(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】サンプル霧化のためのガスチャネルを伴うマイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
B05B 7/08 20060101AFI20230605BHJP
H01J 49/04 20060101ALI20230605BHJP
H01J 49/16 20060101ALI20230605BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20230605BHJP
【FI】
B05B7/08 ZNM
B05B7/08 ZNA
B05B7/08 ZBP
H01J49/04 450
H01J49/16 500
G01N27/62 F
G01N27/62 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565797
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 US2021029292
(87)【国際公開番号】W WO2021222171
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518187374
【氏名又は名称】インタバイオ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マック, スコット
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】グヴェルダー, エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウォルトン, イアン
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド, ドナルド ウェスリー
【テーマコード(参考)】
2G041
4F033
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041EA03
2G041GA19
2G041GA20
2G041GA23
2G041GA25
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QD18
4F033QD25
4F033QE06
4F033QF01X
(57)【要約】
マイクロ流体デバイスの流体チャネルからのサンプルの霧化を実施するための方法、デバイス、およびシステムが、説明される。本明細書に開示されるシステムまたはデバイスは、マイクロ流体デバイスの流体出口におけるサンプルの霧化のために使用される、ガスチャネルを備える、マイクロ流体デバイスを備えてもよい。いくつかの事例では、開示されるデバイスは等電点電気泳動を実施し、その後、霧化と結合される、エレクトロスプレーイオン化を使用して、分離された被分析物のさらなる特性評価が続き、サンプルを質量分析計の中に導入するように設計されてもよい。開示される方法、デバイス、およびシステムは、等電点によって、タンパク質被分析物混合物または他の生物学的分子の高速かつ正確な分離および特性評価を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体チップであって、
a)基材であって、前記基材は、
i)エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する遠位端を備える流体チャネルと、
ii)前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接して配置されるガス出口オリフィスと流体連通する遠位端を備えるガスチャネルと
を備える、基材
を備え、
前記流体チャネルの遠位端と前記ガスチャネルの遠位端との間の角度は、約0度~約30度に及ぶ、マイクロ流体チップ。
【請求項2】
前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、前記基材の縁または角または先端上に配置される、請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記ガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接する前記基材の縁上に配置される、請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記基材は、2つまたはそれを上回るガスチャネルを備え、これらのそれぞれは、ガス出口オリフィスと流体連通する遠位端を備える、請求項1-3のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記2つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接して、かつそれを中心として対称的に配置される、請求項4に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
前記角度は、約10度~約20度に及ぶ、請求項1-5のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項7】
前記角度は、約15±5度である、請求項1-5のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項8】
前記ガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスから排出される溶液の霧化を実施するように構成される、請求項1-7のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項9】
前記マイクロ流体デバイスは、それぞれが前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接して配置されるガス出口オリフィスを備える3つまたはそれを上回るガスチャネルを備える、請求項1-8のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項10】
前記3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、前記基材内に配置され、前記3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、前記少なくとも1つのガスチャネルが前記基材と同一平面内に位置しないように、前記基材に隣接して位置付けられる前記マイクロ流体チップの補助構成要素内に配置される、請求項9に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項11】
前記補助構成要素内に配置される前記3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、そのガス出口オリフィスが、前記基材のものと略垂直な平面内にあり、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として対称的に、かつそれに隣接して位置付けられるように位置付けられる、請求項10に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項12】
前記補助構成要素内に配置される前記3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、そのガス出口オリフィスが、前記基材のものに対して回転され、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として、かつそれに隣接して、半径方向対称対様式において位置付けられる1つまたはそれを上回る平面内にあるように位置付けられる、請求項11に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項13】
前記流体チャネルは、分離チャネルを備える、請求項1-12のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項14】
前記マイクロ流体チップは、前記流体チャネル内において、被分析物の混合物を備えるサンプルの等電点電気泳動または電気泳動分離を実施するように構成される、請求項1-13のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項15】
前記流体チャネルは、約20μm~約600μmに及ぶ幅を有する、請求項1-14のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項16】
前記流体チャネルは、約10μm~約100μmに及ぶ深度を有する、請求項1-15のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項17】
前記流体チャネルは、約0.25cm~約30cmに及ぶ長さを有する、請求項1-16のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項18】
前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、略正方形、長方形、円形、長円形、または菱形形状断面を有する、請求項1-17のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項19】
前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、約10μm~約100μmに及ぶ最大断面寸法を有する、請求項1-18のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項20】
前記ガスチャネルは、約20μm~約200μmに及ぶ幅を有する、請求項1-19のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項21】
前記ガスチャネルは、約10μm~約100μmに及ぶ深度を有する、請求項1-20のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項22】
前記ガスチャネルは、約0.2cm~約20cmに及ぶ長さを有する、請求項1-21のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項23】
前記ガス出口オリフィスは、略正方形、長方形、円形、長円形、または菱形形状断面を有する、請求項1-22のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項24】
前記ガス出口オリフィスは、約10μm~約50μmに及ぶ最大断面寸法を有する、請求項1-23のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項25】
前記ガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスの100μm以内に配置される、請求項1-24のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項26】
前記ガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスの50μm以内に配置される、請求項1-25のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項27】
前記ガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスの15μm以内に配置される、請求項1-26のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項28】
前記基材は、ガラス、シリコン、ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせから加工される、請求項1-27のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項29】
マイクロ流体チップであって、
a)基材であって、前記基材は、
i)それぞれがガスをガス出口オリフィスに送達するように構成される異なる長さの2つまたはそれを上回るガスチャネル
を備える、基材
を備え、
前記2つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つの寸法は、前記2つまたはそれを上回るガスチャネルのそれぞれが略同一流体力学的流動抵抗を有するように、その長さの一部に沿って調節される、マイクロ流体チップ。
【請求項30】
前記2つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つの断面積は、その長さの一部に沿って調節される、請求項29に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項31】
前記2つまたはそれを上回るガスチャネルの長さにおける最小差異は、約1cm~約10cmに及ぶ、請求項29または請求項30に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項32】
前記2つまたはそれを上回るガスチャネルの長さにおける最大差異は、約1cm~約10cmに及ぶ、請求項29-31のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項33】
前記基材はさらに、エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する遠位端を備える流体チャネルを備える、請求項29-32のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項34】
前記2つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として対称的に、かつそれに隣接して配置され、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスから排出される溶液の霧化を実施するように構成される、請求項33に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項35】
前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、前記基材の縁または角上に配置される、請求項33-34のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項36】
前記2つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接する前記基材の縁上に配置される、請求項35に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項37】
前記流体チャネルは、分離チャネルを備える、請求項29-36のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項38】
前記マイクロ流体チップは、等電点電気泳動または電気泳動分離を実施するように構成される、請求項29-37のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項39】
前記ガスは、霧化装置ガスである、請求項29-38のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項40】
前記霧化装置ガスは、空気、窒素、酸素、亜酸化窒素、フルオロウレタン、ヘリウム、アルゴン、メタノール、またはそれらの任意の組み合わせを備える、請求項39に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項41】
前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスがその上に配置される前記基材の縁または前記基材の角の少なくとも一部上に、疎水性コーティングをさらに備える、請求項35-40のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項42】
マイクロ流体チップであって、
a)基材であって、前記基材は、
i)流体入口ポートと流体連通する近位端と、エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する遠位端を備える流体チャネルと、
ii)それぞれがガス入口ポートと流体連通する近位端と、ガス出口オリフィスと流体連通する遠位端とを備える少なくとも2つのガスチャネルと
を備える、基材
を備え、
前記少なくとも1つの流体入口ポートおよび前記少なくとも2つのガス入口ポートは、前記基材の第1の縁に沿って配置される、マイクロ流体チップ。
【請求項43】
前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、前記基材の第2の縁上に位置付けられる、請求項42に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項44】
前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、前記第1の縁を備えない前記基材の角上に位置付けられる、請求項43に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項45】
前記基材は、約2.0mm厚未満である、請求項42-44のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項46】
前記流体チャネルは、電気泳動分離を実施するように構成される分離チャネルを備える、請求項42-45のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項47】
前記流体チャネルは、等電点電気泳動分離を実施するように構成される分離チャネルを備える、請求項42-45のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項48】
前記基材は、第1の分離チャネルと、第2の分離チャネルとを備え、前記第1の分離チャネルの遠位端は、前記第2の分離チャネルの近位端と流体連通し、前記第2の分離チャネルの遠位端は、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する、請求項46-47のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項49】
前記第1の分離チャネルは、クロマトグラフ分離を実施するように構成され、前記第2の分離チャネルは、電気泳動分離を実施するように構成される、請求項48に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項50】
前記第1の分離チャネルは、クロマトグラフ分離を実施するように構成され、前記第2の分離チャネルは、等電点電気泳動分離を実施するように構成される、請求項48に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項51】
前記流体チャネルは、被分析物の混合物を備えるサンプルの等電点電気泳動分離を実施するように構成される分離チャネルを備え、前記基材はさらに、前記分離チャネルの遠位端と流体連通し、動員電解質の電気泳動導入を前記分離チャネルの遠位端に提供するように構成される動員電解質チャネルを備える、請求項42-50のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項52】
マイクロ流体チップからエレクトロスプレーイオン化を実施するための方法であって、
a)基材を備えるマイクロ流体チップを提供することであって、前記基材は、
i)エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する遠位端を備える少なくとも1つの流体チャネルと、
ii)前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接するガス出口オリフィスにガスを送達するように構成される少なくとも1つのガスチャネルと
を備える、ことと、
b)溶液が前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスから排出されるように、前記溶液を前記少なくとも1つの流体チャネルを通して流動させることと、
c)ガスが前記ガス出口オリフィスから排出されるように、前記ガスを前記少なくとも1つのガスチャネルを通して流動させることと
を含み、
前記基材の温度は、前記少なくとも1つのガスチャネルを通して流動する前記ガスの温度によって制御される、方法。
【請求項53】
前記ガスの温度は、約4℃~約100℃に及ぶ、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記基材の温度は、約10℃~約50℃に及ぶ、請求項52または請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記基材の平均温度は、30±5℃に保持される、請求項52-54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つの流体チャネルは、分離チャネルを備える、請求項52-55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記分離チャネルは、被分析物の混合物を備えるサンプルの等電点電気泳動分離を実施するように構成される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記分離チャネルは、被分析物の混合物を備えるサンプルの電気泳動分離を実施するように構成される、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記マイクロ流体チップがサンプルを質量分析計の中に導入するように構成されるときに達成されるエレクトロスプレーイオン化性能は、総質量質量分析信号強度における1.0%標準誤差未満の変動によって特徴付けられる、請求項52-58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記マイクロ流体チップがサンプルを質量分析計の中に導入するように構成されるときのエレクトロスプレーイオン化性能は、総質量質量分析信号強度における0.1%標準誤差未満の変動によって特徴付けられる、請求項52-59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
安定エレクトロスプレーイオン化性能を提供するための方法であって、
a)基材を備えるマイクロ流体チップを提供することであって、前記基材は、(i)エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する遠位端を有する流体チャネルと、(ii)ガス出口オリフィスと流体連通する遠位端を有するガスチャネルとを備える、ことと、
b)溶液を前記流体チャネルを通して流動させることと、
c)ガスを前記ガスチャネルを通して流動させることと、
d)前記ガスおよび溶液に関する体積流率の比が1000:1~1,000,000:1に及ぶように、前記ガスの流率および前記溶液の流率を制御することと
を含む、方法。
【請求項62】
前記ガスおよび溶液に関する体積流率の比は、10,000:1~500,000:1に及ぶ、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記溶液の流動は、圧力、重力、動電力、またはそれらの任意の組み合わせによって制御される、請求項61または請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ガスの流動は、圧縮ガス源によって提供される、請求項61-63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記溶液に関する体積流率は、25μL/分未満である、請求項61-64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記マイクロ流体チップは、2つまたはそれを上回るガスチャネルを備え、それぞれがガス出口オリフィスと流体連通する遠位端を備え、前記2つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として対称的に、かつそれに隣接して配置される、請求項61-65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、前記基材の縁または角上に配置される、請求項61-66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記1つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、前記基材の縁上の前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接して配置される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記マイクロ流体チップがサンプルを質量分析計の中に導入するように構成されるときに達成されるエレクトロスプレーイオン化性能は、総質量質量分析信号強度における1.0%標準誤差未満の変動によって特徴付けられる、請求項61-68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記マイクロ流体チップがサンプルを質量分析計の中に導入するように構成されるときのエレクトロスプレーイオン化性能は、総質量質量分析信号強度における0.1%標準誤差未満の変動によって特徴付けられる、請求項61-69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
安定エレクトロスプレーイオン化性能を提供するための方法であって、
a)基材を備えるマイクロ流体チップを提供することであって、前記基材は、(i)エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する遠位端を有する流体チャネルと、(ii)ガス出口オリフィスと流体連通する遠位端を有するガスチャネルとを備える、ことと、
b)溶液を前記流体チャネルを通して流動させることと、
c)ガスを前記ガスチャネルを通して流動させることと、
d)前記ガス出口オリフィスにおける前記ガスに関する流速および前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスにおける前記溶液に関する流速の比が、100:1~1,000,000:1に及ぶように、前記ガスの流率および前記溶液の流率を制御することと
を含む、方法。
【請求項72】
前記ガス出口オリフィスにおける前記ガスに関する流速および前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスにおける前記溶液に関する流速の比は、500:1~5,000:1に及ぶ、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ガス出口オリフィスにおける前記ガスに関する流速および前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスにおける前記溶液に関する流速の比は、1,000:1~3,000:1に及ぶ、請求項71または請求項72に記載の方法。
【請求項74】
マイクロ流体カートリッジであって、
a)マイクロ流体チップの縁上に配置される少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートを備えるマイクロ流体チップと、
b)前記マイクロ流体チップと流体連通し、前記マイクロ流体チップの少なくとも一部を包含するように構成されるマイクロ流体カートリッジ構成要素であって、前記マイクロ流体カートリッジ構成要素は、前記マイクロ流体チップの前記少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートと整合する少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートを備える、マイクロ流体カートリッジ構成要素と
を備える、マイクロ流体カートリッジ。
【請求項75】
前記マイクロ流体チップの縁と前記カートリッジの表面との間に配置される1つまたはそれを上回るエラストマ構成要素をさらに備え、前記1つまたはそれを上回るエラストマ構成要素は、力の印加に応じて、前記マイクロ流体チップの前記少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートと前記マイクロ流体カートリッジ構成要素の前記少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートとの間に実質的無漏出シールを形成する、請求項74に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項76】
前記マイクロ流体チップの縁は、約2.0mm厚未満である、請求項74または請求項75に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項77】
前記マイクロ流体チップの縁は、約1±0.4mm厚である、請求項74-76のいずれか1項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項78】
システムであって、
a)2つまたはそれを上回る流体ポートを備え、前記システムから除去可能であるように構成されるマイクロ流体カートリッジと、
b)2つまたはそれを上回る流体相互接続を備える器具と
を備え、
前記2つまたはそれを上回る流体相互接続のそれぞれは、前記2つまたはそれを上回る流体相互接続および前記マイクロ流体カートリッジの前記2つまたはそれを上回る流体ポートを備えるアセンブリへの力の印加に応じて、前記器具の流体ラインと前記マイクロ流体カートリッジの流体ポートとの間に実質的無漏出流体継手を提供するように構成され、
前記実質的無漏出流体継手は、2つまたはそれを上回る流体ラインのうちの2つ内の相対的流体圧力が少なくとも10倍変動するときに維持される、
システム。
【請求項79】
前記実質的無漏出流体継手は、前記2つまたはそれを上回る流体ラインのうちの2つ内の相対的流体圧力が少なくとも100倍変動するときに維持される、請求項78に記載のシステム。
【請求項80】
前記2つまたはそれを上回る流体相互接続のそれぞれは、独立してばね荷重された継手を備える、請求項78または請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
前記独立してばね荷重された継手は、前記マイクロ流体カートリッジ内に孔を備える流体ポートと噛合する平坦面シール継手を備える、請求項80に記載のシステム。
【請求項82】
前記マイクロ流体デバイスは、それぞれが前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスに直接隣接して配置されるガス出口オリフィスを備える3つまたはそれを上回るガスチャネルを備える、請求項1-8のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項83】
前記3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、前記基材内に配置され、前記3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、前記少なくとも1つのガスチャネルが前記基材と同一平面内に位置しないように、前記基材に直接隣接して位置付けられる前記マイクロ流体チップの補助構成要素内に配置される、請求項82に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項84】
前記補助構成要素内に配置される前記3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、そのガス出口オリフィスが、前記基材のものと略垂直な平面にあり、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として対称的に、かつそれに直接隣接して位置付けられるように位置付けられる、請求項83に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項85】
前記補助構成要素内に配置される前記3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、そのガス出口オリフィスが、前記基材のものに対して回転され、前記エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として半径方向対称対様式において、かつそれに直接隣接して位置付けられる1つまたはそれを上回る平面にあるように位置付けられる、請求項84に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項86】
等電点電気泳動が、流体を前記流体入口ポートから前記分離チャネルを通して流動させながら実施される、請求項47に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項87】
エレクトロスプレーイオン化が、流体を前記流体入口ポートから前記第1および第2の分離チャネルを通して流動させながら実施される、請求項48に記載のマイクロ流体チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年4月28日に出願され、「Microfluidic Devices with Gas Channels for Sample Nebulization」と題された、米国特許出願第63/016,880号の優先権を主張する。第‘880号出願は、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
被分析物の本質的な品質に基づくより複雑な被分析物混合物からの被分析物成分の分離およびその品質の状態に関して濃縮される分画のセットの提供は、分析化学の重要な部分である。このように複雑な混合物を簡略化することは、下流分析の複雑性を低減させる。しかしながら、質量分析法等の公知の濃縮方法および/またはデバイスを分析機器ならびに/もしくは技法と界面接触させることを試みるとき、複雑な問題が、生じ得る。例えば、サンプルを質量分析計の中に導入するための方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)である。しかしながら、ESIでは、大液滴の形成は、汚染物質を導入し、質量分析法の分析性能に悪影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に認識されるものは、質量分析計の中へのサンプルの導入に先立って、およびその間、液滴サイズおよび汚染を低減させるための方法、デバイス、およびシステムの必要性である。本明細書に開示されるものは、サンプル処理および特性評価のための方法、デバイス、ならびにシステム、およびその種々の使用である。第1の側面では、本開示は、被分析物の混合物内の被分析物の分離および特性評価を実施するための方法、デバイス、ならびにシステムに関し、より具体的には、エレクトスプレーイオン化に先立って、またはその間、サンプルを霧化するためのデバイス(および関連方法ならびにシステム)に関する。第2の側面では、本開示は、1回またはそれを上回る分離反応(例えば、等電点電気泳動)を実施するように設計され、その後、質量分析による特性評価のための分離された被分析物の動員、霧化、およびエレクトスプレーイオン化が続く、マイクロ流体デバイス(および関連方法ならびにシステム)に関する。
【0004】
本明細書に提供されるものは、生物医学研究、臨床診断、および医薬品製造における潜在的用途を伴って、被分析物混合物内の被分析物の分離および分析のための改良された定量的性能を可能にする、方法、デバイス、ならびにシステムである。例えば、生物学的薬物および薬物候補(例えば、タンパク質)の厳格な特性評価が、規制機関によって要求される。本明細書に説明される方法およびデバイスは、タンパク質および/または他の被分析物を特性評価するために好適であり得る。いくつかの事例では、本明細書に説明される方法およびデバイスは、1つまたはそれを上回る濃縮ステップが、被分析物混合物を濃縮被分析物分画に分離するように実施される、被分析物混合物を特性評価することに関し得る。いくつかの事例では、本明細書に説明される方法およびデバイスは、1つまたはそれを上回る濃縮ステップを実施し、サンプルの高スループット特性評価のために多重化形式で被分析物混合物を濃縮被分析物分画に分離することに関し得る。いくつかの事例では、本明細書に説明される方法およびデバイスは、1つまたはそれを上回る濃縮ステップが、被分析物混合物を、続いて、エレクトスプレーイオン化界面を介して質量分析計の中に導入される、濃縮被分析物分画に分離するように実施される、被分析物混合物を特性評価することに関する。いくつかの事例では、本明細書に説明される方法およびデバイスは、エレクトロスプレーイオン化の間、サンプルを霧化し、それによって、分析器具(例えば、質量分析計)の中に導入されるサンプルの液滴サイズを減少させるための1つまたはそれを上回るガスチャネルの使用を含む。いくつかの事例では、本明細書に説明される方法およびデバイスは、エレクトロスプレーイオン化の間、サンプルを霧化するための1つまたはそれを上回るガスチャネルを含む、1つまたはそれを上回るマイクロ流体デバイスの使用を含む。開示される方法およびデバイスは、被分析物分離ならびに特性評価の便宜性、再現性、および/または分析性能の改良を提供し得る。
【0005】
ある側面では、本明細書に開示されるものは、マイクロ流体チップであって、a)基材であって、i)エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する、遠位端を備える、流体チャネルと、ii)エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接して配置される、ガス出口オリフィスと流体連通する、遠位端を備える、ガスチャネルとを備える、基材を備え、流体チャネルの遠位端とガスチャネルの遠位端との間の角度は、約0度~約30度に及ぶ、マイクロ流体チップである。
【0006】
いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、基材の縁または角もしくは先端上に配置される。いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接する基材の縁上に配置される。いくつかの実施形態では、基材は、2つまたはそれを上回るガスチャネルを備え、それぞれ、ガス出口オリフィスと流体連通する、遠位端を備える。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接して、かつそれを中心として対称的に配置される。いくつかの実施形態では、角度は、約10度~約20度に及ぶ。いくつかの実施形態では、角度は、約15±5度である。いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスから排出される、溶液の霧化を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、それぞれ、エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接して配置される、ガス出口オリフィスを備える、3つまたはそれを上回るガスチャネルを備える。いくつかの実施形態では、3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、基材内に配置され、3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのガスチャネルが基材と同一平面内に位置しないように、基材に隣接して位置付けられる、マイクロ流体チップの補助構成要素内に配置される。いくつかの実施形態では、補助構成要素内に配置される、3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、そのガス出口オリフィスが、基材のものと略垂直な平面内にあって、エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として対称的に、かつそれに隣接して位置付けられるように位置付けられる。いくつかの実施形態では、補助構成要素内に配置される、3つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つは、そのガス出口オリフィスが、基材のものに対して回転され、エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として、かつそれに隣接して、半径方向対称対様式において位置付けられる、1つまたはそれを上回る平面内にあるように位置付けられる。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、分離チャネルを備える。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップは、流体チャネル内において、被分析物の混合物を備えるサンプルの等電点電気泳動または電気泳動分離を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、約20μm~約600μmに及ぶ幅を有する。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、約10μm~約100μmに及ぶ深度を有する。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、約0.25cm~約30cmに及ぶ長さを有する。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、略正方形、長方形、円形、長円形、または菱形形状断面を有する。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、約10μm~約100μmに及ぶ最大断面寸法を有する。いくつかの実施形態では、ガスチャネルは、約20μm~約200μmに及ぶ幅を有する。いくつかの実施形態では、ガスチャネルは、約10μm~約100μmに及ぶ深度を有する。いくつかの実施形態では、ガスチャネルは、約0.2cm~約20cmに及ぶ長さを有する。いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスは、略正方形、長方形、円形、長円形、または菱形形状断面を有する。いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスは、約10μm~約50μmに及ぶ最大断面寸法を有する。いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスの100μm以内に配置される。いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスの50μm以内に配置される。いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスの10μm以内に配置される。いくつかの実施形態では、基材は、ガラス、シリコン、ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせから加工される。
【0007】
本開示の別の側面では、本明細書に提供されるものは、マイクロ流体チップであって、a)基材であって、i)それぞれ、ガスをガス出口オリフィスに送達するように構成される、異なる長さの2つまたはそれを上回るガスチャネルを備える、基材を備え、2つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つの寸法は、2つまたはそれを上回るガスチャネルのそれぞれが略同一流体力学的流動抵抗を有するように、その長さの一部に沿って調節される、マイクロ流体チップである。
【0008】
いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも1つの断面積は、その長さの一部に沿って調節される。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るガスチャネルの長さにおける最小差異は、約1cm~約10cmに及ぶ。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るガスチャネルの長さにおける最大差異は、約1cm~約10cmに及ぶ。いくつかの実施形態では、基材はさらに、エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する、遠位端を備える、流体チャネルを備える。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として対称的に、かつそれに隣接して配置され、エレクトロスプレーイオン化オリフィスから排出される、溶液の霧化を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、基材の縁または角上に配置される。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接する基材の縁上に配置される。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、分離チャネルを備える。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップは等電点電気泳動または電気泳動分離を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、ガスは、霧化装置ガスである。いくつかの実施形態では、霧化装置ガスは、空気、窒素、酸素、亜酸化窒素、フルオロウレタン、ヘリウム、アルゴン、メタノール、またはそれらの任意の組み合わせを備える。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップはさらに、その上にエレクトロスプレーイオン化オリフィスが配置される、基材の縁または基材の角の少なくとも一部上に、疎水性コーティングを備える。
【0009】
別の側面では、本明細書に開示されるものは、マイクロ流体チップであって、基材であって、i)流体入口ポートと流体連通する、近位端と、エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する、遠位端を備える、流体チャネルと、ii)それぞれ、ガス入口ポートと流体連通する、近位端と、ガス出口オリフィスと流体連通する、遠位端とを備える、少なくとも2つのガスチャネルとを備える、基材を備え、少なくとも1つの流体入口ポートおよび少なくとも2つのガス入口ポートは、基材の第1の縁に沿って配置される、マイクロ流体チップである。
【0010】
いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、基材の第2の縁上に位置付けられる。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、第1の縁を備えない、基材の角上に位置付けられる。いくつかの実施形態では、基材は、約2.0mm厚未満である。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、電気泳動分離を実施するように構成される、分離チャネルを備える。いくつかの実施形態では、流体チャネルは等電点電気泳動分離を実施するように構成される、分離チャネルを備える。いくつかの実施形態では、基材は、第1の分離チャネルと、第2の分離チャネルとを備え、第1の分離チャネルの遠位端は、第2の分離チャネルの近位端と流体連通し、第2の分離チャネルの遠位端は、エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する。いくつかの実施形態では、第1の分離チャネルは、クロマトグラフ分離を実施するように構成され、第2の分離チャネルは、電気泳動分離を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、第1の分離チャネルは、クロマトグラフ分離を実施するように構成され、第2の分離チャネルは、等電点電気泳動分離を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、被分析物の混合物を備えるサンプルの等電点電気泳動分離を実施するように構成される、分離チャネルを備え、基材はさらに、分離チャネルの遠位端と流体連通し、動員電解質の電気泳動導入を分離チャネルの遠位端に提供するように構成される、動員電解質チャネルを備える。
【0011】
本明細書に開示されるものは、別の側面では、マイクロ流体チップからエレクトロスプレーイオン化を実施するための方法であって、a)基材を備える、マイクロ流体チップを提供するステップであって、基材は、i)エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する遠位端を備える少なくとも1つの流体チャネルと、ii)ガスを、エレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接する、ガス出口オリフィスに送達するように構成される、少なくとも1つのガスチャネルとを備える、ステップと、b)溶液がエレクトロスプレーイオン化オリフィスから排出されるように、溶液を少なくとも1つの流体チャネルを通して流動させるステップと、c)ガスがガス出口オリフィスから排出されるように、ガスを少なくとも1つのガスチャネルを通して流動させるステップとを含み、基材の温度は、少なくとも1つのガスチャネルを通して流動するガスの温度によって制御される、方法である。
【0012】
いくつかの実施形態では、ガスの温度は、約4℃~約100℃に及ぶ。いくつかの実施形態では、基材の温度は、約10℃~約50℃に及ぶ。いくつかの実施形態では、基材の平均温度は、30±5℃に保持される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの流体チャネルは、分離チャネルを備える。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、被分析物の混合物を備えるサンプルの等電点電気泳動分離を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、被分析物の混合物を備えるサンプルの電気泳動分離を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップがサンプルを質量分析計の中に導入するように構成されるときに達成される、エレクトロスプレーイオン化性能は、総質量質量分析信号強度における1.0%標準誤差未満の変動によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップがサンプルを質量分析計の中に導入するように構成されるときのエレクトロスプレーイオン化性能は、総質量質量分析信号強度における0.1%標準誤差未満の変動によって特徴付けられる。
【0013】
さらに別の側面では、本明細書に開示されるものは、安定エレクトロスプレーイオン化性能を提供するための方法であって、a)基材を備える、マイクロ流体チップを提供するステップであって、基材は、(i)エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する、遠位端を有する、流体チャネルと、(ii)ガス出口オリフィスと流体連通する、遠位端を有する、ガスチャネルとを備える、ステップと、b)溶液を流体チャネルを通して流動させるステップと、c)ガスをガスチャネルを通して流動させるステップと、d)ガスおよび溶液に関する体積流率の比が1000:1~1,000,000:1に及ぶように、ガスの流率および溶液の流率を制御するステップとを含む、方法である。いくつかの実施形態では、ガスおよび溶液に関する体積流率の比は、10,000:1~1,000,000:1に及ぶ。いくつかの実施形態では、ガスおよび溶液に関する体積流率の比は、10,000:1~500,000:1、より具体的には、10,000:1~300,000:1に及ぶ。
【0014】
いくつかの実施形態では、溶液の流動は、圧力、重力、動電力、またはそれらの任意の組み合わせによって制御される。いくつかの実施形態では、ガスの流動は、圧縮ガス源によって提供される。いくつかの実施形態では、溶液に関する体積流率は、25μL/分未満である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップは、2つまたはそれを上回るガスチャネルを備え、各ガス出口オリフィスと流体連通する、遠位端を備え、2つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として対称的に、かつそれに隣接して配置される。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化オリフィスは、基材の縁または角上に配置される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るガス出口オリフィスは、基材の縁上のエレクトロスプレーイオン化オリフィスに隣接して配置される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップがサンプルを質量分析計の中に導入するように構成されるときに達成される、エレクトロスプレーイオン化性能は、総質量質量分析信号強度における1.0%標準誤差未満の変動によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップがサンプルを質量分析計の中に導入するように構成されるときのエレクトロスプレーイオン化性能は、総質量質量分析信号強度における0.1%標準誤差未満の変動によって特徴付けられる。
【0015】
別の側面では、本明細書に開示されるものは、安定エレクトロスプレーイオン化性能を提供するための方法であって、a)基材を備える、マイクロ流体チップを提供するステップであって、基材は、(i)エレクトロスプレーイオン化オリフィスと流体連通する、遠位端を有する、流体チャネルと、(ii)ガス出口オリフィスと流体連通する、遠位端を有する、ガスチャネルとを備える、ステップと、b)溶液を流体チャネルを通して流動させるステップと、c)ガスをガスチャネルを通して流動させるステップと、d)ガス出口オリフィスにおけるガスに関する流速およびエレクトロスプレーイオン化オリフィスにおける溶液に関する流速の比が、100:1~1,000,000:1に及ぶように、ガスの流率および溶液の流率を制御するステップとを含む、方法である。いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスにおけるガスに関する流速およびエレクトロスプレーイオン化オリフィスにおける溶液に関する流速の比は、500:1~5,000:1に及ぶ。
【0016】
いくつかの実施形態では、ガス出口オリフィスにおけるガスに関する流速およびエレクトロスプレーイオン化オリフィスにおける溶液に関する流速の比は、1,000:1~3,000:1に及ぶ。
【0017】
さらに別の側面では、本明細書に提供されるものは、マイクロ流体カートリッジであって、a)マイクロ流体チップの縁上に配置される、少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートを備える、マイクロ流体チップと、b)マイクロ流体チップと流体連通し、マイクロ流体チップの少なくとも一部を包含するように構成される、マイクロ流体カートリッジ構成要素であって、マイクロ流体チップの少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートと整合する、少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートを備える、マイクロ流体カートリッジ構成要素とを備える、マイクロ流体カートリッジである。
【0018】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジはさらに、マイクロ流体チップの縁とカートリッジの表面との間に配置される、1つまたはそれを上回るエラストマ構成要素を備え、1つまたはそれを上回るエラストマ構成要素は、力の印加に応じて、マイクロ流体チップの少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートとマイクロ流体カートリッジ構成要素の少なくとも1つの流体ポートおよび少なくとも2つのガスポートとの間に実質的無漏出シールを形成する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップの縁は、約2.0mm厚未満である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップの縁は、約1±0.1mm厚である。
【0019】
別の側面では、本明細書に開示されるは、システムであって、a)2つまたはそれを上回る流体ポートを備え、システムから除去可能であるように構成される、マイクロ流体カートリッジと、b)2つまたはそれを上回る流体相互接続を備える、器具とを備え、2つまたはそれを上回る流体相互接続はそれぞれ、2つまたはそれを上回る流体相互接続およびマイクロ流体カートリッジの2つまたはそれを上回る流体ポートを備える、アセンブリへの力の印加に応じて、器具の流体ラインとマイクロ流体カートリッジの流体ポートとの間に実質的無漏出流体継手を提供するように構成され、実質的無漏出流体継手は、2つまたはそれを上回る流体ラインのうちの2つ内の相対的流体圧力が少なくとも10倍変動するときに維持される、システムである。
【0020】
いくつかの実施形態では、実質的無漏出流体継手は、2つまたはそれを上回る流体ラインのうちの2つ内の相対的流体圧力が少なくとも100倍変動するときに維持される。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回る流体相互接続はそれぞれ、独立してばね荷重された継手を備える。いくつかの実施形態では、独立してばね荷重された継手は、マイクロ流体カートリッジ内に孔を備える流体ポートと噛合する、平坦面シール継手を備える。
(参照による組み込み)
【0021】
本明細書に述べられる全ての出版物、特許、および特許出願は、各個々の出版物、特許、または特許出願が、参照することによってその全体として組み込まれるように具体的かつ個別に示された場合と同一の程度に、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。本明細書の用語と組み込まれた参考文献内の用語との間の矛盾の場合、本明細書の用語が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の新規の特徴が、添付の請求項に詳細に記載される。本発明の特徴および利点のさらなる理解が、本発明の原理が利用される、例証的実施形態を記載する以下の詳細な説明、および付随する図面を参照することによって、得られるであろう。
【0023】
【
図1A】
図1Aは、本開示の一側面による、複数の等電点電気泳動反応のための複数のチャネルを備える、マイクロ流体チップの非限定的概略図を提供する。
【0024】
【
図1B】
図1Bは、本開示の別の側面による、分離反応を実施するためのエレクトロスプレー先端を備える、例示的マイクロ流体チップの流体チャネルネットワークの非限定的概略図を提供する。
【0025】
【
図2】
図2A-2Bは、デバイスの縁に位置付けられる、入口ポートを伴う、ガスチャネルおよび分離チャネルを備える、マイクロ流体チップの非限定的概略図を提供する。
図2Aは、マイクロ流体チップの占有面積を示す。
図2Bは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの上下図を示す。
【0026】
【
図3】
図3A-3Dは、本明細書に説明されるマイクロ流体チップの改変可能側面(例えば、設計パラメータ)の非限定的概略図を提供する。
図3Aは、流体チャネルの遠位端とガスチャネルの遠位端との間の角度を示す。
図3Bは、ガス出口オリフィスの直径を示す。
図3Cは、流体チャネルの遠位端とガスチャネルの遠位端との間の近接度を示す。
図3Dは、マイクロ流体チップの縁とガスチャネルの遠位端との間の角度を示す。
【0027】
【
図4】
図4A-4Bは、流体チャネル(例えば、分離チャネルの端部)に隣接して対称ガスチャネルを備える、基材を備える、マイクロ流体チップの1つの設計の顕微鏡写真の非限定的実施例を提供する。
図4Aは、マイクロ流体チップの1つの設計の顕微鏡写真を示す。
図4Bは、マイクロ流体チップの別の設計の顕微鏡写真を示す。
【0028】
【
図5】
図5A-5Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、例示的マイクロ流体チップの付加的非限定的概略図を提供する。
図5Aは、マイクロ流体チップの占有面積を示す。
図5Bは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの上下図を示す。
図5Cは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの等角図を示す。
【0029】
【
図6】
図6A-6Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップの別の実施例の付加的非限定的概略図を提供する。
図6Aは、マイクロ流体チップの占有面積を示す。
図6Bは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの上下図を示す。
図6Cは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの等角図を示す。
【0030】
【
図7】
図7A-7Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップのさらに別の実施例の付加的非限定的概略図を提供する。
図7Aは、マイクロ流体チップの占有面積を示す。
図7Bは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの上下図を示す。
図7Cは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの等角図を示す。
【0031】
【
図8】
図8A-8Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップのさらに別の実施例の付加的非限定的概略図を提供する。
図8Aは、マイクロ流体チップの占有面積を示す。
図8Bは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの上下図を示す。
図8Cは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの等角図を示す。
【0032】
【
図9】
図9A-9Bは、本明細書に説明される基材の反対縁上に入口ポートを伴う、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップのさらに別の実施例の付加的非限定的概略図を提供する。
図9Aは、マイクロ流体チップの占有面積を示す。
図9Bは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの上下図を示す。
【0033】
【
図10】
図10A-10Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップの別の実施例の付加的非限定的概略図を提供する。
図10Aは、マイクロ流体チップの占有面積を示す。
図10Bおよび
図10Cは、流体チャネルおよびガス出口オリフィスの上下拡大図を示す。
【0034】
【
図11】
図11A-11Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップの別の実施例の付加的非限定的概略図を提供する。
図11Aは、マイクロ流体チップの占有面積を示す。
図11Bおよび
図11Cは、それぞれ、ガス入口部分および遠位出口部分の等角拡大図を示す。
【0035】
【
図12-1】
図12A-12Dは、マイクロ流体チップの種々の遠位端(先端)の例示的概略図(
図12A-12C)および画像(
図12D)を提供する。
図12Aは、ガスおよび流体オリフィスを伴う、成形されていない先端の概略図を示す。
図12Bは、ガスおよび流体オリフィスを伴う、ファセット加工された成形された先端の概略図を示す。
図12Cは、ガスおよび流体オリフィスを伴う、丸みを帯びた成形された先端の概略図を示す。
図12Dは、ガスおよび流体オリフィスを伴う、ファセット加工された成形された先端の画像を示す。
【
図12-2】
図12A-12Dは、マイクロ流体チップの種々の遠位端(先端)の例示的概略図(
図12A-12C)および画像(
図12D)を提供する。
図12Aは、ガスおよび流体オリフィスを伴う、成形されていない先端の概略図を示す。
図12Bは、ガスおよび流体オリフィスを伴う、ファセット加工された成形された先端の概略図を示す。
図12Cは、ガスおよび流体オリフィスを伴う、丸みを帯びた成形された先端の概略図を示す。
図12Dは、ガスおよび流体オリフィスを伴う、ファセット加工された成形された先端の画像を示す。
【0036】
【
図13】
図13は、エレクトロスプレーイオン化の間の、流体出口チャネルと、対称ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップの流体オリフィスの例示的画像を提供する。
【0037】
【
図14】
図14A-14Bは、エレクトロスプレーイオン化の間の、流体出口チャネルと、対称ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップの流体オリフィスの付加的例示的画像を提供する。
図14Aは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスの近傍の照明の画像を示す。
図14Bは、電極プレートの近傍の照明の画像を示す。
【0038】
【
図15】
図15は、本明細書に説明されるデバイスの流体出口チャネルオリフィスの周囲のガス流速を図示する、数値シミュレーションからの結果の実施例を提供する。パネルAは、本明細書に説明されるデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルBは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルCは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネル「同心」は、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルDは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルEは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルFは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルGは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。
【0039】
【
図16】
図16は、本明細書に説明されるデバイスの流体出口チャネルオリフィスの周囲のガス剪断率を図示する、数値シミュレーションからの結果の実施例を提供する。パネルAは、本明細書に説明されるデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルBは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルCは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネル「同心」は、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルDは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルEは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルFは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルGは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。
【0040】
【
図17】
図17は、本明細書に説明されるデバイスの流体出口チャネルオリフィスの周囲の速度場を図示する、数値シミュレーションからの結果の実施例を提供する。パネルAは、本明細書に説明されるデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルBは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルCは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネル「同心」は、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルDは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルEは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。
【0041】
【
図18】
図18は、本明細書に説明されるデバイスの流体出口チャネルオリフィスの周囲のガス圧力場を図示する、数値シミュレーションからの結果の実施例を提供する。パネルAは、本明細書に説明されるデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルBは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルCは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネル「同心」は、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルDは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルEは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルFは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。パネルGは、本明細書に説明される別のデバイスに関するシミュレーション結果を示す。
【0042】
【
図19】
図19は、エレクトロスプレー先端からの距離の関数として、複数のデバイス設計に関するガス圧を比較する、プロットを示す。
【0043】
【
図20A】
図20A-20Eは、マイクロ流体カートリッジ/器具界面およびその構成要素に関する設計を図式的に図示する。
図20Aは、分解図を示す。
図20Bは、組み立てられたユニットの図を示す。
図20Cは、装填解除された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Dは、接触された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Eは、シールされた構成におけるアセンブリの断面図を示す。
【
図20B】
図20A-20Eは、マイクロ流体カートリッジ/器具界面およびその構成要素に関する設計を図式的に図示する。
図20Aは、分解図を示す。
図20Bは、組み立てられたユニットの図を示す。
図20Cは、装填解除された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Dは、接触された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Eは、シールされた構成におけるアセンブリの断面図を示す。
【
図20C】
図20A-20Eは、マイクロ流体カートリッジ/器具界面およびその構成要素に関する設計を図式的に図示する。
図20Aは、分解図を示す。
図20Bは、組み立てられたユニットの図を示す。
図20Cは、装填解除された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Dは、接触された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Eは、シールされた構成におけるアセンブリの断面図を示す。
【
図20D】
図20A-20Eは、マイクロ流体カートリッジ/器具界面およびその構成要素に関する設計を図式的に図示する。
図20Aは、分解図を示す。
図20Bは、組み立てられたユニットの図を示す。
図20Cは、装填解除された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Dは、接触された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Eは、シールされた構成におけるアセンブリの断面図を示す。
【
図20E】
図20A-20Eは、マイクロ流体カートリッジ/器具界面およびその構成要素に関する設計を図式的に図示する。
図20Aは、分解図を示す。
図20Bは、組み立てられたユニットの図を示す。
図20Cは、装填解除された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Dは、接触された位置におけるアセンブリの断面図を示す。
図20Eは、シールされた構成におけるアセンブリの断面図を示す。
【0044】
【
図21】
図21A-21Cは、マイクロ流体カートリッジ/器具界面の継手アセンブリの斜視図を図式的に図示する。
図21Aは、装填解除された位置におけるアセンブリの斜視図を示す。
図21Bは、接触された位置におけるアセンブリの斜視図を示す。
図21Cは、シールされた構成におけるアセンブリの斜視図を示す。
【0045】
【
図22】
図22A-22Cは、マイクロ流体チップおよびカートリッジ構成要素を接続し、マイクロ流体カートリッジを組み立てるための設計を図式的に図示し、その中で界面は、エラストマ構成要素を備える。
図22Aは、カートリッジに固着される、マイクロ流体チップを図式的に示す。
図22Bは、エラストマ構成要素の概略図を示す。
図22Cは、接続されたエラストマ構成要素のセットの概略図を示す。
【0046】
【
図23】
図23は、本明細書に説明されるソフトウェアアーキテクチャシステムの実施例を示す。
【0047】
【
図24】
図24は、本明細書に説明される統合されたシステムの例示的ブロック図を示す。
【0048】
【
図25】
図25は、本明細書に説明される別の統合されたシステムの例示的ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
詳細な説明
本明細書に開示されるものは、サンプルを分析器具(例えば、質量分析計)に導入しながら、サンプルを霧化するための方法、デバイス、およびシステムである。本明細書に開示される1つまたはそれを上回る方法、デバイス、およびシステムは、加えて、等電点電気泳動反応(または他の分離反応)を被分析物の混合物上で実施し、その後、分離された被分析物の動員および質量分析計への導入が続くことを含んでもよい。分離された被分析物の導入は、エレクトロスプレーイオン化を使用して導入されてもよく、サンプルの霧化は、下流分析アプローチ(例えば、質量分析法)のより優れた精度、制御、および改良された分析性能を提供し得る。本明細書に開示される方法、デバイス、およびシステムは、加えて、等電点(または他の物理化学性質)によって、タンパク質被分析物混合物または他の生物学的分子の高速かつ正確な分離および特性評価を可能にし得る。
【0050】
ある側面では、本明細書に開示されるものは、分離チャネルと、ガスチャネルとを有する、基材を備える、マイクロ流体チップである。いくつかの事例では、分離チャネルは、等電点電気泳動反応を実施するために使用され、流体チャネル出口と流体連通する、遠位端を備える。流体チャネル出口は、エレクトロスプレーイオン化オリフィスの一部である、またはそれを備えることができ、これは、サンプルまたは分離されたサンプルを分析器具(例えば、質量分析計)の中に界面接触させるために使用されてもよい。本明細書で使用されるマイクロ流体チップは、加えて、ガスチャネルおよび分離チャネルと流体連通する、入口ポートを備えてもよく、入口ポートは、基材の縁(すなわち、基材占有面積の最大および最小寸法(例えば、長さおよび深度)によって画定された基材の面)に沿って位置付けられてもよい。入口ポートは、1つまたはそれを上回る反応、例えば、分離反応、動員反応、エレクトロスプレーイオン化等を実施するための試薬を備える、チャネルまたはリザーバに流体的および/または電気的に結合されてもよい。いくつかの事例では、基材は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)先端を備え、これは、サンプル(または分離されたサンプル)を動員およびESI介して放出するために使用される。ESI先端は、基材の縁上に配置されてもよい。いくつかの事例では、ESI先端およびガスチャネルの出口(例えば、ガス出口オリフィス)は、基材の縁上に相互に隣接して配置される。いくつかの事例では、サンプル(または分離されたサンプル)は、分析器具(例えば、質量分析計)の中に導入される。
【0051】
いくつかの事例では、ガスチャネルは、ESIの間、ESI先端からのサンプル(または分離されたサンプル)を霧化するために使用される。霧化は、ガス噴射が持続液体流を小液滴に破壊することによって生成される、剪断および慣性力によって達成される。サンプルの霧化(または分離されたサンプル)は、ナノ流下でのサンプル(または分離されたサンプル)の定量的測定を改良するために使用されてもよく、サンプル(または分離されたサンプル)は、約ナノリットルスケール流率(例えば、ナノリットル/分)において、ESI先端を通して流動される。サンプルの霧化(または分離されたサンプル)は、マイクロ流下でのサンプル(または分離されたサンプル)の定量的測定を改良するために使用されてもよく、サンプル(または分離されたサンプル)は、約マイクロリットルスケール流率(例えば、マイクロリットル/分)において、ESI先端を通して流動される。いくつかの事例では、サンプルの霧化(または分離されたサンプル)は、イオン抑制を低減させる、イオン種を横断して、イオン化を増加させる、汚染を低減させる、より安定なエレクトロスプレー性能を提供する、液滴形成をESI電位から結合解除する、および/またはより優れた正確度を提供する。いくつかの事例では、マイクロ流体チップの中に統合されるガスチャネルは、分離チャネルまたはESI先端に対する霧化のためのガスの設置におけるより優れた精度、ガスの層流、より優れた寸法の制御等を可能にする。いくつかの事例では、ガスチャネルは、ESI先端の清掃または乾燥のため、もしくは分離チャネルまたはESI先端からの廃棄物生成物を下流分析ユニット(例えば、質量分析計)から離れるように指向するために使用されてもよい。いくつかの事例では、ガスチャネルは、基材の温度を制御する(例えば、ガスチャネルを通して流動するガスの温度を改変することによって)ために使用される。
【0052】
デバイスの基材内へのガスチャネルの統合は、特定の有用性および利点を提供し得る。例えば、流体チャネルオリフィスに関連したガス流の設置におけるより優れた精度が、デバイスに結合するように構成される、外部ユニットと比較して、達成され得る。例えば、標準的加工アプローチを使用した流体チャネルオリフィスに対するガスチャネルオリフィスの設置は、約+/-100μmの設置の精度を達成する、外部ユニットと比較して、+/-約2μmの設置の精度を達成し得る。さらに、マイクロ流体形式へのガスチャネルの統合は、ガスの層流を達成する際に有利であり得、これは、流体チャネルオリフィスまたはその近傍における渦または乱流を排除または防止することを補助し得、これは、より安定したエレクトロスプレーを提供することができる。加えて、ガス流と液体/分離チャネル流動の近接度は、ガス流の効果を液体流動により効果的に及ぼす。
【0053】
本開示の別の側面では、本明細書に提供されるものは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備え、その中でガスチャネルの一部が、分離チャネルの一部と略平行である、マイクロ流体チップである。いくつかの事例では、ガスチャネルおよび分離チャネルは、分離チャネルに接続される、分離チャネルの遠位端(または流体出口チャネルの遠位端(また、本明細書では、「流体チャネル」))とガスチャネルの遠位端との間の角度(また、本明細書では、「収束角度」)が約0度~約45度に及ぶように、基材上に配置される。
【0054】
いくつかの事例では、ガスチャネルの遠位端と流体出口チャネルの遠位端との間の角度は、約0度(平行、非収束)、約5度、約10度、約15度、約20度、約25度、約30度、約35度、約40度、約45度、約50度、約55度、約60度、約65度、約70度、約75度、約80度、約85度、または約90度である。いくつかの事例では、ガスチャネルの遠位端と流体出口チャネルの遠位端との間の角度は、少なくとも約0度、少なくとも約5度、少なくとも約10度、少なくとも約15度、少なくとも約20度、少なくとも約25度、少なくとも約30度、少なくとも約35度、少なくとも約40度、少なくとも約45度、少なくとも約50度、少なくとも約55度、少なくとも約60度、少なくとも約65度、少なくとも約70度、少なくとも約75度、少なくとも約80度、少なくとも約85度、または少なくとも約90度である。いくつかの事例では、ガスチャネルの遠位端と流体出口チャネルの遠位端との間の角度は、最大で約90度、最大で約85度、最大で約80度、最大で約75度、最大で約70度、最大で約65度、最大で約60度、最大で約55度、最大で約50度、最大で約45度、最大で約40度、最大で約35度、最大で約30度、最大で約25度、最大で約20度、最大で約15度、最大で約10度、最大で約5度、または最大で約0度である。角度、例えば、約10度~30度も、本明細書に列挙された値範囲内に該当し得る。
【0055】
別の側面では、本明細書に開示されるものは、ガスチャネルと、少なくとも1つの入口ポートであって、基材の縁に沿って位置付けられる、入口ポートとを備える、基材を備える、マイクロ流体チップである。いくつかの事例では、基材は、ガスチャネルと、分離チャネルと、ガスチャネルとを備え、分離チャネルはそれぞれ、基材の縁上に位置する、入口ポートを備える。いくつかの事例では、基材は、流体チャネルと、2つのガスチャネルと、少なくとも1つの流体入口ポート(例えば、に接続される、分離チャネル)と、少なくとも2つのガス入口ポートとを備え、その中でポートは、第1の基材の縁に沿って位置する。
【0056】
本開示の別の側面では、本明細書に提供されるものは、2つまたはそれを上回るガスチャネルを備える、マイクロ流体チップであって、ガスチャネルはそれぞれ、異なる長さを有し、ガスをガス出口オリフィス(また、本明細書では、「ガスチャネルの出口」)に送達するように構成され、そのオリフィスは、基材の縁、またはいくつかの事例では、角上に配置される。いくつかの事例では、(1つまたはそれを上回るガスチャネルの)2つのガス出口オリフィスから外に出るガス流は、(流体チャネルの)流体出口オリフィスから外の液体の流体路内で収束するように構成される。いくつかの事例では、ガスチャネルの全長は、2つまたはそれを上回るガスチャネルのそれぞれの全部または一部の断面積と異なってもよく、2つまたはそれを上回るガスチャネルはそれぞれ、略同一流体力学的流動抵抗を有するように調節されてもよい。いくつかの事例では、ガスチャネルは、出口において狭小化され、ガス流の線形流率を増加させてもよい。いくつかの事例では、ガスチャネルは、その出口において超音速(音より高速)流速を達成するように構成されてもよい。いくつかの事例では、本構成は、狭化ガスチャネル区分から成り、その後、より狭い「チョーク」区分、次いで、拡張区分が続き、超音速流速を達成してもよい。
【0057】
いくつかの事例では、マイクロ流体チップは、流体出口チャネルと流体連通する(例えば、遠位端において)、流体チャネル(例えば、分離チャネル)を備え、その流体出口チャネルは、ESIオリフィスとして機能し得る、流体出口オリフィスを備える。いくつかの事例では、流体出口オリフィスは、基材の縁または角上に配置され、ガスチャネルの出口は、基材の縁または角上に、流体出口オリフィスに隣接して配置されてもよい。いくつかの事例では、その上にESIオリフィスが位置付けられる、角は、その上に流体出口オリフィスが位置付けられる、縁を備える。他の事例では、その上にESIオリフィスが位置付けられる、角は、その上に流体出口オリフィスが位置付けられる、縁を備えない。いくつかの事例では、ガスチャネル内のガスの流率および/または流体チャネル内の液体の流率は、ガスおよび液体のための体積流率の比が1000:1~1,000,000:1に及ぶように、制御または調節されることができる。いくつかの事例では、ガスチャネル内のガスの流速および/または流体チャネル内の液体の流速は、ガスおよび液体のための流速の比が100:1~10,000:1に及ぶように、制御または調節されることができる。
【0058】
別の側面では、本明細書に提供されるものは、組み立てられたマイクロ流体カートリッジ内でマイクロ流体チップと界面接触するように構成される、カートリッジ構成要素である。マイクロ流体チップは、デバイスの基材の縁上に配置される、2つまたはそれを上回る流体ポートを備えてもよく、カートリッジ構成要素は、カートリッジの表面または縁上に配置される、2つまたはそれを上回る流体ポートを備えてもよく、その流体ポートは、マイクロ流体チップの流体ポートと界面接触するように構成される。いくつかの事例では、カートリッジ構成要素の流体ポートは、例えば、チップが組み立てられたマイクロ流体カートリッジ内に固着されると、マイクロ流体チップのものと整合する。組み立てられたマイクロ流体カートリッジは、マイクロ流体チップの縁とカートリッジ構成要素の表面との間に(例えば、整合された流体ポートの界面に)位置付けられる、1つまたはそれを上回るエラストマ構成要素を備えてもよい。いくつかの事例では、マイクロ流体チップと、カートリッジ構成要素とを備える、アセンブリへの力の印加が、マイクロ流体チップを組み立てられたマイクロ流体カートリッジ内に固着させ、流体連通をマイクロ流体チップのポートとカートリッジのポートとの間で確立するために使用される。いくつかの事例では、組み立てられたマイクロ流体カートリッジは、実質的無漏出流体継手をカートリッジ構成要素とマイクロ流体チップとの間に提供するように構成される。いくつかの事例では、無漏出流体継手は、マイクロ流体チップのガスチャネルの中へのガスの導入に応じて、維持される。
【0059】
別の側面では、本明細書に開示されるものは、マイクロ流体カートリッジを器具システムに除去可能に接続するための界面設計であって、これは、界面設計は、流体連通をマイクロ流体カートリッジの少なくとも1つのチャネルとマイクロ流体カートリッジの外部の流体ラインとの間に確立するように構成される。界面設計は、1つまたはそれを上回る流体相互接続を備えてもよく、その中で流体相互接続はそれぞれ、実質的無漏出流体継手を外部流体ライン(例えば、リザーバ等に接続される、器具)とマイクロ流体カートリッジの流体ポートとの間に提供するように構成される。その中でカートリッジ構成要素と、マイクロ流体チップとを備える、組み立てられたマイクロ流体カートリッジが使用される、いくつかの事例では、界面は、1つまたはそれを上回る流体相互接続を備え、その中で流体相互接続はそれぞれ、実質的無漏出流体継手を外部流体ラインと組み立てられたマイクロ流体カートリッジとの間に提供するように構成され、これは、ひいては、マイクロ流体カートリッジのカートリッジ構成要素および/またはマイクロ流体チップとの実質的無漏出流体連通を提供し得る。実質的無漏出流体継手は、2つまたはそれを上回る外部流体ラインのうちの2つ内の相対的流体圧力が、下記に説明されるであろうように、少なくとも10倍変動するときでも維持され得る。いくつかの事例では、界面設計は、少なくとも1つの独立してばね荷重された継手を備え、これは、流体連通をマイクロ流体カートリッジと外部流体ラインとの間に確立するために使用されてもよい。いくつかの事例では、カートリッジは、同時に、ガスおよび液体をチップに送達してもよい。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態では、マイクロ流体チップは、平面基材を備え、その平面基材は、平行かつ多重化された分離反応のための2つまたはそれを上回る分離チャネルと、随意に、下流分析(例えば、ESI-MSを介して)のための分離されたサンプルの平行かつ多重化された霧化のための2つまたはそれを上回るガスチャネルとを備える。好ましい側面では、分離反応は、等電点電気泳動反応である。別の好ましい側面では、被分析物混合物は、タンパク質被分析物混合物から成り、並行した2回またはそれを上回る等電点電気泳動反応の実施は、被分析物混合物内のタンパク質成分の高速で正確な分離およびそれらの等電点(pI)による個々のタンパク質成分の特性評価を可能にする。いくつかの事例では、撮像、例えば、全チャネル撮像の使用は、等電点電気泳動のために使用されるpH勾配におけるpIマーカの位置を可視化するためのpIマーカと組み合わせて、被分析物混合物の分離されたタンパク質成分のためのpIのより正確な判定を可能にする。
【0061】
本開示のある側面では、マイクロ流体デバイスまたはカートリッジを動作するための方法およびシステムは、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源(もしくは単一の多重化高電圧電力供給源)を使用し、これは、マイクロ流体チップの各分離チャネル内の分離反応または実験条件の独立した制御を可能にする。したがって、いくつかの事例では、マイクロ流体チップは、並行して分離または実験条件の同一のセットの下で2つまたはそれを上回る異なるサンプルの分離および特性評価を実施するために使用されてもよい。いくつかの事例では、マイクロ流体チップは、並行して2つまたはそれを上回る異なる反応もしくは実験条件下で同一のサンプルの2つまたはそれを上回るアリコートの分離および特性評価を実施するために使用されてもよい。いくつかの事例では、デバイス上の分離チャネルのサブセットが、分離または実験条件の同一のセットの下で複数のサンプルの分離を実施するために使用されてもよく、代替として、もしくは加えて、デバイス上の分離チャネルの異なるサブセットが、並行して複数の異なる反応または実験条件下で同一のサンプルからの複数のアリコートの分離および特性評価を実施するために使用されてもよい。いくつかの事例では、デバイスは、分離チャネルのサブセット毎に、質量分析計の中への分離されたサンプルの導入(例えば、ESIの間、霧化を介して)のために、分離チャネルのそれぞれ内においてサンプルを霧化するために使用される、1つまたはそれを上回るガスチャネルを備える。
【0062】
条件は、同一であり得、またはマイクロ流体チップの分離チャネルを横断して異なり得、緩衝剤選択、電解質選択、pH勾配選択、電圧設定、電流設定、電場強度設定、電圧設定、電流設定、電場強度設定を変動させるための時間経過、等電点電気泳動反応時間、またはそれらの任意の組み合わせを備えてもよい。
【0063】
いくつかの事例では、システムはさらに、1つまたはそれを上回る入口ポートの中へのサンプルアリコートおよび/または(例えば、分離試薬、動員、エレクトロスプレーイオン化、霧化のためのガスのため)他の試薬の自動的な独立して制御された装填のために構成される、オートサンプラもしくは流体取扱システムを備えてもよい。いくつかの事例では、システムはさらに、(例えば、試薬を流体チャネルおよび/またはガスチャネルに送達するために)例えば、2つまたはそれを上回るチャネルを通して独立して制御された圧力駆動流を提供するように構成される、流体流コントローラを備えてもよい。いくつかの事例では、システムはさらに、分離反応(例えば、等電点電気泳動反応)に続いて、流体チャネルを洗い流す、洗浄する、すすぐ、または排出するように構成される、オートサンプラもしくは流体流コントローラを備えてもよい。いくつかの事例では、分離チャネルの洗い流し、洗浄、すすぎ、もしくは排気に続いて、オートサンプラまたは流体流コントローラは、別のサンプル(例えば、異なるサンプルもしくは同一のサンプルの別のアリコート)を2つまたはそれを上回る分離チャネルの中に自動的に導入するように構成されてもよい。いくつかの事例では、オートサンプラまたは流体流コントローラは、障害(例えば、気泡形成または導入、誤って調製されたサンプル、充填不足の試薬リザーバ、もしくはそれらの組み合わせ)が(例えば、電圧または電流監視を介して)検出される場合、サンプル、反応試薬、またはそれらの組み合わせを1つまたはそれを上回る分離チャネルの中に自動的に再導入するように構成されてもよい。そのような場合において、障害の検出に続いて、オートサンプラまたは流体流コントローラは、障害が生じた分離チャネルを洗い流し、サンプル、反応試薬、またはそれらの組み合わせを再導入してもよく、分離反応は、(例えば、独立して制御された電圧供給源のうちの1つまたはそれを上回るものによる電場の印加を介して)再開されてもよい。
【0064】
いくつかの事例では、システムはさらに、分離チャネルおよび/またはガスチャネルまたはチャネルのいずれかの出口の一連の1つまたはそれを上回る画像を入手するように構成される、撮像モジュールを備えてもよい。いくつかの事例では、画像の視野は、分離チャネルまたはガスチャネルの全部または一部を備えてもよい。いくつかの事例では、画像の視野は、流体チャネルまたは流体チャネル出口の全部または一部を備えてもよい。いくつかの事例では、撮像は、分離反応、動員反応、および/またはエレクトロスプレーイオン化が実施されている間、持続撮像を備えてもよい。いくつかの事例では、撮像は、分離反応、動員反応、および/またはエレクトロスプレーイオン化が実施される間、断続撮像を備えてもよい。
【0065】
いくつかの事例では、撮像は、エレクトロスプレーイオン化および/または霧化が実施される間、持続または断続撮像を備えてもよい。いくつかの事例では、撮像は、UV吸光度画像を入手するステップを含んでもよい。いくつかの事例では、撮像は、例えば、固有蛍光または被分析物に付着した外因性蛍光標識の存在に起因する蛍光のいずれかの蛍光画像を含んでもよい。いくつかの事例では、撮像は、ESIのパラメータまたはESIの間に形成されるテイラー円錐を判定するために使用されてもよい。いくつかの事例では、パラメータは、テイラー円錐の形状、ESI噴射、ESIプルーム、霧化効率、流速、液滴サイズ、ガス圧、液体圧力、ESI安定性、ESIエミッタ汚染、流体流内の泡を備える。
【0066】
本開示の別の側面では、1つまたはそれを上回る分離反応、例えば、等電点電気泳動反応を実施し、被分析物の混合物を備えるサンプルをその個々の構成要素に分離し、その後、分離された被分析物のエレクトロスプレーイオン化が続くように設計される、マイクロ流体チップを備え得る、システムが、説明され、そのエレクトロスプレーイオン化は、サンプルの霧化を備える、またはそれと並行して実施される。いくつかの事例では、マイクロ流体チップは、例えば、高電圧電極接続、試薬リザーバ、弁、固着機構、継手、チャネル等をさらに備える、カートリッジ内に格納されてもよい。いくつかの事例では、マイクロ流体チップは、略平面基材を備えてもよく、平面基材は、少なくとも1つのガスチャネルと、例えば、等電点電気泳動反応を実施するように構成される、分離チャネル分離反応とを備える。いくつかの事例では、ガスチャネルは、エレクトロスプレーイオン化の間、サンプルの霧化のために使用される。いくつかの事例では、ガスチャネルは、分離チャネル内の液体を分離チャネルから離れるように(例えば、分析器具、例えば、質量分析計から、廃棄物レセプタクル等に向かって離れるように)移動させるために使用される。いくつかの事例では、基材はさらに、エレクトロスプレーイオン化先端を分離チャネルの遠位端に備え、ガスチャネルは、エレクトロスプレー先端を清掃または乾燥させるために使用されてもよい。
【0067】
いくつかの事例では、複数の分離チャネルのうちの1つまたはそれを上回る分離チャネルの第1の端部が、固定具を使用して、電極(例えば、陽極液)リザーバに電気的および/または流体的に結合され、その固定具は、膜を備えてもよい。いくつかの事例では、1つまたはそれを上回る分離チャネルの第2の端部が、固定具を使用して、電極(例えば、陰極液リザーバ)に電気的および/または流体的に結合され、その固定具は、膜を備えてもよい。膜は、電極リザーバの表面を画定する、またはそれと平行である平面において、もしくはそれに隣接してリザーバ内に配置される、電極であってもよく、その平面は、入口流体チャネルおよび出口流体チャネルに交差してもよい。いくつかの事例では、システムはさらに、質量分析計等の分析器具を備えてもよい。開示される方法、デバイス、およびシステムは、分離データの再現性および定量的正確度の改良を可能にし、また、分離データと、下流分析特性評価データ、例えば、質量分析計または他の分析器具を使用して取得されるものとの間の改良された相関も可能にする。
【0068】
上記に示されるような開示される方法、デバイス、およびシステムの別の特徴は、被分析物ピークの存在を検出する目的のために分離チャネル内の分離反応を監視するため、および/または分離反応が完了に到達したときを判定するための画像の使用である。いくつかの事例では、画像が、分離チャネルの全てまたは一部に関して入手されてもよい。いくつかの事例では、分離チャネルの全てまたは一部の撮像は、分離ステップおよび/または動員ステップが実施されている間に実施されてもよい。いくつかの事例では、画像は、分離チャネル内の1つまたはそれを上回るマーカもしくはインジケータの存在、例えば、等電点(pI)標準を検出し、したがって、1つまたはそれを上回る被分析物のためのpIを判定するために使用されてもよい。いくつかの事例では、画像は、分離チャネル内の障害(例えば、気泡形成)を検出するために使用されてもよい。いくつかの事例では、そのような画像から導出されるデータは、(例えば、ピーク速度、ピーク位置、および/またはピーク幅を監視することによって)分離反応が完了したときを判定し、続いて、動員ステップをトリガするために使用されてもよい。
【0069】
いくつかの事例では、動員ステップは、分離チャネルの中への動員緩衝剤または動員電解質の導入を含んでもよい。いくつかの事例では、動員緩衝剤または動員電解質は、流体力学的圧力を使用して、導入されてもよい。いくつかの事例では、動員緩衝剤または動員電解質は、電気泳動を用いて導入されてもよい。いくつかの事例では、動員緩衝剤または動員電解質は、電気泳動および流体力学的圧力の組み合わせを用いて導入されてもよい。いくつかの事例では、一連の1つまたはそれを上回る分離された被分析物帯の動員は、分離された被分析物帯を分離チャネルの出口または遠位端に向かって遊走させるステップを含んでもよい。いくつかの事例では、一連の1つまたはそれを上回る分離された被分析物帯の動員は、分離された被分析物帯を、下流分析器具と流体連通する分離チャネルの出口または遠位端に向かって遊走させるステップを含んでもよい。いくつかの事例では、分離チャネルの出口または遠位端は、遊走する被分析物ピークが、質量分析計の中に注入されるように、エレクトスプレーイオン化(ESI)界面と流体連通してもよい。いくつかの事例では、被分析物ピーク位置を検出し、被分析物pIを判定するために使用される画像データはまた、被分析物分離データを質量分析データと相関させるために使用されてもよい。いくつかの事例では、被分析物ピーク位置を検出するために使用される画像データは、動員反応についての情報を生じさせるために、および/または動員情報を質量分析データと相関させるために使用されてもよい。
【0070】
上記に示されるような開示される方法、デバイス、およびシステムの別の重要な特徴は、サンプルの霧化を監視する(例えば、エレクトロスプレーイオン化反応の間)ための撮像の使用である。撮像は、テイラー円錐の存在を検出するために使用されてもよい。いくつかの事例では、画像は、分離チャネル、エレクトロスプレーイオン化先端、またはデバイス(例えば、マイクロ流体チップ)と分析器具(例えば、質量分析計または接地された電極プレート)との間の領域の全部または一部に関して入手されてもよい。いくつかの事例では、ESI先端の全部または一部の撮像は、ESIが実施される間、実施されてもよい。いくつかの事例では、画像は、テイラー円錐の存在を検出するために使用されてもよい。いくつかの事例では、画像は、テイラー円錐のパラメータ、例えば、液滴サイズ、テイラー円錐の形状、テイラー円錐のサイズ、ESI噴射の形状、ESI噴射のサイズ、ESIプルームの形状、ESIプルームのサイズ、流速、ガス圧、液体圧力を判定するために使用されてもよい。
【0071】
好ましい側面では、開示される方法は、マイクロ流体デバイス形式で実施されてもよく、それによって、極めて小さいサンプル体積の処理および2つまたはそれを上回るサンプル処理ならびに分離ステップの統合を可能にする。別の好ましい側面では、開示されるマイクロ流体デバイスおよびカートリッジは、下流分析器具に結合するための統合界面、例えば、分離された被分析物に質量分析を実施するためのESI界面を備える。いくつかの事例では、開示される方法は、より従来の毛細管形式で実施されてもよい。
【0072】
本明細書に説明される開示される方法、デバイス、およびシステムの種々の側面が、下記に記載される特定の用途のうちのいずれかに適用されてもよい。開示される方法、デバイス、およびシステムの異なる側面が、個別に、集合的に、または相互と組み合わせて理解され得ることを理解されたい。
【0073】
定義:別様に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語の全ては、本開示が属する分野内の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0074】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別様に明確に決定付けない限り、複数の参照を含む。本明細書の「または」の任意の言及は、別様に記述されない限り、「および/または」を包含することを意図している。同様に、用語「comprise(~を備える)」、「comprises」、「comprising」、「include(~を含む)」、「includes」、および「including」は、限定的であることを意図していない。
【0075】
本明細書で使用されるように、語句「限定ではないが、~を含む」および「1つの非限定的実施例は、~である」は、本開示が属する分野内の当業者によって一般的に理解されるように、所与の実施例の変形例および派生語を含むように意図されている。
【0076】
本明細書で使用されるように、用語「約」の数は、その数の±10%の数を指す。範囲との関連で使用されるときの用語「約」は、その最低値の-10%~その最大値の+10%の範囲を指す。
【0077】
本明細書で使用されるように、用語「特性評価」および「分析」は、同義的に使用されてもよい。「特性評価する」または「分析する」ことは、概して、サンプルを査定し、例えば、サンプルもしくはその成分の1つまたはそれを上回る性質を判定すること、またはサンプルの識別を判定することを意味し得る。
【0078】
本明細書で使用されるように、用語「チップ」および「デバイス」は、本明細書では、同義的に使用されてもよい。
【0079】
本明細書で使用されるように、用語「被分析物」および「種」は、同義的に使用されてもよい。被分析物は、概して、測定可能な性質において別の分子、生分子、化学物質、巨大分子等と異なる、分子、生分子、物質、巨大分子等を意味する。例えば、2つの種は、わずかに異なる質量、疎水性、電荷もしくは正味電荷、等電点、有効性を有してもよい、または化学修飾、タンパク質修飾等の観点から異なり得る。
【0080】
本明細書で使用されるように、「流体チャネル」は、概して、チャネル内で流体、例えば、ガスまたは液体(溶液等)を運搬するように構成される、デバイス(例えば、マイクロ流体チップ)のチャネルを指す。いくつかの事例では、流体は、チャネルの近位端からチャネルの遠位端に向かって運搬される。
【0081】
本明細書で使用されるように、「ガスチャネル」は、概して、チャネル内でガスを運搬するように構成される、流体チャネルを指す。いくつかの事例では、ガスは、チャネルの近位端からチャネルの遠位端に向かって運搬される。
【0082】
本明細書で使用されるように、「マイクロ流体デバイス」は、概して、1つまたはそれを上回る流体チャネルを備える、マイクロ流体チップ、例えば、ガラスまたはポリマー基材を指す。いくつかの事例では、「マイクロ流体デバイス」はさらに、その中にマイクロ流体チップが、搭載され、取扱の容易性を促進する、ホルダ等の付加的構成要素を備えてもよい。いくつかの事例では、「マイクロ流体デバイス」は、試薬リザーバ、弁、流体コネクタ等の付加的機能特徴を備え、「マイクロ流体カートリッジ」を生成し得る、より複雑な「カートリッジ構成要素」に取り付けられる、またはその中に搭載される、マイクロ流体チップを指し得る。いくつかの事例では、マイクロ流体チップと、カートリッジ構成要素とを備える、アセンブリは、「マイクロ流体デバイス」または「マイクロ流体カートリッジ」と称され得る。
【0083】
サンプル:開示される方法、デバイス、システム、およびソフトウェアは、種々の生物学的または非生物学的サンプルのうちのいずれかから取得される被分析物の分離および特性評価のために使用されてもよい。実施例は、限定ではないが、組織サンプル、細胞培養サンプル、全血サンプル(例えば、静脈血、動脈血、または毛細血管血サンプル)、血漿、血清、唾液、間質液、尿、汗、涙、産業用酵素または生物学的薬物製造プロセスから導出されるタンパク質サンプル、環境サンプル(例えば、空気サンプル、水サンプル、土壌サンプル、表面スワイプサンプル)、および同等物を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、統合化学分離および特性評価のための開示される方法およびデバイスを使用する分析に先立って、当業者に公知である種々の技法のうちのいずれかを使用して処理されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、サンプルは、タンパク質または核酸を抽出するように処理されてもよい。サンプルは、種々の源または対象、例えば、細菌、ウイルス、植物、動物、もしくはヒトのうちのいずれかから収集されてもよい。
【0084】
サンプル体積:開示される方法およびデバイスのいくつかの事例では、マイクロ流体デバイス形式の使用は、非常に小さいサンプル体積の処理を可能にし得る。いくつかの実施形態では、デバイスの中に装填され、分析のために使用されるサンプル体積は、約0.1μl~約1mlに及んでもよい。いくつかの実施形態では、デバイスの中に装填され、分析のために使用されるサンプル体積は、少なくとも0.1μl、少なくとも1μl、少なくとも2.5μl、少なくとも5μl、少なくとも7.5μl、少なくとも10μl、少なくとも25μl、少なくとも50μl、少なくとも75μl、少なくとも100μl、少なくとも250μl、少なくとも500μl、少なくとも750μl、または少なくとも1mlであってもよい。いくつかの実施形態では、デバイスの中に装填され、分析のために使用されるサンプル体積は、最大で1ml、最大で750μl、最大で500μl、最大で250μl、最大で100μl、最大で75μl、最大で50μl、最大で25μl、最大で10μl、最大で7.5μl、最大で5μl、最大で2.5μl、最大で1μl、または最大で0.1μlであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの実施形態では、デバイスの中に装填され、分析のために使用されるサンプル体積は、約5μl~約500μlに及んでもよい。当業者は、分析のために使用されるサンプル体積が、本範囲内の任意の値、例えば、約18μlを有し得ることを認識するであろう。
【0085】
被分析物:いくつかの事例では、サンプルは、複数の被分析物種から成ってもよい。いくつかの事例では、サンプルに存在する被分析物種の全てまたは一部は、分析に先立って、もしくはその間に、濃縮されてもよい。いくつかの事例では、これらの被分析物は、例えば、グリカン、炭水化物、核酸分子(例えば、DNA、RNA)、ペプチド、ポリプチド、組み換えタンパク質、無傷のタンパク質、タンパク質イソ型、消化されたタンパク質、融合タンパク質、抗体・薬物共役、タンパク質・薬物共役、代謝産物、または他の生物学的に関連性がある分子であり得る。いくつかの事例では、これらの被分析物は、小分子薬物であり得る。いくつかの事例では、これらの被分析物は、生物学的タンパク質製剤(例えば、酵素製剤もしくは抗体製剤)および/または培養もしくは生体内から単離される細胞から収集される溶解物等のタンパク質混合物内のタンパク質分子であり得る。
【0086】
マイクロ流体デバイス:本明細書に開示されるものは、デバイスの基材の流体オリフィスまたはその近傍において、サンプルまたは分離されたサンプル(例えば、等電点電気泳動を介して分離された被分析物の混合物)の霧化を実施するように設計される、デバイスである。いくつかの事例では、開示されるデバイスは、分離チャネルと、1つまたはそれを上回るガスチャネルとを有する、基材を備える、マイクロ流体デバイスであって、そのガスチャネルは、サンプル、例えば、等電点電気泳動等の分離反応を使用して分離された被分析物を備える、サンプルを霧化するために使用される。サンプルの霧化は、サンプルのナノ流動または実質的にナノスケール体積放出を達成するために、液体を流体オリフィスまたはその近傍(例えば、分離チャネルの遠位端または分離チャネルに流体結合される流体出口チャネルの遠位端またはその近傍)において小液体液滴等に破壊する(例えば、液滴の表面張力の破壊を介して)ために使用されてもよい。いくつかの事例では、流体オリフィスは、エレクトロスプレー先端を備える、またはそれであるように構成され、サンプルの霧化は、エレクトロスプレーイオン化の間、ナノ流動を達成するために使用されてもよい。
【0087】
いくつかの事例では、デバイスは、複数のガスチャネルを有する、基材を備えてもよい。基材は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれを上回るガスチャネルを備えてもよい。基材は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20ガスチャネルを備えてもよい。基材は、最大で20、最大で19、最大で18、最大で17、最大で16、最大で15、最大で14、最大で13、最大で12、最大で11、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、または最大で1チャネルを備えてもよい。基材は、変動し、異なるガスチャネル、例えば、2~4ガスチャネルの範囲を有してもよい。
【0088】
本明細書に説明されるように、1つまたはそれを上回るガスチャネル出口(また、本明細書では、「ガス出口オリフィス」)の位置は、流体チャネルの出口オリフィス(また、本明細書では、「流体チャネルオリフィス」)に隣接して位置付けられてもよく、これは、エレクトロスプレーイオン化オリフィスを備える、またはそれとしての役割を果たすように構成されてもよい。いくつかの事例では、ガスチャネル出口は、流体チャネルオリフィスから約0μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約15μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、またはそれを上回って位置付けられる。いくつかの事例では、ガスチャネル出口は、流体チャネルオリフィスから少なくとも約0μm、少なくとも約1μm、少なくとも約2μm、少なくとも約3μm、少なくとも約4μm、少なくとも約5μm、少なくとも約6μm、少なくとも約7μm、少なくとも約8μm、少なくとも約9μm、少なくとも約10μm、少なくとも約15μm、少なくとも約20μm、少なくとも約30μm、少なくとも約40μm、少なくとも約50μm、少なくとも約60μm、少なくとも約70μm、少なくとも約80μm、少なくとも約90μm、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約250μm、少なくとも約300μm、少なくとも約350μm、少なくとも約400μm、またはそれを上回って位置付けられる。いくつかの事例では、ガスチャネル出口は、流体チャネルオリフィスから最大で約400μm、最大で約350μm、最大で約300μm、最大で約250μm、最大で約200μm、最大で約150μm、最大で約100μm、最大で約90μm、最大で約80μm、最大で約70μm、最大で約60μm、最大で約50μm、最大で約40μm、最大で約30μm、最大で約20μm、最大で約15μm、最大で約10μm、最大で約9μm、最大で約8μm、最大で約7μm、最大で約6μm、最大で約5μm、最大で約4μm、最大で約3μm、最大で約2μm、最大で約1μm、最大で約0μmに位置付けられる。ガスチャネル出口は、流体チャネルオリフィスからある値の範囲、例えば、10μm~100μm内に位置付けられてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、分離およびガスチャネルは、略共平面配向において、チップから退出してもよい。いくつかの実施形態では、分離およびガスチャネルは、略非共平面であってもよい。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、ガスチャネルによって形成される平面から外に0~500μmの距離だけ突出してもよい。いくつかの実施形態では、流体分離チャネルとガスチャネルとの間の交点は、ガスチャネルの出口平面が分離チャネルに対してマイクロ流体デバイスの中に陥凹されるように成形されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、分離チャネルは、公称上、チップの角から退出し、隣接する縁に対して角を二分する。いくつかの実施形態では、隣接する基材の縁のそれぞれに沿って終端する、ガスチャネルの出口は、分離チャネルのオリフィスにおいて、分離チャネルの軸に沿って視認されるとき、必然的に(幾何学形状によって)陥凹される、平面を形成する。
【0090】
本明細書に説明されるように、ガス出口オリフィスまたは流体チャネルオリフィスはそれぞれ、基材の縁または角もしくは先端に位置付けられてもよい。基材の縁は、いくつかの事例では、最長および最短寸法を伴う、基材の面(例えば、デバイスの長さおよび厚さによって画定された基材の面、例えば、
図2A参照)によって画定されてもよい。基材は、台形または先端の形状における特徴を有してもよい。好ましい実施形態では、基材は、流体チャネルオリフィスと、2つのガスチャネルに流体結合される、2つのガス出口オリフィスとを備える。いくつかの事例では、2つのガス出口オリフィスは、流体チャネルオリフィスから退出する流体流経路によって画定される、流体チャネルオリフィスまたは軸から対称的に位置付けられる。他の事例では、ガス出口オリフィスは、流体チャネルオリフィスから退出する流体流経路によって画定される、流体チャネルオリフィスまたは軸から非対称的に位置付けられる。
【0091】
基材の占有面積は、例えば、長方形、円形、楕円形、三角形、正方形、菱形、五角形等、任意の有用な幾何学形状をとってもよい。好ましい側面では、基材は、略長方形占有面積を有してもよい。いくつかの事例では、略長方形占有面積の最長寸法は、約10~約100mmに及ぶ。いくつかの事例では、略長方形占有面積の最短寸法は、約2~約50mmに及ぶ。いくつかの事例では、略長方形占有面積の厚さは、約0.5mm~約2mmに及ぶ。いくつかの実施形態では、略長方形占有面積の厚さは、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、または2mmであることができる。いくつかの実施形態では、基材出口オリフィスはさらに、楔、角錐、円錐体、または他の3次元形状に成形されてもよい。形状は、平坦特徴を含んでもよく、そこで、チャネル(ガスまたは流体)のいくつかまたは全てが、退出する。いくつかの実施形態では、基材表面は、化学的に修飾され、その表面エネルギーを改変する、またはより疎水性もしくは親水性にしてもよい。いくつかの実施形態では、表面は、流体との事前に規定された接触角度を維持してもよい。いくつかの実施形態では、表面は、修飾の一部として、レーザ処理、ナノ粒子の共堆積、疎水性または親水性を向上させることが当技術分野において公知の他の手段によって、マイクロ粗面化されるように調製されてもよい。
【0092】
本明細書に説明されるチャネルおよび/またはオリフィス(例えば、流体チャネル、ガスチャネル)のいずれかの断面は、任意の有用な幾何学形状、例えば、円形、長方形、楕円形、三角形、正方形、菱形等をとってもよい。ある好ましい実施形態では、エレクトロスプレーイオン化オリフィスの断面形状は、略正方形または長方形である。
【0093】
いくつかの事例では、霧化のための1つを上回るガスチャネルを使用することが有用であり得る。例えば、特に、流体出口オリフィスの反対側上にガス出口を伴う、霧化のための2つまたはそれを上回るガスチャネルを有することが有用であり得る。いくつかの事例では、基材は、流体出口オリフィスの側面に位置する、一対または複数の対のガスチャネルを備えてもよい。いくつかの事例では、基材は、4つまたはそれを上回るガスチャネルを備えてもよい。そのような場合、4つまたはそれを上回るガスチャネルのうちの少なくとも2つは、補助構成要素内に配置されてもよく、ガス出口オリフィスが、基材のものに対して回転される、1つまたはそれを上回る平面にあるように位置付けられてもよい。例えば、一対のガスチャネルおよびそのガス出口オリフィスは、ガスチャネルが流体チャネルおよび流体出口オリフィスから半径方向に対称にあるように、流体出口オリフィスに対して位置付けられてもよい。1つのそのような実施例では、流体チャネルオリフィスは、ガスチャネルオリフィスの2つの直交または垂直平面によって囲繞されてもよく、ガス出口はそれぞれ、流体チャネルオリフィスから半径方向に対称である。別の実施例では、流体チャネルオリフィスは、ガスチャネルオリフィスの2つの平面によって囲繞されてもよく、平面のうちの1つまたはそれを上回るものは、基材に対して回転され、エレクトロスプレーイオン化オリフィスを中心として半径方向対称対様式に、かつそれに隣接して位置付けられる。ある実施形態では、ガスチャネルは、ガスチャネルオリフィスが流体オリフィスの出口と同心であるように、環状断面を備えてもよい。
【0094】
1つまたはそれを上回るガスチャネルからのガス流は、流体オリフィスにおいて、または流体オリフィスからある距離において、サンプルを霧化するように構成されてもよい。例えば、ガスは、(例えば、その中で軸が流体オリフィスから流出する流体の方向の軸である、軸方向距離において)流体オリフィスから約1マイクロメートル(μm)、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、約550μm、約600μm、約650μm、約700μm、約750μm、約800μm、約850μm、約900μm、約950μm、約1000μmの距離において、サンプルを霧化してもよい。ガスは、流体オリフィスから約1000μm、約950μm、約900μm、約850μm、約800μm、約750μm、約700μm、約650μm、約600μm、約550μm、約500μm、約450μm、約400μm、約350μm、約300μm、約250μm、約200μm、約150μm、約100μm、約90μm、約80μm、約70μm、約60μm、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、約15μm、約10μm、約5μm、約1μm未満、またはそれを下回る距離において、サンプルを霧化してもよい。ガスは、本明細書に説明される値の範囲内の距離、例えば、約50μm~300μmにおいて、サンプルを霧化してもよい。いくつかの実施形態では、サンプルを霧化するためのガス流は、流体オリフィスに直接隣接する。
【0095】
マイクロ流体チップは、試薬をチャネルに提供するために使用され得る、複数の入口ポートを有する、基材を備えてもよい。本明細書のいずれかの場所に説明されるような試薬は、陽極液溶液、陰極液溶液、電解質溶液、緩衝剤、動員試薬、サンプルまたはサンプル試薬、空気、または(ガスチャネルへの)ガス等を備えてもよい。基材の各チャネルは、その独自の入口ポートを備えてもよい、またはいくつかの事例では、接続され得る2つまたはそれを上回るチャネルおよび接続されたチャネルは、入口ポートを共有してもよい。いくつかの事例では、入口ポートは、基材の縁に沿って位置付けられる(例えば、
図2A、5A、6A、7A、および8A参照)。いくつかの事例では、基材は、基材の縁に沿って位置付けられる、少なくとも4つの入口ポートを備えてもよい。基材は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、またはそれを上回る入口ポートを備えてもよい。基材は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、またはそれを上回る入口ポートを備えてもよい。基材は、最大で50、最大で40、最大で30、最大で20、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、最大で1つの入口ポートを備えてもよい。基材は、ある範囲の入口ポート、例えば、約2~8つの入口ポートを備えてもよく、そのそれぞれまたはサブセットは、基材の縁に沿って位置付けられてもよい。
【0096】
ある事例では、開示されるデバイスは、複数の分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップである。そのような事例では、マイクロ流体チップは、複数の被分析物分離反応を、並行して、すなわち、デバイス内の複数の分離チャネルの中で実施し、その後、(i)動員および(ii)霧化と組み合わせられたエレクトロスプレーイオン化が続くように設計される。
【0097】
図1Aは、下記の実施例1により詳細に議論されるであろうような、本開示の一側面による、4チャネル等電点電気泳動設計を備える、マイクロ流体チップの非限定的概略図を提供する。
【0098】
図1Bは、下記の実施例3により詳細に説明されるであろうような、本開示の第2の側面による、エレクトスプレー先端を備える、分離反応を実施するための例示的マイクロ流体チップの流体チャネルネットワークの非限定的概略図を提供する。
【0099】
図2A-2Bは、下記の実施例4により詳細に議論されるであろうような、デバイスの縁に位置付けられる、入口ポートを伴う、ガスチャネルと、分離チャネルとを備える、マイクロ流体チップの非限定的概略図を提供する。
【0100】
図3A-3Dは、下記の実施例5により詳細に議論されるであろうような、本明細書に説明されるマイクロ流体チップの改変可能側面(例えば、設計パラメータ)の非限定的概略図を提供する。
【0101】
図4A-4Bは、流体チャネルに隣接する(例えば、分離チャネルの端部にある)、対称ガスチャネルを備える、基材を備える、マイクロ流体チップの1つの設計の顕微鏡写真の非限定的実施例を提供する。
【0102】
図5A-5Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、例示的マイクロ流体チップの付加的非限定的概略図を提供する。
【0103】
図6A-6Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、別の例示的マイクロ流体チップの付加的非限定的概略図を提供する。
【0104】
図7A-7Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、さらに別の例示的マイクロ流体チップの付加的非限定的概略図を提供する。
【0105】
図8A-8Cは、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、さらに別の例示的マイクロ流体チップの付加的非限定的概略図を提供する。
【0106】
図9A-9Bは、入口ポートを本明細書に説明される基材の反対縁上に伴う、分離チャネルと、ガスチャネルとを備える、さらに別の例示的マイクロ流体チップの付加的非限定的概略図を提供する。
【0107】
図10は、エレクトロスプレーイオン化の間の、流体出口チャネルと、対称ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップの流体オリフィスの例示的画像を提供する。
【0108】
図11A-11Bは、エレクトロスプレーイオン化の間の、流体出口チャネルと、対称ガスチャネルとを備える、マイクロ流体チップの流体オリフィスの付加的例示的画像を提供する。
【0109】
マイクロ流体チップの基材の縁上に位置する、ガスチャネルおよび/または入口ポートに加え、基材は、複数の分離チャネル(例えば、2つまたはそれを上回る第1の分離チャネル、2つまたはそれを上回る第2の分離チャネル、2つまたはそれを上回る第3の分離チャネル等)と、1つまたはそれを上回るガスチャネルとを備えてもよい。本開示のデバイスまたはマイクロ流体チップ(またはその基材)は、複数の入口ポート、出口ポート、サンプルおよび/または試薬導入チャネル、相互接続チャネル、サンプルならびに/もしくは試薬廃棄物チャネル、リザーバ(例えば、サンプルリザーバ、試薬リザーバ、または廃棄物リザーバ)、マイクロポンプ、マイクロ弁、通気口、トラップ、フィルタ、膜、および同等物、またはそれらの任意の組み合わせを備えてもよい。
【0110】
開示されるマイクロ流体チップおよびマイクロ流体カートリッジは、当業者に公知である種々の加工技法および材料のうちのいずれかを使用して、加工されてもよい。いくつかの事例では、デバイスは、一連の2つまたはそれを上回る別個の部品として加工され、続いて、完成したデバイスを形成するように、機械的に圧着されるか、または恒久的にともに接合されるかのいずれかであってもよい。いくつかの事例では、例えば、流体チャネル(時として、本明細書では「マイクロチャネル」とも称される)は、(例えば、ガラス基材のフォトリソグラフィパターン化および所望の深度までのチャネルのウェット化学エッチングによって)第1の層に加工され、次いで、第2の層を第1の層に接合することによって、シールされてもよく、流体チャネルと交差する第2の層内の貫通孔は、流体チャネルへの外部アクセスを提供する。いくつかの事例では、流体チャネルは、(例えば、好適なポリマーまたはセラミックフィルム内のチャネルパターンのレーザ切断によって)第1の層に加工され、次いで、第2の層と第3の層との間に第1の層を挟持および接合することによって、シールされてもよく、流体チャネルと交差する第2の層および/または第3の層内の貫通孔は、流体チャネルへの外部アクセスを提供する。後者の実施例では、第1の層の厚さは、流体チャネルの厚さ(または深度)を画定する。
【0111】
好適な加工技法の実施例は、限定ではないが、従来の機械加工、CNC機械加工、射出成型、3D印刷、レーザ切断またはダイカットポリマーまたはセラミックフィルムの1つまたはそれを上回る層の整合および積層、もしくはフォトリソグラフィおよびウェット化学エッチング、ドライエッチング、ディープ反応性イオンエッチング、またはレーザ微小機械加工等のいくつかの微細加工技法のうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、マイクロ流体構造は、エラストマ、ポリマー、またはセラミック材料から3D印刷されてもよい。
【0112】
開示されるマイクロ流体チップおよびマイクロ流体カートリッジは、当業者に公知である種々の材料のうちのいずれかを使用して加工されてもよい。一般に、使用される材料の選定は、加工技法の選定に依存し、その逆も同様であろう。好適な材料の実施例は、限定ではないが、ガラス、石英、溶融石英、シリコン、種々のポリマーのうちのいずれか、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS、エラストマ)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフッ素化ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エポキシ樹脂、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))等の付着防止材料、SU8または任意の他の厚いフィルムフォトレジスト等の種々のフォトレジスト、もしくはこれらの材料の任意の組み合わせを含む。いくつかの事例では、複数の層を備える、マイクロ流体チップまたはマイクロ流体カートリッジ内の異なる層が、異なる材料から加工されてもよい。いくつかの事例では、1つまたはそれを上回る層を備える、デバイスまたはマイクロ流体チップ内の所与の単一の層が、2つまたはそれを上回る異なる材料から加工されてもよい。
【0113】
いくつかの事例では、マイクロ流体チップまたはマイクロ流体カートリッジの全てもしくは一部は、デバイスの分離チャネルおよび/または他の部分の撮像を促進するように、光学的に透明(例えば、紫外線(UV)、可視、ならびに/もしくは近赤外光に対して透明)であり得る。いくつかの事例では、分離チャネルの全てまたは一部は、撮像、例えば、全チャネル撮像のために構成される。例えば、いくつかの事例では、分離チャネルは、光学的に透明な材料の2つの層の間に挟持される光学的に不透明な材料の層に加工され、それによって、それを通して光が透過および/または集光され得る、「光学スリット」を形成してもよい。いくつかの事例では、流体オリフィスの全部または一部は、例えば、エレクトロスプレーイオン化の間、撮像のために構成され、テイラー円錐のパラメータ(例えば、本明細書のいずれかの場所で説明されるように、液滴サイズ、テイラー円錐の形状等)を判定してもよい。
【0114】
一般に、開示されるデバイス内の流体チャネル、ガスチャネル、サンプル、および/または試薬リザーバ等の寸法は、(i)被分析物混合物から成るサンプルまたはサンプルアリコートの高速で正確かつ再現可能な分離を提供するように、かつ(ii)サンプルおよび試薬消費を最小限にするように、最適化されるであろう。一般に、流体チャネルまたはガスチャネルの幅は、約10μm~約2mmであってもよい。いくつかの事例では、流体チャネルまたはガスチャネルの幅は、少なくとも10μm、少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも750μm、少なくとも1mm、少なくとも1.5mm、または少なくとも2mmであってもよい。いくつかの事例では、流体チャネルまたはガスチャネルの幅は、最大で2mm、最大で1.5mm、最大で1mm、最大で750μm、最大で500μm、最大で400μm、最大で300μm、最大で200μm、最大で100μm、最大で50μm、最大で25μm、または最大で10μmであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、流体チャネル(またはリザーバ)の幅は、約100μm~約1mmに及んでもよい。当業者は、流体チャネル(またはリザーバ)の幅が、本範囲内の任意の値、例えば、約80μmを有し得ることを認識するであろう。
【0115】
一般に、流体チャネルまたはガスチャネルの長さは、約0.5cm~約10cmであってもよい。いくつかの事例では、流体チャネルまたはガスチャネルの長さは、少なくとも0.1cm、少なくとも0.5cm、少なくとも1cm、少なくとも2cm、少なくとも3cm、少なくとも4cm、少なくとも5cm、少なくとも6cm、少なくとも7cm、少なくとも8cm、少なくとも9cm、少なくとも10cm、またはそれを上回ってもよい。いくつかの事例では、流体チャネルまたはガスチャネルの長さは、最大で10cm、最大で9cm、最大で8cm、最大で7cm、最大で6cm、最大で5cm、最大で4cm、最大で3cm、最大で2cm、最大で1cm、最大で0.5cm、または最大で0.1cmであってもよい。本段落に説明される下限および上限値のいずれかは、組み合わせられ、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの事例では、流体チャネル(またはリザーバ)の長さは、約5cm~約10cmに及んでもよい。当業者は、流体チャネル(またはリザーバ)の長さは、本範囲内の任意の値、例えば、約8cmを有し得ることを認識するであろう。
【0116】
一般に、流体チャネル(またはリザーバ)の深度は、約1μm~約1mmであろう。いくつかの事例では、流体チャネル(またはリザーバ)の深度は、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも20μm、少なくとも30μm、少なくとも40μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも600μm、少なくとも700μm、少なくとも800μm、少なくとも900μm、または少なくとも1mmであってもよい。いくつかの事例では、流体チャネル(またはリザーバ)の深度は、最大で1mm、最大で900μm、最大で800μm、最大で700μm、最大で600μm、最大で500μm、最大で400μm、最大で300μm、最大で200μm、最大で100μm、最大で50μm、最大で40μm、最大で30μm、最大で20μm、最大で10μm、最大で5μm、または最大で1μmであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、流体チャネル(またはリザーバ)の深度は、約50μm~約100μmに及んでもよい。当業者は、流体チャネル(またはリザーバ)の深度が、本範囲内の任意の値、例えば、約55μmを有し得ることを認識するであろう。
【0117】
いくつかの実施形態では、ガスチャネルの深度は、流体チャネルのものに合致するであろう。ガスチャネルの深度は、約1μm~約1mmであってもよい。いくつかの事例では、ガスチャネルの深度は、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも20μm、少なくとも30μm、少なくとも40μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも600μm、少なくとも700μm、少なくとも800μm、少なくとも900μm、または少なくとも1mmであってもよい。いくつかの事例では、ガスチャネルの深度は、最大で1mm、最大で900μm、最大で800μm、最大で700μm、最大で600μm、最大で500μm、最大で400μm、最大で300μm、最大で200μm、最大で100μm、最大で50μm、最大で40μm、最大で30μm、最大で20μm、最大で10μm、最大で5μm、または最大で1μmであってもよい。本段落に説明される下限および上限値のいずれかは、組み合わせられ、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの事例では、ガスチャネルの深度は、約50μm~約100μmに及んでもよい。当業者は、流体チャネル(またはリザーバ)の深度は、本範囲内の任意の値、例えば、約55μmを有し得ることを認識するであろう。
【0118】
ガス出口オリフィスの断面寸法は、概して、約10μm~約100μm以内であろう。いくつかの事例では、ガス出口オリフィスの断面寸法は、少なくとも10μm、少なくとも25μm、少なくとも50μm少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも750μm、少なくとも1mm、少なくとも1.5mm、または少なくとも2mmであってもよい。いくつかの事例では、ガス出口オリフィスの断面寸法は、最大で2mm、最大で1.5mm、最大で1mm、最大で750μm、最大で500μm、最大で400μm、最大で300μm、最大で200μm、最大で100μm、最大で50μm、最大で25μm、または最大で10μmであってもよい。本段落に説明される下限および上限値のいずれかは、組み合わせられ、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの事例では、ガス出口オリフィスの断面寸法は、約10μm~約100μmに及んでもよい。当業者は、出口オリフィスの断面寸法が、本範囲内の任意の値、例えば、約80μmを有し得ることを認識するであろう。
【0119】
カートリッジ:いくつかの事例では、開示されるマイクロ流体デバイスまたはチップは、相互に結合されるように構成されてもよい、もしくはマイクロ流体カートリッジ等の統合ユニットの一部であってもよい。カートリッジは、分離チャネル、少なくとも1つのガスチャネル、および他のリザーバ、試薬、膜、弁、固定具(例えば、膜含有高電圧電極固定具)、固着デバイスもしくは特徴(例えば、ねじ、ピン(例えば、ポゴピン)、接着剤、レバー、スイッチ、溝、形態嵌合対、フックおよびループ、ラッチ、ねじ山、クリップ、クランプ、尖叉、リング、ゴムバンド、リベット、グロメット、結び目、スナップ、テープ、真空、シール)、ガスケット、Oリング、電極、またはそれらの組み合わせを備える、基材を備え得る、マイクロ流体チップを備えてもよい。カートリッジは、モノリシックに構築されてもよい、またはモジュール式であり、除去可能な部品を備えてもよい。例えば、マイクロ流体チップは、カートリッジに除去可能に結合するように構成されてもよい。同様に、リザーバ、膜、弁等はそれぞれ、カートリッジから除去可能であり得る。1つまたはそれを上回る構成要素が除去可能であり得る場合において、マイクロ流体カートリッジは、個々の構成要素がそれぞれ、ユーザによって十分な公差を伴って定位置に整合され得るように、構成されてもよい。例えば、マイクロ流体カートリッジは、マイクロ流体チップが、チップが整合のためにピンに到達するまでカートリッジに沿ってチップを摺動させることによって、統合され得るように、溝およびピンを備えてもよい。いくつかの事例では、チップは、カートリッジまたはその一部と同一平面内に位置付けられるように構成されてもよい。いくつかの事例では、チップは、1つまたはそれを上回る入口、出口等が、リザーバ、電極、膜、および/または他の有用な界面接触ユニットに(例えば、流体的ならびに/もしくは電気的に)接続され得るように、カートリッジの中に位置付けられてもよい。いくつかの事例では、チップおよびリザーバ、電極等の界面接触は、ユーザからのいずれの付加的測定または調節も伴わずに、ユーザによって実施されてもよい。例えば、リザーバは、定位置にスナップ留めする、またはポゴピンを介して固着される、電極を受容し、それによって、電気通信および/または流体連通を確立するように構成されてもよい。カートリッジおよびチップのこれらの例示的構成は、限定的であるように意図されておらず、マイクロ流体チップまたはマイクロ流体カートリッジの他の構成要素の位置付けの多くの異なる構成が達成され得ることを理解されたい。いくつかの事例では、マイクロ流体カートリッジは、本明細書に説明されるシステムの除去可能および/または使い捨て構成要素であるように構成されてもよい。
【0120】
好ましい実施形態では、カートリッジ構成要素は、マイクロ流体チップの縁において、マイクロ流体チップと界面接触する。マイクロ流体チップは、2つまたはそれを上回る流体ポートを備えてもよく、カートリッジ構成要素は、チップの流体ポートの数を鏡映する、縁を備えてもよい。いくつかの事例では、カートリッジの縁は、マイクロ流体チップの2つまたはそれを上回る流体ポートと整合する、2つまたはそれを上回る流体ポートを備える。カートリッジはまた、マイクロ流体チップと、カートリッジ構成要素とを備える、アセンブリへの力の印加に応じて、実質的無漏出シールをマイクロ流体チップの2つまたはそれを上回る流体ポートとカートリッジ構成要素の2つまたはそれを上回る流体ポートとの間に形成するために使用される、1つまたはそれを上回るエラストマ構成要素(例えば、ガスケット、Oリング等)を備えてもよい。例えば、アセンブリは、力を印加し、無漏出シールをマイクロ流体チップのポートとカートリッジ構成要素のポートとの間に形成するために使用される、ねじ、クランプ、または他の締結機構を備えてもよい。
【0121】
ある事例では、カートリッジは、カートリッジは、所望の体積の流体を含有するように構成される、1つまたはそれを上回るリザーバを備える。いくつかの事例では、リザーバは、少なくとも約200マイクロリットル(μL)、少なくとも約300μL、少なくとも約400μL、少なくとも約500μL、少なくとも約600μL、少なくとも約700μL、少なくとも約800μL、少なくとも約900μL、少なくとも約1ミリリットル(mL)、少なくとも約1.5mL、少なくとも約2mL、少なくとも約2.5mL、少なくとも約3mL、少なくとも約3.5mL、少なくとも約4mL、少なくとも約4.5mL、または少なくとも約5mLを含有することが可能であり得る。いくつかの事例では、リザーバは、最大で約5mL、最大で約4.5mL、最大で約4mL、最大で約3.5mL、最大で約3mL、最大で約2.5mL、最大で約2mL、最大で約1.5mL、最大で約1mL、最大で約900μL、最大で約800μL、最大で約700μL、最大で約600μL、最大で約500μL、最大で約400μL、最大で約300μL、または最大で約200μLを含有することが可能であり得る。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、リザーバは、約200μL~約2mLにおよび得る流体の体積を含有してもよい。当業者は、リザーバ流体体積容量が、本範囲内の任意の値、例えば、約1.8mLを有し得ることを認識するであろう。
【0122】
マイクロ流体カートリッジが、リザーバを備える、そのような事例では、リザーバは、マイクロ流体チップに(例えば、電気的に、流体的に)制御可能に結合されてもよい。例えば、カートリッジは、チップ内の流動体積または率を制御するために使用され得る、1つまたはそれを上回る弁を備えてもよい。ある場合には、カートリッジは、1つまたはそれを上回る液体試薬(例えば、動員試薬)の送達の間に制御された流率を可能にし得る、コック栓弁または剪断弁(例えば、摺動弁もしくは回転剪断弁)を備えてもよい。ある場合には、カートリッジは、チップの中への液体の流率を制御するために使用され得る、シリンジポンプと統合または界面接触されてもよい。ある場合には、流率は、ピストン、ばね荷重デバイス、または他の機械的アプローチを使用して、制御されてもよい。
【0123】
いくつかの事例では、カートリッジは、異なるタイプまたはモデルのチップに適応するように構成されてもよい。例えば、カートリッジは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100個の異なるタイプもしくはモデルのチップに適応するように構成されてもよい。ある場合には、カートリッジは、チップのチャネルと界面接触し得る(例えば、チップの入口および/または出口と界面接触する)ポートもしくは接続を備えてもよい。
【0124】
器具界面設計:好ましい実施形態では、カートリッジは、界面設計を通して、器具システムに結合するように構成され、その界面設計は、他のユニット(例えば、リザーバ、電極、流体取扱ユニット)をマイクロ流体カートリッジおよび/またはマイクロ流体チップに界面接触させるために使用される。いくつかの事例では、界面設計は、2つまたはそれを上回る流体相互接続を備え、流体相互接続はそれぞれ、界面デバイスと、マイクロ流体カートリッジとを備える、アセンブリへの力の印加に応じて、実質的無漏出流体継手を外部流体ラインまたはリザーバとマイクロ流体カートリッジの流体ポートとの間に提供するように構成される。いくつかの事例では、流体継手は、カートリッジの2つまたはそれを上回る流体ポートへのその流体継手の点において、2つまたはそれを上回る外部流体ラインのうちの2つ内の相対的流体圧力が変動するときでも、実質的無漏出として維持される。例えば、流体継手は、2つの外部流体ライン内の相対的流体圧力が、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、または約100倍変動するときでも、無漏出のままであり得る。流体継手は、2つの外部流体ライン内の相対的流体圧力が、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、または少なくとも100倍変動するときでも、無漏出のままであり得る。いくつかの事例では、流体継手は、2つの外部流体ライン内の相対的流体圧力が、最大で100倍、最大で90倍、最大で80倍、最大で70倍、最大で60倍、最大で50倍、最大で40倍、最大で30倍、最大で20倍、最大で10倍、最大で9倍、最大で8倍、最大で7倍、最大で6倍、最大で5倍、最大で4倍、最大で3倍、最大で2倍、または最大で1倍変動するときでも、無漏出のままであり得る。
【0125】
いくつかの事例では、2つまたはそれを上回る流体相互接続は、独立してばね荷重された継手を備え、これは、反復可能シール力を発生させる際に有用であり得る。いくつかの事例では、器具界面は、マイクロ流体カートリッジアセンブリに結合するように構成される、部品を備える。例えば、器具界面およびカートリッジは、噛合するように構成される、部品(例えば、円錐形継手アセンブリ、平坦面シールアセンブリ)を有することができる。いくつかの事例では、ばね荷重された継手は、マイクロ流体カートリッジ内に孔を備える、流体ポートと噛合する、円錐形継手を備える。いくつかの事例では、ばね荷重された継手は、マイクロ流体カートリッジ内に孔を備える流体ポートと噛合する、平坦面シール継手を備える。いくつかの側面では、マイクロ流体カートリッジ内の孔は、テーパ状である。いくつかの事例では、器具界面は、1つまたはそれを上回る締結機構を使用して、マイクロ流体カートリッジアセンブリに機械的に結合されてもよい。ある場合には、器具界面および/またはマイクロ流体カートリッジアセンブリは、除去可能結合を可能にする、磁石を備えてもよい、または、例えば、器具界面およびカートリッジアセンブリの相互係止幾何学形状を使用して、機械的に結合されてもよい。例えば、器具界面は、ねじ山(例えば、ねじ山、雌ねじ等)を備えてもよく、アセンブリは、界面のねじ山係合し得る、相補的ねじ山を備えてもよい。それと併せて、または代替として、界面デバイスおよび/またはアセンブリは、器具界面とマイクロ流体カートリッジアセンブリの相互係止を可能にする、スナップ嵌合継合部(例えば、カンチレバースナップ嵌合、環状スナップ嵌合等)を備えてもよい。代替として、またはそれと併せて、器具界面および/またはマイクロ流体カートリッジアセンブリは、締まり嵌め、圧力嵌め、収縮嵌合、隙間嵌め等を可能にする、構成要素を備えてもよい。締結機構の他の実施例は、非限定的実施例では、形態嵌合対、フックおよびループ、ラッチ、ねじ山、ねじ、ステープル、クリップ、クランプ、プロング、リング、無頭釘、ゴムバンド、リベット、グロメット、ピン、繋ぎ材、スナップ、Velcro(登録商標)、接着剤(例えば、糊)、テープ、真空、シール、それらの組み合わせ、または任意の他のタイプの締結機構を含んでもよい。
【0126】
被分析物の分離および濃縮:いくつかの事例では、開示されるデバイスまたはシステムは、混合物内の複数の被分析物が個々の分画において分離および/または濃縮される、1つまたはそれを上回る分離もしくは濃縮ステップを実施するように構成されてもよい。例えば、いくつかの事例では、開示されるデバイス(例えば、マイクロ流体チップまたはマイクロ流体カートリッジ)は、サンプル内の被分析物の混合物が、元のサンプルからの被分析物分子のサブセットを含有する被分析物分画(例えば、被分析物ピークまたは被分析物帯)に分離される、および/または被分析物分画として濃縮される、第1の濃縮ステップを実施するように構成されてもよい。いくつかの事例では、これらの分離された被分析物分画は、動員および/または溶出されてもよく、いくつかの事例では、次いで、別の下流分離および/または濃縮ステップを受けてもよい。いくつかの事例では、例えば、最終分離および/または濃縮ステップに続いて、分離/濃縮された被分析物分画は、さらなる分析のためにデバイスから排出されてもよい。
【0127】
いくつかの事例では、開示されるデバイスおよびシステムは、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ、もしくはそれを上回る分離および/または濃縮ステップを実施するように構成されてもよい。いくつかの事例では、分離または濃縮ステップのうちの1つまたはそれを上回るものは、固相分離技法、例えば、逆相HPLCを含んでもよい。いくつかの事例では、分離または濃縮ステップのうちの1つまたはそれを上回るものは、溶液相分離および/または濃縮技法、例えば、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)もしくは等電点電気泳動(IEF)を含んでもよい。
【0128】
開示されるデバイスおよびシステムは、当業者に公知である種々の被分析物分離および/または濃縮技法のうちのいずれかを実施するように構成されてもよく、分離または濃縮ステップは、分離プロセスが実施されるにつれて監視され得るように、全体的もしくは部分的に撮像されるように構成される、少なくとも第1の分離チャネル内で実施される。例えば、いくつかの事例では、撮像された分離は、被分析物混合物から1つまたはそれを上回る分離された被分析物分画を産生する、例えば、等電点電気泳動、キャピラリゲル電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ動電クロマトグラフィ、ミセル動電クロマトグラフィ、流量均衡キャピラリ電気泳動、電場勾配集束、動的場勾配集束、および同等物を含む、電気泳動分離であってもよい。いくつかの事例では、分離および動員ステップは、分離および動員プロセスが実施されるにつれて監視され得るように、全体的もしくは部分的に撮像されるように構成される、少なくとも第1の分離チャネル内で実施されてもよい。これらの事例のうちのいずれかでは、全体的または部分的な分離チャネルの撮像は、持続的もしくは断続的に実施されてもよく、分離および/または濃縮プロセスに先立って、その間に、もしくはそれに続いて、実施されてもよい。
【0129】
いくつかの事例では、マイクロ流体デバイス形式の使用は、高速分離時間および正確で再現可能な分離データを提供し得る。例えば、マイクロ流体デバイスが電気泳動分離および/または等電点電気泳動反応を実施するように構成される、事例において、マイクロ流体チャネルの高い表面積対体積比は、有意なジュール加熱を被ることなく、高電場強度を使用することを可能にし、それによって、分離分解能の実質的な分散および損失を伴わずに、非常に高速な分離反応を可能にし得る。いくつかの事例では、流体チャネル幾何学形状の精密な制御は、サンプル注入体積、電場強度等の正確かつ再現可能な制御を提供し、それによって、検定の1つまたはそれを上回るパラメータの非常に正確な判定、例えば、分離分解能および/またはpI判定を可能にする。
【0130】
検定の1つまたはそれを上回るパラメータは、分離の特性を備えてもよい。例えば、1つまたはそれを上回るパラメータは、分離分解能、ピーク幅、ピーク容量、pH勾配の直線性、および最小の解決可能なpI差から成る群から選択されてもよい。
【0131】
一般に、完全な分離を達成するために要求される分離時間は、利用される具体的分離技法および動作パラメータ(例えば、分離チャネル長、マイクロ流体デバイス設計、緩衝剤組成、印加された電圧等)に応じて変動するであろう。いくつかの事例では、開示されるデバイスおよびシステムを使用して達成される分離時間は、約0.1分~約30分に及んでもよい。いくつかの事例では、分離時間は、少なくとも0.1分、少なくとも0.5分、少なくとも1分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも25分、または少なくとも30分であってもよい。いくつかの事例では、分離時間は、最大で30分、最大で25分、最大で20分、最大で15分、最大で10分、最大で5分、最大で1分、最大で0.5分、または最大で0.1分であってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、分離時間は、約1分~約20分に及んでもよい。当業者は、分離時間が、本範囲内の任意の値、例えば、約11.2分を有し得ることを認識するであろう。いくつかの事例では、分離時間は、20分より長くてもよい。
【0132】
同様に、開示されるデバイスおよびシステムを使用して達成される分離効率ならびに分解能は、利用される具体的分離技法および動作パラメータ(例えば、分離チャネル長、マイクロ流体デバイス設計、緩衝剤組成物、印加された電圧等)、ならびに分離の1または2次元が利用されるかどうかに応じて、変動し得る。いくつかの事例では、例えば、等電点電気泳動を実施するとき、分離チャネルの中への動員電解質の電気泳動導入をトリガするための切替可能な電極の使用は、改良された分離分解能をもたらし得る。例えば、いくつかの事例では、開示される方法およびデバイスを使用して実施されるIEFの分離分解能は、約0.1~約0.0001pH単位に及ぶpIが異なる被分析物帯の分解能を提供し得る。いくつかの事例では、IEF分離分解能は、0.1未満、0.05未満、0.01未満、0.005未満、0.001未満、0.0005未満、または0.0001未満のpH単位だけpIが異なる被分析物帯の分解能を可能にし得る。
【0133】
故に、いくつかの事例では、例えば、分離チャネルの全てまたは一部の画像を使用し、等電点電気泳動反応におけるpIマーカの位置を識別し、分離された被分析物のためのpI値を判定するとき、pI値が判定され得る正確度は、±0.1pH単位未満、±0.05pH単位未満、±0.01pH単位未満、±0.005pH単位未満、±0.001pH単位未満、±0.0005pH単位未満、または±0.0001pH単位未満であり得る。
【0134】
いくつかの事例では、開示されるデバイスを使用して達成されるピーク容量は、約100~約20,000に及んでもよい。いくつかの事例では、ピーク容量は、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000、少なくとも2,000、少なくとも3,000、少なくとも4,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、または少なくとも20,000であってもよい。いくつかの事例では、ピーク容量は、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で5,000、最大で4,000,最大で3,000、最大で2,000、最大で1,000、最大で900、最大で800、最大で700、最大で600、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、または最大で100であってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、ピーク容量は、約400~約2,000に及んでもよい。当業者は、ピーク容量が、本範囲内の任意の値、例えば、約285を有し得ることを認識するであろう。
【0135】
キャピラリ等電点電気泳動(CIEF):いくつかの実施形態では、分離技法は、等電点電気泳動(IEF)、例えば、キャピラリ等電点電気泳動(CIEF)を含んでもよい。等電点電気泳動(または「焦点電気泳動」)は、それらの等電点(pI)、すなわち、分子が正味ゼロ電荷を有するpHの差異によって分子を分離するための技法である。CIEFは、両性電解質(両性電解質)溶液を、アノードまたはカソードを含有する試薬リザーバの間のサンプルチャネルに添加し、それを横断して分離電圧が印加される、分離チャネル(すなわち、電極含有ウェルを接続する流体チャネル、例えば、マイクロ流体デバイス内の毛細管またはチャネルの管腔)内にpH勾配を発生させることを伴う。両性電解質は、溶液相である、またはチャネル壁の表面上に不動化されることができる。負に帯電した分子が、正の電極に向かって媒体内でpH勾配を通して遊走する一方、正に帯電した分子は、負の電極に向かって移動する。その等電点(pI)を下回るpH領域内にあるタンパク質(または他の分子)は、正に帯電し、したがって、カソード(すなわち、負に帯電した電極)に向かって遊走するであろう。タンパク質の全体的な正味電荷は、そのpIに対応するpH領域に到達し、その時点で、正味電荷を有しておらず、したがって、遊走が停止するまで、(例えば、カルボキシル基または他の負に帯電した官能基のプロトン化に起因して)増加するpHの勾配を通して遊走するにつれて減少するであろう。結果として、タンパク質の混合物は、酸性および塩基性残基のそれらの相対含量に基づいて分離し、各タンパク質がそのpIに対応するpH勾配における点に位置付けられた、急峻な定常帯に集束された状態になる。本技法は、タンパク質が別個の帯に分画されている単一の電荷によって異なる、極めて高い分解能が可能である。いくつかの側面では、等電点電気泳動が、流体(例えば、陰極液または動員試薬)を、流体入口から、毛細管またはチャネルを通して、毛細管またはチャネルの遠位端の外へと流動させながら、実施されてもよい。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動は、電気浸透流(EOF)を排除するように、例えば、中性および親水性ポリマーコーティングで恒久的または動的にコーティングされた、分離チャネル内で実施されてもよい。好適なコーティングの実施例は、限定ではないが、アミノ修飾因子、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびポリビニルアルコール(PVA)、Guarant(登録商標) (AlcorBioseparations)、線形ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリジン(PVP)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、トリエチルアミン、プロピルアミン、モルホリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアミノプロパン、エチレンジアミン、キトサン、ポリエチレンイミン、カダベリン、プトレシン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、セルロース、デキストラン、ポリエチレンオキシド(PEO)、酢酸セルロース、アミロペクチン、エチルピロリジンメタクリレート、ジメチルメタクリレート、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、Brij(登録商標)35、スルホベタイン、1,2-ジラウロイルsn-ホスファチジルコリン、1,4-ジデシル-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンジブロミド、アガロース、ポリ(Nヒドロキシエチルアクリルアミド)、ポール-323、超分岐ポリアミノエステル、プルラン、グリセロール、吸着コーティング、共有結合コーティング、動的コーティング等を含む。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動は、電気浸透流を有意に減少させ、より良好なタンパク質可溶化を可能にし、電解質の粘度を増加させることによって毛細管(例えば、毛細管の管腔内)または流体チャネルの内側の拡散を限定するように、分離媒体内のメチルセルロース、グリセロール、尿素、ホルムアミド、界面活性剤(例えば、Triton(登録商標)-X100、CHAPS、ジギトニン)等の添加剤を使用して(例えば、コーティングされていない分離チャネル内で)実施されてもよい。
【0136】
上記のように、キャピラリ等電点電気泳動技法のために使用されるpH勾配は、両性電解質、すなわち、酸性および塩基性基の両方を含有し、大部分がpHのある範囲内の双性イオンとして存在する、両性分子の使用を通して発生される。分離チャネルのアノード側の電解質溶液の部分は、「陽極液」として公知である。分離チャネルのカソード側の電解質溶液のその部分は、「陰極液」として公知である。限定ではないが、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、グルタミン酸、リシン、ギ酸、ジメチルアミン、トリエチルアミン、酢酸、ピペリジン、ジエチルアミン、および/またはそれらの任意の組み合わせを含む、種々の電解質が、開示される方法およびデバイスで使用されてもよい。電解質は、0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%等の任意の好適な濃度において使用されてもよい。電解質の濃度は、少なくとも0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%であってもよい。電解質の濃度は、最大で90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、1%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%であってもよい。電解質の濃度の範囲、例えば、0.1%~2%が、使用されてもよい。両性電解質が、任意の商業用または非商業用担体両性電解質混合物(例えば、Servalyt pH4-9(Serva, Heildelberg, Germany)、Beckman pH3-10(Beckman Instruments, Fullerton, CA, USA)、Ampholine 3.5-9.5およびPharmalyte 3-10(両方ともGeneral Electric Healthcare, Orsay, France)、AESlytes(AES)、FLUKA両性電解質(Thomas Scientific, Swedesboro, NJ)、Biolyte(Bio-Rad, Hercules, CA))、および同等物から選択されてもよい。担体両性電解質混合物は、密接に離間したpI値および良好な緩衝容量を有する、複数の脂肪族アミノおよびカルボキシレート基を含有する、小分子(約300~1,000Da)の混合物から成ってもよい。印加された電場の存在下で、担体両性電解質は、アノードからカソードまで次第に増加する平滑な線形または非線形pH勾配に分割する。
【0137】
種々のpI標準のうちのいずれかが、分離された被分析物ピークのための等電点を計算するために、開示される方法およびデバイスで使用されてもよい。例えば、概して、CIEF用途で使用されるpIマーカ、例えば、タンパク質pIマーカおよび合成小分子pIマーカが、使用されてもよい。いくつかの事例では、タンパク質pIマーカは、一般的に容認されるpI値を伴う特異的タンパク質であってもよい。いくつかの事例では、pIマーカは、例えば、撮像を介して検出可能であり得る。市販されている種々のタンパク質pIマーカまたは合成小分子pIマーカもしくはそれらの組み合わせ、例えば、Advanced Electrophoresis Solutions, Ltd.(Cambridge, Ontario, Canada)から入手可能な小分子pIマーカ、ProteinSimple、Shimuraによって設計されたペプチドライブラリ、およびSlais染料(Alcor Biosepartions)が、使用されてもよい。
【0138】
キャピラリゾーン電気泳動(CZE):いくつかの事例では、分離または濃縮技法は、印加された電場内の溶液内の荷電被分析物の分離のための方法である、キャピラリゾーン電気泳動を含んでもよい。荷電被分析物分子の正味速度は、異なるサイズ、形状、または電荷を呈する被分析物分子が、遊走速度差を呈し、帯に分離するように、(分子のサイズ、形状、および電荷に依存して)個々の被分析物に関して、分離システムによって呈される電気浸透流(EOF)、すなわち、μEOF、および電気泳動移動度、すなわち、μEPの両方の影響を受ける。他のキャピラリ電気泳動方法と対照的に、CZEは、分離のための溶液である、「単純な」緩衝剤または背景電解質を使用する。
【0139】
キャピラリゲル電気泳動(CGE):いくつかの事例では、分離または濃縮技法は、それらのサイズおよび電荷に基づく、巨大分子(例えば、DNA、RNA、およびタンパク質)ならびにそれらの断片の分離および分析のための方法である、キャピラリゲル電気泳動を含んでもよい。本方法は、ゲルが、印加された電場内の荷電被分析物分子の電気泳動移動の間に反対流および/または篩媒体として作用する、ゲル充填分離チャネルの使用を含む。ゲルは、電場の印加によって引き起こされる熱対流を抑制するように機能し、また、分子の通過を遅らせる篩媒体として作用し、それによって、異なるサイズまたは電荷の分子に関して遊走速度差をもたらす。
【0140】
キャピラリ等速電気泳動(CITP):いくつかの事例では、分離技法は、好適な寸法の毛細管または流体チャネル内の2つの電解質(先行電解質および終末電解質として公知である)の不連続システムを使用する、荷電被分析物の分離のための方法である、キャピラリ等速電気泳動を含んでもよい。先行電解質が、最高電気泳動移動度を伴うイオンを含有する一方、終末電解質は、最低電気泳動移動度を伴うイオンを含有する。分離されるべき被分析物混合物(すなわち、サンプル)は、これらの2つの電解質の間に挟持され、電場の印加は、減少する電気泳動移動度の順序で密接に隣接するゾーンの中への毛細管または流体チャネル内の荷電被分析物分子の分割をもたらす。ゾーンは、検出器、例えば、伝導度検出器、光検出器、または撮像デバイスが、分離チャネルに沿ったそれらの通過を記録するために利用され得るように、印加された電場内を一定の速度で移動する。キャピラリゾーン電気泳動と異なり、アニオン性およびカチオン性被分析物の同時判定または検出は、キャピラリ等速電気泳動を使用して実施される単一の分析では実行可能ではない。
【0141】
キャピラリ動電クロマトグラフィ(CEC):いくつかの事例では、分離技法は、液体クロマトグラフフィおよび電気泳動分離方法の組み合わせに基づく、被分析物混合物の分離のための方法である、キャピラリ動電クロマトグラフィを含んでもよい。CECは、キャピラリ電気泳動(CE)の効率および充塞キャピラリ高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)の選択性ならびにサンプル容量の両方を提供する。CECで使用される毛細管が、HPLC充塞材料で充塞されるため、HPLCで利用可能な多種多様の被分析物選択性はまた、CECでも利用可能である。これらの充塞材料の広い表面積は、CEC毛細管が、比較的に大量のサンプルを収容することを可能にし、続いて溶出された被分析物の検出を、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)におけるよりも若干単純なタスクにする。
【0142】
ミセル動電クロマトグラフィ(MEKC):いくつかの事例では、分離技法は、界面活性剤ミセル(擬定常相)と周辺水性緩衝溶液(移動相)との間の差分分割に基づく、被分析物混合物の分離のための方法である、キャピラリ動電クロマトグラフィを含んでもよい。MEKCのために使用される基本的設定および検出方法は、CZEで使用されるものと同一である。差異は、界面活性剤モノマーが、ミセルと平衡状態にあるように、緩衝溶液が、臨界ミセル濃度(CMC)を上回る濃度において界面活性剤を含有することである。MEKCは、典型的には、強い電気浸透流を発生させるように、アルカリ性条件を使用して、開放毛細管または流体チャネル内で実施される。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、MEKC用途における一般的に使用されている界面活性剤の一実施例である。SDSの硫酸基のアニオン性質は、界面活性剤およびミセルに、強い電気浸透流の方向と反対である電気泳動移動度を持たせる。結果として、界面活性剤モノマーおよびミセルは、極めてゆっくりと遊走するが、それらの正味移動は、依然として電気浸透流の方向である、すなわち、カソードに向かっている。MEKC分離の間に、被分析物は、ミセルの疎水性内部と親水性緩衝溶液との間にそれら自体を分配する。ミセル内部で不溶性である親水性被分析物は、電気浸透流速uoにおいて遊走し、緩衝剤の残留時間tMにおいて検出されるであろう。ミセル内で完全に可溶化する疎水性被分析物は、ミセル速度ucにおいて遊走し、最終溶出時間tcにおいて溶出する。
【0143】
流量均衡キャピラリ電気泳動(FCCE):いくつかの事例では、分離技法は、圧力誘発逆流を利用し、毛細管を通した被分析物の動電遊走を能動的に遅らせる、停止させる、または逆転させる、キャピラリ電気泳動の効率および分解能を増加させるための方法である、流量均衡キャピラリ電気泳動を含んでもよい。被分析物を遅らせる、停止させる、または検出窓を横断して前後に移動させることによって、着目被分析物は、通常の分離条件下よりもはるかに長い時間周期にわたって分離チャネルに効果的に閉じ込められ、それによって、分離の効率および分解能の両方を増加させる。
【0144】
クロマトグラフィ:いくつかの事例では、分離技法は、サンプル流体内の被分析物混合物(移動相)が、混合物の種々の構成物質を差分的に留保し、それによって、それらを異なる速度で進行させて分離させる、カラムまたはチャネル充塞材料(定常相)を通して通過される、クロマトグラフィ技法を含んでもよい。いくつかの事例では、溶出または動員の後続のステップが、定常相のための高い結合親和性を有する被分析物を変位させるために要求され得る。開示される方法に組み込まれ得る、クロマトグラフィ技法の実施例は、限定ではないが、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、および逆相クロマトグラフィを含む。
【0145】
分離された被分析物種の動員:いくつかの事例では、本明細書で提供されるものは、例えば、逆相クロマトグラフィ等のクロマトグラフィ分離技法を実施するように構成される、デバイスおよびシステムである。デバイスまたはシステムによって実装される方法はさらに、「動員」ステップまたは反応と称され得る、(例えば、各複数の分離チャネルを通して流動する緩衝剤を同時に、または独立して変化させることによって)複数の分離チャネルのそれぞれの中で定常相上に留保される被分析物種の溶出を含んでもよい。いくつかの事例では、デバイスまたはシステムによって実装される方法はさらに、「動員」ステップとも称され得る、同時に、または独立して圧力を複数の分離チャネルのそれぞれに印加するステップ、もしくは同時に、または独立して電解質を複数の分離チャネルのそれぞれの中に導入し、等電点電気泳動のために使用されるpH勾配を妨害し、したがって、分離チャネルから外への分離された被分析物ピークの遊走をトリガするステップを含んでもよい。いくつかの事例では、分離反応を駆動するために使用される力(例えば、逆相クロマトグラフィのための圧力、または動電分離もしくは等電点電気泳動反応のための電場)は、動員ステップの間にオフにされてもよい。いくつかの事例では、分離反応を駆動するために使用される力は、動員ステップの間にオンのままにされてもよい。開示される方法、例えば、等電点電気泳動ステップを含むもののいくつかの事例では、分離された被分析物帯は、分離された被分析物帯が、別の流体チャネル(例えば、出口、廃棄物リザーバ、または第2の分離チャネルであり得る)に接続される複数の分離チャネルのそれぞれの端部に向かって遊走するように、(例えば、流体力学的圧力および/または化学動員技法を使用して)動員されてもよい。いくつかの事例では、例えば、キャピラリゲル電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ動電クロマトグラフィ、ミセル動電クロマトグラフィ、流量均衡キャピラリ電気泳動、または速度差によって被分析物混合物の成分を分離する任意の他の分離技法が、採用される、それらの事例では、分離ステップ自体が、動員ステップと見なされてもよい。
【0146】
いくつかの事例では、被分析物帯の動員は、同時に、または独立して流体力学的圧力を複数の分離チャネルのそれぞれの一端または両端に印加することによって、実装されてもよい。いくつかの事例では、被分析物帯の動員は、重力が採用され得るように、複数の分離チャネルが垂直位置にあるように、デバイスを配向することによって、実装されてもよい。いくつかの事例では、被分析物帯の動員は、EOF支援動員を使用して実装されてもよい。いくつかの事例では、被分析物帯の動員は、例えば、同時に、または独立して、等電点電気泳動のために使用されるpH勾配における局所pHを偏移させる動員電解質を複数の分離チャネルのそれぞれの中に導入することによって、化学動員を使用して実装されてもよい。いくつかの事例では、これらの動員技法の任意の組み合わせが、採用されてもよい。
【0147】
1つの好ましい事例では、等電性に集束された被分析物帯のための動員ステップは、化学動員を含む。圧力ベースの動員と比較して、化学動員は、圧力の使用を通して誘発される流体力学的放物線流プロファイルを克服することによって、最小限の帯拡大を呈するという利点を有する。化学動員は、電解質(すなわち、「動員電解質」)を分離チャネルの中に導入し、分離された被分析物帯(または双性イオン緩衝剤成分および関連付けられる水和殻)が、印加された電場内で遊走するように、それら(もしくは双性イオン緩衝剤成分)上の局所pHおよび/または正味電荷を改変することによって、実装されてもよい。いくつかの事例では、分離された被分析物帯を動員するために使用される、印加された電場の極性は、被分析物が、分離チャネルの出口または遠位端と電気通信するアノードに向かって遊走するようなものであってもよい(アノード動員)。いくつかの事例では、分離された被分析物帯を動員するために使用される、印加された電場の極性は、被分析物が、分離チャネルの出口または遠位端と電気通信するカソードに向かって遊走するようなものであってもよい(カソード動員)。動員電解質は、分離チャネルまたは毛細管の中への導入のためのヒドロキシル(カソード動員)もしくはヒドロニウムイオン(アノード動員)と競合する、アニオンまたはカチオンのいずれかから成る。アノード動員のために陰極液として使用され得る塩基の実施例は、限定ではないが、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム(「アンモニア」)、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ピペリジン等を含む。カソード動員で陽極液として使用され得る酸の実施例は、限定ではないが、リン酸、酢酸、ギ酸、および炭酸等を含む。いくつかの事例では、動員は、陽極液または陰極液への塩(例えば、塩化ナトリウム)の添加によって開始されてもよい。いくつかの事例では、アノードが、接地において保持されてもよく、負の電圧が、カソードに印加される。いくつかの事例では、カソードが、接地において保持されてもよく、正の電圧が、アノードに印加される。いくつかの事例では、ゼロではない負の電圧が、カソードに印加されてもよく、ゼロではない正の電圧が、アノードに印加されてもよい。いくつかの事例では、ゼロではない正の電圧が、アノードおよびカソードの両方に印加されてもよい。いくつかの事例では、ゼロではない負の電圧が、アノードおよびカソードの両方に印加されてもよい。
【0148】
いくつかの事例では、分離された被分析物帯の動員は、オン状態とオフ状態との間で切替可能な電極(例えば、複数の分離チャネルのそれぞれの遠位端と電気通信するカソード、および複数の動員チャネル(例えば、各分離チャネルの出口または遠位端の近傍で分離チャネルに交差する流体チャネル)のそれぞれの近位端と電気通信するカソード)をトリガし、分離チャネルの中への動員緩衝剤または電解質の電気泳動導入を制御する、ユーザ規定時点において開始されてもよい。
【0149】
いくつかの事例では、複数の分離チャネル毎にオン状態とオフ状態との間で1つ、2つ、または3つ、もしくはそれを上回る切替可能な電極の遷移を独立してトリガするためのユーザ規定時間は、動員方式のうちのいずれかに関して、約30秒~約30分に及んでもよい。いくつかの事例では、ユーザ規定時間は、少なくとも30秒、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも25分、または少なくとも30分であってもよい。いくつかの事例では、ユーザ規定時間は、最大で30分、最大で25分、最大で20分、最大で15分、最大で10分、最大で5分、最大で4分、最大で3分、最大で2分、最大で1分、または最大で30秒であってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、ユーザ規定時間は、約2分~約25分に及んでもよい。当業者は、ユーザ規定時間が、本範囲内の任意の値、例えば、約8.5分を有し得ることを認識するであろう。
【0150】
いくつかの事例では、本明細書に開示される動員シナリオのうちのいずれかで動員を生じさせるために(またはそのような分離技法が実施される、それらの事例において、動電分離もしくは等電点電気泳動反応を実施するために)使用される電場は、約0V/cm~約1,000V/cmに及んでもよい。いくつかの事例では、電場強度は、少なくとも0V/cm、少なくとも20V/cm、少なくとも40V/cm、少なくとも60V/cm、少なくとも80V/cm、少なくとも100V/cm、少なくとも150V/cm、少なくとも200V/cm、少なくとも250V/cm、少なくとも300V/cm、少なくとも350V/cm、少なくとも400V/cm、少なくとも450V/cm、少なくとも500V/cm、少なくとも600V/cm、少なくとも700V/cm、少なくとも800V/cm、少なくとも900V/cm、または少なくとも1,000V/cmであってもよい。いくつかの事例では、電場強度は、最大で1,000V/cm、最大で900V/cm、最大で800V/cm、最大で700V/cm、最大で600V/cm、最大で500V/cm、最大で450V/cm、最大で400V/cm、最大で350V/cm、最大で300V/cm、最大で250V/cm、最大で200V/cm、最大で150V/cm、最大で100V/cm、最大で80V/cm、最大で60V/cm、最大で40V/cm、最大で20V/cm、または最大で0V/cmであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、電場強度は、約40V/cm~約650V/cmに及んでもよい。当業者は、電場強度が、本範囲内の任意の値、例えば、約575V/cmを有し得ることを認識するであろう。
【0151】
いくつかの事例では、分離された被分析物帯の動員は、例えば、等電点電気泳動の場合、分離チャネルを通して通過する電流が最小値に到達し得る、複数の分離チャネル毎に電流(または伝導度)を独立して監視することから導出されるデータに基づいて、開始されてもよい。いくつかの事例では、最小電流値、または規定時間周期にわたって一定のままである、もしくは規定閾値を下回る電流値の検出は、等電点電気泳動反応が完了に到達したかどうかを判定するために使用されてもよく、したがって、化学動員ステップの開始をトリガするために使用されてもよい。
【0152】
いくつかの事例では、最小電流値または閾値電流値は、約0μA~約100μAに及んでもよい。いくつかの事例では、最小電流値または閾値電流値は、少なくとも0μA、少なくとも1μA、少なくとも2μA、少なくとも3μA、少なくとも4μA、少なくとも5μA、少なくとも10μA、少なくとも20μA、少なくとも30μA、少なくとも40μA、少なくとも50μA、少なくとも60μA、少なくとも70μA、少なくとも80μA、少なくとも90μA、または少なくとも100μAであってもよい。いくつかの事例では、最小電流値または閾値電流値は、最大で100μA、最大で90μA、最大で80μA、最大で70μA、最大で60μA、最大で50μA、最大で40μA、最大で30μA、最大で20μA、最大で10μA、最大で5μA、最大で4μA、最大で3μA、最大で2μA、最大で1μA、または最大で0μAであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、最小電流値または閾値電流値は、約10μA~約90μAに及んでもよい。当業者は、最小電流値または閾値電流値が、本範囲内の任意の値、例えば、約16μAを有し得ることを認識するであろう。
【0153】
いくつかの事例では、規定時間周期は、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも15秒、少なくとも20秒、少なくとも25秒、少なくとも30秒、少なくとも35秒、少なくとも40秒、少なくとも45秒、少なくとも50秒、少なくとも55秒、または少なくとも60秒であってもよい。いくつかの事例では、規定時間周期は、最大で約60秒、最大で約55秒、最大で約50秒、最大で約45秒、最大で約40秒、最大で約35秒、最大で約30秒、最大で約25秒、最大で約20秒、最大で約15秒、最大で約10秒、または最大で約5秒であってもよい。本明細書に説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、いくつかの事例では、規定時間周期は、約5秒~約30秒に及んでもよい。当業者は、規定時間周期が、本範囲内の任意の値、例えば、約32秒を有し得ることを認識するであろう。
【0154】
いくつかの事例では、分離された被分析物帯の動員は、分離反応が実施されるにつれて、分離チャネルの画像から(例えば、自動画像処理を実施することによって)導出されるデータに基づいて、開始されてもよい。画像導出データは、1つまたはそれを上回る被分析物ピークの存在または非存在、1つまたはそれを上回る被分析物ピークの位置、1つまたはそれを上回る被分析物ピークの幅、1つまたはそれを上回る被分析物ピークの速度、分離分解能、1つまたはそれを上回る被分析物ピークの存在、位置、幅、もしくは速度の変化率またはその欠如、もしくはそれらの任意の組み合わせを監視するために使用されてもよく、分離反応が完了したかどうかを判定するために、および/または所与の分離チャネル内の動員ステップの開始をトリガするために使用されてもよい。ある場合には、分離ステップの完了は、時間周期にわたって(例えば、10~60秒の周期にわたって)分離性能パラメータ(例えば、ピーク位置またはピーク幅)の変化率を監視することによって判定されてもよい。
【0155】
いくつかの実施形態では、化学動員ステップは、デバイス内の電場を変化させ、動員電解質を分離チャネルの中に電気泳動させることによって、CIEFをESI-MSと統合するように設計される、マイクロ流体デバイス内で開始されてもよい。いくつかの事例では、動員ステップの開始は、分離チャネルの全てまたは一部の画像から導出されるデータに基づいて、トリガされてもよい。いくつかの事例では、電場の変化は、1つまたはそれを上回る電力供給源に取り付けられた1つまたはそれを上回る電極を接続もしくは接続解除することによって、実装されてもよく、1つまたはそれを上回る電極は、デバイス上の試薬ウェル内に位置付けられる、もしくはデバイスの流体チャネルと統合される。いくつかの事例では、1つまたはそれを上回る電極の接続もしくは接続解除は、動員ステップのタイミングおよび持続時間が、分離ステップと協調され得るように、コンピュータ実装方法およびプログラマブルスイッチを使用して、制御されてもよい。いくつかの事例では、デバイス内の電場を変化させることは、留保された被分析物が、定常相から解放されるように、定常相を備える分離チャネルの中に動員緩衝剤を電気泳動的または電気浸透的に流動させるために使用されてもよい。
【0156】
いくつかの事例では、分離チャネル毎の3つまたはそれを上回る電極が、デバイスに接続または統合されてもよい。例えば、第1の電極は、分離チャネルの近位端、分離チャネルに結合される、電極リザーバ、または分離チャネルと電気および/または流体連通する、別のチャネルに電気的に結合されてもよい。同様に、第2の電極は、次いで、分離チャネルの遠位端、分離チャネルの遠位端に結合される、電極リザーバ、または分離チャネルの遠位端と電気および/または流体連通する、別のチャネルに結合されてもよく、第3の電極は、例えば、分離チャネルの遠位端において分離チャネルと交差し、動員緩衝剤を含有するリザーバに接続する、またはそれを備える、動員チャネル(またはそこに接続されるチェネルまたはリザーバ)と結合されてもよい。画像ベースの方法によって判定されるような分離ステップの完了に応じて、それらの個別のチャネルとの第2または第3の電極の電気結合は、「オン」状態と「オフ」状態との間で切替可能であり得る。1つのそのような実施例では、分離回路のアノードまたはカソードを形成し得る、第2の電極は、「オフ」モードに切り替わってもよく、分離の間にオフであり得る、第3の電極は、(例えば、電気泳動を介して)チャネルの中への動員緩衝剤の導入を開始するように、「オン」状態に切り替わってもよい。いくつかの事例では、「オン」および「オフ」状態は、それぞれ、電極と流体チャネルとの間の電気結合の完全な接続または接続解除を含んでもよい。いくつかの事例では、「オン」および「オフ」状態は、それぞれ、規定電極を通して通過する電流を非ゼロまたはゼロマイクロアンペアに固定するステップを含んでもよい。
【0157】
いくつかの事例では、動員ステップのトリガまたは開始は、上記に説明されるような1つまたはそれを上回る画像導出分離パラメータに関して、変化なしまたは規定閾値未満の変化を検出するステップを含んでもよい。例えば、いくつかの事例では、1つまたはそれを上回る画像導出パラメータ(例えば、ピーク位置、ピーク幅、ピーク速度等)の20%、15%、10%、または5%未満の変化が、動員ステップをトリガするために使用されてもよい。
【0158】
いくつかの事例では、動員ステップのトリガまたは開始は、上記に説明されるような1つまたはそれを上回る画像導出分離パラメータに関して、変化なしまたは規定閾値未満の変化率を検出するステップを含んでもよい。例えば、いくつかの事例では、少なくとも10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、または60秒の時間周期にわたる1つまたはそれを上回る画像導出パラメータ(例えば、ピーク位置、ピーク幅、ピーク速度等)の20%、15%、10%、または5%未満の変化(もしくはこれらの変化率および時間周期の任意の組み合わせ)が、動員ステップをトリガするために使用されてもよい。
【0159】
いくつかの事例では、較正物が、質量分析計からの情報を相関させる、および/または較正するために、動員ステップの間に使用されてもよい。いくつかの事例では、較正物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または公知の質量を伴う他の分子(天然もしくは合成のいずれか)から成ってもよい。いくつかの事例では、較正物は、動員剤溶液と混合されるであろう。較正物は、質量分析計を較正するために使用されてもよい。いくつかの事例では、較正物は、質量分析計からの情報を動員プロセスまたは分離プロセスに相関させるために使用されてもよい。例えば、較正物は、分離(例えば、等電点電気泳動)または動員の間に監視されてもよい。
【0160】
エレクトロスプレーイオン化(ESI)および質量分析法:好ましい実施形態では、本開示の方法、デバイス、およびシステムは、分離された被分析物混合物のエレクトロスプレーイオン化を実施するため、および質量分析計の中への分離された被分析物混合物の注入のために構成される。ESIでは、サンプルおよび溶液の液滴は、電場毛細管先端またはエミッタと質量分析計源プレートとの間の電場の印加によって、エミッタ先端またはオリフィス等のエレクトロスプレー特徴を備える、毛細管またはマイクロ流体デバイスの遠位端から放出される。いくつかの実施形態では、毛細管またはエミッタ先端と質量分析計との間の電圧は、500~6,000Vまたは-500~-6,000Vであってもよい。液滴は、本誘発される電場内で伸展および拡張され、円錐形状の放出(すなわち、「テイラー円錐」)を形成し、これは、蒸発し、さらなる分離および検出のために質量分析計の中に導入される、ガス相イオンを生産する、ますます小さい液滴を備える。好ましい実施形態では、本開示の方法、デバイス、およびシステムは、ESIの間、霧化プロセスを実施する(例えば、ガスチャネルを使用して)ことを含む。いくつかの事例では、霧化は、ナノ流動またはナノスケール液滴の発生を達成するために実施されてもよく、これは、低減されたイオン抑制、増加されたイオン化、低減された汚染、より安定したエレクトロスプレー性能、検出のより優れた正確度、または質量分析法の間のより高い検出信号を補助し得る。例えば、霧化を含む、ESI性能は、総質量質量分析信号内の1.0%未満の標準誤差変動によって特徴付けられ得る。いくつかの事例では、ESIは、流体を、流体入口から、毛細管またはチャネルを通して、毛細管またはチャネルの遠位端の外へと流動させながら、実施されてもよい。
【0161】
本明細書に説明されるように、いくつかの事例では、マイクロ流体デバイス(例えば、マイクロ流体チップまたはマイクロ流体カートリッジ)は、エミッタ先端(例えば、ESIオリフィス)としての役割を果たす、流体オリフィスを備える。エミッタ先端は、ラッピングホイール、ファイル、機械加工ツール、CNC機械加工ツール、ウォーター噴射切断、または小表面体積を提供するようにESI先端を形成するための他のツールもしくはプロセス、および同等物を使用して、小表面および液滴体積を提供するように鋭利化されてもよい。いくつかの事例では、エミッタ先端は、マイクロ流体デバイスの縁または角に位置付けられてもよい。他の事例では、先端は、チップの先端部分を加熱および伸展することによって延伸されてもよい。いくつかの事例では、先端は、次いで、所望の長さまたは直径に切断されてもよい。いくつかの事例では、エレクトロスプレー先端は、疎水性コーティングでコーティングされてもよく、これは、先端上に形成される液滴のサイズを最小限にし得る。いくつかの実施形態では、システムは、分離ステップの間、被分析物がデバイスから溶出されていないとき、動員剤、陰極液、または任意の他の液体をエレクトロスプレーしてもよい。いくつかの実施形態では、基材出口オリフィスはさらに、楔、角錐、円錐体、または他の3次元形状に成形されてもよい。いくつかの実施形態では、形状は、平坦特徴を含んでもよく、そこで、チャネル(ガスまたは流体)のいくつかまたは全てが、退出する。いくつかの実施形態では、基材は、疎水性または親水性である、化学的に修飾された表面である、もしくは流体、すなわち、水、有機溶媒等と事前に規定された接触角度を維持してもよい。
【0162】
マイクロ流体デバイス(例えば、生物製剤またはバイオ後続品)から排出され、質量分析計の中に導入される被分析物に関する質量/電荷比(または「質量」)は、種々の異なる質量分析計設計のうちのいずれかを使用して測定されることができる。実施例は、限定ではないが、飛行時間質量分析、四重極質量分析、イオントラップまたはオービトラップ質量分析、飛行距離質量分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴、共鳴質量測定、およびナノメカニカル質量分析を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスのエレクトロスプレー特徴は、分離チャネルと一直線であってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスのエレクトロスプレー特徴は、分離チャネルに対して直角に、または中間角度に配向されてもよい。開示される方法のいくつかの実施形態では、毛細管またはマイクロ流体デバイスにおいて実施される最終分離もしくは濃縮ステップからの分離および/または濃縮された被分析物分画の実質的に全てが、連続的な流れにおいてエレクトロスプレー先端もしくは特徴から排出される。いくつかの実施形態では、被分析物混合物の一部(例えば、着目分画)が、質量分析計等の分析器具またはサンプルの少なくとも一部を分画ならびに/もしくは濃縮するように構成される別のデバイスと界面接触するように構成される出口または流体オリフィスを介してマイクロ流体デバイスから排出されてもよい。
【0164】
いくつかの実施形態では、毛細管またはマイクロ流体デバイスからの排出は、圧力、電気力、イオン化、もしくはこれらの任意の組み合わせを使用して実施される。いくつかの実施形態では、排出は、上記に説明されるような動員ステップと一致する。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化のために使用されるシース液が、電気泳動分離のための電解質として使用される。好ましい実施形態では、霧化ガス(例えば、マイクロ流体デバイスのガスチャネルを通して流動する)が、質量分析計等の分析器具の中へのサンプルの導入の間、サンプルを霧化し、および/または液滴サイズを減少させるために提供される。霧化の間、ガス(例えば、空気、酸素、窒素等)流が、サンプルをエアロゾル化するために十分に高速において、サンプルに向かって指向される。結果として生じるサンプルは、より小さい液滴を備え、これは、次いで、より急速に蒸発し、質量分析計の中に導入されるサンプルの改良されたイオン化を可能にし得る。
【0165】
エレクトロスプレーイオン化性能の撮像:本明細書に開示されるものは、エレクトロスプレーイオン化性能、したがって、毛細管ベースまたはマイクロ流体デバイスベースのESI-MSシステムのために収集される質量分析法データの品質を改良するためのデバイス、方法、およびシステムである。いくつかの事例では、エレクトロスプレーイオン化設定におけるテイラー円錐の撮像が、ESIの間、霧化プロセスの性能を査定するために使用されてもよい。例えば、テイラー円錐の撮像は、テイラー円錐または霧化プロセスのサイズ、形状、または他の特性(例えば、液滴サイズ、均一性等)に関するデータを提供し得る。ある事例では、撮像は、テイラー円錐の形状、密度、または他の特性が、規定された範囲内に維持されるように、1つまたはそれを上回る動作パラメータのフィードバック制御を提供するためにコンピュータ実装方法において使用されてもよい。いくつかの実施形態では、そのようなフィードバックプロセスを通して制御され得る動作パラメータは、限定ではないが、エレクトロスプレー先端またはオリフィスと質量分析計入口との整合、エレクトロスプレー先端と質量分析計入口との間の距離(例えば、統合エレクトロスプレー特徴を備える毛細管先端またはマイクロ流体デバイスをプログラマブル精密X-Y-Z変換ステージ上に搭載することによる)、エレクトロスプレー先端を通した被分析物サンプルの流率(例えば、被分析物サンプルの排出を駆動するために使用される圧力、電場強度、またはそれらの組み合わせを調節することによる)、例えば、チャネルの近位端において、例えば、エレクトロスプレー先端またはオリフィスと質量分析計入口との間に印加される電圧、排出される被分析物サンプルを囲繞するシース液またはシースガスもしくは霧化装置ガスの体積流率、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0166】
分離チャネルの撮像:いくつかの事例では、開示されるデバイスおよびシステムは、少なくとも1つの分離チャネルの全てまたは一部の撮像を実施し、分離および/または動員反応が実施されている間にそれを監視するように構成されてもよい。いくつかの事例では、開示されるデバイスおよびシステムは、複数の分離チャネルの全てまたは一部の撮像を実施し、複数の分離および/または動員反応が実施されている間にそれらを並行して監視するように構成されてもよい。いくつかの事例では、分離および/または動員反応は、当業者に公知である種々の撮像技法のうちのいずれかを使用して撮像されてもよい。実施例は、限定ではないが、紫外線(UV)光吸光度、可視光吸光度、蛍光(例えば、固有蛍光もしくはフルオロフォアで1つまたはそれを上回る被分析物を標識したことから生じる蛍光)、フーリエ変換赤外分光法、フーリエ変換近傍赤外分光法、ラマン分光法、光学分光法、および同等物を含む。いくつかの事例では、複数の分離(または濃縮)チャネルは、複数の毛細管の管腔であってもよい。いくつかの事例では、複数の分離(または濃縮)チャネルは、マイクロ流体デバイス内の複数の流体チャネルであってもよい。いくつかの事例では、分離(または濃縮)チャネルの全てまたは一部、分離チャネルおよび下流分析器具の端部またはエレクトスプレーオリフィスもしくは先端を接続する、接合部もしくは接続チャネル、またはエレクトスプレーオリフィスもしくは先端自体、またはそれらの任意の組み合わせが、撮像されてもよい。いくつかの事例では、分離(または濃縮)チャネルは、毛細管の管腔であってもよい。いくつかの事例では、分離(または濃縮)チャネルは、マイクロ流体デバイス内の流体チャネルであってもよい。
【0167】
分離された被分析物帯の撮像および検出のために使用される波長範囲は、典型的には、撮像技法およびそこからデバイスまたはその一部が加工される材料の選定に依存するであろう。例えば、UV光吸光度が、分離チャネルの全てまたは一部、もしくはマイクロ流体デバイスの他の部分を撮像するために使用される場合において、(ペプチド結合の固有吸光度に起因して)約220nmおよび/または(芳香族アミノ酸残基の固有吸光度に起因して)約280nmにおける検出は、デバイスの少なくとも一部、例えば、分離チャネルまたはその一部が、これらの波長における光に対して透明であることを前提として、分離ならびに/もしくは動員の間にタンパク質帯を可視化することを可能にし得る。いくつかの事例では、分離されるべき被分析物は、分離に先立って、蛍光画像、UV吸光度画像、または他の好適な撮像技法を使用して、撮像され得るように、例えば、フルオロフォア、発色団、化学発光タグ、または他の好適な標識で標識されてもよい。例えば、被分析物が商業用製造プロセスによって産生されるタンパク質から成る、いくつかの事例では、タンパク質は、蛍光を使用して撮像され得るように、緑色蛍光タンパク質(GFP)ドメインまたはその変異型を組み込むように遺伝子操作されてもよい。いくつかの事例では、タンパク質または他の被分析物分子を標識することは、標識自体が、選定された分離技法が基づく被分析物性質に干渉しない、もしくはそれを摂動しないことを確実にするためのアプローチを使用して、実施されてもよい。
【0168】
いくつかの事例では、画像(またはそこから導出されるデータ)が、例えば、第1の分離チェネルまたは複数の分離チャネルから第2の分離チャネルまたは第2の複数の分離チャネルまで、もしくは第1の分離チャネルまたは複数の分離チャネルから第1のチャネルまたは複数の分離チャネルの出口端と流体連通する第2の分離チャネルまたは複数のチャネルまでの分離された被分析物分画またはその一部の動員ステップもしくは他の移送をトリガするために、使用されてもよい。例えば、いくつかの事例では、開示される方法は、第1の複数の分離チャネルおよび第2の複数の分離チャネルを含有する、マイクロ流体デバイスの中に被分析物混合物を注入するステップを含んでもよい。第1の複数の分離チャネルは、サンプル被分析物混合物からの被分析物を結合するように構成される、媒体を含有してもよい。故に、サンプル被分析物混合物が、デバイス、例えば、マイクロ流体デバイスまたはマイクロ流体カートリッジの中に装填または注入されるとき、各サンプル被分析物混合物内の被分析物の少なくともある分画が、基質に結合される、および/または第1の複数の分離チャネルを通して流動しないように妨げられてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスの中に被分析物混合物を注入するステップは、第1の複数の分離チャネル内でクロマトグラフィ分離を生じさせることができる。溶出剤が、次いで、被分析物の少なくともある分画が、存在する場合、各分離チャネル内の媒体から動員されるように、マイクロ流体デバイスの中に注入されることができる。いくつかの事例では、第1の複数の分離チャネルは、被分析物が動員されている間に撮像されてもよい。いくつかの事例では、第1の複数の分離反応の撮像は、全カラム(例えば、全チャネル)撮像および/または分離チャネルの一部の撮像を含んでもよい。いくつかの事例では、電場は、被分析物分画が、第2の複数の分離チャネルの中に動電学的に注入されるように、撮像が、被分析物分画が第1の複数の分離チャネルおよび第2の複数の分離チャネルの交点に配置されることを検出するときに、第2の複数の分離チャネルに印加されてもよい。例えば、いくつかの事例では、第1の複数の分離チャネルおよび第2の複数の分離チャネルは、一連のT字接合部を形成してもよい。いくつかの事例では、撮像は、被分析物分画(例えば、着目分画)が一連のT字接合部のうちの1つまたはそれを上回るものにあるときを検出するために、使用されてもよい。電場を印加することは、分離の第2の段階のために、第2の複数の分離チャネルの中に(随意に、一連のT字接合部に位置しない他の被分析物ではなく)着目被分析物分画を動電学的に注入することができる。いくつかの事例では、電場は、着目被分析物分画がT字接合部のうちの1つまたはそれを上回るものにおいて検出されるかどうかに応じて、第2の複数の分離チャネルのうちの1つまたはそれを上回るものに独立して印加されてもよい。
【0169】
いくつかの事例では、撮像は、動員反応を監視するように、動員の間に実施されてもよい。いくつかの事例では、分離反応を監視するために使用される撮像システムはまた、動員反応を監視するために使用されてもよい。いくつかの事例では、チャネルまたは複数のチャネルの一部のみが、動員反応を監視するように撮像されてもよい。いくつかの事例では、チャネル全体または複数のチャネルが、撮像されてもよく、撮像されたチャネルもしくは複数のチャネルの一部のみが、動員反応を監視するために使用されてもよい。例えば、チャネルは、所与のサンプリングレートにおいて撮像されてもよく、発生される画像毎に、1つまたは複数のチャネルの遠位端に対応する画像の一部が、移動度クロマトグラムを発生させるために使用されてもよい。移動度クロマトグラムは、時間の関数として、例えば、あるピクセル幅(例えば、8ピクセル)の平均吸光度についての情報を提供してもよい。いくつかの事例では、(例えば、チャネルの遠位端に対応する)移動度クロマトグラムを発生させるために使用される画像のピクセル幅は、少なくとも1ピクセル、少なくとも2ピクセル、少なくとも3ピクセル、少なくとも4ピクセル、少なくとも5ピクセル、少なくとも6ピクセル、少なくとも7ピクセル、少なくとも8ピクセル、少なくとも9ピクセル、少なくとも10ピクセル、少なくとも15ピクセル、少なくとも20ピクセル、少なくとも25ピクセル、少なくとも30ピクセル、少なくとも35ピクセル、少なくとも40ピクセル、少なくとも50ピクセル、少なくとも60ピクセル、少なくとも70ピクセル、少なくとも80ピクセル、少なくとも90ピクセル、少なくとも100ピクセルを備えてもよい。
【0170】
移動度クロマトグラムは、動員反応のパラメータを判定するために使用されてもよい。例えば、移動度クロマトグラムは、質量分析計を較正し、1つまたはそれを上回る被分析物の飛行時間情報、ピーク幅、ピーク速度、ピーク移動度、ピーク位置等を判定するために使用されてもよい。いくつかの事例では、移動度クロマトグラムは、リアルタイムで発生されてもよい。いくつかの事例では、移動度クロマトグラムは、サンプリングレート(例えば、ナイキストサンプリングレート、1~2Hz、または質量分析計のサンプリングレートに合致する周波数)において発生されてもよい。いくつかの事例では、クロマトグラムは、時間の関数として、チャネルのセグメントの吸光度についての情報を生じさせるために使用されてもよい。
【0171】
システムおよびシステム構成要素:いくつかの事例では、本開示のシステムは、開示されるデバイスのうちの1つまたはそれを上回るもの(例えば、マイクロ流体デバイス)、1つまたはそれを上回る高電圧電力供給源(もしくは複数の並列分離の場合では、2つまたはそれを上回るチャネルの独立した制御を可能にする単一の多重化高電圧電力供給源)、オートサンプラおよび/または流体取扱システム、流体流コントローラ、撮像モジュール、動的光散乱モジュール、マイクロプレート取扱ロボットモジュール、(例えば、流体液滴の蓄積がエレクトスプレー先端の外部に蓄積しないように除去または防止するための)廃棄物管理モジュール、電極界面接触ユニット、プロセッサもしくはコンピュータ、またはそれらの任意の組み合わせを備えてもよい。
【0172】
高電圧電力供給源:いくつかの事例では、開示されるシステムの1つまたはそれを上回る高電圧電力供給源(もしくは2つまたはそれを上回るチャネルの独立した制御を可能にする単一の多重化高電圧電力供給源)は、複数の分離チャネルの同時の独立した電気制御を提供するように、例えば、同時に、かつ独立して、規定電圧または電流を複数の分離チャネルまたは補助流体チャネル(例えば、等電点電気泳動反応の完了に続いて、化学動員剤を分離チャネルに送達するために使用される動員チャネル)のそれぞれに印加するように構成される。いくつかの事例では、開示されるシステムの2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源(もしくは2つまたはそれを上回るチャネルの独立した制御を可能にする単一の多重化高電圧電力供給源)は、(全電流だけではなく)複数の分離チャネルのうちの各分離チャネルを通して流動する電流を監視および/または記録するように構成される。本明細書に説明されるように、分離チャネルは、異なるサンプルまたは同一のサンプル(例えば、サンプルのアリコート)を備えてもよい。いくつかの事例では、各分離チャネルを通して流動する電流は、例えば、等電点電気泳動反応が完了したときを判定するため、および/または障害(例えば、分離チャネル内の気泡の導入もしくは形成)を検出するために使用されてもよい。
【0173】
いくつかの事例では、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源は、例えば、複数の分離チャネルおよび/または補助チャネルのそれぞれを横断して印加される電圧が、分離反応の持続時間にわたって、もしくは規定時間周期にわたって固定されて保持される、定電圧モードで起動するようにプログラムまたは別様に構成されてもよい。いくつかの事例では、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源は、1つまたはそれを上回る規定時間において、第1の規定電圧から少なくとも第2の規定電圧までの複数の分離チャネルおよび/または補助チャネルのそれぞれを横断して印加される電圧の段階的変化を生じるようにプログラムもしくは別様に構成されてもよい。いくつかの事例では、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源は、分離反応の経過にわたって、電圧の2つ、3つ、4つ、5つ、または5つを上回る段階的変化を生じるようにプログラムもしくは別様に構成されてもよい。
【0174】
いくつかの事例では、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源は、定電力モードで起動し、例えば、伝導度変化に起因する分離反応の間に電流が降下するにつれて、所与の分離チャネルに印加される電圧を上昇させ、それによって、電圧を増加させ、過剰なジュール加熱を誘発することなく分離時間を最小限にすることを可能にするようにプログラムまたは別様に構成されてもよい。
【0175】
上記のように、いくつかの事例では、電気泳動分離または等電点電気泳動反応(もしくは他の動電注入または分離プロセス)を実施するために使用される電場は、約0V/cm~約1,000V/cmに及んでもよい。故に、いくつかの事例では、開示されるシステムの2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源は、(例えば、長さ5cmの分離チャネルに関して)約0ボルト~約5,000ボルトに及ぶ調節可能な電圧を提供するように構成されてもよい。いくつかの事例では、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源は、少なくとも0、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、または少なくとも5,000ボルトの調節可能電圧を提供するように構成されてもよい。いくつかの事例では、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源は、最大で5,000、最大で1,000、最大で500、最大で100、最大で50、最大で10、または最大で5ボルトの調節可能電圧を提供するように構成されてもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの事例では、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源は、約100ボルト~約1,000ボルトに及ぶ調節可能な電圧を提供するように構成されてもよい。当業者は、2つまたはそれを上回る高電圧電力供給源が、本範囲内の任意の値の調節可能な電圧、例えば、約1,250ボルトを提供するように構成され得ることを認識するであろう。
【0176】
流体流コントローラ:いくつかの事例では、開示されるシステムは、例えば、(例えば、単独で、もしくは1つまたはそれを上回る分離チャネルに印加される電圧勾配と組み合わせて使用するための)1つまたはそれを上回る分離チャネルもしくは分離チャネルと交差する補助チャネルを通して独立して制御された圧力駆動流を提供するように構成される、1つまたはそれを上回るプログラマブル流体流コントローラを備えてもよい。いくつかの事例では、圧力駆動流は、分離チャネルから外に分離された被分析物ピークを動員するために使用されてもよい。いくつかの事例では、圧力駆動流は、例えば、分離チャネルの中に化学動員剤(例えば、等電点電気泳動のために使用されるpH勾配を乱す電解質)を導入し、それによって、分離チャネルから外に分離された被分析物ピークを動員するために使用されてもよい。いくつかの事例では、圧力駆動流は、例えば、分離チャネルの中に化学動員剤(例えば、分離チャネル内に閉じ込められた定常相から被分析物を溶出するための溶出緩衝剤)を導入し、それによって、分離チャネルから外に分離された被分析物ピークを動員するために使用されてもよい。いくつかの事例では、流動は、デバイスの中への流量制限器、例えば、流体力学的抵抗を増加させ、一様な流動プロファイルおよびエレクトスプレー性能を提供するための長い毛細管またはチャネル長さの統合によって、制御されてもよい。
【0177】
開示されるデバイスおよびシステムを通した圧力駆動流体流の制御は、典型的には、ポンプ(または他の流体作動機構)および弁の使用を通して実施されるであろう。好適なポンプの実施例は、限定ではないが、シリンジポンプ、プログラマブルシリンジポンプ、蠕動ポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、および同等物を含む。いくつかの実施形態では、システムを通した流体流は、デバイス上の1つまたはそれを上回る流体入口もしくはサンプルまたは試薬リザーバにおいて正の空気圧を印加することによって、制御されてもよい。いくつかの実施形態では、システムを通した流体流は、1つまたはそれを上回る流体出口もしくは廃棄物リザーバにおいて真空に引くことによって、制御されてもよい。好適な弁の実施例は、限定ではないが、逆止弁、電気機械2方向または3方向弁、空気圧2方向および3方向弁、ならびに同等物を含む。いくつかの事例では、1つまたはそれを上回るマイクロポンプもしくは(例えば、蠕動ポンプ、圧電ポンプ)、マイクロ弁(例えば、計量注入弁、圧電弁、コック栓弁、スライド弁)が、デバイス内に統合されてもよい。ある場合では、開示されるデバイスおよびシステムを通した制御または圧力駆動流体流は、ブラダ、ブリスタパック、ピストン、スクリュ、ガラスフリット、またはそれらの組み合わせを使用して、実施されてもよい。いくつかの事例では、圧力駆動流体流は、無パルスであり得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、システムを通した流体流は、1つまたはそれを上回るデバイスもしくはシステムパラメータを使用して制御されてもよい。いくつかの事例では、流動が、(例えば、デバイスの面積内のガス圧を変化させるように)システムの温度を改変することによって、または温度勾配を導入することによって、デバイス内で発生されてもよい。いくつかの事例では、リザーバ高さは、(例えば、静水圧を介して)デバイスの1つまたはそれを上回るチャネルを通して流動を駆動するように変更されてもよい。いくつかの事例では、デバイスの一部(例えば、入口または出口)が、露出され、蒸発することを可能にされ、それによって、チャネルを通して流体流を駆動してもよい。いくつかの事例では、流体流は、無パルスであり得る。
【0179】
いくつかの事例では、開示されるデバイスおよびシステムを通した流体流が、電気的に実施されてもよい。例えば、デバイスのチャネルのうちの1つまたはそれを上回るものの中もしくはチャネルの外側の電気浸透流が、例えば、電気浸透ポンプを使用して実施されてもよい。
【0180】
ガス流コントローラ:いくつかの事例では、開示されるシステムは、例えば、流体チャネルと交差する、1つまたはそれを上回るガスチャネルまたは補助チャネルを通して、独立して制御された圧力駆動ガス流を提供するように構成される、1つまたはそれを上回るプログラマブルガス流コントローラを備えてもよい。いくつかの事例では、流量は、デバイスの中への流動制限器、例えば、流体力学的抵抗を増加させるための長毛細管またはチャネル長、可変幾何学形状等の統合によって制御され、均一ガス流プロファイルを提供してもよい。
【0181】
開示されるデバイスおよびシステムを通した圧力駆動ガス流の制御は、ポンプ(または他の流体/ガス作動機構)および弁の使用を備えることができる。いくつかの実施形態では、システムを通したガス流は、正の空気圧圧力をデバイスの1つまたはそれを上回るガス入口に印加することを用いて制御されてもよい。いくつかの実施形態では、システムを通したガス流は、真空を1つまたはそれを上回るガス出口に引くことを用いて制御されてもよい。好適な弁の実施例は、限定ではないが、逆止弁、電気機械2方向または3方向弁、空気圧2方向および3方向弁、ならびに同等物を含む。いくつかの事例では、1つまたはそれを上回るマイクロポンプ(例えば、蠕動ポンプ、圧電ポンプ)またはマイクロ弁(例えば、計量注入弁、圧電弁、コック栓弁、スライド弁)が、デバイス内に統合されてもよい。ある場合では、開示されるデバイスおよびシステムを通した制御または圧力駆動流体流は、ブラダ、ブリスタパック、ピストン、スクリュ、ガラスフリット、またはそれらの組み合わせを使用して、実施されてもよい。いくつかの事例では、圧力駆動流体流は、無パルスであり得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、システムを通したガス流は、1つまたはそれを上回るデバイスもしくはシステムパラメータを使用して制御されてもよい。いくつかの事例では、流動が、(例えば、デバイスの面積内のガス圧を変化させるように)システムの温度を改変することによって、または温度勾配を導入することによって、デバイス内で発生されてもよい。いくつかの事例では、リザーバ高さは、(例えば、静水圧を介して)デバイスの1つまたはそれを上回るチャネルを通して流動を駆動するように変更されてもよい。いくつかの事例では、流体流は、無パルスであり得る。
【0183】
1つまたはそれを上回るガスチャネルを通したガス流は、原動力、例えば、圧力駆動流、動電力、重力、遠心力等、またはそれらの組み合わせを使用して実施されてもよい。いくつかの事例では、ガス流は、圧縮ガス源を使用して駆動される。いくつかの好ましい事例では、ガス出口オリフィスの上流の入口ガス圧は、100~110ポンド/平方インチ(PSI)に及ぶ。ガス出口オリフィスの上流の入口ガス圧は、約50PSI、約60PSI、約70PSI、約80PSI、約90PSI、約100PSI、約110PSI、約120PSI、約130PSI、約140PSI、約150PSI、またはそれを上回ってもよい。いくつかの事例では、ガス出口オリフィスの上流の入口ガス圧は、であってもよい少なくとも約50PSI、少なくとも約60PSI、少なくとも約70PSI、少なくとも約80PSI、少なくとも約90PSI、少なくとも約100PSI、少なくとも約110PSI、少なくとも約120PSI、少なくとも約130PSI、少なくとも約140PSI、少なくとも約150PSI、またはそれを上回ってもよい。いくつかの事例では、ガス出口オリフィスの上流の入口ガス圧は、最大で約150PSI、最大で約140PSI、最大で約130PSI、最大で約120PSI、最大で約110PSI、最大で約100PSI、最大で約90PSI、最大で約80PSI、最大で約70PSI、最大で約60PSI、最大で約50PSI、またはそれ未満であってもよい。ガス出口オリフィスの上流の入口ガス圧は、例えば、約50PSI~約110PSIの範囲内に該当し得る。ガス出口オリフィスにおけるガス圧は、約0PSI、約5PSI、約10PSI、約15PSI、または約20PSIであってもよい。特に、側面、ガス出口オリフィスにおけるガス圧は、約0PSIであってもよい。
【0184】
ガス流率は、ある値の範囲に該当してもよく、具体的幾何学形状または有用性(例えば、ESI先端等を乾燥させるための霧化のため)に従って調節されてもよい。ガス流率は、約10m/秒、約20m/秒、約30m/秒、約40m/秒、約50m/秒、約60m/秒、約70m/秒、約80m/秒、約90m/秒、約100m/秒、約150m/秒、約200m/秒、約300m/秒、約400m/秒、約500m/秒、またはそれを上回ってもよい。ガス流率は、少なくとも約10m/秒、少なくとも約20m/秒、少なくとも約30m/秒、少なくとも約40m/秒、少なくとも約50m/秒、少なくとも約60m/秒、少なくとも約70m/秒、少なくとも約80m/秒、少なくとも約90m/秒、少なくとも約100m/秒、少なくとも約150m/秒、少なくとも約200m/秒、少なくとも約300m/秒、少なくとも約400m/秒、少なくとも約500m/秒、またはそれを上回ってもよい。ガス流率は、最大で約500m/秒、最大で約400m/秒、最大で約300m/秒、最大で約200m/秒、最大で約100m/秒、最大で約90m/秒、最大で約80m/秒、最大で約70m/秒、最大で約60m/秒、最大で約50m/秒、最大で約40m/秒、最大で約30m/秒、最大で約20m/秒、最大で約10m/秒、またはそれ未満であってもよい。ガス流率は、ある値の範囲、例えば、約50m/秒~150m/秒に該当し得る。いくつかの側面では、ガス流率は、周囲条件に応じて、音速速度(例えば、約350m/秒)にあってもよい。いくつかの側面では、ガス流率は、周囲条件に応じて、超音速速度にあってもよい。
【0185】
ガス源は、空気、窒素、酸素、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)、電子担体ガス(例えば、亜酸化窒素、またはフルオロポリマー、例えば、フルオロウレタン)を備えてもよい。ガスの組み合わせ、例えば、窒素および酸素が、使用されてもよい。いくつかの事例では、溶媒(例えば、メタノール)が、ガスラインに添加されてもよく、これは、ガス流が、流体チャネルオリフィスまたはその近傍において、液体の流体流経路と収束するとき、電荷を分子上で駆動することを補助し得る。いくつかの事例では、ガス源は、分析器具(例えば、質量分析計)から取得されてもよく、本明細書に説明されるデバイス、システム、および方法の中に統合されてもよい。
【0186】
流体流制御の異なるモードが、開示される被分析物分離方法の実施の間の異なる時点で利用されてもよく、例えば、(所与のデバイスまたは流体もしくはガスチャネルのための入口および出口に対する)前方流、逆流、発振もしくは拍動流、またはそれらの組み合わせが、全て使用されてもよい。例えば、いくつかの事例では、発振もしくは拍動流派、例えば、デバイス内に閉じ込められ得る任意の気泡の遊離を促進するために、デバイスプライミングステップの間に使用されてもよい。いくつかの事例では、デバイスは、例えば、流体または試薬の気泡がない導入を促進するように、デバイスプライミングのために真空を受けてもよい(例えば、脱気される)。
【0187】
異なる流体流率が、開示される被分析物分離方法の実施の間の異なる時点で利用されてもよい。例えば、開示されるデバイスおよびシステムのいくつかの事例では、体積流率は、-100mL/秒から+100mL/秒まで変動してもよい。いくつかの事例では、体積流率の絶対値は、少なくとも0.001mL/秒、少なくとも0.01mL/秒、少なくとも0.1mL/秒、少なくとも1mL/秒、少なくとも10mL/秒、または少なくとも100mL/秒であってもよい。いくつかの事例では、体積流率の絶対値は、最大で100mL/秒、最大で10mL/秒、最大で1mL/秒、最大で0.1mL/秒、最大で0.01mL/秒、または最大で0.001mL/秒であってもよい。所与の時点における体積流率は、本範囲内の任意の値、例えば、2.5mL/秒の前方流率、-0.05mL/秒の逆流率、0mL/秒の値(すなわち、停止した流動)を有してもよい。いくつかの事例では、各分離チャネルおよび/または補助流体チャネルを通した圧力駆動流体流モードならびに/もしくは流体流速は、規定時間経過を辿るように、相互から独立してプログラムされてもよい。
【0188】
ESIの間、ESIオリフィスからのサンプル(または分離されたサンプル)の流率は、略ナノ体積流を取得するように調整されることができる。例えば、テイラー円錐を形成するように放出されるにつれたサンプルの流率は、約1ナノリットル/分(nL/分)、5nL/分、10nL/分、20nL/分、30nL/分、40nL/分、50nL/分、60nL/分、70nL/分、80nL/分、90nL/分、100nL/分、200nL/分、300nL/分、400nL/分、500nL/分、600nL/分、700nL/分、800nL/分、900nL/分、1000nL/分(1μL/分)、2μL/分、3μL/分、4μL/分、5μL/分、10μL/分、またはそれを上回ってもよい。テイラー円錐を形成するように放出されるにつれたサンプルの流率は、少なくとも約1ナノリットル/分(nL/分)、少なくとも約5nL/分、少なくとも約10nL/分、少なくとも約20nL/分、少なくとも約30nL/分、少なくとも約40nL/分、少なくとも約50nL/分、少なくとも約60nL/分、少なくとも約70nL/分、少なくとも約80nL/分、少なくとも約90nL/分、少なくとも約100nL/分、少なくとも約200nL/分、少なくとも約300nL/分、少なくとも約400nL/分、少なくとも約500nL/分、少なくとも約600nL/分、少なくとも約700nL/分、少なくとも約800nL/分、少なくとも約900nL/分、少なくとも約1000nL/分(1μL/分)、少なくとも約2μL/分、少なくとも約3μL/分、少なくとも約4μL/分、少なくとも約5μL/分、少なくとも約10μL/分、またはそれを上回ってもよい。テイラー円錐を形成するように放出されるにつれたサンプルの流率は、最大で約10μL/分、最大で約5μL/分、最大で約4μL/分、最大で約3μL/分、最大で約2μL/分、最大で約1μL/分、最大で約900nL/分、最大で約800nL/分、最大で約700nL/分、最大で約600nL/分、最大で約500nL/分、最大で約400nL/分、最大で約300nL/分、最大で約200nL/分、最大で約100nL/分、最大で約90nL/分、最大で約80nL/分、最大で約70nL/分、最大で約60nL/分、最大で約50nL/分、最大で約40nL/分、最大で約30nL/分、最大で約20nL/分、最大で約10nL/分、最大で約9nL/分、最大で約8nL/分。最大で約7μL/分、最大で約6μL/分、最大で約5μL/分、最大で約4μL/分、最大で約3μL/分、最大で約2μL/分、最大で約1μL/分であってもよい。テイラー円錐を形成するように放出されるにつれたサンプルの流率は、ある値の範囲、例えば、約500nL/分~約1μL/分内に該当し得る。
【0189】
オートサンプラおよび流体取扱システム:いくつかの事例では、開示されるシステムはさらに、分離チャネルへの複数のサンプルまたは試薬入口ポートの中へのサンプルアリコートおよび/または他の分離反応試薬の自動的な独立して制御された装填のために構成される、オートサンプラもしくは流体取扱システムを備えてもよい。いくつかの事例では、特注のオートサンプラまたは流体取扱モジュールが、開示されるシステムに組み込まれてもよい。いくつかの事例では、市販のオートサンプラまたは流体取扱モジュールが、開示されるシステムに統合されてもよい。好適な市販のオートサンプラの実施例は、限定ではないが、Agilent 1260 Infinity二重ループオートサンプラおよび1260 Infinity高性能マイクロオートサンプラ(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)、HT1500L HPLCオートサンプラ(HTA, Brescia, Italy)、Spark Holland Alias(Spark-Holland, Emmen, Netherlands)、ならびにSIL-20A/AC HPLCオートサンプラ(Shimadzu, Columbia, MD)を含む。好適な市販の流体取扱システム(または液体取扱システム)の実施例は、限定ではないが、Tecan Fluent(登録商標)システム(Tecan Trading AG, Switzerland)、Hamilton Microlab STARおよびMicrolab NIMBUSシステム(Hamilton, Reno, NV)、ならびにAgilent Bravo自動液体取扱プラットフォームおよびAgilent垂直ピペット操作ステーション(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を含む。
【0190】
いくつかの事例では、1つまたはそれを上回る流体流コントローラもしくは流体取扱システムが、1つまたはそれを上回るリザーバを充填もしくは補充するために使用されてもよい。リザーバは、本明細書に説明されるように、カートリッジ、マイクロ流体デバイス、またはアセンブリと流体連通してもよい、または、例えば、界面接触ユニットを介して、カートリッジまたはアセンブリと界面接触する、流体ラインに接続されてもよい(例えば、
図17A-17Bおよび下記の実施例9参照)。リザーバは、例えば、圧縮ガスユニット、分離反応を実施するための試薬(例えば、陰極液、陽極液、担体両性電解質等)、動員反応を実施するための試薬、またはエレクトロスプレーイオン化反応を実施するための試薬を備えてもよい。
【0191】
廃棄物管理:いくつかの事例では、マイクロ流体デバイスのガスチャネルまたは複数のガスチャネルは、流体(例えば、分離)チャネル内のまたはそれに隣接する、廃棄物を管理するために使用される。ガスチャネルは、例えば、流体を、分離チャネルと流体連通する、流体オリフィスから離れるように指向するために使用されてもよい。例えば、ガスチャネルは、流体を廃棄物レセプタクルに向かって、または概して、下流分析器具(例えば、質量分析計)から離れるように指向するために使用されてもよい。いくつかの事例では、ガスチャネルは、流体オリフィスに隣接する、ガス出口オリフィスにおいて空気を排出し、その空気流は、過剰液体を流体オリフィス(エレクトロスプレー先端を備える、またはそれとしての役割を果たし得る)から除去するために使用される。いくつかの事例では、ガスチャネルは、エレクトロスプレー先端を清掃するために使用されてもよい。例えば、より高い圧力が、過剰流体または廃棄物生成物をエレクトロスプレー先端から離れるように指向するために印加されてもよい。
【0192】
ある実施形態では、システムは、廃棄物管理モジュールを備え、これは、マイクロ流体デバイスと統合される(すなわち、それに取り付けられる)か、またはそれと別個であるかのいずれかであることができる。廃棄物管理モジュールは、マイクロ流体デバイスから廃棄生成物を収集するために使用されてもよい。いくつかの事例では、廃棄物管理モジュールは、加えて、または代替として、マイクロ流体デバイスの出口もしくは表面における液滴形成を管理するために使用されてもよい。例えば、廃棄物管理モジュールは、液滴がデバイスの出口(例えば、エレクトスプレー先端)において形成されること、および/またはデバイスの異なるセグメントもしくは部分(例えば、入口、界面接触された電極等)への液滴の吸い上げを防止するために使用されてもよい。いくつかの事例では、廃棄物管理モジュールは、陽または陰圧(例えば、真空)の印加を含んでもよい。そのような場合において、真空が、マイクロ流体デバイスの一部(例えば、出口またはエレクトスプレー先端)に印加されてもよい。例えば、フランジまたはアダプタが、チップに適用され、それによって、デバイスの設置または任意の下流分析ユニット(例えば、質量分析計)への最小限の妨害を伴って、真空がデバイスと界面接触されることを可能にし得る。真空は、次いで、液滴または廃棄生成物が出口もしくはエレクトスプレー先端から排出されるにつれて、それらを吸引するために使用されてもよい。いくつかの事例では、廃棄物管理モジュールは、正圧を使用する。例えば、(例えば、霧化装置モジュールからの)空気流が、液滴をエレクトロスプレー先端から離れるように指向するために使用されてもよい。そのような実施例では、空気流は、空気(または窒素ガス)圧を発生させ、液滴を排出する、またはデバイスもしくはその一部(例えば、エレクトスプレー先端)から離れるように液滴を指向するように、空気もしくは窒素ガス源および/または加圧器に接続されてもよい。いくつかの事例では、廃棄物管理モジュールは、噴霧ユニットを備えてもよい。例えば、霧化装置は、チップに固着するように構成されてもよい。霧化装置は、液滴または廃棄生成物が、エレクトスプレー先端もしくは出口から離れるように(例えば、廃棄物レセプタクルに)指向されるように、チップに向かって空気を指向するために必要な幾何学形状を備えてもよい。霧化装置は、シール機構を備えてもよく、空気圧を発生させ、液滴を排出する、またはエレクトスプレー先端から離れるように液滴を指向するように、空気源および/または加圧器に接続されてもよい。いくつかの事例では、霧化装置は、ノズルを備えてもよい。霧化装置は、ポリマー、金属、またはセラミック材料から成ってもよい。
【0193】
いくつかの事例では、本明細書に説明される廃棄物管理方法は、廃棄物管理のための他のアプローチと併せて使用されてもよい。例えば、デバイスは、流体オリフィスまたは出口における液滴形成の制御、および/またはデバイスの異なるセグメントもしくは部分(例えば、電極または入口)への液滴ならびに流体の吸い上げを最小限にすることを可能にする、幾何学形状もしくは化学/材料性質を備えてもよい。いくつかの事例では、コーティングが、デバイスの先端または出口における液滴形成を可能にするために使用されてもよく、デバイスの他のセグメントまたは部分への流体の吸い上げの防止を補助し得る。ある場合には、コーティングは、疎水性コーティングであってもよい。
【0194】
いくつかの事例では、デバイスの幾何学形状または配向は、出口における液滴形成を制御するために、および/またはデバイスの異なるセグメントもしくは部分への液滴の吸い上げを最小限にするために、使用されてもよい。例えば、出口またはエレクトスプレー先端は、最適な液滴形成を可能にするように、三角形の先端に形成されてもよい。いくつかの事例では、デバイスの幾何学形状は、廃棄物管理を制御するために使用されてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスが、ガスチャネルと、流体チャネルとを備える、事例では、ガスチャネルの幾何学形状は、高ガス圧が流体を流体オリフィスまたは出口から離れるように指向することを可能にするように最適化されてもよい。高ガス圧はまた、例えば、残骸または他の望ましくない生成物もしくは副産物を流体オリフィス(例えば、ESI先端)から除去するために使用されてもよい。
【0195】
撮像モジュール:いくつかの事例では、システムはさらに、2つまたはそれを上回る分離チャネルもしくはその一部の一連の1つまたはそれを上回る画像を入手するように構成される、撮像モジュールを備えてもよい。いくつかの事例では、画像の視野は、2つまたはそれを上回る分離チャネルの全てもしくは一部を備えてもよい。いくつかの事例では、撮像は、分離および/または動員反応が実施されている間の2つまたはそれを上回る分離チャネルの全てもしくは一部の持続的撮像を含んでもよい。いくつかの事例では、撮像は、分離および/または動員反応が実施されている間の2つまたはそれを上回る分離チャネルの全てもしくは一部の断続的または周期的撮像を含んでもよい。いくつかの事例では、撮像は、UV吸光度画像を入手するステップを含んでもよい。いくつかの事例では、撮像は、例えば、固有蛍光または被分析物に付着した外因性蛍光標識の存在に起因する蛍光の蛍光画像を入手するステップを含んでもよい。いくつかの事例では、撮像モジュールは、例えば、等電点電気泳動反応が完了するときを判定するように、および/または障害(例えば、分離チャネル内の気泡の導入もしくは形成)を検出するように構成されてもよい。
【0196】
種々の撮像システムまたはシステム構成要素のうちのいずれかが、開示される方法、デバイス、およびシステムを実装する目的のために利用されてもよい。実施例は、限定ではないが、1つまたはそれを上回る光源(例えば、発光ダイオード(LED)、ダイオードレーザ、ファイバレーザ、ガスレーザ、ハロゲンランプ、アークランプ等)、集光レンズ、対物レンズ、ミラー、フィルタ、ビームスプリッタ、プリズム、画像センサ(例えば、CCD画像センサもしくはカメラ、CMOS画像センサもしくはカメラ)、および同等物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの事例では、1つまたはそれを上回る光源は、光源のアレイを備えてもよい。例えば、LEDアレイは、デバイスの1つまたはそれを上回る領域を照明するために使用されてもよい。利用される撮像モードに応じて、光源および画像センサは、例えば、吸光度ベースの画像が入手され得るように、マイクロ流体デバイスの反対側に位置付けられてもよい。いくつかの事例では、光源および画像センサは、例えば、落射蛍光画像が入手され得るように、マイクロ流体デバイスの同一側に位置付けられてもよい。
【0197】
上記のように、画像が、分離および/または動員ステップの間に持続的に入手されてもよい、または無作為もしくは規定時間間隔において入手されてもよい。いくつかの事例では、一連の1つまたはそれを上回る画像が、持続的に、または無作為もしくは規定時間間隔において入手される。いくつかの事例では、一連の短時間露出画像(例えば、10~20枚の画像)が、高速で(例えば、ミリ秒時間尺度で)入手され、次いで、改良された信号対雑音比を有する、「単一の画像」を提供するように平均化される。いくつかの事例では、「単一の画像」は、1秒、5秒、10秒、20秒、30秒毎に、またはより長い間隔において入手される。いくつかの事例では、より長い露出時間が、信号対雑音比を改良するために使用されてもよい。いくつかの事例では、一連の1つまたはそれを上回る画像は、ビデオ画像を備えてもよい。
【0198】
画像処理:いくつかの事例では、上記のように、システムは、被分析物ピークの存在を検出し、pIマーカまたは分離された被分析物帯の位置を判定し、ピーク幅を判定し、ピーク形状(例えば、ガウス適合または他の曲線適合アルゴリズム)もしくは経時的なこれらのパラメータのうちのいずれかの変化を判定するための画像処理ソフトウェアを起動するように構成される、プロセッサ、コントローラ、またはコンピュータを備えてもよい。いくつかの事例では、画像処理は、2つまたはそれを上回る分離チャネルのうちの1つの中の障害、例えば、気泡の導入または形成の検出のために使用されてもよい。種々の画像処理アルゴリズムのうちのいずれかが、開示される方法およびシステムを実装する際に、画像前処理または画像処理のために利用されてもよい。実施例は、限定ではないが、キャニーエッジ検出方法、キャニー・デリチェエッジ検出方法、一次勾配エッジ検出方法(例えば、ソーベル演算子)、二次差分エッジ検出方法、相合同(相一致)エッジ検出方法、他の画像セグメンテーションアルゴリズム(例えば、強度閾値化、強度クラスタ化方法、強度ヒストグラムベースの方法等)、特徴およびパターン認識アルゴリズム(例えば、恣意的形状を検出するための一般化ハフ変換、円形ハフ変換等)、および数学分析アルゴリズム(例えば、フーリエ変換、高速フーリエ変換、ウェーブレット分析、自己相関、サビツキー・ゴーレイ平滑化、固有分析等)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0199】
マイクロプレート取扱ロボット:いくつかの事例では、システムはさらに、サンプルおよび/または試薬のための源としての役割を果たす、マイクロプレートを輸送および交換するように構成される、マイクロプレート取扱ロボットモジュールを備えてもよい。いくつかの事例では、システムはさらに、例えば、障害が検出された後に、システムで使用されるマイクロ流体デバイスを輸送および交換するように構成される、マイクロ流体デバイス取扱ロボットモジュールを備えてもよい。いくつかの事例では、マイクロプレート取扱およびマイクロ流体デバイス取扱は、同一のロボットモジュールによって取り扱われてもよい。いくつかの事例では、カスタムロボットが、これらの機能を実施するように、開示されるシステムに組み込まれてもよい。いくつかの事例では、市販のロボットシステムは、これらの機能を実施するように、開示されるシステムに適合および/または統合されてもよい。好適なマイクロプレート取扱ロボットシステムの実施例は、限定ではないが、Tecan Robotic Gripper Arms(Tecan Trading AG, Switzerland)およびAgilent Direct Drive and BenchBot Robots(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を含む。
【0200】
温度制御:いくつかの事例では、開示されるシステムおよび方法は、温度制御を受けてもよい。いくつかの事例では、デバイスのガスチャネルまたは複数のガスチャネルは、基材の温度を調整または制御するために使用されてもよい。例えば、ガスの温度は、熱が、ガスチャネルの中にまたはそこから消散され、デバイスを加熱または冷却し得るように変動され得る。いくつかの事例では、システムの一部(例えば、デバイスの一部)が、温度制御を受けてもよい。いくつかの事例では、システムもしくはシステムの1つまたはそれを上回る構成要素が、例えば、ペルチェ、ファンまたは他の放熱器、エアナイフを使用して、冷却されてもよい。いくつかの事例では、冷却システムは、廃棄物管理システム(例えば、エアナイフ)と統合されてもよい。いくつかの事例では、冷却システムは、冷却のための圧縮機を備えてもよい。いくつかの事例では、システムは、環境または温度制御チャンバを備えてもよい。いくつかの事例では、冷却ブロックまたは予冷されたブロックが、使用されてもよい(例えば、ステージもしくはカートリッジに結合される)。いくつかの事例では、その構成要素のシステムは、環境との熱交換を可能にする材料から構築されてもよい。いくつかの事例では、システムは、液体熱交換器を備えてもよい。いくつかの事例では、システムは、液体熱交換器を備えてもよい。いくつかの実施形態では、システムは、約15~35℃の範囲内で温度を制御するであろう。いくつかの実施形態では、システムは、約+/-5℃以内に温度を制御するであろう。いくつかの実施形態では、システムは、約+/-1℃以内に温度を制御するであろう。
【0201】
用途:開示される方法、デバイス、およびシステムは、限定ではないが、プロテオミクス研究、細胞研究、創薬および開発、ならびに臨床診断を含む、種々の分野で潜在的用途を有する。例えば、開示される方法を使用して、被分析物サンプルの分離ベースの特性評価のために達成され得る、改良された再現性および定量は、開発および/または製造の間の生物学的ならびにバイオ後続医薬品の特性評価のために大いに有益であり得る。
【0202】
生物製剤およびバイオ後続品は、例えば、組み換えタンパク質、抗体、生ウイルスワクチン、ヒト血漿由来タンパク質、細胞ベースの薬剤、天然源のタンパク質、抗体・薬物共役、タンパク質・薬物共役、および他のタンパク質薬物を含む、薬物の種類である。FDAおよび他の規制機関は、構造、機能、動物毒性、ヒト薬物動態(PK)および薬力学(PD)、臨床免疫原性、ならびに臨床安全性および有効性に関する提案された生成物および参照生成物の比較を含み得る、生物類似性を実証することへの段階的アプローチの使用を要求する(例えば、“Scientific Considerations in Demonstrating Biosimilarity to a Reference Product: Guidance for Industry”, U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, April 2015参照)。タンパク質生成物のために要求され得る、構造特性評価データの実施例は、一次構造(すなわち、アミノ酸配列)、二次構造(すなわち、アルファ螺旋またはベータシート構造を形成するための折畳の程度)、三次構造(すなわち、ポリペプチド骨格および二次構造ドメインの折畳によって産生されるタンパク質の3次元形状)、および四次構造(例えば、活性タンパク質複合体またはタンパク質の凝集状態を形成するために要求されるサブユニットの数)を含む。多くの場合、本情報は、X線結晶構造解析等の労力を有する時間集約的で高価な技法を採用することなく、入手可能ではない場合がある。したがって、候補生物学的薬物と参照薬物との間の生物類似性を確立する目的のために、タンパク質構造の便宜的でリアルタイムかつ比較的に高スループットの特性評価を可能にする、実験技法の必要性が存在する。
【0203】
いくつかの事例では、開示される方法、デバイス、およびシステムは、生物類似性を確立する目的のために、生物学的薬物候補(例えば、モノクローナル抗体(mAb))および参照生物学的薬物のための構造比較データを提供するために使用されてもよい。例えば、いくつかの事例では、薬物候補および参照薬物のための等電点の判定は、生物類似性の実証を支持して重要な証拠を提供し得る。いくつかの実施形態では、両方とも同じ反応条件下で部位特異的プロテアーゼを用いて処置された、薬物候補および参照薬物のための等電点データは、生物類似性の実証を支持して重要な証拠を提供し得る。いくつかの実施形態では、開示される方法、デバイス、およびシステムは、生物学的薬物製造プロセスを監視し(例えば、リアルタイムでバイオリアクタプロセスを監視し)、生産プロセスにおける異なる時点で採取されるサンプルまたは異なる生産工程から採取されるサンプルを分析することによって、生成物の品質および一貫性を確実にするために使用されてもよい。
【0204】
並行して複数の独立して制御された分離反応を実施するための開示されるデバイスおよびシステムは、現在利用可能な技術と比べていくつかの利点、例えば、より詳細かつ正確なサンプル特性評価(例えば、pIのより正確な判定)のために、(例えば、異なるpH勾配、異なる集束時間、異なる集束電圧等を使用して)異なるチャネル内で異なる等電点電気泳動反応(もしくは他の分離反応)を実施する能力、またはより高いスループットのサンプル特性評価のための分離反応条件の同一のセットを使用して、並行して複数のサンプルを同時に処理する能力を提供する。さらに、分離チャネル毎に使用される電流トレースおよび/または電圧設定の独立した監視ならびに/もしくは記録は、生物類似性等を実証しようとするときに、FDA提出のためのデータ追跡要件を満たすことに有利であり得る。留意されるように、いくつかの事例では、開示されるデバイスおよびシステムは、サンプル工程障害、例えば、マイクロ流体デバイス内の気泡の存在または形成を識別するように、かつ、例えば、マイクロタイタープレートもしくは他のサンプル源からサンプルを自動的に再装填し、分離反応を繰り返すことによって、回復ステップを開始するように構成されてもよい。
(実施例)
【0205】
これらの実施例は、本明細書に提供される請求項の範囲を限定するためではなく、例証的目的のためのみに提供される。
【実施例1】
【0206】
実施例1-複数の分離チャネルを備えるマイクロ流体デバイス
図1Aは、複数の分離反応、例えば、等電点電気泳動反応を実施するためのマイクロ流体デバイスの1つの非限定的実施例の図面を提供する。デバイスは、幅が210μm、深度が100μmである、流体チャネルが、例えば、エンボス加工、レーザ微小機械加工、またはフォトリソグラフィおよびウェット化学エッチングを使用して加工される、溶融石英から成る、略平面的であり得る下側基材101を備える。流体チャネルは、基材101を透明カバースリップ102に接合することによって、シールされる。いくつかの事例では、例えば、UV吸光度画像が分離および/または動員反応を監視するために使用される場合において、基材101は、光学的に透明な材料から加工されてもよい。例えば、落射蛍光画像が分離および/または動員反応を監視するために使用される、いくつかの事例では、基材101は、光学的に不透明な材料から加工されてもよい。長方形として図示されるが、デバイスは、任意の有用な形状をとり得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、流体が、デバイスから離れるように(例えば、廃棄物レセプタクルまたは分析ユニット、例えば、質量分析計に)指向されることを可能にし得る、(例えば、遠位端における)先端を備えてもよい。
【0207】
デバイス内の流体チャネルへのアクセスが、サンプル入口ポート103、アノードウェル104、カソードウェル106、サンプル出口ポート107、および化学動員剤入口ポート109を通して提供される。1つのアノードウェル104およびカソードウェル106は、それぞれ、各分離チャネル105の近位端および遠位端と流体連通ならびに電気通信する(4つの分離チャネルが、本非限定的実施例に示される)。電極は、いくつかの事例では、アノードウェル104およびカソードウェル106と接触して設置されることができる。分離チャネルは、カソードウェル106を越えてサンプル出口ポート107まで延在する(図に示される4つの分離チャネルのうちの2つに関してのみ標識される)。化学動員剤入口ポート109は、化学動員チャネル108を介して分離チャネル105の遠位端に接続される(図に示される4つの分離チャネルのうちの2つに関してのみ標識される)。
図1Aに図示されるように、入口ポート109および出口ポート107は、デバイスの側面を通して装填されるように構成されてもよく、これは、全チャネルまたは全デバイス撮像を促進し得る。
【0208】
複数の等電点電気泳動反応を実施し、タンパク質の混合物を分離する際の使用のために、タンパク質サンプルが、バイアルの中に設置し、オートサンプラの中に装填する前に、両性電解質pH勾配およびpIマーカと予混合される。サンプルは、サンプル入口ポート103を介してオートサンプラによってデバイスの中に、マイクロ流体デバイス上に、分離チャネル105を通して、サンプル出口ポート107を通して廃棄物までデバイスから外に、連続的に装填される。
【0209】
陰極液流体(例えば、H2O内の1%NN4OH)が、カソードウェル106の中に装填され、陽極液(例えば、10mMH3PO4)が、アノードウェル104の中に装填され、動員剤溶液(例えば、49%MeOH、49%H2O、1%酢酸)が、動員剤入口ポート109に接続される。
【0210】
全ての試薬が装填された後、例えば、+600V/cmの電場が、電極をアノードウェル104およびカソードウェル106に接続し、等電点電気泳動を開始することによって、アノードウェル104のうちの1つまたはそれを上回るものから対応するカソードウェル106に印加される。上記のように、分離チャネル105のそれぞれに印加される電圧および/または電流は、独立して制御されてもよく、また、時間の関数として記録されてもよい。いくつかの事例では、アノードおよびカソードのために使用される電極は、デバイスと統合されてもよい。UV吸光度画像に関して、UV光源によって提供される光のコリメートされたビームが、分離チャネル105と整合され、画像センサ(例えば、CCDカメラまたはCMOSカメラ)が、分離チャネル105のそれぞれを通して透過される光の量を測定し、それによって、それらの吸光度によって集束されたタンパク質(または他の分離された被分析物)を撮像および検出するように、分離チャネル105の反対側に設置される。いくつかの事例では、集束されたタンパク質は、非標識され、220nm、280nm、またはタンパク質が光を吸収するであろう任意の他の波長における固有吸光度を通して検出されてもよい。蛍光画像、すなわち、落射蛍光画像に関して、好適な波長の励起光が、好適なダイクロイック反射体および帯域通過フィルタを備える、光学アセンブリを用いて、分離チャネル105に送達され、放出された蛍光が、同一の光学アセンブリによって分離チャネル105から収集され、画像センサ上に撮像される。いくつかの事例では、集束されたタンパク質(または他の分離された被分析物)は、固有蛍光を使用して撮像および検出されてもよい。いくつかの事例では、集束されたタンパク質は、SYPRO(登録商標) Ruby、クーマシーブルー、および同等物等の非共有結合蛍光性、発色性、蛍光、または発色標識を使用して、検出されてもよい。いくつかの事例では、デバイスの一部は、光が、分離チャネル105を通してのみ透過され、それによって、任意の迷光が、分離チャネル105を通して通過することなく画像センサに到達し、UV吸光度測定の感度を増加させないように阻止し得るように、光学的に不透明な材料から構築されてもよい。
【0211】
分離チャネル105の全てまたは一部内の集束タンパク質の画像は、等電点電気泳動反応が複数の分離チャネル105内で実施されるにつれて、持続的および/または周期的に捕捉されることができる。いくつかの事例では、分離チャネル105の画像内のpIマーカの位置の検出が、分離チャネルに沿った位置の関数として局所pHを判定し、外挿によって、分離されたタンパク質(または他の被分析物)のためのpIのより正確な判定を行うために、使用されてもよい。いくつかの事例では、集束が完了したとき、陽圧が、サンプル出口107に向かって分離されたタンパク質(または他の被分析物)混合物を動員するように、サンプル入口ポート103および/またはアノードウェル104において印加される。いくつかの事例では、集束が完了したとき、カソードウェル106に接続された電極が、接続解除され、動員剤チャネル108と電気通信する電極が、アノードウェル104からの600V/cmの電場を化学動員剤入口109に印加し、動員剤を分離チャネル105の中に電気泳動的に導入するために、使用される。いくつかの事例では、動員剤入口109に印加される軽微な陽圧が、化学動員剤の電気泳動導入の代わりに、またはそれに加えて、使用されてもよい。
【0212】
動員剤の電気泳動導入の場合、動員剤溶液内の酢酸は、電場によって分離チャネル105の中に引き込まれ、そこで、タンパク質および両性電解質をイオン化し、等電点電気泳動のために使用されるpH勾配を乱す。濃縮タンパク質分画のイオン化は、それらをサンプル出口107に向かって分離チャネル105から外に遊走させる。動員プロセスの間に分離チャネル105を撮像し続けることは、分離されたタンパク質毎にpIの判定を精緻化するために使用されることができる。
【実施例2】
【0213】
実施例2-生物類似性の実証のための開示されるデバイスおよびシステムの使用の予言的実施例
開示されるデバイスおよびシステムの有用性の1つの非限定的実施例は、生物製剤および生物類似性の実証の分野内である。上記のように、FDAおよび他の規制機関は、構造、機能、動物毒性、ヒト薬物動態(PK)および薬力学(PD)、臨床免疫原性、ならびに臨床安全性および有効性に関する提案された生成物ならびに参照生成物の比較を含み得る、生物類似性を実証することへの段階的アプローチの使用を要求する。タンパク質生成物のために要求され得る、構造特性評価データの実施例は、一次構造(すなわち、アミノ酸配列)、二次構造(すなわち、アルファ螺旋またはベータシート構造を形成するための折畳の程度)、三次構造(すなわち、ポリペプチド骨格および二次構造ドメインの折畳によって産生されるタンパク質の3次元形状)、四次構造(例えば、活性タンパク質複合体またはタンパク質の凝集状態を形成するために要求されるサブユニットの数)、および翻訳後修飾を含む。タンパク質等電点の正確な判定は、生物類似性を実証するために、参照薬物への生物学的薬物候補の比較のための重要なデータを提供し得る。製造されたバイオ後続候補および参照薬物のサンプルアリコートは、開示されるデバイスまたはシステムの中に装填され、反応条件の1つまたはそれを上回るセットの下で正確なpI値を判定し、バイオ後続薬物候補および参照薬物のための貴重な比較データを提供するように、(例えば、異なる緩衝剤、pH勾配、印加された電圧、および/または電流等を使用して)等電点電気泳動反応条件の1つまたはそれを上回るセットの下で特性評価されてもよい。さらに、個々の分離反応毎の電流トレース(および等電点電気泳動反応を実施するために使用される他の動作パラメータ)の監視および記録は、FDAデータ提出要件へのコンプライアンスを促進する。
【実施例3】
【0214】
実施例3-被分析物ピークがマイクロ流体チップから退出し、質量分析計に進入するにつれて、それらの速度を追跡する
図1Bは、本明細書に説明されるマイクロ流体デバイスの別の非限定的実施例を示す。マイクロ流体チャネルネットワーク110は、不透明環状オレフィンポリマーの厚さ250μmの層に加工される。チャネル122は、250μmの層を通して全体に切断するように、深さ250μmである。全ての他のチャネルは、深さ50μmである。チャネル層は、平面的なマイクロ流体デバイスを加工するように、環状オレフィンポリマーの2つの透明層の間に挟持される。ポート112、114、116、118、および120は、外部リザーバからの試薬導入および電気接触のためにチャネルネットワークへのアクセスを提供する。ポート112は、真空源に接続され、チャネル113が廃棄物チャネルとして作用することを可能にし、「廃棄物」へのチャネルネットワークを通した他の試薬のプライミングを可能にする。酸(例えば、1%ギ酸)が、ポート118を通してチャネル119、122、124、および113に、かつポート112までプライミングされる。サンプル(例えば、4%Pharmalyte3-10で希釈されたペプチドまたはタンパク質、12.5mMpI標準3.38(精製ペプチド、配列:Trp-Asp-Asp-Asp)、12.5mMpI標準10.17(精製ペプチド、配列:Trp-Tyr-Lys-Arg))が、ポート118を通してチャネル119、122、124、および113の中に、かつポート112までプライミングされる。これは、チャネル122を、サンプル被分析物を含有した状態にする。塩基(例えば、1%ジメチルアミン)が、ポート114を通してチャネル115、124、および113の中に、かつポート112までプライミングされる。動員剤(例えば、1%ギ酸、49%メタノール)が、ポート120を通してチャネル121、124、および113の中に、かつチャネル113から出てポート112までプライミングされる。
【0215】
チャネル122内の被分析物サンプルの電気泳動が、4,000Vをポート118に印加し、ポート120を接地に接続することによって実施される。被分析物サンプル内の両性電解質は、あるpH勾配に及ぶチャネル122を確立する。分離の吸光度撮像が、チャネル122に整合され、CCDカメラを用いてチャネル122を通した280nm光の透過を測定する、280nm光源を使用して実施される。ソフトウェアは、被分析物が流される前に集束された被分析物が存在しない場合に得られる「ブランク」参照測定と比較して、分離または動員の間の光透過を比較することによって、吸光度を計算し、次いで、チャネル122の長さにわたってピクセルあたりの吸光度を表示する。標準または被分析物が集束した場所は、画像データから導出される吸光度トレース内のピークとして表示される。
【0216】
いったん被分析物が焦点を完了させると、最終集束吸光度画像が、捕捉される。ソフトウェアは、pIマーカの空間位置を識別し、マーカの間で補間し、集束被分析物分画ピークのpIを計算するであろう。本時点で、制御ソフトウェアは、ポート120において接地を接続解除し、ポート114を接地に接続するリレー、ならびにポート114を通してチャネル115および124の中に、かつオリフィス126においてチップから外に100nL/分の動員剤溶液の流動を確立するように、ポート114に接続される動員剤リザーバ上の圧力を設定することをトリガするであろう。オリフィス126は、-3,500V~-4,500Vの入口電圧を伴って質量分析計ESI入口から2mm離れて位置付けられる。
【0217】
圧力駆動流が、ポート114からオリフィス126に動員剤を指向する一方、動員剤試薬内のギ酸の一部は、チャネル115からチャネル122を通してポート118におけるアノードまで、ギ酸塩の形態で電気泳動するであろう。ギ酸塩がチャネル122を通して進行するにつれて、等電pH勾配を乱し、両性電解質、標準、および被分析物サンプルに電荷を増加させ、チャネル122からチャネル124の中に電気泳動的に遊走させ、ポート120からの圧力駆動流が、それらを、ESIスプレーの中に、かつオリフィス126から外に搬送するであろう。
【0218】
動員が生じるとき、ソフトウェアは、吸光度画像を捕捉し続け、ピークを識別し、撮像チャネル122からチャネル124の中へのそれらの遊走を追跡する。各ピークが撮像チャネル122から退出する時間、その速度、およびチャネル124内の流率を追跡することによって、ソフトウェアは、ピークがチャネル124を横断し、オリフィス126を介して質量分析計に導入される時間を計算し、元の集束されたピークと結果として生じる質量スペクトルとの間の直接相関を可能にすることができる。
【実施例4】
【0219】
実施例4-液体の霧化のためのガスチャネルを備える、マイクロ流体デバイス
図2A-2Bは、分離チャネルと、2つのガスチャネルとを備える、本明細書に説明されるデバイス例示的マイクロ流体の上下概略図を示す。
図2Aを参照すると、マイクロ流体デバイスは、基材200を備え、これは、約1ミリメートル(mm)の厚さであって、溶融シリカを備える。チャネルは、40ミクロンの深度および86~600ミクロンの幅に化学的にエッチングされる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、(例えば、遠位端における)先端を備えてもよく、これは、流体がデバイスから離れるように(例えば、廃棄物レセプタクルまたは分析ユニット、例えば、質量分析計に)指向されることを可能にし得る。
【0220】
デバイス内の流体チャネルへのアクセスは、サンプル入口ポート203、アノードポート204、カソードポート206、サンプル出口ポート207(また、本明細書では、「流体オリフィス」)、および化学動員剤入口ポート209を通して提供される。アノードポート204およびカソードポート206は、それぞれ、分離チャネル205の近位端および遠位端と流体および電気連通する。電極は、いくつかの事例では、アノードポート204およびカソードポート206と接触して設置されることができる。他の事例では、アノードポート204およびカソードポート206は、電極リザーバ(図示せず)と流体および/または電気連通し、これは、例えば、チャネルを介して、アノードポート204およびカソードポート206に接続する。分離チャネル205は、カソードポート206を越えて、サンプル出口ポート207まで延在する。化学動員剤入口ポート209は、化学動員チャネル208を介して、分離チャネルの遠位端205に接続される。デバイスはまた、2つのガスチャネル211および213を備え、これは、サンプル出口ポート207に隣接する、ガスオリフィスまたは出口を有する。ガス入口ポート215および217は、ガスチャネル211および213の中へのガス(例えば、空気、窒素等)の進入を可能にする。いくつかの事例では、ガスチャネル211および213のガスオリフィスまたは出口は、サンプル出口ポート207から対称的に位置付けられてもよい。アノードポート204、カソードポート206、サンプル入口ポート203、化学動員剤入口ポート209、ならびにガス入口ポート215および217を含む、入口ポートは、デバイスの側面または縁220を通して装填されるように構成されてもよく、これは、試薬装填、チャネル全体、またはデバイス全体の撮像等の種々のプロセスを促進し得る。
【0221】
等電点電気泳動反応を実施し、タンパク質の混合物を分離する際の使用のために、タンパク質サンプルが、バイアルの中に設置し、オートサンプラの中に装填する前に、両性電解質pH勾配およびpIマーカと予混合される。サンプルは、サンプル入口ポート203を介してオートサンプラによってデバイスの中に、マイクロ流体デバイス上に、分離チャネル205を通して、サンプル出口ポート207を通して廃棄物までデバイスから外に、連続的に装填される。
【0222】
陰極液流体(例えば、H2O内の1%NN4OH)が、カソードポート206の中に装填され、陽極液(例えば、10mMH3PO4)が、アノードポート204の中に装填され、動員剤溶液(例えば、49%MeOH、49%H2O、1%酢酸)が、動員剤入口ポート209に接続される。
【0223】
全ての試薬が装填された後、例えば、+600V/cmの電場が、電極をアノードおよびカソードリザーバ(図示せず)に接続し、等電点電気泳動を開始することによって、アノードポート204から対応するカソードポート206に印加される。いくつかの事例では、アノードおよびカソードのために使用される電極は、デバイスと統合されてもよい。UV吸光度画像に関して、UV光源によって提供される光のコリメートされたビームが、分離チャネル205と整合され、画像センサ(例えば、CCDカメラまたはCMOSカメラ)が、分離チャネル205のそれぞれを通して透過される光の量を測定し、それによって、吸光度を使用して、集束されたタンパク質(または他の分離された被分析物)を撮像および検出するように、分離チャネル205の反対側に設置される。いくつかの事例では、集束されたタンパク質は、非標識され、220nm、280nm、またはタンパク質が光を吸収するであろう任意の他の波長における固有吸光度を通して検出されてもよい。蛍光画像、すなわち、落射蛍光画像に関して、好適な波長の励起光が、好適なダイクロイック反射体および帯域通過フィルタを備える、光学アセンブリを用いて、分離チャネル205に送達され、放出された蛍光が、同一の光学アセンブリによって分離チャネル205から収集され、画像センサ上に撮像される。いくつかの事例では、集束されたタンパク質(または他の分離された被分析物)は、固有蛍光を使用して撮像および検出されてもよい。いくつかの事例では、集束されたタンパク質は、SYPRO(登録商標) Ruby、クーマシーブルー、および同等物等の非共有結合蛍光性、発色性、蛍光、または発色標識を使用して、検出されてもよい。いくつかの事例では、デバイスの一部は、光が、分離チャネル205を通してのみ透過され、それによって、任意の迷光が、分離チャネル205を通して通過することなく画像センサに到達し、UV吸光度測定の感度を増加させないように阻止し得るように、光学的に不透明な材料から構築されてもよい。
【0224】
分離チャネル205の全てまたは一部内の集束タンパク質の画像は、等電点電気泳動反応が複数の分離チャネル205内で実施されるにつれて、持続的および/または周期的に捕捉されることができる。いくつかの事例では、分離チャネル205の画像内のpIマーカの位置の検出が、分離チャネルに沿った位置の関数として局所pHを判定し、外挿によって、分離されたタンパク質(または他の被分析物)のためのpIのより正確な判定を行うために、使用されてもよい。いくつかの事例では、集束が完了したとき、陽圧が、サンプル出口207に向かって分離されたタンパク質(または他の被分析物)混合物を動員するように、サンプル入口ポート203および/またはアノードポート204において印加される。いくつかの事例では、集束が完了したとき、カソードポート206に接続された電極が、接続解除され、動員剤チャネル208と電気通信する電極が、アノードポート204からの600V/cmの電場を化学動員剤入口209に印加し、動員剤を分離チャネル205の中に電気泳動的に導入するために、使用される。いくつかの事例では、動員剤入口209に印加される軽微な陽圧が、化学動員剤の電気泳動導入の代わりに、またはそれに加えて、使用されてもよい。
【0225】
動員剤の電気泳動導入の場合、動員剤溶液内の酢酸は、電場によって分離チャネル205の中に引き込まれ、そこで、タンパク質および両性電解質をイオン化し、等電点電気泳動のために使用されるpH勾配を乱す。濃縮タンパク質分画のイオン化は、それらを分離チャネル205からサンプル出口207に向かって外に遊走させる。動員プロセスの間に分離チャネル205を撮像し続けることは、分離されたタンパク質毎にpIの判定を精緻化するために使用されることができる。
【0226】
図2Bは、
図2Aに図示されるマイクロ流体デバイスの出口部分の拡大概略図を示す。ガスチャネル211および213はそれぞれ、それぞれ、ガスオリフィス219および221を有し、そこから、ガスが、排出される。ガスオリフィス219および221は、サンプル出口ポート207に隣接して位置付けられ、サンプル出口ポート207の近傍でサンプルを霧化するために使用される。いくつかの事例では、ガスチャネル211および213またはその一部は、サンプル出口207から対称的に位置付けられる。いくつかの事例では、ガスチャネルオリフィス219および221は、サンプル出口207から対称的に位置付けられる。いくつかの事例では、ガスチャネル211および213はそれぞれ、分離チャネル205の一部と平行な領域を備える。
図2Aに示されるように、ガスチャネル211および213は、異なる長さを有する。しかしながら、ガスチャネル211および213は、実質的に類似する流体力学的流動抵抗をガス出口オリフィス219および221のそれぞれに提供するように構成されることができる。例えば、ガスチャネル211および213は、チャネルの一部に沿って異なる断面積であるが、ガス出口オリフィス219および221の近傍では、略同一断面積有してもよい。ある場合には、ガスチャネルは、遠位端において狭小化し、ガス出口オリフィスにおける流率または流速を増加させてもよい。ガス出口オリフィス219および221がサンプル出口207から対称的に位置付けられる、デバイスに関して、ガス出口オリフィス219および221のそれぞれにおける類似流体力学的流動抵抗が、サンプル出口207の近傍でサンプルの霧化のための定常気流を達成する際に有益であり得る。他の事例では、ガス出口オリフィス219および221は、サンプル出口207から対称的に位置付けられなくてもよい。そのような場合、ガス出口オリフィス219および221のそれぞれにおける流体力学的流動抵抗は、サンプル出口207に到達する、空気の体積、量、または流率が、略同一であるように、異なり得る。
【0227】
ESIと並行して実施され得る、霧化の間、サンプルは、より小さい液滴に分散または破壊される。いくつかの事例では、霧化された液滴は、次いで、補完的乾燥ガスに曝され、液体の蒸発と、質量分析計(図示せず)の中に導入される、ガス相イオンの生産とをもたらす。エレクトロスプレープロセスの間の、サンプル出口207またはサンプル出口207を囲繞する面積の持続撮像が、ESIまたはテイラー円錐の特性、例えば、液滴サイズ、テイラー円錐形状等を判定するために使用されることができる。
【実施例5】
【0228】
実施例5-ESIの間のサンプルの霧化を最適化するための設計パラメータ
本明細書に開示されるようなサンプルの霧化は、持続液体流を小液滴に破壊するためのガス噴射によって生成される、剪断および慣性力によって達成される。サンプル(または分離されたサンプル)の霧化は、マイクロ流下でのサンプル(または分離されたサンプル)の定量的測定を改良するために使用されてもよく、サンプル(または分離されたサンプル)は、約マイクロリットルスケール流率(例えば、マイクロリットル/分)において、ESI先端を通して流動される。霧化は、特に、マイクロリットル/分流範囲内のより高い流率のために使用される(数、数十、数百μl/分であって、付加的溶媒が、分析のために質量分析計の中に収集される、単一イオンに達するために、サンプルから除去される必要がある)。本明細書に開示されるガスチャネルの種々のパラメータは、改変可能であって、霧化を最適化するように構成されてもよい。
図3A-3Dは、流体放出チャネルと、流体放出チャネル内でサンプルを霧化するために使用され得る、2つのガスチャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの改変可能パラメータの非限定的実施例を図式的に示す。いくつかの事例では、流体放出チャネルは、等電点電気泳動等の分離反応において使用するための(例えば、遠位端における)分離チャネルに流体的に結合される(例えば、近位端において)。
【0229】
図3Aは、ガスチャネルの遠位端と、オリフィス(また、本明細書では、「サンプル出口」、「流体オリフィス」、または「流体出口オリフィス」)を備える、流体放出チャネルの遠位端との間の改変可能収束角度の概略図を示す。そのような構成では、ガスチャネル311および313は、流体放出チャネル307の出口から対称的に位置付けられる。ガスチャネル313の遠位区分と流体放出チャネルの遠位区分との間の収束角度は、例えば、約0度~約45度に及び得る。収束角度は、有用な霧化性質を達成するように改変されてもよい。例えば、15度収束角度が、毛細管ベースのシース流システムにおいて使用されるもの等の同軸流を実質的に再現するために使用されることができる。さらに、2つのガス噴射の収束は、液体サンプルのより小さい液滴への破壊を助長する、より多くの慣性および剪断力を生成する。いくつかの事例では、より低い収束角度は、例えば、サンプル出口307またはその近傍でサンプルの背圧または逆流を減少させる際に有用であり得る。サンプル出口307またはその近傍でサンプルの減少された背圧または逆流は、流体放出チャネルの中に再導入される、サンプルの量を低減させることを補助し得る。最適霧化は、流体(液体)放出チャネルオリフィスまたはその近傍の高剪断力および流速を維持し、サンプルを効率的に霧化するための定常ガス流を提供しながら、サンプル出口の直前のガス流誘発背圧が最小限にされるときに生じ得る。
【0230】
図3Bは、改変可能である、ガスチャネルまたはガス出口オリフィスの直径の概略図を示す。ガスチャネルおよび流体放出チャネルの幾何学形状および収束角度に加え、ガスチャネル311および313またはガス出口オリフィスの一方または両方の直径も、改変可能である。例えば、ガス出口オリフィス311の直径は、40~400ミクロンであってもよい。いくつかの事例では、より狭いガス出口オリフィスを有し、流体放出チャネルの出口またはその近傍に向かってガスの局所的速度を最大限にすることが好ましい。
図3Cは、ガスチャネルまたは流体放出チャネルに対するガスチャネルの改変可能位置付けの概略図を示す。付加的改変可能側面は、流体放出チャネルの出口またはオリフィスに対するガス出口オリフィスの位置付けであり得る。
図3Dは、ガス出口オリフィスの出口の改変可能角度の概略図を示す。
図3A-3Dを参照すると、最適霧化は、定常ナノ流またはマイクロ流が、流体チャネルの出口における実質的背圧を伴わずに達成されるときに生じ得る。
【0231】
図4A-4Bは、本明細書に説明されるマイクロ流体デバイスの顕微鏡写真の非限定的実施例を示す。
図4Aは、流体出口チャネルのオリフィス407aから対称的に位置付けられる、出口オリフィスを伴う、2つのガスチャネル411aおよび413aを備える、マイクロ流体デバイスを示す。ガス出口オリフィスは、流体出口チャネルオリフィスと収束する。ガス出口オリフィスのそれぞれの直径は、約114マイクロメートル(μm)であって、流体出口チャネルの直径は、約98μmである。ガスチャネル413aおよび流体出口チャネルの収束の角度は、約15度である。
図4Bは、流体出口チャネルのオリフィス407bから対称的に位置付けられる、出口オリフィスを伴う、2つのガスチャネル411bおよび413bを備える、マイクロ流体デバイスを示す。ガス出口オリフィスは、流体出口チャネルオリフィスの若干外側で収束し、0~200ミクロンの間隙をそれらの間に伴って、流体出口チャネルオリフィスに隣接して位置付けられる。ガス出口オリフィスのそれぞれの直径は、約119μmであって、流体出口チャネルの直径は、約94μmである。ガスチャネル413および流体出口チャネルの収束の角度は、約15度である。
【実施例6】
【0232】
実施例6-霧化ガスチャネルを伴うマイクロ流体デバイス
実施例5に説明されるように、ガスチャネルおよび流体出口チャネルの種々のパラメータは、可変である。
図5A-9Bは、ガスチャネルと、分離チャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの非限定的実施例を図式的に図示する。
図5Aを参照すると、デバイス500内の流体チャネルへのアクセスは、サンプル入口ポート503、アノードポート504、カソードポート506、サンプル出口ポート507(また、本明細書では、「流体オリフィス」)、および化学動員剤入口ポート509を通して提供される。アノードポート504およびカソードポート506は、それぞれ、分離チャネル505の近位端および遠位端と流体および電気連通する。電極は、いくつかの事例では、アノードポート504およびカソードポート506と接触して設置されることができる。他の事例では、アノードポート504およびカソードポート506は、電極リザーバ(図示せず)と流体および/または電気連通し、これは、例えば、チャネルを介して、アノードポート504およびカソードポート506に接続する。分離チャネル505は、カソードポート506を越えて、サンプル出口ポート507まで延在する。化学動員剤入口ポート509は、化学動員チャネル508を介して、分離チャネル505の遠位端に接続される。デバイスはまた、2つのガスチャネル511および513を備え、これは、サンプル出口ポート507と収束する点に隣接してガスオリフィスまたは出口を有する。ガスチャネル513および流体出口チャネルの収束の角度は、約30度である。ガス入口ポート515および517は、ガスチャネル511および513の中へのガス(例えば、空気、窒素等)の進入を可能にする。いくつかの事例では、ガスチャネル511および513のガスオリフィスまたは出口は、サンプル出口ポート507から対称的に位置付けられてもよい。アノードポート504、カソードポート506、サンプル入口ポート503、化学動員剤入口ポート509、ならびにガス入口ポート515および517を含む、入口ポートは、デバイスの側面または縁を通して装填されるように構成されてもよく、これは、試薬装填、チャネル全体、またはデバイス全体の撮像等の種々のプロセスを促進し得る。
【0233】
図5Bは、
図5Aに図示されるマイクロ流体デバイスの出口部分の拡大概略図を示す。ガスチャネル511および513はそれぞれ、それぞれ、ガスオリフィス519および521を有し、そこから、ガスが、排出される。ガスチャネル511および513は、サンプル出口ポート507と収束し、サンプル出口ポート507の近傍でサンプルを霧化するために使用される。
図2A-2Bに示される実施例と同様に、ガスチャネル511および513またはその一部は、サンプル出口507から対称的に位置付けられる。いくつかの事例では、ガスチャネルオリフィス519および521は、サンプル出口507から対称的に位置付けられる。いくつかの事例では、ガスチャネル511および513はそれぞれ、分離チャネル505の一部と平行な領域を備える。ガスチャネル511および513は、異なる長さを有する。しかしながら、ガスチャネル511および513は、実質的に類似する流体力学的流動抵抗をガス出口オリフィス519および521のそれぞれに提供するように構成されることができる。例えば、ガスチャネル511および513は、チャネルの一部に沿って異なる断面積であるが、略同一断面積をガス出口オリフィス519および521の近傍に有してもよい。ガス出口オリフィス519および521がサンプル出口507から対称的に位置付けられる、デバイスに関して、ガス出口オリフィス519および521のそれぞれにおける類似流体力学的流動抵抗は、出口507の近傍でサンプルサンプルの霧化のための定常気流を達成する際に有益であり得る。他の事例では、ガス出口オリフィス519および521は、サンプル出口507から対称的に位置付けられなくてもよい。そのような場合、ガス出口オリフィス519および521のそれぞれにおける流体力学的流動抵抗は、サンプル出口507に到達する空気の体積、量、または流率が略同一であるように、異なり得る。
【0234】
【0235】
図6A-6Cは、ガスチャネルと、分離チャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの別の実施例を図式的に示す。
図6Aは、デバイスのレイアウトを示す。
図6A-6Bは、それぞれ、
図6Aに図示されるデバイスの出口部分の拡大および等角図を示す。デバイスは、
図5A-5Cに示され得るものに類似し、サンプル出口ポート607と収束し、サンプル出口ポート607の近傍でサンプルを霧化するために使用される、ガスチャネル611および613を伴う。ガスチャネル611および613は、約15度の角度において、流体出口チャネルと収束する。ガスチャネル611および613は、流体チャネル出口オリフィス607に対して非対称的に位置付けられる。ガスチャネル611および613は、流体出口チャネルオリフィス607に対して非対称的に位置付けられるが、チャネルのそれぞれ内のガスの出口流経路は、流体出口オリフィス607からの流体の流体流経路の軸に対して対称である。
【0236】
図7A-7Cは、ガスチャネルと、分離チャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの別の実施例を図式的に示す。
図7Aは、デバイスのレイアウトを示す。
図7A-7Bは、それぞれ、
図7Aに図示されるデバイスの出口部分の拡大および等角図を示す。ガスチャネル711および713の遠位端は、流体出口チャネルと平行である。ガスチャネル711および713は、オリフィス719および721がそれぞれ、流体チャネル出口オリフィス707から約30μm離間されるように位置付けられる。ガスチャネル711および713は、サンプル出口ポート707の近傍でサンプルを霧化するために使用される。ガスチャネル711および713は、流体チャネル出口オリフィス707に対して対称的に位置付けられ、チャネルのそれぞれ内のガスの出口流経路は、流体出口オリフィス707からの流体の流体流経路の軸に対して対称である。
【0237】
図8A-8C図式的には、ガスチャネルと、分離チャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの別の実施例を示す。
図8Aは、デバイスのレイアウトを示す。
図8A-8Bは、それぞれ、
図8Aに図示されるデバイスの出口部分の拡大および等角図を示す。ガスチャネル811および813は、オリフィス819および821がそれぞれ、流体チャネル出口オリフィス807から約40μm離間されるように位置付けられる。ガスチャネル811および813は、サンプル出口ポート807の近傍でサンプルを霧化するために使用される。ガスチャネル811および813は、流体チャネル出口オリフィス807に対して対称的に位置付けられ、チャネルのそれぞれ内のガスの出口流経路は、流体出口オリフィス807からの流体の流体流経路の軸に対して対称である。ガスチャネル811および813の遠位端は、約15度の角度において、流体出口チャネルと収束する。
【0238】
図9A-9Bは、ガスチャネルと、分離チャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの別の実施例を図式的に示す。
図9Aは、デバイス900のレイアウトを示す。
図9Aを参照すると、デバイス内の流体チャネルへのアクセスが、サンプル入口ポート903、アノードポート904、カソードポート906、サンプル出口ポート907(また、本明細書では、「流体オリフィス」)、および化学動員剤入口ポート909を通して提供される。アノードポート904およびカソードポート906は、それぞれ、分離チャネル905の近位端および遠位端と流体および電気連通する。電極が、いくつかの事例では、アノードポート904およびカソードポート906と接触して設置されることができる。他の事例では、アノードポート904およびカソードポート906は、電極リザーバ(図示せず)と流体および/または電気連通し、これは、例えば、チャネルを介して、アノードポート904およびカソードポート906に接続する。分離チャネル905は、カソードポート906を越えて、サンプル出口ポート907まで延在する。化学動員剤入口ポート909は、化学動員チャネル908を介して、分離チャネル905の遠位端に接続される。デバイスはまた、2つのガスチャネル911および913を備え、これは、サンプル出口ポート907と収束する点に隣接してガスオリフィスまたは出口を有する。ガス入口ポート915および917は、ガスチャネル911および913の中へのガス(例えば、空気、窒素等)の進入を可能にする。ガスチャネル911および913のガスオリフィスまたは出口は、サンプル出口ポート907から対称的に位置付けられる。アノードポート904を含む入口ポートおよびガス入口ポート917のうちの1つは、デバイスの片側または縁に沿って位置付けられる一方、カソードポート906、サンプル入口ポート503、化学動員剤入口ポート509、およびガス入口ポート915は、デバイスの反対側または縁を通して装填されるように構成される。
【0239】
図9Bは、
図9Aに図示されるデバイスの出口部分の拡大図を示す。ガスチャネル911および913の遠位端は、流体出口チャネルと平行である。ガスチャネル911および913は、オリフィス919および921がそれぞれ、流体チャネル出口オリフィス907から約30μm離間されるように位置付けられる。ガスチャネル911および913は、サンプル出口ポート907の近傍でサンプルを霧化するために使用される。ガスチャネル911および913は、流体チャネル出口オリフィス907に対して対称的に位置付けられ、チャネルのそれぞれ内のガスの出口流経路は、流体出口オリフィス907からの流体の流体流経路の軸に対して対称である。ガスチャネル911および913の遠位端は、約15度の角度において、流体出口チャネルと収束する。
【0240】
図10A-10Cは、ガスチャネルと、分離チャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの別の実施例を図式的に示す。
図10Aは、デバイスのレイアウトを示す。
図10Bおよび10Cは、
図10Aに図示されるデバイスの出口部分の拡大図を示す。ガスチャネル1111および1113の遠位端は、流体出口チャネルと平行である。ガスチャネル1111および1113は、オリフィス1119および1121がそれぞれ、流体チャネル出口オリフィス1107から約15μm離間されるように位置付けられる。ガスチャネル1111および1113は、サンプル出口ポート1107の近傍でサンプルを霧化するために使用される。ガスチャネル1111および1113は、流体チャネル出口オリフィス1107に対して対称的に位置付けられ、チャネルのそれぞれ内のガスの出口流経路は、流体出口オリフィス1107からの流体の流体流経路の軸に対して対称である。
【0241】
図11A-11Cは、ガスチャネルと、分離チャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの別の実施例を図式的に示す。デバイスは、
図10A-10Cに示されるものに類似し得る。
図11Aは、デバイスのレイアウトを示す。
図11B-11Cは、それぞれ、
図11Aに図示されるデバイスのガス入口および遠位出口部分の等角拡大図を示す。ガス入口ポート1215は、略楕円断面を特徴とする。ガスチャネルの遠位端は、流体出口チャネルと平行である。ガスチャネルは、オリフィス1219および1221がそれぞれ、流体チャネル出口オリフィス1207から約15μm離間されるように位置付けられる。ガスチャネルは、サンプル出口ポート1207の近傍でサンプルを霧化するために使用される。ガスチャネルは、流体チャネル出口オリフィス1207に対して対称的に位置付けられ、チャネルのそれぞれ内のガスの出口流経路は、流体出口オリフィス1207からの流体の流体流経路の軸に対して対称である。
【0242】
図12A-12Dは、マイクロ流体チップの種々の遠位端(先端)の例示的概略図(
図12A-12C)および画像(
図12D)を提供する。ガスチャネルの遠位端は、流体出口チャネルと平行である。ガスチャネルの遠位端は、流体出口チャネルと平行である。ガスチャネルは、オリフィス1319および1321がそれぞれ、流体チャネル出口オリフィス1307から約15μm離間されるように位置付けられる。ガスチャネルは、サンプル出口ポート1307の近傍でサンプルを霧化するために使用される。ガスチャネルは、流体チャネル出口オリフィス1307に対して対称的に位置付けられ、チャネルのそれぞれ内のガスの出口流経路は、流体出口オリフィス1307からの流体の流体流経路の軸に対して対称である。
【0243】
図12Aは、ガスオリフィス1319および1321と、流体オリフィス1307とを伴う、成形されていない先端の概略図を示す。
図12Bは、ガスオリフィス、1319および1321と、流体オリフィス1307とを伴う、ファセット加工された成形された先端の概略図を示す。ファセット加工された成形された先端は、面取りされた面を上部面1325および底部面1327上に備え、これは、
図12Aに示されるような成形されていない先端上には不在である。
図12Cは、ガスオリフィス1319および1321と、流体オリフィス1307とを伴う、丸みを帯びた成形された先端の概略図を示す。丸みを帯びた成形された先端は、均一に面取りされ、
図12A-12B上に示されるように、鋭角を伴わずに、丸みを帯びた先端を形成する。
図12Dは、ガスオリフィス1319および1321と、流体オリフィス1307とを伴う、ファセット加工された成形された先端の、概略
図12Bに示されるものに類似する、画像を示す。ファセット加工された成形された先端は、面取りされた面を上部面1325および底部面1327上に備え、これは、
図12Aに示されるような成形されていない先端上には不在である。
【実施例7】
【0244】
実施例7-霧化およびESIの間のテイラー円錐の撮像
霧化の関数として、ESIの性能は、撮像を使用して、監視されることができる。
図13は、ESIの間の、流体出口チャネルのマイクロ流体デバイスのオリフィスの蛍光画像の非限定的実施例を示す。流体出口チャネルは、蛍光性色素で充填される。
図13の各パネルは、流体出口チャネル(1.3μL/分、4.6μL/分、2.5μL/分、および4.7μL/分)から外へのサンプルの流率と、ガスチャネル1011および1013のそれぞれ内の70PSIの印加されるガス圧とを図示する。上側パネルは、先端が成形される、デバイスを実証し、下側パネルは、先端形状が画定されていない、デバイスを実証する。先端成形は、角錐形形状を出口オリフィスの周囲に生成する。これは、概して、当技術分野において公知のいくつかの手段のいずれかを使用して、良好に制御された角度(好ましくは、30度)において、機械的研削および/または研磨を用いて、オリフィスの近傍のチップの上部および底部角を面取りすることを要求する。
【0245】
図14A-14Bは、霧化と組み合わせられたESIの間の、マイクロ流体デバイスの出口(オリフィス)部分のオリフィスの蛍光画像の非限定的実施例を示す。流体出口チャネルは、蛍光性色素で充填され、デバイスの先端は、接地されたプレート(対電極)から約8ミリメートル(mm)に位置付けられる。4,000Vの電圧電位が、先端と接地されたプレートとの間で印加される。蛍光性色素を備える、サンプルは、約2~3μL/分の率で、流体出口チャネルから排出される。約100PSIのガス圧が、サンプルの霧化のために、ガスチャネルのそれぞれを通して印加される。
図14Aは、UV光源がデバイスオリフィスの近傍に設置されるときのデバイスの画像を示し、霧化および電圧降下から発生される、オリフィスを囲繞する噴霧プルームを実証する。
図14Bは、UV光源が接地されたプレートの近傍に設置されるときのデバイスの画像を示し、噴霧プルームが所与のESIおよび霧化条件下で接地されたプレートに事実上到達することを実証する。
【実施例8】
【0246】
実施例8-可変チップ設計における流動プロファイルの数値シミュレーション
マイクロ流体デバイスの流体出口チャネルのオリフィスおよびその周囲のガス剪断率が、数値シミュレーション(例えば、全てのマイクロ流体チップに関する3Dシミュレーション、COMSOLにおける同心円筒形実施例の2D軸対称モデル)を使用して特性評価され得る。
図15は、流体放出チャネルと、2つのガスチャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの可変パラメータ(例えば、収束角度、ガス出口オリフィス直径、ガス出口オリフィスと流体出口チャネルオリフィスの近接度等)の関数として、流体出口チャネルオリフィス上およびその周囲のガス流速の有限要素分析からの結果の実施例を示す。「同心」パネルを除き、全てのシミュレーションは、11標準立方センチメートル/分(sccm)/チャネルのガス流率を使用する一方、「同心」モデルは、370sccmのガス流率を使用する。
【0247】
図15のパネルAは、流体出口チャネルのオリフィスから対称的に位置付けられる出口オリフィスを伴う、デバイスに関するガス流速を示す。ガス出口オリフィスは、流体出口チャネルオリフィスと収束する。ガス出口オリフィスのそれぞれの直径は、約114マイクロメートル(μm)であって、流体出口チャネルの直径は、約98μmである。ガスチャネルおよび流体出口チャネルの収束の角度は、約15度である。
図15のパネルBは、先端の一部が切頂されている、
図15のパネルA内のものと同一デバイスに関するガス流速を示す。
図15のパネルCは、その中でガス出口オリフィスが15度の角度で流体出口チャネルオリフィスと収束する、
図6A-6Cに示されるデバイスに関するガス流速を示す。出口角度は、対称であって、下側チャネルは、屈曲をオリフィスの近傍に備える。
図15のパネルDは、その中でガスチャネルが流体出口チャネルから約115μm離間される、
図2A-2Bに示されるデバイスに関するガス流速を示す。
図15のパネルEは、その中でガス出口オリフィスが、流体チャネル出口オリフィスと収束し、ガスチャネルが、流体チャネル出口に隣接して位置付けられる、
図5A-5Cに示されるデバイスに関するガス流速を示す。
図15のパネルFは、その中でガスが流体出口チャネルから外への流体流経路と平行に退出するように、ガスチャネルがガス出口オリフィスの近傍で外向きに屈曲する、
図7A-7Cに示されるデバイスに関するガス流速を示す。ガスチャネルのオリフィスはそれぞれ、流体出口チャネルのオリフィスから約30μmに位置付けられる。
図15のパネルGは、その中でガスチャネルおよび流体出口チャネルが約15度の角度において収束するように、ガスチャネルがオリフィスの近傍で屈曲する、
図8A-8Cに示されるデバイスに関するガス流速を示す。ガスチャネルのオリフィスはそれぞれ、流体出口チャネルのオリフィスから約40μmに位置付けられる。
図15のパネル「同心」は、環状同心ガスチャネルによって半径方向に囲繞される、流体出口チャネルのシミュレーションの結果を示す。
【0248】
数値シミュレーションはまた、ガスチャネルからのガス剪断率を判定またはモデル化するために使用されてもよい。
図16は、流体放出チャネルと、2つのガスチャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの可変パラメータ(例えば、収束角度、ガス出口オリフィス直径、ガス出口オリフィスと流体出口チャネルオリフィスの近接度等)の関数として、流体出口チャネルオリフィス上およびその周囲のガス剪断率の有限要素分析からの結果の実施例を示す。全てのシミュレーションは、「同心」パネルを除き、11標準立方センチメートル/分(sccm)/チャネルのガス流率を使用する一方、「同心」モデルは、370sccmのガス流率を使用する。
【0249】
図16のパネルAは、流体出口チャネルのオリフィスから対称的に位置付けられる出口オリフィスを伴う、デバイスに関するガス剪断率を示す。ガス出口オリフィスは、流体出口チャネルオリフィスと収束する。ガス出口オリフィスのそれぞれの直径は、約114マイクロメートル(μm)であって、流体出口チャネルの直径は、約98μmである。ガスチャネルおよび流体出口チャネルの収束の角度は、約15度である。
図16のパネルBは、先端の一部が切頂されている、
図16のパネルAにおけるものと同一デバイスに関するガス剪断率を示す。
図16のパネルCは、その中でガス出口オリフィスが15度の角度において流体出口チャネルオリフィスと収束する、
図6A-6Cに示されるデバイスに関するガス剪断率を示す。出口角度は、対称であって、下側チャネルは、屈曲をオリフィスの近傍に備える。
図16のパネルDは、その中でガスチャネルが流体出口チャネルから約115μm離間される、
図2A-2Bに示されるデバイスに関するガス剪断率を示す。
図16のパネルEは、その中でガス出口オリフィスが、流体チャネル出口オリフィスと収束し、ガスチャネルが、流体チャネル出口に隣接して位置付けられる、
図5A-5Cに示されるデバイスに関するガス剪断率を示す。
図16のパネルFは、その中でガスが流体出口チャネルから外への流体流経路と平行に退出するように、ガスチャネルがガス出口オリフィスの近傍で外向きに屈曲する、
図7A-7Cに示されるデバイスに関するガス剪断率を示す。ガスチャネルのオリフィスはそれぞれ、流体出口チャネルのオリフィスから約30μmに位置付けられる。
図16のパネルGは、その中でガスチャネルおよび流体出口チャネルが約15度の角度において収束するように、ガスチャネルがオリフィスの近傍で屈曲する、
図8A-8Cに示されるデバイスに関するガス剪断率を示す。ガスチャネルのオリフィスはそれぞれ、流体出口チャネルのオリフィスから約40μmに位置付けられる。
図16のパネル「同心」は、環状同心ガスチャネルによって半径方向に囲繞される、流体出口チャネルをモデル化する。
【0250】
図17は、流体放出チャネルと、2つのガスチャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの可変パラメータ(例えば、収束角度、ガス出口オリフィス直径、ガス出口オリフィスと流体出口チャネルオリフィスの近接度等)の関数として、流体出口チャネルオリフィス上およびその周囲の速度場を図示する、有限要素分析からの結果の実施例を示す。
図17は、デバイスの斜視図を示す。全てのシミュレーションは、「同心」パネルを除き、11標準立方センチメートル/分(sccm)/チャネルのガス流率を使用する一方、「同心」モデルは、370sccmのガス流率を使用する。
【0251】
図17のパネルAは、その中でガスチャネルが流体出口チャネルから約115μm離間される、
図2A-2Bに示されるデバイスに関するガス流速を示す。
図17のパネルBは、その中でガス出口オリフィスが、流体チャネル出口オリフィスと収束し、ガスチャネルが、流体チャネル出口に隣接して位置付けられる、
図5A-5Cに示されるデバイスに関するガス流速を示す。
図17のパネルCは、その中でガス出口オリフィスが15度の角度において流体出口チャネルオリフィスと収束する、
図6A-6Cに示されるデバイスに関するガス流速を示す。出口角度は、対称であって、下側チャネルは、屈曲をオリフィスの近傍に備える。
図17のパネルDは、その中でガスが流体出口チャネルから外への流体流経路と平行に退出するように、ガスチャネルがガス出口オリフィスの近傍で外向きに屈曲する、
図7A-7Cに示されるデバイスに関するガス流速を示す。ガスチャネルのオリフィスはそれぞれ、流体出口チャネルのオリフィスから約30μmに位置付けられる。
図17のパネルEは、その中でガスチャネルおよび流体出口チャネルが約15度の角度において収束するように、ガスチャネルがオリフィスの近傍で屈曲する、
図8A-8Cに示されるデバイスに関するガス流速を示す。ガスチャネルのオリフィスはそれぞれ、流体出口チャネルのオリフィスから約40μmに位置付けられる。
【0252】
図18は、流体放出チャネルと、2つのガスチャネルとを備える、マイクロ流体デバイスの可変パラメータ(例えば、収束角度、ガス出口オリフィス直径、ガス出口オリフィスと流体出口チャネルオリフィスの近接度等)の関数として、流体出口チャネルオリフィス上およびその周囲の霧化からのガス圧力場を図示する、有限要素分析からの結果の実施例を示す。全てのシミュレーションは、「同心」パネルを除き、11標準立方センチメートル/分(sccm)/チャネルのガス流率を使用する一方、「同心」モデルは、370sccmのガス流率を使用する。
【0253】
図18のパネルAは、流体出口チャネルのオリフィスから対称的に位置付けられる出口オリフィスを伴う、デバイスに関するガス圧力場を示す。ガス出口オリフィスは、流体出口チャネルオリフィスと収束する。ガス出口オリフィスのそれぞれの直径は、約114マイクロメートル(μm)であって、流体出口チャネルの直径は、約98μmである。ガスチャネルおよび流体出口チャネルの収束の角度は、約15度である。
図18のパネルBは、先端の一部が切頂されている、
図18のパネルAにおけるものと同一デバイスに関するガス圧力場を示す。
図18のパネルCは、その中でガス出口オリフィスが15度の角度において流体出口チャネルオリフィスと収束する、
図6A-6Cに示されるデバイスに関するガス圧力場を示す。出口角度は、対称であって、下側チャネルは、屈曲をオリフィスの近傍に備える。
図18のパネルDは、その中でガスチャネルが流体出口チャネルから約115μm離間される、
図2A-2Bに示されるデバイスに関するガス圧力場を示す。
図18のパネルEは、その中でガス出口オリフィスが、流体チャネル出口オリフィスと収束し、ガスチャネルが、流体チャネル出口に隣接して位置付けられる、
図5A-5Cに示されるデバイスに関するガス圧力場を示す。
図18のパネルFは、その中でガスが流体出口チャネルから外への流体流経路と平行に退出するように、ガスチャネルがガス出口オリフィスの近傍で外向きに屈曲する、
図7A-7Cに示されるデバイスに関するガス圧力場を示す。ガスチャネルのオリフィスはそれぞれ、流体出口チャネルのオリフィスから約30μmに位置付けられる。
図18のパネルGは、その中でガスチャネルおよび流体出口チャネルが約15度の角度において収束するように、ガスチャネルがオリフィスの近傍で屈曲する、
図8A-8Cに示されるデバイスに関するガス圧力場を示す。ガスチャネルのオリフィスはそれぞれ、流体出口チャネルのオリフィスから約40μmに位置付けられる。
図18のパネル「同心」は、環状同心ガスチャネルによって半径方向に囲繞される、流体出口チャネルをモデル化する。
【0254】
図19は、先端(流体チャネル出口オリフィス)からの距離(mm)の関数として、複数のデバイス設計に関するガス圧を比較する、プロットを示す。「TSTKC4」は、
図4Aに示されるデバイスを表し、「TSTKC6」は、先端が切頂されている、
図4Aに示されるデバイスを表し、「E5E1」は、
図2Aに示されるデバイスを表し、「E5E2」は、
図5Aに示されるデバイスを表し、「E5E3」は、
図6に示されるデバイスを表し、「E5E4」は、
図7Aに示されるデバイスを表し、「E5E5」は、
図8Aに示されるデバイスを表す。
【実施例9】
【0255】
実施例9-マイクロ流体チップ-カートリッジ界面およびカートリッジ-器具界面
本明細書に説明されるように、システムは、マイクロ流体チップと界面接触するように構成される、カートリッジを備えてもよく、いくつかの事例では、カートリッジ(マイクロ流体チップと界面接触する)は、器具と界面接触するように構成される。
【0256】
図20Aは、マイクロ流体チップと、カートリッジと、器具界面との間の界面の分解図を図式的に示す。マイクロ流体デバイス1702は、カートリッジ1704と界面接触される、またはその中に挿入される。マイクロ流体デバイスは、カートリッジの縁と界面接触する、デバイスの縁に位置する、6つのポートを有する(例えば、
図2A、5A、6A、7A、8A参照)。カートリッジは、マイクロ流体デバイスの6つのポートと整合し、エラストマ材料(例えば、ガ示されないスケットまたはOリング)を使用して、ポートにシールする、6つの流体ポートを備える。
【0257】
カートリッジ1704は、器具と界面接触するように構成され、これは、界面デバイス1706を介して遂行されてもよい。界面デバイス1706は、6つの独立してばね荷重された継手アセンブリ(また、本明細書では、「相互接続」)1710を備え、これは、ポートを介して、カートリッジおよびマイクロ流体デバイスと流体的および/または電気的に連通するように構成される。ばね荷重された継手アセンブリは、例えば、サンプル、陽極液、陰極液、動員試薬、ガス(例えば、霧化のため)等を提供する、外部流体ラインに結合する。各ばね荷重された継手アセンブリは、流体ポートと噛合する、例えば、円錐形継手または平坦面シール継手であることができる。そのような実施例では、独立してばね荷重された継手は、マイクロ流体カートリッジ内の孔1712を介して、6つの流体ポート(6つのうちの4つのみが、矢印によって示される)と噛合する、円錐形継手または平坦面シール継手を備える。いくつかの側面では、孔1712は、テーパ状であることができる。界面デバイス1706は、位置決めピン1708を使用して、精密な方式において、カートリッジ1704と結合するように構成されてもよい。
【0258】
図20Bは、「シールされた」構成における、マイクロ流体デバイスと、カートリッジと、界面デバイスとの間の界面を図式的に示す。圧着力1712が、全3つの構成要素に接触するように印加され、それによって、実質的無漏出流体連通を確立してもよい。
【0259】
図20C-20Eは、装填解除された、接触された、およびシールされた構成における、ばね荷重された継手アセンブリの断面図を図式的に示す。
図20Cは、装填解除された構成における、ばね荷重された継手アセンブリを示し、その中で流体相互接続は、カートリッジのエラストマ構成要素1714に接触していない。
図20Dは、接触された構成における、ばね荷重された継手アセンブリを示し、その中で流体相互接続は、カートリッジのエラストマ構成要素1714に接触する。
図20Eは、シールされた構成における、ばね荷重された継手アセンブリを示し、その中で流体相互接続は、カートリッジのエラストマ構成要素1714に接触する(例えば、1612等の圧着力の印加に応じて)。シールされた構成では、カートリッジは、ばね荷重された継手を介して、界面デバイスに圧着され、シール力が、管類とカートリッジとの間で発生される。ばね荷重された継手のばね1716は、反復可能シール力を確立することを補助する。
【0260】
図21A-21Cは、
図20C-20Eにおいて実証されるように、装填解除された、接触された、およびシールされた構成における、ばね荷重された継手アセンブリの斜視図を図式的に示す。
【0261】
図22A-22Cは、マイクロ流体デバイスとカートリッジとの間の界面を図式的に示す。
図22A-22Bを参照すると、デバイスのポートとカートリッジとの間の界面は、エラストマ構成要素1901(例えば、Oリングまたはガスケット)であって、これは、実質的に無漏出シールをカートリッジとデバイスとの間に発生させることを補助する。いくつかの実施形態では、接続されたガスケットのセットが、
図22Cに示されるように、使用されてもよい(例えば、デバイスのポート間のピッチまたは間隔が同一である事例において)。
【実施例10】
【0262】
実施例10-コンピュータシステム
図23は、例示的ソフトウェアアーキテクチャシステムを示す。ソフトウェアアーキテクチャシステムは、本明細書に開示されるシステムと統合されてもよく、1つまたはそれを上回るコンピュータプロセッサを備えてもよい。いくつかの事例では、1つまたはそれを上回るコンピュータプロセッサは、データを収集および/または分析するように構成されてもよい。ソフトウェアアーキテクチャシステムは、先入れ先出し(FIFO)データベースと通信し得る、コントローラサービスを備える、コンピュータ処理ユニットを備えてもよい。いくつかの事例では、FIFOデータベースは、グラフィカルユーザ界面と、サーバデータベースとを備え得る、第2のコンピュータプロセッサと通信してもよい。第2のコンピュータプロセッサは、例えば、クラウドを介して、顧客データベースと通信してもよい。いくつかの事例では、コンピュータ処理ユニットは、(例えば、有線または無線接続を介して)システムの1つまたはそれを上回るハードウェアユニットと通信してもよい。例えば、コンピュータ処理ユニットは、USBハブを介して、ステージ、1つもしくは複数のカメラまたはカメラ、高電圧電力供給源、オートサンプラ、流量制御システム(例えば、マイクロ流体流制御のためのソフトウェアおよびハードウェア、例えば、Fluigent Inc.)および/または他の研究室機器に接続されてもよい。
【実施例11】
【0263】
実施例11-統合されたシステム
図24は、統合されたシステムの例示的ブロック図を示す。統合されたシステムは、本明細書に開示される1つまたはそれを上回るシステムを備えてもよい。システムは、界面接触カートリッジ2107を備えてもよく、これは、複数のリザーバ2103と流体および/または電気連通してもよい。例えば、界面接触カートリッジ2107は、陽極液リザーバ、陰極液リザーバ、動員剤リザーバ、およびオートサンプラユニットに接続されてもよい。代替として、またはそれに加え、界面接触カートリッジ2107は、圧力制御マニホールド2105と流体および/または電気連通してもよく、これは、流体駆動機構、例えば、ポンプに結合されてもよい。界面接触カートリッジ2107は、カートリッジ2100に結合されてもよく、これは、デバイス2101を備えてもよい。デバイス2101は、陽極液高電圧リザーバ、陰極液高電圧リザーバ、動員剤高電圧リザーバ、およびサンプルラインと電気および/または流体連通してもよい。陽極液高電圧リザーバ、陰極液高電圧リザーバ、動員剤高電圧リザーバ、およびサンプルラインはそれぞれ、界面接触カートリッジ2107と流体および/または電気連通してもよい。デバイス2101はまた、廃棄物管理ユニット2109に結合されてもよく、これは、廃棄物をデバイス2101から離れるように指向するために使用され、いくつかの事例ではまた、サンプルを下流分析ユニット2111に指向するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、廃棄物管理ユニット2109は、霧化装置を備えてもよい。いくつかの事例では、下流分析ユニット2111は、質量分析計を備えてもよい。
【0264】
システムはまた、複数の撮像システムを備えてもよい。例えば、システムは、撮像システム2115を備えてもよく、これは、カメラ、照明器、廃棄物レセプタクル、および/またはアダプタを備えてもよく、これは、分析ユニット2111と界面接触するために使用されてもよい。システムはまた、撮像システム2117を備えてもよく、これは、照明器(例えば、UV照明源)、ミラー、および/またはカメラまたは他の好適な検出器を備えてもよい。いくつかの事例では、検出器(例えば、カメラ)は、冷却源、例えば、ファンまたは他の温度制御プラットフォームに接続されてもよい。
【0265】
図25は、統合されたシステムの例示的ブロック図を示す。システムは、サンプル2201と、サンプルを貯蔵し、サンプルを処理する(例えば、サンプルを混合する、試薬を添加する、吸引または分注する等)ように構成され得る、サンプルおよび試薬ホルダおよび/またはプロセッサ2203と、サンプル注入器2205と、サンプル先端洗浄器2207とを備えてもよい。サンプル先端洗浄器は、サンプルおよび/またはシステムを洗浄するための機構を備えてもよい。システムはまた、分離ユニット2209を備えてもよく、これは、デバイスを構成する、カートリッジと、撮像システム(例えば、UV照明器およびカメラ)とを備えてもよい。分離ユニットは、複数のコントローラ2211に結合されてもよく、これは、負圧(例えば、真空)または正圧(例えば、回転式またはダイヤフラムポンプ、弁等)を使用した流体制御を備えてもよい。コントローラ2211および/または分離ユニット2209は、流体マニホールド2213に結合されてもよく、これは、1つまたはそれを上回る試薬含有リザーバを備えてもよい。
【0266】
分離ユニット2209は、分離反応(例えば、等電点電気泳動)および/または動員反応を実施するために使用されてもよい。分離ユニット2209は、通信界面2215(例えば、RFID)、高電圧電力供給源2217、廃棄物管理ユニット2219(例えば、真空および廃棄物レセプタクル)、別の撮像ユニット2221、および/または下流分析ユニット2223(例えば、質量分析計)に接続または結合されてもよい。いくつかの事例では、分離ユニット2209は、温度制御ユニット2225に結合されてもよい。いくつかの事例では、本明細書に説明される1つまたはそれを上回るシステムは、温度制御ユニット2227および/または、例えば、器具制御2229のための他の制御ユニットを備えてもよい。
【0267】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、説明されたが、そのような実施形態は、一例のみとして提供されることが、当業者に明白であろう。本発明が本明細書内に提供される具体的実施例によって限定されることは、意図するものではない。本発明は、前述の明細書を参照して説明されたが、本明細書の実施形態の説明および例証は、限定的な意味で解釈されるように意図されていない。多数の変形例、変更、および代用が、ここで、本発明から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。さらに、本発明の全ての側面は、種々の条件および変数に依存する、本明細書に記載される具体的描写、構成、または相対的割合に限定されないことを理解されたい。本明細書に説明される発明の実施形態の種々の代替物が、本発明を実践する際に採用され得ることを理解されたい。したがって、本発明はまた、任意のそのような代替物、修正、変形例、または均等物を網羅するものとすることが検討される。以下の請求項は、本発明の範囲を定義し、これらの請求項およびそれらの均等物の範囲内の方法ならびに構造は、それによって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】