(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】鉄道車列、特に貨物輸送用の鉄道車列のための制御システム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20230605BHJP
B60T 13/66 20060101ALI20230605BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
B60T17/22 Z
B60T13/66 A
G05B9/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565762
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 IB2021053441
(87)【国際公開番号】W WO2021220144
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】102020000009205
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】グラッソ, アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】ティオーネ, ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】コッレンド, ロベルト
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
5H209
【Fターム(参考)】
3D048AA04
3D048BB12
3D048CC43
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3D049RR04
5H209AA09
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5H209DD06
5H209GG05
5H209HH04
5H209JJ01
5H209JJ05
(57)【要約】
貨車(102)と、マスター機関車(101)と、少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)と、を含む、特に貨物輸送用の鉄道車列(400)のための制御システムが開示される。鉄道車列(400)は、鉄道車列(400)全体に沿って延在するブレーキパイプ(105)を含む。マスター機関車(101)は、ブレーキパイプ(105)内の圧力を制御し、通信チャネルを用いてスレーブ機関車(402、403)に牽引指令および/またはブレーキ指令を送るよう設けられている。少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)は、牽引指令および/またはブレーキ指令を受信し、牽引指令および/またはブレーキ指令をスレーブ機関車(402、403)の牽引制御ユニット(232)およびブレーキ制御ユニット(211)に再送信するよう設けられた送受信手段(230)を含む。制御システムは、鉄道車列(400)のための制御システムの少なくとも1つの誤動作状態が発生した際に、リレーバルブ(212)が空気圧ブレーキパイプ(105)に供給するのを防止するよう設けられた安全ユニット(501)を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貨車(102)と、鉄道車列(400)の先頭に配置されたマスター機関車(101)と、前記鉄道車列(400)内に分配された少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)と、を含む、前記鉄道車列(400)、特に貨物輸送用の前記鉄道車列(400)のための制御システムであって、
前記鉄道車列(400)は、
前記鉄道車列(400)の常用空気圧ブレーキおよび非常用空気圧ブレーキ用であって、前記鉄道車列(400)全体に沿って延在するブレーキパイプ(105)を含み、
前記マスター機関車(101)は、前記ブレーキパイプ(105)内の圧力を制御し、無線技術または有線技術の通信チャネル(404、405)を用いて、前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)に牽引指令および/またはブレーキ指令を送るよう設けられ、
前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)は、前記通信チャネル(404、405)を通じて前記マスター機関車(101)により送られた前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令を受信するよう設けられた送受信手段(230)を含み、
前記送受信手段(230)は、前記ブレーキパイプ(105)内の前記圧力を制御するために、前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)内の通信手段(235)を用いて、前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令を前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)の牽引制御ユニット(232)およびブレーキ制御ユニット(211)に再送信するよう、さらに設けられ、
前記ブレーキ制御ユニット(211)は、リレーバルブ(212)のパイロットチャンバー(213)内の圧力を増加させるよう設けられた第1の空気圧ソレノイドバルブ(204)、および、前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)内の前記圧力を減少させるよう設けられた第2の空気圧ソレノイドバルブ(205)に作用することによって、前記ブレーキパイプ(105)内の前記圧力を制御するよう設けられ、
前記リレーバルブ(212)のインレットは、メインパイプ(201)によって圧力供給されるよう設けられ、
前記リレーバルブ(212)のアウトレット(214)は、前記ブレーキパイプ(105)に接続されるよう設けられ、
前記鉄道車列(400)のための前記制御システムは、前記ブレーキ制御ユニット(211)に関連付けられた安全ユニット(501)を備え、
前記安全ユニット(501)は、前記鉄道車列(400)のための前記制御システムの少なくとも1つの誤動作状態が発生した際に、前記リレーバルブ(212)が前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給することを防止するよう設けられていることを特徴とする鉄道車列(400)のための制御システム。
【請求項2】
前記鉄道車列(400)の前記制御システムの前記少なくとも1つの誤動作状態は、
前記通信チャネルが、前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令を前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)に送信することができなくなった状態、または、
前記送受信手段(230)が、前記ブレーキパイプ(105)内の前記圧力を制御するために、前記通信チャネルを通じて前記マスター機関車(101)によって送られた前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令を受信することができなくなった状態、または、前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令を前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)の前記牽引制御ユニット(232)および前記ブレーキ制御ユニット(211)に再送信できなくなった状態、または、
前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)の内部の前記通信手段(235)が、前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令を、前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)の前記牽引制御ユニット(232)および前記ブレーキ制御ユニット(211)に再送信することができない状態を含む請求項1に記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項3】
前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)に空気圧で接続されるよう設けられた第1の圧力センサー手段(236)をさらに含み、
前記ブレーキ制御ユニット(211)、前記第1の空気圧ソレノイドバルブ(204)、前記第2の空気圧ソレノイドバルブ(205)、前記リレーバルブ(212)、および前記第1の圧力センサー手段(236)の全ては、前記鉄道車列(400)の前記ブレーキパイプ(105)内の前記圧力を制御するための機能を実行するよう設けられており、
前記鉄道車列(400)のための前記制御システムの前記少なくとも1つの誤動作状態は、
前記第1の空気圧ソレノイドバルブ(204)、前記第2の空気圧ソレノイドバルブ(205)、前記リレーバルブ(212)、および、前記第1の圧力センサー手段(236)のうちの少なくとも1つが正しく機能していない状態を含む請求項1または2に記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項4】
前記ブレーキパイプ(105)に空気圧で接続され、かつ、電気信号(507)によって前記安全ユニット(501)に電気的に接続された第2の圧力センサー手段(506)をさらに含み、
前記安全ユニット(501)は、
前記第2の圧力センサー手段(506)を用いて前記ブレーキパイプ(105)内の前記圧力をモニタリングし、
前記通信手段(235)を介して、前記ブレーキ制御ユニット(211)と同時に、前記マスター機関車(101)によって前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)に送信され、前記ブレーキパイプ(105)に印加されるべき圧力値を示す、前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令を受信し、
受信されたそれぞれの前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令について、それぞれの前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令によって示される前記圧力値が、前記第2の圧力センサー手段(506)を通して測定されたそれぞれの圧力値を含む、しきい値の範囲内に入るかどうかを比較するよう設けられ、
前記鉄道車列(400)のための前記制御システムの前記少なくとも1つの誤動作状態は、
それぞれの前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令によって示される前記圧力値が、前記第2の圧力センサー手段(506)を介して測定されたそれぞれの前記圧力値を含む、前記しきい値の範囲内に入らない状態を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項5】
前記ブレーキパイプ(105)に空気圧で接続され、かつ、電気信号(507)によって前記安全ユニット(501)に電気的に接続された第2の圧力センサー手段(506)をさらに含み、
前記安全ユニット(501)は、
前記第2の圧力センサー手段(506)を用いて前記ブレーキパイプ(105)内の前記圧力をモニタリングし、
前記通信手段(235)を介して、前記ブレーキ制御ユニット(211)と同時に、前記マスター機関車(101)によって前記少なくとも1つのスレーブ機関車(402、403)に送信され、前記ブレーキパイプ(105)に印加されるべき圧力値を示す前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令を受信し、
受信されたそれぞれの前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令について、前記第2の圧力センサー手段(506)を介して測定された圧力値が、それぞれの前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令によって示される前記圧力値を含む、しきい値の範囲内にあるかどうかを比較するよう設けられ、
前記鉄道車列(400)のための前記制御システムの前記少なくとも1つの誤動作状態は、
前記第2の圧力センサー手段(506)を介して測定された前記圧力値が、それぞれの前記牽引指令および/または前記ブレーキ指令によって示される前記圧力値を含む、前記しきい値の範囲内に入らない状態を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項6】
前記安全ユニット(501)は、前記リレーバルブ(212)が前記メインパイプ(201)と前記リレーバルブ(212)の空気圧インレットとの間に配置された空気圧ソレノイドバルブ(209)を用いて、前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給することを防止するよう設けられており、
前記空気圧ソレノイドバルブ(209)は、前記メインパイプ(201)から前記リレーバルブ(212)の前記空気圧インレットへの空気圧供給圧力の伝播を禁止する第1の状態、および、前記メインパイプ(201)から前記リレーバルブ(212)の前記空気圧インレットへの前記空気圧供給圧力の前記伝播を可能にする第2の状態をとるよう設けられ、
前記安全ユニット(501)は、前記リレーバルブ(212)が前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給することを防止しなければならない際に、前記第1の状態で前記空気圧ソレノイドバルブ(209)を駆動するよう設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項7】
前記安全ユニット(501)は、前記リレーバルブ(212)が第1の電空モジュール(609)を用いて前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給するのを防止するよう設けられており、
前記第1の電空モジュール(609)は、前記メインパイプ(201)に接続された第1の空気圧インレットと、前記ブレーキパイプ(105)に接続された第2の空気圧インレットと、前記リレーバルブ(212)の前記インレットに接続された空気圧アウトレットと、を備え、
前記第1の電空モジュール(609)は、
前記メインパイプ(201)を前記リレーバルブ(212)の前記インレットに空気圧で接続する第1の状態をとり、
前記ブレーキパイプ(105)を前記リレーバルブ(212)の前記インレットに空気圧で接続する第2の状態をとるよう設けられ、
前記安全ユニット(501)は、前記リレーバルブ(212)が前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給および前記ブレーキパイプ(105)から圧力放出することを防止しなければならない際、前記第1の電空モジュール(609)を前記第2の状態で駆動するよう設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項8】
前記安全ユニット(501)は、第2の電空モジュール(610)を用いて、前記リレーバルブ(212)が前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給および前記ブレーキパイプ(105)から圧力放出することを防止するよう設けられており、
前記第2の電空モジュール(610)は、前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)内の前記圧力を増加させるよう設けられた前記第1の空気圧ソレノイドバルブ(204)の下流、および、前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)内の前記圧力を減少させるよう設けられた前記第2の空気圧ソレノイドバルブ(205)の下流に接続された第1の空気圧インレットと、前記ブレーキパイプ(105)に接続された第2の空気圧インレットと、前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)に接続された空気圧アウトレットと、を備え、
前記第2の電空モジュール(610)は、
前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)内の前記圧力を増加させるよう設けられた前記第1の空気圧ソレノイドバルブ(204)、および、前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)内の前記圧力を減少させるよう設けられた前記第2の空気圧ソレノイドバルブ(205)を、前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)に空気圧で接続する第1の状態をとり、
前記ブレーキパイプ(105)を前記リレーバルブ(212)の前記パイロットチャンバー(213)に空気圧で接続する第2の状態をとるよう設けられ、
前記安全ユニット(501)は、前記リレーバルブ(212)が前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給および前記ブレーキパイプ(105)から圧力放出することを防止しなければならない際に、前記第2の電空モジュール(610)を前記第2の状態で駆動するよう設けられている請求項1ないし7のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項9】
前記安全ユニット(501)は、前記ブレーキパイプ(105)に空気圧で接続された空気圧非常ソレノイドバルブ(219)を制御するよう設けられており、
前記空気圧非常ソレノイドバルブ(219)は、
前記ブレーキパイプ(105)と大気との間の空気圧接続を禁止する第1の状態をとり、
前記ブレーキパイプ(105)と大気との間の前記空気圧接続を可能にする第2の状態をとるよう設けられており、
前記安全ユニット(501)は
前記マスター機関車(101)からの非常ブレーキの適用の要求がある場合に、前記第2の状態で前記空気圧非常ソレノイドバルブ(219)を作動させ、および/または、
前記非常ブレーキが適用中であることを示す前記ブレーキパイプ(105)内の圧力変動がある場合、および/または、前記送受信手段(230)、前記通信チャネル(404、405)および前記通信手段(235)のうちの少なくとも1つが正しく機能していない場合に、前記第2の状態で前記空気圧非常ソレノイドバルブ(219)を作動させる請求項1ないし8のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項10】
前記安全ユニット(501)は、前記リレーバルブ(212)の前記アウトレット(214)と前記ブレーキパイプ(105)との間に位置するように配置された空気圧ソレノイドバルブ(215)を用いて、前記リレーバルブ(212)が前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給およびブレーキパイプ(105)から圧力放出することを防止するよう設けられており、
前記空気圧ソレノイドバルブ(215)は、
前記リレーバルブ(212)の前記アウトレット(214)と前記ブレーキパイプ(105)との間の空気圧接続を禁止する第1の状態とり、
前記リレーバルブ(212)の前記アウトレット(214)と前記ブレーキパイプ(105)との間の前記空気圧接続を可能にする第2の状態をとるよう設けられており、
前記安全ユニット(501)は、前記リレーバルブ(212)が前記ブレーキパイプ(105)に圧力供給およびブレーキパイプ(105)から圧力放出することを防止しなければならない際に、前記空気圧ソレノイドバルブ(215)を前記第1の状態で駆動するよう設けられている請求項1ないし9のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項11】
前記安全ユニット(501)は、関連付けられた前記ブレーキ制御ユニット(211)の安全インテグリティーレベルよりも高い前記安全インテグリティーレベルに従って開発されている請求項1ないし10のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項12】
前記安全ユニット(501)は、安全インテグリティーレベルSIL≧3に従って開発されている請求項1ないし11のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項13】
前記安全ユニット(501)は、1つ以上のマイクロプロセッサーを備える構成に従って製作されている請求項1ないし12のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【請求項14】
前記安全ユニット(501)は、1つ以上のプログラム可能なデバイスを備える構成に従って製作されている請求項1ないし13のいずれかに記載の鉄道車列(400)の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、鉄道ブレーキシステムの分野に関し、より具体的には、本発明は、鉄道車列、特に貨物輸送用の鉄道車列(railway convoy)のための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下において、欧州規格EN50129(rev.2018)、EN50159(rev.2010)、EN50126-1(rev.2017)、EN50126-2(rev.2017)、およびEN50128(rev.2011)を参照する。
・EN50126「鉄道用途。信頼性、可用性、保守性、安全性(RAMS)の仕様とデモンストレーション(Railway applications. The specification and demonstration of reliability, availability, maintainability and safety (RAMS))」
・EN50128「鉄道用途。通信、信号伝達、処理システム。鉄道制御および保護システム用ソフトウェア(Railway applications. Communications, signalling and processing systems. Software for railway control and protection systems)」
・EN50129「鉄道用途。通信、信号伝達、処理システム。信号伝達用の安全関連電子システム(Railway applications. Communication, signalling and processing systems. Safety related electronic systems for signalling)」
・EN50129「鉄道用途。通信、信号伝達、処理システム。伝達システムにおける安全関連通信(Railway applications. Communication, signalling and processing systems. Safety related communication in transmission systems)」
【0003】
特に、EN50126規格は、安全性解析の結果に基づいて、本発明に係るシステムを構成する複数のサブシステムに、安全インテグリティーレベル(safety integrity level)SIL0/1/2/3/4を割り当てるための方法を規定している(SIL4は、安全レベルが最も高いことを示している)。そして、EN50128規格およびEN50129規格は、安全性解析の結果に基づき割り当てられたSILレベルに従って、ソフトウェアおよびハードウェアコンポーネントにそれぞれ適用されるべき設計基準を規定している。
【0004】
従来技術において、以下のことが知られている。
・欧州規格EN50126に従って実行される非常ブレーキ機能に関する安全性の計算は、非常ブレーキ機能に安全インテグリティーレベルSIL≧3を体系的に割り当て、その結果、通常、それらを実施するサブシステムに安全インテグリティーレベルSIL≧3を割り当てること。
・欧州規格EN50126に従って実行される常用ブレーキ機能に関する安全性の計算は、通常、常用ブレーキ機能に安全インテグリティーレベルSIL≦2を割り当て、その結果、通常、それらを実施するサブシステムに安全インテグリティーレベルSIL≦2を割り当てること。
・EN50128およびEN50129に関するSIL≧3レベルに従った、典型的には、マイクロプロセッサーに基づく、または、FPGAに基づく、制御ユニットの開発においては、SIL≦2レベルに従った設計よりも、設計コスト、検証コスト、および認証コストが、必然的に、およそ1桁大きくなるということ。
【0005】
上述の最後の点に関連して、SIL≧3の安全レベルに従って開発されるべき機能を、極めて限定的で簡素なものに維持することに価値があることは明らかである。
【0006】
【0007】
列車100は、複数の貨車(wagons)102を引く機関車(locomotive)101により形成されている。
【0008】
機関車101に導入されている(installed)列車100のブレーキシステムは、圧縮空気を生成し、フィルタリングし、貯蔵するためのユニット103により構成されている。このユニット103は、ブレーキ制御ユニット104に、圧縮空気を供給するよう設けられている。圧縮空気は、通常、6bar(600kPa)と10bar(1000kPa)との間で変動する圧力値で貯蔵されている。
【0009】
ブレーキ制御ユニット104は、「ブレーキパイプ」として知られるパイプ105に圧力供給する(supply)。ブレーキパイプ105は、列車の全長に渡り通っており、通常、貨車102上に導入された剛性セグメント(rigid segment)107と、貨車間に設置された可撓性要素(flexible elements)106により構成されている。可撓性要素106は、鉄道ルートが曲線状である全ての状態において、ブレーキパイプ105の空気圧の連続性(pneumatic continuity)を確保するよう構成されている。
【0010】
各貨車102において、ブレーキユニット108は、ブレーキパイプ105に接続されている。ブレーキユニット108は、ブレーキ制御ユニット104により掛けられるブレーキパイプ105内の現在の圧力値に依存する圧力で、圧縮空気を集め(collect)、ブレーキシリンダ109に供給する。
【0011】
図3は、UIC(International Union of Railways)規格によって規定されるブレーキユニット108の伝達関数(transfer function)を示している。X軸は、ブレーキパイプ105内の圧力を表し、Y軸は、ブレーキユニット108から出力されるブレーキ圧力を表している。
【0012】
ブレーキパイプ105内の圧力、すなわち、ブレーキユニット108への入力圧力が、5bar(500kPa)に相当する公称値(nominal value)を有する場合、ブレーキユニット108から出力されるブレーキ圧力は、0bar(0kPa)の値を取る(assume)、すなわち、ブレーキ動作は、実行されない。
【0013】
ブレーキパイプ105内の圧力、すなわち、ブレーキユニット108への入力圧力が公称3.5bar(350kPa)以下の任意の他の値を有するとき、ブレーキユニット108から出力されるブレーキ圧力は、3.8bar(380kPa)という値をとる。すなわち、非常ブレーキに対応する最大ブレーキ圧力が印加される(applied)。
【0014】
公称(nominal)3.5bar(350kPa)と公称5bar(500kPa)との間の、ブレーキパイプ105、すなわちブレーキユニット108への入力圧力における圧力値について、ブレーキユニット108から出力されるブレーキ圧力は、X軸上の、およそ公称5bar(500kPa)の最小圧力区間を除き、公称3.8bar(380kPa)と公称0bar(0kPa)との間で線形圧力値(linear pressure values)をとる。
【0015】
図2は、ブレーキ制御ユニット104の簡略化された実施形態を示している。従来技術において、例えば
図2に示されるように、ブレーキ制御ユニット104は、程度の差はあるが様々な複雑な形態をとり得る。
【0016】
メインパイプ201は、圧縮空気を生成し、フィルタリングし、貯蔵するためのユニット103によって圧力供給される。圧縮空気は、通常、6bar(600kPa)と10bar(1000kPa)との間で変化する圧力値をとる。
【0017】
メインパイプ201は、空気圧ソレノイドバルブ203、204、205のグループに、通常、6bar(600kPa)よりも低い圧力値を供給するよう意図された圧力リリーフバルブ202に圧力供給する。
【0018】
空気圧ソレノイドバルブ203は、電気指令信号206によって作動され、電気指令信号206が電力を提供しない場合、空気圧ソレノイドバルブ204への供給圧力の伝播(propagation)を禁止する第1の状態をとる。電気指令信号206が電力を提供する場合、空気圧ソレノイドバルブ204への供給圧力の伝播を可能にする第2の状態をとり得る。
【0019】
電気指令信号206は、ブレーキ制御ユニット211によって、または外部電源によって生成されてもよく、その性質は機関車101の全体構造(general architecture)に依存する。
【0020】
メインパイプ201は、さらに空気圧ソレノイドバルブ209に圧力供給する。
【0021】
空気圧ソレノイドバルブ209は、電気指令信号210によって作動される。空気圧ソレノイドバルブ209は、電気指令信号210が電力を提供しない場合、リレーバルブ212への供給圧力の伝播を禁止する(inhibit)第1の状態をとり、電気指令信号210が電力を提供する場合、リレーバルブ212への供給圧力の伝播を可能にする第2の状態をとり得る。
【0022】
電気指令信号210は、ブレーキ制御ユニット211によって、または外部電源によって生成されてもよく、その性質は機関車101の全体構造に依存する。
【0023】
空気圧ソレノイドバルブ204は、電気指令信号207によって作動される。電気指令信号207が電力を提供しない場合、リレーバルブ212のパイロットチャンバー(pilot chamber)213への供給圧力の伝播を禁止する第1の状態をとり得る。電気指令信号207が電力を提供する場合、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213への供給圧力の伝播を可能にする第2の状態をとり得る。
【0024】
空気圧ソレノイドバルブ205は、電気指令信号208によって作動される。電気指令信号208が電力を供給しない場合、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213内における圧力が大気に放出される(discharged)ことを可能にする第1の状態をとり得る。電気指令信号208が電力を供給する場合、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213内の圧力の大気への放出を禁止する第2の状態をとり得る。
【0025】
電気指令信号207および208は、ブレーキ制御ユニット211によって生成される。
【0026】
ブレーキ制御ユニット211は、要求指令217を受信し、0bar(0kPa)から最大値(通常5bar(500kPa)から5.5bar(550kPa))の公称範囲内で圧力値をブレーキパイプ105に印加する。
【0027】
ブレーキ制御ユニット211は、指令217から受信された要求に従って、リレーバルブ212のアウトレット(outlet:排気口)214における圧力を減少させ、維持し、増加させる。ブレーキ制御ユニット211は、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を増加させるために、電気指令信号207、208を変化させ、空気圧ソレノイドバルブ(pneumatic solenoid valves)204、205の双方に電力を供給する。ブレーキ制御ユニット211は、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を減少させるために、空気圧ソレノイドバルブ204、205の双方の電力の供給を停止する。また、ブレーキ制御ユニット211は、空気圧ソレノイドバルブ204への電力の供給を停止し、空気圧ソレノイドバルブ205に電力を供給することにより、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を一定に保つ。さらに、パイロットチャンバー213に空気圧で接続された第1の圧力センサー手段236を読み取ることによって、パイロットチャンバー213における圧力を制御するためのループを閉じる。
【0028】
空気圧ソレノイドバルブ215は、リレーバルブ212のアウトレット214とブレーキパイプ105との間に配置されている。空気圧ソレノイドバルブ215は、電気指令信号218によって作動され、電気指令信号218が電力を提供しない場合、ブレーキパイプ105とリレーバルブ212との間の空気圧接続を禁止する第1の状態をとる。電気指令信号218が電力を提供する場合、空気圧ソレノイドバルブ215は、ブレーキパイプ105とリレーバルブ212との間の空気圧接続を可能にする第2の状態をとる。
【0029】
多くの実適用において、複数の鉄道事業者の現地規制(local regulations)に応じて、
図2に示されている図には空気圧ソレノイドバルブ209のみ、または空気圧ソレノイドバルブ215のみが存在する。
【0030】
空気圧ソレノイドバルブ(空気圧非常ソレノイドバルブ)219は、ブレーキパイプ105に空気圧で接続されている。空気圧ソレノイドバルブ219は、「非常ループ(emergency loop)」としても定義される電気信号220によって作動される。非常ループ(電気信号)220が電力を供給する場合、ブレーキパイプ105と大気との間の空気圧接続を禁止する第1の状態をとる。非常ループ(信号)220が電力を供給しない場合、ブレーキパイプ105と大気との間の空気圧接続を可能にする第2の状態をとる。
【0031】
非常ループ(信号)220は、列車の非常ブレーキを要求し得る1つ以上の装置221によって作動される1つ以上の接点222によって遮断され(interrupted)得る。
【0032】
非常ブレーキを必要とする事象が存在する場合、1つ以上の装置221は、1つ以上のそれぞれの接点222を開くことにより非常ループ(信号)220を遮断し、空気圧ソレノイドバルブ219をその第2の状態にする。
【0033】
このようにして、空気圧ソレノイドバルブ219は、ブレーキパイプ105を大気に空気圧で接続、すなわち、ブレーキパイプ105内の圧力を、非常ブレーキの圧力値に対応する公称0bar(0kPa)の値にする。
【0034】
いくつかの非排他的な事例において、1つ以上の装置221は、送受信手段230および/またはブレーキ制御ユニット211と一致し得る。
【0035】
さらに、非常ブレーキ要求のための要求を示す信号220、すなわち非給電信号(non-powered signal)の場合、非常ループ(信号)220は、ブレーキ制御ユニット211に接続されてもよい。ブレーキ制御ユニット211は、2つの空気圧ソレノイドバルブ204、205への電力の供給を停止し(de-energize)、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を0bar(0kPa)にする、すなわち、リレーバルブ212を介してブレーキパイプ105をさらに放出させる。
【0036】
さらに、非常ループ(信号)220は、電力が供給される場合、接点223をアクティブ化させるために、または、電力が供給されない場合、接点223を非アクティブ化するために使用され得る。このように、信号220へ電力が供給されない場合、接点223は、開放状態(open condition)にセットされ、これにより、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を0bar(0kPa)にするために、2つの空気圧ソレノイドバルブ204、205への電力供給を停止する(de-energizing)。すなわち、空気圧ソレノイドバルブ219によって同時に実行される動作と重複して、リレーバルブ212を介してブレーキパイプ105をさらに放出させる。
【0037】
ブレーキパイプ105の圧力を公称値0bar(0kPa)にする動作は、その結果として、3.8bar(380kPa)に対応する最大ブレーキ圧力をブレーキユニット108に印加することを意味している。
【0038】
前述のように、非常ブレーキ機能は、安全レベルSIL4に従って開発される必要がある。
【0039】
従来技術において、空気圧ソレノイドバルブ219と、信号220と、1つ以上の装置221と、1つ以上のそれぞれの接点222と、接点223と、および、非常ブレーキ適用機能を構成するそれらの全ての統合(integration)と、を含むコンポーネント(components)のグループは、適用可能な欧州規格に準じてSIL4安全レベルに従って開発される。
【0040】
空気圧ソレノイドバルブ219と、信号220と、1つ以上の装置221と、1つ以上のそれぞれの接点222と、接点223と、を含むコンポーネントのグループの統合によって実行されるブレーキ適用動作は、ブレーキ制御ユニット211によって実行される全ての動作より優先される。このソリューションは、EN50128およびEN50129の規格に従う安全レベルSIL2を超えないブレーキ制御ユニット211の開発を可能にする。
【0041】
圧力スイッチ231は、ブレーキパイプ105に空気圧で接続され、牽引制御ユニット(traction control unit)232に接続された電気指令信号(電気制御信号)233を生成するよう設けられている。
【0042】
ブレーキパイプ105内の圧力が3.5bar(350kPa)よりも大きい場合、圧力スイッチ231は、指令信号233に電力を供給する。ブレーキパイプ105内の圧力が3.5bar(350kPa)以下である場合、圧力スイッチ231は、指令信号233への電力供給を停止する。
【0043】
牽引制御ユニット232の内部の適切な回路234は、指令信号233への電力の有無をモニタリングする。指令信号233に対する電圧(tension)が検出された場合、回路234は、牽引制御ユニット232が牽引モーター(図示せず)に電力を供給することを可能にする。回路234は、指令信号233に対する電圧(tension)が検出されない場合、牽引制御ユニット232が牽引モーター(図示せず)に電力を供給することを防止する(prevent)。
【0044】
このソリューションは、非常ブレーキ要求がある場合に、牽引制御システムがモーターに動力を供給すること、すなわち、列車100を引くことを禁止する。
【0045】
従来技術において、非常ブレーキがある場合、牽引禁止機能(traction inhibition function)を構成する圧力スイッチ231と、指令信号233と、適切な回路234と、および、それら全ての統合と、を含むコンポーネントのグループは、適用可能な欧州規格に従ってSIL4安全レベルに従って開発されている。
【0046】
貨物輸送のための鉄道輸送量の増加の必要性が増大しているため、より多くの牽引力が必要とされている。単一の機関車101が必要な動力を供給することができない場合、1つ以上の機関車が列車100に追加される。
【0047】
図4において、非排他的な例として、第2の機関車402は、列車(鉄道車列)400の中間位置に追加されている。機関車402の代替物として、または、機関車402に加えて、列車400の端部に追加の機関車403を追加してもよい。さらなる複数の機関車が列車400に追加されてもよい。さらなる機関車402、403は、圧縮空気を生成し、フィルタリングし、貯蔵するための独自のユニット103をさらに備えている。ユニット103は、独自のブレーキ制御ユニット104に供給するよう設けられ、ブレーキパイプ105に接続されている。
【0048】
さらなる機関車402、403は、スレーブ機関車(slave locomotives)として定義されており、先頭の機関車101は、マスター機関車として定義されている。スレーブ機関車である、さらなる機関車402、403は、マスター機関車である機関車101によって実行される牽引またはブレーキ動作を正確に再現する(replicate)ことができるよう、先頭の機関車101と同期されなければならない。そのため、マスター機関車101および1つ以上のスレーブ機関車402、403は、無線通信チャネル404または有線シリアルの通信チャネル405を用いて互いに通信する。マスター機関車およびスレーブ機関車の内部において、送受信手段230は、通信チャネル404、405で送受信するよう設けられている。マスター機関車およびスレーブ機関車の内部において、送受信手段230は、内部の通信手段235を用いて、牽引制御ユニット232およびブレーキ制御ユニット211と通信する。内部の通信手段235は、シリアル通信チャネルを備えているが、これに限られない。
【0049】
WO2017025895は、
図4に示されるように、マスター機関車と1つ以上のスレーブ機関車との間の通信システムと、無線チャネルが失われた場合の列車の運行の安全性への影響について詳述し、この縮退モード(degraded mode)におけるリスクを軽減する方法を請求(claim)している。
【0050】
マスター機関車101が非常ブレーキを掛けると同時に、非常ブレーキの適用要求を1つ以上のスレーブ機関車402、403に送り、および、さらに同時に、現在ブレーキが掛かっていない状態の1つ以上のスレーブ機関車402、403が、非常ブレーキの適用要求を受信しない事態を例に挙げて、縮退モードの非排他的な事例を説明する。この場合、以下の一連の問題が生じる。
・マスター機関車101の近傍において、ブレーキパイプ105内の圧力が0bar(0kPa)に低下する。
・1つ以上のスレーブ機関車402、403の近傍において、ブレーキパイプ105内の圧力は、依然として5bar(500kPa)である。
・圧力差は、1つ以上のスレーブ機関車402、403からマスター機関車101に向かう空気の流れを引き起こし、その結果、ブレーキパイプ105に沿って圧力降下が生じ、それによって、第1のスレーブ機関車402の近傍における公称5bar(500kPa)からマスター機関車101の近傍における公称0bar(0kPa)までの範囲の圧力値が生成される。
・通常、ブレーキパイプ105内の圧力が公称3.5bar(350kPa)未満である全ての貨車は、最大ブレーキ圧力値を適用する。
・ブレーキパイプ105内の圧力が3.5bar(350kPa)から5bar(500kPa)の間にある全ての貨車は、
図3に示されるグラフに従って圧力を加える。
・特に、第1のスレーブ機関車402の近傍、および、第1のスレーブ機関車402と、予定されるさらなるスレーブ機関車403と、の間の貨車は、公称5bar(500kPa)以上の圧力をブレーキパイプ105内に有し、いかなるブレーキも適用しないであろう。
・さらに、1つ以上のスレーブ機関車402、403が、通信チャネル404の損失の前にアクティブな牽引状態にあった場合、圧力スイッチ231における圧力が3.5bar(350kPa)の値を下回らないため、1つ以上のスレーブ機関車402、403は、牽引を適用し続けてしまい、これにより、圧力スイッチ231が牽引制御ユニット232を禁止する(inhibit)ことを防止する。
【0051】
全体的な結果は、実質的に列車の前方部分のみに非常ブレーキをかけることができる非常ブレーキ状況における列車100によって表される。一方、この状況において、1つ以上のスレーブ機関車402、403の近傍の列車の部分は、解除状態(動くことができる状態)(release condition)のままであり、1つ以上のスレーブ機関車402、403は列車を押し続けるため、列車400の脱線の高リスク状態を作り出してしまう。
【0052】
WO2017025895は、通信チャネル404が失われた場合に、1つ以上のスレーブ機関車402、403に属するリレーバルブ212が、ブレーキパイプ105に圧力供給することを防止することを開示している。このようにして、適時、圧力を、列車全体に沿って0bar(0kPa)まで降下させることができるので、これにより、上述の危険な状況が防止される。
【0053】
WO2017025895は、リスク軽減措置に関与する装置および関連するソフトウェアが、いずれの安全レベルに従わなければならないかを詳述するものでも、開示するものでもない。
【0054】
前述のリスク軽減措置、とりわけ非常ブレーキに関連する装置および関連するソフトウェアが、欧州規格EN50128およびEN50129に従ったSIL≧3レベルに従って開発されなければならないことは明らかである。
【0055】
この場合、リレーバルブ212および空気圧ソレノイドバルブ209、215の制御を担うブレーキ制御ユニット211は、欧州規格EN50128およびEN50129に従ったSIL≧3レベルに従って開発されなければならない。
【0056】
ブレーキ制御ユニット211の機能的な複雑さ、ハードウェアおよびソフトウェアを考慮すると、欧州規格EN50128およびEN50129に従ったSIL≧3レベルに従ったその開発は、上記の理由から極めて複雑で不経済である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0057】
従って、本発明の目的は、より簡素で、開発コストを抑えたソリューションを提供することである。
【0058】
本発明のさらなる目的は、非常ブレーキ状況において、列車の前方部分以外にも非常ブレーキを掛けることができるソリューションを提供し、その結果、列車自体が脱線する(derailing)リスクを低減することである。
【0059】
本発明の1つの態様によれば、上記目的および他の目的、並びに利点は、請求項1に規定される特徴を有する、鉄道車列、特に貨物輸送用の鉄道車列のための制御システムによって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において規定されており、その内容は、本明細書の重要な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
次に、以下の添付図面を参照して、本発明に係る鉄道車列のための制御システムの、いくつかの好ましい実施形態の機能的特徴および構造的特徴を詳述する。
【
図1】
図1は、商品を輸送するための列車の既知の構成を示している。
【
図2】
図2は、従来技術によるブレーキ制御ユニットの簡略化された実施形態を示している。
【
図3】
図3にUIC規格において規定されているブレーキユニットの伝達関数(transfer function)を示している。
【
図4】
図4は、第2の機関車が列車の中間位置に追加されている列車を示している。
【
図5】
図5は、本発明に係る鉄道車列のための制御システムの例示的な実施形態を示している。
【
図6】
図6は、リレーバルブがブレーキパイプに対して圧力変動を生じさせることを禁止するために可能なソリューションを示している。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の複数の実施形態を詳述する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に提示されるか、または図面に示される設計の詳細(design details)および部品の構成に限定されないということが明らかにされるべきである。本発明は他の実施形態をとることができ、本発明を、実際には様々な方法で、実施または構築し得る。また、表現および専門用語は、説明を目的とするものであって、限定として解釈されるものではないことも理解されるべきである。「備える(include)」、「含む(comprise)」、またはそれらのバリエーションは、以下に記述される要素やそれらの均等物、並びに、それらの追加要素およびその均等物を含むことを意味する。
【0062】
図5は、前述の
図2に示されているブレーキ制御システム104をさらに再現した図である。
図5に示されているブレーキ制御システム104は、安全機能をモニタリングし、強化するために、スレーブ機関車402、403のために追加された新しい安全ユニット501を有している。
【0063】
以下、複数の貨車102と、列車400の先頭に配置されたマスター機関車101と、鉄道車列400に分配された少なくとも1つのスレーブ機関車402、403と、を含む、特に貨物輸送用の鉄道車列400のための制御システムの第1実施形態を詳述する。
【0064】
鉄道車列400は、鉄道車列400の常用ブレーキおよび非常ブレーキの空気圧ブレーキ(pneumatic braking)用のブレーキパイプ105を含んでいる。ブレーキパイプ105は、鉄道車列400の全体にわたって延在している。
【0065】
マスター機関車101は、ブレーキパイプ105内の圧力を制御し、無線技術または有線技術の通信チャネル404、405を介して、少なくとも1つのスレーブ機関車402、403に牽引指令および/またはブレーキ指令を送るよう設けられている。
【0066】
少なくとも1つのスレーブ機関車402、403は、通信チャネル404、405を介してマスター機関車101によって送信された牽引指令および/またはブレーキ指令を受信するよう設けられた送受信手段230を含んでいる。送受信手段230は、ブレーキパイプ105内の圧力を制御するために、少なくとも1つのスレーブ機関車402、403の牽引制御ユニット232およびブレーキ制御ユニット211に牽引指令および/またはブレーキ指令を再送信するよう、さらに設けられている。
【0067】
送受信手段230は、送受信デバイス、送受信システム、または送受信ユニット等であり得る。
【0068】
牽引指令および/またはブレーキ指令は、少なくとも1つのスレーブ機関車402、403内部の通信手段235を用いて再送信される。
【0069】
ブレーキ制御ユニット211は、リレーバルブ212のパイロットチャンバー(pilot chamber)213内の圧力を増加させるよう設けられた第1の空気圧ソレノイドバルブ204、および、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213内の圧力を減少させるよう設けられた第2の空気圧ソレノイドバルブ205に作用する(act)ことによって、ブレーキパイプ105内の圧力を制御するよう設けられている。
【0070】
リレーバルブ212のインレット(入口、給気口)は、メインパイプ201によって圧力供給されるよう設けられている。リレーバルブ212のアウトレット(出口、排気口)は、ブレーキパイプ105に接続されるよう設けられている。
【0071】
鉄道車列400のための制御システムは、ブレーキ制御ユニット211に関連付けられた安全ユニット501を備えている。
【0072】
この安全ユニット501は、鉄道車列400のための制御システムに少なくとも1つの異常状態(malfunction condition)が発生した際に、リレーバルブ212が空気圧ブレーキパイプ105に圧力供給することを防止するよう設けられている。
【0073】
鉄道車列400のための制御システムの少なくとも1つの異常状態は、以下の状態を含み得る。
・通信チャネルが、少なくとも1つのスレーブ機関車402、403に、牽引指令および/またはブレーキ指令を送信することができなくなった状態。または、
・ブレーキパイプ105内の圧力を制御するために、通信チャネルを介してマスター機関車101によって送信された牽引指令および/またはブレーキ指令を受信することができなくなった状態、または、牽引指令および/またはブレーキ指令を少なくとも1つのスレーブ機関車402、403の牽引制御ユニット232およびブレーキ制御ユニット211に再送信することができなくなった状態。または、
・少なくとも1つのスレーブ機関車402、403内部の通信手段235が、牽引指令および/またはブレーキ指令を、牽引制御ユニット232および少なくとも1つのスレーブ機関車402、403のブレーキ制御ユニット211に再送信することができない状態。
【0074】
前述の状態は、それらの任意の組み合わせにおいて同時に生じてもよいことは明らかである。
【0075】
ブレーキ制御ユニット211は、上述のように、欧州規格EN50128およびEN50129による安全レベルSIL≦2に従い開発されてもよい。したがって、欧州規格EN50128およびEN50129によるSIL≦2レベルに従って開発された本発明に係る安全ユニット501が追加されてもよい。
【0076】
第1実施形態において、安全ユニット501は、送受信手段230によって生成された診断信号(diagnostic signal)502を受信するよう設けられてもよい。診断信号502は、送受信手段230が正しく機能していること、および、鉄道車列400に属する1つ以上のさらなる機関車との通信が送受信手段230によって確立され、機能しているとみなされる(判断されている)ことを示す第1の状態を有するよう設けられてもよい。診断信号502は、送受信手段230が正しく機能していないこと、および、鉄道車列400に属する1つ以上のさらなる機関車との通信が送受信手段230によって確立されているとみなされず、機能しているとみなされないことを示す第2の状態を有するよう設けられてもよい。
【0077】
マスター機関車101は、周期(period)Tでメッセージを送信してもよい。欧州規格EN50159の推奨に従って、マスター機関車101によって送信されるメッセージは、メッセージがマスター機関車101によって継続的に更新されることを示すパラメーターを含み、非排他的な例として、各メッセージとともにマスター機関車によって増加されるカウンター(counter)を含む。
【0078】
マスター機関車101によって送信されたメッセージは、送受信手段230によって受信され、通信手段235を介して、ブレーキ制御ユニット211および安全ユニット501に即座に伝播される(propagated)。
【0079】
以上をまとめると、以下のケース(cases)の少なくとも1つに該当する場合、安全ユニット501は、マスター機関車101からローカル通信チャネル(通信手段)235までのグローバル伝達チャネルが正常に動作していない(malfunctioning)とみなす。
・安全ユニット501が、マスター機関車101の送信周期に対応し、生理学的通信ジッタ(physiological communication jitter)を許容するために必要な所定の許容誤差±ΔTを有する公称時間間隔(nominal time interval)である周期Tの間、メッセージを受信しない。
・安全ユニット501が、メッセージが継続的に更新されていることを示すパラメーターが、現在受信されているメッセージが更新されていることを示していないことを検出している。
・診断信号502が、送受信手段230が正しく機能していないこと、または、送受信手段230によって、列車100に属する1つ以上のさらなる機関車との通信が確立されているとみなされず、機能しているとみなされないことを示す第2の状態をとっている(assume)。
したがって、安全ユニット501は、ブレーキ制御ユニット211が、非常ブレーキ適用要求(the emergency braking application request)を含むメッセージを含む、マスター機関車101からのメッセージを受信できていないとみなす。
【0080】
さらなる実施形態において、貨物輸送用の鉄道車列400のための制御システムは、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213に空気圧で接続されるよう設けられた第1の圧力センサー手段236をさらに含んでいてもよい。ブレーキ制御ユニット、第1の空気圧ソレノイドバルブ204、第2の空気圧ソレノイドバルブ205、リレーバルブ212および第1の圧力センサー手段236は、鉄道車列400のブレーキパイプ105内の圧力を制御する機能を実行するよう設けられている。
【0081】
制御機能は、ブレーキ制御ユニット、第1の空気圧ソレノイドバルブ204、第2の空気圧ソレノイドバルブ205、リレーバルブ212、および、第1の圧力センサー手段236の存在に基づいて、既知の制御アルゴリズムに従って実装され得る。
【0082】
この場合、鉄道車列400の制御システムの少なくとも1つの異常状態(malfunction condition)は、第1の空気圧ソレノイドバルブ204、第2の空気圧ソレノイドバルブ205、リレーバルブ212、および、第1の圧力センサー手段236のうちの少なくとも1つが正常に機能していない状態を含んでいてもよい。換言すれば、安全ユニット501は、安全ユニットが鉄道車列400のブレーキパイプ105内の圧力制御機能が正しく機能していないことを検出した際に、リレーバルブ212が空気圧ブレーキパイプ105に供給することを防止するよう、さらに設けられてもよい。
【0083】
第2実施形態において、安全ユニット501は、ブレーキ制御ユニット211によって生成された診断信号503を受信するよう設けられてもよい。この診断信号503は、ブレーキ制御ユニット211が正しく機能しており、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を正しく制御することができることを示す第1の状態を有するよう設けられてもよい。診断信号503は、ブレーキ制御ユニット211が正しく機能していないことを示す、または、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を正しく制御することができないことを示す第2の状態を有するよう、さらに設けられてもよい。
【0084】
実際には、診断信号503は、空気圧ソレノイドバルブ204、205、第1の圧力センサー手段236、および、リレーバルブ212の健全性の状態をさらに示し得る。ブレーキ制御ユニット211に接続された、さらなる圧力センサー(図示されていない)は、ブレーキパイプ105内の圧力を制御するための要素の機能について、さらなる情報をブレーキ制御ユニット211に提供し得る。さらなる圧力センサー手段は、例えば、ブレーキパイプ105に直接的に接続されているが、これに限られない。
【0085】
さらなる実施形態において、鉄道車列の制御装置は、ブレーキパイプ105に空気圧で接続され、電気信号507を用いて安全ユニット501に電気的に接続された第2の圧力センサー手段506を含んでいてもよい。
【0086】
それぞれの実施形態において、第1の圧力センサー手段236および第2の圧力センサー手段506のそれぞれは、圧力センサーであってもよい。
【0087】
この場合、安全ユニット501は、
第2の圧力センサー手段506を用いてブレーキパイプ105内の圧力をモニタリングし、
通信手段235を介して、ブレーキ制御ユニット211と同時に、マスター機関車101により、少なくとも1つのスレーブ機関車に送信された、ブレーキパイプ105に印加されるべき圧力を示す牽引指令および/またはブレーキ指令を受信し、
受信されたそれぞれの牽引指令および/またはブレーキ指令ごとに、それぞれの牽引指令および/またはブレーキ指令によって示される圧力値は、第2の圧力センサー手段506を介して測定されたそれぞれの圧力値を含むしきい値の範囲内にあるかどうかを比較するよう設けられている。
【0088】
したがって、鉄道車列のための制御装置の少なくとも1つの異常状態は、それぞれの牽引指令および/またはブレーキ指令によって示される圧力値が第2の圧力センサー手段506を介して測定されたそれぞれの圧力値を含む、しきい値の範囲内に入らない状態を含んでいてもよい。
【0089】
換言すると、第2の圧力センサー手段506によって読み取られた圧力値が、所定の公差値(tolerance value)内で、マスター機関車101によって送信されたメッセージにより受信された圧力値と一致する場合、安全ユニットは、ブレーキ制御ユニット211、ならびに、空気圧ソレノイドバルブ204、205、リレーバルブ212、および、第1の圧力センサー手段236から構成される空気圧チェーン(pneumatic chain)が正しく機能しているとみなす。
【0090】
第2の圧力センサー手段506によって読み取られた圧力値が、マスター機関車101によって送信されたメッセージにより受信された圧力値に対して所定の公差値の範囲外にある場合、安全ユニットは、ブレーキ制御ユニット211、ならびに、空気圧ソレノイドバルブ204、205、リレーバルブ212、および、第1の圧力センサー手段236から構成される空気圧チェーンが正しく機能していないとみなす。
【0091】
さらなる実施形態において、安全ユニット501は、
第2の圧力センサー手段506を用いてブレーキパイプ105内の圧力をモニタリングし、
通信手段235を介して、ブレーキ制御ユニット211と同時に、マスター機関車101により、少なくとも1つのスレーブ機関車に送信された、ブレーキパイプ105に印加されるべき圧力を示す牽引指令および/またはブレーキ指令を受信し、
受信された牽引指令および/またはブレーキ指令ごとに、第2の圧力センサー手段506を介して測定された値が、マスター機関車101によって少なくとも1つのスレーブ機関車に送信された、それぞれの牽引指令および/またはブレーキ指令によって示されるそれぞれの圧力値を含むしきい値の範囲内にあるかどうかを比較するよう設けられている。
【0092】
したがって、鉄道車列のための制御システムの少なくとも1つの異常状態は、第2の圧力センサー手段506によって測定された値が、マスター機関車101によって少なくとも1つのスレーブ機関車に送信されるそれぞれの牽引指令および/またはブレーキ指令によって示されるそれぞれの圧力値を含む、しきい値の範囲内に入らない状態を含んでいてもよい。
【0093】
以上をまとめると、以下のケースの少なくとも1つに該当する場合、安全ユニット501は、ブレーキ制御ユニット211、空気圧ソレノイドバルブ204、205、リレーバルブ212、および第1の圧力センサー手段236が正常に動作していない、すなわち、特に非常ブレーキ要求中に、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を正しく制御することができないとみなす。
・診断信号503が、ブレーキ制御ユニット211が正しく機能していないか、または、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を正しく制御することができないことを示す第2の状態をとっている。
・ブレーキパイプ105における現在の圧力値が、マスター機関車101によって送信されたメッセージで受信された現在の圧力値に対して所定の公差値の範囲外である(または、この逆)。
【0094】
さらなる実施形態において、安全ユニット501は、リレーバルブ212がメインパイプ201とリレーバルブ212の空気圧インレット(pneumatic inlet)との間に配置された空気圧ソレノイドバルブ209を用いてブレーキパイプ105に供給することを防止するよう、設けられてもよい。空気圧ソレノイドバルブ209は、メインパイプ201からリレーバルブ212の空気圧インレットへの空気圧供給圧力の伝播を禁止する第1の状態をとり、かつ、メインパイプ201からリレーバルブ212の空気圧インレットへの空気圧供給圧力の伝播を可能にする第2の状態をとるよう、設けられてもよい。したがって、安全ユニット501は、リレーバルブ212がブレーキパイプ105に圧力供給すること防止しなくてはならない際に、空気圧ソレノイドバルブ209をその第1の状態で駆動するよう設けられてもよい。
【0095】
換言すれば、安全ユニット501は、電気指令信号206を用いて空気圧ソレノイドバルブ203を開放状態または閉鎖状態(open or closed state)で作動させるよう設けられてもよい。空気圧ソレノイドバルブ203を開放状態(open condition)で作動させることによって、安全ユニット501は、空気圧ソレノイドバルブ204がパイロットチャンバー213内の圧力を増加させることを可能にし、すなわち、リレーバルブ212がブレーキパイプ105内の圧力を増加させることを可能にする。空気圧ソレノイドバルブ203を閉鎖状態(closed condition)で作動させることによって、安全ユニット501は、空気圧ソレノイドバルブ204がパイロットチャンバー213内の圧力を増加させることを防止し、すなわち、リレーバルブ212がブレーキパイプ105内の圧力を増加させることを防止する。安全ユニット501は、電気指令信号210を用いて空気圧ソレノイドバルブ209を開放状態または閉鎖状態で作動させるよう設けられている。空気圧ソレノイドバルブ209を開放状態で作動させることによって、安全ユニット501は、メインパイプ201からリレーバルブ212への空気の流入を可能にし、それによって、リレーバルブ212がブレーキパイプ105内の圧力を増加させることを可能にする。空気圧ソレノイドバルブ209を閉鎖状態で作動させることによって、安全ユニット501は、メインパイプ201からリレーバルブ212への空気の流入を防止し、それによって、リレーバルブ212がブレーキパイプ105内の圧力を増加させることを防止する。安全ユニット501は、電気指令信号218を用いて、空気圧ソレノイドバルブ215の開放状態または閉鎖状態を制御するよう設けられている。空気圧ソレノイドバルブ215を開放状態で作動させることによって、安全ユニット501は、リレーバルブ212がブレーキパイプ105内の圧力を制御する際に適切に機能することを可能にする。空気圧ソレノイドバルブ215を閉鎖状態で作動させることによって、安全ユニット501は、リレーバルブ212を隔絶(isolate)し、すなわち、リレーバルブ212がブレーキパイプ105内の圧力を増加または減少させることを防止する。
【0096】
図6は、リレーバルブ212がブレーキパイプ105に圧力変動を生じさせることを禁止することができる、さらなるソリューションを示している。
【0097】
安全ユニット501は、好ましくは、リレーバルブ212が第1の電空モジュール(first electro-pneumatic module)609を用いてブレーキパイプ105に圧力供給することを防止するよう設けられてもよい。第1の電空モジュール609は、メインパイプ201に接続された第1の空気圧インレットと、ブレーキパイプ105に接続された第2の空気圧インレットと、リレーバルブ212のインレットに接続された空気圧アウトレット(pneumatic outlet)と、を備えていてもよい。第1の電空モジュールは、
メインパイプ201をリレーバルブ212のインレットに空気圧で(pneumatically)接続する第1の状態をとり、
ブレーキパイプ105をリレーバルブ212のインレットに空気圧で接続する第2の状態をとるよう設けられている。
【0098】
この場合、安全ユニット501は、リレーバルブ212がブレーキパイプ105に圧力供給およびブレーキパイプ105から圧力放出(supplying and discharging)をすることを防止しなければならない場合に、第1の電空モジュール609をその第2の状態で駆動するよう設けられてもよい。
【0099】
1つの実現例(realization example)において、安全ユニット501は、電気指令信号608を用いて、第1の電空モジュール609の状態を制御するよう設けられてもよい。第1の状態において、電空モジュール609は、リレーバルブ212のインレットをメインパイプ201に空気圧で接続してもよく、それによって、リレーバルブ212がそのアウトレット214、すなわちブレーキパイプ105において圧力を増加させることを可能にする。第2の状態において、第1の電空モジュール609は、リレーバルブ212のインレットをブレーキパイプ105に空気圧で接続してもよく、供給インレット(supply inlet)をリレーバルブ212と一致させ、それにより、リレーバルブ212がそのアウトレット214、すなわちブレーキパイプ105において圧力変動を生じさせることを防止する。
【0100】
好ましくは、第1の電空モジュール609に加えて、またはその代替物として、安全ユニット501は、リレーバルブ212が第2の電空モジュール610を用いてブレーキパイプ105に圧力供給およびブレーキパイプ105から圧力放出することを防止するよう設けられてもよい。第2の電空モジュール610は、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213内の圧力を増加させるよう設けられた第1の空気圧ソレノイドバルブ204の下流、および、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213内の圧力を減少させるよう設けられた第2の空気圧ソレノイドバルブ205の下流に接続された第1の空気圧インレットと、ブレーキパイプ105に接続された第2の空気圧インレットと、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213に接続された空気圧アウトレットと、を備えていてもよい。第2の電空モジュールは、
リレーバルブ212のパイロットチャンバー213内の圧力を増加させるよう設けられた第1の空気圧ソレノイドバルブ204と、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213内の圧力を減少させるよう設けられた第2の空気圧ソレノイドバルブ205とを、リレーバルブ212のパイロットチャンバー213に空気圧で接続する第1の状態をとり、
ブレーキパイプ105をリレーバルブ212のパイロットチャンバー213に空気圧で接続する第2の状態をとるよう設けられている。
【0101】
この場合、安全ユニット501は、リレーバルブ212がブレーキパイプ105に圧力供給およびブレーキパイプ105から圧力放出することを防止しなければならない際に、第2の電空モジュール610を、その第2の状態で駆動するよう設けられてもよい。
【0102】
1つの実現例において、安全ユニット501は、電気指令信号611を用いて第2の電空モジュール610の状態を制御するよう設けられてもよい。第1の状態において、第2の電空モジュール610は、パイロットチャンバー213を空気圧ソレノイドバルブ204、205および第1の圧力センサー手段236に空気圧で接続し得る。それにより、ブレーキ制御ユニット211がリレーバルブ212のアウトレット214、すなわちブレーキパイプ105における圧力を定期的に制御することを可能にする。第2の状態において、第2の電空モジュール610は、パイロットチャンバー213をブレーキパイプ105に空気圧で接続し、制御インレットをリレーバルブ212のアウトレットと一致させ、それにより、リレーバルブ212が、そのアウトレット214、すなわちブレーキパイプ105において圧力変動が生じさせることを防止する。
【0103】
さらなる態様において、安全ユニット501は、接点505を作動させるための指令信号508を生成するよう設けられてもよい。上述のように、接点505を閉鎖位置(closed position)において作動させることにより、安全ユニット501は、牽引制御ユニット232が、電気制御信号(電気指令信号)233、または、圧力スイッチ231によって設定される状態に従い動作することを可能にする。接点505を開放位置(open position)で作動させることによって、安全ユニット501は、電気制御信号233を、電気制御信号233が牽引制御ユニット232に印加されている牽引トルクを禁止する状態にする。
【0104】
安全ユニット501は、接点504を制御するための指令信号509を生成するよう設けられてもよい。接点504を開放位置で作動させることによって、安全ユニット501は、空気圧非常ソレノイドバルブ219が、ブレーキパイプ105を大気に接続する状態にし、非常ループ(信号)220を遮断し、それにより、ブレーキパイプ105内の空気圧を0bar(0kPa)に減少させる。
【0105】
さらに、空気圧ソレノイドバルブ204、205に電力を供給しないことによって、非常ループ(信号)220を遮断し、接点223を開放する。それにより、強制的に、リレーバルブ212に、空気圧非常ソレノイドバルブ219と並行した動作で、ブレーキパイプ105内の空気圧を0bar(0kPa)へ減少させる。
【0106】
さらなる実施形態において、安全ユニット501は、リレーバルブ212のアウトレット214とブレーキパイプ105との間に位置する空気圧ソレノイドバルブ215を用いて、リレーバルブ212がブレーキパイプ105に圧力供給およびブレーキパイプ105から圧力放出することを防止できるよう設けられてもよい。空気圧ソレノイドバルブ215は、リレーバルブ212のアウトレット214とブレーキパイプ105との間の空気圧接続を禁止する第1の状態を有するよう設けられてもよい。空気圧ソレノイドバルブは、リレーバルブ212のアウトレット214とブレーキパイプ105との間の接続を可能にする第2の状態を有するよう設けられている。安全ユニット501は、リレーバルブ212がブレーキパイプ105へ圧力供給およびブレーキパイプ105からの圧力放出を防止することを可能とするために、空気圧ソレノイドバルブ215をその第1の状態で駆動し得る。
【0107】
さらに、さらなる実施形態において、安全ユニット501は、ブレーキパイプ105に空気圧で接続された空気圧非常ソレノイドバルブ219を制御するよう設けられてもよい。空気圧非常ソレノイドバルブ219は、ブレーキパイプ105と大気との間の空気圧接続を禁止する第1の状態と、ブレーキパイプ105と大気との間の空気圧接続を可能にする第2の状態と、をとるよう設けられてもよい。安全ユニット501は、マスター機関車101からの非常ブレーキの適用要求が存在する場合に、第2の状態にある空気圧非常ソレノイドバルブ219を作動させるよう設けられてもよい。
【0108】
さらに他の実施形態において、安全ユニット501は、ブレーキパイプ105に空気圧で接続された空気圧非常ソレノイドバルブ219を制御するよう設けられてもよい。空気圧非常ソレノイドバルブ219は、ブレーキパイプ105と大気との間の空気圧接続を禁止する第1の状態、および、ブレーキパイプ105と大気との間の空気圧接続を可能にする第2の状態をとるよう設けられてもよい。安全ユニット501は、通信チャネル404、405および通信手段235、すなわち、グローバル通信チャネル404、405、230、235が正しく機能していない場合に、および/または、ブレーキパイプ105内において適用中の非常ブレーキを示す圧力変動がある場合に、その第2の状態で空気圧非常ソレノイドバルブ219を作動させるよう設けられてもよい。
【0109】
上記の実施形態および実施例を踏まえると、
・安全ユニット501が、マスター機関車101からローカル通信チャネル235までのグローバル伝達チャネル(global transmission channel)が誤動作しているとみなしている場合、
・安全ユニット501が、特に非常ブレーキ要求中において、ブレーキ制御ユニット211が、リレーバルブ212のアウトレット214における圧力を正確に制御することができないとみなしている場合、のケースの少なくとも1つにおいて、安全ユニット501は、以下の動作の少なくとも1つを実行することによって、リレーバルブ212がブレーキパイプ105内の圧力を上昇させることを防止し得る。
・空気圧ソレノイドバルブ209が、メインパイプ201からリレーバルブ212への供給圧力の伝播を禁止する第1の状態で、空気圧ソレノイドバルブ209を作動させる。
・空気圧ソレノイドバルブ215が、ブレーキパイプ105とリレーバルブ212との間の空気圧接続を禁止する第1の状態で、空気圧ソレノイドバルブ215を作動させる。
・第1の電空モジュール609が、リレーバルブ212のインレットをブレーキパイプ105に空気圧接続した第2の状態で、第1の電空モジュール609を作動させ、供給インレットをリレーバルブ212のアウトレットと一致させる。
・第2の電空モジュール610が、パイロットチャンバー213をブレーキパイプ105に空気圧で接続した第2の状態で、第2の電空モジュール610を作動させ、制御インレットをリレーバルブ212のアウトレットと一致させる。
【0110】
有利には、上述のソリューションによれば、1つ以上のスレーブ機関車402、403は、上記に列挙された理由の少なくとも1つのために、1つ以上のスレーブ機関車に関連付けられたブレーキ制御ユニット211がブレーキ指令、特に、非常ブレーキの指令を複製することができない場合、マスター機関車101が、ブレーキ、特に、鉄道車列400に沿った非常ブレーキを適用することを禁止すること(hindering)を防止する。
【0111】
マスター機関車101によって発せられ、ブレーキ制御ユニット211と同時に安全ユニット501によって受信される非常ブレーキ要求が存在する場合に、安全ユニット501は、接点504を開き、空気圧非常ソレノイドバルブ219を非通電状態にする。また、安全ユニット501は、安全ユニット501をブレーキパイプ105と大気との間の空気圧接続を可能にする第2の状態にし、これにより、非常ブレーキをかける。さらに、接点504を開くことにより、空気圧ソレノイドバルブ204、205が非通電状態になり、その結果、リレーバルブ212によってブレーキパイプ105が圧力放出される。
【0112】
全体的に、通信チャネルが、マスター機関車101から少なくとも1つのスレーブ機関車402、403に関連付けられたブレーキ制御ユニット211または安全ユニット501に非常ブレーキ要求を送信することができない場合、安全ユニット501は、第2の圧力センサー手段506を用いてブレーキパイプ105内の圧力変動の挙動を観察し、WO2017025895に記載されている適当なアルゴリズムを使用することによって、非常ブレーキが適用中であることを判別することができる。
【0113】
非常ブレーキが適用中の場合、安全ユニット501は、例えば、信号509を用いて接点504を開放し、これにより上記の手順に従い、またはWO2017025895に記載された手順に従い、非常ブレーキを局所的に複製し得る。
【0114】
有利には、このソリューションは、通信チャネルが非常ブレーキ要求をブレーキ制御ユニット211に送信できない場合、または、ブレーキ制御ユニット211が、リレーバルブ212を用いてブレーキパイプ105内の圧力を減少させることができない場合であっても、ブレーキパイプ105内の圧力の急降下に寄与することによって、非常ブレーキの適用を早める(accelerate)。
【0115】
非常ブレーキが適用中である場合、安全ユニット501は、例えば、信号508を用いて接点505を開放し、これにより、牽引制御ユニット232が牽引モーターに動力を供給することを防止し得る。
【0116】
有利には、このソリューションは、介在する圧力スイッチ231(これはブレーキパイプ内の圧力が3.5bar(350kPa)未満に減少したときにのみ介在する)よりも前に牽引制御ユニット232の禁止(inhibition)を早め、それにより、鉄道車列400への長手方向の応力を低減する。
【0117】
本発明は、WO2017025895と比較して、ブレーキ制御ユニット211によって、従来の技術に基づき実施される通常のブレーキ動作の機能、および、TCMS(列車制御監視システム)との通信や運転者とのインターフェースを、安全ユニット501に割り当てられる非常ブレーキのモニタリング機能および保証機能から切り離すという利点をもたらす。機能を切り離すことにより、ブレーキ制御ユニット211の開発を安全レベルSIL≦2に維持することができ、安全ユニット501に対する適切な安全レベルSIL≧2での開発を局所化することができ、それにより、開発コストへの影響を低減する。
【0118】
本発明のさらなる利点は、
図4に示されるように、分散型(distributed)の牽引機能のために既存の機関車の技術を更新することが可能であることである。
【0119】
実際には、安全ユニット501および適切な送受信手段230を、
図2に示す現行の機関車に存在するブレーキシステムに追加すれば十分であり、システムの電気部品(electrical part)に限定的な変更を行うことで、前述のソリューションの多くに示されているように、空気圧部品(pneumatic part)に介入する必要がなく、またはSIL≧3レベルでブレーキ制御ユニット211のハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントを再開発する必要がない。
【0120】
安全ユニット501は、関連付けられたブレーキ制御ユニット211の安全レベルよりも高い安全レベルに従って開発され得る。例えば、安全ユニット501は、安全インテグリティーレベルSIL≧3に従って開発され得る。
【0121】
安全ユニット501は、1つ以上のマイクロプロセッサーを備える構成(architecture)に従って、1つ以上のプログラム可能なデバイスを備える構成に従って、または、1つ以上のプログラム可能なデバイスおよび1つ以上のマイクロプロセッサーを備える構成に従って、製作され得る。
【0122】
本発明に係る鉄道車列のための制御システムの様々な態様および実施形態を詳述した。各実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせることができることが理解される。さらに、本発明は、詳述された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更されてもよい。
【国際調査報告】