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特表2023-524394高強度及び熱安定性の5000系アルミニウム合金
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】高強度及び熱安定性の5000系アルミニウム合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/06 20060101AFI20230605BHJP
   C22F 1/047 20060101ALI20230605BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
C22C21/06
C22F1/047
C22F1/00 602
C22F1/00 622
C22F1/00 623
C22F1/00 625
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 673
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 694B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563126
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021030676
(87)【国際公開番号】W WO2021226103
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/019,564
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516270717
【氏名又は名称】ナノアル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フローレス,フランシスコ ユー.
(72)【発明者】
【氏名】ドーン,ジョシュア ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ボ,ノン キュー.
(57)【要約】
本開示は、冷間圧延、加工、又はひずみ硬化の後の、安定化及び/又は焼きなまし処理中に、高強度を有し、強度低下に耐えることができ、食品及び飲料並びに自動車産業に非常に有利である、新規な一連の5000系合金に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約3~約6.2重量%のマグネシウム;
約0.01~約1.8重量%のマンガン;
約0.01~約0.6重量%の鉄;
約0.01~約0.5重量%のケイ素;
約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;
約0.01~約0.2重量%のスズ;
約0.08~約1重量%の銅;及び
残量としてのアルミニウムを含む、アルミニウム合金。
【請求項2】
約0.05~約0.6重量%のマンガンを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項3】
約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.15重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金。
【請求項4】
約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.3重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金。
【請求項5】
約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.6重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金。
【請求項6】
前記合金がスカンジウムを本質的に含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項7】
ハードテンパー条件において、前記合金が、少なくとも400MPaの降伏強度、少なくとも450MPaの引張強度、及び少なくとも5%の伸びを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項8】
成形又は延伸の後、前記合金が、塗料焼き付けサイクル中の強度低下に抵抗する、請求項1~7のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項9】
塗料焼き付けサイクルが後に行われる、成形及び延伸の後に、前記合金が少なくとも170MPaの降伏強度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項10】
前記合金がAlZrナノスケール析出物を含み、前記ナノスケール析出物が、約20nm以下の平均直径を有し、α-Al面心立方マトリックス中にL1構造を有し、前記ナノスケール析出物の平均数密度が約2021-3以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項11】
前記合金がCu含有相を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項12】
冷間圧延、成形、又は延伸(例えば安定化処理及び/又は塗料焼き付けサイクル)後の中程度の時効処理中に、前記Cu含有相によって熱安定性が向上する、請求項11に記載のアルミニウム合金。
【請求項13】
前記Cu含有相がAlCuMg析出物及び/又はS’相を含む、請求項11又は12に記載のアルミニウム合金。
【請求項14】
AlCuMg析出物の形成によって、意図的に加えられた銅を有しない基準AA5182合金よりも引張強度が増加する、請求項13に記載のアルミニウム合金。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のアルミニウム合金から部品を製造する方法であって:
a)前記合金を約700℃~約900℃の温度で融解させることと;
b)前記合金を鋳型中で鋳造することと;
c)冷却媒体を用いて、前記鋳造された鋳塊を冷却することと;
d)前記鋳造された鋳塊を300℃~600℃の間の温度で厚板又は板に熱間圧延することと、
を含む、方法。
【請求項16】
ハードテンパー条件を得るために:
e)前記厚板又は板を約350℃~約550℃の温度で約2~約48時間の時間、熱時効させることと;
f)前記熱間圧延及び熱処理が行われた板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することと;
g)前記板製品の100℃~250℃の間の温度で1分~8時間の安定化熱処理及び/又は被覆硬化処理と、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ソフトテンパー条件を得るために:
e)前記熱間圧延された板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することと;
f)前記板又は箔を約300℃~約550℃の温度で約2時間~約48時間の時間、熱時効させることと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
冷間圧延後、前記合金が、安定化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
冷間圧延後、前記合金が、被覆硬化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
約2.5~約6.2重量%のマグネシウム;
約0.01~約1.8重量%のマンガン;
約0.01~約0.6重量%の鉄;
約0.01~約0.5重量%のケイ素;
約0.01~約1重量%の銅;及び
残量としてのアルミニウムを含む、アルミニウム合金。
【請求項21】
約0.1重量%の銅、約0.15重量%の銅、約0.2重量%の銅、0.25重量%の銅、0.3重量%の銅、0.35重量%の銅、0.4重量%の銅、0.45重量%の銅、0.5重量%の銅、0.55重量%の銅、0.6重量%の銅、0.65重量%の銅、0.7重量%の銅、0.75重量%の銅、0.8重量%の銅、0.85重量%の銅、0.9重量%の銅、0.95重量%の銅、又は1重量%の銅を含む、請求項1~14及び20のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項22】
約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.15重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、請求項20に記載のアルミニウム合金。
【請求項23】
約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、請求項20に記載のアルミニウム合金。
【請求項24】
約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.45重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、請求項20に記載のアルミニウム合金。
【請求項25】
約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.6重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、請求項20に記載のアルミニウム合金。
【請求項26】
ハードテンパー条件において、前記合金が、少なくとも370MPaの降伏強度、少なくとも430MPaの引張強度、及び少なくとも5%の伸びを有する、請求項20~25のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項27】
冷間圧延後、前記合金が、安定化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、請求項20~26のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項28】
冷間圧延後、前記合金が、被覆硬化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、請求項20~26のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項29】
前記合金がCu含有相を含む、請求項20~28のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項30】
冷間圧延、成形、又は延伸(例えば安定化処理及び/又は塗料焼き付けサイクル)後に行われる中程度の時効処理及び/又は被覆硬化処理中に、前記Cu含有相によって熱安定性が向上する、請求項29に記載のアルミニウム合金。
【請求項31】
前記Cu含有相がAlCuMg析出物及び/又はS’相を含む、請求項29又は30に記載のアルミニウム合金。
【請求項32】
AlCuMg析出物の形成によって、意図的に加えられた銅を有しない基準AA5182合金よりも引張強度が増加する、請求項31に記載のアルミニウム合金。
【請求項33】
請求項20~30のいずれか一項に記載のアルミニウム合金から部品を製造する方法であって:
a)前記合金を約700℃~約900℃の温度で融解させることと;
b)前記合金を鋳型中で鋳造することと;
c)冷却媒体を用いて、前記鋳造された鋳塊を冷却することと;
d)前記鋳造された鋳塊を300℃~600℃の間の温度で厚板又は板に熱間圧延することと;
e)場合により、前記板を約350℃~約550℃の温度で約1分~約48時間の時間、熱時効させることと;
f)前記熱間圧延及び熱処理が行われた板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することと;
g)前記板製品の100℃~250℃の間の温度で1分~8時間の安定化処理及び/又は被覆硬化処理と、
を含む、方法。
【請求項34】
請求項1~14のいずれか一項又は請求項20~32のいずれか一項に記載のアルミニウム合金を含む、食品及び/又は飲料の缶の蓋及び/又はタブ。
【請求項35】
請求項1~14のいずれか一項又は請求項20~32のいずれか一項に記載のアルミニウム合金を含むアルミニウム合金部品であって、屋根ふき材料、羽目板材料、化学製造装置、食品製造装置、貯蔵タンク、家電製品、板金加工、海洋部品、輸送部品、高耐久性調理器具、油圧管、燃料タンク、圧力容器、トラック車体、トラック組立部品、トレーラー車体、トレーラー組立部品、掘削装置、ミサイル部品、及び鉄道車両からなる群から選択される、アルミニウム合金部品。
【請求項36】
請求項1~14のいずれか一項又は請求項20~32のいずれか一項に記載のアルミニウム合金の製造された形態であって、ワイヤ、板、厚板、及び箔からなる群から選択される製造された形態。
【請求項37】
請求項1~14のいずれか一項又は請求項20~32のいずれか一項に記載のアルミニウム合金を含む、装飾用に着色被覆される、食品及び/又は飲料の缶の蓋及び/又はタブ。
【請求項38】
a)前記合金を約700℃~約900℃の温度で融解させることと;
b)前記合金を鋳型中で鋳造することと;
c)冷却媒体を用いて、前記鋳造された鋳塊を冷却することと;
d)前記鋳造された鋳塊を300℃~600℃の間の温度で厚板又は板に熱間圧延することと;
e)場合により、前記板を約350℃~約550℃の温度で約1分~約48時間の時間、熱時効させることと;
f)前記熱間圧延及び熱処理が行われた板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することと;
g)前記板製品の100℃~250℃の間の温度で1分~8時間の安定化処理及び/又は被覆硬化処理と、
によって形成される、請求項1~14のいずれか一項又は請求項20~32のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項39】
冷間圧延後、前記合金が、安定化処理及び/又は硬化被覆処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、請求項38に記載のアルミニウム合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[1001] 本出願は、全体が参照により本明細書に援用される2020年5月4日に出願された米国仮出願第63/019,564号の優先権の利益を主張する。
【0002】
[1002] 本開示は、高強度と、高成形性と、安定化処理及び/又は塗料焼き付けサイクル中の高熱安定性とを有する一連の5000系アルミニウム合金に関する。この合金は、連続鋳造、例えば限定するものではないが双ロール、ベルト鋳造、及びブロック鋳造、並びにあらゆる形態の直接チル鋳造などの圧延製品に用いられる加工方法によって製造することができる。本明細書に開示される合金は、固溶体硬化、時効硬化、分散硬化、及び又は結晶粒微細化による硬化が可能である。
【背景技術】
【0003】
[1003] アルミニウム合金は、航空宇宙、自動車、海洋、ワイヤ及びケーブル、エレクトロニクス、核、並びに消費者製品の産業での軽量構造における多種多様の用途を有する。それらの中で、良好な機械的性質、成形性、及び耐食性を併せ持つという理由で、アルミニウム5000系合金が一般に用いられる。これらの合金は、圧延された板及び厚板の形態で製造される。開示される合金は、特に食品及び飲料の缶の蓋及びタブ、並びに自動車部品及びパネルの性能の改善に特に有利である。さらに、開示される合金は、例えば、屋根ふき材及び羽目板材料、化学及び食品装置、貯蔵タンク、家電製品、板金加工、海洋部品、輸送部品、高耐久性調理器具、油圧管、燃料タンク、圧力容器、大型トラック及びトレーラーの車体及び組立部品、掘削装置、ミサイル部品、並びに鉄道車両の性能の改善に有利である。
【0004】
[1004] アルミニウム5000系合金は、典型的には、a)マグネシウム及び/又はマンガンによる固溶強化、及びb)加工によるひずみ硬化(Hテンパー)の2つの主要な強化機構によって硬化される。そのため、これらの合金は、高温にさらされると、ひずみ硬化が失われるため、及び結晶粒成長のために軟化する。これによって、高温にさらされた後、達成可能なそれらの最大強度が大幅に低下する。
【0005】
[1005] 5000系合金は、Alマトリックス中でマグネシウムの拡散が加速されるために、ひずみ硬化条件において、室温又は中間温度でさえも「経年変化」が特に起こりやすい。典型的には高Mg含有量のAl合金に対して、中間温度(例えば、100~250℃)における安定化処理が行われる。例えば、安定化処理は、典型的には冷間圧延後のAA5182板に対して行われ、これは食品及び飲料の缶の蓋及びタブに用いられる。この処理によって延性が改善されるが、強度は低下する。自動車用5000系板の加工において同様の挙動が生じる。完全焼きなましが行われた(O-テンパー)AA5182板は、成形プロセス中のひずみ硬化によって強度が増加する。しかし、強度増加は、典型的には、塗料焼き付けサイクル(すなわち、100~250℃の中間温度で数分から数時間の焼きなまし)中にほぼなくなる。
【0006】
[1006] したがって、冷間圧延、加工、及びひずみ硬化の後の安定化及び/又は焼きなまし処理中の強度低下に抵抗できる新しい一連の5000系合金が本明細書に開示される。このような合金は、多数の用途において非常に有利であると予想される。
【発明の概要】
【0007】
[1007] 本明細書に記載される実施形態は、新規な熱処理可能なアルミニウム-マグネシウムをベースとする(5000系)合金(すなわち、開示される合金)に関する。
【0008】
[1008] 幾つかの実施形態では、合金は、約3~6.2重量%のマグネシウム、0.01~1.8重量%のマンガン、0.01~0.6重量%の鉄、0.01~0.5重量%のケイ素、0.08~0.6重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。幾つかの実施形態では、合金は、α-Al(Mn,Fe)Siナノスケール析出物を含む。幾つかの実施形態では、合金はCu含有析出物を含む。幾つかの実施形態では、Cu含有析出物はAlCuMgを含む。これらの合金は、安定化及び/又は塗料焼き付けサイクルなどの焼きなましプロセス中に高強度及び高熱安定性を示す。
【0009】
[1009] 幾つかの実施形態では、合金は、約3~6.2重量%のマグネシウム、0.01~1.8重量%のマンガン、0.01~0.6重量%の鉄、0.01~0.5重量%のケイ素、0.1~0.5重量%のジルコニウム、0.01~0.2重量%の接種剤(例えば、スズ);0.08~0.6重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。幾つかの実施形態では、合金はAlZrナノスケール析出物を含み、このナノスケール析出物は、約20nm以下の平均直径を有し、α-Al面心立方マトリックス中でL1構造を有し、ナノスケール析出物の平均数密度は約2021-3以上である。幾つかの実施形態では、合金はα-Al(Mn,Fe)Siナノスケール析出物を含む。幾つかの実施形態では、合金はCu含有析出物を含む。幾つかの実施形態では、Cu含有析出物はAlCuMgを含む。これらの合金は、安定化及び/又は塗料焼き付けサイクルなどの焼きなましプロセス中に高強度及び高熱安定性を示す。
【0010】
[1010] 開示される合金は、直接チル鋳造、スクイズキャスティング、双ベルト鋳造、双ロール鋳造、ストリップ鋳造、及びブロック鋳造などの当技術分野において周知の従来の鋳造方法によって製造することができる。
【0011】
[1011] 開示される合金の室温における高強度は、i)マグネシウム及びマンガンなどの合金化元素を用いた固溶体の強化によるマトリックス強度の最大化、ii)析出硬化によるマトリックスのさらなる強化、及び(iii)ひずみ硬化(塑性変形)によるさらなる強化の3つの主要な方法に起因する。幾つかの実施形態では、開示される合金の析出硬化は、a)L1結晶構造を有する整合性AlZrの析出(ここでナノスケール析出物は6~20nmの範囲内の平均半径を有する)、b)50~200nmの範囲内の平均半径を有する不整合性AlMn分散質の析出、c)半整合性α-Al(Mn,Fe)Si分散質の析出、d)整合性AlCuMgのG.P.ゾーンと、Cuを含有する合金中の中間相のいわゆるS’相との析出、及び/又はe)50~800nmの範囲内のAl12Mn金属間相の形成と関連している。結晶粒中に金属間相及びナノ析出物が存在することで、周囲温度における転位運動に対する強いピン留め力が生じる。
【0012】
[1012] 幾つかの実施形態では、開示される合金の高い焼きなまし温度(例えば250~500℃)における高い熱安定性は、a)L1結晶構造を有し6~20nmの範囲内の平均半径を有する整合性の耐熱性及び粗大化抵抗性AlZr、b)50~200nmの範囲内の平均半径を有する不整合性の粗大化抵抗性AlMn分散質、及びc)半整合性の耐熱性及び粗大化抵抗性α-Al(Mn,Fe)Si分散質、及び/又はd)50~800nmの範囲内の耐熱性Al12Mn金属間相の存在と関連している。結晶粒中に熱安定性金属間相及びナノ析出物が存在することで、高温における転位運動に対する強いピン留め力が生じ、これによって焼きなましプロセス中に強度が保持される。
【0013】
[1013] 予備変形条件(pre-deformed condition)における開示される合金の安定化処理及び/又は塗料焼き付けサイクなどのプロセス中の中間焼きなまし温度(例えば、100~250℃)における熱安定性は、整合性のAlCuMgのG.P.ゾーン及び中間S’相の析出と部分的に関連している。変形した合金は、高数密度の転位を含み、これによってAlCuMgが析出するための不均一核生成部位が形成される。これらの析出物は、回復プロセス中及び遅い転位運動中の強度損失の相殺に役立ち、したがって焼きなまし中の急速な強度低下の緩和に役立つ。
【0014】
[1014] 上記合金の製造方法も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】[1015]Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Cu重量%(AA5182-I、開示される合金1)と比較した、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)を含む例の合金の種々の加工条件の結果としての引張強度(1A)である。
図1B】[1015]Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Cu重量%(AA5182-I、開示される合金1)と比較した、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)を含む例の合金の種々の加工条件の結果としての降伏強度(1B)である。
図2A】[1016]Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Cu重量%(AA5182-I、開示される合金1)、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn重量%(AA5182-nano-I、参考文献の特許出願の米国特許出願公開第2019/0390306A1号)、及びAl-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn-0.3Cu重量%(AA5182-nano-II、開示される合金2)と比較した、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)を含む例のピーク時効され、冷間圧延された合金の種々の安定化温度及び被覆硬化温度における引張強度対焼きなまし時間である。
図2B】[1016]Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Cu重量%(AA5182-I、開示される合金1)、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn重量%(AA5182-nano-I、参考文献の特許出願の米国特許出願公開第2019/0390306A1号)、及びAl-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn-0.3Cu重量%(AA5182-nano-II、開示される合金2)と比較した、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)を含む例のピーク時効され、冷間圧延された合金の種々の安定化温度及び被覆硬化温度における降伏強度対焼きなまし時間である。
図3A】[1017]Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Cu重量%(AA5182-I、開示される合金1)、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn重量%(AA5182-nano-I、参考文献の特許出願の米国特許出願公開第2019/0390306A1号)、及びAl-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn-0.3Cu重量%(AA5182-nano-II、開示される合金2)と比較した、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)を含む例のピーク時効され、冷間圧延され、安定化された合金の破断時伸びの関数としての引張強度である。
図3B】[1017]Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Cu重量%(AA5182-I、開示される合金1)、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn重量%(AA5182-nano-I、参考文献の特許出願の米国特許出願公開第2019/0390306A1号)及びAl-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn-0.3Cu重量%(AA5182-nano-II、開示される合金2)と比較した、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)を含む例のピーク時効され、冷間圧延され、安定化された合金の破断時伸びの関数としての降伏強度である。
図4】[1018]4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn-0.3Cu重量%(AA5182-nano-II、開示される合金2)と比較した、例の冷間圧延され、完全焼きなましされた合金(ソフトテンパー):Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)の機械的延伸(成形)及び焼きなまし(塗料焼き付け)を含む種々のプロセスステップによる降伏強度の発生である。
図5】[1019]4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn重量%(AA5182-nano-I、参考文献の特許出願の米国特許出願公開第2019/0390306A1号)と比較した、Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)の2つの加工経路(従来及び修正したもの)により製造規模(連続鋳造)で製造した例の冷間圧延され、完全焼きなましされた合金(ソフトテンパー)の機械的延伸(成形)及び焼きなまし(塗料焼き付け)を含む種々のプロセスステップにおける降伏強度の発生。
図6A】[1020]例のピーク時効され、冷間圧延され、安定化された合金:Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)のCu濃度の関数としての引張強度及び伸びの値を含む物理的性質である。
図6B】[1020]例のピーク時効され、冷間圧延され、安定化された合金:Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Cu重量%(AA5182-nano-I、参考文献の特許出願の米国特許出願公開第2019/0390306A1号)のCu濃度の関数としての引張強度及び伸びの値を含む物理的性質である。
図6C】[1020]例のピーク時効され、冷間圧延され、安定化された合金:Al-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182、基準合金)及びAl-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Cu重量%(AA5182-nano-I、参考文献の特許出願の米国特許出願公開第2019/0390306A1号)のCu濃度の関数としての腐食電位を含む物理的性質である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
[1021] 従来の5000系合金は、ひずみ硬化可能であるが、熱処理可能ではないと理解されている。これらは、主要合金化元素としてマグネシウム、場合によりマンガンを含み、典型的には良好な強度、成形性、及び耐食性を有する。4~5のMg及び0.2~0.5のMn(重量%)を含むAA5182アルミニウム合金は、現在、食品及び飲料の缶の蓋に利用されている。これは自動車用途にも用いられる。缶の蓋の場合、AA5182の製造は、指定の厚さ(例えば0.25mm)まで減少させる冷間圧延によって終了し、これによって微細構造が変化することで、全体の強度が増加するが、合金の延性/成形性は大幅に低下する。延性を回復するために中間温度処理(安定化)を用いることができるが、これによって合金の冷間圧延により得られた強度も低下する。強度増加の大部分は、高数密度の転位の発生によって生じ、これは高温において減少することがある。幾つかの実施形態では、延性を増加させるために安定化を用いることができるが、これは特定の元素を追加する人工時効ステップとして戦略的に用いることもできる。林立転位は、多数の析出物核生成部位を形成するので、時効プロセスの重要な部分である。AA5182中へのCuの微量添加の効果は、製造プロセスの安定化中に調べられる。
【0017】
[1022] したがって、幾つかの実施形態では、本開示は、約3~6.2重量%のマグネシウム、0.01~1.8重量%のマンガン、0.01~0.6重量%の鉄、0.01~0.5重量%のケイ素、0.08~0.6重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含むアルミニウム合金を提供する。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金中の銅の量は、間にあるあらゆる範囲及び値を含めて、約0.10~約0.6重量%の銅、約0.12~約0.6重量%の銅、約0.14~約0.6重量%の銅、約0.16~約0.6重量%の銅、約0.18~約0.6重量%の銅、約0.2~約0.6重量%の銅、0.25~約0.6重量%の銅、約0.3~約0.6重量%の銅、0.35~約0.6重量%の銅、約0.4~約0.6重量%の銅、又は約0.45~約0.6重量%の銅である。
【0018】
[1023] 開示されるアルミニウム合金は接種剤を含み、この接種剤はスズ、ストロンチウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、インジウム、アンチモン、鉛、及びビスマスの1つ以上を含む。接種剤が存在することで、AlZrナノ析出物の析出反応速度が増加し、そのためこれらの析出物は、熱処理中の実用的な時間で形成することができる。言い換えると、接種剤を用いない場合の数週間の熱処理と比較して、有益なAlZrナノ析出物は、接種材の存在下で数時間以内の熱処理で形成することができる。幾つかの実施形態では、接種剤はスズである。幾つかの実施形態では、スズは、他の接種剤と比較して最も有効にAlZrナノ析出物の析出反応速度を増加させる。この挙動は米国特許第9,453,272号に記載されている。
【0019】
[1024] 一実施形態では、アルミニウム合金は、アルミニウムと、マグネシウムと、ジルコニウムと、銅と、接種剤と、不可避の不純物の限度量と、AlZrを含むナノスケール析出物とを含み、ナノスケール析出物は、約20nm以下の平均直径を有し、α-Al面心立方マトリックス中でL1構造を有し、ナノスケール析出物の平均数密度は約2021-3以上であり、接種剤はスズを含む。
【0020】
[1025] 幾つかの実施形態では、本開示のアルミニウム合金はCu含有析出物を含む。幾つかの実施形態では、Cu含有析出物は、整合性のAlCuMgのG.P.ゾーン及び中間のS’相を含む。なんらかの特定の理論によって束縛しようとするものではないが、銅は、安定化処理及び/又は塗料焼き付けサイクルなどのプロセス中の中程度の焼きなまし処理中の熱安定性を向上させると考えられている。
【0021】
[1026] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約2.5~約6.2重量%のマグネシウム;約0.01~約1.8重量%のマンガン;約0.01~約0.5重量%のケイ素;約0.01~0.6重量%の鉄;約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;約0.01~約0.2重量%のスズ;0~0.6重量%の銅;及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0022】
[1027] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約2.5~約6.2重量%のマグネシウム;約0.01~約1.8重量%のマンガン;約0.01~約0.5重量%のケイ素;約0.01~0.6重量%の鉄;約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;約0.01~約0.2重量%のスズ;0~1重量%の銅;及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0023】
[1028] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約2.5~約6.2重量%のマグネシウム;約0.01~約1.8重量%のマンガン;約0.01~約0.6重量%の鉄;約0.01~約0.5重量%のケイ素;約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;約0.01~約0.2重量%のスズ;約0.08~約1重量%の銅;及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0024】
[1029] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約3~約6.2重量%のマグネシウム;約0.01~約1.8重量%のマンガン;約0.01~約0.5重量%のケイ素;0.01~0.6重量%の鉄;約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;約0.01~約0.2重量%のスズ;約0.08~約1重量%の銅;及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0025】
[1030] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約3~約6.2重量%のマグネシウム;約0.01~約1.8重量%のマンガン;約0.01~約0.5重量%のケイ素;0.01~0.6重量%の鉄;約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;約0.01~約0.2重量%のスズ;約0.08~約0.6重量%の銅;及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0026】
[1031] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約3~約6.2重量%のマグネシウム;約0.01~約1.8重量%のマンガン;約0.01~約0.5重量%のケイ素;0.01~0.6重量%の鉄;約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;約0.01~約0.2重量%のスズ;約0.2~約0.6重量%の銅;及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0027】
[1032] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約3~約6.2重量%のマグネシウム、約3.2~約6.2重量%のマグネシウム、約3.4~約6.2重量%のマグネシウム、約3.6~約6.2重量%のマグネシウム、約3.8~約6.2重量%のマグネシウム、約4~約6.2重量%のマグネシウム、又は約4.2~約6.2重量%のマグネシウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約3~約6.2重量%のマグネシウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約3.2~約6.2重量%のマグネシウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約3.4~約6.2重量%のマグネシウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約3.6~約6.2重量%のマグネシウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約3.8~約6.2重量%のマグネシウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約4~約6.2重量%のマグネシウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約4.2~約6.2重量%のマグネシウムを含む。
【0028】
[1033] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約1.8重量%のマンガンを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約1.5重量%のマンガンを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約1.2重量%のマンガンを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約1重量%のマンガンを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.8重量%のマンガンを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.6重量%のマンガンを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約1.8重量%のマンガン、約0.1~約1.6重量%のマンガン、約0.1~約1.4重量%のマンガン、約0.1~約1.2重量%のマンガン、約0.1~約1重量%のマンガン、約0.1~約0.8重量%のマンガン、約0.1~約0.6重量%のマンガン、又は約0.1~約0.5重量%のマンガンを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約0.5重量%のマンガンを含む。
【0029】
[1034] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.6重量%の鉄、約0.1~約0.6重量%の鉄、約0.15~約0.6重量%の鉄、又は約0.2~約0.6重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.6重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.55重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.5重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.45重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.40重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約0.6重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約0.55重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約0.50重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約0.45重量%の鉄を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約0.4重量%の鉄を含む。
【0030】
[1035] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.5重量%のケイ素、約0.1~約0.5重量%のケイ素、約0.15~約0.5重量%のケイ素、又は約0.2~約0.5重量%のケイ素を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.5重量%のケイ素を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.5重量%のケイ素を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.45重量%のケイ素を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.40重量%のケイ素を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.35重量%のケイ素を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.3重量%のケイ素を含む。
【0031】
[1036] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約0.5重量%のジルコニウム、約0.15~約0.5重量%のジルコニウム、又は約0.2~約0.5重量%のジルコニウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.5重量%のジルコニウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.1~約0.5重量%のジルコニウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.15~約0.5重量%のジルコニウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.2~約0.5重量%のジルコニウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.25~約0.5重量%のジルコニウムを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.2~約0.4重量%のジルコニウムを含む。
【0032】
[1037] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.01~約0.2重量%のスズ、約0.05~約0.2重量%のスズ、又は約0.1~約0.2重量%のスズを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.01~約0.2重量%のスズを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.05~約0.2重量%のスズを含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.10~約0.2重量%のスズを含む。
【0033】
[1038] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.08~約1重量%の銅、例えば約0.10~約1重量%の銅、約0.12~約1重量%の銅、約0.14~約1重量%の銅、約0.16~約1重量%の銅、約0.18~約1重量%の銅、約0.2~約1重量%の銅、0.25~約1重量%の銅、約0.3~約1重量%の銅、0.35~約1重量%の銅、約0.4~約1重量%の銅、約0.45~約1重量%の銅、約0.5~約1重量%の銅、0.55~約1重量%の銅、約0.6~約1重量%の銅、0.65~約1重量%の銅、約0.7~約1重量%の銅、又は約0.75~約1重量%の銅を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.08~約0.6重量%の銅、約0.10~約0.6重量%の銅、約0.12~約0.6重量%の銅、約0.14~約0.6重量%の銅、約0.16~約0.6重量%の銅、約0.18~約0.6重量%の銅、約0.2~約0.6重量%の銅、0.25~約0.6重量%の銅、約0.3~約0.6重量%の銅、0.35~約0.6重量%の銅、約0.4~約0.6重量%の銅、又は約0.45~約0.6重量%の銅を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.08~約0.6重量%の銅を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.10~約0.6重量%の銅を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.15~約0.6重量%の銅を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.20~約0.6重量%の銅を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.25~約0.6重量%の銅を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.30~約0.6重量%の銅を含む。
【0034】
[1039] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約3~約6.2重量%のマグネシウム、約0.1~約0.5重量%のマンガン、約0.01~約0.3重量%のケイ素、約0.05~約0.4重量%の鉄、0~0.5重量%のジルコニウム、0~0.2重量%のスズ、約0.08~約1重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0035】
[1040] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.08~約1重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0036】
[1041] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.08~約0.6重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0037】
[1042] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.08~約0.3重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0038】
[1043] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.15重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0039】
[1044] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0040】
[1045] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.45重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0041】
[1046] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.60重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0042】
[1047] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0043】
[1048] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.15重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0044】
[1049] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.3重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0045】
[1050] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.45重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0046】
[1051] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.60重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0047】
[1052] 一実施形態では、アルミニウム合金は、約0.01%~約0.5%の鉄を、例えば不純物元素として含む。
【0048】
[1053] 本開示の幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は:
AA5042、AA5052、AA5056、AA5083、AA5086、AA5182、AA5352、及びAA5754からなる群から選択されるアルミニウム合金に実質的に類似する(すなわち、各成分が約5~10重量%の範囲内の)基本組成を含み;
約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;
約0.01~約0.2重量%のスズ;
約0.15~約1重量%の意図的に加えられた銅;
及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0049】
[1054] 本開示の幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は:
AA5042、AA5052、AA5056、AA5083、AA5086、AA5182、AA5352、及びAA5754からなる群から選択されるアルミニウム合金に実質的に類似する(すなわち、各成分が約5~10重量%の範囲内の)基本組成を含み;
約0.15~約1重量%の意図的に加えられた銅;
及び残量としてのアルミニウムを含む。
【0050】
[1055] 本開示の幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、以下からなる群から選択される組成を含む。
【0051】
【表1】
【0052】
[1056] 本開示の幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、以下からなる群から選択される組成を含む。
【0053】
【表2】
【0054】
[1057] 幾つかの実施形態では、亜鉛が意図せずに加えられる。
【0055】
[1058] 幾つかの実施形態では、クロム及び/又はチタンは、良好な鋳造特性のために結晶粒微細化の目的で意図的に加えられる。一実施形態では、アルミニウム合金は、良好な鋳造特性のために結晶粒微細化の目的で、約0~0.35重量%のクロム、及び/又は0~0.15重量%のチタンを含む。
【0056】
[1059] 幾つかの実施形態では、本開示のアルミニウム合金は、スカンジウムを本質的に含まない。幾つかの実施形態では、スカンジウムが存在する場合、これは意図せずに加えられ、間にある値のあらゆる範囲を含めて、約0.5%未満、約0.4%未満、約0.3%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.09%未満、約0.08%未満、約0.07%未満、約0.06%未満、約0.05%未満、約0.04%未満、約0.03%未満、又は約0.02重量%未満で存在する。
【0057】
[1060] 幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0~約0.5重量%の不可避の不純物、例えば、約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.15重量%、約0.2重量%、約0.25重量%、約0.3重量%、約0.35重量%、約0.4重量%、約0.45重量%、又は約0.5重量%の不可避の不純物を含む。幾つかの実施形態では、アルミニウム合金は、約0.5重量%未満、約0.4重量%未満、約0.3重量%未満、約0.2重量%未満、又は約0.1重量%未満の不可避の不純物を含む。
【0058】
[1061] 当業者によって理解されるように、開示される合金中に存在する不可避の不純物は、合金の性質、例えばその引張強度、降伏強度、破断時伸び、又は本明細書に記載のあらゆる他の性質に測定可能な影響を与えない。
【0059】
[1062] 幾つかの実施形態では、本開示の合金は、約90重量%を超えるアルミニウム、約91重量%を超えるアルミニウム、約92重量%を超えるアルミニウム、約93重量%を超えるアルミニウム、約94重量%を超えるアルミニウム、約95重量%を超えるアルミニウム、約96重量%を超えるアルミニウム、約97重量%を超えるアルミニウム、又は約98重量%を超えるアルミニウムを含む。幾つかの実施形態では、本開示の合金、約90重量%のアルミニウム、約91重量%のアルミニウム、約92重量%のアルミニウム、約93重量%のアルミニウム、約94重量%のアルミニウム、約95重量%のアルミニウム、約96重量%のアルミニウム、約97重量%のアルミニウム、又は約98重量%のアルミニウム。
【0060】
[1063] 本開示の幾つかの実施形態では、合金は、ハードテンパー条件において、少なくとも400MPaの降伏強度、少なくとも450MPaの引張強度、及び少なくとも5%の伸びを有する。幾つかの実施形態では、合金は、ハードテンパー条件において、少なくとも405MPa、少なくとも400MPa、少なくとも395MPa、少なくとも390MPa、又は少なくとも385MPaの降伏強度を有する。幾つかの実施形態では、合金は、ハードテンパー条件において、少なくとも470MPa、少なくとも465MPa、少なくとも460MPa、少なくとも455MPa、又は少なくとも450MPaの引張強度を有する。幾つかの実施形態では、合金は、ハードテンパー条件において、少なくとも5%、少なくとも5.5%、少なくとも6%、少なくとも6.5%、少なくとも7%、又は少なくとも7.5%の伸びを有する。
【0061】
[1064] 本開示の幾つかの実施形態では、合金は、ソフトテンパー条件において、少なくとも170MPaの降伏強度、少なくとも320MPaの引張強度、及び少なくとも10%の伸びを有する。幾つかの実施形態では、合金は、ソフトテンパー条件において、少なくとも210MPa、少なくとも205MPa、少なくとも200MPa、少なくとも195MPa、少なくとも190MPa、少なくとも185MPa、又は少なくとも180MPaの降伏強度を有する。幾つかの実施形態では、合金は、ソフトテンパー条件において、少なくとも470MPa、少なくとも465MPa、少なくとも460MPa、少なくとも455MPa、又は少なくとも450MPaの引張強度を有する。幾つかの実施形態では、合金は、ソフトテンパー条件において、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、又は少なくとも15%の伸びを有する。
【0062】
[1065] 開示されるアルミニウム合金から部品を製造する方法の1つは:a)合金を約700~900℃の温度で融解させることと;b)合金を鋳型中で鋳造することと;c)冷却媒体を用いて、鋳造された鋳塊を冷却することと(冷却速度は、固溶体中の溶質原子の含有量を増加させるのに十分速い速度である必要があり、このことは析出後に最適な機械的性質を得るために重要である);d)上記鋳塊を300℃~600℃の間の温度で厚板又は板に熱間圧延することと;e)上記板を約350℃~約550℃の温度で約2~約48時間、熱時効させることとを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、f)熱間圧延及び熱処理が行われた板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することをさらに含む。幾つかの実施形態では、この方法は、g)薄板又は箔製品の最終安定化熱処理(100~250℃で1分~8時間)を行うことをさらに含む。
【0063】
[1066] 開示されるアルミニウム合金から部品を製造するための別の方法の1つは、a)合金を約700~900℃の温度で融解させること;b)合金を鋳型中で鋳造すること;c)冷却媒体を用いて、鋳造された鋳塊を冷却すること(冷却速度は、固溶体中の溶質原子の含有量を増加させるのに十分速い速度である必要があり、このことは析出後に最適な機械的性質を得るために重要である);d)上記合金を300℃~600℃の間の温度で厚板又は板に熱間圧延することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、e)熱間圧延された板又は厚板を冷間圧延して、厚板、薄板、又は箔製品を形成することと;f)上記板を約300℃~約550℃の温度で約2~約48時間、熱時効させることとをさらに含む。
【0064】
[1067] 本方法の幾つかの実施形態では、冷間圧延後、合金(例えば、板又は箔製品)は、安定化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す。幾つかの実施形態では、冷間圧延後、合金は、被覆硬化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す。幾つかの実施形態では、延性は、安定化又は被覆硬化処理を全く行わなかった冷間圧延した状態と比較して、間にあるあらゆる範囲及び値を含めて、約5%、約20%、約50%、約100%、約150%、約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、約450%、又は約500%だけ改善される。
【0065】
[1068] 開示される合金の幾つかの用途としては、例えば、食品及び飲料の缶の蓋、食品及び飲料の缶のタブ、屋根ふき材料、羽目板材料、化学製造装置、食品製造装置、貯蔵タンク、家電製品、板金加工、海洋部品、輸送部品、高耐久性調理器具、油圧管、燃料タンク、圧力容器、トラック車体、トラック組立部品、トレーラー車体、トレーラー組立部品、掘削装置、ミサイル部品、及び鉄道車両が挙げられる。開示されるアルミニウム合金の幾つかの製造された形態としては、例えば、ワイヤ、板、厚板、及び箔が挙げられる。
【0066】
参照による援用
[1069] 本明細書に参照されるそれぞれの特許文献及び科学論文の開示全体が、あらゆる目的で参照により援用される。
【0067】
均等物
[1070] 本発明は、その意図及び本質的な特性から逸脱することなく、別の特定の形態で具体化することができる。したがって、上記の実施形態は、すべての態様において、本明細書に記載の本発明を限定するものではなく、説明的なものであると見なされるべきである。したがって本発明の範囲は、上記の説明によってではなく添付の請求項によって示され、請求項の意味及びその均等性の範囲内となるあらゆる変化が、その中に含まれることが意図される。
【0068】
[1071] したがって、以上より、本開示の新しい概念の真の意図及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び変形を実施できることが理解されるであろう。例証され説明される特定の実施形態に対する限定が意図されるものではなく、そのように推測されるべきではないことを理解すべきである。例えば、本開示の例示される合金は、AA5182アルミニウム合金を基準材料として用いるが、開示される合金を用いて実現される同じ改善が、限定するものではないが、マグネシウム、マンガン、並びにその他の微量の合金化元素及び不純物元素を含むAA5052、AA5056、AA5352、AA5754、AA5083、AA5086、及びAA5042などの別の従来の5000系アルミニウム合金にも適用可能であることは、当業者は直ちに理解するであろう。
【実施例
【0069】
実施例
[1072] 本開示は、以下の実施例を参照することによってさらに説明される。しかし、これらの実施例は説明的なものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきでは決してないことに留意されたい。
【0070】
[1073] 実施例1:開示される合金の製造及び評価
[1074] 2つの合金:AA5182(基準合金)及びAA5182-I(開示される合金1)を製造した。合金の公称組成を表1中に列挙する。両方の合金は、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、及び安定化処理(経路-I)の同じ処理経路で製造した。さらに、1つのAA5182試料及び数個のAA5182-I試料を445℃で熱処理し(Cuの固溶化熱処理)、異なる冷却速度で室温まで冷却した後、冷間圧延を行った。種々の冷却速度の影響を調べて、冷却速度(経路II-水焼入れ約100℃/秒、経路III-炉中冷却約1℃/分、及び経路IV-炉中冷却約0.5℃/分)に対する時効硬化の依存性を求めた。
【0071】
【表3】
【0072】
[1075] 図1は、それぞれの処理経路(I~IV)から得られたAA5182-I(開示される合金1)の引張強度を示している。経路I(鋳造、熱間圧延、冷間圧延、安定化)及びII(鋳造、熱間圧延、固溶化、及び水焼入れ、冷間圧延、安定化)によって処理した基準合金(以降AA5182と呼ぶ)の引張強度も示される。市販のAA5182合金よりもCu含有量が多い開示される合金は、固溶強化とともにAlCuMg析出物の形成によるCuの強化効果が最大化されるように設計される。合金が経路Iで処理される場合(固溶化せず)、AA5182と比較するとAA5182-Iの引張強度のごくわずかな増加(約10MPa)が示されるが、両方の合金を経路IIで処理すると約30MPaの引張強度の明確な増加が示される。経路II、III、及びIVにおけるAA5182-Iの引張強度は同程度であり、これは、この範囲内の冷却速度(固溶化温度から室温まで)は、Cu添加の有効性に対して大きな影響は生じないことを示している。AA5182は、経路III及びIVによる処理は行わなかったが、その理由は、経路IIよりも遅い速度で冷却した場合に、合金の顕著な差が期待されないからである。たとえば、幾つかの実施形態では、Cuは、冷間圧延の前に固溶化されず、安定化処理を行うと、Cuの強化効果が最大化される。
【0073】
[1076] 実施例2:ジルコニウムを含む開示される合金の製造及び評価
[1077] 開示される合金中にZr及び接種剤元素を加えることで、熱安定性で整合性のAlZrナノ析出物を高数密度で導入することができる。AlZrナノ析出物とともに、Cuを少量添加することのAA5182の引張強度に対する効果が調べられる。4つの合金:AA5182、AA5182-I、AA5182-nano-I、及びAA5182-nano-IIを製造した。合金の公称組成を表2中に列挙する。すべての合金は、鋳造、熱間圧延、高温熱処理(445℃/5時間)、冷間圧延、及び安定化処理の同じ処理経路によって製造した。製造プロセス中の高温熱処理は、1)AlZrナノ析出物を生成するための時効処理、2)Cu及び別の合金化元素ための固溶化熱処理の2つの目的を果たす。安定化処理後の強度保持を示すために、AA5182-nano-II(開示される合金2)の安定化熱処理のための幾つかの温度(160、180、及び200℃)を選択した。AA5182及びAA5182-nano-I(参考特許出願の米国特許出願公開第2019/0390306A1号)に対して安定化温度(160℃/3時間)を選択することで、基準合金AA5182の標準的なハードテンパー特性が得られた。すべての合金を、224℃で60秒の油浴に通すことで、種々の食品及び包装用途に必要な被覆硬化プロセスをシミュレートした。
【0074】
【表4】
【0075】
[1078] 図2A及び2Bは、AlZrナノ析出物が存在し、Cuの微量添加も行われた開示される合金の種々の安定化及び被覆硬化の温度における焼きなまし時間の関数としての引張強度及び降伏強度をそれぞれ示している。160℃で3時間安定化させた(H39-テンパーに典型的)AA5182及びAA5182-nano-Iの引張強度及び降伏強度が図に含まれる。初期点(ゼロ時間)は、安定化又は油浴処理の前の冷間圧延されたままの性質を表している。図2Aから明らかなように、AA5182-nano-IIの引張強度及び降伏強度の両方が、160℃の温度で3時間の安定化の後、AA5182及びAA5182-nano-Iよりもはるかに高い値を示している。その熱安定性をさらに示すため、さらなる安定化温度がAA5182-nano-IIの場合に示される。180℃の温度において、引張強度及び降伏強度は、少なくとも8時間、比較的安定なままである。200℃において、引張強度及び降伏強度の両方の曲線が、8時間まで、依然としてAA5182-nano-I(160℃/3時間)の値の上にある。AA5182-I合金の場合、冷間圧延されたままの状態での強度は基準AA5182合金と同等であるが、安定化処理(160℃/3時間)後には基準AA5182合金よりもはるかに高くなる。中程度の焼きなまし処理中の基準AA5182合金の熱安定性も、Cuの微量添加で改善されることも示されている。224℃における60秒の油浴による結果も、すべての合金の場合で含まれている。AA5182-nano-IIの引張強度及び降伏強度の両方が、別の合金よりもはるかに高い。
【0076】
[1079] 図3A及び3Bは、図2中の同じ合金の破断時伸びの関数としての引張強度及び降伏強度をそれぞれ示している。安定化処理後の調べたすべてのAA5182、AA5182-I、AA5182-nano-I、及びAA5182-nano-IIの伸びの値はほぼ同じで、おおよそ5.5~7.5%の間であるが、強度は大きく異なることが明らかである。AA5182-I及びAA5182-nano-Iの両方の強度は、基準AA5182合金よりも高く、AA5182-nano-IIの強度が最も高く、延性を犠牲にすることなく開示される合金の強度が増加することを示している。
【0077】
[1080] したがって、板の形態の開示される合金において延性を犠牲にすることなく強度が改善されることは、食品及び飲料缶産業に非常に有利である。開示される合金は、食品及び飲料の缶の板厚を減少させながら、同じ機能を維持するのに役立ち、アルミニウムの使用量が減少し、食品及び飲料の会社並びに最終使用者のコストが削減される。
【0078】
[1081] 実施例3:塗料焼き付けサイクル後の開示される合金の機械的性質
[1082] 製造のためにAA5182を用いる自動車製造業者は、典型的には、高成形性を有するO-テンパー/ソフトテンパー(完全焼きなましされた)板として合金を入手する。板が所望の形状に成形されると(例えばスタンピング)、その強度は加工又はひずみ硬化によって増加する。しかし、組み立てられた車両の典型的な塗料焼き付けサイクル(すなわち中間温度の焼きなまし処理)の後、加工によって増加した強度が低下する。塗料焼き付けサイクルの最中及び後の機械的性質に対する影響をAA5182及びAA5182-nano-II合金に対して調べる。これらの合金の公称組成を表2中に列挙する。これらの合金から製造された板は、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、及び最終焼きなまし処理(AA5182の場合270℃/4時間、AA5182-nano-IIの場合420℃/4時間)の同じ処理経路が行われる。成形及び塗料焼き付けサイクルをシミュレートするために、板を約5%のひずみまで延伸し(張力下)、次に205℃で20分及び2時間の焼きなましを行った。
【0079】
[1083] 図4は、ソフトテンパーと、5%延伸と、205℃で20分の焼きなましと、205℃で2時間の焼きなましとの成形及び塗料焼き付けサイクルのそれぞれの段階における各合金の降伏強度を示している。5%延伸において、両方の合金は、約55MPaの降伏強度の増加を示す。205℃で焼きなますと、AA5182の降伏強度は20分以内に55MPaだけ低下し、一方、AA5182-nano-IIは、20分でわずか30MPaだけ低下し、20分と比較して2時間後に約10MPaだけ増加する。焼きなました状態(塗料焼き付け後)では、AA5182-nano-IIは、基準AA5182合金と比較して>30%の降伏強度の増加を示す。
【0080】
[1084] これらの合金の処理パラメーターは、塗料焼き付けサイクル中のそれらの応答をさらに改善するために、変更することができる。この技術の拡張性を示し、処理パラメーターをさらに調べるために、連続鋳造によって2つの合金を製造した。これらの合金の公称組成は、表2中に列挙されるAA5182及びAA5182-nano-Iの公称組成である。これら両方の合金は、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、及び焼きなまし処理からなる従来のO-テンパー経路と;鋳造、熱間圧延、高温熱処理(445℃/5時間)、冷間圧延、及び焼きなまし処理からなる修正O-テンパー経路との2つのわずかに異なる経路によって処理した。製造プロセス中の高温熱処理は、最終焼きなまし処理中に生成するものとは対照的に、冷間圧延前にAlZrナノ析出物を生成する時効ステップとして機能する。この析出物形成の順序の変更によって、合金の回復中の析出及び転位による熱安定性に変化が生じることがある。塗料焼き付け応答に対する2つの処理経路の影響を調べた。成形及び塗料焼き付けサイクルをシミュレートするために、板を約5%のひずみまで延伸し(張力下)、次に205℃で20、60、及び120分の焼きなましを行った。
【0081】
[1085] 図5は、ソフトテンパーと、5%延伸と、205℃で20、60、及び120分の焼きなましとの成形及び塗料焼き付けサイクルのそれぞれの段階における、従来の経路及び修正した経路によって処理した各合金の降伏強度を示している。合金AA5182の場合、両方の処理経路によって、ほぼ同じ結果が得られる。従来の経路と比較すると、修正した経路で処理した合金AA5182-nano-Iは、延伸段階及び焼きなまし段階中により高い降伏強度を示す(約6%の増加)。修正した処理経路はAA5182-nano-IIに適用可能であり、したがって、同じ強度増加が予想される。
【0082】
[1086] 実施例4:種々の量の銅を含む開示される合金の評価
[1087] Cu量を増加させると、開示される合金の機械的性質にさらなる利点を付与することができる。それらの効果について、AA5182(0.05、0.15、0.3、0.45、0.6重量%)及びAA5182-nano-I(0.05、0.3、0.6重量%)を含む種々のCu濃度を有する8つの合金を用いて調べた。合金の公称組成を表3中に列挙する。すべての合金は、鋳造と、熱間圧延と、熱処理と、冷間圧延と、安定化処理との同じ処理経路によって製造した。Cu合金化濃度を増加させることの効果について、安定化熱処理中の時効硬化応答を求めるために調べた。さらに、合金中の腐食電位に対するCuの影響を、ASTM G69規格を用いて測定した。
【0083】
【表5】
【0084】
[1088] 図6Aは、0.05~0.6重量%のCu濃度の関数としてのAA5182の引張強度及び伸びの値を示している。この合金は、Cu含有量が増加すると、強度が増加することを示しており、最初に0.05重量%のCu量で約410MPaから始まり、0.6重量%のCuで475MPaまで増加する。強度の最大の増加は、最初の0.15重量%のCuの増加の後に起こり(約25MPa)、その後、0.15重量%のCuの添加ごとに増加分は少なくなる(0.45~0.6重量%のCuで強度は5MPaだけ改善される)。Cu含有量を増加させても伸びに顕著な変化は見られない(すべて約9%)。同様に、図6Bは、0.05~0.6重量%のCu濃度の関数としてのAA5182-nano-Iの引張強度及び伸びの値を示している。0.3重量%のCuを加えると強度が35MPa増加し、0.6重量%のCuで50MPa増加する。Cu濃度の増加は、伸びの値に対する悪影響を示していない。図6Cは、0.05~0.6重量%のCu濃度の関数としてのAA5182及びAA5182-nano-Iの測定腐食電位値をまとめている。同じCu合金化濃度においてAA5182とAA5182-nano-Iとの間に腐食電位の顕著な差は見られない。値は、より高いCu濃度において、より貴な合金であることを示唆しており、腐食電位の合計の低下は、0.6重量%のCuの添加で約40mVである。
【0085】
[1089] 実施例5:ハードテンパー又はソフトテンパーにおける開示される合金の機械的性質
[1090] 表4は、ハードテンパー及びソフトテンパーにおけるAl-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si重量%(AA5182)、ハードテンパー及びソフトテンパー(塗料焼き付けサイクル後の性質をシミュレートするための延伸及び焼きなましが行われた条件)におけるAl-4.5Mg-0.25Mn-0.2Fe-0.1Si-0.3Zr-0.1Sn-0.3Cu重量%(AA5182-nano-II)を含む薄板(厚さ0.25mm)の機械的性質を列挙している。AA5182ハードテンパーは、食品及び飲料の缶のタブ及び蓋用の一般的なアルミニウム合金であり、AA5182ソフトテンパーは自動車用途に一般に用いられる。AA5182-nano-II合金は、ハードテンパー及びソフトテンパーの両方において、それぞれのテンパーのAA5182合金よりも高い降伏強度、引張強度を実現しながら、本質的に同じ破断時伸びを維持する。
【0086】
【表6】
【0087】
[1091] 本開示の番号が付いた実施形態
[1092] 本開示によって考慮される別の主題は、以下の番号の付いた実施形態に記載される。
【0088】
[1093] 1.約3~約6.2重量%のマグネシウム;
約0.01~約1.8重量%のマンガン;
約0.01~約0.6重量%の鉄;
約0.01~約0.5重量%のケイ素;
約0.1~約0.5重量%のジルコニウム;
約0.01~約0.2重量%のスズ;
約0.08~約1重量%の銅;及び
残量としてのアルミニウムを含む、アルミニウム合金。
【0089】
[1094] 2.約0.05~約0.6重量%のマンガンを含む、実施形態1のアルミニウム合金。
【0090】
[1095] 2a.約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.15重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、実施形態1又は2のアルミニウム合金。
【0091】
[1096] 3.約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.3重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、実施形態1又は2のアルミニウム合金。
【0092】
[1097] 4.約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%のジルコニウム、約0.1重量%のスズ、約0.6重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、実施形態1又は2のアルミニウム合金。
【0093】
[1098] 5.合金がスカンジウムを本質的に含まない、実施形態1~4のアルミニウム合金。
【0094】
[1099] 6.ハードテンパー条件において、合金が、少なくとも400MPaの降伏強度、少なくとも450MPaの引張強度、及び少なくとも5%の伸びを有する、実施形態1~5のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0095】
[1100] 7.冷間圧延後、合金が、安定化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、実施形態1~6のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0096】
[1101] 7a.冷間圧延後、合金が、被覆硬化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、実施形態1~6のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0097】
[1102] 8.成形又は延伸の後、合金が、塗料焼き付けサイクル中の強度低下に抵抗する、実施形態1~7のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0098】
[1103] 9.塗料焼き付けサイクルが後に行われる、成形及び延伸の後に、合金が少なくとも170MPaの降伏強度を有する、実施形態1~8のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0099】
[1104] 10.合金がAlZrナノスケール析出物を含み、このナノスケール析出物が、約20nm以下の平均直径を有し、α-Al面心立方マトリックス中にL1構造を有し、ナノスケール析出物の平均数密度が約2021-3以上である、実施形態1~9のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0100】
[1105] 11.合金がCu含有相を含む、実施形態1~10のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0101】
[1106] 12.冷間圧延、成形、又は延伸(例えば安定化処理及び/又は塗料焼き付けサイクル)後の中程度の時効処理中に、Cu含有相によって熱安定性が向上する、実施形態11のアルミニウム合金。
【0102】
[1107] 13.Cu含有相がAlCuMg析出物及び/又はS’相を含む、実施形態11又は12のアルミニウム合金。
【0103】
[1108] 14.AlCuMg析出物の形成によって、意図的に加えられた銅を有しない基準AA5182合金よりも引張強度が増加する、実施形態13のアルミニウム合金。
【0104】
[1109] 15.実施形態1~14のいずれか1つのアルミニウム合金から部品を製造する方法であって:
a)合金を約700℃~約900℃の温度で融解させることと;
b)合金を鋳型中で鋳造することと;
c)冷却媒体を用いて、鋳造された鋳塊を冷却することと;
d)上記鋳造された鋳塊を300℃~600℃の間の温度で厚板又は板に熱間圧延することと、
を含む方法。
【0105】
[1110] 16.ハードテンパー条件を得るために:
e)厚板又は板を約350℃~約550℃の温度で約2~約48時間の時間、熱時効させることと;
f)熱間圧延及び熱処理が行われた板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することと;
g)板製品の100℃~250℃の間の温度で1分~8時間の安定化熱処理及び/又は被覆硬化処理と、
をさらに含む、実施形態15の方法。
【0106】
[1111] 17.ソフトテンパー条件を得るために:
e)熱間圧延された板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することと;
f)上記板又は箔を約300℃~約550℃の温度で約2時間~約48時間の時間、熱時効させることと、
をさらに含む、実施形態15の方法。
【0107】
[1112] 17a.冷間圧延後、合金が、安定化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、実施形態16又は17の方法。
【0108】
[1113] 17b.冷間圧延後、合金が、被覆硬化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、実施形態16又は17の方法。
【0109】
[1114] 18.約2.5~約6.2重量%のマグネシウム;
約0.01~約1.8重量%のマンガン;
約0.01~約0.6重量%の鉄;
約0.01~約0.5重量%のケイ素;
約0.01~約1重量%の銅;及び
残量としてのアルミニウム、
を含むアルミニウム合金。
【0110】
[1115] 19.約0.1重量%の銅、約0.15重量%の銅、約0.2重量%の銅、0.25重量%の銅、0.3重量%の銅、0.35重量%の銅、0.4重量%の銅、0.45重量%の銅、0.5重量%の銅、0.55重量%の銅、0.6重量%の銅、0.65重量%の銅、0.7重量%の銅、0.75重量%の銅、0.8重量%の銅、0.85重量%の銅、0.9重量%の銅、0.95重量%の銅、又は1重量%の銅を含む、実施形態1~14及び18のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0111】
[1116] 20.約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.15重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、実施形態18のアルミニウム合金。
【0112】
[1117] 20a.約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.3重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、実施形態18のアルミニウム合金。
【0113】
[1118] 20b.約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.45重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、実施形態18のアルミニウム合金。
【0114】
[1119] 21.約4.5重量%のマグネシウム、約0.25重量%のマンガン、約0.2重量%の鉄、約0.1重量%のケイ素、約0.6重量%の銅、及び残量としてのアルミニウムを含む、実施形態18のアルミニウム合金。
【0115】
[1120] 22.ハードテンパー条件において、合金が、少なくとも370MPaの降伏強度、少なくとも430MPaの引張強度、及び少なくとも5%の伸びを有する、実施形態18~21のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0116】
[1121] 23.冷間圧延後、合金が、安定化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、実施形態18~22のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0117】
[1122] 24.冷間圧延後、合金が、被覆硬化処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、実施形態18~23のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0118】
[1123] 25.合金がCu含有相を含む、実施形態18~24のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0119】
[1124] 26.冷間圧延、成形、又は延伸(例えば安定化処理及び/又は塗料焼き付けサイクル)後に行われる中程度の時効処理及び/又は被覆硬化処理中に、Cu含有相によって熱安定性が向上する、実施形態25のアルミニウム合金。
【0120】
[1125] 27.Cu含有相がAlCuMg析出物及び/又はS’相を含む、実施形態25又は26のアルミニウム合金。
【0121】
[1126] 28.AlCuMg析出物の形成によって、意図的に加えられた銅を有しない基準AA5182合金よりも引張強度が増加する、実施形態27のアルミニウム合金。
【0122】
[1127] 29.実施形態18~28のいずれか1つのアルミニウム合金から部品を製造する方法であって:
a)合金を約700℃~約900℃の温度で融解させることと;
b)合金を鋳型中で鋳造することと;
c)冷却媒体を用いて、鋳造された鋳塊を冷却することと;
d)上記鋳造された鋳塊を300℃~600℃の間の温度で厚板又は板に熱間圧延することと;
e)場合により、上記板を約350℃~約550℃の温度で約1分~約48時間の時間、熱時効させることと;
f)熱間圧延及び熱処理が行われた板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することと;
g)板製品の100℃~250℃の間の温度で1分~8時間の安定化処理及び/又は被覆硬化処理と、
を含む方法。
【0123】
[1128] 30.実施形態1~14のいずれか1つ又は実施形態18~28のいずれか1つのアルミニウム合金を含む、食品及び/又は飲料の缶の蓋及び/又はタブ。
【0124】
[1129] 31.実施形態1~14のいずれか1つ又は実施形態18~28のいずれか1つのアルミニウム合金を含むアルミニウム合金部品であって、屋根ふき材料、羽目板材料、化学製造装置、食品製造装置、貯蔵タンク、家電製品、板金加工、海洋部品、輸送部品、高耐久性調理器具、油圧管、燃料タンク、圧力容器、トラック車体、トラック組立部品、トレーラー車体、トレーラー組立部品、掘削装置、ミサイル部品、及び鉄道車両からなる群から選択される、アルミニウム合金部品。
【0125】
[1130] 32.ワイヤ、板、厚板、及び箔からなる群から選択される、実施形態1~14のいずれか1つ又は実施形態18~28のいずれか1つのアルミニウム合金の製造された形態。
【0126】
[1131] 33.実施形態1~14のいずれか1つ又は実施形態18~28のいずれか1つのアルミニウム合金を含む、装飾用に着色被覆される、食品及び/又は飲料の缶の蓋及び/又はタブ。
【0127】
[1132] 34.a)合金を約700℃~約900℃の温度で融解させることと;
b)合金を鋳型中で鋳造することと;
c)冷却媒体を用いて、鋳造された鋳塊を冷却することと;
d)上記鋳造された鋳塊を300℃~600℃の間の温度で厚板又は板に熱間圧延することと;
e)場合により、上記板を約350℃~約550℃の温度で約1分~約48時間の時間、熱時効させることと;
f)熱間圧延及び熱処理が行われた板又は厚板を冷間圧延して、薄板又は箔製品を形成することと;
g)板製品の100℃~250℃の間の温度で1分~8時間の安定化処理及び/又は被覆硬化処理と、
によって形成される、実施形態1~14のいずれか1つ又は実施形態18~28のいずれか1つのアルミニウム合金。
【0128】
[1001] 35.冷間圧延後、合金が、安定化処理及び/又は硬化被覆処理中の強度低下に抵抗し、改善された延性を示す、実施形態34のアルミニウム合金。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
【国際調査報告】