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  • 特表-エチレン-コポリマーゴム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】エチレン-コポリマーゴム
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20230605BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C08F220/18
C08L23/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565887
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2021062644
(87)【国際公開番号】W WO2021228951
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】20175017.1
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511242409
【氏名又は名称】アランセオ・ネザーランズ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリア・モンセラート・アルヴァレス・グリマ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ベーレン
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ・ベルナルド
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ゲーゲライン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB151
4J002DA046
4J002EK006
4J002EV046
4J002FD146
4J002GJ02
4J002GN00
4J002GQ00
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15P
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA18Q
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100AL08R
4J100BC27R
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA49
4J100DA51
4J100FA08
4J100FA19
4J100JA28
4J100JA43
(57)【要約】
エチレンから誘導された単位、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィン、及び少なくとも1種の非共役ジエンを含む、エチレンコポリマーを含む組成物であって、そのコポリマーには、以下のものが含まれる:(i)そのコポリマーの全重量を基準にして、58重量%以下まで、好ましくは35~56重量%、より好ましくは38~52重量%のエチレンから誘導された単位;(ii)そのコポリマーの全重量を基準にして、57重量%以下まで、好ましくは17~55重量%の、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィンから、好ましくはプロピレンから誘導された単位;ここで、そのエチレンコポリマーは、ポリマー鎖1本あたり、約80単位から、約125単位までの、1種又は複数のジエンから誘導された単位を有しており、そしてそのエチレンコポリマーが油と混合されるが、その組成物の中の油の全量が、29phr以下であり、そしてここで、その組成物が、その組成物の全重量(=100%)を基準にして、60重量%~100重量%のエチレンコポリマー及び油を含んでいる。さらに提供されるのが、そのコポリマーを含む、ゴム組成物及びゴムコンパウンド物及び物品、並びに、そのような物品、組成物、及びコンパウンド物を作製するための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンコポリマーであって、
(i)35重量%から58重量%以下まで、好ましくは35~56重量%、より好ましくは38~52重量%のエチレンから誘導された単位;
(ii)17重量%から57重量%以下までの、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィンから誘導された単位であって、前記少なくとも1種のC~C20-α-オレフィンにはプロピレンが含まれる、単位;
(iii)5~20重量%の、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)から誘導された単位;
を含み、
(i)~(iii)の中の重量%が、前記コポリマーの全重量(=100重量%)を基準にしたものであり、前記コポリマーが、ポリマー鎖1本あたり、次の式(I)に従って求めて、80より多いENBから誘導された単位を有している:
ENBから誘導された単位=([ENB]×10×ポリマーのMn)/120g/mol (I)
[式中、「[ENB]」は、前記ポリマー中のENB単位の含量(単位、重量%)(前記ポリマーの全重量(=100重量%)基準)であり、「ポリマーのMn」は、前記ポリマーの数平均分子量(Mn)(単位、kg/mol)を意味する]、
エチレンコポリマー。
【請求項2】
5~20の間、たとえば10~25の間の分岐度(Δδとして表される)を有する[ここで、Δδ(単位、度)は、0.1rad/sの振動数での位相角δと、100rad/sの振動数での位相角δとの間の差であって、動的機械分光法(DMS)により、125℃、10%歪みで測定される]、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項3】
ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して、少なくとも400,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1又は2に記載のエチレンコポリマー。
【請求項4】
ポリマー鎖1本あたり、95~120のENBから誘導された単位の含量を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のエチレンコポリマー。
【請求項5】
前記エチレンコポリマーがさらに、前記コポリマーの全重量(=100重量%)を基準にして、0.05~5重量%の5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)から誘導された単位を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のエチレンコポリマー。
【請求項6】
前記エチレンコポリマーが、前記ポリマーの全重量を基準にして、35~56重量%のエチレンから誘導された単位を含み、前記エチレンコポリマーが、前記エチレンコポリマーの全重量(=100重量%)を基準にして、7~18%の間、又は8~15重量%の間のENBから誘導された単位の含量を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のエチレンコポリマー。
【請求項7】
組成物であって、前記組成物の全重量(=100重量%)を基準にして、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の、請求項1~6のいずれか1項に記載のエチレンコポリマーを含み、前記エチレンコポリマーが油と混合されるが、前記組成物の中の油の全量が、29phr以下であり、前記油が、好ましくは、1種又は複数の炭化水素ベースの油を含む、組成物。
【請求項8】
前記組成物が、ISO 289に準拠して測定して、少なくとも80のムーニー粘度ML1+8(150℃)を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、1より大、且つ4.00未満、好ましくは3.70未満、より好ましくは3.20未満の最小位相角δminであって、位相角(δ)対絶対モジュラス([G])のプロットから得られる、最小位相角δminを有する、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
80から、最高150までの、ムーニー粘度ML1+8(150℃)を有する、請求項7~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
ゴムコンパウンド物を作製する方法であって、請求項1~6のいずれか1項に記載のエチレン-コポリマー、又は請求項7~10のいずれか1項に記載の組成物を、少なくとも1種の硬化剤、任意選択により場合によっては少なくとも1種の充填剤、及びさらに任意選択により場合によっては少なくとも1種の発泡剤、又はそれらの組合せと混合することを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって得られる、ゴムコンパウンド物。
【請求項13】
物品を作製する方法であって、請求項12に記載のゴムコンパウンド物を、成形及び硬化にかけることを含み、ここで、成形が、硬化の後、前、又は硬化と同時に実施することができる、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法によって得られる、物品。
【請求項15】
発泡させた物品である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
以下の性質(i)~(iv)の内の少なくとも二つを有する請求項13又は14に記載の物品:
(i)動的剛性:1.30未満、
(ii)tanデルタ:0.15未満、
(iii)破断時伸び:少なくとも500%、
(iv)圧縮永久歪み(72時間、23℃):20未満、好ましくは9未満。
【請求項17】
油展されたポリマー組成物を作製する方法であって、
(i)反応媒体中で、エチレン、少なくとも1種のC~C20α-オレフィン、及び少なくとも1種の非共役ジエンを重合させて、請求項1において定義されたエチレン-コポリマーを得るステップ、
(ii)前記反応媒体の中で、前記エチレンコポリマーを、1種又は複数の油と混合するステップ、
(iii)前記反応媒体を除去して、前記コポリマー及び前記油を含む組成物を単離するステップ、
(iv)任意選択により場合によっては、前記組成物を、乾燥、成形、圧縮、洗浄、及びそれらの組合せから選択される少なくとも一つのステップにかけるステップ、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エチレン-コポリマーゴム及びゴム組成物、並びにそのようなゴム及びゴム組成物を製造するためのプロセス、並びにそのようなゴムを用いて製造した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-α-オレフィン-エラストマー、及びエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(EPDM)は、特に、多くの用途で使用されている。一つの主たる用途においては、EPDMタイプのポリマーが、シールとして、又はシール若しくはシーリングシステムの一成分として使用されている。EPDMゴムは、自動車、船舶、及び航空機におけるシーリングシステムにおいて、たとえば扉又は窓のためのシーリング材料として(当業界では、「ウェザーストリップ」用途とも呼ばれている)、見出される。多くの交通用途においては、それらの物質は、低密度であることを要求され、典型的には、発泡材料(いわゆる、「スポンジ」)として提供される。EPDMゴムはさらに、ビルディングにおいて窓をシールするため、或いは、器具に気密性若しくは水密性を与えるシールとして(たとえば水栓におけるOリングとして)、或いは洗濯機や他の設備における開口部のためのシール若しくはフランジとしても使用されている。そのようなゴムの他の用途としては、ベルトとして、たとえばコンベヤのベルト、エスカレーターのベルト、エンジンのベルトとしての使用が挙げられる。さらなる用途としては、たとえば、エンジンマウント、屋根材、及びホースが挙げられる。
【0003】
これらの用途に適したゴムでは、良好な機械的性質、たとえば引張強度、引裂強度、さらには良好な可撓性、弾性、及び、静的応力及び動的応力下での形状維持性能などを有することが必要とされる。屋外用途で使用される場合には、広い温度範囲にわたって、これらの性質が保持されなければならない。多くの用途、特にシーリング用途においては、それらのゴムがさらに、良好な振動又は音響の減衰性能(たとえばエンジン音を減衰させるため)も必要とされる。
【0004】
ほとんどの用途において、EPDMゴムは、少なくとも1種の他の成分とブレンドされて、いわゆるゴム「コンパウンド(compound)」(以下、コンパウンド物とも記す)が製造される。そのような成分としては、充填剤、硬化剤、又は発泡剤が挙げられる。EPDMゴムの機械的性質、たとえば引張強度は、そのポリマーの分子量とともに増大すするということは公知である。このことにより、改良された機械的性質を達成するために、高分子量のゴムを提供することが必要となる。しかしながら、高分子量を有するゴムは、特にコンパウンド物を製造したり、そのコンパウンドを加工したりするときに、加工が困難となる傾向がある。そのような困難さは、混合が不十分、混練が困難、及びコンパウンド物における凝集した塊状物の生成、並びに、硬化可能若しくは硬化されたゴムコンパウンド物を押出成型、注型成形、又は切断した際の表面の粗さの形で顕在化される。
【0005】
これらの問題を低減させるためのいくつかの方法が、業界では公知である。一つのアプローチ方法は、たとえばポリマーの分子量分布又は分岐構造を制御することによって、特定のポリマー設計及びミクロ構造を創り出すことである。また別の公知のアプローチ方法は、そのゴム組成物に、いくつかの成分を添加して、たとえばより低い粘度の他のゴムをブレンドして、そのゴム組成物を希釈することにより、全体の粘度を下げる方法である。別な方法として、或いはそれに加えて、そのゴムに油を添加して、いわゆる「油展された(oil-extended)ポリマー」を製造することもできる。油展されたポリマーは、ポリマーの調製過程、又はその仕上げステップの際(すなわち、ポリマーを単離及び乾燥させるより前)のいずれかで、1種又は複数のエクステンダー油を用いてブレンドすることにより製造される。次いで、そのエクステンダー油を、ポリマーに均一に混合する。そのような油展されたポリマーは、同一のポリマーを油なしで加工するよりは、容易に加工してゴムコンパウンド物を製造することができるが、ただし、油が添加できるのは、そのゴムコンパウンド物を製造するプロセスの間だけである。
【0006】
(特許文献1)には、少なくとも300,000g/モルの分子量を有する油展されたEPDMポリマーが記載されている。エクステンダー油の含量は、30~70phrである。そのゴム組成物は、良好な機械的性質、及びさらには位相角測定において、低いデルタmin値で表される良好な防振性を有している。しかしながら、油含量が高いために、製造コストが上昇することになる。油含量が高いことで、さらに、特に、そのゴム組成物に他の成分を添加すると、そのゴム組成物の動的性能の低下が起こりうる。このことによって、そのゴム組成物に添加しうるそのような成分、たとえば充填剤又はゴム添加剤の量が限定され、そしてその油展されたEPDMポリマーの操作枠が狭められる。(特許文献2)には、少なくともこれらの問題の内のいくつかは、特定の、モノマー組成及び分岐のレベルによって定義されるポリマー設計のエチレン-コポリマーを提供することによって克服することが可能であるということが記載されている。その油展ゴム組成物には、少なくとも400,000g/モルの分子量を有するエチレンコポリマーが含まれ、10~40phrの、どちらかと言えば低い油含量でも、良好な機械的性能及び形状維持性能を有している。しかしながら、(特許文献2)には、シーリング用途、特に発泡させたシールすなわちスポンジ材料では有用である、振動及び騒音の抑制並びに動的性質についての記述がない。
【0007】
特定の組成及び構造のエチレン-コポリマーを含む組成物、それを含む組成物を加工して、さらに改良された動的性質及び機械的性質を有するゴムコンパウンド物とすることができるということが今や見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0313868A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0153206A1号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様においては、以下のものを含むエチレンコポリマーが提供される:
(i)35重量%から58重量%以下まで、好ましくは35~56重量%、より好ましくは38~52重量%のエチレンから誘導された単位;
(ii)17重量%から57重量%以下までの、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィンから誘導された単位(ここで、その少なくとも1種のC~C20-α-オレフィンにはプロピレンが含まれる);
(iii)5~20重量%の、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)から誘導された単位;
ここで、(i)~(iii)の中の重量%は、コポリマー(100重量%)の全重量を基準にしたものであり、そしてここで、そのコポリマーは、ポリマー鎖1本あたり、次の式(I)に従って求められる、80より多いENBから誘導された単位を有している:
ENBから誘導された単位=([ENB]×10×ポリマーのMn)/120g/mol (I)
[式中、「[ENB]」は、ポリマー中のENB単位の含量(単位、重量%)(ポリマーの全重量(=100重量%)基準)であり、そして「ポリマーのMn」は、ポリマーの数平均分子量(Mn)(単位、kg/mol)を意味する]。
【0010】
また別の態様においては、エチレンコポリマーを含む組成物と、少なくとも1種の硬化剤、場合によっては少なくとも1種の充填剤、又はそれらの組合せとを混合することを含む、ゴムコンパウンド物を作製する方法が提供される。
【0011】
さらなる態様においては、その方法により得られるゴムコンパウンド物が提供される。
【0012】
さらにまた別の態様においては、そのゴムコンパウンド物を、成形及び硬化させることを含む、物品を作製する方法が提供されるが、ここで、その成形は、硬化の後、前、又は同時に実施することができる。
【0013】
さらなる態様においては、その方法によって得られる物品が提供される。
【0014】
また別の態様においては、油展されたポリマー組成物を作製する方法が提供されるが、それに含まれるのは、以下のステップである:
(i)反応媒体中で、エチレン、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィン、及び少なくとも1種の非共役ジエンを重合させて、エチレン-コポリマーを得るステップ、
(ii)その反応媒体の中で、そのエチレンコポリマーを、1種又は複数の油と混合するステップ、
(iii)その反応媒体を除去して、そのコポリマー及びその油を含む組成物を単離するステップ、
(iv)場合によっては、その組成物を、乾燥、成形、圧縮、洗浄、及びそれらの組合せから選択される少なくとも一つのステップにかけるステップ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のポリマーについてのDMTA測定から得られた、ファン・グルプ-パルメン(van Gurp-Palmen)プロットである(実験の項で説明)。破線は、最小位相角及び相当する絶対モジュラス、それぞれ、[δ]min及びG minを示している。
図2】動的-機械的分析(実験の項で説明)から得られた、損失係数(tanデルタ)対振動数のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の記述において、規格が使用できる。特に断らない限り、規格は、2020年3月1日現在に施行されている版を使用する。たとえば、その規格が失効したなどの理由のために、施行されている版が存在しない場合には、2020年3月1日に最も近い日時に施行されていた版を参照する。
【0017】
以下の記述において、組成物又はポリマーの成分の量は、「重量パーセント(weight percent)」又は「重量%(wt.%、又は% by weight)」によって、相互に置き換え可能に表すことができる。「重量パーセント(weight percent)又は重量%(wt.%、又は% by weight)」という用語は、相互に置き換え可能に使用され、組成物又はポリマーそれぞれの全重量(特に断らない限り、100%である)を基準にしている。ポリマーのモノマー又は他の成分から誘導された単位の量は、コポリマーの重量を基準にした重量%で表され、そのコポリマーが油展されている場合でも、コポリマーの全重量は、依然として、そのコポリマー全重量を指している。別の言い方をすれば、油展されたコポリマーの、コポリマーの全重量は、コポリマーとエクステンダー油の重量から、エクステンダー油の重量をマイナスしたものである。
【0018】
「phr」という用語は、ゴム100部あたりの部数、すなわち、100重量%と設定したゴムの全量を基準にした、重量パーセントを意味している。本開示におけるエチレン-コポリマーは、ゴムである。組成物に、1種若しくは複数のエチレン-コポリマー、又はエチレン-コポリマーと1種若しくは複数の他のゴムとが含まれている場合には、「phr」は、それらのゴムの全量を指している。
【0019】
本開示において表示されている範囲には、その範囲の終点の間のすべての値が含まれ、且つ開示されているが、特に断らない限り、それらの終点も含まれる。
【0020】
「含む(comprising)」又は「含む(containing)」という用語は、相互に置き換え可能に使用される。それらは、それらが示唆している構成成分(ingredients)又は成分(components)が含まれていることを意味しているが、他の構成成分又は成分の存在を排除する訳ではない。「からなる(consisting)」という用語は、限定した意味合いで使用されているのであって、組成を、「それからなる」としている構成成分のみに限定していることを意味している。
【0021】
エチレン-α-オレフィン-コポリマー
本明細書において提供されるエチレン-α-オレフィン-コポリマーは、特に、シーリング用途で特に有用な良好な動的性質、たとえば低いtanデルタ値、高い反発弾性値、低い圧縮永久歪み、低い動的剛性、並びに、良好な機械的性質たとえば引張強度、及び弾性的性質たとえば破断時伸びを有する、良好な性質を有するコンパウンド物を得るのに使用することができる。高い分子量を有しているにもかかわらず、それらは、エクステンダー油を全く使用しないか、或いはほんとわずかな量を使用するだけで、加工してゴムコンパウンド物とすることができる。
【0022】
本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーは、エチレンと、少なくとも2種のさらなるコモノマーとのコポリマーである。これは、そのコポリマーが、エチレンと、それら少なくとも2種のさらなるコモノマーとから誘導された繰り返し単位を含んでいるということを意味している。そのコポリマーが、最高で58重量パーセント(重量%)までの、エチレンから誘導された単位を含んでいるのが好ましい。本開示におけるコポリマーが、最高で56重量%まで、より好ましくは最高で52重量%までの、エチレンから誘導された単位を含んでいるのが、より好ましい。一つの実施態様においては、本開示のエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、35~56重量%、好ましくは38~52重量%の、エチレンから誘導された単位を含んでいる。その重量パーセントは、コポリマーの全重量を基準にしたものである。
【0023】
エチレンから誘導される単位に加えて、本開示におけるコポリマーには、以下のものから誘導された繰り返し単位が含まれる:
(i)1種又は複数のC~C20-α-オレフィン、好ましくはC~C12-α-オレフィン、
(ii)少なくとも1種の非共役ジエン、及び
(iii)少なくとも1種のデュアル重合性(dual polymerizable)ジエン。
【0024】
~C 20 -α-オレフィン
~C20-α-オレフィン(本明細書においては「C~C20-アルファ-オレフィン」とも呼ばれる)は、3~20個の炭素原子を含み、単一の脂肪族炭素-炭素二重結合を有するオレフィンである。その二重結合は、そのオレフィンの最先端部(terminal front end)に位置している。α-オレフィンは、芳香族又は脂肪族、直鎖状、分岐状又は環状であってよい。例としては、以下のものが挙げられる:プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、及び12-エチル-1-テトラデセン。複数のアルファ-オレフィンを組み合わせて使用してもよい。好ましいアルファ-オレフィンは、脂肪族のC~C12-α-オレフィン、より好ましくは脂肪族で直鎖状のC~C-α-オレフィン、最も好ましくは、プロピレン(C-α-オレフィン)及び1-ブテン(C-α-オレフィン)である。本開示のエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、プロピレン及び1種又は2種以上の他のC~C20-α-オレフィンを含んでいるのが好ましい。本開示の一つの実施態様においては、そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、C~C20-α-オレフィンとして、プロピレンのみを含んでいる。そのエチレン-コポリマーには、好ましくは、最高57重量%まで、より好ましくは、最高55重量%までのC~C20-α-オレフィンから誘導された単位が含まれる(重量パーセント(重量%)はすべて、そのコポリマーの全重量基準である)。そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、17~57重量%の、C~C20-α-オレフィンから誘導され合計単位を含んでいるのが好ましい。そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、好ましくは、最高57重量%まで、より好ましくは最高55重量%までのプロピレンから誘導された単位を含んでいる(重量パーセントはすべて、そのコポリマーの全重量基準である)。本開示の一つの実施態様においては、そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、17~55重量%の、プロピレンから誘導された合計単位を含んでいる。
【0025】
非共役ジエン
非共役ジエンは、少なくとも2個の二重結合を含み、それらの二重結合が、鎖中、環中、環構造中、又はそれらの組合せの中で非共役である、ポリエンである。それらのポリエンは、環内及び/又は環外の二重結合を有していてよく、そして置換基を持たないか、或いは同一又は異なったタイプの複数の置換基を有していてもよい。それらの二重結合は、少なくとも、2個の炭素原子によって隔てられている。多くの場合、複数の非共役二重結合の内の1個だけが、重合触媒によって変換される。その非共役ジエンは、好ましくは脂肪族、より好ましくは脂環族及び脂肪族である。
【0026】
好適な非共役ジエンとしては、芳香族ポリエン、脂肪族ポリエン、及び脂環族ポリエン、好ましくは6~30個の炭素原子を有するポリエン(C~C30-ポリエン、より好ましくはC~C30-ジエン)が挙げられる。非共役ジエンの具体例としては、以下のものが挙げられる:1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-エチル-1,4-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘプタジエン、5-エチル-1,4-ヘプタジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-エチル-1,5-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,4-オクタジエン、4-エチル-1,4-オクタジエン、5-エチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,5-オクタジエン、5-エチル-1,5-オクタジエン、6-エチル-1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、6-プロピル-1,6-オクタジエン、6-ブチル-1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,4-ノナジエン、4-エチル-1,4-ノナジエン、5-エチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,5-ノナジエン、5-エチル-1,5-ノナジエン、6-エチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6-ノナジエン、6-エチル-1,6-ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,7-ノナジエン、8-メチル-1,7-ノナジエン、7-エチル-1,7-ノナジエン、5-メチル-1,4-デカジエン、5-エチル-1,4-デカジエン、5-メチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,5-デカジエン、5-エチル-1,5-デカジエン、6-エチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、6-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、7-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,7-デカジエン、7-エチル-1,7-デカジエン、8-エチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、8-エチル-1,8-デカジエン、1,5,9-デカトリエン、6-メチル-1,6-ウンデカジエン、9-メチル-1,8-ウンデカジエン、ジシクロペンタジエン、及びそれらの混合物。ジシクロペンタジエンは、デュアル重合性ジエンとして、又は非共役ジエンとしての両方で使用することができるが、そのような場合、ジシクロペンタジエンは、少なくとも1種のデュアル重合性ジエン又は少なくとも1種の非共役ジエンと組み合わせて使用される。
【0027】
好ましい非共役ジエンとしては、脂環族ポリエンが挙げられる。脂環族ジエンは、少なくとも1個の環状単位を有している。好ましい実施態様においては、その非共役ジエンが、少なくとも1個の環内二重結合、及び場合によっては、少なくとも1個の環外二重結合を有するポリエンから選択される。好ましい例としては、ジシクロペンタジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、及び5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)が挙げられるが、ENBが特に好ましい。一つの実施態様においては、本開示のコポリマーには、ENBのみが非共役ジエンとして含まれる。
【0028】
芳香族非共役ポリエンの例としては、ビニルベンゼン(その異性体も含む)及びビニル-イソプロペニルベンゼン(その異性体も含む)が挙げられる。
【0029】
本開示の典型的な実施態様においては、そのコポリマーが、少なくとも5重量%、且つ20重量%以下までの、1種又は複数の非共役ジエンから誘導された単位を含む。好ましい実施態様においては、そのコポリマーに6~18重量%、より好ましくは7~18重量%、たとえば8~15重量%の、1種又は複数の非共役ジエンから誘導された単位が含まれる。好ましい実施態様においては、そのコポリマーに、5重量%から最高20重量%までのENBから誘導された単位、より好ましくは6~18重量%のENBから誘導された単位、又は7~18重量%、たとえば8~15重量%のENBから誘導された単位が含まれる(重量%はすべて、エチレン-α-オレフィン-コポリマーの全重量を基準)。
【0030】
デュアル重合性ジエン
デュアル重合性ジエンは、ビニル置換された脂肪族単環式非共役ジエン、ビニル置換された二環式非共役脂肪族ジエン、アルファ-オメガ直鎖状のジエン及び非共役ジエンから選択されるが、その不飽和の両方の部位が、配位触媒(たとえば、チーグラー・ナッタのバナジウム触媒又はメタロセンタイプの触媒)によって重合することが可能である。デュアル重合性ジエンの例としては、以下のものが挙げられる:1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロ-ヘキサン、1,4-ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニル-シクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン及び1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、ジシクロペンタジエン、並びに1,4-シクロヘキサジエン。好ましいのは、非共役ビニルノルボルネン及びC~C12アルファ-オメガ直鎖状のジエンである(たとえば、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン,1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン)。そのデュアル重合性ジエンは、13~17族のヘテロ原子を含む少なくとも1種の基、たとえばO、S、N、P、Cl、F、I、Br、又はそれらの組合せを用いてさらに置換されていてもよい。デュアル重合性ジエンは、ポリマーの分岐を形成させる原因となったり、或いはそれに寄与したりすることができる。
【0031】
本開示の好ましい実施態様においては、そのデュアル重合性ジエンが、2,5-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、1,7-オクタジエン、及び1,9-デカジエンから選択され、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)が最も好ましい。一つの実施態様においては、本開示のコポリマーには、VNBのみがデュアル重合性ジエンとして含まれる。
【0032】
本開示のコポリマーには、好ましくは0.05重量%~5重量%、より好ましくは0.10重量%~3重量%、又は0.2重量%~1.2重量%の、1種又は複数のデュアル重合性ジエンから、より好ましくはVNBから誘導された単位が含まれる(重量パーセントはすべて、そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーの全重量基準である)。
【0033】
好ましい実施態様においては、本開示のコポリマーには、5-エチリデン-2-ノルボルネン及び5-ビニルノルボルネンから誘導された単位が含まれている。本開示のより好ましい実施態様においては、そのコポリマーには、エチレン、プロピレン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及び5-ビニル-2-ノルボルネンから誘導された単位が含まれている。たとえば、そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーには、5~20重量%の、ENBから誘導された単位及び0.05~5重量%の、VNBから誘導された単位が含まれていてよい。
【0034】
その本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーには、他のコモノマーから誘導された単位が含まれていてもよいし、或いは含まれていなくてもよい。エチレン、非共役ジエン、デュアル重合性ジエン、及びα-オレフィンから誘導された単位を合計したものが、そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーの全重量を基準にして、99重量%より大、好ましくは100重量%である。本開示の一つの実施態様においては、エチレン、プロピレン、ENBから誘導された単位を合計したものが、そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーのポリマーの全重量を基準にして、75重量%より大、好ましくは90重量%、そしてより好ましくは少なくとも95重量%である。
【0035】
本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーは、好ましくは、高いムーニー粘度、たとえば少なくとも80又は少なくとも90又は少なくとも100のムーニー粘度ML1+8(150℃)を有しており、実際のところ、さらに高い150よりも高いムーニー粘度を有していてもよい。たとえば、そのコポリマーが、80~120、又は80~150のムーニー粘度ML1+8(150℃)を有していてよい。
【0036】
好ましくは、本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーは、少なくとも400,000g/モル、好ましくは少なくとも500,000g/モル、より好ましくは少なくとも600,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有している。たとえば、そのポリマーが、400,000g/モル~700,000g/モルの間のMwを有していてよい。本開示のエチレン-コポリマーは、少なくとも2.5、たとえば3.0~30、又は3.5~25、又は3.7~10の多分散性(分子量分布)を有していてよい。本開示の一つの実施態様においては、本開示のエチレン-コポリマーの数平均分子量(Mn)が、約40~230kg/モルであってよい。Mw及びMnは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0037】
本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーが分岐状であって、たとえば2~50の間のΔδ、より好ましくは5~35の間、又は8~30の間、又は10~25の間のΔδの分岐度を有していてもよい。Δδ(単位、度)は、0.1rad/sの振動数での位相角δと、100rad/sの振動数での位相角δとの間の差であって、動的機械分光法(DMS)により、125℃で測定される。
【0038】
好ましくは、本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、少なくとも80、好ましくは少なくとも95、より好ましくは少なくとも100の、ポリマー鎖1本あたりのジエン含量を有しており、そしてそのジエンにENBが含まれているのが好ましい。本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、約80から最高約125までの、ポリマー鎖1本あたりのジエン含量を有しているのがよい。
【0039】
好ましい実施態様においては、本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、少なくとも80、好ましくは少なくとも95、より好ましくは少なくとも100のポリマー鎖1本あたりのENB含量を有している。本開示の一つの実施態様においては、そのエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、約80から最高約125までの、ポリマー鎖1本あたりのENB含量を有してよい。
【0040】
本開示の一つの実施態様においては、そのエチレンコポリマーが、そのコポリマーの全重量を基準にして、5~20重量%の間の、ENBから誘導された単位の含量と、10~25の間の分岐度(Δδとして表される)とを有している。そのようなコポリマーは、好ましくは、5~20重量%の、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)から誘導された単位、及び0.05~5重量%の、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)から誘導された単位を有している。好ましくは、そのようなコポリマーは、高いムーニー粘度、たとえば少なくとも90又は少なくとも100のムーニー粘度ML1+8(150℃)を有しており、実際のところ、150を越えるようなムーニー粘度を有していてもよい。好ましくは、この実施態様のコポリマーは、400,000g/モル~700,000g/モルの間のMw、及び/又は少なくとも2.5、たとえば3.0~30の多分散性を有している。この実施態様におけるコポリマーは、約40~230kg/モルの数平均分子量(Mn)を有していてよい。
【0041】
本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーは、加工して、好ましくは少量の油と混合したときに、たとえば油展されたコポリマーとして、良好な、すなわちさらに改良された動的性質及び機械的性質を有するコンパウンド物とすることができる。その油展されたエチレン-α-オレフィン-コポリマーは、上述のエチレン-α-オレフィン-コポリマーと同等の性質を有しているが、ただし、その油展されたコポリマーのムーニー粘度が、その油展されていないコポリマーのムーニー粘度よりは低い。したがって、本開示においては、油と混合した、1種又は複数の本開示のエチレンコポリマーを含む組成物もまた提供される。その油が、ポリマーの中に組み入れられるのが好ましい。その混合物が、固体の混合物であるのが好ましい。その混合物が、均一であるのが好ましい。「固体」及び「均一」という用語は、裸眼を通して見た外観を指している。油とポリマーとの固体で均一な混合物が、油展された形態にあるエチレン-コポリマーを含む、すなわちそのエチレン-コポリマーが油展されているのが好ましい。たとえば、その油展されたコポリマーは、重合プロセスの途中また後に、反応媒体の中で、コポリマーと油とを混合することにより得られ、その後でその反応媒体を除去するのがよい。油の量は、0よりは多く、最高29phrまでの範囲がよい。したがって、油と混合し、その油を全量で、5~25phr、好ましくは10~20phr含む、本開示のコポリマーを含む組成物が提供される。その油が、炭化水素ベースの油を含んでいるのが好ましい。油と混合されたコポリマーが、油展されたコポリマーであるのが好ましい。その組成物の油が、油展されたコポリマーのエクステンダー油であるのが好ましい。その油の少なくとも主要部分、すなわち、その油の全量を基準にして油の50重量%を超えるものが、エクステンダー油である、すなわち、油展されたコポリマーの油であるのが好ましい。
【0042】
本開示における一つの実施態様においては、油と混合されたエチレン-α-オレフィン-コポリマーを含む組成物が提供され、その組成物の全油含量は、その組成物の全重量を基準にして、5~25重量%、好ましくは8重量%から最高20重量%まで、又は8重量%から最高18重量%までである。その油が、炭化水素ベースの油を含んでいるのが好ましい。油と混合されたコポリマーが、油展されたコポリマーであるのが好ましい。その組成物の油が、油展されたコポリマーのエクステンダー油であるのが好ましい。その油の少なくとも主要部分、すなわち、その油の全量を基準にして油の50重量%を超えるものが、エクステンダー油である、すなわち、油展されたコポリマーの油であるのが好ましい。
【0043】
典型的には、本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーを含む組成物には、60重量%から、好ましくは90重量%から、より好ましくは95重量%から、さらには少なくとも97重量%のエチレン-コポリマー及び油が含まれる(その重量パーセントは、その組成物の全重量(=100%)を基準にしたものである)。その油が、1種又は複数の炭化水素ベースの油を含んでいるのが好ましい。エチレン-α-オレフィン-コポリマーが、油展されているのが好ましい。その組成物の油が、油展されたコポリマーのエクステンダー油であるのが好ましい。その油の少なくとも主要部分、すなわち、その油の全量を基準にして油の50重量%を超えるものが、エクステンダー油である、すなわち、油展されたコポリマーの油であるのが好ましい。
【0044】
油とコポリマーとの混合物、たとえば本開示における油展されたエチレン-α-オレフィン-コポリマーは、典型的には、固体の組成物であり、且つ油とポリマーとの均質な混合物である。それらは、好ましくはポリマーを調製している間に、エチレン-コポリマーと少なくとも油の一部、好ましくは全部の油とを、液相中でブレンドすることにより調製して、油展されたコポリマーを得ることができる。使用することが可能な油は、ゴムの製造において「エクステンダー油」として当業界で公知である、各種の慣用される油すなわち軟化剤であってよい。その油が、1種又は複数の炭化水素ベースの油を含んでいるのが好ましく、或いは炭化水素ベースの油又はそれらの混合物である。「炭化水素ベースの(hydrocarbon-based)」という用語は、その油が、その油の全組成を基準にして、少なくとも50重量%の水素及び炭素を含んでいることを意味している。炭化水素ベースの油には、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の炭素及び水素を含んでいるのがよい。その油が、25℃、大気圧(1気圧)で液体であるのが好ましい。好適な油の例としては、炭化水素ベースの油、たとえば石油からの高沸点留分から得られるものが挙げられる。具体例としては、主としてアルカン及び/又はシクロアルカンをベースとする油、たとえばパラフィン系油、ナフテン系油、鉱油などが挙げられる。好適な油としてはさらに、芳香族油、たとえば石油の蒸留分から得られるものが挙げられる。それらの油は、通常、100℃で5~35mm/sの動的粘度を示す。好ましい油としては、パラフィン系油が挙げられる。好適な油は、たとえば以下のような商品名で市販されている:PLI PROCESS OIL P 460SUNPAR 2280(Sunocoから入手可能)、CONOPURE 12P(ConocoPhillipsから入手可能)、PARALUX 6001(Chevron Texacoから入手可能)。他の例としては、ガス液化(GTL)プロセスにより製造された油、たとえば、RISELLA X 430(Shell製)が挙げられる。それらの油には、オレフィンオリゴマー、たとえばオレフィンのホモオリゴマー又はコオリゴマー、好ましくはアルファ-オレフィンオリゴマーが含まれていてよい。一つの実施態様においては、その油には、1種又は複数のアルファ-オレフィンのオリゴマー又はポリマーが含まれ、以下の性質の一つ又は複数を示す:
a.温度190℃での粘度(ブルックフィールド粘度):90,000mPa・sec以下、又は80,000以下、又は70,000以下、又は60,000以下、又は50,000以下、又は40,000以下、又は30,000以下、又は20,000以下、又は10,000以下、又は8,000以下、又は5,000以下、又は4,000以下、又は3,000以下、又は1,500以下、又は250~15,000mPa・secの間、又は500~5,500mPa・secの間、又は500~3,000mPa・secの間;並びに/又は
b.温度60℃での粘度(ASTM D3236に従って測定):200mPa・sec~20.000mPa・sec、400~20.000mPa・sec、又は500~20.000mPa・sec、又は1,000~10.000mPa・sec。一つの実施態様においては、そのオレフィンオリゴマーが、重合の際に、ポリマーとの反応性があり、重合プロセスの間にポリマー鎖の中に組み入れられることもあり得る。
【0045】
本開示におけるまた別の好ましい実施態様においては、本開示のエチレン-α-オレフィン-コポリマー、及び0から最高29phrまで、好ましくは5~25phr、より好ましくは10~20phrの油を含む組成物が提供されるが、ここでその組成物は、約80~約120、好ましくはたとえば約85~約110のムーニー粘度ML1+8(150℃)を有している。その油が、炭化水素ベースの油を含んでいるのが好ましい。その組成物が、1より大、且つ4.0未満、好ましくは3.70未満、より好ましくは3.20未満のデルタmin(δmin)を有しているのが有利である。たとえば、本開示におけるエチレン-α-オレフィン-コポリマーが、2.0より大で、3.5未満のデルタmin(δmin)を有しているのがよい。
【0046】
エチレン-α-オレフィン-コポリマーが、油展されているのが好ましい。その組成物の油が、油展されたコポリマーのエクステンダー油であるのが好ましい。その油の少なくとも主要部分、すなわち、その油の全量を基準にして油の50重量%を超えるものが、エクステンダー油である、すなわち、油展されたコポリマーの油であるのが好ましい。
【0047】
本開示の一つの実施態様においては、そのコポリマーの全重量を基準にして、5~20重量%の間の、ENBから誘導された単位の含量と、10~25の間の分岐度(Δδとして表される)とを有する、エチレンコポリマーを含む組成物が提供される。そのようなコポリマーは、好ましくは、5~20重量%の、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)から誘導された単位、及び0.05~5重量%の、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)から誘導された単位を有している。好ましくは、そのようなコポリマーは、高いムーニー粘度、たとえば少なくとも90又は少なくとも100のムーニー粘度ML1+8(150℃)を有しており、実際のところ、150を越えるようなムーニー粘度を有していてもよい。好ましくは、この実施態様のコポリマーは、400,000g/モル~700,000g/モルの間のMw、及び/又は少なくとも2.5、たとえば3.0~30の多分散性を有している。この実施態様におけるコポリマーは、約40~230kg/モルの数平均分子量(Mn)を有していてよい。この実施態様の組成物は、最高29phrまでの油の、油の合計含量を有している。そのエチレン-コポリマーが油展されているのが好ましい。その組成物の油が、油展されたコポリマーのエクステンダー油であるのが好ましい。その油の少なくとも主要部分、すなわち、その油の全量を基準にして油の50重量%を超えるものが、エクステンダー油である、すなわち、油展されたコポリマーの油であるのが好ましい。
【0048】
<ポリマーの調製>
本開示におけるコポリマーは、エチレン-コポリマーの生存に関して当業界で公知のようにして、エチレン、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィン、少なくとも1種の非共役ジエン、及び場合によっては、少なくとも1種のデュアル重合性ジエンモノマーを共重合させることを含むプロセスによって調製することができる。それらのポリマーは、慣用される触媒、たとえばチーグラー・ナッタ-触媒、又はメタロセンタイプの触媒、若しくはポストメタロセン触媒、又は複数の触媒の組合せを使用することにより製造してもよい。チーグラー・ナッタ触媒は、遷移金属、特にチタン又はバナジウムのハロゲン化物をベースとする、非メタロセンタイプの触媒である。メタロセンタイプの触媒は、有機金属触媒であるが、ここで、その金属は、少なくとも1個の環状有機配位子、好ましくは少なくとも1個のシクロペンタジエニル配位子又は少なくとも1個のインデニル配位子に結合されている。一つの実施態様においては、チーグラー・ナッタ触媒が使用される。また別の実施態様においては、好ましくは、メタロセンタイプの触媒が使用される。また別の実施態様においては、2種以上のメタロセンタイプの触媒の組合せが使用される。
【0049】
その重合は、気相中、スラリー中、又は不活性溶媒、好ましくは炭化水素溶媒中の溶液中で実施することができる。
【0050】
重合を、異なった重合ゾーンで起こさせることも可能である。一つの重合ゾーンが、容器であって、そこで重合を起こさせるが、それが、バッチ反応器であっても。或いは連続反応器であってもよい。複数の反応器(たとえば直列に接続したり、或いは並列に接続したりした反応器)を使用する場合には、それぞれの反応器が、独立した重合ゾーンとみなされる。
【0051】
好ましい溶媒としては、1種又は複数の炭化水素溶媒が挙げられる。好適な溶媒としては、C5~12炭化水素、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタメチルヘプタン、水素化ナフサ、及びそれらの異性体及び混合物が挙げられる。その重合は、作成される製品に応じて、10~250℃の温度で実施することができる。重合を溶液中で実施する場合、50℃よりも高い温度で実施するのが、最も好ましい。
【0052】
好ましい実施態様においては、その重合に、そのポリマーの分子量を制御する目的の、1種又は複数の連鎖移動剤の使用が含まれる。好ましい連鎖移動剤としては、水素(H)が挙げられる。ポリマー鎖1本あたりのジエン含量は、たとえば当業界で公知のようにして、反応におけるジエンの量及び分子量(鎖長)を制御することにより制御することができる。分岐は、当業界で公知のようにして、たとえば特定の触媒、たとえばポリマーの中に分岐を創り出す触媒、たとえばビニル基を創り出す触媒を使用することによって、或いはポリマーの分岐を創り出すモノマー、たとえばデュアル重合性ジエンを使用することによって、或いは、それら両方の組合せを使用することによって、導入することができる。分岐度は、たとえば、当業界で公知のようにして、重合の際のそれらの量、すなわちフィードストリームを調節することによって制御することができる。長鎖分岐のレベルによって、最小位相角を制御することができる。
【0053】
油展されたエチレンコポリマーは、好ましくは、ポリマーの調製中、且つポリマーを仕上げるより前、より具体的には溶媒を除去するより前に、1種又は複数のエクステンダー油をエチレン-コポリマーとブレンドすることによって得られる。1種又は複数の油を、反応溶液を反応容器から出した後、及び/又は油展されたポリマーを製造するための重合反応を停止させた後、且つその反応溶液の溶媒を除去するより前に、反応溶液に添加するのが好ましい。たとえば、その添加を、重合反応器の後で、且つ揮発分の除去の前に、たとえば、スチームストリッパー又は乾燥仕上げエクストルーダーの前に実施するのがよい。エチレン-α-オレフィンコポリマーが、反応媒体中に溶解されているか又は懸濁されているとき、好ましくは重合反応器から抜き出したときに、エクステンダー油を、エチレン-α-オレフィンコポリマーとブレンドするのが好ましい。
【0054】
エチレン-コポリマーコンパウンド物
本開示におけるエチレン-コポリマー、好ましくは油と混合した本開示におけるコポリマーを含む組成物、より好ましくは油展されたコポリマーは、1種又は複数の追加の成分と組み合わせることもできる。そのような追加の成分としては、(a)1種又は2種以上の硬化剤、(b)1種又は2種以上の充填剤、(c)1種又は2種以上のゴム助剤が挙げられるが、それらに限定される訳ではない。エチレン-コポリマー及び油展された組成物をそのような成分と混合して、典型的には、均一で固体の、ゴムとそれらさらなる成分との混合物であるゴムコンパウンド物を製造するための、ゴムコンパウンド物を得ることができる。ゴムコンパウンド物においては、典型的には、エチレン-コポリマー及び油以外の成分の含量は、その組成物の全重量を基準にして、少なくとも10重量%か、又は10重量%よりも多い。それらのゴムコンパウンド物は硬化可能であり、硬化されて、加硫されたコンパウンド物、すなわち「加硫物」を与えることができる。
【0055】
硬化剤
好適な硬化剤(加硫剤)としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、4,4’-ジチオジモルホリン、モルホリンジスルフィド;アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、セレンジメチルジチオカルバメート、及び有機ペルオキシド。有機ペルオキシドとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:ジクミルペルオキシド(DCP)、2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-ヘキサン(DTBPH)、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(DTBPIB)、2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン(DTBPHY)、ジ-t-ブチル-ペルオキシド、及びジ-t-ブチルペルオキシド-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(DTBTCH)、又はこれらのペルオキシドの混合物。これらの内で好ましいのは、硫黄、TMTD、TETD、DCP、DTBPH、DTBPIB、DTBPHY、及びDTBTCHである。
【0056】
硫黄加硫の場合においては、硫黄、又は硫黄含有硬化剤を、0.1~10phr、好ましくは0.5~5phr、さらにより好ましくは0.5~2phrの量で使用するのが好ましい。
【0057】
ペルオキシド加硫の場合においては、有機ペルオキシド-ベースの硬化剤を、0.1~15phr、好ましくは0.5~5phrの量で使用するのがよい。
【0058】
加硫剤としての硫黄は、1種又は複数の加硫促進剤、及び1種又は複数の加硫活性化剤と組み合わせて使用してもよい。加硫促進剤の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾール-スルフェン-アミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾール-スルフェン-アミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル-ジスルフィド、ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン、o-トリル-ビ-グアニド、ジフェニルグアニジン-フタレート、アセトアルデヒド-アニリン反応生成物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア、2-メルカプトイミダゾリン、チオカルバニリド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジ-o-トリルチオ尿素、テトラメチルチウラムモノスルフィド、TMTD、TETD、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、亜鉛ジエチル-チオカルバメート、亜鉛ジ-n-ブチルチオカルバメート、亜鉛エチルフェニルジチオカルバメート類、亜鉛ブチルフェニルジチオカルバメート類、ナトリウムジメチルジチオカルバメート、セレンジメチルジチオカルバメート、テルルジエチルジチオカルバメート、亜鉛ジブチルキサンテート、及びエチレンチオ尿素。加硫促進剤は、使用するのならば、そのエチレン-コポリマーの100重量部あたり、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~5重量部、最も好ましくは0.25~2phrの間の量で使用する。
【0059】
加硫活性化剤の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:金属酸化物たとえば、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛、ステアリン酸又はその金属塩、ステアリン酸又はそれらの組合せなど、たとえば酸化亜鉛とステアリン酸との組合せ。加硫活性化剤は、エチレンコポリマーを規準にして、通常は0.5~10phrの量、好ましくは0.5~5phrの量で使用する。
【0060】
加硫剤として、ペルオキシド又はペルオキシドの混合物を使用する場合、ペルオキシド架橋助剤を使用してもよい。そのようなペルオキシド架橋助剤の例としては、以下のものが挙げられる:シアヌレート化合物たとえば、トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレート、(メタ)アクリレート化合物たとえば、トリメチロールプロパン-トリメタクリレート及びエチレングリコール-ジメタクリレート、亜鉛-ジメタクリレート及び亜鉛ジアクリレート、ジビニルベンゼン、p-キノンジオキシム、m-フェニレンジマレイミド、(高ビニル)ポリブタジエン、並びにそれらの組合せ。0.1~5phrのペルオキシド架橋助剤が使用できれば、好ましい。0.25~2.5phrのペルオキシド架橋助剤が使用できば、より好ましい。ペルオキシドを、加硫剤として追加して使用する場合には、硫黄(元素状、又は硫黄加硫促進剤若しくは供与体の一部として)を使用して、いわゆるハイブリッド硬化系が得られるようにすることができれば、好ましい。これらの硬化系では、ペルオキシド硬化では典型的な高い耐熱性と、硫黄加硫系に典型的に伴う、極めて良好な極限的な性質、たとえば引張性及び引裂性、さらには優れた動的性能及び疲労性能とが組み合わされている。硫黄の適用量は、好ましくは0.05~1.0phr、好ましくは0.2~0.5phrである。
【0061】
充填剤
充填剤は、20~500phrの量で使用できれば好ましい。好ましい充填剤としては、カーボンブラック及び/又は無機充填剤たとえば、シリカ、炭酸カルシウム、タルカム、及びクレーであるが、これらはゴムに対して慣用されている。カーボンブラックのタイプは、ASTM D-1765により、その粒径(BET、単位m/g)及び構造(DBP吸着量、単位cm/100g)に従って分類される。5~150のBET数及び30~140のDBP数を有するカーボンブラック充填剤を使用するのが好ましい。当業界では、これらのタイプのカーボンブラックは、たとえばMT、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどの略称で表されることも多い。それらの無機充填剤が、適切なシランを用いて、表面処理されていてもよい。そのような充填剤の2種以上を組み合わせて使用することもできる。その充填剤が、カーボンブラック、及び/又はシラン化シリカ含むのが、最も好ましい。
【0062】
さらなる充填剤としては、1種又は2種以上のEPDMゴムも含めたその他のゴム、及びゴムのブレンド物が挙げられる。
【0063】
その他のゴム添加剤(ゴム助剤)
その他のゴム添加剤としては、ゴムコンパウンディング業界で一般的に使用されているものが挙げられる。例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:抗酸化剤(たとえば、ヒンダードフェノール化合物、たとえばBASFから商品名IRGANOX 1010又はIRGANOX 1076として市販されているもの);亜リン酸塩(たとえば商品名IRGAFOS 168として市販されているもの)、乾燥剤(たとえば、酸化カルシウム)、粘着付与剤(たとえば、ポリブテン、テルペン樹脂、脂肪族及び芳香族炭化水素樹脂、ステアリン酸アルカリ金属及びステアリン酸グリセロール、及び水素化ロジンなど)、結合剤、熱安定剤;粘着防止剤;剥離剤;静電防止剤;顔料;着色剤;染料、加工助剤(たとえば、加硫油、脂肪酸、ステアレート、ポリ-若しくはジ-エチレングリコール)、抗酸化剤、熱安定剤(たとえば、ポリ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、又は亜鉛2-メルカプトベンズイミダゾール)、UV安定剤、抗オゾン剤、発泡剤及び離型剤、分配剤、又は加工助剤たとえば、タルク若しくは金属塩、たとえば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、若しくはステアリン酸カルシウム、並びに可塑剤(可塑剤潤滑油、たとえば商品名PLI PROCESS OIL P460として市販されているもの、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン、低分子量ポリイソブチレン若しくはポリブチレン、液状EPDM若しくはEPM、コールタールピッチ、ヒマシ油、アマニ油、蜜蝋、アタクチックポリプロピレン、及びクマロンインデン樹脂)。可塑剤は、20~250phrの量で使用するのがよい。ゴム助剤には、1種又は複数の油を含んでいてもよい可塑剤が含まれ、そしてそのゴムコンパウンド物の中の全油含量が、そのコンパウンド物を作製するのに使用された組成物の中より高いのがよい。当業界で公知のさらなる添加剤を使用してもよい。
【0064】
ゴムコンパウンド物を作製するプロセス
本開示におけるエチレン-コポリマーを含むゴムコンパウンド物は、エチレン-コポリマー、好ましくは油と混合したエチレン-コポリマーを含む組成物を、1種又は複数の成分、たとえばa)1種又は複数の上述の硬化剤、b)1種又は複数の上述の充填剤、及び/又はc)1種又は複数の上述のゴム助剤と混合することによって、製造することができる。加硫可能なゴムコンパウンド物を形成させるための典型的なプロセスには以下のものを混合して、加硫可能なゴム組成物を形成させることが含まれる:
(i)油と混合されたエチレンコポリマーを、好ましくは油展されたエチレン-コポリマーとして含む組成物、
(ii)1種又は複数の硬化剤、
(iii)1種又は複数の充填剤、
(iv)1種又は複数のその他のゴム添加剤(好ましくは少なくとも1種の可塑剤を含む)。
【0065】
その混合には、好ましくは、たとえば以下のような、慣用されるゴム混合装置を用いた混練が含まれる:ニーダー、オープンロールミル、インターナルミキサー、又はエクストルーダー。混合は、当業熟練者に公知の一つ又は複数のステップで実施することができる。
【0066】
エチレン-コポリマー、特には、好ましくは油展されたコポリマーとして油と混合したコポリマーを含む組成物を使用して、以下の性質の、少なくとも二つ、好ましくは少なくとも三つ、より好ましくは少なくとも四つ又は全部を有する加硫ゴムコンパウンド物又は物品を調製するのがよい:
(a)ショアーA硬度:少なくとも40、
(b)破断時引張強度:少なくとも10MPa、
(c)破断時伸び:少なくとも400%、
(d)tanデルタ:0.16未満、好ましくは0.15未満、
(e)動的剛性:1.35未満、好ましくは1.25未満、
(f)反発弾性:少なくとも63%(23℃及び60℃で)。
【0067】
一般的に、低い圧縮永久歪み、たとえば72時間、23℃で、9未満の圧縮永久歪みを有するコンパウンド物を調製することができる。
【0068】
物品及び応用
物品を製造するためには、硬化可能な(加硫可能な)ゴムコンパウンド物を、少なくとも1種の、たとえば押出成形及び/又は金型成形による成形ステップにかけて成形し、そして、少なくとも1種の加硫ステップにかける。その加硫は、成形の前、途中、又は後に、たとえば、押出成形及び/又は金型成形の途中又は後に実施することができる。本開示におけるエチレン-コポリマーを使用して作製される物品には、硬化された形態のポリマーが含まれる、すなわち、そのポリマーが、物品、たとえば他の硬化可能なゴムを作製するために使用されるコンパウンド物又は組成物の中で、それ自体、又は他の架橋可能な成分を用いて架橋される。
【0069】
したがって、本開示におけるゴムコンパウンド物を成形及び硬化にかけることを含む、物品を作製する方法も提供されるが、成形は、硬化の後、前、又は同時に実施することができる。したがって、この方法によって得られる物品もまた提供される。
【0070】
本開示におけるエチレン-コポリマー、並びにそれらを含む組成物及びコンパウンド物は、EPDMポリマーに適した各種の用途を含めて、各種の最終使用用途で使用することができる。例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:ホース、ベルト、シール、エンジンマウント、屋根材、又はガスケット。
【0071】
本開示におけるエチレン-コポリマーは、それらから作製されたコンパウンド物も含めて、シーリング材料として、又はシールを作製するのに、特に好適であり得る。シールとしては、固体のシールが挙げられる。固体のシールとは、その材料が発泡させたものではなく、発泡させた材料とは反対に、多孔性であったり、スポンジ状の構造を有していたりはしないということを意味している。本開示におけるエチレン-コポリマー及び組成物は、それらから作製されたコンパウンド物も含めて、スポンジ状のシール又は発泡させたシールも含めて、発泡させた物品を作製するのに特に適している可能性がある。本開示の一つの実施態様においては、その物品が、発泡させた物品、より好ましくは発泡させたシール、より好ましくは1.0g/cm未満の密度、たとえば0.4~0.8の間の密度を有する、物品である。本開示のまた別の実施態様においては、本開示のエチレン-コポリマーを含む物品が硬化された形態で提供されるが、ここでその物品は、好ましくは、固体のシール、すなわち、非発泡のシールである。
【0072】
<特定の実施態様のリスト>
ここで、本開示の例示的実施態様のリストによって、本開示をさらに詳しく説明するが、本開示が、以下のリストに示されたこれらの例示的実施態様に限定される訳ではない。
【0073】
第一の例示的実施態様:エチレンから誘導された単位、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィン、及び少なくとも1種の非共役ジエンを含む、エチレンコポリマーを含む組成物であって、そのコポリマーには、以下のものが含まれる:
(i)そのコポリマーの全重量を基準にして、58重量%以下まで、好ましくは35~56重量%、より好ましくは38~52重量%のエチレンから誘導された単位;
(ii)そのコポリマーの全重量を基準にして、57重量%以下まで、好ましくは17~55重量%の、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィンから、好ましくはプロピレンから誘導された単位;
ここで、そのエチレンコポリマーは、ポリマー鎖1本あたり、約80単位から約125単位までの、1種又は複数のジエンから誘導された単位を有しており、そしてここで、そのエチレンコポリマーが油と混合されるが、組成物の中のその油の全量が、29phr以下であり、そしてここで、その組成物が、その組成物の全重量(=100%)を基準にして、60重量%~100重量%のエチレンコポリマー及び油を含んでいる。
【0074】
第二の例示的実施態様:第一の特定の実施態様の組成物であって、ここで、そのコポリマーが、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)を非共役ジエンとして含んでいる。
【0075】
第三の例示的実施態様:第一及び第二の例示的実施態様に記載の組成物であって、ここで、そのコポリマーが、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)を非共役ジエンとして含み、そしてここで、そのエチレンコポリマーが、ポリマー鎖1本あたり、80から最高125までの、ENBから誘導された単位を有している。
【0076】
第四の例示的実施態様:先行する例示的実施態様のいずれか1項に記載の組成物であって、1より大、且つ4.00未満、好ましくは3.70未満、より好ましくは3.20未満の最小位相角δminを有している。
【0077】
第五の例示的実施態様:先行する例示的実施態様のいずれか1項に記載の組成物であって、ここで、その組成物が、80~120のムーニー粘度ML1+8(150℃)を有している。
【0078】
第六の例示的実施態様:先行する例示的実施態様のいずれか1項に記載の組成物であって、ここで、そのエチレンコポリマーが、2~50の間の分岐度(Δδとして表される)を有している。
【0079】
第七の例示的実施態様:先行する例示的実施態様のいずれか1項に記載の組成物であって、ここで、そのエチレンコポリマーが、そのコポリマーの全重量を基準にして、5~20重量%の間の、ENBから誘導された単位の含量と、10~25の間の分岐度(Δδとして表される)とを有している。
【0080】
第八の例示的実施態様:先行する例示的実施態様のいずれか1項に記載の組成物であって、ここで、そのエチレンコポリマーが、5~20重量%の5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)から誘導された単位、0.05~5重量%の5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)から誘導された単位、35~56重量%のエチレンから誘導された単位、及び17~55重量%のプロピレンから誘導された単位を含み、ここで、重量%は、そのコポリマーの全重量を基準にしており、そしてここで、そのエチレンコポリマーが、ポリマー鎖1本あたり、約80から最高約125までの、ENB及びVNBから誘導された単位を有しており、そしてここで、その組成物の中の油の合計量が、5~25phrである。
【0081】
第九の例示的実施態様:先行する例示的実施態様のいずれか1項に記載の組成物であって、その組成物の全重量(=100%)を基準にして、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%の、エチレンコポリマー及び油を含み、ここで、その組成物の中の油の合計含量が、最高29phrまで、好ましくは5~25phr、より好ましくは10~20phrであり、そしてその油が、1種又は複数の炭化水素ベースの油を含んでいる。
【0082】
第十の例示的実施態様:ゴムコンパウンド物を作製する方法であって、先行する例示的実施態様のいずれか1項に記載の組成物を、少なくとも1種の硬化剤、場合によっては少なくとも1種の充填剤、又はそれらの組合せと混合することが含まれる。
【0083】
第十一の例示的実施態様:例示的実施態様十に記載の方法によって得られる、ゴムコンパウンド物。
【0084】
第十二の例示的実施態様:物品を作製する方法であって、例示的実施態様に記載のゴムコンパウンド物を、成形及び硬化にかけることを含み、ここで、成形は、硬化の後、前、又は同時に実施することができる。
【0085】
第十三の例示的実施態様:例示的実施態様十二に記載の方法により得られる、物品。
【0086】
第十四の例示的実施態様:発泡させた物品である、例示的実施態様十三に記載の物品。
【0087】
第十五の例示的実施態様:例示的実施態様十三に記載の物品であって、以下の性質(i)~(iv)の内の少なくとも二つを有している、物品:
(i)動的剛性:1.30未満、
(ii)tanデルタ:0.15未満、
(iii)破断時伸び:少なくとも500%、
(iv)圧縮永久歪み(72時間、23℃):20未満、好ましくは9未満。
【0088】
第十六の例示的実施態様:例示的実施態様一~九のいずれか1項に記載の組成物を作製する方法であって、
(i)反応媒体中で、エチレン、少なくとも1種のC~C20-α-オレフィン、及び少なくとも1種の非共役ジエンを重合させて、エチレン-コポリマーを得るステップ、
(ii)その反応媒体の中で、そのエチレンコポリマーを、1種又は複数の油と混合するステップ、
(iii)その反応媒体を除去して、そのコポリマー及びその油を含むその組成物を単離するステップ、
(iv)場合によっては、その組成物を、乾燥、成形、圧縮、洗浄、及びそれらの組合せから選択される少なくとも一つのステップにかけるステップ、
を含む方法。
【0089】
ここで、例を挙げて、本開示をさらに詳しく説明するが、これらの実施例及び、実施例の中で使用される実施態様に、本開示が限定されることは意図されていない。
【0090】
<試験方法>
ポリマーの試験法
ポリマーの組成
圧縮成形したポリマーフィルムについて、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を使用して、コポリマーの組成(ASTM D 3900に従ってC2/C3比、D 6047に従ってジエン含量)を測定した。
【0091】
Δδ:
ポリマーの分岐度は、パラメーターΔδによって特性解析した。Δδ(単位、度)は、0.1rad/sの振動数での位相角δと、100rad/sの振動数での位相角δとの間の差であって、動的機械分光法(DMS)により、125℃、10%歪みで測定される。このΔδの大きさが、そのポリマーの中に存在している長鎖で分岐状の構造の量の目安であり、H.C.Booij,Kautschuk+Gummi Kunststoffe,Vol.44,No.2,p.128~130で提案された(参考として引用し、本明細書に組み入れたものとする)。
【0092】
分子量及び分子量分布:
そのポリマーの分子量(Mw)、そのポリマーの数平均分子量(Mn)、そのエチレン-コポリマーのz平均分子量(Mz)及び分子量分布(MWD、MwとMnの間の比率として定義される)は、Polymer Char GPC(Polymer Characterisation S.A.(Valencia、Spain)製)を使用する、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC/SEC-DV)によって測定した。そのサイズ排除クロマトグラフには、オンライン粘度計(Polymer charV-400 Viscometer)、オンライン赤外検出器(IR% MCT)、3本のAGILENT PL OLEXISカラム(7.5×300mm)、及びPolymer Charオートサンプラーが取り付けられていた。その系のユニバーサルキャリブレーションは、ポリエチレン(PE)標準を用いて実施した。
【0093】
Polymer Charオートサンプラーのバイアルの中へ、ポリマーのサンプルを量り込んだ(濃度範囲:0.3~1.3mg/mL)。そのオートサンプラーの中で、自動的にバイアルに溶媒(1g/Lのジ-tert-ブチル-パラクレゾール(DBPC)で安定化された1,2,4-トリ-クロロベンゼン、TCB)が充填された。それらのサンプルを、高温オーブン(160℃)の中で4時間保持した。この溶解時間の後、それらのサンプルを、インラインフィルターによって、自動的に濾過してから、カラムの中に注入した。そのクロマトグラフ系は、160℃で運転した。TCB溶出液の流量は、1.0mL/minであった。そのクロマトグラフには、濃度のためのビルトインのオンライン赤外検出器(IR5 MCT)及びビルトインのPolymer Charオンライン粘度計が組みこまれていた。その系のユニバーサルキャリブレーションは、ポリエチレン(PE)標準を用いて実施した。
【0094】
鎖1本あたりのジエン単位:
ポリマー鎖1本あたりのジエン単位(本明細書においては、「ジエン含量」又は「ジエンから誘導された単位」とも呼ばれる)の数は、次式に相当する:
【数1】
式中、[ジエン]iは、そのポリマーの中でのi番目のジエン単位の含量(単位:重量%)(=ジエンから誘導された単位の含量)を意味しており;「ポリマーのMn」は、そのポリマーの数平均分子量(単位:kg/モル)を意味しており;「(Mwジエン)i」は、i番目のジエン分子の分子量(単位:g/モル)を意味している。
【0095】
そのポリマーに、いくつかの異なったジエンから誘導された単位が含まれている場合には、ポリマー鎖1本あたりの合計したジエン含量は、各種のジエンの鎖1本あたり含量を合計したものである。たとえば、ジエンA及びジエンBから誘導されたジエン単位を含むポリマーのポリマー鎖1本あたりのジエン含量、すなわちポリマー鎖1本あたりのジエンの数は、次式に従って計算される:
鎖1本あたりのジエンの数={([ジエンA]×10×ポリマーのMn)/ジエンAのMw}+{([ジエンB]×10×ポリマーのMn)/ジエンBのMw)}。
【0096】
ポリマー鎖1本あたりのENB単位の数は、次式に相当する:
[ENB]×10×ポリマーのMn)/(120g/モル)
ここで、[ENB]は、そのポリマー中のENB単位の含量である(単位:ポリマーの全重量(=100%)を基準にした重量%)。120g/モルは、ENBの分子量である。「ポリマーのMn」は、ポリマーの数平均分子量(単位:kg/モル)を意味している。
【0097】
ムーニー粘度
ムーニー粘度は、ISO 289に準拠して測定した。
【0098】
最小位相角、δmin
エチレン-コポリマーは、van-Gurp-Palmen(vGP)プロットにおけるそれらの曲線により、特徴づけることができる。vGPプロットにおいて、位相角(δ)が、絶対モジュラス([G])に対してプロットされる。その位相角及び絶対モジュラスは、レオロジー的測定から得られるが、そこでは、温度依存性の貯蔵モジュラス及び損失モジュラス、G’(T)及びG”(T)が測定される。位相角δは、tan(G”/G’)から計算される。絶対モジュラスの[G]は、(G’)+(G”)の平方根から計算される、すなわち、
【数2】
【0099】
そのプロットにおいて、位相角が最小値をとるポイントは、絶対モジュラス[G]が最小値をとるポイントでもあり、エチレン-α-オレフィンコポリマーを特徴づけるのに使用することができる(参照:たとえば、M.van Gurp,J.Palmen,「Time temperature superposition for polymeric blends」,Rheol.Bull,67(1998)、5、及びS.Trinkle,C.Friedrich,「Van Gurp-Palmen-plot:a way to characterize polydispersity of linear polymers」,Rheol.Acta,40(2001),322。S.Trinkleらによる論文が、直鎖状のポリマーのみを対象としているのだが、デルタminの測定をすることによって、分岐状のポリマーを特徴づけることも可能である)。
【0100】
δminを求めるため、温度依存性の貯蔵モジュラス及び損失モジュラス、G’(T)及びG”(T)を、ダブルサンドイッチ単純剪断サンプルホルダーを備えたMettler Toledo DMA 861eレオメーターを使用して、-100℃から+100℃まで、1Hzの振動数そして1K/minの加熱速度で、動的機械的熱分析(DMTA)測定することにより求めた。105℃、120barで10分間かけて圧縮成形したスラブから、直径8mm、厚み1mmの試験片を切り出した。
【0101】
G’(T)及びG”(T)を用いて、絶対モジュラス、
【数3】
及び位相角、δ=tan(G”/G’)を計算した。図1に示した、van Gurp-Palmen(vGP)プロットは、δを、実施例1からの測定の|G|に対してプロットすることにより得られた。図1における破線は、最小位相角(δmin)及びそれに相当する絶対モジュラス(本明細書では、G minと呼んでいる)を示している。
【0102】
油含量
油含量は、抽出法、たとえば、ISO 1407(2011)の方法D:未加硫ゴム、及び方法A:加硫ゴムに準拠する抽出法によって求めることができる。
【0103】
コンパウンド物の試験
ムーニー粘度:
硬化可能なコンパウンド物のムーニー粘度(測定条件:ML(1+4)@100℃)は、DIN 53523-3に準拠し、NatureFlex NP/28μmフィルム(Putz Folien(D-65232,Taunusstein Wehen,Germany)製)を使用して測定した。
【0104】
圧縮永久歪み(CS):
圧縮永久歪み(CS)は、DIN ISO 815に準拠し、硬化させたコンパウンド物について求めた。
【0105】
破断時引張強度(TS)及び破断時伸び(EB):
破断時引張強度(TS)及び破断時伸び(EB)は、DIN ISO 37に準拠し、硬化させたコンパウンド物について、S2ダンベルで、23℃で求めた。
【0106】
硬度:
ショアーA硬度(H)は、DIN ISO 7629-1に準拠し、硬化させたコンパウンド物について求めた。
【0107】
反発弾性:
反発弾性は、DIN 53512に準拠し、23℃で測定した。
【0108】
tanデルタ及び動的剛性:
MTS Systems Cooperation製の動的-機械的アナライザーを使用した。二つの試験片(高さ6mm、直径20mm)を、ダブル剪断サンドイッチサンプルホルダーの中に入れ、60℃で少なくとも30分かけて平衡に達しさせてから、測定を開始した。その後で、0.1~200Hzの範囲の振動数(対数表記で、一つの対数目盛あたり8データポイント)で、ピーク-ピーク間の大きさ0.3mmを適用して、そのゴム物質の線形的な粘弾性能が、単純剪断の形状で証明された。結果を図2に示す。tanデルタは、200Hzのところで求めた。動的剛性、DSは、180Hzと10Hzで測定した絶対モジュラスの比率から得た:DS=|G(180Hz)|/|G(10Hz)|。
【0109】
引裂強度:
ISO 34-2を適用して、23℃で、Delft試験片を用いて引裂抵抗を測定した。
【実施例
【0110】
実験
実施例1及び比較例C1~C5:
重合は、国際公開第2005/090418号パンフレット(参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)において、化合物19を触媒として用いた、一般的な連続重合手順の記載に従って、実質的に連続重合法により実施した。その重合は、直列に連結した二つの液体充填溶液重合反応器の中で実施した。両方の反応器の容積は3Lであった。全系を溶液相で維持するために、全系の圧力を、脱ガス圧力(degassing pressure)より高く保持した。エチレン及びアルファ-オレフィンのフィード、並びに触媒のフィードを調節して、表1に示したような、単位含量を発生させた。ENBのフィードは、988mmol/hであり、VNBのフィードは、61mmol/hであり、そして水素含量を0.09NL/hに調節すると、所望の鎖長、ムーニー粘度、及び鎖1本あたりのジエンの比率が得られた。ポリマーの生成速度は、約900g/hであった。排出ラインを通して、ポリマー溶液を連続的に取り出し、そこでIRGANOX 1076のイソプロパノール中溶液を添加した。そのポリマー溶液にパラフィン系油を添加し、そのポリマー(及び油)の溶液を、連続スチームストリッピングにより処理した。そのようにして得られた油展されたEPDMを、2本ロールミル上で、バッチ式で乾燥させた。実施例1(Ex1)のポリマーのレオロジー的性質を、各種の組成及び構造を有する各種のEPDMポリマー(比較例、C1~C6)の性質と比較した。それらの結果を表1にまとめた。
【0111】
【表1】
【0112】
それらのポリマーには、プロピレンがα-オレフィンコモノマーとして含まれていた。表1には、プロピレンから誘導された単位の含量が記載されていないが、ポリマーの残りのものが出ているので、100%から、エチレン、ENB、及びVNBから誘導された単位の合計を引き算することにより計算することができる(ポリマーC5Aの場合を除く)。C単位の量は、データシートから抜き出したが、ジエン含量のための補正はできない。ポリマーを(100重量%)基準にした、C単位(エチレン)とC単位(プロピレン)との合計量は、幾分か、少なくてよい。
【0113】
比較例C1~C5Aは、市販製品であり、データは公表されているデータシートから採用するか、又は実験で求めた。C1は、Lion Copolymer Geimar,LLCから、商品名ROYALENE 547として入手可能なEPDMサンプルであった;C2は、KUMHO POLYCHEMから、商品名KEP2480として入手可能なEPDMサンプルであった;C3は、ExxonMobilから、商品名VISTALON 8800として入手可能なEPDMサンプルであった;C4は、ExxonMobilから、商品名VISTALON 8700として入手可能なEPDMサンプルであった;C5は、三井化学(株)から、商品名EPT8120Eとして入手可能なEPDMサンプルであった;C5Aは、住友化学から、商品名ESPRENE 5527Fとして入手可能なEPDMサンプルであった。
【0114】
表1からわかるように、そして当業界で公知のように、一般的には、ムーニー粘度が高いほど、分子量(Mw)が高い。Mwが高いほど、数平均分子量Mnが高い。Mnは、分子量分布(MWD)を広くすることにより、下げることができる。ENB含量を調節して、ポリマー鎖1本あたりのENB含量が80より高くなるようにすることができる。分子量(Mw)及び(Mn)が高い場合、分子量が低いポリマーの場合よりは、より少ない量のENBが必要となる可能性がある。
【0115】
以下の追加の市販サンプルで、ポリマー鎖1本あたりのENBから誘導された単位の含量について分析した:
ARLANXEOから、商品名KELTAN K8340Aとして入手可能なEPDM:鎖1本あたりのENB=44;
ARLANXEOから、商品名KELTAN K7341Aとして入手可能なEPDM:鎖1本あたりのENB=63;
Exxonから、商品名VISTALON 7500として入手可能なEPDM:鎖1本あたりのENB=34。
【0116】
実施例2及び比較例C6~C10:
実施例1及び比較例C1~C5のポリマーを、インターナルミキサー(Harburg-freudenberger Maschinenbau GmbH製のGK1,5 E1;ラム圧力8bar、50rpm、充填度72%、全混合時間5分)を使用して、表2に示した成分と共にコンパウンディングした。硬化系を、オープンミル(ロール直径200mm;20rpm、ロール及び摩擦温度40℃)上で添加した。
【0117】
【表2】
【0118】
そのようにして得られたEPDMコンパウンド物で、コンパウンド物の性質についての試験をした。実施例2は、実施例1のポリマーを用いて作製したコンパウンド物である。比較例C6~C10は、比較例C1~C5のポリマーを用いて得られたコンパウンド物である。
【0119】
2mm×6mm厚の試験プレートを180℃で、t90の1.10~1.25倍に等価な時間をかけて硬化させることによって、試験片を調製した(t90とは、レオメーター測定の際の最大トルクの90%に達するまでの時間である)。それらの試験結果を、表3に示す。
【0120】
【表3】
【0121】
表3に見られるように、本開示によるポリマーから調製されたコンパウンド物は、破断時引張強度によって示されるような良好な機械的強度、及び500%よりも大きい破断時伸びで示されるような良好な弾性的性質を有している。それらのコンパウンド物は、低い圧縮永久歪みの値で示されているような、良好な形状維持性能を有している。それらの圧縮永久歪みは、広い範囲の温度にわたって、低かった。本開示のポリマーから作製されたコンパウンド物はさらに、高い反発弾性値及び低いtanデルタ値で示されているような、改良された弾性的及び動的性質も有していた。本開示のポリマーから作製されたコンパウンド物はさらに、表3における低い動的剛性値に示されているように、優れたレジリエンスも示している。低い動的剛性値は、振動及び騒音を減衰させるのに特に望まれており、そして、シーリング用途のため、及び特に発泡させたシールすなわちスポンジ材料を作製するためには有用な性質である。
図1
図2
【国際調査報告】