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特表2023-524429光ワイヤレス通信のための選択的な送信ブランチ結合を有するマルチトランシーバシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】光ワイヤレス通信のための選択的な送信ブランチ結合を有するマルチトランシーバシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/114 20130101AFI20230605BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20230605BHJP
【FI】
H04B10/114
H04B10/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565758
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2021060218
(87)【国際公開番号】W WO2021219435
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】20171742.8
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】リンナーツ ヨハン パウル マリー ヘラルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン フォールトハイセン パウル ヘンリクス ヨハンネス マリア
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA51
5K102AL23
5K102AL28
5K102MA01
5K102MB02
5K102MC11
5K102PB02
5K102PB14
5K102PH31
5K102RD05
5K102RD28
(57)【要約】
複数のトランシーバ(11)と、少なくともM個の出力を有する単一のマルチインプットマルチアウトプット(MIMO)モデム(41)とを有するLiFiシステムであって、MIMOモデム(41)のM個の送信出力は、リニアコンバイナ(42)に供給される。リニアコンバイナは、MIMOモデムのN個のMIMO送信ブランチ信号に基づいてM個の区別がつく線形結合を作成し、線形結合は、M個の区別がつく出力信号のうちのN個が受信される場合にN個のMIMO送信ブランチ信号の各々のデコーディングを可能にするように選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ワイヤレス通信システムを制御するための装置であって、当該装置は、
通信のためのN出力マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)モデムによって出力されるN個の送信ブランチ信号を受信するための入力部であって、N≧2である、入力部と、
M個の空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタに供給されるべき複数のM個の異なる出力信号を生成するために選択された混合係数を用いて前記N個の送信ブランチ信号を結合することにより複数の線形結合を介して前記N個の送信ブランチ信号を結合するためのコンバイナであって、M>Nである、コンバイナと、
を含み、
前記コンバイナは、異なる線形結合から生成される出力信号が、前記空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように線形結合を設定するように構成される、装置。
【請求項2】
前記コンバイナは、N個の混合係数を用いて前記N個の送信ブランチ信号を混合することによりM個の前記出力信号の各出力信号を形成するように構成され、それぞれの出力信号のN個の混合係数は、N次元空間内の点を表し、前記M個の出力信号が同じ出力信号パワーを用いて前記M個のトランスミッタによって出力されるように、それぞれのM個の点の各々に対する原点までの距離の二乗は同じである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コンバイナは、前記M個の出力信号に対して以下の混合係数の行列を用いることにより2つの送信ブランチ信号を結合するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記コンバイナは、オペアンプの帰還抵抗と入力抵抗との比率を対応付けることにより線形結合を設定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記コンバイナは、前記送信ブランチ信号を前記コンバイナに供給するため又は前記出力信号を前記空間的に分離されたトランシーバに供給するために用いられるスイッチング要素のスイッチ状態の制御を可能にすることにより線形結合の適応設定を行うように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
当該装置は、学習若しくはトレーニングアルゴリズムに基づいて又はコミッショニングプロシージャに基づいてスイッチング要素のスイッチ状態の制御を可能にするように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
光ワイヤレス通信システムを制御するための装置であって、当該装置は、
前記光ワイヤレス通信システムのN個の空間的に分離されたトランスミッタから、通信のためのN出力マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)モデムによって出力されるN個の送信ブランチ信号のそれぞれの選択された線形結合を示す情報を受信するためのレシーバであって、N≧2であり、前記それぞれの選択された線形結合は、前記N個の送信ブランチ信号に基づいて、前記空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタによって送信される通信信号を生成するために使用される、レシーバと、
前記空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される信号における前記N個の送信ブランチ信号の選択された線形結合を比較する、及び、前記N個の送信ブランチ信号が、前記空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される異なる線形結合から生成されることができるように変更される必要がある線形結合を決定するためのコンパレータと、
を含む、装置。
【請求項8】
当該装置は、前記空間的に分離されたトランスミッタに対して更新されるべき結合状態のリストを有するフィードバック信号をシグナリングするように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
光ワイヤレス通信システムにおけるマルチインプットマルチアウトプット(MIMO)通信のための出力信号を生成するためのモデムであって、当該モデムは、請求項1に記載の装置を含む、モデム。
【請求項10】
マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)通信のための出力信号を送信するためのトランシーバであって、当該トランシーバは、請求項1に記載の装置を含む、トランシーバ。
【請求項11】
当該トランシーバは、前記出力信号を生成するために用いられる線形結合を示す情報を、線形結合の設定を制御するための制御デバイスに送信するように構成される、請求項10に記載のトランシーバ。
【請求項12】
請求項9に記載のモデムと、請求項10に記載の複数の空間的に分離されたトランシーバとを含む、光ワイヤレス通信システム。
【請求項13】
ワイヤレス光通信システムのアクセスポイントをコミッショニングするためのコミッショニングデバイスであって、当該コミッショニングデバイスは、請求項7に記載の装置を含む、コミッショニングデバイス。
【請求項14】
光ワイヤレス通信システムを制御する方法であって、当該方法は、
通信のためのN出力マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)モデムによって出力されるN個の送信ブランチ信号を受信することであって、N≧2である、ことと、
M個の空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタに供給されるべき複数のM個の異なる出力信号を生成するために選択された混合係数を用いて前記N個の送信ブランチ信号を結合することにより複数の線形結合を介して前記N個の送信ブランチ信号を結合することであって、M>Nである、ことと、
異なる線形結合から生成される出力信号が、前記空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように線形結合を設定することと、
送信のためのM個の空間的に分離されたトランスミッタに前記M個の異なる出力信号を供給することと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記結合することは、
N個の混合係数を用いて前記N個の送信ブランチ信号を混合することによりM個の前記出力信号の各出力信号を形成することであって、それぞれの出力信号のN個の混合係数は、N次元空間内の点を表し、前記M個の出力信号が同じ出力信号パワーを用いて前記M個のトランスミッタによって出力されるように、それぞれのM個の点の各々に対する原点までの距離の二乗は同じである、こと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
光ワイヤレス通信システムを制御する方法であって、当該方法は、
前記光ワイヤレス通信システムのN個の空間的に分離されたトランスミッタから、通信のためのN出力マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)モデムによって出力されるN個の送信ブランチ信号のそれぞれの選択された線形結合を示す情報を受信することであって、N≧2であり、前記それぞれの選択された線形結合は、前記N個の送信ブランチ信号に基づいて、前記N個の空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタによって送信される通信信号を生成するために使用される、ことと、
前記空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される信号における前記N個の送信ブランチ信号の選択された線形結合を比較することと、
前記N個の送信ブランチ信号が、前記空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される異なる線形結合から生成されることができるように変更される必要がある線形結合を決定することと、
を含む、方法。
【請求項17】
コンピュータデバイスで実行された場合、請求項14又は15に記載の方法のステップを行うためのコード手段を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭、オフィス、小売、ホスピタリティ及び産業のための様々な異なるアプリケーションで使用するための、限定されるものではないが、LiFiネットワーク等、光ワイヤレスネットワークにおける通信の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(WiFi(登録商標)ネットワークと名前が似ている)LiFiネットワーク等のワイヤレス光ネットワークは、ラップトップ、タブレット、スマートフォン等の(以下でエンドポイント(EP)と呼ばれる)モバイルユーザデバイスがインターネットにワイヤレスで接続することを可能にする。WiFi(登録商標)は無線周波数を使用してこれを実現するが、LiFiは、これまでにないデータ転送速度及び帯域幅を可能にし得る光スペクトルを使用してこれを実現する。さらに、Li-Fiは、電磁干渉を受けやすいエリアで使用されることができる。ワイヤレスデータは、伝統的なコネクテッドデバイスのみではなくそれ以上のために必要とされていることを考慮することが重要である。今日、テレビ、スピーカ、ヘッドフォン、プリンタ、バーチャルリアリティ(VR)ゴーグル、さらには冷蔵庫さえ、ワイヤレスデータを使用して接続し、本質的な通信を実行する。WiFi(登録商標)等の無線周波数(RF:radio frequency)技術は、このデジタル革命をサポートするためのスペクトルを使い果たしており、LiFiは、次世代の没入型コネクティビティ(immersive connectivity)を動かす(power)のに役立つことができる。
【0003】
変調に基づいて、コード化光の情報は、任意の適切な光センサを使用して検出されることができる。これは、専用のフォトセル(ポイントディテクタ)、場合によってはレンズ、リフレクタ、ディフューザ又は蛍光体コンバータを備えたフォトセルのアレイ、又はフォトセル(ピクセル)のアレイ及びアレイに像を形成するためのレンズを含むカメラであることができる。例えば、光センサは、エンドポイントにプラグインするドングルに含まれる専用のフォトセルであってもよく、又は、センサは、エンドポイントの汎用(可視又は赤外光)カメラ若しくは例えば3D顔認識のために当初設計されている赤外線ディテクタであってもよい。どちらにしても、これにより、エンドポイント上で動作するアプリケーションは、光を介してデータを受信することが可能になる。
【0004】
ワイヤレス光ネットワークにおいて、物理アクセスデバイス(例えば、トランシーバ)は、典型的には、照明器具に位置してもよく、論理アクセスポイントは、1つ以上の照明器具に各々位置する1つ以上の物理アクセスデバイスに接続されてもよい。通信信号は、日常照明器具(everyday luminaire)、例えば、室内照明又は屋外照明等、物理アクセスデバイスの照明源によって発せられる光信号に埋め込まれることができ、斯くして、照明器具からの照明を情報のキャリアとして使用することを可能にする。斯くして、光は、部屋等の対象環境を照らすための可視照明寄与(典型的には、光の主要な目的)と、環境に情報を提供するための埋め込まれた信号(典型的には、光の副次的な機能と考えられる)との両方を含む。このような場合、変調は、典型的には、人間の知覚を超えるように十分に高い周波数で、又は、少なくとも、目に見える一時的な光アーティファクト(例えば、フリッカ及び/又はストロボアーティファクト等)が、人間が気づかない若しくは少なくとも人間が許容できるように十分に高い周波数で十分に弱くなるように行われる。斯くして、埋め込まれた信号は、主要な照明機能に影響を与えない。すなわち、ユーザは、全体的な照明を知覚するだけで、当該照明に変調されているデータの効果は知覚しない。物理アクセスデバイス(例えば、トランシーバ)は、典型的には、照明器具に位置してもよく、論理アクセスポイントは、1つ以上の照明器具に各々位置する1つ以上の物理アクセスデバイスに接続されてもよい。多くのイルミネーションシステムにおいて、連続した均一な光レベルは、すべて光を発する同じ室内の多くの照明器具及び光源が関与することにより実現される。これにより、全体のエリアが均一に照らされ、光線を遮る障害物の鮮明な影が防止される。同様に、LiFiシステムは、ラインオブサイト(LOS:line of sight)がブロックされる場合、即時のリンクの機能停止(immediate link outage)に陥る。これは、ユーザが自身の通信デバイスに向かって前かがみになり、天井に取り付けられたアクセスデバイス(例えば、トランシーバ)と自身の通信デバイスの間に入り込む場合に頻繁に発生する可能性がある。
【0005】
ここでは、複数のエミッタからの複数のオーバーラップするカバレッジエリア(overlapping coverage area)を有し得る、複数の光トランスミッタを使用するアイデアが、データ送信のために使用される。これは、可視光に制限されるものではなく、例えば、赤外(IR:Infrared)光又は他の放射にも使用されてもよい。それゆえ、とりわけトランスミッタオーバーラップの度合い(degree of transmitter overlap)に関する、配備の基準は、均一な照明に必要とされるものとは異なり得、例えば、支配的な光ビームが誤ってブロックされる場合でも、カバレッジエリア全体にわたり十分に均質な達成可能ビットレートを達成する目標に基づくことができる。
【0006】
MIMO(Multiple-Input Multiple-Output(マルチインプットマルチアウトプット))通信は、依然としてLOS有する代替の天井に取り付けられたトランシーバが瞬時にリンクを引き継ぐことを可能にするので、この状況を改善することができる。これは、プロトコルレベルの介入なしにOSI(Open Systems Interconnection(オープンシステムインターコネクション))モデルの最下層の物理(PHY)層で実現することもできる。実際、これは、同時にマルチパスリンクを介した送信も可能にし、あるLOSがブロックされる場合、別のリンクを利用することによって直ちにフォールバックすることができる。
【0007】
しかしながら、高速通信に関する問題は、異なるアクセスデバイス(すなわち、ライトポイント(light point))からの伝播時間(travel time)の差が、通信チャネルのフェージングによりマルチパス消滅(multipath extinction)(ヌル(null))が起きるほど実質的なもの(substantial)である可能性があることである。トランシーバに向かうケーブル長の差も、これらの遅延に寄与する可能性がある。クライアントが、2つの天井に取り付けられたアクセスデバイスのエミッタの真下の中間で信号を受信する場合、自由空間光路(free space optical path)はほぼ等しい長さなので、信号はほぼ等しい強度で届く。自由空間伝搬に起因する位相差は小さいが、2mのケーブル長の差は、(自由空間における光速の2/3のケーブル速度を仮定して)50MHzでは半波長の位相差に相当し、ヌルを生じる可能性がある。ケーブル長のより大きな差は、さらに低い周波数での転送においてファーストヌル(first null)につながる可能性がある。この問題は、将来のシステムがより高いビットレートを使用する、より優れたエミッタ(例えば、LEDの代わりに垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL:vertical-cavity surface-emitting laser))を利用する、及びレシーバでより優れたアンプ(amplifier)を利用する場合、悪化する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書で想定される光ワイヤレス通信(Optical Wireless Communication)は、可視光スペクトルに限定されるものではない。追加的又は代替的に赤外スペクトル及び/又は紫外スペクトルを利用し得るシステムが想定される。ここで、一般に、赤外スペクトルが、赤外線のエネルギ量子(energy quanta)は、紫外線と比較してより低いエネルギを有し、斯くして、ユーザが存在するエリアに対してより好適であるので、好ましい。可視スペクトル外の光を使用することの実質的な利点は、フリッカ、調光、及び通信のみをイネーブルにするのにイルミネーションをオンにしなければならない等、イルミネーション機能に関連する問題がもはや存在しないことである。
【0009】
可視光外の光を使用する場合でも、このようなOWCシステムをイルミネーションデバイスに組み込むことは依然として有益であり得る。そうする主な理由の一つはロケーションである。すなわち、イルミネーションデバイスは、一般に、通信を必要とするユーザがいる場所へのダイレクトラインオブサイト(direct line-of-sight)を有するロケーションに設けられる。さらに、例えば、(パワー、又はパワーオーバーイーサネットアプリケーションの場合のコネクティビティ等)イルミネーションライトによって提供される既存のインフラストラクチャにタグ付けすることも可能であり得る。
【0010】
本発明の目的は、マルチパス誘起フェージング(multi-path induced fading)に対するロバスト性が向上した光ワイヤレス通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1又は7に記載の装置、請求項9に記載のモデム、請求項10に記載のトランシーバ、請求項12に記載のシステム、請求項13に記載のコミッショニングデバイス、請求項14又は16に記載の方法、及び請求項17に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
【0012】
モデム又はトランシーバに向けられる第1の態様によれば、光ワイヤレス通信システムを制御するための装置であって、当該装置は、
マルチインプットマルチアウトプット(MIMO:multiple input multiple output)通信のための少なくとも2つの送信ブランチ信号(transmit branch signal)を受信するための入力部と、
それぞれの空間的に分離されたトランスミッタに供給されるべき複数の出力信号を生成するために複数の線形結合を介して少なくとも2つの送信ブランチ信号を結合するためのコンバイナ(combiner)であって、出力信号の数は、送信ブランチ信号の数よりも大きい、コンバイナと、
を含み、
コンバイナは、異なる線形結合から生成される出力信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように線形結合を設定するように構成される、装置が提供される。
【0013】
したがって、トランスミッタ出力信号を生成するためにMIMOチャネル信号を結合するために使用される線形結合が、異なる線形結合から生成されるトランスミッタ出力信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように選択及び更新されることができる。これにより、マルチパスフェージングに対するロバスト性を高めた複数のトランシーバを含むMIMOシステムが提供されることができる。(例えば、異なるケーブル長に起因する)異なる遅延を有する異なるトランスミッタからエンドポイントデバイスに届く信号は、信号が互いに異なるため、もはや互いに相殺しない及び/又はビットレートを大幅に低減しない。
【0014】
斯くして、例えば2つのブランチをサポートする単純なMIMOシステムは、異なる出力信号を送信することによって、同じモデムに結合されるより多くのトランシーバをサポートするように拡張されることができる。設置(installation)の問題は軽減されることができ、(例えば、コミッショニング又は学習/トレーニングプロシージャを介した)MIMOシステムの自動構成(automatic configuration)のオプションが提供されることができる。
【0015】
第1の態様の第1のオプションによれば、コンバイナは、選択された混合係数を用いて少なくとも2つの送信ブランチ信号を結合することにより線形結合を適用するように構成されてもよい。これにより、線形結合は、デジタル信号プロセッサのソフトウェアパラメータを介して又は混合パラメータを反映するアナログ若しくはデジタル回路を介してそれぞれの混合パラメータを変更することによりフレキシブルに設定及び修正されることができる。
【0016】
このようにして、コンバイナは、M個の空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタに供給されるべき複数のM個の異なる出力信号を生成するために選択された混合係数を用いてN個の送信ブランチ信号を結合することにより複数の線形結合を介してN個の送信ブランチ信号を結合するために設けられてもよい。ここで、M>Nである。斯かるコンバイナは、異なる線形結合から生成される出力信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように線形結合を設定するように構成されてもよい。
【0017】
好ましくは、コンバイナは、N個の混合係数を用いてN個の送信ブランチ信号を混合することによりM個の出力信号の各出力信号を形成するように構成され、それぞれの出力信号のN個の混合係数は、N次元空間内の点を表し、M個の出力信号が同じ出力信号パワーを用いてM個のトランスミッタによって出力されるように、それぞれのM個の点の各々に対する原点までの距離の二乗は同じである。その結果、ヌルが発生する可能性(likelihood of nulling)が低減され、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて異なる線形結合を受信する可能性が高められ、これにより、N個のブランチ信号が受信信号から復元され得る可能性がより高くなる。
【0018】
第1のオプションと又は第1の態様と組み合わされてもよい、第1の態様の第2のオプションによれば、コンバイナは、M個の出力信号に対して以下の混合係数の行列を用いることにより2つの送信ブランチ信号を結合するように構成されてもよい。
【0019】
斯くして、任意の数のトランシーバに対する混合パラメータを生成するための一般的なアプローチが、密な光ワイヤレス通信ネットワークにおけるマルチパスフェージングに対するロバスト性を向上させるために提供されることができる。
【0020】
第1若しくは第2のオプションと又は第1の態様と組み合わされてもよい、第1の態様の第3のオプションによれば、コンバイナは、オペアンプの帰還抵抗と入力抵抗との比率を対応付けることにより線形結合を設定するように構成されてもよい。この方策は、提案される係数ベースの結合のシンプルなアナログ実装を提供し、混合係数は、適切な抵抗値及び比率を選択する又は可変抵抗を用いることにより容易に調整されることができる。
【0021】
第1乃至第3のオプションのいずれかと又は第1の態様と組み合わされてもよい、第1の態様の第4のオプションによれば、コンバイナは、送信ブランチ信号をコンバイナに供給するため又は出力信号を空間的に分離されたトランシーバに供給するために用いられるスイッチング要素のスイッチ状態の制御を可能にすることにより線形結合の適応設定(adaptive setting)を行うように構成されてもよい。スイッチング要素を用いることにより、アナログ又はデジタル回路によって実装されるコンバイナに適応制御を導入するためのフレキシブルで実装が容易なソリューションが提供される。
【0022】
第1乃至第4のオプションのいずれかと又は第1の態様と組み合わされてもよい、第1の態様の第5のオプションによれば、当該装置は、学習若しくはトレーニングアルゴリズムに基づいて又はコミッショニングプロシージャに基づいてスイッチング要素のスイッチ状態の制御を可能にするように構成されてもよい。斯くして、学習又はトレーニング又はコミッショニングプロシージャに基づいてもよいフィードバックメカニズムを介した線形結合の適応制御が提供されることができる。
【0023】
制御デバイス(例えば、コミッショニングデバイス)に向けられる第2の態様によれば、光ワイヤレス通信システムを制御するための装置であって、当該装置は、
光ワイヤレス通信システムの空間的に分離されたトランスミッタから、マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)通信のための少なくとも2つの送信ブランチ信号のそれぞれの選択された線形結合を示す情報を受信するためのレシーバであって、それぞれの選択された線形結合は、少なくとも2つの送信ブランチ信号に基づいて、空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタによって送信される通信信号を生成するために使用される、レシーバと、
空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される選択された線形結合を比較する、及び、異なる線形結合から生成される出力信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように変更される必要がある線形結合を決定するためのコンパレータと、
を含む、装置が提供される。
【0024】
斯くして、光ワイヤレス通信システムを制御するための装置であって、当該装置は、光ワイヤレス通信システムのN個の空間的に分離されたトランスミッタから、通信のためのN出力マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)(N-output multiple input multiple output, MIMO)モデムによって出力されるN個の送信ブランチ信号のそれぞれの選択された線形結合を示す情報を受信するためのレシーバであって、N≧2であり、それぞれの選択された線形結合は、N個の送信ブランチ信号に基づいて、空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタによって送信される通信信号を生成するために使用される、レシーバと、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される信号におけるN個の送信ブランチ信号の選択された線形結合を比較する、及び、N個の送信ブランチ信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される異なる線形結合から生成されることができるように変更される必要がある線形結合を決定するためのコンパレータとを含む、装置が提供される。
【0025】
第2の態様の第1のオプションによれば、当該装置は、空間的に分離されたトランスミッタに対して更新されるべき結合状態のリスト(list of combination states)を有するフィードバック信号をシグナリングする(signal)ように構成されてもよい。これにより、実際の受信状況に基づいて選択された線形結合を適応させるためのフィードバックメカニズムが提供されることができ、これはまた、空間的に分離されたトランスミッタの各々に対する線形結合の分散制御(decentralized control)も可能にする。
【0026】
第3の態様によれば、光ワイヤレス通信システムにおけるマルチインプットマルチアウトプット(MIMO)通信のための出力信号を生成するためのモデムであって、当該モデムは、第1の態様による装置を含む、モデムが提供される。
【0027】
第4の態様によれば、マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)通信のための出力信号を送信するためのトランシーバであって、当該トランシーバは、第1の態様による装置を含む、トランシーバが提供される。
【0028】
第4の態様の第1のオプションによれば、当該トランシーバは、出力信号を生成するために用いられる線形結合を示す情報を、線形結合の設定(setting)を制御するための制御デバイスに送信するように構成されてもよい。これにより、線形結合が、個々のトランシーバについて、これらの送信された線形結合(transmitted linear combination)を検出する、及び、異なる線形結合が、隣接するトランシーバペア又はオーバーラップするカバレッジ若しくは照明エリアを有するトランシーバに割り当てられていることを確認することによりチェックされることができる。
【0029】
第5の態様によれば、第3の態様によるモデムと、第4の態様による複数の空間的に分離されたトランシーバとを含む、光ワイヤレス通信システムが提供される。
【0030】
第6の態様によれば、ワイヤレス光通信システムのアクセスポイントをコミッショニングするためのコミッショニングデバイスであって、当該コミッショニングデバイスは、第2の態様による装置を含む、コミッショニングデバイスが提供される。
【0031】
モデム又はトランシーバに向けられる第7の態様によれば、光ワイヤレス通信システムを制御する方法であって、当該方法は、
マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)通信のための少なくとも2つの送信ブランチ信号を受信することと、
それぞれの空間的に分離されたトランスミッタに供給されるべき複数の出力信号を生成するために複数の線形結合を介して少なくとも2つの送信ブランチ信号を結合することであって、出力信号の数は、送信ブランチ信号の数よりも大きい、ことと、
異なる線形結合から生成される出力信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように線形結合を設定することと、
を含む、方法が提供される。
【0032】
斯くして、光ワイヤレス通信システムを制御する方法であって、当該方法は、通信のためのN出力マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)モデムによって出力されるN個の送信ブランチ信号を受信することであって、N≧2である、ことと、M個の空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタに供給されるべき複数のM個の異なる出力信号を生成するために選択された混合係数を用いてN個の送信ブランチ信号を結合することにより複数の線形結合を介してN個の送信ブランチ信号を結合することであって、M>Nである、ことと、異なる線形結合から生成される出力信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように線形結合を設定することと、送信のためのM個の空間的に分離されたトランスミッタにM個の異なる出力信号を供給することとを含む、方法が提供される。
【0033】
より好ましくは、結合すること(combining)は、N個の混合係数を用いてN個の送信ブランチ信号を混合することによりM個の出力信号の各出力信号を形成することであって、それぞれの出力信号のN個の混合係数は、N次元空間内の点を表し、M個の出力信号が同じ出力信号パワーを用いてM個のトランスミッタによって出力されるように、それぞれのM個の点の各々に対する原点までの距離の二乗は同じである、ことを含む。
【0034】
制御又はコミッショニングデバイスに向けられる第8の態様によれば、光ワイヤレス通信システムを制御する方法であって、当該方法は、
光ワイヤレス通信システムの空間的に分離されたトランスミッタから、マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)通信のための少なくとも2つの送信ブランチ信号のそれぞれの選択された線形結合を示す情報を受信することであって、それぞれの選択された線形結合は、少なくとも2つの送信ブランチ信号に基づいて、空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタによって送信される通信信号を生成するために使用される、ことと、
空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される選択された線形結合を比較することと、
異なる線形結合から生成される出力信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信されるように変更される必要がある線形結合を決定することと、
を含む、方法が提供される。
【0035】
斯くして、光ワイヤレス通信システムを制御する方法であって、当該方法は、光ワイヤレス通信システムのN個の空間的に分離されたトランスミッタから、通信のためのN出力マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)モデムによって出力されるN個の送信ブランチ信号のそれぞれの選択された線形結合を示す情報を受信することであって、N≧2であり、それぞれの選択された線形結合は、N個の送信ブランチ信号に基づいて、N個の空間的に分離されたトランスミッタのそれぞれのトランスミッタによって送信される通信信号を生成するために使用される、ことと、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される信号におけるN個の送信ブランチ信号の選択された線形結合を比較することと、N個の送信ブランチ信号が、空間的に分離されたトランスミッタのオーバーラップする受信エリアにおいて受信される異なる線形結合から生成されることができるように変更される必要がある線形結合を決定することとを含む、方法が提供される。
【0036】
第9の態様によれば、コンピュータデバイスで実行された場合、第7又は第8の態様による上記方法のステップを行うためのコード手段を含む、コンピュータプログラムプロダクトが提供されてもよい。
【0037】
上記の装置は、ディスクリートハードウェアコンポーネント、組み込みチップ若しくはチップモジュールの配列を備えたディスクリートハードウェア回路に基づいて、又はメモリに格納された、コンピュータ読み取り可能媒体に書き込まれた若しくはインターネット等のネットワークからダウンロードされたソフトウェアルーチン若しくはプログラムによって制御される信号処理デバイス若しくはチップに基づいて実装されてもよいことに留意されたい。
【0038】
請求項1又は7に記載の装置、請求項9に記載のモデム、請求項10に記載のトランシーバ、請求項12に記載のシステム、請求項13に記載のコミッショニングデバイス、請求項14又は16に記載の方法、及び請求項17に記載のコンピュータプログラムは、同様及び/又は同一の好適な実施形態、とりわけ、従属請求項に記載されるような実施形態を有し得ることを理解されたい。
【0039】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであり得ることも理解されたい。
【0040】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に述べられる実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、様々な実施形態が実装されることができるLiFiアーキテクチャのブロック図を概略的に示す。
図2図2は、マルチインプット及びマルチ又はシングルアウトプット通信のためのLiFiアーキテクチャを概略的に示す。
図3図3は、two-rayレシーバの入力アンプにおける信号及び雑音パワースペクトル密度の周波数ダイアグラムを概略的に示す。
図4図4は、様々な実施形態による送信ブランチ結合を有する光送信システムのブロック図を概略的に示す。
図5図5は、様々な実施形態による異なる送信ブランチ結合の2つの入力チャネルに対する混合係数を有する2次元座標系を概略的に示す。
図6図6は、様々な実施形態による結合の固定設定を有するマルチトランシーバアクセスデバイスのブロック図を概略的に示す。
図7図7は、様々な実施形態による結合の適応設定を有するマルチトランシーバアクセスデバイスの第1の例のブロック図を概略的に示す。
図8図8は、様々な実施形態による結合の適応設定を有するマルチトランシーバアクセスデバイスの第2の例のブロック図を概略的に示す。
図9図9は、様々な実施形態によるマルチトランシーバアクセスデバイスにおけるコミッショニングベースの結合設定プロシージャのフロー図を示す。
図10図10は、様々な実施形態による結合の適応設定のためのコミッショニングデバイスのブロック図を概略的に示す。
図11図11は、様々な実施形態によるコミッショニングデバイスにおけるコミッショニングベースの結合設定プロシージャのフロー図を示す。
図12図12は、様々な実施形態によるマルチトランシーバアクセスデバイスにおける結合の適応設定のためのコミッショニングシステムのアーキテクチャを概略的に示す。
図13図13は、トランシーバの例示的な配置及び結合状態を概略的に示す。
図14図14は、様々な実施形態による送信ブランチ結合を有するマルチトランシーバアクセスデバイスの例示的な実装を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
ここで、本発明の様々な実施形態が、マルチトランシーバアクセスデバイス(multi-transceiver access device)を有する光ワイヤレス照明及び通信(LiFi)システムに基づいて述べられる。
【0043】
以下を通じて、アクセスデバイスとしての照明器具(luminaire)は、照明及び/又は通信目的のための1つ以上の光源(可視又は非可視(赤外線(IR)又は紫外線(UV))光源を含む)及び任意選択的に、例えば光を分配するため、光源及びバラスト(該当する場合)を位置決め及び保護するため、並びに照明器具を電源に接続するため等、照明の適切な動作に必要な他の内部及び/又は外部部品を含む、任意のタイプの照明ユニット又は照明具(lighting fixture)として理解されるべきである。照明器具は、埋め込み型又は表面取付け型の白熱、蛍光又は他の電気放電照明器具等、従来のタイプのものであることができる。また、照明器具は、一方の場所に光源があり、他方にファイバーコア又は「ライトパイプ(light pipe)」がある光ファイバ等、非従来のタイプのものであることもできる。
【0044】
さらに、赤外線及び/又は紫外線等、光スペクトルの不可視部分に基づく光ワイヤレス通信を使用する場合、特許請求の範囲に記載の発明による装置は、光ワイヤレス通信システムの別個のトランシーバノードに組み込まれてもよいことに留意されたい。
【0045】
図1は、様々な実施形態が実装されることができるLiFiネットワークのブロック図を概略的に示している。
【0046】
LiFiネットワークは、スイッチ(例えば、Ethernet(登録商標)スイッチ)14を介して接続される、複数のアクセスポイント(AP)AP1~AP3 12、例えば、照明システムの照明器具を含み、これにより、各AP12は、エンドポイント(EP)EP1~EP4 10、例えば、モバイルユーザデバイス又は他のユーザデバイスに向けた光通信のための1つ、又は複数のトランシーバ(TRX)11(すなわち、組合わせトランスミッタ(光エミッタ)及びレシーバ(光センサ))を制御する。TRX11によって生成され、EP10の平面上のカバレッジエリアを定義するそれぞれの光ビームは、図1において破線の台形で示されている。
【0047】
AP12は、自身のカバレッジエリア内の(複数の)EP10と通信するためのタイムスロットスケジュールを適用してもよい。TRX11のカバレッジエリアが(図1のEP1について示されるように)オーバーラップする場合、AP間干渉(cross-AP interference)を低減するために、関連するTRX11が異なるAP12に属する場合、AP12の調整(coordination)が必要とされる。
【0048】
LiFiネットワークを管理するように構成されるLiFiコントローラ13は、スイッチ14に接続され、EP10の1つがAP12のオーバーラップしたカバレッジエリアに移動する及び該オーバーラップしたカバレッジエリアから移動する場合に干渉処理及びハンドオーバをサポートするための斯かる調整を提供することができる。コントローラ13は、スイッチ14を介して(複数の)AP12に接続される。スイッチ13は、同期管理のための同期サーバ16及びバックプレーン又はバックホールネットワーク(例えば、Ethernet)100に接続するためのルータ15に接続されてもよい。
【0049】
図2は、LiFiインフラストラクチャにおけるMIMO通信のための2つのオプションを概略的に示している。
【0050】
LiFiインフラストラクチャは、平面エリア19(例えば、建物の天井壁)に位置するそれぞれのAP(例えば、照明システムの照明器具)の複数のTRX11を含む。各TRX11は、TRXによって発せられる光LiFi信号を受信するための光フロントエンド101を有するEP10が位置する、第2の平面エリア(図示せず、例えば、建物の1階)に投影されるLiFi信号を送信及び受信するための光カバレッジエリアを有する。
【0051】
図1の左のシステムは、同じLiFi信号が、それぞれの天井APの少なくとも2つの異なるTRX11と、EP10の少なくとも2つの異なる光フロントエンド101との間でやり取りされる(exchanged)、MIMOシステムである。
【0052】
図2の右部分に示されるシンプルなバージョンは、それぞれの天井APの複数(少なくとも2つ)のTRX11が、複数のTRX11から複数の信号を受信するEP10における単一の光フロントエンド101と通信する、マルチインプットシングルアウトプット(MISO:multiple input single output)システムである。
【0053】
MISO動作は、EP10の標準光フロントエンド101(例えばドングル)が、天井のTRX11における処理から利益を享受する(benefit from)ことを可能にする。2つ以上のTRX11のそれぞれの送信ブランチは、単一のEP10によって、単一の共通信号を作成するために使用されることができ、本発明は、遅延及び位相差を補償するために使用されてもよい。天井におけるAPのMIMO対応モデム(MIMO-capable modem)は、両方のダウンリンクチャネルを別個にアクティブに推定することができる。これは、(例えば、直交周波数分割多重(OFDM:orthogonal frequency-division multiplexing)の周波数ビンごとに)位相が調整され、コヒーレントな建設的加算(coherent constructive addition)を保証し、マルチパスフェージング(例えば、ヌリング(nulling))を除去することを確実にし得る。
【0054】
多くの場合、LiFi信号の1つ又は2つの光線のみが実際に受信に大きく(significantly)寄与する場合に十分であり得る。これは、MIMO対応モデムがMISO送信のために使用され、それぞれのTRXの2つの光エミッタが、EPにおける1つの光レシーバに送信することで十分であり得ることを意味する。
【0055】
これは、光レシーバが、両方の送信リンクの光路長がほぼ同一であり、振幅が同じであるように、2つの光エミッタのクロスポイントにある場合、かなり効果的であることができる。しかしながら、exp{-2πjτf}の残存位相差(remaining phase difference)が、2つ(又はそれ以上)のTRXの給電ケーブル長(feeding cable length)の違いによって依然として導入され得る。ここで、τは、ケーブル長の違いに起因する時間遅延(time delay)を示し、fは、LiFi信号の周波数を示す。EPにおける光レシーバは、2つの信号を等しい強度で加算するため、完全な消滅又は相殺(ヌル)(full extinction or cancellation (null))が、τf=1/2又はその奇数倍の周波数で生じる。
【0056】
例えば、モデム及びTRX間のケーブル長が例えば2m以上異なる場合、TRX間の中間にあるレシーバは、スペクトルの広い部分にわたる相殺につながる遅延をもって2つの信号を受信する。MISOシステムでは、モデムが、相殺を防止するために一方のTRXの位相が当該周波数範囲において自動的に反転されるように動作されることができる。当該周波数範囲外では、最適な位相が選択され、相殺に起因するノッチ付近の帯域幅が依然として使用されることができる。
【0057】
図3は、two-rayレシーバ(two-ray receiver)の入力アンプにおける信号及び雑音パワースペクトル密度の周波数ダイアグラムを概略的に示している。
【0058】
より具体的には、図3の周波数ダイアグラムは、EPのレシーバにおけるフォトディテクタ要素での光電流(photo current)及び暗電流(darkness current)の直流(DC)の原因として発生するショット雑音信号(SN)、アンプ雑音信号(AN-PSD)及びMISO LiFi信号(S-PSD)のパワースペクトル密度(PSD)の特性を示している。周波数ダイアグラムからわかるように、マルチパス相殺効果(フェージング)に起因するノッチが、約25MHz及び75MHzで観測される。25MHzのノッチにより、チャネルが15~35MHzの間でデータ通信に適さなくなる。
【0059】
様々な実施形態によれば、モジュレータの出力における複数の送信ブランチ信号が、マルチパスフェージング効果に対するロバスト性を高めるために選択された混合係数を用いて結合される。
【0060】
図4は、様々な実施形態による送信ブランチ結合を有する光送信システムのブロック図を概略的に示している。
【0061】
提案されるシステムは、2つ以上の光アウトレット(optical outlet)(すなわち、TRX)の使用を可能にし、コンバイナ機能又は回路(CB)42(以下、「コンバイナ」と呼ぶ)が、選択された混合係数を使用する送信ブランチ信号の固定又は適応線形結合を提供するために追加される。
【0062】
したがって、提案される光ワイヤレス通信システム(例えば、LiFiシステム)は、N個の送信ブランチ(Nは2以上)を有するMIMO信号を生成するように適合される物理層(PHY)信号処理通信ユニット(例えば、MIMOモデム)41(以下、「MIMOモデム」と呼ぶ)を含む。信号処理通信ユニット41のN個の送信ブランチ端子は、コンバイナ42に接続され、コンバイナ42は、それぞれのTRX11のM個の光トランスミッタユニット(エミッタ)に供給されるM個の出力信号(MはN以上)を生成するために複数の混合係数を用いてN個の送信ブランチを結合する。
【0063】
コンバイナ42は、N個の送信ブランチをTRX11のM個のトランスミッタに接続し、N個の送信ブランチの線形結合で構成されてもよく、線形結合の混合係数は、チャネルマトリクス43によって定義されるワイヤレス空間を通じて送信され、(例えば、アドレス指定、衝突回避、データ確認応答プロトコル等を扱う)物理層(PHY)ユニット10が後続する(例えば、チャネルフィルタ、アンプ、アッテネータ、ミキサ等を含む)アナログフロントエンド(AFE)44を通じてレシーバで受信される光信号の相殺(ヌリング)の可能性(likelihood)を減らすように選択される。
【0064】
以下の図6図8の例で説明されるように、コンバイナ42のパラメータベースの結合動作は、固定的又は(例えば、どのTRXがネイバであるかを見出すためにユーザからの(履歴)入力に基づいて又は学習アルゴリズムに基づいて)適応的であることができる。
【0065】
2つのMIMO送信ブランチ又はチャネル又はパス(N=2)及び2つのTRX(M=2)に対する混合係数のシンプルな第1の例は、第1のMIMO送信ブランチを第1のTRXに接続し、第2のMIMO送信ブランチを第2のTRXに接続するだけのものであってもよい。この場合、2つのTRXの入力信号を得るために2つのMIMO送信ブランチを結合するためのパラメータ行列は、以下のように表現され得る。
しかしながら、以下の第2の例も良好な選択であり得る。
これは、第1のTRXの入力信号が、各々混合係数
によって乗じられる2つの送信ブランチ信号の和に相当し、第2のTRXの入力信号が、各々混合係数
によって乗じられる2つの送信ブランチ信号の差に相当することを意味する。
【0066】
2つのMIMO送信ブランチ及び4つのTRXの第3の例によれば、混合係数は、例えば、以下のように選択され得る。
これは、第1のTRXの入力信号が、第1の送信ブランチ信号に相当し、第2のTRXの入力信号が、第2の送信ブランチ信号に相当し、第3のTRXの入力信号が、各々混合係数
によって乗じられる第1及び第2の送信ブランチ信号の和に相当し、第4のTRXの入力信号が、各々混合係数パラメータ
によって乗じられる第1及び第2の送信ブランチ信号の差に相当することを意味する。
【0067】
より一般的に、N個のMIMO送信ブランチ及びM個のトランシーバ、並びにN次元空間(N-dimensional space)について。N次元空間内の各点の座標は、それぞれの信号結合のN個の混合係数を表し、原点までの距離の二乗は、信号パワーを表す。
【0068】
この態様では、コンバイナは、N個の混合係数を用いてモデムのN個の送信ブランチ信号を混合することによりM個のトランスミッタ/トランシーバ出力信号の各々を形成するように構成されてもよい。それぞれの出力信号のN個の混合係数は、N次元空間内の点を表すと考えられることができ、ここで、N次元空間内のそれぞれのM個の点の各々に対する原点までの距離の二乗は同じである。その結果、(同じパワーを有する)N個の送信ブランチ信号の各々は、M個の出力信号の信号パワーに、適用される係数に基づいて、パワーの一部(fraction of power)で寄与し得る。すべてのM個の出力信号について原点までの距離を等しく設定することにより、M個のトランスミッタは、同じ出力信号パワーを送信することになる。
【0069】
N次元空間内のそれぞれのM個の点は、N球(N-sphere)の実部上の点を表す。N=2の場合、これは、単位円(unity circle)の実円の半分(real circle half)に変換する(translate)。レシーバの事前知識がない場合、実円の半分上の点は、レシーバにおいて再構成を容易にするために、できる限り離間されることが好ましい。
【0070】
このアプローチを用いて、M個の出力信号のうちのN個が受信されるエリアにおいてN個の送信ブランチ信号をデコードすることが可能である。送信ブランチ信号が相殺する可能性が低減されるため、これは、異なる光トランスミッタのケーブル長等による、遅延に対するトランスミッタシステムのロバスト性を向上させる。
【0071】
図5は、様々な実施形態による異なる送信ブランチ結合の混合係数を有するMIMOモデムによって出力される2つの送信ブランチ信号の1つを各々表す座標x及びyを有する2次元座標系を概略的に示している。
【0072】
それぞれx軸及びy軸上の2つの座標点50-1及び50-2は、2つのTRXを有する上記第1の例に対応する。
【0073】
さらに、4つの座標点50-1、50-2、51-1及び51-2は、4つのTRXを有する上記第3の例に対応する。
【0074】
さらに、8つの座標点50-1、50-2、51-1、51-2、52-1、52-2、52-3及び52-4は、8つのTRXを有する場合に対応する。
【0075】
2つの送信ブランチ及びM個の出力信号(すなわち、M個のTRX)の一般的な例として、M次元球(M-dimensional sphere)が座標系の原点を中心として描かれることができる。そして、x軸の正のパラメータのみを考慮し、以下の混合係数の行列が得られることができる。
【0076】
上記のパラメータベースの結合は、コンバイナ42のフォワードパス(forward path)にマトリックスパラメータ値の逆数に比例する抵抗を設けることにより実現されることができる。値が負の場合、抵抗は、インバータ回路を追加することによって得られることができる反転信号に接続される。
【0077】
図6は、様々な実施形態による結合の固定設定を有するマルチトランシーバアクセスデバイスのブロック図を概略的に示している。
【0078】
本開示全体を通して、以前に述べられた同一の参照番号を有するブロックの構造及び/又は機能は、追加の特定の機能性が関与しない限り、再度述べられないことに留意されたい。
【0079】
図6のマルチトランシーバアクセスデバイスは、2つの送信ブランチ又はチャネルX及びYを有するMIMOモデム41と、3つのTRX11に供給される3つの出力信号を生成するために固定混合係数を用いて2つの送信ブランチを結合するためのコンバイナ42とを含む。
【0080】
混合係数は、以下のように、混合係数としてそれぞれのオペアンプOPa、OPb、OPcのそれぞれの増幅率又はゲインg1a、g2a、g1b、g2b、g1c、g2cを規定する、それぞれのオペアンプOPa、OPb、OPcのそれぞれの帰還抵抗R3a、R3b、R3cとそれぞれの入力抵抗R1a、R2a、R1b、R2b、R1c、R2cとの比率によって定義される。
g1a=-R3a/R1a
g2a=-R3a/R2a
g1b=-R3b/R1b
g2b=-R3b/R2b
g1c=-R3c/R1c
g2c=-R3c/R2c
【0081】
MIMOモデム41の第1の送信ブランチ信号X(図6の左の出力)がインバータ回路INVを介して上の(upper)オペアンプOPaの入力に案内されることに起因して、図6の上の(upper)TRX11に対するこの送信ブランチの混合係数の符号は、g1a=+R3a/R1aに反転される。
【0082】
それゆえ、TRXの3つの出力信号Oa~Ocは、それぞれの混合パラメータを有する送信ブランチX及びYの以下の結合によって得られる。
上の(Upper)TRX11:Oa=(R3a/R1a)X-(R3a/R2a)Y
中の(Middle)TRX11:Ob=-(R3b/R1b)X-(R3b/R2b)Y
下の(Lower)TRX11:Oc=-(R3c/R1c)X-(R3c/R2c)Y
【0083】
以下では、コンバイナ42の適応的及び/又は自己学習的アプローチの例が、図7及び図8に基づいて述べられる。
【0084】
図7は、様々な実施形態による結合の適応設定を有するマルチトランシーバアクセスデバイスの第1の例のブロック図を概略的に示している。
【0085】
図7の適応コンバイナ(adaptive combiner)42の構成は、インバータ回路INVが省略され、送信ブランチ信号X及びYの各々が、半導体スイッチ(例えば、トランジスタ)又は機械的(マイクロ)スイッチ等として実装されてもよいスイッチング要素S1a、S2a、S1b、S2b、S1c及びS2cのそれぞれのスイッチング要素を介して入力抵抗R1a、R2a、R1b、R2b、R1c及びR2cのそれぞれの入力抵抗に接続されることを除いて、基本的に図6の例に対応する。
【0086】
スイッチS1a、S2a、S1b、S2b、S1c及びS2cのスイッチ状態は、例えば、コミッショニングデバイス又は少なくとも1つのそれぞれのEPの少なくとも1つのレシーバからのフィードバックに基づく適応設定メカニズム又はアルゴリズムによって生成されてもよいそれぞれの制御信号を通じて制御されてもよい。モデム41は、2つの送信ブランチ信号X及びYを生成し、2つの送信ブランチ信号X及びYの適切な結合は、TRX11の各々によって又はTRX11の各々に対して選択される。
【0087】
図8は、様々な実施形態による結合の適応設定を有するマルチトランシーバアクセスデバイスの第2の例のブロック図を概略的に示している。第2の例では、モデム41の2つの送信ブランチ信号X及びYは、3つのTRX11に対する3つの出力信号を生成するために、まずコンバイナ42において、抵抗ネットワークによって定義されるそれぞれの混合係数を有するアンプ-抵抗回路(amplifier-resistor circuit)81によって結合され、これらの出力信号は、半導体スイッチ(例えば、トランジスタ)又は機械的(マイクロ)スイッチ等として実装されてもよいそれぞれのスイッチング要素Sa、Sb及びScを介してTRX11のそれぞれの入力端子に選択的に適用される。
【0088】
図8によれば、第1の送信ブランチ信号X(モデム41の左の出力)は、スイッチング要素Sa~Scが3つの入力端子の中の入力端子を選択するように制御される場合、3つのTRX11の各々に直接適用されることができる。それらの入力端子の上及び下の入力端子は、アンプ-抵抗回路81によって定義されるように、送信ブランチ信号X及びYの特定の結合によって生成されるそれぞれの出力信号に接続される。
【0089】
コンバイナ42における適応結合(adaptive combination)の上記第1及び第2の例では、スイッチング要素の接続状態は、アクセスポイントの隣接するランプ又は照明器具のTRXが異なる通信信号(すなわち、出力信号Oa~Oc)を受信するようにするために学習又はトレーニングアルゴリズムに基づいて制御されることができる。天井等におけるTRXの規則的な矩形パターンでは、2つの異なるMIMO信号が、隣接するTRXが決して同じ信号を受信しないようにするために十分である。
【0090】
システムをトレーニングするために、すべてのTRX11は、その発光のための送信ブランチの適切な結合について通知されてもよく、又は該適切な結合を決定してもよい。目標は、(それぞれのランプ又は照明器具における)隣接するTRXが異なる信号(例えば、異なる位相及び/又は振幅)を受信することを確実にすることであってもよい。
【0091】
適応フィードバック機能が中央コントローラなしで実装される場合、提案される拡張ネットワークインフラはシンプルに保たれることができる。すなわち、TRX11のための送信ブランチ信号X及びYの適応結合は、ローカルに制御されるべきである。
【0092】
コンバイナ42における結合の適合及び/又は初期構成(adaption and/or initial configuration)は、コミッショニングプロシージャによって達成されることができる。コミッショニングプロシージャに関連して必要とされる通信のために、帯域外(OOB:out-of-band)シグナリングが、追加の発光ダイオード(LED)及びフォトディテクタを加えることなくTRX11に実装されることができるため、使用されてもよい。OOBシグナリング(OOB signaling)は、LiFi通信信号の定義された周波数バンドの外側、又は、隠喩的に、LiFiネットワークの他の何らかの種類のシグナリングアクティビティの外側で伝達される。
【0093】
図9は、様々な実施形態によるマルチトランシーバアクセスデバイスにおけるコミッショニングベースの結合設定プロシージャのフロー図を示している。
【0094】
初期ステップS901において、N個のMIMO送信ブランチ信号(例えば、X及びY)が、モデム41から受信される。その後、ステップS902において、コンバイナ42の結合及びそれぞれの混合係数の初期設定又はデフォルト設定が選択され、M個の対応する出力信号がTRX11に転送される。その後のステップS903において、選択された個々の結合に関する情報(結合状態(combination state))が、自動又は手動動作に基づいてLiFi通信範囲をスキャンするモバイルデバイスであってもよいコミッショニングデバイスに(例えば、OOBシグナリングを介して)アクセスデバイスの各TRX11の識別子(ID)と共に送信される。
【0095】
その後、ステップS904において、アクセスデバイスは、コミッショニングデバイスからフィードバックメッセージを受信するまで待つ。フィードバックメッセージは、識別されたTRXの選択された結合が、維持されることができるか、例えば、送信ブランチの同じ又は十分に区別されない結合を使用する隣接するTRXとの衝突(collision)に起因して、更新される必要があるかを示す。
【0096】
その後のステップS905において、アクセスデバイスは、選択された結合が更新されなければならないかどうかをチェックする。そうでない場合、プロシージャはステップS903にジャンプバックし、例えば、コミッショニングデバイスから受信されるトリガに応答して、それぞれのTRXのID及び現在の結合の送信を継続する。選択された結合の所要の更新がコミッショニングデバイスから受信された場合、プロシージャはステップS906に続き、新しい結合が、コミッショニングデバイスから受信されるそれぞれの情報に基づいて又は新しい結合の任意又は所定の自身の選択に基づいて(例えば、コンバイナ42のスイッチング要素に適用される対応する制御信号によって)セットアップされる。
【0097】
図10は、様々な実施形態による結合の適応設定のためのコミッショニングデバイスのブロック図を概略的に示している。
【0098】
コミッショニングデバイスは、コミッショニングシグナリング(commissioning signaling)(例えば、OOBシグナリング)のためのTRX101を有するモバイルユーザデバイスであってもよい。OOBシグナリングは、光周波数範囲又はRF範囲であってもよい。
【0099】
ディテクタ回路(DET)102は、建物の天井等に配置されるそれぞれのアクセスデバイスからOOBシグナリングを介してシグナリングされる結合状態及びIDを検出する、及び、受信した(複数の)ID及び(複数の)結合状態をコンパレータ(CP)103に転送するように構成される。コンパレータは、受信したID及びそれぞれの結合状態のリストを、例えば、受信したIDによって識別されるそれぞれのTRX間の地理的関係に関する地理的情報と共にメモリ又はデータベース(MEM)104に記憶する。この地理的情報(geographical information)は、どの結合状態が隣接するTRXに属するかを(例えば、ネイバフラグ(neighbor flag)等によって)シンプルに示してもよい。
【0100】
コンパレータ103は、2つの隣接するTRXが同一の又は十分に区別できない結合状態を有すると判断する場合、それぞれのTRXの結合状態が更新される必要があるというインディケーションとともに、自身のTRX101を介してそれぞれのTRXのアクセスデバイスへのフィードバック信号の送信を開始する。追加のオプションとして、コンパレータ103は、当該TRXに対して十分に区別できる結合状態(sufficiently discriminative combination state)を選択する、及び、当該TRXへの選択された結合状態の送信を開始するように構成されてもよい。
【0101】
図11は、様々な実施形態によるコミッショニングデバイスにおけるコミッショニングベースの結合設定プロシージャのフロー図を示している。
【0102】
初期ステップS1101において、コミッショニングデバイスは、(自動又は手動動作に基づいてLiFi通信範囲をスキャンするモバイルデバイスであってもよい)当該コミッショニングデバイスのスキャニング範囲内に位置するそれぞれのアクセスデバイスから(例えば、OOBシグナリングを介して)スキャンされた通信範囲内の各TRX11の(複数の)それぞれのIDと共に(複数の)選択された結合状態に関する情報を受信する。
【0103】
その後、ステップS1102において、コミッショニングデバイスは、(複数の)受信した結合状態を、(複数の)それぞれのID及びそれぞれのTRXの隣接状態(neighboring state)を示し得る任意選択的な地理的情報と共に(例えば、コミッショニングデバイスのデータベース又はメモリに)記憶する。これに基づき、EPにおいてMIMO又はMISO受信に使用されることができるすべての(隣接する)TRXペアのログ又はリストが生成されてもよい。手動スキャニングモードでは、ログは、コミッショニングデバイスのユーザが、すべてのTRXからのメッセージが受信されるまで部屋を歩き回りながら生成されてもよい。自動スキャニングモードでは、コミッショニングデバイスにおけるレシーバの受信範囲(例えば、アンテナ特性)が、すべてのTRXが位置するエリア全体をスキャンするために機械的又は電子的に制御されてもよい。
【0104】
その後、ステップS1103において、受信した結合状態のうちどれが(例えば、関連するTRXペアにおける衝突に起因して)更新される必要があるかが判断され、対応するリストが生成されてもよい。オプションの方策として、更新された結合状態が、生成されたリスト上の各TRXに対して選択されてもよい。
【0105】
最後に、ステップS1104において、更新されるべき結合状態及びそれぞれのIDの対応するリストを有するフィードバック信号が、新しい結合状態の任意選択的な提案とともにアクセスデバイスに(例えば、OOBシグナリングを介して)シグナリングされてもよい。
【0106】
図12は、様々な実施形態によるマルチトランシーバアクセスデバイスにおける混合係数の適応設定のためのコミッショニングシステムのアーキテクチャを概略的に示している。
【0107】
図12のシステムにおいて、MIMOモデム41は2つの送信ブランチ信号X及びYを生成し、2つの送信ブランチ信号X及びYは、以下のように2つの送信ブランチ信号X及びYを結合するそれぞれのコンバイナ(図示せず)を含む4つのTRX11(TRX1~TRX4)に供給される。
TRX1:(ID1により識別される)a1X+b1Y
TRX2:(ID2により識別される)a2X+b2Y
TRX3:(ID3により識別される)a3X+b3Y、及び
TRX4:(ID4により識別される)a4X+b4Y
【0108】
一例として、TRXのそれぞれのコンバイナにおける選択は、送信ブランチ信号の信号パスに挿入される少なくとも1つの制御可能波長選択フィルタ(controllable wave-length selective filter)によって実現されることができる。
【0109】
OOBシグナリングを介して、いずれのTRX11も、レシーバ121を有するコミッショニングデバイス120に向けて自身のID及び選択されたX-Y結合(selected X-Y combination)を通信する(例えば、ブロードキャストする)。コミッショニングデバイス120が自身の通信範囲内のすべてのTRX11からメッセージを受信することを確実にするために、ランダムなバックオフ時間(random back-off time)が送信に使用されてもよい。
【0110】
図13は、トランシーバの例示的な配置及びそれぞれの選択された結合状態を概略的に示している。
【0111】
図13の例では、4つのTRX11(TRX1~TRX4)が、部屋の天井等に正方形パターンで配置されている。斯くして、ログのそれぞれのTRXペアは、それぞれのTRX11間に両矢印で示されるように、TRX1/TRX2、TRX1/TRX3、TRX2/TRX4及びTRX3/TRX4であってもよい。図13に示されるように、TRX1、TRX2及びTRX4は、(例えば、MIMOモデムの第1の送信ブランチを示す)結合状態「X」をシグナリングしており、TRX4は、(例えば、MIMOモデムの第2の送信ブランチを示す)結合状態「Y」をシグナリングしている。ログが完了すると、コミッショニングデバイスは、その選択を更新すべきトランシーバのリストを定義することができるようになる。
【0112】
図13に示される例では、TRX2は、すべての識別されたペアの隣接するTRXが、それぞれ相互に異なる結合状態「X」及び「Y」を有するそれぞれの光通信信号を送信するように結合状態「Y」に切り替えるべきである。この結果は、コミッションデバイスによって、OOBチャネルを介して送信されるフィードバック信号において通信し戻される。
【0113】
図14は、様々な実施形態による送信ブランチ結合を有するマルチトランシーバアクセスデバイスの例示的な実装を概略的に示している。
【0114】
図14の例示的な実装において、MIMOモデム140は、プラグ142を介して主電源グリッド(mains power grid)に、及びネットワークケーブル143を介して通信ネットワーク(例えばローカルエリアネットワーク(LAN)等)に接続される。MIMOモデム140は、上記の実施形態で述べられたようなコンバイナ(図示せず)を含み、MIMOモデムによって生成される例えば2つの送信ブランチ信号に基づいてそれぞれ異なる結合状態を有する6つの出力信号を生成する。6つの出力信号は、それぞれのケーブル141を介して、それぞれのTRX11によって生成される出力信号の光送信のための1つ以上のランプ又は照明器具を含むそれぞれの天井ユニット(パネル)145に設けられる対応するソケット146に接続されることができるプラグ又はインターフェースを組み込んだ6つのTRX11(例えば、赤外線(IR)トランシーバ)に供給される。天井ユニット145は、別のプラグ142を介して主電源グリッドに接続されるドライバ回路144(例えば、LEDドライバ)によって駆動される。
【0115】
このようにして、光ワイヤレスTRXユニットは、天井ユニットに組み込まれ、別個のトランスミッタユニットを必要としない。代替的に、例えば、イルミネーション天井ユニットの間隔が、天井ユニットに組み込まれるTRXによって適切なカバレッジを提供するには離れすぎている場合、TRXは、別個の「スタンドアロン」ユニット(図示せず)に設けられてもよい。
【0116】
アクセスデバイス140及びすべての天井ユニット145間のケーブル長は、異なるTRX11の出力信号間の位相遅延を最小限に抑えるために、好ましくは同一であるべきである。
【0117】
図14の例示的な実装は、MIMOモデムによって生成される送信ブランチ信号の数(例えば、2つのアウトレット)を、複数の天井ユニット145(例えば、6又は12個のユニット)のための相互に異なる結合を有するより多くの出力信号に増加することによってMIMOケイパビリティを高めるために使用されることができる。
【0118】
様々な実施形態によれば、逆の通信方向(すなわち、アップリンク方向)も考慮されてもよい。インフラストラクチャデバイス(典型的には、アクセスポイント12の天井又は壁に取り付けられたTRX11)から分散したエンドポイント10に向かうダウンリンク方向において上記の実施形態のいずれかの態様を使用する通信システムは、エンドポイント10からインフラストラクチャデバイスに戻るアップリンク通信リンクでこれを補完してもよい。これは、エンドポイント10の少なくともいくつかが、建物の天井又は壁等に位置するインフラストラクチャデバイスの少なくともいくつかにおけるアップリンク信号ディテクタ又はレシーバによって受信可能なデータ信号を担持する少なくとも1つのアップリンク放射ビームを発することによって実現されてもよい。その後、インフラストラクチャデバイスは、以下の非限定的な例に従って、ダウンリンクMIMO又はMISO信号の結合プロシージャを最適化するためにアップリンク信号レシーバによって受信されるデータ信号を結合してもよい。
【0119】
第1の例では、アップリンク信号レシーバからMIMO対応TRX11への2つのアナログ信号バス(又はダウンリンク分配(downlink distribution)で使用されるのと同数)が設けられることができる。信号バスから受信される信号は、ダウンリンク方向において使用される線形結合(例えば、混合重み(mixing weight))と少なくとも実質的に同一である重み係数(例えば、共有重み(sharing weight))を使用して結合される。一例として、重み係数は、上記の実施形態で述べられるメトリックと同様に決定されてもよい。
【0120】
第2の例では、すべての受信したアップリンクデータ信号が加算されてもよい。しかしながら、これは、位相相殺(phase cancellation)がアップリンクデータ信号の(より高い)部分に影響し、ノイズの蓄積(accumulation of noise)をもたらし得るため、リスクが伴う。このアプローチは、(例えば、大きなダウンロードファイルを含む又はビデオをストリーミングする)所要のダウンリンクデータレートがアップリンク方向におけるデータレートより高い場合、とりわけ魅力的である。
【0121】
第3の例では、ノイズゲーティング(noise gating)が、受信したアップリンクデータ信号に適用されてもよい。例えば、受信したアップリンクデータ信号の強いコピー(例えば、所定の閾値を超える信号対雑音比又はエラーレート)又は最も強いコピーのみが処理されてもよい。これにより、アップリンク方向における信号適応動作(signal-adaptive operation)が実現されることができる。これは、大規模なネットワークにおけるノイズの蓄積を回避する。
【0122】
要約すると、M個の複数のTRXと、少なくともN個の送信ブランチ出力を有する単一のマルチインプットマルチアウトプット(MIMO)モデムとを有するLiFiシステムが述べられ、MIMOモデムのN個の送信ブランチ出力は、リニアコンバイナに供給される。リニアコンバイナは、MIMOモデムのN個のMIMO出力に基づいてM個の区別がつく(distinct)線形結合を作成し、線形結合は、M個の送信信号のうちのN個の区別がつく信号が受信される場合にN個のMIMO信号の各々のデコーディングを可能にするように選択される。
【0123】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明されてきたが、そのような例示及び説明は、図的又は例示的であって、限定的なものではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。提案されるMIMO又はMISO信号の結合プロシージャは、他のタイプのワイヤレスネットワークに、並びに、他のタイプのアクセスデバイス及びトランシーバと共に、適用されることができ、可能であれば標準化されることができる。とりわけ、本発明は、ITU-T G.9961、ITU-T G.9960、及びITU-T G.9991ネットワーク環境等、LiFi関連の環境に限定されるものではない。
【0124】
図面、本開示、及び添付の請求項の検討によって、開示される実施形態に対する他の変形形態が、当業者により理解されることができ、また、特許請求される発明を実施する際に実行されることができる。請求項では、単語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項において列挙される、いくつかの項目の機能を果たしてもよい。特定の手段が、互いに異なる従属請求項内に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが、有利に使用され得ないことを示すものではない。上記の説明は、本発明の特定の実施形態を詳述している。しかしながら、上記がテキストにどのように詳細に現れようとも、本発明は多くの方法で実施されることができ、したがって、開示された実施形態に限定されないことを理解されたい。本発明のある特徴又は態様を説明する際のある用語法(terminology)の使用は、用語法が、当該用語法が関連付けられている本発明の特徴又は態様の特定の特性を含むことに制限されるように本明細書において再定義されていることを意味すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0125】
単一のユニット又はデバイスが、請求項において列挙される、いくつかの項目の機能を果たしてもよい。特定の手段が、互いに異なる従属請求項内に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが、有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0126】
図9及び11に示されるもの等の述べられたプロシージャは、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、及び/又は、レシーバデバイス又はトランシーバデバイスの専用ハードウェアとして実装されることができる。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に、又は他のハードウェアの一部として供給される、光学記憶媒体又は固体媒体等の、好適な媒体において記憶/頒布されてもよいが、インターネット、又は他の有線若しくは無線の電気通信システム等を介して、他の形態で頒布されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】