(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】イオン交換材料を組み込んだ電極アセンブリのためのポリマーコーティングプロセス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20230605BHJP
H01M 4/26 20060101ALI20230605BHJP
H01M 4/32 20060101ALI20230605BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230605BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20230605BHJP
H01M 4/50 20100101ALI20230605BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20230605BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230605BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20230605BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20230605BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230605BHJP
H01M 6/02 20060101ALI20230605BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20230605BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20230605BHJP
H01M 4/12 20060101ALI20230605BHJP
H01M 4/08 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M4/26 H
H01M4/32
H01M4/26 E
H01M4/38 Z
H01M4/52
H01M4/50
H01M10/28 Z
H01M50/403 D
H01M50/46
H01M4/24 H
H01M4/24 Z
H01M50/414
H01M6/02 Z
H01M4/02 Z
H01M4/04 Z
H01M50/403 Z
H01M4/12 D
H01M4/08 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564829
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021029620
(87)【国際公開番号】W WO2021222393
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522133071
【氏名又は名称】ゼロス エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーキロフ、パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラー、アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
5H021
5H024
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021BB12
5H021BB15
5H021CC04
5H021EE02
5H024AA01
5H024AA03
5H024AA11
5H024AA14
5H024BB08
5H024BB11
5H024DD09
5H024FF07
5H024HH01
5H024HH13
5H028AA05
5H028BB00
5H028BB03
5H028CC08
5H028EE01
5H028EE05
5H028EE06
5H028HH01
5H028HH05
5H050AA19
5H050BA11
5H050CA01
5H050CA03
5H050CA05
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB13
5H050DA19
5H050GA11
5H050GA22
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
電池セルの製造方法は、電極を形成するステップと、n量体溶液で電極をコーティングするステップとを含む。n量体被覆電極は、n量体を重合し、電極の少なくとも一部を被覆するイオン交換材料を形成するために、熱、紫外線又は架橋剤によって処理される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの製造方法であって、
電極を形成するステップと、
前記電極をn量体でコーティングするステップと、
前記n量体コーティングされた電極を処理して前記n量体を重合し、前記電極の少なくとも一部を覆うイオン交換材料を形成するステップと、
を含む、電池セルの製造方法。
【請求項2】
前記n量体が、モノマー、オリゴマー、及び分岐又は非分岐ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項3】
前記n量体を溶液中に配置することができる、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項4】
前記n量体を溶融することができる、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項5】
熱、紫外線、又は化学剤誘導架橋のうちの少なくとも1つによって促進される架橋ステップをさらに含む、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項6】
前記架橋ステップが前記重合ステップの後に行われる、請求項5に記載の電池セルの製造方法。
【請求項7】
前記架橋ステップが前記重合ステップと同時に行われる、請求項5に記載の電池セルの製造方法。
【請求項8】
重合前に前記電極と前記n量体とを電池ケーシングに組み付けるステップをさらに含む、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項9】
前記重合イオン交換材料が、前記電極の少なくとも一部との相互貫入界面を画定するように配置される、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項10】
前記電極が、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、鉄、リチウム及びそれらのそれぞれの酸化物又は塩のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項11】
前記電極が亜鉛(Zn)含有アノードをさらに含む、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項12】
前記電極が、水酸化ニッケル(Ni(OH)
2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、二酸化マンガン(MnO
2)、酸化マンガン(MnO)、鉄酸塩(Fe(VI))、マンガン酸塩(Mn(VI))、及び過マンガン酸塩(Mn(VII))のうちの少なくとも1つを含むカソードである、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項13】
前記電極が、少なくとも部分的に、300ミクロン未満のサイズであり、かつ全電極体積の50%未満の細孔体積を有するように充填された電極粒子を含む、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項14】
充電式電池セルであって、
複数の粒子を含む電極と、
n量体コーティングされた電極を処理して前記n量体を重合させることによって少なくとも部分的に形成されたイオン交換材料であって、前記処理されたイオン交換材料は、前記電極の粒子の少なくとも一部に接触して取り囲んでいる、イオン交換材料と、
を含む、充電式電池セル。
【請求項15】
前記電極が、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、鉄、リチウム及びそれらのそれぞれの酸化物又は塩のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項14に記載の充電式電池セル。
【請求項16】
前記電極が亜鉛(Zn)含有アノードをさらに含む、請求項14に記載の充電式電池セル。
【請求項17】
前記電極が、水酸化ニッケル(Ni(OH)
2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、二酸化マンガン(MnO
2)、酸化マンガン(MnO)、鉄酸塩(Fe(VI))、マンガン酸塩(Mn(VI))、及び過マンガン酸塩(Mn(VII))のうちの少なくとも1つを含むカソードである、請求項14に記載の充電式電池セル。
【請求項18】
前記電極が、少なくとも部分的に、300ミクロン未満のサイズであり、かつ全電極体積の50%未満の細孔体積を有するように充填された電極粒子を含む、請求項14に記載の充電式電池セル。
【請求項19】
前記イオン交換材料がアニオン交換材料をさらに含む、請求項14に記載の充電式電池セル。
【請求項20】
前記イオン交換材料がポリマー材料をさらに含む、請求項14に記載の充電式電池セル。
【請求項21】
前記イオン交換材料が、正に帯電した官能基が結合したポリマー材料をさらに含む、請求項14に記載の充電式電池セル。
【請求項22】
液体アルカリ電解質をさらに含む、請求項14に記載の充電式電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年4月28日に出願された米国仮出願第63/016,827号の利益を主張し、その全体はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、電池及び電池用部品の分野に関する。より具体的には、本出願は、電極材料をイオン交換材料でコーティングするための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯機器、電気自動車、グリッド貯蔵及び他の用途のための高エネルギー密度を有する低コストの充電式電池システムに対する大きな需要がある。残念ながら、多くの電池システムは、電極材料、セパレータ、コレクタ、及びケーシングなどの複数の構成要素の複雑な組み立てを必要とする。セパレータ又はケーシングのピンホール又は漏れは、動作不能、苛性又は酸性化学薬剤の漏れ、及び電池によって駆動される製品の損傷をもたらす可能性がある。
【0004】
様々な電池化学に有用であり、安価に構築することができ、高い信頼性を有し、最小限の組み立てステップ又は個別の構成要素を要する電池システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、一次電池セル又は充電式電池セルを製造する方法は、電極を形成することと、電極をn量体でコーティングすることと、を含むことができる。n量体は、nが1~数百万の範囲で選択される繰り返し単位を有する組成物を含むことができ、これには、モノマー、オリゴマー(二量体、三量体等)、及び分岐又は非分岐ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。n量体被覆電極は、n量体を重合し、電極の少なくとも一部を被覆するイオン交換材料を形成するように処理される。いくつかの実施形態では、コーティングは、浸漬、噴霧、又はその他の方法で電極をn量体溶液で完全に又は部分的にコーティングすることをさらに含む。電極及びn量体は、重合前又は重合後のいずれかに電池ケーシング内に配置することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、n量体処理は重合を含むことができる。他の実施形態では、n量体処理は、熱、紫外線、又は化学剤のうちの少なくとも1つを使用して架橋又は硬化することを含むことができる。いくつかの実施形態では、重合及び架橋は同時に起こり得るが、他の実施形態では、重合の後に架橋が続く。いくつかの実施形態では、重合及び/又は架橋イオン交換材料は、電極の少なくとも一部との相互貫入界面を画定するように配置することができる。密接に接触する相互貫入界面を提供することは、電極をイオン交換材料内に完全に又は部分的に埋め込むこと、あるいは電極又は電極の不連続部分をイオン交換材料の薄膜で囲むことを含むことができる。一実施形態では、電極は、イオン交換材料に完全に又は部分的に埋め込まれているか、イオン交換材料でコーティングされているか、又はイオン材料に部分的に接触している粒子であり得る。別の実施形態では、電極粒子は、イオン交換材料と混合され得るか、その他の方法で混合され得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、電極は、亜鉛(Zn)又はZnOを含有するアノードを含むことができる。他の実施形態では、電極は、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化マンガン(MnO)、鉄酸塩(Fe(VI))、マンガン酸塩(Mn(VI))、過マンガン酸塩(Mn(VII))のうちの少なくとも1つを含むカソードである。
【0008】
電極は、少なくとも部分的に、300ミクロン未満のサイズであり、かつ全電極体積の50%未満の細孔体積を有するように充填された電極粒子を含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、イオン交換材料は、アニオン交換材料又はカチオン交換材料のいずれかを含むことができる。イオン交換材料は、帯電した官能基が結合したポリマー材料を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、電極に接触する液体アルカリ電解質によってイオン輸送を可能にすることができる。任意選択的に、電解質は、少なくともいくつかの組み込まれたイオン交換材料を有することができる。
【0011】
一実施形態では、充電式電池セルは、複数の粒子と、電極の粒子の少なくとも一部に接触して取り囲むイオン交換材料とを含む電極を含むことができる。
【0012】
一実施形態では、充電式電池セルは、複数の粒子を含む電極を含むことができ、イオン交換材料は、複数の粒子の少なくともいくつかの表面に接触し、その表面を完全に取り囲む。
【0013】
一実施形態では、充電式電池セルは、複数の粒子を含む電極と、電極の複数の粒子の実質的にすべてを埋め込むように配置されたイオン交換材料とを含むことができる。
【0014】
一実施形態では、充電式電池セルを製造する方法は、電極に複数の粒子を形成することと、電極の複数の粒子の少なくとも一部にイオン交換材料を埋め込むか又は混合することと、を含むことができる。埋め込みは、溶融、軟化、溶融物又は溶液からの堆積、積層、及び圧力印加のうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの他の技術が存在する。
【0015】
いくつかの実施形態では、製造は、電極を液体電解質に浸漬することを含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、製造は、イオン交換材料を複数の粒子の少なくとも一部に埋め込むか又は混合する前に、電極及びイオン交換材料を電池に組み付けることを含むことができる。
【0017】
【0018】
本開示の非限定的かつ非網羅的な実施形態は、以下の図を参照して説明され、特に明記しない限り、様々な図を通して同様の参照番号は同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】電極材料と接触するイオン交換材料を含む電池を示す。
【0020】
【
図2A】電極粒子とイオン交換材料との間の様々な形態の接触を示す。
【
図2B】電極粒子とイオン交換材料との間の様々な形態の接触を示す。
【
図2C】電極粒子とイオン交換材料との間の様々な形態の接触を示す。
【0021】
【
図3】サイクル数の関数としてのNi-Znセルの放電容量を示すグラフである。
【0022】
【
図4】アニオン交換膜を両面に積層したZn電極の断面SEM像を示す。
【0023】
【
図5】アニオン交換膜を両面に積層したZn電極のより詳細なSEM画像を示す。
【0024】
【
図6A】SEM画像及び関連する線EDX元素走査を示す。
【
図6B】SEM画像及び関連する線EDX元素走査を示す。
【0025】
【
図7】n量体ベースの電池製造方法の一実施形態を示す。
【0026】
【
図8】n量体ベースの電池製造方法の別の実施形態を示す。
【0027】
【
図9】熱処理を使用してさらに重合されたビニルベンジルトリメチルアンモニウム系(VBTMA)モノマーで処理されたZn系アノードを有するNiZn電池の性能プロットを示す。示されている性能プロットは、アノード利用率の関数としての(a)放電及び(b)充電電圧プロファイル、(c)NiZn電池の容量保持率及び(d)クーロン効率である。
【0028】
【
図10】サイクル数の関数として、Ni-Znセルについてのこの試験(エネルギー保持)中にセルによって実証された最大放電エネルギーの百分率としての放電エネルギーを示すグラフである。
【0029】
【
図11】容量の関数としてのNiZnセルの電圧を示すグラフである(上の横軸は理論アノード容量の%として表され、下の横軸は面積容量として表される)。
【0030】
【
図12】サイクル数の関数として、MnO
2-Znセルについてのこの試験(エネルギー保持)中にセルによって実証された最大放電エネルギーの百分率としての放電エネルギーを示すグラフである。
【0031】
【
図13】MnO
2-Znセルの電圧を容量の関数として示すグラフである(理論カソード容量の%として表される)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、部分的には、使用時の改善されたサイクル寿命及び電気的性能を有する電池セルに関する。例えば、電池セルは、より高い電池放電電圧、より高い放電容量、より低い内部抵抗、及び高レート放電能力を示すことができる。いくつかの実施形態では、開示の電池セルは、高レート放電電流で長いサイクル寿命を有する。
【0033】
図1は、様々な電池構成要素を取り囲むケーシング102を含む充電式電池セルシステム100を示す。電池構成要素は、電池セルシステム100の充電及び放電を容易にする電流コレクタ110及び112を含むことができる。他の構成要素は、電流コレクタ110及び112にそれぞれ接触する電極材料120及び122を含む。電極材料120及び122は、材料間のイオンの流れのみを可能にするセパレータ130によって互いに分離されている。一実施形態では、電極材料は、やはりセパレータとして作用するイオン交換材料でコーティングすることができる。充電式電池セルシステム100は、アノード、カソード、イオン交換、並びに以下に記載されるような他の材料及び構成要素を含むことができる。
【0034】
電極
電極材料は、薄膜として形成された材料、又は柱、針、溝、若しくはスロットなどの構造化パターンを含むことができる。いくつかの実施形態では、電極は、緩く配置された材料、堅固に結合された若しくは焼結された構造、又は固体連続細孔構造とすることができる。一実施形態では、電極は、粉末、顆粒、ペレット、又はナノ材料などの様々な形態で提供される粒子から形成することができる。特定の実施形態では、粒子は、約0.1μm~300μm、特定の実施形態では、約100μm~1μmの平均サイズ(直径又は最長寸法)を有することができる。いくつかの実施形態では、比較的均一な粒径を使用することができるが、他の実施形態では、不均一なサイズの材料を使用することができる。粒子を処理して有効表面積を増加させることができる。いくつかの実施形態では、粒子を加熱、溶融、融着、又は焼結によって処理して、粒子を互いに結合させることができる。他の実施形態では、粒子を一緒に保持するために追加の結合剤を使用することができる。
【0035】
電流コレクタ
電極材料の少なくとも一部は、電流コレクタと接触して配置される。電流コレクタは、充電時に電極反応のために消費できるように電流を供給し、放電時に発生した電流を回収する役割を果たす。電流コレクタは、典型的には、高い導電率を有し、かつ電気化学的電池セル反応に対して不活性な材料から形成される。電流コレクタは、プレート形態、箔形態、メッシュ形態、多孔質形態様スポンジ、打ち抜き又はスロット付き金属形態、又はエキスパンドメタル形態に成形することができる。
【0036】
電流コレクタの材料としては、Ni、Ti、Cu、Al、Pt、V、Au、Zn、Fe及びこれらの金属のうちの2種以上の合金、例えば、ステンレス鋼、青銅、黄銅等を挙げることができる。他の実施形態は、グラファイトクロス、グラファイト箔、銅シート、又はスロット付きメッシュ若しくは織られた真鍮を含んでもよい。
【0037】
アノード材料
電極用のアノード材料は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、鉄、及びリチウム、並びに純粋な、酸化物形態若しくは塩形態の他の金属、又はそれらの組み合わせなどの広範囲の材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、比較的純粋なZn、ZnO、又はZnとZnOとの混合物を使用することができる。充電式亜鉛負極の場合、電気化学的に活性な材料は、酸化亜鉛粉末又は亜鉛と酸化亜鉛粉末との混合物である。酸化亜鉛は、アルカリ電解質に溶解して亜鉛酸塩(Zn(OH)4
2-)を形成することができる。酸化亜鉛又は/及び亜鉛酸塩は、充電プロセス中に亜鉛金属に還元される。
【0038】
より広義には、アノード材料は、以下を含むことができる。
【0039】
カソード材料の酸化還元電位よりも低い酸化還元電位E0を有する任意の金属M、金属酸化物MOx又は金属塩。
【0040】
カソード材料の酸化還元電位よりも低い酸化還元電位E0を有する任意の金属酸化物MOx。
【0041】
カソード材料のE0よりも低いE0を有する任意の金属MM1M2...Mn、混合酸化物又は混合塩の任意の合金。
【0042】
カソード材料の酸化還元電位よりも低い酸化還元電位E0を有する、その構造中にイオンを収容することができる任意のポリマー。
【0043】
上記の種類の材料の1つ又は複数の任意の混合物。
【0044】
カソード材料
電極用のカソード材料は、金属又は金属含有化合物、例えば、鉄酸塩(Fe(VI))、マンガン酸塩(Mn(VI))、過マンガン酸塩(Mn(VII))、水酸化ニッケルNi(OH)2、オキシ水酸化ニッケルNiOOH、二酸化マンガンMnO2、酸化マンガン(MnO)又は任意の組み合わせなどの広範囲の材料を含むことができる。
【0045】
より広義には、カソード材料は、以下を含むことができる。
【0046】
アノード材料の酸化還元電位よりも大きい酸化還元電位E0を有する任意の金属M、金属酸化物MOx又は金属塩。
【0047】
アノード材料の酸化還元電位よりも大きい酸化還元電位E0を有する任意の金属酸化物MOx。
【0048】
アノード材料のE0よりも大きいE0を有する任意の金属MM1M2...Mnの任意の合金。
【0049】
酸化還元電位がアノード材料よりも大きい金属フッ化物MFn。
【0050】
nが2以上であり、mが0以上である任意の合金MM1M2...MnOxFm。
【0051】
アノード材料の酸化還元電位よりも大きい酸化還元電位E0を有する、その構造中にイオンを収容することができる任意のポリマー。
【0052】
上記の種類の材料の1つ又は複数の任意の混合物。
【0053】
添加剤及び結合剤
電極の電気化学的、電気的、又は機械的特徴を改善するために、様々な添加剤を使用することができる。例えば、電気化学的性能は、電池セル性能を改善するために、少量の酸化コバルト、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、酸化バリウム(BaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、Fe3O4、フッ化カルシウム(CaF2)、又は酸化イットリウム(Y2O3)を組み込むか又はそれらでコーティングすることができるニッケル、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、又は酸化ニッケル含有カソード材料を添加することによって改善することができる。別の例として、電極は、酸化ビスマス、酸化インジウム、及び/又は酸化アルミニウムなどの酸化物を含むことができる。酸化ビスマス及び酸化インジウムは、亜鉛と相互作用し、電極でのガス発生を低減することができる。酸化ビスマスは、乾燥負極配合物の約1~20重量%の濃度で提供され得る。酸化インジウムは、乾燥負極配合物の約0.05~10重量%の濃度で存在し得る。酸化アルミニウムは、乾燥負極配合物の約1~10重量%の間の濃度で提供され得る。
【0054】
さらに、いくつかの添加剤は、電池サイクル中の化学プロセスに関与して、電極の新しい位相を生成し、電池のサイクル性能及び安定性を改善することができる。そのような添加剤は、Bi2O3含有組成物を含むことができるが、これに限定されない。
【0055】
特定の実施形態では、亜鉛電極材料の耐食性を改善するために1つ又は複数の添加剤が含まれてもよい。電解質中の亜鉛の溶解度を低下させるために含まれ得るアニオンの具体例としては、リン酸塩、フッ化物、ホウ酸塩、亜鉛酸塩、ケイ酸塩又はステアリン酸塩が挙げられる。一般に、これらのアニオンは、乾燥電極配合物の約10重量%までの濃度で電極中に存在し得る。
【0056】
また、導電性等の電気特性を向上させる添加剤を添加することもできる。例えば、グラファイト、コークス、ケッチェンブラック及びアセチレンブラックなどの粉末状又は繊維状炭素を含む、様々な炭素質材料を電極添加剤として使用することができる。炭素質ナノ材料、例えば、単層又は多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、多層カーボンナノ粒子、カーボンナノウィスカー又はカーボンナノロッドも使用することができる。
【0057】
添加剤は、化学的に均質な成分として混合物又は溶液中に提供されてもよく、共沈殿されてもよく、又は粒子上にコーティングされてもよい。
【0058】
一実施形態では、結合剤を添加して電極の機械的強度を高め、電極の屈曲又は亀裂を低減することによって、機械的特性を改善することができる。結合剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸又はその塩、ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリアミドなどの高分子材料、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーン系エラストマー、又は天然ゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)又はエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのゴム材料を挙げることができる。
【0059】
イオン交換材料
イオン交換材料は、一般に、カチオン又はアニオンのいずれかの輸送に対して選択的である。アニオン選択性イオン交換材料は、単独で使用することができ、カチオン選択性イオン交換材料は、単独で使用することができ、又はこれらを互いに組み合わせて使用することができる。一実施形態では、イオン交換材料は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを含むスルホン酸、又はポリAMPSなどの強酸性基が結合した有機又はポリマー材料であり得る。あるいは、イオン交換材料は、トリメチルアンモニウム基(例えば、ポリAPTAC)を含む第四級アミノ基などの強塩基性基が結合した有機又はポリマー材料であり得る。別の実施形態では、イオン交換材料は、カルボン酸基を含む弱酸性基が結合した有機又はポリマー材料であり得る。あるいは、イオン交換材料は、典型的には第一級、第二級及び/又は第三級アミノ基(例えばポリエチレンアミン)を特徴とする、弱塩基性基が結合した有機又はポリマー材料であり得る。
【0060】
イオン交換材料は、完全に又は部分的に埋め込まれたポリマー、粒子混合物、膜若しくはフィルム、微粒子若しくはビーズ、又はコーティングとして電極材料と相互作用するように提供することができる。アノード単独、カソード単独、又はアノード若しくはカソードの両方は、それぞれの電極に対して同じ又は異なる材料であり得るイオン交換材料と相互作用するように構成することができる。
【0061】
イオン交換材料の処理
いくつかの実施形態では、イオン交換材料は、n量体ベースのコーティング、重合、又は架橋プロセスを使用して製造することができる。n量体は、nが1~数百万の範囲で選択される繰り返し単位を有する組成物を含むことができ、これには、モノマー、オリゴマー(二量体、三量体等)、及び分岐又は非分岐ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。典型的には、n量体は、適切な溶媒を使用して溶液中に保持することができ、又は代替的に若しくは追加的に溶融可能であり得る。n量体は、様々なサイズの粒子(ナノスケールからミリメートルスケールの粒子を含む)、ストリップ、プレート、針、多孔質構造、又はより複雑な構造を含んで電極材料上にコーティングすることができる。熱、UV、架橋剤、又はそれらの組み合わせによる重合は、重合イオン交換材料を生成することができる。いくつかの実施形態では、重合イオン交換材料はさらに架橋されている。いくつかの実施形態では、重合及び架橋ステップは同時に起こる。いくつかの実施形態では、イオン交換のステップを使用して、イオン交換材料を適切な形態(例えば、OH形態)に変換する。イオン交換ステップは、必要なイオンを含む溶液(例えば、KOH溶液)に電池構成要素を浸漬することを含むことができる。イオン交換ステップは、別個のステップとして、又は電池構成要素を電解質に浸漬する間に起こり得る。いくつかの実施形態では、電極粒子又は構造は、n量体でコーティングされ、電池への組み付け又はケーシング内への配置の前に架橋され得るが、他の実施形態では、n量体は、電極粒子又は構造が電池内に配置された後、コレクタ上に配置された後、又はケーシング、格納シェル若しくは格納領域内に保持された後に添加及び架橋され得る。一実施形態では、n量体材料は、電極材料又は電極に形成された複数の粒子をn量体溶液の浴に浸漬することによって塗布することができる。他の実施形態では、n量体材料は、噴霧、滴下、印刷、溶融、又は他の方法で電極材料に接触するように向けることができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、イオン交換材料を形成するための適切なn量体は、イオノゲン官能基、重合のための官能基、及び/又は架橋のための官能基を含む一連の官能基を有することができる。イオノゲン官能基は、塩基性形態又は塩形態の第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基の1つ又は複数、酸性形態又は塩形態のカルボキシ基、又は酸性形態若しくは塩形態のスルホ基を含むことができる。
【0063】
重合のための官能基及び架橋のための官能基は、以下のリストから独立して選択することができる。
【0064】
ハロゲン(-Cl、-Br又は-I)
【0065】
カルボキシ基(-COOH)
【0066】
アミン(-NH2,-NH-)
【0067】
アルコール(-OH)
【0068】
チオ(-SH)
【0069】
-N=C=O
【0070】
-N=C=S
【0071】
-C=CH2
【0072】
-C=CH-CH3
【0073】
-C≡CH
【0074】
-C≡C-CH3
【0075】
-CH=O
【0076】
-NH-NH2
【0077】
-N=N+=N-
【0078】
エポキシド
【0079】
一実施形態において、重合及び/又は架橋は、n量体とは異なる構造を有する架橋剤分子を使用する添加によって促進され得る。架橋剤分子は、n量体分子又は重合n量体分子の間に分子架橋を生成する。架橋剤分子は、上記の表からの少なくとも1つの官能基を有し得る。架橋剤分子対n量体のモル比は、0.5%~50%の範囲であり得る。例えば、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド(VBTMA-Cl)などのn量体の場合、架橋は、2つの官能基-C=CH2を有するジビニルベンゼン(DVB)を使用して行うことができる。別の例として、官能基-CH=Oを有するホルムアルデヒド(CH2O)の添加を使用して、n量体を含有する-OH(特に、フェノール)を重合することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、イオン交換材料を形成するのに適したn量体は、
(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム化合物、
[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム化合物、
[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム化合物、
[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム化合物、
(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム化合物、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸化合物、3-スルホプロピルアクリレート化合物、3-スルホプロピルメタクリレート化合物、ジアリルジメチルアンモニウム化合物、ビニルベンゼンスルホネート化合物、又はN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド化合物を含むことができる。
【0081】
電解質
電解質は、電極間の高いイオン伝導性を維持するために使用される。電解質は、水性系、溶媒系、固体ポリマー、又はイオン液体であり得る。いくつかの実施形態では、電解質は半固体又はゲル化することができる。ゲル化剤は、電解質溶液の液体を吸収して膨潤するポリマーを含むことができる。そのようなポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、及びポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はポリアクリレートを含むことができる。
【0082】
別の実施形態では、電解質は固体電解質であり得る。別の実施形態では、電解質は、吸収された水を有する固体材料として形成することができる。例えば、KOHは湿った空気に曝される。
【0083】
別の実施形態では、電解質は、「イオン交換材料」の項で上述したようなイオン交換材料から形成することができる。
【0084】
一実施形態では、水性アルカリ電解質を使用することができる。アルカリ電解質は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどのアルカリを含むことができ、又は臭化亜鉛などの無機塩を含むことができる。
【0085】
セパレータ
セパレータは、イオン交換膜又はフィルムと置き換えられてもよい(又は併用されてもよい)。従来の多孔質ポリマーセパレータ又はイオン交換セパレータは、ポリマー膜又はフィルムとして提供され得る。典型的には、セパレータは、アノードとカソードとの間に配置され、アノード及びカソードが内部電気的短絡を有するのを防止するように作用する。さらに、セパレータは、特に異なるカソード及びアノード電解質溶液を使用する電池システムに対して、電解質を保持するように作用することもできる。いくつかの実施形態では、セパレータは、多孔質構造、又は電解液に対して化学的に安定でありながらイオンを通過させることができるいくつかの穿孔を有する構造を有する。いくつかの実施形態では、セパレータは非多孔質であり、固体電解質材料、固体若しくはゲルポリマー電解質又はイオン交換材料の層を含む。いくつかの実施形態では、セパレータは、電極に接着し、圧力、温度、又は圧力と温度の組み合わせの印加中に電極を互いに結合することができる。いくつかの実施形態では、電極又は電極を集合的に形成する粒子をコーティングすることによって、1つ又は複数のセパレータを形成することができる。セパレータは、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン、樹脂、ポリアミドからなる微細孔構造を有する不織布や膜から形成することができる。あるいは、セパレータは、それぞれ複数の孔を有する金属酸化物と組み合わされた金属酸化物膜又は樹脂膜から構成されていてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、電池内の電極は、電極表面の完全な被覆を提供し、かつセパレータを介さずに互いに直接接触して配置された場合でもアノードとカソードとの間の電気的接触を回避するのに十分な厚さのイオン交換材料で覆われる。これらの実施形態では、電池は、別個の構成要素としてセパレータを有さない。
【0087】
処理
一実施形態では、様々なアノード及びカソード材料、並びに添加剤及び結合剤が乾燥しながら混合される乾式混合プロセスを実施することができる。混合物を電池ケーシング内に配置する前に、イオン交換材料の加熱、融合、圧縮、及び溶融などの任意選択の処理ステップを行うことができる。他の実施形態では、混合物を電池ケーシング内に配置した後に、イオン交換材料の加熱、融合、圧縮、及び溶融などの任意選択の処理ステップを行うことができる。電池ケーシングを密封する前に、液体電解質を添加することができる。
【0088】
他の実施形態によれば、代わりに湿式混合プロセスを利用することができる。湿式混合プロセスでは、1つ又は複数の溶媒が混合プロセスの開始時又は混合プロセス中に添加されるか、あるいは、1つ又は複数の成分が分散液又は懸濁液の形態で使用され得る。溶媒は、その後、混合プロセスの後又は製造プロセスの後の状態で除去することができる。
【0089】
他の実施形態では、様々な個々の構成要素は、異なる方法を使用して作製されてもよい。例えば、電極の一部は乾式混合プロセスを使用して製造することができ、電極の一部は湿式プロセスを使用して製造することができる。さらに別の実施形態によれば、異なる構成要素のための乾式及び湿式プロセスの両方を組み合わせることが可能である。
【0090】
他の実施形態では、電極は、乾式混合プロセスを使用して製造され、湿式プロセスを使用してn量体系イオン交換材料でコーティングすることができる。他の実施形態では、混合物を電池ケーシング内に配置した後に、イオン交換材料の架橋、加熱、融合、圧縮、及び溶融などの処理ステップを実行することができる。
【0091】
電池及びセル設計
電池セルは、いくつかの異なる形状及びサイズのいずれかを有することができる。例えば、コイン、角柱、パウチ又は円筒形セルを使用することができる。本発明の円筒形セルは、従来のAAAセル、AAセル、Aセル、C又はD又は18650又は26650又は21700セルの直径及び長さを有することができる。いくつかの用途では、カスタムセル設計を使用することができる。例えば、角柱セル設計は、ポータブル又は車両用途、並びに様々な非ポータブル用途に使用される様々なより大きな形態のセルに使用することができる。電池パックは、特定の工具又は用途のために特別に設計することができる。電池パックは、電気機器における信頼性の高い充電及び放電を可能にするために、1つ又は複数の電池セル並びに適切なケーシング、接点、及び導電ラインを含むことができる。
【0092】
図2A~
図2Cは、電極と、電極の少なくとも一部との相互貫入界面を画定するように配置されたイオン交換材料とを含む充電式電池セル200、210、220の一部を示す。密接に接触する相互貫入界面を提供することは、電極をイオン交換材料内に完全に又は部分的に埋め込むこと、あるいは電極又は電極の不連続部分をイオン交換材料の薄膜で囲むことを含むことができる。一実施形態では、電極は、イオン交換材料に完全に又は部分的に埋め込まれているか、イオン交換材料でコーティングされているか、又はイオン材料に部分的に接触している粒子であり得る。一実施形態では、コーティング電極は、架橋してイオン交換材料を形成することができるn量体で電極をコーティングすることを含むn量体ベースの処理を使用して達成することができる。
【0093】
図2Aは、複数の電気化学的に活性な粒子206の少なくともいくつかと接触するコレクタ202を含む充電式電池セル200を示す。粒子206の別の組も接触し、イオン交換膜204に部分的に埋め込まれている。このイオン交換膜は、粒子206を部分的に溶融、融合、積層、又は圧着することによって配置することができる。粒子細孔空間を充填し、イオン交換膜204と接触するために、電解質(図示せず)を設けることもできる。
【0094】
図2Bは、コレクタ212を含む充電式電池セル210を示す。粒子216の各々は、イオン交換膜214に接触し、囲まれている。このイオン交換膜は、粒子を充電式電池セルに組み込む前に、粒子216へのコーティング付着によって配置することができる。粒子細孔空間を充填し、イオン交換膜214と接触するために、電解質(図示せず)を設けることもできる。
【0095】
図2Cは、複数の電気化学的に活性な粒子226の少なくともいくつかと接触するコレクタ222を含む充電式電池セル220を示す。粒子226の別の組も接触し、イオン交換膜224に完全に埋め込まれている。このイオン交換膜は、粒子226への溶融又は融着によって配置することができる。イオン交換膜214に接触するよう電解質(図示せず)を設けることもできる。
【0096】
例1
この例は、積層によって表面の電極に埋め込まれたアニオン交換膜を有するアルカリ充電式電池用のZnO系アノードの製造を説明する。以下のペースト組成物をアノード調製に使用した。ZnO(94w.%)、カーボンナノチューブ(1w.%)、PTFE(5w.%)。この組成物を用いて、27w.%の水を有する粘性ペーストを調製した。ペーストを広げて厚さ約0.6mmまでの均一なフィルムを形成した。フィルムを黄銅金網電流コレクタ上に適用した。電流コレクタに適用したアノードフィルムを70℃で一晩真空乾燥した後、カレンダーローラープレスを用いて圧縮した。その後、電流コレクタ上のフィルムから37mm×25mmの電極を切り出し、電極にニッケルストリップタブを取り付けた。SKY-325R6積層機を用い、140℃、速度設定2で両面にアニオン交換膜を積層した。
【0097】
例2
この例は、表面上の電極に埋め込まれたアニオン交換膜を有するZnO系アノードを有する充電式アルカリ性ニッケル-亜鉛セルの製造を説明する。セルのアノードを、上記の例1に記載したように調製した。市販の焼結ニッケル電極をカソードとして使用した。カソードサイズは40mm×27mm、容量は27mAh/cm2であった。ニッケルストリップを各カソードに溶接して電極タブを形成した。各カソードを紙セパレータで密封した。アノードを、電極スタックを形成する両側のカソードの間に挟んだ。電極スタックを、電極タブがパウチから突き出るように、圧力逃がし弁が取り付けられたポリプロピレンパウチの内部に配置した。2mlの電解質(20%のKOH水溶液)をセルに添加した。その後、ヒートシーラーを用いてセルを密封した。
【0098】
セルを4時間浸漬したままにし、次いで充電し、続いて以下の試験プロトコルを用いて充放電サイクルに供した。162mAで1.95Vまでの定電流充電、引き続いて173mAhの総容量までの定電圧充電、1.2V又は173mAhまでの定電流放電。試験は室温で行った。サイクル数の関数としてのNi-Znセルの放電容量は、グラフ300として
図3に示されている。
【0099】
例3
この例は、積層によって表面の電極に埋め込まれたアニオン交換膜を有するアルカリ充電式電池用のZn金属系アノードの製造を説明する。以下のペースト組成物をアノード調製に使用した。Zn(79w.%)、ZnO(14.5%)、Bi2O3(0.5%)、PTFE(5.8w.%)、CMC(0.2%)。この組成物を用いて、12w.%の水を有する粘性ペーストを調製した。ペーストを広げて厚さ約0.6mmまでの均一なフィルムを形成した。フィルムを黄銅金網電流コレクタ上に適用した。電流コレクタに適用したアノードフィルムを70℃で一晩真空乾燥した後、カレンダーローラープレスを用いて圧縮した。その後、電流コレクタ上のフィルムから37mm×25mmの電極を切り出し、電極にニッケルストリップタブを取り付けた。SKY-325R6積層機を用い、140℃、速度設定2で両面にアニオン交換膜を積層した。
【0100】
ポット及びポリッシュ技術を使用して、形成されたアノードから断面サンプルを調製した。断面SEM画像及びEDX分析の結果を
図4~
図6に示す。
【0101】
図4は、アニオン交換膜を両面に積層したZn電極の断面SEM像を示す。真鍮メッシュ電流コレクタ403が埋め込まれた電気化学的活性層402の両面に、アニオン交換膜401を含むアノード400が積層されている。電気化学的活性層は、Zn金属粒子404からなり、添加剤としてのZnO、Bi
2O
3及び結合剤としてのPTFEと混合される。
【0102】
図5は、アニオン交換膜を両面に積層したZn電極のSEM画像500(断面)を示す。画像は、膜アニオン交換材料501(
図4の膜アニオン交換材料401に対応)と電極電気化学的活性質量502(
図4の電気化学的活性層402に対応)との間の密接な接触の拡大図を示す。
【0103】
図6Aは、SEM画像(画像600A及びEDX元素断面走査線602A)を示す。
図6Bは、アノードにおけるアニオン交換膜601A(
図4の膜アニオン交換材料401に対応)とZn粒子604(
図4のZn粒子404に対応)との間の密接な界面をグラフで示す、関連するEDX元素断面スキャン(
図600Aの走査線602Aに沿って取った図)を示すグラフ602Bである。元素分布は、Zn(Zn粒子)並びにC、O及びBr(アニオン交換膜成分)についての重複シグナルを示した。
【0104】
図7は、電極をイオン交換材料でコーティングするためのn量体ベースの処理のためのプロセス700の一実施形態を示す。プロセスステップは、電池ケーシング調製702を含む。一実施形態では、ステップ702は、粉末、顆粒、ペレット、又はナノ材料などの様々な形態で提供される粒子から形成された電極材料をケーシングに配置することを含む。ステップ704において、官能化n量体を噴霧するか、その他の方法を使用して粒子をコーティングする。ステップ706において、n量体は、熱、UV又は架橋剤を使用して重合され、電極を完全に又は部分的に被覆するイオン交換材料を形成する。ステップ707において、重合n量体はさらに架橋される。ステップ706及び707は、同時に又は順次行われてもよい。いくつかの実施形態では、イオン交換材料は、電極の少なくとも一部との相互貫入界面を画定するように配置される。密接に接触する相互貫入界面を提供することは、電極をイオン交換材料に完全に又は部分的に埋め込むことを含むことができる。一実施形態では、電極は、イオン交換材料に完全に又は部分的に埋め込まれているか、イオン交換材料でコーティングされているか、又はイオン材料に部分的に接触している粒子であり得る。別の実施形態では、電極粒子は、イオン交換材料と混合され得るか、その他の方法で混合され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、層ごとの構築を可能にするために、同じ電極材料を用いてステップ704から706を繰り返すことができる。他の実施形態では、異なる電極材料を同じ又は異なるn量体材料と共に使用して、例えば、第1のタイプのイオン交換材料コーティングを有するカソード及び第2のタイプのイオン交換コーティングを有するアノードを提供することができ、カソードとアノードの両方が電池ケーシング内に配置される。最終ステップ708において、電池は、任意の必要な電気的相互接続を提供し、ケーシングを封止することによって調製することができる。
【0106】
図8は、電極をイオン交換材料でコーティングするためのn量体ベースの処理のためのプロセス800の一実施形態を示す。プロセスステップは、電極のコーティング802を含む。ステップ804において、官能化n量体が電極上にコーティングされる。ステップ804は、押出、スロットダイコーティング又はドクターブレードコーティングを使用して、電極と同じコーティングラインで行うことができる。いくつかの実施形態では、ステップ804は、コーティングされた電極をn量体溶液又は溶融物の浴に浸漬することによるバッチプロセスとして行うことができる。ステップ806において、電極上にコーティングされたn量体は、熱、UV又は架橋剤を使用して重合され、電極を完全に又は部分的に被覆するイオン交換材料を形成する。ステップ807において、重合n量体はさらに架橋される。ステップ806及び807は、同時に又は順次行われてもよい。いくつかの実施形態では、イオン交換材料は、電極の少なくとも一部との相互貫入界面を画定するように配置される。密接に接触する相互貫入界面を提供することは、電極をイオン交換材料に完全に又は部分的に埋め込むことを含むことができる。一実施形態では、電極は、イオン交換材料に完全に又は部分的に埋め込まれているか、イオン交換材料でコーティングされているか、又はイオン材料に部分的に接触している粒子であり得る。別の実施形態では、電極粒子は、イオン交換材料と混合され得るか、その他の方法で混合され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、層ごとの構築を可能にするために、同じ電極材料を用いてステップ804から806を繰り返すことができる。他の実施形態では、異なる電極材料を同じ又は異なるn量体材料と共に使用して、例えば、第1のタイプのイオン交換材料コーティングを有するカソード及び第2のタイプのイオン交換コーティングを有するアノードを提供することができる。最終ステップ808において、アノード、カソード及びセパレータを積層、巻回又は折り畳み、電池に電解質を充填し、任意の必要な電気的相互接続を提供し、ケーシングを封止することによって電池を組み立てることができる。
【0108】
例4
この例は、アルカリ電解質に浸漬している間に熱処理、続いてアニオン交換反応によって重合された、アニオン交換n量体が電極に埋め込まれた、アルカリ充電式電池用のZn系アノードのn量体系コーティングを記載する。
【0109】
以下のペースト組成物をアノード調製に使用した。Zn(79.6w.%)、ZnO(14.6w.%)、Bi2O3(0.5w.%)、PTFE(5.1w.%)、CMC(0.2w.%)。この組成物を用いて、10w.%の水を有する粘性ペーストを調製した。ペーストを広げて厚さ約0.6mmまでの均一なフィルムを形成した。フィルムを黄銅金網電流コレクタ上に適用した。電流コレクタに適用したアノードフィルムを70℃で一晩真空乾燥した後、カレンダーローラープレスを用いて圧縮した。その後、電流コレクタ上のフィルムから37mm×25mmの電極を切り出し、電極にニッケルストリップタブを取り付けた。
【0110】
電極をイソプロパノール(IPA)中の(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド(VBTMA-Cl)の25w.%溶液で浸漬コーティングした。電極を室温で空気中で乾燥させた。次いで、電極を真空中160℃で4時間熱処理した。熱処理は、VBTMA-Clの重合及びIPA又は水に可溶性でないポリ-(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドの形成をもたらす。電極をSKY-325R6積層機に140℃で速度設定4を使用して通し、ポリマーで覆われた電極表面を平滑化した。
【0111】
VBTMA-Clで処理したZn電極を使用して、対極としてNiOOH及び50%充電状態のNiOOH/Ni(OH)2参照電極を有する3つの電極電気化学セルを組み立てた。細胞を20%のKOH水溶液で満たし、24時間浸漬したままにした。
【0112】
処理中、VBTMA化合物による化学変換には、熱処理中の重合、KOH溶液への浸漬中のイオン交換が含まれる。
【化1】
Cl-アニオンはOH-アニオンで置換される。全体的なプロセスは、アニオン交換ポリマー被覆電極粒子の形成につながる。ポリマーはイオン伝導性であり、OH-イオンを電極に輸送することができる。
【0113】
セルの定格容量をZn電極の理論容量と定義した。セルを試験前に24時間浸漬したままにし、次いで理論Zn容量の30%までC/4レートで放電し、続いて以下の試験プロトコルを用いて充放電サイクルに供した。1.8VまでのC/4電流レートでの定電流充電、引き続いて1mA電流カットオフでの理論Zn容量の30%までの定電圧充電、C/4レートで1.2V又は173mAhまでの定電流放電。試験は室温で行った。サイクル数の関数としてのセルの放電電圧対容量曲線が
図9に示されており、これは最初の50サイクルのチャートa)を含む。
図9のグラフb)は、最初の50サイクルにおける充電中のZn電極対基準電極の電圧を示す。
図9のチャートc)及びチャートd)は、それぞれ最初の50サイクルにおけるセルの容量保持率及びクーロン効率を示す。
【0114】
実際に、VBTMA化合物で処理した電極は、理論容量の30%の比較的高い利用レベルで良好なサイクル安定性及び高いクーロン効率を示す。
【0115】
例5
この例は、積層によって表面の電極に埋め込まれたアニオン交換膜を有するアルカリ充電式電池用のZnO系アノードの製造を説明する。以下のペースト組成物をアノード調製に使用した。ZnO(89.4w.%)、カーボンナノチューブ(1w.%)、PTFE(4.8w.%)、CMC(0.2%)、KOH(4.8%)。この組成物を用いて、21w.%の水を有する粘性ペーストを調製した。ペーストを広げて厚さ300μmの均一なフィルムを形成した。フィルムを黄銅金網電流コレクタ上に適用した。電流コレクタに適用したアノードフィルムを70℃で一晩真空乾燥した後、カレンダーローラープレスを用いて圧縮した。その後、電流コレクタ上のフィルムから37mm×25mmの電極を切り出し、電極にニッケルストリップタブを取り付けた。上記のようにして作製した電極を、160℃で150秒間、続いて10℃で150秒間の設定の高温低温積層プレスを用いて両面にアニオン交換膜を積層した。
【0116】
例6
この例は、表面上の電極に埋め込まれたアニオン交換膜を有するZnO系アノードを有する充電式アルカリ性ニッケル-亜鉛セルの製造を説明する。セルのアノードを、上記の例Aに記載したように調製した。市販の焼結ニッケル電極をカソードとして使用した。カソードサイズは40mm×27mm、容量は27mAh/cm2であった。ニッケルストリップを各カソードに溶接して電極タブを形成した。各カソードを紙セパレータで密封した。アノードを、カソードの1つと対にして電極スタックを形成した。電極スタックを、電極タブがパウチから突き出るように、ポリプロピレンパウチの内部に配置した。1.5mlの電解質(20%のKOH水溶液)をセルに添加した。その後、ヒートシーラーを用いてセルを密封した。
【0117】
セルを24時間浸漬したままにし、次いで充電し、続いて以下の試験プロトコルを用いて充放電サイクルに供した。162mAで1.95Vまでの定電流充電、引き続いて173mAhの総容量までの定電圧充電、1.2V又は173mAhまでの定電流放電。試験は室温で行った。サイクル数の関数として、Ni-Znセルについてのこの試験(エネルギー保持)中にセルによって実証された最大放電エネルギーの百分率としての放電エネルギーが、
図10のグラフ1000に示されている。さらに、
図11の関連するグラフ1100は、容量の関数としてのNiZnセルの電圧を示すグラフである(上の横軸は理論アノード容量の%として表され、下の横軸は面積容量として表される)。
例7
この例は、MnO
2系カソード及びZn金属系アノードを有するアルカリ電池を説明する。カソードサイズは40mm×27mm、アノードサイズは37mm×25mmであった。この例のアノード及びカソードの両方を、160℃で150秒間、続いて10℃で150秒間の設定の高温低温積層プレスを使用して膜の形態のアニオン交換材料で覆った。電極間にポリプロピレン製不織布セパレータを挟んで、カソードとアノードとを積層した。電極スタックを、電極タブがパウチから突き出るように、ポリプロピレンパウチの内部に配置した。1.5mlの電解質(20%のKOH水溶液)をセルに添加した。その後、ヒートシーラーを用いてセルを密封した。
【0118】
セルの定格容量をカソードの理論容量(617mAh/g MnO
2)と定義した。セルを2時間浸漬したままにし、以下の試験プロトコルを用いて充放電サイクルに供した。C/5で0.3V又は定格容量の20%までの定電流放電、続いてC/5で定格容量の1.8Vの24%までの定電流/定電圧充電、及びC/25での電流カットオフ。試験は室温で行った。サイクル数の関数として、MnO
2-Znセルについてのこの試験(エネルギー保持)中にセルによって実証された最大放電エネルギーの百分率としての放電エネルギーが、
図12のグラフ1200に示されている。さらに、
図13の関連するグラフ1300は、MnO
2-Znセルの電圧を容量の関数として示す(理論カソード容量の%として表される)。
【0119】
前述の説明では、その一部を形成し、本開示を実施することができる特定の例示的な実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本明細書に開示された概念を実施することを可能にするために十分に詳細に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な開示された実施形態に修正を加えることができ、他の実施形態を利用することができることを理解されたい。したがって、前述の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0120】
本明細書を通じて、「一実施形態」、「実施形態」、「一例」、又は「例」への言及は、実施形態又は例に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な箇所における「一実施形態では」、「実施形態で」、「一例」又は「例」という表現の出現は、すべて同じ実施形態又は例を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、データベース、又は特性は、1つ又は複数の実施形態又は例において任意の適切な組み合わせ及び/又は部分的な組み合わせで組み合わせることができる。さらに、本明細書で提供される図面は、当業者への説明目的のためのものであり、図面は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。
【0121】
前述の説明及び関連する図面に提示された教示の利益を有する当業者は、本発明の多くの修正及び他の実施形態を想起するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正及び実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることが理解される。本発明の他の実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない要素/ステップの不在下で実施され得ることも理解される。
【国際調査報告】