(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】たばこ材料を処理するための方法および処理されたたばこ材料
(51)【国際特許分類】
A24B 15/20 20060101AFI20230605BHJP
A24B 3/12 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
A24B15/20
A24B3/12 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022562338
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2021062194
(87)【国際公開番号】W WO2021224474
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ブラン ミシェル フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ボヴェ ルシアン
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BA60
(57)【要約】
本発明は、たばこ材料を処理するための方法に関し、方法は、たばこ材料を発酵させて処理されたたばこ材料を得ることを含み、これが、嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることと、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る圧力をたばこ材料にかけることと、たばこ材料の水分含量を、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る量に保つこととを含み、発酵は少なくとも1か月持続する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ材料を処理する方法であって、前記方法が、
○前記たばこ材料を発酵させて、処理されたたばこ材料を得ることを含み、これが、
■嫌気性条件下で前記たばこ材料をインキュベートすることと、
■1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る圧力を前記たばこ材料にかけることと、
■前記たばこ材料の水分含量を、前記たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る量に保つことと、を含み、
○前記発酵が少なくとも1か月持続する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
○前記たばこ材料を乾燥して、前記たばこ材料の総重量の5パーセント~10パーセントから成る水分含量を有する乾燥たばこ材料を得る工程を含む、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、
○発酵前に前記たばこ材料を乾燥する工程を含む、方法。
【請求項4】
前記たばこ材料の温度を25℃~35℃から成る温度に保つことを含む、請求項1~3の一項以上に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4の一項以上に記載の方法であって、
○前記たばこ材料を回転させる工程を含む、方法。
【請求項6】
請求項1~5の一項以上に記載の方法であって、
○前記たばこ材料を水分保持材料内に確保することを含む、方法。
【請求項7】
請求項1~6の一項以上に記載の方法であって、
○前記たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る、前記たばこ材料の水分含量が達成されるように、発酵前に水中で前記たばこ材料を湿らせることを含む、方法。
【請求項8】
前記処理されたたばこ材料中のアスパラギンの量が、処理前の同じたばこ材料中に含有されたアスパラギンの量よりも少なくとも50パーセント低くなる、請求項1~7の一項以上に記載の方法。
【請求項9】
前記処理されたたばこ材料中のアスパラギンの量が、処理前の同じたばこ材料中に含有されたアスパラギンの量よりも少なくとも50パーセント低くなる、請求項1~8の一項以上に記載の方法。
【請求項10】
前記処理されたたばこ材料中の還元糖の量が、処理前の同じたばこ材料中に含有された還元糖の量よりも少なくとも50パーセント低くなる、請求項1~9の一項以上に記載の方法。
【請求項11】
たばこ材料であって、
○総乾燥重量基準で3パーセント未満の総還元糖と、
○総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンと、を含むたばこ材料。
【請求項12】
請求項11に記載のたばこ材料であって、
○総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含むたばこ材料。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のたばこ材料であって、
○総乾燥重量基準で10000ミリグラム/キログラム超の総遊離アミノ酸を含む、たばこ材料。
【請求項14】
前記たばこ材料が乾燥されている、請求項11~13の一項以上に記載のたばこ材料。
【請求項15】
請求項11~14の一項以上に記載のたばこ材料を含むエアロゾル発生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵によってたばこを処理するための方法および処理されたたばこに関する。特に、発酵は嫌気性発酵である。
【背景技術】
【0002】
たばこ製品に利用されるたばこ材料の全体的な特性または性質を変化させるために、様々な処理方法および添加剤が当技術分野で提案されてきた。例えば、たばこ材料は添加剤で処理されてきた。加えて、これらのたばこ材料の加工中に使用される処理条件は、こうしたたばこ材料から生産されるたばこ製品の化学特性または官能特性を変化させるために、およびこうしたたばこ材料を組み込んだ喫煙物品によって発生される主流煙またはエアロゾルの化学特性または官能特性を変化させるために、制御されてきた。
【0003】
たばこ加工の後の方の段階でたばこ材料の風味および香りを強化または添加するための処理は多くの場合、一つ以上の添加剤(複数可)をたばこに添加することを伴い、追加の加工工程および装置を必要とする可能性があり、これは費用と時間がかかる可能性がある。さらに、たばこへの添加剤の添加は、一部の消費者に良く思われない場合がある。
【0004】
従って、たばこ自体に外部風味剤を添加することを伴わないプロセスで、たばこ材料の感覚刺激特性を修正するニーズがある。さらに、複雑な加工を必要とせずに、こうした異なる感覚刺激材料を表すたばこ材料のニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
一態様によると、本発明は、たばこ材料を処理するための方法に関し、本方法は、たばこ材料を発酵させることを含む。発酵工程は、嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることを含むことが好ましい。発酵工程は、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る圧力をたばこ材料にかけることを含むことが好ましい。発酵工程は、たばこ材料の水分含量を、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る量に保つことを含むことが好ましい。発酵工程は、少なくとも1か月持続することが好ましい。
【0006】
本発明の方法によると、たばこの発酵は、請求される条件下で起こる。発酵に起因して、たばこ材料中に存在する特定の化合物は変化する場合があり、同様にたばこ材料の感覚刺激特性も変化しうる。さらに、本発明の方法によって発酵されたたばこ材料は、より低いレベルのアスパラギンを示しうる。
【0007】
たばこ材料は発酵しうることが知られている。たばこ植物は微生物の宿主となる場合があり、この微生物は次に細菌、カビ、アクチノマイセスを含みうる。研究では、細菌がたばこ中の現存の微生物の大半を占める一方で、カビおよびアクチノマイセスは少数であることが示されている。酵母はほとんどないか、または全く検出されることができない。発酵たばこは、当技術分野で周知の様々な適切な技法によって、例えばhttp://www.scirp.org/journal/jbmで入手可能なYang Yangらによって発表された「Research Progress in Tobacco Fermentation」(Journal of Biosciences and Medicines 2018, 6, 105-114)、または米国特許第5372149号、または米国特許第4528993号、およびその他に記載の通りの技法によって作られることができる。概して、たばこ発酵は、乾燥されて熟成されたたばこの水分含量を、約20パーセント~約60パーセントの水分含量に調整することと、湿らせたたばこを重ねて発酵させることとを含む。発酵は、例えば乾燥または低温貯蔵によって終了させることができる。上述の通り、微生物は概してたばこ植物に天然に存在するため、たばこ発酵は微生物の添加を必要としない。
【0008】
本発明において発酵は、当技術分野で周知のものと異なり、嫌気性条件下で行われる。
【0009】
嫌気性発酵は、酸素の非存在下でのより小さい分子への複雑な有機化合物の変換として定義される。この用語はまた、化学平衡と生化学的活性の両方の結果として、酸化還元反応に酸素を利用できない条件として定義されることができる。代わりに、特定のタイプのエネルギー代謝のために微生物によって使用されることができる他の酸化化合物が存在してもよい。
【0010】
嫌気性条件は好気性条件と共存する場合があり、ガス形態の酸素は、微小環境(例えば、水中に懸濁された岩屑の凝集体など)中の微生物には利用できない場合があり、その一方でそれと同時にマクロ環境(水)中に存在しうる。
【0011】
たばこの嫌気性発酵において、理論に拘束されることなく、主要エネルギー抽出経路は解糖から来てもよく、一部のアミノ酸は炭素/窒素源としても使用される。好ましい窒素化合物には通常、グルタミン、アラニン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、尿素、アルギニンが含まれる。
【0012】
嫌気性条件は、たばこ材料を容器の中に入れることと、容器を閉じることとによって達成されることが好ましい。嫌気性条件は、たばこ材料を容器の中に入れ、容器から空気を除去し、容器を気密の方法で閉じることで達成されることが好ましい。
【0013】
たばこ材料から空気を除去するために、圧力がかけられることがより好ましい。かけられた圧力は、たばこ材料から空気を「押し出し」、それによって、容器が閉じられた後、容器中に酸素がもはや存在しないか、または最小限の量でのみ存在する。
【0014】
たばこ材料を容器の中に入れ、空気が密封容器から除去された後に容器を閉めることは、嫌気性条件に迅速に到達することを可能にする。嫌気性条件を達成するこの方法は、コスト効率が良く、実施が容易であるため好ましい。
【0015】
別の方法として、たばこ材料を容器の中に入れ、空気を除去して水で置き換える。
【0016】
たばこ材料が入れられる容器は、例えばバレルである。バレルは木材、またはコンクリート、または金属、またはこれら3つの材料のいずれかの組み合わせで作製されることが好ましい。
【0017】
嫌気性条件は、所望の発酵期間にわたり保たれる。
【0018】
本発明による所望の発酵を得るために、たばこ材料は、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセント(重量比パーセント)から成る水分含量を有することが好ましい。たばこ材料は、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~35重量パーセント(重量比パーセント)から成る水分含量を有することがより好ましい。たばこ材料は、たばこ材料の総重量の28重量パーセント~32重量パーセント(重量比パーセント)から成る水分含量を有することがより好ましい。たばこ材料は、たばこ材料の総重量の30重量パーセント(重量比パーセント)の水分含量を有することがより好ましい。この水分含量に到達するために、たばこ材料は水で湿らせることが好ましい。水がたばこ材料に添加されている。たばこ材料は、嫌気性条件が得られ保たれている容器に導入される前に湿らせていることが好ましい。
【0019】
さらに、発酵工程中、この水分含量が維持される。従って、発酵中、たばこ材料の水分含有量はモニターされることが好ましい。例えば、発酵が起こる容器の中にたばこ材料が導入されている場合、容器は開けられてもよく、たばこ材料の水分は、容器が開けられている時に測定されてもよい。たばこの水分の測定を実施するために、容器は一定の間隔で開けられることが好ましい。
【0020】
水分は、容器内部に設けられた水分センサーによって測定されてもよい。このようにして、水分は、たばこ材料が密封容器中にある時も測定されてもよい。
【0021】
たばこ材料の水分は、一定の感覚で測定されることが好ましい。
【0022】
発酵中、たばこ材料は圧力を受ける。たばこ材料が受ける圧力は、1000キログラム/平方メートル(kg/m2)~4000キログラム/平方メートル(kg/m2)から成ることが好ましい。
【0023】
たばこ材料にかけられる圧力は発酵中、上記の範囲に維持される。
【0024】
圧力は、任意の手段によってたばこ材料にかけられてもよい。圧力は、容器に不活性ガスをポンプ注入してかけられてもよい。たばこ材料上に重しを置いて、望ましい圧力範囲がたばこ材料にかけられるようにして圧力がかけられてもよい。例えば、湿ったたばこ材料で容器が充填されてもよく、また水が容器から滲出するまで、容器の「リッド」として重しが、たばこ材料と接触して置かれる。
【0025】
たばこ材料は容器に挿入され、重しはたばこ材料の上または上方に位置して、所望の圧力を及ぼすことが好ましい。その後、容器は閉じられ、容器内部に重しを残し、それによって重しがたばこ材料に圧力をかけ続けうることが好ましい。
【0026】
以下において「発酵条件」という用語では、これら3つの条件のすべては、嫌気性条件と、たばこ材料の水分量がたばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成ることと、かけられる圧力が1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成ることとを意味する。従って、たばこ材料が発酵条件の対象であると述べることは、たばこ材料が嫌気性条件に供されることと、たばこ材料の中の水分量がたばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成ることと、かけられる圧力が1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成ることとを意味する。
【0027】
たばこ材料は、少なくとも1か月間、上述の発酵条件に供される。たばこ材料は、少なくとも2か月間、前記発酵条件に供されることが好ましい。たばこ材料は、少なくとも6か月間、前記発酵条件に供されることが好ましい。たばこ材料は、少なくとも12か月間、前記発酵条件に供されることが好ましい。たばこ材料は、少なくとも24か月間、前記発酵条件に供されることが好ましい。たばこ材料は、36か月未満にわたり、前記発酵条件に供されることが好ましい。
【0028】
前記発酵条件の適用は、すべての請求された時間(例えば、1か月超、または2か月超、または6か月超、または12か月超、または24か月超)にわたって継続しうる。別の方法として、発酵条件は、複数の時間間隔中に適用され、一連の時間間隔を形成してもよい。時間間隔は、「中断」によって一方が他方から分離される。例えば、嫌気性条件の存在と、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る水分量と、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る圧力の印加とのうちの一つ以上の一回以上の中断が起こってもよい。中断は、たばこ材料を調べるために起こってもよい。例えば、たばこ材料の水分は、中断中に測定されてもよい。中断は、一様な処理されたたばこ材料が得られうるように、たばこ材料を回転させるまたは混合するために起こってよい。
【0029】
中断は最大6時間持続してもよい。
【0030】
それ故に、たばこが上記の発酵条件に供される合計期間は、発酵条件が実際に適用されるすべての時間間隔の期間を足して計算される。別の方法として、合計期間は、発酵条件が初めて適用される瞬間から開始して、発酵条件が最後に適用される時に終了し、その後中断の期間を「除去」して計算することができる。
【0031】
例えば、発酵時間T(ここで、たばこ材料が発酵条件に供される合計期間を「発酵時間」とする)が選択された場合、以下の場合が可能である。
【0032】
発酵条件は、Tに等しい合計期間にわたり、連続的に適用される。
【0033】
発酵条件はN発酵時間間隔t1、t2、...、tNにわたって適用され、ここでt1+t2+...+tN = Tである。発酵時間間隔tjと、その後の時間間隔tj+1との間の時間ギャップは中断である。
【0034】
この合計期間Tは、少なくとも1か月、または少なくとも2か月、または少なくとも6か月、または少なくとも12か月、または少なくとも24か月である)。
【0035】
発酵条件が適用される2つの連続した時間間隔の間に、中断が存在することが好ましい。中断は6時間を超えて持続しない。
【0036】
発酵条件は、たばこ材料の所望の化学修飾を確かめるために、少なくとも1か月間、たばこ材料に適用される。例えば、発酵条件は、一つ以上の化学物質の所望の量がたばこ材料中で達するまで適用されてもよい。例えば、たばこ材料に含まれる化学物質は、発酵条件によって減少または増加しうる。従って、発酵条件は、化学物質が所望の量に達する時に停止される。例えば、発酵条件は、たばこ材料の所望の色が得られるまで適用されることができる。
【0037】
たばこ原料が発酵条件下にある時、嫌気性発酵が起こる。
【0038】
発酵中(発酵条件が適用される間)のたばこ材料の温度は、25℃~35℃、より好ましくは27℃~31℃の範囲内に含まれたままでありうる。たばこ材料の温度は、発酵全体中(発酵条件が適用される間)に、この範囲内に実質的に維持される。温度は発酵自体によって維持され、たばこ材料への熱を提供するまたは減じる必要はない。発酵中のたばこ材料のこの温度は、たばこ材料が位置する周囲の周囲温度が好ましくは15℃~25℃から成る時に得られる。
【0039】
発酵条件下での発酵中、たばこ材料中に存在する還元糖および遊離アミノ酸の量はモニターされている。たばこの葉に最も豊富に天然で存在する糖は、グルコース、フルクトース、スクロースである。糖含量の違いは、たばこの種類間で存在しうる。例えば、バージニアは糖度が高い(概して8パーセント~30パーセントの範囲である)一方で、バーレーは糖度が低い(概して1パーセント~2パーセントの範囲である)特徴がある。しかしながら、たばこ材料に使用されるたばこタイプにかかわらず、本発明の発酵条件下での発酵中の還元糖の含有量の減少が見いだされた。
【0040】
還元糖の量の変化は、たばこ材料の感覚刺激特性、およびたばこ材料で生成される煙またはエアロゾルの感覚刺激特性を変化しうる。
【0041】
さらに、たばこ材料は複数レベルのアミノ酸を含有する。アミノ酸は、発酵されたたばこ材料が含有されている最終製品によって生成される煙またはエアロゾル中の特定の成分のレベルと、煙またはエアロゾルの官能特性とに実質的に寄与しうる。異なるタイプのたばこは、異なる量のアミノ酸を含有しうる。さらに、たばこの葉または先端または葉柄の間で、アミノ酸組成に(主に定量的な)差異がある可能性がある。また、たばこの成長場所は、異なるアミノ酸のレベルの比を変化させうるが、同じたばこアミノ酸でかなり類似した組成が概して維持される。たばこのタイプおよび原産地にかかわらず、本発明の発酵条件下での発酵中に、たばこ材料中のアスパラギン含有量が減少することが観察された。
【0042】
これは、本発明の発酵における発酵細菌が、アミノ酸資源からCおよびNを同化するための特定のアスパラギナーゼ(複数可)を産生することを示唆する。
【0043】
アスパラギンは、アクリルアミドに熱的に変換されうる。アクリルアミドは、潜在的に有害な物質であると考えられている。たばこ材料中のアスパラギンの含有量の減少を得ることは、アクリルアミド形成の減少に一致して起こりうるため、望ましい。
【0044】
たばこ材料中のアスパラギンの量および還元糖の量における上記の変化は、発酵条件がたばこ材料に適用された瞬間から1か月後に見られうる。発酵条件は、たばこ材料に適用され、少なくとも1か月間適用され続ける。
【0045】
本発明の方法において、たばこ材料の嫌気性発酵は、たばこ材料が発酵条件に供される時に起こる。この嫌気性発酵は、たばこ材料中の還元糖およびアスパラギンの量を変える。従って、発酵などの自然なプロセスによって、かつたばこ材料に添加剤または外部微生物を添加することなく、特定の潜在的に有害な物質の低減を達成しうる。これらの物質はアクリルアミドを含みうる。発酵は加えて、たばこ材料の感覚刺激特性を変化しうる。感覚刺激特性のこれらの変化は、還元糖がピルビン酸塩およびピルビン酸に変換され、これらが多くの他の風味化合物の前駆体であるため、起こりうる。これは、本発明の発酵後に、たばこ材料の感覚刺激特性に著しい変化がありうることを意味する。たばこ材料の味覚特性は、従来の乾燥に従う、かつ本発明による発酵条件下での発酵の適用がない同じたばこ材料の味覚特性と比較して変化しうる。
【0046】
本明細書で使用される「変化」または「変化した」という用語は、風味または感覚刺激特性の文脈において使用され、熟練した喫煙者によって特定される通りの、一つの全体的な味または官能特性から別の味または官能特性への修正があることを意味する。これには改善が含まれうる。
【0047】
方法は、たばこ材料を乾燥して、たばこ材料の総重量の1重量パーセント~15重量パーセントから成る水分含量を有する乾燥たばこ材料を得ることを含むことが好ましい。乾燥工程は、発酵条件下での発酵が終了した後に実施されることが好ましい。総発酵期間Tが経過した後、処理されたたばこ材料は、それが入れられた容器から取り出されて、たばこにかけられる圧力が減少されることが好ましい。処理されたたばこ材料は次いで、たばこ材料の総重量の1重量パーセント~15重量パーセント、より好ましくは5重量パーセント~10重量パーセントの水分含量まで乾燥される。乾燥は、処理されたたばこ材料が後続の工程で容易に加工されうるように実施される。
【0048】
方法は、発酵前にたばこ材料を乾燥する工程を含むことが好ましい。本発明の方法によって加工されたたばこ材料は、乾燥後のたばこを含んでもよい。本明細書で使用される「乾燥後のたばこ」という用語は、乾燥されたたばこを指す。たばこの乾燥は、標準的な手順によって実現されることが好ましく、たばこ材料に含まれるたばこのタイプに依存しうる。たばこ材料は、異なるタイプのたばこ、および異なる乾燥を受けたたばこを含んでもよい。異なるタイプのたばこをブレンドし、その後本発明によって処理してもよい。
【0049】
別の方法として、または追加的に、本発明の方法によって処理されたたばこ材料は、再び等級分けされたたばこ、未加工の葉がブレンドされたたばこ、コンディショニングされたたばこ、茎を取ったまたは茎を剥がされたたばこ(または全葉の場合ではない)、乾燥たばこ、または詰めたばこを含んでもよい。
【0050】
方法は、たばこ材料の温度を25℃~35℃から成る温度に保つことを含むことが好ましい。たばこ材料の温度は、25℃~35℃の間に保たれ、その一方でたばこ材料は発酵条件に供される。たばこ材料の温度は、発酵プロセスによってこの範囲内に自動的に保たれる。たばこ材料を冷却または加熱するために、追加の装置を必要としない。
【0051】
方法は、たばこ材料を回転させる工程を含むことが好ましい。たばこ材料の回転は、均質化の改善を提供しうる。たばこ材料を回転させることは、たばこ材料を上下逆にすることを意味してもよい。たばこ材料を回転させることは、たばこ材料をひっくり返すことを意味してもよい。回転によって引き起こされた、発酵条件の中断は、たばこ材料の特定のパラメータ、例えば水分含量を測定するためにも使用されてもよい。たばこ材料の回転中、発酵条件は、もはや適用されなくてもよい。3つの発酵条件のすべては、回転中に適用されなくてもよく、またはその一部のみ適用されなくてもよい。それ故に発酵プロセスは「中断」される。回転後、発酵条件をたばこ材料に再び適用することが好ましい。
【0052】
方法は、たばこ材料を水分保持材料内に確保することを含むことが好ましい。たばこ材料を確保するこの工程は、たばこ材料が発酵条件に供される前に起こることが好ましい。水分保持材料は、たばこ処理プロセス(発酵)中に、分解に耐えることが望ましい。水分保持材料は可撓性材料を含んでもよい。この可撓性材料は、たばこ材料の周りに巻かれてもよい。水分保持材料は、プラスチック材料を含むことが好ましい。別の方法として、または追加的に、水分保持材料は硬質材料を含んでもよい。たばこ材料が中に導入される容器は、水分保持材料として機能してもよい。この場合、容器の材料は、例えば金属、木材、プラスチック、またはコンクリートを含んでもよい。
【0053】
方法は、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成るたばこ材料の水分含量が達成されるように、発酵前にたばこ材料を水中で湿らせることを含むことが好ましい。乾燥後、たばこ材料の水分は概して低い。従って、25重量パーセント~35重量パーセントの水分レベルに達するために、水がたばこ材料に添加されることが好ましい。少なくとも1か月間、より好ましくは少なくとも2か月間、好ましくは少なくとも6か月間、好ましくは少なくとも12か月間、好ましくは少なくとも24か月間、たばこ材料の水分量を、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る量に保つために、発酵プロセス中にも水が添加されることがより好ましい。
【0054】
別の態様によると、本発明は、以前の態様の方法によって処理されたたばこ材料に関し、処理されたたばこ材料は、以前の態様による処理前の同じたばこ材料中に含有されたアスパラギンの量よりも、少なくとも50パーセント、より好ましくは60パーセント、さらにより好ましくは80パーセント低い量のアスパラギンを含む。発酵の終了時に、アスパラギンの量は、処理前の同じたばこ材料中に含有されたアスパラギンの量よりも少なくとも50パーセント、より好ましくは60パーセント、さらにより好ましくは80パーセント低いことが好ましい。本発明の方法によって処理されたたばこは、未処理のたばこに関して、その化学的組成を変化しうる。本文脈における「処理されたたばこ材料」とは、前のプロセスにおいて記述の通りの処理を受けたたばこ材料、すなわち少なくとも1か月間、発酵条件に供されたたばこ材料を意味する。本文脈における「未処理のたばこ材料」とは、前のプロセスにおいて記述の通りの処理を受けなかったたばこ材料、すなわち発酵条件に供されていないたばこ材料を意味する。未処理のたばこ材料は、例えば本発明の処理が始まる前に容器に挿入されているたばこ材料である。処理されたたばこ材料は、本発明による処理を受けなかった同じたばこ材料(未処理のたばこ材料)と比較される。アスパラギンの減少は、アスパラギン酸の増加と関連付けられうる。これは、発酵細菌が、アミノ酸資源からCおよびNを同化するための特定のアスパラギナーゼ(複数可)を産生することを示唆する。この反応はアンモニアを産生しうる。
【0055】
処理されたたばこ材料は、前の態様の方法による処理前の同じたばこ材料中に含有されたグルタミンの量よりも少なくとも50パーセント、より好ましくは60パーセント、さらにより好ましくは80パーセント低いグルタミンの量を含むことが好ましい。発酵の終了時に、グルタミンの量は、処理前の同じたばこ材料中に含有されたグルタミンの量よりも少なくとも50パーセント、より好ましくは60パーセント、さらにより好ましくは80パーセント低いことが好ましい。本発明の方法によって処理されたたばこ材料は、未処理のたばこ材料に関して、その化学的組成を変化しうる。処理されたたばこ材料は、本発明による処理を受けなかった同じたばこ材料と比較される。グルタミンの減少は、グルタミン酸の増加と関連付けられうる。これは、発酵細菌が、アミノ酸資源からCおよびNを同化するための特定のグルタミナーゼ(複数可)を産生することを示唆する。この反応はアンモニアを産生しうる。
【0056】
処理されたたばこ材料は、前の態様の方法による処理前の同じたばこ材料中に含有された総還元糖の量よりも少なくとも50パーセント、より好ましくは60パーセント、さらにより好ましくは85パーセント低い総還元糖の量を含むことが好ましい。発酵の終了時に、総還元糖の量は、処理前の同じたばこ材料中に含有された総還元糖の量よりも少なくとも50パーセント、より好ましくは60パーセント、さらにより好ましくは85パーセント低いことが好ましい。還元糖はグルコース、フルクトース、スクロース、マルトースの合計である。処理されたたばこ材料中の還元糖の大半は、変換されうる。出発たばこ材料中に存在するグルコースおよびフルクトースなどの還元糖資源は、嫌気性細菌によってエネルギー源として使用されうる。酸素が存在しない場合、解糖経路は、グルコース(またはフルクトース)をピルビン酸に変換する。これらの化合物のレベルの変化は、処理されたたばこ材料の望ましい味および香りに寄与しうる。
【0057】
処理されたたばこ材料は、未処理のたばこ材料よりも少なくとも100倍酸性であることが好ましい。処理されたたばこ材料のpHおよび未処理のたばこ材料のpHは、少なくとも2pH単位異なっていてもよい。異なるたばこ材料において、pHは実質的に変化しないままでありうる。
【0058】
処理されたたばこは、乳酸を含むことが好ましい。嫌気性発酵において、乳酸は関連する異化産物であることが知られている。乳酸は、ニコチンのえぐさに関して「なめらかにする効果」を有しうる。乳酸は、処理されたたばこ材料のpHの低下の原因でありうる。
【0059】
別の態様によると、本発明は、総乾燥重量基準で3パーセント未満の総還元糖を含むたばこ材料に関する。たばこ材料は、総乾燥重量基準で2パーセント未満の総還元糖を含むことがより好ましい。たばこ材料は、総乾燥重量基準で1パーセント未満の総還元糖を含むことがさらにより好ましい。たばこ材料は、総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンを含むことが好ましい。たばこ材料は発酵たばこ材料である。たばこ材料は、本発明の方法によって処理されたたばこ材料であることが好ましい。
【0060】
本発明のたばこ材料の利点は、前の態様を参照しながら既に概説されていて、ここでは繰り返さない。
【0061】
発酵は、発酵前にたばこ材料に既に含まれている微生物以外の微生物を添加することなく得られる。
【0062】
たばこ材料は、総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含むことが好ましい。
【0063】
たばこ材料は、総乾燥重量基準で10000ミリグラム/キログラム超の総遊離アミノ酸を含むことが好ましい。
【0064】
たばこ材料は、葉脈が取り除かれた、手で剥がされた葉を含むことが好ましい。
【0065】
たばこ材料は乾燥されることが好ましい。乾燥は、発酵前に実施されることが好ましい。
【0066】
たばこ材料はカストリたばこを含むことが好ましい。
【0067】
異なる一態様によると、本発明は、前の態様によるたばこ材料を含むエアロゾル発生物品に関する。
【0068】
「たばこ材料」という用語は、たばこ植物体の任意の部分、または異なる植物体の混合物を意味し、これには、たばこ葉くず、未加工のたばこ葉くず、たばこの茎、たばこ加工中に生成されたたばこダスト、たばこ葉プライムラミナ細片、およびその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。たばこ材料は、加工済みたばこの部分または断片の形態、本質的に天然のラミナまたは茎の形態の乾燥・熟成したたばこ、たばこ抽出物、または上記の混合物を有することができ、これには例えば、抽出したたばこパルプを、粒状化されて乾燥・熟成した天然たばこラミナと組み合わせた混合物がある。たばこ材料は、固体の形態、液体の形態、半固体の形態、またはこれに類するものとしうる。「たばこ材料」という用語は、任意の部分、および例えばNicotiana属の任意のメンバーの葉または茎など、関連する任意の副産物を含むことが好ましい。本発明で使用するためのたばこ材料は、Nicotiana tabacum種由来であることが好ましい。任意のタイプ、スタイル、または様々なたばこを処理しうる。使用されうるたばこの例には、バージニア、バーレー、オリエント葉たばこ、およびこれらのタイプの任意のブレンドが含まれうるが、これらに限定されない。たばこ材料はカストリたばこを含むことが好ましい。処理されるたばこ材料は、乾燥後のたばこを含んでもよいか、またはそれから成ってもよい。
【0069】
本明細書で使用される「乾燥後のたばこ」という用語は、乾燥されたが、たばこ材料の味または香りを変えるためのさらなる処理プロセスを受けていないたばこを指す。乾燥後のたばこは、他のスタイル、種類、またはタイプのたばことブレンドされていてもよい。別の方法として、または追加的に、処理されるたばこ材料は、再び等級分けされたたばこ、未処理の葉がブレンドされたたばこ、コンディショニングされたたばこ、茎を取ったまたは茎をはがされたたばこ(または全葉の場合ではない)、乾燥されたたばこ、または詰められたたばこを含むかまたはそれらから成ってもよい。
【0070】
たばこ材料はラミナたばこ材料を含むことが好ましい。たばこは約70%~100%のラミナ材料を含んでもよい。
【0071】
たばこ材料がラミナたばこ材料を含む時、ラミナは全葉の形態でありうる。一部の実施形態において、たばこ材料は、乾燥された全葉たばこを含む。一部の実施形態において、たばこ材料は、乾燥された全葉たばこを実質的に含む。一部の実施形態において、たばこ材料は本質的に、乾燥された全葉のたばこから成る。
【0072】
一部の実施形態において、たばこ材料は茎たばこ材料を含む。たばこは、最大30パーセントの茎材料を含んでもよい。
【0073】
未乾燥たばこを「乾燥する」プロセスは、収穫したたばこのタイプに依存する。例えば、バージニアフルー(ブライト)たばこは典型的に、熱風乾燥され、その一方でバーレーおよびある種のダークストレインは通常、空気乾燥される。たばこの熱風乾燥は典型的に、5~7日の期間にわたって行われ、これと比較して空気乾燥は1~2カ月にわたって行われる。数多くの主要な化学変化および生化学変化は、乾燥プロセス中に始まり、葉の乾燥の初期段階を通して継続される。黄色から褐色へのたばこの転換は概して、ニトロソアミンの形成および著しい蓄積をもたらし、微生物の含量が増加する。
【0074】
異なるタイプのたばこには、異なるタイプの乾燥が使用される。
【0075】
バージニアたばこは概して、「熱風乾燥」されている。たばこの葉は乾燥する納屋に吊り下げられ、そこで加熱された空気が発生されて葉を乾燥する。葉が水分を失うと、独特の香り、質感、色を発現する。農夫は、このプロセスを慎重に進めなければならず、このプロセスには最大1週間かかるが、その間、加熱された空気の温度を絶えず監視し、徐々に上昇させなければならない。プロセスのどの段階においても、熱が高すぎたり低すぎたりすると、たばこの品質にマイナスの影響を及ぼすことになる。
【0076】
バーレーおよびオリエント葉たばこは、異なる方法で乾燥される。バーレーは、熱と湿度が自然換気に由来する納屋内で「空気乾燥」される。乾燥プロセスは最大2か月かかる。オリエント葉たばこは、日の当たる屋外で葉を約2週間吊り下げることによって、「日光乾燥」される。
【0077】
本テキストにおいて、動詞の「comprise(含む)」および「include(含む)」は同義語であり、両方とも特徴の非網羅的リストを示す。動詞「consist(から成る)」は、網羅的なリストを示す。
【0078】
本発明は特許請求の範囲に定義されている。しかしながら、以下に非限定的な実施例の非網羅的なリストを提供している。これらの実施例の特徴のうちの任意の一つ以上は、本明細書に記載の別の実施例、実施形態、または態様の任意の一つ以上の特徴と組み合わされてもよい。
【0079】
[実施例1]
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
○たばこ材料を発酵させて、処理されたたばこ材料を得ることを含み、これが、
■嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることと、
■1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る圧力をたばこ材料にかけることと、
■たばこ材料の水分含量を、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る量に保つことと、を含み、
○発酵が少なくとも1か月持続する、方法。
【0080】
[実施例2]
実施例1に記載の方法であって、
○たばこ材料を乾燥して、たばこ材料の総重量の5重量パーセント~10重量パーセントから成る水分含量を有する乾燥たばこ材料を得る工程を含む、方法。
【0081】
[実施例3]
実施例1または実施例2に記載の方法であって、
○発酵前にたばこ材料を乾燥する工程を含む、方法。
[実施例4]
【0082】
実施例1~3の一つ以上に記載の方法であって、発酵が3年未満持続する、方法。
【0083】
[実施例5]
実施例1~4の一つ以上に記載の方法であって、
○たばこ材料を回転させる工程を含む、方法。
【0084】
[実施例6]
実施例1~5の一つ以上に記載の方法であって、
○たばこ材料に水を添加して、たばこ材料の水分含量を、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る量に維持することを含む、方法。
【0085】
[実施例7]
たばこ材料の温度を25℃~35℃から成る温度に保つことを含む、実施例1~6の一つ以上に記載の方法。
【0086】
[実施例8]
実施例1~7の一つ以上に記載の方法であって、
○たばこ材料を水分保持材料内に確保することを含む、方法。
【0087】
[実施例9]
実施例1~8の一つ以上に記載の方法であって、
○たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る、たばこ材料の水分含量が達成されるように、発酵前に水中でたばこ材料を湿らせることを含む、方法。
【0088】
[実施例10]
処理されたたばこ材料中のアスパラギンの量が、実施例1~9による処理前の同じたばこ材料中に含有されたアスパラギンの量よりも少なくとも50パーセント低くなる、実施例1~9の一つ以上に記載の方法。
【0089】
[実施例11]
処理されたたばこ材料中のアスパラギンの量が、実施例1~10による処理前の同じたばこ材料中に含まれるアスパラギンの量よりも少なくとも50パーセント低くなる、実施例1~10の一つ以上に記載の方法。
【0090】
[実施例12]
処理されたたばこ材料中の還元糖の量が、実施例1~11による処理前の同じたばこ材料中に含有された還元糖の量よりも少なくとも50パーセント低くなる、実施例1~11の一つ以上に記載の方法。
【0091】
[実施例13]
処理されたたばこ材料が、実施例1~12による処理前の同じたばこ材料中に含有されたアスパラギンの量よりも少なくとも80パーセント低いアスパラギンの量を含む、実施例1~12のいずれか一つによって処理されたたばこ材料。実施例14:処理されたたばこ材料が、実施例1~12による処理前の同じたばこ材料中に含有されたグルタミンの量よりも少なくとも80パーセント低いグルタミンの量を含む、実施例13に記載の処理されたたばこ材料。
【0092】
[実施例15]
処理されたたばこ材料が、実施例1~12による処理前の同じたばこ材料中に含有された総還元糖の量よりも少なくとも85パーセント低い総還元糖の量を含む、実施例13または実施例14に記載の処理されたたばこ材料。
【0093】
[実施例16]
処理されたたばこ材料が、実施例1~12による処理前の同じたばこ材料よりも少なくとも100倍酸性である、実施例13~15のいずれかに記載の処理されたたばこ材料。
【0094】
[実施例17]
たばこ材料であって、
○総乾燥重量基準で3パーセント未満の総還元糖と、
○総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンと、を含むたばこ材料。
【0095】
[実施例18]
実施例17に記載のたばこ材料であって、
○総乾燥重量基準で1パーセント未満の総還元糖を含む、たばこ材料。
【0096】
[実施例19]
実施例17または実施例18に記載のたばこ材料であって、
○総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含む、たばこ材料。
【0097】
[実施例20]
実施例17~19の一つ以上に記載のたばこ材料であって、発酵たばこ材料が、
○総乾燥重量基準で10000ミリグラム/キログラム超の総遊離アミノ酸を含む、たばこ材料。
【0098】
[実施例21]
乳酸を含む、実施例17~20のいずれかに記載のたばこ。
【0099】
[実施例22]
たばこ材料が、葉脈が取り除かれた、手で剥がされた葉を含む、実施例17~21の一つ以上に記載のたばこ材料。
【0100】
[実施例23]
たばこ材料が乾燥されている、実施例17~22の一つ以上に記載のたばこ材料。
【0101】
[実施例24]
乳酸を含む、実施例17~24の一つ以上に記載のたばこ材料。
【0102】
[実施例25]
実施例17~24のいずれか一つに記載のたばこ材料を含むエアロゾル発生物品。
【0103】
ここで、以下の図を参照しながら実施例をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1】
図1は、本発明による発酵の前(0T)および6か月後(3T)にそれぞれ測定された、実施例1のたばこ材料中の乳酸の量を表すヒストグラムである。
【
図2】
図2は、本発明による発酵の前(0T)および6か月後(3T)にそれぞれ測定された、実施例2のたばこ材料中の乳酸の量を表すヒストグラムである。
【
図3】
図3は、本発明による発酵前(0T)および発酵中にそれぞれ測定された、実施例1のたばこ材料中の総アルカロイド(TA)レベルの量(総乾燥重量基準DWのパーセント)を表すヒストグラムである。
【
図4】
図4は、本発明による発酵前(0T)および発酵中にそれぞれ測定された、実施例2のたばこ材料中の総アルカロイド(TA)レベルの量(総乾燥重量基準DWのパーセント)を表すヒストグラムである。
【
図5】
図5は、本発明による発酵前(0T)および発酵中にそれぞれ測定された、実施例1のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中のグルタミンおよびグルタミン酸の量を表すヒストグラムである。
【
図6】
図6は、本発明による発酵前(0T)および発酵中にそれぞれ測定された、実施例2のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中のグルタミンおよびグルタミン酸の量を表すヒストグラムである。
【
図7】
図7は、本発明による発酵前(0T)および発酵中にそれぞれ測定された、実施例1のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中のアスパラギンおよびアスパラギン酸の量を表すヒストグラムである。
【
図8】
図8は、本発明による発酵前(0T)および発酵中にそれぞれ測定された、実施例2のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中のアスパラギンおよびアスパラギン酸の量を表すヒストグラムである。
【
図9】
図9は、本発明による発酵前(VG-BF)、発酵中、および発酵後(VG-AF)にそれぞれ測定された、実施例3のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中の総アルカロイドの量を表すヒストグラムである。
【
図10】
図10は、本発明による発酵前(VG-BF)、発酵中、および発酵後(VG-AF)にそれぞれ測定された、実施例3のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中の還元糖の量を表すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0105】
同じたばこタイプであるが、発酵前に異なる加工を受けた第一および第二のたばこ材料が準備された。たばこの原料はカストリたばこである。
【0106】
[実施例1]
暗色のたばこ葉材料を約10日間完全に日光で乾燥した。日光で乾燥された葉は、ラミナ(手で剥がされた葉)のみを取っておくために剥がされた。このたばこ材料は「HS」と呼ばれる。
【0107】
たばこ材料をコンディショニングして、およそ30パーセントの水分を得た。コンディショニングされているが、まだ発酵されていないこのたばこ材料の試料は0T(「出発物質」)と呼ばれる。
【0108】
次いで、コンディショニングされたたばこ材料を3つのバレルに導入し、各バレルにおよそ100キログラムのたばこ材料が存在する。導入前に、たばこ材料は、得られた水分を維持する材料で包まれる。
【0109】
圧力が各バレルにかけられる。圧力は、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る。
【0110】
1か月後(1Tと呼ばれる試料)、2.5か月後(2Tと呼ばれる試料)、6か月後(3Tと呼ばれる試料)、および8.5か月後(4Tと呼ばれる試料)に、バレルを開けて、たばこの回転前に、および水分含量をおよそ30パーセント±5パーセントに再調整する前に、試料を各バレルで少なくとも3つ採取した。
【0111】
完全嫌気性条件下での重発酵プロセス中に、バレル内部の温度は特に上昇しなかった(温度は27℃~31℃の範囲内に留まった)。発酵は8.5か月後に停止された。
【0112】
[実施例2]
暗色のたばこ葉材料を2日間黄ばませ、カットフィラーで急速に刻んだ。このたばこ材料は、ラミナと葉脈の両方を含有する。ラミナと中央脈の両方を含有する刻まれた葉を2日間日干しした。このたばこ材料の試料は、以下で「CC」と命名されている。
【0113】
たばこ材料をコンディショニングして、およそ30パーセントの水分含量を得た。コンディショニングされているが、まだ発酵されていないこのたばこ材料の試料は0T(「出発物質」)と呼ばれる。
【0114】
次いで、コンディショニングされたたばこ材料を3つのバレルに導入し、各バレル内におよそ100kgのたばこ材料が存在する。導入前に、たばこ材料は、得られた水分を維持する材料で包まれる。
【0115】
圧力が各バレルにかけられる。圧力は、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る。
【0116】
1か月後(1Tと呼ばれる試料)、2.5か月後(2Tと呼ばれる試料)、6か月後(3Tと呼ばれる試料)、および8.5か月後(4Tと呼ばれる試料)に、バレルを開けて、たばこの回転前に、および水分含量をおよそ30パーセント±5パーセントに再調整する前に、試料を各バレルで少なくとも3つ採取した。
【0117】
完全嫌気性条件下での重発酵プロセス中に、バレル内部の温度は特に上昇しなかった(温度は27℃~31℃の範囲内に留まった)。発酵は8.5か月後に停止された。
【0118】
[目視観察]
最初のたばこ材料は発酵の2.5か月後(資料2T)、既に変化していて、HS葉とCC葉の両方の色はより暗くなり、たばこの臭いは良いカラメルバターと発酵した複雑な特徴とを発現していた。暗色はプロセス終了時(8.5か月、4T)のCC葉と比較して、発酵HS葉でより顕著であったが、これはおそらくCC葉の葉の中央脈の存在に起因する。
【0119】
[化学分析]
以下において、試料に関する値が言及される場合、所与の値は、同じタイプの各試料について得られた幾つかの値の平均を表す。
【0120】
発酵条件が2.5か月間適用された後(試料2Tで見いだされた通り)、たばこ材料の試料(CCとHSの両方)のpHは酸性になり、3.2に達した。これは、(酢酸および/または)乳酸などの有機酸を通常産生する、糖分解を伴う嫌気性発酵のプロセスを反映する。たばこ材料の出発pHは概して、5pH~6pHから成る。
【0121】
図1および
図2は、たばこ材料中の乳酸の存在を示す。図によって示される通り(
図1はHS葉の乳酸含量を表し、
図2はCC葉の乳酸含量を表す)、発酵前に、全試料には乳酸が存在しない(たばこ材料(CCまたはHS)当たり3つの試料0Tが示されている)。発酵後(この場合、6か月後に、3Tと呼ばれるたばこ材料についての3つの試料が、両方のたばこ材料(CCまたはHS)について示されている)、すべての試料(CCとHSの両方の葉)は、可変量であるが乳酸の存在を示す。
【0122】
発酵中にアルカロイドは分解しなかったか、またはわずかだけ分解した。総乾燥重量基準のパーセントでの総アルカロイド(TA)含量(図において%DWとして示される)が、
図3(HS葉)および
図4(CC葉)に示されている。総アルカロイド含量は、発酵中にかなり安定を保っていた。8.5か月後(4T)、HS葉では4パーセントだけ分解し、CC葉では9パーセント分解した。統計的に関連があるものの、こうした小さい変動はサンプリングからのみ生じうる。一部の限定的なアルカロイドヒドロラーゼ活性を除外できない可能性がある。総アルカロイドは、重発酵プロセス中に開始時(0T、n=6試料が分析されている)、1か月後(1T、n=9)、2.5か月後(2T、n=9)、6か月後(3T、n=9)、8.5か月後(4T、n=12)後に収集された試料で分析された。T検定(検定統計量)を対照の未発酵の乾燥されたたばこ(0T)との比較のために行った。結果は、p値を示す
図3および4に示されていて、p値は以下のように示されている。
*、p<0.05;
**、p<0.01および
***、p<0.001。
【0123】
HS葉の試料4TおよびCC葉の試料3Tは、p値<0.01を有し、CC葉の試料1Tおよび4Tは、p値<0.001を有する。これは、発酵たばこ材料と非発酵たばこ材料の間の統計的有意差を示す。
【0124】
硝酸塩含量は重発酵プロセスの影響を受けなかった。しかし、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)に幾らかの影響が観察された:NNN(N’-ニトロソノルニコチン)、NNK(ニコチン由来ニトロソアミンケトン)、およびNAT(N’-ニトロソアナタビン)。8.5か月の発酵後、NNKおよびNATについて変化は測定されなかった。しかし、HS(3倍の増加)とCC(5~6倍の増加)の両方において、NNNの増加が観察された。ノルニコチンとして、ニトロ化前のNNNの前駆体は、それに応じて増加しなかった。従って、NATおよびNNKは、発酵を実施中に細菌によって部分的に分解されうるが、NNNは部分的に分解されない場合がある。その理由はNNKおよびNATが最初に2.5か月の発酵まで2倍上昇し、その後、低下して非発酵たばこの初期値に達したからである。この観察は、アルカロイドのニトロ化が重発酵中に起こることを意味しうる。
【0125】
本発明による重発酵中の糖類および遊離アミノ酸の進展が分析されている。たばこ材料の試料で実施された測定の値は表1に収集されている。表1は、実施例1および実施例2にある通り、手で剥がされた(HS)または刻まれた(CC)葉のいずれかを含有するバレル中の発酵条件下での、未処理のたばこ材料試料(試料0T)から発酵プロセスの8.5か月(試料4T)に至る重発酵プロセス中の糖およびアミノ酸の進展を示す。表のすべての値は、総乾燥重量基準である。還元糖の単位は総乾燥重量基準のパーセントである一方で、遊離アミノ酸は、全乾燥たばこ材料の1キログラム当たりのミリグラムである。還元糖の低下は、色の変化およびスラリー酸性化と同調して、2.5か月後(2T、表1を参照)に現れた。グルコースおよびフルクトースは、発酵バレル中で嫌気性細菌が代謝しうる2つのたばこ葉基体である。逆に、大半のアミノ酸はプロセス中に増加した。アスパラギンとグルタミンの両方が大きく減少した。全体として、これらの観察は、主要な発酵活性が1か月目と3か月目の間に生じたことを示しうる。プロリンは嫌気性発酵下で分解されなかった(表1を参照)。オルニチンは、HSとCCの両方で発酵中に大きく(>100倍)増加し、シトルリン(0Tと3Tの間のメタボローム解析から得られたデータ)は、HSにおいて16倍、CCにおいて2倍増加した。これは、(植物由来の)乳酸細菌が、たばこ発酵バレル中で活性であることを示し場合があり、その理由は、こうした細菌が、高レベルでオルニチンおよびシトルリンを産生すると説明されているからである(Rakhimuzzaman et al., Biol Pharm Bull. 2019;42(9):1581-1589)。
【0126】
【0127】
図5~8において、たばこ材料中のグルタミンおよびアスパラギンの量を示す。
図5~8によって示す通り、および表1に提示したデータに基づき、HS葉とCC葉の両方の重発酵プロセス中に起こるグルタミンおよびアスパラギンの脱アミノ化は、グルタミン酸塩およびアスパラギン酸塩の同時増加とそれぞれ相関しうる。これは、発酵細菌が、アミノ酸資源からCおよびNを同化するための特定のグルタミナーゼ(複数可)およびアスパラギナーゼ(複数可)を産生することを示唆する。どちらの反応もアンモニアを産生し、アンモニアはHS葉とCC葉の両方の嫌気性発酵プロセス中に2倍増加した。
図5および
図6は、HS葉およびCC葉中のグルタミン(白色のヒストグラム)およびグルタミン酸(黒色のヒストグラム)のレベルをそれぞれ示す。発酵中にグルタミンが減少し、グルタミン酸が増加することが、図から明らかである。
図7および
図8は、HS葉およびCC葉中のアスパラギン(縞模様のヒストグラム)およびアスパラギン酸(黒色のヒストグラム)のレベルをそれぞれ示す。発酵中にアスパラギンが減少し、アスパラギン酸が増加することが、図から明らかである。
【0128】
たばこ葉嫌気性発酵プロセスに関連するマーカー分子または経路を特定するために、メタボローム研究を実施した。HS葉とCC葉の両方の出発材料(対照)中に存在するグルコースおよびフルクトースなどの糖源は、嫌気性細菌によってエネルギー源として使用されうる(表1を参照)。酸素が存在しない場合、解糖経路は、グルコース(またはフルクトース)をピルビン酸に変換し、2つのATPおよび2つのNADH+H+を産生する。嫌気性細菌によって急速に使用されうる他の有機化合物および豊富な炭素化合物は、クエン酸塩およびリンゴ酸塩であり(Bintsis, T, 2018, AIMS Microbiology, 4(4): 665-684)、どちらも植物において最も豊富な有機酸である。クエン酸塩およびリンゴ酸塩も還元糖と同様に、たばこの重発酵中に代謝される。試料の化学分析から、出発たばこ材料(試料0T)、手で剥がされて刻まれた葉の中に存在するグルコースおよびフルクトース、クエン酸塩およびリンゴ酸塩の60%超が、6か月間の重発酵後(試料3T)に異化されることが示されている。こうした有機分子の消費に関連付けられることができる別の観察は、HSとCCの両方の発酵たばこ材料におけるピルビン酸の増加(13~14倍)である。ピルビン酸は、嫌気性条件下で起こりうる幾つかの反応の基質である:(1)主に解糖反応のためのNAD+を再発生するためのD-乳酸の産生、(2)重発酵たばこ中の芳香族化合物および風味の送達に寄与しうる酢酸、ジアセチル、2,3ブタンジオールの産生。ピルビン酸は、乳酸細菌の産物として、2,3-ブタンジオールまたは乳酸などの芳香族化合物の発生をもたらしうる。
【0129】
重発酵たばこのメタボローム解析から、(1)トリプトファンの分解、および(2)クロロゲン酸の異化という2つの他の経路が出現した。
【0130】
トリプトファン分解に関して、経路は、チーズ細菌についてUmmadiおよびWeimerによって説明されていて(2001、J.Dairy Sci. 84:1773-1782)、それに応じて適合されている。この場合、出発たばこ材料(試料0T)中に存在するトリプトファンの78%超は、HS葉とCC葉の両方において6カ月の発酵後(試料3T)に異化される。経路は、こうした異化反応から生じる産物が主にインドール-3-乳酸であることを示した。これは、HS葉とCC葉におけるそれぞれ14倍および28倍の増加によって示されている。この経路に属する他の化合物は、こうした増加を示さなかった。この化合物について、特定の芳香族特性は報告されていなかった。
【0131】
重要な生物学的に活性な食物ポリフェノールであるクロロゲン酸(CGA)は、たばこなどの特定の植物種によって産生され、コーヒーの主要成分である。重発酵たばこ葉において、CGAは嫌気性発酵プロセス後に完全に分解される。その一方で、CGAの異化から生じる産物、すなわちキイン酸およびカフェイン酸は、HS葉とCC葉の両方において6か月の発酵後に増加した。これはおそらく、Guglielmettiら (2008, Applied and Environmental Microbiology, 74, 4: 1284-1288)によって記録された通り、細菌のシンナモイルエステラーゼ活性に起因する。従って、キイン酸プールおよびカフェイン酸プールの一部はおそらく、CGAの加水分解に起因し、それらのいずれも風味特性を有すると報告されなかった。
【0132】
乾燥されたたばこと比較して、重発酵たばこ中のピルビン酸、インドール-3-乳酸の上昇の存在、およびクロロゲン酸の欠如は、それらを化学マーカーとして有用なものにしうる。
【0133】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的において、別途示されていない限り、量(amounts)、量(quantities)、割合などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。また、すべての範囲は、開示された最大点および最小点を含み、かつそれらの任意の中間範囲を含み、これらは本明細書に具体的に列挙されている場合もあり、列挙されていない場合もある。従って、この文脈において、数字AはA±10パーセントとして理解される。この文脈内で、数字Aは、数字Aが表す特性の測定値に対する一般的な標準誤差内にある数値を含むと考えられてもよい。数字Aは、添付の特許請求の範囲で使用される通りの一部の場合において、Aが逸脱する量が特許請求する本発明の基本的かつ新規の特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさないという条件で、上記に列挙された割合だけ逸脱してもよい。また、すべての範囲は、開示された最大点および最小点を含み、かつそれらの任意の中間範囲を含み、これらは本明細書に具体的に列挙されている場合もあり、列挙されていない場合もある。
【0134】
実施例1および実施例2と異なるたばこタイプの第三のたばこ材料が調製された。たばこ材料はバージニアたばこである。
【0135】
[実施例3]
たばこ葉材料を約10日間完全に日光で乾燥した。日光で乾燥された葉は、バージニアたばこの標準として処理された。
【0136】
たばこ材料をコンディショニングして、およそ30パーセントの水分を得た。コンディショニングされているが、まだ発酵されていないこのたばこ材料の試料は、BF(発酵前の出発材料)と呼ばれる。
【0137】
次いで、コンディショニングされたたばこ材料を2つのバレルに導入し、各バレルにおよそ100キログラムのたばこ材料が存在する。導入前に、たばこ材料は、得られた水分を維持する材料で包まれる。
【0138】
圧力が各バレルにかけられる。圧力は、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る。
【0139】
1か月後(1Tと呼ばれる試料)、2か月後(2Tと呼ばれる試料)、3か月後(3Tと呼ばれる試料)、4か月後(4Tと呼ばれる試料)、5か月後(5Tと呼ばれる試料)、6か月後(6Tと呼ばれる試料)、7か月後(7Tと呼ばれる試料)、および8か月後(AFと呼ばれる試料、発酵後)に、バレルを開けた。
【0140】
各月中に、2つのバレル中のたばこ材料を少なくとも6回、回転させた。
【0141】
試料は、発酵前(VG-BF:出発材料、6回の反復)、発酵プロセス中(VG-T1からVG-T7までのすべての月、1バレル当たり3回の反復)、および発酵後(VG-AF:発酵後、6回の反復)に採取された。
【0142】
試料採取中に、たばこ材料は回転され、たばこ材料の水分含量はおよそ30パーセント±5パーセントに再調整された。
【0143】
完全嫌気性条件下での重発酵プロセス中に、発酵開始時(VG-T1)の30℃から発酵終了時(VG-AF)の26℃に直線的に変動した発酵プロセス中に、大きな温度変化は観察されなかった。温度は、キャプターを使用してバレル内部で測定された。
【0144】
たばこ材料のpHは、発酵工程(T1~AF)中に著しく変化せず、5.1±0.3に留まった。
発酵は8か月後に停止された。
【0145】
[目視観察]
カストリたばこ材料の場合で見られる通り、発酵プロセス終了時(VG-AF)のたばこ材料の色は、出発材料(VG-BF)と比較して著しくより暗くなった。しかしながら、4か月の嫌気性発酵後(VG-T4)、バージニアたばこ材料は、同量の発酵後のカストリたばこと同じ暗さを示さなかった。これは、4か月ではバージニアたばこ材料の完全な発酵を得るために十分ではない可能性を示唆している。
【0146】
[化学分析]
以下において、試料に関する値が言及される場合、所与の値は、同じタイプの各試料について得られた幾つかの値の平均を表す。
【0147】
たばこ材料中の乳酸の経時的な挙動は、
図1および
図2に描写されている挙動と非常に類似している。定性的に、発酵前は、すべての試料に乳酸が存在しない。発酵後、可変量ではあるが乳酸が存在する。
【0148】
図9は、発酵プロセス中の総アルカロイド(TA)の進展を示す。これらのデータは、アルカロイド、特にニコチン(図示せず)が嫌気性発酵の影響を受けないことを裏付ける。細菌は、発酵基質として主要なアルカロイドを消費しなかった。
【0149】
その一方で、
図10に描写の通り、かつ実施例1および実施例2で既に観察された通り、還元糖は発酵細菌によって基質として使用された。従って、還元糖(RS)の約60%は、8か月の発酵中に酸化され、乾燥重量(DW)で18.3パーセント(VG-BF)から7.4パーセント(VG-AF)に変わった。より長い発酵期間は、より高いRS分解率につながった可能性がある。
【0150】
平均(n=6)およびSDは、
図9および
図10に提示されていて、またBFとAFの間で実施されたt検定(対応あり)も提示されている。
【0151】
さらなる化学分析は、出発材料(VG-BF)が乾燥重量基準で262マイクログラム/グラム(ug/g)のアスパラギン含量を有したことを示した。発酵後の同じたばこ材料(8か月、VG-AF)は、乾燥重量基準で19マイクログラム/グラム(ug/g)のアスパラギン含量を有する。
【0152】
出発材料(VG-BF)は、乾燥重量基準で185マイクログラム/グラム(ug/g)のグルタミン含量を有した。発酵後の同じたばこ材料(8か月、VG-AF)は、乾燥重量基準で12マイクログラム/グラム(ug/g)のグルタミン含有量を有する。
【国際調査報告】