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特表2023-524437CDKL5欠損症(CDD)の治療において有用な組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】CDKL5欠損症(CDD)の治療において有用な組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20230605BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230605BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230605BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230605BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230605BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20230605BHJP
【FI】
C12N15/864 Z
C12N7/01 ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N5/10
A61P25/00
A61K35/76
A61K48/00
A61K9/10
A61P43/00 105
C12N15/12
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565789
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 US2021029185
(87)【国際公開番号】W WO2021222118
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/109,608
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/091,032
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/016,036
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.LABRASOL
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド,ラルフ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA22
4C076BB13
4C076BB21
4C076BB40
4C076CC01
4C076FF70
4C084AA13
4C084MA23
4C084MA56
4C084MA66
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZC01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA23
4C087MA56
4C087MA66
4C087MA70
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZC01
(57)【要約】
AAVカプシドと、機能的CDKL5(hCDKLK5)をコードする核酸配列を含むベクターゲノムと、を有する、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。また、rAAVを産生するために有用な産生系、rAAVを含む薬学的組成物、及びCDDを有する対象を治療する方法、又はCDDの症状を改善する方法、又は有効量のrAAVを、それを必要とする対象に投与することを介して、CDDの進行を遅延させる方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDKL5欠損症(CDD)を治療するために有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、前記rAAVが、
(a)AAVカプシドと、
(b)(a)のAAVカプシド中にパッケージされるベクターゲノムと、を含み、前記ベクターゲノムが、逆位末端反復(ITR)、及び中枢神経系細胞におけるヒトCDKL5(hCDKL5)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5をコードする核酸配列である、hCDKL5コード配列を含み、前記hCDKL5コード配列が、配列番号3(配列番号22)のnt699~3581、又は配列番号3(配列番号22)のnt699~3581と少なくとも約95%同一である配列である、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項2】
前記hCDLK5コード配列が、hCDKL5転写バリアント1~3(NM_001037343.1(配列番号16)、NM_NM_001323289.2(配列番号17)及びNM_003159.2(配列番号18))のうちのいずれか1つと80%未満同一である、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
前記機能的hCDKL5が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項1又は2に記載のrAAV。
【請求項4】
CDKL5欠損症(CDD)を治療するために有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、前記rAAVが、
(a)AAVカプシドと、
(b)のAAVカプシド中にパッケージされるベクターゲノムと、を含み、前記ベクターゲノムが、逆位末端反復(ITR)、及びヒトCDKL5(hCDKL5)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5をコードする核酸配列である、hCDKL5コード配列を含み、前記機能的hCDKL5が、機能的hCDKL5アイソフォーム2(hCDKL5-2GS)、機能的hCDKL5アイソフォーム3(hCDKL5-3GS)又は機能的hCDKL5アイソフォーム4(hCDKL5-4GS)である、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項5】
前記ベクターゲノムが、配列番号6のアミノ酸配列を有する前記機能的hCDKL5-2GSをコードする核酸配列を含む、請求項4に記載のrAAV。
【請求項6】
前記hCDKL5コード配列が、配列番号24、又は配列番号6をコードする配列と少なくとも95%同一の配列である、請求項4又は5に記載のrAAV。
【請求項7】
前記ベクターゲノムが、配列番号8のアミノ酸配列を有する前記機能的hCDKL5-3GSをコードする核酸配列を含む、請求項4に記載のrAAV。
【請求項8】
前記hCDKL5コード配列が、配列番号25、又は配列番号8をコードする配列と少なくとも95%同一の配列である、請求項4又は7に記載のrAAV。
【請求項9】
前記ベクターゲノムが、配列番号10のアミノ酸配列を有する前記機能的hCDKL5-4GSをコードする核酸配列を含む、請求項4に記載のrAAV系。
【請求項10】
前記hCDKL5コード配列が、配列番号26、又は配列番号10をコードする配列と少なくとも95%同一の配列である、請求項4又は9に記載のrAAV。
【請求項11】
前記調節配列が、ニューロン特異的プロモーターを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項12】
前記調節配列が、ヒトシナプシンプロモーターを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項13】
前記調節配列が、構成的プロモーターを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項14】
前記調節配列が、CB7プロモーターを含む、請求項1~10又は請求項13のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項15】
前記調節配列が、UbCプロモーターを含む、請求項1~10又は請求項13のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項16】
調節エレメントが、Kozak配列、イントロン、エンハンサー、TATAシグナル、及びポリA配列のうちの1つ以上を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項17】
前記調節エレメントが、WPREエレメントを更に含む、請求項1~6又は16のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項18】
前記ベクターゲノムが、前記hCDKL5の3’非翻訳領域に、少なくとも2つの背根神経節(drg)特異的miRNA標的配列のタンデムリピートを更に含み、前記少なくとも2つのタンデムリピートが、少なくとも第1のmiRNA標的配列、及び同じ又は異なり得る少なくとも第2のmiRNA標的配列を含み、miR183又はmiR182を標的とする、請求項1~16のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項19】
前記発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の前記少なくとも第1のmiRNA標的配列及び/又は前記少なくとも第2のmiRNA標的配列が、(i)AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(miR183、配列番号11)、及び(ii)AGCAAAAATGTGCTAGTGCCAAA(配列番号12)である、請求項1~16又は18のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項20】
前記miRNA標的配列のうちの2つ以上が、スペーサーによって分離されており、各スペーサーが、独立して、(A)GGAT、(B)CACGTG、又は(C)GCATGCのうちの1つ以上から選択される、請求項18又は19に記載のrAAV。
【請求項21】
前記miRNA標的配列間に位置する前記スペーサーが、前記第1のmiRNA標的配列の3’及び/又は最後のmiRNA標的配列の5’に位置し得る、請求項20に記載のrAAV。
【請求項22】
前記miRNA標的配列間の前記スペーサーが、同じである、請求項20又は21に記載のrAAV。
【請求項23】
前記カプシドが、AAVhu68カプシド、AAV9カプシド、又はAAVrh91カプシドである、請求項1~22のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載のrAAVのストックと、水性懸濁媒体と、を含む、組成物。
【請求項25】
前記懸濁液が、静脈内投与、髄腔内投与、大槽内投与、又は脳室内投与用に製剤化される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
発現カセットを含むベクターであって、前記発現カセットが、ヒトhCDKL5(hCDKL5)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的ヒトCDKL5をコードする核酸配列である、hCDKL5コード配列を含み、前記hCDKL5コード配列が、配列番号22、又は配列番号22と少なくとも約95%同一の配列である、ベクター。
【請求項27】
前記ベクターが、
組換えパルボウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、若しくは組換えアデノウイルスから選択されるウイルスベクター;又は
裸のDNA、裸のRNA、無機粒子、脂質粒子、ポリマーベースのベクター、若しくはキトサンベースの組成から選択される非ウイルスベクターである、請求項26に記載のベクター。
【請求項28】
CDDを治療する方法であって、有効量の、請求項1~23のいずれか一項に記載のrAAV、又は請求項26若しくは27に記載のベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項29】
請求項1~23のいずれか一項に記載のrAAVを産生するために有用なrAAV産生系であって、前記産生系が、
(a)クレードFカプシドタンパク質をコードする核酸配列と、
(b)ベクターゲノムと、
(c)前記ベクターゲノムを前記クレードFカプシドにパッケージングするのを許可する十分なAAV rep機能及びヘルパー機能と、を含む細胞培養物を含む、rAAV産生系。
【請求項30】
前記ベクターゲノムが、配列番号1である、請求項29に記載のrAAV産生系。
【請求項31】
前記ベクターゲノムが、配列番号29である、請求項29に記載のrAAV産生系。
【請求項32】
前記ベクターゲノムが、配列番号31である、請求項29に記載のrAAV産生系。
【請求項33】
前記細胞培養物が、ヒト胚性腎臓293細胞培養物である、請求項29~32のいずれか一項に記載のrAAV産生系。
【請求項34】
前記AAV repが、異なるAAVに由来する、請求項29~33のいずれか一項に記載の系。
【請求項35】
前記ベクターゲノムが、配列番号3である、請求項29に記載のrAAV産生系。
【請求項36】
前記ベクターゲノムが、配列番号5である、請求項29に記載のrAAV産生系。
【請求項37】
前記ベクターゲノムが、配列番号7である、請求項29に記載のrAAV産生系。
【請求項38】
前記ベクターゲノムが、配列番号9である、請求項29に記載のrAAV産生系。
【請求項39】
発現カセットを含むベクターであって、前記発現カセットが、ヒトCDKL5アイソフォーム2(hCDKL5-2GS)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDK
L5-2GSをコードする核酸配列である、hCDKL5-2GSコード配列を含み、前記hCDKL5-2GSコード配列が、配列番号24、又は配列番号24と少なくとも約95%同一の配列である、ベクター。
【請求項40】
発現カセットを含むベクターであって、前記発現カセットが、ヒトCDKL5アイソフォーム3(hCDKL5-3GS)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5-3GSをコードする核酸配列である、hCDKL5-3GSコード配列を含み、前記hCDKL5-3GSコード配列が、配列番号25、又は配列番号25と少なくとも約95%同一の配列である、ベクター。
【請求項41】
発現カセットを含むベクターであって、前記発現カセットが、ヒトCDKL5アイソフォーム4(hCDKL5-4GS)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5-4GSをコードする核酸配列である、hCDKL5-4GSコード配列を含み、前記hCDKL5-4GSコード配列が、配列番号26、又は配列番号26と少なくとも約95%同一の配列である、ベクター。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CDKL5欠損症(CDD)は、幼児に影響を及ぼす重篤な神経発達障害である。根本的な原因は、X連鎖サイクリン依存性キナーゼ様5遺伝子、CDKL5(Mendelian Inheritance in Man,MIM:300203、以前はSTK9として知られていた)における変異によるCDKL5タンパク質発現の欠如であり、初期の乳児てんかん性脳症の形態であるEIEE2(MIM:300672)[Bahi-Buisson,N.et al.Key clinical features to identify girls with CDKL5 mutations.Brain 131,2647-2661,doi:10.1093/brain/awn197(2008)]、及び点頭てんかん[Fehr,S.et al.Eur J Hum Genet 21,266-273,doi:10.1038/ejhg.2012.156(2013)、Kalscheuer,V.M.et al.,American Journal of Human Genetics,72,1401-1411,doi:10.1086/375538(2003)、Tao,J.et al.American Journal of Human Genetics 75,1149-1154,doi:10.1086/426460(2004).Weaving,L.S.et al.American Journal of Human Genetics 75,1079-1093,doi:10.1086/426462(2004)]を含む一連の表現型をもたらす。特徴的な早期発症の発作に加えて、表現型は、定型的な手の動き、重度の精神運動遅滞及び一般的な低張などのいくつかの他の特徴も含み得る。症状の産後早期発症は、CDKL5が脳発達に重要な役割を果たすことを示す。CDKL5は、成熟成人神経系内でも発現される。CDKL5は、核、並びに細胞体の細胞質及び樹状突起を含む、細胞全体で発現される。
【0002】
CDKL5遺伝子変異は、CDDのほとんどの症例の原因であり、進行性神経発達障害であり、女性の認知障害の最も一般的な原因の1つである。CDDを引き起こす遺伝子変異を有する男性は、壊滅的な影響を受ける。彼らのほとんどは出生前又は乳児期初期に死亡する。例えば、ninds.nih.gov/Disorders/Patient-Caregiver-Education/Fact-Sheets/Rett-Syndrome-Fact-Sheet and omim.org/entry/312750を参照されたい。
【0003】
現在、CDDの治療法は存在せず、疾患症状の緩和に重点を置いた治療が行われている。多くの場合、発作は制御が不十分であるため、新規の治療的アプローチを見出すための緊急の医学的必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、CDKL5欠損症(CDD)の治療を必要とする対象におけるCDDを治療するために有用である、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。rAAVは、逆位末端反復(ITR)を含むベクターゲノムと、標的細胞においてhCDKL5発現を指示する調節配列の制御下で、機能的ヒトCDKL5タンパク質をコードする新規の核酸配列とを有する。
【0005】
特定の実施形態では、CDDを治療するために有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。rAAVは、(a)AAVカプシドと、(b)(a)のAAVカプシドにパッケージされるベクターゲノムとを含み、このベクターゲノムは、逆位末端反復(ITR)、及び中枢神経系細胞においてヒトCDKL5(hCDKLK5)発現を指示
する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5をコードする核酸配列を含み、hCDKL5コード配列は、配列番号3(若しくは配列番号22)のnt699~3581又は配列番号3(若しくは配列番号22)のnt699~3581と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、機能的hCDKL5は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、調節配列は、ユビキチンC(UbC)プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、調節配列は、WPREエレメントを含む。
【0006】
特定の実施形態では、機能的ヒトCDKL5(hCDKLK5)がhCDKL5アイソフォーム2である、CDDを治療するために有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。特定の実施形態では、機能的ヒトCDKL5(hCDKLK5)がhCDKL5アイソフォーム3である、CDDを治療するために有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。特定の実施形態では、機能的ヒトCDKL5(hCDKLK5)がhCDKL5アイソフォーム4である、CDDを治療するために有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。
【0007】
特定の実施形態では、CDDを治療するために有用なrAAVは、AAV9カプシドを含む。いくつかの実施形態では、CDDを治療するために有用なrAAVは、AAVhu68カプシドを含む。他の実施形態では、CDDを治療するために有用なrAAVは、AAVrh91カプシドを含む。
【0008】
特定の実施形態では、CDKL5-2GSコード配列は、配列番号24、又は配列番号6をコードする配列と少なくとも95%同一の配列である。特定の実施形態では、CDKL5-3GSコード配列は、配列番号25、又は配列番号8をコードする配列と少なくとも95%同一の配列である。特定の実施形態では、CDKL5-4GSコード配列は、配列番号26、又は配列番号10をコードする配列と少なくとも95%同一の配列である。
【0009】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、hCDKL5の3’未翻訳領域に後根神経節(drg)特異的miRNA標的配列のうちの少なくとも2つのタンデムリピートを含み、少なくとも2つのタンデムリピートは、少なくとも第1のmiRNA標的配列、及び同じ又は異なり得、miR183又はmiR182を標的とする少なくとも第2のmiRNA標的配列を含む。
【0010】
特定の実施形態では、rAAV以外のベクターは、本明細書に記載される発現カセットの送達に使用される。ベクターは、組換えパルボウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、若しくは組換えアデノウイルス;又は裸のDNA、裸のRNA、無機粒子、脂質粒子、ポリマーベースのベクター、若しくはキトサンベースの製剤から選択される非ウイルスベクターであり得る。
【0011】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるrAAV又は他のウイルスベクターのストック及び水性懸濁媒体を含む組成物が提供される。
【0012】
特定の実施形態では、有効量の本明細書に記載されるrAAV又は他のベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む、CDDを治療する方法が提供される。
【0013】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるベクターを産生するために有用なrAAV産生系が提供される。
【0014】
特定の実施形態では、発現カセットを含むベクターが提供され、この発現カセットは、ヒトCDKL5-co1(hCDKL5)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5をコードする核酸配列を含み、hCDKL5コード配列は、配列番号22、又
は配列番号22と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、発現カセットを含むベクターが提供され、この発現カセットは、ヒトCDKL5-2GS(hCDKL5-2GS)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5-2GSをコードする核酸配列を含み、hCDKL5-2GSコード配列は、配列番号24、又は配列番号24と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、発現カセットを含むベクターが提供され、この発現カセットは、ヒトCDKL5-3GS(hCDKL5-3GS)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5-3GSをコードする核酸配列を含み、hCDKL5-3GSコード配列は、配列番号25、又は配列番号25と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、発現カセットを含むベクターであって、この発現カセットは、ヒトCDKL5-4GS(hCDKL5-4GS)発現を指示する調節配列の制御下で、機能的hCDKL5-4GSをコードする核酸配列を含み、hCDKL5-4GSコード配列は、配列番号26、又は配列番号26と少なくとも約95%同一の配列である。
【0015】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、後根神経節(drg)特異的miRNA標的配列のうちの少なくとも2つのタンデムリピートを更に含む。特定の実施形態では、rAAV又はrAAVを含む組成物は、CDDの症状を改善する、及び/又はCDDの進行を遅延させるために、それを必要とする対象に投与可能である。
【0016】
更なる一態様では、本明細書に記載されるrAAV又はベクター及び水性懸濁媒体を含む組成物が本明細書で提供される。
【0017】
別の態様では、CDDを有する対象を治療するか、又はCDDの症状を緩和するか、又はCDDの進行を遅延させる方法が提供される。本方法は、有効量の本明細書に記載のrAAV又はベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施形態では、ベクター又はrAAVは、大槽内注射(ICM)を介して患者に投与可能である。
【0018】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の本発明の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】5’AAV逆位末端反復(ITR)、ニューロンプロモーター、操作されたヒトCDKL5 DNAコード配列、エンハンサー、及びポリA、並びにAAV 3’ITRを含む発現カセットを含む、AAV CDKL5ベクターゲノムのAAVベクター設計を示す。
図1B】5’AAV ITR、並びにユビキチンC(UbC)プロモーター、操作されたヒトCDKL5 DNAコード配列、drg脱標的化miRNA、ポリA、及びAAV 3’ITRを含む発現カセットを含む、AAV CDKL5ベクターゲノムのAAVベクター設計を示す。
図1C】5’AAV ITR、並びにニワトリβアクチンハイブリッドプロモーター(CBh)、操作されたヒトCDKL5 DNAコード配列、drg標的化miRNA、ポリA、及びAAV 3’ITRを含む発現カセットを含む、AAV CDKL5ベクターゲノムのAAVベクター設計を示す。
図2A-2B】抗CDKL5抗体(S957D,University of Dundee,UK)で評価したマウス海馬の分析を示す。マウスを、新生児脳室内注射によって5×1010GC AAV-hSyn-CDKL5-1co.WPREで処置した。図2Aは、PBS注射した野生型マウス、PBS注射したKOマウス、及び処置されたKOマウスにおけるCDKL5/チューブリンレベルをチャート化する、ウエスタンブロッティングによるCDKL5発現を示す。図2Bは、PBS注射した野生型マウス、PBS注射したKOマウス、及び処置されたKOマウスにおけるpS222EB2(Baltussen et al,2018)レベルを使用して判定した場合のCDKL5活性を示す。
図3】CDDマウスモデルにおけるAAV-hSyn-hCDKL5-1co.WPREの注射後のマウス成熟及び生存のグラフを提供する。注射した全てのマウスは、処置後に生存し、体重を増加させた。マウスは、有害転帰の明らかな徴候を示さなかった。
図4】AAV-hSyn-CDKL5-1co.WPREを受容するCDDマウスにおける行動評価からの結果を提供する。この図は、リスクテイキング、好奇心、及び不安のバランスを評価する上昇したゼロ迷路(Elevated Zero Maze)の結果を示す。第1のバーは、PBSを受容するwtマウスを表す。Wtマウスは、好奇心が強いが慎重であり、限られた時間をオープンで過ごす。中央のバーは、PBSのみを受容するCdkl5-koマウスを示し、これは、不安の低下、及びオープンでより多くの時間を過ごすことを示し、これらのマウスはより頻繁にオープンゾーンに入った。AAV-CDKL5処置後、Cdkl5-koマウスの行動は、wtの行動に戻る(オープンゾーン内での時間、及び閉鎖されたゾーンからオープンゾーンへの進入について)。
図5A-5B】AAV-hSyn-CDKL5-1co.WPREを受容するCDDマウスにおける行動評価からの結果を提供する。図5Aは、ビームブレイク/ビン対時間(分)としてプロットされたオープンフィールドアリーナにおけるマウスの探索活動を示す。点線は、好奇心が強いが、10分以内にアリーナを探索し、落ち着いているwtマウスを示す。長い破線による線は、Cdkl5-koが探索に長い時間を費やすが、最終的に落ち着くことを示す。破線及び点による線は、AAV-CDKL5処置後、Cdkl5-koマウスの活動が低減し、それらの全体的な活動レベルがwtマウスに類似することを示す。図5Bは、マウスによって取得された総ビームブレイクの累積活動データを示し、これは、図5Aにおける結果を確認する。
図6】連続3日間にわたるマウスにおける運動活動及び機敏性評価(ロータロッド)における、測定された落下までの時間(秒)のグラフを示す。野生型マウスは、経時的に学習しながらパフォーマンスを高めることが観察される。Cdkl5-koマウスは、wtマウスと比較して、以前に観察された初期多動性に起因する可能性が高い、パフォーマンスの向上を示す。AAV-hSyn-CDKL5-1co.WPRE.処置後、Cdkl5-koマウスの行動はwtの行動に戻らない。
図7A-7B】海馬の学習及び記憶(Y迷路)の結果を示す。図7Aは、試験群及び2つの対照群の自発的変化のパーセンテージを示す。図7Bは、試験群及び2つの対照群の移動距離(m)を示す。wtマウスは、最近訪れていない迷路アームを探索する強い傾向を示す(自発的変化行動)。
図8A-8D】発現アイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、又はアイソフォーム4について、AAV.CDLK5ベクター構築物のCDKL5発現レベル又は活性レベルを示す。図8Aは、ビヒクルを注射した野生型マウス及びビヒクルを注射したノックアウトマウスと比較した、AAVベクター(5×1010GC、新生児ICV)を注射したノックアウトマウスにおけるCDKL5アイソフォーム1、2、3、及び4の定量化された発現レベルを示す。図8Bは、処置された野生型マウス(ビヒクル(PBS)を注射した)、ノックアウトマウス(ビヒクルを注射した、又はAAV.CDKL5-1co)からの組織のウエスタンブロット分析からのpS222EB2の定量化されたシグナルから決定される、CDKL5活性を示す。図8Cは、処置された野生型マウス(ビヒクル(PBS)を注射した)、ノックアウトマウス(ビヒクルを注射した、又はAAV.CDKL5-アイソフォーム1、2、3、若しくは4(図8Aから))由来の組織のウエスタンブロット分析からのpS222EB2の定量化されたシグナルから決定される、CDKL5活性を示す。図8Dは、KOマウスにおけるアイソフォーム1の定量化されたCDKL5発現レベルを示す(図8Bから)。
図9A-9F】ノックアウトマウス及び野生型マウスにおける異なるベクター用量(5×1010GC、2.5×1010GC、1×1010GC、及び6×10GC)を比較したマウス研究におけるAAV.CDKL5遺伝子療法の治療有効性を示す。図9Aは、5×1010GC又はPBSの用量でAAV.CDKL5で処置されたマウスの10週間にわたる体重増加(g)を示す。図9Bは、2.5×1010GC又はPBSの用量でAAV.CDKL5で処置されたマウスの10週間にわたる体重増加(g)を示す。図9Cは、未処置のCdkl5-koマウスと比較した、5×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置群の後肢クラスピング試験の用量依存性結果を示す。図9Dは、未処置のCdkl5-koマウスと比較した、2.5×1010GCの用量の用量でのAAV.CDKL5処置群の後肢クラスピング試験の用量依存性結果を示す。図9Eは、未処置のCdkl5-koマウスと比較した、1×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置群の後肢クラスピング試験の用量依存性結果を示す。図9Fは、未処置のCdkl5-koマウスと比較した、6×10GCの用量でのAAV.CDKL5処置群の後肢クラスピング試験の用量依存性結果を示す。WTマウスはクラスピングを示さず、KOマウスは顕著なクラスピングを示した。処置後、KOマウスは、クラスピングの中で著しく低減したを示した。注射したWTマウスは影響を受けなかった。
図10A-10E】CDD koマウス研究におけるAAV.CDL5遺伝子療法の治療有効性を示す。図10Aは、未処置のCdkl5-koマウスと比較した、5×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置群の巣構築(巣の質/スコア)における結果を示す。図10Bは、WT及びCdkl5-koマウスと比較して、5×1010GCの用量で、AAV.CDLK5処置群において正常化の傾向を有するガラス球覆い隠しタスクからの結果を示す。図10Cは、未処置のCdkl5-koマウスと比較した、2.5×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置群の巣構築(巣の質/スコア)における結果を示す。図10Dは、WT及びCdkl5-koマウスと比較した、2.5×1010GCの用量でのAAV.CDLK5処置群において正常化の傾向を有するガラス球覆い隠しタスクからの結果を示す。図10Eは、未処置のCdkl5-koマウスと比較した、1×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置群の巣構築(巣の質/スコア)における結果を示す。
図11A-11F】オープンフィールド活動試験で評価したように、AAV.CDKL5処置を受けたkoマウスにおける多動性の補正を示す。図11Aは、5×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置koマウスにおける歩行活動/ビン対時間(5分間隔で30分間)を示す。図11Bは、5×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置koマウスにおける総活動を示す。図11Cは、2.5×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置koマウスにおける歩行活動/ビン対時間(5分間隔で30分間)を示す。図11Dは、2.5×1010GCの用量でのAAV.CDKL5処置koマウスにおける総活性を示す。図11Eは、6×10GCの用量でのAAV.CDKL5処置koマウスにおける歩行活動/ビン対時間(5分間隔で30分間)を示す。図11Fは、6×10GCの用量でのAAV.CDKL5処置koマウスにおける総活動を示す。AAV.CDKL5処置koマウスにおいて、リスクテイキングの増加の正常化は、上昇したゼロ迷路において観察され、海馬学習欠損の正常化は、Y迷路において見られる。
図12】CDKL5アイソフォーム2~4の発現が、koマウスにおける5×1010GCの用量で評価した場合に、後肢クラスピング表現型の著しい補正を提供することを示す。
図13A-13D】AAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置したKOマウスにおける補正の強い傾向を示す。図13Aは、5×1010GCの用量でAAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置されたKOマウスにおける上昇した活動を示す。図13Bは、2.5×1010GCの用量でAAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置されたKOマウスにおける上昇した活動を示す。図13Cは、5×1010GCの用量でAAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置されたKOマウスにおけるY迷路での活動を示す。図13Dは、2.5×1010GCの用量でAAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置されたKOマウスにおけるY迷路での活動を示す。
図14A-14C】AAV.CDKL5-アイソフォーム1によるノックアウトマウスの処置後の後肢クラスピングにおける性別特異的な結果を示す。図14Aは、AAV.CDKL5-アイソフォーム1による雄ノックアウトマウスの処置後の後肢クラスピングを示す。図14Bは、AAV.CDKL5-アイソフォーム1による雌ノックアウトマウスの処置後の後肢クラスピングを示す。Cdkl5-koマウスにおいて、半接合雄及びヘテロ接合雌の両方が後肢クラスピングを示し、これは処置後に著しく低減した。WT群のいずれも、クラスピングを示さなかった。図14Cは、雌のヘテロ接合マウスにおける著しく改善を伴う、高用量(5×1010GC、新生児ICV)での歩行活動を示す。
図15A-15B】オープンフィールド評価におけるオープンフィールド-歩行活動の性別特異的な結果を示す。図15Aは、経時的なX、Y軸ビームブレイクとしてプロットされた、AAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置された雄(KO)マウスにおけるオープンフィールド評価における歩行活動の結果を示す。図15Bは、経時的なX、Y軸ビームブレイクとしてプロットされた、AAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置された雌(ht)マウスにおけるオープンフィールド評価における歩行活動の結果を示す。野生型への完全補正は、AAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置された雄(KO)及び雌(ht)両方のマウスにおいて、複数の時点で観察される。
図16A-16B】AAV.CDKL5-アイソフォーム1ベクターで処置されたkoマウスにおける性別差を示す。図16Aは、オープンゾーン内で過ごした時間(秒)としてプロットされた、AAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置された雄(KO)マウスにおける、上昇したゼロ迷路評価におけるオープンフィールド-歩行活動の結果を示す。図16Bは、オープンゾーン内で過ごした時間(秒)としてプロットされた、AAV.CDKL5-アイソフォーム1で処置された雌(ht)マウスにおける、上昇したゼロ迷路評価におけるオープンフィールド-歩行活動の結果を示す。リスクを伴いやすい行動が補正され、雄ではより顕著なサイズ効果を伴う。
図17】NHP研究からの様々な組織試料中のベクター分布を提供する(1×1014GC用量の代表)。このグラフは、様々な非神経組織、脊髄トラック、及び脳組織のgc/二倍体ゲノムにおけるrAAV.CDKL5を提供する。後根神経節(DRG)の強力な形質導入が観察される。脳組織の中~低程度の形質導入が観察され、非神経組織へのいくらかの漏出を伴う。
図18】小脳、前頭皮質、後頭皮質、頭頂皮質、及び側頭皮質に示されるNHP研究におけるhCDKL5発現(RT-qPCRによって測定)を定量化した結果を提供する。
図19A-19B】WTマウスへのCDKL5遺伝子療法投与後の行動変化を測定する用量漸増研究の結果を示す。図19Aは、PBSで処置した対照マウスと比較して、7.5×1010GC及び1×1011GCのAAVを注射したWTマウスにおける後肢クラスプ重症度スコアの著しい変化を示さない。図19Bは、PBSで処置した対照マウスと比較して、7.5×1010GC及び1×1011GCのAAVを注射したWTマウスにおける著しい歩行活動変化を示さない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
CDDを治療するための組成物及び方法が、本明細書で提供される。AAVカプシド(例えば、AAVhu68又はAAV-PHP.B)を有し、機能的ヒトサイクリン依存性キナーゼ様5(hCDKL5)をコードするベクターゲノムがその中にパッケージされる、有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が、それを必要とする対象に送達される。
【0021】
I.ヒトCDKL5
サイクリン依存性キナーゼ様5(CDKL5、CFAP247としても知られる、セリン/スレオニンキナーゼ9、STK9;Uniprot#076039)遺伝子は、X染色体の22.13位の短い(p)アーム上に天然に位置する。CDLK5タンパク質のN末端は、他のタンパク質の活性を変化させる酵素であるキナーゼとして作用する。いくつかのCDKL5の直接基質が同定されている(Baltussen et al,2018、Munoz et al,2018)。CDKL5のC末端は機能不明である。
【0022】
本明細書で使用される場合、機能的hCDKL5タンパク質は、CDDと関連付けられていないCKDL5タンパク質のアイソフォーム、天然バリアント、バリアント、多形体、若しくは切断を指し、かつ/あるいはその送達若しくは発現は、動物モデル若しくは患者におけるCDDの症状を緩和するか、又は進行を遅延させる可能性がある。OMIM#300203を参照されたく、各ウェブページは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、機能的hCDKL5は、配列番号2のアミノ酸配列(アイソフォーム1)、又はそれと少なくとも約90%(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.9%)同一のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、機能的hCDKL5タンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列(アイソフォーム2)、又はそれと少なくとも約90%(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.9%)同一のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、機能的hCDKL5タンパク質は、配列番号20のアミノ酸配列(アイソフォーム3)、又はそれと少なくとも約90%(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.9%)同一のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、機能的hCDKL5タンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列(アイソフォーム4)、又はそれと少なくとも約90%(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.9%)同一のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、機能的hCDKL5は、配列を有するメチル-CpG結合ドメイン(MBD)及びNCoR/SMRT相互作用ドメイン(NID)を含む、切断されたhCDKL5である。WO2018/172795A1(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0023】
特定の実施形態では、機能的hCDKL5タンパク質は、動物モデルにおけるCDDの症状を改善するか、又は進行を遅延させる。例示される1つの動物モデルは、CDKL5-koマウスである。他の好適なモデルは、本明細書に記載されている。
【0024】
CDDの症状又は進行は、生存プロット(例えば、カプラン・マイヤー生存プロット)、体重のモニタリング、及び行動変化の観察(例えば、後肢クラスピング、オープンフィールドアッセイ(運動機能)、上昇したゾーン迷路(不安/リスク対探索)、Y迷路(学習及び記憶/海馬)、ガラス球覆い隠しアッセイ(先天的行動及び運動)、巣作り(先天的社会行動)、並びにロータロッドアッセイ(運動機能、整合)を含むがこれらに限定されない、種々のアッセイ/方法を使用して評価され得る。特定の実施形態では、動物モデルにおける機能的hCDKL5タンパク質の投与又は発現は、対応する野生型動物で得られたものの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、又は100%超であるアッセイ結果によって示されるCDD症状の改善、又はCDD進行の遅延につながる。特定の実施形態では、CDD動物モデルにおける機能的hCDKL5タンパク質の投与又は発現は、対応する非処置CDD動物から得られたものの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、又は100%超である向上したアッセイ結果によって示されるCDD症状の改善、又はCDD進行の遅延につながる。
【0025】
本明細書では、hCDKL5コード配列又はCDKL5コード配列と称される、機能的hCDKL5タンパク質をコードする核酸配列が提供される。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号3、又は配列番号3と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号2(CDKL5若しくはCDKL5co又はCDKL5-1若しくはCDKL5-1coと称される)、あるいはアミノ酸配列NP_001032420.1(配列番号19)をコードするNCBI参
照配列NM_001037343.1(CDKL5若しくはCDKL5e1と称される、配列番号16)、アミノ酸配列NP_001310218.1(配列番号20)をコードするNM_001323289.2(配列番号17)、及びアミノ酸配列NP_003150.1(配列番号21)をコードするNM_003159.2(配列番号18)、又はそれらと少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.9%)同一である核酸配列から選択される。NCBI参照配列の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、修飾又は操作された(hCDKL5若しくはhCDKL5co又はCDKL5-1若しくはCDKL5-1co)である。修飾又は操作されたは、NCBI参照配列に対して約70%(例えば、約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.9%)未満の同一性を共有する。
【0026】
特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号22、又はそれと少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは少なくとも約99.9%)同一の核酸配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号24、又はそれと少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは少なくとも約99.9%)同一の核酸配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号25、又はそれと少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは少なくとも約99.9%)同一の核酸配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号26、又はそれと少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは少なくとも約99.9%)同一の核酸配列である。
【0027】
特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号37の操作配列、又は配列番号37と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号38の操作配列、又は配列番号38と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号39の操作配列、又は配列番号39と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号40の操作配列、又は配列番号40と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号41の操作配列、又は配列番号41と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号42の操作配列、又は配列番号42と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号43の操作配列、又は配列番号43と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号44の操作配列、又は配列番号44と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号45の操作配列、又は配列番号45と少なくとも約95%同一の配列である。特
定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号46の操作配列、又は配列番号46と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号47の操作配列、又は配列番号47と少なくとも約95%同一の配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号48の操作配列、又は配列番号48と少なくとも約95%同一の配列である。
【0028】
本明細書に記載される「核酸」は、RNA、DNA、又はその修飾であってもよく、一本鎖又は二本鎖であってもよく、例えば、対象となるタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、核酸類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)、偽相補性PNA(pc-PNA)、ロックされた核酸(LNA)等を含む群から選択されてもよい。そのような核酸配列には、例えば、転写抑制因子、アンチセンス分子、リボザイム、低阻害性核酸配列、例えば、限定されないが、RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチド等として作用する、例えば、タンパク質をコードする核酸配列が含まれるが、これに限定されない。
【0029】
核酸配列の文脈で「パーセント(%)同一性」、「配列同一性」、「パーセント配列同一性」、又は「パーセント同一」という用語は、対応するように整列させたときに同じである2つの配列中の残基を指す。配列同一性の比較の長さは、ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長、又は少なくとも約500~5000個のヌクレオチドの断片にわたってもよく、これが望ましい。しかしながら、例えば、少なくとも約9個のヌクレオチド、通常は少なくとも約20~24個のヌクレオチド、少なくとも約28~32個のヌクレオチド、少なくとも約36個以上のヌクレオチドの、より小さい断片間の同一性も望まれ得る。
【0030】
パーセント同一性は、タンパク質、ポリペプチド、約32個のアミノ酸、約330個のアミノ酸、若しくはそのペプチド断片の全長にわたるアミノ酸配列、又は配列をコードする対応する核酸配列について容易に決定することができる。好適なアミノ酸断片は、長さが少なくとも約8個のアミノ酸であり得、最大で約700個であり得る。一般に、2つの異なる配列間の「同一性」、「相同性」、又は「類似性」に言及する場合、「同一性」、「相同性」、又は「類似性」は、「整列された」配列を参照して決定される。「整列された」配列又は「整列」とは、複数の核酸配列又はタンパク質(アミノ酸)配列を指し、参照配列と比較して、多くの場合、欠損又は追加の塩基又はアミノ酸についての補正を含む。
【0031】
整列は、公共の又は市販のいずれかの様々な多重配列整列プログラムを用いて行われる。配列整列プログラムは、アミノ酸配列に対して利用可能であり、例えば、「Clustal X」、「Clustal Omega」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、及び「Match-Box」プログラムが挙げられる。一般的に、これらのプログラムのうちのいずれかをデフォルト設定で使用するが、当業者は、これらの設定を必要に応じて変更することができる。あるいは、当業者は、別のアルゴリズム又はコンピュータプログラムを利用することができ、参照のアルゴリズム及びプログラムによって提供されるように、少なくとも同一性のレベル又は整列が提供される。例えば、J.D.Thomson et al,Nucl.Acids.Res.,“A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”,27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0032】
多重配列整列プログラムもまた、核酸配列に対して利用可能である。かかるプログラムの例としては、「Clustal W」、「Clustal Omega」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」、及び「MEME」が挙げられ、インターネット上のウェブサーバを通してアクセス可能である。かかるプ
ログラムの他のソースは、当業者に既知である。あるいは、Vector NTIユーティリティもまた使用される。また、当該技術分野で既知のいくつかのアルゴリズムが存在し、上に記載のプログラムに含まれるものを含め、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができる。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムであるFasta(商標)を用いて比較することができる。Fasta(商標)は、照会配列(query sequence)及び検索配列(search
sequence)の間の最良の重複領域の整列及びパーセント配列同一性を提供する。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、GCGバージョン6.1(参照により本明細書に組み込まれる)に提供されるように、Fasta(商標)をそのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6及びスコアリングマトリックスのためのNOPAM因子)とともに使用して決定することができる。
【0033】
II.発現カセット
本明細書では、発現カセットとも称される標的細胞におけるhCDKL5発現を指示する調節配列の制御下で、hCDKL5コード配列を含む核酸配列が提供される。本明細書で使用される場合、「発現カセット」は、コード配列(例えば、CDKL5コード配列)、及びそれに作動可能に連結された調節配列を含む、核酸分子を指す。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、2つ以上の発現カセットを含む。「導入遺伝子」という用語は、標的細胞に挿入される外因性供給源からのDNA配列を指し、典型的には、導入遺伝子は、産物(例えば、CDKL5)をコードする。典型的に、ウイルスベクターにパッケージされるかかる発現カセッは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルに隣接する本明細書に記載される遺伝子産物のコード配列、及び本明細書に記載されるものなどの他の発現制御配列を含む。必要な調節配列は、標的細胞中でその転写、翻訳及び/又は発現を許可する様式で、hCDKL5コード配列と作動可能に連結される。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」配列には、hCDKL5コード配列と連続する転写、翻訳、及び/又は発現を調節する配列、並びにhCDKL5コード配列を制御するためにトランスで又は離れて作用する調節配列が含まれる。発現カセットは、他のエレメントの中で、遺伝子配列の上流(5’~)の調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン等のうちの1つ以上、及びエンハンサー、又は遺伝子配列の下流(3’~)の調節配列、例えば、ポリアデニル化部位を含む3’非翻訳領域(3’UTR)のうちの1つ以上を含有してよい。かかる調節配列は、典型的には、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、Kozak配列、ポリアデニル化配列、及びTATAシグナルのうちの1つ以上を含む。特定の実施形態では、プロモーターは、組織特異的プロモーター、例えば、CNS特異的又はニューロン特異的プロモーターである。特定の実施形態では、プロモーターは、ヒトシナプシンプロモーター(配列番号23)である。特定の実施形態では、追加的又は代替的なニューロン特異的プロモーター配列は、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersen et al.,(1993)Cell.Mol.Neurobiol.,13:503 15)、神経フィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioli et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611 5)、ニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioli et al.,(1995)Neuron,15:373 84)、及び/又は他から選択されてもよい。
【0034】
特定の実施形態では、ヒトシナプシンプロモーターは、配列番号1、3、5、7、9又は配列番号23(本明細書ではhSyn又はSynとも称される)の配列(例えば、nt213~nt678)を有する。
【0035】
他の実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーター、例えば、サイトメガロウイルスエンハンサー(CB7)プロモーターを有するニワトリβアクチンプロモーター、ヒト伸長開始因子1αプロモーター(EF1a)プロモーター、ヒトユビキチンC(UbC
)プロモーターである。特定の実施形態では、調節配列は、中枢神経系(CNS)細胞におけるhCDKL5の発現を指示する。
【0036】
特定の実施形態では、標的細胞は、中枢神経系細胞であり得る。特定の実施形態では、標的細胞は、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、グリア細胞、皮質細胞、前頭皮質細胞、大脳皮質細胞、脊髄細胞のうちの1つ以上である。特定の実施形態では、標的細胞は、末梢神経系(PNS)細胞、例えば、網膜細胞である。また、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、NK細胞、リンパ節細胞、扁桃細胞、骨髄間葉細胞、幹細胞、骨髄幹細胞、心臓細胞、上皮細胞、食道細胞、胃細胞、胎児切断細胞、結腸細胞、直腸細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、肺細胞、唾液腺細胞、甲状腺細胞、副腎細胞、乳房細胞、膵臓細胞、ランゲルハンス島細胞、胆嚢細胞、前立腺細胞、膀胱細胞、皮膚細胞、子宮細胞、子宮頸細胞、精巣細胞、又はCDDを有しない対象における機能的CDKL5タンパク質を発現する任意の他の細胞などの、神経系由来の細胞以外の細胞も標的細胞として選択され得る。
【0037】
特定の実施形態では、発現制御配列(調節配列)の一部として、例えば、選択される5’ITR配列とコード配列との間に位置する追加的又は代替的なプロモーター配列が含まれ得る。構成的プロモーター、調節可能なプロモーター[例えば、WO2011/126808及びWO2013/04943を参照されたい]、組織特異的プロモーター、又は生理学的ヒントに応答するプロモーターが、本明細書に記載されるベクターに利用され得る。プロモーターは、異なる供給源、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー/プロモーター、SV40最初期エンハンサー/プロモーター、JCポリモマウイルスプロモーター、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)又は神経膠原線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)潜伏関連プロモーター(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)長末端反復(LTR)プロモーター、ニューロン特異的プロモーター(NSE)、血小板由来成長因子(PDGF)プロモーター、hSYN、メラニン凝集ホルモン(MCH)プロモーター、CBA、マトリックス金属タンパク質プロモーター(MPP)、及びニワトリβアクチンプロモーターから選択され得る。
【0038】
プロモーターに加えて、ベクターは、1つ以上の他の適切な転写開始配列、転写終結配列、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列(例えば、WPRE);翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;及び必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強する配列を含み得る。好適なエンハンサーの一例は、CMVエンハンサーである。他の適切なエンハンサーには、所望の標的組織適応症に適切なものが含まれる。一実施形態では、調節配列は、1つ以上の発現エンハンサーを含む。一実施形態では、調節配列は、2つ以上の発現エンハンサーを含有する。これらのエンハンサーは同じであっても、互いに異なっていてもよい。例えば、エンハンサーは、CMV前初期エンハンサーを含み得る。このエンハンサーは、互いに隣接して位置する2つのコピーに存在し得る。あるいは、エンハンサーの二重コピーは、1つ以上の配列により分離される。更に別の実施形態では、発現カセットは、イントロン、例えば、ニワトリβ-アクチンイントロンを更に含有する。特定の実施形態では、イントロンは、ヒトβ-グロビンスプライスドナー及び免疫グロブリンG(IgG)スプライスアクセプター要素からなるハイブリッドイントロンである、キメライントロン(CI)である。他の好適なイントロンには、当該技術分野で既知のものが含まれ、例えば、WO2011/126808号などに記載されている。好適なポリA配列の例には、例えば、ウサギグロビンポリA、SV40、SV50、ウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン、及び合成ポリAが含まれる。任意選択的に、1つ以上の配列を選択して、mRNAを安定させてもよい。かかる配列の一例は、修飾WPRE配列であり、これは、ポリA配列の上流及びコード配列の下流で操作され得る(例えば、MA Za
nta-Boussif,et al,Gene Therapy(2009)16:605-619を参照されたい)。特定の実施形態では、WPRE配列は、存在しない。
【0039】
特定の実施形態では、発現カセットは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム1、配列番号2)をコードする、配列番号1のnt213~4439の配列を有する核酸分子を指す。特定の実施形態では、発現カセットは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム2又は2GS、配列番号6)をコードする配列番号5のnt213~4562の配列を有する核酸分子を指す。特定の実施形態では、発現カセットは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム3又は3GS、配列番号8)をコードする配列番号7のnt213~4388の配列を有する核酸分子を指す。特定の実施形態では、発現カセットは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム4又は4GS、配列番号10)をコードする配列番号9のnt213~4511の配列を有する核酸分子を指す。特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、又は48から選択され、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム1、配列番号2)をコードする操作された核酸配列を含む。特定の実施形態では、発現カセットは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム1、配列番号4)をコードし、miRNA183(配列番号11)で構成される、配列番号3のnt213~4555の配列を有する核酸分子を指す。特定の実施形態では、これらの発現カセットは、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のdrg脱標的化配列(すなわち、miRNA)を更に含む。例えば、2019年12月20日に出願され、現在WO2020/132455として公表されているPCT/US19/67872を参照されたい。
【0040】
III.rAAV
本明細書では、CDDを治療するために有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。rAAVは、(a)AAVカプシド、及び(b)(a)のAAVカプシドにパッケージされるベクターゲノムを含む。好適には、選択されたAAVカプシドは、治療される細胞を標的とする。特定の実施形態では、カプシドは、クレードF由来である。しかしながら、特定の実施形態では、別のAAVカプシド供給源が選択され得る。ベクターゲノムは、逆位末端反復(ITR)、及びhCDKL5発現を指示する調節配列の制御下で、機能的ヒトサイクリン依存性キナーゼ様5(hCDKL5)をコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、CDKL5は、CDKL5又はhCDKL5、CDKL5-2GS又はhCDKL5-2GS、CDKL5-3GS又はhCDKL5-3GS、及びCDKL5-4GS又はhCDKL5-4GSを指し得る。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号22(CDKL5-1又はhCDKL5-1のアミノ酸配列をコードする、配列番号2)と少なくとも約95%同一である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号24(CDKL5-2GS又はhCDKL5-2GSのアミノ酸配列をコードする、配列番号6)と少なくとも約95%同一である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号25(CDKL5-3GS又はhCDKL5-3GSのアミノ酸配列をコードする、配列番号8)と少なくとも約95%同一である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号26(CDKL5-4GS又はhCDKL5-4GSのアミノ酸配列をコードする、配列番号10)と少なくとも約95%同一である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、hCDKL5転写バリアント1~3のうちのいずれか1つと80%未満同一である(配列番号16を有するNM_001037343.1であり、配列番号19を有するアミノ酸配列NP_001032420.1をコードする;配列番号17を有するNM_001323289.2であり、配列番号20を有するアミノ酸配列NP_001310218.1をコードする;配列番号18を有するNM_003159.2であり、配列番号21を有するアミノ酸配列NP_003150.1をコードする)。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、配列番号37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、及び47であるか、又はそれと少なくとも約95%同一である(CDKL5-1又はh
CDKL5-1のアミノ酸配列をコードする、配列番号2)。特定の実施形態では、機能的hCDKL5は、配列番号2のアミノ酸配列(CDKL5-1又はhCDKL5-1)を有する。特定の実施形態では、機能的hCDKL5は、配列番号6のアミノ酸配列(CDKL5-2GS又はhCDKL5-2GS)を有する。特定の実施形態では、機能的hCDKL5は、配列番号8のアミノ酸配列(CDKL5-3GS又はhCDKL5-3GS)を有する。特定の実施形態では、機能的hCDKL5は、配列番号10のアミノ酸配列(CDKL5-4GS又はhCDKL5-4GS)を有する。特定の実施形態では、調節配列は、中枢神経系細胞におけるhCDKL5発現を指示する。特定の実施形態では、調節配列は、ヒトシナプシンプロモーター(hSyn)又はCB7プロモーターを含む。特定の実施形態では、調節エレメントは、Kozak配列、ポリアデニル化配列、イントロン、エンハンサー、及びTATAシグナルのうちの1つ以上を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、後根神経節(drg)特異的miRNA標的配列の少なくとも2つのタンデムリピートを更に含み、少なくとも2つのタンデムリピートは、少なくとも第1のmiRNA標的配列と、同じ又は異なり得る少なくとも第2のmiRNA標的配列とを含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号1のnt1~nt4634、又は配列番号3のnt1~nt4750、又は配列番号5のnt1~nt4757、又は配列番号7のnt1~nt4583、又は配列番号9のnt1~nt4706、又はそれと少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.9%)同一の核酸配列である。
【0041】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム1、配列番号2)をコードする配列番号1を含む、核酸分子を指す。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム2又は2GS、配列番号6)をコードする配列番号5を含む、核酸分子を指す。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム3又は3GS、配列番号8)をコードする配列番号7を含む、核酸分子を指す。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、hCDKL5のアミノ酸配列(アイソフォーム4又は4GS、配列番号10)をコードする配列番号9を含む、核酸分子を指す。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号3を含み、hCDKL5(アイソフォーム1、配列番号4)のアミノ酸配列をコードし、miRNA183(配列番号11)を含む、核酸分子を指す。
【0042】
特定の実施形態では、hCDKL5コード配列に加えて、別の非AAVコード配列、例えば、目的のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、機能的RNA分子(例えば、miRNA、miRNA阻害剤)、又は他の遺伝子産物が含まれてもよい。有用な遺伝子産物としては、miRNAも含まれる。miRNA及び他の低分子干渉核酸は、標的RNA転写産物の切断/分解又は標的メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳抑制を介して遺伝子発現を制御する。miRNAは、典型的には、最終的な19~25の非翻訳RNA産物として天然に発現される。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)との配列特異的相互作用を通してそれらの活性を示す。これらの内因性の発現miRNAは、ヘアピン前駆体を形成し、これがその後、miRNA二本鎖へと処理され、更に「成熟」一本鎖miRNA分子へと処理される。この成熟miRNAは、成熟miRNAとの相補性に基づいて、例えば、3′UTR領域内の標的mRNAの標的部位を特定する、多タンパク質複合体miRISCを誘導する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「miRNA標的配列」は、DNAプラス鎖上に位置する配列(5’から3’)であり、miRNAシード配列を含むmiRNA配列に少なくとも部分的に相補的である。miRNA標的配列は、コードされた導入遺伝子産物の非翻訳領域に対して外因性であり、導入遺伝子発現の抑制が所望される細胞で、miRNAによって特異的に標的化されるように設計される。「miR183クラスター標的配列」という
用語は、miR-183、-96、及び-182(参照により本明細書に組み込まれる、Dambal,S.et al.Nucleic Acids Res 43:7173-7188,2015によって記載されている)を含む、miR183クラスター(あるいは、ファミリーと称される)のうちの1つ以上のメンバーに応答する標的配列を指す。
【0044】
典型的には、miRNA標的配列は、少なくとも7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長、少なくとも8ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長、7ヌクレオチド~28ヌクレオチド、8ヌクレオチド~18ヌクレオチド長、約12~約28ヌクレオチド長、約20~約26ヌクレオチド、約22ヌクレオチド、約24ヌクレオチド、又は約26ヌクレオチドであり、miRNAシード配列に相補的である少なくとも1つの連続領域(例えば、7又は8ヌクレオチド)を含有する。特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と正確な相補性(100%)を有する配列、又はmiRNAシード配列といくつかのミスマッチを含む部分的な相補性を有する配列を含む。特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と100%相補的である少なくとも7~8個のヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と100%相補的である配列からなる。特定の実施形態では、標的配列は、シード配列と100%相補的である配列を複数コピー(例えば、2又は3コピー)含む。特定の実施形態では、100%相補性の領域は、標的配列の長さの少なくとも30%を含む。特定の実施形態では、標的配列の残部は、miRNAに対して少なくとも約80%~約99%の相補性を有する。特定の実施形態では、DNAプラス鎖を含む発現カセットにおいて、miRNA標的配列は、miRNAの逆相補である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「miRNA標的配列」は、DNAプラス鎖上に位置する配列(5’から3’)であり、miRNAシード配列を含むmiRNA配列に少なくとも部分的に相補的である。miRNA標的配列は、コードされた導入遺伝子産物の非翻訳領域に対して外因性であり、導入遺伝子発現の抑制が所望される細胞で、miRNAによって特異的に標的化されるように設計される。「miR183クラスター標的配列」という用語は、miR-183、-96及び-182(参照により本明細書に組み込まれる、Dambal,S.et al.Nucleic Acids Res 43:7173-7188,2015によって記載されている)を含む、miR183クラスター(あるいはファミリーと称される)のうちの1つ以上のメンバーに応答する標的配列を指す。理論に束縛されることを意図するものではないが、導入遺伝子(遺伝子産物をコードする)のメッセンジャーRNA(mRNA)は、miRNAを含有する発現カセットが送達される細胞型に存在し、その結果、3’UTR miRNAの標的配列に対するmiRNAの特異的結合が、mRNAのサイレンシング及び切断をもたらし、それによって、miRNAを発現する細胞においてのみ、導入遺伝子の発現が低減又は排除される。
【0046】
典型的には、miRNA標的配列は、少なくとも7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長、少なくとも8ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長、7ヌクレオチド~28ヌクレオチド、8ヌクレオチド~18ヌクレオチド長、約12~約28ヌクレオチド長、約20~約26ヌクレオチド、約22ヌクレオチド、約24ヌクレオチド、又は約26ヌクレオチドであり、miRNAシード配列に相補的である少なくとも1つの連続領域(例えば、7又は8ヌクレオチド)を含有する。特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と正確な相補性(100%)を有する配列、又はmiRNAシード配列といくつかのミスマッチを含む部分的な相補性を有する配列を含む。特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と100%相補的である少なくとも7~8個のヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と100%相補的である配列からなる。特定の実施形態では、標的配列は、シード配列と100%相補的である配列を複数コピー(例えば、2又は3コピー)含む。特定の実施形態では、100%相補性の領域は、標的配列の長さの少なくとも30%を含む。特定の実施形態では、標的配列の残
部は、miRNAに対して少なくとも約80%~約99%の相補性を有する。特定の実施形態では、DNAプラス鎖を含む発現カセットにおいて、miRNA標的配列は、miRNAの逆相補である。
【0047】
特定の実施形態では、発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の少なくとも第1の及び/又は少なくとも第2のmiRNA標的配列のmiRNA標的配列は、(i)AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(miR183、配列番号11)、(ii)AGCAAAAATGTGCTAGTGCCAAA(miR-96、配列番号12)、(iii)AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(miR182、配列番号13)から選択される。他の実施形態では、AGGGATTCCTGGGAAAACTGGAC(配列番号14)が選択される。
【0048】
特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-183の標的配列である少なくとも1つのmiRNA標的配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(配列番号11)を含むmiR-183標的配列を含み、miR-183シード配列に相補的な配列は、GTGCCATである)。特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-183シード配列に100%相補的な配列を、2コピー以上(例えば、2又は3コピー)含む。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、約7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長であり、miR-183シード配列に少なくとも100%相補的である少なくとも1つの領域を含む。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号11に部分的に相補的な配列を含み、したがって、配列番号11に整列させた場合、1つ以上のミスマッチがある。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号11と整列させた場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のミスマッチを有する配列を含み、ミスマッチは非連続であり得る。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、100%相補的な領域を含み、また、miR-183標的配列の長さの少なくとも30%を含む。特定の実施形態では、100%相補性の領域は、miR-183シード配列と100%相補性を有する配列を含む。特定の実施形態では、miR-183標的配列の残部は、miR-183と少なくとも約80%~約99%相補性を有する。特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、切断された配列番号11(すなわち、配列番号1の5’末端若しくは3’末端のいずれか又は両方で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドを欠く配列)を含む、miR-183標的配列を含む。特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、導入遺伝子及び1つのmiR-183標的配列を含む。更に他の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、少なくとも2つ、3つ、又は4つのmiR-183標的配列を含む。(i)AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(miR183、配列番号11)、(ii)AGCAAAAATGTGCTAGTGCCAAA(miR-96、配列番号12)。
【0049】
特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-182の標的配列である少なくとも1つのmiRNA標的配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(配列番号13)を含む、miR-182標的配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-182シード配列に100%相補的な配列を、1コピーより多く(例えば、2又は3コピー)含む。特定の実施形態では、miR-182標的配列は、約7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長であり、miR-182シード配列に少なくとも100%相補的である少なくとも1つの領域を含む。特定の実施形態では、miR-182標的配列は、配列番号13に部分的に相補的な配列を含み、したがって、配列番号13と整列させた場合、1つ以上のミスマッチがある。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号13と整列させた場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、
7、8、9、又は10個のミスマッチを有する配列を含み、ミスマッチは非連続であり得る。特定の実施形態では、miR-182標的配列は、100%相補性の領域を含み、これはまた、miR-182標的配列の長さの少なくとも30%を含む。特定の実施形態では、100%相補性の領域は、miR-182シード配列と100%相補性を有する配列を含む。特定の実施形態では、miR-182標的配列の残部は、miR-182と少なくとも約80%~約99%相補性を有する。特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、切断された配列番号13(すなわち、配列番号13の5’末端若しくは3’末端のいずれか又は両方で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドを欠く配列)を含む、miR-182標的配列を含む。特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、導入遺伝子と、1つのmiR-182標的配列とを含む。更に他の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、少なくとも2つ、3つ、又は4つのmiR-182標的配列を含む。
【0050】
「タンデムリピート」という用語は、2つ以上の連続するmiRNA標的配列の存在を指すように本明細書で使用される。これらのmiRNA標的配列は、連続的であってもよい。すなわち、ある配列の3’末端が、介在配列なしで、次の配列の5’末端のすぐ上流にあるように、又はその逆でもよく、次々と直に位置している。別の実施形態では、miRNA標的配列のうちの2つ以上が、短いスペーサー配列によって分離されている。
【0051】
本明細書で使用される場合、「スペーサー」としては、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド長の任意の選択された核酸配列であり、2つ以上の連続するmiRNA標的配列の間に位置する。特定の実施形態では、スペーサーは、1~8ヌクレオチド長、2~7ヌクレオチド長、3~6ヌクレオチド長、4ヌクレオチド長、4~9ヌクレオチド、3~7ヌクレオチド、又はより長い値である。好適には、スペーサーは、非コード配列である。特定の実施形態では、スペーサーは、4つの(4)ヌクレオチドであり得る。特定の実施形態では、スペーサーは、GGATである。特定の実施形態では、スペーサーは、6つの(6)ヌクレオチドである。特定の実施形態では、スペーサーは、CACGTG又はGCATGCである。
【0052】
特定の実施形態では、タンデムリピートは、2つ、3つ、4つ以上の同じmiRNA標的配列を含む。特定の実施形態では、タンデムリピートは、少なくとも2つの異なるmiRNA標的配列、少なくとも3つの異なるmiRNA標的配列、又は少なくとも4つの異なるmiRNA標的配列などを含む。特定の実施形態では、タンデムリピートは、2つ又は3つの同じmiRNA標的配列、及び異なる第4のmiRNA標的配列を含んでもよい。
【0053】
特定の実施形態では、発現カセットには、少なくとも2つの異なるセットのタンデムリピートが存在し得る。例えば、3’UTRは、導入遺伝子、UTR配列のすぐ下流にタンデムリピート、及びUTRの3’末端の近くに2つ以上のタンデムリピートを含み得る。別の例では、5’UTRは、1つ、2つ以上のmiRNA標的配列を含み得る。別の例では、3’は、タンデムリピートを含んでもよく、5’UTRは、少なくとも1つのmiRNA標的配列を含んでもよい。
【0054】
特定の実施形態では、発現カセットは、2つ、3つ、4つ以上のタンデムリピートを含み、導入遺伝子の終止コドンの約0~20ヌクレオチド以内に開始する。他の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の終止コドンから少なくとも100~約4000ヌクレオチドのmiRNAタンデムリピートを含む。
【0055】
特定の実施形態では、miRNA標的配列間のスペーサーは同じである。本明細書で使用される場合、CDKL5又はhCDKL5は、別途指定されない限り、アイソフォーム
1を指す。アイソフォーム2~4は、CDKL5-2GS又はhCDKL5-2GS、CDKL5-3GS又はhCDKL5-3GS、及びCDKL5-4GS又はhCDKL5-4GSとして指定することができる。これらのアイソフォームを有する発現カセット及びベクターゲノムは、アイソフォーム1について記載されるように構築され得る。
【0056】
参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月20日に出願されたPCT/US19/67872(現WO2020/132455)及び2020年5月12日に出願された米国仮特許出願第63/023,593号、2020年6月12日に出願された米国仮特許出願第63/038,488号、2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/043,562号、及び2020年9月16日に出願された米国仮特許出願第63/079,299号、2011年2月22日に出願された米国仮特許出願第63/152,042号を参照されたい(これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0057】
特定の実施形態では、クレードF AAVカプシドは、AAVhu68カプシド、AAV9カプシド、AAVhu31カプシド、AAVhu32カプシド、又はこれらのカプシドのうちの1つの操作されたバリアント(例えば、AAV-PHP.B)から選択される。AAVhu68カプシドタンパク質をコードする核酸配列は、ベクターゲノムを有するAAV.hCDKL5組換えAAV(rAAV)の産生のために以下の実施例で利用される。AAVhu68又はAAV-PHP.Bに関連する追加の詳細は、WO2018/160582及びUS2015/0079038に提供され、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるクレードFベクターは、hCDKL5コード配列を含むベクターゲノムを、脳、海馬、運動皮質、小脳、及び運動ニューロンを含む中枢神経系内の細胞に送達するのに非常に好適である。これらのベクターは、中枢神経系(CNS)内の他の細胞、並びにCNS外の特定の他の組織及び細胞を標的にするために使用され得る。
【0058】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法のためのAAVカプシドは、標的細胞に基づいて選択される。特定の実施形態では、AAVカプシドは、CNS細胞及び/又はPNS細胞を形質導入する。特定の実施形態では、AAVカプシドは、cy02カプシド、rh43カプシド、AAV8カプシド、rh01カプシド、AAV9カプシド、rh8カプシド、rh10カプシド、bb01カプシド、hu37カプシド、rh02カプシド、rh20カプシド、rh39カプシド、rh64カプシド、AAV6カプシド、AAV1カプシド、hu44カプシド、hu48カプシド、cy05カプシド、hu11カプシド、hu32カプシド、pi2カプシド、又はそれらのバリエーションから選択される。特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAV9カプシド、AAVhu68カプシド、hu31カプシド、hu32カプシド、又はそれらのバリエーションなどのクレードFカプシドである。例えば、2015年4月14日に公開されたWO2005/033321、WO2018/160582、及びUS2015/0079038を参照されたい(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態では、AAVカプシドは、非クレードFカプシド、例えば、クレードA、B、C、D、又はEカプシドである。特定の実施形態では、非クレードFカプシドは、AAV1又はそのバリエーションである。特定の実施形態では、AAVカプシドは、神経系細胞以外の標的細胞を形質導入する。特定の実施形態では、AAVカプシドは、クレードAカプシド(例えば、AAV1、AAV6、AAVrh91)、クレードBカプシド(例えば、AAV2)、クレードCカプシド(例えば、hu53)、クレードDカプシド(例えば、AAV7)、又はクレードEカプシド(例えば、rh10)である。特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVrh91カプシド(配列番号33及び35の核酸配列)などのクレードAカプシドである。2020年4月29日に出願されたPCT/US20/030266、現在公表されているWO2020/223231(参照により本明細書に組み込まれる)、及び2019年4月29日に出願された米国仮特許米国特許出願第63/065,
616号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。また、2020年8月14日に出願された米国仮特許出願第63/065,616号、及び2020年11月4日に出願された米国仮特許出願第63/109,734号(参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。にもかかわらず、他のAAVカプシドが選択されてもよい。
【0059】
本明細書で使用される場合、AAVの群に関連する「系統群(clade)」という用語は、互いに系統的に関連するAAVの群を指し、AAV vp1アミノ酸配列の整列に基づいて、少なくとも75%のブートストラップ値(少なくとも1000反復のうち)及び0.05以下のポアソン補正距離測定値による隣接結合アルゴリズム(Neighbor-Joining algorithm)を使用して決定される。隣接結合アルゴリズムは、文献に記載されている。例えば、Nei and S.Kumar,Molecular Evolution and Phylogenetics(Oxford University Press,New York(2000)を参照されたい。コンピュータプログラムが利用可能であり、それを使用して、このアルゴリズムを実装することができる。例えば、MEGA v2.1プログラムは、修正Nei-Gojobori法を実装する。これらの技術及びコンピュータプログラム、並びにAAV vp1カプシドタンパク質の配列を使用して、当業者は、選択されたAAVが、本明細書で特定される1つの系統群(clade)に含まれるか、別の系統群に含まれるか、又はこれらの系統群の外にあるかを容易に決定することができる。例えば、クレードA、B、C、D、E、及びFを同定し、新規AAVの核酸配列(GenBank受入番号AY530553~AY530629)を提供する、G Gao,et al,J Virol 2004 Jun;78(10):6381-6388を参照されたい。また、WO2005/033321も参照されたい。
【0060】
rAAVは、AAVカプシド及びベクターゲノムからなる。AAVカプシドは、vp1の異種集団、vp2の異種集団、及びvp3タンパク質の異種集団の集合体である。本明細書で使用される、vpカプシドタンパク質を参照するために使用される場合、「異種」という用語又はその任意の文法的変形は、例えば、異なる修飾アミノ酸配列を有するvp1、vp2、又はvp3モノマー(タンパク質)を有する、同じではない要素からなる集団を指す。
【0061】
本明細書で使用される、vpカプシドタンパク質を参照するために使用される場合、「異種」という用語又はその任意の文法的変形は、例えば、異なる修飾アミノ酸配列を有するvp1、vp2、又はvp3モノマー(タンパク質)を有する、同じではない要素からなる集団を指す。vp1、vp2、及びvp3タンパク質(代替的にアイソフォームと称される)に関連して使用される「異種集団」という用語は、カプシド内のvp1、vp2、及びvp3タンパク質のアミノ酸配列の違いを指す。AAVカプシドは、予測されたアミノ酸残基からの修飾を有する、vp1タンパク質内、vp2タンパク質内、及びvp3タンパク質内に亜集団を含有する。これらの亜集団は、最低限、特定の脱アミド化アスパラギン(N又はAsn)残基を含む。例えば、特定の亜集団は、アスパラギン-グリシン対における少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの高度に脱アミド化されたアスパラギン(N)位置を含み、任意選択的に他の脱アミド化アミノ酸を更に含み、脱アミド化は、アミノ酸変化及び他の任意選択的な修飾をもたらす。
【0062】
特定の実施形態では、複数の高度に脱アミド化された「NG」位置を含むAAVカプシドアイソフォーム(すなわち、VP1、VP2、VP3)の異種集団を有するAAVカプシドが提供される。特定の実施形態では、高度に脱アミド化された位置は、予測される完全長のVP1アミノ酸配列を参照して、以下に示す位置にある。他の実施形態では、カプシド遺伝子は、参照される「NG」が除去されるように修飾され、変異「NG」は、別の位置に操作される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「標的細胞」及び「標的組織」という用語は、対象となるAAVベクターによって形質導入されることが意図される任意の細胞又は組織を指し得る。この用語は、筋肉、肝臓、肺、気道上皮、中枢神経系、ニューロン、眼(視覚細胞)、又は心臓のうちのいずれか1つ以上を指し得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ベクターゲノム」という用語は、ウイルスカプシド、例えば、AAVカプシドにパッケージされ、宿主細胞又は患者の細胞に送達され得る核酸分子を指す。特定の実施形態では、ベクターゲノムは発現カセットであり、ベクターゲノムをAAVカプシドにパッケージングするのに必要な逆位末端反復(ITR)配列を5’及び3’最末端に有し、それらの間に、発現を指示する配列と作動可能に連結された本明細書に記載されるCDLK5遺伝子を含有する。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、少なくとも5’から3’へ、AAV 5’ITR、コード配列、及びAAV 3’ITRを含み得る。特定の実施形態では、ITRは、AAV2由来(カプシドとは異なるAAV供給源)であるか、又はそれ以外の完全長ITRが選択され得る。特定の実施形態では、ITRは、産生中のrep機能又はトランス相補性AAVを提供するAAVと同じAAV供給源由来である。更に、他のITRが使用され得る。ベクターゲノムは、本明細書では「ミニ遺伝子」と称されることがある。
【0065】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、rAAVがプラスミドから産生されるパッケージング細胞株を指し得る。代替的に、「宿主細胞」という用語は、導入遺伝子の発現が所望される標的細胞を指し得る。
【0066】
上に示されるように、所望の細胞を標的とするAAVカプシド、並びに少なくとも、ベクターゲノムをカプシドにパッケージするのに必要なAAV ITR、hCDKL5コード配列、及びそのための発現を指示する調節配列を含むベクターゲノムを有するrAAVが提供される。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、一本鎖AAVベクターゲノムである。特定の実施形態では、自己相補的(sc)AAVベクターゲノムを含むrAAVベクターが本発明に利用され得る。
【0067】
ベクターのAAV配列は、典型的には、シス作用性5’及び3’逆位末端反復(ITR)配列を含む(例えば、B.J.Carter,in“Handbook of Parvoviruses”,ed.,P.Tijsser,CRC Press,pp.155 168(1990)を参照されたい)。ITR配列は、約145塩基対(bp)の長さである。好ましくは、実質的にITRをコードする全体配列が分子内で使用されるが、これらの配列のある程度の軽微な修飾が許容される。これらのITR配列を修飾する能力は、当該技術分野の範囲内である。(例えば、Sambrook et al,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual”,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)、及びK.Fisher et al.,J.Virol.,70:520 532(1996)を参照されたい)。本発明で利用されるかかる分子の一例は、選択された導入遺伝子配列及び関連する調節エレメントが5’及び3’AAV ITR配列に隣接する、導入遺伝子を含む「シス作用性」プラスミドである。一実施形態では、ITRは、カプシドを供給するものとは異なるAAV由来である。一実施形態では、ITR配列は、AAV2由来である。D配列及び末端分離部位(trs)が欠失している、ΔITRと称される5’ITRの短縮バージョンが記載されている。他の実施形態では、全長AAV5’及び3’ITRが使用される。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、外部Aエレメントが欠失している、130塩基対の短縮AAV2 ITRを含む。短縮されたITRは、内部Aエレメントをテンプレートとして使用して、ベクターDNA増幅中に145塩基対の野生型長に戻される。しかしながら、他のAAV起源由来のITRが選択され
得る。ITRの起源がAAV2からであり、AAVカプシドが別のAAV起源からのものである場合、得られたベクターは、シュードタイプであると称され得る。しかし、これらのエレメントの他の構成も好適であり得る。
【0068】
特定の実施形態では、5’AAV ITR-プロモーター-任意選択的なエンハンサー-任意選択的なイントロン-hCDKL5コード配列-ポリA-3’ITRを含む、ベクターゲノムが構築される。特定の実施形態では、5’AAV ITR-プロモーター-任意選択的なエンハンサー-任意選択的なイントロン-hCDKL5コード配列-任意選択的に反復するmiR脱標的化配列-ポリA-3’ITRを含む、ベクターゲノムが構築される。特定の実施形態では、5’AAV ITR-プロモーター-任意選択的なイントロン-hCDKL5コード配列-任意選択的なエンハンサー-ポリA-3’ITRを含む、ベクターゲノムが構築される。特定の実施形態では、5’AAV ITR-プロモーター-任意選択的なエンハンサー-任意選択的なイントロン-hCDKL5コード配列-任意選択的なエンハンサー-任意選択的に反復するmiR脱標的化配列-ポリA-3’ITRを含む、ベクターゲノムが構築される。特定の実施形態では、ITRは、AAV2由来ではない。特定の実施形態では、1つより多くのプロモーターが存在する。特定の実施形態では、エンハンサーは、ベクターゲノムに存在する。特定の実施形態では、1つより多くのエンハンサーが存在する。特定の実施形態では、イントロンは、ベクターゲノムに存在する。特定の実施形態では、エンハンサー及びイントロンが存在する。特定の実施形態では、ポリAは、SV40ポリA(すなわち、サルウイルス40(SV40)後期遺伝子に由来するポリアデニル化(PolyA)シグナル)である。特定の実施形態では、ポリAは、ウサギβグロビン(RBG)ポリAである。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、少なくとも、5’AAV ITR-hSynプロモーター-hCDKL5コード配列-ポリA-3’ITRを含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’AAV ITR-CB7プロモーター-hCDKL5コード配列-RBGポリA-3’ITRを含む。特定の実施形態では、drg脱標的化配列は、本明細書に記載される1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のmiR183配列であり、発現カセットに含まれる。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、CDKL5のためのものである。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、CDKL5-2GSのためのものである。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、CDKL5-3GSのためのものである。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、CDKL5-4GSのためのものである。任意選択的に、これらのベクターゲノムのうちの1つ以上は、WPREエレメントを含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、ベクターゲノム又はベクターゲノムを含むrAAVは、本明細書では、AAV.プロモーター(任意選択的).Kozak(任意選択的).イントロン(任意選択的).CDKL5コード配列(例えば、hCDKL5、hCDKL5co、CDKL5、CDKL5co).miRNA(任意選択的).ポリA(任意選択的).Stuffer(任意選択的)として例示される。特定の実施形態では、rAAVは、本明細書では、AAVカプシド.プロモーター(任意選択的).Kozak(任意選択的)イントロン(任意選択的).CDKL5コード配列.miRNA(任意選択的).ポリA(任意選択的).Stuffer(任意選択的)として例示される。任意選択的に、これらのベクターゲノムのうちの1つ以上は、WPREエレメントを含む。
【0070】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、少なくとも、5’AAV ITR-ユビキチンCプロモーター-hCDKL5コード配列-1、2、3、4、又はそれ以上のmiR183配列-RBGポリA-3’ITRを含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、少なくとも、5’AAV ITR-ニワトリβアクチンハイブリッドプロモーター-hCDKL5コード配列-1、2、3、4、又はそれ以上のmiR183配列-RBGポリA-3’ITRを含む。任意選択的に、これらのベクターゲノムのうちの1つ以上は、WPREエレメントを含む。
【0071】
更に、本明細書では、本明細書に記載されるrAAVを産生するために有用なrAAV産生系が提供される。産生系は、(a)AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列と、(b)ベクターゲノムと、(c)ベクターゲノムをAAVカプシドにパッケージングするのを許可する十分なAAV rep機能及びヘルパー機能とを含む、細胞培養物を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号1、3、5、7、9、29、又は31である。特定の実施形態では、細胞培養物は、ヒト胚性腎臓293細胞培養物である。特定の実施形態では、AAV repは、異なるAAV由来である。特定の実施形態では、AAV repは、AAV2由来である。特定の実施形態では、AAV repコード配列及びcap遺伝子は、同じ核酸分子上にあり、任意選択的に、rep配列とcap遺伝子との間にスペーサーが存在する。特定の実施形態では、スペーサーは、atgacttaaaccaggt(配列番号15)である。
【0072】
AAVウイルスベクター(例えば、組換え(r)AAV)の産生における使用のために、ベクターゲノムは、パッケージング宿主細胞に送達される任意の好適なベクター、例えば、プラスミドに担持され得る。本発明において有用なプラスミドは、とりわけ、原核細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞におけるインビトロでの複製及びパッケージングに適しているように操作され得る。好適なトランスフェクション技術及びパッケージ宿主細胞は、既知であり、かつ/又は当業者によって容易に設計することができる。
【0073】
ベクターとしての使用に好適なAAVを生成及び単離するための方法は、当該技術分野において既知である。一般に、例えば、Grieger & Samulski,2005,Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production and clinical applications,Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145、Buning et al.,2008,Recent developments in adeno-associated virus vector technology,J.Gene Med.10:717-733、及び以下に引用される参考文献を参照されたい(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。本明細書で使用される場合、遺伝子療法ベクターは、本明細書に記載されるrAAVを指し、患者を治療する際の使用に好適である。遺伝子をビリオンにパッケージングするために、ITRは、遺伝子を含む核酸分子と同じ構築物においてシスで必要とされる唯一のAAV成分である。cap及びrep遺伝子は、トランスで供給され得る。
【0074】
一実施形態では、選択される遺伝子要素は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合を含む任意の好適な方法によってAAVパッケージ細胞に送達され得る。安定したAAVパッケージ細胞も作製することができる。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における技術者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術を含む。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,ed.Green and Sambrook,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0075】
用語「AAV中間体」又は「AAVベクター中間体」は、それにパッケージされた所望のゲノム配列を欠失している組み立てられたrAAVカプシドを指す。これらは、「空の」カプシドと称され得る。そのようなカプシドは、発現カセットの検出可能なゲノム配列をまったく含まないか、又は遺伝子産物の発現を達成するには不十分な部分的にパッケージされたゲノム配列のみを含み得る。これらの空のカプシドは、宿主細胞に目的の遺伝子
を導入するために非機能的である。
【0076】
本明細書に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、既知の技法を使用して産生されてもよい。例えば、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、US7588772B2を参照されたい。かかる方法は、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列、機能的rep遺伝子、最低限でもAAV逆方向末端反復(ITR)及び導入遺伝子からなる発現カセット、並びに発現カセットをAAVカプシドタンパク質にパッケージングするのを許可する十分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することを含む。カプシドを産生する方法、そのためのコード配列、及びrAAVウイルスベクターを産生するための方法が記載されている。例えば、Gao,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(10),6081-6086(2003)及びUS2013/0045186A1を参照されたい。
【0077】
一実施形態では、組換えAAVhu68又はAAVrh91を産生するために有用な産生細胞培養物が提供される。かかる細胞培養物は、宿主細胞中でAAVhu68カプシドタンパク質を発現する核酸、AAVhu68カプシドにパッケージングするのに好適な核酸分子(例えば、AAV ITRを含むベクターゲノム)、及び宿主細胞において遺伝子の発現を指示する調節配列に作動可能に連結された遺伝子をコードする非AAV核酸配列、並びにベクターゲノムを組換えAAVhu68又はAAVrh91カプシドにパッケージングするのを許可する十分なAAV rep機能及びアデノウイルスヘルパー機能を含む。一実施形態では、細胞培養物は、哺乳動物細胞(例えば、とりわけヒト胚性腎臓293細胞)又は昆虫細胞(例えば、ヨトウガSpodoptera frugiperda(Sf9)細胞)で構成される。特定の実施形態では、バキュロウイルスは、組換えAAVhu68又はAAVrh91カプシドにベクターゲノムをパッケージングするのに必要なヘルパー機能を提供する。
【0078】
任意選択的に、rep機能は、hu68以外のAAV又はAAV-PHP.Bによって提供される。特定の実施形態では、rep機能の少なくとも一部は、AAVhu68又はAAVrh91由来である。別の実施形態では、repタンパク質は、AAVhu68rep以外の異種repタンパク質であり、例えば、限定されないが、AAV1 repタンパク質、AAV2 repタンパク質、AAV3 repタンパク質、AAV4 repタンパク質、AAV5 repタンパク質、AAV6 repタンパク質、AAV7 repタンパク質、AAV8 repタンパク質、又はrep78、rep68、rep52、rep40、rep68/78、及びrep40/52、又はそれらの断片、あるいは別の供給源であり得る。これらのAAVhu68又は変異体AAVカプシド配列のうちのいずれかは、宿主細胞中でそれらの発現を指示する外因性調節制御配列の制御下にあり得る。
【0079】
一実施形態では、細胞は、好適な細胞培養物(例えば、HEK293又はSf9)又は懸濁液で製造される。本明細書に記載される遺伝子療法ベクターを製造するための方法は、当該技術分野においてよく知られている方法、例えば、遺伝子療法ベクターの産生のために使用されるプラスミドDNAの産生、ベクターの産生、及びベクターの精製を含む。一部の実施形態では、遺伝子療法ベクターは、AAVベクターであり、産生されたプラスミドは、AAVベクターゲノム及び目的の遺伝子をコードするAAVシス-プラスミド、AAVのrep及びcap遺伝子を含むAAVトランス-プラスミド、及びアデノウイルスヘルパープラスミドである。ベクター生成プロセスは、細胞培養の開始、細胞の継代、細胞の播種、プラスミドDNAによる細胞のトランスフェクション、トランスフェクション後の無血清培地への培地交換、並びにベクター含有細胞及び培養培地の回収などの方法ステップを含み得る。回収されたベクター含有細胞及び培養培地は、本明細書では粗細胞回収物と称される。更に別の系では、遺伝子療法ベクターは、バキュロウイルスベースベ
クターによる感染によって昆虫細胞に導入される。これらの産生系に関するレビューについては、概して、例えば、Zhang et al.,2009,Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production,Human Gene Therapy 20:922-929を参照されたく、各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これら及び他のAAV産生系を作製及び使用する方法は、以下の米国特許にも記載されており、各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:米国特許第5,139,941号、同第5,741,683号、同第6,057,152号、同第6,204,059号、同第6,268,213号、同第6,491,907号、同第6,660,514号、同第6,951,753号、同第7,094,604号、同第7,172,893号、同第7,201,898号、同第7,229,823号、及び同第7,439,065号。
【0080】
粗細胞回収物は、その後、ベクター回収物の濃縮、ベクター回収物のダイアフィルトレーション、ベクター回収物の微小流動化、ベクター回収物のヌクレアーゼ消化、微小流動化された中間体の濾過、クロマトグラフィによる粗精製、超遠心分離による粗精製、タンジェンシャルフロー濾過による緩衝液交換、並びに/又はバルクベクターを調製するための製剤化及び濾過などの、方法ステップに供され得る。
【0081】
2工程の高塩濃度でのアフィニティクロマトグラフィ精製、続いて、アニオン交換樹脂クロマトグラフィを用いて、ベクター薬物製品を精製し、空のカプシドを除去する。これらの方法は、2016年12月9日に出願されたWO2017/160360号及びその優先権書類、2016年4月13日に出願された米国特許出願第62/322,071号、及び2015年12月11日に出願された「Scalable Purification Method for AAV9」という題名の同第62/226,357号により詳細に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、ベクター薬品製品の精製(例えば、AAVrh91)は、2016年12月9日に出願されたWO2017/100674及びその優先権書類、2015年12月9日に出願された米国仮特許出願第62/266,351号、及び2016年4月13日に出願された「Scalable Purification Method for AAV1」という題名の同第62/322,083号(参照により本明細書に組み込まれる)により詳細に記載されるものを含む。
【0082】
空の及び完全粒子含有量を算出するために、選択された試料(例えば、本明細書の実施例では、イオジキサノール勾配-精製された調製物、ここで(GC)=粒子の数)についてのVP3バンド容量が、ロードされたGC粒子に対してプロットされる。得られた線形方程式(y=mx+c)を用いて、試験物品ピークのバンド体積中の粒子の数を算出する。次いで、ロードした20μL当たりの粒子の数(pt)に50を掛けて、粒子(pt)/mLを得る。Pt/mLをGC/mLで割って、ゲノムコピーに対する粒子の比(pt/GC)を得る。Pt/mL~GC/mLは、空pt/mLを与える。空pt/mLをpt/mLで割って、次いで100を掛けることよって、空粒子のパーセンテージを得る。
【0083】
一般に、空のカプシド及びパッケージされたゲノムを含むAAVベクター粒子をアッセイするための方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Grimm et al.,Gene Therapy(1999)6:1322-1330、Sommer et al.,Molec.Ther.(2003)7:122-128を参照されたい。変性したカプシドについて試験するために、本方法は、3つのカプシドタンパク質を分離することができる任意のゲル(例えば、緩衝液中に3~8%のTris-アセテートを含む勾配ゲル)からなるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に処理済みAAVスト
ックを供し、次いで、試料材料が分離するまでゲルを泳動し、ナイロン又はニトロセルロースの膜(好ましくは、ナイロン)にゲルをブロットすることを含む。抗AAVカプシド抗体は、次いで、変性したカプシドタンパク質に結合する一次抗体、好ましくは、抗AAVカプシドモノクローナル抗体、最も好ましくは、B1抗AAV-2モノクローナル抗体として使用される(Wobus et al.,J.Virol.(2000)74:9281-9293)。次いで、一次抗体に結合し、一次抗体、より好ましくは、抗体に共有結合した検出分子を含有する抗-IgG抗体、最も好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼに共有結合したヒツジ抗-マウスIgG抗体との結合を検出するための手段を含む、二次抗体が使用される。一次抗体と二次抗体との間の結合を半定量的に決定するために、結合を検出するための方法が使用され、好ましくは、放射性アイソトープ放射、電磁放射、又は比色変化を検出することができる検出方法、最も好ましくは、化学発光検出キットが使用される。例えば、SDS-PAGEでは、カラムフラクションからの試料を取って、還元剤(例えば、DTT)を含有するSDS-PAGE充填緩衝液中で加熱することができ、カプシドタンパク質は、プレキャスト勾配ポリアクリルアミドゲル(例えば、Novex)中で分解された。SilverXpress(Invitrogen、CA)を製造元の指示に従って使用して、銀染色を実施してもよく、又は他の好適な染色方法、すなわち、SYPROルビー若しくはクーマシー染色を実施してもよい。一実施形態では、カラム画分中のAAVベクターゲノム(vg)の濃度は、定量的リアルタイムPCR(Q-PCR)によって測定することができる。試料は希釈され、DNase I(又は別の適切なヌクレアーゼ)で消化されて、外因性DNAが除去される。ヌクレアーゼの不活化後、試料は更に希釈され、プライマー及びプライマー間のDNA配列に特異的なTaqMan(商標)蛍光発生プローブを用いて増幅される。規定レベルの蛍光(閾値サイクル、Ct)に到達するのに必要とされるサイクル数は、Applied Biosystems Prism 7700配列検出システム上で各試料について測定される。AAVベクター中に含有されるものと同一の配列を含有するプラスミドDNAを利用して、Q-PCR反応における標準曲線を作成する。試料から得られたサイクル閾値(Ct)値を用いて、プラスミド標準曲線のCt値に対してそれを正規化することにより、ベクターゲノム力価を決定した。デジタルPCRに基づくエンドポイントアッセイも使用されることができる。
【0084】
一態様では、広域スペクトル血清プロテアーゼ、例えば、プロテイナーゼK(例えば、Qiagenから商業的に入手可能なもの)を利用する最適化されたq-PCR方法が使用される。より具体的には、最適化されたqPCRゲノム力価アッセイは、DNase I消化の後に、試料をプロテイナーゼK緩衝液で希釈し、プロテイナーゼKで処理し、続いて、熱失活させることを除き、標準的なアッセイと同様である。適切には、試料は、試料サイズと等しい量のプロテイナーゼK緩衝液で希釈される。プロテイナーゼK緩衝液は、2倍以上に濃縮されてもよい。典型的には、プロテイナーゼK処理は、約0.2mg/mLであるが、0.1mg/mL~約1mg/mLで変動し得る。処理ステップは、一般に、約55℃で約15分間実施されるが、より低い温度で(例えば、約37℃~約50℃)より長い時間にわたって(例えば、約20分間~約30分間)、又はより高い温度で(例えば、最高約60℃)より短い時間にわたって(例えば、約5~10分間)実施されてもよい。同様に、熱失活は、一般に、約95℃で約15分間であるが、温度を下げてもよく(例えば、約70~約90℃)、時間を延ばしてもよい(例えば、約20分間~約30分間)。次いで、試料は希釈され(例えば、1000倍)、標準アッセイで記載されるように、TaqMan分析に供される。
【0085】
追加的に、又は代替的に、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)が使用されてもよい。例えば、ddPCRによる一本鎖及び自己相補的なAAVベクターゲノム力価を測定するための方法が記載されている。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods
.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。
【0086】
簡潔に言うと、パッケージされたゲノム配列を有するrAAVhu68(又はAAVrh91)粒子をゲノム欠損AAVhu68(又はAAVrh91)中間体から分離するための方法は、組換えAAVhu68(又はrh91)ウイルス粒子及びAAVhu68(又はAAVrh91)カプシド中間体を含む懸濁液を高性能液体クロマトグラフィに供することを含み、AAVhu68(又はAAVrh91)ウイルス粒子及びAAVhu68中間体は、約10.2(又はAAVrh91の場合、約9.8)のpHで平衡化された強力なアニオン交換樹脂に結合され、約260ナノメートル(nm)及び約280nmで紫外吸光度について溶出液をモニタリングしながら、塩勾配に供される。rAAVhu68及びAAVrh91にはあまり最適ではないが、pHは、約10~10.4の範囲であり得る。この方法では、AAV完全カプシドは、A260/A280の比が変曲点に到達すると溶出される画分から回収される。一実施例では、アフィニティクロマトグラフィステップのために、ダイアフィルトレーションされた産物を、AAVhu68又はAAVrh91血清型を効率的に捕捉するアフィニティ樹脂(Life Technologies)に適用してもよい。これらのイオン性条件下、残留細胞DNA及びタンパク質の著しいパーセンテージは、カラムの中を流れ、AAV粒子は、効率的に捕捉される。
【0087】
rAAV.hCDKL5は、好適な生理学的に適合性の組成物(例えば、緩衝生理食塩水)中に懸濁される。この組成物は、保管のために凍結され、後に解凍され、任意選択的に、好適な希釈剤で希釈され得る。あるいは、ベクターは、凍結及び解凍ステップを進めることなく患者への送達に好適な組成物として調製され得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、「NAb力価」という用語は、その標的化されたエピトープ(例えば、AAV)の生理学的効果を中和する中和抗体(例えば、抗AAV Nab)がどれだけ産生されるかの測定値である。抗AAV NAb力価は、例えば、Calcedo,R.,et al.,Worldwide Epidemiology of Neutralizing Antibodies to Adeno-Associated Viruses.Journal of Infectious Diseases,2009.199(3):p.381-390に記載されているように測定され得、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
略称「sc」は、自己相補性(self-complementary)を指す。「自己相補的AAV」は、組換えAAV核酸配列によって担持されるコード領域が、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計されている構築物を指す。感染の際、第2の鎖の細胞介在性の合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補的な半分が会合して、即時の複製及び転写が可能な1つの二本鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成する。例えば、D M McCarty et al,“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,Pages1248-1254.を参照されたい。自己相補的なAAVは、例えば、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号、及び同第7,456,683号に記載されており、その各々は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0090】
「複製欠損ウイルス」又は「ウイルスベクター」は、合成又は人工ウイルス粒子を指し、ここで、目的の遺伝子を含有する発現カセットは、ウイルスカプシド又はエンベロープ中にパッケージされ、ウイルスカプシド又はエンベロープ内にパッケージされた任意のウ
イルスゲノム配列は、複製欠損である、すなわち、それらは、後代ビリオンを産生することができないが、標的細胞に感染する能力を保持することができる。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要とされる酵素をコードする遺伝子を含まないが(ゲノムは、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要とされるシグナルに隣接する目的の遺伝子のみを含有する「ガットレス(gutless)」であるように操作されることができる)、これらの遺伝子は、産生中に供給され得る。したがって、それは、後代ビリオンによる複製及び感染が、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下以外で生じることができないために、遺伝子療法における使用のために安全であると考えられる。
【0091】
多くの場合、rAAV粒子は、DNase耐性として参照される。しかし、このエンドヌクレアーゼ(DNase)に加えて、他のエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼが、汚染核酸を除去するために本明細書に記載の精製工程において使用され得る。かかるヌクレアーゼは、一本鎖DNA及び/又は二本鎖DNA、及びRNAを分解するために選択され得る。かかる工程は、単一のヌクレアーゼ、又は異なる標的に指向性のヌクレアーゼの混合物を含み得、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼであり得る。
【0092】
「ヌクレアーゼ耐性」という用語は、AAVカプシドが、宿主細胞に遺伝子を送達するように設計された発現カセットの周りで完全に構築されていることを示し、産生プロセスから存在し得る汚染核酸を除去するように設計されたヌクレアーゼインキュベーション工程の間の分解(消化)から、これらのパッケージされたゲノム配列を保護する。
【0093】
IV.他のベクター
本明細書では、本明細書に記載される発現カセットを含むベクターが提供される。特定の実施形態では、発現カセットは、hCDKL5発現を指示する調節配列の制御下で、機能的ヒトサイクリン依存性キナーゼ様5(hCDKL5)をコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、[MKIPNIGNVMNKFEILGVVGEGAYGVVLKCRHKETHEIVAIKKFKDSEENEEVKETTLRELKMLRTLKQENIVELKEAFRRRGKLYLVFEYVEKNMLELLEEMPNGVPPEKVKSYIYQLIKAIHWCHKNDIVHRDIKPENLLISHNDVLKLCDFGFARNLSEGNNANYTEYVATRWYRSPELLLGAPYGKSVDMWSVGCILGELSDGQPLFPGESEIDQLFTIQKVLGPLPSEQMKLFYSNPRFHGLRFPAVNHPQSLERRYLGILNSVLLDLMKNLLKLDPADRYLTEQCLNHPTFQTQRLLDRSPSRSAKRKPYHVESSTLSNRNQAGKSTALQSHHRSNSKDIQNLSVGLPRADEGLPANESFLNGNLAGASLSPLHTKTYQASSQPGSTSKDLTNNNIPHLLSPKEAKSKTEFDFNIDPKPSEGPGTKYLKSNSRSQQNRHSFMESSQSKAGTLQPNEKQSRHSYIDTIPQSSRSPSYRTKAKSHGALSDSKSVSNLSEARAQIAEPSTSRYFPSSCLDLNSPTSPTPTRHSDTRTLLSPSGRNNRNEGTLDSRRTTTRHSKTMEELKLPEHMDSSHSHSLSAPHESFSYGLGYTSPFSSQQRPHRHSMYVTRDKVRAKGLDGSLSIGQGMAARANSLQLLSPQPGEQLPPEMTVARSSVKETSREGTSSFHTRQKSEGGVYHDPHSDDGTAPKENRHLYNDPVPRRVGSFYRVPSPRPDNSFHENNVSTRVSSLPSESSSGTNHSKRQPAFDPWKSPENISHSEQLKEKEKQGFFRSMKKKKKKSQTVPNSDSPDLLTLQKSIHSASTPSSRPKEWRPEKISDLQTQSQPLKSLRKLLHLSSASNHPASSDPRFQPLTAQQTKNSFSEIRIHPLSQASGGSSNIRQEPAPKGRPALQLPGQMDPGWHVSSVTRSATEGPSYSEQLGAKSGPNGHPYNRTNRSRMPNLNDLKETAL](配列番号2)のアミノ酸配列を
含むhCDKL5タンパク質をコードし、hCDKL5コード配列は、配列番号22の核酸配列、又は配列番号22と少なくとも約95%同一であり、配列番号2のタンパク質をコードする核酸配列である。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、[MKIPNIGNVMNKFEILGVVGEGAYGVVLKCRHKETHEIVAIKKFKDSEENEEVKETTLRELKMLRTLKQENIVELKEAFRRRGKLYLVFEYVEKNMLELLEEMPNGVPPEKVKSYIYQLIKAIHWCHKNDIVHRDIKPENLLISHNDVLKLCDFGFARNLSEGNNANYTEYVATRWYRSPELLLGAPYGKSVDMWSVGCILGELSDGQPLFPGESEIDQLFTIQKVLGPLPSEQMKLFYSNPRFHGLRFPAVNHPQSLERRYLGILNSVLLDLMKNLLKLDPADRYLTEQCLNHPTFQTQRLLDRSPSRSAKRKPYHVESSTLSNRNQAGKSTALQSHHRSNSKDIQNLSVGLPRADEGLPANESFLNGNLAGASLSPLHTKTYQASSQPGSTSKDLTNNNIPHLLSPKEAKSKTEFDFNIDPKPSEGPGTKYLKSNSRSQQNRHSFMESSQSKAGTLQPNEKQSRHSYIDTIPQSSRSPSYRTKAKSHGALSDSKSVSNLSEARAQIAEPSTSRYFPSSCLDLNSPTSPTPTRHSDTRTLLSPSGRNNRNEGTLDSRRTTTRHSKTMEELKLPEHMDSSHSHSLSAPHESFSYGLGYTSPFSSQQRPHRHSMYVTRDKVRAKGLDGSLSIGQGMAARANSLQLLSPQPGEQLPPEMTVARSSVKETSREGTSSFHTRQKSEGGVYHDPHSDDGTAPKENRHLYNDPVPRRVGSFYRVPSPRPDNSFHENNVSTRVSSLPSESSSGTNHSKRQPAFDPWKSPENISHSEQLKEKEKQGFFRSMKKKKKKSQTTDSTNGENPSIKKSLFPLFNSKNHLKHSSSLKKLPVVTPPMVPNSDSPDLLTLQKSIHSASTPSSRPKEWRPEKISDLQTQSQPLKSLRKLLHLSSASNHPASSDPRFQPLTAQQTKNSFSEIRIHPLSQASGGSSNIRQEPAPKGRPALQLPGQMDPGWHVSSVTRSATEGPSYSEQLGAKSGPNGHPYNRTNRSRMPNLNDLKETAL](配列番号6)のアミノ酸配列を含むhCDKL5-2GSタンパク質をコードし、hCDKL5コード配列は、配列番号24の核酸配列、又は配列番号24と少なくとも約95%同一であり、配列番号6のタンパク質をコードする配列を含む。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、[MKIPNIGNVMNKFEILGVVGEGAYGVVLKCRHKETHEIVAIKKFKDSEENEEVKETTLRELKMLRTLKQENIVELKEAFRRRGKLYLVFEYVEKNMLELLEEMPNGVPPEKVKSYIYQLIKAIHWCHKNDIVHRDIKPENLLISHNDVLKLCDFGFARNLSEGNNANYTEYVATRWYRSPELLLGAPYGKSVDMWSVGCILGELSDGQPLFPGESEIDQLFTIQKVLGPLPSEQMKLFYSNPRFHGLRFPAVNHPQSLERRYLGILNSVLLDLMKNLLKLDPADRYLTEQCLNHPTFQTQRLLDRSPSRNQAGKSTALQSHHRSNSKDIQNLSVGLPRADEGLPANESFLNGNLAGASLSPLHTKTYQASSQPGSTSKDLTNNNIPHLLSPKEAKSKTEFDFNIDPKPSEGPGTKYLKSNSRSQQNRHSFMESSQSKAGTLQPNEKQSRHSYIDTIPQSSRSPSYRTKAKSHGALSDSKSVSNLSEARAQIAEPSTSRYFPSSCLDLNSPTSPTPTRHSDTRTLLSPSGRNNRNEGTLDSRRTTTRHSKTMEELKLPEHMDSSHSHSLSAPHESFSYGLGYTSPFSSQQRPHRHSMYVTRDKVRAKGLDGSLSIGQGMAARANSLQLLSPQPGEQLPPEMTVARSSVKETSREGTSSFHTRQKSEGGVYHDPHSDDGTAPKENRHLYNDPVPRRVGSFYRVPSPRPDNSFHENNVSTRVSSLPSESSSGTNHSKRQPAFDPWKSPEN
ISHSEQLKEKEKQGFFRSMKKKKKKSQTVPNSDSPDLLTLQKSIHSASTPSSRPKEWRPEKISDLQTQSQPLKSLRKLLHLSSASNHPASSDPRFQPLTAQQTKNSFSEIRIHPLSQASGGSSNIRQEPAPKGRPALQLPGQMDPGWHVSSVTRSATEGPSYSEQLGAKSGPNGHPYNRTNRSRMPNLNDLKETAL](配列番号8)のアミノ酸配列を含むhCDKL5-3GSタンパク質をコードし、hCDKL5コード配列は、配列番号25の核酸配列、又は配列番号25と少なくとも約95%同一であり、配列番号8のタンパク質をコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、hCDKL5コード配列は、[MKIPNIGNVMNKFEILGVVGEGAYGVVLKCRHKETHEIVAIKKFKDSEENEEVKETTLRELKMLRTLKQENIVELKEAFRRRGKLYLVFEYVEKNMLELLEEMPNGVPPEKVKSYIYQLIKAIHWCHKNDIVHRDIKPENLLISHNDVLKLCDFGFARNLSEGNNANYTEYVATRWYRSPELLLGAPYGKSVDMWSVGCILGELSDGQPLFPGESEIDQLFTIQKVLGPLPSEQMKLFYSNPRFHGLRFPAVNHPQSLERRYLGILNSVLLDLMKNLLKLDPADRYLTEQCLNHPTFQTQRLLDRSPSRNQAGKSTALQSHHRSNSKDIQNLSVGLPRADEGLPANESFLNGNLAGASLSPLHTKTYQASSQPGSTSKDLTNNNIPHLLSPKEAKSKTEFDFNIDPKPSEGPGTKYLKSNSRSQQNRHSFMESSQSKAGTLQPNEKQSRHSYIDTIPQSSRSPSYRTKAKSHGALSDSKSVSNLSEARAQIAEPSTSRYFPSSCLDLNSPTSPTPTRHSDTRTLLSPSGRNNRNEGTLDSRRTTTRHSKTMEELKLPEHMDSSHSHSLSAPHESFSYGLGYTSPFSSQQRPHRHSMYVTRDKVRAKGLDGSLSIGQGMAARANSLQLLSPQPGEQLPPEMTVARSSVKETSREGTSSFHTRQKSEGGVYHDPHSDDGTAPKENRHLYNDPVPRRVGSFYRVPSPRPDNSFHENNVSTRVSSLPSESSSGTNHSKRQPAFDPWKSPENISHSEQLKEKEKQGFFRSMKKKKKKSQTTDSTNGENPSIKKSLFPLFNSKNHLKHSSSLKKLPVVTPPMVPNSDSPDLLTLQKSIHSASTPSSRPKEWRPEKISDLQTQSQPLKSLRKLLHLSSASNHPASSDPRFQPLTAQQTKNSFSEIRIHPLSQASGGSSNIRQEPAPKGRPALQLPGQMDPGWHVSSVTRSATEGPSYSEQLGAKSGPNGHPYNRTNRSRMPNLNDLKETAL](配列番号10)のアミノ酸配列を含むhCDKL5-4GSタンパク質をコードし、hCDKL5コード配列は、配列番号26の核酸配列、又は配列番号26と少なくとも約95%同一であり、配列番号10のタンパク質をコードする核酸配列を含む。
【0094】
特定の実施形態では、ベクターは、組換えパルボウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、若しくは組換えアデノウイルスから選択されるウイルスベクター;又は裸のDNA、裸のRNA、無機粒子、脂質粒子、ポリマーベースのベクター、若しくはキトサンベースの製剤から選択される非ウイルスベクターである。選択されるベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技法、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合を含む、任意の好適な方法によって送達され得る。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技法を含む。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい。
【0095】
「複製欠損ウイルス」又は「ウイルスベクター」は、合成又は人工ウイルス粒子を指し
、ここで、目的の遺伝子を含有する発現カセットは、ウイルスカプシド又はエンベロープ中にパッケージされ、ウイルスカプシド又はエンベロープ内にパッケージされた任意のウイルスゲノム配列は、複製欠損である、すなわち、それらは、後代ビリオンを産生することができないが、標的細胞に感染する能力を保持することができる。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要とされる酵素をコードする遺伝子を含まないが(ゲノムは、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要とされるシグナルに隣接する目的の導入遺伝子のみを含む「ガットレス(gutless)」であるように操作することができる)、これらの遺伝子は、産生の間に供給され得る。したがって、それは、後代ビリオンによる複製及び感染が、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下以外で生じることができないために、遺伝子療法における使用のために安全であると考えられる。そのような複製欠損ウイルスは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス(組み込み又は非組み込み)、又は別の適切なウイルス源であってもよい。
【0096】
V.組成物
本明細書に記載されるrAAV又はベクター及び水性懸濁媒体を含む組成物が本明細書で提供される。特定の実施形態では、懸濁液は、静脈内送達、髄腔内投与、又は脳室内投与のために製剤化される。
【0097】
本明細書では、少なくとも1つのrAAVストック、並びに任意選択的な担体、賦形剤及び/又は防腐剤を含む組成物が提供される。本明細書で使用される場合、rAAVの「ストック」は、rAAVの集団を指す。脱アミド化に起因するカプシドタンパク質の不均一性にもかかわらず、ストック内のrAAVは、同一のベクターゲノムを共有することが予想される。ストックは、例えば、選択されたAAVカプシドタンパク質及び選択された産生系に特徴的な不均一な脱アミド化パターンを有するカプシドを有するrAAVを含み得る。ストックは、単一の産生系から産生されてもよく、又は産生系の複数の実行からプールされてもよい。本明細書に記載されるものを含むが、これらに限定されない、様々な産生系を選択することができる。
【0098】
本明細書で使用される場合、「担体」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。薬学的活性物質に対するかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補足有効成分を組成物中に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されるときにアレルギー又は類似の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞などの送達ビヒクルが、本発明の組成物を好適な宿主細胞に導入するために使用され得る。特に、rAAVベクター送達ベクターゲノムは、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、又はナノ粒子などのいずれかに封入された送達ために製剤化され得る。
【0099】
一実施形態では、組成物は、対象への送達に適した最終製剤を含み、例えば、生理的に適合するpH及び塩濃度に緩衝される水性液体懸濁液である。任意選択的に、1つ以上の界面活性剤が製剤中に存在する。別の実施形態では、組成物は、対象への投与のために希釈される濃縮物として輸送され得る。他の実施形態では、組成物は、投与時に凍結乾燥され、再構成され得る。
【0100】
好適な界面活性剤、又は界面活性剤の組み合わせは、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択されてもよい。一実施形態では、例えば、中性pHを有し、平均分子量8400を有するポロキサマー188としても知られているPluronic(登録商標)F68[BASF]などの、一級ヒドロキシル基末端の二機能的ブロックコポリマー界面活性剤が選択される。他の界面活性剤及び他のポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチ
レン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖からなる非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリル酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及びポリエチレングリコールが選択され得る。一実施形態では、製剤は、ポロキサマーを含有する。これらのコポリマーは、一般的に、文字「P」(ポロキサマーの場合)の後に3桁の数字で命名され、最初の2桁×100は、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子質量を与え、最後の1桁×10は、ポリオキシエチレン含有量のパーセンテージを与える。一実施形態では、ポロキサマー188が選択される。一実施形態では、界面活性剤は、懸濁液の最大約0.0005%~約0.001%(w/w%、重量比に基づく)の量で存在し得る。別の実施形態では、界面活性剤は、懸濁液の最大約0.0005%~約0.001%(v/v%、体積比に基づく)の量で存在し得る。更に別の実施形態では、界面活性剤は、懸濁液の最大約0.0005%~約0.001%の量で存在し、ここで、n%は、懸濁液100mL当たりのnグラムを示す。
【0101】
別の実施形態では、組成物は、担体、希釈剤、賦形剤及び/又はアジュバントを含む。好適な担体は、導入ウイルスが向けられる適応症を考慮して、当業者により容易に選択され得る。例えば、1つの好適な担体は、生理食塩水を含み、様々な緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)とともに製剤化され得る。他の例示的な担体としては、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、及び水が挙げられる。緩衝液/担体は、rAAVが注入チューブに付着するのを防ぐが、インビボでrAAV結合活性を妨げない成分を含むべきである。好適な界面活性剤、又は界面活性剤の組み合わせは、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択されてもよい。一実施形態では、例えば、中性pHを有し、平均分子量8400を有するポロキサマー188(商品名Pluronic(登録商標)F68[BASF]、Lutrol(登録商標)F68、Synperonic(登録商標)F68、Kolliphor(登録商標)P188としても知られている)などの、末端が一級ヒドロキシル基の二機能性ブロックコポリマー界面活性剤が選択される。他の界面活性剤及び他のポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖からなる非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリン酸グリセリド)、ポリオキシ-オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及びポリエチレングリコールが選択され得る。一実施形態では、製剤は、ポロキサマーを含有する。これらのコポリマーは、一般的に、文字「P」(ポロキサマーの場合)の後に3桁の数字で命名され、最初の2桁×100は、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子質量を与え、最後の1桁×10は、ポリオキシエチレン含有量のパーセンテージを与える。一実施形態では、ポロキサマー188が選択される。界面活性剤は、懸濁液の最高約0.0005%~約0.001%の量で存在してもよい。
【0102】
特定の実施形態では、rAAV.hCDKL5を含有する組成物は、6.8~8、又は7.2~7.8、又は7.5~8の範囲のpHで送達される。髄腔内送達の場合、pHが、7.5超、例えば、7.5~8、又は7.8が望ましい可能性がある。
【0103】
特定の実施形態では、製剤は、重炭酸ナトリウムを含まない緩衝生理食塩水溶液を含有し得る。かかる製剤は、ハーバード緩衝液などの緩衝生理食塩水溶液を含有してもよく、水中に、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含む。水溶液は、ポロキサマーである
Kolliphor(登録商標)P188を更に含んでもよく、これは、BASFから市販され、以前、Lutrol(登録商標)F68という商品名で販売されていた。水溶液は、7.2のpHを有し得る。
【0104】
別の実施形態では、製剤は、1mMのリン酸ナトリウム(NaPO)、150mMの塩化ナトリウム(NaCl)、3mMの塩化カリウム(KCl)、1.4mMの塩化カルシウム(CaCl)、0.8mMの塩化マグネシウム(MgCl)、及び0.001%のポロキサマー(例えば、Kolliphor(登録商標))188、pH7.2を含む、緩衝生理食塩水溶液を含有し得る。例えば、harvardapparatus.com/harvard-apparatus-perfusion-fluid.htmlを参照されたい。特定の実施形態では、ハーバード緩衝液は、ハーバード緩衝液でより良好なpH安定性が観察されるため、好ましい。
【0105】
特定の実施形態では、製剤緩衝液は、Pluronic F68を含む人工CSFである。他の実施形態では、製剤は、1つ以上の浸透促進剤を含有し得る。好適な透過促進剤の例としては、例えば、マンニトール、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、又はEDTAを含んでもよい。
【0106】
任意選択的に、本発明の組成物は、rAAV及び担体に加えて、防腐剤又は化学的安定剤などの他の従来の医薬成分を含み得る。好適な例示的な防腐剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが含まれる。好適な化学安定剤としては、ゼラチン及びアルブミンが含まれる。
【0107】
本発明による組成物は、上記に定義されるような薬学的に許容される担体を含み得る。好適には、本明細書に記載される組成物は、有効量の薬学的に好適な担体に懸濁された、及び/又は注入、浸透ポンプ、髄腔内カテーテルを介して対象に送達するために、又は別のデバイス若しくは経路による送達のために設計された好適な賦形剤と混合された1つ以上のAAVを含む。一実施例では、組成物は、髄腔内送達用に製剤化される。一実施例では、組成物は、静脈内(iv)送達用に製剤化される。
【0108】
VI.使用
本明細書では、CDDを治療する方法であって、有効量の本明細書に記載されるrAAV又はベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0109】
特定の実施形態では、本明細書における「有効量」は、CDDの症状の改善及び/又はCDDの進行の遅延を達成する量である。
【0110】
ベクターは、細胞をトランスフェクトするのに十分な量で投与され、十分なレベルの遺伝子導入及び発現を提供して、過度の悪影響なしに、又は医学的に許容される生理学的効果を伴う治療効果を提供し、これは当業者によって決定され得る。従来の及び薬学的に許容される投与経路には、限定されないが、所望の臓器(例えば、脳、CSF,肝臓(任意選択的に、肝動脈を介して)、肺、心臓、眼、腎臓)への直接送達、経口、吸入、鼻腔内、髄腔内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、実質内、髄腔内、ICM、腰椎穿刺、及び他の非経口の投与経路が含まれる。投与経路は、所望される場合、組み合わされてもよい。
【0111】
ウイルスベクター(例えば、rAAV)の投薬量は、主に、治療されている状態、患者
の年齢、体重及び健康状態などの要因に依存し、したがって、患者間で異なり得る。例えば、ウイルスベクターの治療上有効なヒト投薬量は、概して、約1×10~1×1016ベクターゲノムコピーの濃度を含有する約25~約1000マイクロリットル~約100mLの溶液の範囲である。特定の実施形態では、約1mL~約15mL、又は約2.5mL~約10mL、又は約5mLの体積の懸濁液が送達される。特定の実施形態では、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15mLの懸濁液の体積が送達される。特定の実施形態では、合計約8.9×1012~2.7×1014GCの用量が、この体積で投与される。特定の実施形態では、約1.1×1010GC/g脳質量~約3.3×1011GC/g脳質量の用量が、この体積で投与される。特定の実施形態では、脳質量1グラム当たり約3.0×10、約4.0×10、約5.0×10、約6.0×10、約7.0×10、約8.0×10、約9.0×10、約1.0×1010、約1.1×1010、約1.5×1010、約2.0×1010、約2.5×1010、約3.0×1010、約3.3×1010、約3.5×1010、約4.0×1010、約4.5×1010、約5.0×1010、約5.5×1010、約6.0×1010、約6.5×1010、約7.0×1010、約7.5×1010、約8.0×1010、約8.5×1010、約9.0×1010、約9.5×1010、約1.0×1011、約1.1×1011、約1.5×1011、約2.0×1011、約2.5×1011、約3.0×1011、約3.3×1011、約3.5×1011、約4.0×1011、約4.5×1011、約5.0×1011、約5.5×1011、約6.0×1011、約6.5×1011、約7.0×1011、約7.5×1011、約8.0×1011、約8.5×1011、約9.0×1011GCの用量が、この体積で投与される。
【0112】
任意の副作用に対する治療効果のバランスをとるために、かかる投薬量を調整してもよく、かかる投薬量は、組換えベクターが利用される治療用途に応じて変化し得る。導入遺伝子の発現レベルをモニタリングして、ウイルスベクター(好ましくは、ミニ遺伝子を含有するAAVベクター)をもたらす投薬頻度を決定することができる。任意選択的に、治療目的で記載されているものと同様の投薬レジメンは、本発明の組成物を使用した免疫に利用され得る。
【0113】
複製欠陥ウイルス組成物は、投薬量単位で製剤化され、ヒト患者にとって、(対象を治療するために)約1.0×10GC~約1.0×1016GCの範囲にある量の複製欠陥ウイルスを含み、その範囲内の全ての整数又は小数量、好ましくは1.0×1012GC~1.0×1014GCを含むことができる。一実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、又は9×10GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、又は9×1010GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、又は9×1011GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、又は9×1012GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、又は9×1013GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014
、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、又は9×1014GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、又は9×1015GCを含むように製剤化される。
【0114】
一実施形態では、ヒト適用のために、用量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、体重1kg当たり1×1010~約1×1015GCの範囲であり得る。一実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は少数を含む、体重1kg当たり約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、又は9×10GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、体重1kg当たり約1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、又は9×1010GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、体重1kg当たり約1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、又は9×1011GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、体重1kg当たり約1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、又は9×1012GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、体重1kg当たり約1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、又は9×1013GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、体重1kg当たり約1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、又は9×1014GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、体重1kg当たり約1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、又は9×1015GCである。
【0115】
一実施形態では、ヒト適用のために、用量は、範囲内の全ての整数又は少数を含む、脳質量1グラム(g)当たり1×1010~約1×1015GCの範囲であり得る。一実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は少数を含む、脳質量1グラム(g)当たり約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、又は9×10GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、脳質量1グラム(g)当たり約1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、又は9×1010GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、脳質量1グラム(g)当たり約1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、又は9×1011GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、脳質量1グラム(g)当たり約1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、又は9×1012GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、脳質量1グラム(g)当たり約1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、又は9×1013GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、脳質量1グラム(g)当たり約1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、又は9×1014GCである。別の実施形態では、ベクターの有効量は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、脳質量1グラム(g)当たり約1×1
15、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、又は9×1015GCである。
【0116】
これらの上記用量は、治療される領域の大きさ、使用されるウイルス力価、投与経路、及び方法の所望の効果に応じて、約25~約1000マイクロリットルの範囲の様々な容量の担体、賦形剤、若しくは緩衝液製剤、又はその範囲内の全ての数を含むより高い容量で投与され得る。一実施形態では、担体、賦形剤、又は緩衝液の容量は、少なくとも約25μLである。一実施形態では、容量は、約50μLである。別の実施形態では、容量は、約75μLである。別の実施形態では、容量は、約100μLである。別の実施形態では、容量は、約125μLである。別の実施形態では、容量は、約150μLである。別の実施形態では、容量は、約175μLである。更に別の実施形態では、容量は、約200μLである。別の実施形態では、容量は、約225μLである。更に別の実施形態では、容量は、約250μLである。更に別の実施形態では、容量は、約275μLである。更に別の実施形態では、容量は、約300μLである。更に別の実施形態では、容量は、約325μLである。別の実施形態では、容量は、約350μLである。別の実施形態では、容量は、約375μLである。別の実施形態では、容量は、約400μLである。別の実施形態では、容量は、約450μLである。別の実施形態では、容量は、約500μLである。別の実施形態では、容量は、約550μLである。別の実施形態では、容量は、約600μLである。別の実施形態では、容量は、約650μLである。別の実施形態では、容量は、約700μLである。別の実施形態では、容量は、約700~1000μLである。
【0117】
特定の実施形態では、用量は、約1x10GC/g脳質量~約1x1012GC/g脳質量の範囲であり得る。特定の実施形態では、用量は、約1×1010GC/g脳質量~約3×1011GC/g脳質量の範囲であり得る。特定の実施形態では、用量は、約1×1010GC/g脳質量~約2.5×1011GC/g脳質量の範囲であり得る。特定の実施形態では、用量は、約5×1010GC/g脳質量の範囲であり得る。
【0118】
一実施形態では、ウイルス構築物は、少なくとも約最小1×10GC~約1×1015、又は約1×1011~5×1013GCの用量で送達され得る。これらの用量及び濃度の送達のために好適な容量は、当業者によって決定され得る。例えば、約1μL~150mLの容量が選択されてもよいが、より高容量が、成人用に選択されてもよい。典型的に、新生児用に好適な容量は、約0.5mL~約10mL、より年長の乳児用に、約0.5mL~約15mLが選択される。幼児のためには、約0.5mL~約20mLの容量が選択されてもよい。小児用に、最大約30mLの容量が選択されてもよい。プレティーン及びティーンには、最大約50mLの容量が選択されてもよい。更に他の実施形態では、患者は、選択された約5mL~約15mL、又は約7.5mL~約10mLの容量で髄腔内投与を受けることができる。他の好適な容量及び投薬量が決定されてもよい。任意の副作用に対する治療的利益のバランスをとるために、投薬量を調整してもよく、そのような投薬量は、組換えベクターが利用されるための治療用途に応じて変化し得る。
【0119】
上述の組換えベクターは、公開された方法に従って宿主細胞に送達され得る。好ましくは生理学的に適合性のある担体に懸濁されたrAAVは、ヒト又は非ヒト哺乳動物患者に投与され得る。特定の実施形態では、ヒト患者への投与のために、rAAVは、食塩水、界面活性剤、及び生理学的に適合性のある塩、又は塩の混合物を含有する水性溶液中に好適に懸濁される。好適には、製剤は、生理学的に許容されるpH、例えば、pH6~9、又はpH6.5~7.5、pH7.0~7.7、又はpH7.2~7.8の範囲に調整される。脳脊髄液のpHは約7.28~約7.32であるので、髄腔内送達のためには、この範囲内のpHが望ましく、静脈内送達のためには、約6.8~約7.2のpHが望ましい可能性がある。しかしながら、最も広範囲内の他のpH、及びこれらの下位範囲が、他
の送達経路のために選択され得る。
【0120】
本明細書で使用される場合、「髄腔内送達」又は「髄腔内投与」という用語は、脊柱管への注入による、より詳細には、脳脊髄液(CSF)へ到達するようにクモ膜下腔空間内への注入による、薬物の投与経路を指す。髄腔内送達は、腰椎穿刺、脳室内(側脳室内(ICV)を含む)、後頭下/槽内、及び/又はC1-2穿刺を含み得る。例えば、材料は、腰部穿刺により、クモ膜下腔空間にわたって拡散させるために導入され得る。別の実施例では、注入は、大槽内であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載されるrAAV、ベクター、又は組成物は、髄腔内投与を介して必要な対象に投与される。特定の実施形態では、髄腔内投与は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年11月29日に公表された米国特許公開第2018/0339065A1号に記載されるように実施される。
【0121】
本明細書で使用される場合、「大槽内送達」又は「大槽内投与」という用語は、小脳延髄大槽の脳脊髄液への直接的な薬物の投与経路、より具体的には、後頭下穿刺による、若しくは大槽内への直接注射による、又は永続的に配置されたチューブによる、薬物の投与経路を指す。
【0122】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物の治療は、感覚神経毒性及び無症状性感覚ニューロン病変に関して良好な耐容される、動物及び/又はヒト患者におけるDRG感覚ニューロンの最小~軽度の無症状変性を有する。
【0123】
VII.脳脊髄液中への医薬組成物の送達のための装置及び方法
一態様では、本明細書に提供されるベクターは、この節で提供され、かつWO2018/160582(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法及び/又はデバイスを介して髄腔内投与され得る。代替的に、他のデバイス及び方法が選択され得る。特定の実施形態では、本方法は、脊椎ニードルを介する、患者の大槽内へのCTガイド下の後頭下注射のステップを含む。本明細書で使用される場合、コンピュータ断層撮影(CT)という用語は、軸に沿って作成された一連の平面断面画像から、コンピュータによって身体構造の三次元画像が構築される放射線撮影を指す。特定の実施形態では、装置は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年11月29日に公開された米国特許公開第2018/0339065A1号に記載されている。
【0124】
VIII.CDD
本明細書で使用される場合、「患者」又は「対象」は、雄又は雌の哺乳動物を意味し、ヒト、獣医学用動物又は農業用動物、家庭用動物又は愛玩動物、及び通常臨床研究に使用される動物が含まれる。一実施形態では、これらの方法及び組成物の対象は、ヒト患者である。一実施形態では、これらの方法及び組成物の対象は、男性又は女性のヒトである。特定の実施形態では、これらの方法及び組成物の対象は、CDD及び/又はCDDの症状と診断される。
【0125】
方法及び組成物は、CDDの病期のうちのいずれかの治療のために使用され得る。特定の実施形態では、患者は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11ヶ月齢であるか、又は約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18歳である。特定の実施形態では、患者は、幼児、例えば、18ヶ月齢~3歳である。特定の実施形態では、患者は、3歳~6歳、3歳~12歳、3歳~18歳、3歳~30歳である。特定の実施形態では、患者は、18歳を超えている。
【0126】
CDDの症状には、通常、生後3ヶ月以内に始まる発作が含まれ、出生後1週間に早く
も現れる可能性がある。発作の種類は年齢とともに変化し、予測可能なパターンに従うことがある。最も一般的なタイプは、意識喪失、筋剛性、及び痙攣を伴う全般性強直間代発作;異常な筋収縮を特徴とする強直発作;及び筋肉ジャークの短いエピソードを伴うてんかん性痙攣である。発作は、CDKL5欠損症のほとんどの人々で毎日起こるが、発作のない期間を有し得る。CDKL5欠損症における発作は、典型的には、治療に耐性である。
【0127】
CDKL5欠損症を有する小児では発達障害がみられる。ほとんどは重度の知的障害があり、発話はほとんど又はまったくない。座る、立つ、及び歩くなどの全身運動能力の発達が遅れているか、達成されていない。罹患者の約3分の1は、独立して歩くことができる。指で小さな物を拾うなどの細かい運動スキルも損なわれ、罹患者の約半数は、意図的に手を使用している。この状態の人々のほとんどは、視力障害(皮質視覚障害)を有している。
【0128】
CDKL5欠損症の他の一般的な特徴には、拍手、手舐め、及び手吸いなどの反復的な手の動き(ステレオタイプ)、歯ぎしり(ブラキシズム)、睡眠障害、摂食困難、並びに便秘及び食道への酸性胃内容物の逆流(胃食道逆流)を含む胃腸障害が含まれる。罹患者の中には、不規則な呼吸のエピソードがある人もいる。CDKL5欠損症を有する一部の人々における特徴的な顔の特徴は、高く広い額、大きくくぼんだ目、鼻と上唇との間の明確な空間(フィルトラム)、ふっくらした唇、広い間隔の歯、及び高い口の頂部(口蓋)を含む。他の物理的な違い、例えば、異常に小さい頭部サイズ(小頭症)、脊椎の側面から側面への湾曲(脊柱側弯症)、及び先細りの指なども生じ得る。
【0129】
上に記載したとおり、「増加」「減少」「低減」「改善」「向上」「遅延」若しくはそれらの任意の文法的変形、又は任意の類似の用語は、別途指定されない限り、対応する参照(例えば、未治療の対照又はCDDを有しない健常状態の対象)と比較して、約5倍、約2倍、約1倍、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、約5%の変動を意味する。
【0130】
特定の実施形態では、患者は、発作、筋肉硬直、又は呼吸、睡眠、消化管若しくは心臓の問題など、CDDと関連付けられたいくつかの徴候及び症状を制御する薬剤を受容する。
【0131】
特定の実施形態では、利尿剤は、それを必要とする対象における併用療法で使用されてもよい。使用される利尿剤は、アセタゾラミン(Diamox)又は他の好適な利尿剤であり得る。いくつかの実施形態では、利尿剤は、遺伝子療法投与時に投与される。いくつかの実施形態では、利尿剤は、遺伝子療法投与の前に投与される。いくつかの実施形態では、利尿剤は、注射量が3mLである場合に投与される。
【0132】
特定の実施形態では、Cdkl5-アイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、及び/若しくはアイソフォーム4発現ベクター、又はそれらの様々な二方向若しくは三方向の組み合わせの同時投与を含む、併用療法が利用されてもよい。任意選択で、併用療法は、別の活性剤の投与を更に含み得る。特定の実施形態では、併用療法は、酵素補充療法を含み得る。
【0133】
任意選択的に、必要とする対象において、免疫抑制性併用療法を使用してもよい。かかる併用療法のための免疫抑制剤としては、限定されないが、グルココルチコイド、ステロイド、抗代謝剤、T細胞阻害剤、マクロライド(例えば、ラパマイシン又はラパログ)、及び細胞分裂阻害剤(アルキル化剤、抗代謝剤、細胞傷害性抗生物質、抗体、又はイムノフィリンに対して活性な薬剤を含む)が挙げられる。免疫抑制剤には、ナイトロジェンマ
スタード、ニトロソウレア、白金化合物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、IL-2受容体(CD25)特異的抗体又はCD3特異的抗体、抗IL-2抗体、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、IFN-β、IFN-γ、オピオイド、又はTNF-α(腫瘍壊死因子-α)結合剤を含み得る。特定の実施形態では、免疫抑制療法は、遺伝子療法投与の0、1、2、3、4、5、6、7日前若しくは後、又はそれ以前若しくはそれ以後に開始されてもよい。かかる免疫抑制療法は、1つ、2つ、又はそれ以上の薬物(例えば、グルココルチコイド、プレネリゾン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/又はシロリムス(すなわち、ラパマイシン))の投与を伴い得る。かかる免疫抑制薬は、同じ用量又は調整用量で、1回、2回、又はそれ以上、必要とする対象に投与され得る。かかる療法は、同じ日に2つ以上の薬物(例えば、プレドニゾン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/又はシロリムス(すなわち、ラパマイシン))の同時投与を伴い得る。これらの薬物のうちの1つ以上が、同じ用量又は調整された用量で、遺伝子療法投与後に継続されてもよい。かかる療法は、必要に応じて、約1週間(7日間)、約60日間、又はそれ以上であり得る。特定の実施形態では、タクロリムスを含まないレジメンが選択される。
【0134】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」という単語は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。「構成する(consist)」、「構成する(consisting)」という語句、及びその変形は、包括的ではなく排他的に解釈されるべきである。本明細書の様々な実施形態は、「含む(comprising)」という言葉を用いて示されているが、他の状況では、関連する実施形態は、「からなる(consisting of)」又は「本質的にからなる(consisting essentially of)」という言葉を用いて解釈及び記載されるべきことも意図される。
【0135】
「発現」という用語は、本明細書で最も広い意味で使用され、RNA又はRNA及びタンパク質の産生を含む。RNAに関して、「発現」又は「翻訳」という用語は、特に、ペプチド又はタンパク質の産生に関する。発現は、一過性又は安定であり得る。
【0136】
「a」又は「an」という用語は、1つ以上を指し、例えば、「エンハンサー(an enhancer)」は、1つ以上のエンハンサーを表すと理解されることに留意されたい。したがって、「a」(又は「an」)、「1つ以上(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0137】
本明細書全体を通して、指数は、「e」という用語に続いて数値(n)を使用して参照される。これは、「×10)」を指すことが理解されるであろう。例えば、「3e9」は、3×10と同じであり、「1e13」は、1×1013と同じである。
【0138】
上述のように、「約」という用語は、別段の指定がない限り、数値を修正するために使用される場合、±10%の変動を意味する。
【0139】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって、及び本明細書で使用されている多数の用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する公開された文書を参照することによって、一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【実施例
【0140】
IX.実施例
以下の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明を限定することを意図するものではない。
【0141】
CDDのためのいくつかのモデルが開発されており、治療効果を評価する際に使用するために選択され得る。これらの以下のモデルは、CDKL5発現についてヌルである:例えば、エクソン6(Δエクソン6)に欠失を有するCdkl5-koマウス(Wang et al,Proceedings of the National Academy of Sciences Dec 2012,109(52)21516-21521;DOI:10.1073/pnas.1216988110);エクソン4(Δエクソン4)に欠失を有するCdkl5-koマウス(Amendola et al.(2014)Mapping Pathological Phenotypes in a
Mouse Model of CDKL5 Disorder.PLoS ONE 9(5):e91613.doi.org/10.1371/journal.pone.0091613(2014)を参照されたい);Cdkl5(R59Xノックイン)モデル(Jackson Laboratoryから入手可能、Tang et al(2019),Tang S,et al.Altered NMDAR signaling underlies autistic-like features in mouse models of CDKL5 deficiency disorder.Nat Commun.2019;10(1):2655.Published 2019 Jun 14.doi:10.1038/s41467-019-10689-wを参照されたい)、及びCdkl5(D471fs)モデル(Rodney Samaco,Baylor College of Medicine,Houston,TX)。
【0142】
本研究では、3つのCDDマウスモデル(Cdkl5-ko(エクソン6)、Cdkl5(R59X)、Cdkl5(D471fs))のCNSにおけるCDKL5発現を復元することは、疾患症状を著しく改善することが示されている。我々は、AAVhu68カプシドで構成されるAAV遺伝子療法ベクター、及びヒトシナプシンプロモーターを有する発現カセット、及び操作されたヒトCDKL5導入遺伝子を開発した。AAV-CDKL5ベクターが、新生児の側脳室への注射を介してCdkl5ノックアウトマウスに投与されたとき、我々は、脳全体の最大50%のニューロンにおける堅牢な発現を検出した。AAV投与及びヒトCDKL5発現は、良好に忍容された。ヒトCDKL5は、ほとんど細胞質に局在しており、タンパク質発現及びキナーゼ活性は、4ヶ月以上持続していた。我々は、処置されたCdkl5-koマウスのコホートを一連の神経行動試験に供し、野生型マウスで観察された行動転帰に対して、未処置のCdkl5-ko表現型から著しい改善を見出した。次いで、遺伝子ノックアウトの代わりに患者由来のフレームシフト変異(Cdkl5(R59X)及びCDKL5(D471fs)モデル)を有する2つの異なるCDDマウスモデルにおいて同じ研究を繰り返した。我々は非常に類似した結果を得たため、我々のCDKL5遺伝子療法ベクターの治癒的利益を再確認した。
【0143】
CDKL5は、ヒト脳における少なくとも4つの異なるアイソフォームとして発現される。我々は、3つの交互にスプライシングされたアイソフォームについて同様のAAV遺伝子療法ベクターを生成し、これらは全て、形質導入されたマウス脳においてキナーゼ活性を発現し、それを示すことが見出された。
【0144】
より大きな動物における我々のAAV-CDKL5遺伝子療法ベクターの発現を試験するために、我々は、アカゲザルを用いた研究を行った。大槽を介した脳脊髄液への注入を通じて、我々は、二倍体ゲノム当たり0.1~1ベクターコピーで、脳全体にわたるベクター分布を達成することができた。後根神経節(DRG)において、はるかに高いベクター形質導入が観察された。したがって、ヒトCDKL5配列に特異的なプローブによるインサイチュハイブリダイゼーションは、DRGニューロンにおける豊富な発現を示したが
、皮質灰白質ニューロンでははるかにまばらな発現を示した。CDKL5の投与及び発現は、概して、60日間にわたって全6匹のアカゲザルにおいて良好に忍容性があったが、我々は、白質脊髄路の軽度の軸索障害に気付いた。
【0145】
要約すると、我々は、CDKL5遺伝子療法がモデルマウスに持続的な治癒的利益をもたらし、非ヒト霊長類において良好に忍容性があるという有望な証拠を示す。このアプローチの更なる最適化は、最終的に、CDDに罹患している小児における臨床介入のための選択肢を提供する可能性がある。
【0146】
実施例1.材料及び方法。
プラスミド。ヒト脳において発現する4つのCDKL5(サイクリン依存性キナーゼ様5、Uniprot ID O76039)のアミノ酸配列をDNA配列に逆翻訳した。コード配列は、例えば、ヒトゲノム、暗号RNAスプライス部位、及び代替リーディングフレームに見出されるコドン頻度を考慮することによって、更に操作された。操作された配列を、ヒトシナプシンプロモーターの制御下で、AAV発現プラスミドにクローニングした。コード配列は、Kozak配列、続いてWPREエンハンサーカセット(ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント)、SV40ポリA配列に続き、AAV2逆位末端反復(ITR)によってフレーム化される。後根神経節(DRG)における発現を抑制するために、いくつかの実験では、上記のプラスミドは、CDKL5コード配列の直後及びWPRE配列の直前に、miR183結合部位(agtgaattctaccagtgccata)(配列番号11)の4回の反復を含有するように修飾された。AAV
CDKL5ベクターは、マウス研究のためのカプシドPHP.B又はマウス及び非ヒト霊長類研究のためのAAV9hu68又はAAVrh91のいずれかとして使用して、ペンシルベニア大学Vector Coreで産生された。
【0147】
マウス研究。マウスを伴う全ての研究は、ペンシルベニア大学IACUCによって承認された。我々は、Jackson LaboratoriesからCdkl5-koマウス(B6.129(FVB)-Cdkl5tm1.1Joez/J、株番号021967)を得て、ヘテロ接合雌koマウスをwtC57Bl6雄と交配させ、以下の遺伝子型の同腹子を得た:雄の半接合Cdkl5-ko(KOマウス又はマウスとしても参照される)、雄のwt、雌のヘテロ接合Cdkl5-ko、及び雌のwt。マウスは、18~21日齢で、後眼窩注射によって総容量100μlで、AAV Cdkl5ベクター(用量範囲1×1011GC~5×1011GC)又はビヒクル対照(滅菌リン緩衝生理食塩水)を受容した。あるいは、マウスは、出生日に、1×1010GC~5×1010GCの用量を総容量2μlで脳室内に注射された。遺伝子型及び注射産物に関して混合したマウスを収容し、体重を測定し、週に少なくとも2回観察し、行動試験に供した場合、雄は11週、雌は14週まで加齢させた。治療関連の病的状態は観察されなかった。
【0148】
ウエスタンブロッティング及び組織染色。安楽死後、一方の皮質半球を急速冷凍し、続いてRIPA緩衝液を使用して、タンパク質溶解物を生成した。ヒトCdkl5(S957D、University of Dundee、UK)、EB2(ab45767、Abcam)又はEB2 phospo222(pab01032-P、Covalab、UK)に対する抗体を用いて、ウエスタンブロッティングを実行した。もう一方の脳半分をホルマリン中で一晩固定し、パラフィン包埋し、薄い切片を、同じCDKL5抗体を用いて免疫蛍光染色のために処理した。
【0149】
行動試験。マウスは、1日当たり1回の試験を行った。試験の日時、操作者、及び環境を同じに保った(60dBのホワイトノイズバックグラウンド、及び1000ルーメンの白熱間接照明)。各試験の前に、マウスをホームケージ内で30分間慣らした。オープンフィールドアッセイのために、最小量の床敷を有する新しいケージを、赤外線ビームアレ
イ(MedAssociates,Inc.)中に配置した。ケージの中央に一匹のマウスを追加し、次の30分間にわたって、ビームブレーキの数を自動的に記録し、地面に近いビームブレーキ(一般的な活動)と地面から3インチ上のビームブレーキ(飼育活動)に分離した。高架式ゼロ迷路(EZM、Stoelting Co.)については、2つの対向する閉じたアームと2つの開放されたアームを有する高架式円形プラットフォームを使用して、途切れない探索を可能にした。一匹のマウスを開放されたアームの中央に配置し、その動きを15分間ビデオ記録した。Y迷路(Stoelting Co.)については、Y形状の3つの同一のアームを含む密閉プラットフォームを使用した。操作者に最も近いアームに一匹のマウスを配置し、その動きを5分間ビデオ記録した。ガラス玉覆い隠しアッセイのために、新しいケージを3インチのAlphaDri床敷(Shepherd Specialty Papers)で満たし、穏やかに押して圧縮した。12個の固形の青いガラス玉を床敷の上に等間隔で配置し、一匹のマウスをケージの中央に配置した。少なくとも半分が床敷で覆われたガラス玉の数を、30分後に記録した。
【0150】
データ分析。データは、GraphPad Primsソフトウェアを使用してグラフ化し、分析した。ビデオファイルを20fpsでmp4形式で記録し、EthoVision XTソフトウェア(バージョン14、Noldus Information Technology)を使用して分析した。巣構築アッセイのために、マウスは、新しいケージ内に単独で一晩収容され、標準化された2×2インチ平方ネストレット(綿ベース)を供給された。24時間後、巣の質を1~5の尺度でスコア化し、残りの触れられていないネストレット材料を計量した。
【0151】
非ヒト霊長類実験。非ヒト霊長類を伴う全ての研究は、ペンシルベニア大学IACUCによって承認され、USDA規則に従って実行された。Macaca mulatta(アカゲザル)種の非ヒト霊長類(NHP)は、Covance Research Products,Incから入手した。隔離及び動物の飼育は、遺伝子療法プログラムSOPに従って実施した。AAVベクター投与の前月に研究を通じて、体重、体温、呼吸数及び心拍数を定期的に監視し、血液及びCSF試料を得た。全血を細胞数及び鑑別に使用し、臨床血液化学パネルを使用した。CSF試料は、血液細胞数及び鑑別、並びに全タンパク質定量に使用された。大槽穿刺によるCSFへのAAVベクター送達のために、麻酔されたサルを、側臥位で処置台上に配置し、頭部を前方に屈曲させた。無菌技法を使用して、21~27ゲージ、1~1.5インチのQuincke脊椎ニードル(Becton Dickinson)を、CSFの流れが観察されるまで、後頭下空間へと前進させた。ニードルは、血液の汚染及び潜在的な脳幹損傷を回避するために、より広範囲の大槽の上部空隙へ指向される。ニードル穿刺の正確な配置は、透視装置を使用する脊髄造影法によって確認される。1mLのCSFを、投与前に、ベースライン分析のために収集した。CSF収集の後、ルアーアクセス延長カテーテルは、脊椎ニードルに連結されて、1mlのイオヘキサール(商標名:Omnipaque 180mg/mL、General Electric Healthcare)コントラスト培地を促進する。ニードル配置を確認した後、試験品目を含有するシリンジ(1mLに等価な容量並びにシリンジ及びリンカーのデッドスペース容量)は、可撓性リンカーに連結されて、30±5秒間にわたって注射された。ニードルを除去し、直圧を穿刺部位に適用した。AAVhu68.hSyn.Cdkl5-1co及びAAVhu68.hSyn.Cdkl5-1coベクターは、最大3×1013GC/NHPの用量で注射されている。研究0日目、14日目、18日目、41日目、及び最終試験日に、神経学的機能の詳細な評価のために、全てのアカゲザルで神経学的評価を行った。簡潔に述べると、評価には、姿勢及び歩行評価、脳神経評価、固有受容性評価、並びに脊髄/神経反射が含まれた。56日目の試験で、アカゲザルを安楽死させ、大規模解剖検査及び剖検を行った。瞬間凍結又はホルマリン固定のいずれかのために、25個の主要な組織を各アカゲザルから二重で回収した。DNA又はRNAを瞬間凍結した組織から精製し、それぞれ、ベクター生体内分布又は導入遺伝子発現分析の
ために使用した。ベクター生体内分布については、導入遺伝子カセットのポリA領域を再び指向するプローブを用いたTaqMan qPCRアッセイ及び内部標準を使用して、総DNA重量当たりのゲノムコピー(GC)を決定した。導入遺伝子発現を定量化するために、総RNAを使用して、ポリTオリゴヌクレオチドによる第1の鎖合成を介してcDNAを生成し、続いて、内因性アカゲザルCDKL5配列と交差反応しない導入遺伝子に特異的なプローブを有するTaqMan qPCRを生成した。組織病理学的分析のために、マカク組織をパラフィン包埋し、これらの切片を、それぞれH&E溶液又はCDKL5抗体で染色した。同じ脊髄切片をLuxol Fast Blueとともにインキュベートし、ミエリンを染色した。全ての染色組織切片は、委員会認定の獣医病理学者によって審査され、異常所見は査読によって検証された。
参考文献:
1.Hector,R.D.et al.Characterization of CDKL5 Transcript Isoforms in Human and Mouse.PloS one 11,e0157758,(2016).
2.Thiel,G.,Greengard,P.& Sudhof,T.C.Characterization of tissue-specific transcription by the human synapsin I gene promoter.Proc Natl Acad Sci U S A 88,3431-3435,(1991).
3.Deverman,B.E.et al.Cre-dependent selection yields AAV variants for widespread gene transfer to the adult brain.Nat Biotechnol 34,204-209,(2016).
4.Hinderer,C.et al.Severe Toxicity in Nonhuman Primates and Piglets Following High-Dose Intravenous Administration of an
Adeno-Associated Virus Vector Expressing Human SMN.Human Gene Therapy 29,285-298,(2018).
【0152】
実施例2:遺伝子療法AAVベクター
ITR間の発現構築物は、ヒトシナプシンプロモーター(配列番号23)、ヒトCDKL5の操作されたコード配列、アイソフォーム1(配列番号22)、WPRE発現エンハンサー(配列番号27)、及びSV40ポリA配列(配列番号28)で構成される(図1A)。同様に、代替発現構築物は、アイソフォーム1の代わりに、それぞれヒトCDKL5、アイソフォーム2(CDKL5-2GS若しくはhCDKL5-2GS、配列番号24)、3(CDKL5-3GS若しくはhCDKL5-3GS、配列番号25)、又は4(CDKL5-4GS若しくはhCDKL5-4GS、配列番号26)の操作されたコード配列を含有する。全ての試験されたプラスミドは、マウスの脳で良好に発現し、EB2をリン酸化する能力(CDKL5キナーゼ活性の測定)にわずかな違いを示す。我々は、野生型マウスCdkl5発現に類似するマウス脳におけるヒトCDKL5発現レベルを得るために、WPREエンハンサーが必要であることを見出した(図2)。CDKL5は、その内因性標的EB2タンパク質をリン酸化する能力によって決定されるように、完全に活性であった(図2)。CDKL5の発現及び局在を、IHCを介して確認した。また、ヒトシナプシンを、ヒトユビキチンCプロモーター(Ubc)(図1B)又はニワトリβアクチンハイブリッドプロモーター(図1C)と交換することによって、代替発現構築物を生成した。AAVrh91カプシド中のAAVベクターAAVrh91.UbC.CDKL5-1co.miR183及びAAVrh91.CBh.CDKL5-1co.miR183を、Cdkl5-koマウスの新生児ICVを介して3×1010GCの用量で投与し、剖検をP14で実施した。マウス脳組織のウエスタンブロット分析は、UbC又
はCBhプロモーターを含むAAVベクターゲノムによる形質導入後のCDKL5の発現を確認した。我々は、AAVrh91.UbC.CDKL5-1co.miR183及びAAVrh91.CBh.CDKL5-1co.miR183での形質導入後のマウス脳におけるCDKL5導入遺伝子の発現を観察した。AAVrh91.UbC.CDKL5-1co.miR183での形質導入後、細胞当たりのより高いCDKL5発現が、マウス脳の海馬において観察された。一方、AAVrh91.CBh.CDKL5-1co.miR183での形質導入後、ここで、細胞当たりのより低いCDKL5の発現が、マウス脳の海馬において観察された。AAVrh91.UbC.CDKL5-1co.miR183での形質導入後、細胞当たりのより高いCDKL5の発現が、マウス脳の皮質において観察された。AAVrh91.CBh.CDKL5-1co.miR183での形質導入後、細胞当たりのより低いCDKL5の発現が、マウス脳の皮質において観察された。更に、AAVrh91.UbC.CDKL5-1co.miR183(3×1010GC、新生児ICV)及びAAVhu68.hSyn.CDKL5-1co.miR183(2.5×1010GC)の投与後のCdkl5-koマウス脳におけるCDKL5発現を比較した。指定されているように、AAVの投与後に、非常に類似した発現パターンがマウス脳で観察された。AAVrh91.UbC.CDKL5-1co.miR183(AAVrh91カプシド、ユビキチンCプロモーター)又はAAVhu68.hSyn.CDKL5-1co.miR183(AAVhu68カプシド、シナプシンプロモーター)のいずれかでの形質導入後のマウス脳において、CDKL5発現が観察された。更に、1×1010GC、3×1010GC、及び6×1010GCでの様々な用量のAAVrh91.UbC.CDKL5-1co.miR183及びAAVrh91.CBh.CDKL5-1co.miR183を、Cdkl5-koマウスにおいて行動効果について調べる。
【0153】
AAV.UbC.CDKL5-1co.miR183ベクターは、hSynによってCDKL5発現が駆動されたときと同様に、マウスにおいて治療有用性を示した。操作された核酸配列を含むAAVベクターゲノムとともに使用した場合のAAVrh91カプシドは、AAVhu68と同様のCDKL5発現を達成した。マウス脳におけるCDKL5タンパク質レベルは、hSynプロモーターと比較して、Ubcプロモーターでより高かった。
【0154】
実施例3:CDDマウスモデルにおけるCDKL5遺伝子療法の臨床前治療効果
Cdkl5欠損マウスに対するCDKL5遺伝子療法の治療効果の試験のために、我々は、若年性Cdkl5-ko(KOマウス又はマウスとしても参照される)及び野生型(wt)同腹子のコホートを、逆軌道IV注射によって、5×1011GC(5e11gc)のAAV9-PHP.B-hSyn-hCDKL5-1co.WPREベクターで処理した。全ての処置群は、同じ速度で成長し続け、処置関連死は観察されなかった。生後10週で、マウスを一連の行動試験に供した。上昇したゼロ迷路及びオープンフィールド活動試験では、処置群について堅牢かつ統計学的に有意な正規化が観察された。ロータロッド試験及びY迷路試験では、同じ群でわずかな改善が認められたが、熱感度に改善は認められなかった。
【0155】
Cdkl5が神経発達に重要であることを考慮して、遺伝子療法の早期投与はマウスにおける治療転帰を改善する可能性があるかどうかを考えた。次に、我々は、脳室内(ICV)注射によって、マウス1匹当たり6×10GC~5×1010GCのAAVhu68-hSyn-hCDKL5-1co.WPREベクターの用量範囲で、新生児Cdkl5-ko又はwt同腹子のコホートを処置した。生後10週間又は11~14週間(指示されている場合)に記載された行動試験。全ての群にわたる全体的な観察は、処置が良好に忍容され、処置関連死は存在せず、正常な体重増加(図9A及び9B)並びに全体的な発達が観察された。5×1010GCの用量、2.5×1010GCの用量、及び1×1
10GCの用量で、Cdkl5-koマウス脳におけるCDKL5導入遺伝子の用量依存的発現が観察された。10週齢で、KOマウスは、特徴的な後肢クラスピング表現型を示し、これは、処置されたkoマウスにおいて実質的に改善された。CDKL5遺伝子療法の治療有効性は、後肢クラスピング試験によって測定された。用量依存的改善は、処置されたCDKL5-koマウスの重症度スコアにおいて観察された(図9C~9F)。同様に、koマウスに見られる持続的な多動性及び飼育表現型を、野生型活性に対して正規化した。海馬の学習及び記憶は、Y迷路試験(自発的変化指数)において、処置されたkoマウスで高度に改善された。CDKL5遺伝子療法の治療有効性は、KO及びAAV処置マウスにおける多動性の補正を測定する、オープンフィールド活動試験によって更に測定した。処置されたCdkl5-koマウスにおいて、多動性の用量依存的解決が観察された(図11A~11F)。KOマウスは、新鮮なケージに単独で一晩収容されたときには貧弱な巣構築であり、全ての巣材を引き裂かない。処置したKOマウスは、用量依存的に、巣構築能力を大幅に向上させた(図10A、10C、10E)。追加の2つの他の神経行動アッセイ(ガラス玉覆い隠し及びY迷路)は、処置したCdkl5-koマウスにおける表現型の改善の強い傾向を示した(図10B及び10D)。EEG表現型は、予備的な共同研究で救出され、翻訳バイオマーカーとして有用になり得る。主要なアッセイ(後肢クラスピング、歩行活動)の転帰の検証は、独立した実験コホートを用いて追加的に行われる。より大きなコホートサイズ(N=18/群)は、より堅牢な統計学的有意性をもたらした。代替のCDDマウスモデル(R59X、D471fs)を用いた主要アッセイ(後肢クラスピング、歩行活動)の転帰の検証も実施される。要約すると、CDKL5遺伝子療法は、機能的CDKL5タンパク質をマウス脳に送達し、CDD雄マウスモデルにおけるいくつかの神経行動転帰に対して用量依存的な治療効果を有する。
【0156】
行動試験を終えた後、マウスが約3ヶ月齢であったときに脳を採取した。ウエスタンブロッティングは、AAV投与の3ヶ月後であっても、Cdkl5-ko脳におけるヒトCDKL5の堅牢な発現を明らかにした。最後に、ヒトCDKL5は、リン酸化EB2タンパク質についてブロットするときに堅牢なキナーゼ活性を示した。
【0157】
また、代替CDDマウスモデルを用いたCDKL5遺伝子療法の転帰を調べた。Cdkl5(D471fs)は、早期終止コドンにつながる患者点変異を有する。患者と同様に、これらのマウスの脳において、CDKL5タンパク質は見出されず、非常に低減したEBリン酸化レベルが見出された。したがって、Cdkl5(D471fs)は、以前に使用されたCdkl5-koマウスとCdkl5タンパク質の非存在を共有するが、マウスモデルの生成方法により、遺伝的背景が若干異なる。新生児には、以前と同じ濃度(5×1010GC、neoICV)で注射し、3ヶ月後には堅牢なhCDKL5タンパク質発現及びEB2リン酸化を示した。小さなパイロットコホートを行動試験に供した。AAV処置は良好に忍容され、病的状態は観察されなかった。後肢クラスピングは、処置された変異体マウスにおいて著しい補正され、同様に、上昇したゼロ迷路試験における変異体表現型は、処置された変異体マウスにおいて野生型行動に補正された(オープンゾーン内、オープンゾーン進入。変異体マウスは、相互作用及び新しいケージ内のグリッドに配置されたガラス玉での覆い隠し行動が不良であることを示すが、野生型マウスは、典型的にほとんど全てを覆い隠す。処置された変異体マウスは、野生型マウスに対するそれらの行動の強力な補正を示す。処置群のCdkl5-koマウスにおいて、5×1010GC/マウスのより高い用量で著しい改善が観察された。
【0158】
また、代替CDDマウスモデルを用いたCDKL5遺伝子療法の転帰を調べた。Cdkl5(R59X)は、未成熟終止コドンを導入する患者点変異を有する。患者と同様に、これらのマウスの脳において、CDKL5タンパク質は見出されず、非常に低減したEBリン酸化レベルが見出された。したがって、Cdkl5(R59X)は、以前に使用されたCdkl5-koマウスとCdkl5タンパク質の非存在を共有するが、マウスモデル
の生成方法により、遺伝的背景が若干異なる。新生児には、以前と同じ濃度(5×1010GC、neoICV)で注射し、3ヶ月後には堅牢なhCDKL5タンパク質発現及びEB2リン酸化を示した。小さなパイロットコホートを行動試験に供した。AAV処置は良好に忍容され、病的状態は観察されなかった。後肢クラスピングは、処置された変異体マウスにおいて著しく補正された。
【0159】
我々はまた、ヘテロ接合雌Cdkl5-koマウスにおける代替CDDマウスモデルを用いたCDKL5遺伝子療法の転帰を調べた。このようなモデルは、ほとんどのCDD患者(CDD雌)を反映する。全体的な評価は、ヘテロ接合雌Cdkl5-koマウス神経行動表現型がはるかに穏やかであり、後に発症するため、治療転帰の堅牢な評価をより困難にすることを示した。しかしながら、高用量(5×1010GC、新生児ICV)における後肢クラスピング及び歩行活動の代表的なデータは、著しい改善を示す(図14B及び14C)。
【0160】
加えて、我々は、WTマウスにおけるCDKL5遺伝子療法の用量漸増を調べた。WT(C57Bl6/J)マウスに、新生児ICVを介して、7.5×1010GC及び1×1011GC(すなわち、以前に使用された最高用量の1.5倍又は2倍)で注射した。体重、発達、及び生存に明らかな影響は観察されなかった。マウスは正常に見え、後肢クラスピング又は活動変化を示さなかった。CNS組織の病理学的レビューにおいて、効果は観察されなかった(図19A及び19B)。
【0161】
実施例4:実用的なヒトCDKL5アイソフォーム2~4
ヒト及びマウスの脳には少なくとも4つの検出可能なCdkl5 mRNAスプライスバリアントが存在することが示されているが、アイソフォーム2~4が安定なタンパク質として存在することは確立されていない。アイソフォーム1は、脳CDKL5の85%超を占める。
【0162】
我々は、ヒトCDKL4アイソフォーム2~4のコード配列をコドン操作し、以前と同じAAVベクターにコード配列をクローニングした。アイソフォーム1~4のAAV9-PHP.Bベクターコーディングを、ウエスタンブロット分析のために2週間後に採取した成体Cdkl5-koマウス及び脳に尾部IV注射した。我々は、期待されるゲル移行パターンを堅牢に発現し、表示する4つのアイソフォーム全てを見出した。フォローアップのために、アイソフォーム1の発現量によく似たアイソフォーム2~4の発現をもたらした操作配列を選択した。アイソフォーム2によって生成されたEB2リン酸化レベルは、アイソフォーム1と比較してわずかに高く、アイソフォーム3又は4によるものはわずかに低かった。
【0163】
3つの代替CDKL5アイソフォームが、新生児Cdkl5-koマウスに注射され、潜在的な治療効果がアイソフォーム1とどのように比較されるかを試験した。図12は、代替CDKL5アイソフォーム(2、3、及び4)による処置を用いたクラスピング表現型の著しい補正を示す。図8A~8Dは、発現アイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、又はアイソフォーム4のためのAAV.CDLK5ベクター構築物のCDKL5発現レベル又は活性を提供する。図8Aは、ビヒクルを注射した野生型マウス及びビヒクルを注射したノックアウトマウスと比較した、これらのアイソフォームの各々を発現するAAVベクター(5×1010GC、新生児ICV)を注射したノックアウトマウスにおける発現レベルを示す。図8Bは、ビヒクル(PBS)を注射した野生型マウス、ビヒクルを注射したノックアウトマウス、又はAAV.CDKL5-1coにおいてpS222EB2を使用して決定されたCDKL5活性を示す。図8Cは、図8Aの群について、pS222EB2を使用して決定されたCDKL5活性を示す。図8Dは、図8Bの群のCDKL5発現レベルを示す。
【0164】
要約すると、全てのアイソフォームは、タンパク質として発現し、同等の触媒活性を有する。CDDマウスモデルにおけるアイソフォーム2、3、又は4を有する治療転帰は、頭から頭への試験を行った場合のアイソフォーム1と同等である(5×1010GC、新生児ICV)。全体として、CDKL5アイソフォーム1によるCDKL5遺伝子療法は、著しい治療効果を有する雄CDDモデルマウスにおける有望かつ安全なアプローチである。
【0165】
実施例5:hCDKL5遺伝子療法の毒性及び安全性試験のためのNHPパイロット試験
我々は、NHPにおけるAAVhu68カプシドにパッケージングされたAAV-hSyn-CDKL5-1co.WPRE構築物の発現パターン及び安全性プロファイルを調査することを望んだ。本明細書に記載されるベクターゲノム及び以前に記載されている産生方法を使用して、ベクターを生成した。例えば、WO2018/160582を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。6匹のアカゲザル(4~6歳)の群を、大槽(ICM)を介して注射した。異なる条件を試験し、
A.用量1×1014GC、1mlの緩衝液中で注射
B.用量1×1014GC、3ml又は5mlの緩衝液中で注射
C.用量3×1014GC、3mlの緩衝液中で注射
D.用量1×1014GC、1mlの緩衝液中で注射、2日間の利尿剤アセタゾラミン(Diamox(登録商標))による前処置後、CSF産生を低減した。
【0166】
簡単に述べると、非ヒト霊長類(NHP)研究のために、hCDKL5遺伝子療法の毒性及び安全性試験を、AAVhu68-hSyn-Cdkl5-1co-WPREベクターを使用して実施した。予備研究では、3つの異なる用量、3×1012GC/動物、1×1013GC/動物、及び3×1013GC/動物を評価した。パイロット研究のために、1×1014GC/動物の用量を選択し、2つの異なる体積(3mL及び5mL)を、AAVベクターの、大槽を介した脳脊髄液(CSF)への送達について評価した。他の研究群は、利尿薬(例えば、Diamoxブランドのアセタゾラミド)とともに1×1014GC/動物又は3×1014GC/動物(対象)を使用した。
【0167】
更に、2×1012、1×1013、及び3×1013GC/対象の用量を試験した。CDKL5ベクターによる処置は、良好に忍容され、臨床血液化学の変化の徴候は観察されなかった。ケージ側の神経学的検査からの観察では、ベースラインからの変化は見出されなかった。
【0168】
剖検は、注射の28日後に実行され、続いて、分子分析、組織学、及び病理学の検討が行われた。全体的に、CNS以外の主要な臓器では、大きな形質導入の違いは見出されなかった(例えば、肝臓の形質導入は、既に最大値に達している可能性が高い)。脊髄及びDRGにおける主要な形質導入の違い(非常に高い形質導入速度に留まる)は観察されなかったが、注射パラメータに応じて脳組織の著しい変化が明らかになった。形質導入の最も高い形質導入増加は、皮質において見られた。Diamoxは、脳を介した導入効率のわずかな増加につながる。
【0169】
図17は、非神経組織、脊髄路組織、及び脳組織にわたる各NHPのベクター生体分布を示す。図18では、脳のベクター生体分布データのみが示されている。結果は、後根神経節(DRG)の強力な形質導入、脳組織の中~低程度の形質導入、及び神経組織への形質導入漏出が観察されることを示す。病理学的結果は、背側白質路における軽度の軸索障害を示した。hCDKL5 mRNAレベルのわずかな差が観察された。3mlの注射量を使用した場合、mRNAの発現が高くなる傾向がある。また、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)によるhCDKL5 mRNAの分布も視覚化した。後根神経節
(DRG)は、6つ全てのNHPにわたって非常に強力なmRNA発現を示した。運動皮質では、少数の形質導入ニューロンが観察された(<10%)。時折、形質導入ニューロンの小さなクラスターが見出された。この研究では、NHP間の運動皮質におけるhCDKL5 mRNA陽性ニューロンに著しい差はなかった。
【0170】
病理学的レビューでは、組織及びNHPにわたる大規模な病変は見つからなかった。最高用量を受容したNHPは、肝臓における炎症性細胞浸潤の軽度の徴候を示した。更に、全てのNHPにおいて、軽度~中程度の脊髄軸索障害及びDRGサテリトーシス。
【0171】
更に、我々は、AAVrh91.UbC.CDKL5-1co.miR183及びAAVrh91.CBh.CDKL5-1co.miR183ベクターのNHPにおけるベクター発現及び安全性試験を調べる。ベクターは、ICM経路を介して3×0110GCでC.マカクに投与される。AAVベクター投与後のCDKL5発現の効果を評価するために、病理学的分析及び神経検査を実施する。
【0172】
結論として、我々の研究で調べたAAV-CDKL5ベクター(配列番号1)を使用して、ニューロンにおける安定したCDKL5タンパク質発現を達成することができる。AAV-CDKL5遺伝子療法は、CDDマウスモデルの表現型を著しく改善した。更に、AAV-CDKL5ベクターは、大槽を介して非ヒト霊長類に効率的に送達され、CNS全体を通して発現され得る。
参考文献
1.Bahi-Buisson,N.et al.Key clinical features to identify girls with CDKL5 mutations.Brain 131,2647-2661,(2008).
2.Fehr,S.et al.The CDKL5 disorder is an independent clinical entity associated with early-onset encephalopathy.Eur J Hum
Genet 21,266-273,(2013).
3.Kalscheuer,V.M.et al.Disruption of the
serine/threonine kinase 9 gene causes severe X-linked infantile spasms and mental retardation.American journal of human
genetics 72,1401-1411,(2003).
4.Tao,J.et al.Mutations in the X-linked cyclin-dependent kinase-like 5(CDKL5/STK9)gene are associated with severe neurodevelopmental retardation.American journal of human genetics 75,1149-1154,(2004).5.Weaving,L.S.et al.Mutations of CDKL5 cause a severe neurodevelopmental disorder with infantile spasms and mental retardation.American journal of human genetics 75,1079-1093,(2004).
6.Hector,R.D.et al.Characterization of CDKL5 Transcript Isoforms in Human and Mouse.PloS one 11,e0157758,(2016).
7.Baltussen,L.L.,et al.(2018).“Chemical genetic identification of CDKL5 substrates reveals its role in neuronal microtubule dynamics.”EMBO Journal 37(24).
8.Munoz,I.M.,et al.(2018).“Phosphoproteomic screening identifies physiological substrates of the CDKL5 kinase.”EMBO Journal.
【0173】
本明細書に引用される全ての文書は、2020年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/016,036号、及び2020年10月13日に出願された米国仮特許出願第63/091,032号、2020年11月4日に出願された米国仮特許出願第63/109,608号と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。「20-9196PCT_SeqListing_ST25.txt」という名前で本明細書とともに提出された配列表、並びにその中の配列及びテキストは、参照により組み込まれる。本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正を行うことができることが理解されよう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図10D
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図11A
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図11D
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図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19A
【配列表】
2023524437000001.app
【国際調査報告】