(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】ゲポチダシンの結晶形態
(51)【国際特許分類】
C07D 519/00 20060101AFI20230605BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20230605BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230605BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230605BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61K31/4985
A61P31/04
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565755
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2021060983
(87)【国際公開番号】W WO2021219637
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カウチ,リッキー ウェーン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ヴェンニング
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィソン,センディル
(72)【発明者】
【氏名】ペンドラック,イスラエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムス,グレン ロバート
【テーマコード(参考)】
4C072
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C072MM06
4C072UU01
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC32
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA82
4C086ZB35
(57)【要約】
ゲポチダシンの新規の結晶形態及びそれを含有する医薬組成物が開示される。その調製方法及びその使用方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メシル酸ゲポチダシン無水物、メシル酸ゲポチダシン一水和物、メシル酸ゲポチダシン二水和物及びゲポチダシン無水物からなる群から選択されるゲポチダシンの結晶形態。
【請求項2】
メシル酸ゲポチダシン二水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
Cu K
α線を使用して測定された場合に、約9.0、11.5、13.4、14.3、14.9、15.5、17.6、18.6、及び20.7°2θからなる群から選択される、少なくとも3つ又は少なくとも4つの回折角を含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とするメシル酸ゲポチダシン二水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項4】
図1と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とするメシル酸ゲポチダシン二水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項5】
以下の単位格子パラメーター:
a=6.9255(5)Å、b=15.4500(12)Å、c=25.7918(19)Å、α=β=γ=90°、
V=2759.7(4)Å
3、Z'=1、
空間群P2
12
12
1、
分子/単位格子4、
密度(計算値)1.398g/cm
3、
ここでZ'は非対称単位あたりの分子の数である、
を特徴とするメシル酸ゲポチダシン二水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項6】
メシル酸ゲポチダシン無水物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項7】
Cu K
α線を使用して測定された場合に、約7.1、9.7、12.1、14.2、15.2、17.3、及び20.2°2θからなる群から選択される、少なくとも3つ又は少なくとも4つの回折角を含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とするメシル酸ゲポチダシン無水物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項8】
図2と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とするメシル酸ゲポチダシン無水物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項9】
以下の単位格子パラメーター:
a=12.3921(7)Å、b=7.0262(4)Å、c=14.6536(9)Å、α=γ=90°、
β=95.0077(13)°、V=1271.01(13)Å
3、Z'=1
空間群P2
1、
分子/単位格子2、
密度(計算値)1.423g/cm
3、
ここでZ'は非対称単位あたりの分子の数である、
を特徴とするメシル酸ゲポチダシン無水物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項10】
メシル酸ゲポチダシン一水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項11】
Cu K
α線を使用して測定された場合に、約5.6、7.1、8.8、11.2、13.0、13.7、20.1、21.6、及び23.3°2θからなる群から選択される、少なくとも3つ又は少なくとも4つの回折角を含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とするメシル酸ゲポチダシン一水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項12】
図3と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とするメシル酸ゲポチダシン一水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項13】
Cu K
α線を使用して測定された場合に、約8.8、10.8、11.7、12.8、13.2、14.4、16.3、19.9、20.8、及び25.0°2θからなる群から選択される、少なくとも3つ又は少なくとも4つの回折角を含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とするゲポチダシン無水物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項14】
ゲポチダシン無水物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項15】
図4と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とするゲポチダシン無水物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項16】
以下の単位格子パラメーター:
a=8.44022(16)Å、b=6.42442(12)Å、c=20.2774(5)Å、α=γ=90°、
β=96.778(2)°、V=1091.83(4)Å
3、Z'=1
空間群P2
1、
分子/単位格子2、
密度(計算値)1.364g/cm
3、
ここでZ'は非対称単位あたりの分子の数である、
を特徴とするゲポチダシン無水物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項17】
少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の多形純度を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の結晶形態及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
経口投与用である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
錠剤又はカプセル剤である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
ゲポチダシンを含む医薬組成物を調製する方法であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の結晶形態及び薬学的に許容可能な担体を混合するステップを含む、方法。
【請求項22】
それを必要とするヒトにおける細菌感染症を処置する方法であって、有効量の請求項1から17のいずれか一項に記載の結晶形態を前記ヒトに投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
細菌感染症が単純性尿路感染症又は淋菌による感染症である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
治療における使用のための、請求項1から17のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項25】
単純性尿路感染症又は淋菌による感染症を処置することにおける使用のための、請求項1から17のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項26】
メシル酸ゲポチダシン二水和物を調製する方法であって、水及び有機溶媒の溶媒混合物中でメシル酸ゲポチダシンを結晶化させるステップを含む、方法。
【請求項27】
有機溶媒が2-プロパノールである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
単純性尿路感染症又は淋菌による感染症の処置のための医薬の製造における、請求項1から17のいずれか一項に記載の結晶形態の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、アメリカ国防脅威削減局により認可された契約第HDTRA1-07-9-0002のもとで、米国政府の援助によりなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有しうる。
【背景技術】
【0002】
(2R)-2-({4-[(3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[2,3-c]ピリジン-6-イルメチル)アミノ]-1-ピペリジニル}メチル)-1,2-ジヒドロ-3H,8H-2a,5,8a-トリアザアセナフチレン-3,8-ジオン(以下では「ゲポチダシン」)は、独自の機構により細菌DNAジャイレース及びトポイソメラーゼIVを選択的に阻害し、これは現在承認されているヒト治療薬剤では活用されていない。
【0003】
国際特許出願公開WO2008/128942は、ゲポチダシンを含む、抗菌剤として使用可能な一連の化合物について記載する。ゲポチダシンのモノHCl塩が、その全体にわたって参照により本明細書に組み込まれるWO2008/128942の実施例39において調製された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本出願はゲポチダシンの新規の結晶形態に関する。ゲポチダシンは式(I)の構造を有する。
【0006】
【0007】
本発明は、ゲポチダシンの結晶形態、例えばメシル酸ゲポチダシン無水物、メシル酸ゲポチダシン一水和物、メシル酸ゲポチダシン二水和物、ゲポチダシン無水物、又はそれらの組合せを提供する。本発明は、ゲポチダシンの結晶形態を作製する方法、ゲポチダシンの結晶形態を含む医薬組成物、及びゲポチダシンの結晶形態を使用して細菌感染症を処置する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のX線粉末回折パターンを示す図である。
【
図2】メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のラマンスペクトルを示す図である。
【
図3】メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)の示差走査熱量測定トレースを示す図である。
【
図4】メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)の熱重量分析トレースを示す図である。
【
図5】メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)のX線粉末回折パターンを示す図である。
【
図6】メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)のラマンスペクトルを示す図である。
【
図7】メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)の示差走査熱量測定トレースを示す図である。
【
図8】メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)の熱重量分析トレースを示す図である。
【
図9】メシル酸ゲポチダシン一水和物(形態3)のX線粉末回折パターンを示す図である。
【
図10】メシル酸ゲポチダシン一水和物(形態3)のラマンスペクトルを示す図である。
【
図11】メシル酸ゲポチダシン一水和物(形態3)の示差走査熱量測定トレースを示す図である。
【
図12】メシル酸ゲポチダシン一水和物(形態3)の熱重量分析トレースを示す図である。
【
図13】ゲポチダシン無水物のX線粉末回折パターンを示す図である。
【
図14】ゲポチダシン無水物のラマンスペクトルを示す図である。
【
図15】ゲポチダシン無水物の示差走査熱量測定トレースを示す図である。
【
図16】ゲポチダシン無水物の熱重量分析トレースを示す図である。
【
図17】メシル酸ゲポチダシン二水和物について、計算値対実験値XRPDパターンを比較する図である(上、実験値;下、計算値)。
【
図18】メシル酸ゲポチダシン無水物について、計算値対実験値XRPDパターンを比較する図である(上、実験値;下、計算値)。
【
図19】ゲポチダシン無水物について、計算値対実験値XRPDパターンを比較する図である(上、実験値;下、計算値)。
【
図20】メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のX線粉末回折パターンを示す図である。
【
図21】メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)のX線粉末回折パターンを示す図である。
【
図22】メシル酸ゲポチダシン一水和物(形態3)のX線粉末回折パターンを示す図である。
【
図23】ゲポチダシン無水物のX線粉末回折パターンを示す図である。
【
図24】20~25℃及び61℃それぞれでの、各種形態のゲポチダシンについての水含有量境界を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願はゲポチダシンの新規の結晶形態を対象としている。メシル酸ゲポチダシン(gepotidacin mesylate)は各種水和物及び溶媒和物を形成する強い傾向を示し、大部分は不安定であることが判明した。メシル酸ゲポチダシン二水和物形態に加えて、6つのさらなる水和物が特徴づけられた。4つの非溶媒和形態及び多数の溶媒和物が特定された。溶媒和物(ジメチルホルムアミド、トリフルオロエタノール、クロロベンゼン、ニトロメタン)及び溶媒和物/水和物(アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサン、1-ブタノール、イソプロピルアルコール)を含む、少なくとも39形態のメシル酸ゲポチダシンが合計で観察された。
【0010】
結晶メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)は、スクリーニングから観察される主要な形態であり、これが室温で、又は室温付近で最も熱力学的に安定な形態であることが示された。
【0011】
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)
一部の実施形態において、ゲポチダシンの結晶形態はメシル酸ゲポチダシン二水和物である。メシル酸ゲポチダシン二水和物は、以下の構造により表されうる。
【0012】
【0013】
一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約9.0、11.5、13.4、14.3、14.9、15.5、17.6、18.6、及び20.7°2θからなる群から選択される、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つの回折角を含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする。本明細書で使用される場合、用語「約」が数のリスト前にあれば、該用語は列挙される数の各々に適用される。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約13.4、15.5、17.6、及び18.6°2θからなる群から選択される少なくとも3つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約13.4、15.5、17.6、及び18.6°2θの4つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約13.4、17.6、及び18.6°2θの3つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0014】
一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、
図1と実質的に一致するXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、
図20と実質的に一致するXRPDパターンを特徴とする。
【0015】
一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、約1154、1269、1306、1518、1584、1637及び1676cm
-1でのピークからなる群から選択される位置における、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又は少なくとも7つのピークを含むラマンスペクトルを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、
図2と実質的に一致するラマンスペクトルを特徴とする。
【0016】
さらなる実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、
図3と実質的に一致する示差走査熱量測定トレース及び/又は
図4と実質的に一致する熱重量分析トレースを特徴とする。
【0017】
別の実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、以下の単位格子パラメーター:
a=6.9255(5)Å、b=15.4500(12)Å、c=25.7918(19)Å、α=β=γ=90°、
V=2759.7(4)Å3、Z'=1、
空間群P212121、
分子/単位格子4、
密度(計算値)1.398g/cm3、
ここでZ'は非対称単位あたりの分子の数である、
をもたらす単結晶XRDを特徴とする。
【0018】
本出願は、メシル酸ゲポチダシン二水和物を調製する方法であって、水及び有機溶媒の溶媒混合物中でメシル酸ゲポチダシンを結晶化させるステップを含む、方法も提供する。一実施形態において、有機溶媒はアセトンである。一実施形態において、有機溶媒はアルコールである。一実施形態において、有機溶媒はC1~3アルカノールである。一実施形態において、有機溶媒は2-プロパノール(すなわちイソプロパノール)である。
【0019】
一実施形態において、本出願は、メシル酸ゲポチダシン二水和物を調製する方法であって、約5%v/vの水(例えば、水5mL及び2-プロパノール95mLの混合物)又は約5.5%v/vの水(例えば、水5.5mL及び2-プロパノール94.5mLの混合物)を含有する2-プロパノール中でメシル酸ゲポチダシンを結晶化させるステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物を調製する方法は、商業規模(例えば、1kg、5kg、又は10kg超)で実施される。
【0020】
メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)
一部の実施形態において、ゲポチダシンの結晶形態はメシル酸ゲポチダシン無水物である。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約7.1、9.7、12.1、14.2、15.2、17.3、及び20.2からなる群から選択される、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又は少なくとも7つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約7.1、9.7、15.2、及び17.3からなる群から選択される少なくとも3つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約7.1、9.7、15.2、及び17.3の4つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約9.7、15.2、及び17.3の3つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0021】
一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、
図5と実質的に一致するXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、
図21と実質的に一致するXRPDパターンを特徴とする。
【0022】
一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、約1105、1260、1280、1297、1517、及び1642cm
-1でのピークからなる群から選択される位置における、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は少なくとも6つのピークを含むラマンスペクトルを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、
図6と実質的に一致するラマンスペクトルを特徴とする。
【0023】
さらなる実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、
図7と実質的に一致する示差走査熱量測定トレース及び/又は
図8と実質的に一致する熱重量分析トレースを特徴とする。
【0024】
別の実施形態において、メシル酸ゲポチダシン無水物は、以下の単位格子パラメーター:
a=12.3921(7)Å、b=7.0262(4)Å、c=14.6536(9)Å、α=γ=90°、
β=95.0077(13)°、V=1271.01(13)Å3、Z'=1、
空間群P21、
分子/単位格子2、
密度(計算値)1.423g/cm3、
ここでZ'は非対称単位あたりの分子の数である、
をもたらす単結晶XRDを特徴とする。
【0025】
メシル酸ゲポチダシン一水和物(形態3)
一部の実施形態において、ゲポチダシンの結晶形態はメシル酸ゲポチダシン一水和物である。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン一水和物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約5.6、7.1、8.8、11.2、13.0、13.7、20.1、21.6、及び23.3からなる群から選択される、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン一水和物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約8.8、11.2、20.1、及び23.3からなる群から選択される少なくとも3つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン一水和物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約8.8、11.2、20.1、及び23.3の4つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン一水和物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約8.8、11.2、及び20.1の3つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0026】
一実施形態において、結晶メシル酸ゲポチダシン一水和物は、
図9と実質的に一致するXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、結晶メシル酸ゲポチダシン一水和物は、
図22と実質的に一致するXRPDパターンを特徴とする。
【0027】
一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン一水和物は、約1148、1272、1292、1516、及び1649cm
-1でのピークからなる群から選択される位置における、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つのピークを含むラマンスペクトルを特徴とする。一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン一水和物は、
図10と実質的に一致するラマンスペクトルを特徴とする。
【0028】
さらなる実施形態において、メシル酸ゲポチダシン一水和物は、
図11と実質的に一致する示差走査熱量測定トレース及び/又は
図12と実質的に一致する熱重量分析トレースを特徴とする。
【0029】
ゲポチダシン無水物
一部の実施形態において、ゲポチダシンの結晶形態はゲポチダシン無水物(すなわち遊離塩基)である。一実施形態において、ゲポチダシン無水物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約8.8、10.8、11.7、12.8、13.2、14.4、16.3、19.9、20.8、及び25.0からなる群から選択される、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は少なくとも9つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、ゲポチダシン無水物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約8.8、13.2、14.4、及び20.8からなる群から選択される少なくとも3つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、ゲポチダシン無水物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約8.8、13.2、14.4、及び20.8の4つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、ゲポチダシン無水物は、Cu Kα線を使用して測定された場合に、約8.8、13.2、及び14.4の3つの回折角を含むXRPDパターンを特徴とする。
【0030】
一実施形態において、ゲポチダシン無水物は、
図13と実質的に一致するXRPDパターンを特徴とする。一実施形態において、ゲポチダシン無水物は、
図23と実質的に一致するXRPDパターンを特徴とする。
【0031】
一実施形態において、ゲポチダシン無水物は、約1099、1143、1289、1344、1476、1516、1612、及び1687cm
-1でのピークからなる群から選択される位置における、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、又は少なくとも8つのピークを含むラマンスペクトルを特徴とする。一実施形態において、ゲポチダシン無水物は、
図14と実質的に一致するラマンスペクトルを特徴とする。
【0032】
さらなる実施形態において、ゲポチダシン無水物は、
図15と実質的に一致する示差走査熱量測定トレース及び/又は
図16と実質的に一致する熱重量分析トレースを特徴とする。
【0033】
別の実施形態において、ゲポチダシン無水物は、以下の単位格子パラメーター:a=8.44022(16)Å、b=6.42442(12)Å、c=20.2774(5)Å、α=γ=90°、β=96.778(2)°、V=1091.83(4)Å3、Z'=1、
空間群P21、
薬物分子/単位格子2、
密度(計算値)1.364g/cm3、
ここでZ'は非対称単位あたりの薬物分子の数である、
をもたらす単結晶XRDを特徴とする。
【0034】
なおさらなる実施形態において、当業者が理解するように、具体的なゲポチダシン多形は、前述の実施形態を特徴づける分析データの2つ以上のセットの任意の組合せを特徴とする。例えば、一実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、
図1又は
図20と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターン、
図2と実質的に一致するラマンスペクトル、
図3と実質的に一致する示差走査熱量測定トレース、及び
図4と実質的に一致する熱重量分析トレースを特徴とする。
【0035】
別の実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、
図1と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターン及び
図2と実質的に一致するラマンスペクトルを特徴とする。別の実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、
図1と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターン及び
図3と実質的に一致する示差走査熱量測定トレースを特徴とする。別の実施形態において、メシル酸ゲポチダシン二水和物は、
図1と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターン及び
図4と実質的に一致する熱重量分析トレースを特徴とする。
【0036】
一実施形態において、本出願は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の多形純度を有する、本明細書で開示されるゲポチダシンの結晶形態を提供する。一実施形態において、本出願は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の多形純度を有するメシル酸ゲポチダシン二水和物を提供する。別の実施形態において、本出願は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の多形純度を有するゲポチダシン無水物を提供する。本明細書で使用される場合、用語「多形純度」は、特定の形態の、その形態及びゲポチダシンの他の形態を含有する試料中の重量パーセンテージを指す。多形純度は、当技術分野で既知の方法、例えばXRPDにより測定可能である。
【0037】
XRPDパターンが指定された値の±0.2°2θ以内の回折角を含んでいる場合、XRPDパターンは、本明細書で指定された「約」値の回折角(°2θで表される)を含むと理解されるはずである。さらに、X線粉末回折(XRPD)パターンを得るのに関与する、利用される器具、湿度、温度、粉末結晶の方位、及び他のパラメーターが、回折パターンにおける線の出現、強度、及び位置のある程度の変動を引き起こしうることが、当業者に周知であり、理解される。用語「XRPD」は、用語「PXRD」と交換可能に本明細書で使用される。
【0038】
本明細書で提供される
図1、5、9、13、20、21、22、又は23のX線粉末回折パターンと「実質的に一致する」X線粉末回折パターンは、
図1、5、9、13、20、21、22、又は23のXRPDパターンをもたらした化合物と同じ結晶形態を有する化合物を表すと当業者により考えられるXRPDパターンである。すなわち、XRPDパターンは、
図1、5、9、13、20、21、22、若しくは23のXRPDパターンと同一であってもよく、又はそれよりも、ある程度異なっていてもよい。そのようなXRPDパターンは、本明細書で提示される回折パターンのうちのいずれか1つの線の各々を必ずしも示していなくてもよく、及び/又はデータを得るのに関与する条件の差から生じる前記線の出現、強度、若しくは位置の移動のわずかな変化を示してもよい。当業者は、結晶化合物の試料が、本明細書で開示される形態と同じ形態、又は異なる形態を有するかどうかを、それらのXRPDパターンの比較により決定することができる。例えば当業者は、ゲポチダシンを含有する試料のXRPDパターンを
図1と重ね合わせ、当技術分野における専門技術及び知識を使用して、試料のXRPDパターンがメシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のXRPDパターンと実質的に一致するかどうかを容易に決定することができる。XRPDパターンが
図1と実質的に一致する場合、試料形態は形態1と同じ形態を有するものと容易に且つ正確に特定されうる。
【0039】
ラマンスペクトルが指定された値の±5.0cm
-1以内のピークを含んでいれば、ラマンスペクトルは本明細書で指定される「約」値のピーク(cm
-1で表される)を含むと理解されるはずである。さらに、ラマンスペクトルを得るのに関与する、利用される器具、湿度、温度、固体としての又は懸濁液中の粉末結晶の方位、及び他のパラメーターが、スペクトルにおけるピークの出現、強度、及び位置のある程度の変動を引き起こしうることも、当業者に周知であり、理解される。本明細書で提供される
図2、6、10、又は14のラマンスペクトルと「実質的に一致する」ラマンスペクトルは、
図2、6、10、又は14のラマンスペクトルをもたらした化合物と同じ結晶形態を有する化合物を表すと当業者により考えられるラマンスペクトルである。すなわち、ラマンスペクトルは、
図2、6、10、若しくは14のラマンスペクトルと同一であってもよく、又はそれよりも、ある程度異なっていてもよい。そのようなラマンスペクトルは、本明細書で提示されるスペクトルのうちのいずれか1つのピークの各々を必ずしも示していなくてもよく、及び/又はデータを得るのに関与する条件の差から生じる前記ピークの出現、強度、若しくは位置の移動のわずかな変化を示してもよい。当業者は、結晶化合物の試料が、本明細書で開示される形態と同じ形態、又は異なる形態を有するかどうかを、それらのラマンスペクトルの比較により決定することができる。例えば当業者は、メシル酸ゲポチダシンの試料のラマンスペクトルを
図2と重ね合わせ、当技術分野における専門技術及び知識を使用して、試料のラマンスペクトルがメシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のラマンスペクトルと実質的に一致するかどうかを容易に決定することができる。ラマンスペクトルが
図2と実質的に一致する場合、試料形態は形態1と同じ形態を有するものと容易に且つ正確に特定されうる。
【0040】
「本発明の化合物」は、(2R)-2-({4-[(3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[2,3-c]ピリジン-6-イルメチル)アミノ]-1-ピペリジニル}メチル)-1,2-ジヒドロ-3H,8H-2a,5,8a-トリアザアセナフチレン-3,8-ジオン(すなわちゲポチダシン)、並びにメシル酸ゲポチダシン無水物、メシル酸ゲポチダシン一水和物、メシル酸ゲポチダシン二水和物、ゲポチダシン無水物、及びそれらの組合せを含む、その新規の結晶形態を意味する。
【0041】
使用、処置方法、及び医薬組成物
本発明は、それを必要とするヒトにおける細菌感染症を処置する方法であって、有効量の本発明の化合物、又は有効量の本発明の化合物及び任意の薬学的に許容可能な担体を含む組成物をヒトに投与するステップを含む、方法を含む。細菌感染症は、グラム陰性及びグラム陽性生物の両方を含む広範な生物により引き起こされる可能性があり、感染症は、上気道及び/又は下気道感染症、皮膚及び軟部組織感染症、尿路感染症、並びに淋病を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態において、感染症は尿路感染症である。一部の実施形態において、感染症は淋病である。ゲポチダシンを使用することにより細菌感染症を処置する方法は、ともにそれらの全体にわたって参照により本明細書に組み込まれる、WO2008/128942及びWO2016/027249において開示される。
【0042】
一部の実施形態において、感染症は、大腸菌(Escherichia coli)(E. coli)、腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)、又は肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(K. pneumoniae)により引き起こされる尿路感染症である。一部の実施形態において、感染症はE. coliにより引き起こされる尿路感染症である。
【0043】
別の実施形態において、感染症は淋菌(Neisseria gonorrhoeae)により引き起こされる淋病である。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「処置」は、指定される状態を緩和すること、状態の1つ以上の症状を取り除くこと又は低減させること、状態の進行をゆっくりにすること又は取り除くこと、及び以前に罹患した又は診断された患者又は対象における状態の再発を防止すること又は遅らせることを指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、例えば研究者又は臨床医により求められる、組織、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き出す薬物又は薬剤の量を意味する。別途明示されない限り、薬物又は薬剤の量は遊離塩基化合物の量を指し、対応する薬学的に許容可能な塩の量は指さない。
【0046】
本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物も対象としている。本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容可能な担体を混合することを含む、医薬組成物を調製する方法をさらに対象としている。
【0047】
「薬学的に許容可能な担体」は、ヒトに好適に投与された場合有害反応を生じず、原薬(すなわち本発明の化合物)のための媒体として使用される、本発明の化合物の製剤における使用にとって十分な純度及び質の、任意の1つ以上の化合物及び/又は組成物を意味する。担体は、賦形剤、希釈剤、造粒及び/又は分散剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、結合剤、保存料、緩衝剤、滑沢剤、及び天然油を含んでいてもよい。
【0048】
本発明は、本発明の化合物及び1つ以上の薬学的に許容可能な担体を混合することを含む、医薬組成物を作製する方法をさらに含み、そのような方法から生じる組成物を含み、その方法は従来の調剤技法を含む。例えば、本発明の化合物は、製剤化の前にナノ粉砕されてもよい。本発明の化合物は、すりつぶし、微粒子化又は当技術分野で公知の他の粒子サイズ低減方法により調製されてもよい。本発明の医薬組成物は、当業者に公知の技法及び方法を使用して調製されてもよい。当技術分野において一般的に使用される方法の一部は、その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)に記載されている。
【0049】
特に、本発明の化合物、又は本発明において使用される、対応する医薬組成物又は製剤は、他の抗菌剤/抗結核性化合物からの類推により、ヒト又は獣医学における使用のため、任意の便利な方法での投与用に製剤化されてもよい。
【0050】
本発明において使用される医薬組成物は、任意の経路による投与のために製剤化されてよく、経口、局所又は非経口使用に適した形態のものを含み、ヒトを含む哺乳動物において使用されてもよい。
【0051】
組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、トローチ剤、坐剤、クリーム又は液体調製物、例えば経口又は無菌非経口溶液又は懸濁液の形態であってもよい。
【0052】
一実施形態において、本発明の化合物は錠剤又はカプセル剤形態である。一実施形態において、これは錠剤形態である。一実施形態において、錠剤は750mg錠剤である。
【0053】
製剤は、適合する従来の担体、例えばクリーム又は軟膏基剤、及びローション用のエタノール又はオレイルアルコールも含有していてもよい。そのような担体は、製剤の約1%~最大約98%として存在してもよい。より一般的には、これらは製剤の最大約80%を形成する。
【0054】
本発明における経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、単位用量提示形態であってよく、従来の賦形剤、例えば結合剤、例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガント、若しくはポリビニルピロリドン;フィラー、例えばラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール若しくはグリシン;錠剤化滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール若しくはシリカ;崩壊剤、例えばジャガイモデンプン;又は許容可能な湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムを含有していてもよい。錠剤は、通常の薬務において周知の方法に従ってコーティングされてもよい。経口液体調製物は、例えば水性若しくは油性懸濁液、溶液、乳剤、シロップ若しくはエリキシル剤の形態であってもよいか、又は使用前に水若しくは他の好適な媒体により再構成するための乾燥生成物として提示されてもよい。そのような液体調製物は、従来の添加物、例えば懸濁剤、例えばソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は硬化食用脂、乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート、又はアラビアゴム;非水性媒体(食用油を含んでいてもよい)、例えばアーモンド油、油性エステル、例えばグリセリン、プロピレングリコール、又はエチルアルコール;保存料、例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸、及び必要に応じて、従来の香味剤又は着色剤を含有していてもよい。
【0055】
坐剤は、従来の坐剤基剤、例えばココアバター又は他のグリセリドを含有する。
【0056】
非経口投与では、化合物、及び水が好ましい無菌媒体を活用して、流動性単位剤形が調製される。化合物は、使用される媒体及び濃度に応じて、媒体中に懸濁又は溶解されてもよい。溶液の調製において、化合物は注射用水中に溶解され、濾過滅菌された後、好適なバイアル又はアンプルに充填され密封されてもよい。
【0057】
有利には、薬剤、例えば局所麻酔薬、保存料及び緩衝剤は、媒体中に溶解されてもよい。安定性を増強するため、組成物は、バイアルへの充填後に凍結して、真空下で水を除去してもよい。次いで乾燥した凍結乾燥粉末はバイアルに密封され、使用前に液体を再構成するため、添付の注射用水のバイアルが供給されてもよい。非経口懸濁液は、化合物が溶解される代わりに媒体中に懸濁され、滅菌が濾過によって達成されえないことを除いて、実質的に同じように調製される。化合物は、無菌媒体中に懸濁する前のエチレンオキシドへの曝露により滅菌されてもよい。有利には、化合物の均一な分布を促進するため、界面活性剤又は湿潤剤が組成物中に含まれる。
【0058】
さらに、本発明に使用される化合物又は医薬組成物の量は、患者及び投与様式に応じて変動し、任意の有効量であってもよい。
【0059】
組成物は、投与方法に応じて0.1重量%~、好ましくは10~60重量%の活性物質を含有していてもよい。組成物が投与量単位を含む場合、各単位は好ましくは活性成分50~1000mgを含有する。
【0060】
本発明において成人の処置に利用される投与量は、好ましくは、投与の経路及び頻度に応じて1日あたり100~6000mgの範囲、例えば1日あたり1500mgである。そのような投与量は1日あたり約1.5~約80mg/kgに相当する。好適には、投与量は1日あたり5~80mg/kgである。一実施形態において、投与量は1日2回1500mg(すなわち1日あたり3000mg)である。一実施形態において、投与量は1日2回3000mg(すなわち1日あたり6000mg)である。一実施形態において、1日における2回の用量は6~12時間空けて投与される。
【0061】
このように、一実施形態において本発明は、尿路感染症(UTI)を処置する方法であって、それを必要とするヒト対象における治療有効量でゲポチダシン又はその薬学的に許容可能な塩を投与するステップを含み、ゲポチダシン又はその薬学的に許容可能な塩が1日2回1500mg、6~12時間空けて投与される、方法を提供する。
【0062】
特に、本発明の組成物は単位用量として提示され、好ましくは1日1~5回、例えば所望の効果を実現するため1日1回又は2回投与される。一実施形態において、ゲポチダシン又はその薬学的に許容可能な塩は、3、4、5、6又は7日間のいずれかの連続で投与される。一実施形態において、本発明の任意の態様において、ゲポチダシン又はその薬学的に許容可能な塩は5日間連続で投与される。
【0063】
別の実施形態において、本発明は、淋菌による感染症を処置する方法であって、それを必要とするヒト対象における治療有効量でゲポチダシン又はその薬学的に許容可能な塩を投与するステップを含み、ゲポチダシン又はその薬学的に許容可能な塩が各3000mgで2回、6~12時間空けて投与される、方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、淋菌による感染症を処置する方法であって、それを必要とするヒト対象における治療有効量でゲポチダシン又はその薬学的に許容可能な塩を投与するステップを含み、ゲポチダシン又はその薬学的に許容可能な塩が各3000mgで2回、10~12時間空けて投与される、方法を提供する。
【0064】
従来の投与方法が、本発明における使用に好適でありうる。
【0065】
行われる処置に応じて、本発明の化合物、及び/又は組成物は、経口的に、血管内に、腹腔内に、皮下に、筋肉内に又は局所的に投与されてもよい。好ましくは、組成物は経口投与に適している。
【0066】
本発明において使用されるゲポチダシン又は薬学的に許容可能な塩は、本発明の組成物中の唯一の治療薬剤であってもよく、又は他の抗菌剤との組合せであってもよい。他の抗菌剤がβ-ラクタムである場合、β-ラクタマーゼ阻害剤も利用されてもよい。
【0067】
ある特定の実施形態において、本発明は、メシル酸ゲポチダシン無水物、メシル酸ゲポチダシン一水和物、メシル酸ゲポチダシン二水和物、ゲポチダシン無水物、又はそれらの組合せを含む医薬組成物に関する。別の実施形態において、本発明はゲポチダシンを含む医薬組成物に関し、ここで少なくとも10重量%のゲポチダシンがメシル酸ゲポチダシン二水和物として存在する。別の実施形態において、本発明はゲポチダシンを含む医薬組成物に関し、ここで少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%のゲポチダシンがメシル酸ゲポチダシン二水和物として存在する。別の実施形態において、本発明はゲポチダシンを含む医薬組成物に関し、ここで少なくとも95重量%、又は少なくとも96重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%のゲポチダシンがメシル酸ゲポチダシン二水和物として存在する。
【0068】
別の実施形態において、本発明はゲポチダシンを含む医薬組成物に関し、ここで少なくとも10重量%のゲポチダシンがゲポチダシン無水物として存在する。別の実施形態において、本発明はゲポチダシンを含む医薬組成物に関し、ここで少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%のゲポチダシンがゲポチダシン無水物として存在する。別の実施形態において、本発明はゲポチダシンを含む医薬組成物に関し、ここで少なくとも95重量%、又は少なくとも96重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%のゲポチダシンがゲポチダシン無水物として存在する。
【0069】
別の実施形態において、本発明は、メシル酸ゲポチダシン無水物、メシル酸ゲポチダシン一水和物、メシル酸ゲポチダシン二水和物、及びゲポチダシン無水物からなる群から選択される混合物を含む医薬組成物に関する。一実施形態において、医薬組成物は、メシル酸ゲポチダシン二水和物、メシル酸ゲポチダシン無水物、及びメシル酸ゲポチダシン一水和物の混合物を含む。一実施形態において、医薬組成物は、メシル酸ゲポチダシン二水和物及びメシル酸ゲポチダシン無水物の混合物を含む。一実施形態において、医薬組成物は、メシル酸ゲポチダシン二水和物及びゲポチダシン無水物の混合物を含む。
【0070】
一部の実施形態において、本出願は、メシル酸ゲポチダシン無水物を実質的に含まない、メシル酸ゲポチダシン二水和物を含む医薬組成物に関する。一部の実施形態において、本出願は、メシル酸ゲポチダシン無水物及びメシル酸ゲポチダシン一水和物を実質的に含まない、メシル酸ゲポチダシン二水和物を含む医薬組成物に関する。本明細書で使用される場合、用語「実質的に含まない」は、ゲポチダシン形態の総重量と比較して約10重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、又は約1重量%未満を意味する。
【0071】
以下に示される実施例は本発明の例示であり、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0072】
実験
以下の実施例は本発明を例示する。これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図するのではなく、本発明の化合物、組成物、及び方法を調製し使用するための、当業者への手引きを提供することを意図する。本発明の具体的な実施形態が記載されるが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、各種変更及び改変がなされてもよいことを理解するものである。別途明記されない限り、試薬は市販のものであるか又は文献における手順に従って調製される。
【0073】
[実施例1]
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)
[実施例1a]-調製方法1
アセトン(5ml)をゲポチダシン(294.14mg)に添加した。スラリーに、メタンスルホン酸(3M水溶液、1当量)を60分の期間にわたって添加した。スラリーを50℃に3時間加熱し、20℃に徐冷し、20℃で5時間撹拌したままにし、5℃にさらに冷却した。スラリーを5℃で一晩撹拌した。結晶固体を真空下で濾過し、アセトンで洗浄し、60℃の真空オーブン中で乾燥して、結晶メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)を72.9%収率で得た。
【0074】
[実施例1b]-調製方法2
ゲポチダシン(32.00kg)及びメタンスルホン酸(7.00kg、1.02eq)を、2-プロパノール304L及び水16.1kg中で74~80℃に加熱した。溶液を濾過して結晶化容器に入れ、59~63℃に冷却した。5%v/v水性2-プロパノール(2-プロパノール1.194kg及び水0.080L)中に懸濁させた形態1二水和物(0.318kg)を添加し、混合物を58~64℃で2時間熟成させた。混合物を15~25℃に冷却し、生じたスラリーを湿式粉砕した。スラリーを55~61℃に加熱し、15~25℃に冷却した。メシル酸ゲポチダシン二水和物を濾過により単離し、5%v/v水性2-プロパノール(2×2-プロパノール106L及び2×水5.6kg)で2回洗浄し、真空下で約40℃で乾燥して、メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)(38.505kg)を結晶固体として得た。
【0075】
[実施例1c]-XRPD
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のX線粉末回折(XRPD)パターンが
図1に示され、回折角及びd間隔の要約が以下の表1で示される。XRPD分析を、PANalytical X'Pert Pro回折計において、Siゼロバックグラウンドウェハー上で実施した。取得条件は、Cu K
α線、発生装置電圧45kV、発生装置電流:40mA、ステップサイズ0.03°2θを含んだ。
【0076】
【0077】
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)の別の試料のXRPDパターンが
図20に示される(表2を参照のこと)。XRPD分析を、PANalytical Empyrean回折計において、Siゼロバックグラウンドウェハー上で実施した。取得条件は、Cu K
α線、発生装置電圧45kV、発生装置電流:40mA、ステップサイズ0.03°2θを含んだ。
【0078】
【0079】
[実施例1d]-ラマンスペクトル
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のラマンスペクトルを、Nicolet NXR9650又はThermo Electron NXR 960分光計において、Nd:YVO4レーザー(λ=1064nm)由来の励起により4cm
-1分解能で記録した。メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のラマンスペクトルが
図2に示され、主要ピークが455、492、558、525、590、628、667、752、775、823、940、993、1037、1109、1154、1216、1269、1306、1346、1392、1424、1472、1518、1584、1637、1676、2929、3005及び3046cm
-1で観察される。
【0080】
[実施例1e]-DSC
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のDSCを、40mL/分N
2パージ下で、オートサンプラー及び冷蔵機能付き冷却システムを備えるTA Instruments Q2000示差走査熱量計を用いて実施した。圧着したAlパンにおいて、15℃/分で試料のDSCサーモグラムを得た。形態1のDSCサーモグラムは、広い吸熱、その後の開始温度約129℃での急な吸熱、その後の開始温度約195℃での吸熱を呈する(
図3)。当業者は、吸熱の開始温度が実験条件に応じて変動しうることを認識するものである。
【0081】
[実施例1f]-TGA
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)の熱重量分析(TGA)サーモグラムを、TA Instruments Q50熱重量分析装置で、60mL/分N
2流下及び加熱速度10℃/分で記録した。メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)のTGAサーモグラムは、30~130℃で約6%(2.0eq)の損失を呈する(
図4)。
【0082】
[実施例1g]-単結晶構造
メシル酸ゲポチダシン二水和物の単結晶を、メシル酸ゲポチダシンの水/2-プロパノール溶液から徐冷により調製した。
【0083】
単結晶データを、Incoatec microfocus 3.0 CuKα Sourceを使用してBruker D8 Ventureシステムで収集した。データ収集及び単位格子インデクシングをAPEX3 v2017.3-0スイート(Bruker AXS Inc.、2017)で実施し、測定された強度データの処理をSAINT V8.38Aソフトウェアパッケージ(Bruker AXS Inc.、2017)を用いて実施した。構造を、SHELXT-2018/2ソフトウェアパッケージ(Sheldrick、2018)を使用して直接法により解明した。導き出された原子パラメーター(座標及び温度因子)を、SHELXL-2018/3(Sheldrick、2018)でフルマトリックス最小二乗法により精密化した。ヘテロ原子における位置を除いて、自由に精密化された理想的な位置に水素を導入した。
【0084】
単結晶X線データを低温(-123℃)で測定した。単結晶を、以下の単位格子パラメーター:a=6.9255(5)Å、b=15.4500(12)Å、c=25.7918(19)Å、α=β=γ=90°、
V=2759.7(4)Å3、Z'=1、
空間群P212121、
分子/単位格子4、
密度(計算値)1.398g/cm3、
ここでZ'は非対称単位あたりの分子の数である、
を有するメシル酸塩二水和物構造として確認した。
【0085】
図17は、メシル酸ゲポチダシン二水和物についての計算値対実験値XRPDパターンを比較し、ピーク2θ値において良好な一致を示す。
【0086】
[実施例1h]-溶解度
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)の溶解度を、模擬胃液pH1.6(SGF)、空腹状態の模擬腸液pH6.5(FaSSIF)及び満腹状態の模擬腸液pH6.5(FeSSIF)中で、周囲室温(20~25℃)で決定した。以下の表3を参照のこと。
【0087】
【0088】
[実施例2]
メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)
[実施例2a]-調製
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)(894mg)をイソプロピルアルコール(IPA)(5.4ml)中に懸濁させ、61℃に加熱した。生じた固体をラマンによりin-situで、XRPDにより湿ったスラリーとして分析した。
【0089】
別の調製において、スパチュラ1杯(<20mg)のメシル酸ゲポチダシン二水和物(形態)1をIPA(<1.5ml)中に懸濁させた。懸濁液をヒートガンを用いて加熱して、大部分の固体を溶解させ、次いで放置して室温に徐冷した。生じた結晶を濾過し、DSC、TGA、及びXRPDにより分析した。この形態は周囲条件下では不安定であり、ゆえに得られる分析は相純粋無水物試料についてでない可能性があることに留意されたい。
【0090】
[実施例2b]-XRPD
溶媒で湿っているが、メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)のX線粉末回折(XRPD)パターンが
図5に示され、回折角及びd間隔の要約が以下の表4で示される。XRPD分析を、PANalytical Empyrean回折計において、Siゼロバックグラウンドウェハー上で実施した。取得条件は、Cu K
α線、発生装置電圧45kV、発生装置電流:40mA、ステップサイズ0.03°2θを含んだ。
【0091】
【0092】
メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)の別の試料のXRPDパターンが
図21に示される(表5を参照のこと)。XRPD分析を、PANalytical X'Pert Pro回折計において、Siゼロバックグラウンドウェハー上で実施した。取得条件は、Cu K
α線、発生装置電圧45kV、発生装置電流:40mA、ステップサイズ0.02°2θを含んだ。
【0093】
【0094】
[実施例2c]-ラマンスペクトル
メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)のラマンスペクトルを、IO1/4インチS-NIRプローブを装着されたKaiserラマンRXN-4を使用して、15秒曝露時間及び1蓄積で、IPA懸濁液中でin-situで収集した。励起はλ=785nmレーザーに由来した。IPA中に懸濁された本物質のラマンスペクトルが
図6に示され、主要ピークが418、463、587、631、670、753、819、953、1042、1105、1150、1260、1280、1297、1345、1453、1517、1578、1603、1642cm
-1で観察される。
【0095】
[実施例2d]-DSC
メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)のDSCを、50mL/分N
2パージ下で、オートサンプラー及び冷蔵機能付き冷却システムを備えるTA Instruments Q200示差走査熱量計を用いて実施した。圧着したAlパンにおいて、10℃/分で試料のDSCサーモグラムを得た。形態2のDSCサーモグラムは、開始温度約201℃での吸熱を呈する(
図7)。当業者は、吸熱の開始温度が実験条件に応じて変動しうることを認識するものである。
【0096】
[実施例2e]-TGA
メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)の熱重量分析(TGA)サーモグラムを、TA Instruments Q5000熱重量分析装置で、25mL/分N
2流下及び加熱速度10℃/分で記録した。無水物のTGAサーモグラムは、25~200℃で約2%の重量損失を呈する(
図8)。
【0097】
メシル酸ゲポチダシン無水物(形態2)は、周囲条件で1時間後にメシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)に変換することが示された。メシル酸ゲポチダシン無水物のDVSは、水の取り込み4.8%で、60%RHでの最初の吸着サイクルにおいて決定的なRHステップを示し、メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)への変換を示す。
【0098】
[実施例2f]-単結晶構造
メシル酸ゲポチダシン無水物の単結晶を、2-プロパノール溶液から徐冷により調製した。
【0099】
単結晶データを、Incoatec microfocus 3.0 CuKα Sourceを使用してBruker D8 Ventureシステムで収集した。データ収集及び単位格子インデクシングをAPEX3 v2017.3-0スイート(Bruker AXS Inc.、2017)で実施し、測定された強度データの処理をSAINT V8.38A(Bruker AXS Inc.、2017)ソフトウェアパッケージを用いて実施した。構造を、SHELXT-2018/2(Sheldrick、2018)ソフトウェアパッケージを使用して直接法により解明した。導き出された原子パラメーター(座標及び温度因子)を、SHELXL-2018/3(Sheldrick、2018)でフルマトリックス最小二乗法により精密化した。ヘテロ原子における位置を除いて、自由に精密化された理想的な位置に水素を導入した。
【0100】
単結晶X線データを低温(-123℃)で測定した。単結晶を、以下の単位格子パラメーター:a=12.3921(7)Å、b=7.0262(4)Å、c=14.6536(9)Å、α=γ=90°、β=95.0077(13)°、V=1271.01(13)Å3、Z'=1、
空間群P21、
薬物分子/単位格子2、
密度(計算値)1.423g/cm3、
ここでZ'は非対称単位あたりの薬物分子の数である、
を有するメシル酸塩無水物構造として確認した。
【0101】
図18は、メシル酸ゲポチダシン無水物についての計算値対実験値XRPDパターンを比較し、ピーク2θ値において良好な一致を示す。
【0102】
[実施例3]
メシル酸ゲポチダシン一水和物(形態3)
[実施例3a]-調製
メシル酸ゲポチダシン二水和物(形態1)(900mg)をIPA(5.4ml)中に懸濁させ、61℃に加熱した。水(0.17ml)を添加した。生じた固体を一晩スラリーにし、次いでラマンによりin-situで分析した。懸濁液を濾過し、結晶固体をXRPD、DSC及びTGAにより分析した。
【0103】
[実施例3b]-XPRD
メシル酸ゲポチダシン一水和物のX線粉末回折(XRPD)パターンが
図9に示され、回折角及びd間隔の要約が以下の表6で示される。XRPD分析を、PANalytical Empyrean回折計において、Siゼロバックグラウンドウェハー上で実施した。取得条件は、Cu Kα線、発生装置電圧45kV、発生装置電流:40mA、ステップサイズ0.03°2θを含んだ。
【0104】
【0105】
メシル酸ゲポチダシン一水和物の別の試料のXRPDパターンが
図22に示される(表7を参照のこと)。XRPD分析を、PANalytical X'Pert Pro回折計において、Siゼロバックグラウンドウェハー上で実施した。取得条件は、Cu K
α線、発生装置電圧45kV、発生装置電流:40mA、ステップサイズ0.02°2θを含んだ。
【0106】
【0107】
[実施例3c]-ラマンスペクトル
メシル酸ゲポチダシン一水和物のラマンスペクトルを、IO1/4インチS-NIRプローブを装着されたKaiserラマンRXN-4を使用して、15秒曝露時間及び1蓄積で、IPA/水懸濁液中でin-situで記録した。励起はλ=785nmレーザーに由来した。IPA中に懸濁された本物質のラマンスペクトルが
図10に示され、主要ピークが418、449、586、627、668、753、778、819、953、1044、1109、1148、1211、1272、1292、1346、1386、1453、1516、1576、1602、1649及び1686cm
-1で観察される。
【0108】
[実施例3d]-DSC
メシル酸ゲポチダシン一水和物のDSCを、50mL/分N
2パージ下で、オートサンプラー及び冷蔵機能付き冷却システムを備えるTA Instruments Q200示差走査熱量計を用いて実施した。圧着したAlパンにおいて、10℃/分で試料のDSCサーモグラムを得た。メシル酸ゲポチダシン一水和物のDSCサーモグラムは、約50~130℃の広い吸熱、その後の開始温度約202℃での吸熱を呈する(
図11)。当業者は、吸熱の開始温度が実験条件に応じて変動しうることを認識するものである。
【0109】
[実施例3e]-TGA
メシル酸ゲポチダシン一水和物の熱重量分析(TGA)サーモグラムを、TA Instruments Q5000熱重量分析装置で、25mL/分N
2流下及び加熱速度10℃/分で記録した。メシル酸ゲポチダシン一水和物のTGAサーモグラムは、55~80℃で約3.1%(1.0eq)の損失を呈する(
図12)。
【0110】
[実施例4]
ゲポチダシン無水物
[実施例4a]-調製方法1
ゲポチダシン(52g)及び1-プロパノール(440mL)を90℃に加熱した。1-プロパノール40mLを透明溶液に添加し、組み合わされた内容物を90℃に再加熱した。透明溶液を76℃に冷却し、1時間撹拌したままにした。スラリーを0℃に冷却し、一晩撹拌したままにした。スラリーを濾過し、冷却した1-プロパノールで洗浄し、50℃でおよそ6時間真空下で乾燥して、結晶固体(47.8g)としてのゲポチダシン無水物を得た。
【0111】
[実施例4b]-調製方法2
ゲポチダシン無水物の調製を、以下の工程による規模で実施した:
n-プロパノール(12体積)をゲポチダシン(1.0当量)に添加し、混合物を95±3℃に加熱して完全な溶解を成す。塊を95±3℃で濾過し、n-プロパノール(0.1体積)でフィルターを洗浄する。濾液を採取し95±3℃に再び加熱して完全な溶解を確実にする。塊を77±2℃に冷却する。種スラリー(2.5体積n-プロパノール中に懸濁された1.0%w/w)を添加し、77±2℃で少なくとも1時間撹拌する。スラリーの塊を0±2℃にさらに冷却し、1時間撹拌する。物質を濾過し、ケーキをn-プロパノール(2体積)で洗浄する。物質を50±2℃で真空下で乾燥する。
【0112】
[実施例4c]-XRPD
ゲポチダシン無水物のX線粉末回折(XRPD)パターンが
図13に示され、回折角及びd間隔の要約が以下の表8で示される。XRPD分析を、PANalytical X'Pert Pro回折計において、Siゼロバックグラウンドウェハー上で実施した。取得条件は、Cu K
α線、発生装置電圧45kV、発生装置電流:40mA、ステップサイズ0.02°2θを含んだ。
【0113】
【0114】
ゲポチダシン無水物の別の試料のXRPDパターンが
図23に示される。XRPD分析を、PANalytical X'Pert Pro回折計において、Siゼロバックグラウンドウェハー上で実施した。取得条件は、Cu K
α線、発生装置電圧45kV、発生装置電流:40mA、ステップサイズ0.02°2θを含んだ。
【0115】
【0116】
[実施例4d]-ラマンスペクトル
ゲポチダシン無水物のラマンスペクトルを、Nicolet NXR9650又はThermo Electron NXR 960分光計において、Nd:YVO4レーザー(λ=1064nm)由来の励起により4cm
-1分解能で記録した。本物質のラマンスペクトルが
図14に示され、主要ピークが453、471、586、630、656、748、825、985、1099、1143、1289、1344、1391、1429、1476、1516、1572、1612、1647、1687、2927及び3051cm
-1で観察される。
【0117】
[実施例4e]-DSC
ゲポチダシン無水物のDSCを、40mL/分N
2パージ下で、オートサンプラー及び冷蔵機能付き冷却システムを備えるTA Instruments Q2000示差走査熱量計を用いて実施した。圧着したAlパンにおいて、10℃/分で試料のDSCサーモグラムを得た。ゲポチダシン無水物のDSCサーモグラムは、開始温度約196℃での単一の吸熱を呈する(
図15)。当業者は、吸熱の開始温度が実験条件に応じて変動しうることを認識するものである。
【0118】
[実施例4f]-TGA
ゲポチダシン無水物の熱重量分析(TGA)サーモグラムを、TA Instruments Q50熱重量分析装置で、25mL/分N
2流下及び加熱速度10℃/分で記録した。無水物のTGAサーモグラムは、25~200℃で約0.25%の損失を呈する(
図16)。
【0119】
[実施例4g]-単結晶構造
ゲポチダシン無水物の単結晶を、1-プロパノール溶液から種晶添加ありの徐冷により調製した。
【0120】
単結晶データを、Nova X-ray CuKα Sourceを使用してOxford Diffraction Xcalibur A Novaシステムで収集した。データ収集及び単位格子インデクシングをCrysAlisPro 1.171.37.34iスイート(Agilent Technologies、2014)で実施し、測定された強度データの処理もCrysAlisPro 1.171.37.34i(Agilent Technologies、2014)ソフトウェアパッケージを用いて実施した。構造を、SHELXT-2018/2(Sheldrick、2018)ソフトウェアパッケージを使用して直接法により解明した。導き出された原子パラメーター(座標及び温度因子)を、SHELXL-2018/3(Sheldrick、2018)でフルマトリックス最小二乗法により精密化した。ヘテロ原子における位置を除いて、自由に精密化された理想的な位置に水素を導入した。
【0121】
単結晶X線データを低温(-123℃)で測定した。単結晶を、以下の単位格子パラメーター:a=8.44022(16)Å、b=6.42442(12)Å、c=20.2774(5)Å、α=γ=90°、β=96.778(2)°、V=1091.83(4)Å3、Z'=1、
空間群P21、
薬物分子/単位格子2、
密度(計算値)1.364g/cm3、
ここでZ'は非対称単位あたりの薬物分子の数である、
を有する遊離塩基無水物構造として確認した。
【0122】
図19は、ゲポチダシン無水物についての計算値対実験値XRPDパターンを比較し、ピーク2θ値において良好な一致を示す。
【0123】
ゲポチダシン無水物は、ジクロロメタン及びトリフルオロエタノール(>100mg/mL)を除いて、一般的な溶媒及び水では低~中度の溶解度(<20mg/mL)を呈する。
【0124】
ゲポチダシン遊離塩基の結晶形態スクリーニングは、水和物及び他の溶媒和物ももたらした。結晶無水ゲポチダシン及び他の形態の相対的熱力学的安定性を研究した。40℃では、ゲポチダシン無水物が、少なくともaw=0.5までで水和物よりも安定である。23℃では、ゲポチダシン無水物はaw0~0.8でより安定である。
【0125】
[実施例5]
メシル酸ゲポチダシンモノIPA溶媒和物二水和物の調製
メシル酸ゲポチダシンモノIPA溶媒和物二水和物は、ヒートガンを用いて3%Aq v/v IPA中に形態1を溶解させ、次いで飽和溶液をカーディスバス(cardice bath)に直接配置することにより調製されうる。メシル酸ゲポチダシンモノIPA溶媒和物二水和物は、懸濁液中で、及び単離の際に形態1に徐々に変換する。メシル酸ゲポチダシンモノIPA溶媒和物二水和物は、5%水性IPA中でこの方法で形成可能であるが、20℃で3時間以内に形態1に変換する。
【0126】
[実施例6]
その他
[実施例6a]-多形及び水活性
形態1、形態2、形態3及びメシル酸塩IPA溶媒和物二水和物は、水/IPA混合物中で、水性組成及び/又は溶媒添加の順序を変化させること、例えば水をIPA中の化合物に添加すること又は混合物として添加することにより形成されうる。溶解度及びKFデータを使用して推定された以下の水含有量境界(引用符を付けた、IPA中のw/w水含有量)内で、様々な形態が観察された(
図24A及び24Bも参照のこと):
20~25℃:形態2<1.147%>IPA/水溶媒和物<2.169%>形態1、
61℃:形態2<2.694%>形態3<4.643%>形態1。
【0127】
室温では、形態1の溶解度が、広範な水含有量全体の中で他の多形よりも小さく、これがより安定な形態であることを示唆する。
【0128】
61℃では、形態3が、水含有量5.2%w/wで形態1に変換することが観察されたが、水含有量4.2%w/wでは観察されなかった(種晶未添加)。推定される相境界は、水含有量対濃度データから生成される傾向直線(対数スケール)に基づき、水含有量4.6%w/wである。
【0129】
形態1を作製する結晶化方法は5%v/v水性IPA中であり、これは6.25%w/w水の当量である。ゆえに、この方法は形態1についての熱力学的安定性に好都合な組成で実施される。
【0130】
[実施例6b]-非晶質固体
非晶質メシル酸ゲポチダシンは、凍結乾燥により生成可能である。形態1(150mg)をMeCN/水(80/20v/v、1mL)に溶解させた。清澄濾過を実施し、濾液を20mLバイアルに添加した。溶液を液体窒素下で凍結させ、4時間凍結乾燥した。物質はPXRDにより非晶質であることが決定されたが、乾燥剤を有する密封バイアル中に保存されない限り形態1に変換し始めた。
【0131】
非晶質物質はt-BuOH水溶液の凍結乾燥によっても調製され、ガラス転移温度63.9℃を呈し、周囲条件で少なくとも3日間物理的に安定であった。
【0132】
[実施例6c]-メシル酸塩及びHCl塩の比較
ゲポチダシンHCl塩を、WO2008/128942の実施例39に示されるように調製した。メシル酸ゲポチダシン二水和物は、ゲポチダシンHClに対して取り扱いでの利点を示す。メシル酸ゲポチダシン二水和物及びゲポチダシンHClの水分吸着/脱着等温線を、相対湿度5~90%の範囲にかけて得た。メシル酸ゲポチダシン二水和物試料は2%未満の水を取り込んだが、ゲポチダシンHCl試料はおよそ10%の水を取り込んだ。
【0133】
本発明が上文で例示される態様又は実施形態に限定されず、例示される態様又は実施形態及び以下の特許請求の範囲内の改変全てに対して、権利が留保されることが理解されるはずである。
【0134】
本明細書で引用される学術誌、特許、及び他の出版物に対する各種参照は現行技術を含み、全体が示されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】