肪酸基を含む、請求項D2に記載の方法。
【請求項43】
請求項D26.
前記組成物が、SP-B及びSP-Cからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を更に含む、請求項D1に記載の方法。
【請求項44】
請求項D27.
前記結合剤が、疎水性部分、負に荷電した部分、及び非荷電極性部分を有する、請求項D1に記載の方法。
【請求項45】
請求項D28.
前記結合剤が、(a)リン脂質グリセロール骨格、(b)キシリトール極性頭部基、(c)前記グリセロール骨格を前記キシリトール極性頭部基に連結するホスホジエステル結合、及び(d)長さ14~18個の炭素の2つの脂肪族鎖を含む可変疎水性領域、を有する、キシリトール脂質類似体である、請求項D1に記載の方法。
【請求項46】
請求項D29.
前記脂肪族鎖と前記リン脂質グリセロール骨格との間の結合が、O-アシル結合又はO-アルキル結合である、請求項dD28に記載の方法。
【請求項47】
請求項D30.
前記脂肪族鎖が、0~2個の二重結合を含有する、請求項D29に記載の方法。
【請求項48】
請求項D31.
前記アンカーが、ポリ-N置換グリシンである、請求項D1に記載の方法。
【請求項49】
請求項D32.
前記アンカーが、SP-B及びSP-Cからなる群から選択されるタンパク質のペプトイド模倣体である、請求項D1に記載の方法。
【請求項50】
請求項D33.
前記病原体がコロナウイルスであり、前記結合剤がACE-2受容体の模倣体である、請求項D1に記載の方法。
【請求項51】
請求項D34.
前記病原体がコロナウイルスであり、前記結合剤が組換えACE-2タンパク質である、請求項D1に記載の方法。
【請求項52】
請求項D35.
前記病原体が、Pseudomonas aeruginosaであり、前記結合剤が、ラミニンの少なくとも1つの部分の模倣体である、請求項D1に記載の方法。
【請求項53】
請求項D36.
前記病原体が、Staphylococcus aureusであり、前記結合剤が、コラーゲン、フィブリノーゲン、Fn、糖タンパク質、及び免疫グロブリンからなる群から選択される少なくとも1つの材料の少なくとも1つの部分の模倣体である、請求項D1に記載の方法。
【請求項54】
請求項D37.
前記病原体が、Candida albicansであり、前記結合剤が、ムチンの少なくとも1つの部分の模倣体である、請求項D1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、同じ発明者及び表題を有する、2020年5月10日に出願された米国特許出願第63/022,572号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本開示は、概して、疾患の治療及び予防のための方法に関し、より具体的には、病原体、アレルゲン又は他の感染因子への結合部分を備えた肺サーファクタントの使用を通じて、感染症又はアレルギー応答を治療及び予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
肺サーファクタント(PS)は、II型肺胞細胞によって産生される表面活性リポタンパク質複合体であり、正常な呼吸に不可欠である。ヒトPSは、約10%のタンパク質及び90%の脂質からなる。タンパク質部分は、4つのタンパク質:(1)水溶性の先天性免疫タンパク質であるコレクチンSP-A及びSP-D、並びに(2)呼吸の負荷を減少させるためにPSの生物物理学的機能に不可欠である疎水性の表面活性サーファクタントタンパク質SP-B及びSP-C(特に、これらの膜タンパク質は、PSが肺の表面に広がる速度を増加させる)を含む。PSの脂質部分は、多くの異なる脂質、並びにコレステロールの混合物からなる。これらの中には飽和リン脂質があり、その約85%がホスファチジルコリンである。表面張力低下に最も重要であるPSにおける一次ホスファチジルコリンは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。
【0004】
PSの構成タンパク質及び脂質は、親水性及び疎水性領域の両方を有する。気道では、PSは、(1)肺胞空気-液体界面に急速に吸着することによって界面サーファクタント層を形成する、(2)圧縮時の界面表面張力をゼロに近い値(呼気)に大幅に低減することによって肺胞崩壊を防止する、及び(3)膨張(吸入)時に効率的に再拡散することによって最大表面張力を低減する(かつ呼吸に必要な労力を減少させる)ために機能する。
【0005】
DPPC及び他のリン脂質は、DPPCの親水性頭部基が水部分に配置され、DPPCの疎水性尾部が空気側に面するように、肺胞の空気-水界面で混合脂質単層/二層/多層を形成することによって、PSにおける表面張力を低減する。飽和リン脂質が非常に低い表面張力を達成することを可能にする生物物理学的特性はまた、これらの脂質が膨張時に急速に再吸収及び再拡散することを防止する。脂質部分に疎水性タンパク質SP-B及びSP-Cを添加することは、サーファクタントの吸着、安定性、及び脂質フィルムのリサイクルを大幅に向上させる。したがって、これらのサーファクタント特異的タンパク質の包含は、適切な呼吸に必要であり、それらの省略は、致死的な呼吸不全の可能性をもたらし得る。
【0006】
いくつかのヒト肺疾患、例えば、未熟な肺を有する未熟な乳児で起こり得るものは、肺サーファクタント材料の欠乏に起因する。これらの疾患は、歴史的に動物由来の材料に由来する外来性肺サーファクタント調製物の適用によって一般的に治療される。
【0007】
天然、動物由来のサーファクタント調製物は、多くの用途において有効であることが証明されているが、これらの材料の使用は、いくつかの顕著な欠点を有する。特に、動物由来材料の使用は、感染因子の種間移動の可能性を生み出し、生産コストが高く、サーファクタント材料の組成におけるバッチ間変動の影響を受ける。
したがって、当技術分野では、合成PS配合物を開発するためのかなりの努力がなされている。この努力により、合成肺サーファクタントが開発された。したがって、例えば、“Surfactant Lipids,Compositions Thereof,And Uses Thereof”と題された米国特許第10,532,066号(Voelker et al.)は、(a)疎水性部分、(b)負に荷電した部分、及び(c)非荷電極性部分を有する陰イオン性脂質を開示する。“Methods And Compositions For Treating And Preventing Respiratory Related Diseases And Conditions With Xylitol-Headgroup Lipid Analogs”と題されたU.S.2020/0009165(Voelker)は、(a)リン脂質グリセロール骨格、(b)キシリトール極性頭部基、(c)グリセロール骨格をキシリトール極性頭部基に連結するホスホジエステル結合、及び(d)長さ14~18個の炭素の2つの脂肪族鎖を含む可変疎水性領域を有するキシリトール脂質類似体を開示しており、脂肪族鎖とリン脂質グリセロール骨格との間の連結は、O-アシル結合又はO-アルキル結合であり、脂肪族鎖は、0~2個の二重結合を含有する。
PSタンパク質の合成類似体も開発されている。例えば、Brown,Nathan&Lin,Jennifer&Barron,Annelise(2019),“Helical Side Chain Chemistry of a Peptoid-Based SP-C Analogue:Balancing Structural Rigidity and Biomimicry”,Biopolymers.110.10.1002/bip.23277(Brown et al.)は、ポリ-N置換グリシン(又は「ペプトイド」)骨格を使用したSP-Cの合成非天然模倣体を開示している。Brownらは、SP-Cのペプトイド模倣体の以前の生成が報告されている先行文献を引用し、関連する研究についても論じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第10,532,066号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0009165号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Brown,Nathan&Lin,Jennifer&Barron,Annelise(2019),“Helical Side Chain Chemistry of a Peptoid-Based SP-C Analogue:Balancing Structural Rigidity and Biomimicry”,Biopolymers.110.10.1002/bip.23277
【発明の概要】
【0010】
開示の概要
一態様では、対象を治療するための方法が提供される。方法は、対象を、原因因子の対象における存在から生じる状態に罹患していると診断することと、(a)疎水性螺旋領域、(b)少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域、(c)疎水性螺旋領域をN末端領域に連結する第1の連結部分であって、該連結部分が少なくとも1つのリジン様又はアルギニン様側鎖を備える、第1の連結部分、(d)原因因子に結合する結合部分、及び(e)結合部分をN末端領域に連結する第2の連結部分、を有する薬学的有効量の物質を対象に投与することと、を含む。
【0011】
別の態様では、病原体によって引き起こされた感染症を治療するための方法が提供される。方法は、該感染症を有するか、又は該感染症を発症するリスクがある個体に、少なくとも1つの組成物の量を投与することを含み、組成物の量は、該感染症を阻害するのに有効であり、組成物は、(a)ポリペプチド又はポリペプトイド(ポリ-N置換グリシン)のいずれかである肺サーファクタントタンパク質模倣体、(b)該病原体に結合する結合部分、及び(c)結合部分を肺サーファクタントタンパク質模倣体に連結する連結部分を含む。
【0012】
更なる態様では、関連するアレルゲンによって引き起こされたアレルギーを治療するための方法が提供される。方法は、少なくとも1つの組成物の量を該アレルギーを有する個体に投与することを含み、組成物の量は、該アレルギーを阻害するのに有効であり、組成物は、(a)ポリペプチド又はポリペプトイド(ポリ-N置換グリシン)のいずれかである肺サーファクタントタンパク質模倣体、(b)該アレルゲンに結合する結合部分、及び(c)結合部分を肺サーファクタントタンパク質模倣体に連結する連結部分を含む。
【0013】
更に別の態様では、病原体によって引き起こされた感染症に対して個体を治療するための方法が提供される。方法は、該感染症を有するか、又は該感染症を発症するリスクがある個体に、薬学的有効量の少なくとも1つの組成物を投与することを含み、組成物の量は、該感染症を阻害するのに有効であり、組成物は、病原体に結合する結合剤を含み、該結合剤は、病原体が結合する受容体のペプチド又はペプトイド模倣体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本明細書の教示に従って結合模倣体を作製する際の前駆体として利用され得る、サーファクタントタンパク質C(SP-C)のペプトイド模倣体のセットの分子構造の図である。示したペプトイドモノマーのセットの略称名も示されている。
【
図2】
図2は、SP-Cの異なるペプトイド模倣体のライブラリの変化した螺旋化学の図であり、そのいくつかは
図1に示される。
【
図3】
図3は、SP-Cの更なる様々なペプトイド模倣体の図であり、そのいくつかは、
図1に示されており、そのいくつかは、螺旋領域で使用されるモノマーの異なる分子設計により、より生体模倣的である。
【
図4】
図4は、本明細書の教示に従って結合模倣体を作製する際に利用することができる、いくつかの前駆体ペプトイド模倣体のN置換グリシンモノマー配列のリストである。
【
図5】
図5は、本明細書の教示に従う、結合模倣体のセットの分子構造の図である。
【
図6】
図6は、本明細書の教示に従って結合模倣体を作製する際の前駆体として利用され得る、SP-Cのペプトイド模倣体のセットの分子構造の図であり、前駆体のペプトイド螺旋長及び側鎖化学を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
これまでに生成された合成肺サーファクタントのいくつかは多くの望ましい属性を有し得るが、これらの材料の更なる改善が望まれる。例として、コロナウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2コロナウイルスによって引き起こされるCOVID-19、SARS-CoV又はSARS-CoV-1コロナウイルスによって引き起こされる重症急性呼吸器症候群(SARS)、及びMERS-コロナウイルス(MERS-CoV)によって引き起こされる中東呼吸器症候群(MERS)を含む)などのいくつかの疾患は、患者の肺内の肺サーファクタント(PS)材料の欠乏又は損傷を誘発又は含み得る。この状態は、関連する病原体(ここでは、コロナウイルス)が肺上皮細胞に侵入することを可能にし得、これは、被害者の症状の悪化及び疾患の進行をもたらし得る。一部の場合において、合成で外来性で生体模倣性のサーファクタントで天然PSを補充することは、症状の重症度を軽減するのに役立ち得るが、このようなアプローチは、必ずしも原因因子を処置するものではなく、したがって、患者の状態を解消することができない場合がある。
【0016】
上記の問題は、本明細書に開示される新規の合成肺サーファクタントのクラスで対処され得ることが今や見出された。好ましい実施形態において、本明細書で「結合模倣体」と称されるこれらの肺サーファクタントは、結合部分が、好ましくは連結部分を介して、結合される塩基を含む。塩基は、好ましくは、PSタンパク質又はPSタンパク質模倣体(好ましくは、ポリ-N置換グリシン又は「ペプトイド」構造に基づくが、PSタンパク質のポリペプチド模倣体であり得る)であり、塩基が他のサーファクタントタンパク質(サーファクタントタンパク質SP-A、SP-B、及びSP-Dを含む)、脂質(例えば、コレステロールを含む)、リン脂質(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含む)、又はホスホチド(phosphotide)である(又はその模倣体である)結合模倣体の様々な実施形態が本明細書の教示に従って可能であるが、より好ましくは、SP-C模倣体である。
【0017】
結合部分は、好ましくは、1つ以上の病原体、又は目的の他の原因因子若しくは感染因子に結合するように選択される。理論に拘束されることを望まないが、これらの結合模倣体は、そのような原因因子に結合することによって作用し、したがって、それら(又は結果として生じる反応生成物)が天然の免疫系又は他の自然のプロセスによって破壊又は体内から除去され得るまで、それらを非活性化又は固定化すると考えられる。
【0018】
連結部分は、好ましくは、塩基と結合部分との間の適切な間隔を提供するように選択され、場合によっては、結合模倣体に所望の回転特性又は配向特性を付与することもできる。連結部分はまた、十分に不安定であってもよく、又は分解されやすい場合もある(例えば、結合部分がタンパク質であるか、又はアミノ酸配列を含む場合に、タンパク質分解を受けることによって)。
【0019】
一例として、限定するものではないが、肺内で、結合模倣体は、目的の病原体、アレルゲン、及び他の原因因子、感染因子、又は標的に結合及び固定化、非活性化、破壊又は除去するために利用され得る。結合模倣体は、通常は肺内に存在する脂質二重層に分子を固定するように作用し得る塩基(例えば、SP-C模倣体であり得る)を含むので、これは、天然免疫系又は他の天然プロセスによって非活性化、破壊、又は体内から除去することができるまで、目的の標的を脂質二重層に結合させる効果を有し得る。
【0020】
例えば、SARS-CoV-2コロナウイルスの場合、結合模倣体は、ウイルスに結合する(又はウイルスが結合する)結合部分(例えば、ACE-2受容体の一部の模倣体など)を備えていてもよく、したがって、ウイルス粒子が(SP-C模倣体に付着する結合部分に結合することによって)外部サーファクタント脂質二重層に付着したままになり、ウイルス粒子が肺上皮細胞に侵入して感染症を引き起こすことを防止する。結合したウイルス粒子は、次に、例えば、繊毛の通常の清浄作用を通して、又は他の天然プロセスによって肺から除去され得る。COVID-19などの疾患の予防及び治療の両方が、原因病原体の拡散を阻止し、特に、ウイルス粒子の宿主肺上皮細胞への侵入を防止することに依存するため、この手法が予防的及び治療的用途の両方を有することが理解されるであろう。
【0021】
特に好ましい実施形態において、本明細書に開示される結合模倣体は、(a)疎水性螺旋領域、(b)少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域、(c)疎水性螺旋領域をN末端領域に連結する第1の連結部分であって、該第1の連結部分が少なくとも1つのリジン様側鎖及び/又は1つのアルギニン様側鎖を備える、第1の連結部分、(d)目的の病原体又は因子に結合するように選択された結合部分、並びに(e)結合部分をN末端領域に連結する、好ましくは短く水溶性及びフレキシブルな連結部分である第2の連結部分、を含み得る。
【0022】
本明細書に開示される結合模倣体は、好ましくは、肺サーファクタント模倣体(及びより具体的には、肺サーファクタントタンパク質の模倣体)の好適な修飾を通じて誘導される。これらの肺サーファクタント模倣体は、最も好ましくは、ヒトSP-C又はその一部の模倣体であるが、他の肺サーファクタントタンパク質(又はその一部)の模倣体も可能である。これらには、SP-A、SP-B又はSP-D(又はその一部)の模倣体、及び他の種、例えば、ブタバージョンのSP-Cなどのサーファクタントタンパク質(又はその一部)の模倣体が含まれるが、これらに限定されない。これらの肺サーファクタント模倣体への修飾は、好ましくは、1つ以上の結合部分を模倣体上に(好ましくは1つ以上の好適な連結部分を介して)設置することを伴い、したがって、結合模倣体を生じる。結合部分及び連結部分は、好ましくは、基礎となる模倣体の安定性及び立体構造状態、3D構造及び一般的な機能特性を維持するように選択され、結果として、得られる結合模倣体が肺サーファクタント模倣体として機能し続ける。
【0023】
いくつかの実施形態において、結合模倣体は、脂質(例えば、コレステロールを含む)、リン脂質(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含む)若しくは別の好適なリン脂質であるか、又はその模倣体である塩基を特徴とし得る。
【0024】
前述のように、好ましい実施形態において、本明細書に開示される結合模倣体は、好ましくは、SP-C模倣体に由来する。SP-Cは、35アミノ酸長である、螺旋状の非常に疎水性のタンパク質である。これは、全ての哺乳類種の中で高度に配列保存されている。SP-Cは、37Å長の螺旋領域を含有する。この螺旋領域は、脂質二重層を横断することができ、リン脂質アシル鎖の内部を会合(及び相互作用)する。加えて、天然ヒトSP-CのN末端領域は、5位及び6位に2つのパルミトイル化システインを含有する。2つのパルミトイル鎖は、界面サーファクタントフィルム内のSP-Cと関連するリン脂質との間の会合を、非常に高いレベルの圧縮で維持する上で重要な役割を果たすと考えられている。したがって、パルミトイル化システインは、除外されたサーファクタント材料の疎水性「アンカー」として機能し、膨張中にこの材料の再組み込みを補助する。これらのシステインのパルミトイル化はまた、SP-Cの強固なα-螺旋構造を維持する上で重要であることが示されている。
【0025】
天然のSP-Cタンパク質の重要な生物物理学的活性、及びそれが動物由来のサーファクタントに含まれることは、肺サーファクタント組成物におけるこのタンパク質の重要な役割を強調する。残念ながら、このタンパク質の大規模な産生は、(部分的には、その高度に疎水性の性質のため)非常に困難であり、したがって、合成サーファクタント調製物へのその組み込みは実用的ではない。更に、SP-Cは比較的小さく、いかなる三次構造をも欠いているが、天然タンパク質及びその配列同一性類似体を扱うことが困難である。例えば、ポリバリル螺旋は、脂質の不在下で、表面活性が低下したβシート凝集体構造に自発的に変換される、β分枝側鎖を有する脂肪族残基で完全に構成されている。
【0026】
天然SP-Cに関連する困難(特に、その準安定な二次構造及び凝集傾向)は、SP-C模倣体の使用によって克服されている。適切なペプチド模倣物を設計する際には、SP-Cの主要な機能性を保持する、より管理可能なSP-C類似体を生成するために不可欠な特徴を考慮すべきである。したがって、構造機能研究がSP-Cについて行われており、これは、タンパク質の機能性を保持するために好ましくは保持される分子特徴のいくつかを明らかにしている。これらの研究は、タンパク質の極端な疎水性を保持すること、疎水性及び極性残基の縦方向に両親媒性なパターン形成を複製すること、及びその強固な螺旋状の二次構造を維持することの望ましさを強調している。
【0027】
SP-Cの表面活性特性の多くは、タンパク質のバリルリッチ螺旋領域によって促進されることが知られており、その長さは、DPPC二重層の厚さに近似する(37Å)。a-螺旋構造及び全体的な疎水性は、SP-Cの表面活性特性を捕捉する際に正確な側鎖化学よりも重要であることがわかっており、したがって、代替的な(なおも疎水性である)側鎖構造を有するペプチド模倣物において所望のSP-C分子パラメータを保存する可能性を開く。このアプローチは、SP-C類似体の生成及び取り扱いを簡素化するために利用され得る。
【0028】
ポリ-N置換グリシン(又は「ペプトイド」)は、SP-Cを模倣するために利用されてもよく、本明細書に開示される結合模倣体の製造での使用のための好ましいクラスの模倣体である。ペプトイドは、側鎖が構成アミノ酸のα炭素ではなくアミド窒素に結合されていることを除いて、同様の骨格構造に基づくペプチドと構造的に類似している。ペプトイドは、プロテアーゼ分解に耐性があり、側鎖のこの変更された配置の結果として、ペプチドよりも生体安定性が高い。ペプチドと比較して、ペプトイドはまた、固相合成の方法はほぼ同様であるが、合成するのに比較的単純であり、費用対効果が高い。
【0029】
ポリペプチドとは異なり、ペプトイド骨格の非置換メチレン炭素はアキラルである。更に、骨格窒素は側鎖で置換されているため、ペプトイドはまた、骨格水素結合ドナーを欠く。これにもかかわらず、α-キラルで立体的にかさばる側鎖を持つペプトイドは、極めて安定した巻かれた螺旋をとることができる。したがって、ペプトイドは、正しく機能するために螺旋構造に依存する生体活性分子(肺サーファクタントの疎水性タンパク質など)を模倣するための優れた候補である。これらの螺旋構造は、ポリプロリンI型螺旋と物理的に構造が類似しており、1ターンあたり約3個の残基を有し、螺旋ピッチは約6Åである。特に、SP-Cペプチドベースの類似体の開発で使用される同じ設計戦略の多くは、ペプトイドベースの類似体及びそれに基づく結合模倣体にも適用可能である。ペプチドベースの類似体と同様に、より強固な螺旋を含有するペプトイドベースの類似体は、よりフレキシブルな脂肪族ベースの螺旋を含有するペプトイドベースの類似体と比較して、優れたSP-C様の挙動を呈する。これは、正確な側鎖化学ではなく、SP-Cの全体的な二次構造及び疎水性が、模倣するためにはより重要な特徴であることを示唆する。
【0030】
SP-Cのより強固な(芳香族側鎖ベースの)ペプトイド模倣体の優れた表面活性にもかかわらず、脂肪族ベースの模倣体は、いくつかの所望の特性を呈し、したがって、それらを、本明細書に開示される結合模倣体のいくつかの用途の前駆体として選択される材料とする。かかる特性には、動的サイクル中のより低い最大表面張力が含まれ、これは、分枝脂肪族側鎖と脂質アシル鎖との間の好ましい相互作用を示す。これらの相互作用の保存は、SP-Cポリバリル螺旋が典型的に保存されているという事実を考慮すると、機能的に重要であり得るが、これが単に極めて疎水性な脂質環境への適応であるか、又は機能的必要性の1つであるかは現在のところ不明である。
【0031】
前述のことを考慮して、ペプトイドベースの模倣体のセットは、本明細書に開示される結合模倣体の前駆体として機能するように生成されている。
図1に示されるこれらの前駆体は、α-キラルな芳香族側鎖及びα-キラルな脂肪族側鎖の両方を組み込むことによって、SP-C模倣体の分子特徴を最適化することを意図して生成及び特徴付けられた。
図2~4は、これらの前駆体の特徴のいくつかを示す。好ましくは、これらの前駆体から結合模倣体を生成するために利用される連結部分及び結合部分は、基礎をなす前駆体の特性を保存するために選択される。
【0032】
好ましい実施形態において、設計された結合模倣体は、14残基の螺旋領域内に様々な量の芳香族及び脂肪族残基を含有する(すなわち、全芳香族、10芳香族/4脂肪族、及び5芳香族/9脂肪族側鎖)。このアプローチは、芳香族側鎖から構造的な強固さ、及び脂肪族側鎖から側鎖生体模倣性(すなわち、バリン構造を模倣する)を得ることによって、1つの結合模倣体に2つの分子特性を付与することを可能にする。螺旋領域における脂肪族含有量を増加させると、前駆体のインビトロ表面活性が徐々に増大し、動的サイクル中の最大表面張力の低下を引き起こすことがわかっている。強固さ及び生体模倣性の範囲は、構造の強固さのための約3分の1の芳香族側鎖及び側鎖生体模倣性のための3分の2の脂肪族側鎖を螺旋領域に組み込むことによって、バランスをとり、最適化され得る。このプロセスは、芳香族側鎖又は脂肪族側鎖のいずれかのみで構成される前駆体模倣体よりも多くの用途においてより優れた表面活性を呈する前駆体模倣体のセットをもたらす。
【0033】
最も有望な結合模倣体のいくつかの表面活性を更に改善するために、2つのアルキル鎖がN末端領域に導入され得る。アミド連結C-18アルキル鎖は、重要な表面活性特性を担うSP-Cのパルミトイル鎖の構造及び疎水性を模倣し、連結点において安定である。アルキル化は、これらの結合模倣体の表面活性を更に改善し、天然のSP-C含有配合物と同等のインビトロ表面活性を有するサーファクタントフィルムをもたらし得る。
【0034】
様々なペプトイド模倣体が、本明細書に開示される結合模倣体の前駆体として利用され得ることは、前述から理解されるであろう。好ましい前駆体としては、本明細書においてCLeu3及びジ-pCLeu3として示される模倣体が挙げられ、モノ-pCLeu3として示される前駆体(この前駆体は、配列中の1位に1つのオクタデシル修飾を有するだけである)が特に好ましい。
【0035】
以下の非限定的な実施例は、本明細書に記載される組成物及び方法論の様々な態様を例示する。
【実施例】
【0036】
実施例1
本実施例は、本明細書に開示されるタイプの結合模倣体を作成する際に利用されるペプトイド模倣体前駆体の合成を例示する。
【0037】
図1のペプトイドベースのSP-C模倣体を、Zuckermannら[R.N.Zuckermann,J.M.Kerr,S.B.H.Kent,W.H.Moos,J.Am.Chem.Soc.1992,114(26),10646]に記述される、2ステップのサブモノマー法に従って固体支持体(Rinkアミド樹脂)上で自動化433A ABI Peptide Synthesizer(Foster City,CA)により合成した。簡潔に述べると、0.25mmolのRinkアミド樹脂(NovaBiochem,San Diego,CA)上で合成を行った。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジンで樹脂から第1のFmoc保護基を除去し、DMFで樹脂をすすいだ後、最初にDMF中の1.2Mのブロモ酢酸、続いてN,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を添加して樹脂をアセチル化することにより、モノマー添加サイクルを実施した。アセチル化工程を45分間実施し、次いで樹脂をDMFで洗浄した。次に、樹脂結合ハロゲンを、N-メチルピロリジノン(NMP)中の1.0Mの一級アミンサブモノマーによって置換し、これを樹脂に添加し、90分間反応させた。2段階のサイクルを、リジン様サブモノマー(NLys)、アルキルサブモノマー(Nocd)、及びプロリン残基の添加を除いて、ペプトイドの所望の長さ及び配列が得られるまで繰り返した。Boc保護NLysサブモノマー及びNocdサブモノマーの置換ステップを120分に延長し、一方、プロリン残基の添加のために、PyBrop活性化システムを用いた。加えて、NMP中の溶解性が悪いため、Nocdサブモノマーをジクロロメタン:メタノール(1:1)中に0.8Mで溶解させた。プロリン添加後、以前と同様にピペリジンでFmoc基を除去し、ペプトイドサイクルを継続した。
【0038】
実施例2
本実施例は、コロナウイルスに付着するように設計された、本明細書に開示されるタイプの結合模倣体に対する好適な結合部分の産生を例示する。
【0039】
SARS-CoV-2コロナウイルスの結合部分は、Vanessa Monteil、Hyesoo Kwon、Patricia Prado、Astrid Hagelkruys、Reiner A.Wimmer、Martin Stahl、Alexandra Leopoldi、Elena Garreta、Carmen Hurtado Del Pozo、Felipe Prosper、J.p.Romero、Gerald Wirnsberger、Haibo Zhang、Arthur S.Slutsky、Ryan Conder、Nuria Montserrat、Ali Mirazimi、Josef M.Penninger.Inhibition of SARS-CoV-2 infections in engineered human tissues using clinical-grade soluble human ACE2.Cellに提出,2020 DOI:10.1016/j.cell.2020.04.004に開示される方法論を使用して生成される。
【0040】
実施例3
本実施例は、コロナウイルスに好適な別の結合部分の産生を例示する。
【0041】
アミノ酸配列IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSを有する23量体合成ポリペプチドを、自動フローペプチド合成によって調製した。ACE2 α1螺旋配列から選択された23残基(IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS)は、MDシミュレーション軌道に沿って低い変動を示し、スパイクタンパク質とのいくつかの重要な相互作用が観察された。これは、複数ラインの公開されたデータと一致していた。R.Yan,Y.Zhang,Y.Li,L.Xia,Y.Guo,and Q.Zhou,Structural basis for the recognition of the SARS-CoV-2 by full-length human ACE2.Science,2020、及びY.Wan,J.Shang,R.Graham,R.S.Baric,and F.Li,Receptor recognition by novel coronavirus from Wuhan:An analysis based on decade-long structural studies of SARS.J Virol,2020を参照されたい。
【0042】
実施例4
本実施例は、本明細書の教示に従う、ペプトイドベースのSP-C結合模倣体の産生を例示する。
【0043】
ペプトイドベースのSP-C模倣体は、前述の実施例2又は3の結合剤、例えば、ACE2 α1螺旋配列(IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS)を、ペプトイドベースのSP-C模倣体のN末端に、介在する短い水溶性連結配列と共に付加することによって調製され得る。この連結配列は、1~10個のモノマー長であってもよく、ペプチド配列(例えば、フレキシブルな水溶性繰り返しアミノ酸二量体[Ser-Gly])又はペプトイド配列(例えば、オリゴ-N-メトキシエチルグリシン(Nmeg)の繰り返し)のいずれかであってもよい。固相ペプチド及びペプトイド合成の制限を考えると、最大の実用的な鎖長は約30~32モノマーであり、好ましいペプトイドベースのSP-C模倣体(例えば、CLeu3、モノ-pCLeu3、又はジ-pCLeu3)は、長さが約22のN置換グリシンモノマーである。追加の5つの水溶性Nmegモノマーを同じ合成においてペプトイドのアミノ末端に添加してよく、続いてアジド末端化ペプトイドサブモノマーを添加してよい。このペプトイドは、合成ペプトイドの調製の分野で周知の方法を使用して、特にこれらのSP-C模倣ペプトイドの調製のためのそのような方法を使用して、HPLC精製されてもよい。別途、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質に緊密に結合する上記ACE2 α1螺旋配列(IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS)を合成してもよく(好ましくは、最終残基としてアルキン末端化ペプトイドモノマーを添加して)、このペプチドをHPLC精製してもよい。最後に、水溶性連結部分及びアジド末端を組み込んだ精製SP-C模倣ペプトイド化合物、並びにアルキン末端を有するACE2 α1螺旋配列(IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS)は、好ましくは、両方とも有機溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、DMF、又はN-メチルピロリジノン、NMP)に溶解し、クリックケミストリーを利用して連結される。この化学反応は、アジド末端化化合物を、アルキン末端化化合物と特異的かつ高収率で反応させ得る(Jean-Francois Lutz;Zoya Zarafshani(2008).「Efficient construction of therapeutics,bioconjugates,biomaterials and bioactive surfaces using azide-alkyne“click”chemistry」.Advanced Drug Delivery Reviews.60(9):958-970.doi:10.1016/j.addr.2008.02.004.PMID18406491を参照されたい)。次いで、最終コンジュゲートを再度HPLC精製し、その後、使用するために、純粋な形態で調製してもよい。
【0044】
様々な結合部分が本明細書に開示される組成物及び方法論で利用され得る。結合部分は、好ましくは、目的の1つ以上の病原体又は因子に結合するように選択される。例えば、SARS-CoV-2コロナウイルスに感染した患者の治療において、結合部分は、例えば、組換えACE-2タンパク質などのACE-2受容体の模倣体であってもよく、例えば、ヒト組換え可溶性ACE2(hrsACE2)であってもよい。しかしながら、好ましくは、結合部分は、ペプチドであり、より好ましくは、(例えば、結合選択研究を介して特定されてもよい)ペプトイドであるが、これは、かかるより小さい分子がもたらす多くの利点に起因する。
【0045】
好ましくは、結合部分は5000g/mol未満の分子量を有し、より好ましくは3200g/mol未満の分子量を有する。結合部分は、好ましくは50個以下のアミノ酸配列を有するペプチドであり、より好ましくは25個以下のアミノ酸配列を有するペプトイドである。
【0046】
様々な連結部分が本明細書に開示される組成物及び方法論で利用され得る。好ましくは、これらの連結部分は、短く、フレキシブルであり、水溶性である。いくつかの実施形態において、連結部分は、長さが1~10個のモノマーの結合配列であってもよく、ペプチド配列又はペプトイド配列のいずれかであってもよい。可能な連結部分の特定の非限定的な例には、Ser-Glyリピートペプチド、オリゴエチレングリコール(Quanta Biosciencesから市販されている)、及びオリゴ(Nmeg)と呼ばれることもあるオリゴ-N-メトキシグリシンペプトイドが含まれる。
【0047】
本明細書に開示される結合模倣体は、種々の外来性サーファクタントと混合され得る。これらには、限定されないが、CUROSURF(商標)気管内懸濁液が含まれ、これは、気管内使用を意図した滅菌された非発熱性肺サーファクタントである。CUROSURF(商標)は、99%の極性脂質(主にリン脂質)及び1%の疎水性低分子量タンパク質(サーファクタント関連タンパク質SP-B及びSP-C)からなる天然ブタ肺サーファクタントの抽出物である。
【0048】
これらの外来性サーファクタントには、気管内滴下を意図した無菌の非発熱性肺サーファクタントであるINFASURF(登録商標)気管内懸濁液も含まれる。INFASURF(登録商標)は、リン脂質、中性脂質、及び疎水性サーファクタント関連タンパク質B及びC(SP-B及びSP-C)を含む、仔ウシの肺からの天然サーファクタントの抽出物である。それは、0.9%塩化ナトリウム水溶液中のカルファクタント(calfactant)の懸濁液である。そのpHは、5.0~6.2(目標pH5.7)である。各ミリリットルのInfasurfは、35mgの総リン脂質(26mgのホスファチジルコリンを含有し、そのうち16mgは二飽和ホスファチジルコリン)、及び0.26mgのSP-Bを含む0.7mgのタンパク質を含む。
【0049】
これらの外来性サーファクタントには、気管内使用を意図した無菌の非発熱性肺サーファクタントであるSURVANTA(登録商標)(beractant)気管内懸濁液も含まれ得る。SURVANTA(登録商標)は、リン脂質、中性脂質、脂肪酸、及びサーファクタント関連タンパク質を含有する天然ウシ肺抽出物であり、パルミチン酸コルホスセリル(ジパルミトイルホスファチジルコリン)、パルミチン酸、及びトリパルミチンを添加して組成物を標準化し、天然肺サーファクタントの表面張力低下特性を模倣する。得られた組成物は、25mg/mLのリン脂質(11.0~15.5mg/mLの二飽和ホスファチジルコリンを含む)、0.5~1.75mg/mLのトリグリセリド、1.4~3.5mg/mLの遊離脂肪酸、及び1.0mg/mL未満のタンパク質を提供する。組成物を0.9%塩化ナトリウム溶液に懸濁し、加熱滅菌する。組成物のタンパク質内容物は、一般にSP-B及びSP-Cとして知られる2つの疎水性低分子量サーファクタント関連タンパク質からなる。これは、SP-Aとして知られる親水性大分子量サーファクタント関連タンパク質を含有しない。各mLのSURVANTAは、25mgのリン脂質を含有する。
【0050】
これらの外来性サーファクタントはまた、例えば、ヘキサデカノール及びチロキサポールを拡散剤として添加したDPPCの混合物であるパルミチン酸Colfosceril(Exosurf)、DPPC及びPGの混合物であるPumactant(人工肺拡張化合物又はALEC);SP-Bの構造的特徴を模倣する21アミノ酸合成ペプトイドと組み合わせたDPPC、パルミトイル-オレオイルホスファチジルグリセロール、及びパルミチン酸からなるKL-4;DPPC、PG、パルミチン酸及び組換えSP-Cを含有するVenticute;並びにDPPC、POPG、及びパルミチン酸を含有するLucinactantなどの他の合成肺サーファクタントも含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される結合模倣体は、ウイルス及び他の病原体に結合するように操作されていない複数の(好ましくはSP-C)模倣体も含有する外来性サーファクタントにスパイクされ得る。そのような実施形態において、結合及び非結合模倣体は、所望の効果を達成するために様々な比率で存在し得る。
【0052】
本明細書に開示される結合模倣体は、SP-Cのペプチド類似体(例えば、Dr.Jan Johanssonによって最初に実証されたように、疎水性螺旋領域への全ロイシン置換を伴う、Brown NJ,Johansson J,Barron AE,“Biomimicry of surfactant protein C,”Acc.Chem.Res.2008,41,1409-1417を参照されたい)、SP-Cのペプトイド類似体、又はハイブリッドペプチド/ペプトイド分子(好ましくは、オクタデシルアミンペプトイドモノマーを使用して、2つのチオエステル連結パルミトイル鎖を置き換える、5位及び6位に2つのペプトイド残基のみを有する)に基づき得る。
【0053】
本明細書に開示される結合模倣体は、肺での使用に特に好適であるが、それらは、体の他の部分での感染症を治療するためにも使用され得る。例えば、SP-Cは耳の耳管にも生じる。したがって、本明細書に開示される結合模倣体は、例えば、中耳炎、慢性化膿性中耳炎、及び外耳炎などの様々な耳感染症の治療に特に好適であり得る。かかる用途において、結合部分は、関連する病原体に合わせて調整され得る。例えば、水泳者の耳の症例の大部分は、Pseudomonas aeruginosa及びStaphylococcus aureusによる感染に起因し、多数の他のグラム陽性及びグラム陰性種がそれに続く。Candida albicans及びAspergillus種(Aspergillus fumigatusなど)は、この状態を引き起こす最も一般的な真菌病原体である。したがって、組成物及び方法論は、これらの病原体のうちの1つ以上を標的とする1つ以上の結合部分を備えた結合模倣体(又は結合模倣体の混合物)を使用して、これらの状態を治療するために、本明細書の教示に従って使用され得る。例えば、Pseudomonas aeruginosaの場合、結合部分は、1つ以上のラミニンの模倣体であり得る。Staphylococcus aureusの場合、結合部分は、コラーゲン、フィブリノーゲン、若しくはFnなどの宿主ECMの1つ以上の成分の模倣体、又はフォン・ウィルブランド因子(vWF)などの糖タンパク質の模倣体、又は免疫グロブリンの模倣体(若しくは抗体のFc領域又はB細胞受容体のFab領域)、又は上記の1つ以上の部分の模倣体であり得る。Candida albicansの場合、結合部分は、例えば、ムチンの118kDa C末端糖ペプチドの66kDa切断産物などのムチン又はその成分の模倣体であってもよく、又は第H因子(FH)などの補体調節タンパク質又はその一部の模倣体であってもよい。Aspergillus fumigatusの場合、結合部分は、フィブリノーゲンCドメイン含有タンパク質1(FIBCD1)若しくはその部分の模倣体、又はMASP-1、MASP-3若しくはその一部分などのMBL関連セリンプロテアーゼ(MASP)の模倣体であり得る。
【0054】
いくつかの用途では、抗生物質又は抗真菌剤は、本明細書に開示される結合模倣体を含有するサーファクタント配合物に添加され得る。いくつかの場合では、これらの抗生物質又は抗真菌剤は、(例えば、それらが結合模倣体質に結合されている間に病原体を不活性化することにより)結合模倣体質と相乗的に作用し得る。例えば、抗菌ペプトイド、抗菌ペプチド、及び抗生物質(例えば、トブラマイシン、オフロキサシン、又はアジスロマイシンなど)は、本明細書に開示される結合模倣体を含有するサーファクタント配合物に添加され得る。本明細書に開示される結合模倣体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、“Selective Poly-N-Substituted Glycine Antibiotics”と題される米国特許第8,445,632号(Barronら)に開示されるペプトイド、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Diamond G,Molchanova N.,Herlan C.,Fortkort J.A.,Lin J.S.,Figgins E.,Bopp N.,Ryan L.K.,Chung D.,Adcock R.S.,Sherman M.,Barron A.E.Potent Antiviral Activity against HSV-1 and SARS-CoV-2 by Antimicrobial Peptoids.Pharmaceuticals(Basel).2021 Mar 31;14(4):304.doi:10.3390/ph14040304.PMID:33807248、PMCID:PMC8066833に開示されるペプトイド、及びそのようなペプトイドのハロゲン化誘導体と併せて利用され得る。本明細書に開示される結合模倣体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第9,938,321号(Kirshenbaumら)、米国特許第9,315,548号(Kirshenbaumら)及び米国特許第8,828,413号(Kirshenbaumら)に開示されるペプトイドと併せて利用され得る。本明細書に開示される結合模倣体は、Barronら及びKirshenbaumらのペプトイドのハロゲン化類似体と併せて利用されてもよい。これらのハロゲン類似体は、1つ以上のハロゲンによる、1つ以上の側鎖又は環構造におけるハロゲン置換を特徴としてもよく、好ましくはブロモ置換又はクロロ置換類似体を含む。
【0055】
本明細書に開示される組成物及び方法論の一部の用途では、結合模倣体は、エアロゾル化粉末として適用され得る。かかる粉末の製造及び適用方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Daniher,D.,Mccaig,L.,Ye,Y.,Veldhuizen,R.,Lewis,J.,Ma,Y.,&Zhu,J.(2020)“Protective effects of aerosolized pulmonary surfactant powder in a model of ventilator-induced lung injury.”International Journal of Pharmaceutics,583,119359.doi:10.1016/j.ijpharm.2020.119359に記載されている。
【0056】
いくつかの実施形態において、結合模倣体は、好適なサーファクタント脂質及びその類似体と併せて利用されてもよい。これらには、その全体が本明細書に組み込まれる、“Surfactant Lipids,Compositions Thereof,And Uses Thereof’と題される米国特許第10,532,066号(Voelkerら)に開示される脂質、及びその全体が本明細書に組み込まれる、“Methods And Compositions For Treating And Preventing Respiratory Related Diseases And Conditions With Xylitol-Headgroup Lipid Analogs”と題される米国特許出願公開第2020/0009165号(Voelker)に開示される脂質が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明の上記の説明は例示的であり、限定することを意図しない。したがって、様々な追加、置換、及び修正が、本発明の範囲から逸脱することなく上述の実施形態に対して行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体によって引き起こされた感染症に対して個体を治療するための
組成物であって、
前記組成物が、
(a)疎水性螺旋領域、
(b)少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域、
(c)前記疎水性螺旋領域を前記N末端領域に連結する第1の連結部分であって、前記連結部分が少なくとも1つのリジン様側鎖を備える、第1の連結部分、
(d)原因因子に結合する結合部分、及び
(e)前記結合部分を前記N末端領域に連結する第2の連結部分、を含
み、
前記個体が、前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある、組成物。
【請求項2】
前記第2の連結部分が、前記結合部分を、前記N末端領域内のプロリン残基に連結する、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記第2の連結部分が、親水性である、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項4】
前記N末端領域が、少なくとも1つのアルキル鎖を含む、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項5】
前記N末端領域が、少なくとも1つのC-18アルキル鎖を含む、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項6】
前記N末端領域が、複数のC-18アルキル鎖を含む、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項7】
物質が、ポリ-N置換グリシンである、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項8】
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpe)
14-NH
2を有する、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項9】
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNSpeNssb)
4-NSpeNSpe-NH
2を有する、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項10】
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNssbNssb)
4Nspe-NH
2を有する、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項11】
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNssbNssb)
4Nspe-NH
2を有する、請求
項1に記載の
組成物。
【請求項12】
病原体によって引き起こされた感染症を治療するための
組成物であって、
前記組成物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含
み、前記組成物が、前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある個体に投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項13】
前記肺サーファクタント模倣体が、SP-C模倣体である、請求項
12に記載の
組成物。
【請求項14】
前記組成物が、第1及び第2の化合物の混合物を含み、前記第1の化合物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含み、前記第2の化合物が、前記結合部分及び連結部分を含まない前記肺サーファクタントの類似体である、請求項
13に記載の
組成物。
【請求項15】
関連するアレルゲンによって引き起こされたアレルギーを治療するための
組成物であって、
前記組成物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記アレルゲンに結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含む、
組成物。
【請求項16】
前記肺サーファクタント模倣体が、SP-C模倣体である、請求項
15に記載の
組成物。
【請求項17】
前記組成物が、第1及び第2の化合物の混合物を含み、前記第1の化合物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含み、前記第2の化合物が、前記結合部分及び連結部分を含まない前記肺サーファクタントの類似体である、請求項
16に記載の
組成物。
【請求項18】
病原体によって引き起こされた感染症に対して個体を治療するための
組成物であって、
前記組成物が、前記病原体に結合する結合剤を含み、前記結合剤が、前記病原体が結合する受容体のペプチド又はペプトイド模倣体であ
り、前記組成物が、前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある個体に投与されることを特徴とする、
組成物。
【請求項19】
前記組成物が、
肺の肺サーファクタント(pulmonary lung surfactant)に結合するアンカーを更に含む、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項20】
前記組成物が、
前記結合剤を前記アンカーに連結する第1の連結部分を更に含む、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項21】
前記結合剤が、ペプチドである、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項22】
前記結合剤が、ペプトイドである、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項23】
前記結合剤が、アミノ酸配列を含む、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項24】
前記結合剤が、前記病原体が結合する細胞受容体を模倣する、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項25】
前記結合剤が、前記病原体が結合する上皮細胞受容体を模倣する、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項26】
前記個体への前記組成物
の投
与が、
前記組成物を含有する粉末を生成することと、
前記個体の肺に前記粉末を適用することと、を含む、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項27】
前記個体への前記組成物
の投
与が、
前記組成物を含有する蒸気を生成することと、
前記蒸気を前記個体の肺に適用することと、を含む、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項28】
前記アンカーが、
疎水性螺旋領域と、
少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域と、
前記疎水性螺旋領域を前記N末端領域に連結する第2の連結部分であって、前記第2の連結部分が少なくとも1つのリジン様側鎖を備える、第2の連結部分と、を含む、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項29】
前記結合剤を前記N末端領域に連結する第1の連結部分を更に含む、請求項
28に記載の
組成物。
【請求項30】
前記アンカーが、親油性である、請求項
28に記載の
組成物。
【請求項31】
前記アンカーが、親水性頭部及び少なくとも1つの疎水性尾部を有する、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項32】
前記アンカーが、親水性頭部及び複数の疎水性尾部を有する、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項33】
前記アンカーが、化学式R
1R
2PA
(式中、R
1及びR
2はアルキル基である)を有する、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項34】
前記アンカーが、脂質である、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項35】
前記アンカーが、コレステロールである、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項36】
前記アンカーが、リン脂質である、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項37】
前記アンカーが、ホスファチジルコリンである、請求項
36に記載の
組成物。
【請求項38】
前記アンカーが、ジパルミトイルホスファチジルコリンである、請求項
36に記載の
組成物。
【請求項39】
前記アンカーが、以下の構造:
【化1】
を有する、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項40】
前記アンカーが、前記結合剤に共有結合される、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項41】
前記アンカーが、前記結合剤にイオン結合される、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項42】
前記アンカーが、少なくとも1つの脂肪酸基を含む、請求項
19に記載の
組成物。
【請求項43】
前記組成物が、SP-B及びSP-Cからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を更に含む、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項44】
前記結合剤が、疎水性部分、負に荷電した部分、及び非荷電極性部分を有する、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項45】
前記結合剤が、(a)リン脂質グリセロール骨格、(b)キシリトール極性頭部基、(c)前記グリセロール骨格を前記キシリトール極性頭部基に連結するホスホジエステル結合、及び(d)長さ14~18個の炭素の2つの脂肪族鎖を含む可変疎水性領域、を有する、キシリトール脂質類似体である、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項46】
前記脂肪族鎖と前記リン脂質グリセロール骨格との間の結合が、O-アシル結合又はO-アルキル結合である、請求項
45に記載の
組成物。
【請求項47】
前記脂肪族鎖が、0~2個の二重結合を含有する、請求項
46に記載の
組成物。
【請求項48】
前記アンカーが、ポリ-N置換グリシンである、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項49】
前記アンカーが、SP-B及びSP-Cからなる群から選択されるタンパク質のペプトイド模倣体である、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項50】
前記病原体がコロナウイルスであり、前記結合剤がACE-2受容体の模倣体である、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項51】
前記病原体がコロナウイルスであり、前記結合剤が組換えACE-2タンパク質である、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項52】
前記病原体が、Pseudomonas aeruginosaであり、前記結合剤が、ラミニンの少なくとも1つの部分の模倣体である、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項53】
前記病原体が、Staphylococcus aureusであり、前記結合剤が、コラーゲン、フィブリノーゲン、Fn、糖タンパク質、及び免疫グロブリンからなる群から選択される少なくとも1つの材料の少なくとも1つの部分の模倣体である、請求項
18に記載の
組成物。
【請求項54】
前記病原体が、Candida albicansであり、前記結合剤が、ムチンの少なくとも1つの部分の模倣体である、請求項
18に記載の
組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
本発明の上記の説明は例示的であり、限定することを意図しない。したがって、様々な追加、置換、及び修正が、本発明の範囲から逸脱することなく上述の実施形態に対して行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
項目A1.
病原体によって引き起こされた感染症に対して個体を治療するための方法であって、
前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある個体に、少なくとも1つの組成物の量を投与することであって、前記組成物の前記量が前記感染症を阻害するのに有効であり、前記組成物が、
(a)疎水性螺旋領域、
(b)少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域、
(c)前記疎水性螺旋領域を前記N末端領域に連結する第1の連結部分であって、前記連結部分が少なくとも1つのリジン様側鎖を備える、第1の連結部分、
(d)原因因子に結合する結合部分、及び
(e)前記結合部分を前記N末端領域に連結する第2の連結部分、を含む、投与することを含む、方法。
項目A2.
前記第2の連結部分が、前記結合部分を、前記N末端領域内のプロリン残基に連結する、項目A1に記載の方法。
項目A3.
前記第2の連結部分が、親水性である、項目A1に記載の方法。
項目A4.
前記N末端領域が、少なくとも1つのアルキル鎖を含む、項目A1に記載の方法。
項目A5.
前記N末端領域が、少なくとも1つのC-18アルキル鎖を含む、項目A1に記載の方法。
項目A6.
前記N末端領域が、複数のC-18アルキル鎖を含む、項目A1に記載の方法。
項目A7.
物質が、ポリ-N置換グリシンである、項目A1に記載の方法。
項目A8.
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpe)
14
-NH
2
を有する、項目A1に記載の方法。
項目A9.
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNSpeNssb)
4
-NSpeNSpe-NH
2
を有する、項目A1に記載の方法。
項目A10.
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNssbNssb)
4
Nspe-NH
2
を有する、項目A1に記載の方法。
項目A11.
物質が、式H-NpmNpm(Pro-L-A)NValNpmNLeuNLysNLys(NSpeNssbNssb)
4
Nspe-NH
2
を有する、項目A1に記載の方法。
項目B1.
病原体によって引き起こされた感染症を治療するための方法であって、
前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある個体に、少なくとも1つの組成物の量を投与することであって、前記組成物の前記量が前記感染症を阻害するのに有効であり、前記組成物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含む、投与することを含む、方法。
項目B2.
前記肺サーファクタント模倣体が、SP-C模倣体である、項目B1に記載の方法。
項目B3.
前記組成物が、第1及び第2の化合物の混合物を含み、前記第1の化合物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含み、前記第2の化合物が、前記結合部分及び連結部分を含まない前記肺サーファクタントの類似体である、項目B2に記載の方法。
項目C1.
関連するアレルゲンによって引き起こされたアレルギーを治療するための方法であって、
前記アレルギーを有する個体に、少なくとも1つの組成物の量を投与することであって、前記組成物の前記量が、前記アレルギーを阻害するのに有効であり、前記組成物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記アレルゲンに結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含む、投与することを含む、方法。
項目C2.
前記肺サーファクタント模倣体が、SP-C模倣体である、項目C1に記載の方法。
項目C3.
前記組成物が、第1及び第2の化合物の混合物を含み、前記第1の化合物が、(a)ペプトイド骨格を有する肺サーファクタント模倣体、(b)前記病原体に結合する結合部分、及び(c)前記結合部分を前記肺サーファクタント模倣体に連結する連結部分を含み、前記第2の化合物が、前記結合部分及び連結部分を含まない前記肺サーファクタントの類似体である、項目C2に記載の方法。
項目D1.
病原体によって引き起こされた感染症に対して個体を治療するための方法であって、
前記感染症を有するか、又は前記感染症を発症するリスクがある個体に、薬学的有効量の少なくとも1つの組成物を投与することであって、前記組成物の前記量が、前記感染症を阻害するのに有効であり、前記組成物が、前記病原体に結合する結合剤を含み、前記結合剤が、前記病原体が結合する受容体のペプチド又はペプトイド模倣体である、投与することを含む、方法。
項目D2.
前記組成物が、
肺の肺サーファクタント(pulmonary lung surfactant)に結合するアンカーを更に含む、項目D1に記載の方法。
項目D3.
前記組成物が、
前記結合剤を前記アンカーに連結する第1の連結部分を更に含む、項目D2に記載の方法。
項目D4.
前記結合剤が、ペプチドである、項目D1に記載の方法。
項目D5.
前記結合剤が、ペプトイドである、項目D1に記載の方法。
項目D6.
前記結合剤が、アミノ酸配列を含む、項目D1に記載の方法。
項目D7.
前記結合剤が、前記病原体が結合する細胞受容体を模倣する、項目D1に記載の方法。
項目D8.
前記結合剤が、前記病原体が結合する上皮細胞受容体を模倣する、項目D1に記載の方法。
項目D9.
前記組成物を前記個体に投与することが、
前記組成物を含有する粉末を生成することと、
前記個体の肺に前記粉末を適用することと、を含む、項目D1に記載の方法。
項目D10.
前記組成物を前記個体に投与することが、
前記組成物を含有する蒸気を生成することと、
前記蒸気を前記個体の肺に適用することと、を含む、項目D1に記載の方法。
項目D11.
前記アンカーが、
疎水性螺旋領域と、
少なくとも1つのプロリン残基を含むN末端領域と、
前記疎水性螺旋領域を前記N末端領域に連結する第2の連結部分であって、前記第2の連結部分が少なくとも1つのリジン様側鎖を備える、第2の連結部分と、を含む、項目D2に記載の方法。
項目D12.
前記結合剤を前記N末端領域に連結する第1の連結部分を更に含む、項目D11に記載の方法。
項目D13.
前記アンカーが、親油性である、項目D11に記載の方法。
項目D14.
前記アンカーが、親水性頭部及び少なくとも1つの疎水性尾部を有する、項目D2に記載の方法。
項目D15.
前記アンカーが、親水性頭部及び複数の疎水性尾部を有する、項目D2に記載の方法。
項目D16.
前記アンカーが、化学式R
1
R
2
PA
(式中、R
1
及びR
2
はアルキル基である)を有する、項目D2に記載の方法。
項目D17.
前記アンカーが、脂質である、項目D2に記載の方法。
項目D18.
前記アンカーが、コレステロールである、項目D2に記載の方法。
項目D19.
前記アンカーが、リン脂質である、項目D2に記載の方法。
項目D20.
前記アンカーが、ホスファチジルコリンである、項目D19に記載の方法。
項目D21.
前記アンカーが、ジパルミトイルホスファチジルコリンである、項目D19に記載の方法。
項目D22.
前記アンカーが、以下の構造:
【化1】
を有する、項目D2に記載の方法。
項目D23.
前記アンカーが、前記結合剤に共有結合される、項目D2に記載の方法。
項目D24.
前記アンカーが、前記結合剤にイオン結合される、項目D2に記載の方法。
項目D25.
前記アンカーが、少なくとも1つの脂肪酸基を含む、項目D2に記載の方法。
項目D26.
前記組成物が、SP-B及びSP-Cからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を更に含む、項目D1に記載の方法。
項目D27.
前記結合剤が、疎水性部分、負に荷電した部分、及び非荷電極性部分を有する、項目D1に記載の方法。
項目D28.
前記結合剤が、(a)リン脂質グリセロール骨格、(b)キシリトール極性頭部基、(c)前記グリセロール骨格を前記キシリトール極性頭部基に連結するホスホジエステル結合、及び(d)長さ14~18個の炭素の2つの脂肪族鎖を含む可変疎水性領域、を有する、キシリトール脂質類似体である、項目D1に記載の方法。
項目D29.
前記脂肪族鎖と前記リン脂質グリセロール骨格との間の結合が、O-アシル結合又はO-アルキル結合である、項目dD28に記載の方法。
項目D30.
前記脂肪族鎖が、0~2個の二重結合を含有する、項目D29に記載の方法。
項目D31.
前記アンカーが、ポリ-N置換グリシンである、項目D1に記載の方法。
項目D32.
前記アンカーが、SP-B及びSP-Cからなる群から選択されるタンパク質のペプトイド模倣体である、項目D1に記載の方法。
項目D33.
前記病原体がコロナウイルスであり、前記結合剤がACE-2受容体の模倣体である、項目D1に記載の方法。
項目D34.
前記病原体がコロナウイルスであり、前記結合剤が組換えACE-2タンパク質である、項目D1に記載の方法。
項目D35.
前記病原体が、Pseudomonas aeruginosaであり、前記結合剤が、ラミニンの少なくとも1つの部分の模倣体である、項目D1に記載の方法。
項目D36.
前記病原体が、Staphylococcus aureusであり、前記結合剤が、コラーゲン、フィブリノーゲン、Fn、糖タンパク質、及び免疫グロブリンからなる群から選択される少なくとも1つの材料の少なくとも1つの部分の模倣体である、項目D1に記載の方法。
項目D37.
前記病原体が、Candida albicansであり、前記結合剤が、ムチンの少なくとも1つの部分の模倣体である、項目D1に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
アミノ酸配列IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS(配列番号1)を有する23量体合成ポリペプチドを、自動フローペプチド合成によって調製した。ACE2 α1螺旋配列から選択された23残基(IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS(配列番号1))は、MDシミュレーション軌道に沿って低い変動を示し、スパイクタンパク質とのいくつかの重要な相互作用が観察された。これは、複数ラインの公開されたデータと一致していた。R.Yan,Y.Zhang,Y.Li,L.Xia,Y.Guo,and Q.Zhou,Structural basis for the recognition of the SARS-CoV-2 by full-length human ACE2.Science,2020、及びY.Wan,J.Shang,R.Graham,R.S.Baric,and F.Li,Receptor recognition by novel coronavirus from Wuhan:An analysis based on decade-long structural studies of SARS.J Virol,2020を参照されたい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
ペプトイドベースのSP-C模倣体は、前述の実施例2又は3の結合剤、例えば、ACE2 α1螺旋配列(IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS(配列番号1))を、ペプトイドベースのSP-C模倣体のN末端に、介在する短い水溶性連結配列と共に付加することによって調製され得る。この連結配列は、1~10個のモノマー長であってもよく、ペプチド配列(例えば、フレキシブルな水溶性繰り返しアミノ酸二量体[Ser-Gly])又はペプトイド配列(例えば、オリゴ-N-メトキシエチルグリシン(Nmeg)の繰り返し)のいずれかであってもよい。固相ペプチド及びペプトイド合成の制限を考えると、最大の実用的な鎖長は約30~32モノマーであり、好ましいペプトイドベースのSP-C模倣体(例えば、CLeu3、モノ-pCLeu3、又はジ-pCLeu3)は、長さが約22のN置換グリシンモノマーである。追加の5つの水溶性Nmegモノマーを同じ合成においてペプトイドのアミノ末端に添加してよく、続いてアジド末端化ペプトイドサブモノマーを添加してよい。このペプトイドは、合成ペプトイドの調製の分野で周知の方法を使用して、特にこれらのSP-C模倣ペプトイドの調製のためのそのような方法を使用して、HPLC精製されてもよい。別途、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質に緊密に結合する上記ACE2 α1螺旋配列(IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS(配列番号1))を合成してもよく(好ましくは、最終残基としてアルキン末端化ペプトイドモノマーを添加して)、このペプチドをHPLC精製してもよい。最後に、水溶性連結部分及びアジド末端を組み込んだ精製SP-C模倣ペプトイド化合物、並びにアルキン末端を有するACE2 α1螺旋配列(IEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQS(配列番号1))は、好ましくは、両方とも有機溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、DMF、又はN-メチルピロリジノン、NMP)に溶解し、クリックケミストリーを利用して連結される。この化学反応は、アジド末端化化合物を、アルキン末端化化合物と特異的かつ高収率で反応させ得る(Jean-Francois Lutz;Zoya Zarafshani(2008).「Efficient construction of therapeutics,bioconjugates,biomaterials and bioactive surfaces using azide-alkyne“click”chemistry」.Advanced Drug Delivery Reviews.60(9):958-970.doi:10.1016/j.addr.2008.02.004.PMID18406491を参照されたい)。次いで、最終コンジュゲートを再度HPLC精製し、その後、使用するために、純粋な形態で調製してもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】